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1970/03/13 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 予算委員会第三分科会 第3号
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1970/03/13 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 予算委員会第三分科会 第3号

#1
第063回国会 予算委員会第三分科会 第3号
昭和四十五年三月十三日(金曜日)
    午前十時一分開議
 出席分科員
   主査 田中 龍夫君
      相川 勝六君    赤澤 正道君
      西村 直己君    藤枝 泉介君
      古内 広雄君    大原  亨君
      藤田 高敏君    細谷 治嘉君
      鬼木 勝利君
   兼務 久保 三郎君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 野原 正勝君
 出席政府委員
        大蔵省主税局長 細見  卓君
        通商産業省鉱山
        保安局長    橋本 徳男君
        労働大臣官房長 岡部 實夫君
        労働大臣官房会
        計課長     増田 一郎君
        労働省労働基準
        局長      和田 勝美君
        労働省婦人少年
        局長      高橋 展子君
        労働省職業安定
        局長      住  榮作君
 分科員外の出席者
        厚生省薬務局薬
        事課長     山高 章夫君
        建設省計画局建
        設業課長    檜垣 五郎君
    ―――――――――――――
分科員の異動
三月十三日
 辞任         補欠選任
  細谷 治嘉君     藤田 高敏君
  松尾 正吉君     鬼木 勝利君
同日
 辞任         補欠選任
  藤田 高敏君     細谷 治嘉君
  鬼木 勝利君     松尾 正吉君
同日
 第五分科員久保三郎君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和四十五年度一般会計予算中労働省所管
 昭和四十五年度特別会計予算中労働省所管
     ――――◇―――――
#2
○田中主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。
 昭和四十五年度一般会計予算及び昭和四十五年度特別会計予算中、労働省所管を議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。
 この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は一応本務員は一時間程度、兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力願いたいと存じます。なお、政府当局におかれましても、答弁はでき得る限り簡潔、明瞭にお願いをいたします。
 質疑の申し出があります。順次これを許します。久保三郎君。
#3
○久保分科員 限られた時間でありますから、簡単に二、三お尋ねするわけですが、まず最初は労働災害の問題であります。
 これは最近いろんな問題を起こしているわけですが、それに伴って労働災害補償というか、こういうものもこの国会を契機に改正するということであります。この問題は労働災害をいかに防止するかという問題でありますが、最近の実態を見ますと、災害が必ずしも質的にも減ってはいない、こういうふうに考えられるのでありますが、最近の傾向はどうなんですか。
#4
○和田政府委員 お答え申し上げます。
 災害につきましては、先生御指摘のようになお相当の量にのぼっておりまして、私どもとしてもこの減少について十分苦慮いたしておるところであります。最近の傾向を申し上げますと、昭和三十六年がいままでのところ統計的に最高でございまして、傷病八日以上のものについて統計で見てみますと四十八万二千、これが最高でございます。漸次減少してまいりまして、現在では三十八万件程度にまで減ってきております。大体この八、九年の間に十万件くらいの減少でございます。しかしながら、死亡事故につきましては絶対数が相変わらず六千前後を上下いたしておる。もちろん雇用労働者数がずっとふえてまいっておりますので、指数的に申し上げますと死亡のほうも減少をいたしておりますが、絶対数が減っていないということに対して私どもとしても十分注意をしなければならない、かように考えております。それからもう一つは、いま申し上げましたように、三十六年ごろから十万件くらいの件数の減少はございますが、最近になりましてこの減少率がやや停滞ぎみであるということにつきまして、私どもとしても十分注意して、さらにこの停滞ぎみの原因を究明いたしまして今後の事態に対処していく必要がある、かように考えております。
#5
○久保分科員 いまお話しのとおりでありまして、なるほど数は減って、最近は停滞というか横ばい。中にはかなり大きい問題がある。これは労働強化と未熟練労働というか、そういうものもあるし、それからもう一つは、技術の改革といろか革新というか、そういうものに労働の質が伴っていかない、あるいは技術そのものもまだ慣熟してない者を使っているというところに問題があろうかと思うのですね。
 そこで、そういう災害防止の体制というのは労働省としては必ずしも完全ではないと私は思う。もちろんどんなものでも完全ではありませんけれども、特にひどいのじゃないかと思う。大体姿勢からいって労働大臣、あなたの責任じゃないのでありますが、労働省の中で安全衛生局というのが一年足らずの間に出たり引っ込んだりしておりますね。たしかこれは九カ月くらい安全衛生局というふうになったんでしょうかね。大体役所というのは画一的で、一省一局削減ということで、あとからできたものをみんなへずるという。こんなことをやっているから役人にばかにされるのじゃないかと思う。そういう意味から、特に野原労働大臣はまさにやってくれそうな人間だと実は期待しているのです。一省一局削減だなんて、あとからできたものをみんなへずれというのは、小学校の一年だってみんなできますよ。大臣が寄ってたかって相談する必要はない。そのために大臣があるのだろうと思う。別に局がなくなったから、あるからということで、行政が直ちにてんびんにかけられるというわけにはいかぬかもしれません。しかし変なものでありまして、そういうものがなくなればだんだん仕事の中身も減ってくるというのが官僚機構のしきたりでありまして、予算の上でも機構の上でも、そういうものを新しい労働大臣にぜひ骨折ってほしい、こういうようにまず私は田やりのです。
 別に局長をつくれということは二の次にして、まず人間の命を大事にするということが、特に労働者の命と暮らしを守るというのが労働大臣の最大の任務だと私は思うのです。だから、そういう観点からあらためて労働行政をひとつ見直してほしい。見直されているとは思うのでありますが、ことしの予算などを見ましても、必ずしもそうだとはいえない。本分科会の中でもそれぞれの委員から御指摘がありましたように、予算一つをとっても前進がない。もっともこれは新聞のゴシップなんかに出ましたが、圧力団体がないからせいせいしていいという話が大臣からあったそうであります。それが正しいのでありまして、圧力団体があるから予算が取れるなんという仕組み自体がおかしいのであります。国会の意見だけ聞いていただけば大半達成できるのじゃなかろうかと思うのもあるし、常日ごろごらんになっていることを考えて予算に盛り込めばいいのだろう、私はそう思うのです。
 長い話をして恐縮でありましたが、まず一言、労働者の命と暮らしを守るというか、特に暮らしを守るということはだれでもわかるのですが、命を守るというのはわかっているようでわからぬことが多いのですね。そういうことについて一ぺん国会でも終わったらゆっくり取り組んでいただくおつもりがあるかどうかお伺いしたい。
#6
○野原国務大臣 御指摘のごとく、労働政策の中で人命を尊重するというか、災害をできるだけ少なくするという仕事は最も重大な仕事であろうと存じます。したがいまして、この問題につきましては真剣に検討いたしまして、御指摘のような点の改善に努力いたしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
#7
○久保分科員 時間もありませんので、具体的なものを逐次お尋ね申し上げてまいりたいと思っております。
 そこで、労災補償の問題でありますが、御承知のようにこの答申が出まして、法律改正はこの国会に出します。法律改正の中でというか、これは法律改正にならぬ部分だと思うのでありますが、いわゆる遺児に対しての就学奨励金の問題であります。この労災就学援護費の新設というのは法改正になりますね。――ならぬ。それじゃこの支給対象はどんなふうになされますか。私がいただいた資料によりますれば、その学費の支弁が困難であると認められる、これは非常にむずかしい認定だ。学費の支弁が困離であると認められたものについて中学生が千円、高校が千五百円というような区別で出そう。たいへんけっこうなことだと思うのでありますが、支弁が困難だという認定はだれがどういうふうにどういう基準でなさるのか。もしおわかりでありましたら、基準局長。
#8
○和田政府委員 四十五年度予算におきまして、労災遺児の就学奨励金制度を設けることにいたしまして、その段階は小学校は千円、大学生の場合は五千円ということでございますが、もちろん裕福な場合においてそういう金を差し上げることは一般との均衡上問題がございますので、どうしてもどの程度の収入であるかという問題が当然に審査をさるべきだろうと考えております。どういう程度にするかということにつきましては、実は他にもいろいろ例がございますので、それらとの兼ね合いを十分勘案をしながら具体的なものをつくってまいりたいと思っていますが、いまのところまだ成案を得ておりません。成案を得ましたならば、これは一応労災保険審議会の権威につながることでもございますので、審議会のほうにも、こんな方法でやりたいということを御相談をいたしました上で確定をしてまいりたいと思います。決定をいたしますのは基準監督署のほうで決定を見る、こういうことにいたしたいと考えております。
#9
○久保分科員 これは法改正の必要がないとするならば、予算案にも盛られていることでありますから、新学年は御案内のとおり四月からでありますね、善政は一日も早いほうがいいです。喜ばれることはみんな一日でも早いほうがいいのです。四月からおやりになりますか。
#10
○和田政府委員 これは法律改正との関連で出てきた問題でもございますので、法律の審議の状況等を勘案をしながらやりたいと思いますが、四月につきましては、現在のところでは本予算が四月一日から施行されそうな気配でもないように伺っておりますので、それらとの関係も考えさしていただきたいと思っております。
#11
○久保分科員 さかのぼってやることもできるんですよね。そうでしょう。さかのぼってはいけないですか。
#12
○和田政府委員 新しくつくる制度でございますので、私どもの気持ちとしては、できるだけさかのぼりたくないように考えておりますけれども、なお検討さしていただきたいと思います。
#13
○久保分科員 どうしてさかのぼりたくないのですか。
#14
○和田政府委員 前からある制度の手直しの問題でございますればけっこうなんでありますが、これから新しくつくる制度でそうしますと、どこまでさかのぼるかという問題等も十分検討しなければならない問題があるようでございます。できるだけ新しく設けたときからやりたい。
#15
○久保分科員 失礼だが、そういうのは詭弁というのです。予算ないでしょう。予算案として出しているのは四月からでしょう。四十四年度なんかありませんよ。一文もないでしょう。さかのぼりようがないのじゃないですか。そんなことを言ってはいけませんよ。それとも法律か何か規則か知りませんけれども、制約があるのですか。ないでしょう、それは。ただあなたの気持ちとしてでしょう。これはあまりこういうところで詰めた話はおかしいけれども、ことばの行きがかり上そういうふうになりますよね。だから別に私の主張だけをあなたに押しつけようという考えはありませんよ。あなただっていいことは早くやったほうがいいと思っているんでしょう。その気持ちがみんなにわかればいいんですよ。だが、いまのような答弁だとかえってわからぬじゃないですか。御注意いただいたほうがいいと思います。法律の審議等もありますから、おそらく社労委員会等へかけて早くやったほうがいいんじゃないかと思いますけれども、ぜひそういうふうにしてほしい。
 もう一つ、これはまた社労委員会でも問題になりますが、ここに労働省で発行した書物――書物と言っちゃおかしいが、婦人少年局の外郭団体かで発行している、いつのでしたかわかりませんが、そういうものに、労働災害遺族の生活実態に関する調査というのがあるんです。これは非常に簡単と言っては語弊がありますが、簡単に結論的に、三つほど政府や公的機関にやってほしいという要望がある。これに完全にこたえているかどうかの問題です。
 一つは、労災保険の遺族補償年金の増額、今度は増額する、こういうことですね。しかし増額をしましても、言うならば、これにはいろいろ理屈はあるようでありますが、一般的に見て年金というか一時金、特に一時金でやったほうがわかりやすいかと思いますが、一時金にしましても、やはり通常常識的な額にはまだほど遠いというように考えているわけであります。もっとも御承知のように補償については、いわゆる慰謝料を含んだようなものについては、事業所内におけるところの労働協約でやるべきだという本筋もありましょう。だから大きい組織立ったところの労働組合と事業所では、大体五百万ぐらいの労災の場合の見舞い金といいますか、一時金といいますか、そういうものを出す協約ができております。これは当然だと思う。ところが、そういうものができないところが、やはり一番問題なんですね。たとえば労働組合もないというようなところ、そういうようなところが一番困ると思う。だから、これをカバーするためには、やはり労災制度そのものの基本的な考え方をもう一ぺん考え直す必要がありはしないか、こういうふうに思うのです。けさの新聞にも出ましたし、それから何かの意見にも出ておりましたが、通勤途上における労災の問題をこれから扱うそうでありますからけっこうなことです。ぜひいい結論をつけてほしいと思うのです。ただ問題は、その場合には、自動車事故でありますから自賠責というのがからんでまいります。これは御案内のとおり現行最高、死亡の場合は一時金五百万であります。労災からいくとどうなるかということです。だからそういうものを考えると、もう少し前向きで考える必要がありはしないか。それからもう一つ、そのためには労災の保険料というか掛け金が非常に高くなる。これはやはり命のためにはそういう出費はやむを得ぬと思うのです。金で片づくことならやるべきであって、命を守れるとか、人間を守っていけるのならやはり惜しむべきじゃないと思う。ましてや最近は労働力は、金の卵かダイヤモンドか知りませんけれども、そういう表現すらあるほどであります。そうなれば、やはり労働力というものを大事にしていくという基本的なものを確立する必要がある。いままでの観念からいけば、御答弁はおそらく、これだけ上げたんだからりっぱでしょうということでしょうが、もう少し上げるくふうを考えたらどうか、こういうことです。これはまとめて御返事いただきたい。
 それからやってほしいものの二番目は、労災保険の遺族補償年金加算を受ける子供の資格年齢を上げてほしいというのが三六%ある。先ほどの補償年金というか、これを上げてほしいというのが七九%要望があるんですね。いま申し上げた加算を受ける子供の年齢をもう少し上げてほしいということをいっているのが三六%ある。これは今度の法改正や制度改正でどう取り入れられていくのか。
 それから遺族のための相談所がほしいというのがやはり二七%ほどある。これは言うなら相談するところがないわけですね。これはどうなっているか。その四番目に書いてある奨学金制度がほしいというのが一六%程度ある。これは先ほどのお話では、今度は多少であっても取り入れられるということですが、相談所はどうなるか。しかも、相談所という看板をかけたからうまくいくというものではない。相談員というのは、しかるべきアフターケアとして、回って歩くような制度が必要だと私は思う。年に一ぺんくらいは家庭訪問する。もし訪問できなかったら手紙の一本もやる。そして、お返事をいただきたいというような葉書を同封させるくらいのサービスというか、親切は必要だと思います。そういったような相談制度というのができるのかどうか。この三点か四点でありますが、簡単にお答えをいただきたい。
#16
○和田政府委員 遺族補償の増額の問題につきましては、ただいま国会に提案をいたしております労災保険法等の一部改正の法律案の中では、年金につきましては、平均的に申し上げますと二〇%強の引き上げを行なっております。一時金につきましては、年金を受けられない遺族の場合には一時金でございますが、四百日分を千日分に上げておりますので、二。五倍というような非常に高い倍率を示しております。この遺族補償の問題につきましては、わが国の場合でも漸次、遺族補償の本来の姿は一時金のスタイルから年金のスタイルにかえていくのがよかろうという傾向にあろうと思います。これは国際的に見ましてもそういう傾向になっておりまして、ILOの条約あたりでも、年金を主体にして、ほかの姿として一時金を認める、こういうようなかっこうになっております。そういう趣旨で、昭和四十年の労災保険法の改正のときに、従来一時金の制度でありましたものを年金制度に切りかえまして、法律として確定をいたしておりますが、その傾向は私どもとしては今後とも続けてまいりたい。ただ、一時金の需要の非常に多いことも事実でございますので、今回の改正におきましても、四十年の改正の際に一時金――年金の前払い制度を経過措置として設けましたが、それを今回の法案でもさらに五年間存続させるということでお願いを申し上げておる、こういうことでございます。
 それから、通勤の問題につきましては、先生がきょう新聞で御承知をいただきましたようなことで、昨日から専門家会議を開催しております。これはきのうも私のほうから、できるだけ早くやってほしいという要望がございますので、その点をおくみ取りいただきたいということを申し上げまして、今後調査会のほうでいろいろと御検討をいただくことになると存じます。
 それから、年金をもらう年齢の問題でございますが、これは十八歳未満の子供さんに差し上げることになっております。これは単に労災保険だけではなくて、日本の扶養制度全体の問題につながります大きな問題でございますので、今回の改正ではそれらの勘案もございますので、十八歳未満に据え置いております。
 それから相談所の問題でございます。新しく相談所という機構を設けてはおりませんが、昨年から労働保険相談員という制度を監督署に設けました。これは遺児の身の上相談ということが主たる任務ではございませんけれども、相談員の活用によりまして、できるだけ先生の御趣旨に沿うような運営をさしていただきたい、かように考えております。
#17
○久保分科員 非常に時間がありませんから、簡単にお答えをいただきたい。私のほうからも簡単にお尋ねします。
