くにさくロゴ
1970/04/10 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第17号
姉妹サイト
 
1970/04/10 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第17号

#1
第063回国会 法務委員会 第17号
昭和四十五年四月十日(金曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 瀬戸山三男君
   理事 細田 吉藏君 理事 畑   和君
   理事 沖本 泰幸君
      石井  桂君    松本 十郎君
      赤松  勇君    黒田 寿男君
      下平 正一君    林  孝矩君
      岡沢 完治君    松本 善明君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 小林 武治君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 影山  勇君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総長      岸  盛一君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  寺田 治郎君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  矢崎 憲正君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  矢口 洪一君
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月九日
 辞任         補欠選任
  永田 亮一君     石田 博英君
同日
 辞任         補欠選任
  石田 博英君     永田 亮一君
    ―――――――――――――
四月八日
 訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第七五号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申し入れの件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 九〇号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。
 日航機乗っ取りに関する問題について、運輸委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定しました。
 なお、連合審査会の開会日時につきましては、運輸委員長と協議の上、公報をもってお知らせいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。
     ――――◇―――――
#4
○高橋委員長 内閣提出の裁判所法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。
#5
○畑委員 私は、ただいま提案をされております裁判所法の一部改正に関する法案について質問をいたしたいと思います。
 今度の改正案は、法文そのものとしてはまことに簡単でありまして、要するに簡易裁判所の民事の管轄権の範囲を、従来十万円までであったものを三十万円にしようということだけで、それだけの法文でありますけれども、その意味するものは私は非常に重要だと思っております。この十万円を三十万円にする問題につきましては、つとに裁判所ではそうした意向を持っており、また法務省でもそれを支持しておったかのごとくであります。ところが、これに対して日本弁護士連合会におきましては、臨司意見書に対する反対もこれあり、この事物管轄も臨司意見の中に包含されておる関係もありまして、臨司意見に対しても日弁連はこれに絶対反対の態度を表明して今日まで来た。したがって、日弁連としては、そうした根本的な問題に対するものでありますから、したがって、これは単に物価の騰貴、経済情勢の変動、こういう問題だけで割り切ってこの法案を云々するわけにはまいらぬというのが日弁連の基本的態度のようでありまして、私自身も、裁判所あるいは法務省の言うこともわからぬではないけれども、これはやはり基本的な問題にかかわる問題であるから、慎重にこの法務委員会の名誉にかけて、あとで笑われないように、ひとつ法務委員各位と一緒に研究していこうというような実は態度でありまして、決してこれを引き延ばして、そのことによって廃案にしようといったような考えは毛頭ありませんということをお断わりしておきます。しかし、この問題をただ早く通すということにあせるのあまり、法曹三者の間に大きなひびが入って、それがあとでひどく長く尾を引くというようなことではとうてい許されるものではないと思います。そういう観点から、同僚諸君におかれましてもまじめな態度でひとつこの問題について当たっていただきたいと思っております。
 私も、以上そうした観点に立ちましてこれから質問を続けてまいるつもりでありますが、おそらくは二時間もかかるし、またあるいは足りないときにはひとつ、本会議のベルが鳴るようなことになった場合には、またいずれあとの機会で追加して質問さしていただくということになるであろうということもあるかもしらぬと思いまして、あらかじめお断わり申し上げます。
 今次の提案理由の説明書によりますと、まことに簡単なものでありまして、その中には「経済事情の変動にかんがみ、」要するに物価あるいは経済情勢の変動等ということで、それ以外にはほとんど触れられておりません。この中には裁判所の仕事の分配ということすら書いてない。それがほんとうのねらいであろうと思うけれども、そのことすら一つも触れてない。ただ経済事情の変動、物価の変動ということだけで、従来どおり十万円であると簡易裁判所の仕事が非常に狭くなるということだけでありまして、地方裁判所と簡易裁判所と仕事の分配上云々ということすらがこれに載ってないということは、おそらくはいままでの裁判所、弁護士会等とのいろいろ議論のいきさつ等を考慮して、ほんとうに経済変動だけの問題なんだということで最高裁並びに法務省が出ておるから、ことさらにこの説明の理由書にも、事務分配のことすら載せておらぬ、きわめて用意周到な書き方だと私は思っておるわけです。しかし、私はそう簡単にいくものではないと思っておるわけでありまして、そこに問題があると思う。むしろ、入れてないことが問題ではないかと思う。
 ところで、私はきのう調査室のほうから取り寄せたのでありますが、この前の昭和二十九年の五月の二十七日の法律百二十六号、裁判所法の一部を改正する法律、これは三月九日に提案理由の説明がされた、例の三万円から十万円にするようになったときの法案の提案理由の説明でございます。このときには、提案は二十万円だったようでありますけれども、それを修正されて、結果的には十万円となったといういきさつがあることは御承知のとおりであります。そのときの提案理由は、三浦政府委員が説明いたしております。このときには、先ほど申し上げました、今回の提案理由の説明とは違って、むしろ正直にはっきりと、物価の問題もこれありというので、物価の問題等はつけ足しみたいな意味の書き方がしてあるのは、私は注目しなければならぬ。それをひとつ時間がちょっとかかりますけれども、読んでみます。
 「この法律案の改正点の第一は、民事に関する簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張して、裁判所間の権限の分配の適正化をはかつたことであります。」こうはっきり前面に出しております。そして、地方裁判所の負担が、非常に最近加重であるということで、事件の迅速な処理が必要だということから、「御承知のとおり、裁判所における民事訴訟の第一審の新受件数は終戦後年年増加の一途をたどっているのでありまして、昨年の全国地方裁判所における総件数について見ますに、戦前十箇年の平均年間件数の三倍以上に達しており、これがため近時地方裁判所は、各地とも著しく事務の負担加重を来し、事件の迅速な処理がはばまれる結果となっているのであります。」
 「ところで他面、」として、簡易裁判所のほうを言うておる。「簡易裁判所における民事訴訟事件の負担量を見ますと、昨年の全国簡易裁判所の新受件数は、戦前十箇年の区裁判所の平均年間件数の約五分の一にすぎないのでありまして、これを地方裁判所の負担量と比較いたしますと、民事訴訟第一審新受件数の比率は、戦前は、区裁判所八割五分、地方裁判所一割五分であったのに対し、昨年は、地方裁判所七割三分、簡易裁判所二割七分と逆転しており、簡易裁判所は、民事訴訟に関する限りむしろ閑散ともいうべき状態となつているのでありまして、この傾向は今後ますます強くなつて行くものと予想されるのであります。」こう言いまして、はっきり件数について、戦前の簡易裁判所との比較を出しておる。大体、こういった考え方が裁判所の基本的な考え方だったと思うのです。簡易裁判所と比べております。
 その次に、「もとより、」として、「裁判所法のもとにおける簡易裁判所は、裁判所構成法のもとにおける区裁判所とは、多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんが、」と、こうちょっと断わっておりますけれども、その次に、「わが審級制度を大局的に観察するならば、簡易、地方の両裁判所問に見られる以上のような不均衡を是正して、民事第一審事件を適切に配分することが、簡易裁判所設置の本旨に沿うゆえんであつて、これにより地方裁判所における事件の渋滞を解消することができ、」こういうことになっております。
 さらに、その次が問題だ。「また簡易裁判所事件の上告審が高等裁判所である関係上、ひいては、最高裁判所の負担の調整にも寄与することができると考えられますので、これらの目的を達するため、簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張する必要があると考えるのであります。」こういうふうになっておりまして、最高裁の負担の軽減ということも目的の大きな一つであるということをはっきり申しておるわけです。
 そして、「昭和二十五年法律第二百八十七号による裁判所法の改正の結果、訴訟物の価額が三万円以下の事件につき管轄権を有するものとされておるのでありますが、最近の物価指数は、右改正当時のものと比較して、すでに四割程度の上昇を示しておりますし、また戦前区裁判所が千円以下の事件につき権限を有していたことや、特に最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律が近く失効するのに伴い、最高裁判所の負担が増大することをあわせて考えますと、この際簡易裁判所事件の限度額を二十万円程度まで増額することが適当と考えられるのでありまして、」こういうふうになっておるわけです。ここにも最高裁の負担の増大を大いに考えるということがあるし、また、この昭和二十五年のときから、物価が四割高くなった。確かに統計を見ますと、四割ぐらいの高さです。二十五年に三万円になったんだから、物価が四割だから、三万円の六倍の二十万円にしよう、三万円から二十万円ですからその倍数になりますが、そういうことで、これはてんで物価の問題とは――物価よりはるかにというか、物価は四割だ、それが三万円が二十万円、こういう大胆な提案であります。
 したがって、これは物価の問題はこれありというのはつけ足しであって、やはりこのことは、裁判所法の改正、事物管轄権の改正のときに大きく、いまの簡易裁判所のあるべき姿と、それからいまのある姿との食い違いというものが、その前の二十五年の改正のときもそうでありましょうけれども、さらにこの二十九年の改正のときに大きく、私は、簡易裁判所のあるべき姿というものがゆがめられたものだというふうに考えるのです。それが出発点だった。むしろそのときに、いまの簡易裁判所が地方裁判所の小型化、昔の区裁判所と地方裁判所との違い、つまり相対的な違い、ところが、この簡易裁判所と地方裁判所との違いというものは絶対的な違い、性格的な違いであります。それが本来であったのが、非常に今度は地方裁判所の小型化を招来することになったその出発点は、少なくとも二十九年にあったと私は思う。
 そういう点で、実は私、先ほど来、その記録を読み上げまして、私の演説ばかりしたわけでありますが、この前の提案のときには、物価の問題ということはつけ足しみたいなものであったと思うのです。それだけにはっきりしておった。今度は物価の問題でございます、ございますと言うものだから、ほかのことが目的であってもそれが言えない。また、しいて裁判所のほうも法務省のほうも、そのことを口にするのは禁句だということだと私は勘ぐらざるを得ないのでありますが、そこで問題はその次にあると思うのです。
  〔委員長退席、瀬戸山委員長代理着席〕
 これも私、今度の問題の食い違いであるし、同時にまた、裁判所の怠慢だと思うのだが、そのときの提案理由の説明のときには、その次にこういうことが書いてありますね。「次に、簡易裁判所の事物管轄の範囲をこのように拡張するとしますと、簡易裁判所の裁判官の任用資格等につき、当然考慮を払うべき必要が生じて来るわけでありますが、簡易裁判所制度につきましては、右のほか根本的に検討を要する事柄が少くないのでありまして、これらはいずれも裁判所の制度の改善に関する問題の一環として、さらに慎重に研究いたしました上で、恒久的措置を講ずるのが相当であると考えるのであります。従いまして、それまでの暫定的措置としては、特定の簡易裁判所の民事訴訟に関する事務を、その所在地を管轄する地方裁判所の本庁の所在地または支部の所在地にある簡易裁判所に移転し、事務の移転を受ける裁判所に相当数の有能な裁判官を配置することによつて、事物管轄の引上げにより生ずる不都合を除くこと」が、そうすればできるであろう、こう言っている。やはり不都合ができるのですね。今度の場合だっておそらく不都合ができる、そういうことをわれわれは心配している。不都合ができるから、とりあえずの間は暫定的に事務移転をして、それを何とかしようということであります。根本的な問題はともかく、不都合が生じてくる。
 ここでまず第一に問題になるのは、裁判官の任用資格の問題であるが、それに対して当然考慮を払うべきだ、こういうふうに書いてあるんだと思う。だから、急に事物管轄がふえたらふえただけの処置を裁判所ではいたします、そのために簡易裁判所の判事の資格について、要すればこの意味は特任ではなくて一般の判事の法曹資格のある者を充てるようにする、そして結局地方裁判所の小型化をはかる、そのそしりをそこで埋め合わせる、こういうことだと思うのでありますが、それに対する処置を一体やっておったのかどうか。通すときにはこう言って、当然任用資格の問題について大いに考慮を払う必要がある云々と言うておるのだと思う。ところが、それをやっておるような形跡があまりないのではないか。通すときの便宜でこう言っておいて、それでそのあとやっていないのじゃないか。そしてその上に立って今度は物価の問題だけだということで管轄を変えようとするところに、弁護士会等がどうしても反対しなければならぬような意図がやはり隠されておる、こういうふうに見るのもあながち間違いではないのではないか、こう私は考えるのであります。私の演説ばかり長くしましたけれども、その辺のことについて最高裁のほうから御意見を承りたいのであります。
 今度の提案理由と前の二十九年の場合の提案理由の説明のこの違い、裁判官の任用資格等についてということがどういうふうにその後行なわれたか、それだけの努力が払われたかということ。要するにやれることだけもやっておかない。これをやりますから通してください、通すと、そのあとやらない。ますます簡易裁判所の性格が失われてきつつあるのはこのせいじゃないか、こう思うのだが、いかがでしょう。
#6
○寺田最高裁判所長官代理者 法案の提案理由等に関連いたします部分は、むしろ法務省のほうから御説明いただくのが筋かとも存じますが、畑委員から裁判所の意見はどうかというお話でございましたので、便宜まず一応私どもの考えを申し上げさせていただきたいと存じます。
 畑委員から御指摘のございましたとおり、昭和二十九年の改正の際には、いまお読み上げになりましたような提案理由説明になっておるわけでございます。ただ、この法案はいま畑委員からも御指摘がございましたように、三万円を二十万円に引き上げる、こういう政府原案であったわけでございます。そういう政府原案のもとに提案理由もできておりますし、また、おそらくそのあとでいろいろ質疑応答がされました場合にも、法務省からもそういう趣旨で御説明申し上げておると思いますし、裁判所もそういう趣旨で御説明申し上げたと思うわけでございます。
 なお、いわゆる簡裁判事の資格の問題に関連いたしましても、御承知のとおりその改正法案で、裁判所法の附則に事務移転の規定ができました。それで、その事務移転の規定を入れます趣旨は、二十万円になりました場合には、相当大幅に簡易裁判所の事務を、本庁または支部の所在地の簡易裁判所に移転する、そういたしますれば、本庁または支部の簡易裁判所には有資格の簡裁判事がおりますから、当然にそれであるからといって有資格の者が担当するということではございませんけれども、しかし、そういう含みはございまして、あの裁判所法の民訴事務移転の規定が政府原案に入ったわけでございます。
 ところが、国会での御審議の過程で、いろいろ御意見がございました。弁護士会等の御意見も出たように承知いたしております。そうしていろいろ検討されました結果、結局二十万円が十万円ということに修正されて成立したわけでございます。これは政府原案から見ますと、相当大きな修正でございます。三万円を二十万円にいたしますという政府原案は七倍程度の引き上げで、確かにこれは経済変動等をかなり上回った原案であったわけでございます。しかしながら、それに対しまして十万円に修正ということになりますと、これまた国会での御修正でございますから、その十万円というものがはたして当時における経済変動に見合った程度の全額かどうかということについての緻密な理由づけというものは、今日の資料では必ずしもはっきりいたさないというように思います。いずれにいたしましても、当初の政府原案とは相当性格の変わった法律としてでき上がった、こういうふうに理解せざるを得ないわけでございます。
 そういうことでございますので、附則のほうに事務移転の規定が入りましたけれども、政府原案で考えられておりましたような大幅な事務移転ということは、必ずしも当然に考えられることではないのではないか、やはり十万円というふうに半分に修正されました以上は、またそれに見合った事務移転ということになるのではないかということで、現地の実情等をよく伺いまして、そうして四十数庁について民訴事務移転をいたしたというような経過になっておるわけでございます。
 今回の改正の法案は、これはまさに法務省から御説明いただくべき事項かと存じますけれども、ついでに私どもの考え方を申し上げますれば、先ほど来畑委員からお話がございましたように、中心は経済事情の変動ということにあるわけでございます。それはあくまでも二十九年の成立の法律を前提といたしまして、それ以後における経済変動、こういう考え方でございます。しかしながら、経済変動によってこういう法律改正をしていただきますことは、一面では十万円から三十万円までの事件を国民が簡易裁判所に提起することができる、つまり身近な裁判所に提起できるという意味を持つわけでございますし、他面では裁判所の一審の配分が地方裁判所と簡易裁判所の間でアンバランスになっておりますのがバランスがとれるようになる、そういうことを伴いますことは当然のことでございます。ただ、どの範囲でやるかということは、裁判所の事務負担が適当になるということをめどにしての範囲でなくして、経済事情の変動ということがめどで三十万という数字が出てきた、こういう意味で、おそらく提案理由説明にもそういうことが書いてあるのではないか、かように考えるわけでございます。
 それからなお、あるいはちょっと申し落としたということになるかと存じますが、簡易裁判所の基本的なあり方についての検討という問題につきましては、実は御承知のとおり、臨時司法制度調査会の意見書では相当基本的な変革の意見が出ておるわけでございます。しかしながら、これまた御承知のとおり、弁護士会を中心としてたいへん御反対が強いわけでございますし、また私どもといたしましても、臨時司法制度調査会のあの部分に関する意見をそのままにいたしますことにつきましては、これは非常に大きな問題があるわけでございます。一方に判事補制度等にも結びついておりますので、これはなかなかそう簡単に結論の出る問題ではない。臨司の意見は出ておりますけれども、さらに十分お話し合いをし、検討しなければならない問題ではないか、かように考えておりますので、先般の二十九年の国会で法律制定以後の私どものとりました措置なり考え方は以上のとおりであるわけでございます。
#7
○畑委員 法務省のほうはどうですか。大同小異ですか。一応お聞きします。
#8
○影山政府委員 ただいま最高裁のほうから申し上げたのと同様に考えておるわけでございまして、二十九年のときには、そのときのいろいろな事情で、事件の分配、あるいは当時、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律で制限しておりました上告が緩和されるというようなことから、最高裁の事務負担を軽減するという趣旨もあったかと思われますけれども、先ほどお読みになった部分にもございましたように、二十万円の提案でございましたけれども、この提案が、ここにございますように、「わが審級制度を大局的に観察するならば、簡易、地方の両裁判所間に見られる以上のような不均衡を是正して、民事第一審事件を適切に配分することが、簡易裁判所設置の本旨に沿うゆえんであつて、」とも申しておりまして、それが半分の十万円に修正された事情がございます。したがって、いまの御指摘の点もこの提案のときとは若干事情が違っているので、今回は、二十九年当時に修正によって十万円になりましたそれを、その後の十数年の経済変動に見合った引き上げだけをいたしたい、こういうことでございます。
#9
○畑委員 私は思うのですが、この前の二十九年の改正、その前の二十五年のときもそうだったと思いますが、それ以上に二十九年のときにこれが十万円で通った。最初は二十万円だったけれども、十万円にした。半分になった。これは法務省並びに裁判所の側からすれば、半分になったのだからえらい見当が違ったかもしれない。違ったかもしれないけれども、三万円が十万円になった。物価の変動は提案理由にもありますが、四割高。今度の場合はそれに比べれば七、八割高ぐらいになっておりましょう。だから今度のことを言うわけではない。それよりもむしろ私は、二十九年のときに種がまかれたのだ、こういうことを言いたい。二十九年のときははっきりと物価の問題もこれありとはいっておるけれども、それはつけ足しで、すべて裁判所の都合ということで、事務分配の関係ということが中心となってやられた改革だと思う。そうだと思うのでありますが、そこから種がまかれてきたと私は思っているわけです。その点については日弁連のほうもその当時はきわめてうっかりしておって、はっきりした意見を言う機会がなかったのかどうか知らぬけれども、言ったので通ったのかもしれないけれども、その辺の事情はつまびらかでないけれども、日弁連のほうでも臨司意見書に対するはっきりした反対意見みたいなものはその当時はなかった。今度はそれが、三十九年にその臨司意見が出たものだから、それに対してはっきりした意見を言った関係もあって、この前の反対と今度の反対とはずいぶん質的に違うのだろうと思う。二十九年のときのそうした弁護士会としての責任もあろうと思うし、また二十万円を十万円に削ったという点で、ある程度国会としての責任を果たしたかもしれないけれども、国会議員の法務委員も、当時基本的に簡易裁判所の性格そのものに対する研究が不足していたのじゃないか、こういうふうに思う。
 その点はどうでしょうかね。この前の二十九年のとき――今度じゃないですよ。区別しましょう。二十九年のときには、そうした小型地方裁判所というか事物管轄の変更が非常に大きく影響を与えた、そういう意図でやられたものだというふうに考えるのだが、いかがですか。今度の場合と区別しましょう。
#10
○影山政府委員 二十九年の改正でございますが、これは三万円を二十万円に引き上げるという提案をいたしまして、国会で御審議をいただいたわけでありますが、この額について十分各委員の御議論がございました。御審議を尽くされ、そして修正案も出まして、そのほかに参考人をお呼びになって意見をお聞きになったわけですが、その当時参考人としてお出になった弁護士会関係の方も、十万円にすることには賛成だという御意見であったように伺っているわけであります。したがって、国会の審議も相当慎重にされましたし、いま申しましたような弁護士会の御意見も十分聴取された結果、修正されて十万円で可決成立ということになったものと承知いたしております。私どもとしてはこういう、特に政府提案がそのまま通ったのではなく、それについて非常に慎重な審議の結果修正されましたものでございまして、その点で二十九年の十万円の基礎というものは十分な根拠があるものと考えておるわけでございます。
#11
○寺田最高裁判所長官代理者 いま影山司法法制調査部長からお話のありましたとおりでございまして、実は私、当時この法案の国会御審議の際にも若干の関係を持っておったわけでございますが、いま影山部長からお話のあったとおりの経緯というふうに承知いたしておるのでございます。
#12
○畑委員 先ほど私が聞いたのは、今度の場合はおくとして、二十九年の場合にさかのぼって考える必要がある、この辺から尾を引いているのだから。そのときに、はっきり申せば簡易裁判所の立法の当時のあるべき姿というものがだいぶ変更されて、かつての区裁判所か地方裁判所の小型化というようなことにこの事物管轄の二十九年の改正でなったと私は思う。その点どう考えるかということです。裁判所も法務省もとにかく二十万円が十万円になったのですから、そうじゃありませんというような意味の答えのようですが、わずかに四割の物価の上がりに対して、三万円が半分に下げられても十万円だから三・三倍になっているわけですね。物価は四割高ですよ。事物管轄というのはやはり金を貸したり借りたり、あるいはまた不動産の売買をやったりする。結局物価ですよ。消費者物価が結局中心だと思う。あなた方は資料をたくさん出していますが、公務員の給与だとか国民総生産だとか国民所得だとか、そういうものを出していますけれども、やはり消費者物価指数というものが基本であるべきだと思うのです。
 いずれにいたしましても、四割の物価高に対してこの前の二十九年のときには三倍以上になっておりますね。そういう点で私は、単なる物価の変動ということで決して軽く片づけられない。それはつけ足しである。要するに小型地方裁判所化というものがもくろまれ、それがある意味で遂げられた、そういうふうに考えておるのですが、いかがですか。両者から簡明に答えてください。
#13
○影山政府委員 簡易裁判所の発足当時の性格については、いろいろなお考えがあると思われます。しかしながら、この提案理由にもございますように、区裁判所との比較をいたしておりますことを考えましても、当時の御審議では、区裁判所と簡易裁判所の差というものは当然に前提とされて、その上でこういうことにきめられたものと承知している次第でございます。
#14
○寺田最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましても、いまの点につきましては法務省の御意見と大体同様でございます。
#15
○畑委員 今度の新しい裁判所法が制定せられた当時の簡易裁判所はこうあるべきだと描いた立案者の考え方は、こういうふうになっていますね。御承知であると思いますが、木村篤太郎国務大臣の提案理由に「民事、刑事の軽微な事件のみを取扱うのでありまして、今回新たに設けられるものであります。この種軽微な事件を処理いたしますために、全国に数多く」警察署単位ぐらいに置いてありますね。五百七十も置いてある。「数多くこれを設けまして、簡易な手続によって争議の実情に即した裁判をするよう、特に工夫をいたした次第でありまして、この制度は、司法の民衆化にも貢献するところ少からざるものがあろうと期待いたしておる次第であります。」こういうふうにうたっておるのです。
 だから、これが基本でなければならぬと思う。同時にまた、これだけではなくて、やはり若干区裁判所的なものもないではなかったというようなことも確かに考えられる。その辺がもともとはっきりしない。大体が外国の例の治安裁判所、ああいう制度を考えておったのだが、それが通らなかったのであいまいなものになったというような意見も確かにあります。当時の立法に参加した方の意見を私読んだことがございますけれども、大体そういうところから基本的に若干の混乱があったと思うけれども、少なくとも基本的には私がいま読みました木村篤太郎国務大臣の提案理由が簡易裁判所についての大体の考え方だろうと思う、そのために今度は簡易という新しい名前をつけたのですから。それを今度は、臨司意見でははっきり区裁判所にしよう、簡易裁判所をやめて区裁判所にしてしまおう、こういうことだ。だから、最初のあれとえらい違うじゃないかということで弁護士会等が反対して、民主化に逆行するんじゃないかと言っている。確かに民主化に逆行すると思うのです。昔の区裁判所と地方裁判所のような制度になってしまう。そのことをわれわれもおそれる。民主的じゃなくなる。
 民衆に親しみやすい、どんな軽微な事件でも取り扱って親切丁寧にやる。それには相当手数もかかります、手間もかかります。そのためにいろいろ簡易手続もやる、口頭受付もやる、準備書面も要らない、簡易な裁判手続でやるというようなこと。ところが、いまはどうでしょう。いまの簡易裁判所はそれをやっていますか。一つもやっていませんね。口頭で受理してくれと法律に従って持っていくと、裁判所は、そういうことの取り扱いは実際いたしておりません、代書で書いてもらってくださいと言われる。そうすると、相当多額の金を取られて持っていく、こういうことだと思うのです。それから証人申請でも必ず証人申請書を出さないと承知しない、こういうことがいまの簡易裁判所の現状だ。私も実際に裁判をやっていたから知っているのです。
 そういう点で、最初は簡易裁判所のあるべき姿を規定されている。そのためにいろいろこまかい簡易規定がある。ところが、民衆に親しみやすい、迅速な裁判をしてやろうというようなことに対する配慮は全然とられておらないじゃないですか。そうしてそういうことはそっちのけにしておいて、職員でも少なくしておいて、裁判所の都合だけで、事務分配の都合でございますといってやられた二十九年の改正は根本的に問題があると思う。いま起きた問題じゃない。したがって、私はことさらに二十九年のときの改正を問題にしている。しかもこの改正のときには、しり隠さずどころじゃない、はっきり言うておるわけです。ところが、今度はそれをちっとも言うてない。ことさらに言ってないところにいろいろ心配するところがあるのだと思う。この点はどうでしょう。そういった簡易裁判所に対する民事訴訟法の規定を実際に実行していますか、一つ一つ答えてください。
 まず口頭受付はどうであるか。それから答弁書と準備書面、そういったものはどうであるか。いろいろありますよ。そういうことがやられておるかどうか。まずそれをやってからやるべきだ。ところが、やらないでおいて民衆に押しつけるということは、結局民主化ではない。決して民主化とは言えない。そこが根本的な問題だと私は思うのです。そうだとすれば大きな裁判所制度の変革です。これは全部が全部それでよろしいということなら別だけれども、一応きまって二十二年に発足したものを、よほどの事情がなければ変えるわけにはまいらぬと思う。その辺はいかがでございましょう。
 まず現在の簡易裁判所のやり方ですね。それが法規どおり行なわれているかどうか。ちっとも行なわれておらぬと思う。一人ぐらいの裁判官があっちこっちかけ持ちでやっておる。仮処分をもらおうと思ってもあっちだ、こっちだというわけでてんで会えない。場合によったら書記官がひょいと連絡して裁判官に聞いて、幾らの保証金で許しますというくらいのことを伝言してもらうというようなことがあるようだ。それぐらい簡易裁判所というものは人手も不足で、民衆にこたえるような十分なことをやっておらぬ。弁護士も非常に困っています。しかも、あとで申しますけれども、法曹資格のない方たちが相当やっているものだから、相当間違ったことも多い。異論が多いようだ。それにたくさんの事件を今度持っていこうということになるから、どうなるだろうかということの心配が非常に多い。その点についてまず規則どおりにやっているかどうか、両方から答えてください。法務省のほうは民事関係知らないかもしれないが、提案しているのだから知らないわけでもあるまい。その辺、まず裁判所から答えてください。
#16
○矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、簡易裁判所の手続につきまして特則のございます点での御質問でございますが、お答え申し上げます。
 簡易裁判所を最初どのような性格のものにつくっていくかということについては、御指摘のございましたように、当初からいろいろ議論があったようでございます。最も端的なものは、これを非常に簡易なものといたしまして、その結果もしそれに争いがあるような場合には、第一回目の簡易裁判所における手続は全く無視しまして、あらためて訴訟を起こし直すようにするというようなことが考えられたようでございます。すなわち覆審的な手続を考えたものでございます。ところが、現実の問題といたしましては、そのような考えがございましたにもかかわりませず、ことに民事に関する限りにおきましては、いわゆる民事訴訟法に基づく一般的な手続をとらざるを得ないということになりまして、現在の裁判所法で簡易裁判所の手続が定められたわけでございます。もっともそれには特則がございまして、御指摘のように、民訴法の三百五十二条から三百五十七条にかけまして、簡易な手続をとることができるとしての特則があるわけでございます。ただ、簡易裁判所の性格がいま申し上げましたような形でできておりますために、実際の運用の段になりましては、畑委員御指摘のように、その特則が十全の運用をされておるということには相ならなかったわけでございます。もう少し実情に即して申し上げれば、ほとんどその特則どおりの運用はできなかったということでございます。
 では、なぜできなかったのかということでございますが、まず第一に、簡易裁判所発足の性格から申しましたように、全部やることにつきましては、その性格との関連において疑義があったということであるわけであります。それはなぜかということでございますが、たとえば最初に問題になります口頭受付の問題でございますが、口頭受付ということは現在の一般民衆の法律的なものの考え方等からまいりますと、私どものほうでいろいろとアドバイスをしてやらなければ、適切な事実の主張、整理ができにくいということでございます。口頭受付ということをやります限りにおきましては、どうしてもそこに口頭による事件の提起の相談ということが入ってまいるわけでございます。ところが、この相談ということが入ってまいりますと、裁判所の審理の公正ということとの関連になってまいります。調停等につきましても相談ということを行なっております。調停協会等が相談等を行なっておりますが、この調停協会の行ないます相談等につきまして、弁護士会の方面の方々に御協力をお願いいたしますような場合にも、それは弁護士法等との関連で問題があるのではないかというような疑義が提出されることがあるわけでございます。また家庭裁判所の家事相談等の問題にいたしましても、履行確保等との関連におきまして、これを明文の規定をもって家庭裁判所に取り入れたいということを御相談申し上げました際にも、弁護士会等でそういうことはやはり裁判所の性格上困るのではないかというような御反対がございまして、現在のような状況に相なっておるわけであります。調停とか家事相談というようなことについてすらそのような状況でございますので、この法律の訴訟の問題、これは最も原告と被告の利害が対立する点でございますので、この訴訟の問題等につきまして、一方に相談的なものを行なうということになりますと、やはりいろいろの公正さの観点からして問題が生じてくるわけでございまして、これが実は私どもが口頭の受付ということをちゅうちょいたします最大の原因でございます。もっとも事件によりましては、私ども口頭の受付等を決していけないとしているわけではございません。これは畑委員も御承知かと思いますが、交通事件の損害賠償事件、このような事件は比較的そういった意味の公正さを疑われるといったような問題が少のうございますので、現に東京の地方裁判所の交通部等におきましても、特定の訴状の定型化をいたしまして、そうしてこれに書き込んでやっていただくというような方式をとっております。すなわち、その場合にお寺ましても、実は全く完全にこちらで調書をつくるというような形ではなくて、定型化されました書類等に書き込む場所を教えることによって、いわゆる口頭受付に準ずる扱いをいたしておるわけであります。
 畑委員お尋ねの口頭受付をやっておるかという点に対しましては、そうではないというお答えを申し上げざるを得ないわけでございますが、定型化された訴状等を使って申し出てくるように、そうしてそういったものの書き方はどういうふうに書くかということを窓口で相談がございますれば、これには懇切に教えていくということは、その事件の性質が、いま申しましたような公正といったような問題からあまり問題にならないようなものに限りまして、私どもこれを現に実行いたしておるわけでございます。
 したがいまして、調停等につきましても、これは申し立て書を定型化いたしまして、できるだけそれによって受付をするようにいたしております。ことに、調停は何と申しましても互譲の精神でやるものでございますので、比較的公正という点からは訴訟に比して問題が少のうございますのでそのようにいたしております。この調停の定型化された申し立て書による受付等は、全国相当な範囲にわたって実施いたしておる。このような状況に相なっておるわけでございます。
 それから起訴前の和解、これは双方が出頭いたしまして裁判官の面前で和解をいたして、それが調書に記載されることによって確定判決と同一の効力を持つ、いわゆる即決和解でございますが、このようなものも、せっかく当事者が参りましても、私ども一度帰っていただいて、それに対してあらためて裁判所から呼び出し状を出してもう一度来ていただくという、場合によりましては迂遠な方法をとっております。これが諸外国の例にもございますように、必ず自動車運転免許証をほとんどの人が持っておる、それに写真が張ってあって同一人であることが確認できるというようなものでございますと、またそれはそれで直ちにやるということは可能でございますが、一たん帰って出直してもらうということの裏には、その本人であることを確認するというような要素が入っております。現在の日本の状況におきましては、むしろそのようにすることのほうが慎重を期するという上においては法の目的にかなうのではないかということでございます。
 簡易の呼び出しの問題は、これは適宜場合に応じて実施いたしております。
 それから、調書を不要にすることができるか、調書を簡略にすることができるかという問題は、これは上訴との関係がございますので、いま直ちに調書の内容を簡略化していくということはかなり問題でございますので、できるだけ要領調書を使うということはいたしておりますけれども、調書の内容を完全に簡略化するということにつきましては必ずしもそうすべきではない、そういう段階にはないのだというふうに考えておるわけでございます。
 準備書面を要らなくするといったような問題は、これはそのときどきの当事者の法律に関するものの考え方の、わかっておるかわかっていないかといったような程度によりまして適宜やっておるわけでありまして、必ずしも全部について準備書面が必ずなければいけないというふうにはやっていないわけでございます。
 また、証人の申し出等、証拠の申し出につきましても書面を要するかどうかという問題は、これはやはり当事者の訴訟や法律ということについての知識と申しますか、そういったものの程度に応じてしかるべく処理しておるという段階でございます。
 最後の判決の問題でございますが、簡易裁判所の判決につきましては、簡略な判決でいいということが規定されております。しかし、私どもはこの点につきましても、裁判の公正ということを、負けた被告にもよくわからせる、負けた原告にもわからせるという意味におきまして、やはりより丁重な判決を書くべきであるとは考えておりませんけれども、ある程度その判断のよって来たる根拠を示す必要があるのではないかということで、地方裁判所の扱いに準じた扱いに、別のことばで申しますれば民事訴訟法に定められた本来のやり方というものによってやっていくというふうに指導いたしておるわけでございます。
 これを通じて見てまいりますと、確かに畑委員御指摘のように、民事訴訟法のこの簡易裁判所における特則というものは、当初考えましたとおりの扱いではございませんが、しかし、現在の段階といたしましては、そのやり方のほうが最も実情に適するのではないかということでございます。ただ、今後いろいろな問題で、法律的な国民の知識と申しますか、一般国民の考え方が向上してまいるに従いまして、私どももちろんこの訴状の定型化といったことも推し進めなければならないと存じておりますし、口頭で受け付けるというようなことも、事情の許す限りこれを行なっていくということについてはもちろん異論のないわけでございます。
 以上でございます。
#17
○影山政府委員 この訴訟に関する法規の実際上の運用という点になりますと、裁判の公正ということと迅速、簡易という二つの要請の調和という点で、必ずしも法律どおり、しゃくし定木にまいらない場合が、一般論としてあろうかと思われます。いま最高裁判所のほうからお述べになりました実情を伺っておりますと、法務省といたしましては、これが簡易手続に関する法規の精神に反する、必ずしも精神に反するとまで言えないので、それからまた、いま御質問にありましたように、将来国民の法律知識、法律常識と申しますものがだんだんに発達してまいりまして、裁判所で法律相談を行なって訴状を出すということもだんだんに少なくなるのではないかと思われます。要するに、必ずしも法律の趣旨に反して実際が行なわれているというふうには考えておりません。
#18
○畑委員 いま裁判所と法務省のほうから、特に民事訴訟法における、簡易裁判所における手続の特例だということで、特則で特別に書いてあるのですね。その問題について実際にやってみると、なかなかそのとおりにはむずかしい。裁判所の裁判の公正というような点などを考えて、なかなか実際はむずかしい。また、控訴になってからどうするかといったような問題についても、相当調書等にも配慮を加えなければならぬということで、規定のとおりには必ずしもいっていないというような話がございましたが、しかし、これは規則に書いてあるんだから、それをやはりほんとうに実行しようという気がなくてはできないわけです。やはりこれは民主化の一助でありますから、これをまずやり抜くということでなければならぬのでありまして、しいて裁判の公正とかなんとかということだけにこだわっておると、何もできないということになると思うのです。親切な簡易裁判所の本来の仕事ができないと思うのです。それをとうとうこれまで大体やらずに過ごしてきたということが、やはり旧来の区裁判所と同じようなことになってきた。それに輪をかけてこの事物管轄をどんどん広げるものだから、結局昔の区裁判所のほうの色彩のほうがいまは強くなっている。法規で特則まで設けた簡易裁判所の特色というものが、きわめて薄れてきたということは間違いない。この点、先ほどはっきり明快な答弁を願いたいと言ったが、少なくとも今度の場合でなくて、二十九年の場合がそういった大きな種をまいたということには、まだ答弁がなかったと思うのだが、それをひとつはっきり答弁してもらいたいと思うのです。
#19
○影山政府委員 二十九年の改正については、先ほども申し上げたわけでございますが、二十九年に至って、そういう簡易手続における裁判の公正と迅速との調和という点が特にそこなわれたというふうには私ども考えておりません。なるほどこの簡易裁判所発足前の立案段階の論議によりますれば、全く手続も判事の自由裁量で、そのかわりこれを覆審にするという議論もあったようでございます。しかし、現実に発足いたしましたその裁判所というものは、やはりそれとは違っておりまして、原則としては、民事訴訟法の規定にのっとって特則として簡易手続を行なう、その簡易手続の運用状況が二十九年の改正によって特段に悪化してきておるというふうなことはないのではないかというふうに考えております。
#20
○畑委員 非常に官僚的な答弁だと思うのですね。影山君、なかなか頭がいいから、なかなか用意周到に答えられたが、そうすると、結局最初のそもそもの簡易裁判所というものは、もとの区裁判所が本来であった、それに対して特別の簡易手続の点で特則を加えて、そっちのほうが附則だ、こういうようなふうにとられたのだが、大体そうだとすれば、基本的にもうたいへんな違いがあると思うのです。やはり私の言うのは、少なくとも簡易裁判所は、いま言った木村大臣が答弁したのが基本であって、それにちょっぴり地方裁判所の小型化が入ったから問題が混乱して、そっちのほうが現在では中心になろうとしておるということを私は言おうと思うのです。あなたの答弁では、ちっともそうではなくて、簡易裁判所のほうの本来の精神というものはつけ足しだというような感じがするのですが、どうですかね。
#21
○影山政府委員 私は、現在の簡易裁判所と区裁判所との問に差があるのは当然だと考えております。ただ、先ほど来申し上げております立案前の段階のような覆審制の全く判事の自由裁量によって――規則によって行なわれるというものとは違うのではないか、こういうつもりで、表現がたいへん不適切であったと思います。
#22
○畑委員 まあその辺に最初からもう立法上の混乱があったのだと私は思う。それがこの不幸なものだとやはり思いますね。それをだんだん、そんなような現状で、なかなか実際にやりづらいものだからそのままにして、簡易裁判所は手数もかかるしというようなことで、だんだんとそのほうは忘れられて、置いてきぼりを食って、そしてもとのやりやすい区裁判所的なものがどんどん実際において根を張ってきた、こういうこと、それにつけ加えるのに、それが事物管轄を必要以上に大きくしたから、ますます最初の理想と食い違ってきた。こういうことが私はやはりいまの現状ではなかろうかと思うのです。私は、どうこうという深い、基本的な態度を別に持っておるわけではありませんが、私が外から見ておりますと、そういう感じがします。これはいつまで議論しておっても同じだから、この点はこの程度にとどめます。
 次に、私が申し上げたいのは、まあそういう趣旨でつくられた簡易裁判所であるから、おそらく私は特任判事を中心とするというふうに構成上なったのだと思うのです。それはどうでしょうか、間違いないでしょうね。それでなければ、昔のような区裁判所で、法曹資格のある者だけで構成していく。監督判事がいてやっておった区裁判所、それには特任判事なんかなかったのですね。特任判事ができたのは、結局簡易裁判所は、いままでの区裁判所と違うのだ。非常に簡易な手続で、いわゆる治安裁判所あるいはかけ込み裁判所、そういうものにしようということだからこそ、本来の法曹資格でなくとも、むしろ常識円満な人格者、地方の人格者等までも入れよう、アメリカあたりの非常に民主化の進んだところあたりでは、そういう考えが相当あっているのだろうと思う。何とかいう裁判所の形がございますね、英国のマジストレートコートというやつですか、それの行き方をねらったのだと思う。それでこそ、簡易裁判所に特任判事を中心にするということになったのだと思う。ところが、最近はそうじゃないようになりましたね。そこで区裁判所化してきたから、特任判事のあり方が問題になってきたわけだと思うのですね。本来の簡易裁判所であれば、いまの特任判事でけっこうなんです。法律知識は、そんなものなくてもいいわけなんです。常識円満な人格者であればいい。そういう趣旨で最初は始められたのだと思う。ところが、その簡易裁判所特任判事というものは、そのまま依然としてある。しかも通常の一審、二審等、昔と同じような形の事件を扱わせようというところに、私は問題があると思う。その点はいかがですか。問題は確かにある。それは裁判所、法務省、どう考えますか、その問題だけについて答えてください。
#23
○影山政府委員 仰せのとおり、簡易裁判所は区裁判所と違いまして、特にいわゆる特任判事を構成要素としている点はまさに御指摘のとおりだと思います。ただ、特任判事を中心としているかどうかは私、疑問でございまして、必ずしも特任判事が中心の裁判所というわけではなかろうと思います。
 それから簡易裁判所は、いま申しましたようにイギリスのマジストレートコートの純然たる模倣であるかどうかについても、かなり御議論のあるところではないかと思います。しかし、区裁判所と違いまして、少額軽微な事件というものを扱うという意味で、いわゆる特任判事も十分活躍していただく余地がある裁判所だろうと思います。そこで、その少額とはどのくらいをいうかという点がまあ御議論の中心になって、今度の法案についてもこの点についていろいろの御議論があろうかと思っております。
#24
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの点は、私ども、法務省のお話と全く同様に考えております。
#25
○畑委員 そうするとどういうことですか、特任判事という制度ができて、そういう資格の裁判官が大部分だかどうかちょっとよくわからないが、六割かそこらを占めているのじゃないですか。六、七割占めているのじゃないかと思うが、簡易裁判所判事という、正式の資格を持って地方裁を定年になった人、それがあと五年間あるからというので五年間やられる。いわゆる法曹資格のある判事ももちろんいますね。そのほかに特別任用の裁判官が相当いるわけだ。というのは、結局簡易裁判所のそうした特色に応じてつくられた制度である。だから、そういう程度のものをやればいい、裁判すればいいんだけれども、そうでないものがどんどんと事件として扱わざるを得ないということになってきて、そこで法曹資格との関連においていろいろ弁護士会等が、大衆の、国民の利益というものと関連をしてこのことを問題にしている。事件が簡易裁判所にどんどんたくさん来ることは、やはりそういうたてまえ上困るのだということも、今度の反対の一つの大きな理由になっていると思うのです。その点を私は言っている。どうでしょうか。そのために簡裁の特別任用の判事を置いたということは、簡易裁判所のそういった特色から置いたことだということで、間違いないでしょうか。そのことだけに答えてください。いろいろほかのことを言うとはっきりしないから……。
#26
○影山政府委員 特任判事の数等については、大体有資格の判事が四・七%ぐらい、それから特任判事が五・三%というふうに私ども伺っております。間違っておりましたら、あとで最高裁のほうから訂正していただきたいと思います。
 結局、先ほど申し上げましたように、区裁判所と非常に異なっておる点は、たとえば破産執行等をやらないという点ももちろん質的にございますけれども、まず少額軽微な事件をやるというような、その他督促手続、公示催告その他のいろいろなとまかな事件がございまして、これらも簡易裁判所の処理にまかせております。現行の法制上、そういう簡易裁判所というものをつくる場合に、いまの特任判事の制度が考えられたものと思います。
#27
○寺田最高裁判所長官代理者 いわゆる法曹有資格の裁判官と、いわゆる特任選考と申しますかの裁判官との比率は、いまちょっと数字は合っているかもしれませんが、ただお読み違いになったかと思いますが、四・七%と言われたのは四七%、それから片方が五三%ということでございます。
#28
○畑委員 結局少額軽微な事件ということで一本やりで答弁をされておりますが、私はそういう少額軽微ということももちろんだが、先ほど来言うております簡裁の特殊な性格ということに見合うために、有資格でない者まで、むしろそれがいいんだということで特任判事が設けられたのだと思うのです。これはいつまで議論しても尽きない話でございますから、この問題は以上にします。
 それからもう一つ、ちょっとさかのぼりますけれども、昭和二十二年に五千円ということに、初めて簡易裁判所が事物管轄となりましたね。その前に旧区裁判所では二千円、これは戦時特例ということだったが、戦時中に物価が高くなったものだから二千円とした。その前には平静状態は一千円でし五ね、戦前には。それで一千円だったのが五千円になった、これは一体物価の状況等比べて、だいぶ前にさかのぼるけれども、一体その千円と比べてどうだと思っておるのですか。高いか低いか。
#29
○影山政府委員 ただいま手元に当時の物価変動についてのものを持っておりませんので、御承知のように物価が特に戦時中、終戦にかけて騰貴いたしましたことを考えますと、千円が二千円、再度五千円に簡易裁判所発足当時になりましたことは、特に高いということではないのではないかと思っております。
#30
○畑委員 裁判所、いかがです。
#31
○寺田最高裁判所長官代理者 いま法務省からお話がございましたように、当時は非常にインフレの激しい時代でございましたし、また終戦直後の時期でございますために、いろいろな立法当時の資料というものも必ずしも十分に整備されておりませんので、どういう趣旨で二千円を五千円というふうに定めたかということが必ずしも明らかでないわけでございます。現在わかります資料で見ますると、当初司法省の原案では二千円であったものが枢密院等で修正されたような程度のものは残っておりますけれども、それが一体どういうメルクマールで五千円という数字が出たのかという資料がはっきりしないわけでございます。ただ国会で、先ほど畑委員から御指摘がありました木村国務大臣の説明のあとで、奥野政府委員は、当時たしか司法省民事局長であったと思いますが、「現在の區裁判所におきましては、民事事件につきましては二千圓以下の事件しか取扱つておりません。貨幣價値の關係もありますことを考慮いたしまして、簡易裁判所では民事事件については五千圓を超えない請求を取扱うことにいたしましたので民事事件につきましては今の區裁判所よりも權限が相當廣いように考えております。」という答弁はいたしておりますけれども、これも積極的に広げるという趣旨でおっしゃったものとも必ずしも受け取れないわけでございまして、問答等を見まして、一つの答えとして申し上げたようにも受け取れる面がございます。この程度の資料しかございませんので、一体奥野政府委員が言われるように広げるというお考えであったのか、それともむしろ若干でも狭めるというお考えであったのか、この点はどうも当時の資料をいろいろ調べましても必ずしもはっきりいたさない。しかもインフレが非常に激しい時代なので、司法省で当初立案しました段階、それからそのあとの段階、それによりましてずいぶん指数も違うようでございますので、明確には申し上げられないというのがほんとうのところかと存ずるわけでございます。
#32
○畑委員 私は物価指数をちょっと比べてみたんです。これはおたくのほうから出ている「自由と正義」に「その二 目次」というところがある。それには、昭和二十九年を一〇〇とした場合に、戦前の平静な、物価が落ちついておる昭和五年、九年、十年のころは〇・二五だった。それが十八年には、もう戦争が相当激しく、相当物価が高くなって金の値打ちが下がってインフレになっているときでありますが、その昭和十八年に二千円になりました。そのときの消費者物価指数は〇・七九であります。大体〇・八ですね。それからさらに昭和二十二年の今度のそもそもの一番最初の簡裁ができたときの、五千円にきめられたときの物価指数はどうかというと、三二・二ですね。先ほど申し上げましたのはみんな〇コンマ以下の数字です。平静の時代が〇・二五、そして十八年、戦争苛烈になったときが〇・七九、約〇・八です。ところが、それから負けてえらいインフレになった。そのときが何と三二・二になっています。そうすると三二・二と〇・七九を比べただけでもこれはもう四十倍近くになっておりますね。だから〇・七九であった十八年の区裁判所の事物管轄を二千円にしたときが〇・七九で、五千円にした二十二年のときが三二・二で、いま言った約三十四、五倍くらい。ところで二千円と五千円は一体何倍かといったら、二倍幾らでしょう。そうするとむしろ五千円というのは戦時中の二千円よりもはるかに低い全額だと私は思います。これは子供でもわかります。はるかに低い。だからむしろ前の区裁判所のときの事物管轄のときよりもはるかに低いものが――量目的には二千円から五千円になったのだけれども、その間の金の値打ちはがた落ちだ、それでしかも五千円だというのだから、簡易裁判所のときの最初の事物管轄は実際には相当低かったと思う。また低いのをねらったのではなかろうか、それだから簡易裁判所の性格がそこから出てきたのじゃないかと私は思っております。いかがでしょう。
#33
○寺田最高裁判所長官代理者 いまお話の資料は、私も「自由と正義」で見ましたので存じておりますが、結果においていま畑委員からお話のございましたような数字の関係になることは事実であろうと思います。ただ私、先ほど申し上げました趣旨は、つまり当時非常にインフレの激しい進行中であったために、立案者の意識が十分にその変化に追いついていかなかったという面があるのではないかということでございます。これはこういうインフレの時代のときにはしばしば起こりがちのことで、指数を正確に見ますればそういうふうになっておりましても、生活実感としてたとえば五千円という金額が当時立案する人たちの頭の中でそう指数どおりのものとして受け取られたかどうかという辺が、どうも資料が残っておりませんのでわからないという趣旨で申し上げたわけでございます。同時に、どの資料を見ましても積極的に狭めようというような議論がされていないわけでございます。その辺はしかしまだもっと資料をさがしますれば、あるいはどこかにそういうのが出てくるかもしれませんけれども、いままでさがしました範囲では、いろいろな性格論はともかくといたしまして、民事訴訟の事物管轄の金額に関しまする限り、これを何らかの形でそう大幅に変更しようという点につきましては、先ほど申し上げました奥野政府委員の答弁がありますだけで、しかもそれについて私どももそれがそのまま受け取られるものとは考えておりませんが、それがありますだけで、あとにございませんために十分な御説明ができないということを申し上げておるわけでございまして、結論的にいまお話しのような数字関係になっておるということは事実であろうと思います。
#34
○畑委員 その当時物価指数やなにかをはたしてこまかく考慮してやったかどうかは必ずしもわからぬが、結果として見ますと、この五千円という金額は決して高くはないですね。ほんとうはもう前の二千円よりもはるかに低い。やはり簡易裁判所の性格をそこに置こうという配慮に基づいてできたのではなかろうか、私はこういうふうに思うのです。
 ついでに、古くさかのぼって私ちょっとその表から割り出したものを申してみたいと思いますが、一番最初からじゃなくて、昭和二十二年の今度の裁判所法になってからの事物管轄と物価の動き、これを私ちょっと調べてみました。そうしますと、二十二年から四十五年――四十五年はいままだはっきりしたものはありませんけれども、趨勢から四十四年のやつから割り出してきましてしますと、ちょうど物価のほうは五倍から六倍というところだと思います。二十二年から四十五年までの間の消費者物価の値上がりは、先ほど言った二十九年を一〇〇とした場合に、昭和二十二年が三二・二ですから、それが今度は四十四年が一七五ですから、四十五年は一八〇くらいにはなるかもしれません。それをずっと計算してみまして、通してみますると、物価のほうは五、六倍ですね。ところがどうでしょうか、この事物管轄の数字の変遷を見ますと、五千円から三万円になり、三万円から十万円になり、今度はもしこれが通るとすれば、それが三十万円になるということになりますね。五千円から三十万ということは、結局六十倍ということになると思いますね。そういう数字が出てくるわけですが、これから見ましても、物価、物価で上がってきたんだけれども、少なくとも物価を中心としてみれば、ずいぶん物価に比べて事物管轄は上がったもんだというふうに思うのです。これは今度だけに限ったことじゃないのです。先ほど来、私が申し上げましたように、いままでずっと三回も四回も値上げの間だんだんと上がってきた。しかも昭和二十二年の最初のときは、いま言ったようにうんとむしろ低いのですね。いままでの裁判所のときよりもうんと低いのです。二千円よりももっと低かった、五千円とはいうけれども。それが逆に実際物価はそれから後は前よりはそれほど上がっていないのですね、というような計算が出てまいるわけです。こういう点で、結局戦前といまとまたさらに比較します。私は二十二年からといまを比較しましたから。
 戦前のときに平穏状態のときに〇・二五です。二十九年を一〇〇とした場合ですよ。ところが、四十四年の場合だと一七五ですね。そうすると、これは約七百倍になります。〇・二五のときは一千円でしたね、裁判所の管轄は。一千円の七百倍ということになる。そうすると、七万という数字が出ます。結局、少なくとも消費者物価を中心としてとった場合には、ほかの要素が入れば別です。ですけれども、消費者物価だけから計算してみますと、今度の改正でも、いまの十万でも高過ぎる。七万が妥当だという計算が出るのですが、こういうことまであなた方は研究されましたか。
#35
○寺田最高裁判所長官代理者 いま畑委員のお話のあれでまいりますと、七十万ということではございませんでしょうか。
#36
○畑委員 七十万になりますか。そうですがね。これはあとでひとつ計算してみてください。ちょっと概算したのですが、私のあれは間違いかもしれません。私の計算だとそう出ている。
 これについでに物価の関係との問題で表で割り出してみたのですけれども、いずれにいたしましても、今度の案というものは、一切ほかの関係とは関係なしで、昭和二十九年のときの状態に戻すのだ、こういうことが法務省並びに裁判所のほうの考えで、戻すのだということは、結局簡裁と地方裁判所の取り扱いの件数で、これの状態を二十九年の改正された状態ぐらいにまた戻したいというためには、ちょうどこれくらい上げればそれが戻るというようなことが提案の一応の理由になっておると思います。それでまた物価の点からいうても、さらに物価は一番低い。むしろ国民総生産、国民総所得、地価それから給与所得、そういったものはもっともっと多い。したがって、物価のほうでは二十九年に比べて七割増しくらいのところだけれども、そういう問題もあるしということで三十万を提案してきていると思うのです。ところが物価からしますれば、先ほど言ったように七割高。ところが、それが今度は三倍になる。その点だけからしぼってみましても、ほかのことをいろいろあなた方も資料を出しておりますけれども、消費者物価を中心として考えれば、これは多過ぎるのじゃないだろうかと私は思います。十八万ぐらいにするのが、少なくとも二十万ぐらいが、むしろその問題を中心とするならばその程度が一番――それならまだ話はわかるということにもなるのじゃないか。三十万を提案された理由はどういうことですか。提案理由にもちょっとありますけれども、どういうことでしょうか。消費者物価が一番値上がりが低いので、ほかの問題をむしろずっと加味して、ほかのものはみんな上がった割り合いがそれより多いのだから。だからちょうど三倍くらいが適当だ、こういうことでやられたのですか。それとも逆に、事務分配の関係上それが中心なのか、どっちなんでしょうか。要するに二十九年に戻すということが第一で、物価その他はつけ足しであるのか、物価その他の経済情勢の変動が先であって、それから地裁と簡裁との事務分配の関係のほうが二の次なのか、それを聞きたい。
#37
○影山政府委員 今回の改正は、提案理由にもございますように、全く経済事情の変化によるものでありまして、その結果として事件数の移動が起きるというつもりでございます。経済事情の変動でございますが、消費者物価指数もこの事物管轄をきめる場合の一つの要素ではございますが、その他いま御指摘になりましたように、国民総生産とか一人当たりの国民所得、たとえば約五倍半に前回よりなっておりますし、公務員給与その他勤労所得、可処分所得、いずれも三倍半をこしているような状態でございます。これらを考えますと、一体この事物管轄を定める場合に基準となるのは物価指数だけでいいであろうか、つまり一定の金額に対しての国民の生活意識から見た重要度というようなものも考慮されてしかるべきじゃなかろうかということで、こういう経済の成長に応じて十数年おくれて改正が行なわれておりませんでしたので、この成長にスライドするというだけの今回は改正のつもりでおったのでございます。
#38
○矢口最高裁判所長官代理者 もしこれを簡裁と地裁の割合という点だけから三十万という線がきまったいうものでありますれば、今回これを実施していただきました暁における両方の割合が旧に復することになるわけでございますが、現実にはそういうふうにはなっていないわけでございます。前回十万円にしていただきまして、一番地裁と簡裁の割合が開きましたのは、大体地裁が四、簡裁が六の割合でございました。しかし、今回の三十万というのは、いま影山部長からも御説明しましたように、経済の事情の変動ということを問題にして出てきたものでございますので、これを現実の事件数に引き合わせてみますと、なお地方裁判所には四八・四%の事件が残りますし、簡易裁判所には五一・六%の事件にしかならないという結果に相なっております。これはあくまで結果でございまして、しかも、この割合は、いま申し上げましたのは四十四年の事件をもとにして申し上げたわけでございますが、四十三年の事件をもとにした数字と比較いたしてみますと、おそらく本年中あるいは来年になれば確実に、また割合が地方裁判所のほうが多くなるというような予想がされるわけでございますので、単に事務分配ということでございますれば、むしろ別の観点からの調整をお願いするということに相なるのではないかと思います。簡裁が多うございました、簡裁が六、地裁が四というような状況に戻さなければいけないという観点だけから見てまいりますと、おそらく五十万くらいまで持っていかないとそういうふうにはならないのじゃないか、こういうふうに考えております。これからもおわかりいただけますように、決して事務分配ということだけを問題にしたのではない、このように御了解願いたいのであります。
#39
○畑委員 どうもしいて弁護士会等々の反対を意識して、事務分配関係のことは第二である、これでもまだそのほうからすれば足りないのだ、すぐまた追いつかれてしまうというようなことで、もっぱら経済情勢の変動だ、こういうふうに模範生答弁みたいなものをされておるけれども、しかし、それよりも何よりも、まずやはり事務分配の裁判所の都合、こういうことだとずばり私は思います。物価のほうはむしろつけ足しじゃなかろうかと思う。
 そこで、私はまだたくさん残っておるのですけれども、もう十二時半近く、本会議が二時からでございまして、一時半から各党の代議士会があるようであります。まだたくさん聞き残しがございます。しかし、食事もしなければなりませんでしょうし、本会議は三時間くらいかかるようでありますから、本会議後というわけにもなかなかまいりませんでしょう。ということで、そろそろ一応のはしょりをして、あとで別の日に質問を続けさしていただきたい。
 冒頭申し上げましたように、私は決してこの法案を引き延ばして、これを廃案に持っていこうとか、そういうけちな考えは持っておりません。ただ、問題が非常に根本の問題に属する問題でありますから、この際われわれ法曹の一人といたしましても、後に変なそしりを受けないようにやりたいというような関係から、十分に論議を尽くすという態度で終始をしたい。民主主義の原則に従うことはもちろんでありますが、そういう態度で進みたいと思いますので、そういう意味からもまだ実はたくさん残っておりますので、この点は委員長、あとで私が質問を続けることを理事会ではかっていただきまして、一応きょうだけの区切りをつけたいと思います。
 私は、先ほど冒頭にも申し上げましたが、今度のこの問題は、法そのものについては事物管轄の条項を十万から三十万にするというだけのことでありまして、きわめて簡単、ところが、問題の所在するところは非常に大きいと私は思っております。それなるがゆえに、弁護士会等でも非常な大きな反対をされておりまして、私の手元にもとりあえずこれだけの請願書が届けられております。法曹なるがゆえに、この法曹三者で十分に論議を尽くしてやってもらいたいということで、相当の反対意見もあるようです。いずれ参考人として日弁連の代表の方にも来ていただいて、その意見を聞いて、真摯に耳を傾けるべきものは傾けるというようなことでいきたいと思います。そういうことでひとつ問題は慎重に取り扱ってほしいと思います。簡易裁判所のあり方の基本に関する問題でございますから、われわれがこの最終判断を誤ったら大きなミスになると思います。そこで、いままで弁護士会との連絡協議というものについてどういう経過をたどってきたかということについて問いたいのですが、これはあまり時間がございませんから、いずれあとで詳しく聞くことといたしまして、詳しく触れませんけれども、まだ弁護士会との協議がととのわない段階で――どうもそうらしいですね。その最初の当時、弁護士会のほうは非常に非協力であったとかなんとかいう話があったようでございますが、それは単なる非協力ということではなくて、基本に触れる問題だからずばりとしたことがお互いに言い出せないということもあったでしょう。弁護士会の選挙その他との関係もあったでありましょう。そういうことで弁護士会としても、今日の状態までは急にいかなかったという点等もあるようでございまして、結局裁判所並びに法務省のほうでは、業を煮やしてこの提案に踏み切ったということのようであります。この辺に相当問題がある。弁護士会のほうは、そう緊急を要するものではないじゃないかと思うから、この問題は非常に重要であるからひとつ一年間だけ待ってもらって、その間に基本的な問題と同時にこの問題を討議をして、三者合意の上で、少なくとも裁判所と弁護士会は合意の上で、ある結論に達し得るようにという配慮で、この結論を持ってもらうように要請をしたそうだけれども、それが聞き入れられずに今日になったようであります。そのいきさつ等について一々問答を取りかわしたら時間が長くなりますが、お互いに言いたいことがあるのでありましょうけれども、そういう事情のようであります。
 そこで、この問題について、そうした基本的な問題にかかわる問題であるということであるので、慎重を期さなければならぬと思うが、その点について法務大臣並びに最高裁の事務総長はどうこの点について考えておられるか、この点をひとつ承りたいと思います。結局このことによって法曹三者の間に深いみぞができるということは決して得策ではない。長い目で見た場合に、やはり一年くらい研究課題としておいて、一生懸命でお互いに話し合うということのほうが、私は一年おくれてもそのほうが得策ではなかろうか、こういうふうに思います。問答無用で、いつまで待っても煮え切らぬ、ずばりやろうということで提案され、そして自民党三百名の議席かもわかりませんが、もしそんなふうな意向であるということでありますれば、私はいけないと思います。その点ひとつそういう趣旨でどうこの法案の処理についてお考えになっておるか、御両者にお聞きいたしたいと思います。
#40
○小林国務大臣 この問題は、実はもう昨今の問題でないことは御承知のとおりでありまして、裁判所におきましてももう三、四年来いろいろなお考えなり、御相談もされてきた、こういうことでございますし、また弁護士の中には、実は正直に申すと、私どもあれを早くやってもらいたい、こういうことをいろんな人が言って来る人がございまして、弁護士会の中の御意見が必ずしもまとまっておると、こういうふうなことはなかなか言い切れないという事態もございますし、裁判所側においてももう十分御相談になった上でこういうことの決心をされたと思うのでございます。それは実は弁護士会の中にもいろいろな御意見がおありになりますから、私はこの際はやはりひとつこれは一応区切りをつけたらどうだろうか、こういうふうに強く考えておりまして、法務省といたしましては、何とかひとつ国会側の御了承を得て成立させたい、こういうことをいまも強く考えております。
#41
○岸最高裁判所長官代理者 簡易裁判所の事物管轄の問題につきましては、昭和四十年九月三十日、日弁連の当時の事務総長と最高裁側の私との間で、この問題は、ほかの問題――具体的には法曹資格の問題であります。そういう問題とは切り離して、そして事物管轄の問題について早急に実現をはかるようにいたしたいという約束を取りかわしたわけであります。ところが、具体的にはその後の経過につきましてはこれは長くなりますから、いずれ別の機会にその事情をよく知っております総務局長から御説明申し上げるのがよろしいと思いますが、その後第一審の裁判のあり方という題で相当期間今日まで弁護士会との間の連絡協議会に、裁判所は胸襟を開いてお互いに意見をかわすという態度でまいったのであります。ところが、弁護士会内部の事情もありまして、なかなか中身に入って論議するということまでできない事情でありました。
 一方、裁判所のほうで何回か開かれました高等裁判所長官、地方裁判所長の会同の席でも事物管轄の調整の問題を早急に実現してもらいたい、そういう強い要望が何回もございました。これらの長官、所長の方々はそれぞれの管内の事情を十分把握しておられる方で、その裁判所全体の強い希望であると申すことができると思います。われわれもずいぶん努力いたしましたが、最後まで弁護士会との連絡協議を終了することができませんでしたが、かような事態になりましてはやはり早急にこの法案を国会にお願いして一日も早く成立さしていただきたい、かように考えております。
#42
○畑委員 御両者ともその責任の立場でこの法案を提案をしたんだし、その立場はわからないでもないのでありますけれども、ともかく今度のこの委員会の審議を十分に尽くして、どう処置するかということはわれわれ自身がきめるべき問題でありまして、もちろん法務省あるいは裁判所できめるというものではないという性質であることは承知いたしておりますけれども、しかし、提案された立場からいたしますならば、いまの答弁は一応ごもっともとも思いますけれども、この審議を通じて熱心にこれからもひとつ十分審議を尽くすということでいってもらいたい、かように考えております。あとでのっぴきならないようにならないようにということを、実は私は切に心から希望いたしておるわけです。そういうことを配慮ずるからこそ、また私も法曹の一人でもあるからこそ、特にその点を強調したいと思うのであります。
 時間もどうやら参りましたので、先ほど申し上げましたようなことでありますので、あとでさらに私の質問を別の機会に続けさせていただくということを含んで、以上できょうの私の質問を終わりたい、かように考えます。
#43
○瀬戸山委員長代理 委員長から申し上げます。
 畑委員は残余の質疑を希望されておりますが、この問題は次の理事会で御相談を願うことにいたします。
 なお次は、先ほどの理事会の御相談では林孝矩君が質疑をされる順序になっておりますけれども、林君の御了解があるそうでありますから、本会議の都合もありますので、松本委員、約三十分間やっていただきたいと思います。
 それでは松本善明君。
#44
○松本(善)委員 法務大臣、この法案につきましては単なる物価とか経済状況の問題ではなくて、簡易裁判所のあり方の問題、ひいてはわが国司法の将来に関する重要な問題であると思うのでありますが、法務大臣はこのことの結果がそういうような問題になるのだということを御認識していらっしゃいましょうか。
#45
○小林国務大臣 これはそういう議論もありますが、裁判そのものの組織、こういうことにつきましては最高裁判所側で十分お考えの上でお出しになっておる、こういうことでございますので、私どももその意見を尊重する、そういうことでございます。
#46
○松本(善)委員 法務大臣は、いま弁護士会でもやってくれというようなことを言ってくる人があるということでございますが、私もごく最近に日本弁護士会の幹部の方々とお会いいたしましてお聞きいたしましたところでは、この法案そのものに反対であるということについては変わりはない、これは全部一致しているということであります。これは参考人として日弁連の代表がおいでになってまたお話しになることであろうと思いますが、かつてこの種の法案につきまして日本弁護士連合会が反対をしたまま、日本弁護士連合会との意見の調整を終わらないで提案をするということが法務省としてはあったであろうか。この点について法務大臣は認識されておるかどうか。一体これは日弁連の意向を無視したままやるということがどれだけ重大なことであるかということを御認識になっておるかどうか、法務大臣にお聞きしたいと思います。
#47
○小林国務大臣 これはもう法曹の全体の合意があることが一番けっこうなことで、そうあるべきだと思いますが、この問題につきましては、昨今の問題でなくて相当長期間にわたって最高裁とも、あるいは法務省ともお話し合いの上でどうしても今日まで合意ができない、したがって、ただこれをじんぜんとして延ばしておくことは、裁判所の側においても非常にお困りだ、そういうことでありまして、これは弁護士からそういう話があったということは、弁護士会からということではなくて、弁護士会を構成しておるそういういろいろの人から申し出があったということも事実でございます。しかして、いま言うようにもう数年にわたってこの問題もお話し合いになり、また今回これを提案するについてもいつ幾日まで待ってもらいたいということもありましたが、これらについてもこれを提案するについてはそういうふうな手だてもいたしたのでありますが、究極において、とにかくこのままではいつのことかわからぬ、こういうことで裁判所はお出しになりたいということを切望いたしますし、私どももいまの状態においてただじんぜんとして延期することが裁判の進行上非常にお困りだ、こういうことだから提出したのでございまして、出し方について私は万全であったとは思いません。なるべく一緒に合意の上で出すのがとるべき手続であろう、こういうふうに考えております。
#48
○松本(善)委員 事務当局でもけっこうですが、こういう司法全体に関係をする問題について日弁連の意向を無視して提案したことがいままであったか、お答え願いたいと思います。
#49
○影山政府委員 ちょっといま手元に記録がございませんけれども、法務省には御承知のように法制審議会がございまして、法制審議会には弁護士会の御推薦による委員の方も出、第三者である学識経験者も出ておられまして、こういう法案はいずれも法制審議会にかけまして、御審議を願って出しておりますので、そういう意味で日弁連、弁護士会の御意向は、少なくともそういう機会を通じまして伺っているわけでございます。
#50
○松本(善)委員 端的にお聞きしますが、弁護士会の意向を無視して提案したことはありませんか。ありますか。――ないはずです。
#51
○影山政府委員 前回の二十九年の改正のときのことで記憶がございませんけれども、国会で参考人として日弁連の方が、政府の二十万円という提案に対して十万円を相当とするという御意見をお述べになったのを見ますと、特にその提案の際に御意見を伺ったかどうか、私、現在記憶ございませんけれども、反対の御意向であったのではないかと思われます。
#52
○松本(善)委員 法務大臣にお聞きしますが、事務当局でもたいへんあいまいな話であります。私どもが調べた範囲では、この種の場合には必ず日弁連にいろいろの話があって、そして意思統一をしてやっている、これがいままでの慣例でございます。法務省の中で日弁連の意向を無視して提案するということの重大性について、いまの答弁では私はほとんど論議をされていないのだ、これがわが国司法の将来にどういう問題を投げかけるのかということについてほとんど討議をされていないのだと思いますけれども、法務大臣、そうではないでしょうか。この問題について法務省の中では一体論議がされたでありましょうか。日弁連の意向を無視したままやっていいかどうかということについて論議をされたのでありましょうか。そしてもし論議されたのならば、無視してよいという根拠は一体どういうことで主張されたか。
#53
○小林国務大臣 無視してよいとは考えませんが、そのことも論議をいたしましたけれども、この際やむを得ない、こういうことで提出いたしたのでございます。
#54
○松本(善)委員 事務総長にお伺いいたしますが、民事事件にいたしましても刑事事件にいたしましても、弁護士なしでわが国の司法を運営していくことはできないと思います。弁護士会の正式な意見を無視して、一体司法行政というものが円滑にいくものでありましょうか。裁判所はそういうふうに考えておられるのかどうか。今後とも日弁連とはそういうふうな対立をしていっても裁判所だけでやっていくのだ、それでやっていける、こういうふうにお考えでありましょうか。
#55
○岸最高裁判所長官代理者 司法制度の問題につきましては、法曹三者が一致協力して考えていくべきものと考えます。われわれもその線に沿ってこれまで弁護士会との間の問題に対処してまいりました。しかしながら、裁判所側の強い要望もありますことで、事情やむを得ずこれが十分に最後まで協議を遂げることができなかったのは、はなはだ私どもも遺憾と思います。しかし、これはそのときの事情によることでありまして、決してこれがいいとは思っておりません。裁判官会議にも弁護士会との連絡協議の経過を詳細に説明し、御報告いたして、そしてこの際全国の裁判所の要望に沿うべくこの事物管轄の問題を国会にお願いするかしないか、慎重に検討していただいた結果、裁判官会議におかれても、これはやむを得ない、この際、今国会においてぜひ成立させていただくようにすべきである、こういう結論になったわけであります。
#56
○松本(善)委員 法務大臣にお伺いしたいのでありますが、事務総長にいたしましても法務大臣にいたしましても、これは決して望ましいことではないというお話であります。ところが、この問題に関して論じなければならない問題は、簡易裁判所の性格の問題、それからひいてはわが国の司法全体のあり方の問題、それからさらには毎回毎回裁判所の職員の定員法の問題で論じられておりますけれども、裁判所の人員増加の問題、予算の問題、そういうようなわが国の司法全体に関する問題がからんでおるわけであります。そういう問題につきましても日弁連としてはいろいろ考えながら協議を続けてきた。今度の成富新会長にもお会いいたしましてお聞きいたしましたけれども、成富先生は対立候補なしで日弁連の会長に選ばれた方であります。その成富会長も、何としてもこれは今国会で成立させるのをやめてほしいというふうに言われておる。それがわが国の司法のために必要だというふうに言われておる。そこまで日弁連の正式の代表が言われておる。その事態を無視するほどの緊急性が一体この法案にあるだろうか。わが国の司法の将来について法曹三者がほんとうに真剣に論議をして、そうして成立をさせるということが、法務大臣にいたしましても最高裁の事務総長にいたしましても、これが望ましいというふうに言われるならば、それを上回るほどの今国会で成立をさせるという緊急性がなければならないはずであります。そんな緊急性が一体どこにあるのだろうか。これは政府の司法行政全体についての考え方に非常に重大な問題を提起しておるのじゃないか。これはやりかけたからやってしまうのだというような安易なことでなくて、国会の論議の中でも問題が起こってくるならば、一歩引き下がって考えるということがあってしかるべきものであります。そういう点を考えに入れた上でそういう緊急性がどこにあるかということを法務大臣に御説明をいただきたいと思います。
#57
○小林国務大臣 これは御承知のとおり、昨今起こった問題ではありません。もう数年前からの問題で、そして十分お話し合いが行なわれた、こういうことで、たまたまそれが合意を得られないということでございまして、緊急性そのものはわれわれも考えなければならぬが、一番これを認めるのは裁判所でございまして、裁判所側が強い御希望を持っておることはわれわれとしても十分尊重しなければならぬ、かように考えております。
#58
○松本(善)委員 裁判所についてもあとで伺おうと思いますけれども、裁判所が希望されておるというだけで――政府として司法行政全体について責任を持っていく、提案をするのはあくまでも政府であります。佐藤内閣であります。政治的に一体日弁連とそれから裁判所が対立したままこの法案を成立させるということが、わが国の司法の将来についていいのかどうかということについての当然の政治判断がなされなければならないはずであります。裁判所が要望しておるからということでただ機械的に国会に提案をしていいものではなかろうと私は思う。また提案をしたからといって、どうしてもそれを強行していいというものではなかろうと思います。その点について法務大臣はあらためて一歩引き下がってお考えになるという気は全くございませんですか。
#59
○小林国務大臣 日弁連のことも十分考えました上に、やはりこの際やむを得ない、こういうことだから、いま私どもとしては率直に申せば一歩引き下がって考える、こういうことは考えておりません。
#60
○松本(善)委員 それでは審議を通じてもお考えいただきたいと思うのでありますが、法務大臣自身の政治的な判断といたしまして、この国会で成立をさせなければならないという緊急性をどこにお考えになっておりますか、お聞きしたいと思います。
#61
○小林国務大臣 これは、一番われわれが参考とし尊重しなければならぬのは最高裁の判断でありまして、最高裁が強く緊急性を認めてこの国会で成立を期待する、こういうことであれば、私どももこれを十分に尊重しなければならぬ、こういう立場にあると存じます。
#62
○松本(善)委員 それでは事務総長にお伺いしたいと思いますけれども、最高裁が日弁連との今後の対立ということを考えに入れても、この法案を今国会で成立させなければならないという理由は一体どこにあるのか。これはあらためて私は申し上げますが、日本弁護士連合会がこれだけこの法案についての反対運動をするということはかつてなかったことであります。日弁連が司法についての意見を無視されるということはかつてなかったからであります。その意見を無視をしてまで、日弁連の会長以下がこうやって国会へ来てまでいろいろな運動をしなければならないほど切実に考えている問題について、それを無視をして最高裁がどうしても今国会で成立をさせなければならないというふうに考えておられる緊急性というのはどこにあるんだろうか、お答えいただきたいと思います。
#63
○岸最高裁判所長官代理者 先ほど申しました昭和四十年九月三十日の双方の事務総長の間の取りきめと申しますか約束、その際にもこの事物管轄の問題は早急に実現をはかろう、当時は弁護士会においてもそういうふうに考えておられたわけであります。そして先ほど申しましたように、その具体的な経過がどういうものであったかということは、別の機会に総務局長からこの席で説明してもらいたいと思っておりますが、とにかく裁判所としては弁護士会に呼びかけ、そして早く中身に入って審議しよう、そういう態度でまいりましたにもかかわらず、弁護士会の内部事情で中身には入らない。しかも最近は何回か交渉を持ちましたが、あの事務総長同士の間で取りかわした約束は、あれを一方的な裁判所の願望にすぎないのだ、そういう意見すら吐かれる連絡員の人もあったくらいであります。それで要するに事物管轄を調整するということはすでに四年前から双方がそれを認めてきたことであります。そういういろいろな諸事情から、やはりこの際、この機を逸してはこういう問題は解決できないのではないかというふうに思われるのであります。
 なお、現日弁連会長が四月の二日に入江最高裁長官代理を訪問されまして、一年間延ばしてくれぬか、この間に自分は裁判所と日弁連との間の関係をよく調整したい、しかしそれができるかどうか、それはやってみなければわからない、そういうお話がありました。それに対して長官代理は、この問題については多年裁判所として努力を続けてきたんだ、そして裁判官会議で検討した結果でも、やはりこの際この実現をはかるべきだ、そういう結論となりました。その結果やっておることで、これ以上一年間も待つことはできないということをはっきり会長に長官代理からお話ししてあるわけであります。
#64
○松本(善)委員 事務総長のお話では、非は日弁連側にあるというお話しかうかがえなかったわけであります。私はそういう態度で裁判所は臨んでいいのかということをお聞きしております。連絡協議をやっていて、非は日弁連にあるんだ、日弁連の会長がわざわざ出向かれて調整をしたい、一年間待ってほしいと言われたのに対して、それが信用できないと言われるのかどうか。日弁連会長が言われることを――それはもちろんやってみなければ、結論について会長が独断で私はこういうふうにしてやりますというふうにはなかなか言えるものではなかろうと思います。しかし、日弁連の会長がそういうふうに言われるということについて、これを信頼していかないということになりますれば、これはわが国の司法の将来にとってたいへんな禍根を残すということにはなりませんでしょうか。事務総長はそのことについてどうお考えになりますか。
#65
○岸最高裁判所長官代理者 法曹三者が協力体制をとらなければならないということは言うまでもないところであります。そして臨司意見書の中にも、司法協議会の設置という項目があげられておりまして、すみやかに法曹三者がこの協議会を持ってそうして問題を考えていくべきである、そういう項目があげられております。にもかかわらず、この司法協議会すら弁護士会の内部の事情で設置することができない、こういう状態であります。裁判所と弁護士会とが対立するというような態勢を今後続けていくということは、決してよいことではありません。これは申すまでもないことであります。裁判所としましては、従来どおり胸襟を開いて弁護士会のほうに呼びかけ、積極的な態度で協議すべきものは協議していきたいと考えておりますが、今回のこの事物管轄の問題につきましては、従来の経過から見て万やむを得ない措置だ、かように考えます。
#66
○松本(善)委員 事務総長、まだ私のお聞きした点について御理解いただけないようでありますが、なるほど経過はわかりました。そして裁判所がこの国会で成立させたい、やむを得ないというふうに考えているということもわかりました。私がお聞きしているのは、日弁連とのそういう対立をはらむことになる、そういうことを考えて、それを越える緊急性というのは一体どこにあるのだ。話がついてからきめたいというのを、これは望ましいというなら、そのために努力していいじゃないか。その努力はもう一切今後しないのだといって開き直ってやっていかなければならない緊急性は一体どこにあるのか。今国会で成立しなければなぜ困るのか。あるいは臨時国会もあるかもしれません。日弁連と話がついたら、あるいはこういう論議なしに一ぺんに国会を通過するということも考えられる。そういうようなこともできない、どうしても反対を押し切ってもやってしまわなければならないというふうに言われる緊急性はどこにあるのかということであります。
#67
○岸最高裁判所長官代理者 先ほど申しましたが、日弁連会長が長官代理に一年間延ばしたらどうかということを申されましたときに、できるかどうかそれは自信はない、結果はわからぬ、そういうことを申しておられたわけです。そういう成否未定の関係のものについて漫然とそれ以上裁判所が待つということはこれはできないことだと思います。これまでの連絡協議も約束の期日が何度も弁護士会側の事情で流されてきております。従来の経過から見まして、はたして一年以内に話がつくかどうか、そういうことについては会長自身もそれは結果はわからぬと申されますが、私どももはたして一年これを待ってうまく話がつくかどうかについては疑問を持っています。
#68
○松本(善)委員 結局日弁連は信用できぬということじゃありませんか。それでいいのかということなんです。私が聞きますのは、この国会で成立させなければどういうふうに困るのですかと言っているのですよ。そのことを具体的にあげなければわかりませんよ、国会では。
#69
○岸最高裁判所長官代理者 物価スライドあるいは経済事情の変動に伴って事物管轄の訴額を上げる、これは先ほどから説明していることであります。その結果として第一審の民事裁判の地裁、簡裁における負担が調整される。このことは現在の裁判所にとって非常に大事な問題であると思います。
#70
○松本(善)委員 角度を変えてお聞きしますが、もし本年度におきまして最高裁が政府に要求されたように約八百人の人員増加が認められるというようなことになりました場合に、これは負担の軽減という問題は解決をするのではありませんか。
#71
○岸最高裁判所長官代理者 裁判官の増員ということは一朝一夕にできるものではありません。したがって、増員によって負担の軽減をはかるということは、これはよほど時間をかけてやらなければならぬ問題だと思います。
#72
○松本(善)委員 私も増員が一朝一夕にできるとはもちろん思いません。これはわが国の司法の戦後のあり方あるいは戦前からのあり方にも関係するきわめて重要な問題だからだろうと思います。これはまたあらためて論じますけれども、しかし、そういう問題を含めて、日本弁護士連合会と協議をしなければならないはずではありませんか。裁判官の給源の問題にいたしましても、これは法曹三者共通に考えなければならない問題であります。そういう問題を含めて日弁連等も今後の意思統一をしなければならない。そういう問題をはらんでおるだけに、日弁連と対立したままやってはいかぬのではないかということを私どもは盛んに言っているわけです。
#73
○岸最高裁判所長官代理者 いかにして裁判官の数をふやしたらいいかという問題は、連絡協議が発足した最初に取り上げた問題で、当時の連絡協議において十分双方の意見を取りかわしております。そしてできる限り優秀な弁護士の方が裁判官になられる、裁判官を希望されるような措置としてはどういう方法がいいだろうか、そういう問題についても相当時間をかけて、発足の当初連絡協議においてお互いに意見を交換しております。
#74
○松本(善)委員 しかし、最高裁がそういうことを日弁連に期待をされているとすれば、ますますもっていまの態度を改めらるべきではないでしょうか。日弁連と協議をしないでこの対立をますます拡大をしていって、一体裁判官を弁護士の中に求めるというようなことができますか。そういう問題をはらんでいるということを、事務総長ほんとうにお考えになりませんか。
#75
○岸最高裁判所長官代理者 何度も申し上げまするが、これは従来の経過をこまかく説明しなければ十分おわかり願えないと思います。それはまたあらためて別の機会に総務局長からここで説明いたさせることにいたします。
 われわれ裁判所側としては、意見の相違は相違として、お互いに意見の違いはあってもよろしいのです。しかし、それにこだわるというようなけちな感情は持っておりません。今後も日弁連とできる限りの連携をとっていきたいという気持ちについては、従来と少しも変わっておりません。
#76
○松本(善)委員 事務総長にいたしましても、この問題の重要性をまだまだ認識されていないというふうに私は思います。それは、日弁連がこういう運動をしたことがありますか。税理士会でありますとかあるいは司法書士会であるとか、いろいろ立法の過程においては運動したことがあります。しかし日弁連が、私の知る範囲では、こういうような運動をしたことはありません。それは日弁連の意向というものは当然に聞かれ、それが立法の中で反映されるのはきわめて常識的なあたりまえのことで、それが踏みにじられるというようなことは考えられないことなんです。それだけ日弁連の――メンツということばが適当かどうかわかりませんけれども、日弁連の権威を踏みにじって、そうして最高裁の考えておるようなことが実現できるというふうにお考えだとするならば、法曹のあり方の問題について、事務総長の考え方は非常に間違っているというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#77
○岸最高裁判所長官代理者 日弁連が今回のような運動をしたことがあるかないか。まずその点でありますが、私もはっきりその点について正確な記憶、知識は持っておりませんけれども、例の司法試験法改正が問題になったときに、弁護士会が国会方面にずいぶん働きかけをされたという事実があるように聞いております。
 なお、重ねて申し上げますが、われわれは決して日弁連を敵対視しているわけではなく、裁判所の呼びかけに対して先方が応じてくだされば幾らでも十分話し合いはできることであり、また今後もそうありたいと思っております。
#78
○松本(善)委員 私が個人的に成富日弁連会長からお聞きしたところでは、成富会長は、裁判官の給源の問題についても論じておられました。この問題はわが国の司法については非常に大きな問題でありますから、それを日弁連の意見として公式にまとまったというようなものはあるいは述べられないかもしれない、あるいはそれぞれいろいろな考え方があるかもしれません。しかし、会長はそれなりにちゃんとそういうことを考えておられるわけです。その会長がそういうふうに動かれておるというのに、いや提案した以上はもうだめだということでは、私はこれはわが国の司法に重大な禍根を残すことになるだろうと思います。
 きょうは委員長のお話で三十分くらいでやめてくれということでありますので、私はこれで終わろうと思いますけれども、これはそういう重大な問題を含んでいる。簡易裁判所の性格の問題、それから裁判所の裁判官の給源の問題、それから毎年毎年論じられます裁判所の予算や人員の問題、そういうようなことに関係をしておる重大な問題なんだ。ちょっと一回や二回の審議をしただけで、事務的に物価の問題でございますというようなことでやっていくような性質のものでは決してない。最高裁の事務総局もそういう問題に関係しておるのだということを十分御承知の上のはずであります。それは経済状況の問題だけだというようなことを言って、国会で提案を可決していくということは私は許されないことだと思うのです。もっと正々堂々と司法の問題について国民の前に論議をして、そして正しい方向で解決すべきものであります。それが事務総長にいたしましても、法務大臣にいたしましても、国民に負っておる責任ではないか。私は、そういうような重大な問題であるということを法務大臣は認識をされ、最高裁の事務総長は最高裁の裁判官各位にお伝えいただいて、そしてこの問題に誤りなきよう処置してもらいたいと思うわけであります。
 私は、さらにたくさんの問題点をこの法案について感じておりますので、これだけで終わるわけにまいりませんけれども、きょうは時間の関係もございますのでこれで終わりますけれども、委員長におかれましても、この法案の処理については、そういう重大な問題だということをお考えいただいて処理をしていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
#79
○瀬戸山委員長代理 次回は、来たる十四日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後一時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト