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1970/04/07 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 運輸委員会 第16号
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1970/04/07 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 運輸委員会 第16号

#1
第063回国会 運輸委員会 第16号
昭和四十五年四月七日(火曜日)
   午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 福井  勇君
   理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君
   理事 徳安 實藏君 理事 箕輪  登君
   理事 村山 達雄君 理事 内藤 良平君
   理事 宮井 泰良君 理事 和田 春生君
      佐藤 孝行君    菅波  茂君
      砂田 重民君    長谷川 峻君
      古屋  亨君    増田甲子七君
      井野 正揮君    金丸 徳重君
      斉藤 正男君    渡辺 武三君
      田代 文久君    關谷 勝利君
 出席国務大臣
       運 輸 大 臣 橋本登美三郎君
 出席政府委員
        内閣法制局第四
        部長      角田礼次郎君
        経済企画庁国民
        生活局長    矢野 智雄君
        運輸政務次官  山村新治郎君
        運輸大臣官房長 鈴木 珊吉君
        運輸省自動車局
        長       黒住 忠行君
        運輸省自動車局
        業務部長    見坊 力男君
        海上保安庁長官 河君 一郎君
 委員外の出席者
        運輸委員会調査
        室長     鎌瀬 正己君
    ―――――――――――――
四月六日
 タクシー業務適正化臨時措置法案(内閣提出第
 一〇三号)
同月三日
 気象業務の整備拡充等に関する請願(田代文久
 君紹介)(第二二八三号)
 同(内海清君紹介)(第二三五〇号)
 同(石橋政嗣君紹介)(第二三五一号)
同月六日
 気象業務の整備拡充等に関する請願(林百郎君
 紹介)(第二四七四号)
 地下鉄八号線建設促進に関する請願(伊藤惣助
 丸君紹介)(第二四七五号)
 同(松本忠助君紹介)(第二四七六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 タクシー業務適正化臨時措置法案(内閣提出第
 一〇三号)
 港則法の一部を改正する法律案(内閣提出第二
 八号)(参議院送付)
 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ
 き、海運局の支局の設置に関し承認を求めるの
 件(内閣提出、承認第一号)(参議院送付)
 航空に関する件(日航機乗っ取りに関する問題)
     ――――◇―――――
#2
○福井委員長 これより会議を開きます。
 航空に関する件について調査を進めます。
 日航機乗っ取りに関する問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。宇田國榮君。
#3
○宇田委員 このたびの日航機乗っ取り事件に際しまして、山村政務次官のとられた行動は、実に勇気と果断力をもって善処され、乗客はもちろん、乗務員、国民、ひとしく双手をあげて歓待いたしておる次第であります。
 御承知のとおり韓国もわが日本も、北鮮とはいわゆる国交ルート、外交ルートが正常化されていませんために、私らは、今日比較的わが日本と友好関係を醸成しつつあるところのソ連政府並びに日本赤十字社を通じて、いわゆるこの善後策を解決いたしてもらいたいという希望に燃えておった次第でありますが、今日このよき結果を得ましたことは、まことに御同慶にたえないのであります。
 われわれ委員会は、山村政務次官並びに航空局長に対して、事件当時、直ちに緊急質問をなし、その善後策を山村政務次官に要請し、場合によっては人質にもなって、そうしてこの多くの生命を救ってもらいたいということまで、私自身がお願いした次第でありますが、勇躍きん然として、そうしてこの問題に当たられた。まことに心から敬意を表する次第であります。
 しかしながら、いわゆる帰国されてから、いろいろマスコミあるいは国対あるいは各方面で、山村政務次官から経緯を聞いておられるのでありますけれども、本来なら、本質的にわが運輸委員会において御声明をしていただきたいということがわれわれの念願であり、またそうすることが山村政務次官の責務であると思っておるのであります。したがいまして、本日は、その経緯につきまして、そうしてその行動について、どうか山村政務次官からわが運輸委員会に披瀝されるようにお願いを申し上げたいのであります。重複いたしてもかまいませんから、ひとつこの際、山村政務次官からの御説明をお願いを申し上げる次第であります。
#4
○山村政府委員 最初に、私としましては、当委員会から命ぜられました、まず第一に人命の安全というものを確保していけ、この任務を与えられました。この任務を無事に果たすことができまして、皆さま方の前にこうして出てきて御報告できることを、私はほんとうにうれしく思います。皆さま方にほんとうに御心温いただきまして、韓国、出先まで電報そのほかをいただきまして、ほんとうに心強く、はっきり申しますと、みっともないことをしないで帰ってこられましたのも、ひとえにこれ皆さま方のおかげでございます。ほんとうにありがとうございました。
 御報告いたします。
 この委員会から福岡行を命ぜられたわけでございます。そしてすぐ羽田へ飛びました。羽田には特別機が用意してありました。その特別機をもちまして福岡へ向かいました。ところが、その福岡へ着く前に、もう日航機は北鮮に向かって出てしまったという報告を機上で受けたわけでございます。
 しかしまあ、このようなハイジャック問題というものを二度と起こさないためにも、できるだけの調査をして帰ろうということで――いろいろのこまかいことを向こうで調べておりました。日本航空関係者、また福岡の空港長、そして福岡県警、これらを通じましていろいろこまかいことを調べておりました。
 そこへ今度は大臣から命令がございました。大臣の代理としてすぐ韓国へ飛ぶように――もちろん、この大臣の命令があります前に、北朝鮮へ向かって着陸すると思った飛行機が、これが韓国の金浦空港へ入ったという報告は聞いております。そして大臣から、すぐ韓国へ向かうようにということを命ぜられました。ところが、この韓国へ向かいます場合に、その当時、金浦空港は閉鎖状況でございます。そこで、近くの軍用空港へおりるということで、三十一日に私は東京を出発したわけでございますが、一日の朝早く、まだまっ暗なうちに着きました。時間は三時半か四時ごろだったと思います。そして、あと金浦空港へ回ることにしまして、大使の公邸へ参りました。大使の公邸で金山大使とこまかく打ち合わせをしまして、金浦空港へ向かい、そしてこの乗っ取り事件の対策本部がございますところへ向かったわけでございます。この対策本部のございますところは、金浦空港内のいわゆる軍の基地内でございまして、これはおそらく韓国政府として、マスコミそのほかのいろいろな取材というものが今度のこの対策に妨げになるんじゃないかということで、ほんとうの関係者以外はだれも入れないという配慮からそのようなことを行なってくれたと思います。
 まず、私は参りまして、金山大使からいろいろな事情を聞いたわけでございますが、そのとき金山大使が申しますのには、私が行きましたときには、もういろいろ韓国側と交渉済みでございました。そして韓国側から、乗客を全員おろせば犯人の好きなところへ行かせてやるという条件を出しまして、犯人と交渉しておったわけでございます。われわれ日本人として聞いてみますと、きわめて当然なことじゃないかと思うわけでございますが、ところが、この金浦空港のすぐわきは、これは私がもうくどくど申し上げるまでもございませんが、いわゆる北朝鮮、そしてその停線ラインをはさんで北朝鮮との国交状態というのは、現在休戦はしておるけれども、ほんとうに険悪な、日本としてはとても考えられないような険悪な状況であります。この韓国がよくこれまで、はっきり言って譲歩してくれた。これは金山大使が申すことでございますが、しかしまた、私は、一般の韓国の方、そして韓国の新聞記者等と話しましても、韓国がなぜこれまで折れたのか、これを疑問に思っておったようでございました。そしてまた、私は、金山大使と参りまして、この対策本部では当時の最高責任者といってもいいかと思いますが、国防部長官とお会いしました。国防部長官は、もうきのうから全然寝ていないということでございます。それで、国防部長官と会いましたのが五時か六時だったと思いますが、国防部長官が言うのには、何はともかく、これは韓国のほうでできる最大譲歩の線である、これ以上はできないんだ、ひとつ考えてもらいたいということでございました。それはまた情勢の変化というものもある、いろいろな点はまだあるが、とりあえず現状況ではこれでひとつ交渉してくれということでございました。そこで、いろいろ金山大使を通じて交渉さしておったわけでございますが、全然進展はございません。
 その交渉はどのようにして行なわれたかと申しますと、コントロールタワーの一番上の階へ参りまして、そして無線をもって飛行機内と対話をしたということでございます。犯人のほうは、ただこれはもう直ちにわれわれを出せ、その一点ばりでございました。そして一つの一番大きな山場と申しますのは、一日の朝の九時でございます。その時点に返事がないと、われわれはどのような行動を起こすかもわからないぞというのが犯人側の言い分でございました。しかし、その間、金山大使、またこの対策本部長、これらの方々のほんとうに必死の説得と申しますより、呼びかけに対しまして、犯人側も九時の行動を起こすということはやめたわけでございます。それでわれわれはまず一安心したわけでございます。
 そうすると、これは少し長期になるかもしれない、ここで少しいろいろ犯人側の心境の変化というものを待ってわれわれは対策を練るほかはないのだということでございます。初めは犯人側へ御飯も差し入れまして――これは韓国側のほうでやってくれたようでございます。御飯も犯人のほうは取る。ところが、それが一日だと思いますが、九時に出さないというあとでございましたと思いますが、もう御飯は要らないのだということで、結局飛行機のわきへ積んであっても取らないというような状況でございまして、私ども心配したわけでございます。しかし、いろいろわれわれが得た情報では、これは副操縦士がおもに向こう側の犯人の意向を伝えたというようなことで、いろいろこっちへ話してきたのですが、すぐ出してもらわなければ困るというようないろんな案は出しましたが、しかし、われわれはそれに対しまして案外安心をしておった。というのは、実はその副操縦士の場合、脅迫をされながらやっておったということがあるわけでございます。そして日本の国内で、もう狂人が出るとか、機内の空気が険悪化して一触即発だ、どういうふうなことになるかわからないというような、日本の国内のマスコミ関係を通じてのいろんな推測で、皆さんを御心配させたようでございますが、少なくとも私が私の案を出す少し前までは、そのような空気はわれわれは感じられませんでした。
 そこで、いろいろ日本の国内の新聞等も取りまして、その状況を見ておったわけでございますが、ただわれわれといたしましては、何はともあれ、はっきり申しますれば、自分のうちの家族がけんかを隣の家の中に行ってやっているようなものでございます。それを仲裁にいった人間が、今度は隣の家にこっちの言うとおりすべてやれということは、これはできません。また、これは韓国の国内事情というものもあると思います。しかし、私が知る範囲では、韓国の場合は、ほんとうに日本の言うとおりというほど、韓国におきましては実はこういうようなこともございました。あんまり日本の言うとおりになっていて、韓国政府は一体何をしておるのだというような、政府を国民がそれこそしかりつけるというような一場面もあった。それくらい政府は協力してやっていただきました。
 そして、われわれとしてはもうここで決断する以外にはないというときが、私が人質のことを申し上げた段階でございます。私は、その前にも、宇田先生ただいまおっしゃいましたように、人質ということを頭に入れてということでしたが、事実頭には入っておりまして、二へん私は大臣には申し入れたのでございます。ところが、大臣は、初めのときは、まだまだそういうようなことをする時期ではない、時間があるから、ひとつそれは頭には入れておくが、するべきではない、わかっておるからということでございます。ところが、次の日本の新聞を取ってみますと、はっきり申しますれば、なぜ北へやらないのだ、北へやらないのは政府が――これは韓国にはなはだ御迷惑をかけたと思うのでございますが、韓国の言うとおりにただ手をこまねいているからこんなことになるのだ、もっと政府がしっかりして、早く北へ送ってやれというような論調の新聞がぽつぽつ出始めておりました。そこで、私が大臣に申し上げたわけですが、実は大臣と口論をするという一場面もございました。大臣は、絶対やらない。しかし私は、ここでというようなこともございましたが、最後は、大臣はおれだ、おれが命令を下すまで君は動いちゃいかぬということでございますので、それは下がりましたが、それでついに私が申し入れたときというのは、実は大臣が、山村君、これが限度じゃないか、済まないけれどもと言われまして、私は、はいわかりましたというところで、いわゆる人質となることを引き受けたわけでございます。
 しかし、人質を引き受けるということを申し入れたら、すぐ今度は向こうのほうから、これは向こうのほうで言うのは、本物のおまえだという証明は何にもできない、だから、これは私の尊敬する社会党の阿部代議士を呼んできてもらいたいということでございました。そこで、私のほうは、急遽これを連絡をとりまして、そして阿部先生においでいただいたわけでございます。それで、阿部先生とともにその晩大使の公邸で綿密な打ち合わせをいたしまして、次の日の犯人との会談に臨んだわけでございます。そして、私には、少なくとも尊敬する阿部先生ということでございますから、これで何らかもう少し交渉ができるんじゃないかという淡い期待があったわけでございます。
 それで、飛行機のわきへタラップをつけました。これは操縦席の窓のところにつけたわけでございます。そして、阿部先生が、いま間違いなく山村新治郎がそこに来ているということで交渉をしまして、私が手をあげたら山村君すぐ来てくれということで、私は飛行機からずっと離れたところで待っておったわけでございます。そうしたら、手があがりましたから参りました。そうしたら、犯人のほうから、政務次官か、そうだ、それではとりあえずおまえさんここに乗りなさい、それでわれわれは全部おろすから、いや、それは困る、私のほうは、全部おろしてから私が乗り込む、そういう約束事しか考えてないということで、犯人のほうとぶつかってしまいました。そこで、阿部先生を尊敬しているということを私は言ったわけですが、実は私には一面識もないんだということでございました。そういうようなぐあいに少し議論が沸騰して、犯人とのやりとりが激しくなってきたので、阿部先生がまあまあと言ったら、うるさい、おまえは黙っておれ、おれは政府代表と話しているんだと言う。これはちょっと常識では考えられない犯人の行動じゃないか。わざわざ日本から証人として呼びまして、そして証明してくれたその人が仲裁に入ったら、うるさい、おまえには用はないんだと言われて、阿部先生もかなり憤慨された。私も阿部先生には申しわけなく思っておりますが、何しろ相手は気違いでございます。おそらく社会党の皆さんは、阿部先生ということで、そんなに阿部先生と関係があるのかというようなことで、ずいぶん心配されたことだろうと思いますが、全然そういうことはございません。これは犯人が阿部先生を呼び出すための一つの敬語みたいなもので、尊敬する、こうつけたと思っていただければいいと思います。阿部先生がそこで完全におこるのも無理ございませんで、それきりあとは話はなくなってしまいました。
 それから、犯人とのいろいろな交渉の結果、乗客を半分おろせ、そうすれば私が乗り込もう、そして私が乗り込んで、あとの乗客を半分おろすということで、韓国を離れ北鮮へ行くのを認めようじゃないかという交渉が成り立ったわけでございます。これが三日の日の夕刻でございます。
 あとはいろいろ新聞紙上で皆さま御存じのような経過を経まして、経過を経ましてというのは、犯人との交渉がその途中にもいろいろございました。いわゆる取りかえっこと申しますか、犯人側からも人質を出させまして、私が入り込んで、あとの乗客を全部おろしてから、そこで犯人を乗り込ませるというようなことをやりまして、平壌へ向かったわけでございます。
 ただ、その犯人たちの心境というのは、ただいま申しましたように気違いですから、心境というものはないのかもしれませんが、機内におきましても、私の場合は、初めに犯人側からうそつきということを指摘されたわけです。うそつきというのは、私が半分ずつということで約束して、半分おろした段階で、また条件を出して、そこで交渉する、これはうそつきじゃないか。これは私も率直にあやまりました。しかし、これは全然私の関与していないところでございます。私はその飛行機の下におりまして、それは本部と犯人とのやりとりでございます。私はそこで生命の危機を感じたわけでございます。犯人側からすれば、これははっきり言えば、ペテンにかかっておれたちの仲間を出したというようなことでございますし、それと同時に、私が生命の危機を感じたというのは、その前に北鮮側から回答が来たわけでございます。
 これは停戦委員会を通じてこちら側から申し込みまして、そして北鮮側からの回答を得たわけですが、その場合に、空路の安全を保障しよう、それと、乗客に対しては人道的立場に立って取り扱う、機体は返還する。そして最後に、これは新聞紙上に出ておりませんが、ただしと書いてありまして、機内において起こった事故はわれわれは責任を持たない、これが書いてあるわけです。そこで、大使も心配しまして、これはきっと機長のことをさすのではないか、機長が実は平壌へ行くと言いながら、金浦空港、京城のほうへ着いてしまった。そこで、これは完全におこっておる。これはそのことをさすのだろう。ここで最後まで搭乗員の乗りかえば交渉しよう、そうでなければ機長は殺されてしまう、これが大体集まった人間の一致した意見でございます。
 ところが、それともう一つ、実は私にとりましてははなはだ気持ちの悪いいろいろな状況が――状況というよりも、いままでの経過が出てきたわけです。というのは、前の韓国のいわゆるハイジャック、乗っ取り事件のときに、北側へ連れていかれた人間がまだ十二人帰ってきていない。どうなってしまったか、全然音信不通、殺されたんだかどうかも全然わからないということでございます。それで、その帰されない人というのは搭乗員とマスコミ関係。ましてや、これは韓国側の言うことですが、政務次官、あなたが行ったとなったら、これは一番大きな、向こうにとっては重要な人間ということになるから、これはだめだということを回を重ねて言うわけでございますが、私としては、これは気持ちのいいことではございませんでした。
 そういうようなことを頭に入れてあったわけですが、その上に犯人をおこらしてしまった。もうこのときは完全に私は覚悟していたわけです。そうしまして、私は、乗りぎわに、大使、こんなことをやってもらっては困る、ひとつ約束だけは守ってもらいたいということで乗り込んだわけですが、そうしましたら、私が思っていたとおり、犯人はかんかんでございました。おまえはうそつきだというようなことでございました。ところが、私が入っていったときに、残っていた五十人の方々が、よっぽどお待ちいただいたと思いますが、ほんとうによく来てくれたというような意味で、ぱちぱちっと拍手がわっと出まして、その瞬間、犯人とのやりとりはなくなったわけであります。それで、皆さんおそくなって申しわけありませんでしたとあいさつしていましたら、いきなりうしろから向きを変えられて、手をぐるぐるっと縛られて、一番前の席へすわらされてしまった。それで、あと五十人近い残りの方がおりまして、そのあと一番緊迫した状態で、ちょっとおかしな空気でございました。そこへ大使から、政務次官を出してもらいたいということで電話がかかってきたわけです。政務次官、おまえ電話だ。そして、前に行けということで行ったわけですが、行ったら――電話は機内に二つあります。私がとる電話は機長のところにございます。もう一つは、うしろの、外からは見えないところにございました。それを犯人側がとって、全部やりとりを聞く。そのときに、まず大使から、ただいまの政務次官から言われましたことを伝えました、今後は絶対にこのようなうそはつかないということを確約いたしております、これをまずお伝えいたしますということが出たわけでございます。それであと、いま整備をしておりますとか、いろいろなことをやりとりをしておりましたが、そこで電話を切りましたら、犯人側は、いままでおまえと言っていたのが、今度は先生となったわけでございます。先生、あなたはうそをつかないと思っていましたよと。
 これからは、皆さまにずいぶん御心配していただいたわけですが、私にとりましては緊迫した空気というのは一つもございませんでした。
 あとはいろいろ犯人たちとやりとりをしながら行ったわけですが、機内においてはみんな確かにドス、いわゆる短刀、それからもう少し長いわきざし程度のもの、そういうものをみんなそれぞれ持っておりました。それと爆弾を持っていました。その爆弾というのは、鉄の管を両方鉄のせんでとめたようなものでしたが、その連中も私をばかに信用してくれまして、私のわきにその爆弾を置いていく始末なんです。それで私、これいいのかいと言ったら、ああ、それはだいじょうぶなんです、こっちに持っているこれを入れなければ爆発しないんです。どうなんだと言ったら、中に入っているのはダイナマイトだ、しかし、こっちに持っているのは硫酸だ――硫酸が試験管のようなものに入っていまして、そのふたをあけてそこに入れて、それでたたきつけると爆発する。飛行機が吹っ飛ぶというようなものではないらしいのですが、少なくともその破片で飛行機がぶつぶつ穴があいてしまうことは間違いないようでございます。連中はそれを十数本用意してあったようでございます。犯人は九人でございます。それで、その十数本の爆薬というものを考えましたときに、私はほんとうにぞっとしたのですが、彼らはほんとうに狂人といいますか、阿部先生を呼び出してあんな失礼なことを言った彼らにしてみれば、これは当然というか、あたりまえのことで、そんなことまで気をつかう必要はないということなんです。
 そこで、私は、この犯人たちといろいろやりとりをしました。平壌に着くまで一時間、それから平壌に着いてから二時間少々の時間、約三時間をこえる間犯人たちとやりとりをしました。私の電話が終わった段階では、完全に私の手を縛った綱から何から全部取ってしまいました。それで、先生、あとはどこへでも自由なところへ行ってくれ。あとは自由ということで、私がすわっているところに、先生、コーヒーがいいですか、紅茶がいいですかと言ってくるようなぐあいでございます。
 ただ、そこで、今回のこの乗客の一部、ほんの一部の皆さんですけれども、テレビなどへ出まして、また新聞記者会見で、あんないい青年たちはないというような意味の発言をしておられる方が二、三あるわけでございます。おそらくその人たちは、私たちに一つも危害を加えないでくれた、そして最後には、聞くところによると、お別れパーティなどを開いたそうです。これはちょっと私どもには理解できないところなんですが、やはりその時期の機内のお客さんというのは少し異常心理になっているのじゃないか。
 それと、彼らの指導格である田宮というのが実は私と一番話をするのが長かったのですが、犯人田宮が言いますのは、もう私は日本へは永遠に帰らない、そこで、せっかく先生と一緒になったんだから種あかししていくよというようなことでございます。それで私も、今後のことがございますので、いろいろ聞きました。聞きましたら、まず第一に、今回の飛行機乗っ取り事件で何が成功したと思うかという、私に対する向こうからの問いでございます。私は、こっちはわからないな、何なんだいということで聞きましたら、まず第一に、乗客の心理というものを完全にこっちにつかまえてしまった。一つの例をあげれば、まず最初に自分たちが乗り込んで乗客が言うことを聞いた段階で、すぐうしろ手に縛りあげて乗客を恐怖のどん底へおとしいれた、これが第一番の成功のもとだ。そして乗客の恐怖感というのを徐々に除いていきながら、結局ハイジャックという問題、この凶悪な犯罪をも完全に別のものにしてしまった。この凶悪な犯罪を犯した犯人はおまえたちだという考えを乗客の頭からなくしてしまう。そして言うことさえ聞いていれば、もう何もしないんだ、この人たちはいい人たちなんだというようなことを思わせる。たとえば御飯が出てくる。ぱっと乗客に配ってしまう。自分たちはあとで食べる。そしてまた、いろいろ乗客が持っているもの、たとえばあめを持っている人間は出せ、食いものを持っている人間は食いものを全部出せ、たばこを持っている人間は全部たばこを出せ、お客のほうは何てひどいやつだと思う。ところが、それを、たばこのほしい人、はいと手をあげる、では何本ずつとぱっと配る。あめのほしい人、はいと配る。これはほんとうに犯人の巧妙なところかもしれませんが、そのようなことをやっています。やつらの言うのは、それははっきり言うと、ハイジャックを成功させるための一つの手なんだ、まずお客の心理状態を完全にこっちのものにしてしまわなければだめだということでございます。
 そして、私は、実はゆうべもテレビに出演させられましたときに言ったのですが、私が乗り込みましてから、犯人の一人が、コーヒーにしますか紅茶にしますかと言いながら、先生、これ弁当ですと、もう一つ弁当を持ってくる。先生、これは毒は入っていませんからということです。何言っているんだ、毒入れるわけないじゃないか、いや、そうはいかない、おれたちはあくまでも慎重の上にも慎重、いや、さっきおりていった連中に全部毒味させたということです。聞いてみますと、これは乗客のほんのわずかの方々ですが、御飯だって先に食べたといって、彼らをほめております。これはモルモットにされていたことが全然わからない。そして彼らは、乗客が御飯を食べて三時間たって何でもないということを見てからでなければ食べなかったわけです。全部のものがそうです。これくらい彼らとしては慎重に事を運んでいた。ところが、その反面、われわれでは考えがつかないくらいルーズなところがございます。阿部先生の問題がそうでございました。
 もう一つ、彼らは北鮮と何の連絡もありません。実は北鮮へ着く直前ですが、若いほんとうに子供みたいな青年が私のわきにすわっていまして、先生、北鮮へ行ったらおれたちどうなるんだろう。そんなばかな、おれを誘拐して人質にとっておいて、おれたちはどうなるんだなんて。(笑声)ところが、彼らは真剣なんです。何もないのか、行ったらどうするんだ、どうするかわからない、出たとこ勝負だ――これは私の心境と一緒かもしれませんが、彼らの場合は、あくまでも計画もあれば、意思の通せるところがありながら、出たとこ勝負、関係なしというような、そんなところに平気で飛び込んでいっている。
 そして、いろいろ彼らとのやりとりもございましたが、あまり時間も長くなりますので、飛ばしまして、それで平壌の付近に行ったわけです。そのころはもうだんだん暗くなってきた。そして、平壌の空港じゃないかなというのがあったのですが、ちょっとどうも違うようだ、じゃもう少し先に行ってさがそうかと言ったときに、完全にあと五分か十分で終わりだ――終わりというのは、暗くなって有視飛行ができなくなってしまう。有視飛行ができなければ、向こうからレーダーそのほかで誘導してもらったらどうだといいますが、誘導というものが一つもないわけです。これは完全に機長、副操縦士の二人の、それこそいままでの勘と技術によってそこまで行ったわけです。そして、いまからおります、ベルトをきつく縛ってください、しっかり座席につかまっていただきたいという放送があったわけです。それで、私はぎゅってベルトを締めて、そして皆さん御存じのように、からだを前に傾けた。これが一番ショックを受けない方法だ。そうしたら、そのわきにおりましたのが、先生何やっているんです、何言っているんだ、こうするのが一番ショックが少ないんだよ、はあ、私は初めて飛行機に乗ったのでわかりませんでした、ほんとにそんなようなメンバーです。それで私はすわってぎゅっと締めた。そしておりたわけですが、私はいままで百数十回飛行機に乗っております。しかし、はっきり言うと、このときの衝撃くらいものすごい衝撃は受けたことがございません。だだだだっと、ほんとにからだが飛び上がりました。一つの例を申し上げますと、彼ら犯人たちが爆薬の一つのあれとして持っておりました硫酸というのは、みんなワイシャツのポケットに入れていたわけです。それがあふれ出て、彼らのワイシャツが焦げたというようなことがあるくらいすごい振動だったのです。それとまた、皆さん御承知のとまる寸前の逆噴射です。これも、私は逆噴射というのはよく経験しておりますが、あれほどひどい逆噴射は初めてです。そしておりてみて――ちょっと窓の外から私のぞこうと思ったんですが、私のほうはうしろで、機長のほうが先でのぞけなかったんですが、あとで機長、副操縦士に聞いてみたところが、もう滑走路が幾らもなかった。やっぱりあれをやらなければだめだったということでございます。
 それで、ちょっとこの問題について申し上げますが、あとで、機内から出まして、向こうへ着いてホテルへ行って御飯を食べるというときに、満票縦士が私のわきにすわったわけですが、そのときに副操縦士の言うのには、先生申しわけありませんでした。何だと言ったら、実は先生、私らと一緒に死んでもらうつもりだったんです。というのは、百に一つのかけをした――私は、これは、機長と副操縦士はどれほど表彰しても、ほめても、それほどほめ過ぎではないと言えると思うのですが、彼らが言いますのには、百に一つのかけ、誘導装置は何もない、有視界飛行の着陸の最終段階だ。それで乗っている人間は、私、政務次官と搭乗員が三人、そして気違いがここに九人あと乗っているわけです。そこで、機長と副操縦士が相談しまして、ここでもしやらなければ、韓国へは帰れないわけです。というのは、韓国を出発するときに、もう今後は韓国領内へは絶対入れませんよという約束がついているわけです。それを承知して出てきている。ところが悪いことに、東京まで帰ってくる燃料があるわけです。もしあれがあのまま帰っていったらどうなっていたでしょう。おそらくこれはまたそのまま、今度はもっと大きな問題として東京で騒ぎが起きる。日本国じゅうが騒ぐという問題になる。そこで、機長、副操縦士と二人で決断して、政務次官には申しわけないけれども、間違ったら死んでもらおう、機長、副操縦士のほうは、まあおれたちは職務だ、これを遂行する、あと乗っているやつは九人の気違いだ、鬼畜だ、畜生だ、こういうようなやつを道連れならかまわないじゃないか、政務次官もあとで死んでからでもかんべんしてくれるだろうという気持ちで突っ込んだそうです。ほんとうに先生、申しわけありませんでしたということが、副操縦士から私に言ったことでした。それで、どれほど副操縦士、機長が一生懸命やってくれたかと申しますと、副操縦士は、飛行機に乗りましてから北鮮の空港へおりるまでの間、全部すわり切りです、トイレへ行く以外は。ところが、普通の乗客と違いまして、操縦者の席というのは、いすがいわゆるリクライニングシートといいますか、横になったりなんかできないわけです。ですから、ほとんど圧力のかかるところは全部しりの骨二つということになるわけです。だから、御飯食べているときに、先生、こんなところできたない話をして申しわけないですが、実はパンツの両方のしりが二つ穴があいてしまった、いや、私も驚きました、なんていうことを言っておりましたが、そのくらい彼らは一生懸命やってくれました。私は、今度の彼らのとってくれたその行動というのが、今回の問題を一番大きく片付けたと思うのです。ほんとうに沈着、冷静と言ってもいいと思います。
 実は、きのうちょうど彼らに対して大臣表彰がありまして、私もそこへ立ち会いました。そのあとで歓談ということになったときに、機長に聞いたわけです。機長、あれ、もしあそこで乗客が全員乗っていたとしたらどうする。完全に全員即死だそうです。そしてただ一つ機長がつけ加えました。私はその場合は東京へ帰りました――しかし、私はぞっとするんですが、あのとき乗客を全員乗せてあの空港へ来ておりることになって、そしておりられないということになって、東京へあのままの状況で、結局板付にあった、そして金浦にあった状況をそのまま東京へ持ち帰るわけです。考えただけでも私はぞっといたします。しかし、その際の搭乗員のとってくれた措置というものに対して、私はほんとうに心からもう感謝、これ感謝をするという以外に何ものもございませんでした。
 しかし、そういうようなぐあいにしながら北鮮へ着いたわけでございますが、着いてからの彼らの行動でございますが、これはもう気違いというに私はひとしいと思います。気違いというより私どもには想像できないわけです。善悪は別にしまして、彼らは命がけの仕事をしたわけです。ところが、新聞紙上で、着いたからっていって喜んで、から手のまねをしてどうこうといいますが、それはそうじゃございませんで、私と中で話をしておって、くたびれたから、こうやっておりてきたというところだと思います。それをそういうぐあいに――普通の神経の持ち主なら、喜んでわあっとやっておりてくるのが当然ですから、ああ、喜んでやっていると、そうとって新聞の発表になったと思いますが、実はそれははっきり言いますと全然違います。冷静そのもの、着いた瞬間でも、喜びもしなければ、悲しみもしないのです。私は、その瞬間、ぞうっと全身鳥はだが立ちました。私はこれほどこわいことはないと思うのです。これだけの凶悪な犯罪を犯して、そしてそれを顔色も変えずにやってのけているわけです。私はそのときに考えたのは、やはり時間がかかっていろいろな批判は受けましたが、しかし、彼らをいわゆる武力をもって何とか制圧しようとしてかからなかったというのは、ほんとうに幸いであった。もしそれを行なった場合は、彼らは完全にその爆弾とともに自爆をしております。同時に、乗客もその道連れにされております。それを考えましたとき、今回のこの措置というものは、少なくとも、ベストとは言えないまでも、いい方法じゃなかったか、そういうぐあいに私は考えるものでございます。
