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1970/12/09 第64回国会 参議院 参議院会議録情報 第064回国会 内閣委員会 第3号
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1970/12/09 第64回国会 参議院

参議院会議録情報 第064回国会 内閣委員会 第3号

#1
第064回国会 内閣委員会 第3号
昭和四十五年十二月九日(水曜日)
   午前十時五十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十二月九日
    辞任         補欠選任
     上田  稔君     山本茂一郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         西村 尚治君
    理 事
                石原幹市郎君
                八田 一朗君
                足鹿  覺君
                上田  哲君
    委 員
                佐藤  隆君
                玉置 猛夫君
                長屋  茂君
                安田 隆明君
                矢山 有作君
                中尾 辰義君
                峯山 昭範君
                岩間 正男君
   国務大臣
       法 務 大 臣  小林 武治君
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
       建 設 大 臣  根本龍太郎君
   政府委員
       法務省入国管理
       局長       吉田 健三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        相原 桂次君
   説明員
       法務省矯正局長  羽山 忠弘君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務
 員の給与に関する法律の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○建設省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(西村尚治君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨説明を聴取いたします。愛知外務大臣。
#3
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。
 外務省設置法の一部改正におきましては、まず、本省に関しましては、大臣官房に置かれております国際資料部の名称を、その実態にあわせて「調査部」と改めるとともに、その所掌事務につきましても、各局の所掌事務にまたがるような総合的な外交政策の企画立案機能の一そうの強化拡充をはかるため、調査部がこれを行なうことを明文化するものであります。
 また、在外公館に関しましては、ブラジルの首都移転に伴う在ブラジル日本国大使館の所在地名の変更と、在リオ・デ・ジャネイロ総領事館の設置、昭和四十三年九月に独立したスワジランドへの兼轄大使館の新設、昨年五月のわが国の軍縮委員会加入に伴う軍縮委員会日本政府代表部の設置及び在レニングラード総領事館の設置を規定したものであります。
 次に、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部改正におきましては、以上に述べました新設四公館に勤務する職員に支給する在勤手当の額を定めるとともに、公館所在地の変更等、勤務、生活条件の著しい変動に対応するため、在ブラジル日本国大使館の在勤基本手当の額並びに在インドネシア、パキスタンの各日本国大使館及び在ジャカルタ日本国総領事館の住居手当の限度額をそれぞれ改正するものであります。
 何とぞ、本案につきまして慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願いいたします。
#4
○委員長(西村尚治君) 本案の審査は後日に譲りたいと存じます。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(西村尚治君) 次に、建設省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨説明を聴取いたします。根本建設大臣。
#6
○国務大臣(根本龍太郎君) ただいま議題となりました建設省設置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその要旨を御説明いたします。
 第一に、地方建設局における国土計画及び地方計画に関する調査、土木工事に関する技術及び管理の改善に関する事務等の増大並びにその内容の複雑化に対処するため、昨年、関東、中部、近畿及び九州の各地方建設局において企画室を部制に改組し、組織の強化をはかってまいりましたが、残余の地方建設局における業務量の増大等に対処するとともに、組織の統一ある整備をはかるため、東北、北陸、中国及び四国の各地方建設局について企画室を部制に改組することといたしております。
 第二に、地方建設局における直轄事業の事業量の増大に伴う用地関係事務の増加に対処するため、昭和三十六年度以降、関東地方建設局等六地方建設局に順次用地部を設け、事業の円滑な実施をはかってまいりましたが、北陸地方建設局及び四国地方建設局所管の直轄事業に伴う用地関係事務の増大にかんがみ、両地方建設局に用地部を設けることといたしております。
 以上がこの法律案の提案の理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
#7
○委員長(西村尚治君) 本案の審査は後刻に譲りたいと存じます。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(西村尚治君) 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨説明を聴取いたします。小林法務大臣。
#9
○国務大臣(小林武治君) 法務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案の改正点の第一は、矯正施設の移転並びに廃止及び設置についてであります。現在、東京都豊島区にある東京拘置所は、首都圏整備計画の一環として他地区へ移転させる必要があるため、これを東京都葛飾区の小菅刑務所の現在地へ移すこととし、これに伴い、小菅刑務所を廃止して、栃木県那須郡黒羽町に黒羽刑務所を設置しようとするものでありますが、同所の施設が完成いたしますと宇都宮刑務所の施設が不要となりますので、これを廃止することとし、また、いわゆる精神障害受刑者に対する処遇の充実をはかるため、岡崎市に岡崎医療刑務所を設置しようとするものであります。
