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1970/12/03 第64回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第064回国会 本会議 第5号
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1970/12/03 第64回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第064回国会 本会議 第5号

#1
第064回国会 本会議 第5号
昭和四十五年十二月三日(木曜日)
    ―――――――――――――
 昭和四十五年十二月三日
  午後二時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の
  処遇等に関する法律案(内閣提出)
 国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 公害対策基本法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)及び環境保全基本法案(細谷治嘉君外
  七名提出)の趣旨説明及び質疑
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改
  正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質
  疑
   午後二時九分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(船田中君) 議員請暇の件につきおはかりいたします。
 野田卯一君から、十二月六日より十三日まで八日間、また、岸信介君から、十二月八日より十五日まで八日間、右いずれも海外旅行のため請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 国際機関等に派遣される一般職の国家公務員
  の処遇等に関する法律案(内閣提出)
 国家公務員災害補償法等の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
#5
○加藤六月君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律案、国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#6
○議長(船田中君) 加藤六月君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
 国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律案、国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
#8
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長天野公義君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔天野公義君登壇〕
#9
○天野公義君 ただいま議題となりました二法案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律案について申し上げます。
 本案は、本年三月五日付人事院の国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律の制定についての意見の申し出に基づいて、一般職の派遣職員の処遇等について統一的な制度を定めようとするもので、その要旨は、
 第一に、任命権者は、条約等に基づき、国際機関等の業務に従事させるため、部内の職員を派遣することができるものとすること。
 第二に、派遣職員は、派遣期間中、職員としての身分を保有するが、職務に従事しないものとし、派遣が終了したときは、直ちに職務に復帰するものとすること。
 第三に、派遣職員には、派遣期間中、俸給その他の給与の百分の百以内を支給することができるものとすること。
 第四に、派遣職員に関する国家公務員災害補償法、国家公務員共済組合法等の規定の適用については、派遣先の機関の業務を公務とみなすものとすること。
 第五に、退職手当の算定については、派遣期間を職員としての在職期間としてそのまま通算するものとし、また、特に必要と認められるときは、往復の旅費を支給することができるものとすること。
 第六に、派遣職員が職務に復帰したときには、任用、給与等の処遇について、部内職員との均衡を失することのないように適切な配慮が加えられなければならないものとすること。等であります。
 なお、附則において、現に国際機関等の業務に従事している休職中の職員の取り扱い等につき、所要の経過措置等を規定しております。
 本案は、十一月二十七日本委員会に付託、本三日政府より提案理由の説明を聴取し、直ちに質疑に入り、これを終了いたしましたところ、塩谷委員外三名より、国会職員についても一般職の職員と同様の措置を講ずることを内容とする自由民主党、日本社会党、公明党、民社党四党共同提案にかかる修正案が提出され、趣旨説明の後、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 次に、国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、本年二月二十八日付人事院の国家公務員災害補償法等の改正に関する意見の申し出に基づいて、補償年金の支給率の改善等を行なうとともに、あわせて公務上の傷病により休職にされた職員の退職手当の改善をはかろうとするもので、その要旨は、
 第一に、障害補償年金についてその支給率を約一六・五%引き上げること。
 第二に、遺族補償年金について原則として一〇%の引き上げを行なうこと。
 第三に、遺族補償年金の受給権者が希望する場合の平均給与額の四百日分の前払い制度をさらに五年間延長すること。
 第四に、退職手当にかかる勤続期間の計算にあたり、公務上の傷病により休職にされた場合の休職期間については、二分の一除算を行なわないこと。等であります。
 本案は、十一月二十七日本委員会に付託、本三日政府より提案理由の説明を聴取した後、直ちに質疑に入り、これを終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党五党共同提案による附帯決議が全会一致をもって付されました。
 附帯決議の内容は、次のとおりであります。
  政府は、次の事項について速かに善処するよう要望する。
 一 公務災害の予防及び職業病の発生防止に努力し、公務災害の絶滅に努めること。
 二 国家公務員の障害補償、遺族補償、休業補償、葬祭補償等について、引き続きその改善に努めること。
 三 通勤途上の災害の取扱いについて、検討を加え、その改善を図ること。
 四 平均給与額の算定について、期末、勤勉手当の算入につき検討すること。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#10
○議長(船田中君) 両案を一括して採決いたします。
 両案中、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律案の委員長の報告は修正、他の一案の委員長の報告は可決であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 公害対策基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び環境保全基本法案(細谷治嘉君外七名提出)の趣旨説明
#12
○議長(船田中君) 内閣提出、公害対策基本法の一部を改正する法律案、及び細谷治嘉君外七名提出、環境保全基本法案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣山中貞則君。
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#13
○国務大臣(山中貞則君) 公害対策基本法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 戦後すでに二十有余年を経過いたしましたが、その間わが国経済は目ざましい発展を遂げ、これに伴い国民所得の増大、産業構造の高度化等望ましい現象をもたらした半面、短期間におけるきわめて早い経済の発展と人口の著しい都市集中を背景として、大気の汚染、水質の汚濁、騒音等による公害の発生が各地に見られ、人の健康や生活環境に対する脅威となって、重大かつ深刻な社会問題を引き起こしております。
 公害対策基本法は昭和四十二年八月に制定され、以来、同法の精神にのっとり、政府としては大気汚染防止法、水質保全法、工場排水規制法、騒音規制法等により公害の発生源の規制を強化するとともに、公害紛争処理法及び公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の制定により紛争処理及び被害救済のための法制の整備をはかるなど、公害関係諸法の整備につとめたほか、内閣に公害対策本部を設置する等政府の公害防止に関する体制を強化し、さらに公害防止施設の整備を促進するための金融上、税制上の措置の拡充強化につとめてまいったのであります。
 しかしながら、近年に至って、公害現象はますます複雑の度を加え、自動車排出ガスによる鉛汚染、カドミウム汚染、産業廃棄物による公害等新しい公害が問題となるに至っているのであります。
 このような状況にかんがみ、政府の公害に取り組む姿勢を明確にするため、公害対策基本法の目的を全面的に改正するとともに、土壌の汚染、産業廃棄物の適正な処理等、新たに問題となるに至ったものを取り上げて、同法の上に位置づけ、公害関係諸法制の全面的な改正をはかるため、この際同法について所要の改正を行なう必要があるものと考え、ここに公害対策基本法の一部を改正する法律案を提案することにした次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、憲法にいう国民の健康で文化的な生活を確保する上において公害の防止がきわめて重要であることを目的の中で明確にするとともに、経済の健全な発展との調和規定を削除したことであります。
 第二に、公害の定義に土壌の汚染を追加するとともに、これに伴い土壌の汚染にかかる環境基準の設定等土壌の汚染を防止するために必要な規定を設けるほか、温熱排水等による水の状態の悪化、汚泥による水底の底質の悪化等が公害に含まれることを明確にしたことであります。
 第三は、廃棄物の適正な処理をはかるため、その処理についての事業者の責務を明確にするとともに、政府の講ずべき措置として廃棄物の公共的な処理施設の整備を推進すべき旨を明らかにしたのであります。
 第四は、各種の公害の防止のための施策と相まって公害の防止に資するよう緑地の保全その他自然環境の保護につとめなければならない旨を規定いたしたことであります。
 その他都道府県公害対策審議会を必置の機関としたこと等所要の改正を行なうこととしたことであります。
 以上が公害対策基本法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(船田中君) 提出者細谷治嘉君。
  〔細谷治嘉君登壇〕
#15
○細谷治嘉君 私は、日本社会党、公明党、民社党を代表いたしまして、三党共同提案にかかる環境保全基本法案について、その趣旨を説明し、議員各位の御賛同を得たいと存じます。(拍手)
 このたび政府は、合計十四件の公害関係法案を国会に提出し、ただいまその中心ともいうべき公害対策基本法改正案の趣旨を説明されたのでありますが、お聞きのごとくその内容は、
 第一に、経済との調和条項を削除したものの、人間の生活と生命を優位に置くことを明記せず、依然として従来の基本姿勢をとり続けておること。
 第二に、土壌汚染、産業廃棄物を対象に加えたものの、国民の基本的権利である良好かつ快適な生活環境を現在及び後代に保障する努力を忘れ、単に緑地の保全その他にとどめて、矮小化し、世界の傾向からも著しくおくれていること。
 第三に、加害者企業の無過失責任を明記せず、公害罪は法案をつくったものの、後退に後退を重ねたこと。
 第四に、法案のみで、これを裏づけする予算措置は全く講ぜず、特に公害行政を実質的に担当する地方公共団体に対する行政、財政上の措置を軽視または無視したこと。
 第五に、公害行政の強化、一元化が強く叫ばれているにもかかわらず、これを怠り、たとえば電気事業法等の対象工場、事業場を大気汚染防止法の適用除外としているなど、多くの縦割り行政の弊害を存続していること等々、基本的な点できわめて不徹底、不十分であって、今日の激化した公害問題に対処することはとうてい不可能だと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 今年一月、アメリカのニクソン大統領は、年頭教書において、七〇年代の大きな課題として公害問題を取り上げ、その解決には費用と決意と創意が必要だとし、二十三項目の立法措置と十四項目の行政措置からなる総合計画を、いま実行できるものとして提案し、河川浄化のための四十億ドルの支出をはじめ、年次計画による自動車排気ガス規制、各種の基準違反に対する一日一万ドルの罰金賦課等を発表したことはいまだ耳新しいことであり、比較するだに天地の差を感ずるのであります。(拍手)
 このたびの国会は、公害国会とすら呼ばれております。過日の本会議において、佐藤首相は、「福祉なくして成長なし」を政策基調の理念とすると述べたのでありますが、一方では、今後進むべき道は「国民の福祉と経済成長がこん然と融和し、調和がとれてこそ初めてその理想が達成される」とし、依然として経済成長優位主義を捨てていないことを暴露いたしたのであります。
 去る九月二十一日、宇都宮市での一日内閣で、総理は、「政府は、人間尊重を第一義として、公害対策基本法をはじめ、各種公害規制立法の整備、公害罪新設等の立法措置を行なうとともに、企業の無過失責任を早急に検討したい」と力説いたしました。ところが、この国会では、無過失責任はその影すらもなく、この上ない後退であります。それのみか、公害罪法案は、財界などの圧力で、政府原案が修正提出されるという醜態を演じ、公約を破棄したことは、まさしく言語道断と申さなければなりません。(拍手)
 そもそも今日の公害問題は、昭和三十年代以降とられた政府の高度経済成長と企業第一の政策とによって、毒物、害物がたれ流され、自然の環境調節能力の限界を越えて環境汚染を進行させたところにあります。
 現に、公害がこれほど重大化、深刻化しているにもかかわらず、今年九月、労働省が一万四千工場について行なった実態調査では、アルキル水銀は調査工場全部が未処理のままたれ流し、農薬のPCPは七二・六%が、また膀胱ガンを誘発するベンジジンは七・七%の工場が何らの処理もせず放出していたというのであります。全く驚くべき事態であり、文字どおりの無法状態といって差しつかえないのであります。
 訪日中のニューヨークタイムズ紙の論説主幹オークス氏は、十一月三十日付紙上で、「日本は史上最もみごとな経済的カンバックをなし遂げたが、その代価として、環境にひどい打撃をもたらし、人口集中地帯では生存不可能の事態が生まれつつある。産業優先の佐藤内閣は、公害対策を口で言いながら、実際は首相自身、大学紛争の解決のほうに心を奪われているように見える」と論評しているのであります。いまやわが国の公害問題は、対症療法やごまかしの予算では解決できるものではなく、政治の基本姿勢を正し、全力をあげてこれと取り組まなければならない課題であります。
 健康で文化的な生活を営むことは人間の基本的権利であり、これを確保するために、何人にも長期的に良好かつ快適な生活環境を保障しなければならず、この基本理念に立ってのみ基本法は立法されるべきであります。
 私どもは、この見地に立ちまして、本年八月以来、検討に検討を重ねた結果提出いたしたものが、この環境保全基本法案なのであります。本法案は、さきに述べました政府の公害対策基本法案の欠陥を抜本的に改め、公害撲滅を目ざすことはもちろん、進んで自然環境や資源を守り、自然的景観や歴史的遺産の保全をはかり、国民すべてが健康で文化的生活を営むに必要でかつ十分な公共的施設の整備を約束し得るための国、地方公共団体、事業所等の責務、確保すべき環境基準、その他施策の基本事項を明らかにいたしたものであります。
 何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いして、私の趣旨説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 公害対策基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び環境保全基本法案(細谷治嘉君外土名提出)の趣旨説明に対する質疑
#16
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。古川丈吉君。
  〔古川丈吉君登壇〕
#17
○古川丈吉君 私は、自由民主党を代表して、公害問題について、総理並びに関係各大臣に対し、その所信と具体的対策をただし、自由民主党の政府に対する要望を申し上げ、政府の明確な答弁を求めるものでございます。
 国民一般が公害に重大な関心を持つようになったのは、きわめて最近のことであります。政府は、昭和四十二年、公害対策基本法を制定し、国民の健康の保護を最優先の目標として公害対策を推進してこられたつもりであるが、対策が公害発生の速度に及ばず、今日の公害の実情を見ては、並みたいていのことではこれを除去することはできません。いまこそ、人間尊重と国民の真の福祉を守るため、一大決心と勇断が必要であります。何としても、国民の公害に対する不安を取り除かねばなりません。総理のお考えはたびたび伺っていますが、この点について、あらためて総理の御決意のほどを伺いたいと思います。(拍手)
 公害対策の目的は、国民の健康の保護と生活環境の保全にありますが、中でも、国民の健康の保護は絶対的なものであり、何ものにも優先すべきものであります。健康を害する公害の発生源、すなわち公害を出す企業に対しましては、施設の改善を命じ、なお目的を達しないときは、操業の短縮または中止を命じ、いかなる方法をもってしても公害を除去し得ないときは、その企業を廃止しなければなりません。この公害防止のため、生産が減退し、経済成長が低下しても、やむを得ないと考えます。
 公害対策を推進するに、困難な根本問題が二つあります。その一つは、具体的な公害がどの程度に人の健康に影響するかということについて、科学的判断が非常に困難なものが多いことであります。この点については、公害と人の健康との因果関係ははっきりしていると思い込んでいる人、きめ込んでおる人が多いのであります。いま一つは、公害を防止する技術が十分開発されていないことであります。現代科学界で最高の権威といわれる人々をもって構成する研究機関を設けて、具体的な公害についてそれぞれ判断を求め、これを公害対策の基本とし、かつ、これによって国民の公害に対する不安を除くことが必要であります。また、公害防止技術の開発は、現在の機関では不十分で、さらに充実した研究機関を設置する必要があります。公害対策を進めるには、公害の実態調査ができていなければなりません。現在、公害のこの実態調査はきわめて不十分であります。
 今次臨時国会は公害国会といわれ、政府首脳は非常に熱心であり、関係官吏は夜を徹して努力せられたのでありますが、法律案の準備ははかばかしく進みませんでした。これは、対策を立てる基本となる実態調査が不十分であったことと、かつ、これに従事する人員が少ないからであります。私は、国家公務員を思い切って削減することを主張する一人でありますが、定められた定員の中で、公害対策に従事する人員を増加し、機構を整備拡充することを切望するものであります。行政管理庁長官、大蔵大臣、総務長官の御答弁をお願いいたします。
 公害対策をいかに強調しても、必要な予算が十分確保されなければ目的を達することはできません。政府は、来年度各省予算は本年度の二五%アップ以内の要求とされていますが、御承知のとおり、公害関係は各省にまたがっております。事公害に関する限り、この一般的なワクにとらわれず、必要とするものは必ず認められるよう、党として強く要望しているのであります。大蔵大臣のこの点についてのお考えを伺いたいと思います。
 公害の防止は、公害を発生させるものが防止する責任があり、企業の場合は、企業がその費用を負担し、実施するのが原則であります。
 しかし、これを防止するには多額の費用を要する場合が多く、長期低利の融資と税制上の優遇措置が必要であります。中小企業に対しては、特に助成措置が必要であります。また、中小企業の公業防止施設のための融資は、別ワクとして、かつ特別の信用保証制度の必要があります。公害防止事業団は今日まで相当成績をあげてまいりましたが、公害防止事業団の融資のワクをさらに拡大し、融資条件を改善しなければなりません。
 政府首脳が公害対策に非常に熱心であるにもかかわらず、課税当局は、公害に対して、最近の公害の状況と社会情勢をほとんど考慮されておりません。わが党として、公害防止施設に対する課税について、さらに画期的な特別の配慮をされるよう強く要望いたしております。この点についても大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
 公害基本法第二十二条に基づき、事業活動による公害の防止事業を国または地方公共団体が実施する場合の事業者の負担については、今回法律案が提出されました。この基本法第二十二条による地方公共団体の実施する防止事業についても、また、基本法第十九条により実施される特定地域、すなわち、千葉・市原、四日市、水島、近く予定されている東京、神奈川、大阪の公害防止事業についても、事業者のほか、地方公共団体の負担すべき費用は膨大なものとなります。一昨日、千葉・市原、四日市、水島の三地域の公害防止計画が正式に決定されましたが、千葉・市原は千二百六十億円、四日市は六百九十億円、水島は九百四十億円の事業費であります。その約半額は事業者、他の半額は地方公共団体の負担となります。これら地方公共団体の実施する公害防止事業の中には、従来一部国の補助制度のあるものもありますが、今後画期的に公害防止事業を実施せねばなりませんので、今日地方公共団体の財政は多少好転したとはいえ、従来の補助制度ではとうていこれを実施することはできません。
 わが党は、公害防止事業費事業者負担法案をあらかじめ審議するにあたり、地方公共団体の実施する公害防止事業について、国の負担率を高める別の法律案を次の通常国会に提案することを要求したのであります。大蔵大臣、自治大臣、総務長官のこの点についてのお考えを承りたいと思います。(拍手)
 公害防止の目標である公害に関する環境基準、排出基準の設定もいまだ不十分であります。政府は、権威ある機関によって、すでに定められた基準についても再検討し、定められていないものについては早急に基準を設定して、守るべき基準を企業者及び一般国民に周知徹底せしめ、国、地方公共団体、企業者及び一般国民が一体となって公害を防止しなければなりません。
 政府は、公害基本法をはじめ関係法令全般にわたって再検討し、多くの法律案を提出され、公害対策にきわめて積極的な態度を示されたことは、われわれ心から賛意を表するものでありますが、単に姿勢や方針だけでなく、具体的に公害防止が実現し得るよう、右各般にわたって申し上げた具体的な施策を実行されんことを強く強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 古川君にお答えをいたします。
 国民の福祉を最重点として、多様化し深刻化しつつある公害対策に、全力をあげてまいる決意であることは、さきの所信表明において、あるいはその後各党からの代表質問に際して、申し上げたとおりであります。私は、公害問題を、人の健康や環境に問題が起きたときに対処するという、いわば受け身の問題としてではなく、積極的に、りっぱな環境を取り戻す、美しい自然を永遠に子孫に残していく、こういう前向きの姿勢で、真剣に取り組んでまいる決意であります。(拍手)
 本日提案いたしました公害関係各法案は、今後の公害行政を進めていく場合において、大きな前進と飛躍を可能にする基盤であります。私は、この基盤に立って、産業政策、地域開発あるいは社会資本の充実等、各般の施策を総合的に推進することによって、公害の防止を進め、国民福祉の一そうの向上をはかってまいりたいと考えるものであります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#19
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 公害のための機構を増強すべし、こういうお話でございます。人が要る、そういう場合には、これをふやすことにやぶさかであってはならぬ、また、機構もそういうふうに思います。公害は非常に大事なものであるからであります。ただし、その場合におきましても、既定の人員の再配分、また既定の機構の再編成、こういうワク内において行なうということこそが妥当な措置ではあるまいか、さように考えております。
 次に、概算要求で二五%ワクにこだわらずに公害対策費を認めよというお話でございます。公害対策費は大事なものでありますので、各省におきましても、各省ごとの二五%ワクは守っていただきましたけれども、公害対策費につきましては、これは非常に増額の要請があります。これに対しまして、私といたしましても事の重要性にかんがみ、二五%というようなワクにとらわれずに対処してまいりたい、かように考えております。(拍手)
 次に、公害防止のための企業負担、これが非常に重大なんで、税と金融において特別の配慮をせいというお話であります。企業負担は非常にふえていくだろう、かように考えます。これに対しまして、金融ではすでに中小公庫や国民公庫において特別ワクを設けておりますが、さらにこれを拡充をいたしてまいる考えでありますが。また、公害防止事業団におきましても、融資ワクを拡大するとかあるいは条件の改善をいたすとか、可能な最大の努力をいたしてまいりたい、かように考えます。税の面におきましても、これは公害対策となじむ税制という考え方、これができ得るのじゃあるまいかと存じておりまして、ただいま前向きに検討中でございます。
 次に、地方公共団体が公害対策によってかなりの財政上影響を受ける、かように考えます。古川君はこの点を御指摘でございますが、これに対しましては交付税の配分、これを考えなければならぬということ、ごれももちろんでございまするけれども、その上さらにあるいは国が財政投融資の面において特別の配慮をしなければならぬ、あるいはさらに国と地方との財政全体をにらみ合わせまして、総合的な調整をしなければならぬ、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣秋田大助君登壇〕
#20
○国務大臣(秋田大助君) 公害対策の推進、ことに公害防止計画事業の推進をはかるためには、国の責任を明らかにいたしまして、地方公共団体が所定の、予定の期間内にその防止計画事業を達成できまするように国の負担補助制度と財政上の必要な措置を拡充していくことが必要であろうと考え、その点せっかくいろいろ検討をいたしておりますが、次の国会までにこの点について所要の結論を得べくせっかくただいま関係機関と協議をいたし、努力をいたしておるところでございます。(拍手)
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#21
○国務大臣(山中貞則君) 公害の問題について権威ある研究機関というものがぜひ必要であるということでございます。現在も、御承知のように、国立公衆衛生院等政府の、各省庁の研究機関等がございますが、やはりそれぞれ相互の間の、研究いたしました資料等の相互交流なり有機的な活用なりの点において問題なしといたしておりませんので、これらについては、総理の御判断を前提としてのことでありますが、国立公害研究所としての一本化されたもの等が必要となってくるのではないかというようなふうに考えておるわけでございます。
 さらに、それと相呼応いたしまして、防止技術の開発研究についても、これまた、現在工業技術院の公害資源研究所等、その他関係省庁の研究機関で同じように開発研究の努力を続けておるわけでございますけれども、これが実際上に民間なり、あるいはまたそれらの民間の利用者なりにこれが公開利用されているかという問題になりますと、そこらでいろいろまだ足りない点があるように思いますし、これらも、ただいま私が申し上げましたような機構の検討等と相まって、やはり技術面の研究開発の成果が直ちに国民に、その果実として受け取られるような方法を考えてまいる必要があると考えます。
 なお、機構の中でも、庁もしくは省等の設立の踏み切りの決意等についても聞かれたのでありますが、これらは、私の一存できめることではございませんが、しかし、関係閣僚会議におきましては、少なくとも、ただいま申し上げましたような現状を前進させるために、データバンクを設けることにいたしております。データバンクを設けることによって、それぞれ外に向かって開放されなかった資料、研究成果、あるいは相互に有機的に活用されなかったもの等が、これがデータバンクによって集積された情報として、民間等にも提供され、活用されるようになることを期待しておるつもりでございます。
 財源措置については、それぞれ御答弁がございましたが、次の国会に国庫補助、地方債等についての特例法を出すかということでございました。次の国会に出したいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#22
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 私に対する御質問の要旨は、国家公務員の削減には賛成であるが、定められた定員の中で、公害対策に従事する人員を増加し、機構を拡充することを希望する旨の御質問であったかと思います。
 政府は、総定員法の趣旨に沿って、その適切な運用をはかるとともに、行政改革を着実に推進しつつあるところでありますが、公害対策等、真に必要とされる新規行政需要に対しては、既存機構の再編成及び既存定員の配置の合理化等によって、支障のないように対処する所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(船田中君) 島本虎三君。
  〔島本虎三君登壇〕
#24
○島本虎三君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨の説明がありました公害対策基本法改正案並びに関係諸法案に対して、総理はじめ関係閣僚に対し、その所見をただそうとするものであります。(拍手)
 国民注視の中で開かれた本臨時国会は、御承知のように、過ぐる十一月二十九日をもって議会制度創設八十年の記念すべき日を迎えて、国政に参加する者の責任の重大さを痛感するものでありますが、言うまでもなく、本臨時国会の最大の課題こそは、公害対策の抜本的転換であるはずであります。私は、国民が最も疑問を抱いている幾つかの問題点について、政府に具体的にその真意をただしてまいりたいと存じます。
 まず最初に私が指摘いたしたいと思いますことは、今度政府が提出を予定している一連の公害立法が、いかなる発想に基づいて打ち出されているかということであります。すなわち、今日の大気汚染の重要な原因と目されているわが国の石油消費量一つを考えてみても、その消費量の増大に伴い、五年後には亜硫酸ガス及び炭化水素の総排出量が現在の二倍をこえることは確実といわれているのであります。この量は現在のアメリカの水準の実に四倍に達するのであり、このまま推移すれば、三十年後にはわが国土の亜硫酸ガスの濃度は想像を絶するものとなり、希硫酸の雨に洗われるに至るであろうといわれているのであります。
 このように進行する環境の汚染は、野生の動植物の生態に大きな変化を引き起こす段階から、すでに人体を知らないうちにむしばむ段階に入り、東京大学の浮田教授の報告によりますれば、すでに日本人の頭髪に含まれる水銀の量は、何と外国人の三倍近くも検出されたというではありませんか。また、昭和三十五年に比べてわが国の肺ガンによる死亡数は本年には二倍にふえ、上咽頭ガンも大都市や大きな河川の流域に多いとも報ぜられておるのであります。すでに事態はかくも深刻になりつつある以上、今日の現状の基準だけで対策を考えるということでは手おくれになり、今後予想さるる事態に対処でき得ないことは明白な事実ではありませんか。(拍手)だとするならば、いまや公害対策を確立するにあたっては、重大な発想と対策の転換が必要にもかかわらず、政府の対策は現状にすくみ、全く立ちおくれているといわなければなりません。国民のため憂慮にたえない次第であります。
 国民の疑問の第一は、まず、公害対策基本法成立以来、政府が一連の公害立法を整備し規制を強化してきたにもかかわらず、公害が減少するどころか、環境破壊がますます進行して、国民の健康と生命がいよいよ危険にさらされているということによっても明らかであります。政府はこれに対していかなる具体策を講じてきたのか、政府の施策に対する大きな疑問であります。
 その第二は、政府が今国会で成立させようとしている新たな立法によって、これまで政府がなし得なかった対策をほんとうに実現できるのだろうかということであります。すなわち、政府の新規施策の実効性に対する疑問であります。
 いま申し上げました第一の点から総理に具体的にお伺いいたしますが、基本法制定以来、大気汚染防止法、騒音規制法、亜硫酸ガス並びに一酸化炭素等の環境基準の設定、あるいはまた公害による健康被害の救済及び公害紛争処理法の制定などの施策が矢つぎばやに行なわれました。しかし、それにもかかわらず、むしろ公害による生活環境の悪化がますます増大した理由はなぜなのか、国民の前に明確な答弁をいただきたいのでございます。(拍手)
 あわせて内田厚生大臣にお答えを願いたいが、政府の施策のかなめというべき環境基準についてであります。昨年、亜硫酸ガスの環境基準が定められましたが、その達成状況を明らかにしていただきたいのであります。この基準を達成するためには具体的な施策が明らかでなければならず、しかも目標達成年度である昭和五十三年度までの年次計画が必要であると思います。したがって、たとえば政府の低硫黄化燃料計画等でも、年度別に環境基準達成目標を設けて、確実に前進するという内容のものにする必要があるのであります。それが中間目標を置く程度では実効を期待し得ないのは、けだし当然ではございませんか。したがって、今回の基本法の改正に伴って、当然、これら既存の計画が改善され、充実されるのでなければ、環境基準を設定した効果はなきにひとしいといわざるを得ないのであります。(拍手)
 これと同様なことは、自動車の排気ガス規制についてもいえると思うのであります。運輸大臣にお尋ねいたしますが、政府は一酸化炭素及び鉛等の規制を行なっておりますが、その効果があがっているならば、具体的な例によって示していただきたいと思います。
 第二の、今回の政府の新規施策の実効性についてでありますが、当初の政府原案でさえその実効性がきわめて危ぶまれているのに、それさえも、その後、財界その他公害発生企業の圧力に屈して、全く骨抜きの閣議決定になっているがごときは、まことに言語道断といわなければなりません。(拍手)
 一つには、環境基準については、国民の健康で安全かつ快適な環境を保全するために達成され、維持されなければならない最低限の基準としなければならないにもかかわらず、政府案では、現行基本法第九条の「維持されることが望ましい基準」と、きわめてばく然としているのであります。あえてこれさえも改正を加えないとは何事でしょうか。総務長官にこの点、お尋ねいたします。
 二つには、国及び地方公共団体の事業者に対する規制がきわめて微温的なものにとどまっていろことであります。たとえば、発生源に対する操業停止命令に従わない場合、電気、ガス、工業用水等の供給停止などの措置がとり得るようにすべ費であるにかかわらず、閣議決定においては、大気汚染防止法の政府原案二十三条における都道府県知事のばい煙発生施設の使用停止命令権さえ拒否して、これを改善勧告にとどめてしまうなど、国民の疑惑と失望を買うことばかりしているではありませんか。(拍手)一体、いかなる理由でこうなったのか、国民の納得のできる御説明ができるならば承りたいのであります。(拍手)
 三つには、経団連の反対で一躍有名になりました公害罪についてであります。法務大臣、あなたにお尋ねしたいのは、経団連をはじめ財界がこぞっての反対について、あなたはどのような理解と受けとめをしておられたか。そして、かりにこの政府案どおりに法が施行されたとして、今後、あのいまわしい水俣病やイタイイタイ病、あるいはまた四日市ぜんそく等と同様な事態、事件が発生した場合、この法律で処罰できるのでありますか、できないのですか、端的にお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 四つには、公害による被害者を救済する最も有効な道は、加害者に故意または過失がなくとも加害者に損害賠償の義務を負わせること、すなわち、無過失賠償責任制度の確立とともに、公害に関する訴訟においては、原告たる被害者は、被害の因果関係を立証するにあたりその蓋然性を証明しさえすればよいとする挙証責任の転換であり、これに加えて、準司法的権限を持つ紛争処理機関を創設し、紛争を迅速かつ公平に処理する制度を確立すること、すなわち、裁定制度の創設、以上三つを基本とし、その上に、被害者の生活保障を含めた被害者救済措置の充実が必要と考えるのであります。しかるに、政府案は、これらの施策は一切無視して、悲惨な公害被害者の現状を顧みることなく放置したままになっているけれども、一体これでほんとうによいのでしょうか。これがほんとうの対策として認められるでしょうか。この点について総務長官、法務大臣、厚生大臣に承りたいのであります。
 政府の公害関係法案には、このほかにも不備、欠陥があまりにも多いのでありますが、総理をはじめ関係閣僚は、これらによってわが国の公害を絶滅することができるという確信があるのですか、いかがですか、お伺いいたします。
 五つには、財政上の問題であります。総務長官にお伺いいたしますが、基本法第二十二条に基づく企業負担の制度化につきましては、ようやく具体化を見たわけでありますが、基本法二十三条に示されております「地方公共団体に対する財政措置」については、いまもって何らその具体策が明らかにされていないのは、あまりにも片手落ちと言わなければなりません。企業負担とともに、ここに、国の責務を果たす意味からも、政府の財政負担に対する新たな立法措置なり施策が当然必要と考えるのでありますが、その点について具体的かつ明確な御答弁をいただきたいのであります。
 このように、政府案に重大な欠陥が生じたのは、公害対策の抜本的転換がはかられなかった明白な証拠であります。私は、この抜本的転換をはかるために、次の三大原則を踏まえなければならないと確信するものであります。
 すなわち、第一の原則は、良好な環境を享受する権利は国民の基本的権利であって、企業活動が環境を実質的に支配し、これをほしいままに汚染し破壊するのを国は全力をあげて阻止しなければならないことであります。
 第二の原則は、自然の浄化能力をこえるおそれのある汚濁もしくは破壊を禁止して自然と人間の調和をはかることは、いまや人類共通の責務であるという認識をせなければならないことであります。
 第三の原則は、公害は必要悪として甘受すべきものではなく、本来人間の英知によって絶滅し得るものである立場に立つことであります。
 わが党の細谷議員からただいま提案されました野党三党共同提案による環境保全基本法案は、この原則に貫かれているのでありますが、総理、まずあなたは、健康にして安全、かつ快適な環境を享受する権利は国民の基本的権利であることを認めますか。次に、あなたは、政府の基本法改正案において、公害防止と環境保全のための施策はあらゆる産業政策と企業利益に優先する旨の修正が欠落していることを、どのように釈明されますか。あわせて、この点については、国民の生命と健康を預かる立場におられる厚生大臣並びに通産大臣の決意も伺わしていただきたいのであります。
 さらに、私は、国民の生存権を保障し、また環境権を保障する責務は、国とともに地方公共団体にあるという見地に立って、公害を防止し、環境を保全するための施策は、特に法律の定めのない限り自治体の固有の事務なのであって、したがって、法律に定めのない規制を条例において行ない得ること当然であって、法律に定める規制であっても、当該地域の諸条件に応じて条例で法律より厳格なものにすることも可能であると思うのでありますが、自治大臣と法制局長官の見解を承りたいのであります。
 最後に、最近、財界は、来年の統一地方選挙並びに参議院選挙で自民党に資金援助を与える見返りに、公害罪法案をはじめとして関係法案の審議未了、または骨抜きを策しているかのように伝えられているのであります。有効な公害罪の新設こそ、総理の国民へ言明した公約であるはずであります。国民の総理であって、断じて財界の総理ではない気概を示すべく、その圧力をはね返して、公害企業からの政治献金を辞退する姿勢を総裁としてとることこそ、国民は期待するところでございます。(拍手)
 以上、私は、このたび提案された公害関係法案の主要な疑問点について、総理並びに関係閣僚の所見をただしてまいりました。重ねて総理に決意を伺っておきたいと思いますのは、総理は、さきの代表質問の際、わが党の下平議員の質問に答えて、このたびの法案が成立すれば、わが国の公害の対策は世界一になる、このように断言されました。私は、率直にそれを受けとめておきます。人間尊重と福祉優先を打ち出した佐藤内閣のもとで、万が一にも二度と再び公害国会などの開会が必要とされることがないように、ここに総理の決断を促して、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 島本君にお等えをいたします。
 公害問題が深刻化しつつあることは、政府の防止努力にもかかわらず、残念ながら事実であります。私は、国政を預かる者として、最終的な政治責任を回避するものではありません。むしろ、その責任を感じ、事態の重大さを認識すればこそ、このたび公害国会ともいわれるこの国会に、多くの公害関係法案を準備し、御審議を願うこととしたのであります。(拍手)
 公害問題がいまやわが国のみならず、国際的に大きな問題として登場している中にあって、特にわが国の場合、特異の様相を呈しているゆえんにつきましては、さきに、宇都宮における一日内閣におきましても明らかにしたところでありますが、私が国政を預かって以来、早々に人間尊重と社会開発の必要性を訴えてきたにもかかわらず、遺憾ながら公害問題が深刻化してきたのには、急速な経済発展、経済成長や、急激な都市化、こういうような事態がその背景をなしているのであります。さきに自民党の古川君にお答えしたように、公害対策が、単に直接的な公害防止の施策にとどまらず、総合的な施策が必要であるゆえんも、まさにこの点にあると考えます。
 また、今回の法案の準備の段階におきまして、あるいは財界の圧力に屈したとか、あるいは党との間の意見の調整等についてとかくの批判をされたようでありますが、私どもは、議会政治、政党政治として、当然与党である自民党の意見を十分取り入れることは、これは政党内閣のたてまえとしてむしろ当然のことであり、決して一部第三者の圧力に屈したものではありません。(拍手)このことはたいへん誤解があるようでございますから、はっきり申し上げまして、その誤解を解いてもらいたいと、かように思います。(拍手)
 私は、この点は島本君も日本社会党を代表してお尋ねになったと同じように、私どもも議会政治、政党政治、そういうたてまえで与党とよく話をしておるわけであります。野党の諸君とは、もちろん、審議を通じまして御意見を謙虚に承るつもりでございます。
 私は、本日提案いたしました法案は、政府が責任をもって作成したものでありますが、これが国会におきましてあらゆる角度から建設的な討議の対象となり、今後の公害行政の飛躍的な充実の基礎となることを心から期待するものであります。(拍手)何とぞ、皆さま方の率直な御批判と建設的な御意見を聞かしていただきたい。これをお願いいたします。(拍手)
 また、島本君から法案の実効性について具体的にお尋ねがあり、その個々につきましては所管大臣からお答えいたしますが、一般論といたしまして、私からは、御審議いただいた法律は、今後その実効をあげるようその具体的な展開につとめると同時に、今後の公害問題の推移に応じ、法律そのものも、常に最善のものとしてこれを修正していく考えでございます。あるいは新しくつくるというようなこともございます。その点を一言つけ加えておきたいと思います。
 次に、島本君から、環境権を重視せよ、この意味合いにおいてのお尋ねがありました。先ほど三党の共同提案になった環境保全基本法案の趣旨に基づくものと考えます。御承知のように、憲法二十五条においては、「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む権利を有する。」と規定されているものであり、私もこれをそのまま守っていくものであります。国民の健康を保護し、良好な環境を享受できるよう、種々対策を講じてまいらねばならないことは申すまでもありません。今回の公害基本法改正案は、この憲法の大原則のもとに組み立てられたものであり、関連諸法案におきましても、結果としての公害の除去から一歩前進して、公害の未然防止を前面に打ち出したものであります。環境権なることばはまだ熟しておりませんので、そのようなことばを使ってこそおりませんが、島本君のお尋ねの趣旨は、政府案におきましても十分尊重されているものと考えております。何とぞ御審議のほどお願いをいたします。
 以上、私からのお答えは……(「政治献金はどうした」と呼ぶ者あり)政治献金は、私は、別に財界の圧力との関係はございませんということをはっきり申し上げましたので、これは以上で尽きております。(拍手)
  〔国務大臣小林武治君登壇〕
#26
○国務大臣(小林武治君) 公害罪の処罰に関する法律案でございますが、これは私は率直に申し上げまして、公害問題の最後の処理に当たる法律であるのでありまして、本体は公害が出ないように、発生させないようにすることが、行政としてもまた企業家としても当然なことであるのでございます。(拍手)したがいまして、この法律自体は、その目的は、いまお話しのように、これは世界にまだ例がないが、公害の実態にかんがみまして、公害という特別の行為、特別の実態を犯罪としてとらえる、そのことを法律によって宣言することによって、企業者あるいは事業者が自粛、反省をして、そのことのないような、抑止的あるいは予防的効果をねらったことが最大の眼目であるのでございます。したがいまして、いま、たとえばその中の一部が手直しがなったとかならぬとか、こういうことを非常に大きな問題にしておるのでありまするが、私どもはいま、実は直したことが一体どういう差異があるかということを、私、専門家でないので、ここで明確に答弁することが不可能であるほどの問題である。したがって、これらのことは、私は委員会等において明らかにいたしたいと思いまするが、さような意味におきまして、私どもはこの公害罪の眼目、こういうものをひとつ考えてもらいたいのでございまして、その効果を私どもはいまの予防的、抑止的効果に期待しておる、こういうことをあらためて申し上げておきたいのでございます。実はいま私が申すように、公害罪というものは、これは公害の最後のいわば終末処理であって、これが先行するなんということは、私はむしろ議論の本末転倒である、かように考えておるのでありまして、要は、公害を発生させないくふうをするのがこの国会の目的であろう、かように私は考えておるのでございます。(拍手)かような意味からして、詳細のことはまた担当委員会で申し上げます。
 なお、したがって、私がいま申すように、このことが人の圧力であったとかどうとかということではない、私ども法務省が原案をきめ、またその最後の検討において、かように直すことが適当であると、私の責任においてこれを直して国会提出をしたのであって、この閣議決定したものが政府の原案である、こういうふうに私は御承知を願いたいと思うのであります。
 なお、これにつきまして、いま島本議員から、いわば公害の被害者の救済に無過失責任とかあるいは立証責任、こういう問題がありましたが、これは、総理も宇都宮の一日国会で、これは検討すると申されたので、立法するとか国会提案するとか申されたとは思いません。したがって、私どもも、いまの被害者、公害が非常に過失が…(「検討するということは何もしないということだ」と呼ぶ者あり)何にもしておらぬわけではありません。検討しておる、こういうことでありまして、これはやはり、公害の特質に照らしてこの問題は検討する必要があるということで、目下検討を加えておる。また、挙証責任の転換の問題についても、同様の問題がありまして、これは検討をしておる、こういうことであるのでございます。なお、あるいは水俣病とかその他についてこの法律が適用になるかどうか、こういうような質問もありますが、このことは現在民事上の裁判になっておるのでありまして、具体的の問題につきまして、私がいま、適用があるかどうかというようなことを申すことは適当でない、かように考えるものであります。(拍手)
  〔国務大臣内田常雄君登壇〕
#27
