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1970/04/28 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第22号
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1970/04/28 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第22号

#1
第063回国会 法務委員会 第22号
昭和四十五年四月二十八日(火曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 瀬戸山三男君
   理事 田中伊三次君 理事 畑   和君
   理事 沖本 泰幸君
      石井  桂君    島村 一郎君
      中村 梅吉君    羽田野忠文君
      福永 健司君    細田 吉藏君
      松本 十郎君    村上  勇君
      大野  潔君    林  孝矩君
      岡沢 完治君    松本 善明君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 小林 武治君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
 委員外の出席者
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十七日
 辞任         補欠選任
  赤松  勇君     三宅 正一君
  岡沢 完治君     西村 榮一君
同月二十八日
 辞任         補欠選任
  永田 亮一君     細田 吉藏君
  西村 榮一君     岡沢 完治君
同日
 辞任         補欠選任
  細田 吉藏君     永田 亮一君
  岡沢 完治君     西村 榮一君
    ―――――――――――――
四月二十七日
 在日中国人の広州交易会参加に関する請願外十
 九件(下平正一君紹介)(第三九一七号)
 同(中嶋英夫君紹介)(第三九一八号)
 同外二十件(下平正一君紹介)(第四〇三六号)
 裁判所法の一部を改正する法律案反対に関する
 請願(岡沢完治君紹介)(第四〇二九号)
 同(寒川喜一君紹介)(第四〇三〇号)
 同(栗山礼行君紹介)(第四〇三一号)
 同(西尾末廣君紹介)(第四〇三二号)
 同(西村榮一君紹介)(第四〇三三号)
 同(吉田賢一君紹介)(第四〇三四号)
 同(吉田泰造君紹介)(第四〇三五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 航空機の強取等の処罰に関する法律案(内閣提
 出第一〇八号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 航空機の強取等の処罰に関する法律案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。瀬戸山三男君。
#3
○瀬戸山委員 私は、航空機の強取等の処罰に関する法律案、これは御承知の日航「よど号」のいわゆる乗っ取り事件に関連して、急遽政府から提案されたものでありますが、新しい犯罪形態ができたということで、この種の刑罰法規が欠けております現在においては、当然早急に国としては制定すべきものである、こういうふうに考えておりますが、そういう考えを前提にして、将来この法律の解釈等について疑義を残さないために、若干の質問をしておきたいと思っております。
 そこで、まず第一にこの第一条の読み方であります。第一条は簡単でありますけれども、法律家は別としてしろうとから見ると、なかなかこれはややこしい表現になっている。そういう意味で、将来できるだけ疑義を残さないように、この際、当委員会で解明をしておきたい。まあ手段として暴行または脅迫による航空機を強取するいわゆる乗っ取りということであります。それから「その他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、」云々と、こういうふうにいろいろ書いてあるわけであります。そこでお尋ねしておきたいことは、どういうふうにつながるのかということです。この航空機の強取にはこの二つの手段はどういうふうにつながるのか、これをまずひとつここで明らかにしておいていただきたい。
#4
○辻政府委員 ただいまの第一条の要件でございますが、この趣旨といたしますところは、手段といたしまして、一つが暴行でございます。次に第二が脅迫でございます。第三がその他の方法により人を抵抗不能の状態におとしいれる。この三つでございまして、方法としては暴行一つ、脅迫一つ、それからその他の方法により人を抵抗不能の状態におとしいれる、これが一つ、この手段が三つございまして、この三つのいずれかの方法によって「航空機を強取し」または航空機の「運航を支配した」とかように私どもは解釈いたしておるわけでございます。
#5
○瀬戸山委員 そうしますと、暴行または脅迫、その他の方法によりいわゆる抵抗不能の状態におとしいれる、この三つの手段が航行中の航空機を強取する、これにつながる、こう解しているわけですね。
 それからもう一つ、運航支配という点がありますが、これはどういうふうにつながるかという、これも明らかにしておいていただきたい。
#6
○辻政府委員 ただいま申し述べました暴行または脅迫または抵抗不能の状態におとしいれて、このいずれかの手段によりましてほしいままに運航を支配した、かように続く趣旨でございます。
#7
○瀬戸山委員 それでまあ次の形態というのがそういう形であらわれてくる、行なわれた場合。これで明らかになったと思いますが、そこで暴行、脅迫は従来から各種の刑法その他の法律概念がありますからわかりますが、その他の方法により人を抵抗不能の状態におとしいれる、この態様といいますか、これの手段、方法、これは一体どういうことを想定して法案をつくっておられるかという、これをお伺いします。
#8
○辻政府委員 この「その他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、」ということの意味でございますが、私どもは、これは暴行、脅迫以外の方法によりまして人の意識作用に一時的または継続的な障害を生ぜしめて相手方を抵抗する能力が全くない状態にしてしまう、かような意味でございまして、これは現在の刑法の二百三十九条の人を昏酔せしめて物をとるという場合が一つのいわゆる昏酔強盗として強盗の一形態になっておりますが、それと実際問題としては大体一致するものと考えております。要するにこの「抵抗不能の状態に陥れて、」といいますのは、抵抗できないような状態にしてと、かような趣旨でございます。
#9
○瀬戸山委員 概念的にはそうでしょうが、どういう手段、方法をおおむね想定されておるか。
#10
○辻政府委員 これは、たとえば麻酔剤をかがすとか睡眠剤を飲ますとか、かような方法によって抵抗できない状態にしてしまう、かような場合を考えておるわけでございます。
#11
○瀬戸山委員 昏酔する場合、いろいろあると思いますが、まあ麻酔剤なんか一番適当だといいますか、頭をなぐって昏酔することもあるのですが、それは暴行ということになると解してよろしいですね。――そこで、暴行、脅迫により強取するというのと、もう一ついわゆる「抵抗不能の状態に陥れて、」強取するとありますが、それともう一つ次の形態として「ほしいままにその運航を支配した者」と、いわゆる強取と運航支配と区別されておる。これもひとつ解明しておいてもらいたい。
#12
○辻政府委員 本条の「強取」でございますが、これは強盗罪にいいます強取と全く同じ意味でございまして、本条の場合には航空機そのものを不法に領得する意思で暴行、脅迫を用いて、あるいはその他の方法によって乗客や乗り組み員の反抗を抑圧して、機長の占有支配しております航空機を自己の占有に移すということでございます。
 それから、ほしいままに運航を支配するというのは、やはり先ほど申し上げておりますように、暴行もしくは脅迫を用い、またはその他の方法により人を抵抗不能の状態におとしいれまして、乗り組み員らの反抗を抑圧して、航空機の運航に関する権限を奪い、自己の意のままに運航さぜる、かような状態をいうものと解しておりまして、結局この強取といいますのは、刑法の観念にございます不法領得の意思をもって占有を奪うという場合でございますが、「ほしいままにその運航を支配した」といいますのは、財物である航空機そのものを不法に領得するという意思はない場合でございまして、その者は不法領得の意思はないけれども、航空機の運航に関する権限を自己に完全に奪い取ってしまう、かようなことを意味しているわけでございます。
#13
○瀬戸山委員 当然のことと思いますが、いままでの説明では、何かたとえば機長、飛行機を支配しておる権限者に暴行もしくは脅迫を加え、その他の方法によって抵抗不能の状態におとしいれて、一種の強制をもって飛行機の運航を支配する、こういうふうな積極面といいますか、この御説明だけであったように思います。そういう状態におとしいれて――めったにないことかもしれませんが、諸外国では全然皆無ということはなかったと思います。航空機の操縦ができる犯人がそういう状態におとしいれて、みずからどこかに飛んでいった、これはもちろん入ると思うのですが、いかがですか。
#14
○辻政府委員 いま先生の、犯人がたとえば機長を暴行、脅迫いたしまして、機長をどこかに押しやって、機長の占有あるいは機長の運航管理の権限を奪ってしまいまして、みずからが飛行機を占有するか、あるいは航空機の運航を支配いたしまして、そしてみずから操縦していくという場合が本条に当たることはもちろんでございます。
#15
○瀬戸山委員 次は第二項の未遂罪との関係でただしておきたいことは、強飯または運航支配、これには一体目的を必要とするのかどうか。強取はもとよりでありますが、運航支配の目的をもって暴行、脅迫、またはその他の方法により抵抗不能におとしいれる。目的がない場合が想定されることもないとは限りませんが、未遂罪の関係でどういうふうにこれを解釈すべきか、これをひとつ明らかにしてもらいたい。
#16
○辻政府委員 これは典型的な例といいますか場合を想定いたしますと、航空機をいわゆる乗っ取る意思で機長、乗り組み員に暴行、脅迫を加えた。ところが機長や乗り組み員や、あるいは乗客の抵抗によってその本来の目的を遂げなかったという場合が、典型的なこの未遂罪であろうと思います。
#17
○瀬戸山委員 いま私が問いたいのは、それにはそういう目的を必要とするのか。そんな目的がないのだけれども、機長がどうもふだん何かしゃくにさわる、それで暴行、脅迫を加えた、あるいは昏酔させた、そして飛行機をどこに持っていこうという意思がない場合も未遂に入るのかどうかというのを確めておるのです。
#18
○辻政府委員 これは刑法の強盗罪の場合と全く同じでございまして、犯人が強取の場合だけに例を限って申し上げますと、航空機を強取するという一つの犯意と申しますか、事実の認識を持ってあえてこの犯行に出るということが必要である。一般の刑法の場合の犯意の問題に当たると思うわけでございます。
#19
○瀬戸山委員 もうちょっと突っ込んでいくと、ハイジャッキングの目的がある場合、こういうことですね。
#20
○辻政府委員 ハイジャッキングを行なうつもりでやる、ハイジャッキングの事実を認識してあえて行なう、かようなことでございます。
#21
○瀬戸山委員 もう一つ突っ込んでおきますが、そういう目的、そういうねらいがないで、ここに書いてあるような手段を講じたときには、それに該当する他の刑罰法規で罰する、それに当たる。こういう意味ですね。
#22
○辻政府委員 さようでございます。たとえば、航空機を乗っ取るつもりは全然ない、機長が非常ににくいやつであるから暴行、脅迫を加えたという場合には、単なる暴行罪であるとか脅迫罪が成立する、かような趣旨でございます。
#23
○瀬戸山委員 今度は第二条に関してですが、第二条は、第一条の罪を犯し、よって人を死亡させた者の罰条でございます。そこでいまお問いしたことに関連するのでありますけれども、強取または運航支配の目的でない場合に第二条の死に至らしめた、この場合はどういう罰条になるのですか。
#24
○辻政府委員 第二条は、第一条の罪を犯して、その結果、よって人を死亡させた場合でございますので、第一条が全然成立しない場合にはこの第二条が成立しないことは申すまでもございません。したがいまして、全然航空機を乗っ取る意思がなくて機長をなぐって死なせたという場合に、初めから殺意がなければ単なる傷害致死であり、殺意を持ってなぐり殺したというなら刑法上の殺人ということになるのでございまして、第二条の適用はございません。
#25
○瀬戸山委員 今度は第四条についてお尋ねをいたします。
 第四条「偽計又は威力を用いて、」云々ですが、第一に、「偽計」というのはどういうものを想定しているか。いろいろの場合があると思いますが、この面の例示を考えておられたら明らかにしておいてもらいたい。
#26
○辻政府委員 第四条の「偽計」でございますが、これはもとより刑法二百三十三条の偽計業務妨害罪における偽計と同じ意味に解しております。例といたしましては、たとえば急病を装ってどこどこへ行ってくれというようなことを言ったという場合、あるいは何もないのに急に事故が起きたからどこへ行ってくれというふうに針路を変えさす、かような場合がこれに該当すると思います。
#27
○瀬戸山委員 航空法にいろいろな航空管理の規定がありますが、私はそのほうの専門家ではございませんからよくわかりませんが、信号なりあるいはレーダーなり、いわゆる技術的なものがいろいろあると思うのです。そういう方面で行なわれた偽計というものも当然入るのですか。
#28
○辻政府委員 結論として入ると思いますが、この偽計をめぐらす相手方と申しますか、偽計の対象は、必ずしも機内にある乗り組み員その他に限らない。機外の管制関係の人に対して用いて、その結果その運航が阻害されればやはり第四条が適用される、かように考えております。
#29
○瀬戸山委員 そうしますと、航行中の航空機に関しては、航空機外でもこの犯罪をやり得る、こういうことですね。
#30
○辻政府委員 さようでございます。
#31
○瀬戸山委員 同じ第四条中に「威力」ということがございます。前の条文で「脅迫」というのがあります。「脅迫」と「威力」と区別したのはどういうことかということを明らかにしてもらいたい。
#32
○辻政府委員 第四条にいいます「威力」は、刑法第二百二十四条の威力業務妨害罪における威力と同じ意味に解しておるわけでございます。したがいまして、この威力は暴行、脅迫という観念をもちろん含んでおりますが、さらにそれよりも広く、不正の勢威を示しまして、人の意思決定に影響を与えるというような勢威、これもこの威力に当たるということでございます。したがいまして、この威力は暴行、脅迫も含んでおると申しましたが、第一条の暴行、脅迫に至らないような程度の低い脅迫その他のものは当然この第四条の威力の中に入ってくる、かように考えておるわけでございます。
#33
○瀬戸山委員 「脅迫」と「威力」は事実問題の判定にかかると思いますから、この程度に聞いておきます。
 そこで第四条には「正常な運航を阻害した」こういう表現が、文字が使われておりますが、正常な運航を阻害するというのは前の「運航を支配した」というものとどういう違いがあるのか。あるいは「正常な運航を阻害」というのはどういう場合を想定してこの条文ができておるか、これを明らかにしてもらいたい。
#34
○辻政府委員 この第四条の「正常な運航を阻害した」という観念は、航空機の運航の支配権といいますか、運航の管理権というものがなお機長側に残っておる場合でございまして、第一条の運航の支配と申しますのは、運航の管理権が機長から完全に犯人側に移ってしまって管理権を奪ってしまった状態が運航の支配であり、この第四条の運航の阻害のほうは、運航管理権はなお機長に残っておる、機長の運航管理権を阻害したということでございます。具体的な例といたしましては、もとよりこの第四条の針路の変更というのは正常な運航阻害の一例示でございますが、この針路の変更に当たるようなものであって正常な運航を阻害するという場合を考えております。具体的にはどういうことをいうかということでございますが、たとえば目的地に行くのにわざと目的地への到着をおくらす場合であるとか、あるいは極端に高度を下げてみろとか、そういうような場合が当たると思います。
#35
○瀬戸山委員 おかしな問いをいたしますが、先ほどの偽計の説明に関連して、この前の当委員会その他における「よど号」事件のいわゆるハイジャッキングについてのいろいろな事態がありましたが、「よど号」が板付から北鮮に向かうという状態があった。平壌に向けて飛ぶという想定で飛ばれていた。これが韓国の金浦空航に着陸した。それのいきさつはいろいろ説明がありましたが、石田機長の説明では、ここが平壌だという電波でしょうか連絡があった。それで平壌という考えであそこに着陸した。まあ偽計のつもりであったかどうか知りませんが、一つの偽計の形をなしておる。これはやはり第四条に当たる犯罪行為とみなされるのかどうか、こういう場合も。これはいかがですか。
#36
○辻政府委員 先ごろのいわゆる日航機事件の場合の事柄はつぶさに承知いたしておりませんので、その場合の問題と離れまして、かりに設例の問題として考えました場合に、ある犯人がどこか本来の目的地であるソウルならソウルに行く飛行機があるといたしますと、そのソウルに行く飛行機を平壌に着かしてやろうということを考えまして、そして管制塔におる係員と共謀いたしまして、それで偽電を発して、ソウルでないのにここがソウルだというような管制の電波を打たしたというようなことになりますれば、やはりこの第四条の「正常な運航を阻害した」という場合に当たるわけでございます。
#37
○瀬戸山委員 こういう場合に航空法百三十八条ですか、「飛行場の設備若しくは航空保安施設を損壊し、又はその他の方法で航空の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。」という航空法の罰則があります。この第四条とこの航空法百三十八条のいま申し上げた規定との関係はどういうふうになるのか、これを説明願っておきたいと思います。
#38
○辻政府委員 この第四条はもとよりでございますが、第一条の場合におきましても、航空法百三十八条にいいます航空危険罪とは保護法益を別にしておると考えております。
 第四条について申し上げますと、第四条は運航を阻害するということを中心に規定いたしておりまして、この運航を阻害した場合に、必ずしも航空法百三十八条にいう航空危険というものが常に発生するわけではございません。むしろ発生しない場合のほうが多いのだろうと思うわけでございます。したがいまして、第四条は偽計または威力を用いて正常な運航を阻害した、このことを一つの犯罪として処罰するわけでございまして、こういうようなことによって、同時に航空の危険が生じたという場合には、その行為によって第四条と同時に航空法百三十八条も成立するということでございまして、刑法にいう一個の行為に対して数個の罪名に触れる場合でございます。いわゆる観念的競合として両罪が成立するというふうに考えております。
#39
○瀬戸山委員 第四条は、必ずしも危険が生ずる場合だけではないと私は思います。しかし、地上のものと違っていわゆる飛行機ですから、非常に周密な航空計画を立てまして、そして運輸大臣の許可を得なければ航空ができないという非常に厳重な各種の規定があるようであります。航空機が針路を変えたり、気象条件その他によって危険を伴うおそれのあるものだというので、各種のそういう法規ができておると思う。
 それでは第四条の場合は、全然危険を伴わない場合のことであるかどうか。危険を伴った場合には、いまお話しのように、やや重く罰してある航空法百三十八条が適用される、こういうように解釈するということですね。
#40
○辻政府委員 第四条が成立いたしました場合に、同時に同じ行為で航空法百三十八条が成立する場合がもとよりございます。この場合には、先ほど来御指摘のように、第四条も成立し、航空法百三十八条も成立する、両罪が成立するという趣旨でございます。
#41
○瀬戸山委員 同じく航空法との関係で、航空法百二十九条、これは御承知のとおり「航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、又は破壊した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。」こういうようになっておりますが、この法案の第一条あるいは第四条との関係はどういうように解釈されておりますか。この点をひとつ明らかにしておいていただきたい。
#42
○辻政府委員 これも先ほど申し上げている問題と同じことでございまして、この第一条の犯罪行為によりまして、それが航空法百三十九条の行為に同時に当たるという場合には、この法律案の第一条と航空法百三十九条の両罪が同時に成立いたしまして、一個の行為によって両方の罪名に触れる場合ということで、やはり刑法のいわゆる観念的競合の関係になる、かように解しております。
#43
○瀬戸山委員 もう一点、同じく航空法の百四十条、いま申し上げました転覆その他の事犯によって「人を死亡させた者は、死刑又は無期若しくは七年以上の懲役に処する。」死刑の刑が設定されております。本法の場合は第二条によって、やはり死亡させたときには死刑もしくは無期懲役、こうなっておりますが、これとの関係。それから、同じく第四条、これとの関係をここで御説明願っておきたいと思います。
#44
○辻政府委員 これも同じように、たとえばこの法律案の第二条と航空法百四十条、これが一つの行為でどちらにも当たる場合があり得ると思いますが、そういう場合には両罪が成立して、やはり観念的競合の関係になる、かように考えております。
#45
○瀬戸山委員 私がこういうことをくどくどお尋ねするのは、この今度のいわゆるハイジャッキング取り締まり法というのですか、これを立法するのは、いろいろ航空法あるいは刑法その他に罰条があるけれども、どんぴしゃりということばを前にも使われたことがあると思いますが、いわゆるどんぴしゃり当たる刑事法をつくろう、こういう前提でこの立法をしようというのでありますから、そういうすでにある刑法あるいはいま申し上げました航空法等を排除するのかどうか、あるいは競合して適用されるのかどうか、この点を明らかにしておきたいために申し上げておる。いま御答弁のとおりでよろしいかどうか、もう一ぺんひとつ……。
#46
○辻政府委員 まさしく御指摘のように、今回のこの法律案は、特にその第一条はいわゆるハイジャッキングにぴたりとま正面から当たる条項を規定したのでございます。第一条におきましては、私ども、いわゆる保護法益として何を考えておるのかということになるのでございますが、これはハイジャッキングを処罰する場合の保護法益の問題でございます。
 この場合には、まず第一に保護法益といたしまして、機長以下の乗り組み員、それから乗客の生命、身体の安全ということが一つの保護法益でございます。第二は、この機長や乗り組み員や乗客の自由というものが第二の保護法益になると考えるわけでございます。それから第三といたしまして、当該航空機の航行の安全――あえて危険とは申さないのでございますが、航行の安全というものが第三の保護法益になっておると思います。第四点といたしまして、この航空機そのものの財物としての保護と申しますか、あるいは不法な利益を得たという意味の財物性、不法な利益というような財産犯的な意味の保護法益。
 かような四つの保護法益が全部この第一条に盛られているという考え方で立案をいたしておるわけでございます。これがまさしくハイジャッキングをぴったりとつかまえたつもりで私どもはおるわけでございますが、先ほど来御指摘の航空法の百三十八条、第三十九条、百四十条、この辺の犯罪は、航空危険というものを一つの保護法益として、その観点から規定しておる犯罪でございます。したがいまして、この航空法関係の百三十八条ないし百四十条の犯罪と、この本法に規定しております一条、二条、三条、これは同じでございます。四条も同趣旨でございますが、これとはやはり保護法益を異にいたしておるわけでございます。したがいまして、一つの行為でこれらどちらの規定にも当たるという場合には、これは一つの行為にして二つの罪名、両方の罪名に触れるという意味で刑法のいわゆる観念的競合に当たるということになろうかと考えておるわけでございます。
#47
○瀬戸山委員 おおむねこの立法の趣旨及び法文の解釈等は明らかになったような気がいたしますが、各党とも、重要な法律でありますから御質疑があるようであります。私はこれで終わりますが、最後に、この法律に一貫しておりますのは、適用の範囲でありますから念を押しておきますが、「航行中」というものの意義を明らかにしておいてもらいたい。しろうとにちょっとわかりませんから、どこからどこまでが航行中ということになるのか、それがはっきりしなければ、この法律の適用がむずかしい場合があると思います。それをひとつ明確にここでしておいていただきたい。
#48
○辻政府委員 この「航行中」の観念でございますが、本法の場合には、離陸のためのエンジンの作動開始のときから、着陸のための滑走が終了する時点まで、かように考えております。この定義は必ずしも条約に追随したわけではございませんけれども、東京条約にいう航行中の意味も――特に東京条約においてはいま申し上げた定義の規定を設けておりますし、さらに現在検討中のハイジャッキング処罰の条約草案においてもこの航行中という観念は、先ほど申し上げましたような離陸のためのエンジンの作動開始のときから着陸のための滑走の終了する時点まで、かように定義の規定を設けております。
#49
○瀬戸山委員 念のためにお尋ねしておきますが、そうすると、これは国際間の常識といいますか、統一された見解であるということですか。
 それから、皆さん飛行機に乗られるとわかりますけれども、誘導路をはっていく場合にはまだそれに入らない、滑走路の起点でエンジンが本格的に始動を始めてから、着陸して、それからよく言いますが、座席ベルトをはずさないでおいてください、最終の、客をおろすところまではベルトははずさないでください、エンジンが完全にとまるまで、具体的にいえばそうなる、こういうことですか。
#50
○辻政府委員 ただいま御指摘の誘導路から滑走路のほうに飛行機が地上を動いていくという状況はまだ、先ほど申しました離陸のためのエンジンの作動開始には至っていないわけでございますから、航行中に入らない。それから着陸の場合も、着陸いたしまして飛行機が完全に滑走路にとまって、これからスポットのほうに自動車のごとく動いていくという段階はもう着陸のための滑走が終了してしまったあとでございますから、これも航行中には入らない。したがいまして、この航行中は、いよいよ離陸するということで、滑走路に出まして猛烈にエンジンを動かし始めたとき、テークオフということばが使われておるようでございますが、そのときから航行中に入り、かつ着陸の場合には滑走路で滑走が終了した時点で航行中が終わると、かように考えておるわけでございます。
#51
○瀬戸山委員 これで終わります。
#52
○高橋委員長 聞き違いか、思い違いか知らないので、私からただしたいんですが、金浦ですか、あそこでおりた場合に、偽計が行なわれておったならば何か犯罪行為これに該当するというふうにも御答弁になったように聞こえましたが、私は、犯罪行為が行なわれておって、それを防止するために偽計を用いて着陸さしたというふうな場合には、それは犯罪に該当しないと思うんです。この条文が該当してもほかの違法性阻却の原因で犯罪が成立しないという見解ならともかく、その点どうですか。
#53
○辻政府委員 先ほど私は、今回の日航機のいわゆる乗っ取り事件とは全然別であるということでお答えを申したわけでございますが、ただいまの委員長の仰せになりましたような場合、一つの別の正当業務と申しますか、航空機の安全をはかる意味におきまして、管制塔の正当業務として一つの誘導をしたというような場合には、もとより違法性を阻却するというようなこと、あるいは犯意そのものが阻却される場合ももちろんございましょうが、そういう場合には犯罪が成立しないことはもちろんでございます。私が先ほど申し上げましたのは、航空機の運航を阻害する目的の犯人が、その犯意を実現する手段として管制塔の人と意思を相通じて、共謀して偽電を発したというようなケースの場合には、そしてその結果飛行機が間違ったところへ行ってしまったというような場合には、この第四条に当たることがある、こういうふうに申したわけでございます。
#54
○高橋委員長 よくわかりました。
 それから「航行中」というのは、乗客が乗り始めたとき、それからおり終わったときまで「航行中」ということにはならないんですかね。
#55
○辻政府委員 先ほど申し上げました、離陸のためのエンジンの作動開始のときから、着陸のための滑走を終了する時点まで、これをいうものと解するわけでございまして、したがいまして、いま委員長の仰せになりましたような場合には、ここにいう「航行中」には入らないと考えておるわけでございます。その実体的な趣旨と申しますと、このハイジャッキングを強く罰するという趣旨は、やはりこれは陸上の社会から完全に隔絶した一つの別の社会と申しますか、そういう状態になればこそここにハイジャッキングの危険性というものがあるわけでございまして、まだただいま申しました「航行中」という段階に入っていない状況におきましては、やはり一般の社会と十分に隔絶されたわけではございませんので、その段階で航空機に対するいろいろな妨害がありました場合には、一般の刑法犯として十分処罰できる、かように考えているわけでございます。
#56
○高橋委員長 局長の名答弁で一応了解いたします。
 羽田野忠文君。
#57
○羽田野委員 一般的な問題につきまして、二、三点大臣にお伺いいたします。
 この法案の具体的な問題につきましては、局長にお伺いいたしたいと思いますが、まず大臣にお伺いいたしたいと思いますのは、わが国は処罰法規の中心法典といたしまして刑法がございます。この処罰法規が刑法を離れていろいろな単行法で分散するということは、法的安全を害しまして、好ましくないことだと思います。ただ、このハイジャッキングは、今回わが国で急に出てきた問題でありまして、これを処罰する法規が整備されていないということで、今回急速にこの単行法をつくられるということは、やむを得ないことで、私も賛成でございます。改正刑法の準備がいま進んでおりますが、将来この刑法改正がなされる場合に、今回単行法で定められます航空機の強取等の処罰に関する法律のこの内容は、改正刑法に吸収されるおつもりであるのか、あるいは刑法とは別にこの単行法をずっと存続されるおつもりであるのか、その点いかがでございましょうか。
#58
○小林国務大臣 これは、お話しのような臨時また急迫を要するので、特にこういう単行法をお願いするわけでありますが、刑法改正案が出る場合には吸収するような方法をとりたい、かように考えております。
#59
○羽田野委員 そこで、その場合に一つ問題になりますのは、いま刑法改正の過程におきましては、法定刑に死刑をなるべく少なくしたいという考え方があります。そこで、いわゆる結果的加重犯といわれる本法案の第二条の「よって人を死亡させた」というふうな、いわゆる結果的加重犯の場合には、原則として死刑を取り入れないというような方針が考えられておるようでございます。この改正刑法準備草案などを見ましても、航空機を墜落させて、そうしてよって人を死にいたしたというような場合でも、これは準備草案の二百十三条に規定してありますが、七年以上の懲役と無期ということで、死刑はこれを定めておりません。そこで、今回の法律案の二条と、それから刑法改正の基本方針というものをどういうふうに調和されるお考えであるか、この点を承りたいと思います。
#60
○辻政府委員 ただいま刑法の全面改正の一環として作業をいたしております法制審議会におきましては、死刑をなるべく減らしていこうという観点でいろいろと検討をいたしておることは事実でございます。ただいま御指摘のように、結果的加重犯の場合に死刑をなるべくやめていこうという考え方がとられておることも事実でございます。そういう観点から、今回のこの法案におきましても、第二条について死刑を規定することの当否が法制審議会の段階では論議されたわけでございます。しかしながら、この今回の法律は、現行刑法が施行されておるこの時点において考えなければいけない問題でございます。そういたしますと、御承知のとおり現行刑法の二百四十条の強盗致死の場合には、死刑が規定されておるわけでございまして、この一条と二条の関係からいきますと、やはりこれは現行刑法二百四十条との関係で、現時点においては死刑をもって臨まなければいけないということになったわけでございまして、私ども事務当局としてもさように考えておるわけでございます。
#61
○羽田野委員 次の問題は、これは関連の問題でございますので、大臣でもあるいは刑事局長でも、どちらから御答弁いただいてもけっこうでございますが、今度のハイジャッキングの問題、具体的に見ましても、犯人が国外に行きまして、事実上これを逮捕して裁判するということができない現状です。こういう犯人の引き渡し等につきまして、現在、条約その他の規定がどの程度に整備されておるのか、実際にどういうことを要求することが可能であるのか、その概要をちょっと説明していただきたい。
#62
○辻政府委員 これはいわゆる逃亡犯罪人引き渡しの問題でございますけれども、御案内のとおり、逃亡犯罪人の引き渡しは、二国間の、関係国間の条約によるのが原則でございます。わが国におきましては、アメリカ合衆国との間にはこの逃亡犯罪人引渡条約を締結いたしておりますので、この条約の運用として、相互に逃亡犯罪人の引き渡し、引き取りができるわけでございます。ただ、その条約を結んでおるのはその一国でございます。
 そのほかに、現在御承知のとおり、一般の国際法の問題といたしまして、逃亡犯罪人の引き渡しには、条約がない国の間におきましても、一つの国際礼譲として、相互主義なら相互主義の保障のもとに逃亡犯罪人の引き渡しを行なうということがまた一つの国際慣行になっております。現に、わが国の逃亡犯罪人引渡法におきましても、条約のない場合でございますが、国際礼譲による逃亡犯罪人の引き渡しの場合、日本の場合には、この引き渡し要求を受けた場合のことが、この逃亡犯罪人引渡法によるという前提で、この逃亡犯罪人引渡法ができ上がっておるわけでございます。現に、わが国におきましても、たしか昭和三十八年に、スイスに逃亡いたしました刑の確定者をわが国から引き取りに参りましたが、これなんかは、国際礼譲による逃亡犯罪人の引き渡しがわが国においても行なわれたという事例でございます。
#63
○羽田野委員 関連しまして、具体的にもう一つ。
 今度実際に「よど号」乗っ取りをしましたあの犯人に対して、この法律はもちろん適用されません。いままでの日本の刑罰法令のもとでどういう国内的な措置がなされたか。また国際的に、この犯人を引き取るためにいかなる措置が、どういう法令の根拠でなされて、そしてその見通しはどういうふうにお考えになっているか。
#64
○辻政府委員 この「よど号」事件につきましては、すでに、警視庁を中心といたします警察におきましても、また東京地検を中心といたします検察におきましても、「よど号」事件の捜査をいたしております。これは、もとより直接の犯人は向こうに行ったきりになっておりますけれども……(羽田野委員「時効の中断とか、そういう法的措置はどういうふうにしておるかということです」と呼ぶ)いたしておるわけでございます。そこで、御案内のとおり、直接の犯人そのものは現在国外におるわけでございますが、関係の捜査は進めておるわけでございます。
 犯人につきましては、刑事訴訟法の規定によりまして、国外におる間は公訴時効が停止するという規定がたしか二百五十五条にございますので、これによりまして、犯人が日本に来ました場合にはすぐに所要の措置がとれるように着々準備をいたしておるわけでございます。
#65
○羽田野委員 具体的に、この法律案の内容について局長にお伺いしたいのでございますが、この法律案の結局中心規定は第一条のようでございます。この第一条の、「航行中の航空機を強取」した場合と、航行中の航空機を「ほしいままにその運航を支配した」場合と、この二つの場合がこの一条の中に含まれておりますが、この二つの場合の保護法益、これは違うのではないでしょうか。同じと考えておられるか。その点、どうでしょう。
#66
○辻政府委員 この第一条の保護法益につきましては、先ほど申し上げたところでございまして、私どもは、第一条では、まず、乗り組み員、乗客の身体、生命が一つの保護法益になっておる。第二は、これらの人の自由というものが保護法益になっておる。第三は、航行の安全を保護法益にしておる。第四は、財物、航空機そのものの財物または航空機による輸送の利益という、一つの財産上の利益というものも保護法益にいたしておるわけでございます。
 いまお尋ねの、強取の場合と運航支配の場合とが保護法益が違うのではないかという点になりますが、ほかの保護法益の、私が申しました一から三まではこれはもちろん同じでございますが、四の財物性ということになりますと、この強取の場合には、財物である航空機というものが保護法益になっておると思います。
 運航支配の場合も、飛行機そのものは自分のものに将来確定的にする意思はない、自分はただどこかへ行けばいいという場合でございますから、財物たる航空機そのものにつきましては違うわけでございますけれども、財物の強取はしないが、やはりどこまで行くということにつきましては、輸送の利益というものもそこに含んでおるわけでございます。そういたしますと、いわば、刑法にいう、二百三十六条二項の不法利益の強盗というものに当たる場合がたいへん多いわけでございます。この運航支配の中には、いわゆる不法利益の強盗に当たる場合もありますし、それが全然ない場合もそれは考えられるわけでございます。この不法利益を獲得するということが全然考えられないようなケースにおきましては、この運航支配に財物というものを保護法益にする面が欠けてまいりますけれども、大多数の場合は、やはり不法の利益という観点におきまして財産を保護法益にしておるということが言えると思うのでございます。若干、非常に希有の例としての運航支配の場合に、財物を保護法益にしておるという点が欠けますけれども、これはやはり一から三まで、先ほど申しましたほかの保護法益と一緒にいたしまして、大多数の場合には第四の財産性というものも保護法益にしておるということで、これらをひっくるめて一つのハイジャックの保護法益であるということが言えると思うのでございます。
#67
○羽田野委員 強取の場合は、刑法改正の刑法特別部会の小委員会の第一次案の中に、三百四十三条に船舶、航空機の強盗というような条文が入ってきておる。大体今度のこの特別法の第一条の前段は、これをそのまま受けてきたような、航空機と船舶というものがあるのを、船舶を抜いて、航空機の強盗という規定をそのまま受けてきたような形になっておる。そして犯罪類型としては、個人法益のうちのいわゆる財産犯の中に入る犯罪類型としてこれを考えられておる。次の運航支配という考え方は、いままで全く文章にも出てこないし、考え方として出てこなかったものがこの第一条にぽかんと出てきた。この運航支配そのものの考え方は、むしろこの財産犯的なものではなくして、社会法益に対する侵害、いわゆる交通妨害的な考え方、このいわゆる法益類型の違う二つのものが同じ条文の中に入ったということで非常にこんがらがってきているのではないかと思うのですが、その点いかがでございますか。
#68
○辻政府委員 これは先ほど来申し上げておりますように、ハイジャックの保護法益といたしましては、四つのことを考えておるわけでございます。それをまたさらに大ざっぱに申し上げますと、先ほど御指摘のように、財物に対する罪という意味の財産犯罪としての強盗というものと、それからいわば強制罪的な、強要罪的な意味の犯罪の性格も含んでおるわけでございまして、先ほど来四つ法益を申しておりますのは、このすべてを含んだハイジャックという特殊な一つの犯罪がやはりあるんだということで、必ずしもこれが財産犯だけのものでもなければ、これがまた一つの強制罪的な、人の自由を保護法益にすると申しますか、そういうものだけでもないハイジャックというものの性格からして、そういうものすべてを侵害するんだというふうに考えまして、この第一条ができておるわけでございます。先ほど御指摘の、刑法全面改正の一環として考えておりますのは、これは財産犯的な強盗でございまして、これはむしろ海賊行為、空賊を含めた海賊行為という点にウエートを置いた規定でございますので、財産犯の章に規定されたものと考えております。
#69
○羽田野委員 「航行中の航空機」という特殊事情のもとにおける犯罪でございますから、生命、身体の危険あるいは安全なる運航に対する危険というものが結果的には出てきますけれども、その法益の本質というものを考えてみれば、強取は財産犯である。運航支配というのはむしろメキシコの連邦刑法百七十条の三項に書いてある「航空機の目的地を変更させ、又はその針路からはずれさせた者」というような、航空機が一定のコースをたどって安全に目的地に着く、そのことを阻害して目的地を変更させたり、あるいは針路からはずさせる、このことがいわゆる法益の侵害と考えることのほうが運航支配の場合には正しいんじゃないですか。
#70
○辻政府委員 先ほど来申し上げておりますとおり、ハイジャックにはいろんな保護法益があろうかと思うわけでございます。そしてただいま御指摘のように、この場合、ハイジャックの場合には、財物である航空機というものよりも、到着地を変更さすというような点に本質があるのではないかという御指摘でございますけれども、確かにそういう面もございますけれども、それではハイジャックの最もはなはだしく凶悪な事例は何かといえば、運航支配をした結果、目的地をも変更させた上で、さらにその飛行機まで全部取ってしまうというのが、やはりハイジャックの一番凶悪といいますか最も悪い場合でございます。そういう場合をさておきまして、ただ運航支配をした結果、目的地を変更さすというだけの点をとらえろということになりますと、これはやはり事物の本質からいって、やはり足らない点があるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
#71
○羽田野委員 これはもう論議はこの程度にしまして、その次に暴行または脅迫の結局程度ですが、強盗の場合に、暴行、脅迫の程度は、いわゆる相手方の反抗を抑圧するに足るものということが一般的な通説になっております。そこでこの後段の、航行中の航空機をほしいままに運航を支配するという行為による犯罪の場合に、それに加えられる暴行もしくは脅迫は、やはり相手方の反抗を抑圧するに足る程度のものでなければいけないのかどうか、その点はいかがですか。
#72
○辻政府委員 この法案の第一条に規定いたしております暴行、脅迫の程度の問題でございますが、この暴行、脅迫は、ただいま御指摘のとおり、相手方の身体または意思を制圧してその反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要するというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、その反抗を抑圧するに足りる程度というものが具体的にどの程度のものであるかということを具体的事案について考えました場合には――具体的事案でなくとも本罪の性質との関係において考えました場合は、本罪はやはり先ほど御指摘のように、航行中の航空機内という特殊の環境にあるわけでございますから、通常の場合ならば相手方の反抗を抑圧するに足りないと思われるような暴行、脅迫でございましても、航行中の航空機内であるために、かりに機長が乗客の安全とかあるいは航行の安全を顧慮する必要が十分にあろうかと思うのです。そういう関係からむしろ抵抗することが著しく困難になるという場合が実際問題として出てくると思います。そういうことで、これはやはり航行中の航空機という特殊性から考えまして、本条にいいます暴行、脅迫の程度というものは、一般の陸上におけるものよりは程度が低くても、この反抗を抑圧するに足りる程度のものになるんだ、なる場合がきわめて多い、かように考えているわけでございます。
#73
○羽田野委員 最後に一点だけ。
 この一条のいまの問題とそれから四条の「偽計又は威力を用いて、」という関係でございます。この「偽計又は威力を用いて、」というこの文言が条文にそのままずばりと同じように出てきておりますのが、改正刑法の準備草案の百六十五条、いわゆる「偽計・威力による公務妨害」の条文の中にきちっとこれと同じ文句が出てきております。これのいろんな理由書を見ますと、この場合の「威力を用いて」という意味は、暴行、脅迫に至らぬ程度の威力ないし偽計を用いて云々、こういうことを理由にしておる。そうすると、先ほどの御説明では、威力というものの中には暴行、脅迫も包含される概念だということを御説明なさっておられました。むしろ考え方としては、この威力という場合には暴行、脅迫は含まれないんだ、暴行、脅迫というものはその外にあるんだというふうに考えることのほうが法的解釈は統一するのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
#74
○辻政府委員 私どもは、やはりこの威力の中には暴行、脅迫を含み、さらにそれよりも広い観念である、かように申しておるわけでございます。ただいま御指摘のように、暴行、脅迫は入らないのじゃないかということでございますけれども、暴行罪あるいは脅迫罪として、この犯罪それ自体として犯罪になります場合には、もちろん暴行罪、脅迫罪が成立するわけでございます。そういう意味におきまして、ここで暴行罪やあるいは脅迫罪に当たる暴行や脅迫というものがこの威力の中に入っていると申しましても、その暴行や脅迫を別途処罰する場合には別の罰則がございますから、それによって評価される。それによって評価されないような暴行、脅迫というものはここの威力の中に入っているのだ。結局威力としては、暴行、脅迫も全部含み、しかし暴行罪や脅迫罪の対象になるようなものは別途それで処罰される場合があり得る、かように考えておるわけでございます。
#75
○羽田野委員 時間が少ないようでございますから、終わります。
#76
○高橋委員長 畑和君。
#77
○畑委員 最初に法務大臣にお尋ねいたしたい。
 先ほど羽田野君のほうからも質問がございましたが、今度の立法に際しまして、これは本来は羽田野君の言われるように、刑法体系の一部であるべきはずだと思うのです。ところが、こうした緊急の事態でもあるしというので、刑法をいじくらずに単独法で立法するために案を提示されたわけでありますけれども、そうした単独法でやってこられた理由はどういうわけか、その点を重ねて聞きたいと思います。
#78
○小林国務大臣 お話しのように、刑法の中に当然包含さるべき規定であると思いまするが、刑法の改正が相当手間どるということで、それを待つことはできないので特にそこから抜き出した、こういう形で単独法でひとつお願いをしたい。しかし、やがて刑法改正の際には、その中に適当に吸収するような方法をとりたい、こういうことでございます。
#79
○畑委員 昭和三十八年に例の吉展ちゃん事件というのがございました。身のしろ金を要求して誘拐したという事案について、特に重く罰する必要があるということで、刑法の誘拐罪のところへ一つそうした罰条を設けて、そして刑法の一部改正をやったことがあります。もっともこのときには、刑法に誘拐罪という規定がございますから、それをことさらに別の法律にする必要はない、したがって刑法の一部改正で済んだと思うのでありますが、この立法もそういう意味で本来は同じようにやるべきものだったと思うのです。ところが、ハイジャックそのものについての新しい規定ということになるから、したがって、刑法に別の条章を新たに設けるということでなくてとりあえず単独法にした、そうして将来刑法の全面改正のときには刑法の中に取り入れる、ほかの問題もございますが、できるだけそうしたものを刑法の中に入れて規定をしよう、将来はこういう考え方である、こういうことでございますね。
#80
○小林国務大臣 お話しのとおりでございます。実は他の委員会等で公害罪、こういうような問題が出てきておりまして、これも刑法の草案に多少入っておる。しかし、これも私は他の委員会におきまして、相当に急を要する事態であるから、できたらやはりこの法律と同じようにひとつ抜き出して、これは刑法的な規定をいたしたい、こういうことを答弁いたしてございますが、さようなことが他にもある、全面改正の際にはこれらも当然刑法の中に入れたいが、間に合わない、また急を要する、こういうことのためにいまのような例外的な措置をとりたい、こういうことでございます。
#81
○畑委員 政府のその態度は了解いたしました。そうやっていただきたいと思います。
 それから次に、船舶を入れるかどうかということで、立案の過程でそれを入れるというような時期もあったようでありますけれども、われわれも実は御相談を受けた際に、船舶と申しましてもなかなか、その範囲をどれまでを船舶というかということ等、その他いろいろ航空機とは違う面もありますので、とりあえず問題になっておるハイジャックだけに限って規定したほうがよろしかろうというような意見を私たちも申したのでありますが、今度提案ということになった際には、船舶は除いてございます。法制審議会の段階では入れたままに諮問をされて、それで法制審議会でも、できれば船舶も入れたほうがいいというような御意見だったかのような話も聞いておりますが、しかし、われわれの意見等もあって、政府は船舶を除かれたと思うのでありますが、その辺の事情はどういうことになっておるか、承りたい。
#82
○小林国務大臣 これは御承知のように、刑法の試案の中に船舶も加えられておったと思います。そういうことでありまして、この際、各位の合意が得られるなら船舶も入れたい、こういうことで一応船舶も入れて法制審議会にも諮問したのでございます。審議会では、それでよかろう、こういうことでございますが、国会方面の御意見も承りまして、この際、船舶の定義をすることは、なかなか簡単にいかない、こういうことでございました。多少の時日を要する、したがって、次の機会に船舶の定義等についてもひとつ十分な用意をしてそうして規定をいたしたい、かようなことに相なりましたので、刑法を改正する場合には当然船舶も一緒に規定される、こういうふうに考えておりますが、この際、いま申したように、簡単に定義はなかなかむずかしかろう、こういうことで一応除いた。しかし、将来の問題としては当然船舶も包含さるべきである、かように考えております。
#83
○畑委員 それから今度の法案のいわゆる航空機ですが、この航空機の中には、民間航空機だけでなくて、軍用の航空機あるいは警察用の航空機あるいは税関用の航空機、こういったものも入る趣旨ですか、それともそうでなくて、それらは除かれる趣旨か。おそらく入ることだと思います、国内法だからそうだと思いますけれども、国際条約のほうの今度の準備草案には、これは民間の航空の関係だろうと思うけれども、それらを除いてということになっておるが、これはどういうことなのか。含まれるとは思いますけれども、一応念のためにはっきりしておきたいと思う。この点はいかがですか。
#84
○辻政府委員 今回の法案の航空機は、単に民間のいわゆる営業用といいますか、輸送用の航空機はもとより入りますが、そのほかに警察用のものであるとか、あるいは自衛隊の飛行機であるとか、あるいは税関にあるかどうかは存じませんがそういうものも全部含む趣旨でございます。
#85
○畑委員 それから、ほかのお二人の方が質問されたので大体わかりましたけれども、一、二申し上げます。
 実は、私も第一条の問題についていまの羽田野君の意見と同じような疑念を持っておったわけで、私も質問しようと思ったのでありますけれども、保護法益の問題です。航空機の強取罪、これは一応は強盗罪と同じようなもので、財物の関係が被害法益であるのが普通でありますが、先ほど言われたように、幾つも被害法益がある、そのうちの一部が航空機の強取、その他が運航の支配ということなんだ、それを四つひっくるめて被害法益なんだ、こういうことでありますけれども、これはむしろ私は罰条を別にしたらどうかという考えもないではない。そういうことかもしらぬけれども、強取の条文とそれから運航支配の条文と別にすれば、その被害法益の問題は一応解決をする。そうでないと、この一カ条で被害法益が混在しておるというような感じで、すっきりしないというような感じがするのです。これはこういうように規定すればこれで通るには通りますけれども、何か被害法益の考え方からすると、むしろ罰条を別にしたほうがいいような気がするのですが、その辺はいかがですか。
#86
○辻政府委員 この件につきましては、先ほど羽田野委員の御質問に対しましてお答えしたとおりでございます。この四つの被害法益が一緒になって一体をなしておるというのがこのハイジャックの一つの特殊性ではなかろうかと考えておるわけでございまして、ハイジャックの中の一番凶悪なのは、航空機そのものの強取までいくものもあり、あるいは軽いものの中には、単に目的地を変更さすというようなものもあろうかと思いますが、ハイジャックという一つの社会的事実といいますか犯罪と申しますか、それはやはり共通した一つのハイジャックというものがあるのじゃなかろうかという考え方で、あえて、先ほど来御指摘の財産犯であるとか、あるいは人の強制罪的なものと混在しておるのじゃないかという御批判もあろうかと思いますけれども、そこまで一緒にするところが一つのこのハイジャックの特殊性であろうかと考えるわけでございます。御承知のとおり東京条約はもちろんでございますが、現在のハイジャック防止の条約草案におきましても、この強取に当たるシージャーと、運航支配に当たるエクササイズコントロールというのをやはり並べて書いてあるというところに、同じようなハイジャックの特殊性ということが指摘されておるのじゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。
#87
○畑委員 そうすると、やはりほんとうにこの法律に特有の一つの犯罪類型、強盗罪と同じようなつもりで見ずに、航空犯罪としてのハイジャックとしての一つのまとまった四つくらいの被害法益をひっくるめた一つの新しい犯罪類型だ、こういうふうに理解すれば私もそれで理解できる、それでよろしゅうございますか。
#88
○辻政府委員 私どもそのとおり考えております。
#89
○畑委員 それから「強取」という場合、これはおもなる場合は操縦士を排除して自分で操縦席にすわって飛行機を操縦するというようなのが典型的ですか、それ以外に何かありますか。
#90
○辻政府委員 この「強取」は財物である航空機そのものを不法に領得するという意思がある場合が強取である、かように考えておるわけでございます。
#91
○畑委員 そうすると、そういったことをやらずとも、要するに自己の占有下に強制的に移す、そういうことであれば強取になる。この強取の意思とまた同時にそういった行動があれば強取であるる、それ以外のものは運航支配だ、こういうことになるという趣旨ですか。
#92
○辻政府委員 逆に申したほうがいいかと思うのでございますが、財物である航空機を不法に領得する意思がない場合が、ほしいままに運航を支配した、こちらに当たる、そうでない場合が強取に当たる、かように考えております。
#93
○畑委員 それから第二条は、航空機強取等致死これは致死ですね。致傷は結局吸収されるというか、致傷は別に加重はないのですね。
#94
○辻政府委員 致傷の場合は、御指摘のとおり第一条で全部まかなわれるという考えでございます。
#95
○畑委員 それから第四条の航空機の運航阻害ですね。先ほどもだいぶいろいろ質疑応答がございまして、だいぶはっきりしてまいりましたが、結局ここで「威力」というのは、暴行、脅迫であるけれども、それが強取等の場合のような程度に至らぬ程度のものも含む、そうしてまたそれより広い、こうようような答弁だったと思います。
 そこで、それはいいといたしまして、先ほど設例になりました例の「よど号」の事件の金浦着陸の場合のことですね。そこでこれは仮設だけれども、それについてどう答えろという意味ではないので、先ほど実は私、質問しようと思ったら、ちょうど瀬戸山君がその点に触れられました。航空機に乗っておらなくても、外でもそういったいわゆる偽計で針路を変更させる、あるいは違ったところに着陸させる。こちら平壌、こちら平壌といって、とうとう金浦に行ってしまったというのが実際のようですけれども、どなたがやったかということについてはどうもいまだにはっきりしないわけだが、そういった場合には一応飛行機の中に乗っておらない人がやったとしても、第四条の運航阻害にはなる。ただそれが、善意でこういう連中をつかまえようというためにそういう偽計を用いたんだとすれば、違法性の阻却、こういうようなお話です。もっともあのときに日本の政府が向こうに頼んで、あるいは連絡をして、意思相通じて、そういった結果偽計を用いたということであれば、まさにそうであろうけれども、それでない、連絡がないといった場合にはやはり違法性の阻却になるか、その点を……。設例ですよ、あの場合もしそうだとすればということでけっこうです。
#96
○辻政府委員 一つの設例として申し上げるわけでございますが、四条の場合には、私ども先ほど申し上げておりますように、この偽計または威力を用いて、正常な運航を阻害するという場合には必ずしも航行中の航空機の中に犯人がいることを要しない。したがって、航行中の航空機の正常な運航を阻害する犯意を持って、機内の者が機外の特定の、たとえば管制塔におる者と意思を相通じ共謀して偽電を発する、そして誘導するというような場合には、この四条の適用があるということでございます。
#97
○畑委員 そうすると、違法性阻却の問題は別ですね。
#98
○辻政府委員 これは、管制塔にある管制官の一つの業務行為というようなことであれば、違法性を阻却する場合もあろうかと思いますが、これは具体的な事例によらなければ何ともお答えいたしかねると思うわけでございます。
#99
○畑委員 それからその次に国外犯であります。第五条の国外犯ですが、これは刑法第二条の例によるということで、何人といえども、しかも犯罪地がどこであっても、こういう規定だと思いますね。そうなると、これはこういったハイジャッキングが世界のどこで行なわれても理論的には全部日本もそれに対して処罰を加えることができる、こういうことになるわけですか、その辺は……。
#100
○辻政府委員 第五条はただいま御指摘のとおり、何人がどこで犯しても、この一条から第四条の適用を受けるということでございます。したがって、この刑罰法規の適用を受ける。ただそれに対して実際の刑事裁判権を日本が行使するという場合は、そういう人が日本の刑事裁判権が働くところに来た場合に、この規定によって処罰される、こういう趣旨でございます。
#101
○畑委員 刑法第二条の規定によると、内乱罪とかその他いろいろございますね。通貨偽造だとかそういった、要するに一般の公益を害する、しかも日本の国益が中心だと思いますが、それはいわゆる国外犯として、どこでやっても、だれがやっても処罰をされる、こういうことだと思うんです。ところで、この刑法の二条の場合は、日本の国益というものが中心だと思いますね。もっとも通貨なんというのはもう国際的なものだから、国際的な信用というか、そういうものも規定しているのかと思いますが、その辺はどうでしょう。
#102
○辻政府委員 ただいま御指摘のとおり、刑法二条に掲げております、何人がどこで犯しても適用されるという罰則につきましては、いわゆる保護主義ということがいわれておるわけでございます。この保護主義ということで、刑法第二条に掲げる罪があがっておると思うのでございます。その意味におきまして、今回のこの五条は、必ずしも保護主義というものとぴったりこない面があろうかと思うのでございまして、いわばこれは新しい刑事法でいっております世界主義という考え方から、五条の国外犯処罰の規定を設けた次第でございまして、これまた御案内のとおり、どこで何人が犯しても適用される罰則といたしまして、この刑法二条のほかに、刑法施行法二十六条に、船舶法に掲げる罪であるとか船員法に掲げる罪であるとか、それぞれの刑罰法規の性質によりまして、国外犯処罰の規定がございます。この第五条も、今回やはりハイジャック処罰というものの性格からして、この国外犯処罰が必要である、かように考えて規定をいたした次第でございます。
#103
○畑委員 まさにそういった点で、世界主義という点では一つの新しい例だと思う。これは国際的にこういったハイジャッキングを取り締まろう、予防しようというような観点に合致する考え方として、私はこれでよろしいと思うのですが、これは結局は、理論的にはどこでどういうことがハイジャッキングで行なわれても、それは日本も国内法として処罰することができるということは、実際においては行なわれる例はほとんどない。ただ一番の可能性は、そういった犯人が日本にやってきた場合、日本人にそういった飛行機が着陸した場合、こういった可能性を考えてのことだと私は思う。それでなければ、理論的にはわかるけれども、実益はそれ以外にはほとんど考えられない。そういうことを予想して国際的に協力をするという意味での世界主義、国際主義だと私は思う。そういう意味なら私は了解いたすのですが、そうでないと、あまり何でもかんでも、世界どこで何の犯罪が起きても、日本が全部処罰できるんだといったら、少し思い上がり過ぎた考えだと思うのだけれども、ただ、国際的なハイジャッキングを取り締まるためにどこか穴があってはいかぬ、その穴を埋めるためにこういったものを規定しておいて、そうした犯人が日本にやってきた場合、国際的協力の意味で日本が処罰をする法規を持っておるのだということだと思う。そういう点では私はいままでかつてないことだ、画期的なことだと思うのですが、そういう意味ですね。
#104
○辻政府委員 まさしく仰せのとおりの意味でございます。
#105
○畑委員 それから、元に戻りますが、第四条の「航空機の運航阻害」です。これについては、私はこの前案を示されて了解を求められたときに、刑事局長だったか官房長だったか、今度締結される予定の条約の準備草案にもあるのでありまして、それを予想して、実は強取に至らない運航阻害も規定する必要があると思ってこれを並べました。こういうような話でありましたが、配付されました参考資料の準備草案にはこれはない。この強取あるいは運航の支配以外の、それに至らない運航妨害の罪については、国際条約の準備草案にはございません。私はそういうふうに受け取ったのです。そうかといって、私はこれに反対するわけでも必ずしもないのでありますが、ただ、ほかの国の立法例には確かに一、二あるようであります。アメリカとオーストラリアがこの立法例を持っておるようでございます。その点は、別にそういった話があったからどうこうというわけではございませんです。
 それから「一年以上十年以下の懲役に処する。」こういうことになっていますが、威力業務妨害の場合は幾年ですか。三年以下ですか。
#106
○辻政府委員 刑法の威力業務妨害の場合は三年以下でございます。
 いま、御指摘になりましたこの条約案との関係でございますが、条約案の関係では必ずしもこういうものがないじゃないかという御指摘でございますが、実は、お手元にお配りいたしました条約案文そのものをごらんになりますと、さような御見解になりやすいのでございますけれども、私ども、むしろ、この条約案にいっております運航支配というものが、今度の私どものほうの法案の一条の運航支配、完全に機長の運航管理権を奪い取った状態だけをいっておるのかどうか。要するに、この条約案にございます運航支配という、エクササイズコントロールということばが、そのような強い場合だけなのか、もう少し弱い、この法案の四条にございますような場合の、ある程度のものまでも含んでおるんじゃないかという一つの疑点がございます。
 それと、「暴行もしくは脅迫ということの英文でございますが、英文も、この訳文で暴行、脅迫といたしておるよりもちょっと広いような感じがいたします。「バイ・エニ・アザー・フォーム・オブ・インティミデーション」ということばがあとに入っておりまして、この暴行、脅迫も、法案にいう暴行、脅迫よりもなお広いものがあるやに思われるのでございます。そういう点がございますので、この四条についての威力であるとか偽計であるとか、それから運航阻害というような規定も、条約面からも必要であろうかと思います。
#107
○畑委員 そうすると、国際条約で運航支配とか、この項目の中に規定しておるいわゆる暴行、脅迫、そういったもので、日本のいま言った一条に特に当たらない程度のものも、この国際条約の中に入っておるのではないか。そういった場合に、それにもし入っておるとすれば、それに合わせる関係があるから、やはり奪取罪に至らぬ程度のものも航行阻害罪としてやはり規定する必要がある。これもやはり準備草案に関係がある、こういうことですね。
#108
○辻政府委員 そのとおりでございます。
 ただ条約だけが先走ってこの規定を設けておるというふうでもございませんけれども、条約草案との関係においても考慮すべき点があるという意味で、この四条が設けられたわけでございます。
#109
○畑委員 そうすると、もう一点だけ政治亡命者の扱いの問題との関連でちょっと聞きたいんですが、これは政治問題にもなろうと思います。日本では、別に政治亡命の法規というのはない。われわれ社会党でこの前提案したことがございますが、審議未了でそのままになりました。国際的には、これをはっきり国内法で規定しておる国もあります。また、国連憲章等の精神も、それを是認しておるわけだと思いますが、政治亡命のための国外への逃亡、それの手段として航空機の乗っ取りが行なわれるという場合が相当あると思うのです。この間の赤軍派の連中は、自分たちは政治亡命だと言うかどうかわからぬけれども、私は政治亡命とは思わぬが、こういうのは相手国があるわけでありまして、そういった政治亡命、政治的な国外亡命の手段としてこういったハイジャッキングが行なわれるということが往々にしてあると思うのです。日本においては、将来、亡命犯人が法規的にどう扱われるか、そういうことは別問題として、ともかくこうした形でのハイジャッキングは在来の法規よりも特に重く処罰をする、こういうことだと思うのですが、その点いかがでしょう。
#110
○辻政府委員 この法案の第五条は、ハイジャックを広く、日本へ来た場合に処罰をするということでございます。
   〔委員長退席、瀬戸山委員長代理着席〕
たまたま日本の刑事裁判権のもとに立ち、この法律の一条から四条までの罰則によって刑事裁判を受けるということは、ハイジャッカーのうちのいわゆる亡命者という人についてもこの条文が働くことはもとより当然でございます。本法案はそのことを規定したわけでございます。この亡命の問題そのものは入管法令その他の問題でございまして、この法案は処罰できるという点を規定したわけでございます。
#111
○畑委員 以上で終わります。
#112
○瀬戸山委員長代理 沖本泰幸君。
#113
○沖本委員 御質問がいろいろ出ましたので、ばらばらになるかもわかりませんが、重なった場合は御容赦をいただきたいと思います。
 まず、第一条の中の「その運航を支配した者は、」こういう運航の支配という点ですが、第四条では、針路変更、その他運航の阻害というふうになっておるわけですが、この両者の関係、区別はどういうふうになるのでしょうか。運航の支配というのは機長に対しての問題を考えられたと思うのですけれども、威力を用いて針路変更等運航を阻害することについても、結局同じことになるのじゃないか、こう考えられるわけですが、その点いかがですか。
#114
○辻政府委員 第一条にいいます「ほしいままにその運航を支配した」と申しますのは、機長に属しております航空機の運航に関する権限を奪い、自己の意のままに運航させる、こういうことでございます。運航の管理権、支配権を完全に機長から犯人が奪取するということを意味しておるわけでございます。これに反しまして第四条は、機長の運航支配権、運航管理権というものは依然として機長側に残っておる、そういう残っておる機長というものを前提にいたしまして、「偽計又は威力を用いて、」「正常な運航を阻害した」という場合は四条で処罰される、かような趣旨でございます。
#115
○沖本委員 つきましては、大臣にお伺いしたいのですが、これは朝日ジャーナルあたりにも、最初の段階で論じられておる点を持ってきてみたわけですが、この法律ができるというようなことは、こういう犯罪を防止するための目的が多分に含まれる、こういった観点から考えていきますと、現在の法律で十分な予防効果があるかどうか、こういう価値判断というものはどの程度なさっておるかということになるわけですが、その点いかがですか。
#116
○小林国務大臣 これはそれぞれの判断の問題でありますが、かような法律は相当な抑止力を持っておる。また結果的に申せば、今回のようなものは国外へ出てしまえば何にもならぬじゃないか、こういうふうなこともいわれておりますが、その処罰そのものも大事であるが、こういう規定をすることによって犯罪を抑止するという非常に大きな効果を私ども考えておるわけであります。
#117
○沖本委員 死刑等を含めて処罰がきつ過ぎる場合にはかえってむしろ狂暴化してしまう、そういうところから殺人等の問題がなければ死刑を除くというようなお考えに至ったのではないか、こういうふうに考えられるわけですけれども、いま申し上げたとおりにやすやす出ていく。今度の乗っ取り事件でも、結局話題を世界じゅうにまいたという点では成功した、こういうことが考えられるわけでして、そういう点だけをねらえばけっこう同じようなことができる。この法律が適用される関係国以外に逃げさえすれば何でもできる、こういうことになってきたのでは何もならないという点についての歯どめ、こういうととろを考えなければならないと思うわけですけれども、さりとて十分な関係を持てる国々において完全な国際法、条約を張りめぐらすという点もなかなかむずかしい、こういうことになるわけですが、そういう点についてこの処罰そのものが十分効果があり得ると大臣はお考えでございますか。
#118
○小林国務大臣 いまのように日本と外交関係を結んでいる国等に対しては相当効果があるというふうに思います。先ほどお話しのように、犯罪人引渡条約はアメリカしかない、こういう現状でありますが、他の友好国等におきましてはもう相互主義によって当然これらの問題は解決できる、相互に犯罪人の引き渡しをするということは可能であると思うのでありますが、今回のように、いま日本と外交関係がないというところになれば、それらの道も閉ざされておるということがあるからして、処罰そのものについては結果的にはあまり効果がないじゃないか、こういうことを言われると思うのであります。しかしそれでも、それじゃ黙って見ておるのかということになると、やはり何らかの手を尽くして、そして処罰の効果があがるようなくふうというか努力と申しますか、こういうことはしなければならないと思います。
#119
○沖本委員 今度の「よど号」を乗っ取った犯人はいま北朝鮮におるわけですけれども、たとえばこれが国外追放になって、キューバあるいは彼らが目的としておるような国のほうへ行った場合に、引き渡しの要求をお考えになっておりますかどうか。そういうときの交渉はどういう段階で行なわれるかどうか。そういう場合にはこの法律を適用するかどうか。こういう点についてお答え願いたいと思います。
#120
○小林国務大臣 外交関係のあるところに参れば、当然こちらからそういう要請を公式に出す、こういう問題もありますし、また、今回の場合におきましても、私どもこのまま静観というわけにはまいらない。したがって、私ども法務省の立場としては、そういう犯罪人の引き渡しを何らかの手段で要請をしなければならぬ。しかし、これらの方法そのものは外務省の関係でありますから、その方法は外務省として検討してもらいたい。しかし、私どもとしては、そういう趣旨のことを外務省にも申し出なければならぬ。また閣議の席上においても、その要があるということを私は申しておるのであります。
#121
○沖本委員 この問題はその程度にいたしまして、第三条に「第一条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者」ということがあるわけですが、その予備につきまして、未遂と予備という点の限界をどういうふうにお考えになっておりますか。
#122
○辻政府委員 第三条に申します予備と未遂の関係でございますが、これは一般刑法と申しますか、刑事法における観念と全く同じでありまして、予備といいますのは、御案内のとおり、犯罪を実現するための一切の予備行為であって実行の着手に至らないものということになるわけでございます。実行の着手というのは、一般の刑法の観念で律していくべきものであると考えております。
#123
○沖本委員 そうしますと、この説明の中で、
 「航空機に乗り込むための航空券を購入する行為、犯行に使用する凶器を入手する行為、これらのための資金を準備する行為などが考えられる。」というふうに説明ではなっておりますが、たとえば何人かの人たちがキューバならキューバへ脱出するためとか、国外逃亡あるいはいろいろな目的を持って飛行機を乗っ取ろう、こういうことをお互いに計画し合って、それを実行に移さなかった、しかし、そういうことがわかったという段階になりますと、どういうふうに考えたらよろしいのですか。
#124
○辻政府委員 これは全体的にいかなる程度に実現性があるかという、その具体的事案との関係に問題の重点があろうかと思うのであります。一般的に申しまして、予備と陰謀の限界の問題であろうかと思うわけでございます。御承知のように、この法案におきましては陰謀は処罰はいたしておりません。この陰謀と申しますのは、犯行の謀議をするという段階が陰謀でございますが、その陰謀がさらに進みまして、一つの準備行為に移っていくという段階でこの予備が成立する。予備罪の程度に至ればこの第三条によって処罰の対象にしようということでございます。
#125
○沖本委員 それからもう一つは、先ほど御説明があったのですが、「航行中」という規定ですが、いわゆるエンジンを始動して誘導路から滑走路に入っていくというような段階、あるいは着陸して誘導路に入るまでの段階、こういう段階が航行中だというふうな御説明を聞いたように思うのですが、たとえて言いますと、タラップを上がって機内に入って、全部の乗客が乗り終わってドアを締めて、タラップをはずし、エンジンを始動した段階ですと何でもできる。こういうことになるわけですけれども、コントロールタワーの指令がなくても、いわゆる脅迫し、何らかの威力を加えて進めていけば、当然乗っ取りということは実現の可能性は考えられるわけですけれども、先ほどの御説明で少し私疑問を持つわけなんですが、その点いかがでしょうか。
#126
○辻政府委員 ここに申します「航行中」ということは、先ほど来御説明いたしておる、むしろ非常に狭い観念でございます。いまの離陸のためのエンジンの始動の開始から着陸のための滑走の終了まで、これが航行中ということでございますので、ただいま御指摘の誘導路から出ていって離陸に移るまでの行為、動きであるとか、あるいは着陸が終わってからこの誘導路へ移っていくという段階は、すでにもう航行中でないということでございまして、航行中とは空を飛んでおる状態と、先ほど申したようなそれに接着する段階だけを航行中と考えておるわけでございます。なぜそのように狭くしたかという御指摘であろうと思うのでございますけれども、やはりこれは一般の社会から隔絶された特殊な一つの社会と申しますか、そこで初めて成立するのじゃなかろうか。それからやはり機におるということは危険であるという点においても違うわけであります。隔絶された社会ができるという点と、それから実際問題としては、まだその私が言います航行中に至らない段階におきましては、一般の危険性も少ない。それから犯罪の鎮圧なんかも容易であるというような諸点から考えまして、航行中という観念を先ほど来申し上げているこの範囲に限ったわけでございます。
#127
○沖本委員 いまの御説明ですと、どうしても私は納得できないのです。結局先ほど申し上げたような中の状態に置くと、もうすでに同じことが行なわれる可能性は十分にあるわけですね。別に航行していなくても、先ほど言ったような状況の中で犯罪を起こせば、十分その可能性が出てくるわけですから。たとえば管制塔の指示をあおがなくても、危険はありますけれども、かってに機長をおどかして飛び立つこともできるわけですし、けっこう同じことが同じ条件のもとで行なわれる。それがそれからはずれた段階は違うということになりますと、そのはずれた分はどういうふうに考えていけばよろしいでしょうか。
#128
○辻政府委員 私の申し上げます航行中の段階に至らないときに、同じようなことができるじゃないかという御指摘でございますが、それは可能かもしれませんけれども、やはりその鎮圧といいますか、防止あるいは検挙という点におきまして、これはまた非常に差があるんじゃないかと思うわけでございます。そういう点から、このハイジャック法案におきましては、航行中を先ほど来申し上げておる範囲内にしぼったわけでございます。ただ、その航行中に当たらない場合にもできるじゃないか。やりました場合には一般の刑法の暴行罪もございましょうし、傷害罪もございましょうし、強盗未遂罪というようなことになるかもしれませんし、一般の刑罰法規が十分適用されるというふうに考えております。
#129
○沖本委員 さらに申し上げるようですけれども、航行中以外の段階で犯罪を起こして、同じ条件でそれが成功したということになれば、限界というものはその前から起きてくるわけです。だから、その規定は航行中の中から始めた、こういうふうな考え方になるわけですか。
#130
○辻政府委員 これはこの法案の第一条の犯罪の着手時期がいつかという問題になろうかと思うわけでございます。私どもはこの第一条の犯罪の着手というのは、一般的にはやはり航空機が航行中の状態にならなければこの犯罪の既遂というものはないのだというふうに考えております。それじゃ犯罪の着手というものはいつあるかという問題があるわけでございますが、これも原則的にはやはり航空機が航行中にならないと着手といえない場合が多いと思うのでございますが、かりに完全にハイジャックをいたしまして、航行中になりましてから完全に運航を支配した、しかし、その運航支配に至る暴行とか脅迫がテークオフの直前から行なわれておった。たとえばテークオフの直前に乗客を縛り上げた、そうしてテークオフした段階において今度は機長を縛り上げた、そうして結局ハイジャックが行なわれたというようなことになりましたならば、これはまだ乗客の手を縛り上げた段階ではテークオフはしていなかったといたしましても、実行の着手そのものは、最初の乗客の手を縛ったときからあるというふうに考えるわけでございまして、この点は航空中の航空機というものを中心に犯罪の成否を考えていかなければならないと考えるわけでございます。
#131
○沖本委員 結局は歯どめであり、罰するということにあるわけでありますが、論争そのものはそんなにまでと思うわけですけれども、そういうものをいろいろな観点から考えて、事件を起こしていくということになれば少し変わってくるのじゃ、ないか、こういうことも考えるわけで、むしろそういうことより、アルゼンチンなんかのように、「航行中もしくは離陸前の地上操作中の航空機又は」こういうふうなことを入れたほうがいいのじゃないかと私自身には考えられるわけであります。こういう点についてもお考えいただきたい、こう考えるわけでございます。
 それから先ほど、このハイジャックの問題は、すべて観点はいわゆる民間機であるいはその他の飛行機ということを御説明がありましたけれども相当何人か乗客が乗っているというような内容で考えられているように思うのですが、たとえば福岡におるセスナに燃料を満タンした場合は朝鮮海峡を越えられることもできるわけですから、こういうものは指図一つでもできますし、あるいはヘリコプターも同じような犯罪を行なうことができるわけですね。あるいは双発の軽飛行機においても同じような犯罪構成ということはできるわけですけれども、そういう飛行機の機種の範囲のお考え方はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
#132
○辻政府委員 この法案に申しております航空機の観念でございますが、これは刑法の第一条にございます航空機とも同じでございますが、さらに具体的に申しますと、航空法の二条に定義されておる航空機全部を含むということでございます。単にいわゆる民間用の航空機のみならず、日本の場合には自衛隊機であるとか警察の飛行機すべてを含む。ここにいっております航空法二条に定義しております航空機とは、御案内のとおり、いわゆる飛行機のほかヘリコプター、回転翼航空機であるとかグライダーだと思いますが、「滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器をいう。」という、この航空法二条にあります航空機すべてを含む趣旨でございます。
#133
○沖本委員 以上で終わります。
#134
○瀬戸山委員長代理 岡沢完治君。
#135
○岡沢委員 この法案の提出に至るまでの経過と、特に法制審議会の審議との関連性についてお尋ねいたします。
#136
○辻政府委員 この法案のいままでの作業の経過について申し上げますと、日航機のいわゆる乗っ取り事件が発生いたしましたのが三月三十一日であったと思いますが、その発生後間もなく、ハイジャックについてぴったりとした罰則がないという観点から、ハイジャックをまつ正面から処罰できる罰則規定を設けるべしという決定と申しますか、法務大臣からそういう指示がございまして、私どもといたしましてはさっそく作業にとりかかったわけでございます。そういたしまして、その過程におきまして十分に国会方面の御意向も聞きながら、さらにまた法制審議会の意見をも聞きながら、早急に新しい処罰法を制定すべしということでございましたので、四月二十日閣議決定という段階を目途に鋭意作業をいたしたという経過になっております。
#137
○岡沢委員 三月三十一日に「よど号」の乗っ取り事件が起こって、きょうは四月の二十八日であります。法案審議に入って、しかもあと松本委員の質問を含めて午後二時までには終わるようにという与党の理事からの指示がございました。この法案は、私から指摘するまでもなしに、刑事立法の基本に関する法案であります。私も何回か指摘いたしましたように、刑法の改正作業は昭和三十八年から引き続き行なわれておるわけであります。来年の秋に草案ができるという予定だという御答弁をこの席でもいただいております。日航機の「よど号」事件が起こったから急遽一月以内に立法作業を終わる、これは私は必ずしもそれに反対という意味ではありませんけれども、いささかどろなわ式、いささか軽率に過ぎるというそしりを受けてもしかたがないのではないか。いま刑事局長は、意図的かどうかわかりませんが、法制審議会の法案に対する審議のことにお触れになりませんでしたけれども、四月十三日に法務大臣から諮問されて、たった一日の審議で、予定であれば七年、八年もかかる予定の法案がさっと答申される、これは私はどうしましても納得できないような感じがいたします。もっともいま外務委員会にかかっております東京条約の批准にいたしましても、七年前に調印された条約を急遽あわただしく批准にこぎつける、国会自身も反省をすべき点があろうと思いますけれども、ほかのいわば雑な法案と違いまして――雑ということばにはちょっと語弊がありますけれども、この法案の場合には、法務委員会としては、刑事立法の基本に関する重要法案であることは否定できないと思います。やはり法体系全体を配慮し、慎重に審議すべき法案だという見方は正しいと私は思うのでございますが、この法案について、あまりにもおざなりなと申しますか、法制審議会の権威をも疑わざるを得ないような手続上の過程というものについては、私はいささか納得できないわけでございまして、その辺のところをもう少し詳しく刑事局長でも法務大臣からでも御説明いただきたいと思います。
#138
○小林国務大臣 実は、御批判のように、どろなわ式であるということはそのとおりであろうと思うのでございますが、全体としてああいう事件というものはあまり予期しなかった、こういうことがうかつであったといえばうかつでありますけれども、しかし起きてしまった。起きた時点におきまして、それではこのままじんぜんと過ごしてよいか、こういう問題がございます。世論の問題もありますし、国会方面の御意見もありまして、予算委員会等におきましても、強く御希望的な質問がしばしば行なわれたのでありまして、私は実は三十一日にこのことが行なわれてからすぐその翌日かに、これはやはり適当な処罰の規定がない、どうしても大きな欠陥であるから、急いでこれをつくらなければならない、こういうふうに思いまして、事務当局にすぐ指示をいたしたのでありますが、たまたま御承知のように、刑法の草案の中にもこの規定がある。すなわち、こういうことはある程度法制審議会においても審議をし、そうして一応の草案ができている段階である。したがって、その趣旨からいいましても、こういうものはかねがね設けるべきものだというふうな世論は決定しておった、こういうことが言えるのでございます。したがって、これはもうわれわれが法務省として独善的にこれをやるということは戒めなければならぬが、国会側の御意見また一般世論からいっても、また法制審議会が従来検討している立場からいたしましても、この際やはり早急に立法すべきである、こういう結論をもってこれに対処したのでございます。
 法制審議会としましても、全然新しい問題をわずか二日、三日でどうこう、こういう問題はお話しのような批判が出るのでありますが、かねがね検討を重ねて、その試案が発表されている、こういう事態でございますので、何とかして、さようなことになるなら、この国会で成立せしめたいというのが、私は一般の世論でもあろう、国会側の御意見もさように私どもは考えましたので、法制審議会が二日か三日でこれをきめたということは、多少お話しのようなことが言われる余地はあろうと思いますが、やはりこういうことは急いでやる必要がある。しかもいまお話しのように、東京条約等もこの国会で批准して承認してもらう意思がもともとあったかどうか、こういうことになれば、これは御承知のとおりでありまして、航空法の改正も同様なものであります。
   〔瀬戸山委員長代理退席、委員長着席〕
これらの一連の問題はこの際のこととしてぜひやらなければならぬ、こういうたてまえであると政府も考えたのでありまして、御批判は私は十分あり得る、またごもっともである、かように考えます。
#139
○岡沢委員 おことばを返すようでございますけれども、こういう事件は予想できなかったという趣旨の御答弁がございました。しかし、この法案の提案理由の御説明では、航空機の発達とか諸外国の例を考えた場合、これは一時的な現象ではなしに、十分今後ハイジャックというようなことが予想されるから、この改正案を出すのだという御説明がございましたし、また一方では、いま御指摘の刑法草案では、船舶を含むとか、条文上もかなりの変化がございます。われわれももちろん鉄は熱いうちに打てということわざがございますし、この法案に反対でもございませんし、必要性も十分認めるわけでございますけれども、たとえば公害罪の問題につきましても、慎重審議ということは十分わかりますし、手続上の面から十分な検討をなされて、批判を受けるような、問題を起こさないような立法過程を経ることは私も賛成ではありますけれども、しかし、こんなようにあわてて後手後手に回った法案を急選作成するということについては、法務省のお立場としてはいかがかという感じを禁じ得ないわけであります。今後は、性格は違いますけれども、前の委員会でも私が指摘しましたように、このハイジャック事件が外科的な病気だとすれば、内科的なガン症状ともいうべき公害罪の策定につきましても、後手に回らないように慎重な御配慮、そして時宜に適した立法措置というようなことについても、法務省としては姿勢を正していただきたいと指摘をしたいと思います。
 このハイジャッキングの背景あるいは犯人の態様というのはいろいろあると思います。財物損傷を目的とするものもあるでしょうし、国外亡命を目的とするのもあると思います。しかし、今度の赤軍派の諸君に見られたような例が日本の場合には多いと考えられるので、そうしますと、刑法の確信犯に相当する犯罪者であります。確信犯の場合は、違法性の認識がないのが普通であります。そういたしますと、刑罰を重くして犯罪を防止できるかという点につきまして、一般予防の観点からこの法案の効果ということについていささか疑問があるわけであります。そういう点を考えましても、必ずしも急いでこれを成立させたから、この種の犯罪が防止できるという効果は直ちには期待できないということも含めて考えますと、やはり先ほど申しましたように、刑法体系、刑事立法の基本に関するこの種の法案については、東京条約とはちょっと別の意味で、慎重性を要したのではないかという感じを持つわけでございます。確信犯とそれを限った場合のこの法案の一般抑止効果について、どのように法務省として考えておられるか、お尋ねいたします。
#140
○辻政府委員 この法案とハイジャックの抑止効果の問題でありますが、この点につきましては、先ほど大臣の御答弁にあったと同様の見解を持っております。何と申しましても、この法律を制定いたしませんと、ハイジャックの場合に、人の死があれば別でございますが、死がない場合は最高限度が有期懲役どまりになる。これも死が発生した場合とか、あるいは爆発物の爆発があったという場合は格別でございますが、そうでない場合は有期懲役どまりということになりますわけで、ハイジャックの可罰性という面からいきますと、現行の刑罰法規では足らない面があるんじゃないかと考えておるわけでございます。かような観点からも、この第一条については無期懲役を規定しておるわけでございますが、この無期懲役につきましては、私は一般的にいう犯罪の抑止力があるというように考えておるわけでございます。
#141
○岡沢委員 時間の制約がありますので、次に進みたいと思います。
 この法案の作成過程で、与党に草案を御提示なすった段階では、船舶が入っておりましたというふうに聞いております。それからまた、先ほど御答弁がありました法制審議会の刑法草案にも、船舶が入っているわけでございます。この際、船舶を除かれた具体的な理由――当時の新聞報道では、運輸省なんかでは韓国へ渡るフェリーボートの開設も近いというようなことも含めまして、船舶も含めるべきだという意見とか要望もあったというように聞いておりますけれども、その辺のいきさつを明らかにしていただきたいと思います。
#142
○辻政府委員 この法案作成の過程におきまして、法制審議会の諮問に対する答申が出ましたのが四月十五日と承知いたしておりますが、その段階までは航空機のほかに船舶をも対象にいたしておった次第でございます。その過程におきまして、国会方面の御意向を十分に承るということもいたしたわけでございますが、その際、各政党とも船舶を早急の間に入れるについてはやや疑問があるという御意見が、公式でなくても批判的な御意見があったことは事実でございます。運輸省当局におきましては、ただいま御指摘のように、船舶もぜひ入れてほしいという要望があったことも事実でございます。
 そこで、私どもは法務省の立場におきまして、かような客観的な御意見というものを前提にいたしまして、いろいろ検討をいたしたわけでございます。もとより一般社会から隔絶された一つの特異な社会という点におきましては、航行中の航空機、航行中の船舶、同じ性格を持っておるわけでございまして、私どもは、理屈としては船舶がここに入ってしかるべしというふうに考えておったわけでございます。現在もそのように考えるわけでございますけれども、何ぶん船舶というものは大小いろいろあるということが、何といいましても一つの法律化する場合の難点でございます。形状それから性能につきまして、たいへんな差が船舶についてはあるということでございます。もっとも船舶という場合に、現行の刑法におきましても裸で日本船舶ということばもあるわけでございますし、法律化することは刑法と同じような観点から、裸で船舶ということを入れても、もちろん理屈の面では差しつかえないと思うわけでございますけれども、実際問題といたしまして、その辺の釣り船のようなものであるとか、あるいはボートのようなものも船舶に入るわけでございますし、大海を定期航行する大型汽船もございます。漁船もございます。いろいろな関係で、どうもこの際は、早急の間に船舶についてこの法案の対象とするものを、理論的に、かつまた実際上限定していくという作業が、やはり間に合わないということが実際上の理由でございまして、この際、船舶の問題は後刻検討するということで、船舶を削除すべしという政府の決定がございましたので、この段階におきましては航空機だけに限られた次第でございます。
#143
○岡沢委員 時間の関係で、法案の中身についてお尋ねしたいと思います。
 第一条の中で、「航行中の航空機」ということについては、もうすでに各委員からいろいろ質問もございました。御答弁もございました。刑事局長の御答弁は、ハイジャック防止条約の草案第二条あるいは東京条約の第一条三項に従った御解釈で、離陸のためのエンジン作動開始のときから、着陸のための滑走が終止したときまでという御解釈に統一されているようでございますけれども、いわゆる航行中という意味の文字解釈からはそういう解釈が出てまいりませんし、また、航行中の航空機、それは、たとえばニンジンがとまれば瞬間に落ちるというきわめて危険性が高いというところから、この航空機の奪取罪があえて設けられた理由があろうと私は思います。悪質とか危険性だけであれば、これは人質をとって車の中でも新幹線の中でもやり得るわけなので、また同じような危険性はあるわけであります。そういたしますと、飛んでおるのではなしに、まだ離陸に至らないで、しかし、エンジン作動を開始したとき、あるいは着地してから滑走が終わるまでの段階というのは、陸上の他の車両、あるいは御質問申し上げました船舶における犯罪と、性格はそうたいして変わらないのではないか。文字解釈としても疑問があるし、またこの航空機奪取罪をあえてほかの強盗と区別して重罪に処する理由からいっても、ちょっと問題があるのではないか。そのためでしょうけれども、先ほど沖本委員も御指摘になりましたが、アルゼンチン刑法では、「航行中もしくは離陸前の地上操作中の航空機」航行中の場合と離陸以前の地上操作中の航空機とは区別して規定しているわけでございます。概念上も航行中の航空機に、実際上航行をしていない、いま御答弁のありました、私が指摘しましたような着地中のある種の航空機を含むということは、解釈上も、また立法の趣旨からいっても疑問を私は持つのでございますけれども、これについての見解をお聞きします。
#144
○辻政府委員 この「航行中」の観念につきましては、先ほど来申し上げているとおりでございまして、いま御指摘のテークオフに至らない段階、戸をしめてから滑走路に移動していく段階とか、あるいは滑走が終了して、それからスポットのほうに移動していく段階、これも航行中と同じではあるのじゃないかということでございますが、やはりこれは陸上におる航空機であるという点におきまして、航行中の、空を飛んでおる飛行機、またはそれにきわめて接着した、いわゆる私が申し上げておる航行中の航空機という点とは、社会からの隔絶という点において違った面があろうかと思います。そういう観点から、この航行中という観念を私どもの解釈をいたしておるわけでございます。これは、世界的には、ただいま御指摘のように、条約等におきましても特にこの規定を設けておる趣旨もそこにあるのではなかろうかと考えておるわけでございます。
#145
○岡沢委員 刑事局長の解釈はぼくはわかっておるのです。これは御説明の中にも、文書としてもいただいております。しかし、その解釈自体が、一般の航行中という概念からは出てこないし、そこまで広く解釈する必要があるかどうか。東京条約なりハイジャック防止条約草案にはわざわざ定義として入れておりますから、これは解釈上救われますけれども、このいまお出しになっておる法案そのものを見た場合の、「航行中の航空機」という中の、いわゆる着地中のある種の飛行機も含むという解釈は出てこないし、それを含めさせる必要もないのじゃないかという私の意見に対する見解を聞いておるわけです。
#146
○辻政府委員 岡沢委員の御指摘は、私どもの申した航行中という観念はそれでいいのだというお立場から、それが法文上明確にされていないではないか、こういう御趣旨でございましょうか。(「着いてからのだよ」と呼ぶ者あり)着地してからの分も航行中というところに入れなければならないという御議論、ちょっと私……。
#147
○岡沢委員 むしろ逆なんです。着地中の飛行機であれば、たとえば、先ほど申しましたように、船舶の中とか、普通の乗用車の中とか、新幹線の車両の中とか、あるいは一般の家でも危険性はほとんど同じなんで、爆薬を持ったりあるいはピストルを持ったり、人質をかかえて犯す危険な、ある種の悪質な犯罪と同じなんです。飛行機の場合は、エンジンがとまった、航行中なら瞬間に落ちるというところに非常に大きな危険性があるわけだ。また、航行中であれば外国へでもすぐに行けるという問題が、ちょっとほかの同種の人質犯罪等とは違うというところに、あえてこの特別立法の趣旨があろうと思うのです。そういうことを考えました場合に、また文字解釈からいたしましても、「航行中の航空機」航行中ということをわざわざおっしゃることは、私は、やはり着地中の航空機は含まないという解釈のほうがすなおじゃないか。また、現に解釈の根拠とされております、ハイジャック防止条約草案や東京条約ではわざわざ定義を入れておるわけです、航行中の場合はこれを含むと。しかし、この法律案にはそういう定義はないわけで、定等がない場合は一般の航行中という解釈に従うのが正しいのじゃないかという私の見解についての御意見を聞いておるわけですす。
#148
○辻政府委員 私は、岡沢委員が、私どもの申しておる航行中の観念でよろしいという前提から、それをもっと明確にできないのかという御趣旨と承るわけでございますが、そういう御趣旨であるといたしますならば、これは一つの実質的な刑法でございますので、この法律にその航行中の定義規定を書くことは適当でない。むしろ、この国会の御審議を通じて、ここにいう航行中というものはこういうものであったということを明確にさしていただいたほうがいいのじゃなかろうか、かような観点から、特に定義規定を設けていない次第でございます。
#149
○岡沢委員 日本の刑法の形式からいいまして、定義を書く場合はないわけなんで、解釈上あるいは運用上あるいは判例上それの解釈が統一されていくというのが通例だと思います。しかし、この東京条約を見ましても、ハイジャック防止条約を見ましても、あえて、わざわざ定義を入れているのは、普通の文字解釈上の航行中の航空機という概念と違うから、わざわざこの定義の条項を条約の中に含んでいるのじゃないか。そうすると、やはり刑法の一般解釈として、先ほど、船舶を入れたら、船舶の概念の中には小さなボートも入るのだという御釈明がございました。同じような意味で、航空機の場合も、定義がない場合に、着陸中の航空機も航行中の航空機になる場合もあるのだという解釈は、非常に拡大解釈のおそれを免れないし、一方で必ず含まなければ犯罪が防止できないというものでもないし、むしろこの特別立法が、わざわざ急遽制定されようとしておる理由には、航空機の特殊性というものが、先ほど来繰り返しておりますように一瞬も停止できないという危険性が強いから、ほかの、それは社会から隔絶されたというのなら、船舶の場合も同じ場合が考えられるわけなんで、わざわざ区別した理由はそこにあるのではないかというふうに私は考えておるわけでございますけれども、時間の関係でこれはあとに残しまして、次に進みたいと思います。
 この「航行中の航空機を強取し、又はほしいままにその運航を支配した者」の後段の「又はほしいままにその運航を支配」も、やはり「航行中の航空機」というふうにかかると解釈すべきなんでしょうか。
#150
○辻政府委員 さようでございます。
#151
○岡沢委員 同じことは、第四条の運航阻害の場合の後段のほうにもかかると解釈してよろしゅうございますか。
#152
○辻政府委員 そのとおりでございます。
#153
○岡沢委員 いまの航行中の解釈の基準が、基礎が、東京条約あるいはハイジャック防止条約草案にかかっておるとすれば、同じような意味で、東京条約の場合とハイジャック防止条約の場合は、「軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。」という規定があるわけです。これは国際法規であるので、こういう規定になったかもしれませんけれども、この際明らかにしておきたいのは、いま審議いたしております法案では、こういう航空機についての例外規定の解釈はあり得ないと考えますけれども、法務省の見解を明らかにしていただきたいと思います。
#154
○辻政府委員 この点も、先ほど来申し上げておりますとおり、この法案におきます航空機は、わが国の場合であれば自衛隊の飛行機も含み、かつ警察の飛行機も含む、単に民間航空だけに限らないというふうに解しております。
#155
○岡沢委員 先ほど私は、地方行政委員会に出ましたので、途中席をはずしておりまして、失礼いたしました。
 次の点は、瀬戸山委員がすでに若干お触れになりましたけれども、犯人及び共犯者のみが乗っている航空機の場合にこの犯罪が成立する余地がございますか。
#156
○辻政府委員 これは、航行中の航空機に犯人と共犯者だけということになりますと、初めからその支配権というものは犯人と共犯者だけが持っておるということになろうかと思いますが、そういう場合は現実にあまりないと思いますが、かりにあるといたしましても、これはやはり運航権の支配を奪い取る、あるいは財物である航空機を奪い取るという点に本質がございますから、そういうものに当たらない限りは、この一条の適用はないというふうに考えます。
#157
○岡沢委員 第二条に入らせていただきまして、「前条の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。」この「よって」の因果関係につきまして、逐条の御説明では若干触れておられますけれども、いわゆる暴行、脅迫その他の方法と直接の因果関係がなくても、死者を出した場合に、この第二条の適用があるという御解釈でございますけれども、たとえば乗客の中に非常に心臓の弱い人がおられて、ほかの大多数の乗客は何でもなかったけれども、本人だけショックでシック死をなさるというような場合も想定できないことはないわけなんで、その辺の解釈あるいは法意、これについてどういうふうに考えておられますか。ほかの一般の致死罪についての刑法上の規定がございますが、同種に考えていいのか、その辺のところをお尋ねいたします。
#158
○辻政府委員 この第二条は、第一条の犯罪の結果的加重犯であるというふうに考えておるわけでございます。その場合に、第一条の手段でございます。暴行、脅迫、それから抵抗不能の状態におとしいれる行為、こういう行為から人の死亡があったという場合は、もちろんこの第二条の適用がございますが、そのほかに強取、特に運航を支配した結果、その支配の状況においてそれを因果関係のある死亡というものが出ました場合にも、第二条の適用があるということでございます。ただいま御指摘の、ハイジャックがございまして、運航支配されたその一種の監禁状態の中で特別の方が、虚弱な方が、その監禁されたことによって死亡なさったということになれば、やはり第二条の適用があるというふうに考えております。
#159
○岡沢委員 第四条に入らしていただきたいと思いますけれども、この規定は刑法二百三十三条、二百三十四条等の業務妨害罪に非常によく似た規定だと思いますけれども、第四条を従来の刑法草案等から考えましても、あえて早々の間に立法されるこの法律案に含めなければならないという必要性、緊急性についてはちょっと疑問を感ずるわけでございますが、この第四条を設けられた趣旨、法意等につきましてお尋ねいたします。
#160
○辻政府委員 この第四条につきましては、この第四条に規定している行為そのものがやはり航行中の航空機の乗り組み員や乗客にたいへんな不安であるとか迷惑であるとか、そういうものを及ぼすという点におきまして、単なる業務妨害というものとはやはりその可罰性が違うのではなかろうかということが第一点でございます。これはやはり航行中の航空機という特殊性からくるものであろうと考えるわけでございます。
 第二点は、先ほど来申し上げておりますが、現在準備中のハイジャック防止条約草案におけるいわゆるハイジャックの定義が、解釈のいかんによりましては、本法案の一条の場合のような典型的なハイジャックよりもさらに広い面をも予定しておるかにうかがわれるところもございます。この四条に当たるようなものも、やはり各国が処罰義務を負うというようなことを考えておるやにも思われますので、そういう点をも勘案いたしまして、この四条の規定を設けておる次第でございます。
#161
○岡沢委員 第五条の、国外犯の規定について質問したいと思いますが、刑法第二条の国外犯の処罰の規定は、一般的には内乱罪とか外患罪とか、通貨偽造、詔書偽造、有価証券偽造等、わが国の国益に直接結びつく犯罪に国外犯の規定が適用されているわけです。今度のこのハイジャックの場合は、必ずしも国益に直接結びつくという感じはないわけなんで、条約上との関係もあろうかとは思いますけれども、たとえばわが国以外の飛行機の中で、しかも日本人以外の犯罪者が、しかも日本人の乗客の一人もない場合、しかも日本の国外で行なわれた場合でも、日本に着陸した場合、処罰の対象になるということになろうと思うのでございますが、そこまで国外犯の処罰を広げた理由について御説明いただきたいと思います。
#162
○辻政府委員 これはやはりハイジャックという犯罪の性格から見まして、その処罰並びに防止に関する国際的な協力義務というものが強く要請されるものであろうと思います。現にハイジャック防止草案の考え方も、そういう国際的な協力を強く期待しておるわけでございますし、東京条約におきましてもその片りんが出ておるわけでございます。こういう観点からハイジャック犯罪の特殊性から、特にこれはいわば世界主義という観点からこの国外犯処罰の規定を設けた次第でございまして、御指摘のように、現在ございます刑法二条のいわゆる保護主義からきておるものと若干その性格が違うと思いますけれども、これはやはりハイジャックに関する犯罪の特殊性という点からあえて世界主義的な立場をとったものでございます。
#163
○岡沢委員 最後に一問だけ、特に法務大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、この法案でも二条でいわゆる死刑が刑として明記されているわけでございます。すでに一部で御質問もございましたけれども、死刑廃止について法務大臣としての御所感を、これはこの問題だけを論じても論じ尽くせないたくさんの問題を含んでいることは重々承知いたしておりますけれども、しかし、この日航機の乗っ取り事件で百名余りの乗客の方々の命を国民全部が心配をした。幸いにしてこの日航機事件では一人の死傷者も出さずに解決しましたけれども、その四日後には大阪で天六のガス爆発事故によって七十七名の人命が失われる。また国外におきましてはカンボジア等で人間が動物と同じような扱いをされているという報道もございます。人の命につきまして、やはりわれわれ人類の一員として、また平和憲法を持ち、人権尊重を第一義にうたっておる憲法を持つ国民として、死刑廃止の問題は必ずしも個々の死刑囚の数だけから論じられるべき問題ではなしに、人間と死、あるいは人が人を殺し得るかという基本的な問題、あるいは人の命は地球よりも重いというような観点からいたしましても、きわめて大きな問題を含んでおると私は思うのでございます。小林法務大臣のこの死刑廃止に対する御見解を聞かせていただきたいと思います。
#164
○小林国務大臣 この問題は、御承知のように法制審議会におきましても、死刑を全廃ということは尚早である、これは残すべきである、こういうふうになっておりますが、ただしこれを当てはめる犯罪そのものをできるだけ減らしていこう、死刑をなるべく少なくしていこう、こういう考え方はお持ちになっているようでございます。このハイジャックの法律につきましても、これは刑法に入れる際に全体の調和を保ってまたいろいろ考えられる、こういうふうに思います。
 私が法務大臣として、これについて別に意見を申すのはどうかと思いますが、変なことばでいえば、法務大臣としての私個人としては、死刑を廃止するというようなことは尚早である、かように考えております。したがってまた、公式の場合に私の意見が聞かれればさような返答をいたすであろう、こういうふうに思います。
#165
○岡沢委員 もう一点だけ。個人として死刑廃止は尚早だという御意見がありましただけにお尋ねしたいわけですが、諸外国の例でたしかベルギーだと思いますが、死刑は残しておるけれども、事実上百年以上も執行をやってない国がございます。法務大臣御就任以来、死刑執行のいわゆる御署名をなさったことがございますか。
#166
○小林国務大臣 かようなことはひとつ言明いたさないことにいたしております。
#167
○岡沢委員 終わります。
#168
○高橋委員長 松本善明君。
#169
○松本(善)委員 この法案の国外犯の問題が先ほど来論じられておりますけれども、「犯人の国籍、犯行の場所、被害航空機の所属国のいかんにかかわらず、これを処罰する」ということになりますと、たとえば例をあげますならば、アメリカからキューバへ、あるいは逆の場合、あるいはカンボジアとベトナム、こういうような全く日本と関係がなくて、しかも場合によっては交戦状態である、場合によっては内戦状態である、こういうようなところのものについてまで処罰をするということにならざるを得ないと思いますが、それでよろしいですか。
#170
○辻政府委員 およそこの一条ないし四条の犯罪に該当する限り、何人がどこで犯しても日本のこの規定が適用されるということでけっこうでございます。
#171
○松本(善)委員 そうすると、これは先ほど来論じられておるわけですけれども、刑法二条が大体保護主義で日本の国益との関係できめられておる。それが世界主義だということを言われるわけですけれども、こういうような、極端にいえば南極で起こったようなことまで日本法で処罰をしていく。これは日本の刑法の体系からいうならばやはり相当の変化であると思うので、そういうことは本来ならばやはり法制審議会で十分にこういう問題点について論議がされるべきではないか。刑法学者、それから法曹関係者の中で十分に論議をされた上でこの国会に提案をされるというのが筋ではないかと思いますけれども、この点は法務大臣にお聞きしたいのであります。
#172
○小林国務大臣 これはお話しのとおりでございまして、従来に例がない。しかし、こういう犯罪は世界人類の敵だ、こういうふうな考え方が強く出ておるのでありまして、そのくらいにしなければこれを抑止することは非常に困難だ。犯罪そのものがもう初めから世界的犯罪である。これを世界じゅうの敵としてひとつ処置しなければならぬということで、条約等においてもむろんそういうふうな考え方がこれから出てくるものでありますが、これらの問題についていまお話しのようなことがございます。十分審議しなければならぬという問題でございます。ですから、この問題については法制審議会において相当に、時間は三日間でございましたが、論議をされた、こういうことの事実がございます。
#173
○松本(善)委員 この問題については法制審議会で論議がなかったと聞いておりますが、いかがでしょう。
#174
○辻政府委員 この法案と同じ一条から五条までのこの形で諮問が出たわけでございまして、法制審議会におきまして現在の第五条に当たる国外犯処罰の規定は十分に論議をされまして、その結果むしろ反対者はなかったというふうに理解するわけでございまして、全員の御賛成をいただいたと私は解理をいたしております。
#175
○松本(善)委員 先ほど金浦着陸等の関係で同僚委員がいろいろ聞きましたけれども、これも金浦着陸の問題について直接聞くというのではありませんけれども、この法案の趣旨についてやはりここに明確にしておく必要があると思うのであります。
 先ほど刑事局長は、平壌とソウルという例をあげて言われましたけれども、別に地域を限る必要はありませんけれども、地上から擬装着陸をさせたという場合には当然にこの四条に当たるわけですね。
#176
○辻政府委員 四条に当たりますのは、やはり航行中の航空機の運航阻害をするという意思のもとに、まずその行為を行なうことが必要でございます。その手段といたしましては、必ずしも航行中の航空機に乗っておる人がやる場合とは限らない。地上におる人が行なうことも可能である、かように申したわけでございまして、何はともあれこの四条の運航を阻害するという犯意があり、そのもとの行動でなければならないという前提があるわけでございます。手段といたしましては、管制塔から偽電を発するというようなことも考えられる、かように申したわけでございます。
#177
○松本(善)委員 それから交戦状態のような国の間で起こった場合はどうなりますか。
#178
○辻政府委員 交戦状態の国と申しますか、具体的にどういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。
#179
○松本(善)委員 たとえば戦闘行為の一部というふうにみなされるような場合ですね、そういう場合にどういうふうに考えているのか。
#180
○辻政府委員 いわゆる戦闘行為といいますのは、私あまり深い理解じゃございませんが、戦時国際法の適用を受ける一つの国としての行為と申しますか、そういう範疇に入ってくるわけでございます。戦時国際法の適用があるという面におきましては、一般的にいって国内の刑罰法規というものは適用されなくなる、こういうふうに考えておりまして、これは国際法と国内法の一般問題として考えるべき問題であると考えております。
#181
○松本(善)委員 それから戦時国際法が適用されないけれども、戦闘状態のような状態というのがありますね。そういう場合についてはどう考えていますか。
#182
○辻政府委員 これも一般論になろうかと思うのでございますが、国の行為というものを他国が処罰できるかというような一般論の問題で、一般法理の問題であろうと思います。一般的に国の刑罰法規は自分の国そのものは処罰できないという、これは定理と申しますか、そういう観念があることは御承知のとおりだと思います。
#183
○松本(善)委員 そうすると、他国の国の意思として行なわれたことはこの適用外である、こういうことですか。
#184
○辻政府委員 私、刑罰法規が他国の国の意思として行なわれた行為について適用除外されるかどうかという問題につきましては、ちょっと答弁を留保さしていただきたいと思いますけれども、私は、国の行為である限り、外国の行為であっても、これは刑罰の対象にならないと一応現在考えておりますが、確定的なことは留保さしていただきたいと存じます。
#185
○松本(善)委員 そういうことは法制審議会で論議されたんですか。
#186
○辻政府委員 必ずしも国外犯の問題としては論議されておりません。
#187
○松本(善)委員 私が言いますのは、そういうような問題についてもすべてやはり法制審議会で論議されて、そうして国会に提案されるべきではないかということを言っておるわけですけれども、こういうことは国際的に例がありますか。
#188
○辻政府委員 こういうことと申しますのは……。
#189
○松本(善)委員 もう一度聞きましょう。ハイジャッキングについて犯人の国籍、それから航空機の所属国のいかん、犯罪地のいかんを問わず、世界じゅうどこで起ころうと処罰をするんだというようなことをしておる国があるかということです。
#190
○辻政府委員 このハイジャック関係の法律は、お手元にもお配りいたしましたように、まだこれずばりとして規定しております国は四カ国だというふうに私は承知をいたしております。この四カ国のいわゆるハイジャック法につきましては、広く世界主義的なものをとっていないと思うのでございますけれども、一般的にヨーロッパの大陸法系におきましては、この国外犯処罰というものは、一般犯罪の問題といたしまして非常に広く規定されておるのが通例でございます。
#191
○松本(善)委員 ヨーロッパは地続きの国であって、そしてそれはそれなりの特殊性があると思うのです。そうすると、少なくもこのハイジャッキングについては全く世界じゅうに例がない、この刑法二条のいわゆる世界主義として刑事局長が説明されたことは世界じゅうに例がないと一応言っていいですね。
#192
○辻政府委員 ただいま申しました四カ国の法制につきましては、広く国外犯処罰までには至っていないと思いますけれども、ハイジャックの処罰及び防止に関する条約案の関係、こういうものを見てまいりますと、将来ハイジャック処罰の国際条約ができました場合には、この条約の内容からして広い国外犯処罰を各国が規定する必要があろうかと思います。
#193
○松本(善)委員 条約の話が出ましたけれども、本来ならば、条約について国際的な諸関係というものが十分論議をされてから、条約との関係でこのような法律というものの立案が考えられるのが筋ではないかと思いますが、法務大臣いかがでございましょう。
#194
○小林国務大臣 これはいろいろ御議論がありますが、私は、ハイジャッキングという犯罪の世界的、国際的性質からいたしまして、必ずこういうものが広く規定されるようになる。それにしても少し早過ぎるようだという御議論もあると思いますが、ことしの九月、へーグでこの関係の条約が審議される、こういうふうになると、こういうことをしなければ犯罪の抑止、予防ということについてむしろ大きな欠陥が出るんじゃないか、どうも少し手回しがよ過ぎるという御批判はあろうと存じますが、このほうがよろしかろう、こういうことで規定をいたしたいのでございます。
#195
○松本(善)委員 先ほど来論議をされておりますが、ハイジャッキング防止条約準備草案によりますと、「軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。」ということになっておる。そうすると、国際的にこの条約との関係でも、刑法二条を適用するというのは非常に広い範囲である。こういうような国の軍隊、それから税関、警察の航空機というのは国の意思との関係で動いている、そういうような関係のものです。そういうことにまで広がっていくことになるわけですけれども、これはそういう意味ではハイジャッキング防止条約の準備草案よりもさらに広いものだというように言っていいですね。
#196
○辻政府委員 ハイジャックの準備草案は、御承知のとおり、国際民間航空機構、いわゆるICAOでございますが、ICAOが中心になってやっておるわけでございます。そういうことからいたしまして、当然条約というものは民間航空に限るという一つのワクがあろうかと思うわけでございまして、そういう観点からいわゆる軍用機であるとか警察や税関の航空機は除くということが出ておると思うのでございます。しかし、今回御審議をいただいておりますハイジャック防止法案におきましては、その処罰の必要性というものは必ずしも民間の航空機に限らないという観点から、この法案におきましては、警察であるとか自衛隊の飛行機であるとか、そういうものも含むということにいたしたわけでございます。そういうことでございますから、いま御指摘のように、条約との範囲の広狭という点になりますと、この法案のほうが広い面もございます。
#197
○松本(善)委員 法務大臣に伺いたいのでありますが、こういうことは外国の主権との関係でどういうふうになるというふうにお考えでございますか。
#198
○小林国務大臣 外国の主権とは直接関係がない、こういうように思います。
#199
○松本(善)委員 もう少しわかるように御説明をいただきたいと思います。この審議の状況というのは国民が見るわけであります。外国人がどこで犯そうと、日本の国法で処罰をするんだ、こういうことをきめるわけですから、それが外国の主権と関係がないと言われても国民はわからない。どういうことになるか、御説明いただきたい。
#200
○辻政府委員 ただいまの国外犯処罰の規定でございますけれども、これは御案内のとおり各国といいますか、国によってこの考え方がいろいろ違うと思うわけでございます。先ほど申し上げましたヨーロッパ大陸諸国におきましては、国外犯処罰の規定がわりあい広く行なわれておりますし、これに反してアメリカ関係においては比較的これが厳重といいますか、狭いというふうに理解をいたしておるわけでございます。したがいまして、一国の刑罰法規の適用範囲をいかにするかということは、各国がそれぞれの立場におきまして規定できるわけでございます。問題はそういうふうに刑罰法規の適用範囲を定めました場合に、あと実際にそれに対して刑事手続が行なわれるかどうかという問題につきましては、現実にわが国の場合ならば、わが国の刑事裁判権の及ぶ範囲にその犯人が来なければできないわけでございます。これは一国の刑罰法規の適用のしかたという国の一つの考え方に基づいて規定されるべきものでございまして、その場合には犯罪の性質との関係におきまして、この範囲をきめていくのが至当である。ハイジャック法案におきましては、その犯罪の性質から見まして、いわゆる世界主義をとりまし
 て、広く国外犯の処罰をするということがむしろ当然かと考えておるわけでございます。
#201
○松本(善)委員 ハイジャッキング防止条約の準備草案の三条には処罰のことをきめておりますが、これは処罰を義務づけるものですか。
#202
○辻政府委員 これはまだ草案でございますけれども、一応これは義務づけられておる。もっともその犯罪人引き渡しとか、究極的にそういう当該犯人がどこかで処罰され得るということを保証するものであろうと思いますけれども、その限度におきましては――その限度といいますか、犯罪人引き渡しとか、そういうものを含みまして、各国に処罰の義務と申しますか、処罰し得るようにすることを規定したものであろうと考えます。
#203
○松本(善)委員 このハイジャッキングの防止条約もできまして、各国がそれぞれ処罰をするというようなことをお互いに条約としてきめる、その後にこういうことをつくっていくということならば、これは順当な順序というふうに思うわけであります。普通はやはりそういうふうにやっていくのが慎重なやり方であり、穏当なやり方ではないかというふうに思いますが、法務大臣、いかがでございましょうか。
#204
○小林国務大臣 これはそういうふうにやればあるいは穏当かもしれません。とにかく航空機の犯罪というものは初めから国際的で、よそへ逃げてしまえばそれでいいのだ。たとえば日本に逃げてくればそれでいいのだというような考え方は、多少先回りしても、こういう種類の犯罪は、もう国際的に、どこの国に行ってもこれは許される行為ではないということをきめておくのが――少し先ばしるというようには思いますが、ほかのやり方と比べて調子が合わぬじゃないかというふうな御批判もまたあろうかと思いますが、私はやはりそのくらいに考えるべきがこの種の犯罪であるというように思っております。やがてまた国際条約においても、あるいは外国の立法例においても、こういうものが相当広く行なわれるだろう、こういうふうに私は考えております。
#205
○松本(善)委員 ところで、このハイジャッキングで、外国でその犯人が処罰をされた、そしてその後日本に正当な手続で入国したという場合に一体どうなりますか。
#206
○辻政府委員 それは同じ犯罪で外国で処罰された者が、その後にその犯人が日本に来たという場合と理解をいたしますが、そういたしますと、これを処罰するかどうかは、刑法の外国判決の効力の規定、これを適用して処理されるべきものであろうと考えております。
#207
○松本(善)委員 それから、その犯人が日本と関係のない二国間でのハイジャックの場合ですが、亡命であるということで、亡命先の国で亡命が認められ、その後合法的に日本へ入国するというようなことになった場合、日本の当局としてどういうことになりますか。
#208
○辻政府委員 この法案に規定いたしております一条から四条の罪を犯しておる者が日本へやってきた、その人が同じ犯罪でよそで処罰をすでに受けておるということでございましたら、それは先ほど申した刑法の外国判決の効力の規定を適用して、そのもとで処理すればよろしいというふうに考えております。亡命であろうとなかろうと、この法律の適用につきましては変わりはないのではないかと考えます。
#209
○松本(善)委員 それから、外国におればこの点では時効は進行しないということで、これを一回犯した限りは、合法的な入国であろうと、日本へ来たら必ず処罰をされる、それが何十年後になろうとも処罰をされる、そういうことになりますか。
#210
○辻政府委員 これは、この法案の犯罪が広く国外犯を世界主義で処罰をいたしておりますことと、刑事訴訟法二百五十五条との関係で、犯人が国外にいればその間公訴時効の進行が停止されるという結果になってまいります。
#211
○松本(善)委員 私どもは、「よど号」の事件のようなものは、もしこういうような規定を設けなくてももちろん処罰をできる、これは明らかだと思います。これだけのことをしなくても方法はあろうかと思いますけれども、たとえば刑法一条二項を適用した場合にはどういうことになるか、どういう場合は処罰できなくなるか、その点を御説明願いたいと思います。
#212
○辻政府委員 刑法一条二項をどういうふうにやるのでございますか。もう一回ちょっと御質問願いたいと思います。
#213
○松本(善)委員 刑法一条二項で考えれば、「よど号」のような場合は全部処罰をされる、それから日本に関係をするものは全部処罰をできると思うわけですよ。そうすると、この一条二項ではだめで、二条でしなければならぬということは一体何を目的にしているのかということです。
#214
○辻政府委員 これは、外国人が外国で日本航空機に対する第三条のようなことを行なったという場合でございますとか、必ずしも日本航空機というものでない、外国航空機に対して日本人が国外でハイジャックを行なったというような場合、こういうような場合は刑法の一条二項ではまかなえないわけでございまして、やはり第五条の規定が要るというふうに考えたわけでございます。
#215
○松本(善)委員 日本人に関していうならば、三条にすればいいんじゃありませんか。
#216
○辻政府委員 三条につきましては、いわゆる運航支配というようなものが強盗であるならば、これは日本人の国外犯として処罰できますけれども、強取に当たらない運航支配というようなものを日本人が外国で犯したという場合には、やはり三条ではまかなえないことになろうと思います。
#217
○松本(善)委員 だから、この法律であらためて国外犯について規定するとすれば、日本国民の国外犯として三条の例による、というふうにすれば、それで日本国民の場合は全部包括できるんじゃないかということを言っているのです。
#218
○辻政府委員 日本国民だけを適用するということであれば、この五条を、刑法第三条の例による、とこうすればいいわけでございます。しかし、先ほど来申し上げておりますように、この条約ができました場合の各国の協力義務という関係からまいりますと、日本人だけを処罰の対象にしておくということは狭きに失するということでございます。
#219
○松本(善)委員 そうすると結局、この国外犯の法令、刑法二条の例によるというふうにする目的は、日本と全く関係のないところで行なわれた外国人の犯罪についてこの日本の国法によって処罰をしよう、こういう目的、だと、こういうことでありますね。
#220
○辻政府委員 ただいま仰せのような場合、もちろん入るわけでございます。
#221
○松本(善)委員 このハイジャッキングを防止するということについては、私どもも当然でありますけれども、いま論議の中で明らかでありますように、この問題については、日本の刑法の理論からいいましても相当の大きな変更でありますし、それからまた、この問題についての処置は、国際関係にも非常に大きな影響を与え得るものであります。それからその国の実情その他をいろいろ検討しなければならない問題である。したがって、やはり軽々にやるべきものではないのではないか。このハイジャッキング防止条約もいまだにもちろんできていない。これが近くできるというのならば、それを待っても一向に差しつかえない。こういう立法というものは、何か事が起こったら、その機会にやってしまおうというような考えではなくて、やはり正々堂々と国民に問題点を全部明らかにして、こういうことが一体国法上いいことか悪いことかということを十分に論議をして立法をしていくのが穏当なやり方であり、慎重なやり方ではないかというふうに私どもは思うわけであります。この点について、刑法学会その他においてももちろん論議が十分されておりません。法制審議会の内容については私どもつまびらかにしませんけれども、しかし、一般に刑法学会においても当然にこういう問題については議論されなければならないことではなかろうかというふうに思うわけであります。そういう意味で、私どもはやはりこの五条については賛意を表しかねる、そういうふうに考えるわけであります。
 この点について、あらためて法務大臣に、そういう外交上の問題、それから日本の刑法理論を大きく変えるという問題についての立法上の慎重さ、そういう点についての御意見を伺いたいというふうに思うわけであります。
#222
○小林国務大臣 これはもう御意見のようなことも十分考えられるのでございますが、この際こういう法律をつくるならば、できるだけその法律の国際的な意味、こういうものも考え、またこの法律の抑止的な作用、こういうようなものも考え、また少し早手回しと先ほど申し上げましたが、近い将来に必ずこういうことも国際的に実現されるであろうということを考えていたしたのでございます。御意見のほどは私にもよくわかります。
#223
○松本(善)委員 終わります。
#224
○高橋委員長 これにて質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#225
○高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
 航空機の強取等の処罰に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#226
○高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
 おはかりいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#227
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
   〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#228
○高橋委員長 この際、暫時休憩いたします。
   午後一時五十一分休憩
     ――――◇―――――
   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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