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#1
第061回国会 石炭対策特別委員会 第9号
昭和四十四年四月十六日(水曜日)
   午後一時十七分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         阿具根 登君
    理 事
                鬼丸 勝之君
                川上 為治君
                小野  明君
                藤原 房雄君
    委 員
                石原幹市郎君
                剱木 亨弘君
                徳永 正利君
                西田 信一君
                二木 謙吾君
                吉武 恵市君
                大矢  正君
                小林  武君
                小柳  勇君
                片山 武夫君
   政府委員
       通商産業政務次
       官        植木 光教君
       通商産業省鉱山
       石炭局石炭部長  長橋  尚君
       通商産業省鉱山
       保安局長     橋本 徳男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小田橋貞寿君
   参考人
       日本石炭協会会
       長        大槻 文平君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○当面の石炭対策樹立に関する調査
 (新石炭政策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(阿具根登君) ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。
 当面の石炭対策樹立に関する調査を議題といたします。
 本日は参考人として、日本石炭協会会長大槻文平君に御出席をいただいております。
 この際、大槻参考人に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところ、本委員会に御出席いただき、ありがとうございました。本委員会は新石炭政策樹立のため、現在石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案等の審査を行なっておるのでありますが、この際、日本石炭協会としての立場から御意見を承ることが必要であると考え、本日大槻参考人に御出席をお願いした次第であります。聞くところによりますと、協会内部にもいろいろの御意見がございますようでありますし、私たちも膨大な予算の審議でございますので、この法律によって、将来ほんとうに石炭が再建できるのかどうか、初めに十分程度の御陳述をお願いし、その後に各委員からの質問にお答えいただきたいと存じますので、この旨御了承を願います。
 それでは大槻参考人お願いいたします。大槻参考人。
#3
○参考人(大槻文平君) 日本石炭協会の会長をやっております大槻文平でございます。石炭問題につきましては、かねてからこの委員会の諸先生方に格別の御配慮をいただいておりますが、きょうは、また新石炭対策につきまして、業界の意見を申し上げる機会をいただきましたことを心から感謝いたしております。
 本論に入ります前に、私はまず、去る四月二日、当協会の会員であります雄別炭砿株式会社の茂尻炭砿におきまして大変災を引き起こしまして、多数の人員を損傷し、社会各方面に対して御迷惑をおかけいたしましたことに深く責任を感じ、お詫び申し上げる次第でございます。また、本委員会におかれましても、直ちに調査団派遣等いろいろ御配慮をいただきましたことにつきまして、厚く感謝申し上げる次第であります。その後、通産大臣よりもきびしい警告もありましたのにかんがみまして、私ども協会の評議員会におきまして、保安優先の決議を行ないまして、会員一同災害の絶滅を誓った次第でございます。
 さて、新石炭政策に関しましては、御承知のように、昨年末の審議会の答申を経まして、本年初頭に閣議決定がなされ、これに基づきます四十四年度予算が過日先生方の御配慮によりまして成立いたしましたものの、これが実施方法をきめまする法律案については目下国会において御審議中でございます。業界といたしましては、そのつど意見なり要望なりを申し述べてまいりましたが、もちろんそれらがすべて受け入れられておるわけではございません。しかし、現在のこの最後的な段階におきまして、対策の内容についてかれこれ申し上げる時期ではないと存じますので、ただ希望といたしまして、一、二簡単に申し述べさしていただきたいと存じます。
 新政策に関しましては、いろいろ不満もあります。しかし、限りある財源の範囲内で考えられました政策といたしましては、大筋におきまして、これ以上望むことも困難かと思われますので、業界といたしましては前向きにこれを受けとめまして、この多額の国費を投じてもらいますこのたびの新しい計画を手がかりといたしまして、石炭の再建をはかり得る見通しのあるものにつきましては、再建のために最大の努力を行ない、また、どうしてもこの程度の対策では再建困難と思われる企業は、企業ぐるみ閉山を検討いたしておるところもございます。また中には、一部非能率炭鉱を閉山いたしまして、他は生き残るべく努力しておるものもございます。もちろん、現在なお法律は審議中でございますし、政省令もきまっておりませんので、正確な対策効果を判定して再建計画を樹立したり、また閉山処理計画をきめることは困難でございますが、企業は生きものでありまして、一刻の猶予も許されませんので、予算なり法律案なりにより、およその見通しを立てまして、それに基づきましていろいろと準備をいたしておる次第でございます。
 再建計画の樹立及び実施に際しましては、企業といたしましては、先ほども申しましたように、多額の国費をちょうだいすることでもございますので、この際労使ほんとうに協力して、個別企業の場においては最大限の合理化努力を行なうことはもちろん、各企業は共同して合理化メリットが追求できるたとえば流通機構の合理化なり、あるいは鉱区調整なり等はできるだけこれを実施するということで、目下協会内の企画委員会において検討中でございます。したがいまして、当面の急務は一刻一日も早く法律が成立し、それに基づく政省令が決定せられまして、対策の細目が具体的となり、これに基づきまして再建計画の樹立や閉山の処理が可能になることでございます。一日おくれればそれだけ従業員の不安を増し、金融の梗塞を来たします。生き残れる山までも閉山のやむなきに至る心配もございます。一日も早い御審議のほどを衷心からお願い申し上げる次第でございます。
 また、対策の中で最も不安を蔵しているのは、率直に言いまして金融対策じゃないかと存じます。もちろんこれに対しましては、再建交付金の交付あるいは経過金融措置、合理化事業団の無利子融資の拡大、担保解除措置等いろいろ手厚い配慮が考えられているようでございますが、従来、資金供給の大宗でありました開発銀行の後退があり、また市中銀行は石炭産業に不安感を抱いておりますので、企業によりましては、今後市中銀行の融資を受けることはなかなか困難な向きも出てくるかと思われます。したがいまして、企業によりましては、場合によりまして運転資金に事欠くおそれも生じますので、もちろん企業としては最大限の努力はいたすわけでございますけれども、担保解除措置等の弾力的な運用について、この上の御配慮をお願いしたいと存ずる次第であります。
 以上きわめて簡単でございますが、私どもの決意のほどと希望を申し述べさしていただきました。
#4
○委員長(阿具根登君) ありがとうございました。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○大矢正君 ただいまの参考人の陳述に関連をいたしまして、二、三御意見を承りたいと思うのでありますが、いま述べられた中にありましたとおり、石炭に関連する予算は、特別会計として先般の全体の予算成立の一環として成立を見ておりますることは御了承のとおりであります。これは予算が一括採決、一括成立というたてまえがありますから、成立はいたしましたものの、御了承のとおり法律はいまだに衆議院段階にありまして、当初私どもが想定をしておりました成立の時期よりもかなり後退をしていることは事実でありまするが、なぜ一体法律の成立がおくれているかと申しますると、いまのお話にもありましたように、四千二百億円という膨大な金を、今後五カ年間に石炭企業、石炭産業につぎ込むということの国民的なこの支援といいましょうか、理解といいましょうか、そういうものに欠ける面があるので、法律がなかなか成立しがたい状況になっているという解釈を実は私ども持っているわけであります。国会の中にありましても、この四千二百億円という金をなぜ石炭産業――産業というよりは企業です、これは。個々の石炭企業に四千二百億円の金をつぎ込まなければならないのだろうかという、今日のこの社会情勢の中の一環として出ておりまする疑念というものが、国会の中にあっても法律の成立を促進できない要因に私はなっていると、こう思うわけでありますが、他の産業、他の企業にはかようなものは一切行なわれていないけれども、石炭だけはこのような手厚い措置がとられなければならないのだとするならば、それなりの根拠があるものと思われるのでありますが、残念ながら、いまの段階で、私ども四千二百億円という金をつぎ込むこと自身もそうでありまするし、さらにそれを上積みして、石炭企業に金をつぎ込まなければならぬという考え方の説明で、国民やその他の人を理解せしめる根拠の持ち合わせがないわけでありまして、できたらこの機会に協会長の大槻さんに、どういうふうに説明をすればわかっていただけるものなのか、お教えを願いたいと思うわけです。
#6
○参考人(大槻文平君) ただいまの大矢先生のお話でございますが、どうも石炭対策のABCから始めるような感じがいたすわけでございますが、私どもといたしましては、いまお話のございましたふうに、石炭産業だけになぜ国家がそんなに多額の金をつぎ込まなければならぬかということに関しましては、国民全体がやはり相当な疑問を持つ向きもあるかと存じます。しかし、私はかように考えておるわけであります。
 まず第一点は、石炭産業は日本の産業興隆の基盤であった。石炭の興隆とともに日本の産業は興隆しておった。したがって、日本産業の発展に対する石炭のウエートというものはまことに大なるものがあったということが第一点であります。
 第二点は、その石炭産業がなぜこんなに突然みじめないわゆる斜陽ということになってきたかと申しますと、これは申すまでもなく、御承知のようにエネルギー革命の所産でございまして、決して従業員が悪い、あるいは経営者が悪いということのために起こったものではないと私は考えております。
 しかも第三に、この石炭企業というものを取り巻いておりまするところの社会的な背景と申しますか、石炭企業と一緒にめしを食べておる膨大な大衆というもの、それが一朝にして閉山ということになりますと、大きな社会問題が起こってくる。こういうような観点から、やはり政府といたしましては、この際将来に対しても石炭は残さなきゃならぬ。また、いま降りかかってくる火の粉を払わねばならないというような観点で、種々保護政策をとられているものと、かように考えておる次第でございます。
#7
○大矢正君 私が承っているのは、政府がどう考えているだろうかということを聞いているのじゃなくて、協会長のあなた自身が経営者としてどういう立場をとられておるかということを承りたいと思っておるわけです。石炭対策というのは何もいまに始まったことじゃなくて、十年以上前から法律的な措置を講じたり、予算的な措置を講じてやってきておるわけであります。それが十年たった今日なお継続して、これから五年間なり十年間なりやらなければならぬというところに問題があると思う。臨時の措置でありますれば、三年とか五年とかいうことに限って、石炭産業がどうあるべきだ、石炭企業がどうあるべきだということで問題が解決されるべきではないかと思うのでありますが、石炭に関連する法律の第一号ができ上がってからもうすでに十年をこえておるわけであります。そういたしますると、石炭それ自身というものは、特別の措置としてかくかくのことをやればよいというような状況ではない。そういう状態ではない。本質的にもう問題があるという受けとめ方をしないと、石炭問題の対策を立てるにあたって間違いが起こるのではないかという感じがするわけであります。そこで、たとえばとりあえずの措置として、ここ数年間こういうことをしてもらえるならば、石炭は企業としても産業としても生き延びることができるのだというものの考え方や判断のしかたというものは、いままでの経過を振り返ってみれば、とうに過ぎ去っておる問題であります。しかも時代の変化なりまた社会の流動化というものは激しいものがありますから、十数年前の考え方が今日も通用するとか、あるいはそういう考え方が生きているなどということはもう考えられないと私は思うのであります。
 そこで、まああなたは経営者の責任ではない。労働者の責任ではない。私は労働者の責任でないことは確かだと思うのであります。しかし経営者の責任ではないというものの言い方というものはどうしても理解することができません。かって一時期には、外貨の蓄積が非常に少なかった。したがって貴重な外貨を使わない意味で、国産のエネルギー資源を温存しなきゃならぬという考え方はありましたが、御了承のとおり、三十億ドルをこえる外貨の蓄積ができて、むしろわが国が蓄積した外貨をどうやって海外に放出して、外資のバランスを保っていくかという逆な現象まであらわれておる今日でありますから、そういう面における石炭の必要性というものは考えられないと思うのであります。で、まああなた経営者の責任ではないというふうにおっしゃるが、ほんとうに経営者の責任というものは、一切過去の石炭産業、企業の経営の中にはなかったというふうにあくまで言われるわけですか。もう一度お尋ねをいたします。
#8
○参考人(大槻文平君) 私が経営者の責任ではないと言ったのは、エネルギー革命ということは経営者の責任ではないということを申し上げたので、誤解のないようにしていただきたいと思います。
#9
○大矢正君 たとえば具体的に申し上げまするが、企業ぐるみ閉山云々というような話がありますが、その企業ぐるみ閉山というものがなぜ生まれてこなければならなかったかといいますれば、結局としては、政府が一切の責任と申しましょうか、処置ないしは処理というものを負うことによって、社会の混乱を防ごうということだと思うのであります。明治問題あるいは杵島問題を取り上げてみましても、この段階までくると、一体経営者というのはいるのかいないのか、経営担当者というものは何を考えているのか、そうして経営担当者というものは、みずから経営を担当してどういうことが現実にはできるのか、非常に疑問が出てくるわけであります。退職金の問題あるいは一般債務の問題、金融機関の債務の問題、それらの問題は全部政府がやらなければいかぬ。国会においても議論しなければいかぬ。しかもそれだけではない。山を継続する際にあたっては、経過金融のめんどうまで見なければ全然やっていけないという状態、こういう状態で、はたしてそれが経営者というものが存在するという意識で把握できるものかどうか、私自身疑問があるわけですよ。ですから、あなたがおっしゃられたように、エネルギーの流体化というものはなるほど経営者の責任じゃありません。そのことは私もよくわかります。しかしそうではなくて、石炭企業というものの経営ということを過去から振り返って見た場合に、経営者の責任というものは一切ないのだと、あくまでもこれは政府が負うべき責任の内容のものだというふうに言い切れるのかどうか、疑問があるわけでありますが、重ねてお答えをいただきたい。
#10
○参考人(大槻文平君) エネルギー革命が始まりましてからちょうど十何年かたちます。その間において何回かの石炭対策というものがとられたのでありますけれども、━━━━━エネルギー革命の進行速度というものがあまりにも速過ぎたということが今日の瓦解の原因になっているのでありまして、この瓦解がほとんど八〇%、九〇%に近くなっておる現状においてかれこれ言われましても、私どもとしては言いわけはありません、それは。しかし石炭企業のような企業におきましては、有限的なものを掘るということでありますので、やはり過去におきまして相当多額の内部保留というものを常に企業としては持ちながら、やっていくべき筋合いのものであったと思います。ところが、先ほど申しましたように、長い間の不況のために、蓄積しておりました金もほとんど使い果たしていったということが実情ではないかと思います。私の実例を申し上げますと、私の会社三菱鉱業は、昭和二十八年ころは五十二億の退職積み立て金を持っておりました。この五十二億というものは、日本において八幡製鉄に次ぐ第二番目の膨大な積み立て金であったわけであります。ところが、二十八年からこのかたのこの急激なエネルギー革命のために整理に整理をやらざるを得ないということのために、この五十二億は全部払い出して、しかもなお借金をしなくちゃならなかった、こういうような状態になっておるわけでございまして、経営者としまして、現状から見て、おまえたちは責任を果たしていないじゃないかと、どういう一体責任感を持っておるのかという御非難はごもっともかと思いますけれども、私どもといたしましては、長い過去から現在に至るまで相当に努力はしてきたということは私は言えると自分で思っています。
#11
○大矢正君 私も長い間石炭にも関係しておりますから、私自身責任がないとかいうような意味で申し上げているわけじゃないが、ただ問題は、ここまで参りますと、大槻さんも、私が聞いている限りにおいてはかなりはっきりとものを言われる方のようだし、私もどっちかというと、歯に衣を着せるような性格の男じゃございませんから、まあ言いづらいことを言ったほうがお互いにいいのじゃないかと思うし、大槻さんもそういう方だから、私が申し上げてもさほど気にしないだろうという感じもいたしますから、先ほどから申し上げているわけですが、まあ具体的にいろいろとお尋ねをすることはあるいは迷惑になるかもわかりませんが、実は私どもも企業ぐるみ閉山などという法律的な措置、予算的な措置を講じられたことによって非常に苦しんでおるわけでありますね。明治鉱業にしても、杵島にいたしましても、おたくの協会の協会員であったことは間違いないわけですが、そうして経営者というものは完全にもう自主能力を失ってしまって、退職金から予告手当から見舞い金から一切のそういう金はもう見ることができない、全部これは政府におんぶさすんだと、結果としてはそういうものが今日出ているわけなんです。それらを解決するために私どもも鋭意努力をしています。努力をしておりますし、せっかく長い間働いてきた労働者がやめていくわけでありますから、一銭でもよけいに金を渡してやりたい、退職金も払ってやりたいという気持ちでは動いておりますが、最後の段階になったときに、経営者というものは過去の一切の責任が問われないままにここで問題が終わってしまうということに対して耐えられないものを私自身持つわけであります。私は、いまおたくの協会に残ってこれからもなお経営をやっていこうとされておる社長さんや経営者にというよりは、あなたの協会の会員の一人として、今回多くの人にたいへんな迷惑をかけて、経営者というのは一体いるのかいないのかわからぬというような、そういう今日の状態というものははたしていいものなのかどうか、いいものなのかどうかということばが適切でないといたしましても、私ども割り切れないものがあるわけであります。協会長としてどういうようにお考えになっておられるか、この際こまかいことは申しませんが、お尋ねをしたいと思う。
#12
○参考人(大槻文平君) ごもっとものことでございまして、おそらくいまお話になりました杵島、明治の企業ぐるみ閉山をやります経営者といたしましても、衷心から申しわけない気持ちで一ぱいだろうと私も思っております。また将来におきまして、経営者といたしましてこのような状態を引き起こさないように全力を尽くすべきであろうというふうに考えております。また協会といたしまして、長い間の病弊でありましたので、そのような事態に立ち至ったものに対しましてはできるだけ共助――お互いに助け合うということをやりたいということでいろいろ論議もいたしたのでございますけれども、何しろ先ほどから申しておりますように、石炭業界の現状というものはそういう余力がないので、まことに残念ながら見殺しにしなきゃならぬといったような状態になっておりますことを非常に残念に存じておるものでございます。
#13
○大矢正君 大槻さん、たとえば明治の例でもそうですが、杵島の例でもそうです。法律に定められておる一カ月間の解雇予告手当すらみずからの力で払わないで、というよりは払われないという言い方が適切かどうかわかりませんが、それまで政府におんぶさせるような経営者のあり方というものについては私自身疑問を持っていますよ。しかし、今日それが悪いということを言えば、逆に労働者はそれだけ金をもらえぬことになりますから、お互いにここで述べても限界はあると思いますが、ともあれ自主能力がまるっきりないというふうなことは、社会常識から考えたって私ども納得できないところであります。しかしその話はその話としても、たとえばこの間茂尻炭砿の災害がありました。私はきびしく経営者の責任を追及するように政府に申し入れをいたしました。それは貴重な人命を損傷するだけではなくて、企業それ自身も経理的な立場がぐらつき、そして他の企業、他の炭鉱の労働者が流出する原因をつくり出し、最終的には四千二百億円もの金をなぜ石炭につぎ込まなければならないかという疑問を引き起こさせるようなこういう事故というものは全くもってけしからぬ話であると思う。私は茂尻の事故にだけ限定して言うんじゃなくて、最近の一連の事故を振り返って見る際に、こういうような事故を起こしておきながら、なおかつ経営者として平気でおられるというその気持が何としても理解できないところがあります。まあ、今度は思い切って茂尻問題では保安統括者の解任を、経営者が自主的にやらないならば鉱山保安法に基づいてやるぞというほどの強い態度が政府当局から示されましたから、自主的に解任するということで問題は決着がつきましたが、しかし、もし政府がそういう強い態度をとらなければ依然としてそのまま残っていたと私は考えざるを得ません。そういう無責任なといいましょうか、責任を感じないような経営者が石炭協会の中に今後とも残るとすれば、私は国民やわれわれの疑惑は解かれないのではないかというような感じがいたしますが、先ほどあなたの御発言の中に、通産大臣からきびしく保安問題については警告を受けましたというお話がありましたが、いま私が申し上げましたような内容に関連をして、各企業をまとめておられる協会という責任ある立場で、今後どのような態度と措置をもって臨んでいこうとしておられるのか、この際お答えをいただきたいと思います。
#14
○参考人(大槻文平君) 変災があった場合の保安総括者の処分の問題と申しますか、責任者の処罰の問題でございますが、これはその会社の最高責任者としていつも頭を悩ます問題であります。というのは、たまたま変災を起こしたがゆえに当該炭鉱の責任者というものを解任する。非常に優秀な能力を持っておるにもかかわらず解任するということがいいか悪いかといったような問題に逢着するわけであります。しかし、おしなべて申し上げますならば、いくら優秀であろうが、結果責任として大きな災害をこうむったからには、やはり何らかの措置を講ずるのが妥当であろうかと思います。私どもの関係しております美唄におきましても、昨年大きな変災を起こしました。私は直接ではありませんけれども、その会社におきましても、つい最近になりまして、大体事後の安定ができたので責任者を解任して他のポストに移そうということを考えておるように聞いております。事故を起こした直後にそういう手段をするのがいいのか、あるいは事後処置がある程度円満にいくという見通しがついたところでやるのがいいのか、そういうことは問題だと思いますけれども、いずれにしましても責任をとってもらうということはやはり当然なことだと考えております。
#15
○大矢正君 先般茂尻炭砿の事故後、通産大臣から協会また協会加盟のそれぞれの経営者に対して警告が出されておりますが、その警告の末尾にこういう内容があります。「石炭企業は、ややもすれば、国の助成に依存し、経営責任が希薄であるとの世間の批判なしとしないが、」、こう言われております。まあ通産大臣がおれば通産大臣に書いた趣旨を承ってから大槻さんに承るべきところでありますが、受け取ったからには、あなたもこれはどういう意味のことですかということをお聞きになるか、聞かなくても思い当たる節があるからこれを受け取って帰られたと思うのでありますが、こういうことを経営者として思い当たる点があるでしょうかどうでしょうか。なければ私も通産大臣にそういうものがないのを書いたのはけしからぬじゃないかと言わなければならぬのでありますが、こういうことを通産大臣が警告として石炭協会及び加盟の各社の社長さんに言われたということは一体何なのか、この際もしお答えできたならばお答え願いたい。
#16
○参考人(大槻文平君) どうもまことに微妙なお話でございまして、石炭産業が政府から補助をもらっておる。その補助に甘えてはならない。ややもすれば先ほどからお話の内に出ておりますように、あぐらをかいて果たすべき責任を果たさないというようなことがあってはならないという趣旨の警告であったかと私は受け取っておるのであります。これは世間さまの見る目でございますから、世間の目に戸をたてるわけにはいきません。そういう見方をする人もあるでしょうし、またそうでないという見方をする人もあるかと存じます。ですから、私としましてはこれ以上のお答えはできません。
#17
○大矢正君 まあ一般的に私どもが耳にしていることは、十幾年もの長きにわたって少しずつではありますが、石炭産業に対する対策と予算措置を積み上げてまいりましたから、そういうことを行なうことが当然であるかのごとき錯覚を今日石炭の経営者が持っているのではなかろうかとする判断があるのであります。これは私が言うのじゃないですよ。そういう意見なり気持ちなり考え方を私は耳にすることがあるわけですが、しかし、私自身振り返って考えてみて、そういう物の見方なり考え方は必ずしも間違いではないというような感じもするわけであります。
 しかし、この問題はこれ以上参考人と議論してもいたし方ない問題でありますので、最後にお尋ねをいたしたい点は、私どもがどこからといわれますると困りまするが、耳にしていることは、今度のこの新石炭対策をかりに実行をしてみても、五カ年間で四千二百億円使う。その途中の段階で、もっと極端なことを言えば、ここ二年ぐらいの間には、いまの石炭対策というものはくずれてしまって、もう一度やり直さねばならぬことになるのではないかとする、そういった見方というものが出ておるようであります。経営者の側の中にもそのような意見があるやに報ぜられている部面もありますが、参考人としては協会長という立場において、もちろんいまの新石炭対策ではそれは話にならないのだ、一年半か二年たって、もうだめになるのだということはここではよもや申すことはできないと思いまするが、しかしながら、そういうような感じが経営者の中に、あるいはそれ以外にもあることは間違いがないと私は思うのでありますが、この点についてどのようにお考えになっておられるか、感じとられておられるか、お答え願いたいと思います。
#18
○参考人(大槻文平君) 今度の対策は十五年間の間に四千二百億円出してもらうのであります。しかもその四千二百億円と、こう一口に申されますけれども、石炭企業そのものに入ってくる金はやはり五〇%足りないのではないかというふうに考えております。で、現在石炭は炭価がくぎづけにされております。しかしながら、一方におきまして賃金も上げなければならぬ、物価も上がってくるというようなことで、ここ何年かが繰り返されるものといたしますれば、やはり能率その他の合理化によってカバーできなくなるという日は必ず来るものというふうに考えなければならないかと思います。もちろんこれは二年や三年でそういうことになるとは思いませんけれども、幾年かの後には、やはり前提がいま申したようなことでありますならば、やはりそういうことになるおそれが多分にあると申さねばならないかと思います。
#19
○大矢正君 正確なことはわかりませんけれども、私が聞いておる限りにおきましては、たとえば今度新しく八百五十億円ないし一千億の肩がわりをいたしましても、その肩がわりの金の大部分は政府関係金融機関に戻るということ、言いかえるならば、市中銀行の融資を現に仰いでいないし、仰げないほどきびしい環境に石炭が置かれておるということを、私物語っていると思うわけであります。
 そこで、そうなりますと、金を貸す面も助成をする面も、ほとんどが政府の金によってなされてしまう。またいま炭価のお話がございましたが、それでは炭価問題については頭打ちをしているとかするとかいう話がありますが、自由にして、電力会社なり鉄鋼会社なりと話し合いをして炭価をきめなさいということになった場合に、はたしてその結果、いまの炭価というものが上がるものなのかどうかという点については疑点のあるところでありまして、結局のところ、増加引き取り交付金その他を通して炭価は上がらないが、その分をめんどうを見てやることによって石炭を使わせるといういまの仕組みになっていると思いまするし、これをいまこわしたら、炭価が上昇して、しかも石炭は引き取ってもらえるということになるかどうかということは、私自身疑点のあるところであります。したがって、そういう意味における経営者の自主的な販売に対する能力なり意思というものをあらわすことができない現状にある。しかしながら、炭鉱の経営者は、やはり私企業に固執をされて、あくまでも私企業でいきたい。政府ももちろんそうである。しかし政府がそうであるということの裏には、石炭企業がこれだけ国の規制を受け、国の金を使い、政府関係金融機関以外にはもう石炭代の回収をめどとする以外の金融は受けられないというような、こういう全く政府まるがかえ的な炭鉱経営をやっていても、なお私企業でなければならぬという考え方は、どう考えてみましても納得ができないところでありますが、しかし、いまここで大槻さんに、私どもが国有化云々ということを申し上げておりますので、そのことに対しての回答をもらおうとは思いませんが、ともあれ経営者の自主的な能力というものは、経営全般にわたって示されるような状態にはないことは事実なんだが、その上に一年たち二年たちして、そう遠くない日のうちに、さらにまた何かを施策として国がやらなければならぬということになれば、もうその段階では、いまのような私企業というものがはたして存続されるものかどうかということについて、疑問が出てくる気もするわけでありますが、重ねて最終的にお尋ねをいたしたいと思いますが、二年後三年後のことはいまここで申すわけにはまいりませんということであればいたし方のないことでありますが、いろいろな情勢を踏まえて、ここ二、三年後の石炭産業というのは、一体どうなるのかということをお答えいただけますれば、これから法案審議するにあたっての参考になるんではないかと思うので、重ねてお尋ねをしたいと思います。
#20
○参考人(大槻文平君) 今回の新対策は、炭鉱企業というものに対してふるいにかけるという政策――簡単に申しますとそういうことだと思います。ここで足の弱いものは全部ふるい落として、そしてかなり健全なものだけにするということにする政策でございますので、この対策が行なわれた暁におきましては、私は、かなり石炭企業というものは強いものばかりが残って相当やれるようになるのではないかというふうに考えております。それも先ほど申しました前提いかんでございますが、また、一方におきまして、やはりたとえば原料炭の場合を考えてみますというと、国外における、カナダあるいはオーストラリアにおける原料炭というものは年々値上がりして、きわめて入手困難になってまいります。したがいまして、原料炭の国内における値段というものはまた相当値上がりぎみの状態を続けるのではないかというふうに考えておるのでありますが、かれこれ考えまして、私はここ二、三年の間におかしなことになるというふうには考えておりません。
#21
○大矢正君 先ほど申し上げましたとおり、参議院の法律案の審議というのはこれから始まるわけでありますが、各界各層においては、今日の新石炭対策なるものを必ずしも妥当としてない向きもあります。そういう中でわれわれが法律案の審議をし、新石炭対策というものを、政府のとおりになるかどうかは別にしても、軌道に乗せなきゃならぬという重大な段階でもありますので、石炭の企業のサイドにおきましても、経営責任ということをやっぱり明確にされて、今後保安の面、生産の面、その他一切の面について協会の指導力を遺憾なく発揮されて運営をされることを私は切に希望をいたしたいと思うわけであります。以上です。
#22
○小野明君 二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 第三次の石炭抜本策というものが二年前に実施をされました。その際も大槻参考人出てこられまして御意見を伺ったことがあるのであります。それが二年後にまたこうして手直しをしなければならぬ。しかも、前回の四倍近い金をさらに継ぎ足していくと、こういう結果を招いたのであります。そこで第三次――いわゆる抜本策と言われておりましたが、この第三次の、石炭政策なるものが失敗をしたその原因をどのように把握をしておられるのか、お伺いをしたいと思います。
#23
○参考人(大槻文平君) 前回の抜本策というものがなぜ失敗したかと、こういうお話でございますが、━━━━━━━この抜本策がきめられてから実施されるまでの間に六カ月ぐらいの時間が空費された。そのために企業が非常に予想以上に疲弊こんぱいした。これらが原因かと考えております。また、労銀にいたしましても、前提としておりました七%アップという問題が、七%ではきまらずに、世間並みに――世間並みと言っても世間並みよりは低い賃金にきまっておるのでありますけれども、かなり高いところにいっておった。また、物価の値上がりも予想以上に高かった。こういうようないろいろな原因が今日を招いたのではないかというふうに考えております。したがいまして、抜本策ができ上がりました直後におきまして、私どもはやはり平均的には五百円ぐらいはマイナスになりますよということを申し上げて、アフターケアをお願いしておったと、こういう状態であります。
#24
○小野明君 意外な御意見を伺うわけです。私はこの経営者の代表としての大槻参考人にお尋ねをしておる。ところが、経営責任という問題については全然お話がない。国会や政府が悪いから失敗をしたのだ。これはまことにさか立ちした私は御意見ではなかろうか。自分たちの責任はたなに上げて、そして政府や国会が悪いからこういった結果になったのだと。これはまあどういう意見を言っても自由でありますけれども、少しこれは経営者が、あなたら御自分の責任というものを投げ出されて、もう全部政府やわれわれ国会が経営者のように立場がかわったような感じがするわけです。少しけしからぬ私は話ではないかと思うのです。
#25
○大矢正君 関連。大槻さん、いまあなたの御発言は速記録に残るわけですから、私どもだまって聞いているわけにはいかぬですよ。いま小野委員からも言われたとおりに、あなた自身のほうの責任は一切ないというような口ぶりで、さっきから一貫していて、そして最後には政府と国会が悪いから第四次の新石炭対策をやらなければいかぬというような発言は、だまって私ども聞いておるわけにはいかぬわけです。政府がいいとか悪いとかという議論ならば、これはあなたどこに行ってやっていただいてもけっこうだが、こともあろうにこの委員会に来て、国会が悪いから今日このような事態になったなんというものの言い方は、だまって私ども聞くわけにいかぬですよ。どうですか。それから、それじゃ第三次の石炭対策をやるときにあなた方はこんなものをやってもだめだと、もっとこれをやりなさいと、こんなものじゃだめですよ、こんなものじゃもう一回やらなければなりませんよと、あなた方言いましたか。言わないじゃないですか。これだけやってくれれば何とかなりますよということで、あのとき法律は通っているわけですよ。そうすれば、そのときの責任をわれわれ国会におっかぶせるようないまの発言をだまって聞くわけにいかないのですよ。あなた個人の意見なのか。協会の各社長が全部そういう意見なのか。この際それをはっきり承っておかなければならない。
#26
○委員長(阿具根登君) ちょっと速記とめてください。
  〔速記中止〕
#27
○委員長(阿具根登君) 速記を起こしてください。
#28
○参考人(大槻文平君) ただいまの私の話でもって非常にお怒りをかいまして恐縮していますが、これは国会が悪いと言ったのじゃないのであって、政府のとりましたこの前の政策に関しまして、私どもはこういうふうに考えておったのだという私の意見を申し上げたのでありまして、もちろん私は協会の会長ではありますけれども、協会の評議員会の意見をまとめて、どういう質問が出るかわかりませんから、まとめてお話をしているわけでも何でもありません。だから私も考えておるところを申し上げたのでありまして、もしそれが非常にげきりんに触れたとするならば、おわび申し上げます。ただ私どもは、この前の対策のときに、すでに五百円の赤字が出ますよということは、前もって申し上げているはずであります。それは国会においてこういう参考人としてどうこうするという場所では私どもは申し上げなかったかもしれませんけれども、私ども会長を通じて、やはり政府筋にもいろいろとそういう点は話してあったはずなのであります。諸先生の耳にはあるいは入っておらないかもしれませんけれども、当時において、すでにそれだけのマイナスが出るということは、われわれとしては予想していたわけであります。そういうことでありますので申し上げたわけでありますけれども、それが国会が悪いということばを使ったとすれば、私は謝罪いたします。そういうわけではございません。
#29
○委員長(阿具根登君) 速記とめてください。
  〔速記中止〕
#30
○委員長(阿具根登君) 速記を起こしてください。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時二十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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