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1970/11/26 第64回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第064回国会 本会議 第3号
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1970/11/26 第64回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第064回国会 本会議 第3号

#1
第064回国会 本会議 第3号
昭和四十五年十一月二十六日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和四十五年十一月二十六日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後一時四分開議
     ――――◇―――――
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。下平正一君。
  〔下平正一君登壇〕
#4
○下平正一君 わが国を取り巻く世界の情勢、特にアジアの情勢は激しい動きを示しております。佐藤四選を終えまして、わが国の政局もまた大きく変動をしようといたしております。こうした情勢のもとに幾多の重要な課題をかかえて召集をされました第六十四国会の冒頭に、私は、日本社会党を代表して、内外政策の重要な数点について佐藤総理の所信をただしたいと思います。(拍手)
 今国会の召集に先立ちまして、十一月の十五日には沖繩県民の国政参加の選挙が行なわれ、この議場に沖繩県民を代表する五名の同僚議員を迎えることができましたことを諸君とともに喜びたいと思います。(拍手)
 この国政参加の選挙において、日米共同声明路線の打破を主張する革新勢力が完全なる勝利を見たということは、その意味するところまことに重大であります。(拍手)佐藤内閣は、昨年来、沖繩の核抜き、本土並みとか、安保の自動延長とかいうことばで国民をごまかしてきたのでありまするが、核の撤去どころか、沖繩基地はますます強化され、安保条約は核安保、アジア安保に変質をいたしております。共同声明は、自動延長ということばによる新安保条約の締結にほかなりません。安保条約の拡大の中心にある沖繩県民は、国民投票的な意味を持つ国政参加の選挙で、佐藤内閣の安保路線を明確に拒否をしたのであります。(拍手)
 私は、沖繩に関する具体的な質問は、すべて同僚の上原君に譲りますので、ここでは、日米共同声明路線が沖繩県民によって拒否をされたという冷厳なる事実は、まさに佐藤総理に対する事実上の不信任であるという点を指摘をいたしたいと思います。(拍手)
 本年、わが党は、成田委員長を先頭に、ソ連、ドイツ、朝鮮、ベトナム、中国などへ連続的に代表団を派遣し、これらの国々の友人と話し合いをいたしました。この話し合いを通じて明らかになったことは、アジアの諸国民が、日米共同声明や第四次防衛計画と国防白書にあらわれている日本軍国主義の復活の危険性に対して、きわめて強い不信感と鋭い警戒心を抱いているということであります。もし政府が具体的行動によってアジア平和のための措置をとらなければ、いかに佐藤総理が、日本は軍事大国にはならないと口先で唱えてみても、それはアジア諸国民の不信感を増大させることにしかなりません。いま求められているには、口先だけの甘いことばではなくして、具体的な行動であります。日本が今日とるべきアジア平和に対する行動は数多くありまするけれども、私は、本日は対中国問題にしぼって総理のお考えをただしたいと思います。
 最近、カナダ、赤道ギニア、イタリアなどが、中国は一つであるという明確な立場に立って中華人民共和国を承認をいたしました。西欧側の国を含めてさらに多くの国が引き続き中国を承認することが予想されております。国連総会では、アルバニアの決議案が五十一票を獲得して、ついに多数になりました。このように、いまや中国封じ込め政策の破綻が明らかになったのを見て、御承知のとおり、アメリカは、国連の総会で、明らかに中国は二つであるという意味の演説をいたしました。ところが、それに引き続いて演説した日本の鶴岡代表も、まるでアメリカのオウムのように、アメリカ代表引き写しの演説を行なって、世界各国代表の失笑を買いました。(拍手)しかし、これは笑いごとでは済まされません。私は、この際、一つの中国と二つの中国との関係について、佐藤総理の所信をお尋ねいたしたいと思います。この点が、いまや対中国関係のとびらを開くことができるかどうかのかぎになっているからであります。あなたは、一つの中国の立場をとるのですか、それとも二つの中国の立場をとるのですか。どちらかを明らかにここで示していただきたいと思います。一つの中国、一つの台湾だなどというごまかしは、もう許されません。一つの中国、一つの台湾とは、まさに二つの中国論の変形にほかならないからであります。私の質問に対して、おそらく総理は、従来と同様に、一つの中国の立場をとる、なぜならば、北京も台湾もともに一つの中国を主張しているのに、第三者が二つの中国などと言うべきではないとお答えになると思いますが、その前提に立って、さらにお尋ねをいたしたいと思います。一つの中国の立場に立つとするならば、北京の中華人民共和国政権と、台湾の蒋介石政権と、どちらが中国を代表する政権であるのか、総理の考え方を明確に示していただきたいと思います。(拍手)
 ここで、私は次のことを指摘しておかなければならないと思います。すなわち、蒋介石政権は、中国革命に敗れて、中国国民に見放され、大陸から台湾へ逃げ込んだ亡命者集団であり、中国本土の七億の人民を代表していないばかりか、台湾千四百万人の住民をも代表しておりません。アメリカの指先で動く指人形にしかすぎないのであります。したがって、中国を代表する政権はただ一つ、中華人民共和国政権しかあり得ないということであります。佐藤総理、あなたは好むと好まざるとにかかわらず、この事実をいまこそ認めるべきであります。一つの中国を代表する政権は一つしかありません。カナダあるいはイタリアと日本は、台湾問題の比重が違っているという意見があります。まさにしかりです。かつて台湾を植民地に持ち、そうして第二次大戦の敗北によって台湾を中国へ返還することをきめたカイロ宣言、ポツダム宣言を受諾した日本こそ、台湾問題で明確なる態度をとることによって、初めて日中関係を解決することができるのであります。国連における重要事項指定方式を取りやめて、中国代表権の回復に努力すること、中国との政府間接触を行なうこと、吉田書簡を廃棄すること、チンコム、ココムの規制を廃止すること、郵便、航空、漁業などの政府間協定を結ぶことなど、対中国関係で具体的に踏み出すステップはたくさんありまするが、佐藤総理が、中国は一つであり、それは北京政府であるとの基本を明確にするならば、これらのステップは、どれであろうと、日中関係正常化への道となることは疑いありません。総理はこの際、中国は一つ、それは北京政府であるとの立場を明確にすべきであります。決意のほどをお伺いいたします。(拍手)
 アジアにおける最大の工業国である日本と、七億の人口を持つ大きな社会主義国である中国、この二つの国が敵対関係に立つのか、それとも友好関係に立つのか、これによってアジアが戦争か平和かに分かれることは、三歳の童児でもわかることであります。日本は断じて中国と友好、国交回復の道をとるべきであります。それが絶対多数の国民の世論であります。(拍手)日中国交回復促進議員連盟に多数の自民党議員が参加しようとしていることも、この一つのあらわれでありましょう。
 しかるに日本は、第二次大戦が終わって二十五年、最大の被害を与えた中国といまだに国交を回復せず、国際法的には戦争状態になっております。その上に、中国の領土である台湾を、日米共同声明でかってに日米の防衛範囲であると宣言することにより、中華人民共和国に対して再び弓矢をかまえるに至ったのであります。
 私は佐藤さんにお伺いをいたしたい。一体だれが、中国に対して弓矢を向けるように命じましたか。それは明らかに、日本国民の意思では断じてありません。それは、アジア人とアジア人を戦わせようとするアメリカのニクソン大統領の要求ではないでしょうか。(拍手)
 佐藤総理、あなたが昨年の日米共同声明において、台湾を日米の防衛区域に組み込んだことは、あなたの師といわれる故吉田首相とダレス長官との間にかわした日台条約に関する書簡によって、台湾政府とゆがんだ平和条約を結んだことのまさに二の舞いであります。日米共同声明は第二の吉田・ダレス書簡として、日中両国民の国交回復にとっていまや最大の障害になっております。
 こうした意味におきまして、あなたが日中関係を前向きに進める気持ちがあるならば、少なくとも日米共同声明の中の、韓国及び台湾地域における平和と安全の維持は日本の安全にとって緊要かつ重要な要素であるとの条項を、最低限度取り消すべきであります。それこそが、日本は軍国主義の道へ再び進まないことを中国はじめアジアの諸国民に証明する一つの道ではないでしょうか。(拍手)
 中国問題を中心とするアジア情勢は歴史的な転換の流れの中にあります。佐藤総理、あなたが事あるごとに盟友と仰ぐアメリカでさえも、すでに百三十六回にのぼる米中会談を行なっており、中国問題に関してはわが国は全く孤立の状態に置かれているのであります。(拍手)私は、佐藤総理が過去の誤りを改めて、勇断をふるって日中間の戦争状態に終止符を打ち、日中国交回復の課題に邁進されることを要求いたします。私は、これこそが四選総裁としての総理に残された唯一の使命であり、もしこれが不可能であるならば、いさぎよくあなたは政権の座をおりるべきであります。(拍手)
 佐藤・ニクソン会談の密約の結果である日米繊維交渉は、大詰めを迎えておりまするが、佐藤総理は国会の決議を無視し、業界と国民の意思をじゅうりんして、その犠牲の上に、なりふりかまわずアメリカ政府の不当な要求に屈服しようとしております。
 私は、この際、繊維問題に対して二つの点を総理にお伺いをいたします。
 このたびのいわゆる見切り発車の発端となった一九七〇年法案は、御承知のとおり、米国の通商研策が自由貿易主義から保護貿易主義に大きく転換をすることであり、このことはガットを中心とする世界貿易体制の基本原則である自由、無差別、互恵、多角的という四原則を踏みにじろうとするものであります。世界各国も重大なる関心を寄せており、欧州共同体の通商担当委員のダーレンドルフ氏は、今世紀最大の悪法であると批判し、欧州と日本が協力をして、国際世論の力でその成立を阻止することを強調いたしております。米国内においても、御承知のとおり、反対意見が強く高まってきております。したがって、単なる日米間の友好とか二国間の経済問題として処理をしようとする米国追従の姿勢や、特に七〇年法案と繊維問題を取引するような態度は、断じて許されない態度であります。(拍手)繊維交渉は、国際世論を背景にして、被害なきところに規制なし、業界の了解なき規制はしないという立場で、日本の自主性をあくまで貫くべきであります。佐藤さん、あなたは国会の決議を踏みにじり、世界の国や業界の反対を無視してこれだけの混乱を起こしてまで、なぜニクソンの選挙公約のしりぬぐいをしなければならないのですか。(拍手)ニクソンに頼まれたからといって、十分なる専門的、外交的な手続もせずに、それを原則的に受け入れてしまい、そのために業界との約束を裏切ってまで見切り発車をして、今日の混乱を招いているあなたの政治責任は、まことに重大であります。(拍手)また、今日自衛のために立ち上がっている業界に対して、輸出貿易管理令という強権を発動することは断じて許されないことであります。
 繊維問題に対する総理の政治責任と今後の方針について、明確にお答えをいただきたい。(拍手)
 佐藤総理、あなたは七〇年代は内政の年だと言われました。内政の最も重要な課題の一つは公害対策であります。
 今国会の中心的課題でもある公害問題についてお伺いをいたします。
 総理は、去る九月の宇都宮の一日内閣で、わが国の公害問題が特異な様相を呈しているのは、第一に、わが国の経済成長のスピードがきわめて速かったこと、第二に、人口が過度に都市に集中したことだと述べておりまするが、この政府の急速度な経済成長政策こそが、公害防除に対する企業責任を免罪し、自然環境、生活環境の破壊を放置し、その結果として、今日の公害や都市問題と称せられる深刻な事態を招来せしめたのであります。
 このような意味において、わが国の公害は諸外国でいわれるところの環境汚染とは本質的に異なっております。人間の生命、健康までをも奪い取るという深刻な形を呈しているのであります。わが国の公害は、企業第一主義の政策が生んだ、まさに社会的犯罪であります。(拍手)
 昭和四十二年に成立した公害対策基本法の審議の過程で、産業発展との調和をはかるとの条項は削除すべきであるというわれわれ社会党や国民の強い要求にもかかわらず、政府・自民党は応じようとしませんでした。しかし、経済成長と公害対策が両立しないことは、いま政府みずからがその修正を余儀なくされているところを見ても明らかであります。(拍手)この産業優先の政治姿勢こそが、基本法制定後も依然として産業公害が野放しにされ、日本全土を公害列島たらしめた元凶といわなければなりません。(拍手)私は、公害問題に対して以上の立場から、数点にわたって総理にお尋ねをいたします。
 総理は、かねてから人間尊重をうたっておりました。今度の所信表明でも、「福祉なくして成長なし」との基本理念のもとに公害対策に取り組む決意を昨日表明をいたしました。ところが、今国会に政府が提出を予定している公害関係法案を見ると、この決意と公約はほとんど生かされておりません。大幅に後退をしていることはまことに遺憾であります。特にわが国の公害の七〇%以上を占めるといわれておりまする産業公害の規制にあたって、企業責任の明確化と、企業の公害対策の実行を促す意味で最も有意義だと考えられていた無過失賠償責任の制度化は、これまでの総理のたびたびの言明、山中総務長官の国会における発言にもかかわらず、今国会への提出が見送られようとしております。また、注目されておりました公害罪法案の制定には、早くも財界や経営者団体からの反対の動きが活発化し、このために政府・自民党もこの圧力に屈して、その成立が危ぶまれております。国民が政府・自民党に最も不信を抱いている点はこの点にあります。
