くにさくロゴ
1970/12/15 第64回国会 参議院 参議院会議録情報 第064回国会 商工委員会 第4号
姉妹サイト
 
1970/12/15 第64回国会 参議院

参議院会議録情報 第064回国会 商工委員会 第4号

#1
第064回国会 商工委員会 第4号
昭和四十五年十二月十五日(火曜日)
   午前十時二十七分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    理 事
                大谷藤之助君
                川上 為治君
                近藤英一郎君
    委 員
                赤間 文三君
                稲嶺 一郎君
                植木 光教君
                八木 一郎君
                阿具根 登君
                大矢  正君
                林  虎雄君
                上林繁次郎君
                渡辺  武君
   衆議院議員
       商工委員長代理
       理事       中村 重光君
       商工委員長代理
       理事       武藤 嘉文君
   国務大臣
       通商産業大臣   宮澤 喜一君
   政府委員
       経済企画政務次
       官        山口シヅエ君
       経済企画庁国民
       生活局長     宮崎  仁君
       通商産業大臣官
       房長       高橋 淑郎君
       通商産業省公害
       保安局長     莊   清君
       通商産業省公害
       保安局公害部長  柴崎 芳三君
       中小企業庁長官  吉光  久君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   説明員
       公正取引委員会
       事務局取引部長  坂本 史郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○水質汚濁防止法案(内閣提出、衆議院送付)
○下請中小企業振興法案(第六十三回国会内閣提
 出、第六十四回国会衆議院送付)
    ―――――――――――――
  (理事大谷藤之助君委員長席に着く)
#2
○理事(大谷藤之助君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 水質汚濁防止法案を議題といたします。本案についての趣旨説明はすでに聴取しておりますので、これより政府側から補足説明を聴取いたします。宮崎国民生活局長。
#3
○政府委員(宮崎仁君) 水質汚濁防止法案につきまして、提案理由を補足して御説明を申し上げます。
 本法案を提案いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。
 第一に、本法案でいう「公共用水域」の範囲につきましては、第二条第一項で規定しておりまして、水質保全法上の取り扱いとは異なり、終末処理場を現に設置していない公共下水道及び都市下水路は、原則として、公共用水域として取り扱うこととしております。
 第二に、本法案による排水規制の対象となる工場または事業場につきましては、第二条第二項及び第三項に規定しておりまして、カドミウム等人の健康にかかわる被害を生ずるおそれがある物質を含む汚水または廃液あるいは水素イオン濃度等の水の汚染状態を示す項目に関し、生活環境にかかわる被害を生ずる程度の汚水または廃液を排出する施設を「特定施設」として政令で定めることとし、この特定施設を設置する工場または事業場といたしております。なお、「特定施設」を定めるにあたりましては、現行工場排水等規制法と異なり、製造業関係に限定せず、広く第一次産業から第三次産業までの各種産業で用いられる施設を対象とし得ることとしております。
 第三に、排水基準につきましては、第三条に規定しておりまして、排水基準は、まず全水域を対象に総理府令によって定めることとしております。この排水基準の対象とする物質または項目は、現行水質保全法に基づき設定されている水質基準の対象項目をできるだけ幅広くカバーするよう配慮する予定でおります。この排水基準につきましては、水域の自然的、社会的条件から判断して、これによっては、人の健康を保護し、または生活環境を保全することが十分でないと認められる水域があるときは、都道府県は、当該水域につき、条例でさらにきびしい排水基準を定めることができることにしております。なお、第四条では、公共用水域の水質の汚濁の防止のため特に必要があると認めるときは、経済企画庁長官は、都道府県に対し、この排水基準を定めるべきこと等を勧告できることとしております。
 第四に、排水基準を工場等に順守させるための措置につきましては、第五条から第十四条までに規定しておりまして、まず、特定施設設置前の措置として、特定施設を設置しようとする者は、特定施設の設置に関する計画等を都道府県知事に届け出なければならないこととし、都道府県知事は、その計画にかかわる排出水が排水基準に適合しないと認めるときは、その計画の変更命令等を出すことができることとしております。次に、排水基準に適合しない排出水を排出した場合の措置として、これを直ちに処罰し得るよう所要の罰則を設けております。また、特定施設を設置している工場等が排水基準に違反する排出水を継続して排出するおそれがある場合の予防的措置として、その排出により人の健康または生活環境にかかわる被害を生ずると認めるときは、都道府県知事は、汚水等の処理方法の改善、排出水の排出の一時停止等を命ずることができることとしております。
 第五に、公共用水域の水質の監視、測定についてでありますが、これは、第十五条から第十七条までで規定しており、公共用水域の水質を常時監視すべき義務を都道府県知事に課するとともに、効率的な水質の測定を確保するため、都道府県知事を中心に測定計画を定め、国及び地方公共団体が協力して、水質の測定を行なう体制を整備するほか、都道府県知事は、この測定結果を適宜公表しなければならないこととしております。
 第六に、公共用水域の異常な渇水等の緊急時の措置として、第十八条において、異常渇水等により人の健康または生活環境にかかわる被害が生ずるおそれがある場合として政令で定める場合に該当する事態が発生したときは、都道府県知事は、これを一般に周知させるとともに、工場または事業場に対し排水量の減少等を勧告できることを規定しております。
 第七に、水質審議会につきましては、第十九条から第二十一条までに規定しておりまして、従来どおり経済企画庁に中央水質審議会を置くとともに、都道府県が排水基準の設定等の重要な任務を担当することになったことに伴い、都道府県にも都道府県水質審議会を置くことにしております。
 第八に、本法案のうち、特定施設設置の届け出、計画の変更命令、汚水等の処理方法の改善命令等に関する規定の適用除外に関してでありますが、鉱山、電気工作物及び廃油処理施設につきましては、排水規制につきそれぞれ鉱山保安法、電気事業法及び海洋汚染防止法で定められていることにかんがみまして、排水基準順守のためには、本法案のこれらの規定に適用せず、これらの法律の相当規定の定めるところによる旨を第二十三条で規定しております。
 第九に、地方公共団体の条例による規制と本法案による規制との関係につきましては、第二十九条に規定しておりまして、本法案の規制対象となる工場または事業場につきましても、本法案による排水基準の対象とされた物質または項目以外の項目について、固有の条例体系において必要な規制をすることを妨げない等を明らかにしております。
 以上のほか、都道府県知事による工場または事業場に対する報告の徴収、立ち入り検査権、都道府県知事による資料の提出の要求、都道府県知事の権限に属する事務を政令で定める市の長へ委任すること等につきまして所要の規定を設けております。
 以上をもちまして水質汚濁防止法案についての補足説明を終わります。
#4
○理事(大谷藤之助君) この際、本案に対する衆議院における修正点について、衆議院商工委員長代理理事中村重光君から説明を聴取いたします。中村重光君。
#5
○衆議院議員(中村重光君) 水質汚濁防止法案の衆議院における修正点につきまして御説明申し上げます。
 第一点は、第二条第二項の特定施設の定義中、第二号の生活環境項目に関する規定が「生活環境に係る被害を生ずる程度」とあったのに対し、第一号の有害物質の場合と同様に「おそれがある」の字句を挿入したこと。
 第二点は、第五条の特定施設の届け出の規定について、「排出水の汚染状態及びその量」が添付書類の記載事項となっていたのを、届け出事項に改めたこと。
 第三点は、第十三条中、改善命令等を発する要件が「排水基準に適合しない排出水を継続して排出するおそれがある場合において、その継続的な排出により人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認めるとき」とあったのを、単に「排水基準に適合しない排出水を排出するおそれがあると認めるとき」に改めたこと。
 第四点は、第十四条中、第二項の「排出の方法を適切にするよう努めなければならない」を「排出の方法を適切にしなければならない」に改め、第三項の「地下にしみ込むこととならないよう努めなければならない」を「地下にしみ込むこととならないよう適切な措置をしなければならない」に改めたこと。
 第五点は、第十八条の緊急時の措置の規定中、「勧告することができる」を「命ずることができる」に改めたこと。
 第六点は、第二十五条の国の援助の規定に、「中小企業に対する特別の配慮」に関する規定を加えたこと。
 第七点は、付則第四項として、現在の水質審議会及びその委員がそのまま中央水質審議会及びその委員に移行する旨の規定があったのを削除したこと。
 その他、以上の修正に伴って罰則その他の規定を整備したこと。
 以上でございます。
 よろしく御審査をお願い申し上げます。
#6
○理事(大谷藤之助君) 以上で本案についての補足説明及び衆議院における修正点の説明聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#7
○理事(大谷藤之助君) 下請中小企業振興法案を議題といたします。
 まず政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤通商産業大臣。
#8
○国務大臣(宮澤喜一君) 下請中小企業振興法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 下請中小企業は、わが国産業に広範に存在し、わが国経済の重要なにない手として、その発展をささえてきており、今後とも、わが国産業の高度化の進展に伴い、その役割りはますます増大するものと見込まれております。
 しかしながら、下請中小企業は、受注の不安定、体質改善のおくれ等多くの問題をかかえており、さらには深刻な労働力不足、親事業者からの合理化要請の強化等きびしい環境に直面しております。
 このような情勢に対処して、下請中小企業が自主的にその事業を運営し、かつ、その能力を効果的に発揮することができるようにすることは、わが国経済のバランスのとれた発展を確保する上からもきわめて重要な課題となっております。
 本法案は、このような観点から、下請中小企業の実態に即して効率的に近代化の促進をはかるとともに、下請取引のあっせん等を推進することにより下請中小企業の振興をはかろうとするものであります。
 すなわち、第一に、下請中小企業の振興に関し、下請中小企業者及び親事業者のよるべき振興基準を定めるとともに、これに基づき必要な指導、助言を行なうことといたしております。
 第二に、国民経済上特に近代化を促進する必要がある下請中小企業について、特別の近代化制度を創設することといたしております。すなわち、下請中小企業者が組織する事業協同組合及びその親事業者が、親事業者の発注分野の明確化、下請中小企業者の設備の近代化、技術の向上、事業の共同化等を内容とする「振興事業計画」を作成して、政府の承認を受けることができることとしております。政府は、承認した計画の実施を促進するため、金融上、税制上の助成措置を講ずることといたしております。
 第三に、下請取引のあっせん、下請取引に関する苦情相談等の業務を行なう下請企業振興協会に対して、その業務の公正的確かつ広域的運営を確保するため必要な指導、助言を行なうこととしております。
 これが、この法案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#9
○理事(大谷藤之助君) 次に補足説明を聴取いたします。吉光中小企業庁長官。
#10
○政府委員(吉光久君) 下請中小企業振興法案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。
 下請中小企業は、製造業全体で約三十万企業と推定され、これは全中小企業製造業の過半を占めるものであります。このような膨大な下請中小企業がわが国産業の重要なにない手としてその発展に大きな役割りを果たしてきたことは御承知のとおりであります。
 さらに、今後わが国経済が一そうの発展を続けていくためには、産業の高加工度化が一そう進展し、また新製品の開発が推進されなければなりませんが、これらはいずれも現在下請中小企業がになっている分野を拡大していくと見込まれるものであります。
 しかしながら、下請中小企業は、概して親企業からの受注が不安定であり、かつ、経営面、技術面等各般にわたりその企業体質はきわめて弱い状態にとどまっております。またこのため発注企業に対して従属的関係におちいらざるを得ないものも多いのであります。
 加えて、労働力不足の深刻化、経済の国際化の一そうの進展等下請中小企業を取り巻く環境は一段とそのきびしさを増しつつあります。
 このような状況を考えますと、これら下請中小企業の振興をはかり、下請中小企業が支配・従属の関係から脱却し、自主的にその事業を運営し、かつ、その能力を効果的に発揮することができるようにすることは、きびしい環境変化の試練を受けつつある下請中小企業の存続発展のため急務であるばかりでなく、わが国経済のバランスのとれた発展をはかるためにも、国民経済上きわめて重要な課題となっていると考える次第であります。
 政府は、従来、下請中小企業の取引条件の改善につきましては、下請代金支払遅延等防止法の運用を中心に施策を実施してきておりますが、これは、下請中小企業と取引をする親企業に適正な取引条件を守らせることが中心であって、下請中小企業自体の体質改善を直接の目的としたものではありません。また、下請中小企業の近代化のための施策としては、従来中小企業近代化促進法、機械工業振興臨時措置法などに基づく施策が講じられておりますが、これらの施策は下請中小企業だけを対象として取り上げているものではないこともありまして、下請中小企業の末端までその施策が浸透しているとは、必ずしも言い得ない実情にあります。
 本法案は、以上御説明申し上げたような考えから、下請中小企業の実情に即してその近代化を効率的に促進するための措置を講ずるとともに、下請取引のあっせん等を推進するため、その体制の整備をはかり、もって下請中小企業の振興をはかろうとするものであります。
 すなわち、第一に、通商産業大臣は、中小企業近代化審議会等の意見を聞いて、下請中小企業の振興をはかるための振興基準を定めることとしております。この振興基準は、下請中小企業者の生産性の向上、親事業者の発注分野の明確化および発注方法の改善、下請中小企業者の設備の近代化、技術の向上及び事業の共同化その他下請中小企業の振興に関し必要な事項について下請中小企業者及び親事業者のよるべき指針を示すものであり、下請中小企業振興のため適正なルールを設定しようとするものであります。また主務大臣は、その振興基準が順守されるよう必要な指導、助言を行なうこととしております。
 第二に、国民経済上特に近代化を促進することが必要な下請中小企業につきまして特別の近代化制度を創設することとしております。すなわち、政令で指定する業種に属する親事業者とその親事業者にかかる下請中小企業者が組織している事業協同組合とが「振興事業計画」を作成して主務大臣の承認を受けることができるようにしております。この振興事業計画の内容は、下請中小企業者の受注量確保のための親事業者の発注分野の明確化、下請中小企業者の設備の近代化、技術の向上、事業の共同化等を中心とするものであり、事業内容に応じて親事業者の責務及び下請中小企業者の自主的努力の内容を明確に定めることとしております。政府は、その承認した計画の実施を促進するため、中小企業金融公庫からの特別貸し付け制度、下請中小企業振興準備金制度の創設等金融、税制上の助成措置を講ずることといたしております。
 第三に、下請取引のあっせん、下請取引に関する苦情相談等の業務を行なう下請企業振興協会に対し、下請取引の円滑化を促進して下請中小企業の振興をはかるという見地から、その業務が公正的確に、かつ、広域にわたり効率的に運営されるよう必要な指導、助言を行なうこととしております。
 以上この法律案につきまして、簡単でございますが、補足説明をいたしました。何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。
#11
○理事(大谷藤之助君) この際、本案に対する衆議院における修正点について衆議院商工委員長代理理事武藤嘉文君から説明を聴取いたします。武藤嘉文君。
#12
○衆議院議員(武藤嘉文君) 下請中小企業振興法案に対する衆議院の修正点について御説明申し上げます。
 第一点は、第一条の目的の修正であります。御承知のように本案は、いわゆる親子ぐるみで下請中小企業の近代化をはかる等、従来の中小企業施策に新たな一面を加えるユニークなものでありますが、現実の下請関係における特殊な実情にかんがみまして、特に下請中小企業の自主性を確保しつつその振興をはかることが重要でありますので、中小企業基本法第十八条の規定にのっとり目的の明確化をはかりました。
 第二点は、第三条の振興基準の内容に関する修正であります。振興基準は、下請事業者及び親事業者のよるべき一般的基準として定められるものでありますが、下請中小企業の振興をはかるためには、下請関係の取引条件の改善及び下請事業者の組織化の推進をはかることが重要でありますので、これに関する事項を振興基準に定めるべき事項として加えました。
 第三点は、第五条の振興事業計画の作成に関する修正であります。振興事業計画の作成においては、特定親事業者の協力が重要な問題でありますので、特定下請組合が計画の作成について協議したい旨を申し出たときは、特定親事業者はこれと協議し、計画の作成に協力しなければならないことを明定いたしました。
 第四点は、第十一条の下請企業振興協会の業務に関する修正であります。下請企業振興協会は、下請取引について重要な機能を果たすものでありますが、下請取引に関する苦情または紛争については、相談に応ずることとなっておりますので、さらにその解決についてあっせんまたは調停を行なうことと改めました。
 以上であります。
 よろしく御審査をお願い申し上げます。
#13
○理事(大谷藤之助君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
#14
○林虎雄君 脆弱な基盤に立つ下請業者を、国家的な法律で、ある程度保護しようという、こういうねらいの法律で、案としてはまことに適切であると思います。しかし、この法律にうたっております内容について見ますると、いろいろ疑問点が出てまいるわけであります。特に、もうすでに昭和三十一年に制定されて、四十年に改正されました下請代金支払遅延等防止法でありますが、この法律の内容というものはほとんど実施されておらない。特に重要な点であります代金支払いの期日というものが、もう全く実行されておらないというのが実情のようであります。それはあとで申し上げたいと思いますが、結局、世間ではこの法律はざる法であるとまで酷評しておりますが、今度の提案されたこの法律案も、ざる法にならないように特に当局の積極的な態度を示していただきたいということを最初に申し上げておきたいと存じます。
 最初に大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、金融引き締めが若干公定歩合の引き下げ等で緩和されたようでありますが、一般的には不況がだんだん押し寄せてきておるような感じがいたします。特に下請事業者の場合などの受注率が逐次減少しておるような傾向があらわれておるのでありますが、大臣から、わが国の今後の景気の展望といいますか、それと関連いたしまして公定歩合の再引き下げというような点につきまして、お考えをまず承りたいと存じます。
#15
○国務大臣(宮澤喜一君) 御審議願っております法案につきましての最初の御質問でもございますし、また、下請代金支払遅延等防止法との関連につきましても御言及がございましたので、現在の中小企業あるいは下請などにつきましての見方、考え方を最初に申し上げることをお許し願いたいと思います。
 御承知のように、わが国で労働の需給が相当逼迫をいたしてまいりました。同時に、経済がかなり高度になるに従いまして、技術進歩等も伴いましたために、加工の工程あるいは必要部品の点数等が相当に増大をしてまいりました。この二つのこと、すなわち労働の需給関係及び加工工程の複雑化、高度化ということから、数年あるいは十年前に比べますと、下請なり中小企業なりの位置というものが相対的に強くなりつつあるというふうに判断をいたしているわけでございます。まだ十分に強いとは決して申し上げられませんけれども、かつてのように好況不況に伴って親企業のいわばバッファーになる、それだけの役割りだということから、かなり下請あるいは中小企業というものが、独自性なり力なりを持つ趨勢に入った、傾向に入った、十分とは申し上げられませんが、そういうふうになってきたと判断をいたしております。すなわち、以前でございましたら親企業にとって下請企業は強いほうがいいか弱いほうがいいかといえば、露骨に申して弱いほうが都合がよろしかったろうと思われます。バッファーとしてしわを寄せやすい、そういう状況をおそらく親企業としては腹の中では望んでおったのではないかと思われますけれども、最近のように労働需給が逼迫をいたし、また製造工程が高度化してまいりますと、下請がほんとうにしっかりしてもらわないと困るという感じが親企業に出てきておる。経済の分野全部とは申し上げませんが、そういう部門がかなり多くなりつつあるのではないかと思っております。すなわち、それは労務のほうから申しますと、親企業が十分に労働力を確保できるとは限りませんので、下請にしっかりした労働力、技術を持っていてもらいたいという気持ちが強いこと、それからまるがかえでございますると、不況のときに仕事を十分に与えられないというふうなことになりかねませんので、むしろ下請が独自の技術を持って、まるがかえでなく何人かの相手に対して生産体制、供給体制をとったほうが量産のコスト低減もはかれる、また技術も向上するというような事実が最近はございまして、そういう意味で親企業が下請に強くなってほしい、まるがかえでなく独自のものを持ってほしいというふうに考えられるような経済の部門もだいぶん出てきたのではないかというふうに考えるのでございます。これがこのたびこの法案を提案申し上げました基本的な私どものものの見方でございますが、さて、その下請代金支払遅延等防止法が最初に制定されましたのは昭和三十一年でございましたわけで、いろいろ世の中の要請から、これを法制化いたしましたが、確かに力関係というものが今日のごとくにはなっておりませんでしたので、いわゆるざる法として批判を受けてまいったわけでございます。で、今日といえども下請の体制が非常に強くなって、検収の時期をいいかげん延ばされるとかあるいは規格どおりの品物であるのに、いわば言いがかりのようなクレームをつけられるというようなことは、皆無とは申しませんけれども、かなり、十年余り前に比べますと、その間の事情が変わってきたように考えられます。決して十分とは申し上げられませんが、そのような趨勢にあるというふうに考えております。下請代金支払遅延等防止法につきまして、私ども調査といたしましては、親事業者について、年に一万七千件くらい調査を行ない、あるいは立ち入り検査なども千件余りやったりいたしておりますが、まだ十分とは申し上げられませんものの、かなりその間の基本的な情勢は変化したように考えております。
 次に、金融引き締め等々の問題についての所見を申し述べるようにということでございますが、先般、量的な金融規制というものは一応終了をいたしたわけでございますが、これが日本経済に浸透をいたしますのには、やはり半年はかかるのではないであろうかと私は考えております。もとのところで水が出始めましても、末端にそれがまず行きわたったかなという感じは、半年くらいは待たなければならないのではないであろうか。おそらく来年の四月ないし五月ごろ予算の執行が順調に行なわれますと、ちょうどそのころの時期には多少はそういうこととあわせまして、金融が正常になったという感じが末端に出てくるのではないかと考えております。したがいまして、ことにこの年末というところは依然として末端のほうが苦しいわけでありますので、先般、国民金融公庫、中小企業金融公庫並びに商工中金に対しまして、下半期の融資のワクをかなり大幅に広げまして、年末と手形の決済期とが重なります時期を金融緩和をしていこうというふうに、はかっておるわけでございます。そのような状況だと考えておりますが、公定歩合の問題になりますと、御承知のようにいっとき、世界的にかなり高金利になりまして、それがこの一カ月ほど多少正常のほうに向かいつつあるやには見えておりますけれども、わが国の金利水準だけが高いという状況ではございませんので、まずまず国際水準にあるということが申し上げられるかと思います。そういたしますと、外国の金利についてはかなり大幅な引き下げでもございますと、これはまた別でございますが、と申しますのは、国際的な短期資金の流入等々も考えなければなりませんので、そういう場合は別でございますが、いまといたしましては、やはり量的な金の流れの拡大ということを中心に考えていくべきではないだろうか。私といたしましてはさように思っております。
#16
○林虎雄君 年末を迎えまして、特に下請企業というような脆弱な企業は、かなり苦しくなっておるということは御承知だと思いますが、そういうことから十二月一日付で公正取引委員会のほうから大臣あてに、下請企業に対する年末対策についてというものが出ておりますが、これと関連して、下請代金支払遅延等防止法等の法律がありますが、その第二条の二として、「下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。」結局、納品を受け取った場合、そのときから六十日以内ということが法律で明らかにされておりますが、実際は全然行なわれておらない。特に最近のように不況になってまいりますと、下請事業者が、納品に対しまして検収が非常に故意におくらされているという傾向があって、苦しくなっておるわけであります。例を申し上げますと、受注を受けた百のものを納品したとする、その納品の検収が二カ月後ぐらいで、その五〇%が検収されたとして下請に通知される。その間六十日たっております。その日に手形を発行されて、その手形がまず百五十日、結局二百十日のあらしではありませんが、ようやくそれで金になる、しかもそれが納品した約五〇%でありまして、あとの五〇%は、親事業者はすでに組み立てて市場に出しておるにもかかわらず、検収がまだだというのでおくらされておる、それがさらに二カ月ぐらいになる。ですから、半分は二百十日であり、あとの半分はさらに六十日かかるとすれば、二百七十日という一年の大半かかってようやく下請業者の手に金が入る、こういう実情のようでありまして、それだけ金繰り等で下請がいかに苦しんでおるかということがわかるわけであります。ですから、親事業者の立場とすれば、検収をおくらせることによって、その間の支払うべき金に対する利ざやをかせいでいる、利息をかせいでいる。こういうことであります。同時に、下請業者は高い金利の金を借りて労働賃金なり原料の支払いに充てておる。非常にむちゃというか無理というか、あまりにも親事業者が専横であるということに対して、私はこの法律が、いかにも法律をつくりながら、ほとんどこれに対する適切な手を打っておらないというところに、政府の怠慢といいますか、そういうところを追及をいたしたいと思うわけであります。いま申し上げた公取委員会のほうから大臣に出してある文書によりましても「下請企業に対する年末対策について」というこの文書によりましても、端的にこれが守られておらないということを明らかにしております。後段において、最後のところでありますが、「また、その際標準手形サイト(機械工業、非鉄金属工業および鉄鋼業は一二〇日以内、繊維工業は九〇日以内)の遵守についても併せて強力に指導していくこととしております。」、これは公取のほうからでありますけれども、実際六十日と法律であるのに、内容的には、実際には、百二十日以内にしろ、あるいは九十日以内にしろということで、いままで法律が守られておらなかったのみならず、従来は百二十日以内でなく、以上であったと、これが今日までずっと続いてきておる。せめても機械工業とか繊維工業とかが百二十日とか、九十日というように、百五十日よりも少なくはなっておりますけれども、法律の趣旨とはだいぶかけ離れているという現実は、これはどうお考えになりますか、お答え願いたいと思います。
#17
○国務大臣(宮澤喜一君) 下請代金支払遅延等防止法のただいま御指摘の条文は、これはたしか当初の法律にございませんで、中途で挿入した条文であったと記憶いたしますが、ただいま御指摘になりましたように、大企業が事実上品物を取っていながら検収をしないことにしておる、したがって、その期間は手形でもカバーされていない。いわばこういうのは、はっきり言いまして、どろぼうのような行為でございますが、そういうことをしてはならない、検収をするとしないとにかかわらず、六十日を過ぎれば、この法律に違反であるぞということを規定したわけであります。そういうことについて、この法律制定後、立ち入り検査をし、あるいは調査をしばしばいたしておるわけでありますけれども、御承知のように当時の力関係から申しますと、これを訴え出れば、下請企業にとりましてはいわば死刑の宣告をみずからにするような感じのものでございますので、なかなか立ち入り検査でもいたしませんと、十分な効果があがらなかった。今日でもなおそういうことは皆無とは申しませんけれども、当時ことにひどかったわけでございます。したがって、私どもとしては、手形のサイトを正常化するということもきわめて大事なことでございますけれども、その前に、まず品物を取っていながら検収という行為をおくらせるという盗賊的行為を、まずなくさなければならないというふうに考えておったわけでございます。
 先ほど御指摘になりました通達は、これは公正取引委員長と通産大臣が連名で、親事業者団体と中小企業団体にこの一日に出しましたものでございまして、私のほうは中小企業の健全な発展という意味から、公正取引委員会は下請等の法律が公正に守られる見地から、連名で通達をいたしたものでございます。手形のサイトが正常化することももとよりきわめて大事なことでございますが、その前に、いわゆる検収をおくらせる、あるいは品物はちゃんとしているのに、言いがかりのようなクレームをつけるといったようなことは、これはもう法律以前の問題でもございます。厳に慎しんでもらわなければならないと思っております。
 なお、中小企業庁長官からお答えいたさせます。
#18
○林虎雄君 いまの通達については、私の勘違いがございまして、訂正いたします。
 公取委員会に承りたいと思いますが、通達の中にあります点ですね、これはどの程度守られておるか。こういう通達を出すには、せっかく百二十日あるいは九十日以内といっても、守られておらない当該工業があると思いますが、どの程度守られているか、何か資料がございますか。
#19
○説明員(坂本史郎君) 現在、私のほうでは下請代金支払遅延等防止法に基づきまして、中小企業庁と密接な連携のもとに、調査並びに検査を行なっておりまして、大体年間で親事業者を対象にして調べます件数は、ごく大ざっぱに申し上げまして七千件ぐらい、中小企業庁が大体一万件ぐらいというふうに存じておりますが、それで合わせまして一万七千件ぐらいの親事業者の調査をしておるわけでございます。現在製造業につきましては、大体そのようなくらいの親事業者というふうに考えられておりますので、年に一回は親事業者は調べられるというふうに考えられるわけでございますが、その調査あるいはさらに検査、その中からいろいろ立ち入り検査等を行なうわけでございますが、それに基づきまして、四十四年度におきまして、公正取引委員会が法七条に基づきます勧告あるいは行政指導等、あるいは中には違反の容疑がないということで不問に付するケースもございますが、大体七百件ぐらいございます。そのうち勧告をいたしますものが二十六件というのが四十四年度の実績でございます。この勧告というのは、現在のところ主として四条一項の二号の支払い遅延、それから同じく二項の長期手形サイトの交付ということを中心にして行なっておりまして、まあ一応私どものほうとしては、及ばずながらこの点に重点を指向しまして、極力努力しておるわけでございます。ただいま先生御指摘のような非常に極端なひどい例は、中にはあるかと思いますが、漸次その点は改善されてきておるように考えております。
#20
○林虎雄君 いま、指定といいますか、サイト設定いたしました業種の中にも、まだ十分に順守されないようなものもあるようでありますが、したがって、他は推して知るべきで、下請業者というものは、資料によりますと約三十一万あるといわれております。したがって、その大半は、百二十日はおろか、先ほど私が申し上げたように二百日も二百七十日もというようなのが大半ではないか。したがって、いかに下請業者が苦しんでおるかということが明らかであると思いますが、公取としては、この設定された二つのサイト二つといいますか、百二十日以内、九十日以内の――この機械工業と非鉄金属工業及び鉄鋼業並びに繊維工業以外の、もっと業種を広げるといいますか、理屈でいけば変なことであります、六十日以内ですから……。実際問題としてこれをも一つと広げて、全般にできるだけ法律に沿うようにしていかなければならないので、すでにこの法律も十数年たっておるにもかかわらず、ほとんど守られておらない。こんな法律もあまりないと思うのでありますが、そういう意味で業種のサイトの設定をもう少し広げるというお考えについてはどう考えておられますか。
#21
○説明員(坂本史郎君) ただいま御質問のあった点でございますが、現在の下請取引法におきましては、一応金融機関で割り引きができる手形というものは、支払いがあったというふうに認めておりまして、この点はいろいろそれぞれの業界の実情、それから景気の状況によって手形サイトというものを画一的に法定するということが適当かどうかという点については、若干異論もございまして、その点はまだ法律的には定められておらないわけでございますが、一応公正取引委員会としましては、ここにあげられております機械、非鉄金属、鉄鋼業というものが百二十日以内でというふうにありますのに準じまして、百二十日以内の線におさめるようにというふうに現在指導をいたしておるわけでございます。
#22
○林虎雄君 全部ですか。
#23
○説明員(坂本史郎君) これは指導をしておるわけでございます。
#24
○林虎雄君 三十一万件もあり、親企業者も相当数がありますから、公取委員会としてはなかなか実際の検査、調査ということは容易でないと思うのでありますが、もう少し調査、検査をする人員を増さなければ、とても所期の目的に近づくことは困難じゃないかと思いますが、そのお考えはいかがですか。
#25
○説明員(坂本史郎君) 御指摘の点は、確かに私どもの人員もたいへん全体としても少のうございますし、下請課のほうとしましても二十名足らずということでございますので、人員としては少ないわけでございますが、まあ現在、極力中小企業庁とも一密接な連携をとりまして、効率的に機動的に取り締まりをやっていきたいというふうに考えております。
#26
○林虎雄君 下請代金の支払い遅延防止の法律というものが、いま申し上げて、大臣も認めておられますように、ざる法であるということは非常に遺憾で、しかも年末に際しまして発注率が次第に減ってきておる。代金の支払いの遅延ももちろんでありますが、大体八月ごろをピークとして親事業者の下請事業者に対する発注が激減をしておるようであります。九月以降五〇%になり三〇%になり、中にはゼロになってきておる。しかもそれがわが国で有数の親事業者である。ですから下請企業者としては全く計画も立たなければ、そして仕事もなければというような状態に追い込まれている上に、先ほど申し上げたような支払い遅延がはなはだしいという状況でありますから、したがって年末対策につきまして、中小企業庁は、中小企業金融公庫その他を通じて融資等も行なわれるようでありますが、特に本年度の予算として計上されておる特利の融資でありますか、これは一五億あるようでありますが、もしこの法律案が通過した場合に、年末対策として、年末もあとわずかでありますけれども、スピーディーにこれを年末対策費として運用するようなお考えと準備がおありであるかどうか、長官に承りたいと思います。
#27
○政府委員(吉光久君) ただいまお示しいただきましたように、昨今一部の業種におきまして生産の停滞、それがさらに下請企業者に対します発注の減少、下請企業のほうから申しますれば受注の減少あるいは頭打ちというふうな事態が出ておるわけでございまして、特に電子機器関係の下請業者あるいは自動車部品、モザイクタイルその他の陶磁器等の減少というのが相当あるわけでございます。ただいまお示しいただきました十五億というのは、実はこの振興事業計画に沿って事業を実施いたします場合、共同施設に対する資金援助というふうなことで、これは設備資金がその中核でございます。したがいまして、この十五億につきまして、そういう近代化のためにできるだけ早く使いたい、こういう気持ちは持っておるわけでございますけれども、いまの年末金融対策は、いずれかといいますと運転資金を中心にしたものになろうかと思うわけでございますので、いますぐには即効薬にはなり得ない筋のものではないかと思っております。したがいまして、年末金融対策といたしましては、先般、特に先ほども大臣からもお答えいただきましたように、昨今の経済事情を前提にいたしまして、それらの滞貨金融的な要素も含めまして、政府三機関には千五百九十億円という追加貸し出し規模の拡大を行なったところでございますし、同時にまた、市中金融機関に対しましても、昨年に比べまして約二千億円増というふうな金融の協力をしてもらいたいという要請をいたし、また市中金融機関の快諾も得ておるところでございまして、これらの手段を通じまして、その滞貸の問題等には対処してまいりたいと考えております。
#28
○林虎雄君 まあ年末でだいぶ苦しい状況にあります下請事業者でありますが、私は、これに適切な運用資金等の融資が行なわれれば倒産しないでもいいものが相当あると思います。ですから、国の施策いかんによって倒産かどうかという岐路に立っておるのも相当あろうかと思うのでございまして、中には劣悪な、ずさんな経営というようなことで倒産するのは、これはまあやむを得ないとしても、年末を切り抜ければ息がつけ、また新しく出発ができるというような企業体が相当多いと思います。まあ三十一万もあります下請でありますから、いろいろ内容はあろうと思いますが、特に中小企業庁で調べた資料があるとすれば、まあ三十一万あるうちで、特に経営が拙劣である、劣悪であるというのと、それからまあまあというのと、優秀であるというのと、そういうランクを調べたことおありでありますかどうですか。承りたいと思います。
#29
○政府委員(吉光久君) 下請企業につきましては、その経営動向調査等を通じましてサンプル調査をいたしております。全部につきまして悉皆調査をいたしますことは、相当の業種、業態に分かれておりますし、調査ポイントも違ってまいるわけでございますので……。ただ、私ども調べておりますのは、いずれかといいますと、先ほど御指摘ございましたような、受注量がどうなっておるとか、あるいは現在の現金比率がどうなっておるとかいうふうな、支払い面その他を中心にいたしまして実態調査を行なっておりまして、したがいまして、事業者数が三十万に近い数でございますので、その一つ一つにつきまして経営が良好である、不良であるというふうなことは、なかなか手の届かない面もございます。したがいまして御指摘のような資料は現在手元に持っておりません。むしろそういう経営の実態面、どういうふうな点にどういう困難を感じておられるかという意味での経営者の意識調査を中心に下請調査を行なっておる段階でございます。
#30
○林虎雄君 大臣もお忙しいようでありますから、あとまだ質問者があるようでありますから、この程度にいたしまして、中小企業、下請中小企業の振興法案の内容については後日に譲りたいと思います。その前提として、いままでの下請代金支払遅延等防止の法律について承ったのでございまして、ここで今日提案の内容に触れないのは恐縮でございますが、また後日にしたいと思います。
#31
○上林繁次郎君 二、三問お尋ねをしてみたいと思います。
 この法案は親子ぐるみの近代化を目的としているわけであります。そうしてこれを実施することによって、かえって下請中小企業の親会社への依存度を強めることにならないか、こういった点はどうですか。
#32
○国務大臣(宮澤喜一君) その点、実は冒頭に申し上げましたように、最近の力関係の変化――親としては下請が弱くあってくれるよりは強くあってくれるほうが有利であるという判断の変化――を考えたわけでございまして、いわばこの法律は下請を強くするために親も協力せよ、しかし親は出過ぎたことをしてはいかぬぞ、こういうたてまえで考えておりまして、振興計画もそういう点からただいま御指摘のようなことを懸念いたしましたために、そういう点を中心にいたしまして法律を書いたつもりでございます。
#33
○上林繁次郎君 年末を控えまして中小企業の倒産もだんだん多くなってきているわけですね。そこで、特にその中で下請企業の倒産の実態、これはどんなような状態になっておりますか。
#34
○政府委員(吉光久君) 最近十月、十一月と中小企業の倒産がふえているわけでございます。大体本年におきましては、当初は六百件台の件数で推移いたしておりましたが、四月以降八百件台にのぼりまして、そうしてそれが十月、十一月と九百件台にのぼったわけでありまして、金融引き締めの影響が相当程度中小企業にまで浸透してまいったその裏づけではないかと考えております。と同時に、他方、この秋口から、特に輸出の依存度の強かった商品及びカラーテレビのように価格問題で輸出の面と同時に内需の面で不振におちいりましたような業種あるいは自動車産業のように需要が頭打ちと申しましょうか、というような感じで、そのためにそれにつながっております部品事業者、下請事業者というように、相当受注減が見られているような業種があるわけでございまして、それらのものが相重なりまして、金融引き締めの浸透と実際の需給のバランスが一部頭打ちになったということと相重なりまして、倒産に追い込まれているという業種が出てまいりました。その一番大きな例は、先ほどの御質問の中にございました家電関係につきまして倒産状況がある程度数多く出ているというのが実情ではないかと考えます。
