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#1
第061回国会 産業公害及び交通対策特別委員会 第9号
昭和四十四年六月四日(水曜日)
   午後一時二十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十九日
    辞任         補欠選任
     大森 久司君     黒木 利克君
 四月二十三日
    辞任         補欠選任
     多田 省吾君     小平 芳平君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         加藤シヅエ君
    理 事
                大谷 贇雄君
                黒木 利克君
                松澤 兼人君
                内田 善利君
    委 員
                菅野 儀作君
                土屋 義彦君
                山内 一郎君
                渡辺一太郎君
                杉原 一雄君
                千葉千代世君
                小平 芳平君
                小笠原貞子君
   国務大臣
       国 務 大 臣  床次 徳二君
   政府委員
       内閣総理大臣官
       房陸上交通安全
       調査室長     宮崎 清文君
       警察庁交通局長  久保 卓也君
       厚生政務次官   粟山  秀君
       厚生省医務局長  松尾 正雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
       常任委員会専門
       員        吉田善次郎君
   説明員
       厚生大臣官房審
       議官       高木  玄君
       運輸省自動車局
       参事官      岡田 茂秀君
       労働省労働基準
       局補償課長    長岡  貢君
   参考人
       患者代表(全国
       むちうち症被害
       者対策協議会財
       務部長)     小安 常祐君
       国立王子病院副
       院長       渋沢喜守雄君
       患者代表(全国
       むちうち症被害
       者対策協議会会
       長)       松倉 昭二君
       社会保険中央病
       院院長      渡辺 茂夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠選任の件
○参考人の出席要求に関する件
○産業公害及び交通対策樹立に関する調査
 (交通事故によるむちうち症対策に関する件)
 (むちうち症対策の充実に関する決議の件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(加藤シヅエ君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。
 まず、おはかりいたします。去る四月二十四日、佐藤理事から文書をもって、都合により理事を辞任したいとの旨、申し出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 つきましては、直ちにその補欠選任を行ないたいと存じます。選任は投票の方法によらないで委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認めます。
 それでは理事に黒木利克君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(加藤シヅエ君) この際、参考人の出席要求につきましておはかりいたします。
 交通事故によるむちうち症対策に関する件の調査のために、本日この特別委員会に、患者代表全国むちうち症被害者対策協議会財務部長小安常祐君、国立王子病院副院長渋沢喜守雄君、患者代表全国むちうち症被害者対策協議会会長松倉昭二君、社会保険中央病院院長渡辺茂夫君の四名を参考人として出席を要求したいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#7
○委員長(加藤シヅエ君) 産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、交通事故によるむちうち症対策に関する調査を行ないます。本件につきまして、本日は四名の参考人の方々から御意見をお伺いいたします。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は御多用のところ 本特別委員会に御出席をくださいましてまことにありがとうございました。むちうち症に関する諸問題につきましてその実情を御報告願うとともに、忌憚のない御所見等を拝聴いたしたいと存じますが、よろしくお願いいたします。
 次に、本日の議事の進め方でございますが、参考人の方々から順次御発言を願うことにつきまして、まことに恐縮でございますが、時間の関係もございますので、大体お一人十五分程度におまとめを願いたいと存じます。次いで各委員から質疑がございますので、これに対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人の方々の御発言の順位でございますが、これは慣例といたしまして五十音順ということになって、ただいま御紹介を申し上げたような順位になっておるのでございますが、御意見を伺います都合といたしましては、やはり医学の立場からの参考人の方の御発言を最初にお二人、そして患者代表の方をそれに続いてお二人、こういうことにお願いを申し上げたいと存じますから、そこにお並びになりました順序と少し変わってまいることを御了承願いたいと存じます。それで御発言の順序は、最初渋沢参考人から、次に渡辺参考人、その次が小安参考人及び松倉参考人、こうした順序でお願いいたしますので、よろしくお願いいたします。
 ではこれより順次参考人の方から御意見を聴取いたします。最初に渋沢参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(渋沢喜守雄君) まっ先に御指名にあずかりまして光栄に存じます。
 実はお手元に刷りものをお差し上げしてあると存じますが、一部足りない方もあるそうでございますが、たいへん失礼いたしました。刷りもののうち日本文は、これは去年一年間私が現在の病院で実際取り扱った患者さんの検査成績、横文字は参考のためにサルで実験した成績でございますが、本日はこの日本文で書いた患者さんの検査成績だけを申し上げます。
 私自身、昭和三十八年の夏、厚生省へ出張した帰りに、皇居の前で小型トラックにぶつけられまして、私自身むち打ちになったのでございます。そのとき私はむろん頭が痛い、目が回るというようなこともありましたが、非常に背中と腰が痛いということ、それから足がしびれる、それから物につまずきやすいということを感じたのでございます。そのときからむち打ちという病気は、これは首や頭だけの病気じゃなしに、もっとほかのところにも障害があるのじゃなかろうかと、こういうふうに感じ、そのうちに厚生省を通じまして科学技術庁の交通事故防止対策特別研究調査費をもらいまして、多数の患者さんを取り扱う機会を数年間持ちましたが、ますますそういう感を深くしたのでございます。
 この日本文の四二四ページの第¥というところがございますが、まず患者さんはいろいろのところが痛いということを訴えます。たとえば首が痛い、肩が痛い、背中が痛い、腰が痛い、腕が痛い、そういう痛いというようなところをよくさわってみますと、そこには四二五ページから四二六ページにあるような、ちょっとこれは薬や何かではなかなかなおりそうもないような変化があるということに気づいたのでございます。これはほとんどすべての患者さんに、全例とは申しませんが、ほとんどすべての患者さんに出てくる症状でございます。そういったこととともに筋肉の力が落ちてまいります。したがいまして、これは神経のほうからも説明できますが、ものをにぎる力とかあるいは胸を広げる力とか、あるいは背骨をこう曲げる力、胸筋力、背筋力というようなものがどんどん落ちてまいります。
 それから、前のほうへ飛んで恐縮ですが、四二○ページの第二列目の上のほうに書いてございますが、背中が痛い、腰が痛い、つまずきやすい、腰がふらふらする、こういうふうな患者さんが相当のパーセントに出てまいります。したがいまして、ここから上だけじゃなしに、腰から下にも何か故障があるのじゃなかろうかということを暗示するものと存じます。
 次に四二一ページのVと書いて、「呼吸機能と心電図」とございますが、呼吸機能はいろいろの検査の方法で調べておりますが、どの検査方法をいたしましてもおよそ七〇%、七割くらいの患者さんに呼吸機能が、どういう方法で調べましてもかなりの程度、二〇%くらい、落ちております。そうして血液はアルカリ性に傾く傾向があります。また、心電図はおよそ五割の患者さんにおいて、一定ではございませんが、何かしらの変化がございます。
 それからその次に、Wと書いてございますが、胃のカメラというものを飲んでもらって、これは首の痛い患者さんに胃のカメラを飲ませるのはたいへん医者としては忍びないことでございますが、飲んでもらって調べてみますと、第5図というように線状のびらんあるいは出血、かいようというようなものが正常人よりもパーセントが非常に高く出ているわけでございます。
 その次にXと書いてあるところがございますが、「内分泌機能」内分泌機能のうち、特に副腎の機能というようなのがございますが、副腎の機能は大体七割くらいの方が低下してまいります。そのうち約三割は著しい低下を来たして、しまいにはアディソン病という、顔が黒くなるようなそれほどひどい病気に、障害になる者もございます。で、よくむち打ち症の患者さんが立ち上がると目がくらむとかなんとか申しますが、あれは副腎機能の障害と関係があるのじゃなかろうかと、こういうふうに考えます。
 それから御婦人では、卵巣のホルモンの分泌のしかたが生理の機能に従いまして、山を描いてふえたり減ったりするのでございますが、これが平べったい一直線になってしまいます。しかも非常にレベルが低いレベルになってまいります。そして無月経、あるいは生理が非常に不順で、月に五回生理があるなんていう方が、決してまれでございません。
 それから次のページにZというところがございますが、まず患者さんは大体四日目ごろから自分がちょくちょくおトイレに行く。たいへんどうも下等なお話で恐縮でございますが、しばしばおトイレに行くということに気づきます。むろん看護婦も気づきます。したがって、われわれもそのころ気づくのでありますが、よく見ておりますと、ほんとうによく通うんです。私は女性についてはそういうことはできませんが、男性の患者さんについては、しばしばトイレまで一緒についていって、みますと、尿の流れが非常にのろくなる。そうして排尿する時間が非常に長くかかる。そして帰ってきてもまたすぐトイレに行きたい。つまり残尿が残る。こういう傾向が大体二週間ごろ最も著明になってまいります。そして大体三週間くらいになりますと、状態はもっと悪くなってまいります。そのころ患者さんは便泌を訴えて盛んに下剤を要求してくるようになります。また腹が張ってガスがふくれて、腸がこんなに大きくなりましたということをよく言ってまいります。ちょうどそのころこれまたたいへん下等なお話で恐縮でございますが、男の方ですと、勃起不能なんという現象がしばしば起こってまいります。この勃起不能という現象は、私が取り扱いました患者さんでは四五%が一過性に起こっております。また難治症になった同症患者では六〇%が六カ月以上の勃起不能を訴えております。むち打ちというのは若い人に多うございますから、若い患者さんでこういうことが起こってまいりますと、その家庭はたいへんな悲劇に見舞われるのではなかろうかと、こういうふうに存じます。この勃起不能、排尿障害というのは、三カ月くらいでよくなる者もありますし、六カ月たってもよくならない者もございますが、大体境目は三週間くらいで見当がつきます。三週間くらいたって症状がさらに悪くなっていくというような場合には、これは必ず慢性化してくる。三週間くらいたって少しずつ軽快してくる者は、これは軽くてなおるということが、およそ見当がつくわけでございます。そして勃起不能が回復したあとどうなるかと申しますと、今度はこれまた下等なお話でまことにおそれいりますが、射精がたいへんうまくいかなくなります。射精の時間が非常に長くなる、射精の量が少なくなってくる。患者さんのことばを使うと、のろのろ、ぽとぽと射精する、こういうふうに患者さんは言います。こういうころに腰の痛みとかあるいはものにつまずきやすいとか、あるいは足がしびれるということを同時に訴える者が多いようでございます。
 こういうふうに、きわめて簡単でこざいましたが、むち打ちの患者さんは全身に、至るところと言ってもいいくらい多くのところに隠された症状をひそめて持っておる。たとえばいま申しませんでしたが、盲腸炎、正しく言えば、医学的には虫垂炎と申しますが、盲腸炎のような痛みを訴えるという患者さんが幾人もおります。また、ここに胆嚢という苦い水のたまるところがありますが、胆嚢の働きが悪くなって胆汁がうまく出ないというような患者さんもおります。そういうぐあいにむち打ちという病気は、肩、首、頭という、こういうだけの病気ではなしに、全身にまだわからない、医学的に解明し切れない、隠された症状を秘めて持っておる、そういうふうに考えられます。
 ところが、患者さんに対してはまことに申しわけない言い方でございますが、むち打ちの患者さんくらい医者の指示に忠実に従わない患者さんは、これまたきわめてまれでございます。患者さんは、ここに代表者がおられるのでまことに恐縮ですが、ほんとうにむち打ちの患者さんは医者の言うことをあまりきかない。これはむろん社会的なあるいは経済的な事情があってきくことができないだろうと存じますし、これは医者であるわれわれには解決することができない問題だろうとは思いますが、医者としては、被害者はもちろんのこと、その御家族もまたその方を雇っている会社、団体、そういうものも、また加害者も、加害者の加入している団体も、言いかえるならば、社会全体がこのむち打ちということがきわめてやっかいな、何だかわけのわからない、医学できわめ尽くされないいろいろなものをひそめておる、そういう病気であるということを十分に認識してくださって、そうして治療には長い日数がかかるというふうにお考え、また覚悟していただくということが必要じゃなかろうかと、こう存じます。渋沢の証言、以上でございます。
#9
○委員長(加藤シヅエ君) ありがとうございました。
 では次に、社会保険中央病院院長の渡辺参考人にお願いいたします。
#10
○参考人(渡辺茂夫君) 渡辺でございます。私は脳神経外科の専門医でございまして、三十二年間脳神経の研究をやっておりますので、そういう立場からこのむち打ち損傷という受傷起点におけるこの病気につきまして、若干、時間の許す限りにおきましてお話ししたいと思います。
 かつてこういうものがなくて、最近多くなったというか心ごとき考えを皆さまおそらく持っていらっしゃるだろうと思います。これはすでにこのことばは一九二八年のフローという人が始めまして、その後一九四四年デビスという人が比較的広範に使っておりますが、まず四十年ほどの日にちがたっておる。しかし、その間ほとんどそういうことばをあまり使っていなかった。なぜならば、多くの受傷起点における、受傷メカニズムにおける一つの形でありまして、ただいまそれだけを取り上げて云々するというのは、むしろ非常に狭い範囲を見ているのじゃないか。むしろ私は、たとえば産業公害の原因の中で、たとえば鉛毒なら鉛毒とか、あるいはまた、最近のカドミウムならカドミウムというものだけを取り上げてやっているかのごとき感を持ちます。なぜならば広い意味における脳神経――脊髄を含めた脳神経の障害の中の一つの形というものでもあり、また同時に、それがただいま渋沢さんお話がありましたように、その衝撃が強ければ全身的な症状をもちろん呈する。しかし、それが局所として起こった場合には、当然脳並びに脊髄等の局所症状として考えていく、こういうふうな見解があるわけでございます。したがって、われわれ脳並びに脊髄その他の神経を扱ったものにとりましては、たとえば交通外傷が、現在御承知のごとく、年間九十万にもなろうとしておる、年間二万人の人が死んでおるという状態の中において、その中で脳及び脊髄損傷は六、七〇%あるわけなんです。六、七〇%の中の、いまのむち打ち損傷的な受傷起点を持つものが大体七、八%から一二%でございます。若干違うところもございますが、大体の検討したところ。ですから他のたとえば九〇%ならば九〇%以上はその交通傷害による脳神経障害というのが九割以上あるということをまず考えなければいけないと思います。そうして、それらに対する救いの手を伸べるということが広い意味においてわれわれそういうことの専門家として特にお願いしたいというふうな気持ちを持っております。ただいまお話がありましたように、確かに全身的なものは、一つの受傷者というものの中に、一つ脳あるいは神経特に脊髄神経こういうものの損傷からくるもの、さらに軽いものはいわゆる捻挫式、筋肉並びに骨並びにこの靱帯等の捻挫というものからくるものもあり得る、非常にバラエティーに富んでおるということをまず頭に入れなければいけない。それから同時に、それに大きな因子、ファクターがつけ加わってまいります。たとえば既往症的な因子、前に病気をしたものから続発疾病的な因子あるいは医原性ということばを持っておりますが、医師の指導がいいか悪いかによって医原性的な因子あるいは性格的なもの、あるいはまた、情動的なエモーショナルなもの、あるいは社会心理学的なもの、さらに加わって経済的あるいは環境的な幾多の因子というものも同時に考えなければならない因子があるということを忘れてはいけない。病気そのものに対する一つのそういう程度があると同時に、その周囲の環境というようなものからくるあるいは本人の体質、遺伝、心理状態、性格、そういうものも同時に考えて治療をし、指導をしなければならないということを忘れてはいけないと思います。したがってわれわれ脳神経を何十年かやっておる者にとりましては、この一つの現象だけを取り上げるという前に、もっとやらなければならぬ問題があるだろうということと同時に、この一つのものに対しまして、さらに先ほどのお話しのように、積極的に研究しなければならないし、また厚生省におきましても、われわれもその委員になりましていろいろな特別研究班で研究もしております。しかし、最初に私がお願いしたいことは、むしろその脳神経の外傷というものから来る後遺症というものがいかに広範であって、しかも、それの後遺症が悲惨であるかという現状というものを忘れてはいけないと思います。そういうことをまず私はお話ししたいと思うわけでございます。
 それから、個々の問題になりますが、こういう頸部症候群あるいは頭頸部症候群――頸部というのはくびです――サービカルシンドロームあるいは頭頸部症候群――クラニオサービカルシンドロームというようなものにつきましては、いまのいろいろの現象が出てまいります。たとえば頭を打ったということがなくても、頭を強く振ったということ。要するにウイプラッシュ・インジャリーズというのはむちを振るごとく頭を振るということでございますから、ですから、頭をかりに打たなくても脳髄に対して、特に間脳、その中枢に対する影響も当然あると思います。たとえば一つの例ですが、椎骨動脈がございます。これがくびの動脈の問題が、脳底動脈にも影響を及ぼしております。そういうことになりますと、首を強く振ったということ。特に細い骨の部分が頸骨の上にまるい大きな重いたまがついている。そのたまが振るということにおいて内部的な変化があるということは当然のことでございまして、そういうことから広い意味における脳あるいは骨髄神経の障害というものが、当然それが先ほどお話がありましたような自律神経障害あるいは内分泌障害、その他の障害が出てくるということも考えられます。
 それからもう一つは、受傷のメカニズムによってただ首を振るだけでなくて、いまの衝突いたしますと、前後動があります。上へ、しりもちをつくとか、背中を打つとか、そういうものがございますので、それは確かにいろいろバラエティに富んだ症状が出てきてもいい。同時に、もしよそを打ってなくても脳の中枢に対する、特に間脳における――間脳というのは自律神経中枢がございますが、人間の生命をあずかっておる自律神経中枢でございますが、その自律神経中枢に対して当然何らかの変化があってもいいという考えが出てまいります。しかし、そこに考えなければならない問題は、ケース・バイ・ケースである。ケース・バイ・ケースというものに対して明らかなる診断をすると同時に治療をするということがそこに出てまいります。それには何かと申しますと、そのシビアーな重症なものと、それから比較的軽症であるけれども、性格的あるいは心理的あるいは経済的いろいろなそのファクターというものを一緒にして、そこで分折していかなければいけないものが個々にあるということを忘れれてはいけないと思うのでございます。したがって、私たちの立場から申しますと、むしろその脳神経障害の広い意味における他のもっと九〇%以上の、この病気だけじゃないものがたくさんこの日本に存在し、世界に存在しておる。交通外傷という一つの悲惨な事実から起こってくるこういうものを忘れてはいけない。それの中の一つのむち打ちという受傷起点によるメカニズムによる一つの現象であるということを頭に考えながらケース・バイ・ケースということと、個々においてのその分析、同時にまた、それの基本的な、基礎医学的な研究の問題でありますけれども、ケース・バイ・ケースにおける臨床的な正しい診断と治療というものがなくちゃいけない。それにつきましては、われわれ、たとえば脳神経外科学会あるいは整形外科学会あるいは精神神経学会その他その学会におきましてその問題についておのおの検討をしております。したがって、その合同的な一つの見解による次の方法というものを考慮さるべきだと思うのでございますが、いずれにいたしましても総合的な意味における見解の前に、いろんな要素を分析して、いろいろな因子を分析しまして、そうして、それに対するケース・バイ・ケースにおける正しい判断をするということが必要だと、こんなふうに思っております。
 またあと御質問がありましたら、用意してございますから御返事いたします。
#11
○委員長(加藤シヅエ君) ありがとうございました。
 では次に患者代表の小安さん、
#12
○参考人(小安常祐君) 患者としまして、私が健康保険制度について、現行の保険制度における矛盾性について皆さまに訴えたいということ、交通事故の犠牲者の利用や生活保護を実現し、これの犠牲者の人権擁護が認められるように先生方にお願いしたいということです。
 交通被害者の実情を一、二申し述べたいと思います。これは御婦人の方でございますが、歩行中に無免許の自動車にはねられまして、全身打撲症を負った。これはすぐ交番に届け出たが、警察署に事故の申請がなかったため事故証明がおりなかったという一つのケースがございます。その後、幾ら警察に行っても、そういう事故はなかったといって取り合ってくれない、こういう状態におかれました。患者はやはり生活ができないということで一応生活扶助を受けようということになりまして、かりに加害者との交渉権を生活扶助協会の弁護士さんにお願いしたわけでございますが、調停の段階で、あなたは何もおっしゃるな、私にまかしておきなさいということで、加害者がその土地の有力者であったがために、九万円で和解させられたということを訴えておるわけでございます。現在この方は、都立の病院に通院中でございます。強い後遺症が起こりまして、医者もこれ以上にならないのだとあきらめなさいということをおっしゃっております。それから次に、きのう、私たちの会員の中で二名首の手術を行ないました。一つは都立病院で、もう一つは私立大学の大きな病院でございますが、この患者さんのおっしゃるには、ここ数年間、もうありとあらゆる治療を受けたんだ、しかし、現在の医学ではなかなかなおり切れないということでいろいろ考えたんですが、まあ首の手術もよかろう、強い後遺症が残るのも覚悟の上、同病に苦しむ患者たちのためになることであるならば、私はあえてその実験に――こういうことばはどうかわかりませんが――実験台にのぼるんだと、そういうことを、悲惨なことばを漏らしておりました。現在、この方は、一家は離散しまして、もう非常に悲惨きわまりない生活を送っております。このように、しあわせな家庭を破壊されまして、いろいろの苦しみにたえている患者は全国に何百万とおるわけです。去年の交通被害者は大体八十二万名ですか――ということですが、実際は、実際の数はもっともっと多いわけでございます。そこで、私の知っている限りでも、こういった苦しみにたえかねて、二十名近い自殺者を出している現状でございます。これは、どうしてこういう悲惨な現状が発生するのかということになりますと、現在の医学が統一されていない、統一医学の制度が確立されていないということと、それから現行の各保険制度、いわゆる賠償責任保険ですね、それと任意保険、それから労災、国民健康保険制度の不合理といいますか、矛盾の中から、そういった結果が生まれてきているんじゃなかろうかということを痛感する次第でございます。
 現在、わが国の憲法二十五条によりますと、国民の生存権、それから社会保障的義務の精神というものが全然生かされてないということが私は言いたいのでございます。現在の自賠法死亡三百万円ということは人命が三百万円ということだということでございまして、先生方のやはりお子さんなり、また奥さん、あるいは自分の夫の生命が三百万円の価値しかないのかということを申し上げたい。それから災害の場合五十万円、これはやはり治療費、休業補償、その他の補償はございますが、大体、普通の所得者ですと、三カ月間でこれはなくなってしまいます。三カ月以上かかる患者は、それではどうすればいいのかということにつきましては、自賠が切れると任意保険あるいはまた労災保険等に移る。また悪質な加害者には、私はいわゆる経済力がないのだ、あなたに補償をできないから民生保護を受けなさい、生活扶助を受けなさいという加害者がおるわけでございます。こういった自賠が切れましてほかの保険に移行されたときにおきまして、いろいろの悲惨な問題が生じてくるわけでございます。任意保険は御存じのように、加害者、被害者の示談が成立しなければ保険金は一銭もおりてこないという、この現状がいろいろの多くの問題を生んでおるわけでございます。また、労災保険においては十分な治療が現在受けられないという実態でございます。これは特に物理療法を含めまして、いわゆる労災保険の金がいたずらに消費されているというただいまの現状も知っていただきたいということでございます。それからまた生活保護を受けまして、たとえば後遺症の決定がありまして後遺症金が手元に入りますと、いわゆる生活保護の打ち切りを迫ってくるわけでございます。これは福祉事務所で打ち切ってくるわけでございます。それといままでのいわゆる支給額ですね、支給金につきましても、これは絶対的な命令をもちましてこれを返済要求されるわけでございます。こういった矛盾の中からいわゆる示談が成立しなければ、加害者より補償金がおりない。それでまた補償金を受け取ったあとならばともかくとして、こうした加害者は被害者の生活が補償できないのであるから、できないからこそ生活保護というものを受けておるわけでございます。このように、生活の道を断たれた交通事故の災害者は、災害者の中の貧困者にとっては現在の自賠法五十万円ですね、いわゆる傷害事故の五十万円を使い切って、いわゆる各任意保険なりほかの保険に移行されたあとの時点において発生する治療費とか生活費、これは生きていかなければいけない必要経費でございます。そういう資金の必要に迫られて非常に苦しい生活を行なっているわけでございます。こういった事情によりまして、やはりあしたの家族の生活費はどうしようかということによりまして、現在自分は治療中でありながら、不利な条件でもって加害者と示談に応じてしまい、その後、後遺症が残りまして、労働力が喪失しまして働けず、ますます悲惨な状態に落ち込んでいく羽目になるわけでございます。こういったいろいろの問題によりまして、一家心中、一家離散しまして、あるいは離婚ですね、こういった問題が起き、また悪質加害者によりましては、被害者が自己制裁を加えるいわゆる刑事問題をも引き起こす現状でございます。これらの問題を解消するには、自動車賠償責任保険、死亡者につきましては一千万円、それから傷害の場合には三百万円という金額がどうしても必要なわけでございます。任意保険は自動車賠償責任保険同様、やはり自動車賠償責任保険でおりる仮払い金、内払い金制度を任意保険にも適用していただきたいということでございます。それから交通災害対策救済資金制度というものを設けてもらいたいということでございます。それから生活保障の法制化でございます。これをぜひ実現してもらいたい。また、総合医療制度の確立及び交通災害救急病院をこれは一日も早く設置してもらいたい。また、むち打ち症患者に対する純然たる後遺症認定ですね、いわゆる等級の一本化の法律化をぜひお願いしたいということでございます。時間がございませんので、またあとで質問にお答えしたいと思います。
 このように、この請願請求が実現されたならば、全国の交通被害者、この数約数百万人の被害者は、ここにお集まりの先生方に非常に感謝し、その功績、名声は永遠に続くことを私は信じております。よろしくお願いいたします。どうも失礼しました。
#13
○委員長(加藤シヅエ君) ありがとうございました。
 では次は同じく患者代表の松倉昭二参考人にお願いいたします。
#14
○参考人(松倉昭二君) 私、全国むちうち症被害者対策協議会の会長をつとめております松倉昭二でございます。本日はかかる特別委員会にお招きにあずかり、患者を代表しまして厚く御礼を申し上げます。
 私たちの会は全国で約六千名、都内で一千百名を数えておりますが、潜在的な患者を含めますと、おそらくはその五倍ないし十倍あるいはもっとそれ以上の数にのぼっているのではないかとわれわれは推定しております。私どもの会が発足してより約一年七カ月、この間いろいろと患者自身の救済に身を投じてまいりましたのですが、その最も多い訴えの一つに、まず第一は治療をいかにしてくれるか、いかに妥当な治療法があるだろうかということの訴えが多いわけです。
 次に、生活の保障あるいは示談、そういった問題にまあいくわけでございますが、この治療面で、私は一言この席をかりまして諸先生方に訴えたいと思います。
 私もかつて昭和四十一年六月九日に、都内の千駄が谷の小学校前の交差点で信号待ちをしていたところを、後方より来た小型トラックに追突されまして、前方約十メーター飛ばされました。そのためにいわゆるむち打ち症ということになりました。さっそく例のとおり救急病院に運ばれまして、まあ応急の診断を行なっていただき、その日は一応は帰りましたのですが、翌日より頸部の筋肉が硬直いたしまして全く首が回らない、痛くてどうにもならないという症状が出てまいりました。さっそく知人をたよりまして都内の権威ある病院に行きまして診断を受けたところ、さっそく入院しなければいけない、一応取るものもとりあえずその場から病床に伏しまして治療を受けたわけでございますが、一向によくならない、ますます悪化するような感じでございました。その後仕事の都合もございましたので、とにかく入院をそう長く続行するわけにはいきませんので、一応退院しまして毎日通院いたしまして、それがだんだんと間延びになりまして、一週間に一度、十日に一度というぐあいで通ったわけでございますが、先ほども申しましたように、一向に病状は好転いたしません。そうこうしておりますうちに、人の話を聞いたりあるいは知人の話を聞いてあそこの病院がいいだろう、こっちの病院がいいだろうということで、都内の権威ある病院を転々と五、六カ所移行いたしましたのですが、一向によくなりません。そうこうしているうちに約二年を経過いたしました。私の口から申すのは何でございますが、いわゆる末期的症状になりました。びろうな話でございますが、自分で、自分自身で便所にも行けない、痛くてからだが動かないという断末魔の状態になったわけでございます。それでこのまま放置すればどうなるのだろう、自分の不安なりあるいは生活その他いろいろな問題がここにかぶさってまいりまして、何とかこの窮状を打解しなければいけない。それを骨身に徹して感じまして、それでいままでかかっていた医師に再度徹底的に自分の症状を究明いたしましたところ、もはやここまできたら固定症状であるからどうにもならないという、いわゆる死の宣告に値する言い渡しを受けたわけであります。私自身いままで医師を信頼してやってきた、ところが好転するどころか悪化して、しかも最終的には末期的症状にまで追い込まれた、しかも医者が見離したと、かといって自分自身このままで推移するか、それこそ便々として死を待つだけであります。これはやはり苦痛を取り除き幸福を求めるということは人間の本能的行動でありますから、私自身も便々として死を待つわけにはいきません。したがって、あらゆる方法を講じましてこれをなおそうとかたく決心したわけです。それでいわゆるあんま、はり、きゅう、そういった東洋医学的な治療もありとあらゆる機会をつくって受けたわけでありますが、一向にこれもよくなりません。そうこうしているうちに、私の知人で弁護士をしています人が、都内のさる療術師というところへ行って一応治療を受けてきたらどうだろう、なおらなくてももともとではないか、なおったらそれこそもうけものだということをすすめられまして、それでその療術師というものを、いままで自分自身、ある程度認識もありませんし、その存在すらも知らなかったわけでありますが、とにかくやってみよう、何でもとにかくやってみようということで毎日そこへ通ったわけであります。 文字どおり雨の日も風の日も一年間、日曜を除いて毎日通いました。それで不治といわれるこのむちうち症を私は完全に完治したわけであります。いわば誇張に過ぎるかもしれませんが、この貴重な経験を何とか生かしていただいて、療術という日本伝来の一つのりっぱな治療法があるわけでございます。それを何とか患者の負担によらないで、国家的な一つの補助のもとに患者自身が一日も早くなおって社会復帰して、国家のために社会のために、また、おのれのために一生懸命働ける状態に持っていってもらいたいために本月訴えるわけでございます。現在のところ、この療術に対しては見解がまちまちでございまして、特に保険に対する適用度という面になりますと、自賠責保険及び労災保険というものは一部適用されているものの、きわめて全国的に不統一でございます。これを何とか統一していただいて、患者の自己負担によらないで保険を適用していただいて、一日も早く患者を救済していただくということがわれわれの趣旨であります。
 いろいろとお願いする点は多々ございますけれども、まず第一に、病気をなおすということ、これが患者を救い、日本の国を守るまっ先に手をつけるべき問題だと思います。とにかくなおらない治療を幾年、幾十年続けようと、これは国家的な見地からしても、国民の大事な血税の集まりであるところの予算を浪費するだけだと私は思うわけです。それよりもなおる治療をやって、一日でも早く患者を救済することができればこれは患者自身の利益ばかりではなく、大きな国家的な重要な利益にもなると私は確信してやまないわけです。どうぞひとつ先生方、何とかその点を御理解いただきまして、この療術をせめても第一歩の踏み出しとして、患者救済の踏み出しとして、自賠責保険及び労災保険にここを適用さしていただくよう切にお願いするわけでございます。
 簡単ではございますが、これをもって一応大綱的なごあいさつといたさせていただきます。
#15
○委員長(加藤シヅエ君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
 これより質疑に入ります。参考人及び政府側に対して質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
 なお、今日御出席の渡辺参考人は御都合によりまして三時に退席されますので、この点を御考慮の上御質問をお願いいたします。
  〔委員長退席、理事松澤兼人君着席〕
#16
○理事(松澤兼人君) 加藤君。
#17
○加藤シヅエ君 最初に質問をさせていただくわけでございますが、今日は参考人の方々にはそれぞれのお立場から御意見、御経験等を承りまして非常に有益であったと存じます。私はこの委員会の委員長をいままでさせていただいておりましたが、たまたまこのむち打ち症の問題につきましてたくさんの被害者の方々から請願、陳情等を受けまして、その患者の方の苦痛、肉体的な苦痛あるいは精神的な苦痛、そして生活困窮、いろいろの複雑な困難の中に自分の過失でなくておちいってしまう、これがこの問題の特殊性かと思っております。ところが、こうした問題は、なかなか十分に理解ができにくい、十分に理解ができにくいというのは、つまりどのくらい深くこの問題について自分がほんとうにはだに感じて理解ができるかどうかというのが、この問題をいかに解決の方向に向けていくか、対策をどういうふうにしたらいいかということの一つの方向づけになるのではないかと私は感じました。それで今日渋沢博士からの参考御意見の御開陳のときに私は初めて伺いましたが、渋沢博士はせんだってサルを実験台に乗せましてむち打ち症の大きな実験をなさいましたことを新聞紙上あるいは自分の御発表の。パンフレット等によって私は拝見いたしましたが、渋沢博士はこういうことに特に医者として関心をお持ちになっておやりになっているというぐらいにしか私は理解できなかったのでございますが、いまお話を伺いましたら御自身がやはり被害者の立場にお立ちになったと、そこから非常に深くこの問題に打ち込んでいらっしゃったその御心境、私はこれは、こうした御自分がそうした心境の中にあるということがたまたま医者としてのお立場、そしてこれを医学的により深く解明していこうという御努力と相まって、これは先生御自身がそうした被害者であったということが、不幸なことではありながら、全体の問題の解決にはこれはたいへんよかったことではなかったかと、私はこのような感想を持ったわけでございます。それは、私自身が委員長でございますから、こういうような請願、陳情等を受けますれば、もちろん交通安全対策の中でこの問題を取り上げるのは当然のことでございますけれども、私自身が最近私の身辺の身近な家族及び私の身辺で働いている者、そういう者がやはりこうした病状でたいへん苦しんだわけでございます。そうしていろいろ非常に信用度の高い今日の医学の最高峰にいらっしゃるお医者さん方の診断を受けて治療をいたそうと思ったわけであります。しかし、私はお医者さん方を批判するわけではありませんけれども、理解いたしましたことは、むち打ち症の後遺症というようなこうした問題になってまいりますと、今日の医学が治療することのできる限度というものがあるらしいということ、これを経験上理解いたしました。そうしてそこに限度がある。しかし、医者としては、それで誠心誠意十分にその問題に取り組んでいらっしゃっていることはよくわかりますけれども、この医学あるいは科学全体の進歩というものは、いつも際限なくよりよいものに進みつつある過程にあるわけでございますから、現段階における医学の解明、それだけでこのむち打ち症、そうして後遺症、こういう自覚症状、苦悩というような問題の全部を制度上あるいは保険の上でどういうふうに取り扱うかというようなことをきめていくということは、それ自体無理があるのではないかということを私は感じるわけでございます。したがいまして、今後たとえば労災保険をどのように適用させるとか、医者の十分な手当てを受けたけれども、後遺症や自覚症状が少しも治癒できないので、民間の療術その他にかかって治療を受けたいが、その点数がはたして妥当であるかどうかというようなこと、それから自賠責の金額がこれが妥当であるかどうかというようなこと、そういうようなことをいろいろと今後間口を広げて改革していかなければならないと思いますけれども、その改革していく上には、いろいろなやはり医学上の判定というものがものさしでございますから、そういうものさしがまだ今日完全なものでないということになりますと、今後いろいろ問題を解決していく上に、そこに一つの隘路があるということを私は感じたわけでございます。したがいまして、私はこうした問題に取り組んでいらっしゃるお医者さん、先生方、こういう先生方には、さらには患者の苦悩というものが現実にそこにある以上、医学が解明できないものがあっても、それ以上のものを何か発見して、あるいはそういうことも解明できないけれども、そういう苦悩というものがあり得るというたてまえから取り組んでいただきたいということを強く希望いたしまして、そういう問題でそういう立場から取り組んでいただけるかどうか、私は最初に渋沢先生にそういうふうな立場からさらに取り組んでいただけるかどうか。そうしてもし取り組んでいただけるとしたら、いまのいろいろな制度上のどんな点が問題になっているかというようなことでもし御意見がございましたら聞かしていただきたいと思います。
#18
○参考人(渋沢喜守雄君) まず最初の、むち打ちだけに限りますが、むち打ちについて今後さらに医学上の、あるいは先ほどのお話しの療術その他を含めた治療のものさしとなるべき何かを発見する、そういう努力を今後することができるかということにつきましては、今後さらに一そう努力をしてやりたい、こういうふうにお答え申し上げます。微力でございますので、どのくらいのことができるかわかりませんが、十分客観的な立場から独断におちいらないいいものさしをつくっていく努力をさしてもらいたい、こういうふうに考えております。
 それから第二のいろいろの制度上の欠陥につきましては、私はたいへんそういう面につきまして知識がございませんので、ただいま何とも責任ある御返事ができないのは、まことに残念でございますが、おぼろげながら何かしらいろいろこの両患者さんのお話を承っておりますと、何かたいへんいろいろ欠陥がありそうだということがわかりましたので、加藤先生の御指摘のとおり、これまた今後勉強してまいりたい、こういうことで答弁になりませんが、御答弁にさしていただきたいと思います。
#19
○加藤シヅエ君 渡辺参考人に伺いたいと思うのでございますが、聞くところによりますと、このむち打ち症患者というものの数多くの患者さんの中にはいろんな方があると思うのでございますけれども、その自覚症状をお医者に訴えましても、それはお医者の目から見ると別に問題になるようなことではないのだというようなわけで、医者からその自覚症状を十分に認めていただけないという不満があるということをたびたび聞いているのでございます。たとえば、頭痛とか、首の痛みとか、しびれ、目まい、耳鳴り、ふらつき、目のかすみ、目の奥の痛み、脱力感、こんなようなものは主観的なものじゃないか、客観的に医者の診断ではこれはたいした問題じゃないというようなふうに判定されてしまいますと、患者は非常に絶望感におちいるのじゃないか。中央病院のほうでは、そういうような患者のそんな痛みに対してはどういうようにお取り扱いになるのでしょうか。
#20
○参考人(渡辺茂夫君) いまの問題に関連してお答えいたします。ただいまの患者の自覚症状、これは明らかに医師がそれをそのまま受け入れましてそうしてその疼痛、特に痛みでございますが、痛みの場所、それからその他の神経症状、その他知覚の症状、運動障害、こういうものを医学的にとらえて分析する必要がありますし、当然また現にどこでもやっていると思います。私が最近扱いました三、四百例のケースの中にでも、その場所、場所の疼痛点というものにつきまして非常にこまかく分析しております。どこの場所が一番多いか、どの場所が多い場合にはどうすればいいかというのは、先般の厚生省のむち打ち症特別研究班のレポートにも出しておきました。疼痛点の分析ということは確かに大事なことでございますと同時に、自覚症状の分析の中に、たとえば先ほどちょっと申しました中枢神経系からきているもの、その中の自律神経的なものあるいは内部疾患的なもの、そういうようなものを医学的にはっきり分析をして単なる主観的なものじゃないのだ、そうしてしかもそれは張り合いのある将来性、将来といいますか、将来を見通した指導を与えていくということをしなければいけない。あくまで医師はただいま委員長がおっしゃいましたように、患者に直接接して、そうしてその症状を明らかに医学的にしかも科学的に分析して、そうしてそれに対していろいろいい方法は何であろうかということをやらなければいけないと思います。それから事実われわれ扱ってみますと、非常にたくさんな症状が出てまいります。しかし、その症状をさらに分析いたしていきますと、それを単一ということにいきませんけれども、ある一つのポイントにしぼっていくことができる。そこにたくさんなケースの中から明らかにそういう自覚的な症状というものを今度は客観的にキャッチすることもできます。だからそういう努力、それからただいまおっしゃったようなヒューマニティに基づいた医学的な努力というものが当然なされておると思いますが、ここに若干な問題がありますので、少し勉強さしていただきたいのですが、まず後遺症者というものがむち打ち損傷の方はある程度まで統計ができておるかもしれませんけれども、全般的なものはまだ全国的な調査の必要があるんじゃないか。それから、治療からリハビリテーションまでの一貫した施設も、あるいは方法というものがまだまだないというようなこと、それから先ほども被害者のほうからお話が出ましたが、いわゆるハイレベルでの救急的なセンターというものが必要であるということ、それに対して、学会その他の関係者の協力、努力というふうなものが必要であるということ、それから同時に、それを裏づける、先ほども話がございましたが、医療経済の裏づけというものが必要だというふうに感じます。
#21
○加藤シヅエ君 ありがとうございます。もう一つ続いて伺いたいんでございますが、さっきの患者の訴えからも、そのほかのたくさんの被害者のお訴えによりますと、救急病院の設備が非常に欠除している。その数から申しましても、また設備の内容からいたしましても欠除している。片一方、この交通事故はふえるとも一向減らないような実情にあるにもかかわらず、その救済制度がこんなにおくれているということは、どういうところに原因があるのだろうか、それをよくするにはどうしたらいいだろうかというようなことを多くの方が考えていらっしゃることだと思いますが、私、聞くところによりますと、救急指定病院のあり方というものが、これが指定病院に自分がなろうと考えられた、その病院の側で準備をして資格をちゃんと備えて、そして消防法によってこれを申請して、そしてこれが指定されると、こういう手続である。ところが、そういうような手続をして病院を経営しようとしても、保険のいろんな点数とか、あるいは救急に持ち込まれる患者のことでございますから、支払いが非常に手間どるとか、いろんな問題が起こってきて、経営が非常に困難になってくる。だから救急病院はやろうと思ったけれども、正直にはやってかれないから、救急病院の看板をかけて、まあそういうのがどこにあるか私は存じませんけれども、聞くところによりますと、やはり外部からあまり評判のよくないようなことをやらざるを得なくなってくるというのも現実にあるというようなことを聞くんでございます。で、そういうような問題に対して、たくさんの御経験のおありになる渡辺参考人の御意見は、センターとか指定病院をたくさんふやすとかするには、どういうふうにしたらいいとお思いになりますか。
#22
○参考人(渡辺茂夫君) お答えいたします。この救急病院の問題は、ただいまのむち打ち損傷起点による外傷というものだけにしぼらないで、広い意味におきまして救急外傷に対する、あるいは救急の疾患に対する救急病院というものが必要でございますが、ただいま委員長のお話のように、確かにその救急病院的なものがオープンいたしましても、非常に経済的な裏づけがないとやっていけない。なぜならば、救急病院は二十四時間勤務でございます。そうしますと、普通の病院が八時間勤務である。看護婦だけが二十四時間でございますけれども、他は八時間である。そうしますと、約三倍の人件費が、まあ医師及びその他につきましては三倍の人員が必要である、こういうような問題がございます。それからかりにその外傷その他があってもなくっても、それだけの拘束された人員というものが存在しなきゃならないということ、それからさらにそれが非常に救急の関連した最近の医学の進歩による診断及び治療の施設というもの、機械というものがどんどん進歩している。そういうものに対して、施設上の、あるいは人的上の経費というものが相伴わないといけない、それがまず経済のあれかと思います。それからその次の問題は、今度は人間の内容と申しますか、結局、現在そういう救急の中で、特にパーセンテージの多い脳神経障害というもの、脊髄を含めましての脳神経障害というものに対する専門的な人間が比較的少ないということ、そのことがすべてのパートにおいて、やはり難がある。これは諸外国でも非常に同じような問題をかかえておりますけれども、人間的な少なさというものもございます。したがって、経済的な裏づけ、それから人間的な少なさというようなことが、やはり救急病院の現状において非常に不十分であるという一つの根拠になっております。したがって、今後はそういう問題につきまして、あらゆる機会を通じましてやるべきでありますが、もちろん厚生省におきましてもそういう方面の充実はやっておられますし、われわれはこれに対して協力はいたしておりますが、すべての医療関係がはたして救急というものに対しましていまのような隘路のために十分でないという現状でございます。そういうためにやはり救急病院の将来につきましてはさらに真剣にいまのようないろいろな要素を含めて考えていただきたいというふうに思います。
#23
○加藤シヅエ君 いま実際に患者をお取り扱いになる医者の立場からああいう御発言ございましたが、厚生当局に伺いたいのでございます、救急病院に関して。この二年間どのくらい救急病院がふえておりますか。それから分布状態ははたして妥当になっておりますか、どうでございますか。それからいま医者の側からあれだけのいろいろ設備をしなくちゃならない、必要人員をそろえていかなければならない、そういうことに対してなかなか経営上の困難があるということで困るという、そういう御説明もあったわけでございますが、そういうことに対しまして今後どういうふうに取り組んでいこうかというふうに考えていらっしゃるか。その案がございましたら聞かせていただきたい。
#24
○政府委員(松尾正雄君) いわゆる救急告示病院の動向でございますが、三十九年の八月にスタートいたしましたときは全国の施設が千百八十二カ所でございました。昨年の十月一日調査におきましては三千九百九十八、約四千カ所になっております。そのうちで二千四百六十カ所が病院でございます。そういうように入れかわりは多少ございましても、全体といたしましてはこの告示医療機関は急速にいま伸びつつあるわけでございます。ただ分布上からは、御指摘もございましたように、必ずしも県別に見ましてまだ十分に分布が整っているとも言いがたいものもございます。その点は私どももさらに努力を重ねまして、広く十分な網の目を張りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。なお、特に今後高速道路等の問題が起こりますと、従来の分布以上に新しいまた分布も考えなきゃならぬ要素もございまして、ただいまそういった点につきましても具体的に研究を進めておるわけでございます。
 それから第二の問題といたしましては、そういう救急病院が、維持していく上、あるいは指定を受ける上においてのいろいろの困難があるかという問題になるわけでございます。私どもといたしましては、そういう一般的な救急病院のほかに、先ほど渡辺参考人からの御意見にもございましたように、特に高度の機能を持った医療機関というものをやはり整備する必要があるというふうに考えておりまして、年次計画を持ちまして、大体人口百万人に一カ所というような基準をもって全国の各病院の中で百十一カ所を予定いたしまして、これをやはり相当高度の設備を持ったところにいたしたい。これに対しましては、その設備を整えますための補助金というものを計上をいたしております。そのほか自動車賠償保険のほうからも、四十四年度におきましては約一億二千万ほどがそういう医療機関の整備というものに特別に指定をするということで内容の充実をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。同時にまた、先ほど来お話もございましたように、設備を整えましてもそれを十分に使いこなしていくだけの人がそろっていませんと、それはもうますます絵にかいたもちになるわけでございます。特に御承知のように、頭の外傷等が非常にふえてまいりましたために脳神経系統の専門家を養成していくということが、外科系統の専門家を養成することが非常に要請されております。これも私どものほうでは、予算的に裏づけをいたしまして脳神経外科の専門家というものの専門コースを学会に委託をいたしまして、ただいま一年に約三十人くらいの外科系統の養成をお願いいたしております。そのほか、ことしからさらにそういう方々とパートとなって手術等に従事いたします麻酔の専門家という者の養成にも着手をいたしまして、これも麻酔学会等に依頼をいたしまして訓練をしていただいているような実情でございます。
 経常的な問題といたしましては、よく私どももいろいろ調査をいたしておりますけれども、医療機関の一部といたしましてそういう救急業務を担当しておられる、そのためだけにどの程度の損失があるかということを病院ごとにある一定の水準ではじき出すということはなかなか困難でございます。病院によりまして非常にまちまちでございます。したがいまして、四十四年度におきましては、一応私どもが、ある一定額を協力費というような名目でもって出したい、こういうことで計画をしてみましたけれども、まだその私どもの計画自体も未熟のようでございまして、認められるところになっておりませんけれども、何かこういうような体制に対しましては、こういう維持していく費用、あるいは特に患者さんがお見えになって、そこでいろいろな治療をなさっていく場合よりも十分な体制をもって待機をしておる。しかし、それがから振りで終わる。このから振りに終わるということは、実は患者さんが見えませんので収入が一銭もないというわけでございます。そういった事態に着目いたしまして、何か合理的な点でささえができればということでただいま検討を続けておるような状態でございます。
#25
○理事(松澤兼人君) 渡辺参考人が三時にお帰りになられますので、黒木君から渡辺参考人に御質問があるそうでございます。
#26
○黒木利克君 両先生に伺いたいのですが、まず渋沢先生にちょっと最初に簡単に御質問して、それから渡辺先生にお願いしたいと思います。
 両先生にお伺いしたいことは、結局医学的にむち打ち症というものが何かということがはっきりしなければ診断なり治療の方針も確立せぬわけですが、また、そのはっきりせぬがために患者さんがいろいろ精神的な不安を持っておられる。精神的不安がそのむち打ち症の特色とも言えるわけなんでありますが、しかも、むち打ち症というもの、あるいは後遺症が何かということがはっきりしない限りは、本人は治癒はない、なおっていないのだ、渡辺さんはいや治癒しているのだというようなことから、結局医療類似行為あるいは宗教にたよっていくことになるのじゃなかろうか。あるいは治癒ということがどういう段階かはっきりしないために社会保障の運用上もいろいろの患者さんの間のトラブルや不満が出てくるのじゃないかという感じがするのですが、そういう意味で質問するのですけれども、渋沢先生は、すべてのむち打ち症患者が――あとで、ほとんどという修飾語をおつけになりましたが、すべてのむち打ち症患者が全身的な症状を来たす、単に肩とか首とか頭だけじゃないのだということを一つの説としてお述べになりました。渡辺先生のほうは、これは衝撃が強ければ全身的症状もあるだろうけれども、まず軽いものもあるはずだということを言っておられるので、私もどうもそういうふうに考えられるのですが、そこで渋沢先生、逆に言うと、全身的症状がなければそれはむち打ち症とは言わないのだ、言えないのだというふうにむち打ち症の定義についての一つのお考えなのか。これは私は先ほど申しましたが、愚者の精神的不安という観点から見ますと、それがはっきりしないのにむち打ち症というものはすべて全身的症状があるのだと、あるいはまた、性的不能というのはこれは自分が実際に体験すればわかるのですが、その他のことは、大体やはり精神的な、あるいは前々からの、先ほどおっしゃった医原的要件とか環境とか、そういうものによってわしも全身的にやられておるのかなという不安をますます増加をすることにもなりますからね。これは私は非常に慎重さを、御発言にも慎重さを要すると思うのでありますが、そういう意味で先生の、全身的症状というものがなければむち打ち症とは言えないのか、あるいはむち打ち症というものはほとんどすべて全身的症状というものが必ずあるというものなのか、その辺を少しはっきり教えていただきたい。
#27
○参考人(渋沢喜守雄君) 私の陳述がたいへんまずくて先生方の御了解を十分得られなかったことのようでございます。お手元に配りました日本語で書いたものの中に、患者を百二名見たと、そのうち慢性化したのが三十八名であると、こう書いてございます。で、百何名のうち全身的な損傷の%はどのくらいかということは、四一九ページの第一図というところに出ていますが、これは追突を受けたときにどういう部分がどのくらいの頻度でけがを受けるかということでありまして、全身的な症状を呈しなければむち打ちではないぞということでは決してございません。むち打ち症状というのは、やはり渡辺博士が申されましたような症状を持ったものがすなわちむち打ち症だろうと思います。そのむち打ち症のうち難治症というもの、六カ月以上なおらないものを私は難治とかりに言いましたが、そういうものをよく見ると、全身的な症状を持っているものが、ある場合においては、たとえば呼吸器の障害は何十何%、心電図症状は何十何%、何々は何十何%というふうに書いてございます。でございますから、全身障害がなければむち打ち症ではないと、こういうふうに言うつもりはございません。むち打ちは、渡辺博士が言われましたとおりの症状がすなわちむち打ちでございまして、むち打ちのうち難治のものはこれこれ、何々は何%、何々は何%くらいあると、こういうふうに私は言うのが正しいだろうと思います。先ほど、追突というときに起こってくるけがは第一図にありますような頻度でございますが、むち打ちというものは追突すべてが――追突一〇〇%むち打ちというわけでもございません、衝突がすなわちむち打ちでもございませんので、第一図が全部これがむち打ちということを意味しているわけじゃ決してございません。これは、むち打ちというものは皆さんが理解していらっしゃるとおりの概念が、これがすなわちむち打ちであると思います。したがいまして、先生の御質問に対してはそれでよろしいかと思いますが、ただむち打ちというものの中にわれわれがまだ医学的に見つけ得ないものがひそんでいわしないかと、先ほど加藤先生からも御指摘がございましたが、そういうものを何かものさしとしてひっぱり出してくることはできないかという御意見でございましたが、そういう隠れているものを見出そうという、そういうねらいがあったために、つい口がすべって全身症であるというようなことになったんだろうと思います。私の説明が不十分でございました。むち打ちという概念はあくまで一般の皆さんが御理解なすっているとおりの概念が妥当であろうと、こういうふうに私も考えております。
#28
○黒木利克君 わかりました。
 渡辺先生、お急ぎのようですから、ひとつ要点だけお尋ねをしたいと思います。
 このむち打ち症の治癒というものをどの段階でお考えになるのか。まあ愚者さんのいまのお話を聞いておりましても、それがあいまいなためにいろいろあとのまたトラブルが起こったりあるいは医療類似行為に走ったり、お医者さんはあてにならぬというようなことに結局なっていくような感じもするのですけれども、社会保険の、あるいは社会保障の適用上もこの治癒という問題があいまいなためにいろいろトラブルを起こすのではないかと思うのです。私は、実はメジカル・ケースワーク、サイキヤトリック・ケースワークとか、そういうものは先進国では非常に発達しておりますから、お医者さんもそういうような専門家の協力によって愚者さんの精神的な不安を私は解決できていくのであろう。ただ、日本では、残念ながらそういう仕組みが、形の上ではありますけれども、現実には普及しておりませんから、結局そこで医者不信、医者は信用できぬということで医療類似行為に走ったり――医療類似行為が悪いとは言えませんけれども、あるいは宗教に走ったりというようなことになっているのが現実ではないかと思うのですが、そこでそういう問題につきましてどのようにお考えなのか。先生は、いみじくもケース・バイ・ケースでこれは当たらなくちゃならぬのだと。私もそのとおりだと思いますが、そういう点は医者を信用していないとなればどうにもなりませんから、しかもそういうサイキヤトリックのケースワークがないということになれば、一体現実にどうしたらいいか、その辺についてのひとつ建設的な御意見を承りたいと思います。
#29
○参考人(渡辺茂夫君) 非常にいまの御質問むずかしい問題でございます。
 その前にちょっと定義の問題をお話をいたしたいと思います。先ほど私ちょっと早口で少ししゃべり過ぎて、定義の問題があるいは御理解なかったかと思いますが、むち打ち損傷というのは、たとえば窓から落ちて頭を打ったというのと同じわけなんです。つまり原因なんです。むち打ちという一つの受傷メカニズムにおける外傷を受けたということでございまして、だからむち打ち損傷という一つの形において受けた傷害ということであるわけなんです。ですから、それじゃ、むち打ち症というもの、はたしてそういうものがあるかどうかというところに、いまの問題があると思います。先ほど渋沢先生お話のように、慢性化してしまって一定の症状が出ている、その症状については容易になおりがたい。しかもある一定のワク内において科学的に医学的にそれを根拠づけるような症状がそろっているというものがあるとすれば――事実あるにはありますけれども、そういうものをむち打ち損傷――受傷起点によって起こったいわゆる症状であると、医学的に言うと、そう言わなければいけないわけなんであります。そこにいわゆる定義の問題があるわけなんであります。したがって、この人は途中で滑ってころんで頭を打ちましたというのと同じ理由において、むち打ち損傷という受傷起点において起こったものであるというのが、もともとのことばでございまして、病名ではない、あくまで病名ではない。しかし、慢性の症状が固定した、同じような受傷起点において症状が固定した場合には、一定の一つの症状群があるならばそれをとらえてもいいだろう、それによっていまの御質問の治癒判定という問題が出てくると思います。私が先ほど申しましたように、個々のケース・バイ・ケースであるというのは、首の筋だけを筋違いをしたというものもあるでしょう、骨折という場合もあるでしょう。それからそれだけじゃなくて、非常に強い衝撃による全身的な症状も出てくるだろうと思います。そういうことから考えた場合には、おのずから治癒起点に対する判定というものは出てくると思います。
 それからその次に後遺症――すべての疾患の後遺症に対する判定がすべてむずかしいと同じように、このむち打ち損傷による障害からくる症状も同時にその後遺症的なものの判定、どこでなおったかということはむずかしいと思いますが、しかしながら、もし形態学的な変化、並びに物理化学的ないまの現在医学において行なわれている検査においてのデータをキャッチすることができるならば、そこにおいて後遺症の程度並びにその判定ということの、ある程度のことはできると思います。しかし、現在それならばものさしにおいて、このものさしが明らかにその慢性のむち打ち損傷の症状である、あるいはこれがこうなったらこれは治癒起点にあるもの、あるいは治癒しないものということに対しては、まだ依然として今後に問題は残るだろうと、かように思います。
#30
○黒木利克君 それでわかりましたが、結局そういうような社会保障の適用上判定というものはある程度のものでしかない、だから社会保障の運用というものはもっと弾力的にやらなければならない、この疾病の特色にかんがみて。そういう感じが私もあったから、そういう質問いたしたわけです。
#31
○参考人(渡辺茂夫君) それからもう一つ実はちょっとことばが足りませんので追加さしていただきますが、結局先ほどの御質問の中に、先ほどちょっと私申し述べましたが、治療から一貫した社会復帰、すなわちリハビリテーションというものに対して、特にこういう脳神経症状を大部分呈しておるものにつきましてのリハビリテーション施設というものが日本にはほとんどないということなんです。これがもしあるならば、先ほどもメディカル・ケースワーカーの話がございましたが、メディカル・ケースワーカーと同時に、やはりメディカル・リハビリテーションというものが、さらに進んでボケーショナル、作業、それから社会復帰に対する作業能力を養わさせて作業教育をするという一つのセンターが必要であるならば、いまの問題は、後遺症がかりにあっても直ちに社会復帰ができるならばその問題は解決するだろうというふうなことが、現に諸外国において一部行なわれておりますので、それをつけ加えさしていただきます。
#32
○黒木利克君 そこでもう一つ患者代表の方々の御意見を聞きますと、まあ一種のお医者さんに対する不信ですね、そういう精神的不安というものがなかなか除去されない。そこでまあ医学者としてこの精神的不安の原因が一体何か、この辺をどういうふうにお考えになるのか。そうしてその精神的不安を治療する何か方法はないものか。これは治療の中でやるべきかあるいはリハビリテーションの段階でやるのがいいか、その辺を医学者としてどういうようにお考えか教えていただきたいと思います。
#33
○参考人(渡辺茂夫君) 確かにいまおっしゃいましたような患者の不安というものに対する治療ということは、これは受傷の当初から行なうべきだと思います。現在私がいま調査を始めておりますが、その調査では精神科医とそれから脳神経外科医と整形外科医と、一応その三者が共同になりまして、その調査をやっております。これは後遺症を持っておる者でございますが、その場合に受傷の当初からの医師の指導ということも当然これはいまの不安の心理的要素になります。同時にその治療のプロセスにおいての指導ということは明らかにいま先生のおっしゃったように、これはあくまで心理的な要素を含めて、先ほど私いろいろ要素を申し上げましたが、そういういろいろな要素を含めて治療すべきでなければいけない。それがいまの精神的なものというものも取り除くことができない。結局病人である、病人というものは疾患と同時に病気を持ったものであるという考えが、ともするとそういうことを離れてはこの病気のほんとうに根治的な治療はできないだろうというものも相当あると私は思います。
#34
○黒木利克君 ほかの先生方も御質問ありましょうから、そこでですね、実は精神的不安というものにそれは根拠はあると思います。お医者さんの側でここも何ともないかとか医者に誘導されますと、やはりそこもそうだというように、弱いですからね。あのリハビリテーションの問題あるいは社会復帰の問題にからみまして、そういう自信のない人たちはつい医者がそう言うならば、そこも悪いかもしれないと、やはり依存性に腰を落ちつけるという、残念ながら人間には弱点もあるわけですね。ですからお医者さんとしてはよほど慎重に治療に当たってもらいませんと、ここも悪かろう、あそこも悪かろうといって、かえって精神的不安を増大する心配もあると思いますが、その点どういうふうにお考えでしょう。
#35
○参考人(渡辺茂夫君) 私一人しゃべっておるとたいへん失礼でございますけれども、先ほどいろいろな要素と申し上げました中に、やはり医原性要素と申しますか、医原性要素というのは、医師が、医療担当者が治療をうまくしないために起こってくる一つの要素としてあげたのでございます。確かにそういうことがございます。しかし、たとえば一つの例を言いますと、胸が痛い、腰が痛い、いつまでも痛い。それならばある一つのそこに痛みが取れる注射をする、それが一回二回三回、いつまでも痛いが、しかし注射をしているうちになおってしまう。たとえばそういうこともあり得るのです。決してその判定が絶対的に不可能であるということはあり得ないと思います。あくまでそれは治療というものに対して真剣に取り組んで患者と医師とが話し合っていけば私はそういう問題も解決できる。こういうふうに思います。
#36
○黒木利克君 わかりました。終わります。
#37
○理事(松澤兼人君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#38
○理事(松澤兼人君) 速記を起こして。
#39
○加藤シヅエ君 もう私は渡辺参考人に対する質問は終わりましたので。
 今度はほかのことを伺いたいんです。さっきの黒木委員から治癒の問題でたいへん問題にされて、私も治癒ということは特にこのむち打ち症患者及びその後遺症に対しては治癒ということで区切りをつけられてしまう。それはこのむち打ち症のような病状に対してはそこで区切りを切られてしまって、なおったと自分も思っていたらとんでもないときに後遺症がまた復活するというようなこういう病気に対しては、治癒ということでぴたっと切られるということは非常にこれは妥当でないので、これは治癒という問題をどういうふうに扱ったならば、後遺症を非常に御心配になっていらっしゃると思うのですが、これは保険をお出しになるほうの関係の方から治癒という段階は、治癒というようなことばの使い方がいまのような現状に対して非常に不満だと思われていることに対してどうお思いになるか。今後こういうようなことを機会があったらばもう一度検討し直すべきではないかとお思いにならないかどうか、そのことを保険の関係の方に伺いたいんです。
#40
○説明員(高木玄君) 健康保険はじめ医療保険におきましては、大体におきまして一つの症状につきまして転帰まで見るというのが大体のたてまえでございます。転帰と申しますのは治癒または死亡でございまして、医師が治癒と判定いたしました場合には、それから以後につきましては医療保険ではめんどうを見ようがないということでございます。治癒までめんどうを見る。こういうたてまえでございます。
#41
○加藤シヅエ君 それはよくわかります。現状がそうだということはわかっておりますけれども、一体そういうことでよろしいですか。
#42
○説明員(高木玄君) これは医師が治癒と判定をいたします以上、それに従うというのが当然のことであろうと私どもも考えております。
#43
○加藤シヅエ君 それは役所としてはそういう答弁が出てくるかもしれませんけれども、あなた個人が自分はほんとうになおっていないと思っているときに、医師から治癒と言われてしまって、それ以上保険は出ないというふうに保険の窓口を締められるという扱いをされるということをどう思いますか。個人的な答弁はお困りになるかもしれませんけれども、保険行政を扱っていらっしゃる方として、やはり人間ですから、今後そういう問題の出たときには、やはりしゃくし定木に文字がこうなっていて決定がこうなっているからというようなことではなくて、これは非常に矛盾があるということを認めて、今後そういう問題の対策を講ずる場合には、何とか対策を講じなければいけないと思われるのかどうか、そこをお答えいただきたい。
#44
○説明員(高木玄君) 現代医学の領域において治療を尽くされまして、その患者の主治医である医師が治癒したというふうに判定されました場合は、それが最終的な最も権威のあるものであろうと、かように思います。
#45
○加藤シヅエ君 ですからもしむち打ち症の患者の方が医師から治癒というふうにピリオドを打たれてしまう。自分もそのときはなおったのかしらとこう思っている。それで何か自分の仕事に復帰している。そうしたらば何カ月か後に急に悪性の再発があったというようなときには、その患者はどうしたらよろしいと思います。
#46
○説明員(高木玄君) そのような場合には、疾病の再発ということで医師の診察を受ける。こういうことになろうと思います。
#47
○加藤シヅエ君 それではやはり前の治癒ということばが必ずしもほんとうの治癒ではなく、法律上あるいは医学上の用語としての治癒はあっても、その患者の主観あるいは実情からいえばほんとうに治癒ではないということになるわけですけれども、いかがでございますか。
#48
○説明員(高木玄君) 医師が治癒と判定いたしましたその段階におきましては、それは正しい判定だと私ども思っております。
#49
○千葉千代世君 ちょっと関連して。先ほど渋沢参考人は、この治療はたいへんむずかしいということと、それから調査はたいへん詳しくしておられたのですが、治療の日数が非常にかかる。もう一人の渡辺参考人のほうは、後遺症がたいへんあって悲惨な状態が多いということを言われたですね。もう一つ、先ほどから御意見の開陳の中でむち打ち症というものの判定ということのむずかしさが述べられたと思うのです。ぶつかってむち打ちの状態の中で病名をつけていくには、それから派生した要因というもりはいろいろある、こういうことを言われた。もし、一ぺんなおったという診断を医者がおつけになって、次に、いま加藤委員がおっしゃったように再発した、そのときにお医者さんが、あなたのおっしゃるように、厚生省の役人のおっしゃるように、この前の病気の再発だということをすぐ認めればそれは文句はないわけです。ところが、お医者さんの立場から考えていった場合に、その後の要因ということもあるでしょうし、いろいろ出てくるわけなんですね。患者自身は再発だということを、ほかにないから、そうだと思い込んでいても、そうではないという判定が下されないとは保証できないわけです。そういう例が現にあるのです。私の質問の時間にしたいと思っておりますが、私自身も昭和四十年に自動車にやられましてなおったところが、とんでもないじぶんに痛んできまして、椎間板ヘルニヤということです。私自身は自動車にぶつかって、そのとき治癒したと思っていたところが、椎間板ヘルニヤになって黒木先生なんかにだいぶお世話になった。そのときに、これは違うということになったときにどうなるのか、では手術をし直してもらいたいと言ったならば、神経が大事なところにきているでしょう、一万人に何人とか、切ったために手足がきかなくなってぶらぶらになって一生廃人だ。コルセットをかけていれば三、四年たったらなおるでしょう、年のせいもあったのでしょう、そういうふうに言われて私は四年かけているのです。そういう意味で、療術のことをおっしゃったからあとに聞きたいと思いますけれども、いま質問が限定されておりますから……、これは大きな問題だと思うのです。判定するお医者によってたいへん違ってくるということを頭に置かなければならない。だから初めの判定がむずかしいということをきちんとして総合判定というような判定、むち打ち症の判定はこれこれこうだということをきちっとされていない以上は、こういうことが何べんも繰り返されていく。役所の机の上で医者の診断かこうだというのは子供だってできますよ、そうじゃないですか、どうですか。王子病院の渋沢参考人の方、どうでしょうか、そういう点について。
#50
○参考人(渋沢喜守雄君) 先生のいまの御質問たいへん鋭い、また医者の弱いところをつかれまして、ちょっとたじたじした次第でございますが、たとえば本日は渡辺博士と渋沢が医者として参っておりますが、渋沢が治癒と判定したものを渡辺博士は治癒と判定しないということも当然あり得るわけでございます。また、渡辺博士は治癒としても渋沢は治癒と認めない場合もあり得るわけでございます。したがいまして、現在の医療の制度では、渋沢なら渋沢という医者にかかっている患者さんは、渋沢が治癒と認めればもはや治癒と言わざるを得ない、それで不満なら渡辺博士のところに行く。また渡辺博士が治癒と言ったけれども、私はどうも不安定だから、では渋沢のところに行く。渋沢は治癒と認めない。こういうふうになりますので、どうもそこのところきわめて明快に言えと言われますと、ちょっと明快に私には説明できません。
 つまり医者の、医療制度といってもいいかもしれませんが、医者の一番の弱いところをギャフンとつかれましてまことにたじたじ、取りとめない御返事にしかすぎませんが、先生御経験の昭和四十年のむち打ちが二年間の後に椎間板ヘルニヤという形になってあらわれた、こういった場合、その椎間板ヘルニヤがどこであったか私は存じませんが、それがたとえ首じゃなくて、それはむち打ちと関係があったかなかったか、その判定は渡辺博士と渋沢が二人おればおそらく意見は一致しないのじゃなかろうかと、私はこう存じます。
 で、こういう何と申しますか、つまり医者の技量というか医者の技術というか、あるいはキャリアといったらよろしいか、その人の研究の深さといったらいいか、医者のまあ俗なことばを使えばいい医者と悪い医者ですね、簡単にいえば。それで判定が違うのでございますので、そこのところを、まあ、いま厚生省の方をだいぶおしかりいただいたようですが、私は別に厚生省の肩を持つわけでもなんでもありませんが、医者自体がいまのところそういう状態でございますので医者のほうにも責任がある。そういうときには何とかいい方法を、法の名のもとに何かいい方法を考えていただければたいへんありがたいのじゃなかろうかと、私は逃げるわけじゃございませんが、そう考えます。
#51
○加藤シヅエ君 じゃ、先ほどからいろいろと質問さしていただきましたので、最後にもう一つ締めくくり的な質問もさしていただきます。
 それは今日、参考人のいろいろのお立場から御意見を伺いまして、今日取り上げられているこのむち打ちの対策ということは、もう実に複雑で、矛盾きわまるものであって、ものさしがあってなきがごときものであって、治療の方法も同じくあってなきがごとくいろいろ複雑な様相を示しております。したがいまして、これを保険の対象にしたような場合にもまたそこでいろいろな大きな矛盾が出てまいります。たとえば、民事訴訟で損害賠償の提起をいたしました場合に、たいへんに大きな金額を計算いたしまして、その人の生涯今後働いてもうけ得る金額というようなものをある方法によって算定して、千万円以上あるいは二千万円というような金額を賠償金として支払うべしというような判定が下されて、そのお金がほんとうにもらえればたいへんな慰めにもなるかと思いますけれども、そのお金がもらえるかどうか全然あてにならない。もしもらえなかった場合には、それを強制するにはどうしたらいいかというような問題で、もしそれを非常に強制してお金を取らなければならないということになればまたそこに費用もかかるし手間もかかるしたいへんな苦労である、こういうようなそこにも大きな矛盾があるわけでございまして、いま自賠責法についてもいろいろ問題が出ておりますけれども、こういうような支払いが非常に不確定であるような問題を、ほんとうに裁判所の判定が下されたとおり払われるようにしむけていくにはどうしたらいいのか、こういうような問題についてどういうように考えていらっしゃるか、これはどなたに答弁していただいたらよろしいでしょうか、自賠法。
#52
○説明員(岡田茂秀君) 私は運輸省の自動車損害賠償保険を担当しておるものでございますから、その立場に多少限定されるかとも思いますけれども、その点はあらかじめお含みの上で御了承願いたいと思います。
 まず、わが国の交通事故の救済というふうなもはどういうふうになっておるかということでございますが、一つは、事故があればそれに対して、なくなった場合には得べかりし利益の損失を算定し、慰謝料を払い、それから傷害を生じた場合にはまたその傷害の治療費あるいは休業補償あるいは慰謝料等を算定してこれを支弁する。その支弁の方法といたしましては、最小限のものとしては自賠責強制保険でございまして、さらにはいわゆる任意保険といわれる自動車保険がございまして、さらには加害者の何がしかの持ち分というふうなものが総合されて、その損害に償い得ればという仕組みになっているのじゃないかと思うのでございます。したがいまして、私の所管いたしております自賠責保険の立場からいたしますと、いわばそれらのものの一般的な場合におけるまあ妥当といいますか、最低といいますか、その辺を目安に補償をさしていただく。したがいまして、現行法のもとでは死亡の場合には三百万円、それから傷害については五十万円を限度とする。また、後遺障害を伴う場合には三百万円から十一万円までの間、十四等級にわたって補償するという仕組みになっておるわけでございます。しかし、そうはいうものの、いろいろの客観情勢の推移等で、現行のままでいいのかということが問題かと思いまして、いまわれわれも、その限度額の改定について、鋭意検討しておる次第でございます。同時に、先ほどからも申し上げますように、任意保険にまたこれが入ることを勧奨してまいるべきではないか、かように考える次第でございます。
#53
○加藤シヅエ君 いま、先ほど私が申し上げましたように、たくさんの矛盾があって、今後いろいろの立場から検討していただいて、より患者が満足できるような対策が講じられなければならないと思いますが、先ほどから患者代表の方が医者にいろいろかかって、医者の手ではどうすることもできないような場合に、民間の療術というようなものにかかって、全快したということを身をもって体験していらっしゃる患者さんが、ここで発言なさったわけでございます。こういうような場合は、愚者の自覚症状を、苦痛を取り除くというためには、また治癒のためには非常に患者から喜ばれているにもかかわらず、それが保険の適用において十分でないために、そのお金が払えなくてそうした療法に長くかかることができないというような問題が提出されておるわけでございます。これは請願、陳情等によって、こういうような問題を将来もう少し理解ある方向に取り上げてはどうかと思うのでございますが、そういうことについてどういうふうにお思いになりますか。
#54
○説明員(岡田茂秀君) 御質問のおそらく、はりとかもみ治療というふうな種類のものと……。
#55
○加藤シヅエ君 いろいろな種類がございます。ひっくるめて、電気もあります、光線もあります。
#56
○説明員(岡田茂秀君) 私たちの自賠責保険の治療費の支払い方といたしましては、少なくとも現在、医師の指導のもとにさようなものが用いられ、かつさようなものに相当の経費が必要だという場合には、さようなものも場合によっては養生費等をも含めて支弁するたてまえにいたしております。ただ医師の手から全然離れて民間のその種のものを利用された場合にどうなるかということは、実は私もきょうこの席へ出席させていただいて、そういうことで完治したという例は初めて伺ったわけでございまして、勉強不足でいまのところどういう扱いになっておるか、ちょっと申しかねますが、御趣旨ごもっともという感じもいたしますので、前向きの方向で今後検討さしていただきたい、かように思います。
  〔理事松澤兼人君退席、委員長着席〕
#57
○千葉千代世君 時間の節約上まとめて質問さしていただきたいと思っております。
 いままで述べられた中で、一貫した治療体系がないとか、総合治療対策もないとか、保険も少ない、こういうふうに考えていくと、まさにこれからがほんとうの対策を立てられる初めじゃないかという感じさえしたということなんです。けれども、一方では、患者は非常に苦しんでいるし、交通事故は激増しているという、こういう中にあって、さっき患者さんの述べられた中で、幾つかの心配な点がありましたので、松倉参考人に質問いたします。
 あなたは医者の治療がきかない、きかないということをおっしゃったんですね。二年も行ったけれどもむだに過ごした、一年で療術でなおしたと、こうおっしゃる。いま配られたこの請願書は、これはあなたのほうでお出しになったのですか。
#58
○参考人(松倉昭二君) そうです。
#59
○千葉千代世君 その中を見ますと、療術治療、こういうふうに手技とか電気、光線、温熱、刺激というふうに五つが述べられているわけです。きかないといったお医者さんはどういう治療というか、詳しいことは要りません、こういう席ですし、お互いしろうとですから詳しく言われてもわかりません、簡単に、どんなになさってきかなかったか。それから療術でなおったというけれども、この中でどの療術でなおったというのか。それから療術でなおったというけれども、治療費はどうしたのですか。具体的には、自己負担であったのか、加害者からもらったのか。あるいはここに、請願には、労災適用されているということがあるものですから、それでお聞きしますから、そのことを答えていただきたい。
 それから続いて小安参考人に伺いますけれども、労災保険のことを言われたんですけれども、その前に自賠責の保険ですね。これが一本あって、それから任意保険に加入していた方があれば適用されるわけでしょう。任意保険というのは示談が成立しなければ払われないというたてまえじゃないかと思うことが一つと、それからもう一つは、当委員会でも再三問題になったのですけれども、裁判の判決がなければ払われない仕組みになっていると思いますが、そうすれば、任意保険というものはすぐはもらえないわけなんですね。それで、自賠責保険を任意保険にも適用せよと、こういう意味でおっしゃったんでしょうが、その意味がちょっと私解しかねた問題ですから、その任意保険に適用せよというのは、代行機関、たとえばこの前のいつかの委員会で、なかなか払われないときには、かわって中間機関を設けて代行して一定の額を申し出、当座支払っておくような機関を設けたらというような話もちょっとあったのですが、そういう機関ではなくて、法的に適用せよという、こういうことなんでしょうか。
 そのことについて運輸省のほうではどういう見解をとられていますか。御研究になったことがあるかどうかということ。
 それから、被害者の中には、たいへん生活保護の適用を受けていらっしゃる方が多い。というのは、さっき述べられたように、死亡者が三百万円で負傷者が五十万円でございましたね。こうなってきますというと、負傷した方々ですと、これはたいへんでしょう。治療費払ってしまうと生活費がなかなかない、仕事もできない、生活保護も受けている、こういうふうになってきます。これは非常にこの問題が大きいと思うのですが、これらについて単に保険の適用だけでこれが救済されるものかどうかということと、それから病院をもう一つ求めてほうぼう歩いたということ。あとへ戻りまして恐縮ですが、順に思い出して書いたものですから。病院をほうぼう回って歩く人が多いということですが、転々と歩くということは、さっきお医者さんの証言の中でやっぱり総合的なあれがないということとかあるいは脳外科、その他についての医療設備がまだ不十分とか、こういう点もあって指摘されたのですけれども、転々と歩くということは、たとえばA病院へ行ってなおらない。今度B病院へ行ったら初めから検査し直しますね。これは私の経験ですけれども、そうすると、二重、三重に費用がむだになるわけですね。そうすると、そういう意味ではお金がもったいない気がいたしますね。総合的にやっていけば一ぺんで済むものをそういうふうになっていかなければならないという事情、こういう点なんかについて皆さんの愚者対策協議会ですか、そちらのほうでそういう点について何かありましたら。
 それから厚生省にお伺いいたしますけれども、療術師の方々に対する法的な措置といいますか、病院に入っておって療術を受けた方ですというと、保険の適用をされて点数で数えられるわけですね。療術の方に自宅で治療を受けた場合にはこれは適用されない。だから、療術の方々の制度化というものをどうするかということがずっと前に審議会にかけられているわけなんですね。あんまとか、マッサージ、指圧とか、はり、きゅう、柔道整復師等の、これがたしか四年前くらいじゃなかったかと思うのですが、私が社労委員をやった時分にちょっと聞いたことがあるのですが、その後の審議会の審議の状況、どんな審議が行なわれて、現段階ではどうなっているのかということ。それから答申の見通しというようなこと。それらについてお述べいただきたいと思います。
#60
○委員長(加藤シヅエ君) 最初に松倉参考人。
#61
○参考人(松倉昭二君) ただいまの千葉先生の御質問にお答えいたします。現在むち打ち症にかかりまして、まず救急病院へ入れられる、それで大体一応の応急手当てをされて、そのあと本格的になおすという段階で別個の病院へ行く患者もおれば、そのままその救急病院に長い入院治療を行なう患者もいればいろいろございますが、治療の大体の概略を申し上げますと、渋沢先生もおいでになることですが、まず以前はこの首を固定いたしまして、軽いところでは一応包帯をして、首を動かないようにする。これはおそらく私の考えでは内出血をとめる手段に固定するのではないかと思われます。病院によっては、包帯ばかりではなくて、いわゆるカラーのようなギプスをはめて、それで、かなり長い期間、まあ大体一カ月ないし二カ月、人によっては六カ月以上一応固定する。それで、症状がある程度固まったところで、今度は牽引療法というのをやるわけです。牽引はすわってやる場合、それからベッドにテーパーをつけて傾斜しまして傾斜牽引という場合、いろいろございますのですが、つまりくびを引っぱるわけです。この理論はおそらく頸椎が七本あるのですが、厳密に言うと八本なんです。これを衝撃によってある程度変形したやつを物理的に力を加えて引き戻そう。それで、原形に復帰させようということではないかと思われます。それが、第二段階でございまして、それを、今度過ぎて、なおかつ痛みがおさまらないときは、今度はブロック注射というやつをやります。これはブロカインを神経節に直接打つわけです。それで、完全に麻痺させる。それで痛みを一時取り除く。それをかなり長い期間やるわけですが、人によってはもう何百本、大体二、三十本から二、三百本程度までやるわけです。それでもなおかつ真の原因をなおさない限り痛みは出てくるわけです。これは当然の理だと思います。そうすると、今度医者のほうでは、神経を切るわけです。神経切断ということになります。あるいは頸椎の切開をしまして要らざるところを削り取る、切除するというふうな段階へ行きます。そうなると、私らの経験では、もはや終わりです。もうそれ以上、一ぺん切ったものは二度と再び原形には復さないということ、しかも、決してこれはなおったということではなくて、もう一定の症状をそこで一応とめた。それ以上は進まないかわりに、それ以上決して回復はしない、なおらないということ、これをはっきり認識していただきたいと思うのです。したがって、先ほど御質問のありました内容からいたしまして、医者不信ということ、これも、医者自身がむち打ち症というものの一つの症状を完全に見きわめていれば、患者にいかなることを現在考えているか、いかなる質問に対しても明確に回答できるわけなんです。そうすれば、医者不信ということはあり得ないと思うわけです。明確に回答できないから、ますます疑問がつのってくる。これは当然不信ということになるよりほかないのじゃないかと思います。そういうところで大いなる医学の欠陥がある。欠陥というよりもまだまだ見きわめ尽くせない限界がそこに現在あるということを私は痛感したわけです。それと同時に、医学だけが人間の病気をなおす唯一の方法ではないということなんです。これをもっと根本的にひとつ考えていただきたいと思うのです。われわれのいままで教育からすれば、親が子供に、先生が生徒に、知人が友人に、回りの人すべてが、まず病気になれば医者に行け、こう申します。これは一見当然のようではありますが、根本的に掘り下げて考えた場合に、大いなるここに一つの錯誤があるではないか。私はこの病気をやってつくづくそのことを痛感したわけです。
 それで第二の質問の、療術の治療内容、これは現在のところ五種目ございます。手技、温熱、電気、刺激、光線五種類ございますが、私がなおったのは手技というやつです。これを大体概略申し上げますと……。
#62
○千葉千代世君 発言中相すみませんが、あと質問する方がずっと控えているようですから、ごく簡単にしていただいて、たいへん質問しておいてそういうことを言うのは御無礼になりますけれども、予定の時間で私ばかり取るのもはばかるものですから、たいへん恐縮ですが……。
#63
○参考人(松倉昭二君) 手技というのは脊椎の矯正並びにそれを支持し、保護している靱帯、それから筋肉組織、そういったものをいわゆる矯正したり賦活するわけです。簡単に申します。
 その次の御質問です。支払いはどうしたか、と。私の場合は、一応全部自分で立てかえまして、そうして一年間分立てかえたところで加害者に請求いたしました。それを包括したところで示談に持ち込みました。
 先生、以上でございましたでしょうか。
#64
○千葉千代世君 立てかえたとおっしゃったのですが、収入や何かの点もございましょうが、仕事なんかにつけたかどうか、そういうような具体的に非常にお困りじゃなかったでしょうか。
#65
○参考人(松倉昭二君) 私の場合には、幸いにして経済的にある程度恵まれておりましたので、自分自身でその分は全部一時立てかえて払ったわけです。立てかえというより、負担して支払ったわけですが、そのあとでそれを包括して示談に持ち込んだ、これが私の場合です。
#66
○千葉千代世君 示談でそれじゃお金をもらったわけですか。
#67
○参考人(松倉昭二君) はい、いただきました。
#68
○委員長(加藤シヅエ君) 千葉委員、よろしゅうございますか。
#69
○千葉千代世君 小安さんのほうに……。
#70
○参考人(小安常祐君) 自賠法、任意保険それから労災、いわゆる生活保護の問題、これ関連しますので、一括してお答えしたいと思います。
 現行の自賠法ですね、五十万円はいわゆる治療費とか、休業補償におもに回ってしまうわけですね。その間、いわゆる被害者請求、加害者請求というのがございまして、仮払い金制度と内払い金制度と、この二種類ございまして、何といいますか、この五十万円を消費してしまいますと、たとえば一千万、二千万の任意保険がございましても、これは裁判で、示談から裁判が終わって判決が下らなければ、これは何年でも一銭も入ってこないわけです。こうした制度によりまして、いわゆる生活保護を受けなければならない人間がたくさん出てくるわけです。
 それから労災保険に関しましては、病院を転々とするのはどういうわけかという質問に関連するわけでございますが、現在のむち打ち症に対しての――現在のお医者さんも努力していることはよくわかります。しかし、その病気の根源というものは解明されておりません。したがって、その治療効果も薄いわけでございます。そこで、たとえばAという患者がEという医師にかかりまして治療を受けても、一向よくならない。徐々にはよくなっているだろうが、なかなかなおらない。医師の言うのには、一年、二年たちまして、あなたはもうなおらない、後遺症は認定してやるからその補償金をいただきなさいということなんです。しかし、患者としましては、後遺症をもらうということは、この先、生涯その重荷を背負って生きていかなければならないわけです。また、妻子のある人間は、十年なり二十年なり働いて、親としての責任を果たさなければならない義務があるわけなんです。ですから、どうしてもなおしたいという信念を持ちまして、やはり、次の病院へ行くわけです。しかし、また、その行った先の病院でも、はっきりその治療効果がわからない。あなたはもうだめなんだよ、後遺症なんだよ、最終的には首を切りなさいということを言ってくるわけでございます。さっき黒木先生ですか、お話をお伺いしましたけれども、その不安感があって、神経性の障害と言われましたが、神経性障害でも、ノイローゼでも、何でもいいんです。われわれ患者は痛みを少しでも取り除いてくれれば、それでいいのです。何の病気でもいいのです。むち打ちでなくてもいいのです。神経性障害、ノイローゼ、何でもけっこうです、お医者さんなおしてください。私は、この正月元旦の日――正月元旦はあたりまえですが、元旦から三日間、頭の割れるような頭痛に悩まされて、三日間寝られないわけですよ。病院はしまっております。そうして四日の日、病院に行きました。どういう手を施してくれたと思いますか、皆さん。何といいますか、治療方法はないわけです、はっきり言って。麻酔を打って寝かせるわけですよ。麻酔が切れて痛みが来たらまた睡眠薬を飲んで寝ろということなんです。現在お医者さんがこういった治療の程度しかできないということなんですよ。私はことしの二月まで睡眠薬を服用して寝ておりました。たまたま渋谷に筋肉医学研究所というやはり療術治療所がございまして、これは友だちの方からそこに連れていかれました。そうしてその当時、二月の末に大体体重五十キロになってしまいました。私は大体七十キロぐらいございましたが、それが五十キロになってしまいました。そうして四月から大体十五回ぐらいその療術の治療を受けたわけです。そうしましたら、最初に検査されるときに肺活量が大体三千百ちょっと欠けたわけなんです。現在十五回の治療をしまして肺活量は大体四千ちょっと欠けるわけですね。これだけの回復があったのです。これは医者がだめなのならしょうがない、どこかに行ってなおす以外にないのです、われわれは。ですから、たとえば私の場合は労災でかかっておりますから、労災でどんな高い後遺症の認定を受け後遺症の金額をもらっても、ちっともありがたくないわけですよ。少しでも早くよくなおしたいわけです。その金額をもらうならば、その金を、療術でもって治療を受けて、その療術の治療代にして、少しでも後遺症をなくしたいという切なる願いを持っております。そういうわけでございまして、治療の方法ですね、いわゆるまたたとえば大学病院などにおいても、たとえば三時間かかったり、半日かかって物理療法を受けるわけです。いわゆるこれが物療室といいまして整形外科に付属している治療機関がございます。これは半日待って三分か五分の治療なわけなんですよね。病院側に言わせますと、点数制の欠陥があって長く治療することはできないのだ、とうてい採算が合わないとおっしゃるわけですよね。ですから、私どもも二時間も三時間も四時間も待って、ぐあいの悪いからだを遠くのほうからむち打って疲れ果てて、着いたと思ったら二、三分で終わってしまう。また遠くの道を満員電車にゆられバスにゆられて、うちに戻るころにはそれ以上ひどくなっちゃっているわけですよ。ですから、何とかして、ほかの治療を受けたいということで家庭でもって療術を受けている人もおるでしょう。また、いろいろの療術の機関に足を運んで、長い時間治療を受けるわけなんです。しかし、治療を受けるのはこれは実費なんですね。私も品川の基準監督署に行きまして、御相談申し上げたのです。実際ごうよくなっているのだ、病院ではよくなっていないのだけれども、現によくなっていると言いましたところ、上からのそういう指示がなければそれは労災保険として認めてやれないのだというわけですね。ですから、私たちは出してやりたいのだが、上の人たちの指示を待っているのだ、ひとつあなたが多くの患者を代表してこれを出して見てくれと言われました。で、病院に帰って医師に話しましたところ、お医者さんのおっしゃるには、まあ私の一存じゃ何とも言えぬ、病院側に迷惑がかかると言うのです。どうして迷惑がかかるかとお尋ねしましたら、やはりそういうことをすると、現在自分の病院に整形外科があり、物療室があって、ほかのやはり物療にかかるとなると、査定事務とか監査、その他いろいろの問題が出てくる、ひとつかんべんしてくれと言うのですね。まあかかればいいに越したことはないのです。実際よくなっているのだから診断書も書いてあげたいのだが、私も雇われている人間だ、一介の医師にすぎないということなんです。それで私はまた基準監督署に行きまして、病院側でこういうことを言っている、ひとつ病院側に絶対迷惑のかからないような方法でお願いしたいのだと言いましたら、ええけっこうでございますと言う。私はほんとうに涙の出るほどうれしかったのですね。ですから、基準監督署の役人のとった態度に私はほんとうに、何といいますか、感に打たれました。どうかひとつぜひ働きかけて、私たちも喜んで出せるような方法を何とか上からの指示をあげたいということを申しておりました。
#71
○政府委員(松尾正雄君) あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復師、これにつきましては御承知のとおり、免許並びに養成制度が確立いたしております。それ以外のものは法律上は一応禁止、ただしかしながら、昭和二十二年当時法律ができましたときに、仕事をやっておられる方については届け出によってずっと永続する、こういうことになっております。この問題をどう取り扱うかは御指摘のとおり、約三年余になりますけれども、その審議会におきまして検討するということになっております。検討が続けられております。たいへん長くかかっておりますけれども、中身といたしましては、相当認めるべき条件、あるいは認め得る可能性というようなことについて、かなりの分類がいろいろなされてまいっております。ただ御承知のとおり、ほかのそういうただいま申し上げましたあんま、はり、きゅう等々のものにおきましては、後継者をつくります場合ちゃんと一定の養成所というものを出まして、そこで次の人ができ上がる、そういうしかけができておるわけでございますが、いわゆるその他の医療類似行為におきましてはなかなかその養成機関をつくることがはたしてできるかどうか、いわゆる後継者をつくるために学校をつくりましても、極端な例を申し上げますと、一人一派とでも申しますか、そういうものが多数ございまして、種類にいたしまして数えあげますれば百数十種類、私どもが承知しているだけでもいろいろございます。したがいまして、他のそういったことがいま申し上げましたあんま、はり、きゅう、その他のものとうまく調整をはかって継続して養成ができるようなことになるかどうか、この辺がいまいろいろ議論の焦点になっております。しかし、たいへん長くかかっている問題でもございまして、あまり長くかかることは審議会としては困る、こういうことで私ども促進方をお願いしております。近く大体年内程度に一応の結論をつけたい、こういうことで、委員会自体の運営もさらに小委員会方式を設ける等で促進をいたしまして、いま審議を熱心にやっていただいておるような状況でございます。
#72
○説明員(岡田茂秀君) 自賠責保険につきましては参考人の方がおっしゃいましたように、現在も仮渡し金あるいは内払い制度というふうなものを設けております。それで任意保険につきましてはちょっと私の所管でございませんで、大蔵省のほうの所管でございますので、ちょっと私からはお答えいたしかねるのでございますが、御了承いただきたいと思います。
#73
○小平芳平君 療術につきまして保険で見てもらいたいという御趣旨の発言が、松倉さんからも小安さんからもあるわけですが、その実情については、まずお医者さんの側からはこの病気そのものがむずかしい病気であって、おそらく二人の博士がごらんになれば治癒にするかしないかさえも必ず意見が違うだろうとおっしゃるようなむずかしい症状、むずかしい病気だとわれわれしろうとながら思うわけです。そういうむずかしい病気で、しかも現に患者の方がどのように苦しい思いをしていらっしゃるか、病気そのものも苦しいし、また生活的にも困難におちいって非常な苦しみの中にいらっしゃるということはるるいま御説明があったのです。それに対して政府側からは、いま運輸省のほうから、自賠責ではそれは払うのだと、それはお医者さんを通じて請求のあった分は自賠責で見ているのだ、これだけの返事があったわけです。それでは非常に不満足なんですね。それは厚生省としては、そうした医学上の立場から、そういうむずかしい病気は、いま小安参考人がおっしゃったように、とにかく苦痛をとってもらいたい、その苦痛をとってあげるためには、それが現行法律がどうこう、もし現行法でできないならば法律を改めて、そうして何が何でもそうした苦痛の中から解放できるようなそういう措置を講じていくのが当然ではないかと思うのですね。同時にまた、実態としてはいま御説明がありましたように、長い道を病院へ通い、何時間も待たされて二、三分で終わると、これじゃたまらないからといって、自宅なり近所のそういう療術師にかかるというような場合、それは現在の法律では自分で金負担しなくちゃならないかもしれない。しかし、それは厚生省、労働省ともに、これは健康保険もあり労災保険もあるわけです。しかもそれはともに保険料もそういう事故の発生したことを見て考えて、すでにもう保険料も常時払ってきているわけですから、それだけの保険料も取り、それだけの制度がありながら、しかもこうした交通事故という突発的な災難にあわれた方がそれだけ苦しんでいるのに、結果としては自分でお金を払わなければどうにもならないというこの制度はおかしいのじゃないか、やはり改めるべき点は改めなくちゃならないのじゃないか、以上そういう点を私は御質問したいのです。第一は、医学上の見地からこうした総合的な治療が必要だということ、それから第二には、厚生省健康保険の関係、第三には労災保険の関係、こうした三つの観点からして、とにかく安心して、安心もできないですけれども、とにかく病気をなおしてあげるという方向に全機能を集中していくべきだ、このように考えますがいかがでしょうか。
#74
○説明員(高木玄君) 医療保険におきましては、あんま、マッサージ師、指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師における整復につきましては、医師の診断書があります場合に、これを給付の対象に認めております。
#75
○説明員(長岡貢君) 労働者の災害補償保険法は業務上けがをいたしましたりあるいは疾病にかかった場合に、それに対して補償すると、無過失賠償責任を担保する制度でございます。自賠法との関係につきまして先ほど運輸省のほうから御答弁があったのでございますが、自賠法におきましてはこの過失相殺というようなもの、あるいは慰謝料というようなものが含まっておるのでありますが、労災保険は無過失賠償責任を担保する法律でございますので、慰謝料というようなものは含んでいないのであります。つまり民法の損害賠償という分野でそういった慰謝料というようなものはきめられている、こういう制度に相なっておるのでございます。医療補償の面につきましては、治癒するまで必要な医療を行なう、このような制度に相なっておるわけでございます。
 そこで、先ほど治癒という問題についていろいろと患者の方あるいはお医者さんの方からこの制度に対しての御論議があるわけでございますが、労災法上の治癒という点につきましては、この治癒の中に社会的な治癒つまり根治したとかあるいは全治したというような社会的な治癒、それからもう一つは医学的な治癒――お医者さんがなおったというような治癒……。
#76
○小平芳平君 全然聞いていないのだ、そういうことは。
#77
○説明員(長岡貢君) それから労災制度の治癒につきましては、障害補償というものがございますが、健康状態に達した場合に治癒ということになるわけでございます。
 療養の範囲等につきましては、労災補償保険法の十三条に、必要な医療を行なうということになっておりますので、治療が必要なものについては治療を行なっておるというたてまえになっております。
 そこで、先ほども、はり、きゅう、柔道整復師といった医療類似行為の療養の問題につきましては、医師が必要と認めたものに対しては支払う、このような制度に相なっておるわけでございます。
#78
○小平芳平君 それはきょうおいでの高木審議官、それからまた労働省長岡補償課長から、皆さんのこの席における答弁としては、それは現行法を一歩検討しようという答弁はできないから、そういうような同じことを繰り返されるのかもしれませんけれども、こうした実情は皆さんも重々御承知だと思うのですよ。それはそういう行政の衝に当たっていらっしゃるわけですから、現在むち打ち症という病状がどんな状況にあるか、患者さんがどんな環境にあるかということは、それはもう御存じでないなんというのはおかしいですよ。ですからそういう現状をよく把握して、そうして省内で検討していただきたいと思うのですね。そのことを伝えていただきたいと思うのですね。
 それから、医務局長はどんなお考えですか。
#79
○政府委員(松尾正雄君) 私どもとしましては、治療の可能性というものについては広くこれは探求すべきだ、こういう態度に立っております。したがいまして、いわゆるむち打ち症といわれるものにつきましても、四十二年以来研究費を出して研究をお願いしておるわけでございますけれども、それはやはり現在の段階ではなるべく基本的なところを早く解明したいという態度――発生の機序でございますとかあるいはただいま参考人の先生方から申されましたような基本的な問題も急いで取りまとめるという方向で進んでおります。だんだんにそういうものが進んでまいりまして、治療の方法というものについても各種のいろいろな比較検討がなされると、こういう段階に入りつつあるわけでございます。したがいまして、そういういわば医学的な研究の中にそういう可能性を十分取り入れて検討する。これはただいま渋沢参考人からのいろいろな御所見の開陳がございましたけれども、やや幅広い医学的所見という形も十分考え得る問題であると存じますが、私としましては、そういう研究班の中にそういう幅を広げて、これを裏づけるほうがいいのではないか、こういうように考えております。
#80
○小平芳平君 医務局長にもう一ぺんお尋ねしますが、要するにいまの厚生省並びに労働省からの御答弁は、現状としては医師の診断があれば保険で見ているということなんですよね、結論は。ですから全国のお医者さんが、医務局長の指示によって一斉に動くかどうかわかりませんけれども、要は厚生省医務局長として、こうしたきょうの参考人の方がお述べになった御意見は、医務局長としては御存じだと思うのです。そういう現状、こういう病気そのものがむずかしいという、あるいは現に非常に苦しんでいるというような、こういうような点からして、医師の診断によって、とにかく苦痛を去ることが大事なんですから、それにはこの療術によって苦痛を取れればこんなありがたいことはないと思うのですよね。それが医師不信かどうかということは全く別問題だと思うのです。お医者さんならお医者さんで、早く苦痛を取ってくれればいい。療術なら療術で早く苦痛を取ってくれればいい。そういう観点に立って、厚生省としてどういうふうなことをお考えか。もっと幅広くこの保険を適用すべきだというふうなお考えをお持ちかどうか。あるいは医師の診断をもっと能率的にといいますか、いままでより一そうお医者さんがそういう診断を出してくれるような方向に、局長として持っていかれることができるかどうか。その点、いかがでしょう。
#81
○政府委員(松尾正雄君) ごもっともな点だと存じます。現在でも実は非常に難解な問題はたくさんございますけれども、しかし、私どもがいろいろな文献を、学問的な結果を拝見しているわずかな範囲を見ましても、これは決してなおらないものではなくて、大部分は早い治療によって相当軽快しておられるという現状でございます。しかしながら、やはりおくれましたりあるいは症状によりましては、御指摘のように非常に難治な問題が残る。この両面があるということだけは事実でございます。
 私どもは、先ほど来申し上げましたような研究班の研究をことしも継続させまして、できるだけひとつ広く研究を進めていただきたい、こうお願いしておるわけでございますが、その最終的なねらいといたしましては、でき得べくんばそういう研究班による診断の基準なり診療あるいは治療上のいろいろな方針なりこういったものが、学問的にも裏づけられてまとまり、そうしてそれがまとまったものとして、広くかつ早く医療関係者にも周知徹底してもらいたい。こういうことを終局的な研究班のいわば最終的な仕事としてはお願いしたい、こういう気持ちを持っておるわけでございます。
 したがいまして、その中で治療の方法としましては、先ほども申し上げましたように、あらゆる可能性というものに、やはり科学的にも取り組むべきでございます。そういうことで、こういうものに取り組んでまいりたいと存じますが、またできればそういうものが医療機関の内部でいろいろとできるということになれば、これは一番望ましい姿ではなかろうかと考えておるわけでございます。で、現在そういう方向に非常に接近している問題としましては、はなはだ不十分でございますけれども、いわゆる理学療法あるいは作業療法といわれているグループの人もおります。専門職として養成してきておるわけでございます。そういうものとの関係をいろいろ考慮しながら、医療の体系の中でどう取り扱うかということをやはり考慮すべきではないかと、こう思っております。
 ただ現在、あんま、はり、きゅう、マッサージ等については、一定の条件のもとに保険の給付というものは行なわれておるわけでございます。その他のものに直ちにこれを認めるかどうかは、先ほど千葉先生にもお答え申し上げましたように、非常に業界と申しますか、そういうところのいろいろな意見がどうも強いようでございまして、したがって、審議会で非常に長い間もんでおりますものの、まだ最終結論が出ないというような事情がございます。したがいまして、私どもとしては、それを全く無視して一方的に行政措置だけとるということは非常に困難な事情にあろうかと存じます。したがいまして、基本的には、最初のほうに申し上げましたような姿勢で、むしろこういう大きな医療研究なり医療の推進の中に含ませるような方向で考えていくほうが最もいいのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
#82
○小平芳平君 その行政上の問題としては研究班の活動、その他の御説明はよくわかますが、しかし、単なるそうした行政上の問題ではなくて、いま現実の問題としては――それは政治が、行政がどう、法律がどうということはもちろん一つありましょう。しかし、現実問題はいかにして苦痛を去ってあげるか、それは、いま局長はむち打ち症はなおせるのだということを最初に言われましたが、むち打ち症はなおせるのだということが前提ならば、早くなおるように、これはあそこがむずかしいここがむずかしいじゃなくて、もっと早くなおるように、早くそうした患者さん方が苦痛からのがれることができるように、これをひとつ、この一点に集中して結論を出し、また実現すべきものは実現していただきたいと思うわけです。
 それから先ほどのお話で、リハビリテーション施設は日本にはないんだ、また救急病院もきわめて不足しているんだというようなことですね。こういう点から見て厚生省としては、医務局ではこれはお答えできないですか。そうしたさしあたっての苦痛の問題と早く社会復帰できるように――それがお医者さんとしての、病院としての範囲に入るか入らないかという問題、それは行政上の問題であって、とにかく患者さん御本人にとっては苦痛を去ることと、早く社会復帰したいことと、この二つなんですね。そういう点についての御所見をお願いしたい。
#83
○政府委員(松尾正雄君) 医療の姿としましては、基本的に、根本的にすべての原因を取り去ってなおしてあげるということが、もう最高の望みでございますけれども、その前にやはり苦痛を除くということは、これもやはり医療としての大きな目的でございます。したがいまして、私どもは、やはり弾力的にそういうものが取り入れられるような可能性も十分信じて進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
 それからリハビリテーションの問題につきましては、御指摘のように、日本の医療としては非常に立ちおくれておる問題でございます。しかしながら、現在でも決してリハビリテーション的なそういう機能を持った医療機関がないわけではございません。また最近におきましては、積極的にそういう固有の施設をつくりたい、あるいはつくりつつあるというような機運も出てきておるわけでございます。私どもも、国立病院等の中でも十分そういう機能を中心にした施設をつくるようにしたい、こういうことで、すでに着手をしているような状態でございます。ただこのためには、一つはそれに従事する専門者が非常に少ない悩みがございますので、この点はやはり同時に充足してまいらなければならぬと思います。ただリハビリテーションというものが、非常に幅の広い問題でございまして、ときに社会復帰、職業的な意味まで含めますと、私どもの範囲を越えておりますけれども、先ほど渡辺参考人もちょっと申しておられましたように、医学的なリハビリテーションというものは、実は患者を診断したときからスタートすべきものであるということには、私どもも全く同感でございます。ある治療が終わったあとでリハビリテーションというものが始まるんだという感覚では、おそらくほんとうの意味のリハビリテーションというものはできない。最初に患者を見ましたときに、この人をどうして社会復帰させるかということの個々の状態、あるいは精神状態に応じて指導していくという、そういう基本的な概念というものが医者の中にぜひ打ち立てられる、これが何よりも、むち打ち症のみならず、その他の疾病をとりましても非常に大事であると思います。しかしながら、何と申しましてもそういう施設あるいは機能というものがなければ、ある限度を越えますとできないことでございます。特にこういう救急医療の関係につきましては、救急医療という特別の医療機関とか、同時に私どもは安定化した一つの機能回復というものを打ち立てたいと存じておる次第でございます。
#84
○小平芳平君 時間もありませんので、これで……。最後にお伺いしたいのは、自賠責についてですが、三百万円というものはきわめて現実的でない。前にも何回か三百万円は引き上げるという発表をしておられるのですけれども、一体いつ実現されるか。いま参考人の方からは具体的に一千万円という提案もなされているのですし、三百万円というのはいかにも現実離れしているのじゃないか。それでこれは引き上げる、引き上げると言いながら、どのような見通しに立っていらっしゃるか、その点いかがですか。
#85
○説明員(岡田茂秀君) 自賠責の限度額の引き上げにつきましては、かねてから検討しておったところでございますが、その検討過程におきまして、実は保険財政が非常に窮迫しておるというふうな事情も出てまいりまして、ために予想されるところでは、相当大幅な引き上げをやらざるを得ない状況になっておるように思われるわけでございます。したがいまして、資料の精微を――整えるために、いわば事務的にかなり手間どっているわけでございますが、この事務的な資料ができ次第、できればこの数カ月くらいを目途に引き上げることができれば幸いだというふうに考えておるわけでございます。
 それからまた、額につきましては、一応、先ほど申し上げたような、大幅に上がるというような感じもいたしますので、また判決、判例等の実例から見まして、いわゆる私たちは、カバレージと申しておりますが、そこらからも勘案して五百万程度を一応の目途として事務的に検討いたしたいと思っております。
#86
○小平芳平君 そうすると、資料が集まるのに数カ月まだかかるわけですね。
#87
○説明員(岡田茂秀君) その資料が集まるのに数カ月かかるという意味ではございませんで、資料ができ次第、関係官庁、つまりこの料率の限度額の引き上げ等は、裏に料率のアップというものを伴うわけでございまして、料率のアップは大蔵大臣の認可事項になっておりまして、大蔵省とも協議しなければならないし、また、保険以外に農業共済というふうなものでもこれを実施いたしておりますので、農林省あたりとも協議しなければならない。したがって、いわば関係各省と協議する。それからさらには自賠責保険審議会というものに御意見を伺う。さらには政令改正の手続等を必要とする、かようなことを勘案して、いま申し上げたような日にちを、少し御猶予をいただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
#88
○小平芳平君 たいへんむずかしい手続があるようにいま説明なさいますけれども、前からの問題ですね。大臣ももうこれこれこういう方針だということを発表してからもう何カ月もたつわけです。これはそういう事故が起きないほうが望ましいわけですけれども、しかし、万一の場合を考えてそうした保険が必要だということと、それから任意保険は大蔵省の管轄だからわからないのだと言われますけれども、これはやはり任意保険の現状も、なるべく任意保険に入るようにという意見が一方にあれば、一方には保険会社がボイコットしてなかなか受け付けてくれない。そういうことは重々御承知だと思うのですよ、皆さんとして。ですからやはり、さしあたって自賠責の限度額が非常に重要な問題でありますので、これはいろいろむずかしい点があるかもしれませんが、やはり能率的な運営が望ましいということです。
 以上です。
#89
○内田善利君 関連して一点だけ交通局長に質問したいと思いますが、任意保険は大蔵省管轄というのですけれども、任意保険の未加入者と交通事故との関係がおわかりだったら教えていただきたい。
 もう一つは、きょう、いろいろむち打ち症の悲惨さをお伺いしたわけですが、むち打ち症に対する現在の予防対策、そういうものがどのように打たれているか、お聞きしたいと思います。以上二点。
#90
○政府委員(久保卓也君) 保険と交通事故の関係は、私どものほうでそういう統計を全然とっておりませんのでわかりません。
 それからむち打ち症の関係でありますが、むち打ち症の原因がどうであるか具体的にはわかりませんけれども、過去五年の間に交通事故による負傷者の数が四十万以上、倍以上になっておりますので、これはおそらく交通事故の中でもむち打ち症の負傷が非常にふえたのではなかろうかと思っております。その中でも追突事故によります事故が非常にふえております。昨年一年で十五万件でありますが、一昨年あたりに比べて五割くらいふえておると思います。
 そこで、この追突事故の原因を見てみますると、大体交差点における事故、これは必ずしも追突事故だけではありませんで、全体の事故の半分近くを交差点及びその周辺における事故で占めております。したがいまして、交差点における対策ということが重要になるわけでありますが、四十三年度までの過去三カ年で交通安全施設整備計画三カ年計画というものが実施されました。この場合には、信号機をなるべく広くつけるということに努力が向けられました。これは反面信号機があります関係上追突が起こるということが出てくるわけであります。あるいはかえって信号機をつけて安全をはかった反面、追突の面ではふえておるというきらいもあろうかと考えます。
 そこで、四十四年度から始まりまする三カ年計画では、信号機の高度化ということを考えております。これは単に広く薄く信号機をつけるということではなくて、むしろ信号機を、高度な信号機をつける、たとえば信号機を系統化していくということは、一々の信号機にそのたびにぶつからない、ずっと続けて幾つかの信号機を続けて車が走れるということになれば、とまるチャンスがそれだけ少なくなってくるわけでありますが、そういった意味での信号機の高度化ということがこれから三カ年で行なわれる、これは公安委員会の関係及び県の事業として行なわれてまいります。
 それからもう一つ問題がありますのは、黄色の信号というのは、これは黄色の信号が出たらその場でとまれという合図で、むしろ赤の意味に近くなっております。ところが、外国ではこれが違っておりまして、とまれる場合にはとまりますけれども、とまれそうにない、普通に走っておってとまれそうにないという場合には通過してよろしい、むしろ青の意味あるいは赤の予告であるということに外国ではなっておるようでありますけれども、どうもそのほうが合理的であるようであります。ただし、これにはほかの要因も伴いまして、信号機の改善も若干必要なんでありますが、そういうことで黄色を赤の予告であるというふうに改善すれば、もう少しよくなるのではなかろうかという感じを持っております。そういった交差点における問題、さらにもう少し申し上げれば、信号機が見えにくいというような問題もあります。あるいは信号機の手前にありまする標識が見えにくいといったような問題もあります。これは五月の十日まで過去一カ月をかけまして総点検をやっておりまして、六月一ばいにはその結果がまとまると思いますけれども、それによって措置すべきものは本年度中に措置をしたい。実はこの安全施設計画につきましては、四月には国及び県の整備計画が全部出そろうわけでありますけれども、もしこの安全施設関係で特に交差点付近のものであって、いま直すべきものが発見されたならぱ、その中であらためて計画を修正してもよろしいのではなかろうかというふうに考えております。その他追い越しの場合、それから車間距離をとる場合、この点につきましては運転者の再教育といういろんな機会がありますので、その際に十分に取り上げてまいりたい、さように考えております。
#91
○参考人(渋沢喜守雄君) 追加と言っては変ですが、参考意見を申し上げたいと思います。
 安全マクラとかシートベルトとかの取り付けば御承知のとおりでございますが、つい最近、私どもの実験並びにそれから外国の文献のごく最近のでございますが、前席のバックレストをいまより十センチぐらい高くするとむち打ちはだいぶん数が減るそうですし、また程度が軽くなるそうでございます。でございますので、車体構造の改革というものも一つの参考になるのじゃなかろうかと、こう存じます。
#92
○小笠原貞子君 年々交通事故件数が非常にふえてきているわけですが、その中でも追突事故というのが四十二年度の場合には八四%というたいへんな高率でふえてきている。当然四十三年度もふえてきていると思われるのですけれども、そういう中で追突すなわちむち打ちというわけではないと思いますけれども、当然の結果としてむち打ち症の方が非常にふえるのじゃないか、そうしてそのむち打ち症の患者さんたちがどんなに苦しんでいらっしゃるかということはもう皆さん御承知のとおりだと思うのです。そういうものに対して具体的な対策を立てていかなければならないという仕事が緊急にいま必要な課題になっているときでございますので、そういう状態についての実態の調査というものがどういうふうに行なわれているかということをお伺いしたい。総理府の宮崎室長のほうにお伺いしたいと思いますけれども、先ほどからの話を聞いていますと、むち打ち症ときめるのに非常にむずかしいというような点があろうかと思いますけれども、追突事故によっていわゆるむち打ち症というようなそういう状態で苦しんでいるというような数ですね、そうしてそれらの人たちの職場における状態とか、また生活の実態とか、そういうような対策を立てていく上においての必要な資料として当然の調査がいただきたいと思うのですけれども、そういう調査はなすっていらっしゃったのでしょうか。
#93
○政府委員(宮崎清文君) ただいま御指摘のいわゆるむちうち症にあわれた方のみを対象とした調査は現在までやっておりません。ただ私のほうで昨年十余りの府県に委託調査をいたしまして、交通事故一般の被害者の方のある程度の追跡調査をいたしております。これはまだ都道府県から全部集計がきておりませんが、実はその中にも、かりにむち打ち症にかかられた方がどうなっているかということはサンプル的には出てくると思いますので、その結果を見まして、もしまた必要があれば次の調査を考えたいと思います。
#94
○小笠原貞子君 それは大体いつごろおたくのほうにまとまって発表されるのでしょうか。
#95
○政府委員(宮崎清文君) 計算その他になかなか手間が要りますので、あと二カ月ないし三カ月の御猶予はいただきたいと思います。
#96
○小笠原貞子君 次に運輸省にお伺いしたいと思います。
 先ほど自賠責の保険額についていろいろ御答弁いただきましたけれども、死亡の場合の三百万を五百万にという話は伺っておりましたけれども、傷害の場合にはどういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
#97
○説明員(岡田茂秀君) 死亡は三百万を五百万、それと同時に、後遺障害につきましても一応三百万を五百万、それに応じて各等級ごとにレベルアップというふうなことを一応考えておりまして、傷害につきましては、実は結論を先に申し上げますと、今回の改定では見送って次回にしたいというふうに考えております。理由は、一つは先ほどからも少し申し上げておるように、今回の料率アップが相当大幅になるということを危倶しております。したがいまして、できる限り今日の時点においてはそれを低目にすることが望ましいのじゃないかという配慮が一つございます。それからいま一つは、傷害につきましては、ことばが適当かどうか、ないし私、現段階でそう言い切れるかどうか問題はあろうと思いますが、いわゆる過剰診療というふうなことも問題になっております。したがって、それらにつきましては制度の改正を必要とするかと思うのであります。したがって、それらの点を総合して次回までに検討を経て、次回の改定の際にそれを考えたい。ちなみに障害の限度額五十万円が現状でどうかと申し上げますと、一応障害の平均単価は約二十万円程度になっております。それから障害の給付を受けられた方の約九〇%が五十万円で見ておるというふうな現状でございます。
#98
○小笠原貞子君 数字的に平均的にという数を出されたらそういうお答えになるかと思いますけれども、やはり私などは患者の立場に立って、傷を受けた者がその財政的補償をどうしてもらえるかということを考えますと、実態を調べますとたいへんなものなんですね。私がちょっと聞きましただけでも、いろいろ写しをこうやってとってもらったんですけれども、たとえば五十五歳の男の方は百八十七日で百六万三千九百何がしだし、それから二十六歳の女の方は百四十八日で通院六日を含めて四十四万、今度は五十二歳の男の方は十八日で九十一万何ぼ、こういうのが私のちょっと聞いただけでも具体的に出てくるわけなんですね。そうしますと、平均ではそうだというふうにペーパーの上では出てきたとしても、実際こういうようなたいへんな負担額ということになりますと、いまの五十万円でも保険金の料率をなるべく上げないようにしたいということから、五十万というような押え方をされますと、被害者の立場というのには全く立っていただけないということで、たいへん不満に思うわけなんですよ。それぞれのお医者さんがこれは過剰診療だというふうに言われたとしても、患者の立場に立てば過剰診療だということには責任ないわけですから、そういうようなことを考えたら、一体どういうふうにお考えいただけるかどうかということなんですけれども、いかがですか。
#99
○説明員(岡田茂秀君) 確かに個々の方の治療費というふうなものを見ますと、先生御指摘のとおりだろうと私も思います。ただ冒頭これも申し上げましたように、自賠責というのが強制されておるんだ、したがって、ある一定の限度の中でまかなうんだ、それ以上はやはり任意でまかなうんだということをひとつ御認識いただけないかということです。同時に、そうは言ってもやはり相当の方がそういう困難に遭遇しておるんじゃないかという感じもいたします。実はその典型がむち打ち的なものではなかろうかということから、せめてむち打ちだけでも引き上げられないだろうかというふうなことも実は検討過程ではしてみたわけでございます。ところが、五十万円を上回るもののむち打ちの災害、むち打ち症による方は約二〇%くらいなんです。そうすると、あとの八〇%の方を犠牲にして二〇%の方だけを救済するということには問題があるんじゃないか。そうすると、今度は重症、軽症というふうなことで何か区分けできないだろうかということも考えてみたわけでございますが、これはこの制度が発足当初にそういうことをやりましたけれども、技術的に非常に判定困難だというにがい経験を持っておりまして、実はその辺何かうまい技術的な基準がないかということは私どもも苦慮して検討しているわけでございます。したがって、それらのことも一つの検討課題として、それらが総合されて次回までに何とか目鼻をつけ得ればというふうに考えておるわけでございます。
#100
○小笠原貞子君 時間がないので、その辺詳しくまたこの次の機会にでも質疑をさせていただきたいと思います。
 次に労働省の方にお伺いしたいと思うのですけれども、労働省として追突事故でむち打ち症的な愚者さんが非常にふえておるという場合に、全体の中で、私のほうがちょっと調べました中でも、被追突者の中で職業運転手さんというのが非常に多く出ているわけなんです。労働省の立場で職業的な運転手さんが非常に多いと、全国的にどれぐらいの割合になっているかというような、そういう立場で御調査なすったことはございますか。
#101
○説明員(長岡貢君) むち打ち症の労災補償保険法の新規給付者ということで補償いたしました数につきまして調査をいたしたのでございますが、昭和四十一年度におきまして治癒者数が一千八百九十人、そのうち障害補償受給者数が二百十三名、昭和四十二年度におきまして、四月から九月までの数を調べたのでありますが、労災補償の新規の給付者数は一千三百九十六名、治癒者数が九百三十名、それから障害補償の受給者数が百二十八名、このように相なっております。
#102
○小笠原貞子君 私これは京都府の衛生部でお調べになった四十二年度の報告なんですけれども、これの中で被追突者のうちの二八%が職業運転手さんということになっているわけです。それで、きょうは時間がありませんので、職業的の運転手さんがいま非常にむち打ち症が多くなって苦しんでいらっしゃるという立場からお伺いしたいわけなんですけれども、職業の上で、業務の上での事故ですから、当然労災が適用される、本人も労災を適用してほしいという希望が第一の希望になっているわけなんですけれども、労災を適用されているというのが案外というよりも非常に少ないのです。私のほうでちょっとこれも京都のこの調べを見ましても、労災の適用を受けているというふうなものは七%しかないのです。一番多いのが相手方から取っておるというのが五四%、あと自賠責が三〇%とか、自費が七、健保が五、国保が三というような割合、それから日本むち打ち症の協議会というのがございまして、そこでお調べになった中でも、これは少し多くなっておりますけれども、職業運転手さんで職業上、業務上で災害を受けているのに労災を適用しているというのが二七・四%にしかすぎないということ。
 そこでやはり職業の、業務上受けられた方で希望されているのにこれだけしか実際には適用されていないということの原因をどういうふうに考えたらいいでしょうか。労働省としては、当然業務上だから労災を適用すべきだと、そういうふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、そこのところをちょっと伺わせていただきたいと思います。
#103
○説明員(長岡貢君) 業務上の災害につきましては、労災補償保険の適用を受けることは当然でございます。いま先生御指摘の二七%ですか、という数が労災の適用を受けておる、こういう御指摘があったのでございますが、先ほど自賠法と労災補償保険法との関係につきまして、まず自賠優先ということで行政上取り扱っておるわけでございます。先ほど自賠法の問題について五十万、三百万という限度があるという御指摘がございましたが、自賠法でまず取り扱いまして、そのあと引き続いて治癒しないというような場合に、雇用労働者である場合には労災保険法の適用をするという取り扱いになっておるわけでございます。したがいまして、労災で取り扱ったのが二七%で、その他の面については自賠責で取り扱ったということの数字だというふうに考えております。ただ、自賠法で扱うことについて、自賠優先主義ということで行政上の扱いをいたしておりますので、被災した労働者の方が労災補償保険法の適用を受けたいという希望があれば、当然労災補償保険法のほうで取り扱う、こういう仕組みになります。
#104
○小笠原貞子君 いまの追突された労働者の希望としては、やはり労災の適用を受けたいというのが一番いま切実な希望なんですね、聞いてみますと。そうしますと、それにもかかわらず自賠優先だというような指導をなすっているとすれば、労働省として労働者の立場に立っての行政指導ではないということが言えるんじゃないかと、そう思うんですよ。労働者が自分の職業上で労災を適用されれば、休業補償ももらえるしというようないろいろな点を考えて希望している場合には、当然労災で適用できるように労働者の希望を尊重していただきたいと、そう思うわけなんです。それで、この労災保険がなぜ適用されないかというのを具体的に調べてみますと、先ほどもこちらの患者さんおっしゃってましたけれども、会社側で労災適用したくないというのが一つ大きな問題になってくるわけなんですね。これも大阪の場合ですけれども、全乗協と申しましてタクシー経営者の団体が自分たちの会社のところずっとアンケート出しているんですわ。そういうのを見ますと、こういうふうになっているんです。むち打ち症患者でその傷病の真偽を疑ったことがあるかと、こういうアンケートが一つあるわけなんですね。つまりむち打ち症だと労働者が言っても、これはうそなんじゃないかということを疑ったことがあるかということをアンケートして、で、まあ疑っているという答えが出てきますね。そうすると、疑っている場合には、一体どういう方法でそれを解決しているかというのが今度次にアンケートとして出てくるわけなんです。そうしますと、補償の支払いを故意に制限して本人が働くようにし向けると、こういうふうになってきている。そういうことで、経営者の立場だから決して労働者の立場には立っていないんでしょうが、こういうふうに非常に労働者に疑いの目を向けているし、そして労働者が労災として当然業務上のものとして認めてほしいというようなことに対しても、会社側が押えていると、経営者のほうが。で、非常に労働者が苦しんでいると、こういうような場合が実態として出てくるわけなんですね。そういうような点で労働省として実態が労働者の希望の労災保険の適用についてどういうものが障害になっているか、労働者がいま苦しんでいる問題は何かというようなことを監督なすったり、そして御調査なすって行政指導なすったりというようなことをされたことがあるのかどうか。実態としてはいろいろこういう問題が出てきますので、その辺のところを監督官庁としてお伺いしたいと思うんです。
#105
○説明員(長岡貢君) 労災補償を受けたいという被災労働者の御意見に対しまして使用者がチェックする、こういう問題でございますが、労災補償保険法の施行規則十一条の二に基づく様式第五号の中に、使用者が証明をする欄がございます。この被災労働者がその証明欄に証明を求めた際に、業務上であるかどうかという判断が加わるわけでございます。しかし、これは施行規則十一条の二に基づく様式第五号の様式中の災害についての業務上外の判定については一応参考意見ということでございますので、事業主がこの署名を拒否すれば、そこの内容について監督署にそのまま書類を提出すればいいということになっておるわけでございます。
 したがいまして、従来むち打ち患者同盟の方々あるいはその他の被災労働者の患者同盟の方々からそういうようなことに対して十分出先機関を監督指導してほしいという要望がございましたので、そういう問題について適切に処置するように出先機関を指導しておるわけであります。
#106
○小笠原貞子君 ぜひその労働者の立場に立って、守る立場の労働省としての役目を強めていただきたいとお願いしたいわけです。
 それで、次に、労働省の中にむち打ち症の補償基準に関する専門家会議小委員会というのが持たれていろいろ検討されているということを伺ったわけですけれども、ここで労働省としてはどういう問題について検討を要請をされているのか。先ほどからのお話を伺いますと、むち打ち症そのものをどういうカテゴリーのものとして定めるかというのは非常にむずかしいとまあ言われていましたし、また、治療についても非常に、渋沢博士の言によれば、重症度の場合には全身障害だというふうに出てくるし時間もかかるというようなことで、具体的な調査というようなものや研究の結末というのがまだまとまっていないわけですね、いままでの御報告を伺ってますと。そういう中でこの小委員会というのがどういう内容の検討をされて、そうして、聞くところによりますと答申が出されるというようなことを伺っているのですけれども、その中の動き、内容というものをお聞かせいただきたいと思うのです。
#107
○説明員(長岡貢君) むち打ち症の認定に関しまする専門家会議というものを昭和四十二年の二月の十七日設けまして、その後本年までに十回にわたりまして開催をいたしておるのでございます。このむち打ち症の専門家会議と申しますのは、専門委員の方々に御参集を願いまして、むち打ち損傷に対しまする業務障害等の問題、それから治癒の取り扱い等の問題、それから障害等級の決定についての問題等について医学的に解明をしていただく。それによって統一見解をつくっていただきまして、行政上それに基づいて今後処理をしてまいりたいというその基礎づくりを現在やっておるわけでございます。
#108
○小笠原貞子君 それはいつごろその一応のめどというものを出して行政指導に使われようということになるのですか。
#109
○説明員(長岡貢君) 予定といたしましては、当初四十三年度中ぐらいに問題の処理をしたいということでつとめてまいったのでありますが、このむち打ち損傷問題というこの事案が非常にむずかしい問題を含んでおりますので、関係の専門医の先生方の研究もかたがたお願いいたしたいというようなことからそういう研究成果を十分織り込んで十分なものにいたしたいということで、せっかく現在は取り急いでおるのでありますが、いまいつまでにこの専門家会議の答申が出るかということについて、見通しとしては、近いうちに何とか出したい、こういう考えで関係専門家の諸先生方にお願いをしておるわけであります。
#110
○小笠原貞子君 いま近いうちと言われましたが、その近いうちというのは、本年度中とか、ここ二、三年とか、五、六年とか、近いうちという範囲は大体どれくらいなんですか、見通しで。
#111
○説明員(長岡貢君) ただいま六月でございますが、数カ月のうちに何とかまとめたい、このように考えております。
#112
○小笠原貞子君 まあとにかくことし中ということですわね、数カ月のうちということが。そうしますと、先ほどから伺っていると、非常にむずかしい、むずかしいと、治療について非常にむずかしい点があると、こう出てきているわけですわね。それを大体数カ月、五、六カ月のうちにまとめて出して、それで行政指導したいということはね、ちょっと問題があるのじゃないですか。現実にそこまでで、あと数カ月できちっとそういうのを科学的なデータというものが出て、それで答申されて行政指導するというのならわかりますよ。まだ、いま伺っていた段階では非常にむずかしいむずかしいと、一年やそこら出ないようなさっきお話しだったのですけれども、それはもうその数カ月先にお出しになろうというまでには、もう見通しとして、その研究班の研究成果だとかいろいろ治療方法について科学的に出せるという、そういう根拠があってことし中に出したいと、こういうふうにおっしゃるのでしょうか。
#113
○説明員(長岡貢君) 先生御指摘のような問題を踏まえて専門家会議の答申を出すというふうにいま進めておるところでございます。
#114
○小笠原貞子君 いや、私が聞きましたのは、そういうふうに進めていらっしゃることはわかるのだけれども、ことし中に出したいという、ことし中に専門家会議のほうで科学的にむち打ち症というのはこういうものだ、治療はこういうものだというのが一応のめどとして出せるというふうに御判断になったわけですか。
#115
○説明員(長岡貢君) 現在の取り扱いの問題と将来の取り扱いの問題と二つに分けて御説明申し上げたいと思います。先ほどむち打ち症の医療の問題についていろいろと御質問があったのでございますが、その点につきまして、被災された方がどこのお医者さんに行ってもいいというたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、被災した労働者の方が大学病院に行きたいということであれば大学病院、町の診療機関に行きたいということであればその診療機関に参ると、その際に、頭頸部症候群というそのむち打ち損傷患者の疾病が非常に複雑多岐にわたっておるというところから、相当各専門科目の整った診療所あるいは病院でないとなかなか治療効果をあげるということが困難な場合が多いわけであります。したがいまして、初期診療というものがきわめて有効な医療を行なうということから、できるだけ早くそういう専門科目の整っておる病院、診療所で治療を受けてほしいというふうに指導いたしておるわけでございます。したがいまして、現在におきましても、現在の医学水準において可能な限りの治療を行なっておりますけれども、それに加えて、現在取り扱われておる診療の状況が非常に区々にわたっておるというところから、できるだけ適正な医療を行なうことによって被災労働者ができるだけ早く職場復帰できるように処置をとっていきたいと、こういうふうな指導をいたしておるわけでございます。
#116
○小笠原貞子君 どうも、私の言ったことにはっきりお答えいただけないので入れ違いになっておるのですけれども、私の心配いたしますのは、聞くところによりますと、この小委員会で答申を出されると、その答申の中には、労災適用の期間については腰痛症の基準と同様に扱うということで、大体六カ月というふうにしたらいいだろうというような答申が出されそうだということが言われているわけなんです。そしてまた、各地方に行きますと、たとえば京都なんかでも話し合ってみますと、この答申か出たときには症状固定ということでこれはもう打ち切りという、全く打ち切りの立場に立って整理していく立場に立ってこのデーターがいまずっと集められているという動きも出てくるわけです。そうしますと、私が先ほどから何度も言いましたのは、むち打ち症というのは非常に原因も複雑だと、その治療もたいへん長くかかるし、いまのところわからないと、そういうことが言われているのは事実でございますよね。そうでございましょう。それはもうお認めになると思うのですよ、このことは。そうしますと、その被害を受けた労働者の立場に立ってみれば、まだ半年でも一年でもなおらないというような場合に、それで症状固定だということでさっきも話に出た治療の打ち切りというようなことでどんどん職場復帰させられてしまうわけなんですよ。そういうことになりますと、この答申というのが非常にいま急がれて、ことし中に出そうと言われるのには、そういうふうにいまのむち打ち症患者の立場に立っていないで、これを整理していくということのために盛んにやられているということを非常に私は心配するわけなんです。そこで、先ほど言ったように、どういう科学的な根拠があって答申の結末を出されるのかということをお伺いしたのです。それというのも、決して、ただ私がひがめで言っているのでなくて、この小委員会のメンバーというのを拝見いたしますと、決して労働者の立場に立ってどう解決するかというような、そういう方でない委員さんが、まあどれどれということは言えません、だいぶいらっしゃるわけなんです。たとえばその委員会の座長をつとめていらっしゃいます東京労災病院の近藤院長先生、ここへむち打ち症連絡協議会の患者さんたちが真剣にいろいろお話し合いをしているのを見ますと、こういうことを言っていらっしゃいますのを、御承知かどうか知りませんけれども、ちょっと言いますと、むち打ち症なんというのは一、二週間でなおる病気だ、それをおまけして一カ月の診断書を出しているのだと、私はむち打ち症で五年間も一生懸命取り組んできた、むち打ち症なんということばを使うからよくないのだ、こういうことを言うから患者さん一般が恐怖症になっている、特に筋肉労働者の場合は職場復帰早くしたほうがいいのだ、だから、現在まことに労災基準があいまいだが、タクシー運転手の場合には三カ月くらいで職場復帰したらいい、こういうふうなことを言っていらっしゃるわけなんですね。これが小委員会のメンバーであり座長であるわけなんです。しかもそのあとに、まあベトナムと違って治療を受けれるだけしあわせなんだと、こういう暴言をお吐きになっていらっしゃるわけなんです。そういうことを私たち患者さんと一緒になってやっている中で聞いてみますと、こういう方が座長になって出される答申というのはもう結果的にわかっているような気がするのですよ。こういうことを言われている座長さんの発言ね、労働省の立場としてはひどいとお思いになりますでしょう、これ。どうですか。
#117
○説明員(長岡貢君) むち打ち損傷の問題につきまして、先ほど渡辺先生からむち打ち損傷の内容につきまして非常に複雑な頭頸部症候群があるという御意見があったのでございますが、その因子の中に、傷害による重篤障害あるいは中等度障害あるいは軽症というふうに、必ずしもむち打ち損傷それ自体が同一症状を呈するということではないわけでございます。したがいまして、現在障害等級等につきましては一級から十四級までございまして、一、三、七、十二、十四、このように障害等級が分かれておるわけでございますが、昨年この自動車のけがによるいわゆるむち打ち損傷というものが非常に続発しておるということから、七級と十二級の間に九級という障害等級を設けまして、実情に沿うように規則の改正を行なったのでございます。
 専門家会議の任務といたしましては、先ほど申しましたように、業務障害の問題とか障害等級の決定の問題、医学的な解明をどうするかということでございまして、必要な治療を行なうことが必要なものについて打ち切り措置をとるというような目的のためにつくった専門家会議ではございません。あくまで労働者の保護という立場に立って適正な医療補償、給付を行ないたい、こういう趣旨から専門家会議にお願いすることになった、こういうことでございます。
#118
○委員長(加藤シヅエ君) 小笠原委員に申し上げますが、時間が超過いたしましたので打ち切っていただきたいと思います。
#119
○小笠原貞子君 あと一問だけ……。いまのまたお答えちゃんといただかないのですよ。そういうような立場で小委員会がつくられている、それは当然だと思うのですよ。そういう立場でつくられている小委員会の座長さんがこういうようなひどい発言をしている、これについて労働省としては考え方違っていますでしょう、こういう発言をされるのだったら。そのことをどうお思いになりますかと私は聞いたわけです。
 時間がないから次へ移りますけれども、そういうようなことを言っていらっしゃるという事実を認識くださって、その小委員会というのがほんとうに労働者のための立場に立つ委員会であるように行政官庁として指導していただきたいし、見ていただきたいと思うのです。それが近藤先生だけじゃなくて、もう一人の鈴木勝己先生も、これは関東労災ですよね、ここでも患者さんのカルテをなくしちゃった。一度ならいいけれども、三回、四回なくしてますね。カルテをなくして、その患者さんが賠償のための裁判に非常に困ったと、こういうような事実も出てきているわけなんです。そういう方が座長であり、メンバーの中にあって、そしてしかも、六カ月で補償を打ち切るというようなことがいわれているのでは、いまのほんとうのむち打ち症に悩む労働者を守る立場に立たれていないのではないかと、ここのところを私はしっかり申し上げたいわけなんです。そういうわけですから、この答申というものがもし出ましても、労働省としては、この答申がほんとうに労働者の立場に立っているものかどうかというところをしっかり見きわめていただきたいし、そういう不当な答申は決してほんとうの意味の答申ではないんだから、あくまで労働者の立場に立つ労働省としての役目を果たして、いま悩んでいるむち打ち症患者の悩みを解決できるようなそういう立場に立っていただきたいということをお願いして、質問を終わりたいと思います。
#120
○委員長(加藤シヅエ君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#121
○委員長(加藤シヅエ君) 速記を起こしてください。
 参考人の方々に申し上げます。本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見を拝聴させていただきましてまことにありがとうございました。皆さん方の御意見を参考といたしまして、今後十分に検討いたしたいと存じます。
 本日はほんとうにありがとうございました。
 ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#122
○委員長(加藤シヅエ君) 速記を起こしてください。
 この際おはかりいたします。理事会において御協議いただきました決議案を私から提案申し上げます。委員各位の御賛成を得たいと存じます。
 まず案文を朗読いたします。
   むちうち症対策の充実に関する決議案
 現在、いわゆる「むちうち症」患者の多くが、社会復帰に対する不安と長期療養に伴う生活の困窮化に悩まされている。
 政府は、すみやかに、次の対策を講ずべきである。
一、診断及び治療の基準確立を急ぐとともに、初期における適切な治療のための施設の整備と専門医の養成を一層促進するほか、長期療養者の機能回復を促進するためのリハビリテーショソ医療の充実をはかること。
二、右の各措置のために必要な研究助成を拡充すること。
三、診断及び治療方法が確立するまでの間においては、治ゆの認定及び再発に対して弾力的な取扱いを考慮すること。
四、患者が診療費の負担及び生活の不安におびやかされることなく、療養できる体制を整備すること。
 右決議する。
 以上でございます。
 別に御発言もなければ、ただいまの決議案の採択をいたします。本決議案を本委員会の決議とすることに御賛成の方の挙手をお願いいたします。
  〔賛成者挙手〕
#123
○委員長(加藤シヅエ君) 全会一致でございます。よって、本決議案は全会一致をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対して、総理府総務長官から発言を求められておりますので、この際、これを許可いたします。
#124
○国務大臣(床次徳二君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしまして、十分検討し、御趣旨に沿うよう努力いたしたいと存じます。
#125
○委員長(加藤シヅエ君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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