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1970/03/12 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第11号
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1970/03/12 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 法務委員会 第11号

#1
第065回国会 法務委員会 第11号
昭和四十六年三月十二日(金曜日)
    午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 田中伊三次君 理事 福永 健司君
   理事 岡沢 完治君
      石井  桂君    江藤 隆美君
      河本 敏夫君    島村 一郎君
      千葉 三郎君    中尾 栄一君
      永田 亮一君    田中 武夫君
      山田 太郎君    青柳 盛雄君
 出席政府委員
        警察庁刑事局長 高松 敬治君
        法務政務次官  大竹 太郎君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 貞家 克巳君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        法務省矯正局長 羽山 忠弘君
        文部省大学学術
        局長      村山 松雄君
        厚生省医務局長 松尾 正雄君
 委員外の出席者
        文部省初等中等
        教育局審議官  井内慶次郎君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  瀬戸 正二君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  牧  圭次君
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十二日
 辞任         補欠選任
  中澤 茂一君     田中 武夫君
同日
 辞任         補欠選任
  田中 武夫君     中澤 茂一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 民事訴訟費用等に関する法律案(内閣提出第七
 九号)
 刑事訴訟費用等に関する法律案(内閣提出第八
 〇号)
 民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟費用
 等に関する法律施行法案(内閣提出第八一号)
 法務行政に関する件(大阪刑務所の不祥事件)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 民事訴訟費用等に関する法律案、刑事訴訟費用等に関する法律案並びに民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟費用等に関する法律施行法案の各案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。岡沢完治君。
#3
○岡沢委員 最初に、きわめて小さいことから質問に入らせてもらいたいと思います。
    〔委員長退席、小澤(太)委員長代理着席〕
 それは、今度の法案の中に「通事」ということばがあります。通訳という意味だと思いますが、一般には「通事」ということばはあまり使わないと思います。あえて「通事」ということばを使われた理由ですね。やはり国民に簡単にすなおに受け入れられるような通訳ということばでいいのではないかと思いますが、通訳と「通事」とではどこか違うところがあるのか、お伺いいたします。
#4
○貞家政府委員 御指摘のとおり、「通事」というのは非常に古いことばでございまして、刑事訴訟法におきましては「通訳人」ということになっておりますが、実は民事訴訟法におきましてはずっと昔から「通事」という表現を用いておりまして、今回の立法にあたりましては、なるべく民事訴訟法自体に影響を及ぼすという態度をとりませんでしたために「通事」ということばを踏襲したわけでございますけれども、御指摘のとおり内容は同じだと存じます。古めかしい表現であるということは間違いないことでございますが、一応基本法である民事訴訟法にならったということでございます。民事訴訟法のほうが改まりますればおのずからそういう表現を用いることになるはずでございますが、今回のところは民事訴訟法にならったということで御了解願いたいと思うのでございます。
#5
○岡沢委員 これも小さい点でございますが、「財産権上の請求でない請求に係る訴えについては、訴訟の目的の価額は、三十五万円とみなす。」これは法第四条でそうなさっておられます。従来はたしか民事訴訟用印紙法の第三条で五万円だった。いかに物価の変動とはいえども七倍でございまして、いま対前年比七・七%でもたいへんな問題になっているときに、同じような基準で比較できるものでもございませんが、このように三十五万円と七倍も大幅にお上げになった理由をお伺いいたします。
#6
○貞家政府委員 財産権上の請求でない訴訟につきましては、現在裁判所法二十四条、三十三条あるいは民事訴訟法第二十二条の規定によりまして地方裁判所が取り扱うということに裁判権の上ではなっているわけでございます。これらの事件は、簡易裁判所が取り扱うにいたしましては複雑、困難でございますし、訴訟の結果によって当事者が得る利益あるいは失う損失というものも、地方裁判所に取り扱わせるのにふさわしい事件であるということがいえると思います。そして、そのことは裁判所法の改正及びそれに伴う民事訴訟法の改正によりまして、裁判権のほうではそういうことになっているわけでございます。したがいまして、そういった裁判所の手数もかかりますし、当事者の利害が大きい事件の申し立ての手数料の額というものも、やはりそれ相応の額でなければならないというふうに考えたわけでございます。したがいまして、この種の事件につきましては、裁判権の帰属に合わせまして地方裁判所の取り扱います財産権上の請求の訴えのうちの最も低いところ、つまり三十万円をこえるわけでございますから、三十万円をこえ三十五万円までは五万円きざみで同額ということになりますので、そこで三十五万円とみなすことにいたしまして、その地方裁判所の一番低いものに合わせるということにいたしたわけでございます。
#7
○岡沢委員 いまの御説明はよくわかりますけれども、それなら昨年事物管轄の改正があった裁判所法の改正のときに、大体同時に当然これは改正されるべきじゃなかったかという気がするんでございますが、その辺はどういう事情でございますか。
#8
○貞家政府委員 確かに仰せのとおり裁判所法の一部改正の際にあわせて考えるのが、いまとなりましては適当だといわざるを得ないかと思いますが、何ぶんにも昨年のいまごろにおきましては、訴訟費用法全般につきまして考えをまとめつつあったと申しますか、着手の段階でございますけれども、どういうふうに申し立て手数料というものをきめていくか、その段階におきましては、初期でございますから、あるいはこういう逓増と申しますか、金額の多寡によって上げていくのがいいのか、それとも何かはかの別の考えをとりまして固定的にきめるのがいいか、あるいは外国の立法令にございますように、申し立ての段階、それから証拠調べの段階、裁判の段階というふうに分けまして、手数料をそれぞれ取っていくというような考え方をとるかというような点が、まだ検討当初であったのでございます。したがいまして、その段階で、従来とっておりましたように、事物管轄の限度額と非財産権上の請求のみなし価格というものを一致させるということが、実は決断がつかなかったわけでございまして、もう一年検討したいというふうに考えていたのでございます。
#9
○岡沢委員 別の質問でございますが、第一条に「他の法令に定めるもののほか、」というふうにありますが、「他の法令」というものは具体的にはどういうものが考えられるわけでございますか。
#10
○貞家政府委員 今回提出いたしました法律案は、たとえば民事で申しますと、民事訴訟費用等に関しましてなるべく網羅的に、しかも明確に定めるということをねらいとしているのでございますけれども、ただ民事訴訟費用などに関する事項といたしましては、非常に各手続法にわたりましてそれぞれの個性がございます。したがいまして、それらの手続法等におきましてそれぞれ固有の規制をしている面がございます。そういった点まで全部取り込むということはいたしませんし、まず何よりも当事者間の費用の相関関係、つまり費用の負担関係というようなものは、これは各訴訟手続法の固有の原則によって定められているのでございます。一例をあげますと、たとえば民事訴訟法で申しますと八十九条以下に、そもそも訴訟費用を何ぴとが負担するかという原則的な規定がずらっと並んでいるわけでございまして、そういったものまで取り込むということはやや行き過ぎではないか、そういったものは訴訟法にまかせる、あるいは民訴の五百五十四条もそうでございますし、非訟事件手続法の二十六条から三十二条にかけましても、そういった費用の負担あるいは国庫の立てかえというような規定がございますし、なお破産、会社更生法等につきましてもそういった規定がございます。あるいは訴訟上の救助の要件でございますとか、そういったものは訴訟法に書いてあるわけでございまして、それぞれの訴訟手続法にまかせる。そして費用の負担というものはほかの法律で定められまして、その費用の中身、額ということをこの法律で網羅的に書いていくという方針をとったわけでございます。したがって、そういった各訴訟手続法の定めが他の法令に定めがあるものということになるわけでございまして、これは刑事につきましても、刑事訴訟法の百六十四条あるいは百七十一条に、そもそも証人が日当、旅費等の請求権を持つという規定があるわけでございまして、他の法令とはそういったものをさすわけでございます。
#11
○岡沢委員 第二条、民事訴訟等の費用の範囲、額等について、いわゆる列挙主義に改められました。従来は概括主義だったと思いますが、その利害、また列挙主義にはそれなりの利点があってこそ新しく御採用になったと思いますが、やはり欠陥もそれなりに考えられるわけなので、どういうメリット、デメリットをお考えになっておるか、考えられる点を御指摘いただきたいと思います。
#12
○貞家政府委員 御承知のとおり、現在の民事訴訟の費用の範囲につきましては、現行の民事訴訟費用法の第一条で「権利ノ伸張又ハ防禦ニ必要ナル限度ノ費用」というようなことで限度を画しておるわけでございますが、二条以下はそのうちの一部につきまして金額を定めている。したがって範囲につきましては、この一条がものをいうと申しますか、一条によってその範囲の限界が画されると解釈せざるを得ない、こう思うのでございますが、それが非常に抽象的な表現を用いておりますために、個々の事件におきまして一体訴訟費用に入るのか入らないのか、権利の伸長または防御に必要な費用と見得るのかどうかという点に若干の疑義のございますものがあったわけでございます。
 そこで、今度の法律案におきましては、手続法規の要求する行為をするために必要な最小限度の種目を列挙いたしまして、その額もでき得る限りこれをはっきりさせたということでございます。したがって、現在解釈上はっきりはいたしませんけれども、入るのではないか、あるいは入らないという意見もございますが、そういった分かれておるような若干のものにつきましては、はっきりとそれを除いたというものもございますし、また従来はっきりしていなかったものを明確に書いたという点がございます。現在はっきりしておりませんけれども、それを今度書かなかったものといたしましては、たとえば訴訟委任のために弁護士のもとにおもむいた旅費というようなものでございますが、これは訴訟準備の前段階のものでございます。これも訴訟費用になるのだという見解もあるようでございますけれども、今度の法律案ではそれは入らないのだということを、列挙主義から当然でございますけれども、そういう態度をはっきりさせているわけでございますし、また訴状その他の書面を裁判所に提出するための費用につきましても、現在の法律、民事訴訟費用法では、その他必要な費用は実費によるというような十五条の規定によりまして、その金額の計算がはっきりしていなかったわけでございますが、今回の法律案では、これを提出の費用といたしましては郵送の方法でやれば足りるわけでございますから、そういったものの提出のための旅費というものは入らない。これは郵便料金で計算をするということをはっきりいたしております。したがって、従来不明確なものがはっきりした、範囲につきましてもその額のとらえ方につきましてもはっきりしたという点は一つの大きなメリットだと思います。
 ただ、考えられる欠陥といたしましては、これは現在の手続法規におきまして十分な検討の上必要な最小限度の費用を列挙したわけでございますが、将来特殊な手続ができまして、それによって当然これは権利の伸長または防御に必要な費用があるはずだというような事態になりました場合に、それはこれからは抜けるのではないかという問題もあるかと思います。しかしながら、それはどうも列挙して明確にするというところから免れることのできない点でございまして、そういった事態に直面いたしますような際には、これはこの各号に新しくつけ加えるというような措置をとらざるを得ないのではないか、さように考えているわけでございます。
#13
○岡沢委員 その列挙主義と関連しまして、前回松本委員からも質問がありましたけれども、今度の場合はいわゆる弁護士費用を訴訟費用の中に含まないという態度でございますが、この問題については臨時司法制度調査会等でも論議されたところでございますが、お入れにならなかった理由を、前回の松本委員に対する御答弁と重なってもけっこうでございますが、簡単にあらためて明らかにしていただきたいと思います。
#14
○貞家政府委員 わが国の民事訴訟につきましては、弁護士強制主義、つまり弁護士でなければ法廷活動ができないという制度はとっておりませんけれども、現実の問題といたしまして、よほど簡単な事件でございませんと、訴訟を遂行するにあたりましては弁護士を代理人とすることが必要であるということは否定できないところでございます。そこで俗なことばで訴訟のための費用ということを考えます場合には、弁護士に対する報酬、弁護士に支払った報酬というものが非常な大きなウエートを占めるということも間違いないところでございます。したがいまして、これが法律上の訴訟費用の範囲に入らないということは、裁判による国民の救済を不十分にするものだという非難は確かにあるわけでございまして、そういった観点からは、弁護士に対する報酬も、何らかの限度におきまして民事訴訟費用の一部にするということが適当であるという意見が唱えられておりますことは、先ほど御指摘の臨時司法制度調査会の意見を見ても明らかでございます。しかしながら、これは臨時司法制度調査会の審議の際にも意見が出ましたし、また現在におきましても、おおむねそれと同様の議論がなされているように見受けられるのでございますが、こういった方向に対しましてはやはり消極論もかなり根強いように思われるのでございます。つまりそういった議論をされるほうからは、敗訴者に弁護士に対する報酬まで負担させるということではあまりに酷になるのではないか。特に敗訴者というものが非常に経済的弱者であることが多い現状を見ると、これに報酬まで負担させるということは、ますますその負担が大きくなって、道義に反することになりはしないかという御意見がございますし、また弁護士報酬を訴訟費用化するということは、必ずしも弁護士に対する報酬を法定化するというようなことと結びつくものでは理論的にはないわけでございますけれども、どうも事の成り行きとして、弁護士に対する報酬というものが低い水準に押えられるという傾向を生みやしないかというような懸念と申しますか議論もあるわけでございます。この点は諸外国にも例はございます。訴訟費用化しております代表的なものとしましては、英国あるいはドイツでございますけれども、アメリカはそういたしておりません。
    〔小澤(太)委員長代理退席、田中(伊)委員長
     代理着席〕
それでアメリカの雑誌などを見ますと、これがイギリスの法廷に比べて時代おくれであるとか、劣っているという批判もございますと同時に、どうも英国では、あまり訴訟費用がかかり過ぎて、これは敗訴になったらたいへんなことになる。アメリカでは、そんなひどいことはないからましだというような擁護論もあるそうでございます。
 そういった点等も考えますと、やはりこれは一方的な理屈だけで割り切るということはむずかしいのではないか。もう少し反対論というものにも十分耳を傾け、そういたしまして、こういった法律事務に携わる方々の御意見が一致し、あるいは国民の声もそれを要求するというような段階に、初めて考えるべきことではないだろうか。一方的に一方的な理屈だけで割り切るということは無理ではなかろうかというふうに考えまして、将来の検討にまつという態度にした次第でございます。
#15
○岡沢委員 その点よく承知いたしました。
 従来手数料を取られました期日指定、弁論続行、答弁書あるいは証拠の申し出等のいわゆる中間の申し出に、今度はそれをお取りにならないようになりましたが、その理由といいますか、根拠といいますか、それをお願いいたします。
#16
○貞家政府委員 現行法におきましてはあらゆる申し立て、つまり独立した手続を開始するというようなものでありませんでも、あらゆる中間的、付随的な申し立てについてまで必ず印紙を貼用することが要求されておりまして、ことに金額を別に定めませんものにつきましては、十円あるいは二十円という、今日の経済事情から申しますときわめて形式的なさまつな金額の印紙を張らなければならないというようなことになっているのでございます。ところが、申し立ての中には、先ほど申し上げましたように、期日指定の申し立てとか、あるいは証拠の申し出などというように、どんな事件でも必ずひんぱんに数多く行なわれることが予想されている申し立てがございます。こういった申し立ての手数料というものは、そもそも考えてみますと、訴えを起こすということ自体の中に事柄として含まれているべきものでないだろうか、そう考えられますので、こういった中間的な申し立てにつきましては、無差別にそのつど形式的にあまりたいした意味のない金額の金銭を徴するということは、手数料の徴収のしかたといたしまして、いかがであろうかということがまず考えられたわけでございます。これを実際的に見ましても、こういった各種の申し立てにつきまして、中身は正しくても手数料を納めないから不適当で却下するというようなこと、これは理論的にはそうすべきものかもしれませんけれども、それを繰り返していたのでは、結局は事件の迅速な進行を妨げるということにもなるわけでございます。また当事者の側から見ましても、裁判所の側から見ましても、そういったさまつな印紙の貼用、それを調べるというような事務のわずらわしさから解放いたしまして、当事者も裁判所のほうも本案の主張とそれに対する防御ということに勢力を注ぐということが望ましいのではないだろうか。
 こういった見地からかなり大幅にそういった中間的な申し立てにつきましては手数料を徴しない、印紙の貼用を要しないということにしたわけでございまして、これはたとえて申し上げますと、中間的、付随的な申し立ての大部分でございますから、弁論の続行申請あるいは証拠の申し出、取り立て命令、転付命令の申し立てでございますとか、破産あるいは会社更生等におきまして仮りの処分を申し立てる、あるいは強制執行におきまして執行処分の取り消しを申し立てる、あるいは支払い命令に対する異議についてもこれを手数料を徴しない。それから公平の観点から訴訟救助あるいはその取り消しの申し立てというようなものにつきましてもこれを徴しない。その他たくさんございますけれども、重要なものを申し上げれば以上のようなものでございまして、なお現在は厳格な意味では申し立てであるとは考えられませんけれども、答弁書のようなものに至るまで一々印紙を貼用させていたのでございますが、これも当然はずれる、つまり印紙の貼用を心要としないということになるわけでございます。
#17
○岡沢委員 そういう中間の申し立ての手数料を省かれた反面かもしれませんが、手数料の額についてはかなり思い切った改正案を提出しているわけでございますけれども、訴訟の提起の手数料の額について、別表第一の一項で三十万円とされた点、これは裁判所法の改正等とも関連があると思いますが、各刻みが従来の一万円から五万円になっている理由、特に五万円というのはどこから出てきたのか。それからこれは従来あまり低過ぎたからだということで理解できますけれども、会社更生、破産等の申し立てが現行の十円、二十円、百円から一挙に三千円、倍率からいうとたいへんなものでございますが、引き上げられた理由。こまかいことでございますが、この辺の事情を御説明いただきたいと思います。
#18
○貞家政府委員 御指摘のとおり、現在の訴えの提起の印紙につきましては、十万円、五十万円というのが一つの切れ目になっておりまして、訴額に対する手数料印紙額の率がだんだん下がるようになっているわけでございます。つまり低額のものにつきましては一%、中間のものにつきましては〇・七%、高額のものにつきましては〇・五%というふうに下がっているわけでございまして、このように下がっているということの理由を考えてみますと、やはり手数料の額というものは純粋に訴訟目的の価額の多寡に基づいて、それに比例してきめるという考え方もございますが、そういう考え方をとっておりません。つまり手数料の額のうち、下積み分と申しますか基本料金的なものがあるわけでございまして、そういった部分については率が高くなっている、それ以上の部分については低率で逓増していくというような仕組みになっているわけでございます。
 そこで、そういった十万円、五十万円という金額でございますが、これはかなり古くからそうなっているわけでございまして、これを調べてみますと、もちろん刻み方のこまかいところは違っておりますけれども、昭和二十三年以来、十万円、五十万円というものをその率の変わる分岐点と申しますか、そういう柱として立てていたわけでございます。しかし、経済事情が昭和二十三年からはかなり変動しております。一般に訴訟目的の価額がうんと上がっている、また一件当たりの事件処理に要する経費も非常に高くなっているわけでございます。そこでこの十万円、五十万円という金額は、その後の経済事情に合わせまして、もう少し移動させるのが適当ではなかろうかというふうに考えたわけでございます。これは必ずしも事物管轄の三十万円と密接に合ってるわけではございません。ただその基準といたしましては、三十万円以下の訴訟というものは低額訴訟と申しますか、低、中、高と分けますと低のほうに入るんではなかろうか。したがって、三十万円までの件については一%、それから百万円までの分については〇・七%、それをこえるものは比較的高額の訴訟といたしまして〇・五%という低い率の逓減の利益を得させるというように考えた次第でございます。
#19
○岡沢委員 わかりました。
 次に、刑事訴訟費用法案に関連して、一、二お伺いするわけでございますが、第二条によりますと、「公判期日若しくは公判準備につき」となっておりまして、新たに公判準備についても規定されているわけでありますが、訴訟費用の範囲が現行と変わったことになるのかどうか。刑事では現在は公判前に裁判官が取り調べる証人、鑑定人等に対する旅費、日当、宿泊費等の支給については、公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法が適用されているわけでございますけれども、本案では公判の前後で区別していないように読み取れるのでございますが、その辺御説明願いたいと思います。
#20
○貞家政府委員 結論から申し上げますと、被告人その他の者に負担させることができる訴訟費用の範囲は、現在の解釈と全く変更がございません。現在「公判二付」という表現を刑事訴訟費用法がとっておりますけれども、これは公判準備、つまり第一回公判期日後に公判期日外で証拠調べをいたします場合の証人、鑑定人に支給する費用というものは、刑事訴訟費用の中に入っていたわけでございます。
 そこで、裁判所の行なう手続と裁判官の行なう手続とあるわけでございますが、裁判所の行なう手続における証人、鑑定人に対する給付といたしましては、まず公判期日にやる場合があります。これは当然刑事訴訟費用に入ります。それから公判準備、つまり先ほど申し上げました第一回公判期日後に公判期日外で証拠調べをするというような場合、これも現行法の解釈として訴訟の費用の範囲に入りていたわけでございます。裁判官の行なう手続といたしましては、これは第一回公判期日前に被告人あるいは被疑者、弁護人の請求によりまして、証拠保全の手続をいたす場合がございます。これは刑事訴訟法第百七十九条でございますが、この場合にも証人に対する給付を必要とするわけでございます。それから第一回公判期日前のものといたしましては、検察官の請求によって証人尋問の手続をする場合、これは刑訴法二百二十六条、二百二十七条でございますが、そういった場合もございます。こういった裁判官の行なう手続につきましては、現行法で、公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法によりまして、その一条によりましてその金額が定められていたのでございますが、これはむろん現行法におきましても、今度の改正法におきましても、訴訟費用の範囲には入りません。
 そこで、今度の法律案は、訴訟費用の範囲とあわせまして、刑事の手続において証人等に給付するものの内容を規定しているわけでございまして、訴訟費用になるかどうかということとは関連がない規定もあるわけでございます。ところが、従来二つの法律によってそれぞれ額が定められていたのでございますけれども、その根拠といたしましては、いずれも刑事訴訟法の規定でございまして、これが訴訟費用になるかならないか、つまり被告人に負担させるべき訴訟費用になるかならないかということによりまして、法律を二つに分けておくということは不便でもあるし、必ずしも望ましいことではないのではないかというふうに考えまして、今度の法律案では、そういった被告人等に負担させる訴訟費用の範囲、それに見合うものと、それ以外の裁判所、裁判官が刑事の手続の上において証人等に給付するその内容というものをあわせて規定することにしたわけでありまして、今後は一本になりまして、先ほど申し上げました公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法は、その題名も改めまして、結局検察官の取り調べる場合だけに関する法律にするというふうな仕組みにしたわけでございます。
#21
○岡沢委員 最後に、証人の日当、宿泊料等に関連してお尋ねいたしますけれども、従来は法律事項でございましたね。今度は最高裁判所が定める額の範囲内で裁判所がきめる。法律事項からこういうふうに最高裁判所の規則に改められた理由はどこにあるのか、お尋ねします。
#22
○貞家政府委員 証人等の日当その他旅費、宿泊料等の額でございますが、これは御承知のとおり、最近数年間におきまして、経済事情に合わせまして、毎年少額ずつ増額をいたしております。そのたびごとに国会の御審議をわずらわしたわけでございますが、こういった他の者に対する給付の内容でございまして、経済情勢の変動に合わせて常時変えていかなければ適当でないというようなものにつきましては、最近の立法例といたしましてはほとんど法律以外の、法律以下の法形式に委任しているものが大部分でございます。たまたまこの民事、刑事の訴訟費用は非常に古い法律でございますので、それを法律の形式によって金額を上げていくという形式を従来踏襲していたわけでございますけれども、同じく裁判所関係でございましても、家事審判あるいは民事調停における証人等につきましては、家事審判法による申立手数料等規則、あるいは民事調停法による申立手数料等規則というようなものがございまして、これはすでに古くから――古くからと申しましてももちろん戦後でございますけれども、ずっと裁判所の規則で金額を定めることになっていたのでございます。
 それで、今度それらを統合いたしますにつきましては、これを法律で金額まできめて、経済情勢に合わせて少額ずつ変更していくというのは、やはり現代の要請にはかえってマッチしないのではないかと考えまして、給付額の上限の決定は最高裁判所の規則に委任するという態度をとったわけでございまして、これは司法関係あるいは行政関係についても同様でございます。たとえば、議院に出頭する証人の旅費、日当でございますが、こういったものも支給規程がございまして、両院の議長の協議によってきめるというような形になっているわけでございまして、そういった司法、立法、行政、各方面の立法例にならったということでございます。
#23
○岡沢委員 最高裁にいまの証人の旅費、日当に関連してお尋ねいたしますけれども、今回のこの規則できめようとしておられる証人、鑑定人の日当の最高額は大体どれくらい予想しておられるか。それとあわせまして、現実に支給する場合の基準、これは各級裁判所がそれぞれきめると思うのですが、やはり最高裁が基準をお示しにならなければばらばらになると思うのです。基準ですね、その基準と関連して当然この日当の性格というものが問題になるだろうと思うわけですが、最高裁としては日当というものはどういうふうに規定されておられるのか、もちろん人によっても違うというようなところが大きな問題になろうかと思いますが。
 あわせまして、時間の関係で、当然いま公害訴訟なんかで、ドイツからレンツ博士を呼ぶというような問題も起こってこようと思うのでございますが、いわゆる外国からの証人の喚問に関連しての費用、日当等についてどういう御配慮をなさっているのか。あわせましてお尋ねします。
#24
○牧最高裁判所長官代理者 お尋ねのうち、日当額でございますけれども、現行法におきましては証人の日当も千六百円と定められておるわけでございます。それから鑑定人その他の分につきましては千四百円でございますが、定められておるわけでございます。したがいまして、この刑事訴訟費用等に関する法律が成立いたしましたならば、最高裁判所の規則を定めて、その額の上限を定めなければならないことになろうかと思いますので、現在は準備でございますけれども、事務的には一応それを千六百円の証人等を千七百円、それから鑑定人等の千四百円を千五百円に引き上げたいというふうに考えておるわけでございます。
 それから、それの支給でございますけれども、証人日当の性格あるいは鑑定人等の日当の性格につきましては、私どもは特に法律に規定はございませんけれども、一応証人が裁判所に出頭するために要したいろいろな湯茶あるいは弁当等の費用、そういう意味で実質的に自分のほうから支払った雑費、そういうものを補償する面が一つと、それから裁判所に出頭することによってみずからの本業のほうが行なえなくなったということに伴って、得べかりし利益が得られなかったという意味での逸失利益の補償という二つの面があろうかというふうに考えておるわけでございまして、それに従って証人日当等の額を考えていかなければならないのではなかろうかというふうに考えております。
 したがいまして、各裁判所が証人の日当額を個々的にきめる際に、いまの二つの要素を勘案してそれぞれおきめになることだというふうに考えております。ただ、各地によりましては多少の事情もございましょうけれども、個々の裁判所の決定がちぐはぐになるということも必ずしも好ましいことではございませんので、ある程度一応の基準を定めまして、予算執行の適正もはかるというような見地から、一応各地に裁判所のこういう基準ということで流しているものがございます。その基準に基づきまして、各裁判所がそれぞれ具体的なやはり基準を定めまして、その範囲内、あるいはそれに従いまして受訴裁判所が個々の具体的な証人あるいは鑑定人等の日当額を現実にはきめておるという仕組みでございます。
#25
○岡沢委員 外国の証人等の点については。
#26
○瀬戸最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、現在東京地裁においてサリドマイド訴訟というものが係属しておるわけでございますが、これにつきまして原告側からレンツ博士外四名の外国証人の申請がございます。被告側からも同様五名の外国証人の申請があるわけでございます。また札幌地裁におきましては、種痘後遺症事件が係属しておりますが、この訴訟におきまして原告側からマイルス外四名の外国証人を申請しております。これらの証人が尋問することに決定せられ、現実に出頭して尋問を受けるということになりますと、これは在廷証人として旅費、日当、宿泊料が支給されることになると存じます。
 なお、この両訴訟におきましては、原告側に訴訟救助が許与されておりますので、出頭日当、旅費等は国が立てかえて支払うということになろうと存じます。
#27
○岡沢委員 終わります。
#28
○田中(伊)委員長代理 青柳盛雄君。
#29
○青柳委員 今度の改正で、この民事訴訟の手数料の基準が一応きまっておりますけれども、その基礎になる訴訟物の価額についてどういう基準でどう評価するかということは、具体的に個々のケースを見てきめられることだと思いますが、それはこの法律には触れておらないようでございますけれども、これはどういうふうな基準を設ける御予定でございましょうか。
#30
