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1970/12/10 第64回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第064回国会 法務委員会 第6号
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1970/12/10 第64回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第064回国会 法務委員会 第6号

#1
第064回国会 法務委員会 第6号
昭和四十五年十二月十日(木曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
   理事 福永 健司君 理事 畑   和君
   理事 沖本 泰幸君
      石井  桂君    江藤 隆美君
      河本 敏夫君    島村 一郎君
      千葉 三郎君    羽田野忠文君
      松本 十郎君    黒田 寿男君
      中谷 鉄也君    安井 吉典君
      林  孝矩君    岡沢 完治君
      青柳 盛雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 小林 武治君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 貞家 克巳君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
 委員外の出席者
        法務省民事局長 川島 一郎君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  長井  澄君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  矢崎 憲正君
        最高裁判所事務
        総局人事局給与
        課長      中村 修三君
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
十二月十日
 辞任         補欠選任
  三宅 正一君     中谷 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  中谷 鉄也君     三宅 正一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律案
 (内閣提出第一九号)
 裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第九号)
 検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第一〇号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律案、同法律案に対する沖本泰幸君外二名提出の修正案及び同法律案に対する青柳盛雄君提出の修正案の各案を一括して議題といたします。
 質疑の申し出があります。これを許します。中谷鉄也君。
#3
○中谷委員 最初に大臣にお尋ねをいたします。
 大気汚染防止法が施行されて数年を経過いたしました。水質汚濁防止法案の前提となる二法のうち、罰則を持っている工場排水等の規制に関する法律も施行されて相当の年月を経過いたしております。にもかかわらず、同法において改善命令違反等について罰則の規定がありまするけれども、施行以来今日まで処罰を受けた者がいないということが統計上明らかであります。私の調査によれば、改善命令等については、すでに施行以来工場排水等について、記憶に誤りがなければ、本年十一月までの間に二百九十三件の改善命令、それは指定水域に限るわけでありまするけれども、すでにそういう改善命令を受けているという事実があります。それらのことをあわせ考えますならば、本件公害罪法も、かりに成立をいたしましても、ざる法に終わるおそれがあるのではないか。要するに、公害罪法を適用する体制に問題がないか、これらの点について大臣の御答弁をいただきたいと思います。
 なお、大臣から特に監視官制度という問題について前回御答弁がありました。これは法務省といいますか、政府の閣僚の一人としてどのような形のものを構想しておられるか。これはひとつ公害罪とのかかわり合いにおいて大臣の御答弁をいただきたい。
 なお、第三点の質問でありますが、同じくそれに関連をいたしますが、法務省人権擁護局、地方法務局及び法務局の人権擁護関係の職員の数は二百名に足りません。百六十五名ではなかったかと思うのであります。しかも国民の人権擁護局に対する信頼はいまなお消えず、その苦情申し立て件数、公害関係の苦情申し立て件数は二千件を上回っていると聞いております。それらのことをあわせ考えますならば、監視官制度の構想は私はぜひとも政府部内において大臣に詰めていただきたいと思いますけれども、法務省の公害苦情処理のあり方、これらの問題についても人権擁護局の拡充という問題が当面の急務ではなかろうかというふうに私は考えるわけであります。御答弁をいただきたいと思います。
#4
○小林国務大臣 私は、お話しのように、行政各法による取り締まり、こういう規定がありながら、特別に各省の怠慢というわけじゃありませんが、とにかく告発等がほとんどない、こういうことはどういうことであろうかということを、実は私は去る五月の閣議で発言をいたしました。各省ともこれらの問題についてはもっと真剣に取り組んでもらいたい、そういう意味からいたしましても、法務省として独自の方法を考えざるを得ない、こういう発言をいたしまして、それがもとになって今度の公害罪法案、こういうことに相なっておるのでありまして、その点は私は強く各省の反省を促したことがあったということを申し上げておきます。
 それから、いまの人権擁護の点については、人員その他で非常に不十分であるということと同時に、また一般市民においても、これを活用するこにおいて必ずしも十分とは思えないということがいわれるのでありまして、私どももこれからはやはり人権擁護は公害問題などに非常な重点を置かざるを得ない、こういうふうに思いますから、お話しのような公害に関する各種の教養というかそういう知識を人権擁護局の職員に持たせるということと同時に、その人員等についても整備をしてまいりたい、かように考えております。
 もう一つの公害監視官というのは、これは私ども法務省の所管とは必ずしも思いませんが、しかしこの間、この委員会のいろいろの質問に徴しても、企業体に公害の管理者を置くということは、やはりその企業体の反省のために非常に大事なことである。したがって、これは政府全体として、そういうものの設置について行政指導なり、場合によれば公害法の中に何らかの規定をしてもよろしい。そうするとそれと対応するためには、政府側でも法案をつくりっぱなしではいけない。これはたれ流しということをよくいいますが、法案のつくりっぱなしではいけない。これを常時監視するというか、これに対する責任者を置いて、そして巡回なり巡視なり、あるいは各種の調査なりをふだんからする必要がある。こういうふうな考え方からして、公害監視官というものを創設する。これはむろん新規の立法によりましてそれだけの権限を与え、また、それをどこに置くかというようなことも考えなければならぬと思うのであります。要するに、今度は公害監視官というものが公害そのもののの監視をすると同時に、われわれに対する公害の告発もしてもらいたい。あるいは住民からの公害に関する各種の不安もここにひとつ申告をしてもらう、こういうふうな方法をとることがよかろうというふうに思って、この問題は、あのあと私は公害対策本部の担当大臣とも十分相談をいたしまして、その面においてもこれは政府としてそういう措置をとるべきだ、要するに法案をつくるばかりではだめだから、法案の実施についてもふだん責任をもってこれを監視する制度をつくりたい、こういうようなことをいまの山中大臣も了承されて、きょうは何か公害対策委員会でもそのお話が出るそうでありますが、いまのような機能を持たせたい。それらの方法等については今後政府部内で検討する、こういうことに相なっております。
#5
○中谷委員 簡単に第二点目の質問をいたしたいと思います。
 公害罪法案の質疑につきましては、与党の羽田野委員から私のあとに質問をされる民社党の岡沢委員まで、あらゆる角度からきわめて精緻な法律論を展開されたわけであります。しかし、私は日本の公害対策について一つの反省を持つわけでありますけれども、日本の公害問題はいわゆる公害の被害者救済という問題がきわめて前面に押し出されてきた中で、法律学者、法律実務家、これらがまず前面に出てきましてこれらの問題に取り組んだ。そのような中で医学あるいは化学などの自然科学者の出足は必ずしも十分でなかったと私は思うのであります。したがいまして、公害罪の問題にいたしましても、いろいろな被害者救済の問題にいたしましても、会議録等を調べてみますと、当法務委員会では、人権擁護の立場からもうすでに十年も前からこれらの問題は取り上げられているわけでありますけれども、ここで私ども自身一つ反省をいたしますことは、法律実務家の中に自然科学の知識が導入されなければならない。そうでなければ、結局今度は法律実務家の公害に対する対策は医学あるいは自然科学者におくれをとるだろう、こんな感じも私はいたすわけであります。公害罪法案がかりに成立をいたした場合、ことに検察官あるいは警察官のこれらの問題についての自然科学的な知識が必要だと私は思う。どのようにしてそれらの知識を持たせるかという点についての大臣の御所見をひとつ承りたいと思うのであります。
 いま一点は、これは説の分かれるところであるようでございますので、お答えをいただきたいと思いますが、法的安定性という意味から申しますと、国民が知りたいのは、どのような有害物質がどのような量が排出された場合に生命、身体に危険を生ずるのだろうか。それを法律的な評価、危険を生じたという法律的な評価の問題としてではなしに、自然科学の面からそれをまず知りたい。そういう自然科学の面についてそれらの問題が明らかにされたものを法律的に評価をしてもらいたい。だからまず前提になるのは自然科学的な評価ではなかろうか、そういうことを国民は知りたがっているのではなかろうかと思うのであります。昨日、これらの問題について、省内においてあらゆる場合を想定をしていろいろな問題について検討を進められるということについてのお答えがありましたが、それらの内容について検討された場合、こういう場合には公害罪に触れますよということを国民に知らせることが必要ではなかろうか。そういうことは故障がある、合理的でないというならば、その理由をお答えをいただきたいと思うのであります。
#6
○小林国務大臣 御意見は全く同感でございまして、法律分野にそういうものを入れなければならぬ、これはもう必要なことでございます。したがって、私どもはそういう知識を授けるためにいろいろの方途を講じますが、たとえば司法研修制度等の研修のいわゆる座学においてもこれらの問題をぜひ取り入れてまいらなければならぬ、かように考えております。また、健康に害ある有害物質の基準等もぜひ法務省でもつくり、そしてこれを執務の基準にしたい、こういうことも考えております。
 いずれにしましても、同感でございまして、さような措置をぜひとらなければならぬ、かように考えております。
#7
○中谷委員 最後の質問をいたしたいと思います。公害罪法案とそれの民事的な問題との関連についての質問であります。
 企業が原則的に排出基準を守っておれば公害罪の違法性を阻却するというのが従来の答弁でございました。しかし、それは民事的には一体どうなるのだろうか。すなわち排出基準を守っておる、しかしながら公衆の生命、身体、財産に被害を与えた場合、民事的には不法行為が成立すると思われますが、この点についての御見解を承りたい。これについてはきょう、政府のほうから統一見解が出るというお話も聞いておりまするけれども、質問をいたしたいと思うのであります。
 なお、その場合、排出基準を定めた国と都道府県にも共同不法行為者としての責任が生ずる場合も、私は場合としてはあり得ると想定をいたすわけでありますが、この点についての御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
#8
○川島説明員 私からお答えをさせていただきたいと思います。
 まず第一の点でございますが、排出基準を守っていた場合に、それが民事上の不法行為責任の成否と関係があるかどうかという点でございます。この問題につきましては、従来から一般に考えられておりますように、民事責任の成否と排出基準とは別個の問題である、直接には関係のあるものではない、かように考えております。
 それから第二点でございますが、国または都道府県が排出基準を定めました場合に、なおかつ公害が発生した、この場合に国あるいは都道府県は責任があるかどうかという点でございます。これは実際にはほとんどあり得ないであろうと思いますが、理論的にお答えいたしますと、排出基準を定めた国または都道府県とその企業との間に民法の共同不法行為が成立する、そういう関係がもし認められるとすれば、そういう場合には国や都道府県のほうの責任も生ずる、こういうことになるわけでございます。これは理論的にお答えしたわけでございます。
#9
○中谷委員 それじゃ終わります。
#10
○高橋委員長 それでは岡沢完治君。
#11
○岡沢委員 昨日の午前中の参考人の意見聴取の際に、法務大臣はお見えになりませんでしたが、立案者の刑事局長はお見えでございました。お聞きになりましたとおり、いわゆる公害罪法案に食品公害、薬品公害を入れるのが是であるか非であるかについては、稲川参考人と藤木参考人の意見はまっこうから対決をいたしました。対立した御意見でございました。法務大臣は、この委員会におきましても、将来食品公害等をこの法案に加味することも前向きで検討するという御趣旨の御答弁がございました。刑事局長からでけっこうでございますけれども、この二つの対立する意見の相違、また法務大臣が当委員会でお述べになりました方向と結びつけて、この食品公害あるいは薬品公害を将来の問題として改正の方向で御検討になる用意があるのかどうか。そして、そのどっちにいたしましても、その理由を明らかにしていただきたいと思います。
#12
○辻政府委員 いわゆる食品公害の問題につきましては、昨日、ただいま御指摘のとおりの御意見が参考人から述べられたわけでございますが、私ども法務省当局として考えておりますのは、稲川参考人の述べられた意見と全く同じ見解を持っておるわけでございます。
 といいますのは、この食品に毒物を混入するということそれ自体が一つの、たいへん健康に有害な行為でございまして、その毒物を混入してから公衆の生命、身体に危険を生ぜしめるということはまことにまどるい話でございまして、この毒物を混入することが、すなわち現在の公害罪法案におきます危険な状態を生ぜしめたというところに当たるわけでございます。そういう意味におきまして、犯罪としては毒物混入による公害といわれておりますのは、この公害罪法案と犯罪の性格を異にするという点が一番の根本的な理由でございまして、そういう理由から、この公害罪法案の一連のものとして取り上げることは法律的に適当でないと思うのでございます。これはやはり現在ございます食品衛生法、あるいは薬の場合には薬事法その他の行政法規で、現にそういう観点からの規制及びその罰則が定められておるわけでございまして、それをやはり必要のつど、必要があれば改正するとか規制を強化するという観点で処理されるべきものであろうと思うのでございます。もとより、そのまた第二点の前提といたしまして、この公害罪法案は、公害対策基本法の公害というものを受けておるのでございますが、この公害という中にも、これはいわゆる食品公害は入っていないというまた第二の理由もございますが、何よりも第一に申し述べました法律的性格において、この公害罪法案と毒物混入による食品の公害というものとは性格を異にするのではないかと考えておる次第でございます。
#13
○岡沢委員 いまの御答弁ですと、従来当委員会で法務大臣が、食品公害、薬品公害についても前向きに検討するというおことばとは違うわけでございまして、それからもう一つ、やはり食品衛生その他とは違いまして、今度の法案につきましては、問題になりました危険犯を罰する類推規定がございます。そういうことを考えますと、やはり新しい公害罪法案の発想によりまして、より広範に、たとえばカネミの問題あるいは森永砒素ミルクの問題等につきまして、解決の糸口と申しますか、被害を未然に防止するという意味あるいは刑事犯罪としてきびしく取り締まるという方向からして、私は、取り入れることは意義があると思いますし、局長も十分御承知のとおり、法制審議会の刑事法特別部会の第一次試案にも、第二百十八条に飲食物毒物混入の案があるわけでございます。これらを勘案いたしましても、私は、稲川参考人の意見にも傾聴すべきものがあるとする一面も否定するものではございませんけれども、一方で従来の御答弁、あるいは藤木参考人の意見にも、そしてまた法制審議会があえて二百十八条でこの飲食物毒物混入の新しい規定を御検討になっているということも、十分意義があるし、簡単にいまの刑事局長の御答弁で、これは公害罪法案には将来とも食品、薬品公害について入れないと断定されることは、私は、非常に問題があると考えるわけでございますが、重ねて意見をお聞きいたします。
#14
○小林国務大臣 私が先般お答え申し上げたのは、この公害法、この法律に入れる、入れない、こういうことを端的に申し上げたわけでありませんで、いまの食品、薬品についても、いわゆる実害を生じなは線においてとらえる、こういうふうな、考えとしてはこれと類似な考えで、とにかく、何らか刑事罰の対象として別に考える、あるいは刑を重くするとか、あるいはいま申すようにだれかが飲んで害を生じた、その生ずる前の状態においてとらえる、あるいはこの行為を重く処罰する、こういうふうなことも考えなければならないから、刑事罰の新しい対象として考え、将来検討しなければならぬ。しかし、この法律は御承知のようなかっこうでできておるから、これに直ちに入るかどうかというようなことを申し上げたわけではありませんが、しかし、いま三党でお出しになっておるのには、「公害等」というふうなことばでこれを包括されておる、こういう例もありまするから、いずれにいたしましてもこれらの食品、薬品公害というものは、現状のままでおくことは適当でない。したがって、適当な刑事罰の対象として何らかの処置をひとつ講ずべきではないか、かように考えておりますから、その辺ひとつ御了承願います。
#15
○岡沢委員 きのうの関田参考人の意見の一番最後に、企業犯罪、その多様性、特に企業内部の複雑性、特に転任の問題あるいはいわゆる責任者の転任の問題、企業内部での責任細分化の問題等を考えた場合に、いわゆる第一線の現場職員だけが犯罪の対象にされて、企業そのものは、あるいは企業の最高責任者らが犯罪を免れるというおそれがなきかという点が一つと、それから一般にこの公害罪法案がいわゆるざる法的に、運の悪い者だけが処罰をされて、実際問題としては行なわれない法律、いわゆる法の適正なあるいは厳正な執行が、履行がむずかしいということで、むしろ法の権威を害するおそれがあるというような御指摘がありまして、こういう犯罪の特殊性から、むしろ行政犯処罰の整備充実の方向で検討すべきではないか、いわゆる基準を越えて人の健康を害するような物質を排出した者を、当然に、一律に処罰の、いわゆる行政罰の対象にする、あるいは行政犯処罰の対象にするという意見がございました。これも私は傾聴に値すると思うわけでございますけれども、そういう法の適正な運用と、一方で、犯罪者をたくさんつくるだけが必ずしも公害防止、あるいは公害対策の主たるねらいでないということを考えました場合に、やはり関田参考人の意見につきましては、国会としても党派を越えて検討に値すると思いますだけに、この点についての法務省見解をお聞きしたい。
#16
○辻政府委員 ただいまの御指摘のうちの第一点の問題は、いわゆる公害罪法案にいう犯罪につきまして、企業の場合に、責任者が転任をしておるというような場合に、たいへん刑事責任がとらまえにくいのではないかという点でございます。この点につきましては、私どもは刑法の一般共犯理論、特に承継的共犯の理論、これを適用して犯罪の成否を検討していかなければならないと考えておるわけでございます。これは一過性といいますか、いわゆる集積性の公害でない場合、別段その問題はそう深刻に出てこないわけでございますが、蓄積性の有害物質による公害につきましては、当然考えられることでございます。この場合には承継的共犯理論をもって前任者、後任者の関係を十分に究明してまいりましてこの刑事責任者の確定につとめていかなければならないと考えておるわけでございます。
 それから次は、企業内部における責任の細分化という点にかんがみて、適切な本来刑事責任を角うべき者が負わないようになるおそれがあるのではないかという御指摘でございますが、特に末端の職員が処罰をされて、上級職員が処罰されないことになるのではないかという御指摘でございますが、これは何回も御説明を申し上げておりますように、私どもは、この法律の行為者として処罰されます者は、工場または事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出した者でございますから、何ぴとがこれに当たるかはもちろん具体的な事実関係いかんによって異なってまいりますけれども、一般には工場長その他これに準ずる地位にある者等のごとく、工場または事業場における事業活動、特に排出に関する業務について何らかの責任ある立場にある者がこれに該当する、末端の機械的労務に従事するにすぎない者は対象にならないことが多いというふうに考えておるわけでございます。こういう観点から、将来法の運用にあたりましても、行為者の確定という点については、この法律の趣旨に照らして十分慎重な検討が加えられるべきであると考えておるわけでございます。
 それから第三点は、この公害防止については、まず関係行政法規の規制の充実、強化というものが先決であって、刑事罰をもって臨むのは適当ではないのではないかという御指摘でございます。私どもも、この法案の作成にあたりましては、あくまでも公害の防止につきましては関係の行政規制というものが先行すべきであり、刑事司法の関与すべき面は補充的、第二次的なものであるという基本的な観点に立ちましてこの法案を作成いたしたわけでございます。これは非常に極端な、当然刑事的に評価すべきそういう事犯のみを刑事罰の対象にしたということでございまして、私どもにおきましても、この法案の性格は、御指摘のように、公害防止に関しては補充的、第二次的なものであると考えておる次第でございます。
#17
○岡沢委員 御答弁いただきました最後の行政犯処罰規定の法令の整備充実ということは、ほんとうの意味で実効性を期待する面では、いわゆる公害罪法案よりもはるかに対象も広くなるし、実際の効果もあげ得るし、また行為者、加害者にとっても、公害罪で処罰されるよりも幾ぶん行政犯的な性格の処分のほうがこの行為の性質上適切ではないか。それだけに、各種の行政法規に対する制裁規定等の整備について、ぜひ法務省としても前向きで、各省とも横の連絡をとられまして、その法案の充実に御努力をしていただきたい、これは私の意見でございます。
 昨日も関田参考人が指摘になりましたように、今度の法案の二条、三条でいわゆる危険犯の処罰、そしてまた五条で推定規定、この二つのいわば従来の刑法にない概念を取り入れ、しかもほんとは刑事法規におきましては推定規定というのはやはり原則からはずれるだけに好ましい規定ではないし、また一方で、運用を誤りますと基本的人権の侵害という悪い面を出し、一方では、厳格な推定ということになりますと、実際問題として公判の維持あるいはまたいわゆる有罪判決というのは非常にむずかしいという問題を持っているだけに、むしろ、先ほど来申し上げておりますような行政犯処罰的な、いわゆる基準を越えて有害物質を流出したときに当然にまた厳正に処罰するということのほうが、威嚇的な効果は別として、実効をあげ得るのではないかと感ずるわけでございます。