 過ぐる宇都宮での一日内閣において、十五歳の高校生が述べた、自民党が企業から金をもらっている以上、どれほどの決意を持って公害対策に取り組めるのかという疑念は、国民すべてに共通する疑念であります。(拍手)総理は、国民に向かって公徳心を問う前に、財界のいかなる反対があろうとも、無過失賠償責任の制度は、今国会で公約どおり実行するということを国民の前に明らかにすべきであります。(拍手)公害対策基本法が成立してから三年有余の歳月を経過しましたが、この間の政府の姿勢を見ると、立法措置を講ずることによってむしろその責任を回避し、企業の公害発生を容認してきたといわれても弁解の余地がありません。
 いまや、公害反対の国民世論と住民運動は、日を追って高まっております。政府の企業責任を免罪した法律では、公害の解決を期待することができないという失望感が広がっております。いかなる法律がつくられようとも、そこに住民の参加が保障され、住民監視の体制がなければ、血の通ったものとはならないのは当然であります。現に、東京や横浜などの革新自治体におきましては、政府に先がけ、地域住民の意思を背景にした公害対策が着々と進められております。
 佐藤さん、今後の公害行政の中で、どのような形で住民の参加を保障するのかお伺いをいたしますと同時に、十分なる予算的裏づけを持った地方自治体への権限委譲の措置を断行するお考えがあるかどうかお聞きいたします。
 近く発足を予定されておりまするアメリカの環境保護庁は、予算十四億ドル、職員七千五百名を有する画期的なものだといわれております。わが国よりははるかに対策の進んでいるアメリカでさえも、このような決意をもって公害絶滅と環境保護に対処しようとしているのであります。
 しかるに、わが国の公害対策本部の職員はどれほどでありまするか、わずか数十名にすぎないのであります。それのみか、各省庁間の対立が激しく、一貫性を欠いているのであります。たとえば、すでに今国会に提出を予定されておりまする大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの改正案は、企業擁護の立場に立つ通産省などの抵抗によって骨抜き同然にされ、また、そのほかの諸法案も具体性を欠き、これでは実効ある対策が期待できないとする非難が、厚生省内部にさえ起こっているではありませんか。(拍手)
 この際、公害対策行政を一元化して推進するために、新たに環境保全省の設置が必要ではないかと考えるものでありまするが、総理の所見を伺いたいと思います。(拍手)
 次に、物価問題についてお尋ねをいたします。
 物価問題を一言にしていうならば、本気で物価問題に取り組めば物価の安定は可能であるにもかかわらず、佐藤さん、あなたは、何もやっていないということであります。
 池田内閣の経済政策を批判して、特に物価の安定と人間性の回復を中心公約に掲げ、あなたが内閣を組織して六年になります。この間、消費者物価は実に四一・五%も上昇しております。総理は、これを公約違反と思いませんか。あなた、責任を感じませんか。昭和四十一年以来、物価安定に関しては、幾つかの機関が幾つかの提案を行なっておりまするが、あなたは一つも実施していないじゃありませんか。それのみではありません。昨年夏の物価安定政策会議で、あなたは「経済成長のためには物価の上昇はがまんすべきだ」と発言をいたしております。そもそも日本の経済成長は、公害対策を怠り、交通地獄や住宅難を放置して、国民生活に犠牲のしわ寄せをして実現したものであります。世界に類を見ない公害で国民を苦しめた上に、成長のためには物価上昇はがまんしろという態度は、まさに重大なる公約違反であります。(拍手)
 このような無責任な態度だから、今年度の経済見通しは、政府が四・八%といたしましたが、政府統計によりましても、九月の前年同月比ですでに七・四%、今年度じゅうには平均して七%の上昇は避けられないという異常な事態になっているではありませんか。(拍手)しかも、政府は、私鉄運賃やビールの値上げを認め、さらに、郵便料金、電話料金、健康保険料など公共料金を相次いで値上げをして、物価上昇の機運に一そうの拍車をかけているではありませんか。
 総理は、昨日の所信表明でも、「福祉なくして成長なし」と発言をされましたが、この際、私は、物価安定なくして成長なしとの理念に立って、物価問題にまじめに取り組むべきことを要求するとともに、具体的に、今後の物価に関する責任ある見通しと対策を、国民の前に明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 最近のカラーテレビの二重価格に対する消費者の手による告発と抵抗は、佐藤さん、あなたの物価問題に対する国民の激しい憤りのあらわれであることを銘記すべきであります。(拍手)
 物価問題の解決のためには、高度経済成長という、大企業の過大な設備投資や日銀の信用膨張を中心とするインフレ政策を改めて、安定した経済成長に転換をしなければ根本的な解決はないと思いますが、この際、これ以上物価を上げないために、佐藤さん、あなたがやる気があればすぐにでもできる二、三の点について、提言をいたしたいと思います。
 その一つは、公正取引委員会に消費者代表を加え、これを強化改善して、独占価格、管理価格に鋭いメスを入れ、独占、寡占に基づく価格の硬直性を打ち破ることであります。
 その二つは、現在検討中の公共料金の値上げをやめることであります。
 その三つは、生鮮食料品の流通機構の改善を直ちに行なうことであります。
 以上、物価問題について、明確なる総理の御答弁をお願いをいたします。(拍手)
 次に、目下最も重要な問題の一つでありまする農政について、政府の方針をお尋ねいたします。
 いま、わが国の農業は、文字どおり存亡の危機にあるといっても過言ではありません。畜産も、果樹も、蔬菜も、何一つ安心してつくれなくなった農家は、いま、最後の頼みとする米の管理制度まで奪われようとしております。農家の八割は、農業だけでは食えないので兼業となり、わずかな専業経営も完全に行き詰まっております。
 岸内閣は、貿易自由化によって、麦、大豆、家畜の飼料、畜産、果樹製品の輸入増大政策をとって、米以外の農産物を不安定にして農業を米に傾斜させ、米の増産をもたらしました。また、佐藤内閣になっては、昭和四十年から連続四年、五十数%の消費者米価の値上げをやり、米の消費を激減させました。ある人はこう言います。岸さんによって米増産の原因をつくり、佐藤さんによって米の消費を減らし、いまの米の余ったのは、岸・佐藤兄弟の無策、無責任の合作である、と言っております。(拍手)
 特に昭和四十二年、米の過剰が叫ばれだしてからもはや三年になりまするが、その間、米の対策は無責任と無能力の一語に尽きるのであります。佐藤さん、昭和四十三年以来あなたの言われた総合農政は、一体どうなりましたか。自主流通米はすべて産地銘柄を記入した小袋に詰めて販売すると、この本会議場で明言をされた政府の公約は、一体どのように実行されておりますか。百五十万トンの減反というそれは、どのような結果になりましたか。明確なる御説明をいただきたいと思います。(拍手)
 また、佐藤総理をはじめ政府・自民党は、再三にわたって食管制度の堅持を約束されましたが、この公約を守ることをこの議場において確認されることを、あらためて私は要求をいたします。
 食管制度は、単に生産農民のためにあるのではありません。もし米が間接統制になり、また自由販売にされたならば、ちょうどいまの牛乳、果樹、蔬菜のように、流通経費や業者の販売手数料の幅が増大して、生産者も消費者も、ともに苦しむことは火を見るより明らかであります。(拍手)さらに、米が投機の対象になった場合の弊害は、はかり知れないものがあります。
 今日、歴代政府の誤った農政によって農業の矛盾を拡大し、食管制度を動揺させ、さらに加えて、財政上の理由によってわが国農業の根幹を破壊することは、許しがたい農民じゅうりんの政策であります。
 政府は、一方では食管制度の骨抜きを進めながら、他方では畜産物、果樹加工品などの輸入をふやそうとしております。また、資本の自由化によって外国の食品加工資本が上陸をし、一そう農産原料の海外依存を強めようとしております。これは、ただでさえ行き詰まっているわが国の農業をさらに壊滅に導くものであります。農業は、決してもうかる産業ではありませんが、あらゆる産業の基盤として、ほかにかえることのできない重要性を持っていることを見のがしてはなりません。
 政府は、一体わが国の農業を守る意思があるのか、農産物の自由化政策をやめる考え方があるのかないのか、この際、明確なるお考えをお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 ある有名な農政学者は、今日の農業の危機を評して、もし十年前に正しい政策を打ち立てていたならば今日の混乱は起こらなかったであろう、と言っております。私も全く同感であります。昭和三十六年の農政国会において、わが党から提案をいたしました農業基本法案が実現をされていたら、こうした事態にはならなかったはずであります。(拍手)
 米だけの一本柱でなく、米と畜産と果樹の三本柱に農業の構造を改善すべきであります。共同化の育成によって、経営規模を拡大し、土地改良、農業機械、肥料、農薬などに要する経費を軽くして、生産コストを引き下げ、借金をしないでも済む農業をつくろうとするわが党の政策は、今日においてもますます、その正しさが証明されていると確信するものであります。(拍手)政府は、無能にして独善の農政を大きく改めて、わが党の政策を実行する意思がありやいなや、総理の所信をお尋ねいたします。(拍手)
 なお、東パキスタンの災害に対し、この際、人道主義の立場に立って最大の救援活動を行なうべきであると思います。そして、その中心としては、米を多量に送るべきだと思いまするが、あわせて所信をお伺いいたします。(拍手)
 最後に、私は、最近相次いであらわれておりまする反動的な政治その他の動きに対しまして、総理の所信をただしたいと思います。
 まず、見のがすことのできない問題は、司法に対する政治の介入であります。司法の独立は、わが国民主主義の発展にとって、まさに扇のかなめともいうべき重要性を持っているものであります。しかるに、佐藤総理が任命した歴代法務大臣は、公正なる判決に暗に圧力をかけ、あるいは司法制度調査会の設置を画策するなど、公然たる裁判所への支配、介入をはかってきたのでありまするが、過般の札幌地裁に関する裁判官訴追委員会の決定、青法協に対する問題等は、まさにその反動的本質を暴露したものといわざるを得ないのであります。(拍手)
 また、人間尊重を強調してきた佐藤総理が、在日朝鮮公民の国籍書きかえに対してとっている非人間的な態度も、最近の反動的特徴の一つのあらわれであります。国籍選択の自由は、世界人権宣言、国際法で確立をされている人類普遍の基本的な人権であります。ところが、全国革新首長だけでなく、自民党首長まで含めて、まさに人道的見地そのものとして実施している国籍書きかえに対し、佐藤内閣が、公然たる弾圧、挑発行為を行なっていることは、地方自治擁護の観点からも、断じて許すことができないのであります。(拍手)
 わが国は、来たる二十九日をもって、議会創設八十周年の記念すべき日を迎えます。衆参両院ともに改装され、記念祝典も行なわれるのでありまするが、要は、新しい器に古い酒を盛るのでなく、新しい器には新しい酒を盛ることこそ国民が求めているのであります。
 八十年間にわたるわが国の議会制度を振り返ってみるとき、戦前の軍部ファッショによる議会じゅうりんは、目に余るものがあったのであります。また、多くの政治家が、軍部権力の前にひざまずき、侵略戦争への道をひた走りに走ったことは、歴史の物語る事実であります。
 戦後、新憲法が制定されてからの二十五年は、国会においては活発な論争が発展をし、そこには生き生きとした民主主義の息吹きを感じさせるものがあったのであります。
 しかるに、佐藤内閣の成立以来、そのファッショ的な議会運営と議会軽視によって、わが国の議会制民主主義はまさに形骸化されつつあります。わが党を中心に、去る六月一日、安保問題をはじめとする臨時国会の開会を要求したにもかかわらず、今日まで半年間、政府が、憲法第五十三条の規定を無視して国会を召集しなかったことは、議会の軽視であり、きわめて重大な憲法違反であります。(拍手)さらに重視すべきことは、三次防の二倍半、五兆八千億円にのぼる第四次防衛計画など、わが国は、佐藤内閣によって、再び軍国主義への道を歩みつつあることを痛感せざるを得ないのであります。(拍手)
 ここで、私は、昨日起こった三島由紀夫事件に関連して、佐藤総理に警告をしたいと思います。
 三島事件は、単なる狂信的反動分子の飛びはねた事件として済ますことはできません。それは、本質的には、政府・自民党が一貫して進めてきたなしくずし憲法改悪、再軍備の促進、靖国神社国家護持、アジアの社会主義勢力への敵視、軍国主義復活の政策と同じ根につながるからであります。(拍手)
#5
○議長(船田中君) 下平君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
#6
○下平正一君(続) かつて五・一五や二・二六のテロ事件が太平洋戦争の呼び水となったあの歴史を、われわれは断じて繰り返してはなりません。淺沼委員長を右翼のテロで失ったわが党として、このことを強く総理に警告をいたします。今後、このような事件の再発を防ぐ最善の道は、政府が憲法を守り、平和に徹する姿勢を明確に示すことであります。
 国連創設二十五周年記念総会で、あなたは、日本は軍事大国の道へ進まないと演説をされましたが、日本国民に対し、世界の各国に対して、あなたの演説がうそでないことを、行動によって示す責任があります。四十六年度の予算編成で防衛予算を削り、国民生活安定に予算の主力を向けるべきであります。そして、とどまるところのない再軍備の拡大にストップをかけるべきであります。私は、さきの中国政策のところでもあなたの決断を要求したのでありまするが、防衛予算の縮減問題とあわせて、勇気ある決断を要求をいたします。
 以上、私は、日本社会党を代表して、重要な内外政策についての質問をいたしましたが、きのうの総理の所信表明演説には、国民の聞きたいことが何一つ述べられていないことに、国民は不信と失望を感じております。(拍手)私の質問は、まさに国民ひとしく聞かんとするところと信じます。具体的かつ明確なる御答弁を期待いたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 下平君にお答えをいたしますが、およそ民主主義国家におきましては、国の進路をきめるのは国民であることは、御承知のとおりであります。しからば現在、大多数の日本国民は、自分自身の国家目標を軍事国家に置いているかといえば、私は絶対にさようなことはないと、この機会にはっきり申し上げるのであります。(拍手)申すまでもなく、国民の合意は平和国家であると思います。
 ただ、今日、世界でも枢要な経済力を持つに至ったわが国に対し、それと見合った軍事力を持つのではないかと心配する向きもあるようでありますが、日本はそういう道は歩まないんだということを、機会あるごとに強調し、理解してもらうことが必要であります。その具体的な例としては、まず核武装をしないことであり、同時に、必要最小限の自衛力を整備するにとどめるということであると、かように思います。
 第一問についてのお答えは、以上ではっきりしておると、かように私考えます。
 次は、日中問題についてでありますが、これは、下平君がすでに予想しておちれて、佐藤総理はたぶんこう言うだろう、かように御指摘になりましたが、そのとおりであります。私が申し上げるまでもなく、中国は一つであることは、政府が従来とも堅持してきた方針であります。ただ、問題は、双方が全中国の主権を主張している現状におきまして、政府は、わが国が結んだ条約に基づく国際信義を重んじ、国民政府と正式の外交関係を有しているのであります。いま直ちにこの関係を変える考えはございません。(拍手)
 日米共同声明の関連部分は、沖繩の祖国復帰に伴い、わが国の防衛範囲が南西諸島地域に及ぶことの当然の帰結を述べたものであり、同地域を含む極東地域の安全と安定の維持こそ、極東の緊張緩和の前提であると考えるものであり、わが国の希求するものは極東の平和であり、同地域において武力が行使されるような事態が生じることを未然に避けることにあります。
 北京政府との間に友好的な関係が生まれることは、政府の最も期待するところであり、さきに大使級会談を提唱いたしました。いまだに進展を見ておりませんが、引き続き積極的に接触をはかり、これを正常な軌道に乗せたいと考えております。いずれにしても、わが国の中国政策は、カナダやイタリア等の他のいずれの国にも比してむずかしい面がありますので、政府といたしましては、昨日の所信表明でも申しましたように、さらに今後とも慎重に取り組んでまいる所在であります。
 次に、日米繊維交渉についてお答えをいたします。日米両国の経済関係を一そう進展させるため、目下両国政府間において、鋭意話し合いを続けております。互恵互譲の精神に基づいて問題の解決をはかることこそ、両国関係のみならず、世界の自由貿易を発展させるゆえんである、かように信じております。御意見を十分参考にいたしまして交渉に当たりたいと考えますので、一そうこの上とも、御遠慮なしに御支援いただくようお願いをいたします。
 次に、公害問題について、まず、経済をすべてに優先さす政府の企業第一主義が公害の元凶であるとの御意見でありましたが、決してそのようなことはありません。政府の念願する国民生活の一そうの向上、繁栄のためには、経済の成長がもちろん望ましいことでありますが、かといって、企業優先を認めるものでは毛頭ありません。昨日4申し上げましたように、経済成長は、これは手段だという点がはっきりいたしておりますので、そこには誤解のないようにお願いをいたします。
 企業に対する責任はきびし過ぎるほどきびしくとは、かねてから申してきたところであり、急速な都市化と工業化の進展の過程に発生するひずみに対しては、つとに社会開発の必要性を指摘し、すでに十年前より各種公害関係諸施策の実施に当たるとともに、関連社会資本の整備につとめてきたものであります。今回御審議いただく公害関係諸法案は、これをさらに前進さすものであり、これをもってわが国の公害行政は、おそらく世界でも最先端をいく充実したものとなり得るのであります。(拍手)問題は、ぜひとも早く成立さして国民の期待にこたえたいと思いますので、よろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
 次に、無過失賠償責任の問題でありますが、これは故意または過失による責任を大原則とする民法の例外となるものであり、法理論上種々むずかしい問題がありますので、今国会中に結論を得ることは、残念ながらできません。しかし、公害による被害者の救済を容易にすることは当面の緊急課題であり、今後引き続き無過失責任制の導入につき検討を進め、早急に結論を得たいと考えております。
 次に、公害行政の地方委譲については、今回思い切った措置をとったつもりであります。これにより、真に公害行政が地域住民と密着したものとなるものと確信しております。
 また、公害について、住民参加の体制につき御意見がありましたが、これは公害審議会の適切な運用によりまして十分可能のことと考えます。
 公害行政の一元化につきましては、さきに内閣に公害対策本部を新たに設置し、関係各省庁あげて公害対策に取り組む体制を確立したところであり、すでに見るべき成果をあげつつあることは、十分お認めいただけるものと自負しております。今後ともこの体制を利用して、公害対策に万全を期してまいる所存であります。
 次に、物価についてでありますが、最近の消費者物価が当初の政府予想をかなり上回りつつあることは、残念ながら御指摘のとおりであります。当初見積もりの四・八%自体、その実現が容易でないことは、前国会におきましてすでに申し上げたところでありますが、これが現状において七%台に上っている以上、その理由のいかんを問わず、当初見通しが甘かったという御批判は甘受せねばなりません。物価上昇の現状から見て、年度間を通じて六%台にとどめることすらなかなか努力を要する実情でありますので、政府としては物価問題に一そう努力する所存であり、その基本的方向については昨日所信表明において明らかにしたところでありますので、重ねては申し上げません。ただ、たびたび申し上げますように、物価問題は国民の消費態度に負うところが大であり、(発言する者あり)また物価が所得とうらはらの関係にあることもあり、物価の安定は国民各位の御協力が何よりも必要であります。よろしく御理解、御協力をお願いいたします。(拍手)
 また、独占管理価格について御指摘がありましたが、政府としては、独禁法の厳正な運用によって、違法なカルテル行為が行なわれないようきびしく規制すると同時に、競争がより有効に行なわれるよう環境の整備に一そう留意してまいります。
 次に、公共料金については、従来から極力これを抑制し、十分な合理化努力を前提として、真にやむを得ないものについてのみ最小限度の引き上げを認めてまいりましたが、最近の強い物価上昇基調のもとでは、従来にも増して一段と抑制的な態度をとる必要があります。かように政府は考えておる次第であります。
 また、生鮮食料品の流通機構の整備について御意見がありましたが、その重要性は、最近の物価上昇の大きな原因が季節商品の大幅値上がりにあることから見ましてもこれは明らかでありますとおり、先般の物価対策閣僚協議会においても具体的に取り上げたところであります。さきの国会に提出した卸売市場法もすみやかに成立をはかり、流通機構整備のよりどころとしたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。(発言する者あり)継続審議を通していただきたいというお願いでございます。
 次に、農業問題についてお答えをいたします。
 下平君は、食管制度は生産者の保護だけでなく、消費者を守っている点を忘れてはならないとの御指摘でありましたが、私もそのとおりだと思います。私は、食管制度が戦後の食糧危機を乗り切ってきた原動力として高く評価するとともに、農民各位のこの間の御尽力に深く敬意を表するものであります。しかし、いまや時移り、需給事情の大きな変化によって、事態の変化に即応して米の管理を適正に行なうよう、その制度運営の改善をはかるべきことが大きな課題となってきたのであります。私は、食管制度が農家経済に対してはもちろん、国民消費生活一般にきわめて大きな関係を持っていることに十分留意しつつ、慎重にこの問題に取り組んでまいるつもりであります。その意味におきまして、社会党からも十分御意見を出していただきたいと思います。
 また、下平君は、米、畜産、果樹の三本柱を今後の農業の柱として育成せよとの御意見でありました。かように私は伺っておりますが、基本的な方向としては全く私も同感であり、現に総合農政はこれらの生産性の向上と適地適産をねらいとして展開しつつあるものであります。その前途には困難な問題が数多く横たわっておりますが、関係者の一致協力によって、今後とも農業が国民生活の基盤としてりっぱに発展していくことを確信するものであります。
 最後に、下平君は、司法への政治介入、このことを御批判になりましたが、憲法上保障されている司法権の独立がきわめて重要であることは、あらためて申すまでもないところであります。政府が司法に介入する意図もないし、またその事実もないことをはっきり申し上げておきます。三権分立こそ民主主義の基盤であります。さようなことは絶対にない。このことは誤解のないようお願いをいたしておきます。裁判官訴追委員会も独立して独自の権限を行使したものであって、政府とは全く関係はありません。
 また、朝鮮国籍書きかえ問題でありますが、これは国籍そのものの本質及び外国人登録事務の外政法上の性格から見て、国が地方団体に対して与えた適切な指示、指導であり、憲法違反と言うには当たらないものであります。
 次に、第四次防衛計画は目下政府において慎重に検討中のものであり、御指摘の経費ワクも確定を見たものではありませんが、いずれにせよ、わが国の防衛はシビリアンコントロールのもとに、自衛の範囲を大前提とし、国力、国情に即した適切な自衛力を保有しようとするものであり、もちろん核武装などは考えておりませんから、決して軍国主義への道を歩むものではありません。このことは、さきの国連総会におきましても、はっきりと内外に対し申したとおりであり、わが国はあくまでも平和の中において世界に対し独自の貢献を行なうものであることを率直にお認めいただきたいものと考えます。(拍手)
 なお、臨時国会の開催がおそくなったとして、これが佐藤内閣のファッショ化だ、あるいは軍国主義化だ、かような御批判がありましたが、何もかも公式的に反動路線であるとの御意見でありましたが、決してそのようなものではありません。今回提案した公害関係法案にいたしましても、その斬新さと充実ぶりは世界にも例を見ないものであり、これを短期間に同意した政府の熱意のほどもおくみ取りいただきたい、かように考えますので、何とぞ国会におきましても御協議、御審議いただいて、御協力をお願いいたします。
 最後に、三島事件について。昨日の事件につきまして私もたいへん驚いたのでありますが、いろいろ御意見を述べられました。確かにわれわれは、こういう事柄が二度と起こらないように、あらゆる機会に、その動機がどうあろうと、暴力は絶対に排撃しなければならない、こういうことだけははっきり私どもは考えていかなければならないと思います。(拍手)ただいまこの事件は捜査中でありますので、私自身は、ただ私自身の現時点における率直な感じを御披露いたしたのであります。しかし……(「日本刀を持った人をどうして防衛庁に入れたんだ」と呼ぶ者あり)だから暴力をもつこと、暴力をもって云々することはよくないと言っている。そのことが聞こえなかったら、重ねて申し上げておきます。(拍手)
 それから、パスキタンヘの米を送ることはどうなったかというお話であったようですが、これは、ただいま緊急援助の問題と、あるいは恒久的な基本的復旧計画の問題と二つに分けまして、とりあえずただいま必要な米、食糧あるいは医薬品等を現地へ輸送する、さらに再建復興、そういうことについてはあらためて協議する、かような考え方でございます。(拍手)
#8
○議長(船田中君) 小川平二君。
  〔小川平二君登壇〕
#9
○小川平二君 私は、自由民主党を代表いたしまして、昨日行なわれました内閣総理大臣の所信表明演説に対して、若干の質疑を行なおうと存じます。
 先般行なわれた沖繩における国政参加のための選挙によりまして、わが衆議院が五人の議員を新たにお迎えすることになりましたことは御同慶にたえません。今後の御精進と御活躍に対しまして、心から期待申し上げる次第であります。(拍手)
 沖繩県民はもとより、全国民の熱望してまいりました沖繩の祖国復帰は、佐藤総理大臣の格段の御努力によって、明後年には実現する運びとなり、諸般の準備が着々進捗しておりますことは喜びにたえません。なかんずく沖繩返還協定については、日米両国間においてすみやかに締結されることがきわめて望ましいと存じますが、政府はいかなる順序と日程をもってこれに臨もうとしておられるか、まずお伺いいたします。
 次に、祖国復帰に伴い、日本国憲法が全面的に沖繩県に及び、各種の法令が本土と同様に適用されることが原則となることは当然であります。これによって、すみやかに、かつ円滑に本土と沖繩の一体化がはかられることがきわめて必要なことは申すまでもありません。その際、長く本土と異なる制度ないしその運営が行なわれてきた沖繩の県民のために、社会生活、経済生活等について激変を加えざるための配慮を行なうべきことも、これまた当然でございましょう。しかしながら、一部には、沖繩の特殊性を強調して、今後長きにわたって現存の特定の制度や運営を固定すべしとする強い主張が存在いたしております。これをそのまま受け入れるならば、政府の推進してきた沖繩・本土の一体化の趣旨に背馳することとならざるを得ないと存じますが、この点に関し、政府の所見はいかがでございましょうか、お伺い申し上げます。
 次に、日中問題についてお伺いいたします。
 去る二十一日、国連総会での中国代表権問題の表決において、わが国も共同提案国となってきました重要事項指定再確認決議案に対する賛否の票差は相当大幅に縮まり、同時に、いわゆるアルバニア型決議案が過半数を獲得して成立いたしました。中国の国連復帰問題はここで一つの転機を迎えたものと申すべきでございましょう。明年の総会においてこの問題がいかなる形で処理されるか、今日これを見通すことは簡単でありませんが、このままで推移するならば、重要事項処理方式が過半数で否決されるか、しからざる場合においても、アルバニア決議案が三分の二の支持票を得て可決されるという事態さえ、可能性の問題としては指摘されておるのであります。この事実は、カナダに続くイタリアの中国承認、続いてベルギー、ルクセンブルグ、オーストリアその他の諸国の動向とあわせまして、中国を受け入れるべしという国際世論が大勢を制しつつあることを示しているものと理解すべきでありましょう。政府はこの事態をいかに受けとめ、この事実の持つ意味をいかように理解されておられるのか、総理大臣の御所見を承りたいのであります。
