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1970/02/16 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第1号
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1970/02/16 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第1号

#1
第065回国会 法務委員会 第1号
本国会召集日(昭和四十五年十二月二十六日)(
土曜日)(午前零時現在)における本委員は、次
の通りである。
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
   理事 福永 健司君 理事 畑   和君
   理事 沖本 泰幸君 理事 佐々木良作君
      石井  桂君    江藤 隆美君
      河本 敏夫君    島村 一郎君
      千葉 三郎君    中尾 栄一君
      中村 梅吉君    永田 亮一君
      羽田野忠文君    松本 十郎君
      村上  勇君    山手 滿男君
      赤松  勇君    黒田 寿男君
      下平 正一君    三宅 正一君
      安井 吉典君    林  孝矩君
      丸山  勇君    西村 榮一君
      青柳 盛雄君
―――――――――――――――――――――
昭和四十六年二月十六日(火曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 福永 健司君
   理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君
   理事 岡沢 完治君    江藤 隆美君
      石井  桂君    松本 十郎君
      羽田野忠文君    日野 吉夫君
      黒田 寿男君    青柳 盛雄君
      林  孝矩君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 秋田 大助君
 出席政府委員
        内閣法制局第二
        部長      林  信一君
        法務政務次官  大竹 太郎君
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務大臣官房会
        計課長     伊藤 榮樹君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 貞家 克巳君
        法務省民事局長 川島 一郎君
 委員外の出席者
        大蔵省理財局国
        有財産第一課長 市川廣太郎君
        農林省農地局管
        理部農地課長  馬場 道夫君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  長井  澄君
        最高裁判所事務
        総局経理局長  大内 恒夫君
        最高裁判所事務
        総局行政局長  瀬戸 正二君
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
昭和四十五年十二月二十六日
 辞任         補欠選任
  下平 正一君     勝澤 芳雄君
  安井 吉典君     日野 吉夫君
  西村 榮一君     岡沢 完治君
昭和四十六年一月三十日
 辞任         補欠選任
  佐々木良作君     永末 英一君
二月一日
 委員永末英一君が退職された。
同月三日
 辞任         補欠選任
  青柳 盛雄君     谷口善太郎君
同月四日
 辞任         補欠選任
  谷口善太郎君     青柳 盛雄君
同日
 辞任         補欠選任
  青柳 盛雄君     谷口善太郎君
同月九日
 辞任         補欠選任
  勝澤 芳雄君     細谷 治嘉君
同日
 辞任         補欠選任
  細谷 治嘉君     勝澤 芳雄君
同月十二日
 辞任         補欠選任
  岡沢 完治君     佐々木良作君
同月十三日
 辞任         補欠選任
  勝澤 芳雄君     西宮  弘君
  谷口善太郎君     青柳 盛雄君
同日
 辞任         補欠選任
  西宮  弘君     勝澤 芳雄君
同月十五日
 辞任         補欠選任
  勝澤 芳雄君     安井 吉典君
  佐々木良作君     岡沢 完治君
同日
 辞任         補欠選任
  安井 吉典君     勝澤 芳雄君
同月十六日
 辞任         補欠選任
  勝澤 芳雄君     楢崎弥之助君
同日
 辞任         補欠選任
  楢崎弥之助君     勝澤 芳雄君
同日
 理事佐々木良作君一月三十日委員辞任につき、
 その補欠として岡沢完治君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
二月三日
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一一号)
同月四日
 商法の一部改正反対に関する請願(吉田之久君
 紹介)(第二〇七号)
 出入国管理制度に関する請願(赤松勇君紹介)
 (第二九〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 国政調査承認要求に関する件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一一号)
 裁判所の司法行政に関する件
 法務行政に関する件
 検察行政に関する件
 国内治安に関する件
 人件擁護に関する件
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 理事補欠選任の件についておはかりいたします。
 去る一月三十日、理事佐々木良作君の委員辞任に伴い理事一名が欠員となっておりますので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により委員長において指名するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、岡沢完治君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
#4
○高橋委員長 国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。
 すなわち、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中、裁判所の司法行政に関する事項、法務行政及び検察行政に関する事項並びに国内治安及び人権擁護に関する事項につきまして、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により国政調査を行なうため、議長に対し承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#6
○高橋委員長 次に、最高裁判所長官等の出席説明の承認に関する件についておはかりいたします。
 今会期中、最高裁判所の長官またはその指定する代理者から出席説明の要求がありました場合、その承認に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#8
○高橋委員長 次に、裁判所の司法行政に関する件、法務行政及び検察行政に関する件並びに国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、昭和四十六年度法務省関係予算及び裁判所関係予算の概要について、政府及び裁判所当局からそれぞれ説明を聴取いたします。法務省伊藤会計課長。
#9
○伊藤政府委員 昭和四十六年度法務省所管予算の内容について、概要を御説明申し上げます。
 昭和四十六年度の予定経費要求額は、千七十一億六千六百十四万三千円でありまして、これを前年度予算額九百四十九億七千二百七十八万五千円に比較いたしますと、百二十一億九千三百三十五万八千円の増額となっております。
 増額分の内訳を大別いたしますと、人件費百三億四千四百二十五万二千円、一般事務費十四億九千五百二十二万八千円、営繕施設費三億五千三百八十七万八千円、となっております。
 まず増員について申し上げますと、
 第一に、検察庁において八十八人が増員となっております。まず、自動車等による業務上過失致死傷事件の増加に対処し、事件処理の円滑適正化をはかるため、副検事三十六人、検察事務官三十六人が増員となっております。また、産業犯罪事件の増加に対処するため検察事務官十人、公判審理を迅速に処理するため検察事務官六人が増員となっております。
 第二に、法務局において事務官二百人が増員となっております。まず、登記事務の激増に対処しその迅速適正化をはかるため、百九十人が増員となっております。また、国の利害に関係のある民事、税務等の争訟事件の処理を充実するため八人人権侵犯事件等の増加に対処するため二人が増員となっております。
 第三に、刑務所における職員の勤務条件を改善するため、看守が婦人補導院からの振りかえ増十九人を含めて百人の増員となっております。
 第四に、非行青少年対策を充実するため、関係職員四十三人が増員となっております。
 その内容は、少年院の職業補導の充実のため教官十九人、少年鑑別所の観護活動の充実のため教官十一人、保護観察所の面接処遇の強化のため保護観察官十三人でありまして、犯罪を犯した青少年の健全な社会復帰を強力に推進しようとするためのものであります。
 第五に、国際交流の活発化に伴い増加している出入国審査業務の適正迅速化及び在留外国人の資格審査の充実をはかるため、地方入国管理官署において、入国審査官三十人、入国警備官三人が増員となっております。
 第六に、公安調査庁における破壊活動調査機能を充実するため、公安調査官二十人が増員となっております。
 増員の内容は以上のとおりでありますが、御承知のとおり、昭和四十三年八月の閣議決定に基づく定員削減計画による昭和四十六年度削減分として四百十八人が減員されることになりますので、所管全体といたしましては、差し引き四十七人の定員増加となるわけであります。
 次に、一般事務費について御説明申し上げますと、前年度に比し、旅費類が一億八千八百九十三万七千円、庁費類が八億六千百二十六万二千円、被収容者食糧費、弁償金等のその他の類が四億四千五百二万九千円増額となっております。
 法務省におきましては、昭和四十六年度予算案の主要事項を治安対策の充実強化、国民の権利保全の強化、非行青少年対策の充実強化、矯正施設収容者処遇の改善、出入国管理業務の充実等に取りまとめておりますので、これらの主要事項を中心に御説明申し上げます。
 第一の治安対策の充実強化につきましては、さきに申し上げました交通事件担当の副検事三十六人を含む合計二百三十二人の増員経費及び関係組織の人件費を含めて六百七十四億八千万円を計上し、前年度に比して七十六億九千百万円の増額となっております。これにより検察機能、矯正機能及び破壊活動調査機能の充実をはかるほか、保護観察機能を強化して罪を犯した者の更生と再犯の防止をはかり、もって法秩序の維持に万全を期することといたしております。
 その増額分について申し上げますと、
 まず、検察庁関係としては、二十七億一千七百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、直接検察活動に必要な検察費四千二百万円、公害犯罪事件処理の適正をはかるための経費一千百万円、捜査用器材費等一千五百万円が含まれております。
 次に、矯正関係としては、四十億九千四百万円が増額されておりますが、この中には、関係職員の人件費のほか、職員の待遇改善経費二億九千五百万円が含まれております。
 次に、公安調査庁関係としては、四億五千七百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、調査活動費四千六百万円が含まれております。
 次に、保護関係としては、四億二千三百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、保護司等との連絡通信費、事務能率器具等庁費千五百万円、定期駐在実施旅費四百万円、保護司実費弁償金一億四千三百万円、更生保護委託費千四百万円が含まれております。
 第二に、国民の権利保全の強化につきましては
 まず、登記事務処理の適正化に関する経費として、さきに申し上げました事務官百九十人の増員経費及び関係職員の人件費を含めて百十億四千三百万円を計上し、十七億二千五百万円の増額となっております。これにより経済の発展、公共事業の活発化等に伴う登記事件の増加に対処して、事務処理の適正、迅速化につき一そうの改善をはかることとしております。その増額のもなものは、事務処理の能率化をはかるための全自動謄本作成機等庁費三千七百万円、謄抄本作成事務の一部を請負により処理するための庁費四千四百万円、不動産登記簿の粗悪用紙改製に要する旅費、庁費二千二百万円、公共事業関係登記事件の処理に伴う応援等の旅費、庁費一千六百万円であります。
 次に、人権擁護活動の充実に関する経費として、関係職員の人件費を含めて四千百万円の増額となっております。その孝もなものは、同和事件等を含む人権侵犯事件調査の強化をはかるための旅費、庁費四百万円、人権擁護委員の活動強化をはかるための実費弁償金六百万円であります。
 第三に、非行青少年対策の充実強化につきましては、治安対策関係と重複しておりますが、さきに申し上げました少年院教官等四十三人の増員及び関係職員の人件費並びに収容関係諸費を含めて百二億五千二百万円が計上され、前年度に比して九億七千七百万円の増額となっております。これにより、粗暴化、兇悪化の傾向にある青少年犯罪に対処する検察体制の充実をはかるとともに、少年院、少年鑑別所の機能を整備し、同時に青少年に対する保護観察機能を強化して罪を犯した青少年の更生と再犯の防止をはかることにいたしております。
 その増額分について申し上げますと
 まず、検察庁関係としては、千六百万円が増額されておりますが、これは検察取り締まり経費であります。
 次に、少年院関係としては、四億九千万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、教育、生活用備品七百万円、食糧費千六百万円が含まれております。
 次に、少年鑑別所関係としては、二億三千八百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、鑑別観護用備品二百万円、食糧費四百万円が含まれております。
 次に、保護観察所関係としては、さきに申し上げました保護観察官十三人の増員及び担当職員の人件費並びに補導援護経費を含めて三億二千五百万円が増額となっております。
 第四に、矯正施設収容者処遇の改善につきましては、四百万円の増額となっております。これは、作業賞与金の支給計算高を一五%引き上げるための所要経費八百万円、生活用備品、日用品等の収容諸費七千七百万円、被収容者食糧費の菜代の単価を九・二%引き上げる等の内容改善経費一億三千三百万円等が増額となりましたが、収容人員を七千三百六十人減じましたため差し引きわずかの増額となったものであります。
 第五に、出入国管理業務の充実についてでありますが、さきに申し上げました入国審査官等の増員及び関係職員の人件費を含めて五億一千七百万円の増額となっております。その中には、近時増加する出入国審査事務及び在留資格審査事務を充実するための臨船審査等旅費二百万円、携帯無線機購入費等出入国審査費五百万円、舟艇建造費等機動力充実経費千三百万円が含まれております。また、港出張所を北海道苫小牧港等四カ所に新設し、審査業務等の迅速適正な処理をはかることにしております。
 次に、その他の事項経費のうち増額となったおもなものについて申し上げますと、
 一、訟務費につきましては、弁護士等謝金二千六百万円、訟務旅費四百万円、庁費類五百万円、調査委託費百万円、計三千六百万円が増額となっております。
 二、外国人登録事務費につきましては、一億三千六百万円が増額となっておりますが、そのおもなものは、昭和四十六年度が、外国人登録法に基づく在日外国人の登録証明書の大量切りかえを行なう年度に当たりますので、これに要する経費として登録諸用紙印刷費等庁費三千三百万円、外国人登録事務委託費八千万円、計一億一千三百万円が新たに計上されたものであります。
 三、昭和四十六年度から法務省に電子計算機を導入するための経費として、一億七千四百万円が計上されておりますが、そのおもなものは、電算機借料一億百万円の国庫債務負担行為の歳出化分のほか、カードせん孔委託費二千四百万円であります。
 四、本年四月及び六月に実施される予定の統一地方選挙及び参議院議員通常選挙に際し、適正な検察権を行なう必要がありますので、これに要する経費として旅費、庁費合わせて九千五百万円が計上されてかります。
 五、刑務所作業費につきましては、原材料費が相当額増額されましたほか、金属、印刷等の作業を充実するための機械器具の更新費、安全管理のための寒冷地の工場暖房費、作業付帯経費等合わせて九千六百万円が増額となっております。
 以上が一般事務費関係で増額となったおもなものであります。
 次に、施設の整備につきましては、三億五千四百万円の増額となっております。これは検察庁、法務局等庁舎の新営整備経費が四億七千七百万円の増額となりましたが、刑務所、少年院等の収容施設の新営整備経費が一億二千八百万円減額となり差し引き三億四千九百万円の増額となったことと、営繕付帯事務費におきまして五百万円の増額があったためであります。
 なお、年次計画に基づく法務局出張所の整備として四十五庁の新営が認められております。
 このほか、法務本省庁舎及び東京検察総合庁舎の冷暖房設備費として建設省所管の官庁営繕費に三億五千七百万円が計上されており、さらに特定国有財産整備特別会計に松山刑務所等十七施設の施設整備費として三十三億三千八百万円が計上されております。
 以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の概要てあります。
 終わりに、当省主管歳入予算について御説明いたします。
 昭和四十六年度法務省主管歳入予算額は、三百九億九千九百八十三万二千円でありまして、前年度予算額二百九十四億二千百二十七万二千円に比較いたしますと、十五億七千八百五十六万円の増額となっております。これは、過去の実績等を基礎として算出されたものでありまして、その増額のおもなものは、罰金及び科料と刑務所作業収入であります。
 以上をもって、法務省関係昭和四十六年度予算案についての説明を終わります。
#10
○高橋委員長 それでは、大内最高裁判所経理局長にお願いいたします。
#11
○大内最高裁判所長官代理者 昭和四十六年度裁判所所管予定経費要求額について、御説明申し上げます。
 昭和四十六年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、五百八十九億九千七百七十七万円でありまして、これを前年度予算額四百八十八億九千四百八十一万円に比較いたしますと、差し引き百一億二百九十六万円の増加となっております。
 これは、人件費にむいて七十九億一千四百六十八万九千円、裁判費にむいて二億七千百四十六万二千円、最高裁判所庁舎新営費において十三億七千八百六十三万一千円、下級裁判所営繕費において二億七千五百四十二万七千円、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費、庁費等において二億六千二百七十五万一千円が増加した結果であります。
 次に、昭和四十六年度予定経費要求額のうちおもな事項について御説明を申し上げます。
 まず、最高裁判所庁舎の新営に必要な経費であります。
 最高裁判所庁舎を東京都千代田区隼町十三番の一に、工事費総額百十九億九千四百四十七万三千円、工期三年で新営する初年度の工事費及び事務費として十四億五千八百七万円を計上しております。
 なお、との歳出予算額のほかに、国庫債務負担行為として二十六億五千三百八十二万一千円を計上しております。
 次は、人的機構の充実のために必要な経費であります。
 特殊損害賠償事件等の処理をはかるため、判事補十二人、裁判所書記官十二人、裁判所事務官二十四人の増員に要する人件費として三千五百七十八万三千円、簡易裁判所の交通事件(刑事関係)の適正迅速な処理をはかるため、簡易裁判所判事二人、裁判所書記官二人、裁判所事務官十人の増員に要する人件費として、九百八万七千円、家庭裁判所の資質検査の強化をはかるため、家裁調査官三十六人の増員に要する人件費として三千四百一万一千円、執行官法所定の金銭の保管及び予納事務を取り扱うため、裁判所事務官(歳入歳出外現金出納官吏補助職員)二十人の増員に要する人件費として八百七十万五千円、家庭裁判所を充実、強化するため、専任の家庭裁判所長を置く庁の増設二庁に要する経費として二百五十四万九千円、合計九千十三万五千円を計上しております。
 次は、裁判運営の能率化及び近代化に必要な経費であります。
 裁判官の執務環境の改善をはかるため、下級裁判所裁判官研究庁費一億七千五百六万五千円、資料室図書、図書館図書の充実をはかる等のため、裁判資料の整備に要する経費一億三千七百十四万円、裁判事務の能率化をはかるため、検証用器具等の整備に要する経費八千五十八万九千円、電子計算機による事務機械化の調査研究のため、研究開発に要する経費一千百六十八万一千円、調停制度を審議するため、臨時調停制度審議会(仮称)の設置に要する経費七十六万九千円、合計四億五百二十四万四千円を計上しております。
 次は、公害訴訟の処理に必要な経費であります。
 公害訴訟を適正迅速に処理するため、協議会を開催する等に必要な経費四千百四十七万五千円を計上しております。
 次は、下級裁判所の営繕に必要な経費であります。
 下級裁判所庁舎の新営、増築等に要する経費として、裁判所庁舎等の継続工事十六カ所、新規工事十七カ所、増築工事二カ所の工事費及びその事務費等四十億二千二百二十万三千円を計上しております。
 次は、裁判費であります。
 国選弁護人の報酬及び日当を増額するに必要な経費として四千百八十六万一千円、調停委員等の日当を増額するに必要な経費として三千七百四万六千円証人等の日当を増額するに必要な経費として四百八十四万円、合計八千三百七十四万七千円を計上しております。
 最後に、沖繩の本土復帰に伴う沖繩裁判所の受け入れ準備に必要な経費であります。
 沖繩司法制度の調査研究に必要な経費二百八十九万七千円、職員の任命がえ等人事関係に必要な経費七百八十万三千円、合計一千七十万円を計上しております。
 以上が昭和四十六年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。
#12
○高橋委員長 次に、秋田法務大臣から、法務行政等当面する諸問題について説明を聴取いたします。秋田法務大臣。
#13
○秋田国務大臣 委員各位には、平素から法務行政の諸問題につきまして種々御尽力いただいており、この機会に深く感謝いたす次第でございます。
 本日は、法務大臣に就任いたしまして初めて法務委員会に出席いたしましたので、御審議に先立ちまして、私が日ごろ考えておりますことを申し上げてみたいと思います。
 私は、法秩序の維持、確保と国民の権利の保全、擁護が法務行政の使命と考えてわるものであり、全力を尽くしまして、法務行政の最高責任者としての責めを果たしたい所存でございます。何とぞよろしく御協力くださいますようお願い申し上げます。
 以下、当面、重要と考えております二、三の点について申し述べたいと思います。
 第一は、治安対策についてであります。
 昨年は、過激派集団による暴力活動が懸念されたのでありますが、憂慮されていたほどのことはなく、また、ここ数年来相次いで発生した一部学生らによる大規模な集団的暴力活動等も、鎮静化の傾向を示し、治安情勢はおおむね平穏に推移しているものと認められるのであります。しかしながら、過激派集団は、来年の沖繩返還時期に向かって、活発な各種闘争を企図しているとうかがわれ、今後の情勢は、必ずしも楽観を許さないものがあると存ずるのでありまして、私といたしましては過激派集団の動向を慎重に見守り、社会秩序を破壊する過激な違法行為に対しては、従来同様、厳正な態度をもってこれに対処し、治安維持に万全を期する所存であります。
 第二は、公害対策についてであります。
 近年問題となっている公害につきましては、関係各省が協力し、総合的な施策のもと強力にこれを推進して、公害を克服する必要があると考えるのであります。法務省におきましても、前国会において各位の御協力により成立し、本年七月一日施行が予定されている人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律の適正な運用をはかるなど、所管行政を通じ現下の重要課題である公害の防止に寄与する施策を進めたいと考えます。
 第三は、法務行政の充実についてであります。
 法務省が所管いたす民事、刑事、矯正、保護、人権擁護、出入国管理、訟務その他の事務は、いずれも国民の権利義務に直接にかかわる事項でありますので、これら行政が的確かつ迅速に実施されるよう、一そうの充実をはかる所存でございます。
 特に、近時の著しい経済成長に伴い登記事件その他の民事行政需要が飛躍的に増加している情勢にかんがみ、国民の権利の保全、円滑な経済活動等に支障を生ずることがないよう、効率的事務処理がなし得る施策を講じ国民の期待にこたえたいと存じております。
 また、所管各庁の老朽庁舎等の改築、職員の待遇改善等につきましても十分に留意し、法務省関係職員の士気の高揚につとめたい所存でございます。
 最後に、法務行政を適正に遂行し得るよう、予算の確保につきましては、できる限りの措置を講じるとともに、当面必要な諸法律の改正をはかりたいと考えておりますので、これらの点につきましても何とぞよろしくお願いいたします。
 以上、はなはだ簡単ではありますが、私の所信を申し上げまして、委員各位の格段の御協力をお願いする次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#14
○高橋委員長 次に、内閣提出の裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。秋田法務大臣。
#15
○秋田国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件の適正迅速な処理をはかるため、判事補の員数を十二人増加し、また、簡易裁判所における交通関係の業務上過失致死傷事件の増加に対処するため、簡易裁判所判事の員数を二人増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、地方裁判所及び簡易裁判所における事件の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所書記官の員数を十四人、裁判所事務官の員数を五人、合計十九人増加しようとするものであります。
 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重にご審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
#16
○高橋委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
     ――――◇―――――
#17
○高橋委員長 次に、今国会法務省関係の提出予定法案の概要について説明を求めます。安原官房長。
#18
○安原政府委員 今国会に法務省が提出を予定し、またすでに提出した法案につきまして、内容を簡単に御説明申し上げます。
 お手元に「第六十五回国会提出予定法案」というリストが差し上げてございますので、この順序に従いまして御説明をいたしたいと存じます。
 法務省がすでに提出した法案並びに予定をいたしておる法案は全部で十三件でございまして、※印が二件、これは予算関係法案ということでございます。その他の法案が十一件ということに相なります。
 最初は法務省設置法の一部を改正する法律案でございます。要旨は、羽田入国管理事務所を廃止し、成田入国管理事務所を設置すること。現在羽田にあります東京国際空港において行なわれております出入国管理業務は、成田市に設置されます新東京国際空港の新設に伴いまして、同新空港において行なうことになりますので、これを実施するため羽田入国管理事務所を廃止いたしまして、成田入国管理事務所を設置するということであります。
 第二点は、苫小牧市等に入国管理事務所の出張所を置くこと。苫小牧市所在の苫小牧港、相生市にあります相生港、因島市にあります土生港、鹿児島県の揖宿郡の喜入町にあります喜入港、これら四港におきます出入国者数の増加に対処いたしまして、出入国管理の事務を一そう有効適切に行なうため、この四カ所に入国管理事務所の出張所を新設しようとする内容であります。
 第三番目は、市町村の配置分合等に伴い官署の位置等の表示を改めること。これは市町村の配置分合に伴いまして、札幌法務局の管轄区域内の行政区画等の名称の一部を改め、愛光女子学園、岡山少年院及び広島入国管理事務所尾道港出張所の位置の表示をそれぞれ改める内容であります。
 以上が設置法の一部を改正する法律案の内容でございまして、すでに二月の四日、衆議院内閣委員会に提出済みでございます。
 それから、その次は裁判所職員定員法の一部を改正する法律案でございます。
 これにつきましては、ただいま法務大臣から提案理由を御説明申し上げたとおりでありまして、特に説明を加えることはないと存じます。
 三番目は、旧執達史規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律の一部を改正する法律案でございます。
 内容は簡単でございまして、一般の公務員の恩給の増額に伴い、執行官の恩給の年額も改定されることとする措置を講ずるという内容でございます。特に詳しく申し上げる必要もないと存じます。
 その次は民事訴訟等費用法案、一枚めくっていただきまして刑事訴訟費用法案、それからさらに民事訴訟等費用法及び刑事訴訟費用法の施行に関する法律案、この三つは互いに密接に関連いたしますので、一括して御説明申し上げます。
 要旨はここに書いてございますが、これを要しまするに、現在多くの規定上の不備のあります民事訴訟費用及び刑事訴訟費用に関する各法規を体系的に整備、明確化いたしまして、いわば訴訟費用に関する基本法を制定しようとするものでございます。
 なおこの際、当事者間の費用償還請求権の対象となる費用について、その範囲を制限列挙的に明確にするとか、あるいは手数料が過大に納められた場合、裁判所が納付者に対し超過金額を金銭で還付する道を開くということ、あるいは証人、鑑定人等に対しまして、出頭当日について日当を支給するほか、新たに出頭のための旅行に要した日についても日当を支給するものとすること、あるいは証人、鑑定人等の旅費の種目として新たに航空機を加えるというようなことの改善をはかりたいと考えておる次第であります。
 次に、民事訴訟費用法及び刑事訴訟費用法の施行に関する法律案は要するに、現行の民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法、民事訴訟用印紙法、商事非訟事件印紙法及び訴訟費用臨時措置法は、いずれもこれを廃止することといたしますので、廃止に伴う経過措置及び新法制定に伴う関係法律の整理をすることを内容とするものであります。
 次は、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案であります。これは市町村の廃置分合等に伴いまして、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表に所要の改正を加えるものでありまして、同法律の別表に百カ所ほど、かような整理をする必要がありますので提出するものであります。内容は、簡単と存じます。
 その次は、民法の一部を改正する法律案であります。
 根抵当権の意義及び効力等について新たに規定を設け、不動産登記法その他の関係法令に所要の改正を加えることという要旨でありますが、要するに、根抵当は、御案内のとおり、銀行と取引先、商社と取引先などの間において、反復継続して生じます多数の債権を一定の極度額において担保する抵当権といたしまして、民法上明文の規定がないまま、明治以来、判例、学説によりましてその有効性が承認され、経済取引におきまして重要な役割りを果たしてきたのでありますが、この法律案は、明文の規定がないために生ずる複雑、困難な問題を解消するため、従来の慣行を基礎としつつ、根抵当をめぐる法律関係を明確化、合理化し、根抵当取引を安定したレール上に乗せようとする内容のものであります。
 要点といたしましては、根抵当権を設定するには、極度額のほか、一定の担保すべき債権の範囲を定めるべきものとするとともに、その変更もできるものとする、あるいは根抵当権の優先弁済権の範囲を明確にする、根抵当権者または債務者に相続、合併があった場合の法律関係を明確にする根抵当権の譲渡その他の処分をめぐる法律関係を明文化する等の内容のものであります。
 次は、商法の一部を改正する法律案であります
 要旨は、監査役の職務及び権限を拡張し、決算について公認会計士の監査を受けなければならないものとすること及び累積投票制度、転換社債の発行、準備金の資本組み入れによる抱き合わせ増資等について所要の改正を加える。要旨は、株式会社の監査役は、会計監査だけではなく、業務監査をすることとし、そのために必要な権限を与えますとともに、適正な監査が行なわれるよう、任期を一年から三年に延ばすなど、独立性の確保、地位の安定等のための措置を講ずるというのが第一点。