 そこで、北鮮へ着きまして、いろいろ北鮮での取り調べ等ございました。そして確かに人道的に取り扱っていただきました。ただ、人道的とはいいますが、ちょっと私どもが理解できないのは、これは私ども四人すわらされたわけです。そしていろいろ取り調べ、無罪を言い渡される寸前ですが、そのとき、二人は退席していった。これは副操縦士と航空機関士、江崎さんという方と相原という方ですが、この二人は退席させられて、私と機長が残ったわけですが、そして新聞記者から非常に責められました。しかし、その責められた結論は、おまえたちは北鮮の法を犯したんだ、これは有罪と認めるか、認めた場合にはどんな判決が下ろうと文句言わないでそれに服するんだな、これの連続でございました。そしてその記者会見の最後、あとで、今度はばっと――新聞社だそうでございます。これが、政府の委任を受けて来た、そこでみんなに伝えるということで、私のほうは通訳がつくわけですが、通訳を聞きますと、四人は全員無罪である――無罪であるとは言いませんでしたが、全員わが領内を本日午後出ていくことを認める、退去することを認める――私も、はっきり言って、これはうれしかったです。しかし、それならなぜその二人が行くときに――私は、二人がどうしたのかと思って、実は処罰されるんじゃないかと思って心配したのです。ところが、あとで聞きましたら、すぐ飛行場へ行けということで、車に乗せて連れていかれた。それならなぜその段階で私たちに聞かしてくれないのか、おまえは有罪だ、有罪だとさんざんいじめておいて。これはかなり、私にしてみれば、はっきり言えば気持ちいいことじゃございません。有罪だ、有罪だといじめておいて、そのすぐあとで、ほい、おまえたちは無罪だ、出ていけ――これは一つの、やはり今後北鮮側に一考していただきたい問題じゃないかと私は思います。
 それと、もう二つあります。といいますのは、われわれが参りましてまず困りましたのは、彼らは大歓待のつもりで、すばらしいホテル――日本のホテルからいえば、備品そのほかはずいぶん怖いものです。しかし、部屋というのはたいへんなものです。まず私ども入りますと、これくらい大きな応接室、そして次が私の書斎、そして次がやっぱりこれくらいの寝室、その大きなのが私一人に与えられるわけです。それで、出てくるごちそうというのは、十品近くのものが、朝昼晩ニンニクとトウガラシのごってりとしたものでございます。そのごってりとしたニンニクとトウガラシを私ども五回食べさせられたわけです。初めのうち、一晩のうまかったこと、私も朝鮮料理好きなほうですから、ぺろっとやっちゃった。ところが、その次の朝になったら、また十品ばさっと来るのです。それでもけっこうやりながらやってきましたが、最後の晩はさすがに鼻についちゃって、半分ぐらい食べて残しました。
 そうしたら、その晩の十一時半になりまして、私どもが呼ばれたわけです。あしたの朝早く帰るという晩の十一時半です。午後帰るということでしたが、飛行機の整備のほうで、どうしても機械その他がそろわないから、それを向こうでそろえてくれるから、あしたの朝早く出られるということでございます。そうしますと、普通の常識ならばたいがい、機長も副操縦士も搭乗員はくたびれているから、早く寝ろ、あした事故が起きないようにしろというのが常識じゃないかと思うのです。ところが、せっかく来たんだから、わが国の映画を見ていってくれ、そこまではけっこうです。私もおつき合いのつもりですから見にいきました。ところが、これがいつまでたっても終わらない。一体いつまでかかるのかと聞いたら、いや二時に終わるんだ。十一時半に始まって、二時に終わる、二時間半見せられたわけです。私のほうは政治家という立場もありまして、はっきり言うと、北鮮の国内の工業はこうなっている、商業はこういうぐあいにやっている、教育はこうだということは、関心もあるわけですから、私はおもしろく見ている。ところが、私がこっくりすることがありました。そうすると、通訳がつついてまた話し出すわけです。機長と副操縦士に聞いてみると、つらいといったらない、目がくっついちゃう。目がくっつくと、またすぐやる。人道的立場というけれども、これは人道的立場じゃない。私はそういうぐあいに感じました。
 それとまたもう一つ。翌朝五時に起こされたわけです。二時に一応映画は終わったわけですが、私どもそうかといって、映画を見てどうこうというと目がさえますから、寝るのは二時半か三時ということになる。そして朝五時に起こされ、またがばっとニンニクの十品が出るわけです。それで私は、絶対それは食べられない。私は腹が痛い、絶対だめだということで断わりました。そうしたら、私のほうへは、それじゃこれを食べないから、飛行機が立てなくなっても、おまえの責任だ。おれは腹が痛いんだからしようがない、ああそうかと言って、すぐ医者を呼んできまして、医者が診断して、あなた肝臓が少し悪くないかと言うから、日本ではよく飲み過ぎをやるからと言うと、薬をくれた。それですぐ済んだ。ところが、あとで聞きますと、副操縦士は、おまえが食べなければ飛行機は立たせないというので、命がけで半分食べたということを言っていました。
 しかし、これは彼らも誤解をしてやっていたようでございます。というのは、あとで帰りに、今度の滞在についてあなたに何か特別の意見があったら言ってもらいたい、また感想なり何かあったら言ってもらいたいというので、とりあえず二つ言わせてもらいたい。めしをあんなに強要するのは絶対やめなさい、はなはだ迷惑だ。それから映画のことも考えてもらいたい。私どもは朝早いんだ。それをどんないい映画を見せられたって、あれではだめになってしまいますよ。めしと映画のことは申し上げておきたい。それはわかったということで、おそらく今度北鮮へ行かれたら――もちろん今度はこんなハイジャックじゃなくして、社会党の皆さんは去年も行かれましたが、今度行かれた場合は、おそらく映画とめしの責め苦はのがれられると思います。(笑声)
 そういうようなわけで、私ども帰ってきた結果から見ますと、とても人道的に取り扱っていただいたことは事実でございます。
 それで、私は、特に今回のこの問題についてここで申し上げたいのでありますが、この委員会を通じ、そしてまた、この委員会がまず第一番に立ち上がっていただきまして、日本の世論、そして世界の世論となった。それが韓国、そして北朝鮮というものを動かして、ここまでの解決を見たのじゃないか。特に私は、全員乗せて空港に行った場合には、もしおりれば全滅だった。だめであった場合はもう一ぺん東京に帰ってきたということを考えますと、あの狂人と一緒にもう一ぺん東京に帰ってきたらどのような惨事が起きたかを思いますと、ほんとうに今回皆さま方にいろいろ御心配をおかけして申しわけございませんでしたが、いろいろ私のとりました立場も御了解いただきまして、お許しいただけますれば幸いと思います。
 これをもちましてあいさつといたします。(拍手)
#5
○宇田委員 詳細にわたる経緯をお伺いいたしましたが、山村政務次官は自分みずからの功を搭乗員に譲って、きわめて謙虚な態度であられることに対して、重ねて敬服いたします。
 なおまた、社会党の阿部代議士に御協力を願い、全く超党派的に、本委員会も実にこの問題に対しましては終始一貫御協力を願った次第であります。
 なおまた、山村政務次官にちょっと御注意かたがた私の御助言を申し上げますが、これからいろんなところでいろいろ発言を求められると思いますが、これは口頭ではなかなかたいへんです、どんな博学の、記憶力の強い人でも。だから、その要項だけメモでもされておったほうが話がしやすいと思います。そうされませんと、話が前後になったり、またそこにいろんな問題が出てまいると思いますから、一時間か二時間さいてまとまったものを記録されてひとつお話しされるように、はなはだ僭越で失礼でありますが、お願いします。
 ただいまの経緯を承って、心から敬意を表し、そしてまた、日本航空史上かつてないところのこの凶悪事件、これが再び起こらないように万全の処置をされるようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
#6
○福井委員長 井野正揮君。
#7
○井野委員 きわめて貴重な時間でもございますし、簡明に、まず、山村次官の政治的な立場や一切を越えた、非常に高い人間性に徹した行動によって、きわめて不幸な事態がきわめて好ましい結果に終わりましたことを、社会党を代表して厚くお礼を申し上げたいと思います。
 私どもがきょう特に御質問を申し上げたいと考えておりますことは、今度の事件を通じて、わが国の持っておる政治の体質というものが、山村さんのかくかくたる成果とは反対に、周章ろうばいして所を知らなかったみっともなさがたくさん出ました。たとえば、すでにきょうの新聞などで特別立法の問題も出ておりますし、あるいはこの凶悪犯罪に対して各政党責任者の対処する方針も出されました。私はまだ国会議員になって百日でございますので、一体そういうようなことがどうなっているのだろうかということで、詳しくわが国の法律を調べてみました。ところが、法律の内容には、かかる事態が起こった場合にはということを前提にして刑罰もきめられておりますし、各般の省令も出されております。そういうことでございますので、いま私は、この一週間にわたる命をかけての中で冷静沈着に事を処理された山村さんに対しては、感謝の一言に尽きるので、このことについては聞こうと思っておりません。また、いまこの席で続いてこれからの運輸行政の問題をお尋ねをするのは、あまりにも私は常識がないことになると思います。そういう点では、きょうはその質問は避けたいと思いますけれども、この問題を担当するこの運輸委員会としては、いま言った二つの使い分けをいたしまして、今後に処する問題、あるいは今度の政府のとった措置、あるいは日航のとった措置、いかに英雄的な、崇高な任務を果たされたとはいえ、石田機長以下の乗員の皆さんのとられた措置を、真実を明らかにして今後の問題に対処しなければならぬ、こういうふうに考えますが、きょうは適当な時間でもありませんし、場所でもないと考えますので、この点は御遠慮申し上げたいというふうに考えておるわけであります。
 ただ、私も、先ほど御質問なさいましたと同じように、緊急質問を通告いたしましたが、しかし、これは国会の許すところになりませんで、その演説原稿をその後推移する情勢の中で照らし合わせてみて、私は、あまり多くの経験のないほうがかえって問題の解決に誤らないんじゃないかという気がするわけです。
 ここで一つだけ、心境としてお尋ねをしておきたいと思いますことは、いま国へ帰られて冷静になられた山村次官がお考えになることの中で、先ほど御説明申し上げましたように、政府あるいは国会でつくられた法律、それから日本航空が職員に平素研修を続けておった、かかる事態が生じた場合の処理の方針、こういうものの中にその基調になっておるのは、何といっても日本国憲法の精神であろうと思うのであります。そして、人道に徹する、人格を尊重し、人命を尊重する、この姿勢こそが、すべての発想になっているところに、そういう社会環境の中で成長された山村さんにもその決断があった、私はこう考えるわけであります。
 もう一つ考えてみなければならないことは、不幸な状態、戦争からいまなお国交が回復してない北鮮の人間性の問題、過剰なサービスもその中に入ると思いますが、終始彼らの考えていることも、今日段階で日本の人々が考えておるものとはかなり相違があるということを、私も諸外国を歩いてみて感じられるわけであります。その国家体制の中が住みよいとか住みにくいとか、これは別な判断でありまして、人の命に関する問題として、いわゆる人道追求の上で、またわれわれの印象とはかなりかけ離れたものがある、こういうふうに感じられる次第でありますが、いずれにしても、先ほども御注意がございましたように、山村さん以外にはその体験をお持ちになっていないわけであります。
 山村さんの今後のものの考え方は、日本の世論を大きく左右する重要なポイントを持っておると思います。そういう点で、今回の不幸な中にきわめて幸福な結果が得られたということが、今後の日本の政治の一つの大きなポイントになるとすれば、これはまた歴史的にたいへんな功績であるとも考えます。こういうような点から考えてみまして、いま二つの点に触れて、日本国憲法の崇高な精神、そしてもう一つ、いまなお、交戦状態とは言いませんけれども、国交回復しない国の人間的良心に対する理解の問題を、感じとしてお話をいただければ幸いだと思います。きょうは重ねて質問いたしません。
#8
○山村政府委員 先生がいま言われました点、すべてごもっともでございます。特に私としましては、今回の、いわゆる政治では解決し得ない問題、それをいわゆる人間性というものの上に立って各国が考えていただいたということが、今回のこの解決を見たものと私は思うものでございます。そこで、私としましては、今後このような問題というものを起こさないようにするのが第一番でございますが、それと同時に、先生のおっしゃった意味を十分かみしめまして、いろいろな問題に対処してまいるつもりでございます。
#9
○井野委員 これで質問を終わりたいと思いますが、実はこの委員会としては、今日わが国の航空法その他の政令等に関しまして、この富士山頂上でハイジャックが起こった瞬間から、はたして行政的な機能が働いておったのかどうかという点、あるいはそれが運輸行政の面からほんとうに完備されておったかどうか。非常に疑問の点が多うございます。そういうような点で、指揮をされた運輸大臣と、命を受けて行動された次官とは、おのずから区分さるべきものだということで、次官にお尋ねすることは適当でないと私は思いますから、質問を打ち切るわけでございます。その点については、いかなる法案にも先立って、本件を通じての今後の航空運航に対する処理の問題を究明することこそ、この委員会の重要な使命だと思います。委員長として、かかる措置をおとりくださることを希望いたしまして、質問を終わります。
#10
○村山委員長代理 宮井君。
#11
○宮井委員 山村政務次官、たいへんごくろうさまでございました。
 大任を果たされ、今日ただいま委員会で御報告を受けたわけでありますが、私も感慨無量でございまして、世界の新聞紙上におきましても、騎士道を唱えておりますフランスにおきましても、まことにノーブルな今回の処置であったと絶賛をいたしておるわけでございますが、そういった今回の行動に対しまして敬意を表し、時間もございませんので、一言だけ質問をさせていただきまして、終わりたいと思います。
 先ほどもお話が出ましたが、犯人が、これ以上こちらが抵抗いたしますと爆弾で自爆するという、そういった態度に出てくるような状況であった、こういうお話でございましたが、これから問題になるのは、ハイジャック対策、航空法の問題でございます。航空法の改正によりまして機長に警察権を与えていくという問題でございますが、アメリカでは副操縦士が取り押えようとして射殺されたという事件もございまして、かえって危険である、こういうふうなこともいわれておるわけでございますが、実際の責任者として、今回のこの問題をなまに感じた感触といいますか、航空法の改正に対する御意見を聞きまして、こまかい点はまた委員会で質問したいと思います。
#12
○山村政府委員 私は、今回のこの事件を体験しました者の一人といたしまして、ほんとうにこのような事件は二度と起こしてはいけないという気持ちで一ぱいでございます。そうして特に、いわゆる航空法の改正、ハイジャック問題に対するいろいろな刑罰というものもございますが、ただ、それだけではなかなか解決できない問題ではないかというぐあいに考えるものでございます。と申しますのは、これはあくまでも私見でございますが、日本でもしそういうようなことをやりましても、犯人が出ていってしまったら、それっきりもう重くすればするほど絶対帰れないということになるわけでございます。そこで、凶悪化するおそれもあるのではないか。また、これは一つの例でございますが、韓国のほうではいわゆるハイジャック問題に対してどういうような対策を練っておるかということも聞いてみました。韓国の場合は、操縦席と乗客席を完全に分離しておる、ちょっと操縦席には入れないというようなぐあいになっておるようでございます。そして、乗客席のほうへいわゆるボデガード的な人間が入っておる。しかし、これは韓国であればこそ通じる問題でございます。と申しますのは、韓国の場合は、現に前にハイジャックで北鮮へ連れて行かれた搭乗員が帰ってきていないわけです。ですから、操縦席と乗客のほうを完全に切り離してしまえば、幾ら乗客のほうを脅迫しても、操繰士は目的地へ乗っていったらもう帰ってこられないという気持ちがあります。そこで、韓国の場合は、別にしておいて、客席を占領しても、操縦者までは自由にコントロールできないという状況ができるわけでございます。ただし、日本の場合にそれがはたしてきくであろうか。実は犯人の首謀者でございます田宮、これが私に申しておりましたことは、絶対にいまの日本ではハイジャックという問題は防げないぞ、現にもしスチュワーデス一人、旅客一人を自分が人質に取ってピストルを向けたならば、日本の飛行機は言うがままじゃないか、これを考えなければ先生またやられるよ、こんなことを言っていました。
    〔村山委員長代理退席、委員長着席〕
その犯人の言うのも、日本の場合はもっともではないかと思います。ただし、韓国の場合は、先ほど申しましたように、自分が行けば殺されるということになれば、幾らおどかされたって、どっちみち殺されるならということで、殺されない方法というのは、自分の国の空港へ着くことだということになりますので、私は、やはりその国その国のいろいろな事情があると思います。それに応じて、いわゆるハイジャック問題には取り組んでいかなければならない、そういうようなぐあいに考えております。
#13
○福井委員長 和田春生君。
#14
○和田(春)委員 今回の事件に関しましていろいろ質問をいたしたいと考えておりましたけれども、本日の会議の時間の都合もございます。そこで、運輸委員の一人といたしまして、山村運輸次官がまことに称賛すべき犠牲的精神を発揮されまして、任務を全うして帰られたことに対して、深甚な感謝の意と敬意を表しまして、本日は、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
#15
○山村政府委員 先生にただいまおほめのことばをいただきましたが、私としましては、ほんとうにただ無我夢中、ここの委員会から与えられました、人命の安全確保に全力を尽くせ、どのようなことをやってもこれだけはやってこい、それを無我夢中でやってきたというのが私の心境でございます。私、言うならば、ただこの委員会から命ぜられたことをやってきたというにすぎませんものを、それほどおほめいただきまして、ありがとうございました。
#16
○和田(春)委員 どうも御苦労さんでございました。
#17
○福井委員長 この際、暫時休憩いたします。
   午前十一時五十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後零時四十分開議
#18
○福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 タクシー業務適正化臨時措置法案、港則法の一部を改正する法律案及び地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、海運局の支局の設置に関し承認を求めるの件を順次議題とし、それぞれ提案理由の説明を聴取いたします。橋本運輸大臣。
    ―――――――――――――
#19
○橋本国務大臣 提案理由の説明を申し上げる前に、御礼のことばを申し上げたいと存じます。
 今回の事件に関しまして、当運輸委員会の皆さん並びに国会全体、各党がこぞってご支援、御激励、ご協力くださいましたことを厚く御礼を申し上げます。いろいろ不手ぎわなところがありましたけれども、山村政務次官の勇気ある行動によって、とにかく人命全体が無事に救出をせられ、かつまた関係各国の非常なお世話によりまして、円満といいましょうか、まあ満足すべき解決ができましたことは、ひとえに関係各国の御協力及び皆さまの御支援の結果でありまして、厚く御礼を申し上げます。
 ただいま議題となりましたタクシー業務適正化臨時措置法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
 わが国の経済成長に伴う産業構造の高度化は、企業の管理中枢機構、情報部門等の都市集中をもたらし、都市人口の増加を招いております。
 このような都市人口の増加は、企業活動の活発化と相まって都市交通需要の急激な増加となってあらわれ、御承知のように、都市交通に関して種種の問題を惹起いたしております。
 中でもタクシーはその機動性、迅速性、随時性等が近代的経済活動の要求に合致しており、さらに所得水準の向上に伴いタクシー利用者層が拡大し、その利用回数も急激に増加しており、今日では大衆交通機関として国民の日常生活に密着したものとなっておりますが、ここ数年来東京等の大都市におけるタクシー輸送につきましては乗車拒否をはじめとする違法行為が頻発し、そのサービスの低下が社会的問題となっております。
 このような事態は、本来タクシー事業者の責任とタクシー輸送に従事する運転者の自覚によって是正されるべきであると考えますが、タクシー輸送の都市における国民生活に占める役割の重要性にかんがみ、政府といたしましても早急に改善のための措置をとるべきであると判断いたした次第でございます。
 このため、昨年タクシー輸送サービスの改善に関する総合的対策を樹立し、これに従って諸種の施策を実施に移しているところでありますが、さらにタクシーの運転者の確保が困難であるためタクシーの輸送力が需要量に対し著しく不足しており、かつ、乗車拒否等の違反行為がひんぱんに行なわれる等タクシー事業の業務が適正に行なわれていないと認められる地域においてタクシー業務の適正化をはかるためには、当分の間法律上の措置により悪質運転者を排除する等の必要があると判断し、ここに本法案を提出することといたした次第であります。
 この法律案のおもな内容は次のとおりであります。
 第一に、前述しましたようなタクシー業務が適正に行なわれていない地域を指定地域として政令で指定いたしましてその地域内のタクシー運転者の登録を行ない、登録にあたっては道路運送法に定める要件を備えていない場合等にはこれを拒否することとし、運輸大臣は、乗車拒否等違反行為をした運転者の登録を取り消し、二年以内の登録禁止期間を設ける等の措置をとることができることといたしております。
 この場合において指定地域内のタクシー事業者は、タクシーに登録運転者以外の者を乗務させてはならないこととするとともに、登録運転者を乗務させる場合には登録タクシー運転者証を表示しておかなければならないことといたしております。
 なお、登録等の事務は、登録の取り消し等にかかる処分を除き、一定の基準に適合する財団法人を指定して、これに行なわせることができることといたしております。
 第二に、指定地域においては、運輸大臣は、街頭指導、研修、苦情処理、タクシー乗り場及びタクシー運転者の共同休憩施設の設置運営等一定の業務を行なう財団法人を指定して、これらの業務の遂行に必要な経費を当該地域内のタクシー事業者から負担金として徴収させることができることといたしております。
 その他、指定地域にあっては駅前、繁華街等において時間を限ってタクシー乗り場以外でのタクシーへの乗車を禁止する制度、研修命令制度等を設けることといたしております。
 以上がこの法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
 続いて、ただいま議題となりました港則法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
 この法律案は、鹿島、内浦、会津及び喜入の各港におきまして、港湾施設が整備されたのに伴い船舶交通がふくそうしてまいったことなどの事情から、これらの港に港則法を適用し、船舶交通の安全と危険物による災害の防止をはかる必要が生じましたので、同法の別表を改正しようとするものであります。
 改正を必要とするおもな事情を述べますと、
 第一に、鹿島港につきましては、港湾施設の整備の進捗に伴い各種企業が進出し、大型タンカーをはじめとする多数の船舶の入出港が予想されますので、港内における船舶交通の安全を確保し、あわせて危険物による災害を防止するため、港則法による規制を行なう必要が生じたことであります。
 第二に、内浦港につきましては、貯木場の完成に伴い、大型の木材専用船が入出港するようになり、そのほか各種船舶の入出港も増加しておりますので、港内における船舶交通の安全を確保するため、港則法による規制を行なう必要が生じたことであります。
 第三に、合津港につきましては、天草上島と前島にはさまれた赤松の瀬戸に位置する狭隘な港である同港に、天草五橋の開通以来、多数の船舶が入出港するようになりましたので、港内における船舶交通の安全を確保するため、港則法による規制を行う必要が生じたことであります。
 第四に、喜入港につきましては、石油中継基地の稼働に伴い、超大型タンカー及び多数の内航タンカーが入出港するようになり、膨大な量の危険物が取り扱われるようになりましたので、港内における船舶交通の安全を確保し、あわせて危険物による災害を防止するため、港則法による規制を行なう必要が生じたことであります。
 以上がこの法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
 次に、ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、海運局の支局の設置に関し承認を求めるの件の提案理由につきまして御説明申し上げます。
 この案件は、最近、出入港船舶が激増しております茨城県鹿島港に関東海運局鹿島支局を設置しようとするものであります。
 鹿島港は、工業整備特別地域に指定された鹿島臨海工業地帯の拠点として、昭和五十年度を目途に、年間入港船舶一万七千隻、最大船舶二十万トン、取り扱い貨物量六千万トンを対象とした工業港として計画され、開発の途上にあります。同地域には、鉄鋼、石油、機械、セメント、食品、飼料等の工場が建設されておりまして、一部の企業はすでに操業を開始しており、残りの企業も昭和四十六年までには操業を開始することとなっております。
 鹿島港における昭和四十四年の入港船舶は百三十三万総トン、取り扱い貨物量は二百十五万トンに達しておりますが、今後の港湾開発の進捗に伴い、ますます大型船の入港が激増するとともに、取り扱い貨物量が増加するものと思われます。
 このような鹿島港の港勢の進展につれて海上運送事業者、港湾運送事業者、倉庫業者等の海事関係業者が新たに進出し、その事業活動が活発化しておりますので、海事に関する行政手続の利便をはかるとともに、海事行政の円滑な運営を確保するため、同港に海運局の支局を設置する必要が生じてまいったのであります。
 以上の理由によりまして、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、海運局の支局の設置に関し、国会の御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認いただきますようお願い申し上げます。
#20
○福井委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
#21
○福井委員長 引き続き、タクシー業務適正化臨時措置法案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、これを許します。村山達雄君。
#22
○村山委員 ただいま議題となりましたタクシー業務適正化臨時措置法案について、提案理由の説明並びに法案を通読いたしますと、道路運送法上、現在運転者の違反に関する有効なる行政処分の規定を欠いている。同時にまた、運転者の資質向上、この二つをねらいまして、一つは、登録制度を実施し、違反があれば、場合によればその登録を取り消す、また二年間の再登録禁止の期間を設けることができることにし、登録されない運転者については、事業者が乗務をさしてはならないという義務をこの法によって一方において課していこう、同時にまた、運転者の資質向上のために、街頭指導あるいは研修、さらには共同施設、もろもろのいわば資質向上の施策を講じようとするものでございまして、私は、今日東京、大阪等ひんぱんに違反行為の頻発する事態に対処するためには、率直に申しまして、まあやむを得ない措置かもしれぬ。これ以外には有効な措置はちょっと考えられないのでございますけれども、若干の疑義がございますので、その点をただしたいと思うのでございます。
 提案理由の説明によりますと、このような頻発事件の背景として、第一に、輸送需要に対して供給力の不足をあげているのであります。実車率は通常五五%程度が適正だといわれているようでございますが、最近において実車率が六三%に上がってきている。こういう状況は、まさに需給の関係が売り手市場になっているということを意味しているかもしれません。そしてまた、その原因として運転者が不足しておる。運輸省からちょうだいいたしました資料によりましても、それは実働率によって看取できるということでございますが、これらの実車率あるいは実働率以外に、これらの需給の関係をあらわす資料あるいは運転者が不足するというようなものがありますかどうか、その辺の事情をちょっと最初にお伺いしたいと思います。
#23
○黒住政府委員 通常、タクシーの場合におきまして、需給の状況がどうなっているかということにつきましては、いま先生が御指摘の実車率、これが五五%でありますとか、六〇%でありますとか、実車率というものを検討いたします。運転手の不足の状況等はそれらでわかるわけでございますが、もう一つ水揚げで、一車平均一日の水揚げの状況というものを見ますと、都市ごとに、大都市と中小都市あるいは地方という違いがございまして、それらのレベルごとに見てみますと、ある都市におきましては、同じような状況のよその都市よりも水揚げの率が相当高いというふうな場合におきましては、そこで一つの判断ができます。それからさらに輸送人員その他あるいは一日の回数等を全国的に見てみますと、おおむねどの都市の需給が逼迫しているかという判断はできるわけでございます。
#24
○村山委員 もしわかりましたら、東京だけでけっこうでございますけれども、年間の乗車延べ人員数と、それから車両数がどれくらいふえているか、たとえば四十年−四十三年度、最近の数字でけっこうでございますが、ひとつその点をちょっと明らかにしていただきたいと思います。
#25
○黒住政府委員 東京におきます車両数は、昭和三十四年を一〇〇といたしました場合に、これが特別区でございますと、一万五千八十八両でございますが、いま御指摘の四十年におきましては二万九千八百六十で、指数が一九八、それから四十四年度におきましては三万八千百六十五で、指数は二五三というふうになっております。それから一日当たりの輸送人員でございますが、三十五年度におきましては百二万三千人でございます。それから四十年度におきましては百八十一万八千人、さらに四十三年度におきましては約二百二十万人の人を東京の特別区におきましてタクシーでもって輸送しているということになります。
#26
○村山委員 いまの点はこういうことですね。詰めて言いますと、乗車のほうは、三十五年度に対して四十三年度では大体二五〇くらいお客がふえておる、しかし車両のほうは九割くらいしかふえていない、こういう答えですね。したがって実車率が上がってくる。
#27
○黒住政府委員 輸送人員は、三十五年度が百二万人に対して四十三年度は二百二十万人でございますから、倍以上でございます。それから車両数は、一万五千八十八に対しまして三万八千百六十五という数字になっております。約二倍になっております。
#28
○村山委員 私は、乗車拒否が行なわれるということは、多分に運転者の資質、あるいは有効なる取り締まりの規定を持っているかどうか、これに依存するところが多いと思いますけれども、同時にまた、私は、運転者の待遇、したがってタクシー事業という特殊性から考えますと、合理化余地の非常に少ないタクシー事業から見ますと、運賃がいかにきまるかということ、これと非常に深い関係があるように思われますので、それらの点につきまして、多少お伺いしたいと思うのでございます。
 そこで、まず確かめておきたいことは、ちょうだいいたしました資料によりますと、昭和三十九年対四十三年の職種別月額給与の推移でございますが、タクシー事業の従業員は、三十九年では五万五千円に対して四十三年は七万五千円、上昇率が一三八、一般製造業では三万九千円が七万四千円、上昇率が一八八、卸売り・小売りでは四万円が七万三千円で一八三%、金融業では四万九千円が十万五千円で二一二と、毎月勤労統計から見ますと、タクシーの従業員の給与の上がり方が、他の業種に比べまして非常に低いという事実が出ておるわけでございます。また、調べてもらいましたタクシーの料金と一般消費者物価との対戦前比較を見ますと、一般消費者物価は、昭和九年−十一年の平均に対して四十四年で五百三十九倍、ところがタクシー料金のほうは、昨年の改定前で二百六十三倍、改定後で三百四十二倍、こういうふうに出ているのでございますが、念のために確かめておきますが、この数字に間違いございませんか。
#29
○黒住政府委員 いま先生がお述べになりましたとおりの数字でございます。
#30
○村山委員 もう一点、資料を確かめておきたいのでございますが、タクシー事業の収支率が、改定直前においては九八%、つまり、収入に対して経費のほうが二%オーバーしておる、こういうことでございますが、昨年ではなくて、前回の改定が行なわれました三十九年、このときのタクシー業の収支率がおわかりであったら、ちょっとお話し願いたいと思います。
#31
○黒住政府委員 前回行なわれました場合につきましては、三十六年度の実績というものを見まして計算いたしましたが、そのときには九八・一%でございます。
#32
○村山委員 それは改定後の三十九年の実績でございますか、改定直前でございますか。
#33
○黒住政府委員 改定前におきまして九八・一%でございます。これを三十九年の一月に改定いたしましたが、改定後におきます三十九年度の収支率は一〇三・九%でございます。
#34
○村山委員 私は、いま申し上げたこれらの数字からいたしまして、タクシー事業というものの特質から考えまして、やはり料金と多分に関係があるのではないかという気がしてならぬのでございます。第一、タクシー事業の人件費割合は東京が六三くらいだと承知しております。仙台で見ますと約六〇くらい。人件費割合の非常に高い事業でございます。ということは、労働集約型の産業でございますから、規模の利益というようなものはあまり出ないと思うのです。通常製造業におきましては、設備を倍にすれば三割方生産性が上がるといわれるのでございますが、タクシーの場合は、これだけの労働集約型産業でございますから、そういうことはまずないだろうと思います。特にほかの輸送事業を考えてみますと、航空にいたしましても、あるいは海運にいたしましても、さようでございますけれども、その合理化というものは何かといえば、大型化あるいは高速化、あるいはせめて省力化という大体三つの要素で今日生産性を上げていると思うのでございます。現に航空機においては、ついこの間まで高速化、大型化ができないときに、世界の航空会社で黒字会社というのはパンアメリカン一社であったと思うのでございます。海運においてもまたしかりでございまして、今日大型化、高速化ができていればこそ、それによる生産性の向上によって世界の各国が黒字になり、またわが国においても黒字をもたらしているわけであります。
 そこで、タクシーという事業をほんとうに考えてみますと、労働集約型の産業であるというだけでなくて、まず第一、高速化ができるか、東京において。いまおそらく時速二十キロくらいだと思うのでございますが、これは私は、いまの道路事情からいえば、低速化することはあっても高速化する見込みは非常に少ないと思うのです。大型化ができるか。道路事情からちょっと不可能だろうと思うのでございます。省力化ができるか。これまた運転者は一人は必ず要るわけでございます。そういうことを考えますと、これはやはり非常に生産性の低い事業といわざるを得ないわけでございます。
 そこで、企画庁の方がおられましたら伺いたいのでございますが、今日の消費者物価高の原因は、政府当局がしばしば説明しているように、一方において、急激なる日本経済全体の成長のもとに、生産性の高いところと低い企業がいま混在しておる。そしてしかも、労働賃金その他は、生産性の高いところが一つ相場をつくっておるが、生産性の低いところが自分なりの生産性に合わせて賃金の高騰その他をやることができない。やればそこに問題はないのだが、今日のように労働不足の事情のもとにおいて、それは言うべくして行なうべくもない。特に技術革新の時代になりますと、技術そのものは進むけれども、労働そのものは非常に単純化して代替性が出てくる。しかも労働力は全般として不足しておりますから、どうしても、もし自分たちの生産性に合わせて給料をきめるということになれば、労働力の確保が得られない。ここに当然、それらのものは企業の自己防衛上、扱っている消費者物資あるいはサービス料金を上げざるを得ない。その過程は、また同時に逆の面から見れば、日本の生産性の向上に均てんしていくという過程としても把握できるけれども、そこに最大の問題がある。したがって、もし消費者物価全体を押えようとするなら、設備投資を中心とする総需要を押えるか、あるいはこれは望むべくもないかもしれぬけれども、高生産を上げたことがその自分なりの生産性をすぐ賃金にはね返すというようなことではなくて、平均の生産性程度にもし賃金の高騰をとどめることができれば、まあ消費者物価というものはある程度安定するであろう、こういうことがいわれておるわけでございますが、いま私の言った所見がもし違っておりましたらお話し願いたいと思うのでございます。
#35
○矢野政府委員 大筋におきまして、大体先生の言われましたとおりだと思います。
 いまお話しのように、消費者物価が上がっております原因は非常に多岐にわたっておりますが、一つの大きな要因が、生産性の上昇率が産業によってかなり違うということがあります。特に日本経済の場合に、全体の生産性の上昇テンポは諸外国に比べて早いだけに、また産業間の生産性の上昇率の格差も大きくなっておる。一方、賃金所得のほうは、昭和三十五、六年ごろから、従来労働がとかく余りぎみであるのが逆に労働不足ぎみの経済に移っていくということを背景としまして、賃金所得のいわゆる平準化作用が起こってくる。その結果、生産性の上がり方の早いところに比べて、生産性が上がりにくい部門が、どうしても相対的にコストが高くなるという状況があります。ただもちろん、いま申しましたことは、相対的にコストの動きが違うということでありまして、それから直ちに全体の物価水準が必ず上がるということには本来ならないわけでありますが、しかし、現状におきましては、あるいはここ数年来の動きを見てまいりますと、生産性が非常に上がったところ、そういう産業においてもあまり価格を引き下げないようないろいろな仕組みが一方でできており、他方、コストが上がっているところは比較的それを安易に――安易というと語弊があると思いますが、それをとかく価格の引き上げのほうに転嫁していくような仕組みができてきておる。また、そうした仕組みの背後には、いま御指摘のように、全体としてやはり需要が超過ぎみである。これはしかし景気の局面によって違いますが、概して申しますと、超過ぎみである。特にここ数年来は、御承知のように、非常な高度成長のもとで需要が非常に強くなってきておる。そういう背景のもとでいろいろとかく問題が起こりますと、価格、賃金の引き上げによって切り抜けていこうという機運が強まってきておる。その辺の、大体先生が言われましたことのほぼ繰り返しになるかと思いますが、そうしたことが複合して現在の物価上昇が起っておるということ、そういう状況だと考えております。
#36
○村山委員 もしそうであるとすれば、タクシー運賃はいま認可料金になっておりますが、政府の公共料金抑制、それから大衆性、タクシーの大衆性という点から押えておることからなんでございますが、もしそうでなければ、いま言ったような物価上昇の原理から申しまして、そしてまた、タクシーというものは、おそらく理髪屋さんよりももっと生産性を上げるのに困難する業種であると思うのでございますが、もしそうでなければ、当然上がる性質を持っておるということをいま皆さま方が間接にお認めいただいたものと思うわけでございます。先ほどこの提案理由の中でいわれておりますように、実車率が非常に上がっておる。せめて残された企業家努力というものは、実車率を上げる以外にないのではなかろうか。つまり、料金が押えられておるところに、高速化もあるいは大型化もできない。省力化もできない。一車当たりの実車率をどんどん上げるということがせめて残された道ではないか。これは非常に売り手市場だという見方もございますけれども、その売り手市場になっておる理由、並びに運転者が確保できないというその裏には、実はそのタクシー制度の特殊性からいって、料金というものが多大に関係しておるように私は思うのでございます。それだけに、この公共料金、先般上げたばかりでございますけれども、この公共料金を上げためどは、大体収支比率をどのくらいのところに置いてやられたのか、また収支比率が一体どれくらいになったらタクシー企業としてノーマルだとお考えなのか、その点をちょっと教えていただきたいのであります。
#37
○黒住政府委員 道路運送法に規定がございまして、適正な利潤を含むものでなくてはならないということがございますが、それを現在の資本の額等から見まして、全体といたしまして見た場合には、中小企業が大部分でございますので、東京の場合におきましては、おおむね一〇二%ないし一
〇三%の収支比率であれば一割配当は可能であるということを目標にいたしております。したがいまして、適正な利潤を維持いたしますためには、そういう線が維持できればこれが理想であるというふうに考えております。
#38
○村山委員 関連してお尋ねしたいと思いますがきょうの新聞を見ますと、物価安定政策会議の提言として、今日の消費者物価の高騰に行政機関が介入することがかえって物価を上げている面がある、その一つの例としてタクシーが出ているわけでございます。しかし、おっしゃるように、確かに私は、タクシー事業というものは、ほかの輸送機関に比べますと、その本来の独占性というものは少ない業種だと思う。いわば自由競争にかなり適しておる事業だと思うのでございます。今日のタクシーの状況を考えますと、先ほど言ったように、せいぜい戦前に対して物価倍数で三百何十倍、それを反映して、従業員のほうも、ほかの業種に比べて非常に給与の上がり方が少ない。しかも生産性の向上の余地のないということを考えますと、なかなか自由にしたからといって直ちに現時点で料金が下がるようには私は思わないのでございます。逆に物価をちょっと調べてみますと、非常に生産性の低い、労力によらざるを得ない理髪が、戦前に対して千倍以上になっておるというあたりを見ますと、その点は非常に疑問に思うわけでございます。
 自由企業としては、確かにほかの産業に比べて適するが、いまのような事情のもとでこれを直ちに料金を野放しにした場合にはどういう現象が起きるかというようなところを、もし企画庁のほうでその点を検討されたことがあれば、ひとつお話し願いたいと思います。いかがでございますか。
#39
○矢野政府委員 物価安定政策会議の行政介入に関します提案は、昨日いただいたばかりで、まだ十分中身を検討してございませんが、提案でいっておりますことは、これまでのところ、先ほどもお話が出ておりましたが、輸送人員の増加に比べて、車両の増加が相対的に少ない状況である。これは一つには、やはり免許制度に問題があるのじゃなかろうか。今後は免許制度をもっと弾力的に運営したらどうか。たとえば一定の適格条件を備えているもの、あるいは提案の文句によりますと、一定の欠格条件がなければ免許していくというように考えていったらどうか、こういう趣旨のようであります。その中身、まだいただいたばかりで、十分検討しておりません。
 それで、先ほどからお話のあります料金の点に関連いたしますが、確かに産業によって性格が違います。生産性の上がりにくいものと上がりやすいものとでは、どうしてもコストが相対的に違うということは御存じのとおりであります。何といいましても労働力が不足してくる、人手が高くなってきますと、この影響を受ける産業は、どうしてもコストが上がりがちである。しかし、一方で、人手が安いとき、人手が余っているときにできた仕組みは、人手が高くなってくる、人手が足りなくなってくれば、それに適応するような仕組みなりにまた改善していかなければならないということも、当然一方で必要だと思います。たとえば理髪の例がよく出ておりますが、確かに、理髪の場合には人件費が非常に大きくて、非常に上がりやすい産業であります。コストが人件費の高騰に伴って高くなりがちな産業であります。しかし、そうした人手が高くなっていけば、今度そのサービスが高いということを前提にして、それをもっと有効に活用していく。同じ理髪の仕組みで人件費の上がった分は全部価格に転嫁するということでは通用いたしませんで、御存じのように、アメリカと日本では理髪の制度がだいぶ違います。頭は大体刈るだけというのがアメリカあたりの常識であります。そういうふうに人手が高くなれば、それに応ずるような料金制度、仕組みを変えていくというようなことは必要だと思います。
 タクシーの場合におきましては、先ほどからお話がすでに出ておりますように、能率的な経営のもとにおける適正原価、適正利潤が基本になると思います。経済企画庁といたしましても、別段これを特に無理に押えているというふうなことはございません。これは運輸省が認可されるわけでありますが、それにあたりまして、特に六大都市の料金の場合には閣僚協議会に付議する。その場合に経済企画庁と協議するということになっておりますが、御承知のような物価の情勢でありますので、私どもと協議させていただいておるわけであります。その場合には、もちろん理由のいかんを問わず上げないということではございません。ただ、認可料金になっておりますと、自由な価格競争をするものと違いますので、その経営の内容、原価の内容を十分検討していかなければならない、そういうたてまえで処理しております。
#40
○村山委員 意見にわたりますが、私は、いまの状況から申しまして、増車なりあるいは免許を比較的ゆるやかにするというようなことは、確かに下げるほうにいくと思うのでございますが、料金の認可制というものを考え、それから現在の状況を考えまして、いまの料金、そしてタクシー事業の現状を、先ほど申しました価格面からも給与の面からも考えまして、その得失から考えますと、いまこれを認可を離せば、現状では少なくとも上がると私は思うのでございまして、将来十分その辺を御検討願いたいと思うのでございます。
 時間がございませんので、先を急ぎたいと思いますが、それに関連いたしまして、運転者の増加というときに、いまなかなか運転者の確保ができないので、法人企業については、残念ながら増車計画そのものがなかなか出てこない、運転者確保の不足から出てこないというのでございますが、個人タクシーの問題がございます。個人タクシーは、私の承知している限りでは、かなりなりたいという人が多いのでございます。運輸省もその辺お考えになって、どんどんいま個人タクシーの認可基準を円滑にするように努力されておることは承知しておりますが、さらに一そうの推進が望ましいと私は思うのでございます。
 その理由としましては、第一、需要があること、それから第二に、先ほど申しました労働集約型の産業でございますから、規模の利益というのがあまりない。したがって、法人企業であろうが個人企業であろうが、国民経済的に見て、それほどの違いはない。特に料金違反という問題を考えるときに、経営者であり、運転者であるほうが、どうしても少ないであろう。また、これらの労働というものは非常に特殊な労働でございまして、労務管理がなかなかできない性質を持っておる。歩合給がある程度やむを得ないということも、そこに一つの労務管理が非常にむずかしいところ、自動的な労務管理をする必要性から出ていると私は思うのでございます。それらの点を考え合わせますと、いまの料金違反とかその他のことを考えますと、私は、今後は個人タクシーの伸びる客観的な素地を持っていると思いますので、これも私は意見にとどめておきますが、どうぞひとつ十分御検討をわずらわしたいのでございます。
 時間がありませんので、先を急ぎます。
 その次は、純法律的なことをお伺いしたいのでございます。この法律は、いわば現在の道路運送法における取り締まりが、必ずしも現在のお客の利益の確保が十分でないという観点で、しかも臨時的につくられているのでございますが、この法律の仕組みの中心は、登録の取り消しと、それから二年間以内の再登録の禁止ということにありまして、そして登録されていない乗務員は乗せてはならないという、事業者に対する義務を命じておるところが、私はこの法律構成の中心であると思うのでございます。
 そこで、法制局にちょっとお伺いしたいのでございますが、九条の登録の取り消し、あるいは二年間以内の再登録禁止期間を定めるという決定、これはことばで見ますと事実行為のように見えますけれども、これは行政処分でございましょうね。
#41
○角田政府委員 御承知のとおり、行政処分でございます。
#42
○村山委員 そこで、私たちは、これ以外になかなかないと思うのですけれども、非常に変わった法律構成をとっているものですから、やや法律的にひっかかる点があるので、その辺の疑義をお聞きしたいのでございます。
 この法律は単独法の形をとっておりますけれども、その内容からいいますと、道路運送法の特例的な立場をとるのか、あるいは同じでございましょうが、補充法と考えるべきなのか、この辺の法律体系上のお考えをひとつお聞きしたいのでございます。
#43
○角田政府委員 純粋に法律的な問題としてお答えしたいと思いますが、普通、一般法に対して特別法ということばがございます。特別法ということばを厳密に使いますと、ある事柄について特別な規制をしているものが特別法でございますけれども、その場合には、特別法のほうが優先的に適用されて、その限りにおいて一般法の適用は排除される、こういうのがほんとうに法律的には正しい意味の特別法でございます。その観点から申しますと、この法律は、実は道路運送法の適用を排除しておりません。道路運送法の上に立って、むしろ付加的、補充的にいろいろな特別な規制をしております。したがって、そういう意味では、厳密な意味の特別法とはいえないわけでございます。ただ、私ども自身もそういう使い方をいたしますが、一般に特例法とか特別措置法というものも含めまして、つまり、そういうある一つの法律に対して付加的、補充的な定めを特別にきめたものも含めまして、特別法ということばの使い方もございます。したがって、広い意味では確かに特別法ということがいえるだろうと思います。
 なお、補充法ということを御指摘になりましたけれども、いま私が申し上げたような意味で付加的、補充的な定めをしておる、さらに道路運送法の上に立って規制を強化しておる、そういう意味において付加的、補充的であるから、補充法という言い方も可能かと思います。ただ、私どもは補充法ということばは一般には使っておりませんので、本法に対して付属法であるとか、母法に対して子法、そういう使い方をいたしております。
#44
○村山委員 憲法第十四条によりますと、国民は法の前に平等である。特にあそこに書いてありますことは、信条とか人種とか門地とか社会的身分によっては差別されないということを書いてあるわけでございます。必ずしもそれにぴったりいきませんけれども、いまの登録の取り消しあるいは二年間以内の登録の禁止という処分、これは行政処分でございますが、運転者の立場で考えてみますと、これはなかなかたいへんなことなのでございます。そういった憲法十四条と直ちにどうだとは申せませんが、法の平等性という見地から申しますと、これは一体公共の利益の点からやむを得ず許されるということになるのか、必要があればよろしいというのか、その辺の法律的の感触でもけっこうでございますが、お話し願いたいと思います。
#45
○角田政府委員 御指摘のように、憲法十四条は、人種とか信条、性別等によって区別してはならないということが規定されております。これも先生がいま御指摘のように、憲法十四条の解釈としましては、あそこに列挙された事項に限らず、およそ不合理な理由による差別というものは、憲法においては、実際上の扱いにおいても、あるいは法を定立する場合においても禁止しておる、こういうふうに一般に解釈されております。したがって、そういう意味におきましては、確かに、特定の地域において登録制がしかれることによって、特定の地域におけるタクシー運転者の職業の自由がこの法案に関する限りにおいては制限されるわけであります。したがって、そういうことが合理的な理由でなければ、これは憲法十四条の問題に当然なり得ると思います。ただ、先ほど来提案理由その他で御説明申し上げておりますが、そういうところに合理的な理由があれば、憲法十四条の趣旨は、あらゆる場合において、あらゆる事項について絶対に平等であることを要求するものではございませんので、そういう合理的理由がある限り、特別の規制を加えるということは、別に憲法十四条の問題にはならないと思います。
 なお、例として申し上げますならば、本法律案と同じように、地域的にある一定の地域を特定して、ある特定の規制を実施している立法例というのは、これは枚挙にいとまがないほどございます。たとえば港湾労働法であるとか、あるいは港湾運送事業法であるとか、そのほか公害関係の法規は、大体一定の地域のみを指定して、その地域についてのみ特別の規制をやっておるわけであります。これらはいずれも憲法十四条との関連におきましては合理的な理由があるということから、このような規制が行なわれているものと信じられます。
#46
○村山委員 時間もございませんので、今度は法案の個々の内容について、若干お尋ねしたいと思うのでございます。
 やはりこの法律の一番基本になるところは、登録の取り消し並びにそれに伴って当然出さなければならない再登録の禁止期間だと思うのでございます。政令で定めるところはさしずめ東京、大阪を予定されていますので、これはひとり運転手のみならず、広く利用者も知っておく必要があろうと思うのでございますが、お聞きしたい第一点は、この取り消し、それから再登録禁止期間についての運用の基準のようなものをおつくりになるつもりかどうか、それを広く公表するおつもりがあるかどうか、その点をまずお伺いいたしたいのでございます。
#47
○黒住政府委員 この法におきましては、登録の禁止をいたします期間は、最高二年ということに相なっております。それの運用につきまして基準を設けたらどうかという御質問だと思うわけでございますが、いろいろ起きてきます事案に対しまして、的確に事前に基準をもって対処するということは、いろいろ困難かと思うわけでございます。しかしながら、これは公平を期した運用をする必要があると思うわけでございまして、それにはまず一応われわれとして運用上考えておりますのは、単純な乗車拒否等で道路運送法違反として行政処分を受ける場合があるわけでございますけれども、そういう場合におきまして、初犯の場合と累犯の場合とを差別する。たとえば初犯の場合におきましては一カ月、累犯の場合におきましては三カ月、そういう場合におきますいわゆる運転手の違反の場合でございます。それから乗車拒否に関連して傷害等が起きたような場合、それから乗車拒否の常習者で全く改俊の見込みがない、あるいは酔っぱらい引き逃げであるとか、婦女暴行というふうなものがからんでまいりました者は、これは非常に著しくまずい事案でございますので、まあ二年ということに相なるのではないかというふうに思います。われわれといたしましては、現在の状況等から見て、公平に実施していきたいと思うわけでございます。ただ、この法律は、単に登録の取り消し、禁止ということが目的ではなくして、良質な人たちによく働いてもらおう、ただ例外的にそういう事態がありました場合において、公平にこれを適用していこうという趣旨でございますので、それらの点につきましては、今後実態に即しまして適正に考えていきたいと思っております。
#48
○村山委員 時間がございませんので、これで最後にいたしますが、ひとつ資料を出していただきたいのは、適正化事業実施機関、それから指定登録機関、それの事業計画とおおよその予算が明らかになりましたら出していただきたいと思います。
 それに関連してちょっとお伺いしたいのに二点ございまして、一つは、適正化事業をやるために、そのうちの研修については国家から補助金が出ているわけでございます。同時にまた、タクシー一台当たりの負担金が出ているわけでございます。これがすでに運賃引き上げのときに原価計算上計算されておるということを聞いておるのでございますが、その点を確かめておきたい。したがって、もしこの法案が通りませんと、結局運賃引き上げの原価の中に計算されて、利用者は当然その見合いとして適正化ということを期待しておるだろうけれども、運賃引き上げのほうだけそれが織り込み済みになって、そして適正化のほうは行なわれないという結果になると思うのでございますが、はたして運賃計算の中に入れられているかどうか、それを第一点として確かめたい。
 それから第二点といたしまして、諮問委員会の規定があるわけでございます。
    〔宇田委員長代理退席、委員長着席〕
そこで、この指定登録機関の諮問委員会と適正化実施機関の諮問委員会の構成についてどういうふうに考えておるか。それからそれは代表者の諮問機関になっておりますが、それぞれの機関についておおよそどういうことを諮問することを期待しておるか。諮問事項として予定される概略はどんなものであるかということを最後にお伺いしたいわけでございます。
#49
○黒住政府委員 先般の運賃改定におきましては、東京の場合におきまして約二二・五%の引き上げをしたわけでございます。二二・五%の中におきまして、近代化センターに関する経費の増加額といたしまして〇・七二%、それから大阪の場合におきましては、東京の二二・五%に相当するものが二二%でございますが、その中に〇・八〇%を見込んでおります。それが第一点でございます。
 第二点は、適正化事業諮問委員会は法律の第三十九条にございますが、この第二項に、適正化事業実施機関の代表者の諮問に応じまして「負担金の額及び徴収方法その他適正化業務の実施に関する重要事項」、重要事項と申しますと、事業計画でありますとか収支予算でありますとか資金計画、それらにつきまして調査審議いたすと同時に、必要と認める意見を実施機関の代表者に述べることができるというふうになっております。
 それから諮問委員会の委員の構成は、同じく三十九条の第三項にございまして、これは四者構成になっております。タクシー業者の団体が推薦する者と、タクシーの運転者が組織する団体が推薦する者、それから学識経験のある者、それから次にタクシー業の利用者というふうに、四者構成になっておりまして、これは合計二十人以内でもって構成する予定にいたしております。
#50
○村山委員 最後に、希望だけ述べて、私の質問を終わります。
 この法律は、いまの客観情勢のもと、それから道路運送法上の不備な点、その辺のいわば非常に微妙な穴を埋める規定でございまして、しかも使いようによっては刃物が切れ過ぎる、またへたに使えば意味がない法律だと思うのでございます。したがいまして、これが成功するかどうか、私はかかって運用にあると思いますので、先ほど申しました料金の運用の措置も含めてこの事業法全体がほんとうにむずかしい運用だと思いますが、慎重にかつ勇気をもってこれを運用されることを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#51
○福井委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後一時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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