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1970/12/03 第64回国会 参議院 参議院会議録情報 第064回国会 商工委員会 第2号
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1970/12/03 第64回国会 参議院

参議院会議録情報 第064回国会 商工委員会 第2号

#1
第064回国会 商工委員会 第2号
昭和四十五年十二月三日(木曜日)
   午前十時十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十一月二十五日
    辞任         補欠選任
     浅井  亨君     上林繁次郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    理 事
                大谷藤之助君
                川上 為治君
                竹田 現照君
    委 員
                赤間 文三君
                稲嶺 一郎君
                植木 光教君
                剱木 亨弘君
                阿具根 登君
                大矢  正君
                小柳  勇君
                林  虎雄君
                上林繁次郎君
                田渕 哲也君
                須藤 五郎君
   国務大臣
       通商産業大臣   宮澤 喜一君
   政府委員
       外務省経済協力
       局長       沢木 正男君
       通商産業政務次
       官        内田 芳郎君
       通商産業大臣官
       房長       高橋 淑郎君
       通商産業省通商
       局長       原田  明君
       通商産業省貿易
       振興局長     後藤 正記君
       通商産業省重工
       業局長      赤澤 璋一君
       通商産業省繊維
       雑貨局長     楠岡  豪君
       通商産業省鉱山
       石炭局長     本田 早苗君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   説明員
       大蔵大臣官房審
       議官       大倉 真隆君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○派遣委員の報告に関する件
○産業貿易及び経済計画等に関する調査
 (繊維問題に関する件)
 (海外経済協力に関する件)
 (自動車産業の資本の自由化に関する件)
○小委員会設置に関する件
    ―――――――――――――
  〔理事川上為治君委員長席に着く〕
#2
○理事(川上為治君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十一月二十五日、浅井亨君が委員を辞任され、その補欠として上林繁次郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○理事(川上為治君) この際、派遣委員の報告に関する件についておはかりいたします。
 第六十三回国会開会中に当委員会が行ないました委員派遣につきましては、各班からそれぞれ報告書が提出されておりますので、それを本日の会議録に掲載することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○理事(川上為治君) 御異議ないと認め、さように取り計らいます。
    ―――――――――――――
#5
○理事(川上為治君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。
 御質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
#6
○大矢正君 日米繊維交渉につきまして若干の質問をいたしたいと思いますが、先般の佐藤総理の訪米、ニクソン会談以降あらためて中断をされておりました繊維交渉が再開をされ、新聞等の報ずるところによりますると、非常に重大な段階に差しかかっているようでありますが、現在の交渉の状況について、大臣から御説明をいただきたいと思います。
#7
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては、去る六月に私と米国のスタンズ商務長官とが会談をいたしまして妥結をはかろうとしたわけでございましたが、両者の意見が合いませんで、妥結を見るに至りませんでした。できるだけ早い機会に妥結をはかろうといったようなことで話は終了したわけでございます。その後、御承知のとおり米国内におきまして日米の経済関係の上で私どもとして幾つか憂慮すべきことが起こってまいったわけでございます。具体的にわが国からの輸入品についても起こっておりますが、またアメリカ議会における立法の動き、新通商法案といわれておりますようなものの動きも、日とともに具体化し、また先鋭化するに至ったわけであります。このような背景のもとに佐藤総理大臣とニクソン大統領の会談が十月に行なわれまして、妥結に達する目的をもってできるだけすみやかに交渉を開始するという事実上の合意があったわけでございます。その総理大臣の指示に基づきまして、私ども日米間の交渉を再開するに至ったわけでありまして、交渉はワシントンにおけるわが国の牛場大使と大統領の補佐官でありますフラニガン氏との間に、すでに何回か行なわれておるわけでございます。で、私どもとしてこの交渉に臨みます基本的な態度は、諸般の情勢から考えまして、なるべくすみやかに妥結をすることが必要であるということには変わりはございませんけれども、昨年来累次にわたって国会の御決議もございます。また本質的にわが国の繊維業界の自主規制を求めるということでありますから、業界が曲がりなりにもこれでいこうという納得をするものでなければ、両国間で妥結をすることができない、妥結をしても無意味であるという問題もございます。それらの与えられたワクの中で交渉をする以外に方法はないわけでありまして、そういうことを基本態度として今日まで交渉を続けております。先方といたしましては、ニクソン大統領がかねて業界に対していたしております約束といったようなものがあるわけでありまして、先方もその約束に忠実な範囲でしか妥結のしようがないというような態度でございますので、牛場・フラニガンの会談が何回か行なわれておりますものの、両方とも完全な自由な全権を持ってやりとりをするというわけにまいりませんで、おのずから両方とも譲り得る限度に制約がある。こういうことから、交渉はかなり今日まで難航をしておるというのが実情でございます。
#8
○大矢正君 いまあなたの御発言の中に、佐藤・ニクソン会談においては妥結を前提として交渉を再開するというお話がございました。新聞等におきましても、同様なことが言われておるわけでありますが、本来的にこの種の問題の交渉を展開するにあたって、妥結をしないことを前提として交渉をするなどということは考えられないわけですね。したがって、交渉するということは妥結に向かってお互いの意見を述べ合い、かつ譲歩し合うことは譲歩し合って妥結をするということであろうと思うのでありますが、あえて佐藤・ニクソン会談において妥結を前提として交渉を再開するという、その妥結を前提というのは何を意味しているのか。それからもう一つ、こういうことが言えるんじゃないか。基本的な問題でありますが、妥結を前提としたという、そういう立場からの交渉再開というものは、みずからもどの程度まで譲り得るし、相手もこの程度までは譲るのではないかという一つの見通しがあって交渉が再開されると思うのでありますが、そういうものがあったとすれば、その内容を、ひとつこの際明らかにしてもらいたいと思います。
#9
○国務大臣(宮澤喜一君) 佐藤・ニクソン会談では、いわゆる合意の共同声明といったようなものは出されたわけではございませんでしたが、会談の結果の発表につきましては、日米両国のスポークスマンの間に事実上の打ち合わせがあったようでございますので、その発表によりますと、妥結を目途として交渉を早期に開催するということであったと思います。何ゆえに妥結を目途としてと言いましたのか、実は私必ずしもつまびらかでございませんけれども、おそらくは過ぐる六月に私とスタンズとの間で話がございまして交渉をいたしましたけれども、それが不調に終わっておりますので、そのようなことが意識にあって、妥結を目途としてというようなことを申したのではないだろうか、大矢委員御指摘のように、妥結を目途としない交渉というのは、本来あり得ないことでございますので、しいてこの意味を求めれば、そのような意味ではなかろうかと私は考えております。そこで、交渉をいたします以上は、まさに互譲でなければならないわけでございまして、交渉開始にあたって、お互いに、お互いがこの程度のことは譲歩するのではないだろうかというような思惑のもとに交渉が始まったことは確かと思いますけれども、交渉をやってみますと、なかなかお互いに自分の思惑どおりに話が進まないというのが今日までの実情ではないだろうか、と申しますのは、先ほども申し上げましたが、わが国の交渉に臨みます立場には、先ほど申し上げましたような幾つかのかなりはっきりした制約があるわけでございますが、アメリカ側としても、これも先ほど申し上げましたような、一つのワクといったようなものがあるしおまけに事態を複雑にしておりますのは、いわゆる新通商法案なるものが、少なくともアメリカの下院は通過をした形になっておりますので、米国の繊維業界としては、不満足な交渉の妥結であるならば、むしろ新通商法の成立を期して、それによって規制をするというほうが有利である、こういう考え方は当然働きますので、新通商法の成立を阻止したいという両国の政府間の考えとは、おのずから米国の業界の考え方は異なるわけでございます。また、多少程度は違いますけれども、わが国の業界の中にも、一部には似たような考え方があるように思われますので、そこで、両国の業界自身が考えておりますところと、政府同志がこいねがっておりますところとが、そういったような点でも必ずしも一致してない。そういったようなことが交渉をかなりむずかしくしておるというふうに見ているわけでございます。
#10
○大矢正君 現在わが国がアメリカ側に提示をしております案というものの内容は、具体的にどういうものなのか、お答えをいただきたい。
#11
○国務大臣(宮澤喜一君) 外交交渉でございますので、正式にかくかくでございますと、委員会で申し上げますことは避けるべきことであろうと思いますけれども、何ぶんにもこの問題につきましては、国内の関心も高いことでございますし、また私ども事実上業界に対しまして、われわれの提示しております案の内容、これは時間とともに多少変化をしつつございますけれども、その内容は事実上業界にはそのつど知らせておりますので、したがいまして、今日報道されておりますところの概要は、概して正確でございます。したがいまして、恐縮でございますけれども、それによってほぼ私どもの考えておるところを御推察願いたいと思うわけであります。
#12
○大矢正君 外交交渉でありますから、われわれが具体的に、この交渉の詳細な内容を、こういう公式の場所で知ろうとすることは、ある意味では行政に対する介入ということもいわれるかもわかりませんが、しかし問題は、国会の決議が尊重されておるかどうか、あるいは当初からいわれておりまするような業界の理解と協力ないしは納得の上に交渉がはたして進められているかどうか、こういう点で私ども多くの疑点を持っておるわけでありますから、あえて交渉の中身にまで言及しなければならないことをお認めいただきたいと思うわけであります。
 いま大臣が言われた、つど業界との間に日本案の説明を行なっておるから、新聞その他の機関において報道されている内容は、そう違いがないというお話でありますので、私がそれらを勘案して推察をするところ、こういう内容のものでないかと思うのでありますが、一つは、規制の期間でありますが、これは明年の一月から二年六カ月。それから規制の品目については十七品目を特定をし、それを六つのワクに分けるということ。第三は規制の方法でありますが、これはいまの十七品目、六ワクというものを各品目間でおおむね二〇%程度のシフトを認めようとする考え方。それから基準年次につきましては、毛については六八年、化合繊については最近の最も高い一年間。さらに伸び率につきましては、毛は六八年の一%増、化合繊につきましてはおおむね一四%程度の増。そして最後に歯どめの問題でありますが、この二年六カ月の規制の期間が終わりますれば、これを延長することなく、最終的にはガット十九条にその手続が戻る。おおむねこういう内容のものであるやに承っておりまするし、なお最近の新聞等によりますと、伸び率は九%程度まで譲歩をしているというように承っておりますが、こういう内容を前提として議論を進めてよいかどうか、お尋ねをいたします。
#13
○国務大臣(宮澤喜一君) まず期間の点でございますけれども、ただいま御指摘になりました程度の期間を考えてみたいと思っておりますが、いつから、いわゆる始期でございますが、始めの時期でございますが、これについてはまず国会の御決議にもございますとおり、極東の同じように繊維を輸出しております国との間に同種の約束が米国とできまして同時に行動をするということが私どもの原則でございますので、そういう意味で、始期、始めの時期というものが、ただいま確定し得ない状態にございます。と同時に、かりに業界が同意をして規制を始めるということになりますと、そのためのかなり複雑な準備が必要でございます。これはわが国側におけるだけの準備では必ずしもございませんで、統計等の突き合わせ、あるいは品物の内容の確定、具体的に俗にTQと言っておりますけれども、統計における番号の中にどれだけの品物がその番号に属しておるかといったような、かなり複雑なことがございます。したがって、現実に規制に入りますためには、かりに合意ができましても、かなりの準備のための時間が必要でございます。したがいまして始期というものはそういうことからきまってまいりますので、あらかじめやや確定し得ない要素がございます。
