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1970/01/26 第65回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第065回国会 本会議 第4号
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1970/01/26 第65回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第065回国会 本会議 第4号

#1
第065回国会 本会議 第4号
昭和四十六年一月二十六日(火曜日)
 議事日程 第四号
  昭和四十六年一月二十六日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
   午後二時四分開議
#2
○副議長(荒舩清十郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
#3
○副議長(荒舩清十郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。佐々木良作君。
    〔佐々木良作君登壇〕
#4
○佐々木良作君 私は、去る二十二日の総理の施政方針演説に対しまして、民社党を代表して、若干の質問を行ないたいと存じます。(拍手)
 佐藤総理は、わが国政治家として前人未踏の長期政権を立てられまして、失礼ながら、いま、その最終のコースに立っておられると存じます。
 六年前、昭和三十九年十一月十日、第一次佐藤内閣の組閣に成功されるや、胸を張って記者会見を通じて最初に国民に約束されたものは、池田内閣の所得倍増政策から人間尊重の佐藤政治への切りかえの宣言でございました。にもかかわりませず、いまや、当時に倍する公害と物価高と過密過疎の非人間的社会動向の中で、国民の集中的批判を浴びておられます。
 私ども野党もまた、政権交代によって政治を転換し得なかった責任を痛感いたしながら、いまや議会政治への疑いさえ含んだ政治不信に対処すべきぎりぎりの段階に立たされておることをはっきりと自覚いたしておるものであります。(拍手)われわれは、意見の相違にもかかわりませず、国民の要望に率直に応じ、山積する難問の解決に向かって全力を傾けなければなりません。
 私は、佐藤政治が仕上げの段階に入っておることをはっきりと意識しながら、具体的な問題から質問をいたしたいと存じます。
 それに先立って、総理の施政演説が直接国民に協力を求められるものでありましたので、国民の側からの要請もまた一、二紹介をいたしまして、これに対し、総理からその人たちに直接お答えをいただくことをお願いいたしたいと存じます。いずれも、はなやかな成長路線に取り残された陰の、あまりにも人間的な訴えであるからであります。
 その一つは、一老人からのものでございます。
 「七十歳をこえた私は、病気がちで、安楽往生を望むだけです。若いときに一生懸命働いてためたお金も、物価が天井知らずに上がるばかりで値打ちが下がり、使いようがなくなってしまいました。医療費が心配であります。新聞のいう、国民総生産第二位、国民所得第十六位というのがふしぎでなりません。外国で行なわれている老人の医療費をただにすることが、いまの日本にできぬわけがないと思います。どうか、今度の国会で、臨時国会のときのように与野党一致してこの問題を解決してください。
 それから、欲ばりのようですが、もう一つ、七十歳を過ぎたので、当然老齢年金がもらえるものと思って役場に参りましたところ、むすこが会社でいただく月給と少しばかりの農業収入の合算がほんのわずか超過したということで、年金をもらえませんでした。若い夫婦にたびたび小づかいをもらうことは、まことにまことに心づらいものでございます。どうかお察しください。法律を改正してください。拝みます。」とありました。
 総理は、昨日の質疑応答で、来年度予算でのきめこまかい老人対策を自賛されましたが、その中で老人ホームをまた最も強くうぬぼれて自慢をされたところでございました。しかし、老人ホームの予算は、いますぐ入りたいし、厚生省も入れてやらなければならぬと考えておられる老人の数が二十一万人いまあるというのに、来年度予算はその一万人分でしかありません。きめのこまかさよりも分の薄さを嘆かざるを得ないのであります。総理が御自慢なされるほどのものではございません。
 新聞報道によりますと、厚生省は、老人医療をただにしようという計画を四十七年度から実施したい方針のようでございますが、せめて総理から、この老人へのお答えをもって、明らかにこの内容を御答弁の中に入れていただければ、まことに幸いと存ずるものであります。(拍手)
 もう一つ、恐縮ですが、ある過疎地帯の学校の先生の奥さんからの訴えでございます。
 「いまや、古い村組織は完全に崩壊しました。集会や日役ができませんし、何より困ることは、総代さんになり手がないことでございます。けれども、まだ新しい町社会も成立していませんし、近い将来成立する見込みもございません。なぜなら、それをになうべき若者、中堅青壮年が村にいなくなってしまっているからでございます、出かせぎと往復七時間もかけての通勤のために。
 こういう村の実態の中での主婦の立場はたいへんに困難なものでございます。主人にかわっての村人や近所とのつき合いごと、日役、冠婚葬祭、消防など。役場や農協への仕事も多いし、子供の育児、学校のこと、そして主婦としての家庭の世話のほかに、それよりも一番大切な収入の源、野ら仕事、その中心は米づくりでありますが、これと内職とでございます。主人の出かせぎ所得は、失業保険を含めて四、五十万円、そして米収入は二十万円程度、これが年間のきまった定収入で、それを主婦の内職、日に四百円、月八千円程度で補わなければなりません。この内職のため、主婦はほんとうに骨身を削るのでございます。
 このようにして、過疎地域の生活の集中的しわが主婦に向かってくるので、四、五十代の主婦はみんな慢性の過労で、農夫症や早老の状態にあります。米づくりがだめになれば定収入の一部が失われ、この状態は一そう深刻になると存じます。」云々。
 そして最後にお願いとしまして、「一、過労の農家の主婦に対して、定期的に健康検査、診断をするようにしてください。二、何とかもっと近くに男の働ける安定した働き場所をつくってください。三、米づくりにかわる農業のやり方をはっきりと教えてください。」と要望がつけ加えてございました。
 過疎化ということは、単に人口が減るということだけではなく、家も田畑も、したがって農村自体も存在しておるのに、一家の働き手の中心である男がいなくなるということであります。福祉政策の焦点がここにも当てられなければならぬことは当然でありますし、昨日の鈴木質問のごとく、この地域に工業開発が必要であることも当然でございますが、低開発地域工業開発促進法とか過疎地域対策緊急措置法とかの法律がいまでもあるのでありますけれども、それは選挙対策にはなっておっても、いまだ何の実効もあげておりません。(拍手)鈴木質問への総理の御答弁の中で明らかにされました新しい立法がほんとうに効果をあげ得るものであるかどうか、その内容を明らかにしながらお答えをいただければまことに幸いと存じます。
 私の質問に入りたいと存じますが、昨日の質疑応答を伺っておりますと、質問と答弁とにだいぶ食い違いがあるようでございます。私は、なるべく質問に即して御答弁いただきますことを、まずお願いをいたします。
 私の質問は、第一には物価、公害、第二は四十六年度予算案、第三はわが国の平和国家路線、の三つの部門に分かれております。
 まず、物価と公害についてでございます。
 内閣統計局は、昭和四十年を一〇〇とする消費者物価指数が、四十六年には一三九・八%となることを発表いたしております。つまり、総理御在任の六年間に物価が四割上がったことを意味いたします。公害の無過失賠償責任問題ではございませんけれども、これは百万円の貯金が総理在任中に六十万円に減らされたことを意味するものであります。(拍手)
 総理は施政演説におきまして、物価問題に対しても国民の協力を強く強く要請されておりましたが、国民はむしろ物価は上がるものだと、そう考えて、その中で自分の生計をどうして立てようか、またどうしてもうけようか、こう考えるようになってしまっておるのであります。したがって、公害対策も、昨年の臨時国会以来総理は積極的に取り組もうとする姿勢を示してはおられますけれども、その効果に対しては国民は半信半疑、むしろ否定的であります。ここに政治不信の源があります。まことに重大であると存ずるわけであります。(拍手)
 物価、公害など、この一連の要緊急の対策を成功させない最大の原因が、来年度予算案もまた超大型予算でインフレをあおり、米の物統令廃止や公共料金の値上げで、商品面からも物価高をあおり続けようとされる自民党佐藤内閣の本質そのものにあることは、衆目の認めるところでありますが、私は、これとともに、経済一辺倒政策に便乗する行政の姿勢が、役人と業界との特殊の癒着関係をつくっていることと、さらに、官僚機構の硬直した行政姿勢の責任回避体質そのものにまた多くの原因がひそんでおることを見のがすことはできないと存じます。発達し過ぎた官僚機構は、決断のタイミングを狂わせ、実行の責任を回避させるものであります。
 総理が物価や公害問題に対して、ほんとうに実のある対策を進められようとするのでありまするならば、今回のニクソン大統領の教書の一部にあるように、公害予算を一挙に四倍に増額するような重点政策の方針を予算の中ではっきりと明示されなければなりませんし、同時に、十二の省を八つに統廃合するような思い切った行政改革による行政姿勢の転換をこそはかることが必要と存じます。(拍手)少なくとも公害や物価対策について、各省の惰性的官僚行政にまかせず、総理御自身がみずから決断し、みずから対策実行の先頭に立つのでなければ効果はあがりません。総理にそのような断固たる決意ありやいなや、私は承りたいと存じます。
 物価問題の本格的審議は、今国会を物価国会としよう、こういう話し合いが進められておるようでございますので、別の場の審議に譲ることといたしまして、ここでは特に市民運動という形でとらえられておるところの目下の緊急課題である野菜問題と、カラーテレビなどの管理価格問題の二点にしぼって、これに立ち向かう総理の決意と姿勢をお伺いをいたします。
 野菜問題について、恐縮でございますが、もう一ぺんだけ直接の声に耳を傾けていただきたいと存じます。
 「秋の大根最盛期に出せば一本八円から十円の安値に泣かされるというので、半分を土の中に埋め、正月前に仲買い人に売りました。一本二十五円、安いけど秋よりはよいと思っていたら、同じ日に近所の人が市場から買った大根が二百円、初めは信じられませんでした。一がいに仲買い人や小売り店だけを責めるわけにはいかないが、こう現実を見せつけられると矛盾だらけの流通機構や市場のからくりを感じないわけにはいきません。」一月二十日某新聞の投書欄からのものでありまして、青森県の岩木町というところの農業の一主婦からのものでございます。
 この投書は、問題の所在と対策の焦点を言い尽くして余りがあると存じます。生産面ではともかく、主要野菜だけでも年間千五百万トンを上回り、国民需要を満たすに十分な状態に達しておるといわれております。そして昨年十月、総理の諮問機関である物価安定政策会議が、ちょうどこの問題について、市場における相対取引と流通の多元化という流通面の改革を中心に、野菜価格安定のための提言といたしまして、あなたにその実施を進言いたしております。
 昨年の四月、主婦の切実な声の高まる中で、総理は、物価問題解決のためには一つの実行あるのみと言明され、昨日もこの壇上から竹入さんの質問に答えて、今後の課題は実行であると言明されました。去る十四日、生鮮食料品価格安定対策本部を閣議決定されましたが、総理、この機関がまた官僚の責任回避のとりでにでもなって、問題をいつまでも去年のごとく預けられるようなことになれば、たまったものではございません。総理の断固実行は、まず先ほど総理に提言をされておりまするところの安定会議の提言そのものを採用されるべきだと思いますが、私への答弁にかえて、全国の主婦に向かってはっきりとお空目えいただきたいと存ずるのであります。
 次に、昨年来、カラーテレビの二重価格問題としてこれまた主婦たちの集中的怒りを買った管理価格問題も、今日の物価問題の一方の柱でございます。そして、これは他面アメリカなど外国においてダンピング問題を引き起こしつつある問題でありますから、二重の重要性を持つものであります。家庭電化製品のほか、ビール、写真フィルム、板ガラスなど、寡占化傾向の強い産業製品をめぐって、今日次々に問題が起こされていることは御承知のとおりでございますが、これらはすべて、国内では独占的状態の上にあぐらをかいて高い値段を維持しながら、国外では不当に安く売ろうとするものであります。
 これが対策として、民社党は管理価格の監視に関する法律を提案いたします。
 昨日、成田委員長の同趣旨の提案に対しまして、総理は、公取委の適正運用によってその目的を達したいと答えられましたが、現在の公取委員会は、独禁法に基づくカルテル防止の権限しか持っておりません。したがって、独禁法違反の明らかな疑いの事実行為を突きとめない限り、一般的に不当と目される商品価格の追及も、変更の勧告もできないのであります。総理の言明のごとく、公取委の適正運用によってその目的を達しようとすれば、そのために、公取委の権限を強化するための新たな立法を必要とすることは、すでに国会においても論議済みであります。昨年のビール値上げに際しまして、佐藤企画庁長官がその不当性をはっきりと指摘されながら、その値上げをとめ得なかった事情はこの理由によるものでありまして、総理の記憶にも新たなところだと存じます。総理の重ねての御答弁をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
 次に、公害対策については、世論の高まりを背景にようやく積極姿勢がとられ始め、さきの臨時国会を中心に、確かに総理御自慢の法体制は整いかけてまいりました。しかし、法律ができたということと、公害の対策が整うということとは、明らかに別の問題でございます。環境庁の設置も確かに政治決定されました。しかし、これが機能を発揮し得るかどうかは、まだ完全に残された問題であります。無過失賠償責任問題については別に追及することといたしますが、公害対策の実情は、昨日の総理の答弁にもかかわりませず、来年度予算案の内容を見ましても、いかにも薄く、広くばらまかれておるだけでありまして、ニクソン教書の四倍増のような力強さはちっとも感じられませんし、環境庁をめぐっての官僚権限のなわ張り争いは、これまたニクソン的、抜本的改革のメスを官僚機構にふるわなければならぬ必要性だけを痛感させられるばかりであります。念のために総理に申し上げますが、きのうの竹入委員長の質問に対してお答えの中で、公害監視制度の充実というものを相当強調されておりましたが、従来全国で六十六人の監視員があったのを、五十五名増員して、合計百二十一名とするための三億三千万円の予算を今度の予算に計上してあるだけであります。全国で百二十一人ということは、われわれの選挙区の数にも及びません。この制度充実のために厚生省が要求したのは七億四千万でありますから、その半分も認められておらないのであります。まことに道遠しの感があります。(拍手)
 今月の十八日に農薬公害に対する行政管理庁の勧告が行なわれました。実情はまさにそのとおり。議員の皆さん方はもちろん、国民だれ一人この勧告に正面から反対する者はあるまいと存じます。日々の新聞を見ながら、全国の奥さん、おかあさんたちは、毎日自分の家族や赤ちゃんに何を食べさせ、何を飲ましたらよいのかと、気の狂いそうないら立たしさを感じ続けていることと思い合わせまして、この勧告は、あらためて私どもに責任の重大さを感じさせるものがあります。総理は、この勧告をまともに受けとめられ、御自身その先頭に立って改善、実行に当たられる決意ありやいなや、御所信を承りたいと存じます。(拍手)