○国務大臣(内田常雄君) 亜硫酸ガスなどの硫黄酸化物の環境基準が設けられましたのは、島本さん御承知のとおり、昨年の二月でございましたが、その当時設けられた環境基準を超過いたしておりました地区は、全国で東京、大阪、四日市など十九都市でございましたが、昨年中にこのうち改善されました地区が、千葉、釜石など四都市がございましたが、しかし残念ながら、新たに札幌、名古屋、富士などの十七都市が環境基準を越えるような私のほうの計算が出てきております。これは、当該地区における汚染度の進行ももちろん私あると思いますが、他面、指定地域を私どものほうでだんだん拡大をいたしまして、これらの地域に測定器を設けることになりましたので、その測定の網にかかるものも多くなってきたというような、そういう事情も実はございます。いずれにいたしましても、これらの地区の改善のための対策といたしましては、今回の法改正に基づく規制や指導の強化等によりますとともに、低硫黄化対策というようなことも積極的に進めてまいりますし、また、先般閣僚会議できめましたように、東京、神奈川、大阪などの公害防止計画の決定に引き続いて、さらに東京、神奈川、大阪あるいは鹿島、名古屋、尼崎、北九州、大分、鶴崎というような地域に公害防止計画をつくりまして、そうして年次計画をもってこれらの環境基準が一日も早く達成されるような計画を立てていることは、島本先生御承知のとおりでございます。
 一酸化炭素などの自動車の排気ガスにつきましては、運輸大臣からお答えがあると存じます。
 それから、公害による健康被害者の救済の問題ですが、いろいろ新しい面の展開も今後あり得ることと思いますが、当面は、御承知のように、ことしの二月から実施をされてまいりました公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法に基づいて、水俣病、イタイイタイ病をはじめ、川崎、四日市あるいは大阪の汚染地区などにおける慢性気管支炎等を対象とした救済措置が講ぜられておりますが、この十二月から、御承知のように、尼崎の汚染地区も対象地区に新しく加えて措置することになりました。今後、さらに地区の実情に応じまして、対象の拡大でありますとかあるいはその救済内容の改善などを、私どものほうの厚生省としては、はかってまいり、そのための予算措置などにつきましても、今後十分その確保につとめてまいりたい所存でございます。
 それから、御意見がございました環境権の問題と申しますか、そのととに関連しましては、私は常に、公害対策というものは、国民の健康の保護ばかりでなしに、生活環境保全の対策でなければならないと心得て、実は微力ながら推進をはかってまいりましたが、今回の公害対策基本法をはじめ各公害関係法の改正におきましても、この趣旨に沿いまして、産業経済との調和条項の削除でございますとか、自然環境保全のための新しい規定をも取り入れまして、島本構想を他の面から達成するような、そういう姿勢を私は進めておるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#28
○国務大臣(宮澤喜一君) 生活環境保全と産業との関係についてどう考えるかというお尋ねでございましたけれども、先ほど総理大臣が詳しくお答えになりまして、私もそのように考えております。実際の行政をやりますのに、またそういう心がまえで誤りなくやってまいりたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣橋本登美三郎君登壇〕
#29
○国務大臣(橋本登美三郎君) お答え申し上げます。
 御質問の趣旨は、一酸化炭素、鉛等についての規制対策を行なっておるようであるが、効果があがっておるかどうかという御質問のようであります。一括して申しますれば、残念ながら十分なる効果はあげておりません。ただし、相対的効果はあがっておる。というのは、昭和四十年、そのときの一酸化炭素の数量と昭和四十年度の自動車台数の数量と比較いたしますというと、自動車台数で二倍の増加量を示しておるにかかわらず、一酸化炭素は六〇%の増加にとどめておる、こういう意味では相対的な効果はあげておる、こういう意味であります。
 なお、運輸省といたしましては、積極的に一酸化炭素、鉛等のいわゆる対策を講じておりまして、昭和五十年には、一酸化炭素が昭和三十八年の状態にまで戻したい、こういうのでスケジュールを立てて進めてまいっております。及び無鉛化安全車は、昭和四十九年の四月にはぜひともこれを実現する、こういう積極的なプログラムをつくってやっておりますので、御了承願いたい。(拍手)
  〔国務大臣秋田大助君登壇〕
#30
○国務大臣(秋田大助君) 住民の健康を維持いたしまして、快適な生活環境を保全することは、国と並びまして地方公共団体の重要な任務でございます。この意味におきまして、国の法令の及ばないものにつきまして、良好な環境保全のため、合理的な範囲におきまして、条例が始終規制を行なうことは望ましいことと考えております。この観点から、自治省といたしまして、地方公共団体を今後積極的に指導してまいりたいと考えております。
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#31
○国務大臣(山中貞則君) 環境基準を、法的拘束力を持たせなかった問題でございますが、環境基準は行政上の政策目標ということでありまして、それに対して排出規制基準を、法的拘束力を持たせることによって環境基準の政策目標としての達成のための手段としたいという意味で、排出規制の基準についての法的拘束力を与えているわけでございます。
 それから、さきの国会で成立いたしました公害紛争処理法に基づく中央公害審査委員会等の審査の権限の中に裁定の権限を持ち込むべきであるという島本君の長い持論でございますし、また、ある意味において島本君の議論でございますし、私どもも委員会においていつも承っておるわけでございますが、御承知のように、憲法に、行政は終審を行なえないということもありまして、やはり話し合いで裁定、仲裁、調停等の段階で行ない得る限度をこの公害紛争処理法ではねらっておりまして、それでいやならば裁判にいくという場合はやむを得ないというつもりでおりますので、御意見は貴重なものとして今後とも検討を続けてまいりますが、現在の段階では、先国会通過いたしました内容の運営に誤りなきを期したいと考えております。
 さらに、企業負担の、公害防止事業に対する企業負担法は出されたけれども、それに対応する国や自治体の財政上の対応すべき特例措置が出ていないではないかというお話でございます。これにつきましては、私どもも予算編成と一体となってこの問題を解決しませんと、企業の費用負担の問題は、比率その他において確定ができましても、国の財政の中において一般の補助よりどれだけの特別なかさ上げができるかどうか、あるいは自治体の地方債等について、過疎債とかあるいは辺地債等のような性格のものが設けられ得るのかどうか、これらは、やはり予算の編成の際の議論であると考えまして、今国会は見送ったわけでございますが、次の国会に、特例法でありますれば、法律を当然提案する用意を持っているわけでございます。(拍手)
  〔政府委員高辻正巳君登壇〕
#32
○政府委員(高辻正巳君) いわゆる環境権が憲法二十五条の権利にゆかりを持つものであることは、先ほど総理大臣からお答えがございました。
 それからまた、公害の防止に関する責務といたしまして、国のほかに地方公共団体もまた責務がある、これは、公害対策基本法にも実は四条、五条に明らかになっていることでございますが、自治大臣からもお話がございました。
 残りますのは、法律と条例との関係に関してでございますが、これも御存じのように、条例は憲法上法律の範囲内で制定をすることができるものでありまして、法律の範囲外にわたって制定することができるものではないわけでございます。そういうことで、ある事項について条例で規定を設けようという場合には、その事項について一体法律がどういう態度をとっているかということにかかるわけでございまして、それがときどき疑義を生ずることがあることも事実でございます。しかし、そういうことではたいへん困りますので、今度の御審議をお願いしますところの法律案では、法律の規制事項以外の事項につきまして条例で規制することができることを明らかにし、そのような疑義を生じないように配慮を加えることになっております。
 以上、御答弁を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○議長(船田中君) 古寺宏君。
  〔古寺宏君登壇〕
#34
○古寺宏君 私は、公明党を代表して、ただいま提案されました公害対策基本法の一部を改正する法律案及び関係法案について、総理並びに関係各大臣に対し若干の質問をいたしたいと思います。
 公害問題は、いまや質、量ともに大きくその態様を変貌し、地球的規模にまで拡大しようとしており、地球をこれ以上汚染するならば、人類はみずから開拓した環境の中で死滅する結果を招きかねないと警告されております。
 ウ・タント国連事務総長は、一九七二年の国連討議問題として公害を取り上げることを明言し、また、ニクソン大統領も本年初頭に公害教書を発表し、二月十日には、一九七〇年度予算教書によりその提案をさらに具体化し、きわめて大胆に公害に取り組み、その克服にまっこうから挑戦したのであります。
 ところが、目を国内に転じてみるならば、昭和四十二年八月に公害対策基本法が制定され、さらにその他の関係法が制定されてまいりましたが、常に後手後手に回り、企業優先の政府の政治姿勢の結果、わが国の公害は世界にも類を見ないほどの深刻なる様相を呈し、国じゅうが爆発的な公害に脅かされている姿は、全く公害列島日本といわざるを得ないのであります。世界に誇れる美しい自然に恵まれていた日本、それが全く汚染されきってしまいましたが、政府は、一切に優先し、責任をもって美しい自然を取り戻すべきであります。
 最近、厚生省、通産省、労働省などが、やっと世論の高まりに押され、全国の工場及び事業場の公害調査の結果を発表いたしております。厚生省の四十四年度の調査結果によりますと、調査した二十三工場のうち半数をこえる十二工場が、国の水質基準を上回る水銀を流し、特に東京の薬品メーカーの工場では、排水口下のどろから二七八〇PPMという大量の水銀が検出されているのであります。また、通産省のカドミウムを使用している工場の排水実態調査によれば、カドミウムを使用している企業の半数以上が水質基準を守っていないというのであります。中には、基準の一千倍という殺人的排水をしているショッキングなケースもあります。労働省の調査によれば、有害物質の排水、排気の未処理の事業場の全国一万三千余の総点検の結果、排水では二一・四%、排気では七四・四%の事業場にのぼっております。
 この事実は、まさに政府が政府機関みずからの手によって公害列島日本の実情をさらけ出したものであり、公害に対して何らの対策も予防措置も講じてこなかったという事実を証明した以外の何ものでもありません。(拍手)
 公害規制の具体的内容は、行政レベルで決定をされる仕組みになっております。したがって、法律の条文の改正だけではなく、行政レベルでの基本理念の転換が行なわれないならば、公害行政の正しい展開は不可能であります。
 総理は、四十二年の国会で、公害問題は経済との調和をはかることが大切であると答弁されましたが、この無責任な政治姿勢が、このような回復不能とまでいわれる公害の惨状を生み出し、国民の批判の前に破れて、「経済の健全な発展との調和」条項を削除しなければならない羽目となったのであります。総理は、このような公害の惨状に対して、蛮勇をふるっても公害に対処すると発言されたことがあります。今後どのような決意で、政治姿勢で、この深刻なるわが国の公害問題に対処するお考えであるか、明快なる御答弁を承りたいと思うのであります。
 「生命以外に富はない」、十九世紀のイギリスのラスキンはこう述べております。最高にして最尊の宝こそ生命であります。きょうもまた水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく等の患者が、公害裁判を続けながら苦脳の毎日を送っているではありませんか。これらの方々は、すでに公害病に認定された被害者であります。わずかの医療費の支給、生活保障もないどん底の悲惨な日々を送る被害者の血の叫びを、総理はどのようにお聞きになっておられますか。たよりにならぬ政府の態度、責任回避にきゅうきゅうだる企業。裁判のみが、これら被害者の方々の最後のぎりぎりの限界に追い詰められた必死の抵抗ではないでしょうか。最近も、四日市ぜんそくの学童がとうとい生命を奪われ、きょうもまた公害によって一人のとうとい生命が失われた悲しむべき報道に接しました。政府は一体、これら被害者に対していかなる救済措置を考えているのか、総理並びに厚生大臣に承りたい。
 現行の特別措置法はきわめて不完全であって、なきにひとしきものであります。今国会を公害国会というなら、当然法律の整備をしなければならないのに、それをしないで何らの救済措置も考えないのは、いかなる理由によるものでありましょうか。
 さらに、政府は、全国二千十一人に及ぶ公害病認定患者にかわり、どのようにこの憎むべき公害病の元凶たる企業の責任を追及したでありましょうか、承りたいと思うのであります。
 去る宇都宮市での一日内閣で、佐藤総理は、無過失責任の法制化を急ぐと演説いたしました。次いで、山中公害担当大臣も、さきの参議院公害対策特別委員会で、公害に対する無過失責任の立法化について発言をいたしております。すなわち、法理論上の問題として論議中だが、次の国会には提案を考えているという、あたかも無過失責任制度を採用するかのような姿勢をとってきたのであります。しかるに、今国会にはついに立法化を見るに至らなかったではありませんか。現在損害をこうむっている被害者をいかに迅速かつ確実に救済するかということこそ、当面の立法的課題であるとともに緊急の政治課題であります。
 政府は、今回の基本法改正にあたり、公害防止のかなめとなる無過失責任制度を盛り込もうとしないばかりか、民法上疑義があると強弁されておりますが、いまや無過失責任制の実施は、世論の強く望むところであり、しかも、この無過失責任制は、すでに原子力基本法をはじめとする各種立法に導入された実績もあります。したがって、民法上の疑義は総理の逃げ口上にしかすぎないのであります。この点、明快なる答弁を願いたいのであります。(拍手)
 次に、公害罪の立法化は、当初、企業の公害犯罪を抑止をする意味において、大いなる期待をもって国民に受け取られてまいったのであります。また、それが公害防止に対する政府の政治姿勢であるかのようにも考えられたのであります。しかるに、提案された公害罪処罰法案の内容は、前評判とはうらはらに、政府は、大企業、財界の圧力に屈し、大骨が抜き取られてしまい、見る影もなく、ざる法と化してしまったではありませんか。すなわち、「危険のおそれ」条項の削除のいきさつがそれを如実に物語っているのであります。この表現の削除により、公害の事前防止の道が閉ざされてしまったのであります。はたして、「公衆の生命又は身体に危険を及ぼすおそれのある状態」のうち、「及ぼすおそれのある状態」を削除し、「危険を生じさせた者」とすることとした結果、処罰対象の範囲がどのように変化するのか、カドミウム等の有害物質により土壌汚染の場合、排水により水質汚濁の場合について、どのようなときに公害罪が適用されるのか、具体的な明快なる御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)
 現実問題として、生命または身体に被害が生じてからでは原状回復はほとんど不可能といえるのが公害の特質であり、事前予防の道が閉ざされたことは、国民すべてひとしく遺憾とするところであります。この事実は、政府が本気で公害防止に取り組んでいないことを天下に証明するものであります。
 次に、四日市ぜんそくのように、加害者が競合している複合公害にもこの公害罪が適用されるのかどうか、この際はっきりさせるべきであると思いますが、いかなる運用を考えられているのか、お伺いいたします。
 総理は今国会の本会議における答弁の中で、「今回御審議いただく公害関係諸法案は、これをさらに前進さすものであり、これををもってわが国の公害行政は、おそらく世界でも最先端をいく充実したものとなり得るのであります。」と自画自賛しております。世界でも最先端をいく充実した公害行政の中で、企業責任、公害罪、無過失責任制度の具体的実現について、どのようにお考えになっているのか、総理、法務大臣、通産大臣、山中総務長官にお伺いするものであります。
 次に、権限委譲と地方への財政措置についての質問であります。
 わが党は、党の総力をあげて全国の公害総点検を実施いたしました。その結果、東京湾、大阪湾、洞海湾、伊勢湾、瀬戸内海、松島湾等々、いずれも国の規制基準を大幅に上回り、完全に死の海と化していた事実が明らかにされたのであります。
 たとえば洞海湾について申し上げますならば、湾内はまさに鉛色のしま模様を描き、一面どろ絵の具を流したような惨状でありました。湾内の水を調査分析いたしましたところ、フェノールは基準の六百倍、カドミウムも実に基準の五倍もの量が検出され、人体への重大な影響が予想されるのであります。これら死の海をよみがえらせるために、政府はいかなる施策をとろうとするのでありますか。きわめて多くの施策を必要とするでありましょうが、この中で大きな柱となるべきものは、政府がたびたび言明してまいりました地方自治体に対する権限委譲の問題であります。はたして権限委譲の内容はいかなるものか、はなはだ不十分であります。たとえば環境基準の類型の地域指定と水域指定は、都道府県知事に対する機関委任にとどまり、大気汚染防止法、水質汚濁防止法などの規制権限は、骨抜きにされているのが事実・であります。
 さらに、これら権限委譲に伴う財政的裏づけが全く考えられていない今回の改正は、地方自治体が実施する公害防止事業を財政的に制限して、事実上実行不可能にする以外の何ものでもないと思うものであります。(拍手)これら財政的措置を講ずることが、地方自治体の公害防止事業の推進に最も必要なことであると思いますが、政府はこの点いかなる措置を講ずるのか、明らかにすべきであります。
 公害に関する幾つかの問題について質問してまいりましたが、最後に公害対策基本法をはじめとする一連の公害法案によって、この深刻な公害問題を解決できると佐藤総理は断言できるのかどうか、重ねてお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#35
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 古寺君にお答えをいたします。
 公害問題の政治責任につきましては、先ほど社会党の島本君にお答えしたとおりであります。重ねて多くは申しません。私は、日本列島を本来の美しい風土に取り戻すことは、それが国民の一致した願望である以上、十分に可能であると信じます。今回提案した公害関係諸法案を基盤として充実した行政を展開し、美しい自然とすぐれた環境を確保すべく努力してまいる決意のみ申し上げておきます。(拍手)
 次に、国民福祉と経済成長との関連につきましては、さきに所信表明に対する代表質問におきまして、自民党の小川君の質問に私が答えたとおりであります。今回、基本法第一条を改定して、「経済の健全な発展との調和」、この字句を削除したのは、政府は経済優先ではないかという無用の誤解を避けるためでありまして、皆さん方に、はっきりさようなことはないのだということをおわかりいただくようにこれを削除する。人間尊重、国民福祉優先の気持ちには、変わりはございません。繰り返し申すことでありますが、私は、国民生活を最重視しておる観点のもとに、公害防止対策を強化充実したがために日本経済の発展の基調がくずれるものとは考えません。私は、日本人の持つ英知とバイタリティーは、十分これを乗り切っていくものと確信しているものでございます。(拍手)
 次に、公害認定患者の救済についてお尋ねがありましたが、今回提案している一連の公害法案は、被害の発生を未然に防止することを主眼としたものであり、健康被害が発生した場合の救済につきましては、すでに本年二月に施行された公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法に基づいて、今後とも適切な措置を講じてまいる所存であります。
 次に、無過失責任制度を立法化しなかったのは公約違反とのおしかりがございましたが、私は、さきに、宇都宮における一日内閣では、企業の無過失責任については早急に検討する旨申し上げたのであります。無過失責任制度、これが民法の大原則の特例として非常に困難な多くの問題をはらんでいることを念頭に置いて、なお検討段階であるとの認識に立っているものであります。私は、この点をさきの私の所信表明に対するお尋ねに対しても答えたのでありますが、したがって、いわゆる公約違反ではございません。私どもの考え方をよく御理解いただきたいと思います。
 また、その困難さは、原子力基本法のように特定された事業でないだけに、きわめて大きいものがあることをよく御理解いただきたいと思います。原子力基本法にその点があるじゃないか、かように言われますが、さほどに簡単なものでないことをこの機会に申し上げておきます。
 次に、公害罪についてのお尋ねでありますが、政府案確定までの過程におきまして、「おそれ」という表現を盛り込むかどうかがいろいろ議論の対象になったことは事実であり、最終的にこれを削除することとしたため種々の意見を呼んでおりますが、刑事罰の性格上、犯罪の構成要件はできるだけ厳正に運用されることが望ましいという刑事政策上の要請との調和をはかったものであり、現状におきましては最善の判断であると、かように考えております。適用の具体的事例につきましては、御質問には法務大臣からお答えいたさせます。
 次に、地方への権限委譲については、公害行政をできるだけ地方の実情に即したものとするため、大幅な権限委譲を行なうこととしたことはお認めいただけると思いますが、それがただ単に機関委任の形をとったからといって骨抜きになったという御批判は、これは少しひど過ぎやしないか、かように私は政府案を弁護するものであります。
 また、権限の委譲に伴う財政措置については、来年度予算編成の過程で、地方財政全体の中におきまして支障を来たすことのないよう十分配意いたします。
 最後に、今回の公害立法で公害の絶滅が可能かとのお尋ねがありました。私は、率直に申しまして、公害立法だけで公害が絶滅するとは考えません。その基礎の上に適切な公害対策と関連施策が総合的に展開されて初めて公害の防止、軽減が可能となるものと考えます。また立法そのものも、常に新しい事態の進展に即応して整備されることも必要であります。また、公害の防止は、行政のみによって可能となるものでもありません。国民一人一人の心がまえによるところもきわめて大きいものがあります。
 政府は、以上の観点に立ちまして、今後とも一そう公害の絶滅へ向かって努力するつもりでありますから、何とぞ御協力のほどをお願いをいたします。(拍手)
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#36
○国務大臣(山中貞則君) 私の参議院の委員会における発言についてのお尋ねでございますが、私は、臨時国会には間に合わないかもしれませんが、通常国会に間に合うようそのようなめどで努力をしたい、そういうことで法務省で検討いたしてもらっております、ということを申し上げたつもりでございます。挙証責任の転換等の問題、いわゆる故意、過失等について、訴えられた者がそれを証明しなければそれは故意、過失があったものとなるというようなこと等を前提として、それらの話をしたつもりでございます。
 さらに、洞海湾の問題に具体的なお話がございましたが、洞海湾のほうは、北九州市並びに福岡県等から具体的な計画をもって御相談がございました。経企庁を中心に御相談をいたしまして、しゅんせつ、埋め立て並びにそのあとの公園もしくは緑地等の計画の調査を緊急に行なう必要があるということで、先月一千万円の研究調査費を経企庁の調整費から支出をいたしたところでございます。
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#37
○国務大臣(福田赳夫君) 地方への権限委譲に伴う財政措置でございますが、これはただいま総理大臣からお答えがありましたように、目下検討中であります。昭和四十六年度予算編成の際にこれをはっきりさせる。いずれにいたしましても、公害問題の地方への委譲、これによりまして地方財政の運営に支障が生ずるというようなことのないようにいたしたい、かように存じております。(拍手)
  〔国務大臣小林武治君登壇〕
#38
○国務大臣(小林武治君) この公害罪処罰法案を手直ししたことにつきまして、「おそれ」を削除したことによって対象の範囲がどういうふうに変わるか、こういうお尋ねでありますが、「おそれのある」という字句を削ったことにより、公衆の生命、身体にとって具体的に危険な状態が生ずる前の状態は処罰の対象とならないが、危険を生じさせたというのは、実害を発生させるまでは必要としない。すなわち、公衆の生命、身体に危険な状態を生ぜしめれば、その段階で処罰し得るのでありまするから、健康上の実害の発生を未然に防止するための刑罰規定として有効適切なものであると考え、これによって削除したのでありまして、私どもは、このことが法案の骨抜きになっておると、こういうふうな考え方は持っておりません。(拍手)
 また、カドミウム等の土壌汚染あるいは水質汚濁を来たした場合の公害罪適用のお尋ねでありますが、これは具体的の事実関係いかんによるのでありまして、一がいには申し上げかねる、こういうことでございます。
 なお、推定規定その他につきまして、複合公害の場合はどうかと、こういうお尋ねでありまするが、この法案につきましては、法案といたしましては複合公害には適用がない、かように考えておりますが、いずれにいたしましても、この法案そのものは初めての立案であるのでありますから、今後の運用のいかんによってはこれを整備改善していく、こういうことにやぶさかではないのでございまして、この法案のいまの考え方を、以上申し上げたのでございます。(拍手)
  〔国務大臣内田常雄君登壇〕
#39
○国務大臣(内田常雄君) 公害認定患者の救済措置につきましては、ただいま総理大臣からもお答えがございましたように、また、古寺さん御承知のように、昨年の国会で成立し、ことしの二月から実施になりました例の公害による健康被害者の救済特別措置法の運用で現在やっておりますけれども、これの運用につきましては、私どもも、先ほど島本議員に対して御答弁申し上げましたように、対象地域の問題なり、あるいはいまも不十分と言われましたような救済措置の内容につきましては、さらに事態に応じた検討を加えて、行政的、予算的に改善をいたしてまいる所存でございます。
 なお、お尋ねがございました企業責任の問題につきましては、一般論といたしましては、御承知のように、今回提案の各種の法案の中に企業責任の強化を盛り込んでおること、御検討のとおりでございます。
 それから、基本法の改正に伴って環境基準の全面的改正をするかというお尋ねがあったかとも思いますが、現在できております環境基準は、おもに人の健康に関する環境基準が主眼でありますために、今回、基本法の改正によりまして、環境基準の条項につきましても、「経済の健全な発展との調和」条項は削られましたけれども、いま直ちに環境基準について改正をするという必要のものはほとんどないと考えますが、しかし、これにつきましては、常時検討をいたしまして、必要な場合には常に改定を怠らないという努力を続けてまいります。
 なお、まだ未設定の環境基準などもいろいろございます。たとえば騒音の環境基準などにつきましても、今回、騒音規制法の改正が行なわれますので、それとも関連せしめながら、現在作業中の騒音に関する環境基準の設定を早急に進めて設定したい考えでございます。
 粉じんなどにつきましても、同様でございます。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#40
○国務大臣(宮澤喜一君) 無過失責任の問題につきましては、先ほど総理大臣がお答えになったとおりでございます。私どもが企業を特に何かかばってどうとかということではありませんので、非常にむずかしい法律問題であるということで、法務省で御検討を願っておるわけでございます。
  〔国務大臣秋田大助君登壇〕
#41
○国務大臣(秋田大助君) 今回の地方への権限委譲は機関委任であって、骨抜きではないかというお尋ねでございますが、なるほど委任事務は、観念上、機関委任は国の事務ではございまするけれども、実際上は知事さんが自分の判断と責任において権限を行使できるので、実際上の公害防止事業を行なうにつきましては十分実効をあげ、支障ないものと考えておる次第でございます。
 また、地方公共団体で行なうところのいろいろ公害対策に要する費用につきましては、従来、国家の支出金あるいは交付税、地方債等で所要の財源措置を講じておりますが、今回の権限委譲によりまして、また費用の増加が当然予想されるのでありまして、これに対応したところの予算措置の強化、増額は、所要の増額をはかってまいる所存であります。
 なお、公害防止事業を集中的に行なう特別地区に対する措置につきましては、これまた、先ほどお答えいたしましたとおり、地方公共団体が具体的なその目的の期間内にそれらの事業が行ない得るように、所要の措置を総合的に検討しておりまするけれども、次の通常国会には所要の結論を出して御審議を願えるように、十分各方面と検討をいたしておるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#42
○議長(船田中君) 寒川喜一君。
  〔寒川喜一君登壇〕
#43
○寒川喜一君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案趣旨説明のございました公害対策基本法の一部を改正する法律案に対して質問をしますが、社会、公明両党から適切なる御質問があって、それらについては私も全く同じ疑問を持ちますが、できるだけ重複を避けて御質問申し上げたいと思いますので、総理並びに関係大臣は、誠意ある御答弁を賜わりたいと思います。(拍手)
 まず最初に、総理の政治姿勢と政治責任についてでございまするが、私は角度を変えて申し上げたい。
 総理、あなたは、現行公害対策基本法が制定されました五十五国会の審議を、もう一度回想していただきたいのであります。わが党はじめ野党は、公害の今日を予想して、積極的、具体的質問を行ない、各般にわたって各種の提案を申し上げてきたのでございまするが、総理、あなたはこれに対して全く耳を傾けなかったといっても過言でありますまい。もし、わが党の主張、提案を受け入れていらっしゃったならば、今日こうして、公害国会などと大騒ぎをする必要もなければ、これに反して、公害の諸対策は具体的に進展いたしておったと思われ、かつ、国民の不安もかなり解消しておったのではございますまいか。同時にまた、政治に対する信頼もまた確保し得たと私は思うのでございます。(拍手)総理、あなたのただいまの御心境はいかがでありまするか。政治責任についてどういうお考えをお持ちになっておるか、率直に開陳いただきたいと思います。
 都市公害、社会公害の現況は極限に達しつつあると言えましょう。総理はこのことをどう判断されますか。国民は強力な施策の展開を切に望んでおると思います。基本法の中で「経済との調和」の文字を削除しただけで解決する問題ではございますまい。しかるに、本法及びその他の改正案作成の経緯について、マスコミは詳細なる報道をしておる。これを見るに、総理の言行不一致があまりにも目立つと申さねばなりますまい。(拍手)四選されたが、総理、総裁としてリーダーシップが確立されておらないことは、まことに遺憾と申さねばなりません。あなたは、しかし、次のような名言を残されております。その一つは、物質万能の中に埋没をしてはならぬ。第二番目に、人間性回復こそ政治の使命である。さらにまた、暮らしよい生活環境をつくろう、と呼びかけております。このことは名言だと思いまするけれども、巧言令色仁少なしということわざがございます。(拍手)十分かみしめていただきたいのでございます。どうして人間の生命、健康を守る考え方を優先せしめないのか、私には全くわからないのでございます。
 さらに、たとえば他の法律で生かされておる無過失賠償責任の法理が、改正案の中になぜ採用されなかったのか。公害罪の範囲についても同様であり、全く理解に苦しんでおります。総理、いまからでもおそくはございません。野党の良識ある提案を受けられる用意がありやいなや、総理並びに関係大臣の御見解と決意のほどを、率直に伺いたいのでございます。
 次に、具体的な事項について簡単にお伺いしますが、明快にお答えをいただきたいのでございます。
 その第一は、公害をさらに拡大せしめないため、公害のおそれのある事業所の新設及び設備の拡充について許可制を採用する、このことについて総理の御意見を伺いたいのでございます。イギリス等においては、すでにこの措置がとられて、成果をあげておるやに聞いております。ぜひ実現を要望したいものでございます。
 次に、公害防除のための設備基準の義務づけでございます。公害問題は非常に重要でございまするが、発生源に対して強い規制を行なわなければ効果ございますまい。これがため、企業におきます公害防除の設備基準の設定を行ない、可能な限り事前にチェックいたしますことが強く要請されておりまするが、特に総理並びに通産大臣の御所見を伺いたいのでございます。
 さらに、公害防止体制の強化でございます。公害問題の中心として、常に企業の良心ということが議論になっております。労働法では、安全及び衛生について、法律によって管理体制が明らかにされております。しかるに基本法では、皆さんからも御質問ございましたように、抽象的に、事業者について訓示規定があるのみでございます。私は、したがって、立法によって具体的に、企業の公害総括管理者及び事業所ごとに公害管理者を設置することをぜひとも義務づけることの必要を痛感をいたしておりますので、通産大臣の御所見を承りたいと思います。
 次に、公害防除の具体的年次計画の策定でございます。
 法律に書いております年次計画とはいささか趣旨が違いまするが、国民多数は、政府の施策、立法措置によってどのように公害がなくなっていくのか、ほんとうに心から心配をいたしておると思います。しかしながら、各般にわたる総合的、具体的な計画の策定ということは、これはたいへんだと思います。したがって、次に提案をしたいことは、せめて公害を出す企業及び都市公害を中心にして、目標の設定年次につきましてはいろいろ御意見があろうかと思いまするが、たとえば昭和三十年の時点の状態に返すことを目標にされて、工場の排煙、工場の排水、自動車の排気ガス、これらについては、初年度はここまで下げられる、第二、三年度についてはここまで下げられるんだ、五年後にはほとんど目標が達成できるんだという企業の公害防除年次計画を、特にこれは通産当局において策定公表し、国民不安を解消する用意があるのか、総理並びに通産大臣に伺いたいと思います。(拍手)
 次に、財政のことについて、社会、公明ともお触れになりましたが、若干重複いたしますが、御理解をいただきたい。特別立法による公害対策遂行のための財政確保について、私もお尋ねを申し上げたい。
 本来、国の責任であるべきものを都道府県に委任、委譲するお考えのようでございまするが、これが裏づけ財源について、具体的にいかように措置をされようとしておるのか承りたい。
 聞くところによると、自治事務当局において諸般の準備をされたが、つぶれてしまったとも聞いておるのでございます。そこで、平衡交付金方式という問題が出てこようかと思いまするが、私は、この方針は今回は採用すべきでないという考え方を持っております。したがって、特別立法によられて、国と地方の負担の割合をまず明確にする、さらに国民一般に対しまして、国はこれだけの財政負担をするんだという立場を明らかにすべきだと思います。以上の理由からも、特別立法によって地方公共団体に対する財源措置を講ずべきだと思うが、自治大臣並びに大蔵大臣はいかにお考えか、御所見を承りたいと思います。
 さらに先月二十八日、参議院本会議において、わが党高山議員の質問に対して、大蔵大臣は、公債は発行せず、それ以外の財源で対策を立てていくつもりだと御答弁になっております。そこで、公害対策の財源について、具体的な大臣のお考え方をこの機会にお述べをいただきたいと思います。
 最後に、公害教育のことについて文部大臣にお伺いをいたします。
 わが国の教育制度は、環境の質の低下に対して全く対応してこなかったと思います。これは非常な怠慢という以外の何ものでもございますまい。(拍手)今日の時代は、知的な面とモラルの面で新しい公害教育を受けた世代の登場を非常に期待をいたしておると思いますが、文部大臣はこのことについてどう思われますか。
 公害教育が公害対策を進める上で大きなウエートでございますことは、一般のひとしく認めておるところでございます。そこで大臣は、社会教育の面でいかなる施策を講ぜられてきたのか、今後いかなる具体的方針のもとに公害についての社会教育を進めんとせられるのか、御所見をいただきたい。
 さらに、学校教育の面でどうしてこられたのか、これからどう進めようとしておるのか。米国をはじめ先進国におきましてのことに比しますると、著しくこの面はおくれておると思います。大臣の所見はいかがですか。
 特に大学の研究機関については、たいへん立ちおくれておると申せましょう。大臣の勇断と関係者の理解と協力なしに、この著しい立ちおくれを取り戻すことは困難だと思います。大臣はどう考えておるのか、今後の公害教育に対する決意のほどを承りたいと思います。
 以上、総理並びに関係大臣の具体的な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#44
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 寒川君にお答えいたします。
 公害に対する私の政治姿勢について、いろいろ御意見を交え、また、具体的な事例を他の諸君とは変えて、私にお尋ねがございました。お尋ねになったことはいかようにあろうとも、とにかく私の政治姿勢そのものが問題だと思います。すでに、社会党や公明党の方にもお答えをしたとおりでございますが、ただ、重ねて多くは申しませんが、この機会にもう一度申し上げておきたいのは、あくまでも国民の福祉を最優先として、公害被害の対策から公害の未然防止へと積極的に取り組んでまいる決意だけを、あらためて申し添えておきます。
 次に、無過失賠償責任につきましてお尋ねがございましたが、これまた、古寺君に先ほどお答えしたとおりでございます。しかし、観点はそれぞれ違っておると思いますので、別な説明ではございませんが、やや説明のしかたを変えてみますと、とにかく、いままで故意、過失、それを大原則とする民事法令の特例としてこれらを公害に適用する、無過失責任を公害に適用するということにつきましては、これは世界でも例を見ない試みであるだけに多くの問題をかかえておりますが、できるだけ早急に成案を得たいものと、かように考えておる次第であります。以上、私の決意だけを申し添えておきます。次に、公害発生のおそれある企業、そういうものを一体これからその新設等については制限を加えるべきではないかという御意見でありますが、首都圏あるいは近畿圏の既成市街地におきましては、すでにその制限がされておること、これは御承知のとおりであります。さらに、産業公害から総合事前調査を実施して、公害防止のための指導を行なっておるのであります。また、今回の各種公害規制の強化とその厳正な運用によりまして、公害の未然防止は十分実効をあげ得るものと、かように考えております。
 なお、これらの点につきましては、行政の面において指導することもたいへん大事なことだと思っておりますので、立法もさることながら、絶えざる監督指導、行政指導に重点を置いた公害行政と申しますか、対策行政を進めてまいる考えでございます。
 その他の点につきましては、所管大臣からお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣坂田道太君登壇〕
#45
○国務大臣(坂田道太君) 寒川君にお答えをいたします。
 教育にとりまして環境が大事だということは、御指摘のとおりに考えております。したがいまして、公害に関する問題について、教育上種々の配慮をしていくということはきわめて重要なことであると考えるわけでございますが、学校教育の中におきましては、御承知のとおりに、従来指導要領あるいはまた教科書等において十分な記述等も行なわれておらなかったわけでございますが、指導要領の改訂をいたしまして、来年度は小学校、その次は中学校、そしてまた、その次の年度は高等学校ということで、教科書の改訂を行なっていくわけでございますが、これには相当充実した公害の問題を取り扱うようにいたしております。また、教師の使いますいろいろ指導の手引き等につきましては、十分の配慮をいたしていくつもりでございます。
 それから、社会教育の関係でございますが、青少年を自然に親しませ健全な活動を促進するために、少年自然の家をつくるとか、あるいは青年の家を拡充していくということが必要であると考えておりますし、また同時に、生徒児童の遊び場を確保するために、交通災害から児童を守るために、学校の校庭を開放するという仕事も進めております。
 また、各種の社会教育の団体あるいは講座等におきましては、十分この内容を取り入れまして、公害防止の大事であるということを強調してまいる所存でございます。
 また、騒音や大気汚染等につきましては、学校に及ぼす公害対策調査研究会をつくってその調査を続けてまいっておりまするが、昭和四十三年度から、公害防止の工事につきましても国庫補助を行なうなど、積極的に取り組んでおる次第でございます。
 また、大学におきます研究等につきましては、今後とも積極的にこれを取り上げて推進していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#46
○国務大臣(宮澤喜一君) 新規の工場の規制の問題でございますけれども、現在、工場の新規の届け出がございますと、公害発生をしやすいような施設については計画の段階で改善命令が出せることになっておりまして、しかも、改善だけではとてもだめだというときには、計画そのものを廃止する命令ができるようになっております。
 ただ、これは大気汚染防止法と工場排水等の規制に関する法律に基づいておりますので、従来でございますと地域指定制になっておったわけでございますが、今度はこれが全国制になりますので、これで大体目的を達していけるものというふうに考えておるわけであります。
 それから、企業の公害防止計画の点は、現在でも、地方で、しかも大きな公害を発生させるおそれのある企業は、地方団体あるいは通産局等と一緒になりまして、公害防止計画を出させて取りきめをしておるわけでございますが、こういう方向を助長してまいりましたら御趣旨に沿えるのではないかと思います。
 それから、最後に、公害管理者の問題でございましたが、私どももこの点は同じような問題意識を実は以前から持っておりまして、産業構造審議会の公害部会というのに、どう考えるかということをだいぶ前に諮問をいたしてございます。今年中にその中間答申が出ることになるかと思いますので、それに即して考えてまいりたいと思っております。
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#47
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 地方自治団体へ権限委譲いたした結果、地方財政が負担が多くなるが、それに対する配慮いかん、こういうことでございますが、先ほどお答え申し上げましたように、この対策につきましては目下検討中であります。その検討の結果につきましては、四十六年度予算においてこれを明らかにする、そういう考えでございます。
 いずれにいたしましても、権限委譲の結果、地方財政に支障を生ずるようなことはいたしません。
 次に、参議院で高山議員の御質問に答えまして、私が公害国債を発行しない、こういうふうにお答えいたしたが、それじゃ一体どういうふうに公害の財源対策はとるのだ、こういうお尋ねのようでございます。
 四十六年度におきましては、九兆円をかなり上回る財源が予想されるのであります。この中におきまして、優先的に公害対策は講ずるという考え方、つまり予算におきましては、物価と公害、この問題に最大の焦点を置きたい、かように考えております。九兆円の中で公害対策費は十分消化、吸収し得る、かように考えております。
  〔国務大臣秋田大助君登壇〕
#48
○国務大臣(秋田大助君) 先ほどもお答え申し上げたところでございますが、権限委譲に伴うところの地方公共団体における所要の財源措置は、これを充実強化してまいりたいと考えております。
 なお、公害防止事業に関連いたしまする特別の財政上の措置につきましては、自治省といたしましては、これまたさきにお答えを申し上げたところでございますが、これらの公害対策を進めていくに必要な国の責任というものを明らかにいたしまして、関係の地方公共団体が、計画の期間中にその目ざす防止事業が達成できまするように、国庫からの支出、補助金等の増額を期するように、必要な財政上の処置を総合的にただいま検討をいたしておりますが、次の通常国会には所要の結論を得べく、せっかく関係官省とただいま折衝、検討を続けておるところでございます。
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#49
○国務大臣(山中貞則君) 総理から答弁すべき事柄かとも思うのでありますが、残った御質問でありますので、担当大臣たる私から御答弁をさしていただきます。
 それは、この審議の過程においても、出された各種の法案について、謙虚に耳を傾け、正すべきは正す、そういう姿勢をもって臨むかということでございます。もちろん、私たちは、よりよきものを念願をし、よりよきものをつくり上げたいということで努力をしておるわけでありますから、御趣旨のとおり、謙虚に耳を傾けていくことに、何ら疑念のないところでありますが、具体的な修正その他になりますと、やはり政党政治のたてまえ上、与野党一致の意見の合意のあるものを限界とせざるを得ない、さように考える次第でございます。
#50
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
  一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#51
○議長(船田中君) 内閣提出、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣山中貞則君。
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#52
○国務大臣(山中貞則君) 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 本年八月十四日、一般職の国家公務員の給与について、俸給表を全面的に改定し、調整手当を改正すること等を内容とする人事院勧告がなされたのでありますが、政府としては、その内容を検討した結果、人事院勧告どおり、五月一日からこれを実施することが適当であると認めましたので、この際、一般職の職員の給与に関する法律等について、所要の改正を行なおうとするものであります。
 まず、一般職の職員の給与に関する法律の一部を次のとおり改めることにいたしました。
 第一に、全俸給表の俸給月額を引き上げることにいたしました。この結果、俸給表全体の改善率は平均一〇・七〇%になることになります。
 第二に、調整手当について、現行の甲地のうち、人事院規則で定める地域及び官署における支給割合を百分の六から百分の八に引き上げるとともに、これらの地域及び官署以外の地に在勤する医療職俸給表(一)の適用を受ける職員等については、当分の間、その在勤する地域等の区分にかかわらず、一律に百分の八の調整手当を支給することにいたしました。また、転勤等により調整手当の支給割合が減少する場合または調整手当が支給されなくなる場合の異動保障期間を、二年から三年に延長することにしております。
 第三に、今回新たに住居手当を設けることにし、公務員宿舎の入居者等を除き、みずから居住するため住宅等を借り受け、月額三千円をこえる家賃を支払っている職員に対し、その家賃の額と三千円との差額の二分の一の額を、三千円を限度として支給することにいたしました。
 第四に、隔遠地手当を改め、その名称を特地勤務手当とし、離島その他の生活の著しく不便な地に所在する官署として人事院が定める特地官署に勤務する職員に対して、俸給及び扶養手当の月額の合計額の百分の二十五をこえない範囲内で人事院規則で定める額を支給することにいたしました。また、職員が異動し、その異動に伴って住居を移転した場合において、当該移動後の官署が特地官署または人事院が指定するこれらに準ずる官署に該当するときは、これらの職員に対し、異動後三年以内の期間(特別な場合にあっては、さらに三年以内の期間)特地勤務手当に準ずる手当を支給することにし、その支給額は、俸給及び扶養手当の月額の合計額の百分の四をこえない範囲内の額とすることにいたしました。
 第五に、期末・勤勉手当について、六月に支給する支給額をそれぞれ〇・一月分ずつ増額することにいたしました。
 その他初任給調整手当、通勤手当及び宿日直手当の改正等を行なうことにするとともに、さらに、五十六歳以上の年齢で人事院規則で定めるものをこえる職員の昇給について、当該年齢をこえることになった日以後における昇給期間を十八月または二十四月を下らない期間とすることにして、昇給制度の合理化をはかることにいたしました。
 以上のほか、昭和三十二年法律第百五十四号一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律、及び昭和四十二年法律第百四十一号一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律の附則の一部を改めて、暫定手当制度を廃止することにいたしました。
 以上が一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#53
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。大出俊君。
  〔大出俊君登壇〕
#54
○大出俊君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました一般職の職員の給与に関する法律等の賃金に関する各法案に対しまして、以下若干の質問を行ないます。
 先般、ある女子大学の生徒を対象に、あなたは将来いかなる職業の男性を選ぶかというアンケートをとったところ、公務員を選ぶという回答は全くゼロであったという記事が載っておりましたが、これは単なる笑い話ではないのでありまして、最近における人事院の公務員試験合格者が、逐年、合格していながら民間に逃げてしまう率がふえております。
 さらにまた、一人四百万円もの国費支弁をしている防衛大学等においてさえも、四百七十数名の学生のうち、一割をこえる五十一名が、卒業と同時に民間に流れてしまったという事実さえございまして、これはまことに深刻な問題であると考えなければなりませんが、その原因は一体何かという点、私は一口にいって、公務員の給料が民間に比べて安過ぎるということに尽きると思うわけでありますが、まず第一に、この公務員の求人難の原因について、長く公務員生活の体験をお持ちであり、かつまた使用者としての政府の責任者である佐藤総理に、まさに今昔の感ありというところだと存じますが、その原因那辺にありやということについて御所見を賜わりたいのでございます。
 さらに、所管の人事院総裁に、最近におけるこの問題の現状とその対策について承りたいと存じます。
 昭和二十三年に人事院及び給与勧告のこの制度ができまして以来、本年で二十三年目になりますが、この間、昭和二十三年十二月の六千三百七円の勧告以来、合計二十二回の勧告が行なわれ、このうち期末手当、初任給是正、中だるみ是正などの制度改正を除きますと、いわゆる賃金引き上げの勧告は十七回に及びますが、これが完全実施をするというのは、その内容のよしあしは別といたしまして、残念ながら今回が初めてであります。あるときは全く実施されず、また、引き上げ額も削られ、実施時期をおくらされ、多くの公務員諸君とその家族は、そのつど、まず期待を持ち、期待はずれにより落胆をし、果ては憤りを感じて闘争を組み、ばく大な資金さえ投じて、その結果、相も変わらぬ時の大臣の警告、そして処分の積み重ねという悪循環を繰り返してまいりました。
 したがって、今回の完全実施は、公務員諸君とその家族の皆さんのたいへんな経済的損失と自己犠牲の上に、やむなく政府が実施に踏み切ったものといわなければなりませんが、その意味で、使用者としての政府の責任者として、佐藤総理から一言あってしかるべきものと考えますが、御所見をいただきたいと存じます。
 さらにまた、先年のドライヤー報告によれば、「本委員会は、ストライキの禁止がどの程度労働条件または苦情の救済等に関する問題を解決するために満足な代償措置を伴っているかということを特に慎重に検討した。この目的のための現行の措置が十分であることについては満足すべき状態からほど遠いのである」(二一四二)、「現行制度は徹底的に検討される必要があるものと考える」(二十四節)と述べ、さらに、「石田労働大臣は、人事院の勧告に関する手続を説明した後において現行制度の改善が検討されることになろうと述べた」(一八一〇)ともドライヤーは報告をいたしております。
 したがって、ストライキ権と、代償機関と、使用者としての政府の責任と、そしてまた、労使の間において決定さるべき賃金原則との関係について、当然、この機会に制度的検討を加える時期にきていると考えますが、総理並びに山中総務長官は、第三次公務員制度審議会の開催と、そしてまた、この検討を求めるということとあわせて、いかなる御所見をお持ちなのか、明確にしていただきたいと存じます。
 次に、人事院総裁に対して、勧告の内容に触れて所見を伺います。
 今回の勧告は一二・六七%、八千二十二円となっております。しかし、労働省調査によると、これに見合う民間賃金の上昇は、一二・六七ではございません。一八・三%になっておりまして、公務員の定期昇給を実質三・五%と見ましても、なお民間が二・二二%公務員よりも高いということになるのであります。このことは本年に限った現象ではありません。念のために明らかにいたしますが、四十一年、民間一〇・四%の上昇、公務員六・九でございました。四十二年、民間一二・一、公務員七・九、四十三年、民間二二・五、公務員八、四十四年、民間一五・八、公務員一〇・二であります。四十五年、本年でありますが、民間一八・三、公務員一二・六七ということになっておりますから、定期昇給を見ましても、例年民間より低くきめられてきておるわけであります。一体、なぜ人事院は労働省の資料を取り入れようとなさらないのか、まず承りたいわけであります。
 しかも、人事院が、独自の方法により民間賃金を調査し、その均衡をとっていると言われるならば、その調査の客観的公正をはかるためにも、当然学識経験者なり組合関係者なりの参加を求めるべき筋合いでありまして、例年、調査の中身は全く明らかにせず、ただその結果だけを、しかも、まことに不完全な資料によって示すだけというのであっては、事公務員諸君の生活の源泉である賃金決定にかかわるだけに、もはや制度的限界にきているとさえいわなければならぬと存じます。この点、特に明確にしていただきたい。
 さらにまた、調査対象たる企業規模についても、人事院は、百人以上を対象としております。しかし、五百人以上を対象とする場合との間に、詰まってはきておりますが、今日なお一七%もの開きがあるわけでございます。
 さらにまた、教員、看護婦さん等に見られるように、圧倒的に公務員が多く、民間はこれにあと追いの形をとっておりまして、したがって、これらの職種は、常に公務員が高いこともまた当然であって、つまり、比較対象からはずすべきものと考えるわけでありますが、いずれも御所見を賜わりたいのであります。
 次に、高齢者問題について承りたい。
 長い公務員賃金の歴史の中で、昨年来突如として人事院でこれを取り上げ、五十六歳以上の公務員の賃金は民間より高いので、昇給の延伸を行なうというのであります。その真意は一体どこにあるのか。公務員全体にマイナスになるからなどといううわべの理由では承服いたすわけにまいりません。今年の資料によりますと、五十六歳以上の格差がマイナス一二%程度、つまり公務員が一二%高齢者において民間より高いというのであります。したがって、全体に与える影響は、この層の人員が全体の八・五%というのでありますから、約一%ということになるのであります。
 そこで、しからば、先ほどの提案にありますように、人事院の言うように定期昇給を半分に落としたとした場合にどうなるか。官民比較に与える影響はわずかに〇・三%ないし〇・三五%程度のものにしかならないわけであります。もし人事院に定年制にかわるものというような特別な意図でもあるとか、将来に向かって、公労協に見られるように、全体の昇給率を何割かに押えようとでもいう意図があるのだとすれば、当然この際、表に出していただきたいと存じます。もしあくまでもその意図はないと言われるのだとすれば、この際、混乱を避けるという意味で、この制度は取り下げられてしかるべきものと考えますが、この点、御所見をいただきたいのであります。
 民間の実態は、五十五歳定年制が多く、労使間協約の定めるところ等によりまして、再雇用、再就職で働いている人たちが多く、当然退職金や年金をもらっているために、名目の賃金は低下があらわれているのでありまして、これは昨年自治省が出しました定年制法案の際に、年金の支払いを認めて再雇用しようとした案がございましたが、これと同断であります。制度の大きな相違と見られる以上、比較対象からこれまたはずして考えるべき性格のものといわなければなりません。
 さらにまた、公務員の平均年齢は三十八中八歳でございます。この五年間に一・一歳の年齢上昇を示しております。この傾向は当分の間続くものと見なければなりません。そしてまた、公務員の等級号俸別人員分布などを見るとき、上下に非常に少なく分布いたしておりまして、人員がまん中に集中をする、いわゆるちょうちん型といわれる体系をなしております。
 一方、初任給は、例年民間の求人難による上昇を追って上がり続けております。
 さらに、今回の配分によれば、ワク外ではありましても、指定職の甲二二・四%、乙一〇・二%、調整手当を入れますと、優に三〇%をこえる上位層の上昇を示し、各省次官のごときは九万円もの上昇を見るに至っております。
 その結果、いま一番中堅の層において改善がおくれております。たださえこの層の人員が多く、ために改善に金がかかるという理由で、いわゆる中だるみ現象を続けてまいっておりますが、この被害回復のために、人事院は昨年から今年にかけまして、二人世帯、想定年齢二十八歳を、行政職の(一)表、その七等級の五号四万一千九百円に、四人世帯、想定年齢三十五歳を、同じ行(一)の六等級の九号、つまり五万九千四百円と対応させて是正、改善を行なってきたといっております。私も、これらの人事院の努力、それはそれなりに認めますが、しかし、はなはだいまだに不満足であります。
 なぜならば、公務員共闘が行ないました四人世帯における抽出調査、これを参考にいたしてみましても、四人世帯六万円台ではほとんどが赤字になります。七万円台になってようやくバランスがとれ、八万円台に至って初めて黒字家庭に転じているからであります。なお、不十分な調査でありましても、これが実態調査でありますだけに、一つの傾向は明らかにいたしております。
 さらにまた、より悲惨な俸給体系は、行政。表でございます。五等級の十五号、四等級の十号、三等級の四号、二等級の一号に至りますまで、すべて二人世帯の生計費に見合う四万三百二十円以下でございまして、したがって、この行(二)の諸君のほとんどは、理論的には世帯構成を四人にすることができません。しかも、中途採用者がきわめて多く、平均四十五・一歳であることを考え合わせました場合、行(二)などという俸給表の存在それ自体が問題であり、認めがたいといわなければならぬと存じます。
 以上の諸点につきまして、人事院総裁の言いわけを承っておきたいと存じます。
 また、指定職におけるかってない大幅引き上げを、一面高級官僚の天下りを防ぐ方法だなどというかもしれませんが、しからば、給与法第四条による、その職務の複雑、困難及び責任の度合いによって賃金をきめるという原則、この原則に立って考えます場合に、しからば複雑、困難及び責任の度合いが、今日、今年突如として変異をしたとでもおっしゃるのか、開き直って聞かざるを得ないわけでありまして、天下れない多くの下級公務員諸君のいることを特に銘記しなければならぬと存じます。そこにつまりは人事院勧告の矛盾と限界が見えております。民間追随主義、千差万別である民間給与と無理に対応させて、民間賃金のワク内で公務員賃金のワクだけきめて、あとは適当に俸給表をつくり、手直しをし、配分をやる。だからこそ、今年は初任給を、次は上位等級、やれその次は中だるみを直す、そのつど主義の結果として、三年たてば同じになりますなどというばかな答弁をしなければならぬことになるわけであります。
 そこで、一つの提案をいたしたいと存じます。日本の賃金のあり方はいま曲がり角にあるといってもいいかもしれませんが、そのことは後刻論ずるといたしまして、公務員法第六十四条は「俸給表は、生計費、」ここに点が入っております。「生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して」定められるとあります。何よりもまず公務員における生活の実態を詳細に調べること、そして公務員の生活の実態に即して公務員独自の俸給の体系を打ち出てること、官民匹敵の原則、つまり民間賃金に合わせるという原則を否定するものではありませんけれども、追随、この考え方には限界があるということを明確にしなければならぬと存ずるわけでありまして、以上の諸点に御回答いただくとともに、公務員の生計費の実態調査を人事院はおやりになる気があるのかどうか。その気があると承ってはおりますが、大蔵大臣は、人事院にその意思があるとするならば、当然これが予算を認めるべきものと考えますが、あわせて大蔵大臣の所見をも承っておきたいと存じます。
 以下、個条的に質問をいたします。
 総理並びに総務長官に、本年度の完全実施の決定は、今後とも予算の有無にかかわらず引き続き守り抜く御決意をお持ちかどうか、しかと承っておきたいのであります。
 さらに、山中総務長官に、先般、内閣委員会の答弁による、閣議決定と賃金支給時期の大幅なズレについて内払い、あるいは前払い方式について制度的な検討を行なうという言い方をされておられますが、行なうとすればいかなる機関で検討をなさるのか。から手形になってはまことに心外でございますから、その辺までしかと承っておきたいのであります。
 また、予算官庁との相談という答弁も出てきておりますが、あわせて大蔵大臣の御所見をも承りたいのであります。
 さらにまた、閣議決定によりますと、人事院勧告実施の財源の一部に充てる八%の行政費の節約がきまっております。一体、この期に及んで八%節約がそう簡単にできるのだとすると、当初よりこれは一体予算に予定をしていたということになる。とすれば、いささかこれはこそくであります。そうでないとすれば、予算そのものが、これいささかずさんであり、ごまかしがあったことになる。今後の給与財源について、いかなる組み方が妥当なりやという点について、あわせてお答えを願いたいと存じます。
 佐藤人事院総裁に質問を申し上げます。
 調査は四月であります。何で一体四月実施ができないのか。
 さらにもう一つ、期末・勤勉手当につきまして、今年官民格差の中では〇・二九という数字になっているはずであります。つまり、〇・〇九を削ってしまって、〇・二にしたということになるわけでございまして、昨年もこれまた〇・〇八削られておるわけでありますから、本来すみやかに本年は〇・三にすべきものと思いますが、御見解を賜わりたいのであります。
 佐藤総理並びに秋田自治大臣についてお伺いをいたします。
 総理は、かつて私の質問に答えまして、都市交通、水道、病院等に働く皆さんの賃金に触れて、地方公営企業、つまり公営企業だからというので遠慮して賃金が上がらないというようなことであっては、これは正しくはないので、私も善処をする、こういう趣旨の御発言をされております。地方公営企業の赤字原因の一部が賃金にあるとしても、その根源は物価の上昇にあります。それはインフレ政策に基づくものであって、少なくとも働く地方公営企業職員の責任ではないわけであります。企業側も再建計画に基づく懸命な合理化努力をしてきておるわけでございまして、どうせ結果的に上げなければならないものである限りは、できるだけすみやかに、そしてまた、すでに先例となっている交付税方式等の国の努力を土台にいたしまして、人事院勧告に見合う賃金引き上げを促進すべきものと考えますが、御所見を賜わりたいのであります。
 さらにまた、総理と大蔵大臣に伺いたい。
 本日は中曽根防衛庁長官が御不在のおりでございますから、その面の質問はいたしませんが、防衛庁の所管でございますところの駐留軍の労働者の皆さん、長年駐留軍に勤務した皆さんについて、今回伝えられる基地縮小に伴い、大幅な解雇が予測されますが、特に、共同使用というような問題まで出てまいっておりまして、全く返還をされるのではないわけであります。その意味で、政府の責任はきわめて大きいといわなければなりません。
 特別給付金の増額並びに再就職活動のための最高三カ月間の特別休職の制度の確立などなどについて、格段の政府努力があってしかるべきものと考えますが、すでに防衛庁予算原案に組み込まれてもおりますので、異常の事態に対処する格段の御努力が望ましいと考えますが、御所見を賜わりたいと存じます。
 最後に、総理並びに行管長官に承ります。
 人事院勧告閣議決定にあたりまして、毎回、公務員の人員削減と行政機構改革があわせてきめられてきているのであります。国民に対する言いわけとでもいうのであれば、これはまた話は別でございますけれども、近代社会における行政機構は、政府の意思決定が、行政サービスの点で、その機構を通じて国民の最も身近なところにまで行き渡るたてまえでありますから、機構、人員等がふえることは当然であります。これを、国家財政の事情に合わせてどうコントロールするかというのが問題の焦点でありましょう。したがって、その意味では、おのずから給与とは次元の違う問題でございます。
 この点をまず指摘をいたしました上で、公務員諸君とその御家族の皆さんの心配を取り除くために、この閣議決定以後の検討結果について、公務員諸君の納得のいくように、その構想の概略を行管長官からお聞かせをいただきたいのであります。その上で、十分なる時間と検討の場をつくる努力をしていただきたい。
 内閣の自動延長に伴いまして、大臣を数人おふやしになるという総理の口の下から、一方では公務員の定員削減をすると言うのでは、公務員諸君が納得しないであろうということをひとつつけ加えまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#55
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えをいたしますが、なかなか大出君、立て板に水といいましょうか、私のほうの山中君以上に早いので、私、あるいは落とした点があれば、委員会等におきましてそれは補足さしていただきます。
 そこで、まず第一は、公務員の求人難とでも申しますか、あるいは低給与と申しますか、その点について御意見をまじえてお尋ねがございました。私は、公務員の給与水準は、大出君の御承知のとおり、民間の給与水準との均衡を考慮して設定されるものであり、一がいに安いということはなかなか当たらないのじゃないだろうか、かようにも思います。ただ、御指摘のような傾向が現実問題として見受けられますので、今回の給与改定にあたりましては、初任給について大幅な引き上げを行なったほか、特に民間に流れやすい研究職や医療職について改善をはかったのであります。全体の奉仕者であり、実際に行政の運営に当たるべき公務員の質の低下は、国全体として大きなマイナスと考えますので、公務員の給与水準については、今後とも十分に考えていきたいと思います。
 次に、勧告制度ができてから、完全実施は今年初めてのことであります。勧告を極力尊重するという政府の基本方針にもかかわらず、いままでは現実の国の財政がこれを許さなかったので、過去の事実につきましては、私もたいへん遺憾に思うものであります。私は、この間、公務員各位並びに家族の方々が、国家財政の現状をよく理解され、協力していただいたことに対し、深く敬意を表するものであります。これが私の率直な感懐であります。
 また、人事院勧告は、これを尊重するというのが、公務員法の趣旨から申しましても当然のことであり、今回、ようやくにして実現を見た完全実施のたてまえを、今後とも実施してまいりたい、かように考えております。私は、かような政府の考えがございますので、公務員各位におかれましても、冗費の節約あるいは合理化等、能率的な公務の運営に一そう留意されることを希望するものであります。よろしくお願いいたします。
 また、地方公営企業の給与改定でありますが、これは、秋田君から詳細にお答えをいたしますが、私からも一言触れておきます。
 独立採算をたてまえとしている地方公営企業に対して、給与改定の財源を特別交付税等により措置することはなじまないものと考えますが、政府としては、今後も、公営企業の経営合理化を通じてその給与改定につとめてまいりたい、かように考えております。
 次に、行政改革につきましては、最近の閣議においても、地方支分部局の大幅整理、特殊法人の整理統合等を決定したところでありますが、早急にその具体的措置を固め、実効ある行政改革を推進してまいる決意であります。いずれ皆さま方の御審議を願うことになりますので、どうかその際に詳細について御意見を聞かしていただきたいと思います。
 最後に、国務大臣の定数増につきましては、現在慎重に検討中であり、まだ結論を得るに至っておりませんが、行政が高度に複雑化した今日、的確かつ能率的な行政事務の確保をはかるためには国務大臣の若干の増員が必要ではないかと、かように考えるものであります。このことは、決して行政機構の簡素合理化の趣旨に相反するものではなく、真の意味において、むしろその趣旨を生かすもととなるものと私は考えます。できるだけ早急に結論を得て、あらためて国会の審議を願う予定でありますから、さような結論が出ましたら、何とぞよろしくお願いをいたします。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#56
○国務大臣(福田赳夫君) まず、人事院で公務員の生計の実態調査をしたらどうかと、こういうお話でございますが、私は、人事院が全部、初めからしまいまで公務員の生計調査をする、これは妥当ではないのじゃないか。現在でも総理府統計局を使っておる。まあ補足するところがあれば補足調査をするという程度かと、かように思います。人事院から妥当な要請がありますれば、御相談に応じます。
 第二は、人事院勧告に対する閣議決定と支給日との間にズレがある、これを是正することについてのお尋ねでございます。この人事院勧告に対する処置につきましては、国会にはからないわけにはいかないのです。そこで、どうしてもズレがある。これはやむを得ないと思う。ただ、そのズレを何とか埋める名案はないかと、こういうことかと思いますが、なおこれは山中総務長官ともよく相談をしてみる、かようにいたしたいと存じます。
 次に、本年度の人事院勧告の給与支給、その財源といたしまして、整理、節約を考えた、これはいいことをしたと思いましたら、いまおしかりを受けたので実はびっくりいたしておるわけでございますが、当初予算におきましても、かなり整理、節約の方針をもちましてきびしい予算を組んでおるのです。しかし、人事院勧告はこれを完全実施いたしたいと、こういうことで、まあ血を見るというくらいな気持ちをもちまして整理、節約をいたしておるということは、ひとつ、とくと御了承のほどをお願い申し上げます。
 次に、基地労務者の問題でございますが、この問題につきまして、大量の解雇者がありそうな情報は聞いておるのです。しかし、それがいかなる時期、いかなる人数にわたるか、具体的な計画につきましては承知をいたしておりません。ただ、これに関しまして、四十六年度につきましては特別給与費について防衛施設庁から要求を受けております。四十五年度はまだ受けておりませんけれども、四十六年度につきましてはそういう要請がありますので、これは積極的な姿勢をもちまして検討いたしたいと、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣山中貞則君登壇〕
#57
○国務大臣(山中貞則君) 第三次公務員制度審議会の委員の人選等については、なるべく急いでこれを発足させまして、お話にございましたような内容等について十分審議を進めて、なるべく結論を得たいと存じております。
 さらに、人事院勧告の完全実施等につきましては、総理大臣からお話がございましたとおりでございます。ルールの確立したものと、私も担当大臣として認識いたしておるわけでございます。
 閣議決定と支給日のズレについても大蔵大臣からお話がありましたが、私が別途、委員会において答弁した内容等についてのお話でございますし、私が支払い方式等について触れましたための御質問だと思うのですが、別段機関を設けるという気はございませんで、私と大蔵大臣と相談して、合意する方法があれば、しかもまた国会で立法措置をとり、しかも財政法の許す範囲であればという道を発見したいと考えておるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#58
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 行政改革等についてお答え申し上げますが、総理のお答えで要を尽くしておるようなものでございますけれども、幾らか補足させていただきます。
 一省庁一局削減は、行政機構の簡素合理化を推進するための起爆剤として、また、三年五%の定員削減計画は、総定員法の趣旨に従い、総定員の拡大を抑制しつつ、行政需要の変動に即応した合理的な定員の再配置を推進するために講じられているものであります。いずれも行政の簡素能率化を推進する上で、きわめて重要な役割りを果たしているものと考えます。
 また、真に必要な新規の行政需要に対しましては、別途、所要の増員措置を講ずることとしております。必要な行政水準の確保に支障を生じないように配慮しているところであります。
 まず、定員については、今年八月二十五日の閣議決定の方針に従って、昭和四十七年度を初年度とする三年間において、全体として五%を上回る削減を実施する方針であります。できれば昭和四十五年度中に具体案を決定したい考えでおります。
 次に、行政機構の簡素合理化については、去る十一月二十日の閣議決定の方針にのっとって、行政機構の合理的再編成の制度的基盤を確立するための国家行政組織法の改正案を次期国会に提案することを目途として、また、地方支分部局及び特殊法人の整理再編成につきましては、極力、昭和四十六年度予算にも織り込むように鋭意検討中でございます。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
  〔国務大臣秋田大助君登壇〕
#59
○国務大臣(秋田大助君) 地方の公営企業は、独立採算をたてまえといたしておりますので、企業職員の給与は、やはりその企業の収益の中でまかなうのを原則と私は考えております。したがいまして、公営企業の給与改定を実施しなければならないというときには、ひとつ企業で、やはり自前で企業努力をやって財源を生み出していただいて、それで支給をすべきものと心得ておるのでございまして、ただいま大出さんのような考え方も存じてはおりますけれども、政府といたしましては、ただいまのところ、特別交付税等で処置をするというような安易な道はとらないところであります。しかしながら、企業経営の悪化をしております公営企業につきましては、その健全化方策等につきまして、前向きに自治省といたしましては御相談に応じてまいりたいと考えております。(拍手)
  〔政府委員佐藤達夫君登壇〕
#60
○政府委員(佐藤達夫君) たくさんの論点が私に集中しておるわけでございますが、できるだけ要領よくお答えをいたしたいと思います。
 まず第一に、公務員の要員確保の御心配をお述べになりました。まさにこれはずぼしでございまして、私ども公務員試験採用関係の責任当局としては一番頭の痛いところでございます。数字を示せというおことばでございましたが、昭和四十一年、五年前をめどにとって、今年の、最近の場合を考えますというと、上級職において、昭和四十一年に比べて試験の応募者が二〇%減、それから初級の試験におきましては三五%減というまことに懸念すべき状態にあります。私ども、いろいろなこれに対する対策は考えられますが、まず何といっても給与、ことに初任給であろうということで、毎年力を入れてはまいっておりますが、ことしは御審議によってもおわかりいただけますとおり、特にそういう面から初任給に力を入れておるという次第でございます。
 次に、勧告のあり方の問題、この根本問題につきまして、人事院がただいままで堅持しておりました、いわゆる官民比較主義というものが、もう限界に来たという、きわめてショッキングなお尋ねでございます。この辺について特に力を入れてお答えをしておきたいと思いますけれども、先ほどのお尋ねで、ことしの春闘の関係で、労働省が調べた春闘による賃上げは一八・三%ではないか、しかるに、人事院勧告は一二・六七%、これはどういうわけだという御指摘でございますけれども、実はこの労働省の調査は、大手の会社の百四十九社をとらえての調査でございまして、私どもの調査とは基本的に非常に違うのであります。私どもの調査は、御承知のように、先ほどのおことばにもちょっと出ておりましたけれども、事業所規模で五十人以上、それから企業規模で百人以上というところを押えまして、七千百五十にわたる事業所をとらえて、そしてその従業員五十三万人を一人一人調査した結果の積み上げと公務員の給与とを比較しておるわけでございまして、したがいまして、その調査の基準が違う。
 そういたしますと、それでは大規模な、もっと大きな企業と比べてはよくないかという御意見がございます。しかし、これはこれで私どもの立場からいたしますと、私どものとっております、ただいま述べました基準は、これが日本全国の全業種の民間従業者の約半分に当たる者をカバーしておるわけで、私どもは、民間従業員の約半分に当たるそれらの人たちの水準をとって勧告を申し上げておるわけでございますが、これであれば納税者を含む国民の各位からも御納得をいただけるだろうという、その辺に一つの焦点を持っておるわけでございます。
 なお、これによりまして、先ほど教員あるいは看護婦の問題にもお触れになりましたけれども、私どもとしては、官民の総合較差をこれによってとらえまして、さらに公務部内の均衡を考え、あるいは各業種の特性等も考えまして給与の配分をきめておる、その結果、御審議のような俸給表になっておるということでございます。でありますので、私どもとしては、当面の情勢のもとにおいては、やはりこの官民比較主義を基本にすることが一番手がたい方法であり、納税者の各位にも納得いただける方法であるということで、自信を持っておる次第でございます。
 それから次に、高齢者の問題について御指摘がございました。これは先ほどのおことばに、高齢者が非常に高い給与を取っておるために、官民比較の場合においてこれはマイナス要因になるという御指摘であり、まさにそのとおりで、マイナス要因にはなります。私どもの本来のねらいは、やはり給与制度、特に昇給制度のあり方の筋の問題からいたしまして、どうしてもこれは多少延伸というような形で忍んでいただかなければ筋が通らぬ。そうして、むしろ働き盛りの若い人々のほうへ少しでもそれを回してあげるようにいたしたいということから出ておるわけでございます。しかしながら、当面その対象となられます方々は、これはお気の毒であることはもう事実であります。したがいまして、私どもの運用の心がまえとしては、できるだけ急激な、冷酷な結果になりませんように、あらゆる面からこれに配慮を加えていきたいという気持ちでおるわけであります。
 それから、これは先ほどおことばにありました定年制の問題その他とは全然別個の、給与制度自体の問題としてわれわれは考えております。
 それから中位層の方々の給与問題、これも従来中だるみその他の御批判を受けながら、私ども努力をしてまいっておるところでございまして、今回の勧告におきましては、その辺に十分注意を、また配慮を加えたつもりでございます。
 それから生活実態調査のお話は、大蔵大臣からお答えがございました。大蔵大臣がお考えになっているのと、ちょっと違うかもしれませんが、私どもは官民比較主義にかわるべきものというような趣旨ではありませんので、ただできるだけ公務員諸君の生活実態を的確に把握したほうがよかろうという気持ちで、その調査のための予算は実は御要求申し上げておるわけであります。
 それから、行(二)の人々、いわゆる下級の人々の俸給の改善の問題、これはもう大出議員十分御承知のとおり、従来その改善に大きな努力を重ねてまいりました。実績によって御判断いただけると思いますし、今回の勧告においても、さらにその上に十分の配慮を加えておるつもりでございます。
 それから期末・勤勉は、いかにも切り捨てではないかというおことばでございました。これは率直に申しまして、小数点二けた以下は切り捨てました。これは従来の例にならったところでございます。ただ、この趣旨は、民間におきまするいわゆるボーナス等の特別給は、その年その年の企業の実績によって上がったり下がったりするという性格のものでございます。これに対しまして、わがほうの公務員の給与は、やはり法律に一応のりますという形で固定的なものとして出ますために、これを切り上げてこっちに盛り込むというのはいかがであろうかということで従来の慣例が確立されておるものと思います。そういう趣旨で今回の法案もできておるわけでございます。(拍手)
#61
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#62
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時二十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
       運 輸 大 臣 橋本登美三郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 佐藤 一郎君
 出席政府委員
        国 務 大 臣 山中 貞則君
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        人事院総裁   佐藤 達夫君
        人事院事務総局
        給与局長    尾崎 朝夷君
        通商産業省公害
        保安局長    荘   清君
ソース: 国立国会図書館
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