 次には職業病の問題であります。これも単に、いま懸案事項の白ろう病とか、あるいはキーパンチャー病とか、あるいは腰痛病とか、そういうものがいろいろありますね。そういうものの結論がいつ出てくるかわかりませんが、簡単に出るような仕組みにはなっていないようであります。いずれにしても、そういうものを職業病に認定されるものは一日も早くしてやることが、労働者に対して安心感を与えることだし、貴重な労働力を確保というか、保全といったらおかしいかもしれませんが、そうするためにはやはり必要だろうと私は思うのです。だからやはりこれは、ひとつ早い結論を出してほしい。と同時に、これはやはりチェーンソーを長く使えば白ろう病になるという原因がわかったとすれば、一日のうちにどれくらいより使っちゃいけぬとか、そういう制限をやっているのですか――やっているのですね。一つには、それが完全でないからそういうことになるんです。それからもう一つは、それが認められない場合、これはやはり厳重に監督しなければならぬ。それから、どうしてもだめなものがありますね。どうしてもだめなものがあるなら、やむを得ず使わせるものに対しては使用を制限するというところまでいかなければ、ほんとうに労働者の安全衛生は保ち得ないのじゃないかと私は思うのです。そのためにたとえば、有機溶剤中毒予防規則というのがありますが、なるほど労働省のこの規則の中では、たとえばシンナーの入った塗料を使う場合には、どこか通風をよくしてやらなければならぬとか何とかいっていますが、大体中毒することを前提にして予防規則をつくるわけですね。これを吸えば中毒しますという一つの例です。そういうものに対して、これを使うなといっても不可能なことかもしれませんが、そういうもの以外のもので、それの効用を果たすようなものを開発研究することを労働省自体はやっているか。これはお門違いかもしれませんが、あなたのところには産業安全研究所、それから労働衛生研究所というものがありますね。これはうしろ向きの研究か何かをしているのじゃないかと思います。これは前向きにしていくべきだろう。
 そこで、厚生省からもおいででありますから一言聞きたいが、たとえばシンナーとか、労働省にあるところの有機溶剤中毒予防規則、こういうものだけでは中毒を――これを完全にやればいいのですよ。なかなか守り得ないものがあると思うのです。ついては、こういう予防規則だけで完全にこれは守れるのかどうか、これが一点。予防規則だけでほんとうに有機溶剤中毒は予防が完全にできるかどうか。そういうふうな認定の上で労働省にOKを与えてこの規則ができておるのかどうか。厚生省に一言だけお尋ねしたい。
#18
○山高説明員 有機溶剤全般につきましては所管でございませんので何でございますが、シンナーについて申し上げますと、シンナーはその毒性が、主成分はトルエンでございます。
#19
○久保分科員 課長さん、たいへん恐縮ですが、この労働省の規則でいけば中毒はないことになりますかということ……。
#20
○山高説明員 労働省の規則になりますと、労働省のほうでないと……。
#21
○久保分科員 労働省にも医学者がいるのだろうか知りませんが、それはそうでしょう。だけれども、全般的に、そういう中毒するかどうかの認定は厚生省でおやりになるのでしょうね。どうなんですか、これは。
#22
○和田政府委員 職場におきまして有機溶剤を使用いたしますことに伴います中毒問題につきましては労働省の所管で、私どものほうでいろいろの予防措置その他を講ずることになっております。先生がいま御指摘になりました有機溶剤の中毒予防規則は、私どものほうが労働基準法に基づいて制定したものでございます。現在のところこれには許容等その他の規定が詳細になされておりますが、これがこのとおり守られれば職場においては有機溶剤による中毒はない、こういう前提で考えておりまして、これらのことにつきましては、先ほど御指摘のありました労働衛生研究所あたりの研究成果、その他いろいろの研究機関の成果も取り入れてこういうものをつくっておるわけでございます。
#23
○久保分科員 時間がありませんから、この問題はあとの機会に譲ります、いずれにしても、何かちょっと納得いきませんから。
 そこで最後に、お二人程度になると思いますが、簡単にお尋ねして終わりにします。いわゆる最近問題になっている人買い問題、これはすでに昨日の当分科会でもいろいろなお話があったようでありますから、ただ一つ聞きたいのは、こういうものがあるとすれば、これは直ちに建設業法によっても行政的な処置を的確にとるべきだと思うし、また、それ以前に指導するのがあたりまえだ。労働省だけの者では、大体人手も足りないし、なかなか見回りなんかできません。結局業界を扱うところの建設省がこれはやはり適当な監視なり何なりして、そういうものによるところの労働者を確保するような仕組みをやっておるところは、厳重に処分するなり注意するなり、こういうことが必要だと私は思っているのです。労働省はいままで建設省に何も言わなかったかしらぬが、これは労働省ばかりに預けておく問題じゃなくて、むしろ建設省からもそういう問題を考えてもらわなければいかぬ、こういうふうに思うのだが、これはどうか。
 それから続いて、問題は違いますが、先般も本委員会で専売公社の女子従業員の労働時間の問題を申し上げましたが、いまの労働基準法は午後十時から午前五時までですか、これは当然のごとく――当然というとおかしいが、深夜ということになって、婦人は原則としてこれはやっちゃいかぬという規定になっている。ところが、それにすれすれになればいいということで、専売公社は二交代制度にやろう、極端な話をいうと、五時一分から午後九時五十九分までならばいいということで、こういうことを役所の肩がわりみたいな専売公社が始めるのでありますから、民間にはたくさんあると思うのですね。特に最近ではパートタイマーが御案内のとおり数多くになりましたね。そうなると、パートタイマーになっておるのは夫のある婦人あるいは子供のある婦人が大体多いと思うのですね。そういう者の余っている、というと誤弊があるが、労働力を活用するということは日本の経済にとってもいいことだと思うのです。いいことだと思うけれども、反面、それならば家庭の問題や子供の問題を破壊していいかどうかという問題、これはいなかにも最近はあります。おやじは東京へ出かせぎです。それでかあちゃんはというと、やはりパートタイマーで出ていくのですね。いなかのかぎっ子というのがあるのです。都会のかぎっ子ばかりじゃありません。こういうものについて、いわゆる女子労働一般といたしましては、いまの労働基準法でこれはまあいいとしても、いわゆる子供のある、あるいは夫のあるというか、家庭を持っておるところの婦人に対しては、やはり家庭保護というか、そういうものを含めた労働基準を制定すべきであろう、こういうふうに思うのですが、これは婦人局長おいでですから、あなたのお考えを先に聞いたほうがいいですね。大臣からはあとでまたお話を承りましょう。
 もう時間でありますから、以上で質問は終わらしていただきまして、答弁をいただきます。
#24
○住政府委員 最近人手不足によりまして、もぐり求人とか私設職安とか人買いというようなことで、一部に非常に遺憾な事態が起こっていることは非常に残念なことに思っておりますが、私どもといたしましては、たとえば職業安定法による直接募集なり文書募集、縁故募集等の規制の適用について今後一そう努力していきたいと思っております。
 現在、事業場内におきますいろいろな基準法違反等の問題を起こしたものにつきましては、建設省との間に通報制度をとっておりまして、そういう業者についての入札からの排除等の措置等も行なわれておるのでございますが、もぐり求人等につきましては、まだそこまで進んでいない実情でございます。御指摘の点もございますので建設省とも早急に相談して対処していきたいと考えております。
#25
○檜垣説明員 この人買い等の問題については建設省も建設業界を取り締まるという立場で協力すべきではないかという御意向、まことにごもっともでございまして、私ども、労働省と協力いたしまして業界の指導に当たっておりますし、また、ただいまもお話がございましたとおり、格づけの際の点数等にも考慮しておるわけでございます。しかしながら、法律上はあくまでも、第一次的には労働関係法令を所管する労働省の所管でございまして、これが処分ということになりますと、やはり法律上は罰金以上の刑に処せられる、そういった前提があって初めて建設業法の処分ができる、現行法ではそういうことになっておるわけであります。われわれといたしましても、今後とも労働省と協力いたしまして、強力に業界の指導を進めるという決意につきましては、従来よりもさらに強い姿勢でもって臨みたい、かように考えておる次第でございます。
#26
○高橋(展)政府委員 最近家庭を持った婦人が非常に職場に多く出てまいりまして、またパートタイムあるいは交代制等の形で早朝あるいは夜間に就労するというケースも多くなってきておるかと思います。そのことから家庭生活にいろいろとしわ寄せがくる、あるいは婦人自身が家庭と職業との両立に苦しむというような問題も指摘されることが少なくないのでございますが、このような事態に対処いたしまして、先生御指摘のように子供を持つ婦人の就労の時間帯でございましょうか、それを早朝あるいは夜間を規制するというようなことにつきましては、これはやはり婦人の雇用機会の確保というようなことの問題あるいは職場における均等待遇というような問題ともかかわり合いがございますので、一がいに規制すべきであるというようにはにわかに考えられないところでございます。むしろ家庭を持つ婦人が職場に出ます際、それぞれの家庭の状況等をよく考えまして、自主的な生活設計を持って、無理のない形で働くというような姿勢も必要でございましょうし、また家庭と職業の両立を援助するためのいろいろな施設も必要であるかと思います。これらと相まって婦人の家庭と職業の調和というものを容易にしてまいりたいと考えておるところでございます。
#27
○野原国務大臣 婦人労働の重要な使命、ますます重大になってまいっております。したがいまして、婦人労働が家庭との関係あるいは婦人の体質との関係におきまして、無理のない形で日本の経済の発展に十分に役立つよう、その対策を十分講じてまいりたいと考えております。
#28
○田中主査 以上をもちまして久保君の質問を終わりました。
 次に鬼木勝利君。
#29
○鬼木分科員 時間がありませんので、なるべく答弁は簡にして要を得た明快な御答弁をひとつ願いたい。
 労働大臣にまずお尋ねをいたしたいと思いますが、産炭地のことについて私は主としてお尋ねをしたいのでございますが、なかんずく炭鉱離職者対策でございます。御承知のとおり今日炭鉱は、なだれ閉山といわれておるように、急激に閉山また閉山、したがって離職者が非常に多いということは、自然的現象として御了解のできるところと思いますが、先般、先月二十七日でございましたが、雄別炭鉱の閉山、近くはまた日鉄嘉穂、相次いで閉山がありますが、先般石特委員会で委員の諸君の質問に対して、炭鉱離職者の再就職その他の点においては、円満に、スムーズにいっている、こういうお話を承って大いに意を強くいたしておりますが、事実離職者対策がそのように行なわれておるかどうか。われわれの見ましたところでは、四十五年度あたりも八百万トンぐらいスクラップになるのじゃないか。将来、四十八年度あたりまでには三千六百万トンぐらいの炭鉱規模になるのじゃないか、このように見ておるわけであります。その離職者対策のその後の今日までの状況を承りたいと思います。
