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1970/04/07 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第15号
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1970/04/07 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第15号

#1
第063回国会 法務委員会 第15号
昭和四十五年四月七日(火曜日)
    午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 瀬戸山三男君
   理事 細田 吉藏君 理事 畑   和君
   理事 沖本 泰幸君
      石井  桂君    河本 敏夫君
      中村 梅吉君    永田 亮一君
      羽田野忠文君    赤松  勇君
      黒田 寿男君    下平 正一君
      中谷 鉄也君    大野  潔君
      林  孝矩君    岡沢 完治君
      松本 善明君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 小林 武治君
 出席政府委員
        警察庁刑事局長 高松 敬治君
        法務政務次官  大竹 太郎君
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 影山  勇君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総長      岸  盛一君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  寺田 治郎君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  矢口 洪一君
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
四月三日
 在日中国人の広州交易会参加に関する請願(堂
 森芳夫君紹介)(第二二三六号)
 同(松本七郎君紹介)(第二二三七号)
 同(山本幸一君紹介)(第二二三八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 九〇号)
 検察行政に関する件
 人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。
#3
○畑委員 本日は、本来なら法案審査の日でございまして、裁判所法の一部改正の法案審議の日でありますけれども、いままでのいろいろないきさつによりまして、私たちが前から質問さしていただくことになっておりました創価学会関係の高尾霊園の墓石その他いわゆる墓荒らし事件があったことについて、被疑者扱いをされて非常に人権問題だということでわれわれの党のところへも訴えがあり、かつまた新聞紙上にも出たいわゆる墓荒らし事件にまつわる人権問題について、冒頭質問いたしたいと思います。
 警察庁刑事局長、来ていますか。
#4
○高橋委員長 警察庁から高松刑事局長が見えております。
#5
○畑委員 警察庁の高松刑事局長に主としてお聞きいたします。
 このいわゆる墓荒らし問題はいつのことで、大体どんな墓荒らしがあったのか、その概略をきわめて簡単に聞いておきたいと思います。
#6
○高松政府委員 本年の一月十八日の朝に、八王子市の日蓮正宗の高尾墓地というところで墓石がこわされ、あるいは墓の一部が荒らされた、こういう事件が発生いたしております。
#7
○畑委員 どんな程度に荒らされたのですか。荒らされるといってもいろいろある。ただ墓石を倒した程度か、あるいは納骨のつぼをどうしたとか、そういったようないろいろ程度があるので、その程度はどんな程度か。
#8
○高松政府委員 その点につきましては、ちょっと正確な資料をいま持っておりません。
#9
○畑委員 そのくらいのことはわからぬといかぬと思うんだな。
 それで、その捜査は職権捜査で始めたのか、それとも告訴あるいは告発があって始めたのか、その点をお伺いしたい。
#10
○高松政府委員 これは管理事務所のほうからの届け出がありまして、それで警察として捜査をし始めた、こういうことだったと思います。
#11
○畑委員 その事件について、実はその後稲垣和雄という人――この方は、創価学会から退転をした人たちのグループがございまして、退転者懇談会という団体があるけれども、それの代表世話人をしておるそうであります。その方と、それからさらにこの間も言論・出版妨害問題について証人の要求等があったやに聞いておりまする植村左内という方、これまた創価学会からの退転者で文筆家、「これが創価学会だ」の著者でありますけれども、このお二人に対して警察が非常に行き過ぎた捜査をやっておる、いわゆる見込み捜査というか、そういった捜査に行き過ぎがあったということについて、わが社会党の、言論と人権を守る特別委員会というのがありますが、そこへこのお二人が参りまして、こういう実情であった、まさに人権侵害であるということで訴えがありました。われわれもそのことを聞きました。さらに院内の新聞記者とも会見した模様でありまして、それが新聞に出ております。この新聞に出ておることは御承知のとおりだと思うのでありますが、この点について質問いたしたい。
 この訴えによりますると、相当前からこの二人にねらいをつけていろいろ尾行したりその他のあらゆる捜査をしておるようでありますけれども、この点については大体あなたのほうでどういう捜査をしたつもりなんですか。
#12
○高松政府委員 どういう捜査をとおっしゃいますと、ちょっとその辺……。
#13
○畑委員 それでは私のほうから聞きましょう。
 稲垣さんの場合ですね、警察が捜査に協力してくれというので二十三日に八王子署に行った。すると、被疑者扱いをされて、午前十時から午後八時まで、一月十日から二月中旬までのアリバイを言えと、捜査一課の磧谷警部補ら六人に責め立てられた。刑事には、一番の容疑者は植村とあなただ、犯罪者に仕立てることはわけはないのだけれども、できるだけアリバイをさがしてあげたいのだ、こういうことでアリバイについて申し開きをしろということで、相当長時間にわたって責められた、こういうわけなんであります。しかもはっきり被疑者として調書をとられております。どういう根拠に基づいてこの稲垣和雄さんという人を、あるいはまたさらに植村左内さんも、どうも被疑者なんだか被疑者でないのかわからないけれども、二人をねらったように言っておりますけれども、どういう根拠に基づいて被疑者扱いをしたのか、この点を聞きたい。相当な状況的な証拠等でもなければ、まっこうから被疑者扱いをできるはずはないのでありまして、それがすなわちまた人権問題にもつながるわけであります。その点が一番問題だと思う。その点はどういう根拠でやられたかということなんです。
#14
○高松政府委員 稲垣和雄氏については、三月二十三日と二十四日の二回にわたって八王子警察署においで願って事情を聞いております。
 それで、これは被疑者というふうなことではなしに、いろいろなことについて事情をよく御存じではないかということで、いわば参考人としていろいろ話をしているわけでございます。二十三日は午前十時から午後七時まで、それから二十四日は午後一時から午後五時までの間、この二回にわたって事情を聞いております。
 二十三日に、墓荒らし事件でひとつお聞きしたいというふうなことを申しましたところが、自分はいろいろな関係で事情を聞かれるのは当然かもしらぬというようなお話から始まりまして、十七日前後の人の集まり、それから本人の行動というふうなことも若干聞いておるようであります。五時ごろに、もう夕方になったからこれで切り上げようと言いましたところが、御本人から、いま仕事は何もないからもう少し聞いてもらってもいいのだということで、大体七時ごろまでいろいろ話を伺った、こういうことでございます。アリバイその他の問題についても、確かに十七日前後の行動をひとつ思い出してほしいということは申しておりますけれども、しかし、この状態からいきまして、とうてい本人を被疑者というふうな見方のできるような資料はございませんし、そういう点ではあくまでも参考人という形でございます。
#15
○畑委員 いま高松刑事局長は、被疑者扱いではない、また高松刑事局長が考えても、この程度では被疑者と扱うわけにはまいらぬ事案だ、こう言うておられる。私らもそう思った。こんな程度で被疑者扱いされたら、とてもたまらぬ。そしてアリバイを言えということで、ずいぶん長時間にわたってそれを思い出すのに骨を折ったと言っていますよ。しかも、はっきり被疑者ということで調書をとられた、こう言っておるのですけれども、あなたの答弁を聞くと、きわめて協力的であったという。最初は、協力してくれというので、十分協力いたしますということを言ったのだそうだ。ところが、その後の調べがなかなか峻烈で、そして、犯人に仕立てることはたわいないのだが、そのアリバイをさがしてやってあなたのためにしてやるのだ、こういったような形で、記憶を呼び起こせということで、その次はどうだ、その次はどうだと、ずいぶんきつく責め立てられたということで、われわれのところにも訴えがあった。あなたは、私はきょうはひまだからゆっくりでいいのです、おそくまでやってけっこうだと言ったと、稲垣さんがおそくなったことはむしろ稲垣さんの意思だというふうに聞えるような答弁をなさったけれども、実際にはきわめて違うらしい。われわれはそこを問題にしたいと思っているわけです。
#16
○高松政府委員 あれは三月二十六日の新聞にこの記事が出まして、私どももこれは事実はどういうことだろうかということで、警視庁の報告も求めました。その結果、その報告はいま私が申し上げているようなことでございます。
 それから、翌二十四日はその稲垣氏から電話がありまして、きょうは娘の卒業式が午前中にあるので午前中は来られない、午後に行くからということで、午後一時ごろに出向かれた。少し時間が長くかかっておりますけれども、やはりその退転者懇談会の性格なりあるいはその活動なり、設立趣意なりについていろいろなことを尋ねたり、その他やっておりますので、そういうふうな頭から被疑者扱いにしたというふうなことはないはずでございます。
#17
○畑委員 刑事局長は、ないはずだと言うけれども、実際はどうもそういう状況じゃないらしい。しかももう一つ、そうした調べに行っている留守中に、稲垣さんのところで、刑事さんが来て、承諾なしにくつを四、五足持っていってしまったというようなことだけれども、これはどういうことですか。あなたのほうでは任意提出、そういうふうにおっしゃるだろうけれども、そういう状況ではなかったらしい。半ば承諾なしに持っていったというような状況らしいが、どうですか。
#18
○高松政府委員 あの現場に足跡が残っておりましたわけで、稲垣氏についても、一応そういう足跡が合うか違うか、白くするといいますか、結局、捜査が無から有がだんだん出てくる段階に進んでいくものですから、それでそういうところははっきりさせる、こういう意味で、自宅のほうに捜査員が参りまして、そして一月はどんなはきものをはいておられたかということを聞きましたところが、このくつですと言って奥さんがくつを一足出してくれた。ちょっとお借りしてよろしいですか、どうぞどうぞという、こういうお話で、それじゃ御主人はいま署のほうに見えておりますから終わったらすぐ御主人に返します、こういうことで断わってそのくつを借りて署のほうに戻った。それで、返そうとしましたところが、もうすでに稲垣氏が帰ったあとだったものですから、そのあとでこれを返しに行った、こういう状態でございます。
#19
○畑委員 四、五足と一足の違いもあるけれども、それと同時に、またそういう場合には稲垣君のほうに、それじゃあなたのアリバイのほかにもっと明確な足跡の問題があるのだ、したがってあなたはくつを出してみてくれぬか、そして調べてはかってみょう、こういうことでも言うたのなら別なんだけれども、これが、本人に何とも言わずに留守宅に行って、事情を知らない細君のほうから提出させたというようなやり方は、私はやはり捜査の行き過ぎではなかろうか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
#20
○高松政府委員 その稲垣さん自身が警察署に見えておるわけですから、私も、畑先生のおっしゃるように、本人にそういうふうに断わって、そしてそれをやるのが一番順当な方法だと思います。そういう点では、警視庁のほうでも、なぜこれは本人に断わらなかったのだろうかというようなことを申しておりましたけれども、そういうふうなことが、よりこういう誤解を招かないでよかったと思います。事実は、御本人には話ししないで奥さんに話をしてそれで帰ってきた、こういう状態でございます。そして、借りたくつは一足に間違いはございません。
#21
○畑委員 植村さんの場合ですが、植村さんは警察から調べがなかった。結局そのときは、もっとも出張で不在中だったらしいですね。それで、呼ぼうと思ったのだろうが、出張で不在中だった本ので直接の調査がなかったのだが、その留守中に、ちょうどたまたま二十三日に中林警部ら二人の刑事が参って、退転者のリストがあったら見せてくれと言ったり、何かいろいろの関係を聞かれたという。細君が電話に出たすきに、小学校六年のむすこに、本だなにあった「これが創価学会だ」の見本刷りの本をとらして、見せてくれと言われて、電話から戻った細君に、一日だけ貸してくれと、これまた半ば無理やりに持っていった、こういうことなんだけれども、あなたのほうから言わせるとおそらくそうじゃないと言うことだろうが、こういった点も、相当のあせりというか、ちゃんとした手続を踏んでいない、あるいは承諾を得ていないやり方ではなかろうか、私はこう思うのですが、いかがですか。
#22
○高松政府委員 私のほうで報告を受けておりますのは、だいぶ事実が異なっております。
 それで、中林警部が植村さんのところへ二度も行っております。一つは二月九日の日に参っております。このときは植村さん御自身もおいでになって、そしていろいろまだ御存じのことがあったらひとつ教えてもらいたいということでお話をしておりますが、その際に、「これが創価学会だ」という本が二月二十二日ごろに出版される予定だから、そのときは一冊あなたにも差し上げましょう、こういうお話が出ておったそうでございます。次いで、三月二十三日の午前十時ごろに訪問しておりますが、その際に、あらかじめ電話をいたしましたところが、奥さんが出られて、主人はいま出張中だけれども、私にわかることなら何でもお話ししますからどうぞおいでください、こういうことで参っております。
 それで、いろいろ話を伺っておりましたが、その際に、本箱の中に数冊の創価学会関係の書物が並べられておった。それで、二月の九日に参りましたときに、これがとうとう明るみになった本だということで植村さんが説明をしておられました「これが創価学会だ」という本もあったので、ひとつ先生の本を読ましていただけませんかと言ったところ、奥さんは、ええ、どうぞ読んでくださいということで、奥さんがその本を取り出して中林警部に渡された。それで、二、三日貸していただけますか、読み終わったらすぐお返しします。奥さんは、けっこうです、ということで、本人はそれを積りて帰ってきた。で、先生にどうぞよろしく、しばらくしましたらすぐお返しします、こういうことで同書をお借りしてきた、こういう状態でございます。
#23
○畑委員 その問題は、押し問答をしていても、結局水かけ論だと思う。結局、どうしてこの二人を犯人ではないかということでねらいをつけたのか、どうもその辺がわからない。だれかからのサゼスチョンがあったのかどうか、情報提供等があったのかどうか。退転者の代表であるからということで、この二人にねらいをつけることが、ちょっとどうもおかしいと思うのだ。こういう人たちがそういうことをするはずはなかろうと思う。そう思うことが少しおかしいと私は思う。そして、植村さんのところでも、さらにまた稲垣さんの場合におきましても、黒塗りの車等がずいぶん前からあそこにあったそうです。子供が、このおじさんだ、黒塗りの車で、しょっちゅう毎日うちの前にとまって、いろいろしていた。黒塗りの車に乗っていた人はこの人だと言って、来た刑事に対して言ったそうです。稲垣さんの場合、それくらい、子供が覚えているくらいに相当前から張り込み、尾行、そうしたものをやっているらしい。植村左内さんのところなんかにも、植村さんのところに来た人が、やはり黒塗りの車にその当時尾行された、そういう話もしておる。非常にその点、警察のほうで、どういうわけかこの二人にねらいをつけて、長いこと監視をしておる。これではやはり安心していられない、こういう状況が出てくるわけだと思う。
 こういう点について、どうも当局の捜査がきわめて行き過ぎだというふうに考える。しかも、植村さんの場合には、先ほどもちょっと触れましたが、言論・出版妨害の問題として、わが党その他から証人の申請もこの国会で要求をしたぐらいな人でありまして、相当前からこの人の名前が出ておるわけです。こういう人に対して特にねらいをつけたということで、何かのねらいがありはせぬかということで、われわれは少し勘ぐらざるを得ないということなんですが、どういうことでこの二人にねらいをつけたかということ、その辺をちょっと最後に聞きたい。
#24
○高松政府委員 植村さんについては、これはもう被疑者とかそういうふうな感じ方はあまりなかったと思います。植村さんのこの問題につきましては、植村さん自身に若干の誤解があったような気がいたしますし、この間の週刊ポストに植村さんがいろいろな問題を書いておられますが、その最後のところに、この問題について若干、小さな注をつけて、自分の誤解だというような意味のことを書いておられます。
 それから、稲垣さんの問題につきましては、若干のことはあったようでございます。たとえば現場に白塗りの自動車が前から駐車していた。犯行当時そういうものがあったという聞き込みがありまして、白塗りの自動車を持っている人をずっと当たったということも事実でございます。稲垣さんだけでなしに、ほかの方もそうだと思いますけれども、そういう白塗りの自動車を持っておった人について捜査をやっておったことも事実であります。しかし、御本人を容疑者ときめつけるというようなことはほとんどない。
 そういうふうなことで、身辺その他についての捜査を行なったと思いますけれども、特にこれを被疑者扱いしてやったというふうなことはないと私は思っております。
#25
○畑委員 この捜査をめぐって何らかの団体あるいは個人等から、捜査を徹底的にやれといったような申し入れ等が警察関係者にあったかどうか、その点伺っておきたい。
#26
○高松政府委員 これについての捜査を特別に厳重にやれとかいうことについての申し入れは私ども聞いておりません。ただ、こういう墓荒らしというきわめて特異な事犯でございますし、捜査自身はかなり力を入れて現場ではやったわけでございますけれども、残念ながら今日まで容疑者の検挙に至らないというのが事実でございます。
#27
○畑委員 じゃ、これで最後にいたします。
 この問題は、特に、言論・出版妨害の問題と直接に関係あるわけじゃありませんけれども、そうした言論・出版妨害で証人にすら申請されておるような人が犯人である――あなたの言われることによると、植村さんはそうでないと言うんだけれども、少なくともこの二人の人がそういう問題について尾行をされたというようなことなんで特に注目を引いたことでありましょうけれども、しかし、こういったことには相当慎重な配慮が望ましい。いろいろ両者の弁解が食い違っておるから最後のことは断定的には申しませんけれども、きわめて捜査に行き過ぎがあったものではないかというふうにわれわれは見ておるわけです。今後こういうことは絶対にせぬというようにあなたからはっきり申してもらいたい。
#28
○高松政府委員 捜査にあたりましては、慎重な上にも慎重に捜査をやるというのが当然の私どものたてまえでございまして、この問題につきましても、先ほど御指摘がありましたように、たとえば御本人に一応断わってやったほうがいいんじゃないか、そういうふうなことにももっとこまかく心をつかってやればよかったというふうにも思います。今後とも、私どもといたしましては十分慎重に、人権の侵害その他そういうおそれのないようによく第一線を指導してまいりたい、かように考えます。
#29
○高橋委員長 松本善明君。
#30
○松本(善)委員 いま畑委員の御質疑に刑事局長答えられたのですが、その中でもくつを持っていったとか、十七、八日のアリバイをいろいろ聞いたというようなことで、被疑者として扱っていたのではないかというふうに思われる節がずいぶんあるわけですけれども、それだけではなく、私どもが直接稲垣氏に当たって聞いたところでは、やはりこれは被疑者としての調べをしておるようです。
 たとえば、終わってから稲垣さんが、参考人として呼び出したのだから日当をよこせと言ったところが、これは被疑者なんだから日当をやるわけにはいかぬ、こういうふうに言われたということだし、それからこの調べの中で警視庁の捜査一課の磧谷警部補、この磧谷氏は、墓荒らしの犯人は右翼や創価学会内部ではあり得ない。創価学会退転者、反戦青年委員会、それからまことにけしからぬと思うのですが、共産党のうちだ、こういうことを調べの中で言っているということ、こういう態度で捜査をしておるというようなことは、この経過から見て私どもほんとうに許せないと思うわけです。特にアリバイについて詳細に、十七、八日のおかずに何を食べたかというようなことからずっと追っている。それから植村氏と稲垣氏が最高の被疑者だということを言っておるということもある。そういうあなた方の調査だけでは、もちろん自分たちの非を認めるような調査も出てこないかもしれませんけれども、直接私どもが調べたところでは、そういうことを捜査官に言われている。これは被疑者として調べるならば当然に黙否権も告げて調べなければならぬ。参考人として呼び出しておきながら被疑者としての調べをするということは、捜査においては最も避けなければならない重要なことではないかと思います。
 この点については、警察のほうでは非常にルーズにやってもかまわないんだ、参考人として呼び出しておいても被疑者と疑った捜査をしてもかまわないんだという考えでやっているのじゃないかと思いますが、その点についてはどういうふうに考えて警察全体としてやっておるのか、お話しを願いたい。
#31
○高松政府委員 具体的にその際にどういうふうなことを申したかというふうなことは、私ども実はよく承知いたしておりません。植村さんの問題にいたしましても、植村さんが途中で非常に腹を立てたのは、稲垣さんのほうから警察はあなたも被疑者と目しておるのだというふうなお話があった、それで自分としても非常に腹が立ったというようなことをおっしゃっているようでございます。しかし、先ほど申し上げましたようなことで、稲垣さんについては若干のあれがあるけれども、しかし、被疑者として見るほどの状況はとうていないという状態でございます。
 参考人と被疑者というふうな問題も、この段階では一つの話を聞く、状況を聞くという形のものがむしろ多かろうと思います。そういう面で明確に被疑者として持っていけないわけですから、むしろ参考人として持っていくのが私は普通の形であろうかというふうに思います。
#32
○松本(善)委員 そこで、私ども聞いておるわけですが、こういうことを一般的にやられるのかどうかという問題なんです。参考人として呼び出しておいて、アリバイはどうなんだ、それからそこのところの足跡を合わせるためにくつを持っていくというような、実際上の被疑者であるかどうかということを調べる捜査を一般的にやっておるのかどうか、それはかまわないという考えでやっているのかどうか。
#33
○高松政府委員 たいへんきっちりここからここまでが参考人、ここからここが被疑者という形よりも、現実の捜査の場合にはいろいろなニュアンスのものがたくさん出てまいります。そういう場合に、その人についての容疑がないと否定する材料があるならば、それを早く見つけ出すことが現実の捜査としては必要でございます。そういう意味で、われわれ白くする捜査といいますけれども、そういうふうなことも、たくさんの人があります場合には、それを早く消していくというふうなことのために、あるいはアリバイについてお尋ねする、あるいはその他の場合に、これを否定する材料がほんとうにあれば、その人についての容疑は全くなくなるわけですから、それを一応聞いてしまう、そういうことも現実にやっていることは事実でございます。ただこれが参考人か容疑者かというふうにぴしっといかない。一つの多数の、何といいますかニュアンスで、そういう状態があった場合に、それをたとえばアリバイを聞いたからこれを被疑者扱いをしていいんだというふうなわけには私はまいらないんだと思います。
#34
○松本(善)委員 そうすると、あなたのほうは詳細に知らないということだけれども、容疑者ということを言い、それから犯罪者に仕立てるのはわけはないということまで言っておるということが私どもの調査ではあるのです。あなたはいま、そういうようなことは詳細には知らないとおっしゃるけれども、それがある場合にはどうなんですか、そういうことを言ってもいいですか。
#35
○高松政府委員 私は、この際にどういうことを申したかは承知しておりませんけれども、ただこういう容疑の段階というか、そういう稲垣さんについての容疑が非常に薄い容疑であるというふうな段階を考えてみますと、それについていまおっしゃったようなことを言うはずがないというふうな感じを持っております。
#36
○松本(善)委員 これはきょうは十分時間がありませんので詳しくやりませんけれども、別件逮捕については違憲であるということが、東京地裁で六本木の連続放火事件について判決が出ました。それに関連して、別件逮捕とか見込み捜査というもの、これは許せないんだという世論も起こってきておるわけですけれども、この別件逮捕、見込み捜査については、警察庁のほうでは何らいままでと変わりなくやっていくという考えでありますか。
#37
○高松政府委員 別件逮捕ということばの意味のとり方によっても非常に違うと思います。六本木の事件の判決にいたしましても、乙事実が甲事実より軽微である場合、それから同種の事犯である場合、あるいは密接な関連のある事犯である場合、あるいは被疑者が進んで自白した場合、こういう場合は別件についての捜査をやってもよろしいんだという限定をつけておるわけでございます。これ自身も限界としては非常にあいまいだと私は思います。そういう意味で法律的にいわゆる別件逮捕、この中身のとり方によって非常に違ってくると思いますけれども、違法であるかどうかということについては問題はあろうと思います。
#38
○松本(善)委員 それではこの点、別件逮捕について一言で答えてもらいたいんだけれども、東京地裁のこの判決、あなたの言われたとおり一律に考えているわけではないようですが、この判決は尊重してやっていくんだ、見込み捜査というのは本来は考えてはいけないんだ、こういう態度でやっていくということですか。この東京地裁の判決は尊重していくという態度でおるかどうか、それだけ聞きましょう。
#39
○高松政府委員 私自身の個人的見解かもしれませんが、この東京地裁の判決については、こういうふうな例外が認められるということで、例外が認められない場合はすべて憲法に違反して違法だ、こういう言い方をしているわけですが、その境目が非常にややこしい、非常に不明確だ。たいへん流動的でありまして、ある場合については違法であり、ある場合については違法でないといわれる判決には、ちょっと承服しかねるような感じを持っております。
 しかしながら、そういう違法かどうかという問題は別にいたしまして、私は、別件でいくというふうなやり方が捜査として適当であるかどうかというふうなことについては、捜査はやはり本件でいくことが本筋である、別件というものは捜査の本来の形からいってこれはできるだけ避けるということが必要であろうと思います。で、別件でやらなければ捜査はうまくいかないんだというような考え方がないわけではありませんけれども、そういう考え方は、私自身は間違っておると思います。別件でやったために結局本件が割れなかったという事件も幾らもあるはずであります。そういう意味で、私どもの捜査の指導としては、できる限り本件で持っていく、こういう指導が当然だと思っております。
 ただ、何ぶんにも捜査は一つの生きものみたいなところがございまして、たとえば事件をやっておりますうちに、かなり重い別件について証拠は一応あるけれども、本件については十分にまだ証拠がそろわない、その場合に逃走のおそれがあるとか罪証隠滅のおそれがあるとか、あるいは極端な場合は自殺のおそれがあるというふうな場合に、あるいは別件でいくのもやむを得ない場合というのは、それはあり得ると思うのです。しかしながら、その場合の別件というものも、これは逮捕の要件の備わった別件であることは当然でありまして、その意味でやむを得ず使う場合がないとはいえないと思いますけれども、できるだけ本件ずばりで持っていくというのが私どもの指導の一つの方針でございます。
#40
○松本(善)委員 この人権侵害という形で稲垣さんたちの捜査について新聞に報道されました。あと、これは法務次官にもお聞きしたいのですけれども、この晩に、警察の者だけれどもということで、植村さんのところに脅迫電話がかかってきておるわけなんです。それをちょっと御紹介いたしますと、その中では、身のためになりませんよとか、ああいうことをすると君の損だよとか、あるいは承知しないぞとか、覚えておれとか、私はテープでそのものを聞いたわけですけれども、こういう脅迫の電話もかかってきておる。警察の不当な人権侵害という問題が新聞に出ただけでこの脅迫電話がその人たちにかかってくるという、こういう事態について次官はどうお考えになりますか。
#41
○大竹政府委員 いまのお話ですと、どうも具体的にもう少し詳しくお聞きしないとお答えができない面もあるようでありますが、いまのお聞きした限りにおいては、これはやはりその電話自身が人権侵害という場合もあろうかと考えております。
#42
○松本(善)委員 きょうは出版妨害問題についてはやらない、あらためてやるという話でありますので、これ以上深くやろうとは思いませんけれども、いまなおこういう事態が起こっておるということにつきましては、同僚委員も深く留意をしてもらいたい。こういう問題について法務委員会が徹底的にやはり調査をして、そうして事態を明らかにし、こういうような人権侵害が起こらないようにするのが重要な任務であると思いますので、これは委員長にもお願いをしておきたいけれども、法務省といたしましても、また警察当局といたしましても、こういう事案についてきびしい処置をするという方向でやられるよう要求して、質問を終わります。
     ――――◇―――――
#43
○高橋委員長 それでは次に、内閣提出、裁判所法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。鍛冶良作君。
#44
○鍛冶委員 大臣にまず質問したいのですが……。
#45
○高橋委員長 大臣はちょっとおくれます。いま来つつあります。
#46
○鍛冶委員 最初に、法案を出された意味をお伺いしたいのです。
#47
○高橋委員長 大臣が来るまでちょっと待っていてください。――大臣が見えましたので……。
#48
○鍛冶委員 ただいま議題となりました裁判所法の改正案ですが、これは相当期間問題になりました懸案でございまして、大体議論が落ちついたとは思いますが、いまだに議論は残っておらぬわけではございません。このようにいろいろ議論のある問題でありますことは、法務省においても裁判所側においても十分御承知のことと思うが、この事態においてぜひともこれを出さなければならぬから提案せられたものと思うのであります。してみれば、どうしてもこの際、これを通さなければならぬという御決心のもとに出されたものと思われるのであります。そこで、いまどうしても出さなければならぬ切実なる理由をひとつ率直にお述べいただきたい、かように考えておる次第でございます。
#49
○小林国務大臣 これは御案内のように、いまの簡易裁判所の民事上の事物の管轄というのは、昭和二十九年に改定されて、その後十数年たっておるし、社会情勢あるいはいろいろな経済情勢等において変化がある、したがって、これをある程度引き上げたいということはもう数年来の懸案であった、こういうことでございまして、最高裁も関係者といろいろお話し合いをされておったのでありまするが、円滑な結論はまだ得られない、こういうことでございますが、いろいろ常識的に考えても、数年もこのまま放置できない、多少の異論があっても、この際ぜひこのことを国会できめてほしい、こういうわけであります。
 私どももこの間に処して、関係の向きのお話し合いができれば、それは大いにけっこうなことでありますが、結論において必ずしもそういうことにならぬかと思います。しかし、最高裁当局においてはぜひひとつこの際この問題を解決したい、こういうことでございますので、私どもも外から見ましても、やはりこの問題はこのときに、この際にひとつ解決すべきである、ぜひひとつ国会の御賛成を願いたいということで、法務当局といたしましてもさような強い決意をもってこれを提出したのでございまして、その辺はひとつ御了承願いたいと存じます。
#50
○鍛冶委員 もちろん、昭和二十九年に改正せられてから、ことしで十六年目でございます。この間における社会情勢の変革はたいへんなものがございます。ことに経済上の向上ということはたいへんに大きなことでございますから、われわれもその必要なることは十分わかっておるわけでございます。したがって、これから数字その他について詳しくお聞きしたいと思います。
 いま日本弁護士連合会から申し出ております書類によりますと、もしこの法案が通りますと、簡易裁判所の新受件数は一年に、これは昭和四十三年の見込みでありますが、三万八千六百余件、現在の約六〇%の増加になる見込みであると出ております。また法務省から出ておる資料によりましても、最高裁判所から出ております資料によりましても同様の見込みでございます。これは六〇%も一ぺんにふえるということは、裁判所にとっては、ことに簡易裁判所にとりましてはたいへんな変革であると申してよかろうかと思うのでありますが、一ぺんにかような変革ができましても、これをまかない得るという確信があるかどうか、この点を何よりお聞きしたいのですが、第一はこの数字のふえることは間違いございませんでしょうな。
#51
○小林国務大臣 相当な増加を来たすということはわれわれも存じておりますが、しかし、事務処理の能力がありやいなやというのは直接の最高裁判所で勘案されることと存じますから、さようなことについては裁判所のほうから御答弁願いたいと思います。
#52
○鍛冶委員 では、裁判所に承りますが、裁判所から出ておるこの別表第五表、同様でございますが、これはもっと多くなるような数字になっておる。これだけのものがふえるということになると、何よりも心配になりますのは、現在の裁判官でこの裁判がまかない得るかどうか。現在の裁判所の設備でこれだけのものが処理し得るかどうか。さらにまた、現在の人員でできるかどうか。できないとすれば、これはいつから施行されるか知りませんが、施行するまでにやれるだけの準備があなた方のほうでできておるのかどうか。抽象的ではございますが、初めにこの点からひとつ承りたいと存じますが、御答弁願いたいと思います。
#53
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま鍛冶委員からお話しのございました点は、お手元に法務省のほうから、裁判所法の一部を改正する法律案参考資料というものが出ております。その資料の一一ページに、本法案が施行されました場合に事件がどういうふうに移動するかという数字が出ておるわけでございます。ただ御承知のとおり、経済変動というものが時々刻々行なわれておるわけでございますから、正確な数字を把握するということはやや困難でありまして、一応の推計ということになるわけでございます。一一ページの上のほうに出ておりますのが昭和四十三年度の事件をもとにした推計でございますし、下のほうにございますのが昭和四十四年度の事件をもとにした推計でございます。
 いま鍛冶委員からお話しのございましたのは、おそらく四十三年の推計に基づくものかと思いますが、それでまいりますと約三万八千件というものが地方裁判所から簡易裁判所に移動する関係になる、こういうことになっておるわけでございます。ただ四十四年の推計でまいりますと、その表にありますように、三万四千八百十五件という件数が移動する、一応こういう推計になるわけでございます。この法案は、原案どおり成立いたしました場合にも四十五年の中ごろからということでございますから、その後における物価変動等を勘案いたしますと、これより下回ることはあっても上回ることはあるまいというのが私どもの一応の推計でございます。
 そうなりました場合、簡易裁判所の訴訟事件の件数だけからまいりますと、五万三千八百六十九件に三万四千八百十五件が加わりまして、大体年間八万八千件ぐらいになる、こういうことでございますので、全国的な視野において、かつこの訴訟事件の件数からいたします限りは、その右のほうの表にございます、たとえば昭和三十三年における九万四千件あるいは昭和三十四年における九万件等よりなおかなり下回るということで、少なくともその限りにおいては十分まかなえるというふうに考えておるわけでございます。
 ただし、各地の実情その他に応じましていろいろ手配の必要なことは十分承知いたしまして、今後ともその点について十分具体案を練ってまいる、現に作業を進めておる最中でございます。
#54
○鍛冶委員 私の申し上げますのは、本法案を出しました以上は、言うまでもないことではありましょうが、第一番にこれだけの数がふえてもまかなえるだけの裁判官の用意ができておるか、裁判所の設備も十分できておるのか、人員も十分用意ができておりますか、この点を確かめたいのですが、この点の確答ができる得るかどうかを聞きたいのです、いかがでしょう。
#55
○寺田最高裁判所長官代理者 十分できておると確信いたしております。
#56
○鍛冶委員 それでは、それからあとは、こまかくあとで聞くことにいたしましょう。
#57
○高橋委員長 事務総長が参りました。
#58
○鍛冶委員 そこで問題は、いま大臣が言われたようないろいろの理由からきておりますが、本法改正の第一の理由は物価のスライドだと心得るのであります。ところで、二十九年に本法が改正されてから十六年たった今日まで、一体どれだけ物価がスライドされておるか、この点が重大なんです。ことに、どうも日本弁護士連合会から出ておりまする趣意書と裁判所から出ておりまする資料との間にたいへんな違いがございまするので、これはどういうことで違いができたのか、これをここでひとつ明瞭にしていただきたいと思うのであります。
 法務省から出ました資料の別表第二、この間ここでお出しになりましたこの第二によりますると、二十九年を一〇〇といたしますと四十三年は五七〇・六、五七〇ですから五・七倍、約六倍になっておるということになっておる。それからその中の表を見まして、国民所得の点を見ますると、これはなお以上に約六倍にのぼっておると出ておるのであります。ところが、いま日弁連からの申し出を見ますると、上昇は六〇%に過ぎない、かように書いてございます。これはたいへんな違いなんです。六〇〇%の上昇だという資料の出ておるものと六〇%より上がらぬと出ておる。私は日本弁護士連合会と大体において話は合うと思うけれども、合わないところのあるのはここいらに合わない点が出てきておるのじゃないかと思うのだが、これはどうですか。あなた、この法務省で出されたものは間違いございませんでしょうね、私いま申し上げましたのは。
#59
○矢口最高裁判所長官代理者 ただいま鍛冶委員からお話しのございました五七〇・六という指数は、実は先ほど総務局長が御説明いたしました法律案参考資料として法務省からお出しになりました資料にはない数字でございます。それは私どもでつくりましてお手元にお届けしたことのございます「国民総生産と総支出累年比較」と申す表の数字でございまして、それによりますと、一人当たりの国民総生産額というものを昭和二十九年を一〇〇といたしまして昭和四十三年と比較いたしますと五七〇・六と相なるわけでございます。ところで、お手元に法務省のほうから法案の御審議のために参考資料としてお届けいたしております表によって見ましても同様のことがいえるわけでございまして、その六ページ及び七ページでございますが、まずその七ページの一番左のところにございます国民総生産というのがございますが、これは昭和二十九年を一〇〇といたしまして昭和四十三年六七四・五という指数に相なっておるわけでございます。実はそれを私どものほうで一人当たり総生産に引き直したものが五七〇・六という数字になっておるわけでございまして、その間に食い違いがあるわけではないのでございます。
 ちなみに一人当たり国民所得という点で見てまいりますと、法務省提出の参考資料の(2)のところでございますが、昭和二十九年を一〇〇にいたしますと四十三年で五四一、すなわち五・四一倍ということに相なっておりますし、また勤労者世帯の可処分所得というのを見てまいりましても、昭和二十九年を一〇〇といたしまして昭和四十四年では三六九、すなわち三・六九倍となっておる、こういった数字でございます。
 なお、六ページの一番右にございます消費者物価指数というのをごらんいただきますと、これは人口五万以上の都市における消費者物価指数でございますが、昭和二十九年を一〇〇といたしました場合に昭和四十三年一六五・九ということに相なっておるわけでございます。もっともごく最近の数字といたしましては、昭和四十五年の一月で一八二・八ということになっておりまして、ただいま鍛冶委員から御指摘の弁護士会方面からお出しになりました資料との食い違いとおっしゃる点はこの辺をさすのではないかというふうに存じておるわけでございます。
#60
○鍛冶委員 それならば物価としてはあなた方はどれだけ上がっておると見ておられるのでしょうか。私はここに指数と書いてあるから物価だと思って申したのですが、どう見ておられますか。
#61
○矢口最高裁判所長官代理者 消費者物価ということからまいりますと、御指摘のように昭和二十九年に比較いたしまして一・八倍強という消費者物価の上昇というふうには考えておるわけでございます。
#62
○鍛冶委員 一・八倍……。
#63
○矢口最高裁判所長官代理者 一・八倍強でございます。
#64
○鍛冶委員 それはどこについておりますか。
#65
○矢口最高裁判所長官代理者 この消費者物価指数と申しますのが、昭和二十九年を一〇〇にいたしまして昭和四十五年一八二・八という数字でございますので、それから出てまいるわけでございます。その数字はただいまも御説明申し上げましたが、法務省から出しております参考資料の六ページの右端にある数字でございます。
#66
○鍛冶委員 それにいたしましても六〇%の倍でありますね、あなたのほうは一・八だから。弁護士会のほうでは六〇%といっておる。倍じゃない、三倍だね、一・八だから。
#67
○矢口最高裁判所長官代理者 六〇%とおっしゃっておりますのは、一六五・九というのが昭和四十三年の指数でございますので、それは昭和二十九年に比べますと一・六五九倍でございますから六〇%上がっておる、こういうふうにおっしゃっておるのではないかというふうに考えられます。
#68
○鍛冶委員 これはまあずいぶんむずかしい問題で、見方の相違、基礎の立て方からでしょうが、私ら数字にうといもんですから、あまりやかましいことを言っても及ばぬが、これらの点をよく打ち合わせのできなかったことを私は非常に遺憾に思うのです。私ら見るなら、こんなに違ったんじゃこれは意見が違うのはやむを得ないじゃないかと思って第一番にここへあげた点なんです。それだけ申し上げておきまして、あとでまたこまかく申し上げることにします。
 その次に申し上げたいのは、同じく日弁連の主張によりますると、簡裁の事件は二十五万六千件の増加である。二十五万六千件ですよ。地裁の事件は増加はしておるが、審理期間がだんだん短くなっておる。だから地裁はむしろ短縮の傾向にあるといわなくちゃならぬ。しかるに裁判所のほうでは、簡裁の新受件数は激減して、二十九年から三十三年をピークとして次第に減じ、四十三年には二十九年に匹敵するに至った、これはこのとおり別表に書いてございます。そうですね。そうして地裁は六七・六%、簡裁は三二・四%となった、こうこの表に出ております。片一方では簡裁がたいへんにふえて、地裁が減った、こう文書に出てきておる。あなた方のほうは、地裁はどんどんふえて、簡裁が減ったんだ、こういってパーセンテージで半分になったと言っておる。これはたいへんな違いのものがここにあらわれてきておるのです。何と資料と折り合いのつかない主張が出ておるが、どこからこういうものが出たのでしょうか。ぼくにはどうも頭が悪いからかどうか判断がいきませんが、どういうことだと思いますか。
#69
○矢口最高裁判所長官代理者 まず事件の数字でございますが、私ども事件の数字を申し上げます場合に、通常代表的なものでございますし、また、実際問題といたしまして非常に手数のかかる代表的なものといたしまして、訴訟事件の数字というものをあげるわけでございます。先ほど総務局長も御説明申し上げましたが、訴訟事件というもので簡易裁判所の事件数、地方裁判所の事件数というものを二十九年から今日それぞれ比較いたしてみますと、先ほど鍛冶委員も御指摘になりましたように、地方裁判所において非常な増加を示しております一方、簡易裁判所において非常な減少を示しておるわけでございまして、かりにこの法案が施行されまして、三十万円ということになりました場合にも、簡易裁判所の事件というのは八万八千六百八十四件程度になり、一方地方裁判所の事件は八万三千百八十二件ということになるということで、大体半々の割合になるというのが私どもの数字でございます。これはお手元にございます法務省から提出いたしております資料の一一ページのところにそのことがあるわけでございます。
 ところで、裁判所にございます事件というものは、事件そのものといたしましては何も訴訟事件だけであるわけではございません。たとえば和解事件もございますし、非訟事件もございますし、会社更生、あるいは強制執行、仮差し押え、仮処分といったようなもろもろの事件があるわけでございます。なおまた、刑事のほうでは略式事件もございますし、令状事件もあるということで、総件数ということに相なりますとまた別個の数字に相なるわけでございます。私ども正確に拝見いたしておりませんが、その食い違いは、総件数を述べるか、あるいは代表的なものでございます訴訟事件について比較するかということから生じておるのではないか、このように存じておるわけでございます。
#70
○鍛冶委員 そうすると、あなたのおっしゃるのは訴訟事件のことですね、ことにこのパーセンテージを出しておられるのは。
#71
○矢口最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
#72
○鍛冶委員 ことに驚くべきことは、二十五万六千件というのはどこから出てきたのか、私わからぬ。まさか日本弁護士連合会が創作せられたわけでもないと思いますが、これはどこから出てきたものだと思いますか。二十五万六千件というのはたいへんな数字ですよ。
#73
○矢口最高裁判所長官代理者 同じくお手元にございます参考資料の一一ページのあとについております長い表がございますが、この長い表の四、一番最後の紙でございます。これをごらんいただきたいと思います。これに事件数が出てまいっておりますが、この事件数を合計いたしますと、大体いまおっしゃいましたような事件の増減の数字になるのではないかというふうに存じております。
#74
○鍛冶委員 これはどういう事件ですか。事件は事件に違いないですね。先ほど聞いたのは、裁判をする事件だ、訴訟をする事件だ、そのほかにまだあるからこういうことになったと言うのですが、どういうものがあるからこういうことになるのですか、それを聞きたい。
#75
○矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、訴訟事件はいわゆる訴訟手続によって判決をする事件でございます。それ以外に、この表にもございますように、仮差し押え、仮処分の事件がございます。これは場合によっては口頭弁論を開きますが、原則として決定手続で行なうというものでございます。また競売手続、強制執行手続がございます。これは御承知のとおりのものでございます。それからもろもろの非訟事件の手続がございます。また過料の裁判といったように、登記を怠った、届け出を怠ったという場合の過料の裁判がございます。また調停事件もございます。なお簡易裁判所特有のものといたしましては督促手続、公示催告手続、このようなものがございまして、そういったものは訴訟事件外の事件ということで私ども考えておるわけでございますが、一般的に事件数というふうに呼びます場合には、場合によって全事件を合わせて事件と呼ぶ場合もございますので、食い違いの出てまいりましたのはそういった点の食い違いによるものではないかというふうに考えるわけでございます。
#76
○鍛冶委員 これは弁護士会から出ておるのでも、督促手続はずいぶんありまして、八万九千件あるといっておる。こういうようなものは、事件、事件といって件数に入っても、ずいぶん軽いものなんです。そういうものも入れるし、あなた方はこういうものを入れぬというところからこういうふうに違うのだと思うのですが、そう考えてみますと、こういう数字を並べて、片っぽうでは何十万件あるのだと言うし、あなた方のほうではいや減っておるのだ、てんで話が合いやしないじゃありませんか。私はいつでも言うておるのだが、弁護士会と裁判所とが、まあ法務省もおられることですから、もっと話をしてみれば、あなたそう言われるけれども、同じ事件、事件といっても督促手続もあれば略式命令もあるじゃありませんか、ほんとうの事件はこうじゃありませんかと話してみたらわかりそうなものなんだ。それを言わないで、いや減るのだ、いやふえるのだといって、両方で自分の都合のいいものばかりあげてやっておったのでは何年たっても話にならぬ。私はこの点はなはだ遺憾に思う。まあ済んだことはしかたがないか知らぬが、これでだいぶわかりました。もう少しおとなしく、こういうふうにあらわれてきたら、私がここでいま質問したようなことをひとつ話ができなかったものですか、いかがです。これは係の方に申し上げます。
#77
○寺田最高裁判所長官代理者 弁護士会との連絡の窓口は私が担当いたしておりますので、私から一応説明さしていただきたいと思います。御承知のとおり、日弁連とは数年前からいわゆる連絡協議というものを開きまして、いろいろお話し合いをしてまいっておるわけでございます。ことに二年半くらい前からは、第一審裁判所のあり方の問題につきましてお話し合いをするというところまでまいりまして、さらに一昨年には、私どもの一つの試みの案というものをお目にかけてお話し合いをするという段階までまいったわけでございます。その際には、先ほど来鍛冶委員からお話しございましたが、私どもは民刑総合的に考えたいという面もございまして、刑事についても一つの試みの案をお出ししたわけでございます。民事につきましては、もとより出しているわけでございます。そういたしまして、いろいろお話し合いを進めたい気持ちでまいったわけでございますが、弁護士会のほうでは、いま鍛冶委員おっしゃいましたような中身の議論にはなかなか入っていただけないわけでございます。これは弁護士会としては、御承知の三十九年の臨時総会の決議というものがございます関係もおありかと思いますが、そういうような関係がございまして、本質論のほうに話がまいりまして、具体的な計数での話し合いというところに入ってまいらないというのが実際の実情でございます。私ども何とかしてと思いまして、一年数カ月、資料を提出してからあれしたわけでございますけれども、その点については数字的に煮詰めるというようなことにはまいらない。いわば本質的なところで議論が回っておった、こういうのが実情でございます。
 一応、その程度にお答え申し上げたいと思います。
#78
○鍛冶委員 こまかいことはここで言ってもしょうがないし、私もあんまり数字に強い人間ではありませんから、これくらいにしますが、いずれにしましても、弁護士会のいわれる数字の基礎とあなた方のいわれる基礎との違いがわかったので、この点をお互いに突き合わせてやれば話が違うというわけではないということがわかったと思うのです。これらの点から考えまして、今後ともひとつ協調してやっていかれることを切に望む次第です。ひとつまた、このあとでゆっくり話されることを望みます。
 この次に申し上げたいのは根本的なことですが、弁護士会のいわれるのは、簡易裁判所は小事件を簡易迅速にして手続を軽くやろうということが目的でできたわけであります。こうやってふやすとすれば、どうも少額事件を簡易迅速にということからだんだん離れてくるのじゃないか、簡易裁判所を認めた本旨と違ってくる、これが理論上の反対の根拠になっておると思うのです。この点に関して裁判所はどのように考えられますか。もちろん、さようなことがあってはたいへんなんだ、さようなことはない、かように確答できましょうか。これは裁判所よりかまずひとつ法務省から承ります。それから裁判所からも承りたい。さようなことはない、ないならばどういう意味でそういうものがないと確言できるか。これをひとつここで明言していただきたいと思います。
#79
○影山政府委員 法務省からいまの点についてお答え申し上げます。
 簡易裁判所は少額軽微な事件を迅速にやる、そして民衆に親しまれる身近な裁判所ということで発足いたしておりまして、その性格はその後も変わっておらないというふうに考えているわけでございます。この簡易裁判所の性格につきましては、裁判所法ができますまでの立案の過程ではいろいろ議論がございまして、たとえばこれを違警罪裁判所のようにする、あるいはそのほかに令状等の発行をする。当時から全国に千百ばかりございました警察を単位といたしまして、たくさんの数を設けてそういうふうにしたいという議論もございましたし、それだけでなく、これに軽微な民事事件を付属させて行なうべきである、その際の軽微な事件というものは、ごく簡単な手続で、たとえば訴訟手続等も裁判官の随時便宜的に定める方法によるし、記録等も特にとる必要もない、主文をごく簡単に言い渡す、そのかわり控訴は覆審にするというような議論も、最初の立案過程ではあったわけでございます。ところが、現実に裁判所法となって出ました形における簡易裁判所と申しますものは、それよりもはるかにいわば本格的な裁判所でございまして、たとえば民事について申しますと、民事訴訟法が原則としてそのままかぶりまして、ただその少額軽微という点にかんがみまして若干の簡易手続をきめた、こういうことになっております。
 その後、民事につきまして、発足当時は事物管轄も昔の区裁判所が二千円の総額の事物管轄をいたしておりましたが、これが裁判所発足当時は五千円ということでございまして、この点については民事の管轄を拡張したのであるという議論もあったわけでございます。それが二十三年でございまして、その後二十五年にこれを三万円に引き上げる、さらに前回十万円に引き上げる。それで第一回の引き上げが約六倍、この当時は終戦直後で非常にインフレの激しい時期でございましたが六倍、その後二十五年から二十九年に至る四年間は五万円に据え置かれまして、四年間に三倍強ということになったわけでございますが、これも単に消費者物価だけにスライドしたわけでありませんで、経済の規模その他に合わせたものと思われますが、そういう意味で、少額とは申しましても、先ほど申し上げましたようなごく軽微な、ごく少額のものでなければいけないというような最初の姿であったとも思われないので、特にその後の改正等からいたしまして、民事についても一審の裁判所である点は否定できないのではないか、その性格というものは十六年を経ました今回の改正においても特段に変えているつもりではないというふうに考えております。
#80
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの法務省からの御説明に特に補足することもございませんが、簡易裁判所の性格ということはどういうふうに説明するか、なかなかむずかしい問題もあろうと思いますけれども、少なくとも今回の法案は物価スライドを中心とする経済変動に即応したものである、かように考えておりますので、これによって何らかの性格を変更する、あるいは性格が変更されるということは全然考えておりません。
#81
○鍛冶委員 物価の変動並びに経済単位の拡張とでも申しましょうか、経済の伸展とともに取引の拡大、これはやむを得ない。それらの点から考えまして、先ほど言ったように、地裁と簡裁の訴訟のパーセンテージがこのように変化してきました以上は、これはやむを得ないでしょう。そして法務省から出ておる別表によりますと、見当ではございまするが、本法の改正をすれば、地裁は四六・七%、簡裁は五三・三%となる、大体において平均する見込みだ、こういうふうに書いてあるが、これはこさえられたときとどれだけ期間があるか知らぬが、この表に書いてある見当は今日といえども変わりはございませんか。このとおりいくものと確信し、そして裁判はうまくいくものというお答えはきょうもできますか、いかがですか。
#82
○矢口最高裁判所長官代理者 四十三年度の事件数で計算いたしまして、三十万円にいたしました場合は御指摘のとおりでございます。ただ、すでに四十四年の事件が出ておりますので、その事件もお手元の一一ページに掲げてございます。四十四年度の事件で計算いたしますと、地裁が四八・四%、簡裁が五一・六%という数字に相なるわけでございます。
#83
○鍛冶委員 かえって平均していいが、間違いございませんね。その点でまことにいいようだが、これはあなた方の見当ですから、理屈はそのとおりでも、実際において、先ほども申しましたが、そのとおりにでき得るかどうかという実際論は、ここで慎重に検討してみなければならぬ問題だと私は思うのであります。
 先ほどは抽象的に申しましたが、これから二、三具体的な点を申し上げてみたいと思いますから、ひとつ御研究を願いたいと存じます。
 第一は、簡裁の上告でございます。簡裁の上告は高裁になっております。したがいまして、いままで十万円から上の事件は、上告は最高裁にいったのであるが、本法案が通りますと、十万円から上の事件は三十万円までは全部高裁へいって、最高裁へいく権利を失う。別にわれわれは高裁を不信をするわけではございませんが、国民は、同じ上告をするならば最高裁へいきたいという感情を持つ者が多いだろうと思います。この点から考えまして、私はよほど考えてもらわなくては、国民間に不満が生ずるものと考えるのであります。
 そこで、考えられますることは、民事訴訟法第三十条第二項及び同法第三十一条ノ二の規定の活用でございます。この点をできるだけ活用していただきたい。ことに当事者の申し立てのあった場合は――これは申し立てがあっても、裁判所の認定によって許可するか、せぬかきまるわけです一が、訴訟遅延を目的とするものであるというこが明瞭である場合は、これは許すわけにはいきませんが、しからざる限りにおいてはこれを許可することを原則とする、こういう考え方をもって臨んでいただくのが最もよいのじゃないか、こう考えるのでありますが、裁判所としていかがでございましょう。また、そういう方向に向けるということが差しつかえができるものかいなか。事務総長おいでですから、できたら御答弁を願いたいと思います。
#84
○矢口最高裁判所長官代理者 訴訟手続の技術的な問題でございますので、まず私からお答えを申し上げたいと思います。
 御指摘の三十条の二項は、簡易裁判所に属しております事件が地方裁判所に提起された場合に、地方裁判所は申し立てまたは職権で、簡裁に移送することなく、自分でそのまま審理ができるという規定でございます。三十一条ノ二というのは、簡易裁判所の事件が簡易裁判所に提起された場合、非常に困難であるというふうに思われて、申し立てがあった場合または裁判官が地裁で審理したほうがいいと考えた場合、これを地方裁判所に移送するという規定でございます。
 まず、管轄と申しますのが画一的にきめられておるといいますことは、これは訴訟当事者の双方にとってそれぞれの利益があるわけでございますので、一方が申し立てた場合には、当然にそのとおりに移送するというふうにいたしますことは、これは管轄が他方の利益のために設けられておるという一面がございますので、十分に検討しなければいけない問題であるとは存ぜられます。しかし、原告が地裁に訴えを提起いたしました場合には、これを直ちに簡裁に移すことなく、一応地方裁判所に応訴されるかどうかという手続を進めまして、被告のほうでこれに応訴してまいりますれば、もちろん問題はないわけでございますので、できるだけ地方裁判所がここでやっていいではないかというふうな方向に持っていくということについては、被告において異論のない限りもちろん問題はないところだ、かように考えております。
 それから三十一条ノ二で、簡裁に提起されました場合に、被告が出てまいりまして、これはむずかしい事件だから地方裁判所に持っていってほしい、移送してほしいということを申し立てました場合にも、私どもといたしましては、できるだけそれに沿うような取り扱いがなされることが望ましいというふうに存じております。
 ただ、これはあくまで事件の具体的な判断の問題でございますので、私どものほうでこうこうしろということを言うわけにはまいりませんが、御指摘の精神はもちろん異論がございませんので、会同その他を通じまして、できるだけ当事者の意向に沿うような判断をせられることが望ましいのではないだろうかというふうな話し合いをいたすことについては、もちろん異論のないところでございます。
#85
○鍛冶委員 ひとつ事務総長においてもそういうふうに指導していただくことをお願いいたす次第でございます。
#86
○岸最高裁判所長官代理者 その点は確かにお引き受けいたします。
#87
○鍛冶委員 次は不動産事件ですが、これは私ども不動産法の改正になったときにも申し上げたのですが、現在簡易裁判所ではまことに不適当である事件がおもだと思うのです。法律が悪いとは私は申しませんが、なかなか容易なものではないと思うけれども、たんのうな裁判官を簡易裁判所へ持ってこなかったらこれはまかないきれぬのじゃないかとは何回も申し上げたはずです。この機会において、大体まあこの節ですから不動産事件であれば三十万にはなると思いますが、あるいは二十九万で簡易裁判所だと言われることがあるかもしれませんが、こういう場合は不動産事件は原則として地方裁判所へ持っていくという大体のならわしにするということがいいのじゃないかと思うが、この点はいかがですか。
#88
○矢口最高裁判所長官代理者 不動産の事件がいろいろむずかしい問題を含んでおることが多いという点につきましては、御指摘のとおりだと考えております。ただ不動産の訴訟に関しましても、それが地方裁判所にいくか簡易裁判所にいくかという点で問題になります訴訟物の価額というものは、その不動産の取引価額によるのが本来のたてまえであるわけでございます。そういうふうに見てまいりますと、現実の問題といたしまして、三十万円未満の不動産で重要な不動産というようなものはほとんどないのではないかとまでも言い得るのではないかと存ぜられます。しかし、実務の取り扱いといたしましては、この不動産の取引価額というものの一つの目安といたしまして、固定資産税の評価額というものを使用しておるわけでございます。固定資産税の評価額が一般の取引価額をかなり下回っておるということも、これはある程度事実でございますので、その辺のところで、実際は高額のものが、固定資産税の評価額によったがために、簡易裁判所の管轄になるということもあり得るのではないかと存ぜられます。しかし、この点につきましては、本来の地方裁判所に持っていくべきか簡易裁判所に持っていくべきかということの目安になるものが、実際の取引価額であるわけでございますから、訴えを起こされる原告のほうでこれは地方裁判所のほうがいいということでございますれば、その実際の取引価額を評価していただいて、明示していただいて、まず実際の取引価額によっていただくということになれば、当然地方裁判所にいくことに相なる、このように一応は考えております。
 しかし、そのようにした結果においても、なお簡易裁判所にいく不動産事件というようなものも絶無ではないとは存ぜられますが、これは先ほど申しました移送の規定あるいは地方裁判所が直接処理する規定等を活用することによって、十分具体的事案に適した妥当な裁判を行なうことができるのではないか、このように考えておるわけでございます。
#89
○鍛冶委員 それはそうなれば問題ないのですよ。私の言うのは、二十九万円だからといって簡易裁判所へ出た場合に、不動産ならばなるべくひとつ地裁へやろうじゃないかと、こういう慣行とでも申しますか、そういうようなことに持っていかれることがいいのじゃないか。したがって、裁判所のほうでもそういうふうに指導していただくことがいいのじゃないか、こういうことを申し上げるのです。その点は申し立てがあればこれは問題ありません。あれば当然先ほど言ったとおり。なくても、これはめんどうなことですから地裁へ回しましょう、こういうふうにひとつ指導していただくことはいかがなものであろうかということです。
#90
○矢口最高裁判所長官代理者 私ども、不動産事件に限りませず、それが困難な事件であります場合には、従前に比して裁判官の気持ちといたしましてはより楽な気持ちでこの移送の規定を活用していただきたいというふうに会同その他の場を通じて十分話し合っていきたい、このように考えております。
 不動産事件ということだけから、ただそれだけの理由でいまのような取り扱いをすることが妥当であるかどうかということは、一応問題かとは存ぜられますが、不動産事件というのはむずかしい問題を含んでおるのが通常であるということでございますので、そういったむずかしい事件についてはできるだけ楽な気持ちで地方裁判所のほうに移送していく、申し立てがなくてもそちらのほうに持っていくという大きな方針については、先ほど来申し上げておりますように少しも異論がないわけでございます。
#91
○鍛冶委員 どうぞひとつそういうことでお願いいたしたいと思います。
 次に、これは先ほどから申しましたように、このたびの改正は、社会事情上、経済事情上やむを得ず出されることであることがわかりましたが、弁護士会のほうから、地裁の事件が多くなったから、どうあってもやらなければならぬということであるならば、地裁の判事をふやし、地裁の設備を充実すればいいじゃないか。それを簡裁をふやしてやるということはどうも筋違いじゃないかという議論が出ておるのですが、これも一応研究しておかなければならぬ問題だと思いますから一部ここで申し上げます。
 そこで、ことしは二十五名の判事を増員いたしました。これは私があなた方に聞くというのはちょっとおかしな話だが、ここで明瞭にしておきたいから言うのですが、ことしの二十五名の判事の増員は何を目的としてやられたのか。この増員によって、この改正をやらなくても済むというようなことはあるかないか、これをひとつここで明瞭にしてもらいましょう。
#92
○寺田最高裁判所長官代理者 この改正案は、先ほど来お話が出ておりますとおり、経済事情の変動に伴いますいわばスライドということを目標とするものでございまして、その結果地方裁判所と簡易裁判所の事件の割合が平均化するということになる、こういうことでございます。地方裁判所を充実強化することについては、私どもも少しも異論のないと申しますか、むしろ積極的に従来から努力してまいったところでございまして、いま鍛冶委員から御指摘のございました昭和四十五年度予算、これは本予算はまだ御審議中でございますが、定員法で認めていただきました二十五名の増員は、うち二十名は地方裁判所の判事補の増員であり、他の五名は簡易裁判所の判事の増員、かようなことになっているわけであります。そういたしまして、地方裁判所の判事補の増員は、最近における各種の公安事件その他複雑な事件が出てまいりましたことに関連いたしまして、少しでも合議体を強化したいというようなことにねらいの中心があるというふうに御説明申し上げてまいっておるわけでございます。
#93
○鍛冶委員 そこで、問題は判事の補充の問題です。事件がふえますれば判事はたいへんな補充をされなければならないが、一体どこから求められるつもりでございましょう。われわれ多年主張しております、特任判事をもってこれでやろうというお考えであるならば、よほど考えてもらわなくちゃならぬ。簡易裁判所の事件がふえた、何でもいいから間に合わせに特任判事を持ってきてやればいいじゃないかという考えで本件を通されるというならば、たいへんな考えだと思う。ことに今日は経済が拡張しておる。経済が拡張すればその事件の内容も複雑多岐になることは当然でございます。これらの点から考えて、相当の素養のある者が判事になってくれなくてはいかぬと思うわけです。その意味において特任判事はできるだけこれを採用しないこと、これを原則として立ててもらいたい。そうしてみれば、研修所を出た者で得られるのか。研修所を出た者で得られぬとすれば、どこから得られるのか。おそらく在野法曹から入れるよりほかないと思うのだが、これについてはあなた方はどういう抱負を持っておられるか。これは法務省及び裁判所、両方からお考えを承りたいと思います。
#94
○寺田最高裁判所長官代理者 裁判所の問題でございますから、便宜裁判所のほうから先に説明さしていただきますが、裁判官の増員及びこれに伴います給源の問題は、前々からこの委員会でもいろいろお話を承っておるところでございます。
 一般的に申し上げまして、私どもとしては、裁判官の増員は給源が許す限り、できる限り大幅にいたしたいということで努力してまいっておるわけでございまして、その点につきましては、私どもとしては予算上の制約と申しますよりは、むしろ給源上の問題のほうが従来ある意味での隘路であった、かように考えておるわけでございます。本年度判事の増員をとりやめまして判事補に中心を置きましたのもさような点に関連があったわけでございます。
 一般的な給源といたしましては、現状では司法修習生から判事補を通って判事になってまいるという経路が中心的な給源であるというふうに申し上げざるを得ないと考えるわけでございます。ただ同時に、弁護士から裁判官になっていただくということもわれわれとしてつとに希望しておるところでございまして、先ほど御説明申し上げました、私どもと日弁連との連絡協議を五年ほど前に始めましたときも、最初一年半あるいは二年ぐらいでございましたかは、もっぱら弁護士から裁判官になっていただくことについて、具体的にどういう方策を講すればその道が開けるかというようなことについてのいろいろお話し合いをしたわけでございます。いろいろ意見を交換いたしましたけれども、結局きめ手になるような名案もないまま今日に至っておるというのが実情でございます。
 簡易裁判所の判事につきましても、一般的には同様でございます。ただ、御承知のように、定年退官の判事で簡易裁判所判事を希望する者がございます。こういう者は、できる限り定年退官判事を活用してまいりたい、そういうことを私どもとしても考えておるところでございます。
#95
○鍛冶委員 私も定年退官の人で達者な方にもう一ぺん働いてもらうということは賛成でございます。けれども、もう先がきまっています。やはり在野法曹から若くてたんのうな者を求めることが私は最もいいと思う。これらの点について、いつも何をやるにしても、在野法曹と最も緊密なる連絡をとり、協調をとって進んでもらうことが何よりも大事だと私は心得ておるわけでございます。この点は先ほど来何べんも申しますが、今後とも特別にひとつお考えを願いたい。
 そこで、ついでだから申しますが、大臣並びに事務総長にお答えを願いたいのは、われわれ多年主張しております法曹一元の原理について、大臣はどのように思っておいでになりますか。この主張をいたしましてからかれこれ四十年になると思います。一時だいぶ進んで、これならばだんだんよくなると思っておりましたが、近ごろ見ると、だんだんと退歩していくようですが、どのようにお考えになりますか。事務総長もどうですか。私は退歩したように思いますが、そうお思いになりませんか。これに賛成なんですか、不賛成なんですか。これは御両所別々にこの機会に御答弁願いたい。
#96
○小林国務大臣 法曹一元化というのは理想的な考え方、こういうふうに思いますが、これはお話しのように、現在はますます逆行しておる、こういうことが言えるのじゃないかと思います。すなわち、弁護士から転用するというようなことがだんだん困難になりつつある。したがって私は、もう事実問題として、この考え方を実現することはきわめて困難な状態にある、こういうふうに認識をしておるということでございます。
#97
○岸最高裁判所長官代理者 いわゆる法曹一元の問題でございますが、数年前臨時司法制度調査会でこのとるべき制度の一つとして、
  法曹一元の制度は、これが円滑に実現されるならば、わが国においても一つの望ましい制度である。
  しかし、この制度が実現されるための基盤となる諸条件は、いまだ整備されていない。
  したがって、現段階においては、法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに、右の基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。
 こういう結論が全員一致をもって採択されておるわけであります。
 ところが、御指摘のように、この法曹一元というのは古くから言われておりましても、急速には実現できない、これについては、この調査会が指摘しておりますとおり、その基盤となる条件が整備されていないということが一つの大きな原因であろうと思います。その基盤となる諸条件のうち、一番何が大切かということになりますと、これは法曹一体化というものがまず大前提になると思います。この点につきましては先ほど総務局長からも少しく御説明いたしましたが、裁判所はいつでも弁護士会と胸襟を開いて話し合う用意をいたしておりますので、弁護士会のほうにおかれましても、やはりわれわれの気持ちをくんで、在朝在野と胸襟を開いて話し合う、そういう体制をとっていただきたい、かように考えております。
#98
○鍛冶委員 基盤ができぬといえば幾らたってもできっこありませんよ。やはりこしらえることに両方とも努力をすることにおいて初めて実現するものであります。私は、これは一代こういうことを言って終わるのだが、ただどうも基盤ができません、できませんでは遺憾しごくだと思います。いま初めて言うわけじゃありませんが、ぜひと本ひとつ本気になって考えていただきたい。
 在野法曹との協調ですが、私はきょうここであげましたこの点から見ましても、話が合わぬと言われるが、もっと突っ込んでいけば話はわかるわけじゃありませんか。物価はスライドしておる、この数字をもうちょっと突き合わせればそれでいいものを、てんでんにかってなことを言って、そんなに上がっておらぬ、いや上がっておる、そんなことを言っておったのではどんなにたってもいかない。地方裁判所の事件がふえてしょうがないのだ、いやふえないのだ、それではおまえのふえるというのはどこがふえるのだ、おれのふえるというのはこれなんだ、事件とはこれじゃないか、こういうふうになぜもっと打ち割ってやられないのですか。法曹一元をやろうとするならば、そういうことができるようにならなければ法曹一元になりやしないのですよ。きょうはここに在野法曹が見えておるのですが、もうこれだけのことができないとは情けないと思うのです。
 どうかひとつそのことをお考えくださいまして、いま私はこれで違っておることが明瞭になってきましたからいいけれども、何でもないことだ、ひとつぜひともこれをやらなければいかぬ、こういう考え方になってもらいたいと思うのですがいかがでございましょう。私の言うことはいかぬですか、まだその時期に到達しておりませんか、距離がございますか、いかがです。
#99
○岸最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたが、私ども裁判所の者としては、ほんとうに胸襟を開いて弁護士会側と話し合う用意はいつでも持っております。お互いに責任をなすり合うというようなことはしないで、弁護士会におかれても――裁判所だけが幾らやろうとしたって、一方的では何もできません。弁護士会におかれても、やはりそういう気持ちになっていただきたい。臨司の意見書の中に、司法協議会の設置ということが提案されております。これは法曹一体感を醸成するためにも、裁判所、検察官、弁護士、それから学識経験者をもってそういう制度をつくって、そうしてそこで司法制度の運用について十分に協議するようにという構想のものでありますが、従来いろいろな事情からこれすらまだできていない、こういう状況でありますので、こういうことでは日本の司法の将来のためにも決していいことではないと考えております。極力私どももその方向に努力いたしたいと思います。
#100
○鍛冶委員 ついでだから、少し本論からはずれるようだが申し上げておきたいのは、判事の素養ですが、ずいぶん世の中が進みまして、科学がたいへん急速な進歩をしてまいりました。そこで事件も訴訟もたいへん変わった訴訟が出てまいります。したがって、旧来の判事の頭ではこなし切れない訴訟がずいぶん出ておるであろうし、また、これからどしどし出てくることと思います。そのたびごとに、おそらくその専門家を頼んで習うか、鑑定をしてもらうか何かしておられるのだろうと思うが、私はそういうことではいかぬと思う。これはやむを得なければしかたがない、やらなければなりませんが、やはり世界が進めば裁判所も進んでもらわなければならぬ。原子力が進んでくれば裁判所も原子力に追っついていかなければならぬ。電算機が出てくれば電算機に進んでいくような裁判もやらなければならぬ。そういう知識も裁判官は持っておらなくちゃいかぬものだと私は思うのです。
 それらの点から考えられまして、新しい時代に向かうところの新しい教育のしかた、やかましくいえば、裁判官とはいかなるものかという大きいところまでくるのですが、そういう方法までも考えて今後養成してもらいたい。また、在野法曹もこれと同様に追っついていくように勉強しなければならぬ、こう思う。お互いに切磋琢磨して司法の前進をはかり、そして法曹一元の実をあげるということが何よりも大切なことであるし、そうでなくちゃならぬと私は心得るのですが、そこまで考える必要はないとお思いですか、いかがです。
#101
○寺田最高裁判所長官代理者 裁判官を含めて法曹一般の専門化の問題は、現在及び将来における非常に重要であり、かつデリケートな問題であると私ども考えておるわけでございます。確かに、非常に科学その他が進歩いたしますに追いついてまいらなければならないということも御指摘のとおりでございます。しかしながら、また同時に、法曹としてのいわば基本的なあり方としては、やはり法というものを中心に考えるということで、単なる科学的な技術者になるわけにはまいらないわけであります。現状では、たとえば鑑定によりますとか、あるいは調査官を用いますとか、あるいはその他いろいろな方法を併用してやってまいっておるわけでありますが、そういうものを理解するためにもやはり一定の素養を必要とするわけでありまして、現在では会同あるいは研修等の機会を通じまして、裁判所としてはその方向に努力しておるのが実情でございます。弁護士会におかれましてもそういう方向にお進みになることを、われわれとしては期待いたしておる次第でございます。
#102
○高橋委員長 次回は、明八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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