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1970/07/15 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第18号
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1970/07/15 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第18号

#1
第063回国会 外務委員会 第18号
昭和四十五年七月十五日(水曜日)
    午後三時三分開議
 出席委員
   委員長 田中 榮一君
   理事 青木 正久君 理事 田中 六助君
   理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君
   理事 大久保直彦君 理事 曽祢  益君
      池田正之輔君    石井  一君
      鯨岡 兵輔君    小坂徳三郎君
      野田 武夫君    福田 篤泰君
      村田敬次郎君    豊  永光君
      加藤 清二君    堂森 芳夫君
      中川 嘉美君    松本 善明君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
 委員外の出席者
        外務政務次官  竹内 黎一君
        外務大臣官房長 佐藤 正二君
        外務大臣官房国
        際資料部長   鈴木  孝君
        外務大臣官房領
        事移住部長   遠藤 又男君
        外務省アジア局
        長       須之部量三君
        外務省アメリカ
        局外務参事官  大河原良雄君
        外務省条約局長 井川 克一君
        外務省条約局外
        務参事官    山崎 敏夫君
        外務委員会調査
        室長      吉岡 俊夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十四日
 辞任         補欠選任
  不破 哲三君     松本 善明君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
#2
○田中委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
#3
○戸叶委員 最近国際情勢がいろいろ動いておりまして、問題がたくさんありますので、いろいろ御質問したいこともございますが、時間がたいへん限られておりますから、ごく一点にしぼって短く質問させていただきたいと思います。
 そこで、第一にお伺いしたいのは、五月の初めにカンボジアに対しましてアメリカの軍事介入があったわけですが、それがいろいろ変動してきておりますが、今日のカンボジアの情勢というものに対して、日本の外務大臣として、どういうふうな情勢になっているか、こういう点についてまずお伺いしたいと思います。
#4
○愛知国務大臣 カンボジアの情勢につきましては、政府としても非常に重大な関心を持って見続けているわけでございますが、一口に言えばきわめて流動的であって、にわかに断定的にこうなるであろうという予測を下すのにはちょっとまだ材料不足と申しましょうか、きわめて流動的であるという程度にしかお答えができないというふうに存ずる次第でございます。
#5
○戸叶委員 そのことは結局ロン・ノル政権との関係もあると思いますが、愛知外務大臣がさきごろASPACに行かれたころ、聞くところによりますと、あの地域の大使、力石大使などの報告では、ロン・ノル政権がたいへんに安定をしている政権であるというふうに非常に楽観的に考えていたけれども、最近はそういうふうな考え方が変わってきた、楽観的に考えられない。今日のロン・ノル政権というものに対して、いろいろな不安感といいますか、そこまで言い切れるかどうかわかりませんが、ロン・ノル政権に対してかつて外務大臣に報告されたような情勢とは変わってきているというふうにも聞いておりますけれども、外務大臣としてこのロン・ノル政権というものに対してはどういうふうなお考えをお持ちになっていらっしゃるか、第二に伺いたいと思います。
#6
○愛知国務大臣 いまも申しましたように、一口に言えば非常に流動的でございますから、ある時点ある時点において正確に情勢を把握しようと思いますとなかなか困難であると同時に、その情勢の見方につきましても、できるだけ客観的に誠実に捕捉しようとすると、その時点その時点で観察が違ってくるのも私はやむを得ないところじゃないかと思っております。現在私がどう見ているかというお尋ねでございますけれども、ロン・ノル政権としてはやはり依然としていろいろの困難な条件をかかえている、ことに経済的その他の面におきましてもかなり困難な条件に当面しているということがいえるのではないかと思いますが、七月の一日でございましたか内閣改造をやりまして、ロン・ノル政権自体としても積極的に内政の改善に取り組む姿勢と努力は非常に続けていると、こういうふうに承知しております。
#7
○戸叶委員 外務大臣も半ばお認めのように、なかなかロン・ノル政権もこの流動的なカンボジアの情勢の中にあって苦しい立場に置かれている、たとえば時点時点でいろいろ変わっている、しかし改造によって少しずつ強化しようと努力をしているという点をお認めになっているようでありますが、先ごろの新聞によりますと何か相当有力な閣僚級の人がロン・ノル政権からいわゆるシアヌーク殿下のいられるパリで合流をしたというようなことも出ておりまして、なかなか容易ならぬ政治情勢にきつつあるのではないかと、まあ私どもはたいへんに心配しているわけでございます。
 かてて加えて私どもがたいへん危惧いたしますのは、先ごろのアジア会議を開きましたときに、インドネシアがイニシアをとりまして、そして日本も主要メンバーの一つとなり、そして幹事役を仰せつかってあの会議を開いたわけでございます。その会議の目的というのはやはりあくまでもカンボジアを中立の状態に置くべきだ、こういうふうなお考えでこれに臨まれたと思うわけでございますが、最近の報道等によりますとどうもインドネシアが軍事的な援助をするというようなこともいわれているようでありますし、タイも軍事的な援助をしたいというようなことがいわれておりますけれども、こういう点に対しまして外務大臣としては、あのときの会議の内容と少し違うんじゃないかということで、いろいろやはり考えられるところがあると思いますが、この点についてはどういうふうに解釈をしたらよろしいか、この点をまず伺いたいと思います。
#8
○愛知国務大臣 政府としてジャカルタのいわゆるアジア会議に臨んだ姿勢や意見はただいまお述べになったところでございます。参加国が、いろいろの経緯や背景は別といたしまして、結論として日本政府の考え方にコンセンサスができましたことは、私としても喜んだ次第でございます。
 その後の状況について御懸念の点につきましては、私もやはり当事者といたしまして重大な関心を払い続けております。その中で具体的にインドネシアとタイのことについてお尋ねがございましたが、インドネシアはあの会議の主催国という立場をとった関係もありますし、また三つの幹事国の一つでもございますから、あのコンセンサス、決議に忠実な行動をその後も続けておりますので、軍事的な援助とか協力をするということは考えられませんし、事実もさような動きはございません。
 それからタイにつきましても、常に情勢の推移に政府としても注目をいたしておりますけれども、タイ国といたしましての基本姿勢もそれにはずれているとは私は考えておりませんが、なお今後とも十分注視してまいりたいと思っております。タイ国といたしましては、たとえば一時カンボジア領内に爆撃を開始したという報道が流れましたけれども、これはタイ政府として公式にこの点を全面的に否定を声明いたしておりますことは御承知のとおりでございます。
 それからカンボジアの血を持っているといいますか、カンボジア系のタイ国民と申しますか、そういう人たちが母国であるカンボジアの自衛のために祖国を守るというような動きに対して、これを消極的に助けたということはございますようですけれども、タイの軍隊として国境を越えてカンボジアに侵入するというようなことはしない、こういう状況が今日の状況でございます。ただ率直に言えば、何しろ国境を接しておりますし、それからいま申しましたように、国境を前提にしても、タイ国内にカンボジア系統の国民が相当おりますし、また、したがって国境の紛争状態あるいは危険な状態があれば、これは地理的に考えても特殊の状況であって、ある点については関係国あるいはアジア会議に参加している国々も同情をもって見なければならない性質の状況もあり得るのじゃないだろうか、こういうふうに見ておりますけれども、幸いにしてタイ国軍として行動をしたということは、爆撃も含めてタイ国政府としてはこれを否定しているわけでございますから、その限りにおいて、現状においてはアジア会議のコンセンサスの線を守っているもの、かように考えております。
#9
○戸叶委員 いま外務大臣の御答弁を伺っておりますと、たとえばインドネシアの軍事的な介入ということもないだろうし、そしてまたタイも軍事的な介入に対しては軍隊援助ということに対しては否定をされておられる、こういうことでございますが、私どもが報道を通して知る範囲内におきましては、すでに軍隊を派遣したとかあるいは軍事訓練をインドネシアのほうでしているとか、こういったいろいろな情報が入ってきているわけでございます。したがいまして、外務大臣のいまおっしゃったことがはたしてそのとおり受け取っていいものかどうか、少し信じられない面もいろいろあるわけでございますけれども、そういうことがないとかりにいたしましても、これからの戦争状態によっては、あるいは軍事援助をせざるを得ないような形になるのじゃないかということも私ども心配をいたします。ことに、タイの外務大臣がカンボジア、タイ、ラオスの三国で軍事的な協力をしなければならないというようなことを発言しているということを聞きますと、どうもこれはアジア会議の趣旨に反するものではないか、ここで日本の政府としても、アジア会議の目的と反することとしてやはり何か態度を考えていかなければならないのじゃないか。いままでの和平にもっていこうとするその努力が実らないことになるのであり、そのアジア会議の目的というものが達せられない方向にいくとすれば、日本政府もこの辺でアジア会議の幹事役をつとめた国として何らかの方向を新しく出さなければならないのじゃないか、こういうことも感じられるわけでございますが、この点について外務大臣はどう判断をされるでございましょうか。
#10
○愛知国務大臣 政府としては、申すまでもないところでありますけれども、カンボジアの問題については、アジア会議の決議に明確にされているように、カンボジアの独立、中立、領土保全、内政不干渉、外国軍隊の撤退、そしてせっかく、十六年前ではありますけれども、ジュネーブ・アコードというものができているわけですから、それに戻って、またICCもその使命を自覚して活動を再開してくれるようにということで、詳しくは申す必要もないと思いますけれども、いわゆる三特使が共同してでき得る限り関係国に対して、その趣旨とその趣旨に従う行動を要請して行脚をいたしましたことは御承知のとおりでございます。その努力は今後も引き続き続けていきたい、かように考えておりますし、またせっかく参加した国国がその決議に反したりあるいは疑いを受けるような行動は望ましくないわけでございますから、先ほども申しましたように、自国の安全とか国境を越えての自衛というものは、特殊の、一国としてやむを得ないことがあれば格別でございますけれども、カンボジアの平和的な処理ということについては志を同じゅうしてあくまでもこの趣旨が貫徹できるようにしてもらうように、この上ともに政府としては努力を続けていきたい、かように存じております。
#11
○戸叶委員 いまおっしゃった中でも、たとえば自国の自衛というような形で兵をカンボジアに出すということも考えられないでもないじゃないか、それが拡大していくのじゃないかということも私どもは懸念をいたします。したがって外務大臣に、そういうふうな私たちだれもが見て、兵を出したというようなことがないような、あくまでもあのアジア会議が保たれるような形に日本としても絶えず忠告をしていっていただきたい。またこの問題についてはもう少し伺いたくもありますけれども、時間がありませんのでこの辺で打ち切りますが、そういう態度をもって、あくまでもあのときの態度を堅持していっていただかなければ困ると思います。実際問題として、いま私ども知っている範囲では、いま外務大臣のおっしゃったような自衛という判断でいっているかもしれませんけれども、たいへんに心配な面がいろいろあるわけですから、もう一度チェックし直していただきたい。これを一つ要望をいたします。
 そこで次にお伺いしたいのは、新聞報道等によりましてもカンボジア地域で捕虜になっている人たちがいるといわれております。報道によりますと八人くらいいるといわれておりますが、この人たちの生存ということは明らかにされているかどうか。もう一つは、こういう人たちに対して日本の政府としてはどういうふうなことをしておられるか、カンボジアに対して手だてとしてどういうことをやっていられるか、この点をまずお伺いしたいと思います。
#12
○愛知国務大臣 非常に不幸な状況に遭遇した方方に対して、政府としてもできるだけのことは、
 一刻も早くその消息を掌握することはもちろんでありますが、救援をいたさなければならない。あらゆる考え得る方策をとっている次第でございますが、この機会にこれまでの状況を申しますと、三月のクーデター以来、現在までカンボジアにおいて不幸にして現地合弁企業の邦人職員が一人異賊によって殺害をされました。それから邦人関係の報道関係者七名、現地の日本人経営の農場の従業員一名、計八名の邦人が行くえ不明になっております。これらの行くえ不明になっておられる邦人の消息については、あらゆる方策を講じておりまげれども、まことに遺憾でございますが、消息は依然として判明いたしておりません。で、その後も今日あるいは今後におきましてもできるだけ、先ほど申しましたように万全の措置を講じており、また続けなければならないわけでございますので、たとえば北越あるいは解放戦線に対しましても、直接間接のルートを通じて、安否の確認はもとより早期の釈放について努力を続けております。この努力の内容等につきましては機微にわたるところもございますので、あまりそのルート、方法それから場所等につきましてはちょっとここで詳細に申し上げることを御遠慮させていただきたいと思いますが、事柄は人命に関することで、相当の数の方々でもございますから、政府といたしましてもなし得る限りの方途を講じておるということを申し上げるにとどめておきたいと思っております。
#13
○戸叶委員 たいへん不幸に行くえ不明になられた方々に対しては日本の政府としてもあらゆる手段を通していろいろ御努力になっておられるようでございまして、ぜひともそれをさらにお続けになってそういう方たちが早く帰されるようにしていただきたいと思いますが、それにつけましてもこういうふうな不安な状態に置かれておるわけでございますので、やはりそこにはいろいろ問題があろうと思います。で、こうした不安な状態にあり、さらに外務大臣が先ほどお話しになりましたように、カンボジアの状況がたいへん流動的である、こういうふうにおっしゃいましたこともあり、さらにまたプノンペンの近くにあるコンポンスプーが一時占拠されて、また解放されるというようなことでいろいろ問題があるわけでございますが、これに対しまして現地のそういった状態をいろいろ把握してそして現地の情勢を判断して、大使がこの際日本に一応引き揚げてくるべきではないかというので、外務省のほうに引き揚げの請訓をしたということを聞いておりますけれども、こういうことはあったのかなかったのかまずお伺いしたい。もしそういう請訓があったとすれば、どういうふうな内容のものであったかをお伺いしたいと思います。
#14
○愛知国務大臣 カンボジア在留の邦人の方々については、政変以来、政府としても至大な関心を払っているわけでございます。ことにただいまもまことに遺憾でございますが、八人の方々がこういう状況下に置かれている、こういう関係もございますので、三月の政変以来単なる一回の請訓とか訓令とかいうのではございませんで、毎日のように連絡を密にいたしております。また、きわめて最近におきましても、本省からも参事官を派遣いたしまして、あるいは現場あるいはその周辺におきまして、外務省の幹部か大使、あるいはその他の人とも連携をとって会談もいたしております。それから、私自身といたしましても、あるいは香港に、あるいはバンコクに用向きがあっておもむきます当時、力石大使を招致いたしまして万全を期しておるつもりでございます。
 詳しくは、お求めによりましてはこれらの点について御説明いたすべきでありますが、概略を申し上げますと、カンボジアの状況は流動的でございますから、できるだけ邦人の方々については身軽になっていていただきたい。つまり政変の当時は約二百五十名の方々がおられたわけでございますが、七月十三日現在で申しますと、プレクトノットの工事の関係の残務整理中の方が十四名、報道関係者十七名を含めまして、大使館その他の要員を合わせて六十一名でございます。つまり二百五十名から六十一名までに減っておるわけでございます。そしてさらに、これは御案内のように、従来これに準ずるような経験もあるわけでございますが、退去命令というようなものは出し得ないわけでございますから、御本人あるいは御本人の所属しておられまする機関等とも御相談をいたしまして、やはり流動的で、どういう状況が起こるともわかりませんから、できるならば未然に危険を防止する意味で、近隣の諸国、諸都市に一時避退しておくか、あるいはしばらく余裕を見て御帰国願うかというようなことについて、個人個人についての御相談に乗って、そしていま申しましたような結果になっておりますが、さらに私の率直な意見を申し上げますと、もう少し減っておいていただいたほうが、いわば身軽になれるわけでございます。
 それから同時に今回の場合の特色は、日本はあらゆる意味で参戦国でもございませんし、それからたとえば軍用機その他の便益というものも全然持っておりませんから、昔のたとえば北清事変当時の籠城とかなんとかいうこともちょっと考えられないわけでございますから、そういう感覚で今回の問題を取り上げることは私は不適当だと思います。したがいまして、日本は特殊の環境と国情を持っておりますだけに、どうしても必要な要務、たとえば大使館などは私は残らなければならないと思います。しかしそういう場合におきましても、たとえばサイゴンとかあるいはバンコクとかいうところは距離的に見れば比較的近いところでございますから、何どきでも万難を排して、万一の場合に避退し得るだけの用意はいたしておくことが必要である、またこれをわれわれとしてあらかじめ講じておくことはわれわれの責任である、かように考えておりますので、それらの点につきましては、十分、ただいまなし得る限りの準備といいますか体制といいますか、これをとることに腐心いたしておるわけでございます。ただ、これも事柄が事柄でございますから、いかようにしてこうこうやるのかということについては、いましばらくひとつ、内容の具体的なこまかい点は御説明をごかんべんさせていただきたい。
#15
○戸叶委員 私あと四分しか時間がないですから、まとめて質問をいたします。
 いまの外務大臣のお話を伺いますと、日本は特殊な事情やいろいろあるから、いざというときには近くの国で事務のとれるようなことなども考えながら、いろいろ万全を期していきたい、こういうことでございましたが、力石大使のほうからも、おそらくそういったいろいろな事情について本省に請訓してきているというふうに私どもも考えているわけです。またそういうふうに聞いておりますけれども、そこでかつての北京、済南、通州事件というようなこともあったわけですから、そういうふうな目にあわないために大使としても包括的な権限といいますか、自分が適当に、このときには問題が重大だから近くどこかへ避難するといってはおかしいですが、移って事務をとる、こういうふうな権限を力石大使にお与えになっていられるか、そういうことをお許しになっておられるか、認められているかどうかということが第一点。
 それからそういうふうな認められたときにはどこかで事務をとるということもあり得るじゃないか。こういうふうな二つの問題についてはっきりと力石大使と御連絡をされているかどうかということをこの際伺っておきたい。
 それからもう一つは、だんだん在留邦人もいなくなってきた――退去命令はこれはできないと思います。しかし大使館のほうでこれは危険があってはいけないから、人命の問題だから帰ったほうがいいというようなある程度の命令的なものといいますか、お帰りになったほうがいいですよ、というふうなものが出れば、やはりみんな帰らざるを得ないと思うのですが、そういうふうなこともすべて含めた包括的な権限というものを力石大使にお与えになっていらっしゃるかどうか、この点を念のために伺っておきませんと、飛行場が閉鎖されてしまいますと、日本では迎えに行くすべもありませんし、ほかの国の大使館等と違いますから、この点をはっきりさせておいていただきたい、これが私の最後の質問でございます。
#16
○愛知国務大臣 ただいま申しましたように、これは率直に言わしていただきたいのですが、これ以上ないと思うくらい十分に大使とは連絡をとっております。そうしてそういう意味合いにおきまして、いざという場合の全権は一任してございます。というのは、いかに連係をよくとっておりましても、万一と思われるような場合には、電話の通信も途絶することを覚悟しなければなりません。それからその危険の度合いの判定も現場でなければ判定できませんから、そして同時にそういうときの人命の保護というものは絶対に必要でございますから、ただ一任しただけでは私どもの責任は貫徹できませんから、そういう場合に絶対に安全に避退し得るように、しかも日本は特殊の立場におりますから、たとえば軍用機一機持っているわけではございません。そういう特殊の環境でございますから、これらの人々が最後まで十二分に任務を果たし、かつ生還を期し得るように、万一の場合に対する十分の用意はいたしております。同時に、先ほどもるる申し上げましたように、情勢は流動的でございますから、私はそんな危険な状態にあるのかということをコミットして申し上げているわけではございません。そういう事態のこないことを私は可能性としては信じておりますけれども、やはり貴重な人命の問題ですから、そういうふうな万全の用意は十分にしておるつもりであります。
#17
○戸叶委員 それではもう一つだけ。
 それでは、グァテマラでドイツの大使が殺されましたね。あのときには日本でもたしか外務省のほうで、そういうような緊急事態が起きたときには、人命の尊重という意味から近くで、移って事務をとってもいいというような命令をお出しになったと思いますが、まだそういうふうなところまでは外務大臣としてはきておらないわけですか。この点をちょっとお伺いしておきたい。
#18
○愛知国務大臣 そこは事柄が事柄でございますから、こちらのコントロールのきかない状況に――にわかに判定を白、黒と申し上ぐべき筋合いのものではございませんから、グァテマラと比べてどっちがどうということは、私もお答えしにくいと思います。それぞれの状況下において万全と思われる措置をとってまいりたい、かような次第です。
#19
○田中委員長 大久保直彦君。
#20
○大久保(直)委員 時間がございませんので、はしょってお伺いをいたしますが、最近海洋開発の研究の進展に伴いまして大陸だなの問題が脚光を浴びているわけでございますけれども、大陸だなの問題は、日本のみならず国際的にいろいろ紛糾を含む問題としていま話題になっているわけでございます。一九五八年の国連のジュネーブ会議で大陸だな条約というものが採択され、六四年からその効力を発しているわけでございますけれども、わが国、それからドイツ、ベルギーが生物資源の問題についてこの条約には反対をしておるわけでございますが、最近世界的にも加盟国が漸増しているという現状にかんがみまして、なぜ日本がこの条約に加盟をしないのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
#21
○愛知国務大臣 これは詳しく御説明をいたしますと長い時間がかかるかと思いますので、簡単にお答えしたいと思いますけれども、要するに大陸だな条約に加盟するかどうかという、そして日本が加盟してないことの最大の根拠というものは、大陸だなの資源についての主権的な権利というものの帰属をどう考えるべきかということであって、政府といたしましては日本の国益ということからいいまして、大陸だな条約に現在のところ入らないのが国益を守るゆえんである、こういう立場に立脚しているわけでございます。幸いにしてと申しますか、わが国と同じような立場に立っておりまする西ドイツの主張に対して、たまたま国際司法裁判所が昨年北海大陸だなの事件の判決というものを出しましたが、これは日本政府の立場と同じような立場、見解に対して勝訴の判決をしているというようなことは、国際的に見まして大陸だな条約に入っていない日本政府の立場というものが少なくとも国際司法裁判所の判決において支持を受けたというくらいで、国際的にこれはいろいろな議論がある問題である、こういうことは私はいえると思います。そういう観点から政府のただいまの立場といたしましては、大陸だな条約に加入することは適当でないという従来からの見解をいまだに続けておるわけでございます。
#22
○大久保(直)委員 大陸だなの問題につきましては、国際慣例が非常に適用されるわけでございますけれども、この国際慣例が適用されるという場合について、入った場合と入らない場合の相違といいますか、差別といいますか、それはどの点を見ていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
#23
○愛知国務大臣 これもいろいろの点から利害得失を比較検討して十分御意見を伺い、また意見を交換することが必要だと思いますけれども、一口に申しますと、ただいままでのところでは、大陸だな条約に加盟しておらぬことが国益を害しているというような事例は出ていない、かように存じております。
#24
○大久保(直)委員 先ほど大臣がドイツの未加盟の問題を取り上げられましたけれども、私がこれから伺いたいと思う韓国との問題につきまして――韓国も日本と同じような立場でこの大陸だな条約には加盟をしていないわけでございます。そういう意味では日本と全くイーブンの関係にあるといえると思うのでございますが、最近韓国が政令で新たな鉱区を設定してかなり東シナ海に張り出してきておりますが、これを政府としてはどのように考えていらっしゃるのか。
#25
○愛知国務大臣 これも率直にお答えいたすのでございますが、まことに困った問題であると思っております。これは五月三十日でございましたが、韓国が公布いたしました海底鉱物資源法施行令というもので定められておりまする海底鉱区のあるものは、日本側の鉱区とかなり重複しているわけでございます。そういうことで、韓国の考え方あるいは主張あるいはとりたる措置というものが日本側として困った問題である、かように考えておるわけでございまして、この点についてはただいま御質問の範囲外になるかと思いますが、従来からこういうことが察知されましたものでありますから、日本政府といたしましてはしかるべく韓国側に対して注意を喚起し、あるいはその他いろいろの方法で接触をいたしておるようなわけでございますが、ともかくしかし韓国側としてこういう措置がとられたことは困ったことである、かように存じております。
#26
○大久保(直)委員 念のためにお伺いしておきますのですが、今月の二十一日から日韓の定例閣僚会議が予定されておりますけれども、その閣僚会議におけるいわゆる外務省関係の議題と申しますか、話し合いのテーマ、こういったものはもうすでに決定をされておりますか。
#27
○愛知国務大臣 実はこの日韓会談につきましては、これも一年一回の大事な会議でございますので、明後日でございますか、金曜日に、出席六閣僚が、総理の出席も願いまして、十分打ち合わせまして、これはあるいは一回では済まないかもしれませんけれども、そこで十分先方側の希望しておる協議いたしたい議題とにらみ合わせまして、日韓両方で合意する議題並びにその進め方について十分協議したいと思っております。したがって、ただいまの段階で申し上げられますことは、まだきまっておりませんけれども、六人そろっての全体会議と個別会談と両方を予定いたしまして、全般的には経済問題、その中には貿易不均衡是正の問題あるいは韓国に対する日本側の協力の先方からの要請や希望、こういうことが全体会議としては問題の大きなものと思います。個別会談の中では、たとえば外務大臣といたしましては外務部長官と国際情勢、極東情勢その他等々の協議も十分にいたしたいと考えておる次第でございます。いずれこれは十七日以降二十日までの間に善ちっときめたいと思っております。
#28
○大久保(直)委員 再び海底鉱区の問題に戻りたいと思うのですが、伝えられるところによりますと、今秋からこの鉱区の調整についての話し合いを始められる、こういうふうに伺っておりますが、内容的には非常に国民感情もさることながら、技術的にもまた法律的にも多難な問題が多々あると思うのですけれども、いまの見通しでは、日本側の準備等も含めましていつごろからこの鉱区の調整の交渉が始められるか、もしおよその見当でもつけばお伺いしておきたいと思います。
#29
○愛知国務大臣 実はこの大陸だなの問題につきましては、ただいま申しましたように、相当前から日本政府としては重大な関心を持っておりますので、最近のところを申し上げますと、六月の十九日、先月でございますが、在韓大使館を通じましてこの問題についての話し合いを申し入れているわけでございまして、これはただいまも御指摘ありましたように非常にむずかしい問題でもございますし、また法律的、条約的その他いろいろの角度から検討を、双方冷静にじっくり落ちついて意見交換をする必要があると思いますので、この件についてはいま少し両国の専門家同士と申しますか、そういうところで相当の程度煮詰め、自由な意見の交換をやって、その上でしかるべき解決の方途を求めたい、私はこう考えておりますので、ただいま日韓会談のお話も出ましたけれども、まだ日韓会談というような、ある意味におきましては最高のレベルの、閣僚レベルの話し合いにいますぐこれを取り上げるということは、いまのところまだ機が熟さないのじゃないか、こういうふうに考えておりますが、問題は、取り上げようによりましては非常に複雑多岐にわたる問題でもございますので、いま少し冷静で専門的な、いわばクワイエット・ディプロマシーの交渉の問題ではないだろうか、こういうふうに考えております。
#30
○大久保(直)委員 ただいまの御答弁の中で、長い間折衝を重ねてこられたということでございますけれども、この相手先は向こうの外務部もしくは商工部ではないかと思うのですけれども、そのクワイエットに話し合ういままでのプロセスの中において、向こうの態度といいますか、表面的な辞令だけ見ておりますと、かなり強硬なことを言っているように受け取るのですけれども、向こうの態度についてはどんな感触を持っていらっしゃるのか、その点をお伺いしたいと思います。
#31
○愛知国務大臣 先方の感触を申し上げますと、先ほど私が困った問題だと申しましたところに含めて申し上げたつもりでございますが、先方としてはもちろん問題が日本、あるいはその他の国にも関連があるかもしれません。これはまだ申し上げるべき時期でもないかと思いますけれども、先方としてもこれはなかなかの大きな問題だということは私は承知しているように見受けております。
 それから同時に、日本側といたしましても、これはやはり関係各省がずいぶんたくさんあるわけでございます。関係各省の間との意見の調整も現在、まあ私は十分といってよろしいかと思いますが、十分事務レベルでは意見の交換をいたしております。
#32
○大久保(直)委員 時間がありませんので最後にお伺いいたしますが、先ほどの西ドイツに対する判例は私たちの日本にとっては非常に有利な判例であると思っておりましたのですが、これは同時に韓国にも同じようなことがいえる、こういうことで非常に困った問題だと思っているわけでございますけれども、この大陸だな問題はひとえに大陸だなの水深、その国を取り巻く海底の様相といいますか地形というのですか、それに大いに関係があって非常に複雑な問題であるというふうに認識いたしておりますが、一九六五年にイギリスとノルウェーとの間に同じような問題が起きまして、ノルウェーのいわゆる沿岸が水深が二百メートル以上のいわゆる深いところに囲まれているわけでございますが、こういったノルウェー側の事情であるにもかかわらず、イギリスとの円満な話し合いでその国際慣例にのっとってイギリスとノルウェーの中間でいわゆるボーダーラインを引いた、こういった事例もあるわけでございますけれども、時間もありませんので、この大陸だなの問題は日本の国益という立場から、特に日本は大陸だながないわけでございますので、東シナ海、問題になっておりますこの大陸だながどうなるかということは、日本の将来にとってもたいへんな問題である。どうか技術的また科学的な研究を重ねられた上で公正の原理にのっとった上でこれからの交渉をぜひとも強力に進めていただきたい、このことを要望いたしまして私の質問を終わらせたいと思います。
#33
○愛知国務大臣 ただいまの御要望はまことにごもっともでございますので、先ほど申しましたようにまずただいまのところは冷静に法制的、技術的その他の観点からわれわれの考え方が十分韓国側にも理解ができるように、そして相互の円満な妥結と申しますとあるいは不適当かもしれませんけれども、円満な処理ができますように十分の努力をいたしたいと考えております。
#34
○田中委員長 曽祢益君。
#35
○曽祢委員 非常に短い時間しかないのは非常に遺憾ですけれども、外務大臣にぜひ、一月に一ぺんくらいしかできない外務委員会でありまするから、時間を差し繰っていただいて、少なくとも重要案件山積のときに一時間しか出られないということでは、これは結局議会軽視になると思いますね、結果的に。そういうことのないように、ひとつこの次からぜひ三時間ぐらいの時間を繰り合わしていただきたい。外務委員のほうでも繰り合わしたいと思いますから。このことを最初に要望しておきます。
 いささか前のことでありますけれども、重要な問題として、日米繊維交渉が決裂した。このことは、わが国の将来に非常に大きな問題を投げかけていると思います。日米関係の将来は非常に重大な問題をかかえていると思います。したがって、愛知外務大臣はちょうどアメリカに行っておられまして、宮澤通産大臣の最後のぎりぎりの折衝のときにも、いろいろ詳しい事情の協議にあずかっておられると思います。
 まず、その決裂の最後の真相といいますか、一年の暫定的な協定、それが最後の段階になって、総理大臣から訓令が、二年になってもいいというようなことが来たということがあとで伝えられておりますが、そういう事実があったか、その点をまず伺いたいと思います。
#36
○愛知国務大臣 そういう訓令はもらっておりません。それから、私のほうから請訓をしたこともございません。と申しますのは、この問題につきましては、御承知のように、一年以上にわたっての長い話し合いと申しますか経過がございますし、それから、日本側といたしましては、考え方として、譲れない基本線がございます。自由貿易主義、ガット精神ということからわれわれの意見というものは確立しておったわけでございますから、やはり最終的に、われわれ行ってみましても、結局、基本のものの考え方が、繊維問題に関する限りは非常に大きな隔たりがございまして、二年というようなことではとうてい歩み寄りというものは考えられなかった、こういう背景でもございますから、請訓したこともございませんし、また、そういう訓令が出たということもございません。せっかく出かけましたのに、話し合いの結末がつかなかったことは、まことに私も残念に思いますけれども、そのときも、かくなる上は、少なくとも、これをほかの、政治問題についてはもちろんでございますが、経済問題等についてもアフェクトしない、させない、この合意を取りつけて、日米関係に影のささないようにということを取りつけることに全力をあげて帰ってまいったわけでございます。
#37
○曽祢委員 一部の国論の中には、決裂してよかったという意見があるようであります。私は、外交交渉の決裂というのは一つもよくはない。むろん、政府の立場、特に外相の立場はわれわれはよくわかりますし、国会の立場からいえば、筋の通らない妥協をしてはならない、ガットの精神を貫いてほしい、したがって、被害の十分な立証がないのに包括的な規制ということは絶対に許されない。それから、日米間にいかなる話し合いがあっても、最終的にはガットの場における協定によらねばならない、こういう点、これが貫かれたことはいい。しかし、一年間の交渉でついにもの別れになったということは、これは交渉が失敗したことであって、交渉が決裂したことを喜ぶ理由は何もないと私は考える。そういう意味で私は、困ったことだ、残念であるということを外務大臣が言われた、まさにそのとおりだ。喜ぶべきことではなく、困ったことなんだ。そこで、困ったことであるけれども、日米間はかなり対等な経済競争の立場があるし、ある種のものについては、向こうの斜陽産業に対しては日本が押しぎみである。そこの問題が繊維その他の問題に起きておる。他方、わが国がガット精神を言うならば、当然に日本みずからの通商をその他の政策についてもガット精神実現にもっと努力しなければならない。これは当然のことだと思うのです。アメリカのガット精神に反するやり万、いかにそれが斜陽産業であるにせよ、これをとらざるを得ないということ、日本がそれを追及することはりっぱです。同時に日本も、その精神を日本の産業保護と調子をとりながらも、やはりわれわれの主張の一貫性というものは絶対必要だと思うのです。
 そういう意味で、日本がアメリカとは競争関係にあることを認識し、甘えた考えを捨てて、同時にやはり、日本の行く道というものは、日本はどこに対してもガット精神、貿易の自由ということが、結局原料のない日本には究極的にはプラスなんだという気持ちで、そういう精神で、外務省が音頭をとって、今度は日本の自由化の問題についてもやはり貫かれていかなければいけないと思うのです。そういう点について外務大臣はどう――日米間によけいな、悪い波紋を起こさせない、これは当然のことであります。しかし、競争関係にあることも事実です。通商戦争を起こさないということは日本側の自由化に対する基本的な姿勢である。これは国内においても貫かれていかなければならない、こう思います。むろんアメリカの、たとえば従来のやり方から見て、特に自動車産業等は、単に自由化ということでなくて、ほんとうにその国における国内産業を資本的に支配してしまう、こういう悪いビヘービアがヨーロッパ及びイギリスにあったことがわれわれに非常に大きな警戒心を持たせていることは事実です。そういう点はよくない。しかし、一般的にいえば、日本の自由化がおくれていることも事実です。これらの点について、どういうふうに外交の調整をとっていかれるのか、外務大臣の御所信を伺いたいと思います。
#38
○愛知国務大臣 まず、日米間に区切って、ひとつ私の感想を申し上げますと、やはりいまお話しになったようなところと見方が通じているのじゃないかと私思うのですけれども、歯にきぬを着せないで申しますと、日米の経済関係あるいはパターンというものがすっかり変ってしまったということについて、もう少し全国民的に客観的な認識が必要ではないだろうか、なまいきなことを申すようですが、私はそういう感じがいたします。と申しますのは、アメリカとの交渉ということになれば、アメリカが常に強者であって、日本は常にコンプレックスを持っている。日本の主張があればこれを貫徹するということは、強敵にぶつかっていく、勝たずばやまじというような姿勢はいいけれども、弱い者が強い者にぶつかっていく、そういう気がまえというものがまだ相当に、必要以上に残っているのではないだろうか。繊維問題についていえば、向こうが頼む立場であって、こちらは、無原則でない、原則の立った範囲内で、どこまでプレゼントをしてあげることができるかという角度でいくべき性質の問題だと思います。しかし、先ほど申しましたように、プレゼントにも度がございまして、私がかねがね申し上げておりますように、無原則の妥協は絶対にすべきでない。今回の場合は、妥結をあせれば無原則の妥結になってしまって、不必要なプレゼントになるということで、まとまらなかったことははなはだ残念でございますが、いろいろ経験をしたという面で、また、同時に、これはいろいろと伝えられておりましたが、アメリカに対して、何かこちらが得るところがあれば必ずお返しをしなければならないというようなコンプレックスの中から、沖繩を買ったから繊維を売るんだと言いかねないようなムードがありましたが、それとこれとは別だということが今回非常にはっきりしたということで、国民的に御安心を願えたということがせめてもの収穫じゃなかったか、かように私は考えております。したがって、今後も、いま自由化の話もございましたが、日米の関係において、今度繊維でこうなったから、せめて言いわけに自由化を拡大する、こういう発想は私はとりたくございません。同時に、しかし、自由化に対しては、これは私の持論なんですけれども、これは本来、長い目で見て、そして、日本の今日のような経済成長の率をずっと続けていくためには、文字どおりグローバルな日本経済になって、あらゆる原料、資源、エネルギー等は全世界どこからでもとってこれるような状況でなければならないし、また、世界じゅうのどこに対しても市場を広げていけるような環境でなければならない。それについては、アメリカであろうが、どこの国であろうが、相手側、日本以外の国に、日本の態度、ビヘービアというものに非難を受けるようなやり方はすべきでない。したがって、輸出には秩序のある輸出を、あるいは輸入については開発輸入というようなことも含めて、大きく根を広げてやっていかなければ、日本は、現在の経済成長率を長く続けることはできないのじゃないか。これが国益を守るゆえんではないか。そういう点から自由化という問題を堂々と考えていくべきではないか、私はかように存じます。
 これは、同時に、政治の面における外交姿勢にもつながることであって、私は、イデオロギーの異なる国とも、何とかして、できるだけ共存共栄の関係を結んでいきたい。世界じゅうのどこに紛争があっても、あるいはどこの国とも対決の状態にあっても、引き続いて長期にわたって日本の経済成長率を持続することはできないのじゃないか。これは同じ考え方に結びつくのではないかと思いますから、私は、そういう方向で、今後とも経済外交というものを考えていかなければなるまい。こういうことが、繊維の問題と結びつけると、あまりとてつもないことを言うようで恐縮でございますけれども、そういったようなことを、もう少し全国民的に理解が進めばまことにありがたいことだ、こういうふうな感想を私は持つわけでございまして、お答えにならないかもしれませんが、そういう気持を持っております。
#39
○曽祢委員 私も、繊維問題でこういうことになったから、前々から言っておるように自由化をしなければアメリカとの関係もうまくいかない、そういうような卑屈な意味でなくて、わが国の基本的姿勢は、おくれた国に対する援助問題は、これは自由主義ではなくてむしろ計画的にやらなければならない。その他のことについては、やはり日本の輸出についてのガット自由精神を推し広めろ。同時に、日本も、もう持てる国の中に入りつつあるのだから、いままでみたいなことよりも、もっと大胆に自由化の道に踏み切るべきだ、これが国益であり、絶対得なんだ、こういうことを申し上げたかったわけであります。
 そこで、最後に、本題に戻りまして、いわゆるミルズ法案の見通しですね。それと、それができた後においても、あるいは多数国間の話し合いが行なわれるというようなこともあると思いますし、また、そういうことを契機として、アメリカ政府の態度には、やはり単なる、法案を通せばいいだけではなくて、できれば話し合いがしたいなという気配が見えぬでもないと思うので、この法案の性質、内容、それから、繊維問題の国際的な話し合いの場合が近くあり得るかどうか。
 続けてお答え願いたいと思うが、第二は、すでに伝えられているように、この前から問題だった、テレビ等のいわゆる反ダンピング法の適用の問題、こういったような、向こうにおけるはきものその他の、他の規制問題、あるいは法によるのでなくて、いまの反ダンピング法等の査定によるところの規制の問題、つまり他の問題に波及するおそれがあるかどうか、これら等についての、現状における実情、見通し、日本の対策をお聞かせ願いたいと思います。
#40
○愛知国務大臣 第一の、いわゆるミルズ法案の成り行きでございますけれども、しかとしたことをまだ申し上げる段階では私ないように思うのです。公電はまだ入っておりませんけれども、先ほど外電の伝えるところでは、委員会においては成立したようでございます。伝えられておりましたような、はきものを除外するようなことはなかったようです。
 それから、修正の一点として、基準年次が一九六九年をも入れた三年間ですか、そういうことに修正されたように外電は伝えられております。
 それから、トリガー方式が取り入れられた。外電の伝えるところで、私もちょっと走り読みしただけでございますから、正確でございませんが、このように、米国側の見通しも、多数の見通しとはちょっと違ったような状況が出てきているように思います。
 それから、あらゆる品目にわたってトリガー方式というものがアプライされるようなことになったのではないかと読める節もあるのでありまして、そういう適用の決定を政府というか大統領に権限をあずけるということになったように伝えられているようでございます。
 もしそれが事実であり、これがこれから上院との協議とかいうようなことになって、どういう形になるのかわかりませんけれども、その成り行きいかんによりましては、またそれ相応の反響を呼ぶのではないだろうか。要するに、政府といたしましては、ただいまこの事態の成り行きを見ながら、また、あまり変なことにならないことが望ましいことはもちろんでございますから、それ相応の対処策も考えていかなければなるまいかと思っております。
 しかし、私は、やはり希望としては、アメリカとしても今回の日米繊維交渉の経緯にかんがみまして、向こうさんももう少し考え直すゆとりを、あまり、決裂したからといって感情的になって激高しないで、冷静に考えてくれることが希望としては望ましい。そういう状況が出てくることも、あわせて望みたいと思います。
 そういったような状況でございますから、今後、国際的な話し合いという第二のお尋ねでございますが、繊維について国際的な話し合いあるいは四カ国会談とかあるいはガットその他の場でどういうふうな動きが出てまいりますか、これもにわかに断定的に見通しを申し上げるまでの段階でございませんが、十分ひとつ、これは今回の経験にも徴しまして、関係業界、関係の労働界あるいは、もう国会の御意見はもちろんでございますが、十分国内のコンセンサスを盛り上げながら、その上に立って窓口としての外交を展開しなければならぬ。日本も力がついてきただけに、他からの当たられ方もなかなかきびしくなってまいりましただけに、ますますもって日本側の結束したコンセンサスをつくって、その上に立って強力な外交を展開するということがますます必要になってくる。同時に、先ほどなまいきなことを申しましたが、全国民的にも広く長い目でほんとうの日本の国益という立場を考えていくようにしていただきたいものだ、こういうふうに思っております。
 それから、反ダンピング法等の扱い方につきましても、やはりこのミルズ法案、それから通商法のいき方に非常にこれ関連いたしておりますので、あまり断定的にちょっと申し上げることをまだ差し控えさせていただきたいと思います。
#41
○田中委員長 松本善明君。
#42
○松本(善)委員 最初に委員長に御要望を申し上げておきたいのでありますが、憲法六十三条では大臣は答弁、説明を求められたときには議院に出席をしなければならないということになっておる。そうなっておるにもかかわらず、一カ月に一回という委員会で一時間しか出席をされない、各党の質問にも全部は応じられない、こういうような事態というのは、国会と憲法の権威のためにきわめて遺憾であると私は思いますので、今後こういうことのないようにしていただきたいというふうに思うわけです。このことを要望した上で、事務当局に御質問をしたいと思います。
 まず第一に伺いたいのは、カンボジアにいる在留邦人の引き揚げの問題について力石大使から請訓があったかどうか、この事実についてお答え願いたいのであります。
#43
○須之部説明員 先ほど大臣からも申し上げましたように、請訓と申しますか、事態の状況に応じて在留邦人の保護についてどうしたらいいかということの連絡は非常にたくさんきております。したがいまして、どれが請訓かとおっしゃいましてもあれなんでございますが、ただいまプレクトノットのグループ、これをどうするか、それについてのいろいろな連絡はきております。したがいまして、そういう意味で具体的な連絡がきておるかということでございましたならば、たくさんきておるというふうに申し上げておきたいと思います。
#44
○松本(善)委員 それでは具体的にお聞きしたいのですけれども、六月の二十九日付で特に在留邦人の引き揚げの問題に関する請訓がきておりますでしょうか。
#45
○須之部説明員 六月の二十九日ということのあれでしたら、いまちょっと日付は存じておりませんけれども、状況に応じましてカンボジアからの電報はほとんど毎日きておりますから、もちろんきておるというふうに申してもよろしいかと思います。電報はきておると思います。
#46
○松本(善)委員 それでは内容について伺いますが、叱責を覚悟であえて請訓するということを前置きして在留邦人の引き揚げ問題について、ロン・ノル政権へのていさいばかり考えていたのでは国の将来を誤ることになるというような趣旨のかなり強い請訓があったということが報道されたりしておりますが、そのような趣旨の請訓はありましたでしょうか。
#47
○須之部説明員 一般的な意味で在留邦人の保護について考えるべきであるという趣旨の電報がきておるのは事実でございます。ただ、この際全部引き揚げなければならないとかそういう趣旨のものではございません。むしろ十分にいろいろな点を考えてほしいという一般的な趣旨のものでございます。
#48
○松本(善)委員 そうすると、私の申しましたような趣旨の電報がきておって、その内容というのは一般的なものである、こういう趣旨でございますか。
#49
○須之部説明員 そのことばの意味が、一つ一つとられますとちょっと違った意味合いにとられがちでございますので、全般的な趣旨だけ申したいと思います。
 いま言いましたような一般的な趣旨での、どんなふうに処理すべきであるかというふうな意味の考え方は言ってきております。
#50
○松本(善)委員 いや、私の申しますのは、私の言いましたような趣旨の電報というのは、全部をもちろん申し上げないから、趣旨全体についてはいろいろ御説明があろうかと思いますけれども、私の言ったことが全く間違いであるかどうか、そういう趣旨のものはあったけれども、内容としてはそういう一般的なものである、こういう趣旨なのかということを伺っておるわけであります。
#51
○須之部説明員 もしそういう御質問でございますれば、その文字などにこだわることなく、一般的にそういう意味があったかということでしたら、そのとおりでございます。
#52
○松本(善)委員 もう一度お聞きしましょう。叱責を覚悟で請訓するという前置きでロン・ノル政権へのていさいばかり考えていたらたいへんなことになるというようなことも含まれた請訓があったかどうかということなんです。
#53
○須之部説明員 私としましてはその電報の文字もどういうような文字であったかいま必ずしもはっきり記憶しておりませんけれども、現地の在留法人の保護について十分考えてほしいという趣旨の電報でございましたらございましたということは申し上げられると思います。
#54
○松本(善)委員 どうも明確にはお答えにならぬようであります。私はこういうことは在留しておる日本人のためにもそれから日本の外交のためにも、やはり国民の前に率直に明らかにしていくべきことではないかと思います。
 先ほど大臣は包括的に引き揚げについての権限を現地大使館には与えてあるということを言われましたけれども、一般的には大使はそういう在留法人の安全のために、そういうことを勧告したりする権限を持っているのではないでしょうか。
#55
○須之部説明員 勧告という御趣旨がもしどうしても引き揚げろという命令であるなりそういう御趣旨でございましたならば、ございません。むしろ在留民の方は現在それぞれの責任とそれぞれの御判断によって外国に旅行もし、滞在もしておられるということであります。
#56
○松本(善)委員 そういたしますと、先ほど大臣が言われました包括的な権限を現地に与えてあるということは、一般的には大使の持っていない権限をこの際現地の大使館に与えた、こういう趣旨でありますか。
#57
○須之部説明員 いや、そうではございませんで、大臣のおっしゃいました趣旨は、おそらく在留民につきましてどういうふうにすべきかいろいろ御相談がある、そういうときに一々東京のほうに相談の上でそれに対して答えるのじゃなくて、一般的に現地限りの判断でこうしたらいいじゃないかという相談に応じての勧告をしてもいいではないかという御趣旨で大臣は言われたものと考えております。
#58
○松本(善)委員 そうすると、この引き揚げの問題について特別に包括的な権限を大使に与えたのではないという趣旨でありますか。
#59
○須之部説明員 そのおっしゃることばの意味の使い方でありますけれども、普通在留民から御相談があるときにどうするかというのに、やはり現地大使としては本省にも相談していろいろやるのが普通であろうと思います。もしそういう普通のやり方をする場合に時間的に間に合わぬというような場合には、もちろん先ほど申されましたけれども現地の判断で、いよいよ本省のほうとの連絡も途絶するかもしれぬというようなときに、現地の判断でいろいろ在留民の方の御相談に応じて勧告もする、これは当然のことじゃないか、そういう意味で、それをやるのは現地の大使の判断に従うのは当然であるという意味で大臣は言われたものというふうに考えます。
#60
○松本(善)委員 そうすると、局長のお話では結局カンボジアに在留する日本人については大使に特別の権限を与えたものではない、そういうことになりますね。
#61
○須之部説明員 もし御質問の趣旨が特に大使が命令を出して引き揚げるというような権限を与えたということでありますれば、在留邦人の方にこの際引き揚げるべしという命令を出す権限はないわけでありますから、そういうことを大使が命令し得る立場ではないと思います。むしろいろいろ御相談がありますから、そういうときに普通ならばもちろん本省のほうとも相談してやるのを、本省とも相談することなしに現地の判断としていろいろ勧告する、これは当然やるべきことじゃなかろうかという趣旨で言われたものと考えております。
#62
○松本(善)委員 局長の答弁は、言いたいことをかってにしゃべるんではなくて、やはり国民の代表として、わかりにくいから聞いておるわけですから、それに率直に答えるという立場で問いに答えてもらいたい。
 要するに、先ほど来私お聞きしているのは、一般的に大使の持っておる権限でしかるべくやれということになっておるのか、いまの事態で特別の権限をカンボジア大使に与えたのかということを聞いておるのです。
#63
○須之部説明員 そういう意味でございましたらば、大使として一般的にやること、こういう情勢であるからその時に応じて、時宜に応じて判断してやるべしという趣旨の御答弁でございます。
#64
○松本(善)委員 新聞報道によりますと、このカンボジアに在留しておる日本人の引き揚げの問題については、現地からかなり強い引き揚げについての要望が来ておる。いまのような話であるならば、新聞に報道されたようなことは全くうそなのか。現地で日本人の引き揚げの問題について請訓をしたとか、あるいは籠城を訓令したとか、あるいはそれについて再度請訓が来たとか、そういうことがいわれておりますが、そういうことは全くなかったのかどうか。いまのお話では、何かまことに平穏に、いままで持っておるカンボジア大使の権限を行使してしかるべくやれということになっておるというような話でありますけれども、一体そんなに平穏だったものなのかどうか、その点を伺いたいのです。
#65
○須之部説明員 その御趣旨でありますれば、こちらの東京のほうから在留邦人に対して籠城しろとか、そういうことは全然申したことはございません。
 それから、先ほど申しましたとおりに、むしろ状況の万一のことを考えた場合にどうしたらいいかということでの相談がいろいろございました。現地でもいろいろ御相談があれば、先ほど大臣も申しましたけれども、なるべく身軽にしておくという趣旨の助言もいたしますし、それから東京のほうでも、むしろ在留邦人の方は御自身の判断よりは本社のほうの指示で動かれるわけであります。したがって、東京のほうでも本社のほうに対しまして、私どものほうから、いまの状況からもしいろんな仕事の点で差し繰りがつくのならば、むしろ一時そこで仕事をやるとかそういうことも考えたらどうだというようなこともいたしておるわけであります。したがいまして、先ほど籠城しろというような命令が出たということの新聞報道があったということは私も存じておりますが、それは全く事実でございません。
#66
○松本(善)委員 もう一つ事実を聞いておこうと思うのですが、プレクトノットのダム建設に従事をしている人たち、これがカンボジア政府が発注者であるというために自由に帰れない、事実上帰れないというようなことがいわれておりますが、この点はどうなのか。その人たちは、日本政府の引き揚げの命令というようなものが出ないと全部はどうも帰れないというようなこともいわれておる。この関係を、事実を話してもらいたい。
#67
○須之部説明員 プレクトノット関係は、まとまりまして約七十名程度でございましたかおられまして、その点はカンボジア政府が反対という意味じゃございません。実際問題としても、もう現地にはいないわけでございます。大部分引き揚げまして、現在プノンペンのほうにまだ十四名残っております。それで、現地人の手で一部の仕事はまだ若干続いておりますので、日本人はおりませんけれども、プノンペンのほうからときどき行って監督をするというようなことはしておりますが、事実上は現地からは全部引き揚げております。それで、カンボジア政府のほうで別にそれに対して反対したというようなことはございません。いろいろ機械等もございますし、そのあとそれをどういうように維持管理するかというような問題について、機械の問題についてのいろいろ具体的な打ち合わせをやったというのが事実でございます。
#68
○松本(善)委員 七月十三日現在で六十一名ということでありますが、この人たちについては、現在ではまだ全部そのままおらせるという方針でありますか。
#69
○須之部説明員 これは先ほど申しましたとおり、私どもも本社のほうにもお願いいたしますし、できればもうちょっと身軽に、数を減らすという可能性もあるのじゃないかというふうに私どもは感じます。しかし、それぞれの御本人の立場になってみますと、これは私どもの考え方とまた別に、それぞれ御本人の御事情もございます。御本人たちも、われわれ外務省なり大使館のほうからぜひいてくれということで残っておられるわけでもございませんし、むしろ御本人方としていろいろ事情があってもうちょっと残りたいという方もおるわけでございますし、私どもとしても、気持ちとしてはもうちょっと減らし得るのじゃないかというふうに思いますけれども、いまのところ私どもの基本的な立場は先ほど言いましたように、もし事情が許すならばお考えいただけないかという立場を基本的にとっておるということでございます。
#70
○松本(善)委員 終わります。
#71
○田中委員長 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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