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1970/04/06 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第6号
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1970/04/06 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第6号

#1
第063回国会 外務委員会 第6号
昭和四十五年四月六日(月曜日)
    午後二時四十四分開議
 出席委員
   委員長 田中 榮一君
   理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君
   理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君
   理事 戸叶 里子君 理事 大久保直彦君
   理事 曽祢  益君
      小坂徳三郎君    中山 正暉君
      豊  永光君    堂森 芳夫君
      松本 七郎君    山本 幸一君
      伊藤惣助丸君    中川 嘉美君
      林  百郎君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
 出席政府委員
        外務政務次官  竹内 黎一君
        外務大臣官房領
        事移住部長   遠藤 又男君
        外務省欧亜局長 有田 圭輔君
 委員外の出席者
        外務委員会調査
        室長      吉岡 俊夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月六日
 辞任         補欠選任
  樋上 新一君     伊藤惣助丸君
  不破 哲三君     林  百郎君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤惣助丸君     樋上 新一君
  林  百郎君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
四月六日
 窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス
 及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に
 関する議定書の締結について承認を求めるの件
 (条約第一四号)
同月三日
 日米安全保障条約廃棄等に関する請願(青柳盛
 雄君外二名紹介)(第二二三二号)
 中国渡航の制限撤廃に関する請願(堂森芳夫君
 紹介)(第二二三三号)
 同(松本七郎君紹介)(第二二三四号)
 同(山本幸一君紹介)(第二二三五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
 四号)
     ――――◇―――――
#2
○田中委員長 これより会議を開きます。
 旅券法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本七郎君。
#3
○松本(七)委員 前回の委員会で、今後の旅券発給について、いままでほど社会主義国とその他の国の差別、あるいは未承認国と承認国の間の差別をなるべくなくしていきたい、こういう政府の気持ちを表明されたわけですが、きょうはそういう政府の気持ちが具体的にどういうふうにそれじゃ期待できるのかという点を少し質問したいと思います。
 まず第一に、昨年の衆参両院の外務委員会でこれは再三答弁されてきたことですが、今後は旅券発給を原則的に拒否することはしない、こういう答弁が繰り返されておるのですが、とのことは今後も変わりはないものと了解していいですか、まずその点を確認しておきたいと思います。
#4
○愛知国務大臣 前国会の旅券法の審議のときにも非常に熱心な御審議をわずらわしたわけでございますが、そのときに、昨年の七月九日と思いますけれども、当時の北澤外務委員長から、旅券法の改正案というのは、いずれの地域に対しても渡航の制限をする目的に出たものではない、それから、なおいずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって措置するという御発言がございました。これが政府側の意図として与野党理事が確認をした。これが当時の北澤委員長の御発言の要旨でございますが、今日におきまして、今後におきまして、この御発言にあらわれておる政府の当時からの意図、並びに与野党の理事が確認せられましたこの考え方のもとに、改正後においては運営をいたしてまいりたい、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
#5
○松本(七)委員 北澤委員長の発言に基づいていくということですが、いま私の言う表現をもとに答弁していただきたい。では、今後は原則として旅券発給を拒否することはない、拒否するのは例外である、こういうふうに理解していいかどうか。
#6
○愛知国務大臣 これは前国会のことではございますけれども、非常に真剣な御討議をいただいて、ただいま申し上げましたような態度について政府としても確認をいたしておるわけでございますから、ただいまの御質問の直接のお答えにならないかもしれませんけれども、いずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって措置するというのが政府の態度でございます。
#7
○松本(七)委員 だから、私のことばがもし政府としてぐあいが悪いなら、そういう表現は困る、こういう表現ならいい、そういうふうな答弁をしてもらいたい。だから、原則としては旅券発給を拒否することはしないのかどうか、拒否する場合一は例外にすぎないのかどうか、それをまず明らかにしていただきたい。
#8
○愛知国務大臣 まあ、これはことばの上の問題かと思いますけれども、私は、いずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって行なってまいりたいということが政府のお答えである、これでひとつ御理解をいただきたいと思います。
#9
○松本(七)委員 そういう、ことばの問題と言われるけれども、そのことばにずいぶんこだわっておられるから、なお私は質問せざるを得ないのですが、原則として拒否しないという表現を避けられるということは、やはり拒否するのは単なる例外ではなくて、原則的に地域によっては拒否せざるを得ないというふうにこっちは解釈せざるを得なくなってくるのですが、どうでしょう。
#10
○愛知国務大臣 これは非常に大事なことですから、この根本の原則について、やはりことばも非常に大事だと思いますけれども、それはなぜかと申しますれば、この旅券法の法文について審査をして発給することもあり、ないことも法律の上にも書かれてあるわけでございますから、これの運用に当たっては、善意を持って渡航の自由というものを扱っていきたいという気持ちで、この法律を運用していきたいというのが政府の態度でございますということを繰り返し申し上げておる次第でございます。
#11
○松本(七)委員 そこで、前回も私が聞いたように、本来は旅券というものは身分証明書的なものであるべきだ。ところが日本の場合は、依然として外出許可証みたいな性質のものになっている。だから、これをこの旅券法改正の機会に身分証明書的なものにする意思はないかということをこの間聞いたわけです。外務大臣は、それは確かに理想だ、将来はそういう目標にいきたいんだ、けれども今日はそこまではいけないという答弁がはっきりあったわけです。だから私はこのことを聞いておるので、本来ならばそういうところまでいくべきだ。やはり目標としてでも日本政府がそれを認められるなら、私がさっきから言うように、やはり原則的にはこれは旅券の発給拒否はしないんだということが出てきていいはずだと思うのです。目標としては身分証明書的なものでなければならぬという目標を承認されるなら、いま暫定的な措置としては、これはやはり例外として拒否するのであって、原則としては拒否しないという態度に直接結びつくものだと思うのです。そこのところを、なお今日の段階ではそこまで結びつけるわけにはいかないという考えかどうか、その点をここで明らかにしていただきたい。
#12
○愛知国務大臣 そうなりますと、私は問題は二つあると思うのです。旅券というものの性格をどういうふうに考えるかということであって、その理想とするところは、身分証明書みたいなものであることが望ましいには間違いございませんけれども、旅券法にいういわゆる旅券というものには、相手国におけるところの日本国民の保護、安全というようなこと、便宜供与ということも含んだ旅券というものの性格はそういうふうに規定されてあるわけでございます。その旅券というものの扱い方、発給のしかたについての理想としては、これをどなたにでも発給できるような、そういうものにしたいということが私は理想である。この点は御同感でございます。しかしこれは理想であり、あるいは目標でありまして、現実のもう一つの問題は、これは何といいましても、この旅券というものの性格を現実の国際状況、環境、あるいは日本とそれらの国々との間の関係ということから考えますれば、拒否するのは原則か原則でないかということを詰めてお尋ねになりましても、これは政府としては御説明するのにことばの上ではたいへん苦しみます。しかしこれは先ほど申し上げておりますように、昨年の御審議のときにもそうであったように、結局これはケース・バイ・ケースの扱いにならざるを得ない。そういうことでございますから、原則か例外かというふうなところではなくて、ケース・バイ・ケースということで、扱いの形、扱いのやり方について、われわれとしていま申しました、いずれの地域に対する渡航の自由についても善意を持って対処をさせていただきたい、こういう気持ちで運用をやらせていただきたい、こういうことに相なるわけでございます。お気持ちはよくわかりますけれども、ことばの上で、これは何べん押し問答いたしましても、私としてはこれ以上に申し上げることはできないと思います。
#13
○松本(七)委員 原則的には拒否しないという表現までは使えないというその政府の説明を一応前提にして、さらに進みたいと思うのです。
 外務大臣なりいまの政府の気持ちとしても、この旅券法改正を契機にして、社会主義国間、未承認国と承認国の間の差別をできるだけなくしていこうという気持ちは、前回毛表明されたわけですから、それではどの国に対しても、いま言われた善意に対処するという旅券の許可の範囲というものは広げられるものと期待していいですか。
#14
○愛知国務大臣 それは先ほど来申しておりますような前段がございます。旅券法の改正案はいずれの地域に対しても渡航の制限をする目的に出たものではございませんから、そこからこの改正案の趣旨をおくみ取りいただきたいと思います。
#15
○松本(七)委員 しかしいままではずいぶん制限してきたわけですからね。だから、その趣旨を強調される以上は、当然いままでの制限を緩和される、この点は間違いないのでしょう。前回もできるだけ差をなくしていこうという表現で答弁されているんだから。そうすると、制限もできるだけこれからは緩和していくということと同じように理解していいですね。
#16
○愛知国務大臣 それはだんだんとまたこまかい御質問になると思いますけれども、前提として未承認国と承認国との間に差別があるということは、これはやむを得ないということをお認めいただいていると思います。その次に、未承認国でもこれは複数といいますか、一つや二つではございませんから、そこで旅券法の先ほど申しました性格や趣旨から申しまして、それらそれぞれの国々あるいはそれらの国々とその隣国なり他の国々との関係、日本との関係というようなことからいって、これは各国別、仕出し国というか相手国の態様あるいはそれらをめぐるいろいろの環境によって、ケース・バイ・ケースに扱わざるを得ない、こういうことも同時に考えていただきたいと私は考えるわけでございます。しかし同時に、先般来るる御説明いたしておりますように、手続の簡素化というようなことも、これは見る人によりましてはこんなもので不十分だと言われる方もありましょうけれども、漸進的にステップ・バイ・ステップに緩和の措置をとっておることも御承知のとおりでございますから、その辺に政府の意のあるところを御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。
#17
○松本(七)委員 それはだんだんこまかいあれにならざるを得ないのです。したがって少し具体的にそれじゃ聞きますが、この前もちょっと触れた国名の問題ですね。同じ未承認国でも中華人民共和国あるいはベトナム民主共和国は国名を使っておる。ところが、ドイツ民主共和国と朝鮮民主主義人民共和国は国名を使わない。ドイツ民主共和国の場合は、この前も私質問のときにいったように、一応東独側はビザを出そうという意思表示をした。それに基づいて日本政府としてもそれでは渡航を許そうということになったにもかかわらず、国名がドイツ民主共和国と書いてないために向こうが心証を害して、当初ビザを発給するつもりだったのがこれがだめになった、こういう事例もあるわけですね。しからば今後はドイツ民主共和国及び朝鮮民主主義人民共和国についても国名を採用されますか。
#18
○愛知国務大臣 この国名の問題などにつきましては、前回もいままでの経緯、あるいは印刷物の印刷のしかたなどについては、そのときの、たとえばいまから三年前の状況で刷り上げましたような関係もあって、いまお取り上げになったような点も御不審の点があったようでございますから、これらの点につきましては今回旅券法が改正されましたら十分考え直すということは、申し上げたとおりでございます。
#19
○松本(七)委員 それから朝鮮の場合は、特に政府も説明しておるように、韓国に気がねしてからこの点を非常に従来も遠慮されて、われわれから言えば日本の自主的立場を失うほどに韓国に気がねをして、そして旅券発給の制限も不当にきびしいものがあったと思うのです。今後はこれもだんだん緩和されるという期待のもとに、私どもはこの旅券法の審議を続けておるわけですが、これは小坂外務大臣のときでしたが、初めてプラント輸出、いわゆる朝鮮と直接貿易の道も開こうというようなことがなされたわけですけれども、せっかく方針はそういう方針が打ち出されても、実際問題としてたとえば日本から朝鮮民主主義人民共和国にプラント輸出でもしようという場合には、それはどうしても技術者の交流をやらないと、実際に輸出が実現するということにはならないわけです。したがって、せめてそういう経済貿易関係とかあるいは文化、スポーツ、そういう関係については、従来よりずっと広範に旅券の発給をするというようなことは、私どももいままで長く要求もしたし運動もしてきたわけです。今日情勢もかなり変わってきているわけですから、今後においては少なくとも経済貿易あるいはスポーツ、文化という方面については、広範な旅券発給が認められるという期待はしていいものでしょうか。
#20
○愛知国務大臣 具体的に言えば、北朝鮮に対しましては、御承知のように最近ほとんど旅券が発給されていないということは事実でございます。同時に、いまもおあげになりましたが、貿易の関係であるとかスポーツの関係であるとかいうことで、非常に目的がはっきりしている、あるいはこれらについて、実績も考えなければなりませんが、実情も相当従来の経緯からいってわかっている面もございますから、そういうところもケース・バイ・ケースに考えて慎重に検討いたしたい、こういうふうに考えております。
#21
○松本(七)委員 これに関連して同僚の山本さんから質問がありますが、ちょっとその前に、この前もこれは私ちょっと指摘したことなんですけれども、実際に貿易関係いろいろの仕事の面で、朝鮮に行った場合、北京を経由して行ってそしてまた再び北京に商用のために戻らなければならぬ、北京と平壌の間を何回も往復するという場合はしばしば起こるのです。予期しないような用事というものが出るわけです。今後はそういう場合にあらかじめ予備的にそういうことが起こり得るということを予想した場合に、また両方の当事者、中華人民共和国も朝鮮民主主義人民共和国もそれを認める場合には、あらかじめ旅券について、それぞれの国名なり必要な事項の記入をしていただけますか。
#22
○愛知国務大臣 一般的に先ほど申しましたように、その目的でもってあの地域に行かれる、その場合に旅券を発給した、それでその目的のためにまた第三国に往来する必要があるというようなことが認められておるような場合には、従来より簡易な手続でこれを取り扱うというようなことについては、これもケース・バイ・ケースですけれども、考えていかなければならない、こういうように考えております。というのは、前々から御論議もありますように、罰則というものの関係もございますから、実際必要なことで客観的にあるにかかわらず罰則にかかるような、たとえば横流れというようなことが黙認されるようなことは、私は法律のたてまえからいってもおかしいのじゃないか、こういうことも考えますから、そういう点も考えて、これは一般論でございますけれども、旅券法の改正にあたっては十分心得て運用してまいりたいと思っております。
#23
○田中委員長 山本幸一君。
#24
○山本(幸)委員 ちょっと愛知さんに関連してほんの一言だけお尋ねしたいのですが、私は先般の当委員会における戸叶さんからの旅券法に関する質疑をお聞きしたり、またいま松本さんの御質疑を聞いて、あなたの御答弁にかなり苦心があることはよくわかります。なるほど答弁そのものはきわめて複雑な答弁のしかたですけれども、その中にいろいろ苦心をなすってみえるということは私にもわかるわけです。さらに先般の御答弁では、たとえば戸叶さんが広州で開かれる交易会の参加の問題で、不十分だけれどもということでお尋ねがありましたが、そのときに愛知さんは、従来と違った姿勢、つまり姿勢の転換をしたんだ、このところはここでひとつかんべんしてもらいたい。また万博の見学入国について、朝鮮民主主義人民共和国からこの問題についてお尋ねしたときにもケース・バイ・ケースで十分検討する、こういうお答えです。私はその点ではいままでより確かに不十分ながら理解のできるお答えではないか、こう思うわけです。
 そこで私は一言だけお尋ね申し上げたいのは、実は万博の問題です。これは佐藤さんもおっしゃってみえるように、人類の進歩と調和、こういうことを鼓舞されて、いわば国威の発揚を大いにおっしゃってみえる、こういう機会でもあるし、いま一つは、未承認国との友好をできるだけあらゆるケースでやり得るものはやっていくということが、やはりいろいろ将来のためにもいいんじゃないかということを考えますときに、万博の見学入国は政府としては非常に私は荷の軽い問題ではないか、こう思うわけです。と申し上げるのは、あなたも御承知かもしれません、私が四十一年に、当時プラントの取引が北朝鮮側と日本の東邦ベスロンですか、あるいは東工物産等々で成立いたしまして、入国についての手続があったわけですね。その際になかなかむずかしかったのですが、佐藤総理とじかに私二、三回お会いして、椎名外務大臣あるいは三木通産大臣ともお会いしていろいろ話し合いした結果、純経済的な問題として総理の御理解がありまして、そうしてすぐ閣議決定までされたわけですね。これは御承知だと思うのです。ところがその閣議決定が実行に移されなかった。これは中身は別にして率直に言うならば、いろいろな複雑な事情がその後発生したということです。いま私はここでその複雑な事情の中身は申し上げません。結論だけ言うと、そういうことが発生した。せっかく閣議決定したにもかかわらず、ついにたな上げになって今日に至っておる。これと万博とを比較すれば非常に万博のほうは荷が軽いと思うのです。言うならば直接韓国との経済利害等はございませんし、いわんや政治利害等もないと思うのですね。こういうときにこそあなたのおっしゃったケース・バイ・ケースをできるだけ前向きにひとつ御検討いただく、このことが私は必要じゃないかと思うのです。私は言うならば閣議決定はまだそのまま生きておると思いますから、その問題をきょう直ちに実はお尋ねしたいのですが、これはやめます。やめて一番荷の軽い――それと比較してもっと荷の軽い万博等は、ぜひ前向きのケース・バイ・ケースでけっこうでしょう、御検討いただきたい、私は実はこう思うわけです。これも私二度と質問せぬつもりですから一言だけ申し上げますが、いま直ちに私はここでどうこうというんじゃありません。あるいはあす、あさって入国をどうこうというんじゃありません。万博の開催期間はたしか九月までですか、その間のうちにぜひ実現をさせる、そのことは非常に将来両国との友好関係が増進する、いわんや北朝鮮との関係は韓国との関係とからんでなかなか政治的にはむずかしい、そういうときにはできるだけ人事交流、文化交流、経済交流を高めていきながら友好を深めていけば、やはり政府としてもまたパイプをその道において広げられるのじゃないか、こう考えますから、できるだけやりいいところから手をつけていく、こういう点で、きめつけはいたしません、あるいはここで明確にどうということはこの公式の場では申しませんが、ぜひひとつ前向きで御検討いただきたい。これをちょっとお尋ねしたいのですが、いかがでしょうか。
#25
○愛知国務大臣 山本さんからこの問題についてたいへん御理解のある御質問をいただいて、まことに恐縮でございます。
 万博について申しますと、お話があるまでもなく、調和と進歩ということがテーマにもなってなりますから、どういうところから来られるのも歓迎というのがたてまえであると思うのです。具体的に北鮮というお話でございますが、山本さんから、この点について前向きにケース・バイ・ケースで扱え、また時間的な要素その他については何も、ここできめつけて直ちに回答は求めないと、たいへん御理解のある御質問をいただきました。私は山本さんが前向きに扱えとおっしゃっておる気持ちを休して、ひとつケース・バイ・ケースに慎重に検討さしていただきたいと思います。
#26
○山本(幸一)委員 では私の質問は終わります。
#27
○田中委員長 戸叶里子君。
#28
○戸叶委員 先ほどの松本委員の質問のときに愛知外務大臣が、国名の問題につきましてははっきりおっしゃらないで、考慮いたしますというふうなことだったのですが、今回のよど号の事件で町の声を聞いておりますと、いままで政府自身が北朝鮮のことに対して、はっきり朝鮮民主主義人民共和国ということは言わなかったけれども、たまたま保利官房長官等の話を聞いていると、北鮮当局ということばをずっと使ってきている、そこで、政府としての統一的な呼び方というのは北鮮当局ということになるのだろうかどうだろうかという質問をたまたま私はきのう受けました。
 それで、そのままそっくり私は外務大臣に伺うわけでございますけれども、旅券の発注の場合に、あるいはそこへ出す場合に、ことに北朝鮮の場合はいろいろお考えになっていることもあろうと思いますし、いまここでそのことをそれ以上聞きませんけれども、今後において、北朝鮮の呼び方としてはやはり北鮮当局というふうな形でお呼びになるのかどうか、この辺のところをちょっと伺いたいと思います。
#29
○愛知国務大臣 この名称の問題でございますけれども、今回のこのハイジャッキングの問題につきましては、もう全く私どもとしては予想もしない問題しかも飛行機というきわめて急速な速力を持った交通機関の問題でもございます。その環境の中で百人以上の人命をどうやって助けることができるかということに専念しまして、たとえば板門店の休戦軍事委員会、通称マクといわれておりますが、この機関のごときも、本来の委員会の性格、使命から見れば全くこういうことを予想しない仕事なんでございますが、当方としてはあらゆる機関にお願いをして、ここに連絡をお願いしたところが、快く協力していただけたわけで、たいへん感謝しているわけですが、そういうところの連絡のときに、双方ともに当該機関当局というような名前が便宜上使われました。たとえば日本国当該機関当局とか、あるいは先方においてもそういう表現が使われた。これはよけいなことかもしれませんが、たとえば朝鮮中央通信におきましても、当該機関当局というようなことばが放送、公表等にしばしば使われておりましたので、本件についてのみこのことばがしばしば報道界その他に用いられたことばである、こういう経緯があったわけでございまして、このことばが今後公用語あるいは慣用語として使うのに適するかどうかということは全然別問題と考えております。
#30
○戸叶委員 私、この全体の問題についてはほかの機会に伺おうと思っておりますから、きょうはこれでやめますけれども、ただ、いままで北鮮当局とかいうふうに呼ばれていたのが慣用語でもなければ、今後呼ぶとも何ともいうわけじゃなく、今回に限ったものである。そうすると、今後においては一体どういうふうな形で表示なさいますか。一つの国であるのに、日本の国として、さあ何と呼ぶかわかりませんじゃちょっと済まないのじゃないかと思うのですけれども、旅券に書く場合のことはあとにいたすにいたしましても、一応呼ぶ場合の名称なり何なりをやはり統一してお考えになっておかなければいけないと思うのです。北のオーソリティーというのもおかしいのじゃないかと思いますけれども、この点はどういうふうにお考えになるのでしょうか。
