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1969/12/02 第62回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第062回国会 本会議 第3号
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1969/12/02 第62回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第062回国会 本会議 第3号

#1
第062回国会 本会議 第3号
昭和四十四年十二月二日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和四十四年十二月二日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を
  求めるの件
 日本電信電話公社経営委員会委員任命につき同
  意を求めるの件
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後一時五分開議
#2
○議長(松田竹千代君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件
 日本電信電話公社経営委員会委員任命につき同意を求めるの件
#3
○議長(松田竹千代君) おはかりいたします。
 内閣から、日本放送協会経営委員会委員に工藤信一良君を、日本電信電話公社経営委員会委員に武田満作君を任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#4
○議長(松田竹千代君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#5
○議長(松田竹千代君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。川島正次郎君。
  〔川島正次郎君登壇〕
#6
○川島正次郎君 私は、自由民主党を代表して、昨日の佐藤総理の所信表明に関し、主として沖繩返還交渉の成果を中心に、若干の質問を試みたいと存ずるものであります。(拍手)
 佐藤内閣は、組閣以来、アジアの平和とわが国の安全、独立並びに国民生活の安定向上を国策の基調として、外交面では日韓基本条約の締結、小笠原諸島の返還など、輝かしい成果をおさめ、内政面では日本を国民総生産量において世界第二位に向上せしむるなど、顕著な業績をあげたのであります。(拍手)
 さらに、今回の日米会談によって、全国民一致の念願であった沖繩の復帰が、世界史上まれに見る平和的話し合いによって実現したことは、大きな功績としてきわめて高く評価さるべきであります。(拍手)
 また、今回の佐藤・ニクソン会談の結果、相互信頼と国際情勢に対する共通の認識に立って、日米安全保障条約が一九七〇年以降も相当長期にわたり引き続き維持されることになりましたことは、極東の平和とわが国の安全、繁栄のために、まことに喜ばしいことでございます。(拍手)これは同時に、沖繩の返還と並んで一九七〇年代の日本の基本的外交路線を方向づけ、国内政治の基盤をも確立する重要な意義を持つものであります。(拍手)
 今回の日米会談において、沖繩の返還がいわゆる七二年、核抜き、本土並みというわが国の要望どおりの線で実現を見たことは、すこぶる満足すべきことであります。(拍手)総理の努力に対し、ここに敬意を表するものであります。(拍手)
 しかるに、一部には、日米共同声明の内容を曲解、宣伝して、国民に無用の不安を与えようとする者がいますが、かかることは厳に慎むべきであります。(拍手)それと同時に、共同声明の真の意味については、国民の前にこれを一そう明らかにする必要があろうかと考える次第であります。
 第一に、七二年返還についてであります。このことは、復帰に伴う諸準備を考慮すれば、野党の諸君の主張する即時返還とほとんど同意義であります。(拍手)しかるに、七二年までにベトナム戦争が終わっていない場合、返還もまたおくれるかのように言う者がありますが、この点に関する総理の御意見をまず承りたいのであります。
 次に、国民が大きな関心を持っているのは核兵器の問題であります。返還後の沖繩の軍事基地が核抜きであることは、非核三原則を堅持する「日本政府の政策に背馳しない形で返還を実現する」との共同声明によっても明らかであり、これによって沖繩は本土と同様、核兵器なしに返還されるものと確信をいたします。(拍手)しかしまた、「事前協議制度に関する米国の立場を害さない」旨の共同声明の文言をとらえて、総理が将来における核兵器の持ち込みを約束したのではないかとの説をなす向きもあります。私は、この重大な問題について、総理が、返還時核抜きの確約を取りつけられ、またいかなる意味でも、将来の核持ち込みを認める約束を与えたことはないと信ずるものでありますが、この点を、重ねて明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 沖繩返還にあたっては、返還後の沖繩と本土との間に、いかなる形の差別もあってはなりません。沖繩県民が多年の宿願なって復帰するとき、本土並みを期待するのは当然であります。共同声明には、「安保条約及びこれに関連する諸取りきめが変更されることなしに沖繩に適用される」と明記してありますが、これは、本土並みを確約しているものと考えます。
 そこで、これに関連して、最も重要な問題である事前協議についてお尋ねをいたします。
 事前協議において、本来、イエスもあり、ノーもあることは、すでに政府が説明しておるとおりに了解をいたしております。共同声明では、一方で、現在の極東情勢のもとにおいて、沖繩の米軍が重要な役割りを果たしていることを認め、また他方、このような事前協議制度を沖繩に適用しても、「日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っておる国際義務の効果的遂行の妨げとならない」ことをうたっています。このことは、事前協議においてわが国の主体性が完全に貫かれるということに何ら変更はないものと確信をしておりますが、いかがでありましょうか。あるいは、アメリカとの間に何らかの約束でもあって、沖繩の軍事基地が、返還後もいわゆる自由使用を認められることになるのでありましょうか。さらにまた、わが国の安全にとって重要な影響のある朝鮮半島や台湾地域において万々が一にも事変が勃発したような場合、いかに対処する考えであるか。これらわが国の安全にとってきわめて重要な問題について、あらためて御答弁をわずらわしたいのであります。(拍手)
 さらに私は、今日から沖繩の返還実現の日まで、経済面を中心とした各分野にわたり、広範な復帰準備の仕事があることを指摘いたしたいと思います。
 二十余年の異民族支配によって生じた各方面の格差を埋め、完全な一体化を実現するには、復帰までの二年間はあまりにも短過ぎます。この困難を克服することこそ、長い間外国の施政権下にあった沖繩県民をあたたかく迎え入れる道であります。特に、沖繩県民の国政参加については、できるだけ完全な形で早急に実現し、その代表をこの議場に一日も早く迎えられることを希望してやまないのであります。(拍手)
 また、日米安保条約と沖繩返還との関連において、沖繩の返還によって安保条約が何らかの質的変化を受けるものかどうかという点につきましても、お尋ねをいたしておきたいのであります。
 すなわち、その一つは、沖繩の返還により、安保条約の適用範囲、特にいわゆる極東の範囲が拡大されるかどうか。また、沖繩が返還されることにより、安保条約本来の防衛的性格が変わるのかどうかということが問題であります。この点は、わが国が返還後の沖繩の局地防衛の責務を徐々に引き受けていくこととも関連し、国民の大きな関心事でありますので、誤解の生じないよう明確に御説明していただきたいと存じます。(拍手)
 今回の日米会談では、貿易自由化や繊維の自主規制問題についても話し合われたことと思います。しかし、これら経済問題は沖繩返還交渉とは全く別個の問題として取り扱われるべき性質のものであり、総理もこのような観点から話し合われたものと思います。その際、米側、特に議会筋から繊維の自主規制について強い要望があったとも聞いておりますが、政府は今後この問題にどのように対処するか、お伺いをいたします。
 沖繩の復帰は、アメリカとの間に残された戦後処理の最後の課題の輝かしい解決でありますが、ここに一言せざるを得ないことは、総理も昨日の所信表明で言及されたとおり、北方領土の問題が依然として解決の緒についていないことであります。私はこの機会に、政府がこの問題の解決について引き続き努力を重ねられんことを切に要望するとともに、全国民による超党派的な協力の必要を痛感するものであります。(拍手)
 およそ一国の安全と繁栄をはかるためには、一方においてみずからの安全保障の方途を探求するとともに、他方、積極的に国際緊張の緩和を促進することが必要であり、この両者は車の両輪のごとく、相伴って進められなければなりません。不幸にして、今日の世界、なかんずくアジアにおいては、各地になお緊張状態が存在し、にわかに緩和される見通しはないのであります。このような国際環境の中にあって、このたび実現することになった沖繩返還も、また今後さらに継続されることになった日米安保体制も、ともに国際緊張を激化するのではなく、これを緩和するものでなければなりません。この点について、総理の見解と決意を伺いたいのでございます。(拍手)
 アジアの緊張緩和については、特に中共の動向が重要であります。アジアの平和は、中共を除いては達成できないのであります。われわれは、中共自身の努力と関係各国の協力によって、中共がすみやかに国際社会に復帰することを希望するものであります。従来中共は、わが国と密接なつながりを持つ国府の存在を否定し、わが国の政経分離政策を非難してきております。総理は、アジアの情勢の中で、最近の中共をいかに見られ、今後どのように対処していくお考えであるかを承りたいのであります。(拍手)
 沖繩返還の実現は、ただ単に日本民族の悲願達成というだけでなく、日米関係の歴史に新時代を画するものであります。私は、このときにあたり、一九七〇年代から二十一世紀を展望し、今後の日米関係及びアジアにおける日本の役割りについて私の見解を述べ、総理の所見を伺いたいのであります。
 日米関係の新時代とは、日米両国が全く対等の立場に立ち、おのおの自主性を持ちつつ相協力してアジアの進歩と発展を促進する時代だと考えるのであります。(拍手)そうして、少なくともアジアの問題に関する限り、その主導的役割りを果たすのはわが国であって、米国は側面からこれに協力する形になろうかと存じます。
 およそ、アジアの平和と安全の基礎は、この地域における各国の民生の安定と、均衡のとれた経済的発展にあります。七〇年代の日本は、アジアの先進工業国として、こうした時代の要請にこたえる責任を持っていると思います。これは、経済的自立を求めて苦悩するアジア諸国に、わが国が自主的な立場でその自立を援助することなのであります。その中心となる経済協力については、援助量そのものの増大とともに、援助条件の緩和が強く要請されるのであります。また、協力の分野においても、産業、開発のみならず、医療、教育など多くのなすべきことがあります。もちろん、これは、日本がアジアを経済的に支配するがごとき意図の全くないことは明らかで、被援助国の自助の精神と相まって、その国の発展に有効に働くものでなければなりません。(拍手)
 外交問題に関する質問を終わるにあたり、最近強く感じていることを披瀝してみたいと存じます。
 現在、わが国において、外交に関する国論が分裂して、話し合いの態度が見られず、二者択一の対立の様相を呈しておりますことは日本の不幸であり、国家、民族の将来のため憂慮にたえないところであります。(拍手)徳川幕末にあたり、尊王攘夷、佐幕開国と世論が分裂して抗争したとき、国論を統一して明治維新を迎え、ヨーロッパ諸国のアジア植民地化のあらしの中で日本の独立を守り抜いた先人の英知に私は深く敬意を表するものであります。(拍手)いまほど話し合いによる対立の解消が求められているときはありません。話し合いによって国民的合意を探ることこそ、危機に立つ民主主義を救う道なのであります。(拍手)かかるときに、沖繩問題解決のための党首会談を拒否したり、民族的悲願である沖繩返還交渉のための総理の訪米を阻止せんとした一部野党の態度を深く遺憾とするものであります。(拍手)
 内政問題に関し、総理が所信を表明せられました諸政策は、いずれも緊要かつ妥当な措置と見られるのであります。特に消費者物価の安定は、国民の関心が最も深い問題であり、政府は、各般の施策を強力に推進して、国民生活の一そうの安定と向上をはかるべきであります。また、米の過剰をはじめ、多くの困難な問題をかかえている農政につきましては、総合的見地から、政策の大転換をはかるの必要があることは、さきに総理の述べられたところでありますが、私は、政府が新総合農政を展開せられるにあたっては、農民に過渡的な不安動揺を与えないよう、万全の措置を講ぜられることを要望いたします。(拍手)
 また、経済の高度成長に伴って生じている交通、公害、都市問題など、解決すべき各種の懸案がありますが、これらについて総理の決意をお伺いいたしたく存じます。
 私は、今日わが国において最も重大な問題は、大学問題であると考えます。(拍手)暴力と破壊を目ざす一部の過激派学生の行動は、法治国家として許されるところでないのであります。かかる反社会的な破壊行為に対し、断固たる措置を取るべきであることは、総理の言明のとおりであります。しこうして、大学立法に対し強く反対する勢力もありましたが、あの大学法によって紛争大学の数が激減しているのであります。この事実は、何よりも大学を荒廃から救い、学問の自由を守ろうとする政府・与党の措置が適切であったことを物語るものであり、国民大衆の支持を受けたものと信じます。(拍手)
 現下の大学紛争の真の原因については、思想の混乱など幾つかを数えることができますが、その一つの大きなものは、国民の精神力と道義心の欠如に胚胎すると考えております。国民、なかんずく青少年層が健全な精神力を備えず、正しい道義の観念を身につけていない国家が、世界各国に伍して発展していくわけはありません。しこうして、国民の精神力と道義心を涵養する道は、わが国が世界の平和と人類の福祉を念願し、東西文化の融合と南北民族の協力をはかる崇高なる使命をになう国家であることを、われわれみずからが自覚することであり、このビジョンを次代をになう青少年に与えることにあります。(拍手)そうして政治の根本をこの理想に指向することこそ、激動と希望の一九七〇年代をまさに迎えんとする為政者の最大の責務であると信ずるものであります。(拍手)
 総理の確固たる答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 政界の長老川島君がみずから代表質問の第一陣に立たれるその姿こそ、今次国会に臨むわが自民党の気魄と意欲を示すものであり、満腔の敬意を表したいと思います。(拍手)
 そこで、御質問に順次お答えいたします。
 責任政党たる自民党が、安保条約を相当長期にわたって堅持する方針をきめたことは、まさしく国益に合致するものであり、現在の国際情勢を十分認識した上での適切な措置であると思います。
 今回の私とニクソン大統領との会談の基調となったものは、国際間の緊張を緩和しなければならないという共通の観点であります。この点で、世界最大の国力を持つ米国と自由世界第二位の経済力を持つわが国との基本的認識が一致していることは、まことに心強いことであり、世界の平和維持に資する点がきわめて大きいと信ずるものであります。(拍手)
 同時に、緊張緩和ということは、戦争を抑止する強い決意と不断の努力があって初めて達成されるというきびしい現実をも見のがすことはできません。(拍手)
 私は、日米安全保障条約が、今後とも戦争抑止力としての機能を十分発揮することを確信し、これを選択した日本国民の英知にあらためて敬意を表します。(拍手)
 また、緊張緩和という見地から、中共の動向がアジアの各国にとって最大の関心事であることは申すまでもありません。中共が、外に向かってより協調的かつ建設的な態度をとることを期待する点について、わが国の態度は一貫しております。政府としては、日中関係の改善は、極東の緊張緩和に最も大事なことと考えており、また、中共が広く国際社会の一員として迎えられるようになる事態は、わが国としてこれを歓迎するものであります。(拍手)
 以上の考え方は、私とニクソン大統領との共同声明に十分ににじみ出ているものと考えております。
 私は、以上の前提を申し述べまして、お尋ねの諸点についてお答えをいたしたいと思います。
 そこで、お尋ねの核心である沖繩問題についてお答えいたします。
 沖繩の返還につきましては、核抜き、本土並み、一九七二年という政府の基本的立場は、全面的に貫徹することができました。共同声明に明記されているとおりであります。この点について、私は、ニクソン大統領の勇断、米国政府、議会及び米国国民が示した友好と信頼と善意を深く多とするものであります。(拍手)これこそ、今後日米関係を長きにわたり磐石の基礎の上に置くものであると確信いたします。これから日米両国政府の間で協議に入ります返還協定の内容は、複雑多岐にわたることが予想されますが、早急に交渉を開始し、一九七二年じゅうの返還実現に万全を期する所存であります。
 なお、ベトナム戦争の継続が七二年返還のさわりになるのではないかとの懸念が一部にあるようでありますが、ベトナム戦争の帰趨にかかわりなく、沖繩は一九七二年じゅうに返還されるのであります。(拍手)もとより日米両国とも、ベトナム戦争の早期終結を強く希望しており、また一九七二年まで戦争が継続するとは予想されませんが、米国政府としては、現時点で、戦争継続の可能性を一方的に排除したりあるいは排除しているような立場を公にはとり得ないという点に対し、当方の理解を示したのが共同声明の文言であります。(拍手)万一不幸にして返還予定時におきましてもベトナム戦争が続いている場合には、これにいかに対処するか、そのときの情勢に照らして協議しようというのであります。七二年返還そのものに影響を与える事柄ではありません。(拍手)
 沖繩の核兵器を撤去することは、米国の最高責任者であるニクソン大統領の確約でありますから、全く疑問を残す余地はありません。核の問題は、大統領の専決権に属する問題であるだけに、交渉の過程におきまして。最後まで煮詰めることのできなかった最大の関門でありました。しかし、ニクソン大統領は、私との会談で、核兵器に対する日本国民の特殊な感情と、これを背景とした政府の非核三原則に深い理解を示し、みずからの決断によって明確な約束をしたのであります。(拍手)
 さらに申せば、「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」という表現は、返還後の沖繩への核兵器の導入については、本土と同様、安保条約に基づき事前協議の対象となるべき性質のものであるという米国政府の立場を、念のため確認したものであります。(拍手)政府は、非核三原則を沖繩においても堅持することを、この際特に明らかにしておきます。(拍手)
 事前協議制度を含めて、安保条約と予ての関連取りきめは、本土と同様、何ら例外も、変更も、差別もなく、全面的に沖繩に適用されます。したがって、返還後の沖繩における米軍基地が自由使用されることは絶対にありません。(拍手)
 また、御指摘のように、沖繩の米軍が、わが国及びわが国を含む極東の安全と平和の維持に重要な役割りを果たしていることは申すまでもありませんが、このことは安保条約及び関連取りきめが何ら変更なく、差別もなく沖繩に適用されることを、形式的にも、実質的にも修正するものではありませんから、御安心いただきたいのであります。(拍手)共同声明に盛られるとおりでありまして、それ以外の何ものでもありません。
 事前協議制度をそのまま沖繩に適用しても、わが国を含む極東の安全に支障を来たすことはないかとのお尋ねでありますが、この点も御心配はありません。わが国としては、自国の安全保障の見地から、極東の近隣諸国の安全に重大な関心を持たざる得ないことは当然であり、さればこそ、日米安全保障条約第六条に基づき、極東における平和と安全の維持のために米軍によるわが国の施設、区域の使用を認めているのであります。このような政府の認識がある以上、沖繩返還によって、米国が負っているアジアの平和達成という国際義務遂行の妨げとなることはないと信じます。また、わが国が置かれている地理的位置を直視すれば、韓国や台湾地域の平和と安全が確保されることが何よりも望ましいことは明らかであります。(拍手)かりに、これらの地域で重大な武力紛争が起これば、国益に直接響く重大事件となるのでありますから、事前協議に対して、前向きの態度をもって事態に対処するのは当然であります。(拍手)
 次に、沖繩返還によって極東の範囲が変わるかとのお尋ねでありました。結論的に申しまして、変わらないのであります。従来、再三にわたってお答えしておるとおり、安保条約にいう極東とは、国際の平和と安全という見地から、日米両国共通の関心の的となる区域ということであり、沖繩返還によって、ベトナム等のいわゆる周辺地域を新たに含むこととはなりません。また、沖繩の施政権の返還に伴って、同地域の防衛責任は、もちろん第一義的にわが国が負うこととなるのは当然であります。しかしながら、これはあくまでも憲法の許す範囲内であり、返還後の沖繩に整備する防衛力は、純粋に防衛的かつ局地的なものに限られることは言うまでもありません。また、沖繩にある米軍の戦闘作戦行動のための発進は事前協議の対象となるのでありますから、安保条約の性格は、沖繩返還の前後を問わず、全く変わることはないのであります。これまたはっきり申し上げておきます。
 一九七二年の返還時までに沖繩復帰の準備を完了しなければなりませんが、施政権の円滑な移転を確保するためにも、日米間の緊密な協力がますます必要であります。東京の協議委員会が復帰準備作業の全般に責任を負うとともに、沖繩に大使級の日本政府代表と琉球列島高等弁務官からなる準備委員会を新設して、万全を期することとなりました。これには琉球政府行政主席も参加いたします。また、県民の国政参加を早急に実現することが望まれますので、各位の御協力をお願いいたします。
 今回の日米会談におきまして、日米間の経済問題は、あくまでも沖繩返還交渉と全く別個の問題として話し合われたことは御指摘のとおりであります。繊維問題については、わが国はガットのワクの中で多数国間の協議を通じてその解決をはかっていくことを基本方針としておりますが、米側が希望するのであれば、先般のジュネーブにおける話し合いのような二国間の予備的話し合いを行なうことも考えております。
 川島君は、話し合い外交による国民的合意について触れられましたが、私もまた全く同感であります。今日ほど話し合いによる国内対立の解消が望まれているときはありません。私は、このたび米国に使いし、共和党政権と交渉し、沖繩返還を実現したのでありますが、この路線はすでに民主党政権時代にしかれたものであります。わが国の場合も、このような国家的、民族的大問題に関しては、各政党間において話し合いを尽くすという民主主義の基本ルールを守り育てていかなければならないと痛感しております。(拍手)
 また、川島君は、未解決の北方領土問題にも触れられましたが、沖繩問題解決のめどがついた今日、北方領土問題こそがわが国固有の領土に関する残された最大の懸案であります。私はこの点を強調しつつ、全国民的な要望を背景に、ソ連に対する働きかけを今後とも一そう粘り強く交渉していく所存であります。(拍手)
 冒頭に申し述べたとおり、私は、国際間の緊張緩和のため、日米間の協力は緊要であると考えております。そのためにも、わが国は、まずアジア諸国の民生安定と経済的自立達成のため、できる限りの努力を尽くさねばならないと思います。このことが緊張緩和に役立つのであります。御承知のとおり、わが国の援助量は近年急速に増大し、一九六八年には自由世界第四位の援助国となりました。しかしながら、国際的趨勢を見ましても、御指摘のごとく、援助量の増大と、援助条件の緩和の促進がきわめて重要となっております。私は、アジア諸国の繁栄があってこそ初めてわが国のより一そうの発展があるという信念のもとに、国民各位の深い御理解を得て、一九七〇年代の対アジア協力に真正面から取り組む決意であります。(拍手)
 沖繩返還問題が解決した今日、政府の施策の中心が国内政策の充実に向けられなければならないのは当然であります。一九七〇年代は社会開発の完成ともいうべき時期に当面しているのでありますが、なかんずく消費者物価の安定こそ、これまで以上に力を入れるべき課題であります。公共料金の抑制、生産性の向上、これをはかるとともに、流通をよくし、国民生活、特に国民の台所に直結する諸施策を強力に推進する考えであります。(拍手)
 また、川島君御指摘のように、わが国農政は重大な転換期にあります。これに賢明に対処するためには、思い切った政策転換を行なって、農業の近代化をはからなければなりませんが、その際最も肝要なことは、農民に不安、動揺を与えないことであります。(拍手)政府としては、この点に十分配意して、農民諸君の理解と支持を得る形で、農家所得の向上、農業経営の近代化を促進する決意であります。(拍手)
 また、交通、公害、都市問題などにつきましても全力をあげ、その解決に当たる決意であります。一そうの御鞭撻をお願いいたします。(拍手)
 最後に、現在国民の最も関心の深い教育問題についてお答えいたしたいと思います。私が、所信表明演説で、一九七〇年代は国際的教育競争の時代であると申し述べた真意につきまして、賢明な国民各位は十分御理解いただいたことと思います。現代は、情報化社会といわれ、人間の能力が多様多岐にわたって生かされる時代であります。今日、日本が自由世界第二位の経済力を持つに至ったとはいえ、さらに国民の総合力を高める努力をしない限り、国際間の競争に伍していくことはできないのは明らかであります。すなわち、教育問題の充実こそ、そのキーポイントであると申さねばなりません。われわれは、学校教育のみが教育のすべてでないことを、この際あらためて認識すべき時期に来ております。家庭のしつけに始まるあらゆる機会における情操の陶冶こそ、青少年の心を豊かにし、明日の日本を背負っていく有為な人材を多く育てるゆえんであります。もちろん、戦後二十五年、進歩する時代に対応できなくなったり、ほころびの出始めている教育制度、教育内容につきましても、根本的な検討が加えられなければならないのは当然であります。私は、国民諸君と一体となり、ともに力を合わせてこの問題に取り組む決意であります。この機会に強く訴、え、国民各位、一人一人の御理解と御協力をお願いいたします。(拍手)
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(松田竹千代君) 成田知巳君。
  〔成田知巳君登壇〕
#9
○成田知巳君 この第六十二臨時国会は、おそらく後世の歴史家から、日本の運命の大きな曲がりかどであったと評価される国会になると思いますが、私は日本社会党を代表し、日米共同声明を中心に、内外政治のあり方について、総理にお尋ねしたいと存じます。(拍手)
 今国会が解散国会であることは、すでに既定の事実となっております。だとすれば、当面の重大案件を処理した上で解散するのが、政府と国会の、国民に対する共通の義務だと思います。(拍手)
 案件の第一は、日米共同声明の内容を徹底審議して、問題の所在を国民の前に明らかにすることであります。(拍手)
 その第二は、沖繩県民の願いである国政参加の法案と生活関係法案及び公務員給与改正、災害対策のための補正予算を成立さすことだと思います。幸い生活関係法案については、――――――――――――――――――――――共産党を除く各党の協力で本日成立したことは、まことに喜びにたえません。(拍手)
 しかしながら、伝えられるように、代表質問終了後に解散するとするならば、それは日米共同声明の背後に隠された異常な事態が、われわれの追及により国民の前に明らかにされることをおそれての解散であり、すでに国民の合いことばとなっておりますぼろ隠し解散以外の何ものでもないと思います。(拍手)それは、政府あって国会なしの権力政治であり、自民党あって国民なしの党利党略そのものだといわなければなりません。(拍手)すでに議決されました二週間の会期中、日米共同声明について徹底審議を行ない、その上で解散することが国民の期待にこたえる道だと思うが、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 昨日の総理の所信表明演説に対しまして、国民は、日米共同声明がはなはだしく抽象的であっただけに、安保、沖繩返還についての具体的報告があることを期待していたのでありますが、この期待もみごと裏切られたのであります。(拍手)共同声明は美辞麗句に満たされておりますが、美辞麗句が多ければ多いほど、国民は多くの疑惑を抱かずにはおられません。私は、以下、日米交渉の二、三の問題点について簡明にお尋ねいたしますから、総理も、ことばのあやにとらわれることなく、国民にわかるように御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 総理は、沖繩の七二年返還が約束されたと言われておりますが、共同声明は、ベトナムにおける平和が沖繩返還時に実現していない場合には、「そのときの情勢に照らして十分協議する」と、いわば留保つき、条件つきとなっておるのであります。したがって、十分協議するという意味は、返還そのものを延ばすのか、それとも従来どおり、基地の自由使用、すなわち自由出撃、核の保持と持ち込みを認めるのか、この二者択一となると思いますが、総理のただいまの答弁もこれを裏づけております。総理は七二年に返還は実現するとお答えになりましたが、共同声明に、ベトナムに対する「米国の努力に影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現されるように、協議する」とうたつていることで明らかなように、総理は、アメリカのあのきたないベトナム戦争を支持することを約束して、帰ってきたのであります。(拍手)したがって、B52の沖繩からの即時撤去の要求も捨て去ったとしか思われません。もし、そうでないというならば、いま直ちにアメリカにB52の撤去を要求し、その実現をはかるべきであります。(拍手)総理の見解はいかがでしょうか。
 また、総理の言う、施政権が返還されるというその施政権の返還は、形式的なものにしかすぎません。沖繩に対する米軍の軍事支配は依然続くはずであります。その沖繩からベトナム攻撃が行なわれるならば、日本が名実ともにベトナム戦争に参加するという重大な事態をもたらすと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。(拍手)
 次にただしたいのは、いわゆる核抜き、本土並み返還の問題であります。
 総理は、核抜き返還は実現すると言われておりますが、共同声明を幾らしさいに読んでも、残念ながら、核を撤去するとはどこにも明記されておりません。核の悲劇を体験した唯一の国民である日本人、特に異民族の軍事支配下で、核をまくらにした毎日の生活をしいられてきた沖繩の同胞が、祈りにも似た気持ちで日米交渉に願い、期待したのは、返還後の沖繩と本土には、いかなる理由があろうとも、一切の核兵器は持ち込まない、核兵器は一切持たないことを、一点のあいまいさも残さず共同声明に明記することにあったと思います。(拍手)この願いと期待は、佐藤総理により完全に裏切られ、共同声明の表現は、すべて抽象的、間接的なものとなっております。
 総理は、非核三原則を沖繩に適用するから、国民よ、安心しろと言っておられますが、あなたの言う非核三原則は、そのときの都合で変わる政府の政策にしかすぎません。しかも、アメリカの核抑止力にたよることを前提にしたものであります。アメリカの核抑止力にたよりながら核持ち込みを断わるということが大きな論理の矛盾であることを、国民は敏感に感じ取っておるのであります。(拍手)
 問題は、これだけではございません。共同声明には、「事前協議制度に関する米国の立場を害することをしない」との新しい文言がつけ加わっております。事前協議に関する取りきめは、その歴史的経過から見て、また、政府のいままでの説明からいたしましても、アメリカ軍の自由行動に対する歯どめとして国民は理解してまいったであります。ところが、今回の共同声明に、事前協議にあたっては米国の立場を害することをしないという文言が加わったことは、日本の立場に立ったノーの事前協議制度ではなく、アメリカの立場に立ち、米軍の自由行動、すなわち核持ち込み、自由発進を認めるイエスの事前協議、いわばそのためのよりどころとしての事前協議制に変質されたということであります。このことは、安保条約の核安保条約への事実上の改定という重大な意味を持っております。なぜこのような新しい文言を特に加えたのか、その意味するところはどこにあるのか。もし私の理解に誤りがあるというならば、その根拠、理由を総理は明確にしていただきたいと存じます。(拍手)
 総理は、共同声明発表後の記者会見で、核抑止力を強調して、あるとも言えぬ、ないとも言えぬのが核であり、沖繩に核があるかないかもわからないと、白々しく言い切っておるのであります。これほど沖繩県民の心情を無視し、沖繩県民を侮辱したことばを口にした政治家は、戦前、戦中、戦後を通じて、佐藤総理以外にはないということであります。(拍手)この総理の発言を聞いた県民が、いかに総理が核抜きだと大きな声を出されても、核持ち込み、核保持について、内々の承諾をニクソンに与えているのではないかと心配するのは当然のことだと思います。総理が、国民よ、安心しろと言うからには、総理の立場としても、最低限度、まず沖繩の核兵器の有無を政府の責任で確認し、返還前にすべて撤去さすこと、B52の撤去をいま直ちに実現するとともに、密度の高い沖繩の基地を、本土並みに縮小することの確約を取りつけるべきだと思うが、総理の見解はいかがでしょうか。(拍手)
 核時代の今日、核の脅威に対して抵抗するためには、まずわれわれは疑う力を持たなければなりません。今回の共同声明に対し、国民が幾ら疑っても疑い過ぎるということはございません。この疑惑をさらに強めているのが、ナショナル・プレスクラブにおける総理の演説であります。総理は、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」との共同声明を受けまして、「韓国に対する武力攻撃が発生した場合、事前協議については、前向きかつすみやかに態度を決定する」と言われ、昨日はまた本会議場におきまして、台湾についても同じ考え方であることを明らかにされております。これが事前協議制に対するイエスの予約でなくて一体何でしょう。
 現にジョンソン国務次官が、事前協議の運用にあたり、沖繩のみならず、本土においても、米国の自由出撃と核持ち込みを認めることに日米両国政府は合意したと示唆しておることが報道されております。これは沖繩のみならず、本土を含めて日本全体をアメリカの極東戦略のかなめ石とすることであり、安保条約の、アジア安保、事実上の相互援助条約への拡大だというべきであります。(拍手)日本の基地から米軍が他国攻撃のため直接出動することを認めるのは、事実上日本政府が戦争行動をとるにひとしいことであり、憲法のじゅうりんであり、はなはだしい憲法違反であります。それだけではありません。あの三矢計画のあることを知った国民は、今回の共同声明を見て、朝鮮や台湾に自衛隊を派兵する危険のあることをはだで感じ取っております。(拍手)
 総理は、憲法のワク内で行動するから心配ないと言われております。しかし、憲法が、歴代自民党政府の手であめ細工のようにゆがめられてきたことを知っている国民には、総理の説明は全く通用いたしません。憲法に従ってものごとを判断するのではなく、まず既成事実をつくって、それに合わせて憲法の解釈をねじ曲げてきたのが自民党政府であります。(拍手)そのことをよく承知している国民には、総理の説明は何らの説得力を持っておりません。
 私は、国民の不安と危惧を一掃するため、総理に次のことを明確にしていただくことを強く要求するものであります。
 すなわち、ダレスのドミノ理論の亡霊である釜山赤旗論などの虚像をでっちあげて、韓国の安全即日本の安全とみなし、在日米軍の自由行動を許したり、自衛隊を、国連協力の名のもとに、実質的に米軍と共同作戦行動をとらせるような憲法違反の政治は絶対行なわないと、あなたは国民に約束すべきだと思います。(拍手)
 総理は、また、いま川島さんは、戦争によって失われた領土の平和のうちに取り返すことは、世界の歴史にまれなことだと自画自賛されております。しかし、第二次世界大戦後フランス領に編入されたザール地区を、ドイツ国民は、その団結と国際世論に訴え、早くも昭和三十一年に、軍事的にも、経済的にも、何らの取引条件を与えることなく、その返還を実現していることを総理も御承知だと思います。(拍手)これに引きかえて、資本と貿易の自由化、残存輸入制限の撤廃、繊維輸出の自主規制で譲歩に譲歩を重ねただけでなく、軍事的にも日本が大きな荷物を背負わされる道を開いた今度の日米交渉は、佐藤総理のことばをかりますならば、これこそ世界の歴史に類例のない屈辱外交だと言うべきであります。(拍手)
 かつて三木外務大臣が、核抜き、本土並みを提唱したときに、総理は、そのような外務大臣を任命した自分は不明だったと言っておられ、そして暗に、核つき、自由使用の返還を示唆したことは、総理も御記憶だと思います。その総理が、突如、いわゆる核抜き、本土並みに転向したのはなぜでしょう。それは、言うまでもなく、沖繩県民の四分の一世紀に及ぶ血のにじむような祖国復帰の運動と、これと連帯した本土の運動が全国的に盛り上がってきたために、このままでは沖繩の軍事基地としての機能を維持することも困難になると日米両国政府が判断した結果にほかなりません。(拍手)政府・自民党は、国民の復帰運動の上にただ乗っかったにすぎません。しかも、共同声明で明らかなように、佐藤内閣は、沖繩返還を逆手にとり、核抜き、本土並みという口先の欺瞞で三たび沖繩県民を差別と屈辱の中に封じ込めるとともに、日本全土の核基地化と米軍の自由出動を許そうといたしておるのであります。
 申すまでもなく、いままでのアメリカの沖繩支配は、カイロ宣言の領土不拡大方針に違反するものであります。また、わが国が国連に加盟した後は、沖繩におけるアメリカの施政権の根拠であるサンフランシスコ平和条約第三条は、すでに有効性を失っておるのであります。沖繩の返還は、アメリカにとっては譲歩でもなく、権利の放棄でもありません。国際法上、当然の義務の履行であります。(拍手)日本にとっては、アメリカにお願いするものではなく、権利の要求であります。
 社会党は、その意味で、民族の利益を裏切った今回の共同声明を国民的に不承認し、あくまでも即時無条件全面返還、すなわち、核も基地もB52もない沖繩実現のために、国民とともに全力を尽くす決意でございます。(拍手)
 なお、この際一言総理に確かめておきたいのは、北方領土問題であります。もともと日本固有の領土である千島を、われわれの反対にもかかわらず、サンフランシスコ平和条約第二条で放棄したのは自民党であり、あなたの恩師吉田全権であります。(拍手)しかも、今回の日米会談でソ連を仮想敵国とした安保を拡大強化し、ソ連をいたずらに刺激し、日ソ関係を悪化させようとしておるのも自由民主党であります。社会党は、まず日ソ平和条約の締結で歯舞、色丹の返還を実現し、その際、さらに安保の解消と見合って千島全体の返還につき確約を取りつけることが最も現実的な北方領土問題解決の方法であり、沿岸漁民の安全操業を確保する道だと思うが、総理の見解を承りたいと思います。(拍手)
 総理は、安全保障について国民的合意が必要だと事あるごとに強調され、先ほど川島さんもこの点を唱えられたのでありますが、その総理と自由民主党が、主権者である国民の意思を一度も聞くことなく、安保条約の長期堅持をニクソンと約束し、国論を大きく二分し、国民合意を否定したのは皆さん方ではないでしょうか。(拍手)そして、安保があったから日本の平和と安全が守られたと一方的に宣伝しています。しかし、キューバ事件、エンタープライズ号事件、プエブロ問題、厚木基地から進発したスパイ機事件で明らかなように、日本人の知らないうちに、おそらくは佐藤総理御自身も知らないうちに、日本に関係のない事件で日本が戦争のせとぎわに立たされるような危険な行動を、アメリカ軍が安保条約のもとで毎日繰り返しておるのであります。(拍手)
 日本の安全が保たれてきたのは安保のおかげではなく、それとは逆に、安保があったにもかかわらず、平和憲法をとりでとして、社会党を中心とした日本の民主勢力が反戦平和の運動を粘り強く続けてきた結果であります。(拍手)このことは、日米安保条約と同じあの米韓相互援助条約で縛られた韓国の現状を見れば、おのずから明らかだと思います。韓国は遠いベトナムに五万の青年を派兵し、名分のない戦いにとうとい青年の血を流しているではありませんか。すでに多くの国民が安保条約の本質と危険性を見抜いていることは、各種の世論調査で、安保はむしろ危険であり、中立政策をとるべしという主張が多数意見となっていることで明らかだと思います。(拍手)
 他方、国を守るためには軍隊が必要だという意見がありますが、これは、国を守るのは武力しかないという過去の防衛理論の遺物にすぎません。わが国はかの太平洋戦争で国力のすべてを軍備につぎ込んだにもかかわらず、ついに敗れ去り、国民は言語に絶する大きな犠牲を払ったのであります。そのときの政治指導者は、現在の自民党の先輩諸君であります。(拍手)少なくとも自民党の諸君に、軍備による国の防衛を論ずる資格はないといわなければなりません。(拍手)剣で立つ者は剣で滅ぶという歴史の冷厳な事実に学んだからこそ、日本は、国際紛争解決の手段として武力や戦争に訴えないという、世界史的意味を持つ平和憲法を制定したのであります。現代の国際情勢のもとで、一〇〇%確実な安全保障の道はない、すべては相対的だというのが政府・外務省の統一見解であります。だとすれば、より安全度が高く、より危険度の少ない方法を選ぶのが正しい安全保障政策であります。現代の熱核戦争の時代においては、攻められたらどうするかというのではなくて、攻められないためにはどうすればよいかというのが安全保障の中心課題であり、国民の生命と財産をほんとうに守り抜こうと考える政治家の求めるべき道だと思います。(拍手)
 先ほど質問に立たれた川島さんは、日米下田会議での演説で、また先ほども、中国との国交回復なき限りアジアの平和と安定はあり得ないと言われておりますが、その限りでは、私もまことに同感であります。私たちが、ソ連との平和条約の締結、特に中国との国交回復を促進し、日本を取り巻く国際環境を平和なものにするために、積極的な努力を払っているのもそのためであります。
 言うまでもありませんが、私たちの非武装中立の政策は、一部で故意に宣伝しているように、社会党政権のもとで一挙に自衛隊を解散させるなどという観念的なことを考えているものではございません。各種の条件を考慮し、特に平和外交の進展に応じて、国民世論を尊重しながら漸次自衛隊を平和国土建設隊と国民警察隊に改編しようという現実的政策が、社会党の非武装中立の政策であります。(拍手)
 この際、私は、この議場を通しまして、全国の皆さん方に訴えたいと存じます。国の安全保障の問題について、攻められたらどうするかという一般論、抽象論で現実の政治選択を行なうことは、無意味というよりは危険だということであります。(拍手)
 今日、国論を大きく二分している防衛問題の中心は、自民党のいわゆる自主防衛論を認めるかどうかの問題であります。すなわち、自衛隊を国民皆さん方の税金で飛躍的に増強し、国民生活を犠牲にし、日本はアジア安定の主役を果たさねばならぬという佐藤総理の考えや、桜田日経連代表理事の憲法第九条改正論にすでにあらわれておる徴兵制と自衛隊海外派兵への道を選ぶのか、それとも自衛隊をこれ以上増強しないで、平和外交を推し進め、国民世論に聞きながら漸次自衛隊を縮減し、浮いた財源を社会保障、国民生活の安定に回す平和と繁栄の道を選ぶかの問題であります。(拍手)古くて新しい、大砲かバターか、自衛隊か社会保障かの問題であります。国民の皆さん方が、かわいい御子弟の未来のために誤りない選択をされんことを心から期待するものでございます。(拍手)
 次に、私は、佐藤総理をはじめ、自民党の諸君が好んで振りかざす安保繁栄論について、総理の見解をただしたいと思います。
 いわく、安保条約のおかげで軍事費が少なくて済んだ、これが日本経済繁栄の原因だというのであります。確かに国民総生産は世界三位になりました。しかし、国民総生産の成長が国民生活の向上と直接結びつくものでないことは、高度経済成長の日本で、物価の上昇、過疎過密、一年百万人に達する交通事故の犠牲者、各種公害の激増を見れば、おのずから明らかです。(拍手)
 このことはしばらくおくといたしまして、安保条約があったから軍事費の負担が少なくて済んだというのは事実でしょうか。ヨーロッパの北大西洋条約機構に参加している国々は、アメリカとの軍事同盟で守ってもらっているはずですが、軍事費の国民総生産に対する割合は、平均して四・三%という高い率になっています。これに対し、中立政策をとっているオーストリアとフィンランドは、それぞれ一・三%・一・六%という低い率であります。アジアにおいても、韓国、台湾、タイ、豪州、ニュージランドなど、アメリカと軍事同盟を結んでいる国々は、いずれもその割合は非常に高いのであります。なぜかといえば、アメリカは他国と軍事同盟を結ぶとき、必ずバンデンバーグの決議に基づき相手国に防衛力の増強を要求することになっているからであります。現に安保条約第三条で日本が防衛力の増強を義務づけられておることは、自民党の諸君といえども御承知のはずだと思う。だとすれば、軍事費負担が少なくて済んだのは、安保があったおかげではなく、これまた、安保があったにもかかわらず、平和憲法の存在と、われわれの再軍備反対運動が、防衛費の大幅増加を押えてきたというべきであります。(拍手)しかるに、今回の日米交渉で、アメリカの主張に屈服し、財界の軍事産業拡大の要求にこたえ、第四次防衛計画で五兆円の軍事費に国民の血税を浪費しようとしているのが政府。自民党でございます。(拍手)
 日本経済繁栄の真の原動力は、言うまでもなく、日本の労働者、農民、中小企業、知識階層の働き、そのすぐれた創造力によるものであり、それを制度的に裏づけてきた日本国憲法の存在であります。言論、思想の自由は、学問と科学技術の発達を促しました。労働基本権の確立は労働組合の広範な組織化を、農地改革の実施は農業生産力の拡大をもたらしたのであります。そのため、国内市場は大きくなり、購買力は増大して、日本経済は成長を続けてきたのであります。しかるに、歴史の歯車を逆に回すように、大学立法で言論、思想、研究の自由を抑圧し、労働者の権利をあらゆる手段で制限し、農地法、食管法の改悪で日本農業をささえてきた二つの柱を打ち倒そうとしているのが政府一自民党でございます。(拍手)佐藤総理、もし私のこの主張が間違いだと言うならば、具体的にその理由を示していただきたいと存じます。
 言うまでもないことですが、政治は選択の技術だといわれておるように、高いところにますます土を盛るような選択ではなくして、日の当たらぬところ、日の当たらぬ人にあたたかい救いの手を差し伸べるのが正しい選択であり、正しい政治の姿であります。(拍手)この意味で、今日までの佐藤内閣の政治が誤った選択であり、さか立ちした政治であったことは数々の事実が証明しております。
 まず第一に、今日国民が口を開けば、出てくるのは物価高に対する怒りの声であり、物価が上がって苦しむのは勤労大衆であることは、佐藤総理も御承知だと思います。物価上昇は、もちろん自然現象ではございません。自民党の諸君は、農村へ行けば、物価が上がるのは労働者の賃上げが原因であると宣伝し、逆に、都市へ行けば、農民の米価引き上げが原因だと宣伝しておりますが、これが全くでたらめであることは数字が明らかに示しております。(拍手)政府統計によりましても、賃金上昇が大幅だったといわれておる昭和四十年から四十二年までの間に、第二次産業の労働者の賃金は二四・六%上がっておりますが、労働生産性すなわち能率は、実に三一・七%も上がっております。しかも、生産費の中で賃金の占める割合は低下の一途をたどっているのを見ても、賃上げが物価上昇の原因でないことは明らかであります。(拍手)また、過去の例をとるまでもなく、ことしは生産者米価、消費者米価が据え置かれたにもかかわらず、物価はどんどん上昇し、とうてい政府見通しの五%の上昇ではおさまらない状態であることが、米価の引き上げが物価上昇の原因でないことを事実で証明していると思います。(拍手)
 だとすれば、物価引き上げの真犯人はだれなのか。これまた次の政府統計が明らかにいたしております。昭和三十年から四十二年の間に、年平均の実質経済成長率は一〇・一%であったのに対し、通貨の増発率は実に一六・九%となっております。この日銀から増発された通貨の大部分は、大独占企業の設備投資に使われたものであります。(拍手)この高度経済成長の名による大企業本位の経済政策、すなわちインフレ政策こそ、物価上昇の真犯人であります。(拍手)
 さらに、政府・自民党が公正取引委員会に陰に陽に圧力を加え、八幡・富士の合併を強行させたことに端的にあらわれておるように、独占価格、管理価格の設定による物価の一そうの引き上げが予想されておるのであります。もし佐藤総理が、口先だけでなく、物価の安定をほんとうに真剣に考えるならば、このインフレ政策をやめ、独占大企業を規制する抜本的施策を講ずべきだと思いますが、総理の見解を承りたいと思います。(拍手)
 総理は、人間尊重を口ぐせのように言われますが、いまの日本で最も人間性をじゅうりんされておるのは農民ではないでしょうか。かつて食糧不足のときには米をつくれと言われ、いまは米が余ったといって、米価はストップする。米づくりをやめろといわれているのが農民であります。米のかわりに畜産、果樹に移ろうとしても、その畜産も果樹も、アメリカの余剰農産物の圧迫でつぶれかかっておるのであります。農業だけでは、最低の生活さえ維持できなくなり、出かせぎ農家が激増し、農村家庭の崩壊をもたらしております。都市の工事現場で一挙に十人以上の死亡者を出すという悲惨な労働災害が起きているではありませんか。
 総理の言う人間尊重の政治、すなわち、農民が人間らしく生きていけるようにするためには、最低限度、農地法と食管制度を堅持し、農地の改良を国の費用で行ない、農業用資材の値段を国の手で引き下げ、農産物の価格補償を国の責任で行なうべきであります。(拍手)米の余剰問題についても、少なくとも半年分の備蓄米制度を確立し、アメリカの小麦をわざわざ買って、低開発国に食糧援助するというばからしいことを直ちにやめ、日本の米で援助すべきだと思います。アメリカの米を押しつけられておる沖繩に日本の米を送るべきだと思います。(拍手)さらに、アルコール等の工業用原料としての用途の拡大、搗精度の引き上げ、学校給食の実施、これらの施策を講ずべきだと思います。政府は、米の過剰をことさらに大きな声で宣伝していますが、いままで一度でも、米の消費拡大のために政府は努力したことがあるでしょうか。(拍手)それどころか、四年間連続で五七%の消費者米価を引き上げて、米の消費を減退さしたのは、総理、あなた自身ではありませんか。(拍手)
 いまや日本の農民は、もはや、もの言わぬ農民ではありません。総合農政のあり方と当面の農業政策について、農民の納得するような政策を明らかにするのが総理の政治責任だと思いますが、総理の見解はいかがでしょう。(拍手)
 最後に、私は、総理に特にお尋ねしたいことがあります。あなたは、一九七〇年代の日本を一体どういう国にしていこうとお考えになっているかであります。
 敗戦から今日まで、国民の勤労の結果として、わが国は世界で第三位の工業生産力を持つ国となわました。日本は、経済大国になったといわれております。問題は、この国民の汗とあぶらの結晶である経済力を、何のために、どのように生かしていくかということであります。
 今回の日米交渉の経過で明らかなように、総理は、日本の経済力でアメリカのアジア政策に協力し、さらに進んで、アジア反共戦略の主役を果たすことをニクソンと約束して帰ったのであります。(拍手)つまり、あなたは、日本をアジアの憲兵として軍事大国に持っていくことを約束されたのであります。
 しかし、佐藤総理、あなたも御承知のように、日本国憲法は、日本の国家目標として、平和国家を高らかに掲げております。この平和憲法を、過去二十数年にわたり、歴代自民党政府は、再軍備と日米軍事同盟の推進強化を通して踏みにじってきたのであります。その当然の結果として、国民の間に、日本はどういう国になるべきかという国家目標について、大きな分裂と混乱が生じております。今日、青年、学生諸君が、せつな的享楽主義におちいり、あるいはマイホーム主義に閉じこもり、または極左ゲバルト主義に走っている根本原因は、実にこの国家目標の混乱にあるのであります。(拍手)総理は、施政演説のたびごとに、美しいことばで青年に呼びかけられますが、このみずから招いた国家目標の混乱を正すことなしには、青年の奮起はもちろん、大学問題、青年問題の真の解決は絶対にあり得ないと思います。(拍手)
 私は、総理に心から訴えたい。日本を絶対に軍事大国にしてはなりません。かつての大国日本が、無謀な太平洋戦争に突入したように、また、今日、アメリカが、ベトナム戦争で多くの青年の血を流しているように、日本が再び軍事大国の道を歩めば、アジアの戦争の当事者となり、日本人とアジアの人々に、はかり知れない犠牲を強要することになることは明らかだと思います。アメリカという世界第一の軍事強国が、外、戦争の出血に苦しみ、内、極貧層を抱え、凶悪犯罪にむしばまれているのを見るとき、われわれは、どんなことがあっても、軍事大国になることを拒否しなければなりません。(拍手)
 一九七〇年代において日本の進むべき道はおのずから明らかです。
 われわれの進むべき道、正しい国家目標は、第一に、真の平和国家になることであります。平和は、あらゆる人間的価値の前提であり、憲法の精神もまたここにあります。
 第二に、日本は、進歩と平等の国にならなければなりません。進歩と平等とは、学問、科学技術の成果を一部の人の金もうけの手段にするのではなく、全国民の幸福に役立たすということであります。
 第三に、日本は、かおり高い文化国家にならなければなりません。このためには、都市と農村を通じ、国民の生活環境を少なくともヨーロッパ並みに引き上げることが必要です。われわれの高い技術と工業力をもってすれば、これは完全に可能であります。老齢年金、医療保障、児童手当など、社会保障をいまの三倍の水準に引き上げることが必要です。その財源は、あの膨大な自衛隊費の増加をストップし、これを減少させていけば十分生み出すことができるはずであります。(拍手)すべての青少年に対し、高等学校までの教育を無償とし、各人の能力と希望に応じて、国の援助で大学へ進むことのできるようにすべきであります。大企業と金持ちを不当に優遇している租税特別措置の廃止、交際費等の社会的浪費への課税、大口脱税の捕捉によって、そのための必要な財源は十分まかなえるはずであります。(拍手)
 このようにして、経済的にも技術的にも、また文化的にも、高い水準の日本、進歩と平等の気風と活力に満ちあふれた日本、アジアの諸国、世界の国々と平和に共存するわれわれの日本をつくるべきであります。(拍手)この国家目標を高く掲げることによって、青年、学生諸君は向かうべき人生の目標を見出し、毎日の生活に生きがいを感じ、そうして未来をにない、未来を建設するために、目を輝かしてそのエネルギーを傾倒するでありましょう。(拍手)
 佐藤総理、繰り返して申し上げます。日本を軍事大国にしてはなりません。私は、あなたが思い切った発想の転換を行なって、憲法にのっとった政治、憲法を守る政治を志すことを強く要求いたします。もしあなたがこれを拒否されるならば、あなたは憲法の敵、憲法の破壊者として、歴史の上に汚名を残すであろうことを強く警告いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
#10
○議長(松田竹千代君) ただいまの成田君の発言中、――――――――――――――――――――――という部分について、これを取り消したいとの申し出がありましたので、さよう御了承を願います。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 成田君にお答えをいたします。
 私は、本年冒頭の代表質問でお答えしたとおり、国民世論の動向、国際情勢の推移等を見きわめながら、国民の十分納得のいく形で沖繩問題の解決をはかると申し続けてまいりました。その結果、共同声明で明らかなとおり、核抜き、本土並み、一九七二年返還という、そのものずばりで決着したのであります。(拍手)私は、社会党がこの成果に目をつぶり、いたずらに国内の対立、抗争をあおる方向に進む姿を見まして、まことに残念でたまりません。(拍手)
 成田君は、各党が快く応じた党首会談にも出席されず、から回りをしておられるように見受けられますが、それがはたして責任ある野党第一党の姿と言えるのでありましょうか。(拍手)反省を求める点であります。
 次に、共同声明の内容につきましては、先ほど川島君に詳細にお答えをいたしましたのでありますが、また成田君からのお尋ねもありましたので、私はこれにお答えをするつもりであります。
 政府といたしましては、一九七二年まで、現在のような形でベトナム戦争が続いていることはあり得ないと考えております。沖繩返還は、必ず一九七二年中に、核抜き、本土並みで達成されます。ベトナム問題によりまして沖繩返還の時期が影響されるということはありません。(拍手)核兵器につきましては、ニクソン大統領が日本政府の政策、すなわち非核三原則に背馳しないよう、沖繩の返還を実施すると確約したのでありますから、沖繩が核兵器の存在しない形で返還されることにつきましては、いささかの疑問の余地もありません。(拍手)その意味で、沖繩は、全くきれいな姿で返ってくるのであります。(拍手)
 なお、「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく、」との表現は、返還後の沖繩への核兵器の導入については、本土と全く同様、事前協議の対象となるべき性質のものであるという米国政府の立場を念のため確認したものにすぎません。(拍手)政府といたしましては、返還後の沖繩についても、本土の場合と全く同様に、非核三原則を堅持する方針でありますので、有事核持ち込みを認めるなどということは全然考えておりません。(拍手)
 以上から明らかなとおり、安保条約の本質が変わったというようなことは全くないのであります。
 また、B52が沖繩住民に与えている不安を解消すべく政府が努力しておることは、これまでも繰り返し明らかにしているところであり、この方針は今後とも何ら変わるところはありません。
 さらに、沖繩の米軍基地が施政権返還後も引き続き有効な機能を維持することが、わが国及びわが国を含む極東の安全にとってきわめて重要でありますが、不要不急の基地を整理統合することは当然のことであります。今後復帰準備の過程及び返還後は沖繩にも適用される地位協定のもとでこの問題の合理的な解決をはかってまいる所存であります。この点をはっきりいたしておきます。
 また、戦争によって失った地域を返還するということは世界にもまれだと、こういうことを申しまして、全然ないと言ったわけではありません。したがいまして、成田君も、私が全然ないと言ったような所感を持っておられますが、そのことは誤解でありますから、さようなことのないようにお願いします。
 また、私がいかにも憲法違反でもするかのような言い方でありますが、わが党は絶対に憲法違反などいたしません。(拍手)はっきり申し上げておきます。
 以上で、いろいろこまかな点についてのお話がございましたが、私は、この機会に一言、最も重大な点だと思いますので、この点はぜひとも成田君に考え直していただきたいと思います。
 それは何であるか。北方領土につきまして国後、択捉、これは吉田全権が放棄したではないかというそのことばであります。(拍手、発言する者多し)私は、歴史を知らないにもほどがある、(拍手、発言する者多し)わが国の野党第一党はこの程度の知識しか持っておらないのか、(拍手、発言する者多し)かように私は思うのであります。このことは、十分お調べの上、みずから間違っていたということがはっきりすれば、この席でお取り消しをいただきたいと思います。(拍手)この点だけは私がどうしても聞き捨てにならないことでありますので、あえてこの機会にはっきり申し上げておきます。(拍手、発言する者多し)
 次に、安保条約を堅持することがソ連敵視政策であるかのような成田君の発言でありましたが、必ずしもことばはそのとおりであったとは思いません。しかしながら、私は、この北方領土、その問題にいたしましても、また、ただいまのような事柄につきましても、今回の日米共同声明は、決して特定の国に対して敵視政策をいたしたものでないこと、いな、私どもは、かえってあらゆる面において緊張緩和に努力しておること、そのことをはっきり御理解いただきたいのであります。この点が最も大事なことだと思いますので、この点を申し上げておきます。
 次に、成田君がいつも言われることでありますが、非武装中立論に固執されるのは、これは党議で縛られているためであるかもしれませんが、それがいかに幻想であり、非現実的なものであるかは、私が申し上げるまでもなく、国民世論がつとに指摘しているところであります。(拍手)この点につきましては多くを申し上げる必要はないと思います。
 しかし、この際、特に一言つけ加えておきますが、責任ある政治というものは、国民の安全を確保することだと思うのであります。わが国は、日米安保条約のもと、二十四年間にわたって平和を確保し、さらにこれを土台にして一九七〇年代における飛躍をはかろうとしているのであります。この基本的な認識と理解をあらためて切望いたします。
 次に、申すまでもなく、わが国が戦後の荒廃から立ち上がって、自由世界第二位の経済力を有するまでに至ったのは、国民のすぐれた資質と勤勉さであります。と同時に、日米の信頼と友好関係など関係環境に恵まれたことであります。私ともても、すべてを安全保障条約に結びつけるつもりはありませんが、少なくとも、冷厳な国際情勢の中にありましで、国力、国情に応じて逐次防衛力を整備する余裕があったことは、安保条約を堅持したからだということは否定できないのではないでしょうか。私は、いまこそ成田君に発想を転換していただきたいと思います。
 北方領土問題は残るとはいえ、沖繩返還によりまして、ある意味におきましてはわが国の戦後は終わるのであります。いまや、世界の眼は日本に集まっているのでありますから、一九七〇年代の国際競争に立ちおくれないためにも、もっと世界の現実に目を開いていただきたいものだと思います。
 次に、物価の問題でありますが、先般つとに、景気過熱の予防的措置として公定歩合の引き上げを含む金融引き締めの措置をとったのも、基本的に物価の動向を憂慮したからにほかなりません。また、積極的な通貨の増発を試みているのでは毛頭ないことを御理解いただきたいと思います。ただ、急激な経済の膨張は、超過需要を誘発し、これが物価上昇の大きな要因となることを考えると、長期にわたる安定的経済成長を確保するために経済の成長を適度のものにとどめることが何よりも必要であり、私は一九七〇年代の財政、経済政策の眼目をこの点に置き、節度ある経済の運営をはかりたいと考えるものであります。(拍手)
 また、物価対策の基本は、低生産性部門の構造改善にあることは、従来しばしば申し上げているとおりであり、成田君が目のかたきとされる大企業は、むしろその限りでは物価の安定に寄与している面もあることを御理解いただきたいと思います。
 また、私は、成田君が言われるように、物価上昇の原因を、労働者の賃金上昇や生産者米価に押しつけるつもりは全くありませんが、物価の問題は、国民各位の心がまえの問題に負うところもきわめて大きいことを考えると、私は、国民の一人一人にそれぞれの立場で物価の安定に対し十分の配慮をされることを強く希望するものであります。
 最後に、国内情勢の分析につきましては、珍しく成田君と意見が一致いたしております。しかしながら、軍事大国といろことばは現実にそぐわない、誤解を招きますから、これはきっぱり返上いたします。
 成田君の御指摘のように、経済発展に伴っていろいろな矛盾が出ております。お互いに政治家が虚心にその対策を語り合わなければならない、その時期にきていると思うのであります。大学紛争が混乱の極に達したとき、党首会談において、私は真剣に社会党にも相談したつもりであります。しかも残念ながら、御協力は得られませんでした。そのことはそれとして、現代における新しい国家目標は、政府や各政党が掲げる抽象的なスローガンのみでは国民的合意は得られないと思うのであります。まず、国民全体が一致する共通の広場を持つことが何よりも肝要であります。私は、沖繩返還によりまして、国民のすみずみまで、一本立ちとなった自信と自覚が生まれてくることを期待しておりますから、おのずと新しい国家目標が生まれてくるものと確信しております。
 一九七〇年代は、六〇年代にも増して激動の時代であることが予想されます。そこで成田委員長にお願いをいたしたい。われわれ政治家の責任は、国民的共通の広場を持つことに努力することだと思いますので、そのために今後とも率直に相談し合っていきたいので、御協力をいただきたい。この点をお願いをいたしておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(松田竹千代君) 西村榮一君。
  〔発言する者多し〕
#13
○議長(松田竹千代君) 静粛に願います。
  〔西村榮一君登壇〕
#14
○西村榮一君 私は、民社党を代表いたしまして、今回の日米会談の主題である沖繩問題をはじめ、日米安保条約の今後の取り扱い、……
  〔発言する者多し〕
#15
○議長(松田竹千代君) 静粛に願います。
#16
○西村榮一君(続) アジア政策の基本課題である中国問題並びに現下国民生活上の重要問題である物価、大学問題等について、佐藤内閣の所信をただしたいと存じます。(拍手)
 私が伺いたい第一点は、これからの重要課題である日米関係の再検討についてであります。
 その具体的課題の一つは、今回の日米共同声明と沖繩問題であります。(拍手)われわれは、沖繩問題解決の基本原則は、将来への禍根なき解決の一言に尽きるのであります。(拍手)この見地から今回の日米共同声明を見るとき、われわれが率直に受ける印象は、沖繩の返還と引きかえに、日本がアメリカの極東戦略体制に深入りし過ぎたのではないかという点であります。(拍手)
 そこで私は、佐藤総理に端的にお伺いいたします。
 まず、核問題について、共同声明は、国民にはほとんど理解しがたい間接的表現をもって、かろうじて七二年の返還時における核の撤去を推測させておりますが、その後の核の持ち込みの危険の排除については全く不明確といわざるを得ません。(拍手)帰国直後の記者会見並びに昨日の佐藤総理の所信表明におきましても、この核持ち込みと事前協議について触れられておりますが、事前協議に際して、はたしてノーと言い得るのでありますか、依然としてあいまいであります。(拍手)もし政府が真に核持ち込みを拒否する決意と、明確なる協定が成立しておりまするならば、何がゆえに佐藤総理は、その所信表明演説においてそのことを国民の前に率直に明書し、もって国民の疑惑を一掃なさらなかったのでありますか。(拍手)
 それについて先ほど総理は、川島副総裁並びに成田委員長の質問に対してすでに明確に答えておると言われるかもしれませんが、しかしながら、われわれが核持ち込みを懸念する第一の理由は、今回の日米交渉を通じて、日本側が返還後の核持ち込みを拒否する態度を明らかにしなかったことであります。(拍手)何がゆえにニクソン大統領との間に協定事項としてそれを明確にしなかったのでありますか。この際、その理由について具体的に説明をいただきたいのでございまして、日米両国間で解釈の両面性を生ずるがごときあいまいな表現を許すほどなまやさしい問題ではございません。(拍手)
 非核三原則の問題は、単なる政策論の問題にあらずして、日本国家の国家性格の根幹に属する重要問題であります。(拍手)何がゆえにかくのごとき重要問題が交渉の主題にならなかったのでありますか、かつ、それに基づく協定事項として明文化されなかったのでございますか、国民が深く憂えるのはこの点であるのであります。(拍手)私はここに総理の明快なるお答えをいただきたいと存じます。
 第二に、共同声明の中に「事前協議制度に関する米国政府の立場を害さない」旨を明記しておるのであります。おそらく米国は、今後、この共同声明の条項や佐藤演説をたてにとって、有事の際の核持ち込みを要求し得る余地があると解釈いたしておるのであります。現に十一月二十二日のワシントン・ポスト紙は、米政府は有事核持ち込みの権利を留保したと報じておるのであります。したがって、この点に関する国民の疑惑と不安を解消する道はただ一つであります。それは佐藤総理自身が本議場を通じて国民に向かって、政府としては米国からのいかなる核持ち込みの提案も拒否し、平時、有事を問わず非核三原則を貫くという方針を重ねて明言されることであります。(拍手)
 沖繩問題の第二は、ベトナム戦争の推移と沖繩基地の関係であります。この問題の焦点は、ベトナム戦争が終わらない場合、沖繩基地からのB52等による自由な戦闘作戦行動を認めるかどうかという一点に尽きるのであります。もし日本政府がかりにそれを認めるということになりますと、次の三つの重大な問題が発生いたします。
 その第一は、それによってわが国の在日米軍基地は、ケース・バイ・ケースで自由発進基地になります。
 第二に、安保条約の極東条項は拡大化し、これまで政府が言明してきた極東の範囲は完全に変質いたします。それは、いうまでもなく安保条約それ自身の変質であります。
 第三には、在日米軍基地は、B52の発進を認めることにより、攻撃基地の性格を持つに至ります。これは重大な変化であります。もしそうでないというならば、佐藤総理は、返還後も一切自由発進は認めない旨を本議場において断言していただきたいのであります。(拍手)
 ということは、一九七二年までにはベトナム戦争が終わるであろうということは佐藤総理とニクソン大統領の予測であって、その予測を確実に保証するものはどこにも存在いたしておりません。したがって、戦争が継続する場合もあり、また、和平と戦争との中間の道として停戦協定が成立しないまま自然休戦という事態もあり得るのであります。しかる場合、いつ何どき戦争の火がふくかもわからないのでありまして、この場合はアジアの情勢は流動化し、不安定な様相はますます増大される危険があります。また、日米協定によるアジア、極東の情勢も大きな変化を招来するのでありまして、かかる場合、沖繩はもとより、日本本土からも自由発進の危険が発生するのであります。かような状況下においても、総理は、沖繩基地からの自由発進についてノーと言い得るのでありますか。明確なる御答弁を求めます。(拍手)
 第三の問題は、事前協議の弾力的運用に基づく韓国、台湾など極東における紛争介入の危険についてという一項であります。
 日米共同声明における韓国、台湾と日本の安全との直結を強調したこともさることながら、声明発表後、佐藤総理がプレスクラブで行なった演説は、きわめて重大であります。すなわち、佐藤総理は、「万一韓国に対し武力攻撃が発生した場合には、事前協議に対して前向きかつすみやかに態度を決する」と述べ、かつ、同じ演説の中で、日米安保条約の目的について、「広く極東の安全のため米軍が日本の基地を使用する形での日米協力」を力説していることは、日本からの米軍の発進に対し、何か総括的承認を与えたごとき感があり、危険きわまりないといわざるを得ません。(拍手)特に、「武力攻撃」といったあいまいな表現によって、一国の運命を決するがごとき、かような重大問題を論ずること自体がきわめて軽率であると存じます。
 そのことは、明確にしていただきたいのは、国連が侵略と認定しない国境紛争や浸透行動までも含んでおるのかどうか。しかりとするならば、わが国憲法に違反するのみならず、従来の安保条約の解釈を根本的にくつがえすことになるのでありまして、(拍手)この際、佐藤総理は、「武力攻撃」の定義を国民の前に明確にしていただきたい、かように存ずるのであります。(拍手)
 現に、米国筋では、日米共同声明とこの演説を通じて、事前協議のイエスの予約が与えられたと解釈し、さらに、ニューヨーク・タイムズ紙も、在日米軍が韓国、台湾その他のアジアの諸国で安全保障上の米国の公約を遂行するにあたり、新しい行動の自由を持つことに合意したと指摘いたしておるのであります。これは明らかに日本の自主的立場の喪失であります。すなわち、ノーの機能を本来のものとしてきた事前協議は、イエスのための形式的協議に変わり、米国の意向次第で基地の自由使用も可能という道を開いたものといわざるを得ません。(拍手)
 以上の諸点は、今回の日米会談に対して国民が率直に危惧しているところであります。もしその危惧が事実とするならば、それは日米間の国民感情を悪化に導くとともに、政治的に新たなる禍根をつくり出すものといわねばなりません。
 同時に、本土並みという見地からわれわれが最も不満に思う点は、沖繩基地の縮小問題が今回の日米会談で全く無視されたことであります。われわれは、名実ともに本土並みにするためには、この基地の縮小が思い切って断行されねばならないと確信いたしますが、この際、これらの疑念に対し、佐藤総理の口から明快なる御答弁を伺いたいと存じます。(拍手)
 日米関係再検討の第二の課題は、日米安保条約の今後の取り扱いであります。
 ただいま指摘したごとく、沖繩問題、日米共同声明の問題点は、つまるところ、この日米安保条約のあり方に帰着いたします。もとより、日米安保の取り扱いはきびしい現実に立脚した問題でありまして、安易な理想論や感情論は許されません。同時に、激しい変化を続けるアジアの現状よりして、現状固定論もまた進歩なき態度と申さねばなりません。(拍手)その意味で、今回の沖繩交渉を通じて安保条約上の多くの問題を提起しながら、安易にその自動延長の予約が行なわれたことは、将来に重大な禍根を残すものといわざるを得ません。(拍手)
 われわれは、日米安保条約については、七〇年の再検討期の到来を契機に、これを改定すべきだと確信いたします。それは決して日本だけの問題ではございません。米国にとっても、極東の緊張緩和にとっても、大きなプラスになると確信いたしますからでございます。
 われわれが安保条約の改定を主張するゆえんは、次の諸点からであります。
 その第一は、国際情勢の大きな変化、それに基づく安保条約の性格の変化がそれであります。対ソ戦略並びに基地、駐留条約として発足した日米安保条約は、その後の国際情勢の基本的変化、軍事技術の急速な進歩によって、もはや基地、駐留条約として存続する必要性がないばかりでなく、かえってマイナスのほうが多くなっておるのでございます。(拍手)
 第二に、日米安保条約は、基地、駐留条項、極東条項、事前協議等に具体的な欠陥があるばかりでなく、もしこれを放置して自動延長していく場合には、安全保障、外交面における対米自主性の喪失をはじめ、基地問題や国論の対立等、多くの面で重大な政治的マイナスを甘受しなければならないのであります。(拍手)第二次世界大戦終了後の二十四年の歳月の変化に従い、新しいアジア政策を展開し、かつ日本外交の自主性を確立するためにも、この際、安保条約を改定すべきであると確信いたすのであります。
 第三には、わが国にとって安全保障上の重要課題は、先ほど御議論に出ましたが、国論の統一をいかにして達成するかということでありますが、すでに新聞の世論調査で明らかなように、安保の即時破棄は論外として、自動延長という方針では国論の統一を達成できないのであります。(拍手)逆に、国論の分裂を深め、この点でわが国の安全保障体制は大きくそこなわれるのであります。
 先ほど川島副総裁の御演説を承っておりましたが、私は、あなたの御趣旨には賛成であります。あなたは、かように申されました。今後は、日米対等の立場において世界平和のために協力すべきであると言われました。私は、これに対してきわめて同感であります。それならば、占領政策の延長として名称を変え、そして朝鮮戦争の激動の中に発生した安保条約をこの際改定し、名実ともに日米平等の立場において協力する姿勢をとることが、私は、現下、政府の使命ではないかと思います。
 この際、佐藤総理は、進歩なき現状固定論を廃し、七〇年代のわが国の正しい安保体制を確立し、もって、アジアの変革期に備えるためにも、思い切って安保条約の再検討に着手すべきであると思いますが、この点、従来の行きがかりにこだわりなく、総理大臣の国を憂うる率直なる御意見を伺いたいと存じます。(拍手)
 質問の第三点は、沖繩以後の重要課題は、何と申しましても中国問題であります。
 これからのわが国外交の最優先目標は、工業経済国家としての立場に立って、アジアの緊張を緩和し、積極的に平和を強化していく方策を確立することにあると存じます。今回の共同声明の最大の欠陥は、国際緊張緩和の方策が全く欠如しているということでございます。(拍手)
 周知のように、今後アジアに影響力を持つ大国は、米国、ソ連、中国、そして日本の四カ国であります。なかんずく中国と日本との関係がどう改善されるかは、アジアの平和に大きな影響を及ぼします。この見地に立つとき、中国問題の打開については、日本は、アジアの工業国家としての独自の方策をこの際提示すべきだと私は思います。
 いま政府が中国対策として取りつつある台湾即中国論、重要事項方式、政経分離という三つの態度は、どう見ても無理があるのであります。(拍手)これは中国問題を前進させることにはなりません。すでにアメリカ自身も、米中代表の接触強化等、中国問題を前進させるきざしを見せつつあるとき、日本の中国政策は、それに逆行しているかのごとく見えるのはまことに遺憾であります。この春、サンタバーバラ会談で、ゴールドバーグ前国連大使は、中国の国連加盟問題に関連し、この問題について特別委員会を設けて検討しようというイタリアの提案にアメリカは賛成しようとしたが、日本がそれに反対して、依然として重要事項指定方式による中国締め出しを固執したと暴露いたしておるのであります。日本の中国政策が、いかに時代錯誤的であり、アメリカのそれよりおくれていることを如実に証明した言動と言わねばなりません。(拍手)
 私は、政府に対して、中国政策について次のような転換を行なうべきことを提案いたします。
 第一は、台湾すなわち中国という見方は、どう見ても現実的ではありません。したがって、中国の主人公は北京政府であることを、まず勇断をもって認めることであります。(拍手)
 第二は、中国問題のかなめは、言うまでもなく台湾問題であります。わが国としては、台湾が中国と完全に一体になるか、それとも独立国となるか、あるいはまたソ連におけるウクライナや白ロシアのごとく、同一国でありながら国連では別個の議席を持つかは、大陸中国と台湾に住む人々の決定にゆだね、国連の議席については、国連が決定すべきだと考えます。
 第三に、国連の中国代表権については、北京政府に与えることを承認し、いやしくも重要事項方式によってそれを阻止するという態度は改むべきであります。(拍手)
 第四に、経済面では、政府間貿易を目標に、必ずしも政経分離にとらわれない弾力的な経済関係の樹立をはかるべきであります。(拍手)経済提携を密にして、これを通じて生活環境をひとしくしていくことは、両国の融和をはかるためにも、最も現実的かつ強固な手段だと確信いたします。わが国は、当面この点に全力を尽くし、もって政治的雪解けを待つ態度を堅持することが最善の道だと存じますが、佐藤総理の率直な御所見を伺いたい。(拍手)
 以上、私は当面する外交、安全保障の主要点について政府の方針をただしてまいりました。
 最後に、国民生活、内政問題について佐藤内閣に質問いたします。
 最近の新聞の世論調査によれば、現在の国の政治に不満を持つ者は、何と六三・四%に達しております。現在の国民生活は、世界第三位という一見はなやかな経済成長の陰にあって、公害、交通戦争、住宅難、税金難、託児所難、過疎化、そして貧弱なる社会保障といった、戦後二十四年のひずみを一身に背負う結果になっていることを佐藤総理は真剣に考えるべきであります。そして現下国民生活の最大な問題である物価高と大学紛争は、まさにそのひずみの象徴的あらわれと申さねばなりません。そこで、時間の関係上、ここでは物価、大学の二点にしぼって佐藤総理の所信をただしたいと存じます。
 この八年間の物価上昇率は、年間平均実に五・五%に達し、まさに他の先進国には見られない異常な物価高が続いております。この結果、減税はもはや国民の税負担の軽減という機能を失い、単に物価調整措置にすぎないのであります。いまや物価問題は、国民生活とわが国経済の根幹をゆるがす重大な問題に発展しつつあります。このとき、佐藤総理は、物価対策閣僚協議会の席上において、現在のように高い経済成長を続けている状態では、ある程度の物価上昇はやむを得ないと述べておられますが、それはまさに政治不在、政策不在を暴露したものといわざるを得ません。(拍手)経済も成長させるが、物価も上げないというのが真の政治でございます。(拍手)すなわち、経済の安定成長と物価抑制の両立こそ、われわれが取り組むべき物価政策の基本だと存じます。
 私は、この際、佐藤総理に対し、物価の抑制、通貨価値の維持について、厳然たる姿勢と、公共料金値上げ停止、その他具体的政策を国民の前に示すよう、強く要求いたします。(拍手)
 国民にとって憂うべきもう一つの問題は、今日の大学紛争であります。教育の乱れは国の乱れの象徴であります。国民の血税によってつくられた国立大学の中で火炎びんがつくられ、その火炎びんによって国民の大学が次々と破壊されているのであります。しかも、そこに責任をとる者は一人もおりません。(拍手)これぞ無責任時代の最たるものにして、この際その責任の所在を明らかにし、もって国家全般の責任体制を確立することが、現下の政治の緊急事であると考えるのであります。(拍手)しかしながら、今日の大学問題は、かかる秩序破壊の面と、明治以来そのままの古き大学制度の改革という二面性があることは、周知のとおりであります。もちろん、われわれは法治国家の立場と国民の平和生活を維持するため、そのような暴力的な破壊行為は法に照らして処断し、もって現社会から暴力を追放すべきであります。しかしながら、それはあくまで一面的手段であって、これをもって大学問題を根本的に解決することはとうてい不可能であります。
 そこで必要なるものは、大学制度の改革に対する基本方針と具体策の確立であります。すでに大学紛争が火をふいてから二年余を経過した今日、政府が、審議会の答申が出そろわないことを理由にして、いまだ大学制度の改革に対する構想を持たないことは、政治的怠慢もはなはだしいと申さねばならぬのであります。(拍手)
 すでにわが党は、大学基本法案という形で大学制度改革に対する考え方を明らかにいたしてまいりました。教育の可否は国家存亡のかなめであることを考えるとき、大学制度の改革に早期に着手するととは論ずるまでもありませんが、この際、教育に対する国家の姿勢それ自身を根本的に改革し、少なくとも国民所得の最低五%程度は教育費に投入する姿勢を確立すべきだと存じます。大学制度並びに教育全般の改革に対する佐藤内閣の具体的な方針の提示を私は強く要求いたします。
 最後に、私は総理大臣の信念をお伺いしたい。
 一九七〇年代は、先ほどあなたも指摘され、また、成田社会党委員長も指摘されたごとく、世界の変革期であります。このきわめてまれなる二十世紀最大の変革期七も申すべきこの激動期に対処して、二十世紀後半から二十一世紀にかけて輝ける日本を建設するの道はただ一つであります。それは、日本民族の英知とエネルギーを結集し、国民とともに新たなる日本を建設する政治体制の確立が必要であることは論ずるまでもありません。すなわち、国民の合意と協力を得る政治体制の確立のために現下の政治はこん身の努力を傾注し、もって輝ける未来を創造する政治体制を確立すべきであると私は考えますが、総理大臣の御信念はいかがでありますか。
 以上、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#17
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 西村委員長の御質問にお答えする前に、今般の私の米国訪問に際し、党首会談をお願いしたところ、快く応じられ、激励と同時に注文をいただきましたことを、この席上あらためて感謝いたします。(拍手)
 お互い、主義主張は違っておりましても、大きな国民的課題について、党首が率直な意見交換をする機会を持つことは、議会民主主義の進歩を促すゆえんであると確信するものであります。(拍手)
 私は、今次の日米交渉で、日本の国益を第一義としつつ、わが方の主張をことごとく貫徹し得たことを心から喜んでおるものでありますが、以下、御懸念の数点について明快にお答えいたしたいと思います。
 まず、西村委員長は、沖繩返還と引きかえに、米国の極東戦略に深入りし過ぎたのではないかという疑念を表明され、具体的に核持ち込みの問題とか、ベトナム戦との関連、極東における武力紛争が発生した際の対処のしかたなどに触れられました。しかしながら、今次の日米共同声明で明らかなように、私とニクソン大統領の会談の基調になったのは、国際間の緊張緩和への努力の重要性に対する共通の認識であります。国際間の緊張を緩和するためには、その原因となっている種々の不安定要因を除去していく努力が必要であることは申すまでもありません。また、アジアにおける米軍の存在が平和維持に重大な役割りを果たしていることは、アジア各国のひとしく認むるところであります。沖繩返還におきましては、安保条約及びその関連取りきめが本土と同じようにそのまま適用されるのであり、前進も後退も、これによりましてさようなこともなく、わが国が米国の極東戦略に深入りし過ぎたというようなことは絶対にありませんから、御安心いただきたいと思います。(拍手)
 核の問題は、一番国民的関心の深い問題であり、党首会談で西村委員長から念を押された点でもあります。私は、ニクソン大統領が核に対する日本国民の特殊な感情を理解し、これに基づいた政府の政策に背馳しないよう沖繩返還を実施する旨を共同声明に明記できたことは、大きな成果であったと考えております。また、この項目で事前協議の点に触れたのは、返還後の沖繩への核兵器の導入は、安保条約に基づいて事前協議の対象となるべき性質の問題であるという米国政府の立場を念のため確認したものであります。
 いずれにしても、返還後の沖繩につきましては、本土と全く同様に、非核三原則を厳守、適用するというのが政府の方針であり、この点、重ねて明確に申し上げておきます。
 次に、米国として、現在の時点で、一九七二年になっても依然としてベトナムにおける平和が実現していないという事態を、可能性の問題として全く排除したり、また排除したと解されるような立場を公に表明することができないことは、十分理解すべきであります。したがって、今回の会談では、その点はあまり詰めなかったのであります。そしてこの問題は、万一これが現実となったとしたら、返還は返還として実施し、日米双方が十分協議してこれに対処しようということになったのであります。しかし、もちろんそれまでベトナム戦争が続くことは望ましくないばかりでなく、実際問題として、まずそういう事態は起こらないものと私は考えております。
 次に、わが国の安全は、極東の平和と安全なくしては十全を期待し得ないのは理の当然であります。特に、隣国である韓国の安全は、わが国の安全にとってきわめて密接な関連を持っているのでありますから、もし不幸にして韓国に対する大規模な武力攻撃が行なわれるような事態が発生すれば、わが国にとって重大な影響があります。その際、米軍がかかる武力攻撃を排除するために戦闘作戦行動の発進基地としてわが国の施設、区域の使用につき事前協議を求めてくることとなれば、政府として、わが国の安全の確保という見地から、前向きにこれに対処するのは当然ではないでしょうか。(拍手)また、台湾海峡の情勢も安定度を増し、目下そのような事態は予見されませんが、これも米国の戦争抑止力が効果的に作用しているからであります。
 私は、かねがね国民各位に対し国を守る気概を訴え続けておりますが、このことが日米安保条約の戦争抑止力を高め、アジアの緊張緩和を促進するゆえんであると、かように確信しております。この政策を堅持する限り、決して戦争に巻き込まれるようなことはありません。どうぞ御安心いただきたいと思います。したがって、私がナショナル・プレスクラブで述べたことは、わが国のこのような考え方を述べたものでありまして、事前協議との関連で、米国に対し包括的承諾を与えたものではありません。包括的承諾などは、プレスクラブで約束するようなものではございません。そのことも御理解をいただきたいと思います。
 次に、沖繩にある米軍基地が、施政権返還後も引き続きわが国及びわが国を含む極東の安全に重要な役割りを果たすことからも、その処理には慎重を期さなければなりません。しかしながら、不要不急の基地は整理統合するのは当然であります。今後復帰準備の一環として行なわれる地位協定適用準備のための日米間の協議及び返還後の日米安保体制下の協議を通じて、妥当かつ可能な範囲で整理統合が行なわれることを期待しております。
 西村委員長は、かねがね日米安保条約を再検討せよとの議論を展開され、本日もまたその見地からのお話がありました。このことは、残念ながら私は御趣旨に沿いかねるのであります。自由民主党は、党議におきまして安保を相当長期にわたって堅持することをきめております。私とニクソン大統領との会談でも、相互に堅持することを確認し合いました。これこそ最も現実に即し、かつ国益に沿うゆえんであると確信いたしております。(拍手)
 次に、中国問題についてお答えをいたします。
 中共は、文化大革命を収拾したと伝えられておりますが、今後どのような対外政策を打ち出してくるかについては予測の限りではありません。政府としては、日中関係の改善は極東の緊張緩和に最も役立つものと考えており、また、中共が広く国際社会の一員として喜んで迎えられるようになる事態は、わが国としてこれを歓迎するものであります。しかし、中華民国政府と中国大陸との関係は、相互に内政問題であると言っていますから、われわれが介入すべきものとは考えません。また、政経分離政策、国連における代表権問題は、かねがね申し述べているとおりであります。
 以上、お答えをいたします。
 演説でも特に述べましたとおり、物価問題は重要な問題であります。政府は先般の物価対策閣僚協議会で、財政政策の慎重な運営、公共料金抑制方針の堅持、輸入自由化の推進並びに輸入政策の弾力的活用、産業の構造対策、ことに生鮮食料品価格安定政策の推進、第五に生産性の向上とその成果の消費者への還元等を主眼として、一段と積極的に物価対策に取り組むことといたしました。
 また、このような施策とともに、総需要の適正な水準を維持させるため、九月からは公定歩合の引き上げを含む金融引き締め政策がとられていること、及び消費者米価を据え置いたことなど、物価面に配慮した政策運営を行なっていますが、今後ともさらに積極的に物価対策に取り組んでまいりますので、各位の御協力を切にお願いいたします。
 最後に、教育問題についてお答えをいたします。
 私としては、今日の大学問題の根本は、主とし七今日の大衆化した高等教育に現在の大学の体制が即応し得なかった点にあると考えており、このため、大学改革の方向としては、高等教育機関の多様化をはかるとともに、日進月歩の学術研究の進展に即応すること、管理運営についても、従来の伝統的な大学の自治によるのみでなく、開かれた大学として広く社会の意見も反映し得るようにすることなどが必要であり、さらに、教育内容、方法についても、時代の進展に即応して積極的に改善をはからなければならないと思います。これらのことについては現在中央教育審議会で審議中のところでありますが、同審議会の答申を待って、すみやかに大学問題の抜本的解決に取り組む決意であります。
 さらに、見のがしてならないことは、学校教育のみが教育のすべてではないということであります。家庭におけるしつけ、職場における訓練など、あらゆる機会を通じて国民総ぐるみで青少年が心の豊かさを持つようにしむけていただきたい。この点特にお願いをいたす次第であります。
 最後に、一九七〇年代に対して、激動の時代であり、これこそわが日本国民の英知とエネルギーを結集して、そうして困難な問題に対処する、そのためにも政治体制を整備することだ、確立することだと、かように言われました点については、私は心から敬意を表する次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(松田竹千代君) 竹入義勝君。
  〔竹入義勝君登壇〕
#19
○竹入義勝君 最初に、佐藤総理にお願いをしたいと思います。先ほど、成田委員長への御答弁、たいへんエキサイトしておられましたが、御答弁はぜひ冷静にお願いをしたいと思うわけでございます。(拍手)
 昨日、日米首脳会談の結果を総理から報告を受けましたが、多くの重大な疑問を持たざるを得ないのであります。また、先ほどの社会、民社両党に対する答弁においても、なおその疑問は解消されず、国民の危惧はまことに大きいといわざるを得ません。
 私は、公明党を代表して、七〇年代の平和と安全をいかに実現するか、その諸方策について総理の所信をただしたいのであります。
 すでに、戦後二十五年、四分の一世紀を経て、いよいよ新しい七〇年代への歴史の大きな転換期を迎え、いまこそ二十一世紀を展望しつつ、七〇年代のわが国の平和と繁栄へのビジョンをいかに決定するか、これこそ最も大きな国家的責務であると思うのであります。(拍手)
 さて、この日米共同声明を検討するとき、総理は、来たるべき七〇年代を、アジアの緊張を緩和させるのではなく、かえって緊張を激化させようとしておるのであります。アメリカのアジア政策への追随から、いまや積極的にアメリカの極東戦略、すなわち中国敵視政策、アジアの分断政策の共同責任の役割りを果たすべく、大きく転換し、これを国民に押しつけようとしておると思うのであります。(拍手)
 日米共同声明に見る限り、アメリカは、アメリカのアジア政策の基本として、「城内における防衛条約上の義務は必ず守り、もって極東における国際の平和と安全の維持に引き続き貢献するものであることを確言した。」とその態度を明確にいたしました。これは日米安保条約をかなめとして、米韓、米台、米比、ANZUS等各軍事同盟を引き続き強化し、軍事力の拡大強化によってアジアの安全を保とうとするものにほかならないのであります。
 総理は、それに対して、「米国の決意を多とし、大統領が言及した義務を米国が十分に果たしうる態勢にあることが極東の平和と安全にとって重要であることを強調した」のであります。
 さらに、共同声明第七項において、「沖繩の施政権返還は、日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではない」との総理の見解は、沖繩返還後も、現在の沖繩米軍の機能をそこなわない限りの返還と了解すべきであります。アメリカは、日米安保条約をはじめ、米韓、米台、米比、ANZUS等の軍事同盟条約の義務を持ち、そのかなめは沖繩であります。総理は、このような沖繩基地の機能の存続を認めようとしておられるのかどうか、明確なるお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 さらに、共同声明によれば、沖繩をかなめとして、これらの諸条約、特に米台、米韓両条約との関係は、わが国と条約締結なしに、事実上軍事的な連環に完全に組み込まれることになり、憲法違反の疑いすら発生すると解せられますが、総理の所見はいかがでありましょうか。
 しかも、との義務を完全に履行するため、沖繩の軍事的機能を低下させず、韓国、台湾を即日本自身の安全と同一視し、事前協議の適正運用と称する日本基地よりの米軍の戦闘作戦行動の自由化、核有事持ち込みを容認するとともに、六〇年安保体制に見られなかったベトナム戦争への積極的協力さえあえて行なおうとし、加うるに自主防衛の強化と称する再軍備への路線を走ろうとしておるのであります。(拍手)極東戦略の主役的参加への積極的転換であり、日米安保条約の軍事同盟的な側面をますます強化する方向にあることはいなめない事実であります。
 総理の強調するところの日米の新時代を樹立するためには、アジア、太平洋における緊張を緩和するための平和努力を最大限に行ない、共存共栄の平和な国際環境を樹立することこそ、平和に徹する新しい日本のパートナーシップというべきではないかと思うのであります。(拍手)そのために必要な最優先の平和努力こそ、日中国交回復でなければならないことは、もはや、私一人の叫びではなく、真に平和を求める国民のひとしく願望してやまないところであります。(拍手)
 総理は、七〇年代のアジアの平和について、共同声明による日米の基本的なアジア政策によって、真のアジアの平和を樹立できると確信しておられるのか、その真意を率直にお答え願いたいのであります。
 共同声明を見る限り、中国に対する平和への努力は、全く見られないのであります。(拍手)七〇年代の外交、安全保障のかなめは中国問題であることは言うまでもないと思うのであります。もちろん、私は、中国は社会主義国であるがゆえに平和国家であるなどの盲目的、独断的な判断はとらないところであります。私どもは中国と主義を別にし、また、中国に膨張主義的な不安なしとはいえません。ならばこそ、この中国を国際社会に復帰させ、ともに平和共存への努力が肝要だと叫び続けてきたのであります。(拍手)
 アジアの先進工業国であり、平和憲法を誇るわが国は、アメリカの極東政策、すなわち、中国敵視政策の変更を強く求め、米中の平和的対話の橋渡しをすることこそ、わが国の使命であると自覚せねばならないし、それが可能な立場であることを銘記すべきであると思うのであります。(拍手)したがって、戦後処理の最たるものは、片面講和によって残された対中国、対北鮮外交をはじめ、日本のアジアにおける役割りと位置と、その貢献する方途の確立であり、北方領土の回復とともに、初めてわが国の戦後が終わったというべきであろうと思うのであります。(拍手)総理の口癖に言う平和に徹するということには、これら根本問題の解決の姿勢こそ、その基盤になければならないのであります。七〇年代を展望しての日本のアジア政策の基本的方途を、この際、総理にぜひとも承りたいのであります。
 このたび、一九七二年をめどとする沖繩の祖国復帰は、率直に喜ばしいことであります。しかし、返還のために払われた代償があまりにも大きいことをまた指摘せざるを得ないのであります。それはまず、安保条約の長期堅持への同意であります。沖繩基地の核の有事持ち込み、自由使用、ベトナムヘの発進を含め、事前協議の適正運用によるアメリカの軍事行動への積極的協力など、安保条約は防衛条約から攻撃的条約への質的変化を遂げたというべきであり、安保条約の実質的な改悪というべきでありましょう。(拍手)いわばその変質した七〇年安保体制の半永久的堅持の合意は、日本の将来にとって平和と安全に逆行するものと考えざるを得ないのでありますが、総理の見解を伺いたいのであります。
 次に、本土並み返還を総理は強調されておりますが、決して真の本土並みとはいえないと思うのであります。総理は、何の特別な取りきめがつけ加わらず、現行安保条約をそのまま適用するから本土並みと説明するのでありますが、その適用される安保条約の内容は実質的には改悪されたものであり、さらに沖繩基地と本土基地の実態を比較するとき、わが党の沖繩基地総点検の結果によって見れば、基地の数、面積等の、いわゆる密度、さらにその要塞化ともいうべき沖繩基地の機能は、本土の基地とは全くその態様を異にするのであります。(拍手)法制的にも実態的にも本土並みとはいえません。この状態を総理は、一九七二年返還予定時までに沖繩基地を縮小し、機能を制約し、さらに安保条約の内容の変質を防ぐ等、本土並みへの努力を行なう自信があるかどうか、この際明確に伺いたいのであります。(拍手)
 次に、共同声明第八項は核兵器に対する合意でありますが、この表現がきわめてあいまいであり、国民の最も大きな疑惑の一つであります。私は、党首会談においても、核抜きを国民の納得できる形で明示することを強く要求してまいりました。しかしながら、核の抑止力とは核の存在の有無を明らかにしないことであるとの見解をもって、共同声明には明示されず、共同声明の説明や見解にまかせられたのでありますが、これが日本側とアメリカ側と全く相反する説明になっておるのであります。
 ここで、総理に対し、次のことをお尋ねいたします。
 第一に、総理がニクソン大統領に説明した日本政府の核政策とはいかなる内容のものか。
 第二に、非核三原則は沖繩に適用するか。適用するならば、その考え方は佐藤内閣以後の自民党内閣にも引き継がれるのか。さらに、国民の疑惑を明らかにするため、非核三原則の国会決議を行なう決断ができないか。(拍手)
 第三に、総理は、非核三原則について常に前提とされるアメリカの核抑止力とは、沖繩の核兵器の存在をさすのか。それとも、総理が言うように、沖繩の核を撤去するなら、それにかわる他の抑止力とは何をさすのか。
 第四に、返還時の核撤去は行なわれるのか。その確認はいかなる方法によるのか。
 第五に、共同声明にいう、事前協議制度に関してアメリカの立場をそこなわないというのは、有事核持ち込みを許すことではないのか。
 第六に、米台、米韓条約の関連において、沖繩の核撤去という戦力の変更を、台湾や韓国が承認したのかということであります。この点、明確なる答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、日米首脳は、朝鮮半島、台湾地域の安全と日本の安全を同一視する評価を行ない、朝鮮半島への米軍出撃に対する「事前協議に対しては、前向きにかつすみやかに態度を決定する」と、ナショナル・プレスクラブで演説をされ、また、昨日も所信表明で「特に、韓国や中華民国のような近隣諸国の安全はわが国の安全にとって重大な関心事であり、万一これが侵されるような事態が発生すれば、まさしくわが国の安全にとってゆゆしきことであります。このような場合には、事前協議を適正に運用し、前向きの態度をもって事態に対処することは当然であります。」と言われたのであります。これこそ安保の実質的改悪を明確にあらわしているものといわざるを得ません。(拍手)
 そこで、次の諸点についてお答え願いたい。
 韓国に対する米軍の戦闘作戦行動は、沖繩に限らず、本土基地を含むと解せられるが、前向き、すみやかな決定とは、アメリカの事前協議に対していかなるケースについて許諾を与えるのか、その見解を明確に承りたいのであります。(拍手)
 また、韓国に対する武力攻撃とは何をさすのか。韓国以外、たとえて言えば、プエブロ事件あるいは米偵察機撃墜事件など、米軍との摩擦は韓国への武力攻撃と同一視するかどうか、この点も明快にお聞きをしたいのであります。
 これら事前協議において許諾の前提と解される予約をしたことは、党首会談における総理の事前協議の予約はしないという確約に違背すると思うが、総理の見解を承りたいのであります。(拍手)
 さらに、台湾の安全についても言及されましたが、まさしく中国敵視、内政干渉以外の何ものでもないと思うのであります。
 次に、極東の範囲にはベトナムが入っていないのは、すでに国会論議の中で政府の規定しているところであります。しかるに、一九七二年、沖繩返還予定時までにベトナム戦争が終結をしていないときに、沖繩基地からのベトナム発進については再協議することになっております。ベトナムのソンミ村の虐殺は、戦争の残虐をまざまざと見せるとともに、かかる残虐なベトナム戦争に協力する体制を強化しようとしているのはきわめて許しがたいことであります。
 ここで、総理にお尋ねをしたい。
 第一に、返還後においてベトナム戦争が終結をしていないとき、ベトナム発進を許諾するのかどうか、明確にお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 第二に、日米安保条約が適用された沖繩からベトナム発進を許すとすれば、安保の極東の範囲は拡大されたと考えるべきでありますが、その点はどうでしょうか。
 第三に、現在ベトナム爆撃のため、B52は沖繩に常駐をいたしております。沖繩県民をはじめ、国民はB52の撤去を強く要求をいたしておるのであります。日米共同声明の趣旨からいうならば、B52の撤去の要求を撤回したものと受け取られるのでありますが、B52撤去は返還前でも強力に要求するか、またアメリカの意向はどうか、この点も明確に伺っておきたいのであります。(拍手)
 さて、ここで結論して言うならば、中国、北鮮など、わが国にとって地理的、歴史的、文化的に密接な関係のある両国と、その思想が異なることによって国交が断たれ、かつまた一九五〇年の朝鮮戦争以後、アメリカのアジア政策の決定的転換によって両国との経済、文化の交流は全く閉ざされていることは不幸のきわみであります。これら日本が取り続けた中国、朝鮮に対する閉鎖的政策こそ、それは中国、北鮮に対する挑発であり、威嚇であり、総理の言う朝鮮半島、台湾海峡の緊張とは日本やアメリカがつくり出した緊張ではないだろうかと思うのであります。総理は中国との政経分離政策をいつまで続けるのか、さらに七〇年代における北鮮との関係をいかにするつもりであるか、明快にお聞かせを願いたいのであります。
 むしろ中国との国交回復によって、自由圏国家として、わが国の高度の工業水準、文化水準、生活水準を知った中国の人たちの祖国へもたらす自由の空気は、中国の閉鎖社会の開放に大きく役立ち、結局は平和的共存への大きなくさびとなるでありましょう。これら自由と勇気に満ちた平和努力こそ、一九七〇年代のわが国の外交方針の第一であるといわねばならないと思うのであります。(拍手)
 中国への友好は即反米につながり、中国への友好を提唱するものは反米主義者という考え方があります。私は決して反米主義者でもなく、観念的な理想主義者ではありません。私が中国との友好を強く提唱するゆえんは、二十一世紀を望んで、われわれのあとに続く次の世代へのため、一九七〇代を開くいまこそ、これら平和自主外交の基本的態度を決定すべきときであると確信をするからであります。(拍手)太平洋新時代という日米のパートナーシップは大切でありましょう。しかし、あまりにもアメリカの政策に同調、追随するのに懸命となって、真のアジアの平和と安定の樹立のために必要な、アジア人によるアジア人のためのアジア人の新時代の開拓が忘れ去られているのではないかと言いたいのであります。このアジア人による新時代建設こそ、一九七〇年代に生きるわれわれの使命であることを銘記すべきであるのでありますが、総理の将来への抱負をぜひともお聞かせいただきたいのであります。
 このような平和努力の一環として、国連による集団安全保障体制の樹立は外交目標として積極的な努力を要望されるものであります。
 先般、私は、国連アジア極東地域本部の日本設置の構想を世に問い、その設置についての尽力を要望して佐藤総理に申し入れを行なうと同時に、これが実現の要請をウ・タント国連事務総長に書簡をもっていたしましたところ、ウ・タント事務総長よりその返書が参り、きわめて前向きにこれを取り上げる意図のあることが明らかとなりました。しかし、結局は、手続的にも実質的にも日本国政府の推進が何より肝要なことであります。すでに御承知のごとく、国連アジア極東地域本部の構想は、国連アジア平和監察機関並びに国連アジア国際紛争平和処理機関、さらに、国連アジア経済・技術・教育開発機構が併置され、アジアにおける国連による普遍的安全保障機構並びに社会体制、政治体制のいかんにかかわらず、アジア諸国の経済的、社会的国際協力達成を目的にしたものであります。この国連アジア極東地域本部の東京設置について政府はその協力をわれわれに約束をされましたが、その基本的な見解をぜひともお聞かせをいただきたいと思うわけでございます。(拍手)
 次に、内政問題について伺いたいと思います。
 今日、政府・自民党の国民不在の内政は、高物価、重税をはじめ住宅難など、さまざまなひずみをもたらしたのであります。七〇年代のスタートにあたって、われわれが選択せねばならない課題は、このような政府・自民党の国民不在の高度成長経済か、人間尊重、国民本位の安定成長経済かの選択であります。
 政府・自民党の高度成長経済政策は、今日の公害をはじめ、環境の立ちおくれ、中小企業の経営難、農村の疲弊など、言うならば、中小企業者、農民、労働者の切り捨て政策であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 昨日の総理の所信演説においても、何ら具体的な実効ある物価政策を聞くことができなかったのでありますが、従来からの総理の物価安定の口先の約束を、国民は聞きあきております。総理は、物価上昇をやむを得ないとされておるのか、あるいは物価安定の重大なる決意を抱いておられるのか、はなはだ疑問とするものでありますが、総理の決意と方策について伺いたいのであります。(拍手)
 また、中小企業は、その労働力の不足、金融の困難など、常に景気の波に流され、大企業のクッションとして、しいたげられてまいりました。年末を目前にして、中小企業の健全なる発展のため、特に労働力対策、金融対策について伺いたいのでございます。
 さらに、過密化し、無計画に膨張する今日の大都市は、このまま放置すれば、十年をたたずして、およそ人間が生活を営むことのできない都市化としてしまうことは、あまりにも明白であります。この都市対策のかなめは、土地の有効な活用と土地価格の安定であり、住宅難の解決であります。この根本的な解決への具体的な総理の御見解を承りたいのであります。
 今日、農村においては政府・自民党を糾弾する声が満ちております。場当たり的な生産奨励、価格保障と買い上げ保障のない無責任な農業政策、これによってもはや農民は、政治が信用できず、あすの希望もなく、暗い谷間に追い詰められております。生産者米価は農業者の生活と来年度再生産に必要な額を保障すべきであり、食管制度は堅持されるべきであります。一般財源よりの補てんによって、消費者米価の値上がりを抑制し、もって消費者の生活の安定と、農業の進歩的な発展を期すべきであると考えますが、昭和四十五年度産米の生産者米価はどのように決定されるつもりか、この際、明確に伺っておきたいのであります。(拍手)
 最後に、伝えられるところによりますれば、本日の代表質問終了後、衆議院の解散が行なわれると聞いております。わが党は、本年当初より、平和に逆行する外交、国民生活を苦しめる内政、あるいは政治資金規正法のほおかむりや、多数横暴の国会運営に見られる自民党の政治姿勢など、当然衆議院を解散し、もって国民の審判を受けるべきであると、この一年来、解散の要求を続けてまいりました。(拍手)国鉄運賃値上げの強行のときしかり、理不尽な大幅会期延長のときしかり、さらに会期末、未曽有の憲法違反の疑いある健保特例法案強行採決のときしかり、大学法案強行成立のときしかりであります。特に、訪米前臨時国会解散を、われわれは強く要求してきたのであります。しかるに、政府は、その責任を回避し、みずからの権力欲に執着し、解散権を私してまいりましたことは、まことに許しがたいことであります。(拍手)
 木臨時国会は、沖繩、安保問題など、わが国の将来を決する重大な課題について十分論議し、わが国の平和と安全の方途を明確にし、その上で解散してこそ全国民の期待にこたえるものであります。(拍手)しかるに、会期を二週間としながら、政府は沖繩返還の実態を暴露されることをおそれ、野党の質問権を封殺し、権力主義的な解散を行なおうとしているのでありまして、まさしく議会制民主主義をじゅうりんし、国民を裏切ること、これに過ぎるものはないと思うのであります。(拍手)
#20
○議長(松田竹千代君) 時間です、竹入君。
#21
○竹入義勝君(続) しかし、国民は、これについて厳粛な審判を下すでありましょう。
 以上、私の各質問に対し、総理の真摯な答弁を重ねて要求し、代表質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず、私の訪米に際し、公明党が党首会談に快く応じていただいたことに対し、民社党と同様、この際に敬意を表したいと思います。(拍手)
 私は、今後とも機会あるごとに政党間の相互信頼関係を深めたいと念願しておりますので、よろしくお願いをいたします。
 竹入委員長は、一九七〇年代の展望について、私の所見を求められました。私は、これまでもしばしば七〇年代におけるわが国のあるべき姿について述べておりますが、特に今回の日米会談におきましては、両国が、平和と繁栄の不断の探求のため、特に国際緊張の緩和のため、両国の成果ある協力を維持強化していくことを明らかにしたのであります。また、昨日の所信表明演説で、私は、七〇年代は国際的教育競争の時代であることを指摘いたしました。重ねてのお尋ねでありますので、この機会に、私は、経済的に見た若干の展望を行ないたいと思います。
 一九七〇年代は、六〇年代に処理しきれなかった未解決の問題に果敢に取り組み、ややもすれば見失われがちであった人間性を取り戻し、経済的にのみならず、精神的にも真に豊かな社会を建設することを目標とすべき時代であります。幸い、わが国民のすぐれた資質、高い貯蓄率、さらには活発な技術的進歩などを考えますと、今後とも相当の経済発展が期待できるわけでありますが、その際、次の諸点に留意すべきだと思います。
 第一は、わが国経済の規模拡大とともに、世界経済も、国際分業の進展、知識・人材の交流、技術の大型化などを通じて、各国の関係が密接になっていることであります。そうした中で、日本経済は国際経済の影響を直接受けるとともに、日本経済が国際経済に与える影響も急速に増大するわけでありますから、今後の経済運営にも、また国際的責任を果たす上にも、この観点から取り組まなければなりません。
 第二は、経済の成長と技術の進歩、情報化の進展に伴って、今後ともわが国の産業構造は大きな変化を遂げるものと思われますが、同時にその過程で国土の利用形態が変わり、各地域の機能が再編成されるなど、経済社会の高密度化がさらに進行すると思われます。
 第三は、七〇年代に入ると、出生率の低下と進学率の上昇の影響を受けて、労働人口、特に若年層の供給が減少すると予想され、また、人口構成の上で高齢化現象が進むなど、労働事情の社会的条件が変化すると見なければなりません。今後の物価対策や社会保障の点でも十分考慮しなければならないのであります。
 このように、一九七〇年代的激動が予想されるのでありますが、私は、積極的に、物価の安定、国際化、社会開発につとめ、国民の活力を十分に生かし得る環境をつくっていけば、必ずや飛躍の時代になると信ずるのであります。
 以下、いろいろお尋ねになりましたが、必ずしもお尋ねの順序ではありませんが、これからお答えをしてみたいと思います。
 沖繩返還問題を中心とした外交問題の各面におきましては、これまで繰り返しお答えいたしましたことと重複を避け、竹入委員長に対しては、まず、公明党が熱心に提唱しておられる国連アジア本部の問題からお答えいたしたいと考えます。
 国連協力は、わが国外交の重要な柱の一つであります。この見地から、国連アジア本部を東京に設置するという構想は、まことに示唆に富む構想であると考えております。しかしながら、国連の財政上の問題や、エカフェの活動との重複の問題など、この構想には今後さらに慎重な検討を要する点が含まれていると考えますので、今回の竹入委員長の御意見も参考にして、さらに検討することといたしたいと考えます。
 次に、太平洋新時代における日米関係は、アジアの緊張緩和を至上目的とするものでなくてはならないとの御指摘には同感であります。また、長期的に見た場合、中国大陸との関係の改善が必要であることも、御指摘のとおりであります。政府としても、今後ともこの方向で努力していきたいと考えております。その意味でも、中共自身が、対外関係において、より建設的、協調的になり、わが国との間に真の対話が持てるような事態になることを期待するものであります。
 わが国の安全は、極東諸国の平和と安全なくしてはその十全を期し得ず、したがって、わが国としても、極東諸国の安全に重大な関心を有していることは、繰り返し申し述べてきたとおりであります。共同声明に述べられていることは、かかる日本政府の一般的認識がある以上、日米安保条約を沖繩に適用したからといって、そのこと自体が米国の国際義務の効果的遂行を妨げるものではないということを明らかにしたにとどまり、米国がわが国以外の国との防衛条約上の義務を果たす上で生ずべき個々の具体的事態についての、わが国のとるべき態度を述べたものではありません。日本以外の国との防衛条約上の義務との関連で、沖繩の基地をその戦闘作戦行動の発進基地として使用することを希望する場合には、これは当然日米安保条約の事前協議の対象となります。そして、その際にわが国のとるべき態度については、わが国自身の安全を確保するという見地から自主的に決定されることは、これまでも繰り返し述べてきたとおりであります。したがって、沖繩をかなめとして、わが国が、米国の第三国との間の防衛条約上のつながりに組み込まれるということは全くありません。
 なお、竹入委員長は、ナショナル・プレスクラブにおける私の演説について、事前協議の予約はしないとの党首会談における約束に違背するものであるとの御見解をお持ちのようでありますが、先ほども西村委員長にお答えいたしましたとおり、事前協議についての予約などは一切いたしておりませんので、この点は重ねて御了承を得たいと思います。(拍手)
 次に、私は、ニクソン大統領に対し、核兵器に対するわが国国民の特殊の感情、それを背景とする政府の政策、すなわち非核三原則を説明をいたしました。ニクソン大統領がこの日本政府の政策に背馳しないように沖繩返還を実施するよう約束したのでありますから、沖繩が核抜きで返還されることについて、何ら疑いを差しはさむ余地はないのであります。(拍手)
 また、「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」という表現は、返還後の沖繩に核兵器を導入するということは安保条約に基づく事前協議の対象となるという、米国政府の立場を念のため確認したものであります。もしもこの条項がなかったなら、おそらくまた逆なお尋ね、それこそ不安を生ずることだと思います。有事核持ち込みを認めたものではないことが以上ではっきりすると思います。いずれにせよ、返還後の沖繩にも本土と全く同様に非核三原則を適用するのが政府の方針であります。
 なお、非核三原則は佐藤内閣の政策であり、国会で決議すべき性格のものではないと私は考えております。
 また、沖繩が本土に返還された以上、佐藤内閣以後におきましても沖繩を本土と同様に取り扱うこと、これは当然でありまして、この際お尋ねがあるまでもないことだ、かように私は思います。
 次に、B52が沖繩住民に与えている不安を一日も早く解消しようとする政府の方針は何ら変更されておりません。また、共同声明にある「万一ヴィエトナムにおける平和が沖繩返還予定時に至るも実現していない場合には、」両国政府が協議するということは、米国政府として、一方的に返還予定時までにベトナム戦争が終わっていると言い切れない場合にある事情によるものであり、さきに申し述べましたB52に対する沖繩県民の不安を解消するという政府の方針とは何ら矛盾するものではありません。
 いずれにせよ、沖繩返還後といえども、安保条約でいう極東の地域が拡大されるということはありません。この点につきましては、先ほど、民社党の西村委員長にお答えしたとおりでありますから、これ以上、重ねてお答えいたしません。
 次に、今回、私とニクソン大統領は、日米安保条約を一九七〇年以降も堅持することを相互に確認し合いましたが、これは、日米双方とも、安保条約が戦争抑止力としての効果を有することを認めたからにほかなりません。
 これまで申し述べてきたところから明らかなとおり、返還後の沖繩には、日米安保条約が本土の場合と全く同様にそのまま適用され、基地の自由使用も核兵器の持ち込みもないのでありますから、安保条約が変質したということは……(発言する者あり)ということを最後に申し上げてお答えしておきます。
 次に、公明党の、中共との政経分離政策をいつまで続けるか、また……
 先ほどの私の答弁で誤解があると困りますから、申し上げますが、安保条約が本土に適用されるのでありますから、いわゆる本土に適用されている安保条約が、何らの変更なしに沖繩にも適用されるんだ、このことを申したのであります。(拍手)誤解のないように願っておきます。
 最後に、現在わが国のとっている政経分離政策は最も現実的であり、かつ妥当なものであると信じております。したがって、当面この政策を維持してまいります。
 なお、わが国は韓国と正常な国交関係を維持しており、この方針を変更するつもりはありません。この関係もはっきり申し上げておきます。
 最後に、経済問題につきましていろいろお尋ねがございました。これらについてはもうすでにお答えしたとおりでございます。また、私自身も内政問題につきましてはたいへん心配いたしておりますので、これらについては、いままで所信表明や、またその他の機会にお答えしたところで省略さしていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
#23
○議長(松田竹千代君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#24
○議長(松田竹千代君) ただいま内閣総理大臣から詔書が発せられた旨伝えられましたから、これを朗読いたします。
  〔総員起立〕
  日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。
  〔万歳三唱、拍手〕
   時に午後四時五十五分
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 長谷川四郎君
        通商産業大臣  大平 正芳君
        運 輸 大 臣 原田  憲君
        郵 政 大 臣 河本 敏夫君
        労 働 大 臣 原 健三郎君
        建 設 大 臣 坪川 信三君
        自 治 大 臣 野田 武夫君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 有田 喜一君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
        国 務 大 臣 床次 徳二君
        国 務 大 臣 保利  茂君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        内閣法制局第一
        部長      真田 秀夫君
        外務省アメリカ
        局長      東郷 文彦君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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