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#1
第061回国会 大蔵委員会 第16号
昭和四十四年五月十五日(木曜日)
   午前十時五十一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十二日
    辞任         補欠選任
     上田  稔君     今  春聴君
     山本敬三郎君     津島 文治君
     後藤 義隆君     青木 一男君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         丸茂 重貞君
    理 事
                青田源太郎君
                岩動 道行君
                戸田 菊雄君
                多田 省吾君
    委 員
                青木 一男君
                伊藤 五郎君
                大竹平八郎君
                鬼丸 勝之君
                小林  章君
                津島 文治君
                中山 太郎君
                西田 信一君
                佐野 芳雄君
                野上  元君
                松井  誠君
                横川 正市君
                渡辺  武君
   国務大臣
       大 蔵 大 臣  福田 赳夫君
   政府委員
       大蔵政務次官   上村千一郎君
       大蔵政務次官   沢田 一精君
       大蔵省主計局次
       長        相沢 英之君
       大蔵省主計局次
       長        海堀 洋平君
       通省産業省鉱山
       石炭局石炭部長  長橋  尚君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        坂入長太郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改
 正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る五月十二日、上田稔君、山本敬三郎君及び後藤義隆君が委員を辞任され、その補欠として今春聴君、津島文治君及び青木一男君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(丸茂重貞君) 石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案、及び交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。福田大蔵大臣。
#4
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま議題となりました石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案、及び交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及び概要を御説明申し上げます。
 初めに、石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 政府は、従来、石炭鉱業の合理化及び安定をはかるための対策を実施してきたところでありますが、最近の石炭鉱業の状況にかんがみ、さらに石炭鉱業の整備の円滑化及び再建整備の促進をはかる等のための対策を講ずる必要が生じましたので、さきに石炭鉱業審議会にはかり、その答申を受けて本年一月に今後の石炭対策について閣議決定を行ない、これを強力に推進しようとしております。これに関し必要な措置を講ずるため、政府は、別途石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正する法律案等の関係法案を今国会に提出いたしておりますが、本法案は、これらの措置を講ずることに伴いまして、石炭対策特別会計法について次のような改正を行なおうとするものであります。
 第一に、今回の石炭対策を実施するため、本特別会計の存続期限を三カ年間延長して昭和四十九年三月三十一日までとするものであります。
 第二に、政府が石炭対策を実施する昭和四十四年度から昭和四十八年度までの間における本特別会計の収支は、全体としてほぼ見合うことになると予想されますが、石炭対策に要する費用は五カ年度間を通じ毎年度おおむね平均的であるのに対し、その財源となる原重油関税の収入は逐年増加していくものと予想されており、初期において財源不足が生ずる見込みでありますので、借り入れ金の規定を設けようとするものであります。
 第三に、昭和四十四年度からの新規施策として、石炭鉱業を営む会社が負担している金融債務及び従業員等関係債務の償還に充てるための再建交付金を交付することといたしておりますので、これを本特別会計の歳出の範囲に加えるほか、所要の規定の整備をはかろうとするものであります。
 以上が、この法律案の提案の理由及び概要であります。
 なお、この法案につきましては、衆議院におきまして、政府原案の附則で「この法律は、昭和四十四年四月一日から施行する。」とありましたのを、「この法律は、公布の日から施行し、改正後の石炭対策特別会計法の規定は、昭和四十四年度の予算から適用する。」と修正されましたことを申し添えます。
    ―――――――――――――
 次に、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及び概要を御説明申し上げます。
 昭和四十四年度におきましては、地方交付税及び地方税が大幅に増加すると見込まれますので、政府は、国及び地方を通ずる財政運営の円滑化に資するとともに、年度間の財源調整をはかることをも考慮し、昭和四十四年度における地方交付税の総額についての特例措置を講ずることとし、別途、今国会に地方交付税法の一部を改正する法律案を提案いたしておりますが、この地方交付税にかかわる特例措置に対応して、交付税及び譲与税配付金特別会計法について所要の改正を行なおうとするものであります。
 改正の内容は、本特別会計法の規定により、地方交付税に相当する額として一般会計からこの会計に繰り入れる金額を、昭和四十四年度においては、所定の額から六百九十億円を控除した額とし、他方、この控除した額に相当する金額は、昭和四十五年度において繰り入れる金額に加算することといたしますが、地方財政の状況等によっては、別に法律で定めるところにより、その一部を同年度に加算しないで、昭和四十六年度または昭和四十七年度に繰り延べて加算することができることとするものであります。
 以上が、二法律案の提案の理由及びその概要であります。
 何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成くださ
 いますようお願い申し上げます。
#5
○委員長(丸茂重貞君) 次に、補足説明を聴取いたします。相沢主計局次長。
#6
○政府委員(相沢英之君) まず、石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を補足して御説明申し上げます。
 まず、改正案の第一点、特別会計の存続期限の延長について申し上げますと、現行の石炭対策特別会計は、昭和四十一年八月に石炭鉱業審議会の答申を受けて閣議決定いたしました政府の石炭対策に関する経理を明確にするため、昭和四十二年度に設けられ、その対策が終わる昭和四十六年三月三十一日までの間存続することが予定されておりましたが、その後の石炭鉱業の状況にかんがみ、石炭鉱業の整備の円滑化及び再建整備の促進をはかる等のため新たな対策を講ずる必要が生じ、昨年十二月の石炭鉱業審議会の答申の趣旨を尊重して本年一月に閣議決定した政府の石炭対策の推進に関する施策を実施するため、この特別会計の存続期限を昭和四十八年度まで、すなわち、昭和四十九年三月三十一日までの三年間延長しようとするものであります。
 次に、借り入れ金の規定を新設することについて申し上げますと、現行制度では、特別会計法の附則第六項の規定により、この特別会計の歳入の不足に対しては一般会計からの繰り入れ金でまかなうことが予定されておりましたが、新たに行なわれる石炭対策の実施期間中における石炭対策費とその財源となる原重油関税収入とは全体としておおむね見合うものと見込まれているものの、初期においては財源が不足し、後期においては財源に余剰が生ずるものと見通されますので、財源の年度間調整という見地から従来の繰り入れ金の制度にかえて借入金の制度を設けることといたしております。なお、この規定に基づく借り入れ金は昭和四十四年度及び昭和四十五年度の二カ年間に限っており、改正後の特別会計存続期限の昭和四十八年度までに返済するようその償還期限を借り入れをしたときから三年内にいたしております。
 第三に、この特別会計の歳出の範囲に石炭鉱業再建交付金を加えることについて御説明申し上げます。昭和四十四年度からの石炭対策に関する新規の施策に必要な経費のうち石炭鉱業再建交付金は、いわゆる第二次肩がわりとして石炭鉱業を営む会社が負担している金融債務及び従業員等関係債務の償還に充てるためのものでありますが、改正後の石炭鉱業再建整備臨時措置法第四条の二の規定に基づく交付金となりますので、同法第四条の規定により現に交付しております石炭鉱業元利補給金と同様にこの特別会計の歳出として取り扱うため所要の改正を行なおうとするものであります。
    ―――――――――――――
 続いて、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を補足して御説明申し上げます。
 昭和四十四年度におきましては、国の財政については、当然増経費の増加が著しく、かつ、公債依存度がなお高く、財政硬直化の状況にあるのに比べますと、地方財政は、地方交付税及び地方税収入の増加が大幅に見込まれ、その財政構造は著しく改善される状況にありますので、自治省とも十分協議の上、国、地方を通ずる財政運営の円滑化をはかるとともに、地方交付税の年度間の財源調整をも考慮し、昭和四十三年度における国税三税の自然増収に伴う地方交付税の増加見込みを勘案しつつ、昭和四十四年度の地方交付税の総額から六百九十億円の減額繰り延べを行なうこととし、これに伴い一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れる金額を六百九十億円減額することといたしたものであります。
 以上の措置を前提といたしまして、昭和四十四年度の予算におきましては、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計への繰り入れ額として、同年度における国税三税の収入見込み額の三二%相当額一兆三千八百四十二億円と昭和四十二年度の精算分三十一億円と昭和四十三年度の特例措置に基づく加算額百五十億円との合計額一兆四千二十三億円から六百九十億円を差し引いた一兆三千三百三十三億円を計上いたしております。
 なお、との六百九十億円は、提案理由の説明においても申し述べましたごとく、昭和四十五年度における一般会計からの繰り入れ額に加算することにしていますが、地方財政の状況等によりその一部を昭和四十六年度及び昭和四十七年度に繰り延べて加算することができることとしております。この場合においては、その繰り延べるべき金額及びこれを加算する年度につきましては、別に法律で定めることとしているものであります。
 以上、提案の理由を補足して御説明申し上げました。
 何とぞ、よろしくお願いいたします。
#7
○委員長(丸茂重貞君) 午後一時三十分再開することといたしまして、休憩いたします。
   午前十一時二分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時十一分開会
#8
○委員長(丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
 石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
#9
○野上元君 この特別会計法の期限は四十六年三月三十一日に切れるわけですね。それを四十八年三月三十一日まで延長するという、その理由は何ですか。
#10
○政府委員(海堀洋平君) 四十二年度を初年度といたしまして石炭のいわゆる抜本対策というものの発足に際しまして、四十二年度から五カ年間原重油関税のある部分を特定財源といたしまして特別会計によって抜本対策を実施することとして四十三年度に及んだわけでございますが、四十三年度に入りますと、いろいろな理由はございますのですが、一つは、抜本対策を策定するにあたってとりました前提が非常にくずれてきたということが一つと、もう一つは、労務の状況から予定した出炭が確保できないというふうなこと、その他各般の事情がありまして、四十二年度に発足しました対策のみでは石炭の再建というものが遂行し得ないであろうという見込みが明らかになりましたので、通産大臣はあらためて石炭鉱業審議会に対しまして今後の石炭対策のあり方を諮問したわけでございます。非常に長期の審議の結果、四十三年の十二月に至りまして石炭鉱業審議会から新しい石炭対策についての答申が行なわれまして、政府といたしましても、この答申を受けまして、ほぼその線に沿いまして、一月の初めに新石炭対策の閣議決定を行なったわけでございます。この答申は、一応四十四年度から四十八年度までの措置を主体にした答申になっておりまして、その間におきましてほぼ石炭企業が適正な規模で安定することを目ざしておりますし、また、その間における対策費というものがほぼ初年度程度の財源を要するということが明らかになりましたので、この特別会計の期間をその答申に合わせまして、四十八年度まで延長することにしたわけでございます。
#11
○野上元君 抜本的には、四十八年度末には大体政府の考えておるような石炭鉱業の情勢になる、こういう見通しがあるので四十八年度まで引き延ばした、こういうことは言えますか。
#12
○政府委員(海堀洋平君) 四十八年度以降におきましても対策費がゼロになるということではございませんが、四十八年度までにほぼ各企業がある程度の助成を行なえば安定的に推移していくであろうという見込みで、ともかく四十八年度までに石炭企業がその後安定的に推移し得るような措置をとってしまおうということでございます。たとえば、この新対策の一環としております再建交付金につきましても、十五年間にわたって交付いたしますので、四十八年度以降にももちろん歳出は出るわけでございますが、しかし、ともかく四十四年度より四十八年度までに集中的に施策を講じまして、その間に石炭企業の適正な規模における安定をはかろうという趣旨でございます。したがいまして、四十八年度以降は石炭に対する助成がなくなるという意味ではございませんで、四十八年度までに所要の措置をとることによりまして、適正な規模によります石炭産業の安定というものをはかりたいという趣旨でございます。
#13
○野上元君 そうしますと、四十八年度以降にな
 ると、特別会計法をしいてまで助成をする必要がない。したがって、もう少し少額のものを臨時的につぎ込んでいけば何とかなると、こういう見通しですか。
#14
○政府委員(海堀洋平君) もちろん、四十八年度以降におきましても、そのときどきに必要な助成というものは、継続のものもあれば、あるいはそれを継続する必要のないものもあろうかと思いますが、四十八年度の適正な規模と申しておりますのは、通産大臣は三千五百万トンないし三千六百万トン程度というふうに考えております。そうしますと、この五年間に一番問題になりますのは、現在の四千六百万トン程度からそこまでに石炭産業が縮小されると、それに伴う対策がこの間に重要な施策の一つとなるわけでございますが、四十八年度になりますと、その三千五、六百万トンという規模で非常に安定的に、その後縮小しないとは申しませんが、この五カ年間のような急激な急速な縮小というものはないであろう。したがいまして、その後におきましては、あるいは再建交付金をずっと続けて交付していく、あるいは安定補給金を適正な額で続けていくことによって石炭企業の安定が得られるであろうというふうに考えております。したがいまして、とりあえず、この五年間に集中的に石炭企業安定のための施策を講ずる必要がありますので、特に特別会計の期間を四十八年度までに延長したわけでございます。その後におきましては、たぶん、これは予想になるのでございますが、一般会計から所要の助成を行なうことによって足りるのではないかと考えております。
#15
○野上元君 この特別会計の収入財源は、ここに書いてありますように、原重油の関税収入、そういうことになっていますが、四十八年度以降もし補助する場合には、やはりこの財源と同じ財源を使うのですか、あるいは、その点はもう全然これとは無関係になるわけですか。
#16
○政府委員(海堀洋平君) それはまだここで確定的にお答えすることはできないのでございますけれども、本来、特定財源によりまして特別会計をもって措置をするということは決して財政本来の姿から見ると望ましい形ではないのでございまして、できれば必要な施策は施策として考えて行なっていかなければならぬと存じますが、財源の問題につきましては、一般的にどういうふうな租税負担が適正であるかというところから考えていくのが財政としては常道でございますので、できれば特定財源という形は避けていきたい。ただ、その場合に、現在の原重油関税の石炭に充てている分、すなわち、特別会計に入れている分をそのままなくすることができるかどうかという問題は別の問題でございますが、ある財源をある目的に特定するということはできるだけ避けていくのが財政運営の上から適切ではないかと考えております。
#17
○野上元君 これは、大蔵省に聞いたほうがいいのか通産省に聞いたほうがいいのかわかりませんが、一応最初は四十六年度末において石炭鉱業が安定的状態に置かれるという見通しのもとにこの会計法ができ、そして助成が行なわれてきた。しかし、現実には、この提案理由の説明にもあるとおり、石炭鉱業の状況にかんがみ延ばすことにした、こういうことになっているわけですね。そうすると、目的は達せられなかったということですね。そういうことですね。どういうふうにそのあなた方の考えておった状態と現実の姿とは食い違いができているのですか。
#18
○政府委員(長橋尚君) お答え申し上げます。
 前回のいわゆる抜本策によりまして、四十二年度から石炭対策特別会計が設けられ、四十五年度までの間に石炭鉱業の自立を達成するという計画であったわけでございますが、その後、まず第一には、石炭鉱業の内部におきましても、当時、四十五年度までこのようにスクラップ・アンド・ビルドが行なわれて、非能率炭鉱の大幅な整理と同時に生産が能率鉱に集中され、その結果大体四、五千万トン程度の出炭が引き続き四十五年度まで維持されるであろう。そうして、そのもとで、能率が向上し、賃金の上昇率を能率が上回るというふうな形で安定を期待いたしたわけでございます。ところが、その後の状況といたしまして、まず坑内におきます自然条件の悪化が全体として予想以上に急速に出てまいりました。また、同時に、炭鉱外の状況といたしまして、エネルギー革命の進行という辺が急激に展開いたし、需要の伸びがあまり期待できない。のみならず、労働力事情というのが予想以上に悪化いたしまして、労働者の確保の面でなかなか思うようにまかせないというふうな、いろいろな食い違いが出てまいったわけでございます。そのような結果といたしまして、能率の上昇が当初計画において予定いたしましたよりも相当下回った。同時に、賃金につきましては、前回の対策におきまして年率七%程度の上昇率を期待したわけでございますが、それが四十二年度におきましては七%台にとどまったわけでございますが、四十三年度においてやはり、他産業とのかね合いから一〇・四%というふうなベースアップの実績を余儀なくされてまいりまして、そのような結果といたしまして、炭鉱の経理事情が予想以上に悪化をするということに相なりまして、四十三年度におきます大手炭鉱につきましてのトン当たりの赤字も、当初の計画におきまして四十三年度期待しておりましたものに比べますと倍近いというふうな赤字を余儀なくされる、かような推移に相なったわけでございます。そして、このまま放置いたしますと、石炭鉱業全体として成り立たなくなっていく。当時、一昨年の末から昨年ぐらいにかけまして、やや大げさな表現ではありますが、石炭鉱業の総くずれの危機というようなことがいわれたわけでありますが、全体として石炭鉱業を生かす方向に、そして非能率的なものについてはできるだけ産炭地に対する影響を緩和して円滑な閉山処理を可能ならしめながら全体として生かしていく、そのようなことでもう一度根本的に石炭対策を練り直す必要がある、かような事態に立ち至った次第でございます。昨年八カ月にわたります石炭鉱業審議会の審議を経まして、昨年十二月二十五日、新しい石炭対策についての答申を受け、それに基づきまして予算面、法律面の各般の措置が目下国会の御審議を経つつある状況でございます。
#19
○野上元君 四十二年に特別会計法が施行されて、いわゆる助成が本格的に開始されたわけですが、あなたのお話を聞いておると、四十三年度中においてもうすでに政府が予想した赤字を倍近く上回っておるというような状態が現出したわけですね。ということは、四十二年から計画してだんだんよくなるのではなくして、だんだん悪くなっていく傾向にある、こういうふうに一応私は考えたんですが、そういう状態ですか。助成は始めたけれども、実態はだんだんよくなるのではなくして、石炭総くずれの状態は依然として続いておる、こういう情勢ですか。
#20
○政府委員(長橋尚君) 今回の石炭対策におきまして、再建交付金の交付あるいは安定補給金の大幅な増額というふうなことで予算措置が決定せられたわけでございますが、こういった新しい助成策によりまして今後規模がある程度縮小を余儀なくされ、五年後には三千五、六百万トン程度、現在四十三年度においての出炭が約四千六百万トンでありますが、かように非能率炭鉱の整理というものは余儀なくされるといたしましても、全体として石炭鉱業は今後五年間にこうした助成のもとで漸次安定的な形で推移してまいれる、かような見通し、判断に立っているわけでございます。もちろん、その間、非能率炭鉱の整理というふうなことと相まちまして、石炭鉱業におきましては、管理機構の簡素化とか、管理要員の縮減、そういうふうなことをはじめといたしまして、生産面の合理化措置、労使一体となってこれを講じていく、かような前提でございますが、そういうもとで今後五年間平均的に見まして、今回の対策をもちまして安定的に存続し得るものと、かような見通しでございます。
#21
○野上元君 そうしますと、四十二年度の産炭量というのは、おおむね四千六百万トンですか。
#22
○政府委員(長橋尚君) 四十二年度におきましては、実績が約四千七百万トンでございます。それから四十三年度昨年度におきましては、実績が約四千六百万トンでございます。
#23
○野上元君 四十二年度に比べて四十三年度は百万トン産炭量は落ちていますね。だけれども、石炭鉱業界における経営状態というのはむしろ悪くなっているということが言えますね。ということになると、どうしたらよくなるかという問題ですわね。そのことはあまり長く論争もできませんが、私の聞きたいのは、四十六年度末において大体政府の考えた安定的な石炭鉱業というものが望めるだろうということで助成を開始したけれども、実際はそういう状態ではない。したがって、四十八年度末まで延ばしたということなんですが、わずか二年間延ばしただけなんですね。それで、はたして政府の思うような状態にいきますか。ますますだんだん悪くなっていくんじゃないですか。
#24
○政府委員(長橋尚君) 前回の石炭対策におきましては、四十五年まで五千万トンの出炭規模を確保してまいる、かような想定に立っていたわけでございます。ところが、先ほど申しましたように、自然条件の悪化、あるいは労働事情の予想以上の急激な変化というふうなこと等によりまして、出炭量が五千万トンを計画の初年度四十二年度において約三百万トン割り込むというふうな結果に相なったわけでございます。前回の助成策におきましては、出炭五千万トンという想定のもとで助成の厚みが策定されたわけでございますが、生産量がいろいろな予期以外の事情によりまして相当程度減っていったとまいうことの結果、トン当たりにいたしましての損益というものが非常に大きな狂いを示しまして、赤字の増大という形で炭鉱企業の経理を非常に圧迫するという結果に相なったわけでございます。
#25
○野上元君 四十二年度においては、五千万トンの予定が、四千七百万トンに割り込んだと。だから、経営はそれだけよくならにゃいかぬ、ほんとうは。とにかくトン当たりの赤字が出ているわけですからね。したがって、出炭量が少ないほど赤字は少ないわけですね。にもかかわらず、だんだん少なくなっていっているけれども経営状態はよくならないということになると、一体どれぐらいの出炭量ならば石炭鉱業というのは安定的に現状を維持できるのかということになると、先ほどあなたがお話しになったように、あるいは大蔵省が発表したように、三千五百万トン、あるいは三千六百万トンぐらいまで持っていかないと安定的なものにならない、こういうことになるわけですね。そうすると、何といいますか、普通は、商品をどんどんつくっていけばつくるほど生産コストが下がるといわれていますが、この石炭の場合は逆になるわけですね。出炭量が少なければ少ないほど経営状態がよくなる、掘れば掘るほど赤字が累積していく、こういう逆の現象が出ておるわけですね。そういう場合に、はたして石炭鉱業を安定的に維持していくというふうなことが論理的に可能かどうか、経済論理として可能かどうか、その点を私は非常に疑問を持つんですが、通産省としてはどういうふうに考えておるわけですか。
#26
○政府委員(長橋尚君) 石炭のコストにおきます固定費用の割合というのは、労働集約的な産業でございますだけに、非常に高いわけでございます。そこで、まず、前回の対策におきましては、一定の人間のもとで能率があがり、出炭が全体として五千万トン維持される、したがって、トン当たりの赤字はこの程度にとどまるであろう、そして石炭企業を四十五年度までに安定させるためにはこの程度の助成費を投ずれば足りるはずである、かような考え方に立ったわけでございます。ところが、予期以上に出炭が減少いたしまして、そういう固定費の高さというようなものが赤字の増大につながったわけでございますが、今回の石炭対策におきましては、そういった計画面における背伸びと申しますか、そういったことを極力排しまして、ほんとうに実行可能な、もとより労使一体となっての企業の自己努力という辺は当然の前提ではございますけれども、そういったものをある程度前提といたしましても、とにかく最近の実勢から見ましてかたい計画を組みまして、そうしてそのもとで必要な国としての助成費用というふうなものを算出いたしたわけでございます。そして、生産量が四十八年度までに一千万トン余り減るわけでございますが、閉山量にいたしますと、これは一千四百万トン程度のものになろうかと思いますが、そういうことによりまして、いわば限界炭鉱と申しますか、国の思い切った助成にもかかわらずそのもとでどうしても成り行かない、こういうふうな石炭企業がその間に漸次閉山をしていく。その場合、産炭地への配慮というのは十分にいたしておるわけでございますが、そういうもとで閉山をしていくということによりまして、いわば玉石混淆の状態が、漸次粒のそろった能率的な企業の集まり、こういうふうなことになってまいりまして、それで今後、今回の助成制度のもとで、四十八年度までの間には安定的な状態に石炭鉱業を持っていけるものと、かように判断いたしておる次第でございます。
#27
○野上元君 判断はいいんですがね。四十年度末においても判断したわけです。ところが、判断したとおりに行かないで、逆のほうに行っておるんですね。したがって、私は、わずかに二年延長したといって、いまや危機に瀕している石炭鉱業が安定的な姿に立ち直ることができるかどうかということになると、非常に問題があるような気がするんですね。したがって、私は、石炭鉱業を助成することについて反対をするわけじゃないのです。ただ、やはり国の資金を使うんですから、効率的に助成しなきゃならぬと思うんですね。
 ただ、私は、現状を維持するために助成金を出すという行き方と、そうではなくして、いわゆる立ち直りの資金として、ほんとうの再建といいますか、再建としての助成という二つの方向があると思うんですが、これはまあ法案を読んでみると、いわゆる縮小再建、こういうふうになっていますね。いずれにしても、再建資金であるというふうにいわれておるんですが、再建にならないで、だんだん悪くなっていく、そうして結局、現状維持のためにどんどん金をつぎ込んでいく。結局何にもならなかったというようなことになる可能性があるということは、石炭鉱業というものについての基本的なものをそろそろ考えなければならぬのではないかというふうな気がするんです。というのは、現在の競争場裏において石炭鉱業というのがはたして経済的に成り立っていく企業であるのかどうかということは、私は政府としてはおそらくもうわかっておられると思います。しかし、依然としてこういう姑息的なやり方をやっていることは、私は政府みずからが苦境におちいるのではないかというような気がするわけです。
 したがって、その点についてゆっくりと質問したいところですが、きょうは大臣もおられませんし、それはあまりできませんけれども、ただ、私が言いたいのは、とにかく五年間に四千億ですか、あるいは五千億の助成をつぎ込むわけですね。それを毎年平均的につぎ込んでいくという考え方ですね、これは私には非常に納得できぬのですね、経済行為として。もしも四千億をつぎ込んで石炭鉱業が安定的な状態に立ち戻れるという見通しがあるならば、初年度において四千億ぶち込むべきだと思うんです。それを、毎年八百億なら八百億に分けてやっていくという行き方は、私はまずいと思うんです。しかも、財源として五年間とにかく重油関税はあるわけでしょう。収入として見積もりはあるわけですね。したがって、四千億いま借り入れてどっとそれを使っても、石炭鉱業界が立ち直ることができるならば、それをやるべきであって、毎年小刻みにやっていって、結局どろの中に金を捨てるようなことをやるというのは、私は政府としてはまずいような気がするんですね。したがって、私は、平均的な助成のしかたということは、石炭鉱業に対して何とか現状のびほうをしていこうということじゃないかというような気がしてならぬのですがね。ほんとうに再建をされるという必要があるならば、四千億必要なら四千億つぎ込んでいったらいいのじゃないか。収入は明らかに五年後は四千億という見通しなんですから、この際、百億借りるのも四千億借りるのも思い切って借りて、そこにつぎ込んで、石炭鉱業を立ち直らせるという積極的な方法を政府は考えたことはないのですか。
#28
○政府委員(海堀洋平君) 助成の方法でございますが、実は、支出ベースでは、大体横ばいということで、五カ年間九百億円前後の金ということになりますが、助成の態様を御説明いたしますと、第一回の対策のときにとりました元利補給金というのは、元本ベースで千億円、石炭会社が負っております債務千億円を政府がかわって払いますということです。したがいまして、その部門においては千億円がその時点につぎ込まれたと考えてもいいわけですが、それを直ちに千億円をすぐ払うのじゃなくて、金融機関の協力を得まして、ある程度の期間で払っていく。したがって、その場合には、その千億円という額はすでに将来にわたって石炭企業はその負担から免れているわけでございます。それから今度とります再建交付金というのも、約千億円の元本につきましてやはり同様の措置をとるわけでございます。したがいまして、これも政府からの支出は十五年にわたるわけでございますが、企業としましては千億円の借金を肩を抜いてもらうという形になるわけでございます。
 それから次に、助成の大きなものとしまして、安定補給金といいますか、どうしても石炭の売れる価格とそれからコストとの間に差があるものですから、その差の一部を、原料炭と一般炭とは多少の差がありますが、これを補給してやろう。これはやはり生きている企業では補給していかなければならないわけでございますので、その出炭のつどそれを計上していく以外になかろう。
 それからさらに次に大きいのは、石炭企業を続けていくためには設備投資をしなければいけない。これを石炭合理化事業団から無利子の貸し付け金にしていこう。これも、設備投資――大体現在の出炭の非能率なところはもちろん設備投資をするわけではございませんが、能率的な坑道におきましては設備投資をしていく額というのはほぼ百億円程度でございますので、これも、五年間の分の五百億円をすぐ投資しろといいましても、坑道はその投資した分が眠っているというような形になるものですから、やはり年々投資していかざるを得ない。そこで、その負担を軽減するためには、これは無利子で貸し付けようと、こういう考え方に立っておるわけでございます。
 大体、直接的な石炭鉱業そのものへの助成というもの、それから鉱山保安対策に対する助成、それからこれも石炭の需要確保のために、電力会社がある程度の量をこえて石炭を引き取った場合に、その引き取ったものに対してある助成を出す、それから鉄鋼会社が原料炭をある量を引き取った場合には、それに対して助成を出す、これが助成の大宗でございまして、したがいまして、先生がおっしゃいましたような趣旨は、とれるところはとりまして、ただ、財政負担の均衡からそれを各金融機関なんかの了解のもとに長期にわたって分割しているのでございまして、石炭対策として当初になるべくとれるものはとれという趣旨は、十分に取り入れて措置はとっているはずでございます。それ以外の措置はちょっとサイドの措置になりまして、非能率炭鉱をしめる場合には、そのしめるために必要な閉山交付金というふうなものをそれぞれ閉山があればその必要量を計上していく、あるいは、鉱害復旧については、鉱害復旧の必要に応じまして鉱害復旧費を計上していく、産炭地振興につきましては、その必要な額を計上していくということでございまして、非常に平準化されているように見えますが、第一次――いわゆる四十二年度に始まりました抜本対策における元利補給金、今回とろうとしております安定補給金というのは、いずれも、当初におきまして、石炭企業の債務のまあ、俗なことばで言えば肩がわりを一挙に行なってしまうということでございまして、ただ、その支出が、金融機関の協力を得ましてある程度長期にわたっているということでございまして、石炭企業にとりましては、その対策の効果は、前の千億と今回とろうとしている千億というものは、直ちに効果としてあらわれるということでございます。
#29
○野上元君 一つの理屈としてはわかるんですね。しかし、現状として、何といいますか、助成をしたにもかかわらず、必ずしも石炭鉱業がよくならないというのは、その実情が私にはわからないんですね。だから、どうして助成をしながら石炭業界は政府の思うような安定の軌道に乗ってこないのか、むしろ逆のほうへ行くのかということを考えると、どうもそのこまぎれの助成で現状をびぼうしていくというふうにとられてもしかたがないような気がするんですね。だから、それだけ金が見通しがあるならば、思い切った再建策というものを講じても、決して特別会計法違反にもならないし、この負担において借り入れして、そうして国会の承認を得てやればいいんですから、一ぺんに初年度において全部つぎ込んでいくという方法はあると思うのですが、そういうことをやったほうがむしろ起死回生の妙手になるのじゃないかということにわれわれ素人考えではなるのですが、いま主計局次長が言われるようなことも理屈としてはわからぬことはないんです。しかし、現実にだんだんよくなるならば私もそれで承服するんですが、よくならないから、もう少しやり方を考えたらどうだ、こういう気がするわけです。
 その点はそれくらいにしておきますが、問題は、石炭は最初五千五百万トンくらいが大体目標だったですね。それが今度五千万トンになり、だんだん下がってきて、四十八年度末においては三千五百万トンという程度に落ちていくだろうと、そうすれば大体安定の軌道に乗るだろうと、こういうあなたの説明なんですが、そうしますと、三千五百万トンというのが大体ぎりぎりの線ですか。要するに、私の聞きたいのは、出炭量を下げれば下げるほどよろしいと、しかし全部切ってしまうわけにいかぬから、三千五百万トンだけは何とか石炭鉱業のために確保していく必要があるんだと、こういう考え方なのか、それとも、国家の熱資源としてこれだけのものは必要なんだと、需要があるんだと、どうしても欠くことができないんだという考え方なのか。したがって、言い方をかえれば、国としては三千五百万トンの石炭は確保するんだと、熱資源として、こういう方針なのか。そうじゃなくて、業界のためにやむを得ぬ、この辺が安定する線だろうと、こういう考えなのか。私の言うことがわかりますか。そういうことを通産省としてはどういうようにお考えになっているか聞きたいんです。
#30
○政府委員(長橋尚君) 石炭の需要につきましては、まず鉄鋼用の原料炭が一つございますが、これは漸次自給率が下がってまいっておりまして、現在は三割を割る、こういうふうな状態でございますけれども、できるだけこれを国内資源として確保していくということは非常に望ましいことであると思うわけでございます。また、電力用炭を中心にいたしました一般炭につきましても、漸次エネルギー革命のもとで需要が減退してまいっておりますけれども、先々五年後の将来というふうな点を考えましても、非常に低く見積もれば千五百万トンというふうな数字も出ますけれども、二千万トン近いものはやはり必要であるという、かような見通し判断でございますが、ただ、問題は、価格との関係でございまして、現在でも、先ほど説明がございましたように、一定の基準量を越えます引き取り分については鉄鋼業者及び電力会社に対しまして増加引取交付金というふうなものを交付し、また、石炭企業自体に対しまして相当な助成策を行ないながらそういった需要が確保されている、こういう状況でございますので、いくら財政負担がふえようともできるだけ確保していくんだというふうなことには相ならないわけでございまして、ここで国として四十八年度にこの程度の原料炭ないし電力用炭を中心とした一般炭が確保されれば大体需給的にも支障はない、こういうふうな辺を一つのめどにいたしまして、それが先ほど来の三千六百万トン程度という数字でございますが、そういう出炭を一つの基礎に置きまして五年間にわたる助成策というものを積算いたし、今回の石炭対世の裏打ちといたしたわけでございます。
 ただ、御指摘の三千六百万トンは、今後とも引き続き絶対にこれを確保していくんだというふうな考え方には立っておらないわけでございまして、むしろ今後一定の国としてぎりぎりの助成の限界をここでお示ししたという中で、労使一体となって企業の能率を上げて、もっと増産に励んでいくというふうなことが成功いたしますれば、五年後の出炭規模があるいは三千六百万トンを上回るということも期待できるわけでございますし、あるいはまた、相当かた目に数字を見積もりましたにもかかわらず、自然条件の思わざる悪化というようなことで、最悪の場合には三千六百万トンも割ることもあり得るかもしれないというふうな、五年後の将来につきましても、かなり幅を持った考え方のもとで石炭対策を組み立てている次第でございます。
#31
○野上元君 あなたのお話では、三千六百万トンというのは、国家の立場から見ても熱資源の需要としても絶対的なものではない、これはどんどん減っていく可能性もある、こういうわけですね。ということになると、石炭鉱業界はもちろんそういうことはわかっておるわけですね。したがって、何といいますか、将来石炭というものはなくなるかもしれぬというようなことをおそらく考えるでしょう。そういう状態にある製品を業界がつくるわけはないですね。彼らは経済行為をやっておるわけですから、もうからぬ、そうして将来なくなるというものをむきになって生産するなんという、そんなばかげた経済人はいないと私は思うんですよ。したがって、率直に言えば、石炭というやつは、私企業でこれをやらしていくということは経済理論上から無理がある。したがって、これは何とかほかの方法を考えなければ、いくらお金をつぎ込んでみても結局だめになるんじゃないかという気がしますがね。
 ただ、この際聞いておきたいんですが、四十二年度は四千七百万トンを生産したんだが、それは、何といいますか、売れ残りはどれぐらいあるんですか、全部完全に山の手を離れておるんですか。
#32
○政府委員(長橋尚君) 四十二年度あるいは三年度の石炭の需給状況について見ました場合、売れ行き不振で山元に貯炭がたまるというふうな状況は出ておりません。大体、生産されるものは全部はける、かような状況になっております。これは、石炭の価格につきましては標準炭価制度のもとで昭和四十年度来据え置きになっておりまして、そうして、その半面、先ほど御説明申しましたような国の需要家ないし石炭生産業者に対する助成が行なわれておるわけでございます。そういう状況のもとで売れ残る、こういうような状況は四十二年度来出ておらない現状でございます。
#33
○野上元君 四十年度に決定した炭価で四十二年度の出炭量あるいは四十三年度の出炭量は全部消化できた、こういうように解釈してよろしいですか。あるいは、それを全部売るために、いわゆるダンピング的な売り方をしているんじゃないですか。その点の実態はどうでしょう。
#34
○政府委員(長橋尚君) 昭和三十三、四年とかあるいは三十六年当時は、非常に石炭不況の状況のもとで、それ以来特別な石炭対策というものが打たれてまいっておるわけでございます。当時におきましては、御指摘のような標準炭価制度のもとでの安売り競争というふうな状況もございましたけれども、その後、たとえば電力用炭について申しますと、電力用炭株式会社というふうなものが用いられまして、そこがまあ電力業者との間に立ちまして契約ないし配船を行なうというふうな措置も講ぜられ、最近におきましてはそういったダンピング傾向というふうなものは全くないものと見ております。
#35
○野上元君 いま、石炭と競争関係にある熱資源というものは、どういうものがあるんですか。たとえば、重油とか、その他いろいろのものがあると思いますが、どういうものがありますか。
#36
○政府委員(長橋尚君) 一番大きな競争相手と申しますのは、御指摘の重油でございます。
#37
○野上元君 それは重油だけですか。価格の競争を考える場合に、重油だけの価格を考えれば石炭は生きる道があるのですか。
#38
○政府委員(長橋尚君) 一般炭につきましては、まず電力用炭及び工場用のボイラー炭がございます。この面につきましては、まず重油でございます。それから北海道を中心といたしまして暖房用炭がなお年間三百万トン余りの需要がございますけれども、この面につきましては、石油ストーブ、軽油のストーブなり、あるいはまた、電気、ガス、こういったものが一つの競争相手になってまいるわけでございます。あと、原料用炭――鉄鋼用ないしガス用の原料用炭がございます。この面におきましては、もっぱら競争相手は海外原料炭に相なるわけでございます。
#39
○野上元君 原料炭の場合は海外との関係を考慮しながらやっていけばよろしいというわけですね。したがって、比較的需要度は高いわけですね。一般炭の場合は、重油であるとかあるいは石油であるとか、こういうものと競争しなければならぬということになると、先般、国鉄運賃の値上げ法案を審議したときに、国鉄の五カ年計画でしたか、合理化計画でしたか、あれでは、石炭をたいておる汽車、列車を重油に切りかえていく、こういうような話が出ていましたが、現在、国鉄の需要といわれる一般炭の年間の量はどれくらいですか。
#40
○政府委員(長橋尚君) 国鉄用炭も漸次減少してまいっておりまして、四十三年度におきましては、大体百二十八万トン程度、これは見通し数字で、まだ実績数字は出ておりません。今年度におきましては、九十四、五万トン程度になろうかと、かような推定でございます。
#41
○野上元君 そうすると、一般炭の大需要家というのは電力ですか。その年間の使用量を教えてください。
#42
○政府委員(長橋尚君) 御指摘の電力が一般炭の需要の大宗をなすわけでございまして、四十三年度におきましては、合計二千六百五万トンの実績見通しでございます。これが、四十四年度におきましては、二千四百二十四万トン程度になろうかという推定をいたしております。
#43
○野上元君 電力あるいは国鉄が使っておる一般炭というのは、電力会社から見て必要欠くべからざるものとして使っておるのか、あるいは、石炭対策の一つとして一つの国策の線に沿って必要以上のものを買わされておるのか、その点はどうでしょうか。
#44
○政府委員(長橋尚君) 電力用炭につきましては、いま直ちに石炭が大幅に入手できないということになりますれば、非常に困る立場にございますけれども、先ほど申しましたような昨年度ないし今年度の需要量という辺につきましては、やはり増加引取交付金とかそういうふうなものにささえられまして、重油とある程度バランスのとれた値段で引き取っているわけでございます。それから国鉄につきましては、特別の制度はございませんけれども、これも値段とのかね合いでございまして、標準炭価制度のもとで現在の引き取りが行なわれている、こういうことでございます。
#45
○野上元君 二千四百万トンないし二千六百万トンの電力会社が使用している一般炭ですね、これは重油にかわり得る部分というのはどれくらいのものがあるのですか。全部これは重油にかわり得るのですか、かえようと思えば。
#46
○政府委員(長橋尚君) いま直ちに全部重油にというふうなことではございません。現在、石炭専焼火力設備なり、重油との混焼のもとで稼働いたします混焼の火力発電設備というものが相当数あるわけでございまして、そういう設備を動かして電力供給に遺憾なからしめるためには、相当程度の石炭需要というふうなものが今後とも漸次減少はするにしましても期待できる、かような想定に立っているわけでございます。
#47
○野上元君 それは私もわかります。設備が現在、石炭をたくような設備である場合には、その設備を重油に改良してまで重油をたく必要はないという場合には、ある程度現状維持でいくことがあり得るでしょうね。しかし、石炭の価格と重油の価格がうんと差があり、ますます開いてくるということになれば、電力業界としても、電気料金のコストを下げるという意味においても、設備を重油の部門に改良して、石炭を廃止するということだって考えられるわけですね。それを従来電力業界はやってきたわけでしょう。最盛期は石炭をどれくらい使っておったのですか、電力会社は。
#48
○政府委員(長橋尚君) 恐縮でございますが、いまちょっと手元に資料がございませんので、至急取り寄せてお答え申し上げます。
#49
○野上元君 それでは、資料がなければしかたがないんですが、私の聞きたいのは、電力業界も、結局、重油を使ったほうがうんと経営上得だということになれば、これをいつまでも国として押えるわけにはいかないと思うんですね。やはり経済行為をやっておる以上、安いものを使う、しかも熱効果も十分だというような場合には、そっちに切りかえられてもしかたがないと思うんですが、おそらく従来から見れば順次重油の設備のほうに切りかえつつあるのじゃないかというふうに、私は知っているわけじゃありませんが、想像できるわけですが、その実態が知りたいわけです。したがって、もしそうであるとするならば、何年かは現在の設備がある以上は石炭をたくでしょう。しかし、将来、何年か先はこの設備を改良する可能性が出てくるということになれば、もう電力業界から見放されたら石炭業界は立っていけないわけですね。その場合にはどうしても国の力を発動して石炭鉱業を守らなければならない、こういう関係になるわけですね。しかし、それは非常に経済的にはおかしい話なんですね。したがって、そのどちらに矛盾があるかといえば、電力業界に矛盾があるのではなくして、むしろ石炭鉱業のほうに矛盾が出てきておるわけですね。それを私企業でやらしておる以上は、そういう矛盾を繰り返していかなければならない。そして、助成金を毎年毎年つぎ込んでいかなければならない。そして、衰微の一途をたどっていく。そして、だんだん消滅していく。ただ、いわゆる衝撃を一挙に与えないで、徐々に死んでいくというこういう方法をとっておるような気がしてしかたがないんですね。したがって、そうじゃなくて、国としてやはりこれだけのものは必要であるというならば、必要なように基本的な考え方のもとに立って、石炭鉱業のあり方について今後抜本策を立てなければいけないのじゃないかという気がするのですが、通産省としては、そこまで考えたことはないのですか、とにかく現状の状態でやっていこうということですか。
#50
○政府委員(長橋尚君) まず、御指摘の電力用炭の需要につきましては、原油の火力発電設備、その中には、特に四十九年度以降、石炭需要対策というような意味で、電源開発株式会社が石炭対策の財源としての関税収入からも支援を仰ぎながらつくってまいりました三つの専焼発電所がございます。そういったものも含めまして、今後なお相当の需要が期待できる。先ほど御説明申し上げましたように、四十八年度におきましても千九百万トン程度というふうなものが期待できるのではないだろうか。三千六百万トンの内訳といたしましてそういう想定を持ちまして、そういう上で所要の石炭助成対策というものを今回講じたわけでございますが、今後、石炭鉱業全体として再建軌道に乗っていくというための対策といたしまして、一月の十日に閣議で決定されました石炭対策におきましても、昨年末の石炭鉱業審議会の答申を受けまして、今後石炭業界の体制を整備していくということが非常に大きな課題である。そのために、個々の企業内の合理化をはかっていくということはもとよりでございますが、同時に企業相互間でさらに合理化メリットの追求の余地がある場合には、それを企業が協力し合ってやっていく、こういうふうな方向が打ち出されておるわけでございまして、たとえて申しますれば、鉱区の調整ということばを使っておりますが、鉱区が細分されております場合に、そしてまた企業別に所属が異なっております場合に、それを隣合ったものが一緒になって開発をしていくという場合には非常に合理化メリットが出てくる。あるいは、流通面その他において、共同して地区別の販売をある地区について共同してやっていく、店舗を共同化する。いろいろ流通面においても共同行為の余地もあるわけでございます。そういった鉱区の統合とか、あるいは流通の合理化という面につきまして、地域の実情に応じまして具体的なケースごとに、メリットがあります場合には統合とか共同行為というふうなものを重視していくべきである。そして、そのために、石炭鉱業審議会で所要の部会を設けて具体策について検討し、その実施の上で特に必要あれば政府の勧告等の措置を講じていこう、かような一項目が入っているわけでございます。そういう形で、石炭鉱業の今後の再建のために、企業内の合理化努力と並行して企業相互間のケース・バイ・ケースでメリットのあるケースについてそれを推奨していく、かようなことを考えているわけでございます。
#51
○野上元君 重油と石炭の価格の競争ですが、重油というのはほとんど輸入されているわけですね。日本で実際に採掘しているのは、消費量の何%あるわけですか。
#52
○政府委員(長橋尚君) ちょっと古い数字でございますが、四十二年度の実績について申し上げますと、国産原油が八十七万九千キロリッターでございます。それに対しまして、輸入が一億三千八百五十四万二千キロリッターに相なっております。したがいまして、自給度といたしましてはきわめて低い数字になります。
#53
○野上元君 この重油の価格と国内の石炭の価格は、競争できるというような状態にありますか。たとえば、重油が全部国産であるならば、政府の力によって一つのバランスをとるということはできると思うんですが、ほとんど輸入にまっているわけですね。したがって、価格を外国がきめてくるわけですから、関税を設けて輸入を制限するというよりほかに方法がないわけですね、石炭を保護する場合に。そういうことは、ガットの精神から見て、もちろんできるわけではない。したがって、重油は、どんどん外国の技術が進歩すれば、ますますコストは下がってくる。ということになれば、いよいよ石炭は競争に負けていくわけですね。そうした場合に、電力会社としても、あるいは国鉄としても、あるいはその他の大需要家にしても、どうしても安いものに手を出していく、変えていくということは当然考えられるので、私は石炭鉱業の将来というものは非常にむずかしい状態になっているという気がするんです。その点は、通産省としてはどういうふうにお考えですか、競争できますか、価格において。
#54
○政府委員(長橋尚君) 石炭の生産につきましては、自然条件が非常に大きいわけでございます。漸次鉱区も深部の開発に移行してまいるというふうなことで、機械化その他によりまして能率は逐次上昇してまいっておりますけれども、やはり先々能率の上昇傾向というものもある程度鈍化せざるを得ないような状況でございまして、そういう意味合いにおきまして、重油との競争というのは非常にきびしい条件下にあるわけでございます。しかし、当面、あるいはまたここ先々当分の問題としましては、先ほど申し上げましたような電力設備面からいたします需要もございます。あるいはまた、特に北海道とかそういうふうな地域におきます石炭と重油の競争事情という点には、まだかなりのメリットも北海道あたりにおきましてはございます。そういう中で、できるだけ石炭鉱業を全体として生かしながら、そういった電力需要というものにもこたえて、そしてエネルギー経済の中でやはり石炭としての地位を極力維持する努力はいたすべきだと、かように考えるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、また、石炭鉱業の今後につきましては、石炭自体国の助成のもとで最大限の合理化努力をいたすのに応じまして、需要業界のほうの協力ということも期待しながら石炭の再建をはかってまいる、かような考え方に今回の石炭対策が立っているわけでございます。
#55
○野上元君 気持ちはわかりますがね。一時的なびぼう策としてはこのやり方もわからないわけじゃないんですが、将来を思うと、私は、見通しができるような気もするわけですね、しろうとでも。あなたも先ほど説明されたように、石炭鉱業というのは労働集約的な企業であって、生産性を高めるというのはなかなかむつかしいんだということを言われておるわけです。重油のほうは、一方、いわゆる資本主義的なやり方であって、近代産業ですわね。したがって、これは格差はだんだん開いていくばかりだと思うんです、このままほっておいたら。したがって、なかなか競争はできぬと思うんです、一般的に見れば。したがって、あなたが言われるように、何とかして石炭を守っていくんだということはわかるんですが、しかし、将来そんな長いこと持ちこたえられるものじゃないと思うんです。したがって、私は、その点が実は心配だから、先ほど来、気持ちはわかるけれども、こういうやり方では結局じり貧にまたなっていくだけだと。したがって、この辺で思い切った政策転換をやらなければだめなんじゃないかというような気がします。
 それで、まあいろいろと聞きたいことがたくさんあるんですけれども、たとえば、閉山の場合には、割り増しを出す、いわゆる閉山奨励ですよわ、一つの。したがって、あなた方が考えられておる絵も私はわかるんですがね。縮小再建というような表現を使われておるところを見ると、だんだん縮小して、生産性の高いところだけが残っていくというようなことをやって、最後にはこの生産性の高いところだけで石炭業界を守っていこう、こういうおそらく考え方で今後も続けていこうというわけだと思いますが、そういうことをやってみても、生産性の高いところといえども、もう石炭プロパーだけではとてもやっていけるものではない。結局、多角経営をやらざるを得ないような状態に私はなるだろうと思う。そういうことが見通せるならば、この辺でもう私企業にそんな苦労をさせないで、また、大蔵省もそんな苦労をしないで、どうしても石炭が当面何十年か要るということであれば、思い切って私企業の手を放して、あなた方で経営をしたらどうですか。そのぐらいの思い切ったことを大蔵省としては考えませんか。依然としてこういうつぎ込み方をするのですか。
#56
○政府委員(海堀洋平君) 石炭鉱業をどういうふうにして今後運営していくかという問題でございますが、いろんな御意見を、石炭鉱業審議会の場を通じ、あるいは各般の分野からいただいたわけでございますが、石炭鉱業審議会の答申では、やはり私企業のベースにおいて、しかし、他方また、鉱区調整とかそういった能率を向上させる面については、鉱区の調整あるいは企業の協調というようなことをとりつつ、やはり私企業をベースにして考えていくべきであろうという答申をいただき、政府もその方向をとっているわけでございます。石炭の生産のコストがかかるという場合に、それを私企業でやった場合と、あるいはいま先生のおっしゃいました国営でやった場合と、どちらが能率的であるかという問題について考えた場合におきまして、石炭合理化審議会は、現在の私企業体制を前提として行なったほうが能率的にもいいのではないかという判断をされたものと存じます。現実に、他の分野で国の企業としてやっているもの生産性という問題を、同じような業種で私企業でやっているものと比較して、必ずしも高いというふうには言い切れない面がございますので、政府といたしましても、石炭鉱業審議会の答申をもとにして、私企業のベースを基本にして石炭企業の再建を考えていきたい、そういうふうにしたわけでございます。
#57
○野上元君 四十八年において大体三千六百万トンというものを、四十八年以降安定的に確保するという方法はどうなんですか。たとえば、重油に対する関税をさらに引き上げるとかなんとかして石炭を保護するということをやるんですか。それとも、あなたのほうとしては、炭価を下げていくとかいう見通しはあるんですか。
#58
○政府委員(長橋尚君) 石炭鉱業審議会の答申におきましても、石炭業界としてはいつまでもこういった他産業に比して格段の破格の助成を期待すべきではない。今後五年間に四千数百億といった思い切った助成を与えられる機会に、ひとつ体制を十分に整えて、そして四十九年度以降は石炭対策費は減少するんだという前提に立ってこの際今後の事態に対処すべきであると、かようなことがうたわれているわけでございまして、四十八年度まで今後五年の間に、非能率な部分は、これは非常にやむを得ないことでございますけれども、整理しながら、能率的な部分を最大限の企業努力と相まって生かしていくということにいたしますとともに、今後の先々の需要といたしましても、単に五年と言わず、その先やはり原料炭というものは非常に大きな重要性を持つわけでございます。また、電力用炭につきましても、先ほど四十八年度三千六百万トンベースのもとで千九百万トン程度と、かように申し上げましたが、それの先々ある程度の縮小はやむを得ないとしても、続いていくわけでございます。そういった原料炭を中心とした、それに電力用炭というようなものを加えました需要にこたえるべく対処し得るものと、かように考える次第でございますが、その先におきまして、やはり依然国の助成のもとでどうしても立ち行かないというものが出ることもやむを得ないかと思いますが、そういった四十八年度三千六百万トンといったふうな事態に相なりました場合には、その先、需要業界がどのような状況になるか、あるいはまた、これらにおきます賃金水準あるいは賃金傾向あるいはまた能率のぐあいというふうなものによりましてなおまあ予測がむずかしい問題ではございますが、私どもといたしましては、そういった四十八年度以降というふうな状況下におきましては、能率の上昇と賃金の上昇とがそう大きなギャップを来たさない、そして、また、かりに閉山をいたしますものが出ましても、その閉山のための掛かりと、それからまた存続していく場合、維持のための掛かりというものは大体均衡のとれたものになり、国費の引き続いての上昇というふうなものを必要としないで石炭鉱業が存立していくものと、かような見通しに立っているわけでございます。
#59
○野上元君 最後に、大蔵省に聞きたいのですが、五年間で四千億をこえる膨大な助成をするわけです。したがって、これの使途というものは非常に監視されなければならぬと思うのですが、今日石炭鉱業だけで成り立っている企業というものはあまりないと思うんですね。たいてい多角経営をやって、いろいろな事業をやっていると思うんです。したがって、石炭再建のためにあなたのほうで助成された金が、石炭再建に使われないで、他のやっておる事業につぎ込まれる。石炭はもう先行き見通しがないから、いくらやってもだめだ、したがって、他の部門でひとつ利用しようというような気を起こさないとも限らないと思うのですが、そういう事例は過去になかったかどうか、あるいはその監視機関というものは一体どうなっているか、その点をちょっとお知らせ願いたいと思います。
#60
○政府委員(海堀洋平君) この点につきましては、衆議院の大蔵委員会におきましても井手先生から特に厳重な御注意がございまして、附帯決議の形で御注意を受けたわけでございます。過去に事例がなかったかという問題でございますが、これは井手先生のあげられました事案を詳細に調べてみたところ、むしろそれは石炭鉱業の金繰りを何とかつけるためにした措置でございまして、そのあげられた事案は石炭鉱業の再建を妨げるというふうな事案ではなかったと思うのでございますが、しかし、詳細に一件々々見ていった場合に、やはりそういうことが絶無であったということも言い切れない面があろうかと存じます。この法律におきましては、今回新たな助成措置として再建交付金の交付を行なうに際しましては、再建計画を提出さすわけでございます。それから重要財産の処分をする場合にはこれを届け出をさすわけでございます。それを主管大臣でございます通産大臣が見まして、妥当でない場合には、それについて勧告を行ないまして、さらにその勧告が聞かれなかった場合には、従来の元利補給金、いわゆる第一次肩がわりの金でございます、それから今回の再建交付金、これも千億を限度といたしておる、これの補給契約あるいは交付契約を解除するという制裁がついております。しかし、具体的には法の運用の問題でございまして、現実には相当注意して法の運用に当たらなければならないような事案が現に提起されておりまして、そういう点につきまして、通産省と協力いたしまして、これだけの大きな国費が石炭の再建に使用されることを絶対に確保していきたい。この助成によって、国に石炭の再建の責務を押しつけて、企業が他の分野に安易に転進するということは、絶対に避けていかなければならない。ともすると、そういうふうな考えにおちいりやすい企業のあることは事実でありますので、その点は厳に監督していきたいと思っております。
#61
○政府委員(上村千一郎君) いま先生の御指摘でございますが、これは衆議院の場合でも非常に御注意ございまして、私ども、先生の御指摘は非常に重要な御指摘だと思いまして、十分注意をいたしていくつもりでございます。
#62
○西田信一君 私も、野上さんの質問を聞いておりまして、非常に適切な問題を取り上げておられると思うのです。そこで、関連的にひとつお聞きしたい。しかも、少し具体的な問題についてお聞きしたいと思います。
 まあ特別会計も三年延ばして四十八年度までにする、財政措置もそういうふうに講ぜられておると思いますが、それで、これを受けて企業家がよほど真剣な心がまえでやってもらわなければならぬと思うのですが、いろいろいまお話がありましたように、五年先になれば、いろいろな国の助成も一応は現段階ではなくなるというそれを受けて、それに対する企業家の体質改善なり体制の整備なりというものがいまから講ぜられなければならぬと思うわけですね。そこで、具体的にまず通産省からお聞きしたいのですが、きのうあたり、大手の中の大手と言われる三菱鉱業が、いま私が申したような考え方に基づくのだと思いますが、現在石炭産業とその兼業とどのくらいの割合になっているか、これを切り離して、北海道、九州にそれぞれ独立した石炭産業の別会社をつくって、そうして専門にこれをやらせるというような構想が発表されておりますね。これについて、まだ発表直後であるからあるいは詳細にこれらの計画をお取り寄せになっておられないかもしれませんけれども、こういう国の石炭政策を受けて立つ企業側の、しかも具体的な三菱鉱業の今度のような措置に対して、通産省としてはこれをどういうふうに見ておられるか、どういうふうに受け取っておられるかということをお聞きしたいのですがね。
#63
○政府委員(長橋尚君) 御指摘のケースにつきましては、企業側からよりより相談を持ちかけられておりますが、まだその具体的な内容について十分に通産省としての意見を確立するとかそういうふうな事態になっておりません。まだ具体案自体はっきりした形で提示されていない現状でございます。
 ところで、企業が石炭部門とその他部門を分離するということ自体が絶対にいけないとか、そういうことは必ずしも言えないと思いますけれども、問題は、およそそういうふうな分離ということがまじめに考えられる限りにおきましては、いやしくも石炭部門に非常に不利になるということがないように十分明確な基準を立てて、資産負債の帰属先をきめていくとか、あるいはまた、そもそも再建整備法を国会で先般御成立いただいたわけでありますが、それに対しまして先ほど主計局次長がお答え申し上げましたようないろいろな手続があるわけでございます。そこで、実態判断というものが、加えられてはじめて分離の具体的な計画がまた確定をし、実施に移される、こういう筋合いでもございますし、特にそういった二点につきましては、その筋道を十分に立てて私どもとしてもそういう具体策が提示されました機会におきまして対処すべきものと、かように考えております。また、企業自体もそういうふうな点は十分にわきまえているものと、かように考えております。
#64
○西田信一君 まだ具体的な詳細にわたる計画を受け取っておらないという段階でいま最終的な判断を求めることは無理だと思いますが、しかし、私の聞き及んでいる範囲内においては、要するに、政府は、国がこれだけ手厚い措置をしてくれるのだから、あと石炭産業が五年後になっても十分企業として成り切っていくような立場においていろいろ検討しておられるように伺っておるし、また、その後、会社が発表されましてからまだ日がたちませんからわかりませんけれども、私が聞いた範囲では、それに対する反響はむしろ是とするような反響があるように聞いておるのです。聞いておるのですが、通産省としては、いまおっしゃった以上に出ないかもしれませんけれども、ああいう考え方ですね、具体的な内容を見なければわからぬということはわかるのですが、考え方については、一体どういうふうな見解をとられるだろうかということをもう一ぺんお答え願いたいですね。
#65
○政府委員(長橋尚君) 石炭鉱業審議会の昨年末の答申におきましても、石炭の助成費というものが十分にそれなりの目的に効率的に各企業において使用されるようにチェックの体制を整えるべきである。たとえば区分経理であるとか、その他そういうチェック体制を整えるべきであるというような点は指摘されておるわけでございます。また、今後の企業の体制につきましても、とにかくここで石炭企業として労使一体になってほんとうに自己努力を発揮できるような体制をそれぞれの企業ごとに考えていくべきであり、そういう意味合いの一つの考え方としましては、ほんとうに石炭企業としての自立意識を高揚するための分離というようなことも考え方として一つの例示に上がっているわけでございます。そういう意味合いにおきまして、石炭企業とその他企業との分離自体については、これはまた弾力的に考える余地もあろうかと思います。
 問題は、先ほど二点申し上げたわけでございますが、とにかく具体的にどういうふうに分離をし、ほんとうに自立意識高揚ということなら、それなりのほんとうに裏づけのあるものになっているかどうかという点のチェックが非常に肝要なことになろうかと、かように考えるわけでございます。
#66
○西田信一君 それじゃ、今度、大蔵省の立場からどう見ておられるのですか。
#67
○政府委員(海堀洋平君) まだ具体的にこういう案でということではございませんが、原則的に申しますと、政府が私企業ベースにしましてこれだけの助成を行なうのは、各個々の企業の救済というよりも、石炭鉱業が、相当な雇用量を持っているということ、それから地域に密着した――つまり、ほかの産業と違いまして、要するに地域に密着した産業である。すなわち、その地域の経済には非常に影響があるということから、これだけの厚い助成がとられているのだと思っています。そういたしますと、今回、三菱が考えているごとく、そのこと自体、いま石炭部長からお話がありましたように、石炭企業とその他部門を分離することがそういう見地から適当かどうかという点につきましては、これはあるいは適当かもしれませんし、あるいは適当でないかもしれないと思うのでございます。ただ、その場合に一番問題になりますのは、資産、負債の分離のしかただと思います。いま巷間伝えられるところによりますと、炭鉱の簿価を非常に高く評価いたしまして、そうしてそれは非常に大きな資産であるという形にしまして、それに見合って負債を持っていく。ところが、実際は、炭鉱というのは掘れば赤字が出るものでございまして、これを再評価するといいましても、実際問題としては再評価できないものでございますので、そういった資産、負債の不適正な分離をして、石炭部門を弱くして、それを国家の助成に押しつけておいて、他の部門に転進するというのは、これだけの国家的な見地から国費で助成をしていこうとしている際に、絶対にとられてはいけない措置であろう――その点につきましては、まだ具体案が出ておりませんので、いまのは仮定の問題でございますが、具体的な案が出ました際には、その点だけは、これだけの助成は何も各個々の企業の救済ではなくして、石炭産業というものの持っている国家的な意味からの助成であるという点だけは、絶対に踏みはずしていただきたくないというふうに考えております。
#68
○西田信一君 要するに、通産省も大蔵省も、具体案を見なければわからないが、石炭再建という立場に立ってこれが合理性のあるものならば、いまの分離もちっとも排除するものではない。しかし、その内容が、石炭産業に重い荷物を預けてしまってむしろ逃げ出すというようなかっこうでは困ると、こういう考えですね。わかりました。
 もう一点、こまかい問題で恐縮でございますが、私、ちょっときょう聞いたので、われわれの見落としか、気がつかなかったのかなと思っている問題が一つあるんですがね。これは通産省に質問しますが、石炭の鉄道運賃が払えないからというので後払いで延ばしてまいりましたね。それを今度毎年々々払う時期に入ってきているでしょう。ところが、なかなかこういう状態で、昔の払えなかったものが、状態がよくなっているならいいけれども、状態はちっともよくなっておらぬ、むしろ悪化しておって、それを無理して払わなければならぬという状態ですね。そうして、その後、未払いをした会社でやめた会社、閉山して会社がつぶれたというか、そういう会社も一、二にある。ところが、約束は、どっちも払う場合はみんな連帯で、連帯で責任を負って、そうしてつぶれたところも残っているところが払いますという約束になっているんだな。だからして、結局、非常に苦しいのに、つぶれた会社の分までも現在後払いの責任を負っているという状態らしい。こういうことは、通産省としては何か対策を考えておられなかったのですか、どうですか。
#69
○政府委員(長橋尚君) 御指摘の件は、一ころまで実施されておりました石炭の国鉄運賃の延納後払い措置につきましての問題、特に大手業界におきます場合にそれを国鉄に対しまして各社連帯保証をいたしたわけでございますが、そういう状況下におきまして、今回大手企業に企業ぐるみ閉山を受けるものが出てまいりまして、いよいよ大手業界全体としての連帯保証を実行しなければいけない、そしてあと企業ぐるみ閉山になる企業に対して求償権を持つ、こういうふうな問題かと存じますが、この点につきましてそういう場合に国の閉山交付金の一般債務についての対象にするかどうかという点につきましては、いろいろ検討をしているわけでございますが、もともとこれは大手業界としてお互いに協力し合い、共存共助のたてまえというふうなことが、最近、大槻会長の参議院におきます新対策実施に際しての決意表明という中にも出ておりますけれども、そういう共存共助というふうなことで、かつてそういう連帯保証が行なわれたと、かようなたてまえに立って考えるといたしますと、まあ額といたしましてもそれほど大きな額――これは見方の問題がございまして語弊があるといけませんが、でもございませんし、この際仲間で企業ぐるみ閉山になるものに対しては、ひとつ業界が協力してその辺をそれぞれで負担をしようというふうな筋合いも一つあるわけでございますし、しかし、そうは言っても、非常に苦しい状況だというふうな反論も確かにあろうかと思う点でございますが、まあこの点できるだけ業界とも十分お話し合いをして、その問題の処理にふさわしい公正な結論を出すようにいたしたい、かように考えているわけでございます。
#70
○西田信一君 わかりました。私は連帯責任を負ってつぶれた会社の分も払うというふうな苦しさもさることながら、まあそれもなおつらいですわね。それから実際に銀行から借りたやつは負債として肩がわりする対象になっておるが、国鉄に対するものはやはり一種の負債ですわね。ですから、これなんかも国でめんどうをみてやることがいいんじゃないかという気がしておるのですが、それらも含めて御検討くださるという意味ですか。
#71
○政府委員(長橋尚君) 検討をしようということでございます。
#72
○西田信一君 国鉄から借りている、つまり未払いになっているんだから、借金になっているわけですね。それも、経営状態が苦しいから払わないでいたのでしょう。そして、何年かたって払う時期になったけれども、むしろかえって苦しい状態にあるのだから、そういう運賃のこの分も、それは国鉄に棒引きしろと言うわけにいかないわけですわね、国鉄は苦しいんだから。だから、やっぱり財政措置の中で考えてやったらいいのじゃないかという気もするのですが、それも含めて検討をするという意味ですかと聞いているんです。
#73
○政府委員(長橋尚君) まだ最終的な結論を出したわけではございませんけれども、共存共助というような意味合いで、業界こぞって、やむを得ない、それぞれ残った者で負担しようというふうなことに相なればまことにけっこうだとも思うわけでございますが、十分御指摘の御事情も御指摘の点も加えまして検討いたして最終的な結論を出したいと思います。
#74
○西田信一君 はっきり聞いておきますが、ひとのつぶれた会社の分を払うということだけでなくて、残っている未払いの運賃全体について何かめんどうをみてやったほうがいいんじゃないかという意味で聞いているんだが、そういうことで検討してくださるということですねと、こう言っているんです。それでいいですね。
#75
○政府委員(長橋尚君) その国鉄の延納運賃の問題について国が特別な支援を検討してみたらどうかという御意見につきましては、実は私もきょう初めて伺いましたので、この点十分また検討いたしたいと思います。
#76
○委員長(丸茂重貞君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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