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#1
第061回国会 社会労働委員会 第30号
昭和四十四年七月八日(火曜日)
   午後一時三十七分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
 七月七日
    辞任         補欠選任
     徳永 正利君     中山 太郎君
七月八日
   辞任          補欠選任
     中村 英男君     阿具根 登君
     中沢伊登子君     高山 恒雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉田忠三郎君
    理 事
                上原 正吉君
                鹿島 俊雄君
                大橋 和孝君
                上林繁次郎君
    委 員
                黒木 利克君
                高田 浩運君
                中山 太郎君
                矢野  登君
                山崎 五郎君
                山下 春江君
                山本  杉君
                横山 フク君
                阿具根 登君
                上田  哲君
                小野  明君
                藤原 道子君
                渋谷 邦彦君
                高山 恒雄君
                中沢伊登子君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  斎藤  昇君
   政府委員
       厚生政務次官   粟山  秀君
       厚生大臣官房長  戸澤 政方君
       厚生省公衆衛生
       局長       村中 俊明君
       厚生省環境衛生
       局公害部長    武藤g一郎君
       厚生省児童家庭
       局長       渥美 節夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       自治省財政局財
       政課長      首藤  堯君
   参考人
       原田外科病院長  原田 東岷君
       広島大学名誉教
       授        森瀧 市郎君
       東京女子大学短
       期大学部助教授  山手  茂君
       広島女学院大学
       教授       庄野 直美君
       広島大学原爆放
       射能医学研究所  志水  清君
       長
       鹿児島県民生労
       働部長      塚田 新市君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
 の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
○社会保障制度等に関する調査
 (オレンジ学園における児童虐待に関する件)
 (水俣病に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(吉田忠三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 昨七日、徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として中山太郎君が選任されました。
 また、本日、中村英男君が委員を辞任され、その補欠として阿具根登君が選任されました
    ―――――――――――――
#3
○委員長(吉田忠三郎君) 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、原田外科病院長原田東岷君、広島大学名誉教授森瀧市郎君、東京女子大学短期大学部助教授山手茂君、広島女学院大学教授庄野直美君及び広島大学原爆放射能医学研究所長志水清君の御出席を願っております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。
 本委員会におきましては、この機会に、本案に深い関心をお持ちになっておられる参考人の方々から忌憚のない御意見をお伺いいたし、審査の参考にいたしたいと存じます。
 これより御意見をお伺いいたしたいと存じますが、議事の都合上、御意見をお述べ願う時間は、お一人おおむね十分程度にお願いをいたします。
 なお、参考人の方々の御意見開陳のあとで委員からの質疑がございますので、お答えをお願いいたしたいと存じます。御意見をお述べいただきます順序は、原田参考人、森瀧参考人、山手参考人、庄野参考人及び志水参考人でお願いをいたします。
 まず、原田参考人にお願いをいたします。
#4
○参考人(原田東岷君) 原田でございます。
 私は、広島の一開業医でございまして、原爆投下後、約半年後に外地から引き揚げてまいりまして、以後、被爆者の治療、援護並びに制度の確立といった方面にいろいろお世話をさしていただいてまいっております。一言にして申しますと、医療というものを含めました被爆者の援護という問題は、よくぞここまできたというふうな気持ちがいたしまして、関係の国会の方々並びに官庁の方方の御努力に対して、敬意を表する次第でございます。
 しかしながら、それは現在のことでございまして、昭和二十年から二十五年くらいの間の戦後の非常な混迷の時代、これはたくさんの被爆者が、いわゆる原爆ケロイドというものをかかえて肉体的な苦痛と、さらに社会的な混迷による経済的その他の不安をかかえて、泣く涙もなく過ごした時代でございます。昭和二十五年、六年をピークといたします白血病その他の、いわゆる原爆による血液病の非常に盛んであった時代、これはある時期におきましては、また地域を限りますと、一般の日本人における発生率の数百倍と統計的にはいえるほどの頻度で白血病が発生した時期があるのでございますが、そのいわゆる白血病の残酷な死にぶりで恐怖におちいった被爆者の方々が、ようやく数年を経て白血病が少し少なくなって愁眉を開きかけたころには、また、今度は悪性腫腸、ガンを中心とします悪性新生物の多発という事実に、また恐怖のどん底におとし入れられた時代がございます。そのころも、やはりまだ国としての援護は全然できておりません。ようやく民間人の手によって、善意によってこれがささえられる――まあ、手前みそみたいでございますが、私の属します医師会なぞは、昭和二十七年から、だれもが助けてくれない以上、広島に住む医者がこの方々を救おうではないかという決議をいたしまして、約一年半にわたって、無料で治療をいたした時代もございます。そういったように、昭和三十二年に原爆医療法ができますまで、被爆者は経済的、肉体的、精神的の三重苦を味わってきた。そういう歴史を思い出しますときに、現在の法律による援護がここまで延びてきたことについては、一面で感謝をいたしますとともに、一面、われわれ関係者の努力が非常に足りなかったということについて自責の念を禁じ得ないのでございます。
 原爆の被爆という事実が将来の世界の運命を握るかぎともなると、私は考えておるんでありますが、被爆者も、この二十年間に急速に減ってまいっております。これは手帳交付者はふえておりますけれども、実際の被爆者は減っておるということを言っておるんでありますが、この被爆者に対しては、広島の人々はもちろんのこと、日本の国民、いや、リフトン助教授が申しましたように、全世界の現在生きておる人間全部が、被爆者に対しておわびをする気持ちを持たなければいけないのじゃなかろうか。アメリカの平和主義者であるバーバラ・レイノルズさんは、私は被爆者である、もちろん被爆しておりませんけれども、精神的には被爆者であるという、非常に含蓄のあることばを述べておりますけれども、これは、現在、地球に生きておる人類全体が、自分らの運命を示唆するところの原爆を実証する被爆者というものに対して、深い関心を持つべきであるということを言いあらわしておるのであろうと思うのであります。
 総論的なことは以上といたしまして、私は、一民間医師としての体験から、まず、認定制度について意見を述べさしていただきたいと思います。
 この認定の問題につきましては、非常にたくさんのことばが必要でございますので、とうてい述べ切れるものではございませんが、私は、持って参りました廣島医学の別冊に、昨年行なわれました認定問題に対するシンポジウムが載っておりますので、御参考に供したいと思います。現在、いわゆる原爆医療法によりまして認定疾患というものが定められて、それに該当する被爆者は、この認定医療というものを受けられることになっております。健康保険その他より優先しまして治療を受けられることになっております。それを受けるためには、まず、第一番目に、厚生省が認めておりまする認定医療機関という指定機関がございますが、全国で二百六十幾つ、広島市は四十幾つございますけれども、約十二年前にきめられた医療機関で、ある県においては一カ所しかないというようなきめ方でございますけれども、その医療機関で作成された診断書を中心にして、認定医療申請書というものを出さなければなりません。それは三つの種類の申請書でございますが、それはそれぞれ四部ずつ作成しなければなりません。そうして、これは、厚生省に届きましてから数カ月後に、厚生大臣の定めた、法第十五条による原爆医療審議会に認否の諮問がせられます。その審議会において、厚生大臣の定めた、非常に明確でない認定基準、これはどういうことか、一般の医者にはあまり知らされておりませんけれども、何かの基準があるらしいのでございますけれども、それに照らしてケースバイケースに審議されて、一番早くて三ヵ月、普通一年ないし一年六ヵ月、場合によれば、二年を経て認否の通知がまいります。たいていそのころには患者さんはなくなるか、病気が悪くなるか、あるいはもうなおってしまっておるということが多いのでございますが、そういった審議の過程を経まして認定疾患になるわけであります。
 一方、せっかくこういう認定制度というものがありながら、認定患者はどのくらいあるかという質問に対して、衆議院においては、四千九百人と言われ、あるいはある年には四千二百人というふうにお答えがございますが、その数は正しいものであろうかどうかということをわれわれはいつも感じるのでございます。これは第一線の医者として、この申請書を私は出しておりますけれども、医者においては、これは認定されるかどうかわからないという一つの不信がございます。一年半もたって認否がきまるようなところに、こういうものを出しとったんでは間に合わないじゃないかというので、健康保険であるとか、あるいは国民保険であるとか、あるいは特別手帳による一般医療のワクにおいて治療されることが非常に多くございます。したがって、五千人の認定患者があると言っても、それは真実の何分の一かを伝えているにすぎないということをはっきり私は申し上げたいのでございます。このようにいたしまして、まだいろんな理由はございますけれども、認定医療制度というものは現在は宙に浮いたものでございます。
 また、審議会の先生方のほうでも、非常にお困りになっておる点もあろうかと思います。審議会だけを責めるわけにはいかないのじゃないか。というのは、厚生大臣から、この申請書にある者は、学問的に見て、認定疾患としてよろしいかという諮問を受けますと、これは、日本の現在わかっている範囲の医学で判断するよりほかないのでありまして、疑わしきは治療せずという、まことに、法律の大前提である疑わしきは処罰せずに非常に似ておりますけれども、全く逆の立場で認否が決定されるという結果になるのではないかと思います。要するに、これは医学的には、はっきり原爆に起因するということが言えないから御遠慮願うということになる。私から言わせれば、これは原爆と無関係であるということを立証できないから治療すべきではないかということが正しいんではなかろうかと思うのでございますが、やはり大蔵省から金が出るということになると、そこにむずかしい十字架があるのではないかと考えるわけであります。
 いずれにいたしましても、せっかくの原爆医療法というものは、認定という点においては、少なくとも宙に浮いてしまっておる。政令の段階において骨抜きになっておるということを、過去十二年間感じ続けてまいりました。これはどうか――援護法と非常に関連が深い問題でございます。この認定が宙に浮いて何の援護ぞやということを私は申し上げたいのでございますが、この認定制度をもう少し、申請書を出したら一週間で返事が来るというような、あるいは二週間でもいたし方ございますまいが、少なくとも二年後に来るとか、一年半後に来るとか、こういったことが見過ごされていいとは、私は考えておりません。もちろん諸先生方も同じ御意見だと思いますけれども、どうか、この点をよろしくお願いしたいと思います。
 なお、言い落としましたけれども、原爆の被爆者が普通の戦争手段による被害者と違うかどうかという問題が、長い間、問題になり続けております。その点、先ほど申しましたほかに、もう一つだけ、原爆によるおくれた戦死ということを申し上げたいと思います。もし、時間があれば、後ほどそれについても申し上げたいと思います。現在も毎日一人ぐらいずつ戦死者が続いておるんだということを申し上げたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
#5
○委員長(吉田忠三郎君) ありがとうございました。
 次に、森瀧参考人にお願いをいたします。
#6
○参考人(森瀧市郎君) ただいま御紹介いただきました広島の森瀧でございます。
 私は、原爆被害の本質というようなものから見まして、従来の社会保障的な立法から国家補償的な立法へと、そういう原爆被害者が根本要求を持っておりますが、そのことについてしぼって意見を申し述べてみたいと思うのであります。
 と申しますのは、今度のここで審議開始されております特別措置法の一部改正案の一つの柱であります葬祭料支給の問題、これが出て初めて原爆の死者、死んだ者の問題というもの、まあ、ことばだけでも原爆の死没者ということが顔を出してきたからであります。私は、この点に重大な意味を見出しているのであります。
 なぜかと申しますと、原爆による被害の最も大きなものは、われわれは素朴に考えるべきものだと思います。素朴に考えた場合に、最も大きな被害というのは、広島、長崎であの国際法違反の非人道的な兵器の無差別爆撃による最初の犠牲として大量の死んだ者が出たと、そういうことであります。したがいまして、それに伴って、ばく大な家族崩壊が起こったということ、これがもとであります。そして、また、幸いに生き残りました者も、いわゆる原爆乙女のごとくに、一生取り返しのつかない者、あるいは放射能によって救いがたい病になり、あるいは将来いつそういういうものが出るかもわからないという、そういう不安を背負った、いわば生ける屍となった者が大ぜい出たというこの事実であります。ですから、峠三吉の詩は、まことに素朴ですけれども、その本質をよく言いあらわすものだと私は思います。「チチヲカエセ、八八ヲカエセ、コドモヲカエセ、トシヨリヲカエセ、ワタシヲカエセ」云々のこの詩が、私は、最も原爆被害の本質を物語っておるものと思うのであります。
 しかるに、何の償いもなされておらないのではないでしょうか。一体、だれがまどうてくれるのであろうか――広島の方言で申しますと、まどうてくれとは、償ってくれという意味であります。だれが償ってくれるのか、だれがまどうてくれるのか、これが根本の気持ちであります。私は、アメリカから返還されましたこの原爆記録映画が全面的に公開さるべきであるという運動に携わりまして、その中で――カットされておる部分をカットしないでという運動でございますが、あのカットされる部分の、まあいろいろのところございますけれども、その中には皆さんが必ずごらんになっておる一つの少女の写真がございます。それは、十二、三歳で目の澄んだかわいらしい女の子が頭の毛がすっかり抜けた、あの子供の写真であります。私は、この親が見つかって、それを訪れたときにびっくりいたしました。あの子供は当然死んでおって、おらないのだと思っておるから遠慮なくあの写真使っておったんでありますが、実は、四十一歳まで生きまして、子供も一人おって、一昨年ガンでなくなりました。全身にガンを発してなくなりました。その母親をたずねましたときに、「国からは何もしてもらったことはないのですけえ」ということばを、私がおる間に、何度その母親が繰り返したかわかりません。そのほか、親を失った孤児大体六千五百人の孤児と、われわれは申しておりましたけれども、親を失った孤児に何か国家からなされたか。わずかになされたことといえば、民間の善意によって多少のことがなされた。私なども、学生とともに、何ほどかのことをしたというだけのことであります。ケロイドの顔で結婚もできない、一生を生ける屍となっておる女性に、国家から一体何が償われたか。わずかにアメリカの民間の良心によって、コンシャンスによって、二十五人の乙女たちがセント・サイナイ病院で治療を受けた一これは医療法ができましてからは別でございます。その以前はそういうことではないでしょうか。
 このような底知れない、ばく大な犠牲と申しますか、人柱と申しますか、そういうものの上に終戦ともなったのであります。被爆者は、みなそう申します。でも、終戦の詔勅に書いてあるじゃないか、あのむごたらしい兵器で、無事の民を殺すのをもうこれ以上見るに忍びないと、はっきり言ってあるじゃないか、被爆者は、みな素朴にそう言います。それで終戦ともなったのじゃないか、そして、結局あの平和憲法というようなものが国民にすなおに受け入れられ、憲法の第九条などもすなおに受け入れられたのは、やはりそういう体験があったからじゃないか、その後、平和文化国家として目ざましい繁栄があり、今日では繁栄し過ぎるほど繁栄しておるかもしれない、そして一方では二十四年間、ともかく原爆をあれほど競争してつくられながら、原爆は使用されなかったというのはどういうことであるか、一つの大きな原因は、今日から見れば問題にもならない赤ちゃん爆弾である広島・長崎の原爆でもあれほどのことをしたということが、やはりそういう過去を持った国の最高の責任者の頭の中にはやはりあって、引き金が引けないのじゃないか、そう思っております。そう思いますがゆえに、原爆の被害を受けた者の目から見れば、少なくとも、平和憲法のもとで、まず第一に償われなければならなかったのは、この原爆被害者ではなかったのか、そういう気持ちをみな抱いておるようでございます。
 しかるに、戦後処理として施策されましたのは、すべて旧憲法のもとで、戦争に関係した度合いに応じて、いわば戦闘序列型の援護法というものが軍人軍属や、その遺家族への補償とか、引き揚げ者の在外財産の補償とかあるいは旧地主の補償など、そういうふうにこの旧憲法の原理で――これが悪いというのではございませんが、そういう原理で行なわれたのではないかと思わざるを得ないような気がいたすのであります。そういうふうに施策されたのですから、この原爆被害者への償いの要求に対しましては、一貫して答えは、もう十年、二十年一日といってもいいかもしれませんが、同じであります。身分関係論と補償均衡論であります。あなた方と国家との間に、命令服従の関係はなかったんだ、あるいはあなた方のことをすれば、他の戦災者をどうするのですかという、身分関係論と補償均衡論でもって一貫してこの償いの要求というものは拒否されてきたのであります。
 しかるに、その後、原爆被害者の立ち上がりと世論の盛り上がりとの中で、わずかに施行されたところの原爆の医療法や、去年から行なわれますこの特別措置法というふうなもの、これはすべて償いの原理というよりも、社会保障の原理と社会保障のワク内でなされてきたものであります。在外財産の処理で戦後処理は終わったと総理が言われたということが新聞に出たのを見まして、被爆者は一ぺんにおこりまして、東京に押しかけてきたことがあります。私は、そのときの代表として、佐藤総理に会いましたところ、非常に丁重に、原爆で手がすっかり焼けついている婦人の手をとって、それから慰めて、私に向かって穏やかにおっしゃいました。まあ、原爆被害者のことは社会保障で何とかなりますわね、そうおっしゃっていただいたこのことばが、後にどういう結果になるかというようなことを見通し得ることは、私ごとま世間知らずにはできなかったわけでございます。その首相のおことばは、やがて坊厚生大臣――時の厚生大臣坊さんでございました。議会で、坊厚生大臣の口から、特殊の社会保障でということば、一歩進んだ特殊の社会保障でというおことばが出てきました。そして、いよいよそれが実現されて、特別措置法になるときに、時の企画課長、まことに頭の明敏なお方が、いわゆる原爆被害者には特別なニードがあるのだから、そのニードを満たすためにこれはするのであるという、いわゆるニード論を展開されたのであります。真実、ほんとうに被爆者のそのニードに、一体、いまの特別措置法というものは、こたえ得るのでありましょうか。償いの問題をも含めて、真実、被爆者のニードにこたえ得るものであるか。私は、やはり被爆者の、たとえニードという論を展開されてもよろしいが、そのニードにこたえるためには、一般社会保障のワクを越えまして、国家補償という償いの原理を出発点としてでなければ、完全な被爆者の援護措置というものはとり得ないのではないかと思うのであります。実際、その証拠といたしまして、出てきました特別措置法というものは、結果的には救貧法に似たようなものができたということで、被爆者が非常な失望を感じたのは確かでございます。
 そのもう一つの例証は、あのときの特別措置法案の、いわば一つの原型ともなるはずだった広島、長崎の両市、両県から共同で提案されました被爆者特別措置法案というものでは補償制度――償い補うほうの補償でございます。補償制度の確立ということが重要、不可欠の柱として立てられておりましたけれども、実際にでき上がって出てきました特別措置法を見ますというと、その片りんだに見出すことができないのであります。その補償制度の確立という柱のもとでは、原爆死没者と、その遺族の問題、原爆障害者の問題がまことに重要な問題となっておったのであります。
 原爆被害の中心とも言うべき原爆死没者の数や、その遺族の実態、あるいは一生涯を台なしにした原爆障害者の実態というものが、国家の手で調査されたことがあるでありましょうか。ない一番大きな証拠は、国連で原爆白書を出したときに、向坊教授が日本の資料の中で出したそのものの数を皆さん御承知かと思います。七万何がしかという原爆死没者の数、国連白書でそれが出されるということは、結局、日本政府が死没者の数をもつかんでいなかったということであります。私、時間がございませんから、もう多くを申し上げません。死没者のことを言うと、それはもういまから調べがつかんのだ、むずかしいのだという一点ばり、しかし、私は今日なおできるということを、時間があれば後ほどでも、また、きょう御列席の皆さん方から十分答えられると思うのであります。少なくとも、その国家の施策として予算措置を講ずる程度の死没者の数、遺族の実態はつかめるのであります。それはなぜかと申しますと、たとえば医療法施行後、国家が原爆に起因すると認めて死んだ者の数ははっきりしております。あるいは慰霊碑の過去帳に祭られている――うそを言ってまで祭ってもらっている者はありません。また、最近続々発見される死没者の資料、それから被爆者組織自体が自発的、自主的に始めている死没者調査、あるいはここに御列席の志水教授のもとで行なわれている復元方法による調査、やればやれるということであります。
 私は、最後に申します。すべて国家の施策や、立法の一番大切なことは、その対象者の根本的な要求や、気持ちに合うものでなければならないということであります。原爆被害者の心から求めているものは、社会保障――もちろん社会保障が大事なんですけれども、社会保障的精神でつくられる救貧法に似たようなものではなくして、平和のいしずえとなった被爆者への償いの精神、すなわち、国家補償の精神に立つ真の援護法をつくってもらいたいというのが被爆者の真の要求ではないかと思うわけでございます。
 御清聴を感謝いたします。
#7
○委員長(吉田忠三郎君) ありがとうございました。
 次に、山手参考人にお願いをいたします。
#8
○参考人(山手茂君) 御紹介いただきました山手です。
 私、社会学という学問を専攻しておりまして、そういう観点から、特に被爆者の生活を中心とした実態についてお話したいと思います。
 お手元にプリントが配付されていると思いますので、それを御参照いただきたいと思います。ここでは、最近――といいましても昭和四十年、それから四十二年、厚生省と、それから朝日新聞社、それぞれが全国的に大規模な調査を行なわれた。それを御紹介しながら、そこから出てくる問題点、それを私なりに簡単に指摘したいというふうに思うわけです。
 まず、被爆者集団というものと、それから一般国民との間に格差はあるのかないのか、こういう問題です。四十年の国勢調査の結果が四十二年に発表されまして、その結論、これが現在の特別措置法の重要な前提の資料となっているというふうに思うわけですけれども、この中に結語として、「生活調査では、所得、就業状況、従業上の地位、転職の状況等の諸点において、被爆者と他の国民一般との間に有意の差と認められるものが、全般的にいちじるしい格差があるという資料は得られなかった。」、特に問題となりますのは、「全般的にいちじるしい格差がある」のかないのか、こういう問題です。この点につきましては、山梨大学の伊東助教授が朝日ジャーナルに、当時、その厚生省の調査結果を利用しまして、グラフにして、こういう格差があるではないかという、そういう論文をお書きになっているわけで、これは私の用意しました資料の二ページ目に紹介してあるわけです。ここでは、いわゆる健康とか、医療とか、そういう点につきましても、特に医療を受けるとかあるいは保健薬を常用するとか、あるいは医療費の支出があるとか、身体障害率であるとか、こういうさまざまな点について著しい差があるではないかということ。それから第二に、これは生活調査に関して、特に休業率であるとか、失業率であるとか、日雇い率、こういったさまざまな点について格差があるではないかという点。それからこのグラフは、被爆者全体について一般国民と比べたという、そういうことなんですけれども、もう少しきめこまかに見ていきますと、一般的な傾向としては差がないように見えても、実際は差がある、こういった点が指摘できるように思うわけです。たとえば生活保護率、これは一般国民に比べて被爆者のほうがむしろ低いということになっているわけです。しかし、これはなぜこうなるのかというふうに考えてみますと、一つは、原爆医療法によって、医療費はすでに国家補償されているわけですから、一般国民のように、医療扶助を受けることによって生活保護を受ける、それはない、そういう点。それから被爆者の場合、先ほどお話もありましたように、自分の責任で、自分のせいでこういう苦しい生活になったのではない、そういった誇りといいますか、そういうものがあって、できるだけ生活保護を受けたくない、そういった気持ちもあるのではなかろうか、いろいろな点が考えられるわけです。それから就業率、これがほとんど格差がないということなんですけれども、これもこまかに見ていきますと、働き盛りの男子、ここには被爆者のほうがかなり就業率が低い、こういう格差が見られますし、それから七十歳以上の老人とかあるいは女子、普通は扶養家族になるべき人が働いている。こういう形で、むしろ被爆者のほうが就業率が高い。そういうふうに、働くべき人が働かずに、就業率が低い、扶養家族になるべき人が働いて就業率が高い。それを全部平均して格差がどうこう言っても、これはあまり意味がないのではないか、そういうふう考えられるわけです。それから家計の点ですけども、所得の点で平均して一割くらい被爆者が低い。それから消費支出のほうで一割くらい高いということは、大部分の被爆者の場合、栄養をとったり、休養をとったり、そういう健康保持のために専念している。おそらく貯蓄のゆとりといったようなものが、一般国民のような形では、ないのではなかろうか、そういうことが推定できるように思うわけです。こういうふうに考えてみますと、被爆者の平均と一般国民の平均と、平均という形で比べても、あんまり問題ははっきりしないのじゃないか。むしろ被爆者の中にどういう層があるのか、どういうグループがその中に含まれておるのか、そういう検討が必要ではないか、こういうふうに思うわけです。
 まず、根本にあるのは健康の問題ですけれども、これは三ページ目に紹介しておりますが、厚生省の調査によりましても、要医療の被爆者が七・二%、それから要注意が二三・一%、合計三〇%くらいの被爆者は健康上に明らかに障害を持っている。こういうことがあらわれているように思うわけです。それから被爆者自身の健康についての意識、これを見ましても、やはり元気だというのは半分ちょっとで、まあ、元気がない、こういう訴えが高いというようなことが言えると思います。それから朝日新聞の調査結果によりましても、大体同じような傾向が見られるわけですが、特に注目されることは、被爆以来ずっと病気というのが一・六%、それからその反対に、被爆直後もそれから現在も、その間ずっと健康だという、そういう被爆者が三五・二%。こういった形で、被爆者の中にいろいろな層が含まれていることが健康という面からも言えますし、それから、その下には、生活のほうで資料をあげているわけです。一人当たりの月収を見ましても、一万円以下とかあるいは一万円台、二万円台、こういった非常に低所得の被爆者、これが三〇%余り、五万円以上というのは非常に少ない。これは、四十二年の調査ですから、現在と若干水準は違うと思いますけれども、いずれにしても、生活という点でも、層別に見ますと相当大きな開きがある。それから、その右側に、被爆前と現在の比較、これは非常に主観的なものですけれども、よくなっているというものが四割弱という状態、むしろ苦しくなった、こういう人が二四%もいる。これは一般の国民と比べて考えますと、やはり戦後の復興とか、あるいは経済の繁栄であるとか、そういう中から取り残された被爆者、これが相当数いるということを物語っているように思うわけです。
 最後に、以上引っくるめまして、被爆者の実態をどう認識したらいいかという、そういう問題ですけれども、当時も、現在も、一方にはあまり放射能をたくさん受けていない、それから生活基盤にもあまり影響がない、したがって比較的健康で、比較的普通の水準の生活を営んでいる、そういう人もいますし、その反対に、放射能あるいはやけど、そのほかの障害を非常に受けたという人、それから生活基盤を破壊された、極端な場合は、原爆孤児というような形ですが、そういう場合、それから現在にかけて原爆症で苦しんでいる、あるいは貧困で苦しんでいる、こういった層、その両極の間にいろいろな形で実際の被爆者が分布しておると思うんですけれども、そういうふうに考えますと、平均値をもとにして、被爆者と一般国民を比べてどういう格差があるか、そういういわば平均的な被爆者像というものを考えるよりは、むしろ典型的な被爆者像という形で考えるのが正しいのではないか。一番典型的な被爆者としては、繰り返すまでもないと思いますけれども、原爆症と貧困の悪循環に苦しんで今日まで非常な苦しみを経てきている、現在も苦しんでいる、そういう人もありますし、それから、かなり多くは、あるいは大部分はと言ってもいいかもしれませんが、原爆症がいつ起こるか、そういう生命の不安、そうなった場合、自分の生活は一体どうなるか、そういう生活の不安、そういった不安におびえている被爆者が非常に大量に存在している、こういうことが言えるだろうと思います。
 そういう実態を踏んまえて、対策をどういう方向で進める必要があろうかというふうに考えてみますと、そこでは、やはり被爆者の実態をより科学的に把握していく。その場合に、まず考えられますことは、いろいろな要因の相関関係というものをもっと追及していく必要があるんじゃないか。たとえば健康状態と、それから生活状態、この相関を見ていく。生活状態という場合も、たとえば所得を見る場合でも、働き手が被爆者であるという場合、扶養家族が被爆者であるという場合、こういう場合は、おそらく所得の形も相当変わってくる。これは部分的な調査では、それが非常にはっきり確かめられているわけです。厚生省の四十年の調査も、そういう形でさらに検討されれば、さらに的確に実態がつかめるんではなかろうか。
 それから二番目には、やはり生活史の中で、原爆の被害を受けたということが、一体、どういう意味を持っているか、そういう生活史の把握、それが非常に大事ではなかろうか。そういうものを総合して原爆の被害が健康及び生活にどういうふうに及んできているか、それを理論的に追及していく。そういう必要があると思われるわけですが、これが、現在までのところ、必ずしも十分行なわれていないんではないか。こういう形の中へ、たとえば差別の問題であるとか、あるいは被爆者の意識の問題、こういったものも当然出てくると思われます。
 そういう上に立って、より的確な対策を進めていっていただきたいというふうに思うわけですけれども、これは時間もございませんので要点だけ列挙しているわけですが、第一に健康保持、それから発病予防、そういうための生活保障の位置づけ。特に現在のところは、すでに病気になってから生活のほうを見ようという、そういう意味では、非常に不十分というふうに思われるわけです。
 それからいろんな手当に所得制限あるいは年齢制限というものがあります。これに対しては、それをゆるめる、あるいは撤廃していく、そういう方向が検討されてしかるべきというふうに思います。
 それから、もう一つは、諸手当の額、これについても不十分という声がかなりあるわけです。
 それから、そういう一人一人違う問題をかかえているという点からは、被爆者を対象にする専門的なケースワーク、これが行なわれる体制というものがつくられなければいけないんじゃないか。
 それから、最後にいろいろな施設の拡充、こういったことも言われているわけです。これもやはりそういう一人一人の被爆者の実態、そこから生まれてくるニード、それに応じたきめのこまかい対策という方向で必要になってくる、こういうふうに思います。
 最後に、以上のような対策を考える場合、社会保障という原理と、それから国家補償という原理、この二点をどう考えたらいいのかという点、これはすでに森瀧参考人から詳しくお話されまして、つけ加えるまでもないと思いますが、特に私が申したい点は、社会保障という観点から見てもまだまだ不徹底である。特に発病予防というような観点、これがもっと徹底する必要があるのではないか。
 それから国家補償という場合、大きく分けて二つの点から考えられるわけで、一つは被爆者あるいは遺族が被爆以来苦しんできている。その苦しみの意味というものをやはり被爆者自身追及しているわけで、この点を考える上で思い出しますのは、昭和三十二年ごろ、ちょうど医療法ができたころに、被爆者の間から、生きていてよかったという声が非常に出たわけです。これは、要するに、それまでは国民から忘れられ、むだな苦しみを自分たちはしているんじゃないかという気持ちだったのが、やっと国民から理解され、国家から手を伸べられた。そういうことで生きていてよかったという声が出たわけですが、そういう被爆者の苦しみというものをどう考えるか、そういう点からも国家補償ということが一つ言えると思いますし、さらには核戦争とか、核兵器に対する日本国の態度というものを考える場合に、原爆の被害って大したことないんだというような前提ではやはり間違いだと思うわけです。そういう意味で、現在生きている被爆者あるいは被爆以来二十四年の間に死亡した被爆者を追及して、それをやはり核兵器の禁止に対して生かしていく、そういう態度が必要ではなかろうか、そういうふうに思うわけです。
 御清聴感謝します。
#9
○委員長(吉田忠三郎君) ありがとうございました。
 次に、庄野参考人にお願いをいたします。
#10
○参考人(庄野直美君) 私、広島におりましても、最近、被爆者は甘え過ぎておるのではないかとか、あるいは被爆二十四年もたちました今日、いまさら広島、長崎でもあるまい、こういうようなことばをときどき耳にするんでございます。そういうときに、私は言いようのない憤りの念に襲われるんでございまして、その意味は次に申し上げます二つの点から実はなっておるんでございます。
 その第一に考えますことは、戦後二十三年間、確かに核戦争は阻止されてきたわけでございますが、これが阻止されてきましたのは、しばしば大国間の核兵器の均衡がこれを阻止してきたんである、こういうような論が聞かれることがあるんでございますが、私は、これは大きな誤りであって、核戦争が阻止されてきましたのは、あのかつての広島、長崎の衝撃と、被爆者の存在そのものが根本的には核戦争を阻止してきたんだ、こういうぐあいに思うんでございます。そういう意味で申しますと、被爆者というのは、言うまでもなく、自分で好んでそういう状態になったわけではございませんし、また何よりも核戦争を繰り返してはならないというわれわれの人類に対する要請におきまして、生き証人という役割りを果たしておると思うんでございます。そういう意味で、被爆者が甘え過ぎておるというようなことばは、非常に非人間的な発言であると思うんでございまして、その意味でも被爆者に対しまして、国家的な補償が十全になされるということは、当然なことであろうと思うんでございます。また、その際に、当然必要なことは、被爆者の今日なお置かれております実態、実情というようなものが十分周知徹底されるべきでございまして、その意味で、当然いま山手さんの話にもございましたような実態調査の完全な実施というものが要望されると思われるのでございます。
 次に私が憤りを覚えますのは、いまさら広島でもあるまいということばでございますが、しかし人間にとりまして、忘れてもいいこと、あるいは場合によりましては忘れてしまったほうがいいこと、と同時に、絶対に忘れてはならないということがあると思うんでございまして、この広島、長崎の悲劇は、その意味では絶対に忘れてはならない、いわば現代の十字架ではないか、そんなぐあいに思うんでございます。つまり核戦争によって人類が滅亡しないためには、広島、長崎というのは、絶対に忘れてはならないのだ、こういうぐあいにわれわれは認識しなければならないのでありまして、その意味からいたしましても、広島、長崎の実態というものを正確に完全に把握いたしまして、これを世界に知らせるということは、われわれ日本国民の人類に対する責任であると同時に、義務ではないか。つまり、私たちが生き延びていくということが至上命令であるといたしますならば、やはりこれは義務であり、責任であろうと思うのでございます。その意味でも、この実態調査ということの必要性は、言うまでもないことになるのではないかと思うのでございます。
 ところで、今日まで日本において行なわれました実態調査の経過というものを簡単に申し上げてみますと、これは時間もございませんので、ところどころ省略いたしますが、重要なもので約十四種類くらいの調査が今日まで行なわれております。一番古いものでは、昭和二十年十一月に、広島県警が死没者その他の調査をいたしております。これには軍人、軍属は含まれておりませんけれども、それによりますと、約七万八千というものが死亡した、こういうデータが残っております。ところが、このデータは県警の調査だけに、確実に個人の氏名を把握したものだけを収録しておる関係上、正確ではございますけれども、多くの見失われておる者があるという点に留意しなくてはならないのじゃないかと思います。それから、昭和二十四年に、浜井市長が、実は、終戦当時、配給課長であったということで、その職務上、米穀通帳その他のデータからつかみまして、これをアメリカのABC放送で放送したのでございますが、そのときに、浜井市長は、二十万ないし二十四万の人間が死亡したということを推定、公表しております。次が、昭和二十五年十月一日の国勢調査の付帯調査で、これはABCCが集計したのでございますが、そのときに、初めて被爆生存者の数がつかまれた。ただし、これは当時の総理府は難色を示したようでございますが、GHQの圧力によりまして実施した、こういうようないきさつがあるようでございます。それから、その次は、昭和二十六年の広島市の調査。これは省略いたしますが、このときも、死亡者推定二十数万という数字が出ております。それから、昭和三十一年にアメリカのオーターソンとウォーレンという二人の医学者が書物を書きまして、そのときに、広島の死亡者約八万人ということを申しております。それから、昭和三十六年に、日本原水協の専門委員の推定というのもございまして、これは総合的なデータに基づいて、死者約二十万前後ということを、かなりいろいろな角度から推定しております。
 その他、実はあげればいろいろあるのでございますが、ただ一つ言えますことは、重要な点でございますが、昭和四十二年の十月にウ・タント国連事務総長が、世界の科学者十二名に委嘱いたしまして、核兵器の影響等に関する報告書を出しておるのでございます。この中に、広島市における被爆死亡者は七万八千という数を公式に出しておるのでございます。ところが、これは先ほど申しました県警のデータと、オーターソン、ウォーレンのデータによっておると思われるのでございまして、このことは、実は、私たちにとりましては、非常に重要でございまして、というのは、それによって世界的に、公式には広島は約八万という数が信用されておるのでございます。しかし、われわれといたしましては、どうしてもその数は承服できない。やはり二十万前後になるということが言えるのでございまして、このことが物語っている意味は、やはり日本側における徹底的な正確なデータが今日までない。そういうことから、死没者一つをとりましても、世界に誤った印象を与え、しかもそのことが核兵器の影響に関する過小評価というものにつながっておるのじゃないかというぐあいに思うのでございます。
 それから、なお、死没者の数の不明だけではなくて、爆発後入市いたしました、いわゆる残留放射能被爆者の数なども不正確な点があることを含めまして、今日医学的な統計、研究の上で母集団の数があいまいであるため、学問上も困るというような問題があるのでございます。
 ところで、今後の調査というようなものを考えました場合に、健康面とか、医学的な調査というものは、いわば戦後もう二十年の長い間にわたりまして、すでに相当程度明白になっている。したがって、昭和四十年の十一月に厚生省が行ないました調査でも、健康調査を行なっておられますが、私に言わせますと、これはあまり意味がないのじゃないか。つまり意味がないという意味は、今日までの調査で、すでに健康問題に関する結論はある程度出ていると言ってよろしい。そうして、そのことが今日の被爆者医療法その他の根拠になっている。ただその解釈の問題では、先ほどの認定問題などに関しまして不十分な点があるのでございますが、データ自体は、十分われわれが状況を判断するものは集まっていると考えてもいいのじゃないか。
 そうしますと、基本的に抜けておりますのは、先ほど死没者等の調査以外に、いわば被爆者の社会状況あるいは心理状況などに対する調査でございまして、これは言うまでもなく、広島、長崎の被爆者は人類が初めて経験した生活体験の保持者でございますので、この記録を正確に残すということは、われわれにとって人類の平和のために欠くべからざるものではないか。つまり、どんな人がどんな生活を、被爆当時、営んでいたのか、そうしてその人たちがその後生活面あるいは人生観というような面におきまして、どのように変わっていったのかというような、いわば全体像を、家族とか、その地域社会とのかかわり合いの中で明確にしていくということは、どうしてもやらなくちゃならない。つまり一口に申しまして、被爆全体像調査というものが必要であると言われておるゆえんなのでございます。そういうこの被爆全体像調査は、ここにいらっしゃいます志水さんを中心といたしまして、実は、最近、国家がやってくれないために、広島市が独自の予算を組みまして、昭和四十四年度から全体像調査を開始するところに踏み切っておるのでございます。それでこの調査の経験、いままでの見通しから申しまして、こういう全体像調査を徹底的に進めていくならば、非常にむずかしいと言われております死亡者というようなものの確定も、相当可能になっていくのじゃないかというぐあいに私は思うのでございますが、いずれにいたしましても、こういう調査に対しまして、当然国家がしかるべき補償をしていいのじゃないかと思うのでございます。また、こういう調査を完全に実施するためには来たる――明年でございますが、四十五年度の国勢調査におきまして付帯調査として、いまの被爆者の全体像をつかむためへの手助けをぜひお願いしたい。これも厚生省の御意見などでは、いろいろむずかしいというようなことも聞いておりますが、これはしかし明年を逸しますと、言うまでもなく、被爆者は死亡していくばかりでございますし、次のさらに次の国勢調査を待つことになっては、ほとんど不可能になってくる。そういう点でぜひこれはお願いしたいと思うのでございます。
 それで、結局、そういうことを総合いたしまして、被爆者の人権擁護と、それから私たち考えますことは、日本人が世界の文化の上に貢献し得る、つまりこれは言うまでもなく、平和と繁栄のためでございますが、そういうことのために貢献し得る唯一の大きな仕事は完全なる被爆実態の全貌を明らかにして、これを世界に訴え、そうして核戦争を二度と繰り返してはならないと思う。そういう使命こそが私たち日本人に課せられたる、いわば唯一の文化的事業ではないかと、こういうぐあいに思うのでございます。そして、言うまでもなく、広島、長崎が忘れられましたときには再び核戦争が起こっておるときであると、こういうぐあいに私は考えたいと思っております。
 ありがとうございました。
#11
○委員長(吉田忠三郎君) ありがとうございました。
 最後に、志水参考人にお願いいたします。
#12
○参考人(志水清君) ただいま御紹介をちょうだいいたしました広島大学の原爆放射能医学研究所の志水でございます。
 実は、私も、次男が爆心地から三百メーターのところで被爆死いたしておりますし、家内と、長男も千七百メーターのところで被爆いたしておりまして、いわば被爆家族でございますし、遺族の一人でございます。しかしながら、このような立場は一応別といたしまして、白紙の立場に立ちまして、被爆者の特別措置に関する法律と、これに関連いたします課題につきまして、私見を申し述べさしていただきたいと存じます。
 この法律は、昭和四十三年の九月一日から施行になっておるのでございますが、被爆者感情というものを必ずしも満足させておるとは理解しがたいのでございます。被爆者の念願といたしております福祉の充実には、なおかなりの距離があるように存ずるのでございますが、現在の時点におきましては、原爆医療法とともに、被爆者福祉の前進に寄与するところが非常に大きいと存じておるわけでございます。願わくは、時世に対応いたしまして措置し得るよう改善され、被爆者感情に適応し、被爆者の方々に感謝され、被爆者の満足感の得られます福祉立法となりますよう、この上とも御尽力賜わりますよう期待をいたしておるものでございます。
 この法律の趣旨は、被爆者のうち原爆の傷害作用の影響を受けた者が、現在、なお特別の状態に置かれている者に対して、特別手当などの諸手当を支給し、被爆者の福祉を進めるべく特別の配慮がなされたものと理解をいたしております。すなわち、社会保障の国家的制度のもとにおきまして、被爆者の福祉増進をはかろうと配慮されておるものでありまして、単なる恩恵としてではなく、国民の権利として得られる制度であろうと存じておるのでございます。したがいまして、この法律は、生活を脅かす各種の事故、たとえば死亡、老齢、失業、疾病、廃疾といったものなどを保障事由として、生活安定のために必要であると考えられる保障を行なうことが目的でなければならないと存じます。
 この意味で、健康を基準としたものでなく、生活、経済にむしろ基準が置かるべきであったろうと存ずるのでございますが、遺憾ながら、これらについての信頼される確実な基礎資料が得られないので、一応健康に基準が置かれたものと推量いたしております。このように、健康を一応のものさしといたしますならば、原爆の放射能による影響を最も強く疑わしめる疾病群、いわゆる原爆症を一応の基準に求めなければならないものと思われ、理解ができるのでございます。
 しかしながら、法律としては、原爆医療法と全く異なった性格を持つ特別措置法と存じますが、原爆医療法とうらはらのような奇妙な姿となっておりまして、その運用面にいろいろと問題点があらわれたり、被爆者並びに関係者の批判がきびしくなっているように見受けておるのでございます。
 すなわち、原爆医療法におきましては、疾病を科学的、学問的に、また国際学界の動向等をも配慮いたしまして検討審議されなければならないのでございますが、特別措置法は、福祉行政の立場に立って措置されるのがたてまえであろうかと存じますので、原爆医療法とうらはらになっておりますと、円滑な福祉施策の遂行にむずかしい問題や、誤解のあらわれるのはやむを得ないことではなかろうかと存じているのでございます。
 特別手当の支給に当たりましては、原爆症の認定が前提となっておりますし、健康管理手当の支給につきましては、特別被爆者であって、厚生大臣の定める障害が先行しております。しかも、年齢制限や、所得制限の大きな壁が加わりまして、福祉の推進を阻害しているように見受けられるのでございます。たとえば、本年の四月に、健康管理手当の未受給者千百三十三名につきまして、実態を調べました成績では、この制度を知らなかった者が三百四十七名で、三〇・六%見られました。しかし、この制度を知っておりました七百八十六名につきまして、未受給となっている理由を追跡いたしますと、非該当が十七名、病気がなくて元気でいる者が百二十名ありましたが、年齢制限が三百六名、所得制限が百二十七名、病名非該当が百十三名、計五百四十六名でありまして、制度を知っていた者の七〇%に相当いたします高い率を示し、未受給の大きな壁となっておりまして、せっかくの福祉の増進に対する御配慮も、血の通っておらない実態ではなかろうかと存ずるものでございます。
 被爆者の多くは、国と義務的な身分関係はなかったかもしれませんが、やむなく被爆しなければならなかった特別な事情にかんがみまして、原爆の放射能による影響を考慮しての特別の措置が講ぜられたものと理解いたしておりますので、社会保障の理念を生かして、その充実に一そうの御配慮を賜わることをお願いしたいのでございます。
 今後、考慮されまするいろいろな問題につきましては、厚生省の原爆症調査研究班の認定患者の遡及調査の成績が若干の示唆を示しているように存じますので、その概要を御報告申し上げたいと存じます。
 この追跡調査は、昭和三十二年から四十三年末に至ります十二年間におきます広島県在住の全認定患者千九十三名を対象にいたしまして面接調査いたしましたものでありまして、本年一月に実施をいたしました。
 その成績を要約いたしますと、現在全く医療を受けておらない者が四一・一%を占めております。治癒状態にある五・五%と、症状の好転いたしております三三・四%や、治療を中断した者のうち、自分でよくなったと判断しております四四・四%などと照合いたしてみますと、認定後の健康管理につきまして、なお留意すべきものを示唆しているように存じます。
 また、認定以外の疾病で、通院や入院をしている者が六八・一%認められて注目されるのでございますが、その半数が自律神経系の障害と推定され、自宅療養をいたしております五二・六%が買い薬、はり、きゅう、マッサージなどに依存しているという実態も、認定後の健康管理について考慮されなければならないことを示唆しているように思います。
 また、家庭内の患者の位置につきまして、最多収入者でない主婦が四〇・四%を占めておりますことや、収入の不利な職種や、経営規模の小さい職場に移らざるを得なかったために、認定後の収入が認定前に比べて減少している者、七五・八%となっておりますこと並びに家計上に特別の負担の及ぼしたことを認めておる者が三八%認められましたことなどは、今後さらに被爆者の福祉充実について万全の措置の講ぜられなければならない一端を実証しておるものと存じます。
 次に、御参考までに、原爆後障害症について、その概要を付言さしていただきます。
 原爆後障害症という表現が近年一般に広く用いられておるのでございますが、これは常識的には、原爆症と大体同じ内容のものと解釈されておりまして、原爆の放射能によります医学的、生物学的晩期障害あるいは後期影響と理解されております。しかし、厳密に申し上げますと、原爆後障害症は、その一つは、原爆被爆のときから、その障害がなおることなく、そのまま後遺症として残り現在に及んでおるもの、すなわち熱傷性の瘢痕、れん縮、器械的損傷の残存などと、いま一つは被爆当時には全く認められなかった障害が長い年月を経て初めて発現したとみられる障害、すなわち、現在いわゆる原爆症と呼んでいるものとに分けられます。御存じのとおり、原爆の放射能に起因する独立した疾患はいまのところ発見されてはおりません。すなわち、放射線生物学的に、原爆起因には、単一病因性はありませんので、原爆の放射能以外の原因では、発現するとはとうてい考えられないような特異な生物学的、医学的障害は残念ながらいまだ発見されてはおりません。したがいまして、学問的に厳密に解釈いたしますと、原爆症という実体はいまのところ存在するとも、また存在しないとも断言することはできませんし、現時点におきまして、これをはっきりと言い切ってしまうことは正しいことでないと存ずるのでございます。
 しかしながら、常識的に解釈したしまして、被爆者にみられる障害に推計学的な有意差が認められ、かつ、その障害が動物実験によって証明され、しかも、過去の人体経験におきましてそれが立証されますような場合には、一応原爆症として認められておるのでございます。すなわち、疾病の発現が原爆の放射能を浴びた線量、換言いたしますと、爆心地からの被爆距離との間に相関の関係の認められることが重視されております。
 この意味におきまして、いままでのところでは、瘢痕ケロイド、白血病、白内障、胎内被爆高度小頭症、甲状腺ガン、肺ガン、皮膚ガン、卵巣ガン、骨肉腫、悪性リンパ腫などが、常識的解釈のもとに、一応原爆症として取り扱われております。
 もちろん、これらの疾病も、被爆を受けなかった人々にも見受けられるのでありまして、学問的に厳密に解釈されますならば、原爆症と申されませんが、これらの疾病は、爆心地に近いほど、その発現頻度が異常に高く、動物実験や、人体経験でも証明される場合が多いので、原爆症を代表するものとされております。
 以上、まことに大ざっぱで恐縮でございましたが、私見の一端を披露させていただきました。御清聴ありがとうございました。
#13
○委員長(吉田忠三郎君) ありがとうございました。
 以上で、参考人の方々の御意見の開陳を終わります。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 御質疑のある方の発言を求めます。
#14
○小野明君 私は、他の委員の方の発言もありますから、参考人の皆さんに一問あるいは二問ずつお尋ねをしてみたいと思います。
 最初に、原田参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、いまの認定制度にきわめて問題があるということは、先生の御証言の中で、私どもは、十分わかるような気がいたしておりますが、最後に言われました「おくれた戦死」という内容について、いま少しく御説明をいただきたいと思います。
#15
○参考人(原田東岷君) 「おくれた戦死」というのは、多分私がつくったことばだと思うのでございますが、第一次大戦のときは、戦争終結とともに、戦死というものは打ち切られておりますけれども、第一次大戦後数年たって、ホスゲンとか、塩素ガスというものを吸った患者が慢性の気管支炎あるいはさらに気管支狭窄症といった後障害になりました。これがさらにガンになって死んだ者がございました。そういった人が、これは「チボー家の人々」というノーベル賞の対象となったロジエ・マルタン・デュ・ガールという人の小説の中に出てまいりますが、それを私、偶然読みまして、そういった「おくれた戦死」というものがあったのだというふうに感じております。それがこの第二次大戦におきましては非常にたくさんの数であらわれたということが第一次大戦と第二次大戦の大きな差であろうかというふうに考えます。そうして、この数は、戦争終結後に、何万という方々が原爆という永続的放射能作用による原因によって死亡し、また死亡し続けてきて、現在も死に至っておる。将来もそうであろう。そういったことで、原爆兵器、核兵器というものが、今後、戦争を終結させるものでなければならないということを示唆しておるものであろう。要するに、民間人といえども将来は戦争責任があるのだ、その国の戦争を許すということは、自分らもまた「おくれた戦死」、軍人でなくても、戦死することの責任を負うものであろう。そういった意味で、原爆の被爆者がもっておる現在の立場というものは、非常に象徴的であるということを申し上げたかったのであります。
#16
○小野明君 それから、原田参考人には、第一回の沖繩の被爆者調査団長として行かれておるのでありますが、この沖繩におきます被爆者への対策あるいはその実態等について、できますならば、簡潔に御説明をいただきたい。
#17
○参考人(原田東岷君) 昭和三十九年ごろから、沖繩にはそのまま知られない被爆者がたくさんおられるのだということを、ある新聞のルポルタージュで知りました。その数は、四十人くらいであろうということを聞きまして、われわれ被爆者のお世話をしてきた者として、同胞が原爆症に苦しんでいることを見過ごすことはできないと考えまして、個人の資格で渡航申請をいたしました。ところが、半年たっても許可が出ませんので、外務省に問い合わせましたところ、いまのところ、医者や弁護士はむずかしいのだということでございました。特に、原爆の問題で行くのは穏やかでないということでございましたが、同時に厚生省、総理府及び外務省でも、日・米・琉の協議が行なわれておりまして、それではひとつおまえが厚生省の――総理府でありましたか、どちらでありましたか、代表で行ってみろということで参りました。実情は、行きましたところが、まだPRが足りなかったにもかかわらず、百八十一名の被爆者が集まられました。当時、米軍に雇用されている被爆者は診察に来ることができなかったのであります。それでも、百八十名ぐらいの方が集まりました。その翌年からだんだんふえて、二百人をこしたという話でありますが、第一に考えなければいけないことは、それまで何もされていなかったために、原爆後障害というものがあるということも知られなかったのが、そのことで知られたということ、そのために正確な知識を得られた方もあるし、あるいはかえって不安を増された方もあるかと思います。それにいたしましても、診察を受けようにも、われわれが帰ったあとは、どこへ行っても診察を受けることができないという状態でございまして、向こうでは、先ほどどなたかがおっしゃいましたが、医者の数が非常に少のうございます。広島市には、五十五万の人口に対して千名以上の医者がおりますが、沖繩は、百万の人口に対して三百人しか医者がおりません。しかも、離れ島には全然医者がいないという状態でございます。そして保健所が地方の医療機関を代行しておるような状態であります。保健所は、御存じのとおり、公衆衛生がおもな仕事でございますのに、そういった新しい任務が付加された。こういう状態でございまして、また、原爆症と関係があるという場合においても、何ら恩典がございませんので、自費で診療を受けなければならない状態でございました。その後に、特別手帳のようなものができたというふうに聞いておりますけれども、医療機関がないために、診察を受けられない状態の方が非常にたくさんおられるということは、現在も変わりはないというように考えております。
#18
○小野明君 ありがとうございました。
 次に森瀧参考人にお尋ねをいたしたいと思います。参考人が国家補償の急速な実現ということも強調される点につきましては、私ども同感であります。そこで、最初から先生が原爆孤児の問題に取り組んでまいられておるのでありますが、その経験から、孤児、または遺族に対しましては、どんな対策が現在必要であるか、また、老齢化した被爆者に対しては緊急に何が必要であるか。きわめて具体的な問いになりますけれども、現在緊急に措置しなければならぬものは、一体、何であるのか、こういう問題についてお尋ねをしたいと思うのです。
#19
○参考人(森瀧市郎君) 小野先生にお答え申し上ます。
 もちろん、この原爆被害の最も大きなものとして死亡並びにその死亡者があるがゆえの家族崩壊といううちの一番典型的なものが両親を失った子供、ほうり出された子供ということでございますから、もとは、われわれの頭に一番原爆被害としてきたのは、そこらをうろついているいわゆる原爆孤児であった。ですから、それに何らかの手を差し伸べるということに自然なるわけですが、しかし、子供は早く大きくなるものでございまして、もう私が世話をしました一番小さい、その原爆の年に生まれた子でも、もう二十四歳でございます。大きくなって、結婚ブームの時期でございます。しかし、私が言いたいのは、一体、そういう孤児たちに国家ではどういう施策が行なわれたのか、何も行なわれなかったじゃないか、何の償いもなかったじゃないか、これは怒りを込めて申すわけですけれども、そこで、私にもう一つ言わしていただけば、被爆者ということばが私は気にいらない。いつの間にか被爆者ということばが固定化してしまって、今度もこれを見ると原爆被爆者、何々被爆者といえばみな被爆をした。その放射能を受けた者だけでなくても、原爆の被害というのは、子供はいなかへ疎開して、そこで勉強しておって、親や、おじいさんが広島におって全滅して、一人になった。この全部の肉親を失った子供が原爆の被害者でないのかと言いたい。だから、大体被爆者だけに限っておるということが間違いなんでございまして、私たちが被爆者団体などという名をつけ、ざるを得ないのは、そのうちに遺族があって一それに遺族会というものを独立してやっているところもありますが、多くは遺族たちが被爆者団体の中に入っておるのは当然なんでありまして、それは原爆被害者だからであります。ですから、自分が直接被爆したのでなくたって、親を失って孤児になったというのは一大事でございます。そういう意味の遺族、その遺族に一体何をしていただいておるのか。しかも、今度は初めて、死んだ者にということが出てきたから、私は文句を言ったのであります。いや、今度は死んだ者、そうしましたら、ちょっと拝見いたしますと、これから死んだ者、それはニードからといえばニードに相違ないのですけれども、やはりなおすのは痛いところをなおしていただきたいのでございまして、そういう痛みが、たとえば原爆孤児でございますというと、今日大きくなっていますけれども、そのために一体どれだけ難儀をし――私はその当時何人原爆の孤児が監獄の中にいるだろうかということも推計したことがあります。ひねくれて、私などがどんなにもうあれしても、ひもじくて、牛乳一本よそのものを盗んだことがあったかどうか、そのためにだんだん問題児とされていった。ずいぶん保護しましたけれども、最後には少年院に行って一人前の悪党になって出てきた。そういう者は身寄りがないから、暴力団が使いやすい。だから、とうとう撃ち合って死んだ者もある。そういう者は、一体原爆被害者でないのかと言いたい。だから、この死んだ者、いまからでもいいから、やはり償いの意味であるならば、これから死ぬ者ばかりでない、被爆者にせめて弔慰金でも出していただきたい。それならいますぐにでもできることであります。
#20
○小野明君 そういたしますと、今回の改正は、まことにわずかなものですね。今回の措置は、葬祭料というものの若干の値上げ程度にとどまっておるわけです。これでは、これからの人に葬祭料ということなんですから、この性格は、当然さかのぼって弔慰金としてやらなければならぬ、今後はもちろんですけれども。これはあとの参考人にもお尋ねをしたいと思うのですが、現実に死亡された、死没された方の数がはっきりされていないというような、もう基礎そのものがあいまいであるというような実態なんです。そこで、今回の葬祭料の若干の改定というものについて、再度どういう御意見をお持ちであるか、お尋ねをしたいと思います。
#21
○参考人(森瀧市郎君) 私は、この葬祭料のことが出たということは、つまり原爆で死んだ者、死者の問題がはじめて国会の議にのぼったということで評価いたしたのですが、その死者の問題というならば、実は原爆で何十万の者が死んだというこのことが、そもそも、原爆被害の一番中心の大きなものなんです。だからそれへ国家が何かの償い、たとえば弔慰金と申しますか、遺族に対して、たとえば遺族年金であるとかいうことになるのではないかと思うわけですが、一言、私は孤児の問題から質問を受けましたので、孤児のことを言いますと、孤児でその親の骨を抱いて何十年でもそれを自分のかたわらに置いて暮らした孤児を私は知っております。せめて、いまからでも、もう大きくなっておりましても、両親を失って原爆孤児と昔言われたその子に、――いいことばじゃないですが、言われたその子に、これがあなたの親への弔慰金ですよといって、何がしかでも与えていただいて、その子が、おとうさん、おかあさんといって一度でも親のお祭りができたら、何か自分も国家から忘れられてはいなかったんだという気持ちにもなるだろうと思います。そういう意味で、緊急にというのは、緊急にできる範囲でということです。いますぐにできることがあります。もちろん、全部の被爆者の数をつかむというのは、これは日本だけではないことでございます、私は世界の大事業だと思っております、だから、それがすぐできるとは言いません。だけれども、国家の施策として、わかったところからやるということは当然であります。そのわかったところは、幾らでも手がかりがあります。
#22
○小野明君 山手参考人にお尋ねをいたしますが、厚生省が昭和四十年に調査をしておりました。その問題点については、先ほど若干触れられておるわけであります。この四十年の調査に対して、いろいろ批判がありますけれども、調査の結果と現行の対策というのは、合理的に結びついておるとお考えになるかどうか、この辺について。さらにまた、どういった調査を追加せなければならぬか、その辺もあわせてお尋ねいたします。
#23
○参考人(山手茂君) お答えします。
 調査結果と、それから現在の対策という点では、たとえば老齢化に伴って非常に健康そのほか問題が出てくるという点で、たとえば六十五歳以上というような線が引いてありますが、これはやはり六十歳くらい、あるいはその前でも、すでに差がだんだん開いてくるわけですね、そういう点。それからやはり六十五歳以上に非常に著しい差が出ておれば、それに対する予防といった観点を入れるならば、当然それ以前から対策をということが問題になってくるのではなかろうか、そういった点があるように思います。それで、結果が対策に結びつくというもう一つ前に、やはり厚生省の調査の中で、特に生活史の調査という部分が非常に重要な位置を占めていると思うわけですし、それから調査票による統計的な分析という中で、やはりいろいろな相関関係をずっと追及していく、そういう点を含めて、やはり全体として発表していただくということがやはり非常に重要なことではないかと思います。
 追加という点でお尋ねですけれども、追加という点では、特に、いま森瀧参考人あるいは庄野参考人からも出ていますけれども、たとえば死亡者の実態、それから遺族の実態、そういうあたりは、やはりこれから行なわれるべき重要な課題ではなかろうか。この点、はたしてどういう形で、どこまで正確に調査できるかという問題がございますけれども、私の考えでは、たとえばそういう弔慰金なり、あるいは遺族年金なり、そういう政策、施策が出ますと、それに応じてみずから申告するという遺族の出てくることが期待できる。これはちょうど被爆生存者の場合も、医療法以来、手帳交付という形で、申告して数が明らかになってきている、そういう経過もございますから、そういうプラスが期待できる。そういう施策があれば、いままで申告する機会もない、あるいは名乗る機会もない、そういう方々が名乗って出られる、そういう点を十分期待していいんではなかろうかというふうに思います。
#24
○小野明君 庄野参考人ですね、先生がおやりになりましたいろいろの調査研究の際に、政府から援助が出たのか出なかったのか。その辺が、ちょっと先ほどのお話では、あいまいな感じがいたしましたので、その点と、昭和四十年の厚生省における調査の最も大きな問題点は一体何なのか、この二点をお尋ねをいたしたいと思います。
#25
○参考人(庄野直美君) それでは、最初の私がやりました調査という点では、二つほどあるのでございますが、その一つは、残留放射能、通称二次放射能と呼ばれておるのでございますが、この放射能の量がどの程度あったのかという問題が、実は、戦後長い問の懸案であったのでございます。御存じのように、サンフランシスコ条約が締結されますまでは、いわゆるプレスコードの中で原爆タブーの時代と呼ばれておりまして、研究などの面でも、非常に制限が加えられておったわけです。その時代は、わずかにABCCがいわば精力的に調査研究をやっておったわけでございますが、ところがABCCの見解は、そのプレスコードの時代はもちろん、その後、私が知っております範囲では、昭和三十年ごろまでの間においても、残留放射能あるいは二次放射能、つまり後日、広島あるいは長崎に入市した者は、放射能の影響はなかったのではないか、こういうような見解がなされておったと思います。ところが、現実に広島、長崎に後日入市者で発病しあるいは死亡する人がたくさんいる、これは一体どういうことなのかということが問題になりまして、昭和三十一年ころに、地元の医師あるいは被爆者の間から残留放射能の問題の――私、物理学の関係なので、物理学的な観点から、そういうものがあったのか、なかったのか、あったとすれば、どの程度の量があったと推定されるのか、これをひとつ研究してみてくれという要請があったのでございます。これは非常に重要なことだと思いまして、ここにいらっしゃいます原田さんなどとも御相談して、とにかく研究してみようじゃないかと、ただし、その場合に、いまのようにABCCの見解とはおそらく衝突する可能性もあるし、それから、まあ、当時の状態では、研究資金を得ると申しましても、国家との関係も、何と申しますか、援助を仰ぐような余地がないし、したがって、私たちは、いわゆるポケットマネーを出しまして、約二十名くらいの物理学、それから化学、それから医学関係の人が自主的に研究会を組織して、残留放射能の問題に取り組んだのでございます。これは、ある程度成果をあげたと自負しておるのでございますが、おそらく、私たちのそういう研究が契機になりまして、昭和四十年だったと思いますが、ようやく二次放射能の被爆者も手帳をもらえる、あるいはその中の特殊な人には特別被爆者と認定されると、こういう経過になってきたのじゃないかと思っております。
 しかし、いずれにいたしましても、今日の時点では、広大の原医研というようなものもできましたし、それから、原爆病院その他、国家のそういう治療研究面に対する目も開いてきまして、相当何といいますか、われわれ市民が要望するような声がそういう研究面でも行き渡るようになってきておりますけれども、その当時は、いまのように、ポケットマネーと、それからライオンズクラブがあとになりまして、若干の研究費を補助してくださる。それから広島市の原対協というのがございます。この原対協からも補助金が出る。こういうような状態で研究を進めることができたわけでございます。ただ、その点で思いますのは、もうわれわれの研究は一段落ついておりまして、その点でも、いまさらその当時の研究費云々ということは、われわれは申しませんけれども、今後の問題としていえば、なお、十全なそういう研究上の措置が国家援助のもとに、既存の原医研、原爆病院その他の面において十分にはかられていくようにということを、この問題にからんで、私お願いしたいと思うのでございます。
 それから、二番目の御質問の厚生省調査でございますが、これについて言いますと、この厚生省調査のいきさつは、御存じだろうとも思うのでございますが、昭和四十年の、先ほども申しました、二次放射能被爆者を特別被爆者と認定するかどうかというときに、実は厚生省としては、その実数とか、実態を知りたいというので、そもそも、調査は企画された。ところが、それだけに限りますと、非常に小範囲なものになる。それで厚生省がいろいろな御意見を各方面に聞かれる中で、そういう限られた不十分なものじゃいかぬ、できるだけ、戦後ちゃんとした調査がないので、広げてやれという要望がございまして、そこで厚生省も、所期の目的を変更して、もう少し広げたい、ところが、何ぶん時間もない、経費も限られておるというようなことで、ああいう約一万四百名に対する抽出調査というのになったと聞いておるのでございます。それで、そういうことからもわかりますように、この調査は抜本的に、やはり先ほど申しました被爆者の全数をつかむとか、あるいは戦後の被爆者の生活史をつかむというような姿勢は、初めからなかったと言っていいと私は思うのでございます。しかしながら、あの調査の範囲におきましても、私は、十分意味のある答えは出てきておる。つまりこれは健康面並びに生活面に対して、やはり被爆者をほうっておいてはいけないのであるという最小限のデータは、あの中から出されておるというぐあいに、プラスの面で評価しなくちゃならないということは、十分あるのでございますが、しかし、基本的には、さっきの話でも申したと思いますが、生活面調査というものが欠落しておるという点は大きいと思うのであります。それで健康面、医学面の調査は、あらためてああいう形の調査をやるまでもなく、すでにいままでの医学者の努力によって十分データは一応出されておる、私はそういうぐあいに思います。したがって、国勢調査とか、あるいは厚生省のそういう一般被爆者を対象にした調査形式におけるものとしては、今後そういう社会状況あるいは心理状況なぞの戦後のやはり生活史が浮き彫りにされるようなものが、しかも抽出調査ではなくて、全被爆者を対象に行なわれなくちゃならないのじゃないかと思うのでございます。
 これはちょっと話が長くなりますが、昭和三十九年だったと思いますが、私、実はアメリカをはじめ数カ国を回りましたときに、ウ・タント国連事務総長にお会いいたしまして、そうしてこの広島、長崎の惨劇の実態をぜひ国連の権威によって正確にまとめて一と申しますのは、従来ABCCと日本人側の見解の相違などもありますので、そういうようなことをちゃんと国連の権威において整理されて、これをぜひ世界各国に周知徹底していただきたい、そのことは、言うまでもなく、核戦争を私たちが防止するという、きわめて当然の使命にとって非常に大切だからという要望を、直接お会いして申し上げたことがあるのです。そのときに、ウ・タントさんが、趣旨は非常によくわかる、ただ、たてまえとしていえば、それほど大切なものであるから、まずお国にお帰りになって、日本国政府に対して十分働きかけてほしい、そうして、まず日本政府がそういう決心をされ、そうしてある程度の調査をされる中で、日本の代表を通して国連へ提案するようなものが最も望ましい、こういうことばをそのときいただいたのでございます。その結果、実は日本側が進まない中で、結果的に申しますと、先ほどいいました昭和四十二年に、ウ・タントさんのほうでは独自に調査を――調査と申しますか、調査自体には至らないのでございますが、見解をまとめた報告書をお出しになった。ところが、その報告書をつくる段階で、いまのように、日本側のちゃんとしたデータがいまだに政府の権威をもって実は出されていないために、死没者一つとりましても、八万というような過小評価の数を採用せざるを得ない実情になっている。一方、日本側で二十数万と言う根拠もある程度あるわけでございますので、こういう点で、やはり日本側の果たすべき責任を怠っている、恥ずかしいことじゃないか、こういうぐあいに考えているのでございます。したがって、この厚生省調査というのは、そういう意味で、すべてを私は否定するものじゃございませんけれども、お願いしたいのは、今後、いまの広島市が山田市長の新しい姿勢のもとに取り粗もうとしているようなそういう調査、あるいは来たるべき国勢調査というような場合における国家の十分な配慮というようなものを通しまして、ちゃんとした、いわば原爆白書とでも呼ばれるようなものをぜひ国においてつくっていただきたい。そうして、それを国連に持ち込んでいくならば、十分貴重な意見として、国連の科学委員会その他も受け入れるでありましょうし、これは、言うまでもなく、人類にとって非常に貴重な遺産になっていくのじゃないか。そういう点で、私は前向きの今後の問題としてこの調査の問題を考えたいし、考えていただきたいと思うのでございます。
 ちょっと長くなりましたが……。
#26
○小野明君 最後に志水参考人にお尋ねをいたします。参考人は、医療審議会の現在委員であるわけです。参考人から先ほど、学問的に原爆症というのは、存在するとも存在しないともいえない、そういう御発言をいただいて、私も、何といいますか、まあ不審に思っておる点がある。しかし、認定基準というのはそれなりに適用されながらきておる、あいまいなものを認定基準としてこられておる。審議会におられる先生としては、そこに非常に大きな矛盾を感じておられるのではないかと思うのですが、問題は、厚生大臣の諮問のしかたというところにもあるように思いますが、そういった点について、厚生大臣の諮問のしかた、あるいは答申のしかた、あるいは現実に即さない認定基準、そういったものについて補足の御説明をいただきたいと思います。
#27
○参考人(志水清君) お答え申し上げます。
 原爆医療審議会は、現在のどころ、内科、外科、眼科、血液、病理、疫学、放射線並びに放射線生物学の各専門分野の方々がお集まりになっておりまして、合議でもって認定をいたしておるわけでございます。認定ということになりますと、医療内容と医療行為というものがなければならないのでございます。したがいまして、書類審査ではございますが、一番重要視されておりますのは、被爆者の受けました線量がどの程度であったか、すなわち爆心地からの被爆距離がどのくらいであったかというところが一番大きな問題になるのでございます。それから被爆の当時の状況、被爆直後の行動、また急性放射能症状、それから既往歴、病気の経過、現在の病気の状況、それから検査成績及び医師の意見というものを参考にいたしまして、ケースバイケースによりまして、いま申しましたいろいろな要素というものがどういうふうにからみ合ってきておるかということを判断いたしまして認定をいたしておる現状でございます。検査成績につきましては、一応の基準というものがきめられておるわけでございますが、その他のファクターは、その人その人によりまして、非常に違うわけでございまして、それらの症状がどういうふうにからみ合ってきておるか、こういうことを判断いたして認定をやり、医療内容がどうなっておるか、医療行為はどういうふうになっておるかということをきめてまいって答申をいたしておるような状況でございます。
 それから、原爆症は、現在のところ、存在しないのじゃないかというようなことは、少し誤解を招くというようなお話でございましたが、先ほども申しましたように、厳密に学問的に解釈をいたしますれば、放射線生物学的に原爆起因の単一病因性というものはないということになっております。したがいまして、われわれがいわゆる原爆症と呼んでおりまして、被爆者に非常に高率に見られますところの頻度を持っておる疾病群に対しまして原爆症ということを申しておるのでございまして、単一な疾病としての原爆症というものはないのだと、こういうことでございます。しかしながら、それらの疾病群につきましても、常識的な解釈をいたしまして、推計学的に有意差があったり、また、動物実験によって証明されたり、あるいは過去の人体経験によってそれが立証されるというようなものにつきましては、放射能の影響を非常に大きく効果的に浴びたのではなかろうかと、こういうことで一応原爆症というふうに考えておるのでございます。
#28
○上田哲君 参考人の御意見の中に、若干御意見の向きが分かれた部分があると思いますので、二、三点だけお伺いをいたしたいと思います。
 この原爆の被爆者に対する救済の不備は、もう言うまでもないと思うのですが、そうした不備が起こってくる根本的な原因に、実態調査の不徹底がある。これは広島のみならず、関係者のひとしく認めるところであり、きょう御出席の参考人のそれぞれのひとしく指摘されるところだと思うのですが、具体的にそれから先の実態調査のあり方については、いささか御意見が違ったように思いました。言うならば、被爆者の実態調査であるのか、原爆それ自体の実態調査までさかのぼるべきか、こういう御意見の違いかと思います。そういう意味では、庄野先生のお話では、医学的にいえばデータがほぼそろっておるのではないか、これは片言隻語をとらえての理解かも存じませんが、そういうような受け取り方をいたしました。特に精神論的な、あるいは感傷を含めた哲学論議をお伺いしたいのではもちろんありませんけれども、今日、法規をもって救済することができない幾つかの不備を補うためには、もう少しく基本的なところに立ち戻った原爆それ自体の実態調査に向かって、いまからでもおそくはない、森瀧先生のおことばをかりれば、死亡調査のすべては、ことごとく調査できる方法は幾らでもあるという御意見があったわけです。こういう点、森瀧先生からその部分についてのいま少しく……。たとえば私の仄聞するところでは、広島大学の今堀教授であるとか、あるいは地元の中国新聞であるとか、今日広島市内の有力――有力と申しますか、多くの市民団体を中心として復元運動も起こっておると聞いておりますが、そういう立場で、もとに戻った実態調査そのものが行なわれ得るのではないかという展望についてお伺いしたいと思います。私が聞いているところでは、ほぼ五億の出費をあえてすれば、そうしたことが可能ではないかというふうにも聞いております。この辺、そうした運動を進めていらっしゃる先生から、あるいは山手先生あたりから補っていただいてもけっこうと思います。よろしくお願いします。
#29
○参考人(森瀧市郎君) やる気になれば幾らでもあるといっても、私は、もちろん役に立たない昔のただ哲学関係の男ですから、今日の厳密な社会科学の立場というものをなかなかあれですが、ただ、幾つか私は列挙だけいたしました。そういうものについては、後ほど専門家が三人もきょうはいらっしゃるわけでございまして、私は、ただやる気になればできるという例をずっとあげていきました。つまりそれは予算を伴う国家施策という場合に、私が言い通してきましたのは、全部調査が済んでからでなくたって、たとえば一番はっきりしておるのは、医療法制定後、原爆症と認定を受けて死んだ者ははっきりしておるじゃないか、はっきりそれには施策ができるじゃないか、たとえ弔慰金にいたしましても、遺族援護の問題にいたしましても。それからもう一つは慰霊碑、これは非常に素朴な考え方かもしれませんが、今日以後のことは知りませんが、今日まで慰霊碑に、広島だけで七万近い数がある。うそを言ってあすこに祭ってもらっておる者はおらぬと私は信じております。そうすると、これを手がかりに、そこをもとにして調査していけば数がつかめます。去年、ことし、この死没者のその当時の記録とか、警宗が死体検視をした調書という非常に貴重なものが出てくるとか、あるいは私が広島市郊外で住まっておる五日市町という町で、そこで火葬にするその火葬許可、そういうような当時のものがなまなましくはっきりしております。そういう資料は、今日さがせばずいぶん出てくることでございますから、そういうようにして、はっきり証拠もあってつかめ得るところから施策していってもできるし、私が言う人類的大事業であるという意味の大きな調査というのは、これはそう一年や二年でできるものではない。それには、しかし、志水先生が行なっておられる復元運動というのはものすごく貢献するであろう、こういうことを申したので、これはむしろ志水先生や、庄野先生からお答えをいただけばと思うわけでございます。
#30
○参考人(山手茂君) 簡単にお答えします。
 私の考えでは、被爆者調査あるいは原爆被害調査というものを大きく分けますと、二つに分かれると思います。一つは、先ほど庄野参考人から主として申し述べられましたような、特に人類史的な観点から原爆被害というものを明らかにしていさ、世界平和に貢献する、そういう観点の非常に徹底した調査、これには、先ほど申し上げましたような五億円とか、それ以上の非常な規模の調査、これがどうしても必要である。それからもう一つは、いま生きています被爆者あるいはその被爆者の遺族、それに、さしあたって、何をどういう対策を講ずるべきか、そういう観点の対策、これに対しては、そういう数億という膨大な調査を待たなくても、すでに健康の実態という点は、医療法を中心に手帳といったものからもかなりつかめるし、それから、特に遺族の場合は、弔慰金あるいは遺族年金と施策が出ますと、それに伴って申請ということもあらわれて、これは全数に近いものがつかめるんではなかろうか。ただ、その間で、では、はたしてそういう被爆者の生活保障をもっと徹底する必要があるのかないのか、あるいは遺族に対して新しい施策を講ずる必要があるのかないのか、ここらあたりで必要ならばやはり調査というものを御計画いただきたいし、私の考えでは、どちらかといえば、やはりそういう調査を待たなくっても、もっと理論的に詰めていけば、やはり結論は出し得るんではないか、そういうことも考えるわけですけれども、しかし、そういう理論だけの検討ではだめならば、やはりそういう生活実態をさらに追求するとか、あるいは遺族の実態をさらに追求する、そういう新たな調査を検討する必要が当然あろうかと思います。
#31
○上田哲君 時間がございませんから、たくさんお伺いできませんが、ただいまのお話を総合しながら、基本的には、はなはだ実態調査がまだ十分に行なわれていない、こういう不十分な実態調査の上に立っての援護法なり、もろもろの施策で十分に行なわれるはずがないではないかという部分が共通の御指摘であったというふうに理解して、その上でひとつ先に進めたいと思いますので、御異論があればまたそのときにお答え願います。
 原田先生にお伺いしたいんですが、やはり詰まるところ、これは認定制度の問題になっているだろうと思うんです。この認定制度が、私の聞いているところでも、これが出てまいりましたときには、月に一万円ももらえば分限者になるではないかといって、おばあさんがかけ込んできたという話もあるそうですが、実際問題はたいへん複雑な手続で、たとえば指定病院の診断書その外十二通の書類が要る。あるいは原爆医療審議会がたいへん時間がかかる。ひどい場合には、とうとうなくなってしまってから、ようやく通知がきたというようなことがある。そこで、率直に申し上げれば、お医者さん自身も、そういう審議会の拒否をおそれて、十分な申請をしないというおぞみが出てきているというような実態があるように聞いております。こういうことは、実態としてはどうであるか。そうして、事実上いま広島、長崎を含めておおよそ三十万人の生存――生存というと、ことばが悪いのでございますけれども、原爆症で戦っている方々がいらっしゃる中で、この認定を受ける範囲は千人に一人だ、有名無実とは言いませんが、千人に一人の実態ということはどうなのか。これは特に長い間臨床の立場でごらんいただいておる原田先生は、その辺をどのようにお考えになるか。その二点をお伺いいたします。
#32
○参考人(原田東岷君) たいへんむずかしいことは、この原爆後障害というものが、医学的にはまだつかまれていないという庄野博士のおことばと相矛盾するようですけれども、医学的に把握できない点がたくさんあるということ、もう一つは、一人一人の例においては、この人が原爆によって白血病になったのであるか、あるいは原爆を受けなくても起こった白血病であるかという区別はできないわけであります。先ほど審議会の意見としては、ケース・バイ・ケースによってやるのだということでありますが、それと逆に、ケース・バイ・ケースでは判定できないはずであるという事実もあるわけです。これは一つの可能性をもって把握する以外は、原爆後障害というもの、認定疾患というものにしても、これは原爆の影響によった病気であるかどうかということは、全体としてでなければ、把握できない問題であろうと思います。たとえば現在ガンというものがクローズアップされて、私が医師会長をやっておりますときに、アメリカのガンの専門雑誌にABCCと広島医師会との共同研究として発表したことがございますが、白血病は別といたしまして、ある種のガンは、距離にもよりまするけれども、二倍ないし十数倍発生率が高いという事実が、ABCCの調査によっても、はっきりしておるのでありますが、それでは、やはり個々のガンの症例が原爆によるかどうかという立証はできないわけであります。またガンの種類についても、あるガンが多いから、これは原爆によるものと認定していいかどうか。あるガンは、たとえば胃ガンのごときは、実際上被爆してない方友よりもやはり相当数多いんであります。パーセンテージとしては多いんでありますが、認定疾患となっておりません。その理由は、おそらく胃ガンというものは非常に普通でもたくさんあるからということ、放射能以外のたばことか、あるいは酒とか、そういった原因による率が多いからということかもしれませんけれども、実際において、胃ガンは――私の家内も四十六歳で、被爆しておりまして、胃ガンでなくなりましたけれども、私は認定疾患に申請もいたしませんし、もちろん原爆症とはだれも思っておらない。それは、原爆医療審議会が胃ガンというものをいままでかつて一度も原爆症として認めたことがないからであります。そういったふうに、ある種のガンは認められ、ある種のガンは認められないということは、結局医学がまだ何ものも立証できないからであります。ただ、医学が進歩してないからといって、何百人、何千人の人が認定疾患と認定されないということはやはりおかしいのじゃないか。これは核というものの作用に個人差がある。非常に個人差のある固体に対する放射能というものの影響を少しでも可能性が少なければ除外してしまうという、これは根本的に間違っていると私は確信するんでありますが、疑わしきものは除外するのだという精神からきているもので、したがって、この問題は医学だけで把握しようというのが無理である。やはりそこには愛情であるとか、あるいは哲学であるとか、社会科学というものがタッチしなければこの問題は解決しない問題であろう、こういうふうに私は考えます。
#33
○参考人(庄野直美君) 私の先ほどの医学的な調査はやる必要がないということば、ちょっと誤解を招いているようでございますので、簡単に釈明しておきます。この意味は、たとえば国勢調査のときに何か調査用紙をつくりますね。そしてそれを調査員が一人一人に当たって調べていくとか、そういうような形式におけるあの医学的な調査ですね。たとえば四十年に厚生省がやりました調査でも、健康面では、血液像がどうとかというようなことが取り上げられているんですけれども、あの程度の内容であれば事であるということですね。結局、医学的な調査研究というのは、やはりいまの医療法のワクの中ででも、病院というものを主体にして、そこへ行って十分いろんな調査研究というものは行なわれ得るわけですし、それは大いにやらなくちゃいけないわけです。したがって、どこまでも、そういう面をほんとうに専門的にやれるような、そういうところでやるべきだという趣旨なんでございまして、国勢調査の生活調査なんかやるときに、あわせてちょろちょろっとやるようなことは無意味だし、その程度のことだったらもう結論が出ているんだということで申したわけでございます。もちろん医学的な調査研究が本格的に必要だということを否定したのでは決してないのであります。
#34
○上田哲君 原田先生に大局的にはお答えをいただいたわけでありますけれども、わざわざもう一ぺん立っていただくことはないのですが、私がお伺いしたがった第一点は、たいへん認定制度の手続上の問題があるだろう、それからもう一つは千人に一人という認定というのは、はなはだ実態的ではないではないかという点についてはよろしゅうございますね。
#35
○参考人(原田東岷君) 先ほどの参考意見にございますとおり、認定手続が非常に煩瑣である。そして被爆者自身にはそれはとても書けるものじゃないので、それはみなわれわれが代行して書いてあげなければ書けないような様式であります。そして、それも意見書と診断書の中には、それが放射能によって起こったものであるということを立証しろと書いてある。そんなことはできるわけがないのです。個々の被爆者についてでなく、それはひとつ全体として判定すべきものであるということを申し上げます。
#36
○上田哲君 最後にお伺いしたいのは、原田先生が御指摘をなさいました部分と志水先生が御指摘をなさいました部分について、ひとつできれば御両者から御意見を承りたいと思うんでありますけれども、先ほど小野委員が御質問いたしました部分に関連いたしますが、原爆症というのは、まだ学問的には認証しがたいのである、確定されていないのだというあたりは、私はしろうとでありますけれども、学問的には少し暴論ではないかと思うんであります。この辺が志水先生のおことばが十分な表現でないのであれば、これはひとつ御訂正を賜り、足りないところは、おそらく反対意見をお持ちであろう原田先生からさらに意見の御開陳をいただきたいと思うんでありますが、たとえば起因の単一病因性がないのだ、こういうことが原爆症というものを医学的な概念としては確定しがたいのだということは、少し私は納得できないように思うわけであります。少なくとも、先生がおっしゃいましたように、推計学的に有意差があるなどなど、二、三の例をあげられましたが、そういうたとえば数値があるならば、もう少し社会的にといいますか、推定する根拠はあり得るのだというおことばにもありましたように、あるいは原田先生のおことばの中にも、一言でありましたけれどもありましたように、それはまだ学問がそこまで深まっていないということを裏書きしているのにすぎないので、それを学問的な結論として原爆症が認定しがたい、確定しがたいというような形で済ますべき時期ではまだ全くない。少なくとも、学問はそれだけの努力をし終わっていないと私は考えるわけです。そういう部分が根底に横たわっているために、実際問題としての認定制度にも、単に手続が煩瑣になるだけで、患者本位の、被爆者本位の対策にならないという問題もあると思うんですが、事実、今回の問題は、志水先生は原爆放射能医学研究所長なり、医療審議会の委員としての御見解であって、たとえば四十年の厚生省の実態調査への問題そのものでもなかろうと思いますが、たとえば四十年の実態調査への御批判、あるいは先生が四十三年一月ごろ「世界」に御発表なすったような御意見を承れば、かなり違った部分もある。たとえばデータとして非常に不備ではないかという問題が、はたしてきょうの御見解表明の中に十分尽くされていたかどうか。私は、その辺が、学問がまだそこまで達していないという、もう一歩余裕のある御表現をいただくべきではないか。そういうことでないと、千人に一人というような、明らかに原田先生の長い経験の上に立ってのデータの配置、そういうものは解消されないのではないか、その辺をひとつ御意見が違う部分があれば、御両者から伺いたいことが一つ。
 もう一つは、いかにがんばりましても、いま非常に予算が足りない、人手が足りないということにもなっていまして、実態調査をしろとか、学問的データを集めろといいましても、むずかしい問題がある。ABCCというのが厳然として存在している。ABCCには膨大な資料があるわけでありますから、存在自身が大きくワシントンでも問題になっているおりから、ABCCとの情報交換、あるいは情報をこちら側に受け取るなり、こういう問題についての御見解はどうであるか。そういうものを補って、その上で少なくとも学問概念としての原爆症があり得るかどうか、こういう御発言があるのではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
#37
○参考人(志水清君) 多少誤解をいただいておるようでございますが、先ほども申し上げましたように、原爆症という単一な病名の疾病はないということが一つと、それから被爆者だけにあらわれる病気でなくして、被爆しない方にもこの病気が出てくるということですね。したがって、単一の病因性はない。しかしながら、医学が今後進歩いたしまして、仰せのとおり、検査技術が進んでまいりますと、あるいはそういう特別な疾病が出てまいるかもわかりません。したがって、先ほども申し上げましたように、原爆症の実態というものは、現在の段階におきましては、存在するともしないとも言うことは、正しくないんだというふうに申し上げたのでございます。
 そこで、原爆症というのは、非常に誤解を生じやすいし、むずかしい表現でございますが、この表現を被爆者にたくさん見られる疾病群というふうに解釈していただけば御了解がつくんじゃなかろうか、こういうふうに存じております。
 それから、第二のABCCとの関係でございますが、ABCCのほうに絶えず連絡いたしまして、われわれの研究調査の上で必要な資料は、厚生省の了解を得まして、有効に利用さしていただきます。なお、今後におきましても、それらの資料を十分活用いたしまして効果をあげてまいりたいと、かように考えております。
#38
○参考人(原田東岷君) 昭和二十五年に、ABCCは、すでに原爆病は消滅したという発表を国務省に送っております。また、昭和三十年に私がアメリカにおるとき、当時のABCCの主張はアメリカの週刊誌に、原爆傷害というものはないのだ、やけどの後遺症があるくらいのことで、ほかにはないんだということをやはり書いております。それにもかかわらず、ABCCは現在存在している、研究を続けております。そこらでおわかりだと思います。また、遺伝関係については、終戦直後に、小頭症あるいは性の、男の子がよく生まれたとか、そういったこと以外には有意の差がないというふうな発表をしておりますが、やはり遺伝の関係をまだときどきやっております。たとえば染色体の異常が、若い者では三十五倍から六十倍よけいに見られる。これはリンパ線の染色体でありますが、そういった発表をやっておるわけであります。したがっていわゆる原爆症というものは医学的にまだ完全に把握されておりませんし、まだ流動的であるということは、だれも認めるところだろうと思います。先ほどもちょっと触れましたが、昭和二十八年当時は、ガンというものは関係がないのだということをはっきりABCCの病理部長は申しておりましたけれども、五年後には悪性新生物というものは、非常に関係があるということをみずからの手で発表しておる。そういたしますと、将来、二世の中に出てくる白血病といった問題も、必ずや新しいスポットライトを浴びてくるのではないか。したがって、この原爆後障害というものは、将来どうなっていくかわからないものだ。そういう事実をよく踏んまえておりませんと、現在の医学では認められないといって拒否される人はどうなるのかと、五年後にはその人たちはどうなるのだろうということを心配するのは私一人ではなかろうと、こういうふうに考えておる次第でございます。
#39
○参考人(庄野直美君) これ私医学者ではないので、いわばしろうとの判断として、いまの問題について実は広島あたりでもよく論争がなされておりますので、そのしろうとの私がまわりから聞いていて感じている点をちょっと御参考に申し上げてみますけれども、志水さんがおっしゃる点はこういうことだろうと思うのです。要するに人間のいままで持っておりますいろいろな病気がございますね、そのいままで知られておる病気以外の全く新しい病気が原爆被爆者によって明らかに出た場合があるかどうかなんですね。ところが、そういうものはないということのようなんです。つまり被爆者があらわしてくる病気が、どんな病気をとってみても、すべていままで人間がいろいろな原因にしろ出しておる病気であるということらしいのでございます。したがって、そういうことをどういうぐあいに判断するかといえば、一番はっきりしていることは、統計的に確かに被爆者にこれこれの病気がある、その病気はもちろん他の原因でも起こるのですが、被爆者の場合にはこれこれの病気が統計的に有意差があって、たくさん出てくるということがわかったら、これは確かに被爆によるということが統計的に裏づけられたということがはっきりしたと言っていいと思うのです。これが、常識的という先ほどことばがあったと思うのですが、普通、信じられるわけです。統計的に有意差がないときに他の病気を被爆者があらわしたときにどうするかという解釈の問題だと思うのですが、その場合に一つ言えますことは、これは私の判断なんですが、この病気が、たとえば頭がしょっちゅう痛がるとか、疲れやすいとかいうような症状が明らかに被爆に無関係であるということが証明されたときは、これはまた取り除くことができますね。ところが、そういうことがまだ実はないわけです。明らかに無関係であるということを証明されたことはない。そうすると、明らかに有意差がないけれども、被爆者があらわす病気というものをどう認めるかということは、まさに今後の追求の問題ですし、その場合に、被爆というようなたいへんな原因で起きてきた病気なんですから、したがって、頭から、有意差がないからといって、無関係であるというぐあいに切り捨てていただきたくないと、これはわれわれのこの常識人のお願いみたいなものなんですが、被爆者というものが特殊な位置にあるということから、医学的な議論もいろいろおありでしょうが、それが明らかに無関係ということがわかるまでは、やはりどこかに問題があるのじゃないかというぐあいに、いわば一種の人道的な精神といいますか、そういう態度でこの問題を見ていただきたい。しかし、いずれにしても、そういう意味で問題は十分今後に残っておる、まあこういうことじゃないかと私は理解しております。
#40
○藤原道子君 時間もございませんので、ごく一、二点についてお伺いをしたいと思うのでございます。
 結局、広島、長崎で受けたこの原爆は、世界人類始まって以来の最高の不幸だと思うのです。ところが、いまいろいろお話伺ってみまして、疑わしきは治療せずというようなあり方というものは、私ども納得がいかないわけです。結局、原爆小頭症患者すら、一昨年、やっと一部が認定されたというようなことですね。ということになると、いまの原爆医療審議会のあり方に問題があるのじゃないかというふうに考えますが、原田参考人、志水さんからお伺いをしたい。
 それから、続きまして、医療審議会に対する厚生大臣の諮問のしかたと、これに対する答申のしかたについての御説明を志水参考人にお伺いをしたいと思います。
 さらに続けてお伺いをいたしますが、六月二十日の朝日その他の新聞に、十七歳の被爆二世が白血病によって死亡したということが伝えられております。十七歳といえば、被爆者が被爆してから数年後に妊娠したはずでございます。にもかかわらず、こういう不幸が再三起こっておるということ、これに対してどのようにお考えになっておるか。どんなにか被爆者の女性が不安に思っておるかわかりません。しかし、そういうことは、ほかにも例があるのだということになれば、これも認定されないのでございましょうか。こういう人類初めての不幸によって起こった事態、これが今後いつ繰り返されるかわからない。先ほど原田参考人もお話がございましたが、ガンが起こる、あり得ないといってアメリカでは笑っていた。だが、今日では、これを認め、ざるを得なくなってきた。こういうことになったときに、いまのあり方で正しいのだろうかどうだろうか。疑わしきは治療せずではなしに、疑わしきはむしろ取り上げて治療してまいりまするのが国家的な責任じゃないかと、かように思いますが、これに対して御意見を伺いたいと思います。
#41
○参考人(原田東岷君) たいへんむずかしい問題に差しかかってきたようでございます。私には、それを答える能力はございません。ただ、一つ言えることは、もし各専門家がそろっている審議会ですね、現在の医学を知り尽くした、それぞれの専門分野においては権威者であるという方々の集まりの団体に、おまえの学識をもってこの人が原爆症であるかどうかということを、原爆に起因しているかどうかということを立証せよという質問がありましたら、多くの場合、非常にお困りになるだろう。それで、保留して、さらにいろいろなデータを集めるということで、三ヵ月おきにやっておりますと、これがすぐ一年半になる、二年になる理由の一つかと思います。もし厚生大臣が、この患者は原爆と無関係であることを立証せよという諮問がありましたなら、今度は逆に、無関係であるということがなかなか言えないから、審議がまた難航するかと思います。かように非常にむずかしいことを諮問されているまことにお気の毒な審議会である、こういうふうに理解しております。
 もう一つ、二世の問題でございますが、これについては全く私は答える能力がございませんが、先ほど申しましたように、二十数年たってなお、非常に有意の差がある染色体の異常というものがABCCで発見されております。これは遺伝に関連する性染色体については、まだ行なわれておりませんので、何とも申し上げかねますが、研究がそこまで進めば、おそらく異常がまだ残っておるに違いない。リンパ腺には残っておるが性染色体には残っていないということはなかなか言えないのじゃないか。それにもかかわらず、被爆二世の原爆症の有無について、医学がそれをどちらかに立証する時代は十年もあるいは二十年も先ではないかというふうに推測いたします。しかしそれにいたしましても、ABCCは、その研究を続けておるということだけは申し上げておきたいと思います。
#42
○参考人(志水清君) 審議会の答申につきましてお答え申し上げたいと思います。
 先ほども申し上げましたように、書類審査でございまして、まことに医療機関にはごめんどうであり、御迷惑かもわかりませんけれども、その被爆者が線量をどういうふうな状況によって受けたか、遮蔽の状況等十分に記載していただかないと、判断が間違ってまいるわけでございます。それから、先ほど申し上げましたように、被爆の状況、それから被爆した後の行動、それから急性症状があったかなかったか、どういう病気の経過をたどってきたか、発病の状況はどうであったか、現在の病気がどうして起こってきたかというようなこととを、現在の検査成績と医師の意見というものを参考にいたしまして、まず、この病気については、この被爆者においては、原爆の放射能を効果的に浴びてきたのではなかろうかと、こういうことで、原爆の放射能を多量に浴びてきたものと認める、こういう答申をいたすわけでございます。具体的な例を申し上げますと、たとえば原爆白内障――「そこひ」でございますが、この場合に、いわゆる五十五歳くらいから先になりますと、老人性白内障というのが多くの方に出てまいるわけであります。したがって、被爆者の場合には、年齢的にもそういう考慮が要るわけでございます。それからまた、動物実験その他のいろいろな調査研究報告によりまして、広島におきましては、千七百メートルから外では、そういう白内障があまり起こっておらない。また長崎におきましては、千八百メートルから先においては、非常に少数しかそういうケースは見られない。したがって、まず切り上げて二キロまでは、そういう白内障が出た場合に、どうも原爆の影響がくさいのじゃないか。しかも、年齢が若くて、そして視力障害が非常に軽度である、そして特別な眼底検査の結果、水晶体の後極部に特殊な混濁が見られるというような動かせない事実、そういうものを総合的に判断いたしまして、まず白内障と疑って差しつかえないのじゃないか。こういうむずかしい、つらい審議をやりました結果、原爆の放射能を効果的に浴びたものと思われる、こういう答申をいたすことにいたしております。
 それから二世の白血病のお話がございましたが、二世につきまして、私も若干の調査をいたしているのでございますが、四十二年の十月十日に、広島市の当時の被爆者が九万五千八百四十八名でございまして、その二十分の一の四千七百九十二名で結婚しておる者の、あるいは結婚したことのある者が三千五百八十九名でございます。それらの中から、子供の数を調べますと、三千七百十六名でございました。その三千七百十六名がいわゆる二世ということになるのでございますが、これらの方々の健康状態を見ますると、病弱であるという者が百六十八名で、四・五%。それから、現在何らかの病気をしておるというのが二十三名で、〇・七%。それから、死亡いたしております者が百十八名で、三・二%でございます。この死亡の原因を調査いたしますと、ほとんどが乳児死亡あるいは事故死というようなことになっております。これは一般的な被爆者の子供さんに対する調査の結果でございますが、この成績から見ましても、現在の被爆者の子供さんには、心配するような異常が見られないのじゃなかろうかと、私は信じておるわけでございます。私にも三女がおりまして、やはり現在健康に薬大を卒業して就職しておるような状況でございます。
 それから二世の白血病の問題でございますが、現在までに五名ほど白血病が出ておるわけでございますが、それは年次がみな違っておりまして、大体一年に一人というようなことに推測されるわけでございます。そういたしますと、被爆者でない全人口に対します白血病の死亡率というものは、十万に対しまして三人でございます。そこでそういうデータから観察いたしまして、いまのところ被爆者の子供さんに見られる白血病というものは、まず自然発生的な白血病ではなかろうか、こういうふうに考えておりまして、いわゆる特殊なものであろうという考え方はできないように存ずるのでございます。
#43
○参考人(原田東岷君) それにもかかわらず、原爆と関係がないということを言い切ることは、当然できないと思います。発生率だけでものを割り切ることは、これは、また何年かたって、新しい学問を身につけた学者から批判される時期がくる可能性があると思います。また、先ほど言い落としたことでございますが、認定患者というものは、申請されたうちの一部がなるわけでありますが、その前にほかの病気でなくなった、たとえば脳溢血で死亡した患者を解剖してみますと、あるいは胃ガンでなくなった患者を解剖してみますと、最終的な死亡診断は胃ガンであり、あるいは脳溢血であったとしても、そこに幾つかのほかのからだの状態があったということがしばしば発見されております。当然、認定疾患であるべきものがほかの病気で死んだということは、この先ほど差し上げました「鹿島醫學」の病理学者がそういうことを発言しておられるわけでありますが、死んでから後にわかることもしばしばあるわけであります。したがって、認定疾患というものは、たやすく除外、否定さるべきものではないということを重ねて申し上げたいと思います。
#44
○藤原道子君 それから審議会のあり方でございますが、病院からいろいろな点で検査をして、そうしてうるさい書類を出しますね。そうすると、早くて半年ぐらい、長くなれば一年半もかかるというようなことを伺いますが、その間に死ぬ人も相当出てくるでしょうね、これはいまのあり方でよろしいのでしょうか。何とかもっとすみやかに判定するというようなことにはいかないものでしょうか。その点についての御意見を伺って、きょうは参考人に対する質問でございますので、あとは……。その点だけお伺いいたします。
#45
○参考人(志水清君) 認定申請から認定になりますまでの期間の問題でございますが、過去におきましては、比較的そういうケースが多かったのでございますが、最近は非常に改善されておりまして、と申しますのは、認定患者の、先ほど申し上げました十二年間の調査の成績から見ましても、三十五年ごろまでは相当数の認定患者がございましたけれども、それ以後におきましては、年に数件しか認定申請が出ておりません。ところが、御配慮いただきました特別措置法が施行になりましてから、認定申請がふえてまいっております。多いときには、私たちが五十件から六十件余りの審査をやらなければならないというような、相当な数になっておりまするが、そういう状況から、審議会もかなりひんぱんに開かれるようになりまして、申請から認定までの期間というものも非常に短縮されてまいっておるようでございます。ただ、先ほど申し上げましたようないろいろなむずかしい要因がございますので、判定の上で非常にこれは困難と思われるものにつきましては、その当時の被爆状況とか、あるいは急性症状の状況について、詳しくもう一度調査をお願いしたいというようなことで保留をいたしましたり、あるいは再審査というような措置を若干とるわけでございますので、そういうケースがやはり多少おくれてまいるのじゃなかろうかと推察いたしておるわけでございます。
#46
○委員長(吉田忠三郎君) これにて、参考人に対する質疑を終わりたいと存じます。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。この機会に厚く御礼申し上げます。
 なお、本案に対する質疑は後刻行ないます。
    ―――――――――――――
#47
○委員長(吉田忠三郎君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、中沢伊登子君が委員を辞任され、その補欠として高山恒雄君が選任されました。
 速記とめて。
  〔速記中止〕
#48
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をつけて。
    ―――――――――――――
#49
○委員長(吉田忠三郎君) 次に、社会保障制度筆に関する調査を議題といたします。
 オレンジ学園における児童虐待に関する件について調査を行ないます。
 本日は、本件調査のため、参考人として、鹿児島県民生労働部長 塚田新市君の御出席を願っております。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、御出席くださいまして、まことにありがとうございました。
 本日の議事ですが、まず参考人の方から本件の事情について御説明等を願ったあと、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、まず参考人からの御説明等を聴取いたします。塚田参考人。
#50
○参考人(塚田新市君) 御説明をいたします。
 鹿児島県議会は、六月二十一日に開会をされまして六月三十日に閉会をいたしておりますが、その間、二十四日、二十五日と本会議で質議が展開をされたわけでございます。
 二十五日の本会議におきまして、公明党所属の和泉議員の質疑が展開をされました。その中には、オレンジ学園に児童虐待の事実があるのではないかという、きわめて重要な内容を含んだ発言があったわけでございます。
 そこで、それまで県といたしましては、社会福祉事業法第五十四条に基づきますところの一般的な児童福祉施設最低基準が適切に順守されているかの調査指導、なお、衛生部におきましては、医療法上の医療監視を行なってきたわけでございますけれども、それまでの県の指導調査からは、特に児童虐待と思われる事実は発見されていなかったわけでございます。したがいまして、発言の中にございます重要な事項を考えまして、衛生部と協議をいたしまして、さっそく翌六月二十六日午前中に、県の児童家庭課長、医務課主査を現地に派遣をいたしまして、とりあえず事情の聴取をしてまいりまして、午後の委員会に臨んだわけでございます。
 二十六日の午後の委員会におきますところの論議の模様を申し上げますと、委員会の冒頭におきまして、私から特に委員会で発言を求めまして、昨日の発言につきましては、執行部といたしましても、その行政執行の責任上、とりあえず早急に解明すべきものは解明をいたしまして、もし改善を要するものがあるといたしますと、直ちに改善させることが必要でございますし、衛生部とも相談をいたしまして、児童家庭課長並びに医務課の主査を現地に派遣をいたしましたので、その結果を御報告申し上げさせていただきたいという了解をいただいたわけでございます。そこで部長が調査結果の説明報告をいたしまして、それに対しまして議員の追加質疑がございまして、さらに部長といたしましては、所信の表明をいたしたわけでございます。行政指導上ゆるがせにできない問題でございますので、本件につきましては、今後、衛生部と合同の調査をいたしまして、健全な施設として運営がなされまするように指導してまいりたいということを申し上げましたわけでございます。委員会といたしましてはそのことを前提にいたしまして次のような集約が実はなされたわけでございます。
 本問題は、部長の発言もあるとおり、当局の姿勢も示されたわけであるから、具体的な調査は、ある程度の時間もかかることであるので、各委員の了解が得られるならば、この問題は、この段階においては、一応審議を行なわず、当局の調査が完了したら、適当な時期に委員会を再開して、閉会中の委員会に付議するということではどうかということで、一応委員会の了解が得られましたわけでございます。
 このような委員会の前提に基づきまして、私ども、県といたしましては、衛生部と合同の調査を七月の二日から直ちに実施するという予定でございましたところ、御承知のとおりの豪雨に見舞われましたので、やむなくこれを七月の七日、昨七日から七月の十一日までに調査をいたしまして、その結果を七月二十二日、七月二十三日に開かれます所管の委員会、つまり鹿児島県で申しますと、水産商工民生委員会と文教衛生委員会のあるいは単独、あるいは合同の委員会にかけて御審議をいただく、そして一応の結論を得たい、こういう段取りに実はなっておるわけでございます。
 二十六日の午後の委員会におきまする質疑の要点は、必要がございましたら、詳しく申し上げてもいいと思いますが、七月一日における当委員会におきます質疑と大体同様なことのようでございます。
 以上一応終わります。
#51
○委員長(吉田忠三郎君) どうもありがとうございました。
 これより参考人に対する質疑を行ないます。
 御質疑のある方の発言を求めます。
#52
○渋谷邦彦君 たいへん御苦労さまでした。
 ただいまの御説明によれば、もっと早い機会に調査をなさる御予定のところ、あいにくの豪雨で調査を延期なさっていらっしゃる。そうなりますと、私のほうからお尋ねするようなこまかい具体的な問題につきましても、あるいは調査待ちということになりかねないのではないかということを感じます。また、事実が明らかになりました際には、参考資料でもけっこうでございますので、お送りいただければ幸いかと思います。
 ただ、この際にただいま御説明のございました六月二十六日の常任委員会でございますか、内田児童家庭課長さんが事実の内容についてのあらましをお述べになっておられますが、それによりますと、どうもやはり不正事実があったような印象を私としては受けるんでございますけれども、この内田課長さんの発言の内容は誤りがなかったかどうか、それが一点でございます。時間の関係等も先ほどからずいぶん気にしておりますので、たくさんお伺いしたいんでございますけれども、大体要点だけを申し上げますので、それが一点。それから第二点は、この学園が日本でも四番目という、たいへん期待をかけられた身体障害児の収容施設でございまして、私どもとしても、その成り行き、今後の運営の理想的なやり方というものについて注目をするところでございます。それだけに国の費用を使い、また県の費用を使ってやるからには、当然国民としても知る義務があるであろう、権利があるであろうと、こう思います。したがいまして、そうしたお金の使途についても当然問題になりますけれども、いま、一応それはさておいて、なぜ今回のこの事件が表面化したかという背景を尋ねてみますと、やはり最低基準に合致していわゆる承認を与えた施設であるかどうか、つまり医師が定足数に満ちているかどうか、あるいは看護婦の問題、保母の問題、これが一つございます。それから施設そのものがどういうふうにできているか、収容されている子供たちが特殊な子供であるだけに、けがをする率も多うございましょう。それだけに、そのベッドやその他のいろんな器具について万全の体制がとられてきたかどうか、そういうことまでも年一、二回おそらく行政指導なさる県当局としては、十分な配慮をもってその辺を監督されたかどうか、ここにやはり問題があるのではないか。先ほど申し上げた内田課長さんの発言によりますと、やはりその最低基準に満たないというふうに考えられます。その場合には、県としては、当然、法律の定めるところによりまして、改善命令をお出しになる、その改善命令をお出しになって、なお聞かない場合には、業務の停止、なおかつ、聞かない場合には、罰則の規定というふうになっておるようでございますが、はたしてその改善命令をお出しになったことがあるのかどうなのか、そしてもし出したとしたならば、それに対しての措置が十分なされたかどうか。まず、最初にこの三点について、私自身も事件の真相を知る上から、責任ある明確な御答弁をお願いを申し上げたい。
#53
○参考人(塚田新市君) お答えを申し上げます。
 先ほど御報告を申し上げましたとおり、過去におきます私どもの監査におきましては、特に児童虐待と思われるような内容についての事実は発見をいたしておらなかったわけでございます。したがいまして、先ほど御報告申し上げましたとおりに、内田課長が調査をいたしてまいりましたのは、とりあえずの事情の調査でございましたので、今回衛生部との時日をかけました合同の調査の結果でないと、なかなかはっきりしたことが申し上げられないわけでございますが、ただ、最低基準に合致しておったかどうかということでございますが、最低基準の内容等をずっと見まして合わしてみますと、お説のとおり、医師の定数があるいは少し足らなかったかというような事実はございます。それから介護の職員、看護婦、保母さん等につきましては、大体、私どもの見方といたしましては、厚生省の指導の程度に近いところであるように思われるわけでございます。どういうことでこういうところに開設の許可をしたかということの意味もあったようでございますが、私の見ますところでは、むしろこのオレンジ学園におきましては、他の医療機関等も持っておりますので、むしろ医師等につきましては、かえって医師の充足が応急の応待のしかたがしやすいというような面もあったのではないかというふうにも考えられます。なお、このオレンジ学園におきましては、その前から福山学園という精薄施設も経営をされておったのでございまして、その開設の許可に間違いがあったとは考えられないわけでございます。
 それから医療法上の問題等につきましては、これは御承知のとおり、衛生部におきますところの医療監視の問題でございまして、毎年医療監視を実施いたしておりまして、その面から衛生部が指導をいたしておるようでございます。
 以上でございます。
#54
○渋谷邦彦君 なるほどただいまの御説明でございますと、事実調査が完全でないということで、きわめて抽象的なお答えになったようでございますが、いまおっしゃられた中で、欠陥としては、医師の常勤が足りなかった、こういう問題が御指摘ございました。伝えられるところによりますと、この収容人数からいけば、当然十三名の常勤、非常勤の医師が必要である、中には鹿児島大学のお医者さんの名前が連なっておる、こうなりますと、当然、人事院総裁の承認も必要とするわけでございますが、そういったような手続もきちんとなさった上で医師を配置されたかどうか。それから看護婦につきましても、いま、ここでこまかくは申しませんけれども、常時定員に、はたして定員が充足していたかどうか、これにも若干の疑問が残るようでございます。特に保母の問題につきましては、これは、非常に移動が激しいようでございますね。私が入手したこの名簿によりますと、この三年間で六十五名の保母さんがやめておられます。したがいまして、一年間に二十二、三名でございますか、これによりますと。希望退職というと、聞こえがいいようでございますけれども、これがほとんど結婚によるものがきわめてわずかと、こういうような問題が残るようでございますが、なぜ、そのような保母さんたちがやめていかなければならないか。結局、人手が足りないということになりますと、どうしても子供の扱いが粗雑になるということは、われわれしろうとでも常識的に十分考えられる問題だと思うんでございます。県当局としても、こうした問題の監査をなさる場合に、はたしてどの程度の実際監査をなさっていらっしゃるのか。まあ、ことばが過ぎるかもしれませんけれども、要するに、なれ合いのような監査をやられたような傾向はなかったのかどうなのか。ほんとうに本気になってこまかい点にまで行政指導を的確におやりになったかどうか。こうしたことも今後問題が明らかになれば、当然指摘されるところになるんじゃないか。その点についても、若干御見解を述べていただきたい。
 それから、やはり非常に問題になりますことは、命令入院ということと、それから同意入院ということがございますけれども、同意入院の場合には、たとえ精薄児であろうとも、その人権を尊重するという立場から、院長なりあるいは専門医が必ず診察をした上で入院をさせるというのが法律によってきめられている仕組みではないか。はたしてその診察をしたことがあるかどうか。そういう同意入院の場合には、全部にわたって診察をしているかどうか、カルテもきちんと残っているかどうか、これがやはり次に残る問題ではないかと、こう思うわけでございます。
 それから、やはり最大の問題は、国から、県から多額の補助金が支出されているわけでございますけれども、その収支決算というものについて、一片の疑義も差しはさむことのないような明確なものであるのかどうなのか等々、この点について御見解をひとつお示しいただきたいと、このように思うわけでございます。
#55
○参考人(塚田新市君) お答えを申し上げます。
 県の監査は、なれ合いの点があったのではないかということについての御質疑でございます。先ほどから申し上げますとおりに、県の監査は、社会福祉事業法第五十四条によりますところの一般的な監査で、児童福祉施設の最低基準が実際に実施せられておるかどうかにつきまして、綿密に調査をいたしておるわけでございます。なお、医療法上の問題につきましては、衛生部の医療監視がなされているわけでございまして、そこにおきまして誠実にやっておるものと、私は存じます。
 それから、保母の移動の問題でございますが、御承知のとおり、当オレンジ学園は、重度の精薄児と、重度の肢体不自由児をあわせ持った、まことにふしあわせな児童を収容しておる施設でございまして、そこで働いておりまする看護婦さん、保母さん方、これは、まあ、私ども参りましても、直ちに涙を催すような仕事をしておられる状況でございまして、それであるから保母さんがおやめになるというわけではないと思いますけれども、やはり保母さん方も、私どもの知っておる限りにおきましては、やはり結婚等がおもになってやめていただいておるのじゃないかというふうに考えております。なお、これはさらに十分に調査をいたしまして、指導の万全を期したいというふうに考えておるわけでございます。
 命令入院の問題でございますが、これは児童をこの施設に入所させますには、児童相談所で医師が判定をいたしまして入所させるということになっておるわけでございます。
 補助金の収支決算につきましては、私どもの過去の検査では、悪い点はないようでございますが、しかし、私どもといたしましては、やはり今後は、特にこのオレンジ学園におきます物品の買い入れ等については、十分これは重点的に監査をしていきたいというふうに存じております。
#56
○渋谷邦彦君 最後に一つだけ集約的にお尋ねをして終わりにしたいと思います。
 要は、子供を虐待しているかどうかという問題、なければ幸いでありますけれども、まずこまかいことでたいへん恐縮なんですが、先ほども述べましたように、たとえばベッドや何かの場合、それが何でつくられているか、もし、これが金属性のものでつくられたり、木製のものでつくられれば当然けがをすることは予測できる問題でございます。そういう器具等の設備が万全であるかどうか。
 それから、子供の扱い方について、これは法律でも定められておりますように、たとえばおむつカバーを取りかえない、なかなか取りかえてくれない、あるいは寝具がよごれても取りかえてくわない、また、病気になった場合でも、常勤の医師いなかったり、旧館と新館ではだいぶ違いがあるようである。あるいはその旧館に収容されていろ子供たちについては特殊な訓練、指導というものがなされていない等々、そういう問題がないかどうか。
 それから精神病の経験のある者を学園に入れまして、そうして軽度の仕事に従事させた事実がないかどうか。もし、そういうことが考えられますと、特に炊事のような場合、やかんを持たせるようなことがあっても、それをこぼすということも考えられる。それによってやけどをすると、あるいはその他し尿のくみ取りであるとかというようなことが考えられますし、特に、炊事においては、まあそう重症じゃないのだし、少しは訓練の意味も含めて炊事の用事をさせよう、そうなりますと、かりにほうちょうなどを使わせますと、手を切るという、そういうおそれも出てまいりましょう。いろいろそうしたようなことについても、実際に完ぺきを期して、これは、われわれの理想論かもしれませんけれども、やはりそうした理想を、特にそういう施設でございますので、求めたいのは、当然だろうと私は思います。言うなれば、非常に概括的な言い方で当を得ないかもしれませんけれども、そういう問題についての監査の結果の状況はいかがでございましたでしょうか。
 それから、今後、県当局として、これは災いを転じて福となすような方向に持って行っていただきたいということを私ども願うのでございます。問題は問題といたしまして、そうした観点に立ちまして、もっと積極的に進めてもらいたい。国としても、県としても、こうした施設に対しての配慮というものが、他の問題と比較いたしますと、出おくれている感じがいたします。本格的に始まったのはこの二、三年来だというふうに言われております。しかも、相当日本全国的に考えてみますと、多くの患者がおります。それだけに問題が重大でありますので、ひとつ理想的な今後の運営ということを果たすためにも、十分のひとつ御配慮を願うとともに、絶えずやはり上級官庁である厚生省とも連携をとられて、みごとな今後の運営というものを期待いたしたい。
 そうした点についての決意なり、また抱負なりを、締めくくりとして述べていただきまして、参考人に対する私の質問を終わることにいたします。
#57
○参考人(塚田新市君) 精神病院を出た患者に保母の手伝いをやらせたことがあるのではないかといったようなことでございますが、そういう点もございましたが、精神病者ではございませんで、うつ病で精神病院を退院いたしました者で、現在完治しておりまして、保母として勤務しておる者がおることは事実でございます。
 それから、寝具が不潔といったようなこと、これは基準寝具を適用いたしておるものでございますので、週一回は必ず基準寝具で取りかえております。なお、その都度、必要によりまして、取りかえておるようでございます。御承知のとおり、入院園児それぞれが非常にいろんなあり方がございまして、なかなか看護婦さん、保母さんなども応対しにくい点もあったりいたしまして、客観的に誤解を受けるような点もあったかと思いますが、職員の方々は、一生懸命努力をばいたしておられるようでございます。私どもといたしましては、いま御意見にございましたとおりに、厚生省の御指導を十分にいただきながら、鹿児島県におきましても、これは全国で四番目のものですが、たった一つのまことにあわれな児童を預かっております施設でございますので、健全に育成をいたしますように、今後あらゆる努力をいたしてまいりたいと存じますので、御了承いただきたいと思います。
#58
○委員長(吉田忠三郎君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
#59
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#60
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をつけて。
 引き続いて本件に対する質疑を行ないます。
#61
○渋谷邦彦君 いま、鹿児島県の民生労働部長さんとのやりとりでおわかりいただいたと思いますが、いずれにしても、調査不十分ということで、私がこれから厚生大臣なり、局長にお尋ねをいたしましても、それ以上のはたして回答が得られるかどうか疑問でありますし、まず不可能であろうと、こう思います。また、この件については、後日に譲りますけれども、ただ、いま答弁があった中で、うつ病患者の問題がありました。精神病患者でないといえばそれまでかもしれませんけれども、しかし、いままでのいろんな発生した問題から推測をいたしますと、これが、いつまた、狂人になり得ないという保障は考えられない場合もございましょう。いずれにしても、そういうところにいた人を使う問題であるとか、あるいは医師が足りなかったとか、若干のそういうやはり不備の点がある。中には、ことばを伏せられて言われた個所もあるような印象を受けるわけでございますが、事実がはっきりしないということもございましょうし、いずれにしても、いま大臣がどのようにお感じになられたか、現在のやりとりだけでは、私自身の質問も十分申し上げられないと思うのです。
 まず、最初にいまのやりとりを通じて大臣がどのようにお感じになったか、そこから入っていきたいと思います。
#62
○国務大臣(斎藤昇君) 先般の当委員会におきまして、いろいろ御質問がございまして、政府委員なり、私からもお答えをいたしましたが、その後の調査は、ただいま参考人として出てまいりました県の部長が申し上げましたように、梅雨前線の被害等によって、まだ行なわれていないということでございまするし、その後の具体的なさらに調査の結果、あるいはその他の資料は得ておりませんので、そういった資料を得てから後にお答えをいたしたいと、かように思います。
 いま、参考人との質疑応答を私も伺っておりましたが、ただその感じだけで申し上げるのもいかがか、かように思います。ただ、この前も申し上げましたように、松下園長は、その道におきましても、みなに非常に尊敬をされておられた人でありますから、こまかい点につきましては、それはあるいは至らなかった点もあろうかと思いますけれども、完全無欠であったとは言えない点もあるのじゃなかろうか――あれだけ問題になりましたから。でありますが、大筋におきましては、先般も申し上げましたように、とにかく全国の重症身障児を持っておられる親御さんたち、またそういった施設の方々もかねて尊敬を払っておった人でございますから、まあ、園長自身のさしがねから、特に、何といいますか、悪いことばで言えば、この施設を自分の食いものにするとか、そういうようなことはもちろんなかったであろうというように思っておるのです。しかし、これは、いろいろと調査の結果を待たなければなりません。ただいまの段階では、そういう気持ちでおりまして、いま質疑応答を伺っておりましても、その気持ちに変化はない、かように申し上げておきます。
#63
○渋谷邦彦君 ただいま大臣の答弁のとおりでございますので、これ以上の質疑を続けることは不可能かと存じますので、本件につきましては、また、後日に質問を留保さしていただいて、本日は、私は終わりにさしていただきたい、こう思います。
#64
○委員長(吉田忠三郎君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑はこの程度にとどめておきます。
    ―――――――――――――
#65
○委員長(吉田忠三郎君) 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
 御質疑のある方の発言を求めます。
 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#66
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をつけて。
#67
○大橋和孝君 先ほどいろいろ参考人からもお話を承りまして、まだ十分に消化ができないわけでありますけれども、いろいろこの原爆被爆者に対する特別措置の法案に対して、時間もありませんからして、委員長の仰せのごとく、できるだけひとつ簡潔に要領よく質問してみたいと思いますから、その点ひとつよろしくお答えをしていただきたいと思います。また、最後に、私は、皆さんの質問が終わったところで、もう一度最後の詰めの質疑もしたいと思いますけれども、初めにあたりまして、私、原爆そのものについて少しお考え方を十分聞いておきたいと思うわけであります。
 さきに可決されましたところの戦傷病者戦没者に関する遺族援護法、これが昭和二十七年に成立して、数々の未処遇の問題がありました。原子爆弾の被爆者の医療に関する法律、これは昭和三十二年において成立したのでありますけれども、この原爆被爆者に対する特別措置法も、昨年、これがまた成立したわけであります。しかし、この中には、非常に未処遇のものがたくさん含まれておるのは、前の遺族援護法と同じようであります。この原爆被爆者に対するものは、あの悲惨な原爆被爆を受けた人の特別な措置法でありまして、これに対しても未処遇があるということは、非常に立ちおくれを意味するものでありまして、今後、これに対して、一体、どういう対策を考えられるのか。これは根本的な問題でありますので、この戦傷病者とか、戦没者なんかに対する遺族の援護法というものができており、これの未処遇のものがあるということと、今度の原子爆弾の被爆者に対する医療の問題から、あるいはまた特別措置法の問題に関しても、非常に未処遇が多いわけでありまして、これはより以上悲惨なわけで、そういう立場から考えるならば、非常にこれが立ちおくれてるのは問題だと思います。これに対する対策をひとつ聞いておきたいと思います。
#68
○政府委員(村中俊明君) 原爆の対策につきましては、ただいま御指摘もございましたが、従来とも、関係機関、団体その他の御意見も十分拝聴しながら、対策を進めてまいっております。特に衆議院、参議院、両院で附帯決議をされました事項を中心に現在まで改善をしてまいりました。御指摘の、援護法的な措置を今後原爆の被爆者対策についても措置するかどうかという問題につきましては、これは従来も当委員会でいろいろ御審議を願っておりますが、社会保障というたてまえから、各方面の意見を十分盛り込みながら、内容のあるものを整備してまいりたい、こう考えております。
#69
○大橋和孝君 確固たる戦後処理の方針のないままに、圧力団体もない被爆者の対策については、財政上の理由から処理されなかった。その辺の点が非常に何となく遅延をした原因だと私は考えるのです。このあたりは、すみやかに援護対策を確立をして、いまおっしゃっておりましたけれども、十分国の責任で国家補償を拡充していくということが必要だと思うのです。いま、いろいろの御意見を承りながらそれをしようと、いま局長おっしゃっておりますけれども、これはほんとうに被爆者の心理から申しますと、世界中でここだけに起きた原爆の被爆者であり、それが非常に大きな影響を及ぼしておるという点からして、これらの人たちは別に圧力的な行為はしておりませんけれども、非常に悲惨な状態にある。こういう点からいえば、まあ圧力的ないろんなものはないとしても、進んで国がこれを責任を持ってやらなければならぬ。こういうものに対してはもう一そう明確にしてもらわなければならぬと思いますので、この点、ひとつ特に注意してもらいたいと思うので、決意のほどをひとつ大臣からも承りたいと思います。
#70
○国務大臣(斎藤昇君) 原爆被爆者の方々が非常に悲惨な状態におられるということは、私もよく承知をいたしております。今後ますますその援護につきましては、手厚く保障してまいりたいというふうに考えます。
#71
○大橋和孝君 それから昭和四十年に政府が行ないましたこの被爆者の実態調査、この最終報告が明らかにされておりませんが、一体どうなっておるのか。明らかにされたことは、一体、どこの点を明らかにされたのか、その内容、状態をひとつ示していただきたい。これが第一点であります。
 次に、また、この調査の結果については不十分という批判があります。たとえば血液、血圧の測定の不備だとか、不十分、あるいは就労、生活調査、あるいは所得調査についても一面的な見方をしている、こういうように言われておるわけであります。患者のこの実態調査とあわせまして、政府はどう考えておられるのか、データをもって示していただきたいと思うのでありますが、その点をひとつお示し願いたいと思います。
#72
○政府委員(村中俊明君) 昭和四十年に実施をいたしました原子爆弾の被爆者実態調査は、御承知のとおり、基本調査とそれから健康調査とこの二つの問題に入っている。さらに健康調査と並びまして生活調査も同時に実施をいたしました。この三つの項目については、それぞれ結果の概要は、四十二年の十一月に公表したところでございます、基本調査につきましてはその一年前でございますが。ただ先ほど参考人の意見開陳の中にもございましたが、まだ調査の最終報告が出ていないという点についての疑問があるわけでございますが、これは御承知のとおり、生活史の調査を広島と長崎の両市に限りまして、ほぼ二百ぐらいの世帯について実施をいたしました。これは、当時の実態調査の専門委員の中に社会学の専門家の御参加をいただきまして、この委員の方が手分けをして現地におもむいて調査をしたわけです。一部この調査を手元にいただいたのもございますが、残念ながらまだ全部の報告がまとまっておりません。この世帯の生活史がまとまりましたら――これは正規の調査ということではなくて、付帯的な調査ということで実施をしたわけでございますが、これはまとまり次第公表したい、こういうふうに考えております。
#73
○大橋和孝君 特にこの調査は、いろいろなこれからの施策に対して反映することでありますので、これを何とか最も必要な生活とかあるいは所得、そういうような方面の調査が不十分なわけですから、実態の調査をひとつ急いで処置していただきたい、こういうように希望いたしておきます。
 それから次には、この特別措置法の内容についても、まあ数々の問題点があるわけであります。第一には特別手当等の性格、それから所得制限、それから特別被爆者の対象者の拡大をしないこと、第四には、戦傷病者戦没者遺族等援護法に準ずる法的な措置のないこと、たとえば障害年金だとか介護加給、扶養加算、遺族年金、弔慰金、そして被爆者の代表を含むところの援護審議会の設置等、最も立ちおくれが目立っておるわけであります。これら一つ一つについて、政府は、どういうふうな考えを持っているわけか、いま私が指摘を申し上げました四項目についてお考え方をひとつ述べておいてもらいたいと思います。
#74
○政府委員(村中俊明君) 特別手当の問題につきましては、御承知のとおり、特別被爆者の中のいわゆる認定被爆者として医療を受けている、あるいは医療を受ける必要のある状態に、すなわち健康でない状態の者に対する月額一万円の支給でございますが、これも先ほど来の参考人の意見開陳の中にもございましたが、認定の方法についてのいろいろな意見も出てまいっております。しかし、結論的に申し上げられますことは、現在の認定の方針は、医学的な定説をもとにして認定の審査をいたしておりまして、これは学問の進歩につれまして、対象の範囲などが随時変更してまいるわけでございまして、これの一つの例といたしましては、特別被爆者の拡大というふうなことあるいは妊娠中に被爆した生後間もない胎児の問題、あるいは小頭症の問題等、だいぶ内容が学問の進歩につれて変わってまいります。そういう点では、今後も認定患者の認定、さらに特別手当の支給、こういう関連の中で改善がされるものと、私どもも期待をいたしているわけでございます。
 第二点の、これらの手当に対する所得制限の問題でございますが、これは御承知のとおり、先ほど来申し上げていますように、社会保障の立場をとる法律でございまして、社会保障制度のたてまえからいたしますと、所得の相当ある方については、応分の自己負担をいただくというのがたてまえかと存じまして、そういう基本的な法の性格ともからみまして、所得制限の問題があるわけでございます。ただし、所得制限の緩和ということにつきましては、当委員会の強い御意見もございますし、私ども、今後の問題として、検討させていただきたい、こう存じます。
 それから、特別被爆者の範囲の拡大でございますが、これは原爆医療法が制定されましてから、たしか四回にわたって範囲の拡大をしてまいっておりまして、現在三十一万人余の被爆者の中で二十六万人程度が特別被爆者の対象になっております。五万人余が一般被爆者、こういったことで、一応現在の放射能の影響というもの、あるいは原子爆弾の投下というものとのからみで考えられる物理学的な面、医学的な判断に基づいた範囲の拡大は、この辺でおおむねよろしいじゃないかというふうな考え方を、私、現在持っているわけでございます。
 なお、最後の、援護審議会の制定についてでございますが、これも第二点の特別措置法の内容、それから所得制限の問題のところで触れましたけれども、私どものたてまえとしては、社会保障という基本的な立場から対策を進めておりまして、現在医療法に基づく医療審議会が大臣の諮問機関として認定をいたしておりますが、こういう形について、特に現地の患者を扱っていらっしゃる方方の意見が十分反映されますような委員の選考につきまして、近い将来、端的に申し上げますと八月が任期の改選期に当たっておりますので、これをめどにして、そういう面での改善を考えたい、こう存じております。
#75
○大橋和孝君 いまの局長の答弁聞いておりますと、特別手当の性格の点からいっても、特別手当というものをいままでやってこられたことから、かなりそれで内容的に十分であるというような答弁ですけれども、そうじゃない。私は、日本で初めてという悲惨な原爆の被爆者の関係を考えてみるときには、やはりただ学問的だとか、あるいはまたその症状を云々するとかいうのは――そういうたてまえからはもちろんやらなきゃならぬけれども、
 〔委員長退席、理事上林繁次郎君着席〕
 別にやはりこういうような特別の手当をつける上においても、もっと生活の実態を見ながら、もっと範囲の拡大を十分考慮しなければ、こういう人たちがいままでに経騒をしたことのない、将来もこういうことはもう起こってはならないという悲惨な状態を考えてみたならば、この手当を問題にする場合に、この性格を判定する場合には、もっと拡大解釈をすべきだ、こういうことを特に主張しておきたいと思うのです。そういう意味では、いままでも各こうした委員会での附帯決議の中にも、いろいろ盛られているわけでありますからして、そういう点を十分に配慮してもらいたい。また所得制限の問題に対しても、社会保障の立場だからというけれども、非常にいろんな生活の面で、おそらく被爆者の中には一般の人から比べれば、所得は一割くらい当然低いものしか得られないものだということが実態においてあるわけです。私の家にも被爆者の人、二人ほど働いてもらっているのですが、こういう人たちは、やはり被爆を受けたために非常に抵抗力がない。ですからあの所得制限の中にはかからないような人でありましても、実際所得は減っているわけです。こういうことからいえば、やはり所得制限というのは、社会保障の立場からはあると言えばあるわけですか、これは当然拡大して、そして現に所得が普通の人より減っていることは事実でありますから、所得制限は制限として設けるのではなくして、この範囲を十分拡大しなければならぬものだということは当然だと、私は思うわけです。こういう問題に対しても、ひとつ十分な配慮をしてもらいたい。特別被爆者の対象を認定する場合もそのとおりです。ですからして、こういうようなことも学問的な問題であって、ある程度その辺からこれをやらなければならぬという気持ちはわかるのでありますけれども、その学問そのものに、あるいは研究そのものにとらわれ過ぎて、こういうことが非常におくれているとか、あるいは認定のところに問題を起こしていること自身がいけない。いま、あなたのおっしゃるように、もうほぼそれは十分考えられているのではないかということになれば、私は、これは大問題だと思う。ですから、これはもう少し、いまの答弁のようでなくて、もう少し逆な面からの配慮をしてもらわなければならない。特に、私が第四の問題で触れましたのは、戦没者と戦傷病者なんかの遺族援護法の問題まできているのに、こちらのほうではまだ援護法もやられておらぬ。あなたの答弁では、今度審議会の委員もかわるから、その時期にひとつかえようという意向は、非常にありがたいのでありますが、特に、その点は明確にしておいてもらいたいと思いますので、さらに、そうしたところの答弁を聞いておきます。
#76
○国務大臣(斎藤昇君) 全体的にわたりまして、ただいま大橋委員のおっしゃいますような気持ちをこめまして、今後処理をいたしてまいりたいと、かように考えます。
#77
○大橋和孝君 いままでの国会でも附帯決議事項がいろいろたくさん出されておりました。これの処理状況についてちょっと伺いたいのでありますが、一体処理されたものと、処理されてないもの、その状況をちょっと理由をつけて御説明願いたいと思います。
#78
○政府委員(村中俊明君) 昨年の国会の五月十六日の参議院の社労委員会で、附帯決議が特別措置法の御審議の中でございました。
 この第一点は、認定被爆者の認定を行なうにあたっては、放射能の影響を重視して積極的に対処をすること。これが第一点でございまして、これは、ただいま指摘もございましたが、及ばずながら積極的に推進をしてまいっているわけでございます。
 第二点の生活保護法の適用上特別手当の収入認定について配慮すること。これは御承知のとおり、五千円の特別加算が現在行なわれているわけでございまして、ただ、この額がこれでいいのかどうかということについては、御異論があろうかと存じますけれども、一応こういう形で附帯決議の趣旨を生かさしていただいております。
 第三点の諸手当について、その支給対象の範囲の拡大及び支給金額の改善につとめるとともに、介護手当について弾力的運営につとめること。この点につきましても、御趣旨に沿って、現在実施いたしておりまして、特に介護手当の問題につきましては、その配偶者及び扶養義務者が介護をやった場合の費用の支出の認定の問題でございますが、この点は、担当都道府県、市町村とも話し合いをいたしまして、弾力的な運営を現在はかってまいっておるわけでございます。
  〔理事上林繁次郎君退席、委員長着席〕
 それから、第四番目の健康保険等被用者保険における本人の一部負担金について、公費負担を行なうことを検討すること。この点については、四十四年度の予算に計上しておりまして、これも一応附帯決議の趣旨に沿った措置をいたしたつもりでございます。
 それから、第五番目の死没者及びその遺族に関する調査を実施するとともに、葬祭料の支給その他の援護について検討すること。この前段の死没者及びその遺族の調査実施については、現在まだいろいろ検討をいたしておりますが、動き出しておりません。ただし、後段の葬祭料の支給につきましては、これも今回の法律の一部改正で御審議願っている、こういう段階でございます。
 それから、第七番目の沖繩在住被爆者に関しては、現地医療制度の実態を考慮して、万全の措置を講ずること。これも医療特別措置要綱、それから特別措置に関する実施要綱というふうな、本土の医療法並びに特別措置法に全く準ずるそれぞれの要綱をつくりまして、これも必要な技術者の派遣をいたしまして、実施態勢を現在整えてまいっているわけでございます。
 大体このような実施状況になっております。
#79
○大橋和孝君 いまの報告を聞いておりますと、たとえば沖繩の状態を見ましても、向こうと一体となって調査をしておるというが、沖繩は医療の状態も違いますので、こういう点については、もう少し前向きで考えてやってもらわなければならない。これは、私は、あとから附帯条件の中に、あるいはそれについての決議の中に入れたいと思いますけれども、こういう問題について、いまお伺いした中では、一応の答弁にはなっておりますけれども、実際問題としては、まだまだ具体的にあらわれてないという点があるので、これに対して特に配慮をしてもらいたいと思います。
 それから、次にお伺いしたいのは、治療研究開発についてであります。第一番目には、研究機関における技術開発、特に予研とABCCとの連携はどういうふうになっておるか。特に運営の方面だとか、あるいは財政、あるいは内容、こういうものについてひとつ伺いたいと思います。
 第二点につきましては、医療機関における臨床医学における研究状況でございます。医療機関については、どういうような状況でいまやられておるか。その状況の程度をひとつ聞かしてください。
 第三点は、これはそういう研究について、一体国費の交付、助成はどういうふうにしておられるか、この状況を第三点として伺いたい。
 第四点は、動物実験等による遺伝の研究ですね。特に、ここで私が聞きたいのは、原爆の二世の人たちの対策、その研究、こういうものについてどのように推進されておるか。この四点についてひとつお答えを願いたいと思います。
#80
○政府委員(村中俊明君) 被爆者の後障害におきます研究の体制についてのお尋ねでございますが、第一点の予研の支所と、それから被爆者の後障害におきますABCCの研究所との連携の問題でございまして、これは御承知のとおり、終戦直後間もなく、現地にABCCができまして、たしか、その翌年だったと記憶いたしておりますが、現地に予防衛生研究所の支所を設置いたしました。それ以来、約十万人をフィールドとする健康調査を、予研とそれからABCCが共同で現在まで行なっております。
 この概要につきまして申し上げますと、死亡の調査、これは十万の対象の中で、年々調査を繰り返しながら、死亡された方々の調査。それから成人の健康調査、これは成人病を主体にあるいは加齢現象を調べるというふうな成人の健康調査。さらになくなった方の病理解剖の調査。こういったことがABCCと予防衛生研究所の基本的な共同調査になっておりまして、その結果は、毎年年報によって、日米両国の国語で公表をされております。
 なお、これに関連いたしまして、原爆後障害研究会というのがございまして、これは日本の学者が中心になっておりますが、これにつきましては、ABCCの調査研究に協力する一方、本年は約三百万円の研究費の委託をいたしまして、この後障害研究会で臨床的な面の研究をしていただいておるわけでございます。
 これは厚生省の関係について申し上げたわけでございますが、このほかに、御承知のとおり、文部省の関係では、広大の原爆放射能医学研究所、それから長崎の原爆後障害医療研究施設、この二つの研究施設をそれぞれ現地に設置いたしまして、ただいまお尋ねのございました臨床研究、基礎研究をあわせてここでやっているわけでございます。
 なお、これとは別に、もう一つ科学技術庁が放射線医学総合研究所というものを持っておりまして、ここでも、一部被爆者の患者を治療をしながら、臨床的な研究あるいは放射線の医学的な影響についての研究を、基礎的なものとして行なっているわけでございます。
 なお、予防衛生研究所の広島支所に対する年間の予算は、大体五千万円程度のものが国費として計上して支出されているわけでございます。
 最後に、動物実験について遺伝的な関係についてのお尋ねでございますが、これは放射能を浴びた動物が遺伝的にどういう異常が起きるかという点の研究は、従来もそれぞれの学者が行なっているわけでございますが、ただいま申し上げましたこれらの原爆の被爆者の患者を扱っている研究所あるいは大学の研究所、こういうところで実験をいたしているデータを仄聞いたしますと、放射能による遺伝的な突然変異が動物実験では証明されたという例があるようでございます。ただ、これが人体にどういう形で影響するかということは、相当長期にわたって研究が必要であることとからみまして、先般、問題になりました白血病が二世に遺伝的に影響があるのかないのかという点の論争も、学者の研究の成果で、いま、わかっている段階では、白血病の遺伝的な要素はきわめて消極的である、全く否定はできないけれども、きわめて消極的である、こういうのが大方の遺伝学者と申しますか、研究者のほぼ一致した意見のようでございます。ただし、これは二十年の経過の中での研究成果でございまして、今後の研究が積み重なっていった段階では、あるいはまた新しい意見が、あるいは結論が出るかもわかりません。いまの段階では、この点は予測されませんが、いままでの実験調査の範囲では、特に白内障については、二世について遺伝するという要素はきわめて消極的である、こういうふうに承知をいたしております。
#81
○大橋和孝君 こうした研究は、やはりいろいろな研究開発をずっと進めてもらうことによって、今後のいろいろな考え方の根本にもなるわけであります。特にこの動物実験からする二世への遺伝の問題、これは広島だけでももう四名、二世の方で白血病で死んだ人がおります。ときには、それこそ非常に苦しんで。そういうことを発表すること自身、やはりそれをいろいろ遺伝的であると言われたのでは困るということで、こういう被爆者の心理状態から考えますと、発表も遠慮しておる。あるいはまた、被爆者であるから、子供にはそういうものができたということが新聞に出されるだけで、自分は被爆者であるということを言えば、子供のいろんな問題に関係するのではないかというので、それをひた隠しにしていこうとする向きさえあるということであります。しかし、いまのお話によれば、学説的には、いま局長は非常に否定的なデータが出ておると言われましたけれども、私はこの間ある研究室でいろいろデータを聞いたときには、かなりそれは否定できない、むしろそういうことが起こり得るということを言ってる学者もあるわけです。ですから、こういうものに対して、いま、予研には五千万円出しておると、五千万円というのはかなりの金額であろうと思いますけれども、私は、こういうものが戦後二十何年も経過しておる点から考えますと、何とか、いままでのことを振り返ってみて、もう少し前向きでこういうことに対してお金をつけるべきではないかということも考えられるのでありますが、ここでひとつ、そういう観点から、四十五年度の予算の要求は、おそらくこの八月ごろ概算要求を出されるのだろうと思いますが、その内容として、厚生省では、こういう被爆者対策について、どれほどこれに対して見込んでいかれるつもりか。過去のそういう状態を考えてみますと、もう少し国費というものを大きくみて、これらを解消さしてしまうための努力というものが必要ではないか。いままでかなり努力しておったことは、私も認めますけれども、もう二十何年にもなっております。しかも、第二世が何名かなくなっておる。また、そういうことを悲観してから、つい一昨日でしたか、自殺された人のことも新聞に報ぜられております。こういうことを考えてみますと、私ども健康な者、被爆者でない者が考えておる考え方と、実際の被爆者とは非常に考え方の開きがある。私も、そういう人を使っておりまして、その人たちの考え方を見ていると、われわれが思う以上に卑屈にものを考えたがる。少なくとも、自分がからだがえらくても、えらいことを見せたら、もう何か言われるのではないかというつとめ方をしている。そういう人を見ていると非常にいじらしい。そういうこともあるわけです。そういう点で、金をつけることについては十分に考えてもらいたい。そういうことに対して、どういうふうに考えておるか、これを第一点として聞きたい。
 もう一点は、外国の核実験による放射能、また原子力の平和利用によっての被害者と被爆者との関係及び対策について、もう一ぺん考えてもらいたい。こういう点については、どういうふうに考えておられるのか。放射能、実験、こういうもので被害者が出てきますけれども、こういう被害者と被爆者と、いままで原子爆弾で被爆を受けた者との関係、こういうことに対する考え方を、第二点として伺いたい。
#82
○政府委員(村中俊明君) 来年度の考え方についてのお尋ねでございますが、残念ながら、まだいろいろ検討をしておりまして、ここで御披露申し上げる段階になっておりません。ただしい御趣旨の点は、十分私どもも肝に銘じまして、今後検討してまいりたいと、こう存じております。
 第二点の原子力の平和利用の問題、それから核爆発の実験問題、それから原爆の被爆という問題についてのお尋ねでございますが、私は、手段が違うのであって、放射能による人体への影響というのはみな同じだと、同じカテゴリーの中で考えられてよろしいのではないかと考えます。ただ、問題は、平和利用の場合につきましては、相当長期にわたった、しかも、相当周密な防護を加えた中での被爆ということでございまして、これは線量の面から、この三つの種類の面から一番安全性のあるものだと考えております。なお、核爆発の実験につきましても、これも実験地域を指定したりなんかいたしまして、付近を航行する船舶の配慮も相当あるわけでございますが、平和利用の場合に比べますと、若干被爆線量というものは、これより多いのではないかという感じがいたします。なお、原爆による被爆というものにつきましては、これは全く前二者に比べますと、防護につきましても、あるいは予防につきましても、思いがけない問題ということで、この点については無防備であるという点が他の二つとは異なるというふうに考えます。
#83
○大橋和孝君 予算の概要は、まだ発表する段階でない、あるいはそうかもしれんと思います。しかし、先ほどからも申しておるように、概算要求をしてもらうときには、この問題について、やはり論議をした中で出てきた問題に対して、前向きに、二十何年も経過しているのだから、もうほんとうにそういう人たちをしっかりできるというふうな形にしてもらうためには、やはり予算が、裏づけがなければ何にもできないことになるわけでありますからして、特に、この八月ごろから始まる概算要求の中には、ひとつこの原爆の問題については、被爆者の問題に対しては、徹底的な配慮をしてもらって、厚生省としては、そうした非常に悲惨な、先ほどからもいろいろあげておりますし、きょうの参考人を呼んでの話の中にもたくさん出ておりましたように、非常な問題を含んでおるものでありますから、この概算要求に対しては、ひとつ今度こそは腹をきめて、十分な予算の裏づけのとれるような努力をしてもらいたい、これを要望いたしておきます。
 それから、いま、ちょっと触れました核実験の問題に対しましても、これは防備はしてありますけれども、また放射能を浴びてくる人もあるわけであります。こういうことの対策は、いま、あなたのおっしゃるとおり、原爆被爆者の状態と多少の差はある、あるでありましょうけれども、一応これに対しても、対策は両方進めていただかなければならぬと思いますので、これについても十分配慮をしていただきたい。
 それを要望しながら、そういう意味からも、今度は沖繩の被爆者についてひとつ伺っておきたい。その現状は、一体どうなっておるのか。私は、これについてのいろいろな意見はありますけれども、沖繩と日本との医療の制度の状態が違っております点が第一点、それからまた、向こうでは、医療設備が十分できていない。医療機関の設置も、あるいは専門家も少ない。こういうふうな状態で、非常に沖繩の状態が日本の本土内の状態と大きな格差があるのであります。そういう中で、政府はやっぱり本土と一体化政策を進めるということで進められておるわけでありますが、これに対して、今後沖繩の被爆者に対しては、どういうふうにしていかれるのか。ほんとうに一体的な状態にしてもらおうと思えば、いまの沖繩の医療の状態、医学の状態からは、沖繩にまかしておいたのでは、沖繩ではできない。もうすでに日本にも被爆者を迎えておやりになってはおりますけれども、医療の問題からいいましたら、向こうは七割給付であり、しかも、療養費払いでありますから、あとから支給する状態になっております。ですから、沖繩におる人々は、なかなか十分な医療は受けられないような状態になっておる。こういうような点で、非常にいま沖繩の被爆者と本土の人とは格差ができておるように思うわけでありますが、その辺についても、どういうふうになっておるのか、今後はどうされるのか、そういう点について、明らかにしておいていただきたいと思いますが、お考えをお伺いいたします。
#84
○政府委員(村中俊明君) 沖繩の原爆被爆者対策につきましては、御承知のとおり、健康診断の実施、医療の給付、また各種手当の支給、これらにつきましては、本土におけるとほぼ同一の措置を、特別措置要綱によりましてやっておりまして、これに必要な財政的な援助も現在しているわけでございますが、専門医の派遣、これにつきましても、特連局と連絡をとりながら、定期的な健康診断、あるいは医療の指導、認定疾病患者の本土治療というふうな点で、従来とも協力援助をしてまいっておりますが、今回の葬祭につきましても、前回と同じような形で本土と同様な措置をとっております。医療事情が本土と比べまして、相当劣悪なことも聞いておりまして、こういう技術者の援助協力ということについては、今後も力を入れてやってまいりたい、こう存じます。
#85
○大橋和孝君 特別に措置を考えていただかない限り、ほんとうに一体化の精神は出ないと思いますから、これに対しては特に要望いたしておきます。
 それからもう一点だけ、私、おもだったことを伺って、時間がございませんから終わりたいと思いますが、この被爆された方も、どんどん年を重ねて老齢化してこられて、原爆孤老といわれているほど、老齢化が進んで、非常にさびしい状態になっておる人がかなりたくさんありますですね。被爆者の老齢化が進んでいるこの状態で、この法律案提出の経過及び関係団体の悲願であるところの原爆被爆者援護法というものを今度の国会に出されるべきだと思っておったのですが、これが出されていない。いろいろ老齢者もでき、あるいはまたそういうことからいえば、この被爆者の援護法、そういうふうな形であの戦傷病者の援護法と同じような形で援護をするような法律にしなければ、こういうものは解決せぬと思っておったわけでありますが、そういうものが今度出されなかったのに対して、私は、少々納得がいかないわけでありますが、これはどういうわけか、ひとつ説明してください。
#86
○政府委員(村中俊明君) 原爆の被爆者に対する対策といたしまして、いろいろ御議論があるわけでございますが、私ども、基本的に申し上げますと、従来援護法の中で措置している、岡と特別の雇用関係にあるもの、あるいは公務に起因するものという前提になじまないものというふうな判断で、特に一般市民を対象にする被爆者対策は、社会保障の制度の中で処理をすることが適当であろうというふうな判断を持っております。ただ、その救済あるいは援助の方法につきましては、社会保障的な精神に基づきまして内容の充実を逐次はかってまいっておりますが、今後とも、そういう意味で、内容の充実をはかってまいりたい、こう存じます。
#87
○大橋和孝君 その内容の向上は、確かに徐々に行なわれておりますけれども、いま私の言うのは、ただ、医療の問題で、あるいはまたそれに少し生活保障的なものを加味してというのじゃなくて、やはり援護法的なものにして、あのような悲惨な状態で置かれておるものは、やはり戦傷病者と同じような、公務的なあれじゃないけれども、進んでそういうことが行なわれたわけでありますからして、私は、どうしてもこういう問題に対しては、やはり援護法として考えるべきだというふうなことを思っておりますので、そのことを要望しておいて、またあとから一ぺんそれについての質疑をしたいと思います。
#88
○上田哲君 しぼってお伺いをいたします。原爆被災者の保障立法の根底には、原爆に対する、核問題に対する国の思想がなければならないと思いますが、そういう意味では、政府が従来から、唯一の原爆の被爆国としての原体験から、世界にこうした悲惨な状態を二度と起こさないように訴えていくんだといわれることに、その限りでは大いに賛同したいと思いますし、額面どおり受け取りたいと思います。その限りでは、ジュネーブの軍縮会議に代表を派遣された趣旨もそのように理解したいと思います。
 そこで、唯一の原爆被災国として日本が全世界に所える、そうした根底のデータとしては、まさに原体験である広島、長崎の被災者の実数が問題だろうと思います。一体、ジュネーブの日本代表は、国連その他で通説としていわれている七万八千人という被災者の数字を持っていかれたのか。国民の中では、すでに常識となっている二十数万という数字を持っていかれたのか。どちらでございましょうか。
#89
○政府委員(村中俊明君) 終戦時投下されました原爆の被爆による惨害ということ、その後の警察庁その他の調査によって一応部分的には把握されておりますが、残念ながら、その全貌が、実態がわからない事情でございまして、この点についての実態の把握についての調査などについての意見は、従来もいろいろ議論をされてまいりましたが、調査の技術的な面で困難だというふうなことで、いまのところ把握できなかったのでございます。ただし、被災当時の警察当局の調査によると、あるいは七万あるいは十万という数字が出ておるようでございますが、それらの終戦直後のデータをもとにした国連のほうの発表じゃないかというふうに私は想像いたしております。
#90
○上田哲君 語尾がはっきりしませんが、ジュネネーブの軍縮会議には七万八千人を持っていったのですか、そうではないのですか。
#91
○政府委員(村中俊明君) よく承知をいたしておりません。
#92
○上田哲君 厚生省でまとめなければ持っていきようがないわけですけれども、ほかに持っていく可能性があるのですか。持っていっていないとお考えですか。
#93
○政府委員(村中俊明君) ただいま申し上げましたように、被爆当時の状況については警察当局が……。
#94
○上田哲君 それはどうでもいいのだ。持っていっているのかどうかを答えてもらいたい。
#95
○政府委員(村中俊明君) それらのものをもとにした結果が、軍縮会議で出た数字じゃないかというふうに考えております。
#96
○上田哲君 七万八千という国連で通っている数字を軍縮会議に報告をされたということですね。
#97
○政府委員(村中俊明君) 申し上げますように、報告されたという事実については、私、よく承知をいたしておりませんが、もしも、そういう死亡者の数字が取り上げられたとすれば、警察の手で調査された基礎資料に基づいたものではないかというふうに想像をいたします。
#98
○上田哲君 報告されたかどうか、私もつまびらかではない。あなたが報告されたのだとおっしゃるから、そういう報告があったのかということで。私がお尋ねしているのは、これは、厚生省でなければ調べられないはずですから、厚生省からそういうデータを軍縮会議に出る代表に与えたのか与えないのか。与えたとすれば、七万八千であるか、二十数万であるか、どっちかということをお尋ねしているわけです。
#99
○政府委員(村中俊明君) 承知をいたしておりません。
#100
○上田哲君 まあ、わかっていなければ、これは後ほど御回答いただきたいと思います。七万八千とい数字が出ているのだとすれば――軍縮代表のことはどうでもいいのです。私の言いたいことは、唯一の被爆国であるから、こうした惨禍を再び世界にもたらさないようにすることが日本の政策の重大な基本にあるのだと言われている政府が、そうであるならば、できるだけ正確な数字を世界に訴えるべきものだろうと思うのです。そういう面でいえば、いまもって、国連が世界の大体通説を代表するものであるとするならば、そこに出されている七万八千というふうな数字で世界に知らされていることでいいのかどうか。いま、終戦直後云々と言われましたけれども、この七万八千という数字は、昭和二十年の十一月三十日に広島県警が調査をした数字です。昭和二十年十一月三十日なんというのは、これはあの当時の混乱の世相からすれば、ほとんど実数ではないということは言うまでもないし、今日ただいま生存している概数が全国合わせておよそ三十万と言われていることからすれば、その当時の原爆による戦没者は七万八千でないことは、常識中の常識でしょう。二十万といい、三十万というのは、いろいろ推定の余地があるでしょうけれども、そういう実態をつかんでいないところに、根本的な援護対策あるいは保障対策が出てこない理由があると思うのです。こういう実態をつかむことが非常に重要だと思うのですが、これについては、いかがですか。
#101
○政府委員(村中俊明君) 私どもが昭和三十二年に制定いたしました法律の趣旨は、原爆の被爆の影響がいまなお残っておる、健康上いろいろ問題があるというふうな被爆者に対する社会保障をしよう、医療の給付をしようというのが昭和三十二年の法制定の趣旨でございます。その後、対策を進めていく過程の中で、先ほども御意見が出ましたが、被爆者に対する全般的な全国調査をいたしました。この中で社会的な面の調査もあわせてやったわけでございますが、それから出てまいりました結果に基づきまして保障的な立法を特別措置法という形でいたしました。現在、これをあわせて被爆者対策をやっておるということでございます。
#102
○上田哲君 まるきり答弁をしていないと同じですからね。もう少し先ほど社労委員長から言われたように、簡潔にひとつお答えをいただきたい。的をはずしてお答えになるなら、私もどんどん持っているデータを開陳をして迫っていかなければならぬのです。
 私がお伺いをしたいことは、あなたのおっしゃるように、原爆被災の実態調査と言われるが、この原爆被災の実態調査などはほとんど調査という名に値しない。これは、先ほど出られた参考人のことごとくが、あらゆる党派から推薦された方々でも、この辺のところは異口同音に認められているところです。だから、そういう意味での調査なんていうものは、大きく胸を張って、唯一の被爆国であるなんという形容詞をつけて説明ができるほどの調査ではない。これはやはり率直に認められるほうがよかろうと思う。その辺のところは、いろいろな事情があろうから、大きくは追及をしないけれども、その実態に立って、単に被爆者の実態調査という、生活史調査すらないではないかということが具体的に指摘をされ、また政府も認めておられるところですから、そういうところは調査しないよりか、したほうがいいことはあたりまえの話で、それは調査をすれば大いに議論が発展するところです。したがって、そういう、実態調査の優先すべきところは、単に被爆者の実態調査ということでなくて、原爆そのものの実態調査というところまでさかのぼらなければ、千人に一人というふうな認定制度が出てきてしまうということになるわけです。だから、たとえば日本が、政府の言われるように、まさに唯一の被爆国として、今後こういう惨禍を世界にもたらさないようにすることが日本外交の基調であるというようなことであるならば、これは先ほど来五億円というような程度の金も出た。この程度の調査費で済むのであれば、五千年昔の人口だって、埋没した都市の人口は推定することができる今日、二十年前のそうした戦没者の数その他を推定することは、ほとんど可能なことなんです。これは現地のいろいろな学者や研究者たちが明らかにしていることなんです。地元の新聞もすでにそういうキャンペーンを張っているということなんです。だから、ここはもうやる気になってやれば、原爆被災者の単なる糊塗的な、びほう的な、表面的な調査に終始していることが、この問題の根底の問題なのですから、ここでひとつ根本的に、世界にそうしたデータを示すために、少なくとも七万八千なんていう、世界だって信じ得ないような数字を持っていくような恥ずかしさではなくて、根本的に、一体、二十数万というのはどうであったのかというようなところまで引き戻しての根本的な調査を、この際まさに政府の基本方針の一つとしても、たいした金がかかるわけじゃないから、このことをおやりになる気持ちがあるかどうかということをずばりお伺いをしたい。これはひとつ大臣からお答えをいただきたいと思います。
#103
○国務大臣(斎藤昇君) 原爆で当時なくなられた数字を正確に調べ直すということも、意味のないことではないと思います。おっしゃいますように、またいろいろな問題も起こっておりますので、まあできるだけ調査ができれば、当時にさかのぼった調査をしていきたいと、かようにいま考えておるわけでございます。
#104
○上田哲君 たいへん前向きでけっこうだと思います。広島の人たちの気持からすれば、もう死んでしまった人の名前を掘り起こし、数を調べるということが直ちに今日の援護につながるものではないけれども、少なくとも、政府の施策というものがそこまで戻ってこないというところに政治のあたたかみが出ないので、補償論なりあるいは救済論なんていう議論はあるでしょうけれども、根本的に政治に対する、あるいはこうした法制論に対する期待を持たせない理由があるんです。大臣からそういう前向きな御回答がありましたから、これはこの際ぜひ積極的に前向きに進めていただきたいと思うんです。これは先ほど来大橋委員からの御質問がありましたように、来年度の予算編成の中にぜひひとつ具体化をしていただくことをお約束をいただきたいと思いますが、そういうことであるならば、非常に小さな問題として、いま広島の市民の中でぜひひとつ原爆戦災図を復元しようじゃないか、こういう運動が起こっております。これはもう市民の世論というべきものであって、市当局も今年度三百万円の補助費を出して、そういう運動が具体化をしているわけです。こういう点について、政府はどういう御見解をお持ちになるか、いまの大臣の前向きな御答弁の中から、こうした問題についての理解を示されたいと思います。
#105
○国務大臣(斎藤昇君) 広島市当局において、そういうなにをやっておられることは、私自身は聞いておりませんが、これもまた意味のないことではないと思います。私は、おそらく世界で再び繰り返すことのない、この被害の状況を、できるだけ詳細にしるしておくということが、これは一つの、何といいますか、有意義なことだ、かように考えまして、どういう方法で協力するかは別といたしまして賛成でございます。
#106
○上田哲君 けっこうだろうと思います。ぜひひとつそういう方向で、直ちに二十数万人の死没者をあす、あさって、すぐ調べ上げるということはできないにしても、そうした方向を明示され、そうした方向の具体的手だてとして、市民が、そして地元の市当局が取り組んでいる問題に、大臣の示された理解でどうか具体的に前向きにひとつ力づけてやっていただきたいと思います。
 強い要望を述べて第二の問題に移るのですが、そうした実態調査というものの不備で、すべてにわたってこの対策の不足なりあるいは不満なりを起こしている。審議会、審議会とおっしゃるけれども、三カ月に一ぺん開くような審議会では、どうにもならぬと思いますけれども、基本的に、さっき政府委員の御答弁の中で、実は学界の定説に基づいていろいろと処置をしておるのだ、認定をしておるのだとおっしゃった。そうおっしゃりながら、実は学問の進歩やその他の趨勢の中で、いろいろとまた認定基準も変わっていくのだ、これはことばにおける矛盾だろうと思うのですよ。まさに世につれて、そうした学問の進歩につれて基準が変わっていくということが、今日定説がくつがえっているということなんでありまして、さっきの参考人の御意見にもありましたように、明らかに原爆症という新しいカテゴリーというものをつくり出すことはできないかもしれないけれども、少なくとも、そういうことができないということのみであるということが大体の皆さん方のお考えであったわけです。私はまさにそのとおりだと思うのです。そういう意味では、もう何か、いかにもはっきりした定説があり、そうした定説では、何か原爆症というものは、さほどたいしたものではないのだ、たいしたものではないのだと言いくるめられようとしている。そういうふうには思いませんけれども、そういうふうにしか受け取りようのないような中でこうした法律が実施されようということになっては、これはもう全く仏つくって魂入れず。仏であるかどうか疑問がありますけれども、たいへん足りない、不足がちな仏さまであると思いますが、魂の入りようがないだろう、こういうふうに思う。私は、ここではセンチメンタリズムや、感傷論を述べようとは思いませんけれども、しかし、もうちょっとこの問題に、原爆に対する思想性と、そして国家の愛情というものがにじみ出てこなければ、政治立法というものの意味が全くないと思うのです。国家補償というものが政府のたてまえとして、これがいいか悪いかの議論は別として、もう少し愛情というものをそこに投じなければならないということであるならば、いかにも三百代言的な、まるでかけ出しの医学博士のような言い方と、末端には映るわけです。厚い壁に突き当たるでしょう。冷たい壁に突き当たるでしょう。私はあまり三百代言のような答弁でごまかしていただきたくないと思う。
 いずれにしても、そうした問題に迫っていくためにも、ここに問題になるのは、データが足りないからです。そのデータの一つとして、ABCCの問題がある。先ほど志水参考人からは、ABCCから十分なデータをもらっている云々ということがありましたけれども、私は、この問題は、やはり国の姿勢の問題としてはっきり打ち出しても一らいたいと思う。このABCCには膨大な資料があるわけでありまして、この膨大な資料が、文献というものが今日十分に日本側との交流の中に使用されているという証拠はどこにもありません。いろいろな事情を聞いて、協力してもらっているとおっしゃいましたけれども、そうであるならば、具体的なデータで、一体どれくらいのデータを交流したかということをお示し願いたいと思いますが、私どもはそういうふうなデータを持っておりません。そこで、どうしてもやはり政府の方針そのものとしても、このABCCのデータというものを、ぜひとも早くひとつ日本に返還してもらう、こういうことを大いにひとつ主張してもらわなければならない。これがポイントであると思う。こういう問題がないから、こうした法規制をどんどんしていっても、あまり効果があがってこないのだろう。去年の十一月にダーリング所長の年次報告の中で、返還を示唆しているわけです。したがって、いろいろな人から、そろそろ返してもらおうじゃないかという意見が出てきたけれども、政府の態度が非常に消極的であります。今日の政府からは、どうもその辺について納得のいく御答弁を承ってないのでありますけれども、この法改正を議論するこの際に、ひとつダーリング所長が示唆をしてABCCの資料を返してもいいのだと、去年の十一月に言っていることについて、政府は、その返還に熱意を持っているかどうか、明快な御答弁をいただきたいと思います。
#107
○政府委員(村中俊明君) 認定について、私が申し上げたことが、ことばが十分でなくて多少誤解をされていらっしゃるのじゃないかと思います。私が定説と申し上げましたのは、大体の学者が、皆さん異論がない、意見がほぼ一致したというのを定説と申し上げたわけであります。それは、翌年には、さらに学問の進歩によって変わっていく場合もある、そういう意味で変わり得る場合もあるし、その辺からあるいは新しい学説に応じた改善というものが当然なさるべきであるという趣旨で申し上げたわけでございます。それからABCCに対する資料についてでございますが、これは一応関係機関には、それぞれ研究者には、おも立った方には報告書の形で配布されておりまして、まとまったものが年次報告という形でこれはまた公表されておりまして、その中でダーリング所長が資料について発言しておるわけでございますが、私どもは、被爆者の対策に非常に大切である、参考になるというふうな趣旨では、必要な方にはいつでもABCCと話をいたしまして、印刷されてないものについても資料を差し上げる仲介の労はとります。全般的な事項としては、年報のほかに月月まとまったデータの報告書が出ております。これは日米両国語で出ております。
#108
○上田哲君 簡単にひとつイエスかノーかでお答えをいただけばいいんですが、十一月の返還の示唆があって以来、厚生省はこのABCCの資料返還について具体的な交渉を進めておられますか。これが一つ。
 それからもう一つ。大体維持費は十億円ですね。こういう膨大――膨大であるかどうかは議論の余地もありましょうが、こういう部分についての、たとえば予算措置などがおもんばかられるために、政府のそうした交渉が強く出ていかないのかどうか。たとえば、もっと逆な言い方をすれば、返してくれるということになったら直ちに維持費その他について予算措置を講ずる意思があるかどうか。この二点を明快にお答えをいただきた
#109
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまの十一月のダーリング所長云々は、資料の返還の問題とは違うんじゃございませんか。
#110
○上田哲君 何ですか、それじゃ。
#111
○国務大臣(斎藤昇君) 資料の返還ということじゃなくて、資料は何どきでも見られますし、したがって、資料の返還ではなくて、私が仄聞をいたしておりまするのは、いままでアメリカが約十億円の維持費を持っておった、これを日本で肩がわりしたらどうだ、こういうことだというように仄聞をいたしておりますが、まだ外交ルートを通じては参っておりませんので、態度は決定をいたしておらぬわけであります。いま、あそこで使われているいわゆる経費をもう日本側でぼつぼつ肩がわりをせぬかという示唆であったと仄聞をいたしております。
#112
○上田哲君 いや、どうも大臣は遠耳かもしれませんが、イエスかノーかでけっこうなんですが、私どもが聞いているところでは、所長の示唆の中で、膨大な資料を日本側に委譲をする、委譲をするから当然維持費としての十億円がかかるのであって、たとえば、ABCCについてわれわれが聞いているところでは、アメリカ側が、欠員ができた場合にはもう補充しないというようなことも組合や何かにも言っているようです。そういうようなことを積み重ねてみると、そろそろ返還を意図しているとわれわれは考えている。だから、それについて具体的にお伺いしたいことは、第一点は、それについて、まあこれは一つのデータですけれども、根本的に、ABCCそれ自体の資料の返還について政府はアメリカ側と交渉を持っているかどうかということですよ。それから、返還をしてくれるということになったら、いまお話も出ましたように、私のほうとそのデータは一致しますけれども、十億円という維持費について、返してくれるなら直ちに予算化する決意があるかどうか。その十億円が惜しいから返してもらわなくてもいいんだということになると大問題ですから、向こうが返してくれるということになるのであれば、直ちに十億円という、維持費の予算措置を講ずる決意があるかどうか。この二点について明快にお答えいただければいいんです。これは大臣からお答えをいただきたい。
#113
○国務大臣(斎藤昇君) ただいま申し上げましたように、資料の返還というのではなくて、資料を返還してもらうのに十億かかるという問題でなしに、資料は何どきでも見せてくれまするし、何どきでも、もらえるわけであります。そうではなくて、現在の施設なり、それから運営の経費を日本側で負担をしたらどうであろうか、こういう示唆だと思っているんです。
#114
○上田哲君 だからこっちに返ってくるということですよ。
#115
○国務大臣(斎藤昇君) いや、返ってきてもこなくても、いま自由に使えるわけですから、十億円出さなければその資料が見られぬわけでもなし、現在、日本側が利用していることと同じにことばを変えて言えば、アメリカの金で日本が十分利用できている。それを今度は全然日本のあれにしないかと、そういうことだと考えておりますから、そこで十億の金を出し渋って、資料をようもらわぬのかという御意見には答弁はマッチしないわけであります。
#116
○上田哲君 それじゃ、やっぱりこの議論がたいへんおかしいところにいくのですよ。ですから、資料はいつだって使えるのだという御見解、これはどれだけ自由に使えるのかどうか。私どものほうは、完全に自由に使えていないという実態を踏まえて議論をしているのでありまして、これがとにかく広島市民、あるいは被団協の二十年間の大きな不満の一つであると思う。ただ、それを議論しても、おそらくだめだろうから、それを置いておいて、それで詰めていることは、イエスかノーか、きちっとお答えいただきたい。これが答えられなければおかしいのでありまして、ABCCそれ自体の資料を、きのうもそれを日本側に全部移管をする、返還をする、おっしゃるとおりでけっこうです。単に資料だけとは申しません。そういうことのために、日本側はABCCには積極的に交渉しているかどうか。これはイエスかノーかの問題に過ぎないわけです。それから、もし、返還するということになるのであれば、いまかかっている十億円という金はこっちの肩がわりになるのだから、その場合、十億という金を直ちに予算化するという決意があるかどうか。その二点についてこれはきわめて簡単なことだからお答えになれないはずはないと思う。
#117
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど申し上げましたように、資料の問題につきましては、返還をしてくれという交渉は積極的にいたしておりません。それからあと今後あの施設、それからその他一切日本で……。
#118
○上田哲君 返してくれるといえば……。
#119
○国務大臣(斎藤昇君) 日本でやると、日本の費用で負担してやりますということにつきましても、積極的には交渉いたしておりません。
#120
○上田哲君 いや、交渉じゃないんです。返してくれるという事態になったら、十億円つけますねということです。
#121
○国務大臣(斎藤昇君) 返してくれるというよりは日本で負担をせい、こういうことと、私は仄聞しているのですよ。
#122
○上田哲君 それは仄聞が間違っているんですよ。
#123
○国務大臣(斎藤昇君) そこで間違っておれば別ですけれども、正式には聞いてはおりませんから、正式の事態になりましたときにとくと考慮をいたしたい。
#124
○上田哲君 これはもう少しく具体的にお話をしなければならぬと思いますが、それほど複雑な問題ではないし、今日までお話を詰めてきたことからすれば、これは、言ってみれば、十億円ですよ。大臣が十億円にそんなに神経をお使いになるのは、私はよくわからぬけれども、もし、御答弁いただけるならば、フランクにひとつ御答弁をいただきたいし、そうでなければ、私の意見を述べて終わりにしたいと思いますけれども、ABCCというのは、何と言ったってたくさんの資料を持っているのはたしかです。そして、その資料は頼めばいつでも使えるのだという状況であるかどうかは別問題としても、やはり原爆を受けたのは日本なんですから、その一本自身が自分たちの手で、この二十年たっても、なお終わらない原爆の被災の実態を自分たちの手でやはり分析したいということは、これはやっぱり日本の国民感情としては当然のことだろうと思うんですよ。ですから、この点に関しては、いろいろな外交上の問題もありましょうけれども、どうかひとつ厚生省が広島の人たちの気持ちも背に負うて、できるだけひとつABCC自体を、資料の問題も含めて、日本側に返還をしてもらうということについて交渉を煮詰めていただきたいということ。その際には、あえて十億円にはこだわりますまい。いろいろな財政的な問題も出てくるでありましょうけれども、財政的な困難度があるから、返還については積極的ではないのだということではないように、ぜひお願いをしたいと思うわけです。まあ、私もここまで相当おりてまいりましたから、大臣から、これを注目している広島なり、長崎なりの方々の気持ちをくんで、前向きの御答弁をいただいて終わりたいと思います。
#125
○国務大臣(斎藤昇君) 先日、原爆記念日に私も広島に参りました。その問題につきましても若干関係の方々とも意見の交換をいたしました。ただいまの御意見のほどもわからぬではございません。そういうことを踏まえまして、とくと考慮をはらってまいりたいと思います。
#126
○上田哲君 最後のことばは、努力をするということで了解をいたしまして私の質問を終わります。
#127
○小野明君 私は三点ばかりお尋ねをいたしたいと思います。
 一つは広島、長崎の両県、両市ですね、これから政府に要望をしておる特別措置というものがあると思います。それをひとつ明らかにしていただきたいと思います。局長でいいです。
#128
○政府委員(村中俊明君) 従来とも県、市当局から、いろいろな個別的、あるいは陳情書というふうな形あるいは要望書というふうな形でいただいておりますが、これは、先ほど大橋委員に御説明申し上げました昨年の五月の参議院の社会労働委員会で附帯決議という形になって具体的にあらわれてきまして、これが大体基本的なものであるわけでございます。ただ、このほかに、たとえばただいま上田委員からお話が出ました広島市内における原爆投下当時の復元調査をやると、これに対して国のほうも経済的な助成をしてほしいというふうな問題が出ております。あるいは先ほど来いろいろ問題になっております手当あるいは法の施行に伴って書類その他でいろいろややっこしいめんどうくささがあると、これを何とか改善する方法がないだろうかという趣旨の意見も出ておりますが、基本的に特に大きな問題としては、附帯決議の中に盛られたものが大体であると、こう理解をいたしております。
#129
○小野明君 私がいまの問題をあえてお尋ねをいたしましたのは、そういう一つ一つの具体的な措置ということでは実はなかった。それですと、すでにいままでのいろいろな議論の中に出ておりました。私の申し上げたかったのは、こういった原則的なものが出ておると思うのです。一つは、原爆投下というのは国際法違反であるということ、いま一つの問題は、対日平和条約によって日本がアメリカに対しまして損害賠償の請求権というのを放棄しておる、三番目は、したがって、国がその責任において被爆者を援護すべきである、四点日は核戦争というものが二度と繰り返されてはならない、こういった点が特別措置を含む基本的なものとして要求されていると思うのですね。これらの点についてどのような御見解であるのか。そうしてこれらを踏まえてこの特別措置なり、医療というものができておると思うのですが、これらとの相関関係をひとつ明らかにしていただきたい、こういうことなんです。
#130
○政府委員(村中俊明君) ただいまの御指摘の問題点は、原爆判決の要旨の中に一応盛られておりまして、この結論を見ますと、訴えをいたしました、損害賠償を請求いたしました原告に対しては、失うべき権利を持たないという前提でこの権利の請求をすることは適当でない。最後には、国は十分な救済策をとること、これは多言を要しないことであるというふうな結論でございまして、私どもといたしましては、そういう国際法上の問題のあるそういう事故によっていろいろ被害を受けた両県市民に対しましては、救済的な面あるいは補償的な面で、先ほど来申し上げましたような医療法及び特別措置法による対策を具体的に行ないたいと考えております。
#131
○小野明君 これをやりますと、長くなるようでありますから何ですが、先ほど局長が言われておりました社会保障の範囲でもって被爆者に対する特別措置、これをおやりになっておるのだと、このように伺っておるわけです。
 そこで、これは大臣にお尋ねしたいと思うのですが、国の責任においてこの戦争が行なわれた、その上に対日平和条約によって損害賠償の請求権を放棄したということになりますと、当然、社会保障的な観点からこの措置というものがなされるべきではなくて、やはり国家補償の観点から被爆者の援護あるいは家族の援護というものが行なわれるべきではないか、こういう考え方であります。ところが、先ほど局長は社会保障と明確におっしゃっておられるのですが、国家補償ということでこの問題はさらに一歩を進めるということはできないものであるかどうか、大臣にお尋ねをいたします。
#132
○国務大臣(斎藤昇君) 戦後処理に当たりまして、国家補償として補償をしておりますものと、それから社会保障として救済をしているものと二種類あることは、御承知のとおりであります。そこで、原爆の被害を受けられた方々を国家補償にするかどうかという問題、これは私はちょうど境目くらいじゃないかと思うわけでございます。たとえば焼夷弾で死傷をされた、これは国家補償かどうかということになりますと、考えようによっては、これは国家補償すべきだという議論が私は当然出てくると思います。しかし、これは今日まで大きな問題としては取り上げておりません。原爆は、いまおっしゃいました戦時法規違反であるということでございますが、それでは罪のない市民に、焼夷弾を浴びせてたくさん死傷させた、それはどうだというようなことにもなるわけであります。そこで、ただいまといたしましては、社会保障的な見地からひとつ救済をできるだけ手厚くしようというたてまえになっておるわけであります。しかし、私は、国家補償と社会保障の境目にある問題だと、かように考えますので、もう少し広い範囲で、さらに国家補償として進めるかどうかということを検討する余地のある問題であろう。いままではそうでないという立場に立っておりますけれども、将来検討すべき問題に値いするものであろうと、かように考えております。
#133
○小野明君 大臣からかなり前向きな御答弁をいただいて希望が持てるような気がするのですが、いま大臣の言われたのは、一般戦災で、焼夷弾で被災をした、この者に一体どうするのかという補償均衡論――先ほど参考人か言われておったのですが、補償均衡論がおもに入っていると思うのですね。私は、これは国の責任でもって戦争が行なわれたのですから、当然一般戦災者、これは膨大になると思いますけれども、これにも補償すべきである、その上に、原爆被爆者というのは、その補償を積み上げていくべき筋合いのものではないか、このように考えるわけです。これがまあ一つの社会保障、国家補償の境目であると、こういうふうにおっしゃっておられるんですけれども、いま、特別措置にいたしましても、この特別手当あるいは健康管理あるいは介護、いま一つは医療ですか。今度初めて葬祭料というものができるわけですけれども、戦没戦病の援護法から比べますと、非常にこれは薄いものだと、こう言わざるを得ないと思うのです。ですから、さらにこれを社会保障的な観点からと、こう言われておるのですが、さらに一歩進める、ことばをかえていいますと、この特別措置なり、医療の法律というもり援護法、したがって、審議会にしましても、医療、審議会ではなくて生活援護審議会ですか、そういった生活全般を見るようなものに改組すべきであると思うのですが、できないという理由を大臣から先ほど答弁いただいておりますから、さらに局長のほうから、ひとつふえんをしていただきたい。説明をいただきたいと思う。
#134
○政府委員(村中俊明君) 事務的な御答弁でまことに申しわけないと存じますが、先ほども申し上げましたとおり、現在二つの被爆者に対する法律の立法の精神というのは、現に被爆の影響で健康上不安な状態にある、あるいは健康が阻害されてる、こういった被爆者の方々に対する医療上の保障、それから福祉面の保障というのが現在の法のたてまえでございます。御指摘の援護法のたてまえは、これも公式論を申し上げて恐縮でございますけれども、国と一定の雇用関係にあるということ、もう一つは公務に起因している、公務に従事中に起きた事故であるという二つが援護法の柱になっているようでございまして、この基本論を比較する限りにおいては、これは、両者一体ということは困難だ、しかし、大臣が御答弁申し上げましたように、福祉の内容が次第に充実してまいりますと、私は、内容そのものについて、あるいは被爆者が受ける保障の中身については、援護的な法律とそう大差のないものが出てまいるのではないか。しかし、これは本質的に比較は困難であるというふうに考えております。
#135
○小野明君 先ほどから申し上げておりますのは、あなたの言う身分関係、国と特別の雇用の関係にないという論の立て方は間違いではないかと、私は申し上げておる。というのは、国の責任で戦争が行なわれておる、そのおかげで世界に例のない原爆を被爆をいたしておる。こういうことになりますと、当然これは雇用関係で律すべきものではないのではないか。身分関係で峻別をしていくということ自体が誤まっておるのではないか。当然、後段の援護の均衡という問題に、補償の均衡ですが、それもやはりこの際一考すべきものがあるのではないか。それは、先ほど私が申し上げた理由によって、その辺は、これは大臣に御答弁をいただいたほうがよかろうと思うのです。
#136
○国務大臣(斎藤昇君) おっしゃることは、よくわかります。たとえば広島、長崎で普通の方が原爆でなくなった、ところが、今度は防空監視哨員がなくなった、今度はこれは援護法で援護する、それはいま局長が答えましたような法理に基づいて区別をするのはおかしいじゃないか、こういうことだろうと思うのでありますが、とにかくいままでそういうたてまえできておりましたわけでございますから、このいま御審議いただいておる法律もそのたてまえでできておりますので、そのたてまえを援護法的な、あるいは援護法でくても、別の国家補償的な法律にかえるかどうか、それは大きな一つの変更になりますので、その場合には、他とのやはり均衡ということも考えなければならぬという問題が起こってくるわけで、むずかしい問題である。しかし、そこで考えてみる余地のある問題でもある、ひとつ考えてみたい、かように申し上げております。私は、これは援護法的なものあるいは国家補償的なものに切りかえるべきだというところに踏み切るまでには、まだちょっと踏み切ったお答えをいたしますまでには、まだそこまでちょっと至っておりませんし、これは広く関係の意見も聞く必要があろうと、かように考えております。
#137
○小野明君 これ以上は、大臣の御答弁も前に出ないかと思いますが、いま、政府が立てられておる身分関係あるいは補償均衡、こういうものを援護法の審議の際においても、やはり軍人、軍属から準軍属あるいは一般市民にまで及ぶべきであるという考え方が大臣から示されておるわけなんですね。そういうことからいきますと、やはりこの際、国の責任における戦争ですから、やはりこれを全般的に、いままでの立論というものを抜本的に御検討いただかなければならぬのではないか。特に、最初に申し上げたように、対日平和条約によって、日本も請求権をアメリカに対して放棄しておる。これは黙って政府は放棄しているわけですから、なお、国が賠償すべき責任があるのではないか。くどいようですけれども、再度、現実論の面から御答弁をいただきたいと思うのです。
#138
○国務大臣(斎藤昇君) 援護法の御審議の際にも御答弁を申し上げました。第一段階としては防空従事者を全部ひっくるめたらどうだ、そうしたら大体事実上入ってしまうのじゃないかという御意見もありました。防空関係におきましては、さらに一歩進めてまいりたい、その答弁はいたしました。きょうは、その程度でひとつごかんべんをいただきまして、もっと広く全体的にというのは、これは私は、理屈のつく限りは、援護法のほうへ引き入れてやってまいりたいと思いますが、しかし、そこで法の考え方を一転さして、そしてやれるかどうかということになりますと、私一存ではなかなかお答えいたしがたいと、かようにいま答えておりますので、その辺は、ひとつよろしく御了察を願いたいと思います。
#139
○小野明君 どうも意見が平行のようですから、再度、私は、国家補償の観点からこの被爆者については考え直していただきたいという要望を、再検討をお願いをして、次の問題に進みたいと思います。
 先ほどから上田委員の質問あるいは参考人の意見にも強く言われておったのですが、実態調査を再度やり直してもらいたい、それはやり直すすべもあるのだ、こういうことを言われておるわけです。そこで、大臣、この被爆の実態を、一時原爆タブーの時代もあって、被爆の実態をあまり露骨に出すということはアメリカの好むところでなかった、あるいは政府がどう考えられたか知らぬが、過小に出していく、こういう考えがあるやに承っておるのですが、政府も、核戦争をやろうということは言っておらぬ、再び戦争がないようにということは言っておる。われわれも、そういう目的を持っておる。とすれば、核均衡論からくるもの、あるいはわれわれの非武装中立論もいろいろあるわけですけれども、この被爆の、実態というものをあからさまに出すということをおそれる、これを過小にちびちび小出しをしていくというような姿勢というものは、まさか政府にはないと思うのですが、事実は事実として、これを日本国民全部に、あるいは全世界に公表をしていく御態度でなければならぬと思うのですが、この辺を大臣にお尋ねをしたいと思うのです。
#140
○国務大臣(斎藤昇君) 被爆の実態を明らかにいたしますことは、これは、アメリカその他どこの国にはばかるということは、 これはございません。私は、そういうことはあるべきではないと、かように思っております。いつかも申し上げましたとおり、私は、被爆直後に公務で視察に参りました際にも、たしか、あのときの知事であったと思いますけれども、当時の状況をつぶさに写真その他におさめて、そうして保存をしていくことが必要ではないかということを言ったわけであります。その考えはいまも変わっておりません。ただ、当時にさかのぼって、そうしてこれはどういうようにやれば、その、実態の調査ができるか、調査方法はなかなかむずかしいのでありますが、ひとつ、できるだけ考えてみたいと衆議院のほうでも答弁をいたしております。さように御承知おきをいただきたいと思います。
#141
○小野明君 そこで、きょう、志水参考人が、これは自民党の推薦の方ですが、四十三年一月の「世界」に述べられておるのですが、この原爆被爆者の特別措置なり、医療という問題を一歩進めるためには、やはりこの、実態調査、しかも、これは来年、四十五年の国勢調査のとき以外にはもうない。それを過ぎるともう五十年になるわけで、永久にこの被爆の実態というのはつかまえられないだろう、こういうことをおっしゃっておるのであります。先ほどから、大臣も、この実態調査という点については否定をなさっておりません。昭和四十年の厚生省の調査というのは、抽出調査なんです。すべての全貌も明らかにされていないという点があって、いろいろ批判をされておるのですが、医療の問題は、ある程度明らかになってきておる問題もありますけれども、しかし、被爆者がどうやって生活をしておるかと、こういう点については、まだ解明されていないところが多分にあるわけであります。でありますから、せっかく平年に行なわれるこの十月の調査の時期をはずしては、もう大臣の先ほどの御答弁も空文になるのではないかという気がするわけですが、この来年の十月の調査にあわせて付帯調査をやれないものかどうか、その点をあわせてお尋ねをいたしておきたいと思うのです。
#142
○政府委員(村中俊明君) 国勢調査のおりに付帯調査として原爆被爆者の実態の把握をすることは、実は、事務的に総理府当局と詰めたわけでございますが、結論を申し上げますと、非常に困難であると、理由といたしましては、調査に当たる担当員がそういう国勢調査と直接結びつかないそういう問題の理解をするのに非常にひまがかかる、しかも、全国的な悉皆調査であるために、調査漏れその他で不備な点が出てきて、集計のときには相当困難をする、さらに技術的な面について見ても、たとえば被爆当時にはまだ単身であった者が現在すでに結婚しておる、あるいは世帯が分かれておるというふうなことで、そういう重複をどうやって整理するかというふうな点をいろいろ事務的に詰めたわけでございますが、結論を申し上げましたように、非常に困難である。ただ、こういう時期に何らかの方法で調査をする手はないかということが一点、大臣がそのとき御答弁申し上げたわけでございます。ただ、これと関連をするわけでございますが、先ほど来御意見が出ております広島、長崎、両市について被爆当時の家屋家族構成、こういったものの復元調査を現在広島の原医研がいたしております。これに対して、市が相当強力に援助いたしております。これは非常に貴重な研究だと存じまして、私どもも、できるだけそれに対する助成をすることを検討したい、こういう考えでおりまして、国勢調査のおりの付帯調査ということについては、残念ながら、非常に困難だということでございます。
#143
○小野明君 そこで、そういうお話も初めて承ったんですが、大臣も言われておりますように、被爆者の実態をあからさまに調査をしていくということは、これは否定をされていないわけですから、全被爆者といいましても、三十万程度ですね。広島における調査に政府が協力をされるということは、もちろんこれは推し進めていただきたいと思うんですが、どうも、先ほどから私もお聞きいたしておりまして、政府側の発表、これの発表というのが七万何がしで、現地のこの問題を専門におやりになっている学者の皆さんの見込みというものが、二十万から上であるということは、あまりにも開きが多過ぎるような感じがするわけです。そこで、全被爆者、いま三十万といわれておりますが、それにあらためて再度調査をするような計画というものはできないものかどうか。国勢調査に便乗するということは非常に困難ということなんですから、それをあらためて調査をする意図はないか。そして四十年の厚生省の調査を再検証するという意味もあってもいいと思うんですが、その点をお尋ねします。
#144
○政府委員(村中俊明君) 御承知のとおり、四十年の実態調査の成績が四十二年の末にまとまったわけでございまして、まだそう年月がたっていないわけであります。ここですぐに同じような調査あるいはこれを補なう調査というふうなことは現在考えておりませんが、今後の問題として、一定の年限を切って、その時点では前回の調査とどういう相違があるのか、そういう点の解明は検討に価すると、こう考えております。
#145
○小野明君 局長、私が申し上げているのは、前回の抽出調査ではなく、全被爆者に対する調査をやってもらいたいということを申し上げているわけです。ですから、性格がずいぶん違うわけです、これは。ですから、そういうことを検討願えるかどうか。その場のがれで、はい、検討いたしますでは、相済まぬわけですが、やはり被爆実態を明らかにするという熱意を示すためにもこれについてのひとつ御所信を伺いたいと思うのであります。
#146
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど局長がお答えいたしましたように、関係市当局も、もう一ぺん実態調査をしてみたい、それには、われわれも協力いたしたい、こう考えております。ただいまおっしゃいますような調査、この調査の内容、どういう項目をどういうように調査するかということによっても違ってくると思います。できるだけやってみたいと考えておりますから、できましたら、個人的にでもよろしいし、当委員会においてでも、こういう項目のこういう調査が望ましいというものを、われわれのほうも考えますけれども、お考えいただいて、そうしてできるだけこういう項目をこういう方法でやるのが最善だというようにやっていただければありがたいと、かように存じます。
#147
○小野明君 最後に、これもいろいろ御指摘があったのですが、一番いま被爆者の中で、いろいろな手当てを受ける人の中で困っておられるのは、やはり所得制限なんです。一万七千二百円というのが全部適用になっておるものですから、受ける人が少なくなってきておる。これは国家補償の観点に立てば、当然これは撤廃さるべきものだと思うのですが、この一万七千二百円をいま年間の所得に直しますと、百五万ですか、これをかなり下げていくといいますか、そういう措置が私は最低限の必要な措置ではないかと思うのですが、その辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#148
○政府委員(村中俊明君) 所得制限の根拠としての考え方は、申し上げたとおりでございますが、これを緩和するというふうな点について、実は四十四年度は一ぺん作業をいたしております。それは特別手当の支給対象の従来の所得税一万七千二百円を、これを二万二千七百円に引き上げまして、一万七千二百円と二万二千七百円の間にあるものについては、従来ゼロであったものをこれを五千円の特別手当を出すというふうな形の所得制限の緩和は、実際に今回の措置でいたしております。ただ問題は、基本的に所得制限を廃止するということにつきましては、再三申し上げていることでございますが、社会保障法のたてまえとしては、なじみにくいということ。ただ、今後とも所得制限の緩和というふうな点については、十分配慮してまいりたい、こう存じます。
#149
○小野明君 この点については、四十二年ですか、参議院の大蔵委員会でも附帯決議がされておるので、当然相当の年月がたっておるのですから、この一万七千二百円という制限については緩和の措置が検討されておらなければならぬと思うのですよ。先ほど五千円の問題だけと、こういうことですが、大体手当てそのものがわずかなものなのに――援護法から比べますと、非常にわずかなささやかなものなんです。それを一万七千二百円の制限がついておるということは、ことさらにこれは社会保障と言ってしまえばそれまでなんですが、われわれのいう国家補償的な見地と開きがあまりにあり過ぎる。また、大蔵委員会での結論が出ておるにもかかわらず、その措置が多少緩慢ではないか、こういうふうに考えるのです。再度、御答弁をいただきたい。
#150
○政府委員(村中俊明君) ただいま申し上げましたとおり、これは所得額で制限をしておるのではございませんで、所得税で制限をいたしております。したがって、全般的に所得が上がってまいりますとか、あるいは税法改正というような時点では、緩和の間接的な作用が出てまいるわけでございますが、そういったことで、今後とも所得制限の問題については配慮してまいりたいと、こう存じます。
#151
○小野明君 どうも、据え置いておるからというような御答弁で、納得できないのですが、大蔵とも折衝いただいて、その辺を何とか緩和できるように、また最後に大臣にお願いですが、この支給項目では、何といっても、社会保障と見ても薄いわけですよ。それで漸次その点を変えていただいて、支給項目もふやしていく、あるいはそれぞれの項目についても充実をしていく。内容は衆議院のほうでも附帯決議がついておるようですから、ひとつ抜本的な方向に切りかえていただくように、充実をしていただくように大臣に要請をいたしまして、最後に大臣の御所見をいただいて終わりたいと思うんです。
#152
○国務大臣(斎藤昇君) お趣旨を体しまして、今後さらに一そう充実するように努力をいたしてまいります。
#153
○阿具根登君 一、二点だけ短時間質問申し上げたいと思うんです。特別措置そのものに対しては、私は意見を持っておるんですが、今度の改正によりますと、三十一万人の被爆者のうちに、特別被爆者の二十五が八千七百八十六名に限って葬祭料を出す、こういうことなんですが、一般被爆者の五万四千三百七十五名ですか、この人たちが被爆による作用によって死亡した場合は、葬祭料一銭も出ない、これは一体どういうことなんですか。
#154
○政府委員(村中俊明君) 一般被爆者に対する葬祭料の支給の点でございますが、これはいまの御質問の要旨によりますと、被爆によって死亡した者というふうなケースでございますけれども、この場合には、疾病が大臣の定めた成人病関係の疾病あるいは特別措置法の被爆に関係があるというふうに認定された疾病の場合には、特別被爆者の扱いになるわけでございまして、こういう形では手続をとって支給の対象になり得る、こう考えております。
#155
○阿具根登君 それでは距離を、四キロ以内の方は特別被爆者、それ以外は一般被爆者、こういうことで差をつけなくて、被爆者がその被爆が原因によって死亡した場合は葬祭料を支給する、こうすれば何でもないじゃないですか。なぜ距離をきめて、特別被爆者と一般被爆者と、こういうことをやらねばならないんですか。私はその人間のからだの強弱にもよるかもしれませんけれども、四キロ以内の人だけがそうであるということは限らないと思うのです。だから冒頭申し上げましたように、この本法案そのものに疑義があるということを申し上げたわけなんです。その点いかがですか。
#156
○政府委員(村中俊明君) 特別被爆者の定義につきましては、ただいま御指摘がございましたが、距離的な問題が一点、それから、相当濃厚に汚染されている時期に入市をした人、こういう方が対象になる。そのほかに、先ほども触れましたけれども、七つの疾病がございますが、これは原爆の被爆に影響があるというふうな疾病を持った者は特別被爆の対象になり得る。一般被爆者の場合には、これは原爆に関係ない状態で死亡した場合には、葬祭料の支給はありませんけれども、まだ生存しているうちに原爆に被爆したというそういう判断の、大臣が指定する七つの疾病による病気をわずらってなくなったという場合には、特別被爆者の扱いをして、葬祭料の支給あるいはその他の手当の支給というものが行なわれるわけでございます。
#157
○阿具根登君 厚生省の考え方は、表面は非常にいい。いままで数人の人が質問をしておったけれども、たとえば特別被爆者にしても、諸手当は三十一万のうちに八%しか受けていないと私は聞いておるんですね。非常にいい文句が書いてあるけれども、そこまで皆さん言わなかったけれども、そういう規制処置があるために、わずか八%しか救われておらない。だから、この問題はいままで言い尽くされたから、もう言いませんけれども、実際問題としては、わずかの人しか救われておらない。そして、名目は非常に広範に助けられるようになっておる。だから極端にいえば、なるべく少なくしぼろうしぼろうとしておるのが今日の法体系じゃなかろうか。そこに私は非常な疑問を持ってくるわけです。
 それからもう一点、この特別被爆者が死亡した場合、注が言っておるわけなんです。「その死亡が原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかである場合」を除くと。明らかでない場合は、どういう点があるか、ひとつ教えていただきたいと思うんです。
#158
○委員長(吉田忠三郎君) ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
#159
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をつけて。
#160
○政府委員(村中俊明君) ただいまの特別措置に関連いたしまして、いろいろな手当その他の保障が制限をされるという点についての御指摘でございますが、これも御承知のとおり、ただいま三十一万人の被爆者に対して八%という御指摘がございましたけれども、これの根本には、毎年定期的な健康診断を無料で実施をしております。さらに、特別被爆者に関連する疾病にかかった場合には、これは自己負担のない形で医療が受けられるわけでございます。そのほかに、認定患者あるいは特別手当というふうな制度が最近出てきたわけでございます。そういうことで、部分的におとりいただきますと、非常に少ないという御指摘でありますが、対策全般をごらんいただきますと、私は、必ずしも非常に対象が狭められているというふうには考えておりません。
 それから被爆者にA席、B席という委員長の御指摘がございましたが、これは特別被爆者の対象に入れる手順として三キロメートル以内で被爆した者あるいは入市者あるいは大臣特定の疾患というふうなことが入ってしまえば全部同じ扱いになるわけでございます。
#161
○阿具根登君 もう一つ質問をしておったのです。特別被爆者がなくなった場合に、被爆による死亡ではないのだ、その原因による死亡ではないのだというのは、一体どういうことがあるのかということを聞いておる。
#162
○政府委員(村中俊明君) どうも失礼いたしました。
 これはたとえば遺伝的な疾患で、全く被爆と無関係だ、あるいは交通事故というふうなことで、これは原爆とはどうも関係ない、しかし精神的な痛手を受けて、それが間接的な原因で、たとえば交通事故になるというふうなケースが出てまいりますと、それは個々のケースによって処理されることにいたしております。
#163
○阿具根登君 おっしゃること、よくわからないのですけれども、たとえば交通事故の場合ですね。また関連があるとおっしゃったけれども、きょうの参考人の意見を聞いておっても、白内障が一番危険だ、あぶない、目が見えなかった、体が衰弱しておった、それで、当然健康な人ならば渡れるところを渡れなかった、そして事故にあった、こういう場合、一体どうなるか。それを遺伝だとおっしゃるけれども、これに全く関係なくして、遺伝でなくなるという病気は、一体何々があるか。くどいようですけれども、私は、回り道して言わずに、そのものずばり聞いているのですから、教えて下さい。
#164
○政府委員(村中俊明君) 御指摘のどういう疾病が遺伝的な疾患で、しかも、原爆に無関係であるというふう病名――遺伝病の名前をあげろという点でございますが、たとえば先天性の心臓疾患あるいは先天性のその他の疾患、血友病というようなことになってまいりますと、一応、原爆の被爆ということから除外されるのじゃないか。ただし、こういうケース、遺伝的な疾患につきましても、原爆と関連があることの否定できないものは対象にすることになるかと思います。明らかに否定されるものは対象にしない。結局ケースケースで処理されることになっております。御指摘の交通事故で、精神的な状態あるいは疲労が重なっている、あるいは白内障、当然、白内障などは原爆に関連があるという疾病です。あるいは衰弱という問題も、被爆が関連してそういう状態にあれば、これは交通事故であっても、葬祭料の支給の対象になり得ると考えております。
#165
○阿具根登君 あなたの答弁ではそうなりますけれども、いままでの労災法あるいは職業病等を見てみると、今度は診断は違ってくるわけなんです。お医者さんが診断されるわけなんです。そうすると、われわれは医者でない限り、それに対してこれは関係ありということはなかなか立証できないわけなんですね。この前、職業病の問題で質問いたしましたから、御承知かもしれませんけれども、たとえば七十数歳で老衰で死んだ――これは人間だから九十歳で老衰で死ぬ人もありますし、七十歳で老衰で死ぬ人もあります。しかし、こういう被爆者でなかったならばもっと生きられるということは、言えないことじゃないと思うのです。カンの場合は一まあ被爆者はガンにかかりやすいと言われているから、これはおそらく関係ありと、こう見られるわけなんです。そうしてくると、特に、特別被爆者と、これだけきめつけるなら、何もそんなこと言わずに、特別罹災者が死んだならば、これは葬祭料送りますと、二十一万名のうちの、いまおっしゃった数なら、わずか何名かです。何名かのためにそういうようなことを書かれるから、これが拡大解釈され、あるいはそれを治療されたお医者さんの考え方で、これは何の病気だということで診断されると、その人はこれに該当しない、これが現実なんです。だから、あなたのその気持ちなら、わずか何名のあるかなしかの者なら、こういう注を入れる必要も何もないのだ。それからまた、それを入れるとするならば、先ほど申し上げました一般被爆者も、その原因が被爆によるものであることとするならば、なぜ分けたかです。それを分けるとするならば、一ぺんに被爆者全部をそうしていいわけだ。それを一方では、これは一般被爆者と分けておって、一般被爆者の中でも、被爆が原因になって余病を併発し死んだ場合に、特別被爆者と認めますと、こう言っているわけなんです。一般被爆者の中でも被爆に関係がなかった場合には、葬祭料やれませんと、こうなっているのですね。そういうように回り持ってきて、どこか逃げ道のあるような法律案を出すから、この法律の陰で泣く人が出てくるわけだ。いつも言われている、法律は一人歩きします。ここでは何ぼいいことを言って、何ぼいい答弁されても、これが法律として出ていけば一人歩きする。これを解釈する者によって、泣く者も喜ぶ者も出てくるということを言われている。そうするならば、泣く者を一人でも助けるためには、わずか何人かの問題でそういう注釈を入れたりなんかするのは当たらぬじゃないか。厚生大臣のお答えを聞いて、私の質問、やめます。
#166
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまおっしゃるようなことになるおそれがありますので、したがって、特別被爆者がなくなれば、これは特別な場合を除いては、もう無条件であげます。原爆でなくなったという証明がなくてもあげます。そこで最もわかりやすい例は、先ほど非常に、ちょっとややこしい例でしたからあれですけれども、たとえば列車に乗って旅行しておって、その汽車が脱線してなくなった。あるいは殺人――人に殺されたというような場合には、これは原爆に基づくものでないことが明らかだから、そういう場合には除くというもので、除くあれをしたのであります。そういう立証がなければ、みなあげましょう。それから一般被爆者も、病気その他になれば特別被爆者になるわけですから、したがって特別被爆者になってなくなるというわけです。私もあそこに参いりましたから、これは一般被爆者の資格があるわけです。しかしながら、私が死ぬ前に原爆の病気になったとかということになれば、特別被爆者になるわけです。いま、一般被爆者でも、その前に原爆病になったということであれば、特別被爆者になって、そして葬祭料はもらえる、こういうことです。
#167
○阿具根登君 これでやめるはずだったのですが、それならば、一般と特別と分ける必要は何もないのじゃないですか。一般と特別と分ける必要が何もないのをそうされるから、大臣はそうおっしゃるけれども、この法律ができ上がった場合には、そうでなくなると私は言っておるのです。それが労災にもあり、職業病にもあるわけです。ここで当然そうなるわけです。
#168
○国務大臣(斎藤昇君) 私は労災その他のことはいまよく覚えておりませんけれども、これはその証明は逆になっているのじゃないかと思うのです。それで、一般被爆者は特別被爆者になり得る素因を持っている。特別被爆者になる前に死んだからといって、原爆の症状がまだ出ていないというのであれば、やるわけにはまいらない。原爆症状が出ている者がなくなれば、これはもう全部おしなべてあげますし、殺人でなくなったとか、あるいは列車事故でなくなったとか、これはもう何にも関係がないことは明らかですから、そういう場合だけは除くということになっている。そんなわずかばかりのものを除かんでもいいじゃないかというあれもあるかもわかりません。わかりませんが、これは法律のたてまえはなかなかやかましいものですから、そういう理詰めでいくというと、そうなるというわけです。そのために、私は、非常にもらえるべき者がもらえなくなるということはないだろうと、かように思います。先ほど申しましたように、私がいま死んで、そうして葬祭料をもらおうとは思っておりませんけれども、どうも白血病になってきたということになれば、そのときは特別被爆者になるわけですから、そのときには、白血病ということがはっきりしなくても、特別被爆者になっておれば、すぐもらえる、こういうわけであります。
#169
○阿具根登君 どうも、あなたの答弁を聞くと、それはあなたが白血病になった、これがはっきりしてくれば、それが非常に進んでくればもちろんそうでしょう。しかしそうじゃなくて、その疑いもあるかわりに全然別な病気になってきた。これが今度は特別の場合は、いまおっしゃられたように、もうわずかの者だけだけれども、一般の場合は、それはあなたがおっしゃるようにならないと私は言うのです。それがそうなっておるなら、一般と分ける必要はないわけなんです。わずか五万人です。三十一万人のうちの五万人をなぜ分けておいて、おまえが病気したなら認めてやるけれども、病気しないなら認めてやらない、そういう法はあるかというのです。そうすると、逆にその法がひとり歩きすると私は言うわけです。あなたはそうおっしゃるけれども、大体これが適用されるのは、たった八%しかいまの特別手当なんかもないのですから、だから、答弁ではそうおっしゃるけれども、そうならないから、そういうふうにこれを変えたらいいじゃないかというのです。その気持ちならば。これだけ見れば、これは特別被爆者だけを対象にしてやるとしか見れないわけなんです。これは議論になりますからこれでやめますけれども……。
#170
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#171
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をつけて。
#172
○国務大臣(斎藤昇君) 法律の趣旨も、いま阿具根委員のおっしゃるようなことになることをおそれてやっておりますが、なお、それでも心配があるという御意見でございますから、運用に当たりましては、なお一そう気をつけまして、御趣旨を体していきたいと思います。
#173
○藤原道子君 時間もだいぶたっておりますから、ごく簡単に一つか二つの点でお伺いしたい。
 私、どうも厚生省のとらえ方が次元が違っていると思うんです。私ども社会党は、軍人恩給を審議するときに、広島、長崎の原爆の犠牲者を含む戦争犠牲者補償法とすべきである、こういうことを主張いたしましたが、いれられませんでした。そのときにもこういうことを言っているんです。国内で原爆だけがあれじゃない、直撃弾で死んだ人もある、あるいは火災によって死んだ人もある、これらを考えると、まことに困難でございますと。それと同じ答弁を今度衆議院でも大臣はしていらっしゃる。ところが、原爆の被災者というのは違うんですよ。世界に例のない、もうそのものずばりのこの辺の人がやられたのですから、この次元で、真剣に考えていただかなければ納得がいかない。それはそれといたしまして、いまここで幾ら言っても、いい答弁が得られるとは思いませんけれども、原爆による被災者がいかに悲惨であるかということは、もっと真剣に厚生省では考えてほしい。福竜丸でなくなられました久保山さんは、たしかあのとき見舞金は五百万円ぐらいですか、同じく被災された船員の人は二百万円。その被災された方に、その後はたして白血病が出ているだろうかということになると、疑問があるわけです。二十九年の時点で久保山さんは五百万円、そして乗っておられた船員の方は二百万円の見舞金が出ているわけです。にもかかわらず、きょうまでなくなられた方にお線香一本国としては立てていないんです。それで、あれは被爆による病気ではないとか、これはどうだとかということで、しぼりにしぼってこられたのがいままでのやり方だった。しかも、今度出ますのはたった一万円でしょうが、葬祭料。そうですね。その一万円の葬祭料出すのに、これから死ぬ人に出すわけです。過去死んだ人はかえりみない。しかも、いまのようなつけぬでもいいようなことばまでつけてくるから問題になるし、私は、非常に薄情だと思う、政府の考え方は。この点は、今後さらにこの法の改正に努力していきたいと思いますけれども、そういう点、次元の違うものをごまかすような答弁は納得がいかないのです。そこで、それはそれとして私は強くこの点は御検討願いたいということを強く要望いたしておきます。
 そこで、お伺いしたいのは、学徒動員で広島に行って、そして作業中に被爆して死んだ学生はたくさんあると思います。これはどういうふうに考えておいでになるか。
#174
○国務大臣(斎藤昇君) 学徒動員でなくなられた方は今回援護法で救うようにいたします。
#175
○藤原道子君 これにつきまして、どのくらいの数が死んでおりますか。
#176
○国務大臣(斎藤昇君) 母法の御審議のときに申し上げたかと思いますが、私、いまちょっと数字は覚えておりませんが、先般も学徒動員の碑で広島のところに私お参りしてまいりましたけれども、ちょっと確実な数は覚えておりません。なくなったということがわかったお方は全部援護することにいたしております。
#177
○藤原道子君 それで、被災した者はどうなりますか。
#178
○政府委員(村中俊明君) 法の立て方からは援護法と特別措置法、あるいは原爆医療法と並列的に、対象に対して支給する。言いかえますと、原爆の被爆者が特別被爆者で、しかも、学徒動員という場合には、全部重なって対策が行なわれるということになっております。
#179
○藤原道子君 そういうことは、もう少し詳しく伺わしてほしい。
#180
○政府委員(村中俊明君) 原爆医療法につきましても、特別措置法につきましても、対象は広島及び長崎で被爆をし、しかも、それが濃厚に放射能を浴びたというふうな前提条件があるわけでありまして、国との雇用関係とかあるいは学徒動員とか、そういうこととは関係がないわけでございます。したがいまして、軍人、軍属であっても、現在被爆の影響を受けて法律の対象になるような事項については、それぞれ重ねて措置されるということでございます。
#181
○藤原道子君 学徒動員で行かれた人は国の命令で行ったんだから、だから対象になる。それから同じように仕事をしていた隣組の人とか、あるいは町の人みんな戦時体制でしたよね、あのころは。私どもさえ動員で働いたんですから。そういう一般の市民が同じ条件のもとに、一発や二発落ちたのじゃなくて、原爆が落ちたことによって二十数万の人が死んでいるんですよ。被災している人がいまだに三十何万あるわけですね。ところが、これらの人は、戦争行為によって受けた被害にもかかわらず、対象になかなかしてくれない。やっと今度葬祭料が出るというけれども、国の責任で出すとはあなた方どうしてもおっしゃらないで、社会保障的だと言うのですね。それでいいものでしょうか。私は、あくまで国家補償の立場でやるべきだと考えるのですけれども、どうでございましょうか。
#182
○国務大臣(斎藤昇君) そのお話は、先ほども大橋委員、それからその他の委員の方々にもお答え申し上げました。現在のたてまえはそういうふうになっておりますけれども、そこが非常にむずかしい境い目になっておりますので、全般的な問題としてさらに前向きで検討いたしたい、かように申し上げておるわけであります。
#183
○藤原道子君 私は、斎藤さんは、うそは言わないと思うのです。この前、園田さんもそういう答弁をしているけれども、一向それが今度実っていないのです。いま、また大臣がそういう御答弁をいたしましたが、私は、原爆でなくなられた多くの人は浮かばれないと思う。衆議院の答弁を読めば読むほど、私ども、ずっと前のことを思い出して心痛むものがございます。どうかそういう点もあわせ考えられまして、いまの被災による死でないことが明らかであるときは云々なんということはなくもがなということになると思います。そういうこともあわせまして、ぜひ、もう少しあたたかい気持ちで今後の運営をお願いしたい。いろいろ大臣は言うけれども、出た法律は、法律は一人歩きする。だから阿具根さんも心配していろいろ御質問があったと思うし、私も、きょうまでの政府のやり方を見ていて、非常に不安でございます。そういう点はしかと御検討いただきまして、少なくとも、そういうような問題が今後起こらないようにしていただくと同時に、原爆に対する考え方を根本的にさらにお考え直しを願いたいということを強く申し上げまして、さらに大臣の最後の御答弁を伺いまして、時間も十二時にはまだ早うございますけれども……。
#184
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど申し上げましたように、原爆でなくなられた方、あるいは原爆で傷病を受けられた方、できるだけ、いまのたてまえのもとにおいても、広げられる退りは広げてまいるように努力をいたしますと、これは、私はその方針をはっきり申し上げておきます。
 防空業務に従事をしたというので、防空監視員だけを今度援護法に入れましたけれども、そのほか防空従事員をもっと広く入れられないか、これはできるだけ広く入れられるように検討していきましょう。これはいまのたてまえでも、できる限り、へ理屈のつく限り現行法へ取り入れるようにいたします。しかし、どうしても、へ理屈がつかぬやつは、いまおっしゃいますように、次元が違う、次元をかえなければならない。次元をかえることについては、私は、お約束をするだけの勇気はございませんけれども、広く一般の意見を聞いて、次元がかえられるものならばかえていくようにいたしたい、かように思います。これははっきりお約束をいたしますと言うだけの自信は、私はございません、先ほどから申し上げておりますとおり。しかし、そういう御意見もございますから、広く意見を聞きまして、前向きに検討のできるようにいたしたい、かように思います。
#185
○藤原道子君 いろいろありますけれども、時間の関係で、私はこの程度にいたします。
#186
○上林繁次郎君 いままで具体的な問題について相当突っ込んで論議されてきたわけです。そこで、ほとんど言い尽くされたと言って過言ではないんじゃないかと思います。私は、そこで、今後の原爆被爆者援護についての国としての決意と言うか、あるいはまた、これに取り組んでいく姿勢と言いますか、そういった点でちょっとお尋ねをしてみたいと、こう思います。
 御承知のように、今回の改正案は、葬祭料のみが掲げられているわけです。いままで参考人の方たちからもいろいろ問題点について話もありました。また、各委員からも相当突っ込んだ具体的な問題が取り上げられて、論議されてまいりました。そういった経過を考えてみますと、この問題については、もっともっと前向きでこれを解決していかなければならない問題が山積されておるという感が強いわけであります。そういう事情の中で、なぜ今回葬祭料だけが対象になって、いわゆる法改正ということになったのか、なぜいわゆる葬祭料だけが掲げられてきたのか、そのほかに幾らでも問題点があるにもかかわらず、この葬祭料だけが問題になったということはちょっと解せないんですが、何ゆえこの問題だけが取り上げられたか、その点についてひとつお答え願いたい。
#187
○政府委員(村中俊明君) 被爆者の対策につきましては、いろいろ各方面から御意見を伺っておりまして、一番大きな問題の処理といたしましては、昨年の九月からスタートいたしました特別措置法でございまして、
  〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
 これは御承知のとおり、各種の手当がこの中に含まれて、初めて形として福祉面の対策が一歩前進したということでございまして、今回の提案申し上げました法律改正は、改正を要する事項は葬祭料の支給という点でございますが、予算的な措置といたしまして、今回被爆者対策で改善いたしました点を項目だけ申し上げますと、先ほど来御者見が出ております特別手当の支給の所得制限の緩和をいたしたということ、それから健康管理手当の支給に特定疾病を一つ加えまして、従来白内障というのが原爆に関係あるのではないかという点の学者の意見も、いろいろ研究が積み重なりまして、今回はこれを大臣の指定するいわゆる政令三号疾病という形で、健康管理手当を支給し得る疾病の中に入ることになった。さらにこれは予算措置でございますが、これも従来から強く要望されておりました健康保険の被保険者本人の健保特例法による一部負担というのがございますが、これを今回予算措置をいたしまして、被保険者本人についても一部負担がかからないような、そういう国費の支出をするような予算を組んでおりまして、こまごましたことは幾つかございますが、大まかに言いまして、こういう点の改善をいたしたわけでございます。
  〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
#188
○上林繁次郎君 私がお尋ねしたのは、おもなものは葬祭料、こういうことですね。いままで論議されてきたことは、最も原爆被爆者に対しての援護ということについては、相当重要な問題であり、当然そうしてあげなきゃならぬというふうに考えるわけです。そういう問題が山積しているにもかかわらず、なぜこの問題だけが今回取り上げられたか、そういう問題をいままで十分に検討されてきたのかどうか、いままで論議されてきたような問題は、実際に厚生省の中で国の立場で考えられたのかどうか。またきょう参考人の方々に来ていただいたわけですけれども、そういう専門家と――この特別措置法ができて以来一年たつわけですが、その間に、これらの方たちと、いわゆる国との話し合いがあったのか、意見聴取が行なわれておったのかどうか、そういった点はどうなんですか。
#189
○政府委員(村中俊明君) 私どもは、いろいろな方々の御意見を伺っております。御指摘のように、確かに、昨年の九月福祉法ができたわけでございますが、この福祉法の内容の充実というのが私ども当面する問題だと考えて現在措置をいたしておりまして、これを社会保障法から援護法に切りかえるという点につきましては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、まだ十分検討が終わっていないわけでございます。
#190
○上林繁次郎君 いまあなた援護法だけの問題を取り上げたのですけれども、いままで論じられてきた問題は、そういう一つの問題だけじゃない、広範にわたってのいわゆる問題が論議されてきたわけです。そうでしょう。ですから、そういう問題が今度の法改正で織り込まれていないじゃないか。当然、あなたが言うように、いままであらゆる人と会って、そうしていろいろと論議されてきた、審議されてきた、そういうことであれば、当然、今度の改正で葬祭料だけでなくて、もっともっと重要な問題がここに盛り込まれてきて当然ではないか、私はそれを言っているわけなんです。なぜそれが上がってこなかったのかということを聞いておるわけです。
#191
○国務大臣(斎藤昇君) 法律を改正しなければやれないという点を今度法律に盛ったわけで、先ほど局長が答弁いたしましたように、法律を改正しなくても、いろいろ問題になっております点、範囲の拡大あるいは手当の増額その他、これは予算措置とこちらの省令でやれますから、それはやりましたと、こう御答弁を申し上げたわけであります。
#192
○上林繁次郎君 ですから、そこのところがどうも通じないのですよ。省令等でもってやれるのだと、法律改正しなくても。その分については、どうのこうのという、いまお話があったのですけれども、それならば、いままでいろいろと問題になってきた重要な問題が今度の中に相当盛り込まれてきていいのじゃないかということなんです、私の言っているのは。そうだとすれば、いままでいろいろ論議があったけれども、そこまで論議がいかなくても、あなた方がその点を踏まえた上で、それが今度の法改正、あるいはまた、省令の改正というか、そういった中でいままで論じられたような問題が盛り込まれていたら、そこまで問題にならなかった、こう思うのです。そういうものが何もないじゃないか、いままで論じられてきた問題が盛り込まれていないじゃないか、こう言っているわけです。それがなぜなのかということです。
#193
○国務大臣(斎藤昇君) いままで論じられておりました問題で法律を改正しなければできないもの、法律を改正しなくてもできるもの。法律を改正しなくてできるものは、いま述べましたように、また、昨年の附帯決議にいただきましたもののうちで、大部分先ほど御説明を申し上げましたように、今度処理をいたしますと、それは法律を改正しなくてもできますから、いたしますと、予算も取りました。こういうふうにいま申し上げております。これはひとつ御了承いただきたいと思います。
#194
○上林繁次郎君 どうも、その辺のところは、私の言っていることと合わないんですよ。何回繰り返しても同じようなことになりそうなんで、それ以上、一つの問題で、いまの点で話をしても結論は出そうもありません。
 それでは、もう一点だけ聞いておきたいんですが、いま大臣も、局長も言った省令等で改正できるものはその中で、いわゆるかえられるものはかえていくと、こう言ったわけです。法律改正しなきゃならないものもありますけれども、いままで重要な問題が数々論議されてきたわけです。そこで、私は聞きたいんですけれども、少なくとも、あなた方は、今後省令等の中で、法律を改正しなくてもできるものはどんどんやっていく、こういう話があったわけですが、そういう立場でいままで論じられてきたこの問題が、来年度、少なくとも、昭和四十五年度において、いままで論じられてきた問題が大幅に取り入れられ、そして大幅にこれが改正されていく、また、かえていくその決意、そういう決意をほんとうに持っているのかどうか。持っているとすれば、当然、来年度において、この原爆被爆者に対するこの法律あるいは省令、いろいろな面で大幅にこれが改正されてくる、こう思います。そういう考えをあなた方持っているならば、その決意があるのかどうか、来年度において。その点をひとつ決意を聞きたいのです。
#195
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほども申し述べましたように、予算編成に当たりましては、御趣旨に沿うように大いに努力をいたしたいと、かように思っております。
#196
○大橋和孝君 もうだいぶ質疑がいろいろされましたが、最後に私七点ほど大臣のお考えを聞いて、それで最後の詰めの質問としたいと思いますので、私がこれからずっとお尋ねすることに対しては、大臣からお答えを願いたいと思います。
 現行の医療審議会の委員の任期はもう近く終わる、先ほど質疑の中にもありましたが、そういうふうに聞いておりますが、広島原爆病院の資料等に照らしましても、被爆者問題はきわめて深刻であります。また、現在の厚生省の対策や、基本的な考え方につきましては、審議会委員自身からも本質的な批判があるわけであります。この際、五十八国会での園田前厚生大臣の答弁も尊重いたしまして、広い視野から被爆者対策を検討する被爆者援護審議会を設置する意思はおありであるかないか。
 むろん、この緊急医療対策は即刻着手すべきであると思いますが、それとあわせ抜本的な施策検討の場として、広く現場の専門家や、被爆者代表者あるいは学識経験者を加えまして行なうべきであると、こう思いますが、そういう審議会設置と、それからまた緊急対策とを並行させるべきであると、こういうふうに思いますが、そのお考えのほどを。
#197
○国務大臣(斎藤昇君) 審議会委員の任期も八月に迫っておりますので、その際に、ただいまおっしゃるように、できるだけ幅広く委員の方々を選任をいたしまして、そして御趣旨に沿えるような運営のできるようにいたしたいと考えております。
#198
○大橋和孝君 現行の健康管理手当は、すでに重い病気になり、しかも六十五歳以上、母子世帯、身体障害者である者に限られて、名前と内容が一致するものではないのであります。真の健康管理ができるよう、被爆者は、平均でも一般人よりも収入が一割も低いと言われておりますし、必要経費は一般人とは変わらないという、厚生省自身の調査の結果にも照らしまして、この手当の支給対象は大幅に拡大すべきだと、こう思いますが、いかがでございましょうか。
#199
○国務大臣(斎藤昇君) 健康管理手当の問題につきましては、私もさように考えております。来年度は十分検討をいたしたいと思います。
#200
○大橋和孝君 次に、認定制度は、きわめて不合理であり、被爆者対策の隘路であると、こう言われております。厳密な学問的研究と、現実に病気に苦しむ被爆者への対策対象の認定基準は、別個のものであるべきだと考えます。この際、この認定制度を抜本的に改めまして、特別手当あるいは医療手当の支給対象を一定基準以上の病気の被爆者に拡大すべきだと、こう思いますが、この点はいかがでございましょうか。
#201
○国務大臣(斎藤昇君) 認定のやり方につきましても、先ほど申し上げました審議会委員の選任と同様に、また審議会委員の任命もそういうことを考えていたしたいと思っておりますので、御趣旨に沿えるように努力をいたします。
#202
○大橋和孝君 それから諸手当の金額を社会の実情に応じて是正すべきであると思いますが、特にこの介護手当の一日三百円は、全く社会常識に反する額であると思われます。一応、重症者は入院あるいは施設収容のたてまえとなっているのでありますけれども、しかし、病院ベットの不足とか、あるいはやむなく自宅療養で家族の手が足らないために、非常に困っておられる場合も多いようであります。介護手当を含め諸手当の増額をすることが必要であろうと思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
#203
○国務大臣(斎藤昇君) 諸手当、特に看護手当は十分であるとは考えておりません。これも御趣旨に沿うように検討いたしたいと思います。
#204
○大橋和孝君 今回提案の葬祭料は、大臣みずからが、衆議院におきまして、こじつけ的なと答えていらっしゃるとおり、生存被爆者への福祉措置であり、衆参両院においても、佐藤総理が検討を約束した国家の弔慰としてのものではない。この際、原爆死没者に対する国家の弔慰の表明として、葬祭料を弔慰金に改めて、過去、現在、将来の全原爆、被爆の死没者に支給するように要望いたしたいと思うのでありますが、この点につきまして、お考えをお聞きしたいと思います。
#205
○国務大臣(斎藤昇君) この点は、先ほどからしばしば申し上げておりますように、国家補償に踏み切るかどうかという、いわゆる次元の問題があると思います。その次元の問題として検討させていただきたいと思います。
#206
○大橋和孝君 特に御配慮を願いたいと思います。
 それから次に、六月二十日の朝日新聞などで、広島では十七歳の被爆者二世の少女が白血病で死亡したと伝え、これが広島市内では四名と伝えられている。二世への影響について、被爆者の不安はきわめて深刻である。遺伝の問題は、学問的にも未解決のことでもあり、また、親としてあまり大きく取り上げられることは、かえって子供たちへの差別を助長するという危惧もある。しかし、二世が被爆者と同じような症状を呈する例がかなりある以上、保護者、または本人の申請に基づき、二世に対しまして適切な予防的、健康管理措置を講ずることは、きわめて至当なことと思いますが、この点いかがなものでしょうか。
#207
○国務大臣(斎藤昇君) 原爆症がさらに二世に及ぶかどうかの問題は、きわめて重要な問題だと考えます。いま、おっしゃる意味も含めまして、十分医学的にも早く解明できますように、御趣旨に沿うて検討いたします。
#208
○大橋和孝君 最後に、沖繩の被爆者についてお尋ねしますが、現地の医療制度や施設、専門医等の現状を考慮いたしまして、当面、本土での検診、受診を国家が補助をして、実質的に格差是正につとめる意思はおありであるかどうか。このほか、本土での現地医療関係者の研修や現地施設、スタッフの充実にもつとめていただきたいと思うのでありますが、その点につきましてのお考えを承りたいと思います。
#209
○国務大臣(斎藤昇君) 沖繩と本土と差別のないように、沖繩の方のめんどうを十分見てまいりたい、かように思います。
#210
○委員長(吉田忠三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#211
○委員長(吉田忠三郎君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明かにしてお述べを願います。――別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#212
○委員長(吉田忠三郎君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#213
○委員長(吉田忠三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#214
○大橋和孝君 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 政府は、次の各項について、その実現に努めるべきである。
一 最近における被爆者の疾病状況、老令化傾向等にかんがみ、すみやかに関係者を含む原爆被爆者援護審議会を設置し、生活保障を含む被爆者対策について根本的な改善を促進すること。
二 認定疾病の制度に根本的検討を加えること。
三 健康管理手当の支給対象を大巾に拡大すること。
四 弔慰をこめて、葬祭料の金額を大巾に増額するとともに、過去の死没者にも遡及して支給するよう検討すること。
五 諸手当の金額を大巾に増額し、所得制限の撤廃に努めること。
六 特別被爆者の範囲を合理的に拡大するとともに、被爆者二世に対する健康管理の実現を図ること。
七 原爆死没者を含む被害実態調査を、明年度中に美施すること。なお、地方自治体等が行なう同種の調査に対する国の補助を行なうこと。
八 昭和四十年に政府が行なつた被爆者実態調査を.関係者の協力のもとにすみやかに完結し、最終報告を公表すること。
九 沖縄在住被爆者に対する措置について、実質的に本土並みの措置を確保するよう、現地医療施設とスタツフの充実に努めるほか、当面、本土において検診及び医療が受けられるよう、かつ、費用負担について本土居住者との間に格差を生じないよう措置を講ずること。
十 原爆被爆地において旧防空法に基づく防空業務に従事中死傷した者に対し、戦争儀牲者救済の公平の原則にたつてすみやかに施策を講じること。
 右決議する。
 以上でありますので、御賛成を願いたいと思います。
#215
○委員長(吉田忠三郎君) ただいま述べられました大橋和孝君提出の附帯決議案を議題といたします。大橋君提出の附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#216
○委員長(吉田忠三郎君) 全会一致と認めます。よって、大橋和孝君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。
 ただいまの決議に対し、斎藤厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。斎藤厚生大臣。
#217
○国務大臣(斎藤昇君) ただいま採決せられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、善処をいたす処存でございます。
#218
○委員長(吉田忠三郎君) なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#219
○委員長(吉田忠三郎君) 御異議ないものと認めさよう決定いたします。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#220
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をつけて。
    ―――――――――――――
#221
○委員長(吉田忠三郎君) 次に、社会保障制度等に関する調査を議題とし、水俣病に関する件について質疑を行ないます。
 御質疑のある方の発言を求めます。
#222
○阿具根登君 時間が相当過ぎておりますし、委員長の御指示もございますように、なるべく時間を短くしたいと思いますが、この種公害病につきましては、新潟の水俣病、富山のイタイイタイ病、四日市のぜんそく、阿賀野川の水銀中毒、いろいろございますが、これは公害特別委員会でやるのが至当だと思いますので、私は、本委員会の今日までの経過に従いまして、水俣病について一、二点質問をいたしたいと思うのです。
 最近、熊本医大の発表によれば、非顕性水俣病ですか、今日になって水俣病がまた発見されておる。それが表面に出てこないけれども、死亡した人を解剖した場合に、水俣病だということがはっきりしてきた。そして、一部学者の間では、この水俣病が非常に発生した地域を主要な地域にして、再度精密なる調査をしなければ、水俣病の実態はつかみ得ないかもしれない、こういうことまでも言われておるのですが、厚生省としては、どういうお考えなのか、お尋ねいたします。
#223
○政府委員(武藤g一郎君) ただいまの潜在水俣病患者の問題でございますが、現在、水俣病審査会におきまして患者の認定を行なっておりますが、疑わしい方たがあれば、審査会に申し出るように、私どもとしては、地方自治体を指導しております。したがいまして、現在でも、いろいろからだのぐあいが悪いというような方につきましては、最近も新しく五名ほど認定患者がふえたわけでございますが、そういう方法を通じて、いわゆる新しく水俣病の疑いがあるという方については、措置を行なっていきたい、かように考えております。
#224
○阿具根登君 そこで、公害部長が言われましたように、新しい五名の患者について水俣病と認定されたわけなんですが、それに対しまして、会社側がそれぞれの家庭に謝罪と見舞いに回っておりますが、そのときに、これまでの患者と平等な方法で扱う、しかし、それには三十四年の、いわゆる現在の寺本知事が中に入って調停をした、水俣病は日窒の廃液による病気であるということがわかっても、今後の補償は要求しないというのを確認をしなければ、これを渡さない、こうなっているわけなのです。これは御承知ですか。それがいいとお思いになりますか。
#225
○政府委員(武藤g一郎君) 新しく認定されました五名の方のうち、四名の方が会社側のほうとお話し合いになりまして、前のいわゆる知事があっせんされました条件と同じ条件でけっこうであるから、やはりいわゆる年金等をいただきたいということで、会社側との間で調印が行なわれたと、こういうふうに聞いております。したがいまして、この問題につきましては、両当事者の問題でございますので、もうすでにその点は契約が行なわれておるようでございますので、私どもとしては、現在両当事者の自由なる合意によって行なわれたということで特段これにつきましては意見がございません。
#226
○阿具根登君 それは、厚生省としてけっこうだと思うのですけれども、現在、厚生省のあっせんによる調停機関が調整中である、調査されておる。こういう時期に三十四年のものを適用するというのは、一体那辺にその意味があるのか。この被害者から見れば、極端な生活難に追い込まれておる。一銭の金でもいまほしいわけなんです。だから、将来のこととか、あるいは調停に入っておるとか、あるいは半数足らずの人が裁判に持ち込んでおると、こういう事態の中でも、自分の生活を守るためには、それを約束しなければならなかったんだろうと、私は思うのです。
 そこで、私が考えるのは、三十四年には、そういう有名な方々が調停に入られて、しかも、そのときには、これは公害であるということが十中八、九までわかっておったのです。これは、この前御質問申し上げましたように、十年前に私がここで質問をいたしまして、そしてそれはほとんど確認されておったわけなんです。その当時に、これが水俣病であり、これが会社の廃液のためになった病気だとわかっても、補償は要求しませんという一札を入れている。今度厚生省があっせんされたやつには、第三者のあっせんには、一切不服を申し立てません、こうなっておるわけなんです。そしてあっせんに入られておるわけなんです。ところが、不幸にして今度は割れて、一方は裁判するようになった。これだけ見てみる場合に、何かしら、あなた方が悪意をもってやられるとは、私は言いませんけれども、基本人権である裁判を避けたい、裁判に持っていくなというような処置をされているような気がしてしようがない。これが公害であるか、公害でないかわからなかった場合にも、もしも公害であっても補償はしませんよと、補償はいたしませんということがいいか悪いか、また、今度厚生省があっせんされた場合、確かにその日の生活に追われて、そうして何とか頼みますといってきた人もあったと思う。しかし、その人に対して、不服は一切申しませんということも、また、その人の基本的人権である裁判にも持っていけないんだぞと、これに頼めば。そういうことに私は裏づけられると思うのです。この問題は、先般質問いたしましたから、むし返したいとは思わないのです。しかし今日二つに割れた問題は、この前、私が指摘いたしましたように、あれが白紙委任状同様のものでなかったならば、全部がまとまってあっせんは受ける空気が十分あったわけなんです。それも、裁判もされないというところで、一方は裁判に持っていったわけです。ところが、あっせんに入ってもらったところが、四百八十万という金が水俣市で予算を組まれたわけなんです。そうして、ある人に聞いてみれば、水俣市は、今日まで相当な金も出しているし、とてもそれには耐え切れない、これは厚生省のほうで何とかめんどうみてもらうのだ、特別交付税その他でめんどうみてもらうのだ、こういうことで四百八十万の金を組まれたということを聞いておりますが、それは正しいのか、全くそうでないのか、お伺いいたします。
#227
○政府委員(武藤g一郎君) 昨年の十月、公害認定が行なわれました以後、両当事者での話し合い、あるいは地元でのあっせん等が不調に終わりまして、本年初め患者並びに会社、それから市役所等から、何とか早く解決していただきたい、それには、地元では適当な方もおられないので、ぜひ厚生省のほうでどなたかあっせんしていただきたいというようなお話がございまして、厚生大臣のほうでいろいろ努力されまして、発足の運びになったわけでありますが、その間、水俣市のほうでいろいろ事務費等も要るであろうから、それにつきましては、水俣市のほうでも、ある程度のものを負担しようと、こういうようなお話がございまして、それでは両当事者で、つまり厚生省と市のほうでいろいろ出し合って早く解決をしたいと、こういう話になったのであります。したがいまして、五月の終わりだと思いますが、市のほうで四百八十万円の一応概算的なものをお組みになったそうでございます。これにつきましては、例年水俣市におきましては、水俣病関係等含めましてたしか七、八百万円の特別交付税が交付されております。したがいまして、それの増額等についても、厚生省のほうにおきまして関係省のほうへの配意をしていただきたいと、こういう陳情がございましたので、私どもとしては、この件につきましては、自治省のほうにもその件を申し入れ、善処方をお願いしております。そのほか、ただいま先生がおっしゃいましたように、水俣市は、いろいろ財政不如意で、いままでも厚生省では相当の金額をいろいろの名目で補助しておりますが、こういう面を通じまして、水俣市のいろいろの財政的な援助をいたすよう努力する約束をいたしております。以上がただいまの先生の御質問に対します概要でございます。
#228
○阿具根登君 時間がないですから、答えもなるべく簡潔にお願いいたします。
 自治省のほうにお尋ねいたします。お聞きのように、水俣市そのものも、この四百八十万円の中の何割か――あとでお尋ねいたしますけれども、これを負担すると、こういうことになっております。これは、厚生大臣にも質問いたしますから、どうぞお聞き願いたいと思うのです。ならば、一方は、厚生省のあっせんによる調停を依頼したために、それに要する費用四百八十万円というのを国と市で負担してやる、こうなるわけなんです。そうすると、一方は、これは日本国民が最も最後に人権として認められておる法廷に持ち出した、その法廷のやつも費用は見ていただくのかどうか。また自治省のほうにお尋ねいたしますが、そういうことが自治省としては許されておるのかどうか。また、伺うところによれば、法廷の費用は持っちゃならぬけれども、調停の費用は持ってよろしいということを、自治省は示唆したということまで聞いておりますが、それは正しいのかどうか。その点についてお尋ねいたします。
#229
○説明員(首藤堯君) ただいま御指摘のございました調停あるいは法廷云々のお話でございますが、私どものほうは、市町村ないしは府県の財政面の運営の円滑をはかるという立場からいろいろ考えておりますので、いままでの例で申し上げますと、費用の内訳云々ということよりは、これは府県が持ってまいりますが、実際に、水俣病に対して、当該市町村がどのくらいの経費を支出すべくして支出をしたか、支出をしなければならないことになったか、そういうことを金額として受け取りまして、市の財政状況等勘案をして、特交を決定をいたしておるわけでございます。
 昨年の例を申し上げますと、一般会計、それから病院会計等合わせまして、約二千万円余りの市の負担になっております。この一般会計分に対しまして約九百万円程度、それから病院は、水俣病だけではございませんが、その他の病院分を合わせまして約千二百万円程度、こういうものを、ルールによりまして、積算をいたして交付税を配付をいたしております。したがいまして、四十四年度の所要経費はどの程度になりますのか、全部で幾ら要るのか、まだ私どももちろんわかっておりません。これは、年度末になりまして、県のほうから水俣病のために市が合わせてこれだけの経費を負担せざるを得なかった、こういうかっこうで申請が出てまいると思いますので、その額を勘案をし、財政の状況を勘案をして、しかるべき財政措置をしたい。このように考えております。
#230
○国務大臣(斎藤昇君) 訴訟による関係者の費用を厚生省が持つかとおっしゃいましたが、これはとうてい持てるわけのものでないことは、御承知のとおり。御承知のような経緯によりまして、第三者の調停をぜひ早くやってもらいたいと患者側も言われるし、市当局も、紛争が長引けば長引くだけ市費もよけいかかる。早く紛争を解決いたしたいということで、その希望がございましたので御希望にこたえたわけでございます。したがって、訴訟に基づくものは、これは、私らのほうでその費用までどうこうという点は考えておらぬわけであります。訴訟費用は被告の負担になるか、原告の負担になるか、それは裁判できまるものだと思います。
#231
○阿具根登君 自治省のほうの答えはちょっとはずれておるが、それでは大臣の考え方は、裁判をやるならかってにやれ、厚生省によるあっせんに応じるならば金を貸してやる、同じ病人が、大体公害を受けておる人が、それを厚生省に頼めば金は出してやる、裁判に持っていけばかってにやれ、ということは裁判忌避なんですね、裁判をやるなということですね。
#232
○国務大臣(斎藤昇君) 私は、みんな裁判をやっていただけば、厚生省は何の手間も要らないわけで、厚生省としてはありがたいわけでございます。しかしながら、裁判は長くかかって、どうしても自分たちは困るし、ぜひ調停をやってもらいたい、いろいろ心情を聞いてみますと、ほんとに心からそういうように言うておられるようであるし、この際、ひとつ仏心を出したほうが行政としては適当であろうかと、かように思ったまででございます。
#233
○阿具根登君 それは、患者の全部、被害者の全部がそういう気持であった場合は、大臣の考え方も、私はわかると思うのです。冒頭に申し上げましたように、これに対しては、裁判は考えておられないんです、そうでしょう。だから裁判に持っていったわけです。それで裁判を認めておられて、これに不服のあった場合は裁判というのがありますよということになっておれば、全部が一応調停を受けたと私は思うのです、そのときの空気から考えても。ところがあれでは裁判にいかれない状態です。そうすると、あなたはそうおっしゃっても、たとえばこれで三分の一であった、五分の一であった、五分の一の人が、私は裁判はもう長くかかるからお断わりします、厚生省何とかしてください、そう言った場合、金を出してめんどうをみてやりますか、そういうことはできないと、私は思うのです。また、これが水俣だけでなくて、先ほど申し上げましたように、阿賀野川でもあるいはイタイイタイ病でも、富山でも、どこでも裁判に持ってきて、いま、時の焦点になっておる、公害病は。それがいま厚生省の調停で、新聞で見れば、十月までに結論を出すと言っておられる。そうした場合に、裁判と調停との差ができた場合には、一体どうお考えになるか。おそらく、大臣は常識家だから、裁判のほうが上だったならば裁判の線に従いますということになってくると思うのですよ。そうすると、一方は裁判をやっておったがために一銭も金は補助してもらえない、一方は裁判の結果を適用されるにしても、その間、厚生省がめんどうをみてくれる、こういうことが平等であるかどうか。自治省は、そういうことが平等であると思うかどうか。同じ公害を受けて苦しんでいる人、それを一方には――四百八十万の金をいままでは全部に出しておられるから私は言わないのです。今度割れたからこれは言っておる。そうすると、結論から言うならば、裁判はやるなということになる。そうすれば、これだけ世話してやる、こういうことになるのじゃないでしょうか。
#234
○国務大臣(斎藤昇君) 決して裁判はやるなという趣旨ではございません。当初、この前にも申し上げましたように、調停を頼む以上は、ひとつそれでお願いしますと、気に入らなければ裁判にいきますからと、初めからそう言って調停が一体成り立つかということで、とにかく一応従がいますからということにならぬと、第三者だって、気に入らなければ裁判へいきます、まあ試みにやってみなさい、そんなことでは、やれるものじゃありませんから、したがってああいうことになったわけでございまして、裁判をやられる方は、裁判官の費用、報酬は、これは国が持つでありましょう。判決がきまれば、訴訟費用に要する金は原告の負担とか、被告の負担とかいうことがきまるわけです。原告の負担になれば、会社が負担をいたします。裁判官の俸給、旅費、その他必要なものは、これは国が負担します、裁判官の、裁判官でありますから。訴訟費用が要ればこれは会社負担ということになるかもしれない。それは原告側のあれによりましてそういうものを見きわめて、第三者調停はやられるものだと、私は思います。第三春調停の中には、民事訴訟に非常に詳しい方もおられるわけでありますから、この点は、私は抜かりがないだろう、かように考えます。
#235
○阿具根登君 そうすると、厚生省の言うのを聞いた人は、それでは国が見てやる、裁判の場合は、負けた場合は会社が見る、こうおっしゃるわけですね。どうして、あっせんの場合は国が見られないか。私は、それがわからない。どうして地方が見なければならぬのか。これは当然会社が見るべきではないですか、加害者が見るべきではないですか。そうじゃなかったならば、三十四年のが生きているということになるのですね。そうすると三十四年のが生きているのに国がまた同じような条件で調停をされた。しかも、調停費用は国が、市が見るというのは、私にはわからないわけです。同じ病人なんです、同じ公害患者なんです。しかも、それがいま、世間の注目を受けて、水俣病だけをやっているけれども、十七年間水俣の患者というのは泣いてきておるから、確かに弱いですよ。そのところで二つに割れて、調停依頼してきたところはないはずです。ほとんど裁判に持っていっておるわけです。一番弱って弱って、ほんとうに弱り切っておるのです。そうすれば調停費用は見てやるぞ、あるいは市が見てやる、国が見てやるということになったら、それについていくのはあたりまえで、またそれを見てくださいというのはあたりまえのことなんですね。その場合は国が見てやる、市が見てやる。裁判にやるなら何も見てやらぬ。私はそれは片手落ちだと思うのです。そういうことが許されていいかどうか、私はそう思うのですがね。
#236
○国務大臣(斎藤昇君) 私は、公害に関する紛争処理法、あれによって紛争を処理して解決してもらうのが一番よかろう、こう思ったのでありますが、これも法律が成立して、そうして歩み出して、実際に動くまでには相当時日を要する、それを待てないと、患者側は言われる。市の当局としましても、なるべく早く解決をしてもらうほうが市の負担が少なくて済む。長引けば長引くだけいろいろと市の負担が多くなってくるから、そのくらいのものは出しても、市としてはけっこうだから、ぜひ早く片づけてもらいたいということで、私は悪いことではないと、かように思います。
#237
○阿具根登君 自治省は、どうですか。自治省は、そういう調停の場合には、特別交付金の中からめんどうをみてやる、裁判の場合はみてやらぬぞと、こういうことなんですか。
#238
○説明員(首藤堯君) 私どものほうは、先ほども申し上げましたように、具体的な事情をつまびらかにいたしませんので、その点についてはちょっとはっきりお答えを申し上げかねるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、水俣病全般につきまして、市が負担をすべくして負担をしたものですね、負担を余儀なくされた額、そういう実際の支出に対しまして、これは県の意見もよく聞きまして、それに対して全般的な財政状況を見ながら措置をする、こういうかっこうになりますので、ただいま御指摘の点は、負担をすべきではないのではないかというようなお気持ちかと存じますが、その付近、ちょっと内容をつまびらかにいたしませんので、この場でお答え申し上げかねます。
#239
○阿具根登君 負担をすべきじゃないと言っているわけじゃないのです。負担をして差しつかえないけれども、負担をすれば、同じ人たちが調停じゃなくて、裁判に行った場合も見るべきじゃないかというわけで、それで、自治省のほうは、裁判は見ぬ、こちらのほうは見るというのはどうかと聞いているわけです。
#240
○説明員(首藤堯君) 何度も申し上げますように、私どものほうとしては、地方団体、市町村が負担をした金、それが根っこでございますので、あくまでスタートはそこからになるわけでございます。その負担をした金の必然性、必要性、それを判断をいたしまして、それから財政状況を判断をいたしまして決定をいたしてまいりますので、市等が負担をいたしませんものにつきましては、これはもちろん交付税のらち外でございます。
#241
○阿具根登君 そうすると、大臣はまあ非常に民訴に詳しい人が調停委員になっているから、だから安心だろう、こうおっしゃったけれども、裁判と調停のアンバランスができた場合は、どうしますか。また、いま各所で裁判をやっておるときに、いま、その金額を出すのが妥当であるかどうかという問題については、どうお考えになりますか。
#242
○国務大臣(斎藤昇君) そこは、私申し上げますように、民事裁判のベテランの人がおられるわけでございますから、そこらをにらみ合わせて、適当な、妥当な結論を出していただけるものだろうと、かように思います。
#243
○阿具根登君 ならば、妥当な線というのは、裁判官じゃない人が出したやつが妥当な線で、裁判で出す線は妥当な線じゃないということになる。三権分立の今日、裁判で出すやつが一番公正妥当なものであり、人権を尊重しておるものと私は思うのです。いま裁判されておるのと同じ問題がその前に論議されて、そこであなたは妥当な線が出てくるだろうとおっしゃるならば、出てきたやつが妥当であって、そのほかに裁判で出てきたやつは不当になりますか、いかがですか。
#244
○国務大臣(斎藤昇君) それは裁判で出てきたら、裁判が妥当なものになりまするし、それから調停でおさまったものは、その調停も妥当だと、それぞれみな妥当性を持っているだろうと思います。
#245
○阿具根登君 どうも、そういう答弁では、ちょっと引っ込みがつかぬけれども、委員長との約束もありますから、もう時間がまいりましたから、調停が出したのも妥当だし、裁判が出したのも妥当だとおっしゃる気持ちは、裁判で出る金額と調停で出る金額が同じようなものだとお考えになっておると思うのですけれども、私は、そういうものじゃないと思うのです。それならば、格差があった場合、どうするかというわけです。その人たちは泣く泣く片方で調停、片方は裁判やっている、裁判で多少金額が上がってきた、多少どころじゃない、多いかもしれない、あるいは少いかもしれないですね。そうした場合に、不平等になるじゃないかというわけです。そのときに、一番正しいのは、裁判なのかですね、調停なのか、どっちなのかと言っているわけです。私は、裁判が一番妥当な線だと、こう思うと、それならば、それの出したやつがきまるのであって、それ前に出たやつは、私は妥当な線じゃなかろう、私はこう思うのです。
#246
○国務大臣(斎藤昇君) だから、私も裁判でやられるのが一番いいのじゃないですかと言うのですけれども、裁判は長びくから待てないと、できるだけ調停で早くやってもらいたい、公害紛争も待てない、早くやってもらいたい、こういうわけでありますから、結果がどう出るかわかりませんけれども、早くぜひと言って、泣きつかれて、事情を聞いてみると、なるほどと思いますから、御要望にこたえるようにするのが行政の道ではなかろうかと、かように考えております。
#247
○阿具根登君 私は、その説は、先ほど申し上げましたように、全員がその説ならばいいのです。しかし、その意見が二つにも三つにも分かれてきている。そうして、組織がそのために割れてしまったのです。裁判を否定することはできないのです。あなたは、悪かったら裁判にいくからとなったら、だれが調停するかと、こうおっしゃるけれども、そういうのは書いても書いてなくても同じことなんです。裁判を否定することはできない。しかし、一般に与える考え方というのは、裁判に、しんぼうして、持っていけないのだ、これはこうなるわけです。だから、私は非常に心配をしておるわけなんです。
 委員一長との約束の時間がまいりましたから、あとは委員長にお願いしておきますが、私は、ただいま申し上げましたように、裁判でいま一生懸命裁判が始まっていっているのに、いま調停の線が出てくるのがいいのか、悪いのかですね。妥当な線が二つだとおっしゃるけれども、妥当な線は一つしかないと思うのです。真理というのは一つしかないと思う。それをきめるのは一つしかないわけなんです。だから、たとえば調停で出た線で裁判とのバランスがくずれた場合は、裁判所なら裁判所のほうに持っていきますよとか、あるいは、その場合にはまた話し合うぞというような気持ちがあるならまた別です。しかし、調停は妥当であるとするならば、裁判で出た額に対しては、これは適用しないということになるわけであります。だから、そういう考え方もありますので、質問は、きょうはひとつ中断さしておいてもらいたい。また、この問題は質問したい。
 そして、あとでまた御相談は申し上げますけれども、そういう大臣方が、これはもう妥当な線を出されると言う、りっぱな調停委員の方々が入っておられるのだから、その方々を一度はここに呼んでいただいて、来ていただいて、私たちの疑問に、ひとつお答えしていただきたい。いま裁判の途中であるから、非常に微妙な段階にある。しかも、それが大臣が言われる、妥当な線だから、あとのはできないとおっしゃるのなら、一度はここに呼んでもらいたい。そうしてどこが妥当な線なのか、裁判と違った場合はどうなのか、それもお聞きしたいと思っているし、どういうお考えなのか、お聞きしたいと思いますので、一応理事会におはかりくださって、参考人としてお呼びいただくようにお願いいたしまして、私の質問はきょうはこれで終わります、ちょうど八時十分になりましたから。
#248
○委員長(吉田忠三郎君) せっかくの阿具根委員の質問でございます。委員長に対する御要望でありますから、理事の協議会におはかりをいたしまして、事後の問題については善処するように努力したいと思います。
 他に発言もなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます
 本日はこれにて散会をいたします。
   午後八時十四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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