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#1
第061回国会 建設委員会 第7号
昭和四十四年四月三日(木曜日)
   午前十時十六分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十五日
    辞任         補欠選任
     高山 恒雄君     萩原幽香子君
 三月二十六日
    辞任         補欠選任
     鬼丸 勝之君     柳田桃太郎君
 四月二日
    辞任         補欠選任
     萩原幽香子君     高山 恒雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         岡  三郎君
    理 事
                大森 久司君
                山内 一郎君
                沢田 政治君
    委 員
                上田  稔君
                小山邦太郎君
                高橋文五郎君
                塚田十一郎君
                中津井 真君
                林田悠紀夫君
                柳田桃太郎君
                田中  一君
                松本 英一君
                二宮 文造君
                宮崎 正義君
                高山 恒雄君
                春日 正一君
   国務大臣
       建 設 大 臣  坪川 信三君
   政府委員
       内閣法制局次長  吉國 一郎君
       総理府総務副長
       官        鯨岡 兵輔君
       宮内庁次長    瓜生 順良君
       建設大臣官房長  志村 清一君
       建設省計画局長  川島  博君
       建設省都市局長  竹内 藤男君
       建設省道路局長  蓑輪健二郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中島  博君
   説明員
       文化庁文化部宗
       務課長      鈴木 博司君
       労働省労働基準
       局労災管理課長  桑原 敬一君
       労働省労働基準
       局安全衛生部安
       全課長      中西 正雄君
       建設大臣官房官
       庁営繕部長    横山 正彦君
       自治省行政局行
       政課長      森   清君
   参考人
       日本道路公団理
       事        宮内 潤一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○建設事業並びに建設諸計画に関する調査
 (国又は公団等の建設工事における起工式等の
 挙式に関する件)
 (新四ッ木橋の橋脚工事における事故に関する
 件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(岡三郎君) それではただいまから建設委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 去る二十六日、鬼丸勝之君が委員を辞任され、その補欠として柳田桃太郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(岡三郎君) 建設事業並びに建設諸計画に関する調査を議題といたします。
 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#4
○委員長(岡三郎君) 速記を起こして。
 まず、国または公団等の建設工事における起工式等の挙式に関する件について質疑を行ないます。
 質疑のある方は、順次御発言を願います。
#5
○田中一君 最初に瓜生さんに伺いたいのですが、新宮殿も皆さま方、われわれも努力して非常に荘重なよい新宮殿ができ上がって幸いだと思っているのです。
 そこで伺いたいのは、施工の工事中に、設計者の吉村さんがあの設計者としての自分の立場を辞任したというように伝えられておったのですが、今国会で提案されようとする著作権法との関係ですね、そのようなことがあった場合には、著作権というものを一体どういうぐあいに宮内庁としては理解をしておるのか、最初にこの点伺いたいと思います。自分の作品ではないという表現もあったように聞いておるのですが、あるいは材料の選択とか、あるいは一部の設計変更とかいう問題からくる設計者の意思というものが具現された宮殿に完全に盛り込まれていない場合には、この著作権というものはどういうぐあいに見られているか。また現行法では著作権があるかないか、この見解を最初にひとつお示し願いたいと思います。
#6
○政府委員(瓜生順良君) この吉村先生は、この宮殿の基本設計を委嘱をいたしました。で、吉村先生が中心になって――お一人ではございません、顧問の先生、それから臨時皇居造営部の者が一緒になって基本設計をしていただきました。昭和三十五年の暮れから三十八年度一ぱいで大体基本設計ができまして、工事にかかったのは三十九年の七月からでございますけれども、この基本設計は動いておりません。現在のはこの基本設計によってできておるわけであります。で、吉村先生との間に意見の不一致がありましたのは、その基本設計に基づいて実施設計をいたします。その段階において、ここにどういう幅の銅板を使い、厚さをどうするかということ、あるいは材木の場合に、その長大なものを使うかあるいはそれをもっと場所によっては簡易にするか、そういうような実施設計の段階で臨時皇居造営部のほうと意見の不一致な点がありました。これはやはり行政官庁として、実施する場合には一応予算がありますものですから、その国会の議決を経ました予算の範囲でできるだけやらなきゃいかぬ。まあ、ぜひ要る場合は追加で増額をお願いする場合もございますが、やはりできるだけきまった予算の範囲内で実施設計をやろうというようなわけで、この材料の一部は吉村先生がおっしゃるよりは幾らか落としたという点がございます。全部落としたんじゃなくて、あまり人目につかぬようなところを落としたのであります。それについて吉村先生は芸術家としてのまたあり方のお立場もあって、自分の意見が全部通るんじゃなきゃいけないというようなことをおっしゃいました。しかし、そうは言ってもこの程度のことはひとつ、実施設計は宮内庁がやるということになっているんだからおまかせ願いたいと言ったんでありますが、しかし吉村先生は、それでは自分は手を引きたいとおっしゃいました。で、これはよく誤解がありますが、この基本設計はもうすでにできておったわけです。実施設計の段階では吉村先生の指導を受けるとなっておったのに、指導を辞退された。そういうことで、われわれとしては非常に遺憾なんでありまして、おとめしたんですけれども……。ほかにも顧問の先生やなんかおられます。たとえば内田祥三先生だとか、吉田五十八先生とか、久田俊彦先生とか、その他にもおられますが、そういう方の御意見もいろいろ聞いておりますが、やはりああいう設計の専門の方としては、いろいろそれぞれのニュアンスがありまして、御意見が全部の方が必ずしも一致はしてなかったわけです。しかしながら、それを総合してこの予算の範囲内でやっていこうということで、まあでき上がったわけであります。で、ごらんのように昨年の十一月の十四日に落成式をいたしました。この四月一日から御使用を始めておられるわけです。
 で、この著作権の関係は、吉村先生に対しては委嘱をし、謝礼も相当、お互いの好意によってお出しをして、その点では問題は残っていないと思っております。
#7
○田中一君 どうもねえ、こういう時代の記念建造物と言われるべきようなものがそうした形で、まあ芸術的良心というのですか、少なくとも経済性の考えられない建造物はないわけなんですから、今日ですね。それをその程度のもので造営から手を引くなんということがあり得るんでしょうかねえ、こういうことが。主観だ、御自分の意思だ、と言えば意思でしょうけれども、建築家として、自分の基本設計したそれができ上がるまでの、その程度の――いま御説明の程度のようなもので、材料の選択からくる意見の食い違いから分かれたんだ、辞任されたんだ、という程度のものでこれはあり得るんでしょうかねえ。
#8
○政府委員(瓜生順良君) われわれも、どうしてもやめたいとおっしゃいます際に、ちょっとはっきりどうも先生のお気持ちがわかりかねた点もありまして、東大の教授の関野さん、この方も造営の顧問の一人でありました。この方がお親しいものですから、吉村先生ともいろいろお話をしてもらいましたが、しかし、吉村先生はその自分の思うとおりに、あの方の表現ですと、一〇〇%に自分の思うようにできるのじゃないとすると、やはり手を引きたい。あの方独特のお気持ちをお持ちで、まあそれほど一徹でない方も建築家の中にはいらっしゃいますが、あの方は非常に一徹な方だったものですから、その実施設計の途中で手を引かれまして、指導をすることを手を引かれたわけでございますけれども、まあ普通考えると、そんな手を引かれなくてもよかったのではないかと思うのです。他の方の例を、これは申し上げたら悪いと思うのですが、内田祥三博士、この方が顧問団の首席ですけれども、たとえばあの方あたりも、屋根の形についてはあの方の意見では必ずしも満足ではなかった。あの屋根の形なんかは主として吉村順三さんが基本設計の段階でおつくりになった。顧問の先生もおられて、顧問の先生としては、吉村先生のあの屋根の形については顧問団の内田祥三博士はあまり満足されませんでした。しかしこういう建物というのは、あの方の意見だと、一人の人が中心になればその人の意見を尊重するのがほんとうだから、自分は満足せぬけれども黙っていよう、しかし満足せぬということはこの記録には残してくれ、という形で記録に残っている。しかしあの方は最後までずっと顧問を続けていただいたわけですけれども、吉村さんは非常に一徹の方で、ああいうふうになりましたのは、非常にわれわれも遺憾と思っております。しかしながらわれわれも、吉村先生がりっぱな基本設計をまとめ上げられたというその功績については、非常にいまでも深く敬意を表しております。
#9
○田中一君 そこで、先般の落成式のときには、非常にさわやかな感じを持ったものです。それはなぜかと申しますと、ああして両陛下お出ましになり、奉告をされただけの簡素な落成式の――披露の会ですか、奉告の会ですか。先だってのあれ、落成式でしたか。
#10
○政府委員(瓜生順良君) あれは落成式でございまして、したがって、奉告の意味も兼ねております。
#11
○田中一君 そしてわれわれが呼ばれたときの以前には、何か落成に関するところの行事は行なったわけですか。
#12
○政府委員(瓜生順良君) この落成式の前日には、古式にのっとっていわゆるおはらいがございました。しかしこれは内々の行事で、われわれは参列いたしましたが、外部の方は参列されない、というのは前の日に行ないました。
#13
○田中一君 あの新宮殿はむろん天皇家のものではなくして、国民の税金でつくったものなわけです。国の宮殿のわけです。そこで、どんな形式でおやりになりましたか、どういう形式でおやりになりましたか。内輪の何といいますか、修祓式というのですか、それをどういう形式でおやりになりましたか。
#14
○政府委員(瓜生順良君) これは正殿で、名前は大殿祭、これはずっと平安のころからそういう宮殿ができます際に行なわれている、そういう古式によりまして、掌典職――掌典職というのがございます。これは大膳職員でありまして国家公務員でございますけれども、その掌典職がこれは奉仕して、普通のいろいろのもの、建物の落成式の前におはらいがありますけれども、それに似たものでありますが、やり方は古式にのっとりますから、むずかしい点もありますけれども、そういう古式にのっとっておはらいが行なわれたわけであります。
#15
○田中一君 ほかの質問をしますから、しばらく聞いていてください。
 つい先だって、中央高速道路の落成式には、何かたいへんはなばなしい落成式を行なったようです。ことに政府が行なう建築に関する起工式とか、地鎮祭とか、上棟式とか、落成式とかいう行事がありますけれども、これはことごとく神主が来て、そこで行事をやるわけなんです。言ってみれば、道路公団の高速道路というものは、道路公団のものでもなければ、国民のものなんですよ、あれは。それは御承知のとおり、道路というのは、ただその施設を政府なりあるいは政府関係機関が国民のために仕事を担当するにとどまっておって、どうも最近まで必ず神主が来て、おはらいをしてやっているわけなんですがね。この根拠はどういうことなんです。なぜ神主が来ておはらいをして、そしてわれわれがそれに従属して、神主に扈従していって、そういう行事を行なわなきゃならないのか。これはひとつ道路公団、しょっちゅうやっているんだから、その根拠をひとつ明らかにしてほしい。
#16
○参考人(宮内潤一君) お答え申し上げます。
 ただいま田中先生のおっしゃったとおり、道路公団の場合、神事が行なわれまして、それから祝賀会に移るという行事を行なっております。で私どもやります起工式あるいは竣工式とか、高速道路のみならずいろいろあるわけでございます。そのつど地元の県庁であるとかあるいは市町村、そういうところと相談をいたしまして、大体習慣的にまあ神事が先行すると、こういうぐあいで取り行なわれておりますので、必ず神事によらなけりゃならぬとか、そういうふうにきめているわけではございません。ただ事実としてはいずれの方の御意見も、従来の習俗的慣習に従って、まあ神主さんを呼ぼう、こういうことに意見が一致して取り行なわれている次第でございます。
#17
○田中一君 建設大臣に伺いますがね。建設省のそれらの行事もことごとく神式でやっておるんです。これはどういう根拠です。
#18
○国務大臣(坪川信三君) 田中委員の御指摘になりました、これら各種の行事につきまして、いわゆる起工式あるいは竣工式その他の式典におきまして、神式で行なうという規定は、何ら設けてはおらないような次第でございますが、この種の行事につきましては、いま御指摘になりましたとおり、神式で行なうことが大体まあ常識といいますか、何ら規定はございませんけれども、神式で行なっておるということだけは事実でございます。これらにつきまして、神式でやれとかあるいはこれをもって規定をするとかいうような行政指導は
 いたしておりません。
#19
○田中一君 これはことしの三月二十三日に出ている「時の法令」の中の「法令の話題」、これは政府が出しているんですが、いま宮内君、説明しているような、大臣が説明しているような問題が、津の訴訟でもって、判例が示しております。しかしこれは、私はここでもって単に憲法二十条の違反だといって即断はしませんけれども、これはなるほど天皇家には神道という伊勢の大神ですか、伊勢大神宮に対する信仰がある。それぞれ個人的な立場では、それぞれの信仰を持っていると思うのです。しかし憲法二十条のこの規定というものは、これは明治憲法にもそういうことが言われておるのです。信教の自由という点は、明治憲法にも明らかなんです。しかしながら信教の自由ということはうたっているけれども、その背景をなすものは何かと言うと、ここにいろいろな学者の抜き刷りを手に入れて調べて見ますと、やはり日本古来の宗教としては、古事記、日本書紀等から流れをくむところの神ながらの道、いわゆる神道というものが根を出している。これはなるほど習俗的慣習というけれども、これはもう強権でもってはっきりと規定しているのが、明治維持以来の日本の姿であるわけです。これはひとつ調べて見ると、こういうことがあるのです。明治四年に、太政官布告でこういうことが出ております。官社、官幣大社、中社、小社、別格官幣社、国幣大社、中社、小社、府社、藩社、県社、郷社等、これらのものはまあ官幣ですから、結局天皇、宮内庁から金が出るのでしょうか。国幣は御承知のように国が出している。一切の費用、神社に関するところの一切の費用を出している。そして神官その他も全部国家公務員ですよ、いまで言うならば。これらのものが背景となって信教の自由を原則的に認めているのが現状なんです。国が神社というものを、神道というものを保護している、保護するよりも国が経営をしているわけです。だからその以前の問題を調べて見ても、あるいは織田信長が仏教をいじめる、御承知のようにわれわれ子供のときに習っている歴史にもあります。あるいはキリスト教に寛大な時期もあった。等々いろんな日本の宗教の沿革というものを見ると、いろんな形でもって時代時代の流れの中で、その社会情勢によって強弱はありますけれども、一貫して流れているものは何かというと、その神道なわけです。場合によっては神ながらの道と言っていますね。いわゆる天照大神から通ずるところの宗教というもの、宗教がわれわれ民族の根幹をなしておったことは、これは大臣は十分御存じだと思うのです。あなた教えておったこともあるのじゃないかと思う。そうするとそれが今日新憲法の第二十条の条文から見ても、個人個人が行なう場合、これは差しつかえありません。信教の自由、これは憲法二十条ではっきりしております。ただ国並びに地方公共団体またはこれに準ずるところの機関が、なぜ神道によって行事を行なわなければならないのかということになると、相当な問題が残っているのじゃなかろうかと思うのです。これはどうも非常に私前々からこの問題について気にしておったのですが、最近は特にごくひどいです。聞くところによると中央高速道路の行事などは衆議院における建設委員長とか参議院における建設委員長なんという者を呼んでおきながら、まるで相手にもしないようなことをやって、神主様々なわけなんです。それからまた地元の国会議員あたりが優先して、一体道路公団が何をしようとしているのか、さっぱりわからぬようなことがある。あるいは人間の力が政治に負けるのが一つ、権力に負けるのが二つ目等々、こうやった行事がやたらに国の手によって行なわれているという現状は、これは非常に問題があるんじゃないかと思うんです。あんなものやめたらいいんですよ。国会議員も忙しい、儀礼的に招待状がくる、行ってみると神主が来て、何かわからぬ、のりとかなんか、私はよく神道わかりませんけれども、これは大臣もせんだって行かれたでしょう。神道が宗教じゃないなんてことを一部の人は言っているらしいんですが、これは宗教に違いございません。ここにあるたとえば梅田さんが書いている「日本宗教制度史」見てもいいです。これははっきり宗教に違いないんです。こういう点について一体建設大臣どういうふうにお考えになるか。まあ福井県などは仏教の非常に盛んなところでありますから、あなたは仏教徒だろうと思うんです。しかし、あなた建設大臣になって、一々神式でもってこれらの儀式を行なわなきゃならぬということは、習俗的慣行といっても、根にあるのはやはりわれわれ少年時代から教育されているところの明治憲法下における国教的な――国教という規定はありません。ありませんが、国教的な意識をわれわれは植えつけられてきておるんです。この点をひとつ建設大臣どうお考えになるか。
#20
○国務大臣(坪川信三君) 田中委員この問題に対してあらゆる角度から御研さんになったその御意見をいま拝聴いたしておりますが、これに対して、大臣という立場からいわゆる祝賀行事をやるそれらの問題につきましては、個々にやはり改良、改善しなければならぬ問題点のあることは私は了解いたし、またそうすべきであるとも考えております。ただし、先ほども申しましたように、神式でやれという規定もございませんけれども、各人これを施工されました立場に立ってその仕事の完成を喜び合う、また安泰にその仕事が進捗することを祈るという意味からのいわゆる起工式、あるいは喜びをともに分かち合うという竣工式、これらについての喜び祈るというような気持ちは、私は付度してあげなきゃならぬと思います。ただしその方法について、神式である、あるいは仏式であるとか、いろいろの方法ございましょうけれども、これはやはり長年つちかわれてきました日本民族のやはり奥深く血に流れている一つの神秘性といいますか、あるいは尊厳さといいますか、こういうようなものを私は各人各人やはり持っておられるその気持ちのあらわれとして私は評価すべきであって、これが直ちに憲法違反になるとか憲法に抵触するということは、私はなかろうと思うような感じを持っております。私も憲法学者でもございませんから、ただ私はいま申し上げましたような喜びをともに厳粛に味わう、また祈りをささげるという気持ちから、ある方法を講じてそれらの気持ちを具体的に表現するということは私はとうといことであり、やはり認めなければならぬ気持ちじゃなかろうかと、こういうような気持ちを持っております。
#21
○田中一君 あなたの気持ちと私は同感です、その点は。ただなぜ神式でしなきゃならないかと聞いているわけなんです。これはやはりあなたにもぼくにも明治生まれの人間は、どうもたたき込まれたところのいわゆる国教的性格を持つ神道というものが植えつけられているわけなんです。しかし、ここに問題があるわけなんですね。明治憲法でもはっきりとこの点は、信教の自由はうたっております。うたっておりますが、新憲法ではそれを極端にその点を明らかにしているわけなんです、新憲法では。二十条では明らかにしているわけなんです。さっき申し上げたように、いままでの神社は、明治憲法下の神社はすべて国がまかなっている、県社は県がまかなっている、郷社は地域社会でまかなっている、すべての経費を。したがって、どの宗教にも何らの保護をしないんだということが憲法二十条にあるわけですね。それによらなけりゃならないという根拠がないんですよ。私はいま自民党のほうでもって盛んに唱えているところの靖国神社の問題について言っているわけじゃございません。しかし、こういう問題がもしも憲法違反でないという、お話にもありましたけれども、憲法違反でないということになるならば、それによらなきやそうした行事を行なえないんだという前提で現実に行なっているという事実を、どうお考えになるかの問題です。少なくともどの宗派にもよらない落成式も可能なわけなんです。
 で、私はせんだっての新宮殿の披露にも行ったが、これは非常にさわやかな気持ちがしたものです。またあそこで古式豊かな、天皇家は先ほど申し上げたような神道、神ながらの道を御信仰なさっています。これは信仰かあるいは自分の祖先に対するあれか、どちらか存じませんけれども、これは個人的にやることはちっともかまわない。ただああいう行事があるのではないかと思っておったところが、そうではなかった。非常によかったと思うんです。しかし内々、その前日そうした奉告祭的なことをなすったというなら、これはまた天皇家が、天皇陛下があそこを御中心に国事を担当なさるのでありますから、それも個人的なものとしては差しつかえないが、宮内庁がそれを主催するということに対しては、やはりこれは憲法違反ではないという断定は立たないんです。天皇家が御内帑金でもってそういうお祭りをするのは一向差しつかえない。しかし、これが国費をもって行なうということに対しましては、私はやはり問題があろうと思います。かつて瓜生さんに、皇居は三殿、一つは北の丸、これは今度開放された。一つは天皇家にお貸しになっている土地、あとは新宮殿、宮内庁等が設置されているところの土地、その中に三殿がおありになる。これは皇太子殿下の御成婚のときに伺ってはっきり拝見したのですが、あの敷地は何であるか、こう伺うと、これは国有財産であるという御答弁があなたからあった。あれはもう天皇家のほうに御使用になるように国から分けてお貸しするようなことが、御使用願うことのほうが私は国民に対するところの天皇陛下、一番天皇が日本の憲法を守らなければならぬというのは憲法九十九条にあります。その天皇がやはり国民的な新宮殿の敷地内に三殿をお持ちになるということのほうがこれは誤解を招くんではなかろうかということを考えて申し上げたわけなんでありますが、これなどはもう即刻に、天皇家の御信仰の社でありますから、そうお変えになったほうがいいと思うんですが、瓜生さんどうお考えになりますか。
#22
○政府委員(瓜生順良君) これは非常にむずかしい問題を含んでおりますが、憲法の八十八条に「すべて皇室財産は、國に属する。すべて皇室の費用は、豫算に計上して國會の議決を經なければならない。」という条文があります。このすべて皇室財産は国に属するとありまして、これは憲法発布のころに、新しいこの憲法のころにありました皇室財産すべてを国のほうの要するに国有財産にしなければいけないという条文があります。その経過規定にもなってなくて、本文のほうにあるわけであります。したがって、皇室としてはまとまった財産をお持ちにならない。お手回り品とかそういうことはいいますけれども、そういうものは憲法の条文になっておりますものですから、そこらあたりに問題があります。したがって、憲法では皇室で必要なものはこれは国が必要があれば提供するというたてまえをとっておりまして、これは公的に御使用になるところと私的に御使用になるところと両方含んでおります。私的に御使用になるところを申し上げますと、吹上御所、お住まいになるところ、これも皇室財産の国有財産でございます。それから、御趣味でなすっております生物学御研究所というのがございますが、これも皇室財産である国有財産になっておるわけであります。ですから憲法のたてまえから来ているわけで、この御祖先を祭られていく宮中三殿の敷地の関係も、やはりどちらかというと皇室のプライベートの用に供されるわけでありますけれども、しかし、この憲法の精神から、憲法の条文から、やはりこれは皇室の用に供する国有財産ということで扱うようになっておるわけでございます。
#23
○田中一君 そうすると、宮中の三殿は、あれは国有財産になっておるわけですか。
#24
○政府委員(瓜生順良君) この宮中三殿につきましては、はっきり国有財産になっていないわけであります。これは普通の御家庭にある大きな神だなのようなものであるということを一時占領下では言われまして、これは占領下の、ちょうど昭和二十年の十二月十五日に総司令部から神道指令というのが出たことがございます。この神道指令によると、この公の財源でつくる施設の中に神だなその他国家神道を象徴するようなものを置いてはいけないというような命令がございました。そういうたてまえから、この宮中三殿の建物を国有財産にするということは、やはりその精神に合致しないわけであります。それを撤去しなければいけない。そういう点では、これはこの皇室の伝統からいって無視し得ないし、これはまあ当時の司令部でもその点は了解して、結局、その建物そのものはこの皇室に属するもの、国に属するものじゃないという解釈で来ておったわけでございます。それが、この占領が解けまして、新しい憲法が完全に実施されるようになって、この神道指令は占領が解けますと効力を失っておるわけです。そうなりますと、新しい憲法の制限だけを受けるわけで、そうなりますと、いま先生のおっしゃいましたようなこの二十条でしたか、二十条の関係とか、それからあとのほうの八十九条ですか、八十九条の制限を受けると、この二十条を八十九条の制限だけでありますと、この宮中三殿の建物も国有財産にすることは可能であるという法制局の解釈ではありますが、まだはっきりしないままになっておるわけであります。
#25
○田中一君 私は天皇に非常に親近感を持っているわけです。しかし、こうしてあなた方側近でいらっしゃる方々が、やっぱり憲法上の疑義のない形に天皇を置かれることがあなた方の役目なんです。むろん憲法改正当時は、これはいろいろ問題がございます。私どもは、全面的に――部分的にはどうかわかりませんけれども、全面的にはいまの憲法というものを尊重し、これをこのまま推し進めていこうという考え方を持っている一人でありますけれども、事実、単に国有財産でなければ、プライベートの信仰の対象になっているならば、あの土地そのものも陛下のプライベートの用に供するように編入するのが一番早いことなんです。現憲法――憲法を改正するなんという問題はこれはたいへんな問題ですから、そういうことによらなくてもいいのじゃないか。ただ問題は、やはり憲法を守るのは、われわれ並びに陛下がまず最初から憲法をお守りになるという姿勢をとらなければならないわけなんです。これには、憲法二十条の信教の自由というものが明らかになっておる。どの宗教でも保護されないのだと、国家が保護しないのだと。ところが、国は常に神道をもって行事は行なっておる。私は、そのために、神道に対する非難をするのではありませんよ。おのおのめいめいみんな、それぞれの宗教を持っております。ですけれども、なぜ神道にだけ片寄った、国民の前に神道とはこれこれでございますよといを行事を示すということをするのであろうかと思うのです。まあ瓜生さんに申し上げる問題は、これはいま申し上げたように、解決する方法があるではないか。少なくともあなた方側近の方々は、それらの疑いを持たれるような天皇であっては困るという点を申し上げるわけなんです。あれはもう撤去して吹上御殿のほうに持っていらっしゃいと言うのじゃないのです。どこまでも天皇のプライベートの用地としておきめになればいいということです。建設大臣先ほど習俗的慣行と言っておりますけれども、根にあるものは何か。これは津であった、訴訟事件に対する判例が出ておりましたからね、先ほど申し上げたときのあの中にね。それを一つ覚えで言っておるのだろうけれども、これは二つに分かれます。この判例は、一つは宗教じゃないかと、宗教じゃないかと、宗教だということを一応認めながらも、これが習俗的慣行としてこれを無罪にしているわけですね。その市長のほうで無罪になっておるわけです。無罪というよりも、これは行政訴訟でしょうけれどもね、違背しないと、憲法二十条の三項に違背しないのだという判決が出ておりますし、これを一方的にあなた方は持っておる。これはおそらく靖国神社の問題をだれかが言われてきたものだから、さっそく政府は援軍としてこういうものを引っぱり出してきたのだろうと思うのです。これは現在行なっているところの非常識きわまる落成式、起工式その他の国の行事はこれは何としても反省をして、先ほど瓜生次長も言っているようなさわやかな落成式で行事を行なうようにしなければならないと思うのですよ。考えられると言っております、建設大臣も。これは少なくとも建設大臣が所管する事項だけでも、おやめなさい。それはまあ酒一ぱい飲んであいさつするのはいいでしょう。酒飲むのは慣行だから、これは。宗教でも何でもないから。
 この明治四年の太政官布告、それから明治五年の神官職員等の布告、これらはみんな、背景となるものは国家なんです。国家がいままでこれを強制しているわけなんです。まあ一つのね、宗教関係の中央行政官庁のこれを見ても、明治元年には神祇事務科というものができました。これは神社を担当する。それから明治元年二月には神祇事務局ができ、それから同じ元年の四月には今度は神祇官というのですか、これができている。明治三年には民部省の社寺掛、次に三年−四年に民部省寺院寮、大蔵省戸籍寮社寺課、これは明治四年。神祇省、教部省、内務省の社寺局、これは明治十年、それから内務省の神社局、宗教局、文部省の宗教局、昭和になってからでも、神祇院とか文部省の教化局宗教課、今日では文部省の宗務課ですか。宗務課長どなたですか、宗務課長見えているの。
#26
○委員長(岡三郎君) 見えてます。
#27
○田中一君 こういうぐあいに変遷して、全部国が扱っているわけです。今日の新憲法下の宗務という問題は、これは全然別の問題です。
 そこで、ちょっと文化庁にお伺いしますがね、これはどんな仕事をしています、いま。いまの宗務課というのは。
#28
○説明員(鈴木博司君) いまの文部省の宗務課は、文化庁文化部の宗務課になっておりまして、所掌事務といたしましては、宗教法人の認証その他宗教法人に関します事務、宗教に関する情報資料の収集、提供、宗教団体との連絡という三つの仕事をいたしておるわけでございます。
#29
○田中一君 そうすると、自治省の森さん来ているでしょうか。
#30
○委員長(岡三郎君) 来てますよ。
#31
○田中一君 東京都の行政のうち、やっぱり東京都に窓口がありますね。宗教法人。宗教法人法による宗教でしょうか、あるいは宗教法人法によらない宗教団体かわかりませんが、それらの管掌する分布はどうなっておるんです。
#32
○説明員(森清君) 直接それを調査をいたしておりませんで、ここで具体的に申し上げられませんが、宗教法人法による宗教法人の認可その他の権限は都道府県知事に委任されておりますので、その関係の事務を取り扱う課あるいは係でございます、あるいは担当官というものが各都道府県庁にいるものだと、こう考えております。
#33
○田中一君 だめだよそんな実態知らなくちゃ。存じませんじゃ困るよ。こういうように理解していいのかな。文部省の宗務課では、全国的な布教を目的とする宗教法人の届け出事務を扱うということなんじゃないですか。それから各知事のほうは、その地域的な行政区範囲内での宗教活動、布教活動を行なう団体の宗務というように理解すればいいんじゃないですか。どうなんです。どうもあなた方がわからぬようなあいまいなこと言っちゃだめですよ。はっきりおっしゃい、はっきり。説明員(鈴木博司君) 宗教法人法では、「宗教法人の所轄庁は、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事」ということになっております。ただ、他の都道府県内にあります宗教法人を包括する宗教法人については、その所轄庁は文部大臣ということでございます。
#34
○田中一君 自治省では、それらの問題については明確に業務というものを把握していないんですか。
#35
○説明員(森清君) 地方公共団体の組織、運営その他の基本については、自治省で主管をいたしておりますが、宗教法人の仕事であれば、これは文部省の所轄になりまして、たとえばそれについて都道府県知事を管理、監督するというような字句があるとすれば、それは文部大臣が行なうわけでございます、そういう意味で、そしてただいま手元には各府県においてどのような組織、機構をもって宗教法人についてその監督、指導をやっておるか、つまびらかにいたしておりません。
#36
○田中一君 宗教法人法によらない宗教団体に対しては、やはり知事が認証を与えているのですか、それともあるいはそういう認証をしなければ布教活動ができないということになっているのですか、その点はどうですか。
#37
○説明員(鈴木博司君) 信仰の自由につきましては憲法の保障するところでございますので、個人、宗教団体がそれぞれの宗教活動をされることにつきましては、都道府県知事、文部大臣といたしましては何ら干渉いたしておらない。ただ宗教法人団体が宗教法人法に基づくところの法人格を取得する際におきます認証の関係の仕事を、文部大臣または都道府県知事がいたしております。こういうことでございます。
#38
○田中一君 これはだれに聞いたらいいのかな、これは坪川さんに伺います。神道というのは宗教ですか宗教じゃございませんか、神ながらの道というのは。
#39
○国務大臣(坪川信三君) 私の現在の立場から、いま数々御指摘になりました問題点について見解を申し上げるということではっきり申し上げたいことは、最初に、冒頭に申し述べられましたいわゆる竣工、起工というような式におけるところのなるべく簡素化をいたす、順序あるいは経費その他付属行事等を含めまして、これらの行事を執行する場合にいわゆる簡素化するということについては、私は田中先生と全く意見をともにし、またそうした行政指導をいたすべきである、またいたしたい、こう考えております。
 ただここで宗教論とかあるいは法律論を議論し合うというようなことでなくて、先ほど私も申し上げましたごとく、関係国民が熱願しておったある事業がいよいよ着工に入るというとき、あるいは悲願であった施設なり工事が完工いたしましたときに、ともどもに祈り、喜び合うというこの人間性は私はとうとばなければならぬと思います。ただし、その方法について権力を行使していわゆる権力指導をやりましたり、あるいは教育の場を通じてこれを指導するというようなことは私は避けるべきでありますが、たとえば待ちこがれた結婚式が行なわれる場合に、一族郎党が相寄り合って、いわゆるどんな方法で行なうかは、これは各自の意思の自由であります。キリストの前で教会でやられる喜びもありましょう、あるいは神式においてやられる喜び、尊厳を味わう方もありましょう、仏式でやられる方々にもおのおのあるだろうと思います。こうした人間生活のいわゆる冠婚葬祭は人間性の立場に立って、私は尊厳な中に、厳粛な中にそうした祈り、喜びをささげるというこの気持ちは認めるべきである。私は先生のおっしゃることを聞いてふと思い出しますのは、ミレーの晩鐘の絵などを見ますときに、あの絵の魅力というものはまた私どもも何とも言えない、この効果は。あの農夫二人が一日の労を終えて教会から流れてくる鐘を聞きながら、その日のしあわせを感謝し、神にあすのしあわせを祈り、ささげるこの気持ちは、私はクリスチャンである田中先生には御理解いただけると思います。その点で各人各人が神道、神式により、仏式によってそうした喜びと祈りをささげるということは、一つの神秘性を持った象徴の行事というものについては、私は理解をすべきである。神道その他いろいろございましょうけれども、私はそうした立場に立って日本民族のやはり歴史と伝統と流れている血などを考えてみるときに、私はそうした気持ちで各人各様が、いわゆるその気持ちの上に立って人間性の上に立って行なうということについては、私は権力をもって指導したり、教育の場を通じて指導するものではない。したがって、私は今後もそうした気持ちで、やはりひとつの宗教行事が行なわれるということについて、私はいま直ちにやめるべきであるとか、やめざるを得ないというような指導をいたす考えは、私は持っていないことを御理解いただきたいと思うのであります。
#40
○田中一君 そうするとどこまでも神道で神事を、行事は神道で行ないますということを宣言しているんですね。私はそれを聞いているんです。あなたずいぶんことばを添えるけれども問題はそらしておる。
#41
○国務大臣(坪川信三君) 私はあくまでも神道でやるべしということを結論に出して申し上げているのではございません。
#42
○田中一君 それではいろいろと私からも質問しておりますが、今後せめてあなたの所管だけでも、そうした宗教的色彩のない精神で起工式を行なうべきだと思うのですがどうですか。
#43
○国務大臣(坪川信三君) 決しておことばを返す意味、あるいは反論する気持ちで申し上げるんじゃございませんが、これは、やはり各人各人の気持ちによって私はいたすことが好ましい姿ではなかろうか、こう考えております。
#44
○田中一君 坪川個人が何してもかまいませんが、国家の名においてやる場合はおやめなさいと言っているんです。これは問題があります。いままでいろいろな学者の説、宮沢さんも言っております。これは法制局からどなたか見えておるから伺いますが、各人各様なんということばを言っているが、国がやるのもやめなさい、国がそういうことをやるのは。
#45
○政府委員(吉國一郎君) ただいままでの質疑応答を私伺っておりまして、先ほど田中委員が御指摘になりました昭和四十二年の津の地方裁判所の判決、この以前からこの事件はたとえば東京大学の「註解日本国憲法」であるとか、あるいはその他の学者の著書におきましても、先ほど仰せられました習俗的行事という議論が憲法の著書の中に見えております。その考え方は、ある行為がその期限においては宗教的なものであっても、その後いろいろ変遷を来たして、今日においては一般国民の間において宗教的な意味を失っているというふうに認められるようなものについては、つまり単に社会生活における習俗となっているというようなものについては、この憲法二十条の三項の問題は生じないのではないかという考え方が基本でございます。具体的にそれではどういう点が習俗になっているかどうかということは、これは結局広く社会通念でもって判定しなければならないと思いますが、最も顕著な例を申し上げますならば、これは「註解日本国憲法」なんかでも論じておりますが、たとえば日曜日を休日にするという習慣、これはその起源は旧約聖書に発しておると思いますが、現在各国においても日曜日は休日といたしております。これは何らキリスト教の信仰に基づいたものでなしに、仕事を休んでおりますし、またクリスマスは本来はキリスト教の祭りの日でございましたでしょうが、現在それにちなみますクリスマス・ツリーについて宗教的な意義をもって飾りつけをなさる方ももちろん多々あると思いますけれども、一般的には単なる季節的な――と申してはやや行き過ぎかもしれませんが、年の暮れに一つの季節の祭りとして、装飾として飾りつけをするというのが、これはもう一般的な習俗化しておると言ってもよいのではないかと思いますが、そのように一般的な習俗というような形に化したものに対しては、憲法第二十条三項の問題は生じないのではないかというのが、私どもの基本的な考えでございます。繰り返し申し上げますが、「註解日本国憲法」等の著書においてもこのような考え方を支持しておりますし、多数の学説もそれに従っておると思います。
 ただ問題は、具体的にある行為が習俗となっておるかどうかの認定の問題でございます。この辺につきましては私どもは、法律を扱っております者でございますので、断定的には申せませんが、一般的に申しますと、建物、建築物に対してあるいは起工式を行なうとか、完成式を行なうとか、上棟式を行なうとか、あるいは落成式を行なうということは、ほとんど本来の宗教的意味を失って、一般的な習俗になっているのではないかという地方裁判所の判決に私どもも同感を覚えるものでございまして、そのような、先ほどたとえば道路公団のような国の機関がこれを行ないましても、その意味によって特に神道に対して一定の特典を与えたとか、あるいは国が宗教的指導をしたというには当たらないのではないかというのが法制局の見解でございまして、その点は私ども現在の高辻長官も、前の林長官の時代からも何回かお答え申し上げておるところでございます。
#46
○田中一君 それはたとえば日曜日を休むとか、土曜日が半日というのはキリスト教から出ていると言っておりますが、クリスマス等に国鉄なんかで飾りつけをやっているじゃないか、こう言うが、これはショーなんだ、ショー的な表現なんだと。日曜日とか何とかというのは、これは休みが多いからそういうふうにきめているわけです。また諸外国は日曜に休んでいるから、どうもこっちが月曜日休もうと思っても向こうとちぐはぐになって、世界の国際的な疎通化がそれだけだめになるのです。日本は後進国であったので、それにならったにすぎないのですよ。しかしながら、いま国が、だから国も習俗的慣習に従うということだけでは済まない、国の場合には。あなた個人なら差しつかえない。国の場合にはそういうものにはよらないでやりなさいと言っているのです。なぜ神道でなけりゃならないという理由があるのか。これはそういう例はたくさんありますよ。前にも神道でやった場合もあります。おのおのそれは個人は個人でよろしい。それはかまいません。しかし、国並びに公共団体、政府関係機関等はそうしたものをやめなさいと言っている。やめるべきではないかと言っている。あなたはこれは、地裁の判決だけを例にとってだいぶおっしゃっているけれども、この問題を全部取り上げて結論づけているんじゃなくて、判決の全般というものはやはり問題があると言っているんです。宗教というものの範疇が全然関係ないと言っていないのですよ。神道の行事がやはり、宗教的背景があるのだと言っている。なぜそうしたものによらなければならないかということになると、いま言っているとおり、国教的な存在として明治憲法以来百年、われわれ国民の脳裏に植えつけられている問題なんです。そういう背景もあるのです。ことに天皇陛下が信仰しているところの神ながらの道というものに対してはそれはおやめなさい、それは問題があるのじゃなかろうか、こう言っているのです。そういう点から、法律論やあるいはあなたたちにしても、慣習論を両方かみ合わせて判決を出しておりますけれども、なぜことさらにそういう宗教にのっとって行事を行なわなければならないかというものを発見するのに苦しむわけです。落成式もそうであります。起工式もよろしゅうございます、おやりなさい。しかしそれがなぜ神道によらなければならないか、神道の行事にのっとらなければならないかということなんです。そんなことを、私はことばはたくさん要らないと思う。あなた方よくわかっていながら、津の判決例だけを取り上げておっしゃっているんですけれども、これは林さんもかつて三十九年ごろでしたかね、長谷川君の質問なんかにはそういう答弁をしています。これはそれでいいんですよ。いいけれども、国が行なう行事として、そういう疑惑を持たれるようなことはおやめなさいと言っているんです。問題があるかないか言っているんです。そうすると、ことにここは建設委員会でありますから、建設関係の行事がしばしばやられる。それで申し上げているんですが、結論としては、坪川さんは従来どおり神道によってこれらの行事を取り行ないますという結論だと理解していいんですか。あなたはさっきも神に祈るとかいうことばを使われておりますけれども、神に祈っても仏に祈っても差しつかえございません。祈るというのは、人に強制するものじゃないんです。おのおのが自分の内面にひそんで持っているものなんです。それをここでもって表現する。あなたの良識を疑いますよ。この委員会でもってそういうことを言っているんじゃないのです。
#47
○国務大臣(坪川信三君) 私も先ほどから申し上げていることは、いわゆる建設省といたしましては、一切の行事を神道によってやれという行政指導をいたしますということは、何ら申しておりません。私の先ほどから申し上げたとおりでございます。したがって、各人各様がそれぞれの気持ちに立ってやるということについて、建設省としまして統一的な行政見解を下し、指導をやるということはどうかと思う。こういうことを申し上げているんで、神道でやりますということを行政指導で行なうとか、あるいは今後も続けるとかいうことを申し上げているのではないことだけは、御理解いただけると思います。
#48
○田中一君 各人各様で、人のことを言っているんじゃないんです。あなたの行政機関を言っているんです。あなたが監督し、あなたが主管するところの行政機関の問題を言っているんです。人の問題を言っているんじゃないんです。
#49
○国務大臣(坪川信三君) 決して私が行政的機関を通じて、行政の権力を通じていわゆるこれを指導する、あるいは統一するということを申し上げていないということだけは、御理解いただきたいと思います。
#50
○田中一君 各部局がかってにおやりなさいということですね、少なくとも建設大臣は。
#51
○国務大臣(坪川信三君) 各局ともかってにおやりなさいということではなくて、その行事を行なうところの責任者の方々がいわゆるその判断に基づいてやることについて、私が行政指導を行なったり、統一見解を下して、それに制肘を与えるというようなことはいたしません、ということです。
#52
○田中一君 こういう理解でいいんですか。あなたの主管する各機関というものは、そうした行事をやろうとやるまいと、何式であろうと、それぞれの主催する部局の意思で自由におやりなさいということ、何にも指示はしません、自由におやりなさい、こういうふうに理解していいんですか。
#53
○国務大臣(坪川信三君) あえて私が自由におやりなさいというようなことを申し上げているわけではございません。各人の責任者の方々がそれぞれの立場に立って行なうということを、私は統一見解をもってそれを制肘したり、行政指導をいたすということをすることはしない、ということを申し上げているのであります。
#54
○田中一君 どうもあなたはだいぶ苦しくなっているものだから、そういうことを言っているのです。
#55
○国務大臣(坪川信三君) 決して私は苦しくない。私はそんなことを申しておりません。
#56
○田中一君 これは道路公団はいままでどおり建設大臣に届け出て、自由に行事を行ないます。道路公団もいままでずっと神道による行事を行なっているけれども、それは踏襲してまいりますという意思表示ははっきりできるんだね。
#57
○参考人(宮内潤一君) 先ほどお話し申し上げましたとおり、私どもは式を行ないます場合に、地元の県とかそれから市とか、いろいろなところと相談をいたしまして、みんなの意見が一致したところで行なっております。ただ、その実例として神道が多かったということだけでございます。今後も同じように、県庁なり地元市町村等と相談をいたしまして、みんなの喜ぶ形で式を行ないたい、このように思っております。
#58
○田中一君 そうすると、神道以外の行事を行なった例はありますか。
#59
○参考人(宮内潤一君) 当公団においてはございません。
#60
○田中一君 時間がだいぶきたので、この次に建設省関係の各実施官庁を全部呼んで、この問題を聞いてみますから、この程度にします。
#61
○委員長(岡三郎君) ちょっと聞きますが、いま大臣が主管するところの行事をどうするかということについては答弁ないのです。主管というか、大臣みずから直轄工事、あなたが施主になってやるのじゃないですか。それも人に聞かなければわからぬというのじゃ――あなた自身の問題だから。
#62
○国務大臣(坪川信三君) いま委員長御指摘になりましたその問題についての私の気持ちを申し上げますならば、その行事を主催される方々の慣習、あるいはいままでのしきたりを含めまして、意思をそんたくいたして私は行ないたいと、こう思っております。
#63
○委員長(岡三郎君) 大臣がみずから主催してやるのです。それはいろいろあるけれども、あなたが主催してやるものなんだよ。それをどうするのかと聞いているのです。道路公団とか住宅公団ではなくして、建設省直轄工事というものはあなたがやるんでしょう。
#64
○国務大臣(坪川信三君) いわゆる私の責任において、主催において催すいわゆる建設省の直轄工事の起工あるいは竣工等をおさしになっておると思います。これらにつきましても、私はいわゆるその地域によって、おのおの場所がそれぞれ違いますから、その場所などの主催者の気持ちをやはりそんたくして一任いたしたいと、こう思っております。
#65
○田中一君 主催するのはあなたですよ、主催者は大臣じゃないか。
#66
○国務大臣(坪川信三君) 主催するのは私でございますが、やはりそれを執行するのは、具体的にやるところは、おのおのそこの地がかりなりその区域なり、その県なりその市であると思います。そうすると、私は私から直接神式によってやれ、あるいは仏式によってやれ、あるいはほかの方法でやれということでなくして、いわゆるその関係者の方々の意向をそんたくするということであります。私が直ちに一定の方式を指揮指導、また権力をもってそれを制肘するというような考えはないということであります。
#67
○田中一君 ちょっとおかしい。外務省でも増築をやっておりますが、あれも起工式、落成式やるんでしょう。これは外務省がやるのだということになるのかもしれないけれども、地建の庁舎なんかつくっているでしょう。その場合どうするのですか。
#68
○国務大臣(坪川信三君) 営繕部長から答弁させます。
#69
○説明員(横山正彦君) 建設省が実施しておりますいわゆる官庁営繕に限ってのことでございますが、当省の建築に関係いたします行事は、建設省が主催をしてやる事例はほとんどございません。大体相手庁が主催されるわけでございます。その際は、先ほど来大臣御説明しておられますように、私どもは受け身の立場に立ちまして、あくまでもその行事に招かれるという立場で行動しております。
#70
○田中一君 横山君、聞くけれども、たとえば地建の庁舎なんかつくりますね。そうすると、それは地建の局長の名前で儀式をやるんですか。
#71
○説明員(横山正彦君) 地建の単独庁舎の場合でございますと、地建局長がいろいろ行事の内容等について取り計らっておられるようでございます。
#72
○田中一君 そうすると、建設大臣は官庁営繕については一切そういうものには主催者にならない、なったことがないというんですか。
#73
○説明員(横山正彦君) かつて京都の国際会館を実施いたします際には、建設省が主催をいたしまして地鎖祭等を取り行なった経緯があったはずでございますが、そのときに神式でやりましたかどうかということにつきましては、私いま実は存じ上げません。私が過去三十年間で記憶しておりますのは、たぶんそれ一つではなかろうかと思います。なお、古いものは私が知らないものはあるかも存じませんが、ここ四、五年来におきましては、それ一つでございます。
#74
○田中一君 横山君、古いものでね、明治憲法下にあっては、神道が国教的性格を持っておったんですよ。いいですか。それは旧憲法にも第二十八条に、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」。これは制限つき自由ですね。しかし背景となっておるのは、すべての神道、神社というものは国が経営しておったのです。この二十八条の条文があるけれども、国が経営しておったんです。神社というものは官幣とか国幣とかでもってね。しかし、これは国教だという、国の宗教だということには憲法上なっておらないんですけれども、それを完全に掌握しておったんです。でありますから、昔のことというよりも、昔のことはそれは神道で行なったのは当然であります。しかし新憲法の二十条の規定は第一項で「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」といい、第二項で「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」とあり、第三項で「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」となっている。この行為を習俗的慣行といって裁判所が違憲でないと判決を下しているけれども、私はそこに疑惑を持たれるのではなかろうかというんです。だから、そうした宗教によらない儀式をなさいと言っているのです。これは横山君突然答弁に立ったけれどもね、建設大臣は……。まあ、これ以上は同じことになるからやめますけれども、法制局でもたった一つの判決だけを取り上げているのだ。私も一ぺん訴訟を起こしてみましょう、この問題については。やはり国民の間にとうとうと、日本の憲法を旧憲法に持っていこうとしておるのではなかろうかという疑惑を持っておる層が相当おるわけです。神道というものは戦いの神かもしれませんが、だれでもそういう疑惑を持っている、いまの若い人たちが疑惑を持っているということだけは間違いない。この点については、もう少し政府としても慎重にわれわれの社会に臨む態度というものをはっきりしなきゃならぬと思うのです。こういう点はいまこれ以上坪川さんに言ってもしようがないので、何かの機会にまたやりましょうか、これくらいにいたしておきます。
    ―――――――――――――
#75
○委員長(岡三郎君) 次に、新四ッ木橋の橋脚工事における事故に関する件について調査を行ないます。
 まず、政府から発言を求められておりますので、これを許します。坪川建設大臣。
#76
○国務大臣(坪川信三君) 御審議を願うに先だちまして、まことに不幸な、遺憾な事件が発生いたしましたことを深くおわびを申し上げますとともに、このたびの不幸な事件によって遭難され、とうとい生命を失われました八つのみたまに対しましてつつしんで哀悼の誠をささげ、御遺族の各位に対しましてもつつしんでお悔やみを申し上げたいと思うのであります。
 もうすでに御承知のとおりに、昭和四十四年四月一日、すなわち一昨日の午後四時四十分ころ、建設省直轄施工中の東京新四ッ木橋七号橋脚、間組が施工でございますが、環状けた締め切り工法による締め切り鋼が破壊するという事故が発生いたしまして、青森県から出ていただいておりました労務者の八人が行くえ不明になられました。ただいま被災者の収容に全力を尽くしておる次第でございますが、現時点におきまして三遺体のみたまを収容いたしておる現況でございます。
 この事件が発生いたしまして以来、私といたしましては直ちに施工者でありますところの間組の首脳部を呼びまして厳重な警告を発しますとともに、その善後策に万全を期するよう指令をいたしますとともに、私ども相寄りまして今後の方針について協議をいたしました結果、直ちにこの原因の究明をいたし、今後これの工法について調査をいたすべきであるという観点から、委員十一名による構成のもとにおいて調査委員会を設置いたしまして、本日から緊急に調査活動を始めておる次第であります。
 私も、事の重大なことを思いますとともに、現場をよく視察いたしまして、今後の貴重な厳粛な問題としての資料にいたしたいと考えますとともに、みたまに対する哀悼の誠をささげ、御遺族にも御慰問を申し上げたいと思って昨日三時、現場におもむきまして一時間有余にわたりましてつぶさに視察をいたし、また御遺族の方々にもお会いをいたしまして、哀悼の誠をささげましたような次第であります。
 御出身地の町長さんもおいでになられまして、この不幸を再び繰り返さないよう措置を講じていただくことが、せめてもの御遺体に対する慰めであるという町長さんのごあいさつをいただきましたことを考えるときに、私はこの問題については建設省といたしましては緊急かつ真剣にその対策を打ち立てまして、再びこのような不幸な事件の発生のなきよう最善の措置を講じておるような次第であります。
 この工法によって行なっておる工事は四十年ころから始めまして、大体現時点においてのいわゆる工事の経過や工事の実績を見ますと、大体きのうの夜の調査によりますと、二十橋前後になっておりますが、これらの二十橋前後の橋も竣工いたし、何らの支障も来たさなかった。また、あの地点におけるもう一つの小松川橋の工法も同じ工法でありましたが、土砂の質あるいは川の流れ等におきましてはいまの地点のほうが、いわゆる前に竣工いたしました地点の個所よりも有利な立場にある工事の地点であることは、私も了解いたしておりますが、しかしこれらに対するところの措置は厳粛に、しかも緊急に講じまして、再びこの事態の不幸のなきよう最善の努力をいたしますとともに、御遺族の方々に対しましても、最善の弔意を表し上げたいと考えておる次第であります。
 以上、詳しいことにつきましては道路局長より説明いたしますが、重ねましてここでみたまに対する哀悼の誠をささげ、御遺族に対する哀弔の誠をささげまして、御報告にかえたいと思います。
#77
○政府委員(蓑輪健二郎君) 四ッ木橋の橋脚の事故につきまして、お手元にお配りしました資料について御説明申し上げます。
 この新しい四ッ木橋の工事につきましては、現在の四ッ木橋が非常に交通量が多くなりまして、また高潮との関連でもっと上げなければならないということもございまして、現在の橋の下流にやや斜めにかける計画にしておりまして、四車線に歩道をつけまして、全幅十六メートル二十五の幅を持たせまして、延長が約――陸上部の高架になります部分を入れまして約手六十一メートルぐらいの橋になる予定であります。
 その中の橋脚の工事を四十三年十月に着工いたしました。そこにありますように、右岸の橋脚四基を間組と昨年の十月十二日に契約いたしまして、工期は四十五年の六月にいたしております。請負金額が二億四千四百万円でございます。また左岸の橋脚の五基につきましては鹿島建設と二億九千六百五十万円の契約で、工期は間組と同じでございます。
 その橋脚のP7――七番目の橋脚の仮締め切りの施工状況について申し上げますと、鋼矢板二十三メートルの一本ものを、直径二十三メートル五十になるように円形に打ち込んでおりまして、それを外圧から支持するようにするためにリングビームをその中に設置しておきまして、まるいビームによって外圧をささえるようにしております。事故の起こりましたときには、上段から六段目まで設置いたしまして、さらに河床を掘りまして七段目のリングビームの設置を準備しておるときに起こった事故でございます。
 事故の発生につきましては、四月一日の十六時四十分ごろと考えられますが、突然大きな音がいたしまして、現場に行ってみますと、もうすでに中のリングがばらばらになりまして、全部水びたしになっておるというようなことでございまして、その中で八名の労務者が河床の掘さくに従事しておりまして、この八名の労務者が生き埋めになったものと思われます。で、現在鋼矢板が内側にこう傾いておりまして、その中にリングビームがばらばらになっておる状況で、そういう状況からなかなか、一本一本リングビームをはずしていかないと、土の中に埋ずまった遺体を発掘できないような状況で、遺体の収容に手間どっておる次第でございます。
 事故の対策の経過でございますが、その事故発生と同時にすぐ警察及び消防署と連絡いたしまして、間組が主体になりまして労務者の救出に努力いたしました。現在のところ、四月一日の二十一時二十八分、次に二日の二時四十分におのおの一遺体が収容されまして、お手元の資料にはございませんが、本日の朝の一時四十五分にもう一遺体が収容されております。
 これの今後の、事故の原因の対策と今後の方針でございますが、先ほども大臣から話されましたように、調査委員会、これは建設省の土木研究所長を長といたしまして調査委員会を設置いたしまして、事故の究明に当たります。さらに現在施工しております同じ工法につきましても、補強の方法その他がきまるまで中止をさせてまいりたいと考えております。
 実は、この工法につきましては、私たち原則的には非常に理屈に合う工法だと思っております。ただ、だんだんリングが大きくなりますと、それだけよけいにまわりからの水圧、土圧というのが必ずしも平等にかかってこない、偏圧がかかってくるような場合も予想されます。今後こういう工法につきましては、十分調査委員会で検討いたしますと同時に、これの適用する範囲をどうきめていくか、こういうことが、われわれこの事故を繰り返さないで、かつ安全な工法として採用し得ることになると思いますので、そういう点で今後十分調査を進めてまいりたいと考えております。
 以上であります。
#78
○委員長(岡三郎君) これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#79
○沢田政治君 まあこの種の事故の場合ですね、いつでも政府のほうでは、再びこのような事故を繰り返さないように慎重にもう検討しますとか、こういうことを繰り返しておりながらもこういう事故がいつでも起こってくるわけですね。したがって、そういうことばだけではなく、こういう痛ましい事故をどうして防ぐかということですね。やはり工法の問題には相当問題点があるならば、これはやっぱり研究しなくちゃならぬでしょう。ただ単に私は、工法の問題もこれは研究しなくちゃならぬ問題だけれども、やはりそういう危険作業に従事する労働者の安全衛生ですね、こういう点も非常に重要な問題じゃないかと、こういうように思われるわけです。したがって、特に私、労働基準局、労働省のほうにお聞きしたいわけですが、労働基準法の第五十四条ですか、この規定に従って行政措置をどうとっているかということですね。たとえばこの五十四条の二項ですね、二項にこれは該当する工事でなかったのかあったのか、その点をお聞きしたいわけです。基準局だれか来ていますね。
#80
○説明員(中西正雄君) この工事につきましての五十四条の適用関係でございますが、五十四条は、常時十人以上の労働者を使用する場合の工事着手前の設置届けの提出義務でございます。この工事につきましては、もちろんこの五十四条に該当いたしますが、第二項の基準に違反した施設の使用停止の問題につきましては、本件については特に具体的な安全衛生規則についての定めがございませんので、基準に反するという事実がございませんので、特別に措置の必要はなかったというふうに思っております。
#81
○沢田政治君 基準法の第五十条では、雇用した労働者に対して、当該業務に対する安全衛生の教育をしなくちゃならぬ、こういう規定があるわけですが、非常に危険な地下で仕事をするわけですから、一瞬に惨事が起きるということは予見できる作業ですから、どういうような安全教育をしてきたのか、具体的に、どういう教育をして何日ぐらいやったのかと、こういうことがおわかりならば御答弁願いたいと思います。
#82
○説明員(中西正雄君) 今回の事案につきましては、どの程度の事前に、採用時に安全教育を実施したかは調査しておりません。で、ただ最近特に若年労働者の不足、あるいは技能労働者の不足に伴いまして、高年齢者、出かせぎ労働者等が多数雇用されてきておりますので、このような状態にかんがみまして、労働省としては、特に労働者の雇い入れ期の安全教育につきましては、重点的に監督指導を行なっております。なお、危険業務につきましての技能労働者の確保とか養成、また作業者、労働者の適正配置ということも、重点として監督している状況でございます。
#83
○沢田政治君 ある新聞によりますと、私も現場で目撃したわけではないから、的確にこれは言えませんが、ある新聞によりますと、まあ助かった方だと思いますが、現場におって異常が認められたのであぶないぞと中にいる人に声をかけた。ところが、はい出そうとしたその瞬間に途中で水没してしまったと、こういう新聞もあるようですが、私考えてみまして、全然徴候なく一瞬にして土圧、水圧のために埋没したのじゃないと思うのです。私もまあ地下労働で落盤に四、五回あった経験があるわけですが、徴候があるんですよね。ほんとうに安全教育をしておったならば、ぴりぴりか何か音がするのです。こういう場合は危険だぞという教育をしておったならば、私の予想ですけれども、あるいはこの事故が未然に防げたのじゃないかと、こういう気がしてならぬわけですよ。結局外におる人が変な徴候が出てきたので、あぶないぞと声をかけて途中まで上がってきてやられたのですから、安全教育さえよければ、この事故が未然に防げたのじゃないかという予想がしてなりません。非常に残念だと思います。したがって、どういう安全教育をしたのか、具体的にはわからぬということですが、非常に無責任だと思うんですよね。たとえば、普通の軽微な作業、特にだれが予想しても危険な作業ではないというものについては私は強調しませんが、明らかに風圧、土圧、しかも水中で仕事をするのだからあぶないということは常識として考えてもわかるわけですが、こういうものに対してどういう教育をしたのか、まだつかんでおらぬということは、非常に遺憾だと思いますね。
  〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
したがって、今度は建設省のほうにお伺いしますが、工法の問題、これは究明しなければならぬと思います。私も専門家ではありませんので、こういう工法がいいとか悪いとか言えませんが、やはりこういう危険な建設作業については安全衛生の教育をするということ、常時監督者をそこにつけておくということ、こういうものに対して、単価の積算にこういうものを入れるべきだと思うのですがね。そういうことを現になされつつあるのかどうか、いかがですか。
#84
○政府委員(蓑輪健二郎君) 直轄――これは補助でもそうでございますが、私たちやはり工費の単価を積算するときには、やはりいろいろ仕事の業種によりまして、それぞれ最も妥当な単価ということで積算をしておる次第でございます。ただ、非常に土木の現在の歩がかりといいますか、ひとつ一例をとってみますと、一立米の河床の土を掘り上げるのにどれだけの労力が要るか、この辺のことになりますと、非常に施工法によって違うわけでございまして、直轄地建がそういう単価を積算する場合は、地建は地建なりの一つの施工法を考えて積算するわけでございます。実際そういう積算はされますが、それに基づいて必ずしも業者は同じ施工法でやるとは限らない。さらにもっと能率のいい方法があるならそれでやられるということもございます。ただいま先生のおっしゃいました技能者、特にとびとかそういうものについては、普通の非熟練労務者と熟練労務者とでやはり単価は変えて積算されておる次第でございます。
#85
○沢田政治君 私、この前の当委員会でも建設業における労働関係の問題をお聞きしたわけです。非常に他の産業から見たならば雇用関係というものは無秩序だ、こういう点を労働条件の問題あるいは宿舎の問題、これについてお伺いしたわけですが、まさに私はその感をこの事故を前にして深めておるわけです。労働省の推計によりますと、季節労務者、出かせぎ労務者、これは六十万だと言っておりますが、どういう根拠で六十万というものを推計をしたのであるかわかりませんが、実態はもっと多いのじゃないかと思うのです。秋田県だけでも十二万戸ある農民のうち七万人が出かせぎに出ているのだから、実態は非常に多いと思うのです。これは青森県もそうですね。岩手県とか、東北の稲作単作地帯に非常に多いと思うのです。しかもその三分の二が職安を通さずに手配師やら、縁故をたよるやら、知人の紹介やらで来ている。こういう状態になって、労働条件の問題とか災害の問題、たくさんの事故を起こしているわけです。私どものほうにもほんとうにたいへんな数の――これを何とかしてくれ、三年前に、何というか、けがして労災の適用になって病院に入って、病状が固着して障害が残ったのだけれども、一向に基準局のほうで取り計らってくれぬ、こういうような苦情やら、苦情の続発なわけですね。したがって、ぼくはこの際、建設省と労働省のほうに私はお聞きしたいわけですが、特に建設省のほうにはこういうような無秩序な雇用関係というものをいつまでもほっておいていいのかどうか、どう考えているのかということをお聞きしたいと思うのです。特に基準局のほうには、たくさんの労災の適用になる者は労災法というような法律はわからぬのですから、あとで三年ぐらいたって若干びっこになって、これは労災法という法律があって障害補償をもらえるそうだということを聞いて、初めてわれわれのほうに照会をよこすような状態なわけですね。したがって、こういう出かせぎ者の災害、労災法の適用、こういうものをほんとうに親切に、届け出があろうがなかろうが、当然追跡して、結果がどうなったか――ほとんどが郷里の病院に入るわけですね、出かせぎですから。ナシのつぶてになっているわけですね。非常に不親切だと思うのですよ。この二つを建設省と労働省のほうからお聞きしたいと思うのです。
#86
○政府委員(川島博君) いま労働災害の防止を含めまして、労働福祉の向上にあたりましては、私どもといたしましては、やはり建設省は発注者としての立場とそれから建設業という産業を監督する立場と二つあるわけでございます。
  〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕
 それでまず計画局は、産業としての建設業を指導監督する権限を持っているわけでございますが、この立場から申し上げますと、労働省と非常に密接な関係があるわけでございますが、やはり就労経路の正常化をはかるということが、まず第一に重要な問題であろうと思います。そういう縁故関係と称する怪しげな就労経路から雇用先をたどるということになりますと、たとえば登録を受けていないようなもぐりの業者とか、あるいは労働関係の保険にも入っていないようなもぐりの業者とか、そういうところに就労いたしました場合に、事故が起きますれば、当然これは労働者本人が実害を受けるわけです。そういう意味におきまして、まあ職安を通しますと、いろいろ税金や何かの関係で不利な面もあるようでございますけれども、やはり一たんそういう事故があるということを前提におきますと、やはり労働者自身が正しい就労経路をたどって、信用の置ける業者に就職をする、こういう心がまえと申しますか、そういうことを労働者自体が自覚するようにしむけることが、非常に大事なことじゃないかと思うのです。
 それから一たん就労しました業者、これは私どもが建設業法に基づいて監督をいたしておりますが、やはり多い労働災害、あるいは賃金不払いの防止、あるいは現場の労働環境の非常な不備というようなものを是正するということが必要なわけでございますが、これにはやはり発注者、建設業者両方に対して指導をいたす必要があろうと思います。で、建設業者に対しましては、これは建設業法に基づいて、できる限りの指導監督をいたしておるわけでございますが、一面、建設省は大口の発注者でもございます。これは立場上、官房のほうの仕事になるわけでございますけれども、そういった発注者としての建設省も含めまして、公共機関全般に対して労働福祉の条件を、入札参加者の資格審査並びに設計積算の両過程において守ってほしい、ということを再度にわたり要望いたしておるわけでございます。
 で、一つ、入札参加者の資格審査の場合にも、たとえば労働安全成績を含めまして、労働環境の状況でありますとか、あるいは退職金の給付制度を実施しておるかどうか、あるいは賃金不払いの事実が過去にあったかなかったかというような、いわゆる労働福祉の状況というものを、入札参加適格者の選定にあって一つの要素として採用するように申し入れをしているわけでございます。これは多くの機関においてこの要望を受け入れていただいております。
 それから発注者として具体的に積算をいたします場合にも、直接間接にやはり労働者の福祉の状況というものが、工事の成績あるいは安全にも関係するわけでございますから、退職金の共済の掛金相当額を請負経費に算入するということ、あるいは建設業附属寄宿舎規程による現場寄宿舎の設置経費、これを工事費に繰り入れる、積算する、そういうことをやっておるわけでございまして、これも建設省においては、もちろん全面的に御採用願っておりますし、また他の公共発注機関においても大部分のものがその積算をいただいているような実情でございます。
#87
○沢田政治君 私、就労経路については相当問題にしたいと思いますけれども、労働省のほうからも、職安の方も、職業安定関係の方が来られておらぬので、これ以上重ねては聞きませんが、いずれにしてもこれは明確にしなければ、これは将来たいへんな問題です。今度おなくなりになられた方の子供さんですか、東京につとめておって、自分の親がここへ来ておったということがわからなかった。新聞、テレビで出て、東京で事故にあったということを知ったというように、地方自治体でも非常に出かせぎ者の、特に建設業の何といいますか、そういう出かせぎの実態をつかめないわけです。飯場から飯場へ移る傾向があるので、非常に何というか、地域においては社会問題になっていますよ。しかも蒸発して、おらなくなってしまう人がおるわけですね。消されたのかどうかわかりませんがね。したがって、これはやはり立法的にも何らか将来規制しなければ、非常に大きな問題が出てくる可能性があると思うのです。これは後の機会にこの問題について、さらに私質問したいと思います。
 最後に労災補償ですね。遺族補償ということになるわけですが、まあこれはさっそく払うように通達をしたということですが、あくまでも労働基準法にいう労災補償、これは最低なわけだな。それ以上支払っては悪いということは何もないわけです。自動車事故なんかの場合でも、自賠法なんかよりも非常に高くなっておりますですね。最近の判例では一千万、二千万とかいわれて高くなっているわけですね。しかも今度なくなられた方は、ほとんど世帯の中心者が多いのですね、一、二を除いては。したがって労働省基準局としては規定どおりでいい。これは厳格に言えば規定どおりでいいわけですね。それ以上払っては悪いということもないわけですね。そういうことなんで、特に生計の中心者であるし、本人の過失というものは全然ないわけですよ。全然本人の責任ということはない。そういう事情を考慮して、やはり間組なら間組にそれ相当の補償を規定以上にさせる、こういうような行政指導をする意思があるかどうか、ぼくは当然やるべきだと思うのです。役人だから、規定に違反しなければいいということではないと思うのですよ。そういうように考えていいのかどうか。特に建設省のほうでもこれに対して、労災法に基づいて払えば、法律上問題はないわけですが、そういう事情を考えて、間組に対して、この問題についてはもう少し何とかやるべきではないかという意思を持っているのかどうか、両方からお伺いしたいと思うのです。
#88
○説明員(桑原敬一君) 今回の被災を受けられました方々に対します労災補償につきましては、私ども労災保険に定めますところによって、迅速に支払いをいたしたいと思います。
 お尋ねの、それ以外の上積み問題についてでございますが、主として労使関係の問題については私どもあまり口をはさむようなことはいたしておりませんけれども、実態といたしまして、労災保険のほかにこういう建設業者の、特に大手の場合におきましては百万程度の見舞い金が別に出るのが慣行になっておるようでございます。そういう点が労使の協定になっておるようでございますので、その辺を私どもよく調べまして、また関係者とよく相談いたしまして、できるだけ被災者の方方、なくなられた方々のために十分な手厚い手当てがなされますよう、私ども関係者と御相談をいたしたい、かように思っております。
#89
○政府委員(蓑輪健二郎君) ただいま労働省のほうから答弁がございましたとおりで私どもも考えております。大体こういうような事故につきましては、やはり労災保険以外の見舞い金を実際出しておると思いますし、なくなられた方の郷里における生活の実態をも十分考慮の上、手厚い補償をしていただきたいということを間組にも申し入れたいと考えております。
#90
○高山恒雄君 労働省に伺っておきたいのですがね。こういう危険な作業が、だんだん近代化しつつある中で、工事がいろいろ近代化しますね。そういう近代化する作業に対する労働省としての、いわゆる季節夫ですか、そういうものを雇ってくるわけですが、そういうものに対する労働省としての、危険作業に対する指導をせいと指示をしたことはないですか。
#91
○説明員(中西正雄君) その点につきましては、先ほども触れましたように、特にそういった未熟練工による災害の問題は当面非常に重要でございますので、特に建設業につきましては、もう一番重要な問題として取り上げておりまして、対策としては、先ほど申し上げました雇い入れ時の安全教育はもちろん、毎日作業にかかる前に当日の仕事を十分打ち合わせて、そうしてそれぞれの作業の危険な点、安全な作業のやり方等について十分徹底するようにという監督並びに指導をいたしております。それからもう一つは、そういった未熟練者を使用する場合に、特に重要な点は、やはり現場で直接それらの人を指揮監督しているいわゆる作業主任、現場監督者の管理が非常に重要だと思いますので、その指揮管理能力を高めるための現場職長の教育というものにつきましては、特に重点として取り上げて、業界に強く要望いたしておりまして、現にそれらの教育は相当広く行なわれているという実態でございますが、今後さらにこれらの監督指導を徹底してまいりたい、というふうに考えております。
#92
○高山恒雄君 大臣の通達を出して、――これは建設省に出すということよりも、業界だと思うのですね。労働省としても、業界に対してそういう指導の大臣通達というものを出しておるのかどうかですね。いままでに、たとえばこういう危険作業にはこういう一週間の訓練をしなくちゃいかぬとか、そういういろいろ指導の方法があると思うのですね。そういう通達でも出しておる事例はないのですか。
#93
○説明員(中西正雄君) その点につきましては、通達という形では出しておりませんが、毎年労働大臣が定める労働災害防止実施計画というものがございまして、その中で具体的に、建設業としてはどういう問題を取り上げるかということを示しております。その第一に取り上げているのが、先ほども申し上げました職長の教育、その次が作業前の作業者の教育、こういうことで業界には十分徹底しているというふうに考えます。
#94
○春日正一君 こういう事故の起こった、新しい工法だと思うのですけれども、この工法の安全性について、これは始めるときに十分確かめられて、これでだいじょうぶということになっておったのですか。これを取り入れるときにですね。
#95
○政府委員(蓑輪健二郎君) 実はこの工法については、もう数年前からいろいろ実施されておりまして、ただいわゆる、先ほど言いましたように、このリングが非常に小さいうちはこれは大きな問題はないと思います。実はこの工法と同じ工法をこの新四ッ木の下流の小松川橋の橋脚のときに実施しておりまして、このときのリングの直径が二十一メーターでございまして、いまよりはちょっと二メーターばかり小さいのでございますが、これで十分事故もなくてきたという経験をもとにいたしまして、さらにそのときより今度は矢板も相当厚くしております。また、リングの強度も増しておりまして、特にリングとリングを、これをつなぎ合わせるつなぎ手、こういうところをかなり改良を加えておるわけでございます。また同じ工法で同じところで工事を同じ間組がやっておりますが、これは大体うまくいっております。そういう点を考えますと、この問題のこれからの調査をする場合に、この工法で一番問題になるのはどういう点が問題になるか、この辺をまず第一の問題として調査をしていきたい。現在これを採用いたしましたのは、そういうようないままでの実施の例、さらにそれを安全にするための補強工作をやって、まずだいじょうぶだというような確信があったから、これを認めたわけでございます。
#96
○春日正一君 いまのそこの問題ですね、同じやり方でもダイヤが小さければこれは安全だけれども、先ほどのあなたの説明でも、ダイヤが大きくなるといろいろな変圧がかかってくる。そういう可能性が出てくるということになると、これはまあ私技術者でないから詳しいことわからぬけれども、常識的いっても、どのくらいな広さまでが限度とか、どのくらいな直径が限度とか、あるいはそれ以上になった場合にはどうしなければならぬというような研究なりあれがされた上で、これでいいということにならなければ、小さいもので実験しておいて、それで、これでいいからその方法でどれだけ大きくなってもいいということにはならぬと思うのですけれども、そこらの辺の研究とか、最初にやられたときの結論みたいなものはどういうふうなものですか。
#97
○政府委員(蓑輪健二郎君) これは昨日も、実はそういうような、新しい工法について建設省の土木研究所でほんとうに検討したかというような御質問がございました。実はこの工法自身の原理を考えますと、これは外からの外圧を、いままでの工法でございますと四角に矢板を打ちまして、外圧に対しまして抵抗できるように、その四角の中に縦横にいわゆるバリという突っかい棒をかうわけでございます。こういう工法にいたしますと、非常に中の掘さくが、いろいろなもうそういうバリがたくさんございまして非常にスペースがとれないということがあって、リングのアクション、いわゆるアーチ・アクションで外部力を持たせるというそういう原理については、私も当然妥当だと思うのでございます。問題は、こういうような原理はいいのですが、実際にこれを実施いたしますと、いろいろ、日本のどこへ行きましても、土質も違ってまいります。また、この場合でもそうですが、水圧にしても、満水、満潮時と干潮時では水圧も変わってくると、いろいろそういうようなものについて、非常に最悪の場合の実験は現在のところまだやっていないわけでございます。いままでの例から見ますと、やはり過去の実施した例から、どういうときに外からの水が漏ってくる、それから下の土がふくれ上がるというようなものを、過去の実施のいろいろ経験に基づきまして、それのいろいろ改善を考えて実施しておるわけでございます。この工法そのものについてのいろいろな場合について大がかりな実験というところまで、まだやっていないわけでございます。十分現場のわれわれの監督者も、大手も、またこの工法の特許を出願しておりました東京エコンというような会社においてもやられておるし、また建設業者といたしましても、間組も、実はこれ以外に、非常に小さなものですがこの工法でやった経験もございますので、そういうことから、業者のほうもこれで十分安全だという形で、こういう架設の事業、架設の作業と申しますか、計画を出しておりまして、それを検討した結果、建設省のほうも差しつかえないということで実施したわけでございます。
#98
○春日正一君 そこらの辺に一つ問題があると思うのですね。やはり新しいこういう工法を採用する場合、学問的にも十分研究して、そうしてこれならば絶対安全だと、これ以上やる場合には危険が伴うというような点がもっとはっきりされて、その上でそれから先どうするかというような点がまだ十分いまの話だと究明されないままで、実際仕事をしながらどこから水が漏るか、そういう点を見ながら改善していくというような形ですと、これは当然犠牲者というものは出なければならぬ。その犠牲者の犠牲の上に改善されていくということが前提になっているみたいな話しっぷりなんですね。これでは、ちょっと不親切じゃないか。研究、そういう工法の安全性を確かめる上で、やはり十分でないものがあったのじゃないか、そんなふうな感じがします。いまこの工法を一時ストップして十分調査をし研究をして安全性を確かめた上でということになっているようですけれども、この原因を、やはりいままでのそういう問題の資料なり何なりを公表もして、もっと広く意見を求めて徹底的に究明すると、そうして二度とこういうことを起こさぬような方法の上で、建設技術というようなものも改善していくという処置をとられる必要があると思うんですが、どうしても建設省のほうの任命した委員だけでやりますと、外から見ておっても何か非常に狭いものの中でやっているという感じも受けるし、だから、いままでこうこうこういう検討をしてきて、こういうデータに基づいてこれをやってきたけれども、今度の事故はこういうことで起こったんだというようなことがはっきりするように、この原因究明も、もっと広く徹底的にやっていくということが必要だと思うんですけれども、その点どうですか。
#99
○国務大臣(坪川信三君) 春日委員御指摘になりました問題は、非常に重要な問題でもございます。建設省といたしましては、きょうから発足、活動を開始いたしました調査委員会におきましては、それぞれの権威、専門的な立場での技術関係者その他建設実施施工の権威者等も含む民間の方々の御加入もいただきまして、十分いま御指摘になりました点の遺漏のなきよう最善の指導もいたしてまいりたいと、こう考えますとともに、その結論が出ました段階において、指摘されました点の分も十分考慮いたしまして、再びこの不幸な事件のなきよう最善の配慮と、また努力をいたしたい決意でございます。
#100
○春日正一君 それからこの事故の直接被災者に関係することですけれども、先ほどの沢田委員の質問で、基準法五十四条二項にある安全衛生の教育訓練というようなことがやられておるかどうかを調査したかという質問に対して、この点については調査してないというふうな答弁だったと思うんですけれども、この点がたまさか全国たくさんあるうちで一つだけ調査してなかったのか、そこの辺労働省としてのこういう安全衛生関係そのものに対する調査の仕組みなり、どの程度おやりになっておいでになるのか、そこらをお伺いしたい。
#101
○説明員(中西正雄君) 安全教育の実施状況を確認していないのかということでございますが、この点につきましては、昭和四十年にこれらについての、いわゆる安全管理の実態調査をいたしておりまして、安全教育の実施状況を把握いたしております。その状況を見ますと、各事業場とも一応の安全教育はしているという結果が出ておりますが、ただ一つの問題は、具体的に安全教育の基準というものは、現在法律に規則にゆだねる規定がございませんので、具体的な基準が定まっておりません。行政指導としまして、それぞれの産業についての教育の内容を、順次災害防止団体等の仕事として基準を設けさせるということをやっております。大企業では大体九〇%程度安全教育が実施されております。中小企業でも七〇%以上に達しておるのが実態でございます。今後さらに安全教育につきましては十分徹底するように監督、指導してまいりたいというふうに考えております。
#102
○春日正一君 九〇%とか七〇%というのですけれども、それはどういうようにして調査し、把握された数字なんですか。
#103
○説明員(中西正雄君) これは労働災害基本調査という特別の調査をいたしまして、一定の様式に従って各企業における安全管理の実態を調べたわけでございます。その報告に基づいて整理集計した数字が、いま申し上げた数字でございます。
#104
○春日正一君 そこのところですね、紙に書いて雇い主から出されたものでの調査ということになりますと、そういう数字が出てくるかもしれませんけれども、実際に私ども出かせぎの人たちの働いているそういう現場なんかへ行っていろいろ聞いてみたり、事故とかいろいろの問題の起こったときに行って聞いてみますと、大きいところの場合はどういうことになっているかともかく、小さな、大体下請下請関係でやっているわけですが、そういうところでは、実際には当然やるべき基準法の基準が守られていないとか、あるいは労災保険なんかもかけられてなくて、災害が起こってから特別に頼んで適用してもらうというような事実がたくさんあるわけですね。そうしますと、やっぱりそういう現場に立ち入って実際に働いている人たちからどういう教育を受けたかということまで聞いてみなければ、ただ雇い主の報告だけを信用して、そうして九〇%いっているから、七〇%いっているからというようなことでやっておる。そして今度のようなこういう大きな事故が起きた場合、それはどうなっているんだと言うと、そのケースについては存じませんというようなことになってしまうんですね。だからそこらの仕組み、つまり労働省としてどのくらいの人員をもって、それでそういう現場を実際に、まあ日本国中全部というわけでもないけれども、サンプリング的にでも立ち入り調査して、実際に基準どおりのことをやられておるかどうか、というようなことが確かめられるような仕組みがあるのかないのか。それがないということになると、非常に不安定なものになる。
#105
○説明員(中西正雄君) 先生御指摘のような事情が確かにあると私ども存じます。いま申し上げたのは臨時にやりました実態調査の結果でございますけれども、通常は個別監督指導、個々の事業場へ参りまして監督官が監督並びに指導いたしておりまして、その場合にはもちろん安全教育の実施につきましてもチェックすることにいたしております。ただ、先ほど御指摘にありましたように、一体監督官がどのくらいいて、どの程度回れるかという点でございますが、数の上からではまあ十年に一回程度事業場を回れる程度の監督官しかいないのでございますけれども、運用上では特に災害防止上問題のある産業等を重点といたしまして、またその産業の中でも災害の多発事業場、その他問題のある事業場を重点的に選定いたしまして監督いたしておりますので、そういう事業場につきましては年に二回、三回行く場合もございますし、特に建設業につきましては、少なくとも年一回全国一斉に監督をする、これはパトロール方式と言っておりますけれども、できるだけ数多くの事業場へ参りまして、重点的な監督並びに指導を行なうようにつとめております。
#106
○春日正一君 そこでこの雇用関係ですけれども、今度の犠牲にあった人たちは間組の直用になっているんですか、下請になっているんですか。
#107
○説明員(中西正雄君) これは直用でございます。
#108
○春日正一君 まあ直用になっておれば、当然、あれだけ大きな会社だし、労災保険その他もきちっとやられておると思うんですけれども、この際、やはり下請またその下請というような形で実際上そういう仕事をやっておって、その場合に事故が起こる、そしてたくさん犠牲者が出るというような場合、この犠牲者に対する補償の最終的責任は一体どこにくるわけですか。
#109
○説明員(桑原敬一君) 建設業の場合は一人でも人を使っておりますとすべて強制適用になっております。その場合の最終責任は元請がとっております。こういうふうに、建設業の場合は、その就業形態と申しますか、特殊でございますので、下請に責任を持たせずに元請に責任を持たせる、保険料も元請から取る、こういうような仕組みになっておりますので、今回の場合もちろん直用でございますので問題はございませんけれども、たとえ下請の労働者でありましても元請が責任を負う、こういうような仕組みになっております。
#110
○春日正一君 もう一つ。今度の場合あの中へ入って仕事をしておった人は全部出かせぎの農民ですね。ああいう場合に、やはり専門的な知識のある人、八人なら八人の中で一人でもそういう知識のある人が一緒に入って仕事をするというようなことにはならないんですか。ああいうふうに全部――テレビ見ておったら、あの上に一人おって、「私はあぶないよと言ったんだけれども間に合わなかった」と言うけれども、そういうふうに一番あぶないところへまあしろうとみたいな人たちだけを入れてそこで仕事をさせるというようなやり方というものを、こういうことでいいのかどうか。八人とか、そういう相当な人数が入ってくるということになれば、その中に少なくとも、専門的な知識を持って危険があれば事前に予知できるような人が入ってやるように当然ならなきゃならぬ、指導者がいなきゃならぬと思うが、今度の場合どうもそうでないように思う。そこらの辺は規則としてはどうなんですか。そういうことでもいいということになっているんですか。
#111
○説明員(中西正雄君) 一般に作業につきましては、作業の監督者を置いて災害の防止等につきまして使用者にかわって十分管理するように、という行政指導をしておりますが、特に危険な作業につきましては、作業主任者の専任あるいは作業指揮者の専任を規則で義務づけております。御指摘の、この地あまの掘さくといいますか、こういう作業につきましては作業主任者を置かなければならない、この作業主任者の指揮のもとで作業を行なわなければならないということになっておりまして、あの場合の作業主任者がいまお話のございました上から監視をしていたという人ではないかというふうに思われるのでございますが、その点はまだ確認いたしておりません。
#112
○春日正一君 その点やはりはっきりしてもらいたい。何かいまのあなたの説明から見ると、手抜きがあったというか、規則にはずれたことをやっておるというような印象を私は受けるんですよ。あの深い中で仕事をしているのに、作業主任者が上のほうにいたというようなことでいいのか。当然その人がそこに一緒に行ってみんなを指揮もし、状況も見ながら、危険があれば退避させるというようなことをやらなきゃならぬはずだと思うんだけれども、一番しろうとばかり入れて危険なところで仕事をさせて、指揮する人は上のほうの安全なところにいて、大きな声を出しているというのでは責任がつとまらぬのではないか。そういうこともああいう不測の事故が起きる。先ほどの沢田君のお話にもあったけれども、ああいう事故というものは予知できるはずのものだ、経験者が見れば。そういうことを考えればどうも私はそこのところがおかしい。あまりに無責任じゃないかという気がするのですけれども、そこらの辺やはり徹底的に調べてその責任も追及するし、少なくとも今後そういう建設工事というものは全国これから盛んになるわけですから、そういう危険な場合には必ずそういう責任者をつけてやらせるというようなことを確立していく必要があると思うのですけれども、その点どうですか。
#113
○説明員(中西正雄君) 御指摘のとおりだと存じます。それで直接指揮といいますのは黙視できる場所――目で見、耳で聞こえるという、そういう場所にいて指揮をするということのように解釈されておりますが、あの場合にどこにいることが一番安全を確保できるかということについては、いろいろ問題があるかと存じますが、しかしあの場合、あの上にいた人が規則でいう作業主任者であったのかどうかということは、まだ確認できておりません。なおその点は十分調べまして必要な措置をしたいと思います。
#114
○春日正一君 もう一つ問題ですけれども、あの状況で見ると、あぶないということで、「私はあぶないと言ったのだけれども、もう瞬間にくずれてしまった」というふうなことを上にいた人は言っているのですね。そういう場合、ああいう深いところで工事をするという場合に、緊急に退避することができるような設備というか、何というか、あぶないと言ったときに、ぱっと逃げられる――あぶないと言われたって、あの深いところで働いておったら逃げようも何もありゃしないというような場合、八人入れるなら八人入れて、あぶないと言ったら八人ができるだけ早い時期に上がってしまえるような、そういう緊急に退避できるような施設ですね。そういうものが当然あってしかるべきだと思うのですけれども、その点はどうなんですか、今度の場合。
#115
○政府委員(蓑輪健二郎君) 実はまだ私たちどの程度そういう脱出のためのはしごとか、そういうものが用意されたか調べておりません。私も昨日大臣と一緒に現地を見まして、現地の人から聞きますと、不幸にしてあすこの中で行き埋めになったと思われる方は大体八名ございます。現場で聞きますと、八名の中で七名がこれが全部大鰐から来ておる。で、この雇い入れの月日も昨年の十一月くらいからことしの一月くらいでございます。ただ一人がこれが三十七年から雇い入れになっております。この方は現住所は川崎だそうでございまして、間組の言うのには、これを工長という形で監督さしておったという話でございます。先ほどの全部の現場の指揮者がだれであるか、まだ十分調べておりませんが、私もやはりこういうような下におりてやるというような場合に、もちろんそれが危険を判断できるような熟練者を置くということは、まず安全のための必要なことではないか。それと、やはり先ほど沢田先生からお話がございましたように、何かとにかく前兆があったのではないか。そのときにすぐそれを危険と判断してすぐ脱出する、それだけの経験者も一緒に中に入れる。さらに脱出の装置をつくるということ、こういうことはこれからのこういう地下の作業については、十分考えてまた実施さしていかなきゃならないというふうに考えております。
#116
○春日正一君 その点については、大臣に特にお願いしておきたいんですけれども、全国で同じような工事がたくさんやられるわけですから、この機会にそういう問題について徹底した処置をとるというようにしていただきたいと思います。
 それから補償の問題ですけれど、直用だから労災保険はもらえるとしても、先ほど沢田委員も言われましたように労災保険の基準そのものがやはり最低がきまっておるんだけれども、やはりいまのいろいろな補償の状況、物価の状況、そういうものから考えれば、当然それに対してもっと上積みして、見舞いも出して、十分遺族がやっていけるようなそれをやってもらうことが必要だと思うんですよ。これは法律で強制するというものではないにしても、やはり非常に貴重な犠牲者として十分それに対して報いる必要がある。その点についてこれは建設省ですか、基準局のほうですか、その点についての指導をする役所は。とにかく十分話して、世間でも納得するというような十分な補償はやってほしいと思います。
#117
○国務大臣(坪川信三君) 春日委員御指摘になりました前段の問題につきましてでございますが、先ほどから建設省並びに労働省の政府委員が答弁しておりますごとく、非常に重要な問題でございます。したがいまして、責任者である私といたしましては、今後も施工の場合における監督あるいは現場の秩序あるいは非常に際するところの避難所、これらの重要な問題につきましては、十分指導もいたし、再びかかる不幸な事件のなきよう適切なる、また強力なる指導監督をいたしてまいりたいと、こう考えておる次第であります。
 後段にお述べになりました点は、先ほど沢田委員にも政府としてお答えをいたしましたごとく、労働基準によるところの労災の立場からくる法律上の補償の措置は当然でございますとともに、道義的に考えましても、これらにつきましてはやはり最善の弔意を呈上いたすということが、私は当然の道であろうと思いますので、十分これらにつきましては施工者に対して配慮、指導をいたしたいと、こう考えております。
#118
○委員長(岡三郎君) ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#119
○委員長(岡三郎君) 速記を始めてください。
 それでは、本日はこれで散会いたします。
   午後零時四十五分散会
     ―――――・―――――
三月二十八日本委員会に左の案件を付託された、
ソース: 国立国会図書館
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