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1970/04/02 第63回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第063回国会 本会議 第15号
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1970/04/02 第63回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第063回国会 本会議 第15号

#1
第063回国会 本会議 第15号
昭和四十五年四月二日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十三号
  昭和四十五年四月二日
   午後二時開議
 第一電気工事業の業務の適正化に関する法律
  案(海部俊樹君外七名提出)
 第二 港湾法及び港湾整備緊急措置法の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
 第三 船員法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 第四 道路整備特別措置法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 第五 造幣局特別会計法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 第六 日本開発銀行法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 電気工事業の業務の適正化に関する
  法律案(海部俊樹君外七名提出)
 日程第二 港湾法及び港湾整備緊急措置法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三
  船員法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第四 道路整備特別措置法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
 日程第五 造幣局特別会計法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第六 日本開発銀行法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 農業基本法に基づく昭和四十四年度年次報告及
  び昭和四十五年度農業施策についての倉石農
  林大臣の発言及び農業者年金基金法案(内閣
  提出)及び農民年金法案(芳賀貢君外十四名提
  出)の趣旨説明及び質疑
   午後二時三十五分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 電気工事業の業務の適正化に関す
  る法律案(海部俊樹君外七名提出)
#3
○議長(船田中君) 日程第一、電気工事業の業務の適正化に関する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#4
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。商工委員長八田貞義君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔八田貞義君登壇〕
#5
○八田貞義君 ただいま議題となりました電気工事業の業務の適正化に関する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、一般電気工作物による災害発生の防止に万全を期するため、電気工事業を営む者の登録及び業務の規制を実施し、もって一般用電気工作物の保安の確保をはかろうとするもので、そのおもな内容は次のとおりであります。
 第一は、電気工事業を営む者は、通産大臣または都道府県知事の登録を受けなければならないこととしたことであります。
 第二は、電気工事業者は、その営業所ごとに三年以上の実務経験を有する電気工事士を主任電気工事士として設置することとしたほか、業務に関し、所要の規制を加えたことであります。
 第三は、通産大臣または都道府県知事による危険等防止命令、登録の取り消し等の監督規定並びに電気工事業者と注文者間において生じた苦情の処理のあっぜん等の規定を設けたことであります。
 なお、建設業法により登録を受けた建設業者に対しては、本法による登録を要しないこととしております。
 本案は、去る二月二十七日海部俊樹君外七名より提出されたものでありまして、同月二十八日当委員会に付託され、三月三日提出者より提案理由の説明を聴取し、自来、慎重に審議を行なったのでありますが、詳細は会議録を御参照願いたいと存じます。
 三十一日に至り、質疑を終了し、引き続き採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#6
○議長(船田中君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#7
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 港湾法及び港湾整備緊急措置法の
  一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第一二 船員法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
#8
○議長(船田中君) 日程第二、港湾法及び港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案、日程第三、船員法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
#9
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。運輸委員長福井勇君。
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
  〔福井勇君登壇〕
#10
○福井勇君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、港湾法及び港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、最近における港湾の取り扱い貨物量の増大並びに海上貨物輸送の近代化の動向等にかんがみ、重要港湾における港湾施設の整備を一そう促進するため、民間によるこれら施設の整備を助成しようとするものでありまして、その内容は、
 第一に、重要港湾における港湾計画の審査の結果が、国の計画に適合する場合、運輸大臣は、当該港湾の港湾計画の概要を公示することとする。
 第二に、港湾管理者が民間事業者に無利子で資金の貸し付けをした場合、国は、その貸し付け金額の範囲内で政令で定める金額を、当該港湾管理者に対して無利子で貸し付けることができるものとする。
 第三に、国の貸し付けにかかるコンテナ埠頭等の建設または改良事業を、港湾整備緊急措置法の港湾整備事業とし、同法の港湾整備五カ年計画に入れることとする。
 第四に、国の貸し付け金は港湾整備特別会計で経理することとし、附則において所要の改正を行なおうとすること。等であります。
 本案は、去る三月九日当委員会に付託され、翌十日運輸大臣より提案理由の説明を聴取し、参考人の意見を聞くなど、四回にわたり慎重に審議を行ないましたが、その内容は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 かくて、三月三十一日、質疑を終了し、討論の申し出もなく、採決の結果、本案は起立多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 次に、船員法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、小型漁船の航行の実態等にかんがみ、漁船に関する船員法の適用範囲を、政令の定めるところにより、総トン数五トン以上にまで拡大することができることとしようとするものであります。
 本案は、三月十日当委員会に付託され、三月十八日提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、三月三十一日質疑を終了、四月一日、加藤六月君外三名から、船舶に危険がある場合における船長の処置に関する規定を「船長は、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助並びに船舶及び積荷の救助に必要な手段を尽くさなければならない。」と改正すること。また、海員が「船舶に急迫した危険のある場合において、船長の許可なく船舶を去ったとき。」は刑に処せられることとなっているのを削除し、この処罰に関する経過規定を設けること等の趣旨の自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同修正案が提出されたのであります。
 かくて、原案及び修正案を一括して審議することといたしましたが、討論はなく、採決の結果、四党共同修正案及び修正部分を除く原案を全会一致をもって可決し、よって、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(船田中君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#12
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第三につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第四 道路整備特別措置法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
#14
○議長(船田中君) 日程第四、道路整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#15
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。建設委員長金丸信君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔金丸信君登壇〕
#16
○金丸信君 ただいま議題となりました道路整備特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、高速自動車国道を除く道路整備特別措置法に基づく有料道路の整備の効率化と管理の適正化をはかるため、料金徴収の特例を設ける等の措置を講じようとするもので、その内容は、
 第一に、日本道路公団または道路管理者は、二以上の有料道路で、一定の条件に該当するものについて、建設大臣の許可を受けて、これを一の道路として合併採算して料金を徴収することができるものとすること。
 第二に、道路管理者は、日本道路公団が管理している都道府県道または指定市の市道である有料道路については、日本道路公団と協議し、かつ、建設大臣の許可を受けて、その管理を引き継ぐことができるものとすること。
等がそのおもなるものであります。
 本案は、去る三月二日本委員会に付託、同六日提案理由の説明を聴取したのでありますが、質疑の詳細は会議録に譲ることといたします。
 かくて、四月一日、質疑を終了、討論の申し出もなく、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(船田中君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#18
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第五 造幣局特別会計法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
 日程第六 日本開発銀行法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
#19
○議長(船田中君) 日程第五、造幣局特別会計法の一部を改正する法律案、日程第六、日本開発銀行法の一部を改正する法律案、右両案を一括して
    ―――――――――――――
#20
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長毛利松平君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔毛利松平君登壇〕
#21
○毛利松平君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、造幣局特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 御承知のとおり、造幣局特別会計には、政府の発行する補助貨幣の引きかえまたは回収に充てるほか、造幣局の事業に要する経費等の財源に充てるため、補助貨幣回収準備資金が設けられております。
 本案は、この回収準備資金の最近における推移等にかんがみまして、毎会計年度末における回収準備資金のらち、補助貨幣の発行現在額をこえる部分に相当する金額を一般会計の歳入に繰り入れることとしようとするものであります。
 なお、昭和四十五年度におきましては、約百九十九億四千三百万円の繰り入れが予定されております。
 本案は、去る三月十七日政府より提案理由の説明を聴取、同三十一日質疑を終了し、昨四月一日採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、日本開発銀行法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、日本開発銀行の業務の円滑な運営に資するため、同行の借り入れ及び債券発行の限度額を自己資本の五倍から六倍に引き上げようとするものであります。
 すなわち、日本開発銀行の貸し付け等の残高につきましては、自己資本の額と借り入れ金等の限度額との合計額をこえてはならないことと定められておりますが、四十五年度における貸し付け計画等からいたしますと、同行の貸し付け等の残高は、四十五年度中にこの限度額をこえることとなるのであります。したがいまして、この際、同行の借り入れ金等の限度額を自己資本の五倍から六倍に引き上げ、これにより、貸し付け等の業務量の限度を拡大し、もって、同行の業務の円滑な運営をはかろうとするものであります。
 本案は、去る三月十七日政府より提案理由の説明を聴取、同三十一日質疑を終了し、昨四月一日採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案に対しては、経済の国際化、経済社会の急速な発展に対応して、生活優先の融資につとめること、現行制度を基本的に検討すること等を要望する附帯決議を付することに多数をもって決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○議長(船田中君) これより採決に入ります。
 まず、日程第五につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第六につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#24
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 農業基本法に基づく昭和四十四年度年次報告
  及び昭和四十五年度農業施策についての倉
  石農林大臣の発言及び農業者年金基金法案
  (内閣提出)及び農民年金法案(芳賀貢君外
  十四名提出)の趣旨説明
#25
○議長(船田中君) この際、農業基本法に基づく昭和四十四年度年次報告及び昭和四十五年度農業施策についての農林大臣の発言を許し、あわせて、内閣提出、農業者年金基金法案について趣旨の説明を求め、また、芳賀貢君外十四名提出、農民年金法案について趣旨の説明を求めます。
 農林大臣倉石忠雄君。
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#26
○国務大臣(倉石忠雄君) 昭和四十四年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十五年度において講じようとする農業施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、昭和四十四年度農業の動向に関する年次報告について申し上げます。
 近年におけるわが国経済の高度成長は、農業に対し種々の影響を及ぼし、近年縮小傾向にあった農業の製造業に対する生産性の格差は前年度に比べ拡大いたしております。
 しかし、農家の所得は順調な増加を示し、生活水準は世帯員一人当たり家計費で見ますと、生活環境の類似している地方在住の勤労者世帯に対しては、ほぼ同水準となっております。
 次に、農業生産は高水準を維持しておりますが、高度化し多様化している国民の食料需要の動向に十分対応しておらず、米が過剰となる反面、需要に生産が対応し得ない品目もあります。
 今後、農業生産を進めるにあたっては、米の生産調整を進めるなど需要の動向に即応した効率的な生産体制を確立することが緊要となっております。
 さらに、農業構造について見ますと、農家戸数や農業就業人口は引き続き減少しておりますが、農業経営の規模拡大は順調な進展を見せず、一方、新規学卒の就農者は減少を示し、農業労働力の老齢化が進んでおります。
 このような諸情勢に対処して、農業の近代化をはかり、産業としての農業を確立するためには、わが国農業構造を改善し、生産性の高い高能率の農業経営を育成していくことが重要であります。
 以上が第一部の概要であります。
 次に、第二部におきましては、四十四年度を中心といたし、講じた施策につきまして記述しております。
 最後に、昭和四十五年度において講じようとする農業施策について申し上げます。
 ただいま御説明申し上げました農業の動向に対処するため、政府といたしましては、農業基本法の定めるところに従い、諸情勢の推移を織り込んで、総合農政を推進してまいることといたしております。当面、四十五年度におきましては、農業生産基盤の整備、農業構造の改善、米の生産調整など需要に見合った農業生産の推進、流通消費対策の強化など各般の施策の推進をはかることといたしております。
 以上、昭和四十四年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十五年度において講じようとする農業施策につき、その概要を御説明申し上げた次第であります。
 次に、農業者年金基金法案について、その趣旨を御説明いたします。
 近年におけるわが国経済の高度成長のうちにあって、農業がその生産性の向上をはかりつつ国民食糧その他の農産物の安定的な供給を行ない、農業者に他産業従事者と均衡のとれた所得と生活水準を実現し得るようにすることは、農業と農政に課せられた基本的課題であります。
 農業がこの要請に十分にこたえるためには、資質のすぐれた経営担当者による規模の大きく生産性の高い農業経営によって農業生産の相当部分が担当されることが必要であり、このため、農業の構造改善のための各般の施策を総合的に推進し、次代をになう優秀な後継者が将来に希望と自信を持って安んじて営農にいそしめる基盤を確立することが必要であると考えるのであります。
 ところで、優秀な経営担当者の確保、経営移譲の促進、経営規模の拡大等は、農業者の老後生活の安定と密接に関連している面があるのでありまして、このような観点から、農業者年金制度を創設するとともに、これを補完するため、この制度の対象とならない老齢または零細経営主に対し離農給付金を支給することとし、また、離農を希望する者の農地等の買い入れ及び売り渡し並びに融資の措置を一体的に講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
 第一に、農業者年金基金の目的は、農業者の経営移譲及び老齢について必要な年金等の給付の事業を行ない、並びにこれに関連して農地等の買い入れ及び売り渡し等の業務を行なうことにより、国民年金の給付と相まって農業者の老後の生活の安定及び福祉の向上に資するとともに、農業経営の近代化及び農地保有の合理化に寄与することとしております。
 第二、基金の業務は、農業者年金事業を行なうこと、農地等の買い入れ及び売り渡し並びに農地等の取得に必要な資金の貸し付けを行なうこととしております。また、一定の期間、農業者年金の被保険者以外の者が経営移譲をした場合に離農給付金を支給する業務を行なうことができることとしております。
 第三は、農業者年金事業に関する規定であります。
 まず、被保険者につきましては、国民年金に加入している一定規模以上の農業経営主を当然加入とし、このほか、一定の要件に適合する者は、任意加入し得ることとしております。
 また、農業者年金の被保険者は、国民年金の所得比例に加入するものとしております。
 次に、給付される年金額につきましては、経営移譲をした者に対しては、六十歳から六十五歳までの間は保険料を二十五年納付した場合月額二万円、六十五歳以降は国民年金の給付と合わせてややこれを上回る額としております。
 また、経営移譲をしない者に対しても、六十五歳からは一定額の年金を支給することとしております。
 なお、制度の発足当初においては、年金受給に必要な拠出期間を年齢に応じ五年まで短縮するとともに、年金の額についても優遇措置を講ずることとしております。
 第四は、農業者年金事業に関する費用についての規定であります。
 まず、国庫は、毎年度、経営移譲年金の給付に要する費用の三分の一に相当する額を負担することといたしております。
 次に、保険料の額は、当初は一月につき七百五十円とするとともに、国庫は、毎年度、基金に対し、この当初の保険料一月分につき三百二十一円の割合で算定した額を補助するものとしております。
 第五は、基金が行なう農地等の買い入れ及び売り渡し等の業務に関する規定であります。
 基金は、離農しようとする者から一定の区域内にある農地等を買い入れることができるものとし、その売り渡しは、農業経営の規模の拡大、農地の集団化その他農地保有の合理化に資することとなるようにしなければならないものとしております。
 また、基金が行なう資金の貸し付けは、農業者年金の被保険者等が、離農しようとする者から、一定の区域内にある農地等を取得しようとする場合に行なうものとしております。
 以上のほか、基金の財務及び会計、基金に対する監督等について所要の規定を置いております。
 以上が農業者年金基金法案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#27
○議長(船田中君) 提出者芳賀貢君。
  〔芳賀貢君登壇〕
#28
○芳賀貢君 私は、農民年金法案につきまして、提出者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。
 わが国農業は、国民食糧の安定的供給という重要な国家的使命を通じ、社会経済の発展に大きく寄与してまいりましたが、そのにない手である農民に対する社会保障制度はほとんど見るべきものがないというのが実情であります。すなわち、国民総生産は世界第二位と誇示しながら、大事な国民所得水準は第二十位であり、社会保障水準において第十四位と立ちおくれ、まさに高度成長下の資本主義経済の矛盾を物語るものであります。
 しかも、農民の多くの者は、国民皆保険のしんがりとして発足した国民年金制度に加入しておりますが、国民年金の欠陥として、年金財源の負担区分が加入者負担三分の二、国庫負担三分の一と、保険料が高率であること、老齢年金は、保健料を二十五年間納付して六十五歳から月額八千円と、低劣な給付内容であり、国民の老後の生活を保障する年金制度にはほど遠いものがあります。最近の政府・自民党農政に対する農民の不安と不信に加えて、農民に対する社会保障制度がこのような現状では、農村の優秀な青少年が農業に一生を託する希望と情熱を失い、なだれのごとく地産業へ流出するのも当然の帰結といわなければなりません。(拍手)
 このような実情に対処し、わが党といたしましては、日本国憲法第二十五条に規定する国民の生存権保障の理念に基づき、さらに国民年金法第七条の指向する「二十歳以上六十歳未満の日本国民は、国民年金の被保険者とする。」この原則規定を踏まえつつ、いわゆる各種公的年金制度を改善の上、これらを統合、一元化し、国民ひとしく老後生活が保障されるべきとする立場を堅持しつつも、当面、農民の老後保障の充実を中心とした農民独自の年金制度の必要性を強く主張してまいったのであります。
 今回、政府から農業者年金基金法案が提出されましたが、おそらくこれは、去る昭和四十二年一月の衆議院総選挙の際に、佐藤総理が、「農民にも恩給を」という呼びかけで、農民の老後保障を公約したことに対する実現措置と思われるのでありますが、はたしてしかりとすれば、これこそ全国の農民を愚弄し、その期待を裏切るものと断ぜざるを得ません。(拍手)
