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1970/01/22 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 本会議 第2号
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1970/01/22 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 本会議 第2号

#1
第065回国会 本会議 第2号
昭和四十六年一月二十二日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  昭和四十六年一月二十二日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 佐藤内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 愛知外務大臣の外交に関する演説
 福田大蔵大臣の財政に関する演説
 佐藤国務大臣の経済に関する演説
   午後一時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#3
○議長(船田中君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説、佐藤国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣佐藤榮作君。
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#4
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 私は、昭和三十九年秋以来政局を担当し、国運の進展と民生の向上に全力を尽くしてまいりましたが、新しい年を迎え、その任のいよいよ重きを痛感いたしております。ここに第六十五回国会が開かれるにあたり、内外の情勢を展望し、内閣の施策の基本について所信を申し述べたいと存じます。
 一九六〇年代においてわが国は、恵まれた国際環境の中にあって、国民の勤勉と努力により、飛躍的な経済発展と完全雇用の実現など歴史的な進歩を遂げることができました。また、国力の充実を背景に、平和外交を積極的に推進した結果、国際的地位も著しく向上いたしました。しかしながら、その間、世界にもまれな高密度社会が形成されたこともあって、物価、公害など、現代社会の諸問題も数多く発生いたしました。一九七〇年代は、このような困難な諸問題を克服し、平和と繁栄と福祉の基盤を一そう強固にし、経済、社会の均衡ある成長を実現できる時代になったと信じます。私はこの際、わが国の国力の基本に立ち戻って考え、あわせて将来の展望を行ないたいと思います。
 昨年十月に実施された国勢調査によりますと、わが国の総人口は沖繩を含め一億四百六十五万人で、ちょうど半世紀前、大正九年の調査に比べてほぼ二倍になったのであります。この人口動態から幾つかの特徴をつかむことによって、われわれは国家と民族の将来を予測し、これに対する適切な対応措置を講じていかなければならないと思うのであります。
 わが国の人口構成は、十五歳から六十四歳までのいわゆる生産年齢人口が全体の約七〇%を占め、過去のどの時代よりもその比率が高く、この点から見れば、一九七〇年代のわが国は、現在その長い歴史の中でも、最も力の充実した時期、いわば壮年期にあるということができるのであります。したがって、現代に生きるわれわれは、この旺盛な国民的エネルギーをさらに効果的に燃やし続けて一そうの進歩を遂げ、国家百年の磐石の基礎を確立しなければならないと信じます。(拍手)これこそ、この時代に生をうけた者の民族の将来に対する使命であり、責任であると考えるのであります。(拍手)
 一方わが国の経済は、内外の好環境に恵まれて、今日まで高度の成長を続けてまいりました。国民総生産の規模は、四十六年度八十四兆円台の大きさに達する見込みで、昭和五十年には百四十兆円前後、十年後にはさらに一回り大きくなる可能性がきわめて強いのであります。これを国民一人当たりの所得水準で見ますと、昭和三十五年には約四百ドル程度であったものが、昭和四十五年には千五百ドル以上になり、昭和五十年には二千七百ドル前後に達する見通しであります。
 このような人口と所得という二つの大きな要因を中心に考えてみれば、われわれはこの大きなエネルギーを前提として、これからの五年、十年の間に、国土利用の効率化をはかり、人間と自然、人間と環境との新しい調和をつくっていくことが可能であります。この過程で環境保全対策をはじめ重要な諸問題に取り組み、真に豊かな国民生活の実現をはかることが期待できるのであります。
 政府は一九五〇年代、六〇年代を通じて、東海道新幹線、名神高速道路、東名高速道路をはじめ、大都市周辺の高速道路網、地下鉄網の建設、バイパス道の整備、全国的な電話の自動即時化など、日本列島の主軸となり、発展の根幹となるべき交通・通信体系の整備を重点的かつ計画的に進めてまいりました。これらはすでに国民生活の中にとけ込み、経済活動に不可欠のものとなり、社会資本整備の影響の大きさがあらためて認識されているのであります。
 この影響はすでに今回の国勢調査にも分散集中の傾向として如実にあらわれております。過密の問題はなお深刻ではありますが、東京や大阪のような大都市に対する人口の流入がほぼ停滞し、その周辺でかなり広い範囲で人口が増加しております。また、地方の拠点都市及びその周辺でも非常な人口の伸びが見られ、過疎地域の人口の減り方が少なくなってきていることが注目されます。このことは日本国民にとって、生活を営む上で選択の幅が広がり、地域間の移動が比較的円滑に行なえるようになると同時に、適度に豊かな集中を実現できる時期が到来したことを示すものであります。
 国土総合開発の指針となる新全国総合開発計画は、全国土あまねく情報化の恩恵に浴し、健康な生活が営めるような生活環境にしようとするものであります。現在政府はこの構想に基づいて、各種社会資本の整備を最重点施策の一つとして年々巨額の財政資金を投入し、長期計画のもとに大規模プロジェクトの重点的整備を行なっております。
 まず、幹線道路につきましては、昭和六十年を目途として、七千六百キロの国土開発幹線自動車道を完成させる方針であります。このうち東北縦貫、中央、北陸、中国縦貫、九州縦貫の五道をはじめとした約千三百キロを今後四年間で完成させるとともに、他の路線についてもおおむね着工する予定であります。
 新幹線鉄道につきましては、山陽新幹線が四十七年春には岡山まで開通し、五十年には福岡まで全通いたします。(拍手)東北、上越、成田の三線については四十六年度に着工いたします。さらに北海道、本州の日本海側、四国、九州の南端に至る新幹線鉄道網についても、目下検討を進めております。その中には、青函トンネル、本州四国連絡架橋など世界的大工事も含まれており、これらが完成すれば中核都市間の時間距離は著しく短縮されることになります。また東京、大阪、名古屋など大都市交通の中核となる地下鉄網の建設については、現在の二百三十キロを逐次延長し、都市生活の向上をはかる方針であります。
 建設中の新東京国際空港は、四十六年度中に供用を開始するとともに、関西新国際空港についても、すみやかに着工するよう目下調査を進めております。(拍手)その他の空港及び港湾、通信網などについても、大規模な基盤整備を計画的に実施しつつあり、一般道路や地方公共団体による社会資本の整備と相まって、一九七〇年代は全国的なネットワークの形成を進め、わが国の国土総合開発が急速に進展することを期待しております。(拍手)
 また、国民福祉の向上と豊かな生活環境の確保のための必須の前提である住宅、生活環境施設及び交通安全施設の整備につきましては、九百五十万戸の住宅を建設する第二次住宅建設五カ年計画、総額二兆六千億円の第三次下水道整備五カ年計画及び交通安全五カ年計画など、思い切った長期計画を四十六年度から発足させることといたしました。(拍手)
 現在、全国の市街地は全国土のわずか一%程度にすぎませんが、交通体系や生活環境施設の整備など社会開発を一そう推進することによって、次の十年間には市街地面積を倍にも広げることができるばかりでなく、工業立地や農山漁村の条件も大幅に改善することができます。これによって適度の集中、公園緑地の確保、選択の幅の広い生活、自然との調和、さらには余暇の活用など、幾つかの目標を同時に実現することができると思うのであります。このような国土の総合開発こそ工業化のもたらす諸問題に対応する基本的な方策であると信じます。
 以上私は、経済発展の予測を踏まえつつ、日本列島の再編成を重点にした一九七〇年代におけるわが国の未来像について述べてまいりました。このような未来像のもとで、政府はきびしい現代社会の諸問題について、人間と自然、人間と環境の調和をはかりつつ、国民福祉の達成に全力を傾ける所存であります。(拍手)
 まず、教育の刷新と学術文化、科学技術の振興は、最も基本的な重要課題であります。物質的な豊かさを越え、精神的な豊かさが求められる新しい時代の転換期において、幼児教育から高等教育にわたる教育の内容や制度の根本的改革に着手すべきであると信じます。国民すべてがその能力を最大限に発揮できるよう多様性と弾力性を持ち、かつ、将来への発展性を持った教育制度の実現をはからなければなりません。また、すべての国民に生涯にわたって人間形成の機会を提供するため、学校教育と並んで家庭教育、社会教育の充実をはかることも肝要であります。政府は、近く行なわれる予定の中央教育審議会の答申をもとに、総合的、長期的な計画を樹立し、国民の期待にこたえ得る教育改革の推進をはかる方針であります。(拍手)
 わが国経済の現状は、長期にわたる景気上昇のあとを受けて、昨年秋ごろから景気の鎮静化が明瞭になってまいりました。政府としては景気の過熱を防ぐとともに、過度の落ち込みを避けるため、機動的かつ弾力的に財政金融政策の運用をはかり、着実な成長を達成してまいりたいと考えます。同時にこれを契機として、わが国経済を新経済社会発展計画の目ざす持続的安定成長ラインに定着させつつ、その質的充実につとめる所存であります。
 物価問題について政府は、四十六年度の消費者物価上昇率を五・五%と見込み、この線で押えるため総合的な施策を強力に推進いたします。特に消費者物価の場合、消費需要が大きいにもかかわらず生産の弾力性が少ない分野においては、物価の高騰を招きがちであります。ことに季節商品においてこの傾向が強くあらわれます。このため、特に生鮮食料品の安定供給を確保し、総合農政の推進、中小企業の構造改善などをはかって、流通の合理化を積極的に進めてまいります。また、主要な公共料金を据え置くとともに、輸入政策を活用し、競争条件を整備するなど、きめのこまかい消費者行政を行なって、一段と国民生活の安定、向上に努力いたします。同時に、将来にわたる物価安定のために、経済全体としての生産性の上昇と賃金、利潤などの上昇が均衡のとれた形であることが望ましいことは申すまでもありません。企業レベルでの価格、賃金の決定に際し、消費者の立場についても十分配慮が加えられることを期待したいと思います。
 総合農政の推進にあたっては、生産性の高い近代的な農業を育成するとともに、需要の動向と地域の特性に応じた農業生産を進めていくことが肝要であると考えます。政府は、農産物の需給関係を改善するため、農家、農業団体及び地方公共団体の協力のもとに、今後五カ年間に、転作を基本とした米の生産調整を進める方針であります。また、米の管理については、生産調整の効果があがるよう食糧管理の制度、運営の改善をはかり、政府手持ち過剰米の計画的な処理に着手することとしております。さらに、生産者米価の水準は、これを据え置く方針であります。また、消費者米価については、消費者の選択に応じた米の価格形成ができるよう物価統制令の適用を廃止することとしておりますが、流通体制を合理化し、価格の安定をはかる所存であります。
 社会の健全な発展と国民の福祉を確保するためには、社会保障体制の整備をはからなければならないことは申すまでもありません。このため、新たに児童の資質向上をはかることを目的として児童手当制度を創設することといたしました。また、恵まれない立場にある老人、母子家庭、心身障害者に対し福祉年金等の増額、社会福祉施設の整備などあたたかい援助の手を差し伸べ、あわせて老齢者に対する医療給付の改善と財政の長期安定をはかる医療保険制度の改革を実施することといたしました。(拍手)
 公害問題につきましては、昨年末の臨時国会で、公害対策基本法の改正をはじめ関係法令の整備を行ないましたが、今回環境庁を新設し、今後の最重点課題として取り組むことといたしました。これによって公害行政の一元化をはかり、豊かな生活環境の確保に全力を傾け、国土の保全をはかってまいります。また、公害を克服するための新しい技術の開発を行なって国際社会の進歩にも貢献したいと念願しております。
 行政改革について、政府は年来特に力を注いでまいりましたが、今後とも組織の簡素化、能率化をはかり、真に国民のための行政の実現を期してまいります。
 戦後の日本経済の繁栄と発展は、世界貿易が拡大と自由化を続けたという恵まれた環境の中で達成されたのであります。その間、商品、資本、技術その他あらゆる面で国際的接触と交流が増大しております。政府はこの一両年、輸入の自由化につとめてまいりましたが、残存輸入制限品目を本年九月末には四十以下に縮減して、西欧諸国に伍して遜色のない段階に達する予定であります。今後ともガット、OECDの場をはじめとして世界経済の拡大のための国際的努力に積極的に協力する所存であります。
 国際政治の面においてもこのような基本的な認識は変わることはありません。私は、日本が国際社会で生きる道は、国際主義に徹するほかはないと考えます。偏狭な自国中心主義を排して、国際社会の中で相互協力によって生きようというのは、過去の歴史においてわれわれが見出した教訓であります。戦後四分の一世紀を過ぎ、著しく国力の充実を見た今日、あらためて深く思いをいたすべきところと考えます。自由を守り、平和に徹し、国際協力を推進するというわが国外交の基本方針こそ、国際主義の真髄であります。(拍手)
 この基本方針のもと、わが国の安全と経済の繁栄を維持し、じみらに平和に生き抜いていくために、最も重要性を持つものは、米国との関係であります。日米関係の帰趨が国民生活に及ぼす影響は、他のいかなる国との関係に比べても、圧倒的に大きいことは、いまさら申すまでもありません。この事実は、内外情勢が流動する中にあっても、近い将来に変わる可能性は全く予見できないところであります。われわれは経済の面においても、近代的技術の面においても、世界の最高水準に到達することを大きな目標にしてまいりました。米国もまたより高度の発展を目ざして懸命の努力を重ねております。このような両国間の友好的競争関係こそが、今日、世界の平和と経済の拡大による民生の安定に大きく寄与しているのであります。
 最近日米間の重要な懸案となっている日米繊維交渉につきましても、自由経済と世界貿易の拡大といろ見地から、互恵互譲の精神に基づいて必ずや妥当な解決がもたらされることを確信しております。
 わが国と中国との関係は、歴史的にも地理的にも密接なつながりがあり、国益にも深くかかわると同時に、長期的な極東の平和と緊張緩和に関連する重要な問題であるだけに、特に慎重に取り組まなければなりません。
 中国問題の最も困難な点は、台北の中華民国政府と、北京の中華人民共和国政府が互いに全中国の正統政府たることを主張していることにあります。
 わが国は一九五二年、中華民国政府との間に日華平和条約を締結し、自来親善友好関係を厚くしております。
 他方、わが国としては中国大陸との交流を積極的に行ない、その関係を改善したいと念願しております。日中友好関係を安定したものとするための基本は、何といっても日中両民族の相互理解であります。政府としては長期的な見地から、わが国と中国大陸との間の不自然な状態を解消するために、中華人民共和国政府との間に、政府間の各種接触を行なう用意があり、また、民間貿易の拡大や記者交換の円滑化など交流の増大を強く望んでおります。同時に中華人民共和国政府の側からも、これに呼応する努力が行なわれることを期待している次第であります。
 政府は、北方領土の返還問題について機会あるごとに訴え続けておりますが、今後とも日本国民の正当な主張を展開し、一日も早くその実現をはかる決意であります。日ソ関係は近年ますます緊密の度合いを深め、貿易経済のみならず、国際政治の分野においても相提携し、国際間の緊張緩和と平和確保に協力し合っております。両国間の友好関係をより深めるためにも、話し合いによって北方領土問題を解決し、日ソ平和条約を締結しなければならないと信ずるものであります。(拍手)国民各位の力強い支持のもとに、忍耐強く折衝を続けてまいります。
 開発途上国に対する協力についても、国際主義の立場から、相手国の立場と希望に応じ、その自立と真の発展に役立つよう、積極的に援助を進めてまいりたいと存じます。
 さて、本年はいよいよ国民待望の沖繩返還協定の調印を行なう年であります。日米間の作業は順調に進んでおります。すでに国政参加は実現いたしましたが、明年のできるだけ早い機会に施政権の返還を実現し、沖繩同胞をあたたかく迎え入れることができるよう、政府は格段の努力を傾ける決意であります。(拍手)
 最後に私は、特に国民各位に訴えたいのであります。
 わが国のような情報化社会におきましては、変化のテンポが激しいだけに、われわれは日常生活の面においても、とかくいら立ちがちであります。平和な民主主義社会をなまぬるく感じて、性急に現状を変更しようとあせったり、中には、極端な行動に走ろうとする者さえあります。しかしながら私は、平和を維持し続けるということは、非常な根気と忍耐と努力が必要だと信ずるものであります。(拍手)わが国の国力から見ても、わが国が置かれている国際環境から考えても、われわれは壮年期に入った民族として、いまこそ内政、外交のあらゆる面にわたってじみちな努力を続けるべき時期であると確信いたします。(拍手)またわれわれは、国民の国を守る気概のもと、国力国情にふさわしい防衛力の整備を行なうとともに、国際関係はすべて平和的話し合いによってきめるという平和国家に徹する姿勢を堅持しております。(拍手)このことは人類の歴史における偉大な実験とさえ一声えるのであります。私は、平和の維持は国民の意思の力一つにかかっていると信ずるものであります。(拍手)国民各位があらためてその重要さを銘記され、新しい力をふるい起こしていただくことを切に念願してやみません。(拍手)
 以上、国民各位の心からなる御理解と御協力をお願いして、私の演説を終わります。(拍手)
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#5
○議長(船田中君) 外務大臣愛知揆一君。
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#6
○国務大臣(愛知揆一君) わが外交の基調と当面の重要課題について所信を申し述べます。
 まず、国際情勢の最近の推移を概観いたしますると、世界は徐々にではありますが、平和と安定を指向して動きつつある徴候がうかがわれます。いわゆる世界政治の多極化現象のもとで、国際関係において重要な比重を占める国々は、一方では相互に競争を続けながらも、他方では直接の対決を回避しつつ、相互間の懸案については話し合いによって解決をはかるとの姿勢を示しております。すなわち米ソ間では戦略兵器制限交渉が、またヨーロッパでは独ソ条約交渉をはじめとする一連の東西間交渉が、さらに中ソ間では国境問題を中心とする北京会談が継続されております。戦争以外の手段による大国間の勢力争いはなおきびしいものがあり、局地紛争の可能性は依然として排除し得ない状況であります。しかし中近東においては停戦が実現し、またベトナムにおいては和平追求への努力が続けられております。
 ひるがえって世界経済を見るに、国際的な経済交流はますます盛んとなりつつありますが、その反面、戦後の世界経済発展の基盤となった自由、無差別原則に基づく貿易体制は、保護主義や地域主義の台頭により、今日幾多の試練に直面しつつあります。また、南北間の経済的格差は、ややもすればさらに拡大する傾向すら見受けられるのであります。
 現代は人類史始まって以来最も変化の急激な時代ともいわれ、急速な経済発展、科学技術の進歩、情報化社会の進展等が個人や社会全体に与えつつある影響はきわめて深刻なものがあります。諸国家とも、これら現代社会に特有な国内的諸問題については、国際協力を通じてその解決をはかろうとする機運も生じつつあります。
 このように、世界はいまや一つの岐路に差しかかっており、新しい安定と秩序とを求めて、模索が続けられているとも申せるでありましょう。
 かくのごとく流動してやむことのない国際環境のもとで、わが外交の基本的指針はいかがあるべきでありましょうか。
 私は、それは引き続き平和外交の推進につとめることをおいてほかにないと信ずるものであります。(拍手)
 わが国の安全と繁栄を確保するためには、世界全体の平和と発展が不可欠の条件であります。イデオロギーや国情の差にかかわらず諸外国との間に調和ある友好関係の増進につとめ、国際協力を通じて平和の維持と相互の繁栄をはかり、かつ国際緊張の緩和に寄与することこそ、平和に徹するわが外交の基調であり、私がかねがね平和への戦いと呼ぶところのものであります。(拍手)
 しかしながら外交政策の策定にあたっては、わが国力が近年著しく充実し、わが国の国際的責任がますます増大しつつあることを特に自覚して行動する必要があると思われます。いまや、わが国は国際社会において、求める立場から与える立場へと移行しつつあります。わが国の決意と行動は世界の大勢に少なからざる影響を及ぼさないではおかないのであります。したがって、ひとりみずからの利益のみを追うことなく、諸外国との間に調和ある相互協力の関係を進めることによって相互の利益の増進をはかり、もってわが国の長期的かつ大局的な国益の伸長をはかることがますます重要となってきたと存ぜられるのであります。
 他面、国際社会の既存の秩序や均衡を急激にくずすようなことは避けるべきであって、わが国としてはじみちな外交を着実に積み重ねていかなければならないと信ずるのであります。
 次に、当面のわが外交の重要施策について御説明いたします。
 わが国の安全を確保し、わが国経済の繁栄を維持する上で、米国との関係は他のいかなる国との関係にも増して重要なものであることは、あらためて申すまでもないところであります。
 日米両国が政治、経済、文化等のあらゆる面において相互理解と信頼の関係に立つことは、単に日米両国おのおのの国益に資するのみならず、広く世界全体の平和と安定、人類の進歩と繁栄にとっても大きく寄与するものであると信じます。
 一昨年秋の日米首脳会談による共同声明により昭和四十七年中の返還が確定した沖繩については、本土復帰のための諸準備、並びに返還協定締結のための交渉が順調に進展しております。政府といたしましては、今後一そうその促進につとめ、おそくも本年夏ごろまでには返還協定に署名し、本年後半には国会の十分な御審議を得たい所存でありまして、もって全国民、わけても百万沖繩同胞の御期待にこたえたいと存じます。(拍手)
 日米間の繊維問題につきましては、政府としては、冷静に国益の存するところを判断し、かつ国会決議の趣旨を尊重しつつ、互譲の精神をもって円満解決をはかるべく交渉に当たっております。それぞれ世界の大きな経済単位である日米両国間の経済交流が盛んになればなるほど、一部に摩擦が生ずるのはむしろ避けがたい現象と思われます。しかしながら、これがため日米両国の協力と相互信頼という基調に影がさすようなことがあってはならないのであります。また日米両国が、世界経済の維持拡大に対しおのおのの責任を自覚し、虚心に相協力するならば、この種の問題は必ずや解決できるものと信ずるのであります。
 政府といたしましては、貿易経済合同委員会、防衛、環境保全等の諸問題に関する閣僚間の協議等を通じまして、日米両政府間の意思疎通を一そう緊密にするとともに、政治、経済、文化の各面における人的交流を促進し、各界、各層における相互理解と連携をさらに深めることが肝要と信ずる次第であります。
 中国問題は、わが国にとっても、また世界にとっても、一九七〇年代の重要課題であります。と同時に、中国問題がきわめて困難かつ錯綜した問題であることにも留意しなければなりません。
 政府といたしましては、中華民国政府、中華人民共和国政府の双方とも一つの中国の立場をとっていることを承知いたしておりますが、この種の問題は本来は両当事者間で、あくまで武力行使を避け、平和的な話し合いによって解決せらるべき筋合いのものと考えるのでありまして、話し合いの結果はこれを尊重いたす所存であります。
 政府としては、従来から中華民国政府と友好関係を維持しておりますが、中国大陸との関係については、相互の立場尊重と内政不干渉の原則のもとに、これを改善していくことが望ましいと考えており、そのため中華人民共和国政府との対話を持ちたいと存じます。日中間において、民間交流のみならず、政府間接触が実現すれば、相互の立場をよりよく理解し合うことが可能になると考えます。
 昨年秋の第二十五回国連総会における中国代表権問題の審議において、中華人民共和国政府代表を中国の唯一の合法代表と認め、国民政府を国連から追放するとのアルバニア決議案が初めて反対票を上回る賛成票を獲得いたしました。政府としては、このような結果をもたらした国際環境等について綿密な分析を行ない、今後の国際情勢の推移をも見きわめつつ、本問題について今後とるべき方策を慎重に検討する所存であります。
 朝鮮半島の情勢については、韓国が引き続いて着実な経済建設を進めていることは心強い次第であります。わが国としては、韓国の発展と国民福祉の向上のため今後ともできる限りの協力を続けるとともに、朝鮮半島における緊張が緩和の道をたどることを心からこいねがうものであります。
 インドシナにおいては、一日も早く和平が実現することを強く念願しており、このためわが国としてなし得る役割りがあれば、積極的にできる限りの努力をしてまいりたいと考えております。また、この地域の民生安定と経済開発のため、情勢が許す限り、できるだけの援助を推進してまいりたいと思います。
 アジア太平洋諸国の間には、近年幸いに地域協力の機運が高まりを見せており、これら諸国間の国際的協力のもとにこの地域に共通の問題を解決しようとする努力が払われております。政府は、このような努力を高く評価し、今後も積極的にこれに協力していきたいと考えます。
 政府は、隣国たるソ連との間に善隣友好の関係を維持発展せしめることが、ひとり日ソ双方の利益のみならず、極東の平和と安定にも資するとの考えから、今後ともあとう限り貿易、経済並びに文化などの各種の分野で、ソ連との関係を深めていく所存であります。
 しかしながら、わが国とソ連との間には北方領土問題が依然未解決のままに残され、これが両国関係を真に安定的な基礎の上に発展せしめる上に大きな障害となっていることは、まことに遺憾であります。政府といたしましては、日ソ間の相互理解を一そう深めるとともに、全国民の強い要望と支持のもとに、忍耐強くソ連政府との間に折衝を続け、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島の返還実現をはかることにより平和条約の締結を期したい所存であります。(拍手)
 ヨーロッパにつきましては、東西間の交渉や欧州共同体の拡大の機運に伴う新たな情勢の推移に注視するとともに、これら諸国との関係の一そうの緊密化をはかる所存であります。
 また中南米につきましても、地域統合の最近の動きにかんがみ同地域内諸国の今後の動向に注目してまいりたいと思います。
 中近東の情勢につきましては、昨年八月以来アラブ・イスラエル間に停戦が成立しており、現在は紛争の平和的解決達成のためにきわめて重要な段階にあると考えます。わが国としては、関係国間の話し合いによりこの地域に一日も早く公正かつ永続的な平和が確立されることを切に希望し、かつそのために国連の場等を通じて協力を惜しまないものであります。
 国際連合は昨年をもって創立二十五周年を迎えました。わが国は、今回、三たび国連の安全保障理事会に選出されましたが、この機会に一そうの努力を傾けて、世界平和の維持と紛争の平和的解決のために貢献する所存であります。
 また、成立後四半世紀を経た国連のあり方を、世界の現実に即応したものに改め、国連の機能の充実とその活動の一段の強化をはからなくてはならないと信ずるものであります。私は、昨年の国連総会において、国連のあり方の再検討の必要性を強調し、その平和維持活動の強化、経済社会面での活動の能率化、いわゆる敵国条項の削除等、具体的示唆をも行なったのであります。このような機運が世界各国の賛同を得て、一そうの盛り上がりを示すことを希望する次第であります。
 わが国は、一昨年以来ジュネーブの軍縮委員会にも参加しておりますが、同委員会や国連における軍縮討議等を通じて、国際の平和と安全に寄与することを念願しております。また、わが国は昨年二月核兵器不拡散条約に署名いたしましたが、今後ともあらゆる機会をとらえて核兵器国に対し核軍縮の誠実な履行を強く要請してまいる所存であります。
 軍縮や軍備管理の努力はもとよりのことながら、これと並んで世界各国の軍備競争がもたらすべき経済的、社会的影響に留意し、人的、物的資源の浪費を避けて各国の民生の向上に振り向ける問題に真剣に取り組むこともまた世界の平和に資するゆえんであると考えます。この点は、平和に徹することにより今日の高度経済成長を達成し得たわが国として、特に世界に対して訴えたいところであります。(拍手)
 南北問題は、先進国と開発途上国とが緊密なパートナーシップのもとに解決すべき現代の大きな課題であります。世界が一つになって繁栄に向かうことが、究極的には真の平和と安定をもたらすゆえんであります。また、経済面での協調なくして調和ある世界経済の発展はあり得ません。いかなる大国といえども国際社会から孤立した状態で長期的繁栄は期待できないのであります。
 特に、近年ますます経済力を充実しつつあるわが国が、他の先進諸国と歩調を合わせ、国力に見合った寄与を行なうことは当然の責務であり、かつまた長期的に見て、わが国自体の繁栄にもつながるものであります。
 わが国は、年々経済協力の拡大につとめ、一九六九年実績では、十二億六千万ドルと世界第四位の援助供与国の地位を占めるに至りました。
 わが国は、つとに対外経済協力について、国民総生産の一%目標の達成、ひもつき援助の廃止について態度を明らかにいたしましたが、さらに借款条件の緩和、無償援助の増大、技術協力の拡充など、経済援助の質的並びに量的な拡大をはかり、もって開発途上国の国づくりの意欲を援助してまいりたいと存じます。また、先進諸国の協力による多角的援助に積極的に参加するとともに、対象地域として、近隣アジア地域はもとより、南西アジア、中南米、中近東、アフリカ等にも一そうの援助を行なってまいりたいと考えます。
 貿易面における協力措置については、いわゆる片貿易の是正、開発輸入の促進をはかることが必要であります。この意味で、本年七月を目途に一般特恵関税が供与される運びとなっておりますことはきわめて有意義と考えます。
 さらに政府としては、本年九月には残存輸入制限を西欧諸国並みの水準に引き下げるとともに、資本自由化についても一段とこれを促進し、自由、無差別の原則に基づく世界貿易体制の維持、発展のために一そう寄与する決意であります。
 環境問題はいまや世界的な広がりを持つ重要な問題となってきております。わが国がさきの国会において一連の公害立法を成立させましたことは世界的にも誇るに足るものと考えます。この際、環境問題に関する国際協力については、OECD、国際連合等の活動を積極的に支持することはもとより、さらに進んで国際協力の実をあげるよう努力する所存であります。
 近年、わが国の国際交流が盛んとなるに伴い、海外の世論に対して、平和国家を志向するわが国についての正しい理解を得るための方策の必要がますます高まってまいりました。また、諸国間の文化交流は相互理解と友好関係を増進するものでありますので、政府としては、わが国における外国研究を一そう促進することと並んで、日本文化の紹介、特にアジア地域への教育協力、留学生受け入れ体制の整備など、知的及び人的交流のための諸施策を拡充していく所存であります。
 以上、私は、わが国外交が当面する諸課題と、これに対処する政府の施策について申し述べてまいりました。国際情勢は今日一つの転換期にあり、国力の比重を増しつつあるわが国の国際的責任は、ますます重きを加えてまいりました。このときにあたり、私は、世界の中の日本の地位を明確に認識し、冷静で柔軟な態度をもって平和への戦いのための、積極的な外交を進めていきたいと念願いたしております。国民各位の御理解と御支持を仰ぐ次第であります。(拍手)
#7
○議長(船田中君) 大蔵大臣福田赳夫君。
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#8
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十六年度予算の御審議をお願いするにあたりまして、その大綱を説明し、あわせて、今後における財政金融政策について、所信を申し述べたいと存じます。
 私は、昨年二月の国会におきまして、一九七〇年代は、経済の質的側面を重視すべき年代であり、安定成長路線のもとに、真の福祉の向上を目ざすべきであることを強調いたしました。そして、このような考え方に基づいて財政金融政策の運営に当たってまいったところであります。
 一九六〇年代におけるわが国経済の発展は、世界の奇跡といわれるほど目ざましいものでありました。特に、ここ数年間の成長は、超高度成長ともいうべき勢いであります。もし、このような勢いで成長を続けることができるとするならば、このすでに大きな日本経済と同じ規模の経済が、わずか五年の間に、さらにもう一つでき上がることになろうというのであります。
 しかし、もしこのような趨勢をたどった場合に、わが国の経済ははたしてどういう状態になるでありましょうか。原料や資源の確保は困難となり、交通施設や輸送設備も間に合わず、労働力の不足はさらに深刻となるでありましょう。また、物価の上昇や公害の発生など成長に伴うひずみ現象は、ますます激化するでありましょう。こうした経済成長を制約する諸条件が越えがたい隘路となりまして、やがては、日本経済の成長自体に行き詰まりと混乱を招くことは必定であります。
 私は、国家百年のために、このような事態は断じて避けなければならないと存じます。すなわち、このような事態を未然に防止し、日本経済がもろもろの制約条件を乗り越え、均衡のとれた息の長い発展を期するためには、景気の行き過ぎを是正し、経済発展を安定した軌道に乗せることが、何よりも肝要であると存じます。(拍手)
 一昨年九月から実施されました金融調整措置は、このような考え方に基づいてとられたものであります。その効果は実体経済面に徐々に浸透し、昨年秋以降景気は鎮静化してまいりました。
 私は、今後、経済の動きにきめこまかい配慮を払いながら、財政金融政策を機動的、弾力的に運営してまいりたいと存じます。
 すなわち、もし、再び過熱化の動きが生ずるようなことがありますれば、抑制の方策をとること、これはもちろんでありまするけれども、逆に、鎮静化が過度に進行するような事態に対しましては、財政金融政策の総力をあげて、その下ざさえの役割りを果たす所存であります。昭和四十六年度予算において、経済の動向に機動的に対処し得るよう万全の措置を講じたのも、かかる考え方からであります。
 かくして、私は、景気転換の過程におきまして、景気の過熱もなければ、大きな落ち込みもない、均衡のとれた安定成長を確保することができると信じておりますし、また、そのために全力を尽くす決意であります。
 昨年は、超高度成長から安定成長への転換の年でありました。
 そして本年こそは、この転換に伴う困難を乗り越えて、安定成長路線の定着をはかり、息の長い繁栄に向かって、新たなる第一歩を踏み出すべき重要な年といたしたいと存じておるのであります。(拍手)
 このような安定成長の基盤に立つとき、初めてわれわれの目ざす福祉社会の建設が可能となるのであります。
 福祉社会の建設にあたって第一に重要なことは、そのための環境条件の整備をはかることであります。この見地からは、特に、物価の安定と公害の防止が当面最も大きな課題であります。
 まず、物価の安定につきましては、卸売り物価は、昨年春以来落らついた推移を示してまいりました。
 現在、先進工業国の多くが景気停滞のさなかにおきまして、消費者物価のみならず、卸売り物価の上昇にも悩まされていることを考えまするときに、わが国における卸売り物価の安定は、ひときわ目立っているところであります。
 しかしながら、消費者物価が根強い上昇基調を続けておりますることは、これは大きな問題であります。
 政府といたしましては、総需要の水準を適度に保つとともに、生産、流通、消費の各面にわたって総合的な施策を一段と強化し、消費者物価の安定のために最大限の努力を傾けてまいりたいと存じます。
 また、物価の安定を確保するためには、賃金その他の所得の急激な上昇が物価に悪影響を及ぼすことのないよう、国民各位の理解と関係者の節度ある態度が強く望まれる次第であります。(拍手)
 次に、公害問題でありますが、狭い国土に一億の人口を擁し、他に比類のない高密度の経済活動を営んでいるわが国だけに、特に、世界に先がけて対処していかなければならない問題と考えます。人間と自然の新しい調和、美しい国土の保全を目ざしまして、政府も国民もその英知と努力を傾けるならば、私は、必ずやこの問題を解決することができると確信をいたしております。
 第二に重要なことは、福祉社会建設のための積極的な施策の展開であります。
 このためには、社会資本の整備、社会保障の充実に一段と努力するとともに、農林漁業、中小企業等の近代化を進めることによって、経済全体の均衡のとれた発展を確保し、経済成長の成果を国民の福祉に直接結びつけていくことが肝要であります。
 特に、社会資本の整備拡充は、国民生活を質的に向上させるための施策の根幹をなすものであります。すなわち、これまでの急速な経済成長により、所得の水準は大幅に上昇したにもかかわらず、ストックの充実が必ずしも十分とはいえないのであります。今後は、公私両部門にわたる蓄積の充実に一そう配意してまいらなければなりません。
 このため、公共部門におきましては、長期的な観点から、生活関連施設、交通施設をはじめとする社会資本の計画的整備を進め、民間部門におきましては、貯蓄の奨励や財産形成の促進等により、個人資産の蓄積を一そう推進することが必要と考えます。
 わが国経済の目ざましい発展の結果、国際社会におけるわが国の地位は、今日急速に高まってまいり、これに伴って、世界に対するわが国の責務もますます大きいものとなってまいりました。
 先進工業国の一員として、わが国が国際社会の中で果たすべき役割りは、国際協調のもとで、世界経済の自由な交流を一そう推進するとともに、開発途上国に対する経済協力を促進することにより、世界の平和と繁栄のために積極的に寄与してまいることと存じます。このことは同時に、わが国経済の一そうの発展のためにも必要不可欠なのであります。
 このような観点から、まず貿易・資本の自由化をさらに促進していかなければなりません。すでに、残存輸入制限は八十品目にまで減少してまいりましたが、これをさらに本年九月末には四十品目に縮減する予定であります。また、資本の自由化につきましては、昨年九月に第三次自由化を行ない、積極的に自由化業種の拡大につとめましたが、さらに本年秋、第四次自由化を実施し、一段と自由化を徹底することといたしております。
 次に、経済援助や特恵関税の供与などを通じて、開発途上国に対する経済協力につとめることが、必要と存じます。経済援助につきましては、開発途上国の自助努力を積極的に支援していくという方針のもとに、昭和五十年までに、国民総生産の一%という目標を達成するように努力しておるのであります。特恵関税につきましては、本年七月を目途にこれを実施する予定であります。
 また、国際金融面におきましても、国際通貨体制の安定を確保していくために、今後とも積極的な役割りをになっていく所存であります。
 このような国際経済との結びつきの上に立ちまして、金融政策におきましては、金利機能の活用、競争原理の導入、預金保険制度の創設等により金融の効率化をはかるとともに、投資者保護の徹底等資本市場の育成整備を強力に進め、わが国経済の体質強化に資するようつとめたいと存じます。
 また、経済情勢の推移に即応して、財政政策との密接な連携のもとに、金融による景気調整機能の適切な発揮につとめてまいる所存であります。
 次に、昭和四十六年度予算について、説明いたします。
 その特色は、次の諸点であります。
 第一に、経済の動向に即応した適切な財政運営を行なうよう配慮し、機動性を備えた中立的性格のいわゆる中立機動型予算としたことであります。
 すなわち、わが国経済の安定的成長を確保するため、財政の規模を適正なものとするとともに、公債及び政府保証債の発行額は、それぞれ前年度当初予定額と同額といたしました。
 さらに、経済情勢の推移に応じて、機動的に財政運営を行なうため、政府保証債の発行限度等を弾力化するとともに、使途を特定しない国庫債務負担行為の限度額を増額するなどの配慮を行なっておるのであります。また、不測の財政需要に円滑に対処するため、一般会計予備費の増額をはかったところであります。
 第二は、租税負担の軽減合理化をはかったことであります。
 国民の租税負担の軽減をはかるため、所得税、相続税及び住民税の減税を行なうことといたしました。これによる減税額は、平年度約二千八百億円と見込まれます。
 また、経済社会情勢の推移に即応して、公害防止、資源開発等のための税制上の諸施策を講ずるとともに、自動車について新税を創設することといたしております。
 第三に、予算及び財政投融資計画を通じ、財源の適正かつ効率的配分につとめ、国民生活の充実向上をはかるための諸施策を着実に推進したことであります。
 特に、現下の重要な課題とされておる物価の安定と公害対策の推進につきましては、格段の配慮を行ないました。
 かくして、一般会計予算の総額は、歳入歳出とも九兆四千百四十三億円となり、昭和四十五年度当初予算に対し、一兆四千六百四十五億円、一八・四%の増加と相なっております。
 財政投融資計画の総額は、四兆二千八百四億円でありまして、昭和四十五年度当初計画に対し、七千五億円、一九・六パーセントの増加となっております。
 以下、政府が特に重点を置いた施策について、その概要を申し述べます。
 第一に、税制の改正であります。
 昭和四十六年度の税制改正におきましては、中小所得者の所得税負担の軽減を主眼として、給与所得控除を中心に諸控除を引き上げるとともに、新たに青色事業主特別経費準備金制度を設けることとし、平年度約二千億円の所得税減税を実施することといたしました。この結果、たとえば、給与所得者の課税最低限は、平年分で夫婦と子二人の場合九十八万五千円に、夫婦と子三人の場合百十五万四千円に、それぞれ引き上げられることに相なります。
 このほか、現下の政策的諸要請に応じ、公害防止、海外投資、資源の開発、企業体質の強化、貯蓄の奨励、住宅対策等の措置を講ずるとともに、輸出振興税制の見直しを行ない、あわせて交際費課税を強化するなど、租税特別措置について当面の経済社会情勢の推移に即応するよう格段の配慮を加えたところであります。
 また、来年度におきましては、道路その他の社会資本の充実の要請を考慮して、自動車の使用者に新たに応分の負担を求めることとし、自動車重量税を創設することといたしております。
 なお、地方税につきましても、住民税の課税最低限の引き上げを行なうとともに、事業税、電気ガス税の軽減を行なう一方、市街化区域内の農地の固定資産税の負担について合理化をはかる等の措置を講ずることといたしております。
 第二は、社会資本の整備と公害対策の拡充強化であります。
 わが国経済の均衡ある発展と国民生活の質的な向上を期するため、各種社会資本の整備につき格段の配慮を行ないました。すなわち、住宅及び下水道、環境衛生施設等の生活環境施設の大幅な充実、道路、港湾、空港その他の交通施設整備の拡充をはかるとともに、治山治水等の国土保全のための施策を一そう推進することといたしております。
 また、住宅建設並びに下水道、港湾、空港及び交通安全施設の整備につきましては、それぞれ昭和四十六年度を初年度とする新規五カ年計画を策定することといたしております。
 公害対策につきましては、その推進をはかるため、新たに環境庁を設置することといたしますとともに、下水道等の生活環境施設の大幅な充実、水質保全対策、大気汚染防止対策等の強化、公害防止のための研究調査の充実等、各面にわたり特段の配慮を加えております。また、関税面におきましても、新たに低硫黄原油に対する関税の軽減を行なうとともに、重油脱硫に対する関税の軽減率を大幅に拡大することといたしました。さらにまた、財政投融資計画及び税制におきましても、特に重点を置いて、公害対策の拡充強化をはかっているところであります。
 第三は、物価の安定のための諸施策の充実であります。
 物価対策につきましては、年々その充実をはかってまいりましたが、昭和四十六年度におきましても、低生産性部門の生産性の向上、流通機構の整備、労働力の流動化の促進、競争条件の整備、生活必需物資等の安定的供給、住宅及び地価対策等の各般の施策を一段と充実し、物価の安定を期してまいる所存であります。また、関税引き下げの物価に及ぼす影響を考え、ケネディラウンドによる関税一括引き下げの繰り上げ実施をはじめ、生活関連物資の関税の引き下げに特段の配慮を行なっております。
 なお、公共料金につきましては、厳にこれを抑制する方針のもとに、郵便料金、電報料の改定にあたりましても、必要最小限にとどめるよう、料金改定の幅、実施の時期等について十分配慮をいたしておるのであります。(拍手)
 第四は、社会保障の充実であります。
 わが国の社会保障制度の整備上、かねてから懸案とされておりました児童手当制度は、昭和四十七年一月から実施されることに相なりました。
 また、社会福祉施設の整備を一段と充実するとともに、生活扶助基準の引き上げ、児童、母子、老人、身体障害者等の福祉対策の充実等各般の施策にきめこまかく配慮するほか、厚生年金、福祉年金の改善を行なうことといたしております。
 なお、健康保険財政の健全化に資するため、所要の改善合理化の措置を講ずることといたしております。
 第五は、農林漁業及び中小企業の近代化であります。
 農業につきましては、米の生産が需要を大幅に上回り、政府手持ち過剰米が七百万トンにものぼっている状況にかんがみ、米の生産調整対策を講ずるとともに、農産物需要の動向に即応した農政の推進をはかることといたしております。すなわち、昭和四十六年産米につきましては、政府買い入れ数量を需給上必要な五百八十万トンにとどめることとし、このため、休耕、転作等生産調整の態様に応じた奨励措置を講じ、二百三十万トンの減産を期することといたしておるのであります。また、引き続き生産者米価の水準を据え置く方針とするほか、政府手持ち過剰米の計画的な処理に着手することといたしました。さらに、稲作から他作物への転換の促進、水田の他用途への転用の推進につきましても、所要の配慮を行なっておるところであります。
 他方、需要に即応した農林漁業の振興とその生産性の向上をはかるため、農林漁業の基盤整備、構造改善の推進、農林漁業金融の充実、流通改善の推進等々各般の施策につき配慮いたしておるのであります。
 中小企業対策につきましては、中小企業振興事業団、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等の融資規模の拡充を中心に、その充実をはかっております。
 第六は、文教及び科学技術の振興であります。
 文教につきましては、その充実向上に特に配意したところであります。すなわち、文教施設の整備、私学教育の振興、特殊教育の充実、社会教育施設の整備等各般の施策を推進するとともに、新たに、教員の勤務の特殊性に即し、給与制度を改善し、また、児童生徒急増市町村の義務教育施設を整備するため、特別の助成を行なうことといたしておるのであります。
 科学技術の振興につきましては、動力炉開発、宇宙開発、海洋開発等を中心に、その拡充をはかっております。
 第七は、経済協力の推進と貿易の振興であります。
 このため、日本輸出入銀行及び海外経済協力基金の事業規模の拡大、技術協力の強化、特恵関税の供与等の措置を講ずることといたしております。
 第八は、沖繩復帰対策の推進であります。
 明年に控えた沖繩の本土復帰を円滑に進めるため、沖繩と本土との一体化をさらに強力に推進し、沖繩における住民福祉の向上、産業経済の振興、各種社会資本の整備等各般にわたる施策を大幅に拡充することといたしました。
 第九は、防衛力の整備であります。
 昭和四十六年度を最終年度とする第三次防衛力整備計画の目標をおおむね達成することを目途といたしまして、他の諸施策との均衡を勘案配慮しつつ、防衛力の整備をはかることといたしております。
 最後に、昭和四十六年度の地方財政は、引き続き、地方税、地方交付税等の歳入が相当増加すると見込まれるのでありますが、国と同一の基調により重点主義に徹し、適切な財政運営を行なうとともに、将来に備え、その健全化を一そう推進するよう期待するものであります。
 なお、この際、昭和四十五年度補正予算について、一言申し述べます。
 今回、公務員給与の改善、過剰米の処理等に伴う食糧管理特別会計繰り入れの追加、地方交付税交付金の増額等を内容とする補正予算を提出いたしました。
 これらに要する財源としては、昭和四十五年度における税の自然増収等をもって充てるほか、既定経費の節減及び予備費の減額を行なうことといたしました。また、この際、昭和四十五年度における公債発行額を五百億円減額することといたしております。
 以上の結果、この補正により追加される額は、二千六百三十三億円であり、昭和四十五年度予算は、歳入歳出とも、それぞれ八兆二千百三十億円と相なるのであります。
 以上、予算の大綱について説明いたしたところであります。
 戦後四分の一世紀の間、わが国経済は国民の勤勉と努力によって目ざましい成長をなし遂げてまいりました。完全雇用はすでに達成されたのであります。国際収支の基調にも不安はなくなってまいったのであります。しかし、内には、物価上昇、公害、交通難、過密過疎問題など、成長に伴うひずみが表面化しております。外には、各国とも、成長鈍化の中で激しい物価の上昇に悩まされておる状況であります。世界経済の今後の動向には注視を怠ることはできないのであります。
 このような内外情勢のもとにおきまして、財政金融政策の運営は、慎重のうちにも機動的かつ弾力的でなければならないと信ずるのであります。私は、全力を尽くして、日本経済の中に安定成長路線を確立し、定着させたいと存じます。そして、その上に立って、希望と活力に満ちた福祉社会を実現するとともに、世界平和と繁栄に寄与貢献し、国際社会で尊敬され期待されるようなりっぱな日本国の建設に邁進する決意であります。(拍手)
 国民各位の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
#9
○議長(船田中君) 国務大臣佐藤一郎君。
    〔国務大臣佐藤一郎君登壇〕
#10
○国務大臣(佐藤一郎君) 私は、当面する経済情勢とこれに対処する所信を明らかにし、国民各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
 わが国経済の最近の動向を見ますると、昨年夏ごろから景気は次第に落ち着きの方向に向かい、昨年十月には公定歩合の引き下げが行なわれましたが、需要の停滞と供給力の増大を背景に、製品在庫の増加、設備投資の繰り延べが進む中で、景気はこのところ鎮静化の度を強めております。
 物価面では、卸売り物価が工業製品を中心とする国内需要供給の緩和に、海外市況の軟化も加わりまして、安定基調を取り戻してまいりましたが、消費者物価は生鮮食料品、中小企業製品、サービス料金を中心に、依然騰勢を強めております。
 他方、国際収支面では、インフレ基調下の世界貿易の拡大を背景として、輸出入とも高水準にあり、国際収支は、かなりの黒字基調で推移しております。
 目を世界経済の動向に転じますると、一九七〇年は世界経済にとって景気停滞と物価上昇が併存するという、いわゆるスタグフレーションとの戦いの一年であったといえましょう。アメリカ経済は、一九七〇年において、実質成長率がほぼゼロに対し、総合物価指数は五%をこえる上昇が見込まれております。従来、欧米諸国において、最も安定した経済発展を遂げてまいりました西ドイツでも、実質成長率四・五%に対し、総合物価指数は七%の上昇が見込まれるなど、各国ともきわめてきびしい現実に直面していると申せましょう。
 わが国経済が当面しております問題は、欧米のようなスタグフレーションではありません。むしろ持続的成長と、均衡ある経済発展をはかるため、経済成長を従来の著しく高い成長から、物価安定と成長が両立し得るような、安定成長路線に移行することであり、その過程で生ずる問題にいかに対処するかであります。
 このようなわが国経済の現状について思いをいたしますとき、急激に変化する内外の経済情勢に適応するためには、いまやわが国経済が大きな転換期に差しかかっており、政策運営についての発想の転換が必要であることを痛感するものであります。
 まず第一に、国民総生産が二千億ドルをこえる規模に達しているわが国におきましては、成長のスピードだけが問題ではなく、成長そのものの軌道の修正が必要となってきているということであります。
 第二に、とかく名目的に所得が増大すればよいという、所得至上主義的な考え方から脱却することであります。これまでは、かなりの消費者物価の上昇も、所得上昇が早いから許されるという通念もあったと思われるのでありますが、所得上昇が早過ぎるということに、物価上昇の一因があった点に留意せねばなりません。
 第三に、賃金、所得の面では平準化が進み、いわゆる二重構造の解消が進みながら、生産性の面では、工業と農業、大企業と中小企業の間に、なお著しい格差が存在し、資源の適正配分がゆがめられている現状を是正する必要があるということであります。
 第四に、これまでの成長の過程で、とかくおくれがちであった社会開発を推進するために、社会資本の充実、公共財部門の拡大を可能にするような資源配分の道を積極的に切り開いていくことであります。
 第五に、国際経済のインフレ化が進行している現在、国際収支にゆとりが増大したわが国において、経済の安定成長をはかるためには、輸出は国内需給の動向に十分配慮して行なうとともに、輸入を積極的に進めることにより、資源の内外配分の均衡を保持することが必要であります。
 以上のような基本的、長期的方向を踏まえつつ、四十六年度の経済運営にあたりましては、景気の過度の落ち込みを避けつつ、わが国経済を、新経済社会発展計画の線に沿って、安定成長路線に乗せることが当面の課題であります。
 このため、財政金融政策を、内外の景気動向に即応し、弾力的かつ機動的に運用することとし、極力景気変動の幅を小さくし、四十六年度の経済は、これを実質一〇・一%程度の安定成長にいたしたいと存じます。
 次に、当面する最重要課題である物価安定について申し述べます。
 最近の消費者物価は、景気鎮静下にありながら、上昇傾向を一そう強めており、この強い基調は、今後においてもなお持続することが懸念されます。
 物価の上昇は、先にも申し上げましたように、先進諸国がひとしく悩むところであります。そして、各国においても、可能な限りあらゆる政策手段を動員して、このインフレを克服すべく努力いたしております。
 これは一言でいえば、完全雇用の維持を重大な政策目標とする経済社会において、経済成長と物価安定を同時に達成することが、いかに困難であるかを示すものであります。わが国も総力をあげて物価安定に取り組まない限り、諸外国と同様、景気停滞下における物価高という、最も憂慮すべき事態に立ち至ることが危惧されるのであります。
 政府といたしましては、各般の物価安定政策をさらに充実させ、四十六年度の消費者物価上昇率を、ぜひとも五・五%以内にとどめ、現在の強い物価上昇基調を払拭したいと考えます。国民各層におかれても、その消費者としての立場をさらに物価安定に反映させるよう、格段の御協力をお願いする次第であります。
 当面する物価安定対策としては、まず、消費者物価高騰の大きな要因をなしておる生鮮食料品の著しい値上がりに対し、抜本的対策を講ずる必要があります。
 このためには、生鮮食料品について、国民の消費需要を的確に把握し、これにこたえる長期安定的な生産体制を確立するとともに、消費者の立場に配意しつつ、流通機構の改善を意欲的に進めることが、何にも増して急務であります。
 さらに、政府が率先して物価安定のための強い決意を示し、現在の全般的物価上昇ムードを断ち切るため、公共料金についてきびしい抑制方針をとってまいります。なお、消費者米価につきましては、消費者の選択に応じた米の価格形成ができるよう、物価統制令の適用を廃止する方針でありますが、米穀販売業者の新規参入規制の緩和等、米穀の需給の実情が販売面に十分反映し得るよう、流通面の合理化を進め、消費者価格の安定をはかってまいる所存であります。
 また、近年値上がりの著しい地価につきましては、公共宅地開発及び民間宅地造成事業に対する財政措置を飛躍的に拡充しており、市街化区域における農地の保有課税の適正化等の施策の推進と相まって、その安定をはかりたいと考えております。
 物価安定との関連で留意すべきことに、最近における物価の上昇と賃金の関係があります。ここ数年間、長期にわたる好況、企業収益の好調、労働需給の逼迫という事情を背景に、賃金の加速度的な上昇が行なわれてまいりました。
 しかしながら、最近のように景気が鎮静化する中で、これまでのような大企業を中心とする賃金の上昇が、今後も引き続いて生ずるとすれば、賃金コストの上昇とその価格への転嫁という形で、物価情勢はさらに深刻化するおそれが強いのであります。今後の賃金や価格の決定に際しましては、労使とも、国民経済的観点から節度ある行動をとられるとともに、それによる価格形成が消費者の利益を十分配慮して行なわれるよう、強く期待する次第であります。(拍手)
 この意味で、各種の競争制限的要素を排除し、価格が競争機能を通じて、適正に形成されることが必要であります。このため、独占禁止政策の強化、価格支持政策、事業認可制の再検討等の施策を引き続いて実行してまいります。
 物価安定のための対策としては、輸入政策の重要性を強調したいと思います。このため国内物価との関連を十分考慮するとともに、国内体制を整備しつつ、輸入の自由化を積極的に推進する必要があります。特に食料品等の国民生活に密接な関連のある物資の輸入につきましては、国内供給体制の現状からみて、思い切った施策の展開が必要であります。この意味で、残存輸入制限物資についても、輸入割り当ての弾力化を進め、また、円滑な輸入を可能ならしめるよう、長期輸入契約の促進等、適切な措置を講ずるとともに、さらに、関税率につきましても、物価安定の見地から、極力その引き下げを促進してまいる必要があります。
 しかしながら、物価問題の根本的な解決をはかるためには、わが国経済の構造問題に積極的に対処し、長期的な視野から、たゆまぬ努力を続けねばなりません。
 わが国における消費者物価の上昇や、卸売り物価と消費者物価の乖離という現象が、経済の二重構造、生産性格差に起因していることは、つとに指摘されているところであります。
 したがって、農業、中小企業、流通部門などの低生産性部門の近代化と構造改善のため、さらに投資を拡大するなど、格段の政策努力を払わねばなりません。その場合、すでに硬直化した制度慣行が、とかく資源配分をゆがめがちであることに留意し、勇気をもってこれを改善していくことが必要であります。
 次に、環境保全と国土開発の問題について申し述べます。
 わが国経済は、戦後二十五年間一貫して高い経済成長を遂げ、経済規模は飛躍的に拡大しました。しかしながら、その過程で、国土利用は太平洋ベルト地帯に著しく片寄り、過密過疎問題の激化、公害問題の深刻化などの現象を生じております。そしてこのままに推移するならば、環境の破壊が全国土に広がり、祖先から受け継いだ美しい自然や歴史的遺産が失われることも憂慮されるのであります。
 これは、あまりにも急速な成長と急激な都市化によるところが大きいのでありますが、もとより経済成長の単なる抑制だけでは問題の解決にはならないのであります。適度な経済成長のもとで、社会資本の充実等資源配分の適正化をはかり、環境改善を進めていくことが今後の大きな課題であります。
 いまや政府といたしましても、公害対策の充実強化、生活関連社会資本の整備等、真に豊かな国民生活を実現するための努力を、着々と進めているところであります。
 環境問題は、世界的規模においても問題となっており、このための国際的協力も必要であります。環境保全という人類共通の課題を解決するため、諸外国との情報交換、共同研究など国際的な協力を進めてまいりたいと考えております。
 環境問題は、経済成長や産業構造、技術体系などと深い関連を持つものでありますが、経済社会の高密度化が急速に進行しているわが国におきましては、国土利用のあり方や産業配置、都市整備など、国土開発的な観点からの対応が基本的に重要であります。
 この意味で、国土利用の抜本的再編成によって、豊かな環境の創造を目ざした、新全国総合開発計画の目標の達成は、今日ますます重要な課題であります。この計画に沿って、日本列島に北海道から九州まで縦貫する交通、通信の主軸の形成を促進し、三十七万平方キロの国土の全域に開発可能性を拡大して、地域の特性に応じた、大規模な工業基地、畜産基地の建設、レクリエーション地区の整備を進めるなど、長期的な観点から、新時代にふさわしい総合的な国土開発に取り組んでまいりたいと考えます。
 なお、現在、道路、鉄道、海運及び航空を一体とした総合的な交通対策を樹立することが急務となっておりますが、長期的視野のもとに、わが国将来の交通体系のあり方について、鋭意検討を進める所存でございます。
 次に、わが国経済の当面する課題の一つである国際化への対応について申し述べます。
 経済の拡大に伴う国際的な影響力の増大とともに、今後の経済政策は、世界経済の秩序ある発展にも十分留意せざるを得なくなっております。そして、世界経済の発展と調和したわが国経済の発展をはかるためには、自由貿易の原則と国際協調の理念に立って、対外経済政策を積極的に展開することが不可欠であります。
 このため、秩序ある輸出の促進、輸入の積極化という考え方に立って、輸出入の均衡のとれた拡大をはかる必要があり、また、世界経済的視点に立って、内外資源配分の適正化をはからなければぼなりません。
 現在進められている残存輸入制限の撤廃、関税率の引き下げなどは、まさにこのような方向に沿ったものであります。さらに本年秋には、第四次資本自由化の実施が予定されております。
 ゆとりのある国際収支のもとで、発展途上国に対する経済協力を強化することも、わが国が国際社会において果たすべき重要な役割りであります。
 わが国の経済協力額は、経済力の充実に対応して近年著しく増大し、一九六九年には国民総生産の〇・七六%に達し、アメリカ、西ドイツ、フランスと並んで、世界四大援助国の一つとなっております。政府といたしましては、一九七五年までに、経済援助額を国民総生産の一%とするよう努力する方針のもとに援助額を増大し、また、援助条件の緩和に一段と努力を払ってまいる所存であります。
 さらに、本年七月を目途として、発展途上国に対する特恵関税の供与に踏み切る等、諸般の施策を鋭意遂行してまいります。
 以上、わが国経済の当面する諸情勢について、所信を申し述べたのでありますが、経済政策の目標が、国民全体にとって明るい豊かな社会を実現することにあることは申すまでもありません。
 政府といたしましては、国民生活優先の原則に立って、じみちに、しかも勇断をもって、政策運営に当たり、激動する一九七〇年代を、国民福祉向上の時代とすることを期したいと考えます。
 国民各位の一そうの御理解と御協力を切望する次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#11
○加藤六月君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来たる二十五日午後一時より本会議を開きこれを行なうこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#12
○議長(船田中君) 加藤六月君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時四十六分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
        運 輸 大 臣橋本登美三郎君
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 西田 信一君
        国 務 大 臣 保利  茂君
        国 務 大 臣 山中 貞則君
ソース: 国立国会図書館
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