 改正点の第二は、岩手県宮古市ほか四カ所に入国管理事務所の出張所を置こうとするものであります。近時、宮古港、鹿島港、木更津港、田子の浦港及び衣浦港におきましては、出入国船舶の数が増加してまいりましたので、これらの港における出入国管理事務を一そう適切に行なうため、宮古市、茨城県鹿島郡神栖町、千葉県君津郡君津町、富士市及び半田市の三市、二町にそれぞれ入国管理事務所の出張所を設けようとするものであります。
 最後に、伊丹空港の整備拡張に伴い、大阪入国管理事務所伊丹空港出張所の位置を伊丹市から豊中市に改めようとするものであります。
 以上が法務省設置法の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
#10
○委員長(西村尚治君) それでは、御質疑のある方は順次御発言を願います。
#11
○矢山有作君 それでは、法務省設置法の一部改正案提案の機会に、現在非常に問題になっております韓国籍から朝鮮籍への書きかえの問題について若干お伺いしたいと思います。この問題で、いま、地方公共団体と国との間に非常に対立関係が激化しておるようですから、特別にこの問題を取り上げて政府の所見を伺いたいと思うわけです。
 まず最初に、現在外国人の登録について、最近の統計で韓国と朝鮮との登録人員はどのようになっておりますか。
#12
○政府委員(吉田健三君) 一番最近の数字で、韓国籍に登録しておるのは約三十二万余、朝鮮籍の登録が二十九万でございます。
#13
○矢山有作君 外国人登録法の規定に従って韓国から朝鮮へ、それから朝鮮から韓国へという変更ないし訂正措置がどうなっておるか、その動きを承知したいわけです。ついては、四十年に政府の統一見解が示されましたが、それから後の動きについて御説明をいただきたい。
#14
○政府委員(吉田健三君) 韓国籍から朝鮮籍のほうへの動きでございますか。
#15
○矢山有作君 両方ね。
#16
○政府委員(吉田健三君) 両方でございますか。
#17
○矢山有作君 韓国から朝鮮籍へ移ったもの、朝鮮籍から韓国籍へ移したもの。
#18
○政府委員(吉田健三君) 韓国籍から朝鮮籍へ移ったものは、昭和四十年から四十五年まで百三十名でございます。それから昭和四十五年から最近までに二千三百六十六名でございます。それから朝鮮籍から韓国籍に移ったものは、昭和四十年約七万五千ぐらいだったと思いますが、この数字はいま手元に資料を持ちませんので、至急調べまして、後刻確認いたしたいと存じます。
#19
○矢山有作君 四十五年の当初から最近時まで、韓国籍から朝鮮籍へ移ったのが二千三百六十六人ですね。そういう御説明でしたね。そうすると、それに対応する数字としてお教えいただきたいわけです。だから、今度は逆に、四十年から四十五年までの間に、朝鮮籍から韓国籍へ移ったもの、同じように、四十五年から最近時までに朝鮮籍から韓国籍へ移ったもの、それぞれの数字をお知らせください。
#20
○政府委員(吉田健三君) 後刻正確な数字を資料にして先生のところへ、お手元に届けたいと思います。
#21
○矢山有作君 概略の数字はちょっとわからぬですね。
#22
○政府委員(吉田健三君) 特に問題のあるとき以外は、個々の統計を詳細にとっておりませんので、ただいま概略もちょっと見当がつきません。
#23
○矢山有作君 それでは次に、八月に田川市が市内の朝鮮人の国籍を、韓国籍から朝鮮籍へ書きかえて以来、その訂正命令を出されたり、あるいは職務執行命令も出されたり、いろいろやられたようですが、その経過と現在の状況、どうなっておるのか御説明が願いたい。
#24
○政府委員(吉田健三君) 田川市が最初に十四名の韓国籍の人を朝鮮籍に書きかえたいという申請を受けて、市長限りで訂正されたという事件が起きましてから、山形県、長野県、それから北海道等に類似の事案が発生し、その他神奈川県、各地方のほうで若干の市――現在までのところ三十四市六町村、約三千余り、この外人登録を委任してやってもらっておる市町村がございますが、その中で三十四市六町村で、市町村長限りで訂正されたという事案が発生したわけでございます。そのうち、正式にその訂正の事由、資料を整えて法務省のほうに報告があったものはまだその一部でございます。ただ、現在までに得ました情報を総合いたしますと、市町村長に、それ以外に訂正を希望して、市町村長がそれを法務省のほうに法令に従って経伺してきておる分が約七千四百名ぐらいございます。
#25
○矢山有作君 あれですね、市町村限りでやっておるものが三十四市六町村で、数字が示されなかったのですが、その市町村限りでやっておる三十四市六町村の窓口で、どのぐらい受け付けて、そのうちで報告のあったものが何件なのかということはわかりませんか。
 それからもう一つ、一応法務省にちゃんと伺いを立ててやっておるもの、それで申請のあったものと、それからそれを認めたものと、そうした少しこまかいところへ立ち入って教えてもらいたいのですが。
#26
○政府委員(吉田健三君) 法務省のほうに申請がありました分は、先ほど言いました七千四百七十六名のうち、現在までに理由ありとして許可になったものは二千三百六十六名でございます。それ以外のものの中でまだ懸案になっておるものもございます。先ほど言いました三十四市六町村の総人数は、現在のところ正確な報告が、先ほど申しましたようにまだ到着いたしておりませんので、確認できない点がございますが、約千二百名ぐらいと推定いたしております。
#27
○矢山有作君 この千二百名というのは訂正をしたということで報告のあった分ですね、窓口で申請を受け付けた分じゃありませんね。
#28
○政府委員(吉田健三君) 窓口で申請を受けたものをそのままその市町村では書きかえておられるわけでありますから、申請数と訂正された数は一致しておるものと思います。
#29
○矢山有作君 ああそうだ、そうだ、こちらの誤解です。
 次にお尋ねしたいのは、田川市長が八月にとった措置に対して法務省がいろいろ訂正命令を出されたり、それから最近は自治法百四十六条による職務執行命令を出されたですか、そういうことをやってこられたわけですね、その経過と現状はどうなっていますか。さらに今後の方針。
#30
○政府委員(吉田健三君) 田川市が一方的に法令に違反して書きかえをやりましてから、法務省といたしましては、国の委任事務を、その規定に反して措置がとられたので、再訂正をするように福岡県知事を通じて田川市長に指示をしたわけでございます。福岡県知事に対しましては、法務省といたしましては、地方自治法による法令に従って措置をとったわけであり、これに基づいて福岡県知事は、田川市長に対して累次、訂正方説得につとめられた次第でございますが、結果的には遺憾ながら田川市長はこれを了承されなかったということになりましたので、福岡県知事は、同じく地方自治法第百四十六条に基づきまして職務執行命令を発し、一定期間内にこれを訂正するように田川市長に命令した次第でございます。しかしなお、田川市長はその職務執行命令を了承されないという事態になり、現在に至っているわけでございます。
#31
○矢山有作君 現状はわかりました。そういう状況の中で、今後の法務省の方針はどうですか。
#32
○政府委員(吉田健三君) 法務省といたしましては、法令違反が行衣われておりますので、地方自治法百四十六条による福岡県知事が当事者となる訴訟を提起し、これによって再訂正方を裁判所に指示してもらうつもりでございます。
#33
