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1970/12/15 第64回国会 参議院 参議院会議録情報 第064回国会 法務委員会 第3号
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1970/12/15 第64回国会 参議院

参議院会議録情報 第064回国会 法務委員会 第3号

#1
第064回国会 法務委員会 第3号
昭和四十五年十二月十五日(火曜日)
   午前十時二十八分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十二月十五日
    辞任         補欠選任
     浅井  亨君     塩出 啓典君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                河口 陽一君
                後藤 義隆君
                亀田 得治君
    委 員
                上田  稔君
                木島 義夫君
                小林 国司君
                山崎 竜男君
                松澤 兼人君
                塩出 啓典君
                山高しげり君
   国務大臣
       法 務 大 臣  小林 武治君
   政府委員
       法務省大臣官房
       司法法制調査部
       長        貞家 克巳君
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   長井  澄君
       最高裁判所事務
       総局民事局長   矢口 洪一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○人の健康に係る公害犯罪の処罪に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告します。
 本日、浅井亨君が委員を辞任され、その補欠として塩出啓典君が選任されました。
#3
○委員長(阿部憲一君) 次に、裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案を、便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。
#4
○国務大臣(小林武治君) 裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。
 政府は、人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案を提出いたしましたことは、御承知のとおりであります。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は次のとおりであります。
 第一に、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給は、従来、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職の職員の俸給に準じて定められておりますところ、今回、そのうち、内閣総理大臣及び国務大臣等を除く特別職の職員についてその俸給を増額することといたしておりますので、これに準じて高等裁判所長官の報酬並びに次長検事及び検事長の俸給を増額することとしております。
 第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。
 これらの改正は、一般の政府職員の場合と同様、昭和四十五年五月一日にさかのぼって適用することとしております。
 なお、昭和四十二年の改正法に基づく暫定手当の報酬または俸給への繰り入れの措置が完了したことに伴い、暫定手当に関する規定を削除することとしております。
 以上が、裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
#5
○委員長(阿部憲一君) 以上で説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。両案に対し質疑のある方は、順次御発言を願います。
#6
○松澤兼人君 提案理由の説明を承りましたけれども、もう少し補足的な説明があるんじゃないですか。
#7
○国務大臣(小林武治君) 別段ございません。
#8
○松澤兼人君 今回は一般職の国家公務員に準じているわけでありますから、人事院勧告のいわゆる完全実施という形をとっているんだと思います。よく聞くことでありますけれども、最近における司法官の志望の減少ということは、実際にどういう程度に減少してるのか、あるいは裁判官あるいは検察官、そういう側から考えてみて、欠員あるいは欠員の補充等がどういうふうに行なわれているか、この辺から御質問したいと思います。
#9
○政府委員(貞家克巳君) 御質問の司法修習生から裁判官、検察官への採用状況でございますが、最近におきましては、大ざっぱに申しますと、毎年大体六十人ないし八十人程度の判事補、それから四、五十人程度の検事が、司法修習生の修習を終えた者から採用されているのでございます。昭和三十九年度以降におきましては、司法修習生の数は、かなり従来に比べまして多数になってきておりますのにかかわらず、残念ながら判事補、検事とも一に新任者の数は横ばいないしあるいは漸減の傾向にあると申して差しつかえないと思うのでございまして、今後優秀な新任者を数多く確保することにつきまして、法務省におきましても一、最高裁判所におきましても一、できる限りの努力をいたすというつもりでございます。本年の、昭和四十五年の任官の状況を申しますと、判事補に採用された者が六十一人、検事が三十八人、弁護士が四百四人という状況でございます。
#10
○松澤兼人君 最近における判事、あるいは検事、あるいは判事補、検事補といってさしつかえないかもしれませんが、新たに裁判官あるいは検察官に採用したいという数はどの程度ありますか、いまお話のありました六十一人、三十八人ということで、欠員の補充その他機構改革等いろいろ志望者に対する需要があると思うのですけれども、志望者とそれから採用したいというそういう数の開き等はどういうふうになっておりますか。
#11
○政府委員(貞家克巳君) 便宜法務省といたしまして検事のほうについて申し上げます。本年の欠員でございますが、検事につきましてはおおむね百人程度の欠員がございます。したがいまして、その程度の検事を補充するということはどうしても必要ではないかというふうに考えております。もっとも、量とともに質が重要であることは申すまでもないことでございますが、現にそれだけの欠員をかかえているという状況でございますので、その程度は補充をいたしたいというふうに考えているわけでございます。
#12
○松澤兼人君 それでは便宜検察官のほうにだけ限定して、判事のほうは別としまして。百人程度の欠員があるということは、上級の検事、検察官それから検事補という新たに任用される人々全部含めてですか、検事補だけ百人程度必要であるということでありますか。
#13
○政府委員(貞家克巳君) ただいま申し上げましたのは、副検事を除きまして、検事だけの欠員でございまして、判事のほうにつきましては最高裁判所に……。
#14
○松澤兼人君 判事のほうは別にして。
 そうすると、検事全体において百人程度は欠員だ、そういうふうに考えてよろしいのですか。
#15
○国務大臣(小林武治君) これはもういまのいわゆる簡易裁判所に対応する区の検察庁、こういうのは副検事で充足しておる。副検事はもう試験採用――研修制度とは別個にやっておりますから、大方充足できるようでありますが、検事はいま司法修習を終えた者から採用するということでございまして、現在でも一百名余の欠員がある。そこに毎年自然減耗、すなわち定年でやめる人が相当数いるからこれらを充足するためには百名でも一率直に言って足りない。こういうことになるのでございまして、しかも検事を充足することが困難だから必要な予算的な増員要求も見合わされている。こういう状況でございますので、いま正確にどのくらいほしいということは、あとでまた申し上げますが、そういうことで四十五年度にも検事が事実上ほしいが、欠員を埋めることができない状態では、検事の予算定員をとっても、これを充足することができないということで、要求さえ差し控えておる。こういう状態でございますので、いまの欠員を埋めると、こういうことにとどまらず、将来の増員、また、自然減耗に対する補充と、こういうことからいきまして、私はいますぐもし候補者があるなら、百数十名でも一採用いたしたい。こういうことでありまして、これらの正確な予想数字というものは調べてまた申し上げますが、百名でも足りないと、こういうことでございます。
#16
○松澤兼人君 やはり検察庁は検察庁として、各級定員がそれぞれ配置されていると思うのですが、それが先ほどは検事補の採用ということで三十八人という数字をお示しいただいたわけですけれども、それぞれの検察官はそれぞれの検察庁に配置されている。その定員の配置ということはもうあらかじめきまっているものでしょうから、その定員配置の中における欠員というものはお示し願えるのじゃないかと思うのですが。
#17
○国務大臣(小林武治君) いまの欠員配置はお示しすることができますが、現在の百名の欠員というものは、全国の各高等検察庁に割り振りまして、どこの検察庁管内で何名の欠員を負担すると、こういうやり方をいたしておりますから、全国各地のそれぞれの検察庁等において、たとえばこの検察庁は何名の欠員を負担すべしと、こういうことになっております。検察官の定員は、全部で千七、八百名と思いますが、それを全国に配当いたしまして、そして各検察庁において欠員の負担をさせると、こういうふうな関係になっておる。したがって、どこの検察庁で定員が何名、欠員が何名と、こういうことは全部はっきりいたしておりますから、その数字等も提出することができます。
#18
○松澤兼人君 じゃその数字をお示し願うことにしまして。
 そうすると、欠員というものは、人間を配置するのでなしに、欠員を配置するというようなかっこうになるわけですか。それだけ事務処理の能力も当然欠けてくると思うのですけれども、それが訴訟の進行というようなことについては相当大きな影響があるように思うのですけれども、そういう支障はないのですか。
#19
○国務大臣(小林武治君) これはもう、支障ないとは申せませんが、とにかく全体の定員というものが、予算定員、法律定員ができておりますから、その定員を全国の各高等検察庁に配当いたしまして、その中でいま私が申したように、欠員は何名この検察庁はしょってもらう、こういうことになっておる。
 これらは、事務の繁閑等を全体として考慮して、差しつかえあるのは当然でありますが、その差しつかえの大小というものを考えまして、そして欠員をしょってもらっておる。こういうことをいたしております。
#20
○松澤兼人君 それでは判事のほうもやはり同様ですか。
#21
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 裁判官の欠員状況について、まず御説明申し上げますと、昭和四十五年の七月一日現在で、判事につきまして三十五名、判事補につきまして十六名、合計五十一名の欠員となっております。
 大体年間の欠員数は、四月に充員されまして、その後退職、退官等によりまして、年度末には六、七十名に達するという概況になっております。
 この欠員に対しまして、新たに任官採用される裁判官の数は、本年の四月におきまして六十一名採用されております。このような計算でございますから、現在の欠員は、計算上は、年度の初めにはほぼ充員されるという関係になっております。ただ定年退職、退官等によりまして年度の途中においてできました欠員につきましては、ほかに補充の道がございませんので、ただいま検察官について御説明のございましたように、事務上支障が生ずることは同じような状況でございます。
#22
○国務大臣(小林武治君) ちょっと……。先ほど松澤委員は検事補と申しましたが、裁判官は判事補に任命しますが、検事は初めから検事として一人前――一人前ということばはどうかと思いますが、検事として採用になっております。
#23
○松澤兼人君 そうすると、判事のほうを考えてみますと、欠員が五十一人、それで新規採用と申しますか、判事補あるいは修習終了者六十一人採用しますから、欠員と充員という関係からいえば、きちっといっておるわけなんですね。
#24
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) そういう関係になります。ただ、ちょっと説明がこまかくなりますが、ただいま申し上げました五十一名の欠員は、本年の七月一日現在の正確な数字でございまして、これが年度の末になりますと、まだ七月一日以後の定年退職者その他の退官者が出ますので、六、七十名に毎年なるという状況にございます。それで六十名ないし七十名の修習生からの任官者があれば、裁判官の欠員は年度初めにはほぼ充足される。こういう関係になるわけでございます。
#25
○松澤兼人君 数の上からいえば、欠員と任官ということとが合うわけですけれども、下級の裁判所に配置されている判事という、そういうポストの上からいうと、ただ新規採用があったからといって、上級の裁判所の判事が充足されるというわけのものでもないし、だからそろばん上からいえば数は合っているけれども、しかし実際上はかりに高等裁判所の判事が欠員であるということは、新規採用があっても充足されない。こういうことになるのじゃないですか。
#26
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 退官がございました場合には、そのポストは年度末まで充員されませんので、ただいまお尋ねのように欠員のままでまいりますが、翌年になりますれば、一年おくれている後輩と申しますか、次年度に任官した方が漸次その欠員を埋めてまいりますので、同様な人数を採用してまいります限り、同じような年齢差と申しますか、年齢の構造で充員がなされてまいるわけでございます。
#27
○松澤兼人君 さっき、検事の場合にお尋ねしましたけれども、やはり、欠員はそれぞれの裁判所の仕事の繁閑というようなことを考えて欠員をそれぞれ配分しているということもあるのですか。裁判所の場合はそういうことはないのですか。
#28
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 欠員を予想してあらかじめ人員を配分するという、こまかいところまではなかなか人事配置は困難でございますけれども、裁判所の裁判官の構成は、先輩の裁判官、中堅の裁判官、若い裁判官というような年齢差と申しますか、経験の差のある人をもって充員するようにいたしておりますから、ひまな裁判所だから欠員がたくさん出てもよろしいというような形にはならないように配慮をし、また現実にそのように運用されているわけでございます。
#29
○松澤兼人君 次にお尋ねしますけれども、民間法曹界と、それから検事やあるいは判事、そういう方面への志望者とが著しい差があるということは率直に言ってどういうところに原因があるのですか。
#30
○国務大臣(小林武治君) 四十五年度にしても、修習生が五百余あって、四百何人は弁護士になる。そして判事補には六十一人、検事には三十八人しかならなかった。こういうことで、ほとんど五分の四というものが弁護士を志望する。これは大きく見ていろいろな議論がありますが、私どもやはり報酬が相当な一つの要素をなすであろう。また弁護士の商売はほとんど定着して転任などということがない。ところが、判、検事はそういうこともせざるを得ない、こういうふうなことも一つの原因であろう。まあいろいろ裁判所あるいは検察の待遇等が劣っておるということをいろいろ言われておりますが、そういうこともやはり私は大きな原因だろう、こういうふうに考えております。
#31
○松澤兼人君 この弁護士志望の方々と、それから判、検事志望の方々というもののふえ方、減り方というものは、ある程度時代の傾向、あるいは経済的な理由、経済的といいますか、所得が多い、少ないということとは違って、財界の経済的な動向によって官界志望が多いとか、あるいはまたは民間志望が多いとかいうようなことが一定の何かサイクルか何かあって動いているようにも見えるのですけれども、そういうことはどうなんですか。
#32
○国務大臣(小林武治君) そういうことも一般的に申してあるというふうに考えております。最近は、いまのように財界あるいは経済界が非常に活発である、こういうふうなこともあって、この希望者がむしろいま漸減の傾向にある、そういう一般的な一つの循環というようなものもあろうと思います。
#33
○松澤兼人君 これは弁護士の方々の所得というものはなかなか把握しにくいかもしれませんけれども、かりに大学を終えて一定の年限のたった人で、弁護士として相当程度、あるいはある程度成功していると見られている人と同じぐらいの時期に大学を卒業し、あるいはまたは修習を終えた人とのその所得、まあ報酬ですか、そういうものとの開きというものは何かお調べになったことはございますか。
#34
○国務大臣(小林武治君) これは一がいには申せませんが、一番顕著なものが初任給、こういうところにあらわれる。すなわち、判、検事は大体五、六万円ほど、よくて六万円ほど、こういうことであるが、弁護士のほうでは、また、おつとめになった方でも大体十万円以上もらう、こういうふうなことで、一番顕著なものはいま私が申したように初任給においてあらわれるというふうに思うのでありまして、これは私ども、もうやはり何とかこれを改善しなければなるまいということで、実は今度の予算においてはその初任給の調整手当、こういう制度をつくって少しでも一般的の弁護士の方のこれはサラリーに対して差を縮めていくくふうをしたいということで、これは最近私は閣議においても発言いたしまして、裁判官、検事等の確保のためにはどうしてもいまのような顕著な差があっては、これはなかなかわれわれが努力してもこれを確保することがむずかしい。したがって、どうしても判、検事についての初任給調整手当を相当つけてもらわなければならぬ。こういうことで、私は特にこの問題は、最近閣議で発言をして、大蔵大臣にも、閣議でそのことを要請いたしておるのでありまして、この初任給の調整手当というもので、できればある程度縮まる。これはむろん一緒にはなりませんが、いまのように四、五万円も差がある、こういう状態は縮めてまいりたい、こういうように考えております。
#35
○松澤兼人君 一般職の場合には、たとえば医療職とか、あるいは研究職とかいう人々には初任給を一般職以上に調整的な意味を含めてつけているということはあるようですが、最近大臣がそういうことをお考えになったのですか。それとも以前からやはりそういう傾向は裁判所、あるいは法務省の中にあってもよかったと思われていたのですか。
#36
○国務大臣(小林武治君) いまのような考え方は以前からもあったわけでありまして、その要望を表に出して主張するというところまでまいらなかったということでございますが、いまお話のように、医療職などについては調整手当がある。これをぜひひとつ判、検事にも適用してもらいたい。ことにこれは判、検事も一般公務員と同じに横の権衡ということを非常にやかましくいわれておりますので、そこまでなかなか踏み切れなかったというのでありますが、現在の状態ではそうも言っておれない。何とかこの際そういうような手段を講ずることによって、少しずつでも判、検事の志願者をふやしたい。こういうたてまえからことしはがまんがしきれなくなって、特に閣議にまで発言してこの実現を求めている、こういうことでございます。
#37
○松澤兼人君 判、検事の報酬というもののが一般職と違った取り扱いを受けているということは、これは司法の独立とか、あるいは裁判の独立とかいったことにも関連するのだろうと思うのですけれども、新しい給与法ができまして、税務職員もその当時は非常に社会的な危険に置かれているということで、特別の俸給表をつくったこともありましたが、自来、判事及び検事に対しましては特別の俸給表というものをつくっている。これは仕事の性質がそういうことであると同時に、またいま大臣が言われましたように、判事、あるいは検事を確保するという意味から言っても、一般職と違った給与体系というものを採用しているのだろうと思うのですけれども、それにもかかわらず、現在、民間の弁護士のサラリーと申しますか、サラリーに比べて非常に大きな差があるということであるならば、どうしても大臣が言われましたような新しい調整的な手当、あるいは俸給表というものをつくる必要があると思うのですけれども、これはやはり人事院の勧告か何かなければぐあいが悪いのですか。
#38
○国務大臣(小林武治君) この問題は特に人事院の勧告を必要としない。内閣の人事局のほうと大蔵省の話がつけば実現できる。こういうことでありまして、その向きで話し合いをいたしております。
#39
○松澤兼人君 そこで、俸給あるいは報酬という点からいって低いから、司法修習生の中から判、検事になる者は少ない。こういうことですが、一つは、この検事の場合は別ですけれども、判事の場合、裁判所の場合は、何か最近いろいろ、これは議論するとたいへんむずかしい問題になりますけれども、裁判所の内部におけるいろいろの問題が起こってきて、そこで若い人たちが、そういう思想、信条までやかましく言われるような裁判所ならば行きたくないというような気持ちも起こっているんじゃないかというように思うんですけれども、裁判所の側としちゃどうですか。
#40
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) ただいまお尋ねのような議論が、非常に活発に論議されておりますことは事実でございます。ただ、そういうことを理由として退職、退官したというようなことも耳にいたしておりませんし、そのために裁判所の志望を取りやめたということがはっきり出てくるというような状況もございません。信条をやかましく申すというような議論でございますけれども、裁判官の倫理として司法が公正な役割りを果たすためにはどうあるべきかという問題を議論しているわけでございまして、思想にかたいワクをはめるというような気持ちでの発言というようなものは、内部でもないように私は理解いたしております。
#41
○松澤兼人君 現在の裁判所の制度というものに多少の不満を持っている人でも、やめるときには一身上の都合ということでたぶんおやめになるんだろうと思うんです。だから、そういう思想やあるいは信条ということに対する非常に窮屈なワクをはめられるから、という理由は、外には出てこないと思いますけれども、しかし、逆に言って、若い人たちがそこに志望しないということは、先ほど大臣が言われた経済的な問題以外に、そういう窮屈な裁判所の制度であるならば行きたくないという気持ちも出てくるんじゃないかと、非常に必配するんです。しかし、あなたが答弁されても、石田長官がどういう意図で言われているのかということ、これはなかなかあなたはもう理解に困難だと思いますし、私らもどういうことで言っているのかということはなかなかつかめない。しかし、現実に裁判所の場合には――判事ですけれども、判事補の志望が非常に少なくなってきているということは、経済的な問題のほかに何かそういう制度として、行きづらい、あるいは居づらいという問題があるんじゃないかと思うんです。これは裁判所の側としても、大いに反省しなきゃならないことだと思うんですけれども、そういうことは絶対にないと言い切れますか。
#42
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) ただいま松澤先生の御懸念は長官にも十分お伝えいたしまして、かりにもそういうことのないようにしなければならないと私どもも考えておるわけでございます。ただ、これはそういう理由で裁判所に来るべき人が来ないということを断定いたすことも、まことにむずかしいように感じまして……。もともと裁判官は身分は保障されておりますかわりに、生活の上ではかなりきびしいモラルを公的にも私的にも要求されておりますので、そのようなものにあえて身を投じようという人もあれば、やはりそのようなかたいワクはごめんだ、あるいは転勤というような、家庭生活を犠牲にせざるを得ないような勤務形態というものは、自分としては取りたくないというような考えで、裁判所に自分の将来を求めて入ってこないというような人もございますので、これが内部が暗いから来ないとかこれはあえて来たと、来た人についてははっきり言えますけれども、来ない方について、いまお尋ねのようなことが原因になっているかどうかということは、まことにつかみにくいことでございます。ただ、御懸念の点はございませんように、戻りまして十分に長官にお伝えいたしたいと思います。
#43
○松澤兼人君 先ほど大臣がおっしゃったことは、経済的な問題、それから私が申し上げましたことは、いわゆる石田長官の発言をめぐりまして裁判所の中にいろいろと動揺があると、これは思想、信条の問題ですが、これで二つ理由らしい理由というものが出てきたわけなんです。
 そのほかに私たち考えてみますというと、いわゆる修習制度というものに対して何か分離修習というようなことを考えておられる。その問題もやはりこの判、検事の志望が減少するということに関連してくるのじゃないかと思いますが、大臣はことしの五月ごろですか、分離修習制度を再検討するとか、あるいはまたは現在のように五百人修習しても判、検事になる人が百人しかいないと、五分の一しかいないと、これは国費を使って全くもったいないから、何かこの制度を変えていかなければならないというふうな発言をされたように思うのですけれども、その考え方はどういうところにありますか。
#44
○国務大臣(小林武治君) いま松澤委員がお話しになったようなことを私は考えて、世間にもそういう考え方を出したことがありまして、その後この問題は所管は最高裁の問題でありますし、最高裁とお話し合いをしておると、こういうことでございまして、私はいまの修習制度があのままでよいとは思わぬと、相当長期の経験を経た問題であるからして、やはり検討をしなければならぬ問題だと、こういうふうに考えております。
 私は、やはり実はこの判、検事の修習、あるいはお医者さんの修習は相当似たところがあると、こういうふうに思うのですね。いまのようにもう初めから公務員になる者は公務員として採用することも考えたらどうか。従来、医者のインターンというものはまだ医師の免状をもらわぬ間に修習生として病院で修業をしておる。したがって、その間には何らの手当もないし、国の処置も及んでおらぬと、こういうことが、これは最近変えまして、医者の免状を与えてから今度は修習をすると、こういう制度に変わっておるのでありまして、私も実は判、検事などはそういう方法も考えられぬかと、すなわち判事補なり検事補なり任命しておいて、そうして修習するということ、いまはとにかく自由にしておって、二カ年修習してから自由におきめなさいと、こういうかっこうをとっておりまするが、そういうふうなやり方がよいか悪いかということに私は非常な疑問を持っておるということでありまして、いずれにいたしましても、修習制度がこのままでは私は適当でないと、こういう考えをもって、じゃどうするかということの相談をいましておるということで、これは非常なむずかしい問題でありますから、早急には結論は出ないと思うが、そういう考え方で何らかの改善策が求められないかということで協議検討しておると、こういうことでございます。
#45
○松澤兼人君 小林大臣が分離修習といいますか、あるいは現在の修習制度を検討するという御発言をされてから、弁護士会のほうとしては非常に強い反対が出てきていることももちろん御承知のとおり。やはり現行の修習制度というものは戦後新しい司法制度というものができ上がったときに、やはりそういう制度の根幹をささえるものとして採用されたことだと思います。従来はこ修習終了者が官界に入るということ、そういうことが非常に多かった。それが現在に至って民間へ行く人が多くなって、官界に入る人が少なくなったということでありますから、制度そのものが悪いからそういう結果になったということとは別の問題があるんじゃないかと思うんです。小林大臣は、修習制度というものが現在間違っている。あるいは国費を費やして五百人修習させて歩どまりが百人しかない。これは不経済であると、そういうふうに一がいに経済効果の点からして修習制度を検討するということはどうかと思うんです。これはやはり裁判制度あるいは司法制度というものに密接不可分の関係で今日まで来ているということで、そういうところにメリットがあるんだろうと思うんです。効果が少ないからといって、ほかの方法を考えるということはどうかと思うんです。その点いかがですか。
#46
○国務大臣(小林武治君) 弁護士会が、私どもの考え方に非常に強く反対をしていることは承知しておりますが、私は弁護士会の方にも、それじゃいまの制度でよろしゅうございますかと言うと、必ずしも大満足をされているわけでもなさそう。それではただ反対しておるだけではこれは意味がないんで、どうやったらいいかということもひとつ考えていただきたいと、建設的に。これはもう法務大臣のほうがけしからぬ、けしからぬでなくて、どうやったらいいかということもひとつぜひ考えていただきたいということをいまお願いをしておるのであります。
 実は私はいまのような制度ができた一番のバックボーンと申しますか、これは法曹一元化という一つの理想があって、それを実現するためには、まず一緒に修習するほうがよかろうということから出発したんだろうと思いまするが、その一元化というのは、一番の骨子は、弁護士さんがある程度の経験を積んだら判事さんになってもらうと、こういうところに一番大きなねらいがあったと思うんです。法曹一元化とはそういうもんで、そしていまのように判事補等は――まあ判事補はいま十年たたなければ判事になれないと、こういうふうになっておりますが、どこの国においても判事の職務というのは非常に重大であると、したがって相当の経験を積んだ人がやる。アメリカでも、イギリスでもみな弁護士としての経験を十分、少なくとも十年ぐらい積んだ人が判事になる。こういうふうな長い習慣、伝統を持っておるんで、こういうことは私は非常にけっこうなことだと思うんです。だから、日本でも、弁護士さんが十年も十五年も経験を積んだ人がどんどん判事になってくれれば、こういう問題は起きてこない。ところが、いままで二十年の日時を経過してもほとんどそういう方がない。検事のごときもなっていただければまことに結っこうだと思うが、毎年あって一人か二人。こういう状態において、いわゆる司法修習という制度をささえた根本の法曹一元化というものは、私はいままでの経験によって日本では不可能じゃないかと、こういうふうな考え方をいたしている。これはいろいろ皆さん批評をされておりますが、そういう理想から出たこの制度は、その理想の実現がほとんど不可能だ。困難という程度でなくて、そういうふうな状態であるからして、これの出たもとの考え方がいまくずれてきておる。それはくずれていないという議論もたくさんあります。しかし私はもういままでの経験で、これはほとんど、十年、十五年の経験を積んだ弁護士さんが判事になっていただく。こういうことは、いまはもう、これから私は当分ほとんどできないんじゃないかと。こういうことになれば修習制度のもとがくずれてくるんではないかということも私は考えておりまして、単に経済的な問題ばかりでないのでございまして、これが初めの理想のように相当な若い人が判事さんになってくれれば、こういう問題は起きなかった。しかし実際問題としてなっておらぬ。これが私が言うているようなことの一つの出発点で、これは非常に皆さん異論があります。しかし私はそういうふうに思っておると、こういうととでございます。
#47
○松澤兼人君 いまの大臣の発言は非常に重要だと思うんですけれども、法曹一元化ということは日本の土壌になじまない、あるいは育てるのに不可能だという話なんですけれども、法曹一体化ということは、やはり現在の司法制度というものをささえるこれも一つの根幹だと思う。それがなじまないというふうに断言してしまうということは、やはり司法制度あるいは裁判所制度というものの根幹をゆるがすことになり、そういう発言がもし公にされるということになると、弁護士会からも非常に強い反発があるでしょうし、大臣の個人的な信念ということならば了解できますけれども、そういう発言がだんだん積み重ねられていってしまうと、弁護士は弁護士、検事は検事、あるいは法務省は法務省といったようなことでお互いに対立抗争するということが激化してくるんじゃないか。これは日本の司法制度にとっては非常に悲しむべきことじゃないか。大臣としてそういう方向に、現在の法曹一元化というような考え方はだめなんだというふうに断定されますか。個人的なお考えとしては一応わからないことはありませんが、大臣が日本の土壌に法曹一元化というものが育たないのだというふうに言われることはどうかと思いますが……。
#48
○国務大臣(小林武治君) 私はその法曹一元化というのは、ほんとうに一言にして言えば、人事の交流だろうと思う。この三者の交流というものが法曹一元化ということのやっぱり一つの大きな要素であろうと思う。ところがいま法曹一元化といって、裁判官が定年でおやめになった方はみんな弁護士になるが、一方交通で、こっちから行く交流というものはいまほとんどない。またいま私が申しましたように、検事さんになってくれる人もほとんどない。こういうことであると、人事の交流ということがやっぱり非常な大きな要素であったとするならば、その交流というものが、これはいままで行なわれなかった。私は弁護士連合会の弁護士会長さんにも、何とかひとつそういうふうにただ判事や検事をやめた人が弁護士になるのでなく、若いひとつうんと働きのある有能な人がいまの判事なり検事なりになってもらえぬかということを強く私は要望しておって、それが実現すれば、やっぱりある程度人事交流ということで法曹一元化というようなことも一ある程度実際になってくる。しかし何としても過去二十年それがなかった、言われながらできなかったということは、やっぱりある程度将来の方向を示すものじゃないかと思うのであります。これはまだ政府の意見になったわけでもありませんし、松澤委員が言われるように、法務大臣の個人的意見と、こういうことでまだけっこうだと思います。私がそういうことで、それぞれ政府の意見をきめたものでもありません。そういうことを検討してもらっておる、こういうことでございます。
#49
○松澤兼人君 私、希望いたしますことは、現実、一方交通であって往復にならない、人事の交流ができない。これは現状だというお考えはよくわかりますけれども、そうだからといって法曹一元化という大義名分をおろしてしまう、おろすべきであるという、そういう見きわめをつけて発言なさることに私は非常に心配を持つわけです。これは裁判所の部分は裁判所が考えることだと思いますが、それですから、やはり弁護士それから検事、判事、これが一体となってこの司法制度をささえていくのだという、そういう目標というものをやはり高く掲げておくべきであって、それをいま看板をおろしてしまうということは、どうも納得がいかない。現実は一方交通であって、人事の交流があまりよく行なわれていないけれども、しかし、そのためにできるだけの努力はするということでいいんじゃないかと思うんです。どうですか。
#50
○国務大臣(小林武治君) 努力もいたさなければならぬし、私のような意見が出てくることもありますから、これはみんながもう一ぺんひとつ考てみる、こういうことも必要じゃないか。私のような意見が出ないようにすることを考えていただくことも必要だ。私はいま申すように、弁護士連合会長さんには極力ひとつ何とか人事の交流、一方交通ではなくて、ひとつ検事でも、判事でも、われわれのほうは欠員があって弱っているのだ、したがってそういう方が出てくれば、われわれの言うような考え方がだんだんなくなる。こういう考え方が出る原因についてひとつ十分お考え願いたいということも、私は率直に弁護士会にはお願いをしておるのであります。
#51
○松澤兼人君 前回簡易裁判所の問題で、弁護士さんたちとの間に――その当時も小林法務大臣だったと思うのですが、何かパイプが消えてしまったという感じを持ったのです。その後弁護士さんたちとの意見交換といいますか、そういう協議会というものが復活したのかどうか、その点はいかがですか。
#52
○国務大臣(小林武治君) これは、いまもおやりになっておると承っております。これは法務大臣というのではなくて、次官、あるいは弁護士会の幹部、あるいは最高検の幹部、最高裁の幹部、こういったところで会合なさって、いろいろな意思疎通をはかっているということでございます。
#53
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 前回簡易裁判所の事物管轄拡張の問題に関連いたしまして、ただいま御指摘のような事態が生じましたことは事実でございますが、裁判所といたしましては、その前から日本弁護士連合会と最高裁判所の事務当局との連絡協議会を開催いたしまして、今年の八月に弁護士会側の委員が新たに任命されまして、その委員との間に協議会を再開いたしまして、すでに二回開催いたしております。今月の十八日に第三回目を開催する予定になっております。で、三回目には、従前からの懸案となっております問題といたしまして、先ほどの法案を法務委員会で可決していただく際に付せられました附帯決議の冒頭の、「司法制度の改正にあたっては、法曹三者の意見を一致させて実施するように努めなければならない。」ということがございますので、この線に沿いまして、法務省の御参加もお願いできるような形にこぎつけたいということで、話を進めている段階でございます。これはまだ裁判所、弁護士連合会側との間の話でございまして、この間の協議が十分にととのいまして、三者の話し合いができればはなはだ幸いだというふうに考えて、努力しているわけでございます。
#54
○松澤兼人君 私どうも修習制度の問題にこだわるのですけれども、やはり法曹一元化ということを考えてみましても、現行の修習制度にもし多少の欠陥があるということであれば、その欠陥を是正するということで、大筋はやはり現在のような平等、統一の研修制度というものを確保することが望ましいことであると思うのです。分離修習制度というものに切りかえられたときのことを考えてみると、判事、検事あるいは弁護士というものが、別々に修習するというようなことは、いろいろここで法曹一体化、一元化ということについてわざわざ好きこのんでひびを入れるという結果になりはしないかということを考えておるのです。ですから、小林大臣の気持ちはよくわかりますけれども、戦後ずっと続いてまいりました平等、統一の修習制度というものは堅持すべきであるということを強く考えるのであります。重ねて大臣の、平等あるいは統一の修習制度のよさというものを考え直していただくわけにいきませんか。
#55
○国務大臣(小林武治君) 今日のところは、松澤委員の御意見を慎しんで承って、私また今後のいろいろの検討の参考にいたしたいと、かように考えます。
 なお、先ほどの検事の欠員等についての数字が、もし必要ならばこの際申し上げますが、書面で差し上げてよろしければそういうふうにいたします。いかがでしょう。
#56
○松澤兼人君 それは書面で出してください。
 それからちょっと話題が変わりますけれども、検事さんの中には専門担当といいますか、事務担当というようなことで、従来、たとえば暴力団の担当検事だとか、あるいは交通の問題が非常にやかましくなると交通担当の検事さんだとか、というような専門的な仕事を担当する検事という、そういうことを考えているようですけれども、これは一体どういう性格のものなんですか。
#57
○政府委員(貞家克巳君) 一がいには申せませんけれども、大都市の検察庁等におきましては、事件もかなり専門的、複雑なものがございますので、ある程度専門化しておりまして、たとえば財政係とか、あるいはそのほかの特別の部門を担当する検事というものが、大都会の検察庁におきましては例外なくあるわけでございますが、必ずしも各地方におきまして少数の検事の場合に、はっきりとある検事が特定の事件だけを専門的に取り扱うというような態勢は、必ずしも行き渡ってはいないかと思いますけれども、だんだん事件が、非常に社会が複雑化するに伴いまして専門的な知識を必要とするという場合が多くなると考えられますので、そういった方向での訓練ということにも各検察庁におきまして努力しているような実情でございます。
#58
○松澤兼人君 特別の事件を担当する、たとえばまあ会社の問題だとか、あるいは先ほど言いました暴力団の問題であるとか、あるいは交通担当の検事であるとかいうようなことは、その問題の事件を、交通ならばだれだれ検事のところ、あるいは暴力団ならばだれだれ検事のところというようなふうに縦割りに割ってしまうわけなんですか。
#59
○政府委員(貞家克巳君) 概略はさようでございまして、財政経済あるいは交通あるいは少年、外事というようなふうに縦割りになるわけでございます。
#60
○松澤兼人君 そうしますと、自分の専門外の裁判には関係しないということですか。
#61
○政府委員(貞家克巳君) それぞれの部なり係なりがございまして、その部に所属しております間はさような結果に相なるわけでございますが、これはもちろん交代と申しますか、ある部門から他の部門に転ずるということもございますので、非常にある検事が終始財政ばかりであるとか、あるいは交通ばかりをやっているというような状況になるわけではございません。ただその期間、それを担当いたしておりますある係に所属しております間は、もっぱらそういった事件について裁判にも関与するという結果に相なるわけでございます。
#62
○松澤兼人君 そういう特別の係なりあるいは専門的な仕事を担当する検事というものは特別の研修を受けているわけですか。
#63
○政府委員(貞家克巳君) その担当によりますけれども、一応相当の研修を受けているというふうに承知いたしております。
#64
○松澤兼人君 そうすると、上級の検察庁、それから中級あるいは下級というふうに一貫してそういう専門職がある。もっともそれは地方へ行けばないところもあると思います。大体幾つくらいの係検事あるいは担当の仕事というものに分けていらっしゃるのですか。
#65
○政府委員(貞家克巳君) 事務の分け方といたしましては、少年、交通それから財政経済、外事、公安それから公判立ち会いを専門に行なうというような部門に分かれているわけでございますが、これはもちろんそれだけの専門家として、一般事件は不得意であるとか、ほかの事件が取り扱えないというような意味での非常に片寄った専門家になるというようなニュアンスを持っているものではございません。特にそういった特定の部門についての研修を受けまして、知識を豊富にして事件の取り扱いに役立たせているという程度ではないかというふうに考えるわけでございます。
#66
○松澤兼人君 そうすると、ある人にある問題、あるいはある事件の処理を担当させるということは、だれがおきめになるのですか。
#67
○政府委員(貞家克巳君) 検察庁の長である検事正がきめることになるわけでございす。
#68
○松澤兼人君 いま法案が出ておりますが、公害罪というような法律が成立すると、やはり公害担当の検事というのができるわけですか。
#69
○国務大臣(小林武治君) これはまあ将来の問題として、いろいろなことを含んでおるのでありますが、来年度の予算要求におきましても、公害を担当させたいということで、検事の増員を十名近くいたしております。将来はやはりこれらは普通の法律事件と違いまして、科学的な専門知識を必要とする。こういうことでございますので、これはまた公害罪法案審議の際に実は申し上げようと思っておったのでありまするが、普通の法律知識だけではなかなか問題の処理は困難だ、むろん外部に鑑定その他も出すわけでありまするが、それだけには頼れない。ある程度の基本的な知識を持っておる必要がある。こういうことでございますので、公害のための検事というふうなことで予算要求もしておる。私はこれについて先ほどから司法修習の問題がありましたが、私はこういうふうな時勢になれば、自然科学を専攻したような人も検事として将来採用する必要がありはせぬか、こういうふうなこともこれからの問題として考えなければならぬ。そうすると、いまのような司法修習の試験ではこれらの方々がそれに及第することがきわめて困難だ。したがって、もしそういう検事を採用する場合に、どういう方法をとったらいいかというふうなことも、これからの問題として考えなければならぬと思っておりまするし、また私はこれからまた司法修習関係においても、公害関係などのある程度の一般的知識を授けるような科目と申しますか、そういうものも必要になりはせぬかというふうなことも考えております。
#70
○松澤兼人君 いま法務省が大蔵省に対して予算要求をしているという、その公害担当の検事の十名増員というのは、新規にそういう仕事を担当する検事を増員するということにあるのか、あるいは先ほどの、係検事あるいは専門検事というふうに配置がえをしておやりになるのか、どうなんですか。
#71
○国務大臣(小林武治君) それは差し向きの問題としては、この公害罪というふうな新しい種目ができるからして、そのために増員を求める。しかし、その内容は公害等を担当する検事を置きたい。こういうことになるから、差し向きはいまおる検事さんにそういうことを勉強してもらって、その担当のほうのことをやってもらおう、全体としてそのための仕事がふえるから検事の増員を求める、こういうふうな考え方であります。
#72
○松澤兼人君 自然科学的な知識、特に公害の場合には疫学的な知識が必要なんですが、必要だからといって修習の課程を経ないで、特別にそういう専門的な知識、公害に対する科学的あるいは化学的なそういう知識のある人を何かの形で採用するということは、そういうことは考えていらっしゃらないのですか。
#73
○国務大臣(小林武治君) これは最近の衆議院の委員会におきましても、そういう専門の知識ができなければ、適当な検察を果たすことができまい。こういう委員からのお話しもありまして、私もやはりこれからはそういう専門的知識を有する者を検事として採用することの必要が出てくる。したがって、それをいかなる方法によってこれを得るかということは、今後の検討の課題だと、こういうふうに申し上げて――多少の腹案もありまするが、いまはまだじゃどうするかというようなことは、これからひとつ相談するということで、そういう必要があるということを前提として考えたいということでございます。
#74
○松澤兼人君 小林大臣は、衆議院の公害の問題の審議の過程で、公害の監視員制度と申しますか、あるいはそういう常時監視するようなまあ職員を必要だということを発言されたと聞いておりますけれども、それはどういう構想なんですか。
#75
○国務大臣(小林武治君) 実は公害に関する各種の法規ができても、この実施を保障するための制度と申すか、組織がやはり必要であろう。ことに公害罪などをどうやって捜査の端緒を得るが、こういうふうな問題が出てまいったのでありますが、これは私は正直に申して検事が回って歩いておるわけじゃないから、あるいは申告だとか、あるいは投書であるとかいろいろな問題があるが、要は、私は公害を予防するという見知から、政府全体として公害監視をするというような意味において、公害監視官というふうなものを設けたらどうか、こういうことを申したのでありまして、その後これは閣議においても私は発言をいたしまして、そういうふうな、要するに、公害問題の実施の裏づけとしての監視制度が必要じゃないか。政府におきましてもその必要がある。したがって、そういうことを制度として、あるいは組織としてどういうものを設けるかということは、これからひとつ公害対策本部でもって至急に関係省庁を集めて相談をする。その席で、たとえば労働大臣は、いまの労働基準監督官を使ったらよかろう。あるいは厚生大臣は食品検査官とか、あるいは保健所に職員があるからこれをお使いになったらどうか、いろいろな議論が出ておりますが、こういうものをまとめてそういう制度をひとつ全国的につくる。それが地方公務員であるか、国家公務員であるか、どこに置くか、これからいろいろな問題があるが、これを調整して案をひとつまとめる。こういうことをいま考えております。
#76
○松澤兼人君 私は公害の監視制度というものは必要だと思いますけれども、いま大臣おっしゃったように、どういう形でどこに置くかということはなかなかむずかしい問題でして、保健所を使うにしても、現在の保健所の機構あるいは能力からいって、必ずしも適切に公害の原因あるいは結果というものをつかめるかどうかということがありますし、あるいは基準監督官ということになりますというと、やはり労働省の立場からですから、一般住民の立場ということにならないかもしれない。必要性はよくわかりますけれども、どうもその形を考えてみましても、なかなかむずかしいということはよくわかります。検察庁あるいは法務省としても、優秀な経験と知識を持った検事を配置するということがこれはもう必要なことだと思います。あわてて勉強しても追いつかないことだと思うので、もし検事にも公害担当の係検事を置くということであれば、その研修なりあるいはその活動なりということについては、万遺憾なきを期していただきたいと思います。この点につきまして所信をお伺いしたいと思うのです。
#77
○国務大臣(小林武治君) これはこの法案が通れば、いずれ実施の問題といたしましていまのようなことも考える。しかして、いまのそれじゃ公害の捜査の端緒というものは――私は公害監視官等もそういう職責を果たしてくれるであろう、こういうふうな考え方からそれを申したのでありますが、いずれにいたしましても、お話のように遺漏のないようにひとつ準備をいたしたい。かように考えております。
#78
○塩出啓典君 ただいまいろいろ松津委員のほうから質問がありまして、私もいろいろお聞きしたわけでございますが、非常に裁判官、検事、判事が数が少ない。反対に弁護士になってどんどんやめていく。先般、私の友人も、大学を卒業してずっと二十年間判事をやっておったのが、やめて弁護士を始めたのですが、大体そういう弁護士になる人というのは、毎年どの程度数があるのか。しかも任官してから何年くらいたってやめる人が多いのか。しかもその理由というのはどういう点にあるのですか。大体の数でいいです。
#79
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) どの程度弁護士になるかという数字をただいま準備してございませんから、概数を申し上げますが、一年間の退官者が、先ほど申し上げましたように六十名ないし七十名、大部分は定年退官者でございますけれども、十名前後が裁判官の在任中に退官して、弁護士、ごく一部分は大学の先生になられるのじゃないかというように考えております。
#80
○塩出啓典君 そういう傾向は最近だんだんふえているのか、あるいはずっと経常的なのか、あるいはだんだん少なくなっているのか、そういう点はどうなんでしょうか。
#81
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 結論を申し上げますと、大体その数字は大きな変化はないように考えております。先ほどもお話がございましたように、社会事情といいますか、景気変動などに伴いまして、任官志望者の数がサイクルを描くというような現象はございますけれども、もちろん弁護士として活躍するほうがいろいろな点で恵まれるということで、退官される方が、そのような考え方に適した社会事情が出てくればふえてくるわけでございますけれども、数字の上で明確にあらわれているというような現象はまだ見受けられていないように思っております。
#82
○塩出啓典君 ただいまのお話ではだいぶ欠員がおられるようでありますが、今後そういう公害の法案が通れば、まず十名の定員増だ。しかし、幾ら定員をふやしても、人がふえなければ困るのじゃないか。そういう点でわれわれも、非常に裁判のおくれといいますか、私もよくわからないんのですが、たとえば選挙違反の裁判などが非常に長引いて、判決がおりても控訴して、それで結局任期が終わっちゃう。さようなことをよく言われているわけなんですけれども、そういう欠員が多いという点において、法治国家として裁判の上に支障がないのかどうか。そういう裁判のおくれというのはだんだん延びている。傾向にあるのか。そういう点はどうなんですか。
#83
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 裁判が国民の期待されておるような迅速な形で進行しておらないということはまことに申しわけないことでございますけれども、審理期間が漸次延びているしいうような傾向は、統計的に見ますと出てはおらないわけでございます。審理期間が期待されるほど迅速にいかない、遅延しておるということの原因は、もちろん裁判官が事件数に比して十分でないという原因もあると思いますけれども、そのほかにもいろいろな原因が考えられるわけでございまして、その充員の困難、任官志望者が少ないということが唯一の原因とは言い切れないように考えております。
#84
○塩出啓典君 ほかにはどういう原因が……。
 結局私たちもそういうおくれというものはやはりなくしていかなければならないのが国民の要望じゃないかと思うのですけれども、そういう点で数が少ないということ以外にはどういうようなことがあるのでしょうかね。
#85
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 原因は非常にいろいろ考えられまして、これがきわめて重要な原因だと指摘することは困難ではございますけれども、主観的、客観的に双方の原因がございまして、客観的には先ほど申し上げました裁判官の人員の不足というようなことがあげられると思いますが、そのほかにもたとえばただいま問題になっておりますような公害事件というようなものは、裁判になって争われている中身が非常に複雑で、したがいまして、その当事者の言い分というものが整理に困難を来たし、主張が明確になかなかなってこない、またそれに相応した証拠の提出、証人調べというような関係におきましても、非常にたくさんの証人を調べる、鑑定も科学的に非常に高度な複雑な内容になってまいりますと、多くの費用を要する実験を長期間にわたって試みなければならないというようなことも出てまいります。また、そのほかいろいろ選挙関係の事件、汚職関係の事件というようなことになりますと、関係者のいろいろ裁判に対する考え方といいますか、必ずしも進捗を希望しない事情が出て、そういうものは訴訟指揮によって的確に排除していかなければならないわけですけれども、いろいろな情勢がからみ合って思うように進行いたさないとか、あるいはいろいろ代理人の都合があるというようなことで延びるというようなこともございます。また法律も非常に複雑になってまいりまして、その事実関係に当てはめる法律の発見、解釈、適用というような問題も複雑になってまいりますと、どうしても審理期間が長くなりがちであるというような事情が出てまいります。
 そういうわけで裁判所では人員増に努力はいたしておりますが、そのほかにも、たとえば第一審強化方策協議会というようなものを設けまして、構成している裁判所、検察庁、弁護士の三者がいかようにすれば審理を充実しながら適正にして迅速な進行がはかれるかというようなことにつきまして、しばしば協議会をいたしまして努力はいたしておるわけでございます。
#86
○塩出啓典君 そこで非常にそういう今後の問題として検事、判事になる人が少ないのは一つは給与の問題だ、一つは社会的なそういう情勢だと、そういうようなお話だったわけですけれども、やはり社会的なそういう情勢というのは、これはなかなか一ぺんに、一つの大きな時代の流れというのもありまして、こちらがこうかえてもらいたいと言ってもそうはいかないと思うのですね。結局、国としてできることは、やはり裁判官等のそういう待遇の改善、そのような問題になってくるんじゃないかと思うのですね。そういう点でいま小林大臣が公害担当の技術的な検事も考えると、それも一つの方法だと思うのですけれども、それとともにいわゆる給与体系というものを、これは臨時司法制度調査会等においても、裁判官や検察官の給与はその職責の特殊性から考えて独自の給与体系を確立しなければならない、そういう意見もあると聞いているわけでございますが、法務大臣としてそういうような問題についてどのように考えておられるか。抜本的にやはり何らかの対策を立てる必要があるのじゃないか。そういうような気がするわけなんですが、その点はどうなんでしょう。
#87
○国務大臣(小林武治君) これは一般職に準じてはおりまするが、いまでもある程度の改善が行なわれている、こういうことでございますが、私どもはやはりどうもこの判、検事等については、もう一ぺん見直して、特別なひとつ体系をつくらなければなるまい、こういうふうに思っておりますが、これはまあ何と言ったって、同じ政府の国家公務員と、こういうことでございまして、横の権衡ということが非常にやかましく言われるから、非常に困難な仕事ではあるが、私はどうも職責上やはりある程度いまでも改善が行なわれているが、さらにその問題は検討しなければならぬ、こういうふうに思っております。
#88
○塩出啓典君 それで、今度の一般の政府職員について住宅手当が新設されるのに伴って、今度の裁判官、検察官にも住宅手当が支給されるようになったわけでございますが、その支給対象の範囲はどうなっておるのか。
 それと、もう一点は、非常にあちこち転勤がやはり多いと思うのですね。そういうわけで、そういう社宅とか、こういうのもやはり経済条件の一つになると思うのですけれども、一般の政府職員等と比較してみた場合に、社宅の充足率、社宅の状態ですね。社宅というか、官舎ですね、この場合は。そういうような点は一段と優遇されているのかどうか。その点はどうでしょう。
#89
○政府委員(貞家克巳君) まず住宅手当の点から御説明申し上げます。
 今回一般職のほうにつきまして、今回の改正によりまして住居手当というものが新設されたわけでございまして、公務員宿舎に居住しております職員を除きまして、賃貸住宅に居住して月額三千円をこえる家賃を支払っておる職員に対しましては、その家賃の額と三千円との差額の二分の一、つまり三千円をこえる額の二分の一、もっともこれについては最高限度が三千円であるという制限がございますが、そういった住宅手当という制度が新設されることになっております。ただこの住宅手当は一般職で申しますと、指定職俸給表の適用を受ける上位の一般職員には支給されないことになっております。
 そこで裁判官、検察官につきましても、法律の規定によりまして判事補、それからこれに対応いたします九号以下の検事、それから副検事は大部分でございまして、二号以下、簡易裁判所判事は、五号以下ということになるわけでございますが、こういった方々の給与体系が大体一般職の職員の指定職以外の給与に準じておるわけでございまして、こういった方々にはこの一般職の場合と同じような条件で支給されることになるわけでございます。目下、現実に受けるもの数等につきましては調査中でございますが、大体官舎、公務員住宅というようなものに住んでいる検察官が非常に多うございまして、非常にばく然とした予測でございますけれども、現実にこの支給を受ける対象者はざっと申しまして百名程度にすぎないのではないかというふうに予測されるわけでござい、まして、このことは反面におきまして住宅事情、つまり広い意味の給与の問題といたしまして、先年の臨時司法制度調査会の意見にもございますが、裁判官及び検察官の地位にふさわしい宿舎の設備を充実することという意見が出されておりますけれども、こういった面につきまして逐年努力をいたしまして、的確に数字を申し上げるわけにはまいりませんけれども、決して一般の職員に劣らない、むしろ検察官にふさわしい宿舎の充実ということに努力をしているわけでございます。
 以上でございます。
#90
○塩出啓典君 それからこれはちょっとこういう質問をしていいのかどうかでございますが、いわゆる非常に判例にしても年々増大をしておりますし、そういうような過去の判例を調べるとか、そういうようなことが非常にたいへんだと思うのですけれども、そういう点でそういう情報がふえてくるのに対して、どんどんコンピューターを導入して整理する、そういうようなこともかなりやられていると聞いているわけでございますが、そういう点のやはり機械化といいますか、そういう面における合理化、しかも裁判官や検察官の事務的な仕事を軽減さしていく点において、そういうことも非常に大事じゃないかと思うのですが、そういう点はどのように進行しているのかですね。
#91
○政府委員(貞家克巳君) 御指摘の判例というものが非常に多くなってくる、文献が非常にたくさんになってまいります。そういった意味におきまして、そういった研究資料を豊富に取りそろえるということ、しかもそれを便利に検出できるようにするということが、これは非常に大事なことだと思うのでございまして、これも臨時司法制度調査会の御意見におきまして、裁判所、検察庁職員の執務関係を整備改善し、特に研究施設等を充実すること、こういう条項が掲げられております。それ以来予算面におきましても、検察官の例で申しますと、検察官資料費というようなものが予算に組まれまして、そういった判例等の文献、それを検察官に配付するというようなことをやっているわけでございます。
 それで、ただいま御指摘のコンピューターを利用するという点につきましては、これは省全体としてはいろいろな面においてコンピューターの導入というようなことを検討いたしておりますけれども、なお判例をどうコンピューターで利用していくかという点は非常にむずかしい問題があるそうでございまして、私しろうとでございますけれども、なおその点は具体化するには至っておりません。検討の一つの課題ではあると存じますけれども、具体化するには至っておりません。
#92
○塩出啓典君 その点では何か調査会みたいなものはあるわけですか。何か具体化できなくても、そういうものを研究して将来導入していこうという、そういう法務省なり最高裁判所なりの中にそういう一つの委員会というか、そういうような体制のものはできているわけなんですか。
#93
○国務大臣(小林武治君) コンピューターの問題は、法務省も数年来懸案といたしておりますが、予算もすべて成立いたしまして、いま据えつけの工事もしておる、間もなく稼動できると、こういうふうに法務省ではいたしております。
#94
○後藤義隆君 給与の問題については、もう詳細な質疑が行なわれておるので、ごく簡単にお聞きしますが、一般の行政職の上級試験の合格者の平均年齢と、司法試験の合格者の平均年齢とはぼくはおおむね二年ぐらいは違うんじゃないか、司法試験のほうが多いんじゃないかというふうに考えるが、何か調べたものはありませんか。
#95
○政府委員(貞家克巳君) 司法試験の合格者につきましては、大体最近の例では、二十七歳ちょっとが平均でございます。一般の公務員につきましては、ちょっと資料がございませんけれども、ただいま御指摘のように、二年程度は違うのではないかというふうに私も考えております。
#96
○後藤義隆君 それから一般の行政職は上級に合格すると直ちに任用されるわけですが、司法試験の場合は、先ほどから問題になっておりますようなふうに、さらに二年間司法修習を終えて初めて任官するわけですが、初任給が相当高くあっても適当だというふうに考えるわけですが、一般の行政職の初任給と、それから判、検事の初任給とはどんなふうな状態になっているのですか。
#97
○政府委員(貞家克巳君) 判事補、検事の初任給は提出いたしました資料の二二ページにございますが、今度の改正案によりますと、報酬・俸給の月額が五万四千五百円になるわけでございます。これに対しまして行政職のほうは、上級試験に合格いたしますと、七等級の二号俸を受けるわけでございますが、その俸給月額は三万六千百円ということになるわけでございます。
 ただ御指摘のように、判事補、検事につきましては二年間の修習という要素がございますので、これが三年目にその判事補、検事の初任級を受けるという形になるわけでございますが、一般職のほうにつきましては、三年目でどのくらいになるかということは、的確ではございませんけれども一、大体俸給月額は四万二千円程度になるというふうに承知いたしております。したがいまして、判事補、検事の初任給、つまり三年目でございますが、修習生になりまして三年目に受ける額と、公務員に採用されまして三年目に行政職の者が受ける月額を比較いたしますと、ざっと三割程度格差があるという計算になるわけでございます。もっともこの点につきましては、御指摘になりましたように、年齢の若干の差があるという要素を加味いたしますと、一がいに三割上だからということは言えないかもしれませんが、数字で申しますと、その程度の格差を保っているという形になるわけでございます。
#98
○後藤義隆君 この一般の国家公務員の給与については、人事院が勧告をする基礎が民間産業の従業員の給与を基準として定められておるのが現在の状態ですが、そうしてまた、裁判官、検察官の報酬並びに給与は今度は一般の国家公務員の給与に準ずることになっておるわけですが、結局、そうすると、裁判官並びに検察官の給与も民間産業の従業員の給与に準じたような結果になるわけですが、そういうことになりますか、どうですか。
#99
○政府委員(貞家克巳君) 人事院勧告が官民給与の格差不均衡ということの是正をまあ理由としておりまして、一般職のほうはその勧告に従って給与の改定が行なわれるわけでございまして、それにスライドして裁判官、検察官の給与の改定が行なわれるということになりますので、結局はただいま仰せのような結果になるわけでございます。
#100
○後藤義隆君 そうすると、裁判官並びに検察官の報酬並びに給与を民間の産業の従業員の給与に対比するということは間違いであって、やはり裁判官と検察官は、民間の普通民間会社のそれと対比するべきでなくて、裁判官、検察官に最も近いところの弁護士の所得というものと対比することが至当じゃないか、そういうふうに考える。それはどう思いますか。
#101
○政府委員(貞家克巳君) 確かにそういう考え方も成り立ち得るかと思うのでございますけれども、一般の公務員につきましても、これは一般職といいましても、いろいろ専門の分野に分かれておるわけでございまして、それぞれにつきましてそういった特殊の、民間の特殊の業種の給与との比較というようなことがあるいは問題になるかと思うんでございますけれども、現在のたてまえといたしましては、民間の給与全体ということを考えましてそういう給与改善の勧告が行なわれておるわけでございます。それぞれの裁判官なり、あるいはお医者さんなども、そういったそれに類したものではないかと思いますけれども、俸給表を別にいたしまして、一応たてまえは俸給表のほうは別になっております。
 裁判官、検察官のほうは法律自体も別になっておりまして、別の仕組みをとっておるわけでございますが、ただベースアップの率といたしましては、一応一般の公務員全体とのバランスということを考えまして、そういった人事院勧告の率によっているということでございまして、それぞれについてまたそれぞれ改善の余地があるかと思うわけでございまして、別途にそういった点を検討いたしてさらに改善の努力をしなければならないというふうに思っております。
#102
○委員長(阿部憲一君) ほかに御発言もなければ本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#103
○委員長(阿部憲一君) 引き続きまして、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律案を議題いたします。
 これより本案の質疑に入ります。
 質疑のある方は、順次御発言を願います。
#104
○後藤義隆君 お尋ねいたしますが、この本法〔第一条ですね、「公害の防止に関する他の法令に基づく規制と相まって」というふうに書いてありますが、他の法規というのは何をさしておるのでしょうか。
#105
○政府委員(辻辰三郎君) これはいろいろ公害防止に関する法令があるわけでございますが、主と いたしまして公害対策基本法系統の大気汚染防止法であるとか、現在は水質汚濁防止法案ということで御審議されておりますような水質規制に関する法律であるとかは、もちろんこの中に入るわけでありますが、そのほかにもいわゆる公害関係を規制いたしておりますもろもろの行政法規が入るわけでございます。
#106
○後藤義隆君 これを「公害の防止に関する他の法令に基づく規制と相まって」ということを第一条に入れてありますが、これを全然削除してしまって、入れなかった場合と、これを入れた場合とは意味が違いますか、違いませんか。本法には何か影響がありますか、ありませんか。
#107
○政府委員(辻辰三郎君) これは本法の犯罪の成否との関連におきましては関係がございません。この規制云々ということがあってもなくても関係がございません。私どもは、この公害の防止に関する他の法令の規制と相まって公害の防止に資することを目的とするという意味で、この第一条の目的規定を掲げたわけでございます。
#108
○後藤義隆君 本法は一般の刑法とは非常に趣が異なっておるというようなふうに考えるんです。それは普通の刑法においては傷害あるいは過失傷害というようなふうなことは、全くその手段方法ということについては何らの制限もございません。ところが本法では、「工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、」こういうようなふうに手段と方法が特に限定されておって、非常に一般の刑法の場合とは趣が違っておると思いますが、それは間違いないですか。
#109
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘のとおり、本法案に規定いたしておりますいわゆるこの二条、三条の犯罪でございますが、その犯罪の基本的な行為類型を定めるに当たりましては、ただいま御指摘になりましたような、「工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、」という一つの要件、行為類型を規定いたしております。その点におきましては、ただいま御指摘のように、刑法の傷害罪であるとか、業務上過失致死傷罪というようなものと趣を異にいたしております。
#110
○後藤義隆君 そこで、非常に私は本件について問題になると、複雑であるというようなふうに考えるのは、「工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、」こういう、すなわち本件の手段方法です。これを知っておって、いわゆる故意ですね。そういう事実を知っておって、そうして、かつ「公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者」いわゆる結果を生じせしめた、こういうようなふうな場合は、故意犯に当たるのはもちろんだが、手段も結果もそれから方法も知っておった場合には、当然これは故意犯に当たることはもちろんでありますが、ところが、基準をこえておるということは知っておったが、しかしながらその結果、公衆の生命、身体に危害を生ずるという事実は全然予測しなかったというようなふうな場合に、やはり故意犯になるのか、それとも故意犯にならないのか。いわゆる手段、方法だけは知っておったが結果については全然予測しなかった場合に、これは故意になるのかどうかというようなこと。
#111
○政府委員(辻辰三郎君) 本法案第二条の故意犯の成立の問題でございますが、ただいま御指摘のとおり、この第二条の第一項の罪が成立をいたしますためには、人の健康を害する物質を排出するということについて認識があり、かつその排出することによって公衆の生命または身体に危険を生じさせるということについても認識を必要とするわけでございます。で、この認識というのは、いわゆる刑法に言います未必の認識といいますか、未必の故意と申しますか、そういうものはもちろんこの認識の中に含まれるわけでございますが、ともかくこの二つの点について認識を必要とすることは申すまでもございません。
 そこで先ほど御指摘の、ある排出基準というものに違反しておるということは知っておるけれども、まさか公衆の生命または身体に危険を生ずることはないと確信しておったという場合は、この犯罪は、第二条の犯罪は成立しないということになるわけでございます。
#112
○後藤義隆君 基準をこえておることを知らなかったとしたならば、それは知らなかっただけでもって過失になるのか、知らなかったということについて過失があった場合に過失なのか。いわゆる基準をこえてこういうような物質を排出しておるということを知らなかったと、知らなかったことが過失になるのか、あるいは知らなかったということが――知らないことに過失があって知らなかった、それはどうなるんでしょうか。
#113
○政府委員(辻辰三郎君) 本法案の二条及び三条の犯罪でございますけれども、これは理論的には排出基準というものとは関係がないわけでございます。で、もっぱらいまの御指摘の過失の場合でございますが、過失の、この第三条の過失犯が成立いたしますためには、業務上の必要な注意を怠って1人の健康を害する物質を排出するということに、本来業務上必要な注意義務を果たせば、排出すべきでないのにかかわらず業務上必要な注意を怠って排出したというその面の過失もこれはあたるわけでございますし、また公衆の生命または身体に危険を生じさせたという点につきましても、やはり業務上必要な注意を尽くせば公衆の生命、身体に危険が生じないのにもかかわらず、業務上必要な注意を怠ってそういう状態を生じさせたと、こういう点においても過失がかぶっているという意味でございます。
#114
○後藤義隆君 それから本条は、人の身体、生命に危険を生ぜしめるというだけのことを処罰してあって、ほかに地盤沈下であるとか、あるいはまた騒音であるとか、臭気であるとか、食品公害であるとか、あるいは薬品であるとか、そういうようなふうなものを除外してありますが、それはどういうわけですか。
#115
○政府委員(辻辰三郎君) 法案の立案いたしました基本的な考え方でございますが、これは公害対策基本法に定められております公害のうちで、人の健康にかかわる被害というものをまず対象にいたしたわけでございます。で、生活環境にかかわる被害というものは対象にしないと、やはりこの刑事的な処罰の対象とするものにつきましては、いわゆる公害基本法にいう「公害」のうちで人の健康にかかわる被害を対象にするという基本的考え方に基づくものでございます。で、その意味におきまして、この食品であるとか、薬品であるとか、こういうものは御案内のとおり、現在この公害対策基本法にいう「公害」というところには含まれていないわけでございまして、また現にそれぞれの行政法規で十分な規制が行なわれておるというふうに考えておるわけでございます。
#116
○後藤義隆君 いまお尋ねいたしました地盤沈下であるとか、あるいはまた騒音だとか、臭気だとか、食品だとか、薬品、そういうふうなものについてやはり別個に公害罪を創設する、つくる気持ちがありますか。全然そういうようなふうな考はありませんか。
#117
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま申し上げましたように、この公害対策基本法にいう「公害」のうちで、この人の健康にかかわるものを対象にいたしたわけでございます。で、その意味におきまして、この地盤の沈下であるとか、あるいは振動であるとか、そういうものは――人の健康にかかわる被害という場合に、きわめて特殊な場合には、あるいは人の健康にかかわる場合もあるかとも思いますけれども、これを一般的に見ました場合に、その性質上地盤の沈下や振動というものがこの人の健康にかかわる被害とはいえないのじゃなかろうかと、こういう意味におきましてこの法律の対象にはしていないというわけでございます。そしてなお悪臭につきましても、悪臭によって人の健康にかかわる被害というものが出てくるかどうかという点――これも出てくるというようなことになりますれば、これはこの現在の法案でもその対象になり得ると思うわけでございますが、現実にその悪臭によって人の健康にかかわる被害が出ておるかというような問題は、具体的にはなかなか私ども承知をしていないという意味で事実上この法案の対象になることはないのではなかろうかと考えておるわけでございます。
 で、結局私どもはこの法案の対象を公害対策基本法にいう「公害」のうちの健康にかかわるものに限りましたゆえんは、生活環境にかかわる公害というものを対象にいたしますと、その態様がきわめて種々雑多でございます。それから科罰的評価という面におきましても、人の健康にかかわる被害と生活環境にかかわる被害とは科罰的評価というものが相当違うのじゃなかろうかというふうに考えておりまして、やはり刑事的な評価というものを真正面から出しておりますこの法案におきましては、この公害対策基本法にいう「公害」のうちで人の健康にかかわるものを対象にするのが至当であると、かように考えておるわけでございます。
#118
○後藤義隆君 いまお尋ねいたしましたうちでもって、人の健康にかかわるもののうちでもって抜けておるのが食品とか薬品とかが抜けておるが、それについて公害罪をつくるお考えはないかどうか、その点お伺いいたします。
#119
○政府委員(辻辰三郎君) 食品、薬品につきましては、たとえば食品に有毒物を混入して人の生命、身体に危険な状態を生じさせた者と、こういう者を処罰すべきであるという、まあかりにそういう考え方をとってまいりますと、結局私どもは食品の場合には、食品に有毒物を混入するということ自体がすでに「公衆の生命又は身体に危険を生じさせた」ことになるわけです。直ちになるわけでございまして、その食品に混入するということを処罰すべきであって、食品に有毒物を混入して、そして公衆の生命、身体に危険を生ぜしめた場合に初めて処罰の対象にするというのはおかしいんじゃなかろうかと、やはりそれは混入なら混入というところで押えると申しますか、その混入自体が、この法案にいう「公衆の生命又は身体に危険を生じさせた」というところに相まつわけで、パラレルになるわけでございますので、そういう意味におきまして、この法案に食品なんかのものを加えておくことは法案の体系そのものと相なじまないというふうに考えておるわけでございます。また現に、現行の食品衛生法におきましては、その有毒な食品を製造するということ自体をやはり処罰の対象にいたしているわけでございまして、その考え方をとるべきものであろうと考えておるわけでございます。
#120
○後藤義隆君 その次に、この法律についていままで最も問題になったのが「危険を及ぼすおそれのある状態」を生じたるときと、いわゆる「おそれ」というのが一番最初の法務省の原案にはあったのを、まあいよいよ正式な案には、「おそれ」を除外したのでありますが、これは「おそれ」をいろいろ調べてみると、行政法規の中には「おそれ」ということで処罰しておる法律がたくさんあるけれども、刑法にはそういうようなふうな条文はあまりないようですが、どういうわけでもって刑法には、これ、「おそれ」の場合には処罰しないのですか、してないんでしょうか。
#121
○政府委員(辻辰三郎君) 御承知のとおり、刑法は、ひとつの危険犯という形の犯罪は規定しておるわけでございます。たとえば往来妨害罪であるとか、瓦斯等漏出罪であるとか危険を生ぜしめるということを処罰の対象にいたしておりますが、これはまあ「危険」でございますが、この法務省の当初案で考えておりました、「危険をおよぼすおそれのある状態」といいますと、危険のまあ危険と申しますか、そういう、まあ二重に、危険の危険と、こうなるわけでございますが、そういう点はただいま御指摘のように刑法にはございません。これはやはり、刑法は刑法の立場から危険犯というものをとらえるだけで、各犯罪について危険犯の必要なものは危険犯でよろしいと、こういう考え方から出ているものであろうと考えているわけでございます。
#122
○後藤義隆君 これは刑法に、この「おそれある状態」ということを処罰の対象にすれば、法体系上あまりよくはありませんか、どうですか。刑法体系から考えてあまり適当ではないですか、どうですか。
#123
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま申し上げましたように、現在の刑法には危険を生ぜしめるという文言がございますが、この法務省の当初案にございました「危険を及ぼすおそれのある状態」ということを書くといたしますと、これはもともとひとつの刑事特別法という意味でこの法案は考えておるわけでございますが、そういう意味におきまして、理論的にはそういうことをひとつの法概念として考えられることはもとよりでございますけれども、実際の一般の方々に与える印象としては、何か観念があいまいになるんじゃなかろうかというような印象をも招くのではなかろうかという感じはいたしております。
#124
○後藤義隆君 実際の問題として、「おそれのある状態」というのを入れた場合と、それを取ってのけた場合とでは、非常に意味が違いますか。それともその差は、あまり大した大きな違いはないですか。
#125
○政府委員(辻辰三郎君) もとよりこの法案の御審議願っております現在の「公衆の生命又は身体に危険を生じさせた」という、この政府原案でございますが、これは公衆の生命または身体に傷害を与える可能性というものが、この公衆の生命または身体に危険を生じさせる状態を言うわけでございます。これはこういう傷害に対する可能性の問題でございます。かりに「及ぼすおそれのある」というふうにいたしましても、この公衆の生命又は身体に対する傷害の可能性ということにおいては変わりがないわけでございまして、これを要しますのに、この公衆の生命、身体に対する現実の傷害が発生する前で、未然に、一つの未然の状態で犯罪が成立するという基本的考え方に立ちますならば、「おそれ」があろうとなかろうと、その意味においてはたいした相違はございません、差異はございません。
#126
○後藤義隆君 それから刑罰の関係ですが、本条に最も関係のありそうな近いものは、傷害致死とかあるいは過失傷害というようなふうなものだと思いますが、刑法に比べて本法のほうが刑が幾らか軽いんじゃないかというふうに考えるが、その点はどうですか。どういうわけで軽くしたのでしょうか。
#127
○政府委員(辻辰三郎君) 御指摘のとおり、刑法の傷害罪は、「十年以下ノ懲役又ハ五百円以下の罰金若クハ科料」という規定になっております。この本法案の二条の二項でございますか、二条の故意犯を犯して、その結果的加重として「人を死傷させた者は、七年以下の懲役又は五百万円以下の罰金」ということになっておりまして、この傷害の十年に比べてこの二条二項の七年というのは軽きに過ぎるのではなかろうかという御指摘であろうと存ずるのでございます。
 ところで、御指摘のとおり、この刑法の二百四条の傷害は、これはいろいろな体系、形が考えられるわけでございます。最初から傷害する行為をもって人を傷害する場合もございます。それから傷害する意思はなくて、暴行の意思だけ持っておって、結果的に人に傷害を与えたという場合も、やはりこの傷害罪として二百四条の規定に当たるわけでございまして、この刑法の傷害のほうは非常にいろいろな態様のある結果といいますか、傷害の結果を前提にして、十年以下の懲役ということにいたしておるわけでございますけれども、その本法の場合には、やはりこれは先ほど申し上げましたように、この基本的な行為類型が「事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出」するという、こういう基本的な行為が明確になっておりますので、この行為というものを前提にしたそのあとの結果的加重犯の場合の基本的評価は、この刑法二百四条の傷害の法定刑のうちで七年以下というくらいのところに持ってくるのが至当ではなかろうかと考えておる次第でございます。
 それから過失犯の第三条の場合でございますけれども、第三条のほうは、第三条二項でございますが、懲役刑につきましては、「五年以下の懲役若しくは禁錮」というふうにいたしておりますが、これは刑法の二百十一条の業務上過失傷害または致死というこの二百十一条の法定刑が「五年以下ノ懲役若クハ禁錮」云々と、こうなっておりますが、それと科罰評価はほとんど変わらないということで、この刑法二百十一条の例を参考にいたしましてこの規定をいたした次第でございます。
#128
○後藤義隆君 それから第二条の第二項の「人を死傷させた者は、七年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。」とあるが、五百万円というのは何を基準に額をきめられたのでしょうか。
#129
○政府委員(辻辰三郎君) これは御案内のとおり、この法案の第四条におきまして、いわゆる両罰規定という規定を設けておりまして、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前二条の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。」というふうにいたしておりまして、結局、この事業主が処罰される場合というものを前提にしてこの規定をいたしておるわけでございます。もとより事業主につきまして、事業主が行為者であるというような場合はもちろんございますけれども、実際の運用におきましては両罰規定の結果、法人である事業主が処罰されるというふうな場合を考えますと、相当多額の、事案によっては罰金も必要ではなかろうかと考えたわけでございまして、現在この現行の刑罰法規のうちで定額の罰金刑を定めておりますもののうちで、最高のものが罰金五百万円、こうなっておるわけでございます。たとえば麻薬取締法であるとか、あるいは法人税法であるとか、所得税法であるとか、こういうものは現行の刑罰法規のうちの一番高いのが五百万円であるという点を勘案いたしまして、これはいろいろ事案によって本法の場合には量刑の面でいろんなニュアンスが出てまいると思いますけれども、一応従来の経過にかんがみましてこの五百万円という罰金刑を規定いたした次第でございます。
#130
○河口陽一君 ちょっと関連して。
 私は全くのしろうとでございますから、ごく単純に一、二お尋ねしたいのですが、この法の二条に、「人の健康を害する物質、」これはどういうものをいうのですか。
#131
○政府委員(辻辰三郎君) これは、たとえば大気汚染防止法施行令にあがっておりますような塩素であるとか、あるいは水質関係の規制法にございますシアンであるとか、水銀であるとか、さような物質をいうわけでございます。
#132
○河口陽一君 それはきちっときまっておるのですか。
#133
○政府委員(辻辰三郎君) これは、この法案におきましては、「人の健康を害する物質」ということでございます。ただまあそれを例示していけば、ただいま申し上げましたような、この大気汚染防止法関係であればアンモニア、弗化水素、シアン化水素、一酸化炭素云々ということで二十八ばかりあがっておりますし、水質関係でも九つばかり物質があがっております。そういうものが該当するわけでございますが、この法案の理論的な意味といたしましては、「人の健康を害する物質」ということで、必ずしもこの大気汚染防止法施行令に、のぼっている物質に限るとか、あるいは水質関係の規制法にある物質に限るというわけではございませんが、実際問題としては、そういうものが当たるというふうに考えておるわけでございます。
#134
○河口陽一君 この物質ですが、われわれしろうとでは量が少なければ薬で、多ければ毒になる、あるいは害を受ける、健康をそこねる、こういうことになると思いますが、その量の問題等がなかなか判定しにくいと思いますが、そういうものを処罰する場合の基準というのですか、そういうものは何で定めるのですか。
#135
○政府委員(辻辰三郎君) この二条、三条の本法案の犯罪でございますけれども、これは物質――「人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた」ということが要件でございます。ただいま御指摘の「公衆の生命又は身体」に危険が生じたかどうかという点は何できまるのかという御指摘であろうと思うのでございます。これはもとより具体的な事案事案によって条件は違ってまいりますから、一がいにその基準というものを定めるわけにはまいりませんけれども、たとえばシアンならシアンを考えました場合に、シアンの致死量はどれだけであるか、死傷量はどれくらいであるかということを前提にいたしまして、そうして具体的な事案について、この場の状況においてはこれが公衆の生命、身体に危険であるかどうかということを科学的な鑑定といいますか、科学的な知識を基礎にして認定される、かように考えておるわけでございます。
#136
○河口陽一君 これに関連して、最近熟語として無過失責任という字句が使われておるのですが、私どもこれをちょっと理解できにくいのですが、これは法務省のほうではどういう解釈をされておるのですか。
#137
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御審議を願っておりますこのいわゆる公害罪法案、これは刑事罰を科するという法案でございますから、事、犯罪の成否といいますか、刑事関係につきましてはこの行為者に故意も過失もないという場合を処罰する、いわゆる無過失の場合にこれを処罰するということは、これはもう近代的な刑法の大原則に反するわけでございます。したがいまして、この法案におきましても故意犯、過失犯というふうに、二条、三条で分けて規定いたしておりまして、この無過失を処罰するということは全然していないわけでございます。
 いま御指摘の無過失責任と申しますのは、民事の損害賠償関係の問題でございます。民事の不法行為責任というものにつきまして、現行の民法七百九条は、「故意又ハ過失二因リテ人ニ」云々と、こうございまして、故意、過失を要件にいたしておりますが、民事の損害賠償責任が発生する要件に、故意または過失という要件を入れておるわけでございます。その要件を、無過失の場合であっても民事の賠償責任が発生するようなことを公害に関しては考えろという御議論が、この無過失の御議論であるというふうに理解いたしておるわけでございます。
    ―――――――――――――
#138
○委員長(阿部憲一君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#139
○委員長(阿部憲一君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#140
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#141
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十一分散会
    ―――――――――――――
ソース: 国立国会図書館
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