#30
○住政府委員 数字について私から事務的に御説明申し上げたいと思いますが、私ども、四十四年度の炭鉱離職者の再就職計画におきましては、当初一万一千三百人程度の離職者が出るだろう、こういうことでございましたが、御指摘のように、明治とか杵島とか麻生のような大手企業の企業ぐるみの閉山等も行なわれまして、ことしの一月末までには予想を上回る一万五千七百人程度の離職者の発生を見ております。さらに雄別とか日鉄嘉穂等の閉山もございまして、年度末にはこの数字はさらに二万二千以上になるのじゃなかろうかと思っておるのでございます。
 大体再就職の状況でございますが、たとえば一月末現在におきまして、企業ぐるみ閉山を行ないました明治鉱業を見てみますと、離職者が三千二百七名でございましたが、大体九三・四%が再就職をしておる。麻生では千四百六十八名の離職者のうち七八・一%、杵島では千六百二名に対しまして七六・二%、昨年十月閉山しました北星炭鉱でも、千六十名の離職者のうち七六・六%というようなことで、再就職の状況は、私どもといたしましては、かなり円滑に進んでおるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
#31
○鬼木分科員 そういうような御答弁はたびたび拝聴したのでございますが、御承知のとおり、今日の山は非常に老朽化しておりまして、山そのものというよりも人的方面において非常に老朽化しておる。炭鉱労務者は平均年齢が四十歳以上だ、このようにいわれておる。したがって、皆さんがおっしゃっておるところの再就職ということは、若年層はあるいはそのように行なわれておるかもしれませんけれども、中高年齢者ということになりますと、なかなか再就職は困難である。そうした山が閉山をしますというと、中高年者の再就職ということは非常に困難だということになってくる。聞くところによると、安定所の窓口を通じてのお世話は二十名に一人だ、このように先日から承っておりますが、そういうことでは、私はあなた方のおっしゃることをそのまま額面どおり受け取ることができない。私はそこに非常に不安があるのです。その辺のところ、中高年者の再就職が九八%であるならば大いに敬意を表しますが、もっともこれは安定所の皆さんばかりを責めるわけにもいかない。地方の安定所なんかにもたびたび私は顔を出しておりますが、非常に努力はしておられる。その点は大いに了としておりますが、その点ひとつ御答弁を願いたい。
#32
○住政府委員 私どもの資料によりまして、たとえば四十三年度の実績で申し上げてみますと、就職者の総数が七千百七十人でございましたが、そのうち安定所紹介によるものは五千四百六十人、私どもかなり高い割合で安定所を通ずる再就職が進んでいるというように考えているわけでございます。
 なお中高年齢者の方々の再就職の問題でございますが、御指摘のように五十歳以上ぐらいになりますと、なかなか再就職も困難になってくることは事実でございます。そういうような観点から、私ども再就職を進めていくにあたりましては、たとえば事業主の方とか、組合の方、安定所、そういう三者協力して、離職者に対しますきめこまかい職業指導なり、職業相談を行ないながら再就職を進めているわけでございますが、その場合に、求人者に対する態度といたしましては、若年層に固執することなく、高齢者なり中年者に向く職場もあるわけでございますから、そういう若年者にばかりとらわれない高年齢者向きの職場には高年齢者を採用してくれ、こういうような求人指導等も行ないまして、そのためには特に専門のコーナー等をも設けまして、そういう就職困難な人々に対する特別な配慮を加えて紹介を行なっているところでございます。
#33
○鬼木分科員 局長の御答弁において大体わかりましたが、今日閉山がありますと、求人が殺到してくる。しかし若い者は再就職するけれども、中高年者は再就職ができない。あるいはまたそういうときに、先ほどもちらっとお話がありましたが、不正な求人、いわゆる俗称もぐり求人と申しますか、あるいは新聞広告というようなことによって、甘いえさにつられていって、実はそうでなかったというのでまた現地に舞い戻ってくる、あるいはまた安定所も人手不足から、早く就職をさせようというので、いわゆる先走りで、調査がずさんで、企業体がどういう企業体であるかという十分な調査もやらないで簡単に再就職させる、そういうきらいがないでもない。先ほど申しましたように、私も地元の安定所あたりにはしょっちゅう出入りいたしておりますが、安定所の職員諸君は一生懸命やっております。これは私は認めております。しかしながら、そうした調査を徹底的にすることが、人手が不足である。地方の安定所に参りましても、粗末な安定所で、中にもちらほら入っております。ところがお客さんは充満しております。ときにはあちらこちらで何かトラブルが起きておる。先般も国会で話があっておるようでございましたが、安定所に押しかけてきた。そこでトラブルが起きた。負傷者まで出たというようなことがございます。これは要するに、安定所が一生懸命やっておられることは、私先ほどから言ったとおり了といたしておりますが、認めておりますが、結局人手不足ということが基因で、処理することがすべて――すべてということは言い過ぎかもしれませんが、やや事務的である。真に困っている労働者の相談相手にならない。しかも官僚的である。そこで私は、そういう大衆の困った方の唯一の味方になるんだ、生活すべての御相談相手になるんだ、そして安心してその人が再就職ができるように、安定所の民主化、安定所の拡充強化ということを――今日行政改革ということを盛んにいっておりますけれども、当然整理縮小すべきものは、官僚の圧力だとか天下り人事の温床にするためにとっておく。これはまた行管のほうで徹底的に追及しようと思っておりますが、今日最も大衆のために機能を発揮しなければならない安定所が非常に弱体であると私は思う。そういう点において労働大臣はここに勇断をもっていま少し安定所の人員を拡充する。ただ単に一律に人員を整理する、減少するというようなことでなくして、必要なところにはある程度人員を拡充する、増員する、そして安定所の機構を民主化し、拡充していく、労働行政、安定行政の全きを期するという意欲が労働大臣におありかどうか。先ほどから労働大臣はどっしりそこでお聞きになっておるから、大体われ腹中にありともお考えであろうとは思いますけれども、意思表示をしていただかぬと……。いかがでございますか。
#34
○野原国務大臣 日本の今後の産業経済にとって最大の問題は、いかにして労働問題を解決するかということにあるわけでございます。したがいまして、非常な労働力不足の問題があり、多くの求人の人たちもある。しかし一方においては御指摘のような高年齢者の問題等もあります。また婦人労働力をいかに開発するかという問題もある。いろいろな問題を通じまして職業安定所の機能の強化あるいは労働基準局の機能の強化、また婦人労働対策等もありまして、現在労働省の機構必ずしも十分ではないわけであります。したがいまして御指摘のようなことを考えまして、今後の労働政策に遺憾なきような対策を講ずる。これは前向きに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
#35
○鬼木分科員 安定局長のお考えはどうですか。
#36
○住政府委員 いまも大臣申されましたように労働力の需給関係は非常に逼迫してまいりまして、と同時に非常な求人難の状況の中にありましても一部には就職難、それが地域的にも年齢的にもあるいは性の観点からもそういう問題が起きておるわけでございまして、私ども現在の安定所の機能の強化につきましてはいろいろ努力をしておるつもりでございます。来年度におきましても非常に定員管理のきびしい中ではございますが、一部増員等も認めていただいております。さらに何より大事なことは、安定所の機能をできるだけ強化していくという観点から、機動力の強化ということをはかって、職業紹介の効率化、迅速化ということを積極的に進めていきますとともに、さらに求人、求職者に対するサービスの向上、たとえば正確な求人情報あるいは求職情報というものを適確、迅速に集めまして利用者に使っていただく、こういう態勢等をも積極的に進めていきたいと考えておる次第であります。
#37
○鬼木分科員 先ほど労働大臣が、今日労働力が非常に不足しておるということをおっしゃっておりましたが、まさにそのとおりでございまして、これは一般産業の全般に言われることでありますが、なかんずく石炭鉱業、今日御承知のとおりスクラップ・アンド・ビルド、ところがこのビルド鉱におきましてその存続いかんは労働力を確保することができるかできないか、これが大きな比重を占めておるわけです。ビルド鉱においては絶対の条件として労働力を確保する、これが私は最も大事なことだと思っておるのです。ところがいかんせん今日の炭鉱労働者は非常に条件が悪い。いろいろな悪条件が重なっておる。ことに災害が常に頻発しておる。時間がございませんので、例は何ぼでもありますけれども……。ところが鉱山保安法適用事業の災害発生の件数は非常に減少しております。しかしながら石炭鉱山における災害はもう御承知のとおりあとを絶たない。そこで私は石炭企業の保護育成という点におきまして、労働者の安全を通産省にのみゆだねるということでなくて、労働省はもともと労働者の保護をはかるというのが根本だと思っております。ところが保安行政に対しては、通産省にゆだねてただ勧告するのみだ。災害に対しては通産省に勧告をする。これは鉱山保安法の第五十四条で御案内のとおりでございます。そうでなくして、私は、労働省も通産省と影の形に添うごとく一体となって労働者を通産省にまかせるのではなくして、労働省もともに一体となって、労働者の保安確保、そうすることによって山の労働者の確保ができるんじゃないかと思う。あとで申しますけれども、賃金の問題もございますが、ビルド鉱なんかが人員の確保、従業員の確保ができないということは、災害ということがここにあるからです。炭鉱はあぶない、こわい、炭鉱におる人でも炭鉱から去っていく。こういうような現状です。それをただ通産省にのみゆだねるということでなくして、ただ一片の勧告を出すということでなくして、一体となって労働者の安全をはかる、保護育成をはかっていく。これでなければ、そういう組織上がどうだ、機構上がどうだと、そういう官僚的な、なわ張り的なセクト主義でなくして、一体となって――私は人間尊重の上からもそういう点をお尋ねいたしたい。ですから、あるいは安定局長でも労働基準局長でも、みずから炭鉱にでも出向いて、保安の行政はとういうふうになっているのか、常に間断なく通産省と連絡をとって、皆さんがみずから意欲的に炭鉱労働者を守るという観点の上からそういう努力が行なわれておるかどうか。何か災害があれば全部通産省だ、通産省の鉱山保安局だ。私は、通産省の肩を持つわけでもなければ、労働省の肩を持つわけでもない。労働者の肩を持つのであります。その点は誤解のないように……。いかがでございますか、労働大臣。