 もとより一国の外交は、特定のイデオロギーに奉仕すべきものではございませんし、安易なムードによって左右さるべきものでもありません。国益のために、自主的に、慎重にかつ現実的に展開さるべきものであります。中国問題に対処するにあたって、わが国の直面せざるを得ないわが国に固有の特殊な制約を全く無視して、直ちに百八十度の転換を求めるごときは、いわゆる難きをしいる議論であり、良識ある国民を納得せしむるゆえんではないと信じております。
 しかしながら、中国をめぐる国際環境にきわめて顕著な画期的な変化が生じつつあることがいまや明らかになりました以上、この事実を直視して、代表権問題を含む中国政策全般に対して、長期的な展望のもとにあらためて検討を加えるべきときであると信じますが、政府の所見を承りたいのであります。
 申すまでもなく、日中関係の打開と正常化は、わが国にとってはもとより、アジアの緊張緩和、世界の平和にとって不可欠の、最大の課題であります。長年にわたってこじれにこじれてきた日中関係を正常な姿に戻すことは、さまざまな複雑な要因を解きほぐしていかなくてはならない困難な問題であること申すまでもございませんが、最近の諸情勢は、この問題がもはやわが国にとって遷延を許さざる重大な関頭に立ち至ったことを示しておると思うのであります。政府が一そう真剣に、積極的に問題の解決に努力されるとともに、日中関係改善の手段として繰り返し論議されてきた幾つかの提案ないし懸案についても、この際、新情勢のもとに、実行の可能性をあらためて検討されることを希望するものでありますが、総理大臣の所見を承りたいと存じます。
 政府は、大使級会談によって、直接の政治的接触を企図しておられると承っております。そのこと自体はきわめて望ましいという点について何人も異論はございますまい。先決問題は、しかし、そのための条件と環境と雰囲気をつくるということでございましょう。日中関係の打開のために必要な前提は、相互の不信を取り除くことであります。私は、この点において政府の努力に期待すべき余地はなお広範に残っておると信じておるのであります。不当な誤解はこれを払拭することにつとめるとともに、先方の立場と国民感情を理解することにつとめる態度が必要であると信じます。私は、中国の外交が弾力的、常識的な方向に進みつつあると見られるこの際、政府の一そうの御努力を望むとともに、日中間の感情悪化に油を注ぐ結果ともなる一部勢力の言動に対し、この機会に強く反省を促すものであります。(拍手)
 次に、日米繊維交渉について総理大臣の所見をお伺いいたしたいと存じます。
 この問題は、ニクソン大統領の選挙公約に端を発し、政治問題と経済問題が複雑にからみ合い、昨年五月、スタンズ長官来日以来、一年半に及ぶ長期の交渉となっております。本交渉がかように難航した原因は、米国がみずから提唱し推進してきた自由貿易主義に背馳して、繊維製品の輸出の自主規制というガットの例外的措置をわが国に一方的に要求し続けてきた点にあることは明らかであります。
 本交渉の初期において、当然のことながらガット十九条に基づく解決を主張していた政府が、その後において、米国政府がガットの原則に立ち戻るまでの期間のつなぎの措置として、被害ある品目について輸出を自主規制する用意ある旨の表明をいたしましたのは、もとより日米両国の友好関係の維持という大局的観点からの譲歩であったと存じます。しかるに米国政府は、日本の輸出量の大半に及ぶ品目について、カテゴリー別規制を長期間にわたって継続するという基本的態度を終始くずさなかったのであります。
 かような交渉の経過を通じて、国会においても熱心な論議が展開され、数回に及ぶ決議が行なわれておりますこと、並びにその趣旨については、御承知のとおりであります。私は、この際、総理大臣に対して二、三お伺いをいたしたいのであります。
 まず第一は、紆余曲折を経たこの交渉を貫く日本政府の基本的な態度はどのようなものであったのか、あらためてこれを確認いたしたいのであります。
 次に、本交渉の過程において、さきに述べました国会の決議の趣旨は十分尊重されてきたかどうか、今後も引き続きこれを尊重する決意をお持ちであるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
 伝えられるところによれば、日米繊維交渉は難航を続け、現在のところ、妥結への道はすでに閉ざされているかのごとくでありますが、解決の見通しについて総理はいかように考えておられるか、また、本交渉の早期妥結によって一九七〇年通商法の成立を阻止し得るという十分な確信をお持ちであるのかどうか、お答えを願いたいと存じます。
 この問題がいかなる形で決着を見るにしても、わが国の繊維業界全般にとって相当の影響があり、特に中小企業において倒産、失業という深刻な事態の生ずることは十分予想されるところであります。予想される混乱と被害に対していかような対策を用意しておられるか、お伺い申し上げます。
 わが国の繊維産業は、伝統的な輸出産業として国際収支の改善に大きく貢献してきたことは、高く評価さるべきであります。繊維業界のこうむるであろう打撃については、政府としては当然万全の対策を講ずべきであると信じ、強くこれを要望する次第であります。
 最後に、一言申し上げておきたいことは、全世界、特に米国を中心とする保護貿易主義の台頭であります。米国においては、問題の七〇年通商法案のみならず、イチゴから鉄鋼までといわれるきわめて多数の商品についての輸入規制法案が議会に提出されているほか、一九六二年通商拡大法に基づくエスケープクローズや国防条項の発動を求めるものが続出をいたしております。さらに最近のアンチダンピング法の運用におきましても、これが輸入制限の一つの手段に用いられるのではないかとの印象を受けるのであります。このような情勢から考えますれば、第二次世界大戦以来、自由世界をささえてきたガットの体制が崩壊の危機に臨んでいると申しても過言ではございますまい。日米繊維交渉の早期解決は別といたしましても、総理大臣として、自由貿易擁護のため、今後いかなる対策を講じていかれるか、方針を明らかにせられたいと存じます。
 次に、公害について質問を申し上げます。
 最近各種の公害現象が全国で多発し、国民の公害に対する関心は異常に高まっており、政府の公害対策に対する態度は全国民の注目を集めております。さきに政府が、内閣総理大臣を本部長とする公害対策本部を内閣に設け、公害対策を総合的に推進し、今国会に画期的な公害対策の新法案ないし改正法案を提案して、この課題に真剣に取り組んでおられることは、これを多とするところでありますが、この機会に二、三の点について政府にお尋ねをいたします。
 第一は、公害対策についての政府の基本的態度についてであります。
 急速な経済成長は、必然に、不可避的に国民の健康と生活環境を破壊するという考え方や、あたかも経済成長と国民の福祉が二者択一の問題であるかのごとき論議が行なわれております。総理大臣は、福祉なくして成長なしと言われ、経済成長と国民の福祉をこん然融和せしめると説かれましたが、今国会に提出される公害関係法案にそれはいかように具現されているのか、経済成長と国民福祉の調和を確保するため、具体的にはどのような対策を考えていられるか、総理大臣の御答弁を承りたいのであります。(拍手)
 第二に、公害対策の根本についてであります。
 公害の発生した後に始末をつけるという後手に回る政策をもってしては、効果も限られ、費用もかさみ、国民の不安も十分解消できません。公害対策の根本は、公害を未然に防ぐために産業政策、地域開発政策、社会資本充実のための政策等を総合的に強く推進することにあると信ずるのであります。この意味において、たとえば現行の全国総合開発計画のごときも再検討を加える余地があるのではないかと考えますが、これらの点、政府はいかなる対策を御用意になっておられるか、お尋ねいたします。(拍手)
 第三は、公害対策基本法についてであります。
 現行法は対策を講ずべき公害の種類を限定的に列挙するにとどまっていますが、複雑、多様化する公害対策の要求に、はたして十分こたえ得るや疑いなきを得ないのであります。今国会に提案される公害対策基本法において、この点はどのように扱われておるのか、お尋ねをいたします。
 第四は、公害防止のための公共事業に対する費用負担の問題であります。
 今回提出されました法案には、公害の発生源である企業に公共事業費の一部を負担せしめる趣旨の法案も含まれていると承知しております。対象となるべき企業の範囲、設置を要する施設の種類、計算方法などが、あらかじめ明確にされていることが必要であると存じます。また、国が講ずべき対策の費用は、従来に比して大幅に増額されなければならず、特に技術開発の促進に対する国の責任は、ますます重きを加えてまいりましたが、これらに対する政府の心がまえをお伺い申し上げます。
 最後に、いわゆる公害罪法案についてであります。公害に対して刑事罰を科することは、刑事法規としても画期的なことでありますが、わが国における公害の実情にかんがみ、至上の命題である人間の健康と生命を守るために、政府がこの法案を用意されたことは当然の措置と申すべきであります。その際肝要なことは、順守すべき基準が明確であること、さらに重要なことは、その運用に際して、かりそめにも第一線の捜査担当者の主観や感情によって公正を欠くような運用がなされたり、あるいはまた、特定の政治目的を持つ法律家等によって、これが乱用されるようなことがあってはならないということであります。(拍手)この点について、もとより遺漏なき配慮がなされておることとは存じまするが、政府の御方針を承りたいのであります。
 最後に、私は、内外に大きな衝撃を与えた三島事件についてお尋ねいたします。
 今回の事件は、一個の芸術家の特異な精神構造が生んだ異常な事件であり、一つの孤立した事件であると解すべきでございましょう。かような事件を必然ならしめる基盤、ないし底流が、今日の日本に広く存在しているとは考えられないのであります。したがって、これが連鎖的にさらに組織的な不祥事を生む前駆であろうなどとは考えられません。
 しかし、国際的にも著名な高度の知識人の行為であるだけに、わが国に対する評価をそこなうとともに、あたかも今日の日本に、改憲を企図し、軍国主義の復活を望む勢力が広範に存在しておるかのような誤解を生むことを憂慮するものであります。
 いずれにしても、白昼、このような不祥事を生んだ点について、警備当局の責任は軽からざるものがあると存じます。今後かような事件を再び生ぜしめないために、あるいはまた、この種の反社会的行為を賛美するがごとき風潮の生まれることを防ぐために、政府はいかなる対策をおとりになるか、総理の御所見を承りたいのであります。
 今回の事件は、民主主義日本に印せられた不幸な汚点でありますが、自由を守り、平和に徹するわが国の国是、さらにまた民主主義の基盤は、もとよりこれによって微動だにせぬという点について、諸外国の誤解を解く努力を払われんことを希望して、質問を終了いたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 小川君にお答えをいたします。
 沖繩返還協定の日米間交渉は、日米双方の事務当局間において、鋭意かつ密接に協議を進めております。交渉妥結の見通しとか、協定調印の予定につきましては、何ぶん相手方のあることでもあり、日本政府が一方的にいつごろとこれを明示し得る立場にはありませんが、政府としては、一九七二年内のできるだけ早い時期に沖繩返還を実現することを基本目標としております。そのため政府は、明年春から夏にかけて協定調印の上、明年内に国会の承認手続を完了するよう、諸般の準備を進めることを考えております。
 中国問題は、お説のとおり、わが国にとりましてきわめて困難な問題であります。先ほどもお答えをいたしましたように、双方が全中国に対する主権を主張している限り、双方にとって――これは中華民国と北京政府でありますが、双方にとって満足すべき解決のないことは言うまでもありませんが、特に、わが国は、中国本土と台湾の双方とも歴史的にきわめて深い関係にあり、この点、中国から遠く離れた欧米諸国とは異なる環境にあります。さらに沖繩の祖国復帰に伴い、南西諸島全域が日本の防衛範囲となる結果、わが国の安全保障上も、隣接地域の平和の維持に重大な関心を持たざるを得ません。中国問題の解決につきましては、国際情勢の動向を見きわめつつ、国際信義とわが国益と極東の緊張緩和の観点から、慎重に検討していきたいと考えますが、いかなる解決といえども、相互理解と武力行使の排除の上に立たなければ真の解決とはなり得ないものと考え、大使級接触の実現などにより、双方の間の無用の誤解を払拭する努力を払うとともに、あくまでも武力不行使の原則のもとに、平和的解決の方途を追求したい所存であります。
 国連における代表権問題につきましては、今次総会の表決結果を十分に勘案し、右の基本方針に沿って、今後の事態に対処すべく、慎重に、かつ現実的に検討を行なう所存であります。ただいま、この際に、明確に一方的な意見を述べるということは差し控えるべきだと、昨日所信表明で申しましたように、まだまだ慎重にこの問題は考えなければならぬことだ、かように私は思っております。
 次に、日米繊維交渉に対する政府の基本的態度につきましてのお尋ねがありました。
 昨年十一月のニクソン大統領との会談で、繊維問題をこのまま放置することは、日米関係、日米友好関係にとりまして好ましくないとの観点から、早期に解決することで意見の一致を見ました。その後、閣僚レベルで協議を行なったにかかわらず、交渉が中断したことは御承知のとおりであります。
 しかし、去る十月の会談で、この問題をこのまま放置することは、日米関係にとっても、世界の自由貿易体制の維持のためにも好ましくないので、大局的見地から、合意に達することを目途として、交渉を再開することになりました。現在、この合意に基づいて交渉が行なわれている次第であります。わが国としては、自主規制を行なう場合、あくまでも暫定的であって、LTAのように長期的なものとなってはならない、また、規制の結果、貿易の縮小が生じてはならないとの基本的立場をとって対処しております。また、政府としては、この問題についての国会決議は、その趣旨を十分尊重してただいま交渉しておるつもりであります。
