くにさくロゴ
1968/05/07 第61回国会 参議院 参議院会議録情報 第061回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第7号
姉妹サイト
 
1968/05/07 第61回国会 参議院

参議院会議録情報 第061回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第7号

#1
第061回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第7号
昭和四十四年五月七日(水曜日)
   午前十時十八分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     松井  誠君     前川  旦君
 五月七日
    辞任         補欠選任
     前川  旦君     松井  誠君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本茂一郎君
    理 事
                伊藤 五郎君
                源田  実君
                鶴園 哲夫君
                松下 正寿君
    委 員
                河口 陽一君
                長屋  茂君
                増原 恵吉君
                山本 利壽君
                川村 清一君
                達田 龍彦君
                松井  誠君
                渋谷 邦彦君
                春日 正一君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
       国 務 大 臣  床次 徳二君
   政府委員
       総理府特別地域
       連絡局長     山野 幸吉君
       総理府特別地域
       連絡局参事官   加藤 泰守君
       法務省民事局長  新谷 正夫君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省欧亜局長  有田 圭輔君
       外務省条約局長  佐藤 正二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       水産庁漁政部長  安福 数夫君
       国土地理院地図
       部長       村岡 一男君
   参考人
       北海道領土復帰
       北方漁業対策本
       部長       守屋  治君
       根 室 市 長  横田 俊夫君
       千島歯舞諸島居
       住者連盟常務理
       事        梅原  衞君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○沖繩における免許試験及び免許資格の特例に関
 する暫定措置法案(内閣提出、衆議院送付)
○北方領土問題対策協会法案(内閣提出、衆議院
 送付)
○沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する
 調査
 (沖繩の諸問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本茂一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。
 まず、参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 北方領土問題対策協会法案の審議のため
       北海道領土復帰
       北方漁業対策本
       部長       守屋  治君
       根 室 市 長  横田 俊夫君
       千島歯舞諸島居
       住者連盟常務理
       事        梅原  衞君
 以上三名の方々に本日参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(山本茂一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(山本茂一郎君) 次に、沖繩における免許試験及び免許資格の特例に関する暫定措置法案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。
 床次総理府総務長官。
#5
○国務大臣(床次徳二君) ただいま議題となりました、沖繩における免許試験及び免許資格の特例に関する暫定措置法案につきまして、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。
 政府は、沖繩の本土復帰の日に備えて、本土と沖繩の一体化をはかり、沖繩住民の経済的、社会的福祉を増進するための各般の施策を講じてきたのでありますが、今回、これら施策の一環として、沖繩と本土との各種免許資格の一体化につき成案を得ましたので、ここに法律案を提出することとした次第であります。
 この法律案による免許資格の一体化措置の趣旨とするところは、沖繩が復帰するまでの暫定措置として、本邦の免許資格にかかる試験を沖繩で行ない、また、沖繩の免許資格者に本邦の免許資格を与えることにより、沖繩が復帰する際に起こる摩擦をできる限りなくそうとするものであります。
 沖繩と本邦の免許資格制度の間には、その趣旨または運営において現に相違のあるものもありますので、これらの諸般の事情をしんしゃくいたしまして、慎重に検討した結果、政府といたしましては、さしあたり、司法試験、公認会計士試験等十八種類につき本邦の試験を沖繩で行ない、また、土地家屋調査士、公認会計士等二十七種類につき沖繩の免許資格者に本邦の免許資格を与える等特別の措置をとることとしたのでありますが、沖繩の免許資格者に本邦の免許資格を与えるに際し、税理士等の場合に見られるように、沖繩と本土との制度に若干の相違のある免許資格につきましては、一定の講習の受講を条件として与えることといたしております。
 また、この法律案で措置したもののほか、立法措置によらず、政令以下の命令によって免許資格の一体化措置を講ずることができるものにつきましては、必要な準備が整い次第逐次実施してまいる考えであります。
 次に、免許資格の一体化のために必要な手続につきましては、沖繩において行なう本邦の試験にかかる願書の受理または沖繩で本邦の免許資格を得るための申請に関する事務を日本政府沖繩事務所で行なうこととする等、沖繩における受験者、申請者の便宜をはかった次第であります。このような本土政府のとる措置に対応して琉球政府においてもしかるべき措置がとられることになっております。すなわち、日米琉三政府の代表をもって構成され、那覇に設置されております琉球列島高等弁務官に対する諮問委員会は、昨年六月四日、日本政府及び琉球政府の免許資格の一体化の必要性を認め、高等弁務官に対し必要な措置をとるべき旨を勧告いたしており、琉球政府としては、本土政府の措置と並行してこの勧告の内容を実現するための必要な措置につき鋭意検討を進めていると承知いたしております。また、この法律施行のために必要な各種の通知、試験の広報等の行政措置につきましても琉球政府の協力を得て行なうことといたしております。
 最後に、今回措置いたしましたもの以外の免許資格につきましても、条件が整備され次第、順次本法律案第三条の規定に基づき政令で指定し、または、所要の立法措置をとることにより本土と沖縄との免許資格の一体化の促進をはかってまいる所存であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
#6
○委員長(山本茂一郎君) 続いて補足説明を聴取いたします。
 加藤参事官。
#7
○政府委員(加藤泰守君) ただいま総務長官から提案理由の説明がありましたように、この法律案は、沖繩の本土復帰の日に備えて行なわれる本土と沖繩の一体化施策の一環として、各種の免許資格の一体化に関する措置を定めようとするものでありますが、このような措置の必要性につきましては、日米琉諮問委員会において検討され、琉球列島高等弁務官に対して七十六種類にわたる本土の免許資格につき、免許資格試験の沖繩における実施、本邦または沖繩の免許資格者に対する沖繩または本邦の免許資格の付与等免許資格の一体化に関する措置を認め、その実現のため必要な措置をとるべき旨の勧告がなされており、琉球政府は、これに従って対応措置をとることになっております。
 政府が本土と沖繩との一体化施策の一環としての免許資格の一体化措置としてこの法律案において取り上げておりますものは、法律によるもののみでございまして、政令、省令等に設けられております免許資格につきましては、当該政令、省令等の改正措置によって免許資格の一体化措置を実施する予定でございます。
 以下、この法律案の内容を具体的に御説明申し上げます。
 この法律案は、総則、沖繩において行なう試験及び申請等の特例、各資格法規に関する特例、及び雑則の四章並びに附則から成っております。
 まず、総則の規定のうちの第二条の定義規定でございますが、この法律における用語のうち特に申し上げておきたいのは、免許資格の定義でございます。すなわち免許資格とは、個人が一定の技術、技能または知識を必要とする職業に従事するために法令上必要とされる免許、登録等にかかる資格を言うものとされております。したがって、この法律で規定する免許資格とは、免許または資格にかかる登録等は含まれておらず、この登録等を適格に受けることができる地位を意味するものでございます。
 次に第二章は、本邦の試験を実施することに関する規定でございます。
 第三条は、この法律の一つの柱となっております沖繩において本邦の試験を実施する旨の規定でございます。
 本邦の免許資格と沖繩の免許資格を一体化する最良の方法は、言うまでもなく、本邦の試験を沖繩において実施することであります。これにより沖繩の受験者は、一つの試験で、本土においてもまた沖繩においても認められる資格を取得することが可能となるからでございます。この条においては、大臣またはこれに準ずる行政機関の実施する司法試験等十八種類の試験を沖繩において実施することを明らかにしております。
 これ以外の免許資格の試験で、大臣またはこれに準ずる行政機関の実施するものにつきましても、制度の整備等がはかられ試験を実施することができるようになりますれば、政令で定めることによって試験を実施することが可能となるように措置されております。
 なお、医師、歯科医師等の国家試験が含まれておりませんが、これは、昨年の医師法等の改正により、学校卒業と同時に国家試験を受けられることになりましたし、また、沖繩の大学には現在医学部がございませんので、ただいまのところその必要がないと判断したからでございます。
 これらの試験にかかる受験資格のうちには学校の卒業資格等が必要とされるものがございますので、沖繩の学校を本土のそれに相当する学校とみなす措置を第五条で規定するとともに、あわせて沖繩の免許資格者が本土の免許資格を得る場合、学校の卒業資格が必要とされることもありますので、この場合も同様に適用することといたしております。
 なお、第三条第二項に規定していますように、この免許資格試験の実施については、試験の要領等を琉球政府に通知することとし、琉球政府の広報等の協力を期待しております。
 また、第三条第三項、第四条及び第六条において、この免許資格試験の願書の受理は沖繩事務所において行なうことができることとするとともに、沖繩の免許資格者に本邦の免許資格を認めるための申請書も沖繩事務所を経由して行なうことができることとしたこと、手数料等についてアメリカ合衆国通貨をもって納付する道を開くこととしたこと等、沖繩に居住する受験者、申請者の便宜をはかることといたしております。
 次に第三章は、沖繩で与えられております各免許資格に必要な特例を認め、本邦の免許資格に取り入れるようにいたしております。
 その内容は、それぞれの実態によって扱いが異なっており、沖繩の免許資格をそのまま本邦の免許資格として認めるか、あるいは講習の課程を修了することを条件に認めるか等の差がございます。
 この章で取り上げられ特例を設けられている免許資格は、法務省関係としては土地家屋調査士、大蔵省関係として公認会計士及び税理士、厚生省関係として理容師外七、通商産業省関係として電気主任技術者外四、運輸省関係として海技従事者、郵政省関係として無線従事者外二、労働省関係として社会保険労務士、建設省関係として測量士外三並びに自治省関係として行政書士及び危険物取扱主任者でございます。
 勧告において取り上げられている免許資格のうち法律で処理すべきものにつきそれぞれ具体的に検討を加え、今日直ちに実施できるものはすべてこのような特例を設けようとしているわけでございますが、受験資格等に著しい相違があり直ちに一体化することが困難なものであること、沖繩において本邦のそれに対応する制度がないものであること等の理由から今回の措置に含まれていないものもあります。これらにつきましては、今後制度の整備等相まちまして、さらに検討を加え適切な措置をとってまいりたいと考えております。
 第四章は、雑則でございます。
 まず三十一条は、沖繩の免許資格者に対して本邦の免許資格にかかわる免許、これに類する処分を含みますが、または登録をした場合には、その事務を管理する行政庁または団体は、その旨を内閣総理大臣を経由して琉球政府に通知することを定めております。琉球政府も免許資格の実情を知ることが必要でございますので、この規定を設けたわけでございます。
 第三十二条第一項は、免許等の取り消しに関するもので、沖繩の免許資格者が、本邦の免許資格にかかわる免許または登録を受けた後、沖繩の免許資格が、不正の事実に基づいたこと及び沖繩の法令による絶対的欠格条項に該当したことを理由にその免許または登録を取り消されたときは、琉球政府の通知に基づき、本邦の免許または登録を取り消すことにしております。
 これは沖繩の免許資格者に本邦の免許資格を与える制度の趣旨にかんがみ、明らかに疑う余地のない重大な欠陥により沖繩の免許資格にかかわる登録等が取り消されるような事態になった場合には、本邦の免許資格にかかわる登録等も取り消し得るようにしたものであります。
 なお、沖繩の免許資格者が、沖繩においては登録しないまま、本邦の登録をした後、同じような事由によりまして、沖繩の免許資格者となることができないことが判明した場合または当該免許資格を有しないこととなった場合もあり得ますが、この場合には琉球政府の取り消し処分がございませんので、第二項を設けて本邦の登録の取り消しをすることができるようにしたわけでございます。
 第三十三条は、この法律の実施に関し必要な事項はそれぞれ主務省令で定めることとしたものでございます。
 最後に、附則において、この法律は公布の日より起算して六カ月をこえない範囲内において政令で定める日から施行するものとしたほか、この法律の規定による免許資格試験または申請に関する事務を沖縄事務所において行なわせるために必要な総理府設置法の一部改正を行なうことといたしております。
 以上簡単でございますが、この法律案の内容を補足して御説明申し上げた次第であります。
#8
○川村清一君 ただいま補足説明されました文書でございますが、配付されているものの説明事項とだいぶ違うんです。それは数字まで違うんです。これではいけないと思います。ですから、いま読まれました補足説明を、どっちが正しいのか、そちらが正しいのならあらためて印刷し直して後刻配付していただきたいと思います。
#9
○委員長(山本茂一郎君) ただいまの説明は、いま説明されたものを正しいといたします。配付いたしましたのは参考書類でございますから、後ほど印刷し直して御配付をお願いいたします。
 以上で政府側の説明は終わりました。
 本法案に対する質疑は、後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#10
○委員長(山本茂一郎君) 北方領土問題対策協会法案を議題といたします。
 本案に対する政府側の説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は、順次御発言を願います。
#11
○川村清一君 まず最初に、法案の条章に従いまして逐条的に御質問申し上げたいと思います。一応お聞きしましてから、また掘り下げて質問を展開したいと思います。そういう御了解の上に立って御答弁願いたいと思います。
 最初、第一条の「目的」でございますが、この文章に、「北方領土問題対策協会は、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題について啓もう宣伝及び調査研究」、その以下掲げておるわけでございますが、「北方領土問題その他北方地域に関する諸問題」、つまり、「北方領土」というものと「北方地域」と、こう二つのことばが使われておるわけです。これは具体的にどういう内容をさしておるのか。「北方領土問題」というのはどういう内容で、「北方地域に関する諸問題」というのはどういう問題なのか、これをひとつ具体的に御説明をお願いします。
#12
○国務大臣(床次徳二君) 北方領土問題とここに考えておりますものは、まず地域は、色丹、歯舞国後、択捉、この四つの島を対象としておるわけであります。この四つの島は、わが国の固有の領土でありますので、その返還を求めるという考え方で、領土問題として特にこれを掲げておるのであります。
 なお、北方の旧領土につきましては、いろいろと残されておりまするが、この四つの島は平和条約二条によりましてわが国が放棄してないところで、国後から以南のものは固有の領土として考えられている。ウルップ以北は平和条約二条によりまして放棄した、平和条約におきまして放棄した地域と考えております。したがって、わが国が当然固有の領土として返還を要求いたしますのは、主張いたしますのは、この間申し上げました歯舞群島、色丹、国後、択捉の四つの島を考えております。したがって、「北方領土」という場合には、この四つの島を対象として返還運動並びにこれに関する宣伝あるいは調査研究等を含んでおる次第であります。
 なお、「その他北方地域に関する諸問題」とありまする「北方地域」は、実は考え方からいきますると、これはただいまの固有の領土以外の放棄いたしました地域に対しましても、漁業権あるいは住民の問題等もありますので、「北方地域」としてこれを取り扱ったのでありまして、前のほうはいわゆる外交的なものであるし、あるいは「北方地域」という表現のほうは国内的の取り扱いというふうにお考えいただければいいと思うのでありますが、なお、「北方地域」といたしましたのは、総理府が当初設置せられました当時におきまして使いました用語でありまして、北方の地方の漁業権、住民等の問題を総理府において取り扱ったのでありますが、そのときに固有の領土としてわが国が要求する分、それから、その他、いわゆる所属の放棄はいたしましたけれども、所属の明瞭でない問題という点が残されておったもんですから、その当時「北方地域」という字を使いまして、そうしてこの地域は政令でもって区域を定めると、ただいま申し上げました歯舞、色丹、国後、択捉その他政令でもって定める地域というふうにいたしたのでありまするが、いろいろと北方問題は未解決の問題がありましたので、その後政令におきましては、「その他政令で定むる地域」というものは政令できめておりません。さような形になっております。これちょっと、二通りに使っておりますことがいかにもその点ダブっておるような感じでありまするが、そういうような取り扱いをいたしておるのであります。なお、この本法におきまして対象としておりまするのは、この協会が、実は北方領土問題、それからもう一つの問題といたしまして、従来の北方協会の取り扱っておりました事柄をやはり対象といたしておるのでありまして、これはもっぱら第二項に書いてありますが、第二項は、従来北方協会といたしまして、「北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律に基づき、北方地域旧漁業権者等その他の者に対し、その営む漁業その他の事業及びその生活に必要な資金を融通することを目的とする」という形によりまして、十億円の資金をもちまして北方協会というものが設置されておったのであります。しかし、今回新しい対策協会を設立するにあたりまして、旧北方協会をそのまま全部吸収いたしまして、そして事業の対象にいたそうとするわけでありまして、したがって、この二者を、いわゆる領土返還問題とそれから従来の旧北方協会の問題を合わせた形に並列して書いておるわけであります。
 なお、御参考までに申し上げますると、北方問題に関しましては、従来の南方同胞援護会におきましても領土問題の一環として取り上げておったのであります。今後はやはりこの協会におきまして、南方同胞援護会の取り扱っておりましたものも吸収して実行するように考えております。
#13
○川村清一君 北方領土並びに北方地域というこの地域の問題につきましては、後刻また掘り下げていろいろ質問したいと思いますし、また、きょう午後外務大臣がおいでになりますので外務大臣にお尋ねしたい、こう思っております。ですから、先に進みまして、次に、「北方地域に生活の本拠を有していた者に対し援護を行なう」とありますが、「北方地域に生活の本拠を有していた」ということは、これは北方地域に住居を持っておった者に限定するのか。それとも、北方地域に住居は持っておらないけれども、漁業その他が北方地域において行なわれておった、つまり、住居は北方地域以外にあったけれどもその生活は北方地域の仕事に依存しておったと、こういう二通りのものがこれに含まれるわけでありますが、それらのものも含めて考えられておるかどうか。
#14
○国務大臣(床次徳二君) この色丹、歯丹、国後、択捉の区域に住んでおった者が旧北方区域に関連しております者の大部分でありますが、なお、漁業権の問題も若干あるわけです。なお、ウルップ以北におきましても、わずかの戸数でありますが住居を持っておった者もあります。そういう者を対象として考えておりますが、御質問の問題につきましては、主としてこれは住居を有しておった者を考えておりますが、しかし、ただいま申し上げましたように、漁業を営んでおりまして住所はそこになかった者もある、関連しております者がありますが、しかし、漁業を営んでおって住所を持たない者もある。そういう者も含んでここに考えておる次第であります。
#15
○川村清一君 それでは、くどいようですけれども、第二項の「北方地域旧漁業権者」というものがありますね。そこで、ここで確かめておきたいことは、大体総務長官の御答弁で理解はできたわけでありますが、ちょっと極端なことを申し上げますと、戦前択捉漁業株式会社なんというのがございまして、その会社の本拠は函館市にあるわけですね。ところが、漁業権はこの北方地域にある。そこで漁業権の行使は北方で行なっておる。それから、もっと極端に言うと、ウルップ島以北におきましては、結局冬はとても住めないところでございますから、したがって、夏分だけ向こうに参りましてね、番屋をつくってそこに住んで漁業だけやると、そうしてもう冬が近づくというとみんな北海道に引き揚げてしまう、こういう人もこの中には含めているのでありますか。長官の御答弁では、そういうようなものも含まれておるようなふうに理解されるわけでありますが、この点はどうなんですか。
#16
○政府委員(山野幸吉君) 北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律のいわゆる「旧漁業権者等」という場合には、ウルップ以北のものは入らないわけでございます。で、いわゆる四島の歯舞、色丹、国後、択捉というところに限定して申し上げますれば、これはこの北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律の第二条で四項に分けてそれぞれ該当者を定めてございますとおり、一の場合には、これこれによって「昭和二十年八月十五日において漁業を営む権利を有していた個人」――漁業権を持っていた個人と、こういうことになっておりますし、それから二号では、「漁業権の貸付けを受けていた者(その者が法人である場合には、その構成員又は出資者たる個人)」、こうなっております。それから三号では、「二十年八月十五日まで引き続き六月以上北方地域に」――四島に――「生活の本拠を有していた者」ということでございますが、四号には、それらの配偶者とか親族等が掲げてある。この四つの場合でございます。
#17
○川村清一君 局長のいま御説明されたことを私承知しておるわけです。承知しておりますから、こういうことを御質問しておるわけでございます。で、御承知のように、いま局長の御答弁の中に、北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律の第二条には、「北方領土」といったようなことばは使ってないわけですね。「この法律において「北方地域」とは、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島をいう」とはっきり限定しているわけですね。この法律では、第二条で、北方地域とはこうだと範囲を限定している。ところが、ただいま御提案になっておる法律には、「北方領土」及び「北方地域」とあるから、そこで最初、「北方領土」とは何なのだ、「北方地域」とは何なのだとお聞きしたところが、「北方領土」というのは歯舞色丹、国後、択捉であると言って、「その点北方地域」というのはどこなんだと言ったら、ウルップ島以北であると、そして前の四島は、これはサンフランシスコ平和条約第二項C項で放棄していないのだ、あとのほうは放棄した地域であると、こういうふうな御答弁があったのですよ、いま長官は。でありますから、北方地域に生活の本拠を有している者の「北方地域」とはどこなんだということを、この法律では、「北方地域」というのは、いまおっしゃった北方領土をさしているのであります。ところが、「北方領土」というものと「北方地域」ということばを使っている。「北方地域」とはどこだと言ったらウルップ島以北だと言うから、それなら北方地域に生活の本拠を有している者のとはどういうものか。もちろん、ウルップ島以北にも本拠を有していた者もありますけれども、局長御承知のように、冬季全然住めないところでございますから、ですから、夏分だけ行って漁業をやりますけれども、冬になると北海道に引き揚げてくる、こういう生活をしていたわけです。そこで、本拠を持たないけれども漁業に生活を依存していた者もこの中に入っているのかということを私お尋ねしたわけです。そうしたところが、局長の答弁と食い違うので、そこで、これをはっきりしていただかないとちょっと困るわけですね。
#18
○国務大臣(床次徳二君) その点は、先ほど私が御説明申し上げましたのが若干不明瞭であったと思います。この点は訂正いたしたいと思います。
 総理府の設置法におきましては「北方地域」というものの定義が実は書いてあるのです。これに対しましては、国後、択捉、それから歯舞、色丹及び政令でもって指定する区域と内閣総理大臣の定める地域というのがくっついているわけです。しかし、そのときにいろいろ問題がありましたものですから、まだ領土問題等明瞭でありませんので、実はその後内閣総理大臣はその四島以外の地域を指定しておらないのであります。抽象的には、だから、ちょっと広いかのように見られるのでありますけれども、実は四島だけでもって分かっている。特に、この旧漁業権者の場合におきましては四島だけを取り扱っておるという形でございまして、以北の問題につきましては、したがって、対象になっていないということを明らかに申し上げます。なお、不足な点は局長からさらにそのいきさつを説明させたいと思います。
#19
○政府委員(山野幸吉君) ただいま総務長官からお説明ございましたように、昭和三十四年と思いますが、総理府設置法で北方地域ということを所管に入れましたときに、政令で、「北方地域」とは、歯舞、色丹、国後、択捉その他、内閣総理大臣の定める地域と、こういうことに政令で書いてございますが、内閣総理大臣がその他の地域は指定しておりません。したがいまして、実質的には北方地域は歯舞、色丹、国後、択捉、こういうことになっておるわけでございます。ところが、今回おそらく初めて法律上の用語として「北方領土問題」ということばを使ったわけでございますが、この「北方領土問題」は、総務長官の御説明にもありましたように、歯舞、色丹、国後、択捉はわが国の固有の領土であってソ連に返還を求める地域という、外交上の面からとらえたことばが「北方領土問題」ということでございます。それで、「その他北方地域に関する諸問題」と、こういう点につきましては、総理府設置法で使ってある北方領土という地域をとらえまして、実質的には同一でございますが、この法律の形式論としては広くなる余地になっておりますが、実質的にはこの四島でございますが、これは主として内政上の北方領土問題が片づかないために、内政上いろいろの問題が起こっております。ただいま御指摘になったような、いろいろ引き揚げ住民の問題その他の問題がございますから、内政上処理する問題がたくさんあるわけでございます。それを総理府の所管にしたということから、この「北方地域に関する諸問題」という書き方をいたしたわけでございます。
#20
○川村清一君 そうしますと、最初長官の御説明されたことと内容的に非常に違っておるわけです。それはきわめて重大な問題ですから、第一条のその解釈のしかたが、長官の解釈のしかたとそれから局長の解釈のしかたと全然違うということじゃ、ちょっと困るわけですね。局長の御答弁では、「北方領土」というその概念と「北方地域」という概念、法律上の用語は違うけれども、その地域の範囲、これは同じだ。いわゆる「北方領土」も歯舞色丹、国後、択捉の四島である。「北方地域」も歯舞、色丹、国後、択捉の四島である。それは総理府設置法できちっときまっておると、こういうような御答弁です。しかし、さらに問題を発展していきますと、ウルップ島以北に――先ほど長官がおっしゃったのですがこれは現に若干住んでおった人がいるのですね。たとえば、ずっと北のシムシュ(占守)島あたりには人は住んでおりませんけれども、択捉の隣のウルップ島あたりには住んでおった人がいるのです。こういう人々、それは完全に生活の本拠を持っておったわけです。こういう人は該当しないということなんですか。その「生活の本拠を有していた者に対し援護を行なう」と言うが、これは援護の対象にはならないわけでございますか。
 それからもう一つ、「北方地域に関する諸問題の解決」――領土問題の解決ということは、このことばを聞いただけでもすぐわかるわけでありますが、「北方地域に関する諸問題の解決」というのは、具体的には一体どういう内容を持っておるのですか、これもひとつ御説明いただきたいと思います。
#21
○政府委員(山野幸吉君) 前段の御質問でございますが、法律のたてまえから申しますと、これは入らないということになるわけでございます。
 それから、後段の「北方地域に関する諸問題」についてという問題でございますが、これは北方地域に関する内政上の諸問題のあることは、これは川村議員十分御承知のところでございますが、こういう問題を逐一解決していくためにこの啓蒙宣伝あるいはその他調査研究を行なうということでございまして、いろいろ従来も漁業権者、引き揚げ住民の援護の問題、それから、あるいは地籍の問題戸籍の問題その他いろいろな問題がございますが、そういう問題について十分実態を調査して啓蒙指導し、そうして逐一解決していくということを言ったものでございます。
#22
○川村清一君 われわれも理解はできるのですが、どうもいまの御答弁では、せっかくこの法律をつくったたてまえから言ってちょっと納得できないのです。ということは、「北方地域」というのは、これはもうはっきりいままでの法律においても歯舞、色丹、国後、択捉の四島に限定されておる。しかし、実際問題として、この島以外にも住んでおったし、生活の本拠を持っておった人がいるわけですから、この人々も今度は含むのだろうと、こう思って実は私はこの法律を見たのですよ。非常にやはり考え方が前進したと思ってね。ところが、もうこの四島以外に住んでおった者、四島以外に生活の本拠を持っておった者、これは絶対含まないのだ、いままでと同じだということであれば、新しいこういう立法措置をした趣旨からいってちょっと納得しかねるわけです。せっかくこういう立法に踏み切ったわけでありますから、やはりその点は長官のおっしゃったことが私は正しいと思うのですよ、長官。これはウルップ島以北をわが固有の領土と主張する、しないは、これはまたあとから議論しますけれども、これは別として、かりに政府が言う四島に限ったといたしましても、現にこれは固有の領土であったわけですから、ここに住居を有しておった日本人がいるわけですね。そうして、引き揚げてきて非常に生活困窮者もいるとするならば、この四島以外の土地に住んでおったんだから、もうこの法律の適用はないんだ、北方協会の援護措置の対象外であるというようなことであるならば、これは、せっかく法律をつくったたてまえから言ってちょっと納得できないわけですね。やはり、これは長官のおっしゃったように、やはりそういう者も含めると、こういうふうに解釈すべきではないか。また関係法律も、それで少し支障があるならば、それを改正すべきではないかと私は思うんですが、どうなんですか。
#23
○国務大臣(床次徳二君) ただいまのお話、局長から具体的に申し上げましたものが現実の姿でありまするが、なお、つけ加えて申しますると、これが用語の問題が、先ほど申し上げましたように、総理府設置法第三条第二号に規定する北方地域の範囲を定める政令の用語は、四島以外に総理大臣の指定するものというふうについておって、その後総理大臣が決定してないために、四島に限られた形になっておりまするが、しかし、一方北のほうの問題に対しましては、現実に南方同胞援護会等におきましては千島会館の経営等をずっと行なっております。そこで、今度のこの協会におきましては、千島会館の運営というものも実は吸収するわけであります。したがって、実質的には北のほうの問題も扱っておるというわけでございます。このいわゆる旧漁業権者の法律の施行範囲につきましては、先ほど局長から御説明申しました、限られたものではありますけれども、千島会館の経営というものはここでもって行ないますために、実質的におきましては、やはり以北の者につきましてもいろいろと援護なりそういう会館の運営等を通じまして仕事は行なう、さようにお考えいただきたいと思います。
#24
○川村清一君 法律運用につきましては、十分その点は御配慮をいただきたいと思います。
 次に進みますが、第二項の「北方地域旧漁業権者」、これの内容でございますが、これはこういうふうに解釈してよろしゅうございますか。旧専用漁業権者、旧定置漁業権者、それから旧特別漁業権者、これを全部含むと、かように解釈してよろしゅうございますか。
#25
○説明員(安福数夫君) 漁業権の種類といたしましては、そういったものは全部含むと、こういうことでございます。そのほかに入漁権もございます。漁業権じゃございませんが、そこに入ります。
#26
○川村清一君 そうすると、入漁権者もやはり北方協会あたりの援護の対象になるわけでございますね。
#27
○説明員(安福数夫君) そのとおりでございます。
#28
○川村清一君 それではずっと進みまして、第三条でございますが、「協会は、主たる事務所を東京都に置く」と、こういうふうにうたわれておりますが、これは東京都のどこに置くのでございますか。総理府特連局の中に置くのでありますか。別な建物の中に置くようなおつもりなんですか。どこに置くんですか。
#29
○国務大臣(床次徳二君) これは、特連局以外に民間のところを借り受けまして、そこへ事務所を設置する予定でございます。
#30
○川村清一君 第二項の「必要な地に従たる事務所を置くことができる」とありますが、従たる事務所を置くお考えなのか。置くとするならば、これはどこへ置くお考えなのか。
#31
○国務大臣(床次徳二君) 従たる事務所は、北海道札幌に置くつもりであります。これは、従来から北方協会がやはり札幌を中心として活動しておりました。そして、旧漁業権者に対するいろいろ援護事業を営んでおりました。それをそのまま吸収いたしますので、やはり今後置きます新しい従たる事務所におきましても、従来どおり北方協会の仕事は継続して行なってまいりたいと考えておるわけです。
#32
○川村清一君 それでは、札幌に置く従たる事務所でございますが、ただいまのお話のように、従来北方協会の事務所があるわけでございますが、今度北方領土問題対策協会、この法律制定によってこの協会ができた場合に、この協会の中に従来の北方協会が吸収されるわけでございますが、そうしますと、従来の北方協会のやる業務にこの業務が加わっていくわけです。この場合に札幌市の従たる事務所というのは、北方協会のいままでの事務所とこの対策協会の事務所と別々に持っていくのか。一つの事務所の中に二つを吸収されるのか。いわゆる業務運用の事務的な面においてどういうような機構になるのか御説明願いたい。
#33
○政府委員(山野幸吉君) いま長官から御説明ありましたように、現在の北方協会の事務所を今度は北方領土問題対策協会の札幌事務所にするわけでございます。したがいまして、形の上からは、いまの御指摘になりましたように、従来の北方協会の仕事に北方領土問題対策協会の新たな広報宣伝その他が加わるという形になりますが、札幌の事務所の場合は、主としてこの従来の北方協会関係の事務を主体にして運営していきたい。しかし、やはり北方領土問題対策協会との関連は当然従たる事務所でございますから、本部との連絡その他ができるような若干の措置はとっていく。しかし、あくまで北方協会というものを母体にしたこの新しい協会の札幌事務所にして運営していきたい。そして、いわゆる領土問題の啓蒙宣伝、世論の啓発その他は主として東京で運営していくというぐあいに考えておるわけでございます。
#34
○川村清一君 それらの問題は、また後ほどいろいろお伺いして議論をしたいと思います。
 次に第七条へ行きますが、ここに役員規定があるのですね。でこの役員は、南方同胞援護会と対比いたしまして、どういうような方々の中から役員を選任されるというようなお考えでございますか。
#35
○国務大臣(床次徳二君) 南方同胞援護会とは別個に考えておりまして、なお、この協会において特に特色と考えられますのは、先ほど申し上げましたように、北方協会を吸収してまいりますので、したがって、吸収した関係を見ながら今後の新役員をつくってまいりたいと思います。その人数等の取り扱い、また常勤、非常勤の区別等につきましては、政府委員からお答え申し上げます。
#36
○政府委員(山野幸吉君) これは、会長はこの協会ができますと、南方同胞援護会が取り扱っていました北方領土関係の仕事はこちらへ全部移るわけでございます。したがいまして、この北方領土問題対策協会の会長としてふさわしい人を新たに任命するということになります。それから、「副会長二人」と、こうございますが、やはりこのうちお一人は、従来の北方協会の運営関係にいろいろ造詣の深い方をお選びしたらということを目下検討中でございます。それから、理事は常務理事を二人置くことにいたしまして、お一人は北方協会の従来の業務に非常に知識経験のある方をお願いし、一人は、主として本部の全体の北方領土問題の啓蒙宣伝その他の協会の業務運営上知識経験を持っておられる方を考えておるわけであります。いま考えておりますのは大体そういうことでございます。
#37
○川村清一君 私は現在のこの北方協会の役員を承知しております。で、それは北方協会というものの業務内容がもう限定されておるのですから、簡単に言えば、一つの金融機関みたいなもの。ですから、いまの役員はそれなりに意義があるものと思いますけれども、今度はなかなか広い内容の仕事をしていかなければならない、こういう立場があります。それから、南方同胞援護会の役員をずっと見ますというと、学識経験者あたりには相当広い層からお選びになっていただいております。そういうようなことを勘案してみますというと、単にいままでのような、北方協会の役員を選ぶといったような観点からではちょっともの足りないような感じがいたしますので、やっぱり南方同胞援護会の役員をお選びになったような立場に立って、この重大な北方問題をいろいろと解決するための業務を力強く進めていかなければならないということを考えてみるならば、相当考えられたやり方をしていただきたいものだと、こう思って質問をしているわけであります。この点ひとつお考えいただきたいと思います。
#38
○国務大臣(床次徳二君) ただいまの御意見、まことにごもっともで、私もさように考えております。実は南方同胞援護会を設置いたしましたときにはやや小さい形で、だんだん発展してまいりましたが、特に北方問題につきましては今後大いに充実しなければなりません。さしあたり北方協会を吸収いたしますが、しかし、北方協会の仕事と比べますると著しく舞台が変わりておりますので、今回の新幹部におきましては、御意見もありましたごとく、十分にこの領土問題等を解決するにふさわしい人を会長に選んでまいりたいというふうに予定しておる次第であります。なお、現在の機構等におきましても、必ずしもこれで将来十分かどうかということにつきましては問題もあるかと思うので、今後ともこの点は十分に検討してまいりたいと思います。
#39
○川村清一君 ずっと進みまして、第十九条に第一条の目的を達成するため業務内容が規定されておるわけでありますが、第一条にいろいろ書かれておりますが、これらをもう少し具体的に、どういうことをなされるのか。それから、それらの業務を行なうとするならば当然予算がこれについてこなければならない。それらの業務を行なうためにもどれだけの予算を持っておるのか。こういう点について御説明を願いたいと思います。
#40
○政府委員(山野幸吉君) この業務の内容及び予算でございますが、今年度は初年度でございまして、十月一日発足いたしまして半年間を予定しておるわけでございます。したがいまして、予算としましては半年分が千八百六十三万円でございます。この事業といたしましては、啓蒙宣伝費に二百万、それから世論調査、あるいは北方領土の資料展、これは毎年やっておりますが、資料展覧会、それからあるいは生業研修費とか、北方領土の返還国民大会、これもここ二、三年毎年一回やっておりますが、そういう国民大会、それからあるいは映画の製作とか、そういうことをいろいろ考えております。まあ、できますなら全国各ブロックにおいて何らかの形で北方領土問題の啓蒙宣伝等ができるように持っていきたい、かように考えております。もちろん、初年度でございますので、必ずしも十分ではございませんが、さらに今年度の半期の実行を見ました上で、明年度はひとつしっかりした予算をつくってまいりたいと、かように考えております。
#41
○川村清一君 この次の委員会あたりに詳しく掘り下げていろいろ質問申し上げますけれども、局長は、ここに書かれている業務内容、こういうことは現に北海道や根室市、あるいはまたいわゆる団体がやっていることは御承知だと思う。そういう団体であるとか、根室市であるとか、それから北海道であるとか、こういうところがいままで従来やってきてこのためにどれくらい金を使っておるか。これは御承知だと思うのですが、どうですか。
#42
○政府委員(山野幸吉君) はっきりした数字はここに持っておりませんが、大体ごく概算としまして、北海道では約三千万前後ではないかと思います。根室市ではおそらく四、五百万程度ではないかと考えております。
#43
○川村清一君 ひとつこの次までにこれは調べてください。きょう午後参考人が来ますから、これは根室市長も来ますし、北海道の領対本部の本部長も来ますから、局長そんなことをおっしゃっても、実際に出している方ですから、もっと数字が出てきますよ。私の持っている資料では、そんなくらいの額ではとうていないわけです。
 今度はそれでははっきりお尋ねしますが、いままで国のこういうものはなかったわけですね。啓蒙宣伝、調査、こういうことは全部北海道、根室市、あるいは団体であるいわゆる北方領土復帰期成同盟、これに対しましては国も少し補助出しておりますがね、年間四百万程度。それから社団法人の千島歯舞諸島居住者連盟、こういうような団体がありますね。おのおの相当な事業をやっているわけですが、こういうものを全部含めますと、やはり膨大な金を使っているわけです。そうしますと、今後はどういうことになるのですか。いままでは北海道や根室がやっておったりあるいはこういう団体がやっておったことを、一切この協会がやるわけですか。
#44
○国務大臣(床次徳二君) 今回の考え方は、従来から各団体あるいは地方公共団体でもって御努力を願っておりましたが、さらに中央におきましては十分補ってまいりたいというふうに考えておりまして、やはり各関係者におきましても本協会と呼応してひとつこの問題の徹底に当たっていただきたい、かように考えておる次第であります。
#45
○川村清一君 この業務の中には、いわゆる北方領土、北方地域の居住者の非常な願いを入れまして、墓参を毎年やる――これはもっともソ連政府当局の了解を得なければできないわけです。まあ残念ながら遂に去年は実現しなかった。おととしまではやっているわけですね。そうすると、その墓参といったような事業も、これは根室市がおもにやっておりますが、これはこの業務の中に入っておりませんけれども、こういうこともやられるのですか、この協会は。
#46
○政府委員(山野幸吉君) 実は、従来行ないました北方墓参の経費につきましても、政府としては直接は負担をしていないのでございまして、まあ外交折衝その他は当然やりますが、この経費については国としては現在持ってきていないわけでございます。したがいまして、今年度墓参が実施になりましても、やはり従来の方法でやっていただくということに相なろうかと思います。
#47
○川村清一君 いや、私のお尋ねするのは、経費のこともさりながら、そういう墓参といったような事業がこの協会がやられる事業内容に含まれるようにならないわけでございますか。従来どおりこの墓参のような事業は根室市なり北海道にまかせきりということでございますか。こういう協会がせっかくできたのは、そういうことも協会が取り扱ったらいいんじゃないかと私思って御質問をしているわけです。
#48
○政府委員(山野幸吉君) わかりました。この事業主体としましては、この協会ができました後におきましては、協会にこの事業の実施をやらせるということも確かに考えられるのでございまして、そういう方向でひとつ検討してみたいと思います。
#49
○川村清一君 北方地域におる人々、特に北方領土から引き揚げた方々の一番の念願は領土復帰でございますが、しかし、領土返還というものはなかなか容易でないということもこれはまあわかっておるわけでございまして、そこで領土返還までの暫定措置としてぜひ安全操業を実現してもらいたい、これが悲願でございます。したがって、北方地域の方々のそういう希望をいれてそういう事業を強力にやっていくためには、やはりこの安全操業というようなものを取り上げてこれは当然しかるべきじゃないかと思うのですが、これもこの業務の中に含まれておるのかおらないのか、この辺がわからないのですが、どうです、これは。
#50
○政府委員(山野幸吉君) まあ、安全操業という問題は、従来からもこれは当然で国でやってまいりましたし、この協会ができましても、安全操業を確保していく責任は国にあるわけでございますから、国のそれぞれの担当機関で実施していくということになろうかと思います。しかし、この協会が、安全操業を確保していく上で国の施策に即応して側面的にいんろな面で協力申し上げるような、そういう協力のしかたに相なろうかと考えるわけでございます。
#51
○川村清一君 一番してもらいたいことを一番強力に取り上げていただいておらない、直接的に取り上げていただけないことは残念なんです。そこで私はこの次までに資料を出していただきたいのですが、この十九条に「北方領土問題その他北方地域に関する諸問題について定期刊行物その他の印刷物の発行、講演会、講習会、展示会等の開催その他必要な啓もう宣伝を行なうこと」と、こううたっておりますが、これはどういう一体内容のことをなされるのか、たとえば展示会なんということは何の展示会をなされるのか、講習会というのは一体どういう講習会をなされる御計画なのか、これだけではちょっとわかりません。学校の講習会ともこれは違いましょう。ですから、この事業のための講習会というのはどういう内容の講習会か、そういうことがわかるようにひとつ資料出していただきたい。それからまた、いろいろ質問したいと思います。
 時間がありませんのでずっと飛びまして、第二十八条の第二項でございますが、「主務大臣は、第二十一条の規定により事業計画の認可をしようとする場合には、第十九条第一号若しくは第二号に掲げる業務又はこれに附帯する業務に関する部分について、あらかじめ、外務大臣に協議しなければならない」とうたっているわけでございますが、「外務大臣に協議しなければならない」ということは、これはどういうことなんですか。外務大臣に指示を受けるというようなことがあるわけでございますか。この点、御説明願いたい。
#52
○政府委員(山野幸吉君) 御指摘の点は、この第十九条第一号、第二号は、やはり北方領土の領土返還の問題が中心でございまして、したがいまして、こういう政府関係機関が啓蒙宣伝その他の諸事業を行なう場合においても、やはり国の外交の配慮のもとに基調をそろえていく必要があると思うわけでございまして、したがいまして、そういう面から外務大臣とよく協議をして間違いのない領土返還の啓蒙宣伝をやっていく、こういうことでございます。
#53
○川村清一君 私に与えられた時間がもう過ぎますので、あとの質問はこの次の委員会に残しまして、最後にお聞きしておきたいことは、この特連局の機構と、それから、その特連局のどこがこういう北方問題を事務的に取り扱う窓口になっておるのか、これをひとつ御説明願いたいと思います。
#54
○政府委員(山野幸吉君) 現在、特別地域連絡局におきましては監理渡航課というのがございまして、その監理渡航課で、北方係を置きまして北方問題を担当しております。担当職員は、課長、ほか五名でございます。
#55
○川村清一君 実は私、この北方問題を特連局のどの課が取り扱っているのかと思いまして、それからもう一つは、特連局にどういう課があるのかと思いまして電話帳を調べてみた。そしたら、特連局には総務課というのと援助業務課というのと監理渡航課というのと三つしかないのですね。そこで、その三つのうちのどれが北方問題を取り扱っておる窓口になっているかわからないものですからそれをお尋ねしたわけですが、そこで今度は沖繩問題と比べて私お聞きするのですが、沖繩の問題はどこの課が取り扱っていらっしゃいますか。
#56
○政府委員(山野幸吉君) 沖繩問題は、これは御承知かと思いますが、私の局におきましては総務課、援助業務課――援助業務課がこれは予算その他技術援助全体をやっております。総務課が総括一般をやっております。それから監理渡航課のうち、渡航関係はこれは沖繩の渡航の関係でございます。それから監理の面としまして南方同胞援護会の監理はこの監理渡航課でやっております。で、いま申し上げましたように、団体としましては従来は北方協会を監理渡航課で監理をした、そのほかに、北方係を監理渡航課に五名置いて北方の関係をやってきた、こういう形になっております。
#57
○川村清一君 いまの局長の御答弁聞いてよくわかりました。沖繩問題については総務課、それから援助業務課、監理渡航課、この三つの課が全部沖繩問題。もっとも、特別地域連絡事務局というものが沖繩問題を対象にして設立されたものでありましょうから、これはそれでいいと思うのでございますけれども、さて北方問題がこれだけ大きく浮かび上がってきたときに、北方問題はそれじゃ特連局のどの課が取り扱っているかということを聞きましたら監理渡航課だと言う。その監理渡航課のうちの渡航というのは何をやるのか。沖繩の渡航なんです。まさか北方の渡航はないわけなんですから、沖繩の渡航なんです。それから監理というのは何かというと、これはいまのお話によると南方同胞援護会の監理で、つけ足しに北方協会の監理と、こういうこと。そうしますと、もうこの特連局の中には北方問題をいろいろ事務的に取り扱ってくれる窓口というものは、つけ足しにあるだけで、監理渡航課でまあ北方係というものを四人か五人置いてやっていらっしゃると、こういう局長の御答弁でございますが、これでは長官、せっかくこういう法律をつくって、北方問題というものがいま大きく浮かび上がってきておる。北方問題を解決するための行政的な窓口というものがあまりに狭いということは、あなた方は、口では北方問題北方問題北方領土、北方領土ということをおっしゃっているけれども、腹の中では熱意を持っておらない、ちっとも。これは邪推かもしれませんが、そう思われてもいたし方がないんではないかと思うわけでございます。と申しますのは、やっぱりこの北方問題でずいぶん現地のほうから陳情にいらっしゃる方もいるわけでございますけれども、聞いてみるというと、どうも特連局へ行ってもあまり親切に話も聞いてくれないし、取り扱ってもくれないという批判があるわけです。そこで私お尋ねしてみたんですが、長官、こういうことではいけないと思うんですね。せっかくこういう法律をつくって、北方問題解決のために腰を据えて力を入れてやろうと、こういう政府の考え方ならば、もう少し行政の機構もそれにふさわしいものをやっていただかなければ、これは特連局は沖繩だけ――これはいいんですよ、これはいいんですけれども、しかし、沖繩にしたってもっと力を入れなきゃなりませんが、しかし、それに比べてあまりに北方のほうは貧弱じゃございませんか。どうですか、長官、お考えをお聞かせいただきたい。
#58
○国務大臣(床次徳二君) いま御意見がありましたごとく、北方問題に対しましては、全体の形が、国家といたしましても取り組み方が少なかったと思う。また、現実の北方問題に対するいろいろ事務等も、今日におきましては大部分北海道その他の地方に分散されていまして、また一部は農林省等にありまするが、したがいまして、行政の窓といたしまして、まことに少なかったという点につきましては御指摘のとおりであります。しかし、今後北方問題が非常に拡大してまいりますと、少なくともその意味におきまして北方協会を解消いたしまして領土問題として大きく取り上げてまいったわけでありますが、特連局自体におきましても、今後の発展の推移にかんがみまして、この点は十分にひとつ検討してまいりたいと思う次第でございます。
#59
○委員長(山本茂一郎君) 政府側に申し上げますが、先ほど川村君から資料の提出の要求がございました。これはようございますか。
#60
○政府委員(山野幸吉君) 提出いたします。
#61
○河口陽一君 私から北方領土問題対策協会法案について二、三お伺いをいたしたいと存じます。
 まず、昭和三十六年に制定されました北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律によって制定されておる北方協会を発展的に解消して、今回新たに北方領土問題対策協会を設置しとありますが、今後行なおうとする世論の高揚とか、貸し付けやあるいは援護、啓蒙宣伝、調査研究などの業務は北方協会でもなし得ると思いますが、新たに「北方領土問題対策協会法」にする基本的なものをまずもってお伺いいたしたいと存じます。
#62
○国務大臣(床次徳二君) 北方協会が従来有意義な仕事をしておられることにつきましては私ども認めるのでありまするが、今後積極的に領土問題等の解決のために、これを中心として拡大するということにつきましてはいろいろ検討いたしたんでありまするが、やはり中央におきまして新しくつくって、そうして吸収するほうがむしろ適切ではないか。法律の手続的には北方協会を発展的に解消するということになっておりますが、しかし、事業はそのまま全部吸収して、そうして新しい機構によってこれを行なうほうがより適切でないか、かように考えまして本法を提出した次第であります。
#63
○河口陽一君 先ほども論議をされて、私も同感なんですが、北方問題に対して政府が積極的でなかったということ、さらに、先ほど論議されました北方領土問題と北方地域の問題、いままでは「北方地域」ということばを使われて、その中身は歯舞、色丹、国後、捉択の四島であった、こういう説明でございますが、この協会を発展的に解消して領土問題対策協会という法律にするからには、この法文を見ても、明らかに十九条には「北方領土問題」と「北方地域」の問題が区別されて説明されておるわけでございます。したがって、先ほどの川村委員の御質問に対する政府当局の答弁を聞きますと、内容がおぼつかないような感じがして不安を感ずるんですが、これはやはり「領土問題」は四島に限定をしておる。法文に示されておるとおり限定しておる。「北方地域」ということはそれ以外の島々に関係するということを明確にしてこの北方問題対策協会で今後取り扱っていくという方針が明確にされないと、私ども従来の協会と同じような感じがするわけでございまして、協会でも北方地域全体を対象としてやっておった。ところが、領土対策協会になって四島に限定されるような印象の答弁は、非常に不満足に私は聞き取ったんですが、この点について再度明確に答弁をいただきたいと存じます。
#64
○国務大臣(床次徳二君) 同じ法文の中へ領土問題とそれから北方地域と二通り書いてあることにつきましての御質問で、先ほど川村先生にもお答え申し上げたところでありまするが、「北方領土問題」という場合におきましては、これは外交問題としての領土返還問題を対象として取り上げているというふうに御了解いただきたいと思います。「北方地域」の問題は、北方協会その他の例もありますごとく、国内的の問題において「北方地域」としてこれを表現しておる。しこうして、北方地域と返還を求める北方領土とは区域はどうかということになりますが、現実におきましてはそれが合致しておる。ただ、総理府設置法等におきましては、先ほど申し上げましたように、「北方地域」につきましては、四島のほか政令で定める地域とありましたが、現実的にはこれが指定されておりませんものですから、四つの島に限られておる。まあ、これは過去の法制の沿革等もありますので、そういう形になっております。
 なお、今回におきましては、旧漁業権者に対するいろいろ北方協会のやっておりました仕事をそのまま継承しておりますので、法文におきましてもそのままの字を使っておるような次第であります。
#65
○河口陽一君 次に、一昨年の七月にコスイギン首相が提案いたしました中間的措置についてその後モスクワでは中川大使がソ連当局との間に、また東京では外務当局と駐日ソ連大使との間に、それぞれ折衝が続けられておると思いますが、交渉の進展状況及び双方の主張点は現在どのようになっているか。また、ソ連側はいわゆる中間的取りきめについて何らかの具体的内容を明らかにしたのか。また、これに対しわがほうは具体的対策を何らか提案いたしたのか、この点についてお伺いをいたします。
#66
○政府委員(有田圭輔君) お答えいたします。御指摘のとおりに、一昨年、三木当時の外務大臣が訪ソされましたときにコスイギンとの間に会談が行なわれまして、その際、コスイギンがいわゆる中間的措置ということを言われたわけであります。で、その後、モスコーにおいて中川大使を通じまして数回にわたって先方に接触いたしまして、またその後におきましても、昨年、国連総会で三木大臣がグロムイコ外相に会う機会がありましたので、そのような機会を通じまして先方の考えを確かめましたわけでありますが、遺憾ながら、その先方の領土問題に対する立場というのは依然としてかたいということが漸次はっきりしてきております。わがほうといたしましては、この中間的措置というものの真意というものが一体いかなるものであるか必ずしもはっきりいたしませんし、また、先方からもこれが具体的にどういうものかということの説明はございませんでした。したがいまして、中川大使を通じましての交渉も、実は、この領土問題を含めて日ソ間の懸案というものを総ざらいするというような立場から中川大使を通じて接触してまいりましたわけであります。しかし、ただいま御説明申し上げましたように、日ソ間における最も基本的、最も重要なる問題の北方領土の問題につきましては、漸次、先方の立場が明らかになってきたところによりますと、依然としてかたい。これはやはり一連の国際取りきめその他においてすでに解決済みであるというような考え方が表面に出てきておりますわけで、遺憾ながら、この面における進展は見られない次第でございます。昨年のグロムイコ・三木大臣の国連における話し合いの後には、たまたま、当時の運輸大臣である中曾根大臣が飛行機の故障でソ連に参りましたおりもコスイギンと会う機会がございました。その際にも中曾根当時の大臣からこの領土問題についての話をされましたが、その際にも、それらの問題はソ連側としては解決済みであるというような感触のことが言われておるようでございます。しかしながら、われわれといたしましては、領土問題というのは、先ほど申し上げたように、日ソ間のマイナス面の一番大きなものであり、どうしても解決しなければならない問題でありまして、今回、この北方領土対策協議会というものが特別につくられるようなことになりましたのも、この目的促進のための一つの重要なるステップだと思いますので、国内的にはそのような世論のバックをもとにしまして、さらにソ連側に強くこの点を迫ってまいりたいと思っております。国際情勢もいろいろ変化いたしますので、さらに、この日ソ間の懸案につき一歩一歩解決をしていきまして、しかもなおかつ、この最も基本的な問題の解決がなければ日ソ間の基本的な友好関係の確立ということはむずかしいのであるということをとくと先方に納得させましてこの問題の解決をはかりたいと、このように考えております。
#67
○河口陽一君 昨年の六月に米軍チャーター機が択捉に強制着陸をさせられた事件の際、米政府は択捉をソ連領土、そういう発表をしたのでございます。これに対し外務省当局は直ちに米政府に抗議をし、米政府から謝罪があったといわれておりますが、米国が誤りを認めたからよいようなものでございますが、これは大きな問題を含んでいると思うのでございます。うかつにもせよ、米政府が択捉をソ連領土と間違えたことは、日本の主張に対し最も同情的な米国でさえその程度の認識しかなかったことを物語っていると私どもは考えておるのでございます。まして、その他の国々においては推して知るべきものがあると存じますが、この点において政府は国際的にPRがあまりにも足りない、政府は一そうの努力をしていただきたいと私は考えておる次第でございます。まあ、ただいまの御答弁によりまして、ソ連政府の態度は一向に前進をしない、領土問題はもうすでに解決済みであるという、非常に厚い壁であるということは私どもも承知をいたしておるわけでございますが、何とか条理を尽くして主張を貫く態度を堅持していただきたいと思います。もちろん、交渉の戦術としては時に応じ柔軟な策をとらねばならぬこともあろうが、歯舞色丹、国後、択捉はあくまでも日本領土であるという基本線を踏まえて安全操業やその他の解決をはかる努力を望みたいと存じます。
 そこで、領土権の主張には国民の一致した強い支持と国際世論のバックアップが必要だと思われますが、その点について若干お尋ねをいたしたいと存じます。
 政府はかねがね北方領土問題に関する国民世論の喚起の必要性をうたっていますが、これまでの経緯を見れば、その努力はあまりにも少な過ぎたのではないかと存じます。ことに沖繩の場合と比較してその感を私は禁じ得ないのでございます。もちろん、沖繩には百万近い同胞が現に居住しているのに、北方領土には一人も居住しておらないということもあります。また、元居住者も一万数千人で、そのほとんどが根室市周辺に居住しているため、その声が中央にはあまり届かないという事情もあろうし、現に沖繩は近く返還されるめどがつくというのに、北方領土は全くその当てがつかず、さらに日夜拿捕に苦しんでいるのであります。根室市の場合、いわゆる北方領土対策として昭和四十年度には、これは私の調査でございますが、三千二百万円、四十一年度には三千三百八十万円、四十二年度には三千三百八十一万円を苦しい市の予算の中から支出しているのでありますが、昭和四十二年度の内訳を見ますれば、数字は午後市長さんからいろいろ御説明あると思いますから内容のこまかい点は省きますが、かようなことで、先ほども川村委員から御質問がありました墓参費についても市は多額の負担をいたしておる。あるいは拿捕船員留守家族見舞い金などにも相当の見舞い金を出しておる。これに対して国の補助金は一銭もなかったのであると伝えられておるが、特に領土返還運動費などは当然国が支出すべきものではなかったのか。幸い政府のこの北方領土問題対策法案によりまして、先月行なわれた北方領土問題連絡協議会では、地方交付税の算定基準に歯舞色丹、国後、択捉を含めて交付する方針をきめたといわれておりますが、また、今度の新協会の発足により、全国的な規模の啓蒙宣伝を行なうことになると思いますが、少なくとも特定の市町村に不当な負担をかぶせることのないよう、真に国民的な世論の盛り上がるよう特段の努力を望みたいのでございます。
 次に、国土地理院の地図の問題でございますが、これまで歯舞、色丹は日本領土として載せられていたが、国後は島の半分だけ、択捉は全く載せられていなかったのでございます。さらに、一般の地図帳あるいは地理の教科書でもこの点はきわめて不徹底だったと思われるのでございます。この点において政府はあまりにもルーズではなかったんですか。今後はどのような手段をとられるのか。私どもとしては、万全の策を立てて、教育上にも日本の本土であるということを徹底させるのでなければ、この盛り上がりは期待するものが非常に脆弱になると存じますが、御所見を伺いたいと存じます。
#68
○国務大臣(床次徳二君) 御指摘のごとく、北方問題に対しては政府といたしましても今日まで十分な努力をしておったとは申し得ないのでございます。しかし、幸いにいたしまして非常に世論も進んでまいりました。今回本法案を提案するということができるようになりましたことは、これは非常な進歩だと思いますが、しかし、この程度の段階でもって、なお今日のような予算程度で必ずしも十分だとは申せません、今後とも一そうひとつ充実してまいりまして、そうして今後の北方問題の解決のために努力いたしたいと思っておる次第であります。
 なお、今日まで御協力を願いました地元の北海道あるいは根室市等におきましてたいへんな御負担をかけておったのであります。十分ではございませんが、交付税等において努力してまいり、特別交付税を根室市に出しておったことは御指摘のとおりでありますが、なお、北海道庁に対しましては今後十分に普通交付税の立場におきまして検討いたしまして、そうして必要な経費は国からも負担するというふうに努力してまいりたいと思います。
 なお、本協会が充実されてまいりますならば、地元の方に御迷惑をかけておったものにつきましても、ある程度まで本協会自体が努力できると思いますが、しかし、できるだけひとつ地元のほうにおいても御協力を仰ぎたいと思っております。また、地図の問題につきましては、国土地理院のほうからも申し上げるわけですが、今日までこれが積極的に領土の面積に算入されておらなかった。こういう点につきましては、まことにおくれておったので、過般の各省連絡協議会におきまして、本協会の設立を契機といたしまして本年度から掲載するようにいたしたいと思います。関係の政府委員からこの点につきまして御説明申し上げます。
#69
○説明員(村岡一男君) 国土地理院発行の地図についてお答えいたします。
 国土地理院が刊行しておる地図には、いままでも、既存の資料によりまして国後、択捉の島を載せてございます。ただ、これは全く技術的な話でございますが、図の大きさの関係で択捉島全島を収録することができなかったのでございます。それで、ただいま五十万分の一の地図を改訂しておるのでございますが、これには収録の形式を変えまして、択捉全島が同じ縮尺で載せられるように作業を進めております。
#70
○河口陽一君 はみ出るから削ったというような答弁では、全く私は納得がいかぬのですが、これは日本の固有の領土で、はみ出たから削ったなんて不見識な答弁では全く残念しごくです。今後それは改めるとおっしゃられるのですが、どうかそういうことのないように今後きしっとやっていただきたいと思います。
 それから、四島の元居住者の中には本籍地をこの四島に移したいという強い希望が出ておるということを聞いておるのですが、ところが政府は、実益がないということでこれを取り合ってくれない、これを認めない方針でおられる、こういうことでございますが、確かに、日常生活からすれば本籍はどこにあっても支障はないことになりますが、この四島に本籍を認めようとすれば、根室市あたりに戸籍事務所を設ける必要がある。事務的な経費は若干かさむことになると存じます。日本が領土権を主張するその強いささえをつくるためには、むしろ積極的にかかる希望にこたえるべきではないでしょうか。事務的な経費や手間が若干かさむということでこれを放置するという考え方は、私どもとしては非常に残念に存じますし、また、こういう戸籍を事務所を設けてきちっとやっておるというところに世論も高まると私どもは考えるわけで、元島民に対しこれらの処置をとっていただきたい。現に小笠原については元島民に対し東京都に戸籍事務所を設けたという実例があるのでございますから、こういう面から見ても北方領土問題はもう投げやりになっておったということになるわけでございまして、こういう新しい協会ができましたら、こういう事務所もひとつ設けて、そうして世論の喚起に役立つように積極的な態度で臨んでもらいたいと存じますが、政府のお考えをお尋ねいたします。
#71
○政府委員(新谷正夫君) 北方領土地域に本籍を持っておられました人たちの戸籍事務を特別の事務所を設けて取り扱ったらどうかという御質問でございます。これは沖繩関係におきましては沖繩関係戸籍事務所というものができておりまして、また小笠原につきましても、それに準じまして小笠原関係戸籍事務所というものができたことは事実でございます。しかし、ここでちょっと、沖繩・小笠原関係と北方領土との関係の相違点がございます。その点を若干御説明申し上げたいと思います。小笠原は沖繩と同時に措置されたのでございますが、沖繩は、御承知のとおり昭和二十年の四月にニミッツの布告第一号というのが出まして、当時の日本の法令は原則的にそのまま適用する、こういうことになりまして、現地におきましても、戸籍事務ももちろん従前どおり、市町村も従前どおり、こういうことになっていたのでございます。沖繩は御承知のようにアメリカの海軍が占領いたしました。小笠原も同様に米軍が占領いたしました。おそらく考え方としましては、沖繩の場合も小笠原の場合も同様であったであろうと、こう思うのでございます。
 その後昭和二十一年の一月二十九日に、御承知の行政分離の覚書が出ました。ここではっきりと日本の行政権が及ばないことになったわけでございます。その後昭和二十三年に総司令部の覚書によりまして、沖繩と小笠原につきましては、戸籍事務所を設けてその事務を本土で行なうことになりまして、昭和二十三年の政令の第三百六号というのがございます。これはポツダム政令でございます。これによりまして戸籍事務を内地でとることになったのでございます。ところが、北方領土におきましては、ソ連が占領いたしましてそのような措置ももちろんとられておりません。現在、ソ連側はソ連の領土であると主張し、また、わがほうはもちろん日本の固有の領土であるという主張が相対立しておるわけであります。現在の北方領土地域の法的な地位はどうかということになりますと、歯舞は別といたしまして、色丹、国後、択捉、これは現在地方公共団体に属さない特別の地域でございます。こういうふうにされておるのでございます。御承知のとおり、戸籍事務は市町村にその本籍を設ける、こういうことになっておるのでありますが、沖繩、小笠原の場合には、米軍のあるいはアメリカ合衆国側の措置によりまして、現地に本籍があるという前提に立ってポツダム政令によって、戸籍事務所を設けるに至ったのでありますけれども、北方地域におきましてはそのような措置がとれないわけでございます。これが第一点であります。それから、沖繩におきましては、本籍人口、終戦当時大体九十三万人ぐらいあったと思いますが、そのうちの約十三万人の方が本土で生活しておられました。小笠原につきましてもかなりの人が本土に引き揚げてまいりましたが、まだ現地にも相当の人が残った、こういう事実になっております。そういたしますと、これらの人たちの戸籍事務をどこかで統一して正確にとっていく必要がある、こういう実際上の必要性も生まれてきたのでございます。ところが、北方領土につきましては、全員北海道なり本州に引き揚げておられまして、戸籍も現にそれぞれの地域に、市町村に籍を移して日常の生活をしておられるわけでありまして、特段に小笠原なりあるいは沖繩と同じように措置をとらなければならない必要性も乏しいというのが第二点でございます。
 さらにその次のもう一つの問題は、現在、北方領土におきましては、事実上ソ連側が占拠いたしております。沖繩、小笠原につきましては、降伏文書なりあるいは行政分離の覚書等によりまして、日本政府側もその法的な地位は承認した上で措置がとられたのでありますけれども、北方領土におきましてはその主張が相対立したまま今日に至っております。この事実状態を法律的に認めるという結果が出てくるのではあるまいかということが一つの問題ではないか、こういうことが考えられるわけであります。もちろん、北方領土の返還も一日も早く希望いたすのでございますけれども、少なくともその状況下において、法律上の措置をとって事務所を設けて戸籍事務を行なうということは、見方によれば前進とも見られますが、見方によればまたこれは一歩後退とも見られるのであります。この辺非常に微妙な問題であろうと思います。したがいまして、北方領土地域につきまして戸籍事務所を特別に設けて戸籍事務を取り扱うということにつきましては、かなり慎重な考慮を要するというふうに考えている次第であります。
#72
○河口陽一君 ただいまの御答弁を承って、事務所を設けることが後退になるということは私どもは理解できないので、そういう事務所を設けて日本固有の領土である、返還になればこれらの希望する者は現地に復帰するのだ、こういう強い態度があって初めて世論の支持も高まってまいると思うのですが、そういう事務所を設けることが北方領土返還の要求に後退になるということは私どもはちょっと理解できないのですが、どういう点をとらえてそうおっしゃられるのか。
#73
○政府委員(新谷正夫君) 先ほども申し上げましたように、先生のお考えによれば、これは前進であるということになろうかと思いますが、見方によれば一歩後退ということも考えられる、こう申し上げたわけであります。その理由は、事実上、現在ソ連が占領しておるこの事実というものは、これは客観的事実として厳然としてあるわけでございます。これは事実として認めるということは当然でございます。ただ、これを法律制度として、そういう状態に置かれておるということを法律上認めてしまうということがはたしていかがなものであろうかという趣旨で申し上げたのであります。ちょっと先ほど申し落としましたが、歯舞につきましては、これは御承知のとおり、現在、根室市に編入されております。したがいまして、市の一部であります以上は、これは地方公共団体になっておるわけでございます。この地域に本籍を設けることについては、もちろん差しつかえないわけであります。したがいまして、戸籍事務所を設けて戸籍事務を取り扱うかどうかということよりは、むしろ地方公共団体にするかしないかということのほうが根本の問題であろうということも考えられるわけであります。そういう意味におきまして、現在の事実上のそういう状態を法律制度として認めてしまうということについて、いささか私どもは疑問を持っておる、こういうことであります。
#74
○河口陽一君 いろいろ問題が多い北方領土でございますから、十分ひとつ御研究願って、一歩でも前進するように積極的にお願いをいたしたいと存じます。
 なお、最後に委員長にお願いを申し上げますが、この法案は、北海道では非常な関心を持っておるわけでございます。どうか審議を積極的に進められて、すみやかに可決されるようお取り計らいをお願い申し上げまして質問を終わります。
#75
○渋谷邦彦君 欧亜局長御予定がおありになるそうで、最初に伺わさしていただきます。領土問題については衆参両院を通じまして、何回となく繰り返し審議が続行されてまいりました。ただ、北方領土に関する限り、いままでの政府答弁は一貫して、ソ連の壁が厚い、こういうことに終始しております。もちろん、外交折衝の努力も重ねられておられるとは思うのでありますが、われわれとしては、日本古来の国土であると、こういう観点、いままでの領土返還ということの折衝をやってきておるわけであります。非常に疑問点がたくさんありますけれども、何せ相手国のあることでございますから、なかなかそう簡単にはいかない。そこで、国際条約であるとか、いろいろな宣言であるとか協定というものがあるわけでありますね。こうしたことがソ連国においてはどういうふうに一体理解され、判断されているのか。外務省における情勢分析ですね。たとえば大西洋憲章、あるいはカイロ宣言、これは申すまでもなく、戦争等による暴力行為によって奪取した領土を返還する、こういうようなことがうたわれておるわけでありますね。それ以外のことについては全然触れられていない。もしかりに国際信義というものを守るならば、当然こうしたような憲章であれ、協定であれ、宣言というものは守られているはずである。そのための国連というものがあるのでありますけれども、こうした問題の一貫した一つの相手国の考え方というものにつきまして、外務省当局としてどのように情勢分析をされ、どのように相手国は考えているのか。また、その考えに対して、今後どのようにこちらの折衝態度というものをきめていかなければならないのか。これはむしろ外務大臣にお伺いをしなければならない問題であるにしても、いまそうした技術的な問題がありますから、局長にその点をお伺いしておきたい、こう思います。
#76
○政府委員(有田圭輔君) お答え申し上げます。
 ソ連の北方領土問題に対する考え方等が、特にいろいろな国際取りきめに対する考え方がどうかというただいまの御質問でありますが、これはソ連側は、一連の国際条約と言っておりまして、その中には、条約ではありませんが、いわゆるヤルタ協定というものを一つかざしております。これは御承知のように、連合国、アメリカの立場もそうですが、日本は当然その立場でございます。これは第一に、日本がそれの直接関係国でない。またそれは最終的に領土の取りきめをしたものでもない。単にその当時のヘッドステーツが約束をしたことにすぎない。しかも、アメリカ側から言わせれば、この約束は終戦、戦後にかけてソ連側がすでに破っておる。ソ連側が満州においてその当初の約束と反していろいろな行為をやったと、このようなことから、アメリカ側もそれに縛られるものではないという立場をとっておりますわけでありますが、ソ連側は一貫してヤルタ協定というものをかざしているわけでございます。
 それから、これはソ連一流の考え方でありますが、議論の段階においていろいろと自分のほうに有利な点のみをあげて、反対のほうには目をつぶるということ、平和条約に関する規定についてもそうでありますし、これはいろいろ日ソ交渉の場合においても両全権の間で激しいやりとりがあったわけであります。しかし要するに、先方は依然として返さないということで一貫していろいろの議論をしておるわけであります。したがいまして、情勢判断の問題でありますが、どのように先方が考えているかということはなかなか判断に苦しむわけでありますが、しかしながら、現在ソ連は日本側に対していろいろと積極的に友好関係を強めていきたいという態度が見えることは確かであります。これは御承知のように、先般のシベリア上空の開放交渉におきましても、ソ連側は明年の三月三十一日よりおそくない時期にシベリア上空を開放するということを合意しております。あるいはその他の懸案につきましても、たとえば貿易交渉あるいはシベリア開発に関する日ソの委員会での話し合い、あるいはその他の文化交流の問題でも、先方は相当に柔軟な態度を示しておりますわけで、日本側の国民世論を相当気にしているということは事実でございます。したがいまして、領土問題というような日ソの立場がまっこうから対立している問題につきましても、これはやはり時をかけて忍耐強く話し合いをし、わがほうの立場からすれば、常に楽観的に努力を続けるべきだと、このように考えておりますわけであります。また、国際情勢もいろいろと変化してまいりますので、要は、日本側の立場を堅持して、どうしても日ソの関係を基本的に改善させるためには、この領土問題の解決がなければだめなんだということを先方によく納得させることが一つの一番重要なステップだと存じます。と同時に、その他の面については懸案を逐次解決をしていくという態度も必要かと存じます。最近ではソ連側の顕著な態度は、日本国内において北方領土問題に対しての国民運動を展開しようとする動きがあるが、これはむしろ日ソの友好関係に水をさすものであるというような立場をとっております。裏返して言えば、ソ連側がこの点について非常に気にしているということが一つ言えるのではないかと思います。したがいまして、われわれとしては、この北方領土問題というものが日本国民の悲願であるという立場から、引き続き強力に対ソ折衝を行なっていきたいと、このように考えております。
#77
○渋谷邦彦君 けっこうです、局長。
 総務長官にお尋ねいたします。先ほどから若干問題にはなっておるんですが、今度北方協会から北方領土問題対策協会にですね、これは単なる名称の変更なのかどうなのか。特殊法人ということにおいては変わりがございませんね。また、そのまま事務を引き継ぐという先ほどの御答弁がございましたね。何でこれ、このような名称を変更する必要があったのか、また、その基本的な理由についておっしゃっていただきたい。
#78
○国務大臣(床次徳二君) 北方協会と今回の協会と非常に異なりますのは、北方協会は本部が北海道にありまして、そうして活動しておった主たるものは居住者に対する援護業務でありましたが、若干PR等の関連はしておったと思いますが、今後はやはり中央において全国的な視野においてこの運動を、特に領土返還運動という立場に立って開始をするという分が従来の北方協会よりも非常に広くなった。なお、北方協会の仕事は従来から存続しておりまして、これまた関係者に対して有意義な援護業務を行なってまいりましたので、これはそのまま存続いたしまして吸収するという形で持っておるわけであります。したがって、旧北方協会の仕事にプラス全国的な返還運動の宣伝啓蒙等の事業が加わった、これは全国的な視野において行なわれるというふうにお考えいただけばけっこうと思います。
#79
○渋谷邦彦君 くどいようですけれども、法律の一部改正という、そういう方法で北方協会の内容を改めるわけにはいかなかったのですか、この点いかがでしょうか。
#80
○国務大臣(床次徳二君) 北方協会の法律を改正して改めるということ、これは大体その基本的な立場が、先ほど申し上げましたように、中心地を移してまいりますのと、事業の中心が変わってまいりました関係上、新しい領土対策協会という形につくったのでありまして、その中に従来の地方協会の仕事をそのままそっくり受け入れているという形であります。
#81
○渋谷邦彦君 どうもあまりその設立のその性格を今回変えられたという理由が、ただ主たる運動の中心を東京に置く、それを全国的にするというだけで、これ全部変えなくちゃならぬのかというまだ若干の疑問は残りますけれども、先に進めてまいりたいと思います。
 それから、目的の中に、先ほど特連局長はしきりに宣伝啓蒙のほうに重点を置かれた御説明がございました。私はむしろその反対で、居住者に対する援護の方法ですね、まあ、これもいままで何回か繰り返して行なわれてまいったわけでございますけれども、この冒頭の趣意書にございますように、いままで特に生活困窮者等を含めてのことであろうかと思いますが、政府は見舞い金として十億円という金を出しておるわけですね。ただしかし、見舞い金だけでは今後の生業ということはおぼつかないことは言うまでもありませんので、今後この居住者に対する援護というものが、融資の関係等をはじめとしていろいろな問題があると思うのです。具体的にどういうふうなところにポイントを置かれてこれから強力に推進されようとされておるのか、まずその根本的な問題をお示しいただきたい。
#82
○政府委員(山野幸吉君) この北方協会が今後どういう方向に重点を置いて援護事務を行なっていくかという御指摘でございますが、その御参考に申し上げますけれども、この北方協会は三十六年十二月にできまして以来、昭和四十三年度末の見込みでございますが、一つは、事業資金として引き揚げ者に対して漁業、農業、林業等の事業資金の貸し付けを現在まで三億六千九百万行なっております。それから生活資金、更生資金、住宅資金、児童生徒の就学資金等、生活資金の貸し付けを二億二千一百万行なってきております。それから市町村、それから法人等の貸し付け資金として八千二百万円、合計で六億七千三百万の貸し付けの実績を持っておるのであります。これはいまお話がありましたように、十億円の資金から来ますこの金利を運用しての事業であります。それで今後も私どもはこれは十分、従来からこの事業を推進してきました北方協会の方針でございますが、今後とも札幌に支所をつくりまして、よく引き揚げ島民の意見を聞きながら、地元の要請にこたえて、大体方向としましては、こういう資金の確保がまず第一番でございます。大体十億円をもちまして明年度も大体一億三千万程度の融資資金を確保いたしまして、そうしてこのような重点的な資金貸し付けを行なってまいりたいというぐあいに考えておるわけでございます。
#83
○渋谷邦彦君 先ほどもたしか十分なまだ資金ではないと、こういうお話でございましたね。しかし、この問題が出てからもう非常に久しい時間が流れているわけです。沖繩問題の陰にかくれて北方問題というととかく忘れられがちである、こういうところにも政府の怠慢さというものがあらためてクローズアップされるわけでありますが、いままでも要望書なり陳情書が政府に出されているはずだと思いますね。たとえば北方協会であるとか、あるいは北方領土復帰期成同盟ですか、あるいは千島歯舞群島の居住者連盟と、こういうような団体から連名でもって要望書が出されている。その要望書の中に一番困っている内容が並べられているんですね。その中に、いま私が指摘した資金の問題があるんですよ。そうすると、はたしてこの協会ができることによって充足されるものであるかどうかというその見通しはどうなんです。せっかくそういうものができても、形骸化されたら何にもならないということを非常に私は心配するわけですよ。そうした今後の、いまずっと金額の内容をおあげになりましたものの貸し付け条件はどうなっているのか、これもあわせて将来の一つのビジョンと申しますか、総理府としてあるいは特連局として考えていらっしゃるそういう方向というものは、どういう方向にいま向いて積極的に進められているか。
#84
○政府委員(山野幸吉君) 確かに御指摘いただきましたように、各協会、団体等から要望のありまするうちで、引き揚げ者に対する貸し付け業務と拡充してくれという要望が共通して陳情されておるわけでございます。そのような事情もございまして、実は当初からこの貸し付け資金の拡大について私どもも努力してまいりました結果、現在一億三千万という事業費一そのほかに管理費が二千五、六百万かかるわけでございますが、したがいまして、一億五千六百万程度の全体の資金が運用できるわけでございます。これは十億円のうち一億円を買い戻し条件付きで譲渡をいたしまして資金をつくりまして、そしてこういう資金のワクを生み出したわけでございまして、地元のほうの御意見を明年度につきましてもいろいろ話を聞いておりますが、大体実質的な事業費が一億三千万あればどうにかまかなっていけるという状態でございます。
 資金の金利等につきましては、これは事業ごとに、貸し付け対象ごとにこまかく分かれておりますが、生活資金が、大体三分、それから事業資金が五分程度でございます。それから、償還期間につきましても、長いものにつきましては十年、ごく短期的なものは一年になっております。そういうことで、それぞれの貸し付け事業ごとにこまかく分かれております。いずれにいたしましても、確かにこの引き揚げ者の援護のための措置として、今後私ども十分ひとつ地元の意見を極力反映できるように改善もし、それから必要な資金を確保していくために今後努力してまいりたい、かように考えております。
#85
○渋谷邦彦君 貸し付けにあたりまして、ついでですから申し上げておきたいわけでございますが、従来ややもすると、国民金融公庫であるとか中小企業金融公庫ですか、非常に貸し出し条件がむずかしいんですよね。お金がほしいときには入らない、もうお金がいいかげん要らなくなってから入ってくるというみたいな仕組みは、きわめて政治が冷ややかであるという例証になるわけでありますが、まさか、そういうものとは性格も違うのでありますので、要するに、受け付けられてから貸し付けられるまでのその処理状況というものはきわめて迅速に行なわれているのでございましょうか。
#86
○政府委員(山野幸吉君) 実は、従来の北方協会の取り扱い銀行としましては信用金庫等それから組合等でございますが、少なくともいま御指摘いただいたような意味の、非常に貸し付けがおくれて困るとか、事務がきわめて煩瑣で困るとかいう御批判は、私はただいまのところ承知をしていないのでございまして、おおむね順調に融資されているものと考えております。
#87
○渋谷邦彦君 時間ありませんので、きわめて断片的な質問になるんですけれども、この役員の任命にあたっては、主務大臣の内閣総理大臣もしくは農林大臣というふうにございます。そうすると、一体総理府はどういう仕事をするのか。提案者は総理府ですね。
#88
○国務大臣(床次徳二君) 主務大臣が内閣総理大臣とそれから農林大臣でございまするが、内閣総理大臣というのは主務が総理府でありまして、総理府の長という立場に立って内閣総理大臣が主務大臣になっておる次第で、もちろん総理府総務長官を中心といたしまして実際の仕事をいたしております。
#89
○渋谷邦彦君 そこで、こういう場合にしばしば私たちが危倶をすることは、セクトが非常に分かれるということが、実際の業務を運営する場合において、お役所のほうはいいとしても、実際いろんな問題をかかえている人がいろいろ陳情に来たり、要望に来たり、相談に来たりする場合、あっちへ行け、こっちへ行けということに必ずなるんですね。大臣は、全然そんなことは考えられないと、あるいはできるだけ善処しますと、あるいは十分検討しますということで終わってしまうんですけれども、実際そういう立場にある人がどれほど困っているかということは、こういうセクトが分かれることによって非常に問題をはらむ場合が多いということで、それは漁業関係や何かといういろんな多岐にわたるために総理府及び農林関係というふうに限定されたんだろうと思いますけれども、どうですか、そういう問題で今後そういうような役所の取り扱いがそうした引き揚げ者の方方に誤解を与えたり、あるいは必要外の不安を与えたりするような、そういう気づかいはございませんか。
#90
○国務大臣(床次徳二君) これは総理府でもって所管いたしますものが全体に通ずる実は問題でありますが、各省の連絡調整という意味におきまして総理府が扱っておりますが、特に北方問題につきましては、沖繩と同じく総理府が主務になっております。したがって、総理府といたしましては今後、窓口が小さくはございますが、できるだけ各省に対して、関連いたします問題につきましては連絡をとって円満に事務を遂行してまいりたいと思います。
#91
○渋谷邦彦君 これは総理府に直接関係はない問題ですけれども、御考慮いただきたいと思って発言するんですけれども、これはむしろ海上保安庁に属する問題です。実はあの近海を巡視しております警備艇でございますか、たった一隻だというふうに私記憶があるんですけれども、そのために四六時中、たいへんな激務でもって十分な任務が遂行できない。拿捕船のもらい下げから始まって、沿岸警備あるいは取り締まりですか、それから海難救助と多岐にわたるわけですね。こうした面につきましても、まだまだやはり不備な点が多過ぎやしまいか、具体的にそうしたような問題が現実に起こっておる。あるいはこれはたしか昭和四十二年の事件だったと思いますが、その後どう変わっているかわかりませんが、それでもし御存じであれば御答弁いただきたいと思いますけれども、もし主管官庁が違うということであるならば、これは長官からあるいは閣僚会議のときにでもそれをお出しいただきまして善処していただきたいのです、この問題は。巡視船一隻でもってあの広い海域を、これだけの業務をすべてやらせること自体がこれは非常にまずい問題ではないか、こう思いますけれども、この点いかがでございますか。
#92
○国務大臣(床次徳二君) 直接私はよく存じませんが、いま聞きますところによると、大小二隻持っておるそうであります。しかし、御要望の点につきましては十分に努力、連絡いたしまして御趣旨を伝えたいと思いますが、私どもはこれらの連絡のために各省の連絡会議を持っております。そうして北方問題という立場に立ちましていろいろと折衝をいたしておりますので、御趣旨をよく伝えたいと思います。
#93
○渋谷邦彦君 お伝えになるときに、せいぜい大小二隻なんていうことを言わないで、少なくとも三隻以上は大きな艦艇でもって配置してもらいたいものだ。海難救助一つ考えてみましても、これはとても手が足りませんよ、実際問題として。この点は十分ひとつ御配慮いただきたい、こう思います。
 それから水産庁、来ておられますか。――いままでの拿捕船については、非常に問題が多過ぎるわけでございますけれども、たしか昭和四十二年――私のほうは古い資料しかございませんので、その時点で申し上げますが――拿捕された人がすでに一万八千人、もう二万人近くなっていると思うのですね。船舶にいたしますと、千数百隻以上。帰ってきたものもあれば帰らないものがほとんど多い。こういうことで、まあこの補償等の問題については当然相手側がソ連でありますから、先ほど来から申し上げておりますように、損害賠償はソ連政府に対して行なわれるのがこれは常識だろうと思うのです。けれども、平和条約が結ばれてない現段階としては、そうしたこともできない。まあ、留保されているかっこうである。このように了解しているわけであります。しかし、その留保はけっこうでありますけれども、その間、先ほどの引き揚げ漁民に対する今後の出漁というものを考えてみた場合に、先ほどの問題と関連しまして、これら漁船あるいは実際に拿捕された人に対する損害というものについては、将来とも政府としてはこの補償については暫定措置としても――暫定でいいと思うのです――暫定措置としても行ない得ないものなのかどうなのか。きょうは長官おいでいただければよかったのでありますけれども、いろいろな技術的な問題についてはむしろ部長さんからお伺いしたほうがよろしいと思いますので、その点についてまず最初にお伺いしておきたいと思います。
#94
○説明員(安福数夫君) ただいまの御質問の中で、御指摘のとおり、一応ソ連政府に対して損害賠償を請求すべきである、こういう立場に法律上あるわけであります。したがいまして、交外ルートを通じまして、事件があった場合に、そのつど、私どもとしてはそういう損害賠償の請求は留保している、こういう事情でございます。御指摘の点は、あるいは韓国との関係の際に、政府として四十億円の一応そういうものに対する措置をいたした経緯があるわけでありますが、これはそれまで外交ルートを通じまして韓国政府に対する交渉に対して留保をしておりましたが、日韓の国交正常化をいたした場合に、大乗的な見地から、お互いに請求権的なものを相殺したという経緯があるわけでございます。そういう角度から、それに対して政府として特別交付金的な見舞い金を組んだ、こういう経緯でございます。それと現在の対ソ連の抑留の問題、そういう関係におきまして、現段階においては政府としてこれに対する交付金的なものを組む、こういうふうには考えられない、こういうふうに考えております。ただ、拿捕されました方々についてはいろいろな被害があるわけでございます。あるいは生業がそのために壊滅的な打撃をこうむる、こういうことがございます。したがいまして、われわれの立場としても行政的にそれがてこ入れができるあらゆる方法を講じております。たとえば漁船の特別保険制度であるとか、あるいは漁船員に対する給与保険とか、そういう形で、できるだけのてこ入れと申しますか、行政的なそういう立場で、そのほかいろいろな交付金なり見舞い金というものをそのつど出す、こういうふうな形でそれをサポートしている、こういう実情でございます。
#95
○渋谷邦彦君 そこで、いままでの損害額、これは水産庁としても統計をおとりになっていらっしゃると思いますが、いまそこにお手元に資料がなければけっこうですが、大体総額はどのくらいの金額にのぼるのかということが一点。
 それから第二点目は、自動車に強制賠償保険がつけられているのと同じように、そうした特殊な地域に対する船舶の運航については国として強制的に船舶保険をつけさせるような、そういう考え方を持っていないのかどうか、この二点。
#96
○説明員(安福数夫君) 全体の損害がどのくらいになっているかという資料は現在手元にございません。数字的に、現在のところ、全然その持ち合わせがないのでございまして、それにつきましてまた後ほど検討いたしまして、もしそれが出れば何か御報告、連絡いたします。
#97
○渋谷邦彦君 あとで教えてください。
#98
○説明員(安福数夫君) それから、強制加入にしたらどうかという問題でございますけれども、これは入ります船主でありますとか、あるいは船員についても、かなりの負担がかかってまいります。われわれとしましては、できるだけそういった人たちの加入ということについて努力もしております。啓蒙もしております。したがいまして、そういう点についてかなりの認識は関係漁民の間には持たれているはずでございまして、そういう現在の加入のような方式で、いまのところ、大体いいのじゃないかというふうに考えております。また、それを強制加入のそういう形にまで踏み切るかというふうには検討いたしていないわけであります。
#99
○渋谷邦彦君 やはりその種の問題については、これは私としての希望意見でございますけれども、むずかしいというのは、おそらく保険料が非常に高くなる、零細漁民であるがゆえに保険料が払えないという、そういういろんなからみが出てきて、おっしゃるような答弁になるのだろうと私は思うのですがね。もし保険料が非常に高い、こういうことであって、いまおそらく任意保険の形をとっていると思うのですよ、それならば、何か政府のほうでもって一時的にも貸し付ける。なぜそのような措置をとらなければならないかは、私が言うまでもなく、あまりにリスクが多過ぎる。あの地域が今後保障されるという見通しは何もない。そのために、零細漁民でありますから、どうしても操業しなければ食えない。こういう問題が前面にあるわけです。そうすると、危険をおかしてまでとにかく出漁しなければならない。こういうことをいままで戦後二十四年間にわたって繰り返されてきている。あまりに見るに忍びないというような見地から、私がいま申し上げたような方向が、当局として積極的に考えられる用意はないのかどうかということをお尋ねしたわけでございまして、まだ検討の段階であるならば検討の段階、全然考えていなければ考えていない。いまの御答弁では、いまの方向が一番よろしいのではないかというような結論であったように思うのですけれども、どうもそれだけでは私は不安が残るような気がするのです。ですから、そのことをあえて申し添えておきたいと思います。いずれにしても、限られた時間をちょっと超過しておりますので、まだまだこまかい問題を具体的にお聞きしたかったのでありますけれども、次回に留保さして私の質問終わります。
#100
○委員長(山本茂一郎君) 本案に対する午前中の質疑は、この程度にいたします。
 先ほどの、沖繩における免許試験及び免許資格の特例に関する暫定措置法案について、政府説明のうち、加藤参事官の補足説明が、委員の皆さんに配付されております資料と食い違っておる部分がある点について川村委員から発言がありましたので、私から、加藤参事官の説明が政府側の説明である旨説明いたしましたが、この際、先ほどの説明について政府から発言を求められておりますので、これを許します。
 加藤参事官。
#101
○政府委員(加藤泰守君) 先ほどの私からの補足説明の内容が、お配りしておきました参考資料と異なる部面がございましたが、口頭説明いたしましたものと同内容のものを印刷してあらためて配付いたすことにいたしたいと思います。それによりまして御検討をお願いいたします。
 なお、この際、委員の皆さま方にたいへん御迷惑をおかけいたしましたことをおわびいたします。
#102
○委員長(山本茂一郎君) 速記中止。
  〔速記中止〕
#103
○委員長(山本茂一郎君) 速記開始。
 午後一時十分まま休憩いたします。
   午後零時四十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二十一分開会
○委員長(山本茂一郎君)休憩前に引き続き委員会を再開いたします。
 北方領土問題対策協会法案を議題といたします。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人各位には、お忙しい日程の中、遠路御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 本日は、北方領土問題対策協会法案にあわせて北方の諸問題につきまして御意見をお述べいただき、本特別委員会の審査の参考にいたしたいと存じます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
 議事の順序といたしまして、最初に各参考人からお一人二十分程度ずつ御意見をお述べいただき、そのあと委員の質疑にお答えをお願いいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。また、御発言の順序等につきましては、私のほうから順次指名さしていただきます。
 まず、守屋参考人にお願いいたします。
#104
○参考人(守屋治君) お呼びをいただきまして北海道からはせ参じました北海道領土復帰北方漁業対策本部長の守屋でございます。
 諸先生におかれましては、国政いよいよ御多端のおりからますます御健勝に国務に御精励を賜わりまして、特に北方領土問題審議のために本特別委員会を御設置いただきまして、さらには、本日、沖繩及び北方問題に関する特別委員会が開催されるにあたりまして、現地北海道の意見を申し上げる機会をお与えくださいましたことに対しまして、五百万道民心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。
 さて、このたび北海道民多年の懸案であり、御要望申し上げてまいりました北方領土問題解決促進のための特殊法人を設立し、北方領土の早期復帰の実現をはかるとともに、北方領土問題未解決に伴う北方問題の解決の御推進を賜わりますことは、これはひとり引き揚げ島民ばかりでなく北海道民が二十数年間にわたりまして叫び続けてまいりました心からの願いに対しにわかに光明が点ぜられたような思いがいたしまして、感激おくあたわないところでございます。
 北方領土問題に関しましては、せっかくの機会でございますので申し上げたい点が非常に多うございますが、時間の制約等もございますので、二、三の点にしぼって申し上げさしていただきたい、このように存ずるわけでございます。
 私はこれからの陳述に先立ちまして、ごく最近の事例の一、二を申し上げまして御参考に供したいと、このように存ずるわけでございます。
 昨年七月十一日のことでございます。根室市汐見町天満谷光雄、四十五才が色丹島穴潤の病院で自殺をした件でございます。天満谷はカニ漁船第七永運丸に通信士として乗船をしておった乗組員でございますが、六月七日に拿捕されまして、後七月九日に盲腸炎のために手術をいたしたわけでございますが、七月十一日の夕方のことでございます。当時盲腸の状況は非常によい状態になって、ほとんど回復の状態になっておったということでございますが、夕方、一緒に入っておりましたソ連の兵隊が三名外出をしておるほんの数分の間に縊死――首つりをして自殺をしたということでございます。越えてちょうど二週間くらいたちましてから、七月二十五日に巡視船「ゆうばり」でその遺体の引き取りをしたわけでございますが、この遺体が道から腹のところにかけて解剖したあとがあって、それを包帯で厳重に包んであったそうでございますが、この遺体を迎えましたところの妻は、私の夫は決して自殺をするような人ではありません。あんなに子供の成長を楽しみにしていたのにと、岸壁で泣きくずれました。二十歳になるところの長女は、首や体に生活反応が出ているからといってどうして総死したということが言えるでしょうか、首を絞めても生活反応は出るんではないでしょうかと、こうしたような疑問がいま根室の浜辺には満ちあふれております。
 また、あるいは御承知かとも思いますが、数年前に、病院で自殺をしたという漁夫が一年たったあとにミイラとなって引き取られたといったようなこともございます。また、昨年の十二月十一日のことでございますが――ちょっと長くなりますので、異質の例を申し上げます。
 次に、暮れも押し詰まった十二月十九日のことでございますが、色丹島で釈放されました第五幸宝丸の事件でございます。これは山下一郎という五十八歳になる船長の乗っておった船でございますが、そのほか一名の者が帰ってきましたが、甲板員である金子喜一郎、四十四歳は抑留されたままで帰ってまいりませんでした。そのいきさつは、実は船長が、自分は老齢だし、しかも自分たちがそういうような責任者であるということがわかったら抑留されるので、君がかわって抑留されてくれないかと、こう口説き落とされまして、本人は向こうの地に残ったわけでございます。他の者は釈放されて、家族が迎えましたが、妻は、私や大きい子供たちは納得いたしましたが、しかし、小さい子供、六つの子供がおりますが、この子供は、お父さん、いつ帰ってくるのか、お正月には一緒に楽しくお正月をしようとあんなに言っていたのにと、こういったような状態で、家族じゅうが泣きくれているといったようなこともございます。
 また、ごく最近のことでございますが、択捉島にいました蘂取の村長の岩田末吉という人のことでございますが、岩田末吉さんは大正十二年五月に島に渡ったわけでございますが、その後岩田さんは昭和二十二年の十月二日に強制引き揚げによって帰ってまいりました。このとき岩田さんは自分の兄の遺骨を胸に抱き、背中に村民の戸籍台帳だけを背負って帰ってまいりました。私どもが訪れましたときにも、岩田さんは、自分たちの村民を無国籍、無籍者にはしたくはなかったんだ。だから財産一つも特たずに帰ってきました。そう言ってことばがとぎれるほどの状態でございました。この岩田さんが二月の初旬になくなったんですが、なくなるときのことばに、早く村民を島に帰したいな、こう言って息を引き取ったということを私どもお聞きしまして、何か、引き揚げの島民の方たちが墓標をかついで生活をしている、こういったような感に迫られているわけでございます。
 こうしたことは実は北海道や北方の海域におきましては、非常に多くの人道的事件が発生しているわけでございますが、おそらくこういったようなことは全国的にも報道されませんし、また、諸先生方のお耳にも達していないところではなかろうかと、このように思うわけでございますが、日本の領土が、そして北海道の一部が分断されているために、こうしたような事象が次々と起こっているわけでございます。これらの問題を背景にいたしまして、北方領土問題の解決についてどうぞ先生方の御審議をよろしくお願い申し上げたいと思うわけでございます。
 そこで私は最初に、北方地域に対する統治権と国内行政措置に対する統一見解について特に申し上げたいと存ずるわけでございます。
 わが国の領土であるところの歯舞、色丹、国後、択捉につきましては、わが国の統治権はあるが、事実上ソ連が占拠していることによりまして行政権の行使が妨げられている地域でございます。昭和四十三年一月一日、根室市が歯舞群島の地番を改正するにあたりまして政府の見解に示されましたように、わが国の主権が及んでいるので地番の改正は合法である。また、本年度から国土地理院発行の地図表記上の明示や、都道府県市区町村別面積調べに取り上げられ、また、北海道の面積に算入されるということになったわけでございますが、こうして国内の行政措置がそれぞれお進めいただいていることにつきましては、北海道民ひとしく感謝を申し上げている点でございます。しかし、昭和四十二年八月二十八日から三十一日まで、ちょうど戦後二十二年目でございますが、参議院沖繩等特別委員会から初めて第一回の調査団が派遣されたわけでございます。北海道五百万道民は、まず諸先生方においでいただく、このことに非常に感激をしたわけでございます。さらに諸懸案事項の解決を促進することと、挙党一致をもって復帰運動を進めるということについてのかたいお約束を実はその当時いただいたわけでございます。当時、新聞紙上にこのことが一斉に掲げられまして、北方領土問題の解決が非常に早く進むんだという大きな期待に北海道民は胸をふくらませたわけでございます。また、八月三十日に、巡視船「ゆうばり」によりまして北方海域の視察をされたわけでございますが、先生方の目前でわが国の漁船がソ連監視船のために臨検にあうといったような事態が起こったわけでございます。また、続いておいでいただきました衆議院の調査団の諸先生方の北方海域御視察中に、巡視船上空をソ連の飛行機が飛行するという事態がございまして、北方領土問題のきびしさを身をもって御体験されたわけでございます。それからすでに二年たちました。国内の行政措置に対する方針は、私ども北海道側から見ますと、まことに恐縮な言い分でございますが、どうもまちまちではないか、このように一つは思うわけでございます。統一されていないばかりでなくて、基本的な方針に一貫性を欠くうらみがあると、このように思うわけでございます。すなわち、一、二の例をあげますならば、かねて島民から強い要望があり、さきに根室市花咲小泉秀吉外から提出されました色丹島への転籍届に対しまして、「色丹、国後、択捉島への転籍届は受理すべきではない」との法務省回答が寄せられたのでございます。もしこれが、「北方地域については、日本領土とされているが日本の統治権が及んでいない」との御見解に基づくものでありますならば、わが国の主張をみずから放棄するものとなり、問題視されなければならないのではなかろうか、こう思うものであります。
 また、この地域における不動産登記事務の再開にあたりましても、立ち入りの調査であるとか、あるいは分筆であるとか、現在の台張の保存状態、あるいは戸籍簿との関連におけるところの相続権者など、困難を伴うところの問題はあるにいたしましても、解決策の明示を早急にすべきであり、戦後二十五年になんなんとして放置せらるべきものではないと、私どもはこのように考えるわけでございます。
 地図につきましても、地図上に国境線を明示することを避けるとの回答でございますが、これは領海問題などのためにそのような措置をとられるということでございますけれども、地図上に国境線を明示したからといいまして、領海上不利益な結果を招来するものとは私どもは思わないわけでございます。また、むしろ国益上これを明示することが各国におけるところの実情ではないかと思いますし、学校の教育やあるいはまた国民理解の上からも急を要する問題ではなかろうかと、このように思うわけでございます。
 さらに、歯舞群島の呼称等につきましても、従来、水路国であるとかあるいは海国などでは、歯舞諸島、水晶諸島とも呼びまして、土地の人は珸瑶瑁諸島などと呼んでおったわけでございます。あるいは、ときとしましては色丹島とともに色丹列島とも呼ばれたこともございます。しかし、昭和二十一年――一九四六年一月二十九日の連合国最高司令部覚書によりまして政治上、行政上、日本本土から分離されるにあたりまして「歯舞群島」の呼称が用いられ、自来この呼称を用いておるわけでございます。また、北方地域に関係するところの現行法令は約四十ございますが、これらはすべて「歯舞群島」の名称を使っているわけでございます。しかしながら、国土地理院発行の地図上の表記におきましては「歯舞諸島」とされているわけでございます。したがって、文部省の検定済み教科書やあるいは地理附図等におきましても「歯舞諸島」としているわけでございます。このことは、上記法令はもちろんでございますが、同じく文部省所管にかかわるところの関係法令であります文部省組織令、教育職員免許法、教育職員免許法施行規則には「歯舞群島」と用いているわけでございます。すなわち、学校教育と社会教育、児童生徒の学習指導と教育職員関係法令等との矛盾が指摘されるわけでございます。
 そこで、結論を申し上げますならば、わが国の領土であり、わが国の統治権を主張する以上、日本国領土としての主張を施政対象の面から見ても明確にすることが必要であると、かように思うわけでございます。したがって、検疫、出入国、関税など、国内の秩序やあるいは防疫など、何らかの規制を要するものにつきましては別でございますが、これらを除きまして、国内行政措置として実施可能なものはすべて国内法を及ぼし整備するとの基本的見解をぜひおとりいただきますことを強く要望するものでございます。これらのことは、内政面における国内行政措置として一貫した整備がなされるばかりでなく、日本領土としての対外的対抗措置として国益を守る最大の要件であると、かように思うわけでございます。
 次に、北方領土復帰に対する国民世論の統一という点について申し述べさしていただきたいと思います。
 申すまでもなく、日ソ間における北方領土問題解決のためには、統一された国民世論の高揚を背景とする強力なる政府の外交交渉にまつほかはないと、私どもかたく信じておるものでございます。
 従来、北方領土につきましては、南方に比し国民の関心がきわめて低調であり、その運動もローカルな北海道的範囲を脱し得なかったものでございます。それと申しますのも、従来、北方領土に関しましては国民に周知されてないといったようなことでございます。そのため、その範囲や問題点などにつきましても理解、認識が浅く、また、運動する団体も、引き揚げ島民や北海道にある領土復帰団体並びに北海道庁や根室市など、主として民間団体や地方自治体の善意と努力にゆだねられていたわけでございます。沖繩につきましては、戦後二十三年目――昨年初めて主席公選の実現を見たのでありますが、これに対しましても、きわめておそきに失したとの声を聞くわけでございます。さらに、沖繩に対しましては歴代の外務大臣あるいは総務長官の恒例の視察がございました。さらには総理の視察が行なわれたわけでございます。しかし、北方領土については実態はいかになっておったでございましょうか。同じく二十三年目の昨年、初めて総務長官の御視察をいただいたわけでございます。このことに対しまして、島民はもちろん、北海道民はあげて感激をしたのであります。あまりにも私は格差があると、このように考えるわけでございます。また、昨年来、要路の方々は「沖縄の次は北方領土」という発言をしばしばされるわけであります。私ども、こうした発想に対しましては、悲しみよりもむしろ憤りの心を表明せざるを得ないわけでございます。沖繩も竹島も北方領土も、失地の回復は同列であるべきだと、このように考えているわけでございます。どの指も切れば血が出てひとしく痛むはずではございませんか。私ども、北方領土の地位は沖繩よりもむしろ高いものであるという理解をしているものでございます。したがって、方法、時期など、技術的な関係は別といたしまして、「沖繩とともに」という発想でお取り上げをいただくように切にお願いを申し上げる次第でございます。領土は民族の母胎といわれております。領土を軽んじた民族の衰亡は世界歴史の明らかにするところでございます。たとえ一片の岩石、一個の土くれでありましても、領土はその民族生成の歴史の象徴として、国家遺産として守らなければならないと考えるものでございます。まして北方領土は日本離島のうち至近の距離にあり、貝殻島はわずかに三千七百メートルでございます。水晶島が七キロメートル、国後島におきましてもわずかに十六キロよりございません。これほど近い島々は国内いずれの地域にもないことでございます。また、その広ぼうは日本五大離島のうち第一位と第二位とを占めているのでございます。さらに資源の豊富なことは、千百二十三キロメートルという長大なる海岸線の延長とともに、随一の地域であることはすでに周知されているところでございます。
 このたびの特殊法人の設置は、国民世論の結集の成否を断ずるものと私どもはかたく信じ、せっかく御設置をいただく本協会がその責務を完全に果たし、北方領土復帰の早期実現を期することが最も必要であり、かつ、急を要する統一された国民世論の結集への国内体制の整備が必要であると、このように思うわけでございます。そのために何よりも強く要請されますことは、北方領土復帰に対する範囲や返還要求の方法など、各政党間の意思統一をぜひ早急にお願いしたいというのが北海道民の切望でございます。国民世論を代表し、国民の師表と仰がれ、最高的指導地位にあられる諸先生方の意思の統一がなくして、どうして国民にその最大公約数を求めることができましょうか。領土の問題につきましては、政党の政策から願わくは超党派的な国策へと止揚されまして、小異を捨てて大同につき、国民の向かうべき方向をお示しいただくことが、日本歴史に断層をつくらないためにきわめて重要かつ決定的要素であると信じまして、北海道民あげて切望しておりますことをここに申し上げて、あえて率直にお願いを申すわけでございます。たまたま本年秋には、第二回日ソ定期協議にグロムイコ・ソ連外相の来日が予定されております。また、いたずらに国論の分裂から、外侮りを受けてはならないと私どもは思うわけでございます。さらに、日ソ共同宣言から十三年たち、最近の漁業交渉等に見るごとく、領土問題の未解決がネックになっていると思われるような日ソ間の懸案を抜本的に解決することが必要ではなかろうかと、こう思うわけでございます。申すまでもなく、国際民主主義の時代におきましては民族の世論は武力にもまさるといわれているのであります。もう時間は私は急を要求していると、このように思うわけでございます。本法案をスタートさせるにあたりまして、諸先生方の御英知が国の運命を左右することに思いをいたされまして、ぜひ本特別委員会の御決断をお願いいたすものであります。
 以上私の意見を申し上げまして、御拝聴を心から感謝申し上げます。
#105
○委員長(山本茂一郎君) 次に、横田参考人にお願いいたします。
#106
○参考人(横田俊夫君) 北海道の根室市長でございます。横田俊夫と申します。どうかお見知りおきの上、よろしく御指導のほどをお願い申し上げます。
 今回、根室市民が熱望しておりました北方領土問題対策協会法案が御提案になりまして、こうして御審議をわずらわしますことは、私どもにとりまして何よりも喜びでございます。私は、先ほどから守屋さんから北方領土の法的地位その他につきまして詳しくお話がございましたから、重複することを避けまして、現地における根室市民が現在このことのためにどのように困っておるか、そうしてまた、どのようなことを先生方にお願いをしておるか、そういう観点に立って、これから暫時申し上げたいと思います。
 その前に、根室市は、実は日本じゅうがあきらめたと言ってはたいへんことばが悪うございますが、北方領土問題を気がつかなかった終戦の年の昭和二十年の十二月から領土返還の運動をやっておるわけでございます。そこで、その経過等について若干申し上げてみたいと思います。
 実はこれらの島々は、引き揚げてこられました漁民の方々はもちろんでございますけれども、根室の市民にとりましても、私どもの故郷であり、しかも生活の場である。しかも、その開拓というものは、われわれ根室市民がやったのだ。御承知のように、いまだかつて他国人が一回も住んだことがない、日本人以外の者が全然住んだことのないこういう島でございますから、昭和二十年敗戦のあとでソ連の兵隊がこれらの島々を占領いたしましたときに、これは明らかに間違いである。これはポツダム宣言、あるいはカイロ宣言に言うところの、日本が暴力あるいは貧慾で奪取した島ではないのだ、だからこの占領というのは明らかな間違いだというところから、ことばをかえて言えば、これらの島々は北海道の附属島嶼であるのだ、こういうことから実は当時政府におきましてもまだお気づきにならぬようでございましたけれども、根室市民が運動を始めたわけでございます。このことは、その当時引き揚げてこられました方々の話を聞いても、これは私はその当時ソ連も知っておられたのではないかと思われる節がある。と申しますのは、かつて衆議院でもこの話が出たようでございますけれども、ソ連は終戦と同時に、千島の占領をすると言ってウルップまで占領してまいりまして、ウルップから、千島の占領は終わったと言って、戻っているわけでございまして、この案内をされている方が、当時の第五十一師団でございますか、この参謀長かどなたかがまだ生き残っておられるはずでございます。そういう事実があり、さらにまた、千島から引き揚げてこられた方々が、アメリカ兵は来ていないかと言いながら上がってきておる。これはもう島民全部が認めているわけでございます。ですから、そういうところからいきましても、これはもう明らかに間違った占領だ。ですから、間違った占領はすみやかに解除していただかなければならないというので、昭和二十年から実は運動を始めたわけでございます。何と申しましても相手のあることでございますし、当時敗戦のあの混乱の中でございましたから、私どもの願いがさっぱり進みませんで、ようやく最近に至りまして全国的にこの問題が取り上げられましたことを、私どもたいへんうれしく思いますし、さらにまた、今回こうした特殊法人が設立をされて、このことによって大いに世論も喚起されると思いますし、私どもはそのことに深く期待をするものでございます。ですけれども、先ほど申し上げましたように、何といいましても相手のあることでございますから、実は根室の市民は一朝一夕にこの問題は解決しないのだ、百年かかってもよろしい、私どもでできないことは子供に引き継いでいく、子供の代でできなければ孫の代に引き継ごう、こういう実は考え方で、根室の市民は現在運動をしております。しかし、そうは言いましても、先ほどもちょっと申し上げましたように、非常に困ることが続発するわけでございます。その第一が、守屋さんからお話がございましたが、この海域における拿捕でございます。これは食うためにはどうしても出かけて行く。しかも、海の中に別に線を引いておるわけじゃございませんから、どうしてもつかまる。つかまるとそこが十二海里であるかどうかという議論よりも先に、向こうは十二海里に入ったのだと言われますと、これは反駁する材料も何もないわけでございます。私は漁船員の方々に聞きましたけれども、たとえばこちらにレーダーのある船があって、はっきり向こうの島が写っておる。十二海里の外にあるのだ。ところが、つかまってしまう。向こうはレーダーに入らない岩のあたりからはかっておる。そういうようなことがあるそうでございます。そのほか、あの近海におります船はいずれも零細漁民の所有しておる船でございますから、レーダーを持っていない船もたくさんございます。そうした船がどんどんつかまるのです。昭和二十一年ごろから拿捕された漁船は九百五十六そうでございます。人員は実に七千二百三十人がつかまっておるわけでございます。現在まだ未帰還の人員は六十一人残っておるわけでございます。そうして、その間において、先ほど守屋さんが申されましたような悲劇が数知れず起こっておるわけであります。先ほど守屋さんの申されたこと以外に私もたくさんのことを知っておりますけれども、いまここで繰り返すことを避けますけれども、こういう悲劇が繰り返されておる。これを何とかして防がなければならない。この防ぐ方法は、私は二つあると思うのです。一つは、ソ連との話し合いによる安全操業を実現すること、もう一つは、こういうあぶない所まで出かけて行かなくても、北海道の島のほうに出かけなくても魚のとれるいわゆる漁場をつくること、この二つだと思います。そしてこのことは、少くともコンブ漁業に関する限りは実現しておるわけです。御承知のように、貝殻島でソ連との間に操業の協定ができておりまして、そして毎年三百隻、ことしは一割ふやしてもらいまして三百三十隻のコンブ漁船が拿捕の危険なく貝殻島で操業しております。それからまた、これに先立ちまして、町村北海道知事が、盛んに貝殻島でつかまっているときに、行かなくても済むような方法を講じなければいかぬというので、第二貝殻島と言っておるのですが、歯舞の地先に相当のコンブ礁を投入いたしまして、そこからいま相当の成果をあげておるわけであります。ですから、拿捕されない方法としては、このことをひとつほかの魚にも延長していただく。こちらに魚礁とかあるいはコンブ礁とかその他のことをやっていただくとか、あるいはまたふ化事業をやって大いに魚をふやす、こういうことは可能だと思います。実は根室市もこうしたことにかなり力は注いでおるわけでありますけれども、何と言いましても貧弱な一地方自治体でございますから、思うにまかせません。これを国の力でやっていただければ、こういう危険な水域には出ていかなくても済むようになるのではないか。ただし、このことは領土権を主張する主張の上からは多分に疑問には思いますけれども、少なくともさっき申し上げたような悲劇は起きなくてよろしい。それからまた、貝殻のように、たとえば赤城宗徳先生がいわゆる赤城試案というようなものを農林大臣時代に持ってソ連のほうにいろいろ折衝を続けられたようでございますけれども、コンブ以外の魚につきましてもそうした操業を認めてもらって協定をする、こういうことも一つの方法と思います。しかし、これらにつきましても、先ほど申し上げました領土問題がいろいろからまってまいりまして、なかなかそう簡単なものではないと思いますが、これらの二つの問題につきまして、先生方にぜひ特段の御配慮をお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
 それからもう一つの問題といたしましては、実はこのことにつきまして根室市が非常に財政上の負担を来たしておる。これは私どもといたしましては、いま言ったように、現実に困っておるのは根室市民でございますから、それはどなたかが、そんなことは根室の市長のやる仕事ではない、自治体の行なうべき仕事ではないというようなことをおっしゃる方もございますけれども、そうは言っても、黙って見ておるわけにはいかないわけでございます。ですから、抑留漁船員が出れば、その留守家族の援護をしなければならない。あるいは、さっき申し上げたように、つかまらないようにするために、何とかして北海道の陸続きのほうにいろいろの漁場をつくっていかなければならない。あるいはまた、コンブの協定等につきましてソ連のほうに金を納めております。そうした納めておる金につきましても、市がある程度めんどうを見なければならぬ。あるいは領土問題がだいぶ全国的な世論になりまして、たくさんの方々がお見えになります。そうした場合のいろいろ案内であるとか、あるいは資料をつくって差し上げるとか、こういうような経費がたいへんかかるわけでございまして、こうした問題につきましては、私どもはこれはひとつ国で何とか応援をしていただかなければならない。しかし、自分のことでございますから、全額国でというようなことは申し上げません。けれども、国でやはりある程度の応援をしていただかないと、こういう問題も行き詰まってしまいますし、今後拿捕等もますますふえてまいる、こういうふうに考えるわけでございます。それじゃ幾らかかっているかということになるわけでございますが、実は二、三年前まで、私どもは大体三千万ということを申し上げてまいりました。大体その程度だったのです。ところが、この一年やっぱりこの問題が非常に大きく取り上げられたような関係もあり、物価の値上がりもありまして、今回私こちらへ参りますに際してあらためて調査をいたしましたところ、四千八百万かかってございます。そのうち、額のことはわかりませんが、自治省のほうで特別交付税で多少のものは見ていただいておるようでございます。さらにまた、本年は北海道のほうから四百万円の補助金をいただくことになりました。ですが、この程度では、これは根室市としては、やはりもっともっといただきたいということを申し上げざるを得ないし、同時にまた、さっき私が申し上げましたような、いろいろの漁場を、代替漁場をこちらのほうの本土のほうにつくるというようなことにつきましては、とうていこんな金では足りないわけでございます。これは一億も二億もかかると思います。そういうような施策をこの機会にぜひお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
 さらにまた、いろいろの内政問題等につきましてもたくさんの問題があるわけでございますが、これから梅原委員がそれらの問題についてまた申し上げることになっております。私は重複することを避けまして、いまの二つの問題につきまして非常に現地で困っておりますので、ぜひ先生方の特別の御高配をお願いしたいことを申し上げて私の陳述を終わらしていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
#107
○委員長(山本茂一郎君) 次に、梅原参考人にお願いいたします。
#108
○参考人(梅原衞君) 私は、終戦当時色丹の村長でありました梅原衞でございます。本日の委員会に招致をいただきまして、私ども島民の事情をお話し申し上げる機会を与えていただきましたことをまことに光栄と存じ、感謝申し上げておるわけでございます。
 私事にわたりましてはなはだ恐縮でございますが、私は終戦後、ソ連のでっち上げのスパイ容疑に問われまして、日ソ交渉の戦犯を全部帰すというあの取りきめによりまして、昭和三十一年の暮れの十二月二十六日に帰国してまいったわけでございますが、私ども抑留者の救出のために、わが国の最も大事な領土交渉のほこ先を鈍らしたのじじないかということを考えまして、深く責任を痛感しておるわけでございます。
 島、島民の状況につきましては、お手元に資料を差し上げてございますが島、島民の概況、あの中に若干あるわけでございますので、これに基づきまして島民の概況を申し述べたいと存じます。
 私ども島民団体の究極の目的は島に帰ることにあるわけでございまして、その間におけるお互い島民の生活の安定、それらの二つを柱にして活動しておるわけでございます。北方問題がきわめて低調である、こういうことを言われます。事実そのとおりでございますが、この原因の一つは、現地にいわゆる住民がいないということにあるわけではございますけれども、現地の北海道におります限られたる民間団体のかよわい力には限界があるわけでございます。やはり全国にこの問題を普及するためには、相当の手間と財源を要するわけでございますので、今日それが及んでいない状態でありますことは、はなはだ遺憾に存ずるわけでございます。こうしたときに、今回北方領土問題対策協会という特殊法人が中央に設置されますことは、私ども島民といたしましては干天に水を得たような喜びをいたしておるわけでございます。外交の推進の基調は、何と申しましても、国際条約に基づかなければならぬと思いますが、北方領土の場合は、この諸条約につきましてはまこに金城鉄壁だと私どもは信じておるわけでございます。ただ、相手のソ連の厚い壁によって実現できないわけでございますが、この壁を破るためには、国民世論の統一であると確信するものであります。先ほど守屋本部長から御説明申し上げたとおりだと存ずるわけでございます。特に、いままではいわゆるいろいろの制度あるいは法制等にも食い違いがありまして、何か、私どものやっております領土運動はあれは島民の一つの気休めなんだ、政府あるいは世論もそこへ行っちゃおらぬじゃないか、このことが大きな北方領土問題の障害であったように私どもは痛感するものであります。その意味におきまして、この特殊法人の設立ということに強い共感を持っておるわけでございます。領土につきましては、私ども団体は、択捉以南の四つの島を地域にしたいわゆる唯一の島民団体でございますので、この居住者の割合は、択捉島が二〇%、国後島が四三%、色丹、歯舞を含めまして三七%でございます。したがいまして、領土の範囲は、択捉以南の四つの島ということは法令的にはもちろんでありますが、島民の自然の帰結がそういう領域をきめまして、これは島連盟結成以来今日まで終始一貫して通してきた領土の範囲でございます。
 次に、内政措置の問題でございますが、私どもは、いたずらに引き揚げ者という名前を振りかざして他力に依存するような安易な考えは厳に戒むべきであると考えておりますが、しかし、国内あるいは同じような境遇にある地域に行なわれているそういう施策は、北方元居住者にも適用されてしかるべきだと、こういうふうに考えるわけでございます。引き揚げ者の数は四百万といわれておりますが、その中でも私は北方地域の引き揚げには次のようないわゆる特異性があったと考えるわけであります。まず第一には、北方地域の者は、島で生まれあるいは島に渡った者でありましても、昭和年代になってから渡った者が二九%程度でありまして、その他は、ずっと島で生まれあるいは永住した。北海道、本州に住んでおる者と何ら変わらない気持ちでおったわけでありますが、したがって、北海道の十四支庁の一つであったあの島々が外国の手に渡るというようなことは夢にも考えておられなかったわけであります。いわゆる準備のない引き揚げを強制されたということでございます。第二点は、ソ連だけが行ないましたいわゆる労働力の搾取のために抑留生活を強要され、そしてあの日本経済の転換期に三年あるいは四年おくれて来たわけでありますが、もちろん、これらの正当な労働収入、あるいは財産の換価によって得たルーブルはもちろん没収され、日本貨幣、あるいは預金、貯金、そういう通帳類も一切を没収されて、ほんとうにまる裸で帰ってきたと、そういうことでございます。第三番目は、あれらの島は漁をする以外に生活の道がなかったのであります。島民は魚をとる以外に生きる方法を知らなかったのであります。でありますが、ソ連の抑留によって三年ないし四年立ちおくれて帰ったことが、電車に乗ってもつり皮にもぶら下がれぬ、こういうことでございますので、本来の漁業に復帰しなければならぬ。これが千島の場合の大きな打撃でございます。したがいまして、戦前は、在島当時は漁業者が全体の七六%くらいを占めておったものが、現在において島民が漁業に携わっておる者は一四%に満たないのであります。島民の漁業者の六〇%は、なれない転業を余儀なくされたということで、きょうあすもわからない労働に従事している者は約七〇%程度――六八%を占めていると、こういう現実なわけでございます。しかも、これらは、千島の引き揚げの場合には、ソ連がいわゆる進駐してまいりまして、地域が近いわけでありますから、自分の船、あるいは他の船に便乗をして本土へ帰った者があるわけでございますが、向こうに残りました――その当時の政府出先の御指導は、島に残って生業にいそしめということでございましたので、それをそのとおり信じて残った者が、あの目と鼻の先からすぐ帰れるものを、樺太回りで一カ月余も費やして帰って来た。しかもまる裸で来た。こういうことで、北方地域の引き揚げ者には、抑留生活で帰った者と自由引き揚げとの間に大きな生活上の断層を来たしたということでございます。この関係を生活保護の状況で比較して申し上げますならば、千分率にいたしまして全国平均が一七・六四、北海道平均が一七・九三。ところが、いわゆるソ連進駐後直ちに翌年の二十一年の三月ごろまでに引き揚げた者を自由引き揚げと称しておるわけでありますが、これらの組が全国、北海道平均と何ら変わりがない千分の一八・二ということでございますが、抑留をされて帰った者の平均は、全部の平均が千分の三二・〇八でございます。これが地域別に見ますというと、はなはだしきは千分の六〇・七三と、こういう状況にあるわけでございます。世帯の収入比率にいたしましても格段の相違を来たしておりますので、いわゆる脱出――自由引き揚げをした者を一〇〇に仮定して見ました場合に、抑留して引き揚げた者が一〇〇に対して七八%、二十三年に引き揚げた者は一〇〇に対して六三%という現状でございます。生活保護ばかりでなく、いわゆる各家庭の収入階層がこれだけの開きを来たしておるわけでございますが、それが今日でも生活再建に長く尾を引いておると、こういう現況でございます。
 以上のような点を御賢察いただきまして、全部とは申しませんが、これらの特殊の者に生活再建の御援助を願いたいと、このように考えるわけでございます。その方法といたしましては、内地本土に行なわれました漁業権補償の問題があるわけでございます。昭和二十四年から六年にかけまして、本土の漁民は旧漁業権を政府から買い上げていただいたわけでございますが、あの地域については、あの地域がいま直ちに使う海でないという理由のもとに除外されておるわけでございます。漁業権の補償は未解決になっておるわけでございます。これらのいわゆる専用漁業権は、御承知のように、旧漁業団体の権利でございます。現在におきましても旧漁業権の海域は使わないとおっしゃいますけれども、色丹と国後、択捉の間のあの三角地域は、これは旧漁業団体の専用漁業権の海域でございます。この地域に対しては、現在では公海漁業として別の新しい漁業法によって許可を受けた漁船があすこに出漁をしておるわけでございます。つまり、旧島民の漁業権は現在の日本行政下において別の権利でもって使われておると、こういう状況でございます。さらに、いま政府がお進めになっておる日ソ間の安全操業が実現いたしますならば、ますますこれらの旧漁業権は別の形で使われることになってくるわけでございますので、この漁業権の補償をいわゆる旧島民の転業対策的な補いにすると、こういうお考えのもとに、前に行なわれました漁業権はこれはいわゆる漁業再生産のためという意味も含んでおるのでありましょうが、北方地域の場合は、転業して漁業をやりたくても復帰できないというそういう事情を十分おくみ取りくださいまして、これらの者のいわゆる転業対策にも充当できるような制度のもとに漁業権の買い上げを実施していただきたいということが、われわれ全島民の要望でございます。
 それから第二点は、北方地域のためにいわゆる低利金融をする。北方協会ができて今回の新団体にそれが統合されるわけでございますが、これはいわゆる特殊の状況にある者に対する特別措置として政府が実施していただいたわけでございまして、たいへんけっこうな援護対策ではございますが、ただ残念なことには、一万九千からの対象者に対してのそういういわゆる低利金融をする資金ワクが年間利子六千万円の範囲でございます。したがいまして、この希望する全部の対象者を満たすためには非常にほど遠いわけでございますが、なお、これはもとから根室沿岸におりましたいわゆる入漁権者も対象になっておりますので、島民としては生活資金のような金額の少ないものは借り得るわけでございますけれども、事業資金のような高額のようなものは抵当物、保証人ときびしい条件がございますので、島民には潤うていない現況でございます。幸いにして一昨年、引き揚げ者に対する特別交付公債の制度が実施されまして、これは元居住者といえども一世常が七、八十万円の国債をちょうだいできておるわけでございます。これらのものを担保にして北方協会に融資をしていただくということでありますならば、これは入漁権者も旧島民も均衡のある金融が願えるわけでありますが、残念ながら現在の資金ワクではそれを満たすわけにはいかないのでございます。したがいまして、この北方協会の資金の繰り上げ措置等によって、いままで借り得なかったこれらの元島民に対しての事業資金も行き渡ると、こういうふうな方法をぜひおとりいただきたいと思うわけでございます。その他島民――いわゆる島に本籍を置く問題、島民財産の登記の取り扱い等があるわけでございますが、先ほど本部長から御説明申し上げたとおりでございますので、なおそのことにつきましては、お手元に別途に要望書としてお願いを申し上げておるわけでございます。これらの問題は現地に立ち入りを要しない範囲の法律でありますので、これは現在はソ連の力の占領によって日本の施政権が妨げられておるとは申しますけれども、日本で実施でき得る法律はこれは実施することが内外の領土運動にも大きな関係を持つものと私どもは考えますので、せめてあそこに本籍を置いて死にたい、あるいは島の領土関係を孫子の時代に伝えたい、島民のこの念願が達成されますように先生方の格段の御尽力をお願い申し上げたいと存じます。
 最後に、今回発足いたします特殊法人は、実は私どもが先ほど申し上げましたように、単なる民間団体のかよわい力では領土運動はできない、もう少し積極的な方法をということで、従来私どもがめんどうを見てもらっておった南方同胞援護会法の改正を提携して要望申し上げたわけでございますが、もちろん、北方単独の特殊法人ができるということは、なおさら大きな期待が持てるということを私どもは考えておるわけでございます。ただ、新法人が発足いたしましても、いろいろ予算面において、あるいはその他の事情によって隘路がありますならば、形はできましても北方領土問題は進行しないのじゃないかということを私どもは心配しているわけでございますので、どうぞ、今回できます特殊法人北方領土問題対策協会につきましては、領土を復帰させるために特別にできた法人であるということでございますので、諸先生方からこの育成に対しては特段の御尽力をお願い申し上げたいと存ずるわけでございます。
 たいへんお粗末なことを申し上げましたが、時間もございませんので、私は以上申し上げて失礼いたします。ありがとうございました。
#109
○委員長(山本茂一郎君) ただいまの参考人の御意見に対して質疑のある方は、順次御発言を願います。
#110
○川村清一君 それでは、簡単に二、三お尋ねしたいと思います。
 最初に、横田根室市長さんにお尋ねしたいと思います。
 先ほど、北方問題に関連しましていろいろな事業を根室市自体がおやりになる、それに要する財政支出が約四千八百万という膨大な支出をされておるということであります。できましたならば、この四千八百万円の内訳を、大まかでよろしゅうございますから、ちょっと知らせていただきたい。
#111
○参考人(横田俊夫君) それでは、ごく大ざっぱでございますが、北方領土復帰運動の対策経費として大体九百万でございます。それから、北方海域における安全操業の対策経費として百六十万。それから、拿捕漁船対策費としまして大体百万。それから、引き揚げ者の対策費としまして、これまた百万。それから、北方領土引き揚げ者に対する援護経費といたしまして――さっきのは北方領土引き揚げ者に対する沿岸漁業の振興対策でございます。今度のは援護経費でございます。これがたとえば住宅の問題とかその他合わせまして大体一千万。それから、北方墓参の経費、これはわずかでございますが、百万でございます。それから、たとえば漁港の整備等を市が単独でいろいろやっております安全操業に関係のある経費でございます、これが大体一千万。先ほど申し上げました水産振興施設のためのいろいろな経費たとえば貝類の増殖であるとかコンブの増殖のためのコンブ礁の投入とか、魚礁の投入、こういうものが一千万。日ソ友好親善促進経費、御承知のように、こうした地域でいろいろ海難等もございまして、向こうに救助等もしていただいております。そういうような関係で、私どもとしては、日ソ友好親善のためのいろいろな経費を年間百五十万ほど出していただいております。ちょっとたいへん恐縮でございますが、残った経費が大体貝殻島の安全操業、いわゆる協定を結びましてコンブをとっておりますが、これに対する経費でございます。四千八百万から残ったのが大体そういう計算になります。
 以上でございます。
#112
○川村清一君 重ねて、お話の中には、安全操業が日ソの話し合いの中で実現すればこれにこしたことはないわけでありますが、それがなかなか進まないとすれば、危険水域に行かなくても安全に魚をとってそうして生活ができるようなそういう人工的な施設をしてもらいたい。貝殻島はいま協定でできておりますが、第二貝殻島についても承知しておりますが、そのほかにコンブ礁を設置する、魚礁などもどんどん設置する、そういうことを御希望なさっておると思うのでありますが、問題は、魚礁を設置いたしましても、魚礁につく魚介類というものは大体きまっているわけですね。これは底魚しかできない。カレイ、タコ、アブラゴ、ソイとかガヤとか、そんな程度のものですね。あの水域の漁民の方々はカニだとか、やはり何といいますか、泳いでいる魚をとりますね。またカニなんかそうですね。そういうような魚、魚介類を寄せる魚礁というのはちょっと技術的にめんどうだ。ですから、市長さんの要望されるようなことを、このことをはたしてやってもいいものか。金をかければできる。金をかければそこまでできますけれども、はたして現在の漁業規模を魚礁を設置することによって守れるかというところに問題点があると思うのですね。これについての現地の市長さんとしてどういう御意見がございますか。
#113
○参考人(横田俊夫君) 確かにおっしゃるとおり、魚礁だけでものごとが解決するとは思っておらぬわけです。そこで、私どもいまこんなことを考えております。たとえばエビとかカニとか、こういうもののふ化ができないものかどうか。それからカラフトマスというのがございます。このマスなどを、ちょうど本州方面でやっておりますハマチの養殖のようなことで養殖をいたしますと、大体二年あるいは三年で親魚になるわけです。そうしますと、これは陸続きのほうにどっか養殖場をつくってやればできるのじゃないか。これはもちろんまだ構想だけでございますけれども、小樽の水族館の館長が非常にこういうことを熱心に研究されておる。私どもある程度話には聞いておりますが、そういうことも不可能じゃないのじゃないいか。それからどっか新しい魚田を見つけるとか、あるいは沖合いに進出するように船を大きくするとか、何かそういう方法はないのかということで私は日夜腐心しているわけでございます。そういう点につきましては、またいろいろと先生方にも御指導をいただきたいと思うわけでございます。
#114
○川村清一君 次に、守屋本部長にちょっとお尋ねしたいのですが、同じような質問なんですが、北海道としてこの問題のためにどのくらいの財政支出をなさっておりますか。
#115
○参考人(守屋治君) 申し上げます。
 北海道につきましては――これは内容も申し上げる必要はございますか。
#116
○川村清一君 総額でよろしい。
#117
○参考人(守屋治君) 総額、昭和四十四年度をとりますと、現在予算を組みました分、ただいまの横田参考人からお話がございました沿岸漁業の振興費あるいは対策費、こういったようなものは全部除きまして、単純にいわゆる領土問題に要する経費と、こういうように御理解をいただきたいと思います。そのような形だけで申し上げますというと、ただいま組んであります分が六千二百三十万四千円という形で組んであります。なお、拿捕漁船の見舞い金あるいは北方墓参費等は補正で組みますので、これらを加えますと約七千四百万程度くらいになろうかと存じます。
#118
○川村清一君 それでは次に、梅原さんに最後に一つ御質問したいのですが、引き揚げ者の生活再建の方法として一番強調されておりましたことは旧漁業権の補償の問題でございますが、いま居住者連盟等で昭和二十四、五年の状態のものをいまの金に換算するというと、旧漁業権の補償金は総額どのくらいの計算になりますか。
#119
○参考人(梅原衞君) 数量はわかっておりますが、現在の額に換算した数字はいままとめておりますけれども、ここへ持ってきておりませんので、数量については追って御報告申し上げたいと思います。
#120
○川村清一君 重ねてちょっとお尋ねしますが、昭和三十六年に北方協会が設立されたあのときに、旧漁業権の補償金として打ち出されたものはたしか九十億と私は記憶しているんです。その九十億が交付公債十億でもってごまかされた――と言っては言い過ぎですが、やられておるわけですね。その当時九十億でございますから、いまの金に直すと、金利も見積もればもっと相当の額になると思うんですが、市長さん――道庁でもいいですが、つかみ金で大体どのくらいになりますか。
#121
○参考人(横田俊夫君) 昭和三十六年でしたか、九十億という数字を出していただいているわけです。最近では大体二百億くらいであろうというふうに言っておりますけれども、これはいま梅原さんからお話しありましたように、あらためて計算し直しておりますので、近くその数字が出ると思います。
#122
○河口陽一君 私は、質問を申し上げるというよりも、いろいろ参考人からお話を承って感激を深め、認識を新たにいたしたことを、この機会にお礼を申し上げたいと存じます。本日まで非常に御苦労なされて、政府が特殊法人に踏み切るような段階をつくられたのもあなた方の功績だと感激をし、お礼を申し上げたいと思います。
 ただ一点参考人にお尋ねをいたしたいのですが、根室市では多年にわたってこの地域の方々の援護その他で多額の投資をされておられると承っておるのですが、市の歳入歳出の予算額はどの程度で、その中で先ほどおっしゃられた四千八百万円を負担されておるということを、認識を深める意味において参考にお尋ねいたしたいと思います。
#123
○参考人(横田俊夫君) 根室市の予算は大体十八億でございます。ただし、この十八億というのはかなり背伸びをした予算でございまして、詳しい内容を申し上げますと、税収が四億、それから交付税が大体四億、これは多少ふえるかもしれませんが、大体九億ですから、それと税外収入、いわゆる使用料、手数料等入れまして、大体実質的な自主財源というのは十億でございます。その十億の中の四千八百万でございますから、これはかなりこたえるわけでございます。
#124
○渋谷邦彦君 一括して申し上げたいと思うのですが、一つは、先ほど本部長さんおっしゃったお話の中で、大体三人の方、伺っておりますと、遠慮をされながら非常にいままでのやり方が進んでいないじゃないかという、おしかりともとれるそういう御意見と判断しております。まことにその点は、われわれとしてもそうしたことのないようにこれからも注意をしていかなければならないと、こう考えておりますが、一つは、先ほどのお話の中で、この行政措置に対してのあり方が一貫してないというお話を承りました。これも非常にまずい問題だと私思います。具体的にいままでどんなことがあったのか、もしお差しつかえなければこの点をひとつお教えいただきたい、これが一点です。
 それから第二点は、先ほど根室市長さんおっしゃった、いままでいろんな諸雑費等を含めて三千万ぐらいのお金が当該問題に対してかかっている、特にその中で、国会議員等が現地視察に参りますと、それに要する費用も何かだいぶお金がかかっているような含みでございましたね。私の印象が間違っておるかどうかわかりませんけれども、それはほんとうに申しわけないと思うわけです。今後根室市の財政というものもございましょうし、また、非常に御熱心にいままで御苦労を重ねられてこの問題と取り組んで来られた背景もございますので、あと、予算措置としてといいましょうか、国庫からどのくらい、交付金の形か補助金の形かわかりませんけれども、あればよろしいのか、これが第二点です。
 第三点に、梅原参考人のほうにお伺いしたいのですが、やはり私もちょっと心配な問題は、引き揚げ島民の方が今後どのように自活の道を立てるか、詳しくは参考資料を先ほどちょっと読ましていただきましたが、この統計によりますと、月雇い等の、いわゆるそういう低額所得階層が圧倒的に多い事実を発見しました。現在漁業に携わっておる方がきわめて数が少なくなっておりまして、この方々は大体生活が安定されておるのではなかろうかと思う収入でございます。ほかはおしなべて平均が三万円でございますから、二万五千前後、家族構成も多いようでございます。そうなりますと、これはもう食べていかれないと思われるのでございます。そんなことから、事業資金として貸し出しができればそれぞれの生業の道を考えていける。けれども、現状としてはたいへんその貸し出しの線はきびしいというお話がございまして、私もその点は全く同感だと思います。先ほども午前中の質問でそのことをただしたわけであります。現実の問題としてどのようにきびしく行なわれておるか、それをもし具体的にお聞かせいただければたいへんありがたいと思います。
 以上三点、恐縮でございますが、お願いいたします。
#125
○参考人(守屋治君) 申し上げます。
 大きく分けますと、一つは北方領土に関する領土権の主張ということが従来十分なされていなかったということであります。このことにつきましては先ほども触れましたが、とにかく統一的な見解をとっていただくことと、国内の行政措置を完全にしていただくこと、さらには領土権の主張に基づくところの復帰運動が早急に全国的視野の中で行なわれなければいけない、こういったような要望を申し上げまして、今回の特殊法人の設置という御英断をいただきましたわけでございますので、この点につきましては、今後私ども非常に大きな期待を持っているわけでございます。
 それからさらに二番目には、引き揚げ島民の援護などに関することでございます。内容等につきましては、先ほども申し上げましたし、また梅原参考人からも申し上げたような点でございます。
 三番目は、安全操業の確保と拿捕抑留者対策等に関することでございます。
 四番目は、北方地域に関する地方自治の特殊行政費の財源対策等に対してでございます。
 これらのことをさらに詳細に申し上げますと時間がかかりますので一以上簡単に申し上げます。
#126
○参考人(横田俊夫君) ただいまの御質問でございますが、私の申し上げ方が悪くてそのようにおとりになったとすれば、たいへん申しわけないことですから、おわびを申し上げます。実は、先ほど経費のことを申し上げたときに、いろいろ御視察等においでになることのほうの経費ということは申し上げなかったつもりなんでございます。特に、国会議員の皆さんおいでになりましても、決して経費などをかけてございません。むしろ非常に皆さん御遠慮なさいまして、それこそお茶の一ぱいも飲まないで一生懸命にお調べいただいておるので、ほんとうに現地の者は恐縮しておるのでございます。
 なお、かかっておる、経費のどのくらいを国が出したらいいか。私はほんとうは全額出していただくべきだと思うのです。しかし、やはり現地の
 ことでもございますので、そういうわけにもまいりませんし、一割か二割は私どもも負担すべきものだと思っております。
#127
○参考人(梅原衞君) 先ほど申し上げましたのは、いわゆる事業資金の借り入れ額というか、こういうことでございますが、北方協会はいわゆる金融でございますので、したがって、回収は当然責任があるわけでございますから、事業資金にはこれは必ず担保を提供することになっているわけでございます。ところが、実際島から引き揚げた者は今日そういう担保になるような財産等を持ち合わせがないわけでございます。したがいまして、一昨年の法律で交付公債をちょうだいしておりますので、これは確実な担保物件であります。これ以上確実なのはないと、これらを持っておる者に対してこれを担保に認めて融資の方法をとっていただきたい、こういうことでございます。
 それから、島民のいわゆる生業対策としましては、まあ島に帰ることを念願しておるわけでございますけれども、これがまた未知の問題で、したがって、現在は約六%程度は奥地の農業なんかに転業しておる者もございますけれども、そういう方面に進めることは私どもは考えておりません。ただ、勤労世帯でありましても、おやじが会社に出ておれば子供が自動車の運転手をするとか、いろいろそういう部門に分かれておるわけでございます。なお北海道は冬眠期間が長いのでございますので、やはり婦女子の収入の道もという場合には、何か多少の資金を投入して商いを兼営するとか、そういうことをいたしますにしても、やはり元手が要るわけでありますので、そういう面においてもっとまとまった事業資金の借り入れも島民ができるようにということを念願しているわけでございます。
 さらに、これは従来南方援護会事業としてやっておりますことは、島が返えった場合に、あそこは漁業が主産業になることは間違いございませんので、その場合にやはり漁業技術者を養成しておくということがだいじな問題だと、こういうふうに考えまして、やはり漁船乗り組み員の講習会を本年で三回続けております。これは、国家試験を取りまして一人前のいわゆる乗り組み員になるわけでございます。機関士あるいは甲板員等ですね。そういう講習、それから副業的な技術を授ける講習なんかもしておるわけでありますが、そういう面でやはり両様のかまえで生活再建の方法を与えてやりたいと、そんなふうに考えておるわけであります。
#128
○春日正一君 私は、もう聞きたいことをみんなほかの人が聞いてくれましたから……。
#129
○委員長(山本茂一郎君) まだちょっと時間があるようですが、参考人の方で御説明その他でまだ言い足らなかったというようなところがございましたら、補足をしていただいたらいかがでございましょうか。
#130
○参考人(横田俊夫君) 実は、最近こうして非常に国会のほうでも御熱心にお取り上げをいただいておりますけれども、まだそこまで行かぬかしれませんが、行政のほうにまだあまりよく浸透しておらないというふうなちょっと感じを受けるわけなんです。たとえば不動産登記の問題にいたしましても、戸籍の問題にいたしましても、これは先生方、無理はない、それはそのとおりとおっしゃってくださっておりますけれども、書類を出しましても、だめだと言ってくるわけなんですね。まあ、そういうようなことも、実際、たとえば戸籍の問題にいたしましても、南方――奄美大島、小笠原、沖繩は全部本州で取り扱っているわけですね。北方ができないわけはないと思うのです、戸籍簿はみんなあるのですから。どうして北方のほうができないか、これはお役所のほうではだめだとおっしゃっているわけなんです。そういうような点につきまして特段に先生方の御高配をお願い申し上げたいと思います。
#131
○参考人(梅原衞君) ちょっとお許しがございましたので、いまの戸籍の問題が出ましたから申し上げたいと存じますが、実際、島に本籍を移すということは実益がないじゃないかということを役所のほうではおっしゃるわけですけれども、これは私どもにとりましては、やはり先ほども申し上げましたように、自分のおるところに本籍を移すことは当然でありますけれども、島の場合は別でありまして、あすこに永住する意思表示をするということが、われわれとしても非常な心強さを持つわけでありますし、なお、これはほかから見られた場合にでも、どうも別扱いをしておると、こういうことで領土問題とまあ非常に関係があるということですが、そのほかに、これは申し上げていいかどうかわかりませんが、実はこの地域は昭和二十六年に、いわゆる色丹、国後、択捉に本籍を置くことはできぬということで、それまでは普通の町村と同じような扱いを受けておったわけであります。ところが、平和条約の発効する直前に通牒が出まして、これからはいわゆる戸籍のない者の扱いをやるので就籍の手続によれということで、しかし、実際はその当時就籍は済んでおりませんでした。ところが、三十二年に引き揚げ者給付金が出まして、これは日本国籍を持った者が対象になる、日本国籍を持った者に給付するのだと、こういうことで、金のことでありますから、急いで就籍の裁判を仰いで戸籍をつくったんでありますが、これはもとの戸籍をつけて出した者は詳しくついてございますけれども、一般の者は急いでただ申告をして本人の戸籍関係だけがついているので、父母が不明というような戸籍がたくさんあるわけなんです。したがって、向こうで死んだ、あるいは引き揚げ後就籍に至るまでに死んだ者は、いまなお生存しておるような形に戸籍ではなっておりますけれども、まあ、そういうふうな特殊の関係がありまして、これは財産の相続等は戸籍が唯一の証拠になるわけでありますが、それがうまくいかないと、ことにお手元の資料にも書いてございますが、これは登記を懈怠した者がありまして、終戦前においてすでに登記すべきものが怠っておったということですから、現在の実質的所有者と名義者とは曾孫の時代になっておるものが四件かございます。それから孫の時代になって未登記のもの、未相続のものが百四件かあるわけでありますが、これは三十六年の調査であります。今日では古いものはだいぶ死んでおります。したがって、その数は三十六年には三一%ぐらいだったのであります、全体の件教に対して。現在では四〇%を超過しておると推定しておるわけでありますが、町村のいわゆる除籍簿の保存年限は五十年だと思います。したがいまして、孫、曾孫になりましたのは、戦前において相当の年数が経過しておりまするから、町村に除籍簿の謄本の申請をしても交付を得られない者が出てくるだろうということを考えまして、これは何とか特例を設けて、いわゆるその戸籍の問題等、登記の問題は御解決を願いたいと、こういうふうにまあ考えておるわけでございます。これはお役所のほうにも要望を申し上げておるわけであります。なお、先生方からも特段の実現されますよう御尽力をお願い申し上げます。
#132
○委員長(山本茂一郎君) 以上をもちまして、北方領土問題対策協会法案につきましての参考人からの意見聴取はこの程度にいたします。
 参考人各位には、長時間にわたり御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。お述べになりました御意見は、今後の本委員会の審議にきわめてよい参考になることと存じます。ここに厚くお礼を申し上げます。
 速記を中止して。
  〔速記中止〕
#133
○委員長(山本茂一郎君) 速記を起こして。
    ―――――――――――――
#134
○委員長(山本茂一郎君) ただいまから、午前中に引き続き、政府側に対する質疑を行ないます。資疑のある方は、順次御発言を願います。
#135
○川村清一君 提案されております北方領土問題対策協会法案の第一条目的には、この対策協会は北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての啓蒙宣伝及び調査研究、さらに北方地域に生活の本拠を有していた者に対して援護を行なうことを目的として設立されるわけでございますが、そこで外務大臣にまず北方領土問題について若干お尋ねをしたいと思います。
 政府は北方領土問題解決のために非常に努力なされておるように常々言われておるわけでございますが、われわれの立場から見ますというと、一九五六年に日ソ共同宣言が発効せられまして、あの宣言の中には、領土問題を含む平和条約の締結といった文章、いわゆる領土問題という文言が抜けておりますけれども、この前提になる松本・グロムイコの書簡の中には、はっきり領土問題を含むということが入っておるわけでありますから、したがって、領土問題を含む平和条約締結に関する話し合い、努力というものを積み重ねてこなければなりませんけれども、どうも積極的にそういう努力をなさっておらない。今日まで、一九五六年でございましたから、もう十三、四年たっており、近ごろようやく腰を上げたように見受けられますが、いままではどうも消極的であったというような気がしてならないわけでございますが、外務大臣の御見解を伺いたい。
#136
○国務大臣(愛知揆一君) 北方領土の問題につきましては、私、昨年の十一月に外務大臣に就任いたしました早々から、あらためて努力を新たにしなければならない、かように考えまして、まず東京におきましては、私といたしまして、駐日大使を呼んで会談いたしまして、あらためて、領土問題の解決なくしては真の日ソ友好関係というものは確立できない、それから累次にわたる交渉の経過に徴しても、すみやかに領土問題について積極的に協議をいたしたいということを申入れたわけでございます。同時に、さらにモスクワ側における従来御承知のような経過がございますので、駐ソ中川大使を正月早々の休みの期間を利用いたしましてこちらに帰国してもらいまして、いわゆる中間文書といいますか、こういうものの取り扱い、あるいはその背景というようなものにつきまして、直接詳しい見解を求めたのでございます。その後も機会あるごとに、日ソ間の懸案の交渉のとき、あるいはソ連側から各種の通報、申し入れ等が他の件についてございますときには、常に領土問題についての関心を強くするようにいたしてまいっております。それから、これもまだ確実な日取り等はきまっておりませんけれども、ソ連外務大臣の来日もいま期待しているわけでございます。原則的に来ることについては承知をいたしておるのでありますけれども、まだ日取り等はきまっておりませんが、そういう機会におきましても十分話し合いを進めてまいりたい。
 大体の経過はそうでございますが、ただ、いままでに私の直接受けておる印象は、よく言われますように、領土問題は解決済みであるという態度をソ連側としては堅持しておるわけでございますから、そのいわば厚い壁を破ってまいりますのには、よほどの忍耐強い努力が必要であろうと、覚悟を新たにしておるようなわけでございますが、大体の経過はさような状況でございます。
#137
○川村清一君 私も、三木外務大臣、愛知外務大臣時代になりましてから、政府も相当積極的に腰を据えてこの問題と取り組んでおるような印象を受けておりますけれども、一九五六年以来今日近くまではあまり積極的でなかったのではないか、こういう印象を強く受けておりますので、申し上げたのでありますが、厚い壁があることも十分承知しております。厚い壁があればあるほど、ひとつ政府はしっかり腹を据えて、全力をあげて取り組んでこの問題の解決のために努力し、国民の期待にこたえていただきたいと、私はまず冒頭申し上げたいと思うわけであります。
 そこでお尋ねいたしたいことは、ただいま外務大臣の御答弁の中にもあったわけでありますが、ソ連政府は領土問題についてはすでに解決済みであるという主張を今日まで一歩も変えないできておるわけでございます。そこで、この解決済みということは、具体的にはどういうことなのか、しかもそういう主張をするソ連政府の立論の根拠というものがこれは何なのか、これをひとつお尋ねしたいと思います。
#138
○国務大臣(愛知揆一君) 立論の根拠というようなものが、われわれに、何といいますか、理解できないところが、この問題のむずかしいところであると思うのであります。こちら側といたしますれば、立論の根拠は十分あるわけでございます。また、日ソ共同宣言ができましたときの合意されたこの経過に徴しましても、こちらには十分の根拠がある。先方の言うておりますところには、私どもから言えば、根拠がないわけでございますから、こちらの主張というものを、先ほど申しましたように、忍耐強く、同時に国民の世論を背景にした力強い交渉を展開していかなければならない、かように考えておるわけでございます。で、実はこの日ソ間の関係は、領土問題が未解決であるわけですが、その他の問題につきましては、いわば一時よりも、何と申しますか、親善的と申しますか、そういうムードがだんだんに出てきておるように看取をできますので、一面において領土以外の問題についてはわがほうの主張というものをできるだけ貫きながら、同時にこうした一時よりは解けてきたような感じをうまくとらえまして、そうしていま申しましたような十分な根拠をもってさらに大懸案に取り組むことについて、いまこそ、あるいは今後こそ、本件についてのわがほうとしての態度をますます固めて、ますます強力に交渉を展開する時期であると、このように私としては考えておるわけでございます。
#139
○川村清一君 私は、ソ連政府の言う主張並びにその主張を裏づける根拠は何かということをお尋ねしておるわけです。具体的にお尋ねしておるわけでございます。外務大臣は、立論の根拠はわれわれにはわからない立論の根拠であるということでありますが、そのこともどういうことか私にはわからないわけでございます。こちらのほうでは理解できない立論であっても、向こうはどういう主張をしておるのか。その向こうの主張をひとつ明らかに説明していただかなければわれわれわかりませんので、それをはっきりひとつ。
#140
○国務大臣(愛知揆一君) 私が申しましたのは、いま申しましたとおり、こちらとして理解ができないということを申したわけですけれども、向こうとして、わからないけれども、何を根拠にして主張しているのかということになりますと、根本はヤルタ協定というものを一番基礎にしてそうして根拠つけているということが私は言えるのではないかと思います。
#141
○川村清一君 そこで、さらにお尋ねいたしますが、けさほど総務長官に対しまして、この法案に出ております北方領土というのはどういう地域をさすのか、北方地域というのはどういう地域をさすのかということをお尋ねいたしましたら、国後、捉択、歯舞色丹四島であると、四島に限定されると、かような御答弁をいただいたわけであります。このことは、予算委員会でも私、執拗に総理並びに外務大臣にお尋ねしておるわけでありますが、日本政府は従来、領土返還を要求する範囲といたしましては、国後、捉択、歯舞、色丹と四島に限定しておるわけでございます。この根拠は何かというと、これは日本固有の領土である、北海道の附属島嶼である、こういうことを言っておるわけでありまして、したがってこれはサンフランシスコ平和条約第二条C項で放棄した地域には包含されておらない、いわゆる千島列島には包含されておらないということを言っておるわけであります。で、それはそれとして、そういう政府の考え方というものをさらにずっと展開してまいりますと、私はこう判断せざるを得ないのであります。それは、千島列島、すなわちウルップ島以北シムシュ島までの千島列島はもうすでに既定の事実として放棄したものである、未来永劫にこれはもう日本国には復帰しない地域である、もうあきらめておる、このことが一点。さらにそのことをかたく考えていくならば、すなわち領土不拡大を宣言した大西洋憲章に対する違反を、いわゆる連合国の違反を事実上認めることに私はなると思う。さらには、カイロ宣言にうたっている「日本国が暴力及びどん欲により略取した地域」にウルップ島以北北千島が該当することを日本政府みずからがこれを認めたことになるのではないか、事実上は。さらには、ただいま外務大臣が言われました、ソ連政府の理屈に合わない理屈、立論の根拠はわからない根拠、それは何かという質問に対して、ヤルタ協定。しかしながら、いま政府の考えておることを、これをずっと展開していけば、政府はヤルタ秘密協定も事実上認めたということにならないかと、こういうふうに私は考えるわけでありますが、この点はどうでしょうか。
#142
○国務大臣(愛知揆一君) 協定や条約の解釈等につきましては、専門的に事務当局からもお答えいたしたいと思いますが、政府の態度といたしましては、サンフランシスコ平和条約の締結によって、国後、捉択、歯舞、色丹、まあ四島ということが言われますが、この四島の返還と申しますか、領土主権を主張いたしておるわけでございまして、それはサンフランシスコ条約によりましても、あるいはそのほかの根拠によりましても、これはもう十分に主張ができるという根拠を持っておるわけであります。条約的に言えば、サンフランシスコ平和条約によって四島以外は放棄したのかと言われれば、放棄したということに条約上なると思います。その地域については、帰属はきまっておりませんけれども、平和条約に調印いたした日本といたしましては、条約におきましては、四島以外の点については、わがほうとしては主張をしていない、こういうことが申し上げることができると思います。
#143
○川村清一君 どうも大臣の御答弁はよくわからないのですが、私の質問とすれ違うような感じを受けるわけでございますけれども、もちろんサンフランシスコ条約第二条C項によって千島列島を放棄した一これはウルップ島以北北千島を放棄した。しかし、これは帰属がきまっておらないことも事実でございます。そのことはどういうことかというと、いわゆるサンフランシスコ平和条約にはソ連が調印をしておらないから、したがってこれはソ連のほうに帰属しておらないわけでありまして、これはどこに帰属するかは連合国において今後きめるわけでございましょうけれども、放棄したという事実は外務大臣認められると思う。そこで、放棄したという事実は、このことは事実上は、これはもうあの第二次世界大戦争というものは、大西洋憲章で連合国は領土不拡大方針というものを宣言しておる。ですから、これに違反した連合国の処置であったということは第一点としてあげられると思うのであります。
 次には、ポツダム宣言の前提になるカイロ宣言には、日本国が暴力及び貧欲によって略取した地域は、これは日本から取り去られるべきであるということをうたっているわけです。この北千島を放棄したということは、カイロ宣言のいわゆる日本国が暴力及び貧欲によって略取した土地であるということを、これに北千島が該当するということを日本政府自身が事実上認めたことにならないかどうかということ。それから、現在法律的には帰属はきまっておらないけれども、ソ連が占領していることは事実でしょう。そうすると、事実上ヤルタ協定を日本が認めたことにならないかどうか、この点をお伺いしているわけです。
#144
○国務大臣(愛知揆一君) これは条約論争としてはいろいろな見解も私はあり得るかとも思いますけれども、日本政府としての態度といたしましては、四島について、条約上あるいは固有の権原として、これを強く主張する十分の根拠を持っておる、したがってその主権というものを認めてほしいというのが態度でございまして、それ以外の地域につきましては、まあ条約論とし、あるいはその他いろいろの観点から、いろいろの論議は私はあり得ると思います。思いますけれども、政府として、ソ連に対する関係において、従来からもそうでございますが、サンフランシスコ条約以降において、あらゆる意味からいって主張を十分になし得るところといたしまして、国後、択捉、歯舞、色丹というものをここに問題として交渉の対象にいたしておる。いま私申しましたように、いろいろの論議はございましょうが、それならばますますもってこの四つの島に対しては十二分の根拠を持っている、こういうふうに私は解してしかるべきではないかと思います。
#145
○川村清一君 私は、外務大臣のおっしゃることを理解しないわけではないし、気持ちも十分わかりますし、それからいまの四島に限定してもむずかしいこの問題を、千島列島なんかに広げていったならば、外交交渉はもっともっとむずかしくなることは十分承知している。だけれども、筋は筋としてやっぱり申し上げておかなければならぬ。
 それで、それじゃあこの点だけ確認してまいりますけれども、一九四一年大西洋上においてアメリカのルーズベルト、イギリスのチャーチルが英米共同宣言をやった。これは後に連合国共同宣言に引用されておる。その中には、両国は領土的その他の増大を求めずという、こういう宣言をしておることは、御承知でございますか。
#146
○国務大臣(愛知揆一君) 承知はしております。
#147
○川村清一君 次に、国後、択捉両島はもちろん日本の固有の領土でございます。それからウルップ島以北につきましても、安政元年にいわゆる下田条約によってソ連の領土とする――これは帝政ロシアの時代ですが、ロシアの領土とする、そして南樺太は日本の領土とする、こういうことで国境線をはっきりきめたことは事実でございます。しかしながら、明治八年にいわゆる樺太と千島の交換条約によって、南樺太をソ連にやり、そして千島、北千島全部日本の領土とはっきり帝政ロシアとの間に話し合いがついて、そういうことで日本に帰属したことは、御存じだと思うのです。決して、カイロ宣言による、日本国が他国からどん欲によって略取した土地でないということは、外務大臣確信を持っていらっしゃるのでしょう。その辺は大事なことですから、一体日本はソ連からこれは貧欲によって取ったのですか、ここはどうなんですか。
#148
○国務大臣(愛知揆一君) そういう点になりますと、これはいろいろの見方や議論があり得ると思いますけれども、私は、これは力によって、貧欲によって略取したものとは、そうは思っておりません。
#149
○川村清一君 まあ私がどうしてこういうことを――こういうことって、大事なことなんですが、しつこく申し上げておるかと申しますと、そうでなくても厚い壁があってなかなか突き破れないでいるわけですね。そこで、この壁を突き破って強力な外交交渉によって領土問題を解決するためには、その外交交渉のバックに強力なやはり世論の支持がなければならない。その世論の支持というものは、国論が統一されて、全国民あげて政府のこういう外交折衝というものを応援する、そういう態勢をつくらなければこれは容易でないと思うから、私は繰り返し繰り返しこのことを申し上げておる。ところが、現実の問題として、この国会の中においていろいろ国政を議論しておる、政策を持っておる各政党の考え方が、この問題に一体統一されておるかどうか。もちろん自由民主党は、北方領土は国後、択捉、歯舞、色丹、こういうふうに限定して主張されておる。しかし、私どもの党は、いま私が申し上げたようなそういう論点に立って、千島列島は全部日本の固有の領土である、こういう考え方を持っておるわけであります。さらにほかの党、たとえば、これは新聞で承知したのでありますから、もし誤っておれば、私は釈明してそして訂正しなければなりませんが、共産党においてもそういうような考え方を持っておるように私は聞いておるわけです。あるいは公明党においてもそういう考え方のように聞いておるわけであります。民社党についてはよく知っておりませんけれども、こういうふうに考え方が違うわけです。しかも、自由民主党のこういう政策というものがいつこういう考え方になったかというと、昭和三十一年、すなわち一九五六年、これは日ソの共同宣言がなされる前にロンドン会議がなされておる。その当時、九月二十日付の朝日新聞にこういう記事が出ておる。「日ソ交渉に関する自民党党議」――「自民党は二十日の緊急総務会でさきに決定した同党の日ソ交渉方針を議員総会の議を経ないで党議とすることを決めた。また政府に対しこの党議にそってソ連側の意向を打診することを松本全権に命ずるよう要望することを決め、」、「新たに党議となった日ソ交渉方針は要旨つぎのとおり。」、「2ハボマイ、シコタンの即時返還3エトロフ、クナシリは条約発効後も両国間で引続き交渉する4その他の領土はサンフランシスコ条約の趣旨に反しないこと。」、これが朝日新聞の記事であります。これは昭和三十一年――一九五六年であります。このときに、歯舞、色丹は即時返還、平和条約ができればすぐ返還するということになっております。択捉、国後は条約発効後も両国間で引き続き交渉する。これは日ソ共同宣言に含まれておるわけです。そうしてその他の領土はサンフランシスコ条約の趣旨に反しないことということは、これはウルップ島以北北千島は放棄する。サンフランシスコ条約を守るということなんです、認めるということなんです。これは自由民主党の政策であり、今日までずっと引き続いて一貫して政府が持ってきた主張なんです。そこで、これは予算委員会のときも私は申し上げたのでありますが、こういうふうに各政党間の意見が違っておっては、強力な世論の盛り上がりがないし、そういうかっこうでもって日ソ交渉をしても、とうていそういう壁を破る力にはならないだろう。そこで、こういう問題については、十分ひとつ各党間で話し合って、国論の統一、意思の統一をはかるべきでないかということを、佐藤総理にも申し上げたわけです。どうも予算委員会の中では、総理大臣、私も少し失礼なことを言ったせいか、だいぶお怒りになったようでございまして、どうもはっきり答弁を受けられなかったのですが、私もいまは冷静でございますから、ひとつ外務大臣から、私のいまの考えは十分述べたつもりでありますから、これに対する御見解をひとつ伺わせていただきたいと思います。
#150
○国務大臣(愛知揆一君) 私も御意見の点は私なりによく理解できるつもりなんでございます。先ほどもお触れになりましたけれども、たとえばサンフランシスコ会議のときでも、国後、択捉については特に日本の吉田全権が言及もし、それに対する英米等の代表者の支持する言明もあったわけですが、そのときの吉田全権のことばといいますか、主張の中にも、千島列島及び南樺太の地域は日本が侵略によって略取したものだとするソ連全権の主張に対しては反駁を加えているわけでございます。ですから、そういう考え方、そしてそういう考え方をもとにして国後、択捉両島について特に言及をしている、ここにわれわれの今日の主張の根拠といいますか、沿革的な根拠があるわけでありまして、その後の日本政府の態度といたしましては、いまおあげになりましたが、昭和三十一年二月ころからその当時いろいろの委員会において政府の見解を明らかにしているものがいろいろございますけれども、ソ連に対する主張といたしましては、国後、択捉の両島は常に日本の領土であるということと、それからもう歯舞色丹については申し上げるまでもないと思いますけれども、沿革にも触れて、そしてこの両島――国後、択捉については特に何としてもこれは返還を要求すべきものである、こういう態度を明らかにいたしているわけでありますので、私もこうした沿革的な経過をあわせて根拠として折衝に当たっているわけでございます。
#151
○川村清一君 折衝に当たっていることはわかっておりますけれども、私の質問には明確にお答えにならない。私は、そういうふうにいろいろと政党によって主張、考え方に違いがあるから、これはやはり政府はひとつ各党と話し合ってこういう統一した考え方をつくる、意見をまとめるということに努力する考え方がないか、御意思がないかどうかということをお尋ねしている。
#152
○国務大臣(愛知揆一君) まあ要するに、御意見、御質疑の内容というものは、国後、択捉はともかくとして、もっと広範にわたって日本の領土権というものを主張すべきではないか、またそれにはそれ相応の根拠もあり得るわけではないかと、そういう点についてあらためて各党間でも思想統一をしてみようではないか、こういう御趣旨と私は理解いたすわけでございまして、それはそれなりの見識のある御提案であると、私はかように考えております。同時にしかし、今日までのソ連に対する事実上やっておりますアプローチや主張というものは、先ほど来申しておりますように、四島についてやっているわけでございますから、実際の展開されているこの外交折衝の経過におきまして、これ以上のところについての交渉上の主張ということについては、経過から申しましても、私はむずかしいことだということを、そういう趣旨を私含めてお答えを申し上げた次第でございます。
#153
○川村清一君 私は何も私どもの考えているとおりに政府がなれということを言っておるわけではないのですよ。その点は誤解しないでほしい。私どもは私どもの主張がある、その主張の根拠はこういう根拠に基づいて正しいものと考えておると、しかしこれは事外交折衝でございますから、しかも非常に厚い壁を破っていかなければならない外交交渉でございますから、われわれの思うようにこれはなかなかまいらないということもこれはわかっておるわけです。したがって、政府の言うようなそういう考え方でもって折衝するなら折衝するように、やはり各党と話し合って、各党もそういう了解の上に立って、国論を統一して、政府のいまの考えていることを実現するように努力していったらどうかということを申し上げているので、いまのままみんな別々な考え方を持っておったら、これではどっちつかずになってしまうので、私は申し上げているわけですから、それは誤解しないで、政府もよく検討してみてください。
 それから、もう時間がありませんから、一点だけお尋ねします。領土問題が解決すればこれはもう一切がっさい解決するので問題ないのでありますが、領土問題はいつ解決するか、これはもう先がさっぱり読めないわけであります。しかし、領土問題が解決しないために一番困っているのは、この北方地域に住んでおる人たちであるわけです。この地域に住む人々の生業は、ほとんどが漁業です。漁業にたよっておる。漁業によって生活を立てている。ところが、漁業ができない。いま時間がありませんから数字あげたりして詳しく申し上げませんが、いわゆる漁に出るというとすぐ拿捕、――抑留されるといったようなことで、幾多の悲劇が、悲しい話がたくさん出ているわけであります。そこで、この地域の人々は、北方領土もさることながら、安全操業の実現が一日も早くできることを期待しておる、念願しておる、また悲願しておる。ところが、これはもう実現しないで今日まできておる。もちろんこれは、具穀島だけはコンブ、これを安全に採取できるようなかっこうになっておりますが、コンブ協定ができましたが、これとても政府間協定ではないわけであります。そこで、これがいまどういう段階になっておるのか。いろいろな話が今日まで出ておる。たとえば赤城試案というものも一つは出た。あるいはまた、安全操業を認めるかわりに代償として日本の港にソ連船の寄港を認めろという提案もなされるということも新聞に報道されることある。また、安全操業を認めさせる代償として入漁料を支払うというような考え方も報道されたことがある。ところが、入漁料を支払うということになれば、これは固有の領土を主張しているそこへ行って魚をとって入漁料を払うということは、いわゆる固有の領土というものから考えて筋が通らないし、説得力もないのじゃないかということで、これもどうとかこうとかいう批判が出てきている。あるいはまた、入漁料はおかしいけれども、入漁料を出さないかわりにシベリア開発に日本が大いに協力することによって、これは代償としてそういうことをすることによって安全操業を認めさせるというような提案も出されて交渉しておるとかされておるとかいったような報道もなされている。いろいろなことが新聞には出ておりますが、政府当局からは、こういう提案をしたとか、向こうからこういう提案があったとか、こういうことが一切明らかにされておらない。ですから、われわれ国会に席を置く者としても、その地域の人々からいろいろこの問題を聞かれても説明のしようがない。現在の政府は全く無為無策だと言って悪口を言うよりほかないわけです。ところが、そう言われたら外務大臣も心外でしょう。一生懸命なされているのでしょう。なされておるならば、どういうことをなされておるのか、大体こういうようなかっこうだぐらいは明らにしてもらわぬければ、これは困ると思う。一体、中川大使が一生懸命なされているのですが、どういうような方針でこの安全操業を実現するために努力なされておるのですか、この席でひとつ明らかにしていただきたい。
#154
○国務大臣(愛知揆一君) 安全操業の問題は、私といたしましても非常に重大な関心を持ち、当面早急に結論を得なければならない問題である、こういう基本的態度でいるわけでございます。経過といたしましては、まず先ほど申しましたような領土問題の主張ということについて、これは何としても、こちらも厚い壁をつくって折衝に当たっているわけでございますが、これに影響を与えないような基本的な姿勢のもとに安全操業につきましてソ連側との話し合いを進めていきたい、こういう基本線で、実は先ほど申しましたが、ことしの一月に中川大使を一時帰国させましたが、そのときにも、とにかく安全操業の問題でソ連側と具体的な折衝にすみやかに入るような素地をつくれということを指示いたしたわけでございますが、要するにソ連側としては、この安全操業の問題について商議といいますか協議をする用意があるという態度を示してまいりました。そこで、できるだけすみやかな機会に、あらためて日本側の水産庁はじめ関係省庁の間で十分にソ連のほうの動向もうかがいながらがっちりとした案をつくりまして、そうして具体的な協議に入る用意をただいま進めているわけでございます。そういう関係でございますから、ただいまもお述べになりましたが、赤城試案というものも前にございました。それから入漁料の問題というものも、日本側の一部においてそういう案も考えられたこともございますが、そういうことにこだわらずに、安全操業が実があがって、日本の国益、ことに関係の漁民の方々に安心をしてもらえるような最善の案でソ連側の同意を取りつけるようにということで、近くその交渉に入れる見込みがついたということを申し上げる次第でございます。いままでおくれにおくれておりましたことは、私も非常に申しわけなく思っておりますけれども、とにかく具体的折衝に入り得る段階がようやくできてまいりました。そういうことになりましたので、ここでひとつ勇気を持ってそれに当たりたいと、交渉に入りたいと、かように存じておる段階でございます。
#155
○川村清一君 安全操業につきましては、非常に前進しておるような御答弁をいただいて、私も非常に期待しておるわけであります。またうれしく思っておるわけであります。ぜひひとつこれが実現されるように最善の努力を尽くしていただきたいということを御要望申し上げたいと思います。領土問題ももう厚い壁でとっても破れない、安全操業もだめだ、漁に出ればつかまってしまうということでありますれば、もうこの地域の人の政府不信の声は非常に強まると思いますので、まあ領土問題はこれはなかなか容易でない、これは理解できますが、せめてそれまでの間安全操業だけは実現できるように、一日も早くそれができるようにがんばっていただきたいということを重ねて要望いたします。
 時間がありませんから、最後に一点だけお尋ねしますが、それはこの北方領土に対する墓参の問題でございます。これも、この歯舞、色丹、国後、捉択にどのくらいの物故者がいらっしゃったかということは、数字は申し上げませんが、相当の数でございます。特に国後、択捉が多いわけです。国後につきましてはおととし墓参か初めて認められましたが、択捉につきましてはいまだソ連は墓参を認めないわけです。これは一体どういうわけなんですか。択捉だけには墓参を認めないというのは、これはどういうわけなんですか、その理由がわかっておったら明らかにしていただきたい。
 それから、せっかくおととしまではこれが実現されておったのに、去年はついに墓参が認められなかった。現地の引き上げ住民の方々は非常に落胆したわけです。この理由は何か。
 それから、ことしに対して非常に期待しておるわけなんですけれども、ことしの墓参はどうなるか、これに対する外務省の見通しについて明らかにしていただきたいと思います。
#156
○国務大臣(愛知揆一君) 昨年度墓参が実現できませんでしたことは、たいへん残念な次第でありまして、これについては、当時も再三にわたってソ連側と交渉したんでありますけれども、どうも残念ながら実施に至らなかったわけでございます。そこで、引き続き折衝いたしておりますが、本年度においてはできるだけ墓参ができるようにする。しかし、その地域については、ウランウデの墓参の実施ということについては原則的同意を取りつけることができました。しかし、択捉、これについてはこちら側の申し入れに対してまだ承諾の返答がございませんので、引き続き折衝をいたしておるわけでございます。
#157
○川村清一君 択捉島については、私どもの調査によると、千二百二十二柱のお墓があるわけでございまして、択捉の引き上げ者の方々は、ぜひ捉択に墓参したいと、そういう願いを持っておるわけであります。捉択についてはなかなかソ連が認めない、この理由は何か私はわからないのでありますが、ぜひこれも実現するように努力していただきたいということを強く要望いたしまして、時間でございますからこれで終わります。
#158
○委員長(山本茂一郎君) 本法案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#159
○委員長(山本茂一郎君) 沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題といたします。
 御質疑のある方は、順次御発言願います。
#160
○川村清一君 沖繩問題についてお尋ねしますが、外務大臣がアメリカにおいでになるのは六月と聞いておるわけでございますが、六月の何日においでになって何日にお帰りになる御予定でございますか。
#161
○国務大臣(愛知揆一君) 六月の三、四、五日ぐらいをロジャーズ長官との会談の日取りにしたい、かように考えております。その場合におきまして、四、五日の滞在で一応、第一回とでも申しますが、会談の所要日数としてはそれくらいを予定いたしております。
#162
○川村清一君 先月、東郷アメリカ局長がアメリカにおいでになられました。東郷局長の任務といいますか、使命といいますか、どういう目的で行かれたわけですか。
#163
○国務大臣(愛知揆一君) いま申しましたように、私が大体六月の初旬に国務長官を主たる相手とした話し合いを始めたいと思います。それから、七月の終わりになると思いますけれども、先方が来日をすることに大体なっております。さらに九月の国連総会の機会もまた利用ができるのではなかろうかと思いますが、そうして最後に十一月末を一応予定しておりますが、佐藤総理とニクソン大統領の会談、こういう一連の当方の希望の日程でございますが、その点について最終的な日程的の打ち合わせをする。それから、交渉といいますか、これは六月から始めるわけでございますけれども、たとえば先方の関係者の間にどういうふうなとらえ方をしているかというようなこともできればなまに現状分析もしてみたい、こういうふうな考え方で東郷アメリカ局長を派遣したわけでございまして、実はアメリカ側も、現に今日も滞在中でございますが、国務省のフィン日本部長というような人も来ておりますようなわけで、いわば交渉を始めるに際しましてどういうふうな段取りでやるのがよかろうかというようなことについての事務的な打ち合わせ、それに兼ねて、できるならば向こうの本件に対する態度などももう少し見聞を広めたいというようなことで派遣をいたしまして、帰ってまいりました。これから始める上におきまして、私としても、そういったような意味合いにおける成果と申しますか、これは十分にあがってきた、かように考えております。
#164
○川村清一君 六月の初旬に外務大臣が渡米されまして、向こうの国務長官などとお会いになっていろいろお話し合いせられる。そうしてそれは十一月に総理大臣が渡米されて話し合いをされるアプローチがしかれるわけでございますが、外務大臣が行かれるその道づけといいますか、外務大臣がおいでになったときにはこういう話をするんだというようなことをひとつ話し合ってみると、そうして向こうの考え方をどうも探ってみると、感触を得るんだというような目的でアメリカ局長は行かれたと思うんですが、そうでございますか。
#165
○国務大臣(愛知揆一君) ただいまも申しましたように、どういうふうな、俗なことばで言うと恐縮でございますが、意気込みで、この問題に先方として取り組む用意がどの程度に進みつつあるであろうかというような状況を見ることも、たいへんこれからの交渉に役立つと考えましたわけです。と同時に、わがほうの提案ということが一つこれからの問題でございますけれども、今回のこの国会等を通じましていろいろの角度からいろいろの問題について御質問もあり、また政府としての態度も明らかにすべきことはしてまいったつもりでございますが、そういったようなことを背景にし、頭に入れて、日本側の空気というものも背景にしてそういう準備に当たるということも、これはたいへん大切なことだと思いましたので派遣をいたした、かような次第でございます。
#166
○川村清一君 それから、田中大使が現在沖繩に行っていらっしゃいますが、田中大使もまたアメリカのほうに行かれるように新聞に報道されておりますが、外務大臣が行かれる前に田中大使も行かれるわけでございますか。行かれるとするならば、どういう任務を持たれて行かれるわけでございますか。
#167
○国務大臣(愛知揆一君) 田中大使は、沖繩に行きまして、最近の実情をつぶさに調査してまいりました。帰ってまいりましたので、あらためてアメリカに今月中旬には出発させたいと思っております。で、これは御案内のように、沖繩返還問題というような非常に重大な、また困難な問題でございます。また、それだけではなくって、日米間には両国間のいろいろな問題もあり、また他に関連する問題などもございますが、実は駐米大使下田君もたいへんな重責でございますので、事実上これを補佐し、また本省との連絡に当たるというようなことで、どうしても有能な士が必要であると考えましたので、いわばロービング・アンバサダーとでも申しましょうか、さしあたり対米いろいろな問題についての本任の大使の補佐役として遊撃隊的な活躍を期待いたしているわけでございます。
#168
○川村清一君 東郷局長がお帰りになりましてから、もちろん外務大臣には御報告をなされたと思いますし、新聞報道によりますれば、総理大臣にも御報告なさっているようでございます。
 それから各新聞に、ワシントン電で、まあワシントンの特派員からの報道がずっとこう出ておりまして、東郷局長の、「打診の印象語る」、こういう見出しで談話のようなものも出ているわけでございますが、結局東郷局長はどういうような方針を向こうの要路の方々に話をされて打診されたのか。まあ佐藤総理の考え方は予算委員会等を通じていろいろ示されておりますけれども、施政権早期返還はこれはもうはっきり言われている。しかし返還時における基地の態様というものについてはどうもこれははっきりしないわけで、白紙、白紙でずっとやってきて、そうして参議院の予算委員会である日突然核抜き本土並みというように受け取られるような御発言があって、まあ相当、賛成反対は別としてですよ、だいぶ変わった、具体的になっていくわいというような印象をわれわれ受けたわけでありますが、その後またちょっと変わってきて、また白紙になってしまったというような印象も受けるわけであります。
 そこで、総理大臣はそのようなお考えをまだ国会にもはっきりしないわけでありますが、東郷アメリカ局長が向こうに行かれまして、いろいろ打診をされた、その打診をされた印象を向こうで新聞記者に語っているわけです。そこで、一体どういう打診をされたのかですね。はっきり言って、新聞では核抜き本土並みはなかなかむずかしいという印象を受けたとかいう記事が出ておりますが、まあ具体的にそういう問題を出したのか、出した結果そういう返事が返ってきたのか、その辺がちっともわれわれわからないわけであります。この点について報告を受けたと思いますから、外務大臣からひとつ国会のほうに報告していただきたいと思います。
#169
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど来申し上げておりますように、これは本式の下交渉ではございませんから、まあこれも俗なことばで申し上げてたいへん恐縮なんでありますが、向こうの意向を打診する、いわば取材をするということが主たる任務でございまして、アメリカ政府としてもそれこそ白紙であるという態度をずっととっておるわけでございます。双方ともまだ本格的な交渉が始まったわけではございませんから、双方白紙の状態であるわけでございますが、沖繩問題に関心を深くしておるような人たちがどういうふうな見方をしているだろうかということができれば取材が必要である、こういう角度で任務の遂行に当たってもらったわけでございます。それから、しかしこちら側が何にも言わないで向こうの意見を探るというても、それはなかなか限度があることでございますが、こちらの態度といたしましては、いまもお話がございましたが、早期に施政権の返還を望んでいるというのはもう国民的声で、何ぴとも異論がない、日本の全体の意思であると思います。それから、日本のこの安全、独立、平和、自由ということを引き続きこれからも確保してまいりますためには、政府の見解としては、安保体制というものが絶対に当分必要である、この考え方の中で沖繩の返還を処理したい。
 それから、基地の態様というような具体的な問題につきましては、国会の論議等を通じまして、私として総理と御同様でございますが、私なりにそういったような考え方は理解ができるわけでございますが、これは国会の質疑応答を通じて、私なりに理解のできる、その気持ちを体して事に当たってもらう。つまり、日本の国民の世論というものがどういうふうなところに非常な重点があるということを十分心に体して、向こうの意向をできるなら打診する、こういうところでございまして、日本政府の考え方というものをきちんと取りまとめて、提示をして、それに意見を求める、こういうようなことになれば、これは本格的な交渉でございますから、そういうことはやったわけではございません。
#170
○川村清一君 それはまあわかるわけですが、しかし、ただいま外務大臣おっしゃったように、こちらが何も言わないで向こうの考え方を引き出すということもこれはできないわけですから、やはりこちらのほうもまあある程度のことは話をしなければ向こうの考え方を引き出すことも困難なわけですが、事実上の問題として。そこで、きわめて重要な問題でございますから、局長一人の計らいで、向こうへ行ってから頭にふっと浮かんだことを話しするなんということは、これはできないと思います。そこで、局長が出かける際には、当然外務大臣から、こちらから話できる範囲としてはこの程度の話をしてみれと、その結果向こうがどういう応待をするか、それでもって向こうの考え方を打診をしてこいというような指示を与えられたかと思うわけですが、明らかに核抜き本土並みは非常に困難である、そういうような印象を受けたというような記事が出ておるわけなんであります。したがって、アメリカ局長は、向こうでそういう話を、これははっきり言わなくてもいいですよ、そういうことをほのめかしたと、ほのめかす以上は、総理大臣じゃございませんから、また外務大臣でもございませんから、局長が行って、こういう重大な問題を自分かっての判断でほのめかすことも、これはできないと思います。そこで、やはりこういう程度のことはひとつ話をしてみろということをおっしゃったと思いますが、これはどうですか。核抜き本土並みでどうだと――まあそうはっきり言わなくても、そういうふうに向こうに思わせるようなことを話をしてみろというような、そういう指示を与えてアメリカにやったのだと思うのですが、いかがですか。
#171
○国務大臣(愛知揆一君) これはこういうふうに御説明したらばよろしいかと思いますが、東郷君の帰ってからの報告は、ここにも来ておりますから、直接にもお聞き取りいただきたいと思いますけれども、沖繩の問題の早期処理ということについては、アメリカ政府としては、日本側のこの願望というものを十分わきまえて、相当積極的にこれを取り上げる、テークアップするという気がまえで、こちらの出方を見ながら、どういうふうにこの問題について対処したらいいだろうかということを相当真剣に検討が行なわれつつあるということは、はっきり掌握できました。ただ、いまもお尋ねがございましたように、具体的な焦点になるような事項については、きわめて重大な問題であり、また責任の重大な問題でございますから、たとえば核の問題についてこうこうである、あるいはこれ以上はどういうふうにしたらいいだろうというような、その具体的に突っ込んだところまではもちろんいっておりません。ただいま申しましたように、そういうところから想像されるところも十分腹がまえの中に入れて、そうしてこちらとしては、どういうふうに入っていけば国民の御期待に沿い得るような結果が期待できるか。これには、必ずしもそのものずばりの行き方だけではなくて、たとえば基本的なアジア情勢に対する認識でありますとか、また総合的にどういうふうな考え方を展開していったらいいだろうかということが、またその焦点になっている問題の処理に当たる大切な要素ではなかろうか、こういうふうなことも当然のことではあると思いますけれども、これがきわめて必要なことであるというような印象も受けたわけでございます。これは私の報告を通して受けた印象でございます。そういうことで、今後ひとつ十二分に検討いたしまして、そして六月の話し合いに臨みたい。しかし、なかなかこれは時間がかかるそうであります。やはり六月から始めて十一月末ごろの総理訪米を焦点とするその間を、双方とも精力的に、かつ国益を守り抜くという態度で、十分ひとつ今後時間を活用してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#172
○川村清一君 大臣のお許しをいただいたので、東郷局長にひとつ御報告いただきたいと思います。これは新聞によりますと、あなたがアメリカで記者団にいろいろ語っていらっしゃることが報道されておりますので、ひとつ局長御自身から国会に報告をしていただきたいと思います。
#173
○政府委員(東郷文彦君) 私、先般、六月の外務大臣訪米に備えまして、六月の会談が少しでも実質的に進み得るようにということを期待いたしまして、命を受けて行ってまいりました。会談の模様につきましては、ワシントンにおいて日本側の記者団から会見を求められまして、非常に正確にその話を日本各紙が伝えてくださいました。さらにまた、ただいま大臣からいろいろ私の報告についてのお話がございましたので、特につけ加えて申すことも実はないような次第でございます。全体の印象といたしましては、私は、国会の内外において総理あるいは外務大臣が公にされている考えを背景として、日本側の考えを伝え、それに対する現時点における米国政府、国務省、あるいは大統領、国防省等の関係の人たちの考え方を聞いてまいったわけでございます。全体の感じとしましては、先ほども大臣申されましたように、沖繩問題の重要性ということを米国政府としてよく認識して、日本側から本格的な話し合いというものがあれば、いつでも応じて、これを実質的に推し進めるという気がまえと準備を進めているということを、強く一つ感じたわけでございます。一般に共通してみな申しますことは、日本側のいろいろな事情ということを向こうは向こうの立場からよく研究し考えてわかっているつもりだけれども、アメリカ側とすれば、アメリカの国内の事情もあり、あるいは日本を含む極東の安全という問題に対するアメリカの見方もあり、そういうところをよく日本側でも考えてもらいたい。日本ではアメリカの壁が厚いということをよく申しますが、向こうから見れば、日本の壁はやはり厚い、厚いと申しますことは、向こう側としても日本のいろいろな問題をよく研究し考えていることだと思います。両方の厚い壁の中から、日本として国益に合致し、また日本の安全にもこれでいいというものを今後の本格的な話し合いから何とかつくっていかなければならない。その話は、先ほど大臣申されましたように、相当時間もかかるむずかしい話であろう。しかしながら、この問題の重要性を米国政府全体として、つまりある省はこうであるが、他の省では全然違うといったようなことではなくて、全体としてこの問題の重要性をよく認めて、誠意をもって話し合いに臨もう、こういう感じを持って帰ってまいりました。そのことを大臣に御報告したわけでございます。
#174
○川村清一君 重ねて端的にお尋ねしますが、これは新聞報道なんですが、具体的には核抜き本土並みというように出ておるわけです。これは非常に困難だという印象を受けたとか、あるいは安保条約の事前協議の問題等その点にも触れて、事前協議の何といいますか、特別措置といいますか、こういうことについてもどうとかこうとかいったようなことが新聞に出ておるわけでありますが、局長は、向こうのほうでこういうような問題が具体的に出されたのかどうか、そうしてその結果非常に困難という印象を受けたのかどうか、この点をひとつ端的にお答えいただきたい。
#175
○政府委員(東郷文彦君) 端的に申せば、基地の態様はこうであるというような話はいたしておらないわけでございます。と申しますのは、そういうことはまさしくこれからの交渉の問題でございますし、本格的な話し合いというのは大臣がいらしてからのことで、私はその準備に参ったということでございます。しかしながら、先ほど申しましたように、私もここ三年国会にずっと政府委員として出ておりますし、大臣、総理大臣のお話もよくしょっちゅう聞いておりますし、そういうことを背景にし、念頭に置いて向こうといろいろ話したわけであります。ただ、具体的に基地がこうだああだということまではまだ私の今回の訪米の機会に持ち出すべき問題ではないわけでございまして、しかしまあワシントンで日本の記者の方にお会いした機会その他において申し上げたことは、それをいろいろ解説すればあるいはそういうことにもなろうかと思います。しかし、アメリカ政府に対して基地の態様についてこれこれというところまで具体的に話したということではないわけであります。
#176
○川村清一君 私の時間もなくなりましたので、最後に一つ大臣にお尋ねいたしますが、大臣は、東郷局長がお帰りになりまして、その結果、新聞によりますというと、一つの対米折衝の方針がまあできたと、それに基づいて討議資料の作成に、外務省はいまそういう作業に当たっておるというような報道も出ておるわけでありますが、今度は田中大使が行かれて戻ってまいりまして、田中大使は沖繩へ行って、それからアメリカへ行くんですから、当然沖繩県民の世論というものも向こうにある程度反映させて、また打診をしてくるんじゃないかと思うのですが、まあそういうようなことを全部聞いて、それで総合的に対米折衝の方針なり案というものを固めて、外務大臣は六月初旬に渡米なさると思うのです。そこで外務大臣にお尋ねいたしますが、外務大臣がおいでになるときは、いまいろいろ議論しております基地の態様ですね、核抜き本土並みなのか、核つきなのか、自由使用なのか、この辺は一つ方針を持って行かれるものと思うわけでありますが、そして大体そこで話し合いがつくかつかないかは別としまして、最終的に総理大臣が行かれたときには、そこでもうすぐ最終の話し合いでもって調印するのか、また共同宣言というかっこうになるのか、協定というかっこうになるのか、何かになる、こういうふうに推定するわけでありますが、それで間違いないとすれば、外務大臣が行かれるときに、こういう方針で行きますよということは当然国会に報告されて、そしてそういう意思を国会に伝えられたあとに行かれるものと思うのですが、どうですか。これは何も国会のほうには報告もされないで、何を持って行かれるのか、どういう考え方で大臣が行かれたかわからないようなかっこうで行かれて、そしてワシントン発の特派員の記事をもってわれわれ国民は日本において知るというかっこうになるのですか、そこら辺はどういうことになるのですか。
#177
○国務大臣(愛知揆一君) 私出かけます前には十分の準備をして参りたいと思っております。それから、前々からも申し上げておりますように、何といいますか、交渉方針というものが一枚の紙になって、そしてこれをイエスかノーかと言わせるような本件についての当たり方は、私は不適当だと思いますし、おのずから幅のある考え方をまず基礎にした考えを固めて参りたいと思っております。と申しますのは、対決してどうこうというのではなくて、話し合いの中にこちらの主張をできるだけ貫徹するように、相当の時間をかけ、回数も重ねていかなければならないことと思っております。その話し合いの中から国民的な御期待に沿い得るような結末を最終的に十一月末には決着をつけたい。よく総理も言っておりますように、そういう場合におきまして、たとえば総理訪米前に党首会談というようなことも場合によってはお願いすることが適当でないかということもよく言っておるようなわけでありますから、その辺のことにつきましては十分配慮してまいりたい、こういうふうに考えております。
#178
○川村清一君 最後にもう一つ。大臣がおいでになるときには、何も私はこういう考え方で行きますということは報告されないで行かれるわけですか。
#179
○国務大臣(愛知揆一君) いま私申しましたのは、最終的に党首会談というようなことも考えて行くくらいでありますから、私が参ります場合におきましても、私の考え方というものにつきましては、明らかにしてまいるのが筋であろうと、かように存じます。ただいまお話しになりましたように、具体的なことにつきまして、ことばが適当でないかと思いますが、自繩自縛みたいなものになってしまって交渉がうまくいかないというようなことを考えの中には入れなければなるまいと思います。これも、総理のことばを借用すれば、むずかしい交渉事でございますから、ある程度の幅と、フリーハンドというものをある程度与えていただかなければ、かえって望ましい結果が得られない場合もある、そういうことも考えておりますので、なお若干の時日もございますから、早急にどういうふうに考えるか、どういうふうに交渉に臨むか考え方を取りまとめまして、それに応じて御報告をするなり、御説明をするなり、あるいはその上に立ってさらに御協力をしていただければ、たいへんしあわせであると考えております。
#180
○渋谷邦彦君 ただいま大臣の答弁を伺っておりまして、実は私もその問題に触れようとこう思っておったわけです。衆議院で大臣が答弁なさった内容を拝見いたしますと、首相訪米の際に効果があがるようにレールを敷くんだと、こう仰せになっておるのですね。レールを敷くからには、それだけの準備というものがおありになると、こう判断せざるを得ないわけです。もうすでにいままで衆参両議院において、この問題についてはもうしばしば論議が繰り返されてまいりました。何といっても、この問題は、基地の態様、この一言に尽きるわけでありますけれども、いろいろないまの御答弁を伺っておりまして、それはなるほどおっしゃるとおりだと思うのですね。弾力性のあるそういう交渉態度で臨まなければ外交折衝としてはマイナスをつくるだけだ、これは十二分にわかりますけれども、やはりこちらの腹づもりとして、いままで世論の上からも、一応こういう国論の統一というものを考えつつ全体観に立った場合、こういう大体話し合いをすべきが最も現状に適したやり方ではないか。もうおそらく、大臣が六月三日、四日、五日でございますので、当然腹案がおありになるのじゃないか。東郷局長が今度大臣がいらっしゃるための下折衝、これまた段階的に、首相が行かれるときの外務大臣の下交渉、何かその辺が、やはり大臣がロジャーズに会うにしても、相当権威のある、オーソライズされた話し合いだと思う。ならば、相当突っ込んだ話し合いができてよろしいのではないか。大臣の答弁を先ほどから伺っておりますと、非常にじょうずなんですよ。肝心なところをおっしゃってくださらない。それをくどいようですけれども、いかがでしょうか。レールを敷くと言っておりますが、そのポイントがはずれたら大臣ひっくり返りますよ。その辺をひとつあらためてお答えいただけないでしょうか、実はこういう点が用意されておるのだという。
#181
○国務大臣(愛知揆一君) これはなかなかむずかしいことですけれども、私といたしましても、いろいろ考えて周到な準備を進めておるつもりでございますが、基本的に申しますと、先ほど申しましたように、早期施政権の返還、それから安保体制の護持、国民世論の上に立った結果を紹介したい、こういう基本線でまいりたいと思います。同時に、この効果あらしめるためには、まあなかなか適当なことばがありませんけれども、沖繩問題、ことにこの基地の態様というようなところだけをシングル・アウトして、これで勝負だということでは、策がないのではないか。なかなかアメリカとしてもいろいろ広い視野に立っての問題の処理に当たろうとしておることは、容易にうかがえまするし、またそれも当然かと思うのであります。したがいまして、日本の立場として、主体的に近隣の諸国に対してどういうふうな情勢判断をわれわれはするのである、それに対してアメリカはどういうふうな見解を持っているのか、こういうふうな一般的な情勢判断、分析というものにつきましての私は国民世論の上に立って、日本らしい、平和国家らしい、しかもアジア諸国に対する協力というようなことも十分考えていかなければならない。これは、アメリカがどうするであろうかというような先回りをした考え方じゃなくて、日本としての主体的な考え方でもって、われわれも国民的な願望に立った意欲的な構想というものを持っていなければなるまいかと思います。それから、たとえて申しますれば、沖繩の基地の問題につきましても、本土並みということばがもうすっかり定着したように使われておりますが、同時に逆の本土並みということも考えなければなりません。沖繩の施政権が返るならば、沖繩の防衛ということについて、やはり日本の手によって本土並みに防衛をはかってまいらなければならない。これもまた施政権を要求する以上当然ではなかろうかと思いますが、そういう点につきましても、おおよその基本的な考え方というものは固めなければならないのじゃないか。そういうことが相互に関連して、その中からこの返還問題についての望ましい結論というものを導き出すようにしなければならないのではないか、こう考えまするので、そういったような考え方を固めながら、本筋を、レールの下に敷く土なりあるいは砂利なりというものも同時に固めていってりっぱな線路になるようにしたい、こんなふうな気持ちでおるわけでございます。
#182
○渋谷邦彦君 おそらく、この交渉の具体的な取りきめ等については、いまおっしゃるとおり、いろんな含み、弾力性ということは当然考えられますし、おそらくそのために、第一案、第二案、第三案というような、そういう腹案もおありになるのではなかろうか。実はいまの東郷局長のお話にもありましたように、なるほど重要性ということについてはよく認識しているというお話でございました。ただし、その重要性を認識したというその対象は一体何であるか、それは戦略的軍時的に重要なのか、沖繩返還といういま日本の国内に高まりを見せている、そういう世論というものを非常に重視しているのか、この辺がいま明確なお話がなかったわけでありますね。ところが、いま言われたことを裏づける一つの問題があるのですね。これは私があえてここで力んで申し上げなくてもよろしいのですけれども、過日沖繩に参りましてランパートあるいはカーペンターに会いましたときにも、大体出先の機関ですから、それはもちろんはっきりしたことは言わないですが、しかしわれわれが会った感触としては、やはりキー・ストーンとしての重要性ということは相当根強く持っている。まあそう簡単には渡せませんよと、金もかかっていますよと、こういう表現でございましたね、私の印象といたしましては。おそらくホワイト・ハウスにしましても、出先がそういうような感触を持っているということは実際考える、本国政府は。それと同時に、かつてニクソンが副大統領のときに沖繩を訪れたことがあるのですね。そのときの記者会見の際の言明というものは、まことにきびしい結論だったのです。その後ニクソンが、はたしてタカ派的なそういう考え方というものを変えておられるかどうかわかりませんけれども、もしもそうした底流にそういう考え方というものが今日なおあるとすれば、先ほど来から壁論が出ておりますように、たいへん厚い。しかし、やはり外交折衝というものは、どこかに一つの盲点を見出しながらそこを切りくずしていくという場合もございましょう。したがいまして、いま大臣がおっしゃったことは、私どもも十分わかるのです。いろいろな、核抜きとか、核つきとか、そんな問題が議論されてまいりました。したがいまして、その前提を踏まえて、おそらく大臣として、あるいは佐藤首相としても、こうすべきではなかろうかというもうすでに腹というものはでき上がっているはずじゃないかと。確かに時間がかかる問題だと思います。アメリカ政府においても、日本の現在のこの国民の世論の動向というものはどっちの方向を向いているんだと、一体ここでさらに国民の世論というものを刺激してプラスになるのかマイナスになるのかというようなことは、もうとうに計算済みじゃないかということを感ずるわけですね。お互いそういう一応の認識と理解の上に立って、さらに今度あらためて公的な折衝という段階を迎えるわけでありますので、当然、これから出される問題は全然不明確だ、わからない、ただその努力を積み重ねて一つの方向を何とか見出そう――これはわからないでもありませんけれども、何かそこのところもっと詰めたもうすでに結論というものがおありになるのではないかということを先ほど来から申し上げているわけでございますが、大臣それ以上のことはおそらくおっしゃらないと思いますので、私どもとしては、ただ、せっかく外務大臣が行かれる以上は、われわれとしてもその成果を期待したい、そのつもりでアメリカに行っていただきたいものだと、まあその要望を交えて申し上げておくわけであります。
 次に、いまのその核という問題に関連して一つだけまた大臣に確かめておきたい問題があります。これもたしか衆議院の外務委員会か何かでお話があったと思いますが、まあ私の記憶に誤りがあれば訂正をいたしますが、沖繩において核が持ち込まれていると、これはいろいろなふうにいままで言われてきました。新聞報道でもあります。いろいろな現地の人のうわさというものもございましょう。そういうことが一つの集約された形になって、沖繩には何百発以上の核弾頭がもうすでに持ち込まれているのだ、しかし政府としてははたしてその核があるかどうかについては正式に確かめたことはありませんと、話をしたこともありませんと、こういうお話をなさったことを記憶しておりますけれども、それはこういう機会に公式に話が出せないものなのかどうなのか、その点の所信を大臣にお伺いしたいと思うわけでございます。
#183
○国務大臣(愛知揆一君) 沖繩にメースBというものがあるということは、公にされた情報等によってもわかっていることかと存じます。それから、いまのお尋ねの点でございますけれども、これは、いまはアメリカが施政権を持って自由に使用しておりますし、ことに核兵器の問題等につきましては、アメリカ自身としても、非常に厳重な管理を一般的な問題ですがやっておるわけでございますから、現状において、そういう点について報告を求めるとか、あるいはそれ以上に進んで調査をするということができない筋の問題であるということは、これはまあ当然のことかと思いますが、しかし今度は、これからの問題といたしますと、返還の交渉に実体的に入りますし、それから返還されるときの時点以降においてどういう状態が日本として望ましいかということについては、私は私なりに理解できますから、もうここまで来れば、その返還の時期以降においてどうするかということを焦点にして、そしてこれは考えていかなければならない、かように私は考えております。
#184
○渋谷邦彦君 制約された時間でありますので、まことに脈絡のない質問になってしまうのでありますが、おそらく今度の訪米の最大焦点は、何といっても返還ということを軸にした話し合いということがおそらく大部分を占めるであろう。もちろん、先ほどのお話のように、今日のアジア情勢というものをどう考えられ、どう情勢分析をするか等々の問題も出るでありましょう。ASPACの問題もおそらく関連した問題として出るかもしれませんけれども、やはりその焦点は沖繩である。ならば、まあことしはということで、だいぶ沖繩百万島民の方々も多大の期待を持っておるわけでありますが、返還のめどがつくであろう。ところで、この返還の前後を考えてみた場合、非常に問題が多過ぎるわけですね。核の問題もさることながら、一番いま沖繩県民として不安に思っておることは、むしろ返還後の経済自立というものがはたしてできるかどうか、これが最も大きい課題であろう。そこで、それに関連する内容としまして直ちに起こる問題が、ドルの撤廃ということと日本円の適用ということになります。当然これはアメリカ政府との関係も生じてくるであろう。こういう問題があります。
 それから、いま非常に激増しておりますものが米国の軍人軍属による犯罪であります。これの裁判権の問題も当然でございましょうけれども、補償問題についてはまことにもう差別がはなはだしいこと、これはもうすでに幾つかの事例が取り上げられてその審議の対象になってまいりました。一番いま、核もさることでありますと申し上げましたのは、那覇を通っておりますひめゆり通りですか、あそこを通っている燃料パイプがあるわけですね。一日百五十万ガロン使うといわれておる。これが何かの拍子にどっか点火しますと、全部爆発的な燃焼になって、多大の損害を地域住民に与えるという、そういう問題が現在起こっておるわけであります。現在というよりも、だいぶ前からの問題でありましょう。そのパイプの通っておる状態を見ると、いま申し上げたひめゆり通りを中心として至るところにめぐらされておる。こうした問題でもし事故が起こった場合、一体どうするのか。あるいは、先般来から、燃える井戸であるとか、そういうこともございましょう。あるいは交通事故等においてひき殺した場合でも、実にみじめな問題があります。一体これは本来ならば米国が補償すべき問題じゃないか。こうしたことも今度大臣がいらっしゃったときには当然の問題として起こるのではないか、こう思いますけれども、こうした具体的な問題については、むしろ相当話を進める糸口ができるのじゃないか、こう思いますけれども、そうした問題についてはどのようにお考えになっていらっしゃるか。
#185
○国務大臣(愛知揆一君) これらの問題は、まことにごもっともな御指摘でございまして、実は私も、直接には私が返還の交渉に当たるわけでございますけれども、返還ということを前提にして、まだまだいわゆる一体化、それから沖繩県民の福祉関係につきましてもやるべきことがこれはもうたくさんあることは、かねがね内閣の一人として心配しておる点でございます。施政権返還ということがだんだん時間的にもう差し迫ってきているということは、一面から言えばたいへん喜ばしいことでございますが、それを前提にして、復帰してこられた場合に、沖繩県民が本土と同様な条件のもとにおいて生活を享受し得るようにしなければならない。それを前提にして、施政権返還がきまりましても、その間に若干の時間が残ろうかと思います。その時間の間にも、できるだけ能率的にこうした仕事を運んでいかなければならない。これには財政的にも相当の負担になる部分もございましょうけれども、これだけの国民的願望が四分の一世紀ぶりに成就するわけでございますから、内閣全体としても国民の御支援のもとに、こうした問題を着々と解決することは、大いに意気込んでやっていかなければならないことと存ずるわけでございます。これらの問題につきましては、主として内閣としては総理府が所管されているわけでございますが、私としてもできるだけの御協力をして、中にはやはり対米交渉が絶対的に必要なものもたくさんございまするので、そういったものについては、今後の対米交渉におきましてもさらに一段と意欲的に片づけるようにいたしたいという、抽象的でございますけれども、決意としてはかたい決意で前進したいと、かように存じております。
#186
○渋谷邦彦君 返還までは、どう考えても、時間的に問題がこれからもございましょう。いま私が申し上げたことは、その間においてもいろいろな問題が起こってくる。したがいまして、中間的措置として、ぜひともその問題は解決をはからなければならない問題である。また解決がはかられるはずである。大臣はよく御承知のように、相互信頼のもとに日米交渉というものが詰められていくならば、これは必ずその成果を得ることは間違いないというような意味のことをおっしゃっておられるように、その辺は、やはり今回の交渉を通じましても、あるいは労働布令の問題もございます。あんな人権を無視した布令なんというのは、いまごろ前近代的なああいう布令が出ること自体が、一体沖繩県民を何と考えているかというセンスのなさを思わしめるわけですね。そういうところに、日本を含めたアジア民族に対してのアメリカの考え方というものが従来どおり変わっていないのかどうなのか、こうしたことを私どもは非常に心配するわけなんですね。一部には、これはナンセンスな話かもしれませんけれども、黄禍説なんということも、いまだに非常に強く、根深く一方においてはそういう思想があるというようなことが言われたり、まあいろいろなからみが出てくるわけであります。いずれにしても、アジア人蔑視と申しますか、軽視という問題は、絶対に許されない。そうした問題を踏まえて、やはりいま申し上げたような、強力にひとつ中間的な措置が全面返還を前提としてとられなければなりませんし、せっかく総理が行くについては、大臣としてもそれだけのひとつ用意をなさって行っていただきたいとこう思いますが、その答弁をいただいて私の質問を終わらしていただきたいと思います。
#187
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほども申し上げましたように、まことに適切な御指摘でございますし、私もかねがねそういう点については心配もしておったわけでございますが、いよいよ返還問題が具体的な日程にのぼってきつつあるわけでございますから、この際あらためて勇気を持って具体的に解決に当たらなければならない。そうしなければ、せっかくの返還ということが実らないのではなかろうか、こう思いますので、沖繩全体が、さっき申しましたように、それこそ本土並みにすべての条件が整うようにする。まあ経済政策その他でも、ずいぶんまだまだこれから急速に用意をしなければならないことがたくさんあるように思います。内閣全体として沖繩問題の処理に当たるという体制をいやが上にも強力にいたしたい、かように存じております。
#188
○春日正一君 時間がないから、ざっくばらんというか、ぶっきらぼうな質問になるかと思いますが、外務大臣来月二日おいでになるという新聞報道ですが、当然それまでには、基本的な交渉の態度といいますか、それはきまっているものだろうというふうに私ども考えているし、世間でも考えている。最近の新聞では、討議資料として核抜き本土並み、これで交渉する政府は腹をきめたようだという報道もあるんですけれども、いままでの大臣の答弁を聞いていますと、何かそういうふうにきまってない、まだそういう態度はきめていないんだという印象を受けるんですが、その点どうなんですか。
#189
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、先ほど申しましたように、一字一句間違ってはいけないというような交渉案というものでございますれば、もうイエスかノーということになりますし、先ほど来言っておりますように、この沖繩問題の処理というのを国民的な願望、期待にこたえるような形にうまく決着をつけるというためには、相当、何といいますか、アプローチのしかた、交渉のやり方にも、それなりのやはり方策が私はあるはずだと思いますので、基本的な考え方はもちろんきめてまいりますけれども、ある程度のフリーハンドというものは持たしてもらいたい。そういう限りにおきましても、先ほど申しましたように、私といたしましては、自分の与えられた任務あるいはその方向というものについてはひとつ明らかにしてまいらなければならない、かように考えております。
#190
○春日正一君 東郷局長向こうへ行って、向こうの新聞からの報道によると、アメリカ側の当局者は相当強いことをずばずば言っているんですね。こっちは核つき必要だとか、自由使用はこれは譲れないとか、あるいは沖繩返せと言うからには日本が極東の防衛のためにもつと積極的にならなきゃだめじゃないかとかいうようなことをいろいろずばずば言っている、向こうは。ところがこちらのほうは、それに対して、非常に交渉をむずかしいからといって、音なしのかまえというようなことで、国会でも全然基本的にどういう態度でいくのか――国民が最低限望んでいるのが核抜き本土並みだ、せめてこのくらいはどうしても通すんだ、外交というものはそういうものじゃないですか。基本的な腹をきめといて、それを通すためにいろいろの側面から話のきっかけつくっていくとか、説き落としていくというようなことがあるにしても、どこへ持っていくのか腹がきまってなければ、これは話のしようもない。向こうは非常に強くてどんどん出てくるのに、こちらは国民に対してもどういう態度で臨むかということをいまだにはっきりされない。そのことを国民は非常に不安に思っているんですね。だから、その辺のところでどういう態度でいくのか。政府としてはこうするんだ、交渉してみてこうしかいかないんだというときは、それはまた国会に報告して、国民はそれをどう思うかを聞けばいいのであって、基本的な腹を全然国民に知らせぬで行かれるということになると、どうも国民としては非常な不安を持たざるを得ないということになるので、その辺どうですか。
#191
○国務大臣(愛知揆一君) 現に施政権を持っているものを返還させるということ自体が、そしてこれを大いに国民的の願望として、こんなに長く施政権を持っておられること、これは沖繩百万の人たちの気持ちからいえばどんな思いがしているのかということを基礎にして、われわれとしては返還問題に取り組み、かつこれを公約として掲げ、対米折衝に臨もうとしておるわけでありますから、何といったってこれがわれわれの基本線、これが堂々と披瀝しておると私は思います。
 それからもう一つ、アメリカはどんどんずばずば言っておるではないかというおことばで、そのおことばを返すようで恐縮なんですけれども、アメリカの政府、責任当局、何らやはり言っておりません。音なしのかまえでございます。先ほど申しましたように、双方政府同士は白紙である。こういう状況でございますから、これは時の経過に伴って、ひとつわれわれといたしましても、秘密外交というようなことは考えておりませんですから、状況を御報告をし、さらに一段の御声援をいただくようにしたいと、かように存じておるわけでございまして、どうかひとつ、そういうふうに一度やりだしましたら不退転の決意でやってまいりたいと思います。
#192
○春日正一君 それと関連して、アメリカのほうでは、沖繩の施政権を返すからには極東の安全について日米がもっと軍事的にも責任を持てというようなことも主張しておるというようなことが伝えられておる。これは政府当局者が、いま大臣言われたように言ったのではないにしても、いろいろの人が、しかも相当役人としては高い地位にある人がそれは言っておる。そうしてそういうものを受けて、新聞なんかでも、政府が返してもらう交渉に行く場合ですね、やはり極東の安全について日本が責任を持つと。そのことを大臣は先ほど、本土並みといえば沖繩を防衛するという意味でも本土並みだというような形で言われたのですけれども、しかし事は沖繩だけの局部に限らず、日本全体の軍事力を非常に大きく増強する。たとえば、新聞の報道によれば、そういう立場から第四次防ではGNPの二%くらいを軍事費に回すというような案を持っていくのだというようなことも伝えられておりますけれども、そうなると国民は非常に不安になる。沖繩を返すということをてこにして日本の軍国主義というものが非常に復活するのではないかという不安を持つわけですけれども、そういう点について大臣としてどうお考えになっておるのか。沖繩が返るということになれば、沖繩には当然、小笠原防衛と同じように、軍隊をやるというだけにとどまらず、日本全体が極東の軍事情勢の中で占める地位を飛躍的に増強するということになるのかどうか、その辺お聞かせ願いたいのですが。
#193
○国務大臣(愛知揆一君) これは多くの国民の方々が私は理解してくださっておることと思いますけれども、憲法によりまして日本政府は、たとえば海外派兵というようなことは考えてもおらぬ、できぬことだ、こういう考え方は、私は国際的にも相当定着してきておると思います。したがって、日本が憲法の範囲内においてみずからの国をみずから守るという努力は当然あってしかるべきであると思いますけれども、それをこえて、いまお話がありましたが、アメリカ帝国主義の世界戦略体制の一環として、防衛という問題についてもアメリカの肩がわりを他方において展開するというようなことは、みじんも私は考えておりません。ただ、沖繩の施政権を返せ、返ってくるのだという、そういう気持ちは、沖繩につきましても本土と同様にこれを防衛するということを憲法の制約下においてなし得る限度においては、その責任はむしろわれわれが主体的にあるんじゃないだろうか、こういうふうな考え方でおるわけでございます。
#194
○春日正一君 その説明では十分でないと思うんですがね。というのは、憲法の解釈ということがずっと発展してきまして、最近では非常に拡大されて、核兵器を持つことも憲法からいえば違反じゃない、ただそれは政策上持たぬというだけのことだというような形になってきていますから、憲法の範囲内においてということだけでは、もう安心できぬと思う。そういうところにきておる。国民はそういうところを非常に不安に思っているのですが、そこでもう一つの問題は、自由使用の問題ですね。これは現にB52が出ていっておるというような状況、これはまだ相当続くだろうと思う。そうすると、当然その自由使用について特別の取りきめをするかどうかということが問題になるわけですけれども、この点で条約局長は、国会の承認を必要とすると、きょうこういうことを言ってますね。安保六条の交換公文を法律的に変更する場合には国会の承認が必要だというふうに条約局長言っているんですけれども、この交換公文を法律的に変更するということの意味ですね、これはどういうことなのか。
 それから、国会の承認を必要とする国際的取りきめということになると、その規準はどういうものか。いままで、安保条約本文に限らず、協定とか交換公文、そういうものも条約と一体のものとして、それを変えるには国会の承認を要するというふうな説明がされてきたと思うんですけれども、そういう形のいま言われたようなものを必要とするものはどういうものか。
 それから、たとえばこれが交換公文を変えるといったような形でなく、共同声明みたいなような形で大ざっぱにぱっと合意されてしまうという場合には、国会の承認を必要としない、事後承認、まあそのまま通ってしまうということになるのか、その辺をはっきりさしておいてほしいんですが、
#195
○政府委員(佐藤正二君) けさだったと思いますが、午前中衆議院でお答えした答えだと思いますが、まだ全然政策的にきまってない問題でございますために、非常に抽象的にしかお答えできませんでございますし、したがってそれをお断わりして衆議院でも御答弁したわけでございます。したがって、もう非常に、何と申しますか、観念的なお答えになってしまって、まことに相すみませんでございますが、その交換公文にきめられた問題があるわけでありますが、それを法的に変更するようなもの、そういうものが国際的取りきめとしてできた場合には、これは当然国会の承認を受くべきものと、これは抽象的に申し上げますれば、そういうふうに申し上げるよりしかたがないと思います。
 それで、後段のお尋ねでございますが国会の承認を受けるべき取りきめというものはどういうものであるかというお尋ねだと思いますが、これはいままで政府がたびたび申し上げておりますと思いますが、法律事項及び財政事項というようなものを含んだ国際取りきめ、すなわち行政権の範囲内で処理し得ないもの、そういう国際取りきめができましたときには、当然国会の御承認を受けると、こういうふうに御答弁しておきます。
#196
○春日正一君 共同声明の場合、どうですか。
#197
○政府委員(佐藤正二君) 単に共同声明とおっしゃられても、非常に困るわけでございますが、内容によりまして、その共同声明という名前だけでは、実は名前のためにそれが国会の承認を受けるか受けないかというその区別にはなりませんでございまして、たとえば日ソの共同宣言というようなもの、あれも共同声明と似たような形のものでございますが、あれは確かに法律的事項を含んでおります国際取りきめでございましたために、国会の承認を受けたわけでございます。したがって、そういった法的に拘束力を持つような文書でございました場合には、そして内容的に法律事項、財政事項を含んでおりますような場合には、当然国会の承認を受けると、そういうふうにお答えするよりほか、名前ではちょっとお答えできないわけでございます。
#198
○委員長(山本茂一郎君) 本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会をいたします。
   午後五時六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト