くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第061回国会 商工委員会 第21号
昭和四十四年七月二十四日(木曜日)
   午前十時三十三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 七月二十二日
    辞任         補欠選任
     中村 英男君     阿具根 登君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         八木 一郎君
    理 事
                川上 為治君
                剱木 亨弘君
                土屋 義彦君
                大矢  正君
    委 員
                赤間 文三君
                井川 伊平君
                大谷 贇雄君
                村上 春藏君
                竹田 現照君
                塩出 啓典君
                向井 長年君
                須藤 五郎君
   政府委員
       通商産業政務次
       官        植木 光教君
       通商産業大臣官
       房長       両角 良彦君
       特許庁長官    荒玉 義人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小田橋貞寿君
   参考人
       弁理士会工業所
       有権制度特別委
       員会委員長    奥山 恵吉君
       弁  護  士  戒能 通孝君
       社団法人発明学
       会顧問      北岡  実君
       武田薬品工業株
       式会社特許部長  松居 祥二君
       森産業株式会社
       社長       森  喜作君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(八木一郎君) ただいまから、商工委員会を開会いたします。
 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本法案審査のため、参考人として弁護士戒能通孝君、武田薬品工業株式会社特許部長松居祥二君、弁理士会工業所有権制度特別委員会委員長奥山恵吉君、森産業株式会社社長森喜作君、社団法人発明学会顧問北岡実君、以上五名の方に御出席を願っております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人各位におかれましては、御多用中のところを本委員会に御出席くださいましてまことにありがとうございました。
 本日は、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会の審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 なお、各参考人にはそれぞれ二十分程度の陳述をお願いいたし、その後、委員からの質疑にお答えいただくことにいたしておりますので、さよう御了承をお願いいたします。
 それでは、まず戒能参考人よりお願いいたします。
#3
○参考人(戒能通孝君) 私は、今度の改正提案は形の上では事務的改正である、手続的改正であるという形をとっておりますが、特許という制度に対しましては非常に大きな変革をもたらすものであるというふうな印象を持っておるわけでございます。
 まず、この提案によりますと、申請書の提出後一年六ヵ月いたしますと、出願者の意思に関係なく、強制的にその図面、申請書が公開されるわけでございます。もちろん公開して、それから半年ぐらいの間に許可がくる、特許権が獲得できるということになりましたら、それでもけっこうだと思います。ところが実情におきましては五年ぐらいは待たなくてはならないということになるようでございます。そうなりますというと、発明というものにつきまとう一番重要な財産であるところの秘密が結局ばれてしまう、秘密が破られてしまうということになるだろうと思います。もちろん特許申請の大部分は、やっかいなノーハウなんかには関係しておらなかろうと思います、それを伴うような困難な発明というものは必ずしも出ていないと思います。しかし、単純な発明であればあるほど、それが早期に公開されてしまう、そして書類を見るだけで、ヒントを与えられるだけで模倣されるという可能性を持ったものであるとしますと、現実には、これは財産権に対するきわめて重大な侵害になると言わざるを得ないように思うのであります。しかも、最近でございますと、各企業ともいかにして新しい情報を得るかということに非常に真剣に努力しております。そして社員を訓練して、できるだけ早く電子計算機の使用方法を覚えさせるというようなことをやっておるわけでございます。したがって、情報の拡大スピード、拡大速度は非常に早いというふうに考えなければいけないと思います。そしてまた、一つのヒントが与えられれば、その製作プロセスを変えて、そして別個の方法によって同じ目的物をつくるというふうなことは、これは容易であると考えなければならないと思います。言いかえれば、今度の改正提案によりまして、私有財産権であるところの発明の前提、つまり発明の秘密というものは、これは根本的に失われる可能性が出てきはしないだろうかと思うのであります。もちろん法案におきましては、強制公開をされた人が、これがロイアルティーの請求をすることができる、通常の実施料の請求をすることができるということになっておるわけでございます。しかし、実施料の請求手続は、裁判所に訴えを提起しなければならないと思います。ところが裁判所に訴えを提起する事実をできるだけ確定する上から申しますというと、できるだけ早い時期に盗用を発見し次第、できるだけ早い時期に訴えを提起しなければなりませんが、しかし、裁判所としては、五年も六年も先になって特許権が確定し、それではじめて審査料の支払い、ロイアルティーの支払いを命ずるわけでございますから、実施料の支払いを命ずるわけでございますから、したがって、その間はこれはお休みにせざるを得なくなってまいります。はっきり申しまして、裁判といたしましても、これは全く気の抜けた裁判になってしまいます。そのうちに裁判官がかわってしまう。最初の審理をした裁判官とその次の人と全然かわる。いよいよ裁判が始まる前後におきましては事情が全然変わってしまうというふうな事実になるのではないだろうか。したがって、実施料の請求権があるというふうにいたしましても、事実上はこれはできないということになりはしないか。よほどの忍耐心がない限りこれはできないということになりはしないかと思うわけであります。
 早期公開という立場をとり、しかもそれが強制的に行なわれるということになってしまいますというと、事実上は、重要な発明についてはむしろ特許申請が行なわれなくなる。そして思いつき的な発明、それからほんのちょっとした改良的発明というものについての特許申請もしくは実用新案の申請が行なわれ、逆に申請数は非常にふえるという可能性があるのではないだろうかという印象を持つわけでございます。要するに、こうした提案がなされたというのは、これは審査促進ということを目的にしておる。つまり早期公開をすることと、他面におきまして審査は審査請求があって行なうという立場をとっておるわけでございますが、しかし、審査請求をする、特許の申請をするということは、特許権を取るために申請するわけでございますから、特許権を取るための申請をしておきながら、審査請求をしないということはまずまず考えられないと考えていいのではないかと思います。のみならず、こうした制度が置かれる結果、特許庁の職員自身の職務内容、仕事量というのは、当然ふえざるを得ないと思います。
 まず第一に、少なくとも審査官の立場から申しまして、ある申請が公序良俗に反するかいなかということは、一応資料を見なければならぬ。さらにまた、今度の特許法で定められた補正の手続、かなり厳格な補正の規制がございますので、その補正がはたして妥当であるかどうかということも審査しなければならなくなってくる。しかも、特許の審査官というのは一年か二年ではなかなか成長するものではございません。発明の新規性というものをとらえなければなりませんので、新規な発明であるかどうかということを判断することができ、他の文献に載っているかどうかということをさがすことができるという人は、ほんとうに数年かかるわけでございます。熟練した審査官が、新しい仕事というものを持ってこられまして、そのほうの仕事にとられてしまいますというと、残った審査官の仕事量というのは当然ふえてくることに違いないと思います。しかも現在の特許庁の建物というのは、もはやほとんど破産状態にきているのじゃないか。多数の人がごたごたと出入りするという形になっておりまして、事実上はもはや破産状態にきているのではないだろうか。言いかえれば、今度の提案は、実は建物新築にかえた提案みたいな印象を受けないわけにはまいらないわけでございます。もちろん建物を新築すると申しましても、東京都内に、特に現在の特許庁の付近に何万坪という土地を求めることはできません。したがって、新築建物というのはたとえば筑波学園都市などのところに行かざるを得ないということが起こってくるに違いありません。それに対して組合が反対するから、そこで建物新築にかえて法律を変えるというふうな形になっているんじゃないか。一体どうして従業員、公務員そのものに対して説得できないかという印象を持たざるを得ないわけでございます。建物をつくるについては、衆議院の審議によりますと、大体百億円ぐらいかかるというふうなことが出ておりましたけれども、しかし、どっちみち特許を申請する人たちは、早く特許権をもらいたい、それによって経済的価値を生み出したいということを前提にして申請しているわけでございますから、特許の申請の手続に対して、かりに一万円審査料がふえたからといって、別に文句を言われることもないであろう。建物新築費ぐらいは十分に出すことができるのではないだろうかと思われるわけでございます。それからさらにまた特許の受付となりますと、文献の整理がきわめて重要なことは申すまでもございません。文献整理につきまして、人力だけにたよるわけにはいかなくなりつつあるというのが現状でございます。そうなると、電子計算機のソフトウエアの開発というのは非常に重要でございましょう。これに対してやはり何といっても必死に取り組まなければならないという問題が出てきているのではないかと思います。しかし、現在使われている電子計算機というのは、やっぱりハードシステムのかわりのような印象を受けます。ことに文章というふうなものを電子計算機の中に盛るということになりますというと、これは相当な困難なことが出てくるわけでございます。ところが、今度の制度によりますというと、逆に申請書の文書があいまいになるおそれがあるのではないか。どっちみち公開されるならば、あいまいな形で申請するということが起こるのではないか。つまり電算機に乗りにくい文章になるのではないかという印象を持つわけでございます。文章あるいは図面が――図面はいま電算機にのりませんけれども――文章があいまいな形になってまいりますと、ますます電子計算機の構造を複雑にする、むずかしくせざるを得なくなってくるというおそれがあるのではないだろうか。現在では特許公告はほぼ特許権がくることが間違いないものだけに行なわれているわけでございますが、少なくとも公報を見れば、そのまま実施できるような文章にしなければなりませんし、ある程度までなっているということになると思います。今度はどうなるかわからないというものを出すわけなんで、文章が当然あいまいになって電算機にのりにくいことになり、電算機使用方法の開発をむしろ阻害することになりはしないであろうかと懸念されるわけでございます。その上にもってきまして、現在行なっているところの特許申請の補正というのは、要するに内容の補正ではございません。こういうふうに書き直すと通りやすいがというふうなわけで、内容はそのままでございますけれども、表現はちょっと変えるという程度の補正でございます。ところが、今度の法案による補正というものは、これはそれではなくて、何を書いたらいいのかわからない。最初の文章があいまいな形で出されて、その補正ということになってまいりますと、そうすると補正自体が非常に困難なものになり、そしてその補正がはたして補正なのか新規申請なのか判断すること自体が、知能と技術と時間を要することになりはしないかという印象を持つわけでございます。
 私といたしましては、むしろこの辺で特許法というものに関する基本的な検討が必要になっているのではないか。現在では、むしろ情報過多であり、特許過多になりつつありますので、むしろこれは国際的に特許制度に関する共同研究というものが要る時期になってきておるのではないか。特許基準をどうするか。現在では一発明一特許主義というたてまえをとっておりますが、国際的に不正競争防止法の立場から、特許というものを考える道がないであろうか。そのためには時間的余裕をもっととってもいいのではないか。こちらだけ、日本だけ早く発表しちゃうというやり方よりも、むしろ特許制度全体を検討する時期にきており、また、各国ともそれに協力し得べき体制に現在ではあるんじゃないかという印象を持ちますので、こうしたむしろ特許制度に逆行するような改正案は、これは廃案にしていただいたほうがいいのではないか。特許制度そのものをもっと基本的に検討していただくことが望ましいというふうな印象を受けておるわけでございます。
 これが私の簡単な意見の陳述でございます。
#4
○委員長(八木一郎君) この際申し上げますが、戒能参考人は時間の関係が限られておるとのことでございますので、戒能参考人に対する質疑をこの際先に行なわさしていただきたいと存じます。
 戒能さんに御質疑のある方は御発言を願います。
#5
○川上為治君 特許の請求が非常に多いんですが、これを根本的に早く解決する方法はどういうことをすればいいんですか。
#6
○参考人(戒能通孝君) これは本来特許庁長官の考える仕事でございまして、私の考える仕事ではないのでございます。結局いまの段階におきましては、私は特許庁の建物自体がもはや一つの障害物になっていると思います。ああいうふうにごちゃごちゃのところになってしまいますと、もはや人員増加もできなくなっている。あすこに審査官をもう数百人ふやすといいましても、実はもう入らなくなってしまっていやしないかと思うのでございます。したがって、建物の改造がまず第一の問題だと思います。
 それから次に、これはおそらく促進には間に合わないと思いますけれども、今後の基本的な企画から申しますと、電算機の使用方法、利用方法に関する共同研究が非常に必要だと思います。何も特許庁の方だけが電算機の勉強をする必要はございません。世界的に電算機の研究、特許に向いた電算機の研究依頼というものを行なってもいいのじゃないか。アメリカの何かSMARTという形の電算機でございますと、文章がわりあいにそのまま入るようでございます。日本語の文章をそのまま入れるにつきましては、電算機に入れる文章に直すためには苦労が要ります。これはどうしたら早く直せるか、電算機側で受けることができるか、いわゆるソフトウェアの開発に対して、もっと努力をしてもいいのではなかろうかと思います。そうすれば検出が相当に容易になるのじゃないかと思うのでございます。現在の特許庁の電算機というのは、カードがわりみたいなものになっていやしないかという印象を持つわけでございます。カードがわりもけっこうでございますけれども、カードでできるだけたくさん引けるようにしようというためには、電算機のソフトウェアの開発というものがもっと重要だと思います。そして、できれば新規性の探索というものが時間的に節約できるように、つまり審査官の机の上にボタンがあって、ボタンを押せば少なくとも従来の記録が、特許方法がそのまま浮かび出してくるような施設というものがなければいけないんではないだろうか、そのためには、どうしても個室が必要になってくるということになりはしないだろうかと思うわけです。
 お金を使うだけで審査がはたして早くなるかどうかはわかりません。もちろん審査官自身の心がけが非常に重要でございます。お金を使うだけで早くなるとは申せませんけれども、しかし、現在では記録をさがして歩くほうにむしろ時間がとられる。記録をさがすだけでおそらく労力の三〇%ないし四〇%とられる。それから、若い審査官というのが、どこに記録があるか正確にわからない。正確にさがして歩くために数年間の訓練が要るというようなところにネックがあるんじゃないだろうかと思うのでございます。
#7
○塩出啓典君 今度の法改正によって特許庁の職員の仕事の量がふえるんではないか、そういういま御発言でございますが、大体今度の法案の趣旨は、請求権を認めて、審査請求が少ないから審査が促進されるのではないかと、そういうような意図でこの法案が出されているわけでありますけれども、いま戒能さんが、審査の量がむしろふえるんではないかと、そういう点、もう少しわかりやすく……。
#8
○参考人(戒能通孝君) 私としては、つまり特許を請求するのですから、特許権を取るために審査請求をするのは当然だと思います。審査請求をしない特許申請というふうなものは、これはちょっと、抽象的にはあるかもしれませんけれども、事実上は考えられないわけでございます。したがって、もし新規性の、つまり何か証明だけがほしいということになりましたら、新規性の証明だけをこしらえるような、そういう一種の仮登記みたいな制度を考えてもいいんじゃないか。出願公開の制度ではなくて、要するに制度的な、公開を対象とするところのそういう制度を設けたらいいんじゃないか。これは必ずしも請求権とは関係なくて、たとえば特許の防衛申請みたいなものでございましたら、これは防衛のための出願といいますか、公開出願だけを認めていいのではないか。これだってもちろん仕事はふえますけれども、これは必ずしも特許庁でやる必要はございません。どこかで記録はこしらえて、そしてそこでは特許とは関係なしに公開する、つまりそこでプライオリティをつくるというだけのことにしてはどうか。現在のように出願公開と、それから審査請求というものを結びつけてしまいますと、出願公開の手続に関する仕事がふえてまいります。少なくとも出願公開の手続だけはよけいふえてくるということが言えると思うのです。現在は、特許公告は大体出願件数の半分か六割前後だと思います。ところが公開手続をとりますというと、四割だけは印刷手続がふえてまいりますので、それに関連する仕事量がふえてくることだけは間違いないと思っております。したがって、今度の提案というものは、実を言えば審査官の負担を若干でも軽くして、早く審査をするということが目的でございましょうけれども、その目的を達成することができるかどうか疑わしいと思うのであります。
#9
○委員長(八木一郎君) それでは戒能参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 戒能参考人におかれては、御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございました。
#10
○参考人(戒能通孝君) ありがとうございます。二十二日ということでございましたので、二十二日は時間を取っておきましたけれども、今日に変更されましたので、申しわけございません。
#11
○委員長(八木一郎君) 次に、松居参考人にお願いいたします。
#12
○参考人(松居祥二君) 松居祥二でございます。
 私は、特許法の内容と申しますものは、特許法第一条に掲げております「目的」、すなわち「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」、この趣旨に沿わなければならないものだと、かように考えております。現行法もなかなかよくできた法律とは存じますけれども、この数年間のわが国の発明及びその出願者の状況並びに審査の実態というものから考えてみますと、現行法のままでは、この特許法第一条の目的が達成されないのではないかと、かように考えるわけでございます。
 その理由はいろいろございますが、一つは、結局出願数の増加というもの及びそれに対応した審査がタイムリーに行なわれないという、その二つのことのために審査がたいへんにおくれておる。審査だけではございませんので、審査が終わりましても、審査官と出願人の間の意見が食い違いますと、それが審判に回るわけでございます。その審判でまたおくれるという問題があるわけでございます。この審査、審判と両方でおくれるという実情のために、技術が長く秘密に保たれるということが現実に行なわれておるわけであります。審査には早いものもおそいものもございますが、平均いたしますと四年以上かかっております。審判に回りますと、最初から通算いたしまして六年以上かかるというふうなことは決して珍しくないわけでございます。
 このように、新しい技術が長く秘密の状態にあるということは、発明者にとっても非常に不利益である。また企業にとっても不利益、企業は発明を実施する立場でございますから、それにも不利益でございますし、また第三者である公衆にとっても不利益であると、かように考えております。
 まず、発明者にとってどういう不利益が現在行なわれているかと申しますと、現在審査未着手が六十万件、審判には三万五千件ある、これは捨てられておるわけであります。そういう状態で新しい発明をしていくということは、まるで地雷が埋められている道を手さぐりで歩くようなものでありまして、いつそこで自分より先に出ております発明が爆発するかわからない、そういう状態で研究をする。これはきわめて研究者、発明者にとって不安定な状態、不安な状態ということになるかと思います。そして結果的には発明者は他人の発明のあることを知らないで研究をいたしましたために、結果的には無益な研究に終わったと、こういうことが起こってまいります。現在、企業は個人の発明を買い取りまして、あるいは借り受けまして発明を実施するということもあるわけでございますが、企業としましてはその安全性の立場から、それ以前に他人の発明があるかどうかわからないというふうなものは、これは実施を差し控えるわけであります。発明者の側から申しますと、自分の発明を企業に実施させるというチャンスを失するわけでございます。もちろん、発明者が自分で実施する場合もございますけれども、その場合は、やはり他人の出願があるかもしれない、その結果、一たん始めた事業を中止しなければならぬかもしれない、こういうふうな危険にさらされておるわけでございます。そうしてまた、発明者としましては新しい技術というものが見えない状態、数年間新しい技術が秘密に保たれておりますから、新しい技術を見た上で新しい技術をつくっていくということが不可能になるわけでございます。したがって、自分ではたいへんりっぱな発明をしたと思っておりましても、実は古いものであるというふうなことが起こっております。これが発明者にとっての不利益であるというふうに考えております。
 次に、企業にとっての不利益でございますが、企業は、まず多くの企業が発明者をかかえておるわけであります。研究機関というものを持ちまして、発明者をかかえておりますが、発明者への不利益というものは、結果的には企業への不利益ということが言えるわけでございます。企業は自己の発明あるいは他人の発明を実施するわけでありますが、その実施に踏み切ることができない。またリスクをおかして踏み切りましたあとに、予想外の特許権が出てまいりまして、多くのトラブルに巻き込まれるという例は数々あるわけであります。と申しますのは、現在企業としましては、この技術革新の早い時代でございますから、ある程度早く実施をしなければならぬ。そこで多少のリスクを踏むわけでございます。そのリスクが現実のものとなるという例はままあるわけでございます。
 その次に大衆の不利益でございますが、大衆が特許公開がおくれてまいりますと、どういう不利益をこうむるかと申しますと、結局数年前にでき上がった古い技術が公知にならないということであります。その結果どういうことが起こるかと申しますと、本来公知になっている技術が秘密状態に保たれておりますために、結果的には、審査に際しまして程度の低い技術が許されることになるわけであります。そういたしますと、程度の低い技術が許されますと、大衆は、結局程度の低い技術に与えられた独占権というもののために不利益を受ける、こういうことになってまいります。もう一つは、技術が秘密に保たれるということは、技術の豊富化――技術というものはいろいろの研究開発が行なわれ、それが公開されることによって豊富になっていくわけでありますが、その技術の豊富化ということが妨げられるわけであります。これは結局技術の進歩に妨げがある。そういたしますと、新技術の恩恵を受けがたくなる、こういうことになってまいります。新技術の恩恵が受けがたいということは、これは第三者である大衆にとっても不利益である、かように考えるわけであります。
 それで、現行法のもとにおきまして、このような審査のおくれから生じます弊害を除く方法というものがいろいろ考えられるわけでございますが、その一つといたしまして、すでに有数の審査国でございますドイツ及びオランダにおいて採用されております早期公開制度並びに審査請求制度というその原則を、日本特許法に導入いたしまして、それに伴いまして、公開発明の保護に関する規定あるいは明細書の補正の規定というふうなものが置かれた。それが私はこの今回の法案である、かように理解をしておるわけであります。私はここで早期公開制度並びに審査請求制度の導入ということを申し上げたのでございますが、これはこの新しい法案を見ましても、その特許法の実体にはさほどの変化はないのではないか。ただ現行法の中にそういった二つの制度を組み込んだというふうに考えられますので、導入というふうに申し上げたわけでございます。現行法では、出願をいたしますと、それは同時に審査請求をしたということになってまいります。今回の法案では、出願と、審査請求とが区別されたわけであります。しかし、出願と同時に審査請求をしてはいけないということにはなっておりませんので、もし出願と同時に審査請求をいたしますと、それは現行法と同じことということになるわけであります。しかも審査請求をいたしました結果、特許庁の御努力によりまして、その審査がどんどん早くなってくる。かりに出願と同時に審査請求をいたしまして、一年半以内に審査が終わるという時代がくれば、もはや公開制度というものも何ら意味はない。現行法と同じということになるわけであります。その時期がいつくるかわかりませんけれども、その時期がくれば、公開制度というものは特別の意義は失ってしまう、かように考えております。しかし、審査が早いかおそいかということは別といたしまして、現在の日本の特許制度では、早く出願した者が勝つというところから、その技術が将来工業化されるであろうかどうかということは深く検討しないで、発明ができれば急いで出願をする、こういうことになっておるわけであります。この辺がアメリカと非常に違うところでありますが、したがいまして、出願はしたけれども、よくよく考えてみたら、これはどうも工業化する必要はない、工業化してもものにならぬ、こういう発明が当然あるわけであります。そういうことを考えますと、今回の制度のように、まず出願をしておいて、さらにゆっくりと考えて審査請求をするかしないかということで、あらためて願い出るということは、非常に合理的な考え方ではなかろうかというふうに考えております。一年半前にこれは要らないようだということに気がつけば、そこで取り下げておけば、もともと公開にもならない、こういうふうな制度になっていると理解しております。また、一年六ヵ月で公開をされました場合に、発明が人に見られるわけでございますが、これに対しては、一応それを知って実施した模倣者に対しては補償金を要求できるということで発明者を保護しようとしております。この考え方もドイツ、オランダと同様のようでございます。
 審査請求の費用の問題でございますが、これは確かに現行法よりは多少高くなっております。この高いか安いかということはなかなかむずかしい問題だと思うのでございますけれども、特許出願をいたしまして十五年間の独占権を得るのだ、その十五年間の独占権というものは非常に大きな経済的メリットに通ずるものだと思うのでございますが、このようなメリットから比べた場合に、これが高いかどうかということを考えますと、必ずしも発明者として耐えがたい高額ではないのではなかろうかというふうに考えております。もちろん安いほうがけっこうだとは思いますけれども、ドイツ、オランダの大体三分の一ぐらいでございますし、がまんならぬというほどではないとわれわれは考えております。
 次の問題点は、一年六ヵ月たちまして行なわれました公開が、発明者出願人にとってどういうふうな利益と不利益をもたらすかということは非常に大きな問題でございます。
 私、これをいろいろ分析して考えたのでございますが、まず第一に、自分の技術が公開されるわけであります。発明者が出願いたしまして、それが意思に反して公開される――もっとも、意思に反したかどうか、特許を取るのだから、公開されるのはやむを得ないという覚悟で出すのでございますが、まずまずとにかく法律上いやおうなしに公開される、かようなかっこうでございますが、これは確かに他人の技術も公開される、他人の発明者の出願も公開されるわけでございますから、発明者相互間では非常に公平である。お互いに相手の技術がわかりますから、それによって研究テーマというものの重複を避け、不必要な研究をやめるということができるわけでございます。この点は一つのメリットではないかと考えております。現在、過去にはむだな重複研究を非常に長くやっておったということが、これは私どもの会社でも多々ございます。
 それから発明者にとりましてのメリットは、他人の技術が早く公開されますので、それを模倣するというと非常に語弊がございますが、それに基づいて、それが新しい技術の上にさらに新しい技術を積み立てていく、こういうことが可能になってまいります。これも発明者、研究者にとってはメリットに属すると思います。私も武田薬品に入りまして、研究所に三年くらい研究いたしておりましたけれども、やはり最新の技術を知った上で研究するということが研究者にとって最も重要なことでございます。その点はメリットである。
 公開されました発明につきまして、あとで審査請求をいたしました結果、特許にならなかったという場合に、これは権利になりませんので、結局公開だけに終わった、他人に知らしめただけである、かような不利益が生じてまいります。これは確かに発明者がどうも損をしたのではないか、こういうふうに考えられるのでございますが、これももう少し角度を変えて考えてみますと、特許にならなかった発明というのは、もともと技術レベルの低かったものであります。高ければ特許になるわけでありますから、特許にならない程度の技術というものは、もともと他人も容易に考えつく技術だ、こういうふうに考えられるわけでございますので、それが特許にならなかったといって、本人はどうお考えになるかは別といたしまして、客観的に見れば、それほど大きな被害を発明者に与えたというふうには言えないと存じます。ノウハウというのは、もともと現在ではわれわれは特許出願いたしません。これは公告になろうが特許になろうが、模倣されましても、なかなか模倣の技術を発見されませんので特許に出願いたしませんから、今度の早期公開制度が採用されましても、おそらく現在と同様に特許申請をしないものだろうと考えますので、この点については特別の問題はないと考えております。
 この公開後特許にならなかったという不利益は、実は現行法でもあるわけであります。現在は、審査官が審査をなさいまして公告決定というものをしていただくわけであります。審査官も人間でございますから、文献を見逃がされることがあるわけであります。そういたしますと、審査官は文献を見逃がして、こういうものを新しい発明だと思って特許公告されるわけでございますが、競争会社がよく調べますと、ほかに文献が出てまいりまして、そこで異議が出ます。その異議の結果、死んでしまうわけでございますが、この場合には、審査官がもう少しよく書類を見て、公知文献を発見して拒絶してくれればよかった、審査官がミスをしたからたいへん損をしたということ、こういうことは現行法でもあるわけですが、ある程度の運不運というものはやむを得ないのではないかと考ております。
 出願が公開されました後に模倣者が出た場合、これを直ちに禁止するということが改正法ではできないので、公告あるいは特許になったあとで補償請求をするということになっております。直ちに禁止ができないという点は不利益であると思います。これは、その点だけの不利益と、公開によって得られる発明者、出願人の他の利益というものとをバランスしてわれわれは考えております。いいところだけということは、これはなかなかあらゆる法律でむずかしいと思っておりますので、メリットとデメリットをバランスしてこの法律でよかろうかと、かような考え方をいたしておりますが、この点につきましては、差しとめ請求がすぐにできないということはございますけれども、いわゆる公告になれば差しとめ請求ができるわけでございますから、模倣者が出た場合あるいは出るおそれがある場合には、審査請求を早くやる、極端に言えば出願と同時に審査請求を行なっておくということが可能でございますから、相当その危険は減殺されるんではなかろうか。また、特許庁のほうでは、そういう侵害が起こった場合には、緊急審査という特別の制度を設けまして、特にそれだけは早くやってやろうと、こういうこともお考えになっておるようでございますので、そういうことがうまく運用されますれば、公開発明が模倣されて、長くほうっておかなければならぬというふうなことはなくなるのではなかろうか。むしろ、裁判が非常にひまが要るという、現行の裁判のほうに問題があるのではなかろうかと考えております。
 また、発明者が自分で実施をして、人を差しとめるという場合のことをいま話しているわけでございますが、発明者がこれを第三者に実施させて、自分は実施しないでロイヤリティーを取るだけだと、こういうふうなケースが多々あるわけであります。特に個人の発明者におきましてはそういう例が多いわけでございますが、現在の特許法では何年間ロイヤリティーが取れるかと申しますと、これは十五年間取れることになっております。特許権が十五年間続くわけでございます。これは改正法案におきましてもその点は十五年間でございますが、公開から公告までの間に少なくともロイヤリティー相当額の補償金が取れるわけでございますから、それもロイヤリティーだというふうに考えますと、最も長い期間では十八年六ヵ月間ロイヤリティーが取れるということになっております。特許権はお金をもらうだけのものではないと思いますけれども、そういった立場から考えますと、改正法は三年六ヵ月間余分にロイヤリティーが取れる――ロイヤリティー相当額の金。まあ補償金はロイヤリティーじゃないかもわかりませんが、まあそういうふうなお金が取れるというふうになっておりますから――まあ現実に取れるか取れないかは別の問題でございますが――法制上は取り得るようになっておるわけです。
 その次の問題は、公開公報を読まなければならない、たくさんの書類が出てたいへんだという問題がございます。これはわれわれも重要な問題でございますので十分に検討をいたしました。ところが、この公開公報というものは読まなければならないかというと、そういうものではないわけです。公開公報は現在の特許公報、つまり差しとめ請求権が発生したときに出てまいります公報とはその性質がやや違っておりまして、その点では、特許公報が権利情報であるということに比べて、今回の公開公報は技術文献的要素が強くなっている。差しとめ請求権がないわけでございますから、技術文献的要素が強い。技術文献的要素を中心として考えますと、技術文献というものはもともと非常にたくさんあるわけです。研究者がとうてい読み切れないほどの文献というものが世界じゅうから出ております。でございますから、研究者は全部の文献は読まない。したがって、どの文献を読むかという選択の問題になってまいりますので、もし公開公報が価値がある、非常に技術文献として価値があるというならばそれを読み、そのかわり読めなくなったほかの文献は落とすというふうなことをやらなければならないだろう。これは考えてそうなるだろうとは思いますけれども、これは、技術文献はもともと全部読み切れないものだという点から考えて、やむを得ないというふうに考えております。まあ私は、特許公報というものは技術文献の中ではかなり価値があると考えていますから、当然公開公報も同様の価値がある。したがって、私は研究者に対しまして、いろいろ技術文献があるけれども、そういうものは多少やめても公開公報を読むほうが得ではありませんかということは、社内でも申しておりますけれども、読まなければならないというものではないわけでございます。ところがもう一方、公開公報というものは、これは将来特許につながるわけでございます。特許につながるという面から考えますと、これは権利に関する情報ということになります。そういたしますと、これは読んでおかないと将来困るかもしれないということになってくる。じゃそれを全部読めるかということになりますと、これはなかなかむずかしい。そこでわれわれは、明細書の全体を見なくても、そのほんの一部であるところの請求範囲という部分、これは非常に短い部分でございまして、まあ発明の概要を示した索引のようなものでございます。そこだけを読めば、公開公報のほんの一部である請求範囲だけ読めば権利に関することはわかる、したがってそこを見て権利に関するものかどうかをふるい分けをしてしまって、権利に関係がある、自分の将来の事業、あるいは発明に関係がある、権利として関係があると思うものだけについて全文を読めばいいのではないか、こういうことを提案いたしまして、そういった考え方が相当程度本法案に盛り込まれておりますので、権利情報として読む場合には、全部を読まなければならないというふうな文書のはんらんに悩まされるということは非常に少なくなったのではないかというふうに考えています。したがいまして、権利情報として考えたときは、請求範囲という非常に短い部分を読めば十分であるし、技術情報として研究上プラスがあるということであれば、それは全部お読みになればいいではありませんか、こういうふうなかっこうだと理解をしております。
 以上が、大体私が改正特許法案のおもな改正点でなかろうかと考えました点につきまして意見を申し上げたわけでございますが、以上のような意見の結論といたしまして、私は本法案に対して賛成であります。
#13
○委員長(八木一郎君) ありがとうございました。
 次に、奥山参考人にお願いいたします。
#14
○参考人(奥山恵吉君) 私は、弁理士会工業所有権制度特別委員会というものが弁理士会にございまして、その委員長をやっております奥山恵吉と申します。この委員会は、今度の、あるいは過去の、それから将来の工業所有権制度の改正、あるいはそれをりっぱにするために検討する委員会でございます。
 結論から先に申し上げますと、私は本国会に提出され、現在参議院商工委員会において審議されている特許法等の一部を改正する法律案に対して、この法律案が成立することに反対するものでございます。
 次にその理由を申し述べます。この改正法案を現行特許法と比較した場合に、この改正法案はいろいろ現行法と違った性質を持っております。実際の手続で、形の上で違うことはもちろんでございますが、それに従いましてその性質が違っております。改正法案においてもいい点も悪い点もございます。その点は十分に認めます。いま、そのいい点悪い点の問題でなく、この改正法の持っている性質のうちで特殊のもの、ことに目立つものを三点あげることができると思います。
 その第一点は、改正法律案は、審査請求のあった出願をすみやかに審査すること、そのことが現行法よりも一そう重要であるという点でございます。もちろん現行法においても審査は一日も早くされなければならない、これはもうわかり切ったことでございますが、改正法においては一そう早くしなければならないという、そういう性質を持っていると思います。なぜ現行法よりも審査を早くすることが一そう重要であるかと申しますと、第一に、言うまでもなくこの改正法案は、未処理件数が七十万件もたまっているいまのこの状態を救うためにそういう使命を帯びて登板したピッチャーであるはずであります。第二に、現行法では出願発明は秘密のうちに審査されております。ところが改正法律案では、不十分なかつ不確定な仮の保護があるとはいっても、内容を公開した状態で審査されるのでございます。その状態においては、正当な競争者の正当な追撃を受けるのは言うまでもありません。この点はけっこうなんでございますが、中に不正な模倣者の不正な攻撃をも受ける状態で審査されるのであります。しかもその仮保護は、審査を請求し、審査官が特許してもよいという決定をした場合に、すなわち専門語で言うと公告決定でございますね、をしてから公告公報が出て、その後に初めて受けられる保護でありますから、現行法よりも一そう早い審査が要求されるのでございます。
 で、改正法律案の持っているこの性質に対応して、弁理士会は、審査期間を二年以内と法定すべきであると総会で決議をしております。それも二年というのは審査の第一処理をすることであって、決定をすることを要求しているのではないのでございます。出願された発明の実施開始時の統計が――なぜ二年ときめたかといいますと、出願されたる発明がいつごろ実施されるかというのを統計をとってみましたところが――二ヵ年がピークを示しております。で、そのピークをねらいましてこの主張の根底としたのでございます。また、立法技術上、審査の第一処理を二ヵ年に限ることはできないという、そういう論も聞きますが、規定としては各所にその例が示されております。また、審査期間を法定している例は英国の特許法にございます。それは英国特許法第十二条がそれでございますが、その場合には審査官でなく出願人側の処置としてこれをきめております。それは十二ヵ月以上四年以下に処置をしなければならないのだときめておりますが、これを規定した以上、審査官のほうもそれを守っております。そして、実務上、四年というものはだんだんに減ってまいりまして、三年半にし、その次に三年にし、だんだんに短縮してまいりまして、現在では二年半で行なわれております。これは同じ規定の裏と表の問題でございまして、これは立法技術に属することで、この二年というのを法定することは不可能だということは当たらないと思います。
 その特性の第二点は、改正法律案は、大きい企業の大きい発明に対する産業上の期待が強く示されております。これは各国の早期公開、審査請求を二本の柱としての特許制度――各国といいましても、いま行なわれておるのはオランダとドイツでございますけれども――それにいわれておることでございまして、日本でもその主張は強くいわれておることでございます。その点では、産業上から見てはもっともしごくでございますが、思想的に、特許制度の本来の目的である一般国民の発明奨励のほうの観点から見ますと、現行法よりも改正法のほうが劣っている点がございます。産業政策の点から、それはそれでもよいと思うのでありますが、特許制度本来の目的であるところの国民全体の発明奨励という観点から言いますと、とてもいまの膨大な文献を大企業のようには取り扱い得ないという一事から見ましても、大企業に有利である、中小企業及び一般国民には不利な点があると思います。
 この場合一言申し上げておきたいことは、大企業、中企業という分け方でございますが、あるグループでは一般の分け方、すなわち資本の大きさとか、工場の大きさ、商売の大きさとか、そういうので大企業、中企業と分けておりますけれども、いま大企業、中企業と申し上げますのは、特許制度の管理の点からいって、管理が十分にできる程度の企業は、この場合大企業と考えられるべきだと思います。特許課を十分に持ち得る企業、それはただいまの分け方からいうと大企業と見なさなくちゃならないので、一般の大企業、中企業のそのカテゴリーは別の問題だと思います。
 それで、いまの審査請求料は、入場料を高くして入場者の数を制限する式の考え方が加味されておりまして、この点はとるべきでない点だと思います。たとえばドイツなんかもっとひどくやって高くしておるようでございますけれども、このことは日本の国民全体の発明に関する思想を盛り上げるという点からいって、とるべき政策ではないと存じます。それで、この点に関しまして、弁理士会では審査料を必要最低額にすべきである、そういう決定を弁理士会の総会においていたしました。
 第三の点は、改正法律案は、現行法よりも審査が一そう困難であるというそういう特殊性を持っております。この点を指摘したいのでございます。なぜそう言えるかと申しますと、早期公開による未処理件数七十万件の明細書だけについて考えましても、それらは全部審査資料となるのであります。この場合の観点は、研究所の研究員が参考にして読むというそういう観点ではございませんで、審査をするのにそれが必要があるかどうか、そういう観点からこの場合は考えなくちゃなりませんので、その意味でございます。その資料は、たとえば紙の裏表に印刷いたしまして、一つの紙を四つに分けてそこに縮小してはめ込んだと仮定いたします。そういうふうにして印刷しても、その紙の厚さをずっと並べますと、弁理士会で大ぜいかかって計算したところによりますと、七十万件のその早期公開されるものは約二百四十メートルであります。それらが全部審査資料となるのでありますから、現行法よりもよほどたくさんになります。現行法では、拒絶されたものはもう審査資料になりません。それで落としていきますから、通ったものだけが審査資料ですから、出願したものを一〇〇といたしますと、審査の材料になるものは約四〇%でございます。約四〇%が特許になっているという、そういうことでございます。すなわち改正法案は、現行法の二・五倍の審査資料を、この点だけでも持つわけでございます。で、審査請求制度によって出願件数が減るんだ、だから審査はしやすくなるんだという説をよく聞きます。ところがどれだけ減るかと申しますと、その減る分量は、いまのところ二〇%あるいは多くても三〇%、そのくらいしか減らないのでございます。一方審査の材料は、二倍半までふくれ上がっているわけでございます。したがって、両者増減の対比から見ても、審査は現行法よりも困難となります。これだけからいっても困難になるということがわかります。その上、現行法では出願の順序と審査請求の順序とがちゃんとそろっております。現行法では出願された順に審査されていっております。ところが改正法ではそうでなく、出願とそれから審査の請求は別の順序でされます。そうすると、実際に審査するのは、審査請求の順でやりますから、出願とはばらばらな順序の審査請求でやりますから、一つの事件を審査する、それから次の事件を審査するのには、全然違った時点で出願されたのを審査しなくちゃなりません。このはなはだしい例をいまあげますと、続いた二つの出願番号の出願がございます。そうして一方は、出願と同時に審査請求をしてあるとします。他方は、七年後にできるんですから、七年後に審査請求がなされた場合、そういう場合もあり得るわけでございます。こういう場合に、両者の順序の不同は審査官の記憶力を全然役立たせないことになります。全部が新たな審査に変わるわけでございます。七年も違ったら、審査官そのものがおそらく別の人になっております。しかしこれははなはだしい例でありますが、そのほかの例においても多少ともそういう傾向はありまして、審査請求の順序の不同は、審査速度を著しく阻害しております。そして出願の先願、後願の関係について、これはちょっと専門的になりますけれども、同じものが先に出願され、同じものがあとに出願されたとき、あとのほうは消えていく、その関係でございます。それは審査官がいままで厳重にやっている審査のうちの重要な部分でございますが、その関係については全く致命的で、この点の審査はほとんど不可能に近いと思われます。
 要するに、改正法律案では審査が一そう困難になる、そういうことがはっきりと言えます。すなわち第一点であるすみやかに審査をすることを必要とする特性と相矛盾したこの第三の特性は、改正法律案の運用を現行法よりも一そう困難にするだけであります。それは当然に考えられることでございます。したがいまして、この改正法律案で問題になるのは、法律案の内容もさることながら、いかに運用すべきかの方策にあるはずでございます。ただ法律を出したからといって、それでいいものではなく、その法律は健全な運用をされることが必須条件でございます。またしたがって、改正法律案の持つところの相矛盾した先ほど申し上げた第一の特性と第三の特性――第一はすみやかに審査する必要がある、重要なのだという点でございますね。第三は、審査はいままでよりも困難であるという点――その矛盾した点と、それから現在特許庁が現実に示している実情でございますね、すなわち七十万件の未処理件数を生ぜざるを得なかったというこの実情を思い合わせると、われわれは次の重大な不安に襲われるのでございます。それも、七十万件もできたということについては、歴代の特許庁長官も懸命に努力されましたし、それから特許庁内部の方々も一生懸命努力して、その結果こうなったのでございまして、特許庁長官も人員をふやすこと、それから建築物を大きくすること、それらを非常に努力されたその結果、しかもこういうふうにできている、そういう実情なんでございます。七十万件も滞貨ができたという実情。それで、いままでの考え方から申しますと、改正法律案が成立すると、現在よりももっと多くの未処理審査請求事件が滞積されるに違いない、そういうことをおそれるのでございます。というのは、先ほど申しましたように、審査がいまよりももっと困難になっているという点でございます。このままであったらの意味でございますね。特にその不安感を抱かせる原因の一つは、先ほど申し上げましたように、歴代の特許庁長官が懸命の努力を払って特許庁の行政的拡大強化につとめられました。そうして特許庁の職員各位が苦心して未処理件数の増大防止につとめられたその結果、なおかつ七十万件ができた。そういう未処理件数が出たという現実、それをわれわれ目の前に見ているのでございます。しかも前述のように、改正法律案による処理は、現行法よりもはるかに困難であるという可能性が十分に見込まれるわけでございます。その上、特許庁の労働組合は、いまのやり方でいくと、あるいは特許庁の首脳部から示された今後の行政拡大の計画された機構の大きさでございますね、それからいって、いまよりも短期間に審査請求事件を処理してしまうことはできない、そういう報告をされております。われわれは必ずしも労働組合の主張全部を納得するものではありませんが、特許庁首脳部が同労組に対して、改正法運用機構について納得満足すべき計画を十分に示されていないという点については、われわれにも示されていないのですから、それはよくわかるのでございます。この出願事件を実際に処理する人々が満足すべき計画を与えられていないと認めたこの事実は、われわれも同様に満足できないことがよくわかるのでありまして、この改正法を現実に運用すべき特許庁の当局者が、運用し得ないということは、われわれの不安を一そうつのらせられるわけでございます。われわれは不安と申すよりは、むしろ恐怖を感じます。われわれにとっては、特許制度はその中に生きる畑であるからでございますし、そればかりでなく、それはわが国の発明者及び出願人その他企業並びに技術に関係ある人々の恐怖すべき状態を示しているからでございます。あるいはそれらの人々は十分に知っておられないかもしれません、内容について。私自身もこの特別委員会に入って、そしてつぶさにその実情を観察し、そして考察を重ねた上、初めて事の重大さを知ったわけでございまして、一般の方々がそれにお気づきなく、この方法はいいんだというふうに考えておられることはおそるべきことだと思います。
 ここにおいてわが弁理士会は、その総会において、特許制度運用を満足すべき状態に置くことを念願して、一つの決議をいたしました。それは新規性調査機関を設置することを要望するという決議でございます。先ほどもお話ございましたけれども、オランダもドイツも同じことをやっているんだと、まず早期公開して、そして審査請求でやっているんだと言われました。そのとおりでございます。ところが、オランダにはIIBと一般に言っておりますが、新規性調査機関の非常に大きなものを持っております。これはオランダ、フランスその外八ヵ国が共同でつくっている国際的な特許協会とも言うべきものでありますが、それは十分な文献を、しかも整備して持っておりまして、そして発明の新しさについて検討をしているところでございます。フランスも、この七月に行ってよく聞いてみたところが、フランスでも出願をすると、その出願に似たものをずらっと並べるわけでございます。レファレンスでございますか、似たような特許番号を並べるわけでございますね、その特許番号を並べるのは、どこで調査するかというと、このオランダのIIBで調査して――政府から頼んでそこで調査してもらって――そしてそれをつけているわけでございます。そういうわけで、われわれは要望という謙虚な形をとって総会で決議いたしましたけれども、実際の気持ちは、特許制度の専門実務家の会として、国に対してその設置を御忠告申し上げている次第でございます。そして、もしかりに目下国会に上程されている改正法律案と同時に、新規性調査機関の設置法律案とでもいうようなものが並行して出ていて、そしてその法律案が十分に信頼するに足りる、この法律案を成立さして、そしてそれを施行されても十分にその運用はその新規性調査機関が補助をして、そして進んでいける、そういうふうな確信を持ったとかりにいたしますと、審査期間を二ヵ年に限ってくださいとか、そんなことは申しません。それからまた、特許庁におかれても、審査期間を二ヵ年に法定しても、安心してその案に同意できると思います。
 要するに、われわれといたしましては、改正法律案の運用法策について、われわれが信頼し、われわれが安心できる完成した構想を示していただきたいのでございます。その構想が示されずに、その法案が固まらない現在、七十万件の未処理件数をかかえたこの実績を前にして、そうしてこの改正法律案が国会に上程されたこと、そのことがわが国の特許制度の進むべき正当な道を進んでいるのだと、そういうふうには思えないのでございます。先ほど申し上げましたように、ある法律が成立し、それが施行されるためには、それを運用するちゃんとした案が、現在はありませんけれども、少なくとも案がまとまって、この法律が出たらこういうふうにやっていくという、われわれを安心させてくださるそれが必要なんだと思います。もしこの改正法律案が少しも欠点のない完全無欠なものだと、そういうふうに仮定しても、それはその裏づけがないから、いま成立さすべきではないと思います。ましてこの改正法律案には欠点があります。指摘すると、こまかい点だと数々ございます。補正の問題だとか、それからいろいろあるのでございますが、それらの問題が実際にはあって、そうしてしかも、その運用方策の確定を伴わない現在だからこそ、われわれはそれにかわるべき欠点を補う保証を求めている。それが先ほど申しました二年間に審査してしまうのだ、審査するのだという、そういう保証を求めている。その三点が弁理士会の総会での決議でございます。
 で、われわれ自分から申し上げてはおかしいようでございますが、これは一見すると何でもない三点を拾い出したのだと、そういうふうにごらんになる向きも多々あると存じますが、実はそうでなくて、改正法律案の特性を考えまして、その特性に合わしてそういう案を作ったのでございます。したがいまして、この法律を運用する方策の確立もなく、しかもこの改正案の欠点の補正もせずに、このまま改正法律案を成立さすことは、悔いを千載に残すことを確信いたします。
 この成立といなとは、一にかかって皆さまのお手にゆだねられているのでございます。どうぞ審議を慎重にあそばされて、悔いを千載に残すおそれのあるようなこういう法律案の成立を、いまは避けられるように、切に念願する次第でございます。
 どうもありがとうございました。
#15
○委員長(八木一郎君) ありがとうございました。
 次に、森参考人にお願いいたします。
#16
○参考人(森喜作君) 私は、菌類の研究とその関係の会社の経営をしておる者でございます。そして四十三歳のときにシイタケの栽培で藍綬褒章、五十一歳のときにマッシュルームの栽培法で紫綬褒章をちょうだいした者で、現在までに百数十の工業所有権を持っておりますが、私は法律には全くのしろうとで、あるいは本日の参考人としては不適任者と思いますけれども、発明をする一人として、いままで体験しましたことから、このたびの特許法の一部改正に対しまして、参考意見を申し上げたいと存じます。お断わり申し上げますが、先ほどの武田薬品の松居参考人さんが申されたことに重複する点がございますので、簡単に述べさせていただきたいと存じます。
 最近の技術革新の進歩は全くすばらしい速度で、それに追いつくのにはたいへんのことであります。われわれは、諸先輩の発明された公報こそ、新たな知識と刺激とを得まして次の技術の開発に邁進でき得る大切な資料となるものと信ずるものであります。しかるに、その公告された発明が、ただいまのように三年もそれ以上もおくれたとすれば、それはもはや古いおくれた内容のものが多く、その間にははるかにすぐれた発明がされておるであろうということは明らかであります。その優秀な発明も蔵の中で長期保管されるならば、その空白が、その発明者個人としても、またそれが公開され、その発明を基礎としての後輩の、次の、より進んだ発明が、その間停滞することを思いますならば、国民経済の上からも、ひいては人類の幸福の上からも、大きな損失と言わざるを得ないと思います。
 発明者は特許を出したものの、その審査の結果が三年以上もわからずにおりますれば、たとえ事業にのせましても、その間不安で、あたかも松居さんが申されたように、地雷原を歩くようなものであります。またひいては、その発明の上にさらに進んだ開発の意欲が失われがちであるのであります。また、出願以前に先願者がすでにあったとすれば、その公告がおくれればおくれるほど、その後願者の不幸は大となると存じます。ことに資本の小さい中小企業者にとっては大きな痛手になることと思います。
 以上、審査遅延が改正によって、すなわち、早期公開と審査請求制度とによって少なくなるとするならば、まことにけっこうと存じます。しかし、この制度の改正だけではまだまだいろいろの困難の点があると存じます。この制度の改正に伴って特許行政に対する欧米のごとき国家予算の増額が必要と存じます。審査官の増員はもちろんのこと、その待遇の改善、また環境整備――審査官があの重い資料を腕で運ばれる姿を見るたびに、たいへんなことと常に御同情を申し上げるのでございます。すなわち、エアシュート・コンベア・システムその他電子計算機の導入もけっこうと存じます。また発明者側としますれば、分類を正確にしていただくこと。あるいは公報の閲覧施設の充実もしていただきたいと存じます。発明協会の強化もお願いしたいと存ずるわけであります。
 早期公開の利点を私の例を引きまして述べさせていただきます。
 二ヵ月前にアメリカの特許を見ますると、二重らせんリボ核酸を用いての鼻穴粘膜に塗布することによりインターフェロンによるウイルスの予防及び治療を知ったのであります。主としてガンでありますが、われわれの数年の研究も方向を転換せざるを得なくなったわけでございます。公開の早いことが研究の重複を避け、また、それを上回る研究の開発を推進することに貢献することができると思うわけであります。そのことから、私は、椎茸胞子にインフルエンザ、ガン等のウイルスを感染させて、抗体またはインターフェロン、インデューサーによる予防または治療等の出願にかえたわけであります。このことで私は明日アメリカに出発するわけでありますが、また、かつて太陽光線を利用いたしまして、ノイロスポーク、あるいは菌類による食料の製造法、すなわち大地に種をまく耕作によらないで、すぐれた蛋白の多い食料を工場で生産するというものを出願したことがありますが、審査官から証明を取るようにと言われたのでありますが、ついにこれが取れずに、これが却下された。この今度の改正による早期公開制度があったとするならば、この発明もやみに埋もらずに、あるいは第三者に知られまして、私以外の人がやり得たと存ずるわけであります。
 科学が非常に進むにつれまして、ついに月に着陸するような時代でありますので、あるいは奇想天外と思われるような、あるいは高度の発明がたくさん出されることと思います。この種の審査も早朝公開により多くの学者に知られ、批判され、そうして審査の結論も早く出て、査定の促進ともなり、滞貨がはなはだしく減るのではないかと信ずるのであります。世界各国とも技術の早期公開を目ざして人類福祉の増進につとめておるのでありますので、わが国もこれに協力すべきでございます。
 簡単でございますが、これをもって終わりたいと思います。
#17
○委員長(八木一郎君) ありがとうございました。
 次に、北岡参考人にお願いいたします。
#18
○参考人(北岡実君) 私は、わが国特許行政の現状を打開するために特許庁当局が年来払われた努力には深い敬意を表しますし、また、そのきめ手としてこの法律案が提出されました趣旨もよく理解するものでございます。にもかかわらず、遺憾ながら私は本法案の成立には賛成いたしかねます。と申しますのは、本法案には幾多の疑点がございます。たとえば法案のねらいである審査期間の短縮、こういった実効が期待できない公算が非常に大きい。二番目には出願の強制公開。特にこれは先ほども戒能参考人が申されましたが、とりわけ現行法に基づいて出願されたものを、一方的な行政上の都合でもって変更するということは、まさに国民の権利を侵すものではないかという疑念がございます。また対外的には非常な不信を買うことはないか、こういうことが心配されるわけであります。現にスイスのある会社からは、この現在の法案の進行状態を非常に気にしまして、私の友人を通じて聞いてまいっておる現状でございます。三番目には、一握りの巨大産業のために国民大衆が犠牲になっていいかどうか。この改正法案は、極限された一部業種の利益に直結するものではないか、こういう疑念がございます。
 また欠陥といたしましては、第一番目に、早期公開審査繰り延べ制度が導入されましても、オランダや西ドイツとはわが国の状況は全くそのグルンドが違っておるわけであります。その前提条件を欠いておるわけでございますから、そういうことを一切考慮せずにされても、これは効果があがらない、こう考えるわけでございます。第二番目には、出願技術の不公正な使用が行なわれます現在でございますと、これは模倣だとか盗用だとかに類するものでございますが、これが黙認されることになりますから、結果的にはずるいことを助長する傾向と相なるわけでございます。そうしますと、発明意欲を阻喪させ、またひいては自主技術の開発を鈍化させるおそれがあります。第三番目といたしましては、補償金請求権は規定してございますが、これは単なる名目的な救済規定にすぎない、こういうことでございます。第四番目には、情報書類がはんらんいたしまして、民間における特許管理の負担が飛躍的に増大する結果、特許管理能力に乏しい個人発明者や中小企業が特許制度から締め出しを食ってしまう、こういうおそれがございます。第五番目には、補正の制限が非常に複雑難解でございまして、これをめぐる判断や見解の相違でもって処理能率の低下が見込まれるということでございます。
 大体こういった疑点や欠点を内包しておりますので、この改正法案が施行されますならば、予期に反して特許制度にははかり知れない混雑が生じるわけでございます。そのため改正の目的が達成されないばかりか、かえって逆の現象の発生さえ憂慮されるわけであります。また、最悪の場合を想定いたしますと、それが端緒となって、個人発明者の消滅、中小企業の倒産、産業構造の急変といった一連の連鎖反応を起こしまして、国民経済の健全な進展はもはや望み得なくなるおそれがあります。
 時間がございませんが、その中の若干の点だけを取り上げて申し述べてみたいと思います。
 第一番目には、個人発明家や中小企業が特許制度から締め出しを食ってしまうであろう、こういうおそれがある、こういうことでございます。この公開制度が実施されますと、従来の公告公報に加えまして、公開公報がはんらんすることは申すまでもございません。そうしてこれを発明者、研究者、出願人、発明を実施をする者――大体これは企業でございますが――こういったものは、こういった書類を自分の力で閲覧、調査、検討しなければならないのでございます。したがって時間的、労力的、経済的にその負担が飛躍的に増大することは明らかでございます。はたしてこれに対処できるかという問題がございます。このことは巨大企業におきましても当然大きな問題でございまして、現に鉄鋼六社のごときは、特許部門で一様に頭をかかえ込んでしまっておるという話も聞いております。しかしながら巨大企業の場合には、その組織力、資金力などの点から見まして、無理をしてでもこれについていくことはできるでございましょうが、個人発明家とか中小企業になりますと、おびただしい情報文献の購入と、それからその資料を保存整理する場所の問題もございます。また、それらのものを自分のところで使えるように整理分類する必要がございます。また特許管理者の養成、増員等の点で全くお手あげの状態にならざるを得ないと思います。あるいは、特許管理の困難さは大企業も中小企業も同様だという議論があるかもしれませんが、これは全く実情を無視した机上の空論と申すべきでございまして、事実は決してそのようなものではございません。公開公報にいたしましても、分類されているのだから、自分のところに関係の深い技術のものだけを調査すればいいのだ、だからそんなに過重な負担にはならないはずだと言えるかもしれませんが、公告公報に比しまして、聞くところによりますと、公開公報の場合は分類が非常にラフであるそうでございます。またそれが正確に分類されているかといいますと、現在日本の公報の分類には少なからずミスが多い。決してその正確度が高いとは言えないということでございます。したがって、これは相当広い範囲でこの公報類を見ていかなければならないということになると考えられます。それにも増して、この人手不足の世の中に気のめいるような特許管理の業務、それも中小企業でやる場合には、はたして人員を確保することができるかどうか。第一、人員確保の点で行き詰まることは火を見るよりも明らかだと思われます。結局こうして個人発明者や中小企業者は、事実上特許制度から締め出しを食うほかはございません。中小企業がよって立つ基盤は、特許権、実用新案権以外にはほとんどない時代でございますから、特許制度から締め出しを食わせられれば、それで一巻の終わり、あとは没落倒産に見舞われるだけでございます。そうして中小企業関係の国民総人口に占める比率は非常に高いわけでございますから、このようなことによって産業構造の急変が起こりますと、社会不安がこれに連なってまいり、したがって国民経済の発展は大きく抑止されざるを得ないと考えます。
 第二番目は、補償金請求権というのは名目的な救済規定であるということでございます。したがって、改正法案の施行によって発明振興、技術開発は阻害されるおそれがある。改正法案では、早期公開に対処するための適切な措置が欠けておりますから、公開技術の不公正な使用が黙認されるわけでございます。極言すればこういった行為が特許法によって助長されると言ってもいいかと思います。これに対しては補償金請求権で救済されるから、公開技術については保護をはかっているという議論が成り立つわけでございますが、実際には強制公開された発明、考案は、審査されたあと公告に至るまでの間は、ほとんど保護はない、無保護の状態で放置されると言っても過言ではないと考えられます。補償金請求権はございますが、補償金というのはただ通常実施料程度の低いパーセンテージでございまして、大体最高が五%、平均二、三%かと思いますが、しかも先ほど他の参考人が申されましたように、公告後裁判所に訴訟を提起いたしまして、勝訴が確定した場合初めて請求権が得られるわけでございますが、しかもそれは請求すれば取れるという権利でございます。したがって一種の気休め、名目的、非現実的な規定だと言わざるを得ないわけでございます。それですから有力かつこうかつな企業が、最悪の場合は補償金を支払うつもりで他人の公開技術を使用いたしまして、品物を大量に生産して、大量に販売することによって大いにもうけたといたします。流通革命の時代の今日、市場にその商品が出回って需要が一巡いたしますと、売り値は顕著に低落するのが通例でございます。たとえば一個千円で売り出したものが公告寸前には二百円になっている例はありがちでございます。そうしますと、公告になりますのを待って出願人はその差しとめを請求するでございましょうが、もうそのときはすでに手おくれであって、もうけるものはもうけてしまう。そしてさて自分がやろうと思ってもすでに二百円の市価がついておるものを自分がそれ以上に売るわけにはいかない。だから商売にならないから、結局、公告するなり権利を取っても、それは空権に等しいのであります。それにつけ込んで不公正な技術の使用者が権利を買いたたいてしまう。そうして悪いやつほどよく眠るというキャッチフレーズそのままの状態が予想されることになるのであります。そういたしますと、そんなことをして発明したってしょうがないというので、発明意欲は急激に阻喪いたしまして、自主技術開発などということはから念仏に終わってしまうというおそれがございます。また先願の範囲が拡大されますので、自分の出願技術でも実施し得ない場合が生ずるわけでございまして、こうなりますと、技術は当然に潜行化する。つまりノウハウとして持っていたほうがいいということで、そういう傾向に拍車がかけられて、技術の向上、進歩は阻害されて、別個の意味で特許制度の危機に拍車をかけるということができようと思います。
 第三番目には、公開によりまして、後進諸国がこれを模倣使用いたした上にわが国へ輸出を試みたとしたならば、わが国産業はほとんど危殆に瀕するおそれがございます。御承知のとおり発展途上国といわれておる後進諸国などでも、先進国の国際的な援助によりまして着々と工業化が進んでおります。したがいまして、近い将来、わが国の公開技術を無断で使用して、そのおそるべき低賃金を利用しまして商品をつくり、しかもある商品の場合には特恵関税の恩典さえあるわけでございますから、これをわが国へ輸出してきた場合には、これが公告になるまでの期間、現在の法制といたしましては何らの処置も取り得ないのではないかと考えられます。つまり、輸入禁止が不可能だと考えるわけでございます。これではわが国の市場は撹乱され、また、日本の輸出市場は好きほうだいにじゅうりんされてしまいますので、日本の産業界としては非常な重大な場面に遭遇するわけでございます。これはナショナルインタレストの観点からいいましても、わが国の産業政策上重大問題ではないかと考えるわけでございます。
 また第四番目には、改正法案の実効は期待できないということでございます。早期公開、繰り延べ審査制度を柱とする改正法案のねらいは、審査、審判の処理期間の短縮、処理促進にございますが、先ほど申しましたように、わが国のグルンドはオランダや西ドイツなどの欧州のそれとは全く違っております。そのために審査請求は殺到いたしましょうし、審査業務は複雑困難になってまいりますし、補償金をめぐる紛争関係は激増します。また、民間の特許管理業務の膨大化などによりまして、特許制度をめぐって非常な混雑が生ずる。そのために、決して所期の目的は達成されないであろうという公算が大きいわけでございます。なるほど、単に表面的な抽象論だけで考えますと、こうした制度は処理促進にプラスすることがあることは否定できないわけでございますが、しかしそのためには、たびたび申されますように、オランダのIIBのような新規性調査機関であるとか、それからドイツに見られる特許裁判所の完備、こういった状態が必要なのではないか。これは少なくともこういった制度については不可欠な前提要件であると考えられます。それでございますから、こうしたことを一切没却して新しい制度を導入し、法制化して施行することは、あたかも最新型でブレーキのきかない欠陥車を走らせるのと同じではないかと、こう考えるわけでございます。
 第五番目には、早期公開、審査請求制度は、唯一無二の処理促進策ではないと考えられます。すでに斯界の有識者によって指摘されていることでございますが、出願の早期公開、審査請求制度は、特許制度が当面する緊急事態打開のためのやむを得ない一つの方法でありますから、これが唯一無二の最良策でないことは明白でございます。そして、ほかに正道があるとするならば、何もこうした突然変異的な権道による必要はないわけでございまして、処理促進のためには、とりあえず現行法の部分的修正であるとか、あるいは実務面に関する諸般の刷新、たとえば特許庁機構の充実、人員の増加、特に審査、審判系の人材の確保、処遇の改善、事務処理の能率化などによって十分に所期の目的は達成されるものと確信いたします。と申しますのは、二、三年前でございましたか、ちょうどわが国と同じような状態に悩んだアメリカの特許局が、流線型方式と呼ばれている事務改善によりまして、みごとに審査の促進に成功しておるのでございます。この詳細はキントナー報告に明らかでございますが、そういったわけで、私はこの法案の成立については賛成いたしかねるものでございます。
 以上でございます。
#19
○委員長(八木一郎君) ありがとうございました。
 それではこれより質疑に入ります。質疑のある方は御発言を願います。
#20
○大矢正君 松居参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
 前提として申し上げたいのでありますが、私は松居さんのような専門家じゃありませんし、またこの特許というものの内容に深く立ち入ったこともありませんので、端的に言えば全くのしろうとであります。皆さんの書かれた本を読ましていただいたり、あるいはまた自分で勉強したり、多くの方の意見を聞いたりして、まあそれなりに判断をしているという限度でありますから、その点で、質問の内容もあるいは専門家のあなたにとっては幼稚な内容かもわかりませんが、御了承を賜わりたいと思います。
 それからもう一つは、私はこの特許法の改正はどうも問題があると、現状では反対せざるを得ないという、こういう立場があるわけであります。しかし、そうすると松居さんの場合は賛成だから、そんな反対する者に幾ら説明してやってもどうせ反対されるくらいなら説明してもしようがないじゃないかというふうに思われると全く困るので、松居さんの御説明がまことにそのとおりであるならば、私も賛成のほうに回ることはやぶさかじゃございませんので、ひとつ十分御説明をいただきたいと思います。
 そこで、一番問題だと思うことは、この早期公開制度というものが、発明者の保護という立場からいくと重大な誤りをおかすのではないだろうかということだと思うのであります。まあいろいろほかにもありますが、私は私なりで考えるのですね。そこで、かりに出願して公開され、特許が権利として設定をされるまでに要する期間というものが、いまのように四年をこえるというような状態ではなくて、少なくとも出願から二年程度で権利が設定されるということになると、早期公開というような制度は要らないということになりはしないだろうかというのが、しろうとなりの考え方なんですよ。そこで、早期公開をすることは、結論的に言うと、いまの段階では、小発明者あるいは資力の乏しい発明者もしくは中小企業等にとって大きな損失になるとすれば、考え方の基本としては、特許制度にありまするような発明者の保護ということにいま一度戻らなければならないだろう。その立場で考えますると、本来、二年程度でかりに特許権が得られるとすれば、その方向に行政としては最善の努力をすべきであって、そのことができないということ自身が、行政における欠陥を意味しておるのではないだろうかというのが私なりの考え方なんです。
 ほかに例をたとえば引きますと、自動車がふえる、道路が混雑する。その際に、道路をつくらなければならね政府なり地方団体なりの立場は、自動車がふえるからけしからぬといって済まされない問題だろうと思うのです。ふえる自動車にどう対処するかという道路の整備は、行政の一環として政府が行なわなければならない仕事だと私は思うのであります。自動車がふえるから道路が狭くなるんだから、自動車のふえるのを、まず自動車会社の段階で押える。その次は個人が自動車を買うからけしからぬ、会社が買うからけしからぬから、買う段階で押えてやる。この行政は、私は正しい行政ではないという判断をするわけでございます。そこで、このようにして考えてまいりますと、特許庁というものが民間の企業団体や営利団体であるならば、そういう発想も私はあながち反対だとは申しませんが、特許制度というものが確立され、発明を保護する、特許を守ってやるということは、私企業や営利企業ではできないのであって、国民経済的な立場から見た際には、やはり政府が一つの機関を設けてその保護をし、奨励をする必要があるということで特許庁というものが通産省の外郭機関としてある限りにおきましては、私はいま申し上げたような話を総合して考えますならば、出願がふえ、審査期間が延びるということは、もとより今日の実態ではありますが、それを解消する道を、発明者の保護を犠牲にして出願を減らしたり、ないしは審査の期間を短縮したりということを考えるべきではないだろうというのが私の考え方なんですよ。でありますから、松居さんがおっしゃられるとおりに、早期公開や審査請求制度というものは、根本的に審査制度というもの、あるいは特許法の本質を変えるものではなくて、あくまでもこれは単に特許法の中に、特許制度の中に早期公開、審査請求制度というものを導入することにすぎないのだという発想ならばむしろその発想は、法律によるのではなくて、法律によって小発明者やその他の犠牲をしいるのではなくて、行政において解決されるべき内容のものではなかろうかというのが私の基本的な考え方であり、その考え方からこの法律の改正には賛成をすることが、いまの段階ではできないということなんでありますが、私のそういう考え方が誤りであるのか、もし誤りならば私は訂正をして、法案賛成のほうに回ってもよいわけですが、ひとつ御説明を聞かしていただきたい、こう思うわけです。
#21
○参考人(松居祥二君) では私の意見を申し上げます。ただいま大矢先生の御趣旨の根底には、出願後二年以内くらいに特許が設定されるならばと、こういう前提があったと思います。私も、もし現在出願後二年以内に特許が設定される状態であれば、もともとこのような法案が提出されなかったであろうというふうに考えるわけでございます。しかし、いかんせん、実態が審査だけで四年何ヵ月、審判を入れますと、六年、七年という現実が相当期間続きまして、いろいろの行政的な御努力にかかわらず、こういう実態が現実でございますために、それがいろいろの面に弊害が、私先ほど申し上げましたが、ある。そのためにかかる法案が提出されたと思います。しかし私は、この法案がすべてであって、それ以外に何もないとは申し上げておりません。当然審査の促進ということは行政上の措置として別個に措置がとられるべきものであろうと考えております。そこで、もしかりにこの制度が導入されましても、出願と同時に審査請求をいたしまして一年半以内に審査が完了するならば、この現在のおくれた状態に対応するためにとられた早期公開、審査請求制度というものはなくなる、大矢先生の御趣旨が実現するわけでございます。しかしこのことは、われわれ現在までのところ、何とか審査官を増員し、こういうことをやるから審査が早くなるということを聞いたんですけれども、実現しておらぬ。そこで一応この制度を導入していただきまして、とにかく一年半で公開されるという実態をつくっていただき、一面、審査の促進ということは別個に審査官の増員でございますとか、あるいは環境の整備、資料の整備、出願人側の協力ということもございます。そういうことによりまして実際上早期公開ということが、審査の結果の公開に等しくなるというふうな日がくることを、それをわれわれ大いに期待いたしております。
 しかし技術というのは、急激に、ある技術分野において革新的な進歩をとげるということがございます。現在特許庁の審査、出願を見ておりましても、ある時期にはある技術分野の出願が非常にふえる。そこが一段落いたしますと、数年後には違った技術分野において革新的な進歩が起こりまして、そこがふえるという変動がございます。その急激な変動に対して、その部分だけに専門家を集中してやるということは、これは全く不可能でございます。したがいまして、かりに平均して二年以内というふうな好ましい状態が実現いたしましても、ある技術分野において突如として出願がふえるということは考えられるわけでございます。そうすると、またその部分がおくれるということになります。そのときにこういう制度があれば、その部分に対してこの早期公開制度というものが実は有効に働き、幸い熟練した審査官が大ぜい配置されまして、しかも出願がある場合に、相当技術の進歩がゆるやかであるという部分につきましては、二年はおろか一年以内に審査が完了するだろうという時代がくるかもしれない。その場合において何ら早期公開による損害という懸念はなくなるわけであります。したがって私は、この早期公開、審査請求というのは、現在の状態及び将来ある技術分野の突如として多数の出願が発生する、それに対しては何としても直ちに即応しがたいということが想像されますので、そういう点から考えましても、この法案は望ましい法案ではなかろうかというふうに考えております。
#22
○剱木亨弘君 奥山さんにちょっと伺いたいと思います。
 私も実は北岡さんおっしゃいましたように、この法律が唯一無二の法律ではないということは十分承知しておりますし、あるいは特許庁の人員の問題あるいは待遇の問題あるいは事務処理につきまして、私ども思い切ってこの際特許庁の調査網をつくりかえて事務能力に合致するような新しいものを持ってくるとか、あるいは情報処理につきましてソフトウエアの開発をやるとか、あらゆる問題が必要だと思いますが、その中で、先ほど先生の御発表になりました新規性の調査機関というものも非常にわれわれ考慮すべき問題だと思うのであります。私どもあまり詳しく特許行政を知りませんものですから、はなはだ幼稚でございますけれども、先生の特別委員会でお考えになりました新規性の調査機関というものの構想でございますね、たとえば特許庁の中につくるか、審査の過程においてそれをかけるのか、あるいは特許を申請する際に、その機関を一応通してやることを義務づけるか、あるいはまた、その機関が機関自体において調べるのに相当また期間が長くかかることがありはしないか、そういう問題につきまして、その構想をちょっとお教え願いたいと思います。
#23
○参考人(奥山恵吉君) 先ほどちょっと申し上げたオランダの例でございますが、IIBと申しますか、そこでわりあいに人数が少なくて非常に大きな効果をあげております。職員は百五十人でございますが、文献の再分類をいたしまして、その整備をしていること、非常にその点で発達しているわけでございます。それからドイツでは、ベルリンにもとの特許庁がございまして、そこを使って新規性の調査と同じことを、ドイツではミュンヘンにある特許庁の支部として働いているわけでございます。それからアメリカでは新規性調査機関というのは別にないけれども、非常にこまかい図書室の完備したものでございますね。だれが行ってもわかるような、じきに調査の目的を達するような、そういう図書館のりっぱなものを持って、その上で特許制度そのものを運用しているわけでございます。基本的に特許の審査と申しますと、第一にそれが新規性があるかどうか、新しいものであるかどうかということが第一でございます。その次に、その発明が一般のレベルより飛び上がっておるかどうか、一般のレベルを乗り越した進歩をしているかどうか、専門語で進歩性と言っておりますが、進歩性あるいは特許性――特許になり得る性質と言っておりますが、飛び上がった点を審査する、その二段階に分かれているわけです。その新規性の調査機関で、もし十分にその新規性について調査ができて、そして特許庁で、あと、その進歩性についての審査をして、そして決定するように、その新規性の調査機関が使われたといたしますと、非常に楽に審査ができると思うのでございます。そしてその新規性調査機関は、日本においてはどうしても公団であるとかあるいは公社であるとか、官庁でないことを必要条件とすると思うのでございます。なぜかと申しますと、いま特許庁では人を集めるのに非常に困難でございますし、予算の点でも非常に苦労をされておられます。それから特許庁の方々の俸給についても、官吏の俸給規定に従わなくちゃなりません。そういう点で非常に歴代の長官は苦心されておられるのでございます。苦心されておられて、しかも目的を十分に達し得ておられないわけでございます。ところが公団であったり公社であれば、そういうワクから別のものとして、そういうワクの制肘を受けずに運営できると思いますし、それからその調査は、たとえばまず出願して、出願したものについてどういう似たものがあるかどうかの調査を依頼する。もしそれが金がかかっても、それをまた特許庁に持って行くとか、あるいはそれに基づいて弁理士がこれは進歩性まであるのだというような意見書を添えてでも出すとかりにいたしますと、そういたしますと特許庁は官庁の権威をもって、これは特許になるもの、あるいは特許にならないものというふうにきめていかれればいいと思うのでございます。そういうので、ドイツでは先ほど申し上げましたように、前の特許庁をそれに使っているわけで、日本でももしできるとすれば、日本のいまの特許庁をそれに充てて、そして技術院の、これは望めるかどうかは存じませんが、技術院の情報センターまでもそれに加えて、技術に関する調査機関としては非常に大きなものをここで日本に持つ。で、いま全体の世界のやり方から申しますと、アメリカ合衆国が非常ないい図書室を持っておるわけでございますね。それだものですから、カナダなんかは、アメリカ合衆国で特許になるものは自分のほうでも特許に無条件にするというふうな、その調査機関にあるいは審査機関に依存しているわけでございます。それと同じことをアジアにおいては日本に依存するのだ。それから欧州においてはオランダの調査機関かあるいはドイツの調査機関か、それから東欧諸国ではモスコーでそれをきめるとかして、そうしてその調査機関間にはある連絡を持つ、そういうふうな構想をもし実現されるとしたら、これは日本の技術の進歩に非常に役立つのじゃないかと、そういうふうに考えておるわけでございまして、われわれの委員会といたしましては、その構想をできるだけ早くまとめまして、そうして特許庁の長官にお願いしまして、そうしてほかの団体でございますね、たとえば発明協会であるとか日本特許協会であるとかも構想をお持ちでございましょうから、それらでなるべく早く新規性調査機関の設立の委員会というようなものを構成させていただいて、審議会というのですか、そうして進んで、それの十分なものができれば、特許制度の運用は非常に楽になると思うのでございます。いまのところはもう十分、長官がやり尽くして、予算の面、それから人間を集める面、それから人間を集めるためには特許庁内の方々の俸給の問題、それからことし成立しました総定員法とか、いろいろなワクに縛られてできないでいるそのことを、陰で一つの特許庁の補助機関として、そういうものが官民合同あるいは民間でできたとしたら、非常に楽になると思うのでございます。いまのところわれわれの考えられるただ一つの方法、おもな方法でございますね、そのほか手続の簡略化、法律に違反しない程度の、きわまでいく手続の簡略化とか、そういうものをやるべきでございますけれども、目に見えて特許制度の運用に役に立つと思えるのは、その新規性の調査機関の設立だと思っております。
#24
○竹田現照君 時間がありませんから、二、三お尋ねをしますので、一括ひとつ松居参考人にお答え願いたい。
 弁理士会等でも審査請求率について御意見が出されていることは私も存じておりますけれども、先ほどお話の中で補償性というのが不十分である、したがってその不利を補うという意味で、審査請求を出願と同時に行なうことになるのではないかというふうにお述べになったと私聞いたんですけれども、そうすると、七〇%ないし八〇%の審査請求率になるという政府側の見通しなり、あるいはアンケート等の結果に基づく御説明というものが、大幅に狂ってくるのじゃないか、今度の改正の趣旨というものが、事実上その目的を果たすことが不可能になるのではないかというように思うのですけれども、この点はどうお考えになるのか。
 それから、これも先ほどのお話の中に出てまいりました、例の公開公報等の管理、調査、そういうことについてどのような対策をお持ちになっておられるのか、特にこの公開公報が大量に出ますから、そういう点について、おたくの会社などでは新たにどれくらいの人員を必要とされるのか。される場合の対策といいますか、そういうことについてどうお考えになっていらっしゃるか。これは奥山さんにも関係があるかと思うのですが、私専門家でありませんからわかりませんが、改正法の中の補正制限の規定が出てありますが、これが非常に難解だと、こういわれている。これについて専門家としてのお二人が、この難解だという補正制限の規定で、補正可否の判断が的確にできるのかどうかというようなこと、これについてひとつ御返事いただければと思います。
#25
○参考人(松居祥二君) ただいまの御質問にお答えいたします。私が先ほど出願と同時に審査請求をすればよいということを申し上げましたが、それは出願のほとんどがそうしなければならないというわけではございません。公開をされたものが容易に第三者に模倣せられるということ、これは実は技術の種類によりまして、あるいは技術分野によりまして、模倣されやすいものと模倣されがたいものがある。そこで、模倣されやすいもの、私は、模倣されやすいものというのは、むしろその商品が非常に早く商品化されて市場に出るものだと、こういうふうに考えるわけなんです。それは発明家にとっても同じことでございますから、当然早期に特許にしてもらいたい、こういう希望のものである。したがって、そういうものにつきましては、出願と同時に審査請求が行なわれることもあるだろう。また、そうすることが必要である、かように申し上げたわけです。しかし、一面、技術によりましては、特許出願をしまして三年も五年もかからないと工業化できないというものも多々あるのでございます。そういうものにつきましては、早期に審査請求するということはございません。むしろ、ゆっくり考えて、工業化がきまった段階、あるいは工業化ができそうだという段階で審査請求する。ところが、現在でも日本の出願というのは世界一でございますが、それが審査が終わりまして特許になりますと、料金を払うわけでございます。初年度の料金を払わないものすらあるわけです。三年間は一度で払わなければならないので、払うのでございますが、四年目に払うときにはもう払わないで権利を捨ててしまうというのが相当あります。ということは、現在は審査請求をしないでも、出願をいたしておきますとお金を払わないでも自動的に審査をされますから、そのまま審査をして許されるわけですけれども、許されていざお金を払う段階になると、もうこれは要らないということになるものが現にあるわけでございます。一年か三年までは、せっかく特許になったのだからといって、料金も安いわけでありますから、お払いになるが、四年目になると相当減ってくるということは、やはり要らない技術がある。ということは、それじゃ審査請求というものをもう一度出願と分けて――今回の法案では出願後七年ということでございますが、そういう期間じっくり考えるという余地を残すことは非常にプラスじゃないか、かように考えるわけでございます。一番問題なのは、公開されたものをまねをされまして、その後値が下がってしまうとかいうことになった場合には困る。確かにそういう問題もあるんです。これはもう少しこまかく分けて考えなければいかぬと思うのですが、模倣される製品が大きなりっぱな機械であって、それが長期間――日本では十台もあれば足りるのが、その十台が模倣されてしまったら困るじゃないかということもあるのです。その場合には、公開されまして模倣者が使ったとしても、とめることはできないわけです。それで、審査請求いたしまして公開になりますと、今度は使っている人をとめることができるわけです。したがって、機械をつくっているメーカーがもうつぶれてしまったあとはどうでもいいのでございますが、使ってしまっているところに行って機械をとめることができるのですから、使っている人がロイヤルティーを払うか、どうしてもロイヤルティーを払うことががまんできないということになれば、その機械をスクラップにして、もう一ぺん特許権者から買い直す。そうするとそういうふうな危険をおかして買う人があるかどうかという問題、それからメーカーも、つくって売った以上は、買ってお使いになっておるところが、特許権者から文句を食らって、文句が出てまいりますれば、当然メーカーに対してその反作用として文句がいくわけでございます。私は、そういう場合には公開されましても、メーカーのほうは模倣しないだろうと、こう思います。ところが一方、非常に安いもので大衆に消費されてすぐになくなってしまう、こういうものがございます。こういうものは、私は確かに模倣者が出てそういう商品をつくって手っ取り早く売ってもうけるということがあるだろう、こういうふうに思います。ところがそれもそういう場合は、私は、早く審査請求をして差しとめ請求権を早くとる必要がある、こう申し上げたのですが、その場合に値が下がって困るということがあるわけでございますが、消費し尽くされてしまうというものは、次々と新しい需要が出るわけです。一回使ったからもう要らなくなるというものは、これもあるかと思いますけれども、大量生産で次々に消費し尽くされるというのは、次々に新しいものが売れるわけでございますから、緊急に審査請求いたしまして、どれくらいかかるかわかりませんが、審査請求いたしまして一、二年のうちに特許になるということであれば、それから今度は特許になる前の公開の段階でも差しとめ請求権がはっきりしていますから、そこで差しとめができるわけです。買って使ったところでは確かに文句は言えません。私は確かに使ってしまいました、あるいはもう使った人の数が多くて、もうそこには文句を言いにいけませんが、メーカーが破産でもしているとか、雲隠れすればどうにもならぬのですけれども、公開になって相手から買ってそれから売り始めれば、そういう消費し尽くされてします商品というものは、さらに需要があるわけでございます。それから先はもうかる。しかもその一、二年の先にまねをされたということは確かに損かもしれませんけれども、ある意味では、新製品を導入する当初の期間というものは宣伝広告その他に金がかかるので、普通はあまりもうからない。だから他人が一年か二年模倣はしたけれども、その商品の宣伝広告をしておいてくれて、これはいい商品だということがわかっておれば、これは特許権者が差しとめをいたしまして、自分の商品を売り出すときには、ある面ではメリットにもなるわけですけれども、私は理論的には確かに差しとめ請求ができないということは困ったことだとは思いますけれども、実態からいくと、それほどではないのではなかろうか。むしろ現在差しとめ請求の裁判をやりまして、それがいまだに続いているということが問題じゃなかろうか、こういうふうに考えております。
 それから第二番目の、公報がたくさん出てまいりますので、それを武田ではどうして管理するか、これは私も現在頭を悩ましておりますけれども、先ほど申し上げたように、これは権利情報としての取り扱いと技術情報としての取り扱いと二面性を分けて考えております。そこで、権利情報としては全体を見ないで請求範囲、そういうものを考えたい。これは特許庁でどの程度こまかく分類をしていただいて、武田に関係のあるのはこれだけですということがどのくらいよくわかるようにやっていただけるか、これは行政の問題になってくると思います。われわれは、それはできるだけこまかく分けていただいて、これだけ見れば――そんなに広い範囲の中を見てくれということじゃなくて、狭い分野でこういうふうにやっていただきたいということをお願いいたします。そうなることを希望しておりますので、その分は特許部でやはり見ていこうと考えております。ところが一般の技術情報として、人の発明あるいは新しい技術を見て、その上に自分の技術を積み立てていきたいという研究者からのいわゆる技術情報としての検索は、これはわれわれは研究者にまかせようと思っております。これは研究者も数もたくさんおりまして、それぞれやっております範囲も違いますので、大体題名を見まして関係のあるものを見てやってもらおう。しかし、これは先ほど申し上げましたように、技術情報というものは特許公報以外に何百種という文献があるので、それを全部見ているわけにはまいりませんので、特許公報も全部見ないかもしれません。見のがすかもしれません。これは見のがした場合には多少損をするというだけで、それが会社の死命に関するというものではございません。少々抜けてもしかたがないというふうに考えております。特許化で、先ほど権利情報として見るという範囲につきましては、これはやはり若干人が要るのじゃないかと思っております。現在私どものほうでは現段階でもいろいろ事務的な業務をやっておるものもございますけれども、技術の専門家が四、五人おりますが、やはり一、二名はふやさなければならない、こういうふうに思っております。しかし、これは会社全体から見ますと、早期公開、そういうものを調べることによる重複研究の防止とか、そういうメリットがございますので、その辺は研究者等やはり人員の調整をしていきたい、かように考えております。
 それから第三番目に、補正の制限が難解であるという問題は、これは奥山先生からもお答えいただくと思いますが、確かに若干めんどうがございます。しかし、このめんどうも程度の問題でございまして、もともとこれは特許庁の審査官のほうにめんどうがあるんじゃないか。もともと特許の審査というものは非常に高度のむずかしいものでございまして、大体特許にするかしないかということをきめるのは、これは十五年の独占権をやるか何にもやらないかということをきめるわけでございまして、それをきめるということは非常にむずかしいことでございますので、この補正の制限が、かりにやや複雑になっても、練達な審査官がそれほどお困りにならないのではないか、こういうふうに考えておりますし、多少のお手間はあっても、これは特許庁の審査官のほうで努力していただきたい。また、そのために人が要るというのであれば、これは長官のほうから人をふやしていただきたい、かように考えております。
#26
○参考人(奥山恵吉君) ただいまの御質問は補正の問題であったように存じます。弁理士会では、いま行なわれておる法律の四十一条、要旨を申し上げますと、明細書に書いてある範囲のどこから取ってきても請求範囲を書きかえることができる。内容を変えちゃいけませんけれども、明細書の中に書いてあることを入れた、あるいはそれを出したなら、請求範囲に入れ、あるいは請求範囲から出したなら、それは要旨の変更じゃないんだ、そういう規定でございますが、それでやっていただかないと非常にむずかしくなるんだという主張を、弁理士会はしたわけでございます。ところが、日本特許協会の御意見では、特許管理の面からいって、請求範囲だけを見て、明細書全文を見るのはたいへんなんだから、請求範囲だけを見てそれで判断ができるようにしたいんだ、そういう御意見が出たわけでございます。そういうふうにするためには、現行特許法の六十四条、それは請求範囲内での請求範囲を狭めていくことだけが許されて、広げていくことは許されない。それから、明細書の中に書いてあっても、それを導入するわけにはいかない、そういう規定でございますが、それでないと困るんだ。それからもう一つは、早期公開されたものと、それから実際に審査請求されて、審査の結果出てくる公報、それと違ったものが、内容の違うものが出てきたら困るんだ。だから六十四条でなくちゃならないんだ、こういう御意見だったと思います。四回ぐらいにわたりましていろいろお話し合いしたところが、なかなか折り合いませんで、特許庁にごあっせんをお願いして、特許庁で妥協案的なものをつくられましたのがこの改正法における四十一条でございます。大体申しますと、こういうふうになっております。出願から一年三ヵ月経過後三ヵ年以内の審査請求は四十一条でもいいんだ。それも、自分で補正して自分で訂正してもいいんだ。その他の時期、ですから三ヵ年ないし七ヵ年の間の公開明細書の特許請求の範囲を拡大または減縮することができるんだけれども、変更してはいけないんだ、そういう規定でございます。
 それから第三に、時期的の制限がございます。それはただいまも申し上げましたように、一年三ヵ月までは四十一条の範囲で自発的にも補正できる、公開後は審査の請求をするとき、それから拒絶の通知を受けたとき、それから審判を請求するとき、これに限って補正ができる、それも三十日以内に補正ができる、そういうふうになっております。それで、その内容についての制限を申し上げますと、特許請求範囲内の条件の少なくとも一つを取り出して、それと詳細な説明の記載から他の条件を加えて、それを組み合わせたそういうものはいいんだけれども、発明の変更になってはいけないし、それから目的が違うようなものではいけないんだ、そうなっております。で、条文では公開時の特許請求範囲の構成要件の全部または一部を、その構成要件の全部または一部とし、同一目的を達成する特許請求の範囲の補正はいいんだ、そういうふうになっておるわけでございます。問題になりますのは、早期公開いたします。そうしてそれをまねする人間がほかに出たといたします。そうすると、そのまねした者が、あるいは方法が、その出願を侵しておるかどうか、それをきめるのは審査請求をして、そうして公告されて、その公告された特許請求の範囲できめるわけでございます。まねするというのは、おそらく同じまねはしないわけでございますね。似たような、あるいは初め公開されたものからのがれられるような、そういうまねをするわけでございますね。ですから初め公開されたものそのものではおそらくつかまらない場合が多いわけでございます。これをつかまえようとしてうっかり補正をして、そうして審査請求をして、そうして特許請求の範囲でつかまえようとして、うっかり間違えますとたいへんなことになるわけでございます。どうなりますかというと、もし補正が間違った場合、それを審査官が気がつけばいいんですが、もし気がつかずに通したとしますと、前に自分の出願が公告されたその事実によって、その出願は全部無効になってしまうおそれがある。間違った事実があれば必ず無効になってしまうわけです。そういう危険を伴うわけでございます。ところがまねされた人にとっては、えてしてまねした者をつかまえようとして請求範囲をそれに合うような補正のしかたをします。それがもし間違っていると、もう全部なくなってしまうという危険があるわけでございます。これらは理論的に複雑なんでございますけれども、弁理士としても、また審査官とされても、こういう法案がもし出た以上はやらなければならないのでございますけれども、そういう実務上の非常な複雑な微妙な点があるのでございます。
#27
○委員長(八木一郎君) ありがとうございました。
#28
○塩出啓典君 時間がございませんので、松居さんとそれから森さんにちょっとお尋ねしたいと思います。
 実は私ども非常に心配しておりますのは、今回の法の改正によりまして、ほんとうに審査が促進できるかどうか、そういう点をしさいに検討してみますと、今回やはり公開公報を発行されなければならない。あるいはまた審査が出願順ではなくて、審査請求の順である。そういうわけで審査官としても非常にやはり審査が困難になる。また、いままでは公告されたそういう特許だけを参考資料にしていればいいわけでありますが、これからやはりまだ審査されていない先願の、いわゆる公開公報というものを十分参考資料としなければならない、また補正の問題が非常に複雑になる、そういうような理由で、今回の法改正をしても、審査というものは促進されない、早期公開はされても結局その正式な審査というものが非常におくれていくのではないか、その点を一番心配しているわけでございます。で、そういう観点から、やはりまず森さんにお聞きしたいわけでございますが、あなたのいまさっきのお話では、結局法改正だけではだめだ、やはりそれに伴っていろいろ庁内の事務管理をして、やはり審査というものを早くしてもらいたい、そういうお話だったと思うのですね。ところが今度の法改正をすればますます審査が困難になって審査がおくれていく、そのおくれていく審査を早くするための、やはり奥山先生の新規性調査機関等のお話もございましたが、そういうものをほんとうにやれるならば、何も法改正しないで、いまのままで、しかも早く審査できるようにやっぱり努力すべきだ、その困難性から言うならば、むしろ改正した法の中で審査を促進するほうが困難じゃないかと思いますね。そういう点で、やはりそのように審査を早くするという先ほどのお話は、二年以内ぐらいに審査ができるようになるならば、何も法改正をして非常に事務の複雑化を招くよりも、やはり審査を早くするその努力を、やはり現行の法の中でやるべきではないか、そのように思うわけですけれども、その点をお答えいただきたいと思います。
 それと松居さんでございますけれども、いまさっき今回の法改正による公開公報に伴って、部内で一、二名の増員を考えればいいんだ、そういうお話でございますが、その点が私ども普通直感的に考えるならば、一年間に、いままでの出願公告に比べればはるかに数の多い年間二十万以上の公開公報が出る、しかもいまさっきのお話では、それを権利情報として見る場合には請求範囲だけ見ればいい、そういうようなお話でございました。たしか私の知っている範囲では、今回の法改正によりますと、請求範囲だけではなくして説明書の全文もやはり先願の地位が認められる、そうなると、やはり権利情報と見る場合には、請求範囲だけではない、これは説明全体を見なければならない、そういう点考えると、非常にやはり各企業における、また個人発明家等における負担は増大するのじゃないかと思うわけですね。そういう点で、いままで松居さんは武田薬品工業株式会社特許部長としてきょうは御出席になっておるわけでございますが、現在までの出願公告というものを、現在大きく分けて七分類だそうでございますが、その分類のどの部分を購入されて、そのお仕事というものを何人ぐらいでやっておられるのだろうか。それで、今回の改正に伴いまして大きく分類は何か十四分類になるそうでございますが、そういう公開公報のどの部分を購入されてやられるのか。今回の改正によりますと、審査官が審査分類をして、それがずっと出されるわけです。いままでは分類をしたものをさらに審査官が審査をして審査の過程においてやはりいままでに二〇%ミステークがあったそうです。もっとそれ以上ですね。そういう点で、やはり審査の過程において是正されて正しい分類で出願公告が出るわけでありますが、今回の公開公報の分類というものは非常に分類のミスが多いのじゃないか、そういう点も心配しているわけですけれどもね。そういう点考えて、ある会社によりますと、公開公報の分類は非常にいいかげんだからということで、いままでたとえばこの範囲だったけれども、もう少し範囲を広げて見なきゃならない、そんなようなこともあるわけなんですけれども、おたくの場合、具体的に大体どの分野の方面をいままで購入されておるのか、今後やはりそれに対応していくのか、その辺、もう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
#29
○参考人(森喜作君) 審査処理の滞貨の状況を見ますというと、年々これがふえてまいっておるということ、そして現在は七十万件近いものがあるということで、現在の方法、いままでの制度ではやっていけないということでありますので、早期公開、審査請求制度というものでありますれば、見方の相違があるかもしれませんけれども、ある程度のこれが遅延が免れるのじゃなかろうかと思うわけでございますが、それと並行して、先ほど申し上げたような、庁内のいろいろな待遇をよくすることによってたくさんいい審査官が出ることは望ましいことでもありますし、いろいろな内部の設備につきましても、欧米のように処理が早くできるようにしていただく、そのように並行していくならばということを申し上げたわけであります。
#30
○塩出啓典君 だから結局審査が早くなるというそういう条件があって、それで今回の法には賛成できる、そういうお考えですね。
#31
○参考人(森喜作君) まず早期公開ということが、われわれのいわゆる小さな発明でありますけれどもこれが非常に望ましいということを強調するわけでございます。次いで審査を早くやっていただくということが第二のことであるわけであります。
#32
○参考人(松居祥二君) 先生の御質問にお答え申し上げます。まず、今回私のほうの特許部のほうでは一、二名の増員をすれば済むであろう、そんなことで済むであろう。そういうことに対する御質問かと思います。私のほうで権利情報的検索をいたします場合に、この日本の公開公報が出ますと、現在調べております他の相当文献を略すことができるわけでございます。現在日本の特許公報は非常におそうございますから、これはわれわ企業としてはあまり役に立たない。やむを得ず諸外国で早く出願が公開されるところの国の書類を相当な高額の金を払いましてとって、これを見ておるわけでありますので、日本の特許公報は二番せんじというふうなかっこうになっております。これは外国語の書類を見るということは、はなはだたいへんなことでございますし、特に個人発明家、あるいは中小企業にとっては特にたいへんであろう、われわれでもたいへんであると、こう考えております。そこで、日本の公開公報が出ますと、そういう文献を日本の公開公報に相当切りかえるつもりでおります。したがいまして、現在外国文献を時間をかけて読んでおります人間を日本の公開公報に振り向けることができる、そういう点を考えまして一、二の増員というものを申し上げたわけであります。私のほうは現在特許公報は全分類をとっております。これは当社の事業に関係があってもなくても、一応全部とっておりますけれども、見方におのずと軽重がございまして、あまり関係がないのは公報の一ページにございます発明の題目ぐらいを見まして、もうお払い箱になる、かなりそれがだんだん重要性を増してまいりますと、請求範囲を広げる、さらに重要なものは全文を見る、このように区別をして見ておるわけでございます。現在は特許公報でございますから、一応審査が終わったものでありますから、これは当社に関係のあるものを請求範囲から拾いまして、そのものについてはもちろん全文を見ております。権利情報として全文を見ております。そこで、今回の公開公報が出ました場合に、当社といたしましては、やはり一応は全部買うつもりでおります。そこで見方をいろいろに段階を分けまして、題目なり、あるいは出願順、発明者の名前でほうり出すというものも出てまいります。今度は請求範囲を次に見ることになっております。そこで請求範囲を見まして、これはどうも関係がありそうだと思うものについては本文を見るつもりをしております。その請求範囲でもうはねたものについては、本文は見ないということを考えております。これは研究者が技術情報として見ます場合には、多少われわれと違った見方をするかもわかりません。しかし、これは研究者のほうには特許公報以外の文献が山ほどあるわけでございます。そこの重点をどれに置き、どういう取捨選択をして文献を読むかということは、まだはっきりとはきまっておりません。
 分類審査のミステークがあるということ、これは確かに私もそのとおりだと思います。これは公開公報になりましても分類審査のミステークが私もゼロになるとは実は期待しておりませんが、ゼロになってほしいのでございますが、これは人間のやることでございますから、ゼロにはならぬだろうと思います。これは、われわれ企業といたしましては、もうあらゆる事業をやります場合に、いわゆる計算されたリスクというものを考えております。カルキュレーテッド・リスクというものを考えておりますので、そういった、どうも人間のすることでございますから絶対的な完全は期しがたい。カルキュレーテッド・リスクはやむを得ないと、まあかように考えております。しかし、これは特許庁のほうにせいぜいやかましく言いまして、分類は正確に、間違えないようにやってほしいということを申し上げたいと、かように思います。
#33
○塩出啓典君 いまの質問で、いままで外国の文献、特許情報ですね、そういうのを何人ぐらいで見ておられるか、また、現在おたくでは特許出願公告を全文購入されているわけでございますが、そういうのを何人ぐらいで見ておられるのかですね。今度二十一万件で、一ページ五分で、ある人が計算しますと、大体百人の専門技術者がないとこれは見れない。これはもちろん一枚五分で、もっと短縮できれば、一分で見れば二十人で済むわけですけれどもね、そういう点。しかも、今回はいままでの出願公告が、また正式に審査が終わればそれだけの数くるわけですね。余分に今度きちゃうわけですから、その労力は非常に大きいものがありますし、そのための労力をそこに使うぐらいならば、もっとやはり審査を促進するための労力に使って、そうしてやはり二年以内に審査できるように、もっと早くできるように、これはもうやっていったほうがベターではないか、そういうふうに考えているわけなんですけれども、その点お答えいただきたいと思います。
#34
○参考人(松居祥二君) お答えいたします。今回の改正によって企業の特許に関する負担が減るかふえるかということに関しては、われわれは若干ふえると考えております。このふえるというデメリットと早期公開制度からくるところのメリットとバランスいたしまして、どちらをとるかということで、われわれは早期公開のほうをとったわけでございます。デメリットが全然ないというふうには考えておりません。そこで、先ほどどのくらい実質的な労力かというお話でございますけれども、私のほうでは調査課という一つの課がございまして、そこで工業所有権に関する文献、これは日本のみならず主要なる世界の諸外国の文献は全部見ております。それ以外に権利関係の判断とかそういうことをやっておりますので、その担当者が、公報を単に見るだけにどれだけの人員がどれだけの時間をかけているかということは、実は私正確にお答えしかねるわけでございますけれども、調査課長がその責任を持っておりますので、調査課長に、もし今後この公開公報が出た場合にどのくらいでやっていけるかという問題の意見を聞いているわけでございますけれども、その答えといたしまして、私が先ほど申しましたような、現在より人員で二名くらいの増員をしてもらえれば、現在見ているものを減らすことによって処理ができる、こういうわけでございます。大体現在技術系の人間が調査課に、そうでございますね八人か九人くらいおります。それは文献ばかり見ておるわけじゃございません。しかし忙しくなってきた場合には融通しまして文献ばかり見る。ひまになればほかのほうをやる、こういうことでございますので、何ともそこのところほんとにそればかりというような仕事のやり方をいたしておりませんものですから、たいへんむずかしくて、私といたしましてはむしろ調査課長の意見具申をそのままお伝えをしておる。したがいまして、現在九人おるところに二名ふやすということは、率でいいますと二割近くふえる、こういうことになるかと思います。
#35
○委員長(八木一郎君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 参考人各位には御多用中長時間にわたって御出席をいただき、まことにありがとうございました。
 以上をもって本日は散会いたします。
   午後一時十五分散会
    ―――――――――――――
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト