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1970/10/21 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 大蔵委員会 第36号
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1970/10/21 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 大蔵委員会 第36号

#1
第063回国会 大蔵委員会 第36号
昭和四十五年十月二十一日(水曜日)
    午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 毛利 松平君
   理事 藤井 勝志君 理事 村上信二郎君
   理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君
   理事 松尾 正吉君 理事 永末 英一君
      宇野 宗佑君    木野 晴夫君
      木部 佳昭君    木村武千代君
      坂元 親男君    登坂重次郎君
      中島源太郎君    中村 寅太君
      丹羽 久章君    福田 繁芳君
      坊  秀男君    森  美秀君
      吉田 重延君    平林  剛君
      堀  昌雄君    八木  昇君
      貝沼 次郎君    春日 一幸君
      竹本 孫一君    小林 政子君
 委員外の出席者
        公正取引委員会
        委員長     谷村  裕君
        経済企画庁国民
        生活局長    宮崎  仁君
        大蔵政務次官  中川 一郎君
        大蔵大臣官房審
        議官      前田多良夫君
        大蔵省主税局長 細見  卓君
        大蔵省証券局長 志場喜徳郎君
        大蔵省銀行局長 近藤 道生君
        大蔵省国際金融
        局長      稲村 光一君
        国税庁長官   吉國 二郎君
        国税庁直税部長 江口 健司君
        国税庁間税部長 塚本石五郎君
        日本専売公社総
        務理事     園部 秀男君
        参  考  人
        (富士銀行取締
        役頭取)    岩佐 凱實君
        参  考  人
        (日本銀行総
        裁)      佐々木 直君
        大蔵委員会調査
        室長      末松 経正君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月九日
 辞任         補欠選任
  美濃 政市君     中澤 茂一君
  二見 伸明君     鶴岡  洋君
同日
 辞任         補欠選任
  中澤 茂一君     美濃 政市君
  鶴岡  洋君     二見 伸明君
同月二十日
 辞任         補欠選任
  吉田  実君     中村 寅太君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国の会計に関する件
 税制に関する件
 金融に関する件
 専売事業に関する件
     ――――◇―――――
#2
○毛利委員長 これより会議を開きます。
 この際、去る十月九日就任された稲村国際金融局長より発言を求められておりますので、これを許します。稲村国際金融局長。
#3
○稲村説明員 稲村でございます。先般国際金融局長を拝命いたしました。はなはだ浅学非才の身でございますが、何とぞよろしく御指導のほどをお願い申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
#4
○毛利委員長 金融に関する件について調査を進めます。
 本日は、まず銀行の貸し付け業務の問題について、富士銀行取締役頭取岩佐凱貴君に参考人として出席を求め、その意見を求めることといたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。藤井勝志君。
#5
○藤井委員 私は、このたび十九億にのぼる巨額な不正融資が行なわれました富士銀行の不祥事件をめぐって、参考人として御出席をいただいております岩佐頭取にお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。日ごろ尊敬しておる岩佐さんに、あなたが頭取をされております富士銀行の不祥事件について質問をしなければならぬことはまことに残念に思うわけでございますけれども、是非をただすことは、現在の事件の推移から見まして、当委員会の責任であり、同時にまた、岩佐さんは全国銀行協会の会長という御立場でもありますので、むしろ御本人もこういった機会を得てはっきりその是非を明らかにしたいというお気持ちであろうと思うのでございまして、以下、時間が制約されておりますので、ひとつ答弁も簡潔にお願いをいたしたいと思います。
 巷間伝えられるところによりますと、頭取はどこかで、高い授業料だったというふうな発言をされたようなことも耳にするわけでございますけれども、少なくともこのたびの事件は、富士銀行と申しますと最上位銀行といたしまして自他ともに許す銀行でございまして、その雷門支店において十九億もの巨額な不正融資が行なれておったということは、頭取をはじめ幹部諸君の関係あるなしにかかわらず、重大な責任を感じておられると私は思うのでございまして、香港からパリまで事件は発展をしたという、いわば国際的スケールの事件になりまして、日本の銀行の信用を失墜し、同時にまた実害、実損もあったわけでございますから、こういう事件について、先に結論のようなことをお尋ねいたしますけれども、頭取はどのようにお考えになっておるか。まずその点をひとつお尋ねいたしたいと思います。
#6
○岩佐参考人 いま藤井委員からいろいろ御指摘を受けたわけでございますけれども、今回の当行富士銀行の不祥事件につきましては、私といたしましてはまことに監督不行き届きの次第でございまして、世間をたいへんお騒がせしておりまして、この点についてはまことに申しわけなく存じておりまして、心から深くこの機会におわびを申し上げたいと存ずるのでございます。
 今回のことが起こりました原因等につきましては、私といたしましてもいろいろな観点から深くその原因のよって来たるところを究明いたしておりまして、銀行の事務のあり方、内部の管理のやり方あるいは行員の服務規律の問題、あるいは行員の指導の問題その他の点につきましても十分反省をいたしまして、改めるべきところはすみやかに改めてまいりつつもございますし、さらに検討を進めまして改めてまいる所存でございます。のみならず、銀行の姿勢そのものにつきましても私といたしましては深く反省をいたしておるところでございまして、いまも御指摘がございましたように、銀行は信用を第一とする業務でございますし、その信用を傷つけるようなことが起こりますと、これは富士銀行のみの問題ではございません。全銀行界の問題であり、全金融界の問題であり、いまも御指摘がございましたように、日本の経済は今後国際化がますます進んでまいります。銀行の業務も国際化が進んでまいります中におきまして、国際的な信用をかりに傷つけるというようなことがあれば、日本経済にとりましてもはなはだおもしろくないことに相なるわけでございまして、こういう点につきましても、今回の事件につきましては私いろいろと反省をいたしておる次第でございます。
 今回の不祥事件は金額もきわめて多額でございますので、いろいろ世間からは疑惑やあるいは憶測等が生まれておりますことは、これは一面においてやむを得ないことかとも存じますが、まことに幸いにいたしまして、司直の格段の御努力によりまして犯人が逮捕されまして、この逮捕されましたについての司直の皆さま方の格別のお骨折りに対しましても、私としては心から感謝申し上げている次第でございますが、司直の取り調べが進んで、そしてこの事件の全貌が一段とはっきりいたして、そういう世間で生じております憶測、疑惑等がはっきり解明されますことを心から念願いたしておる次第でございます。
 私といたしましては、今回の事件を私なりにとうとい教えとして受け取りまして、それで再びかかることのないようにすることはもちろんでございますけれども、いろいろな点につきまして深く反省をし、その反省の上に立ちまして、今後、傷つけられました信用、不名誉の挽回のために、もとよりはなはだ微力でございますけれども、粉骨砕身、この不名誉、信用の傷つけられたものの挽回のために努力を傾けてまいりたいというのが私の現在の心境でございます。何とぞこの点は御了承いただきたいと存ずるのでございます。
#7
○藤井委員 世上、二年有半にわたる長期間巨額な不正融資が行なわれたということに対して、ただ単に菅沼一人の犯行ではないという見方もありますけれども、この点について私は大蔵省銀行当局から質問に先立ちまして事情を一応調べまして、私なりに、これはやはり単独犯行であるというふうに一応考えられます。ただ、この場で頭取からこの点についても真相を確かめたいのでありますけれども、時間がございませんから次に移らせていただきまして、かりに菅沼の単独犯行だとしても、内部牽制組織によってなぜこれが早期に発見できなかったかという問題に質問を移させていただきます。
 去る十八日の朝日新聞でしたか、「富士銀事件無責任体制明るみ」こう書いて、「富士銀行雷門支店の不正融資事件について警視庁捜査二課は、さきに銀行上層部はほぼ無関係で、同支店元副長菅沼正男と「トムソン」元社長有馬哲こと韓国人金東善が仕組んだもの、との判断を明らかにしたが、その後十七日までの菅沼の調べなどから、1銀行内部のずさんな管理体制2無責任ムード3行内での不祥事を内々に処理しようとする根強い秘密主義――が事件を大きくしたとの見方を強めた。」こういう報道でございますが、私も先般事前調査をいたしました結論として、まず第一に、雷門支店は従来から預金が主体の銀行でございます。しかるに融資残高が急増しておるという事実が二年有半の途中から出ておるわけでございまして、こういったことが、なぜ支店長はこれに気づかず、本店もこれを指摘できなかったかということと、それからもう一つ、ここに写しをもらっておりますけれども、買入外国為替支払伝票明細表というもの、これを本店の電子計算課あてに送るものを、菅沼が独断で自分が支店の内部に保留しておったというこの事実でございます。したがって、この集中管理をする本店ではこれがわからないということはいえますけれども、支店に伝票がわりにそれが使われておったということは、なぜ支店へ本店から検査に行くなり調べてみてこれが発見できなかったか。内部のいわゆる検査あるいは相互牽制組織、こういったものがあれば未然に防ぎ得た、あるいはまたこれほど拡大しなくて防ぎ得たのではないか、こういうふうに思われますので、この点についてひとつ頭取から御答弁を願いたいと思います。
#8
○岩佐参考人 まことにいま御指摘がございましたように幾多の問題点があるわけでございますが、第一番に申し上げたいのは、機構といたしましては一応二重三重の牽制組織はできておりましたのでございますけれども、その点が全く実行に遺憾な点があり、作動されなかったという点が問題であろうかと思うのでございます。根本の問題といたしましては、支店長、次長等、営業店の責任者が、基本的な銀行の事務管理について欠けるところがあったということでございます。毎日の日計表、バランスシートをしっかり見、管理いたしておりますれば早期に発見できたわけでございますけれども、その点について大きな抜かりがあったということが一つ。それから次は店内のコミュニケーションと申しますか、そういう点についても欠けるところがあったということ。それから次の点は、支店長、次長等が外国為替業務に経験がなかった上に、菅沼本人は十五年間にわたります外国為替の経験者であったということ、そこで菅沼を支店長、次長等が過信を通り越して盲信をしておったということ。そういうような基本的なところから、店内における相互牽制体制というものが、機構としてはあるにもかかわりませず、全く菅沼個人のやるままにまかされて相当な年月を経てしまったということでございまして、この相互牽制体制の点につきましても、今後こういう点が再び起こらないためには実行の面で改善されていかなければならない点が多々あったわけでございます。
 もう一つ、御指摘のございました検査の問題でございますけれども、自店においても自店検査制度というものはあるのでございますが、これが、当該係の検査については、その当該係の係長が自分の係を検査するというたてまえになっておりました。その点について非常に遺憾な点があったのでございまして、これはさっそく改めたわけでございます。それから本店からの検査でございます。本店からの検査は、通常の場合ほぼ一年半くらいの間隔をおいて検査が参るのでございますけれども、本来ならば、検査の性質からいいまして抜き打ち的に検査をやるというのが検査の目的が達せられるのでございますが、それが予告検査と申しますか、あらかじめいついつに検査に行くというようなことで検査をやっていたというような点もございまして、したがって、その間に自分のやっております悪事をびほういたすための時間的な余裕がここにつくられたというようなこともあったわけでございます。
 いずれにいたしましても、そういう検査のやり方についての問題、そして内部チェック組織にいたしましても機構どおりきちっと実行されていなかったというような点、そして菅沼本人を盲信いたしておりますがゆえに相互牽制体制というようなものも十分に作動しなかった、そういうようないろいろな点が今回のことを早期に発見できなかった原因であろうかと思いまして、こういういろいろな点につきましては私どもとしても深く反省をし、改めるべきことはさっそく改め、本部においても、かりにそういうようなことが起こりかけた場合には早期に発見できるような体制もつくった次第でございます。
#9
○藤井委員 ただいま頭取からいろいろその後の内部牽制体制、管理体制についてお話がございました。これはもう少しお伺いしたいこともございますけれども、次に移らせていただきます。
 トムソンに対する不正貸し出しというものが、日本コカ・コーラの預金獲得という、いわゆる預金獲得を主眼にしたためにこういったとんでもない事件に発展をしたのではないかというこの事柄については、一応銀行局から私事前に聞きましたので、これまたこの場でもう一ぺん頭取から真否のほどをただしたいのでありますけれども、私は、これもまた割愛をいたしまして、次に事件発見後の措置について、どうも銀行という社会とわれわれの一般の常識というものとが少しかけ離れているといいますか、すなわち、四月初めにはすでに菅沼なる者が十九億にのぼる巨額な不正融資をしているという事実は発見された。ところが、その後、表に出たのは八月下旬ということになるわけでございますが、銀行から大蔵省当局へは口頭で六月三十日に報告をされておる。しかし、正式な告訴手続は九月十四日ということで、当局への届け出のおくれた理由ですね。一般的には、事故届けをおくらせたり、また、強く言えば隠すという秘密主義が銀行にはある。これは私も反面わからぬことはないのです。やはり債権をできるだけ確保しようという、いわゆるコマーシャルベースに乗った銀行の経営態度というものは、これは預金者保護ということにもつながるわけでございますから、一がいに私はこれを批判するわけにもまいらぬと思いますけれども、今度の事件はきわめて簡単な盲点をねらったとはいいながら、悪質な手口でやっておる。簡単なだけに、考えようによっては非常に悪質である、こういう事件であり、しかもこれが香港からパリにまで広がるということにまでなったということは、日本の銀行というものが国際社会の全体にその醜をさらけ出したということにもなるわけでございますから、私は、被害者である銀行が、その主役をなした有馬という男と会って債権を確保するために、香港までわざわざ担当課長を――管理課長ですか、向かわせたということは、世の中の常識からいえば逆のような感じがする。これは、債権確保のためにやむを得ずやったという反面もありますけれども、そこら辺のものの取り扱い方というものはかえって、猟師山を見ずで、目先の債権確保に急なるため、全体的友銀行の大きな信用を失墜するという無形の損害というものをどう考えたらいいか。こういったことを考えますと、適当なときにふん切りをつけて、是は是、非は非として結論を出すべきではないか、勇断をふるうべきではないか、こういうふうに思うわけでございまして、これはあとから気がつくということも反面ありますけれども、こういう点について、私はこの事件に限ってはいささか、ただ債権をりっぱに取り立てなければいけない、表に出したのではその企業が倒産する、だから内々やった、こういったこととは事件の性質が違う。こういう問題に対しては頭取はどのような御判断をされたのか、これをひとつ御答弁願いたいと思います。
#10
○岩佐参考人 いまおっしゃいましたことにつきましては、私も事後ながら深く反省をいたしておる点でございまして、おっしゃるように金額がはなはだ巨大なものであり、ある意味におきましては単純と申しますか、そういうような事件でもございましただけに、仰せのような配慮が当然あるべきであったかとも存ずるのでございますけれども、四月二日の、私どもがこの事件につきまして菅沼の犯行を承知いたしました時点におきましては、有馬のやっておりましたトムソンは営業を続けておる状態でございましたし、同時にトムソンの会社といたしましては手形を銀行にきちっと差し入れてもございましたし、それからトムソンの会社の帳簿の上においても債務としてはっきり載っておったというような事情もございまして、私どもといたしましては一応トムソン、有馬を相手方として、そしてその債務をはっきり確認させ、そして全く無担保の状態であり、回収のめども全然ついていない相手方でございましたから、その担保固めもいたし、そして債権の回収にもでき得るだけ努力いたしたいということから、有馬を相手方といたしましてその間の交渉を続けてまいっておった次第でございます。そしてそのときにおきまして、菅沼はもちろん犯罪を犯しておるという事実ははっきりいたしておりましたわけでございますけれども、有馬氏がはたして刑事上の犯罪人であるのかないのかというような点につきましては、若干の法律上の疑義もあったりいたしました点もございまして、その間御当局への御連絡もおくれたというような点もあった次第でございますが、そういうようなことにつきましては、いまも申し上げておりますように、私どもとしては、今回のことはもちろんでございますが、かりに今後何か、事柄は非常に小さくても似たような事柄が起こりました場合におきましてのあり方としても、深くその点は反省してまいりたいと思っておるところでございます。
#11
○藤井委員 だいぶ時間がもうすでになくなってまいりましたので、はしょって大事なことを質問いたします。
 本年一月及び二月には、このトムソンの融資依頼に対して、経営内容不良として融資を銀行は拒絶をされておる。ところが事件が発覚後の六月の末にトムソンに一億を融資している、こういう事実がございます。これにはいろんないきさつを、私も銀行局から聞きまして、これはなかなかややこしい出入り関係だというふうに思って、盗人に追い金という、こういう印象は、ある程度私自身わかったような気がしますけれども、これまたちょっと頭取から簡単に――まあ、もし長い説明でなければ答弁ができなければ、書面でひとつお答えを願いたいと思います。
 それで第二は、この事件が発覚後、不祥事件再発防止のためにとった処置について、先ほどちょっと触れられましたけれども、責任者の一人である雷門支店の支店長を検査部付という、こういう辞令を出されておるやに承るのです。銀行の本店の検査部へ、まあ悪いことをした者の一味に関連している人間を検査部付というのは、どうも世間の受け取り方として、はたして被害を再び起こさないという銀行の姿勢として世間が見るであろうか。これはどういう事情でそういう手当てをされたのか、これをお聞きすることと、最後に、あなたは全国銀行協会の会長として、今度の苦い経験、残念な事実に対して、とかく銀行界の閉鎖性、管理システムの不備、預金獲得競争、こういったことから問題が起こるというその背景をどのように認識され、これが防止策について、これをよき一つの教訓として対策を考えておられるか。やはり一般には、銀行は依然として社会の最上部に位して、この辺、人のうわさも七十五日というて、ある程度済めば、結局自動的に銀行はもうかるしかけになっておるので、たまたまおたくの島谷取締役ですか、雷門支店の六−八億の実損見込み額をそのまま損金に算入しても、今期利益は前期の百十億を上回ることは確実で、株主や預金者には迷惑はかけませんという、こういう弁明をされておるけれども、こういったことだけで公器としての銀行の責任は断じて済まされない、このように思うわけでございまして、こういう点についてひとつ最後に、頭取であり、かつ全国銀行協会の会長としての御所見を承って私の質問を終わりたいと思います。
#12
○岩佐参考人 ただいまの御質問の第一点でございますが、この点は世間からも疑惑を招いておる一つでございますが、事が、いまもお話がございましたようにやや法律的な問題にわたりますので、この詳細な点を御説明いたしませんとかえって疑惑を増したりいたします点もございますので、はっきりその点を解明いたすために、書面で皆さま方にお渡ししてよろしゅうございましょうか。――それではこれは書面で後日お届けいたすことにいたしたいと存じます。
 それからいまの第二番目の御指摘の点でございますけれども、私といたしましては、今回の事件の事後の処理等につきまして検査部の審査課でいろいろ扱っておる関係もございまして、一応検査部に籍を支店長を置きまして、そしていろいろ今後についての対策も立てていく。さらにいろいろな点についての事情も聞いていくという必要性もございましたがゆえに、一応検査部詰めということにいたしたわけでございますけれども、御指摘の点を考えてみますと、検査部というのはもっと検査に対する権威を持って、内部的に事故が生じていないか、あるいは事故がかりに生じた場合には、それに対して厳然とした態度でもって処していくという部であらねばならない。またそういう仕事場であらねばならないところにもかかわりませず、いまの御指摘のような外部から疑惑を招くというようなことになりましたのは、私としてはちょっと、ざっくばらんに申しますと、予想いたしかねたところでございますけれども、いまの御指摘の点を深く反省いたしまして、この点については今後改めてまいりたいというふうに存ずる次第でございます。
 第三の点につきましては、これは私どものところだけでは必ずしもない問題であろうかと思いますが、御高承かとも存じますが、九月の初めに銀行協会に業務管理等改善委員会というのを設けまして、これは各銀行の頭取がその委員になりまして、現在いろいろ銀行界に対して世間からの御批判もございます。こういうような御批判を十分伺いまして、それに対して深く反省を加えて、改むべきことはすみやかに改めていく、そして日本の銀行の国の内外における信用を高めていくということがぜひしなければならないことであろうかと思うのでございまして、そういう観点から、この委員会は積極的に前向きにいろいろな問題に取り組んでおりますが、その間におきましては、銀行の内部の事務管理体制についていろいろな改むべき点、これがまず第一でございますが、同時に、対外的にはいわゆる過剰サービスというような点もございますので、そういうような点についても改むべきことは改め、そして適正な正しいサービスをいたしまして、世間の銀行に対する御要望にこたえてまいりたい、銀行の使命を果たしてまいりたいということ。その間におきましては、あるいは銀行の預金獲得のための過当競争というようなこともいろいろ御批判もございます。こういう点につきましても、そういうような御批判が出ませんように十分留意してまいりたいということで、今月に入りましてからの銀行協会の理事会で、とりあえずさしあたりやるべきことをきめたわけでございますが、引き続いていろいろな点については検討を重ねてまいっておるところでございます。
 要は、まあいろいろなきれいごとを並べましても、それを実行していくということが大事なことなんであろうかと思いまして、私どもといたしましてもその実行をしていくという点に重点を置いてこれから処してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#13
○毛利委員長 広瀬君。
#14
○広瀬(秀)委員 参考人としておいでいただきました富士銀行の岩佐頭取に若干御質問をいたしたいと思います。
  〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
 先ほど藤井委員も言われましたように、今回の十九億という膨大な不正融資事件、これは金額的にもこの種の不祥事件として未曽有の額であったということ。さらに非常に長期にわたって不正融資が連続して行なわれて、その間に発見することができなかったということ。しかも先ほどのお話にありましたけれども、銀行としてはそれだけの損害があっても何とか黒にはなるのだ、帳じりは黒になっていますというようなことだが、しょせんは善良な預金者の金でこの支払いもなされるということにもなるという問題。しかもそういうところから、銀行内部の相互牽制組織というものがあるにはあるが、それが有効に働いてないという問題点を非常に浮き彫りにしたし、国際化経済時代において、今日これがICPOの活動などを通じ、また外交ルートなどを通じて逃亡先のフランス、香港というように、国際化された大きな事件に発展をした。こういう特色があろうと思うし、しかも富士銀行は御承知のように日本最大の銀行である。預金量が八月末で二兆五千億に達し、融資残高でも二兆二千億に達するという、まさにそういう日本の超一流銀行の内部で起きたということ。しかもたまたま、これはたまたまであって、岩佐さん御自身はたいへん不幸なときに頭取になられたということもあるかもしらぬけれども、とにかく岩佐さんが頭取で、しかも日本の銀行界においても指導性の高いりっぱな銀行マンとしてこられた方が頭取であったということ。しかも全銀協の会長をされているその岩佐さんのところで起こったという、こういうようなことに非常に大きな問題があり、そして連日、この日本ばかりでなしに、国際化した中で大きくマスコミにも取り上げられている事件であるわけなんです。
 それだけに私どもはこの委員会においてこの問題の真相を究明して、どこにこのような事件が発生する原因があったのかということを、銀行の将来のあり方というものを含め、また国際化時代に対応するいろいろな銀行の内部の組織の仕組みの問題、あるいはコンピューター時代における、何でも事務の簡素化、簡素化というようなことでやっていくことがそのチェックシステムというようなものを非常にスポイルしている面はないのかというような問題、いろいろな問題が数多くあるわけでありますが、そういう中で、さらに銀行の預金獲得競争というようなものが世界に例を見ないほど熾烈であるというようなことからくる問題点というようなことについても、前の委員会等においてもそれぞれ指摘をされているところであったわけです。そういうようなことも含めまして、特に銀行のそういう点でのあり方というものが非常に秘密主義だということ。それから債権回収ということだけまず考えて、事態を早期に司直の手に移すというようなことが怠られてきたというような点、これらの問題点がいろいろと指摘をされてきたわけなんです。
 そういうところでまず最初に第一点お聞きしたいのは、同じ雷門支店で、この事件が起こる前に三千余万円にわたる行員による横領事件というものがあった。これは四十二年八月に発覚した事件でありますが、これは匿名で扱った預金のうち三千三百万円を雷門支店の職員が横領という形が出たわけでありますが、この問題について、この雷門支店だけではなしに、もちろん雷門支店の中の内部牽制の問題やら事務の改善の問題やらチェックシステムの改良の問題やらというようなことが十二分にこの段階で行なわれておったならば、この今回の菅沼不正融資事件も防げたのではないかという感すらあるわけであります。この問題などもやはり秘密主義というような形の中で処理をされた、こういうように伺っておるわけでありますが、まずこの点について頭取として――当時は頭取ではなかったかもしれませんけれども、こういう点についてどういう処理をいたしたのか。この点をまずお聞きをいたしておきたいと思うわけです。
#15
○岩佐参考人 いまいろいろ御指摘がございましたが、一々私どもとしては反省いたしておるところでございまして、雷門に以前御指摘のような事件がございましたことも事実でございます。それが銀行のいわゆる、とかく秘密主義というようなところから内々で処理いたしましたというようなことについては、私どもとして深く反省をいたしておるのでございますが、当時御当局のほうへは事後の御報告はさっそくいたしたのでございます。それはしかし、その事柄は必ずしも、今回の事件とは性質が違いまして、これは内部事務の相互牽制というような点が不十分であったがゆえにということではないと私は存じておりますけれども、秘密主義の結果、雷門事件が生ずるような遠因をなしたのではないかというような点につきましては、私深く反省をいたしておる次第でございます。
#16
○広瀬(秀)委員 私が聞きたいのはそういうことではなくて、このときに、この事件があったときに――いま業務対策委員会とかを全銀協でつくっていろいろ提案もされているし、問題点を摘出して、こういう点をこうしようというようなことが出ておるわけでありますが、この事件があった際に、富士銀行としては――この問題、単にこういうような匿名預金の通帳をごまかす、そうして金を着服するというようなことである、今度の場合とは若干ケースはもちろん違うことは承知しておるんですが、しかしこういうことが行なわれ得るという問題が一つ当然ある。直接その問題についてどういう対策をするのかということがどこまで具体的に指導されたか。しかも今度の不正融資の問題について、これもこの間皆さんのほうから出された、全銀協として出されたいろいろな対策の中には、この匿名預金の問題、預金の通帳を預かるとかいうような問題なんかにも自粛しようというようなことまで入っているわけです。したがって、そういうような事件であったその際の事件について、どれだけ一体銀行が真剣に取り組んだのか、対策を。今後そういうことが絶対に起きないように……。富士銀行にとってみれば、三千万やそこらの横領があって損害をこうむったところで、そんなものはもう蚊に刺されたほどでもないんだ、こういうようなお気持ちがあったのではないか。安易な、そういう点での問題を甘く見る考え、そして表面をつくろってあまり事件を大きくしないでというような配慮というようなものがあったのではないか。銀行に対する過保護体制の中でどうもそういう点があったのではないか。したがって、このときの対策というものをどう内部で生かしたのか。そういう点について何らかその際に手を打たれたことがあったのか。どういうように業務の改善をしなさい、絶対にこんな事故が起きないようにということでどれだけのことをやられたのか。そのときにほんとうに真剣にこの問題と取り組んだのかということが私が聞きたい点なのであります。実際にどういうことをやったかということ、そしてどれだけ効果があったのかということをお聞きしたいわけであります。
#17
○岩佐参考人 いまの御指摘の点でございますけれども、外部、いわゆる渉外の仕事に当たっております者あるいは営業の窓口の一線におきまして直接金銭を取り扱っております者、そういう者が金銭の取り扱い、お客さまの大事な御預金を扱います場合においての心得というものについては、常日ごろから十分に注意もし、そしてあやまちなからしめるように指導もいたしておるつもりでございます。それで御指摘の雷門の前の事件のありました以後におきましても、支店に対しましては、いまもお話しいたしておりますように、渉外の事務に当たります者、金銭を直接取り扱います者に対しましては、いささかでもこういうようなことが起こらないようによく指導しなければならないということを、それぞれの営業店の責任者には強く申し述べたのでございます。しかしその後において、そういういまの注意が必ずしも、全般的に十分に注意が行き届いているかどうかという点につきましては、私といたしましてもこれは十分反省して、さらに今後そういう点については厳重にやってまいらなければならないと思うのでございますが、これは必ずしも当行だけではございません。当行はもちろんでございますけれども、一般的に現在の銀行の渉外活動というものにやや行き過ぎがございまして、そして、安易にお客さまの大事な金を一時的にお預かりしてきて、そしてそれを処理しているというような面もないでもございませんので、そういう点につきましては、銀行協会といたしましても銀行全体の共同の問題としてこれに対策を立てて、そしてそういうようなあやまちが起こらないように十分に注意してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#18
○広瀬(秀)委員 私は、非常にそういう抽象的な答弁しか頭取ができないことに対して遺憾なんですが、この問題だけやっておりますとその他の質問、時間の制約上限りがあるものですから……。その点はしかし、当時もっとこの問題を――まあ、たとえはおかしいけれども、獅子はウサギをとるときにでも全力を尽くすという。銀行にとって信用が一番大事なんだということを言われた。信用を失墜する、やはり三千万といえどもこれはたいへんな信用失墜の行為であったわけなんだが、それに対して全力をあげてそういうもののないことを期した対策というものが当時とられなかったということは、私どもどうしても、いまの答弁から見ましても確認できるわけなんです。だから、そういう点で抜かりがあったということを指摘せざるを得ないわけであります。
 次に質問を移しますが、一般的に、これは前委員会からわが党の阿部委員も指摘しておるところなんですが、こんなに長期に、しかも何十回となく次々に繰り返してこの不正融資が行なわれたというものをチェックできなかった。これは支店長あるいは次長が外国為替業務については非常に知識がなかったというようなことで、もうまかせっきり、というよりもむしろ盲信しておったというお答えがあったわけでありますが、そういう点で、これはかりにそのとおりで、菅沼の単独のやりくりだ、まあ聞くところによると、現物相場取引にだいぶ穴をあけてその埋め合わせからというような動機もあるようでありますが、単にそれだけではなしに、何かやはり、あれだけのことを長期にわたって、十九億というような巨額に至るまで不正融資が続けられたという背景には、やはり銀行の本店の役員クラスといいますか、そういう本店の役席の人たちの中にも、預金獲得というような立場において、今日非常に高い利益をあげているコカ・コーラの預金を導入したいというようなこととこの問題が関係があるのではないか。そしてそのことは本店の常務クラスも知っておったのではないか。あるいは副頭取ぐらいまでは知っていたのではないか。そして預金をコカ・コーラから導入するために、それとの関連の仕事をしている有馬のほうに融資をするということについては、非常に大まかなゆるやかな態度をとるようなマインドが銀行内部にあったのではないかということをやはり疑わせる。これは有馬に対して、六月十六日に、彼が逃亡したあと香港まで管理課長が行って会ったというようなこととも関連をいたしますし、また、そういう関係は全くないのだといいながら、これは十月二日でありますか、佐々木副頭取の談話として新聞に出たところによりますと、そういう事実は四十二年の十月ごろあったのだ。融資を申し込まれ、預金を導入するという話もあったということと、それから有馬へ、トムソンヘの融資というような問題が何かの形で関係をして本店に持ち込まれたことがあるということがいわれておったけれども、そういう事実は確かにあったということを、ことしの十月二日に副頭取が認められたという談話が新聞に載っておるわけなんです。しかしそれまでは、その以前の段階では、そういうことは絶対にないんだないんだということをいっておって、しかも十月二日にそういうことを認められたというようなところに、これは若干そこに疑惑が残るのではないか。こういうことが、われわれいまだに釈然としないものがあるわけなんです。司直の手によれば、この時期の関係からいっても、諸般の状況からいっても、それはまあなさそうだというような新聞記事もその後には出ておりまするけれども、どうもその辺のところがはっきりしない。釈然としない。こういう点について、一体そういう問題についてほんとうのところはどうなんだということを、直接の責任者である頭取にお聞きをしておきたいと思うわけであります。
#19
○岩佐参考人 いまの御指摘の点でございますけれども、コカ・コーラとの関係につきましては若干詳しく申し述べさしていただきたいと存ずるのでございますけれども、昭和四十三年の八月ごろから日本コカ・コーラの取引の開始について希望を持ちまして、品川支店においてコカ・コーラの預金取引について先方にお願いいたしておったのでございます。
  〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
そして大体においてお取引をいただけるというお約束をちょうだいして、そして実際に預金のお取引が始まりましたのは四十四年の三月でございます。そしてコカ・コーラとのお取引は、貸し出しのお取引は一切ございませんで預金のお取引のみでございますが、その預金のお取引の推移は、コカ・コーラは御承知のような季節的にいろいろ商売上変遷がございます関係上、夏場におきましては残高がふえますが、今度冬場にまいりますと残高が減少していくというような関係にあるのでございます。
 そこで、トムソンの会社との問題でございますけれども、この点につきましては一切その両者との関係はございません。これは私、はっきり申し上げておきたいと思うのでございますが、トムソンのほうから貸し金の申し込みがございまして、そして本店にその相談がございましたのは四十四年の二月ごろでございます。そして、四十四年の二月に相談がございましたときに、支店長並びに本店の担当の者たちが相談いたしましたときに、トムソンの商売上、コカ・コーラとの関係はあることはわかるが、しかし当時トムソンは赤字の会社でございましたし、いかなる担保提供等その他の条件がございましても、この会社には融資はすべきでないというはっきりした結論を出しましたし、そしてわれわれといたしましては、コカ・コーラとトムソンとに商売上のつながりがあるから、それがゆえにかりにお約束をいただいておるコカ・コーラの預金取引というものが開始されなくても、これは全くやむを得ないことであるというふうにはっきり割り切りまして、そしてトムソンヘの貸し金は拒絶したわけでございます。そういうことでございますので、この両者のことは一切関係はございません。
 そして、いまもう一つの御指摘の点、銀行の幹部がこの不正融資のようなことについて知っていたのではないかといったようなお尋ねもございましたが、これは一切われわれは知らなかったことでございますし、支店長、次長も、先ほどから申し上げておるように、はなはだその間においては監督の不行き届き、経営者としての能力等疑われる面はございますけれども、そういう点は別にいたしまして、一切このことは知らなかったというのが、まことにお恥ずかしい次第ながら事実でございますので、この点はひとつ御了解いただきたいと存ずる次第でございます。
#20
○広瀬(秀)委員 先ほどの藤井さんに対する答弁の中で、この六月十六日の段階で、おたくの管理課長が香港に行って有馬と会っておられる。このことについて、どういう目的、どういう趣旨で行ったのかということについてお答えがあったわけでありますが、その際の答弁で、菅沼が刑事犯罪行為に該当することははっきりしておったけれども、有馬についてはその解釈が、はたして刑事事犯に該当するのかどうかということについてまだその段階で疑問があったというようなことを言われております。なぜ、頭取としては責任者として、その司直の見解というようなものを――ちゃんとその段階で通報して、そしてこれと会いに行くのだ、これについては居所もはっきりしておるのだというようなことを通報して、その段階でその司直の見解というようなものもただして、これは刑事犯人ではないのかというようなことも十分連絡した上でやはり行くべきであったと私どもは考えるわけですね。そういう点を銀行だけの判断で、どうともつかないお得意さんの一人であったというようなことで、お客さんの一人だというようなことでそれとそういう形で接触をしたということが、彼がフランスまで逃亡して事件を一そう全世界に拡大するようなことにもなったと思うのです。そういう点について頭取はどうお考えでございますか。私はそう思うのですね。事前に司直と連絡してそれから行くというようなことは、これはかなり新聞に出たり何かするようなことでなしに、そういうことはやれるはずなんですね。それは当然打つべき手であったと思うのですが、その点についていかがでございますか。簡単に……。
#21
○岩佐参考人 その点につきましては、御指摘のとおり私といたしましても深く反省をしておる点でございまして、とかく、何か事件が起きますと、債権確保という点のみに中心を置きまして事を処理してまいりたいというような点が従来確かに御指摘のとおりあったと思いますので、いまのお話しのような点、その時点において十分、内々にいたしましても司直の御意見を聞きながら事に処していくべきであったかということを深くいま反省しておる次第でございます。
#22
○広瀬(秀)委員 次に、この今回の事件は輸出手形の買い取りというような形をとった不正融資ということになっておるわけでありますが、これはせんじ詰めてみれば、本質を尋ねてみると外為業務ということで、これを利用した、言うならば本質的には非常に単純な、それだけに悪質だと藤井さんも言われたわけだが、私もそう思うのだが、これは単純な不正融資事件であるというように考えるわけなんですが、そこで問題は、やはり銀行の内部に輸出金融というものに対して、今日までずっと長い伝統を持って、日本の場合には輸出第一主義をとっておりましたから、そういう政治の姿勢、経済全体のあり方というようなものの中で、銀行の内部で輸出外為業務というようなものが、一番厳重な監査、監督、きびしいチェックというようなことをのがれた分野ではなかったのか。そういう点が非常にルーズに扱われるマインドというものが銀行内部にあったのではないかというようなことを私どもおそれるわけです。そういうことに対して、いまでも私どもどうもこれはおかしい。しかもそういう業務についてはなかなかたんのうなベテランがいないというようなことで、先ほどの答弁にもありましたように、支店長、次長がそのほうは暗かったというようなことで、長い間そういうものをベテランであった菅沼にすべてまかせきり、盲信をしておるというような事態ができておったというようなこともあるわけですが、銀行内部にやはり輸出金融というものに対してある程度ルーズに、大まかに、チェックなどもそう厳重にやらないというようなマインドがあるのではないかということを疑っているわけですが、それについての指導のやり方、方針、そういうものがあったのか、なかったのか。その点をひとつお聞きしたい。
#23
○岩佐参考人 いまの御指摘の点でございますけれども、外国為替業務が一種の特殊の分野であるというような考え方がありましたことは遺憾ながら認めざるを得ないと思うのでございます。そして、そういうようなこともございまして、とかくその業務の熟練者にすべてをまかしてしまいがちになる、こういうムードもあったことも事実と思います。そういうような点につきましては十分反省いたしまして、そういうことでないように機構の面においてもいろいろな改革をいまやりつつあるところでございますが、この外国為替の業務につきましては、一般的に申しまして、たとえば輸出信用状づきの、LCづきの外国為替というようなものについてはすべて支店の権限にまかせておるというようなこともございますが、こういうような点につきましても、まかす必要もある面があるのでございますけれども、またそれを本部においても十分チェックしていくというようなことも一面必要なことでございまして、必ずしも従来外国為替業務について本部といたしまして監督を甘くしていたということではないのでございますけれども、御指摘のような点があるいは、いまいろいろ申し上げているようにあったのではないかという点は私としても深く反省をいたして、そしてそれを改めるようにいま努力中でございます。
#24
○広瀬(秀)委員 時間がありませんのでこれ一問にいたしますが、そういうことで、LCづきの場合には支店の権限だというようなこともあって、それが本店のチェックシステムの中に入らないというようなこともあるようでありますが、この点などは、これは大口の輸出手形の買い取りというようなものについては、支店の勘定というよりも本店の勘定に全部それが集中して、これを把握できるようなシステムにしておったらこんな事件はまず起こらなかっただろうと思うのですね。そういうような点についても、将来の問題として当然改善されていい点ではないかと思うのですが、その点の見解をひとつ。
 それから最後に、実は新聞の報ずるところによりますと、前に三菱銀行で吹原弘宣事件があったときに、やはり銀行が政界とかなり密着をしているということに対する不安というものがあの場合に起きた。富士銀行の内部におきましても、岩佐さん、これは非常に政界とも縁の深い人である、大いにそういう面でも活躍されているというようなことで、自重を望まれる声が富士銀行の中にもかなり台頭したというようなこともあったようであります。今回そういう背景があったかないかはこれからの問題で、私どもつまびらかにいたしませんけれども、しかしいずれにいたしましても、あなたが現に頭取をなさっている日本最大の銀行、そうして銀行協会長として、こういう未曽有の高額の、しかも長期にわたってそれがチェックできなかったという、そういう全般の銀行の内部の組織の問題あるいは行員のモラルの問題など、いろいろ問題があるわけでありますが、あなた自身、これは直接たいへんぶしつけなことを申して恐縮でありますけれども、――すでに富士銀の本店関係の重役さんはみんな次のボーナスは返上だ、もうすでに夏のボーナスは返上されたのだと思うのでありますが、そういうことで非常に反省の実を示しておられると聞きますが、その程度のことではおさまることではないと思うので、銀行局長通達の中にも、この責任体制というものをしっかりして、その責任をとるということをやらなければいかぬということが出ておるわけですね。これらの銀行局長通達とも関連をいたしまして、あなた自身の責任のあり方というものについて最後に、これはたいへんぶしつけな質問かとも思いますが、率直な御意見をお聞かせいただければ幸いです。
#25
○岩佐参考人 いまの最初のお尋ねに対しましては、先ほどから申し上げておりますように、さらに一そう内部の管理体制を厳重にいたしまして、そうして改めるべきことはさらに改めまして処してまいりたいと思うので、御了承いただきたいと存ずるのでございます。
 第二点につきましては、私といたしましてもいろいろな点についてみずからのあり方を深く反省をいたしまして、私といたしましては今回のことによって起こりました富士銀行の信用に傷がつきましたこと、不名誉、そういう点につきましては、もとよりはなはだ微力ではございますが、ほんとうに粉骨砕身、十分自粛自戒をいたしまして、内部の綱紀も二段と改めまして、そして経営の点につきまして姿勢をただし、そうして傷つけられました信用、不名誉の挽回にこん身の努力を傾けてまいりたいというのが私の決意でございます。
 それから支店長等の処分につきましては、何ぶんにもまだ司直の手においてのお取り調べが一段落というような段階にまで参っておりませんので、そういうものが一段落しました段階においては厳重に考えてまいりたいと存じておる次第でございます。何とぞ御了承いただきたいと存じます。
#26
○毛利委員長 堀君。
#27
○堀委員 最初に伺いたいのは、この事件が起きまして大蔵省にこれを御報告をなさいましたのはいつでございましたでしょうか。
#28
○岩佐参考人 六月の三十日でございます。
#29
○堀委員 その前日にトムソンに一億円の融資がなされたというふうに伝えられておりますけれども、この事実はいかがでございましょうか。
#30
○岩佐参考人 これは先ほど藤井委員からの御質問にございましたことでございますので、この点につきましては十分御説明をいたしませんとかえって世間の疑惑を招くというようなことにもなろうかと思いますので、書面でもって皆さま方のお手元に事情を詳しく御説明いたしたいと思いますが、それで御容赦いただけますでしょうか。
#31
○堀委員 内容はそれでけっこうなんですが、その事実についてのあとの詳しい経緯は書面でちょうだいして、ただ事実があったかなかったかだけお答えいただければけっこうだと思います。
#32
○岩佐参考人 融資と申しますと多少語弊があるのでございますが、普通の融資とは全然性質の違う、不渡りで手形を返還するかどうかということに関連いたしまして、一応その不渡り処分を免れさせますためにそういう取り計らいをしたということでございます。それは後日直ちに相殺されて、貸し金のほうは解消いたしておるのでございます。そういうことでございますので、普通のいわゆる融資とは違いますので、その点はひとつ誤解のないようにしていただきたいと思うのでございます。
#33
○堀委員 いまの点は書面でまたちょうだいをすればけっこうだと思います。
 その次に、さっきも藤井委員からもお話がありましたが、実損六億円という話でございます。十九億円ばかりの損害が生じておるとわれわれ承知しておるわけでございますが、それが六億円の損害にとどまったということは、十三億円は何らかの方法で回収がされるということだと思うのでございます。いまの十九億円が六億円の実損で済んだということのあらましな中身が承れるでございましょうか。
#34
○岩佐参考人 いまのお尋ねでございますが、七億八千余万円を実損と心得ております。それで、事件が発覚いたしました以後におきまして、トムソンの会社との交渉によりまして大体六億円の担保を取得したわけでございます。それからあとの五億円につきましては、ゼネラル・ベンディングという会社をつくりましてそれに五億円の債権を譲渡いたしまして、それは清涼飲料水の自動販売機による販売を営む会社でございますが、これが今後営業を続けていきます。この営業成績がどういう成績をあげていきますかはもちろん今後の問題でございますけれども、そういう方面のくろうとの方々の一応の御意見といたしましては、七年ぐらいで営業権として計上してある五億円というものを償却していき得るであろうという見解もございますので、その見解に一応従いまして、五億円というものはその新会社から生まれてまいります利益によって徐々に回収してまいりたいというふうに考えております。したがいまして合計十一億円余、やや長期にわたるかもしれませんけれども、それがいわば一応生きた債権ということでございまして、それでいまも話しておりますように、あとの残りの七億八千万というものは直ちに償却をいたすということにいたしたわけでございます。
#35
○堀委員 実は私、六月十二日の大蔵委員会で銀行の事故の問題を取り上げまして、そのときすでに、銀行の事故が、債権確保が優先をするために、これが捜査その他に移されることはきわめておそいことが遺憾だということで、七月十六日にこれを受けて銀行局長通達が出されたわけでございますが、いまお話を伺いながら感じられますことは、もうお答えになっておりますけれども、債権確保のために非常にいろいろな手だてが行なわれ、その一つがいま私の伺いましたトムソンへの、何と申しますか、不渡り防止のための一億円の処置となったり、あるいはさっきからの話にありました香港へ行員が行っていろいろその処置をされたりということで、いずれもどうもあとの債権確保のために時間がたいへん費やされて、いろいろ真相の把握その他がおくれたという点が非常に残念だと思っておるわけであります。
 そこで、いまのゼネラル・ベンディングという会社に債権が五億円移動をさせられたという問題でありますけれども、私は、銀行が債権を確保する姿として、そういう姿というのはノーマルなのかどうかという点にちょっと実は疑問を感じておるわけでございます。いろいろあります担保その他を押えられることについては、普通これは銀行業務でございましょうが、ある一つの権利というものを横へ持ってきて、その権利から生ずる果実というのが銀行のそういう債権として生じてくるという仕組みというのは、私、やや異例の債権確保手段のような気がするのでございますが、これは私もあまりそういう債権確保についてのいろいろなあり方を専門的に承知しておるわけでありませんけれども、やや少しこれは異例な措置ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
#36
○岩佐参考人 御指摘のような点も若干あるかと存じます。しかし、この自動販売機によります清涼飲料水の販売というものにつきましては、これはいろいろの見方もあり得るかとも存じますけれども、現在におきましてもあるいは将来におきましても、ある程度発展性のある、そうしてしたがいまして相当程度の収益性を生んでくる仕事であろうかとも見られるわけでございます。そういうような点につきましては、丸紅飯田におきましてもかねがねこういう性質の仕事につきまして非常な関心も持っていたということもございまして、丸紅飯田といたしましても自分のところが中心になってそういう仕事をやってみたいというような希望も一面において持っていたわけでございます。同時に、日本コカ・コーラといたしましても、トムソンが倒産いたしました、そうして自動販売機によるコカ・コーラの営業にも支障を来たす、業界もそれで混乱におちいる、そうして自動販売機による販売――コカ・コーラのみではございませんけれども、清涼飲料水の販売にいろいろな支障を来たすというようなこともございまして、そういうような観点から、日本コカ・コーラといたしましても新しい有力な信用の置けるところがこの経営の衝に当たってもらうことは望ましいというようなこともございまして、それで丸紅といたしましては中心になりまして、具体的に申し上げますと四千万の出資をいたしまして新しい会社をつくった次第でございます。そうしてコカ・コーラのほうといたしましてはそれをフランチャイズということで、全面的な権利をコカ・コーラのほうからもらったわけでございます。そういうことでございますので、その営業権を一応五億ということで、それで創業当初におきましては若干の赤字が出るのは仕事を始めます場合の通例でございますから、大体五カ年間で五億円は償却できる、もうけが軌道に乗れば可能であろうというような数字も一応出ておりますので、それで創業期間のロスも見込みまして七年間で五億円というものを、営業権を償却していくということでできた会社でございます。そういうのがこの会社のできましたいきさつでございます。
#37
○堀委員 ちょっとそこではっきりいたしませんのは、いまの十九億円というのは損害ではありますが、債権としては一応全部トムソンの債権だったと思うのでございますね。トムソンと富士銀行との関係でございますね。ゼネラル・ベンディングというのはいまのお話しのように新しい会社でございますね。トムノンと無関係の会社だと私ども承知いたしておりますから。そうすると、トムソンと無関係な新しい会社にトムソンの債権が引き継がれるというのがちょっと私よくわからないのであります。私が異例と申し上げておるのはその関係でございまして、親会社、子会社ということからいくのならまだわかりますが、全然新しい会社のゼネラル・ベンディングにこちらの会社の五億円の債権が何とはなくいって、新しい会社にしたら何もその債権を引き受ける必要がないにもかかわらずそこが引き受けて、それが返すというのはやや私、債権確保上のノーマルな姿でないような気がいたしましたので伺ったのですが、そこの関係というのはどういうことでございましょうか。
#38
○岩佐参考人 その点につきましては、御指摘のようにやや異例という点があることは私も率直に認めるところでございます。しかし新しい会社、そしていまもお話ししているように、これはやってみなければわからないことではございますけれども、一応事業としては今後有望であるというようなこともございますし、それから日本コカ・コーラといたしましてもフランチャイズを与えますについては、そこに新しい会社が営業権としてある程度そのフランチャイズを持っていくということにつきましての配慮もございまして、そういう形で発足したのでございまして、私も一、異例じゃないかという御指摘については、今後のあり方としてはやはりこれは反省すべき点があろうかと存じておるのでございます。
#39
○堀委員 時間がありませんので、あとはちょっと全銀協会長としてひとつお伺いをしたいのでありますが、今度「業務管理等の改善について」という、先ほどお話しの委員会ができまして、そこで十月十三日に取りきめをしていただいておりますが、その中の「業務活動の正常化に関する事項」という中に、実は私かねてから取り上げております架空名義預金に対する自粛という項が見当たらないわけでございます。今度の一九億円事件でも、その過半は架空名義預金として他行に預け入れられているという事実もございますし、また同じ雷門事件の三千万円の問題も架空名義預金が実は横領されたという経緯もあるわけでございまして、私は銀行の事故その他の問題と架空名義預金というものは非常に切り離せない問題ではないか、こういう感じがいたしておりますが、実は「業務活動の正常化に関する事項」の中には、「行き過ぎた外訪活動の自粛」とか「銀行本来の業務以外の過当な役務」というふうな問題は提起されておりますけれども、私、架空名義預金の取り扱いということは、今後の事故防止、すべての点についてきわめて重要な事項だと思うのでございます。これについては銀行局その他を通じて、私どももその自粛についてはかねがねお願いをいたしておりますけれども、現実の状態では実は改善されておりません。都市銀行の店舗におきましても、前回の国税庁の報告によりますと二百四十四店舗にわたってこれらが摘発をされておる事実もございますので、この際ひとつ協会長として、これらの事故に非常に重要な関係のある架空名義預金は全国銀行協会では今後一切取り扱わないような処置をお取りきめをいただきたいと思うのでございますが、その点についての御答弁をお願いいたします。
#40
○岩佐参考人 全く御指摘の点、大事なことだと思うのでございます。この架空名義の預金につきましては、かねがね大蔵御当局のほうからもいろいろ御注意を受けておりまして、銀行協会あるいはそれぞれの銀行におきましても、十分その点については注意してまいっておるはずなんでございますけれども、御指摘のように、その点実行の面において欠けるところがあるということは私も率直に認めざるを得ないと思うのでございまして、この点については、この間一応出しましたいろいろな改善策は取りあえずの問題でございますし、逐次やっていくという問題でございますので、今後その問題はひとつ積極的に銀行協会内部においてもあるいはそれぞれの銀行においても注意してまいるということにしなければならない問題であろうかと存じております。
#41
○堀委員 もう一点だけお伺いをいたしますが、この業務管理等の改善につきましていろいろ自粛をおきめになっておりますけれども、これはなかなか守りにくい問題だろうと思います。私はここでひとつ提案を申し上げたいのでありますけれども、全国銀行協会にたくさんの金融機関が加盟をなすっておりますから、大蔵省もさることながら、全国銀行協会に一種の中央検査部と申しますか、各行が自分の銀行をおやりになるのは当然でございますけれども、そうでない、客観的な立場から各銀行を自主的に検査をなさって、たとえばいまの架空名義にしても、行き過ぎたいろいろな外訪活動でございますか、ここにおきめになっておるようなことをチェックするために――私は自主的におきめになっただけでは問題はなかなか処理ができないと思うのであります。新たに銀行協会にかなり強力な検査部というものをおつくりをいただいて、その中に各銀行から出向なさろうと、またそういう関係の諸君の協力を得られようと、いろいろ方法はあろうかと思いますが、もう少し自主的な検査機構というものをおつくりいただいて、ひとつこのおきめになったことが、いまの架空名義預金等を含めて実行ができるという点を担保していただきたい、こういうふうに思いますが、この点についての協会長の御意見を承りたいと思います。