#31
○愛知国務大臣 まず第一に、ただいま詳しく御説明いたしましたように、今回の場合は、目的等急速に、しかも本来こういうことを任務として持っていない機関にまで要請をして、その機関が用いられたことば、あるいは先方も便宜上用いられたことば、日本に対しましても当該機関とか当局とかいうことばを先方でも使われておったような経緯があって、そのことばがこの件について出てきたのであるという経過を申し上げたわけでございます。そういう次第でもございますから、こういうことばを今後使うというようなことは別問題で、私はそういうふうには考えておりません。
 しからば、どういう名前を使うかということにつきましては、現在すぐ御返事ができるほどまだ検討はしておりません。おりませんが、同時に、旅券の申請書とかそのほかの必要な書類の上にどういう表示をするかということにつきましては、十分検討させていただきたいと思っております。
#32
○松本(七)委員 それからもう一つ、やはりかなり小さいことですけれども、いままでいわゆる旅券発給を許可しない場合、理由を聞いても言わないですね。言ったことがないです。これからは原則として拒否をしないとまではいかなくても、大臣も言われるようにできるだけ差別をなくしていこう、未承認田との法的な関係は現状のままでも友好関係は広げていこうというのが政府全体の方針だろうと思います。そうなると、やはり許可しない場合に少なくともその理由ぐらい明らかにするのは憲法上――私は許可しないこと自体が憲法違反だと思いますけれども、政府のいまの立場からいっても、少なくとも拒否理由ぐらいは明らかにしていただかないと、国民の側は納得しないと思うのです。その点はどうでしょう、少しは進歩を期待していいでしょうか。
#33
○愛知国務大臣 それは全くごもっともだと思います。これは先ほどどうも心ならずもことばの上で論争をしたような結果になりましたけれども、私は松本さんのお気持もはよくわかっておるつもりでございます。そして正規の申請を出し、かりにお断わりしなければならぬことがあった場合に、やはり最終的に御納得は得られない場合もあるにしても、政府としてはこうこうこういう配慮でもって、いまの時期においては発給をしばらくかんべんしてください、ことばは悪いですけれども、そのことの御説明は十分にする必要があると思います。まあこれもよけいなことを言うことになるかもしれませんが、この旅券法ができますと、あるいはまた機械的な整備その他も漸次進んでおりますから、旅券の事務を扱う当局もそれこそ多少でも時間的な余裕もできますれば、そういう点について十分親切に、そして理解ずく納得ずくの上でこういうデリケートな問題の処理に当たることが非常に必要なことだ、私はかように考えておりますから、そういう気持ちで当局も事に当たるように私としては指示いたしたいと思っております。
#34
○松本(七)委員 今度の旅券法改正で私どもが心配もし、かつ一面期待もするのは、いままで一番ひどい差別扱いをされていたのは朝鮮民主主義人民共和国です。隣に韓国がある、韓国との関係を考慮されてのことでしょうけれども。したがって、この差別を少しでもなくしていこうという方針が堅持されるならば、その新しい方針にのっとって朝鮮民主主義人民共和国に対する扱いという毛のがどこまで広がってくるかということに期待も持ち、また、あまりたいした変化もないんじゃないかという心配もあるわけですよ。特にこの間の委員会で中山議員の質問のような、ちょうど私と正反対のような意見が、自民党の党内にどの程度強いか知りませんけれども、あるとすると、せっかく政府が前向きに解決しようとしておっても足を引っぱられるような結果になるんじゃないかというような心配もあるわけです。
 そこで、少なくともいままで長年の宿題であった経済外交、いま山本さんの質問に対して、万博についてはケース・バイ・ケースであるけれども、慎重にかつ前向きにというような姿勢がちらほら出てきましたから、すみやかにこれがいい解決ができるように私どもは期待もしておるわけですけれども、そういう万博のような一時的なものにとどまらず、少なくとも経済、貿易、文化、スポーツ、そういうものに広がっていくことを私どもは期待しているわけです。そういうことがお互いに交流なされれば両国間の理解も深まってくるでしょう。そして南北朝鮮の問題の円満な解決にも私は大きな効果がやがて出てくると思います。これはどの程度早くそういうところまで期待できるかは別として、徐々にでもアジア全体の状況というものがよくなると思うのですが、そういう点で私どもはもう一ついままで常に考えておったのは、新聞記者の交流といいますか、これが日本政府の態度がかたくなである間は、たとえば私どもの党の代表が朝鮮民主主義人民共和国に行く、そういう機会に各社がやはり同行を希望されるわけです。ところが、日本政府の姿勢がかたくなであるために、向こうさんとしてもそうたくさんの人数を受け入れるわけにいかない、こういう問題がいつも出てくる。人数制限ということになると、今度は日本の国内事情で、さてどこを選ぶかということになりますと、せっかく向こうさんが何人かは受け入れようという気持ちがあってもそれが実現できないというような事例がいままであったわけです。したがって、今後は新聞記者がお互いに交流するということは、両国の実情を両国民によく知らせ合い、その中から理解が深まるという非常に大きな効果がありますので、この点もぜひ、未承認国全般についても言えることですが、特に私は朝鮮民主主義人民共和国について、大臣が十分考慮しながら運営していただきたい、このことを要望かつ質問したいです。
#35
○愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますことで、まことに微妙な条件のもとにおける私の気持ちというものは、私は主観的でございましてまことに恐縮なんですけれども、おわかりいただきつつあるのではないかと思うのであります。先ほどの山本さんの御質疑に対してのお答えも、山本さんの前向きに検討せよという御質疑に対して、私は慎重にケース・バイ・ケースで検討いたしますと申し上げました。率直に申しまして、私から外務委員会でそこまで申し上げることもいかがかと思いますが、一口に申しましてまことに微妙な環境でありまして、私はお互い日本の中の人たちといいますか、日本の国益がどうやって伸びるかということを真剣に探求すべきであって、何もかも具体的に、これはどうこれはどうというようなことを、この委員会のような最高の国権の機関のところで、仮定する事実、命題等について、何もかも具体例について政府の態度を明確にすることが、場合によってかえってそうした目的を達成することに逆の効果もあることを考えなければなりませんので、その辺につきましては政府の苦衷というものも十分御了察、御理解、御協力賜わりたいということをもってお答えといたしたいと思います。
#36
○松本(七)委員 私どもは日韓条約審議のときに、この朝鮮民主主義人民共和国との関係がかえって悪化するのじゃないかという憂慮からいろいろの角度で質問したわけです。当時の三木外務大臣は一応隣国の韓国との関係が正常化すればその次は北との関係も好転させるべく努力するという方向が打ち出されておったにかかわらず、むしろ日韓条約ができてから後というものは、韓国側の意向に気を使うばかりで、新鮮民主主義人民共和国との関係はあらゆる面でむしろ後退さえしている。少しも前進していないわけです。そういうことで今日まできたわけですから、今日の時点から瀞来を展望してみますと、やはり朝鮮民主主義人民共和国との関係をもう少し前進させるということが、私は、日本のアジアにおけるあるいは世界における発言権というものを強くする一つの大きな力になるということをここで強調しておきたいのです。いままでもむしろ蒋介石政権に非常に気がねして、中国に対してはかたくなな態度をとってきておったのですが、だんだんに政府の努力もかいあって、漸進的には中国との関係というものが開けてきた。その間において蒋介石政権からの日本に対する抗議とかいわゆる圧力というようなものも、昔と比べると今日はむしろ少なくなってきているのですね。ですからそれと同じことが朝鮮と日本との関係においても言えるのではないか。ある程度日本が自主的な態度を堅持しながら前進していけば、私は韓国といえどもいままでの態度を緩和せざるを得なくなってくる。そういう事実を勇敢につくっていくことがむしろこれから必要だと思うのです。このことを特に新しい旅券法を運営される場合には、大臣並びに政府当局が十分考慮していただきたいということを要望しておきます。
 それからもう一つ、最後に伺っておきたいのは、社会主義諸国との間にいわゆる相互主義の原則というものがありますね。これはどこの国でも同じですが、これが体制の相違からくる非常に形式的な相互主義におちいって、実務的にかえって不便を生じているのではないかという点が指摘されなければならぬと思うのです。たとえて申しますと、ソ連と日本の場合でも、日本は非常に過当競争だ。したがって、モスクワにいる日本の商社代表は先を争って多数の者を派遣しようとする。ところが相互主義の原則によって、ソ連当局は非常に厳格な数の制限をする。ホテル住まい以外の事務所を持つことについても非常に厳格な制限がなされる。一方今度はソ連のほうの通商代表部でかかえておる人数を見ますと、これは日本の相手が非常に多くの商社でしかも過当競争をやっておる相手ですから向こうの公団の代表が数人来たんではとても仕事がさばけない、こういう矛盾があるわけなんですね。これはどういうところから今日まで改められなかったか。これはまあいろいろ日航機のシベリア上空を飛ぶ問題等その他と同じような配慮があったのではないかと私は思いますけれども、今日の日ソ関係、それから今後の日ソの関係あるいは世界全体の情勢から考えるならば、こういった点ももっと実務に差しつかえないような弾力的な運営がなされる可能性はあるんじゃないか、そういうふうに私どもは観測しているわけですが、これらについての対処のしかたをこの機会に伺っておきたい。
#37
○愛知国務大臣 このむずかしい相互主義の問題はともかくといたしまして、日ソ間の貿易関係の仕事のやり方、また事務所の交換設置――交換設置ということばは当たりませんけれども、そういう問題については私も年来いろいろ苦心しているところでありますが、現在の実情を申し上げますと、たとえば在京ソ連通商代表部に例をとりますと、三十二年の十二月に通商条約でその設置が認められたわけで、当初は二十五名駐在しておりましたが、現在は定数合計五十名になっております。それから他方モスクワの日本側の商社の駐在員の数は現在五十名でございまして、ちょうどこの数が五十名、五十名になっております。日本側の商社の数は十三社になっております。そしてこの点についてはやはり体制の相違でございますから、こちらは自由貿易、民間貿易の関係でどうしても商社の数が多い。そうするとその仕事の関係から申しまして、事務所をモスクワに常駐的に開いて、そして駐在員をなるべく多くしてくれという要請に接しておりますし、他面ソ連側は、通商代表部の拡充ということを常にやはり関心事にしておるわけでございます。たとえば最近におきましても、具体的な商社名等は別といたしまして、二社ほどのモスクワの、六カ月という期限つきではございますけれども、一応事務所の開設を認められたというようなことで、こうした関係においてはどうしても日ソ間の合意あるいはそれぞれの政府の承認許可というようなことがございますが、そういう点については日ソ間において随時話し合って、そうして双方の便宜になりますように、多少時間はかかっておりますけれども、どうやら軌道に乗って、そしてほぼ満足すべき状況に進みつつある、こういうふうに私は理解しておりますけれども、なおもう少し具体的な点については欧亜局長も来ておりますから、御説明をお聞きいただきたいと思います。
#38
○有田政府委員 お答えいたします。
 ただいま大臣から申し上げたとおりの現況でございますが、最近一九七〇年の貿易取りきめを交渉いたしました際に、ソ連側から具体的にこの通商代表部の支部を大阪に置いてほしい、それから通商代表部の十数名の増員をしてほしい、それから公団の事務所を設置してほしいというような要望がございましたので、われわれのほうから、それは一応検討いたしましょうと返事しております。これは実は通商代表部のほうも仕事がだんだん忙しくなりまして、大臣から御説明申し上げたように逐次増員されております。しかし、同時にわれわれのほうからいたしますれば、日ソの貿易の仕事というのは、両方でやられるべきであって、わがほうは総合商社としてモスクワに駐在しております君たちの待遇と活動がソ連政府によって好意的に処理されてほしいというのがわれわれの希望でございます。一方ソ連のほうは通商代表部ができました当初から、この中には公団の人たちも入れてこの人数を設定しておられるわけです。それでこの二つの問題は、大臣も申し上げましたように、直接つながる問題ではございません、体制が違うものですから。これは直接相互主義とか直接これをバーゲンするという立場は双方ともとっておりません。ただ、実際問題としてはその両端で仕事が行なわれるので、両方でこの問題は解決していかなければならない、こういう立場をとっております。ただ、公団の事務所の設置につきましては、本来通商代表部の中におりまして、公団の人たちも随時日本に出張してきております。ですから、われわれとしては一応公団の事務所というものそれ自体がなくても、それほどソ連側に不便を与えておらないのではないか。また、もし事務所を認めるということになりますと、御承知のようにソ連の公団は百近くございますから、それらが一斉に出るというようなことは、ちょっとたてまえとしても現在のところでは問題がむずかしいのではなかろうかということは一応ソ連側に言っております。究極のところは、ソ連側としても通商代表部のほうもだんだん仕事がふえてくるので少し増員してほしいというのが真相だと思います。この点につきましては、ソ連側にも十分検討してお返事いたしましょう、相談いたしましょう、このように申しているわけです。
 それからもう一つの点は、われわれの商社の待遇は、当初数年前まではホテルの一室で独身暮らしで、きわめて不十分な生活だったわけですが、最近は許可を与えられた人たちについては住居が与えられておりますし、それから事務所の設置許可ということでいろいろ通関の便宜を与えられておるので、その限りにおいては非常に改善されておるわけでございます。そういうわけですが、ただソ連側の許可というものは一年ずつ一年ずつ更新されるということでございますから、その限りにおきましては、通商代表部の五十人よりはわれわれの商社の五十人の地位というものが不安定であるという点が問題だろうと思います。われわれとしては、ソ連側にもう少し長期安定的な待遇を与えてほしい、このように要望するつもりであります。
#39
○松本(七)委員 終わります。
#40
○田中委員長 林百郎君。
#41
○林(百)委員 旅券法の審議をやっているわけですけれども、いずれそれに直接間接からんでいる日航機の乗っ取り問題についても本格的に当委員会で政府の見解を明らかにする機会があると思いますが、私もとりあえずここで政府に旅券法の審議にからんでこの問題についての政府の見解をただしておきたいと思うわけです。
 御承知のとおり、旅券法の審議でいつでも問題になりますのは、旅券法の十三条の一項五号、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」、これには旅券の発給をしないことができる。この解釈について中心的にこれが論議され、そしてこれがないために横すべりせざるを得ない。横すべりをすれば今度は処罰される。処罰された上に今度は旅券が交付されない、こういう改正になっているわけです。したがってこの「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為」、これはやはり時の政府の政策的な考慮を基準にしてきめることができるかどうか、こういうことが論議の非常な中心になっているわけです。そこで、たまたまこの問題を判断する上で非常に適切な事態が、このたびの日航機の乗っ取り問題で起き、そして朝鮮民主主義人民共和国との関係を好むと好まざるとにかかわらず政府も考慮せざるを得なくなった。こういった事態だと思うのですね。そこで、この日航機の問題について政府がどういう見解を持っているかということは、この旅券法十三条の一項五号とも関係してきますので、私はそういう意味において質問したいと思うのですが、まず、このたびの日航機の朝鮮民主主義人民共和国での扱いについて、どういうことがいわれているか、政府の代表的な見解は、四月五日にこれは官房長官の談話として、暴徒によって乗っ取られた「よど」が、やむを得ず平壌に着陸せざるを得なくなり、北朝鮮当局に多大の迷惑をかけたのは政府としてはなはだ遺憾である。それにもかかわらず政府と国民の願望を理解し、人道的見地から、山村政務次官と乗員及び「よど」のすみやかな送還措置がとられたという情報に接し、北朝鮮当局に深い謝意を表する。こういう記事が発表されております。