 次に、品物の数あるいはグループのくくり方等につきましては、ただいま仰せられましたようなことを私どもも考えております。問題は、その後の幾つかの要素について御指摘があったわけでございますけれども、現実に何%程度の伸びを確保するかということは、分解いたしますと幾つかの要素から成り立っておるわけでありまして、その一つは何年を基準にするかということがございます。次に、ワクの上における拡大を毎年どのくらい考えるかという問題がございます。その次に、ワクの間のやりとり、シフトをどのくらいにするかということがございます。次に、前年ワクを十分使い切りませんでした場合のいわゆるキャリーオーバーという問題がございます。それから第五に、現実の問題として、今年のワクを何かのことでオーバーしてしまうということがあり得るわけでございますので、そういうことから今度はキャリーオーバーでなくて、先のものをこちらに持ってきますキャリーインということがあり得るわけでございます。そのような要素を実は組み合わせました上で、初めて事実上の伸びがどれくらいになるかという算術ができるわけでございますので、私どもはただいま、そのような要素を一つ一つつっつきますよりは、現実のネットの伸びをどのくらいに考えれば双方の話が落ちつくかということに問題を集中したほうが交渉の処理としては早いし、かつ円滑にいくのではないかということを先方に向かって申しておるわけでございます。
 最後に、歯どめと言われる点でございますけれども、これも国会の御決議にございましたとおり、また業界が心配しておりますとおり、いわゆる綿製品におけるLTAのような形でこれが恒久化するというようなことは避けなければならないわけでございますので、私どもの考えております一定の規制の期間が終了いたしますと、このようなことはもう二度と行なわない、いわゆる再延長というものはあり得ないということをはっきりさしておきたい、かように考えております。
#14
○大矢正君 いまあなたがおっしゃられた内容は、私わからぬわけではないのですが、たとえば基準年次をいつにとるか。それから具体的には何品目を規制するのか。そしてその規制された特定した品目をどの程度のワクに分類をするのか。それからワクの中におけるシフトはどの程度認めるのか。あるいはワクとワクとの間のシフトはどの程度認めるのか。こういうことが集積をされて、初めて現在までの輸出水準にある程度プラスアルファしたものに到達できるかどうかという判断が出てくるということは、私も知らないわけではない。知らないわけではないが、結局私のお尋ねをしたいことは、いまの段階で政府がアメリカに提示をしている内容というものは、おおむねそういうことを体系的に並べると、先ほど私が申し上げたようなことに尽きるのかどうか、その結論だけをお尋ねしているわけです。
#15
○国務大臣(宮澤喜一君) 概してそのとおりでございます。
#16
○大矢正君 そこで、アメリカとの交渉はあくまでも行政権に属することだから私の胸三寸にあるとあなたお考えになっておられるかもしれないが、しかし、それにはあくまで私は前提があると思うのであります。その一つは国会における決議、国会における意思というものがそんたくされなければならないということと、いま一つは、しばしばあなた自身も繰り返して説明をされておりますとおりに、業界の理解と協力がなければできない。したがって業界の納得が必要だというこの二点が、あなたが行政の当事者として日米交渉を進める上においても最も原則的な問題だと、私はこう思うのであります。そこでそういう二つの立場を踏まえて、あなたがアメリカとの間に交渉されるにあたって基本的に譲れない一線というものは一体何なのか。たとえばその基準年次、それからワクの設定のしかた、シフト、そういう関連する事項はありますが、あなたがこれから最後まで貫いていこうと考えておられるその一線というのはどこにあるのか。アメリカが強引に押し返してくれば幾らでもずるずると下がっていかれようとするのか、いやそうではない、自分はこの程度のものはもう絶対守らなきゃならぬという一線をつくってこの交渉をされるつもりなのかどうか、具体的な内容をひとつこの際お聞かせいただきたいと思うのであります。
#17
○国務大臣(宮澤喜一君) その点は大矢委員が冒頭に御指摘になりましたことからおのずから答えが出てくるわけでございますが、すなわち国会における決議というものがございます。これが一つのワクでございます。と同時に、業界が最終的には納得してもらえませんと現実に規制は行なえないわけでございますので、これも一つの制約でございます。その二つの制約の中で、まず互譲の精神に立ってリーズナブルであると考えられるところで妥結をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
#18
○大矢正君 三月の九日付で日本政府がアメリカに対して覚え書きを手交した。その覚え書きの内容はこの委員会で私が全文読み上げてあなたが確認をされておるわけですが、その覚え書きの原則というものは、これは明確だと思うのであります。それは、被害のないところに規制はないんだという原則は譲れませんし、譲る気持ちは毛頭ありませんと、こうあなたはおっしゃっておられるが、この点はまずどうなんです。それは逸脱していると私は思うが、あなたは逸脱していないと考えるんですか。たとえば具体的に文章を読み上げれば、この三月九日付のエードメモワールの中で述べられていることは、「わが国としては輸入の増加による重大な被害またはそのおそれがある品目に限り、すなわち選択的なベースにおいて、また国内業界の納得と他の関係主要輸出国の合意を得た上でなければ輸出自主規制を行なうことはできない。」ということがまずありますね。それから次に「本問題は米国がガット十九条に従って処理することが本筋であり、前記1の措置はそれが実施されるとしてもガット十九条援用までの「つなぎ」の措置にすぎないことは」云々と、こう言っているわけであります。でありますから、私はこの趣旨から見ますると、たとえば何ら被害の認定もなければ、そういう調査もなされないままに、わが国が十七品目を特定したということ自身が、もうこれから逸脱していると私は思いますが、いかがですか。
#19
○国務大臣(宮澤喜一君) 互譲を目的にした交渉でございますので、私どもが当初申しておりましたことが、きわめてそのまま純粋な形で最後まで実現できるかどうかということは、交渉ということの性質上、それにはある程度の幅を持たして考えなければならないとは思っております。ただいま御指摘のありましたような点、つまり選択的でなければならないと申しますのは、これは被害のことに関係があるわけでございますけれども、私どもいわゆる包括的と申しますか、しばしばコンプリヘンドと言われておるところでございますけれども、そのような考え方はとらない、それからアメリカにおける同種の品物の生産が全然ないか、あるいはほとんどないにひとしいといったようなものについては、被害というものは起こり得ないはずでありますし、また極東からの輸入よりはヨーロッパからの輸入のもののほうが多いといったような品物につきましては、これはかりに被害が起こっておるといたしましても、その主たる原因はヨーロッパ側に求められるべきものであると考えますから、そのようなものは、これまた規制の対象にならないといったような考え方の中で、被害または被害のおそれがあるものに限るという考え方は貫いていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#20
○大矢正君 あなたは以前から言われておるのは、選択的なベース、すなわち被害のおそれがある、あるいは現に被害を与えておるといろ前提に立ってのみこの自主規制というものは存在するのだ、十七品目というものは成り立つのだ、こうおっしゃっておられるわけであります。そうすると、十七品目と日本政府が指定をしたものは、現に被害のおそれがあり、そして被害を与えているという前提に立って十七品目をきめられたのですか。
#21
○国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のようにガットにおきましても、被害または被害のおそれとはどのようなことを言うのかということについては、はっきりきまりました考え方はないわけでございます。したがって、私どもが選択的に考えましたものは、少なくとも逆に申しまして、被害または被害のおそれがあり得ないといったようなものを除く、そういう形で考えておるわけでございます。
#22
○大矢正君 だから、あなたは裏返しにしてものを言おうとするが、あなたが十七品目というものを特定されたその根拠というものは、被害または被害のおそれがあるからということで十七品目を指定されたのかどうかということをお尋ねしておるわけで、あります。
#23
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は、それを裏側からまさしくお答え申し上げておるわけでございまして、そのようなことはどう考えてもあり得ないという品物、先ほど申しましたような品物がそれに当たるわけでございますが、そういうものは除外いたしまして、そうしてかなり輸出が急激に伸びておる、あるいはアメリカの同種の産業が事実上相当いたんでおる、そういったようないろいろな要素から、当然排除しなければならない、ここに持ち込む理由がないといったようなものは除きました上で品目を構成したということになります。
#24
○大矢正君 あなたの言われることはどうも理解できませんが、そこに高橋さんもおられるが、高橋ミッションが行きまして事務ベースで調査もした。それからその後、ことしの春以来しばしばあなたがアメリカ側に出向いて行って調査もしたが、被害のおそれというようなことを認定されるような状態にはないということは明白になっているわけじゃないですか、だからこそあなたと一緒に交渉に当たった通産省のある課長も、この本の中で明確に述べているじゃありませんか、アメリカ側が言う内容というものはこれはむちゃくちゃだ、アメリカの繊維業界に対して重大な被害、あるいはそのおそれは絶対に起こしてはおらぬ、こう本に書いてあるじゃございませんか、交渉に行った人が。あなたの言うことを聞くと十七品目というものが、言い方は、言い回しはいろいろあるが、とにかく被害を与えておるようだし、そのおそれがある、したがって十七品目はこの際特定をしてアメリカとの間に話をしなければならないのだという解釈になるのか、もう一回ひとつお答えをいただきたい。
#25
○国務大臣(宮澤喜一君) 被害または被害のおそれということは、先ほども申し上げましたように、程度の問題においてガットにおいてもはっきりした定説のないところでございますけれども、それをいわゆるナショナルベースで考えるかどうかということにも問題があると言えばあるわけでございます。で、一九六八年の時点において、アメリカの繊維産業は概して好況であるということは客観的に言えることであると思いますが、その中で、一部のものについて、それが地域的にことに集中しておりましたようなときに、そこまでも含めて好、不況であるのかどうかということになりますと、それにはあるいは問題があるかも知れない、そういう意味で被害または被害のおそれ、その内容、程度においてあるいはそれをどのベースで考えるかということにおいて、それはある程度幅を広めて考えざるを得ないのではないかというように考えておるわけであります。
#26
○大矢正君 だから、端的にお尋ねしますが、被害を与えていたり被害のおそれがあるのかどうかということなんです。だから、あなたはあなたの立場において被害を与えておるし被害のおそれがある、だから十七品目を特定したんだとおっしゃるなら、そのおっしゃるとおりで私は議論を進めますが、具体的にお答えをいただきたいのですよ。被害がないけれどもアメリカ側のいろいろな主張があるから、この際十七品目を特定したんだと言うならばそれでけっこうです。とにかく明確にしてもらいたいのです。不明確な、あるような、ないような、聞いておるほうにとりましてはそれじゃ全然わかりませんよ、そういう答弁では。
#27
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、私が裏からお答えをしておりますところで御了察をいただきたいと思いますのは、実は、このような点について日米間に議論があるわけでございます。でございますから、わざわざそういうお答えをしておるわけです。
#28
○大矢正君 日米間の議論というのは、具体にどういう議論なんですか。片方は被害があると言うし、片方は被害がないと、こう言っているという議論ですか。
#29
○国務大臣(宮澤喜一君) それも一つでございます。すなわち被害または被害のおそれは、もっと多くの品物についてあるのではないか、あるいはそれはそうではあり得ないではないかといったような種類の議論でございます。
#30
○大矢正君 あなたの多くの品物と言うのは、繊維以外のことをさしておっしゃっておられるのですか。繊維以外のものを含めて日米貿易全体の上で述べられておるのですか。それとも繊維だけのことに限って、たとえば十七特定品目以外にも問題があると、こうおっしゃっておるのですか、どちらなんです。
#31
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま日米間で議論云々と申しましたのは、繊維について申し上げておるわけでございます。
#32
○大矢正君 あなたの言われる意味がちょっと私には理解できませんが、そうすると、十七品目以外にも問題の品目があるとあなたおっしゃっておられるのですか。
#33
○国務大臣(宮澤喜一君) そういう問題につきまして日米間に議論があるというふうに申し上げておるわけです。
#34
○大矢正君 それは日米間でいままで延々と一年半にわたって交渉してきたのですから、いろいろと議論はおありでしょう。おありでしょうことは私はわかりますが、わが国がわが国の案として十七品目を特定されたということは、十七品目は、どうもこれは被害を与えておるようだし、また将来ともそのおそれがある、よって日米両国間でこの際自主規制について話し合う品目にしたほうがよいと、こういう判断のもとにやられたのかどうかということを聞いておるのであって、私は、日米交渉の内容の具体的な秘密事項を明らかにせよということを言っておるわけじゃないので、もう一回ひとつお答えいただきたい。
#35
○国務大臣(宮澤喜一君) これももう一度裏から申し上げなければならないわけでありますけれども、アメリカ側の主張に従いますと、これ以外にも被害または被害のおそれがある品物があるという議論があるわけでありまして、私どもは、よほどいろいろ考えてみても、これ以外にそういう可能性のあるものはないではないかという議論を繰り返しておるわけでございます。
#36
○大矢正君 どうもおかしいですな、アメリカが特定品目と言っておるのは、当初二十八でありましたが、それが二十二になって、現在は二十でしょう。わが国が特定品目としてあげたのは十七ですね。そうすると、今日の段階では三品目しか違わないでしょう。具体的に品目を言えば、ニットの生地とか、それから布帛のドレス、それに男子用コート、この三つがアメリカとの間に話が合わないだけであって、ほかに合わないものはないわけでしょう。アメリカが二十品目出してきて、日本は十七品目出して、三つしか違わないわけでしょう。その時点において違いはそれだけあるけれども、その間においてたいした違いはない、二十と十七ですから。そのことをあなたはおっしゃっておられるのですか。もしそのことを過大に考えておるとすれば、考えるあなたのほうがおかしいと思いますよ。
#37
○国務大臣(宮澤喜一君) こんなものはたいしたことではないではないかとおっしゃいますのは、それは実はたいへんなことだと思っております。
#38
○大矢正君 あなたはたいへんだとおっしゃられるが、あなたのおやりになることのほうがなお私はたいへんだと思うのですよ。あなたはさっきから裏口からしかものを言わないけれども、少し正面から入るようなものの言い方をやってもらいたいと思います。裏から見れば、裏から見れば――あなたは裏からしかものを見れないのですかね。正面からひとつものを見てください。
 そこでお尋ねしますけれども、一体、先ほども質問いたしましたとおり、政府としては守らなければならない原則というものは何と何なのか。そしてたとえば基準年次のとり方、あるいはシフトの問題、伸び率の問題、この問題はからみ合っている問題でありますから、当然一つだけが生きてくればいいという問題では私はないと思うが、そういう三つの問題をからめて、しかもワクとの関連も出てくる。そうですね。六ワクにするか、十ワクにするか、アメリカのいうとおりの十六ワクにするか、そのことによっても大きな違いが出てまいりますね。ですから、それらを全体含めて政府としてはこの線だけは絶対に譲れないという考え方があってしかるべきだと思う。あるとすればお答えいただきたいと思います。繰り返し申し上げますが、私どもはあなたの行政の内容についてくちばしをいれるつもりはないが、どう見てもこのまま行くとずるずると際限なしの譲歩になりはしないかという心配があるからお尋ねをしておるわけです。
#39
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる私どもとして守らなければならないワク、あるいは制約というものは、国会の御決議並びに業界に対してでき上がったものを納得をしてもらわなければならないという事実、この二つであります。そこで、その中で個々の点を幾つかおあげになりましたが、全体としての評価を私は与えなければならないであろう。たとえば、この点はこちらの言うことが通ったが、この点は通らなかったというときに、その幾つ通って幾つ通らなかったと申しますよりは、全体としてこれに点数をつけなければならない。すなわちわが国から米国に対して輸出されるこれらの品物、これについてはいかに先方側に問題がありましょうとも、ある程度の漸増方式、これはワクでありませんで、現実にそういうものが認められなければ、これはもう互譲とも言えないではないかということが、落ちつきますところは、最後はそこに行くわけでございますけれども、そういったようなワクの中で全体としての評価を与える、こういうふうにするしかないであろうと思います。
#40
○大矢正君 ですから、あなたのいま言われるようなことを一つの絵としてかけば、たとえば柱になるものとして伸び率をどの程度にする、その伸び率の度合いによってはそのワクの設け方あるいはシフト、そういうものの変化が出てくるわけですね。そこで、このいま日本から提示されている内容、これはさっき私が読み上げたわけでありますが、これはお守りになるという考え方ですか。と申しますることは、十七品目特定、それを六ワクにするという原則はあくまでも守る、それからワクの中だけの問題ではなくて、全体として化合繊、毛全体として九%程度の伸び率はぜひこれを守り抜いていく、こういうことを確認できるのですか、これは政府案ですよ。
#41
○国務大臣(宮澤喜一君) それは交渉の落ちつく先を確認しろと言われますと、それは交渉でございますから、そこまで確認することはできませんけれども、私どもの考えておりますことは、これはあくまで選択的な規制であって、いわゆる包括的なものでないということ、それからわが国からの輸出が実質的に漸増すべきだということを申し上げましたけれども、そのときに、その漸増の幅というものをどのぐらいが適当であるかということを考えますと、いろいろな要素があるのであろうと思います。たとえば米国内におけるそれらの品物の消費の伸びといったようなもの、あるいはそれらの品物の米国内における生産の伸び、あるいは世界全体におけるそれらの品物の生産の伸び、またもう少し間接的になりますと、世界貿易の伸びでありますとか、日米間の貿易の伸びでありますとか、そういういろいろな参照すべきファクターがあろうと思いますので、それらのものを勘案した上で適当な実質上の伸び率というものを確保したい、こう思っておるわけでございます。
#42
○大矢正君 だから、わが国がアメリカに提示を現にしている内容は、先ほど私が申し上げたとおりに十七特定品目を六ワクにする、そして基準年次は最近の一番高い時点をとらせて、しかも九%程度は年々伸ばしていくという前提があり、しかもワク間シフトあるいはワク内シフト等もそれ相応に認めていかなければ……。従来の輸出水準に若干のプラスアルファをする、この水準を維持することができないんだと、こういう判断のもとに出てきている案ではないでしょうかと私はお尋ねをしているわけです。だとすれば、もし政府に、輸出は従来よりも減らさないという前提があって、多少なりとも漸増の傾向に持っていこうとすれば、これ以下に譲歩する案というものはとにかく生まれてこないのではないかと私は考えるが、そういう私の考え方は間違いかどうか、端的にお答えをいただきたい。
#43
○国務大臣(宮澤喜一君) 実質的な伸びを決定いたします要素は、先ほど申し上げましたとおり数個あるわけであります。その数個の組み合わせによって実質上の伸びがゼロになるかプラスになるかマイナスになるかということになるわけでございますから、私どもはそれがゼロであってもマイナスであってもいけない、ある程度リーズナブルなプラスでなければいけない、こういうことを申しておるわけでございます。
#44
○大矢正君 だからお尋ねをしているんですよ。そういうあなたの趣旨を生かそうとすれば、今日の段階でアメリカに提示している案以下のものというものは考えられないのではないかと私は思うが、あなたはどう考えるかと、こうお尋ねをしておる。
#45
○国務大臣(宮澤喜一君) それは非常にお答えしにくいお尋ねでございます。と申しますのは、交渉しておるわけでございますから、もう私どもの申しますことはこれで終わりでございますと言わなければならぬときがあるいはあるかと思います。しかし、いまその時期ではございませんから、いまのお尋ねに対してすぐにそのとおりでございますと申し上げることもなかなか申し上げにくいわけでございます。
#46
○大矢正君 では次に、輸出が増加した場合の協議の内容についてお尋ねをいたしますが、承るところによりますと、自主規制を行ない、その自主規制の中で、ワク間シフトあるいはワク内シフトというものももちろんあるわけでありますが、それがある程度急増した場合には、アメリカ側の意思によって、もちろん協議の機関はありますでしょうが、アメリカがかってに輸入を押えることを認めるような内容が政府案の中に盛られていると聞いておりますが、それは事実かどうか。
#47
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもがある程度の品物を選び、そうしてワクを設けたということは、被害または被害のおそれ云々と先ほど申し上げましたようなことにつながっておるわけでございますけれども、それでも予測できないような環境のもとに、ある特定のものが非常にわが国からの輸出が伸び始めて、そうしてアメリカ側に被害または被害のおそれを生ずるということは理屈の上ではあり得るわけでございます。ただいま両方で考えまして、なるべくそういうおそれのあるものを規制しようとしているわけでありますけれども、しかし、これは流行のことでありますから、予想しなかったようなものが、そのようなことになってくるということはあり得るわけであります。その場合にどうするかということについてのお尋ねでありますから、その場合にはガットの原則に帰ればいい、こういうのが私どもの考えであります。
#48
○大矢正君 いま私が申し上げたことは二つの場合が想定されると思いますね。それは特定されてない品目、これが急激に伸びた場合にどういう取り扱いをするかという問題と、それから特定の品目の中で、たとえば日本の主張どおりに、政府の主張どおりに――これを業界がのむかのまないかは別問題でありますけれども――かりに十七品目ときまった場合に、その十七品目の中における急増ということ、本来的には私は考えられませんけれども、どうも政府の案の中には十七品目が急増した場合には云々という考えがあるようでありますけれども、もしあったとした場合に、それをどうするかという、問題が二つあると思いますが、この二つはそれぞれ別個の立場にあると思いますが、もう一回あなたの御説明をいただきたいと思います。
#49
○国務大臣(宮澤喜一君) まさに御指摘のように二つケースがあり得ると思います。で、両方の場合とも、私どもはそのようなことがあればそれはガットの原則に戻って解決すべきである、こう申しております。
#50
○大矢正君 ガットの原則に戻ってこれから急増するものが出てきたら解決をしたらよいではないかということならば、最初からガットの原則に従って解決したらどうなんですか。
#51
○国務大臣(宮澤喜一君) それはまさしく私どもも申したいところでございますけれども、かなり被害または被害のおそれがあるというものをまずひとつ規制を考えようというところまでは、私どもも譲っておるわけでございますから、その上でなおという話はくどいではないか、その上でなおということなら、それはもうガットの原則に帰りましょう、こう申しておるわけでありまして、本来これはガットの原則でやればいいではないかということ、これは私は普通の場合ですと十分筋道のある議論だと思いますけれども、そうであれば、そもそも自主規制という問題は起こってこない問題でありますから、与えられました環境の中で私どもが申しておりますことは、ある程度のことは業界にひとつ納得を得てもらって、規制も考えましょう、しかしその上でなおというお話なら、これはもうその場合には原則に戻るしかないではないか、こう申しておるわけであります。
#52
○大矢正君 これはあなたの言うことを黙って聞くわけにはいかないので、重要な個所はガットからはずして自主規制だ、自主交渉だという形でやって、そうしてこまかい部分的な問題は、今度はガットの原則にのっとってやるのだということは、どう考えても理屈に合わないということが一つ。それをやるくらいなら、最初から被害のおそれあるいは現に被害を与えているものについてどうしてガットの原則によってやらないのかという問題が一つ出てきますね。それからもう一つの問題は、自主規制をやるというかりに取りきめができた段階で、どうして一体急増するのか、十七品目ということを前提として考えた場合ですよ、特定の品目の中でどうして急増が出るのですか。それになぜ協議事項というものを入れなければならないのですか。それは悪く解釈すれば、一応こういうワクは設定をするけれども、しかしそれはある時期がきて輸出が伸びたような場合には、今度はまた個別にたたいて減らすから、アメリカさん納得してくれよという意味以外に解釈のしようがないじゃないですか。日本が自主規制をするわけでしょう。そうしたら、急増しようがないじゃありませんか。ワク間のシフト、ワク内のシフト、品目間シフトの限度ではやれるかもしれないけれども、それ以上やれないじゃないですか。やる方法あるんですか。
#53
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどからいろいろのお尋ねの点は、きわめてごもっともなお尋ねばかりでありまして、あたかもまあ私どもがアメリカに向かって言っていることを大矢委員がおっしゃっておられまして、私がアメリカの立場でお答えをするような、たいへん奇妙なことになるわけでございますけれども、ただいまのお話でございますが、ワクでくくったその中で急増をするということははたしてあるかということでございますが、これは現実にはそうは私はないであろうと思います。かりにある一つのワクの中に六品目とか七品目が入っておるといたしますと、かりにその中のある品物を、まあワクをつくった場合、極端な場合には、ひとり占めするということはありませんでしょうけれども、何割とかいうものを食ってしまって、たまたまほかの品物は伸びないといったようなことは、理屈の上では考えられます。ことに六つなり七つなりの中で比較的現在シェアの小さいものは、これは相当伸びましてもワクそのものの中で泳ぐ余地がたくさんございますから、極端に申せば、七倍になっても八倍になってもなおまだワクが余っている、全体といたしまして。ということは理屈の上では考えられることでございます。現実には、しかし六つなり七つなりがそのワクの中で共存しなきゃならぬのでございますので、現実にはそのようなことはそう起こると考えられませんけれども、理屈としてはそういう問題がございますから、もしそういうことがありましたときには、これはいわば被害または被害を与えるおそれがあるマーケット・ディスラプションということになるでありましょうから、その場合にはガットの原則に帰っていたしましょう。こう申しておるわけであります。
#54
○大矢正君 あなたのせっかくの御答弁にさからうようですが、どうしてそこで協議をしなきゃならぬのですか。たとえば政府が考えている内容を私見ますと、まあかりに化合繊のCならCというワクをつくって、それをまあ七品目ですか、かりに七品目あったと仮定しますね、そうするとこのワク内でシフトがきめられるわけでしょう、シフト率というものは。そういたしますと、どういうわけでいまおっしゃったような結論が出てくるのか、あなた、念のために伺いますが、ワクはつくるけれどもシフトというものはつくらないと、そういう考えが通せるんですか。たとえば九%の伸びということを考えた場合に、それは全部の九%でいくんだから、したがってどっか一カ所急増するものが出てくる、品目間のシフトあるいはワク間のシフト、こういうものはつくらないんだ、要は繊維全体としての九%の範囲内で伸びればいいということでいくんだから、よってそこに一品目だけでばっと急増するものがあり得ると、こういう考え方ですか、それならそれで話はわかるんですよ。
#55
○国務大臣(宮澤喜一君) わかりました、御指摘の点は。ワクとワクとの間のやりとりというものは、これは当然なければならないわけでございますけれども、ワクの中における間仕切り、やりとりというものは、私ども考えないわけでございます。
#56
○大矢正君 そうするとワクの中における量が九%の伸びなら九%、一〇%なら一〇%とかりに決定をされた場合には、その品目間におけるもちろんシフトがありませんから、ある特定の品目は五倍にも六倍にも伸びると、こういうことも今後あり得るわけですか。
#57
○国務大臣(宮澤喜一君) まさしくその点が日米間のいま論争になっておるわけでございます。
#58
○大矢正君 だから、私も論争はわかる、ですからあなたに聞いておる、だからそれをあくまで守るんですかと聞いておるわけです。
#59
○国務大臣(宮澤喜一君) そこで私どもは、いま言われましたように一つのものが五倍にも六倍にもなることがあり得るだろうと、仰せられますとおりなので――それはアメリカ側が申すことでございますけれども――今回はそういう場合には対処いたしましょう、それはガットのルールに帰ればいいじゃありませんか、こう言っておるわけでございます。
#60
○大矢正君 二十分でやめろということでございまして、あと五分ですから、最後にお尋ねいたしますが、期限の問題がありますね。日本側が二年六カ月まで譲歩したということのようでありますが、これは私は問題が大いにあろうと思いますが、その前提で一応議論しようとすれば、二年六カ月後にはこの自主規制というものをなくするための具体的な方策というのはどういう形であらわすつもりですか。もっと具体的に言うと、LTAの場合には、御存じのとおりにこれはあくまで綿製品だけで他の製品には波及させないということがあるにもかかわらず、今回こういう問題が出ておりますね。そうすると、文書で書いてもなおかつわが国がやらなければならないという場合に、二年六カ月で切れるという場合に、どういう形で保証されるのか、お答えいただきたい。
#61
○国務大臣(宮澤喜一君) 取りきめがかりにできるといたしますと、その期間は何年何カ月であるということ、及び再び延長はしないということを両方ともはっきり述べておかなければならないと思います。で、お尋ねは、そのようなことを合意したところで、条約すらがそうなっていないではないか、過去においてそういう例があるではないかと言われますと、それは私どもの意思いかんにかかるとしか申し上げられませんで、取りきめのしかたとしてはそういうふうに取りきめる、こうするよりほかないだろうと思います。
#62
○大矢正君 ですから文章上お互いの協定書に書いてもなおかっこういう問題が出るのだから、将来禍根を残さないために何かよい方法があるのか、政府は二年六カ月には必ず切ると、こうおっしゃっておられるのだが、それではそれは二年六カ月後には自動的に切れるような形のものが何かあるのかとお尋ねをしても、あなたは二年六カ月間今後通産大臣をやっておられればあるいは切れるかもしれないけれども、どうもそうもいかないようですし、だとすれば一体何が残るのか、こうすれば切れるという一番確定的なものは何なのか、あなたの二年六カ月という日にちは別としても、協定期限が切れたらそのあとはやらないのだ、こうおっしゃっておりますが、やらないということばだけでは、文章に書いてさえ実行されてしまうわけですから、どういうふうになるのか、その点もう一回私はくどいようだけれどもお尋ねしておきたい。
 それからもう一つは、時間がありませんから関連してお尋ねいたしますが、大臣、こういうことは考えられませんか。業界としては日米間の取りきめにどうしても従うわけにはいきません、反対です、こうかりに態度を表明したといたしますね。にもかかわらず、政府はこれは国の外交上、政策上取りきめをせざるを得ない、よって政府の責任において自主規制を行なう、業界は協力をしない。そこでそのことの結果として輸出が減少をして業界は被害をこうむりますね、損害をこうむりますね。その際に政府に対してその被害なり損害の賠償を請求するということは、私はあり得ることだと思うんですが、それは業界が納得しないという前提ですよ。そういうことはあり得ることだと思いますが、そういうことは考えられるかどうか、あわせてお答えをいただきたい。
#63
○国務大臣(宮澤喜一君) 再び延長しないということのいわゆる歯どめといわれておりますところの問題につきまして、両国間の正式の取りきめで再び延長はしないという取りきめができたといたしますと、それ以上にこれを担保する方法があるかと、こう言われましても、これはどう考えても両者がそういう合意したという以上のやり方はない。どうもこれはいろいろ考えましてもありそうもございません。にもかかわらず、そういうことにならないかとおっしゃれば、それはもう両当事者の意思、ことにこの場合は自主規制に入ろうとするのはわが国側でございますから、わが国がそれを貫き通す意思を持つか持たないかということにかかる、こう申し上げるしかないと私は思います。私どもに関する限り、そういうことをいたす意思は、ただいま持っておりません。
 それから次に、取りきめがかりにできた場合の業界との関係でございますけれども、総理大臣がせんだって本会議でも答弁されましたように、私どもいわゆる強権を発動してこれを実行する意思を持っておりません。したがって、できました取りきめは、業界がしぶしぶでも納得して実行してくれるか、あるいは不幸にしてそうでないかという二つの場合しか考えられないわけでございますので、取りきめをいたしますときに、再々申し上げておりますとおり、その点はよほど私どもが慎重にしなければならないわけでありますし、また、わが国がそのような事情にあるということ、総理大臣が強権は発動しないということを明言しておられるということ等々は、先方にも繰り返し実は申しております。したがいまして、取りきめが何らかの形で事実上でき上がったという段階になりましたら、それが外交上のきずになりませんような形で一ぺん打ちどめをいたしまして業界と話をする。こういうことにせざるを得ないと思いますので、どういう形が外交上最もきずを残さないかということになるわけでございますが、これはプロトコルの問題でございますので、外務当局に十分研究をしてもらうようにすでに依頼をしておるわけでございます。
 被害の救済につきましては、これは強権を発動しないということは先ほど申し上げましたけれども、強権を発動いたしませんでも、すなわち業界が不承不承でも納得をしてくれました場合でも、被害が出るということは、これはもう考えられることでございますから、それについてはやはり政府としてはできるだけの救済を考えなければならない、かように思っております。
#64
○大矢正君 最後にもう一回念を押しますが、そういたしますと、かりに日米間で話がついた段階において――これは政府間同士ですよ、話がついた段階においては、その内容を業界に提示して業界の理解、納得を得るように努力をすると、こういうことでありますが、もしその段階で業界は、とてもこれは大幅な縮小であるから、縮小均衡であるから、のむわけにいかないという場合には、日米周で合意された内容といえども、そいつをもう一回やり直しをするという可能性は残されているわけですね。
#65
○国務大臣(宮澤喜一君) それが国会の御決議の私は趣旨だというふうに考えております。そこでやり直しということになりますか、これだけ両者が詰めて話をいたしておりますので、都合によりやり直しということは、実はそう簡単なことではないのではないだろうか、むしろ私どもとしては、そういう事態の起こらないように、そういう制約を考えながら交渉をするということしかないのではなかろうか、こう考えておるわけであります。
#66
○大矢正君 くどいようですが、あなたのほうがそういう一つの幅を持って、国会の意思なり業界の意思というものを考えた上での交渉ということであれば、われわれはやはりそれは行政に属することだから、また外交上のことですから、そうくちばしをいれたり、とやかく言うつもりはありませんが、いやそれは最初からもう意見が違っても、その場合にはやはり日米間の交渉のほうが大事なんだから、それはもうやむを得ませんということであれば、しかも、国会は開かれておるわけですから、委員会を開くたびにあなたにお尋ねする以外にないです。その辺のことを十分お含みおきをいただきたいと思うのです。ただ、いまあなたおっしゃられたことから言うと、業界あるいは国会が理解し、納得をしない内容のものであるならば、協定をすることは事実上できないというような御趣旨のようでありますから、それなりに理解をしておきます。
#67
○小柳勇君 時間も少ないので、ポイント、ポイントをはしょって質問いたしますが、要点だけはお答え願います。
  〔理事川上為治君退席、理事大谷藤之助君着
  席〕
 いまアメリカが話題になりましたから、アフリカのほうの話題を中心に政府の経済協力と貿易の問題などをただしていきたいと思います。
 まず、国連で経済協力を目標として、国民総生産の一%を先進国に勧告をいたしております。わが国はまだその線に達しておりませんが、この経済協力に対して政府はどのように考えておるのか、一九七五年に国民総生産が百四十兆円ばかりに見込まれ、その一%といいますと、一兆四千億円ばかりになります。この一兆四千億の金をどういうふうに振り向けるかということが、これからのわれわれ政治家の大きな課題でございますが、現在は東南アジアを中心に経済協力なり援助をしております。ところが、御存じのように東南アジアは、日本に追いつけ、追いつき、追い越せという体制で、たとえば、粗悪品といいましょうか、中小企業などでは日本に逆輸出の傾向すらありますから、私どもとしては、東南アジアも重要でありますが、この際アフリカにも相当のものを振り向けていくべきであろう、そういうことを考えるわけです。実は先般院の命令によりまして、私と公明党の沢田君、西村記録部長と東海岸のほうを主として視察をいたしまして感じましたのは、一つは、政治がいかに国民生活にとって大事であるかということでありますが、もう一つは、各国が競って、独立した新しい国家に対して経業援助をしておる。たとえばタンザン鉄道に対する中国の援助、アメリカ、オランダ、イギリス、それぞれが経済援助をして新興国家に対する政治的な発言力を強めようとしている。そういうものを感じますので、アフリカに対するこれからの経済援助、技術協力などの取り組み方について政府の見解を伺いたいと思います。
#68
○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、わが国としては、やがて国民総生産の一%を対外援助に振り向けるという決心を内外に示したわけでございますが、現在までのところ、いわゆる経済協力が東南アジア地方を重点に行なわれてまいりましたということは、これは小柳委員御指摘のとおりでございます。これはやはり何といっても近いところにある、まあいわば同じ地域のお互いでございますので、そこに重点が置かれましたこと、それもしかもなお現在でも十分でございませんが、これは私はやはり政策として誤っておらないと現在でも思っております。他方でアフリカ諸国が経済援助を非常に必要としておるというのも御指摘のように事実でありまして、現在まで私どももケニアでありますとかウガンダでありますとかタンザニアでありますとかナイジェリアでありますとか、相当の金額の借款を供与いたしておりますし、またこれらの国から研修生を受け入れ、あるいはこちらから専門家を派遣しておるというようなことも相当程度やっております。なお、輸出信用等々、これはもとよりでございます。いかにも先方の需要から申せば、これは十分だとはもちろん申しかねますけれども、東南アジア、次にアフリカといったようなところにわれわれは一%の目標達成に向かって経済協力の手を今後とも差し伸べたいというふうに考えております。
#69
○小柳勇君 抽象的にはわかりますけれども、具体的に少し御説明を願いたいと思います。局長から。
#70
○政府委員(後藤正記君) ただいま大臣からお答えいたしましたように、アフリカ諸国に対します、たとえばケニア、ウガンダ、タンザニア、ナイジェリアの四カ国に対しましては、合計いたしまして四千四百万ドルの借款を供与いたしております。さらにこれに輸出信用、民間投資等の民間ベースによる経済協力もつけ加えますと、昨年度の実績だけで五千二百万ドル、こういう数字になっております。
 なお技術協力の面でございますが、アフリカ全般で昨年の実績が、わが国への研修生の受け入れが百三十八人ほどございました。これは従来までの全部累計いたしますと、経済協力を始めましてから累計二千百七十七人、さらにまた先方の国からの要請に応じまして専門家を派遣いたしました者が昨年実績で六百七名、累計は千六百四十六人、こういう形になっております。
 先ほど四カ国のみ申し上げましたが、アフリカ諸国への経済協力実績は、六九年の実行ベースで政府開発援助が、わが国援助額は、金額にいたしまして政府ベースのものが四百十万ドル、わが国の援助額に占めるシェアは一・二%、直接投資は千六百八十万ドル、シェアは八・四%、それから輸出信用は三千五百三十万ドル、援助に占めるシェアは五・八%、以上の数字になっております。
#71
○小柳勇君 東南アジアにももちろん援助するけれども、将来アフリカ諸国に対しては経済援助あるいは技術協力など拡大するということを確認しながら次の質問に入ります。
 次は借款供与の条件の緩和などの問題でありますが、日本は、たとえばアメリカがナイジェリアに対して期間四十年、金利二%というような条件で供与しておるのに比べまして、わが国では見るべきものがない、そういうような非難もあります。また、無償供与の経済援助がアフリカ向けにはわが国の場合ほとんど行なわれておらぬ。先般大使、総領事など、あるいは出先機関の諸君といろいろ座談会やりまして、一口に言いますと肩身が狭いといいましょうか、発言力が非常に弱いということを申しておりました。タンザン鉄道の問題がいまあの辺では話題の中心でありますが、中国は約二万人の労働者を派遣して、材料を供給しながらタンザン鉄道を建設しており、あるいはアメリカの学校の建築など、非常にもう目に見えるものをどんどん無償供与しておるような情勢ですね。あるいは低利長期の融資で仕事をやっておるような情勢でありますが、このようなものに対する政府の取り組みはいかがですか。これは外務省からも、先般大使会議があったようでありまして、大使の諸君がわれわれも会議では強力に主張いたしますから、ひとつ国会でも十分取り上げてもらいたいという話も承っておりますので、そういう会議の模様なり、外務省の取り組みについても見解をお聞きしたいと思います。
#72
○政府委員(後藤正記君) 今後わが国の経済発展、さらにまた国際的にもコミットいたしました経済協力を全般的に拡大するという姿勢から申しまして、先生御指摘の無償援助につきましても、従来ともこれは技術協力を中心として実施してまいったわけでありますが、今後技術協力のみならず資金面においてもこちらのほうを拡大していくことが必要であると思います。これはアフリカの諸国から適当なプロジェクトが出てまいりますれば、関係各省協議の上で前向きの方向で処理いたしたいと存じております。
 それから政府援助の条件でございますが、これも先方の要請に応じまして、外務省、大蔵省、通産省協議をいたしまして、相手国の案件ごとに、相手国の経済情勢とか対象プロジェクトの性格でございますとか、他国の供与条件等々を考えまして、ケース・バイ・ケースで従来処理してまいったところでございますが、全般的に申しまして、これまでの日本の力というものが必ずしもそれほど十分でなかったという点もございまして、他の主要援助国に比しまして残念ながらまだ相手国の満足するレベルにまで達していなかったことは御指摘のとおりであると存じます。今後十分関係各省協議をいたしまして、相手国の要請にも応じ、世界の大勢を見て援助条件の緩和という方向に進んでまいりたいと、かように考えております。
#73
○小柳勇君 外務省。
#74
○政府委員(沢木正男君) ただいま後藤局長のほうから御説明のございましたとおり、先般のアジア大使会議におきましても、今後、日本の援助がアジアに集中し過ぎております点を改善いたしまして、他の地域に対してもやるということは、すでに愛知外務大臣がことしの国会の冒頭演説でもそういう趣旨のことを述べておられます。したがいまして、今後は資金援助、円借款等につきましても、従来のようなアジアのみでなく、アフリカあるいは中近東地域、ラテンアメリカ地域にも拡大していきたいということで、現在そういう案件の検討にも関係各省取り組んでおります。
 それから技術協力につきまして、無償援助という点をさらに強化するというのは、われわれの一貫した方針でございまして、今年度の援助につきましても、まだアフリカまでは手が伸びておりませんけれども、アジアにおいて賠償支払いが漸減していくに伴いまして純粋な意味での無償の援助をふやすというのは、予算上の方針として今年度も予算要求いたしておりますので、それが拡大してくれば、いずれはアフリカにも及ぶという性格のものでございます。ただ、アフリカに対していままで無償援助を全然やっておらないかと申しますとそうではないのでありまして、技術協力に伴いました機材供与といたしましてケニアには漁具、漁網、外科手術用の機械、それからガーナに電子顕微鏡、それからナイジェリアにも電子顕微鏡、ガストロスコープ、あるいは通信器材というようなものをエチオピアにも出しております。そういうふうなものはまだまだ向こう側の目から見れば非常に少ないわけでございますが、今後予算を確保することによってそういう点の努力を拡大してまいりたいというのがわれわれの方針でございます。
#75
○小柳勇君 次は大蔵省と通産省に対する質問でありますが、片貿易是正のために輸入をふやすと申しましても、相手国から輸入するものはあまりないわけでございます。したがって、天然資源が豊富であるからこれを掘り出して輸入するなり、貿易に取り組まなきゃならぬ。したがって開発輸入に取り組むためには政府資金を活用すべきである、しなければ経済的に民間企業では成り立たない、だからやらないということで、片貿易になっておりまするので、この際は積極的に政府資金の活用をしなきゃならぬと思うが、この対策について通産省と大蔵省の見解をお聞きしたいと思います。
#76
○政府委員(後藤正記君) 仰せのとおり、わが国の貿易構造はたいへん片寄った状況になっております。特に輸出面について申し上げますならば、アメリカ市場が全体の三〇%、それから東南アジア諸国がやはり約三〇%、そしてその他の国が残り全部、こういう形になっておりますが、特に日本の輸出の情勢は、アメリカを除きますと、東南アジア並びにアフリカ等の発展途上国に対しまして、全般的な趨勢として、輸出超過になっておる。したがって、先方からの輸入との間に相当なやはり片貿易という状態が出ております。これを是正いたしますためには、どうしても先方から買うものがないということで、一次産品の輸入が主になってまいり、同時にまた経済協力をあわせ行なって、その国に、なるべく先進国にキャッチアップできるような手っ取り早い産業から興して、そうしてそれを日本国内の産業に急激な衝撃を与えないような形での輸入、漸次的な輸入、そういう形で経済協力を通じて漸次この片貿易を是正いたしていく方法しかないかと思います。で、特にアフリカにつきましては、非常に広大な国土とそれから従来までに未踏査、未開発の資源がたくさんございますので、今日の日本の経済の状態から申しまして、一番足りない資源を開発輸入をするというのが一番新しい、一番手っとり早い方法かと考えるわけでありますが、この場合におきましても、ただ単にその国から原料資源を掘って持ってくるという形でなしに、でき得ることならば、対象国の経済発展にも役立ち、雇用機会も与えるという形での民間ベースの投資というものが行なわれ、現地に合弁企業の産業が興って、ある程度まで半製品までの状態に達して、そうしてそれが日本へ持って来れるというような形に進んでいくのが望ましい形かと存じます。非常に長期的に見るとそういう形になってまいりますが、現在までのところ、残念ながらまだ片貿易の現状というのは必ずしも是正されておりませんので、今後の問題であるかと存じます。これにつきまして主となりますのは、民間の意欲によりまする企業進出でございますが、同時に政府ベースといたしましても、これにでき得る限りの援助を与えて、そういった機運を促進するということも必要かと存じます。たとえば現在、昨年から発足いたしておりますアジア貿易開発協会というのがございます。これはアジアと名を冠しておりまするけれども、必ずしもアジア地域だけに限定するものではなしに、発展途上国に広く対象を広げまして、そこからの一次産品の開発輸入、これに関連しての周辺に経済効果を及ぼすようなプロジェクトに対する長期無利子の貸し付け、あるいはまた輸入に関連するきわめて低利な資金の供与等々を考えておる次第でございます。今後ともこの方向を進めることによって片貿易を是正していきたいというのが通産省の考え方でございます。
#77
○説明員(大倉真隆君) お答え申し上げます。
 ただいま貿易振興局長のほうから御答弁ございましたとおり、私どもといたしましても、今後資源開発にはできるだけ積極的に取り組むという姿勢でまいりたいと思います。終局的にはコマーシャルベースでの開発ということにならざるを得ないと思いますけれども、この前段階、たとえば鉱掘資源における探鉱段階のようなものにつきまして積極的な支援を行ないますために、輸銀資金、石油公団というようなルートを通じまして政府資金の投入を考えてまいりたい。
 なお、御参考までに私出がけに一番新しい数字を見てまいりましたのですが、輸銀が従来何と申しましても大きな資金源でございますが、外来資源の開発関係での融資承諾、コミットメントの数字は、五年前四十年度ではわずか七十二億円にすぎなかったわけでございますが、四十四年度では五百七十三億円、四十五年度の見込みでは八百三十七億円、実際はもっとふえるのではないかという見込みをしておるようでございます。また実際の貸し付け実行のほうで見ましても、昨年が三百二十二億円に対しまして、ことしは計画で五百五十億、実行では六百七十億を若干上回るということで、具体的な案件がまいり次第、その内容を十分審査をいたしますけれども、姿勢といたしましては積極的に取り組んでまいりたいというつもりでおります。
#78
○小柳勇君 再度具体的な質問ですが、これをきょう取り上げていただいたのは、水資源審議会の責任者堀さんが去年二月に行かれまして、順調にダムの計画、発電所の調査、それから電力需要の調査、工業化の研究などをやっておったのですが、万博でこちらに来ている間に、アメリカのカイザーのアルミニウム・エンジニア部門が大統領を口説きまして、そうしてアルミニウム工場をつくってやりますよという口実をもって、その計画を日本からカイザーのほうに取り上げようとしている。いま調査費用大体百四十万ドルないし百五十万ドル、約二百万ドルぐらいあればその計画ができて、しかも佐久間ダムの二倍ぐらいのダムができて、六十万から七十万キロワットの発電ができる。当面は六分の一ぐらいしか電力は要りませんから、日本ではいま公害問題などありますから、アルミニウム工場などをあそこにつくってやったらどうかという企業の意欲もあるようであります。したがってこの際――須磨大使も大使会議では発言すると言っておられたから発言されたと思いますけれども――この際七億ぐらいのものを考えて、せっかく取りかかった水資源開発の審議会の二カ年間の仕事を十分に活用させてもらいたい。そのことが、中国でいまつくっているタンザン鉄道以上に、アフリカの東部海岸に日本の政治的なくさびを打ち込む非常に大きな柱になるということを切々と訴えておられた。これは通産省だけではできない問題だと思いますが、外務省なり大蔵省としても、このくらいのことで将来アフリカの政治経済の中心的なものができるとすれば、金をかけてこの実現のために努力しなければならぬと思うのです。時期がおくれますと、またカイザーのほうでどんどん話が進んでいくようですが、いまならば大統領の気持ちも変わるのではないかということを、アジアの出先機関の諸君あるいは商社の諸君がたくさん集まった席で切々と訴えておりました。大使も見ておられましたが、そういう具体的な問題に取り組んでいくべきだろう。
 それからこちらに学生を留学生として呼んだとおっしゃいましたが、実際見ていますと、いわゆる政治権力者と国民とは全然断絶しておるわけでありまして、留学生が帰りましてもどこから手をつけていいかわからぬというような、そういう実態であります。そういうわけですから、出かけていって、国民の目に見える学校とか道路とか村をつくるとか、そういうものに目を向けていきませんと、留学生を呼んだからこれで経済協力になるということにはならぬのではないか。技術者を運ぶなら、その技術者につけて品物を持っていくかとか、実際品物をつくる中で経済協力しなければとても――日本よりも百年ぐらいおくれたコースを歩いているというのが実態のようであります。皆さんも御存じだと思いますけれども、しみじみわれわれ感じますので、いまの具体的な問題と将来の経済援助の問題、経済協力の問題は、ただ頭の数字の上で国連に対する申しわけの数字を出すということではなくて、実際血の通った経済協力をしなければならぬと思うのですが、その具体的な問題と将来の構想についてもう一回、大臣並びに大蔵省、外務省からの見解を聞きたいと思います。
#79
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては私どもも問題の所在を知っておりまして、まあいわばフィージビリティーにつきまして、そのもう一つ前の段階でフィージビリティー・スタディと申すのでしょうか、その結果において考えなければいけないと思っておりますけれども、全体的に、ただいま御指摘になりましたように、確かにしなければならない、またやれば有効だということはいろいろあるようでございます。なかなかここまで、正直を申して手を回しかねておったというのが従来の実情であると思いますけれども、だんだんわが国の外貨保有等も余裕ができてまいりました。できるだけ前向きに考えてまいりたいと考えております。
#80
○政府委員(沢木正男君) ただいま先生のお説のとおりでございまして、われわれもそういうふうに考えて対処しておるわけでございますが、御指摘のございました具体的な計画は、ステグラー渓谷開発計画であると思います。この計画につきましては日本がフィージビリティー・スタディにかかるとすれば、御指摘のように二百万ドル近いお金を必要とする。ところが外務省が技術協力の中で持っております投資前基礎調査費は四十五年度が二億九千六百万円で、通産省も同じような予算をお持ちでございますが、その両方合わせて全額を突っ込みましても、とてもそれだけの金額にならない予算規模が現状でございます。したがいまして、残念ながらこれは日本としては、東南アジアにもいろいろやることがございますし、引き受けられないということで、この前断わった経緯がご、さいます。そのところをアメリカのカイザー・アルミニウムが全部自分のところでお金を出してやってあげましょうということをタンザニア政府に申し入れましたがために、一応現在はカイザーがやるということになっておりますが、その後の情報によりますと、カイザーも必ずしもそれだけの金を出し切らぬようでございます。したがいまして、今後さらにこれをどうするかという問題は残っておりますが、何ぶんにも資金量が相当多い。それから電力需要の面につきましてはただいま御指摘のとおりでございますが、日本のアルミ精練工業があそこまで出ていきまして、その安い電力を使ってやるかどうかという点にもまだまだいろいろ問題がございます。そういうことで、残念ながらステグラー工事は取り上げるに至らなかったというのが現状でございます。