 政府案による年金制度は、給付内容が劣悪な上に、経営移譲と離農政策のみに力点を置き、国民食糧の生産と供給に挺身した農民に対する老後保障の充実という農民側の願望とはあまりにもかけ離れたものであり、その名は農業者年金とはいえ、その実は構造政策の一環をなす政策年金以外の何ものでもありません。(拍手)このような制度に、はたして農民が魅力を持つでありましょうか。これが「農民にも恩給を」という佐藤総理の公約に対する実現措置であるとするならば、政府・自民党の公約とは、まさに羊頭を掲げて狗肉を売るようなものといわざるを得ないのであります。(拍手)
 しかも、農民の社会保障制度充実の美名をかりて、農民の最も大切な資産であり、生産手段である農地等を手放すことを奨励するような政府の政策に対し、われわれとしては断じて同調するわけにはまいらないのであります。
 この際、かねてからのわが党の主張に従い、みずから農業に従事するすべての農民を対象にした農民年金制度を創設し、国民年金の給付と相まって農民の生活の安定及び福祉の向上をはかり、農村の次代をになう青少年に希望を与え、農業の振興と長期の発展に資することをねらいとして、ここに本案を提出した次第であります。
 以下、本案のおもな内容について申し上げます。
 第一に、農民年金制度は、農民の老齢、廃疾または死亡について必要な給付を行ない、国民年金の給付と相まって農民の生活の安定及び福祉の向上をはかり、もって農業の振興に資することを目的としております。
 第二に、農民年金事業は政府が管掌することとし、その事務の一部は都道府県知事または市町村長に行なわせることができることとしております。
 第三に、農民であって国民年金の被保険者である者は、農民年金の被保険者となることとしております。
 なお、ここにおいて農民とは、農地等を使用して、みずから耕作、養畜または養蚕の事業を営む者、これと生計を同じくする親族であって、もっぱら農業に従事する者及び農業生産法人の常時従事者をさし、その具体的な基準については政令で定めることとしております。
 第四に、本制度による給付は、農民老齢年金、農民障害年金、遺族年金、脱退一時金及び死亡一時金の五種類とし、それぞれの支給要件、年金額等を定めております。
 まず、農民老齢年金については、保険料納付済み期間が二十年以上である者が六十歳に達したときに支給され、その額は七百五十円に保険料納付済み期間の月数を乗じて得た額としており、すなわち、年額で十八万円、月額で一万五千円の老齢年金を給付するものであります。
 次に、農民障害年金については、保険料納付済み期間一年以上の障害者に対し、保険料納付済み期間を乗じた額を基準として、障害の度合いに応じ一定額を支給することとし、なお、この農民障害年金には最低保障額を設け、保険料納付済み期間の二十年に満たない者は二百四十月として最低保障額を定めることとしております。
 その他遺族年金、脱退一時金、死亡一時金については、他の公的年金に準じて支給することといたしております。
 なお、制度発足の当初においては、年金受給に必要な拠出期間を年齢に応じ五年まで短縮するとともに、年金の額についても優遇措置を講ずることとしております。
 第五に、経過措置として、昭和四十六年一月一日現在において六十歳をこえる者で、連続して十年以上もっぱら農業を営み、または農業に従事した農民に対しては、無拠出により月額千五百円の農民福祉年金を支給するとともに、同日において五十五歳をこえる者はこの制度の被保険者とはしませんが、その者が六十歳になり、その日において連続して十年以上農民である場合には、その者に対しても、同じく無拠出による月額千五百円の農民福祉年金を支給することとしております。
 第六に、農民年金の給付に必要な財源としての保険料については、被保険者一人につき月額七百五十円の保険料を納付することとしておりますが、年金給付に要する費用の百分の七十五に相当する額を国の負担として補助することとし、なお、経過措置としての農民福祉年金の給付に要する費用並びに本制度運用に必要な事務費については、全額を国の負担とすることとしております。
 第七に、附則において、農民年金制度の実施に必要な諸規定を設けておりますとともに、われわれは、かねてから、農民、漁民のすべてを対象にした特別の年金制度の創設を主張してきた経緯にかんがみまして、特に本法の附則において、政府は、漁業または林業に従事する者に対する年金制度についてすみやかに検討を加え、本案による年金給付と同一水準の給付が行なわれるよう措置しなければならないことを規定しております。
 最後に、この農民年金制度は、昭和四十六年一月一日より発足させることといたしておりますが、本制度が国民年金制度との併用で運用される趣旨にかんがみ、国民年金制度の抜本的改正をはかり、国民年金においても保険料納付済み期間を二十年に短縮し、満六十歳で月額一万五千円の老齢年金の給付が行なわれ、国民年金と農民年金の併給により、六十歳で月三万円、夫婦で六万円の老齢年金の実現を特に強調いたすものであります。
 以上、農民年金法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 農業基本法に基づく昭和四十四年度年次報告
  及び昭和四十五年度農業施策についての発
  言及び農業者年金基金法案(内閣提出)及び
  農民年金法案(芳賀貢君外十四名提出)の趣
  旨説明に対する質疑
#29
○議長(船田中君) ただいまの年次報告等についての発言及び趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田中恒利君。
  〔田中恒利君登壇〕
#30
○田中恒利君 私は、日本社会党を代表して、ただいま御説明をいただいた昭和四十四年度農業の動向に関する年次報告並びに四十五年度において講じようとする農業施策について、佐藤総理並びに関係各閣僚に御質問をいたします。
 いま、全国の農民諸君が政府に対し強く求めていることは、一体農業はどうなるのだろうかという不安、何をつくればいいのかという疑問、そしてどう生きようかというあせりであります。政府は、これらの課題に対し、明快な解答を与えるべきであります。今回提示された農業白書がこれらの問いに答えるには、きわめて不十分であるといわざるを得ません。この白書が農民諸君に届けられると時を同じくして、米づくりをやめよという政府の指導が呼びかけられているのであります。三年前まであれほど米の増産を強調した政府が、反転して、減反を呼びかけるという、朝令暮改の場当たり農政を身をもって経験している農民諸君は、この白書が示す日本農業の現状と課題に対して、批判と不信を強めこそすれ、理解と協調の姿勢を示すことはできないでありましょう。
 なるほど白書は、二二%を上回る高い成長経済の中で、農業の著しい立ちおくれを指摘し、その近代化と合理化の急務を説き、農産物の輸入自由化、米の生産過剰、兼業の増大、農産物価格の相対的低下など、農業の危機的様相を訴えております。そしてその対策は、百五十万トンの米の生産調整、農業生産の地域別分担、農地の流動化などによる自立農家の規模拡大、零細農の離農促進などを掲げているのであります。この分析と方向づけは、政府、行政機関においては模範答案たり得ても、農民にとっては、手の届かないところで考えられ、高い次元で動かされているとしか映らないのであります。いまさら農産物があり余って価格を引き下げざるを得ないと言われても、多くの農民たちは米をつくり、ミカンを栽培し、家畜を養って生きていかなければならないのであります。そしてその合い間を見つけては、せっせと兼業や内職、出かせぎをふやす以外に、みずからの生活を保障する何ものもないところに、今日の農業問題の深刻さと危機の実態があることを、率直に指摘せざるを得ないのであります。(拍手)
 わが党は、このような立場から佐藤総理にお尋ねをいたしたい。
 総理は、本国会堅頭の施政方針演説において、七〇年代を内政充実の年であるとされ、その方向は人間尊重の精神に基づいて、社会の調和ある発展を期し、長期の見通しに立った総合的な施策の推進を明示されたのでありますが、今日農村では、百万人といわれる農民たちは、夫婦が一つ屋根のもとで暮らすことのできない人間性無視の出かせぎを余儀なくされているのであります。
 国民経済の中に占める農業の比重は、労働力、総生産、消費、投資など、そのいずれを見ても、年とともに低下し、政府が大きく掲げている自立農家も、前年度の一二・九%から九・九%に低下し、基本法農政の挫折を示しているのであります。このような現状の中で、佐藤総理の言う、人間を尊重し、社会の調和ある発展を期するための農業の長期的展望をどう切り開くか、農政の立ち向かうべき方向と、施策の基本たるべき事項について、まず御所見をお聞きしたいのであります。
 すでに、あなたの諮問機関である農政審議会においても、日本農業の衰退はもはや、やむを得ないという議論が出され、食糧の外国依存を強め、農政の撤退作戦が論ぜられている経緯がありますが、総理は、農業と他産業との所得均衡を農政の基本目標として堅持されるのかどうか、あわせてお答えをいただきたいのであります。
 さらに私は、今日の農業危機が、その要因を農業の内部に求めようとする白書の立論に、遺憾ながら賛同することができないのであります。
 本来農業は、その本質において、自然条件、社会条件、経済条件の制約を最も大きく受ける産業であり、特に成長経済の段階ではこれらの制約によって農業の不利が表面化し、農業問題は世界各国共通の困難な課題としてとらえられていることは、御承知のとおりであります。国際的にも驚くべき日本経済の高い成長そのものが、実は農業の危機を引き起こした張本人であります。したがって、この段階における政治の課題は、一つは、一そう強い保護政策を打ち立てること、二つは、高度成長政策の中心をなす工業の成長テンポをこの際思い切って抑制し、産業間の均衡発展を期する経済政策の変更が必要であると思うのでありますが、これについて総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)
 もし今日の事態をこのままに推移すれば、おそらく七〇年代の日本農業は成長経済の渦巻きの中でますます苦悩を続け、農業そのものの崩壊を懸念せざるを得ないのであります。新長期経済社会発展計画は、工業と農業の成長率をどのように推定し、両者間の相互関連とその均衡発展についていかなる配慮がなされているのか、この際、経済企画庁長官にお尋ねをいたします。
 次に、農林大臣に主として御質問をいたします。
 第一は、国民食糧の確保をいかに高めるかの問題であります。
 白書は、わが国の総合日給率を八三%と規定していますが、これには多くの疑問があります。米の過剰割合がそのまま組み込まれ、他方では年間輸入一千万トンといわれる飼料の実態は無視されているのでありまして、米を除けば六九%という白書のただし書きは、今日の国民食糧の三分の一は外国に依存していることを示しているのであります。(拍手)しかも白書は、七〇年代における農産物の輸入増加は必至だとの認識が各所に見受けられるのでありますが、農林大臣は、食糧自給のめどをどこに置き、これが実現のために必要とする農地、水、労働力などの確保、生産目標などについていかなるお考えをお持ちか、お答えをいただきたいのであります。
 これに関連して、通産大臣より、すでに一九七一年度末までに二十八品目の農産物の自由化をアメリカと約束されているのでありますが、七一年以降に残る四十五品目の取り扱いなど、これからの農産物輸入の速度と今後の見通し、政府の決意と自由化への対応策についてお答えをいただきたいのであります。
 第二は、価格政策についてであります。
 今次白書の特徴は、農産物の価格問題について従来に見られない性格づけをいたした点であります。すなわち基本法農政が掲げてきた他産業との所得均衡は、生産者米価を中心とする農産物の価格動向によって維持されてきたことを確認している点であります。このことは、構造政策が十分にその成果をあげ得ない現状の中で、食管制度を軸とする価格支持政策が果たしてきた一定の役割りを明らかにしたものといわねばなりません。
 白書は、六〇年代後半における以上の評価を、七〇年代の価格動向については一変して、自由化と食糧輸入、物価その他の諸要求が農産物価格を低下させるであろうと予測し、長期的には国際価格に接近し、需給事情を反映する価格体系の総合検討をうたい上げているのでありますが、このことは一体何を意味するのか。すでに異常な物価高の中で生産者米価の二年連続据え置きが計画され、本年度の畜産物価格もほとんど据え置きの経緯を見ても、今後の価格政策は、生産費所得補償から需給均衡の価格形成をたてまえとするのか、米価を凍結することによってその他の農産物価格も固定づけようとするのか、あらためて大臣の率直な御意見をお聞きしたいのであります。
 さらに、この数年来、米と養豚を除く各経営部門の所得率は、一律に低下をしているのでありますが、これは明らかに経営費の増加が所得の増加を上回っていることを示すものであります。農業経営資材等の価格対策についても、お考えをお示しいただきたいのであります。
 第三は、米の生産調整についてであります。
 日本農業の中で最も高い生産力を持つ水田を三十五万ヘクタールにわたって転用、休耕させようというのでありますが、政府は一体、米にかわって何をつくれといわれるのか、ほとんど明らかにされていないのであります。転換すべき農産物の生産、流通、価格問題を含めて、責任ある方策を示さないで、いたずらに減反をのみ指向させることは、農業の縮小生産を意味するにとどまらず、農民の農業への希望、意欲を喪失させる以外の何ものでもあり得ないのであります。この際、農民諸君に何をどうつくるかの課題にこたえるとともに、今日まで、政府の責任で買い入れ保管している古々米を含む在庫米の処理をいかにせられるのか。御所見をお聞きしたいのであります。
 第四に、畜産、青果部門についてであります。
 これらの部門は、いずれも成長部門として生産増大の指導がなされたのでありますが、今日なお多くの不安定要素をはらんでいます。酪農、養豚、養鶏などの生産増大は、内部要因によって起きたというより、アメリカからの輸入飼料の増加という外的条件の要請の中でもたらされた側面が強いのであります。一方、従来の日本的畜産といわれる和牛、馬、ヤギ、綿羊などは、大幅に生産を縮小し、畜産全体の成長は、この九年間にわずかに家畜単位では二二%の増加にすぎず、わが国の畜産はいまなお日本の土壌に根を張った拡大を示していないのであります。いわゆる自給飼料にこと欠く畜産政策の不備が指摘されて久しいのでありますが、その成果は見るべきものがありません。あらためて政府の所信をお尋ねいたし、あわせて畜産と同様、成長部門として指導された果樹は、ミカン等を中心に急激な生産増加を示しているわけでありますが、消費拡大の方策、特にリンゴ、ミカンなどの価格支持は、ほとんど放置されているわけでありますが、これについて具体的な方策をお伺いしたいのであります。
 最後に、厚生大臣に御質問をいたします。
 御承知のように、農山村、特に過疎地帯における住民の健康、医療問題は、きわめて重大であります。これらの地域は、次第に老人と婦人の比重が高まり、過重な農作業の圧力が住民の健康を著しく破壊させ、いわゆる農夫症的疾患が増加し、農薬被害など農業特有の医療問題も提起されています。他面、人口の流出が、医師の都市集中化の傾向をもたらし、農山村における医師不足は深刻化し、住民の健康管理が大きな問題となっているのであります。医師確保の壁は、いろいろありますが、開業医に対しきわめて低い公立病院医師の待遇改善など、当面の急務であると思いますが、これらについて、厚生大臣はいかなる方策で対処されようとするのか、お尋ねをいたします。
 以上、私は、農業白書をめぐる若干の問題について御質問をいたしたのでありますが、今日の農業問題はきわめて深刻であります。もし政府が、全国五百三十五万戸の農家に、農業のあすに希望を持つかいなかを問い合わしたとすれば、大半の農民があきらめと不安を抱いていることを知ることができましょう。政府の責任は重大であります。農業のあすに希望を失いかけている人々に自信と勇気を与えることなく、むしろこれらの人々を農業から去らし、農政のらち外とする風潮が、やがて農業を崩壊に導くのではないかとおそれるものであります。政府がこの現実を正しくとらえられることを希望して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#31
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 田中君にお答えいたします。
 まず、七〇年代における農政の基本的考え方についてのお尋ねがありましたが、私は、七〇年代初頭における農業の課題は、何をおいても、古くからの米麦中心の日本農業からの脱皮であると、かように考えます。この大きな、また困難な転換期を無事に乗り切って、需要の動向に即応した農業生産体系に移行し、そこに産業としての国際競争にも耐え得る近代的農業の確立をはかり、そうして新しい、住みいい農村社会の建設を推進してまいりたい、かように考えます。これが基本的な考え方であります。
 次に、最近再び農業従事者と勤労者との所得格差が拡大しつつあることは、残念ながら御指摘のとおりでありますが、決して農業基本法の所得均衡という基本目標を取り下げたものではありません。当面する米の過剰問題を克服して、新しい農政の展開によって、この基本目標をあらためて追求してまいる決意でございます。
 その他の問題については、それぞれの所管大臣から答えることにいたします。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#32
○国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。
 最初に、自給度のお話がございました。私ども、皆さんにお目にかけております農林省の長期見通しにつきましては、五十二年には七七%と想定いたしておることは御存じのとおりでありますが、ただいま八三%といわれておりますのは、米はすでに一一八%ございますので、五十二年には、生産調整もいたしまして、一〇〇%に落としますので、そこでほかの作物の自給度は、やや上に上げながらも、やはり米の生産調整のもとに一〇〇%に下がってきますので、平均して七七%と申しておるわけでありまして、私どもは、農政審議会の答申にもありますように、この程度の自給度は維持してまいるということを申しておるわけであります。
 価格政策のことについてお話がございました。私ども、考えますのに、物を生産するのに消費を考えない生産というものは、およそあり得べからざるものでございますので、私ども農林省は、もちろん生産を維持することに全力をあげて協力いたすべき任務を持っておるのでありますが、同時に、その生産された農作物は、やはり消費者と、その価格においては大体において合意を得られるような価格でなければならないのでありまして、そうでなければ、幾ら生産したって、それは消費者が御納得なさらないのでありますから、そこにわれわれの非常なむずかしさがあるわけであります。したがって、米の生産調整はいたしますが、しばしばあらゆる機会において農林省は申し上げておりますように、他の作付をされる、将来選択的拡大で需要の増加いたしてまいるような、たとえば畜産であるとか果樹であるとかというものにつきましては、四十五年度の予算をごらんくださいましても、そういうもののさらにしっかりした生産が行なわれるように、土地基盤の整備であるとか圃場整備等をやっておることは、御存じのとおりであります。したがって、いま米価と他作物とを均一に平均化していくことはできないかというようなお話でございましたが、これは田中さんも御存じのように、需要供給の関係で、今日の自給度を見ましたときに、私どもは、米に対する価格の考え方と、ますますこれから生産を刺激して消費者に活発に需給してもらうような品物との価格の傾向を、同一に考えるということはできないのではないか、こういうふうに見ております。そういう考えで予算の編成もいたしておることは、御承知のとおりであります。
 さらにまた、米の生産調整についてお話がございました。米はもう、申すまでもなく、百五十万トン程度生産調整をいたしたいのでありますが、それの転換先作物につきましては、できるだけわれわれは、将来性のある作物、いまここで申しましてたようなものについて、さらに生産が活発に出てくるようにいろいろ援助をいたしておるわけであります。
 その次に、古米の処理についてお話がございましたが、この古米の処理につきましては、もちろん政府といたしましても、たとえば学校給食をふやすとか、あるいは国内で使っておりますみそ、しょうゆ等の原料を、いままで外米にたよっておったものを内地米を使うとか、酒米等の手当もいたしておりますが、さらに、飼料等についてどの程度活用できるかということを、いま鋭意努力いたしておるわけであります。
 それから、次にお話がございました畜産、果樹等につきましては、いま申し上げましたからここで重ねて申し上げることを御遠慮いたしますが、最終的に私は、日本の農業者は、決してあきらめておりません。農業者自身が非常に将来性を楽しみにいたしまして、そしてわれわれに非常な協力をして、百万トンの生産調整については、もう全国の農業者もそうでありますし、農業協同組合も市町村長も、全面的に協力をいたしておられるのは、農業の将来に明るいビジョンを彼ら自身が持っていらっしゃる証拠だと思っております。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#33
○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和四十六年の末には、わが国の全体の残存輸入制限の数を六十にまで減らしたいと考えているわけでございますが、ただいま農政が、御指摘のよな現状でございますから、ただいまのところ、なるべくこのウエートを通産物資がよけいにしょい込むようにという心がまえで、自由化を進めておるわけでございます。
 それから、七一年以降、四十六年末以降ということになりますと、農林物資の中で、どうしてもやむを得ない、できないというものも、あるいはあろうかと思います。同時に、関税あるいは課徴金といったような施策もあわせて考えられますので、そういうものもあわせまして、できるものはなるべくやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣内田常雄君登壇〕
#34
○国務大臣(内田常雄君) 僻地医療の重要性につきましては、田中議員から御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、かねてよりこの僻地診療所の年次計画による整備をいたしておりますけれども、近来山村の道路などもよくなりました事情をも取り入れまして、巡回診療車でありますとか、あるいは患者輸送車というようなものの整備にさらに力を注いでおります。
 また、巡回診療車の運営費のようなものも、本年度から新たに助成の対象にいたしましたが、そういうことをいたしましても医者が足りない実情でございますので、これは国立病院のお医者さんを、チームをつくって、でき得る限り僻地のほうに定期的に派遣をするというような政策を続けますほか、ざらに本年度からは所在に親元病院という制度を設けまして、その親元病院から僻地のほうに、これも定時にお医者さんや医療従事者に行っていただく、その助成をする、こういうようなことも本年度から始める所存でございます。
 また、農山村に対しましては、栄養指導車とかあるいは移動保健所というような制度も設けまして、農山村の保健指導あるいは栄養改善等にも国の助成をもってつとめております。また、本年度からは、従来開拓地に対しまして農林省がお世話をいたしておりました保健事業を、私どものほらの系列の保健所が全部お引き受けをいたすことになりまして、この方面にも相当の予算を組み入れまして、かような措置を通じまして、でき得る限りの対策を進めてまいる所存でございます。
 また、御注意がございました国立病院の医師や看護婦等の待遇改善につきましては、昨年度におきましても、一般公務員の給与を上回る待遇改善をいたしておりますけれども、もちろん十分ではございませんので、今後ともこの方面にはさらに努力を続ける所存でございます。(拍手)
  〔国務大臣佐藤一郎君登壇〕
#35
○国務大臣(佐藤一郎君) ただいまの御質問は、新しく今度答申が予定されております新経済社会発展計画、この中におきまして、一体農業はどいう位置づけが行なわれているか、農業はどのくらいの成長を考えておるか、こういう御質問であったと思います。
 御存じのように、一九七〇年代は非常な国際的な環境のきびしさ、国際化を迫られております。そうしてまた、労働力需給の逼迫が相当予想されます。そういう前提に立ちまして、新しい計画は、国際化と物価安定あるいは産業構造の革新、あるいは資源の適切配分、こういうようないろいろな目標を調整しながら掲げておるのであります。
 その中におきますところの農業もまたそれらの政策と対応いたしまして、なかなかきびしい環境を迎えております。全体の経済成長率一〇・六という実質成長率を想定いたしまして、その中で農業は約三%ぐらいの成長を考えられております。
 一面におきまして、農業人口の減少という問題に直面いたします。したがいまして、農業の生産性をこれから相当高めてまいらなければならない。これは一面におきまして、工業生産性との格差をこれ以上に拡大しないようにしなければならないという問題を含んでおります。そういう意味におきまして、高生産性の農業の実現をしなければならない。それによりまして、この多様化し、高度化する食料需要に対する供給部門としての責任を完遂していくという強い要求が出ておるわけでありますが、国際競争というものもきびしい際でありますので、長い視野に立って見ますと、この高生産性農業ということの実現がぜひとも必要になってまいる。大体こういう見方に立ちまして、価格依存の政策のみならず、さらに生産性高揚のために適切なる産業対策をとらなければならない。
 それからまた、従来の単なる農政のワクを越えまして、より広い、総合的な対策が必要である。土地の問題、雇用の問題社会保障の問題、公共投資の問題、そうした従来の農政を越えた、総合的な対策が必要であるという提言がなされております。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○議長(船田中君) 長谷部七郎君。
  〔長谷部七郎君登壇〕
#37
○長谷部七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案趣旨の説明のありました農業者年金基金法案に関し、農政の基本にも触れながら、若干の御質問を申し上げたいと存ずるものであります。
 戦後わが国の農業をささえてまいったものは、一つは農地制度であり、いま一つは食管制度であったと思うのであります。しかるに今日佐藤内閣は、総合農政の名のもとに、この二つの保護制度をつぶそうと企てておりますことは、日本農業の将来にとりましてまことに憂慮にたえないところであります。
 食管制度は、自主流通米制度の導入によりまして、すでに大きな穴があけられ、諸物価値上がりの中で米価は据え置かれ、加えて政府は、米過剰の責任を農民に押しつけ、農民の犠牲によって今日百五十万トンの減産を進めておるのであります。しかも、これはあくまでも農民の自主的協力によるもので、決して強制ではないと言っておりますけれども、過般、農林大臣が参議院本会議におきまして明らかにしたとおり、現行食管法のもとでも米の買い上げ制限ができると言明されたことは、農民に対し、もし政府の減産政策に協力しなければ来年から買い上げ制限をやるぞと脅迫したものでございます。(拍手)しかも、ことしも米価は据え置く、加えて銘柄格差の設定など、二段米価の構想さえ出るに至りましては、もはや食管制度は大きくくずれつつあると言っても過言ではございません。
 一方、農地制度に目を転ずるならば、新都市計画法の施行に伴って、市街化区域では今後十年間に約三十万ヘクタールの農地がつぶれるのであります。また、当面一年や二年の米対策で農民の権利を保障する農地制度に手をつけるべきではないと私は考えるのでありますが、政府はすでに農地転用の許可基準を大幅に緩和し、十一万八千ヘクタールの美田を、農家の経営規模拡大のためにではなく、他用途に買い上げることをきめたのであります。しかも、これを市街化調整区域や、農振法の指定地域にも及すでまいるのでありまして、もはや政府は、農民の土地を守るという姿勢は放棄したとしか受け取ることができないのでございます。
 しかも、今国会におきまして、農地法や農協法などとともに、新たに農業者年金基金法案を提出をし、これを通過させようとしております。この内容は、農協や基金に農地売買の業務ができる道を開き、転用農地までも取り扱わせようとすることになるのでございまして、よってたかって農地を食いつぶそうとするもので、これは、自作農主義を否定し、大多数の兼業零細農民と老齢者を農業から追い出し、一部の資本主義的富農経営を育成しようとする以外の何ものでもございません。
 このように、佐藤内閣は次から次へと農業破壊の政策を進めてまいりましたが、これは、政府が大企業の要求に沿って日本の農業の縮小、後退をはかり、不足な労働力を農村から吸収し、国民の食糧は安い外国農産物にたより、そのことで工業製品の輸出市場を拡大しようとする意図であることは明らかであります。(拍手)
 そこで、私は、佐藤総理大臣にお伺いをするわけでありますが、その第一点は、農産物の輸入と食糧の国内自給との関係についてでございます。
 今日、貿易の自由化について内外からの強い圧力があることは、私とて承知しているところでございます。しかし、最近の農畜産物の輸入量は、年々激増の一途をたどっているのであります。今回政府が発表いたしました農業白書によっても、四十四年の輸入実績は、前年同期に比べまして一一%増と、その増加率が目立って大きくなっておるのであります。日本は世界第五位の輸入国になったのであります。この結果、農畜産物の供給が過剰となり、国内農業を大きく圧迫し、稲作はもとより、畜産、果樹などが大きな打撃を受けていることは御承知のとおりであります。私は、日本の農業を守るためには、基本的には今日の無計画な農産物輸入を中止すべきだと主張するものでございますが、内外の情勢からいたしまして、一挙にそこまでいかないにいたしましても、国内農業と競合する米、小麦、肉類、乳製品などの輸入は、大幅に抑制すべきものと考えるものでございます。佐藤総理は、そのため、この際貿易政策を改善し、思い切って関税及び課徴金制度の実施に踏み切る御意思がないかどうか、御見解を承りたいのであります。
 なお、国民食糧については、外国依存をやめて、可能な限り国内自給体制をとることをわが国農政の柱に据えるべきであると考えるのであります。総理の農政に対する基本的見解を明らかにしていただきたいのであります。
 質問の第二点は、農業生産の地域分担と、主要農畜産物の価格補償についてでございます。
 今回、政府は、米過剰を解決するため、全国一律の減反目標を押しつけておりますが、これは地域の実態を無視した画一行政であって、政治ではないといわざるを得ません。地域によって農業事情が異なることは当然のことで、その特性を十分に生かしてこそ真の農政といえるのであります。私は、困難な問題ではあるが、総理は速急に、ここ一両年の間に、農業生産の地域分担政策を確立し、地域ごとに米、畜産、果樹、蔬菜などの主産地形成を急ぐべきであるし、それを成功させるためには、農畜産物に対して国の責任で価格を補償し、あわせて流通機構の改善をはかり、安定作物を準備すべきであると考えます。そうなりまするならば、農民もあえて米にのみ集中せず、喜んで自主的作物転換が進んでまいるものと確信するものであります。今日まで政府が幾ら作付転換を奨励いたしましても、米以外の安定作物が何一つ準備されていなかったところに大きな原因があることを総理は知らなければならないと思います。ここに佐藤総理の農業生産の地域分担と、農産物の価格補償についての御所見を承りたいのでございます。
 政府は、農地の流動化が進まない原因を現行の農地法にありとして、その改正を強行しようとしておるのであります。私からして言わしむるならば、今日の農地の流動化をはばんでおるものは、第一に地価が非常に高いということ、また、その高い土地を取得をしまして、経営規模の拡大をはかっても、採算が合わない。さらに、ばく大な土地取得資金がないということが大きな要因であります。さらに、何よりも大きな問題は、数多くの兼業農民が、現体制のもとでは安心して他産業に転業することができないということでございます。これは百万人をこえるといわれる季節出かせぎ農民の姿が、これを雄弁に物語っているものといわざるを得ません。
 したがって、本気で農地の流動化を促進し、規模拡大をはからんとするならば、まず他産業の側で雇用条件を改善し、社会保障を拡充し、住宅確保などの受け入れ体制を整備し、農民が安心して他産業に就業できる条件をつくることが先決でなかろうかと存ずる次第でございます。そのためには、政府がまずもって積極的に対策を講ずることが必要と考えるのでありまするけれども、これに関する総理の御所見を承りたいのであります。
 総理に対する質問の第四点は、農業者年金基金法案についてでございます。
 総理が昭和四十二年一月の第三十一回総選挙におきまして、「農民にも恩給を」と公約なさったことにつきまして、今日三年たったいま、公約実現のため農業者年金基金法案を御提案になったのだと存ずるのであります。しかしながら、提案された法案の内容をつぶさに調べてまいりますると、公約とは全くかけ離れた内容となっているので、特にお尋ねをいたしたいのであります。
 「農民にも恩給を」という表現からいたしまして、かつて官吏の特権的恩恵であった恩給を農民にも支給すると受け取られたわけで、この法案の内容の善悪は深く問われることなく、一般の農民は公約実現ということで、無批判にこの制度に賛意を表する向きがあると私は考えるのであります。とするならば、この事態を深く憂えなければ、国政をつかさどる者として、まことに無責任であるというそしりを免れないと私は思うのであります。
 この法案の内容から見まして、一体この制度の趣旨は何であるのか、この制度は何のために設けられるのか、といった基本的な創設目的に深い疑念を持たざるを得ないのであります。真に農民の老後を保障し、農業構造改善に役立てようとしておるのかわからないのであります。この法案のどこに老後保障部分があるのか、御教示をいただきたいのであります。
 公的年金の本来の目的は年金制度でありますから、老後は御安心くださいといって、被保険者に現在の職業に専念させるというならば、労働意欲を向上させるのが本来的な目的ではないかと私は思います。しかるに、この法案では逆に、早く職業を放棄しなさい、経営を移譲しなさい、そうすれば年金をやりましょうという内容になっておるのであります。しかも、経営を移譲しない者は、自分の掛け金の元利相当額がもらえない仕組みになっておるのであります。言うならば、経営移譲という政策に沿わない者は、罰則的に一部掛け捨てを強要する仕組みになっております。このような仕組みの内容のどこに「農民にも恩給を」という公約が果たされておるのでしょう。どの部分に農民の老後保障を果たす機能が織り込まれているのか。佐藤総理から明確にひとつ教えていただきたいのであります。
 次に、農林大臣及び厚生大臣にお伺いをいたします。この制度は、ただいま総理に御質問申し上げた内容で明らかなように、農業構造の改善のため農地の流動化をはかり、農業経営の近代化を促進するという目的で創設されるものであります。したがいまして、制度そのものが農業政策年金であります。政策年金であれば、政策に沿うて経営移譲をしたりあるいは離農した場合に支給する経営移譲年金は、国が全額負担するというのが筋であると私は思うのでありますが、いかがなものでありましょうか。この法案の内容は、経営移譲年金についても農民に負担させることにしております。なぜこのような制度に強制的に加入しなければならないのでしょうか。
 およそ年金制度に対する国の補助は、その制度の性格によってあり方は変わるべきものであろうと思うのであります。政府管掌の制度の場合には、政策目的に沿うた部分は国が負担し、その他の部分については他の国民との均衡をはかるというのが常識的ではないでしょうか。この常識論からすれば、経営移譲年金部分はすべて国が負担することとなります。この制度の中にも、離農給付金はこのように仕組まれております。経営を移譲しない者が、何ゆえに経営を移譲した者の分を負担しなければならないのか、理解に苦しむところであります。
 さらに、私の計算によりますると、二十年間毎月七百五十円の掛け金をして、六十五歳から掛け金の元利合計額をもらい切るには、月四千円の年金にしなければならないことになっております。しかるに、政府提出法案では、三千六百円しか支給しないことになっておりまして、約一割方掛け捨てになることが明らかでございます。何ゆえにこのように仕組まなければならないのか。経営移譲しない農民には、罰則的にこの制度に入らなければならない理由をひとつ明らかにしていただきたいのであります。
 せっかく総理の公約を実現するために創設する制度であるなら、政策年金なら政策年金らしく筋を通し、老後保障部分についても、真に農民の側の立場、掛け金をとられる者の立場を理解し、あたたかい人間性を見出せるように仕組むべきだと思うのでありますが、農林大臣の見解を承りたいのであります。
 次に、制度の運営について御質問をいたしたいと思うのであります。
 この制度を実態的に運営する役員は、主務大臣が任命し、理事は、主務大臣の認可を受けて理事長が任命することとなっているのであります。これでは農林大臣なり厚生大臣が直接運営に当たったほうが、むしろ被保険者としては安心するのではないでありましょうか。官公庁の天下り人事が巷間問題にされている昨今、なぜこのような仕組みを考えなければならなかったのか、その理由をひとつ明確にお願いをいたしたいのであります。
 せっかく基金という特殊法人を設けるのであれば、農業団体の職員を対象にしてできている農林年金のように、被保険者の意思が十分運営に反映できるように、代議員制による選挙制によって役員を定めるという民主的な制度にすべきではないかと存ずるものであります。ここにこの制度の官僚統制的な色彩があらわれております。その運営が真に農民のためになるとは思われないのであります。民主的に制度の運営者を選ばせない理由を、この際、農林大臣から明らかにしていただきたいのであります。
#38
○議長(船田中君) 長谷部君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
#39
○長谷部七郎君(続) また、運営に関連して、農地の買い入れ、売り渡しの業務をこの基金が行なおうとしておりますが、これは全くもって問題となる点だと思います。年金制度の資金は被保険者からの預かり金であって、決して基金という特殊法人のものでもなければ、国のものでもありません。それを農地の流動化資金に役立てよう、利用しようとは、もってのほかの運用であろうと存ずるのであります。(拍手)年金制度の資金が被保険者のものであるからこそ、各種の年金制度には被保険者の福祉に役立つことを配意しながら、安全かつ効率的に運用する。その場合にも、不良債券に投資しないよう適切な規制が施されているのであります。こうした年金制度本来の良識が、この制度の運営にあたっては適用しないこととなっているのであります。
 本来、農地の売買資金は国が措置すべきでありまして、政策貫徹のために農民から拠出させた掛け金をこれに充てるなどということは、本末転倒しておるといわなければなりません。なぜこのように善良な農民の浄財を政策目的のために使わなければならないのか、この際伺っておきたいと思うのであります。
 以上、各般にわたりまして御質問を申し上げましたが、時間になりましたので、総理大臣はじめ関係各大臣から明快な御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#40
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 長谷部君にお答えいたします。
 私はお話を伺いながら、農地制度やあるいは食管制度等について、政府並びにわが党がこれらのものを破壊しようとしておる、次々にさような意味の御発言がございましたが、私どもは、いままでもたびたび申し上げましたように、食管制度の根幹は維持するとあらゆる機会に申しておりますので、この点は誤解のないように、ひとつあらためて新しい認識のもとに話を進めていただきたいと思います。(拍手)
 そこで、これらの問題がこんがらがってまいりますので、ただいまの食糧の自給問題、あるいは輸入問題等につきましても、いろいろの御批判があるように伺ったのであります。私は、この御批判はある程度事実には合っておりますが、必ずしも全部そのとおりだとは思っておりません。
 私が申し上げるまでもなく、食糧は国民生活の基礎として、その自給率はできるだけ高い水準に維持するということが望ましいことはあらためて申すまでもないところであります。
 この基本的な考え方のもとに、国内生産が不足する食糧については、国民生活の安定という見地から所要の輸入を行なっているものであります。また、この場合、輸入の増加が、国内生産に不測の悪影響を与えることのないよう配慮していることも申すまでもありませんが、一面、今後の日本農業の課題が、国際競争に耐え得る近代的な農業の確立にあることも十分認識しておかなければならないものと考えます。私どもは、もちろん生産者の立場に立って、生産者の立場も十分考えてまいりますが、同時に、消費者の立場に立っても、ものごとを考えていかなければならないのでありまして、一面だけでものごとを判断するわけにはまいりません。この点をぜひとも社会党の方にも御理解を賜わりたいと思います。(拍手)
 次に、農産物輸入抑制のための方途につきましてお尋ねがありましたが、ただいま申し上げるような両面、両者の立場に立って、ものごとを考えて、そうして無用の混乱が生じないように私どもは努力してまいるつもりであります。ただ、この場合どういうような措置をとるか、いわゆる関税あるいは課徴金追加等の制度、どういう制度が適当であるかということは、その際に具体的品目についての自由化の進捗度に応じて、物価並びに国際的観点から考慮して、慎重に検討してまいる考えでございます。この点も御了承願っておきます。
 その次に、今後の農業の進むべき道について長谷部君から具体的な御意見がありました。私は、同感の意を表する点もありますが、問題としてはだいぶん複雑な問題でありますので、議論の余地もまたあると思います。農業生産の地域分担目標の作成は、適地適産の新しい農業の確立のためにも可及的すみやかに策定する必要があるものと考えております。これは同じ考え方であります。また価格政策につきましても、その適確な展開によりまして、農産物の安定的供給の確保をはかってまいりたい、かように考えております。
 次に、農地流動化の円滑な推進のためには、他産業への就業のための受け入れ体制を整備する必要があるとの長谷部君の御意見につきましては、全く同感であります。四十五年度予算では重点的に措置したつもりであります。
 なお、農地法、農協法の改正は、農地の流動化を容易にし、農業の構造改善に資するための制度的な基礎でありますので、よろしく御理解いただきたいと存じます。
 最後に、農業者年金についてでありますが、今回の構想は、当初の私の発想から逸脱したものとは私は考えておりません。農民諸君の老後生活の安定という課題に加えて、日本農業の当面する緊急、かつ重要な課題である農業の構造改善推進のために必要な、優秀な経営担当者の確保、これがまず第一でありますが、次には、経営移譲の促進、経営規模の拡大という農政上の要請にあわせこたえる、きわめて適切な制度であると私は確信するものであります。
 なお、「農民にも恩給を」というこのモットーが、一般的に掛け金なしの全額国庫負担を連想されたようでありますが、現在は、いわゆる恩給も年金としての掛け金を基礎として支給されているものであることを御理解いただきたいと存じます。
 また、御指摘のような政策目的推進の意味合いを持っていることを十分考慮して、他の年金制度と比較して、これは高い国庫負担を行なっておること、この点もあわせて私、説明しておきますから、御理解のほどお願いをいたします。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#41
○国務大臣(倉石忠雄君) 総理大臣がほとんどお答えになりましたので、残っておりませんが、最後に、農業者年金基金の構成についてお話がございました。これは御指摘のように、政府も補助金を出しますが、農業者の積み立て金でありますから、これは大事に扱わなければなりませんので、わざわざ特殊法人という制度にいたしまして、その運営にやりそこないのないようにいたしたい。政府が責任をもってこの運営はいたさなければ、国民に相すまぬことでございます。ただしかし、御指摘のように、農業者に一番関係のあることでございますので、その運営の中には評議員会制度というものを設けまして、ここに農業団体の代表者に参加していただきまして、農業者の御意見も、運営について十分取り入れることのできるような制度にいたしたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣内田常雄君登壇〕
#42
○国務大臣(内田常雄君) 長谷部さんにお答えを申し上げます。
 この年金は掛け捨てとか、掛け損にならない計算、仕組みになって一おります。途中で死亡、脱退等がございました場合にも、一定の年限をたっております場合には一時金を支払いますし、あるいはまた六十歳をこえ六十五歳に至るまでの間に経営を移譲しないような事態が起こりましても、六十五歳を過ぎますと、先ほどお話がございましたように、二十年で三千六百円、二十五年掛けで四千五百円というような年金を支給する仕組みになっておりまして、加入者の損にならない計算にいたしております。
 それから、積み立て金の運用でございますが、これは有利、確実、また加入者への還元というような、この種の三原則を守りますことはもちろんでございまして、この年金の計算については独立した勘定を設けますので、基金が他の事業をいたしましても、他の事業によりまして年金勘定の資金がおかされる仕組みはとっておりません。そこで厚生大臣がお引き受けをした、こういうわけでございますので、御了承をいただきたいと思います。(拍手)
#43
○議長(船田中君) 鶴岡洋君。
  〔鶴岡洋君登壇〕
#44
○鶴岡洋君 私は、公明党を代表しまして、ただいま報告のありました昭和四十四年度農業の動向に関する年次報告と農業者年金基金法案に関して、佐藤総理並びに関係大臣に質問をいたすものであります。
 わが国の農業が、いま重大な転換期に直面していることは周知のとおりであります。食糧難に対処するため、主食の増産に始まった戦後のわが国の農政は、昭和三十六年の農業基本法の制定を契機にして、消費者、国民の好みに合わせて生産を拡大していくという、いわゆる選択的拡大政策への転換が叫ばれるようになったのであります。しかし、この農政転換は、結局は政府のかけ声だけに終わって、何ら総合的、具体的施策は講ぜられなかったのであります。政府は、他産業の高度成長には総力をあげてまいりましたが、農業については、農業者の心をつなぎとめるために、米を中心とする価格政策にのみ終始してきたのであります。
 このことは、白書にも明らかなように、農産物価格の上昇率を見ますと、三十五年から四十年の間は、年率八・三%にも達しており、四十一年度、四十二年度もほぼ同率で上昇しております。中でも米、野菜等は平均を大幅に上回り、農産物価格の上昇をリードしているのであります。
 このような政府の小手先だけの価格政策で、一方において、重要な構造政策と生産政策を置き去りにするというわが国農政の大きな欠陥を固定化したというべきであります。すなわち、今日の過剰米問題、牛乳や乳製品等の酪農業、さらにミカン、リンゴ等の果樹農業にもあらわれ、過剰生産という問題は、特に過去九年間にわたる農政の欠除によるといっても過言ではないと思うものであります。
 近年、農業の比較生産性は年々低下しております。農業所得だけでは家計費をまかなうことができず、ますます農家の兼業化が進められ、四十二年以後、全国平均で農家所得の五〇%以上が農外所得に依存するようになってきているのであります。農業白書では、四十三年度の農家所得が全国平均百十三万五千円で、前年比一〇・二%増加となっておりますが、この伸び率は、前年の一九・五%に比べ、著しく鈍化しているのであります。しかも一〇・二%の伸び率の内訳を見ると、その中の八四%が農外所得、すなわち兼業による所得であります。このような兼業依存の傾向は、少なくともここ数年間は続くものと思われます。農業基本法第十五条は、「国は、家族農業経営を近代化してその健全な発展を図るとともに、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成するため必要な施策を講ずるものとする。」と、家族農業経営の近代化とその健全な発展を約束しておりますが、法に規定された目標に対し、農業経営の現状ははるかに遠くなっているのであります。
 そこで、まず佐藤総理並びに農林大臣に質問いたしますが、わが国農業の憲法ともいわれている農業基本法の目標に逆行して、兼業への依存度の高くなっている現状から、法の目標に沿い、全農家戸数の八〇%を占めている現在の兼業農家をいかなる方向に育成していかれるのか、またこれとあわせて、減少する専業自立経営農家をいかなる方向に育成していかれるのか、具体的な対策をお答え願いたいのであります。
 第二に、農産物輸入問題についてであります。
 四十三年度における農産物輸入額は前年比一%の増加にとどまっておりますが、四十四年度は再び増加傾向を強め、特に小麦、肉類、砂糖など著しい増加傾向を示しており、わが国はイギリス、アメリカ、西ドイツに次いで世界第四位の農産物輸入国になっております。一方、アメリカをはじめ諸外国からは、わが国の国民総生産が自由主義圏で世界第二位を維持していると、はなばなしく吹聴され、またわが国経済の実力を過大に評価して農産物自由化を迫られております。しかし、農産物輸入の自由化がさらに拡大されれば、その結果として、前に申し述べましたとおり農業経営の現状から、また特に中小農家の多いわが国農業は、壊滅的打撃を受けることは明らかであります。このことは、三十六年の大豆の自由かによって、過去八年間の作付面積が十二万ヘクタールと二分の一以下に減少し、また、レモンの自由化によって国内のレモン作付農家が壊滅状態になった事例を見ても明らかであります。したがって、農産物自由化については、特に慎重に対処していかなければならないのであります。また、輸入農産物の価格が非常に安価であるとして、物価対策の面から農産物の自由化を主張されておりますが、輸入価格を裏面から見る場合、アメリカやフランスなどでは強力な輸出振興施策が講ぜられており、輸出補助金あるいは輸出金融による助成、さらに輸出税制や輸出保険など、特別優遇措置が講ぜられていることを見のがすことはできないと思うのであります。いずれにせよ、このようにばく大な農産物の輸入がわが国の農家を不当に圧迫することを直視すべきであります。
 さらに、流動的な世界の農産物需給事情を展望してみるに、輸入農産物への依存度を高めていくことは独立国として望ましいことではないと思いますが、総理並びに農林大臣の見解をお伺いするとともに、将来わが国の農産物の自給率をどの程度に維持していくのかは、農家経営との関係からも重要な問題でありますので、あわせて見解をお伺いいたします。
 第三に、農業白書のあり方についてお伺いいたします。
 白書は、価格問題の動向とその分析を中心に述べておりますが、これらは農業者が身をもって体験し、実感している問題であって、農業者の立場からは、白書において明らかにされるべき事項は、米生産調整問題で騒がれている今日、一体食管制度は廃止されるのか存続されるのか、生産者米価の据え置きはいつまで続けられるのか、農産物の自由化についてはいかなる対策を講じていかれるのか等、現在直面している問題の解決策ないしその方向の明示を要望しているのであります。ところが、この白書は、農業者が直面している現実の不安を解消することには何ら役立ってはおりません。また、白書では、問題を全国的な動向分析に終始しておりますが、地域により気候、土質など自然条件が大きく異なるわが国においては、各地域の特性を十分に盛り込んだ分析や対策にウエートをかけるべきであり、各地域の農業者が目まぐるしく変わっていく農業に対処するために十分役立つような内容にするよう再検討すべきではないかと考えますが、この点について政府の御見解をお伺いいたします。
 第四に、農業者年金基金法案についてお伺いいたします。
 まず第一点は、先刻質問のあった問題でございますが、去る四十二年一月の総選挙の際、佐藤総理が、「農民にも恩給を」と農業者に公約して以来、三年ぶりにようやく国会の審議の場にのぼったのでありますが、法案の内容を検討してみますと、農業者の期待に反し、大きく後退しているといわざるを得ません。政府の推進しようとしている総合農政も、過剰米対策中心に検討されているきらいがありますが、総合農政は、構造政策、生産政策、価格政策の三本の柱を中心に、調和のとれた政策が進められなければなりません。農業者年金制度は、構造政策の一環として推進されて初めて大きな成果をもたらすことが可能となってくるのであります。フランスにおいても、構造改善政策の裏づけとして、農業老齢者の保障制度が適用され、また、農業用地を手放す離農者に対しては、無拠出による離農年金が支給されております。イギリスや西ドイツなどでも、十分な保障を自立経営の育成と結びつけて、構造政策の一環としています。このため、これらの国の農業者は安心して農業に従事しているのであります。ところが、わが国においては、農業者の公的な老後の生活保障は非常に立ちおくれ、農業者の加入できる国民年金も、その給付内容は、公務員などの公的年金に比べて、きわめて貧弱なものであります。このたびの政府提出の法案も、経営移譲と離農政策のみに重点を置き、農業者が最も要望している老後の生活保障の充実には、あまりにもかけ離れたものであります。まず、この点についていかなる対策を講ずる考えをお持ちか、重ねてお伺いいたします。
 第二点として、掛け金の活用についてでありますが、加入した農業者は月額七百五十円の掛け金を二十年間も拠出していくことになります。また、農業者の拠出する掛け金は年間百八十億円にも及ぶといわれており、はたしてこの膨大な積み立て金が、農村の近代化や農業者の福祉向上のために十分に還元され、運用されるかどうかが疑問であります。その点について、いかに効果的な運用をしていかれるのか、明快に御答弁を願いたいのであります。
 最後、第三点として、この農業者年金制度の対象から除外される五十五歳以上の農業者についてであります。この法案によりますと、適用される農業者は、制度の発足する時点で経営規模五十アール以上で五十五歳未満の農業経営者と限定されております。したがって、この制度が発足するときには、五十五歳をこえている者には適用されません。ところが、わが国農村の実態を見まするに、むしろ五十五歳以上の農業者こそ最も年金を欲しているのが現状であります。このような場合、政府が責任をもって何らかの特別措置を講ずるべきではないかと思います。その点についていかなる見解を持っておられるか、お伺いいたします。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#45
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 鶴岡君にお答えをいたします。
 農業の中心的にない手は、何といいましても、専業の自立経営農家にあるという考え方には変わりはございません。そういう意味におきまして、農業基本法と逆行しているものとは私は考えておりません。農家の近代化をはかり、近代産業として確立するためには、規模の大きな、生産性の高い農業経営を育成してまいることは何よりも必要であると考えます。農地法の改正毛この方向に寄与するところ大であると考えます。
 また、兼業農家は、工業立地の地方分散の方向とも相まって、今後なお相当数が農村に残存することとなるものと思われますが、兼業は兼業としての安定と発展をはかり、自立経営農家を中核とした集団的生産組織の中に適切な参加を求め、あるいは農協による経営受託を推進するなど、生産の合理化につとめてまいる考えであります。
 次に、食糧の自給率についてでありますが、さきに社会党の長谷部君にお答えしたところで私の気持ちはおわかりがいただけるのではないかと思います。将来の具体的な自給率の目途につきましては、お尋ねがありましたが、これは内外の条件もあるので、一がいには申し上げかねますが、国民が必要とする食糧は、なるべく高い水準で国内で確保することを目途に、農業生産の合理化のための施策を進めてまいりたいと考えております。重ねて申し上げますが、私どもは、生産者の立場に立ってのものを考えると同時に、消費者に対しましても深い理解を持たなければならない、かように思いますので、その間の調整をはかっていくことが必要でございます。
 次に、農業者年金につきまして、さきに長谷部君にお答えしたとおりでありますので、詳しくは申し上げません。国民年金の給付と相まって、農業者の老後生活の安定とその福祉の向上に資するものであります。必ずしも老後保障的性格が薄いとは私は考えておりません。
 なお、詳しくは他の大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#46
○国務大臣(倉石忠雄君) お答え申し上げます。
 農業のあり方につきまして、御指摘のように、われわれは農業基本法の目ざすところを目標にいたしまして、農業の近代化をはかり、産業として確立することのできるような、規模の大きい、生産性の高い農業経営を育成することが必要である。しかしながら、そうは申しましても、自立経営のみで十分に農業がまかなわれるという時期に到達するのはなかなか時間がかかると思います。わが国では特にそうであります。したがって、これは地方の人も要求いたしておりますように、地方に産業を分散したりなどいたしまして、集団的な営農集団をつくりまして、兼業農家の人もそこに参加してもらって、農村をそういう形で維持すると同時に、農業経営を生産から加工等まで一緒になるような仕組みにひとつ農村を仕向けてまいりたい、こういうことでございます。そういう方向に向かって農政を進めていくのであるというのが、政府が発表いたしております「総合農政推進について」でございます。
 自給度のことはいま総理からお話がございました。
 次の、白書につきまして、地域性を十分に取り入れて、各地域の農業者が直面している不安の解消に役立つようにという御指摘は、いままで白書について初めてでございまして、私どもといたしましても、たいへんよいことではないかと思っております。もっとも、私どものほうでは、地方の農政局で、それぞれの地域における農業の動向等を明らかにいたしました地域農業情勢報告を作成いたしまして、これを公表いたしておりますが、将来は、お説のように、白書について地域性を盛り込んでいくということは大事なことだと思いますので、御意見を尊重いたしたいと思います。
 農業者年金は後退していないかということについては、ただいま佐藤総理がお答えいたしましたとおりでございまして、これは他の公的年金、たとえば厚生年金と比較いたしましても、優遇されておりこそすれ、少しも後退いたしておらないわけでありまして、なお将来ともにこういうものを内容を充実してまいるようにいたしたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣内田常雄君登壇〕
#47
○国務大臣(内田常雄君) 重複部分を避けましてお答えを申し上げます。
 積み立て金運用につきましては、一般原則によりますほか、この制度本来の目的にも沿うように運用されることは当然であると考えるものでございます。
 また、五十五歳以上の方には加入の道がございませんが、これは本来二十年掛けの年金を、五十五歳という五年掛けのところまで持ってきた苦心のところをお認めいただきたいということと、また離農給付金を出す仕組みがありますこと、またさらに、これらの方々につきましては、今後とも一般の国民年金の充実によって、できる限りのカバーをしてまいる所存でございます。(拍手)
#48
○議長(船田中君) 合沢栄君。
  〔合沢栄君登壇〕
#49
○合沢栄君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案のございました昭和四十四年度の農業白書並びに農業者年金基金法案に関連いたしまして、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 わが国の最近における技術革新の進展と経済の高度成長は、確かに自由世界第二位の国民総生産をあげるに至りましたが、この結果は、各種の社会的矛盾を新たに引き起こしつつあります。特に産業面について言うならば、その構造上、近代化の困難な農業等の第一次産業は、はなはだしい後進性から脱却することができず、特殊な経済分野として国民経済の中から取り残される傾向にありますが、これに加えて、米の生産過剰と農畜産物の輸入の自由化が、わが国の農業を根底から崩壊させる大きな圧力となっております。したがって、農業者は、みずからの生活をめぐって限りない不安と絶望的な状態に立たされているのが、偽らざる現実の姿だと思うのでございます。
 このような状況のもとで、今回提案されました農業白書を見るとき、現実の農業とかけ離れた一種のそらぞらしさを感じるのは、決して私一人ではないと思うのでございます。(拍手)
 このような立場から、私がお尋ねいたしたい第一点は、先ほども質問がございましたが、農業白書のあり方でございます。
 日本農業を今日のごとく危機的な状態におとしいれた原因について、政府はそれを明らかにせず、しかも、政府の責任を回避するような形で書かれている農業白書は、一体どのような意味を持つのでありましょうか。少なくとも農業白書は、日本農業の今日的危機を招いた根本の原因を明らかにすると同時に、その危機を克服するための具体的な方策を大胆に指摘して、全農業者の率直な理解と協力を得るため、政府の責任を明確にした農業指針を示すべきであると思っております。(拍手)政府はこの際、農業白書のあり方をこのようなものに改めるべきだと思うのでありますが、農林大臣の御所見をまずお伺いいたしたいのでございます。
 質問の第二は、農業基本法と現実農業とのはなはだしい開きについてであります。
 農業基本法の大きな目標は、他産業との所得格差の解消であり、そのためには、農業の持つ宿命的な生産性格差を是正する諸対策の必要は言うまでもないことであります。しかし実際は、四十三年度より非農業に対する比較生産性は、従来の上昇機運に反しまして、逆転して三六%に落ち込み、また、製造業従事者の賃金に対する農業所得の比率も、四十年度以前の水準に逆戻りをいたしており、再び格差拡大の方向にありますが、農家経済の実態は、農外収入の増大によりようやく他産業従事者との所得の均衡を保っているのであります。
 このような所得均衡は、決して農業のあるべき姿とはいえないのでありますが、政府としては、いかなる方策によるも、その手段を選ばず、ただ農家の所得が他産業と均衡さえすればよいと考えておるのでありましょうか。もしそうだとするならば、農民対策とは言えても、真の農業対策とは言えないのであります。政府の基本法農政に関する明確な方針を、総理大臣から明らかにしていただきたいのであります。
 第三にお尋ねいたしたいのは、政府が常に主張されるところの自立経営農家の育成が、昭和四十二年度を頂点にして、いまや縮小の方向に献じているのであります。政府は、この点、単なる一時的な退潮とお考えでしょうか、それとも構造的な、避けがたいものとして考えておられるのか。私は、基本法農政の終局を意味しているものと判断いたしておりますが、この点、農林大臣の確信ある御見解を承りたいのであります。(拍手)
 次にお尋ねいたしたいのは、去る二月二十日の閣議で決定された総合農政の基本方針において、昭和五十二年次までに、自立経営農家の最低規模を、水稲単作地帯で四ないし五ヘクタールとし、酪農経営では二十頭程度にする方針とされておりますが、さきに申しましたごとく、自立経営農家が退潮の傾向にあるとき、いかなる方策でこれを実現されんとするのか、この点を明確にしていただきたいのであります。同時に、この程度の経営規模で国際競争力を持つことができると判断されておられるのか、これもあわせて確信ある御答弁を農林大臣よりいただきたいのであります。(拍手)
 お尋ねしたい第五の問題は、経済の国際化、そして残存輸入制限の緩和が国際的にも強い要求となってきており、すでに政府は、一部の農畜産物の自由化を進めつつありますが、今後主要な農畜産物についても、その自由化が強く迫られてくることは必定であります。これに対し、政府は、国内農業の近代化、合理化がはなはだしくおくれている現状からして、これにどう対処されるのか、明確な方針を示していただきたいのであります。
 もし、主要農産物については自由化しないと言われるならば、現にチーズ・粉乳、バター等の酪農製品は国内需要の六〇%近くも輸入され、日本農業の成長すべき今後の分野を、すでに外国農業に先取りさせている現状をどのように改善されようとするのか。このために緊急の改善対策を用意しなければならないと思うのでありますが、政府は、この必要を感じておられるのかどうか、総理大臣より、政府としての見解を承りたいのであります。(拍手)
 続いて私は、農業者年金基金法案について質問をいたします。
 第一にお尋ねいたしたいのは、年金の性格についてであります。
 この法案では、年金の加入対象者を、年齢及び経営規模によって制限し、しかも、経営主だけと制限しているのでありますが、これでは一体何のための年金制度であるのか、はなはだ疑問を持たざるを得ないのであります。この制度でいくならば、経営移譲後は夫だけが元農業者としての給付を受け、妻は何らの恩恵も受けないことになりますが、これでは、久しく農業に従事し、多くの苦労を共にしてきた妻にとっては、はなはだしく公平を欠くと思うのであります。
 また、構造政策的見地からすれば、土地が主体になるのは当然でありますが、年金は本来人を対象とするものであります。この意味からすれば、この法案は、せっかくの年金制度でありながら、社会保障概念を欠いていると思うのであります。この点、社会保障を十分取り入れて再検討すべきでないかと思いますが、農林大臣の御見解を伺いたいのであります。
 次にお尋ねいたしたいのは、加入対象からはずされている農業者についての対策であります。
 この点については、先ほども御質問があり、大臣よりも御答弁がございましたが、この点については対策はないということでございますが、ぜひこれらの者についても、現在五十五歳以上の者について、何らかの特別措置を講じていただきたいということを要請いたします。
 第三にお尋ねしたいことは、基金の運用についてでございます。
 農業者の拠出する掛け金は、年間百八十億円にのぼる見込みとされておりますが、この膨大な積み立て金が真に農業者のために運用されるかどうか、私どもの最も重大な関心事でございます。
 政府は、この積み立て金を、農地の買い入れ、売り渡し等の資金として運用する意向でありますが、本来、構造政策とは、国の責任において進められるべきものであって、農業者の積み立て金を当てにするのは本末転倒であるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 政府は、構造政策推進のため、その本務として、何年間にどれぐらいの額にのぼる財政資金の投入を計画しているのでありましょうか。年金積み立て金の運用の方針と合わせて、農林大臣の御見解を伺いたいのであります。
 次にお伺いしたいのは、先ほども御質問がございましたが、基金の機構と管理、運営の民主化についてであります。
 基金の理事長並びに監事は主務大臣の任命であり、理事は大臣の承認を受けて理事長が任命する、とされております。これでは高級官僚の天下り人事が行なわれるおそれがあり、私どもの最も深く懸念するところであります。
 また、運営についても、主務大臣の承認を要するとされておりますが、基金の機構並びに管理、運営については、農業団体及び農業者の意向が反映せられるよう、民主的な手段を講ずる必要があると思いますが、これらについては、先ほど農林大臣の説明では明確になっておりませんので、農林大臣に具体的に、その明確な方針をお聞きしたいのであります。(拍手)
 第五に、物価スライド制の導入についてでありますが、物価スライド制の導入について政府の方針を承りたいのでございます。
 政府は、このほど恩給法等の一部改正案を提出して、恩給に本格的なスライド制を導入する意向を示しておりますが、このスライド制が、今回新たに発足させようとする農業者年金に導入されないのは、まことに遺憾であります。私は農業者年金にもスライド制を導入すべきであると考えますが、大臣の御見解を伺いたいのでございます。
 以上の諸点について、関係閣僚の簡明、かつ誠意ある御答弁を期待しつつ、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#50
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 合沢君にお答えをいたします。
 農業の問題は、いろいろの見方がありますが、私いまのお尋ねから、ひとつこの農業の労働生産性について少し分析してみたいと思います。
 この農業の労働生産性の伸びが低い、かように申しましても、これは国際的に例を見ないほど高い成長を続けてきたわが国の工業部門に対比してのことでありまして、農業そのものの生産性は、欧米主要先進国の生産性の伸びと比較いたしまして、別に遜色があるわけではありません。そのことをよく理解していただきたいと思います。
 しかしながら、今後、農産物の価格の上昇が全体としてはそれほど期待できない、こういう客観情勢にあることをも考慮することと、同時に、農業と他産業との生産性ないし所得格差の改善が、これまでのように順調に進むとは容易には考えられないのであります。さような意味におきまして、新しい農政を強力に展開し、そうしてこれを推進していく必要があり、この点を一そう私どもは痛感しておりますので、この機会に決意を新たにするものであります。
 なお、わが国のように、農家の経営規模の小さいところでは、すべての農家が農業だけで生活するのは不可能なので、このような農家の所得、生活水準の向上をはかるため、兼業機会の増大と兼業所得の安定をはかることも重要である、かように思います。
 次に、農産物の自由化に対する対応策につきましては、さきに長谷部君その他にお答えをしたとおりでありますので、多くはこの機会には申し上げません。国内農業に対する配慮は十分考えてまいりますが、いわゆる過保護にならないように、過保護を避けなければならないと思います。今後とも慎重、かつ適切な対応策を講じていく考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#51
○国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。
 農業危機を招いた原因等、加えて白書のあり方をどうするか。
 農業の動向に関します年次報告は、農業基本法六条の規定に基づいて、農業の生産性及び農家の生活水準の推移に中心を置いて、農業の動向とその問題点を、できるだけ客観的に明らかにすることを主眼に分析いたしておるわけであります。
 ただいまお話がございましたが、これから農政の進むべき具体的な道も、農政審議会の答申をも考慮しながら、十分に検討してまいりたいと思っております。
 その次のお尋ねは、農業基本法の趣旨をどう考えているか、基本法の破滅を意味するものかというふうなことをおっしゃっていらっしゃいますが、このことは、先ほど来、たびたびお話が出ておりますが、われわれは、農業基本法の趣旨に沿うて、自立経営農家を中核にいたしまして、集団的営農をやってまいりたい。農業は、いまは米については生産調整のような態度が必要でありますけれども、その他につきましては、いまの農業の生産性をさらに高度化し、他産業に比べて劣らないようなものに維持していくために最大の努力をいたします、こういうことであります。
 それから、五十二年までの長期見通しについて、農業、四ないし五ヘクタール、それからして、自立経営としては搾乳牛ならば二十頭程度というのは、一体どのようにしてやっていくかというお話でございましたが、私は率直に申しまして、いまの状況で四ないし五ヘクタール、あるいは搾乳牛二十頭というような経営単位になりましても、なかなか、外国もまた進歩していくのでありますからして、国際競争的に見て、これで十分だなどとは決して思っておりませんが、そういう目標を持って、先ほど来申し上げておるような国際競争力を維持できる、その線に近づくために最大の努力を続けていくのが農政の目標であると、こういうことを申し上げたいと思います。
 それから、年金のことにつきましては、先ほど来お話もございました、総理からもお答えがございましたので、御遠慮いたしますが、さらにこの年金について、掛け金のお話がございました。これは、この掛け金を農地の買い入れ等に利用しようとしておるのではないかというお話でございますが、わずかな時間で御説明申し上げることは困難かもしれませんけれども、これからまた農林水産委員会等で、しばしばこういう点についてお話があると思いますが、要は、農業者年金制度というものが、一方においては社会政策的意味を持ち、一方においては農業政策推進の政策目標を維持して、推進してまいるために必要なものでございますので、そういうことから出てきた基金というものは、やはりこれは農地の流動化等に効用のあるような運営をいたすことが望ましいということで、今回のような形をいたしておるわけであります。
 それから、基金の役員の選任及び運営等につきましては、先ほどお答え申し上げましたので、ひとつ御了承をお願いいたしたいと思います。
 スライド制については、今後慎重に対処いたしてまいりたいと思います。
 それから、先ほど鶴岡さんのお尋ねにお答えが落ちまして、また同じことをただいま合沢さんからお尋ねいただきましたが、加入対象から除外されておる五十五歳以上のお話がございましたが、これは御存じのように、農業者年金の加入対象とならない五十五歳以上の経営主などが離農する場合には、これに対して、政府は離農給付金というものを支給することになっておりますので、その離農援助、促進をはかることといたしております。それをひとつ御了承願いたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣内田常雄君登壇〕
#52
○国務大臣(内田常雄君) おおむね農林大臣からお答えがございましたとおりでございまして、私が申し上げましても同工異曲でございますが、ただ、一つだけ申し上げますと、この年金におきましては妻は入りません。お尋ねのとおりでございますが、妻が入らなくても経営主一人で、国民年金の場合、夫婦で、しかも所得比例制など入りましたものと同等程度の年金が受けられるというところに、この年金の非常に魅力があるわけでございます。(拍手)
#53
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
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#54
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五十三分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
        運輸大臣臨時代
        理       井出一太郎君
        国 務 大 臣
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        国 務 大 臣 佐藤 一郎君
 出席政府委員
        内閣法制局第二
        部長      田中 康民君
        大蔵政務次官  中川 一郎君
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ソース: 国立国会図書館
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