#35
○上林繁次郎君 先般、公定歩合の引き下げがあったわけですが、これは親会社には相当好影響もあったと思いますが、それが下請の中小企業、こういう立場に対してどの程度好影響を与えてきたか。こういう点が私は問題だと思いますが、その点どうですか。
#36
○政府委員(吉光久君) 金融引き締めが解除されました効果が中小企業に浸透する時期の問題でございますが、従来の例から申しますと、金融引き締めが解除になりましてから大体半年くらい最低かかっているわけでございます。長いときになりますと一年近くもかかるというふうな時期もあったわけでございます。今回の場合におきましても、やはり金融引き締め緩和の効果が中小企業に浸透いたしますまでには半年くらいはかかってくるのじゃないだろうか、このように考えておりす。これは過去のパターンからそうでございますと同時に、現実の中小企業者のほうの関係の実態調査等をやりましても、そういうふうな観測を中小企業者自身がしておるというふうなことも見られるわけでございまして、両々相まちまして、おそらく少なくとも半年はかかるのではないだろうか。もちろんその間におきまして徐々に緩和の方向に向かってまいるということは言えると思うのでございますけれども、全体に解除が浸透するのは少なくとも半年後になるのではないだろうか、こう考えます。
#37
○上林繁次郎君 この法案によりまして親事業の下請中小企業に対する競合による二次、三次などの中小企業の切り捨て措置といいますか、こういったことについて、この法案がどの程度その防止に役立つかという問題ですね。この問題があると思いますけれども、この点どうでしょう。
#38
○政府委員(吉光久君) 本法案は、あくまでも下請中小企業の体質を強化してまいろうという育成策というふうに考えておるわけでございます。したがいまして、いわゆる統制法と違いまして、そういう切り捨てというふうな考えは念頭に置いておりません。したがいまして、この「定義」のところにおきましても、決して一次下請のみならず二次下請、三次下請、すべて親子の関係にある下請企業は全部包含をするというたてまえを貫いておるわけでございます。したがいまして、これが三条の「振興基準」にいたしましても、あるいはまた五条の「振興事業計画」の策定にあたりましても、二次、三次を含めまして一体として振興をはかってまいる、こういう構成になっておるわけでございます。
#39
○上林繁次郎君 それでは私はきょうはこれだけにさしていただきまして、また次の機会にお願いしたいと思います。ありがとうございました。
#40
○渡辺武君 現在、下請企業の問題というのは、これは中小企業の問題の中でも非常に重要な役割りを占めているのではないかというふうに思います。これは通産省御自身の調査による数字でありますけれども、下請企業は製造業全体で約三十一万あると言われております。したがって、製造業における中小企業は約五三・六%を占めておる。つまり半分以上が下請企業として事業を営んでおるというのが現実だと思います。特に多いのは繊維関係で、約十万。下請企業の繊維関係の中小企業の中に占める割合は約七八%だというふうな数字が出ております。それからまた鉄鋼、非鉄金属が四万三千、六九・五%。機械工業は約五万、七一・三%というふうに、それぞれ非常に高い率を占めているわけであります。したがって、この製造業での下請の問題というのは、これは中小企業の問題を解決する上においてのかぎになるような重要な位置を占めておるのではないかというふうに私ども考えております。これは製造業だけではなくして、商業の分野でも、最近は専門店あるいはまた系列店などの組織化が非常に進んでおりますので、商業の分野においても下請関係というものは非常に重要ではないかというふうに思っております。ところで、この下請企業がいまいろいろな困難に直面しているというのが実情だと思いますが、私どもは、その下請企業のいろんな困難に直面しておるおもな原因、これは、親企業である大企業の中小企業に対する収奪、あるいはまた非常に横暴な措置、これが一番大きな原因じゃないだろうかというふうに考えております。
 大臣に伺いたいんですけれども、現在の下請企業の当面しているいろいろな困難の原因はどこにあるとお考えになっていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
#41
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、在来から定期的に企業の意識調査というものをいたしておるわけでございますが、そのときどきで答えが、多少その環境を反映いたしまして、異なっておりますけれども、この節では、一つは労務問題――人手が得られないということ――がかなり数で申しますと問題意識に上がっておりますのと、それから金融、ただいま御指摘のようなことも、これは昔からでございますけれども、ついておりまして、この金融というのには、先ほどもちょっと申し上げましたが、いかにも親企業が検収をなまけるというような、はなはだけしからぬ反社会的な行為を、不景気になると、いたしますが、そういったようなことの反映である場合もかなりあるように考えております。
#42
○渡辺武君 これは中小企業庁関係から出されている雑誌と思いますが、「月刊中小企業」という雑誌がございます。それの昨年の十月号に「下請企業の環境変化と問題点」という題で下請企業の現状の分析が載っておりましたけれども、それを見ましても、先ほど私申しましたように、下請企業がいま当面している諸困難の一番大きな原因、これは大企業の横暴にあるのだということが実によくわかるのじゃないかと思うのです。たとえばその論文の中に、「下請企業をとりまく環境変化」という項目がございまして、一番最初にあげているのは、いま大臣も言われました「労働力不足の進行」ということが言われているのですね。しかし、この労働力不足の進行という原因は一体どこにあるのか、いろんな原因はあります。大臣の御出席の時間も少のうございますので、端的に申しますと、やはり限りある労働可能年齢の労働力、これが大企業に集中している、特に弱年労働力、これが大企業に集中していっている。したがって、大企業による労働力の独占ということが非常に進んでいるというところに、中小企業に労働力不足が特別きわ立ってあらわれてきているという原因があるのじゃないかというふうに思います。ですから、労働力不足の進行ということが、やはり大企業が根源になっているというふうに見て差しつかえないんじゃないかと思うのですね。また、この論文には第二番目として「親企業からの合理化の要請と外注管理の変化」ということがあげられております。そうして、どういうことかといいますると、内容の第一は、「コストダウン、品質向上の要求」が非常に強いのだということですね。それからもう一つは「集中発注」それから「ユニット発注等」が進展している。これみな親工場が下請企業に対してコストを下げろと、あるいはまたユニット発注、集中発注などをやって下請企業――いままでは、かりにおしなべて一次下請だったとしても、その中の特殊な、一番親企業にとって都合のいいような企業に、これに集中的に発注する、あるいはまたユニット発注をやって、あとの企業は二次下請、三次下請という形で新たな下請関係を再編しよう、自分の都合のいいように再編しようというところに最近の環境変化のもう一つの原因があるということを言っております。さらには「内外製区分の変更」という表題で、外注にする部分と、それからまあ自分のところでつくる部分と、この比率が技術革新の進展、あるいはまた景気の変動その他によって不断に変化するというような点をあげているわけです。これはすべて下請企業にとっては大問題なんです。いろんな困難をもたらす原因だと思いますが、同時に、これはやはり大企業がかなり下請に対してそういう点を押しつけてきている、そのことが根源になって起こってきているのじゃないか。
 さらに「下請企業の直面する問題点」としてあげられているのは、取引面の変化として、受注が不安定である、したがって下請企業としては長期的な経営計画が立てがたいということや、きびしい取引条件を課せられて、あるいは親企業の発注品の規格統一が行なわれているために量産化ができない。それからまた二次下請化切り捨てに直面して経営が不安定だということが指摘されているわけです。これらすべて親企業の横暴から生まれてきていることだと思うのですね。もちろん金融逼迫、あるいは大臣自身も言われましたように、この検収の遅延だとか、あるいは不当な検収拒否だとかいうようなこと等が行なわれていることはこれは当然のことです。ですからこういう大企業の下請企業泣かせのいろいろなやり方、ここのところを根本的に解決していかなければ下請企業の振興ということは私はあり得ないのじゃないかというふうに思います。ところで、この法案を見てみますと、大臣は下請企業の振興基準をつくるということになっております。また下請企業、親企業に指導、助言することになっておりますけれども、下請企業のこの振興基準をつくる基本になる下請の振興の基本方針といいますか、そういうようなものはどんなふうに考えていらっしゃるのか。
#43
○政府委員(吉光久君) この法律のねらっておりますのは、従来よくいわれておりました下請関係というものの中に前近代的なものがあるという現実を前提にいたしまして、中小企業基本法の十八条で言っております下請関係を近代化するということが眼目でございます。したがいまして、その下請関係を近代化いたしますために必要な親事業者の望ましきあり方、下請事業者の望ましきあり方というふうな両方の側面から振興基準を定めていくことになるわけでございますけれども、下請関係の近代化というものの中の中核を貫きますものは、やはり下請企業の自主性の確保ということであろうかと思うわけでございます。ただ、現実の問題といたしまして、先ほども御質問の中に述べておられましたような、要するに親事業者の発注に対する協力ということがない限りは、下請関係を近代化してまいるということには非常に困難が伴うわけでございます。そういう観点から、振興基準の各号につきまして、親事業者として順守してもらいたい事項、下請企業者として順守してもらいたい事項等につきまして、そういう一般的な望ましき姿を下請企業の自主性確保という観点から定めてまいりたいと考えております。
#44
○渡辺武君 この法案の目的については、おっしゃるとおりかもわかりませんけれども、この法案を含めて、いまの下請企業者の当面している諸困難を根本的に解決していくために、通産省としてどのような基業方針をお持ちなのか、それを大臣に伺いたいと思います。
#45
○国務大臣(宮澤喜一君) 一般的に構造改善施策というものが進められておりますが、これは下請中小企業の近代化あるいは生産性の向上、省力化、場合によりましては高度化といったようなことをねらっておるわけでございます。これが第一の施策でございます。
 それから先ほどからお尋ねがございました代金支払い遅延防止、これなどは金融面から下請中小企業の擁護をはかっておるわけでございます。それからただいま御審議いただいておりますこの法律案、これはそのようなことを体系的に進めてまいりたい、まあ幾つかございますけれども、そのような関連いたしました一連の施策を考えておるわけであります。
#46
○渡辺武君 いま私は、通産省自身が下請企業の調査によって発表した調査結果を引用しながら、いま下請企業がいろいろな困難に落ち込んでいる一番大きな原因、これは親企業の横暴、あるいはまた親企業による下請企業に対する収奪、ここに一番大きな原因があるんじゃないかということを申し上げました。大臣はそのうちの一部分、たとえば検収の遅延などについては指摘されましたけども、しかしこれは一部分ではないですね、いま申しましたように、いろいろな形をとって親企業の圧迫が及んでいるというところに下請企業の困難の原因があると思う。ですから今後下請企業の振興をはかっていくその基本方針となるべきものは、これはいまおっしゃったようなところではなくて、むしろ大企業のこうした横暴を押えるというところに重点を置かなければ、これはほんとうの振興にならないのではないだろうかというように思いますけれども、その点どうでしょう。
#47
○国務大臣(宮澤喜一君) それは表現はともかくといたしまして、御趣旨は私はそうだと思うのでございます。そういう意味で支払い遅延の防止にいたしましてもu、あるいはこの振興基準、振興計画の中で、大企業が参画はすべきである、指導はすべきであるが、しかし目的そのものは下請企業の自主性の実現である、こういう考え方に立っておるわけでございます。
#48
○渡辺武君 そうしますと、大企業の横暴を押えるという趣旨は賛成だとおっしゃったのですが、この法案を見てみますと、私は必ずしもuそうなっていないのじゃないかと思うのです。たとえば先ほどの御答弁によりますと、下請関係を近代化するのだというような趣旨の表現がございましたけれどもu、この法案を見てみますと、下請関係の近代化というようなことにはならないと私は思うのですね。むしろ、たとえば下請企業の設備の近代化、この辺が非常に強調されているんではないですか。つまり「生産性の向上」、製品の質の向上、それからまた「発注分野の明確化」、「発注方法の改善」というのは、具体的にどういうことを意味しているのかわかりませんですけれども、しかし、たとえば先ほどもあげました内外製の区分の変更だとか、あるいはまたユニット発注、あるいはまた集中発注というような関係がどうなるのかというような点ですね、この辺などもuどうも不明確。大体読んでみますと、大企業の収奪、横暴を規制するというような方向ではなくて、むしろ大企業の要望にこたえて、そうして大企業のこの要求にこたえることのできるような下請企業に、設備の近代化その他を通じて育てていこうというようなところに、この法案の根本趣旨があるんじゃないかというように思います。どうでしょうか。たとえば、いま資本取引の自由化その他で内外の競争が非常に激しくなってきている。特に自動車関係などはそういう点では深刻なあらしに当面していると言っても一差しつかえないと思うのですね。したがってコストダウンということが非常に大きな目標の一つになっているわけです。ところが先ほど申しましたとおり、自動車関係など一つ例にとってみれば、下請企業に依存する度合いが非常に大きい。大体全製品の四五%くらいは下請企業に発注してつくっているのじゃないかというようにいわれているわけですね。そうしますと、コストダウンをやるためにもu下請単価の切り下げはやらなければならない。下請単価の引き下げをやるためには、どうしても一下請企業に対して設備の近代化、あるいは親企業の技術に技術的に結合さしていくというような方向をとらざるを得ないし、さらには先ほど申しましたようにユニット発注、集中発注など、下請企業の中でも一特に親企業にマッチするようなところを一次下請として育て上げながら、あとは二次、三次というようなことで、下請関係の再編ということをやらざるを得ないところにきている。この法案はまさにそういう大企業の要望にこたえることを眼目にしているというように思います。これでは下請企業を育成するというようなことでなくして、むしろ下請企業の従属関係をより深めることになりはしないかと思いますが、その点どうですか。
#49
○国務大臣(宮澤喜一君) これはあまり適切なたとえではないかもしれませんので、そうでござましたらお聞き捨ていただきたいのでございまけれども、たとえて申しますと、宗主国から植民地をどうやって独立させるかというようなこと考えるといたしますと、それはやはり長い間のがございますから、その独立については宗主国いろいろに考えてやり、準備もしてやって独立せるのが一番ほんとうはよろしい、秩序立ってきるわけでございます。宗主国にとっても植民がいつまでもぶら下がっているということが、はや重荷になってきたというような場合には、実にそういうことが歴史上もございますが、そしてひとつ早く植民地から独立国になってもらって、宗主国だけにぶら下がらないで、独自のたまえであちこちの国と貿易をしなさいと、たとえ話でございますけれども、こういうような考えといたしますと、そうやって独立して、あっこっちと自前で貿易をするためには、やはり自分なりの独自のものを持たなければなりません。それがここにございますいろいろ設備の近代化というようなことになっていくわけで、気持ちの上だけで独立しようといたしましても、それだけのものを持たなければ独立ができませんですから、そういうことをさせてやりたい。しかも、そのときにそれがけんかをした形で独立するのではなくして、やはり宗主国としてはそういう独立のプランに協力をしてやれと、しかし目的は独立させることだぞと、こういうものの考え方を、適切なたとえでないかもわかりませんが、したいと考えておるのでございます。
#50
○渡辺武君 宗主国と植民地というたとえでおっしゃいましたけれども、いみじくもそのたとえが、ある程度暗示しておりますように、下請企業の親企業に対する従属性というのは非常に強いですね。これは資金、資材の面、もとよりのことですが、特に製品の販売面でやっぱり独占的な地位を占めている親企業の言うこと、これについてはいやでもおうでも従わざるを得ないというところに、いまの下請企業の一番つらいところがあると思うのです。また、そのことによって下請企業が十分な資金も蓄積も行なうことができない、資金を手に入れることもできない、設備の近代化をすることもできないという結果が生まれてきているんじゃないかと思うんですね。私は別に下請企業の設備を近代化することが悪いことだと考えているわけじゃないですよ、そうじゃないけれども、しかし根本は、親企業である大企業の横暴を押え、下請企業に対する収奪を規制するというところに根本を置きながら下請企業の近代化などを進めていかなければ、ほんとうの振興にならないだろう。その本末を転倒して、大企業を規制することはこれは二の次三の次にして、そうして大企業の要望にこたえ得るように中小企業、下請企業の設備の近代化等々を進めていくならば、結局のところは、技術的にもあるいは資金、資材などの面からしても一、もちろん市場の面からしても一、大企業に対する従属性は強まらざるを得ないだろうということを申し上げているんです。まさにこの法案がねらいとしているところはそういうところにあるんじゃないだろうか。法案自身に、大臣が振興基準をきめるというその振興基準の内容が一、二出ておりますけれども、この中には、先ほど大臣御自身が指摘した検収遅延などをやっちゃいかぬのだとかいうようなことはうたわれていないんです。衆議院の修正案でやっとこれが盛り込まれたということであって、原案には盛り込まれていない。そういうことであって、この法案の根本趣旨は、むしろいま申しましたように、大企業の要望にこたえる鋳型にはめ込むという方向で下請企業のいわゆる近代化、合理化を進めていこうというところに置かれているんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
#51
○政府委員(吉光久君) 私ども一考えておりますのは、ちょうど逆でございまして、下請企業の体質を強化し、あるいはまた下請企業の発言力を強化していくという方式を用いますことが、下請企業が親企業と対等の立場に立ち得るきっかけを与えることであると、こういう考え方に立っておるわけでございまして、したがいまして、振興基準に定めます事項につきましてもu、親企業が発注分野を簡単に変更するとか、あるいはまた短期受注、短期発注だけでやってまいるとか、あるときには数量を非常に大きく、あるときには非常に激減するとかいうふうな、そういうことがあってはならない。それでは下請の近代化がおくれてしまいますので、したがいまして、下請が近代化を急速に進めることができますよう、親企業に対しまして、発注分野を明確にしたり、あるいはまた発注方法につきましてそれを平準化してまいるとか、あるいは、発注契約の取り消しにつきましては、相当、事前予告制というふうなものも内容として採用してまいるとかいうふうな、いずれかといいますと、この順守事項は親企業に対しまして下請企業が自主性を持つようにするためのいろいろな手段について協力を要請するというふうな形で出てまいることが多いわけでございまして、そうすることによりまして下請企業の体質が強化され、また発言力も強化され、組織化も進んでまいる、こういうふうな方向でこの順守基準を定めたいと考えておるところでございます。
#52
○渡辺武君 そういう御答弁がありましたけれども、下請企業の自主性を促進させるのだと、もしあなたがそういうことを目的としてこの法案をつくられたと、かりにするならば、この法案自身があなた御自身の目的に反しているような法案じゃないかと私は思わざるを得ませんね。
 まあこの質問をさらに進めますが、この法案によれば、大臣は下請企業の振興基準をきめて、これに基づいて下請企業や親企業に指導助言を与えるということになっておりますね。また、下請企業の組合のつくった振興事業計画をこの振興基準に照らして承認するということになっております。私は、大臣の定める振興基準の性格自身が、先ほど申しましたように親企業の要求する鋳型に下請企業をはめ込む、その従属性を一そう強める結果になるような、そういう基準、そういう性格を持っていると思わざるを得ない。これはあとからの質問でもさらに明らかにしたいと思いますけれどもu。したがって、この法案の大臣の権限、これは親企業の要求を大臣がいわば代弁して、下請企業に親企業の要望を、事実上これは強制していくということにならざるを得ないのじゃないか。下請企業の自主性を促進させるというのじゃなくして、むしろ下請企業に対する官僚統制、これを強めていくもuのになるのじゃないかというふうに思いますが、その点どうでしょう。特に「指導」「助言」とはどういうことなのか。もし下請企業がこの指導、助言に従わなかった場合にはどういう結果になるのか、この点まず伺いたいと思います。
#53
○国務大臣(宮澤喜一君) 詳細な点はただいま中小企業庁長官からお答え申し上げますが、承っておりますと、どうも政府というものは、一般に政府と申しますか、ただいまの政府でございますが、大企業をそもそも擁護するために毎日ものを考えておるのであって、したがってそういう主務大臣がきめることはみんな大企業擁護につながるのであるから、その鋳型にちょうどはめるような法律であると、こういうふうにおっしゃるのでございますと、私どももいろいろと足りないところもございますし、至らぬところも多うございますが、私どもの意識としては国民全体、ことに中小企業というようなところは弱いところでございますから、それをどうやって育てていくかという、そういう意識で行政をいたしておるつもりでございますし、また、この法律案もそういうつもりで提出をいたしておりますことを申し上げておきたいと思います。
#54
○政府委員(吉光久君) 先ほどもuお答え申し上げましたように、この執行基準の考え方、基本的な原則は、あくまでも中小企業基本法の第十八条に基づいてその実施法というふうな感じでおりますので、また今回衆議院のほうでも御修正いただきまして、基本法第十八条の規定がはっきりとこの法律の第一条の目的のほうに規定されることになったわけでございますけれども、その精神にいましてこの振興基準を定めてまいるというつりでおるわけでございます。と同時に、またこれはそういう趣旨で下請関係の近代化の方策というふうなことでそれぞれの項目をブレークダウンいたしておりますので、したがいまして、その線に沿って下請企業を指導いたします場合、下請企業のほうで指導に服さないというふうな事例はむしろ珍しいのじゃないかと思いますけれども、逆に親事業者のほうで現実の問題としてそこまで順守義務をつくられるということは困るという意味での守らないものが出てきた場合にどうするかというふうな事項が多いのではないであろうかと思うわけでございますけれども、あくまでも下請関係を近代化するために親事業者の協力を要請いたすわけでございますので、所管主務大臣がそれぞれの親事業者に対しまして、この基準の順守につきまして、あくまでも一粘り強く説得していただく、あくまでもこの指導基準に従って下請の体質強化をはかってもらうというふうなことにつきまして、粘り強く指導を続けてまいるというつもりでおるわけでございます。
 なお、あとの、五条の「振興事業計画」についてもお触れいただいたわけでございますけれども、振興事業計画の作成につきまして、個々の請事業者と親事業者を直結させなかったのでございまして、あくまでも下請事業者は個々では弱」が、組織を持った形であれば、個々よりか対抗があるというふうな意味で、親事業者に対しまて、親事業者の入らない下請事業者だけででき一おります事業協同組合が、親事業者と協議し、内容をきめてまいるというふうな手続にいたしま−たのも、やはり下請事業者の自主性を尊重してまいりたいと、こういう配慮からできておるとこでございます。
#55
○理事(大谷藤之助君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#56
○理事(大谷藤之助君) 速記を起こして。
#57
○渡辺武君 大臣、だいぶ神経質になられていんじゃないですか。私ども、もちろんいまの佐紘内閣が、これが大企業本位の政治をやっている内閣だということは思っていますよ。また、それは事実だと思う。しかし、そのことから演繹してきょうの質問をやっているわけじゃない。この法案自身の性格、これを現在の実情及び法案の内容からよく検討してみて、そうして結論としては、大臣がいまいみじくもみずからおっしゃったように、佐藤内閣は大企業の立場に立って下請企業を鋳型にはめ込もうとしている、その代弁をやろうとしているんだという結論を出さざるを得ないというところからこの質問をしているわけです。そういうことですから、何もu頭からそういうことをまず予定しておいて法案の審査をやっているということじゃないんですから、その点はひとつ御心配なく、すなおに聞いていただきたい。きょうは時間がもうなくなりましたので、これで質問を終わりますが、また次の機会にさらに質問を続けたいと思います。
#58
○理事(大谷藤之助君) 本案に対する本日の質疑はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト