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1970/03/09 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第9号
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1970/03/09 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第9号

#1
第065回国会 法務委員会 第9号
昭和四十六年三月九日(火曜日)
    午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
   理事 福永 健司君 理事 畑   和君
   理事 岡沢 完治君
      石井  桂君    江藤 隆美君
      島村 一郎君    羽田野忠文君
      松本 十郎君    黒田 寿男君
      林  孝矩君    青柳 盛雄君
 出席政府委員
        法務政務次官  大竹 太郎君
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 貞家 克巳君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総局民事局長  瀬戸 正二君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  牧  圭次君
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月九日
 辞任         補欠選任
  勝澤 芳雄君     中澤 茂一君
  丸山  勇君     山田 太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 民事訴訟費用等に関する法律案(内閣提出第七
 九号)
 刑事訴訟費用等に関する法律案(内閣提出第八
 〇号)
 民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟費用
 等に関する法律施行法案(内閣提出第八一号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 民事訴訟費用等に関する法律案、刑事訴訟費用等に関する法律案並びに民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟費用等に関する法律施行法案の各案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。松本十郎君。
#3
○松本(十)委員 私は、訴訟費用に関する三つの法案について、若干の質問を行ないたいと思います。
 まず、この訴訟費用制度につきまして、諸外国の立法例と申しましょうか、制度の概要あるいはそういうものを流れる原則的な考え方、そういうものについてお伺いしたいと思うのです。
#4
○貞家政府委員 訴訟費用につきましては、これは一般の国民が訴訟制度を利用するものでございますから、一部利用する当事者の負担にする必要があるという要請は当然あるわけでございます。しかしながら、一方におきまして、その負担を重くするということは国民の権利保護に欠けるという見地から、その間の調整を考える必要があるわけでございまして、世界各国におきましても、詳しいことは存じませんけれども、その点につきましてはいろいろ考慮がされており、また、その態度もさまざまであるようでございますが、民事訴訟の例で申しますならば、結局は敗訴者の負担に帰せしめるということはほぼ共通の原則であるように思われるわけでございますし、また刑事につきましても、ある程度の費用を有罪となった被告人が負担するということも各国を通じた原則であるように思われるわけでございます。
 しかしながら、裁判制度を維持すると申しましても、当然国の側が負担すべき費用があるわけでございまして、この当事者と国の負担の関係をどう調整するかということは非常にむずかしい問題でございますが、これは結局は各国の国民経済あるいは国民感情、国の財政、その他諸般の事情から考えまして、健全な社会良識の上に立って線を引かざるを得ないと思うのでございます。
 この点に関しまして、こまかい金額の点までは存じませんけれども、たとえば英米、あるいは訴訟費用につきましてかなり完備した体系を持っておりますドイツ等におきましては、従来からどちらかと申しますと、わが国が明治以来とっていた制度に比べますと、やや当事者の負担が重いようでございます。その点についていろいろ、それでは国民の権利保護が十分でないというような議論があるようでございますが、これをはっきりと憲法上あるいは法制上、そういった態度を打ち出しておりますのは、たとえばフィリピン憲法などにはそういった訴訟扶助、いわゆるリーガルエードというような、一種のそういうことを受けることを国民の社会権として認めているような規定をしておるところもございますけれども、大半の世界各国におきましてはそういうふうなところまで進んでおらないようでございまして、結局はいろいろな比較考量のもとに、ある程度当事者の負担である、そしてその負担はかなりの程度で、わが国はそれに比べますと、比較的負担の程度は軽いのではないかというふうに考えられるわけでございます。
#5
○松本(十)委員 それではそういう諸外国の例も踏まえ、最近の情勢を織り込んで今度の改正案をつくられたのだと思うのですが、今度の改正のおもなねらいというのはどこにあったのでしょうか。
 現行法は、刑事関係のものは大正十年ですが、民事関係はさかのぼって明治二十三年ですね。それ以後昭和十九年の訴訟費用臨時措置法等があって、経済、社会の動きに適応する努力があったのでしょうが、まだ全体として見ますときに、相当長い間放置されておったというか、いかにも古い法律がいままでまかり通っておったという感じがするのですが、それがなぜここまで延び延びになっておったか、改正のねらいとあわせてお答え願いたいと思います。
#6
○貞家政府委員 民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法、いずれも非常に古い法律でございまして、御指摘のとおり非常に不備なまま放置されていたわけでございます。もちろん訴訟費用の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、非常に基本的な問題があるわけでございますけれども、それは一挙にしてその制度の基本的な方向を動かすというようなことは今回も考えなかったわけでございまして、一般的に申しますと、当事者の負担の程度というものはそれほど変わっているわけではございません。抽象的に申し上げますならば、たとえば民事訴訟で申しますと、民事訴訟制度を利用する国民の、利用者の負担というものはある程度あるわけでございますけれども、民事訴訟制度の機構の一般的な費用、つまり裁判所の庁舎の維持でございますとか職員の給与、そういったものはこれは当事者が負担すべきものではない。これはおおむね国費をもってこれに充てるべきであるというような考え方、そういった基本的な問題につきましては全然そのたてまえを変えたわけではございません。しかしながら、非常に古い法律でございますから、さまざまな点におきまして非常な不備が目立っております。これはもちろん過去におきまして、常時ではございませんけれども、そのつど検討の試みはなされたわけでございますけれども、残念ながらそう急には参らなかったわけでございます。これは訴訟の場におきまして、訴訟関係者の間におのずから解釈も一定いたしますし、あるいは慣行というものが固まってまいりまして、そういったもので曲がりなりにも運用されていたということであったわけでございます。それともう一つは、刑事訴訟費用につきましては、これは比較的事柄が簡単でございます。刑事被告人に対して負担させるべき費用の範囲というものは非常に限定されたものでございますし、その範囲をどうこうするというような議論はあまりなされなかったのでございまして、比較的法律も新しいと申しますか、新しいと申しましても大正十年でございますけれども、それほど破れと申しますか、ほころびが目立たなかったのでございます。
    〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕
それに反しまして民事訴訟費用法のほうは、印紙を含めまして明治二十三年の制定でございまして、非常に不備が目立ってはいたのでございますけれども、実は訴訟費用の確定決定、つまり勝訴者が訴訟費用額を確定いたしまして敗訴者から取り立てるという制度がございますけれども、そういった制度が現実にはそれほど動いていなかったという点にもその原因が求め得られるのではないかと思うのでございます。その数を申しますと、これは最近でございますけれども、全地方裁判所の既済事件中、そういった訴訟費用額の確定決定の申し立てがございましたのは、せいぜい年間六、七百件という程度で、これは全事件に比べますときわめてわずかでございます。その原因はいろいろございましょう。わが国民感情と申しますか国民性と申しますか、訴訟費用まで追い打ちをかけるということについて、それほど国民の間にそういう気持ちがないということも一つの原因でございましょうし、本来訴訟費用として非常なウエートを占めるはずの弁護士に対する報酬というものがわが国では訴訟費用になっておりません。そういったことからも訴訟費用額確定決定を求めるというケースは非常に少ないわけでございます。
 そういったこともございまして、訴訟費用の制度というものがそれほど常時非常な注目を引くというわけにはまいらなかったのでございます。幸か不幸かそういった事情もございまして、まことにこれは遺憾に存ずるわけでございますけれども、長年放置されておりました。それを今回は改善点と申しましてもわずかでございますけれども、若干の改善点を盛り込みまして、とにかくいままで慣行なり解釈なりでまかなっていたところをはっきりと明文化するという作業をいたしたわけでございます。
#7
○松本(十)委員 それでは今度の民事訴訟費用等に関する法律案、刑事訴訟費用等に関する法律案がかりに通過いたしまして、そうして経過的な取り扱いとしての民事訴訟費用等に関する法律云々の法律施行法案というものでつないで、あとはもう当分の間大きな情勢の変化もない限り実定法として長い間有効に、しかもうまく機能する、こう考えていいわけですか。
#8
○貞家政府委員 今度の法律案をごらんいただきますとおわかりになりますように、従来は非常に抽象的、概括的に規定しておりました分を、今度の法律案ではきわめて具体的、明確に書いてある点が相当ございます。したがいまして、今後訴訟手続、訴訟法等の関係で改正がございますと、それに対応した改正を加えるという部分的な改正を要する点は出てくると思います。しかしながら、この組み立ての基本的な部分につきましては、これは予測でございますけれども、将来かなりの使用に耐え得るのではないかというふうに考える次第でございます。
#9
○松本(十)委員 それでは総論的なことは以上にしまして、少しこまかな各論についてまず数カ点伺いたいと思います。
 私の聞いておるところでは、イギリス、ドイツ、諸外国では勝訴した当事者が弁護士に支払った報酬、費用、これは敗訴した相手方に請求して取り立てる、こういう制度があるやに聞いておりますが、わが国でも弁護士報酬を訴訟費用化したらどうかという問題は長い間の司法界の懸案事項だったと思うのであります。今回の立法はそういうことを措置しておりませんが、これに対する考え方、あるいは特にこの法律にそういう問題を入れなかった理由があればお聞かせ願いたいと思います。
#10
○貞家政府委員 御指摘のとおり、弁護士に対する報酬というものは、現実の問題といたしまして民事訴訟に要する費用としては非常に大きなウエートを占めるものであることは間違いないところでございます。したがって、勝訴いたしましても、その弁護士報酬を敗訴者から償還を求めることができないということでは、国民の訴訟による救済を不十分にならしめるものであるというようなところから、弁護士に対する報酬を何らかの限度におきまして民事訴訟費用の一部にするということを主張する意見がかなり前から相当強く唱えられているわけでございます。先般昭和三十九年に臨時司法制度調査会が内閣に対して意見を申し述べましたけれども、その中におきましても、弁護士制度についての改善策の一つといたしまして、「弁護士強制、弁護士報酬の訴訟費用化及び法律扶助制度の拡充について検討すること。」という項目がございました。また御指摘のように、諸外国にもそういった立法例がございます。もちろんこれは、アメリカのように原則としてとっておらない国、フランスもそうでございますが、そういう国もございますが、ただいま仰せのとおり、英国とかドイツなどにおきましては、この制度を取り入れているわけでございまして、この点につきましては、従来からも検討いたしていたのでございます。しかしながら、これは先般の臨時司法制度調査会の審議におきましても出たところでございますが、根強い反対論も一方にございます。つまり反対論は、もし弁護士報酬が訴訟費用とされました場合には、敗訴者に弁護士費用まで負担させるのはあまりにも酷である、道義に反する場合がありはしないか。しかも敗訴者がおおむね経済的弱者であるということを考えると、非常に負担が大きくなるのはいかがなものであろうかというような意見がございますし、弁護士報酬の法定化といいますか、法律で報酬をきめてしまうということに結びつきやすいのではないか。そうでないにしても、弁護士に対する報酬が低い水準に法定化されてしまうおそれがあるのではないかというような、反対意見が相当あるわけでございます。
 そこで、事柄の合理性から申しますと、何と申しましても、弁護士に対する報酬は敗訴者の負担に付するという制度は、確かに合理的ですぐれているという点は認めざるを得ないのでございますけれども、やはり法曹界、ことに法曹界の内部におきまして、賛成、反対の両意見があるという現状で、無理やりにこの制度を取り入れるということはなお早急ではないだろうか。弁護士界の内部におきましても、この問題を積極的に検討すべきであるというふうに研究されておるというふうにも伺っておるわけでございまして、私どもといたしましては、今回の法律案には遺憾ながらその点までは踏み切れなかった。しかしながら、将来の検討と、それから法曹三者の意向というものがおのずから一致して線が出ました場合には、これは当然その点の改正ということも検討すべきであるというふうに考えているわけでございます。
#11
○松本(十)委員 なかなかむずかしい問題でありましょうが、これからも前向きにさらに検討を重ねていただいて、いいコンセンサスを得られるように、それを必要に応じては立法化の道を講ぜられるように要望しておきたいと思います。
 次に、民事訴訟費用等に関する法律案の別表の第一を見ますと、かなり今度は変わっておるわけですが、こういうふうに手数料が変わった、この変えた理由はどこにあるか。また、これを変えれば、全体としての収入総額というのは大きく動くのですか、大勢としてはあまり変わらないようにしたのですか。その辺のところについてのお答えを願いたいと思います。
#12
○貞家政府委員 手数料額の点でございますが、現在の法律できめられております手数料額、つまり民事訴訟用印紙法に定められております印紙代でございますが、これは長年そのままになっておりまして、その後の経済変動に応じて当然改定する必要があったところでございます。しかしながら、今回の改正は、従来のものに単に経済事情に応じてそれを若干増額するというような態度はとりませんで、この機会に手数料の体系を再検討いたしまして、申し立ての種目に応じましてそれぞれ適正な価額を定めたものでございます。したがって、これは決して手数料額の増額というようなことを意図したわけではございません。
 そこで、その内容でございますけれども、逐一申し上げておりますと非常に繁雑になりますので、概略、基本的な点を申し上げますと、手数料の最も基本的と申しますか重要な部分でございますところの訴えの提起の手数料、その他訴訟の目的の価額等に応じまして手数料率が上がっていく、所定の手数料率をかけまして算出することになっているものがございます。これは民事調停の手数料、あるいは支払い命令もそうでございますし、借地非訟事件の申し立ての手数料その他でございますが、そういったものにつきましては、その比率、つまり訴額の何%を手数料額とするかというそのパーセンテージは従来のままにいたしております。つまり価額に応じまして、訴訟で申しますと一%、〇・七%、〇・五%というふうに逓減してまいります。そういった比率につきましては、現在と全く同じでございます。ただ、刻みをやや荒くいたしまして、従来一万円ごとの刻みであったのを、五万円、十万円というふうにやや荒くいたしましたことと、もう一つは、先ほど申しましたように、比率が逓減いたしますけれども、その比率が逓減する分かれ目、つまり十万円まで、五十万円までというふうになっておりましたのを、三十万円まで、百万円までというふうに改めまして、比率が改められるその基準点をやや動かしたという点がございますけれども、さいぜん申し上げましたように、比率そのものは変わっておりません。
 なお、それ以外の手数料、つまり現行法で定額の手数料を納めるべきものとされておりますものにつきましては、個々の種目に応じまして、裁判所の手数の繁雑さでございますとか、当事者等が受けます利益の程度というようなものを勘案いたしまして再検討を加えました。そこで、従来は、十円、二十円、三十円、五十円、百円というように定められていたのでございますけれども、これを種目別に、大体、百円、二百円、三百円、五百円、千円、それから特殊なものとして三千円というものをつくったわけでございます。
 なお、反面といたしまして、現行法では、あらゆる申し立てにつきまして印紙を貼用することが要求されていたのでございます。したがいまして、通常の手続で当然出てまいります期日の指定の申し立て、期日の変更あるいは証拠の申し出というようなものにつきましてまで、あらゆるものについて印紙の貼用が要求されていたわけでございますが、今後はそういった中間的、付随的なものの大部分は、これは基本的手数料の中にすでに含まれているものだというふうに考えまして、これを徴収しないことにしました。
 なお、訴え等におきましては、初期の段階で取り下げあるいは却下の裁判がありまして、これが確定するというような場合には、これは半額を返すというようなことで調整をとっておりますので、これは合計いたしますとそれほどの増額と申しますか収入増にはならない。むろんそれをねらいとしたものではございませんので、当然そうなるわけでございますが、結果的に申しましてもたいした違いはないというふうに理解しておりますが、なおその点につきましては裁判所当局からお答え願うのが適当かと思います。
    〔鍛冶委員長代理退席、小島委員長代理着席〕
#13
○瀬戸最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 現行法によります昭和四十六年度の手数料収入の推計額は約十三億三千万円と推定されます。改正法によります昭和四十六年度の収入推計額は十五億八千万円と推定することができます。これに、訴え却下あるいは取り下げ等の場合に半額を返すという制度が新設されましたので、それらを差し引きいたしますと、結果といたしましては約一五%の増収である。これはあくまで結果がそうなるわけでございます。増収を意図して改正をしたわけではございません。
#14
○松本(十)委員 次に、今度は第九条ですか、「過納手数料の還付等」という規定が新たに入ったと思うのでありますが、従来でも過大に納められた手数料というのは納付者に返しておったと思うのです。今度の規定の新設された事由、あるいは取り扱いの変更の内容等をお伺いいたしたいと思います。
#15
○貞家政府委員 現在におきましても、理論的に申しますと、過大な金額の印紙を貼用いたしました場合には、国が不当利得をするわけでございますから、不当利得の返還の請求をすればむろん国が返さなければなりませんし、現実の処理といたしまして、裁判所当局におきまして実務上の便宜の取り扱いといたしまして、印紙の未使用証明というような方法を講じてやっておられたようでございます。しかしながら、これは明文の根拠がございませんし、それは先年の国会の御審議でもそういった点を完備すべきであるというような御意見もございました。なお、これはほかの税法なんかにおきましてもこういった手当てがなされておりますので、そういった場合には簡易な手続を設けまして、裁判所に申し立てをして、決定で金額をちゃんときめて、すぐ金銭で還付するという道を開く、それを明文化したわけでございます。
#16
○松本(十)委員 次に、刑事訴訟費用関係に移りますが、現行法では刑事の手続において、公判で取り調べた証人、鑑定人等に対する旅費、日当、宿泊料、鑑定料、こういったものの支給につきましては、刑事訴訟費用法が適用される。第一回の公判期日前に裁判官が取り調べた証人、鑑定人等に対する支給のほうは、公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法、これが適用されておったようでありますが、しかし、受け取る側の証人とか鑑定人の側から見れば、何か二本立ての法律を、同じように出ていくのにどうかということだったと思うのですが、今度の法律はこれを一本にまとめたということなのですか、どうですか。
    〔小島委員長代理退席、小澤(太)委員長代理
    着席〕
#17
○貞家政府委員 仰せのとおり、現在におきましては、公判で取り調べた証人と公判前の場合とを別々の法律にいたしまして、公判前のものにつきまして刑事訴訟費用法の規定を準用するということになっていたのでございますが、これはいずれも根拠は刑事訴訟法にあるわけでございますし、これを別に取り扱う必要はないわけでございまして、訴訟費用の範囲さえ明確にしておけば、これはいずれも証人の側から見れば、国から支給を受ける費用に関する事柄でございますから、今度の法律ではすべて刑事訴訟費用等に関する法律の中に一本化することにいたしまして、従来の公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法は第二条だけを残しまして――これは検察官が取り調べた証人等に関するものでございますが、題名もそれに応じまして、検察官の取り調べた者等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法にいたしまして、分離いたしまして、裁判所関係のものはすべて一本化することにいたしております。
#18
○松本(十)委員 次に、訴訟費用の範囲の関係ですが、現行法の第一条というのと改正案の第二条と、こまかく議論すれば切りもありませんが、総じて、かなり表現のしかたというか、法律用語、文言の書き方が変わっていると思うのですが、これはその範囲を広くしたのですか、狭くしたのですか。常識的に結論としてどうなのでしょうか。
#19
○貞家政府委員 結論から申し上げますと、範囲は全然変わっておりません。現在の刑事訴訟費用法一条の規定では「公判二付」というふうに規定されておりますが、その解釈運用といたしましては、裁判所が公判期日外で証人尋問等を行なう場合、つまり公判準備の証人等につきましても、これはそれに支給した日当等は訴訟費用の範囲に入るという解釈がとられていたわけでございますが、それを明文化いたしたわけでございます。
#20
○松本(十)委員 次は、証人等の旅費の関係ですが、第三条、刑事関係ですね。それから民事関係も二十一条にありますが、その旅費として、鉄道賃、船賃、路程賃または航空賃、こういう四つの種類を支払うときめておりますが、どのような条件で幾ら払うかということについてどうも説明が不十分と申しましょうか、法律上はっきりしないような気もしないではないのです。ただ民事の二十五条、刑事の九条等を見ますと、「最も経済的な通常の経路及び方法によつて旅行した場合の例により計算する。」こういうことが書かれておるわけですが、どういうふうになるのか、これに御説明をいただきたい。
 それから、今度初めて路程賃なんということばがありますが、どうもわれわれは日本語として耳なれにくいような感じもしますが、どういう意味なのでしょうか。
#21
○貞家政府委員 刑事訴訟費用等に関する法律案の条文で御説明申し上げます。
 民事のほうも同様でございますが、条文の数がずれますので、刑事のほうで申し上げますと、第九条に「旅費等の計算」という規定がございまして、旅費等につきましては「最も経済的な通常の経路及び方法によつて旅行した場合の例により」ということになっているのでございます。これは抽象的に申しますと、まずある地点からある地点、後者は通常は裁判所でございますけれども、通常の経路及び方法が何であるかということを選定するわけでございまして、複数の行き方が、ルートに二通りあるというような場合には通常の経路及び方法、そうしてその中で最も経済的なものを選び出すということになるわけでございまして、三条のほうには鉄道賃、船賃、路程賃、航空賃というふうにございますが、これは現実に鉄道あるいは船舶を利用したかどうかということとは必ずしも関係ございませんで、先ほど申しました九条による経路、方法が確定いたしますと、それについて鉄道の便があれば鉄道賃、船舶の便があれば船賃ということになるわけでございます。ただ航空賃につきましては、これを利用すべき特別の事由がある場合に限ってこれを支給するわけでございまして、その場合には当然三条の二項の終わりにございますように、「現に支払つた旅客運賃」によるということになるわけでございます。
 なお、そういうふうにして鉄道賃あるいは船賃というものを支給いたします場合に、その等級につきましては裁判所が相当と認めるところによって決定をする、これが三条の二項でございまして、これは各地方裁判所が諸般の事情を考慮して決定されるということになるわけでございまして、個々具体的に決定をするということになるわけでございます。
 それから、最後の路程賃という表現でございますが、これは従来車賃とか車馬賃とかいう名称を使っておりました。法律としてはたしか国家公務員等の旅費に関する法律におきまして車賃という名前がつけられておったと思います。これは陸路鉄道の便のない場合、船舶の便のない場合、そういった場合でございますとか、あるいはその他の交通機関を利用するという場合でございまして、旅費のほうが公共的な定期的に運行される交通機関を利用する場合の運賃に対しまして、これはそうではない交通機関または徒歩で行く場合の旅費でございます。ことばは確かに新しいことばでございますが、これも国家公務員等の旅費に関する法律におきまして、鉄道賃は路程によるというようなことがございまして、路程ということばは必ずしも珍奇な表現でもないのではないか。これも余談でございますけれども、外国の例におきましても、たとえばアメリカの公務員が受けるのにマイリッジというのがございまして、これはマイル賃とか訳しているのでございますが、これもいわば路程に応じて金額がきまるというわけでございますし、ドイツ法を見ましても、運賃と並びまして、先ほど申しましたような非定期的あるいは非公共的な交通機関を利用する場合あるいは徒歩で行く場合にはヴェーゲ・ゲルトというような表現を使っておりますので、これはまさに路程賃に当たるものではないかと考えたわけでございます。
#22
○松本(十)委員 なお当日の話も出ましたので、これを一、二伺いたいと思います。
 この委員会でも前に、前後の旅行日の分について宿泊料は支給されるけれども、日当は出ないじゃないか、これは不合理じゃないかということが出たようでありますが、今度の改正ではそれはどういうふうに相なるわけですか。
#23
○貞家政府委員 刑事のほうの法律案の第四条をごらんいただきますと「証人等の日当は、出頭又は取調べ及びそれらのための旅行(以下「出頭等」という。)に必要な日数に応じて支給する。」ということでございまして、いわゆる旅行日、出頭の前後に及びます旅行日についての日当も支給することができるということにしたわけでございまして、これは先年来国会の御審議でも御指摘がございましたし、新しい各種の旅費法におきましてはやはりこういった手当てをしているようでございますので、かように改めた次第でございます。
#24
○松本(十)委員 ある意味では前進されたということで評価するわけですが、それでは裁判所が日当の額をきめられるきめ方、「最高裁判所が定める額の範囲内において、裁判所が定める。」こうなっておるのですが、これは具体的にはいろいろ問題もあろうかと思うわけでありまして、どういうふうに最高額をきめられて、また実際にはそれがどういうふうになるんだろうか、その辺についての御答弁を願いたいと思います。
#25
○牧最高裁判所長官代理者 証人日当の性質につきましては、いままでの国会でも法務当局から御説明があったと存じますけれども、証人が裁判所に出頭するために出捐を必要とした、たとえば弁当、湯茶というような積極的な出捐をした場合のその費用の補償と、裁判所に出頭するために時間がかかる、あるいは証人尋問で裁判所にある時間拘束される、そのために通常の職業につけなくて、ほんとうは裁判所に出なければそれだけ利益が得られたという消極的な利益の補償と、二つの面を持っているというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、それらの要素を考えて最高裁判所が規則におきまして最高限を定め、その最高限の範囲内において、受訴の裁判所が、証人が裁判所に出頭したときに具体的にどの程度の出頭の費用がかかったか、あるいは得べかりし利益が喪失したか、あるいは証言の必要性の程度、そういうようなことを勘案いたしまして定めるということに相なっておるわけでございます。
#26
○松本(十)委員 民事のほうに戻るわけですが、この十一条では、費用は「当事者等が納めるものとする。」こういうふうになっておるのですけれども、貧困な者が訴訟することが費用の関係で困難がある場合があるわけです。民事訴訟法の百十八条以下では訴訟救助の制度がありますが、これがどのように現実に活用されておるのか、あるいはまた法律扶助の制度、これの活用状況はどうなっておるか、その辺について伺いたい。
#27
○瀬戸最高裁判所長官代理者 民訴法百十八条によります訴訟救助の点についてお答えいたします。
 昭和四十年から昭和四十四年までの過去五年間の統計が出ておりますが、それによりますと、昭和四十年は申し立て件数が二百九十一件、昭和四十一年四百八十四件、四十二年八百十六件、四十三年千百三件、四十四年千七十件と年々累増しておりまして、そのうち許可された件数は約八七%、これが救助決定を受けております。
#28
○松本(十)委員 かなり活用されておることがわかりましたが、刑事訴訟のほうでは貧困な被告人に対して多額の訴訟費用の納付を命ずるときには気の毒な場合もあるのではないかと感ずるわけですが、そのような場合にはどういうふうな措置をとっておられますか。
#29
○牧最高裁判所長官代理者 刑事訴訟法で有罪の裁判がなされますときには、被告人に訴訟費用の全部または一部を負担させるということが原則でございます。しかし、被告人が貧困その他の理由で負担せしめるのを適当としないというような場合には、判決におきまして負担せしめないとする決定をすることもできます。
 それともう一つ、一応判決においては訴訟費用の負担を命ぜられましても、その判決が確定いたしました後に、訴訟費用の執行免除の申し立てというのを被告人のほうから出すことができまして、裁判所のほうとして被告人の貧困等の事情を認めた場合には、一たん負担を命じた訴訟費用を免除することができることとなっております。
#30
○松本(十)委員 法律についての細目の質問は以上で終わりたいと思います。
 最後に政務次官、一言質問いたしますが、法務省の関係の法律ですね、いろいろ六法全書等の法律をひもといてみますと、かなり古い法律がいまだに実定法として残っておる。そもそも法律というものはコンサーバティブのものであって、ただ朝令暮改すべきではないと思いますが、しかし、いまのように社会経済情勢が急速なテンポで変化を遂げていく、その過程において、ともすればそういった現実に適応しない面がかなり出てきておるのではないか。そういう意味で法務省所管の法律はもとより、関連する省の所管でもけっこうですが、できるだけたなおろしをしていただいて、
 いまの時代にはたして合っているのかどうか、そういう意味での検討をしていただきたいと思うのですが、政務次官の御見解はいかがですか。
#31
○大竹政府委員 ただいまの御意見でございますが、憲法はよく御承知だから申し上げませんが、たとえば一番大事な民法、刑法、商法、この三つを実はとってみましても、民法が明治二十九年、刑法が明治四十年、商法が明治三十二年というような、いずれも相当古い法律でございまして、仰せのように根本的に改正しなければならないということもよくわかっておるわけでありまして、たとえば刑法は法制審議会で全面改正に着手していることは御承知のとおりでありますが、たしかこれは昭和三十七年以来御研究くださっているわけでございまして、十年近くたっておりますが、実はまだ結論が出ていないというような状態でございます。
 しかし、おっしゃっていましたように、これはやはり社会的な問題として変化に応じ切れないということは非常に困ることでありまして、もちろん刑法につきましても、この前も公害罪、これは別な法律でございますけれども、刑法の全面改正の中でも取り上げております問題でもございますけれども、この前の国会で取り上げたということも御承知のとおりであります。また商法につきましても、現在一部を改正したいということで研究していることも御承知だろうと思いますし、また民法におきましても、たしかもうこの委員会に付託になったと思いますが、一部不完備な部分について新たに民法に加えたいということで御審議を願うことになろうか、そういうようなことでございまして、これは法務省といたしましても十分全体を考え、そしてまた急速な社会の変化に差しつかえのないように考えておることでございますが、全体を改正するということはいま申し上げましたようになかなかむずかしいことでございます。
 そのほかの法律で今度御審議願いたいと思っておりますのは、これは法律とすればあれでありますが、たとえば出入国管理令がポツダム政令のままになっているというようなこと、これを法律にしていただくこと、それから法務省で問題になっておりますのは、監獄なんというものはないのに監獄法なんという名前の残っている法律なんかも、第一名前だけでも早く変えなければていさいが悪いじゃないかというような話なんかも実は出ておるわけであります。これらも今度の国会には間に合いませんでしょうが、刑事施設法という新しい名前でおそらく次の国会あたりで御審議を願うことになろうかと思います。
 いずれにいたしましても、法律が社会の実情に合わぬということは御説のとおり非常に困ることでございまして、全体を考えるとともに社会の急速な変化に応ずるようにできるだけ考えて改正をしてまいりたいと思いますので、委員会におかれましてもよろしく御協力を賜わるようにお願いを申し上げます。
#32
○松本(十)委員 民法、刑法、商法、こういった基本法は何と申しましても現在の社会、経済をささえる体制の支柱といいましょうか、骨組みでありますから、いろいろな議論もありましょうが、慎重にも慎重な論議、審議を重ねていただいて改正していただく必要があろうかと思うのであります。極端な論をなす人は、七〇年代は激動の時代である、価値転換の十年である、ここまで言う人もあるわけです。情報化時代の波に乗って大きく世の中は変わってくると思うのでありまして、そういった政治、経済、社会、文化万般の変化に適応するように法務省全体が前向きで検討なされますことを要望して、私の質問を終わります。
#33
○小澤(太)委員長代理 次回は明十日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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