 次に、先日の横路委員の御質問に対する法務大臣の答弁で出てまいりました公害監視官、こういう名前を使っていいかどうかは別といたしまして、大臣自身も、非公式ではございますけれども、思いつき的な発言だけれどもなかなかいいアイデアだろうということも漏らしておられましたが、この中身につきましてもう少し具体的に、やはり責任ある法務大臣の御答弁でもありましたわけですから、もう少し充実したと申しますか、その後数日を経過いたしておりますし、御承知のとおりこの問題に関して産業公害対策特別委員会あるいは各党の国対等でも前向きに取り上げていただくということに賛意を表しながら具体的な動きをいたしておるわけでございますが、法務大臣のこの公害監視官制度につきましての今後の構想等を承りたいと思います。
#18
○小林国務大臣 これは実は先ほど申し上げましたが、あの際は私の考えを申し述べたのでございますが、そのあと公害担当の大臣ともよくお打ち合わせの結果、そういうものを設けることが必要である、こういうふうな結論になったのでありまして、したがって、きょう総理大臣がさようなお答えを公害対策委員会でされるであろうと思います。
 要するに、公害防止の実効を期するためには、もう常時の監視機関、こういうものがなければ、ただ法律をつくりっぱなしで、従来ともいろいろな法律があったのに完全ないわゆる責任者がなかったとも申せるのでありまして、私は、その業務官庁とは別個に、人の健康を守る、こういう立場からのそういう監視官を置いたほうがよかろうということでありまして、たとえば、これは私のただ、いまのところは私見でございますが、そのためには、公害の発生しやすいような地域に、これは健康を守るための保健所というものがありますから、そういうところへひとつそれらの専門官を常置させるというふうな方法をとったらよかろうと私は思っておりますが、こういう方法については、今後皆さんともまた政府部内でも検討をして、できるだけ早い機会に――これはまだ設置法等も要りまして、私は公式の権限その他も定めなければならぬというふうに思っておりますから、大体一つの考えはいま私が申したようなことであります。
 いずれにいたしましても、私の所管、こういうわけでありませんで、政府全体の問題として至急に検討に入る、なるべく早くに間に合わせる、こういうことで、予算とか法律とかあるいは組織とか人員とかいろいろな問題がありますから、これらを調整していかなければならぬと思いまするが、政府部内におきましても、必要であるということは、大体そういう方向に向かったようでございますので、さよう御承知願います。
#19
○岡沢委員 いま大臣は、公害監視官制度は自分の所管でないということをおっしゃいましたが、あの発想は、一昨日当委員会の質問に対する御答弁で出てきたわけでございますし、公害罪の捜査の端緒という問題から発した構想であったはずであります。そうしますと、いまおっしゃいましたように、全国にございます保健所に専門官――おっしゃるのはおそらく医者等を御予定になっていると思いますが、これに監視官的な任務を与えてもらう。私は異存はございませんけれども、確かに医者は健康とか生命につきましては専門家でありますが、いわゆる犯罪法律的な面での素質は持っていないわけでございます。私は、公害監視官、いわゆる法務大臣の御答弁から出たこの制度につきましては、公害罪の告発者として必要な素質とかあるいは教養とか、教育とかいうものが当然加味されなければ、単に大気汚染あるいは水質汚濁の監視官とちょっと違うと思うわけでございます。問題の発端が、公害罪の適正なあるいは厳格な適用を前提にして、その捜査の端緒に遺憾なきを期するということであったとすれば、やはりそういう監視官に対する条件というものが、単に保健所の医者に名前だけ与えるということでは、この法務委員会の御答弁から発した構想としてはちょっとはずれるという感じがいたしますだけに、公害監視官には、当然いま申しました法律的な素養、特に告発等についての教育あるいは義務づけということが必要だと思いますが、大臣の見解を聞きます。
#20
○小林国務大臣 これはお話しのとおり考えなければならぬ。われわれ検察の捜査の端緒等はきわめてむずかしい。したがって、常時そういう専門の方がおって、告発等もひとつしてもらいたいわけであります。同時にまた、一般市民からの公害の申告、あるいは不安あるいは不服、こういうものもそこへ持ち出してもらえればよかろう。それから一方において、会社に公害管理者というものがあれば、そこと連絡して、種々注意も申し上げる、そういうこともできるのでありまして、私ども、公害罪適用上の必要からも、いまお話しのようなその必要というものを加えてひとつ考えてまいりたい、かように思います。
#21
○岡沢委員 一昨日私が質問をし、大臣のお答えになりました例の民事上の無過失賠償責任の問題でございますけれども、私は直接この委員会に参加したわけではございませんが、連合審査あるいは産業公害特別委員会において、担当大臣である山中国務大臣は、少なくとも挙証責任の転換については来国会で考慮するということをはっきり御答弁になっておるようでございます。一方で、当委員会におきましては無過失賠償責任制度のいわゆる横断的な採用については原則として考えない。個別立法、個別規制は考えるという御答弁がありましたが、さらに挙証責任の転換についてもきわめて消極的な法務大臣の御答弁しかございませんでした。私は、政府の意見の食い違いということを率直に感ずるとともに、この無過失賠償責任制度の立法化につきましては、前回も指摘いたしましたが、四十二年の公害基本法制定当時の総理大臣の答弁以来、検討検討と、世論をかわすために前向きらしい姿勢だけを示しながら、現実には全く建設的な方向での成案が見られない。前回も指摘いたしましたが、公害の被害者を救済するためには、これこそきめ手だと思います。公害罪で実際に犯罪者をつくるのが目的でもないし、きわめて異例のケースになるどころか、被害者救済に役立つ無過失賠償責任制度を確立することによって、ある場合には、公害に対して財政的にもある程度大きな負担を受けるということが、逆に公害防止施設の充実あるいは公害防止についての各種の努力を間接的に心理的に強制する結果になりまして、もちろん法の取り締まり等が公害政策のすべてでないことは重々承知いたしながらも、せめて法律の分野で、被害者が法律の不備のために長い間泣き続けるということを救ってやるのがわれわれ立法機関としての国会の責任でもあり、もちろん政府の責任でもあるということを考えました場合に、もう少し無過失賠償責任制度の確立については熱意ある、せめて山中国務大臣の線までは、法務大臣自身が政治家の良心として御意見をお述べになってしかるべきではないかと考えるわけでございますが、最後の質問として、重ねてこの点についてただします。
#22
○小林国務大臣 法務省というものは、法秩序を守る重大な責任を持っておるわけでありまして、いまの挙証責任の問題なども、山中大臣は委員会でお答えになった。しかし、総理大臣はその問題につきましても、無過失責任と挙証責任の重要性は変わらない、したがってある時期に出すとか出さぬとか言ったものとは必ずしも思わない、こういうふうな答弁が総理からもあったのでありまして、これは岡沢委員も弁護士だからよくおわかりのことと思いますが、挙証責任というものは、裁判上そういうふうな判例、いろいろなものもありますが、法律では御承知のように自動車損害賠償保障法、あの法律に挙証責任の転換がうたってあることは御承知のとおりであります。あの事柄もそういうふうな取り扱い方を従来ともしておる、こういうことでありまして、私もいま、いわば横断的に挙証責任の転換というようなことを法律的に定めるということは非常に消極的というか、ちゅうちょせざるを得ない。みな法務省が一番悪いのだというふうにいわれておりまするが、この問題は、やはり非常に重大性のあることはあなた自身が非常によくおわかりいただいておると思うのであります。
 そういうわけからいたしまして、われわれ法務省、なっておらぬと盛んに攻撃を受けますが、その攻撃に耐えても、私は、社会全体の法秩序維持という立場において全体の損失というものは十分考えなければならぬということで、いまは私もいろいろの皆さんの非難にあえて耐えているというような状態であります。しかし、検討はいたすし、またやがて法というものは、秩序というものは社会その他の進運によって変わる時期は来ると思いますが、この段階においてはなかなか思い切った措置がとりにくいというのが、非常に保守的と申しますか、私どもの態度でございますので、そういうふうにひとつ御了解を願いたいと思います。
#23
○岡沢委員 この問題は、私はむしろ法務大臣とは逆の立場できわめて重大に、おっしゃるとおり実務家の一人として――また、昨日も四人の参考人のうちのただ一人の実務家の代表でありました弁護士会の公害対策委員長が、刑事法については厳格な構成要件、あるいは因果関係の類推等についてもきわめて慎重な御意見を吐かれた反面、関田参考人自身が、民事については特に原告、被告、いわゆる被害者と加害者の実質的な不平等を打開する意味からも、類推規定あるいは挙証責任の転換についてはきわめて積極的な支持意見、これは刑事局長も聞いておられたと思いますが、はっきりした意見がございました。関田参考人は日本弁護士連合会を代表しての参考人で、私は昨日の四人の参考人の中でもきわめて広い範囲を、日本の在野法曹を代表しての御意見だと聞いたわけであります。いま法務大臣は、挙証責任の転換の問題自身がきわめて重大な問題だとおっしゃいました。私は、その重大という意味は、財界にとって、企業にとっては重大な問題だ。国民にとってはむしろその反対の意味から、企業の責任を追及する意味で特に被害の弁償、あるいは被害者を救済する意味において最も重大で、渇望している法律上の課題が民事上の無過失賠償責任の確立か、せめて挙証責任の転換ではないか。私は反対の意味から実務家として大臣にこの重大性、そしてその必要性、緊急性を指摘したいわけであります。
 公害罪法案が成立いたしましても、すぐから起訴とか有罪という問題が出るべきではないし、また出るとは思いません。しかし、挙証責任の転換一つ、新しい立法として確認されました場合――前回も最高裁の民事局長が、法律家としての法に従うという面と法律家の良心という面から、きわめて無理をし苦労して被害者側と申しますか、原告側の救済に対処しておられる姿勢が、この委員会でも御答弁としてあらわれました。私は、この無過失賠償責任の制度が確立されました場合、いまの四大裁判をはじめとして、現に公害に泣いておる被害者をたちどころに救済される道が開かれる。長期裁判あるいは訴訟費用の大きな負担に耐えておる、苦しんでおる被害者の救済にそれこそその日から役に立つと思いますだけに、私はある意味では公害罪以上の重要性、あるいは政府としての公害対策の被害者救済の面では最も緊急な、緊要な課題であると考えるわけでございまして、もし御答弁があるなら重ねて御答弁いただきたいし、そうでなければ、その私の真情を披瀝させていただきまして、質問を終わりたいと思います。
#24
○小林国務大臣 非常な熱心な御要望でございますので、われわれもさような御要望も参酌いたしまして今後のことを考えたい、かように思っております。
#25
○高橋委員長 これにて質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#26
○高橋委員長 本案並びに両修正案を一括して討論に入ります。
 申し出がありますので、順次これを許します。鍛冶良作君。
#27
○鍛冶委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、沖本君外二名提出の修正案、青柳君提出の修正案、以上二つの修正案に反対し、原案に賛成するものでございます。
 簡単に、まず、沖本君外二名提出の修正案についての反対の理由を申し上げますると、もうこの委員会で言い尽くされましたが、第一に問題になりまするのは、危険のおそれある状態という原案がもとあった。ここへ出たときになかったのだが、どこかにあったときにあったらしい。それが消えて、危険の生じたときとなった。これがはなはだどうもざる法になったと、こう言わるるのだが、私は、法律家にあらざる良識の方々が言わるるのならばある程度敬意をもってお聞きもいたしまするが、法律専門家がこれを言わるるに至っては、私ははなはだ不本意きわまるものだと考えるのであります。私はその案を見るなり、これははなはだいかぬ、こういうことを法律に載せるということはいかぬ。いやしくもこの法律は刑罰法です。人を罰する法律です。その人を罰する法律に「おそれある」――「おそれ」とは一体だれがきめるのだというと千差万別、どの人が言ってもみなおそれと言えば、何がおそれになるかわからない。そういうことでは、刑罰法としては最も危険千万だ。きのうここに来られた宮崎先生が、しろうとが聞いたら一体何のことだろうと思って心配する。くろうとだけならばよろしいが、しろうとに対してはこういうものは法律としてはいかぬと言われた。まことにどうも何というか聞きやすいようなことで、しろうとらしいようなことであるが、それをくろうとの皆さんがこれに便乗して、政府に対して反対すればいいから反対されるのかもしれぬが、言われるということは、はなはだ私は遺憾千万だと思う。
 しかも、その法律のもとには、みなその前にこれに適応した取り締まり法があります。取り締まり法において十分取り締まって、その上でなお聞かないで、それが危険としてあらわれて出てきた、そのときに初めて処罰する、こういうことにおいて初めてこの法律が生きてくるものであって、何でもかんでもどうも危険があるようだからひとつひっ捕まえてやろう、何でもかんでも危険だからといって世の中を騒がしてやろう、かような考えでもってこの法律をつくろうとするのならば、私ははなはだとりません。その意味において、現在出ておりまする法律案は最も適当したるものとして原案に賛成せざるを得ないのでございます。
 次いで申し上げたいのは、第五条の、岡沢君もずいぶん熱心に言われましたが、これはどうもまことに、くしくも私と同意見なのです。私は初めから、一体こういう法律をつくってもいいものかということを言って、私自身どうもこれは差しつかえないのかどうかを疑問にしておりましたが……(「それじゃ反対したらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)どうも反対の人から言われると、私はわが意を得たりと言いたいくらいです。けれども、昨日の参考人が出てきて言われるところを見ると、これはやはり画期的だ、この法律によってこれを入れて、実際においてやってみたほうがまことにいい経験だと言われるから、私もどうもこれははなはだあぶないものだと思うが――これはしばしば法務当局に対して申し上げておるのです。確信があるか、やってみて、もしいかぬとするならば、これはいつでも訂正してもらわなくちゃならぬ。これは裁判所自身においてもどのようにやられるか、われわれも非常な注目をせなければならぬものでございまするが、まあ学者もそろって画期的のものだからこの点はいいとこう言われるなら、われわれもあぶないとは思いまするが、学者がそう言われるならばひとつやってみようじゃないですか。その上でいかなかったらやめるというので、この画期的と言わるる法律をひとつ適用して、その効果を見たいのであります。そのかわり法務当局におきましても、その結果に対しては十分なる注意を払って、よい考えを持ってもらいたいと思うのであります。
 そのほか、いろいろの点はあります。施行の点や刑罰の点はありまするが、これは考え方によっての点ですからここで申しません。
 この大きな意味において、私は、この修正案に反対し、原案に賛成するものであります。(拍手)
 青柳君のこの修正案は、これはなかなかむずかしいことを書いてありまして、非常によく研究しておられることに敬意を表しまするが、一口に言えばもっと重く罰せよということと、これはやはり刑法の無過失責任論がこの意味に入っておるように思います。考え方はあるいは考え方であるかもしれぬが、現在においては直ちにこれはとるべきものでない。原案のこの法律をもって適用して、その上において必要があれば、われわれはあなた方に同調することはやぶさかではございませんが、一ぺんにあなたがたに同調するというわけにはまいりません。
 この意味において、まだ尚早であるという意味から反対いたしまして、原案に賛成するものでございます。(拍手)
#28
○高橋委員長 畑和君。
#29
○畑委員 私は、日本社会党、公明党、民社党三党を代表いたしまして、まず日本社会党、公明党、民社党三党提案の修正案に賛成、共産党の青柳君の提出いたしました修正案に反対、政府原案に反対の意思を表明いたしたいと思います。
 そもそも、今日のごとく企業の事業活動に伴い発生する公害がますますひどくなり、被害がいよいよ深刻化している状況においては、公害による加害行為を道義的、社会的非難に値するものとして、これら行為を自然犯としてとらえ、これが禁止、抑圧に刑罰をもって臨むべきであるとする世論が高まり、その世論を背景として今回政府が人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律案を提案し、刑罰の威嚇による一般予防の効果をあげようとしたことに対しては、一応の評価を与えるにやぶさかではございません。
 しかしながら、今回の提案の基本的問題は、公害の抑止については各種行政規制法規の強化がその第一次的な役割りを持ち、刑罰の果たす役割りはあくまでも第二次的なものであるべきにもかかわらず、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等による直接規制の強化、特に環境基準、排出基準等を公害の現状の改善に役立つに十分なだけに整備強化することに先立って立法化されんとしているところにあります。
 もとより公害を抑止するためには、公害現象の本質に即し、かつ、これに最もふさわしい形でこれを的確に把握し、十分に処罰の実効をあげ得るものとすることであります。
 ところで、はたして本法案が右処罰の実効性をあげ得るかいなかの観点から本法案を検討した場合、まず公害が本質的には企業活動によるものであるにかかわらず、事実行為者がまず把捉処罰せられ、それに付随して企業者たる法人が処罰をされるにすぎない点であり、しかもこの事実行為者としてはせいぜい工場長以下の従業者が処罰され、それより上の幹部が処罰される可能性はなく、しかも法人に対する罰金は最高五百万円にしかすぎない。これは法技術的な制約があるとはいえ、いかにも見当はずれの方策だと評さねばなりません。
 次に、危険の発生についての因果関係の立証の困難性を救うため、推定規定を置こうとするものでありますが、この推定規定はきわめて限定的かつ形式的であり、一見画期的な規定のごとく見えて、実際には実効性が少なく、さほど有効なものとは思われず、特に異種原因の複合公害についてはもちろんのこと、同種の複合公害についても、排出基準を守っていさえすれば違法性を阻却するとの解釈と相まって、ほとんど実効性がないものといわざるを得ません。
 また、公害が長期的かつ継続的排出の結果であることを思えば、当然企業内の担当者が交代、転勤することが予想される事態に対し、従来の共犯理論をどのように適用するかの困難な問題も存するのであります。
 さらに、最も非難さるべきことは、法務省原案にあったいわゆる「おそれ」条項を削除して政府原案としたことは、財界の圧力による後退であることは明らかであり、しかも効果は変わらないと弁解するにおいては、これを許すことはできません。
 これを要するに、前述の第一次的役割りを持つ各種規制法の整備強化がいまだ十分になされていない点との関係において考えるならば、本法案は国民に対する全く見せかけの看板倒れの公害対策法案ではないかとの疑念を抱かしめるに十分なものと断ぜざるを得ないのであります。
 右のとおり、欠陥だらけの法案ではあるが、せっかくの提案でもあり、一歩前進には違いないから、われわれは右「おそれ」条項の復活と食品公害に対する処罰条項とを加えた最小限の修正案を提出し、修正可決の上成立せしめようと考えたものでありますので、三党提案の修正に賛成をし、そしてまた、青柳盛雄君提出の修正案、これに対してはわれわれの修正案とは違う考えに立っておりますので、残念ながら反対、また、われわれの修正案と違う考えをとっております政府原案に対して反対を表明いたさなければならないのであります。
 以上をもちまして、討論を終わります。(拍手)
#30
○高橋委員長 次に青柳盛雄君。
#31
○青柳委員 私は、日本共産党を代表し、内閣提出の本法案及び日本社会党、公明党及び民社党共同提案にかかる修正案、並びに私が昨日提出いたしました修正案について、討論を行ないたいと思います。
 もとよりわが党は、人の健康にかかる公害を人道に反する犯罪として処罰することに反対するものではありません。自然と人類との正常な循環を破壊する公害は、いわゆる緩慢な殺人であります。それは行政犯ではなくて、自然犯であります。
 公害罪を明確に規定し、この犯罪を犯した者がかりそめにもその処罰を免れることなく、かつ公正迅速に罪を問われるように立法いたしますことは、一面において公害の被害者であるすべての国民の強く求めているところであるとともに、他面において公害を防止し、根絶することにも役立つことは言うまでもありません。
 しかるに、本法案は、次の諸点においてこの要請にこたえるものとはなっておりません。
 その第一点は、本法案の犯罪類型はいわゆる危険罪でありまして、理論上は有害物質の排出行為自体を犯罪とし、いまだ人の健康が現実に害せられる以前の段階において処罰しようとするものであるにもかかわらず、その危険の概念規定が明確を欠いていることであります。その結果として、この法律を具体的事案に適用する場合、解釈のいかんによって統一を欠き、ある者は罰せられ、あるいはある者は罪を免れるという不公正な結果を生むおそれがあるばかりでなく、かかる法律をみだりに適用するならば、人権じゅうりんを怠起するとの非難をおそれ、検察官も裁判官も、その適用に消極的となり、実際の運用においては、現実に被害が生じる段階に至って初めて本法を適用し、本来刑法の傷害罪または殺人罪として処罰すべきものを、本法の罪で軽く処罰するというおそれすら生じるのであります。
 基本的にかかる不明確さを持っている本法案は、公害犯罪を厳罰にするとともに、公害を未然に防止することを求めている国民世論にごたえ得ないばかりではなく、これを裏切るきわめて欺瞞的なものといわなくてはなりません。
 その第二点は、本法案は、二つ以上の企業体が同種の有害物質を排出した結果、それらの物質が集合することによって初めて人の健康に被害を生ぜしめるに至った場合には、そのいずれの排出行為をも有罪として処断することができないと解釈される欠陥を持っていることであります。
 わが国の公害の現状は、一企業の単独行為のみによって公害を生ぜしめるというよりも、事実上は非科学的であり不徹底な排出基準を一応は守っている多数の企業の排出行為の複合で公害現象を起こすというところまで放置されてきたことは、天下周知の事実であります。
 かかる現象を犯罪として処罰し得ない法律は、とうてい国民の要求にこたえ得ないばかりでなく、ざる法であるという世論の非難にたえ得ないものであります。
 その第三点は、本法案は、理論上はともかく、事実上は人の健康を害する物質を排出する大企業を除去するため、当該企業を行なう実質上の業務執行者を犯人として処罰するのではなく、その企業体の機構内において現場の責任者または従業者を行為者として処罰する結果となること、及び経済的に公害防止施設を完備し得ない中小零細業者を厳重に処罰するおそれのある欠陥を持っていることであります。
 かかる法律は不公正であり、事実上一部の者を処罰するにとどまり、大企業の最高責任者を免罪する不合理を免れることができません。
 以上のような致命的ともいうべき欠陥を持っている本法案は、時代の要請に沿い得ないものといっても過言ではないと考えます。
 しかしながら、本法案が、他面において公害行為を自然犯として処罰するという構想を持っていることは、公害は産業発展のためやむを得ないものであり、本来不道徳ではないとする企業側の従来の誤った考え方を改めさせ、企業は公害犯罪を犯すものであるとの正しい考え方を定着させ、被害者である国民大衆がこれを糾弾し、是正を求めることに立ちあがる契機をつくるという点で、一定の前進を持っております。
 よって、わが党は、本法案に絶対反対というのではなく、前記の国民感情をも考慮するならば、一応棄権という態度をとらざるを得ないのであります。
 しかしながら、わが党は、これとは構想を別にいたしまして、第一に、企業による公害を真の自然犯として処罰するための公害罪の類型としては、本法案のように危険罪とするのではなく、有害物質を、科学的に厳格に定められた排出基準、環境基準にそむき、反復して排出しつつあえて企業活動を続けているものの行為自体を、公害事業罪として厳重に処罰すること、第二に、この罪を犯してその結果として人を死傷させるに至った者に対しては、刑法所定の結果的加重犯にならない、これをさらに重く罰すること、第三に、以上の犯罪を迅速かつ適正に処罰するためには、これを刑法の職権乱用罪と同様に扱い、刑事訴訟法上起訴強制の手続を設けること、とれこそ人の健康を害する公害を徹底的に取り締まり、公害という非人道的な犯罪の絶滅を期するゆえんであると確信するものであります。