#38
○野原国務大臣 石炭産業の問題、特にビルド鉱についての今後の対策、まことに重大でありますが、これは一つには、いかにして災害をなくするか、犠牲者が起きないような鉱山でなければならぬということと同時に、先ほど御指摘の、人手が足りない、特に若い人はもういなくなったというこの問題につきましては、炭鉱が魅力ある職場として、若い人たちに将来が期待できるような炭鉱にしていく必要がある。そのためには、やはり思い切った炭鉱の近代化を進めていく。設備の投資なども行なうという必要が出てまいります。同時にまた、労働賃金等も炭鉱なるがゆえに安くされておるという現状もあるやに聞いておりますが、そういう面もやはりこれは石炭の価格政策にも関係があるわけでございますが、それらを広範な、総合的観点から、いかにして日本の大事なエネルギー資源である炭鉱を今後少なくとも現状の程度はやっていくんだということにするためには、国としても大きな対策が必要であろうかと存じております。
 保安行政の問題につきましては、先般労働省でいろいろ聞いたわけでありますが、今日まで六回の勧告を行なっておる。しかしこの勧告は、私はいつやったのかということを調べてみましたら、全部炭鉱の災害が起きてからやっておるわけでございます。どうも勧告というものは、災害が起きてからじゃだめだ。むしろ災害の起きるような危険のあるものに対しては、積極的に勧告をしたらどうかということを私は意見として話したわけでございますが、どうもこの点は、やはり行政上の責任が通産にあるのだということから、幾ぶんかいままで遠慮しておったのじゃないかというふうに感じております。ただいまの御指摘の御意見、まことに傾聴すべき御意見でございますので、通産省と十分打ち合わせまして、今後は通産省まかせということだけじゃなしに、積極的に御協力を申し上げるという点で、今後の行政は一役買っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#39
○鬼木分科員 大臣の答弁はまことに私の考えておるとおりで、完全に意見は一致いたしました。ただ意見が一致したのみでは実行がなかったらこれは画餅でございます。でございますので、局長連中、責任者は、大臣の意を意として、今後十分労働者の安全確保ということに対しては意を用いていただきたいと思う。
 次に、時間がございませんのでかけ足をいたしますが、いま大臣もおっしゃっておりましたように、ビルド鉱、ビルド鉱と申しますけれども、今日の石炭鉱業というものは、スクラップ・アンド・ビルドじゃなくしてスクラップ・アンド・スクラップで、全部こわしていくことのみ前進をいたしておりまして、ほとんどビルドの姿は見ることができないのです。これをなだれ閉山と言っておるようでございますが、それはいま労働大臣のおっしゃったように、山に全然魅力がない、労働賃金も最低である、非常に低い。都市の平均賃金の約六割から五割でございます。半額です。それもいいほうです。盆暮れの賞与なんかはほとんど一般産業の三分の一にすぎない、あるいは皆無と言っていい、こういう状態でございまして、ほとんど炭鉱に魅力がない。であればこそ、四十三年の末でございましたか、御承知の石炭鉱業審議会の第四次答申に、従業員の福祉向上ということに対しては非常に力説してあります。もうこれは皆さんよく御案内のとおりでありまして、こういう点において労働基準局長はどのようにお考えになって、どのようなことをおやりになったか、今日までの経過を御説明願いたい。
#40
○和田政府委員 ただいま御指摘がございましたが、石炭鉱業におきましては、確かに一般の製造業と比較をいたしますと賃金が低うございまして、毎月勤労統計の四十四年の平均を見てまいりますると、一カ月平均で、石炭産業におきます男子の労働者が六万九百五円、それに対しまして製造業では六万七千三十五円、こういうことで確かに低うございますが、最近の傾向を見てみますると、上昇率につきまして漸次一般産業並みに上がりつつあるわけでございます。金額としては少のうございますが、上昇率が漸次一般産業にさや寄せをしてきておる。しかしこの問題は、先生も御指摘のように、石炭産業全体の体系がどういう姿でどうなっていくかということと非常に強い関連がある問題でございまして、賃金だけを取り上げて云々は申し上げられない面が多々あるわけでございますが、大臣からもお答えを申し上げましたように、石炭鉱業が魅力ある職場で、不安のない職場でなければ、どうしても人はこないわけでございます。そういう点からいたしまして、全体としての石炭鉱業の再建策の中で、これらの魅力ある職場づくりのための労働条件の向上ということについては、私どもとしても今後とも通産その他と連絡をいたしながら十分考えてまいりたい、かように考えております。
#41
○鬼木分科員 時間がまいりましたので、最後の結論に達したいと思うのですが、いま労働基準局長の御答弁を承っておりますと、だんだんよくなっておる。それはだんだんよくなってもらわなければ困ることは私いま言っているとおりなんです。しかしながら先ほど申し上げましたように、一般都市の平均賃金の六割以下である、あるいは五割以下なんですよ。盆暮れの賞与なんかほとんど皆無のところもあるし、平均して三分の一以下だ。なるほど労働省は最低賃金法第十六条の審議会方式というんですか、あれによって最低賃金を石炭鉱業について決定されております。いわば、石炭鉱業がこれのテストケースだというようなことを承っております。なおまたその後四十三年に改正が行なわれておる、そういうことも承知いたしておりますが、ところが今度一面全産業の賃金上昇率といいますか、上昇といいますか、非常に足早でこれは皆さん御承知のとおりで四十三年度には一四・二%上昇しておる。それから四十四年度には一六・一%大幅な上昇である。それにおくれることはなはだしい、だから私は申し上げておる。少しずつ上がっていると、それは少しずつ上がったって話にならぬのじゃないですか、こういう科学的計数的に話をしてもらわぬというと少しずつ上がっていますといったって尺取り虫が進んでいくようなことでは話にならぬ。一般産業の賃金が急激に上昇しておるのです。であるからこそ石炭鉱業審議会も四十三年暮れには答申をしておるのですよ。でございますから、少なくともビルド鉱におけるところの労働力確保ということを私はいま力説しているのですが、その労働力の確保ということにはあまりにも条件が悪い。その悪い点を改正していきなさいということを先ほどからあなた方に申し上げておる。労働大臣はよくわかっていただいて、努力する。魅力ある炭鉱になるべくするように努力したい。なかなか話のわかったことを言われる。さすが大臣だ。ところがいまうしろのほうからお話があるように、話がわかっても実際は行なわれない。労働基準局長のお話みたいに少しずつ上がっております。そういう事務的な答弁であまりその場のがれのことを言ってもらっては困る。まだわれわれはしばらくおります。先日お話があったが今度は四年間解散せぬというような……。だからまだまだおりますよ。解散があったらまた出てきます。ですからその場限りの答弁では困る。実際に炭鉱のビルド鉱といえども非常に生活が困窮して、皆さん困っておるんですよ。だから私は先ほどから申し上げておる。あなた方現地に行って見ているか。こういうところにおって机の上でいわゆる机上の空論でこうやりました、ああやりました、すこぶる不徹底だ。だから話がわからぬとは言ってない。安定所でも拡充しなさいと大臣にお願いした。大臣はそうしましょうと言っている。できなければできるように人員をふやしてやりなさい。これほど話のわかったことはないでしょう。わかっただけじゃいけない。
 最後の結論といたしまして労働省の責任ある皆さん方に申し上げたい。戦後は四十万からの労働者がおったんですよ。今日は六万何千ですよ。七万切れているんですよ。何としても、たとえ炭鉱が斜陽産業であっても、これは国家の大事な地下資源ですよ。その仕事に従事しておる人たちを安心して仕事ができるように守ってあげるということが、諸君の使命、任務ではないですか。もう少し意欲的に石炭産業ということに対しては再思三考の上御努力をお願い申し上げます。いかがでございますか。
#42
○野原国務大臣 御趣旨の点はまことにごもっともでございます。今後石炭政策に対しましては御意見の点を十分に尊重して取り組んでまいりたい、そのことを申し上げてお答えといたします。
#43
○田中主査 以上をもちまして鬼木君の質問を終わります。
 次に、藤田高敏君の質問を許します。
 あらかじめ申し上げておきますが、労働大臣は十一時正三十五分をもって退席されますから、労働大臣に対する御質問を前もって集中していただきとうございます。
#44
○藤田(高)分科員 大臣の離席の御都合もあるようでありますから、その点十分配慮して質問したいと思います。
 まず、分科会の性格上そのものずばりでお尋ねをいたしたいと思いますが、労働基準法の改正の問題についてであります。労働基準法の改正というよりも、むしろ今日の社会情勢に即応した新しい労働基準法をつくっていくという観点から質問をしていきたいと思うわけでありますが、御承知のとおり労働基準法が制定されましたのは昭和二十二年、戦後直後であります。そのときの社会情勢なり産業構造なりあるいは職場の実態、労働者の生活条件というようなものと、今日の全般的なこれらの諸条件を比較しました場合には、これはまさに異常な変化があるわけですから、これは国会において議会人のほうから問題を提起したり直接関係のある労働団体から対政府要求として要求されるまでもなく、労働省は本来の性格からいって、また役所の機構から見ても、労働者のサービス省としての基本的な性格を持たなければならぬ、こういう観点からいえば、労働省自体がこの労働基準法の改正を提起してしかるべきではないかと思うわけですけれども、その点についてひとつ見解を聞かしてもらいたいと思います。
#45
○野原国務大臣 労働基準法が制定になりましてから、すでに二十年でございます。その間いろいろな労働事情等も変わりまして、あるいは労働者の保護、労働慣行の近代化とすでに変わっております。したがいまして、この労働基準法の問題についてはいろいろ検討を要する時期が来たと考えております。昨年から学識経験者等によります二十名ほどの委員に研究を委託いたしまして、労働基準法研究会を開催いたしております。すでに四回ほど御審議を願っておるわけであります。その結論をできるだけ早く出していただくということを期待しておりますが、その結論等を十分に参考にいたしまして、今後いかに基準法と取り組んでいくかという問題を考えておるわけでございます。まだはっきりと改正するというふうなことを申し上げる段階ではないわけでございますが、それを含めまして、ただいま検討をお願いしておる、こういう段階でございます。
#46
○藤田(高)分科員 本来なれば今日の労働基準法が、国際労働条約との対比においてどういうふうに違っておるか、もっと端的に言えばどのように違反をしておるか、その国際水準に達していないものにはどういうものがあるだろうというようなことを事務当局から聞きたいところでありますけれども、これは総じて言えば、基準法を制定した当時に、すでにILO条約の一号に違反し、その他十五の条約に違反しておることは、これはたしか昭和三十三年の二月二十何日かのこの衆議院における社労委員会において、政府自体も認めておるところですね。それ以後ずっと賃金の問題あるいは労働時間の問題、機械防護の問題、青少年、婦人に関する問題等々について、ILOでは非常に先進的な条約というものができてきた。しかしこれらについてはほとんどわが国においては批准をされてないというか、また基準法自体との対比においてはその国際水準にまで到達をしていない、こういう観点から見て、いまの大臣の御答弁では――昨年ですか、学識経験者を中心とする二十名程度の専門家によって研究会的なものを発足さしたというわけですけれども、私は今日、ここまで社会的な条件が発展をし、しかも国民総生産の面からいけば、ソビエトを含めて世界で第三位だというところまで経済的な諸条件がレベルアップしたわが国において、労働基準法の内容がいまから五十年前のILOの基準であってよろしいのかどうか。しかも五十年前のILOの基準と比較して、違反した部分が二十も三十もあるというようなことでは、これは私は国際的に見ても非常に不名誉なことだと思うんですよ。そういう観点からいっても、ぜひいまの答弁との関連において議論を発展さしたいと思うわけですけれども、そういう方向で取り組まれておるのであれば、どうでしょうか、一歩進めて労働大臣の正式の諮問機関と申しましょうか、そういう成規の機関を設置して、そうしてこの労働基準法の根本的な改正、私の私見からいえば新しい労働基準法をつくっていくんだ、こういう観点の積極的な取り組みをひとつやってもらいたいと思うわけですが、大臣の御見解はどうですか。
#47
○和田政府委員 ただいま大臣から基準法の検討問題について申し上げましたが、その大臣の御趣旨に従いまして、実は労働基準法研究会の審議も、ただいま先生が言われたようなことを当然の内包として議論を進めさしていただいております。
 研究会はすでに四回開会されておりますが、その中では当然にILOの各条約、勧告がどういうような趨勢をたどっておるか、それから諸外国における労働保護法規がどういうように変化をしてきておるのか、要するに国際的にいってどういう問題が労働法規の中にあるのか、日本の産業構造、社会構造がどう変わってきて、どういう問題があるのか、それから労働者あるいは経営者側は基準法に対してどういう意向を持っておるのか、行政を二十年余りやってまいりました中にどういう問題があるのか、これらのことについて研究会でたんねんに御審議をわずらわしております。この研究会は確かに法律に基づく公式という意味ではそういう機関ではございません。法律に基づきますものとしては労働基準審議会がございますが、そこに諮問をいたします前に、大臣としての気持ちをまとめる、大臣としての考え方を整理するという意味合いで、労働基準法は先生ご存じのように非常に大きな、労働三法の一つといわれるほど重大な法律でございますので、そういう見地からしまして、客観的、専門的に事実を見きわめて事に対処する必要があるという意味で、この研究会を発足いたしたわけであります。研究の成果を待って大臣としての考え方をおきめいただいて、必要があるときには、法律的に公式の機関であります労働基準審議会に対して考え方を申し述べる、こういうような手続で作業を進めていきたい、かように考えているわけでございます。
#48
○藤田(高)分科員 ものごとを進めるにあたっては、やはり一定の具体的な目標というものが大切だと思います。私が指摘をしたように、労働基準法自身が非常に後進的な、古証文的な基準になっておる。そういうことを政府としてもわれわれとしても、また直接の利害関係者である労働団体にしても、みな認めておるところなんです。そういうことになれば、せっかく研究会を発足させておるのであれば、研究会自体としての一つの集約といいますか、そして成規の基準審議会であったら基準審議会に答申するというか、諮問するというか、そういう時期をいつごろに考えておるのか。私は、これは冗談やおせじではありませんけれども、労働大臣と初めて縁がありまして社労関係でこの国会で国政に参与することになったわけですが、何となく人間的に労働大臣は寄っていきたいような気持ちの人なので、これは率直に申し上げますが、目標をきめて、野原大臣の在任中にこの基準法の前向きの根本的な改正、新労働基準法をつくるということをぜひあなたの大臣としての功績として残すかまえでやってもらいたいと思うのですが、そういうことを含めてひとつ御答弁をいただきたい。
#49
○野原国務大臣 労働基準法研究会にできるだけ早くおまとめをいただきたいという期待をしておるわけでございますが、非常に重大な問題がたくさんございますので、ある程度時間がかかると思っておりますが、私どもはできるだけ早く結論を得て、その上でこれに対する最終的な腹がまえというか、態度をきめたい、その上で審議会におはかりをするというふうに考えておりますが、その時期の問題はいつごろまでに結論をいただけるか、まだ明確になっておりません。できるだけ早くとお願いしておるわけでありますが、いまの段階ではいつごろということははっきりは言えないと考えております。
#50
○藤田(高)分科員 予算分科会の性格上、これ以上この問題で論議する時間はありません。
 そこで、これは強く要望しておきますが、私自身社労ですから、今国会を通して大臣とも何回となくこれから論議できるわけです。ひとつ労働省部内で十分御相談いただいて、私がいま指摘しましたような時期目標ですね、これを設定して積極的に取り組んでいく。その時期の明示についてはひとつ御検討いただき、社労委員会の中で具体的な答弁ができますように御努力をいただきたい、このことを要請しておきたいと思います。それはどうでしょうか、やってくれますか。
#51
○和田政府委員 大臣から申し上げましたように、できるだけ早くということでございますが、研究会のほうでは現在総括討議をお願いをしておる段階でございます。これからはいよいよ各地に出ましての実態調査、アンケート調査、いろいろ非常にたんねんにおやりいただくようなお考えが強いようでございます。これは基準法の性格が非常に基本的な法律でございますので、私どもとしましても、研究会のお考えはまことにもっともだと存じます。そういう意味で、期間的にはいまにわかにどれだけということは申し上げかねますが、研究会の御意向も伺いながら、できればこの国会中に社労等で申し上げることになろうかと存じますので、そういうことで御了承いただきたいと思います。
#52
○藤田(高)分科員 基準法に関しては、時間の関係でこれで一応留保いたします。
 続いて、私は勤労所得税の大幅な軽減の問題についてお尋ねをしたい。これは労働省関係の予算分科会でこの種の問題を取り上げることは一見奇異に感ずるかもわかりません。本来的にいえば、大蔵大臣と論議をすることが適切であるかもわかりませんけれども、私は大臣もあと四、五分で退席されるから、そういう関係であえて申し上げるわけですけれども、税金問題は、なかんずく勤労所得税の問題は、大蔵省にまかしておいたらいいんだ、税金は大蔵なんだ、労働省やその他のものについては関係ないんだということであってはならぬと思うんですね。私は、少なくとも勤労所得税の問題等については、労働者のいわば主管省ともいうべき労働省あたりから、今日の勤労所得税というものはこれでいいのかどうか、やはりこういう積極的な考え方が政府施策の中に、あるいは税制の中に出ていくことが必要ではないか、こういう観点からお尋ねをしたいわけでありますが、私は結論的にいえば、勤労所得税というものはこれは酷税だと思うのです。いま非常にきびしい税金だ。そこでサラリーマン減税ではありませんけれども、勤労所得税の大幅軽減問題は、税制調査会の中でも中心課題として論議されてきているし、またいわゆる国民大衆の側からも強い要求として出ているわけですけれども、ことしの税制改正の内容を見ても、これは非常に微温的なものでしかない。それでは根本的に勤労所得税を再検討をして、大幅な軽減をはかるためにはどうあるべきかということを考えると、私は本来勤労所得税にかけるべき税金というのは、労働基準法との関連であえて申し上げますと、基準内労働賃金に匹敵する部分にだけ税金をかけるべきじゃないか。いわゆる時間外労働として、俗にいう残業手当、この残業手当に対してまで累進総合課税という名のもとに、いわば手当的な性格にまで税をかけるということは、累進総合課税体系の今日の税制のたてまえからいけば、理屈上は困難だというかもしれないけれども、私は総合累進課税の対象は、課税対象ワクというものをある意味においては非常に過大に広げ過ぎているのではないか、拡大し過ぎているのではないか。こういう観点から、これはあとで内容は申し上げますけれども、さらに具体的には私は私なりのそういう主張をする理論づけはしてみたいと思うわけですけれども、そういう観点からいって、勤労所得税を大幅に引き下げる具体的な策として、時間外労働に匹敵すべき賃金部分、残業手当に匹敵すべき部分については、これを勤労所得税の課税対象からはずすということができないかどうか。この点についてひとつ主税局長の御意見を承り、労働大臣としてはもう時間がありませんから、あえていえば所見的なものになるかもわかりませんけれども、大臣の御見解も承り、さらにこの論議はひとつ私は大蔵なりあるいは社労委員会で深めたいと思いますけれども、御見解を聞くことにいたします。
#53
○田中主査 藤田君に申し上げますが、お約束に従いまして労働大臣は三十五分で退席をされますから、労働大臣から先に御答弁を願っておいたらいかがでしょうか。
#54
○藤田(高)分科員 けっこうです。
#55
○野原国務大臣 御意見はよくわかるわけでございます。私も実はサラリーマン減税等は大賛成の意を表しておるわけでございますが、同時に、ただいま御指摘の基準内労働賃金だけを課税対象にして、それ以外のものについては課税の対象にすべきではないという御意見、まことにどうもわかる気持ちもしますけれども、どうも税制の専門家でございませんので、ここで私がどうこうというわけにもまいらぬと思いますが、御意見等のあったことをとくと胸に置きまして、今後の検討をいたしたいと考えております。
#56
○田中主査 それでは藤田君の質問を続行いたしますが、労働大臣は退席をされてけっこうです。細見主税局長。
#57
○細見政府委員 さすがに委員会が違いますので、私どもあまり予期していなかった御質問を受けるので、やはり専門家は専門家だと思うわけでありますが、ただ勤務時間内、勤務時間外ということになりますと、これはたとえば事業所得者のような方については、御承知のように一日じゅう働かなければならないのが実情でございまして、むしろ勤務時間などの定めがある人たちをうらやましいというようなのも実情でございます。それから医者につきましても、課税上いろいろの便宜があるというようなことがいわれておりますが、やはり深夜起こされたときに往診いたしたものも、同じように診療の収入になっておるわけでございます。そういう意味で、労働時間の外と内とでそれに対する課税関係を変えるということになりますと、一体それでは事業所得者などについては何を労働時間とするかというような非常にむずかしい問題がございまして、おそらく所得税のあり方あるいは所得の観念のしかたそのものにまで響く非常に根本的な問題がございますので、十分慎重に検討いたさなければどうこういえない非常にむずかしい問題ではないか、かように考えております。
#58
○藤田(高)分科員 私は答弁にこだわるわけじゃないのですけれども、分科会の性格といっても、たいへん失礼ですけれども、きょうもあなたがここに出席されることについて一もんちゃくあったわけですよ。どうも労働省関係やこういった分科会には、関連があっても大蔵省関係者というのは出にくいのですか。
#59
○細見政府委員 お答え申し上げたと思いますが、きょうは実は租税条約関係で、近々国会提出いたしますことになっております租税条約の最後の詰めについて、外交と申しますか、韓国大使館の人たちと打ち合わせしなければならない時間が、十時から十一時まで打ち合わせをしておったわけで、終わって参ったわけであります。
#60
○藤田(高)分科員 あまりこのことで時間を費やしたくありませんけれども、私はどの分科会であろうと、関連があれば大蔵省であろうと農林省であろうと、労働関係の委員会にも時間のとれる局長なりあるいは責任ある立場の人が出席するのは当然だと思うのです。これはまあその程度でやめます。
 具体的な問題としてお尋ねをしたいのですけれども、いま局長が答弁をされたような考え方も、これは主税担当の局長としてはそれ以上の答弁はむずかしかろうと思うわけですけれども、どうでしょうか、勤労所得税の戦前との対比ですね、あるいは順序不同ですけれども、自然増収に見合う勤労所得税の軽減率の問題、あるいはここ何年来の物価上昇との関連また最低生活費には課税せずという税法上の基本的な原則、俗にクロヨンといわれております他の職種の収入との比較あるいは毎国会で問題になっておる資産所得、なかんずく利子、配当の分離課税、こういった資産所得との対比等々から見て、私は勤労所得税というものは酷税じゃないか、ひど過ぎるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。そのためにはやれ基礎控除だ、扶養控除だ、何控除だということで税制改正が一部なされてはおりますけれども、いま指摘したような内容等の比較検討からいたしますなれば、勤労所得税というものは、より積極的に、もっと大胆に大幅な減税策を大蔵当局としても、また政府としても考えるべきじゃないかと思うわけですが、その点についての見解を聞かしてもらいたいと思います。
#61
○細見政府委員 物価などとの比較で申し上げますれば、三十五年をかりに一〇〇といたしまして、消費者物価が七割くらい上がっておるわけでありますが、その間課税最低限その他は三倍くらいになっておるというようなことでありまして、物価あるいは直接の生活費というようなものとの関係におきましては、所得税についてそれなりの減税をやってまいったわけであります。しかし所得がふえますれば、それに応じてある程度高い負担をしていただくということも、所得税が累進税率をとっておる限りやむを得ないことと申しますか、むしろ所得税の本来の姿であるわけでありまして、最近所得は、賃金で申しましても年々十数%上がったといたしましても、実質で一〇%あるいは十数%引き上げられてくるというような状況におきまして、国家のいろいろな仕事を担当するために必要な歳入でありますところの所得税についても、その所得のふえるに応じてある程度負担していただくのがむしろたてまえとしては筋であろうかと思います。しかし、にもかかわりませず、ことし行ないました減税額は、御承知のように、平年度で三千五十億になるわけでありますが、この所得税の減税を行ないますと、たとえば二百万円くらいの収入階層の方、おっしゃったような超過勤務ももちろん入っておろうかと思いますが、そういう二百万円ぐらいの年収の方につきまして、かりにことしの所得税額と、それから来年その方が二百二十万になられたときの所得税額を比較いたしましても、所得税が九千円ばかりむしろ減るというようなことでありまして、これは文字どおり大幅な減税として評価していただいてしかるべきではないかと思います。巷間、一五%賃金が上がれば税金がふえるではないかというような議論をなさる方がありますが、一五%ふえるということは所得が三十万ふえることでありまして、三十万ふえたときに税額がたしか六千円ばかりふえることになっておりますが、負担といたしましては、三十万ふえて六千円ふえる、一万円足らずふえるわけであります。これは、かりに物価上昇率で割り引きましても、大幅な軽減であることには間違いない、かように考えております。
#62
○藤田(高)分科員 局長の御答弁では、ことしの税制改正についてお話があったわけですが、私はそのことはそのことなりに聞いておきます。いまの二百万なんというのは、それは一般のサラリーマンのワクに入るかどうか知りませんけれども、われわれが問題にしているのは、それ以下のサラリーマン、勤労所得税を問題にしているわけです、時間外労働賃金を問題にするくらいですから。ですから、そこらに焦点を合わして議論をしてもらいたいと思うのですよ。これはひとつそういうことにしておきましょう。いずれ、大蔵にもまた出ていきますよ。三年前に返りまして一ぺん行って、大いに教えてももらったり論議もしたいと思います。
 そこで、もとに返ります。労働基準法との関連ではありませんけれども、やはり労働者の人たるに値する生活、人たるに値する賃金というものは何を中心にすべきかといえば、やはり限られた基準内労働賃金ですね。これで、家族を含めた労働者の生活というものが人間らしい生活ができる、これがたてまえだと思うのです。国の財政を打ち立てていく税収入の基本的な計画も、それをオーバーするものまで対象にしてどれだけの税収が入るかなんということを考えるのではなくて、基本的にはやはり基準内の給与、本来的な賃金、所得に対してかける税金によって、国の財政の、所得税であれば所得税の根幹を打ち立てていくということで、時間外労働というものは、これは釈迦に説法ですげれども、これは民間の労働者と官公労とを問わずそうでしょうが、時間外労働を長くやっている労働者というものは、定年になってからあまり長生きしておりませんよ。これは、残業なり時間外労働を多くやればやるほど、肉体的にも精神的にも命をすり減らしているわけですから、そういうものに対してまで税金をかけるということは――今日、クロヨンといわれておる、他の職種との相対的な比較なり、先ほど指摘した資産所得との対比ですね、ですから、総合累進課税のたてまえからいって、時間外労働賃金に相当する部分を課税対象からはずすことはできないというのであれば、幾ら政策目的があるといえども、利子、配当なんという分離課税というものは私は根本的に合わないと思うのです。そういう点からいけば、全体的に見て勤労所得税というものはやはり高過ぎるということを実際問題としてみんなが認め合うことができれば、そこには一つの方策として、時間外労働賃金に匹敵するものを、いわば手当として課税対象からはずすべきではなかろうか。その一つの考え方は、きょうはそこまで論議することはできないかと思いますが、たとえば宿日直については七百円までは課税の対象にならないとか、あるいは自分の会社でつくった製品なり、その会社から出す食事あるいは社宅のサービスとか石炭などの現物支給とか、電気、ガスの使用料とか、こういった雇用主負担になるものについても、いま七百円までは非課税の対象になっているとか、そういういわば少額所得については税の対象としてこれを追及せずという考え方がありますし、そういう税制を部分的にとっておるという立場からいけば、私の概念規定からいけば、基準内賃金として、給料として所得税の対象になるべきものと、いま二、三の例を引き合いに出しましたようなものとの関連において、残業賃金というものは、これは残業手当だ、基準法のたてまえからいっても、平均賃金の算定の中には入っておるにしても、やはり手当としてこれは見られているのですから、そういうものについては課税対象からはずしてもいいのじゃないか、こう思うのですが、あえて主税局長の見解を聞かしてもらいたいと思います。
#63
○細見政府委員 御承知のように、所得税におきましては俸給、給料、あるいは賃金、手当というような名称のいかんにかかわりませず、収入はこれをすべて総合して所得と判断するということになっておるわけであります。そういう意味で別の委員会などでよく問題になりますのは、たとえば石炭手当であるとか、あるいは寒冷地手当であるとか、あるいはそのほかの扶養手当とかいうようなものを課税対象にするのはおかしいじゃないかという議論もあるわけでありますが、所得税のたてまえといたしましては、そういうものをすべて総合して一本の所得税のもとに課税をしていくことになっておることは、もう先生御承知のとおりであります。
 ところで七百円の現物給与の問題でございますが、これは戦後給与体系等がまだ完備いたしておりませんときに、現物給与というものがかなり行なわれておるときに、現物の評価の問題はもちろんありますが、そういうこともさることながら、少額のものまでしいて拾い出さなくてもいいではないかというようなことで、現物についてのいまおっしゃったような少額不追及あるいは少額非課税という考え方があるわけでありますが、税制のあり方といたしましては、今後も所得税の基礎控除なりあるいは配偶者控除なりあるいはそのほかの控除税率につきまして、財政の許す限り軽減をいたし、そういったものの増大をはかっていく過程におきまして、こうした少額不追及というようなものにつきましてもでき得ればそれを吸収して、全体としての税負担の軽減をはかっていくというのが、税制の姿としては望ましい将来の改革の形ではないか、かように考えております。
#64
○藤田(高)分科員 本会議においても大蔵大臣でありましたか、もうすでにことしの夏ごろから将来に向けての長期税制改正の問題に取り組むという見解表明がありました。私、大蔵委員会にも差しかえ委員として出席をさしてもらって、この種の問題についてはさらに具体的に審議をしたいと思うわけでありますが、でき得るなれば一見とっぴな政策的な意見であるかもわかりませんけれども、私の強い要望としては、この種の意見も来たるべき税制調査会あたりに、大蔵事務当局の考え方として、どういう強い意見が出されておるというふうなことを、ひとつ税調の検討項目として提示をしてもらいたい、こういうふうに要求をしたいところでありますが、このことについての今日段階における見解を聞かしてもらいたい。
 時間の関係がありますから、あと質問点だけ要約して申し上げたいと思います。
 このことにも若干関連しますが、先ほども指摘しました現物給与の問題については、御答弁を待つまでもなく、給与あるいは現物給与を合わせた総合所得に対して課税されておることは論を待ちません。しかし先ほど指摘した雇用主負担になっておるもの、あるいは旅館住み込みの女中さん、あるいはその他、これは表現は適切でないかもしれませんが、半ば本人の意思を曲げて居住しなければいかぬ人たちに対する手当、住み込み者に対する手当、あるいは夜食一回で百円まで、月七百円まで課税対象にしない、こういうなにがありますが、これはどうでしょう。こういうところまで所得税の対象としてとれるだけとらなければいかぬ、そういうことを今日世界で第二位、第三位の国民総生産国になったといわれる国において、そこまで勤労者あるいは少額所得者に対して税というものの目を詰めてやらなければいけないものでしょうか。私は、でき得るなれば、この程度の現物給与に匹敵するようなものはいわゆる課税対象からはずすということにはならないかどうか、ぜひそうすべきだと思うわけですが、その点についての見解を伺いたい。
 いま一つは、これは官公庁を含めて民間も当然でありますが、私の調査に間違いがなければ、日直とか宿直、これは一回について六百円――これは教字が間違っておりましたらお教えをいただきたいと思うのですが、六百円まで控除されることになっておるようでありますけれども、この種のものは現在法律や政令で定めていないと私は理解をしておるわけです。これはたしか通達によって処理をしておると思いますが、労働者が日直や宿直をするというのは、やはり人間生活を一部犠牲にしておるわけですよ。そういうものに手当がつくものまで、通達行為によってまで所得税の対象にするなんということは、今日のわが国の経済力の実態からいけば、そこまで目を詰めた税制を考えなくても、それこそ資産所得であるいは法人所得でとれば、これくらいのものはすぐ出てくると思うのです。ですから通達行為によっていま処理しておるような宿日直手当等は、全面的に勤労所得税の課税対象からはずすべきだ、このように私は考えるわけです。
 以上三点について、ひとつ見解を聞かしてもらいたい。
#65
○細見政府委員 第一点の、国会でいろいろ御議論がございましたことを税制調査会によく取り次いでおるかという点でございますが、これは例年国会が終わりますと、その間に税制調査会の答申を受けて国会に提案した法案がどういうことになったかということを報告し、あわせて予算委員会その他の審議の過程においてどういうことが税制上の問題として議論になったかということを必ず御披露いたして、それに対する各委員の批判なり御意見を承っておりますので、その意味で本日の御議論も必ず申し伝えるようにいたします。
 それから現物給与の問題でありますが、さっきおっしゃったような義務的なものにつきましては、これはつまりほかの便益を自分で獲得する道がないわけでありますから、たとえば義務的な衣服でありますとか、あるいは義務的な食事といいますか、ほかに動けない交代制での食事、これは概念として所得税の所得に入らない。一方、たとい少額でありましても、たとえばほかに食堂があるけれども社員食堂で出すとか、あるいは職員食堂で食事を出すというふうなものにつきましては、たてまえはやはり現物給与として課税になる、所得になるべきものであろうかと思います。しかしそういうものを全部所得にかかえ込んできて課税をしなければならない、あるいは社員食堂の食事を食べなければ生活に非常に支障があるような人たちに課税するということは、むしろ課税最低限のあり方のほうで考えるべきであって、そういう社員食堂でかりに重役も食事をするかもしれませんし、あるいは高級社員も食事をするかもわかりませんから、そういう人のものまで現物であるから非課税というのは適当でなくて、たてまえとしてはそういうものも所得に総合されるけれども、ほんとうに社員食堂で食事をしなければ、ほかに町の高い食堂でめしが食えないという人については、むしろ課税最低限のほうでそういう人に課税が及ばないようにするというのがたてまえであろうかと思います。
 それから日直、宿直の問題につきましても、ある程度以下の金額については、まさにその日直いたしておるために食事も外へ出られないというようなことから来る実費弁償的なものがあろう、それは一定金額までは実費弁償である、むしろ所得の概念に入ってこないのではないかというようなことで、税法のたてまえとしては、何が所得かということは収入金一切ということになっておるわけでありますが、それを法律を適用するにあたって、管下五百幾つの税務署での扱いがばらばらになってはいけないということで、一応の目安として、六百円というようなものがおそらく実費弁償に該当するものであろうということで考えておるわけでございまして、この問題については、もちろん物価水準あるいはいろんな生活水準等とのバランスを考えてまいらなければならないと思いますが、性格は、やはりこの程度のものが、少なくともこの通達を考えたときにおきまする実費弁償の範囲である。したがって、所得には加算しないほうが適当であろう、こういうふうに考えておるわけであります。
#66
○藤田(高)分科員 時間がありませんから、いずれあらためて論議を発展させていきたいと思っていますが、いま私が冒頭から指摘しましたようなことは、大蔵事務当局としても、今日まで検討済みであるかもわかりませんけれども、さらに議論を深めてもらって、具体的に税制調査会あたりで本問題が取りあげられ、私どもの主張が実現できるように、これは強く要請をしておきたいと思うわけであります。
 最後に、非常にこまかくなって恐縮でありますけれども、いま最後に言われた日直、宿直の関係ですね。これは四十二年に改正したと思うのですが、どうでしょうか、物価がこれだけ上がっておるわけですからね。この宿日直手当については、私は、法律行為で規制しないものは、先ほど言ったように、所得税の課税対象からはずすべきだという立場をとっておるわけですけれども、当面、こういうものについては、せめて物価の上昇分ぐらいは上げて出されたらどうですか。その点だけお聞きして、私の質問を終わります。
#67
○細見政府委員 先ほど申しましたように、実費弁償に該当する範囲程度のものは、むしろ所得と観念しないほうがいいという具体的な判断でありまして、これは国税庁がいたしておることでありますが、せっかく御指摘のあった点については、よく国税庁に伝えまして、しかるべく検討をさせたいと思います。
#68
○田中主査 以上をもちまして藤田君の質問を終わります。
 次回は十六日月曜日午前十時から開会いたし、自治省所管を審査することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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