○貞家政府委員 御指摘のとおり、訴訟の目的の価額は基本的には訴えをもって主張する利益によって算定されることになるわけでございますが、具体的にこの利益をどう金で計算をするかという問題は、非常に現実の問題といたしまして困難な問題でございます。抽象的に申し上げますれば、原告が全部勝訴の判決を受けたとすれば、その判決の内容の実現によって幾ら利益を受けるか、その利益を金銭的に評価して算定するということになるわけでございますが、その利益の算定ということは、通常の場合には客観的に何人の目から見ても明白でございますけれども、事案によりましては、個々の具体的な事案によりまして算定が非常に困難な場合が生ずることがありますことは、御指摘のとおりでございます。この問題につきましては、最終的には受訴裁判所が健全な裁量によって決するということになるわけでございまして、この点につきましては外国の立法例等を見ましても、最終的にはそういった態度をとっているわけでございます。したがいまして、そういった個々具体的な裁量というものを内容とする面があります以上、これを抽象的に法律の規定をもちまして規定し尽くすということはしょせん困難だということになったわけでございまして、そういうような意味合いで、これにはいろいろな現実の基準が設けられているようでございますが、法律におきましては、それをかりに書くといたしましても、同義同語反復と申しますか、きわめて抽象的なものにならざるを得ないということから、法律で書くという態度はとらなかったわけでございます。
#31
○青柳委員 法律でそういう基準を設けるのは技術的な観点から実情に必ずしも合致しない、あるいは公平性が保てるかどうか疑問だというようなことも現にあると思いますけれども、それはそれとして、それを認めるとすれば、具体的には個々の裁判所がきめるといいましてもこれは裁判所の扱いがそれぞれ独自であると、ある裁判所へ持っていけば安いが、向こうの裁判所へ持っていくと高いというようなことになりまして、どうも不公平になる。管轄はいずれも法律できまっているわけでありますからやむを得ないということになるかもしれませんが、しかし、法律できまっている管轄も必ずしも一専属管轄とばかりは限らない場合もありますので、扱い方によっては別な裁判所へ持っていってもいいわけでございます。そうなりますと、甲の裁判所へ持っていくと高いけれども、乙の裁判所へ持っていくと安いということがあり得ては不合理だと思うのですね。そこで最高裁判所のほうでは何かそれを統一するような規則でもつくるような予定がございますか。これを裁判所当局にお聞きしたいと思います。
#32
○瀬戸最高裁判所長官代理者 最終的には訴えをもって主張する利益の額、これを受訴裁判所が判断してきめるということになろうと思うのでありますが、受付段階におきます事務処理の円滑を期するという観点から、昭和三十一年十二月十二日に民事局長通知というものを各裁判所に流してございまして、この中で一応の基準というものをきめておりまして、受付段階におきましてはそれで処理をするということにいたしております。
#33
○青柳委員 その民事局長通達ですかによる受付事務の統一の内容は周知されているわけでありますが、それについてはいまこの訴訟法の改正にあたって検討を要するというようなものは、いまのところ見受けられないわけでしょうか。
#34
○瀬戸最高裁判所長官代理者 前向きに検討をしておりますが、何ぶんにもなかなか困難な問題でございますので、目下研究中でございます。
#35
○青柳委員 また別な質問に移りますが、今度簡易裁判所の事物管轄が三十万円ということになった関係から、地方裁判所の管轄すべきものが、例の財産上の請求でないものということで、必然的に三十五万円がきめられるというような形に理解されるわけでございますけれども、これは訴訟費用法のほうでこの財産上の請求でないものは管轄の関係では三十万円をこえるものというふうにしてきめられたといたしましても、費用の点では当然に三十五万円にしなければならないという合理的根拠があるかどうか、ちょっと疑問に思うわけであります。そこで、いままで財産上の請求でない事件というものがどの程度あって、今度三十五万円ということでこの法律をきめていくと、どのくらいの増収になるのか。このことをお調べになったことがあるかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
#36
○瀬戸最高裁判所長官代理者 まず事件の統計をお話し申し上げます。
 昭和四十三年度におきまして、既済事件の総数が八万一千三百二十四件ございますが、そのうち人事訴訟が三千百四十一件、その余の非財産権上の訴訟及び訴額算定困難な訴訟、これが六百八十九件ございます。合計しますと三千八百三十件。昭和四十四年度におきましては、既済総数が八万四千五百九十二件、そのうち人事訴訟が三千四百十五件、その他の算定困難な訴訟、非財産権上の訴訟が五百二十五件、合計三千九百四十件という件数になっております。
 今度の改正法におきまして、これらの訴訟がどの程度改正手数料の結果増額になるかということは、個々の問題については正確に検討したわけではございませんが、非財産権上の訴訟の訴額を三十五万円とした場合には、おおむね一千万円の増収になろうかと思います。
#37
○青柳委員 一千万円の増収はなかなか捨てたものではないと思いますけれども、法律的に考えて、行政事件とかあるいは非財産的な請求、人事事件、そういったものは地方裁判所の管轄なんだということにすることは、必然的に三十万円をこえるんだからそれは三十五万円の計算でいいんだということになるのかどうか。その点についての合理的な検討は行なわれたのかどうか。訴訟法の中で、管轄は管轄、費用は費用で別に考えてもふしぎはないと思うのでありますが、その点は検討されたかどうかですね。
#38
○貞家政府委員 確かに御指摘のとおり、管轄の問題とみなし価額の問題は論理必然的に結びつくものではないと存じます。しかしながら、現実の訴訟の内容を考えてみますと、そういった財産権上の請求でない訴訟につきましては、一般にその手数と申しますか、内容の困難性という点から申しますと、まさに地方裁判所の管轄に属させるべき事件でございまして、その内容も複雑困難である、また、当事者がそれによって得喪する利益というものもかなり重大なものがあるというふうに考えられるわけでございます。そこで、こういったものにつきまして、特に手数料の点で優遇すると申しますか、安い価額に合わせるというのも一つの立法論としては考えられるわけでございますけれども、やはり裁判所の一般的な手数をどれだけかけるかというような点に着目いたしますと、せめて地方裁判所に持っていく訴額の最低のものに見合う程度は手数料を徴収すべきではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。
 そこで、こういった同じような制度を持っておりますドイツの法制なども調べましたが、ドイツにおきましては、千五百マルクが管轄の分岐点、一般に千五百マルクをこえれば地方裁判所に事件がまいるのでございますけれども、こういった非財産権上の請求につきましてはこれを三千マルクとみなす、これはたしか現在、その手数料が七十マルク程度だと存じます。日本の法制よりはやや高い手数料を取っておりますから、その程度になるのでございますが、そういった点も研究してみたわけでございます。
 なお、先ほども事件数の紹介が裁判所当局からございましたけれども、そのうち人事関係の訴訟におきましては、これは家事調停ではまかない切れなかった事件でございますから、おのずからその内容がこじれていると申しますか、複雑困難であって、かなりの手間がかかるということが一般的に言えるかと存じます。また、非財産権上の請求として重要なものは、株主総会の無効確認等の会社訴訟でございますが、これは非常に複雑困難な訴訟であるということは、これは申し上げる必要もないかと存じます。
 さらに、非財産権上の請求について、必ずこの規定によりまして三十五万円とみなされるかということになりますと、必ずしもそうはならないのでございまして、今度の法律案の四条の三項にございますが、「一の訴えにより財産権上の請求でない請求とその原因である事実から生ずる財産権上の請求とをあわせてするときは、多額である訴訟の目的の価額による。」という規定がございます。したがいまして、たとえば人事関係の離婚とか婚姻の無効とかそういった純粋な人事訴訟にあわせまして、慰謝料の請求なり財産分与の請求というものがくっつきます場合には、その金額によって計算するということになるわけでございまして、その場合には、この三十五万円とみなして計算するという規定は初めから適用はなくて、財産権上の請求をあわせてしておりますので、そちらのほうによることになるという意味におきまして、その実数と申しますか、現実に非財産権上の請求として手数料のほうも取り扱われる事件というものはその一部になる、若干はそうでないものがあるという点を申し上げておきたいと思います。
#39
○青柳委員 民事の訴訟費用の負担は敗訴者に行なわせるというのが原則のようでありますが、これは日本の実情では、追い打ちをかけるといいますか、勝訴したのだから、訴訟費用まで敗訴した被告からびしびし取り立てるというようなことは比較的少ないように見えますが、最高裁判所としては、その訴訟費用の申し立てがどの程度全体の事件との割合――民事の事件では、いわゆる示談、和解とか調停とかいうことで、訴訟費用は各自負担ということになりますけれども、最終的には判決で確定をするというような場合の費用取り立ての申し立てがどの程度、全体としてのパーセンテージでよろしいと思いますけれども、いまの実績では行なわれているかどうか、お調べになったことがありましたら、説明していただきたいと思います。
#40
○瀬戸最高裁判所長官代理者 意外に数は少のうございまして、地方裁判所で申し上げますと、昭和四十年七百九件、四十一年七百五十三件、四十二年六百七十五件、四十三年六百九件、四十四年六百四十六件、簡易裁判所で申し上げますと、昭和四十年七百六十五件、四十一年七百六十六件、四十二年八百十五件、四十三年五百七十六件、四十四年四百十六件、各既済件数に比しまして、きわめて少数であるということが言えると思います。
#41
○青柳委員 いまの数は、非常に少ないということは、その絶対数だけ見ればそのとおりでございますが、既済事件の数がお示しがなかったし、パーセンテージが出されませんでしたから、全体から見ると、大まかにいって何%くらいかということは、お調べになったことはありますか。
#42
○瀬戸最高裁判所長官代理者 概数でございますが、百件に一件程度ということを申し上げてよろしいかと思います。
#43
○青柳委員 次に、刑事訴訟の費用についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、刑事裁判で有罪になった被告に訴訟費用を負担させる、これが原則で、あとは裁判の中で、全部または一部を免除してやる、あるいはいよいよ確定後の取り立ての段階で、また事情によっては免除の決定もあり得るということのようでありますが、これも私は実績を知っておく必要があると思うのであります。いままで、本来被告に負担させるべきものがこのくらいであるのだけれども、裁判の結果では、この程度免除されている、あるいはその後執行段階でまたさらにどのくらい減っているというようなことについて、調査をしたことがありましたら、それを御説明願いたいと思います。
#44
○牧最高裁判所長官代理者 四十四年度の統計で申し上げますと、地方裁判所、簡易裁判所、いわゆる一審でございますが、それを合計いたしまして、有罪とされた人員が七万一千九百二十九件ございます。そのうち、判決において訴訟費用の負担を命ぜられなかったというものが、二万四千七百二十三件でございまして、比率にいたしますと、大体三四・四%ぐらいになろうかと思います。なお、お話しのように、確定後、訴訟費用の負担を命ぜられた者が執行免除の申し立てということができるわけでございますが、その分は、申し立てが千八百十五件ございまして、免除されましたのが千六十九件ございますので、概略五九%くらいが免除を認められております。
 したがいまして、それらを全部合算をいたしますと、三六%程度が訴訟費用の負担を免除されているということになろうかと思います。
#45
○青柳委員 判決あるいは決定の段階での数はわかりましたが、取り立て実績というのはこれと全く同じではないと思いますけれども、それもお調べになったことはありますか。
#46
○牧最高裁判所長官代理者 実績の点は裁判所のほうで関係いたしておりませんので、わかりかねるわけでございます。
#47
○青柳委員 法務省のほうではいかがでしょうか。
#48
○貞家政府委員 正確な数字を現在持ち合わせておりませんが、徴収不能に終わるのが約二五%程度だと記憶いたしております。
#49
○青柳委員 これは初歩的な質問かもしれませんけれども、服役をいたしまして刑務所でほんのわずかの、報酬といえるかどうか知りませんけれども、支払われる段階もあると思うのですが、そういうものから受刑者に負担させられたものを差し引くということはやっているかどうか。やっていないと私は思うのですけれども、その点も……。
#50
○貞家政府委員 お答え申し上げます。そういうことはやっておりません。
#51
○青柳委員 二五%の徴収不能については、もうそれ以上の実績をあげることは困難だということで従来どおりのやり方でやっていくのか、それとももっと何か実績をあげようというような方策を考えているのか。私どもからいえば、犯罪者とされて追及される人たちは概して社会の落後者でございまして、そういう人たちに訴訟費用を負担させるというのは二重の処罰のような感じもするわけであります。だからこれを厳重に取り立てるということが、社会的に見てまた人道的に見ても、必ずしも妥当であるかどうかということは相当な疑問があると思うのでありますが、そういう点で実績が必ずしも一〇〇%いってないということもありますので、さらにこれを強行取り立てをするというようなことを考えるとすれば、ちょっと逆行的な感じがするわけであります。この点、いかがでございましょうか。
#52
○貞家政府委員 確かに訴訟費用の負担ということは、一種の不可罰的な要素が入っているわけでございまして、被告人に対してそういったものをすべて取り立てるというのは、有罪の判決を受けたにいたしましても酷ではないかという見方もあるわけでございますが、御承知かと存じますけれども、日本の刑事訴訟費用というものはかなり限られた範囲でございまして、外国の立法令にございますように有罪になったら裁判所に手数をかけたから手数料を取るとかあるいはその他の費用を負担させるというようなたてまえをとっておりません。その意味におきましては、被告人の負担にとってはかなり寛大と申しますか、それほど手きびしくは互い立法だということがいえるかと存じます。これをあくまでも取り立てるのは酷ではないかという御指摘でございますけれども、こういった点につきまして、先ほど来説明がございましたように、執行の免除の申し立てというようなことで考慮いたしておりますし、また、裁判所が訴訟費用負担の裁判をされる際には、十分資力ということも考慮されて訴訟費用の裁判がなされるわけでございまして、その後におきましては、これは一種の国の債権ということになるわけでございます。私、所管ではございませんけれども、おそらくこれを他の一般のものよりも特に厳重に区別して、あくまでも取り立てるという特別の扱いがされているというようなことはないと存じます。一般の手続によりまして徴収できないという場合には、これは徴収不能ということで負債になる。つまり国の債権の取り立てといたしましてケリがつくということになるわけでございます。
#53
○青柳委員 反面から申しますと、つとめさえすればそれで不法行為に基づく損害賠償あるいは不当利得、そういったようなものは返さなくても済むのだ、だから財産上の犯罪を犯して得た不当な利得を名前を変えてどっかに隠匿しておく、そして刑をつとめてきて出てきてからそれを使うというようなまことに不届きしごくな人間もいることは事実だと思うのです。だから、そういうのに対して、被害者側から見ると、何としてでも弁償してもらわなければならぬという気持ちが強いわけであります。それはそれとして、そういうような場合でも訴訟費用のほうは徴収不能ということで済ますようにしているのかどうか。そこまではもう立ち入れないのだ、犯罪人が犯罪行為によって得たものをどこかに隠匿してしまって、どうもその所在を追及することは困難であるから、もうそれについては努力を一切やめてしまうのだというようなことでやっているのかどうか、この辺のところもちょっと関連してお尋ねしておきたい。
#54
○貞家政府委員 もちろん訴訟費用の負担を命ぜられました者が財産を持っているということになりますれば、これはもう一般の原則によりまして強制執行する、差し押えをすることもできるわけでございます。したがいまして、これは極端に申しますと、隠匿のしかたが非常に巧みであるというようなことに在りますと、これは普通の努力ではできないということはあり得るわけでございますけれども、これは一般の不法行為による損害賠償の請求に対しまして確定判決をもらいましても同様でございまして、その点について特に刑事訴訟費用については甘くしているとか辛くしているとかいうことはないと思うのでありまして、一般の民事判決によります場合と同様に、その部分は検察官の命令がございますと債務名義になるわけでございまして、それによって差し押えということは不可能ではない。ただ実数としてこれはそれほど多いとは承知いたしておりませんけれども、全く一般の原則と同様でございます。
#55
○青柳委員 終わります。
     ――――◇―――――
#56
○田中(伊)委員長代理 それでは次に、法務行政に関する件について調査をいたします。
 質疑の申し出があります。これを許します。岡沢完治君。
#57
○岡沢委員 最初に高松警察庁刑事局長に、その後の大阪刑務所を中心にした入試問題の窃盗にからむ事件について、捜査状況――新聞等でも報道されている範囲でけっこうでございますし、また捜査の秘密の限界は十分わきまえたつもりで、しかし、社会的に大きな耳目を集めておりますし、またやはり適切な処置とタイミングを失しない措置ということも必要かと思いますので、差しつかえない範囲内でその後の捜査状況を明らかにしていただきたいと思います。
#58
○高松政府委員 三月九日までの捜査状況につきましては、先般の十日の当委員会で御報告申し上げました。
 それで、その後事件は、御承知のように一月三十日に大阪市西区で姜旭生という男が何者かに殺されたというところから端を発したわけですが、それをいろいろ調べておりますうちに、入学試験にからむ何か不正があるようだということで、いろいろ捜査をいたしまして、三月の五日になりまして尾崎増義、家弓光司、この二名の者を逮捕して取り調べをしました。両方とも強盗殺人で無期懲役で大阪刑務所に収容されていた者でございます。次いで、これらの関係者の調べを進めておりますうちに、尾崎、家弓の共犯として宮里栄正、これも強盗殺人で無期懲役に処せられておりまして、四十四年の十月十五日に大阪刑務所を仮出所になったという男でございますが、これを窃盗の共犯容疑で逮捕いたしました。さらに大阪刑務所の看守部長の阪口登、それから看守三反崎益三、この二名の者を贈収賄容疑で三月十日に逮捕いたしまして、現在取り調べ中でございます。
#59
○岡沢委員 受験生とその父兄あるいは仲介者の法律的な責任あるいは被疑者とした場合の適用条例については、前回私は当日十日の日に九州に行っておりましたので、委員会には出席しておりませんでしたが、新聞等の報道によりますと、高松刑事局長は、事件の進展等を見守って総合的に判断したい。現に事件は進展中でございますし、当該父兄あるいは学生あるいは社会に与える影響というのはきわめて大きいだけに、適時適切な措置が必要だと思いますし、その意味からやはり現時点においてどういう法令が適用されるのか。いわれますように、偽計業務妨害罪が成立するのかどうか、被疑者として取り調べの対象にすべきかすべきでないかというのは、やはりいまの段階ではっきりしておかれる必要があるだろうと私は思いますし、また新聞等でも警察庁と法務省とで協議をなさっておられるというふうに聞いておるわけでございます。もちろん仲介者にもいろいろ種類があろうと思いますし、父兄あるいは学生の責任というものはそれぞれ違うと思いますが、その辺について、その後どういうふうな結論と申しますか、根拠と申しますか、方針でこの事件の捜査に当たろうとしておられるか、お尋ねいたします。
#60
○高松政府委員 警察庁といたしましては、本性の事件については殺人の犯人の捜査、これがもちろん中心でやっております。贈収賄関係につきましては、捜査二課の者が応援にかけまして、その点もやっております。それからその仲介者、父兄、それから学生――もう学生は一部でございますけれども、ある程度それらの関係の人についても調べをいろいろやっております。それでまだ全部済んだという段階ではございませんが、これらのいろいろな態様があるわけでございまして、それらの態様をにらみ合わせまして、その事実判断の問題を検討してまいりたい。これは、おっしゃるように非常にむずかしい点がございます。そういう点で法務省と私ども、あるいは現地の大阪府警と大阪地検というものがそれぞれいま協議しているが、まだ結論が出ていないという状態でございます。
#61
○岡沢委員 そうすると、いま殺人罪とか贈収賄罪は、これは法律的に問題はないと思いますが、問題は、やはり仲介者あるいは父兄あるいは当該学生、いまのお答えによりますと、もう一部調べておられる、それは参考人としてなのか被疑者としてなのか、被疑者とすればどういう罪名による被疑事実なのか、その辺もやはり明らかにしていただく必要があろうかと思います。
#62
○高松政府委員 現在のところ参考人ということで調べております。
#63
○岡沢委員 刑法二百三十三条の偽計業務妨害罪については、昭和八年の判例もございますし、いまのお答えで参考人という局長の御答弁がございましたが、常識的にわれわれが報道を通じて知っている範囲内でも、やはり仲介者の特定の人は、現にそれによって利得を得ている、それがもう反復した行為が行なわれているというようなことを考えますと、やはり刑法二百三十三条の被疑者として調べるという厳正な態度も必要ではないかと私は思うわけでございますが、この見解についてはどうでございましょうか。
#64
○高松政府委員 現在のところ参考人として調べている、こういうふうに申し上げたのでありますが、さらに調べがいろいろ進んでまいりまして、その行為の態様その他がさらに明確になった場合には、被疑者として調べる場合も当然出てくるであろうというふうに私は予想しております。ただ、その場合の適用法が何になるかということは、多少いろいろ問題がある、そういう点でいろいろ関係のほうとも連絡をとりながら検討を加えつつあるのが現在の段階でございます。
#65
○岡沢委員 この事件に関連した学生の処分等につきましては、いま村山大学学術局長もお見えでございますけれども、文部省としてもきびしい態度で臨むということは、大臣等の御見解も発表されております。しかし、これはやはりいまちょうど入学試験の時期であるということを考え、また大学生を持つ父兄がいかに多いかということを考え、また学生自体に与える心理的な影響を考えました場合に、やはり個人的な感情等は抜きにして厳正な態度を求めるのが、私は正しい教育行政の姿勢だとも思いますが、だからといって、責任のない者、あるいは証拠の不十分な者の一生を破滅におとしいれるような軽率な処分もあってはいけない。その辺は非常にむずかしいところでございますが、それだけに、私はこの事件については、警察庁あるいは今後事件の中心的な役割りを果たされる検察庁あるいは法務省、それから大学あるいは厚生省、これらの連絡といいますか、手続的にあるいは事実関係の情報交換に十分遺憾のない連絡が必要だと思うわけでございますけれども、特にとりあえず当該学生の処分をなさる場合に手続的にはどういう順序になるのか。たとえば警察からリストをもらわれて、もちろん警察のほうでお調べになった結果にもよると思いますが、大学当局が第一義的に処分をされる。それを文部省としては、指導監督という問題が大学問題のときに大きな課題になりましたけれども、どの程度の指導性を皆さんのほうで発揮なさるのか、また大学の見解と文部省の見解が違った場合にどういう措置が法的に講ぜられるのか、あるいは事実上どういう方針で、いま申しました大学と文部省の見解が違った場合の処置をとろうとなさっておるのか、その辺、文部省の見解をお聞きしたいと思います。
#66
○村山(松)政府委員 今回の不正入学事件に関与した学生の処置につきましては、前回の当委員会でも御説明申し上げましたように、これは本来的に大学において処置すべき事柄でございますが、文部省としても必要な助言を与えてまいりたいと思っております。大学といたしましては三月八日に、入学取り消しなどのきびしい処置をとるという学長談話を発表されております。文部省もこれを支持しております。なお、三月十日の評議会におきまして、学長の方針を支持し、十人からなる不正入学問題の調査委員会を発足させることを決定いたしております。調査並びにその対処のやり方としては、基本的には入学取り消しなどを含むきびしい処置ということでございますが、御指摘のように、本人の事情等よく調査して、かりそめにもこの事情をよく知らないで間違った処置がとられることがあってはならないわけでございますので、その措置をとるにあたりましては、まずもって警察当局等の捜査の結果を承りまして、それに基づきまして慎重に判断の上措置されるものと考えております。
 大学の判断と文部省の判断と食い違った場合どうかという御指摘でございますけれども、学生の入学、卒業の認定というようなことは大学のいわば専管的な事項でございます。大学がただいま御説明しましたような基本方針で進む以上は、文部省の考え方と食い違いが生ずることはないと考えております。
#67
○岡沢委員 いまの御答弁とも関連するわけでございますが、やはりその警察庁の調べがなければ、だれがそれに関係したかということはわからぬわけですね。そういう点で警察庁と大学、あるいは検察庁、法務省と大学との連関関係について、すでに何か事務的な話し合いが進まれているのかどうか、あるいはこれは警察庁のほうから積極的に大学にも御連絡しておられるのか、大学から要求がなければ警察庁としては御連絡にならないのかというような点。
 それから大学としては、いわゆる事件の進展とおっしゃいますけれども、これは裁判ということになれば、通常の場合でございますと数カ月から数年かかるわけでございまして、どの段階で処分をお考えになるのか。先ほどお答えにございましたように、受験生あるいはその父兄の関係の度合いもおそらく個人個人によって違うと思いますし、また本犯であります窃盗なりあるいは贈収賄事件等の関係はどういう時点で大学としてはおとらえになろうとしておられるのか。
 その辺、警察の関係との連絡関係、それから大学のいま私がお尋ねした点についての見解をお聞きいたします。
#68
○村山(松)政府委員 まず大学の対応関係のほうから御説明申し上げます。
 不正入学というようなことになりますと、これがかりに司法事件、刑事事件に関連がなくても、大学としてはそういう事実があれば、その事実に基づいた厳正なる措置がとられるわけでございます。しかし、今回はたまたま刑事事件に関連して事情がわかってまいりましたので、できる限り警察当局等の捜査の結果を大学としては通報を受けまして、それを基礎にして諸般の調査を進めたい、かように考えておるようでございます。すでに新聞等に報道される少し前に、その刑事事件の捜査に関連いたしまして、不正入学がからんでおるらしいということで警察から大学に御連絡があったようでございまして、大学としては最初は捜査に協力するという形で関与しておりました。不正入学が、全貌はわからないにしましても、あることは間違いないと判断される時点になりましたので、大学からも警察等に積極的に御連絡を申し上げ、警察のほうからも御連絡をいただいておるようでございます。今後も連絡を緊密にいたしまして、できるだけ真相を解明して、正確な事実の上に措置をするということになろうかと思います。
#69
○高松政府委員 大阪府警察本部と大阪大学あるいは大阪市立大学との間ではかなり緊密に連絡をとっております。問題が問題でございますので、非常に極秘にやってはおりますけれども、連絡はかなり緊密にとっておるようでございます。
 それから蛇足でございますけれども、当初問題が盗まれたという段階で、大学で盗まれたのか刑務所で盗まれたのかということから、大学当局とはその当時からいろいろ連絡をとっていたわけでございます。
#70
○岡沢委員 警察としては大学と十分連絡をとっていただいた。
 最近の新聞報道によりますと、阪大とか市立大学以外の私学の大学の入試問題の売買といいますか不正事件というのも報ぜられておるわけでございますが、警察のお調べの段階ではそれが出てきておるのかどうか。
 それからもう一つ、村山大学局長に、いわゆる私学の場合と官公立の大学の場合と学生の身分に、この入試不正事件に関連した場合、取り扱い上差があるのかどうか、お尋ねいたします。
#71
○高松政府委員 現在の段階では、私学についてはそういう問題は出ておりません。
#72
○岡沢委員 そうすると新聞のほうが先ばしっているということですか。
#73
○高松政府委員 どういうことでああいう報道がされたのか、私どものほうもわかりませんが、現在の段階ではそういう問題は出ておりません。
#74
○村山(松)政府委員 学生の入退学の認定等につきましては、国公立と私学とで、法律関係は別といたしまして、教育上の問題としては差がないと存じます。したがいまして、私学におきましても、不正な方法で入学をしたということが判明すれば、それによって厳正な措置がとられるものと考えております。
#75
○岡沢委員 ちょっと質問の角度を変えますが、矯正局長に伺います。この入試の抜き取り事件と関連して、大阪刑務所の江村所長は、入試問題が盗まれることはやむを得ないのだという意味の、問題の漏洩は防げないんだという趣旨の発表を、もし新聞記事が正しければしておられるわけでございます。ほんとうに刑務所で入試問題を扱うことが事実上不可能であれば、前回の委員会でも質問がありましたように、また御答弁がありましたように、現在相当数の大学の入試問題あるいは官公吏の試験問題が扱われているということ自体、これはもう改めなければならぬわけでございますが、江村所長の真意がどこにあるか私もわかりませんが、矯正局長としてはどういうふうにお考えいただいておるか、お伺いいたします。
#76
○羽山政府委員 私のほうは、絶対にこの種の事犯が未然に防止できなかったというふうには考えておりません。
#77
○岡沢委員 大阪刑務所長といえば、これは行刑官吏の中でも最右翼の中のお一人だし、江村所長御自身が相当な識見の持ち主だと私は考えておりますけれども、この所長自身が、ここにございます毎日新聞の報道が正しいとすれば、脱走だけに気を配るのに精一ぱいであって、問題の漏れば防げないという御見解です。矯正局長は、そんな心配はない。しかし、第一線の、しかも現職所長がおっしゃっていることと矛盾があるわけなんで、私は矯正局長のほうのを信用したいのですけれども、現実にこういう問題が起こっているし、この前の法務大臣の御答弁でも、過去二回、試験問題が抜き取られそうになったという事実もあるようでございますから、やはり簡単に安心できないのではないかというふうに考えますが、重ねて局長の見解を聞きます。
#78
○羽山政府委員 具体的な案件に即して申し上げますと、今回、大阪の刑務所に犯人が侵入いたしました昨年の一月十五、十六日の当時、三十万七千枚という注文でございまして、冊数にいたしますと七万八千冊というもののうちから十六冊が盗まれた。江村所長が申しますのは、そういう多数のところから少数が盗まれたので点検がむずかしいということを言ったのではないか、それが江村所長が言わんとする真意ではなかったかと思うのでございます。
 しかしながら、私どもは、もし点検が不可能だとかむずかしいというようなことでありますならば、それは注文をとり過ぎたのではないかというような、いろいろな別の面で反省すべきことでございまして、点検もできないような作業を引き受けておいて、事故が起きまして、それはできないというのは、私どもといたしましては、少し考え方がおかしいのではないか。現在どうすれば事故が起きないようにできるかということを鋭意検討すべき段階だと思うわけでございます。
#79
○岡沢委員 前回の法務委員会で植木法務大臣が御答弁になりました、京都と名古屋の入試問題が漏れそうになった事件、わかっている範囲で、どういう事情か詳しくお答えいただきたいと思います。
#80
○羽山政府委員 時期がいずれも一月ごろでございます。
 京都の事件と申しますのは、やはりこれも、出所いたしました者が内部の者と通謀いたしまして、答案用紙を印刷に従事いたします受刑者が抜き取って外に出そう、こういう計画をいたしました事件でございまして、この手口は、外に出ております受刑者が刑務所に参りまして――これは受刑者本人が来たのではないようでございまして、別の、刑務所では全然顔もわからぬような、初対面のような共犯が参りまして、偽名で事務用の紙の袋多数の印刷を発注いたしたわけでございます。そうすると、事務用の袋の印刷がたまたま入学試験問題を印刷いたしております工場と同じ工場で行なわれておった。それらの点につきましては、内部におります受刑者が手紙で連絡をとったようでございます。それで、違った印刷物を同じ工場で印刷いたしておりますので、そのでき上がりました問題の若干を、すぐそばで印刷いたしております事務用の袋の中に突っ込みまして、そしてそれを袋は袋で梱包いたしまして注文主のところへ送る、こういう手口であったようでございます。
 しかしながら、これは刑務所の施設外におきます共犯の間で仲間割れが生じまして、その当時京都の刑務所に密告いたしてまいりまして、搬出前に発覚いたした、こういうことに相なっておるのでございます。これは事件が起こりましたのが昭和四十年でございます。
 それで、この経験にかんがみまして、全国の刑務所に指示いたしまして、試験問題を刷る同じ工場で他の印刷物を刷るなということを実施いたして今日に至っておるのでございます。
 それから、名古屋の事件と申しますのは、昭和四十三年の一月中に二回不法に侵入して、侵入者が、内部の者が用意しておきました試験問題用紙を抜き取って、またへいを越えて逃げたという事件でございます。これはただいま申しました四十三年一月中に二回にわたって起きております。
 それは、受刑者が看守のすきを見まして若干の部数を抜き取りまして、窓のすき間のようなところにはさみ込んでおくのでございます。そしてそれを何月何日に、窓のところにあるから盗みにこいというような、暗号その他の方法で部外におります出所した者に連絡をする。その連絡によりまして、二回外へいを乗り越えて入りまして、合計百四十枚を盗んでいったということになっております。
 これは、南山大学、愛知大学等の試験問題でございまして、人物はよくわからないのでございますが、その問題を買った人か、もらった人か、あるいはどうして入手したのかわかりませんが、その盗んだ問題を持った人が大学当局に参りまして、これはおたくの入学試験問題だということになっておるけれども間違いないかということを聞きに行ったのでございます。それで一挙に事が発覚いたしまして、大学当局は至急にガリ版刷りで――大学当局も非常に御迷惑だったと思うのでございますが、すべての問題をつくり直し、ガリ版で刷って試験を実施した。したがいまして、試験の実施上の実害はなかった、こういうことになっておるようでございます。
#81
○岡沢委員 いまの御答弁を聞きましても、四十年、四十三年、そして今度、しかも現実には各大学の入試問題は現在も刑務所で印刷を担当しておられるのが非常に多いということを考えました場合、私は矯正局長を信用しないわけではありませんが、昨年の金嬉老の事件といい、これだけではございません。ここ数年間刑務所関係の汚職、腐敗事件は枚挙にいとまがないほど続発をしておるわけでございますが、今後もはたして刑務所に試験問題あるいは官公吏の採用試験関係の印刷等、あるいはその他の機密文書の印刷をまかしていいのかどうかということについて心配するのは、私一人ではないと思うのです。
 具体的にはどういう対策を、今後こういう事件の再発を防止されるために考えておられるか、矯正局長として現時点で改善策についての見解がまとめられておりましたら、明らかにしてもらいたいと思います。
#82
○羽山政府委員 昭和四十年以来の事故にかんがみまして、入学試験問題の印刷につきましては、かなり詳細で、かなり厳格な取り扱い心得というようなものが制定されておりまして、それが今回の大阪刑務所におきましてもあるわけでございます。私どもといたしましては、これが確実に励行されるならば今度のような事故は起きないのではないかというふうに考えるわけでございますが、確実に励行ができないような、あるいは励行しない――昨日新聞で報道されまして、まことに恐縮に存じておるのでございますが、たとえば職員などが介在いたしますれば、いかに詳細な取り扱い心得を出しましても、これはもう何ともいたし方がないわけでございまして、職員が介在するということは、もうまことに遺憾千万と申さざるを得ないわけでございます。もし職員でないところで起きたといたしますならば、それは結局、印刷工場に働かす受刑者の選定あるいはその行動観察というものを怠ったのではないか。ことばをかえて申しますと、受刑者でも、一人の人間のうしろにまた一人看守がつくというようなことではとても仕事にならぬわけでございまして、ある程度信用し、ある程度仕事をまかすということはやむを得ないと思うのでございますが、しかし、信用するということと監督するということは別問題でございまして、信用はしても、その毎日の行動を要所要所を押えてしっかり監督していくというようなことができなかったものであろうか、またそれをもっとやるべきではないか。
 それから、先ほど申しましたように、このたびの事故につきましては、四十五工場、四十六工場、受刑者が約百人でございます。それに対して、指導その他監督に当たりますのが、技官を含めまして五人でございまして、こちらの印刷機が故障した、そこで技官が故障を直しているときは、故障の修理に夢中になりますから、頭数にいたしますと、看守が四人になる。便所にでも行けば、また三人になるというような状態でございまして、結局、百人の受刑者がおれば三人で監視するというような体制になるおそれがあるわけでございます。
 そういうふうになりますときに、はたして監視が十分に行き届くように適正に注文の量をとったかどうか、その限界を越えて注文の量をとったのではないか。たとえて申しますと、大阪刑務所におきましては、昭和四十二年の注文学校数と申しますか、注文をいただきました学校数は二十七校でございました。これはあまりにも多いということで、逐年減らしまして、現在は十二校になっておるのでございますが、そういうふうにあまりにも多くの注文をとり、そしてあまりにも多数の紙を管理するというようなことが、そのすきをねらわれまして、引き抜かれるというようなことになっていったのではないかというふうに考えるのでございます。
 私は、昨日も、係を集めまして協議した際に申したのでございますが、大蔵省造幣局あたりで札を印刷しておるところの管理も一度見学にでもいかなければいかぬなということでございますが、試験問題と申しますのがこのように破格な値段で取引されるということになりますと、試験問題の印刷工場というのは、非常に高額の有価証券を刷っているような工場ということになるのでありまして、そこに、受刑者百人に対して三人あるいは五人というような看守でいいものであろうか、この辺についても十分徹底的に検討をし直さなければいかぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
#83
○岡沢委員 いま、試験問題が有価証券なんという話がありました。結局それは、買う人がおる、あるいは入学難、特に医学関係に金がかかる。具体的には、やはりモラルの問題、医師のモラル、あるいはこれに関係した教育者が意外に多い。教育委員長あるいは小学校長というような方がおられるというようなことを考えました場合、やはりここでそっちの背景について考えざるを得ないと思うわけでございます。
 時間もあまりございませんので、詳しい質問は差し控えたいと思いますが、文部省と厚生省に、何と申しましても医学の入学試験が非常にきびしい、あるいは医師養成制度についての問題点がこの事件の背景にあったことはいなめないと思います。医師の絶対数あるいは新しく医師の資格をとる医学生の定数という問題もきわめて重要な、われわれとしては解決策の一つとして考えざるを得ないと思うわけでございますが、これに関連して、いま具体的に自治大臣が地方の医科大学の養成制度を発表なさっておりますし、この間のテレビでは日本医師会等も賛成だ、厚生省の意見については積極的にお触れになりませんでしたが、文部省あるいは厚生省は、この自治大臣の地方医科大学の新設の構想についてはどういう御見解か、お尋ねいたします。
#84
○村山(松)政府委員 文部省の関係につきまして御説明申し上げます。
 今回の事件の背景には、医師が足らないとか、あるいはその結果医学部の志願者が非常に多くて競争が激烈である、それからまた、一部医者というのは、それだけの金銭的な犠牲を払ってもペイするものかというような事態があるということが指摘されておることは否定できないことでございますが、しかし、やはり一番大きな要素は、御指摘のようにモラルの問題ではないかと存ずる次第でございます。と申しますのは、比較するというのは恐縮でございますけれども、アメリカにおきましても、医学部だけは非常に競争が激烈で、二十倍程度の競争率のところも珍しくございませんし、またアメリカにおいては、医師というのは、場合によっては日本以上に経済的には恵まれた職業という評価もあるわけでありますが、アメリカにおいてこの種事件が起こったということを聞かないわけでございます。その点におきまして、文部省といたしましては返す返すも遺憾に存ずるところであります。私どもの一つの反省といたしましては、そういう不正な手段で入学しても修学でき卒業できるという大学教育のあり方についてもっと反省すべき点が多いのではなかろうかと思います。本来、大学に入学する能力のない者が不正な手段で入学したにしても、その後の修学についていけない、そういう者は卒業できないというきびしい大学教育であらねばならないのではないかと思います。そういう点で反省いたしたいと思います。
 それから、第二点の、自治省の計画しております医科大学の問題でございますが、これはまだ詳細な計画は承っておりませんけれども、概要のところは、僻地の医師が確保できない、普通の医科大学を出た者はなかなか僻地に行ってくれないということからいたしまして、政府つまり自治省でございますが、政府と地方公共団体が必要な資金を出し合いまして学校法人を設立して、したがいまして、形式的には私立の医科大学をつくるという計画でございます。ただ単なる私立の医科大学ではなくて、その資金を持ち寄るという点ももちろん変わっておりますし、また修学中手厚い奨学措置などを講じ、そのかわり卒業すれば一定期間僻地の公立病院等に勤務するという条件を課するような私立の医科大学ということに相なるわけであります。文部省といたしましては、このような措置をとられなくても、一般の医科大学で問題が処理されるのが、もちろん理想としては望ましいわけでありますけれども、現実に僻地の医師が確保できないという事態は否定できないわけでありまして、形式的には私立の医科大学ということであれば、基準に合うものであればそれは認可して差しつかえない、かように考えております。
 蛇足ではございますが、特殊の行政目的から特殊の私立大学をつくるということは、厚生省関係で一つ実例がございます。社会福祉の事業に従事する者の確保のために、厚生省が資金のめんどうを見て学校法人をつくり、日本社会事業大学というのが認可されております。事柄は違いますが、趣旨とするところについては共通する点がある、現行法規に照らしまして可能である、やむを得ないという判断をいたしております。
#85
○松尾政府委員 第一点の医者の絶対数というものが不足ではないかという御質問でございますが、私どものほうは、やはり現在のわが国における患者数というようなものと対比をいたしまして現在の医師では非常に足りないという考え方に立っております。したがいまして、一定の計画のもとに目標というものをつくりまして、文部省とも十分連絡の上それが達成されるようにというお願いをしておるところでございます。
 それに関連いたしまして、自治省のいわゆる僻地大学の問題でございますけれども、ただいま村山局長からもいろいろと話がありました内容でございますが、厚生省といたしましても、当初医学高専というような構想も出ておりましたが、少なくとも医者の養成という問題でございますので、中学卒業という段階で六年――同じ六年かけるのに中学卒業者を相手にするというのは基本的に当初は反対いたしました。しかしながら、いまお話しのように、そういう構想も変わりまして、いわゆる正規の大学という形で僻地大学をつくりたいということでございます。私どもも、全体として医師不足という問題もございます。なるべくこれがいい大学になりますような立場に立って十分に協力いたしたい、こういう姿勢になっておるわけでございます。
#86
○岡沢委員 いま文部省と厚生省の責任の両局長から御答弁がございました。医師が絶対数として不足しているということには共通の認識でございます。われわれも同感であります。ただ、それをわかっておりながら、実際に医師をふやす具体的な努力になりますと、日本医師会がどういう態度をとるかどうかは別として、私の職業であります弁護士の世界を考えますと、やはり欧米先進国に比べて非常に数が少ないけれども、日弁連としては質が低下するということを大義名分にしながら、実際には弁護士の数がふえることを好まない。自分の職域を守りたい、ライバルは少なくしたいというような気持ちが実際には私はあると思うのです。医師の社会にも私はそれは否定できないし、具体的な医師の増加ということになりますと、理屈はいろいろ何とでもつくものですから、反対をされる。いまは両局長とも、辺地対策としての地方の医科大学の新設について、自治大臣の構想になわ張りを越えて賛成されたことには非常に勇気を認めさしていただき、私は敬意を表しますが、ぜひ前向きに検討していただきたい。あるいは実際に私はこの問題を契機に、逆にそういう医師不足をなくし、あるいは合理的な解釈を越えた入試問題の売買という背景にある最大のものが、やはり医師の入学試験の異常なむずかしさ、あるいはまた非常に金がかかるというところに問題があるということを考えました場合に、災いを転じて幸いとするという意味からも、この際、医師の養成について思い切った改革が必要ではないか。その意味で村山大学学術局長がお答えになりました、一発試験で通ったらほとんど――医師の国家試験というのも、ある人に言わすと、看護婦の試験よりもむしろ甘いというのが実情だと、私も親戚に医者が多いわけでありますけれども、言える。これは大学局長がおられるだけに特に指摘したいわけですが、日本の大学というのが、やはり入学試験が、医学部だけじゃございませんが、非常にむずかしいけれども、入ってしまえば全くなまけて遊んでおっても、ほとんど無理をしてお願いをしてでも卒業してくれ、国立大学なんかでもその傾向が強い。外国の例もございますけれども、入学は広く門戸を開放して、勉強しない者あるいは大学卒業の資格を与えるにふさわしくない者は、やはり思い切って落としていくということも一つの方法ではないか。そういう方向での御見解の表明があったわけでございますけれども、ぜひそれを具体化する努力を、医学部だけでなしに各大学のあり方として検討していただく価値があるんじゃないかと私は思うわけでございます。
 それから、もう時間がなくて恐縮でございますが、高松刑事局長に、大阪刑務所のいわゆる抜き取り、従来のボールに試験用紙を丸めて詰めて外へ投げた、その報道が、今度は看守が介在しての贈収賄事件と変わってきたわけでございますが、そうするとボールで投げたというのは単なる架空の、あるいはうその供述であったというふうに解していいわけでございますか。
#87
○高松政府委員 四十三年、四十四年、四十五年、三度にわたってあるわけですが、ボールに入れて投げたという供述がそのまま変わらないものもございます。
#88
○岡沢委員 そういう事実もあるのですか。
#89
○高松政府委員 そういうのもございます。それからボール様の形のものにして投げたというのもございます。それから持ち出したというのもございます。いろいろその辺まだ関係者の供述は必ずしもみんな合致いたしませんけれども、いろいろな態様があるように思われます。
#90
○岡沢委員 法務省の辻刑事局長せっかく御出席になりましたので、先ほどお尋ねいたしました偽計業務妨害罪、先ほどの質問にも申し上げましたように、父兄あるいは特に仲介者等が犯罪として対象になり得るという御見解かどうか、法務省の見解を聞きます。
#91
○辻政府委員 本件の場合の仲介者、父兄あるいは学生について刑事上の責任があるかどうかといり問題でございますが、これは先ほど警察の高松刑事局長が御答弁いたしましたように、現在の段階では、事実関係が具体的な場合に個々に違っておるようにも思われるのでございます。事実関係が明らかになりませんと、これに対して業務妨害罪の成立になるかどうかということは、とうてい現段階ではお答えできないようなことになっております。
 一般的な抽象論、この問題から離れて考えました場合、この業務妨害罪というものを考えました場合に、この妨害されるべき業務というものが外形的に業務が妨害されるということ、これが本来の一つの犯罪の中心的な内容をなしておると思うのでありますが、それだけのものかどうかというようなむずかしい問題があろうかと思うのでございます。一般論といたしましては、私どもは十分研究いたしますし、また本件が最終の検察処分に至るというときには、具体的事案に応じて十分に研究をいたしたいと考えておるわけでございます。
#92
○岡沢委員 現に具体的な事案が起こり、取り調べが続行中でございますね。いまの刑事局長の御答弁、たとえば昭和八年の判例のように、業務の妨害は、業務の執行自体の妨害に限らない。いわゆる今度の場合は試験そのものは平穏に行なわれておるわけですね。試験の妨害があったわけじゃないですね。しかし、広義ではわれわれは業務妨害が成立すると思っていますが、あの判例のように、学校の経営を阻害する場合も適用し得る。全体の執行を、たとえば試験の作成から入学者の決定までの段階で不正行為があれば、やはりこれは業務妨害だという解釈に立たれるのか。業務の妨害というのをきわめて狭く解されて、試験業務そのもの、それ自体が平穏に行なわれたとしたら、この業務の執行の妨害は成り立たないという解釈なのか。その辺どちらをおとりになるか、お尋ねいたします。
#93
○辻政府委員 業務そのものが妨害されるとか、妨害されるような状態になっておるという場合、これはもうこの業務妨害罪が成立することはもちろんでございますけれども、業務そのものは外形的には行なわれてしまっておる、平穏に行なわれておるという場合でございますが、この場合について、ただいま岡沢委員の御指摘になりましたような非常に広い意味の業務の適正が阻害されたという点まで、この業務妨害罪が成立するかどうかにつきましては、相当疑問があろうかと思うのでございます。いまの点がまさしく私どもが現在検討しておる問題でございます。
#94
○岡沢委員 検討はわかりますけれども、やはり結論を出してもらわないと、実際に事件は調べられないんじゃないですか。
 最後に、大竹政務次官、矯正局長羽山さんにお尋ねをしたいと思います。
 先ほどの羽山局長の御答弁でも、たとえば刑務所の役人が事件に介在するというような場合なら、もう試験問題の漏洩というのは防ぎ切れないというお話がございました。ある意味では非常に心配な御答弁でもあるわけです。ここでやはりなぜこういうふうな事件が、先ほど指摘をいたしましたように刑務所関係で続発するのか。これが単に一件、二件であればわれわれは心配しないわけですが、試験問題の抜き取りだけでも三回あった。ここ数年来刑務所の汚職、不正というのがほんとうに耳目を聳動しておるわけなんですね。私はやはりこれは単にその人たちだけを責めるというのでは済まないような、やはりこの矯正関係の背景というものをこの際考えざるを得ない。
 一つは、小林法務大臣も前に監獄法はこの通常国会で必ず改正する、今度はお出しにもなっていない、約束も守ってもらえない。法令の不備、これはある意味では立法機関のわれわれも責任を問われているということにもなりますが、監獄法の改正自体が全くルーズに扱われてきて、実際には全く時代に合わないままの姿で放置されておる。われわれの怠慢がまたある意味では第一線の刑務官に対する怠慢の模範になっているといわれてもしかたがない点があろうと思います。あるいはよくいわれますように、刑務官になり手が少ない。仕事上の誇りがない、生きがいを感ずる人がなく、給与が悪い。いろいろ人の面での対策、やはりいい人を得なければ、あるいは誇りを持って、責任を持って仕事に従事できる担当者を確保できなければ、同じような問題が確かに起こると考えるのがむしろ当然になってくるわけです。これじゃたいへんなことでございますから、それに対する対策、あるいは刑務所の機構上の問題がございますと思いますが、これらについての矯正局長と政務次官の見解を聞いて、私の質問を終わります。
#95
○羽山政府委員 監獄法の改正問題は、受刑者の処遇、あるいは刑事被告人の処遇というものが中心でございまして、このたびのような事故というものに必ずしもつながるものではないように考えておるわけでございます。
 御質問の第二の点、給与その他の問題でございますが、これは毎回――毎回と申しては語弊がございますが、こういう事故を起こしますたびに給与その他の御質問をいただきまして、何と申しますか、御同情に対しまして甘えるようなことで、はなはだ御遠慮申し上げたいというような気があるのでございますが、お尋ねをいただきましたのであえてお答えを申し上げます。私どもは現在の刑務官の給与が、その職務と責任にかんがみまして、非常によくつり合いのとれたものであるというふうには考えていないわけでございます。この点は本年の予算編成に際しましても、大蔵省、人事院その他に相当のお願いをいたしまして、その結果、人事院におきましても大蔵省におきましても、私どもの事務当局といたしましては、相当めんどうを見ていただいたというようなところがある、これをまたさらに伸ばしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
 いま捜査中の案件でございますので、どうなるかわかりませんけれども、私どもは平素職員に対しまして、受刑者が出まして町でばったり会うとか、あるいは飲み屋で会うとかいうようなときに、そういう人からごちそうになるというようなこと、これがもう一生の破滅の始まりだぞということを強く指導いたしておるのでございます。施設の中では看守であり受刑者であるかもしらぬけれども、施設の外に出たらばわれわれは非常に弱いものだぞ、もし先生一ぱいどうですかというようなことになったときには逃げてこいということを申しまして、もし何らかの機会に誘惑に負けたというようなことがあれば、それを直ちに上司に報告してこいということを何回も平素申しておるのでございますが、どうもときどき誘惑に屈して遊興、まあ大体遊興が始まりでございますが、遊興と申しますか飲食物の提供、それからだんだんと現金を受け取るというような順序にいくようでございまして、これはまことに私どもの職員の指導監督が不行き届きという点もございますけれども、職員の自覚の欠如と申しますか、まことに遺憾千万でございます。さらにひとつ叱咤激励して責任感と自覚の向上につとめて、そしてこういうような事故を起こさないようにいたしてまいりたいと思うのでございます。
#96
○大竹政府委員 ただいまの、そしてまた先ほどの局長からの御答弁でもおわかりのとおり、もちろん法律の不備とか待遇の問題とか、いろいろ直接、間接の原因がないとは私ども考えておりませんけれども、やはり一番大きな問題は、いわゆる綱紀が厳粛に維持されてない、綱紀が弛緩しているという問題だろうと思うわけでございまして、これは現在刑務所のことが問題にはなっておりますけれども、やはり役所全体、国家公務員全体、地方公務員も含んで、いわゆる役人全体ということにも関係がある問題でございますので、もちろん法務省といたしましても、いまお話がございましたように、法律を整備し、規則を整備いたしまして、待遇を改めますとともに、綱紀の厳正な粛正維持ということに真剣に取り組んでいかなければならないのではないかという考えでおるわけでございます。大臣にもお話しいたしまして、その線に沿うてひとつ微力を尽くしたいと思うわけでございます。
#97
○岡沢委員 終わります。
#98
○田中(伊)委員長代理 次回は十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くことといたしまして、本日は、これにて散会をいたします。
    午後零時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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