 最後に、日本社会党、公明党及び民社党共同提案の修正案は、危険概念を政府提出法案より修正する点及び食品公害罪を加えるという点において前進を持っておるものでありますから、わが党はこれに賛成するものでございます。
#32
○高橋委員長 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。
 まず、青柳盛雄君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#33
○高橋委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、沖本泰幸君外二名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#34
○高橋委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 続いて、原案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#35
○高橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○高橋委員長 本法律案に対し、沖本泰幸君外八名から、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、共産党、五党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されました。
 この際、提出者の趣旨説明を求めます。沖本泰幸君
#37
○沖本委員 自由民主党、社会党、公明党、民社党、共産党、五党を代表して、附帯決議案の趣旨を説明いたします。
 まず、案文を朗読いたします。
   人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律案に対する附帯決議(案)
 一、政府は、複雑多岐にわたる公害の実情にかんがみ、不断の努力によりいやしくも企業責任が現場責任者のみに転嫁されることのなきよう努める等適切な運用をはかるとともに、今後公害の状況に応じ必要により関係法令について所要の改正措置を講じ、将来いわゆる食品薬品公害等の防止についても規制措置を検討するなど公害の防止に万全を期すること。
 二、政府は、公害監視につき適切な措置を講ずることによりいわゆる公害犯罪の未然防止及びその的確な把握に努めるとともにこの種事件の迅速かつ適正な処理に資するため裁判、検察その他関係機関について人的物的両面にわたりその整備強化をはかること。
  右決議する。
 趣旨につきましては、質疑の過程で明らかになっておりますので、省略いたします。
 何とぞ本決議案に御賛同賜わり、すみやかに御可決賜わりますようお願い申し上げます。
 以上で終わります。
#38
○高橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 沖本泰幸君外八名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#39
○高橋委員長 起立総員。よって、沖本泰幸君外八名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
 ただいまの附帯決議に対し、小林法務大臣から発言を求められております。これを許します。小林法務大臣。
#40
○小林国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府としましては十分にその趣旨を尊重してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
#41
○高橋委員長 おはかりいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#43
○高橋委員長 次に、裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。青柳盛雄君。
#44
○青柳委員 ただいま議題となっております裁判官並びに検察官の俸給の改正に関する法案について、最初に法務大臣にお尋ねいたします。
 今度の報酬の引き上げ率は、裁判官については一八・三%、それから検察官については一五・何%であるという説明を前に承りましたが、これは平均の昇給率のようでございまして、資料によりますと、裁判官の場合も、検察官の場合も、おおむね上級の号俸については、改定率が非常に高いのでございます。たとえば判事の特別給与という欄を見ますと、これは二四・一%、それから判事一号、検事一号は二八・八%、二号は二六・二%というように、非常に平均よりも高いのであります。しかるに判事八号俸、検事八号俸あるいは判事補の五号俸とか検事十三号あるいは副検事七号というところにまいりますと一〇・八%、あるいはもっと低い判事補の一号俸では一〇・一%というような率になっていることがわかりました。このように上に厚く下に低いというのは実情に合わないんではなかろうかということをおそれるのでございます。
 その理由は、育ち盛りの子供を持っている、そしてアルバイトもできないでもっぱら親の扶養によって育っているところの乳幼児並びに学童などをたくさんかかえている下級の裁判官あるいは検察官は、非常に多くの収入を必要とするものでございます。もちろん上級の裁判官あるいは検察官も、子供が大学に行くとかあるいは結婚をするとかいうようなことで費用もかかるでございましょうけれども、いまのような物価高の中では、大学へ行く場合でもあるいは結婚する場合も、アルバイトあるいは就職いたしましてみずからある程度の収入を得るというのが現状でございます。上級だからといってそれを免れることはできないようなのが現状でございます。そうだといたしますと、上にのみ厚く下に薄いということは、公平の原則からいっても不自然ではなかろうかということを考えるわけでございますが、このような差別を設けられた根拠というものはどういうところにあるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
#45
○小林国務大臣 ただいまのお話は、さような御意見もございましょうが、私どもできるだけ事務的にこれの作業をしてもらったのでありますから、いまのようなことにつきましては担当官からお答え申し上げます。
#46
○貞家政府委員 御指摘のとおり、一般職の公務員につきまして平均改定率が一〇・七%になっておりますのに対しまして、裁判官、検察官の平均がやや上回っております。なお、御指摘のとおり、裁判官、検察官の号俸によりましてかなりその改善率に違いがあるのも事実でございます。ただ、今回の裁判官、検察官の給与の改定は、人事院勧告に伴いますところの一般職の職員それから特別職の職員の給与改定に準じて、おおむね従来同じ額を受けておりましたものを比較いたしまして、その一般職の給与改定に準じて改定したわけでございます。
 ところで、今年の人事院勧告におきましては、ちょうど裁判官、検察官のただいまおっしゃいました上位に当たりますところ、それに対応しておりますところの指定職俸給表というものがございますが、これを受けております者の給与をかなり大幅に引き上げることにしたわけでございます。それは主として民間企業の役員等の給与の実情を考慮した結果だということが人事院の勧告の中にもうたわれているわけでございます。したがいまして、そういった一般職の給与改定に準じて裁判官、検察官の給与改定をやるということになりますと、おのずから上位のそういった指定職俸給表の適用を受けております者に対応いたしますところの判事の大部分、検事の上位というところがややほかに比べまして高くなってきたわけでございます。
 ただ、ここで一言申し上げておきたいと思いますのは、一般の職員、つまり指定職俸給表の適用を受けません一般の職員につきましては、勤勉手当その他の諸手当がございます。ところが、指定職俸給表の適用を受けます者は、そういった手当が大幅に本俸に組み込まれていると申しますか、その支給を受けないわけでございます。したがいまして、それに応じまして裁判官、検察官につきましても、判事それから検事の上位の者につきましては、そういった指定職なりの取り扱いを受けまして手当を受けないことになるのでございますが、これに反しまして下位の者につきましては、そういった手当というものも一応考慮しなければならない。そういたしますと、全体のこういった年収を比較いたしますと、御指摘のようにこの表にあらわれておりますように、それほどきわだった違いが出てくるという現象は見られないのではないかというふうに考える次第でございます。
#47
○青柳委員 ただいまの御答弁は、主として人事院勧告の一般職に関するこれにならったということでございまして、人事院勧告そのものを絶対化すればあるいはやむを得ないということになるのでありましょうが、必ずしもこれにすべてが拘束されなければならないというものでもなかろうと私ども考えるので、裁判所あるいは検察庁の職員のような特別な公務員の場合には、上厚下薄という現象をできるだけ是正するという措置をとられることが望ましいと私は考えますが、その点はこれにとどめます。
 さらに、いわゆる定期昇給といわれるようなものについてお尋ねをいたしたいと思いますが、一般職につきましては、一定の期間が参りますと特別な事情のない限り自動的に昇給があるようでございます。これは法律とかあるいは規則などによりましてそういうふうに扱われているようでございまして、私の調べたところでは、十二カ月が一つのめどになって号俸が上がっていくというのが原則のようでございますし、また、もうワク外等の最高の号俸を得るようになってから後は二十四カ月、最初は十八カ月たてばさらにまた上がるというように定められているようでございますが、裁判官あるいは検察官の場合について、いわゆる定期昇給というものは何らかの明確な基準をもって定められているのかどうか。その点、検察官の場合もまた裁判官の場合についてもお尋ねをいたしたいと思います。
#48
○貞家政府委員 検察官の昇給につきましては、ごく概略を申し上げますと、下位の検察官の号俸は二十号までございますけれども、その下位のほうと上位のほうとでは若干の違いはございますが、おおむね定期に昇給をしてまいる。もっともごく上位になりますと、その期間はやや長いということになりますが、基準が定まっております。
#49
○青柳委員 その内容は明らかにすることはできないのでしょうか。
#50
○貞家政府委員 これも概略でございますが、大体検事の八号まで、つまりこれは指定職に対応するものでございますけれども、その間は大体一年ないしは中には半年程度の期間もございます。それ以上の検事につきましては、二年ないし四年といった程度でございます。
#51
○青柳委員 裁判所の場合はいかがでございましょうか、最高裁の方から……。
#52
○矢崎最高裁判所長官代理者 裁判官について、特に準則はございません。
#53
○青柳委員 準則がないといたしますというと、結局は個々の裁判官の号俸をおきめになる機関といいますか、それはどこでやるのでございますか。
#54
○矢崎最高裁判所長官代理者 最高裁判所の裁判官会議でございます。
#55
○青柳委員 準則なしに、最高裁判所の裁判官会議で個々の裁判官の昇給をおきめになるということは、これはきわめて自由裁量と申しますか、不公平、客観的に見れば明らかに不公平な取り扱いが行なわれるおそれというものを、われわれ外部の者には感じさせるのでございますけれども、何か公表できないような形での秘密の準則はあるのか、どうなのか、その辺のところをお聞きしたいと思うのであります。
#56
○矢崎最高裁判所長官代理者 さようなものはございません。ただ、御承知のように、判事補の期間は十年間でございます。そして、判事補の報酬は一号から十二号まで分かれておるわけでございます。ですから、十二までの号俸について十年間に割り振られて上がっていくということを申し上げることができると思います。
#57
○青柳委員 判事の場合はどういうことになりますか。
#58
○矢崎最高裁判所長官代理者 判事の場合は、人によって違いますが、判事として二十年ないし三十年在職して裁判をしているわけでございます。したがって、そういう在職の年数とかあるいはその方々の能力に応じて、それぞれ最高裁判所の裁判官会議でおきめになる、こういうことになるわけでございます。
#59
○青柳委員 能力というようなことばがちょっと出たように聞こえたのでございますけれども、能力の判定がなかなかむずかしいので、勤務評定あるいは考課表というようなものをつくって、どの程度の能力があるかというようなことを調べる結果になるのではないかと思うのですが、何らかそういうことをやる機構あるいは作業のようなものはあるのでょうか。
#60
○矢崎最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、裁判官と申しますものは、大体三十年から四十年間、裁判所で裁判をやっている方々でございます。したがいまして、判事になる方は、少なくとも十年は経なければいけない。したがって、そういう方々が寄り集まって、青柳委員御承知だと思いますけれども、みんなが同じ仕事をしておるわけでございます。そういたしますと、十年たち、十五年たち、二十年たつ間には、同僚同士の間に、同じ仕事をやっている関係で、お互いの評価というものが出てくるわけでございます。そういう評価というものがすべて長官等にも反映してくるわけでございまして、また最高の裁判官は、これは昨年は上告事件を五千四百件以上は扱ったわけでございます。それから、たとえば四十二年を申し上げますと、実に六千六百件の上告事件を処理しております。こういうことになりますと、四十四年、昨年などのことを考えますと、大体、最高の裁判官は八千人あるいは九千人ぐらいの裁判官の判決を見ておる。それからまた、四十二年ぐらいになりますと、一万二千人からそれ以上ぐらいの裁判官の判決を見ておる、こういうことになるわけでございます。したがいまして、同じ同僚の評価、そういうものと、そうして最高裁判所で裁判官各自が見ておられる判決、そういうものによって、おのずから裁判官の能力というものはきまってくる、それに応じた処置がなされている、こういうわけでございます。
#61
○高橋委員長 青柳君、十二時をだいぶ過ぎたし、それれら、一時から本会議があるので準備が必要なので、いまのこの問題は、国政調査をずっとやるから、そのときにあなた、三時間でも五時間でも許すからゆっくりやるようにして、きょうはこの程度でひとつ……。
#62
○青柳委員 御趣旨はわかります。もちろん、国政調査の際にもお尋ねいたしたいと思いますが、ただいま給与でございましたからお尋ねをしたのですが、それでは一点だけ最高裁判所にお尋ねいたします。
 これは具体的なケースがありますのでお尋ねをするのですが、例の平賀裁判官に対して注意処分がありました。さらには、訴追委員会の決定に伴って福島裁判官に対しても注意処分がございました。こういう注意処分が行なわれたような場合には、慣例か何かによって昇給がストップするというようなことは可能性として考えられるのかどうか、その点だけお尋ねしたいと思います。
#63
○矢崎最高裁判所長官代理者 慣例というものはございませんで、その個々の裁判官、裁判官について裁判官会議でおきめになる、こういうわけでございます。
#64
○青柳委員 あれはいわゆる懲戒ではないようでございますので、減俸ということにはならないと思いますが、やはり能力プラスそういうことも、昇給をきめる場合の判断になるということはあり得るのでございましょうか。
#65
○矢崎最高裁判所長官代理者 慣例としてはございません。
#66
○青柳委員 それじゃ、終わります。
#67
○高橋委員長 これにて両法律案に対する質疑は終了いたしました。
 次回は、明十一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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