 第二点は、株式会社は、決算について、定時総会前に公認会計士の監査を受けなければならないものとし、株主、取引先、下請企業者、従業員等関係者の保護をはかるということ、それから一年決算の会社について中間配当の制度を認め株主の便をはかる、あるいは取締役の選任について、定款で累積投票の制度を完全に排除することができることとして経営の安定をはかる、あるいは転換社債は新株と同様取締役会の決議で発行できることとし、また法定準備金の資本組み入れによる有償、無償の抱き合わせ増資を認め資金調達の便をはかる、あるいは休眠会社の整理を行なうという内容のものでございます。
 その下の株式会社の監査の特例に関する法律案は、一定規模の株式会社の監査について監査役の権限等の特例に関する法律を制定する。先ほど申し上げましたような内容の監査役の権限強化あるいは決算定時総会前の公認会計士の監査を、資本金一億円未満の会社についてはこれを除外するというようなことを内容とする特例法でございます。
 その次は、民事訴訟法等の一部を改正する法律案であります。
 裁判書、調書等の署名押印方式の合理化をはかり、即決和解に関する請求異議の訴え等の事物管轄に所要の改正を加える。さらに詳しく申し上げますと、即決和解等に関する請求異議の訴え等の事物管轄の改正と申しますのは、簡易裁判所におきまして成立した訴訟上の和解調停に関する請求異議の訴え等は、現在すべて簡易裁判所の専属管轄とされておりますが、請求の価額が三十万円をこえます場合は、これらの訴えの管轄裁判所を地方裁判所に改めようとするものでありまして、これは裁判所法の一部改正法の審議の際における衆議院法務委員会の附帯決議の内容を実現しようとするものであります。
 もう一つの裁判書、調書等の署名押印方式の改正、これは民事裁判手続の合理化、能率化をはかるため、判決書以外の裁判書、調書、訴状等におきます現在の裁判官等の署名捺印を、刑事訴訟法と同じように記名捺印または認印で足りるものとするというのが改正の内容であります。
 その次は刑事施設法案、これは現行の監獄法をより積極的に、被収容者の基本的人権の保障と受刑者に対する効果的な矯正処遇、社会復帰の促進をはかる観点から全面改正しようとするものでありまして、御案内のとおり、監獄法は明治四十一年の制定公布にかかりまして、現在に至るまで、一部の改正を除きましては制定当初のままで推移してきたものでございまするが、その後の行刑の発達、特に日本国憲法の施行後二十年あまりの間における人権思想の推移、世界行刑思潮の進展あるいは一九五五年の国際連合決議にかかる被拘禁者処遇最低基準規則等に照らしますとき、現行監獄法を全面的に改正すべき時期に来ていると存ずるのであります。
 本省におきましては、全面改正を目途といたしまして鋭意作業を続けてまいりました。最近に至りまして、主管局であります矯正局におきまして刑事施設法案を確定するに至ったのでありまするが、なおこれから関係部局等あるいは関係省庁等との意見調整あるいは法制審議会による審議を行なう必要がございますので、国会提出にはいましばらくの日時を要するものと考えております。
 最後は、出入国管理法案でございまして、ポツダム政令であります出入国管理令を廃止いたしまして、新たにすべての人の出入国の公正な管理等に関する法律を制定しようとする内容のものであります。ポツダム政令である出入国管理令を廃止いたしまして出入国管理法を制定する。それから出入国者の数の激増に対処いたしますため、在留期間の短い外国人等に対しまして入国手続の簡素合理化をはかる、あるいは外国人の在留管理の合理化をはかる等の内容でございます。
 以上が法務省が今国会に提出をした、あるいは提出を予定している法案の内容でございます。
     ――――◇―――――
#19
○高橋委員長 次に、法務行政に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。岡沢完治君。
#20
○岡沢委員 私は、お許しを得まして、きょうは国有農地の売り戻し問題に関連して、この発想の基礎が、今年一月二十日の最高裁判決の趣旨を尊重してということを政府は申しておられますので最高裁にこの判決の趣旨あるいは法意を明かにした上、関連して若干の質問をさしていただきたいと思います。
 最初に、最高裁にお尋ねいたしますけれども、昭和四十二年行ツ第五二号、四十六年一月二十日大法廷の判決、特にこの判決が含んでいる法意の中で法律上問題になる点、特に今度の政府の農地法施行令改正措置と結びつけて問題になる点を、この際明らかにしていただきたいと思います。
 私は決して裁判の当否をここで問題にしようという気持ちはさらさらございません。あえて最高裁の行政局長をお招きしてお尋ねしたいのは、やはり立法府としてこの判決に従って政府がとろうとしている政治的な措置についてその適否を判断する資料として、当然最高裁の判決の法意ということを国民の前に明らかにしてもらうということは許されるし、むしろわれわれの求めるべき義務だと考えているわけであります。
#21
○瀬戸最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 本年一月二十日の大法廷判決は、農地法八十条、農地法施行令十六条四号との関係につき判示したものであります。
 すなわち、農地法八十条は、買収農地を自作農の創設等の目的に供しないことを相当と認めたときは、これを旧地主に売り戻さなければならないと規定しているのに、同条の委任を受けた施行令十六条四号が公共用施設の用に供する緊急の必要があり、かつ、その用に供されることが確実な土地に限って売り戻すことができると制限しているのは、委任の範囲を越えた違法のものであると判示しているのであります。で判決は、売り戻し価格が幾らであるべきかということについては何ら判示するところがありません。
 以上で説明を終わります。
#22
○岡沢委員 いまの瀬戸行政局長の御答弁にもありましたが、最後のこの判決はいわゆる国有農地の売り戻しの価格については全く判示がない。重ねてお尋ねいたしますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
#23
○瀬戸最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
#24
○岡沢委員 それから、この判決文の中にある一つのことばでございますけれども、「私有財産の収用が正当な補償のもとに行なわれた場合においてその後にいたり収用目的が消滅したとしても、法律上当然に、これを被収用者に返還しなければならないものではない。」という文言がございますが、これも最高裁判所の大法廷の判断と解釈してよろしゅうございますか。もちろんその以下のただし書きがございます。
#25
○瀬戸最高裁判所長官代理者 判決文の一部にそういう文言があることはそのとおりてございます。
#26
○岡沢委員 そうすると、もう一度重ねていまの局長の御答弁をふえんいたしますと、この判決の主たる判示の中身は、法八十条と関連をして令の十六条四号についての判示が主たるものであって、法八十条の二項、特に後段の価格の点については全く触れていないと解釈してよろしゅうございますか。
#27
○瀬戸最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
#28
○岡沢委員 最高裁に対するお尋ねは一応この程度で留保させていただきまして、ちょっと残っていただきたいと思いますが、法制局のほうにお尋ねをいたします。
 昨日予算委員会でも問題になりましたけれども、御承知のとおり法律の世界には事情変更の原則というのがございます。土地の価格が特に戦後二十五年の間に全く異常あるいは不当と思われるほどの騰貴を示している。地価に関する限り事情変更の原則の最たるものと考えてもいい事象であることはお認めてございますか。
#29
○林政府委員 最近におきまして地価の異常な値上がりがあるという事実、これは否定し得ないと思います。
#30
○岡沢委員 この異常な騰貴あるいは事情の変更というのがいわゆる事情変更の原則の適用の前提になります。当事者の責めに帰することができないものである、またその変更が当事者の予見せず、また予見できない異常なものであったということも私は間違いないと思いますけれども、そのとおりだとお考えになりますか。
#31
○林政府委員 事情変更の原則が適用になる、それが問題になります場合においては、おっしゃるとおりであるというふうに思います。
#32
○岡沢委員 私の質問の趣旨は、この地価の異常な騰貴、地価に関する事情の変更がいわゆる当事者の責めに帰するものとかあるいは予見できたものではない、予見を越えるものだという点についてもお認めになりますか。
#33
○林政府委員 事実の問題でございますので、はたしてどう答えていいか確信はございませんが、常識的に申しまして、いまの地価の異常な値上がりを、契約当事者がかりにありました場合に、その当時において十分予見し得たであろうかということについては、問題が、疑問があると思います。
#34
○岡沢委員 土地収用法の百六条の三項に事情変更の原則を前提にした売り戻し、買い戻し価格についての規定があることは御承知でございますか。
#35
○林政府委員 承知しております。
#36
○岡沢委員 そういうことを考えました場合、今度の最高裁の判決と結びつけて閣議が農地法施行令を改正をされて、しかも売り渡し価格について買収時の価格によることを行政府としてはやむを得ない措置だというふうな解釈をとられていることについて、私自身は事情変更の原則、あるいは法あるいは法解釈は社会正義に基づいて国民の納得するものであるということが大前提であるということを考えました場合、あるいは土地収用法の規定、これは国有農地の売り戻し問題ときわめてよく似た性格の条文であり、また法律上の内容を持っていると思うのでございますが、この場合に当然にあるいは義務的にあるいは法律的には、俗にいわれる平均二円六十銭相当、時価の一万分の一以下だと思いますけれども、これで売り渡すという解釈が解釈上妥当だ、あるいは政府の解釈がそれしかないという答えが当然だとお考えになりますか。
#37
○林政府委員 いわゆる二円六十銭というような問題につきまして、私どもも国民感情という立場からいたしますと、十分理解できるわけでございます。ただ土地収用法百六条三項の規定が昭和二十六年にてきておるわけでございますが、昭和二十七年にてきました農地法にそれに見合う規定がほとんど置かれていないといったこともございます。そういたしまして、この最高裁の判決の適用の問題でございますが、先ほど最高裁の行政局長のほうから御説明がございましたように、価格そのものが問題になった事件でございませんので、この点は最高裁判決は触れておりませんが、この判決文の中に「旧所有者は、買収農地を自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、法八〇条一項の農林大臣の認定の有無にかかわらず、直接、農林大臣に対し当該土地の売払いをすべきこと、すなわち買受けの申込みに応じその承諾をすべきことを求めることができ、農林大臣がこれに応じないときは、民事訴訟手続により農林大臣に対し右義務の履行を求めることができるものというべきである。」こう判示されておりますので、そういたしますと、すでにこの要件に該当する事実が過去において発生しておりますれば、その時点におきまして当時の農地法八十条の規定によって売り払いの請求権が旧所有者に生じておる。そういたしまして、農地法の八十条にむきましては、買収の対価に相当する額で売り払うというふうに明文の規定がございますので、これは契約法上の理論でございまする事情変更の原則を援用いたしまして、解釈上事情変更を理由として時価にこれを変更するということは非常にむずかしいのではないかというのがわれわれの考えでございます。
#38