 交渉の見通しについてのお尋ねがありましたが、目下両国間で鋭意解決に努力中であり、その見通しを申し述べる段階に達しておりません。
 米国の輸入制限立法の動向につきましては、米国の議会の問題であり、軽々には判断しかねますが、米議会内における保護主義の勢力は強いので、繊維問題について日米両政府間で合意に達したとしても、このような法案が成立する可能性が全くないとはいえないと私は思います。いずれにしても自主規制ということは、国内関係者の協力がなければ実効はあがらないのでありますから、業者の被害に対してはできるだけの措置を講ずる考えであります。
 なお、政府としては、自由貿易体制を維持する見地から、各種の自由化を促進するとともに、他国における保護貿易主義的動向を抑制する働きかけなどによって、ガット体制の維持、発展をはかっていく考えであります。
 次に、公害問題についてお答えをいたします。
 まず、企業責任のあり方につきましてお尋ねがありましたが、さきにも申したとおり、企業責任はきびし過ぎるほどきびしくしなければならないというのが、かねてよりの私の考え方であります。公害防止は社会的責務であると同時に、いまや国際的責務でもあります。また、公害防止は、当該企業そのものの存立発展の前提条件でもあります。今回の公害対策基本法において企業者の責務を明確化すると同時に、関係各法案において全面的企業に対する規制を強化し、また公害の費用負担を明確化した公害防止事業費の事業者費用負担法案を新設し、さらに公害罪の制定を考える等の一連の法律改正案は、すべて以上の趣旨を法的に強化整備しようとしたものにほかなりません。
 次に、経済成長と国民福祉との関係であります、が、私は国民生活を最重視する観点のもとに公害防止対策を強化充実したがために、日本経済発展の基調がくずれると、かようには考えておりません。私は、日本人の持つ英知とバイタリティは、十分これを乗り切っていくものと確信しております。今日、思い切った公害対策の強化をはかったのも、このような確信の上に立ったものであり、また、わが国経済の着実な発展は、逆に公害対策の充実を可能ならしめ、国民福祉の増進を実現する基盤となるものと考えております。経済社会発展計画は、すでに過度の経済成長が、ひずみの解決と物価抑制を困難にすることなどを考慮し、あらかじめ経済の成長を従来に比べ適度のものにとどめるよう配意して先般改定されたものであり、いま直ちにこれをあらためて再検討することは考えておりません。
 公害対策の根本が公害の未然防止にあり、このため産業政策、地域開発、社会資本の充実等の友般の施策を総合的に推進する必要があることは御指摘のとおりであります。私も過般の一日内閣で同様の趣旨を明らかにしたところでありますが、公害防止につきましては直接的な関連法規にのみたよることなく、総合的に対策を進めてまいる決意であります。
 次に、公害防止事業の費用負担法についてでありますが、具体的な負担額は、多種多様の公害防止事業を地域の実情に即応して円滑に実施するため、地方ごとの審議会に諮問して決定されることにいたしましたが、負担の適正を確保するため、基準につきましてはできるだけ明らかにする方針であります。
 また、公害対策費の充実につきまして御要望がありましたが、四十六年度予算におきましては、最重点項目の一つとしてその充実を実現する所存であり、技術開発の促進につきましても十分留意してまいります。
 次に、いわゆる公害罪の運用についての御注意がありましたが、もとより刑罰法令である以上、その内容におきまして客観的な明確性を必要とすることは当然であって、立法にあたっても、その方向に沿って万全を期すべく慎重に検討中であります。早急に成案を得て提案する予定でありますので、よろしく御審議のほどお願いをいたします。(拍手)
 最後に、三島事件について私の考えを申し上げます。
 先ほどの社会党のお尋ねにもお答えいたしましたとおり、三島君の行動は、どうも私には理解できないものが多分にあります。ただいませっかく捜査中でありますので、軽々しくこれについての私の意見は差し控えますが、一般的に言えることは、き然として言えることは、いかなる理由があっても暴力は絶対に否定さるべきであります。(拍手)有識者の多くの人が新聞やテレビで述べておられるとおり、日本の社会は健全であり、あのような考え方を受け入れる素地はないと思いますが、政府としては十分今後の対策に留意し、類似の事件が起こらないよう警戒する方針であります。
 ただ、一言つけ加えれば、このようなことで三島君のような希有の才能を持った文学者を失ったことはまことに遺憾であります。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(船田中君) 浅井美幸君。
  〔浅井美幸君登壇〕
#12
○浅井美幸君 私は、公明党を代表して、現下の国際的、国内的重要問題が山積する中で、特に日中問題、日米繊維交渉、公害問題などに焦点をしぼって、総理並びに関係閣僚に質問をいたしたいと思います。
 質問に先立ち、沖繩の祖国復帰に先立って、沖繩県民の待望していた国政参加が実現し、本院に五名の沖繩県選出議員を迎えることができましたことを心から喜ぶものであります。(拍手)
 最初に申し上げたいことは、本臨時国会は、言うまでもなく、国民的重要課題である公害問題を審議するわけでありますが、われわれ野党三党は、かねてからすみやかな公害臨時国会の開催を要求しておりました。しかるに、政府は言を左右にして現在まで遷延せしめ、緊急の対策を怠ったことは、行政府の立法府軽視、民主主義の精神を踏みにじることはなはだしいというべきであり、許しがたいことであります。(拍手)野党三党の要求を無視して、今日まで遷延させた理由をしかと伺いたいのであります。
 一九七二年沖繩の祖国復帰のための準備と折衝が続けられております。ここで最も肝要なことは、いかに沖繩県民の意思を反映していくかということであります。政府の一方的な押しつけであってはならないのであります。すなわち、教育委員公選制度の否定、中曽根防衛庁長官の独善的な復帰後の防衛構想などは、このことを露骨に示したものといわねばなりません。
 そこで私は、沖繩県民百万の平和と福祉を実現する真の祖国復帰のために、次の事柄について伺うものであります。
 まず第一に、政府は返還協定に県民の意思を反映する決意があるのかどうか。
 第二に、過日発表された第一次沖繩復帰対策原案においては、教育委員の任命制をうたっていますが、これは現行の公選制のままにすべきであると思うが、その考えはあるか。
 第三に、返還協定の締結はいつごろを予定して
 いるのか。
 第四に、沖繩の外資対策をどうするのか。
 第五に、米軍用地の処理をいかなる方法で行なおうとするのか。
 第六に、沖繩への自衛隊派遣について、さきの中曽根構想を撤回すべきであると思うが、この点についてはどうか。
 第七に、米軍基地の撤去、縮小、返還、毒ガス撤去を、積極的にアメリカ側に要求するつもりはあるのかどうか。
 第八に、近来激しくなっている米軍基地労務者の解雇対策に関連して、沖繩の基地労務者の雇用条件の改善、離職対策、間接雇用制の確立等緊急を要する課題について、沖繩の復帰を待つまでもなく、早急な対策を実施しなければなりませんが、どのように考えているか。
 第九に、尖閣列島の石油資源開発をめぐる日本、台湾、米国の関係をどう判断し、対処しようとしているのか。今後日中国交正常化が実現したときに起こる問題をも含めて、政府の所信を明らかにしていただきたいのであります。
 この一九七〇年代は、国際的にも国内的にも、まさに激動の時期を迎えております。中でも、中国をめぐる国際政治の展開は、七〇年代最大の課題であるといっても過言ではありません。特に、昨年十一月の佐藤・ニクソン共同声明以来、満一年を迎えることになりました。いわゆる第三次日米安保体制が発足してのこの一年は、中国をめぐる国際政治の潮流が大きく変化しようとしているのであります。
 すなわち、カナダに続くイタリアの中華人民共和国政府の承認によって、承認国はすでに五十五カ国に達し、さらにオーストリア、ベルギーなどのヨーロッパ諸国、南米、アフリカの多数諸国が中華人民共和国政府の承認を行なおうとしているのであります。
 また、先日来の第二十五国連総会の中国代表権問題の表決結果は、すでに明らかなとおり、中国代表権問題が討議され続けて二十年、初めて中華人民共和国の国連復帰を認める、いわゆるアルバニア決議案が過半数の賛成国を獲得したのであります。
 これら一連の動きを見るとき、もはや中華人民共和国政府の承認、国際社会復帰は、世界の潮流であり、動かしがたいものであるというべきであります。
 しかるに、政府は佐藤・ニクソン共同声明によって、韓国、台湾との運命共同体を強調して、日米安保体制をアジア核安保に拡大し、中国敵視、中国封じ込めの姿勢をますます露骨にしようとしていることは、時代錯誤もはなはだしく、緊張を激化し、わが国の平和に逆行するものといわざるを得ません。むしろ、おろかなる中国敵視政策をすみやかに撤回し、緊張緩和のためのあらゆる平和努力を払い、中国を挑発する要因をみずから取り除くことがきわめて重大なわが国の使命であり、特に中華人民共和国の承認と国際社会の復帰は、わが国外交の最重要緊急テーマであります。
 従来、政府の対中国問題に対する政策は、長期的視野とその見識が全く見られず、すべてアメリカのアジア政策、中国政策に無批判に追随し、その結果、日米両国の中国封じ込めによる中国孤立化政策はすでに破綻を来たし、いまや、日米両国が国際的孤立を招き寄せようとしているのであります。しかも、わが国が政経分離を固執して、日中政府間に公式の接触ルートを持たないのに比べて、アメリカは、ワルシャワにおける大使会談などの政府間交流、あるいは昨年来第七艦隊の台湾水域常時パトロールを随時パトロールに切りかえるなど、さまざまな米中接近政策が講じられ、アメリカの対中国政策の変換が伝えられているのであります。もし、わが国が従来の対中国硬直姿勢をとり続けるならば、最後に孤立するのは、中国に最も近いわが日本という皮肉な現象となってあらわれ、国際外交場裏における最も悲劇的な役割りを果たすことになることすら予想され、政府の責任はきわめて重大であります。(拍手)
 そこで、総理にお伺いしたい。
 政府は、中国の国際社会への復帰についてどのように考えているかであります。すなわち、従来の政府の対中国政策は、あくまでも政経分離方式であり、かつ中国の出方論に終始した、まことに抽象かつ拒否的態度であったと私は理解いたしております。現在のように、中国をめぐる国際政局が大きく変化をした現在、政府は、中国に対してどのような具体的政策をもって臨もうとするのか。
 そのまず第一は、中国並びに台湾は、ともに一つの中国論に立っておりますが、政府は、今後の中国問題に対する政策の基本は、一つの中国論に立つのかどうか、それとも二つの中国論、ないしは今後台頭を予想せられる一つの中国、二つの政府論をもってするのか、伺いたいのであります。
 また、政府は、中華人民共和国を中国の正統政府として承認する意思ありやなしや。また、その方策はどのように進めるかについてお答え願いたいのであります。
 総理は、さきの答弁におきまして、中国は一つ、双方が全中国の主権を主張している現在、国際信義にもとることはできないと述べられたが、それでは、台湾政府が全中国を支配することもあると予想しているのか、また、大陸反攻をもってそれを成就することを総理は予想し、期待しているのか、御答弁願いたいし、今日の世界において、台湾が全中国を将来支配するなどと信じている国が一国でもあるのか、この点についてもお答え願いたいと思います。(拍手)
 また、中国の国連復帰に関しては、一九六一年の国連総会におけるいわゆる重要事項指定方式に固執して、積極的提案国であったのでありますが。この重要事項指定方式は、中国を国連から締め出す意味において用いられているものであることは明らかであります。七億五千万人という、世界人口の四分の一を占める大陸中国が、中国を代表しないということは、全く虚構の上に組み立てられた論理であります。憲章十八条を乱用したこの非現実的かつ冷戦的発想による重要事項指定方式が、もはやアルバニア決議案の表決に示されたとおり、何ら説得力を持たないばかりか、国連の場において、いまやこの方式が理不尽な方式として各国の目に明確に認識されつつあるのであります。
 本年の国連総会における鶴岡国連代表の演説においては、わが国が重要事項指定方式再確認決議案共同提案国となった積極的理由は何ら見られないのでありますが、まず第一に、かかる中国承認、国際社会復帰の国際世論が必然的に高まっているにもかかわらず。かつまた、国内的にも、中国の国連復帰に際して、少なくとも重要事項指定決議の共同提案国になるべきではないという国民の声は、世論調査の結果においても歴然としているにもかかわらず、わが国政府がなぜ重要事項指定再確認決議案の共同提案国となったのか。主体性なき盲従外交といわれてもいたし方ありますまい。その理由を明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、歴史的ともいうべき今国連総会におけるアルバニア決議案の表決結果をどう評価し、今後どう対処しようとするのかも明らかにしていただきたい。
 日本政府は国連において、来年以降も引き続いて重要事項指定再確認決議案を提案しようとするのかどうか、明らかにしていただきたい。
 アメリカと密接な関係にあるカナダの中国承認は、まさにカナダの自主的な外交姿勢を示す英断であります。政府が対米追随外交でないというならば、いまここに政府の自主的な対中国政策を明らかにしていただきたいのであります。
 日華平和条約の取り扱いをどう考えているのか、この点についてもあわせて明らかにしていただきたい。
 佐藤総理は、過日の所信表明演説におきまして、日中大使級会談の呼びかけ、分裂国家間の武力不行使協定の締結の呼びかけの用意のあることを明らかにいたしました。しかし、これをどう具体的に実施しようとするのか明示しなければ、従来のこの種の呼びかけが何ら成果のあがらないものとなっていることからも、相も変わらぬリップサービスに終わってしまうと考えられるのであります。御見解を承りたい。
 むしろ、私がここで指摘したいことは、昨年秋の日米共同声明、さらには日本の際限のない軍事力増強政策、さらには国連における中国代表権問題に対する態度など、一連の力による対決姿勢や、中国封じ込め政策を誠意をもって改めることが中国との国交正常化を実現するために不可欠であるということであります。
 さらに、わが国の向かうべき方向は、世界唯一の平和憲法の精神を世界に宣揚し、平和国家、文化国家として、わが国の持つ経済力をわが国の科学技術、文化水準の向上に注ぎ、さらにその能力を十分に発揮して、発展途上国の文化水準の向上にも資するべきであると思うのであります。(拍手)
 従来、世界の常識は、経済的余力はすべて軍事力の増強に注がれることでありました。しかし、おそらく七〇年代は、科学技術や文化的価値が大きく評価され、その力を平和的に駆使し得る国が世界で最も大きな影響力を持つことになるでありましょう。そういう面で、世界各国は真剣に軍縮を考えようとしているときに、最近のわが国は軍事大国一への傾斜を著しくしていることはきわめて遺憾であります。
 わが国のごとき高度工業国家における軍事力の増強は、兵器の国内生産という必然的な結果を招き、この兵器生産能力は科学技術の急速な進歩により、兵器の旧式化の速度を早めて、さらに生産設備の増強、更新となり、生産設備の過剰は、自国の兵器供給から兵器の対外輸出という面に発展することは、歴史の証明するところであります。
 すなわち、軍事力増強の発展は、産軍複合体を生み、かつはシビリアンコントロールの限界を飛び越えて自己運動を始め、軍事国家として急激に巨大化することは火を見るよりも明らかであります。アジア諸国をはじめ世界各国が、わが国の軍事力増強路線に重大な脅威の危惧を抱くのは、わが国の経済力の向かうところが軍事的脅威として著しく成長することを予測しているからであります。いたずらに軍事力や経済力を誇示し、それに政策の重点を置くのではなくて、平和と国民生活に人間性を回復する文化的価値を結実させる方向に向かうべきであり、したがって、とりあえず第四次防衛計画の廃棄をはじめとする軍事力強化路線の撤回、さらには、外交政策においてもこのことが重視されなければならないと思うのであります。(拍手)
 また、徴兵制が憲法違反であり、わが国は今後一切徴兵制をとることはあり得ないことを明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、昨日、自衛隊市ケ谷東部方面総監部において起こった三島由紀夫事件は、きわめて重大な示唆を含んだ大事件であります。いやしくも今日の民主主義社会と平和憲法は、わが国が苦悩に満ちた敗戦の多大の犠牲の中からつかみ取り、国民が力を合わせてはぐくんできた貴重な遺産であります。法と秩序は民主主義のルールによって運営されなければならないことであり、憲法を自衛隊の行動により改めさせようなどということは、許されない暴挙であります。今回の事件の中に、この平和民主主義社会の将来に対する重大な危惧を持たざるを得ないのでありますが、政府の見解を伺いたいのであります。
 今日、日米両国の経済関係は、日米繊維交渉に象徴されるごとく、きわめて緊迫したものになっております。この原因は、あくまでもアメリカの保護貿易主義を相手国に押しつけようとするエゴイズムに由来することは明らかであります。今日、世界貿易の拡大発展がひとしく各国から強く望まれているとき、自由貿易の推進者として戦後の世界経済発展に大きな役割りを果たしてきたアメリカが、いまやそれに逆行する保護貿易主義の立場に立ち、輸入数量制限を強行せんとすることは、はなはだ遺憾であります。今回アメリカがわが国に対し強圧を加えております繊維の輸出自主規制の問題は、ガットの場において解決するのが条約の趣旨であります。もしも輸入品の増大によってアメリカの繊維産業が被害を受けているため規制を必要とするならば、その解決を輸出国の自主規制取りきめといった形に求めるべきではなく、ガット十九条により処理されるべきであります。しかるに、アメリカの主張は、この規定を全く無視し、しかも安易な方法で実質的な輸入制限をわが国の手で行なおうとしており、これは大国主義的な横暴というほかはなく、また、わが国政府がいままでとってきた軟弱な姿勢にまことに遺憾というほかはないのであります。(拍手)
 さて、アメリカに大きく台頭した保護貿易主義は、テレビのダンピングの疑いを理由に関税評価差しとめ、金属洋食器の関税割り当てなど、繊維以外の品目にも次々と波及して、今後さらに多くのものに不当な輸入制限を課してくることが予想されるのであります。このような重大な時期にあって、繊維交渉に見られるような政府の一貫性を欠いた弱腰の態度では、今後安心してまかせておけないと思うのであります。日米繊維交渉は、一年有余の長きにわたってもめてきたのであります。その大きな一つの原因は、昨年十一月の佐藤・ニクソン会談における際のアメリカ側に対する総理の軽率な約束によるものである、このようにいわれており、この責任は重大であるといわねばなりません。もともと経済ペースで解決すべき問題を政治ペースに乗せられたところにこじれる原因があったのであり、沖繩返還と繊維のからみ合いは、総理がいかにその事実を否定されても、今日までの日米交渉の経過を通じて後退に後退を重ねる政府の姿勢を見たとき、すなおに受け取ることはできません。(拍手)もはや、今日においては、この密約説は公然の事実として認識されているのであります。
 ここで総理にお尋ねしたいことは、アメリカが一年有余の長い交渉の経過を通じて最後まで一貫して主張を変えることがなかったのにもかかわらず、わが国政府はなぜ終始譲歩を続けたのかということであります。アメリカ側の主張はきわめて説得力を欠いた理不尽のものであることは、総理みずからも認めておられるはずであります。米国は、国際収支の悪化とそれによるドル不安によって、政治的にまた経済的に国際的権威は低下したとはいえ、依然として世界最大の工業国であり、最も先進的な産業構造を持っている国であることは、あらためて申し上げるまでもありません。また繊維業界としても、従来より世界最大の生産国であったし、現在においても、化合繊の分野において世界的に群を抜く地位にあることは御存じのとおりであると思います。さらに、米国業界は輸入の増大によって重大な衝撃を受けているといっているが、それを裏づける統計的な立証を拒否しており、むしろ紡繊業においても、衣料製造業にあっても、最近の好調ぶりは、利益率の上昇、投資動向の上向き、雇用の増大等を見ても、繊維業界の好況は明らかであり、そのことは総理もよく御存じであるはずでございます。
 政府は、このような米国の不当な要求に対して全面的に譲歩してまで早期解決をはからねばならない理由がいずれにあるのか、まことに理解に苦しむところであります。交渉再開にやっきとなったのはわが国であり、今回また、業界との調整を得られぬまま見切り発車までして交渉妥結を急ぐのはなぜか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 さらに、このような政府の行為は、昨年五月の衆議院本会議において満場一致をもって可決した、わが国のアメリカに対する繊維品の輸出の自主規制に反対する決議を全く無視するものであります。国権の最高機関たる立法府の決議、すなわち国民の意思がむざんにも一方的に行政府によってじゅうりんされることは、全く民主主義のじゅうりん以外の何ものでもございません。(拍手)これは単に繊維問題というよりも、民主主義の基本に根ざす問題であり、総理の確たる見解を求めるものであります。
 米国の保護主義の台頭は、構造的に根深いところから出ております。それゆえ、単に繊維のみアメリカ側の言いなりになったとしても、日米経済関係の解決とならないことは明らかであり、綿製品におけるLTAの二の舞いとなることは十分予測されるところであります。そして、むしろこれが一つのきっかけとなって、次々と他品種にも同じ圧力が波及するであろうことは、容易に考えられます。
 今後、わが国はあくまでも自由貿易、ガットの原則の通商政策の分野に徹底させる政策を貫くことこそ肝要であります。従来のごとく対米追随外交は、もはや百害あって一利なしであることを認識し、自主性のある経済外交を展開していくべきであると確信するものでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 ここで、わが党調査団が、全国主要な繊維生産地における調査をいたしましたが、いまさらながら、このアメリカが強要する繊維の自主規制問題が、繊維業界、特に中小企業に対して大きな影響をもたらしていることを知ったのであります。まだ輸出規制そのものが実施されていないのに、すでに大きな不況が襲ってきているのであります。
 その第一は、先行き不安のために、商社、メーカーとも製品のストックを減らす方向で下請の中小企業に対する発注が激減していること。
 第二に、そのため業者は、仕事がほしいために、採算のとれない無理な工賃で受注するしかないというせっぱ詰まった状態に追い込まれている。
 第三に、銀行の中小企業に対する融資はきわめてきびしい選別融資になったため、資金難におちいっております。
 これらの要素がからみ合って、倒産続出、赤字続出、人員整理続出という状態が起こっているのであります。
 いまや、業界も、また働く従業員、ともに生活の不安に直面しており、ひいては社会不安の種にもなりかねないというのが実情であります。このときにあたり、政府の重大決意が国民総意として求められておるのでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。
 また、アメリカの輸入制限措置が実施される段階においては、わが国として、ガット二十三条による対抗措置に踏み切るお考えはあるのかどうか、あわせてお伺いしたいのであります。
 最後に、今国会最大の焦点である公害問題についてお尋ねします。
 いまや、公害は人類の生存に重大な脅威を与え、人間社会の真実の繁栄とは何かを真剣に追求されるときがきております。GNP至上主義で急速な成長を遂げたわが国経済は、同時に驚くべき公害の拡大をもたらしたのであります。その現況は、わが国をして公害列島と呼ばれるごとく、水と空を、そして大地を汚染し尽くし、加えて食品、薬品公害にまで及び、有害物質による人体の汚染濃度を高め、生命の危機を迎えているのであります。
 そして、このような公害の暴威を許している企業優先の、人間無視の政治に対し、国民の怒りは、いまや頂点に達しております。(拍手)公害悪を追放することは、すべてに優先して、大胆に、そして迅速に、確実に実現しなければならない国民的重要課題であり、かつその対策は、深刻な現状認識と反省に立つべきであると考えます。
 わが党は、公害追放の国民的要請にこたえるために公害総点検を実施し、全国各地における公害の実態を把握し、分析調査の結果を公表してまいりました。その結果、東京湾をはじめ伊勢湾、大阪湾、洞海湾等、日本の沿岸は完全に死滅し、まさに死の海と化しております。猛毒性物質のシアン、有機水銀をはじめカドミウム等、大量の有毒物質によって汚染され尽くしたこの死の海から、第三の水俣病や第二のイタイイタイ病が発生しないと、だれが保証できるでしょうか。(拍手)
 景勝松島に昔の面影はすでになく、漁場を奪われた漁民の怒りが渦巻いております。日本の地中海といわれた瀬戸内海も、また同様であります。さらに東北各県における土壌汚染の状況は、すでに公害病の潜在が十分懸念され、秋田においては、新しいイタイイタイ病の疑似患者まで発生しているといわれております。
 まさに国民は、公害の恐怖におそれおののき、政治に対する不信感は日増しに増大しております。いまこそ、公害絶滅への英知の結集と勇気ある政治の実践しかないのであります。しかるに、今回政府が提出を予定している法案は、公害の当面する対症療法的な段階においても、なお不備な点が多々あることを指摘せざるを得ません。それは、政府部内からも、規制が骨抜き同然との批判が出ていることでも明確であります。
 そこで、提出を予定されている法案全般を通して、問題点について質問いたします。
 公害罪の設定について、政府が大企業の圧力によって新立法を見送ろうとしたことが伝えられるや、国民は、大きな怒りと政府への不信感をつのらせました。その後政府は、公害罪を立法しても、その実効、効果のあがらぬものにするという説得を財界に試みて、その了承の上提案ということが伝えられております。従来の政府の企業に対する擁護姿勢から見て、きわめてありそうなことであると国民は思っております。政府は、この財界の圧力に屈せず、公害罪の成立と、その厳格な実施についての明確な見解を示していただきたいのであります。(拍手)
 公害対策基本法は、経済との調和条項については削除することになりましたが、内容は、いまだ対症療法的といわざるを得ません。なぜかならば、基本法は、国民の健康と生活環境の保全を第一義とすることはもちろん、欧米諸国のごとく、自然環境の保全をはかるという公害絶滅への基本姿勢を確立すべきであります。そこに基本法の精神があると思いますが、今回の改正では、その姿勢と決意が盛られていないのでありますが、この点についてお伺いしたいと思います。(拍手)
 先ほど総理は、世界に冠たる公害法案と仰せられた。いかなる理由をもって世界に冠たる法案であるか、明快にその理由を説明していただきたいのであります。(拍手)
 次に、産業を営むすべてのものに、大衆に迷惑をかけないという企業の社会的責任を自覚させ、企業道徳を高揚し、同時に法的な規制の強化徹底、監視体制の強化が必要なのであります。
 特に企業の無過失責任の立法化をいまだに避けている政府の態度は、全く不可解といわざるを得ません。無過失責任を認めない現行法のもとで、現在まで公害はどれほど拡大、深刻化してきたか、その例は水俣病やイタイイタイ病、第二水俣病の実態から見ても明らかであります。公害の特質から、無過失といえども、事件発生の責任は公害発生源である企業が負うべきことは当然であり、無過失企業責任の問題をたな上げにしていることは、政府が公害問題の解決についていまだ企業側に立つ姿勢を如実に示しているといわざるを得ないのであります。(拍手)
 公害対策基本法の企業責任の確立のポイントとしては、公害発生企業のこの無過失責任を明示しないことはあり得ないのであります。この明示しない理由について明らかにしていただきたいのであります。
 また、企業内に安全衛生管理者と同様に公害防止管理者を置き、その資格は国が認定するものとし、同時に、企業責任を明らかにするために、企業代表者が公害防止総括責任者となることを規定すべきであります。
 なお、また、公害防除工程を生産工程に義務づけるとともに、廃棄物の処理を立法化するとともに、これまた義務づけるべきであると考えるものであります。
 以上の企業責任の確立について、明確なお答えを願いたいと思います。
 わが国経済の計量的な発展計画は、今年すでに政府が発表したとおりであります。しかしながら、この計画に基づく経済の発展が公害の発生をますます増大する傾向にあることは、世論も深刻に憂慮するところであります。そこで、公害絶滅の計画的な諸施策の推進と、それを実現する体制を年次計画として立てなければならないと考えるものであります。このことは、現在の科学の力をもってすれば不可能なことではありません。政府は、産業廃棄物処理処分を含めた公害絶滅のための年次計画を立てる用意があるかどうか、お答え願いたいのであります。(拍手)
 公害防止のためには、環境基準の規制強化と排出基準の運用の高度化とあわせ、工業立地、都市構造、車両運行の計画的な規制と、適切、迅速な運用が重要な要素となることは言をまちません。したがって、企業立地の規制と許可制の実現は不可欠の要素であります。すなわち、過密都市や公害発生源の多い地域及び水系における工業立地については、事前に当該地区の都市計画を勘案するとともに、汚染の可能性によっては、企業の立地を規制する法の規定がない限り、事実上公害対策は常に公害発生の後手に回り、今回のせっかくの改正にもかかわらず、公害関係の各法はざる法となるおそれを多分に持つことになります。(拍手)これら立地条件の規制強化についてはどのように考えておるのか、具体的に御答弁を願いたいのであります。
 公害対策の基本的問題として、単にこれが法の整備のみにとどまっただけでは、その効果は期待できません。その法を機能化、その法を効果あらしめるためには、調査、監視体制の強化並びに公害防除技術の不断の進歩、研究改善が実施されなければなりません。わが国が先進諸国に比べ公害対策の最もおくれているものは、まさに公害防除技術と調査監視体制の整備であります。したがって、公害対策審議会を抜本的に改組し、公害に関する科学的専門事項について調査、審議をさせるため、自然科学及び人文科学全般にわたる科学者をもって構成し、あらゆる角度から総合的に対策を検討することを提案するものでありますが、これに対してどのように考えるか、お答え願いたいのであります。(拍手)
 また、公害専門技術者の早期養成は目下の急務であります。政府においては、公害研究所の設立を用意しているようであります。これにあわせ公害専門技術者の養成機関をつくり、国と地方自治体に公害検査官を配置する、権威ある検査官体制を確立する必要を強く主張するものであります。政府はどのように考えているのか、お答えいただきたいのであります。
 さらに、監視体制として、河川の汚濁防止のための基礎調査と水質汚濁の監視のための水質汚濁防止センターの設置、大気汚染防止センターの整備、増設とあわせ、コンピューターの採用はもちろん、観測点を広域的に、かつ細分して配置し、さらにはテレビ、新聞等による監視データの早期公開の迅速化等の措置を実現すべきであると考えますが、これに対するお答えを伺いたい。
 行政体制の強化についてお尋ねします。
 現在、各省庁に分掌された公害行政は、セクト主義を各所に暴露し、責任官庁不在とさえいえる中で、公害問題の解決を遷延してきました。現在中央公害対策本部は、その陣容も三十数名で組織され、担当大臣も他を兼職し、その機能は各省庁の調整機関にすぎないといわざるを得ないのであります。わが国の公害対策はようやくその緒についたという段階であり、急速に要求される諸施策は、あくまでも被害者国民の側に立ち、わが国の自然環境の保全を確保するため、強力な権限と勇気ある執行機関としての確立が強く望まれるのであります。
 わが党は、現在各省に分掌された公害行政の各部局を統合し、これを環境保全省として設置することを強く要求するものでありますが、これに対するお答えを伺いたいのであります。(拍手)
 次に、地方自治体への公害規制権限委譲については、今回政府は、規制権限体制を地方自治体にウエートを置くとしております。企業としての広域的な公害発生源である電気、ガス事業については、通産大臣を経由して間接的な権限の譲渡であり、地方自治体は通産省に従属する結果となります。このことは、公害の大型発生源である企業に対して、地方自治体が規制権限を持つことができないことであり、規制権限の事実上の形骸化に通ずるものであります。また、地方自治体に対する権限の委譲について、これには膨大な財源措置が予想されます。政府は、権限委譲に伴う財源措置の裏づけを並行して行なわず、権限譲渡のみを先行させようとしていることは、地方自治体にかえって大きな負担を与え、地方自治体の公害行政を実行不可能に追い込み、公害防除対策の実質的な骨抜きをはかろうとするものであります。これらについて、政府の今回の方策が、権限、財政ともに、円滑なる公害防止に結びつく根拠を明確にしていただきたいのであります。
 聞くところによれば、これらについて自治省においては、地方財政に対する特別措置に関する立法措置が用意されていたにもかかわらず、これらの提出を今国会見送ったと伝えられますが、あわせてお答え願いたいのであります。(拍手)
 公害対策が中小企業に及ぼす影響は、その費用負担においてきわめて深刻なものがあります。政府は特に中小企業について特別な計らいをすることを、強く求めるものであります。
#13
○議長(船田中君) 浅井君、時間ですから結論も急いでください。
#14
○浅井美幸君(続) したがって、中小企業に対する現行の各種融資制度の簡素化をはかるとともに、公害防止事業団法を改正する必要があります。
 一方、大企業の義務的行為として、下請企業の公害防止設備の完備をはかることをも考慮すべきでありますが、政府の考えを聞きたい。
 総理並びに関係閣僚の明快なる答弁を期待し、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 浅井君にお答えをいたします。
 何ぶんにも広範多岐にわたるお尋ねでございますので、この機会にもしも問題が漏れておりましたら、その点は他の機会に詳しくお尋ねをいただきたいと思います。また、関係大臣からも補足するものがあるだろうと思いますので、その点も前もって御了承願っておきます。
 臨時国会の召集問題につきまして、下平君から先ほどもお尋ねがあり、御批判がございました。これにお答えしたばかりでありますので、どうかその点で御理解をいただきたいと思います。
 次に、順序はいろいろ違っておりますが、沖繩問題について、これは小川君から尋ねられて、ある程度浅井君のお尋ねとも重なっておりますが、一応申し上げてみたいと思うのですが、沖繩返還交渉における妥結の見通しとか協定調印の予定につきましては、これは先ほども申しましたように、相手のあることでもあり、一方的にいつごろと明示はできませんが、政府としては、一九七二年内のできるだけ早い時期に施政権返還が実現するよう交渉している次第であります。政府内部における心づもりでは、来年の春から夏にかけて協定を調印し、明年度中に国会の承認手続を完了することを目標としております。
 また、沖繩返還の際米側に提供される施設、区域につきましては、日米安全保障条約及び地位協定の手続に従ってこれを行ないますが、県民の意向が十分米側に反映されるよう努力する所存であります。
 なお、沖繩の毒ガスは、綿密な安全措置を講じた上、近く移転されることになっております。
 次に、中国問題についてお答えをいたします。
 これまた下平君や小川君にお答えしたとおりであります。申すまでもなく、中国問題に対する政府の態度は、国際情勢の動向を見きわめつつ、国際信義を重んじ、国益を守り、極東の緊張緩和に資するという観点から最善の選択を行なうようつとめることにあります。特に、アジアの緊張緩和は政府の最も望むところであり、国連記念総会の演説におきましても、分裂国家間の武力不行使を強く訴え、問題の平和的解決を主張したのもそのためであります。わが国は、従来とも中国は一つであるという立場を維持してまいりました。この考えは今日も変わってはおりません。中国大陸と台湾との関係で、われわれにとって最も大事なことは、アジアにおいて平和が維持され、緊張緩和が達成されることにあることを忘れてはならないと思います。来年以降の国連対策につきましては、今年の総会の結果と今後の情勢の推移を勘案して、慎重に検討する所存であります。
 中国問題の過去の経緯は複雑であり、かつ中国を取り巻くアジアの情勢は流動的であります。その中にあって、わが国が独自の立場を貫きつつ妥当な解決を見出すことは容易なことではありませんが、そこに冷厳な国際関係の現実があることをしっかり認識しなければならないと思います。カナダやイタリアと違って、わが国と中国は距離的に近いだけに、一そう問題のむずかしさがあるのであります。わが国は、すでに北京政府に対し、大使級会談と武力不行使の呼びかけを行なっておりますが、今後の推移を見守りながら、柔軟に対処する方針であります。
 また、平和国家に徹するという日本国民の決意は、ようやく国際間の理解を得つつあります。しかしながら、この立場を貫くためには、内外になお多くの困難と障害が横たわっております。各位の御協力を特に切望してやみません。
 なお、わが国の安全を確保するため、必要最小限の自衛力を整備することは、私は当然と考えますが、徴兵制はとらないことは申すまでもありません。この点は、はっきり申し上げておきます。
 そこで、昨日の三島事件につきましてもお触れになりましたが、これも、何かいまの徴兵制度やあるいは憲法問題等と関連があるかのような意味合いでここでお尋ねになったのではないかと思いますけれども、この点については、先ほども申し上げましたように、私は、民主主義発展の基礎、これこそは法秩序を維持することにあると考えます。いかなる理由がありましても、暴力は否定されるべきであります。三島事件に対する国民の反応は、きわめて健全であり、わが国の社会は将来とも健全に推移することを確信しております。
 次に、繊維交渉を中心とした日米関係の諸問題についてお尋ねがありましたので、お答えをいたします。
 まず、昨年十一月の私とニクソン大統領との会談につきましては、共同声明で明らかなとおりであります。また、繊維問題など、両国間の具体的な貿易上の諸問題は、互恵互譲の精神で早期解決につとめるということで意見が一致いたしました。それ以上の約束はありません。皆さん方から、何か具体的な約束をしたのではないかと再三責められておりますが、それ以上の約束のないことを重ねて明確にいたしておきます。
 現在、日米経済関係におきまして幾つかの問題が起こっていることは、ただいまも御指摘になったとおりであります。米国のインフレと貿易収支の悪化に伴う保護主義的機運の増大が一つの要因になっていることは、私もそういう点があるだろうと思います。しかし同時に、わが国の貿易や資本の自由化のおくれが今日の状況の一つの背景となっているという米側の声にも、私は虚心に耳を傾けなければならないと思います。しかし一方、わが国は、従来から米側に対し、ガットのルールに基づいて問題を処理すべきことを主張してきましたが、このような基本的考え方につきましては今日も変わりはありません。また、米国における輸入制限の立法化の動きに関しては、反対の立場を明らかにしております。そして、繊維問題の話し合いによる解決に努力することによって、このような制限立法を阻止したいと考えてもおります。
 今日、日米経済関係はきわめて緊密なものとなっておりますが、今後ともこの関係の円滑化をはかるため、政府は目下全力を尽くしている次第であります。この点は先ほど来、下平、小川両君にも答えたところでありますので、重ねて同様の趣旨を浅井君にもお答えいたします。
 次に、公害の問題でありますが、政府は、何よりも国民生活優先の見地から、有効適切な公害防止対策を進めようとしているものであります。その過程において、第三者からの圧力に屈するようなことは絶対にない。(「うそを言うな」と呼ぶ者あり)社会党の方は、うそを言うなとおっしゃいますが、私はうそは申しません。(拍手)まず、このことをはっきり申し上げておきます。政府としては、あくまでもその所信に基づき、現下の情勢に照らして最も適当と信ずる内容の法律案を国会に提出する決意であります。どうか十分御審議を願います。
 次に、従来の日本の公害に対する考え方は、人の健康及び環境に何か問題が生じたときに、その時点で初めて対処しようという考え方が強かったのでありますが、(「そのとおり」と呼ぶ者あり)これは過去です。今回は、一歩進め、危険な状態になる前に、あるべき環境を取り戻そう、もう一度自然をつくり直そうという観点から、自然環境の保全に関する規定を公害対策基本法に新設することとしており、浅井君の論旨は、この点におきまして十分生かされているものと思いますが、いずれにいたしましても、具体的な法案をごらんになって、そうして御意見を述べていただきたいと思います。
 企業の無過失責任の問題につきましては、さきに社会党の下平君にお答えをしたとおりであり、少なくとも次期国会において、これが実現に一歩近づけるよう検討を進めてまいります。
 また、企業における公害の防止体制の確保につきましては、産業構造審議会の答申を待ってその具体化を進めてまいる所存であります。
 次に、公害防止の確保について種々御意見がありましたが、まず企業立地の制限については、すでに首都圏、近畿圏において企業立地の制限を行なっております。さらに、公害規制立法において、過密地帯における新規立地には、既存施設よりきびしい基準を適用することにより、過密化の進行を防止することを考えております。また、調査体制の整備、技術開発、人材養成等の管理体制の強化についても、今後十分の配慮を払う所存であります。御了承をお願いいたします。
 次に、公害絶滅の年次計画につき御提案がありましたが、公害防止のためには政策目標を明確にし、関係諸施策を総合的かつ計画的に推進することが望ましいことは申すまでもありませんので、地域別防止計画の策定にあたっては、十分御趣旨の線に従った計画的防止事業の推進をはかってまいりたいと考えます。
 環境保全省の設置につきましては、さきに社会党の下平君にお答えをしたとおりであります。
 地方自治体への権限委譲を大幅に実現したことも、各種法案を通じて十分御理解いただけるかと思います。
 電気等一部の公益事業につきまして、その使用停止命令権を国の手にとどめたのは、その公益事業としての特殊性を考慮したからであります。
 地方団体に対する財政上の裏づけは、来年度予算において十分配慮してまいります。
 次に、中小企業の行なう公害防止事業についてでありますが、金融、税制、技術指導等の各面におきまして、お説のように、十分留意してまいります。
 最後に、原子力燃料の産業利用につきましては、その被害の大きさにかんがみ、いささかなりとも公害の発生は許されないところであり、今後とも十分これが防止についてつとめてまいります。また、公害を除くために、産業構造を、燃料等の消費を少なくするよう転換すべきであるとの御指摘につきましては、全く同感であり、その線に沿った総合エネルギー政策の転換につき検討を進めてまいります。
 以上でお答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#16
○国務大臣(宮澤喜一君) 繊維問題につきましての総理大臣の御答弁を補足させていただきます。
 現在の新通商法によって代表されるようなアメリカの保護貿易主義というものは、ガットの精神に正面から背馳するものではないかという点につきましては、私もはなはだそのことを深くおそれております。ただ一部に、ガットというのは、各国の主権の上にあって、完成されたいわば不磨の殿堂であるというような解釈もございますけれども、事実は御承知のように、今日ガットをささえておりますものは、わが国とEECとアメリカのこの三者でございます。この三者が、主権の行使がエゴイスティックにならないようにと自己抑制をすることによって、今日まで二十何年、ガットの体制が維持されたわけでございますから、三者のうち、だれかが主権についての自己抑制を忘れるようなことになれば、ガットの体制そのものが瞬間に崩壊するような実情にあるわけでございます。今日、アメリカで考えられておりますようなことは、そういうことにつながる心配が非常に高いと思いますし、ガットのロング事務局長も、この春以来、私にしきりにそれを申しておるわけでございます。
 そういうことでございますので、それはガット違反であろう、あるいは、先ほど十九条、二十三条というお話もございまして、これは普通のときでありますと、いかにも筋の通った方法であるわけでございますけれども、そういうことを言い出す場がなくなるか残るかというような段階にいまおるというふうに私は考えておるわけでございます。
 先般、総理の訪米に同行されました結果帰られましたわが国の外交当局の最高の判断によりますと、ニクソン政権は、この際、日米間に繊維について取りきめができるならば、新通商法案の成立阻止に向かって全力を傾けるというふうに、わが国の外交の最高首脳が判断をしておられますので、私どもは、それに従いまして、この交渉をできるだけ妥結に導くことによって、ただいま申し上げたようなガット体制の崩壊を防ぎたい、こう考えておるわけでございます。
 そのようにして交渉を始めたわけでございますが、その段階における、先ほど御指摘のいわゆる見切り発車といわれる問題でございます。
 私どもは、総理の所信表明にもございましたように、互譲の精神によってこの問題は解決したいと考えておりますが、米側から提案がございましたに対して、わがほうが対案を出すことによってお互いに歩み寄っていく、これが互譲の方法でございますので、何かの提案をいたすべきだと考えたわけでございます。それに対して、繊維業界が、そういう話には道連れになれない、コミットすることはできないという事態が起こったわけでございますが、このことは、私どもと繊維業界とでは、いわゆる新通商法についての見通しなり評価なりがおのずから違っておりますし、したがって、交渉開始のタイミングについてもおのずから見方が違ったわけでございます。
 これはいろいろ理由はございましょうと思いますが、繊維業界は繊維のことを考えておられればいいわけでございますが、私どもは、もう少し広く日本の経済全体あるいは世界の自由貿易または日米関係といったようなものも、繊維はもちろんでありますが、あわせて考えなければならない立場でございますから、そのような見方が分かれたことは、これはまあ別にふしぎなことではない、理解できることだというふうに思っておるわけでございます。
 ただ、この見切り発車ということばが非常に簡単過ぎますので、誤解を生ずるといけないと思っておりますが、そのようにしてかりに日米間に取りきめができました際には、話はもう一度わが国の業界に返ってこなければならないことはもちろんでありまして、政府が自分の意思でそれを実行することはできないのでございますから、かりに不承不承なりとわが国の業界が協力をしようということでなければ、このような自主規制は行ない得ないことは、これはもう当然のことでございます。これは誤解のないように、あまりことばが簡単な表現でございますので、誤解があってはならないと思いますので、あえて申し上げるわけでございます。
 それから、国会決議の関係、LTA等々につきましては、先ほど小川議員にすでに総理大臣が答弁をされましたので、御参酌をいただきたいと思います。
 産地におきまして、今年、金詰まりとの関係もございまして、相当難儀をしておられる方がありますことは、私も現地を見まして存じております。これにつきましては、構造改善等を進めておりますことは御承知のとおりでありますが、これらの産業に一番関係の深い商工中金あるいは中小企業金融公庫等におきまして、これらの事情も考えまして下半期の貸し出しのワクをふやしておりますことは御承知のとおりであります。(拍手)
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#17
○国務大臣(山中貞則君) まず、沖繩問題から申し上げます。
 今後どしどし具体化していきます沖繩復帰対策の各種問題点について、沖繩側の意向を十分に反映させろという御要望でございますが、当然のことでございますし、私たち祖国は、沖繩に向かって、私たちが沖繩の方々の御意向を反映しているかどうかを絶えず私たち自身が問いながら作業を進めていかなければならない立場にあるというふうに考えておるわけでございます。
 先般、四十項目にわたる第一次の復帰に対する大綱の閣議決定を行ないましたが、その大部分は、沖繩の方々の特殊な環境において、なお復帰と同時に実施されては非常にお困りになる具体的な問題について取り上げたわけでありますけれども、その中で一、二の点、たとえば、御質問にありました、教育委員の任命制の本土並みの移行の件については、意見が合わないままの閣議決定でありましたこと、お話のとおりでございます。
 この問題は、沖繩においても、私たちその当時の内地におきましても、やはり同じように、占領下のアメリカの教育使節団の命令、勧告というような形において、私たちは六・三・三制の制度を受け入れました。その際に、教委公選制というものも出発をしたわけでございます。しかしながら、沖繩においては、市町村の教育委員会の公選制は別といたしまして、現在、沖繩自体において、各県でいうならば県の教育委員会であるべき琉球政府の中央教育委員会の委員の皆さんが、間接選挙とはいえ、主席と同様の任命権を行使しようとした米側に対して、沖繩県民の方々が、自分たちの制度としてかち得られた制度があることを、特異な事実として私も承知はいたしております。
 しかしながら、これらの問題について、私たちは、ぜひ感情的でない議論をしなければならぬと考えます。
 なぜならば、これは、小学校、中学校の生徒、すなわち義務教育の生徒は、義務教育に通っている児童たちは、その住んでおる場所や、あるいはその職業、あらゆる環境の相違にかかわらず、同じ条件の環境のもとに教育を受けなければならない権利を持っておるし、国はそのような義務を持っておるのではなかろうかと思うのであります。
 すなわち、沖繩の一番南の島の波照間島の子供たちも義務教育の生徒であって、かりにおとうさんの転勤の関係で北海道に参ったときでも、同じ制度、同じ教科書、同じ環境の中において、私たちはそのような教育の風土というものをつくっておいてあげる必要がある。したがって、義務教育に関する限りにおいて、教育委員任命制については私たちは閣議決定というものを行なったわけでございます。
 外資の問題につきましては、昨年十一月二十二日の佐藤・ニクソン会談の時点以前に、沖繩の特殊な環境下においてすでに沖繩に入り込んでおりました外国資本については、その既得権の尊重に配慮を加えることあり得べしと思いますが、十一月二十二日以降の、佐藤・ニクソン会談以降の、いわゆる私どもがかけ込み外資といっておりますものにつきましては、本土の外資法、あるいはまた石油ならば石油業法等いろいろの国内の法律がございまするので、これと復帰時点における事実の実態とを対応しながら、そして沖繩県民の方々の職域の、所得の向上に貢献するような企業をなお排除しないままで存続できるような手段を考えていきたいと考えます。
 これは端的に申しますと、佐藤・ニクソン会談以降に入ってまいりましたもので、復帰の時点で、本土の各種規制法に触れるものについては、フリーゾーンという立場においてその中に封じ込めて、沖繩においては、従事者の勤労所得その他の付加価値のみが落とされるという形にして残していきたいと考えるのでございます。
 次に、間接雇用の問題でございますが、軍労の方々が非常に軍事基地密度の高い、ことに本島中南部において、やむを得ず軍労務者として働いておられ、それが次々と解雇の不安にさらされておりまする実情も十分承知いたしております。私たちといたしましては、退職金等について本土並みの給付金や退職金等、適時適切な手を打つと同時に、狭い環境の中における再就職の困難等に対して、十分の御援助ができるように努力をいたしてまいるつもりでございます。
 なお、雇用形態の間接雇用は、復帰時において本土並みになることは当然でありますが、その前において絶えず接触を持ちながら、現在、その前の時点における間接雇用にせめてかわり得る対策を求めるための、日米の合意を求めるための努力の続行中でございます。
 尖閣列島の問題については、領土問題は外務大臣でございますので、外務大臣で御答弁があればけっこうでございますけれども、領土論争というものは、外務大臣として、尖閣列島に関する限り論争する必要がない、どの国とも論争する意思はないということを言っておられますし、私どもは尖閣列島の、主として海底の石油資源開発を目的とした予算上の調査を昨年、ことしと続行いたしておりますが、来年度予算においてもさらにこれを続行し、そして沖繩にもしそのような有望な海底資源が発見されましたならば、ひとり沖繩のみならず、日本全部のこの貴重な資源に大きな貢献をするものと期待をいたしておる次第でございます。
 次に、公害問題でございますが、(目的)のところで、私たちは健康にして文化的なという憲法の条章を受けて法律を盛り込むことにいたしておりますが、総理からも御答弁がございましたように、私たちはこの汚染されかかった、汚染された状態に対処する努力の緊要性もさることながら、汚染されざる状態の保持あるいは汚染されざることを願う政治の姿勢、行政上の努力も必要でございますから、緑地の保全やその他自然環境の保護につとめるための規定を十七条の二項に盛り込んでおる次第でございます。
 産業廃棄物等につきましては、今日では、企業者がまず自分から事業者の責務として、廃棄物が基本法第二条にいう典型公害の状態にならないような状態でまず処理しなければならない前処理の義務があるものと信じますので、第三条の(事業者の責務)のくだりに産業廃棄物をうたい込みますと同時に、第十二条で政府の他の公害防止公共事業に次いで、産業廃棄物やその他の廃棄物の処理を取り入れていくことにいたしておる次第でございますが、具体的には清掃法の抜本改正による廃棄物の広域処理等によりまして、それらの産業廃棄物も手数料を取りつつ処理いたしていく体制を固めていくつもりでございます。
 これらのことをやっていきます際の中小企業に対する配慮でございますが、基本法二十四条に示されております中小企業への配慮というものは、これは基本法全体についていわれておるのでありまして、費用負担法の、二十二条を受けた法律の中でそのことを、やはりわれわれはこれが企業の費用の負担に、中小企業等にとっては、ことに資本金や年間の収益金をこえる投資を余儀なくされて、しかも、その公害防止の投資は、収益に貢献しない性質のものが大部分であることを思いまするときに、中小企業に対する特別の配慮をこの企業の費用負担防止法の中にも盛り込んでいき、さらに、総理の御答弁にございました、来年度の予算と相まって、財政上の国、地方の措置並びに税制、金融等、こまかい措置をとって、中小企業対策に万遺憾なきを期してまいりたいと存ずる次第でございます。
 なお、今後の公害対策の年次計画については、なるべく国民が見て明確な年次計画がそれぞれ打ち立てられまするものは打ち立てるように、御意見を貴重なものとして承りまして、参考としてまいりますが、現在でも下水道や、あるいは屎尿処理、ごみ処理等については五カ年計画等がありますし、硫黄等についても低硫黄重油計画等が立てられておるわけでございます。公害防止計画として、千葉・市原、四日市、水島等につきましては、知事の公害防止計画が上がってまいりますので、近々、閣議において決定をいたすつもりでございます。今後は東京、大阪、神奈川等につき、公害防止計画をそれぞれ推進していくつもりでございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#18
○加藤六月君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十七日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#19
○議長(船田中君) 加藤六月君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
       運 輸 大 臣 橋本登美三郎君
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 佐藤 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 西田 信一君
        国 務 大 臣 保利  茂君
        国 務 大 臣 山中 貞則君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        外務省アジア局
        長       須之部量三君
        外務省条約局長 井川 克一君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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