○矢山有作君 韓国への書きかえは、先ほど御説明いただいたもので見ると、どんどん進められているようですね。たとえば、先ほど四十年から四十五年の間に朝鮮籍から韓国籍への書きかえが、数字ははっきりしないが約七万五千名とおっしゃっておられましたから、かなりこれは進んでおるようです。それに反して逆の場合、韓国籍から朝鮮籍への書きかえの場合は百三十人程度しかできておらぬようですから、これを両方比べてみると、非常に韓国籍から朝鮮籍への書きかえは数が少ない。で、このことについていろいろとわれわれもこれまでの論議は聞いておりますが、私どもどうしてもわからないのは、なぜ韓国籍から朝鮮籍への書きかえについて、法務省がきわめて消極的な態度をとるのか、むしろそれを拒否するような態度をとるのかということがわからないわけなんですが、いろいろと言われてはおりますが、私どもとしては理解できない。その御説明を願いたいと思います。説明といいますか、法務省の見解を示していただきたい。
#34
○政府委員(吉田健三君) 最初に、先ほど七万五千という数字を、不正確な数字を申し上げましたが、ただいま六万五千百十六名と訂正していただきたいと思います。これは韓国は国籍を示すものであり、朝鮮は朝鮮半島出身者であるという用語であるという統一見解が出された経緯は先生御存じのとおりでございますが、国籍のある者が本人の希望によって一方的にほかの国籍に変わるということは法律上あり得ないのでありまして、その国籍が変わっていった離脱証明、あるいは新しい国籍を取得しておる証明書、立証する書類がないと登録上はこれの変更を認めることができないわけであります。逆に韓国として、韓国民であることを立証する旅券なり国民登録証なり、そういった本人の身分を示す立証書類が窓口に提示されるときは、外人登録法の九条によりまして、国籍取得行為として朝鮮籍から韓国籍への変更が認められるということになっております。
#35
○矢山有作君 いまの問題は、政府がかつて示された統一見解等に基づいて御答弁になったんだろうと思います。しかし、この統一見解に対するただいまのお考えについては、後ほど私のほうからも申し上げたいことがありますので、それは後ほど申し上げさしていただきます。
 そこで、いまちょっと気がついたんですが、この四十年から四十五年までの朝鮮籍から韓国籍へ書きかえの六万五千百十六名という数字は、これは違いがないですね。この前、九月の衆議院の会議録を見ますと、ちょっと数字が違っているようですけれども、違いはないですかね。その点をひとつお尋ねしたいんですが、国会のたびに数字が違っては困るので。
#36
○政府委員(吉田健三君) 正確な最終的な数字は後ほど確認いたしまして、資料としてお手元へ届けたいと思います。
#37
○矢山有作君 その点で念のために申し上げますと、九月のときの御説明では七万三千五百八十八人という御説明になっておるようですから、その点ちょっと申し添えておきます。
 次にお伺いしたいのは、国籍というものがどういうぐあいにしてきめられるのか、ごく、しろうとじみた初歩的な質問ですが、ひとつ御説明が願いたい。
#38
○政府委員(吉田健三君) 国籍は出生という現象に対しまして、その国家の法律で、こういう場合に国籍を与えるということがきめてありまして、それに基づいて国籍が決定され、わが国の例でいいますと、戸籍にこれを登録することによって日本国民であることがきまる、こういうことに相なるかと思います。
#39
○矢山有作君 私もいろいろと見てみますと、国籍をきめる条件というのですか、用語が適当かどうかわかりませんが、それは大体二つあるんじゃないかと思うんですね。一つは、先ほどあなたのおっしゃった国のほうの側から国籍をきめていく、つまり自国民の国籍をきめるのは、これはやっぱりその国がきめるその国の権限であって、他国がそのことに対して容喙することはできぬと、こういう意味で、いま説明されたとおりだと思うんです。それからもう一つは、やはり国民の側からの国籍の選択というものが私はあるんじゃないかと思います。これは世界人権宣言の十五条等を見ましても、「何人も、ほしいままに、その国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。」というふうに言ってありますから、だから国籍をきめるというのは、一つは、国の側からする、いまおっしゃったような場合、それから一つは、国民の側にも国籍の選択の権利というものがあると思います。こういう二つの条件で国籍というものがきめられていくんじゃないでしょうか。そうすると、私はこの在日朝鮮人の国籍の問題について、日本政府がなぜ韓国ではよいのだが、朝鮮では悪いとおっしゃるのか、それがわからないわけです。それは政府の統一見解に基づいておっしゃっておるというのですか。それは統一見解の問題についてはあとで触れますけれども、理屈どおりに言うなら、私は国籍をきめるのは、国のほうの側の意向と国民の側の意向、二つの条件だと私は思います。そこのところに日本政府が何も関係していく余地はないと私は思うのです。だから、韓国籍にしてくれといえば韓国籍にしたらいい。朝鮮籍でやってもらいたいといえば、韓国籍の登録が間違っておったということが出てくるならば、朝鮮籍に直すべきだと思うのですが、その辺はどうなんでしょう。
#40
○政府委員(吉田健三君) 国籍は先ほど言いましたように、国籍法等によってそれぞれの国で国籍の決定をきめておるわけでございます。本人の意思が入る場合というのは、無国籍もしくは二重国籍等で選択が規定された人に、限られた場合にのみ本人の意思が働くことがありますが、なお先ほど言われました人権宣言による離脱の自由とか、そういったものは、もちろんわが国におきましては憲法上国籍離脱の自由を保障しておりますが、それには国際法の原則によって無国籍防止もしくは二重国籍の防止という義務もございますので、日本の国籍を一方的に本人の希望だけによって離脱することはできませんので、新しく取得する国籍というものとのかね合いにおいて離脱が行なわれるということになります。なお、一般的には本人が主張する、あるいは本人が希望するといって、国籍というものは取得できない状況でございます。
#41
○矢山有作君 そうすると私は、朝鮮民主主義人民共和国が在日朝鮮人を自国民と認めないという主張をしたことがありますか。これは朝鮮民主主義人民共和国の国籍法を見てもそんなことは互いですね。いわゆる朝鮮民主主義人民共和国としては、在日朝鮮人である者を自国民でないと言ったことはないはずなんです。そうして、しかも在日朝鮮人の方は、みずからの意思として朝鮮籍を得ようということで申請が出てきているわけでしょう。そうしたら日本政府がそういう実態の中で、ただいまの説明のようなことであるとするならば、私は韓国籍から朝鮮籍への訂正をなぜ認めないのかということになる、理屈どおりに言えば。私は理屈の筋道はそうだと思うのです。そいつをできないようにしてきたというのは、これまでの政府がいろいろな外交的な関係、いわゆる韓国との関係あるいは朝鮮民主主義人民共和国との関係等々、いろいろなそういう配慮に基づいて理屈どおりに進まないように政府側がいたしてきたんじゃないですか。
#42
○政府委員(吉田健三君) この問題の中心点は韓国籍と朝鮮籍といいますか、それを自由な立場におる人がどっちかを選べという問題ではございませんので、元朝鮮で全部登録しておった人が、ある時点において本人の申請に基づいてそうして本人が韓国民になりたい、韓国籍も持っておりますという国民登録証を原則として提示して、それを窓口に登録願いが出たので書きかえられて現在韓国籍になっておるわけであります。そういう人たちは本人の意思によって韓国の籍を取得されたわけでございます。その現在韓国の籍を取得して韓国籍になっておる方々が、あらためて朝鮮籍に自分はなりたいのだ、それをどうするのかという問題に具体的に限定されておるわけでございまして、一般論の抽象的に朝鮮籍を選ぶのか、韓国籍を選ぶのかという問題とは、やや趣を異にするのではなかろうかと思います。