 それから、われわれ、留学生、研修生を連れてきて、それで事終われりというふうな考え方は決して持っておりませんで、今後とも研修計画は拡大していきたいと考えております。先般のアフリカ大使会議におきましても、アフリカ地域におきましては向こうから人を連れてくるよりも、むしろこちらから専門家を出して現地で教育するということを、今後の協力の中心に考えていきたいという方針を本省側でも提示いたしまして、今後そういう方向に主体を置いて考えていく予定でございます。
#81
○小柳勇君 いまの金の問題ですね、二百万ドルの金ですから七億円、これは大臣にもう一回私聞きたいのですけれども、この七億の金を出せば、二カ年間の水資源審議会の活動ができて、しかもその計画で将来タンザニアの国民生産の四割くらいの生産に寄与する発電能力を持つのですね。それで日本が将来政治的発言もできますし、また日本のアルミニウム工場などが日本に公害をまき散らすより、向こうへ行ってやろうという人もあるようですから、それは一石何鳥かになる金だと思います。五人のスタッフがせっかく行って、昨年二月から行って苦労して、しかも大統領とじきじきに話せる優秀なメンバーが行っているのに、その人が切々と訴えているのに、七億の金を出せないでアメリカのカイザーに取られることは、政治家としての努力が足らないからで、それを私も国会で発言しようと約束したものですから、男の仁義できょう発言したのだ。公式の場で発言したという記録を残しておかなければ、やはり公館の諸君だって血みどろに戦っているのだから、それを見てやらなければならない。また何とか七億の金を、外務省は二億九千万円しかないとおっしゃったけれども、どうだね、これは七億の金をつくってやりますと通産大臣は言わぬですか。
#82
○国務大臣(宮澤喜一君) この間もアフリカ在勤の大使が東京に来られまして、一堂に会議があったわけでありますが、まことに言われるような感じを、ごもっともなことだと私もそのときも聞いておって持っておりました。このケースは、したがって、もう少し検討させていただきますけれども、おそらく、発言をいたしましたときに、これは一番アルミニウム工場が電力を使うことになりましょうけれども、わが国のアルミニウムの工場の立地はここが適当であるのか、あるいはすでにインドネシアのトバ湖でありますとか、相当発電量の多いところからの話もございますので、そういうこととの関連も考えてみなければならぬ。いろいろな事情があるように思いますので、もうしばらく検討させていただきたい。
#83
○小柳勇君 もう一言。あまり時間もないのですけれども、ほんとうにタンザン鉄道で、当面四千人の中国労働者と発表しているのに二万人前後が入っているそうですね。で、ずっと調査しますと、山の中に家をつくりながら二万何千人の男女の労働者を中国は派遣して、資材を持っていって、いまつくり始めている。起工式のあとも見てきましたが、そのような援助をして、政治的にも発言力を持とうとしている。そういう非常にきびしい情勢の中ですから、出先機関の諸君は非常に苦労しているでしょうし、ことに日本から出しました五人のスタッフを七億の金で見殺しにするようなことは、ぼくら政治家としてもできないですよ。いま通産大臣のもう少し積極的な発言がほしかったのですけれども、また、これは私は適当な機会に発言したいと思いますけれども、各省とももう一回ひとつ検討していただく、そのことを約束してくだされば質問を終わります。いいですね。
#84
○国務大臣(宮澤喜一君) 各省でもう一度検討することにいたします。
#85
○上林繁次郎君 時間もないようですから、端的にお尋ねしてみたいと思います。
 繊維の見切り発車を政府がなぜ急いでやらなければならなかったかという点、この点からひとつお答え願いたい。
#86
○国務大臣(宮澤喜一君) これはせんだって本会議でも申し上げたわけでございますけれども、総理大臣と大統領が互譲の精神でできるだけ早く交渉をしようという話しをいたしました。そこでアメリカ側は、アメリカ側としての提案をしてまいったわけでございますけれども、それに対してどれだけ両方が歩み寄れるかということをはかりますためには、こちらからもこちらの提案をいたしませんと、話の詰めということはできない、こういうことになってまいりました。私どもとしては、できるだけ早く妥結をして新通商法案の成立発効をするようなことがないように、こういうことを考えておるのでございますけれども、したががって時間的にも時間を急ぐ要因がある、こういう判断をしたわけでございますが、業界としてはこれは無理もないことかもしれませんけれども、日本経済全体あるいは日米関係というようなものは、これは業界の考えることではない、業界は繊維のことを考えるんだという立場でございますし、新通商法案の成立云々につきましても、業界はまた違う見方をしておるものでございますので、おのずから両方の考えておることが違いまして、したがってそれならば提案をしないでおくかということになりますと、それでは互譲ということの幅を引き出すことができない、こういうことになりましたので、一応業界とは関係ない立場で政府として提案をいたした。もちろん最終的には業界の納得というところへ入ってまいりませんと有効な規制はできないわけでございますが、これも先ほど申し上げたとおりでございますが、そのような経緯でございます。
#87
○上林繁次郎君 お話によりますとこの七〇年通商法案、これも早く日本の条件を提示することによってこれは阻止できるんだというような考え方といいますか、話の中にそういうようなふうに感じられるものがあるわけですけれども、そうすると、この政府が見切り発車をやったということが、それが通商法案を阻止することに役立ったと、こういうふうに考えていいわけですか。
#88
○国務大臣(宮澤喜一君) 先般、佐藤・ニクソン会談がございましたときに、わが国から外務大臣が同じくワシントンを訪問したわけでございますが、外務大臣が帰りましてからの判断は、日米間で繊維の取りきめができるならば、ニクソン政権としては新通商法案の成立、発効がないように全力を尽くすという判断である、こういう外交判断を外務大臣が示されましたので、私どもそれに基づきまして、できるだけ妥結をはかっている、こういうふうに考えております。
#89
○上林繁次郎君 その見切り発車を急いだということは、先日の十月の佐藤・ニクソン会談、このときにデッドラインを密約したのではないか、こういうような感じがするわけですが、この点どういうふうに考えますか。
#90
○国務大臣(宮澤喜一君) 別段そういうことは総理大臣からも承っておりません。ただ、新通商法案が当時おそらく選挙後にアメリカの議会が開かれる、これは当然に議員の任期はもうことし一ぱい、それももっと申しますればクリスマスを越えてということはほとんど考えられませんので、そういうおのずからの日限はあったと思いますけれども、特にただいまのようなことがあったとは承知しておりません。
#91
○上林繁次郎君 それでは業界を無視したという感じは免れないと思う。そこで、どう考えても米国議会の再開に間に合わせる、こういうようなことで政府が独断専行をやった、そして新妥協案を牛場氏に訓電したんじゃないか、こういうような感じが強いわけです。この点はどうですか。
#92
○国務大臣(宮澤喜一君) 業界といたしましては、新通商法案につきまして、これが成立するかしないか、ほうっておきましても必ずしも政府が心配するようなこともないのではないか、また、かりに万一成立したところで、繊維業界だけから申しますと、自主規制でいくかこの法案でいくかというようなことで、変わりはないではないかという、そういう気持ちがあるようでございます。私は、それとしては、その後者の気持ちは理解はできないわけではございませんけれども、政府の立場といたしますと、このような法律案が成立するということは、これはもう自由貿易、世界全体の問題でもありますし、わが国産業に相当、繊維ばかりでなく、広い影響があることでもございますので、これは阻止することが必要であると考えました。この点は業界とはおのずから判断が分かれたわけでございます。そこで、ひとつ取りきめをするために交渉をしてみようということになったわけでございますけれども、もっともなことかもしれませんが、業界としてはそういう取りきめに入ること自身不賛成でありますし、おまけに先ほどのような事情から、この際急ぐことはないのではないかということでございました。これはそういう意味で基本的なものの考え方、見方が違ったわけでございます。さりとて提案をしなければいわゆる互譲という先方の譲歩の幅を引き出すことができない立場になりましたので、やむを得ず私どもの責任において、日本側の業界が納得することがもちろん前提の条件でございますけれども、案を提示した、こういういきさつでございます。
#93
○上林繁次郎君 第一回の見切り発車をやって、そしてこれに対してまた十一月二十九日には第二回の見切り発車の連発と、いわゆる伸び率実質九%、こういう新提案がなされた。ここまで譲歩してきてこういう交渉がうまくいかなかった場合に、大臣はこの繊維交渉が失敗したとき、その場合は大臣は責任をとっておやめになるくらいの気持ちをお持ちなんですか、その点どうなんですか。
#94
○国務大臣(宮澤喜一君) 何ぶんにもきわめて異例な交渉をやっておるわけでございますし、しかも強権を用いることは考えておりませんから、かりに取りきめができましたときに業界に何とか納得をしてもらわなければならぬ、そういう意味ではまたむずかしい交渉でもございます。私としては全責任をかけましてこの交渉をただいまの段階では妥結に達するために努力を続けたい、こう考えております。
#95
○上林繁次郎君 ここまできた大きな問題であることだけは間違いない。そこで、その妥結に向かって努力をしていくということは、これは当然のことです。そこでここまで譲歩してきて、もしこれが失敗に終わった場合、その場合には大臣として腹を切る覚悟があるのか――辞任する、そこまで考えているのかどうかというその点について私はお尋ねしているわけなんです。その点をもう少しはっきりお聞かせ願いたい。妥結のために努力しておることはわかります。そうでなく、もし失敗に終わったときはどうするんだというあなたの立場ですね、その点についてお尋ねしたい。
#96
○国務大臣(宮澤喜一君) まれはお尋ねの意味はよくわかっておりますけれども、私ただいま交渉の当事者でございますので、ここでお答えをいたしますことは御遠慮させていただきたいと思います。
#97
○上林繁次郎君 佐藤総理は二十六日の衆院本会議でもってこういうふうに言っておられますね、昨年十一月、日米繊維問題について早期解決することで意見の一致を見ておる。その後、閣僚級で交渉したが中断、さらにこの十月合意に達することを目途として交渉を再開することになり、いま鋭意努力していると、こういうふうに答弁しているわけです。これは昨年十一月の佐藤・ニクソン会談の密約をはっきり認める発言をしている。密約を否定し続けてきた通産大臣は、この点についてどういうふうに考えられるのか、こういう点について。総理は衆院でもってこういう発言をしておるわけです。通産大臣は密約を否定し続けてきているわけです。総理はこういうふうに言っているわけです。この点どういうふうにお考えになりますか。
#98
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの総理大臣の発言につきましては、私もその場におりましたわけでございますけれども、ただいま上林委員の言われましたような意味でその発言を私は聞いてはおりませんでした。すなわち、昨年の十一月にニクソン大統領から繊維の話があって、自分としてもそれはできるだけのことはやってみましょう、こういう話があった、これは当時から私そのように承知しておりますので、そのことに触れられたものと考えております。その際密約があったというような意味の発言ではなかったと聞いております。
#99
○上林繁次郎君 では、またその同じ本会議でもって総理はこういうふうに言っていますね。米議会内には保護貿易主義の動きが強いので、たとえ繊維問題がまとまっても、阻止できる可能性は必ずしもない、こういうふうに総理は答弁しているんですね。この点どういうふうにお考えになっていますか。あなたのいままでの発言とですね。
#100
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申しましたように、外務当局の判断に基づいて交渉をいたしておるわけでございますから、私どもはこの取りきめをつくりますことによってミルズ法案の成立発効ということを阻止したい。それを目的にしていることは変わりはございません。ただいまの総理の答弁でありますけれども、これはよその国のことであり、おまけにそれもよその国の議会のことでございますので、断定的にものを言うことはいかがかと思うと、こういう気持ちのあらわれた答弁だと、私はそう考えております。
#101
○上林繁次郎君 まあどういうふうにでも解釈のしかたはあると思うんですね。しかし、いま私がこの総理の答弁を申し上げたですね、それは通産大臣もよくわかっておる。ところが、通産大臣はいわゆる業界を納得させるために通商法案というものをだしに使っているというか、これを阻止するためにはどうしてもこれだけ譲らなければならないのだというふうに、盛んに業界を納得させるための材料のようにしてきている。そういうふうに業界に向かっては通産大臣は言ってきたわけですから、総理がここでもってあの本会議の席上でああいうふうな発言をするということは、まるきりその逆行という形になるわけですね。その辺を私はもう少しはっきり、何かことばのあやでなくて、もう少しはっきり私は通産大臣の所見を伺いたい、こう思うんですがね。
#102
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、ニクソン大統領自身が、現在の新通商法案につきまして、繊維については自分としても何かしなければならぬと思う、しかしそれ以外のものについては適当でないと考えるということを公に言っておるわけでございますから、その辺から判断いたしましても、少なくともニクソン政権といたしましては、繊維の取りきめができればこの法案は支持しない、こういう態度になっておりますことは私は明らかでございましょうと思います。それをアメリカの議会までもひっくるめまして、この話さえできればこの法案は成立しない、発効しないというふうなことを日本の総理大臣が公に言われるということは、それは適当でないだろう、こういう総理の判断だろうと私は思いますので、それはそれで理解できることではないだろうか。現に総理大臣自身が、この法案の成立、発効しないように、そういう努力の一環としてこの交渉を促進したい、促進せよと私どもに申しておられることは、それを意味するのではないかと思います。
#103
○田渕哲也君 それでは自動車の資本自由化の問題についてお伺いしたいと思います。
 先般いすずとGMとの提携の問題が発表されたわけですけれども、これでビッグスリーが三社とも日本上陸の一つの方針というものを出すに至ったわけですが、来年の四月かに予定されております自動車の資本自由化につきましては、いわゆる第一類業種指定ということと、それから新設合弁という条件がついておりますから、このビッグスリーの三つのケースの場合は、全部自動認可ではなくて、個別審査ということになると思います。その場合、基本的な考え方として認める方向で検討されるのか、あるいは認めない方向で考えておられるのか、その点まず第一にお伺いしたいと思います。
#104
○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的には、私はこちらの考え方、原則というものに反していないのならば認めるのがいいのではないかと思っておりますけれども、どうしてもこちらの考えておることと合いませんことでしたら、これはどうもやむを得ない、それを直してくるのならば認めましょう、こういうことにならざるを得ないかと思います。
#105
○田渕哲也君 こちらの原則という、その原則の内容はどういうことですか。
#106
○国務大臣(宮澤喜一君) これはこまかく申しますと、いろいろあろうかと思いますので、政府委員からあるいは補足をしてもらいますけれども、まず、いわゆる日本で育ちました自動車産業を乗っ取るというようなことがあってもらっては困る。こちら側の自主性というものは残さなければならないというのが一つの問題でございます。それからもう一つの問題は、アッセンブリーのところはともかく、下請ではまだまだ整備されておらない部分が相当ございますので、そういう人たちが犠牲にならないようにこれも大事なことではないかと思いますので、心がまえとしては、そのような点が大切ではないかと私は考えております。
#107
○田渕哲也君 乗っ取りの防止といいましても、これは非常にむずかしいことではないかと思います。といいますのは、ヨーロッパのビッグスリー進出の例を見ましても、最初は一部の株を持っていても、最終的には大体大半ないしはほとんど一〇〇%の株を取得して、経営権を取るというのがビッグスリーの従来からのやり方だと思います。それからわれわれのほうから考えてみましても、ビッグスリーにとってのメリットは何かといいますと、やはり経営権まで支配しないと、自動車会社の株を持つだけではあまりメリットがないのではないか、そういうふうに考えた場合、乗っ取り防止ということは、具体的にどのような歯どめが可能なのか、なかなかむずかしいと思うのですが、具体的にどのような歯どめをすればそれができるかということをお考えになっていますか。
#108
○国務大臣(宮澤喜一君) 先方の立場から考えまして、何もわが国の自動車企業の経営権を完全に掌握しなければメリットがないものだろうかどうだろうかということを考えてみますと、それは私はそういうことでもあるまい、非常に優秀な労働力がある国でありますし、日本自身にもある程度のマーケットもございますので、この以外に今後東南アジアあるいは中国大陸といったようなことを考えてまいりますと、これはやはりこの辺にひとつ拠点を置きたいと、十分それは私はメリットがあるのではないだろうか、また事と次第によりましては、わが国でつくっております車を、米国の市場に売る、あるいは米国以外の市場に売る、これもメリットのあることだろうと思います。これは私は先方の立場をそんたくすると、そういうふうに考えてもいいのではないかと思っておるわけでございます。そこで、具体的に乗っ取りが起こらないための方途いかんということでございますが、それは終局的には確かに日本側の経営者の考え方にかかると言ってしまえばそれまででございますが、やはりできることならば、日本側で安定株主というものを、少なくとも先方に有効に対抗できる程度にはまとめておくということが大切なことではないであろうか、こう考えておるわけでございます。
#109
○田渕哲也君 大体ヨーロッパの例を見ましても、乗っ取り防止のためにいろいろの手が打たれおりますが、一つは、やっぱり政府が介入をして、出資比率、あるいは役員構成、あるいは輸出政策とか雇用対策上の経営方針、そういうものに一々口を出すということもあるわけですけれども、出資比率とか役員構成について、そういうものについて条件をつけられるということは考えておられるわけですか。
#110
○国務大臣(宮澤喜一君) 自由化ということは本来政府が口をあまり出さぬということではございましょうけれども、しかし乗っ取り云々ということを考えてみますと、やはり出資比率の点、日本側の安定株主のつくり方、それから役員といったようなことは、これはおのずから私どもとして関心を持たざるを得ませんので、事実上非常に事が極端になりまして乗っ取りの危険があるというふうに考えるようでありましたならば、ものを申さなければならない。実際問題としてはお互いにしょっちゅう連絡もあり、相談もできることでございますから、そういう表立たない方法にいたしたいと思っておりますけれども、どうしてもやむを得なければそういうこともあり得るかと思います。
#111
○田渕哲也君 それから安定株主の問題ですけれども、業績が非常に悪いような会社ですと、安定株主構成がなかなかできにくい面があると思います。これについてイギリスやイタリアでやっておりますような、持ち株会社的なものをやはりつくる必要が出てくるのじゃないかと思いますが、それについてはどう考えますか。
#112
○国務大臣(宮澤喜一君) これはそういうことをいたしますれば、そのための目的には奉仕することができるかもしれませんけれども、持ち株会社というもの自身の持っておるいろいろの問題というものがございますので、制度をつくりますと、ひとり歩きをいたしますから、そこはよほど考えなければならない。私どもとしてはそういうことをいたしませんでも、金融機関等々の協力を求めれば、ある程度の安定株主というものはつくり得るのではないか、そういうふうにただいま考えております。
#113
○田渕哲也君 資本の自由化に対する考え方ですが、通産省としては従来自動車産業の体制整備ができるまでは自由化は引き延ばしたいというような方針があったと思いますけれども、大体来年の四月に自由化をする。さらに具体的に個別審査でビッグスリーの進出も検討するという段階に来ておりますが、自動車産業の体制については、整備できたと判断されるわけですか。
#114
○国務大臣(宮澤喜一君) まあトヨタと日産というものがあれだけ強くなりましたし、輸出もこれだけしておることでございますので、まあ申せば下請等々まだまだ切りがないことでございましょうけれども、私は大勢としましては、まずこの辺で来年の春に自由化に踏み切ってもいい状態になったと考えておるわけであります。
#115
○田渕哲也君 現在の自動車産業の状態を見ましても、非常に過当競争の状態ですし、それからトヨタ、日産というメーカーでの利益の額はかなり大きなものを出しておると思いますが、販売店、下請まで含めて考えた場合に、私はやはりそれほど体質が強化されていないのではないかという考え方を持っております。
 それからもう一つは、ビッグスリーは何としても相手が非常に強大である。そういう点を考えた場合に、ビッグスリーが三社とも日本に入ってくるということは非常に重大な事態ではないかと考えております。ヨーロッパの場合でも、イギリスは三社が入っておりまして、ビッグスリーだけでシェアが五五%とられている。それからドイツの場合は二社入っておりましてこれは大体シェアが三〇%。フランスの場合は一社入っておりまして一七%。これを見ますと大体一社でシェアとしては最低一五%、普通二〇%。一五%ないし二〇%前後のシェアはとるというのが常識だと思います。これは企業を運営するほうから見ても、それだけのシェアをとらないとメリットが出てこないわけです。そう考えた場合、三社が入ってきますと半分前後のシェアはとられるというふうに考えなければならない。そう考えた場合に、私は、通産省が従来から進めてこられた体制整備なり再編成工作というものは、心ずしも成功とは言えないんじゃないかという気がするわけですが、この点どうお考えになっていますか。
#116
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申しましたような原則が満たされるといたしますと、私はどこでもやったらばいいんじゃないか。一社であろうと三社であろうと、みんなすぐれたものがやってきて日本のすぐれた企業と競争すればお互いいいのではないか。思想としてはそう考えておりますし、現にわが国もアメリカにこれだけ自動車を売っておるわけでございますから、自由化ということであれば、お互いのことではないだろうか。たいへん大まかなようでございますけれども、私は、そういう競争にさらしてもそう簡単にへこたれないだけの体制が――こまかく申せばいろいろございましょうけれども――わが国内にはもうできつつある、こう思っているのです。
#117
○田渕哲也君 最近アメリカが保護貿易主義的な考え方が非常に強くなっておるわけですけれども、大体われわれが、自動車の自由化にしても推進する一つのメリットは、やはり自由貿易というものを推し進めていかなければならない。それから、日本の自動車もアメリカやほかに輸出しておることですから、それをやる上においても自由化というものは受け入れたほうがいいだろう、そういう判断があると思うのです。最近アメリカ自体が非常に保護貿易主義的な傾向が強くなりつつあるこのときに、アメリカの資本を何も入れなくてもいいんじゃないかという考え方もできるわけですけれども、将来アメリカがこういう日本が自由化を認めるにかかわらず保護貿易、たとえば自動車の輸出についても何らかの制限措置というものを考えた場合に、報復措置というものをとられるわけですか。
#118
○国務大臣(宮澤喜一君) アメリカの動きいかんにかかわらず自由化を進めていくことがわが国自身のためになると思っていますし、また、ガットあるいはOECD等々の本来のたてまえにも沿うことと思っておるわけでございます。他方で、アメリカにそういう保護貿易主義的な動きが出てきたことはきわめて遺憾でございますが、たとえばそれがガットあるいは国際間のルールに違反したような形で、かりに自動車なら自動車というものに問題が起こってさましたら、これは当然わが国としては報復の権利を持っておるわけでございますから、それに従って行動しなければならない。ただ、願えることであれば、この報復ということは一種の抑止力として使うのがほんとうでございますので、そういうことにならないことを祈ってはおりますけれども、そういう国際法上の権利は当然持っておるものと考えております。
#119
○田渕哲也君 現在アメリカは自動車の資本の自由化というのは非常に強力に要望しておるわけです。ただ、資本の自由化の場合は、簡単に、アメリカがそれじゃ輸出制限したから日本は資本自由化をやめたというわけにはいかないと思うんです。逆戻りはなかなかしにくい問題ではないかと思うんです。そういう観点でやはり非常に慎重な態度で取り組むべきではないかと思います。
 それと、もう一つお伺いしたいことは、やはり日本のアメリカに対する依存度が非常に高いわけですね。輸入にしても輸出にしても非常に高いわけですけれども、私は、アメリカ自体が非常に保護貿易主義に傾きつつある現在、アメリカに対する依存度が高いということは、それだけ日本の経済に与える影響も大きいわけですから、この点に対する配慮が必要ではないかと思います。すでに日中問題の進展ということを考えなければならない時期に来ておりますけれども、中国市場というものをわれわれはもう真剣にやはり考えて対策を立てなければならない時期に来ておるのではないか。そういう面から考えた場合に、自動車の場合についても将来中国が大きな市場になるであろうということは大体想定できるわけですけれども、ただ周四原則によりましてアメリカとの合弁会社とは取引しないということもありますから、そういう面から考えても、アメリカ資本が自動車に進出するということは、大きな戦略的に見てやはり慎重に検討しなければならない問題だと思いますが、この点についてお伺いしたいと思います。
#120
○国務大臣(宮澤喜一君) これは主として経営者が判断すべきことと思っておりますけれども、少なくともわが国の判断として、トヨタあるいは日産というところを中心に考えてまいりますともここに外資が入るかどうかということは、当面の問題としてはないわけでございますので、将来の中国本土、これは仰せのとおりだと私も思っておるわけでございますけれども、そういうことも考えましても、まずいまの体制でそれに支障があるということはないのではないか、こう思っております。
#121
○須藤五郎君 日米繊維交渉はアメリカ側の一貫した高圧的態度と日本政府の譲歩に次ぐ譲歩というきわだった対照を示していると思います。私たちは従来も日米繊維交渉そのものに反対する立場をとってきたものでありますが、従来からそのことは明らかに表明してきたと思うのですが、交渉が現に国民の目から隠されたところで推進されているということから、政府の考え方について二、三の点についてはっきりしたことを伺いたいと思います。
 まず、政府は現在十七品目六ワクという案を、業界の反対にもかかわらず、いわゆる見切り発車という形でアメリカ側に対して提案しておりますが、この案でまとまる見込みは全くないという情勢にあることは政府自身がよく知っていらっしゃることだと思うのでありますが、この案でまとまらない場合、政府はどうする考えか、どこまでなしくずし的に譲歩をしていく考えか、その点をまず……。
#122
○国務大臣(宮澤喜一君) それは先ほども申し上げましたとおり、国会の御決議というものとそれから私どもが持って帰って、業界がともかくも不承不承でも承知をしてくれるということと、この二つが私どもの交渉の制約でございます。それを越えては交渉というものをすることができない、こう考えております。
#123
○須藤五郎君 そういうのは、現段階で業界は政府のやっておることを納得してないということがはっきりしておるのでございますから、これ以上もう譲歩をしたり、交渉を続ける必要はないということではないのですか。
#124
○国務大臣(宮澤喜一君) もともと業界の本来の立場は、このようないわゆる自主規制ということはゆえのないことである。それが本来の立場でございますから、それから申せば、いかなる交渉も業界は腹からは賛成できない、こういうことであろうと思っております。いまおまえたちのやっていることは当然業界は受け入れないにきまっておるではないかと仰せられるわけでありますが、私どもとしては、そこのところがむずかしいところでございますけれども、最終的にここでなら話がまとまりますということになりましたときに、一度業界ととっくり御相談をしてみたい。ただいまの業界の気持ちの中には、事柄そのものはむろん反対だと、これには間違いございませんが、そのつどつどの段階でけっこうです、けっこうですと言っておったんでは、これはどこまでいくかわからぬという当然の心配があるわけでございましょうから、これでまず最終だというめどがつきましたところで、そこで業界にひとつ御相談をしたり、御協力を求めたりしたいと思っているわけでございます。
#125
○須藤五郎君 佐藤総理が十一月二十七日の参議院本会議の答弁で、次のように述べております。「たとえ両国間の合意が成立いたしましても、自主規制である限り、関係業界の協力が得られなければ、実効はあがらないのでありますから、政府としては、業界の理解を得られる線で、最終的妥結をはかりたい」と、こうおっしゃっておられますね。「強権発動という形で、輸出貿易管理令を発動することは、現在のところ全く考えておりません。」、こうはっきり答えております。また一方業界は、いま政府がアメリカ側に提示しておる十七品目六ワクの案でさえ、これをのむことはできないと、はっきりと強硬な態度を表明しております。しかも現状から見れば、アメリカ側との交渉過程で、政府はさらに譲歩した線を打ち出してアメリカ側との合意をはかろうとしておることは、これまた明らかではないかと思うのです。そうしてこの合意の内容は、業界にとって一そう受け入れがたいものであることも私は明白だと思っております。
 そこで三つ質問をいたしますが、事態が業界の理解を得られる線をはるかにこえている現在、常識的に考えれば最終的妥結をはかることはできない、交渉はもの別れとなるよりほかないと思われますがどうか、これが一つです。もう一つは、政府が最終的妥結をはかれば、すなわちその線が業界の理解し協力する線にほかならないというからには、総理には相当の確信なり成算があってのことと思われますが、一体どのような根拠を持って総理はこのような答弁をなされたのか、これは総理の答弁ですからあなたに責任ないかもしれませんけれども、やはり佐藤内閣の閣僚の一員としてあなたも共同の責任者だと思いますから、あなたから答えてもらいたいと思います。それから三番目は、かりに交渉が妥結したとしましても、業界が頑強にその受け入れ、協力を拒否した場合、政府はどのような手を打つつもりなのか、輸出貿易管理令は、現在の段階では強権を発動しないとおっしゃっておりますが、現在ばかりでなく、このように業界が拒否した場合にも発動することはないと言えるかどうか、この三つをまずお答え願いたい。
#126
○国務大臣(宮澤喜一君) 第一点でございますが、ただいま一生懸命交渉をいたしておりますので、ここで私の申し上げることが交渉の成り行きに害のあるような影響を与えてはならぬと思いますので、これはしょせん決裂するしかないのではないかとおっしゃる点については、お答えを御遠慮させていただきまして、私どもとしては、主要な点については譲歩することは困難だと考えておりますけれども、いろいろこまかい点については話し合える余地もあろう、このような態度でおりますので、なお努力をして交渉を続けてみたい、取りきめができますことをこいねがって交渉を続けてみたいと考えております。
 次に、業界の協力についてどのような成算があるかと言われます点でございますが、これは非常に正直申しまして、でき上がるそのでき上がり方を見てやりませんと、ただいま申し上げたことができませんわけで、逆に申しますと、とうてい業界の協力が得られないということが私どもに明らかなような取りきめのやり方をしてはいけない、そういう心がまえで交渉をしておりますと、裏から申し上げることが一番正確ではないかと思います。
 最後に、それでも業界が協力しないときはどうするか、先般総理大臣の答弁もございましたが、おまえはどうかというお尋ねでございますが、私はいわゆる強権というものを発動する考えを持っておりません。
#127
○須藤五郎君 そうすると、総理は業界の理解を得られる線で最終的妥結をはかりたいとおっしゃるのですから、政府が最終的妥結をはかるというときは、あれは業界の納得する線だと、こういうふうに理解していいんですか、納得は得られなければ最終的妥結ははかれないのだ、こういうふうに理解していいんですか。
#128
○国務大臣(宮澤喜一君) そのとおりでございます。
#129
○須藤五郎君 そうすると、先ほどのことばの中に、こういういわゆる大筋ではもう変わらないのだ、政府の態度は。今日個々の小さい問題でいろいろ話し合いの余地はあるけれども、大筋ではもうアメリカと話し合って妥結する望みは、見込みはないと、こういう見解ですか。
#130
○国務大臣(宮澤喜一君) 交渉にあたって非常に頑迷な態度をとっておるというふうに先方に思ってほしくはありませんけれども、先ほど申しましたように国会の決議、業界との関係から考えまして、譲り得る限度にはおのずからの制約があると考えております。
#131
○須藤五郎君 米国の輸入制限立法の動向について、佐藤総理は十一月二十六日の衆議院本会議の答弁の中で次のように述べておられます。「米議会内における保護主義の勢力は強いので、繊維問題について日米両政府間で合意に達したとしても、このような法案が成立する可能性が全くないとはいえない」、いわゆる合意に達した後でもこの法案が成立する可能性がないとは言えないんだと、こういうことを総理は答弁していらっしゃいますね。一九七〇年通商法案が成立するという事態になった場合に、これに対して政府はどのような対抗措置をとる考えであるか、この点伺っておきたいと思います。
#132
○国務大臣(宮澤喜一君) 前段の点は、先ほども申し上げたわけでございますけれども、わが国の総理大臣が他国の、しかも立法府に関係のありますことを、これは絶対に成立いたしませんというお答えはなかなかこれはできないことであろう、正確を期して申し上げれば、いまのようなお答えにならざるを得ないのではないだろうか、われわれの希望、願望を申しておるわけではございませんから、見通しについて申すとすれば、そう申し上げるしかないのではないかというふうに思っております。それから、かりにこの法案が成立いたしましたときには、わが国は国際条約等々によって与えられております権利は留保するということは、先般、覚え書きをもってアメリカ側に通告をいたしたとおりでございます。
#133
○須藤五郎君 そうすると、いまの話し合いの中では、政府間協定が妥結したらその通商法案は国会で成立しないと、させないというような、そういう保証も何もないような状態でいま交渉をしていらっしゃると、こういうふうに理解していいんですね。
#134
○国務大臣(宮澤喜一君) その点について佐藤・ニクソン会談で何かの保証なり確約があったというふうには私は聞いておりません。おそらく、それはニクソン大統領といえども議会に関係することでございますので、それになりかわって約束をするということは、それはできないことでございましょうし、総理大臣としても、したがってそれを求めるということは無理なことだということは当然知っておられたと考えるわけでございます。ただ、外務大臣の判断として、この取りきめができるならば、ニクソン政権としては法案の成立、発効を阻止するために最善を尽くす、そういう方針であるというふうに外務大臣が判断をして帰ってこられまして、私どもにそれを伝えられたわけでございます。
#135
○須藤五郎君 政府間交渉が妥結した後に、業界がおれたちの主張と非常に違うと、そういうものではわれわれは納得できないということで、その業界が協力を拒否した場合、その業界が協力を拒否することは国益に反するとお考えになるのですか、どうですか。
#136
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもとしては、先ほどのような心がまえで交渉をする、また、その交渉の譲歩にはおのずから制約があるわけでございますので、かりにその制約を越えない範囲で取りきめができましたならば、これにひとつ協力を業界にしてもらいたい。それは国全体の利益を私どもが判断いたしますと、ひとつ、つらいであろうが御協力を願いたい、私はそういう説得をいたすつもりでおるわけでございます。ただ、何が国益であるかということについてはおのおの考えるところが異なりますでありましょうし、また私ども政府におります者は、もちろん公務員として国益というものを第一に考えなければなりませんけれども、一つ一つの業界というものにとっては、またおのずからそこに考え方の相違もあるであろう、それだけのことは当然頭に置いておかなければなりませんけれども、私どもが業界を説得するといたしますと、その考えはやはり国益というものに照らしてということでお願いをすることになろうと思います。
#137
○理事(大谷藤之助君) 須藤君、もう時間がありませんから。
#138
○須藤五郎君 もう一問で終わりましょう。
 谷口さんなどは、政府は国益に反するというようなことを言っておるが、業界が、この政府間の協定を受け入れることが国益だと、それを拒否することは国益に反するというような意味のことを言っておるが、それでは国益とは一体何ぞという説明がない。それじゃ国益とは何ぞという説明をしたらどうだというような意見も持っておられるようなんですね。そこで、政府は進んで政府の考える国益とはこういうものだということをひとつ説明してごらんになったらいかがと思うのですね、具体的に。どうです。
#139
○国務大臣(宮澤喜一君) まあこれはたいへんむずかしいお尋ねでございますので、完ぺきに申し上げることもできませんし、それを試みればたいへんに長くなることでございますけれども、やはりいまの新通商法というようなものが成立いたしますことは、ガット体制を根本からこわすことになるのでございますので、世界の自由貿易というものの流れは完全にこれで変わる、そう覚悟をいたしておかなければなりません。で、このことは、わが国のように外国貿易にたよって生きていく国、ことにその貿易を毎年毎年かなり大幅に伸ばしてまいりましたし、今後も伸ばしてまいりたいと考えている国にとりましては、致命的なことではないかと考えておるわけでございます。で、ほかにも、経済外のいろいろな観点もございましょうけれども、その一点から考えましても、私はここで新通商法が成立をしてガット体制がこわれることは、わが国にとって非常に大きな損害である、世界全体にとってもそうでございますけれども、わが国の国益にとって、はなはだ不利であるというふうに考えておるわけでございます。
#140
○須藤五郎君 沖縄の問題がひっかかってくるのじゃないですか、ここで国益という中に。これで終わりますが、どうですか、そのことを業界も言っておりますね。
#141
○国務大臣(宮澤喜一君) 私の存じております限りそのようなことはないものと思います。
#142
○理事(大谷藤之助君) 他に御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
    ―――――――――――――
#143
○理事(大谷藤之助君) 小委員会の設置に関する件を議題といたします。
 産業貿易及び経済計画等に関する調査の一環として、石炭対策に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#144
○理事(大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。つきましては、小委員の数及び人選並びに小委員長の人選は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#145
○理事(大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。
 それでは小委員の数は十名とし、小委員に川上為治君、井川伊平君、剱木亨弘君、山本敬三郎君、阿具根登君、大矢正君、竹田現照君、矢追秀彦君、田渕哲也君、須藤五郎君を指名いたします。
 また、小委員長には川上為治君を指名いたします。
 なお、小委員の辞任及びその補欠の選任並びに小委員会から参考人の出席要求がありました場合の取り扱いにつきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#146
○理事(大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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