 それから、私のほらの赤旗の特派員の平壌からの関係者との記者会見の内容を見ますと、まず石田機長は、「私も年ですからね(四十七歳)。われわれの年代の日本人はみんな、恐ろしい国(共和国のこと)と思っているでしょう。私もら致されることは覚悟していました。それがよもやホテルに案内されるとは夢にも思わなかった。」こう言って、非常に朝鮮民主主義人民共和国側の取り扱いについて、予想外の丁重な扱いを受けたということの謝意を表しているわけです。次いで、山村次官の記者会見での談話を見ますと、「共和国の方で安全を保障し、配慮ある保護をしていただいていることに感謝している。」感謝ということばが書いてある。
 そうしますと、一体外務大臣としては、今度の日航機乗っ取りの事件で、一貫して人道的見地を訴えてきたわけですけれども、外務大臣としては朝鮮民主主義人民共和国が一貫して人道的見地から対処してきたということはお認めになるのでしょうか、どうでしょうか。
#42
○愛知国務大臣 全く私もそのとおりに考えております。
#43
○林(百)委員 そこで、今回の事件は、佐藤内閣の対朝鮮外交で重大な矛盾と問題点をはらんでいることをあらためて明らかにしたわけですけれども、これは金浦空港への着陸の問題、あるいはこの事態の解決をこのようにおくらした問題等を含めて、佐藤内閣のいままでの対朝鮮外交が大きな問題点をはらんでいたことをあらためて明らかにしたと思いますが、政府はこの事件から積極的な教訓を引き出して、従来の朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視政策を改めて、朝鮮民主主義人民共和国との関係を改善するために具体的な一歩を踏み出す意思があるか、あるいはそれとも従来どおりの対朝鮮外交を、朝鮮民主主義人民共和国へ行く自由すら、日本人はもちろんのこと、祖国をそこに求めている朝鮮の諸君の祖国往来すらほとんど許さない。あるいは外国人学校に対する政府の態度などを見てもおわかりと思いますが、こういう態度はそのまま維持されるのですか。それともこういう新しい「よど号」事件等の経験からして、朝鮮民主主義人民共和国との外交関係は従来よりは一歩改善する方向へ踏み出さなければならないということを考えられているかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
#44
○愛知国務大臣 まず今回の「よど号」事件に対しましては、政府としては全く人命の保護、人道的立場ということにしぼりまして関係各国の協力、支援を要請いたしたわけでございます。その目的あるいは日本側の全国民的な要請をよく理解されて、まず韓国政府としてはあらゆる便宜を供与し、あらゆる協力を惜しまれなかったことに感謝をいたしておる次第であります。
 それから先ほどもちょっと触れましたように、緊急の予想せざる事態でございますから、たとえばMAAGというような、本来こういう目的のためにできている委員会組織ではございませんが、こういうところにも協力を求め、非常な協力をいただいたわけであります。
 それからそのほかソ連政府等におきましても、終始この観点に立って協力を惜しまれなかった。それらの国々、政府あるいは赤十字というようなところあるいはそのほかあらゆる機関にたいへん御迷惑をかけ、御協力をいただいたことを感謝しております。
 それから平壌に参りましてからあとの措置、平壌に対しましてもいろいろのルートを通してお願いをしておったわけですが、政府といたしましては、いろいろのルートを通して、先方が人道的な扱いをしてくださるという保障については確信を常に持ち続けてまいりましたが、その政府の確信と同じような意味合いにおいて、北鮮としてもどんなにこれは迷惑な話ではなかったかと思うのであります。立場をかえて見れば、この始末についてはずいぶんお困りになったことと私は想像に余るものがあると思いますが、人道的立場に立って難きを忍んで即時に返還をしてくれられたということに対しては、先ほど御引用になりました官房長官と全く私は同様の感じを持つものでございます。
 さて、そこでいろいろその間に至りますまで政府のとりました処置その他については、何しろ緊急のことであり、何しろ非常に早いスピードの飛行機ではあり、それから率直にいって外交当局といたしましても、板付を発進してから平壌に行くものと考えて諸般の対策を講じておりましたところが、金浦に着陸したというように、与えられた条件下において、しかも与えられた条件というものがひんぴんと目まぐるしくかつ変転いたしました関係もございまして、たいへんな苦心を払ったわけでございますが、与えられた条件下において最善の努力をした、そうしていま申しましたように、最終的に北鮮の好意によってこの事件が決着をした、こういう経過になっております。
 そこでただいまの林さんの御質疑は、ここで対朝鮮半島政策を変えなければならぬのではないか、政府はどう考えるか、こういう御意見でございますけれども、政府といたしましてはかねがね外交方針として国際緊張の緩和、体制を異にするところとも親善関係を持ちたいという大目標を持っております。しかし今回のこの事件と結びつけて直ちに百八十度転換するような具体的な政策を考えるというのには、やはり慎重な真剣な考慮が必要であると思いますので、今後の対朝鮮半島政策ということにつきましては、私はただいまこれを転換するという、そこまではまだ考えておりません。これはやはり従来からのいろいろの経緯もございますし、また同時にこれも引用するまでもないことでございますが、国際連合の朝鮮問題についての累次の決議等におきましても、朝鮮の平和ということについては民主的な方法によって平和裏に統一ができることを希望し、期待するということが最終の目標になっているわけでございます。それにもちろん日本も参加しているわけでございますから、そういう目標を持ちながら、現実のこの微妙できびしい国際環境の中で、しかも日本の隣国でありますこの状況下におきまして、日本の国益を守り、日本のあるべき姿というものについてはきわめて慎重に真剣に、時をかけて考えていかなければならないのではないか、かように私は考えております。
#45
○林(百)委員 外務大臣、私はここでこの問題だけで百八十度政策を転換しろとは決して言っているわけじゃありません。しかし、今度の苦い経験からいって、朝鮮民主主義人民共和国との外交政策について従来よりは一歩前進した改善の方向への積極的な努力をする意思はないか、こう質問しているんですから、その点をひとつよく理解願いたいと思うんです。たとえば具体的に旅券法の問題一つ申しましても、同じ未承認国でも中国だとかそれからいま戦争がホットの状態にあるベトナム民主共和国、こういうところへは旅券が発行されて行っているわけなんですね。ところが、朝鮮民主主義人民共和国には国会議員のわれわれ十二名以外の者は、年々百名くらいの人が実際は行く必要があるわけなんですけれども、旅券が交付されておらないという点ですね。その理由は何かというと十三条一項五号の解釈からくる。これは大韓民国への配慮がある。この友好関係を傷つけるということを考慮しなければならない。もう一つは、朝鮮民主主義人民共和国へ日本の国民がビザを持って行った場合に生命の安全、そういうものが維持されるかどうか政府は保障できないというような理由で、同じ未承認国でもきわ立って差別的な取り扱いを受けている。何も百八十度政策を転換しないにしても、同じ未承認国の間でも何でそう朝鮮民主主義人民共和国だけそのような差別的な取り扱いをするのかということなんですね。しかもこの十三条一項五号は――もう少しこの点はあとで外相の見解をお聞きしたいと思いますが、実は旅券法を制定するとき私は大橋法務大臣に質問しているわけです。大橋法務総裁は、当時の国務大臣ですけれども、こういう答弁をしているわけですね。「外務大臣が認定なさる前に、あらかじめ法務府に御協議があると存じますが、法務府といたしましては、一々の具体例について判断すべきもので、一概に網羅的な表現をもってこれを申し上げることは、ここに書いてありまする言葉以上に申し上げられないと存じますが、たとえば刑法の国家の公益に関する罪、すなわち内乱罪であるとか外患罪であるとか、あるいは国交に関する罪であるとか、また外国為替及び外国貿易管理法、麻薬取締役、銃砲刀剣類等所持取締令等、これらの違反になるようなおそれのある行為などは、この例に該当するというふうに考えておるわけであります。」といって、具体的にこういう危険があるということが認定された場合には交付しないことができる、発給しないことができるということになっておるのであって、これを愛知外務大臣がこの国会で答弁されているように、時の佐藤内閣の外交政策を基準にして、憲法二十二条の二項で保障されている渡航の自由の権限を制限されるべきでないということは、この立法の当時の法務総裁の答弁からも言えると思うのですよ。こういう点でもいろいろな点がありますけれども、何も百八十度外交政策を転換しないにしても、こういう点をあなたの今度の経験をくんで改善される意思があるかどうか、その点をお聞きしたいと思うのですよ。
#46
○愛知国務大臣 この問題については何べんも御議論があるところでございますけれども、国益を害する行為といえば、ただいま御引用になりました当時の意見ももちろんでございますけれども、国益というものの中にはやはり私は外交政策の基本になるようなもの、あるいは経済政策、文教政策というものも私は国益の中に含まれると思うのです。しかしこれはしばしば御説明いたしましたように、「著しく且つ直接に」というような法文が明らかでありますので、またその裁量権を行使する場合におきましては、外務大臣としては法務大臣に協議しなければならないということで押えがきいているというようなことがありまして、これを活用といいますか、アプライいたします場合には、これは非常に慎重に扱わなければならないというのが私は法の趣旨であろうと思うのです。そこで、先ほども松本さんの御質問にもお答えいたしましたように、これを援用いたしますような場合、そしてどうしても旅券を発給できないというような場合には、これはその申請者もよく納得していただけるような十分な説明が必要だ。結果においてはあるいは御納得を得られないこともあるかもしれませんけれども、しかし政府の態度としては十分御説明をし、そしてこの規定が援用されるようにするべきだ、私は法援用の政府の姿勢としてはそうでなければならない、かように考えておるわけでございます。
 そして先ほどの改善する気持ちはないかとおっしゃるわけですが、改善ということは、国益に立って改善をするということについては十分考える、かように申し上げたいのであります。
#47
○林(百)委員 国益の上に立って十分改善する意思ありというのは、慎重な愛知さんにしては一歩前進した答弁だ、そう思っておりますが、従来国会の論議を見ますと、愛知さんの朝鮮民主主義人民共和国に旅券を発行しない大きな理由は、まだ外交関係のない朝鮮民主主義人民共和国に日本人が行っても、一体生命の安全が保障されるかどうか、そういう文化的な、それから人命を尊重したり民主的な権利が保障されるような状態にあるのかどうか、それがわからない、その保障がないのに出せないと言っていたのです。それが非常に大きな理由だった。そればかりだと私は言いません、もちろん大韓民国との外交を配慮するという関係もありますけれども、もう一つの理由はそうだったわけですね。ところが、今度の日航事件でもう保利官房長官までが朝鮮民主主義人民共和国が人命に対して人道的に扱ったことを感謝すると言っているんでしょう。そしてさらに機長も、そして山村運輸政務次官も感謝しているということになれば、あなたがいままで朝鮮民主主義人民共和国へ旅券を交付しなかった大きな理由の一つはここではずされたんじゃないでしょうか。しかも、そういう面と、今度のような不慮の事態を解決する場合に、せめて人事交流なり何らかの政府が信頼できるような感触があそこにあれば、どんなによかったろう。これはもうあなたよく御存じになっていると思う。そういう意味で、この旅券の問題について改善をする、この問題についても従来よりは改善する意思があるかどうかということは、今度の改正といいますが、もちろん若干技術的に改善された面のあることは私否定いたしませんけれども、しかし、事末承認国、ことに朝鮮民主主義人民共和国に関する限りは、いままでもうわれわれ国会議員――国会議員も、さっき戸叶さんからも御質問がありましたけれども、平壌という旅券で、朝鮮民主主義人民共和国という国は認めないわけですね。ところが国会の論議を見ますと、北にもオーソリティーがあるということは言われている。オーソリティーがあるということを認めながら、旅券には平壌としか書いてない。それも国会議員の過去の実績からいうと十二名だけだ。あとは横すべりだ。横すべりは処罰される。処罰されるほかは旅券が出されないということになると、貿易関係の人はもう全然行けないことになるんじゃないでしょうか。ところが、貿易関係の荷物には平壌行きというような――荷物は行ける。しかし、商取引をする人間は行けないなんて、そんな不正常な関係ということはないわけなんです。これはどうしても改善しなければならない。私たち共産党は外務委員会に委員がなかったり、ましてや理事会にも出席もできませんでしたので、微妙な関係はわかりませんけれども、この前の国会では、北澤委員長から、政府からは「渡航の自由についても善意をもって措置するなどの発言があり、与野党理事がこれを確認いたしました。」ということもあるわけです。非常に政治的な配慮のある発言ですけれども、もう少し具体的にこの旅券問題で、朝鮮民主主義人民共和国との関係で、ことに貿易関係もありますので、どういう方向で改善しようとお考えになっているかということは、もしここで答弁でさましたら答弁していただけば、この事態にあたっての政府側の善意もまた朝鮮民主主義人民共和国へも伝わるじゃないかというように思うわけですが、どうでしょうか。あと一、二点お聞きして――なるべく政府側の感謝の意を、この際外交関係からいっても向こうに伝えるのが、これは国と国との間の正常な関係だと思って私は質問しているわけですから。
#48
○愛知国務大臣 人命を尊重して、今回の「よど号」事件に対してとられたる先方の措置に対しましては、私どももあらゆる機会に感謝の意を表明しているわけでございます。それからやはりいままで本件についてお世話になりました各ルートを通しまして、すでに昨日無事山村君一行が帰りました直後に、われわれのそういう謝意は伝達表明しておる次第でございます。そうして、この旅券の問題でございますが、ただいまもおあげになりましたように、私は昨年七月四日の当委員会の――前国会ではごさいましたけれども、当委員会における委員長、与野党理事の御相談の結果委員長から表明されました御意図に対しては、これを拳々服膺して実行に当たりますということをあらためて本国会におきましても表明をいたしておる次第でございます。先ほどもちょっと触れましたけれども、前国会当時の御審議の過程におきまして、たとえば貿易でありますとかあるいはスポーツでありますとかそういう関係がやはり善意をもって扱われなければならないというのが前国会当時の御審議の経過であると私は承知いたしておるわけでありまして、そういう点を十分尊重してまいりたいというのが今国会におきましても当初から私の表明しているところでありまして、かねがねさように考えておったところでございます。そういう方向でケース・バイ・ケースに慎重に扱わさせていただきたい、こういう感じで目下おるわけでございます。
 なお、何べんもくどいことを申すようでございますけれども、いずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって措置をいたしますというのが政府の基本方針でございまして、罰則に初めから触れるようなことをしなければ、そしてそれを黙認するようなことでなければ仕事ができない、純粋な仕事、商売上の用務が足せないというようなことをやろうとしてこの旅券法の改正をしているのでは毛頭ございませんということは繰り返して申し上げたいところでございます。
#49
○田中委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#50
○田中委員長 速記を始めて。
 林百郎君。
#51