○岡沢委員 むずかしいということと、違法であるということとは違うと思うのですけれども、違法であるという意味ですか。かりに時価で売り渡した場合、違法であるというお考えですか、それともむずかしいというお考えですか。
#39
○林政府委員 はっきり申し上げますと、むしろ違法であるというふうに言っていいと思います。
#40
○岡沢委員 違法であればその根拠を示していただきたいわけでございますけれども、いまおっしゃいましたこの農地法の規定が昭和二十七年、土地収用法の規定が昭和二十六年だ。土地収用法が先ではないか。むしろ農地法のほうが私は法の不備だと考えてもいいし、また当然その当時としては土地の異常な高騰というのは三十年以後が顕著であるだけに予想しなかったことだと思うのですが法の不備を解釈で救うのがわれわれ法律家の一つの責務だと思うのです。それはもちろん恣意的な解釈は許されません。しかし、社会正義の実現という法の精神に照らし、あるいは条文上、他の規定の類推等を考えました場合、私は当然許される解釈だと考えるわけでございますが、自信をもってこれは違法だと断言できますか。
#41
○林政府委員 農地買収も一種の土地収用でございますが、土地収用法の規定があるにかかわらず農地法は非常に自己完結的な、自足的な規定を持っております。こういうことからいたしますと、あまり解釈を広げるということにつきましては、われわれは非常に危惧をいたさざるを得ないわけでございます。
#42
○岡沢委員 あなたを責めてもしかたがないのですが、少なくともそうであれば農地法の改正が必要だ、八十条二項後段の改正が必要だ。それが現在の国民感情あるいは事情変更の現実に合致する考え方だと私は思いますし、特にいまおっしゃいましたように、土地収用法とこの農地買収とは非常によく似た性質のものであるだけに、首尾一貫する意味からも当然農地法の改正が必要だ。また実際問題として法律には従ったけれども、国民感情あるいは合理性からいって妥当でないという場合もあるし、一方で法律には違反するけれども国民感情あるいは国民的な納得の点からいけば当然だという措置、いまの場合なんかまさにそうなんで、あなたの解釈からすれば、なるほど二円六十銭で売らなかったら違法になるという解釈も一方では成り立つでしょう。しかし、それは非常に不合理で、あるいは国民の納得できない、いわゆる社会正義に反するという解釈ができると思うのですね。そういう場合にこそ法を改正して、合法的であり、法を守ることが社会正義に合するという方向に持っていくのが立法府の義務だと思いますが、法制局としても私の考え方に同意していただけますか。
#43
○林政府委員 ただいま申し上げましたように、農地法八十条の規定によりましてすでに成立し確定している権利につきまして、事後の立法によりまして当事者の不利益にこれを変更するということにつきましては、まずこれはできないことであろう、そういうふうに考えております。
#44
○岡沢委員 法律の不遡及の問題をお出しになったと思いますけれども、刑事法では確かに刑法をはじめとしてこれは不遡及の原則がございます。しかし、民事のほうの不遡及というのは必ずしも厳格に絶対のものでないということは通説ではございませんか。むしろ事情変更の原則あるいは現在の社会正義を考えた場合に、むしろ法律をさかのぼって適用するほうが社会的な国民感情に合致する、合理的だという場合には。これは戦後の民法の改正一つ見てもそうでございますけれども、これは民事上は法律不遡及の原則というのは私は確立された絶対のものではないと思いますが、間違いでございましょうか。
#45
○林政府委員 先ほど申し上げましたように、事情変更の原則というものが働く余地がある場合でございますればおっしゃるとおりだと思いますがわれわれはそう考えておりませんので、まことにやむを得ないというのがわれわれの考えでございます。
#46
○岡沢委員 あなたは内閣の法制局ですか、それでは話にならぬですね。内閣の直属の下請機関ですからそれ以上言えないかもしれません。
 この際、最高裁に重ねてお尋ねいたしますが、先ほどのお答えで、さきの判例はあるいはさきの判示は価格の点に触れていないことが明らかにされました。ところが、政府は最高裁の趣旨を尊重して、そして価格は二円六十銭、いわゆる買収時の対価に相当してと、八十条二項後段を当然われわれ義務づけられているというような解釈をしているわけでございますが、先ほどのお答えからすると最高裁はそこまで求めてない、そこまで判示してないということでございますから、最高裁としてむしろ迷惑なお立場ではないかと思いますが政府がこの最高裁の趣旨を尊重して政令を改正したということについては、最高裁はそこまでお求めになったかどうか、あるいは最高裁としてはそういう措置を妥当とお考えになるかどうか。最高裁のお立場でございますからお答えにくい点はけっこうでございますけれども、許される範囲で御見解を聞きたいと思います。
#47
○瀬戸最高裁判所長官代理者 一月二十日の大法廷判決が出たあとで農地法施行令が一部改正されました。それは売り戻しの範囲を広くしたというだけの改正でございまして、最高裁の判決も、それから改正されました農地法施行令も、いずれも価格の点には触れておりません。政府が最高裁の判決を尊重したというのは、売り渡しの範囲を広くしたという点にあるかと思います。価格は農地法八十条二項後段に定められているところでありまして、施行令の改正前後を通じて何ら変わっておらないと思います。
#48
○岡沢委員 法務省政務次官もおられますが、いまの最高裁の御答弁で明らかなように、判例の趣旨を尊重してというのであれば、これは施行令そのものの改正は私はまだ許されると思います。また当然かもしれません。しかし、価格をいわゆる八十条二項に限定したという判示まではないわけなんで、これは私は政治的なあるいは行政的な判断だと思うのです。きのうも農林大臣が予算委員会で、行政府の限界としてどうしても判例の趣旨を尊重すると二円六十銭相当の価格で売らざるを得ないのだという御答弁は、私は最高裁の判例からは出てこないと思うのが当然だし、いまの行政局長の御答弁もそうだったと思います。二円六十銭ということで売らなければいかぬというのは、最高裁の判決と直接結びつけて何か義務づけられているのでございますか。
#49
○川島(一)政府委員 今回の政令の改正につきましては、私直接関係いたしておりませんので、政府としての考え方というものは申し上げることができないわけでございますけれども、ただいまの最高裁の判決とそれから価格の問題でございますが、私考えますのに、農地の売り払いの価格を現在の農地法八十条の規定のような線できめておるということは、これは立法政策の問題であるというふうに考えております。
 それから、しからばこれを改正することはどうかという点につきましては、先ほど法制局のほうから心述べになりましたような、すでにそういった請求権を取得しておるという者の権利をどのように扱うかという問題もありまして、なかなか困難な問題が出てくるのではないか、このように考えます。
#50
○岡沢委員 じゃあ川島民事局長に、少なくとも私は、法八十条二項後段の規定を改正して、現在の国民感情が納得するような合理的な価格で売り戻すというのは、行政上あるいは立法上妥当な措置だと思いますけれども、そうお思いになりませんか。いまの価格で、いわゆる政府がいうような買収の対価に相当する額、これは平均二円六十銭で、畑の場合もっと低い、一般の今度の問題の対象になる都市及び都市周辺り国有農地ということになれば、かりに時価二万六千円として一万分の一、二十六万として十万分の一の対価で売り戻すというのが、国民感情に合し、政治として行政として正しい措置だとお考えになりますか。良心的に答えていただきたいと思います。法律家の良心で答えてください。
#51
○川島(一)政府委員 単価をどのように定めるかということは、先ほども申し上げましたように、これはどういう趣旨で売り払いを認めるかということにもよると思うわけでございます。したがいまして、そういった売り払いの趣旨というものを一方に考えながら、政策的な問題として決定する。したがいまして、私の立場として、いま、それが妥当か妥当でないかということを申し上げるわけにはまいらないわけであります。
#52
○岡沢委員 しかし、立法あるいは行政の大原則に公平の概念、社会正義の概念が根底にあるということはお認めになりますか。これは法制局と民事局長両方にお尋ねいたします。
#53
○林政府委員 お答えいたします。
 社会正義あるいは公平の原則ということは、これは法の根本理念でございます。私どもが二円六十銭という価格を維持しなければならないというふうに考えておりますのも、実はそういう考えがある……(岡沢委員「それが公平の概念ですか。正義ということですか。ほんとうに良心的に答えてくださいよ」と呼ぶ)すでに法律上与えられました権利を自後の立法で変更するということは厳に慎むべきであるというのがわれわれの考えであります。
#54
○岡沢委員 あなたは法律の虫かもしれませんけれども、ほんとうの意味の正義がわからないのじゃありませんか。法律の不遡及の原則が刑事法上認められていることは、憲法上も疑いありません。民事については絶対的のものじゃないのじゃないですか。むしろ自後法で適用するのが社会正義に合する場合だってあります。現にいまの場合がそうじゃございませんか。既得権とおっしゃいますけれども、私は、むしろ不労所得あるいは不当利益を与える結果になるような処置が、これが正義だとどうしても考えられませんが、あなた自身の法律家の良心としてもう一回答えてください。
#55
○林政府委員 農地の買収につきましては、そもそもの当初にいろいろ問題があったようでございます。その一たん買収いたしました農地が、自作農創設の目的で買収したその目的に供することがなくなったとき、これは旧所有者に返すのは法律上の当然の政府の義務でございます。したがいまして、いかにして返すかということは、その当時の法律できめられおりましたところによるわけでございますから、これを変更することについては、われわれはやはり、お立場とちょっと見解を異にいたしますが、疑問を持つということであります。
#56
○岡沢委員 川島局長に、法律の不遡及の原則が民事では絶対的なものであるかないかをお答えいただきたい。
#57
○川島(一)政府委員 御指摘のように、刑事については法律不遡及の原則ということが非常に強くいわれておりますが、民事につきましては、一般には既得の権利を侵害しないという意味では同じようなことがいわれているのではないだろうかと考えております。いままでの立法におきましても……。
#58
○岡沢委員 一つの原則であることはわれわれ争わないのです。絶対的なものかどうか聞いている。法律の不遡及の原則が民事上絶対の概念かどうかということを重ねて答えてください。
#59
○川島(一)政府委員 たとえば財産権を法律に基づいて与えられておるという場合に、その財産権を奪うことができるかどうかということになりますと、これは一般的に奪う場合と、それから個々的に奪う場合と、いろいろございます。一般的に奪うというような形での変更ということはあろうかと思いますけれども、個々的に奪うということになると、これは憲法との関係で、その財産の補償をどういうふうにするかといったような問題が出てくるのではないかと考えられます。したがって、事柄によるのではないか、このように考えます。
#60
○岡沢委員 いまの場合は、それは最高裁の判断も、いわゆる私法上の行為だと、いろいろ争いがありましたけれども、判示しているようです。しかし、一般的に、憲法二十九条からいいましても、財産権の内容は公共の福祉に適合するようにきめられるわけだし、正当な補償さえすれば十分に制限ができるわけでしょう。今度の場合、既得権、既得権とおっしゃいますけれども、ほんとうに所有者がこれだけの高い価格を、労働力をもって、自分の努力で、現在の地価を盛り上げたのなら、私は既得権だと認めていいと思います。全くの不労利得、不労所得ではありませんか。こういうごく一部の恵まれ過ぎた人を、ぬれ手でアワ的に地主にすることによって不当な利益を与える。一方では、大多数の国民に、国民感情としても許せないような不平等感を与える、不満感を与える。そして、政府の土地政策としても全く後退の姿勢という批判を免れないような措置が、社会正義だというふうにほんとうにお考えになりますか、良心的に。答えられないなら答えられないでけっこうです。しかし、のうのうとしてここで法制局も法務省も――公益の代表者といわれるような法務省の局長が、これが社会正義だとおっしゃるとすれば、私は少なくとも良心的に納得できないと思うのですが、答えられないなら答えられないでよろしい。しかし、答える以上は、自分の良心に恥じない答えをしていただきたいと思います。重ねて法制局と法務省の見解を聞きます。
#61
○林政府委員 重ねてのお尋ねでございますが、どうも私ども、いままで申し述べましたとおりに考えておりますので、そのとおり申し上げるほかないかと思います。
#62
○川島(一)政府委員 私、先ほども申し上げましたように、対価をどのようにきめるかということは、これは政策的な問題であって、したがって、それを、妥当かどうかということは、私として申し上げる立場にないということでございます。
 それから、既得権の問題は、これは非常に慎重に考えなければならない問題であるということを先ほども申し上げましたが、重ねて申し上げさせていただきます。
#63
○岡沢委員 政策的な問題というとほんとうは国務大臣に聞きたいわけですが、かわりに有能な大竹政務次官がおられますので……。
 価格の問題は政策上の問題だと、これはあなたの下の民事局長が正式にお答えになっている。法律的に必ずしも義務づけられているものではない、政策的なものである。あるいはそれは現在の法律で間違っておれは改正という問題も起こってくると思います。私は、政府は絶対多数を持っておられるのだから、当然不合理な法律は改正を出される、また国会として当然考えなければならない、野党としてもその準備をしたいと思いますけれども、先ほど来の御答弁にもありましたように、最高裁自身が価格についた判示まではしていない。政府が最高裁の判例の趣旨を尊重してというのは全く便乗じゃありませんか。これは令の改正については私は認めます。しかし、価格についてまで最高裁の趣旨だとおっしゃる場合は、これはまさに最高裁も迷惑だと思われますし、最高裁の判例を奇貨として全く政治的な意図があっての価格決定だと思わざるを得ないのですが、政務次官の見解を聞きます。
#64
○大竹政府委員 たまたまいま売り戻しの問題が起きている土地についてこの問題が起こったわけでありますが、現にもうあの当時農地として取得をしておって、現に大都市近郊においては、これをどんどん宅地として、非常な、ばく大もないもうけをしている農家があるわけでありまして、私はやはりそういうものとの均衡において考えなければならないと思うのであります。現在政府がこれを租税の面において税金としてどう取り扱うかということを考えているように私は聞いているのでありますが、もうすでに売り渡しを受け、そして宅地としてどんどん高く売って非常なほろもうけをしておる者もあるということは、岡沢委員もよく御承知のとおりでありまして、私は、そういうような面、政策を国として考えてみると、それらの関係からすると、やはり税金の面でこれを解決するというか、考えていくべきじゃないか、これは私個人の考えでございます。
#65
○岡沢委員 いま大竹政務次官は、これも恵まれた一部の都市近郊農民との比較において、先ほど来民事局長等は、すでに売り戻しを受けた旧地主との関係等も含めて既得権の尊重ということをおっしゃいましたが、大部分の、九五%の国民は土地の騰貴のためにどれだけ不幸になり、どれだけ希望を失い、どれだけ不満を持ち、いわゆる地価の高騰が諸悪の根源といわれているわけですね。この諸悪の根源のために一部の者だけが特別にぼろもうけをする、大多数の国民が不満を持つ、これを認めるような、これを助長するような行政がほんとうの意味の政治であるとお考えになるほうが私はおかしいと思います。しかし、ここで問答してもこれは総理なり国務大臣に聞くべき観点だと思いますので、これ以上の問答は避けたいと思いますが、た光一つ法律不遡及の原則について、法務省の民事局長あるいは林内閣法制局第二部長の御見解について私はどうしても納得できない。刑事と違って民事では法律不遡及は原則であって絶対のものではない、既得権を侵害しないことはきまっております。既得権を侵害することがむしろ社会正義に合致するという場合には法の遡及がありますよ、当然認め得ると私はそう解釈すべきだし、現に戦後の民法の改正やなんかはまさにその適例じゃございませんか。
 私は、法律の専門家であるお二人が良心的にお答えになった答えとはとれない、政府に対する御遠慮から心にもないお考えをお述べになったのではないかと推測をいたします。幸い大竹政務次官が税金の問題での善処のしかたについてはお触れになりました。大蔵省は市川国有財産第一課長お見えでございますので、今度の国有農地の売り戻しに関連して、国有財産を管理される大蔵省のお立場として国民の納得するような課税方法というのをお考えになってしかるべきだと思いますし、また売り戻し価格につきましても、やはり国有財産の管理者として単に農林省にまかしておくというような筋合いではなしに、見識のある御判断があってしかるべきではないか。農地法八十条二項後段の改正、あるいはそれができない場合、あるいはそれに間に合わない前提として、いわゆる課税の面で特別の措置をお考えであるかどうか、またどういう課税の態様が考えられるか、お尋ねいたします。
#66
○市川説明員 課税のことでございますが、私、実は理財局の者でございまして、直接の担当ではございません。不正確かと存じますが、課税関係が起こるといたしますれば、売り戻しをいたしました農地を、売り戻しを受けた旧所有者が他に売却した場合に、譲渡所得がかかるということになろうと思いますが、譲渡所得のかけ方が――かけ方といいますか、譲渡所得の率が当該旧所有者がその財産を保有しておりました期間のいかんによりまして変わってくるわけでございます。
#67
○岡沢委員 現行法律論を聞いているのではなしに、新しい立法措置として、国民の課税の不公正をあるいは財産の土地騰貴についての不満をやはり是正する措置ということが、私は税制上考えられてしかるべきだと思うのですよ。ですから、現行法の解釈を聞いているのじゃなしに、新税あるいは新しい課税措置についてお考えかどうかということを聞いているのです。あなたの判断外ならはしかたがないです。
#68
○市川説明員 担当でございませんので、いまの立法問題まて含めての御質問にはお答えいたしかねます。
#69
○岡沢委員 現行法上最も国民感情に合致するような課税方法を考えられませんか。あなた主税局ではないですけれども、やはり国有財産の管理者として当然ですよ。国有財産を最も国民の納得するような方法で……。
#70
○市川説明員 私も正確なことはわからないのでございますが、二つの扱い方が、抽象的には考えられるので、そのどちらにすべきであるか非常にむずかしい問題である、至急に結論を出すために現在担当局におきまして慎重に検討中でございます。
#71
○岡沢委員 たとえば今度の売り戻しを資産の贈与とみなしで、贈与税的な、これは非常に累進課税ですから、これなら国民は納得するかもしれぬそういう方法が一つあると思うのです。あるいは旧地主の所有権をそのまま認める形になるのか、確認する形になるのか、新しく所有権を付与する形に去るのか、それによって課税の額も率も変わってくると思うのです。そういう点において国有財産の管理の責任者である財産第一課長であれば、私はやはり一応の見識をお持ちになってけっこうだと思うのですが、別に権威のあるものでなくてもいいですけれども、あなた自身として、市川さんとしてどういう方針あるいは方向が考えられるか、私はそれに責任を持てという意味じゃございませんが、お答えをいただきたい。
#72
○市川説明員 どうも不明でございまして、私、本件につきましては見通しを持つことができないわけでございまして、重ねて申し上げますが、担当の局におきまして現在慎重に検討中でございます、と申し上げておきます。
 それから、先生御質問の第二の点でございますが、本件は、私どもの考え方では、政令の不備を補うために必要やむを得ざる政令の改正であるというふうに解釈しておりますので、今回の改正はやむを得ないと考えております。したがいまして、私どもでできますことは何かといえば、その売り戻しいたしました土地をできるだけ公的機関の公的な用途に振り向けるということを、行政指導によりまして、これは農林省が中心になりまして各省が協力してこれを行なうことになろうかと思いますが、行政指導によりましてそのことを確保するということに努力する以外には方法はないのじゃないかと判断いたしております。
#73
○岡沢委員 これ以上問答してもしかたがないと思いますが、大竹政務次官も、この政令改正については次官会議もお持ちになったようでございます。いまの国有財産第一課長の御答弁に対しましても、これは公共用地に使えといったって行政指導だ。強制力は全くないわけですね。いまの国民常識からいいまして、それに協力してくれるということは、希望はいたしますけれどもなかなかむずかしいということを考えました場合、やはり法律的に見て国有財産を最も公正に、有効に利用する──いま社会資本の不足、国有財産が手が出るほどほしい時期であることは、幾ら何でも国有財産を管理される第一課長が否定されるはずはないと思うのです。こういうせっかく手元にある国有財産をただ同然の値段で売り渡すことに、法律上やむを得ない――先ほどあなたおられませんでしたけれども、最高裁判所の行政局長は、あの判決は、価格までは別に判示をしていないということをおっしゃっているわけです。だから私は、政令の改正そのものに異存はありませんけれども、価格を二円六十銭平均で売るという解釈は、必ずしも妥当と思いませんし、法律の要求するところでもないし、まして最高裁判決の要求するところでないことは明らかになったわけですね。私は、もっと国民の立場に立って国有財産を有効に、あるいはまた適切に、そして財産確保に勇気と熱意を持っていただきたいということを指摘さしていただきまして、私の質問を終わります。
#74
○高橋委員長 次に、林孝矩君から質疑の御要望がございます。これを許します。林孝矩君。
#75
○林(孝)委員 国有農地の売り戻しに関して、私も二、三質問をさしていただきます。
 最初に最高裁にお伺いしたいんですが、最高裁の判決の中に、「法八〇条による買収農地の旧所有者に対する売払いは、すでに、当該土地につき自作農の創設等の用に供するという公共目的が消滅しているわけてあるから、一般国有財産の払下げと同様、私法上の行為というべきである。」このようにありますが、これはどういうふうに解釈すればいいのか、その点見解をお聞きしたいと思います。
#76
○瀬戸最高裁判所長官代理者 つまり一般民事訴訟法で売り戻しを請求する、この訴訟は、被告は農林大臣になっておりますけれども、その場合、被告が国になる一般民事訴訟法上の手続で請求すべきだ、こういう趣旨であろうかと思います。
#77
○林(孝)委員 そうしますと、これは大蔵省と関係がございますので、大蔵省の理財局の方にお伺いしたいんですが、国有財産法でいうところの普通財産と行政財産という問題であります。いまの最高裁の判決からいいますと、これは私法上の行為ですから普通財産としての扱いになると思いますが、その点はいかがでしょうか。
#78
○市川説明員 仰せのとおり普通財産でございます。
#79
○林(孝)委員 普通財産ということになりますと、これはその売り戻される価格が適正価格でなければならない、私はこう思うのですが、その点はどうでしょうか。
#80
○市川説明員 もちろん財政法の規定によりまして、普通財産の売り払い価格は、一般的には適正な時価でなければいかぬと規定されております。しかし、別の法律に特別の定めがある場合には、その特別の規定が優先するという原則がございまして、本件は農地法八十条第二項に売り戻し価格が法定されております。したがいまして、その価格で、売り払うことは、国有財産法の規定と何ら矛盾いたさないと考えております。
#81
○林(孝)委員 では八十条の規定のどこが法定されていると解釈しているのですか。
#82
○市川説明員 農地法八十条の第二項に「この場合の売払の対価は、その買収の対価に相当する額(耕地整理組合費、土地区劃整理組合費その他省令で定める費用を国が負担したときは、その額をその買収の対価に加算した額)とする。」と規定されております。
#83
○林(孝)委員 そうしますと、大蔵省の考え方としては、その規定を準用して今回の農地売り戻し価格は二円六十銭でいい、そういう判断をされておるのかどうか。けさの新聞なんかを見ますと、大蔵省の場合はそうではない、これは二円六十銭というのは適正価格でない、大蔵大臣のその点を検討しろということを受けて、現在そういう考え方から検討されている、そういう報道がされておりますが、その報道どおりではないということですね。
#84
○市川説明員 私、まだ報道を読んでおらないわけで申しわけないのでございますが、法律の解釈といたしましては、買収の対価に相当する額」というのは、カッコ書きて加算できます以外のものを加算することはできない、つまり原則としては買収当時のその買収対価そのものであると解釈いたしております。
#85
○林(孝)委員 法律の解釈はわかりました。大蔵省で現在これには非常に問題があるということで、先ほど検討しておるという話がありました。ほんとうに適正価格と考えてこのままで推し進めていいくという方針なのか。それともこれは適正価格でない、非常にいろいろ主点に問題があるという意味から、たとえば先ほども話がありましたように、農地法の改正をして、土地収用法の百六条三項ですかを準用するような規定をこの八十条に入れるとか、それ以外にもいろいろ検討されておることがあるそうなんですけれども、そういうことは一切検討されていない、そういういまの答弁と解釈していいのでしょうか。
#86
○市川説明員 私ども、もちろん本件につきましては、買収の対価相当額ということとは別に、実質的な意味におきまして何か給付を求めることができないかというような点、それから公的先途にできるだけ振り向けたいというふうに考えているわけでございますが、それをできるだけ確実にする方法はないかというような点等につきまして、事務的には種々検討いたしております。いたしておりますが、いまだ結論は出ておりません。
#87
○林(孝)委員 そうしますと、検討しているということは、結局今回の二円六十銭という坪価格が適正ではない、いろいろ問題があるというところの発想に基づいて、そうした検討が行なわれているわけですね。
#88
○市川説明員 法律的には、その当時の買収対価で売り戻しをせざるを得ないという判断があるわけでございます。それで何とかできたら、別のこれにかわるような措置がとれないだろうか、そういうことの可能性を検討しているわけでございます。
#89
○林(孝)委員 私は、普通財産の話をしましたけれども、国家の財産がそうした価格で売り戻されていく。大蔵省としてこれは国家に非常に損失を与えているという考え方はお持ちではないですか。
#90
○市川説明員 農地法に定めておりますその規定に従いまして売り戻しをいたすわけでございますので、国家に損失をもたらしたということにはならないと考えております。
#91
○林(孝)委員 そうしますと、そうした価格でも損失を与えていないからいい、そういうことですね。
#92
○市川説明員 そのとおりでございます。
#93
○林(孝)委員 そうしますと、最初からの話といまの話とは全然相反することになるわけです。というのは、最初はいろいろ問題があるからいま検討しておる。だけれども、いまの話を聞くと全然問題ない。どっちなんですか。
#94
○市川説明員 法律論として考えれば、やむを得ない措置であり問題はないと判断しているわけでございます。ただできるならば、せっかく国に所有権のあります国有農地でございますので、できるだけ有効に活用してみたい、これはできるならばでございます。かつ、感情論といたしますれば、できるならば旧地主、旧所有者に対しまして何らか別の形で給付を求めるような措置を講ずるようなことを検討してみたいということでございます。
#95
○林(孝)委員 わかりました。いま非常に過渡的な状態で、大蔵省もその点をいろいろ思惑されているということはわかります。しかし、先ほどからいろいろ議論もございましたように、法律上――といっても、結局法律というのは常識で考えて現在どうすれば公正に扱うことができるか、昔はどうだった、いまから将来にわたってどうすれば法が正確に運営されていくのか、そういう判断が基準になって初めて法が正しく運営されていくと私は思うわけです。
 そういう面からいくと、いままで政府に非常に大きな手落ちがあった。一つは、先ほどから土地収用法の話が出ておりましたけれども、いわゆる土地収用法の百六条三項の、土地が急騰をしている等の場合は、適正価格で売り戻すという一つの規定が農地法に入ってなかったということなんです。農地法にもし入っておれはこうした問題は起こってこなかった。農地法に入ってなかったゆえにいまこうした問題が起こってきている。したがって、こうした農地法の改正というものまでこの問題を発展させていかなければ、解決ができないのではないか、そのように思うわけですけれども、たとえは、これは土地収用法だけではなしに、森林法においてもそれから鉱業法においても、この土地収用法の準用というものを、あるいは適用というものを規定した法律があるわけです。農林省、来られてますか。――その点は御存じでしょう。
#96
○馬場説明員 お答えいたします。
 おっしゃいますように、農地法におきましては、土地収用法と規定が異りまして、増額請求権につきましての規定はないわけでございます。先ほど内閣法制局のほうからお答えありましたように、土地収用法のあとから農地法が制定されたわけでございまして、全く別の一つの完結した法体系をとっておるわけでございます。
 森林法等につきましては、私、十分承知をいたしておりませんけれども、土地収用法を準用とか、そういうことになっておるのではなかろうか、これは私の推定でげざいます。したがいまして、別の法律体系になっておるわけでございます。そういう点で、やはり法律的にも性格は違うのではなかろうかというように考えております。
#97
○林(孝)委員 法制局の考え方はいかがでしょうか。
#98
○林政府委員 ただいま農林省からお答えがあったとうりだと思います。
#99
○林(孝)委員 土地収用法の立法趣旨はどういう趣旨なんでしょうか。
#100
○林政府委員 土地収用法は、憲法の二十九条三項に基づきまして、国民の私有財産を公共のために用いる場合、正当な補償が要るということに基づきまして立法されました基本法でございます。
#101
○林(孝)委員 その基本法である土地収用法の中に、先ほどから議論になっております適正価格どおり戻すという三項の問題が入っておるわけですけれども、この立法趣旨はどういうことですか。
#102
○林政府委員 収用法で取り上げております収用にもいろいろございます。必ずしも国が当事者になっておらないわけでございますが、こういったもろもろの起業のための収用、これは強制的に土地の所有権を収奪するという権能を、いわば私人に与えるというような法律でございますので、当事者の公平をはかるために特に設けられた規定ではないかというふうに考えております。
#103
○林(孝)委員 一つは公平をはかる、もう一つは事情変更の原則ということが先ほどから言われておりましたけれども、そうした事情変更の原則というものが、こうした土地収用法の百六条三項の立法趣旨に基づいて規定されたものだという解釈は成り立ちますか、成り立ちませんか。
#104
○林政府委員 たびたび申し上げますように、事情変更の原則そのものは契約法、つまり私人がお互いに合意する、契約をするという場合を前提にいたしました考え方でございます。収用は、これは強制的にやるということでございまして、契約によって収用するということではございませんけれども、その趣旨と同じような趣旨で設けられたものとは存じます。同じ趣旨と申しますのは、ただいま申しました当事者間の公平ということが、いまの事情変更の原則の場合にも基本的な考え方になっておるという点におきまして、相通ずるものがあるということはいえると思います。
#105
○林(孝)委員 いろいろ相通ずるものがあるということであります。私もそういうふうに思うわけてあります。たとえば土地収用法の場合においても農地法の場合においても、その内容をずっと見ていきますと、全く同じ内容であって、片一方では現状の適正価格で売り渡すという文言が入っているわけですね。内容は同じであって、農地法においては入ってない。そこに先ほどから言っている混乱の大きな問題がいま起こってきている。まして土地の政策というのは物価政策にもつながります。また住宅政策にもつながっていくわけです。
 政務次官にお伺いしたいことは、そうした問題を踏んまえて、今後の問題として、たとえば農地法の改正、そうしたことを行なって、こうした混乱している問題を収拾していく、そうした考えを持ちなのか。それとも現在の法改正をしないで、こうした事情のまま継続していかれる考えなのか、その点、先ほど税金の面が少し出ましたけれども、お伺いしたいと思います。
#106
○大竹政府委員 いまの農地法の関係の問題は、私のほうの所管ではございませんからあれでございますが、先ほど岡沢委員から御質問のございましたように、法律の精神はどこまでも正義公平というものが基本であろうかと思いますので、そういう面におきまして、それぞれの所管関係の法律にいまの問題が変わっている場合もあるわけてございますので、それらを比較検討いたしまして、全体として国が正義公平を守るのだという方向へ持っていくべきものだろう、こういうふうに考えるわけであります。
#107
○林(孝)委員 そうした農地法の改正等もあり得るというふうに解釈してよろしいでしょうか。
#108
○大竹政府委員 これはいま申し上げましたように、私のほうの所管でございませんからあれでございますが、法秩序の維持ということがやはり法務省の所管であるという意味において、先ほど申し上げたように考えておるわけてございます。
#109
○高橋委員長 関連質問の申し出があります。これを許します。畑和君。
#110
○畑委員 いろいろじっと聞いておりまして、なかなか困難な問題だと思うのです。
 ところで法文を読んでみて、もっともいままでの例とすると、その価格で売り渡しているようですね。また売り戻ししているようですけれども、こうして大きな問題になって社会正義の問題も出てきているので、そこでこういう解釈は成り立たないかということなんですね。八十条の第二項のただし書きですか、文言を見てみますと、買収した価格に「相当する額」とありますが、どういうわけで「相当する額」と書いたのか。あとのカッコの点で、土地改良その他で国がいろいろ経費がかかったとかいうふうな場合は、それを含めてというようなことがあるから、それを相当額と書いたのかわからないけれども、そうでなければ「買収した価格」と書くべきだと思うのだが、それが買収した価格に相当する額で売り戻す、こういうことになっておる。
 そこで、いま岡沢君からも言ったように、事情変更の原則というものもあるのだから、事情変更の原則を適用して、そしてその「相当する額」という文字をそういう意味に解釈をして、当時買収した価格といまの時価、買収当時二円幾らですか、そのときに本来ならば一体どれくらいの値段であったか。それを二円六十銭で買収した。それがその当時の時価と比べて差があるかどうか知らぬけれども、そうだとすれば、それを現在の時価に引き直してみて、買収した価格に相当する額ということで、適正な価格を解釈上きめられないか。そういう余地はないか。「相当する額」というのが、もしあなた方のほうで何かそれだけの理由があるなら別ですけれども、そうでないとすれば、「相当する額」ということにわざわざなっているのは、買収した価格といっていい。カッコして何々のときは何々を含む、改良費なんかを含むというならけっこうなことだ。なぜ「相当する額」といったのか。文字上の問題もあるから、その辺で事情変更の原則を適用して、「相当」ということをそういうことに解釈して、適正な価格でということにできないものか。私のちょっとした意見なんですけれども、法制局、どうでしょうか。
#111
○林政府委員 お尋ねの御疑問の点はよくわかります。しかしながら、先ほど来問題になっております土地収用法の百六条でございますが、この第一項に「支払った補償金に相当する金額」というのがございまして、それとこれとがちょうど見合っている規定でございます。遺憾ながらそういう解釈はできないというのが、われわれの考えでございます。
#112
○高橋委員長 私からもちょっと関連質問さしてもらいたいのだが、これはだれからでもいい。
 いままでの岡沢君の質問なんかも、国民感情の問題とか社会正義の問題、私どもも同感だと思う
 これが国有になっているという国家の立場から見て、一つの正義感とか国民感情ということになるんでしょうが、かつて農地の所有者であったもとの所有者の立場からいくと、そのときに本人の立場、心ならずも強制的に買い上げられた。ところが、強制的に買い上げられずに今日まで農地を持っている人、土地を持っている人があるわけで、すると、土地をそのまま持っている人は、事情変更、地価の暴騰によって、時価によって売ることができて、それだけの利益があったことになっているわけです。ところが、そういう人たちと比較して、強制的に買い上げされた者は非常に甚大な犠牲を払っているということになる。もとの所有者の立場からいくと、そういうような議論も成り立つわけなんだが、そういう点についても社会正義とかなんとかいうものも考えられることになるわけですが、その点についてどういうふうにお考えになっておられるか。買い上げをせられた旧土地の所有者と買い上げをせられずにおった土地所有者の問題なんです。そういう点についてどういうふうにお考えか。
#113
○林政府委員 ただいま委員長から御指摘ありました点、まさにそういう点につきまして、実は私たち心配いたしておるわけでございます。
#114
○林(孝)委員 いまの点は、私、非常に重要なところだと思うのです。たとえば成田空港で土地を収用する、そしてその目的が果たされた――全部果たしたあるいは残ったとか、その目的がもう達成されたとか、そういうことになりますと、結局売り戻せとかという話が起ってくるわけです。そうしたときに、この土地収用法の百六条の三項というのは働くわけでしょう。その点は法制局、どうですか。
#115
○林政府委員 その点は、たびたび申し上げますように、遺憾ながら農地法にはその規定はないということでございます。ですから、農地法に関しましては百六条三項というわけにはいかないということでございます。
#116
○林(孝)委員 農地法にはない。しかし、それは鉱業法だとか森林法だとか、つまり全部適用されるわけでしょう。その点、されますね。
#117
○林政府委員 土地収用法あるいは土地収用法の規定を準用しあるいはその例によるという制度におきましては、そのとおりでございます。しかし農地法は、先ほど話が出ましたように、別の体系を持っております。したがいまして、百六条三項のような制度がない、しかも新しくそういう制度をつくることは、これは既得の権利を害する結果になるという問題がございます。
#118
○林(孝)委員 別の体系を持っておる、それもわかります。そこで、現在農地に関して起こっておる問題、この問題を解決するためには、先ほどから言っておりますように、いわゆる農地法にきまってなければ土地収用法でという、そういう判断は成り立ちませんか、一般法と個別法という関係で
#119
○林政府委員 農地法が特別の体系を持っておりますことは、たとえば土地収用法では収用委員会という手続がございますが、農地法にはそういう手続はございません。その他いろいろ主点が違っております。
#120
○林(孝)委員 そうしますと、どうしても現在の農地法自体を改正していく以外にないと思うわけですけれども、その点は法制局、いかがでしょう。
#121
○林政府委員 その点が、特に価格の点について変更いたしますことが、先ほど申し上げましたような既得権を害するという問題があるということを、たびたび申し上げたわけでございます。
#122
○林(孝)委員 これから起こってくる問題として法制局に考えていただきたいのですけれども、そうした安い金額で売り戻された土地が高い金額で売られていく、その影響というのは、先ほどからいろいろ論ぜられたとおりであります。そうした意味においても、価格の点について、既得権ということで一切これから変更しないでいくというわけですか。
#123
○林政府委員 ただいまのところ、われわれもいろいろ検討はいたしておりますが、これを変更し得る根拠といいますか論拠といいますか、といったものを見出し得ないということでございます。
#124
○林(孝)委員 その見出し得ない根拠というのはどこにあるのですか。
#125
○林政府委員 これもたびたび同じことを申し上げるわけでございますが、すでに法律によりまして明確に取得されております権利、これを事後の立法によって不利益に変更するということ、その点が問題でございます。
#126
○林(孝)委員 不利益に変更するということが問題だ。しかし、不利益でなければ変更するということは考えられますか。
#127
○林政府委員 不利益に変更しないということはそれは政策的な問題で、ワクの中の問題だろうと思います。
#128
○林(孝)委員 農林省はいかがでしょうか。
#129
○馬場説明員 ただいまの御質問でございますがただいま法制局からお答えいたしましたように、現行法によります売り払いの価格でございますが、これは最高裁の判決によりましても、一つの請求権として生きておるわけでございます。それはあくまで現行法を前提にした権利であろうとわれわれは解するわけでございます。そういう意味におきまして、現在の価格を改定するというようなことは、これはできないであろうと考えておるわけでございます。
 また、後段の御質問の、不利益を利益あるほうに変更をするというようなことでございますが、一般論としては、それはいろいろそういうことが考えられるかと思いますけれども、少なくとも現在の八十条の問題につきましては、これを利益のあるほうに変更するというようなことは考えにくい問題じゃないかと思います。
#130
○林(孝)委員 農林省にお伺いしたいのですけれども、先ほどから法制局のほうのあれは、事情変更ということで相通ずるものがあるということまでは話は出ているわけです。それて、土地収用法だとかあるいは農地法においては、形態は違うけれども、議論のいくところは、どうしてもその法改正というものを考えないでは解決しないというところまで来ているわけなんですね。じゃ、どういうふうに改正するかということになりますと、既得権とかという問題が出てくるから、そういう人たちに不利益になるようなことはできないということなんですね。
 そこで、農林省としてこうした改正ということを少しでも考えているのか。それとも、これはもう絶対改正しない、法制局がどのように言おうと事情変更の原則がどうあろうと、そんなことは関係ないのだと、あくまでもそうしたことに固執した態度をとっていかれるのか。その辺はどうなんですか。
#131
○馬場説明員 私ども事務的な検討の段階におきましては、法律的にこれを変えるという根拠が見出しにくいのでございます。
#132
○林(孝)委員 たとえば議員立法でということも考えられるわけですけれども、幾らでも改正する方法はあるわけです。農林省はどうなんですか、その辺は。
#133
○馬場説明員 農林省といたしましては、現在八十条の改正については考えておりません。
#134
○林(孝)委員 まあ農林省は考えてないが、今後考えるということは考えて互いですか。
#135
○馬場説明員 非常に大きな問題でございまして私の答えるべき問題ではないと思います。
 ただ、先ほど来申し上げておりますように、現行法によります買い受け請求権はすでに発生をしておるわけでございます。これにつきましては、やはりこの権利を侵すということは、法律改正はできないのじゃないかというふうに考えております。
 そこで、それでは将来、今後発生するであろうというような問題でございますけれども、それにつきましては、やはり従来の買収対価によります売り払いというような点とのバランス論と申しますか、公平論と申しますか、そういう問題等もございまして、それも非常にきわめて困難な問題だろうというようなことを考える次第でございます。
#136
○林(孝)委員 私、要望しておきますけれども、そうした農林省がかたくなに固執するのじゃなしに、先ほどから各議員が言っているように、できないことではないわけですから、そうした面をよく考えて、この問題が円満に、また国民が納得いくように解決する方向で検討していただきたい。農地法の改正は全然絶対できないというような根拠は何もないわけです。また、既得権があるからといって、その理由とするというようなことは、これはいろいろ意見がありますけれども、絶対的なものではないわけです。これは先ほどからの民事局長あるいは法制局等の答弁においてもうなずける点であります。そうした面をよく踏んまえて農林省としては考えていただきたい。
 それから大蔵省に対しても、普通財産がそうした低額なもので売り戻されるということに対しては、実際問題は大蔵省としてもこれは検討すべきであるということで進んでいるはずです。少しその点についてお認めになったわけでありますけれども、そういう点も大蔵省の立場で農林省と正反対の立場でありますけれども、検討を続けていただきたい。そうしてこの問題を円満に解決する方向に持っていっていただきたい、そういう要望を最後にしておきます。
 以上で質問を終わります。
#137
○高橋委員長 次回は、明十七日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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