 次に、四十六年度予算案を中心といたしまして、財政、経済問題についてお尋ねをいたします。
 その第一は、予算案の規模と性格、すなわちその編成方針について、その二は、米、健康保険、国鉄のいわゆる三K赤字問題を中心として、その三は、国際通貨不安と円切り上げ問題についてであります。
 まず、編成方針についてでありますが、最近の公害問題などについて、たびたび総理みずから言明された施政の基本方針は、GNP第一主義、生産第一主義から人間尊重の国民福祉、国民生活第一主義に転換するということであります。編成に当たられた大蔵大臣である福田さんは、みずから佐藤さんの後継者たらんとされておるのでありますから、この総理の施政の根本は十分に御承知のはずであります。しかるにかかわらず、一兆四千億円になんなんとする自然増収から、わずかに一割強の千六百億円余を減税として国民に返しただけで、その残り全額をはじめ、公債、政府保証債、弾力条項の適用など、さらにその上に自動車新税まで創設して、かつてその例を見ない膨大な財源をかき集められながら、その大部分を不況のてこ入れとして、国民よりも企業の立場に立って、生産第一主義の方向に充てようとされております。(拍手)
 一般会計九兆四千億円は、前年度に比し一八・四%の伸び率であります。これに対しまして、社会保障関係費一兆三千億円は一七・八%の伸び率でありまして、〇・六%も低く、かつ、この社会保障関係費の伸び率は、昨年度の対前年伸び率二〇・一%をも下回るものであります。つまり、福祉対策の中心である社会保障費の伸び率は一般会計よりも低く、昨年の伸び率をも下回っておるという事実であります。これで政府の施策が経済一辺倒から人間尊重の福祉重点に変わったとは、どのように巧妙に説明されても国民の納得し得るものではございません。(拍手)
 さらに重要なことは、だれでもが指摘するとおり、この超大型予算と相次ぐ金融緩和政策が、物価高の背景をますます刺激し続けることは、十分御承知のはずでございます。国民の生活の安定も、財政の本質改善もかなぐり捨てたこの編成は、ポスト佐藤をねらうサービス競争の結果とさえ陰口がたたかれておるようであります。(拍手)
 佐藤総理の人間尊重第一主義の施政の方針とこの四十六年度予算案の実際との根本的な矛盾について、総理の御答弁を求めます。同時に、この問題については福田大蔵大臣からも御答弁をいただきたいと存じます。
 あわせて、福田大蔵大臣は、その財政演説におきまして、安定成長路線の定着化を強調されました。四十六年度予算案は、今後、当然増支出の激増を予想せしめるものがあり、自然増収のための経済成長とインフレをあおらない限り、次の四十七年度予算以降、その財源を公債と増税に求めなければならなくなり、大きく不健全化する危険をはらんでおりますが、大蔵大臣は、数年来の財政硬直化問題に対する基本方針を変更されたものであるかどうか、具体的な説明を要求するものであります。
 次に、米、健保、国鉄のいわゆる三K赤字問題等についてお尋ねいたします。
 この三K赤字問題は、歴代自民党内閣、なかんずく、ここ六年間の佐藤内閣が当然解決しなければならない問題に対して、問題解決を回避し続け、年々当面の糊塗策だけでごまかしてきた報いであります。言うならば、佐藤内閣の責任回避の集積であります。しかも、いま模索されている解決の方向は、もっぱら赤字対策としてのみであります。もともと食管という制度は農民と消費者のために、健康保険は患者と医師のために、国鉄は乗客のために、よかれとつくられた制度のはずであります。しかるに、農民は物価上昇にもかかわらず打ち続く米価の据え置きに腹を立て、消費者は国際価格の倍近い米価に怒りをぶちまけ、納税者は一兆円になんなんとする過剰米のただづかいにたまりかねておるのであります。医療保険の制度、運用の現状には国民はあきれ返っておりまするし、今回の政府の改正方針には、患者も医者も絶対反対を唱えておるようでありますし、国鉄再建問題に至っては、国民は何が何だかちっともわからない状態であります。
 一体これらの制度はだれのためのものでございましょうか。その原点に立ち戻り、根本的な改正が行なわれなければなりませんが、その抜本対策の樹立自身、これまた毎年約束されながら、何の進展も見ず今日に至っておるわけであります。失礼ながら、政治家として最終のコースに立たれたと思われる佐藤総理は、この問題をなお逃げ続けられるおつもりかどうか、政治家としての基本姿勢を明らかにされたいと存ずるわけであります。(拍手)
 端的に伺います。総理は国鉄を一体どうなされるおつもりでございましょうか。失礼でありますけれども、橋本運輸大臣よりもあなたのほうがよほど事情は詳しいし、いまやあなたは絶対権力者であります。事情をだれよりもよく知り、何でもやり得る力を持っておられるあなたが決断する以外に、私は国鉄再建の道はないと存じます。総合交通政策の樹立が必要であることは言をまちませんけれども、いまさら事新しげにそのような官僚的なノータイミングの政策樹立のために、二年も三年も待つことはできないのであります。こう言っている間にも、累積赤字は日に日に四億七千万円と称せられる巨額の利子を生み続けているのであります。それだけ国民の税金は毎日むだづかいされておるのであります。国鉄二分案でも赤字線廃止案でも、あなた自身が決断をされて、方策を立てて国会に協力を求めらるべきであります。重ねて私は国鉄の再建問題につき、特に緊急対策としていまたいへん議論の多い累積赤字の処理、各省間でもめ続けておって、今度もとうとう解決できなかった公共負担問題など、総理御自身どのようにお考えになっておりまするか、率直な御見解を承りたいと存ずるわけであります。(拍手)
 関連いたしまして、郵政事業について、これまたたいへん失礼でありますけれども、郵政大臣ではなしに総理にお尋ねをいたします。
 あなたの内閣は昭和四十一年、普通郵便の翌日配達を国民への約束として郵便料金の値上げを実施されました。しかるに、今日、郵便遅配は恒常化し、事業はすでに来年度約六百億円の赤字が見込まれる状態となってまいりました。そしてあなたの内閣は、またぞろ安易な料金値上げを計画されております。何ら根本的な解決をはかろうとせず、このような惰性で当面の糊塗策を続けるところに、国鉄や健保の破滅的結果が生まれたのであります。郵政事業にもこれを繰り返そうとされるのでありましょうか。
 かつてあなたの内閣において、郵政事業の根本的対策として、公社化、独立採算制というのが決定されたと伝えられましたが、その後この公社化など郵政事業立て直しの根本策は、一体どこにまぎれ込んで、どうなってしまっておるのでございましょうか。四十一年の料金値上げの際の責任大臣も、公社化決定の際の責任大臣も、すでにあなたの内閣からは去られ、今回の値上げ担当の責任大臣も、値上げの結果に対して責任をもって見届けられる状態にあるかどうか、はなはだ私は疑問と存じまするので、(拍手)一貫して総括責任の立場におられまするところの佐藤総理の責任ある御方針を承りたいと存ずるわけであります。
 次に、国際金融の問題についてお伺いをいたします。
 ことしの国際金融の動向は、相当に要注意の感を深くいたします。率直に大蔵大臣のこの問題についての見通しをお聞かせいただきたいと存じます。特にニクソン大統領の金融、財政両面からする激しい景気刺激政策は、ヨーロッパにも相当な動揺を与えており、国際通貨不安再燃の導火線ともなりかねませんし、わが国の場合にはこれが円切り上げという問題に直接結びつく可能性があるので、特に重要だと思うからであります。
 そこで、円切り上げについてお伺いをいたします。軽々に論ずべき問題でないことは、私も十分承知いたしております。しかしながら、アメリカが輸入制限措置に続いてその次に要求し、圧力をかけてくる問題がこの円切り上げであることは、経済評論家の常識となっておるようでありますし、また切り上げになれば、外貨上の大きな損失を招くおそれのある造船とか海運業などが、いろいろとその準備対策を活発に進められておることは、公然の秘密とされております。私は、円切り上げという問題は、今日の段階におきましては、それを行なうことの金融、経済政策としての可否ではなく、円切り上げへの外からの圧力を防ぎ得るかどうかのきわめて政治的な問題であると考えます。そしてその外圧の中心がアメリカでありますがゆえに、繊維交渉のごとく意外の発展に国民が驚かされるのではないかと憂えるのであります。
 切り上げへの可能性を憂慮するならば、その対策としては、国内での円ポジションの安定強化をはかるために、あらかじめ一そうの物価安定対策が進められなければなりませんし、農業、中小企業など、低生産部門の構造対策が一段と重要性を持ってこなければなりません。しかも、これらの対策は、円切り上げ問題のいかんにかかわらず、わが国経済の健全化、安定化のために当然に進められなければならぬものでありますのに、来年度予算案にも特別の留意がなされておるとは見られません。政府が円切り上げを否定し続けながらも切り上げに追い込まれるような結果となって、しかも、そのための本質的な準備がなされないままにそうなっていくようなことになれば、これはたいへんでございまするから、そうならないように強く強く対策を要望するものであります。総理並びに大蔵大臣の責任ある御所見を承りたいと存じます。(拍手)
 三つ目の質問といたしまして、わが国の平和国家路線という問題についてお尋ねをいたします。
 最近、わが国の軍国主義化という問題がやかましいのでありますが、この問題は、昨年四月、周・金日成共同声明が提起して以来、主として中国、北鮮側から日本に向けて警告し続けられたものであります。その意味で、このことばが持つ独特の響きに対しては、確かに抵抗を感ずるものがあります。にもかかわらず、アメリカを含めて世界の各国がいま現実にこの点に注目しつつある事実には、真剣な考慮が払われなければならぬと考えるのであります。
 池田、佐藤両内閣でつくり上げられました経済大国日本は、世界政治の場で、いまや、その成長ぶりに対する称賛的驚きから、明らかに警戒的な見方に変わってまいりました。一つは、強力な輸出圧力による世界貿易の秩序を破壊するのではないかということに対して、他の一つは、残念ながら軍国主義化の危険に対してであります。成長国日本に対するこの二つの国際的警戒は、あるいは合理的根拠に基づくというよりは、直観的なものであり、恐怖心であるかもしれません。しかしながら、古今の歴史は、経済大国が常に例外なく軍事大国に発展する歴史でありました。現代のアメリカもソ連もしかりであります。そしてすでに日本は世界第三位の経済大国に成長し、本年度の国民総生産推計は二千億ドルを大きくこえる八十四兆円にも達しようと想像されるのでありますから、世界の隣人たちがこのことに対して心配することは、あるいは当然といわなければなりません。したがってそれは、総理がその施政方針演説で、わが国は平和に徹し、国際協力を推進していく考えだと主観的に繰り返されるだけでは、隣人たちの恐怖や疑いは解けるものではございません。わが国が歩む基本的施策の実証を通じてのみ信頼感を回復することができると考えるものであります。(拍手)真に総理が平和国家に徹していく考えでおられるのでありまするならば、いまこそ平和憲法が指向するわが国の路線を具体的施策によって明らかにすべきだと存じます。
 その第一は、経済成長の成果を人間尊重の施策にほんとうに集中し、福祉国家への路線を明らかにすることであります。その第二は、いわゆる自衛力の性格と限界の問題について隣人の疑いを解くことであり、第三は、平和外交、なかんずく善隣友好外交の展開であります。
 第一の問題は別項に譲り、第二の問題からお伺いいたします。(「そこからして抽象的だ」と呼ぶ者あり)抽象的ではございませんよ。
 私は、目下のアジア隣人たちの最大の関心事は、ニクソン・ドクトリンに基づくアジアや日本からのアメリカ軍の引き揚げに対して、今後日本がどのような態度をとるかということだと存じます。そしてわが国がこの問題に対して、これをアジアの緊張緩和に積極的に役立たせる態度をとることを強く期待しておると思うのであります。それにこたえる方法は、沖繩を含むわが国の米軍基地が、アメリカ軍によってアジア隣邦諸国に対し攻撃的な足場に使われないようにすることと、わが国自衛力の専守防御的性格を明らかにし、かつ、膨張の限界を明確にすることだと信じます。(拍手)このような立場に立って、具体的にお伺いをいたします。
 第一、米軍基地とその常時駐留体制を解消するための日米安保条約の改定問題は、いまや機が熟しつつあると私は考えるのでありまするが、交渉開始の意思なきや。同時に、地位協定改定問題とあわせてお答えをいただきたいと存じます。
 この問題に対しまして、昨日の竹入質問に対しまして、総理は、米軍の引き揚げが日米安保を変質するものでない旨を答弁されましたことは伺いました。私は、条約改定によって変質させるべきだ、その交渉を始めてはどうか、こう言うのであります。同時に、地位協定の改定の意思なきこともきのう伺いましたが、しかし、それにもかかわらず、私は、中曽根長官の言辞の中で改定の可能性をちらちらと感ぜざるを得ないのであります。重ねて、あわせて御答弁を要求する次第であります。
 第二に、わが国防衛力の専守防御的性格と沖繩米軍基地の攻撃的性格とは、明らかに矛盾するものであります。最近のコザ事件など深刻な沖繩問題の根源は、沖繩が米軍の攻撃基地となっていることにあります。返還交渉の焦点もここにあると思うのでありますが、返還協定にあたって、沖繩の攻撃基地的性格を解消し、この矛盾を明らかになくする用意がございまするかどうか、伺いたいと存ずるのであります。(拍手)
 第三の防衛力の性格と限界の問題については、まず私は、何よりもこれを国民の意思によって決定していくという、言うなれば防衛に対するナショナルコントロール体制の確立こそ目下の急務かと存じます。総額五兆八千億円にも達しようとする第四次防が発足しようとする今日、自衛力の内容が事実上国民の前にベールをかぶされている現状は、早急に打開されなければならぬと信じます。国会こそそのための場でなければなりません。国会を通じ、国民とともに真剣にこの問題に取り組む用意ありやいなや。
 以上三点についての総理の御所信を承りたいと存じます。
 次いで、平和外交の問題でありますが、善隣友好外交の今日的課題は、言うまでもなく対中国政策であります。この点について、昨日も議論が集中されましたが、政府の答弁は慎重検討中の一本やりでありました。特に自民党の鈴木質問の、国連に対して中国を迎え入れ、かつ台湾政府も追放せず、こういう提案に対してもノーコメントでありまして、国民はこの慎重検討という考え方のその内容をほんとうは伺いたいのでありまするから、鈴木質問に対する答弁を、私はあらためて要求いたします。(拍手)総理の御答弁をお願いする次第であります。
 私も、台湾問題を含むこの問題の困難さについては、十分承知いたしております。しかし、それにもかかわらず、いまや中国の代表者は厳然として中華人民共和国政府であり、この政府に代表される中国を国際社会に迎え入れ、かつ、これと正式の国交を回復すべきであるという原則的な考え方を否定することはできないと存じます。それは不自然だからであります。そしてこの基本的考え方に基づいての交渉の中で台湾問題についての妥協的解決点を見出す努力を重ねることが、いまわが国政府がとるべき最も現実的なやり方だと私は考えるのであります。(拍手)
 ただ一点だけ伺います。政府は今回の施政方針演説の中で、愛知外相演説をもって中国との対話を持ちたいという意思を明らかに表明されました。その真意は、中国からの話しかけを待っているという受け身のことなのか、こちらから積極的に会談への姿勢をとろうと考えているという意味なのか、その意味するところははなはだ重要だと考えまするので、この点ひとつ総理から明らかにしていただきたいと存ずるわけであります。
 同時に、私は、政府としてもしためらいがあるのでありまするならば、総理のきのうの答弁におきましても、人事交流を大いに歓迎する旨の言明がありましたので、まず各党代表からなる超党派使節団でも派遣して、政党ベースでの話し合いを行ない、両国の意思疎通をはかってみてはどうかと思うのでありますが、あわせて御所見を承りたいと存じます。各党が別々に、かってがっての筋で行くということは、私は必ずしもいいことでないような気がいたしまするので、お考えを承りたいと思うのであります。
 最後に一言、総理の今回の施政演説は、六年間の佐藤政治に対する自画自賛と、はなやかなわが国未来図の展開によって、まことにきれいに色どられたものではありましたが、それは庶民の実感とは大きな隔たりのあるものであります。そしてこの総理の感覚と庶民の実感との相違こそ、国民大衆が現在の保守政治の矛盾に対して苦痛を感じ続けている根源なのであります。国民の政治に対する不信感の源であると考えるのであります。私は、総理がまずいまの政治に反省を求めておる国民の姿を直視されることを切望いたします。そして、バラ色の未来図もけっこうでありましょうけれども、それよりも、今日の切実な国民の願望に対して、それを一つ一つ着実に解決することによって、国民の政治への信頼を回復するように全精力を傾けられんことを強く強く要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 佐々木君にお答えいたしまするが、前提としての御意見は、私は謙虚に承ったつもりでございます。
 そこで、具体的の事例として、まず年をとられた一市民の切実な要望を代弁されました。
 第一の老人医療の無償化については、率直に申しまして、公費負担によるべきか、あるいは医療保険制度の抜本改正の一環としての老齢保険制度の創設で対処すべきか、私自身判断を下しかねております。なお十分検討を加えてまいりたいと考えます。ただし、御披露がありましたように、この問題は当面の切実な問題であって、最終的な結論を得るまでの間、放置することはできませんので、さしあたり四十六年度予算においては、健保改正の一環として、高齢者に対する医療給付の引き上げを行なうほか、老人性白内障手術費に対する助成等の措置を講じ、老人医療対策の改善をはかったものであります。
 また、老齢福祉年金の所得制限の撤廃について御要望がありました。諸般のかね合いから、一挙に全廃するわけにはまいりかねますが、来年度は、家族の所得による制限を中心に、大幅な緩和を行なうことといたしました。今後とも所得の動向を勘案の上、その緩和についてさらに努力してまいりたいと考えます。
 次に、過疎農村の一主婦の方からの訴えでありますが、過疎地帯の農村主婦の健康保護が切実に望まれていることは十分承知しております。四十六年度予算においては、従来の移動保健所事業に加えて、特定の過疎地域に保健婦を新たに配置する等の措置を講じましたが、今後とも特に過疎地帯の保健活動の徹底について十分努力してまいる考えであります。
 次に、過疎農村に職場をとの御要望につきましては、政府は農村振興の要請にこたえて、農業地域に工業を計画的かつ合理的に導入することをはかり、そのために必要な制度の創設、税制上、金融上の助成措置を中心に、今国会に所要の法律案を提出する予定であります。この措置により、農村地帯における雇用機会は顕著に増大していくものと考えます。
 また、米づくりにかわる農家のあり方については、さきに農林省が策定したいわゆる農業新地図と呼ばれる、総合農政を進める際の指標となる農業生産の地域分担案を大いに参考にしていただきたいと思います。私は、農業団体や農民諸君が日本農業の現状について十分に理解され、地域の特性に応じた新しい農業生産に取り組んでいただき、農業の構造改善に果断に取り組んでいただくことを心から期待するものであります。
 次に、四十六年度予算の性格はGNP第一主義、生産第一主義であって、施政方針でうたっている福祉最優先と全く相反するものであるとの御批判でありましたが、決してそのようなことはありません。四十六年度予算の編成にあたっては、物価対策と公害対策を最も大きな課題として取り上げるとともに、社会保障の充実や住宅、下水道などの生活関連施設を中心とする社会資本の整備を重点施策として大幅に拡充し、国民福祉の真の向上をはかるため、きめのこまかい配慮を加えており、生産第一主義という評価は当たっておりません。また、予算規模も中立機動型予算としてきわめて適切なものであり、今後の日本経済の安定的成長を目ざしたものであります。
 次に、物価問題で具体的な問題についてお答えをいたします。
 まず、野菜の高値対策について御意見がありました。野菜の問題は天候に影響される、さらには労働力不足や、都市化の進展による近郊産地の後退などの構造的変化の影響もあるため、その価格の安定は容易ならざるものがありますが、国民の台所に直結する問題として、全力をあげてこの問題に取り組んでまいる所存であります。昨日も公明党の竹入君の質問に答え、物価問題はあとは実行あるのみと申したのでありますが、物価安定政策会議の野菜価格安定のための提言についても、これを着実に実行する考えであります。特に、流通機構の改革のための卸売り市場制度に関する提言の趣旨は、現在継続審議中の卸売市場法案の内容と一致しており、法案の早期成立をはかり、卸売り市場の計画的整備と、その取引の改善、合理化につとめたいと考えます。
 次に、管理価格について御指摘がありました。一部企業が、国内で高い値段を維持しながら、国外に不当に安く売っていることがあるとすれば、それは国内消費者の立場から許されないばかりでなく、国際的にもダンピング行為として指弾されるところと考えます。政府としては、そのような不祥の事態のないよう十分監督してまいります。
 なお、管理価格の監視に関する法律について御提案がありましたが、残念ながらその詳細をただいま承知しておりませんので、今後の検討課題とさせていただきます。私は、昨日の成田君の御提案とあるいは類似の点、似通った点があろうかと思いますけれども、これらの問題はもう少し詳細に承りたい、かように思います。
 次に、食品添加物や残留農薬による汚染を解消するため、年次計画により処理することは、すでに消費者保護会議で決定したとおりであり、農薬の規制についても、さきの国会で改正を見た農薬取締法によって規制の強化をはかることとしております。法律と対策とが全く別のものであることは、佐々木君の御意見のとおりであり、私も、さきの臨時国会において法令の整備が進んだことで事足りると思っているものではありません。今回、環境庁を設置し、公害行政の一元的遂行に資することとしたのも、まさにその趣旨に基づくものであり、公害対策の促進には、今後とも全力をあげてまいります。
 三Kの赤字、特に国鉄再建の具体策について述べます。
 国鉄再建についてでありますが、増収努力をはじめとする収入増加策、あるいは要員縮減等による経費節減策を国鉄自身が強力に実行していくことが必要であることはもちろんのこととして、将来の総合交通体系において鉄道の特性を発揮し得る分野に重点を置いて、合理的、効率的な輸送を行なうことが何よりも必要であります。このため、総合交通政策の検討と相まって、国鉄経営の一そうの徹底的合理化、運賃制度の合理化、地方公共団体との関係の再検討、さらに、場合によって必要ならば国の財政措置の再検討など、種々の問題点を詰めた上、国鉄財政再建計画の再検討をいたしたいと、かように考えております。
 次に、郵政事業は、人手による作業が多いだけに、最近の人手不足の時代を迎えて種々困難な問題が生じておりますが、このため政府としては、郵便法の改正等をはかって、郵便事業の安定化と効率化に万全を期し、国民の要請にこたえる、いわゆる遅配などのないような良質のサービスを提供するよう、一そう努力いたす考えであります。
 予算と、円の切り上げの問題につきましては、福田大蔵大臣からお答えいたします。
 次に、わが国の防衛は、外交並びに他の内政上の諸政策との調和を保ちつつ、国情にふさわしい自衛力の整備をはかることを基本方針といたしております。佐々木君は、平和に徹するという主観的な表現だけではわが国の軍事大国化に対する諸外国の恐怖や疑念は解けないと、かように言われますが、はたしてそうでありましょうか。私は、わが国が非核三原則を堅持しているということを忘れてはならない、同時にまた、徴兵制度も持っておらない、これらのことを思うのであります。(「あたりまえだ」と呼ぶ者あり)あたりまえだと言われますが、こういうことこそ軍事大国にならないゆえんであります。最も大事な点であります。(拍手)米ソ二大国をはじめ英国、フランス、中国など、世界の主要国が核を中心とした軍事力を保有しているのに比べて、わが国の防衛力は他国に脅威を与えないところに特色があり、軍事大国化という批判は、ためにする論であると言わざるを得ません。(拍手)防衛力の整備計画を策定するにあたっても、国会の審議その他において、国民の前に十分明らかにされております。
 また、米軍基地の使用につきまして、だんだん駐留の軍隊は引いていったが、その基地がそのまま残っておる、こういうところから、今後安保条約も改定したらいいじゃないか、地位協定も、ある程度直すべきものがあれば直せ、こういうような点で、安保条約並びに地位協定について政府の意向を確かめられましたが、昨日もお答えをいたしましたように、ただいま、安保条約並びに地位協定について、これを改正する考えは持っておりません。はっきり申し上げておきます。
 なお、国会に委員会を設置することが、広く国民の理解を促進することに貢献するものであれば、政府として特に反対するものではなく、国会の御決定にゆだねたいと思います。
 次に、中国との問題についてお答えをいたします。
 慎重に検討だというので、何にもわからない、こういうことでありましたが、そのとおり、わからないのが当然、(笑声)ただいま検討中でありまして、結論がまだ出ておらない、そのぐらいのことはおわかりいただけると思います。(拍手)
 昨日以来、何度も繰り返し申し述べておりますが、政府は、中国大陸との関係改善、各種交流の活発化を強く望んでおります。このため、先般来政府間の接触を呼びかけておることは、御承知のとおりであります。これはただ単に、当方で呼びかけておるということでおわかりがいただけると思います。相手方がこれを受け入れてくれれば、いつでも、いかなる場所でも会談できる、こういうことであります。
 佐々木君御提案の超党派使節団を送ることにつきましては、政府として基本的に異論はありませんが、現在まだそのような客観情勢が生まれているとは考えられない面があります。政府としては、日中両民族間の相互理解を深めるためにも、そのような情勢が芽ばえることを期待しておるのであります。
 最終的に、佐々木君の御意見として、政府に反省の色なし、あとなし、こういう御批判でございました。私は、よく佐々木君の御意見も伺ったつもりでありますし、また、反省の不足の点というものについて、さらに私自身も十分検討を加えてまいりたいというふうに思います。御了承願いたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#6
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 今度の予算は生産優先であり、不況対策であり、内政を疎外したインフレ予算ではないかという御批評でありますが、私は、この間の演説におきましても申し上げたのですが、いま超高度成長から安定成長への過渡期にある日本経済である。私がなぜそういうふうな経済運営をするか。これはいろいろ超高度成長を制約する要因もある。それは乗り越えがたい障害になっておるわけです。でありますが、同時に、この超高度成長の路線の前面には、ひずみ現象というものが山積をしておる。その最大なものが、何といっても物価の問題であり、公害の問題である。そういう問題の処理がこの超高度成長下ではできないのです。やはりそれらのひずみ現象といわれるものを克服する、その前提としては、何よりも成長の速度をもう少し安定した速度に落とす必要がある、そういうふうに考えたからであります。その私が、大事なこの流動下の、経過中のこの段階においてインフレ予算を編成する、公害無視の予算を編成する、そういうはずがないじゃありませんか。(笑声、拍手)また同時に……(発言する者あり)また、現在のこの時点における大蔵大臣といたしましては、景気の動向にも深甚な関心を払わなければならない、これは私は当然のことだと思う。私は、過度の行き過ぎがあってもなりませんけれども、しかし、じめじめした、雨の降るような天気模様、こういうような状態であっても、全国一億の国民の士気が阻喪します。やはり政府といたしましては、景気の下ささえということはしなければならぬ、こういうふうに考えるのでありまして、そういうことから景気対策をこの予算に加味する、これは私は当然のことである、かように考えるのであります。
 だからといって、内政を軽視しておるわけじゃない。私は常々、もう六〇年代の量的成長から七〇年代の質的成長の時代だ、こういうふうに言っておりまするが、そのとおりのことを私はやっているつもりなのです。あるいは社会資本の充実にいたしましても、あるいは社会保障にいたしましても、これはかなりの増額をいたしてきたわけでありまして、社会資本のごときは、道路につきましては、とにかく雄大な、四十五年度から始まる五カ年計画が始まっておる。これは、総理が申し上げたとおりの結果を生み出すわけであります。また四十六年度におきましては、新たに住宅、下水、港湾、空港、交通安全、こういう問題につきまして長期計画が策定される。私は、五年たった後のわが国の社会環境というものは、ほんとうに見違えるくらい変わってくるのじゃないか、そういうふうに思うのであります。(拍手)そういうことを思いまするときに、私は、決してこの予算が内政軽視のものであるというふうには考えておりません。いろいろ御評価もあるようでありまするけれども、また多数の人が、この予算につきましては高く評価しているということも申しておるのであります。(拍手)
 また、次に、硬直化打開の方針は捨てたのかというお話でございますが、これは決して捨てません。ただいま総理大臣からもお話がありましたように、特に三Kの問題につきましては、ずいぶん努力したのです。しかし、努力した結果及ばざるところはあります。特に米の問題につきましては新しい方向を打ち出した、これはひとつ御理解を願いたい、かように考える次第でございます。
 次に、国際通貨の見通しにつきましてのお尋ねでございますが、一昨年のフランの混乱、またマルクの混乱、あの時期には、とにかく通貨不安というものが全世界をおおったわけであります。しかし、フランの切り下げにより、またマルクの切り上げによりまして、あの事態が、とにかく一回りいたしますると一応安定の線が出てきまして、昨年一年は、国際通貨情勢というものは、近年にまれな比較的安定な一年であった、かように思います。しかし、さらにそういう機運は、SDRの発動でありますとか、あるいはIMFの増資でありますとか、そういうような国際通貨当局の協力による、こういう面もありますが、問題はアメリカの経済、私はこれに非常に関心を持っておるのです。
 アメリカは、一昨年ニクソン政権が成立いたしましてから、非常に窮屈な金融引き締め政策をとったわけです。ほとんど一年間、通貨の供給はふやさぬというくらいな窮屈な政策でありました。それが端的な影響がありまして、一昨年の暮れあたりから、アメリカの景気は下降傾向に転じました。失業が出る。あるいは倒産、破産。アメリカにおきましては、申し上げるまでもありませんけれども、失業率が四・五%をこえますと社会不安を起こす、これは危機ラインだというふうにいわれましたが、それを突破する状況であり、昨年の四、五月になりますると、その失業率が五%になる。そこで、アメリカ政府当局は政策転換をした、私はこう見ておるのです。つまり、極端な金融引き締め政策から金融緩和政策に転じた、こういうふうに見ております。量的な緩和もそうでありまするけれども、また質的な緩和、つまり金利の引き下げ政策。金利の引き下げ政策につきましては、申し上げるまでもございませんけれども、この二カ月半の間に、実に四回にわたって公定歩合の引き下げをする、こういうような状態です。しかも、それだけの緩和をいたしましても、景気は上昇の機運がない。景気は停滞的であります。昨年一年を見ると、マイナスのGNPであるというような状態でありまするが、それにもかかわらず、失業者が出るのはもちろんでありまするが、物価が上がる。わが国も物価が上がっておりまするけれども、アメリカのほうでは卸売り物価もまた上がる、こういうような情勢でありまして、非常に苦しいことばである、スタグフレーションということがいわれておりますけれども、アメリカはまさに不況と物価高が同居しておるというような状態でございますが、これはアメリカばかりじゃない、ある程度ヨーロッパ諸国にも、そういう傾向が見られるのであります。
 そういうさなかにおきまして、わが国が安定した経済成長発展をなし遂げる、これはどういうふうにするか。私は二つあると思う。一つは、やはりわが国自体の経済政策の運営、これを誤らざることであると思いますが、もう一つは、いま佐々木さんが御指摘のように、わが国の国際社会における地位というものが非常に高いものになってきた、わが国の外貨がだんだんたまってくる、あるいは毎年毎年の国際収支が大幅な黒字である、こういうのが世界で注目の的なのです。しかし、そればかりが注目されるのじゃないのです。国際社会におけるわが国の経済のマナー、これが非常に諸外国から注目される。その注目される勢いというものが、ことしは非常に高まってくるであろうということを私は感じておるのであります。そういうような世界情勢の中のわが日本といたしましては、どうしても国際社会に対しまして節度ある態度――国際金融政策に協力する、これはもちろんでありまするけれども、あるいは過当競争的な、みだらな輸出態度というようなものがあってはなりませんとか、あるいは自由化の諸問題について、これはまた、さらに思いを新たにして取り組むとか、いろいろな国際社会に臨むところの特別の配慮が必要である、かように考えておるのであります。(拍手)
 円の切り上げの問題でありますが、ここで私からいろいろと申し述べますると、いろいろなまた解釈が生まれまして、非常にデリケートな問題を生み出すおそれがある。結論だけを申し上げます。私の頭のすみのどこにも、円の切り上げというものはありませんです。(拍手)
 それからなお、円の切り上げの問題はさようなとおりでありますけれども、御指摘の中小企業の近代化、体質改善、そういうような問題は、別途の問題として大きく力を注がなければならぬ問題である、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○副議長(荒舩清十郎君) 安井吉典君。
    〔安井吉典君登壇〕
#8
○安井吉典君 私は、日本社会党を代表し、国民の率直な声を取り上げ、政府の施政方針演説に関し、主として内政問題にしぼり、総理、大蔵、農林の三大臣にお尋ねをいたします。
 質問の第一は、私は、国民の切なる期待である物価と減税の問題を取り上げたいと思います。
 ある農家のおやじさんは、町の工場で働いているせがれのところへ出てきて、うちの畑で一本三十円の大根を、せがれの嫁はなぜ二百円も出して買わなければならないのか、また、せがれの工場で一台六万円でできているカラーテレビを、おやじの自分はなぜ十九万円で買わなければならないのか、どうしても理解できないのであります。このおやじさんの疑問を解明するには、昨日成田委員長が提案いたしましたように、大企業の独占管理価格にメスを入れ、農業、中小企業などの近代化、流通機構の徹底的改善を、政府は講じていかなければなりません。
 しかし、これまで政府は、物価対策に一体何をしてきたでしょうか。カラーテレビの値下げは、政府ではなしに、全国の消費者の不買運動の中でいまかちとられようとしているではありませんか。(拍手)政治はその無力さを恥じなければなりません。
 私は、経済成長が鎮静期にきた際、いまこそ物価安定のチャンスだと思うのに、政府は、本年度後半に郵便料金や電報料を値上げし、消費者米価を物価統制令からはずすことをきめ、バス賃、ふろ代、私学授業料等も値上がりです。政府みずからが公共料金の値上げをし、国民に物価対策への協力を求めることができましょうか。この際、政府は内政の施策の方向を、物価問題の解決一本にしぼり、公共料金についての値上げ方針を再検討するお考えはありませんか。
 農林大臣、野菜の暴騰をどうするのですか。対策本部をつくり、役人が農村を回り、初めて事情がわかったとか新聞は伝えています。しかし、野菜の生産構造の改善、流通機構の合理化など、これはずっと以前から国会で指摘したところであり、なぜ、これまでそれらを実行に移さなかったのか。いまとなっては、春遠からじと、春野菜の出回りを待つよりほかないのか。私は、いま値上がりに恐怖感さえ感じている主婦の切実な願いをそのままお尋ねをいたしておるのであります。
 消費者米価を物価統制令からはずしても値上がりしないという論があります。しかしながら、いまでも米屋で公定価格以上でお米を売っているのであり、かつ、現在、農産物の中で、統制令のおかげで流通経費の水準の最も低いのはお米であります。したがって、値上がりは間違いありません。しかも、米は最大の商品であり、他物価へのはね返りは大きいのであります。政府は、行政指導をするといいますが、現在、法令があっても従わない違法な業者がいるのに、行政指導になったら従うとだれが考えますか。米がいまの野菜の二の舞いになったらたいへんです。政府は、米の自由化方針を撤回すべきであると思うが、いかがでしょう。(拍手)
 土地の価格の値上がりは、最大の問題であります。その他物価問題は、ここで大ざっぱなすれ違いの演説をかわしている段階ではありません。今国会予算委員会開会中の適当な機会に、前国会で公害対策審議で試みたように、物価問題に集中した審議を行ない、国民の期待にこたえることを私は提案したいが、ぜひ総理の御同意を願うものであります。
 また、春闘を前にして、所得政策についての議論が出ていますが、利潤や配当はそのままにして、インフレ政策を労働者にだけしわ寄せすることは、とうてい許しがたいと思うのであります。(拍手)
 新年度予算を福田大蔵大臣は、中立機動型といいますが、わが国の大企業はなお多分に成長要素を持っており、現在は景気停滞ぎみであっても、財政の運用いかんでは、これまで同様、景気刺激、物価引き上げ予算となりかねないのであります。
 物価引き上げの最大の要因は、通貨増発のインフレーションだからであります。去る二十日の日銀公定歩合再引き下げは、国際経済と関連して一応やむを得ない措置と考えますが、政府は、早くも予算の弾力条項を発動し、予算や財政投融資計画を動かし、有効需要をつくり出すというが、その弾力条項なるものも、財政論の上から問題がないわけではなく、この運用はぜひとも慎重でなければなりません。今度は財界のごきげんとりや選挙対策のにおいもないではありません。運用を誤ってインフレ、物価高を生じ、国民生活を犠牲にすることは絶対にあってはなりません。この際、予算運用の責任を持つ福田大蔵大臣のお考えをお聞きしておきたいのであります。
 税金は、前年度に比べ一兆五千億円も大幅増収になるうち、政府は所得税を一千六百七十億円減らすというミニ減税をやろうとしています。ミニスカートなら趣はありますが、ミニ減税ではさっぱり魅力はありません。(拍手)住民税の課税最低限は引き上げられて八十六万円。生計費に課税しないというわれわれの主張からほど遠いものであり、自動車重量税は、新税は悪税なりという為政者に対する戒めを無視し、税体系をゆがめた安易な新税創設であります。
 税金は、国や自治体にどうしても必要です。問題は、国民のどの層がどれだけ負担するのか、さらに、その税金が何に使われるのかという問題であります。世間では、サラリーマン減税といい、所得税における職業別の均衡だけを問題にする人があります。私は、それももちろん大切だと思います。しかし、税制全体のワクの中で、個人課税と法人課税の全体を洗い直すことからでなければ解決策は出てこないのであります。
 私の提案は、勤労者、農漁民、中小所得者の個人所得に大幅減税措置を講ずるとともに、退職金については、長期勤続者はもう税金ゼロとなるくらいな大幅減税、そのかわりに法人税は、一兆円に及ぶという交際費への課税を強め、租税特別措置をやめ、軽度の累進課税を行なう等により、法人に対する課税の方式を改めることを中心に、税体系の大きな転換をはかるべきではないかと思うが、福田大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。(拍手)
 次は、税金の使い方の問題でありますが、私の第二の質問は、社会保障か四次防か、いずれを選ぶかという問題であります。
 自衛隊を憲法違反とする者も、これをやむを得ないとする者も、国民がいまひとしく疑問を持ち始めたのは、四十六年度で第三次防衛計画、いわゆる三次防が完成し、続いて四次防、五次防と、一体政府はどこまで防衛力を強化するのかということであります。総理は、国力、国情にふさわしい防衛力の整備を行なうと演説されましたが、一体どこを限界としてお考えになっているのか、まずその点を明確にしていただきたいのであります。
 新年度防衛予算は、自衛隊になって以来最高の伸びであり、このほかに予算先食いなどを加えると、優に一兆円で、一機二十一億円近いジェット戦闘機をはじめ、ナイキ、ミサイル警備艦、戦車等を多数整備し、これで三次防を終わり、四十七年度からの四次防にもすでに足を踏み込んでいるのであります。
 四次防は五兆八千億円、年率一九%、世界一の伸び率の軍事費を国民は負担していかなければなりません。これまで、自衛力をどろぼうに対する戸締まり論で説明してきた人があります。しかし、四次防は攻撃的兵器がふえ、総戦略体制に入る計画であり、これにより、いつの間にかわが国の軍備は、核こそ持たないが、米ソなど五大国に次ぐものとなるといわれているのであります。
 一方、社会保障費は、前年度よりも一七・八%の伸びで、四十五年度の二〇・一%という伸び率をはるかに下回り、われわれも長年主張してまいりました児童手当が、不満な内容ながら創設され、各種社会福祉施設の整備もあるにはありますが、しかしながら国民所得に対する社会保障費の割合はいまだに六%、西欧諸国では一四%から二〇%に達しているのと比べれば、わが国の高度経済成長は、年寄り、子供、病人など力弱い階層の犠牲の上に成り立っていることが明らかであります。(拍手)
 私は、各種の社会福祉施設で、乏しい予算で自分の身を削りながら奉仕している職員や、精神薄弱児を里親として引き取り、苦労している婦人のことなどを知っておりますが、政府自身がやるべき責任を果たさず、数多くの人々の善意の上でようやく日本の社会保障制度は成り立っているのであります。
 総理は、日本の国力は壮年期とこの間言われましたが、防衛力はいまや青年期、社会保障はやっと幼年期、そして四選の佐藤内閣は老年期であります。(拍手)防衛費の伸びは世界一、社会保障のレベルは先進国最下位という現状で明らかなことは、佐藤内閣がもし憲法第九条を無視し、今後ともバターよりも大砲を選び続けるならば、軍備拡大の行き着く先は、わが国はもう経験済みです。諸外国から軍国主義復活と非難されつつ、アジアの緊張激化へのいつか来た道にわが日本を追いやってしまうことになるのではないか、総理のお考えをお聞きしておきたいのであります。(拍手)
 政府の扱っている健康保険の赤字対策の法案は、これまで繰り返し繰り返し政府が約束してまいりました医療制度の抜本改正をやらず、被保険者、使用者、それに患者の三者の負担だけで赤字を解消しようとするものであり、この数年間で相次いで三回目の改正でありますが、今回は中でも最悪の提案であります。政府は抜本改正を急ぎ、それが済むまで赤字をたな上げにし、今回の改悪案は断念すべきであると思うが、どうでしょうか。自治体で、国民健康保険の赤字が保険税の値上げにはね返り、各地で問題を起こしていますので、国民健康保険も、抜本改正まで、同様、赤字のたな上げ措置を行なってはどうか、御答弁を願いたいのであります。
 わが国の人口は急速に老齢化に進みつつありますが、総理の誇る国力の基礎をこれまで築き上げてきた功労者であるのは年寄りであります。その年寄りに対する対策はきわめておくれており、老人は物価高の最大の犠牲者でもあります。ぜひとも、各職場での定年制延長、各種年金、恩給の物価スライド制の確立、老齢者医療を、先ほども主張がございましたが、ただにすること、生活扶助や施設の整備等につき、もっと真剣に取り組むべきではないか。また、これらの諸対策が完全に行なわれるまでは、失業対策事業の打ち切りというような残酷むざんな仕打ちは絶対に行なうべきではなく、むしろ、現行制度の前向きな改善をこそ実施すべきではないか、お伺いをいたしたいのであります。(拍手)
 第三点は、財政運営を国民生活向上のための社会資本充実に重点化することであります。
 わが国の社会資本、すなわち住宅とか上水道、下水道、道路、特に市町村道、鉄道、電車、バス等、学校及び社会教育の施設、公園などは、欧米に比べ著しくおくれています。自民党政府は、これまで、毎年膨張してきた財政を、資本の産業基盤整備に役立つところに重点的に使い、かくて日本は、米ソに次ぐ経済大国となったのであり、国民の生活につながる社会資本の充実は、いつもいつもあと回しにされてきました。税金の正しい使い方は、民間資本への不当な支出を押えても、国民生活を最優先とする財政運営に切りかえていかなければなりません。
 川崎ぜんそくの公害病認定患者百人の証言の中から、
 藤尾新吾ちゃん(六歳)
 「ぼく、ノドが痛くて幼稚園をよく休む。だから、みんなみたいに、皆勤のごほうびもらえない。」
 A君(十六歳)の母
 「発作で苦しい時は、壁に頭をぶつけて死んでしまいたい。できるなら、私のほうが代ってやりたい。」
 天野作蔵さん(五十歳)
 「このからだにダイナマイト背負って、亜硫酸ガスを出している工場に飛びこみたい気持。」
 政府は、さきの臨時国会で成立した公害の諸法律を施行し、具体化することを急がなければなりません。処理し残された最大の課題である無過失責任賠償制度の問題については、昨日、成田質問で取り上げたところであります。ただ、公害対策の実際上の担当者であるのは自治体、その自治体の財源を充実することについて、政府は具体策を提示すべきであり、また、被害者保護救済制度を充実すべきではないか。中小企業の公害防止対策に対する融資に利子補給の措置をとらなければ実効があがらないではないか。右の三点についてお伺いをいたしておきたいのであります。(拍手)
 政府は、ようやく総合交通対策に取り組みを始めるといいますが、現在危機に立つ国鉄や都市交通、地方のバスに対する具体的な対策を急ぐのが先決であります。
 都市の交通については、地下鉄網の整備を急ぐとともに、路面交通では電車やバスの大衆輸送車を優先して走らせる専用レーンをもっと拡大すべきではないか。
 国鉄赤字対策は、四十五年度からの再建策で、政府は値上げと合理化だけはやったが、肝心の公共負担に見合う助成をやっておりません。その上、四十六年度予算でも帳簿上のやりくりだけで抜本策を見送っているのであります。
 われわれは、政府がやるべき公共負担ははっきりやり、多額の負債に対する利子補給を行なって資本費の重圧を防ぐこと。ヨーロッパ諸国に行ってまいりますと、どこでもたいへんな出資をいたしております。政府資金をもっと計画的に公社に出資するということ、このことで国鉄の危機を乗り切るべきであります。国鉄を分割し、赤字線の経営を切り離し、自治体に片棒をかつがせるような案は、国の責任のがれであり、全くのお門違いと思うが、総理のお考えを伺いたいのであります。(拍手)
 質問の第四は、農業、漁業、中小企業などおくれた部門に対する対策についてであります。
 ことし、米どころの農村は、暗くて不安なお正月を迎えたのでありました。これまで政府・自民党は、農村票ほしさに農民をだまし、農政の方向を誤ってきました。その結果、一方では米の過剰を来たし、他方、小麦、トウモロコシ、豆類、家畜飼料から畜産物まで年々輸入が増加し、米を除く農畜産物の国内自給率は六割台に落ちました。つい二、三年前まで水田をふやすと補助金を出し、大きな干拓事業を興して増産を奨励してきた政府が、いま一転して米の制限に回り、農民と消費者に大きな犠牲をしいているとともに、多額の税金をうしろ向きに支出せざるを得なくなりました。一体政府は、米が過剰になることを見通せなかったのか、無定見、無計画な農政に対する深刻な反省を政府は少しもしていないのか、まず農林大臣にお伺いいたします。(拍手)
 昨年の施政方針演説において、食糧管理制度の根幹を守ると述べた総理、今国会では、「食糧管理の制度、運営の改善をはかり」と述べられました。私は、米の予約量の割り当てと買い入れ制限、消費者米価の野放しは、まぎれもなく食管法違反だと思うが、どうでしょうか。それとも、けさの新聞で報ぜられているように、制限を越えた米の買い上げもするのですか。政府は公約を捨てて食管法を改正するつもりですか。二百三十万トンを休耕、転作させるというが、一体農民はどのような経営にどのようにして移ればよいのか。それぞれの地域で米作以外の新しい経営に移った農民に、政府は安定的に所得を確保させることができますか。土地改良費など、転作田にこれまでつぎ込んだ農民の借金はどうなるのです。農業団体が協力しないで、政府はどのようにして休耕、転作あるいは予約量の割り当てを末端農家までおろすつもりか。以上の農民の率直な疑問にまず明確にお答えを願いたいのであります。(拍手)
 政府は、いま絶望している農民に、日本農業の将来展望を示さなければなりません。わが党が主張するように、食管制度は米の生産者にも消費者にもなお必要であり、農政全体の柱としてこれを堅持しつつ、米、果樹園芸、酪農の三本立てで食糧の国内自給度を総合的、計画的に高めることを目ざし、米だけに片寄ることなく、土地基盤整備、集団化、共同化による生産組織の整備、価格保障、長期低利資金の大胆な貸し付け等で思い切った農業改革を行なうべきであると思うのであります。まさに田園は荒れなんとしております。倉石農林大臣の責任ある御答弁を求めるものであります。
 出かせぎ農家の中学生の女の子の俳句であります。「父不在 母の日 母の指太し」。
 さて、沿岸漁民にも、出かせぎでようやく暮らしている人たちが多くなってまいりました。しかし、政府が提出を予定しております海洋水産資源開発促進法案にも、沿岸に対する配慮はありません。政府は、沿岸における水産資源の開発、公害防除、経営の構造改善、価格支持、災害補償等を、少なくとも農業対策並みに引き上げる措置をとるべきではないか。沿岸漁業につながる水産加工の部門にも、同じような低利長期融資を行なうべきではないか。また、わが国もいつまでも領海三海里ではなく、専管水域を十二海里とすべき段階にまでもうきたのではないか。あわせてお伺いをしておきたいのであります。
 千島は、わが国固有の領土であり、わが党も事あるごとにソ連側に主張しており、政府の積極的な取り組みを要求するものであります。しかし、いま交渉が継続しております北洋漁業の安全操業の問題については、政府は、領土問題とは切り離し、あくまで歯舞、色丹、国後、択捉の四島周辺について話をまとめるよう外交交渉を強め、出漁する漁民を安心させなければなりません。
 中小企業は、不況やちょっとした金融引き締めで大企業より先に苦しくなり、倒産がふえ、不況対策が講ぜられましても、そのおかげは大企業のあとにわずか受けるだけであります。それだけに最近の不況による危機は、経営近代化対策、労働力不足対策、金融対策、官公庁需要を優先的に中小企業に向ける等、中小企業に直接役立つ対策を強化すべきではないか。
 対米繊維交渉につきましては、あくまでも国会決議の趣旨に沿い、場合によっては打ち切りを決意すべきではないか。同時に、繊維産業の体質改善の強化と対共産圏貿易をも含む貿易構造の転換をはかるべきではないか、総理の御答弁を求めます。
 質問の第五は、地方自治の確立並びに沖繩問題についてであります。
 昨年から引き継がれた朝鮮人国籍書きかえ事務についての法務省と自治体の間の対立問題は、政府の朝鮮人国籍の扱いについての方針が不合理かつ非人道的であることとともに、法務省が地方自治の本質をわきまえず、違法、不当な通達行政で自治体に臨んできたことがついに破綻を来たしたものであり、わが党は、小林法務大臣に対し違法通達の撤回をあくまで要求してまいるものであります。(拍手)
 今日自治体は、行政、財政を通ずる中央集権化の動きの中で過密、過疎に悩みつつ、中にはもとより例外はあるにしても、おくれた生活基盤の整備や住みよい地域社会建設に数々の努力を重ね、その成果もあがっているのであります。佐藤総理は、二十二日の演説におきまして、わが国の飛躍的な経済発展やら歴史的な進歩を自慢されましたが、国の予算の約五割は実は自治体に渡って事業化されていることを御存じと思いますが、下積みとなりながら政府に協力し続けてきた三千三百の自治体の努力に一言もお触れになっておりませんので、現在の自治体をどのように評価しておられるのか、お伺いをいたしておきたいのであります。(拍手)
 中央集権化や生活環境悪化の中で、現在地方自治に生じている活気の一つは、住民意識がかき立てられ、公害追放などの住民運動が活発に起きていることであり、いま一つは、革新的な首長がどんどん誕生し、住民との対話の中から、公害対策や住民福祉の向上に、中央に先がけ積極的な施策を進めていることであります。これは住民が、中央の統治の論理に対し自治の論理を発見し、自治体の政治を住民の手に取り戻し、進んで新しい自治の創造に向かって前進を始めたことを意味すると思うのであります。(拍手)
 ところで、このような地方自治の理念に立ってお伺いをいたしたいのは、よく中央直結といいますが、自治体の首長が保守か革新かにより、政府が補助金や地方交付税でえこひいきをした支出をするのでしょうか。そのようなことがもしありとすれば重大問題でありますが、一般の誤解を解くため、はっきりとお答えを願いたいのであります。(拍手)
 総理の演説では、新全国総合開発計画を中心に、日本列島のバラ色の未来像が描かれましたけれども、旧計画が、地域格差の是正をうたい文句にしながら、結果は逆に過疎、過密を激化してしまった前例がありますように、新計画も、資本の好む大都市周辺に投資が片寄るおそれが目に見えているのであります。特に新全総は、地域住民の声をくみ上げたものではなく、経済合理主義で貫かれた作文である点が問題であります。私は、社会資本の全体につき国民生活の最低限を達成するため、生活環境基準法の制定が必要だと思うのであります。そして全国の自治体が、住民の意思を尊重しつつ、生活環境基準法を基礎にシビルミニマムを総合的な地域計画としてまとめ上げ、これを北から南までつなぎ合わせ、総合調整することで、初めてほんとうの下からの日本列島改造の国民の計画ができると思うのであります。(拍手)そして、その計画を達成し得る財源を、国は自治体に保障するということにすべきであります。
 また、過密も過疎も国の高度経済成長政策の結果であり、自治体の責任で生じたものではありません。したがって、過密、過疎によって生じた財政需要は、すべて国が責任を持つべきものと思うのであります。これらの点につき、総理の明確な御答弁をお願いいたします。
 さて、やがて沖繩県も自治体として本土に復帰することになりますが、返還のための日米交渉は予想以上に順調といい、昨日佐藤派の木曜研究会総会の席上で、愛知外務大臣は、「夏にならないうちに協定を調印し、できるだけ早い国会で批准し、来年早々返還の見込み」と述べたと報道されております。復帰のプログラムについて、派閥の会合だけではなく、国会の場でもはっきり言明をしておいていただきたいと思うのであります。(拍手)
 政府の対米交渉が県民の頭越しに行なわれ、県民はつんぼさじきに置かれていることに、現地できわめて不満が強いのであります。総理は昨日、外交交渉の内容を途中で漏らすわけにはいかないと答えましたが、県民の権利や利益に重大な関係のある事項が話し合われているのでありますから、適当な中間の時点に内容を発表し、県民の世論を聞き、さらに交渉を続けるというやり方をとるべきではないか。
 新全国総合開発計画をはじめ政府の各種長期計画には、沖繩県は含まれていないのであります。今後沖繩県を含めた計画にすべて改めるべきではないか。そして沖繩開発計画は、沖繩の主体性に立ち、沖繩の心を大切にし、沖繩の個性を生かした計画とし、四半世紀異民族の支配下にあることで生じた格差を急速に是正し、本土府県と同等以上のレベルに上げる、そういう配慮が必要であります。
 また、復帰により沖繩県を国内法体系の中に加える作業、これはなかなかたいへんだと思います。どのような法案作業をしておりますか。法律事項を少なくし、多くを政令にゆだねるようなやり方はとるべきではないと思うが、どうでしょうか。
 一万三千トンの毒ガスのうち、やっと百五十トンが運ばれただけで、残りのVXやGBなど、おそろしい神経性ガスの撤去については、事前点検と安全基準の確認が何よりも重要であります。アメリカ本土における安全基準と全く同じものを、本土政府の責任において外交交渉で確認すべきではないか。
 さらに、軍雇用労働者の整理が予想以上の早さで行なわれているのに、再就職や間接雇用制などの雇用安定の対策はさっぱり進んでおりません。人権が不安、毒ガスが不安、雇用も不安で、七二年返還を喜ぶどころではないという県民感情を十分理解したきめこまかな対策を進めるべきではないか。
 以上につき、総理の誠意ある御答弁を求めるものであります。(拍手)
 最後に、私は、今日の政治の反動化を憂うるのあまり、二、三の点について指摘をいたしたいと思います。
 最近、司法部内において福島裁判官問題、飯守裁判官問題、青年法律家協会加入問題、石田最高裁長官の裁判官の資格に関する発言等、問題が相次いでおりますが、わけても裁判官の思想統制は重大であります。最高裁は憲法の番人でありますが、その憲法では、第十九条に思想の自由、第二十一条に結社の自由を規定しているのであり、司法部内において憲法違反の部内指導や人事が行なわれることを許すべきではありません。また、外部の政治からの圧力に裁判所が屈し、みずから司法権の独立を否定するような言動は許すべきではないということを、私はここにはっきりと指摘しておきたいのであります。(拍手)
 伝えられるところによりますと、政府は今国会で行政組織法を改正し、各省庁の部局の設置がその省庁設置法に規定されているのをすべて政令事項にし、すべて国会の議決なくして部局が置かれるようにし、これに便乗し、防衛庁は自衛隊の師団の設置まで政令にゆだねる改正を企図していると聞くのであります。これだけではありません。郵政省は郵便料金の規定も法律からはずし、政令、省令事項できめ、国会に関係なく料金値上げをしやすくしようとしています。財政の運用についても、一般会計から国会議決の要らない財政投融資計画に移す等の問題もありますが、これら一連のあり方は、国民を代表する国会により行政を民主的にチェックするという議会制民主主義を空洞化するあり方といわねばなりません。(拍手)私は、私をやじっている自民党の諸君に申し上げたいのでありますが、このような案を官僚が持ち出し、それに賛成するような自民党議員は、みずから議会人として墓穴を掘るものであるということを申し上げておきたいのであります。(拍手)特に衆議院議員でもある佐藤総理のお考えを伺っておきたいのであります。
 次に、わが国の教育は、戦後、教育勅語体制から教育基本法体制に大きく転換し、平和と民主主義の教育、教育の機会均等、教育の地方分権のたてまえを明らかにし、国民一人一人の人格の完成を目ざし出発いたしました。ところが、政府は資本の要請に追随し、文部省は教育行政機関として重要な任務である教育諸条件の整備、改善はおくれたままにし、教育に対する国家支配を一そう強化しようとしているのであります。その方向をあとづける役目が中教審の作業ではないかと思うのであります。
 政府は、沖繩復帰にあたり、民主的な公選制の教育委員会を、本土並みの任命制にする方針をきめ、現地で激しい批判を受けております。私は、教育権は国民にあるという教育基本法の精神に立つならば、むしろ本土の教育委員会をこそ沖繩並みのもとの公選制に改めるべきであると思うのであります。(拍手)
 教育は、単に文部大臣だけの仕事ではありません。総理は、中教審の答申をまって教育改革をすると演説されましたが、総理自身の教育観とはどういうものか、これをお尋ねしておきたいのであります。
 総理は先日の演説の最後に、国民のいら立ちにつき言及されました。総理がいかにバラ色のビジョンをお示しになっても、物価、公害、住宅難、交通地獄、作付制限、出かせぎ等、差し迫った現実の問題を政府が解決することができなくては、政治への不信はいよいよつのるばかりであります。政府は現実の政治を一体どうするのか、現実の課題をどう解決するのか、具体的に国民の前にお示し願いたい。さもなければ、もう政権担当の資格なしといわなければなりません。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 安井君にお答えいたします。
 何ぶんにも御質問が広範かつ多岐にわたっておりますので、あるいは答弁に十分意を尽くせない点があるかと思いますが、この点はあしからず御了承いただきたいと存じます。まず、冒頭においてお願いしておきます。
 私に対するお尋ねも、そのときによりましてはっきりしておりますが、一般としても、私が答えるのか、あるいは関係大臣かと思う点もありますが、まず最初に公共料金についてでありますが、主要な公共料金は少なくともここ一年据え置くこととしたものであり、政府みずからが値上げを扇動しているという批判は当たらないものと考えます。
 また、米価について物統令をはずすことといたしましたが、流通面の合理化をはかるなどにより、消費者米価の水準が上がることのないよう万全の措置を講じてまいる考えであります。
 なお、この国会において物価を中心としての話し合いの場を持ちたい、こういうようなお話がございましたが、私が申し上げるまでもなく、国会というととろは国策を審議するところであります。御遠慮なしに、必要あればそういう議論をかわされることは当然だろうと思います。
 わが国の防衛は、外交並びに他の内政上の諸政策との調和を保ちつつ、国情にふさわしい防衛力を整備することを基本方針としており、目下、昭和四十六年度を最終年度とする第三次防衛力整備計画を進めつつあります。また、防衛力の限界というものは相対的なものでありまして、そのときの情勢や科学技術の進歩等の諸条件によって左右されるものと考えます。今後どの程度の防衛力を維持すればよいかは、目下鋭意検討中でありますが、いずれにせよ、他国に脅威を与えない範囲内で、専守防衛に徹する方針であります。
 次に、防衛関係費の伸び率について御批判がありましたが、一国の防衛費はその国の国力、国情等によって千差万別であって、その国際比較には十分に注意しないと、いたずらに誤解を招くことになると考えます。昭和四十六年度の防衛予算は、他の諸施策とのバランスを考慮して決定したものであり、一般会計に対する比率もほぼ前年度並みと、妥当な額にとどめております。
 なお、社会保障費については、四十六年度予算において格段の配慮を加えたところであります。その拡充については今後とも努力を惜しまない所存であります。
 次に、健康保険の改正については、今回の措置は抜本改正の第一段階として行なうものであって、今後の抜本改正を促進する方途になるものと考えます。今回の改正では、給付面の改善とあわせて、保険財政の長期的安定に資する所要の措置を講ずる一方、四十六年度末までの赤字をたな上げすることとしております。また、国民健康保険制度の抜本改正についても、被用者の保険と歩調を合わせて検討を進めております。
 次に、老人福祉については、政府としても、来たるべき高齢化社会に備えて、計画的にその推進をはかるべき課題であると考えます。
 安井君から御指摘のあった定年制の延長は、民間企業の協力をまたねばなりませんが、明年度におきましては、健康保険による高齢者の医療給付を引き上げ、老人性白内障の手術費を助成し、老齢者福祉年金の所得制限を大幅に緩和するなどの措置を講じております。今後とも各種年金制度及び生活保護の充実、老齢者医療の改善等について努力してまいります。
 また、失業対策事業については、その刷新改善をはかるため、所要の法案を提出する予定でありますが、その主眼は、今後の中高年齢失業者について、失業対策事業に依存することなく再就職できるよう対策を強化することにあり、現在の就労者について失業対策事業を打ち切ることは考えておりません。
 次に、公害対策について幾つかの御質問がありました。
 まず、自治体の財源充実については、昭和四十六年度予算においては、国庫補助金、負担金の拡充、地方債による資金の重点配分、地方交付税の増額等により、十分配慮いたしております。
 次に、被害者救済については、大気汚染または水質汚濁の影響による疾病の発生が疑われる地域については、すみやかに所要の調査を実施し、公害被害者救済制度の運営に遺憾なきを期してまいる所存であります。
 なお、生活保護者に対する特別手当については、平等の生活保障というたてまえになじまないという問題がありますが、特定の医療手当や介護手当はこれを収入として認定しないことにしております。
 また、中小企業の公害防止のための融資については、現在、公害防止事業団、中小金融公庫等の政府機関において長期、低利の資金を融資しており、四十六年度においては、貸し付けワクの大幅な拡大、貸し付け条件の改善等をはかることとしております。
 次に、総合交通対策については、従来から各省庁においてそれぞれの立場から検討してきたところであります。道路、鉄道、海運、航空など、各種の交通機関を通じて、一体としての便利性、効率性、安全性等が確保されるよう、広い観点から、各省庁が協力して、新たに対策を検討してまいることとしております。
 また、都市交通については、御提案の趣旨に沿い、地下鉄網の整備、専用レーンの確保を今後一そう推進していく考えであります。
 また、国鉄再建策について種々御意見がありました。公共負担に対して助成をとの御意見については、輸送構造の変革に伴い、国鉄の独占的地位そのものがゆらぎ、財政的にも極度に悪化している今日では、むしろ貨物の公共割引を是正する方向で検討すべきものと考えます。
 さらに、国鉄と地方公共団体との関係については、地方交通線の中には、地元の経済、住民生活の安定に大きな役割りを果たしているものがあることは否定できないところであって、何らかの形で地方公共団体の協力を求めることは検討に値する課題であると考えます。
 次に、政府は昭和四十六年度から交通安全施設整備五カ年計画を実施する予定でありますが、その財源措置についても十分に配慮してまいる考えであります。
 次に、専管水域を十二海里にするときがきたのではないかとのお尋ねでありますが、近年、国によっていろいろ一方的な主張がなされていることでもあり、この際、国際的合意に基づいて統一されることが望ましいところであります。わが国としても、その場合、三海里に固執するものではありませんが、今後、国際的にも緊急に検討を要する問題であると、かように考えます。
 また、沿岸漁業に対する融資についても特別に考慮しろという、そのとおり私どもも処置する考えでございます。
 次に、政府の北方領土問題についての考え方は、固有の領土である四つの島の返還を求めることにあります。同時に、北方水域の安全操業についても、これら四つの島を中心としてソ連側と鋭意交渉を重ねている次第であります。
 また、繊維交渉が長引くようなら打ち切れとのお話でありますが、この問題に対する基本的な考え方は、この問題を放置することは、日米関係にとっても、世界の自由貿易体制の維持のためにも好ましくないという判断から両国間で交渉に踏み切ったものであることを認識していただきたいと思います。政府としては、あくまで互恵互譲の精神で妥当な解決をはかる方針であります。
 また、繊維産業の体質改善については、すでに、繊維関係の臨時措置法等に基づき構造改善事業を推進してまいっており、また輸出市場の多角化についても種々配慮してまいりましたが、今後ともこれらの施策を実施していく考えであります。
 次に、中小企業の不況対策については、昨年末、財政の追加により、中小企業金融機関の貸し出し規模を増額するほか、関係金融機関にも協力を要請して、万全の金融対策を講じているところであります。このほか、四十六年度予算においても、中小企業の近代化を推進するため、格段の配慮をいたしております。
 次に、地方自治の問題について御意見がありましたが、まず、国も地方団体も、その行政の目的は国民の福祉を増進することにあり、両者が緊密に連携、協力し合っていくことは、行政の円滑を期するためにも不可欠なことであります。
 また、国庫支出金や地方交付税は、いずれも客観的な基準によって支出または配分されるものであり、安井君のような御批判は当たらないと思います。国は、あくまでも国家的立場において、真に有益な事業に対しては積極的に支援を惜しまないものであり、人によって差別するものでないことをこの機会にはっきり申し上げておきます。
 次に、社会資本について、ナショナルミニマムを実現せよとの御提案がありました。安井君の御主張は、理念としては十分理解できますが、その具体化にあたっては、その望ましい水準が住民の欲求や地域の特性等に応じて異なるため、種々むずかしい問題もあるようであります。政府としては、当面社会資本の整備と水準の向上に一そうの努力を傾注し、社会資本についてのナショナルミニマムの設定については、なお慎重に検討したいと考えております。
 新全国総合開発計画は、関係地方公共団体をはじめ、広く関係各方面の意見を聞き、それらを十分調査して策定されたものであり、地域住民の意思を全く尊重していないという批判は当たっておりません。今後とも、国、地方公共団体、民間等、それぞれの立場、責任に応じ、一致協力して、経済社会の発展と国民福祉の向上に努力していくべきものであります。
 地方公共団体の財源問題等についても、このような観点から、引き続き適切な配慮をしてまいりたいと考えます。
 過密、過疎の問題は、わが国の著しい経済成長の過程において生じたものであり、国と地方公共団体が相協力してその解決に取り組むべき課題であります。政府としては、かねてより過疎過密地域の地方公共団体の財政需要に対処するため、国庫補助、負担金、地方交付税、地方債等について種々の配慮を行なう等、必要な行政及び財政上の施策を行なっているところであります。
 次に、沖繩の返還に関する日米間の交渉は順調に進んでおりますので、ことしの春から夏にかけて調印の運びになることを期待しております。その上で今年中に国会の審議をお願いし、明年、すなわち一九七二年中のなるべく早い時期に沖繩の祖国復帰を実現する方針であります。また、御指摘のように、沖繩返還に基づいて、新全国総合開発計画も実態に沿うよう逐次改定することが望ましいと考えております。
 なお、政府としては、なるべく早い機会に、復帰後における沖繩経済社会の開発振興をはかるための開発計画を策定する方針で、現在検討を進あているところであります。この計画においては、産業振興と住民福祉の向上を目的に、沖繩の自然的、社会的条件の持つ諸条件に即した開発振興をはかり、真に豊かな沖繩県の実現につとめてまいりたい考えでございます。
 沖繩からの毒ガス兵器の撤去に関しては、先般の第一次移送の結果を踏まえつつ、残余の毒ガス兵器の移送にあたっても、安全性の確保を第一として、撤去が一日も早く実現するよう米側との接触を一そう密にしてまいりたい、かように考えております。
 次に、安井君は、国家行政組織法の改正をはじめ幾つかの事例をあげて、議会民主主義を空洞化するものであると批判されました。国家行政組織法の改革にせよ、郵便料金の決定方式の改正にせよ、旧来の制度を再検討して、社会情勢の進展に即応したものとする趣旨から出たものであります。また、国会審議の関係におきましても、部局等の設置改廃は政令に委任し、また一部の郵便料金の決定は省令に委任するとしても、その基本となる各省の所管事務と権限、料金決定の委任の要件等は国会の御審議を仰ぐこととしていることを十分御考慮願いたいと存じます。
 また、特別会計については、個々の特別会計に関する法律案のほか、毎年予算を国会に提出して御審議いただいており、議会民主主義は十分に尊重されております。
 最後に、教育問題についてお答えいたします。
 現行憲法下では、主権者である国民の信託を受けて政府が国政を行なっており、国民と国家は対立的な関係にあるのではありません。したがって、公教育も、国民の意思に基づき、国民の負託を受けて行なわれるものであって、教育行政機関は、法律の定めるところにより、国民の教育意思を実現する権限と責任を負うものであります。教育において、教師の自主性や創意くふうを尊重すべきことは言うまでもないところでありますが、教育の自由と学問の自由とは別個のものであって、小、中、高等学校の教師に、憲法上の権利としての教育の自由があるとは考えません。すなわち、小、中、高等学校においては、心身が未発達で判断力も十分でない児童生徒を対象としており、かつ、教育の機会均等の理念から、全国的に一定の教育の水準を維持し、適切な教育内容を確保することが要請されているのでありますから、そのために教育は、全国的基準に従って運営されなければならないと考えます。(拍手)この限りにおいて、教師は一定の制約を受けるのでありますが、これは国会で定められた法による制約であって、いわば国民の総意によるものであると言うことはできます。(拍手)また、教育が個人の尊厳を重んじ、豊かな人間性の育成を目ざすものであることは、教育基本法に明示されているところであります。一方、経済の発展も、民主的で文化的な国家の建設にとって重要な要素であり、教育にあっても、経済の発展に適切な配慮を払うことは必要であると考えます。
 以上の観点から、公教育の水準の維持向上をはかるため行政上適切な措置を講ずることは、政府の任務であって、これを国家による教育の支配と考えるのは当たらないと考えます。
 重要な問題でありますから、特に詳しくお答えをした次第であります。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#10
○国務大臣(福田赳夫君) 四十六年度予算が機動的中立型の予算である、これがインフレ化を促進するおそれがあるから注意せよというお話でございますが、まことにごもっともな御意見と存じます。つつしんでお受けいたしたいと存じます。
 次に、税の問題で幾つかの御提案があったわけでありますが、所得税減税をなお大幅にいたせというお話でございます。
 四十五年度におきまして三千億所得税減税をいたしましたことは、御存じのとおりでありますが、まあ四十六年度はそのあとだから、一休みしたらいいじゃないかというような意見もありました。ありましたが、しかし、これは私は、所得税は減税を続けていくべきである、かように考えます。国民全体の租税負担といたしますと、必ずしも高いほうではございませんけれども、所得税に偏重いたしておるという点は是正したい、かように考えまして、昭和四十六年度におきましても二千億減税を実行する、かようにいたしましたので、意のあるところをおくみ取りくださいますようお願い申し上げます。
 なお、退職金減税につきましてのお話でございますが、これは今日すでに、昭和四十二年度改正でかなり手厚い制度があるのであります。三十五年定年五百万円というような、これは一例でございますが、そういうような減税制度があるのでありまして、これはかなりのものじゃないか、かように考えております。
 交際費課税を重課せよというお話でございますが、これはそのとおりに考えておりまして、租税特別措置法の改正案として、本国会において御審議をお願いするつもりでございます。
 また、租税特別措置について整理せよというお話でございますが、そのとおりに考えておりまして、たとえば輸出減税の特例措置、これにつきましても見直しを行ないまして、またこれも本国会において御審議をお願いする、かように考えておるのであります。
 また、法人税を重課せよというお話でございますが、これは非常にむずかしい問題です。所得税と法人税との関連をどうするか。これはもう少し税制調査会等にもお願いいたしまして、深く掘り下げてみたい、かように考えております。
    〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#11
○国務大臣(倉石忠雄君) 野菜の価格のことについてお話がございました。野菜の価格安定をはかりますためには、毎々申しておるように、需要に見合いました供給を確保することが基本でございますので、政府は、野菜指定産地制度による新興産地の育成、気象条件に左右される度合いのわりあいに少ないような施設野菜の生産増強と、それから、四十六年度予算には、新たに、こういう野菜産地に対する干ばつなどに対して、露地野菜の生産を継続することができるように、かんがい施設の予算を取って計上いたしてありますことは、御存じのとおりであります。
 そういうようにして、平素、生産を増強したいばかりでありませんで、御承知のように、この国会で継続御審議を願っております市場法を改正していただくことによって、取引関係にはかなりな効果もあがり得るものであることは、すでに定評のあるところでございます。それからまた、今度、総合食料品小売りセンター、これも大きな市場にずっと継続して設置してまいるつもりであります。
 こういうことが関連して行なわれるようになりますれば、われわれの目的も達成されると思いますけれども、当面の対策として、私どもは輸入について考えております。当面、タマネギは大幅に入ってきておりますが、今日の状況を見まして、さらに輸入量を増強いたしてまいりたいと思っております。
 それから、ただいま物統令適用のことについてお話がございましたけれども、あの点だけ突然ごらんくだされば、あるいは御心配のような向きもあるかもしれませんけれども、物統令の米に対する適用を廃止するというのは、四十六年産米の出るころにまで考えることでありまして、その間に、こういうこと、こういうことをしていくんだということについては、まだ政府は何も言っておらないのでありますから、そこで、これからやるべきことは、つまり、私どもといたしましては、御心配のないように諸般のことをやってまいる。たとえば、最近、急に人口のふえた地域などは、いま、米の小売り商人の新しい参入をどんどん認めておる。スーパーなどでもそういうことをやっておりますが、そういうような小売り商の増加、それからまた、いま私ども、ほかのものもそうでありますが、米も商品でありますので、お買いになる方が、一体どこの米ならば一番うまいであろうかというふうなことの選択をしてもらう自由が必要ではないか。そのためには、やはり生産の土地からして、どこの産地、たとえば新潟県なら新潟県のコシヒカリがほしいとおっしゃいましても、はたしてそれが適切な価格で小売り商から配給されるということは、なかなかむずかしい。そこで私どもといたしましては、銘柄格差、それからまた等級間格差等をはっきりすることによって、需要に応じ、消費者の選択で自由に選ばれるような、そういうシステムをとることがいいではないか、こういうのが物統令を廃止してまいりますまでにいたすことであります。
 それから、安井さん第三番目におっしゃいました、過剰が見通せなかったかというお話でございますが、政府といたしましても、昭和三十七年の五月に公表いたしました、農産物の需要と生産の長期見通しを出しておりましたが、長期的には、米の生産は需要を若干上回って、米の需給は均衡を失するおそれが強いということを、農林省では発表をいたしておったのでありますが、三十七年の長期見通し公表後の実績を見ますというと、千三百四十一万トンをピークといたしまして、減少傾向に転じました。ですから、途中で、御承知のように百万トンも外米を輸入したのは、つい最近のことであります。ところが、最近になりまして、いろいろ技術もよく、また天候に恵まれまして、四十一年まで、非常にこの生産がふえてまいった。そこへもってきて、国民の皆さんが米を消費される量が減ってきまして、絶対量では一年に二十万トンずつ、皆さんの食べ量が減ってきているわけであります。そういうようなことが重なりまして今日の状況になったのでありますから、そこで政府は、計画的に今度は長期の計画を立てまして、生産調整をやる、こういうことになってまいったわけであります。
 それから米の予約割り当て、買い入れ制限等は食管法違反ではないかというお話がございました。これは御存じのように、食糧管理法は昭和十七年に制定されまして、国民食糧の確保及び国民経済の安定をはかるため、主要食糧の需給及び価格の調整並びに配給の統制を行なうということを法律の目的といたしております。したがって、政府の買い入れは、この目的を達成するために、政府が買い入れて管理する必要がある数量の米を買うのがこの法律の命令するところであります。したがって、この必要数量の買い入れを確保するため、食糧管理法第三条の規定に基づいて生産者にも売り渡し義務を課しておる、こういうことでありますので、御存じの予約は、この売り渡し義務を定めるための手続として行なわれておるものであります。したがって、予約限度数量を定め、その範囲内で買い入れるという今回の措置は、食管法に違反するものではないと考えております。
 また、消費者米価から物統令のことにつきましても、このときお話がありましたが、ただいまお答えいたしましたとおりであります。
 農政について種々御高見を拝聴いたしたわけでありますが、私どももたいへん御同感の点もありますけれども、転作後の経営の安定をはかるためには、四十六年度から五十年度までの五年間にわたりまして、奨励補助金を交付して、他作物への誘導をいたします。それには、政府がたいへん努力をいたしまして昨年末に発表いたしました地域分担等は、各地方地方において非常に参考になるものでありますので、ああいうものを基礎にいたしまして、土地基盤の整備、農業近代化施設の導入等、稲作転換のための各種の特別事業を実施して、転作経営が円滑に定着してまいるように努力をいたしてまいりたいと思っておる次第でございます。
 それから、農業団体が不協力ではうまくいかぬではないか、全くそのとおりでありますけれども、生産調整の実施を行ないますためには、農業団体をはじめ関係者の協力が必要でありますので、そのため必要な予算措置を講ずることはもちろんでありますが、具体的な実施方法等について、ただいま地方自治体それから農業団体等、緊密な打ち合わせをいたして、着手いたしておるところであります。
 それからもう一つ、土地改良のことで御心配をしていただきました。これは多くの方の御心配のことでございますが、米の生産調整を行なう水田に対しまして、米の生産費や米作所得を考慮した相当額の奨励補助金を交付することといたしまして、所要の予算要求をいたしておりますので、一般的には、生産調整によって直ちに土地改良事業の償還金の支払いに支障を免ずるものはないと私ども考えております。
 なお、生産調整を行ないました一定の農家が、これに伴って土地改良事業の償還金の一時支払いを求められる等、その経営が困難になった場合には、自作農維持資金の融資を行なうことにより対処いたすつもりでおります。
 それから、あと漁業のお話がございました。沿岸漁業について、いろいろ御指摘をいただきましたが、四十六年度予算をお調べいただきますと、よくわかると思いますが、沿岸漁業の振興につきましては、新鮮な魚介類を消費者に円滑に供給するとともに、多数の沿岸漁業家の経営を安定させるという見地で、われわれは農業対策に劣らず年々施策の拡充をはかってまいっておることは御存じのとおりでありますが、特に四十六年度におきましては、第一は、第二次沿岸漁業構造改善事業の実施に着手をいたします。第二は、漁港整備事業、浅海漁場開発事業などを拡充いたします。第三には、漁業公害対策を新たに実施する予算を計上いたしました。第四は、産地流通加工センターの形成事業を新たに実施いたします。それから、水産資源の開発の促進のための制度を新たに設けました。これも御存じのとおり。漁業災害補償制度の充実をはかる等について必要な予算措置、立法指貫を講ずることといたしておりますし、また、長期低利資金についても、農林漁業金融公庫資金、漁業近代化資金の拡充をはかって、水産加工を含めた漁業経営の近代化に役立たせようといたしておるわけでございます。
 お答え申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○副議長(荒舩清十郎君) 不破哲三君。
    〔不破哲三君登壇〕
#13
○不破哲三君 今日、わが国の政治は内外ともにきわめて重大な諸問題に直面しております。しかも、その多くは、従来の自民党路線のワク内では解決できないところに逢着しているところに、今日の事態の特別の深刻さがあります。総理の施政方針演説が、日本の未来像について多くの美辞麗句を費やしながら、公害、物価、日中、基地など、国民が痛切にその解決を求めている諸問題については具体的な施策を示し得ずに終わったのは、決して偶然ではありません。
 私は、日本共産党を代表し、日本の独立、平和中立、民主主義と生活向上を求める国民の願いに立って、総理に政府の内外政策について質問を行ないたいと思います。
 第一の問題は、沖繩県の返還協定をめぐる問題であります。
 総理は、先ほども、ことしの春あるいは夏までに返還協定の調印をするということを申されました。しかし、この協定の内容や問題点については、いまだに国民の前には何ら明らかにされておりません。沖繩返還というような国民的な課題については、これは調印前においても、その内容について、問題点について国会に報告をし、国会の審議を通じて国民の意思、沖繩県民をはじめとする国民の意思を協定に反映させるのが、政府の当然の責務であると考えます。(拍手)私は、まず総理に、政府にこの意思がありやなきや、この点を伺いたいと思います。国民に協定の内容について隠したまま、国会に隠したまま調印をし、調印後にイエスかノーかだけをただ国会に迫るというのであるならば それは国民不在 国会無視の外交であるとのそしりを免れ得ないものであります。
 沖繩返還協定の最大の問題点は米軍基地の問題にあります。わが党は、あの不当、不法なサンフランシスコ条約第三条の廃棄を前提にして、米軍基地の全面撤去を内容とする全面返還協定の締結を一貫して主張してまいりました。しかるに、政府は、本土並み返還という名目のもとに、日米共同声明に基づく米軍基地の存続を内容とする協定の準備を進めてきたのであります。この点で、今日われわれが特に重視をしなければならない問題は、アメリカの軍・政府首脳部が、返還後の沖繩の基地について、これを西太平洋全域を対象とする出撃、補給、通信の基地にするという構想を繰り返し発表し、特に日米会談ののちに、ベトナムから引き揚げた海兵隊をもって新たに緊急出撃部隊を編成し、事もあろうにこの部隊を沖繩及び本土の岩国に配備したという問題であります。この部隊は、朝鮮であれ、台湾であれ、インドシナであれ、一たん問題が起き、緊急事態が起きたならば直ちに出撃して軍事行動をとるという、いわばアメリカの極東戦略の最も危険な突撃隊であります。現に昨年春のゴールデンドラゴン作戦においては、この部隊が沖繩と岩国から出撃をして朝鮮半島に上陸作戦を敢行するという危険な演習まで行なっているのであります。しかも、アメリカの海兵隊のチャップマン司令官は、法的にはどうなろうと、この部隊が沖繩で緊急出撃権を持つのは当然であるということを最近も公言しております。こういう状態が返還後も続くとするならば、政府のいう本土並み返還は全くの空語に終わり、進行している事態の真相が、本土、沖繩を一体としてアメリカの極東戦略により緊密に結びつけるいわゆる本土の沖繩化、安保条約の実質的な改悪を意味することは明白であります。
 そこで、私は総理に伺いたいと思います。用意をされている返還協定の内容について、特に米軍基地の問題について、総理がどのような取りきめを用意されようとしているのか、その点について伺いたいと思います。
 その第一の問題は、政府が、アメリカが占領中にかってに建設をしてきた沖繩基地の現状を、返還後も基本的に認めるつもりなのかどうかという点であります。かつて日本は、一九五一年にアメリカと安保条約を結んだ際、占領下にアメリカが一方的意思で設置した基地の主要部分を講和後も無条件でそのまま提供する、こういう取りきめを強要されました。これは全土基地方式と呼ばれるきわめて屈辱的な取りきめでありました。政府は今回、基地のない沖繩をという日本国民の願いに反して、米軍基地の存続を許すばかりか、沖繩基地の提供の方式についても、二十年前と同じ屈辱的なやり方を繰り返そうとしているのか、その点明確な回答を願いたいと思います。
 第二に、政府は昨年の国会で、沖繩を西太平洋作戦の基地とするなどの構想が安保条約のワク外にあることを認めました。そうであるならば、現に進行しつつあるアメリカ側の構想をこのまま放置することは許されないはずであります。一体政府は七二年返還にあたって、返還後の基地の機能を規制する具体的な取りきめを明確に結ぶ用意があるのかどうか、この点を伺いたいと思います。この問題は、単に事前協議の適用といった形式論だけで解決できる問題でないことは明白であります。
 さらに、これに関連をして、さきに述べた海兵緊急出撃部隊の配備について、これを返還後もそのまま認めるのかどうか。これは沖繩が実際に米軍の自由出撃基地となるかどうかをはかる試金石ともいうべき問題でありますので、総理の明確な答弁を伺いたいと思います。
 第三に、アメリカはインドシナで日増しに侵略戦争を拡大しており、七二年返還の時点で戦争が継続している公算はきわめて大だといわなければなりません。こういう情勢のもとで返還後の沖繩から日本政府が米軍の出撃を認めるかどうか、これは国際的にもきわめて重大な政治問題であります。一体政府は、こういう問題が起こったときに、これを一切拒否するという態度をとるのか、それとも情勢のいかんによってはイエスもあり得ると考えているのか、その点についてあらためて総理の明白な見解をただすものであります。
 第二の問題は、日中問題であります。総理は、対中国政策を論ずるにあたって、しきりに国際信義を問題にされます。しかし、国際信義とは、特定の政治家や集団に対する問題でなく、国民に対して、また国民を代表する政府に対する信義であることは自明であります。ところが、台湾の蒋介石政権とは、昨日も指摘されたとおり、二十二年前に中国から追われた亡命政権であって、中国国民全体を代表する資格がないのはもちろん、一千四百万台湾住民を代表する中国の一地方政権としての資格さえ主張し得ないものであります。総理は、一体この政権を世界のいかなる国民を代表する政権とみなしているのか、明白な見解を伺いたいのであります。
 さらに総理は、中国大陸との関係を改善したいという希望をきょうも繰り返し表明されました。そこで端的に伺いたいのは、総理は、中華人民共和国政府との国交の正常化という目標を、七〇年代日本外交の課題とする立場をとっておられるのかどうか、この点であります。この目標を持たずして、対中国政策のあれこれの手段、方途について論じることは国民を欺くことになります。そうではなく、これが七〇年代日本外交の避けることのできない課題であることを認めるのであるならば、当然今日においても、その目標に向かって真に前向きの政策をとるべきであります。
 第一に、総理は中国との政府間接触を唱えています。しかし、今日必要なのは単なる対話のための対話ではありません。私は、政府が一般的な接触の呼びかけにとどまらず、国交問題を主題とする両国政府間の協議を直ちに開くよう努力すべきことを強く主張するものであります。(拍手)総理にその意思がおありかどうか、明確に伺いたいと思います。
 第二に、政府は、少なくとも日中正常化の課題に新たな障害を置くような行動は差し控えるべきであります。特に昨日の鈴木質問に対する答弁のように、国連において蒋介石政権の議席の維持にきゅうきゅうとする態度をとることや、蒋介石政権への新たな円借款を進めるなどは、日中国交回復を願う大多数国民の願いを正面から裏切ることであります。(拍手)
 特にここで指摘しなければならないのは、台湾問題の日中関係における特別の重大性であります。かつて台湾は日本が中国から奪取した地域であり、第二次世界大戦の終結時にポツダム宣言その他で中国に返還する明白な国際的義務を負ったそういう地域であります。今日、総理がほんとうに国際信義を問題にするのであるならば、一九五二年、アメリカに強要されて日台条約を結び、この亡命政権を中国の正統政府とするという虚構に立って中華人民共和国を否認し、敵視する政策をとってきたこの二十年来の誤った政策をこそ清算すべきであります。それこそが真に国際信義にかなった道であると考えるのでありますが、総理の見解を伺いたいと思います。
 第三の問題は、日本軍国主義の復活をめぐる問題であります。この問題について総理は昨年来いろいろと弁明をされております。しかし、問題は、ことばではなくて事実であります。たとえば、総理は平和に徹するのが国是だと主張しております。しかし、かつて日本軍国主義の侵略の対象となった国々に対して、政府は一体いかなる政策をとっているでありましょうか。朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国、ベトナム民主共和国、これらの国々に対して政府は国交を結ばないばかりか、貿易や人事の交流にさえも不当な制限を加え、さらに一昨年の日米共同声明においては、朝鮮、中国、ベトナムに対するアメリカの軍事行動に対して、特別の便宜を与える約束さえ行なっているではありませんか。この共同声明を契機に日本軍国主義を警戒する声が一段と高まったのは、決して偶然ではないのであります。もし、総理が平和に徹する外交政策をもって軍国主義の批判に対する反証としたいというのであるならば、日米共同声明の朝鮮、中国、ベトナムに関する条項を取り消すとともに、これら諸国に対する平和、友好の外交政策をこそ最も真剣に追求すべきであります。(拍手)朝鮮民主主義共和国、ベトナム民主共和国に対する関係改善の総理の政策をお聞きしたいと思います。
 また、政府は、しばしば日本の軍事大国化を否定する証拠として、軍事費のGNP対比の低さをあげています。しかし、他国が脅威を感じるのは、GNP対比ではなく、実際の戦力の内容であり、軍事費の規模であります。ところが、この点に関していえば、四次防を実行するならば、日本は世界の中で毎年一兆円以上の軍事費を投入するという七カ国の一つ、核保有の五大国に加えて、西ドイツと日本だけが一兆円をこえる軍事予算を持つという、そういう規模に達するのであります。しかも、総理は、昨日も本日も、自衛隊は専守防御、他国に脅威を与える戦力ではないと答弁されました。しかし、自衛隊の性格と任務を決定する最大のポイントの一つは、それが安保条約下の軍隊であり、アメリカの極東戦略の一部をになった軍隊だという点であります。もし米軍が日本を基地として朝鮮その他に出兵し、自衛隊がそれに軍事協力体制をとるならば、かりに自衛隊自身は他国の領土、領空を直接侵さないとしても、その役割りは決して防御的なものではあり得ないのであります。この問題は今日特に重大であります。アメリカはニクソン新戦略のもとで、自衛隊に一そう大きな役割りを受け持たせ、日米両軍の緊密な共同のもとで極東での戦争体制を固める方向を追求しております。自衛隊の沖繩派遣や、米軍の基地の再編に伴ういわゆる基地の共同使用の問題も、まさにその具体化の一歩一歩にほかなりません。政府が自衛隊の任務があくまで専守防御のワクを出ないと主張するのであるならば、在日米軍が他国に出兵するような事態が起こった場合、自衛隊はこれら米軍との軍事協力をしないというのかどうか、総理の見解を明確に尋ねたいのであります。
 さらにこの問題で重視をしなければならないのは、安保条約下に軍事力の増強が進めば進むほど、憲法改悪あるいはその他の手段によって徴兵制や海外派兵への障害を取り除き、軍国主義の全面的な復活への障害を取り除こうという動きが、アメリカと日本の支配層の間に一段と強まりつつあることであります。先日の財界の代表の憲法改正についての発言、あるいはニクソン大統領のフォーリン・アフェアーズ誌での論文、これらはその最も端的なあらわれであります。
 そこで、私は総理に伺いたいと思います。
 総理が総裁を兼ねておられる自民党の政綱にも、憲法の改定の問題は、党の立党以来の方針として明記をされております。憲法の改定の問題、第九条の廃止の問題について、総理は今日及び将来においていかなる見解をお持ちなのか。あるいはまた、憲法下での海外派兵の手段としていろいろ取りざたをされております国連警察軍、あるいは国連軍の形式による自衛隊、またはその一部の海外への派兵について、今日政府はいかなる見解をお持ちか、この点について質問をしたいと思います。
 第四の問題は、物価対策の問題であります。今日、高物価と公害は、国民生活の二大脅威ともいうべき問題でありますが、これはともに自民党政府が六〇年代に続けてきた大企業本位の経済成長第一主義の結果であります。ところが、総理は、施政方針演説において、その根本的な反省を行なおうとはせず、かえって国民に根気と忍耐と努力を求めているのであります。ここで私は、国民の忍耐にも限度があるということを、総理に率直に指摘をしたいと思います。
 物価の安定が、公害問題とともに国政の最大の急務であることは明白であります。私はこの点で、緊急に実行すべき諸政策について提案し、総理にそのすみやかな実行を求めるものであります。
 その第一は、国民の消費生活を直接左右する米と野菜の問題であります。総理は、消費者米価を物価統制令からはずすという問題について、消費者の選択に応じた米の価格形成だと説明をし、昨日も値上げにならないよう事前に必要な措置をとると言明をしました。しかし、それがどういう結果をもたらすかは、自主流通米が配給米よりはるかに値上がりをしている実績に照らしても、自由な価格形成にまかされている野菜や魚の値上がりに今日国民が苦しめられている現実によっても、すでに明白なところであります。私は、政府にこの措置の撤回を強く求めるものであります。
 また、野菜の価格の安定のためには、都市近郊農業をはじめ、野菜づくりを安定させる保護政策とともに、大青果会社に握られている卸売り市場の現状に抜本的にメスを入れ、自治体や住民の監督のもとに、不当な価格のつり上げを取り締まれるような民主的な制度改善が重要であります。(拍手)
 第二に、大企業製品の独占価格の引き下げ対策を、テレビ、薬品などの消費財はもちろん、産業全体に影響する鉄鋼などの基礎資材を含めて強力に推進する問題であります。
 総理は、昨年の国会で、高い生産性の部門では価格引き下げをという期待を表明されましたが、実際にはそのような行政指導は何ら行なわれませんでした。これは政府の重大な失態であります。独占価格引き下げの具体策なしに有効な物価対策はあり得ないからであります。
 昨日総理は、成田議員の質問に答えて、独占価格監視のための特別機関を設ける意思はないと述べました。しかし、今日、大企業製品の真の製造価格を明らかにできる公的機関が存在しないことが独占価格引き下げの大きな障害となっていることは、周知のところであります。(拍手)わが党は、かねてから、この問題で国会に調査権を持たせることを主張してきましたが、ここにあらためて独占価格調査の権限を持った機関を国会に設置することを提案するものであります。(拍手)この機構を通じて、おもな大企業製品の製造原価が明らかにされるならば、そのときに初めて政府は強力な価格規制の勧告を行ない、それに従わない企業に対しては、国が与えている助成措置を停止するなどの強力対策も含めて、効果的な行政指導が可能となるのであります。
 また、消費者運動が独占価格引き下げの重要な力となっている経験に照らして、公正取引委員会の構成や任務を改善し、消費者の提訴がたやすく行なわれるように、これに物価裁判所的な機能を与えることも、実行可能で、かつ有効な方策であります。(拍手)
 第三に、今日の物価上昇に政府主導型の批判があるのは、政府が物価抑制を口にしながら、ほとんど毎年のようにあれこれの公共料金の引き上げを繰り返し、予算規模や日銀信用の急膨張によって、インフレの進行にみずから拍車をかけているからであります。もし総理が、就任以来の物価抑制の公約に真剣な態度をとるのであるならば、いまこそ万難を排してその政策を転換し、郵便、電報、電話料金の値上げを含めて、例外なしにすべての公共料金の据え置き、財政規模の圧縮、赤字公債発行の中止など、インフレの抑制と物価の引き下げにこそ政府の主導性を発揮すべきであると考えます。(拍手)
 以上、私は物価安定のために政府がなすべき最低限度の措置について提案をいたしました。これらの提案の実行について総理の意思と見解を聞いたいと思います。(拍手)
 私は、最後に、議会制民主主義と選挙制度について質問したいと思います。
 議会制民主主義の精神は、主権在民の原則にあります。国会は、主権者である国民の総意を代表する機関であるからこそ、国権の最高機関としての役割りを果たすことができるのであります。その意味で、選挙制度が国民の意思の正確な反映を保障するものであるかどうかは、決して単なる技術問題でなく、議会政治の根本にかかわる重大問題であります。この立場から、私は、さきの公選法改悪に続いて、総理が昨年十二月、第七次選挙制度審議会の発足に際して、三人区程度の準小選挙区制を示唆したといわれる問題を重視せざるを得ないのであります。周知のように、わが国の選挙制度は、現状でも国民の総意の正確な反映という点では少なからぬ欠陥を持っております。最近の国会選挙で、自民党が、得票数では過半数を割りながら、議席では六割もの絶対多数を占めるという結果が繰り返されているのはその端的なあらわれであり、多くの国民がこの矛盾の合理的な是正を要求しているところであります。ところが、総理が示唆したという準小選挙区制は、この矛盾を是正するどころか、少数派から議席を奪うとともに、自民党はより少ない得票率でも議席の多数を維持することができるというきわめて党略的なものであり、まさに議会制民主主義の土台を脅かすものといわなければなりません。(拍手)
 私は、総理が、一方で人口に見合った選挙区定数の是正や政治資金の規制など、政府自身の公約をたな上げにしながら、特に準小選挙区制の採用を示唆された真意はどこにあるのか、明確な答弁を求めたいと思います。(拍手)
 国民主権の原則、議会制民主主義を守ることは、現在及び将来にわたって国政に臨むわが党の基本的見地であります。わが党は、七〇年代の新しい民主政治を展望するにあたって、国会の多数に基づく民主連合政府の樹立を目ざすとともに、将来においても、国会を名実ともに国の最高機関とする確固とした民主政治を打ち立てることを主張するものであります。
 私は、この見地から日本共産党が、選挙制度の問題であれ、その他の問題であるとを問わず、議会制民主主議と国民の民主的自由を脅かすあらゆる反動的企てに対して断固として反対し、わが国における政治的民主主義の真の確立とその発展のために全力を尽くす決意であることをここに表明をして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず、沖繩関係の返還についてのお尋ねにお答えをいたします。
 返還協定につきましては、米側と合意した際は当然国会に提出し、その承認を得ることといたしております。
 また、沖繩返還に関連する種々の交渉事項については、目下鋭意交渉中でありますが、政府としては、沖繩住民の要望をも尊重しつつ、沖繩住民を含むわが国国民全体の利益に即した解決をはかるべく全力を尽くしている次第であります。途中で国会にかけろ、かような御意見でございましたが、外交権はもともと政府の専権の問題でございます。その点は御了承をいただきたいと思います。次に、沖繩返還に際しては、安保条約及び地位協定その他の関連取りきめがそのまま適用されることとなり、米軍に提供される施設、区域は当然これに従って提供されることになるのであります。この意味におきまして、しばしば核抜き本土並み、かような表現、核抜き本土並み、七二年返還、これが合いことばのように言われておりますが、その点は共産党の方にも御了承をいただきたいと思います。
 次に、安保条約により、わが国が米国に対して、わが国内で施設、区域を使用することを認めているのは、わが国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与することを目的とするものでありますから、復帰後の沖繩におきましても、本土におけると同様、右の目的のワク内にあるものについては施設、区域の使用が認められることとなるのであります。
 沖繩の施政権返還に際し、従来本土に適用されている安保条約及びその関連取りきめが、事前協議制度の運用を含め、何ら変更されることなくそのまま適用されることは、これまでもしばしば明らかにしてきたとおりであります。したがって、復帰後の沖繩からの戦闘作戦行動のための施設、区域の使用につき、事前協議制の例外を設けるごとき合意を行なうことは絶対にありません。なお、事前協議制度の運用に際しての日本政府の態度は、わが国益確保の見地から、具体的事案に即して自主的に判断して諾否を決定するということであり、この点は、しばしば申し上げたとおりでありますので、重ねて申しません。
 次に、中国問題についてお答えをいたします。
 政府は、台北の中華民国政府を中国の正統政府として認め、外交関係を維持しております。しかしながら、国民政府の支配が現実に中国大陸に及んでおらず、中国大陸には中華人民共和国政府が存在していることもまた事実であります。この北京にある中華人民共和国、これは台湾に対しても力が及んではおりません。その点ははっきり認識していただきたい。政府としては、中国問題が、わが国にとっても、また世界にとっても、一九七〇年代の重要課題であることを十分承知しております。このため、今後、時間をかけて、忍耐強く日中関係の改善をはかっていきたい考えであり、そのための第一歩として、政府間接触をも含め、日中間の各種交流を促進することによって相互理解をはかっていく所存であります。
 国連における中国代表権問題に対処する政府の基本的態度は、今後の国際情勢の動きを見きわめつつ、わが国の国益をはかり、極東の緊張緩和に資するという観点から、わが国と友好関係にある諸国とも協議しながら、十分に検討し、問題の公正かつ妥当な解決につとめたいと考えております。
 わが国は、アジアの平和と安定を目ざして平和外交に徹することを対アジア外交の基本方針としております。そして、政治信条、社会体制を異にする国を含めて、あらゆる国とできる限り友好的な関係を保つよう努力しているのであります。日米共同声明もかかるわが国の基本方針に沿うものであって、いかなる国をも敵視するものでないことをこの際に重ねて申し上げますから、十分御理解いただきたいと思います。
 次に、わが国が整備する防衛力は、今後ともわが国憲法の許容する自衛の範囲内にとどまるものでありますから、その内容は、他国に攻撃的脅威を与えるものではありません。平和に徹し民主主義の深く定着したわが国において、軍国主義化のおそれのないことは再三申し述べたとおりであります。
 また、自衛隊は、わが国の憲法に基づく防衛力として、専守防衛を本旨とするものであります。しかし、わが国の防衛は自衛隊の力のみではこれを全うし得ないので、その及ばないところを米国の防衛力に期待しているのであります。これによってわが国の専守防衛の方針が変わるとの御批判は当たらないものと、私はかように考えます。
 また、憲法改正を考えておるのではないかというお話がございましたが、共産党ははっきり党則にも書いていらっしゃるように伺いますが、私どもは、その点が党則に書いて党の基本方針にありましても、私が総裁の間には、さような考えはございません。この点ははっきり申し上げておきます。(拍手)
 また、自衛隊を自衛隊のまま外国に派遣するのではないか、かようなお尋ねがありましたが、このことは、憲法も改正がない限りさようなことは許されませんし、また自衛隊法もさようなことを考えておりません。この点もはっきりいたしておきます。
 次に、物価問題について、消費者米価の物価統制令の廃止を取りやめるべきであるとの御意見でありましたが、政府はこれを取りやめることは考えておりません。いままで再々申し上げたように、消費者米価の水準が大きく動くことのないよう十分の配慮を払ってまいります。
 また、生鮮食料品の値上がり対策としては、大資本の投機の場となっているかどうかは別として、流通機構に問題があることは衆目の一致するところであります。このため、卸売市場法案の早期成立を期し、卸売り市場の計画的な配置と省力化、あるいは施設の充実及び取引方法の改善、合理化をはかってまいります。
 なお、不破君は、近郊農家の保護を主張されましたが、最近の労働力不足と都市化の進展は、都市近郊産地の後退を余儀ないものとしており、基本的には主産地形成に努力すべきであろうと考えます。もちろん一般的にいって、野菜価格の安定をはかるためには、野菜生産農家が安心して生産に専念できるようにすることが重要であります。生産対策の充実と並んで価格低落時の対策の充実強化をはかってまいります。
 次に、公共料金を一律に据え置けとの御提案でありましたが、主要な公共料金はほぼ全面的に抑制したものであり、少なくとも政府主導型の物価上昇は避けられるものと考えております。
 また、大企業の製品価格は、むしろ一般的には安定している傾向にあり、これは生産性の向上を消費者にも還元をというたびたびの呼びかけが、昭和四十六年一月二十六日 衆議院会議録第四号もちろんそれだけではありませんが、実を結んだものと考えております。
 また、不破君は、企業の製品コストを調査する機関を国会に設けよとの御意見でありましたが、わが国経済は自由経済を基調としたものであり、民間の自由な価格形成への介入は特に慎重を要するものと考えるのであります。そのような機関を立法府としての国会に設けることには賛成いたしかねます。
 最後に、重要な点についてのお尋ねがありました。選挙制度の改正にあたっては、国民の公正な意見が正しく国政に反映されると同時に、政治の安定がはかられるような制度にすることが必要であると考えます。そのために選挙制度審議会等において、よりよい選挙制度のあり方について検討をお願いしているところであります。
 また、審議会の席上での私の発言について、私の聞いている意見の一つとして、一選挙区の定数を二、三人とする意見もあるという趣旨のことを述べただけでありまして、別段の意図はありません。
 以上をもちまして不破君のお尋ねにお答えいたします。(拍手)
#15
○副議長(荒舩清十郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#16
○副議長(荒舩清十郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
        運 輸 大 臣橋本登美三郎君
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 佐藤 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 西田 信一君
        国 務 大 臣 保利  茂君
        国 務 大 臣 山中 貞則君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
ソース: 国立国会図書館
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