 第二点に、外国人登録法の問題といたしましては、鏡のようなものでございまして、本人が旅券の提示もしくは国籍の表示をする書類を示されたときに、窓口はそれを反映してその国籍を登録原簿に書き込んでおる、こういうことでございまして、窓口であるいは日本政府が、あなたは韓国籍をとりなさい、あなたは朝鮮籍をとりなさい、もしくはあなたは朝鮮籍をとってはいけないということを言ったことは一度もないわけでございます。
#43
○矢山有作君 その御説明はきわめてもっともらしく聞こえるんですよ。しかしながら、在日朝鮮人の戦前から敗戦後のずっと経過を見たら、あなたそういうふうに御説明なさっておるけれども、やはりその説明に何というのか、一まつの不安をお感じになりませんか。それはあなたのおっしゃるように、本人の意思で自発的に終戦後朝鮮の籍を持っておった者が、駐日韓国の代表部で国民登録証をもらって、そうして書きかえた人ばかりだと、こういうふうにあなたの話を聞いていると受け取れるのですが、ところが事実の経過というのは、すべてそれで断定できないものを含んでいるから問題になったのではないですか。私がいまさら時日の経過を申し上げるまでもないと思うのですが、御承知のように、一九四七年の五月の二日に外国人登録令が出ましたね。これでそれまで日本人とされておった在日朝鮮人が韓国人として取り扱われるようになったのです。そのとき交付された外国人登録証明書の国籍記載欄には一律に朝鮮とされたわけですね。これは事実だと思います。それから次の段階で、朝鮮戦争前の一九五〇年の二月の二十三日、駐日韓国代表部とGHQの主張で、日本政府が、本人の希望があれば、朝鮮または大韓民国の記載変更を認めるという法務総裁談話を発表したんでしょう。つまり朝鮮と韓国の二種類の記入を認めたわけですね。ところが実際にはこのころから私どもが承知しておるところでは、いわゆる朝鮮籍から韓国籍への書きかえは認めるけれども、その逆の場合は認めぬという窓口の指導が行なわれておった、こういうふうに私どもは事実をもって承知してきておったわけですよ。それから、さらに進んでこの日本政府のやり方がはっきりした形をとったのは、日韓交渉がかなり進んだ時点、一九六三年の十二月の六日に出された通達、法務省管登合第七〇三号、そうでしょう、第七〇三号、これには「理由の如何を問わず、原票等の国籍欄を「韓国」から「朝鮮」に書換えることは、原則として認めない。ただし、特別な事情によりこれを認めるべきであると思料されるものについては、市町村長は、都道府県を経由し、事前に法務省に経伺すること。」、こういうふうになっています。つまり窓口の判断で書きかえは一切まかりならぬということにしたわけでしょう、この七〇三号の通達で。しかもこの段階ではまだ朝鮮も韓国もどちらも用語である、あるいは符号であるという見解をとっておったわけでしょう。そういう経過を踏まえているわけですよ。そうすると、在日朝鮮人が最初一九四七年当時、国籍欄は朝鮮籍になっておった。ところがその後、駐日韓国代表部なりGHQのいろいろな工作というか、私は工作と言っていいと思うのです、工作があったと思うのです。それで日本政府は、その朝鮮から韓国への書きかえに協力したわけでしょう、現実の問題として。私はそのときからいろいろの問題が起こっておると思うわけです。しかも一方で朝鮮と書こうと韓国と書こうと、いずれにしても符号だ、符号だと言うんです。在日朝鮮人にすれば、これは国籍じゃない、符号なんだ、単なる符号なんだということが一つある。そこへ持ってきて、もう一つは、あの朝鮮動乱の直前からその後の朝鮮動乱にかけての時期ですから、これは私はかなり朝鮮から韓国へかえさせるためのいろいろなことが行なわれたということは、最近の訂正を申請してくる理由の中にもいろいろあらわれているところでしょう。そういうような経過をたどっているわけです。そうして、日韓条約調印後の一九六五年十月二十六日に政府統一見解が出たんです。そういう経過をたどって、このときに急にあなたのほうは、政府のほうはどういうことを言い出したかというと、韓国は国籍だ、しかし、朝鮮は用語にしかすぎぬ、こういうことを言い出したわけです。いままでは韓国も朝鮮も用語なんだ。きわめて、何というのか、どっちでもいいんだという印象を与えるようなそういう扱い方をしておいて、しかもその裏で朝鮮から韓国に切りかえることについては、韓国代表部の要請を受け入れて日本政府はかなり前向きに協力しておった。そういう経過を踏まえておいて、今度は突如として韓国は国籍だとか、朝鮮は用語なんだ、こういうような見解をとってくる。そういう事実経過を考えた場合に、私はあなたのおっしゃるように、本人の自発的な意思でいわゆる国民登録証を提出したから、それによって朝鮮籍から韓国籍に切りかえたんだ。だからそれを訂正することについては云々、なかなかむずかしいことをおっしゃる。そういうことが言えるんですかね。私はそういう事実経過を踏まえて在日朝鮮人の問題は考えなければいけないと思うんです。どうなんでしょうね。
#44
○政府委員(吉田健三君) 事実経過は、おおむねおっしゃられたように非常に複雑な要素を持っておりますが、本人の意思がなかった場合、書きかえるという意思がなかった場合、あるいはもしくは何らかの誤りでそういう記載になっておるという場合が絶無であったとは思いませんので、すでに誤りがある場合には法務省にそれを経伺していらっしゃい。そうすればこれを検討するということになってやってきたわけでございます。それが先ほど申し上げましたように七千四百七十六名の申し立てがあったのに対して、確かに本人はそれを韓国籍をとる意思がなかった。もしくは韓国籍をとるについての経緯に過誤があったということをわれわれのほうで古い記録を調べまして、これを許可したケースが現在までに二千三百六十六名ある。こういうふうに申し上げたわけでございまして、そういう複雑な経過を持って、一度国民登録証を提示して韓国籍をとっておるというふうに推定される状況にある方がもう一度朝鮮籍に戻るにつきましては、慎重に過去の記録を調べ検討しなければならない点がある。遺憾ながら、市町村の現場の窓口――第一線におきましてはその資料がないのでございまして、これを市町村限りで決定することは不可能である。だから、資料のそろっておる法務省のほうに聞いてください。これを各市町村に申しておった。変更は現在までも認めておるわけでございますから、先生のおっしゃいましたように、韓国籍から朝鮮籍への変更はどうして認めてないのかということになりますと、理由のあるものにつきましては、法務省に経伺していらっしゃるものについては、これを検討して許可しておる、こういうことでございます。
#45
○矢山有作君 あなた、いままで政府がやってきたことを取りつくろわなければならぬので、あなた自身腹の中は考えてみればおかしなやり方だと思いながら答弁しているんだろうと思いますが、たとえば朝鮮戦争前後に朝鮮籍から韓国籍へ書きかえをやったとき、われわれはこういう話を聞いておるわけですね。朝鮮戦争が始まった、日本は朝鮮戦争のアメリカの前進基地になった。そういう状況の中で、韓国籍に早くかえぬと強制退去になるんだというようなことを言って、そしてどなたか、たとえば民団の幹部の方なら民団の幹部の方が、在日朝鮮人の方の何か登録証明書を集めて持っていって、駐日代表部で国民登録証をもらって、韓国籍への登録をしたのだ、こういうようなこともままあったようには聞いております。それから、あるいは親族が病気で死にそうだ、見舞いに行きたい。ところが朝鮮籍のままじゃ行かしてくれない、韓国籍に書きかえるならば行かしてやる。しかたがない韓国籍に書きかえて行かしてもらった、こういういろいろな事情があるわけです。たとえば前者の場合に、法務省では国民登録証をもって韓国籍へ書きかえたという事実がはっきりしているとしましても、その前段のところで本人の意思はなかった。明らかに意思はないのに強制退去だというようなことでおどされてやったとか、あるいは何も内実を説明されぬまま外国人登録証を預けちゃって、そしてもらってみたら、みんな韓国籍になっていた。こういうふうないろいろな場合があるのです。そういうところを調べられるのですか、法務省は。そこは調べられないでしょう。
#46
○政府委員(吉田健三君) 私のほうにあります記録によりますと、本人が朝鮮籍であったものが、韓国籍を申請してやったときの経緯を一応書いてございまして、また経伺してくるときには、どういう事由で、自分は現在韓国籍になっているのだから、それが間違いであった、あるいはあれを申請したときに、本人の意思がなかったということを説明できるような資料を添えて経伺してもらえば、私のほうは認めておるわけでございまして、ただし、その中で法律的にそのままでは許可し得ないものもあるということは御了承いただきたいと思います。
#47
○矢山有作君 それももっともらしい話なんですね。それはなるほど自分が韓国籍に登録したことが誤りであったという理由をまあ言って、書きかえの訂正を求めるのでしょうが、そのときに理由を証明できますか、在日朝鮮人が。おそらく理由を証明しろということになると、たとえば強制退去になるぞといっておどされたから、おれは何もわからぬから、しかたがないから預けちゃって書きかえをやった。こういった場合にそれを証明する手段があるのですか。在日朝鮮人がそれを証明する手段がありますか。たとえば、そういっておどして外国人登録証を預かって、そして書きかえをやった人が、私はあなたをおどして、あるいはだまして登録証の書きかえをやったことを証明いたしますというような証明書を書いてくれますか。そうなると、私はだまされて登録したとか、あるいはおどされて登録したとか、いろいろな理由で私は韓国籍への書きかえをおどされてやったとか、あるいはだまされて韓国籍への書きかえをやったとか、いろいろ言っていっても、その理由を証明しなければならぬと言われた場合には、もうどうにもならないのじゃないですか。それで、しかもあなたのほうでは、国民登録証を持ってきて、これは韓国籍に変わっているのだ、それだからこれはだめなんだと、こうおっしゃる。その前段の韓国の国民登録証を持って、そして訂正をしにいくに至ったその間の過程というのは法務省でもわからぬわけでしょう。そうして、これは言ってみるだけの話であって、私は在日朝鮮人というのは全く自分がだまされておった、あるいは自分の不本意であった、あるいは自分が知らないそういう理由で韓国籍になったものを、自分の自発的な意思によってもとに戻そう、朝鮮籍へ戻そうとしても、その機会は事実上は奪われているのじゃないですか。ことばで言えばいかにもあるように見える機会が、日本政府がその点の事情を十分しんしゃくして、あたたかい気持ちで書きかえに応ずるようにはことばの上では思える。しかし、実際にやってみるとできない、こういうことになるのじゃないですか、どうなんですか。
#48
○政府委員(吉田健三君) 本人が心の中で何を思っていたか、あるいは本人の動機が何であったかということを推測するということは、これはきわめて困難なことでございますが、ただ、登録という一つの事実行為が行なわれ、それに法律的効果が発生しておるわけでございますが、ある証明書類をつけて、それを出した行為が現にあると、それが間違いであったということは、いまおっしゃいますように、強迫を受けたか、あるいは錯誤におちいっていたか、何かの理由があるということをできるだけ本人が証明していただかないと本人がたびたびあらわれて、実はあのときは自分はこういう気持ちであった、あるいは明年になったらこういう気持ちであったというふうに、第三者の判断のできない本人の心情だけをそのつど取り上げておりますと、客観性を持つ法秩序の維持は非常に困難になるということになるかと思います。
#49
○矢山有作君 だから、一般論としては私はそのとおりだと思うんですよ。おっしゃるとおりだと思うんです。ただ問題は、在日朝鮮人というものの歴史的な経過というものを考えたときに、いわゆるそういうような法理論だけで、一般論だけで割り切れないものがあるんじゃありませんかと。特に在日朝鮮人というものが、みずからの意思で日本へやってきて日本に住んでおるというよりも、むしろ戦前の日本の植民政策によって食えなくなって、やむを得ず日本に行けば食えるんだというようなことで出てきたとか、あるいは強制連行されたとか、いろいろな歴史的な経過はあなたのほうがよく御存じだと思うんですよ。そういうような歴史的な背景を持っておる在日朝鮮人の場合に、外国人登録には、あなたがいまおっしゃったようなことを一般論だけで片づけられるものかどうか、この点が私は問題だと思うんですよ。しかも政府の扱いのこれまでの、一九四七年以後の経過を見たときに、特に私はそういう気がするわけですよ。だから、この問題についてはそういったような歴史的な背景というものを踏まえながら私はものを考えなければいけないんじゃないかという感じが強くするわけです。特に一九六〇年の段階になって、そのときまでは韓国であろうと朝鮮であろうと、これは国籍じゃないんだ、符号だという言い方をしておったのが、突如として一方が国籍になり一方が符号になったわけでしょう。これは在日朝鮮人にとってはたいへんな問題だと思うんです。国籍としての扱いをされるか、単なる符号だということで片づけられるか、これはもう権利関係、身分関係その他にたいへんな影響を持つ問題だろうと思うんです。とすれば、私は、こういうことをやるんなら常識として、今後の扱いはこうなりますと、したがって、国籍についてその在日朝鮮人が判断をし、みずからの意思で処理できるだけの十分な期間を設けてやってやったというならまだしもです。これはあなたがもし立場を変えても対応できないでしょう。いままではどっちも符号だと、たいしたことはないと、こう言っておったのが、一夜明ければ一方は国籍になっちゃって、一方は符号になった。在日朝鮮人にかかわりないところできめられたわけですね。そういう私は扱いというのが間違いじゃないかと、こう言うわけですよ。ですから、あまり型どおりの法理論にとらわれないで、そこのところは私は処理すべきじゃないかと。私はむしろそういう法理論にとらわれてあなたがそんなことをおっしゃってるんじゃないと思うんです。むしろ、その間のいきさつは私よりも法務省の方々のほうがよっぽどよく知っておられる。ところがそれがやれないというのは、やはりいまの日本の外交関係にあるんじゃないですか。韓国との関係、あるいは朝鮮民主主義人民共和国を承認してないというような関係、そういうところにあると思うんですね。そうすると、国と国との関係でもって、きわめて深刻な歴史的な背景を持った在日朝鮮人の扱いを一律に割り切ってしまう、いわゆる国の政策の犠性にしてしまうということは、私はこれは許されぬのじゃないかと、そういうように感ずるわけです。その点で法務大臣、どうお考えになりますかね。あなたの御見解も私はたびたび会議録等で承知しておりますけれども、そう四角四面な理屈だけでは私は通らぬ段階に来たんじゃないかという気がするわけです。しかも、御承知のように、自治体のほうが、いま国と積極的に争ってでもこの問題で、何というのですか、国と決着をつけようという時期でしょう。ですから私はあまりゆるがせにできぬ問題だと思う。もう少しあなたのほうの前向きの答弁があってしかるべきだと思いますが。
#50
○国務大臣(小林武治君) これはもう長い間いろいろな国会の場で論議をされておりまするが、そしていま矢山委員のおっしゃるような経過をたどってきておる、こういうことでありますが、政府の取り扱いとしては、やはり基準あるいは処理方針というものができなければ扱いようがないと、こういう事態になる。多少無理があってもいまのような統一見解が政府としては出た、そうするとそれによって事務を処理したい、こういうことでありまして、外国人登録などという問題は、これは一般の外交問題等と同じく、市町村がそれぞれの見識によっておやりに在ることになると、この問題が私どもは全国的に画一的に処理さるべき性質のものである、こういう点からいたしまして、自由な見解によって国の見解と異なる処理をすることも困るということは私は当然じゃないかと。これがあるいは地方自治体の選択に関する自治権の侵害などということを言うておりますが、これは自治の範囲に属しない問題だと、したがって、私はこれは自治権の侵害などには当たらないと。政府の統一方針のきめ方についてのいろいろな批判があります。いま矢山さんもおっしゃったのでありますが、きめ方についてはどうも無理をしておるとか、あるいは合理的でない、こういうことが言われておりまするが、そういう批判もあるでしょう。しかし、いま申すように、ある行政事項をきめる際にはやはり一つの処理方針というものもきめざるを得ないと、きめた以上はそれによって処理するのだと、そういうことでなければ行政の混乱というものは免れないということになるのでありまして、私もある席で申したのでありますが、あなたのおっしゃったようないろいろの疑問、いろいろの私どもが適当であるかないかというようなことは、私が法務大臣になってから事務当局に詳しくこれは説明を聞いて、
  〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕
そしてあなたと同じような意見を持ったこともあるし、批判もしたことがありますが、きめた方針はやっぱりやる以外には行政の混乱を防ぐ道はない、こういうことで、きめられた方針によって私はやっておるということでございまして、この問題については私はあくまでも、地方団体のかってなと申してはどうかと思いますが、自分の判断でおれはこう思う、こういうやり方は困る、すなわち国できめた方針によってやっていただきたい、こういうことで進めておるのでありまして、それがもし破れるということになれば全国的に混乱を来たさざるを得ないと、こういうことになるのであります。国籍に関すること、あるいは在日朝鮮人に関するいろいろないきさつというものはわれわれにもわかる、しかし、いまはとにかくきめた処理方針による以外にない、こういうふうに考えております。
#51
○矢山有作君 いまの法務大臣のお話を伺っておりますと、政府のとってきた行政方針が必ずしも正しかったということは主張されておらぬと思うのですね。やはりいろいろ無理があったということも認められておるようですし、それから、これまでのたびたびの会議録等を拝見しましても、大臣自身はこれまでの在日朝鮮人の国籍問題の処理には無理があったということは十分認識して答弁せられておると思うのです。ところがその次に出てくるのは、その無理を承知しておるのに、いわゆる行政の処理の方針としてこれをこういうようにしないと混乱を招くから、一たん行政の処理方針できめた以上は、それがもうそのとおりやっていく以外にはしかたがないのだ、こういう言い方をなさるわけです。私はここに本末転倒があるのじゃないかと思うのです。行政の処理というものは、やはり人間の存在を前提にして行政というものがあるわけでしょう。そうすると、行政の処理方針も、人間の存在にかかわる問題、人権にかかわる問題を無視して私はやるべきではないと思う。しかも、行政処理方針に無理があったということを承知しておられるならば、事、重大な人権にかかわる問題であるならば、その無理を是正していくというのがこれがほんとうの行政のあり方ではないでしょうか。私はそういうふうに考えるのです。そうでないとやはり国民は政府を信頼しなくなりますね。政府が一つきめた行政方針のためには、どんなに人権を無視しようと、どんなに人間の存在を否定するようなことになろうと、それを貫かにゃならぬのだというこの考え方というのは、私は行政あって国民なしという考え方ではないかと思うのです。政治があって人間がないという考え方ではないかと思うのですね。これは小林法務大臣、私は、あなたほどのものわかりのいい苦労人がなぜこのくらいのことを改める勇気をお持ちにならぬかと思うのですよ。これはぜひそうやっていただきたいのですがね。
#52
○国務大臣(小林武治君) これはもう御案内のように、日本の国内処理が先に立った問題じゃない。問題は分裂国家なるがためにこういう問題が起きておる。外から出てきておる問題じゃないか。日本政府のやり方が原因しておると、こういうことでありませんことは御承知のとおりであります。したがって、いま矢山委員は、ある時期前においてはなぜわずか百三十七件しかやらないんだと、こういうことになれば、一応政府の処理方針によってやってきたが、この問題に対する圧力とは私は申しませんが、その要望の熾烈さというものが前とあとでは非常に違ったと。前でもそういう希望はもう出ておったことは御承知のとおり。しかし、それを厳格に審査したと申しまするか、それしがなかった。その後これはまた日本の国内における、それはうそかほんとうか私にはわかりませんが、朝鮮総連と居留民団とのいろいろのいきさつがあったようにも聞いておりますが、それは私はよく知りません。そういうことのために、これらのまた書きかえの要望が出たのが、ほとんど日本でいういわゆる革新の自治体の長のところにこれが出てきておると、こういうことにも私は何かを示しておるように思うのです。ほんとうに人道的の立場とか、いまおっしゃるような話でいくなら、どこの役場にもそれは出てしかるべきだ。それは多少保守党の市長さんのところにも出ておるが、これは少ない。そして、ほとんどこれを取り扱っておるのは革新市長、町村長だけだと、こういうところのうしろに何が意味されておるかということについても私はわかりませんが、どういうことだろうということを考えなければならぬというのでありまして、このことは、やはり何かその背後の勢力争いと申しませんが、民団とかあるいは総連の間に何かあるんではないかとまあ想像もされると、こういうふうなことを私は念のために申し上げておきますし、それから、まあこれを支持、あるいは応援されておる、あるいは社会党かどこか知りませんが、応援されておるところも、ただ国籍の選択は自由だと、こういうような議論を非常に掲げておられて、これはむろん人権宣言にもそういうことを書いておりますが、国籍というものはそれぞれの国の国籍法によって規定されておるので、自由では必ずしもないというふうに思うのでありまして、私がアメリカ人になりたいと言っても、これはなかなか選択の自由はないことは御承知のとおりでありまして、そういうふうな、世界的に申せばいまのようなことが望ましいことだ、国籍は選択が望ましいことだという宣言はあるが、それじゃ各国の国内法でこれを認めておるかというと、さようなわけではないということで、その点も少しごっちゃにされておるように思うのでありまして、どこの国でも、それはあなたのおっしゃるように、北鮮にも国籍法がある、韓国にも国籍法があると、こういうふうなことになっておりまして、その国籍法の拘束を受けるということは当然であるのであります。いまお話しになりましたが、たとえば日本人もかってに国籍離脱するわけにまいりません。二重国籍とかあるいは無国籍ということを防ぐと、こういうことも一つの世界的の定めであるのでありまして、国籍の選択は本人にまかされておると、こういう単純な議論でこの問題だけに取り組まれることもどうかと思うのであります。私は、いま申したように、いろいろ私も検討いたしましたが、いまの段階においては、きめ方あるいは経過においていろいろの点があったが、いまはあれでいく以外にないというふうに考えておるからこの処理方針に従うと、したがって、いい方法があればまた考えるべきである。私もいろいろこの問題については考えたが、いまの段階ではああいうことできまりをつけていく以外ない、こういうふうに考えております。
#53
○矢山有作君 いろいろおっしゃったので、まあ一々それに対応して申し上げることがあるいはできぬかとも思うのですが、まず一つは、今度の国籍書きかえ問題が革新系の市長のところを中心にして起こっているという、こういう認識のしかた、そうしてまた民団とあるいは総連との問題というとらえ方、これは少し不穏当じゃありませんか。というのは、なるほど革新自治体の革新市長のところが多いということは事実です。しかし、これは保守系のほうの市長のところにもこの問題は起こっているということはあなた自身が先刻御承知でしょう。しかも、もう一つの問題点は、国が、いま法務省が非常に強力な指導をやっておりますね。私、この指導には問題があると思っているのですが、指導をやっている。その強力な指導の中で、自治体が正しいと思っても、それをはね返してやるというような形にはいまの自治体と国との関係を見たら、そういう形じゃない。そういう関係にはないでしょう。なるほど地方自治法があって、いわゆる地方自治の本旨云々ということが言われている。地方自治の自主性ということを言われている。しかしながら、それは口では言われておるし、法の体系の中でも一そういうふうになっている。私はそれは否定しません。しかしながら、現実の動きは、その法の体系なりあるいは法の趣旨が自治体と国との関係において生かされるというこのことがなされてないということは、これも一あなた行政府の長として御存じのはずです。いまの自治体は国に比べてきわめて力が弱い。その国の言うことに、間違いだと言って積極的に自分の正しい主張を通そうとする自治体はきわめて少ないわけです。そういう中において、正しいものは正しいと主張することが自治体の本旨を生かす立場であるということを十分に自覚をしている市長が、この国籍書きかえ問題について、いまのき然たる態度をとっているわけです。その市長の中にたまたま革新系の市長が多かったということでしょう。そういうふうに考えていただくならば、あなたのいまの説明のしかたというのは少し不穏当じゃないかと私は思います。そういう不穏当の発言というのは、やはりこういうまじめな議論をやっている場ではなさらぬほうがよかろうと私は思うわけです。
 それからもう一つは、この外国人登録法を適用する上において、分裂国家云々のことをどうして日本政府は気にしなければならぬのですか。私は何もそんなことは気にする必要はない。しかも、在日朝鮮人の歴史的な経過、さらに在日朝鮮人の外国人登録に対してとってきた日本政府の今日までの処置、それを考えてみたならば、この際こそ在日朝鮮人がほんとうに国籍の問題について認識を深め、自分のみずからの意思で国籍を選択しようとしている時期に来ていると思う。これまでの日本政府の行政指導の中では、日本政府のあり方の中では、在日朝鮮人みずからがみずからの自発的な意思によって国籍を選択するという私は自由を与えられてなかったと思うのです。今日までの経過を考えるときに、それは口では、そんなことは在日朝鮮人の自由であったはずだとおっしゃる。しかしながら、在日朝鮮人の中で、いろいろ在日朝鮮人に対していろいろな働きかけの実態から見ると、真に自由に国籍の選択が在日朝鮮人に行なわれ得たという環境にはなかった。それが今日その国籍の問題について深く認識をし、みずからの意思で選ぼうとしているわけです。また、在日朝鮮人がそういうふうな調子できたというのは、一つには日本政府が、先ほど言ったように、朝鮮であろうと韓国であろうと国籍じゃない、符号だ、こういう言い方をしてきた、そこにも私は責任の一端はあると思う。そういうような在日朝鮮人というものの歴史的な背景、あるいはその国籍問題についてとってきた日本政府の指導方針のあり方、これらから考えたときに、私は、問題はそこにあるんであって、何も分裂国家云々をこの国籍、外国人登録について持ち出す必要はないと思う。そういうことを言うからこそ語るに落ちるんです。むしろ逆に韓国政府のほうから日本政府はいらわれているのじゃないかということになるわけです。この問題だって、いままでの在日朝鮮人に対する外国人登録のあり方に対してはあなた自身が無理があったと認めておられるんですから、あなたはその無理をこの際是正するという点に立ち返らなきゃだめだと思うんです。そういう反省がなしに、裏に民団と総連の何かあるだとか、革新首長のところでそれが起こっているから背景をどうとか、そんな議論はこれは少し慎まないと、あんた大臣にも似合わぬことを言いますね。どうなんですか。
#54
○国務大臣(小林武治君) これは私はそういう事実があるということを申し上げて、いけなければこれは、それはそうですかと、こう申し上げる以外にありません。しかして、これらの問題はここでいろいろ議論をしてもいたしかたありませんが、私はあなたのおっしゃることもよくわかる。したがって、そういう御意見も十分ひとつしんしゃくしてまいりたいと、こういうふうに申し上げておきます。
#55
○矢山有作君 それからもう一つは、私どもは抽象論を言っているんじゃないんですよ。これは外国人登録法でそのままこれをすなおに適用していったら、そのことといま言った在日朝鮮人というものの歴史的な背景、日本政府のこの国籍の扱いに対するとってきた方針、これらを考えたら、抽象論でなくて、具体的に私は処理できる問題である。であるから、この段階で私は謙虚に在日朝鮮人の要望を聞いて、それに従って私はどしどし訂正を認めていったらいいと思うんです。それが私はほんとうの日本政府のとるべき態度ではないかと思っております。何とか、大臣、前向きにお考えになる気持ちはありませんか。わかるわかると言っているだけで直さぬというのじゃ話になりませんよ。
#56
○国務大臣(小林武治君) いま申し上げたように、あなたのお話も十分ひとつ拝聴して、またいろいろの考える参考にいたしたいと思います。こういうふうに申し上げておきます。
#57
○矢山有作君 考える参考ということでうまく逃げられたんですがね、私は考える参考ということで逃げられたんでは、この重大な問題に当面しておる在日朝鮮人の問題の私は解決にはならぬと思うんですがね。
 それじゃ、もう一つ伺います。私は、日本政府が、韓国籍ならこれはまあいいと、どうも朝鮮籍ならなかなか認められないと、こういうことでずっと長いことやってこられたと思うんですがね。これは何か法律上の明文があるんですか、根拠が。
#58
○政府委員(吉田健三君) 外国人登録法は、国籍欄というところに記載する非常に技術的なものでございますが、国籍欄に国籍を記載しろということになっておるわけでございます。そこで、朝鮮というのは符号でございますが、韓国という国民登録証をもって、あるいは旅券を提示して国籍というものを記載するという申請があれば、当然これを記載すべきたてまえになっておるわけでございます。そこで、国籍として記載してあるところから国籍でないものに、符号に変わっていくということであれば、外国人登録法のたてまえからいいますと、なるべくあそこに国籍を記載してもらわなければならないということになっておるという技術的な点を御了解いただきたいと思います。
#59
○矢山有作君 話がおかしくなってきた。それはね、外国人登録法――旅券に基づいて国籍欄に記載するのだということはわかるんですよ。しかし、韓国は国籍だと、で、国籍といって一たん記載したんだからと、こうおっしゃるんですね。ところが、一九六〇年の統一見解の出る前までの扱いは、これは韓国は国籍じゃなかったわけでしょう。符号として扱っていたわけでしょう。それで、しかも、あなた方のこれまでの言い分によると、私はこう思っているんです。その朝鮮から韓国籍へ切りかえたのは韓国の駐日代表部あたりの国民登録証かなんかでやられたわけでしょう。これは六〇年以前にやられたわけですね。国民登録証によって外国人登録はやるということなんですね。その場合に、国民登録証をもって登録をした韓国という籍すらこれはあなたは符号だとおっしゃっていたのですね。符号としておったのです。なぜこれが急に符号でなくなったのですか。急に一夜にして韓国は国籍にして朝鮮が符号になっちゃったのですか。
#60
○政府委員(吉田健三君) これは統一見解に示されておりますように、その後韓国と日本とが国交を回復し、国家としての国交関係ができた以上、韓国という国籍に対して法律的効果がそこに発生しておるということでありますから、これはその時点においては韓国というのは国籍と認めるということに相なったわけでございます。
#61
○矢山有作君 そうすると、その日韓条約が締結した以後日韓の正常な国交が回復したから、その点で日本は韓国をいわゆる承認したと、そこで韓国というものを国籍と認めたと、こうおっしゃるのですね。そうおっしゃるのですね。そうですね。
#62
○政府委員(吉田健三君) 韓国の国家としての承認という問題は、もっと以前にさかのぼって国連の決議あるいはその他の問題がございますので微妙な点でございますが、日本との国交回復はその時点において行なわれておる、こういうことでございます。
#63
○矢山有作君 国交回復があったからそれを国籍と認めたと、こういうわけですね。ところがね、私はここのところがしろうとですから率直にお伺いするのですがね、韓国は現実の問題として南半分しか支配していませんね。北半分にはこれは朝鮮民主主義人民共和国が客観的な事実として存在するということは政府は認めているわけでしょう、これは。これもないとは言っていないわけですね、ただ国交が回復されておるかされておらぬかというようなことであって。そうですね。
#64
○政府委員(吉田健三君) 国連決議におきましても韓国は国家として認めておりますが、北鮮は国家としてはまだ認められておりません。事実団体としての政権があそこにあるということは事実でございますが、したがいまして法律的には国家としての存在にはなっておらないわけでございます。
#65
○矢山有作君 そうすると、なるほど事実国家としての存在になっていないにしても、事実上一つの政権があそこに存在しておるという客観的なものは認めておられるわけですね。私はここのところでちょっとわからぬのでお伺いしたいのですがね、国籍というのは、最初の議論に戻りますが、一つは国のほうの側、一つは国民のほうの側の問題になると思うのですね。そこで、なるほど国家としては認めておらない、それは法律上はそうおっしゃるのでしょうけれども、客観的な事実としてあそこに何らか政権が存在しておるということは認めておると思うのですよ、いまの御答弁。そうすると、客観的事実として存在しておる政権、そこが、自分の国の在日朝鮮人は自分の国の公民だと認めておるわけです。公民だと認めておるわけです。それから在日朝鮮人のほうも朝鮮籍への登録を求めるということになると、それはそれを選択をしておるわけですね。両者これは一致しておるわけですよ。そうすれば、私はこれは国籍欄に朝鮮と書いてくれと言えば当然朝鮮とやってやるのが普通筋じゃないかと思うのですが、どうもそこのところが、あなたが、国家としての国交回復だなんだというものが入ってきてそうしてそういうような問題がこんがらがされるというのがどうも私わからないのですよ。ことさらこの問題をこんがらがすためにそういう精緻な法律論を展開されているような気がしてしようがないのですがね。
#66
○国務大臣(小林武治君) これは非常に初めから世界にも異例のような特殊事情があったことはあなたも御承知のとおりで、戦争に日本が負けて、とにかく、いままで日本人だった、日本におった在日の朝鮮人が、もう何でもとにかく日本の関係においてはこれは外国人だ、日本人じゃないと、こういうことになったことはこれはもうあなたもお認めになる。日本人じゃない。それじゃどういう外国人だということはこれはなかなかむずかしい問題であったが、それを全部朝鮮と表示したと、最初ですね。朝鮮と表示して、それからまあ役所がへ理屈を言ったというかもわかりませんが、役所のほうが韓国に直しなさいという強要をしたことはないと、こういうことになっております。すなわち、とにかく日本人ではない、外国人だと、最初。最初はただ外国人だと、こういうことになったことは、これはまあ矢山君もおわかりのとおりだと思います。それから、国連その他で韓国という国ができて、そしてそれぞれの方が、韓国とお直しになった方が、これは自発的かどうかわかりませんが、お直しになった。それから日本は韓国というものが国籍だと。しかし、もともと朝鮮に一切の方が、朝鮮という、とにかく符号か用語か知りませんが、それになった。その中の何がしかの方々が韓国に直したと。そうすると、韓国に直したということになりゃ、これは韓国籍を取ったと、こういうことになるからして、日本の政府としては、籍を取った以上は韓国の同意がなければこれは国籍の離脱ができない、こういうことになる。これは一つの理屈で、いまはその理屈によってやっておる。しかし、われわれは朝鮮から韓国になりなさいということを日本政府は強要したりしたことはないと、こういうことになっております。理屈は、いまの自治体の問題も、韓国という国籍がある以上は、韓国の同意がなければそのほかのものには直せない。朝鮮に直せないということばかりじゃありません。ほかの名前にも直せない。こういうことでございます。一応の筋はそういうことになっておると、こういうふうに私どもは了解いたしております。
#67
○理事(八田一朗君) 速記、ちょっととめて。
  〔速記中止〕
#68
○理事(八田一朗君) 速記を起こしてください。
 暫時休憩いたします。
   午後零時二十三分休憩
  〔休憩後開会に至らなかった〕
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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