○林(百)委員 大臣、いわゆる横すべりというのは使いたくないことばですけれども、横すべりする人も初めから何も横すべりを好んで行くわけじゃないので、もよりの領事館もないわけですし、そうかといって商売で、貿易で商機を逸してはたいへんなことになりますし、それから貿易自体はココムやいろいろあってこれまた国のチェックでちゃんとできることをやっているわけなんですから、この人たちが行って方針に従って貿易をするのに、貿易だけは許されるけれども人が行くことができないという、こういうことをしておくことがこれは問題なんで、さっき大臣の答弁を聞いていますと、何も初めからわなにかけるような処罰をしてそして旅券を出さないことを目的にして今度の法改正をしているのではないのだから、その点は従来のいきさつも十分配慮されるという意味だと思いますけれども、そういう政府の矛盾した政策のために、国益になるような貿易――私も朝鮮民主主義人民共和国へ行きましたけれども、すぐ日本海を渡って日本から買うことのできる機械やいろいろ文化的な生活必需品を、日本との貿易ができないために、わざわざドイツやイギリスやソ連の連中が行ってあそこで取引をしているというような状態です。もし日本との正常な貿易ができればあそこは非常に大きな貿易の拡大の対象になると思うのですけれども、そういう状態にあるということを考慮されてひとつ積極的な改善の方向を考えてしかるべきだと思うのです。
 時間がありませんので、あと二点ほどだけお聞きしておきますが、今度の日航機問題で政府は一貫して人道的見地を主張し、そしてこのことを朝鮮民主主義人民共和国にも間接的に要請していたわけですけれども、そうなるとやっぱりわがほうもまた在日朝鮮人の諸君に人道的な処置をとらなければ、在日朝鮮人の問題については別だ、日本人に関する限りは人道的な処置を共和国でとれといっても、これは無理な話だと思うのですね。人道問題中の人道問題というのはやはり在日朝鮮人の帰国問題、往来問題です。祖国を朝鮮民主主義人民共和国とみずから認めてそして祖国への人間的な往来をぜひ許してもらいたい、これはもう当然だと思うのです。祖国にいる両親や兄弟や身内に会いたい、会っても、生活の根拠は日本にあるのだから、長い間日本と朝鮮とのいろいろな関係で日本にあるのだから、また日本に帰してもらいたい、こういう在日朝鮮人の祖国との往来の問題があるわけですね。この点については人道主義的な立場から外務大臣はどういうお考えを持っているのでしょうか。
#52
○愛知国務大臣 いわゆる墓参り問題についても、政府としては人道的立場に立って従来処理をいたしましたことは御承知のとおりでございます。
 それから北鮮帰還の問題につきましても、経過は御承知のとおりと思いますけれども、一万五千人ですか一万七千人でございますか、すでに申請しておる人たちに対して赤十字を通してその前にできておりました協定に準じて送還をするということについては、政府としては異論は全然ございません。ただ、その後どうするかというような将来の問題について、その手続等について赤十字間の話し合いがまだ十分にない。そこでとりあえずそれでは一万五千人余りの方々にだけでも早くお帰りを願ったらいかがかというような考え方と、いやその後のことまでもこの際きめておきたいというようなお考えとの間で若干の話の煮詰まりがまだできていないというのが、お願いをした政府として赤十字間のお話し合いが決着がつくことを期待しておるのが現状でございますから、そういう点につきましてもなお十分に考慮してまいりたいと思っております。
#53
○林(百)委員 時間がありませんので、大臣ちょっとメモしていただいて、あと二点ほどですから。
 そうすると在日朝鮮人の帰国問題は、いままで申請していた一万余人の人については直ちに祖国へ帰ることについては政府も同意するということにお聞きしていいのでしょうか。そしてそれはあらためて交渉を再開――いまのところ途絶している状態ですから、赤十字社を通ずるなり何なりして交渉を再開される意思なのかどうか、それが一つと、それからこれは他の同僚委員からも質問がありましたが、スポーツの交流、学術団体、科学者、新聞記者の往来、それから向こうから来れば万博の参観に来るというような問題、スポーツ交流、学術団体、科学者、新聞記者の渡航の問題ですね。今度はあまり新聞関係がなくて非常に苦労されたわけですけれども、赤旗の記者が一人いましたけれども、それだけでたいへん苦労されたわけですけれども、これについて改善する意思がありますか。いまの問題で具体的に答弁願いたいと思います。
#54
○愛知国務大臣 北鮮送還問題については先ほど申し上げたとおりでございまして、これは人数は私申しましたのは不正確かもしれません。これは申請を受け付けておりました日赤のほうが正確でございますから何でございますが、大体一万五千人余りだと思いますが、この方々についてはもう政府としては異存はないのでございます。赤十字においてももちろんでございますが、その一万五千人を送還したあとの取りきめをどうするか。これは先ほど率直に申しましたように、この一万五千人がいつ、どういうふうな形でなりますか、それはその後の状況でまた考え直すといいますか、両方で御相談していいんじゃないか。ところがそこのところの何か手続の問題で赤十字間の話がちょっととだえているように私承知しておりますが、これは先ほど申しましたように、まず一万五千人余りのすでに話し合いがまとまっておるところを実行に移す、そして別にその後のことは御協議をするということで進めたらばいいのではないかと、私はただいま考えておるわけでございます。
 それからその次の、前国会の当時スポーツとそれから経済関係については、できるだけケース・バイ・ケースに処理をしていきましょうというようなお話し合いと申しましょうか、そういうふうな御相談ができておりましたことは事実でございます。
 その他の点についてはなお今後の検討にまかせたいと思っております。
#55
○林(百)委員 これで終わりますが、そうすると学術団体、科学者、新聞記者の諸君の交流というのもケース・バイ・ケースにも入らないのですか。それはケース。バイ・ケースには入るが、なお慎重に考慮するという意味なのか。そこのところが一点と、それから最後に、朝鮮民主主義人民共和国との友好を目的とする、今度も共和国との友好関係が全然なかったことから一そう複雑かつ困難な事態が発生したわけですから、その友好関係を目的とする渡航は、私が言うとおり、百八十度転換しろとはいわないけれども、前進した方向で考えるかどうか。要するに学術団体、科学者、新聞記者の諸君については、ケース・バイ・ケースで考えるというのか。ケース・バイ・ケースの部類にも入らないのか。この前は経済団体やスポーツ団体のことを、前国会ではそれはケース・バイ・ケースと言いましたけれども、この学術団体、科学者、記者関係の人たちはケース・バイ・ケースでやはり考えられるのかどうか。ケース・バイ・ケースというのは実質的には拒否するという意味ではないと思いますけれども、ケース・バイ・ケースという巧みなことばで実際は拒否するということなのか、もちろんそうでないと私たちは解釈しますが、その点はどうか。友好親善を目的とする渡航は時の政府の一時的な政治的な基準で、憲法で保障されておる渡航の自由が制限されるべきでもないし、また立法の趣旨からいっても著しく国益に反するというのは、具体的な内乱だとか、外患だとか、そういうものに反するという場合はそれは公共の福祉というようなことで制限できるが、時の政府の一時的な政治的な利害で憲法で保障されている国民の利益が制限されるべきでないという立場から、友好を目的とする渡航は許されるかどうか。この点を聞きまして私の質問を終わりたいと思います。
#56
○愛知国務大臣 ケース・バイ・ケースというのはこの旅券法のたてまえから申しまして、いわば一件ずつの審査という意味をも含めて申しておるわけでございます。
 ただいまおことばの中にスポーツ、経済団体あるいは友好親善団体、友好親善団体というようなことになってまいりますと、よほどこれは慎重に考えて取り扱わせていただかないとならぬのではなかろうかと考えますけれども、これらの点について、慎重に、真剣に、検討してまいりたいと思います。要するに、ケース・バイ・ケース、旅券というのはその人に属する問題でございますから、そういう意味をも含めましてケース・バイ・ケース、こういうふうに扱うべきものだと考えております。
#57
○田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる八日、午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
   午後四時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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