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1970/01/25 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 本会議 第3号
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1970/01/25 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 本会議 第3号

#1
第065回国会 本会議 第3号
昭和四十六年一月二十五日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和四十六年一月二十五日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後一時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。成田知巳君。
    〔成田知巳君登壇〕
#4
○成田知巳君 私は、日本社会党を代表して、総理の施政方針演説に対し、わが党の立場と考え方を明らかにしながら、内外の諸問題について総理の見解をお尋ねしたいと存じます。(拍手)総理の率直、明快な責任ある御答弁をお願いするものであります。
 佐藤内閣は、憲政史上一番長続きした内閣となりましたが、山高きがゆえにとうとからずのたとえのとおり、内閣も長続きしたからといっても決してとうといとは言えないと思います。(拍手)総理が真剣に取り組むと何度も公約されました政界の浄化、政治資金の規制は、ついに今日まで実行に移されず、国民の期待を大きく裏切っております。総理は、池田内閣の高度経済成長政策を人間不在の政治ときめつけられましたが、佐藤内閣六年の施政は、安定成長どころか超高度経済成長をもたらし、日本列島をおおい尽くす公害、とめどもない物価の上昇、農村の荒廃、続出する中小企業の倒産など、人間不在の政治拡大の歴史そのものであります。総理は、施政方針演説で、一年あまりで雲散霧消したあの未来学を思わせるようにバラ色の日本を描いてみせましたが、国民が総理の口から直接お聞きしたがったのは、そのような甘い非科学的な日本の未来像ではなくて、差し迫った内外の諸問題に対する具体的な解決策であったと思うのであります。(拍手)過去六年間にわたって政権を担当してきたあなたは、まず、数々の公約がなぜ実行できなかったのか、その理由を明らかにして、率直に国民にわびるという謙虚な態度をとるべきでありました。そのような自戒と反省の上に立って初めて、あなたはあなたなりに内容のある施政方針演説ができたのではなかったでしょうか。質問にあたり、まず総理の心境をお尋ねしたいと存じます。(拍手)
 総理もすでに御承知のように、最近報道機関は一斉に、昭和四十六年度の国の公害対策費は一般会計で九百二十三億円、東京都のそれは一千二百八十六億円であることを伝えております。東京都の公害対策費のうちから国の財政投融資に当たる貸し付け融資額を差っ引いても、政府のそれを実に三百四十七億円も上回っておるのであります。国民は、この数字は逆ではないかと一時わが目と耳を疑ったのでありますが、事実は報道のとおりであります。言うまでもありませんが、予算は政治方針の金額的表現であります。この二つの数字は、福祉なくして成長なしをスローガンにする佐藤内閣が、公害対策にきわめて消極的であり、美濃部都知事が、いかに生活環境の改善と都民の暮らしと健康を守るために積極的努力を払っているかを、国民の前に余すところなく明らかにしたものであります。(拍手)
 一般会計予算は九年ぶりの大幅増額を示し、特に防衛関係費はことしより一千十四億円もふえ、伸び率でも自衛隊創設以来の最高を示しております。防衛費の増額分だけで公害対策予算全体を大きく上回っておるのであります。六千七百九億円の一般会計予算に三千七百億に達する国庫債務負担行為と継続費を加えますと、実質上一兆円をこえる防衛予算となっております。まさに防衛予算ひとりまかり通るというのが今回の予算案であります。(拍手)
 国民生活に対する政府責任はすべてずり落とされて、高福祉高負担の名のもとに、大企業には高福祉と低負担を、勤労者には低福祉と高負担をもたらす予算案だといわなければなりません。(拍手)現に自動車重量税を新設し、大衆課税である間接税、付加価値税、目的税に道を開こうとしております。
 食管法に違反し、消費者米価を物価統制令からはずし、米価水準全体を引き上げて、国民がうまい米は高くて食べられないばかりか、まずい米も安くは買えないようにしようとしておるのであります。現に総理が歯どめが必要だと言っておられるのは、物価統制令をはずせば消費者米価が値上がりすることをみずから認めておられるからではありませんか。消費者米価値上がりを押える具体的な、有効な措置とは一体何なのか、国民の納得できるような総理の御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 政府管掌健康保険の保険料と患者一部負担の増額が、またまた行なわれようとしております。政府が何度も公約された医療制度の抜本的改正のほうは、今度もほおかぶりであります。佐藤内閣は、言ったことは行なわない、国民の望まないことは言わないで実行する内閣だ、と批判される理由も、ここにあると思うのであります。(拍手)総理は、この公約違反の責任を一体どのように考えておられるのか、国民に明らかにする責任があると思います。
 では、勤労者の高福祉のほうは明るい展望が開かれているでしょうか。住宅建設は七〇%を国民の自力建設にたより、公団住宅の家賃は三万円をこえようとしております。これで若夫婦に狭いながらも楽しいわが家を与えることができるでしょうか。定年退職した勤労者に、物価高の今日、老後の安らかないこいを保障する施策が一体どこにあるでしょうか。
 それだけではありません。政府は失対事業の打ち切りによって、十九万失対労務者とその家族を街頭に無慈悲にほうり出そうとさえしておるのであります。(拍手)もしあなたがあくまで高福祉予算案であると言い張られるならば、具体的に数字をあげてその根拠を明らかにすべきだと思います。
 このような高負担低福祉の予算がなぜつくられたのかは、その原因は、国民生活にかかわる諸問題を社会政策としてではなく、私企業的な経済原則によって処理しようとする政府・自民党の政治姿勢にその根本原因があるといわなければなりません。(拍手)食管制度にしても、健康保険制度にしても、国鉄や上下水道などの公営企業にしても、すべて政府は赤字かどうかを唯一の基準として政策判断を行なってきました。投資した資金が回収できるかどうか、利潤があがるかどうかにより政策決定を行なうのは私企業であります。政府の事業は私企業とは根本的にその性格を異にしなければなりません。健康保険を例にとってみますれば、会計的には、予算的にはたとえ赤字になっていても、それによって国民の健康が守られ、病気が予防されるならば、それこそほんとうの黒字予算だといわなければなりません。(拍手)食管制度も同様に、農家の所得と消費者の安い食生活が保障されるならば、それは国民にとっては黒字であります。食管会計の赤字を理由に、米作から他の作物への転換の裏づけは何らしないで、生産制限と買い入れ制限を一方的に農民に押しつけて食管制度をくずそうとしておることは、政府の責任放棄の最たるものといわなければなりません。(拍手)政府は、私企業原理にとらわれることなく、思い切った予算措置により国民の暮らしと健康を守る政策を断行すべきであり、国の予算はそのためにこそ存在するものであります。国民負担はヨーロッパ並み、国民福祉はその何分の一という、住みにくい点では世界有数の日本をつくってきた責任を総理はどのように反省しておられるのか、お考えを承りたいと存じます。(拍手)
 住みにくいといえば、かつて総理は、公害は必要悪だと国会で答弁されましたが、日本の資本主義経済は、公害のたれ流し、国民の暮らしと健康を破壊することにより初めて高度経済成長が可能であったのであります。総理の公害必要悪説も、このような国民を踏みつけにした経済成長を認める立場に立たれたものであります。私は、公害追放に果たす法律の役割りにはおのずから限界のあることを十分わきまえながら、あえて総理に、公害立法として勇断をもって実行していただきたいのは、無過失賠償責任制度の確立であります。(拍手)
 現在、幾つかの公害裁判が進行していますが、全く同じような悲惨な犠牲者を出している水俣病とイタイイタイ病の二つの裁判の間に、大きな差異があることを総理は御承知でしょうか。民法で争われている前者、すなわち水俣病裁判には無過失賠償責任の適用がなく、鉱業法で争われておる後者、すなわちイタイイタイ病裁判には、とにもかくにも無過失賠償責任制が適用されておるのであります。同じ公害でありながら、法の前の平等が保障されていないのであります。
 近代工業社会におきまして、巨大な生産力により大きな利益をあげる企業は、その企業活動から生ずる危険に対して故意、過失を問わず絶対的に責任を負うべきであって、今日の公害問題を一世紀前の古典的な民法概念で律しようとするほど不公平、不平等なことはないといわなければなりません。(拍手)
 無過失賠償責任制度の確立は、被害者の救済を容易にするだけではなく、公害に対する一般予防的役割りを果たすことをもあわせ考えますならば、総理は、検討するということばでこの場をつくろうのではなく、その立法化を国民に明確に約束されるべきだと思いますが、総理の見解をお尋ねするものであります。(拍手)
 公害が国民の健康と生命を直接にむしばむ社会悪とするならば、家計を通じて、台所を通じて国民生活を破壊しているのが物価の上昇であります。
 昭和四十五年度の消費者物価の上昇は、政府見通しの四・八%を大きく上回り、七%台をはるかにこえると見込まれており、あの朝鮮戦争のときに次ぐ異常ともいうべき物価の高騰ぶりであります。来年度の消費者物価値上がりは、政府見通しによれば五・五%となっていますが、郵便、電報料金は値上げする、消費者米価から物価統制令ははずす、公定歩合はさらに引き下げるなど、物価上昇に拍車をかける要因ばかりつくりながら五・五%でおさまると言われても、国民はとても信用することはできません。五・五%で押えると言われる以上、いままではできなかったが今度は必ずできるという、その根拠を国民の前に明らかにすべきだと思います。(拍手)
 政府は、口で物価抑制を唱えながら、中立機動型予算などといって公債、政府保証債の増発を予定するなど、政府の物価対策はまさに八方破れであります。
 私は、構造上の問題に限って、二つの提案をいたしたいと考えます。
 その一つは、大企業製品の値上がりの背後にある独占・管理価格への対策であります。問題のカラーテレビの二重価格の廃止は、消費者の組織的運動の盛り上がりによって一定の効果をおさめることができましたが、これだけでは実際の小売り価格が安くなるという保証はどこにもありません。それどころか、大企業製品は高水準で価格が安定するおそれさえあるのであります。政府は、商品別に価格指導をするといっておられますが、数字上の根拠を持たないで価格指導するといっても、それは単なるポーズを示すだけに終わるでありましょう。この際、私は、アメリカのキーフォーバー委員会に匹敵する、強力な独占価格監視委員会を設けて、大企業製品に原価の公表を義務づけるとともに、物価に対する勧告権限を持たすべきだと思うが、総理の御見解はいかがでしょうか。(拍手)
 構造政策の他の一つは、中小企業、農業など生産性の立ちおくれた部門に対し、目的意識的に政策的投資を拡大するということであります。すなわち、今後五年間、国民総生産の一%、年額約七千億円を低生産性部門へ投入し、農業、中小企業を中心とする基礎的消費物資のコストを引き下げ、その総供給量を増大させることであります。今日家庭の主婦を苦しめている野菜の異常高値の根本的解決も、これ以外にはないと考えるものであります。このことは、やろうと思えば決して不可能なことではありません。防衛費をこれ以上ふやすのを取りやめ、社会的浪費である一兆円にも及ぶ会社交際費に、せめて三、四割の税金を課する等すれば容易にできるはずであり、これこそ真の意味の発想の転換だと思うが、総理のお考えを承りたいと存じます。(拍手)
 この機会にぜひお聞きしておきたいのは、所得政策の問題であります。
 最近、政府、財界筋が賃上げ抑制のため所得政策を導入しようとしているのに反対して、大川報告が、科学的に数字をあげてその非合理性を明らかにしたことは、総理も御存じだと思います。大川報告だけではありません。日本生産性本部も、過去十五年間の生産性の伸び率が賃金の伸び率を上回っていることを、数字でもって明らかにいたしております。物価上昇の犯人は賃上げだという政府、財界の宣伝は、まさに内部からきびしく造反されておるのであります。(拍手)総理は一体、所得政策の導入と、その変形である生産性基礎原理の採用につき、どのようなお考えを持っておられるのか、この際明らかにしていただきたいと存じます。
 次に私は、中国問題、沖繩返還問題につき、順次総理の所信をただしたいと存じます。
 中華人民共和国の承認と、その国連における正当な代表権の回復は、いまや何人といえども押しとどめることのできない、大きな世界の流れとなっております。この歴史の必然にさからって日中国交回復を拒み続け、中国の国連招請を妨害し続けてきたのが佐藤自民党内閣であります。(拍手)佐藤総理は、日本と中国の関係はカナダやイタリアと異なることを強調され、中国問題には慎重でなければならないと繰り返し述べておられます。日本と中国との関係が特殊なものであるということには私も同感でありますが、私は総理とは逆に、だからこそ、中国との国交回復、国連招請を一日も早く、他国に先んじて日本はやらねばならぬと考えるものであります。(拍手)
 なぜならば、戦前、日本軍国主義は中国を侵略し、中国民衆に対し、人的、物的にはかり知れない大きな損害を与えたのでありますが、その戦争のあと始末はいまだに済んでいないのであります。総理はこの冷厳な事実をあえて無視され、昨年の臨時国会におきまして、中国との間には法的にも現実的にも戦争状態はないと言われ、その理由として、中国との間に貿易や人事の交流が行なわれているではないかと強調されたのであります。この総理の論理をもってすれば、サンフランシスコ平和条約を結んだときも、アメリカその他の連合国と日本との間にはすでに貿易、人事の交流があったのでありますから、これらの国々との間に戦争状態はなかったことになるはずであります。それにもかかわらず、同条約第一条は、日本国と各連合国との間の戦争状態は、この条約が効力を生ずる日に終了する、と明記してあるのを、一体総理はどのように御理解されようとしておるのでしょうか。一国の総理の発言として、あまりにも軽率であり、不見識であったと総理は反省しておられないのでしょうか。総理の見解をあらためてお聞きするものであります。(拍手)
 さらに、総理は、日華平和条約によって中国との戦争のあと始末が済んだと強弁され、信義と国益と平和の観点から、中華人民共和国を承認することはできないとの見解をとり続けてこられました。いわゆる日華平和条約は、御承知のように、一九四九年に中華人民共和国が成立したあと、三年もたって、台湾に落ち延びた蒋介石一派と結ばれた条約であります。のみならず、この条約の交換公文に次のように書いてあります。この条約は、中華民国政府の支配下に現にあり、また今後入るすべての領域に適用される、と書いてあります。だとすれば、現実に中国大陸に何ら支配権を持たないいわゆる中華民国政府を中国を代表する唯一の政権とみなして、日華条約で戦争のあと始末がついたなどと考えるのは、条約論としてもとうてい成り立つものではございません。(拍手)
 しかも、いわゆる中華民国の立法院は、一九四八年、重慶時代に選出された議員が台湾に逃げ込み、その後二十二年間も改選も行なわれずに今日に及んでいるのであります。だとすれば、中華民国政府は、台湾住民さえも法的には代表していない政権、いや、政権というに値しない存在だといわなければなりません。(拍手)言うまでもありませんが、七億をこえる中国の民衆こそが中国の主人公であり、この中国民衆がみずからを代表する唯一の政権として選んだのが中華人民共和国政府であります。
 総理、もしあなたが信義を重んずるというならば、日本軍国主義が中国大陸に持ち込んだ戦争の惨禍を反省し、一日も早く、この中華人民共和国と平和条約を結び、日中間の戦争状態に終止符を打つべきであります。総理の口ぐせである蒋介石に対する信義とは、あくまで個人に対する信義であって、国家、民族に対する信義とは区別しなければなりません。(拍手)小さな信義と大きな信義を混同し、中華人民共和国との国交回復を拒み続けることは、総理の言う国益を誤らす以外の何ものでもないと思うものであります。(拍手)真の国益とは、日本の平和と安全を保障することであります。日本の平和と安全は、日中間の戦争状態の終結、日中の友好親善を深め、極東の緊張を緩和して、アジアの平和を不動のものとすることにより初めて達成されるものであります。(拍手)
 日中問題解決のかぎは、蒋介石一派を中国の正統政府と認めてきたこの大きな虚構を清算するかどうかという、政治家としての良識とその決断にかかっておるといわなければなりません。(拍手)かつて、鳩山首相は、保守政治家や財界の中にあった強い反対を押し切って、日ソ国交回復を決断され、わが党はこれを全面かつ積極的に支持したのであります。鳩山内閣と佐藤内閣の置かれている政治状況を比べてみますれば、世論の示すように、佐藤総理のほうがはるかに有利な条件下に置かれておるはずであります。問題は、総理、あなたの決意いかんにかかっておるのであります。もし既往にこだわり、アメリカに追随し、日中国交回復への決断をためらうならば、佐藤総理は、憲政史上最長の四選をなし遂げたが、日本の政治史上最も好ましくない総理の一人であったと後世の史家から批判されるでありましょう。(拍手)
 私は、文字どおり、国際信義を重んじ、国益を守り、極東の緊張緩和に資するために、中国は一つであり、中国を代表する唯一の政権は中華人民共和国政府であることを確認し、中国との国交回復に向かって勇気をもって進むことを総理に要求いたすものであります。(拍手)そのための最小限度の措置として、吉田書簡を名実ともに廃棄すること、台湾に対する借款供与を停止すること、中国との人事交流を拡大し、中国要人の日本訪問にとびらを開くことを強く要請いたします。このことすらできないで、北京政府を中華人民共和国政府と言いかえてみましても、礼は往来をたっとぶということばのように、口先だけの礼は相手に対する無礼以外の何ものでもないと思います。(拍手)
 次に、国連において中国問題にいかに対処されようとしているか、お尋ねしておきたいと存じます。
 重要事項指定方式の破産がもはや決定的となるや、政府は、二つの中国とか、一つの中国一つの台湾とか、一つの中国二つの政府などを、アメリカとひそかに連絡しながら検討されているやに伝えられておりますが、このような小手先細工は、日中関係に新たな困難をもたらし、中国問題をますますどろ沼におとしいれる結果になることは必定だといわなければなりません。日中問題は、文字どおり日本と中国の問題であり、日本の自主的判断で決定すべきでありまして、アメリカに追随したあなたまかせ、風まかせの風鈴外交を続けることは断じて許されません。(拍手)アメリカの要求に屈し、動揺に動揺を続けている繊維交渉はその典型ともいうべきであります。今日までの自主性を欠いた国連外交、対米外交を改めて、重要事項指定方式を放棄することはもちろんのこと、いかなる意味においても二つの中国の立場をとるべきではないと思うが、総理の明確な御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 中国問題は安保の問題であるといわれておりますが、沖繩問題も安保問題、中国問題と切り離して論ずることはできません。政府のいわゆる七二年本土並み返還を前にして起きたあのコザ事件、毒ガス撤去問題は、四分の一世紀に及ぶ異民族支配に対する県民不満の爆発であります。県民の頭越しに進められておる返還協定に対する不安と憤りを示す象徴的できごとであります。コザ事件が起きるや、総理は、米国に悪い印象を与え、あとに尾を引くのが一番心配だと言われておりますが、日本の総理として一番心配しなければならないのは、言うまでもなく、沖繩百万県民の人権であるはずであります。(拍手)昨年の臨時国会で山中総務長官は、コザ事件について、暴徒だというふうには思っておりませんと見解を明らかにされ、また、琉球警察本部長も、事件に騒乱罪を適用する考えはないと言い切ったはずであります。しかるに、突如として捜査当局が騒乱罪の適用に出たことは、常識では考えられぬことであり、背後に何らかの力が働いていると見られるのもまた当然だといわなければなりません。(拍手)事件調査のため沖繩に出向いたわが党の中谷代議士に、タクシーの運転手が次のように語っております。コザ事件に首謀者なんかはいませんよ、いるとすれば私たち沖繩県民が全部首謀者ですと、これほどコザ事件の本質を端的に物語ったことばはないと思います。(拍手)
 佐藤総理、復帰の前とあとで沖繩県民の人権に軽重があるはずはありません。七二年返還を待たずに、沖繩住民の人権を正しく守るため、騒乱罪の適用が撤回されるように、あなたの影響力を行使するとともに、裁判権の琉球政府への移管を一日も早く実現すべきだと思います。政府は、一体化の名のもとに、沖繩県民のかちとった教育委員の公選制は任命制に切りかえようとしています。一方、裁判権の琉球政府移管は、米国施政権の壁を理由に、これに取り組もうとはいたしておりません。毒ガス撤去の安全対策についても、アメリカに対し要望らしい要望もしようとはしておりません。返還前の真の一体化をこいねがうならば、裁判権の琉球政府移管を実現し、毒ガスの完全撤去を、沖繩県民も参加し確認する形で実現すべきだと思うが、総理の見解はいかがですか、承りたいのであります。(拍手)
 政府は、返還協定を三月、四月に調印する計画で準備を進めておられますが、沖繩県民はもちろん、本土の人々にも、その実態は少しも明らかにされておりません。文字どおり核抜き、本土並みと言われるならば、何らその間秘密はないはずだと思います。
 そこで、私は次の諸点についてお尋ねいたします。
 その第一は、ベトナム戦争は、政府の楽観的見通しにもかかわらず、ラオス、カンボジアへのアメリカの侵略拡大で長期化の様相を見せております。総理は、七二年までにベトナム戦争は終わるといまでもお見通しなのか。もし七二年までに戦争が終わらない場合、佐藤・ニクソン共同声明によって沖繩返還について再協議することがあるのかどうか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 その第二は、米国沖繩支配の基礎であるサンフランシスコ平和条約第三条が失効すれば、これに基づく大統領命令、行政命令や布令、布告も完全に消滅することになると思いますが、政府は経過措置の名で沖繩県民の利益を害するような特別の法律をつくることは絶対になさらないと考えていいかどうか、ということであります。
 その第三は、佐藤・ニクソン共同声明の解釈として、ジョンソン国務次官は、緊急事態において沖繩への核持ち込みを日本政府は必ずしも拒否しない。また、韓国台湾の防衛のため、日本及び沖繩の基地を使用することに日本政府は事前協議でイエスを与えることに傾いてきたと証言いたしております。現に米海兵隊司令官チャップマン大将は、現在の自由な沖繩からの出撃体制は返還後も自由にできると言明いたしております。また、これを裏づけるかのように、米政府から日本政府に対し、返還後も基地を米軍が自由使用できるよう確実な取りきめを結ぶことを強く要求してきていると伝えられております。事実経過は一体どうなっておるのか、国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。
 これに関連して、沖繩返還後に地位協定を改定し、日米安保条約を実質的に改悪するのではないかと国民は大きな疑問を持っていますが、そのようなことは絶対にないと断言できるかどうか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 その第四は、沖繩県民の有する対米請求権、米国資産の買い取りと米国資本の特権を認めるかどうかという問題であります。対米請求権は放棄し、米国の資産はこれを買い取り、すでに沖繩に進出したガルフ、エッソなどに特権を認めるということでは、沖繩県民の願いをじゅうりんするものであり、国益をそこなうもはなはだしいものだというべきであります。総理は、これらの諸問題をいかが取り扱おうとしておられるのか、沖繩県民、いや、全国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。
 以上、私は、日本が当面する内外の諸問題につき総理にお尋ねいたしたのでありますが、ニクソン共同声明の具体化ともいうべき第四次防衛計画の発足、海外経済協力の名による反共アジア諸国への資本進出と権益の獲得など、中国をはじめとするアジア諸国民の間に、いや、米国民の間にさえ、日本軍国主義復活の懸念が強まっていることは、総理もよく御承知のことと存じます。総理は、軍国主義化を強く否定されておりますが、もし総理が、日本は軍事大国の道を決して歩まないと言われるならば、ことばだけではなくして、行動で示すべきであります。
 少なくとも、私が日本の平和と国民生活安定のため提案した諸方策、すなわち、日中国交回復の実現、防衛費のこれ以上の増額を取りやめること、基地も核も毒ガスもない沖繩の復帰と平和な沖繩の県づくりなどにつき、真剣な考慮を払い、その実現のために努力されることを約束すべきだと思います。もし、この最小限度の要求さえも実行できないと言われるならば、あなたが政権の座に一日長くとどまることは、日本の将来にとってそれだけ不幸であり、あなたはいさぎよく政権の座から去るべきだと思うのであります。(拍手)総理の、進退をかけた真剣な御答弁を強く要求いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 成田君にお答えいたします。
 政治の国民に対する責任は、第一義的には、国の安全を確保し、文化を興隆し、国民生活の向上をはかることにあると考えます。しこうして、平和外交を積極的に展開することによりまして、わが国の平和を維持し続けてまいりました。さらに、国民の勤勉と努力を根幹とし、機動的かつ弾力的な財政経済政策の運用によって、画期的な経済発展を遂げることができたと信じております。しかしながら、その間、物価や公害問題など、必ずしも政治の責任を全うすることができなかった面も多分にあることは、まことに遺憾に存じております。
 ただ、わが国のように、国民のエネルギーが横溢し、常に進歩を求めてやまない社会にあっては、もはやみずからの力、みずからの発想によって道を切り開く以外に、他に先例として求むべきものはなく、したがって、そこに政治の新しい責任が存在すると思うのであります。長期展望に立って将来を洞察し、同時に、現在問題にきめこまかく対処していかなければなりません。成田君の御批判は、私は謙虚に承っておきますが、以上のような信念に基づいて政治を進め、国民の政治に対する信頼を高めていきたいと念願しています。(拍手)幸いにして、今日まで国民の絶対的な御支持を得て、わが党は圧倒的な勢力をただいま持っておること、この点も成田君によく理解していただきたいと思います。(拍手)
 次に、福祉の向上と負担の関係についてでありますが、一般的な方向として、社会資本の整備、社会保障の充実など、国民福祉の増大にこたえるために、長期的に見て、国民の負担がある程度上昇することはやむを得ないものと考えます。このことは昨年末の税制調査会の中間報告でも示唆されているところであり、また政府としても、すでに新経済社会発展計画においてその考え方を明らかにしたところであります。私は、国民経済の中で財政が受け持つべき分野が拡大するに伴い、長期的に見て、このような高福祉高負担の考え方が具体的に導入されていくべきものと考えますが、四十六年度予算が直ちに高負担の予算とうたわれるのは当たらないと私は考えます。いわんや低福祉高負担と批判されることは、御批判は御自由でございますが、私にはおっしゃることがどうも理解できません。(拍手)成田君がその例示として、幾つかの事例を引き続きあげられましたが、これらの問題は、いずれ予算委員会その他の場においてその考え方を明らかにする機会があると思いますので、それぞれについていまこの際に詳しく触れることは避けますが、いずれも社会経済情勢の変化に即応した時宜を得た施策であることだけをはっきり申し上げておきます。(拍手)
 ことに消費者米価について、物価統制令の廃止は消費者米価の高騰を招くのだ、総理自身みずから認めておるではないか、かような御意見を述べられましたが、消費者米価についての問題は、なお実施をするまでに必要な処置はそれぞれとる予定でございますから、その実施の暁において、その時点において、どういうような状況であるかを御批判願いたいと思います。
 また、食管や公営企業について私企業的原則で処理してきたのは誤りであるとの御批判がありましたが、私にはいささか理解しがたいところであります。一般会計からの巨額の繰り入れ、必要に応じての補助あるいは融資等の助成措置、こういった措置が、それぞれの事態に即応して大胆にとられてきたことは、成田君も御承知のとおりであります。決して私企業的考え方のみにとらわれているものではありません。税金によって対処しても、受益者負担によって対処しても、帰するところは国民の負担によることには変わりはないのであります。いずれがより適正な国家資源の配分が確保し得るか、あるいはまた社会的に必要なサービスの量と質が確保し得るかがキーポイントであり、私は、これらの問題に弾力的に対処することにより、できるだけ少ない負担で、より多い福祉を追求してまいる所存であります。(拍手)残念ながら、わが国は、近代国家としての立ちおくれから、社会資本の蓄積が不十分であり、このため、むしろ将来の福祉として実を結ぶべき社会資本の充実に多くの力を注がねばならない段階にありますが、その中にあって、国民生活が顕著に改善されつつあることは疑いをいれないところであり、さらに今後の経済の安定的成長によって、国民福祉の飛躍的な向上を実現するものと確信するものであります。
 次に、公害について無過失賠償責任制度を導入せよとの御意見であります。私も、この問題は、被害者救済の立場から、十分かつ早急に検討すべき課題であると考えます。しかしながら、無過失責任は、民法の過失責任の大原則の例外となるものであり、公害一般について抽象的にこれをきめることは適当でなく、これを立法化するにあたっては、加害行為をどの程度に限定するか、あるいは損害の範囲をどの程度にすべきかなどについて、十分検討する必要がありますので、この点を一言つけ加えておきます。
 次に、物価問題についてでありますが、物価対策が十分の効果をあらわしていないことは、まことに残念であります。物価問題についての建設的な御意見は大いに歓迎し、聞くべきものは直ちに実施に移してまいりたいと考えます。
 成田君の御提案の第一点、すなわち独占価格監視委員会の新設につきましては、米国における独占価格についての状況とわが国の状況では顕著な相違があり、当面特別な機構を新設することは考えておりませんが、公正取引委員会による独禁法の厳格な運用をはかると同時に、管理価格の厳重な監視を行ない、御提案の趣旨は事実上生かしてまいりたいと考えます。
 第二の低生産性部門の強化による基礎的消費物資のコスト引き下げと総供給量の増大についての御指摘は、全く同感であり、四十六年度予算においても十分配意したところであります。今後とも引き続き十分配慮してまいりたいと考えます。
 次に、所得政策についてでありますが、世界的なインフレ傾向に対処する一つの有力な手段として、最近OECDにおいても所得政策を再評価する機運が高まってきております。最近のように景気が鎮静化する中で賃金の加速度的上昇が今後も引き続くとすれば、賃金の物価上昇に対する影響が一そう強まることが憂慮される段階にあり、その対策として所得政策が論議の対象となっておりますが、所得政策はいまだ世界でも成功を見た例はなく、私はその必要性や効果についてなお検討すべき段階にあると考えます。
 ただ、この際一言申し上げておきたいことは、五年続きの長期繁栄の結果、労使双方が大幅な賃上げ上昇や高額の利潤になれ切っているきらいがあることであります。私は、国民経済的視点に立った節度ある態度を労使双方に強く訴えるとともに、物価問題をみずからの問題として協力していただくよう国民各位に強く願うものであります。(拍手)
 次に、中国問題についてお答えします。
 わが国は一九五二年、中華民国政府との間に日華平和条約を締結いたしましたが、政府としては、この平和条約によって国と国との間の戦争状態は終結したものと考えております。(拍手)しかし、北京政府がこの条約を有効なものと認めていないことは、政府としても承知しております。この問題については、将来日中関係が全般的に改善されていくことになれば、その過程で自然に解決がはかられていくものと期待している次第であります。
 私は、国際信義を重んずることは、わが国を国際社会の中で重からしめるためにもきわめて重要なことであると信じます。政府としては、過去二十年余にわたって親善友好関係を厚くしてきた台北の中華民国政府との関係を破棄し、直ちに北京の中華人民共和国政府を承認することが、信義を重んじ、かつわが国の国益を増進し、さらには極東の緊張緩和をもたらすゆえんであるとは考えておりません。(拍手)あくまでも慎重に取り組んでまいる考えでございます。
 次に、成田君から、吉田書簡の取り扱いの問題をはじめ、その他の点についての具体的な御提案がありました。御承知のとおり、昭和三十九年に出されたいわゆる吉田書簡は、元来が私信であって、条約や協定のように政府を拘束する政府間の取りきめではないので、廃棄するとかしないとかの問題が生ずる性質のものではありません。政府としては、中国大陸向けの輸銀資金の使用については、従来から、具体的な問題ごとに諸般の事情を勘案してケース・バイ・ケースで処理することにしており、今後ともこの方針に変わりはありません。
 また、中華民国に対する新規借款の供与については、かつての円借款のように総ワクを設定する方式はとらず、台湾の民生の安定に寄与するという観点から、各種のプロジェクトを個々に検討し、これに可能な限り協力していく方式をとる考えであります。
 日中間の人事交流については、日中両民族間の相互理解を深め、かつよき隣人としての関係を樹立するためには、できるだけ多くの人が往来し、ひざを交えて話し合うことが望ましいと考えております。このため、政府としては広く門戸を開放しており、わが国の国益を著しくそこなうと判断される場合以外は、日中間の人事交流には何らの制約も加えていないのであります。
 さらに、中国代表権問題に対して今後どのように対処するかについては、国際情勢の動きを十分見きわめつつ、わが国の国益をはかり、また極東の緊張緩和にも資するという観点から、わが国と友好関係にある諸国とも協議しつつ、慎重に検討していきたいと考えている次第であります。
 また、いわゆる二つの中国論、これは政府のとるところではありませんし、またいかなる陰謀にもくみするようなものではないこと、いまさら申し上げるまでもないことですが、つけ加えておきます。
 次に、沖繩問題についてお答えをいたします。沖繩施政権の明年返還を前に、コザ市においてあのような事件が発生したことは、まことに残念であります。政府としては、各方面との連絡を一そう緊密にし、誤解やしこりの残らないよう万全の策を講じていくとともに、関係者においてもできるだけの配慮が払われることを切望いたします。
 裁判権の問題については、米軍人等の犯罪に対する裁判が、沖繩住民の心情も十分くみ取り、公正に行なわれなければならないことは言うまでもありません。政府としては、適切な裁判の運用がなされるよう、時宜に応じ、米側との連絡を保っていく方針であります。なお、今回、沖繩の軍事法廷に琉球政府オブザーバーの出席を認めることにしたのは一歩前進であると考えます。
 また、毒ガス兵器の早期撤去について、米側と一そう話し合いを進めてまいりますが、この場合に、住民の意向を十分留意し、そうして早期撤去、これが実現するようにいたしたいものだと考えております。
 沖繩返還協定の日米協議は順調に進んでおります。しかし、目下交渉中のことでありますから、その内容を具体的に申し述べることは差し控えたいと存じます。しかしながら、核抜き、本土並み、一九七二年中という施政権返還の基本的大綱のワクの中で確定されることは申すまでもありません。したがって、交渉の基本方針は、その大綱のワクの中で沖繩住民の要望をも尊重し、わが国全体の利益に即した施政権の返還を実現したいと考えております。
 また、万一ベトナム問題との関連で協議が行なわれることになっても、一九七二年の返還が延期されたり、沖繩からの戦闘作戦行動の発進につき、事前協議制適用の例外を設けることは絶対にありません。(拍手)すべて日米共同声明六、七、八項で確定したとおりに返還は実現されるので、御懸念には及びません。(拍手)
 また、復帰とともに現存の行政命令や布令、布告が失効し、本土の法令が適用されることになることは言うまでもありません。沖繩住民の対米請求の問題については、現在の実態、法的側面等をも勘案しつつ慎重に検討中であります。また、地位協定等について、ただいま改定する考えは持っておりません。
 結論といたしまして、最後に、軍事大国への道を歩まないため、成田君御提案の実現を約束せよとのお話がありました。私は、方法論は人により、党派によりいろいろに違うと思いますが、演説でも申し述べたとおり、平和の維持は、何と申しましても国民の意思の力一つにかかっていると信ずるものであります。自由な民主主義がかくも定着し、かつ、過去の歴史的経験をかみしめている日本国民が、再び軍国主義に走ることはとうてい考えられませんが、私としては、誠実に忍耐強く国際主義の立場を貫く決意であります。(拍手)また、国際化時代の今日、わが国の行動が国際社会に及ぼす影響についても真剣に考えなければなりません。すべての点にわたって慎重にして思慮深い行動をとることこそ日本国民の国際的責任でもあると、私はかように考えるのであります。(拍手)
 以上、私の所信を交えてお答えといたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(船田中君) 鈴木善幸君。
    〔鈴木善幸君登壇〕
#7
○鈴木善幸君 私は、自由民主党を代表して、わが国が当面せる重要問題について政府の所信をただしたいと存じます。(拍手)
 内外の情勢を展望しますに、七〇年代の初期はきわめて多事多難が予想されます。国際的には、まず中国問題があります。また、米国との間の輸出調整をめぐる経済問題も重大な問題となりつつあります。国内的には、公害、物価、労働問題を中心として、新しい経済進路の探求と倫理の確立に迫られております。また、人間性の回復を目ざして、教育の刷新による豊かな人間形成と高福祉社会の建設が要請されております。
 いまや国民は、物質的繁栄を享受しながら、公害その他の環境の悪化におびえ、見失われた人間性の回復に目ざめ、真の豊かさを求める新しい価値観を探求しておるのであります。(拍手)これらの課題は、いずれも重要かつ困難な課題でありますが、国民的要請にこたえて、これをよく克服し、解決してこそ、希望に満ちた七〇年代の進路が切り開かれるのであります。
 佐藤内閣の今後の使命は、この重大な転機に立つわが国の進路を定め、七〇年代のわが国発展の基礎を築くことにあると思うのであります。
 そのため、まず必要なことは、従来の政策を再点検し、転換すべき政策は勇気をもって転換し、新たにとるべき政策は果敢にこれを取り入れ、時代の要請に応じた国政の前進、展開をはかることであります。
 さらに、わが国の命運にもかかわるような重大な問題は、できるだけ国民的合意を背景として処理することが望ましく、そのため、与野党が党派を越えて話し合い、国益を基本として問題解決の道を見出すよう努力することが必要と考えます。(拍手)
 私は、こうした観点に立って、当面の外交、内政のうち最も重要かつ基本的な問題について、総理大臣の御所見を伺いたいと存じます。
 まず、中国問題についてでありますが、中国問題は七〇年代前半のわが国最大の外交課題であり、また世界の最も重大な国際問題でもあります。特にわが国と中国大陸とは、地理的にも歴史的にも他のいかなる国よりも複雑かつ深い関係があります。また、台湾の中華民国政府とは、一九五二年日華平和条約を締結して、親善友好関係を維持しております。このような特殊な事情から、これに対処する方法を誤ると、わが国将来の命運とアジア全体の平和と安全に、重大な結果をもたらすことになります。したがって、中国問題は、国際的な動向のほか、わが国独自の判断が必要であります。佐藤総理の言われるように、国連総会の動向や今後の国際情勢に留意しつつ、国際信義を重んじ、国益を守り、極東の緊張緩和に資するという観点から、慎重に対処することが肝要であることは申すまでもございません。しかし、そのような態度のもとで具体性のある措置が必要な段階に来ていると思うのであります。
 中国問題は二つの側面を持っています。一つは国連加盟の問題であり、一つはわが国と北京の中華人民共和国政府との関係をどう改善するかという問題であります。中華人民共和国政府の国連加盟の問題は、御承知のとおり昨年秋の総会では重要事項指定決議案の票差がかなり縮まる一方、いわゆるアルバニア型決議案がついに過半数を獲得するという事態となりました。さらに、その後におけるカナダ、イタリア、チリをはじめ、各国の動向を見てまいりますと、この問題の帰趨はおのずから明らかであると思うのであります。ウ・タント国連事務総長の年頭記者会見でも、国連当局は、すでに北京の中華人民共和国政府の国連加盟は早晩実現するものとして、事務的準備を進めている模様であります。
 わが国外交の基調が国連中心主義にある以上、中国問題をめぐる一つの転機を、われわれなりに率直に受けとめざるを得ないのであります。
 このような国連総会の動向や、国際情勢の底流にあるものは、中国大陸の八億近い国民を支配している中華人民共和国政府を国際社会に迎え入れることなしには、国際の平和と安全、特にアジアの緊張緩和をもたらすことはできないという、必然的な要請があるからだと思うのであります。(拍手)ベトナム戦争の平和的収拾をはかるにしても、あるいは軍縮問題にしても、もはや北京の中華人民共和国政府を無視したままでは、有効な政治的解決は困難であるからであります。(拍手)このことは、国際世論の大きな潮流であると同時に、また、わが国の大方の世論でもあると思うのであります。
 しかし、だからといって、われわれは、アルバニア型決議案には同調することができません。中華民国政府が現実に台湾の領土を支配し、千四百万の国民を統治していることは、厳然たる事実であります。(拍手)その中華民国政府を国際機構のかなめである国連から締め出そうとするアルバニア型決議案は、現実的でないのみならず、国連憲章の精神にも沿わないものと思うのであります。(拍手)
 私は、このような認識に基づいて、中国の国連加盟問題は、われわれの自主的な選択としては、前述のごとき国際世論の潮流をすなおに受けとめ、それに適応した措置が講ぜられるべきものと考えます。同時に、中華民国については、引き続き国連の一員としてとどまり、国際の平和と繁栄に寄与してもらうことが最も現実的であり、かつ妥当なものであると信じますが、この問題について、佐藤総理大臣の御所見を伺いたいのであります。
 次にお尋ねいたしたい点は、わが国と中国大陸との関係を今後いかに改善していくかという問題であります。
 今日、日中間において最も肝要なことは、わだかまりを捨てて、虚心たんかいに話し合うということであります。わが国としても、北京政府の誤解を解き、相互の理解を深めるために、一そう積極的、効果的な努力を忍耐強く続けることが必要と考えます。総理大臣は、この点を重視せられ、大使級会議を提案されておりますが、その反応はいかがでございましょうか。この際、総理大臣は、外交出先機関の接触をはかるほか、政党レベルによる大局に立った自由濶達な話し合いを行ない、相互の意思の疎通をはかるため、与党の代表的な有力政治家が北京を訪問することの意義について、どのように評価しておられるか。いまはなき川島正次郎先生は、機会を見て訪中し、先方の要人と大所高所から隔意ない意見の交換をすることを強く望んでおられたと聞いておりますが、佐藤総理の御所見を承りたいのであります。
 最近、わが国の経済界の間でも、長期的な展望に立って中国大陸との経済交渉を活発化しようとする動きが強まっております。北京政府もまた、本年から新しい経済五カ年計画を遂行しようとしております。このときにあたり、近く開始される日中覚書貿易の継続交渉が円満にまとまることを強く期待するものであります。
 私は、この際、日中関係改善のためにも、輸出入銀行による延べ払い融資については、前向きに処理されることが望ましいと考えるのであります。総理も、この問題についてはケース・バイ・ケースで処理するとの方針を明らかにしておられますが、重ねて御所信を伺いたいのであります。
 次に、日米関係、特に経済問題についてお尋ねいたします。
 申すまでもなく、日米友好はわが国外交の基調であります。自由陣営の国民総生産第一位の米国と第二位のわが国が、お互いに協力して世界の平和と繁栄につとめていくことが、両国共通の目標であると考えます。この目標のため、両国はパートナーシップを保ち、あらゆる分野において協調してまいりました。
 御承知のとおり、日米両国間の通商は、六九年度には往復九十億ドル、七〇年度には百億ドルをこえるという、二国間貿易としては、有史以来最大といっても過言でない膨大なものとなってきております。もとより、このような膨大な商品の交流の中にあって、一部に若干の摩擦が生ずることはやむを得ないことでもあります。しかし、私は、国際経済情勢がきわめて微妙な段階にある現状においては、一部といえどもこのような摩擦を生ぜしめないよう、両国関係者が最大の努力を払うことが肝要であると思うのであります。
 最近の日米間の動きを見ますと、繊維問題を発端として、カラーテレビ、金属洋食器など、こまかい品目が一つ一つ問題となり、日本商品に対する風当たりが次第に強まりつつあります。このような傾向は、日米両国にとってきわめて不幸なことであります。経済問題をめぐる両国間の利害の衝突が、やがては両国の国民感情の離間を招き、日米友好関係に亀裂を生ぜしめる結果ともなりかねないのであります。
 本来自由貿易主義の本山である米国が、最近急速に保護貿易的傾向を強めてきた背景は一体何であるか。米国の経済学者は、一つはインフレ傾向にあり、一つは国際競争力の相対的低下にあると分析しておるのであります。
 特に日本商品の進出は目ざましく、対米輸出総額五十億ドル、日本の出超九億ドルといった事実は、米国の一部業界に不安と警戒心を与えていることは争えないところであります。日本みずからは、自由化をおくらせて国内産業保護主義を脱却せず、米国に対しては輸出規制を拒否するということが、わが国のエゴイズムとして米国の一部に受け取られ、それが七〇年通商法案を提案させた一つの背景になっているのであります。
 私は、米国の保護貿易主義への傾斜が、特定業界の一時的利益にはなっても、長い目で見て決して米国全体の利益にはならないことを確信するものであります。しかし、現実の動きに対しては、米国側の立場と事情も理解をし、しかもわが国の広い国益を守りつつ、日米経済関係の調整打開をはかることが急務と思うのであります。
 こうした観点から、私は、当面日米間の懸案となっている繊維問題について、政府間交渉が難航している実情から見て、新しい決断をすべき段階に来ているのではないかと考えるのであります。繊維交渉は、本来ニクソン米大統領の選挙公約に端を発し、それに政治的、経済的な問題がからんで複雑化したものであり、ガットのルールから見ても米国の主張は納得しかねる点が多いのは御承知のとおりであります。それにもかかわらず、政府が粘り強く米国との交渉に当たっているのは、実に、日米友好の維持と米国の保護貿易的傾向を防ぐという大目的のためにほかならないのであろうと存ずるのであります。
 繊維交渉において米側がわが国に求めているのは、毛、化合繊の自主規制であります。自主規制は、本来業界の理解と協力がなければ実効をあげることはできないことは申すまでもありません。この際、政府は、従来のいきさつにこだわらず、業界に率直に経過を説明し、業界が協力可能な範囲内で自発的に自主規制を実施していくことが、局面打開の道につながるのではないかと考えるものであります。その場合、政府は、自主規制に踏み切った業界関係者に対し、財政、金融両面から積極的な救援措置を講ずべきであります。この点について、総理大臣の御所見を承りたいのであります。(拍手)
 日米経済関係は、このように協調しつつ競争していく時代を迎えました。わが国としては、貿易、資本の自由化を促進することはもとよりでありますが、輸出秩序の確立について十分なる配慮と実効ある対策を講じ、日米経済が将来にわたって円満かつ安定的に一そうの発展を遂げるよう、最善の努力をいたされんことを政府に強く要望するものであります。
 次に、内政問題についてお尋ねいたします。
 総理大臣は、施政演説において、国民の前に初めて壮大な日本列島の未来像を示され、これを実現することが現代に生きるわれわれの、民族の将来に対する使命であり責任であるとし、壮年期の旺盛な国民的エネルギーと英知をもってするならばこれを達成することは可能であると、力強く述べられました。この総理が示された国土総合開発を根幹とする日本列島の未来像には、七〇年代以降の内政上の幾多の政策課題を含んでおりますから、私は、この問題を中心に若干の質問を行ないたいと存じます。
 その一つは、産業立地の全国的再編成の問題であります。
 わが国産業立地の現状を見ますと、政府の幾たびかの総合開発計画の策定にもかかわらず、依然として太平洋ベルトラインに企業が集中し、超高密度社会がこの地域に形成され、そのため、住宅、交通、労働、公害などの諸問題が、ここに集中的に発生をいたしておるのであります。他方、太平洋ベルト地帯以外の地域においては、過疎現象が急速に進みつつあり、今後五十万ヘクタールの稲作の減反が行なわれますと、農村地帯はいよいよ衰退の一途をたどるのではないかと心配されております。(拍手)
 このような深刻化しつつある過密過疎問題を根本的に解決する道は、太平洋ベルト地帯に集中する企業を計画的、合理的に他の地域に分散配置することであります。(拍手)特に、稲作の減反を余儀なくされる農村地帯に適当な工場を誘致し、農工一体の新農村建設を促進することは、国土全体の総合利用という観点からも、また農村振興の要請からも、一石二鳥の方策であると信ずるのであります。(拍手)
 国及び地方公共団体は、この政策を強力に推進するため、工業立地の整備に必要な先行投資を積極的に行なうべきであります。また、私は、農業団体や民間企業をこの方向に誘導するための財政、金融上の必要なる措置を講じますとともに、税制面からも有効な助長政策を進めるべきだと考えますが、佐藤総理の御所見を伺いたいのであります。(拍手)
 次は、総合交通体系の整備についてであります。
 国土総合開発も産業立地再編成も、その根幹をなすものは総合交通体系の整備であります。政府は、既定の全総計画や新経済社会発展計画のほかに、新たに総合交通閣僚協議会を設け、総合交通体系のビジョンを策定されると承っております。全国新幹線鉄道網の建設をはじめ、道路、港湾、空港、地下鉄など、陸海空にわたる交通体系を総合的に整備するためには、巨額の投資が必要であります。この財源対策については、政府におきましてもいろいろ検討されていると思いますが、私は、国及び地方公共団体のほか、受益者である現代の国民だけではなく、後代の国民にも一部負担させてしかるべきだと考えます。この意味において、建設公債の発行も積極的に採用すべきであると思いますが、総理のお考えを承りたいのであります。(拍手)
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 政党政治の要諦は、国の将来を予見して確固たる進路を定め、かつ柔軟に現実問題に対処していくことにあるという鈴木君の御指摘は、まことに当を得たものと考えます。私は、その御趣旨を体して、今後とも全力をあげて国運の伸展に寄与する決意であります。一そうの御支援、御協力を切望してやみません。(拍手)
 まず、中国問題に対するお尋ねにお答えをいたします。
 中国問題が、今後の国際政治においてますます重要な問題となってくることは明らかであります。同時にまた、わが国の外交においても特に重要な課題であることは、鈴木君御指摘のとおりであります。しかしながら、中国問題は、昨今急に世界の注目を浴びた問題ではなく、すでに二十年余にわたって、世界の主要国においても、国連においても、またわが国においても、真剣に討議され、研究されてきた問題であります。であるにもかかわらず、遺憾ながら、今日まで公正にして妥当な解決がもたらされていない点に留意する必要があると思います。特にわが国としては、世界の他のいずれの国よりも重大な関心を抱かざるを得ない問題であるがゆえに、慎重かつ広い視野からこれに対処する必要があり、性急で一方的な解決の道を選ぶべきではないと考えるものであります。(拍手)
 本年の国連総会における中国代表権問題に対しいかなる態度をとるかについては、今後の国際情勢の動きを見きわめつつ、わが国の国益をはかり、長期的な極東の緊張緩和に資するという観点から、特に慎重に取り組む方針であります。その際、友好関係にある諸国とも十分意見交換を行ないたいと考えております。
 他方、昨年秋の国連総会において、いわゆるアルバニア決議案に対する賛成が反対を上回ったこともさることながら、中華民国政府を国連から追い出すべきでないとの考え方が根強く存することも事実であります。このような点にかんがみて、中華民国政府を国連から追放すべしとの論をとるべきでないという鈴木君の御意見には全く同感であります。
 次に、中国大陸との関係改善は、政府としてももとより望むところであります。北京政府がわが国に対して行なっている非難あるいは日本政府非難は、わが国の実情に対する誤解に基づくものであります。したがって、日中関係を改善するためには、人の往来や各種の交流を促進し、相互理解をはかるとともに、お互いに相手の立場を尊重するという原則が打ち立てらるべきであります。そのために政府間の話し合いが必要であれば、いつでも、どこでもこれに応ずる用意があります。(拍手)また、鈴木君御提案のように、わが党の有力政治家が北京を訪問して自由濶達な話し合いが行なえるような情勢がつくられれば、きわめて有意義であると考えるものであります。(拍手)現在までのところ、北京政府の対日態度は遺憾ながら強硬かつ非妥協的であります。政府としては、北京政府がより柔軟で現実的になって、わがほうと同様、よき隣人としての関係を打ち出してくることを期待しております。(拍手)
 昭和四十五年の日中貿易は約八億三千万ドルに達し、史上最高を記録し、前年比三二%の増となりました。中国大陸向け延べ払い輸出に輸銀の融資を認めるかどうかの問題につきましては、従来から具体的な問題ごとに諸般の事情を勘案して、ケース・バイ・ケースに処理することとしておりますが、その方針に変わりはございません。政府としては、相互の経済交流をさらに活発化するためにも、今年度の日中覚書貿易の交渉が円満にまとまることを強く希望しておる次第であります。
 日米間の繊維交渉は、これまでのところ、まだ多くの点において両国の主張にはなおかなりの隔たりがあり、双方納得のいく妥結点を見出すまでには至っておりません。政府としては、合理的な解決方法を見出すため、今後とも一そうの努力を続ける所存であります。わが国の業界が一方的に対米輸出の自主規制に踏み切ることについては、政府間交渉を継続しているおりでもあり、積極的な意見の表明は差し控えたいと思いますが、情勢のいかんによってはこのような方法も一つの考え方であろうかと思う次第であります。また、わが国業界に対する救済措置については、たとえ一方的自主規制であっても、本問題の経緯から見て何らかの救済措置を検討すべきでありましょうが、規制の内容とも関連いたしますので、具体的な措置につきましては現在申し上げる段階ではありません。
 内政問題について、まず太平洋ベルトラインに集中する企業を計画的、合理的に他の地域に分散配置せよとの御指摘がありましたが、鈴木君の御意見には全く同感であり、一昨年に決定した新全国総合開発計画におきましても、工業立地について、従来の大都市集中から遠隔立地への移行を助成、促進することとしております。
 また、農工一体の新農村の建設につきましては、長期的な産業立地の見地から見ましても、また当面の農村振興の要請にこたえるためにも、きわめて緊要な課題であると考え、農村地域工業導入計画に関する制度及び税制上、金融上の優遇措置等を中心に、所要の法律案を今国会に提出する予定であります。(拍手)
 次に、総合交通体系の整備が国土総合開発の根幹をなすとの御指摘も全く同感であり、総合交通政策の樹立について、各省庁一体となって、統一的観点から新たに検討を進めております。その財源として積極的に建設公債を発行せよとの御意見でありましたが、そのときどきの経済情勢、財源事情あるいは市中金融の情勢等を勘案し、適切な公債の活用をはかりつつ、社会資本の整備、充実につとめてまいりたいと考えます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(船田中君) 竹入義勝君。
    〔竹入義勝君登壇〕
#10
○竹入義勝君 私は、公明党を代表して、わが国の平和と国民生活を守るために、内外の諸問題について、佐藤総理にその確固たる所信をただすものであります。
 近代国家として新しいスタートをいたしました明治、大正のわが国の基本国策は富国強兵でありました。しかし、富国はそれほど実現せず、ただ強兵のみが着々と具体化し、ついに悲劇的な敗戦を招き、かつての先人が築こうとした富国強兵の栄光の夢は挫折いたしました。私は、このような強兵策が当然おちいるべき宿命であったと思うのであります。そして、敗戦より今日まで、日本民族は再びししとして努力を重ね、新たなる日本の建設を目ざしてまいりました。国民の望んだものは平和と繁栄であり、福祉であったことは言をまたないのであります。
 思うに、今日までわが国は、政治も経済も社会も、おおむね昭和二十年ごろの占領時代に設定されたレールの上を、目標を物質的繁栄の一途にしぼり、ひたすら走ってまいりました。そして、そのレールでは、わが国の平和も福祉も根源的に実現できるものでなかったという反省が今日求められていると思うのであります。(拍手)
 すなわち、形だけの国民総生産は増大し、物質的繁栄は総体的に向上しましたが、それにもかかわらず、物価の上昇は国民生活を破壊せんばかりであります。水と空気は汚濁し、公害は民族の生存そのものにかかわるほどのしょうけつをきわめているのであります。壮麗なるビルはできました。しかし、通勤通学電車は殺人的混雑であります。密集住宅と街路の混雑、騒音、住宅不足、交通事故など、国民の最低生活ラインすら保障されていないというべきであります。農村にあっても、未来をになう青年が定着せず、かつての村落社会は没落しつつあるというべきであります。
 さらに、山積する国内問題に並行して、国際的にもエコノミックアニマルと嫉視され、イエローヤンキーなどと批判され、軍国主義の復活と脅威の対象として非難され、繊維、電気製品など、日米の経済的角逐も激しくなり、いわば自民党政権にとって唯一の友人でもあったアメリカとの間にも冷たい風が吹いてきております。また、近隣最大の国家である中国とは、頑迷なる政府の中国封じ込め方針により依然として途絶状態にあります。
 七〇年代に入った今日、戦後二十五年を経た今日、このような内外の情勢を冷静に分析するとき、かつてのわが国が、富国強兵の国策のもとに国家の栄光を夢みて、結局挫折してしまったごとく、今日の自民党政権は、物質的繁栄、富国の名のもとに国家目標を見失い、国民無視、生命軽視に堕落し、いまや内外に大きなつまずきの原因が累積していると言っても過言ではないと思うのであります。(拍手)
 今日こそ、人間のしあわせ、生きがいという原点に立ち戻り、人間性豊かな平和福祉国家建設のため、これからの成長と努力の正しい目標は何か、国家にとって正しい価値ある目標は何かを考えなければならないときだと思うのでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 さて、先日総理の施政演説を伺ったのでありますが、従来とかく小手先の弁解めいた話にとどまり、未来への展望を欠いたものに比べ、今回の七〇年代を展望されようとする姿勢は、一応前進らしいものと評価してよろしいと私は思います。しかし、この総理の展望は、救いがたい楽観思想と自画自賛のひとりよがりにささえられたものであり、私が先ほど来申し上げた、戦後二十五年間の自民党歴代政権の物質的繁栄至上主義のもたらしたおそるべき弊害について何の反省もなく、ましてや、このような歴史のターニングポイントにさしかかった深刻な認識もありません。なぜわが国が今日国際的にも嫉視されることが多く、軍国主義の復活や経済侵略といわれねばならないのか。なぜアジアの平和と福祉伸長のリーダーとして尊敬されることが少ないのか。なぜ豊富の中の貧困という現象をもたらし、不況感の漂う中での物価上昇というふかしぎなる経済現象が生まれ、社会資本の飛躍的増大あるいは技術の進歩にもかかわらず、生活環境がかくも悪化しなければならないのか。何ゆえ土地が上がり、公害は解決しないのか。さらに、何ゆえ、総理、あなたや自民党政権が政治不信の的となり、政治公害のシンボルのごとく弾劾されねばならないのか。総理、あなたにはこのような諸問題の本質に横たわるものは何かという、みずからの問いかけが欠けているのではないでしょうか。(拍手)
 総理は先日の所信表明で、日本列島の未来像についてるる語られました。その内容は、一見雄大であり、バラ色であり、日本の経済、社会のバイタリティーをあらためて再認識するほどでありました。また、そのように建設と発展が進まねばならないと思うのは私一人ではありません。しかし、私たち国民の生活感情から見て、いかにもきれいごとの印象をぬぐい得なかったのであります。
 昨日、わが党は、かねてより全党的エネルギーを結集して取り組んできた住宅総点検、すなわち民間木造賃貸アパートの結果を公表いたしました。そこには、わびしい、悲惨な、恵まれない庶民の政治に対する不満と衝突が色濃くにじみ出ているのであります。詳細は当該委員会での質問に譲りますが、おもなる特徴を申し上げれば、居住世帯の五一・二%が一部屋であります。一人当たりの畳は二・八畳、台所を炊事場と洗たく場に併用しているのが三〇%、全く太陽の当たらない世帯は二四・八%、火災のとき逃げ場がないと答えた世帯が六〇%、話し声が隣に聞こえる家族が三分の二、子供が生まれたらアパートを出なければならない世帯が二〇%、家賃が平均収入の二〇%以上の世帯が一七・五%、関東では二三・一%、契約期間が二年という短期が約五〇%、二年たって契約更新料をとられたのが三〇%、そのときの家賃を上げられたのが四五%など、列挙すればきりがないので省略しますが、これほど今日なお国民が住宅に困窮し、最低ぎりぎりの生活を強要されているということを具体的に如実にこの総点検は物語っているのであります。(拍手)
 総理がいかに美辞麗句を並べ、国民総生産第二位を誇示されても、いかに雄大なプロジェクトを説かれても、われわれ庶民の生活感情は今日の政治を許そうとしないでありましょう。総理は、この国民の訴えをどのように受けとめられるか。ほんとうの未来像は、物価に苦しめられ、公害に痛めつけられ、住宅に困窮する国民の悲しみと苦しみと対話し、ともに涙するヒューマニズムがなければ、全国民的共感を得られないと思うが、総理の確たる所信を伺いたいのであります。(拍手)
 このことは、さらに老齢人口の増大が急速に進むことによって、重大な社会問題、政治問題になっている老人福祉問題にも言えるのであります。老人福祉年金は、月二千円を、たった三百円の増額でお茶を濁し、特に寝たきり老人やひとり暮らし老人に対する福祉は、きわめて冷淡なものといわねばなりません。これらの施策を充実、向上するのは何よりも重要といわねばならないのであります。さらに、働く意欲を持つ老人に対する職業のあっせん、老人医療の無償化、老人ホームの増設等、今日の社会の発展、繁栄をもたらすために第一線に立って働いてこられた老人に、生きがいと希望を与える老人福祉対策について、政府は今後どのように力を入れていく決意か、お答えを願いたいのであります。(拍手)
 また、懸案の児童手当は、四十六年度末から不十分ながら実施される運びとなり、小さな一歩を踏み出したのでありますが、私は、これを評価するのにやぶさかではありませんが、当初国民が望んでおった義務教育終了前の全児童を対象とするものと比較すれば、きわめて小範囲のものであります。政府は、今後これを拡大充実する考えを明らかにしていただきたいのであります。
 さて、昭和四十六年度予算について、福田大蔵大臣は、景気動向に留意した、公害対策と物価対策に重点を置いたなどと説明をされております。景気動向に意を用いたことは、財界から、財政がやや刺激的色合いが出ており、たいへんよろしいとおほめのことばがあったぐらいでありますから、確かにそのとおりだと思います。
 しかし、これを裏返せば、とりもなおさずきわめて景気刺激的インフレ予算であることを物語っております。特に、財界、大企業からの強い要請による財政の弾力的運用と称する政府保証債発行の弾力条項、予備費と国庫債務負担行為の大幅増額等、まさにインフレ助長の予算運用が財政民主主義を踏みにじって行なわれようとしているのであります。これは、明らかに国民生活の安定や物価の安定等を犠牲にした産業第一、景気刺激優先の政策となり、国民無視がきわめて露骨にされております。
 公害にも力を注いだと言われておりますが、一般会計九百二十三億円の公害対策費の三分の二は下水道整備の補助金であり、純然たる公害対策費は皆無にひとしいのであります。また、残りの三百億円のほとんどは大企業に対する補助であり、公害被害者の極端な冷遇といわれてもやむを得ないと思うのであります。
 前臨時国会で、野党が、公害を撲滅し、生命を守り、自然環境を整備するための追及をいたした際、与党推薦の参考人ですら、野党の案が正しいと評価されておるのであります。(拍手)
 環境保全基本法ほか一連の対案には政府は一顧だにしなかったのであります。無過失損害賠償責任制度についても、本国会で何らかの結果をわれわれは期待しておりましたが、口をぬぐって全く無視しておられます。総理は、無過失責任をどう制度化するよう考えておられるか、重ねてお伺いをしたいのであります。
 われわれは、前国会で成立した十四法案が、数多くの欠点、つまり大企業への遠慮と、生命軽視の傾向が濃厚であったことをいろいろな角度から批判し、その代案を提出いたしました。さらに、このような法案が、予算の十分な裏づけなしに実施されることになれば、地方公共団体への負担限度をはるかに越えた財政的しわ寄せとなり、中小企業の死活にかかわる負担になることを憂慮いたしてまいりました。
 今回、予算案を見たとき、公害対策推進のため、政府は一体どれほどの誠意をもって臨んだであろうか。何の誠意もないといわざるを得ないのであります。(拍手)また、地方公共団体にはどれだけの財政援助をされましたか。このような貧弱な予算でほんとうに公害がなくなると総理はお考えでしょうか。しかと伺っておきたいのであります。(拍手)
 次に、国民生活の優位を確保するために最も重要なことは、物価の安定であります。
 四十六年度の政府の経済見通しは、経済成長を名目一五・一%、実質一〇・一%とし、これに対し、消費者物価騰貴を五・五%としております。しかし、四十六年度予算案で見る財政政策が、どこから見ても企業の救済と景気刺激の要素に偏重していることから、今日すでに七%をこえた消費者物価の騰勢を鎮静し、五・五%に押え得る保証は見当たらないと断ぜざるを得ないのであります。
 政府の経済成長政策によって高進されてきたわが国の異常な物価高騰が、国民生活の上では、むしろ経済成長の代償としてマクロ的な国民所得の向上の中で吸収されるという政府の甘い考えの中で騰勢を強めてきたことは、いなめない事実であります。経済最優先の政策による物価の高騰が、国民大衆の生活の物心両面に重大なる被害を及ぼし、また物価の高騰は、住宅建設や生活環境の整備をおくらせ、行政需要の消化を停滞させ、ひいては今日の三K問題にまでも及ぼしていることを政府は深刻に反省をすべきであります。
 そこで、物価対策予算を見てみますと、前年より二〇%増の千二百五十億円となっておりますが、その大部分、すなわち一千億円以上も公営住宅予算や地下鉄工事費が物価対策の名で計上されているごまかしであって、何ら物価対策に見るべきものがないのであります。小規模な個別的物価対策の寄せ集めにすぎないものであり、物価対策の具体的きめ手である低生産部門への集中投資、流通コスト低減の抜本対策などは、何ら手をつけられていないではありませんか。ましてや、独占的管理価格を取り締まるための、有効かつ積極的な独禁法の適用のため必要な改正も提案されていないのであります。昨年来、経企庁長官が公共料金凍結の提案をされ、われわれは重大な関心を持ってこれを見ておりました。結局、厳に慎むというしり抜けの申し合わせにとどまり、郵便料金、電報料金、医療費などの値上げが確定的となってしまっております。しかも、全国消費者の激しい反対にもかかわらず、消費者米価を抑制してきた物価統制令の適用をはずして、消費者米価の値上がりを黙視していることは許せないことであります。総理は、物価の安定を何ら真剣に考えていないと非難されてもやむを得ないと思うのでありますが、どのように物価を抑制される決意がおありか伺いたいのであります。
 さらに、経企庁長官は、とかく所得が増大すればよいといろ所得至上主義から脱却せよ、所得水準の上昇が早過ぎることに物価上昇の一因があったと先日申されましたが、今日、賃金上昇が物価騰貴の原因であり、物価対策に名をかりた賃金抑制をもくろむ危険な動きが政府部内にあるといわざるを得ません。また、財界はこれに大いなる期待を寄せているのであり、このように、大型景気の挫折、景気停滞からの脱出を、安易なインフレ政策と所得政策に依然として求めようとする財界人の姿勢は許されるものではありませんが、このような所得政策に総理はどのようなお考えをお持ちか、しかと伺いたいのであります。
 日本経済が今後安定した発展を遂げていくためには、先に述べました基本的な問題をはじめ、公害防止、物価問題、都市問題等の国民の生活と生命を守る重大な課題を解決していかなければなりません。また、それと同時に、抜本的な解決を引き延ばしている農業の構造改善、国鉄の合理化、行財政改革などの問題にも、根本的に取り組まなければならない段階にきております。
 これらは、いずれも単なる予算編成上の課題というよりも、国としての基本政策をいかに進めるかというものであります。政府は、国の基本政策を明確にせず、大きな問題に取り組むことはすべて回避し、きわめて不合理な予算案となったことについて、私は、政府の責任を追及するとともに、総理の責任ある答弁を求めるものであります。
 昨一九七〇年は、激動と変革の七〇年代の幕明けにふさわしく、内外とも波乱に満ちた重要諸問題が提起されました。中でも、中国の国際社会に投げかける影響力はますます増大し、いまや、中国を抜きにして世界の政治、国際政策の立論が困難になってきたのであります。わが国といたしましても、少なくとも、アジアにおけるあるべき平和な国際政局の理想像を明確に打ち立て、しかも、国際社会のメカニズムを踏まえた、現実的かつ具体的な外交政策をもって対処していかねばならない時期が来ているのであります。
 しかるに、過日の施政方針演説の中においても、何ら前向きに現状を打開しようとする意欲も方策も見当たらず、いたずらに日米協力体制の強化をうたい上げ、従来のアメリカ追随、主体性なき外交、すなわち、中国敵視、締め出し政策から一歩も前進していないことは、もはや無策を越えて、日本の将来にとって重大なる政治的責任というべきであろうと思うのであります。
 それは次の事実によっても指摘されるのであります。すなわち、総理は年頭の記者会見において、日中国交回復を議題として大使級会談を引き続き呼びかけていく旨を表明されました。ところが、総理は一月四日の記者会見において、中国問題は二国間での処理はできない、韓国、台湾、アメリカ、ソ連などの意向がきまらないと中国問題は片づけられない、と後退し、さらに一月十一日発行のビジネス・ウイークによれば、中国との正式国交回復問題について、私が政権を握っている間は変化はない、と国論に逆行するごとき発言があったと報ぜられております。
 このように、総理の考えが変転する、しかも、そのたびにうしろ向きになっていくということは、今日わが国外交の最重要課題を解決する能力もなければ、国民世論をまっこうから受けとめる誠意もないと断定せざるを得ないのであります。これらの発言について、その真意を端的に伺いたいのであります。
 さらにその反面、一見前向きのごとき印象を与える対中国との経済その他の交流などの発言もあり、総理は、対中国政策に何らかの実質的内容を持った変更のための検討を始める決心がおありかどうか、お答えをいただきたいのであります。もし検討されるおつもりありとするならば、どういう点をどのような方向で検討されるか、御説明願いたいのであります。
 この大使級会談の呼びかけは、呼びかけるだけでは何の意味もないし、実現もされないでありましょう。そのためには、わが国政府の国交回復のための基本的立場を明らかにしなければなりません。その基本的認識で重大なことは、中国の正統政府は台湾であるか、中華人民共和国政府であるかについてであります。総理は、中国を代表する正統政府は中華人民共和国か、台湾か、どのような認識を今日持っておられるか、お答えをいただきたいのであります。客観的にも、また国際的にも、中華人民共和国が中国を代表する正統政府であることは、もはや自明のことと思うのであります。
 佐藤総理が中国との国交正常化に踏み切ることのできない理由について、具体的にお尋ねをしたいと思うのであります。
 それは、一つはアメリカ、一つは台湾に対する顧慮があり、その根本にあるものは、アメリカに対する最も強い追随にあることは、施政方針演説においても明らかであります。
 したがって、質問の第一は、対中国関係の現状打開は、アメリカの対中国姿勢の変更のない限り日本独自の日中友好関係はあり得ないのかどうか。
 さらに第二は、日華条約締結に際して、中華人民共和国を捨てて台湾を選んだ一九五一年のダレス大使あての吉田首相の書簡の効力について、現在政府はどのような位置づけを行なっているか。また、これが、わが国の中華人民共和国承認の阻害要件となり得るものと思うのでありますけれども、どのようにお考えになっているか、御説明を願いたいのであります。
 これとともに、輸銀使用取りやめの張群あての吉田書簡に対し、日華条約の補完文書であるとの価値づけをした蒋介石の発言に、政府はおろかにも現在まで同調しているとしか思えないのでありますが、これを明確に否定を表明される気持ちがあるかないか、伺いたいのであります。
 佐藤総理は、日台間に結ばれている日華平和条約をもって、日中の戦争状態は終結したと説明しているのでありますが、すでに日華平和条約締結の時点において、中国大陸において中華人民共和国が樹立されておったのでありますが、わが国は、ダレス・アメリカ大使のどうかつ外交に屈服して、台湾との平和関係を結びました。しかし、このアメリカの圧力のもとで、吉田元首相のその最低限度の抵抗とも見られる条約締結の交換公文においては、蒋介石政権をもって直ちに全中国を代表する政府とはみなさないことを確認しているのであります。これは吉田首相の国会答弁にも明らかであります。にもかかわらず、その後、自民党歴代政権は、台湾を全中国の代表とみなす虚構の上に立って、次々と中国との対立を深める外交政策をとり続けてきたのであります。
 それを列挙するならば、一九五七年岸訪台の際における蒋介石総統の本土反攻を激励、また、日中貿易を困難ならしめている吉田書簡、国連における中国代表権問題でのたな上げ論や重要事項指定方式など、中国締め出し政策を積極的に推進し続けてきた態度、さらには、佐藤・ジョンソン並びに佐藤・ニクソン共同声明など、一連の中国敵視の事実は否定することができないと思うのであります。
 今日の日中問題をいたずらに複雑ならしめている原因は、あげて歴代自民党政府の、現実を無視した、これら虚構の上に構築してきた対中国政策にあることは明らかだと思うのであります。(拍手)
 私は、わが国がいま最も確立をしなければならない問題は、これらの虚構をすみやかに放棄し、中国を代表する正統政府は、台湾ではなく、中華人民共和国であるとの方向を明確にすることであり、最も急がねばならないのは中華人民共和国の承認であり、もはや論議の段階から、実行するべきときにきていると思うのであります。
 ここで私は、いま直ちに実行可能な若干の提案をいたしたいと思うのであります。
 その第一は、国会において次のような宣言ないしは決議を行なうことであります。
 初めに、今日日中国交正常化を望む声は、与野党議員を問わず、すでに国民的要請となりつつあります。いまこそ、中国を代表する正統政府は中華人民共和国政府であり、これと国交正常化を急ぐべきであるとの内容の決議案を本国会で採択されることを、われわれは期待しているのであります。(拍手)
 次には、中国国民に対し、また中国国民がつくり上げている国に対し、わが国は絶対に武力を行使することがないという宣言を行なうことであります。わが国の平和憲法の精神からいって、侵略のための武力行使を放棄しているのであるから、その必要はないと言われるかもしれませんが、日本からの長い侵略の歴史を経験してきた中国にとっては、武力不行使の宣言は、将来平和条約締結に際しても当然要求するでありましょうし、わが国は、国是としての武力不行使の宣言は、重複してもそれを行なって決して不都合なことではないと信ずるのであります。(拍手)しかも、中国をはじめ、東南アジア諸国、アメリカでさえ危惧するわが国の軍国主義復活のイメージを払拭する機会でもあると思うのであります。
 その第二は、内政不干渉の原則を確認し、それを明確に意思表示することであります。国連憲章並びに万国国際法のたてまえからいっても、内政不干渉の原則は当然であり、わが国が他国よりの内政干渉を拒むのは当然であると同時に、他国への内政不干渉を明確に意思表示すべきであります。
 第三は、国連における中国代表権問題について、事実上中国の国連復帰を妨害する重要事項指定方式等の小手先の詐術的技巧を排することであります。少なくとも提案国となったり、一切の妨害工作に参加しないことであります。
 第四は、輸銀使用を取りやめた吉田書簡を廃棄し、日中政府間貿易の方途を早急に開くべきであります。
 第五には、台湾に対する借款供与を取りやめ、民間投資を制限する行政指導等を行ない、これ以上台湾との関係に深入りしないことであります。
 第六には、日中国交回復の機運に対し、何らかの制約を加える等の政治的工作を弄しないことであります。議員連盟参加の与党議員に対する何らかの制限的行為をはじめ、中国との人的交流に対して大幅な門戸開放などがその一例であります。
 政府は中国の要人来日を歓迎する用意があり、わが国政界首脳との会談をも考慮していると伝えられますが、中国要人の来日が与党ないしは民間団体の招聘によるものでも大幅に許可を与えるかどうか、お答えをいただきたいのであります。(拍手)
 かくて醸成された日中国交正常化の機運は、必ずやアジアにおける日本の立場を国民的に自覚させ、中華人民共和国との国交回復は急速に達成されると思うのであります。
 以上、私の提案について、総理の所見を伺いたいのであります。
 総理は、アメリカや台湾の意向を気にしておられ、たてをついてはいけない、それが今日までの自民党政府の外交論理だったと思われるのであります。それが追随、盲従と批判されるゆえんでありまして、主体性なき外交は結局国民によって葬られてしまうでありましょう。
 私は、アメリカのすることにいろいろな注文はある、要求もある。しかし、アメリカという名ですべてを悪と決定するかのごとき反米主義者ではありません。国民もそれを望んではいないと思います。しかし、総理はあまりにも無定見、無原則に盲従しているとしか私どもは言えないのであります。(拍手)むしろわが国が米中和解の橋渡しをすることこそ真の平和への貢献だと確信するものでありますが、総理の信念を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、日米安保並びに防衛問題についてお伺いいたします。
 ニクソン・ドクトリンに基づく昨年十二月の日米安保協議委員会での在日米軍の撤退、在日米軍基地整理の発表は、アメリカの極東戦略体制と対日政策の変化を示すものであります。
 そこで、お伺いをするわけでありますが、政府は一連の米軍の撤退をどう考え、将来の方向性をどのように判断しているかを説明されたいのであります。
 政府は、これまで自衛の名のもとに、わが国憲法の精神を無視して、三次にわたる防衛計画を強行し、さらに国民一世帯当たり二十数万円もの負担をしいる、実に五兆八千億円にものぼる第四次防衛計画を策定し、これを昭和四十七年度より実施しようとしているのであります。いままた米軍の撤退を理由に、さらに大幅の軍事力の増強を国民に押しつけるのではないかと危惧するのは私一人ではありません。わが国の軍事力はすでにアジアにおいてはトップクラスであり、軍事費としても世界有数の国家となりつつあることは、これまで数多くの人が指摘をしておる次第であります。しかも、世界の趨勢は軍事費の削減の方向となっておる今日であります。わが国だけが、いかなる理由によって、こうまで軍事力増強を必要としなければならないのでありましょうか。
 佐藤総理は、経済大国にはなっても軍事大国にはならないと、昨年の国連総会におきまして演説をいたしましたが、すでに軍事大国になりつつあるとの非難があることを総理はどのように考えておられるのか。いわれなき誤解だと総理は考えておられるのか、伺いたいのであります。
 私は、日米軍事同盟体制のもと、米軍のアジアよりの撤退の肩がわりとして自衛力の増強が行なわれるものと理解せざるを得ないのであります。そうでないと言われるならば、なぜわが国が軍事力をこのように強化しなければならないのかという、その具体的根拠は何か、すなわち国際情勢の分析とわが国を取り巻く脅威の実体を明確にしなければならない責任があると思うのであります。この点をあいまいなまま、果てしなき軍事力増強を実施することは許されないということを知らなければならないと思うのであります。(拍手)いわば、まぼろしの脅威に対し軍事力を増強することほど危険なものはないということは、われわれ全国民が数次にわたる悲惨な世界大戦の結果得た貴重な体験であります。
 また、米軍基地の整理縮小が急速に進められようとしております。しかし、これまで返還された米軍基地のほとんどは、自衛隊が継続使用するか、または米軍の随時再使用の利用を留保したものとなっております。わが党が再三にわたって実施した米軍基地の総点検の結果はすでに発表したとおり、米軍基地返還後の民間利用度はきわめて大きいのであります。政府は、返還された米軍基地は、自衛隊の継続使用とか米軍再使用の条件つきではなく、国民の利用に供すべきであると思うが、総理の所信を伺いたいのであります。
 さらに、地位協定の改定もなく、基地使用権を保留し、常駐しない米軍基地をそのままにしておくことには重大な疑問があります。自衛隊との共同使用ということとも性格が異なる事態であることは明らかでありますが、政府は地位協定との関連をどう理解しているか、また地位協定の改正を考えているかもあわせて承りたいのであります。
 次に、沖繩問題についてであります。
 沖繩の一九七二年祖国復帰を目ざし準備が進められておりますが、約六百件以上にものぼる復帰後の本土法の適用、基地の取り扱い、アメリカの資産、基地経済、通貨の切りかえ、対米請求権等々の困難な諸問題が山積されております。こうした中で、県民の意思がはたして十分に反映されているかどうか疑問を抱かざるを得ないのでありますが、沖繩県民が要求する平和で豊かな沖繩県建設のための具体的な青写真がいまだ明確にされず、沖繩県民は、祖国復帰に対し強い不安を持っているのであります。しかも、コザ事件、毒ガス移送問題に象徴されるように、県民は抑圧された米軍占領政策に対する忍耐ももはや限界に来ております。まさに世界に類例を見ない長きにわたる異民族による人権無視と、不当な軍人優先の占領政策と、これを全面的に容認し、復帰を目前にした今日でさえ、何らこれを解決しようとしない本土政府の責任は、当然に追及されなければならないと思うのであります。私は、政府に対し、復帰並びに復帰後の諸問題に対し誠意をもって当たるべきことを強く要求し、政府の責任ある見解を承りたいのであります。
 特にこの際ただしておきたいことは、返還後の沖繩米軍基地の自由使用についてであります。
 われわれは、基地の全面撤去を要求しておりますが、アメリカ政府は、今回、沖繩米軍基地を返還後も自由使用できる取りきめを日本政府に申し入れたと聞いております。これを裏づける、さきの米上院におけるジョンソン国務次官の証言、さらに、最近の米海兵隊司令官の談話等から考えて、きわめて重大な問題であります。おそらく政府はこれを拒否すると思いますけれども、政府の見解を明確にお示しをいただきたいのであります。
 また、お尋ねしたいことは、沖繩返還協定の調印、さらには、日米両国における返還協定批准のための日米両国会の審議の時期についてであります。
 伝えられるところでは、返還協定の国会審議の時期は、アメリカ国会の審議に先立って行なう予定であると聞くのであります。すなわち、佐藤。ニクソン共同声明に関するアメリカ上院のジョンソン米国務次官の証言問題等から見て、沖繩返還に関する秘密事項が次々と明るみに出てくる心配があって、アメリカ国会の審議より以前に国会審議が行なわれるといううわさでありますけれども、このような事態が起こらぬというのであれば、日米両国会並行して行なうようにすべきであると思いますが、総理の見解を承りたいのであります。(拍手)
 以上、内外政の基本問題に関し質問をいたしましたが、総理の明快なる答弁を求めるものであります。
 これをもって私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 私は、竹入君の代表質問演説を聞きながら、国家とは一体何か、個人とは何かということを、あらためて考えた次第であります。竹入君もそういう問題点に立ち返って、数々の質問をされたと思うのでありますが、政治の努力目標と、現実に政治が果たしている実績との間には、かなりのギャップがあることは、私もこれを率直に認めざるを得ません。今日のような多様化した社会にあって、政治は万能ではなく、国民生活の細部にわたって施策の行き届かない面も多分にあります。しかし、少なくとも民主主義という、一見回りくどい手段によって平和を維持し、法秩序のある社会も形成し、日一日と前進を続けている、それが日本だと思うのであります。その中にあって、長期展契を持つと同時に、現代社会の諸問題に真正面から立ち向かい、可能な限りの努力をして、人間のしあわせと生きがいを追求していくことこそ、新しい政治の使命であると考えるものであります。(拍手)その意味において、公明党の住宅総点検についての努力と熱意には深く敬意を表し、政府の施策の重要な参考にしたいと思います。
 次に、竹入君から、政府保証債の弾力条項、予備費並びに国庫債務負担行為の増額等は、インフレ助長の財政運営であるとの御批判がありました。四十六年度予算においてこれらの措置を講じましたのは、経済情勢に機動的に対処し、国民生活の安定をはかることを眼目としているものであります。また、経済成長率と財政支出の伸び率のかね合いから見ても、四十六年度予算は中立機動型にふさわしい適切な規模と弾力性を持つものであり、御批判は当たらないと考えます。
 また、物価対策予算が名目的なものにすぎないとの御批判でありましたが、一方において、竹入君御指摘の、低生産部門強化のための集中投資は、農林予算や中小企業対策費として別途計上されているものであり、抜本的対策に何ら手をつけていないという非難は当たっておりません。物価の抑制がきわめて困難なことは、物価問題の基本が低生産性部門に根ざしていることに大きな原因があり、問題が経済の構造的要因に基づくものだけに、政策効果が直ちにあらわれにくい点にあります。
 物価抑制の方向についてお尋ねでありましたが、その基本的方向は、さきの施政方針演説において明らかにしているとおりであり、今後の課題はその実行であると考えます。政府としては、果断にその実行に取り組んでまいる決意でありますので、この機会に、各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。
 次に、四十六年度予算は公害対策を軽視しているとの御意見でありましたが、決してそのようなことはありません。下水道整備事業は、公害対策としてきわめて重要な分野を担当するものであり、下水道事業を除いたものが純然たる公害対策費であるという竹入君の論旨は、いかがなものかと私は考えますし、いわんや、それが皆無にひとしいというのは、実情を誤って説明するものであります。騒音対策事業等の公共事業費や研究開発費、さらには監視、取り締まり体制の整備等についても顕著な充実ぶりを見せていることを、よく御理解いただきたいと思います。また、第一線の公害行政を担当する地方公共団体や財政力の弱い中小企業の行なう公害対策についても、十分その資金的裏づけについて配慮しております。大企業中心の公害対策と言われるのは、全く当たっておりません。このこともよく御認識いただきたいと思います。
 私は、四十六年度予算によって、竹入君の言われるように、直ちに公害がなくなる、さようなものとは考えませんが、公害行政が顕著な充実を見せるであろうことは、確信を抱いております。新しく設置することとした環境庁も公害行政の一元化に資するものであり、公害行政の前進に大きく役立つものと考えております。
 なお、無過失責任の問題については、近代法の大原則である過失責任の原則の例外となるものであるから、公害の実態、企業活動の実態に即し、慎重に検討を進める必要があるのであります。
 なお、国としての基本政策を欠いた不合理な予算であるとの御批判につきましても、はっきり、ノーと申し上げておきたいと思います。(拍手)
 農業の方向にしても、国鉄合理化にあたっての課題についても、しばしば申し上げているとおりであります。むろん問題によっては、結論を得るに至っていないものもあります。しかしながら、そのような問題についても解決の方向を洞察し、近く得られるであろう打開策の第一歩としての意味を十分持ち得る予算内容として盛り込んだものであります。私は、きわめて合理的な予算であると確信するものであります。何とぞよろしく御審議のほどお願いをいたします。
 次に、最近における著しい人口構造の変動に伴い、急速に人口が老齢化しつつあり、老人福祉の問題がますます重要なものとなっていることは、さきに施政方針演説においても指摘したとおりであります。四十六年度予算の編成にあたっては、十分この点に配意したものであり、新しくひとり暮らしの老人対策として、相談電話の設置、疾病時の看護人派遣に対する助成、老人の生きがいを高めるための老人社会奉仕団活動の助成を行なうとともに、寝たきり老人対策として在宅機能回復訓練を実施するなど、きめこまかい配慮を払ったものであります。さらには、特別養護老人ホームの大幅整備をはかるなど、四十六年度予算をよくごらんいただければ、老人に対してきわめて冷淡であるという非難は全く当たらないことをよく御理解いただけると思います。
 なお、老人医療の無償化について御提案がありましたが、社会保険審議会において、老人医療は公費負担によるべきであるという意見が強いことは、私もよく承知しております。しかしながら、一方において、医療保険制度の抜本改正の一環として老齢保険制度の創設が議論されているところであり、この問題についてはなお慎重に検討したいと考えます。
 なお、当面、老人医療問題の改善をはかるため、四十六年度予算において、健保の給付内容につき、老人及び長期勤続者を対象として改善措置を講じたことを申し添えておきます。
 次に、児童手当についてでありますが、かねて懸案であったこの制度が、多くの困難を押し切って新しく発足することになった、これまでの間の各位の御鞭撻に対して、まずこの機会にお礼を申し上げておきます。竹入君からは、一応の評価を与えられながらも、なおその内容が不十分であるとのおしかりでありましたが、財源の問題あるいは制度の円滑な発足と適確な実施をはかるため、最も適切妥当なものとして、四十七年から四十九年にかけて漸進的、段階的に実施することを考えたものであります。
 日中問題についての政府の考え方の基本は、すでに述べたとおりであります。政府としては、中国は一つであると考えており、いわゆる二つの中国の方式をとる考えはありませんが、それぞれ正統政府であると主張する二つの政府が現実に存在することは否定できない事実であります。政府としては、今後中国問題にどのように対処するかについては、中国をめぐる国際情勢の動きを見きわめつつ、わが国の国益をはかり、極東の緊張緩和に資するという観点から、慎重に対処していく所存であります。
 なお、政府としては、一九五二年以来、中華民国政府を中国の正統政府として認めていることは御承知のとおりであります。
 次に、日中関係の改善は、わが国と中華人民共和国との問題であるがゆえに、わが国独自の努力が必要であることは言うまでもありません。わが国の中国政策は、わが国外交基本政策の一環として打ち出されるべきものであります。したがって、わが国としては、日中関係改善を考える際、米国をはじめ、わが国と友好関係にある諸国とわが国との関係に悪影響を及ぼさないよう(「慎重、慎重」と呼ぶ者あり)慎重に配慮することは当然であります。よく御理解をいただけてありがとうございます。
 次に、一九五一年十二月、吉田総理が米国のダレス大使あてに発出したいわゆる吉田書簡は、当時の日本政府が、わが国と中国との正常な関係を再開するための二国間条約の相手方としては、北京政府ではなく、戦争を開始したいきさつもあり、国民政府を選ぶべき旨の意向を明らかにしたものであり、これに基づいて、翌一九五二年に日華平和条約が締結されたことは御承知のとおりであります。つまり、この吉田書簡は、その当時の政府の考えを明らかにしたものであって、いわば歴史的な文書であります。したがって、この書簡は、今後のわが国と中華人民共和国との関係を阻害するような性質の文書ではないと考えます。(「さっきの答弁と違うじゃないか」と呼ぶ者あり)
 なお、もう一つ、はっきりさせたいことは、いまのような誤解がありますから申し上げますが、昭和三十九年の吉田書簡につきましては、これはしばしばこの機会、あるいはその他の機会でも申し述べましたように、いわゆる吉田首相の個人的な私信でありますから、したがって、この書簡は条約や協定のように政府を拘束する政府間の取りきめでないので、放棄するとかしないとかの問題は生じない、さように御了承、御理解をいただきたいのであります。
 次に、竹入君から、中国問題の方向づけを国会で決議せよとの御提案がありましたが、そのようなことが適当であるとは私は考えておりません。
 また、中国に対する武力不行使宣言につきましても、わが国憲法のたてまえからも、ことさらその必要はないと考えます。
 また、相互の立場尊重と、内政不干渉の原則のもとに日中関係の改善をはかっていく方針については、従来どおり変わりありません。
 国連における中国代表権問題については、さきの質問にお答えしたとおり、今後の情勢の推移を見きわめ、慎重に対処いたします。
 次に、国府に対する経済援助でありますが、中華民国は工業化計画を中心とする経済発展に努力しており、わが国に対しても各種の経済協力を要請しております。中華民国と友好関係にあるわが国として、可能な限りこれに協力することは当然であり、政府としては、台湾の経済発展と民生の安定に寄与すると認められる個々のプロジェクトに対しては、借款その他の面で協力していく考えであります。
 また、台湾に対する民間投資については、台湾がわが国にとってきわめて近い隣国であるのみならず、経済的にも相互補完関係にあることから見て、民間の分野における経済協力が行なわれることはむしろ自然の流れであり、政府がことさらに制約を加えるとか、あるいは大いに奨励すべき性質の問題ではない、かように考えております。
 政府としては、中国問題は、今後の国際政治においても、また今後のわが国の外交という面から見ても、きわめて重要であると同時に、困難な課題であることを十分承知しており、したがって、中国問題に関しては、各方面の建設的な意見を虚心たんかいに聞く用意があります。
 また、政府としては、日中間の人の交流については、これが日中間の相互理解を促進するものであるという見地から、一貫してこれを促進してまいりましたし、今後も、わが国の国益を著しくそこなうおそれがあると認められる場合を除いては、広く門戸を開放していく考えに変わりはありません。
 また、中国大陸との各種交流の活発化は、政府の望むところでありますが、竹入君の御提案のように、それが両国民の相互理解に役立つ人事交流、これは政府としてもこれを歓迎するものであります。
 米中和解の橋渡しをしろ、こういうお話がありましたが、また、政府としては、米中を含め、すべての国が平和裏に共存することが人類の理想であると考えており、そのため、わが国としても、なし得る限りのあらゆる外交的努力を傾けたい所存であります。なかんずく、アジアにおいては、わが国及び米、中、ソの四カ国が、平和で友好的な関係を樹立することが重要であると考える次第であります。
 今回、在日米軍の一部削減が行なわれることとなりましたが、これは日米安保条約のワク組みの中の動きであって、これによって日米安保体制が変質するものではありません。今回の措置によって在日米軍の兵力が一部削減されても、なお相当の米軍がわが国に駐留しており、また、適当な規模の米軍施設が保持され、日本側施設の共同使用も可能でありますから、米国の核抑止力の存在と相まって、わが国の安全保障上重大な支障があるとは考えません。
 わが国の防衛力は、現下の複雑な国際情勢のもとでは、わが国の独立と平和を守るためにはなお十分な体制にあるとは言えません。最近の国際情勢から見て、わが国に対し差し迫った脅威があるとは考えませんが、万一の事態に備えることは当然であります。また、現代の防衛力は、科学技術の進歩に伴い、一朝一夕に整備、運用し得るものではないので、専守防衛の体制確立を本旨とし、国力、国情にふさわしい防衛力を整備するものであることを特に御理解いただきたいと思います。(拍手)
 今回の米軍の整理、縮小に伴い、幾らかの施設、区域が返還されますが、政府としては、その多くを引き続き防衛施設として維持することが必要であると考えております。その場合でも、防衛目的以外の利用、地元との関係を考慮することは当然でありまして、政府としては、総合的判断の上、今後具体的な措置をとる所存であります。
 また、政府としては、地位協定を改めることは考えておりません。
 政府は、明年中のできるだけ早い時期に沖繩返還を実現するとの基本方針にのっとり、本年春から夏にかけて協定署名の上、本年内に国会の承認手続を完了したいと考えております。そうして平和で豊かな沖繩県づくり、これを発足したいと思います。
 なお、米側の国内手続については、政府として意見を申し述べる立場にはありませんが、なるべく早く完了することを期待しているということであります。おおむね両者の交渉は順調に進んでいる、かように聞いております。
 また、この返還にあたりまして、いままでの沖繩の基地が特殊な扱いを受けるとか、あるいは自由発進が認められるとか等について政府の意向を確かめられましたが、沖繩が本土に返ってくれば、当然日米安全保障条約、その地位協定、その中の取りきめがそのまま行なわれるのでありまして、アメリカも沖繩を返す以上、特別な権利を留保するというようなことはございません。その点だけ、御心配のないようにお願いしておきます。
 以上であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#12
○加藤六月君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#13
○議長(船田中君) 加藤六月君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
       運 輸 大 臣 橋本登美三朗君
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 佐藤 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 西田 信一君
        国 務 大 臣 保利  茂君
        国 務 大 臣 山中 貞則君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
ソース: 国立国会図書館
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