#42
○岩佐参考人 まさにいま御指摘がございましたように、銀行業務管理等改善委員会におきまして何をきめましても、これがきちっと実行できなければ、極端に申しますといわば人をだまかしたというようなそしりを免れません。そういう点につきましては、私はもちろんでございますけれども、各銀行の首脳部等それぞれ、今回につきましては十分反省をいたしまして、実行の実をあげていきたいということで取り組んでおるのでございますが、御指摘のような点もございますので、いまの御意見、また銀行協会におきまして検討さしていただきたいと存ずるのでございます。
#43
○毛利委員長 平林君。
#44
○平林委員 私は、今回の富士銀行の十九億の不祥事件は、先ほど来指摘をされております問題点とともに、きわめてこの事件が金融機関における秘密主義の典型的な姿を地で行ったという点、それから、失礼ですが富士銀行の頭取はじめ首脳部の方々のこの事件の取り扱い方が隠匿的、何か隠そうとする工作が目立つということ、それからもう一つは、きわめて、まあ岩佐さんの立場に関係があるでしょうけれども、政治的であるということ、こういう点から別な私は批判があなたのところに集中をしているという問題であると思うのであります。この意味で若干お尋ねをしていきたいと思います。
 実は九月十六日に金融証券小委員会が開かれまして、この日は、銀行協会の責任者として金融問題全般について御意見をお伺いしたいと、岩佐さんを参考人としてお招きをいたしたわけであります。このときあなたは御病気になりました。私は当時小委員長の藤井さんにも申し上げたのでありますが、夜電話をかけたり、また朝早く電話をかけたり、寝たり起きたりできる御病気というのはきわめて政治的ではないかという、一種の皮肉を実は申し上げました。しかし、御病気であることはやむを得ない、そう思います。これは私はひとつおきましょう。しかし、今回の金融証券小委員会に、銀行協会の会長として当面の金融全般の問題について御意見を承りたいという、その代理として横田さんがおいでになった。いま堀委員からも、銀行協会において今後の対策をいろいろと検討し、その機能を備えるべきだという御意見があり、それに岩佐さんはお答えになりました。しかし、その銀行協会そのものが、私はどうも今度の取り扱いについても釈然としないものがある。なぜかというと、その参考人として銀行協会の会長がお招きを受けた。それならばその代理は副会長あたりが来るのではないか、こう思ったのであります。しかし、横田さんは前会長である。この点どうも私にはわからない。夜、直接横田さんにあなたお電話をかけられて、ぜひ出てくれと懇請をされたということは、小委員会で横田さんじきじきの御発言でございました。この点はどういう御事情があったのか。私はひとつこの機会に解明をしていただきたいと思うのであります。
#45
○岩佐参考人 九月十六日の金融証券小委員会に、私、急性腸炎をわずらいまして出席することができませんでしたことは、小委員の皆さま方にはなはだ御迷惑をおかけいたしまして、この点についてはまことに申しわけなく存じておりまして、この機会に深くおわびいたしたいと存じます。
 そんな次第でございましたので、たまたまそのときにお招きを受けておりました題が、主として――これは弁解で申し上げるわけじゃないのでございますけれども、主として八月に行なわれました金融制度調査会の答申についての都銀の意見を聞きたいというような点が、私が呼ばれております目的であったと承知いたしております。それは、引き続いて長期信用銀行の代表の方であるとか、証券の代表の方であるとかいうのが呼ばれておったというような事実からもそういうふうに判断されたわけでございます。そして、いま全国銀行協会の副会長は住友銀行の堀田さんでございます。したがって大阪におられるのが原則であるというような事情もございました。それから、お話しする主たる目的がそういうふうなことであると承知いたしておりましたので、金融制度調査会に関連いたしましては、前会長であります横田さんがその間のいろいろな事情を一番お詳しいというようなこともございまして、私といたしましては横田さんが、私にかわって出ていただく方としては最も適当な方ではなかろうかというふうに判断いたしまして、横田さんにたってお願いたしたわけでございまして、その点の私の考えはひとつ御了承をいただきたいと存ずるのでございます。
#46
○平林委員 次に私お尋ねしたいことは、コカ・コーラの預金獲得にからまるトムソンの融資との関係についてでございます。先ほどお答えがございまして概要は承知いたしましたが、昭和四十三年八月当時、富士銀行の品川支店にぜひ預金を入れてもらえないかということで、富士銀行がコカ・コーラと話をされた。その後におきましてトムソンの会社から融資の話がありました。それはどこの支店にお話があったのでしょうか。
#47
○岩佐参考人 それは雷門支店にございました。
#48
○平林委員 コカ・コーラの会社からは富士銀行に対して、トムソンの会社に何とかめんどうを見てやってもらえないかというような声とか相談はありましたか、ありませんでしたか。
#49
○岩佐参考人 何とかめんどうを見てもらいたいというような話はございません。しかし、日本コカ・コーラじゃございません、コカ・コーラ・エクスポートのほうからでございますね、コカ・コーラの商売に関連を持っておるトムソンという会社があるから、このトムソンが資金を欲しておるがゆえに、ひとつこれについては話を聞いてみてくれ、こういうような程度の軽い紹介はございました。
#50
○平林委員 そのときにその融資はお断わりになったということであるから、一種の導入預金といいますか、そういう形は免れるかもしれませんけれども、しかしそういうお話があったとすれば、なぜ雷門の支店に対して、そういうその後のつながりがあったかないかという注目を払わなかったのでしょうか。私は、いろいろな事情で全くこのことは知らなかったことだ、上層部は知らなかったことだと言いますけれども、そこに重大な不注意があったのじゃないかという感じがするのでございますけれども、この点は、くどいようでありますがもう一度御見解を承っておきたいと思うのであります。
#51
○岩佐参考人 いまの点でございますけれども、そういう口添えがございましたけれども、その融資の申し込みについてははっきり、融資はできない、そして、先ほどもちょっと申し上げましたが、それによってかりにコカ・コーラとの預金取引ができないという状態になっても、それはもうやむを得ないことであるというふうに、はっきり割り切っておったわけでございます。したがいまして、その後においてトムソンとの取引が雷門においていかに推移しているかということに、あるいはもっと本部といたしましても注意を払うべきであったかとも思います。その点については若干遺憾な点があったのではないかというふうに、私も深く反省しておる点でございます。
#52
○平林委員 先ほど、現在の債権確保はどの程度に進んだかということに対しまして、実損は七億八千万円、しかしトムソンとの話し合いで六億円ほどの担保は取得をし、あとの五億は別会社をつくってそれに権利譲渡された、長期的に見ればその債権は確保されたというお話で、これに対する疑問が発せられたわけでありますけれども、私も、この新しい別会社に対しまして丸紅が四千万円の融資をしたかしないか、出資をしたかどうか別にいたしまして、これが債権の確保につながるというのはどうも解せない。なぜかというと、少なくともコカ・コーラは新しくつくった会社に全面的にそういうものの事業をすることの権利を与えたわけですね。それならば、コカ・コーラの会社が権利金とかのれん代とか、そういうものについての金を取るということはわかるけれども、それが富士銀行の債権確保につながるということはわからぬ。ということは、前段でお尋ねいたしましたように、コカ・コーラの会社と富士銀行との間には何らかの導入預金的な形があって、そしてそれは一たん断わったけれども、別の為替手形を割り引くというようなことで本店も承知してやった、えらいことになってしまった、その埋め合わせとして今回は五億円を、コカ・コーラは富士銀行に恩を売った、こういう解釈も成り立つのでありますけれども、その点は一点の疑問がないと言えるでしょうか。
#53
○岩佐参考人 いまの点につきましては、コカ・コーラとの関係におきましては、そういう点は全然ないというふうに私は存ずるのでございます。もちろんこの新しい会社がはたしてその五億円というものを、一応いま立てております計画どおり七年間で償却されていくかどうかには、これは今後営業を続けてみなければわからない点があると思いますので、その点について完全なる債権の確保ができているかどうかということについては若干の疑問があることはもちろんであると思うのでございます。それで、この新しい会社といたしましては、五億円の営業権をあれでございますが、それはもちろん、コカ・コーラの好意的な配慮によって原液供給権というものを与えてくれたということは事実でございます。しかしその間におきまして、何らかコカ・コーラがトムソンとの間の云々というようなことで、特に銀行にどうこうというようなことではないということは、私はっきり申し上げたいと存ずるところでございます。
#54
○平林委員 この件、私はまだ疑問が解けたわけではございませんので、きょうは時間がありませんからこれ以上は申し上げませんけれども、もう一点、トムソンが雷門支店に対して初め融資を申し込んできた、それを断わった。そのときトムソンの会社は赤字であった。本店、支店が相談した結果、あるいはコカ・コーラの預金獲得がだめになるかもしれないけれども断わった。このときに本店、支店は相談をして、トムソンの会社をいろいろな角度から検討されたと私は推察するわけであります。だからこそ赤字、経営内容がわかった。同時にトムソンの責任者である今度の問題を起こした人物についても十分な調査が行き届いたものと思うのであります。この人物は非常に政治的な顔があるということは御存じでしたか。つまり、政界にも相当のコネを持っておる人物であるということはそのときにおわかりになりませんでしたか。
#55
○岩佐参考人 私はその融資を断わりましたときに初めて、トムソン会社の社長が有馬であり、そういう有馬という人がいるということはそのときに初めて知ったのでございまして、有馬氏がいかなる人物であるかも一切存じませんでしたし、その後においても私、有馬氏なるものに全然関心も――こういうことばを申し上げていけないかもしれませんけれども、全然関心も持たない。まあお恥ずかしい次第ですけれども、頭の中から全然抜けていたということでございまして、一切そういうようなことについては存じておりませんでございました。
#56
○平林委員 これはおいおい明らかになってくるものと思います。有馬が政界とのつながりがかなりあるということは、ほかのことでも私は承知している点があるわけであります。きょうは、あなた知らなかったということだけを承っておきますけれども、なかなかそうはいかない問題があるのではないかという、その疑念だけは私は申し上げておきたいと思うのであります。
 次に私お尋ねいたしたいのですが、私、今度の事件で非常に不愉快に感じておることが一つあります。それは、先ほどこの事件の最終的責任はだれが負うのかという点につきまして、岩佐さんは、粉骨砕身、自粛自戒、経営の姿勢を正し、信用の回復をする、こういうお話がございました。これはその後の経過を見なければわからぬことでしょう。同時にまた、支店長については、司直の手にゆだねられておるからその取り調べのあとに厳重に考えるというお話もございました。それにもかかわらず、まだ司直で全貌が明らかになっていないときに、先ほど藤井委員も引用なさいましたけれども、この事件には本店上層部は関係がないという趣旨の情報が流れるわけですね。報道がされる。ちょうど三菱銀行の吹原事件のときもそうでした。このときは警察筋からその責任はないということを述べたのではございませんで、むしろ政界のほうでそういう動きがあった。全く私は軌道を一つにする感じをするのでありまして、そこに今度の事件が非常に政治的だなということを別な意味で批判せざるを得ないわけであります。全貌が何もわからぬ、まだはっきりしない、そのときに早くも上層部の責任はないであろうという観測が行なわれる、それが報道をされる、そこに私は今度の事件の底の広いということについての疑問が、幾ら弁明しても消すことができないということは残るのじゃないだろうか、実はそう考えて、まことに遺憾なことだと考えておるわけなんでございます。
 そこで私はやはり、これは苦言でございますけれども、粉骨砕身、自粛自戒、これはことばである。ことばでない何らかの形――そうかといって、参議院でも議論がありましたように、私は銀行法第二十三条による処分、それが適当だとは考えておりません。また、あなたが頭取の地位をやめるということだけがすべてではないと思っています。しかし、何らかの形を示すということが、私は銀行協会の会長として社会的責任を果たすものであるというふうに実は考えるわけです。これは苦言であります。これについての御感想を承りたい。
#57
○岩佐参考人 ただいまのいろいろなありがたい御忠告、深く心にとめて考えてみたいと思います。
 ただ、私の現在の心境といたしましては、先ほども申し上げましたように、私といたしましては今回の事件を心から深く反省をいたしまして、そして今後の経営姿勢を正し、内部的には内部管理体制を改善確立し、そして業務服務規律を厳重にし、そして行員の教育というような面についてもさらに一段と留意いたし、そしてそういうことによりまして、傷つけられました銀行の信用の回復、名誉の回復に、もとよりはなはだ微力ではございますけれども粉骨砕身して努力してまいるのが、私の経営責任を果たしていくゆえんかと存じておるのがただいまの心境でございます。
#58
○平林委員 最後に、私は一つの提案がございますから、御意見を承りたい。
 実は、これはこの間の九月十六日にあなたがおいでになったらお尋ねしたいと思っていた点であります。相次ぐ金融機関の不祥事件は、本年度はまさに富士銀行の事件がありましたから、すでにことしの七、八月でもって昨年のベースを上回るくらいな、件数においても額においても大きい事件でありました。これは相ともに、日本の経済の中枢である金融機関の信用として一ときもゆるがせにできない問題でありますから、私ども大蔵委員の立場にある者としてもいろいろな角度から検討して、不祥事件を未然に防がねばなりません。実は横田さんがおいでになったとき、不祥事件の一つの温床になっておる素預かりの問題を御存じかと聞いたら、私はそれは知らないと言ったんです。ところが、後の銀行協会の相談の結果では、こういう、お客さんから判こや通帳や債券を預かることはひとつやめようという自粛をするという方針が打ち出されました。かなりの地位の人でさえもそれを知らないという程度であっては、これは私は不祥事件というものはなかなか避けることはできない、こう思うのであります。
 同時に、これは銀行局長も政務次官も一緒に聞いておいてもらいたいのでありますが、私はもう一つの問題として、やはり銀行が、金融機関が貸し出しをするときの担保、これについての問題から不正が発生することは、いままでの例でもかなり多い件数であります。銀行検査というものは予備検査があって本検査がありまして、その期間相当長い期間がございます。その間にいろいろな、もし金融機関がこれを隠蔽しようとすれば工作する時間があることも事実です。この問題も私は検討しなければならぬ一つの問題ではないかと考えておるわけであります。
 同時に、手が足りないことはわかりますけれども、担保の検査をしたことはない。たとえば、相当巨額の融資が行なわれてその担保が提示されたといたしましても、その担保の物件を実地に調査するというところまではいかない。実際上おやりにならぬ。なかなか困難な仕事でしょうけれども、できない。こういう段階におきまして、ある一定の金額を上回る融資の担保については、私はやはり、これは鑑定士の鑑定を受けてそれをつけるというような慣行にすることが、不祥事件防止の一つの策になるのではないかということを感じとるわけであります。雷門の為替手形の問題とは少し離れますけれども、不祥事件を防止するという意味では、この検査期間の短縮という問題、それからいまの担保について、これは公的にも認められる鑑定士の証明、それは一定の金額を上回るものであるという限定はつけて、実行に移す必要があるのでないか、こう思うのでありますが、とりあえずひとつきょうは岩佐さんの銀行協会の会長としての御意見を承りたいと思うのであります。
#59
○岩佐参考人 銀行自体の検査制度につきましては、いまいろいろ御指摘のありましたように、改善すべき幾多の点があると思います。そういう点につきましては、当行はもちろんでございますけれども、銀行協会におきましても全銀行の問題として、検査制度の再検討、改善ということについては、いま積極的に取り組んでおりまして、これは大蔵省御当局とも相談をし合いながら、そういう方向で検討してまいっております。
 担保の鑑定のことにつきましては、そういう問題と関連いたしまして、いま抑せのような御意見もひとつ参考にして将来考えてみる必要があるのじゃないかというふうに存ずる次第でございます。
#60
○平林委員 終わります。
#61
○毛利委員長 竹本君。
#62
○竹本委員 すでに各方面、各分野からの議論が尽くされておるようでございますが、私は簡単に一、二の問題を伺いたいと思います。
 まず第一は、今回の事件は中小企業に対して与えたショックが非常に大きかったと私は思います。御承知のように中小企業金融の面においては、中小企業の皆さんたいへん苦しい立場に立っておりますので、われわれには百万円あるいは三百万円借りるのにもこんなに苦しいきびしい条件がつくのに一方ではそういう大きな金がどんどん流れておるかというようなことで、非常な不信感も持つでしょうし、大きなショックを受けておると思いますが、いろいろとお話がございましたけれども、この中小企業に対して与えたショックについて、岩佐さんはどういうお考えを持っておられるか、一口伺いたいと思います。
#63
○岩佐参考人 その点につきましては、まさに御指摘のとおり、私としてはそういう御批判を受けますことが一番につらいことでございまして、これは私先般も当行内の支店長会議のときにも言ったことでございますけれども、こういう巨額のものが不正融資され、一方においては二百万、三百万といったような零細な貸し出しにつきまして、場合によれば、りっぱに仕事をやっていらっしゃる方々に対しましてもお断わりをしなければならないといったようなことも、金融引き締めの事情下にありましてはそういうことも起こる。これは何としても身を切られるように自分としてはつらいことであるということを支店長会議のときも私申し上げた次第でございまして、そういう点につきましては中小企業の方々にまことに申しわけないというふうな気持ちで一ぱいでございます。
#64
○竹本委員 次にお伺いしたいことは、今回の事件の問題の性格でございますけれども、これは菅沼何がしの個人的な性格あるいは個人的な動機、それらに伴う偶発的な孤立した事件というふうに問題を考えるべきであるか、あるいはよく指摘されておりますように、預金獲得競争とか貸し出し競争とか、あるいは日本経済のインフレ、高度成長とかその他いろいろな問題を含めまして、一つの孤立した偶発的な個人的な事件ではなくて、いまの経営のあり方に伴うある意味において必然的な問題である、こういうふうに考えるか。これによって今後の対策がいろいろ変わってくると思うのでございますけれども、岩佐さんのお考えではどういうふうにこの問題をとらえておられるかということをお伺いいたしたいと思います。
#65
○岩佐参考人 もちろん今回の事件はまことに異例なことでありまして、そういうことでたいへん世間をお騒がせしていることは申しわけないと心からおわびを申し上げておるのでございますが、今後銀行の業務のいわゆる国際化、自由化に伴いまして、ますますいろいろ多様化してまいるわけでございますし、それから一面において経営の効率化というようなものも、一般論、抽象論としてはこれにどうしても取り組んでいかなければならない。そういう点からいろいろな業務の合理化、いわゆるコンピュータリゼーションというものもこれはこれで進めていかざるを得ない。その間におきまして、やはり何か事務管理の面においてそこから抜けるところがあったり、すきができたりしていてはいけないことでございまして、こういう点については、ただいままでいろいろ申し上げているように、今回のことを契機といたしまして、これについては積極的に取り組んでまいらなければならない問題であろうと思うのでございますが、やはり日本の経済の成長に伴いまして、そこから各種の問題も、これは銀行界のみならず、生じてまいっておりますことも御指摘のとおりでございますが、いまもお話ししているような、銀行界におきましてももっと大きな観点も踏んまえまして、そして経営の合理化は必要であるのですが、合理化の中からかえって大きなあやまちが出てくるといったようなこと、あるいはいわんや大衆の皆さま方に御迷惑をかけるというようなことがないように、十分気をつけていかなければならないであろうというふうに痛感しておる次第でございます。
#66
○竹本委員 この問題はあとでもちょっと触れたいと思いますが、私はいまの銀行のあり方、経営の姿勢、そういう問題にも非常に大きな関連を持っておると思いますので、より深刻に考えていただきたい。またそういう形で対処してもらいたいと思います。
 そこで次に、本件に関連をして、最近大蔵省のほうでは金融機関に対する検査体制の強化ということをいわれておるようでありますが、富士銀行につきましては、私の知っておるところでは、三十七年八月四日、四十年十月二十六日、四十三年一月二十五日と、最近三回の銀行の検査が行なわれたようでございますけれども、これは大蔵省にお答えいただいてもけっこうですが、抜き打ちでやられたものであるか、事前に連絡があった上で行なわれたものであるかを伺いたい。
#67
○近藤説明員 抜き打ちでやっております。
#68
○竹本委員 四十三年一月の検査の段階では、今回の事件はすでにもう問題がスタートしておるわけですから、抜き打ちでやられて調べられた結果、どうしてそれに気がつかなかったのであるか。気がつかなかった理由は何であるかということについて伺いたい。
#69
○近藤説明員 この段階におきましては、まだトムソンに対する大口の融資は始まっておりません。またこの雷門支店に対する実地検査というものは、支店の数が何ぶんにも多いものでございますから、雷門支店には参っておりません。しかし全体といたしまして、大きな問題点については網羅的に注意をいたしておりますが、まだこの段階におきましては、トムソンに対する大口の貸し出しというものはあらわれてきておらなかったわけでございます。
#70
○竹本委員 ついでにもう一つ伺いますが、今回大いに努力をされて、三年に一回のものは二年に一回にしようという御努力は高く評価しますが、しかしいままでのような検査のやり方で、三年のものを二年に短縮して、結果的にはたびたび行なうということによってこういう不正事件を排除できる、克服できるという自信がおありであるかどうか。
#71
○近藤説明員 もちろん検査の強化ということだけで不祥事件の根絶ということは非常にむずかしいかとは存じますが、検査の面におきましてもできるだけ回数を多くする。そのために検査のやり方にいろいろとくふうを加えるというようなことをいたしまして、さらに自主的な銀行内部の検査のやり方につきましてもいろいろと改善をしてもらう。それらの方策を通じまして銀行検査の実をあげていき、不祥事件根絶の一助にいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
#72
○竹本委員 実は本日は大蔵委員会らしく、というと語弊がありますけれども、今回の不正事件がどういう事務手続のどの過程でどういう理由でできてきたかということについて、実は詳しく一々のプロセスについてお話を聞いてみたいと思っておりましたけれども、時間がもう全くありませんので、簡単に一口、二口伺いたいと思いますけれども、雷門支店の外為の損益が不当に赤字であるということに本店が初めて気がつかれたということがきっかけなようでありますが、そのとき不当に赤字が出ておるというのは一体どういう考え方であったか、その辺をちょっと伺って――事件の発端がどういうところから出てきたかということに関連してその点をちょっと伺ってみたいと思います。
#73
○岩佐参考人 いまのお尋ねは数字的に申し上げる時間もございませんので、それはもし御必要があればまたお手元に差し上げてもいいと存ずるのでございますけれども、本来は買い入れ外国為替の勘定は本店に集中されます関係がございまして、それでそういう本店に集中されません勘定が支店に残っておりますれば、その点から支点の勘定といたしましては外国為替について赤字が出てくるということに相なるわけでございます。したがいまして、その損益のほうは、本店に報告されません不正のものが外国為替にありましても、支店の損益の関係ははっきりそういう赤字の数字が出てまいります関係もございまして、本部におきまして支店の外国為替の損益の管理表を見ておりました段階において、赤字があるのがおかしいということに気づいたわけでございます。
#74
○竹本委員 次に、こういう信用状つきの買い入れ外為が支店長の権限ですべてやれるということになっているようですけれども、今度の事件を契機にその点に何か変改が試みられるか。また貸し出しワクの制限がこういうものにはあるのかないのか。ないとすればまた改められる点があるのか。その辺をひとつ伺っておきたいと思います。
#75
○岩佐参考人 その点につきましては先ほどもちょっと触れましたが、信用状つきの外国為替についてはすべて支店長の権限にまかせておりますが、支店の権限にまかせておるからといいましても、事後について本店で十分チェックしてまいらなければいけないはずなのでございます。その点についてはあの事件が発覚いたしまして以来改めつつございます。それから貸し出しワクの問題につきましては、外国為替の問題については貸し出しワクがございませんでした。この点もやはり一つの反省すべき材料であろうかと存じております。
#76
○竹本委員 さらにいろいろ伺いたいのですけれども時間もないようですから、もう一つだけ具体的なことを伺いたいのですが、それは、銀行の本店が支店をいろいろと監査されているわけでしょうけれども、その場合のねらいをいままではどこに置いておられるかということであります。それは事故防止に重点があるのか、経営管理のための隘路を見つけるというようなことにあるのか、あるいは本店の命令が十分行なわれておるかという実施状況を点検するところに重点があるのか。どういう点にか重点があるわけでしょうけれども、どういうところに重点を置いていままでやっておられるかという点を伺いたい。
#77
○岩佐参考人 もちろんいま御指摘のようないろいろな面につきまして検査するたてまえでございますけれども、その重点の置き方につきましては、事故防止ということに重点を置いてやっていたはずなんでございますけれども、その点につきましては必ずしも十分でない不徹底な点があったということをいま深く反省しておる次第でございます。今後につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、いわゆる抜き打ち検査と申しますか、事前の予告なしに行って、そして事故防止という点に重点を置いて検査してまいりたいというふうに改めておるところでございます。
#78
○竹本委員 かりに事故防止に重点を置いて本店でやられても、私は、外から行って監査するというようなことには非常に限界があるというふうに思いますので、ひとつ御提案を含めて申し上げたいのでございますけれども、御承知のように、アメリカでは各銀行員並びにオフィサーに対して、二週間程度の持続的な継続的な休暇を強制的に与えて、ほかの人にかわらして、そして事務をやらせてみる。従来の例でもそういう場合にインチキがいろいろ発見できるということが非常に多いようでございますけれども、こういう制度は日本にもこういう問題を契機にひとつ取り入れて、外部から大蔵省が監査する、あるいは本店が支店を監査すると申しましても、これには限界があるということを前提にした取り組みがこの際なされなければならぬと思うわけでございます。そういう強制休暇を、あまり短くては意味がないようですけれども、二週間なり一週間なり与えて、ほかの人にやらしてみて、その間にぼろが出るものは大いに発見をしていくという努力を私はやるべきであると思いますが、これに対する参考人の御意見を伺っておきたいと思います。
#79
○岩佐参考人 まことにごもっともな御意見でございまして、これは私の記憶では、戦争前においては、銀行におきまして強制休暇制度というようなものも設けてある銀行がございまして、その強制休暇の期間内において、本人のやっておりましたことをいわば総ざらいするというようなことも行なわれていたわけでございますけれども、戦後におきましては、そういう制度をとっておる銀行は、私全部を存じませんけれども、あまりないようでございますが、これはまことに事故防止あるいは事故の早期発見のために非常に有用な方法であろうかとも存じまして、この点については私としてはさっそく検討してみたいと思う次第でございます。
#80
○竹本委員 ぜひこれは前向きに検討していただいて――いろいろ抽象的な反省なり議論なりは行なわれますけれども、今回のこれだけの大きな事件がありまして、銀行の経営のあり方について何らかの意味で一歩前進がなければ全く意味がない、申しわけのない話だと思いますので、前向きに取り組んで、自己監査をひとつ徹底的にやるように御努力を願いたいと思います。
 それから最後にもう一つだけ伺いたいのですが、先ほど来、十九億のものがいろいろの御努力によって、損失が七億八千万とかあるいは六億とか、いろいろ議論がありましたが、そういうふうになる。かりに六億にせよ八億にしろ、その損失というものは経理の面では何でカバーされるのであるか。その点についてひとつ事務的なやり方を伺っておきたいと思うのです。
#81
○岩佐参考人 いまのお話の七億八千万につきましては、九月末の決算におきまして有税償却を一応いたしましてございます。
#82
○竹本委員 念のために、では銀行局長に伺っておきますが、これは貸し倒れ準備金を取りくずすというような形でやられる場合があり得るのかどうか。この事件のみならず一般的にいって。特に私が申し上げたい点は、貸し倒れ準備金というものは大体民事の場合に対するものだ。刑事事件による損失をそこでカバーすべきものとは筋が違うと思いますが、この点についてひとつ明確な線をきめておきたい。局長の御意見を伺いたい。
#83
○近藤説明員 ただいまの御質問の点は、とりあえず間接償却、有税償却という形で処分をいたしておきまして、後刻はっきり、いかなる処理をするかということをきめるわけでございます。したがって、最終的な処理は今後の問題になるわけでございます。
#84
○竹本委員 これで終わりますが、最終的処理の場合については、ひとつ筋を間違えないように基本的なものを通していただきたいと希望をいたしておきます。
 最後に、参考人からも先ほど来、いろいろ責任を感じて粉骨砕身御努力をするのだというようなお話がございました。私は、これは別な機会に、いまの銀行法、先ほども二十三条の問題が出ましたけれども、銀行の社会的責任をもっと新しい時代の要請に応じたように改正をしたいも一のだと思っておりますが、この問題は時間がありませんのでやめまして、最終的に、この富士銀行の事件というものは、先ほど来議論がありましたように、一人の菅沼何がしがかってなことをやる、そしてそれが上のほうにはほとんどわからないままにやられておるということでございますけれども、一般の庶民の感覚からいえば、実はわかったようなわからないような感じを非常に持っておると思います。そこで、この事件が刑事事件として取り上げられて、ある段階までいかなければならぬということもわかりますが、ある段階がくれば、これはやはり事件の全貌というものを、富士銀行としては国民に対して十分にわかるように説明をする責任があると思うのです。ある時期がくればそういう事件の経過をみんなにわかるように説明もするし、同時にこれに対する今後の取り組みはこうやるのだという新しい対策、また自分たちの責任はこうするのだというようなお考え、そういうものを含めて、やはりまとめて国民に訴えるべきものではなかろうかと思いますが、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
#85
○岩佐参考人 いまの御意見まことにごもっともだと存じまして、司直の手においての取り調べ等が一段とはっきりいたしました段階におきまして、事件の全貌、それからそれに対しての善後処置、それから今後、その事件以後におきましても当行のとっておりますいろいろな改善対策、そういうものも一々詳細につづりまして、あるいはそれについての責任の所在といったようなものも込めまして、そうしてまとめてみるのがしかるべきであろうかと存じております。
#86
○竹本委員 終わります。
#87
○毛利委員長 これにて岩佐参考人に対する質疑は終了いたしました。
 岩佐参考人には、御多用のところ御出席をいただき、ありがとうございました。どうぞお引き取りになってけっこうでございます。
    ―――――――――――――
#88
○毛利委員長 次に、当面の金融情勢等について、日本銀行総裁佐々木直君を参考人として出席を求めております。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
#89
○堀委員 先般から金融政策についていろいろと論じられてまいっておりますけれども、この間、ポジション指導についての十−十二月期の量的規制についてはかなり弾力的な措置がとられておるようでございます。その点とあわせて少しお伺いをいたしたいのでありますけれども、いまとられております金融政策は、昨年の九月以来公定歩合の引き上げとポジション指導と、かように相なっておると思うのでありますが、総裁はこの二つの手段の中で、公定歩合の引き上げというものがはたして貸し出し金利にどういう影響を与えているか。同時にまた、それが企業側に金利的な側面としてどの程度の影響を与えておるというふうにお考えになっておるかを承りたいと思います。
#90
○佐々木参考人 公定歩合の引き上げを実行いたしましてから今回の市中銀行の貸し出し金利の推移を見ておりますと、資金需給が非常に窮屈であったことを反映して相当市中金利が大幅に上がっております。従来の場合に比べますと上げ幅がやや広いように思われます。これには同時に長期貸し出し金利の引き上げが行なわれたこと、その他の影響もあるかと思いますけれども、結局は資金需給の非常に窮屈であったことのあらわれかと思います。したがいまして、そういう面から企業の借り入れコストというものが上がってまいっておりまして、その点が企業としては、採算の面その他で企業のビヘービア、態度に影響を与えておるように思います。日本では全体として金利の動きがそれほど大きくございませんので、公定歩合を動かしましたときの影響は心理的な面がわりあいに大きいのが事実でございますけれども、今回はやや市中の貸し出し金利に及ぼす影響が強かったということが特徴であろうかと思っております。
#91
○堀委員 私は今度の貸し出し金利の推移を見ておりまして、前回、前々同等の引き締めと情勢はいろいろ違いますけれども、貸し出し金利の上がってきておるのが金融政策だけに基づいているのか、その他の要因もここにプラスされているのではないのかと、こういう点にやや疑問を感じておるところでございます。いま総裁もお触れになりましたように、引き締め後大体九カ月というところでございますと、三十六年七月、四十二年九月、四十四年九月の三回の引き締めがそろって処理ができますから、そこで調べてみますと、三十六年七月には結論としては二厘上がりましたから〇・七三%の引き上げに対して金利の上昇は〇・三四四でございまして、この間、実際に引き上げられたのの四七%しか貸し出し金利は上がっておりません。四十二年のときには、同じようにやはり二厘になりましたから、〇・七三%に対して九カ月目には〇・二四五でありまして、わずか三三%しか上がらなかったということでありますが、今回は同じ九月のところで見ますと〇・三〇三%上がりまして七三%も上がっております。その後の経緯をずっとこう見ておりましても、さらにまだ今日上がり続けておるというのが実情でありますけれども、どうもこの金利の上昇の中には、特に全体の平均と都銀とを比べてみますと、一時、五、六、七カ月ぐらいのところが上昇が非常に小さくなっておりましたのが、八カ月目ぐらいから再びかなり大幅な上昇に転じて毎月上昇しておる。これは、私これらの資料を見ておりまして、金融政策によるものもあるけれども、各種の配当の問題その他に関連をして、やや金融機関がそういう政策に便乗した形で収益をあげる手段としての金利上昇もこの中に含まれておるのではないかと、こういう感じもいたしておるわけでありますけれども、その点については総裁はどういうふうにお考えでございましょうか。
#92
○佐々木参考人 ただいまの御指摘のありました銀行の配当の自由化、そういうようなことが銀行の収益についてのものの考え方を非常に、何と申しますか、鋭敏にしておるという事実は、これは否定できないと思います。ただそれがいまの貸し出し金利の上昇に直接結びついておるかどうか、その点についてははっきりいたしておりません。たとえば、いままで短い貸し出しをころがしてまいりまして長期資金の供給を行なっておったのを初めから長期で貸すという形で出しておりますものなどは、これはある意味では正常化の一つの道であろうかとも思われますので、その関係については簡単にはなかなか申し上げかねるという感じがいたします。
#93
○堀委員 そこで、金利の点について、今度はたいへん上がってきたわけでありますが、私はどうもいまの金融政策をながめておりまして、ほんとうにきいておるのはやはりどうも量的規制がきいているのではないのか。ちょっと資料を拝見いたしますと、量的規制は、まことになかなか日本銀行というのは力があると申しますか、たいへんきちんとしておられるというのでありますか、計画を大体お定めになるとほぼ量的規制は計画どおりに行なわれておる。これは私たいへんりっぱだと思っておるのですが、どうも私の感じでは、いまの金融政策というのは量的政策八分、まあ金利政策二分程度の効果ではないかなと、こんな感じもしておるわけでありますが、総裁は大体これをどのくらいの割合で感じておられるでしょうか。
#94
○佐々木参考人 ただいま御指摘がありましたように、量的な規制が相当大きな効果をあげておるという事実は確かにあると思います。ただ、その比率の点になりますと、どうも私もちょっと自信を持ってお答えをするだけの材料は持っておりません。海外におきましても、最近は中央銀行の金融引き締めの場合に量的規制を併用する場合がだいぶふえております。こういうことから考えましても、いまの世界的な管理通貨制度的な状況における金融政策に、やはり量的規制が必要になってきておるのではないかという感じがいたしております。
#95
○堀委員 私がいまこの問題に触れて伺っておりますことは、どうも日本の金融政策の中で公定歩合操作というものが、私は前にも申し上げたと思いますけれども、何か金融政策上たいへんな重大な事件だというように位置づけられておる気がしてしかたがないのでございます。本来は、現在のような状況になりますと金融政策というのは多少私は試行錯誤があってもいいのではないか。これまでのように、一ぺん引き締めたらなかなか解除ができない、解除をしたらまたなかなか引き締めに踏み切れないなどというような認識に立って今後の日本経済を運営していく場合には、私は非常にいろいろ金融政策上困難な問題が生じてくるのではないかという感じがいたします。たとえば、いま私がそれに触れておりますのは、量的規制のほうほゆるめられてきておる――まだ私は今度の量的規制が完全に自由になったと思っておりません。依然として規制があると心得ております。その量的規制は規制として残しておいて、公定歩合のようなものは率直にいうとあまり効果がない。効果がないだけではなくて、私の感じでは、公定歩合を上げることによってどうも都市銀行の利益が増加をすることに日本銀行が力をかしておるような感じもいたさないではありません。そういう点では、量的規制だけでかなりいける条件が、見通しが立っておれば、公定歩合操作というようなものをそう重大事件祝しなくて処置したほうがいいのではないだろうか。引き締めというのは、何も公定歩合をはずしたから引き締めが解除になるわけでもないし、量的規制をある程度残してコントロールをすることもちっとも差しつかえはないことでもありますから、そこらのところは緩急自在の処置をされて、さらに、しかしどうも心理的影響として、公定歩合を解除してしまうと、あとは量的規制も同時に解除してしまわなければならぬのだと、そういう考え方をとる必要はないのではないか、こう私は思うのでありますが、総裁はその点についてはどうお考えでございましょうか。
#96
○佐々木参考人 金融政策をできるだけ機動的に運営する必要があるという点は、これは全く同感でございます。できるだけそのときそのときの状況に合わせまして政策を動かしていくということでなければならないと思いまして、ある特定のものの考え方をいつまでも持ち続けて非常にがんこなことになりますと、いまのように変動の多い経済社会に対して十分な対策が立てられないうらみがございます。したがって、そういう政策の運営につきまして弾力的に行なうということは全く同感でございます。ただ、いままでの長い歴史がございまして、公定歩合というものの操作につきましての世の中の注目が相当やはり強いのでございます。それが何か非常にものごとを重くしている感じは禁じ得ないのでございますが、運営につきましては私どももできるだけ弾力的に、実態に合わしてやっていきたい、こう考えております。
#97
○堀委員 重ねてちょっとお伺いいたしますが、そうすると現在でも公定歩合を引き下げたら量的規制もはずさなければいけないと考えていらっしゃるでしょうか。私はいまちょっと申し上げたように、公定歩合を動かすことと量的規制をやることとは別建てで考えてもいいのではないかと考えておるわけです。しかしこれまでの世間的発想からいきますと、公定歩合を下げるなら量的規制もフリーにしろと、こういうのがこれまでの発想だと思うのでありますが、今後の取り扱いについて――今後というよりも今度ということになりますか、時期はいつかわかりませんが、今度もし公定歩合を引き下げられるときに、それを引き下げるのはイコールポジション指導もやめるんだというふうにセットで考えなければならないのかどうか。私は別建てでいいと思いますが、その点はどうでございましょうか。
#98
○佐々木参考人 私はこの両者が必ず同じセットとして動かなければならないとは考えておりません。ただ一緒に動く場合もあり得る、こういうふうに考えております。
#99
○堀委員 いまの一緒に動く場合というのもあり得るわけでありますが、たてまえとしてはセットでないとお伺いいたしましたので、そういたしますと、セットでないということになると、時期がどうなるのか私は知りませんけれども、もう何か公定歩合をあすこに据えておく意味はどうもあまりないような感じがいたしてしかたがないのであります。特に私、ちょっと前段で触れましたように、公定歩合を上げておることが要するに貸し出し金利の上昇につながっておる。貸し出し金利が上がるということは、たいへんもうかっておる特に都市銀行をさらにもうけさせることだけになって、実質的には量的規制で十分企業のビヘービアなり投資の抑制に、私はさっき申し上げたように八〇%くらい量的規制が働いておると見ておるわけでありますから、どうもそこらの観点から見ましても、公定歩合というのはもう当然下げらるべき時期に来ておるのではないか、こういう感じがいたすのであります。別に私はここで時期を伺うつもりでありませんけれども、そういう認識で現在の情勢を見ていいかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
#100
○佐々木参考人 現在の情勢判断につきましては、これはもういまさら申し上げるまでもなく、全体として景気は鎮静してまいっておりまして、金融緩和の方向に動ける環境であると考えております。そういう意味で、今後の金融政策の運びにつきましては、先ほども申し上げましたように、また御質問にもありましたように、できるだけ弾力的にやっていきたい、こういうふうに考えておるのでございます。
#101
○堀委員 そこで、解除はどうせ時間の問題ですからこれ以上伺いませんけれども、今度は、その次にまた引き締めをする条件がくる可能性もあり得るだろう、こう思います。日本の過去の状態を見ますと、民間設備投資というのは、政府の見通しが当初一六%くらいだと見通しても二五%にもなる、こういうことでございますから、四十五年度が一七%程度の民間設備投資の増加を見込んでおりまして、最近は一七、八%になるのではないかといわれておりますけれども、締めくくればやはり二〇%程度に達するのではないか、私はこう思います。ですから、何といいますか、そういうことでは非常に力があるわけですから、ゆるめればまたすぐ行き過ぎる可能性は十分にありますが、この前のときの引き締めは、ある意味では物価に非常に比重を置いた考え方で、予防的な引き締めということが、当時宇佐美総裁にお越しいただいたら御発言になったわけであります。この物価との関連で見ますと、卸売り物価は確かに少し落ちついてまいりましたけれども、消費者物価は御承知のようなことでありますが、この物価との関連というのは、卸売り物価が鎮静すれば大体引き締めを解除してもいいのだ、こういう理解に立つということでございましょうか。
#102
○佐々木参考人 確かに物価をどういうふうな面から見ていくかということは大きな問題でございまして、日本のように消費者物価が相当高いレートで引き続き上がっております。これを一体われわれはどう判断したらいいのか。私どものいままでの考え方といたしましては、金融政策が直接関連を持つのは卸売り物価である。その卸売り物価というものはまたそれが消費者物価に影響を及ぼしますから、その卸売り物価を中に入れて、間接的ではありますけれども、金融政策は消費者物価にも影響を及ぼし得る、こういうふうに考えておるのでございます。御指摘のように卸売り物価はことしの五月からわりあいに早く安定してまいりましたけれども、消費者物価のほうは最近になりましてまた大幅に上がっておるというようなことでございます。そういう面から考えますと卸売り物価の鎮静が消費者物価の落ちつきにどうもあまりプラスになっていない感じはいたすのでございます。ただ、いまさら申し上げるまでもございませんが、消費者物価をきめます要素というものは、金融政策以外にいろいろなものがございまして、それをあまり大きく評価いたしておりますと、金融政策としての主たる目的である経済全体の動きの調節ということから離れてしまう可能性もございます。したがいまして、過去の例を見ましても、消費者物価が上がっておるのにかかわらず金融をゆるめたケースもたびたびございます。そういう意味で、当面私どもとしては、卸売り物価の鎮静ということで物価については政策判断のおもな柱と考えておるのでございます。
#103
○堀委員 いま当面する金融政策につきましては一応以上といたしまして、次に、これは私は最近いろいろな機会に主張しておりますし、最近では日本経済新聞にも「国債、長期財源に活用 大蔵省償還期限二十年〜三十年に 発行額、GNP比で判断」、こういう見出しで実は出ておりますが、私が申しておりますのは二十年、三十年でなしに、五十年ぐらいでいいじゃないか。二十年も三十年も五十年も、長期国債ということにおいてはあまり変わりはないと思うのでございます。
 私はなぜこういう長期国債論を申しておるかと申しますと、最近の日本の社会資本の伸び率というのが、実は民間設備投資がふえればふえるほど相対的に社会資本のほうはおくれをとる、こういうことになっておりまして、大蔵省にお願いをしてちょうだいしておる資料を見ましても、政府の固定資本形成と民間の企業設備の投資とのバランスを見てみますと、そのバランスが五〇%をこえましたのは三十七年、三十八年、四十年、四十一年でありまして、四十四年においてはもう三八%まで下がってきておる。ことしも、民間設備もいま申し上げたようなことでかなり伸びるでありましょうから、おそらく四〇%程度に落ちつくのではないかと思いますけれども、非常に立ちおくれておる社会資本を充実していこうとすれば、不況がこない限りは社会資本は充実できないのだ、こういうことでは、私は、日本の長期的な経済がバランスを失してくるのではないかと思う。そうなれば、少し長期国債を、フェーバーを与えたものを出す、国民がほんとうに買う国債を出していくならば、かなり政府のほうに資本が来て、民間の側とすれば、単に都市銀行に対する問題以外に、全体としての民間の資金需給というものがタイトになってくるから、金融政策以前の一つの財政政策の中でより効率的な資金配分ができるのではないだろうか、実はこんなふうな感じを持っておるわけであります。
 ことしの予算委員会で私、たまたま佐藤経企庁長官が大蔵大臣であられましたから、総裁も御出席のところで、佐藤さんの発言による日銀引き受け的国債論というのをやりましたけれども、私がそれをやったのは、佐藤さんの考えと私と非常に共通の点があったからやったのでありまして、資料で拝見をしますと、昨年の八月現在に発行されておりました内国債は約二兆八千億円でございますが、今日それが、日本銀行に一兆四千億円オペレーションの種として入っておる。五〇%は日銀に入っているということはやはり日銀引き受け的国債だという感じがしてならないのでありまして、通貨政策上から見てもこういう姿というのはあまり望ましい姿ではないのではないか、私はこう感じておるわけであります。
 ですから、やはり長期国債にして、少し金利を上げて、フェーバーを与えながら、国民が、西ドイツの郵便債のように行列をしてでも買うような国債を発行するということになれば、いまの日銀引き受け的国債論というのはなくなって、あるべき国債論がそこに成り立ち、それが計画的に、ある意味では財政主導型になりますけれども、社会資本を充実していくということで、問題はもう少しスムーズな動きをするのではないかという感じがするのでありますけれども、総裁は、いま私の申し上げましたような長期国債論――いまの世代だけのもので実はいろいろな公共投資をやろうというのは非常に無理がありますから、その無理のしわ寄せの一つは、私は今度の自動車新税だと思うのであります。自動車新税というのはこれからいろいろ議論になる問題でありますけれども、当年度だけの者の税金で道路をまかなおうなどという発想は、私は日本のような社会資本ストックのおくれておる国では非常に問題があろうかと思う。やはりある年代の者が均てんして負担するということでは、長期国債を出して、そして後代の人の税金でそれを償還していくということになってしかるべきではないか。そういう財源がないのに社会資本をやろうとすれば、やはり自動車新税で五千億だとか付加価値で何兆だという話をどうしてもやっていかなければならぬというのは、私はどうも発想上にも日本のような立ちおくれた社会資本の国ではやや問題があるのじゃないか、こういう感じがいたすのでありますが、そこらの金融政策との関連も含めて、長期国債について総裁は――それが私はあるべき国債、いまの日銀引き受け的国債からあるべき国債へのシフトだ、こう思うのでありますけれども、お考えをちょっと承っておきたい。
#104
○佐々木参考人 ただいまの国債の消化方法が、大体都市銀行を中心とします預金金融機関に片寄っておりますことは、金融政策の運営の面から見ましても、はなはだやりにくいものを持っております。したがって、公債が合理的な条件で一般大衆、さらにまた機関投資家によって安定して消化されるということは、筋としてぜひ私どもとしては達成したい一つの目標でございます。この問題は国債だけに限りませず、ほかの公社債一般についてもその方向でぜひ何とか改善をはかりたいと考えておる点でございます。そういう意味で、合理的に発行されました国債によって社会資本の充実がはかられますこと、そのこと自身は、筋として私はもう全然異議はございません。ただ、日本銀行が事実国債を買い入れております。これは確かに御指摘のとおりでございますが、これは少し技術的になりますけれども、私どものその問題についての見方をこの機会に御説明申し上げたいと思います。
 いま、ことしで、昨年に比べまして大体銀行券が六千億円ぐらい増発になっております。これだけのものを――成長通貨と呼ばれる場合もございますが、これだけのものを日本銀行が発行いたしますその発行のしかたは三つ方法がございます。一つは外貨とか金を買い入れて出すという形、もう一つは有価証券を買い入れて出すという形、もう一つは貸し出しをふやして出す、この三つしか、大きく申しまして方法がないわけでございます。ところが、外貨を買います場合には、もちろん最近のように国際収支が好調のときには外貨もふえますから、その分だけは外貨の身がわりにお札が出るという形になるわけでありますけれども、しかしいまの国際情勢では、それほど大きく外貨をふやすわけにもなかなかまいらない。それから一方、貸し出しのほうは、これはやはり都市銀行を中心として貸し出しが行なわれるものでありますから、都市銀行を通じて日本銀行資金が供給されるという形になりますし、それからまた、短期であるべき貸し出しというものが成長通貨の供給のルートになるということが持つ弊害もございますので、昭和三十七年の秋からいわゆる新金融調節方式ということで、債券の買い入れという、より安定した方策を選んだわけであります。そういうことになってまいりますと、結局、通貨の増発分は債券の買い入れによって出さざるを得ないというふうになってまいります。したがって、その債券を買います場合に、最も信用の高い国債を買うということになっておるわけでございます。もし今後、国債が一般の投資家に消化されるような場合に、どういうルートを通じて有価証券を買うか、あるいはまたほかの銀行券の増発のルートを考えるか、これは今後の研究問題でございますけれども、いま申し上げましたように、われわれとしては銀行券を三つのルートを通じて出しておる現状から、とかくそういう有価証券、特に国債に片寄りがちであるという事実を御了承いただきたいと思います。
#105
○堀委員 確かにいまの成長通貨の供給のいろいろな手段としてはおっしゃる形にならざるを得ないと思いますけれども、問題は、その場合にはたして国債が適当かどうかということは、やはり私どもとしては多少ひっかかる点もあるわけでございます。しかし、順序として国債、政保債、こうなっておることでありますから、ある程度やむを得ない点があるかと思いますけれども、これらのオペレーションの種のあり方はまた別の角度で検討の余地もあるのではないだろうか。特に国債が半分も日本銀行に入っていくということは、どうも私どもとしては少しウエートが高過ぎるのではないだろうか。オペ種をもう少し検討の余地はないか。オペレーションすることには私も異議はありませんけれども、いまの形のオペレーションだけでいいかどうかという点は、私、少し検討の余地があるように思うのでありますが、その点についてはいかがでございましょうか。
#106
○佐々木参考人 御指摘のとおりでございまして、いまのやり方ではそのうちにオペ種に詰まってくる可能性もあるわけでございまして、目下、どういうふうな新しい方策が実行できるか、一生懸命検討しておる最中でございます。
#107
○堀委員 私は、いまお話しのように、オペレーレョンの問題を含め、そして前段でお触れになったように、私の長い持論でありますけれども、やはりマーケットができて、そこでオペレーションができるようになれば、全体としてたいへん影響もありますし、都合がいいわけでありますけれども、今日は都市銀行を通じてだけの、特にオペレーションの影響が非常に強く出ております点は、やはり少しあるべき姿に近づける努力が必要ではないかという感じがいたします。
 最後に少し伺っておきたいのは、実は少し中期的展望に立った日本経済の見通しの問題であります。いまいろいろ、不況がくるのかこないのか多少議論の分かれておるところでありますけれども、しかし長期的に見ると、私は日本経済というのはまだまだ成長余力があるという判断をしておるわけでありまして、その中で外貨準備は今後もかなりふえ続ける可能性があるのではないだろうか。短期的に見ましても、円シフトの関係というのはそろそろ時期が来て、これからは必ずしもそういう方法では外貨を減らすというわけにはいかないところへ来て、貿易収支の状態のいかんによりますけれども、これからはやや外貨準備がまた急増する条件が出てくるのではないだろうか、こういうふうにも思いますので、何と申しましても、もしいまのような形でいけば、先に平価の切り上げ問題というのも避けることができなくなる時期もあろうかと思うのでありますが、そこらの中期的な日本経済とそういう外貨準備との関係について、いま総裁はどういうふうに見通しを持っておられるかを承りたいと思います。
#108
○佐々木参考人 外貨準備が今後どういう動きをいたしますか、なかなか見通しはむずかしいところではございますが、当面おそらく年末までは相当ふえるのではないかという感じを持っております。御指摘のように、円シフトも大体限界に達しておりまして、そういう方策によります外貨準備の調整というのはちょっともうできないわけでございます。しかし、今後においてわれわれとして日本の将来を考えますときに、後進国の援助でございますとか、あるいは海外における資源の開発であるとか、あるいはまた世界銀行とかアジア開発銀行とか、そういったような多角的な経済援助機関への出資でありますとか等々、いろいろなものを考えていかなければならないと思います。そういうものは日本の外貨準備の動きを見ながら、そういう投資のほうの量を調節していけばよろしいのでありまして、それを考えますと、外貨準備が非常にふえて困るというところまではなかなかいかないのではないかと思います。
 この点は実は今後の国際収支の見通しの問題に関連してまいります。少なくともことしに入りましてからの推移を見ますと、貿易収支の黒字は大体去年とあまり変わっておりません。ところが貿易の増大に伴います、たとえば船賃とかいうようなもの、大体いわゆる貿易外収支に入るものでございますが、そういうものの赤字がふえておりますし、それから延べ払い輸出の増大に伴います長期資本の流出も増大しておりますので、そういう貿易自体並びにそれに直結する収支を考えますと、どうも黒字はだんだん小さくなるような感じがいたしております。そういう点についての配慮と、それからいまも申し上げましたような海外投資というものを考えてまいりますならば、外貨準備について、特に円切り上げの圧力を感じるといったようなことを避けていくことは可能ではないかと思います。それから、特に私どもといたしましては、短期的な外貨準備の変動にあまり気を奪われたくないと思います。いまの御指摘のように、やはりこういう問題は少なくとも中期的な見通しに立ってものごとを考えていくべきものだ、こう考えておるのでございます。
#109
○堀委員 実は、最近新聞で読んでおりますと、アメリカのマサチューセッツ大学のサムエルソン教授とかあるいはシカゴ大学のフリードマン教授あたりから、ドルがどうもドレスされておるのではないか、いろんな政策手段によってドレスされておる、そのドレスをとってしまえという意見がかなり強く出されておるようであります。確かに私もその意味ではドルはドレスされておると思うのでありますが、ドルのドレスがとれると相対的に日本の円もやはりある程度ドレスをはずさないといかぬ点が来るんじゃないだろうか。いまの日本の円は強い為替管理の中で、これもまた少し逆向けのドレスをしているような感じがしないでもないわけですが、こういう点が将来現実に政策になるかどうか、これはまだ先の問題でありまして、私もやや長期的な議論として承るわけでありますが、確かに私は、国内政策的にはいまの日本の為替管理はたいへん好都合でいいと思うのでありますけれども、だんだんと資本の自由化なり、すべてを自由化していく中で、日本だけがいまのようなソリッドな為替管理がやり切れるのかどうか。日本という立場だけについて考えれば、こういうのがあることはたいへん便利で、諸外国とのいろいろな金融政策上でも独立した処置がとりやすいわけでありますが、だんだん世界的にそういうドレスをとれという形が出てくれば、日本もそれにある程度対応しなければならぬ時期も出てくるのではないだろうか、そういうふうに感じるのであります。そうすると、それに対応するためには、またそれに対する準備もこちら側で考えておく必要が生じてくるのではないか、こう思いますけれども、その点についての総裁の御意見をちょっと承りたいと思います。
#110
○佐々木参考人 ただいまの前段のドルのドレスされている問題、これは、いま世界の為替相場のきめ方がドル基準でつくられておりますために、ドル自身が自分の発意で他の通貨との間の比率を変えることができない。できますことは、金に対する比率を変えることしかできません。したがって、各国が一緒になって動いてくれればドルは助かるわけでございましょうが、その点につきましては、今度のIMF総会で感じましたことは、EEOの通貨が固まりつつある、これが固まって一緒の動きをいたしますと、それはドルに対してやはり相当の――ほかの通貨が全部まとまってやるのとは違いますけれども、相当の力を持った幾つかのものが一緒になるという意味で影響を持つのではないか。そういうふうな動きが始まりましたときに日本の円がどうなりますか、そういう点については、まだ先の問題ではありますけれども、十分研究する必要があるように思います。
 それから第二段の為替管理についての問題でございますけれども、確かにいま日本の円は、輸入制限でございますとかあるいは資本移動についてのいろいろな制限に守られた強さにあるわけでございます。したがって今後国際的な水準にだんだんそれを近づけていくということで、為替管理も為替管理法もだんだん改正していかなければならない、そういうふうには考えております。ただ最近の外国の例をいろいろ見ますと、各国とも短期資本の移動が相当大幅に行なわれるために、それがいろんなゆがんだ影響をその国に与えておる実情がございます。したがって、短期資本の移動を調整しようということについていろいろくふうが重ねられております。ここではそのこまかい点は申し上げませんが、そういう点を考えますと、外国為替管理法の改正にあたりましても、事短期資本の移動に関するものについては、やはりある程度のものを考えておくほうが将来のためにいいのではないか。これは最近の各国の国際収支の面から見て考えておる点で、一言御参考までに申し上げておきます。
#111
○堀委員 終わります。
#112
○毛利委員長 竹本君。
#113
○竹本委員 私は、先ほどもお触れになったかもしれませんが、公定歩合を引き下げるべき時期が来ておるんだから、これは引き下げるべきであるということの立場で一、二伺ってみたいと思います。
 その第一は、公定歩合の考え方が日銀においては少しかた苦しく考えられ過ぎてはいないかということであります。簡単にいえば固定歩合になってしまうのではないか。私はやはり経済政策の機動性、弾力性ということを考えますと、これは簡単に、上げたり――簡単にというと語弊がありますけれども、あるいは下げたりする場合に、もう少し機動的にやったほうがいいのではないか。大体においていままでのところ、とかく一カ月か二カ月おくれるのが常識でございますから、常識というよりも通例でございますから、ぜひひとつ今度は公定歩合についてはあまりにかた苦しく考えないで弾力的、機動的にこれを運用する、そういう考え方のほうがいいのではないか。公定歩合そのものに対する考え方のまず基本についてひとつお伺いいたしたい。
#114
○佐々木参考人 その問題につきましてはただいまも堀先生から御指摘のあった点でございまして、その際にも申し上げましたが、私どもとしてはこういう政策の運営はできるだけ弾力的にやるべきであって、あまりそれについていろいろ問題を重く考えて実行の時期を誤るというようなことがあってはならない、こう考えておるわけでございます。どうもこういうような問題は、昔の金本位制度時代からの一つの遺風といたしまして、非常に各方面の注目を浴びております。したがって、非常にそういう問題について皆さんが敏感にいろいろ取りざたなさるものですから、いつも一、二カ月おくれたというようなことになるのではないかと思うのでありますが、いまのお話の御趣旨は私どもも全く賛成でございまして、できるだけ弾力的に動かしていきたい、こう考えております。
#115
○竹本委員 十−十二月につきまして量的緩和をだいぶやられて、日銀としては相当思い切った量的緩和であったかと思うのですけれども、なおかつ今日の資金需要というものの中には、健全、不健全いろいろあるかもしれませんが、全体としての資金需要についてはもう四、五%くらいの開きがあるのではないかというふうに思いますが、その点を総裁はどういうふうに見ておられるか。
 時間がありませんから、一緒に申し上げますが、中小企業の倒産がけさの新聞にも出ておりましたが非常にふえた。この中小企業金融、特にこれからの年末金融についてどういうふうなお考えを持っておられるか。二つお伺いをいたしたいと思います。
#116
○佐々木参考人 御指摘のように、今度の十−十二の都市銀行に対する資金ポジションの指導、それに伴います貸し出しの増加額では需要に足りないという感じは私どもも持っております。ただ、いままでのこういう金融政策の運びの連続性というものがございますので、その変え方がそう一ぺんに断層をつくって変えるわけにもなかなかまいりません。したがいまして、こういう筋を出しまして、今後さらに年末の状況その他を見てまた問題を考え直してもよろしいではないかと思っております。
 そういう問題が結局はいまの中小企業金融の問題につながるわけでございまして、今度ああいうポジション指導で貸し出し増を認めました一つの原因が、やはり年末における資金需要の増大に対処するというこちらの考え方も中に入っておるわけであります。したがって、最近中小企業に相当金融の逼迫の波が押し寄せてきております。そういう点を考えますと、この年末につきましては政府の中小企業金融機関と一般の金融機関と相並んで、年末資金の供給に遺憾なきを期さなければならぬと思っております。私のほうは一昨日から支店長会議をやっておりまして、きょうの夕方終わるのでございますが、私のほうの支店ではそれぞれの地方における関係当局としょっちゅう連絡をとっておりまして、地元の中小企業の金融の問題については相当きめのこまかいお世話もしておるのでございます。きょう私はその会議の閉会のあいさつのときに、その点について特にまた支店長の注意を喚起しておきたい、こう考えておるのでございます。
#117
○竹本委員 そうしますと、大体今度の量的緩和で中小企業の年末金融はまずまず乗り切れるだろうというお考えであるか。あるいはやはり恒例によって年末に特別な措置を考えられるのであるか。いまはまだその両方とも考える段階ではないというお考えであるのか。どれでございますか。
#118
○佐々木参考人 恒例のと申しますと、例年政府関係中小企業金融機関では年末のワクをつくられるわけでございます。私先ほど申し上げましたのはその点でございます。それから、今度の量的な規制をああいうふうにゆるめました関係もございまして、都市銀行、さらにその影響は地方銀行にも及ぶと思いますが、その他の金融機関においても中小企業に対する年末金融につきまして、従来に比べればある程度のゆとりが出てくるのではないか。この両者が相まちまして、おそらく年末は何とかうまくいくのではないか、こう考えておるのでございます。
#119
○竹本委員 その金融をゆるめる、あるいは公定歩合を下げるということに非常に総裁が慎重であられる立場もよくわかりますが、私は一つ基本的に考えて、日本の従来の財政経済運営の根本に関係する問題ですけれども、大体この財政のほうを、放慢にと言うとしかられるかもしれませんが、相当積極的過ぎるぐらいに積極的にやっておる。そして物価の問題にしてもあるいは高度成長のコントロールの問題にいたしましても、ほとんど大部分を金融に背負わしておる、あるいは日銀さんにおまかせしておるというようなあり方がどうもいまの政府には見受けられるわけであります。私はいま特に強く指摘したいのはその点でありますが、財政のほうを引き締めて、また金融のほうはある程度逆にゆるめるという形にしていくほうが、少なくとも今後の段階においては、運営の基本的態度としては正しいのじゃないか。いままでのような形で財政のほうは年々一八%前後ふくれていく。そうしてまた来年もそのくらいふくれるようでございますが、いろいろ物価の問題等に刺激があり過ぎる、あるいは高度成長になり過ぎるといったような問題をチェックするのはもりばら金融に依存しよう、日銀さんにお願いしようということは本来無理な考え方であり、あるいは極端にいえば逆立ちした考え方であると思いますが、財政の節度という問題のほうをもっときびしく考えるべきであって、金融についてはそれこそ機動的に問題を考えるべきではないかと思うのですけれども、この基本的な問題についての総裁のお考えを承っておきたい。
#120
○佐々木参考人 財政政策と金融政策というものは、これは車の両輪のごときものでございまして、両方がうまくマッチしてまいりませんと車がうまく進まない、その点は御指摘のとおりでございます。とかくいままでそういう重荷が金融政策のほうにかかりがちであったということも御指摘のとおりであると思います。したがいまして、今後の財政政策の運営につきましては、そういう面を十分考慮された上で行なっていただきたいということは私どもの痛感しておるところでございます。ただ今年度の問題に関しまして見ておりますと、財政のほうはわりあいに締まっておりまして、それが非常に大きな景気刺激のほうに働いているという事実はいままでのところは見えておりません。しかしながら、もちろん金融政策と財政政策とのいわゆるポリシーミックス、この点については私どもの年来の希望でございまして、その方向で進めていただきたい、こう考えております。
#121
○竹本委員 最後に締めくくりでございますが、フランスも公定歩合を下げた、アメリカもまた下げるだろうと思いますが、そういう情勢もあれば日本の公定歩合を下げるべき条件なり契機というものがそこに出てくるということが一つ。それからもう一つは、先ほども申しましたように――この点、総裁と私と違いますが、やはり日本の財政がこんなに毎年毎年量的にふくれるばかりであって、質的な内容の問題もありますが、かりに質がよくても、日本経済全体のキャパシティーというものが限定されておるのだから、それをこえたものはどうしてもインフレということで悪く発展をしますから、この十数年間ほとんど財政は毎年十数%膨張しておる、そういう行き方を私は批判しておるわけでございますから、その点は総裁と少し違いますが、それにしても総裁のお話では両輪のごときものだということで、その財政にも大いに節度を求めながらいくということになれば、金融は私はやはりこの際方向転換を早くやらなければ、むしろいわゆる政策不況のほうへ追い込まれる危険もある。一番いま総裁が心配をしておられる問題点は、これは私は先ほども申しましたが、一部は財政に肩がわりして解決すべき問題である。それからより基本的には、いまの経済組織なり経済制度の中ではもともと無理なねらいを持っておられるのではないか。私は、われわれからいうならば、佐藤内閣の次元で解決し得ないような問題まであわせて金融政策のねらいの一つに持っておられることになると、ますます公定歩合に対する考え方が硬直化する。そういう意味で、いまの内閣といまの組織のもとで考え得る対策として考えるならば、私はこの辺でやはり政策の基調を変えていく、金融政策の基本的な考え方を変えていく、その一つのあらわれとして公定歩合というものはこの際、おそきに失しないように引き下げるべきであると思いますが、最終的な御意見をもう一度伺って終わりにいたしたいと思います。
#122
○佐々木参考人 先ほども申し上げましたように、金融政策はそのときどきの情勢に応じて弾力的に運営すべきもの、こういう基本的な考え方を持っておりますので、できるだけ情勢に応じた対策をとっていきたい、こう考えております。
#123
○竹本委員 終わります。
#124
○毛利委員長 これにて佐々木参考人に対する質疑は終了いたしました。
 佐々木参考人には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞ御退席になってけっこうでございます。
 広瀬秀吉君。
#125
○広瀬(秀)委員 関連して銀行局長に一問だけ質問をいたしたいのですが、いま中小企業のこれから年末にかけての金融の問題が竹本さんからちょっとお話がありました。日銀総裁からは月並みな御答弁があったわけですが、やはり金融引き締めが非常にさいてきで、当初は大銀行筋が金が一番詰まっておったというのですが、最近では地方銀行も信用金庫、相互銀行なども、中小企業専門金融機関なども非常に詰まってきておるというような状態になって、しかも経済実体まで引き締めが及んできておる。そういう中でそういう段階を迎えますと、やはりもうもろに中小企業が倒産というような形であおりを食ってくる。そういう体質の弱さというようなことでございますし、すでにけさの新聞にも出ておりますように、しかも十月、十一月というのは中小企業の倒産が一番多い統計の数字もあらわれる。実態がそういうことにもなっている。それと年末を乗り切るための融資体制をどうするかということが非常に大きい問題ということになってくるわけでありますが、これについて、いまは日銀総裁は日銀の立場でお答えいただいたわけでありますけれども、ああいう程度のことではやはりこれはいけないだろうと思うのですね。そういう立場で、中小企業金融について大蔵省当局として、この十月、十一月、そして年末を含めて中小企業金融というものが非常に深刻な状態を迎えつつある、こういう現状認識の上に立って、どういう対策を具体的に考えられていくか。この点についてこの機会に御意見を聞かしていただきたい、こういうことで御質問申し上げたわけであります。
#126
○近藤説明員 ただいま御指摘のように、今回の引き締め時期を通じまして、初めのうちは中小企業に対するいわゆるしわ寄せというものが非常に少ないということが大きな特色であったかと思うのでございますが、四、五月ごろに第一段階、それから八、九月ごろに第二段階、かなり中小企業にもきびしい実情になってきつつあるかというふうに認識いたしております。したがいまして、これらの点につきましては、たとえば中小三機関のワクの問題とか、それらについてただいま鋭意検討をいたしておるところでございますし、それからまた昨日、私、日本銀行の支店長会議におきましても、中小企業に対する格別にきめのこまかい配慮を特に御要望いたしたわけでございますが、そういうことを通じまして、今後中小企業金融に遺憾のないように、年末を控えて格別の配意をいたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#127
○毛利委員長 午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後一時五十五分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時四十四分開議
#128
○毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国の会計、税制及び専売事業に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
#129
○平林委員 塩業政策につきまして関係当局の考え方をお尋ねしていきたいと思うのであります。
 昨年の八月、塩産業近代化方策という点につきまして塩業審議会の小委員会が中間報告を出されまして、世間の注目を浴びたのでありますけれども、これからこの問題に関して専売公社部内において手続的にはどういうふうに進んでおりますか。つまり、この中間報告が報告となり、やがて塩業審議会の決定になるまでの日取りといいますか、日程についてはどうなっておりますか。まず初めにそのことについてお答えをいただきたいと思います。
#130
○園部説明員 いまお話がございましたように、昨年の八月、塩業審議会の小委員会が塩業審議会に対して中間報告をしておりまして、それを受けて塩業審議会の会長の会長談話を発表したというのが御指摘の点でございます。その後さらに塩業審議会の小委員会を重ねて今日まで来ております。今後小委員会、塩業審議会を開いて、年内には塩業審議会の答申をできるだけ早い機会にいただきたい、かように考えております。
#131
○平林委員 年内に塩業審議会の結論が出る。このことは、わが国の塩業政策に根本的な転換をもたらすであろうという重大な時期に直面をしておるわけでありまして、私がこの問題をこの委員会で取り上げた理由はそこにもあるわけであります。
 元来、わが国の塩の問題については、戦後は非常に国民の関心事でありましたが、このごろは塩のありがたみを忘れている状況であります。なおかつ政府におきましても、終戦当時の塩業政策についての熱意は全く見られず、国民の生活、わが国経済に及ぼす影響が大きいのにかかわらず、これが何か一部において議論をされ、しかも重大な転換を迫られておるということはまことに私は重大であると考えておるわけであります。
 そこで、いろいろ質問に入る前に、塩専売法の目的というのはこれはどういうものであるか、これを明らかにしていただきたい。
#132
○園部説明員 明治三十八年につくられた塩専売法が引き続きその法律の形態をとっておりますので、法文に目的を明らかにはされておりません。
 歴史的に申しますと、明治三十八年に塩専売法ができましたときは、財政収入をあげるという目的と、国内塩業を保護しながら日本の国の塩について安定した供給、自給の体制をとるということが目的であったように聞いております。
#133
○平林委員 現在進行中の塩産業近代化方策は、ただいまお示しのとおり、塩専売法の目的とするところから考えますというと、きわめて矛盾しておるという事態に私は直面しておると考えるわけであります。法律には目的ということは書いてありませんけれども、いまお答えになったところが法制定の当時の国が専売公社に課したところの目的であった。しかるに、財政収入につきましては、当面おおよそ三十億円の赤字がある。国内塩業の保護という問題につきましては、イオン交換樹脂膜の導入によりまして、今日その塩業の大半は保護であるどころか、いわば近代化の波に押されて崩壊をしていく、新しい産業が生まれる、こういうことでありまして、当初の目的とは全く別な角度になっておるわけであります。国民生活に対する塩の需給の安定等につきましては、政府の熱意のないことおびただしい。塩のありがたみを忘れるような状態でございまして、この点なども私は、近時それらの法目的が必ずしも達成されているとは思えない現状であります。
 そこでお尋ねしたいのでありますけれども、これらの塩専売法の目的に従いまして公社が直接これを担当する専売制をとってまいったわけでありますけれども、その総裁の諮問機関である塩業審議会が、いろいろな準備期間はございましょうけれども、何年か先に塩専売制を廃止するというような答申を出し、その方向に着々と進めていくということが、法の目的、精神から見て矛盾をしないだろうか。つまり、この塩専売法のもとに国からまかせられた専売公社、その諮問を受ける塩業審議会がこれと反対の方向に、必要やむを得ない事情はわかるにいたしましても、その反対の方向の結論をまさに出そうとするということは矛盾がないだろうか。このことについて御見解を承りたいと思います。
#134
○園部説明員 先ほどの答弁を補足いたしますと、専売法の目的は、御承知のように、その後、大正七年から財政目的を離れまして、国内の塩業を保護するとともに国内の一般用塩についての安定供給、需給調整の体制を目的として運用をされております。それなりに何十年その目的を達すべく努力を積み重ねてきたことと思います。
 いま御指摘の塩業審議会の点でございますが、塩業審議会は専売公社の諮問機関でございます。その専売公社の諮問機関が専売法について触れたという点についての御指摘でございますけれども、私ども専売公社といたしましては、専売法なり制度の諮問をいたしたわけではございません。御承知のように、長年専売という制度のもとで保護しなければ国際競争力がないという塩業が、新しい技術によりまして国際競争力を持ち得る塩業になり得る段階に来たのではないか、こういう段階において今後の塩業政策をいかにすべきかということを塩業審議会に諮問した次第でございます。塩業審議会としてはそういう次元に立って審議した結果、塩業の自立化体制といいますか、そういう制度的な保護なしにもいけるような塩生産業になり得るという見通しを得たので、そういう見通しを得た事業は専売法というようなものに寄りかからなければならない企業ではないんではないかという指摘をしたのが、塩業審議会の中間報告の指摘のしかたではなかろうか、かように受け取っております。
#135
○平林委員 おっしゃるとおり、塩産業近代化方策についての小委員会の中間報告は、塩産業近代化の基本構想を示して、いま御説明になったとおりの考え方を述べています。しかし、基本方針としては、「上記の目標を円滑に達成するため、昭和四十五年度から三年ないし五年間の準備期間を設け、その間、次のような方策を実施し、準備期間終了と同時に塩専売制度を廃止する。」とうたっておるわけなんであります。国から依頼をされた専売公社、その諮問機関がみずからを否定をするというような結果が結果的に出ている。終戦時におきましては、政府が塩政策についてはなかなか熱心で、いまの需給安定のための方策などはいずれも閣議決定によって行なわれ、そのもとに専売公社は塩専売法の維持運営をしてきた。そうでしょう。ですから私は、その点が手続上から考えてみても矛盾がありはしないか。つまり国の基本政策として塩産業政策をきめ、その諸方策について諮問を受けて細部を検討するというならまだ順序は通っておるけれども、そうでない。自分で自分を否定をするという形になって、いま塩業政策の転換がはかられる、これは矛盾じゃないか。いかがでしょうか、政務次官。国の基本政策としてこれからの塩業政策が樹立をされる、そしてそれに従って細部的な問題について方策を検討する、これが順序である。塩専売法で専売公社に移管され、その諮問機関がみずからを否定し、塩専売制度の廃止をうたう。手続的に矛盾がありはしないか。逆にいえば、政府は塩業政策について何らなすべき見解を持っていないということにも通ずるわけですが、この点はいかがですか。
#136
○中川説明員 ちょっと考えるとそういうような疑問も持ちますが、ちょうど食管法の中に米価審議会というのがありますが、米穀の事情が、法律をつくりました当時の情勢と非常に変わってまいりますと、法律のもとにできた米価審議会で食管法改正なりあるいは廃止なりが議論されると同じように、塩業制度についてもいまの法律のもとで検討していくとこの法律は必要なくなる、専売制が必要ないということが当然の結果として出てくる場合もあるんじゃないか。ただし、審議会が法律を改正する、法律を無視するというわけにいきませんで、その結論を見た上で政府なりあるいは国会において十分審議をしていけば法律違反でもありませんし、またそういうことはあり得ることじゃなかろうかというふうに考えます。ちょっと考えると自分のところを自分で首を切ってしまうような話ではありますが、制度そのものを検討する過程においてそうせざるを得ない、社会情勢の変化なり何なりから結論が出る場合もいたし方のないことではないか、このように考えるわけでございます。
#137
○平林委員 私の指摘は、政府においても塩業政策の転換は国の基本的な問題として検討すべきである、そういう一つの手続とルールというものを守る必要がある。私は審議会の答申の内容を見ないと、どういううたい方を最終的にするかまだわかりませんけれども、そういう注意だけはこの機会に喚起をしておきたい。政府に対してもひとつ猛省を促しておきたい、こういう趣旨でいまの点は終わっておきたいと思うのであります。
 そこで次に、それでは塩は、いま用途別に分類をいたしますと大体どういうふうに使われているか。国内塩あるいはソーダ工業塩等についての概要を、時間もありませんから簡単に御説明をいただきたいと思います。
#138
○園部説明員 塩の消費の概況という御指摘でございます。国内塩と輸入塩と両方合わせまして、供給体制として約七百五十万トンぐらいになるかと思います。そのうち六百万トンは輸入によるソーダ工業用塩の原料でございます。百五十万トンが一般用塩と申しまして、国内生産と一部の輸入塩とをもって一般に消費される塩の需要にこたえております。その百五十万トンのうち、いわゆる小売り人を通して一般家庭あるいは一回当たりの消費の少ない需要に売られていく塩が約四十六、七万トンでございます。それ以外の約百万トンは業務用といいますか、いわゆるしょうゆとかみそとかパン、めんとか、そういったような需要、そのほかに最近はソーダ工業以外の一般工業用塩、合成ゴムその他の一般工業用塩の需要がその百万トンの中に入っています。そういった一般工業用塩と、いわゆる家畜その他が約三十万トン、約七十万トンがいわゆる間接に口に入るというか、食料用になる塩の需要ということでございます。
#139
○平林委員 そこで先ほどの話に戻るのですが、塩会計三十億円の赤字と承知をいたしておるわけでありまして、今度の中間報告でも塩会計の赤字が一つの重要なポイントとしてあげられておるわけでありますが、塩会計の赤字はむしろつくられた赤字であって、私は、本来この問題の解消には専売公社も何ら努力をしておらぬ、だから、塩会計の赤字そのものは専売制の廃止の理由にはならないという意見を実は持っておるわけなのであります。特にいま家庭用で使われておる塩は、この間も大蔵委員会で四国に視察に参りまして、六百二十グラム、これは何ぼぐらいすると思いますかと各委員さんにも私お尋ねしてみたのでありますが、正確な答えができる人はありませんでした。一般の家庭用の、食卓塩は別でありますが、六百二十グラムの袋入りを二十円だと考えている人はあまりいません。で、私は各家庭の消費はどのくらいかと推察いたしますと、大体その袋が十袋もあれば一つの家庭で十分である。つまり、家庭が塩を購入する経費は、これを利用すればおおよそ二百円にとどまる。この価格はもう長い間据え置かれております。そのためにまた赤字があるということにもなりましょう。私はこれを値上げせよと言うのではありませんが、かりに五円値上げをしたとすれば一体塩会計の赤字はどうなるか。五円の値上げということは一般の家庭に対しては十袋ですから五十円の影響を与える。あとでビールや酒やその他の問題が議論されますけれども、家庭に与える影響はおおよそこの程度である。それをかりに五円値上げをしたとすれば塩会計赤字にはどういう影響をもたらすか、参考のためにちょっとお答えをいただきたいと思います。
#140
○園部説明員 いまの御質問、五円値上げするということは二割五分の値上げということになりますが、およそそれによると赤字が解消して、それ自身で四十億以上の収入増ということになると思います。
#141
○平林委員 お聞きのとおり、かりにもうずっと長い間据え置かれておるこれを五円値上げしただけで四十億の増収になり、専売会計の三十億円の累積赤字はたちどころに解消するという程度のものである。そういうことがまずお互いに認識をすべき問題であると私は思うのです。塩会計の赤字があるから専売制を廃止せよ。こういう議論は成り立たないという一つの例証であります。
 もう一つお尋ねしますが、六百万トンのソーダ工業用塩、これはいま日本の重要な産業の原材料になるわけでありますけれども、自己輸入制度をとっておるわけであります。塩専売法は、塩の買い入れその他は専売公社に帰属するという形で法定をされております。しかし、この自己輸入制度は、専売公社の手を通ずるけれども、実際の購入交渉その他については民間業者にすべて委託をされた形になっています。私は、これは塩専売法から考えてみても疑問があるということをかねがね主張してまいったのでありますけれども、その手数料は昭和三十七年以降トン当たり三十円しか取っておらぬ。昭和三十七年当時の自己輸入による塩の購入はおおよそ二百二、三十万トンでございましょうか、いまはその三倍の六百万トンに達しようとしている。それにもかかわらず依然としてトン当たり三十円。これはどういうわけか。私は、塩会計の赤字においてこれらの産業に対して一種の財政的援助を与える効果を果たしているのではないかとさえ思う。そして、それが三十七年以降相変わらずトン当たり三十円で据え置かれているということは、塩会計の赤字についてもやはり相通ずるものがある、こう考えるのでありますが、なぜ三十円のまま据え置いておるのか。その算定根拠は何かという点についてお答えをいただきたいと思います。
#142
○園部説明員 ソーダ工業用塩の自己輸入のトン当たり三十円の件でございます。先ほど御指摘がございましたように据え置かれてございますが、その算定根拠は、専売公社の職員による輸入塩の分析立ち合い等の手数料でございます。なぜ据え置かれてきたかということになりますと、年々取り扱い塩量が非常にふえてまいりまして、しかも単位当たりのロットが非常に大きくなりますので、その当時に比べて専売公社の直接それに必要な経費としてはふえておらないというのが現状でございます。
#143
○平林委員 私はその点にも問題があるという指摘をしておるわけであります。つまり、昭和三十七年十月以降トン当たり三十円の手数料しか取らない。そしてその算出根拠は、いまお話がありましたけれども、ソーダ用の塩の販売経費とかソーダ用塩の管理費を積算して、輸入トン数でそれを割るなんという形をしているから三十円なんという安いことになっているわけなんです。その取り扱い量がもう三倍にもなって依然として三十円であるということは、この算出根拠そのものが間違っておる。一つの、塩専売法というものによるところの、財政収入ということもある程度予期し、目的とした法律があるにもかかわらず、これらの点については全く触れなかった。これはやはり問題ではないかと私は考えておるわけなんです。現に専売公社の職員は、夜間といえどもそれらの検査に当たっておる。そのために人件費はオーバーをして、ある一部事業所をとってみても、専売公社の負担によってまかなわれておるという実情なんです。もしかりにこれを、トン当たり三十円を四十円にしたらどれだけの塩専売財政収入があると思いますか。
#144
○園部説明員 六百万トンの十円でございますから、計算上明らかだと思います。
#145
○平林委員 一般の家庭用の問題でもそうです。いまの問題についても、どれだけの塩専売収入があるか。これは極端にいえば不当に、ソーダ工業用塩の自己輸入制度によって、塩専売赤字によって、その犠牲においてこれらを財政的に助成、援助をしておるということにも通ずるわけなんです。これらの点をそのままほっておいて、塩専売制が赤字である、そしてあたかも専売制廃止が合理的であるというようなことは、これは私は受け取りがたい点である、こう考えておるわけなんです。これはまたなお公社におきましてもぜひひとつ検討してもらいたい問題であると思うのでありますけれども、これはいかがでしょうか。
#146
○園部説明員 先ほど来、平林先生の立論が、塩業審議会において、塩事業会計が赤字だから塩専売法を廃止すべきだという点になってきているような前提のように思われますけれども、塩専売法廃止云々の問題は先ほど御説明したとおりで、塩の生産が自立化され、国際競争力を持ち得るという段階になれば、制度に依存することなしに自立できるのではないかというのが塩業審議会の指摘であるという点はあると思います。ただ価格の点あるいは手数料の点、いろいろ御指摘があったところでございますけれども、御承知のように塩事業全体の合理化を進めるという問題について現在取り組んでおる次第でございますので、この問題の輪郭を明らかにして、今後の塩業政策を進める過程において検討してまいりたい、かように思います。
#147
○平林委員 私は、塩業審議会は本来、この近代化政策の前にもこの種の問題については当然議論してしかるべき問題であるという注意をこの際喚起しておきたいわけなんです。こうしたことに全く触れなかった。そうした点について一体塩業審議会というものは何の役割りを果たしておるかという点を顧みて、この際問題を提起をしておきたい、そういう意味なんであります。
 そこで、大体時代としてイオン交換樹脂膜という近代製法を取り入れなければならぬという必要性については、審議会のメンバーの方々と私はそう変わりはございません。問題は、この基本を貫いていくという場合に必ずしも専売制を廃止しなくてもよいのではないか、この点が違うわけなんであります。塩専売制のもとにおいても、イオン交換樹脂膜製法によって国内塩業の需給と安定をはかることが可能ではないか。それをなぜ塩専売制の廃止がなければできないか。これは短い時間に議論することは不可能かもしれませんけれども、私はそういう理論を持っておるわけなんです。繰り返して申し上げます。大体塩専売制を維持したもとにおいても、イオン交換樹脂膜による塩製法に転換することが可能ではないだろうかという疑問を提起しておきたいわけなんです。
 そこで、ちょっとお尋ねしますが、この間も四国へ参りまして、各塩業の状態を見せてもらったわけなんであります。比較的小規模の工場におきましても一部イオン化が進められております。しかし、審議会が将来の塩産業ということを構想する場合には、外国塩と競争し、なお、おそらくその頭には塩専売制の財政ということも頭に描いての話でございましょう。そこで、塩収納価格については一つの限界がある。いろいろなことを考えられてのイオン製法に転換ということが描かれるわけであります。そのときの前提は、少なくとも一工場当たり十五万トン以上の工場をねらっておる。そうすれば、国内塩は先ほど申し上げましたように百五十万トンですか、工業塩が入っていますし、事業用が入っておりますから。これは消費者向けでありますと六十万トンで済むわけであります。いまの状態で見ますと、最終的に幾つぐらいの工場にまとめていくつもりなのか。それは、当初の目的と離れてさらにこまかいようなことになり、せっかく近代化をはかるにしても中途はんぱなことに終わらないかという心配も私は実はしておるわけなんでありますが、こういうことについてはどういうお考えを持っておりますか。
#148
○園部説明員 平林先生御指摘のように、イオン交換膜による製塩は大規模生産の利益が非常にございますので、十五万トン以上の規模で生産する必要があるのではないか。国内塩の需要を九十万トンないし百万トンといたしますと、約六工場ぐらいの見当になるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
#149
○平林委員 現状は、そういう六工場に限定して将来の日本の塩業ということを考えるような趨勢にいくのか、それともやはりだらだらと八工場、九工場を認可するような情勢になるのか。このけじめがはっきりいたしませんと、転換などといったってとても無理が出てくるし、将来不安定なものを残すことになる。そういう点を注意せねばなるまいということを私は申し上げておるわけです。
 そこで、これらの転換をする場合に、特別の助成が必要であるということは私は昨年の予算分科会で主張いたしました。つまり、日本の政府は黒の問題はよくめんどうを見る、石炭やなんかについては。ところが白の問題はあまりめんどうを見ない。碁でも白を大事にしないのは名人の位につけない。政治でも同じことで、黒ばかり大事にするのではなくて、白のことも少しは考えねばなるまいということを申し上げたことがあるのでありますけれども、しかし、そうかといって無制限にそのための助成の経費をかけるというわけにもいかない。合理的な、国民の納得する形の助成がなければならぬ。これは言うまでもありません。
 そこで、いまこれらのイオン交換の製法に転換するにあたって、一体どの程度の助成が必要だと考えているのか、業界はどの程度の希望を持っておるのか、その点を明らかにしてもらいたい。
#150
○園部説明員 今次塩業合理化を推し進めていくにあたって、いま御指摘のように塩業から離脱せざるを得ない方々が出る情勢にきておるということでございます。これに対して助成をするという点の問題につきましては、現在政府及び関係方面といろいろ折衝し、審議会の意見を聞きということで、国民の納得のいく、かつはまた業界としてもやむを得ないというものを求めて努力をしております。業界といたしましては約六百九十億円程度の要求をしております。政府及び公社におきましては、先般国会で大蔵大臣から説明がありましたように、九十二億円の予算をもって二年間に塩業の転換をしてまいりたいというのが現在の状況でございます。
#151
○平林委員 私は、今回の塩業政策の転換には、九十二億円程度の財源で円滑な転換が促進できるとは思っておりません。さればといって、業界が要求するような巨額な資金、これはなかなか適当ではないと思っています。最近はこれを少し下げた形で話し合いが進んでおるようでありますが、最終的にはやはりこれは数百億の資金が必要になってくる。したがってこの問題は、私は政府においても大局的立場から十分検討することを要求しておきたいと思うのであります。
 同時に、私の言わんとすることは、これだけの巨額の助成資金を国家的にいたしまして、結果的には寡占のイオン製塩企業を育成するだけになるのではないかという心配をしておる。そして五社か六社の――これでも多過ぎる。イオンの製塩によって外国の塩と競争しよう、単価もトン当たり七千円くらいに持っていこうとするには、これでも多過ぎる。ほんとうは二十万トンか二十五万トンないし三十万トン程度の規模の工場がなければできぬ。そうなれば補償の額も多くなってくる。これだけの補償の金額をやって、そして専売制を廃止し、寡占の産業を育成する。今度のビール会社のようにかって気ままな値上げを塩価格でやるということになったならば、国民の生活は今度はどうなるのかということにもなってくるわけでありまして、私はこれは将来にわたって非常に慎重に検討すべき問題であると思う。ですから、イオン交換樹脂膜の転換は時代の要請でやむを得ない。しかしそれだけの巨額を使うならば、引き続き塩専売制のもとにおいて行なうことが一体不可能なのかどうか。そして現存の弱い塩産業についての手当ては財政的になかなか負担になるでしょう。しかしそれは先ほど申し上げた塩会計の改善策をもって足りるのではないか。こういう点も、ただ少数の産業を育成するために巨額を結果的に投ずるというような政策が正しいのか、それともその巨額を投ずるなら、同じ金額を使って何らかの助成で塩の需給と安定をはかる方策を考えるべきではないか。こういう点も私は、裏からも表からもひとつやってもらわなければなるまい、こういうことをきょうは申し上げておきたいと思うのであります。
 きょうは時間がありませんで、大体これを三十分でやれというのが無理なのであります。でありますから、これは引き続き検討をすることにいたしまして、政府もせいぜいこの問題について取り組んでもらうことを要望いたしまして、私の質問は中途でおいておきたいと思うのであります。
#152
○毛利委員長 松尾正吉君。
#153
○松尾(正)委員 私は、先般国税庁が四十四年度の課税実績について発表しておりますが、これを中心にただしてまいりたいと思います。
 二十年史等を読ましていただきますと、国税庁が徴税に非常にくふうし、しかも苦労、努力をされておる、こういうことはよく理解できますけれども、しかし法人が非常に伸びている。これに対して不正等の形が大型化し巧妙化している。法人がぐんぐん伸びているにもかかわらず不正によって摘発される脱税額というものがあまり変わっていない。こういう実態を見ますときに、この脱税というものが税の不公平感を助長する大きな原因でもある。さらにまた税の不信にもつながる問題でもあるし、正直に納税しているものにとってはやりきれない、こういういろいろな弊害がありますので、これの対策についてはさらに十分に考えなければならない、こう思うわけです。
 こういう点からまず伺いたい点は、法人税だけでけっこうでありますけれども、昭和四十年度から四十四年度までの五年間の法人税の対象となった企業数、それから調査対象となった企業数、それから不正企業数と、これによって得た追徴税額、これを数字で示してもらいたいと思います。
#154
○江口説明員 ただいまの御質問でございますが、計数に関係がございますので私から御説明をさしていただきたいと思います。
 処理件数の関係でございますが、署所管法人と局調査課所管法人とございますが、合わせまして、法人数というよりは、私どもの事務の処理の関係から申告事業年度数ということで申し上げたほうがおわかりやすいかと存じますので、そういう観点から御説明をさせていただきたいと思います。
 処理件数で申しますと、四十年度が八十三万七千件でございます。四十一年度が八十六万九千件、四十二年度が九十二万二千件、四十三年度が九十七万七千件、四十四年度が百三万一千件でございます。これに対しまして、いわゆる私どもで申しております実地調査をいたしました件数でございますが、四十年度から逐次申し上げますと、十九万一千件、十六万四千件、十四万八千件、十四万九千件、四十四年度が十四万件ちょうどでございます。それからこれを一応実調割合で申し上げてみますと、これも四十年度から逐次申し上げますと、二二・八%、一八・九%、一六・一%、一五・二%、四十四年度が一三・六%でございます。この調査の結果、増差所得が発見されましたと申しますか、修正を含めまして増差の出た所得の額でございますが、これも逐年申し上げますと、二千二百六十五億円、二千二百七十五億円、二千五百六十四億円、二千六百五十六億円、四十四年度が二千九百七十八億円でございます。
 ただ、誤解があるといけませんので若干補足させていただきますが、この増差というのは、いわゆる脱税額というものでは私たちは律しておりません。この中にはいわゆる税法の不知あるいは企業の考え方と税務計算上の考え方との食い違い等がございまして、その分の訂正したものを含むということになりますので、いわば脱税という表現に近いものをとらえた場合に不正発見所得という言い方を私どもいたしてございますが、いま申し上げました数字の中で、いわゆる仮装、隠蔽等を含めましたところの不正発見所得でございますが、この内訳が七百五十億円、七百九十九億円、九百四十七億円、一千三十一億円、四十四年度が一千二十九億円、かような数字になっております。これに対します追徴税額でございますが、この中には加算税等も含んでおりますので、さよう御承知おきいただきたいと思いますが、税額では七百九十億円、七百三十三億円、七百八十八億円、七百八十二億円、四十四年度が八百六十五億円、かようになっております。
#155
○松尾(正)委員 いま詳細に四十年以降の数字を示してもらったわけですが、このうち課税対象企業、これだけをとってみますと非常に増加しておるわけです。ところが、非常に企業が伸びているにもかかわらず実態調査をしたのはこのうちのわずか十四万件、一三%程度しか見られない。しかも、その実態調査をした中で七四%という大きな不正や申告ミスがある。先ほど述べましたように、法人が大きく伸び、税が正しく行なわれて追徴税額等が伸びないというならば、これは理想でありますけれども、しかし実情はそうと思えない節がたくさんあるわけです。脱税額は、このように法人が大きく伸びているにもかかわらず、わかっただけで八百六十五億円と非常に大きな数字を示しておりますけれども、この一三・六%でこれだけの数字になったものを、もし全部を調査対象とした場合には相当大きな数字になるということが考えられる。こういった点を考えてみますときに、よく脱税天国というようなことばが使われておりますけれども、こういうことばもまんざらでない、こういうような感さえいたします。源泉徴収で一〇〇%課税をされているサラリーマン、それからまじめな申告をしている企業、これらにとってはもうやりきれない気持ちであって、現状のままではだんだん脱税というのが、税の不正というのが増加するばかりではないか。こういうことを考えましたときに、一体この原因はどこにあるのか。さらにこれに対する対策についてはどのように考えておられるか。長官にひとつ伺いたいと思います。
#156
○吉國説明員 ただいま数字で御説明申し上げましたように、確かに最近において法人税の実調件数が落ちてきているということが明らかでございます。ただこの点につきましては、私ども先般も御説明申し上げましたが、従来は法人についてすべての法人を調査するという体制をとっておりました。昭和二十四、五年ころはあらゆる法人に対して調査を行なう。そのころは実を申しますと調査をしてもなかなか不正発見というものができなかったわけであります。なぜかと申しますと、その当時の法人の従事員は数が少なかったわけでありますので、やはりいまと同じような多数の件数を持っておりました。これがすべての法人を一々調査をいたしますと、結局一つの法人を調べる時間が非常に制約されまして、ほんとうの意味の調査が十分できない。すべてが中途はんぱな法人の調査になりがちである。またそういう中途はんぱな調査をいたしておりますと、法人の申告意欲というものもそがれてしまうという悪循環を起こすわけであります。そういう点から、昭和二十七、八年ごろから方針を転換いたしまして、法人というものは帳簿を持って継続記録をいたしておりますので、調査をいたしまして一つの年度に不正があればまたさかのぼって不正を発見することは容易であるという点を考えまして、三年循環調査というものを打ち出したわけでございます。そういたしますと調査の件数は三分の一で済みまして、それだけ調査日数が充実をする。まあそういうたてまえで、そのかわりほんとうに真実に基づいた調査をして、また同時にその調査の結果として間違っていれば、法人のほうもそれだけの調査を受ければ反省をし、正しい申告をするであろうという前提で、調査方針を切りかえたわけでございます。それからすでに二十年近くたっておりますけれども、その結果としてかなりいわゆる不正発見というものが出てきたのも事実であります。
 しかし同時に、その間に法人数が毎年、多いときは十万件、最近でも四、五万件ふえております。現在では百万をこえる法人数になっております。ただしその中で休眠法人と申しますか、名だけ法人ができて休んでおるものもありますので、実数はおそらく七十万程度ではないかと思います。あとはいわゆる申告を出しても事業活動がなくて欠損申告というものでございます。そこで、最近それだけ数がふえてまいりまして、法人の従事員も昭和二十六、七年当時に比べますと倍以上の従事員を充当いたしております。それにもかかわらず最近の調査等におきましては非常にむずかしい案件が多くなりました。実地調査の件数は漸次減りつつある状況もございます。しかし同時に、私どもといたしましては、申告している法人がすべて不正をしているということはあり得ないので、従来のそのような綿密な調査をいたしました結果はすべて法人税歴表に登録をいたしております。それでその法人の申告の傾向、調査の実績、また現年度に提出をいたしました申告書の内容の分析等をいたしまして、できるだけ調査対象を制約をするという方向をとってまいりました。従来のように機械的に三年循環ということよりも、正しい申告の法人はより間隔を広めてもいいし、続いて不正な申告が行なわれている法人については連年調査も必要があればやるという体制で、より弾力的な執行をはかってまいりました。その結果といたしまして、その段階で選び出された法人につきましては、御指摘のようにたしか七割程度の法人について税額の相違が出てきておりますし、三割程度の法人については売り上げを落とすとかあるいは仮装、隠蔽をするとかいうような意識的な税額の不符合というものも出てきておるわけでございます。
 しかし同時に、この実地調査が正確に所得をつかむということを中心に行なわれますのと相応じまして、法人そのものが正しい申告をするような指導も必要でございます。ことに最近法人に組織がえをしたものにつきましては、個人当時とあまり変わらない帳簿組織等を持っておるものもございます。そういうことで、いわゆる臨戸指導というものをこれと並行してやっております。帳簿の記録をもとにいたしまして具体的指導を行なう、正しい申告をさせようという趣旨のものをあわせて行なうようにしてまいりまして、四十年ごろからいわゆる調査とあわせて指導というものを続けてまいりました。それでこの臨戸指導というものが最近かなり多くなってまいっておりまして、実地調査の件数が落ちましたかわりに臨戸指導をふやしておりまして、大体現在でも臨戸指導を入れますと年間に三〇%に近い法人に接触をいたしております。さっき申し上げましたように、法人のうち三割近く休業的な法人がございますので、かなりの接触率を保って申告をよくするという方向と同時に正しい調査をいたしまして、それによって具体的に法人の反省を促す更正決定もいたしますし、同時に翌年からは正しい申告をしてもらうという方向をとってまいっております。私はもちろんいまの法人の従事員が十分であるとは思っておりません。もっと定員が許せば、もっと多くの従事員がいればより効果をあげ得るという自信は持っておりますけれども、何と申しましても現在総体としての定員を減らすという時期で、そう多くの定員を要求してもなかなかこれが満たされるものでもございませんので、申告納税の本旨というものを実現する方向で調査と指導をあわせて行なうということを考えております。ただ同時に、その場合にも、不正な申告が行なわれた場合に規模の大きい、社会的影響の大きい法人につきましては、これはあくまでもわずかなものでも是正をはかる必要があるということで、御承知の五千万以上の調査部所管法人につきましては実調率が大体三〇%程度に達するような割合で調べをいたしております。また税務署段階におきましても、法人を大体高階級、中階級、低階級に分けまして、売り上げの大きい、規模の大きい法人につきましては実地調査の割合を高めて是正をはかる度合いを高くいたしております。小さい法人につきましては実調よりもむしろ臨戸指導を多くして正しい申告へ誘導するという方向をとっております。
 そういうことで、私どもといたしましても、御指摘のように申告がまず正しく行なわれるということがなくては、源泉徴収を受けて、みずから申告を左右する権限のない源泉納税義務者にとって非常な悪影響も及ぼしますので、この線を努力してやっていきたい、かように考えておりますが、御指摘のように、できればより多くの定員を確保してより充実をするということが望ましいことは申すまでもございません。しかしいま与えられた範囲内で、多くの従事員が得られなくともそれを補う調査体系というものを年々考えまして対処していくつもりでございます。
#157
○松尾(正)委員 非常に不十分な定員の中で精一ぱいやってこたえていきたいという説明がいまるるあったわけでございますけれども、数字が示しますように、やはり実地調査あるいは臨戸調査等に人員の面で手の回らないところがある。この三年循環調査制度が導入されて、それ以降、この制度に欠陥があるということでなしに、結局これが完全に行なわれていないということは人員が原因になっていると思うのです。そういう意味から、とにかく現状より少しでも人員が増加すれぱ相当なメリットがある。件当たりの不正も大きい、額も大きいということで相当なメリットはある、こういうふうにわれわれも判断できるわけですが、しかし定員にワクがある。
 そこで私は、単に人員を増加するという意味でなしに、現在の機構の中で、直税、間税部門に配転等の余地はないのか。もしこれが不可能な場合に各省庁間の配転等をもって、そうして先ほどから言っておりますように税の不信あるいは不公平、正直者が非常にやりきれないような、こういう大事な税の部門にもう少し重点的に割り当てることは可能ではないか、こういうふうに考えるのですが、まずこの点を長官並びに中川政務次官からひとつお願いしたいと思います。
#158
○吉國説明員 御指摘のように、私どもも仕事の内容を時々検討いたしまして定員の組みかえということを行なってまいりました。この十年間に、地域的に申しますと、大体東京、大阪、名古屋というような大都市を所管する局に他の局から定員を移してまいりました数が約三千名でございます。これは定員を移すのは容易でございますけれども、実員をそれだけ移すということは実は非常な困難がございます。けれども、あえて三千人ばかり、実際の実員も新規参入者の配置の重点化というようなことでやってまいりました。また所管別にいたしましても、間税徴収の職員から約三千人を直税部のほうに移しまして、現在の状況を申し上げますと、全体の定員が五万一千三百二十五名でございますが、そのうち約一割が国税局のいわゆる監督に当たっておる者の数でございまして、国税庁自体としては六百四十名、これらを除きました四万二千名程度が署の定員でございます。そのうち法人税に従事しておりますのが約九千人でございます。それから所得税もほぼ同じ九千人でございまして、大体国税局の実施部門でございます調査査察部を含めましたところで直税関係が約二万二千九百人という数字になっております。これに対しまして間接税の系統は四千三百人、徴収系統が八千五百人、一般の管理をいたします総務系統が六千二百人ということで、直税に約五割近い人員を充てて充実をはかってまいりました。なお私どもといたしましては、今後も同じような考え方で直接税の定員の充実をはかりたい、かように考えております。
 他官庁からの充員の問題もお話が出ましたけれども、これはやはり総定員がふえませんとできないような問題でございますので、定員をふやして他から一緒に持ってきていただくということになりますと、これはまた一つの考え方であると思いますが、定員の増加という問題は、逆にいま五%削減が行なわれている時期でございますので、他の官庁をさらに削減するという結果にもなるなかなかむずかしい問題でございますが、その御意見は非常に私どもにとってはありがたい御意見であると思っております。
#159
○中川説明員 法人税の徴収にあたって不公平のないように、正直者がばかを見ることにならないようにという御指摘は当然のことでございまして、先ほど来長官が御答弁申し上げているように、まだ完全ではありませんが、かなりいい方向にきておるものだと思っております。しかしながら、まだまだ不正申告というのですか、徴収の面もありますので、これからさらに一そう意を用いて万全を期するように努力してまいりたいと存じます。
#160
○松尾(正)委員 定員制でワクを押えている、人員をふやせないということはこれはもう当然なことでありますけれども、ただ考え方として、非常に重要な部門に対しての増員ということはこれは考えなければならない点だと思う。したがって、配転については創意くふうし努力するということでありますけれども、どうかひとつ積極的に取り組んでほしいと思うわけです。
 さらに次に、いま抽象的に伺ったわけですが、四十四年度の実地調査においては税務署所管が百一万三千件のうちに十三万五千件、それから五千万以上の調査課所管が一万八千件のうち五千件を調査した、こういうことなんですけれども、これを担当した職員数は所管別にどうなっているか。もしそれがいま困難でしたら、職員一人当たりの法人担当数はどうなっているか、この点をひとつ長官から伺いたいのです。
#161
○吉國説明員 具体的に調査に当たる人員と申しますのは、内部事務要員その他を除いた、いわゆる調査官が中心になるわけでございますけれども、大ざっぱに申しまして、先ほど申し上げましたように税務署の法人の調査に当たっている人員は約九千人でございます。税務署所管の法人数は、休業法人等を入れますと百万件という数字になりますので、そういう意味では一人当たり百十法人ばかりを持っておるという結果になるかと思います。それに対しまして、国税局の調査部の定員は千三百名ばかりでございます。千三百名に対しまして調査課の所管法人と申しますのは約一万六千程度でございますから、その点から申しますと調査課の所管の法人に対しては一人当たり十五、六件というのが実情でございます。もちろん、頭で割りましてもその中には内部事務に従事する職員もございますから、実際には調査に当たる人間だけで見るともう少し一人当たりの件数が多いかと思いますが、頭で割りますと大体税務署所管では百十法人見当、調査課ではそれがぐっと減りまして十五、六ということになるかと思います。それだけ大法人に対しては調査日数を多くかけて綿密な調査ができる体制を整えているわけでございます。
#162
○松尾(正)委員 そこで、一人当たりの法人十五件、これ全部含めると相当な件数になると思います。これでは手が回らないということは数字の上ではっきりするわけですけれども、具体的に次に、大法人並びに一般の中小零細法人を三段階に分けて苦労されておるわけですが、先ほどのお話しの税の不正並びに脱税等の新聞発表等を総合してみますと、どうしてもこれが中小法人に目が向けられているのではないか、こういうふうに受け取れるわけです。それで、この二十年史によって見ますと、まずこういうことがあげられているわけです。優先順位として、第一は個人企業から法人企業に変更したもの、それから次に好況な事業を営むもの、それと投書等のあった法人、こういうふうに順位がきめられておる、こういうふうにいわれておって、そのあと改めたということはないのですが、これを見ますといずれも、個人から法人に転換したきわめて弱いもの、それから好況事業を営むものといいましても、好況事業あるいは不況ということが数字の上ではっきりするのはやはり中小企業だ。それから投書等によるものも当然これは力の弱い法人ということは考えられるわけです。したがって、この調査の優先順位というものが、国税庁としてやっぱり中小企業に重点を向けているのではないかという感じを受けるわけですけれども、この優先順位は現在そのとおりなのか、それとも変わっているか。その点を伺いたいと思います。
#163
○吉國説明員 調査対象の選定につきましては、もちろんその年度における好況の業種目をできるだけ選ぶということは一つの基準ではございます。それから法人になった直後の法人と申しますのは、先ほど申し上げましたように帳簿の記録等が不十分でございますので、いわばその設立最初における資産その他を確定する意味で、むしろ調査と申しますよりも、先ほど申し上げました臨戸指導的な立場で必ず接触するということはやっております。実際問題といたしましては、先ほどちょっと申し上げましたが、調査課の所管法人は大体において三〇%程度の実地調査割合をとり、それから高階級の法人、大きい法人、税務署の中でも大きい法人については二〇%以上の実調率を保っております。したがいまして、中、さらに低階級ということになりますと一〇%を相当割るような実調率でございまして、調査そのものの重点の置き方を、大きいほうから順に置いておるという形で選定をいたしております。その中ではもちろん好況事業とかあるいはその他特殊な事由のあるものを選んでおりますけれども、全体の調査の割り振りを、大型の法人から順次調査割合を落としていくという形でやっておりますので、中小法人を特に強く当たるという形ではなく、むしろ大きい法人には綿密にかなり時間もかけて、たとえば調査課所管法人でございますと、一件当たりにかける日数が平均をいたしまして一カ月をこえるわけでございますが、税務署所管の法人になりますと高階級でも数日、低階級になりますとせいぜい二、三日という程度の時間をかけているような状況でございます。大きい法人には徹底した調査をするという方向で調査を進めているわけでございます。
#164
○松尾(正)委員 この点についての結論になりますけれども、この優先順位も現在そういう方向に改められているということですから、ぜひひとつそういう方向で進めてもらいたいと思うのです。なぜかといいますと、中小法人の場合には、いま長官からもお話があったように、会計あるいは税等に対する無知あるいは不備という点が相当あげられるわけです。たとえば、脱税といっても子供のいたずらあるいは知らなかったためにというケースも相当多いと思うのですね。こっちに重点が向けられるようであったらこれはたまったものではない。ところがたまたま大法人の場合の脱税といいますと、これは完全犯罪をねらう知能犯のようなきわめて悪質なものだ、こういうことがいえると思うのです。したがって、困難ではありましょうけれども、いま長官から言われた大法人については十二分に優先的に目を向けていく、こういう大方針と、それからもう一つは、本年度の調査でもあげられておりますけれども、中小法人についてはむしろ申告前の申告指導、こういうことを大前提に置くということは、人員的に技術的に可能なのか不可能なのか、その点をひとつ伺いたいと思います。中小法人に対して、未熟なものに対して申告前の申告指導がはたして技術的に可能かどうか。
#165
○吉國説明員 先ほど申し上げました臨戸指導というやり方は、大体申告前に帳簿を見まして、不備な点を指摘をするというような調査をやっておりますので、これがいわゆる申告前の指導に相当すると思います。なお私どももその点できるだけ指導を徹底していきたい。ことに前に非違があったような法人については申告前に、前はこういうことがありましたといって覚せいを促すというような方法も今後とっていきたいと思っております。この臨戸指導をやりましたり、また実地調査の結果、法人の申告というのはかなり向上しているのではないかと私ども思いますのは、四十年から四十五年までの間に、経済の伸びに比べまして法人の申告所得の伸びはかなり大きくなっております。四十年から四十五年の間に鉱工業生産指数とそれに物価指数を加味した、私どもが使っております法人の所得の推計値と申しますか、見積もりの際にやっております数字から申しますと、大体二〇〇%になっております。それが法人の申告の伸びを見ますと、四十年から四十五年の間に二六〇%という伸びになっております。ですから毎年毎年の伸びについては、法人の申告はかなりよくなっている。もちろんそのもとが悪いという問題があるかもしれませんが、やはり申告指導と、また的確な調査を加味していくことによって、正しい申告を出す法人がふえるということをあらゆる角度から検討して努力をしてまいりたい、かように考えます。
#166
○松尾(正)委員 なお、脱税あるいは税の不正については、税制面もありますので主税局長にも来てもらったのですけれども、時間が経過してしまったのでもう……ということでありますから、税制面についてはこの次の機会にひとつ伺いたいと思います。
 最後に、税とは関係ないのですが、きょう午前中に富士銀行の岩佐頭取に来ていただいて、この質問の中でも、またさらに前回の委員会での質問においても、国民に最も信頼を受けなければならない信用を第一とする銀行でもって十九億円という不正貸し出しが、頭取もあるいは本店でも、支店長も知らなかった、こういう事実を見ただけで銀行の内部には多くの管理上の不備があるということが明らかになった。こういう点から、先ほど頭取も、銀行協会長としてあるいは頭取として十分反省し、改善につとめたい、こういう決意を示されたわけですが、これは今後大蔵省当局としても十分に心をきめて取り組まなければならない問題だ、こういうように思います。今後どういう態度でこれらについて指導に当たるか。その考え方を中川政務次官からひとつお答えを願いたいと思います。
#167
○中川説明員 今回の富士銀行の不祥事件は、量的にもまたやった内容においても、非常に国民の皆さんに心配をかける、よろしくない行為でありまして、これは偶発的な類例のない事件であると同時に、銀行行政がそういったことを受けられるようなやはり体質もあるんじゃないか。経営拡大に重点を置き過ぎたために、一つは機械化あるいは労働力不足のために、チェックシステムが不十分である、こういったところに原因があろうかと存じます。
 そこで今後は、量の競争から質の競争というふうに転換をして、内容の充実をはかることに重点を置くことが第一点でありますし、特にその量から質の場合、店外業務については自粛をする方向を強めてまいりたいと存じております。
 それから第二番目の機械化に伴う内部体制の整備については、人事管理、教育研修、内部立ち入り検査の充実については大いにこれを充実してまいりたい。特に優秀な行員が預金獲得のために店外活動に労力を使って、内部で疲れ切って十分働けないというようなことのないように戒めてまいりたいと存じます。
 そして特にまた大事なことは、幹部職員は内部に十分目を光らせておいて、局地的にしかも長期に大胆に、ばく大な金が一職員によって融資されるようなことのないよう、今回の事件を契機として大蔵省当局としても銀行当局を十分監督して、二度とかかることのないように厳然たる態度で進みたいと存じます。
#168
○松尾(正)委員 終わります。
#169
○毛利委員長 堀昌雄君。
#170
○堀委員 この間から引き続き行なわれておりますビールの値上げについて御質問をいたします。
 ビールの価格が昭和三十九年以来自由価格になっておることは私も十分承知をいたしております。ただ、ビールの生産の態様は御承知のように四社による生産でありますし、さらに四社の中でも麒麟麦酒が今日そのシェアが五五%に達しておるということは、言うなれば異常な寡占形態になっておるわけでありますから、この値上げ問題は私は一般の物価の値上がりとはやや趣を異にしておる問題だと思うのであります。きょうはこれらの問題を少し多角的な側面からお伺いをいたしたいと思います。
 最初にビール会社の経営の現状について少しお伺いをいたしますが、証券局長にお伺いをいたします。現在麒麟麦酒は年率配当一五%でありますが、現在の第一部上場会社で年率一五%以上の配当を行なっておる会社は一体どのぐらいありますでしょうか。
#171
○志場説明員 その数字はちょっと手元にございません。
#172
○堀委員 至急調べてあとで質問中に……。いまのはひとつこういうことでお願いをいたします。一五%以上は一部上場会社全体について幾つあるか。あとあるのはおそらく一八、二〇、二五というのがあると思います。二五以上はいまないと私は記憶しておりますけれども、そこらの現状についてひとつ数の上でお答えをいただきたいと思います。
 それでは国税庁長官にお伺いをいたしますが、最近決算におけるビール会社の純益といいますか税引き後利益といますか、一体どのぐらいビール会社が利益をあげておるかをちょっとお答えをいただきたいと思います。
#173
○吉國説明員 公表の決算で申し上げますと、麒麟麦酒が四十五年の上半期、七月決算でございますが、これが経常利益が七十四億五千三百万円、税引き前の純利益が七十億九百万円、税引き後純利益が三十四億六千万円ということになっております。それから朝日麦酒が、これは六月決算だと思いますけれども、端数を切り捨てて申し上げます。経常利益が十三億五千三百万円、税引き前純利益が十五億三千万円、税引き後の純利益が九億一千万円。サッポロビール、同じく六月決算だと思いますが、経常利益が十三億二千七百万円、税引き前純利益も同額でございます。それから税引き後純利益が十億三千八百万円という数字になっております。
#174
○堀委員 実はビール会社の決算につきましては、証券局長も御承知のように公認会計士の限定意見がついておるのでありますけれども、いま国税庁長官がお答えになりましたこの利益の関係と、それから限定意見がついておりますのを一応その引当金の取りくずしと積み増しとの差額で見たとして、これらの利益はさらにふえてくるところと逆に少し減るところとあるのではないかと思いますが、ちょっとその点を証券局長のほうから少し補正をいただけますか。国税庁のほうからでもけっこうです。
#175
○吉國説明員 ただいま御指摘の限定意見と申しますのは容器の調整引当金というものだと思います。これはいわゆる商法上の特定引当金に該当するものでございますが、証券取引法のたてまえから申しますと、商法でいっております特定引当金全体が引当金の性格を必ずしも持たないという意味から限定意見がついたと思います。これは麒麟の場合は引き当てと取りくずしが同額でございますので変化がない。それから朝日の場合は取りくずし額が多くて新しく積み増し額が少ないものでございますから、差し引き三億八千四百万円だけ利益が増加をいたしております。つまり経常利益でない利益が出ておるという結果になっております。それから同じくサッポロにつきましても、四億円の積み不足がございますために、取りくずし額が利益として計上されておりますので、その額が四億円になっております。したがいまして、この額は今期の経常利益から差し引くということになりますと、先ほど申し上げました朝日の十三億五千万という経常利益額が実は九億七千万円という結果になりますし、サッポロの十三億二千七百万円というのは実は九億二千七百万円でしかないという結果になるわけでございます。
#176
○堀委員 いま長官からお話しのありましたように、先ほどの経常利益というものの見方の中にかなりの違いがあるわけでありまして、サッポロ、朝日の場合は、確かに経常利益は対資本金関係から見ると非常に少ないということがわかります。ところがいまお話しのありました麒麟麦酒については経常利益が七十四億もあって、さらにそれはいまの取りくずし同額でありますから、七十四億の半期の利益のある会社と九億程度の会社と、こういうふうにある。片方は一五%の配当率、片方は一二%の配当率と、こうなっているわけでありますけれども、私どもは今度のこのビールの問題には、まず一番奇異な感じがいたしますのは、ビール会社――これは酒類みなそうなっているわけでありますが、ビール会社が卸、小売りのマージンまで込みにしておいて値上げを発表するというこの発想も、私は非常に異常なあり方だと思います。その異常なあり方の上に、ともかくも決算内容が、いろいろこの朝日とサッポロはシェアは違いますけれども、経理内容がいま非常に似てきておるようであります。しかしもう一つはサントリー、これもすでに値上げをしておるわけでありますが、サントリーは後発会社でありますから、私どもいまはたしてビールがペイしておるかどうかまだ疑問に思っておりますけれども、こういうのがみな一列に値上げをしてきておる。いま麒麟麦酒だけが残っておることを私はたいへん望ましい状態だ、こう考えておるわけでありますが、今日残っております麒麟麦酒の値上げを先にちょっと焦点として議論をしておきたいと思うのであります。
 私がいまお尋ねをしましたように、半期七十億の経常利益が麒麟麦酒、これがかりに他と同じような値上げをした場合には、この経常利益の上に積み増しされるであろう利益はどのくらいだと推定されますか。これは推定のことでありますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
#177
○吉國説明員 今回の朝日麦酒、サッポロビール、サントリービールの値上げの内容は、御承知のとおり、メーカーの手取りが三円十五銭、卸の手取りが、妙な話でございますが二円八十五銭、それから小売りが四円という構成になっているようでございます。それで計算いたしますと、麒麟がおそらく年間二十億本ぐらいの生産かと思いますので、年間にいたしまして、それだけでは六十億ぐらいの増差が出るということになるかと思います。
#178
○堀委員 現在七十億の経常利益がある、値上げをして年間六十億だから半期三十億、だから半期百億で、年間二百億の経常利益が出てくるということは、私はこれはたいへんな問題だと実は思うのであります。
 そこで、この問題はまず第一点として、先般私鉄の各社が私鉄運賃の値上げを申請をした。それはいろいろ経緯がありましたようですけれども、結論的には私鉄大手十四社、これは配当を減配することによって私鉄運賃の値上げが認められたようにわれわれは承知をしておるわけであります。私どもは、要するに利益があがって配当を相当にしておって、なおかつ運賃なり価格を上げなければならぬというのは、幾ら資本主義社会といえどもこれは非常に疑問を感じるところなのでありますけれども、今日いまの時点において、麒麟麦酒がシェアがたしか五五%ぐらいだろうと思うのでありますけれども、要するに生産量の過半数をこえる生産力を持ち、十分な収益もあり、配当もできておるところがさらに値上げをするという理由があるのかないのか。この点について、まず最初に国税庁長官はどういうふうに考えておられるか、お答えをいただきたいと思います。
#179
○吉國説明員 御承知のとおり、酒の価格というのは長らく統制下にございましたために、一見他のものから見るとおかしな現象が残っております。いま御指摘になりましたように、卸、小売りのマージンまで大体統一をしてしまっておる。また卸、小売り自身が同じマージンを要求するという、はなはだ固定的な考え方がございます。そういう意味から申しますと、今回の値上げが、約七円が流通機構に入れられるということになりますと、麒麟そのものの利益とは別問題といたしまして、七円というものが小売り、卸の段階で吸収されるという結果になりますので、おそらくその範囲では、競争条件としては麒麟は出さざるを得ないという問題が出るのではないか。結局残りは麒麟にいたしましても、麒麟の立場から申しますと、さっき申しました七十億というのはいわば今期の賃上げの前でございます。そういう意味では、下期は悪いのだといっておりますが、これはわかりませんが、ちょっといまのとおりの利益が出るかどうかわかりませんが、それにしても余裕はあるはずなんで、その点については別の価格を考えてしかるべきではないかということを和どもも指摘をして、いろいろと検討を求めておるわけでございますが、私どもとしてはその辺に間差が出てしかるべしという考え方ではございます。ただ、先方はなかなかまだ承服をいたしておりません。従来から、たとえばこの卸、小売りがなぜ一緒にマージンを含めて価格をつけるかと申しますのは、戦前から戦後にかけまして、ビールについては同じ商品だから、富士山の上で飲んでも百三十円であり、東京のまん中で飲んでも百三十円でなければならぬという妙な信念がございまして、そういう意味では同じ価格が妥当だというような迷信に近いような考えがございます。そんなこともあってなかなかうんとは言っておりませんが、理論的にはそこに差があってしかるべきものだと私どもは思っております。
#180
○堀委員 それでは、いま長官も経理内容から見て、卸、小売りのマージンはその他との競争条件でやむを得ないとしても、あとの部分、麒麟そのものの部分は問題があるという御発言でありますから、私も全くそうだと思うのであります。
 そこで、七円の問題のところへちょっと話を移していきたいのでありますが、一体、卸売り業者がビール卸と全卸と二つに分かれておるわけですね。歴史的には確かにビール卸を設定しなければならぬ経過的な時期があったと思うのですね。しかし、今日酒団法ができて十八年もたって、依然としてビール卸というものが特に酒団法の中にも書かれるような形で残されておるところにも少し私は問題があるんじゃないか。そのビール卸の特約契約の問題等は国税庁長官はいまどういうふうに見ておられるか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
#181
○吉國説明員 御承知のとおりビールの卸形態はやや特殊なものがございます。これはいわば一つの伝統的なものかと思いますが、全酒類卸を通じて販売されるものが約七五%でございますけれども、残りの二五%はいわゆる特約店というものを経由して売られておるわけです。この特約店形態は、これは卸売り形態と申しますよりも、いわば取り次ぎ形態と申しますか、手数料形態をとっておりまして、これが全国で約九百ちょっとの数がございます。東京都内その他におきましては、それぞれ一銘柄を扱っておるというものもございます。
 そういう関係で、これは御承知の配給統制が中止になりました際に取り扱い店の有力なものをすくい上げたというものとか、あるいは戦前の特約店、企業整備でなくなったものを復活させたとか、あるいは小売り店の有力なものに卸機能を果たさせるためにやったとかということででき上がったものでございまして、配給統制の廃止とともに、それによる流通機構の乱れをビールの立場で防ぎたいということからできたものだと思います。しかし実際の形態としては卸ではない形態である。したがって、一時ビールの公定価格自体が二段階できめられていたわけでございます。製造業者販売価格ではなくして卸業者販売価格、それは特約店の手数料を含んだものであり、全酒類卸についてはまさに卸価格であるという形態をとっております。そういう意味では、現在ほかの酒類に比べて特殊な特約店形態が付加されているという点で、卸についてやや複雑な形態ができていることは事実でございます。これが将来今回のような値上げのもとになるかどうか、これは私どもも非常に重要な問題だと思っておりまして、この点についてはひとつ本腰を入れて調査をしてみたい、かように考えております。
#182
○堀委員 公正取引委員長にお伺いをいたしますけれども、いまのビールの特約契約の問題は、私は特にそれが一品種を扱う特約契約のものがあるということは、これは不公正取引に関係があるんじゃないだろうか、こう思いますけれども、公正取引委員会では、これらのビール卸の取り扱い上における不公正取引の問題というのは調査をされたことがありますでしょうか。
#183
○谷村説明員 どういう点からそういうふうに見ておられるか、私はちょっと直ちによくわかりませんが、少なくともいままでその問題を調査の対象にしたことはないと思います。
#184
○堀委員 ビールの卸が、要するに卸の形態をしていない。特約契約で、特に一品種を扱っておるところは卸じゃないのですね、メーカーの販売店というか、そういう形は。しかし、実質的にはそれを卸としてみなそうという立場に立っておるわけですから、この卸とメーカーとの関係というのは、私はその他のビールの生産会社から見て、これは不公正な取引を黙認しておるといいますか、そういう形が存在しておるんじゃないかという感じがするわけであります。
 その問題はさておきまして、要するに今度の問題の中で、ビールが七円の流通の値上げをしておる。その七円の値上げの中のいろいろな根拠の中に、大都市における交通ふくそうが輸送上のコストを高めておるというようなことをいわれておるわけでありますね。ところが、これは東京、大阪その他の大都市ならばなるほど通用する話でありますけれども、それ以外の都市全部が交通渋滞をしておるかというと、まだ地方都市においてはそれほど交通渋滞等はない。ですから、一番高いところの費用をもって全国同じ水準で流通経費を上げようということは、私は非常に問題があるのではないかと思うのです。
 そこで、国税庁にお伺いをいたしたいのは、この前、酒のときにも伺いましたが、現在ビールでとられておるリベートの実態は一体どうなっておるのか、ちょっとこれをお答えをいただきたいと思います。
#185
○吉國説明員 このリベートの実態というのはなかなかっかみにくいものではございますが、さきに若干のものをサンプル調査をした結果でございますので、はたしてこれが実態をあらわしておるかどうかは知りませんけれども、メーカーと卸の間では、その調査では、約二円五十銭程度のものがリベートとしていっておるのではないか。卸から小売りが一円三十九銭というふうになっておりますが、これもちょっと数字的には理解できない点もございます。それから、小売りから飲食店には約四円。小売りから一般消費者については、これはわずかでございますが、二十銭ぐらいという数字になっております。これは平均いたしますから二十銭です。
#186
○堀委員 いまお答えになりましたのは平均ということでありますから、調査をされました資料から、上限、下限は一体どうなっておるのか。メーカーから卸へ二円五十銭程度とおっしゃっていますが、これは一体上限はどのくらい、下限はどのくらいか。卸−小売りが一円三十九銭ということでありますが、これも大体、上限、下限、どのくらいか。料飲店で四円というのも平均値でございましょうから、これも上限、下限があるかと思う。これを、資料でけっこうですから、ひとつ早急に御提出をいただきたいと思います。
 そこで、いまのリベートを含めて計算をしてみますと、一体卸はビール一本で結局幾らマージンを受け取ることになるのでしょうか。お話の最初にありましたビール卸のこれまでのマージン、それに今度のマージン、それからリベートを入れて、さらにビールの卸の場合には御承知のような運賃補助をメーカーが負担しておりますが、これも運賃補助という名目でありますけれども、これは卸が配達をする運賃の部分でございますから、本来やはりマージンと見るべきが適当かと思うのでありますが、それを加えますと今度は一体ビール一本で卸は幾らのマージンを受け取ることになるのでしょうか。
#187
○塚本説明員 卸につきましては、従来は百三十円のビールに対して四円四十銭のマージンを受け取っておったのでございますが、今回朝日麦酒、サッポロビールの届け出によりますると、それに一円六十銭を加えまして六円になる。さらにこれに、先ほど先生からお話がございました運賃補助、従来これが一円二十五銭についておったのでございますが、さらにそれをプラス一円二十五銭いたしまして、運賃補助を含めますと八円五十銭、そういうことになるわけでございます。
#188
○堀委員 それにまだメーカーから卸へのリベートが二円五十銭あるわけですね。ですからそれを加えれば十一円ということになるわけですね。そうでしょう。まあその全部が全部かどうかわからないけれども、あなたのほうの資料で、いまお答えになったのはサンプル調査であるけれども、メーカーから卸へ二円五十銭リベートがいっている。これはリベートといったって結果としてマージンになるわけですから、合計十一円ということですか。
#189
○吉國説明員 このリベートの調査は、御承知のとおりこの値上げ前のものでございます。いわばこの値上げ前に事実上相当リベートを出さざるを得凄くなっていた姿があるという面もあったと思いますので、はたして値上げ後同じリベートを出すものか。運賃補助などは明らかに、一円二十五銭を加えたということは、従来のリベートに相当するものを相当吸収したものではないかと思います。
 そこで、今後どうなるか、これはちょっと私もはかりかねるわけで、そのままリベートが乗っかるとも考えられないわけです。
#190
○堀委員 かりにもし乗っかるとすれば十一円ですね。多少そこで差し引きがあっても十円。ビールの卸というのは何十ダースというのが単位でしょうね。一ダースなんていうのは小売りの単位ですから。何十ダース、何百ダースと動くときに一本十円というのは、ビールの卸マージンとしては私は高過ぎるんじゃないかなという感じがまずありますね。
 それじゃちょっとあわせて伺っておきますけれども、小売りのほうは幾らになりますか。
#191
○塚本説明員 従来小売りのマージンが手取り分が十四円二十銭ということであったようでございますが、今回四円配分増額するといたしますと、これが十八円二十銭になる、かようなわけでございます。
#192
○堀委員 十八円二十銭、これもリベートの問題ありましょうが、一円三十九銭とおっしゃったから、これを機械的に一円三十銭にして足しても十九円五十銭ですね。どうでしょうか、一般的通念として卸が小売りの二分の一のマージンをとるというのは正常でしょうか、ビールのような大量販売の問題について。
#193
○吉國説明員 確かに卸マージンが少し大きいんじゃないかという感じはいたします。これは一つは、先ほど御指摘のあった卸の形態に相当問題があるんではないか。普通、食料品の卸でございますと、平均して全体では一軒当たり年間十五億円くらいの取り扱い量でございます。ところがビールの場合は特約店の場合九千万円程度、それから全卸にいたしましても二億円という非常に小さな規模、したがって酒類の卸形態というものについての非能率という問題をわれわれとしては想定して調査をする必要があるんではないかという感じはいたします。
#194
○堀委員 いまのお話を聞いておりまして、ある一つの特定の制度を残しておいて、そういう特定の制度の規模が小さいからそこでマージンが上がるのはやむを得ぬという発想は、私は現在の物価高の中で困ると思うのですね。だから当然ここらには流通に対する改善のメスが――国税庁としてももう少しきびしい調査をしながら問題を進めていただかなければ、この問題の解決にはならないんじゃないかと思うんです。
 そこで、まず先に経済企画庁にお伺いをいたします。今度のこれらの一連のビールの値上げについて経済企画庁はどういう判断をし、どういう考え方でこれからのこのビール問題に対処をしていこうとするのか。その点をお答えをいただきたいと思います。
#195
○宮崎説明員 経済企画庁といたしましては、このビールの値上げ問題は十月九日に朝日麦酒の値上げがあったわけでございますが、この値上げの発表が非常に突然であり、また一方的であったということでございまして、事前に十分の準備をしておったわけではないわけでありますけれども、ともかくビール会社の実情についていまいろいろとお話がございましたが、毎年の売り上げも相当の割合で伸びておるし、また公表されている収益の状況、配当の状況等から見まして、そうこの会社の経営が苦しいということは一般的にはいえないのではないか。そういう観点から見まして、確かに値上げ発表になった朝日麦酒という会社について見ますと、ちょっと問題もあるようでございますが、そういった場合においても経営改善等の努力が当然行なわれるべきであるし、一方的にこれを消費者にかぶせてくる、しかもそれを突然にやるということははなはだ妥当ではない、こういう考え方を持ったわけでございます。そこでさっそく国税庁のほうに対しまして、朝日麦酒の値上げの撤回、さらに他の各社の追随をできるだけ抑制してもらいたいということを申し入れたような次第でございます。しかしながらその後の状況は御承知のとおりでございまして、どうも今回のような値上げの状況を見ておりまして、こういう非常な寡占の形態の業界において、一つの会社の状況が悪いからといって値上げをすると、全部それに追随する、こういう形は物価政策の面から見ましてもはなはだ大きな問題である、こういう感じがいたしておりまして、管理価格というようなことがいわれておりますが、そういった問題は物価政策会議その他の機関において、これにどう対抗するかということをやはり基本的に検討する必要がある、こういうことを私どもの中では考えて、いまいろいろ検討いたしております。
 それから、今回の値上げにつきまして、もともと値上げをしろということを特に強く主張したのが卸売り業を中心とする流通の問題でございまして、この辺につきましては実は去る六月の物価関係閣僚協議会の了承事項に基づきまして、酒類の流通問題についてある程度合理化をしていただきたいということをきめていただきまして、国税庁にも御検討願っておるわけでございますが、今回のビールの問題についてさらにその点について問題がはっきりしてきたという点もございます。この辺については私どもの中でもいろいろ検討いたしまして、国税庁の低うにお願いすると同時に、ひとつこの辺の合理化を進めるように今後努力したいと考えておる次第でございます。
#196
○堀委員 同じ問題についてひとつ公正取引委員長のほうで、このビールの値上げ問題、それの寡占形態による値上げの問題と、いまの流通関係の諸問題、特に免許その他の問題を含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
#197
○谷村説明員 第一番目のメーカーが寡占の状態にある、しかもその寡占の状態にある中で高度寡占といわれるような意味において一社が他と相当の格差を持っておる、こういう事態について私は二つ問題があると思います。
 一つは、そういうときに価格競争的あるいは品質競争的問題にならなくて、えてしてそういった面は価格協調的な体制がとられる。競争条件が必ずしも十分でございませんから、企業といたしましては、せっかくそういうことならば、やはりその限界企業の値上げがあるならば、それに対して余裕があっても自分がわざわざそれに均てんしないというのはつまらないじゃないか。そうして市場の状況はどうかといえば、そこで価格競争をしてまで相手を倒さなければならないというほどの状況でない。こういう関係でございますとどうしても価格協調的になりがちである。いわゆる管理価格的な問題がそこに出てくる。この点が一つございます。
 そうして第二には、それならばもしそういうことでなしに、価格競争的に出していったらどういうことになってくるかということになりますと、今度は、その業界の態勢にもし従来の姿と変わりなくんば、いよいよ競争力は一方において強くなり、他方がその間においてその市場においておくれをとってくる。片方でいよいよ強きものは強くなってくる。これは競争の結果、別に人為的に協調したりなんかやっているのではなくて、強くなってくるという問題。そうして最後にはどういうふうになってくるのか。独禁政策、競争維持政策というものをやっていく場合に、最後の落ちつきは一体どうなるかという、こういう問題があるのであります。もとより現行の独禁法の問題といたしましては、私どもは、明瞭な価格協定等があればこれはいけない。それから裏で何らかの協定なり話し合いがあっても、これはできればそういうことをさがし出してでも規制しなければならないという状況でございますが、今回の場合には、事情聴取したところではそういう傾向は認められない。いわば一つの環境がそれをそうさせておるというふうに認められるわけでございまして、現行独禁法がいま直ちにこれについて何かできるという状況ではない。むしろ私どもが先般来問題として提起しております管理価格問題を将来においていかに処理すべきかというその問題に触れている、かように思っております。それがいわゆる寡占問題のほうでございます。
 それから第二は、御指摘になりましたような意味での、いわゆる流通のほうが、メーカーが上のほうから上げるといわなければ上がらない。また上げるといえば、その線までみんなすっと線がそろって上がるという前近代的な姿になっておるという点。そうしてそこには多分に、こういう高度な経済社会に発展してまいりましたときに、流通形態というものが一体どう展開されなければならないか。しかもそこの場合には、非常に社会的な摩擦も出てまいりますが、いわゆる中小企業問題をどう処理しなければならないかという政策として見れば二律背反的な問題もございましょうけれども、しかし長い目で見れば、日本の経済構造の改善ということを考えていかなければならない方向というものがそこにある。その際に私どもとしては、いわゆるやみ再販的な行動をとるとか、あるいは横でカルテルをつくるのではないけれども、縦のいわば価格の指示、したがって一斉行動がとれるというふうな体制は、もしそこに明白な拘束の条件があれば、申し合わせのような姿があれば、これは独禁法によっていま規制する問題がありますけれども、そこが一つの慣習とかしきたりとか、あるいほさっき申されましたような意味での免許制度とかいうことによって何らかの障害があるとすれば、そこは改めていかなければならない問題である、かように思って、国税庁のほうにもそう申し上げている次第でございます。
#198
○堀委員 問題が非常に多岐にわたっておりますから、ここで少し焦点をしぼって流通の問題に触れておきたいと思いますけれども、まず最近の新聞を見ておりますと、値段を上げたアサヒやサッポロがもとの価格のままで売られておる小売り店もある。逆に今度はキリンビールは上げていないけれども上げた値段を取っておるところもある。それからまた、そうでなくちゃんと上げておるところもあり、いろいろのようでありますね。確かに九月のビールの出荷が異常でありましたから、ある程度卸、小売りがストックをしておることも事実でありましょうが、過去の例としては、やはり一カ月程度の前がえが行なわれたということがあったわけです。私は前回のビール値上げのときには、ビールメーカーに対して、このことは厳重にひとつやめてもらいたい、消費者をばかにすることでありまして、実際に消費者は高いので買わされていながら、生産者は安い価格のものを出しているということでは問題があろうかということを申したことがあるのでありますけれども、一体これらの流通の現状について国税庁ほどういうふうに考えていますか。
#199
○吉國説明員 御承知のように、値上げがありそうだということになりますと、卸、小売りが先を争って仕入れをするということは毎回見られる現象でございます。本来ならばメーカーとしては、値上げをすれば当然その値で売るべきものですが、前にそれを買った者が安く売るのは、自分がマージンを犠牲にするのですからけっこうなことでございます。現在、メーカーとしては安い値段では出していない。しかしその前に仕入れてしまったものを、小売りのいわば販売政策として、安いものを買ったのだからしばらくは値上げをいたしませんということを言って売っている者もあるし、またかなり力のある小売りの中には、実際に値が上げられたのだからということで売ってしまう。そうするとキリンは需要が多くなるということから、キリンも一緒に百四十円で売っているということが行なわれているやに聞いておりますけれども、ここまではどうも、価格そのものが自由であるだけに、これはビール会社のほうも統制及ばずというのが実情であろうかと思います。
#200
○堀委員 そこで、価格が自由だということで、ここにたいへん興味のある報道があるわけです。「スーパーマーケット業界の団体、日本チェーンストア協会(中内功会長・八十社二千店)は十五日、経企庁、国税庁、公取委に「スーパーなど大型小売店にビール販売を認可してくれれば、流通経費がかからない分だけは安売りする」と申入れることを決めた。青戸同協会事務局長によると、いま行われているビールの値上げ一本(大ビン)十円のうち、卸、小売店の取り分は七円だが、スーパーは、配達なしの大量販売方式なので、七円の流通経費は節約でき、もし値上げしても、一本百三十三円で消費者に売れる、という。」と、こう出ておるわけです。確かに、いまもしスーパーマーケット、大量販売店にビールを売らせるということになれば、さっき私が指摘をしましたように、流通価格の中で小売りが十八円、卸が十円近くもあるということになれば、大量販売店ならば十分、いまの百三十三円じゃなくて、百三十円でけっこう売り切れるだろうと思うのです。
 もう一つ私はこの点について申し上げておきたいのは、料飲店には四円引いて売るわけですね。消費者は、さっきあなたは二十銭と言われたけれども、実際消費者でまけてもらっている者はほとんどいないと思うのです。一番消費者がばかを見て、その次に料飲店は四円引いて安く買ったものを百八十円で売ったり二百円で売ったりしているわけですからね。全くここは別に四円引かなくたってもうかるんだ。十分もうけている者は逆に値引きをさして買っておる。こういう仕組みが行なわれておるということは、私はいまビールの問題――まあ、ヒールだけじゃありませんけれども、一番価格問題でばかを見ておるのは消費者だと思うのですね。
 私はこの前、これはビールというよりも酒販の問題で申したことがあるのですが、酒類の小売り店が、ツケで買うものに対しても配達をするものも店売りも同じ値段で売っているということは一体どういうことだというんですね。とにかく団地の三階までえっちらおっちらビールびんをかついでいっておりてくるんでは、ここはそれだけ経費がかかっておるだろうから、配達料は配達料として取るならよろしい。それからツケならツケ売りというのはそれなりの売価をもらえばいい。現金で店へ買いに来ておるものもツケ売りのものも配達も同じ価格で売るなどということは、まことに私は消費者をばかにした価格体系だ。そのことは、小売り酒販がアンケートをとった場合にちゃんとそれはアンケートの中に出ているではないか、ということを申したけれども、今日この問題は全然改善をされていない、こういうことですね。
 ですから私はこの際ひとつ、いまの流通の価格体系をある程度正常化するといいますか、消費者の側に向けるために、このスーパーマーケットに対するビール免許というものを少し大幅に拡大をして、地域的にこれがインセンティブになるように考えることなくしていまの流通問題の解決はあり得ないと私は考えるのでありますが、まずこれについて経済企画庁はどう考えますか、お答えいただきたいと思います。
#201
○宮崎説明員 先ほど申しました物価政策会議の、去る四月に出されました行政介入と物価という問題についての提言の中で、酒類の販売業に対する問題も取り上げられておるわけでございます。その中におきまして、特に小売り販売業の新規参入の問題につきまして、現在いろいろの基準によってこれが制約をされておりますが、そういった面を緩和して、そして競争条件の整備ができるようにしてもらいたいということを申し上げておるわけでございます。その中において、いま問題になっておりますようなスーパーとか生協というようなものについても、現在免許をもらうことはなかなか困難な状況があるようでございますが、できるだけそういうものもひとつ今後は対象としてやってもらいたい、こういう趣旨で申し入れをいたしまして、現実にいろいろ御検討を願っておる、こういうふうに承知をいたしております。
#202
○堀委員 公正取引委員長にやはり同じ問題で、私はどうもいまの小売りの免許のある中では必要な競争が行なわれていないような感じがするので、この際やはり免許制度の問題を、全部取り消すわけにはいきませんが、免許制度の中における競争条件の確立のためには、いま私が問題提起をした生協なりスーパーへの免許の拡大ということは公正な競争をもたらす一つのインセンティブになると思いますが、その点はいかがでしょうか。
#203
○谷村説明員 私どもは、ただいまおっしゃった方向がよろしいと思っております。
#204
○堀委員 中川政務次官にお伺いをいたします。
 この問題はやや政治的な問題でもありますから、政務次官のほうでこれはひとつ前向きに――いま経済企画庁、公正取引委員会、いずれも主要な経済官庁がこの問題についての意見を述べておることでありますから、これらの意見を踏まえてお答えをいただきたいと思います。
#205
○中川説明員 酒の販売については、御承知のように許可制を酒税の確保というところからやっておるわけでありますが、最近スーパーマーケットあるいは生協の要望が非常に強いのと、もう一方には許可免許をもう少し弾力的に運用せよという声がございます。これは物価会議の意向もそうなっておりますので、免許基準については緩和の方向、特に生協等についてはできるだけ一般の人も買えるという方向を進めまして、そういったものについては一般と同様の扱いをするし、その他につきましても前向きといいますか、許可の割合は一般よりも非常に伸びておるという実態もありますし、今後も、御指摘の点は今度の値上げを契機として非常に問題もありますので、さらに一段と前向きでやるべきであろう、このように考えております。
#206
○堀委員 いまの国内政策の中では物価と公害というのが国民の一番重要な関心事でもありますしいたしますから、これはいまお答えをいただいたのはすべて前向きの線でそろっておりますので私もたいへんけっこうだと思うのでありますが、どうかすみやかに具体化されることを特に要望しておきたいと思います。
 そこで、証券局長、資料そろいましたらお答えをいただきたいと思います。
#207
○志場説明員 たいへんおくれまして申しわけありませんが、最近の報告といたしまして、東京証券取引所の今年の六月末現在の数字を手に入れたわけでございますが、それによりますと、東証一部上場会社が七百十四社ございますが、その中で配当しております有配会社は六百六十一社でございます。したがって無配は五十三社になりますが、六百六十一社のうち一五%以上の配当をしております会社は二百十八社、約三分の一でございます。したがって残りの四百四十三社が一四%以下の配当率でございます。ちなみに、有配会社のうち一五%の配当率の会社は八十六社でございます。
#208
○堀委員 いまお聞きのように、東証の上場会社の七百十四社の中で二百十八社しか一五%以上の配当をしていない、こういうことでありますし、御承知のように六月の時点ということは三月決算後の状態でありますから、日本の産業会社の経済情勢としてはたいへんいいところに率直に言ってある時期なんであります。全体としていい時期であるにもかかわらず、長い好況の持続の中で、それでもなおかつ七百十四社の中で二百十八社しか一五%以上の配当はない。一五%はその中で八十六社ということでありまして、一五%以上のものというのは百三十二社しかないということであります。一五%の配当のできる会社というのはその限りでは、現在の経済情勢の中ではたいへん収益力がある会社だ、こうなっておるわけでありますし、さらに先ほどのビール三社の状態でお聞きになりましたように、なるほど資本金は麒麟麦酒が二百三十億でその他が百億程度でありますから、資本金はやや差がありますけれども、しかし経常利益が片一方は七十億あって、片一方は十億内外というところが、片や一五%、片や一三%という配当ということは、実際は私はあとのビール三社の一三%の配当はややむずかしい配当だろうと思いますが、麒麟麦酒の場合には、配当しようと思えば一五%以上の配当のできるところが一応一五%に押えておる程度だ、こう考えておるのでありまして、特に麒麟麦酒については、これらの現在の会社経理の状態から見て、まず第一点としては値上げをやめてもらいたい。ただしいまの話のような流通の関係の問題というのがあるとするならば、それは流通部分の問題はある時期にはやむを得ないとしても、麒麟麦酒そのものがここでこの上なおかつさっきのお話の三円十五銭でありますか、その利益が上積みされるということは、これはもうどの角度から見ても国民の納得できないことではないだろうか。先ほど公取委員長がお話しになったように、日本のいまの物価政策の中で一番私どもの残念に思っておりますことは、要するに限界企業の値上げに余裕のある企業がいつも右へならえしてそこで過剰利益を持っていく、その過剰利益は国民の負担で生じておるということは私どもは全く納得のできないことでありますが、これについて政務次官はどういうふうにお考えになるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
#209
○中川説明員 この問題は非常にむずかしいのでやないかと思うのです。先ほど公正取引委員長が言いましたように、非常に複雑な問題がある。特に、単純な声としてですが、麒麟麦酒は麒麟麦酒でいい品物をつくっているという自信を持っておるわけです。ところが、いいビールをつくって店頭で安く売らなければならぬ理由はどういうわけかというような単純な考え方もありますし、もうかっているのにまた値上げするというのはけしからぬということにもなりますし、非常にむずかしい問題はありますが、私たちとしては、先ほど国税庁長官が言いましたように、物価問題のこういう時代でありますから、自由価格ではあるけれども自主的に協力を願いたいという気持ちで一ぱいでおるわけでございます。
#210
○堀委員 確かに自由価格でありますから、いろいろとそういう価格抑制について限界があることは私も承知しておりますけれども、やはり私は、現在の物価情勢の中で、企業会社といえども国民の納得するような処理のしかたがあるべきではないか、こう考えるわけであります。ですから、その点は麒麟がたとえ一円でも三円でももし安くできるならば、将来上げるとしても、そういう形によってやはりそこに――もちろんそうなることが寡占状態をさらに促進することになるかもしれません。なるかもしれませんけれども、しかしこれは少なくとも競争原則という面から見るならば、要するに力のあるものがさらに安くすればその他のものは上げられないということになってくるのじゃないかとも思いますから、今後そういう問題を含めて、いまの流通の各種の問題等をもあわせて、ビール問題というものをひとつここらで根本的に、経済企画庁、公正取引委員会、国税庁ともに検討していただいて、少なくともビールの価格の問題が国民の納得のいくような処置ができるように今後努力をされることを要望いたしまして、私の質問を終わります。
#211
○毛利委員長 小林政子君。
#212
○小林(政)委員 沖繩県におけるアメリカの支出金及び管理資産の処理の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
 沖繩県にある米国資産の処理については、去る六月の十日から十二日までの三日間東京で、大蔵省と米財務省の第一回交渉が行なわれまして、その際、米国所有の民生用資産については、引き継ぎ対象に上ったものの中から三つの公社及び行政構造物、道路など、アメリカ側と合意に達したものにつきまして、大蔵省はその資産調査を行ない、評価作業を現在進めておるということでございますけれども、現在その実態はどうなっているのか。まずその点をお伺いをいたしたいと思います。
#213
○前田説明員 お答えをいたします。
 沖繩にありますところの米国所有民生用資産につきましては、六月の十ないし十二日の第一回交渉及び七月に行なわれました第二回交渉、これらの結果、まず米国政府所有事業といたしまして琉球電力公社、琉球水道公社、琉球開発金融公社のいわゆる三公社及び行政上の構造物、軍事基地の外にありますところの道路、航海通信用の援助施設、これらの物件につきまして、返還時におきましてその所有権を日本政府が引き継ぐ、こういうことに合意を見まして、その場合に適正かつ公平な日米両国間の解決をはかるべく両国においてその評価作業が進められておりますが、現在なお評価作業が終わっておりません。目下それらの評価作業が進行中、こういう段階でございます。
#214
○小林(政)委員 速記録等を見てみますと、現地への班を組んでの実地調査などが行なわれておりますけれども、これは六月から八月の末までに一応すべて終了するという意味にとれる発言もございますけれども、その具体的な実態についてはどうであったのか。たとえば沖繩の現地調査等については、何班が何回実施を行ない、あるいはどのくらいの人数が参加して、そして現在まだ終わらないのかという点について、納得のいく御答弁をいただきたいと思います。
#215
○前田説明員 従来これらの評価作業につきましては、三公社、行政構造物及び道路、そういうような点につきまして六月中及び七、八、九と現在まで続けておるわけでございますが、おっしゃいますように六月にたいへんたくさんの班をつくりまして出かけたわけでございますが、現在それらの資料の整備を行なっている状況にあるわけでございます。それからいろいろな資料につきまして米側に要求がございますもので、現在まだ出ていない資料もございますので、そういう資料につきまして督促をしておりまして、それらがまた提出されますれば、それらに基づいた現地調査も実施しなければならない、こういう状況でございます。
#216
○小林(政)委員 私この速記録等を見まして、特に評価作業をいま行なっているということで、具体的には各委員から質問がございましても、その判断を下す段階に至っていないんだ、こういう御答弁がございまして、具体的には有償あるいは無償などという御質問に対しても何一つその判断の基準すらも明らかにしない、こういうことがずっと続いているわけでございます。速記録等を見てみた中で、七月十三日の参議院の沖繩特別委員会、沖特委員会で社会党の委員の質問に対しても同じような答弁をしておりますし、さらにまた九月の十日に行なわれました参議院の大蔵委員会の中で渡辺委員の質問等に対しても全く同じようなことが答弁されておりますし、その時点から約一カ月半を経過いたしました今回もまた同じような答弁を、まさに四カ月も繰り返し行なわれているわけでございますが、私はこのような調子では七二年返還までこのような事態が続くのではないかとすら思うほど、この実態については驚いているわけでございます。特に資産の評価等につきましては、土地収用法等において家屋や土地の評価等もいろいろ行なわれておる事実等も私は近辺においても見ておりますけれども、具体的にはそのような膨大なものではいま調査の実態がなっておらないという中で、相当長期にわたってこのような事実が行なわれておりますけれども、いつになったら判断を下す段階に一体なるのだろうか。目標をいつまでとしているのか。明確に御答弁をお願いいたします。
#217
○前田説明員 評価作業が非常に長くかかっておるという御指摘でございますが、これらの資産の引き継ぎにあたりまして、詳細にわたってこれを評価を続けていくという必要がありますためにおくれているということと、それから、先ほど申し上げましたように資料について米国側からまだ提出されていないものがある、そういうような資料を待って、それと実地とをいろいろ調査して対比する、こういった作業も必要になる、こういうことで現在作業を進めているわけでございます。
 そこで、いつまでにこの作業を終了するか、こういう御質問でございますけれども、私たちといたしましてもできるだけ早くこの評価の作業を終わりまして米側との本格的な交渉に入りたい、こういうふうに考えているわけでございますが、先ほど来述べましたような事情によりまして現在まだそういう段階に至っておらない、こういう次第でございます。
#218
○小林(政)委員 差し迫って行なわれているというふうに聞いておりましたけれども、具体的な目標も計画もお立ちになっていないということは、私はこれはたいへん残念だというふうに思います。
 次の質問に移りたいと思います。十月の八日に愛知外務大臣とマイヤー駐日大使が第四回沖繩返還交渉の会談を外務省で行なった、こういうふうに新聞に報道され、さらにその会議の中で資産の処理につきましては一定の合意に達したと見られているということも、十月九日付の琉球新報等が報道いたしておりますけれども、この合意の内容というものはどのようなものであるのか、お伺いをいたしたいと思います。
#219
○前田説明員 愛知・マイヤー会談で合意を見たというふうに私は聞いておりません。
#220
○小林(政)委員 そうすると、これは新聞の一方的な報道であろう、こういう御答弁かと思いますけれども、この合意を見たか見ないかということについてはいま私がお伺いをしたわけですけれども、この会談では米側から具体的にどのような意見が出され、あるいはどのような話し合いになられたのか。それらの点についてお伺いいたしたいと思います。
#221
○前田説明員 本件の資産交渉は、日本側は大蔵省、それからアメリカ側は財務省が窓口になって行なっておるわけでございまして、現在事務レベルの交渉をすでに二回行なった、こういう状況でございますので、そういう愛知・マイヤー会談等のような場で取り上げられる段階には至っていない、こういう次第でございます。
#222
○小林(政)委員 それでは次の質問に入りたいと思います。
 米国の管理資産について、大蔵省は県民にとって必要な、あるいはまた有益なものについては引き継ぎを行なっていく、こういうことで項目的に合意を見たというふうにいわれておりますが、この合意を見たものの中で、大蔵省として無償で引き継ぐというような具体的な問題を検討している内容がございますか。
#223
○前田説明員 まだ先ほど申しました諸項目につきましてそれらの評価作業を行なっている段階でございますので、どれとどれを有償、どれとどれを無償というような区分けをするような段階にはまだ至っておりません。
#224
○小林(政)委員 私は、大蔵省としていま御検討中だとおっしゃいますけれども、具体的な基本方針というものをお持ちになって、その上でものごとというものは検討するものであろうというふうに考えますけれども、無方針で臨んでいらっしゃるのですか。
#225
○前田説明員 一般的な方針といたしましては、今後沖繩におきますところの経済及び民生につきまして非常に有用な効用を発揮する、こういう資産につきましては、これはそれ相当の支払いがそこに行なわれるであろうというふうに考えておるわけでございます。
#226
○小林(政)委員 具体的には、相当の期日がたっても、目的あるいは期日の目標をどこに置くかとか、あるいはまた具体的な計画というものも明確な御答弁をいただけませんでしたし、あるいはまたこの内容についても、先ほども私四カ月も同じ答弁を聞いているということを申し上げましたけれども、こういった点から考えまして、私は、むしろ基本的な考え方というようなものを、大蔵省としてはこのような考え方を持ってアメリカと折衝しようとしているのだというような基本的な考え方を、なぜもっと国民や沖繩県民に示さないのかということは、これは非常にふしぎだと思います。むしろ国民や沖繩県民に対して秘密交渉というような印象を与えるのではなく、事実の計画なり方針なりというものを明確に打ち出されるべきではないかと思いますけれども、この点についてもう一度お伺いをいたします。
#227
○前田説明員 その点につきましては、ただいま申し述べましたような線、すなわち沖繩におきますところの経済あるいは民生の福祉に役立つような資産については支払うことがあるべし、こういう考え方については機会あるごとに述べておるわけでございます。
#228
○小林(政)委員 それでは政務次官にお伺いをいたしたいと思います。
 ことしの七月に屋良主席が大蔵大臣にお目にかかり、要請されました。あるいはまた八月の三十一日に琉球政府立法院も決議をいたしまして、政府や各党に対して、九月の中旬だったと思いますけれども、陳情に来られた。御存じだろうと思いますけれども、各党お回りになられたと思います。この中に明らかにされておりますように、沖繩にある米国資産は統治責任者として当然の統治費である、こういう見解、あるいはまた資産の相当部分は沖繩県民の多年の努力によって増殖されたものである。したがって、沖繩県民の所有に属するもので、日本政府もその債務を負う必要はない、こういう趣旨については私は全く賛成でございますし、そのとおりであろうというふうに思いますけれども、政務次官はこの問題についてどのようなお考えをお持ちになっていらっしゃるか、お聞かせを願いたいと思います。
 また、この琉球政府立法院の決議の説明書の中に書かれてございましたけれども、本土政府はこれらの米国管理資産が無償、無条件で琉球政府に帰属するというのは何ら根拠がないという態度で臨んでいる旨、述べてございました。この点につきましてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
#229
○中川説明員 希望としては無償が一番いいわけでありますが、何ぶんにも相手のあることでありますから、しかもアメリカがそれぞれ金を使ってつくった財産であり、いまなお価値のあるものでありますので、それをただにしてくれればまことにけっこうではありますが、ただでは困るということになりますと、やはりそれ以上の無理の言えない点もあるのではないか。先ほど来ずいぶんおそいという話もありましたが、返還交渉に入りましてから、戦争で取られた施政権が血を流さずにこんなにうまい話し合いで進んでいるということは、他の諸外国における領土問題その他国際関係から見まして、非常に順調に進んでおるものだと私は評価をしておる次第であります。
#230
○小林(政)委員 沖繩が現在米軍の占領下に置かれ、そして二十五年という長期にわたって植民地支配を受け、どれだけ御苦労をされてきたか。県民が生命あるいは財産、人権など大きな侵害を受け、そして大きな被害を受けてきているわけです。しかも、これはサンフランシスコ条約第三条によって、米軍独自の軍事目的のために強引に沖繩を本土から引き離したという事実から見ましても、このような状況のもとで私は日本政府が米国の管理資産の補償や買い取りというようなものの義務がないことは当然だというふうに思いますけれども、御見解をお伺いいたしたいと思います。
#231
○中川説明員 先ほど来申し上げましたように、何といってもあれだけの戦争をした敵対関係にあったわけですから、それが占領されたことに対して国民も非常に遺憾であり、また特に沖繩県民が二十五年間アメリカの施政下にあったということはまことに気の毒であり、また国民感情としても耐えがたいところではありますけれども、向こうは向こうなりにまた言い分もあるわけでありまして、ここで比較して申し上げて恐縮でありますが、固有の領土であります北方領土はまだ話し合いの糸口もつかないというくらい、国際間の問題というものはきびしいものでありますので、向こうは向こうの言い分もありますが、こちらはこちらとしてまた主張すべきは主張して、一日も早い円満な返還を達成し、その後においても、あるいはそれ以前にでもありますが、二十五年間沖繩県民が苦労してきた、これには沖繩・北方対策庁を通じまして、民生の安定なりあるいは社会福祉の向上なり、経済格差の是正なり、今後全力を尽くして沖繩県民の長年の苦労にこたえなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。
#232
○小林(政)委員 私はいま沖繩の問題等についてしぼって御質問をいたしておったわけでございまして、特にその中でいまお聞きいたしましたのは、そのような米軍独自の軍事目的のために、実際には二十五年間という長い間困難をしょってこられましたこのような事態の中で、はたして米軍あるいは米国の資産の買い取りとかあるいはまたそういう補償の義務があるのかどうかという点をお伺いいたしたわけですけれども、この点については明快な御答弁をいただきたいと思います。
#233
○中川説明員 私は、支払いの義務といいますか、これをただで日本にやらなければならぬ、軍事目的で使ったのだから、軍事目的がなくなったというか、今度返還になるとこれは無償でやる義務があるとは考えられないのではないか。ただでいただけるならばありがたいという要請はできましても、義務であるからただで、無償で渡せということは主張できる根拠はないのではないか、このように思います。
#234
○小林(政)委員 義務というものはないであろうというような見解でございますけれども、必然法的根拠というものもないわけでございますね。
#235
○中川説明員 これについての法的根拠があるかないか、現在のところ私よく承知いたしませんが、要は円満な解決――お互いこれは話し合いでありますから、国際間、特にアメリカとの間において、これが円満に一日も早く返ってくることが先決でありますので、その辺に重点を置いて、法的根拠のあるものでありますればもちろん法的根拠に基づいて――法的根拠がいまのところないんじゃないか、これをただで、無償で渡せという法的根拠はないように私は記憶いたしておりますが、かりにあれば、その法的根拠に基づいて要求はいたしますが、要は、当初申し上げましたように、円満な話し合いの中に、お互いに譲り合って一日も早い返還、実質的な返還ができるように進めるべきであろう、このように思います。
#236
○小林(政)委員 私は、「時の法令」という、あれは政府の刊行物の一部になっているのだろうと思いますけれども、一九六九年の九月三日付の「時の法令」というものを見ましたときにも、そこでやはり明らかに法的根拠というものはないのだという意味のことが書かれております。この点については、したがって、だから法的根拠ということではなくて、日米間の協議によって一応妥当な解決ということがいわれているのであろうというふうに思いますけれども、そのように理解してよろしゅうございますか。
#237
○中川説明員 私が申し上げましたのは、いま言ったような趣旨で申し上げたつもりでございます。
#238
○小林(政)委員 このようなことで、いま話し合いによって問題の解決をはかっていこうということで進められているわけですけれども、義務もなければ法的な根拠もない、しかし円満な協議ということで、いわゆる財政支出等をこれによって行なうというようなことになりますと、これは少し問題だというふうに考えますけれども、ある学者の意見等を見てみましても、政治的解決、いわゆる法的根拠もない、あるいはまたそれに準ずべき解釈といいますか、そういうもの等もきわめて困難だというところで一応政治的な解決といいますか、話し合いによる解決、こういったような態度をとる場合であっても、少なくとも本来の法的な解釈に最も近い形で検討をすべきだというようなことが学者の意見としても述べられております。これらの点等から考えますと、いま沖繩における米国の管理資産の引き継ぎに支払いを行なうというようなことは、明らかにこれはやはり買い取りではないかということがいろいろいわれております。実質的には買い取りを意図するものといわざるを得ないのではないだろうか、このように考えますけれども、この点について明確な御答弁をひとつお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#239
○中川説明員 法的根拠があれば、それはもう一番いいわけですが、法的根拠というものはまずないのではないか。と申しますのは、国際間の問題でありますが、国際間においてこういう形での返還ということはまず前例がないわけであります。しかし、御主張のように、法的に近いものがあれば法的な何かに近いもので解決せよという趣旨もあります。そういうことを含めて円満に協議をして、なるべく国民の税金を少なく、すなわち日本の負担を少なくして、そうして両国ともに納得のいく解決に持っていくべきでありますし、またそうしておるものだと思っておるわけでございます。
#240
○小林(政)委員 この交渉等につきましても、現地の沖繩県民の意向というものを十分尊重するということが常に前提になっているというふうに伺っておりますけれども、先ほど申しましたとおり、屋良主席をはじめ沖繩の立法院あるいはまた住民の方々も、今回のこの買い取りというようなことに対しては、これは非常に不当であるということで、先ほど私の申し述べましたような意見も正式に政府に出されているわけでございますので、これらの点を十分勘案をしていただいて、決してこのようなことのないように、最後に要望をいたしまして終わらせてもらいます。
#241
○毛利委員長 次回は、来たる十月二十七日火曜日午後一時理事会、午後一時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後五時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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