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#1
第061回国会 科学技術振興対策特別委員会 第6号
昭和四十四年四月十八日(金曜日)
   午後二時十六分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         宮崎 正義君
    理 事
                平島 敏夫君
                横山 フク君
                森 元治郎君
                矢追 秀彦君
    委 員
                岩動 道行君
                石原慎太郎君
                源田  実者
                船田  譲君
                矢野  登君
                竹田 現照君
       発  議  者  矢追 秀彦君
   政府委員
       科学技術政務次
       官        平泉  渉君
       科学技術庁長官
       官房長      馬場 一也君
       科学技術庁計画
       局長       鈴木 春夫君
       科学技術庁研究
       調整局長     石川 晃夫君
       科学技術庁原子
       力局長      梅澤 邦臣君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        渡辺  猛君
       常任委員会専門
       員        小田橋貞寿君
   説明員
       文部省大学学術
       局国際学術課長  七田 基弘君
   参考人
       第九次南極地域
       観測越冬隊長   村山 雅美君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○海洋資源開発振興法案(矢追秀彦君外一名発議)
○科学技術振興対策樹立に関する調査
 (原子力施設の安全管理に関する件)
 (南極観測に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(宮崎正義君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。
 海洋資源開発振興法案を議題といたします。
 まず、会議者から提案理由の説明を聴取いたします。矢追秀彦君。
#3
○矢追秀彦君 海洋資源開発振興法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 今日、世界の人口の急速な増加に加え、国民生活の向上、産業経済の発展に伴いまして、各種資源に対する需要が増大してきております。
 このため、最近海洋資源の利用が世界的に注目され、米ソ仏などの先進諸国においては、海洋開発について国としての長期計画を立て、多額の研究開発費を投入して、これに積極的に取り組んでおりますことは御承知のとおりであります。
 これは、海洋資源が人類に残された未開発の重要資源であるとの認識によるものであり、また、それが豊富に賦存していることが確認され、投資すれば必ずそれに見合うものが返ってくるであろうとの見通しが、ほぼ確実視されるに至っていることによるものと思われます。
 四面海をめぐらし、国土の七五%に当たる大陸だなを有し、しかも陸上資源に乏しいわが国としては、海中、海底に眠っている海洋資源の開発は、最も重要かつ緊急を要する課題の一つであると考えます。
 最近における科学技術の急速な発展は、海洋資源の開発を可能にしております。すでに先進諸外国において海洋資源の開発が活発に行なわれておりますことは先述のとおりでありまして、しかも、米ソなどでは、日本海にまで調査の手を伸ばしてきております。
 したがいまして、わが国としても、海洋資源の開発に対しましては、早急にこれが対策を立て、国の施策として、これを総合的、計画的に推進してまいる必要があります。
 この法律は、こうした最近の海洋資源開発の重要性、緊急性、さらにはわが国における開発体制の立ちおくれなどにかんがみ、海洋資源の開発に対する政策の目標、基本的施策等を定め、それに基づき、開発のための機構を整備し、海洋の調査や開発技術の研究を強力に推進しようとするものであります。
 次に、法案の要旨を簡単に御説明いたします。
 まず第一に、この法律は、海洋資源の開発を推進することによって、わが国産業の振興、国民生活の向上に資すべきことを明示し、これを達成するため、海洋等の調査の推進、開発技術の研究と、その成果の利用の推進、研究機関の整備、研究者、技術者の確保と勤務条件の適正化、情報流通の円滑化、国際交流の推進等の施策を講ずることとしております。
 第二に、海洋資源の開発は、平和目的に限られ、しかも、自主、民主、公開、国際協力の原則に従って行なわれるべきことの基本方針を明示するとともに、政府は、これらの施策を実施するため、必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講ずべきものとし、政府が講じた施策及び海洋資源の開発の進展状況に関し、毎年、国会に報告すべきことといたしております。また、地方公共団体におきましても、国の施策に準じて施策を講ずるようにつとめなければならないことといたしております。
 第三に、機構の整備につきましては、海洋に関する調査、開発技術の研究などに関する事項について企画し、審議し、及び決定する最高機関として海洋資源開発委員会を設置することとし、さらに、開発技術等の研究機関として、政府の監督のもとに、海洋資源開発技術総合研究所を、また、実際に開発の事業を行なう者に対する資金の貸し付け等を行なう機関として海洋資源開発公団を、それぞれ設立することといたしております。
 第四に、委員会は海洋資源の開発に関する基本計画を策定しなければならないこととし、しかも、毎年、基本計画に検討を加え、必要があるときはこれを修正しなければならないことを定めております。
 第五に、この法律は、海洋資源の開発に対し、調査、研究の推進から国際交流の推進に至るまで、広範な施策について規定を設けておりますが、特に、調査船の増強、自動調査機器装置の研究等、調査観測体制の整備拡充や、開発技術等の研究の推進、さらには、研究施設を充実し、大学に海洋学部を設置するなど、その研究体制の整備について特段の配慮をいたしております。
 以上が、本法案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#4
○委員長(宮崎正義君) 本法案に対する質疑は後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(宮崎正義君) 次に、科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。
 御質疑のある方は順次御発言をお願いします。
#6
○矢追秀彦君 時間も、三時に参考人がお見えになりますので、それまでの間でできるだけの質問をしたいと思います。
 先日来問題になっております三月三十一日の、太平電業の作業員が原研におきまして放射能汚染が発見されましたが、この発見がされました経過について詳しく御説明をしていただきたいと思います。
#7
○政府委員(梅澤邦臣君) 御説明申し上げます。
 三月三十一日に、原研のJPDRにおいて、前に太平電業の作業員の三名の衣服がそこで汚染されているということが発見されました。そこで、それをよく調べましたところ、その汚染源は、原研を調べましたところ、全くございません。したがいまして、その経歴を調べてまいりましたところ、二十五、六日ごろに、原電の廃棄物を入れますプールのところで作業していたという実績がございました。そこで被曝を受けたということがはっきりいたしましたので、そこを調べたわけでございます。したがいまして、そのときに約三名の者が、くつあるいはシャツ等にわずかの被曝を受けておりました。その被曝は、レム数で言いますと〇・〇一ミリレムという数で、まあ基準の中で安全圏であったことは幸いでございました。こういうことがございましたので、ことにその下請業者の方にそういうことがございましたということは、下請業者の方が会社の中に、原電に入って仕事をやる場合に、管理規程等がございますが、それが完全に守られていたかどうかということが問題でございます。したがいまして、四月二日の日に、私のところへ常務に来ていただきまして、早急にその調査をすることと、それから安全管理についての総点検をすることということを指令いたしました。しかし、口頭でいたしましたが、まだはっきりとしない点もございますので、これを書類にして、やはり明らかなる報告をもらうということ、それからその報告の中には、今度の被曝についての内容の調査、それに対する措置、それから今後安全管理の上にあらためてする措置、そういうことについての調査を早急にして報告をよこせということで、四月五日の日に報告を求めました。その後、四月八日ごろに、一応の、こういうことをしたいという報告が参りまして、それを完全に実施する暁において、あらためて報告が来るということになっております。
 ただ、その内容につきましては、たとえば今度の問題でも、私服を着て中に入っているということがございます。これは、作業衣は着ておりましたが、その私服についておりましたので、私服そのものも着がえさせてはどうかということもございます。そういう関係からしますと、その私服を全部そろえる、あるいはくつを全部そろえるというのにいささか時間がかかりまして、その徹底化をいまはかっておりまして、措置ができましたら報告が来るということになっております。
 また、三十一日にこういうことがございましたので、原研にもお願いして、太平電業の人たちを全部総点検してはどうかということで、総点検を始めました。その関係から、四月十一日に原研に行ってやりましたところの人からやはり三名出ました。これは、調べてまいりますと、三月の二十五、六日にやはりそのプールのところで作業していたということの実績でございます。現在のところ、その調査を進めておりまして、約九〇%くらい調査はできております。と申しますのは、そのころ数十名そういうところで作業をした者がおりますので、その作業をしておる者の実態調査をしているわけでございます。現在約九〇%まで終わって、もう間もなく全員の調査が終わると思います。
 まあ、幸い、これにつきましては、受けました被曝というのがたいへん少なくて幸いでございましたが、こういうのが外部に出るということは非常に問題でございますので、その点、管理規程その他の整備等について目下検討をきしているというのが現状でございます。
#8
○矢追秀彦君 いま九〇%終わっているとおっしゃいましたが、最初三名が発見されて、その次、いま四月十一日に三名と言われましたが、そのあとはどれくらい発見されているか、わかりませんですか。
#9
○政府委員(梅澤邦臣君) 太平電業以外に、そのころ、あるいはその一月ぐらいさかのぼりまして、入りました作業員が約二百名ぐらいおると聞いております。その二百名ほどの者を、できるだけ調査をするということで、いま進めておりまして、もう間もなく完全に進められるのではないかと、こう思っております。
#10
○矢追秀彦君 四月十二、十四日にも原研で発見されたということを聞いておりますが、そちらではその点掌握されておるでしょうか。
#11
○政府委員(梅澤邦臣君) 私のほうに、十二、十四日に被曝した者が見つかったということは、まだ聞いておりません。
#12
○矢追秀彦君 この汚染をした原因でありますけれども、それは、原電のこういう規約といいますか、規制ですね、管理の、それがずさんであったのか、それは完ぺきなものであったけれども作業員が守らなかったのか、どちらですか。
#13
○政府委員(梅澤邦臣君) 現在、東海発電所で厳密なる調査を進めております。しかし、現在、私が調べましたところにおきましては、規程と申しますか、運転を始めてよろしいというときに保安規程を認可しておりますが、その規程の内容としては、特別間違っているところはないと思っております。ただ、その規程を実施しますときに、こまかい点がございます。こまかい点の実施のときに非常にルーズなところがある。したがいまして、そのこまかい点をどうやってはっきりしていくかということに問題点があると思います。その点を、いま、たとえば洋服を全部着かえさせるとか、あるいは管理地域というところの明示のしかたが、明らかなところに明示をして管理地域であることがわかるようにすることという規定もございますが、それに対しての明示のしかたが完全になされていたか、それから見張りを立てなければいけないことになっておりますが、その見張りそのものの陣容が何名でやれば完全であるか、そういう点を実態的にいま調べ上げて進めていくということになると、そう思っております。
#14
○矢追秀彦君 まあ、汚染された原因といいますのは、クーリング・ポンドということがいわれておりますが、ここの管理といいますか、それはどういう形になっておりますか。そこで作業する場合。
#15
○政府委員(梅澤邦臣君) クーリング・ポンドは、今度は要するに管理地域に入っております。したがいまして、その管理地域に入ります場合に、原電の職員でございますと、もう管理地域に入る前、原電の中に入りますと衣服の変換をいたします。また、その管理地域に入ります場合には、あらためて衣服を交換するという形になっております。それは当然、太平電業――下請でも、そういう形にやることを契約のときに約束してやっております。その形としては確かにそういうふうになっておりましたが、現在のところ、クーリング・ポンドのそばで増設等の作業をしておる場所がございます。それは仮のへいをしまして、管理地域としております。その仮の壁がいささかルーズといえば――これならだいじょうぶと思って置いたわけでございますが、それが移動するような形になっております。と申しますのは、やはり作業の関係で、区画したところをある程度移動するようなへいを置いていたわけでございます。そういう点に、ミスといいますか、守られない点があった。したがいまして、今度は、そういうへいにつきましても、それぞれつなげて、かぎをかげて動かなくするという措置をするというような点がございます。そういう形でやりますし、それからポンドそのものにつきましては、定期的に、汚染されているのがどの程度汚染されているか、それが基準内のものであるか、それは完全に保物のほうで調べまして、徹底して実施しております。
#16
○矢追秀彦君 いまのそのクーリング・ポンドのところですね。作業員の人がそこを通ったほうが作業場に近回りだ、そういうことで、さくをついくぐり抜けて行ってしまう、そういうふうなことを聞いておるのです。そういうことで汚染したのだろうと。ところが、原電のほうから、中間の報告書でしょうが、これは配線工事ということだけしか書いてないのですげれども、この点の真相といいますか、事実はいかがでしょう。
#17
○政府委員(梅澤邦臣君) ポンドがございまして、そこにワイヤーがございまして、それを引っぱり出してつなげるということで、たぶん管理地域と管理地域でないところを――そこの管理地域に入ります場合には必ず洋服を着かえて入るということになっておりますが、それが、ほんのちょっとの場所であるからということで、飛び込んでつなげる、たとえばの話でございますが、そういうような感覚で動いた点があるのではないか。したがいまして、作業員そのものに対する一応の保安管理についての研修等をやっておりますが、それが周知徹底していなかったのではないか。それについては、十分それをし直すということにいたしております。
#18
○矢追秀彦君 この原電かう来ています報告書の第一番目に「三月三十一日、原研で太平電業株式会社の作業者一名に衣服汚染が発見され、さらに調査の結果二名の衣服に汚染が発見されました。しかし、いずれの者にも身体汚染はありませんでした。」――「身体汚染はありませんでした。」と、こうはっきり言い切っておるわけですけれども、この身体汚染がないということを原電は調査をしたのでしょう。したとしたら、どういう調査をしたか。
#19
○政府委員(梅澤邦臣君) 身体につきましては、すべてカウンターにかけまして、身体汚染をしているかどうか全部脱がして調べたわけでございます。
#20
○矢追秀彦君 血液、尿、それから、ふんなどの検査もやり終わっていますか。
#21
○政府委員(梅澤邦臣君) 尿その他の検査は、したと言っております。ただ、血液はちょっとあれですが、尿はいたしております。
#22
○矢追秀彦君 尿だけで、全身カウンターの測定ぐらいで、身体の汚染は全然なかったということが、はたして言い切れるのかどうか。その点はいかがですか。
#23
○政府委員(梅澤邦臣君) 失礼いたしました。
 東大の先生に来ていただきまして、血液、尿、それから健康診断を行ないました。
#24
○矢追秀彦君 じゃ、身体の汚染のほうは完ぺきに終わっておる、こう考えてよろしいですか。
#25
○政府委員(梅澤邦臣君) 身体汚染についてはだいじょうぶと考えていただいてけっこうだと思います。
#26
○矢追秀彦君 それから三番目のところに、汚染が一〇マイクロレム・パー・アワー、こうなっておりますけれども、これは汚染された衣服ではかったので、そのもとにおける、その時点における線量といいますか、推定値をやはり出さなければならないのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
#27
○政府委員(梅澤邦臣君) レム数をはかります場合には、時間と日と、いろいろございますが、汚染されたものをはかりまして、それから時間にしていまの一〇マイクロレム・パー・アワーという形で出しました。幸いに、つきましたのは飛散性でございませんので、そこについたものがわかりまして、ありますから、それをはかれば、このレムは出てくるわけであります。
#28
○矢追秀彦君 私聞いているのは、一番もとのところにおける、原因となるべき場所といいますか、そこで汚染された値をやはり出さなければならない、そのまま同じ状態で来ておればいいですけれども、その点はどうですか。
#29
○政府委員(梅澤邦臣君) 管理地域に入りまして仕事をやります場合には、当然、作業員の胸にポケットチェンバーをつけております。そのポケットチェンバーについているレム数も判断に入って、これで出てくるわけでございます。
#30
○矢追秀彦君 それから四月五日に、原子力局長のほうから安全確保に関しての指示を出されておりますが、その内容はどういうものですか。
#31
○政府委員(梅澤邦臣君) 初めの主文は別といたしまして、やるべきことという対策のことでは、今般の事態の発見後とった応急の措置についての再度点検と、それからいろんな意味の万全を期する、それからこのような事態が発生した原因を究明して、今後そのような事態が出ないようにするための対策をとること等、その他保安管理全般についての十分な検討を加えること、それを徹底しまして、その措置が考えられ全うされたところで、われわれのほうにあらためて報告をすることということで出しております。
#32
○矢追秀彦君 さっきの話に少し戻りますけれども、原電のほうの管理の規約といいますか、規程、従業員が守らなければならない事柄については、最初に科学技術庁のほうで見られて、これならよろしいという許可をされた上で、それが行なわれておるのでしょうか。
#33
○政府委員(梅澤邦臣君) 原電が発電いたしますときに、東海発電所原子力施設保安規程というものをこちらに出してまいります。それを私たちのほうで認定いたしまして許可いたしておるわけでございます。そういう形で、その中に書いてあります管理区域にかかる物品の移動、管理区域等の出入管理等、すべて一応規程をつくって認可したわけでございます。
#34
○矢追秀彦君 その規程の内容で今回の事故が起こらないようにはできなかった、要するに、そういう規程を故意に破ってやられたものか、やはりその規程に甘さがあったのでこういうことになったのか、その点はどちらですか。
#35
○政府委員(梅澤邦臣君) この規程を、故意と申しますか、先ほど申し上げましたように、徹底してなくて、しろうとの人がぽっと入ったという、過失と申しますか、その点もございますと思います。この規程を申しますと、そういうところに入る場合にはどうしなければならないということを規定してございますが、それを実際的に行なう方法としてのところにミスがあったと考えられるように私たちは考えております。
#36
○矢追秀彦君 そうすると、その規程自体は完ぺきであるけれども、運用といいますか、そのもう一つ下の段階の、実際行なうにあたっての処置がなかった、たとえば、そこへかぎをつけて入れないようにするとか、絶対通れないように何かをつけるとか、そういうことはやはり原電として怠っていた。ただ単に、作業員がやったとか、知らないでやったとか、そういうふうに罪をかぶせるだけではなくて、しろうとの人を雇った場合、よけいやかましく言わなければならぬわけです。そういう下請業者がだんだんふえてきているわけですから、最近は。そうすると、しろうとの人はここは入ってはいけないのだという看板なり、入れないような仕組みにしてしまえば問題は起こらなかったと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
#37
○政府委員(梅澤邦臣君) ここにできております管理規程につきましてはそうでございますが、管理規程をやります場合に、これの下の実施規程といいますか、実施細則と申しますか、そういうものがございます。それにルーズなところがあったということは、運用上と申しますか、そろいう点にルーズなところがあったということは認めざるを得ないと思います。たとえば、へいをちゃんとしておかなければならない。しかも、そこへ入ってはいけない。それと、入らないようにするのには、見張りは二人でいいか、三人でいいか、その場所の広さによって、やはり実態的に考えるべきだと思います。その点については、現在まで二人でございましたが、最近それを四人にふやしておりますけれども、そういう実態的なやり方のところに不備があったということは、確かに今度認められると思います。
#38
○矢追秀彦君 そういう不備については、最初にチェックはできなかったのですか。先ほど科学技術術庁で許可をしたという、その段階においてできなかったものであるか。そのときに、もっと詳細にチェックをしておれば、こういう事件は起こらなくて済んだのかどうか、その点はいかがですか。というのは、同じく原電の報告書の八番目に、「現在当社の実施している規定手順および監視施設等当社の安全管理体制については、何ら不備はないものと確信しておりますが、」と、「何ら不備はない」と言い切っているのですが、その点を含めまして伺いたい。
#39
○政府委員(梅澤邦臣君) いまの、原電が発表しております「何ら不備はない」というのは、確かに形の上ではそうだと思います。先ほど申し上げましたように、運用の面、それは当然見やすいところで明らかにこれは管理地域であるというようなものは確かに出してございます。しかし、出してあるものを、よくまた見てもらわなければいけません。そういうような運用面としての点に欠けている点は確かにございました。そういう点を十分これから徹底いたします。しかし、私たち側からある程度原電に、同情と言っては申しわけありませんが、考え方でいきますと、初めての運転でございます。したがいまして、こういうことをやりまして管理規程以上にやっておりましたが、実際にこうやって軌道に乗って動いた場合に、やはりちょっとそういう運用面で抜けていた点があるという点が見つけられました。したがいまして、今後日本で発電所がどんどん出てまいりますが、そういうときに、こういうことがないような一つの道しるべとしては十分考えて、原電をモデルとして十分な徹底をはかっていきたい、こう思っております。
#40
○矢追秀彦君 プール水の放射能レベルについては、どの程度調査をされているのですか。
#41
○政府委員(梅澤邦臣君) プールの水につきましては、燃料が入っておりますので、それにつきましては定期的に常に管理規程で調べております。なおまた、水を取りかえる場合、これにつきましても浄化をして取りかえるということで、常によごれのないように、ただ、よごれが完全にないというわけにはいきません。許容量の範囲内でよごれのないようにということで、実際上水の取りかえ等をやっております。
#42
○矢追秀彦君 今回被曝者が作業をした際のプール水のサンプルを各種お取りになって、それから放射能レベル、プールの水面上の空間線量率、あるいはプール壁などの汚染度、そういうものはお調べになっておるのでしょうか。
#43
○政府委員(梅澤邦臣君) 実は、これを行ないますときに、中の塗装関係でございまして、したがいまして、プールの水を抜いて塗装をするという関係でありまして、実態的にはそのプールには水はございませんでした。したがいまして、その水を私たちのほうで取って、われわれのほうでみずから検査するということはいたしておりません。しかし、ほかにもプールはございますから、そういう関係から、十分にプール水をきれいにしていくということは向こうで徹底化をはかってもらっております。
#44
○矢追秀彦君 水はございませんでしたけれども、プール壁の汚染度はあったんじゃないですか。その点はいかがですか。
#45
○政府委員(梅澤邦臣君) プール壁につきましては、この問題の起こりました三十一日夜、一日ですか、そのとき、さっそく測定いたしました。その測定量は、基準としては、1×10−3乗マイクロキューリー・平方センチメーターでございます。これ以下であるという規定はあります。そのとき調べましたときには、これ以下であることは確実でございました。ただ、今度被曝しました点につきましては、プール壁を全部調べます。ただ、つき方といたしまして、こすってつけた場合、あるいは軽くつけた場合等によって、つき方の濃度が、これ以下でも、ついた場合の差は出てくると思います。
#46
○矢追秀彦君 いまさっき、二百名について総点検と言われておりますが、この中には、プール付近で作業をした職員以外に、そういった被曝を受けたと考えられるような人ですね、そういう人も含まれているのですか。この際、過去数年分くらいの全データというものを出されて検討されたほうがいいと思うのですが、その点はいかがですか。
#47
○政府委員(梅澤邦臣君) 三月十五日から大体三月一ぱいにここに入っておりました人たち、これは太平電業以外に、いろいろな会社が入っておりますが、ほかの会社も全部できるだけ調べるという形で進めております。
#48
○矢追秀彦君 できるだけといって、完ぺきではないわけですか。
#49
○政府委員(梅澤邦臣君) できるだけと申し上げましたが、九〇%までいまやっておりますが、あとまだ、もうちょっと残っておると聞いております。したがいまして、調査は完全にいたします。
#50
○矢追秀彦君 過去数年間のデータを調べることは不可能ですか。過去数年間プール付近での作業による汚染ですが。
#51
○政府委員(梅澤邦臣君) いまみたいなものを調べるなら、非常に困難だと思います。ただ、いままででも、フィルムバッジをつけて入っておりますので、そのデータは残っております。フィルムバッジから見て、安全圏外のようなことがあったとは認められません。ただ、下請業者がずっと入ったとか、こういうような実績についての調べというのは、ちょっと現在やるのは不可能だと思います。
#52
○矢追秀彦君 このプール水を、そのときは抜いてあったといいますが、約二千トンにわたるプール水の処理、処分のしかたについて、どのようにしておられますか。
#53
○政府委員(梅澤邦臣君) 水から放射能をとります場合には、主としてイオン交換樹脂が使われております。イオン交換樹脂を利用しまして放射能を抜きまして、規程に基づく基準以下にできるだけ下げて、それを少しずつ捨てていくという形をとっております。
#54
○矢追秀彦君 イオン交換樹脂の分析値はどうなっておりますか。
#55
○政府委員(梅澤邦臣君) イオン交換樹脂は、イオンによってどんどん取りかえてまいりますので、イオン交換樹脂の分析値は――ある程度使いまして、それに放射能が入りましたら、イオン交換樹脂を取りかえて、また新しいものでやっていくという形でございます。したがいまして、イオン交換樹脂そのものの分析値はとってないんではないかと思います。というのは、イオン交換樹脂をある時間やりまして、くっつきましたら、イオン交換樹脂を取りかえていくという形をとっているからであります。
#56
○矢追秀彦君 処分水の放射能レベルはどうなっておりますか。
#57
○政府委員(梅澤邦臣君) これの基準から申しますと、ICRPで使っております飲料水と同じ基準になる以下のところで捨てるということで捨てております。
#58
○矢追秀彦君 時間があまりありませんので、またあらためてこまかい問題については伺っていきたいと思いますけれども、ちょっとまた話がさかのぼりますが、現在汚染されておる作業衣服ですね。これはどうしてますか。
#59
○政府委員(梅澤邦臣君) 汚染されております衣服の中で、汚染が完全にとれたものは一部返しているのがございます。それから汚染がとれない、とれないというか、まだ措置していないものは、新しいもので返したものもございます。汚染のそういう措置のしてございませんものは、すべて原電で現在保管いたしております。
#60
○矢追秀彦君 その保管のしかたですけれども、将来こういうことが起こらないようにするために、研究材料といいますか、そういうことにするためには、原電に置かないで、科学技術庁なり原研なりでやられたほうがいいのじゃないですか。その点はいかがですか。
#61
○政府委員(梅澤邦臣君) こういうものの調査、調べは、常に原電、原研共同体でやっておりまして、今度も原研が協力いたしております。また、先般も庶務課長会議で、あすこの原電、原研等がいつも集まりますが、そこでも徹底をはかるよう連絡しておりまして、そういうものについてはお互いに共同でやっております。その点で、原電だけの調査のデータということではないと存じます。
#62
○矢追秀彦君 また、もとの話になって恐縮ですけれども、最初この汚染が発見されたのは、この作業員が原研へ来て偶然発見されたわけです。どうして原電で発見されなかったのか、その点、いかがですか。
#63
○政府委員(梅澤邦臣君) 管理規程から申しますと、管理地域に入りまして出るときには、必ずカウンターで調査することになっております。ところが、私の聞いているところでは、二名はそっと管理地域に入って、入らないことになっておりましたので、それをのがれた。一名につきましては、非常に雑にはかったんではないか。と申しますのは、洋服のそでを上げてはかった場合と、そでを下げてはかった場合がございます。原研に行きました場合に、原研ではちょうど、作業衣を着せてやっておりましたが、その作業衣をぬがせてはかりましたので、直接そで等衣服の線量がはかれたわけであります。その点、運用の関係でまずい点があったと思いますが、そういう関係から今度の発見が原研でなされた、こう存じております。
#64
○矢追秀彦君 政務次官お見えになっておりますから、一言お伺いしたいのです。
 大臣おられませんので残念ですけれども、今回の事件は、私はあまり簡単にこれは考えてはならないと思います。また、その前に燃料棒の問題等も出てきておりますし、原子力発電あるいは原研の問題について、いろいろ汚染事故あるいは憂慮すべき事故が起こっているわけです。やはりこの際、徹底的な管理体制というものをもう一回再検討して、ぴしっとしたものを立てなければならない時期ではないか。と言いますのは、また新たに発電所等もこれからつくられますし、今後原子力の開発が日本においてますます盛んになってくれば、いまのような状態では非常に心もとない、私はこのように思うのですけれども、その点についてはどのようにお考えになっておりますか。
#65
○政府委員(平泉渉君) 先般、当委員会で大臣もしばしば申し上げておると存じますけれども、安全の問題というのは科学技術庁では非常に重視しております。あくまでもわれわれは、完全に安全を管理しながら平和利用を進めていこう、先般来大臣も、調査会でもう一ぺんこういう問題を再検討しよう、こういうことを言っておられます。本日の先生の御質問の趣旨をわれわれはよく体しまして、安全の問題はさらに一そう注意をしていく所存でございます。
#66
○矢追秀彦君 もう二点政務次官にお伺いしますけれども、一つは、この労使関係ですが、これはいろいろな問題があるわけです。たとえば職業新聞に前に書いた人が三カ月の停職処分になっておるとか、労使関係が非常にうまくいっていないように、ここで出されておる文書等を見ますと、感じるわけです。この問題についてどう対処されるのか。
 もう一つは、立ち入り検査について、自治体とかその他の第三者がこういう汚染に対する立ち入り検査をできるようにするという考え方はどうか。この二点をお伺いして、時間がありませんし、村山隊長もお見えになっておりますので、質問を終わらせたいと思います。
#67
○政府委員(平泉渉君) 原子力研究所の労務問題はいろいろ問題がございまして、確かにいろいろな遺憾な問題が起こっておるようでございます。この問題につきましては、管理者側と労組のほうとの間で十分にこれから話し合いを煮詰めていきたい、こういうふうに思っております。まあ、いずれにせよ、こういう日本の非常に大事な研究でございますから、そういう労務問題でごたごたすることがないように私は注意してまいりたいと思っております。
 なお、先生御質問の、第三者による立ち入り検査の問題は、私は、できることならば、第三者と言いますよりは、科学技術庁自身が管理体制を強化して無用な御心配をかけないようにするということでまいっていきたいと思っております。
#68
○委員長(宮崎正義君) ほかにございませんか。
#69
○委員長(宮崎正義君) それでは、第九次南極地域観測越冬隊長の村山雅美君が参考人としてお見えになっておりますので、南極観測について御意見を聴取することにいたします。
 村山参考人には、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をされ、まことに感謝にたえません。時間の都合もありますので、二、三十分程度御意見を述べていただき、それから質疑に入りたいと存じます。
#70
○参考人(村山雅美君) 村山でございます。
 南極観測に多大の御関心を示され、その一端といたしまして、きょうこの席にお招きされましたことを感謝いたします。
 御承知のように、南極観測も再開以来四年になりまして、その基盤は非常に固く、地道に進んでおります。南極観測の再開にあたりまして、次の三つの点をその大きな項目といたしました。
 その第一は、日本の持ちます昭和基地をして、恒久的観測基地たらしめるということ。と申しますことは、再開以前の、いわゆる「宗谷」時代でございますが、そのころの昭和基地におきます南極観測は、いわば恒久的というものではなくて、臨時的に何年、二年、三年と、その間六回を数えたわけでございます。しかしながら「宗谷」の輸送力の問題等が原因となりまして中断されたわけでございますが、再開にあたりましては、昭和基地をして恒久的観測基地たらしめる、これが第一の考え方でございました。これにつきましては、第七次で再開したわけでございますが、第七次、第八次、また第九次、現在おりますのは第十次でございますが、その四年次の観測隊によりまして、昭和基地の機能は諸外国に比して決して遜色のない地位を占めております。
 それから観測再開の第二の項目といたしまして、昭和基地の立地的条件から見まして、その内陸が非常に奥が深いわけでございます。昭和基地は南極点を中心といたしまして比較的遠い距離にある。すなわち、南極点から見ますと北のほうに偏しております。しかも、その間は、東南極大陸と申しまして、南極大陸を二つに分けて、西南極大陸、東南極大陸と申しておりますが、その東南極大陸の非常に大きな内陸を昭和基地の背後に控えている地点でございます。と申しますことは、非常に大きな内陸を控えております関係上、各国ともその調査は進んでおりません。日本が閉鎖をしている間に、わずかに、ソ連あるいはアメリカが東南極大陸の調査に、そのまなこを向けつつあったわけでございますが、いまだに、その調査、未開発の地点が、ほかの地域に比べて比べものにならない大きなものがございます。そういうような広い範囲、具体的に申しますと、日本は、東経の線で見ましても、東経三十度から東経四十五度までの間に、極点を中心としました扇状地帯を観測の受け持ち範囲としております。この広さは、おおよそ日本の二倍以上の面積になるわけでございますが、この間が、ほとんど内陸の調査が進められていないわけでございます。
 そういうような地域を控えておる昭和基地の現状から見まして、ぜひとも、日本の観測基地として、極地の観測と、一方、昭和基地の内陸の調査が必要であるということが考えられます。そのために、第七次以来、内陸調査について、過去の観測隊以上に積極的にその方針を進めてまいったわけでありますが、その一つの基盤といたしまして、まず、昭和基地から南極点まで、大きく、いわゆる巨視的に、マクロに調査を進める。さらに、その線上において面の調査、あるいはもっとミクロの調査、いわゆる精査の段階に入るべきものと考えまして、まず、マクロの調査の基本線としまして、昭和基地と南極点を結ぶ調査旅行、すなわち、これを極点旅行と通称しておりますが、これを試みようと考えたわけであります。これが、第七次以来、雪上車その他の開発が進みまして、第九次においてこれを行なうことを、文部省にありますところの南極統合推進本部の許可を得てやったのが経過でございます。
 第三に、昭和基地をして観測基地たらしめると同時に、昭和基地のある場所が、御承知と思いますが、オーロラの一番激しい場所、いわゆるオーロラ帯の直下にございます。そういうような立地条件を利用いたしまして、昭和基地からロケット観測を行なう。すなわち、第十次、今年行っている隊が第一期の工事を進めます。この工事に続きまして、来年の夏には第二期の工事をいたします。これによりまして、明年は、夏の間でございますが、二発のロケットを上げまして、オーロラ帯の直下にあるという昭和基地の立地条件を利用いたしまして、地球物理学的観測を進めたいと考えております。第十二次隊でございますが、この豚は、越冬中に十二発のロケットを上げまして、いわゆるオーロラの輝いているそのどまん中にロケットを上げて、さらに、先ほど申しましたような地球物理学的観測を進めていく。
 この三つ、先ほど申しました昭和基地を恒久的にするということ、それから内陸調査に大きな力を注ぎ、その一つの大きなあらわれとして極点旅行を実施する。三番目に、昭和基地をロケット基地としての活躍を今後行なっていこう、この三つを再開の旗じるしとしたわけでございますが、前の二つは極点旅行をもって一応実施できた。第三のロケット観測につきましては、その見通しを確実にした。こういうのが現在の昭和基地あるいは南極における日本の立場の現状でございます。
 ただいま御指名のありました第九次の観測といたしましては、それ以外に、次のような特徴を持たしておりました。第一には、南極というかなり寒いところでございますが、寒い南極の中の海洋観測を行なう、あるいは生物観測を行なう。その一つの方法として、第九次隊に、夏の間でございますが、二人のダイバーを養成して、南極の海にダイバーをもぐらして、海洋の調査、生物の調査を進めたのが第九次隊の一つのアクセントでございます。第二番目に、昭和基地を恒久的観測の基地としての充実をはかる。これは第八次以来継続的に行なったわけでありますが、昭和基地をして観測基地としての機能を十分に発揮させるように整備されたということ、これが二つ目でございます。三つ目には、極点旅行を実施する。この三つを掲げまして、一年余にわたって二十九名の者が越冬し、かつ、この中には、初めての試みといたしまして、新聞協会から派遣された朝日新聞の記者が同行して、その生活を共にし、観測状況、生活状況、これについての取材を許したわけでございます。おかげさまで、以上の三つ、ないし新聞報道の点を含めて四つの点につきましては、ほぼ当初の計画どおりいきまして、三月の二十六日全員無事に帰ってきた次第でございます。
 特に、越冬中一番大きな仕事として考えておりました極点旅行につきまして、お手元の資料に従いまして、概略御説明させていただきます。
 この旅行は参加人員が十二名ということで実施したわけでございますが、残念ながら、基地を出て百五十キロ余りの地点で、越冬隊員の遠藤八十一隊員が、雪氷に使いますドリル、これはちょうど町で電信柱を埋めるときにやるドリルでございますが、それに引きずられて腕を折りまして、基地に送還いたしました。したがって、その残り十一名をもって極点旅行を実施したわけでございます。
 この極点旅行の実施にあたりまして、問題は、まず三つの点にございました。
 その一つは、いままで南極観測におきまして、ソ連、アメリカ、イギリス各国とも、内陸旅行は非常に積極的にやっていたわけでありますが、われわれのような場合、飛行機を持っていない日本の場合、一夏でこれだけの距離を行なうには相当な危険が、あるいは無理があったわけであります。すなわち、一夏約六千キロの道を往復しなければならないために、夏のまだ来ない九月の末に昭和基地を出発いたしました。この早い時期ということは、まだ大陸に太陽が上がりきらない寒い時期でございまして、同時に、風が強い。いわゆる地ふぶきに悩まされる時期でございまして、そういうようなことがある程度原因になり、この遠藤隊員のけがもあったわけでございますが、また、昭和基地から奥に入るに従いまして高度が高まるということ。
 すなわち、時期の早いということが第一とすると、この第二の問題として、この旅行の高度が問題になる。東南極大陸は、南極大陸としても非常に高い地域でございまして、およそ四千メートルの高地がある。この高地を寒さの中で越えなければならないというのが二番目の難点でございます。
 さらに、先ほども申し上げましたように、昭和基地から南極点までは約三千キロの距離がある。これを往復六千キロを走るためには非常に長い時間を要する。距離六千キロに要する時間は五カ月、そういうようなことで、時間的にあるいは距離的に困難を予想のもとに出発した事情でございます。
 しかしながら、結論から申しますと、われわれ非常に好運に恵まれておりました。と申しますことは、その極点と昭和基地を結ぶちょうど中間の地点、ここにアメリカのプラトーという基地がございます。この基地の標高が三千六百二十四メートルでございますが、この基地が、幸いにも一年の間その活動を延期しておりました。すなわち、ことしの一月三十一日まで、人間、資材、あるいは基地としての運営を続けておりました。これがありましたために、その基地をして、補給基地あるいは休養をとる場所ということに利用できました。これは、第八次隊がこのプラトー基地までの道をつけてあります。そういうようなことを最大限に利用いたしまして、われわれの極点までの道は、当初非常に困難はございましたが、極点に近づくに従って、その困難は少なくなってきた。そういう思わぬ好条件に恵まれたわけでございます。
 お手元の資料の二ページ目に旅行日程が出ておりますが、極点までは、プラトーにおきます補給あるいは米軍との国際協力による援助、こういったことが非常にうまくできまして、極点には、去る十二月の十九日、予定どおり到着したわけでございます。帰路は、夏の間に一番悪いところを――すなわち、ちょうど富士山と同じ高さの場所がございます。一番うしろに地図が入ってございますが、プラトー基地の少し右上のところに、仮称富士峠という名前がついてございますが、これがちょうど富士山の高さに近い三千七百五十メートルという地点がございます。この地点を冬の来ない間に帰りは越えてしまおうと行程を急ぎまして、一月の末にこの峠を越えまして、二月の十五日に昭和基地までたどり着いたようなわけでございます。
 その前に、まず、この観測旅行をするにあたりまして、第三の項目でございます、観測項目をあげております。これはわが国独特のものもございますが、おおむね各国が同じような方法でやっておりますものをやろう、そうして最後にこのデータをつき合わせまして南極全体の観測結果を総合する、そういう趣旨にのっとったものでございます。位置測定、高度測定は、すべての観測の基準になるものでございまして、その他の、地形、雪氷の調査、あるいは地磁気の測定、あるいは空中電波の観測、VLFと書いてありますが、非常に短い波長の電波観測でございます。そのほか、医学観測、こういったこともおおむね予定どおり実施できました。
 その実施できました一つの理由といたしましては、われわれの用意いたしました車が非常によく動いてくれたということでございます。この車をつくるにあたりまして、もともと南極点を調査する、いわゆる極点旅行に向く車ということで、昭和四十年以来進めてきたわけでございますが、次の四つの点をそのねらいとした車でございます。
 すなわち、四つのステピュレーションを満たした車でございます。その一つは、マイナス六十度、夏といいながらマイナス六十度の低温に遭遇しても動かせる、マイナス六十度でも動かなければならないというような性能を持っておる車――これは、われわれ旅行中、マイナス六十度の気温を経験いたしまして、その性能は十分満足することができました。
 二番目に、昭和基地から極点までの間に四千メートルの高地があるであろうという推定のもとに、四千メートルの高度でも動ける車、すなわち、スーパーチャージャー、過給機、こういったものをつけまして、エンジンをつけて寒さに耐え得る車である。これも、富士峠、三千七百五十メートル余りの峠を越えまして、一応その点につきましても性能が確認されたわけでございます。
 三番目に、先ほども申しましたとおり、距離といたしましては六千キロ以上はあるので、少なくとも六千キロに耐えるだけの耐久性能が、なければならない、この点でございます。
 以上申しました、寒さの問題、高さの問題、あるいは耐久性の問題、これは、日本ににおいては、いわゆる実地にテストできないものばかりでございます。これを、内地の諸機関あるいは諸会社の援助を得ながら、いわゆる実験的には実地の実験はできませんが、データといたしましては確信を持ってこの車をつくり上げたわけであります。
 前後いたしますが、四番目の性能といたしまして、この間約五カ月の期間を要します。それに加えまして、先ほど申しました観測項目を観測するための諸観測機械あるいは内地との連絡等に使います通信機、そういった観測機械あるいは通信機械等の搭載に耐え、人間としての生活にも耐え得る、いわゆる人間工学的な見地からの要求を十分にいれなければならない。そういった点もわれわれ、結論から申しますと、十分この性能を果たし、要求性能をあげました。四つの点をりっぱに果たした。すなわち、日本の工業力あるいは産業力というものを、日本でテストできないものを現地で十分にその成果をあげ得たということを非常に喜んでいるわけであります。
 以上が大体観測旅行のあらましでございますが、この間、二、三の点を申しますと、寒さにおきましては、一応気温のほうではマイナス五十九・二度、これは十一月八日に経験いたしております。また、高度におきましても、先ほど申しましたように、三千七百メートル余りのところを越えているということ。また、各国とも必要であるところの氷の厚み等の調査につきましては、各国同様、地震法による音波の測定による氷厚の測定、また、重力の測定によりまして、いわゆる地盤との相違を考えながら氷厚を測定するという方法、三番目には、アイスレーダーを使いましての電波による測定、この三つの方法を総合いたしまして、南極大陸をおおっております大きな大陸氷の成因を明らかにしようとしているのであります。
 われわれ無事に極点旅行を終えて帰ったわけでありますが、実は、これから極点旅行の問題をかかえ込んでいるわけであります。と申しますのは、幸いにして得られました膨大な資料、これの解析あるいは発表、これが残された大きな仕事でございます。おそらく一年余りの年月を要することだと思いますが、これを終わらせなければ極点旅行は終わったという気持ちはまだ毛頭ないわけでありまして、これからがわれわれの仕事だというふうに考えております。
 それにしても、この機会を利用させていただきたいと思いますが、そういった観測成果を取りまとめる機関が実はないわけであります。いま、われわれは、そういった観測機関を一応科学博物館の極地調査部というところにまとめておりますが、人間は、よそから来た者を置いて、観測が終われば、また元の職場に戻ってしまう。いわゆる民間の会社の者は言うに及ばず、人間的に資料的に、中央にまとめることがむずかしい。したがって、十分な解析、十分な利用ということに非常に欠けるところがある。これを実施するために、ぜひとも、中央におきます実施機関、つまり、極地研究所という名前で各国で呼ばれておりますが、こういった機関を早急につくっていただきまして、より効果的な結果を生むことをぜひお願いしたいと思います。
 たいへん簡単でございますが、あとは御質問ございましたら、お答え申し上げます。
#71
○委員長(宮崎正義君) どうもありがとうございました。
 それでは、参考人に対して御質問のある方は順次御発言を願います。
#72
○船田譲君 二点ほどお聞きいたします。
 一点は、これから激しい太陽活動期に入るのですが、十次越冬隊では、この激しい太陽活動期の、特にいままでの静かな太陽活動とは違った観測の、何と言いますか、目標みたいなものをお持ちかどうかお伺いしたい。
#73
○参考人(村山雅美君) 昭和基地を始めたときには、特にIGYということで激しい活動期に入ったわけであります。この活動期、一九五七年から八年にかけてIGYをねらって昭和基地が開かれ、また、南極観測はIGYをねらって共同的な観測をしたわけであります。それからIGYに続く期間として、静かなる期間を通じまして観測し、かつ、数年のIQSY、これで観測の機会があったわけでございますが、このときは日本は基地を閉鎖しておりました。したがって、IQSYの次に続きます活動期に入ります時期に、第七次、第八次を行なったわけであります。いま御質問でございますが、その点につきまして、激しい時期、静かな時期を、同じような方法で、また、項目といたしましても、第七次、八次、九次、十次と、地球物理の調査には、人間的にはたくさん――たくさんと申しますか、四名の専門家を充てまして、激しい時期から静かな時期、また静かな時期から激しい時期への移り変わり、これを経年的に観測しております。特に、静かな時期であるからといって、特別の調査はしておりません。
#74
○船田譲君 昭和基地に対する物資その他の補給について、現在の砕氷船「ふじ」なり何なりを使うだけで十分であるかどうか。もし不十分なところがあれば、どういうことが考えられるのか、その点についてお願いいたします。
#75
○参考人(村山雅美君) 昭和基地の補給といたしましては、「ふじ」がこの輸送を担当するようになりましたから、「宗谷」のときに比べますと格段の進歩がございました。数字で申し上げますと、現在、ことしは約五百トン運びます。平均四百五十トンぐらいの陸揚げをしております。現在の程度の規模、現在程度の人数、すなわち三十名を限度といたします調査につきましては、おおむね「ふじ」の輸送限度はこれでいっぱいいっぱいだと思います。しかしながら、輸送力をふやすために、これに随伴船という問題もあります。あるいは「ふじ」を二回往復させるという問題もございます。これにつきましては、かねがね検討しておることもございますが、随伴船あるいはよその国から船をチャーターする、あるいはよその国とは限りませんが、船をチャーターすると相当の費用がかかります。これをするよりも、「ふじ」はその重量のうちで燃料に三分の二を必要としますが、燃料だけのためならば、「ふじ」をもう一度往復させれば、五百トンを上回る、かりに八百トンぐらいの輸送は大体において可能と思います。
#76
○船田譲君 先生が提案されました極地研究所、仮称でございましょうが、それについて、どういった形の中央機関、研究機関が望ましいのか。つまり、言いかえれば、大学の付置機関にするのか、もっと広義な研究所にするか。その点、構成などを簡単にお伺いいたしたいのであります。
#77
○参考人(村山雅美君) これにつきまして、すでに二回の要求でつぶれたわけでございますが、文部省直轄の所轄機関、それによって――現在一番弱い面は、いわゆる計画的に実施する本部がないことです。これをいわゆる研究所をつくりまして、今後これを実施していく。これの一つの方法といたしましては、各国、たとえばイギリスあるいはフランスにこれに近い機関がございますが、これも、当事国に聞きますと、満足すべきものでない。いろいろ問題がございます。たとえば、船のオペレーションの問題もあります。輸送の問題もあります。それから観測者等につきましては、大学の研究所、あるいは官庁の研究所から来てやることもできますが、特に設営関係、こういう者を収容する場所が全然ございません。こういうような設営関係の、人間をまず収容し、そうして将来観測するための、南極観測の受け入れ態勢をまず確実に進めていく必要があると思います。それにあわせて、観測者をその研究所の人間といたしまして、これと大学あるいは諸官庁の研究機関と交流できるようなしかけにいたしまして、南極に行っている間にはこの機関から行って研究する、昭和基地をしてその研究所の分室というかっこうにする、あるいは共同研究所というようなかっこうもあろうと思いますが、そういうかっこうで研究し、帰ってくる。それで、その資料調査、あるいは解析等が進んだ暁には、またもとの大学なり諸官庁の研究所に戻る、そういうような交流できる性格も必要ではないかと思います。そういうような性格が、外国の、いま申しましたフランス、オーストラリア、あるいはイギリスには中央機関がございますが、そこまでは進んでいないために何かと問題がある、そういう事実を聞いております。
#78
○船田譲君 どうもありがとうございました。
#79
○岩動道行君 たいへん御苦労なさって、相当の成果を得られたのですけれども、いまのお話のように、極地研究所みたいなものがなければ、まさに竜頭蛇尾に終わるおそれがある。過去二回予算要求をされて、いまのお話だと、できなかったのですが、一番の難点はどこにあったのですか、予算折衝では。
#80
○説明員(七田基弘君) お答えいたします。
 一番大きな問題といたしましては、一つは、計画をなおよく検討する必要があるという点が一つでございます。それからもう一つは、やはり行政機構の簡素化の現在におきまして、新設機関をつくることがかなりむずかしかった、この二点でございます。
#81
○岩動道行君 これが結局、極地に対する認識というものがまだ十分でないから、時期尚早であるとか、あるいは新しい政府機関はできるだけつくるのを抑制するといったような一般原則の中にはめ込まれて、あっさり引っ込んでしまっておるというようなことじゃないかと思うんですがね。この極地の活用なり、その価値というものについては、これは現地に行かれた村山さんが一番よくわかっておられるので、特に重点的に、極地活用、あるいは極地の意義等、これをひとつ、この機会に、私不勉強なものですから、お話しをいただきたい。
#82
○参考人(村山雅美君) 岩動先生の御質問、たいへんむずかしい御質問でございますが、利用する前に、極地、特に南極大陸はどういうふうな成因で、どういうふうな現状であるかということをまず調べてみたのでございます。その具体的な例としまして、東南極大陸がいわゆるプレカンプリアの六億年前の古い地盤ということがわかっております。しかしながら、これがわかりながら、その地質図さえできていないわけでございます。その地質図をつくる前に、氷の厚みをはかって、どういうようになっているかということを推定しておるわけでございます。そういうことで、南極の利用という以前に、南極そのものの実態を調べるのがIGY以来の各国の南極活動の実態ではないかと思います。また同時に、特に南極という特殊の場所、すなわち極光活動が、北極でもあるわけでございますが、特に南極というものは北極と違って、大きな陸地でございますが、その陸地においてあらゆる観測をすれば、それがいわゆる経年的に比較検討ができる。そういう意味で、地球の成因を、また、地球と太陽の関係を調べる場所として南極が選ばれたものと思います。すなわち、将来の人類の利用のために、その糸口を南極で、観測という名前で見つけ出し、将来の利用に資するその前段階にいまあると思います。
 それよりさらにもっと進んだわれわれの身近な問題としていろいろ提案され、南極条約等で問題にされている問題は、たとえば観光に各国とも利用しつつある。観光に利用することによって、そういった基礎活動、基礎研究のじゃまになっては困るというようなことをすでに持ち出されております。
 また、将来の南極海は一番海洋資源が多いと言われております。そういう意味から申しまして、海洋資源ということから、南極海陸の海洋調査、資源調査、あるいは鉱物調査、これについて各国非常に積極的に進めておられまして、特に日本がその研究に力を入れているというようなレポートさえアメリカの基地から出ている事実がございます。したがって、先ほど申しましたように、現在の全体の南極観測の目標をねらいますと、非常に基礎的な研究をまずやらなければならない。その上に立って、将来の利用、たとえば鉱物資源もあるに違いありませんが、その利用に至る前の過程をいま踏みつつある。その間に、身近な観光産業ということに利用していいものかどうか、そういうことについて、ときおり問題が提起されておるような状況でございます。
#83
○岩動道行君 今度、百キロおきに氷の厚さの測定をされたようですが、大体どれくらいあるものですか、厚さというものは。
#84
○参考人(村山雅美君) いま、ソ連ないしアメリカのデータで一番よくわかっておりますのは、南極点でございます。南極点は、高度二千九百メートルと言われておりますが、このあたりの氷の厚さが千七百メートルございます。すなわち、千メートルくらいの地盤の上に千七百メートルくらいの氷が乗っているのが、非常に確実なところでございます。同時に、この中間にプラトー基地がございます。これはアメリカの基地でございますが、このあたりは三千六百メートルくらいの標高がございますが、氷の厚みは大体二千メートルくらいある。そういうような、すでにわかっている点をもとにいたしまして、われわれは百キロおきに測定をいたしておったわけでございますが、そのデータについてはまだ精査を必要といたしますが、たとえば富士峠、一番高いあたりで、このあたりの氷の厚みが大体二千メートル、これを測定しております。これについては、いろいろのデータから換算いたしまして正確な数字を出さなければなりませんが、おおむね昭和基地から南極点に至る間は、大体二千メートルくらいの厚みが一番厚いところだろう。すなわち、二千メートルの氷の下に、なお千五百メートルくらいの陸地がある。しかも、この東南極大陸全体がそれくらいの高さの基盤を持っている。その上に二千メートル近い氷の大陸がかぶさっているという地域であるということはわかったわけであります。それに引きかえまして、左側になりますが、西側の大陸は、パーマ半島、南極半島と書いてありますが、こういうような形が、一ぺん氷を取ってしまうと、むしろ島になってしまう。南極点を中にして右のほうは大きな大陸、左のほうは小さな島が寄り集まった多島海、そういったようなかっこうを推定されております。東南極と西のほうでは、そういう意味からいいましても、雪氷、あるいは氷厚の調査について、重要性といいますか、これはまた困難性にもつながるわけでありますが、この辺は、まだまだ一、二回の調査では確認できない状況でございます。
#85
○森元治郎君 さっき聞き漏らしたのですが、ロケットかなにかという、打ち上げを日本でやるやつを、ここで待っていて観測するのか、ここで上げるのか、どういうことだったか、これが一つ。
 もう一つは、東経三十度、四十度の幅は、極点に向かっての三角の面積というのは、事実上日本の勢力範囲みたいなものなのか。よその、隣のソ連のほう、あるいはオーストラリアのほうに行ってもかまわないのか。
 それから、この基地は日本はいま一つですが、予算や人員や準備ができるならば、よその国のように、ほかにも持ちたいのかどうか。お金やすべてが許すならば持ちたいのかどうか。
 もう一つは、これは五、六カ国入っていますが、研究結果は相互に通報し合うものか、あるいは、国連みたいなものがまん中にあって、みながそこへ共同研究を公開して、そこへレポートを送って一冊の本として各国に配るのか、あるいは、独立でやるために、競争のようになって、自分だけで研究成果をふところにしまって凍結をしておくのか、ここらのところを、まず伺います。
#86
○参考人(村山雅美君) 森先生の御質問について、順々にお答えいたします。
 ロケットにつきましては、日本でも国内ですでに何回か上げたSの一六〇というロケットを打ち上げまして、約九十キロの高さ、七十五キロくらいの水平面、そういうところをねらいまして、当初はオゾン観測、それから電子密度の観測、これを来年の観測項目にしぼりまして行ないます。さらに再来年、第十二次の観測にいきますと、予定といたしましては十二月にロケットを上げまして、これには、Sの一六〇からさらに二一〇でございますか、大きなものに移りながら観測いたします。しかしながら、南極という特殊事情もありますために、十分内地で使いこなしたロケットで、しかも間違いのない観測を現地で行ないたい、こういうことで現在その計画を進めております。
 二番目の御質問の、東経三十度ないし四十度でございますが、この間の地域といたしましては、これは、ぴったりこれ以外に出てもいけない、はずれてもいけないというものではございません。国の力また基地の活動力によりまして、この範囲を調査したらどうかという、南極研究科学委員会という機関、これは国際学術連合の下部機構となりますが、これのほうから各国に出て、IGYできめられた場所でございます。それの第一のデューティといたしましては、この沿岸のまず地図をつくるという、これは各国割り当てられた地図をつくることを一生懸命やっております。この間の観測地図につきましては、西のほうについては、いわゆる東経三十度に近いほうの地域につきましては、まだ、われわれのほうでも、その実施がおくれております。しかしながら、このきめられた範囲といいましても、事実ソ連と重なっている場所がありますし、西のほうにつきましては、ベルギーと重なった地域もございます。そういった意味から申しまして、主としてこの範囲を受け持つということで、あまり固い、融通のきかないものではございません。特に南極点に至る間の線上地域につきましては、ごらんのとおり、各国の調査隊も入っている事情でございまして、こういうものを一国の力だけではとてもできない事情でございますので、一応各国協調の上にこういうような観測をやっております。ただし、こういうような仕事をするぞという、事前の通告といいますか、了解、こういったものはお互いに出し合っております。
 それから三番目の御質問の、内陸基地の問題でございますが、これは、二番目の御質問にも関連し、われわれといたしましては、そのわれわれの受け持つ範囲内に、われわれの輸送力の続く範囲内で内陸基地を設けたいと思っております。これは、目的といたしまして、内陸の気象だとか雪氷のことはもちろんでございますが、昭和基地の特徴でありますオーロラ観測、こういったものを、内陸と沿岸にあります昭和基地とで同時に行ないたい、行なえばもっと効果的であろう、こういう見地から、内陸に基地を設けたいと考えております。しかしながら、内陸の奥深く基地を設けるには、どうしても相当の輸送力を持つ航空機を持たなければなりません。そういうような航空機を持つことについてなかなか難点がございますので、われわれ雪上車で行ける範囲、すなわち、昭和基地から三百キロもしくは五百キロの範囲ならば、雪上車で一夏の輸送がきくかと思いますので、このあたりに、予算と人員のめどがつきましたら、内陸基地ということを考えております。
 次に、研究結果の問題でございますが、これは、先ほど先生からお話がありましたとおり、全くオープンになっております。IGY以来、各国に資料センターが設けられまして、たしか十三ないし十五くらいの項目に分かれているかと思いますが、ソ連とアメリカが、この全項目の資料センターを引き受けております。日本は、そのうち四つほどの資料センターを引き受けまして、その資料が全部そこに入っております。大体四つほどの資料センターを持っているのは、イギリスとフランスかと記憶しておりますが、その南極活動の度合いに応じまして、資料センターを自分のところに持っている。そして各国の資料が全部集まる。また、自分のところにない資料は、同時にアメリカ、ソ連の資料センターに入る。これはもちろん、全部オープンで、公表し、また、共同研究の材料になっております。
 以上で、四つの御質問についてのお答えといたします。
#87
○矢追秀彦君 二点だけお尋ねします。
 先ほど氷の話が出ておりましたけれども、氷が、縦に割りまして、氷の層といいますか、その硬度とか、あるいは密度ですね、そういった点が、大ざっぱにいって、どういうようになってきているのか。その生成の過程とか……。
 もう一つは、医学調査について、特に今回第九次で力を入れられた点、それから隊員の方の健康管理で特に問題点となった点がありますれば、お教えいただきたいと思います。
#88
○参考人(村山雅美君) 雪氷調査の御質問につきましては、きわめて、何といいますか、原始的な観測方法をやっているようでございます。これは、日本のみならず、各国ともそうでございます。と申しますのは、氷の断面を切りまして、そこに塗料を吹っかけて――色の、インクでごさいます。インクをかけて、それをトーチランプで溶かしますと、ちょうど年輪のように筋がつきます。夏の間は南極といえども日が強い。日が強いが解けることはありません。マイナス二十度、三十度でございますから。解けないかわりに、いきなり昇華をいたします。いきなり気体になるわけでございます。気体になったものが霜になりまして、それが固まります、表面に。それが夏の間。冬に比べますと、濃い、年輪でいえば詰まっているところが出るのでございます。そういうようなところをずっと見ますと、一年にどのくらいの雪が降ったであろうかという、層が年輪としてあらわれてまいります。その層からサンプラーで雪を取りまして、その密度、硬度をはかります。結果といたしまして、密度と申しますと、それを水に換算しますと、おおむね四十ミリくらいの降水量がございます。御承知のように、東京あたりですと千六百ミリございますが、これに比べますと、きわめて少ない。また、昭和基地付近の海岸でございますと四百ミリぐらいございます。しかしながら、南極の内陸に行きますと、その十分の一、四十ミリほどしかない。これは非常に雪の降水量が少ないところでございまして、白い砂漠と申しますが、まさに砂漠と同じような降水量しかないということでわかるわけであります。同時に、雪の降る量、また雪の性質等につきましては、それぞれの方法で研究をしております。ただし、それからさらに、雪が降って、降り積もって氷になるわけでありますが、これが大陸氷になって、その大陸氷がどのような消長、あるいはどのような動きをするか、そういうことをいろいろ調査をしております。これもきわめて原始的な方法だと思いますが、一定地点に竹の棒を立ててまいりまして、一年後して、それをトランシットではかって、どのくらい動いているか。それによって、大陸氷の流れ、すなわち一年に数キロのオーダーで流れるわけでありますが、そういうことを調査しております。
 次に、御質問の医学調査でございますが、医学調査につきましては、昨年来のIBPのプログラムといたしましては、昭和基地で初めて本格的に医学調査をやったのでございます。そのために、IBPの項目に応じまして、生理学、ビールス、それから寒気に対応するアクリマタイゼーション、寒地順応と申しますか、こういったような項目をあげまして、一名医師をふやしまして、これが医学研究に従事いたしました。同時に、今回の極点旅行におきます長期にわたる内陸旅行におきまして、われわれのからだがどういうふうな変化を来たすか、あるいはその寒さの適応性はどういうふうになったかということを、われわれに参加しました外科の医者がこれを担当いたしまして、IBPの示された方法によって調査をしております。具体的に申しますと、われわれは全員体重を減らしております。特に私が一番最高年齢者でございますので減り方が大きい。同時に、回復のほうもおそい。若い者ほど減り方は少ないし、回復も早いという、そういうのが今回の例でございます。同時に、その間の皮下脂肪の調査。これは妙な話でございますが、実はみんな参加者は入れ墨をしております。入れ墨というと語弊がございますが、その場所は、一年間にわたって調査するために、おなかのところに一つ、腕のところに一つ、背中に一つ、この三カ所に墨を入れております。入れ墨みたいなものなんですが、その場所を毎月はかりまして、皮下脂肪の状態を調べております。それによりますと、旅行に行っている者は全員、皮下脂肪が、個人差はありますが、非常に減っている。基地におった者は皮下脂肪がむしろふえている。こういうことで、寒さに対する順応と申しますか、対抗性があらわれていると思います。また、白血球、赤血球の分布の問題につきましては、高度に対応するために、赤血球、白血球分布が変わってきている。これは旅行隊において特に著しい。また、血圧等についても、旅行隊、また基地に残っている者を毎月調査をいたしまして、寒さ、高度あるいは疲労、こういったものから、IBPの項目に従って調査を進めているような実情でございます。
#89
○委員長(宮崎正義君) まことに長い間の御苦労、ほんとうに現地に行った方でなければ、私ども想像にも及びつきません。それで、先ほど村山参考人から、遠慮しながら、予算面についてこうしていただきたいということを、単なる、中央あたりに観測研究所をつくってもらいたいというようなお話がありましたのですが、差しあたりまして、これだけのものはどうしても――今後の研究を続けていく、探険を続けていくのには、最小限度これだけのものは必要である、そういうような御希望があれば、この際、はっきりおっしゃっていただきたい。飛行機等があればなおかついいというお話も伺いましたけれども、最小限度今回の探険を通じての来年度の分に対する考え方、要望等を承っておきたいと思います。
#90
○参考人(村山雅美君) たいへんありがたい御質問をいただいたのでございますが、まず第一に、極地研究所を早急につくっていただきまして、中央におきまして計画的に南極観測の事業を効果的に実施する場をつくっていただきたいことが一つ。
 もう一つは、船田先生からの御質問だったと思いますが、輸送力についてはある程度限度に来ております。今後、昭和基地におきます観測活動も次第に大規模化してまいります。そのために、輸送力を拡充する何らかの方法を持ちたい。具体的には、「ふじ」を二回往復することも考えられますが、輸送力を増大するための御配慮をいただきたい。
 この二つでございます。
#91
○委員長(宮崎正義君) 七田国際学術課長に申し上げておきます。きょうの趣旨をよく文部大臣に達しておいてもらいたいと思います。
 村山参考人に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は貴重な御意見を拝聴させていただきまして、ありがとうございました。委員一同にかわりまして、厚くお札を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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