くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第061回国会 大蔵委員会 第31号
昭和四十四年七月十七日(木曜日)
   午前十時五十一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 七月十六日
    辞任         補欠選任
     鬼丸 勝之君     塩見 俊二君
 七月十七日
    辞任         補欠選任
     徳永 正利君     青柳 秀夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         丸茂 重貞君
    理 事
                青田源太郎君
                岩動 道行君
                戸田 菊雄君
                多田 省吾君
                田渕 哲也君
    委 員
                青木 一男君
                青柳 秀夫君
                伊藤 五郎君
                大竹平八郎君
                小林  章君
                塩見 俊二君
                西田 信一君
                矢野  登君
                木村禧八郎君
                佐野 芳雄君
                田中寿美子君
                松井  誠君
                松本 賢一君
                横川 正市君
                鈴木 一弘君
                渡辺  武君
   国務大臣
       大 蔵 大 臣  福田 赳夫君
   政府委員
       大蔵政務次官   沢田 一精君
       大蔵省主税局長  吉國 二郎君
       国税庁長官    亀徳 正之君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        坂入長太郎君
   説明員
       法務大臣官房参
       事官       内田 恒久君
       法務大臣官房訟
       務部第五課長   廣木 重喜君
       大蔵省主税局税
       制第三課長    早田  肇君
       国税庁直税部長  川村博太郎君
       自治省税務局府
       県税課長     森岡  敞君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国税通則法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨七月十六日、鬼丸勝之君が委員を辞任され、その補欠として塩見俊二君が、また、本日、徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として青柳秀夫君が、それぞれ委員に選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(丸茂重貞君) 国税通則法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
#4
○松井誠君 前回に引き続いて、政策論議はあとで同僚の委員からあると思いますので、主として法律的な点から質問を続けたいと思います。名委員長のおかげで、今度はゆっくり時間ができましたので、このあいだ時間の関係で飛ばした点を最初に数点をお伺いしたいと思います。
 このあいだ、七十五条の二項に関連をして、いままで審査請求という手続をとるはずのものが今度は異議の申し立てに変わった、相手を間違えたときの救済という点をお尋ねしたんですが、さて、今度は異議の申し立てになってからあとのことでありますけれども、異議の申し立てをして三カ月を経過しても決定がないときには審査請求ができるというのは七十五条の五項、そして、百十一条では、審査請求ができるということを異議申立人に教示をしなければならないと。ちょっと機構がややっこしいですけれども、こういう仕組みになっておることは間違いないですね。
#5
○政府委員(吉國二郎君) さようでございます。
#6
○松井誠君 そういう場合に、いままでは、現行法の八十条で「みなす審査請求」ということで、審査請求されたものと当然みなされる。今度は、新しく審査請求をしなきゃならない。そういうように、特別に審査請求をしなきゃならぬという手続を新しく加えた、そういう改正にもなるかとも思うんですけれども、それはそのとおりで間違いございませんか。
#7
○政府委員(吉國二郎君) 従来、いわゆるみなす審査請求という制度がございまして、決定がない場合、納税者が反対の意思を表明しない限りは、当然審査請求に移行するという制度がとられてきましたけれども、実際問題といたしまして、異議申し立てをした人は、住所地の事情とかそういうもので異議申し立てにある利益を求めてやっている場合もあるということが考えられるのでございます。そういう意味で、むしろ本人がたとえば審査に移ると意思を表明したときにいつでも移せるということが、より異議申立人の意思に沿うのではないか。異議申立人がもっと続けていたいと思っても、うっかりしておりますと、三カ月経過しますと自然に審査請求になってしまうという制度のほうがむしろ異議申立人の意思を尊重する意味において不十分な結果になりはしないかということが税制調査会でも議論になりまして、みなす審査請求というよりも合意によってみなす審査請求にしたほうがいいのではないか、合意といいますか本人の意思によってということで、これは改めたわけでございます。
#8
○松井誠君 ただ、現行法の八十条でも、みなす審査請求が原則のような書き方には見えますけれども、いまお話しのように、「異議申立てをした者がその期間内に別段の申出をしたときを除く。」と書いてありまして、実際の取り扱いとしては別段の申し出ということをやる。別段の申し出というのは、三カ月経過をしても私は審査請求じゃなくて異議の申し立てを続けていきますよという、そういう異議の意思表示をあらかじめやっておるという場合が多い、そのように聞いているんですけれども、したがって、そういう意味では、現行法が何か異議の申し立てから審査請求に移るかどうかを本人の自由意思にしているのだけれども、現行法は必ずしもそうではないという説明は、実情からいうとちょっとずれているんじゃないですか。
#9
○説明員(早田肇君) ただいま局長からお答えいたしましたとおり、現行法の制度では別段の申し出ということが必要でございます。今回は、黙っておりますれば、そのまま異議申し立てに残るわけでございます。それで、本人が三カ月もたって異議申し立てはいやだと、私はもう三カ月もたったから審査請求に出たいという場合に、本人がその旨を言ってくれば審査請求になる。言ってくればと申しますか、審査請求に移行する手続をおとりになれば審査請求になるわけでございます。したがって、いままでのように「みなす。」とか「別段の申出」というような形でございませんで、はっきり本人の御意思がわかるような体系に改めたわけでございます。したがって、異議申し立てにいたい方は黙っておられればよろしい、三カ月もたったので審査請求のほうに移行したいという方は、三カ月たったのでどんどん審査請求のほうに手続をとられればよろしい、こういうことにして、むしろいままでの「みなす。」というような、ないしは「別段の申出」というような、必ずしもその納税者の意思をはっきりあらわしているのかどうかわからないような点を合理化したわけでございます。
#10
○政府委員(吉國二郎君) 補足して申し上げますと、ただいま御質問がありましたように、あらかじめ大体みんなそう言っているのではないかという御指摘でございましたが、実際私が国税局長をやっておりました経験からいろいろ聞いておりますところでは、やはりそういう点があまり知られていない。むしろ、三カ月経過する直前ぐらいに、税務署から、ほうっておくと審査請求になりますが、それでよろしゅうございますかということを聞いて回っているのが多いようでございます。それじゃその別段の申し出をするからということで、それで延ばしているというのが多いようでございます。結局、三カ月たってから教示をして、もし意思があるならば審査請求になすってもかまいませんということをはっきり教示するやり方のほうが実際的ではないかという感じを私自身もいたしておるわけでございます。
#11
○松井誠君 あなたが国税局長をやっておられたのはいつごろか知りませんけれども、そうすると、私の聞いたのは、八十条の条項で、異議申し立てをやるとき、そのときに初めから別段の申し出という処理をとるわけですね。あなたの言われたように三カ月で期限が切れるころにあらためて回ってとるのじゃなくて、初めから申し立てをするときに、この異議の申し立てに対する決定が一月以上おくれても私は審査請求をするつもりはありませんというのを初めから一緒にとる。もしそうだとすれば、みなす審査請求というものになるのか、あるいは異議の申し立ての段階で依然としてやってもらおうとするのかは、事実上納税者の自由意思にまかされているように私は思ったんです。だとすれば、今度の場合、いままでが必ずしも自由意思を反映しなかったから、今度は自由意思を反映させるのだという改正の理由はおかしいのじゃないかということを申し上げたんです。もし、局長の言われるように、三カ月間近になったころにあわてて別段の申し出というものをとりに行くような取り扱いが実際に行なわれておったのだとすれば、それは何がしの改善になろうと思うのですが、もしそれならば私も特段このことを質問する理由はないんですが、私の質問を申し上げた趣旨は、いま申したような理由なわけです。そこで、いまの早田さんの御答弁では、審査請求をすることができるという教示はする、しかし審査請求をするかどうかは本人の自由であって、審査請求をしなければ異議の申し立ての段階にとどまっておる、これははっきりしているわけですね。
#12
○説明員(早田肇君) そのとおりでございます。
#13
○松井誠君 実際その異議の申し立てというのが三カ月以内に処理ができるという場合はむしろ少ないくらいで、三カ月以上経過をするというのがわりあい多いですね。そうしますというと、この規定は相当重要な手続上の意味を持ってくるわけでありますが、私は一昨日もお伺いをしましたように、こういう手続がネコの目のようにくるくる変わるというのは、よほどの理由がない限り差し控えたほうがいいんじゃないか。あて先を間違えるというそういう問題が起こってくる。いろいろな意味で実質的な改正の理由というものがなければ、こう簡単に機構をいじり回すというようなことはしないほうがいいんじゃないか、そう思って質問をしたのですけれども、もしほんとうにこの改正によって納税者の意思をより十分に自由に反映をさせるのだというそういうことが実情に合っ
 ておるとすれば話は別です。そうでないとすれば、私は機構いじりのための機構いじりという感じがしたんですが、その点は間違いございませんか。
#14
○政府委員(亀徳正之君) むしろ実情を簡単に申し上げたほうが御理解願えると思いますので、今後の心がまえを申し上げたいと思いますが、現状では、異議申し立てが三カ月以内に処理されるものが大体八割、それから三カ月をこえるものが二割、そういう感じになっております。しかし、今後の体制といたしましては、たてまえはいま主税局長が申したとおりでございますけれども、実行上はよほどのことでない限り三カ月以内に処理するように指導していきたい。
 それからちなみにこの機会に申し上げたいと思いますが、従来の異議の申し立てにつきまして、自分が更正をした職員がもう一度異議の申し立ての処理をするということでは、どうしても自分のやったことに拘泥するのではないか。したがって、不服審判所の問題ではございますが、全般の不服処理の体制をこの際やはり改めたほうがいいじゃないか。したがって、税務署段階での異議申し立てがございましたときに、人をかえる、あるいは上席の者に当たらせる、それから特に大きい署で人員に若干のゆとりのあるところは専担者を設ける、こういうことで極力早く処理できるような体制にいたしたい、かように考えております。
#15
○松井誠君 この異議の申し立ての手続の段階で八十四条に「補佐人」ということばが出てくるのですけれども、この補佐人というのは、審査請求の段階には何も書いてないので、代理人とかそういう規定は別としまして、補佐人というのは異議の申し立ての段階だけの制度ですか。
#16
○説明員(早田肇君) 百一条で準用いたしております。
#17
○松井誠君 わかりました。
 その補佐人の役割りについて、補佐人というのは一体何をするのかということについて規定はないわけですね。あとのほうに代理人の規定があるようでありますけれども、代理人ということについては、一体どういう役割りをするかということは常識的にわかりますけれども、補佐人というのは一体何をするものなのかということがこのことばがいきなり出てくるだけでありますからわからない。補佐人の役割りというのは、具体的にはどういうことですか。
#18
○政府委員(吉國二郎君) 補佐人という考え方を定義をいたしておりませんのは、いわば本質的には異議申し立てば本人か代理人が当然出頭して話をするというたてまえをとっているわけでございますけれども、専門的な事項について本人の申し立てを補充するとか、そういう意味の本人を補佐する者という意味の補佐人ということで使ったわけでございますので、特に補佐への資格とか定義とかをいたさなかったわけでございます。結局、異議申し立てに本人しか来させないというようなことではなくして、本人が陳述をするにつきましても主張するにいたしましても、専門的な事項で本人の陳述を補充させる必要があるという場合もあると思います。そういう意味で、本人の主張等を補佐する人という意味で補佐人ということばを使ったわけでございます。そういう意味では資格あるいはそれらのこまかな規定を必要としないのではないかということで、特に設けなかったわけでございます。
#19
○松井誠君 そうしますと、たとえば税理士なら税理士は、百七条の代理人になることもできるし、一般的に言って補佐人にふさわしい資格を持っておる、そういうことですか。
#20
○政府委員(吉國二郎君) 税理士が関与している事件というのも、正式に代理権を授与されてやっていなかったというケースが非常に多いようでございます。実際問題といたしまして、普通の調査の場合も税理士が立ち会うということは、税理士業務の一つとしてやっております。調査の場合にも税理士が立ち会って、本人の陳述を補充するということはやっておるわけでございますので、そういう意味では実際上代理人にならない税理士というものも多いということなども考慮いたしまして、代理人でなくても本人とともに出頭するチャンスがあるほうが実際のいままでの慣例から申しましても適当ではないかということでございます。もちろん、税理士が補佐人として出てくることは予想しているわけでございます。
#21
○松井誠君 補佐人は、しかし、代理人ではないとすると、たとえば、本人が、一切補佐人にまかしたから、補佐人に聞いてくれ、そういうことで、本人の口述を補佐するという形ではなくして、まるまるかわらせる、そういうことは補佐人の権限としてやれるわけですね。
#22
○説明員(早田肇君) 補佐人は本人の発言機関でございますが、代理人と違いまして審査請求上の事項につきましては本人を代理する権限はございません。したがいまして、補佐人が本人がいないような場合にかわって代理としていろいろ答弁するというようなことはできないものだと思います。その点については、訴訟も同じだろうと思うわけでございます。
#23
○松井誠君 だから、本人は出頭はする、出頭はするけれども、私自身はよくわからない、税理士に一切見てもらってやっているんだ、だから詳しいことは税理士に聞いてくれということで、本人は黙っていることもできるのかというんです。
#24
○説明員(早田肇君) 本人がおりまして、本人の意思を体しまして本人の陳述すべき事項について専門的な知識を活用して発言する以上、それはできると思います。
#25
○松井誠君 その規定の仕方を見ますと、異議申立人から申し立てがあったときは、意見を述べる機会を与えなければならぬ。この場合に、異議申立人は、補佐人と一緒に出頭することができると、こういう書き方をしておりまして、補佐人が出頭をして何をするか書いてありませんけれども、いまのお話ですと、補佐人は補充する意味で陳述ができる、しかし、それはあくまでも申立人がそう思ったとき、申立人がそのようにしたいと思ったときに補佐人の機能というのは動き出すわけだと思うのです、この条文を見ますと。ところが、衆議院の議事録の二十七号ですけれども、細見さんの答弁で、「本人に特に陳述を求めたほうがいいというような事態の場合に本人に来てもらって、補佐人でないほうがいいという判断をすることがございます。ただそういう場合は、したがいまして非常に例外的でございますから、原則として補佐人の立ち会いを断わるというようなことは考えておりませんので、ただ審理の進行の過程で、事実問題としてきょうは本人にしてほしいというようなことをいたす、そういう意味で許可ということばがある」ということを書いてあるのですが、これはどういうことなんです。これを読みますと、とにかく申立人が陳述を要求している、あるいは希望しているから呼ぶというのではなくて、税務署の都合で本人を呼ぶ、税務署の都合で補佐人でもよろしい、だからそのイニシアチブは税務署がとっているような答弁に読めるわけです。そうでなくて、私が先ほど言いましたように、この規定を正面から読めば、本人がその気になったときに補佐人を連れていくことができる、本人がその気になったときに陳述を要求することができる、こういうことになっておりますから、税務署のほうで、事情を話をするために呼び出すという事実上の行為としてできるのは、この条文の規定によってやるわけではないわけですね。
#26
○説明員(早田肇君) おっしゃるとおりだと思います。私、記憶がちょっと正確でないかもしれませんが、細見審議官が衆議院で答弁されました事項は、主として「異議審理庁の許可を得て、」というところのその「許可」ということの内容で、その「許可」というのはどういう基準で許可をするのかという御質問に対してたしか答弁したのだと思っておるわけでございます。
#27
○松井誠君 そのとおりなんです。そのとおりですが、その本人から聞きたいときには補佐人を許可しない、許可しないで本人の出頭を求める、そういう答弁のようにこれは見えるんです。
#28
○政府委員(吉國二郎君) この八十四条の一項は、先ほど私が申し上げましたように、現在実際に行なっております手続をできるだけ具体しようということでやったわけでございますので、本人をこちらからの調査の関係で陳述を求めるために呼び出した場合も、補佐人がついて来るということを拒否する筋はないわけでございます。いわば本人が出てくるという場合に補佐人を連れてくる権利があるということは規定しておりますけれども、それ以外に、本人が出頭を要求された場合に補佐人を連れてくること自体も実際の取り扱いにおいても当然認めるという前提でございます。
#29
○松井誠君 それで、結局、この補佐人をどういう場合に許可をし、どういう場合に許可をしないのかというその方針を聞いたときに、いまのような答弁が衆議院で出てきたわけなんです。どうしても本人でなければわからないという事情でしたら、それを補佐人から聞くというわけにいかないから、それじゃ許可しませんよという意味でこの許可という制度にしたのか、あるいは、その場合に何か意図があるのか、具体的に許可をするしないという基準はどういうところにその基準を求めておられるのか。
#30
○説明員(早田肇君) ただいまの八十四条の規定は、実は行政不服審査法の二十五条に対応いたします条文でございまして、書いてありますことも内容におきまして行政不服審査法と変わっておらないわけでございます。審理庁が許可をするということも行政不服審査法のたてまえどおりでございます。その場合の許可につきまして先ほどの細見審議官がいろいろ申し上げたわけでございますが、一方的にただ気に入らないから許可しないというようなことはあり得ない。本人が補佐人の技術的あるいは専門的な知識を必要とするということでこの人の補佐を得たいということであれば、特段の支障のない限りこれは当然許可されるべきものだと考えます。
#31
○松井誠君 じゃ、その特段の支障のない限りというのは、もう少し具体的にはどういうことですか。
#32
○説明員(早田肇君) たとえば、代理人とまがうような場合にはいろいろ問題がございます。これは、代理人の場合は、法律上の権限を本人にかわって行ならわけでございますから、非常にはっきりするわけでございます。ただ、それ以外におきまして具体的な事案についていろいろ考えてみなければならないかと思いますが、いま直ちにどういう場合ということがすぐ頭に来ないわけでございます。特段の支障のない限り、当然許可されるべきものであると考えます。
#33
○松井誠君 行政不服審査法にもなるほど同じ規定がありますけれども、税務の関係というのは技術的な専門的な問題が多いわけですから、やはりそういう専門的な特別な知識を持っておる、あるいは特別なほうの関係にあってそういう知識を持っている人、そういう者が補佐人という形になる。補佐人というこの制度を活用する機会としては、税務関係がわりあい多いのじゃないかと思うんですね。補佐人の機能がいま言ったようにはっきりしませんけれども、もし税理士なんかがついて出てくることがめんどうなら、委任状を出して代理人になるということもあり得る。しかし、代理人になり得ない人にとっては、この補佐人ということでいくよりほかにはないわけですから、いま言ったように特段の支障がない限りというその特段の支障がいま急には思い当たりませんぐらいならば、許可制にしないで、初めから、これは行政不服審査法の例外というものはほかにもあるのですから、行政不服審査法の例外としてこういう技術的専門的知識を有する補佐人というものは特別な必要がある、だから原則として――原則と言ってはおかしいですけれども、認めるという仕組みにしたほうがむしろ実際的じゃなかったのでしょうか。
#34
○政府委員(吉國二郎君) 先般申し上げましたように、本人がこの人間は代理人になってほしいという場合には、今回の規定では代理人の制限はいたしておりません。本人が適当と思って認める者は代理人とすることを認めておるわけでございますので、本人が全くその代理人にまかしてしまおうという気持ちであれば、代理人の規定によって代理人を選任することはできるわけでございます。したがいまして、特段の支障というのは、まあ特別にいろいろ考えてみた場合、いろいろなケースがあると思いますが、おそらく補佐人の行動が本人の正しい意思の実現にかえって支障になるというような場合もあり得るかと思います。本人が本来主張しようとすることを補佐人がかえって横からとめるということになりますと、これは本来の意思があらわれないわけであります。もしそういう人を本人が特に認めている場合には、代理人とする道は開かれておるわけでございます。したがって、そういう法律的な手続を経ないで出てくる人については、本人の意思が正しく実現されるように本人意思が補充されてそれが本人の意思に相当するものとしてあらわされる限りにおいては、これは特別に拒否する理由はないと思いますが、かえって本人の意思がその補佐人のために妨げられるような事態というものも、補佐人というものを自由に認める限りはあり得ることかと思いますので、そういう場合を考慮してやはり許可制にしておくということが不服審査法のたてまえであったかと思います。私どもは、そういうものが全然ないとは実は申し上げかねる点もございますので、そういう趣旨で許可制を残したという考え方でございます。
#35
○松井誠君 そうしますと、くどいようですけれども、百七条の代理人との関係がまた問題になってくると思うのですが、代理人というのは、「弁護士、税理士その他適当と認める者を代理人に選任することができる。」ということで、この資格というものは、弁護士、税理士でなくても、本人が適当と認めて委任をすればすべての者が代理人になる資格がある、こういうたてまえなんですか。
#36
○政府委員(吉國二郎君) そのとおりでございます。御承知のように、行政不服審査法では、代理人について制限をいたしておりません。したがいまして、ここで弁護士、税理士という例示をいたしましたのは、税務関係というものが非常に技術的なものでございますから、代理人の普通ある姿として弁護士、税理士というものを例示いたしましたけれども、本質は行政不服審査法と同じでございまして、やはり代理人に制限を設けないという不服審査法の精神は逸脱しないようにということで、「その他適当と認める者」というのは、本人が適当と認めればいいという前提をとったわけでございます。
#37
○松井誠君 そうしますと、代理人の資格は事実上制限がないとすれば、それにもかかわらず代理人を選任しないで、わざわざ補佐人という形で連れてくるというのは、具体的にはどういう場合を想定されているのか。代理人をかりに選任をしても本人自身が陳述をすることはできるわけでありますし、ですから、代理人を選任したから本人が何も動く場所がないということにはならないわけでありますから、補佐人を選ぶくらいなら代理人を選ぶのが普通だと思うんですがね。どういうわけなんでしょう。
#38
○政府委員(吉國二郎君) たとえば減価償却その他のこまかい問題が出てきたような場合に、本人としては全部代理してもらう意思はないけれども、この点はどうも自分じゃ説明がしにくいというようなことなどが考えられると思いますし、従来の慣行でございますと、税理士が関与しているケースを分類してみますと、どうも正式に代理権を受けて税務関係を代理するというケースが非常に少なくて実際上相談にのっているというケースが多いようでございます。したがって、審査の場合なども、あらためて代理人になるという手続もめんどうですし、また、代理人というものも、日本では代理権を全部与えてしまうということに不安を持っておる人もおりますから、やはり事実上連れていって話をしてもらうという場合が実際には多いのじゃないかと思いますし、それからよくある例では、外国人が通訳を連れて来るという例があるようでございます。そういう場合には、これは代理人ではなくて明らかに補佐人と、さようなことが考えられるわけでございます。
#39
○戸田菊雄君 関連でいまの補佐人の問題について質問しておきたいんですが、第三課長の説明によりますと、補佐人とはどういうものであるか、これはわかったんですけれども、八十四条の一項でいきますと、「異議申立人は、異議審理庁の許可を得て、補佐人とともに」と、こうなっているんですね。ですから、そういうことであれば、補佐人に対して審理庁で許可をする場合の一定の許可基準といいますか、こういうものはあるんですか。その辺はどう考えますか。
#40
○政府委員(吉國二郎君) この許可基準というのをいま現在具体的に考えているわけではございませんけれども、不服審査庁ができてまいります場合、あるいは今後の正式にこういうものを法律で受け入れました後、国税庁なり不服審査庁におきましてケース・バイ・ケースで積み重ねた行政慣行というものをつくって、それをもって漸次許可基準を形成していくべきものではないかと、かように考えておるわけでございます。
#41
○戸田菊雄君 そうすると、八十四条の一項の前段ですが「異議審理庁は、異議申立人から申立てがあったときは、異議申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。この場合において、異議申立人は、異議審理庁の許可を得て、補佐人」云々でしょう。だから、いずれにしても審理庁の許可を得なければいけないんですね。だから、そのときに、「許可」ですから、採用するもの採用しないものというのができるわけですね。だから、採用する、しないという基準がないと、あるいは何らかの一定の水準の考え方というものがなくては、許可するしないというものは出てこない。そこら辺の考えが明らかでないと、今後補佐人を採用する場合においてもいろいろ不都合な事態が発生するのではないかと、このように考えるんですが、もう少しその辺を詳しく説明していただきたい。
#42
○政府委員(亀徳正之君) これは発足してからの問題でございますが、いずれにしろ、先ほどちょっと主税局長が答弁いたしておりましたように、なかなかその具体的な場合が考えつかないのですが、むしろよほど例外的な場合があるかどうかということで、原則的には許可するということになるのではなかろうかと私は考えます。いわば実質的に許可するものもしないものも相当あって何か許可基準が要るとかいう性格とは違いまして、基本的には、先生おっしゃいましたように、この税というものは技術的な、またなかなか一般の人にはとっつきにくいものでございますので、やはり補佐人の助けをかりたいという方が大部分ではなかろうか。ですから、許可基準と言われると何かむずかしく聞こえるのですが、原則的にはまず認める、よほどのことがない限りはあまり議論にならないで認めるという考え方でいくべきではないかと私は考えます。
#43
○戸田菊雄君 長官が言われましたように、原則的には認めると。これは権利救済の関係ですから、一番納税者がいいという人を持ってくるわけですから、そういうことになれば、原則的には全体採用していくことになるのでしょうが、例外として許可をしないという限り、想定されているのでしょう、一応。それはないんですか。具体的な問題としては見当たらないんですか。その辺はどうなんですか。
#44
○政府委員(吉國二郎君) 具体的にどうも考えていないのでございますが、行政不服審査法等でこの規定を設けている趣旨は、おそらく補佐人はあくまでも個人が独立で異議申し立て審査請求にたえ得る人に対して代理人でなくてつく人でございますから、本人の意思が十全に発揮されるようにということを前提として補佐人を設けておると思います。したがいまして、場合によっては、たとえば異議申立人が一人であるのに十数人の補佐人がついてくるというようなことは不自然でございますし、また、いまの法廷の状況もございますようなことで、それは整理をする必要が出てくるだろうと思います。そういう状況もやはり考えられるだろうと思います。全くこれを自由にしておくことがはたして妥当かどうか、長官の申しましたように、こういうことを許可しないということはまず例外とお考えになっていいと思います。私どもはそのつもりでおります。
#45
○松井誠君 あなた方がいつまでもいまのポストにいるわけじゃありませんから、不許可にするというのは例外でありますと、そういうことをここでいくら言っても、法律の条文から見れば許可を得るということになっておって、むしろ許可をするのかしないのかということについてはどっちが例外でどっちが原則だと、なんにも書いてないわけですからね。ですから、特別の事情がない限りとかなんとかいう、もしどうしても許可制度をとる必要があるとすれば、そういうものを具体的に入れるか、何らかの形で文章の上に残しておいてくれないと、あとの人はわからない。私は、なぜこれを許可制にするのかどうか、よくわからない。いま言われたように、補佐人と称する人が十人も二十人も一緒にやってきて抗議をして団交でもするというような喧騒にわたるような場合に、私も補佐人だといってやってくるようなものは困ると、そんなことを想定しているのかもしれませんけれども、しかし万一の場合のことを考えてこんな大きな制限をやる必要があるのか。もしやる必要があるならば、そういう人たちはまた代理人として出てくるでしょうから、補佐人を許可制にするならば代理人もそれこそ許可制にしなければ首尾一貫しない。補佐人としては認めないけれども代理人としてはしかたがありませんというのでは何ら意味がなくなるわけでしょう。だから、なぜ補佐人だけを許可制にするのか、はっきりわからないんですが。
#46
○政府委員(吉國二郎君) 先ほど申しましたように、代理人というものを選定いたしますと、本人も代理人の行為によってかなり影響を受けるわけでございます。また、代理人を多数選任するという場合を考えますと、多数選任した場合の代理人の行動というものも先生御承知のとおりいろいろ制約が出てまいりますし、補佐人ということになりますと、法律上の制約がないだけに、いろいろ自由といいますか、かなり実際上は予想もしないような事態も起こり得ると思いますので、不服審査法で代理人の自由な選任を認めながら補佐人に許可というものを置いた趣旨はそういうところにあるのじゃないかと私も思うのでございます。あくまでも、その許可というものは、先ほど申し上げたように、制限的に解するということは法理上も当然かと思いますので、私どもかわりましてもそれは厳として存在するようにその運用の指導を国税庁としてはばかってもらえると私は考えておるわけでございます。
#47
○松井誠君 先ほど申し上げましたように、税務の関係では補佐人という役割りというものは普通の行政争訟よりも多いだろう。そういうことを考えますと、私は特別な定めをしてしかるべきだと思うのですが、どうしてもこの条項を残すとすれば、何かの形でその不許可はあくまでも例外だということをやはりはっきりさせておいていただきたい。まあ要望として申し上げておきたいと思います。
 それから九十六条の閲覧のことなんですが、このあいだもちょっと聞きましたけれども、そのときに、具体的にその閲覧をさせるべき書類の問題で聞き落としたと思うのですけれども、いわゆる標準率表とか効率表ですね、これは閲覧を許す対象になるのですか、あるいは拒否をする対象になるのですか。
#48
○政府委員(亀徳正之君) これは毎々申し上げますように、公開いたしておりませんので、標準率、効率を見せてくれとおっしゃいましても、ちょっとそれはお断わりすることになろうかと思います。
#49
○松井誠君 ともかく、しかし、これは審査庁に出した書類の閲覧ですからね。審査庁に出さない書類の閲覧を求めるわけじゃないので、審査庁に出た書類の閲覧でしょう。審査庁には効率表や確率表というのは出すわけですか。
#50
○説明員(川村博太郎君) 処分庁から審査庁に対しましては、当該人に適用した効率――効率表全般ではございませんで、その効率は出すと思います。しかしながら、効率は一般的には公開しない原則になっておりますので、その段階では審査請求人には見せないということに相なると思います。これは訴訟の上でもそうでございますが、それが問題が訴訟というようなことになりますと、最終的に真実を明らかにするというようなことに相なりますので、その段階では、適用しました効率あるいは標準率を証拠として提出をするということはあると思いますが、行政段階におきましては一般的に公開しないということに基づきまして、審査請求の段階でも閲覧は断わるということに現在でもしておりますし、また、今後もそうすべきではないかと考えております。
#51
○松井誠君 裁判の段階ではどうしても出さざるを得ない。しかし、行政手続の段階では当該業種に関する効率なり標準率の表というものは出す。この審査庁に出すのは、いわば国税庁内部で出すのだから、これは部外秘に当たらない。しかし、それを申立人に見せることは、その秘密という観点から困ると、こういうことでしょうか。――きわめて形式的にはそうでありますけれども、しかし、申立人は、推計課税をやられたときに、所得金額なり税額の基礎というのはもうどっちみち標準率か確率かそういうもので出す以外にはない。その出した根拠というものは本人にはわからない。審査庁には出ているけれども、申立人にはわからない。そういうことで、一体、その申立人の正当な主張なり立証なりという準備ができるのでしょうかね。どういう理由で所得金額をこういうふうに認定したかということが、肝心かなめの点になると、審査庁には出ているけれども申立人には見せない。それで本人の納得のいく結論が出るのでしょうかね。私はやっぱりそういうことを考えますと、このあいだも秘密書類の問題でいろいろやりましたけれども、少なくとも本人に関する限り、当該業種に関する限り見せたっていいじゃないか、それが争いというものを不必要に延ばさない方法でもあるし、それが全く秘密じゃなくて何がしかのものはいわば半ば公然とわかっておるわけでありますから、何もむずかしく考える必要はないと思うのですが、どうでしょうか。
#52
○説明員(川村博太郎君) 税務調査の段階では、なかなか御本人が帳簿を見せ、あるいは取引の記録をお見せにならない。しかしながら、現実には、取引の実態をよく御承知になっており、あるいは所得の多寡についての御認識を持っておられるのは、御本人であります。したがいまして、税務官庁といたしましては、実際の原処分の段階では、取引先も教えてもらえない、あるいは取引の資料の基礎的なものについても見せていただけないという場合には、やむを得ずたとえばこの効率あるいは標準率で処理をしなければならない。その推計の権限につきましては法律に定められているわけでございますが、しかしながら、先ほど申しましたように、処分を受けられた納税者の方々は、その所得が多過ぎる、あるいは経費の見方が少な過ぎるということについては、少なくとも御自分ではそれを反証される基礎はお持ちだろうと思うわけであります。したがいまして、たとえば標準率がどういうことであるから自分はそれに対抗してどういう反証をするというようなことでなくても、その処分によって認定された所得が過大であるということについての立証はおできになるはずでございます。したがいまして、標準率ないし効率をお示ししないでも反証はできるものと考えておるわけでございます。
#53
○木村禧八郎君 ちょっと関連して。不服申し立て事案の内容ですね、これは審査請求事案で見て、これまでわれわれの聞くところによると、法令の解釈に関するものはわりあいに少ないと。しかし、事案認定をめぐるものや推計課税に関するものは非常に多いといわれるわけですね。ですから、それを統計的にひとつ数字でこれまでの傾向を参考のためにお示し願いたいんです。そうすれば、いま松井さんが御質問のように、推計課税に関するものが非常に多いということになると、こういう事案が多くなるのは推計課税が多いというなら、そういう申し立てを少なくする上にも、これをかなりはっきりさしちゃったほうがいいのじゃないですか。
#54
○政府委員(亀徳正之君) 法律関係より事実関係が多いということを前々から申し上げているので、推計課税が多いということにはならないのではなかろうか。それで、異議の申し立ての件数は御存じのように約三万、審査請求は一万ございまして、そこの中身を分類するというのは、なかなかむずかしくて、早急には表はできにくいかと思いますが、達観して感じを申し上げますと、事実関係が多い中で個別の具体的事実に関連していろいろ争われていることが多いかと思いますので、全部推計課税で問題になっておるということではないと考えております。
#55
○木村禧八郎君 税制調査会に出した資料においても何かそういうのはあるんですか。
#56
○政府委員(吉國二郎君) 委員限りで出した資料で、公表いたしておりませんが、この場でございますから申し上げたいと思いますが、税制調査会でも、一体どんな内容が審査になっているのだということは当然審査をされたわけでございます。そのときに、ある局の一定の審査請求をとってまいりまして、そこで幹事その他が分析をした結果が出ております。それで、簡単に申し上げますと、金額が多いか少ないかという争いが約三割、それから推計課税というものに対する争いが七%強でございます。それから、その他いま申し上げた以外の課税要件についての争い、たとえば横領手形、これが雑損失になるかどうかという意味の横領手形、手形を横領されたというような主張、こういう関係のものが二二%でございます。それから質問検査が違法であるとかあるいは除斥期間外であるというような課税要件外の事実は問題になっているのが二割程度。結局、税法の解釈という点で争ったのが約三%足らずという結果が出ております。御指摘のように、推計課税そのものを争っているものというのが、約一割足らず、七・四%ということが明らかになっておるわけでございます。
#57
○木村禧八郎君 税制調査会ではそういう資料は出しているわけでしょう。じゃ、われわれにこういう資料を出してもらえますね。
#58
○政府委員(吉國二郎君) サンプル調査ではございますが、後刻提出いたしたいと思います。
#59
○木村禧八郎君 これを見ましても、法令の解釈に関するものは三%、非常に少ないですね。しかし、推計課税に関するものは、全体の金額の多いか少ないかの争いの三〇%よりは少ないのですが、一割足らずあるわけですね。ですから、そういう点から見ても、ぼくもこういうような資料があるんですが、「税務行政の現状について」、これはぼくは政府から出た資料だと思うんです、税調に対して。その中ではこうなっているんです。「不服申立事案の内容を審査請求事案でみると、事案認定をめぐるものや推計課税に関するものが多く、法令の解釈に関するものはきわめて少ない」と。これは、後段はそのとおりですよ。しかし、推計課税に関するものは相当多いと、こういうことになっているのですがね。これは、いまの数字で見ると、事案認定をめぐるものと推計課税と両方プラスすれば多いと、こういう意味か、ここのところはぼくも数字がわからなかったものだから……。
#60
○政府委員(亀徳正之君) いずれにしろ、先ほど主税局長が申しましたのも、非常に多数の中で全部を整理分類するわけにはいきませんので、統計上でのサンプルをとりましての表でございますし、その数字も私先ほど見ないで達観でお答え申しましたのですが、まさに達観どおりが七・四%ということで、相対的にはやはり少ないと考えております。
#61
○松井誠君 先ほどの川村さんの御答弁、これは立証責任の問題と密接に結びついていると思うんですね。あなたのお話のように、とにかく納税者は自分の真実は知っているはずなんだから、それを主張すべき資料を出せばいいじゃないかというのは、納税者に責任があるという前提でものを言っているからそういうことになる。われわれは申告をしたのだから、その申告が認められないといって税務署が更正決定をやったのだとすれば、更正決定をやったほうがなぜ申告がうそなのかという立証をしなきゃならぬ。裁判所の段階ではもちろんそうなっておりますけれども、このあいだの話では、行政手続の段階でははっきりしないという。はっきりしないとはいいながら、行政手続がやはり納税者がまず立証しなければならぬというようにあなたは暗黙に考えているわけです。ですから、いま言ったように、閲覧請求について、そんなことを言わないで、おまえがほんとうのことを知っているのだから、立証すればいいじゃないかと、立証責任というのはそういうことを考えるから出てくる議論だと思うんですね。それじゃ、権利救済だという制度の目的というものが全くなくなってしまう。権利救済というものに重きを置くとすれば、立証責任というのは当然行政庁にあるべきであるし、だとすれば、そういう立証をするために出した書類を閲覧させないということは何としても不合理だと思う。
 しかし、これは、これ以上言ってもしかたがありませんから、質問検査権の問題、九十七条をお伺いしたいのですが、最初に、審判官というのは、衆議院でのやりとりなんか見ておりますと、これはやはり収税官吏だというのですが、審判官も税法に基づいての調査権は持っておるのでございますか。
#62
○政府委員(吉國二郎君) 形式的には持っているということになるわけでございます。
#63
○松井誠君 そうしますと、審判官は、税法に基つく調査権というものを一方で持っており、そうして一方では審判官としてのこの通則法に基づく調査権というものを持っている。両方持っている。問題が審判の段階になってきても、審判官としては税法上の調査権を依然として使えるのですか。
#64
○政府委員(吉國二郎君) 今回は審判に関しての質問検査というものについて特則を設けましたので、審判官はこの質問検査権を行使するというたてまえで、一般の税法の質問検査権は審判に関しては特則によってこちらに優先をさせるという考え方でございます。
#65
○松井誠君 結論は私はそれならいいと思うんですけれども、しかし、おとといの御答弁からはそれは出てこないのじゃないかと思うんですね。行政不服審査法の三十二条でしたか二十三条でしたか、それによって税法上による調査を妨げられることはないという規定は、この規定によって税法の調査権が生きてきたのじゃなしに、これはあってもなくてもいい、いわば注意的な規定なんだということ、そのように局長が答弁されましたね。私は、その答弁自体が、前の答弁とは多少ずれてきていると思うんですが、しかし、その答弁を維持されるとすれば、行政不服審査法のその規定というものは国税通則法ではそれをはずしてしまったわけですが、はずしてしまったにしても、注意的な規定がもしあったとすれば、税法上の調査権は依然として残っているということになるわけでしょう。そうじゃなくて、最初のころのあなたの答弁のように、税法上の調査権というのはこの行政不服審査法の規定ではじめてできるというニュアンスでものを言われたように思うんですけれども、そうだとすれば、この国税通則法で税法上の調査権というものはなくなる。
  〔委員長退席、理事青田源太郎君着席〕
しかし、行政不服審査法の規定が注意規定であるとすればなくならない。これは二本立ての調査権を持っているということになりはしませんか。
#66
○説明員(早田肇君) 従前は、行政不服審査法の調査権につきまして、二十六条ないし三十一条にございまして、同時に三十二条という規定があったわけでございます。御指摘のとおり、ここの条文は、新しい法律では全部排除することになりました。したがいまして、所得税の場合で申しますと、所得税の調査権と今回の調査権と重複するのではないかという御指摘であろうと考えるわけでございます。この法律で行政不服の審査につきまして新たに調査権を規定いたしまして、この法律のほうが後法でございまして、この法律の規定を優先し、両方の調査権を持つとは考えないわけでございます。
#67
○松井誠君 私がそのことを聞くのは、税法上の調査権は罰則としては納税義務者にだけ罰則がある。ところが、この審判官としての調査権は、肝心の納税義務者には罰則がなくて、それ以外の人に対して罰則がある。だから、せっかく審判官としての調査権というものを納税義務者に対する罰則というものをわざわざはずしても、税法上の調査権というものは残っておって、私はこれでやりましたということになると、納税義務者は罰則で強制されるということになって、罰則をはずしたということが全く空文化してしまう。理屈をどういうふうに理由づけるかは別としまして、税法上の調査権というのは審判の段階で審判官にはもうない、これは間違いないですね。
#68
○説明員(早田肇君) そのとおり解しております。
#69
○松井誠君 その根拠について私は異論があるんですけれども、それは別にいたしまして、それならそれでいいんですけれども、この九十七条の一番最後の、ほうぼうにある規定ですけれども、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」と、これはどういう意味でしょう。
#70
○説明員(早田肇君) 第五項の「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」と申します条項は、各法律を通じまして大体において質問検査権の規定があります場合にその末尾に載せられている例文的なものでございます。この条文の趣旨は、ここで認めております調査権というものは、行政上の必要に基づき、行政上の合理性を追求するために、その程度において認められたものでございまして、本人の刑事責任を追及するというようなものではない。特に憲法の三十五条といろいろ関係する条文もございます。これらの条文は、それぞれ刑事手続に関するものでございます。ここで認められている調査権はそういう趣旨のものではないということを念のためはっきり規定した条文でございます。
#71
○松井誠君 これは、審判官がこの規定に基づいていろいろ調査をやっておる。そして、調査の結果、違法な事実というものが結果的にあらわれてきた。そのときに、この「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」という規定はどういう作用をするのか。つまり、そういう容疑というものを審判官が知ったときに、その資料はどうするのですか。
#72
○説明員(早田肇君) 公務員でございますので、犯罪がありと認める場合には、刑事訴訟法の手続によって告発するということが一応刑事訴訟法の規定から原則でございます。そこに至らないといたしましても、国税庁の内部でございますので、必要がございますれば国税庁のほうに連絡をするというようなことも考え得るかと思います。
#73
○松井誠君 そのことについて衆議院でいろいろあるわけでありますけれども、私はこれを読んでいて非常に歯切れが悪くなって、たとえば、吉國さんは、「審判官が知り得た秘密を徴税関係で通知をすることも可能ではあります。しかし、運用としては、私は、そういう意味の第三者を調べてそれが脱税をしておるということを通報すべきかどうかについては、今後まさに国税庁の一つの職務運営として考えていくべき問題だ」ということを言っておるわけですね。あとのほうで、「もしいわゆる犯罪ありと思量すれば、やはり公務員としては問題があるということは事実だと思うのです。私は、この程度にはやはり考えなければいかぬのじゃないかと思います。」と、こういうように、違法な事実が出てきたときに、審判官というものはあくまでも権利救済のために仕事をするというのが本来の職権なんだから、脱税の告発というものは職権外だから、そういうものを告発したりなんかしたら、かえって権利救済にはならぬじゃないかという、これは春日委員の追及に対して、非常にもたもたした答弁をやっているわけですね。刑事訴訟法の二百三十九条に、公務員は告発の義務があるということが書いてあるわけであります。告発の義務があるということを書いてあるんですけれども、告発を積極的にやらなきゃならぬという答弁には全然ならなくて、なるべくならばしないことのほうが権利救済の趣旨に合するかのような答弁をしているわけですね。この制度運営というものはそういう意味で運営をしていくべきかどうかというような答弁になっておるわけですね。これは当然刑事訴訟法によって公務員の告発義務があるんだからやらざるを得ませんとどうしてすっきり言えないのかということですね。
#74
○政府委員(吉國二郎君) その御質問がございましたのは、一般の質問検査権に対しては本人並びに第三者に対して罰則がある。今回の法律に基づく質問検査権については第三者には同様にあるけれども、本人にはない。これはどういう趣旨だということから始まりまして、第三者が協力をしない限りは本人の主張がなかなか認められない結果になる。それは結果において権利救済の実をあげ得ない。したがって、第三者には従来の税法上と同様に認める必要があるということを申したわけでありますが、そうすると、第三者がこれによって課税を受けるということになれば、どうしても強硬に反対するではないかというお説がございました。私はそのときに申し上げましたのは、いわゆる犯罪、つまり有意なと申しますか、意識的に脱税をはかっているという事実があれば、これは一般の公務員の義務と同じように告発をすべき義務を負うであろうけれども、単にそこまで調べるという趣旨で第三者を調べるよりは、本人の権利救済の基礎を発見するために調べるということを主眼にすべきである。明らかにそれが脱税であるとわかるまでは本人の権利救済に必要な範囲で検査を行なうべきであろうという趣旨から、第三者の脱税を調べる趣旨でこの質問検査権を行使するという趣旨ではないという趣旨で申し上げたわけでございます。そういう意味では、もし審判官がこの権限を行使して本人と取引関係にある者の脱税等まで調べようという意思をもっていけば、これはまあ調べられないわけではないわけでございます。そこまでは審判官はやるべきものではないだろう。したがって、審判官が第三者を調べ、その脱税行為を調べて、それを通報するということは、運営上は考えるべきではないだろうということを申し上げたわけでございます。
#75
○松井誠君 私が何かあたかも告発をすべきではないかというような言い方をしたのは、実は他意があるわけではなくて、なぜ私がそういうことを言ったかというと、この権利救済の規定というものはあなた方は権利救済オンリーに考えないで見直し調査的な要素があるんだと。それで、いわゆる総額主義というものをあくまで考えておられる。したがって、申立人が申した争点だけでなしに、ほかの争点についても当然調べられるという前提があるものですから、そうすれば結果的には本人の不利益になる。本人の不利益にするわけにはいかないものだから、もたもたした言い方になるので、私が言いたいのは、権利救済なら権利救済という機構のたてまえがあるならば、それに徹するということになって、ほかの脱税の事実なら事実が出たときには、それはそれで当然別な組織で別なコースでやるべき規定が残されておるわけです。それはきちんと分けるべきなんです。それを権利救済の仕組みの中に便乗して、真実発見という大義名分のもとになんでもかんでも洗いざらい調べようという底意があるものですから、出てきた脱税行為に対して告訴するのがいいか悪いかというような思案をするというようなことになるのではないかと思うんです。そういう意味でお問いしたわけです。ですから、争点以外を調べるということをやれば、当然新しい脱税事実もあらわれてくるかもわからぬ。しかし、出てきたら、やはり公務員の告発義務というものを無視するわけにはいかない。だから、二つの矛盾というものをなくすためには、この権利救済の手続というものはやはり争点に縛られる、そういう前提がなければこういう矛盾というものは出てきます。ですから、そのことを言いたかったんですけれども、きのう、おとといの繰り返しになりますけれども、どうですか。
#76
○政府委員(吉國二郎君) いま御質問があった点でございますが、衆議院で問題になったのは、むしろ第三者を調べる質問検査権というものが第三者の脱税を摘発する結果にならぬか、そうすれば第三者は当然質問検査に抵抗するであろう、そうすれば本人の権利救済ができないのではないかという御質問があったのに対してお答えしたわけでございます。本人についての脱税問題というものは、これはまた別個の問題であると思いますが、あくまでも脱税摘発というのは専門の査察機関があるわけですが、それに連絡するかしないかという問題、その問題は、もし本人に意識的な脱税があるという場合であれば、査察に対して連絡をすべきものだと私は思うわけでございます。ただ、第三者の場合に、その意識的な脱税があるかどうかまでを追及するような調査に質問検査権を行使するようなやり方をやっていくならば、結局は第三者の協力は得られないということになり、本人の権利救済をするという本筋がかえって妨げられるのではないかということで、ややもたもたした答弁をいたしたというわけでございますが、その趣旨は、あくまでも第三者の質問検査というのは本人の所得を明らかにするための質問検査である、第三者の違法な脱税を調査する質問検査としては運営すべきでない、こういうことははっきりただいま申し上げておきたいと思うわけでございます。
#77
○松井誠君 もたもたした答弁になるのは、やはり権利救済という目的そのものがもたもたしているものだから私はなると思うんです。それは別としまして、いま査察の話が出ましたけれども、国税犯則取締法の調査権、この調査権について、質問の拒否というものに対しては罰則はないわけですね。検査を拒否することについては罰則があるけれども、質問を拒否するということについては罰則がない、そういうことになっておりますね。
#78
○説明員(川村博太郎君) そのとおりでございます。
#79
○松井誠君 そうしますと、納税義務者その他に対する質問については罰則の規定がない。罰則の規定がないだけではなくて、衆議院の議事録を読みますと、実際の手続としては拒否権というものを知らせておる。あなたは黙秘ができますよということを知らせて、そうして調書を取っておるというような答弁があるのですけれども、実際の手続上、国犯法の尋問調書でしょう、それについてはほんとうに黙秘の権利というものを知らせてやっておるのですか。
#80
○説明員(川村博太郎君) 実は、衆議院でそういうお答えをいたしましたのは私でございます。私、実は、十何年前かに査察課長をやっておりまして、非常にあいまいな記憶でお答えをいたしたわけでございますが、よく調べてみますと、この黙秘権については調書のときにも言っておりません。実は衆議院の段階でそれを訂正申し上げるのがおくれたものでございますから、この席をおかりいたしまして答弁を訂正さしていただきます。
#81
○松井誠君 それはかえって質問して悪かったですね。私も、国犯法上の調査というのは刑事手続だという前提で黙秘権というものを認めておるのかと実は思ったんです。しかし、私はやはりそれのほうがほんとうだと思うのです。黙秘権というものを認めて、国犯法上の調査というものはもう刑事手続だという考え方が実は正しいと思う。これが刑事手続であるのか行政手続であるかについての裁判所の考えはまだまとまっていないようでありますから、あらためてその点をお尋ねしますが、国犯法上の任意手続ですね、質問調査、これは刑事手続じゃなくて行政手続として考えておるのですか。
#82
○政府委員(吉國二郎君) 国税犯則取締法は、「収税官吏ハ国税二関スル犯則事件ヲ調査スル為必要アルトキハ犯則嫌疑者若ハ参考人二対シ質問シ、犯則嫌疑者ノ所持スル物件、帳簿、書類等ヲ検査シ又ハ此等ノ者二於テ任意二提出シタル物ヲ領置スルコトヲ得」というような書き方をしております。いわば刑事手続の前提としての手続である。ただし、間接国税に関しましては通告処分がございまして、これは行政手続である。したがいまして、罰則につきましても、検査の拒否につきまして間接国税についてはございますけれども、直接国税については、質問に答えない場合、検査を拒否した場合も、罰則はないというたてまえをとっております。そういう意味では、いわば刑事手続の前置的なものとして、したがって、また、この調査の証拠が法廷に持ち出されるわけでありますから、そういう意味で黙秘権の一つのあらわれとして罰則をつけない、つまり強制をしないというたてまえをとっているわけだと思います。
#83
○松井誠君 いまの、黙秘権があるということを知らせないというのは、前は知らしておったけれども最近は知らせなくなったというのですか。前からそういう知らしたことは一度もなかったというのですか。
#84
○説明員(川村博太郎君) 前から知らしておりません。この知らしておらないことにつきまして、たしか裁判所でもそれを違法ではないという判例があったように記憶がございます。
#85
○松井誠君 その問題について、いま言われたように違法ではないというのがあるのですけれども、やはりこれは刑事手続だという見解があるわけですね。両方の見解があるときに、私は、大事をとって、これはもう刑事手続なんだ、だから本人に不利益な強制ができないんだから、黙秘権があるんだということを告知をするにこしたことはないと思う。そうすれば、裁判所に行って敗れることはどっちみちないわけでありますから、そういう点がはっきりしないのに黙秘権の存在を前提にして刑事手続をしているとすれば、お役所としてきわめてまれで、人民の立場に立った手続だと実は思ったんですけれども、案に相違してそうじゃなかった。しかし、ぼくは、これが行政手続か刑事手続かというそういう観念的な議論は別として、ことに、国税犯則取締法の調査というのは、あたかも刑事手続の前段とはいうものの、ほとんどすれすれでしょう。ですから、憲法の精神というものを考えれば、黙秘権があるんだというたてまえで処理したほうがいいと思いますが、そういう意思はございませんか。
#86
○政府委員(亀徳正之君) 先生の御質問はなかなかむずかしい問題ではございますけれども、ただ、先ほど主税局長が申しましたように、刑事手続そのものではない。したがって、その前段階のものでございます。私自身は、税の問題というのは、基本的に、一種の納税義務といいますか、税金の真実の所在の把握という要請というものが片やあるのだと、かように考えております。これから調べるときに、おまえ黙っていてもいいぞ、こら言っておったのでは、せっかく調べようというときにどうもいかにも実情に合わない。やはり罰則がついておらないというところでほどほどいいところになっておるのではないか。それは税に告知の義務はないという判例もいただいておるような次第でございます。
#87
○松井誠君 行政手続とはいうものの、繰り返しますけれども、刑事手続のほんとうの境界線みたいなところにあるわけですからね。ですから、衆議院でも、どろぼうに黙秘権があって告知義務があるのに納税者にないのはおかしいという議論が盛んにあるでしょう。いまのような議論ですと、なおさらおかしいというアンバランスも大きくなる。このアンバランスを縮めるためには、刑事手続ではない、この辺からそろそろ告知義務というものを認めて黙秘権の存在を知らせるということのほうが私はいいと思う。しかし、それは議論になりますからやめます。
 もう一つ、九十九条ですけれども、このあいだも須貝参考人がちょっと言われたけれども私は意味がよくわからなかったのですが、九十九条の二行目ですが、「又は他の国税に係る処分を行なう際における法令の解釈の」云々というところの「他の」というのは、「国税」にかかるのか、「法令の解釈」にかかるのか、何にかかるのかという話があった。税調の答申もどうだとかいうような話もあったんですが、この「他の」というのはどこへかかるのですか。
#88
○政府委員(吉國二郎君) これは、「他の」は、「処分」にかかるわけでございます。「国税に係る処分」、これは熟語にいたしまして、「他の……処分」、こう読んでいただく趣旨でございます。
#89
○松井誠君 やはり参考人の御意見で、通達が長年使われておると、それが慣習法になる場合がある。慣習法に一たんなれば、国民の不利益に改正するためには国会の承認を要する、立法手続が要る、そういう御意見でございます。私は理論としては当然だと思いますけれども、念のためにお尋ねしておきたいのですけれども、それは間違いないですか。
#90
○政府委員(吉國二郎君) あのとき、二人の参考へがちょっとニュアンスが違ったように思うのでございますけれども、一人の方は、さかのぼってはいけないけれども、課税物件として妥当なものであれば、それ以後のものには適用があっていいだろうという意見を言われた方、それからある程度慣習法化するとなれば、その後はやはり法令で直すほうが適当であろうということを言われた方と、両方あったと思います。実際問題といたしましても、通達で扱っていたことが慣習化したために、これをむしろ法律にしたほうがいいんじゃないかということで直した例はございます。たとえば通勤手当、これにつきましては、最初、現物給与の一形態といたしまして、通達で、あれはたしか都電の定期という金額の範囲内で現物給与の非課税という扱いをしていたわけです。しかし、それがだんだん通勤手当的なものとして意識されるに従って、一つには基礎控除的なものを通達でやるのはどうかという意見も片方にはございましたが、ある程度通勤手当というものは、一部妥当な範囲で非課税にすべきだという考え方は通達で慣習法化したという観点から、法律で、現在通常必要と認められるものについては通勤手当そのものを非課税にするという規定を入れた経緯がございます。それは具体的なケースによると思いますけれども、漸次通達が一般化してしまって、しかもそれを不利に変更する場合に法令によったほうがより適当であるという場合は、今後も考えられないわけではないと私は考えております。
#91
○松井誠君 それは、局長、おかしいのじゃないですか。租税法律主義というのがあるでしょう。租税法律主義というのがあって、いわば税金を取り立てるときには法律でやれということを憲法で書いてある。これが慣習法であるかどうかの認定は別ですよ。別だけれども、もし慣習法であるということになれば、それを不利益に変えるということになれば、どうしても法律でやらなきゃならない。政令でやってもよろしいなんていうものじゃない。
#92
○政府委員(吉國二郎君) その慣習法になるかならないかというのは非常にむずかしいところだと思いますが、慣習法的になっても、法令でやったほうがいいのではないかというのが私の考え方でございます。
#93
○松井誠君 ですから、私の聞いているのは、そうじゃなくて、慣習法であるということになったときには、それを不利益に変えるというのは通達ではできない、やはり法律でやらなきゃならぬ、これは租税法律主義の当然の結論じゃないですか。
#94
○政府委員(吉國二郎君) 慣習法として確立されれば、私はそうだと思います。ただ、この慣習法というものが行政段階においてどの程度成立するかというのはなかなかむずかしい問題だと思います。やはりこれは慣習法と言い得るようなものになった場合、慣習法的なものになった場合の扱いを考えていくということが実際的ではないか。これは慣習法であるということを行政法の上で言うのは、なかなか実際上むずかしいかと思っているわけでございます。
#95
○松井誠君 慣習法になり得るという考え方は、何もこのあいだの参考人の場合だけでなしに、判例集なんかにも二つばかり出ています。そういう意味で、慣習法ということは理論的には当然考えられる。ですから、私は、納税者がこれは慣習法だという感触を持っておるような場合に、それを通達で不利益に変更することについては、よほど考えなきゃならぬと思うのです。そういう少なくとも心構えを持っていなきゃならぬ。ですから、慣習法か慣習法でないかの議論はいくらでも逃げ道がありますから、現実にはあまり役に立たないかもしれませんけれども、しかし、考え方の基礎としては、そういうものが頭にあるとないとでは租税法律主義をどら解釈するかということと関連をするわけですから、その点をお考えの上で、これから通達がいいほうに変わる場合が多いだろうと思いまして、わざわざお伺いをしたわけです。
 もう一つ、訴訟の段階で、前置主義のことについて簡単に一つだけ最後にお尋ねをしたいと思うのですが、われわれは必要的前置といういまの通則法の機構というものがおかしいということはあらためて申すつもりはないのですけれども、必要的な前置というものをとったために、事実上の出訴権というものが制限されて、出訴の道がなくなってしまう。そういう意味では、憲法のあの条項に真正面からぶつかるような事例だってたくさん出てくる。異議やあるいは審査請求の段階で、内容の審理に入らないで、形式的に不適法だということで却下をされた。その却下された場合に、裁判所に訴え出ると、これはもう適法な異議の申し立てや適法な審査請求を経ていないのだから前置主義に反するのだといって裁判所でも却下をするということになると、いよいよ救済というものは全然なくなってくる。裁判所では、却下をした分についてもたまには実質的審理に人っている場合もあるようですけれども、それは、却下されてそのために出訴の道がなくなったという不当を救うために、多少無理な理屈をつけて実質的な審理をやっているわけです。だから、いろいろ今度の修正で、不適法として却下をする場合にはなるべく少なくしようという心づかいも多少出ておりますが、どうしても補正が不可能だとか、期限が切れてしまったというような、そういうものでない限りは却下にはしない。そうしないと、それ以外の形式的な理由で却下をすれば、さて今度裁判所に出ていっても、かりに出訴期間のうちであっても、おまえは前置主義に反するのだから、実質的審判を経てきていないからだめだということになれば、どうにもならないわけです。裁判所がどういう取り扱いをしているか、その辺は御存じですか。
#96
○政府委員(吉國二郎君) 却下を受けました場合に、それに対して訴訟を起こしたというケースでございますと、請求が不適法であって却下されたという事実が認定されれば、裁判所でも当然却下にされてしまう。しかし、却下そのものが不通法であるという場合には、いまの裁判所の解釈は、不適法外であった、したがって、本案に入るべきであったというものであれば、それに対して却下という判断をしたことによって前置の要件を満たしたものといたしまして内容に入るというのがいまの解釈でございます。ことに審査請求の理由等について不備であるというようなことで従来却下された例もございまして、そのような場合は、審査請求の理由が不備であるかないかということは本案の内容であるということで、その場合には却下自体が不適法であるという解釈をとって、おります。したがいまして、却下された案件が期限を徒過しているというような明白な不適法でない限りは、却下そのものの不適法がまず判断される。その不適法が判定されれば、裁判所としてはそれが前置を満たしたものとして裁決を行ない、本案の審理に入るというのが現在の解釈でございます。
#97
○松井誠君 これは前置主義をとることには私は反対でありますけれども、どうしてもそれを維持していこうとするならば、その前置主義をとることによって出訴の道がなくなる、そういう意味では憲法違反の結果を生ずるという、そういうことをできるだけ少なくするような配慮が必要だ。そういう意味では、裁判所に行っていきなり却下されるような形にはなるべくしないような配慮というものがぜひ必要だ、こういうことを要望しておきたいと思います。
 それで、ちょっと忘れましたので、もう一ぺんもとへ戻しまして一つお伺いして終わりますけれども、九十九条の二項なんですが、「国税庁長官が当該意見を相当と認める場合を除き、」と、こういうことになっているわけですね。つまり、国税不服審判所長の意見としては審査請求人の考えどおりである、そう考える、しかし、それは法令の解釈と異なる、通達の解釈と違うというときに申し出る。申し出たときに、国税長官が当該意見を相当と認めなければ、つまり、審査請求人が主張する、審判所長もそれに間違いないと思うというときに、しかし国税庁長官がおれは違うぞということになれば、これはもう審査会にもはからないで自分で裁決ができるわけですね。――わかりにくいですか。不服審判所長に対して指示をするときには、条件が二つあるわけでしょう。指示をするときに国税審査会にかけるというのが原則のわけでしょう。しかし、例外の場合もあるわけですね。その例外というのは、「国税不服審判所長の意見が審査請求人の主張を認容するものであり、かつ、国税庁長官が当該意見を相当と認める場合」、つまり、例外の場合には条件が二つあって、一方の条件を満たされただけではだめなんでしょう。一方の条件が満たされた、つまり、審査請求人の主張を審判所長は認容はするけれども、しかし、国税庁長官はそうは思いませんよというときには、審査会は要らないのでしょう。
#98
○政府委員(吉國二郎君) これは「かつ、」でございますから、まず裁決の内容が本人の言い分を聞いているというのが前提であり、しかも、その内容を国税庁長官が相当と認めれば、これは審査会にかけるまでもない。ただし、国税庁長官はもっともだと思ったけれども、実は本人の主張をけっ飛ばしておるものであるということになりますと、通達の争いであるにかかわらず、審査会を経ずに本人の主張が退けられたことになりますから、この場合には、国税庁長官はいいわと思っても、どうしても審査会にかけるというたてまえをとったわけでございます。したがいまして、本人に不利な裁決をする限りは必ず審査会にかかる、こうお考え願ってけっこうだと思っております。
#99
○松井誠君 わかりました。
 これで終わります。
#100
○理事(青田源太郎君) 午後一時三十分に再開することといたしまして、休憩いたします。
   午後零時二十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時六分開会
#101
○委員長(丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、国税通則法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
#102
○横川正市君 先般の衆議院の大蔵委員会に提出された資料でまず最初にお伺いをしていきたいと思うのですが、不服申し立てを受ける立場で、この不服申し立てがどういう事案に基づいて不服というのが申し立てられるかとあらかじめ想定できる内容というものを持っておるかどうかの問題なんです。これはパーセンテージからいったらどのくらいのことをやればどのくらいのミスがあるのだというぐらいの意味でいいと思うんですが、たとえば人の問題でも、全員が全員優良職員だと思っていても、しかし実際にはその中からだいぶ意に沿わない職員が出てくるというような意味で、取り立てる側の国税庁では、これだけやれば大体どのくらいが不服を申し立てられる案件だと、こういうふうに考えておられるかどうかという点をまずお伺いしたいと思います。
#103
○政府委員(亀徳正之君) 昔、更正その他を乱発いたしたときには、納税者の方の六割、七割を更正するというとどういうところのどのくらいはね返ってくるかという大勢的な考え方を持ったことがありますが、近ごろは更正の件数も三%前後でございますし、むしろどういう異議申し立てがあるのかということをあらかじめ想定しておくという感じではございません。また、事実、課税問題は、個々の方々の置かれた状況が千差万別でありますごとくに、いろいろ異議申し立ての中身も千差万別でございます。ただ、こういうことは言えると思います。私たちは、いろいろ資料を、異議の申し立ての件数はどうだ、それから不服申し立ての件数はどうだという件数は掌握しております。しかし、個々の事案の中にわれわれの税務行政を反省すべき一般的な問題も入っていることがある。だから、税務署長とかそういう幹部が、異議の申し立てとかいうものを、ただ件数がどうだということでなしに、個々の内容にわたって、どういう事案、またそこから税務行政について反省すべき点はないかというような、何といいますか、管理者としての心構えというものはしっかり持っていってもらいたい、また、そういうふうに指導していきたい、かように考えております。全般的に申し立ての傾向はどらだといいましても、更正の件数も三%前後でございます。個々の納税者の方によって違いますものですから、あらかじめどういう場合が多いというそういうふうな感じではつかんでおりません。
#104
○横川正市君 実は、私は、不服申し立てというものを取り上げて、それの正当性あるいは理由のない問題というふうに論議をすることも当然必要なんだけれども、どういうところに不服というものが潜在をするのか、いわゆる不服申し立てをしなければいけないような理由の存在をする、そういう潜在しているところというのはどういうふうに判断をされているかという点を少し考えてみたわけなんであります。これは、率直に言って、国税庁長官は仏の何とかいら名前をもらっているそうですね。ところが、一面から鬼の何とかと言われないということもないという二面があるわけですよ。だから、私は、仏だけを見ないでやってみたら鬼の面もあるんじゃないかというので、じゃ鬼の面から仏の面をちょっとのぞいて見ようという気になったわけですが、たとえば国税庁長官という立場に立ってみれば、税を納めてもらいたいということですから問題がないですが、税を納める立場に立ったら問題はないかということなんです。幾ら給料もらいまして、そしてどれだけ生活費にかかって、どれだけ税金に納められて、そうして現状からいってみて税というものについてどういう考え方を持っておられますかというふうに第三者が聞いた場合に、いってみれば、取る側でなくて納めるという側にいろいろ問題があるんじゃないか。だから、納める側に立ってみてその行政をやるということになれば、どこに不服というものが潜在するか、それがどうすれば出てくるのか、どうすればそれに対して手続をすることができるのか、こういう点がもっと行政上の問題で手厚い手の尽くし方というものが必要なんじゃないかというように私は思うわけなんです。これは、税制調査会のあれを見ましても、その点は、ずいぶん納税者側の立場というものを考えていろいろな論議をされたということもあるわけです。それに基づいていろいろな租税体系が出てくるわけですが、そういう租税体系が出てきてもなおかついろいろな問題が出てくるが、それをどういうふうに不服として潜在している、こういう把握をされているか、これは私は行政をする立場の人の立場をお聞きする点では、ことに税は不平不満はたくさんあるわけですから、大切なことじゃないかというふうに思ってお聞きしたわけです。
#105
○政府委員(亀徳正之君) 御質問は、単に異議の申し立てだけに限らず、納税者一般の持っておる不満、そういうものがどこにあると思っておるかというお話かと思います。確かに、私たちの税務行政の一番大切なことは、われわれの運営方針の最初にも、納税者の身になってということを冒頭に掲げてやっております。しかし、どうしても先生おっしゃいますように、私たちの立場は、同時に徴税という面、税金を取るという立場にどうしても立ちがちです。それだけに、納税者の身になってということをやかましく注意しておるわけでございます。いろいろな不満は、率直に申して、税金は確かに基礎控除その他上がりましてだいぶ問題が緩和されたとはいいますものの、税率その他でまだ問題がございます。ちゃんとみんなが同じように取られているだろうかという、執行面で同じようにやられておるだろうか、どうも隣のほうは低いんじゃないかという公平感といいますか、というものが一番最初に出てくるのではないか。それからもう一つは、いろいろな不満の中に、調査を受けたときの態度がどうも初めから疑ってかかるような態度で調査を受けるというような、調査のあり方についての不満、それから、言い出せばいろいろございますが、よく聞きますのは、これはわれわれの不十分な点は反省しておるわけでありますが、取り扱い者によって言い方が違う、あるいは、たとえばあの人はこれは大丈夫だと言ったが、転勤しますと次の人が違うような説明をするとか、いろいろな不満が私の耳に入ってまいります。そういった意味で、ある意味では行政の統一性という点からも問題かと思います。言ってみますれば、不満は山ほどあるわけでございますが、大ざっぱに言いましていま申しましたようなことがおもなものではないかと考えております。
#106
○横川正市君 もう一つ、これは質問の一つの基本なんですが、実はこれはどういう状態になっているかというのがわからなかったので担当者に聞こうと思いましたが、担当者ではないらしいので、問題をかえて国税庁長官にお聞きするわけなんですが、たとえば個人の企業努力があって、そうして所得というものがあるんですね。ところが、いかに企業努力をしてみても個人差がある。たとえば金融面をとってみても、正規の金融ルートで金を借りる者もおるし、それから金貸し業の手を経ている者もおる。あるいは歩積みでよけいな利息を納める者もおる。高利貸しの金を借りる者がある。いろいろな金融面での努力をするという点が確かにあるわけですね。それからもう一つは、支払手形が在来半年なら半年がマキシマムなはずなのに、一年ものがあったり、一年半のものがあったりする。それは割らなければ生産ができない。だから、その場合には結局コストの中に入って企業経営が非常にむずかしくなるというように、経営努力の面ではいろいろな要素があって所得というものが生まれてくるわけなんですが、所得が生まれれば、たとえば両建てをしておっても、実はこれだけやみで払いましたということを言えば、次の金融に差しつかえる。あるいは金貸し業その他から金を借りて、そうしてこれは必要悪みたいなもので、いっときいっときと思っていて倒産なんかに結びつく場合がたくさんあるわけですから、これは存在の理由がないと思うけれども、そういう手だてをする。手形の割引をしてもらった。そういうように、所得の内容が本人は企業の面で非常に努力をしておるけれども違う、千差万別である。その千差万別を読み取る法律というものがないわけですよ。大体が法律というのは一律的なものですから。そういうものを運用する場合にどういう運用の仕方をしているのか、私はそういうところに不服申し立ての一つの潜在的な理由があるんじゃないかと思うので、その点の取り扱いは一体どうされておるかということを……。
#107
○政府委員(亀徳正之君) 形式的に申しますと、高い金利を払っておれば、その高い金利を経費として引くということで調整がとれるはずだと割り切っておるのですが、問題は、むしろそういうことよりも、金を借りて高い金利を払っておるのだけれども、どうも貸し主を言わない。言わないと経費として見ませんというような争い、問題というもの、そういう点をおっしゃっているのではないかと思うのです。これは非常にむずかしい問題で、私たちも、全く空に、おれは金を借りたからどうということをでたらめに言われても困りますし、やはり貸し主をおっしゃっていただけばこれは大いばりで引ける。そこで、少なくとも運用のあれとしては、確かに借りておることが何らか証明といいますか確認できるならば認めていいというところまでいっておりますけれども、何かちょっと言っていただきたいという感じではおるわけなんです。その辺が、いろいろ個別の具体的な実情で、そこを認める場合、認めない場合、この程度のことを言えば認めてもらってもいいんじゃないかという気持ちを持っておられる。その辺のこまかいところで若干――まあ大体同じように扱っていると思うのでございますが、若干のあるいは不満その他があるという場合があろうかとは思っております。いずれにしろ、なかなか相手先は言えないということに関連して、われわれ税務の調査その他で一番問題があることは事実でございます。
#108
○横川正市君 これは、結局、相手側を言えば、相手側が罰を食う。罰を食えば次の金融をしてくれないという問題がある。それじゃ所得はそのまま報告すれば、国税庁からがっさりと税金が取られる。両面からの問題がやはり存在をするわけですよね。実は、私は、法律が一律的に運用できないという面にこの不服申し立てを受けるそういう機関が必要なんじゃないかと、そういうふうに思うわけなんですが、そういう点の運用ではどういう取り扱いをされることが妥当だとお考えになっておるのですか。
#109
○政府委員(亀徳正之君) たいへん一般的な話でむずかしい御質問でございますが、確かに法律と通達でいろんな千差万別の事象を割り切るわけにはいかない、そこにどうしても調査に判断や何なりが働く余地が出てこようかと思います。また、その判断が署により場所により違うことがない、そのためにある程度通達を出しまして考え方の食い違いがないように指導しているわけでございます。そういう意味で、もしもそういう点が不備でございますと、通達をもう少しかみ砕いてこまかく出さなきゃいかぬという問題が出てくるかとも思います。また、事実、ちょっと抽象的な議論で恐縮でございますが、今度できます不服審判所その他で、いままでの通達では十分割り切れなかったという問題を、個別のケースを通じて、こういう場合にはこういうふうに扱っていいのではないかということで、不服審判所の裁決が一つの先例といいますか、あとの取り扱いの一つの慣行の先例になるというようなこともあるのではないかと、そういう意味で、今回の不服審判所の裁決なり何なりの持ってくる意味が重要になってくるのではなかろうか。また、同時に、不服審判所の設立の意義もまたそういうところに場合によれば国税庁の通達に拘束されないで処理し得るというところまで思い切って解決をしているというところに今回の法律の大きな意義があろうかと、かように考えております。
#110
○横川正市君 私は、いろいろな観点、さきに松井委員からも質問があった観点、あるいはいろいろな不服の潜在する多岐な問題、そういうものをいろいろ考えてみて、参考人の意見の中にもあったようですが、行政の一つの一元化された中で、まあ魚心あれば水心みたいなかっこうで審判をしたほうがより能率があがるんだという説明にちょっと納得しかねる、いわば第三者の純然たる機関があることのほうが、税というむずかしい問題を納税者の立場、もちろんこれは何も皆さんに悪い子になってくれというわけじゃないので、徴税の任に当たる人のそういう立場からいってみて、第三者機関が妥当じゃないかというそういう考え方なんですが、これはもう少しあとにもう一回思い起こしていただいて論議をしたいと思うわけです。
 そこで、衆議院の大蔵委員会で提出された「異議申立件数表」があるわけなんですが、三十八年から四十二年までの棄却がだんだんふえてきまして、それから取消・変更が少なくなってきているようなんですが、これは表があると思いますので、これの意味合いがどういうものなのか、ちょっと説明していただきたいと思います。
#111
○政府委員(亀徳正之君) いまの棄却と取消の数の趨勢についての問題ですか。
#112
○横川正市君 そうです。棄却がだんだんふえていますね。
#113
○政府委員(亀徳正之君) 棄却は、結局、納税者の方の意見が取り入れられないということで棄却されたものでございますが、確かに若干ずつそれがふえて、取消・変更すなわち納税者の方の意見が取り入れられる分の割合が若干減っているという傾向はございますが、ただ、たとえば四十年からの数字を見ましても、棄却が全体の二八・二%が、四十一年度には三〇・九%、四十二年度は三〇・三%、それから納税者の意向が取り入れられたものが四十年度は五〇・五%、四十一年度が四八・一%、四十二年度が四七・二%ということで、若干そういう傾向はございますが、急にこれで協議団の考え方が納税者の言うことを聞かなくなったとか、それほどの傾向――大体の感じといたしましては、納税者の言い分を聞くものが約半数、それから棄却するものが三割前後という傾向値は大きくは変わっていない。特にその間の動きに特定して原因がどうだというようなものはないように考えております。
 ちなみに、いま異議申し立てについて申し上げましたが、不服審査請求も似たような傾向でございます。
#114
○横川正市君 この取消・変更の場合ですね、これは全部が取消になっても、また一部が変更になっても、その欄のパーセンテージの中に含められると思うんですけれども、その場合に、たとえば一〇〇%取消あるいは変更、あるいは一部分取消・変更という、こういうあれがあると言うんですが、そういう内容はどういう事情になっておりますか。これは詳細といえばあれですが、概略を……。
#115
○政府委員(亀徳正之君) 全部取消と一部取消の区分をきっちりとりましたのは四十二年度分しかないのでございますが、四十二年度分で申し上げますと、異議申し立ての場合は、全部取消が一八・九%、それから一部取消が二八・三%、合計で四七・二%、それから審査請求では全部取消が一四・二%、一部取消が二三・九%、合計で三八・一%、かようなことになっております。
#116
○横川正市君 自分で取り下げた場合と却下された場合とでは、取り下げた場合には全く自主的な判断によるのか、却下の場合には、第三者が入って相談した上でやられるのか、あるいは、事務当局がそのまま審査の結果却下するということにするのか、その点はどういう取り扱いをしておりますか。
#117
○政府委員(亀徳正之君) 却下は、いろいろその異議の申し立てをする期間を徒過して言ってきたからというような形式的なことで却下される場合が多うございます。取下につきましては、御本人がやはり取り下げられた場合で、よく無理して取り下げろと内面指導したのではないかと、こう疑われる向きがございますが、同時に半数は処分を取消・変更いたしておる事実からいたしましても、無理して取り下げさせるというようなことをやっておらないということが裏から御理解していただけるのではなかろうか、かように考えております。
#118
○横川正市君 これは、いろいろ取り扱いに万間違いがないということじゃなくて、私どもは、当局に対して、それから当局はまた納税者に対して、一連とした信頼関係というものがなくて、お互いに不信関係というものがあって、そしてずいぶんお互いに無理をするような点が出てくるんじゃないかと思うのですが、こういう調査をしたことはないのですか。たとえば、前年度異議申し立てをし、相当いろいろな論議をやって、早目に取消なり、あるいは却下なり、変更なりをしたと。そういう事案は、翌年度のいわゆる課税の額がふえたとか減ったとかいうようなものは、事実上調査資料にはないですか。
#119
○政府委員(亀徳正之君) 特にそういう観点に立って調査いたしてはおりません。
#120
○横川正市君 これは、あなたの名誉のためにも必要な資料じゃないかと思うんですよ。なぜかというと、これはなぜ出さないかという大きな原因ですね。たとえば自主的な取下といってみても、これは親切に相談所の窓口でいろいろ相談をした結果どうということじゃないわけですね、一回審査をしたものは。そうすると、問題がある。その問題のあるうち大体一八%――二〇%近いものが自主的に取下をいたしましたということの裏づけにもなるわけですが、実際は、同時に半数以上が取消・変更ということになるわけですから、その結果として翌年度一体どういうふうになるか。八〇%はだんだんみんな減っていますといえば、これはみんな異議申請するということになるし、翌年度は実は八〇%以上ふえていますということになれば、これはどうも出したほうが損じゃないかということにもなるんじゃないかと思うのですがね。そういういわば翌年の、これはやるかやらないかは別問題として、その人たちの納付されている税額は一体どうなったかというやつは一応検討してみる必要があるんじゃないかと思いますが、どうですか。事務的に繁雑で、する必要がないということですか。
#121
○政府委員(亀徳正之君) なかなかそういう資料を克明にとることはむずかしいかと思いますが、ただ、午前中にも私ちょっと申し上げましたように、こういった取下なり棄却なり、こういった件数だけをながめるのでは問題の所在がつかめない。これは庁で全部計数的に集めるというのはたいへんだと思いますが、少なくとも税務署の段階で、あるいは署長なり課長なりの部下の仕事のしぶりに対する判断としまして、取下がありましたときに、その内容はどういう事情であったか、あるいは棄却の場合の中身はどうか、どういう点が問題だと、また、どういう点でわれわれの決定を取消なり変更しなければならなかったのかという個別的な事情を管理者は的確に把握いたしまして、自分の行なっている税務行政のやり方なり何なりについて判断の指針を得るという心構えが必要ではないかと思います。そういうことを注意する意味でも、若干の取下なり、棄却、取消、そういったものの原因をサンプル的に調べるということを庁なり局の段階でやることも、管理者にそういう観点からいろいろの問題を見させるという意味であるいは必要かと思いまして、今後検討いたしてみたいと考えております。
#122
○横川正市君 「不服申立ておよび訴訟の件数について」という表があるわけですが、それで見ますと、三十八年を一〇〇として、四十二年は、異議申し立てば一二七、審査請求は一七〇ですね、この件数表で見ますと。一審で国民が承知をしないというのがだんだん多くなる傾向にあるわけですが、これと、さらに訴訟事件は三十八年に比して四倍ぐらにはなってきているわけなんで、これは、前段の理由と、それから後段の所詮事件についての件数の四倍近い増加ということは、これはどういうふうに見ておられるかという問題なんですが、たとえば国民の税に対する意識が非常に高まって、その高まった結果がこういう数字になったという見方とか、あるいは税そのものに非常に不平不満が多くて紛争が多くなったのに比例して多くなってきたためとか、いろいろそういう見方もあるのじゃないかと思うのですが、その点は一体どういうふうになっているかですね。
 それからもう一点は、法律関係の争いであるのかあるいは事実関係の争いかという、そういう実態についてはどういうふうな区分をしているか、これは先ほどもちょっと聞かれていたようですが。
#123
○政府委員(亀徳正之君) 確かに、訴訟自件は相当ふえております。私たちは、これは、国民の方々に権利意識が高まっていることが、だから、訴訟を起こすとめんどうだというようなことでなしに、ほんとうに争いがあるなら訴訟にまで打っていって争おうではないかという気持ちが強くなってきているということが一番大きい原因ではなかろうかと思っております。ただ、四十二年度それからその次の年にまたがりまして六百件近くございますのは、裁決不作為の違法確認訴訟と申しまして、協議団で、裁決を、若干おそうございましたために、裁決を早くしなさいという意味の訴えが集団的にまとまって出ましたものが六百件以上ございますので、また、それは、後ほど裁決をいたしましたために、同時に四十三年度において大きく理由がないということで却下の要因になっているようでございますが、そういった特殊なものも加わっていることをつけ加えて御説明いたします。
#124
○横川正市君 法律関係で争われたか、事実関係で争われたかという点はどうなんですか。
#125
○政府委員(亀徳正之君) 大体は、客観的に申しまして、法律関係よりも事実関係が多いかと思いますが、同時に、いろいろ法律関係と事実関係と相からみ合って問題になっている。法律関係が問題になりましても、必ずそこに事実関係もからんでくるということで、さい然と法律関係、事実関係と区分して計数を整理することもちょっと困難ではございますが、総じて言いますと、やはり事実関係の問題が多いということが言えるかと思います。
#126
○横川正市君 法務省の廣木さん、これは、資料の中にも、また、参考人の意見の中にも一部あるわけなんですが、裁判所の受け入れ体制について、不服申し立て前置がないと裁判所側がたいへんであるから、裁判所側でその処理能力の現状からいってみてどうも早期に解決をすることがむずかしいという意味の意見や答弁が先般もあったわけですが、裁判所側としては、この種の事案についての処理能力といいますか、そういう現状はどうなっているかということを実は聞きたいわけなんですが、裁判所の人がきょうちょっと出られないようで、かわりに法務省からというので、これは的確に答弁できないかもわかりませんが、ひとつできる範囲内でお答えをいただきたいと思います。
#127
○説明員(廣木重喜君) ただいまの点で、税金事件につきまして、この訴訟がどの程度審理期間がかかっておるかという点については、それ自体の統計的なものはございませんが、大体、民事、行政、税務、この三種とも国の場合は普通の民間の民事事件よりも相当時間がかかっておるということは言えると思います。と同時に、国の事件で、民事、行政、税務その三様ともそう審理期間に特段に違いがあるようには思われません。そこで、昭和四十二年に判決が出ました総件数につきましては、どれくらい審理期間がかかっているかということを見てみますというと、その年間に六百五十の判決がございましたが、半年以内には百二十六件すなわち二割ぐらい、一年以内にさらに百四十一件、合わせまして四割が一年以内に片づいております。さらに、二年以内を合計しますと四百十四件、六、七割、さらに三年以内に四百九十五件、約八割のものが片づいておるということでございまして、税金事件がこのうちどの程度の審理期間を要しているかということそれ自体の資料はございません。以上でございます。
#128
○横川正市君 どうしておくれるのかということはちょっと聞いてもあれでしょうが、国税庁側では、どうしてこれがおくれているかという原因は、向こうの事務停滞ですか。そうでなければ事実上あまり感じられないんですがね。あるいは、疎明書類がどうだとかこうだとかいら話が出るだろうと思う。事実問題が明らかでないとか、国税庁としてはどういうふうに見ていますか。
#129
○政府委員(亀徳正之君) 裁判所の問題でございますので、何が原因でとかというようなことを言うのはちょっと僣越のような感じがいたしますが、何となくやはり訴訟に持ち込むと時間がかかるということがこの税の場合にも当てはまるような気がいたすわけでございまして、これは裁判所側の方に的確にお答えいただくほうが、われわれが何だかんだと言うのもどうも僣越なような気がいたしますので、ちょっとお許しを願いたいと思います。
#130
○松井誠君 ちょっと関連をしてお伺いしたいのですが、私の聞いているところでは、この税金の訴訟――税務訴訟というものがおくれるのは、行政庁のほうで処分の理由になかったことを新しく主張をし出す。しかも、裁判がだんだん進行して――いつでも出せるということになっていますから、進行してどたんばになってから新しい主張を出す。また調べをそれについてやらなければならない。そういうことがおくれておる一番大きな原因だ。これは何も納税者側の意見ではなくて、大蔵省や国税庁あたりの人の書いたのもそういうことが書いてある。ですから、一応制限をすべきじゃないか。原処分のとき以外の理由を主張することは差し控えさせるべきではないか。主張の制限というものを考えないと、遅延をしている最大の原因というのは除けないのじゃないか。そういう議論が役所の中にもあるのじゃないですか。
#131
○政府委員(亀徳正之君) 私はちょっと訴訟法に弱いのでございますが、訴訟というのは裁判でのお互いの争いで、いかに有利な時期に証拠を出して争うかという、けんかと言っちゃ悪いのですが、争いでより有利に持っていく。これは、逆に、納税者の方のほうも、いつ証拠を出したほうが有利かということで、相見互いというか、一方だけ手を縛ってさあけんかしろというのはやはりどうも……。お互いに公正なフェアプレーで争い、そして真理を追求するというのが裁判所の場ではないか。そういう意味で、ちょっとわれわれのほうだけがおくれる原因だと、こうきめつけられるのはどらかと、私はさように考えております。
#132
○横川正市君 廣木さん、この訴訟費用は大体どのくらいかかっておりますか。
#133
○説明員(廣木重喜君) いまおっしゃいました訴訟費用と申しますのは、訴状の添用印紙とか、答弁書の添用印紙とか、訴訟物の価格によって訴状の添用印紙はきまるわけでございますが、税務署のほうに関しましては、答弁書に添付する印紙というのはわずかでございます。それからほとんどの書面は直接法廷でお渡ししますから、いわゆる送達費用というのもほとんどかかっておりません。それから証人の喚問に要する費用は、これは法定されておるとおりでございまして、さほどかかっておりません。したがって、訴訟費用を原告あるいは被告に負担させるという判決がございますけれども、その費用というものは、おしなべて千円程度じゃないかと思います。
#134
○横川正市君 これは結局争う立場で、勝つことのためにいろいろな手だてを講ずることは、これは当然両者に許されたことですから、やることについては問題ないのだが、一年半以内くらいで解決する、そういう時点のめどならば、新事実といいますかそれが提起されることにはちょっと文句をつけようがない気がするけれども、二年、三年となってくる中でどういうような新事実が発見されたかという何か具体的な例があれば、たとえばこういう案件についてということがあれば……。しかも、全体のパーセンテージとすれば、全体の二割は三年以上残るわけですね。件数にして一件とか二件という特殊な件数ですと問題ないのですが、大体四割が二年以上残って、三年以上が二割残っている、そういう事実があるわけですが、国側が負けるのは困るというメンツ上のことで引っ張っていられるとすれば非常に迷惑だと思いますね。
#135
○政府委員(亀徳正之君) 具体的な案件で一年たち二年たって新しい事実をやって争っておる場合があるかどうか、いま突然の御質問でわかりませんが、やはり事案によってはどこまでも争わなきゃいかぬというケースもございますので、その点はわれわれもやむを得ずして争っている場合も率直に言ってございます。個々具体的なケースをお示し願いますと、いろいろ話は具体化するわけですが、ちょっと……。一般的に申しますと、われわれもがんばらなきゃいかぬところはがんばると、こういうふうに抽象的にお答えするほかはないかと思います。無理してわれわれが引き延ばして、意識してじゃまするんだというような考えは毛頭持っておりません。
#136
○横川正市君 仏の亀徳さんにそういうあれがあるとは思わないけれども、しかし、大体多いのじゃないかという気がするんですよ。たとえば、特殊な例で、判例の争点が出てきたとか、いろんな根本問題に触れるようなことならば、これはもう当然とことんまで争われることは、これは当然あってしかるべきだと思うんですが、いまの報告の案件からいってみて少し長いのじゃないかという気がするし、その長くしていることが新たな新事実の提出によるんだということになりますと、そんなに新事実の提出というものが次から次と出てくるのかどうか。そうすると、その点がちょっと理解しがたいわけですね。
#137
○政府委員(亀徳正之君) いろいろなケースはございますが、たとえば査察に関連しました税務訴訟、その中で債権がほんとうにあるのかどうかということで民事の問題との関連も出てくると思います。そうすると、民事のほうが……。どうも、要するに、民事と刑事が相からんで双方足を引っ張り合っておそくなっているようなケースもございます。それから新しい事実と申しましても、そう何も次々に何度も出してくるというのじゃございませんで、そう先生おっしゃるほど多いものとは考えておりません。ただ、一審では負けた、そうすると今度第二審はもう少し違った角度から主張すべきじゃないかといってその点を補強して主張するということはあるかと思います。
#138
○横川正市君 国が負けるということは絶対ないんだというそういう何かでもって根掘り葉掘りいろんな事実を出して争ってというふうには、私どもそこまで勘ぐっているわけじゃないんだけれども、しかし、事実が新たに発見される、あるいはためておくかもわからぬ、あるいは小出しにしていくかわからぬけれども、それほどたくさんあるものかどうかということなんですよ、税の争いの中で。たとえば民事で争っていて、それが解決しなければこちらも解決しないし、それが明らかにならなければこちらが疎明できないという相関関係があっておくれている、それにしては少し件数が多過ぎはしないか。パーセンテージからいって、三年以上は二割、そういう点です。
#139
○政府委員(亀徳正之君) これは二年なり三年なり延びている具体的な事件についてなぜ延びているかというような御説明をすることが一番的確かと思いますが、そのためには、判決を読んだり、いろいろこまかく聞かなければいけませんので、ちょっとその点はお許し願いたいと思いますが、率直に言って国も最近いろいろ負け出しておりまして、しかも、それが税務の運営の基本にかかわるような問題で負けて、特に地裁第一審で近ごろなかなかわれわれの苦労がちっとも御理解願えませんで、非常に観念的な、理屈一方で判決されて実は困っている例がむしろ多いわけでございます。国は絶対負けないんだなんていう大それた気持ちは持っておりませんで、むしろ近ごろの状況では若干戦々恐々というような面、いろいろなケースでむしろ心配しているような状況でございます。
#140
○横川正市君 それとはちょっとまた違った面がこの資料で出ているわけですが、たとえば裁判における取下件数なんですが、昭和四十二年において四九・六%ですね。これはここまで行って取り下げるというのはどういう意味を持っているかですね。あるいは、これは全体としては半分にも近いものが取り下げられているわけなんですが、内容はどうでしょうか。三十八年で三六・八%、三十九年が三八・二%、四十年が四八・八%、四十一年はちょっと下がって四三%、四十二年が四九・六%、大体半数以上が取り下げになっておるわけなんですが、これは取り下げの理由がわかるでしょうか。わからぬければ、国税庁にお伺いします。
#141
○政府委員(亀徳正之君) 異議の申し立ての取下につきましては、われわれよく……。これは裁判所での話でございますので、私たちとしましては、この訴訟の取下というのは、いわゆる訴訟の経過中に、国側の主張に比べて納税者の方々の原告側のほうの主張にどうも自信がない、このままやるとどらも負けそうだということで取り下げられたんだろうと思うわけでございます。
#142
○横川正市君 これは、結局、長くかかって根負けをするという点もなきにしもあらずで、裁判所からすれば、千円くらいなら別に大した負担ということはないんだけれども、結論がおそいということが一つの問題じゃないかというふうに見えますね。そして、問題をおくらせておるのは国側である、納税者の権利というのはどうもここはいささか無視されるほうが強いのじゃないかと資料上から見て感ずるわけですが、これは間違いでしょうか。
#143
○政府委員(亀徳正之君) どうも、私たちの立場から見ますと、これは双方がそういうことを思い合うのかもしれませんが、どうもわれわれの立場がよく理解されないというようなケースもありまして、国側がごりごりがんばっているからすべてがまずいんだということはないんで、やはり訴訟では国も平等の立場で争うわけでございまして、先生おっしゃるようなことはないものと私は考えております。
#144
○横川正市君 経済面での一番オーソリティの大臣にこういう問題の解明をしていただきたいのですが、高度成長という成長のあおりで生活費が相当高まっていきますわね。それで、所得と生活指数が毎年の物価その他の値上がりによって均衡がくずれていく。くずれていくけれども、税率は変わらないから、生活費が非常にかさむけれども、所得にかかる税率は一定しているので、納税義務というものはその点から押しつけられる。そういうような税の面から見て、高度成長というのはどういう作用をしているのかという問題を御説明いただけませんか。
#145
○国務大臣(福田赳夫君) わが国がいま問題としておる大きな問題は、社会資本、つまりわれわれの共同の施設が足りない、こういうことだろうと思うんです。税は、その共同の施設をやるための財源ですね。そういうことで、納税思想というか、そういうものについては大いに理解をしていただかなけりゃならぬと、こういうふうに考えております。いまの御質問の趣旨がよくわかりませんけれども、そういうふうなことで納税というのはこれからもますます多くなる傾向を持つ、社会資本を充実すると、こういうことですから。そこで、税の負担感というものが出てくるわけですが、それをどういうふうに緩和していくか、これが政治だと、かように心得ております。
#146
○横川正市君 これは具体的に出し入れする財布を預かっている人の立場で考えた場合、一面はこういう点が反省としてはあるんじゃないかと思うのは、当然納められなければならないものはあらかじめ用意しておいて、そして納めていくのが、これは納税者の立場で一番いい方法だし、大蔵大臣に一番歓迎のされるやり方だと思うんですね。ところが、生活の必要出費というものは、その余地を許さないほどにいろいろな出費が重なってくる。それが出費と所得との間に不均衡が来たされてきて、それで納税関係についてだんだん苦しくなってくるというようないわば家庭経済というものを私どもは非常に感知し始めたんじゃないか。そこにサラリーマン減税というような問題が急激に盛り上がってきた原因があると思うんですよ。私はこう思っているわけです。税というのは公平でなければならないし、それからたとえば税率の高い安いというのは、政府サービスが行き届いたか行き届かぬかによって二〇%がいいか三〇%がいいかという問題は当然あると思うから、政策的にいえば実は税率がある程度の水準を維持しながら政府サービスが行き届いて、そして生活その他が安定するということのほうが一番いい政治じゃないかというように思うわけなんです。そうなってくると、いまのような社会資本とか公共投資というものがもっと充実されてくることを前提条件として税率の問題が考えられてくる。同時に、納税者の立場からすれば、必要経費の控除というものをもう少し広範に織り込んでいって納税者の負担というものをその面から軽減していくという、いわば三方にらんだ政策があっていいんじゃないかと、こういうふうに私どもは思うわけなんですよ。ところが、いまは、納税者に対しての政府サービスはそれほど行き届かないから、その面からは非常に重税感というのが一つある。それからもう一つは、物価の上昇に伴って出費が必要以上に高いから、税負担を非常に重く感ずるというような傾向が出てきているんじゃないかというふうに思うのですが、その点は大蔵大臣はどうしますかということをお聞きをしているわけなんですが……。
#147
○国務大臣(福田赳夫君) 必要経費の点は別として、その他の点は御所見は私も同じように考えております。ただ、必要経費というのは、いまかなり見ておる、こういうふうに判断しておりますが、これが必要経費の見方なんというのが問題になりまして争訟案件ということにもなりますけれども、とにかく当局としては十分見ておる、かように考えております。
#148
○横川正市君 これは後日また木村さんにでも徴税と財政の問題について論議してもらいたいと思うんですが、そこで、この法律案の八十四条五項と八十九条二項に関係する、最近大阪地裁で六月二十六日に更正決定の証拠書類を納税者に見せよという問題で判決が出ているわけですが、これは国税庁側はどう考えるか。これは控訴するわけですか。
#149
○説明員(川村博太郎君) 閲覧請求に関する訴訟のお話と思います。これについての判決は昭和四十四年の六月二十六日にあったわけでありますが、これにつきましては七月八日に控訴いたしました。
#150
○横川正市君 これは、どうせ争われているわけですから、これ以上触れることはやめましょう。
 それから百二十六条の罰則に関係して、先般佐野さんが質問をしましたが、東京地裁で六月二十五日に、「税務署の調査拒否しても一律には罰せぬ」ということで、質問検査権についての罰則が問題になっているんですが、これは国税庁側ではどういうふうなお考えか、その内容をあわせて御説明いただきたいと思います。
#151
○政府委員(亀徳正之君) 先生おっしゃいました一つは、六月二十五日の荒川の事件だと思います。これは対象は白色申告者でございますが、税務署側が何回も調査に行きましても質問に応じてもらえない。納税者の方ばかりじゃなしに、何人かがわれわれの調査にどうしても応じられない。また、仕入れ先も言わない。それから取引先も言わない。それから旋盤か何か小さい工場を経営しておられる方ですが、調査に行きましたら、工場でどの程度の規模で作業を進めておられるのか、いろいろなことを拝見したいわけですが、工場を見てはならぬということで調査を妨げられたというようなケースでございまして、裁判所の判決は、ともかくなんでもかんでもすぐ罰金をかけられるんじゃなくて、罰金をかけるについてはそれ相応の、とにかく調査に応じなかったからすぐ罰金をかけるというものじゃなくて、何と申しますか、罰金をかけるだけの具体的な状況がなければいけないという判断でございますが、具体的にそこの周囲のそのときの状況というものは、そういうような抵抗を見せましてはわれわれも調査ができないので、私たちは罰則が適用できる状況であると考えておるわけでございますが、裁判官は、そこまでの状況ではないんだという判断で、そこの判断の食い違いはございますが、私たちは、そういう状況で罰則はかけられないということではどうも困るのではないかということで、これまた控訴いたしておる次第でございます。
#152
○横川正市君 これは松井さんの質問の中で行なわれたことですから深くは触れませんが、ここで一つだけ問題なのは、税金というのは相手側のふところからねじりとってでも取るものだという考え方を相手側に持たせしめるような行為といいますか、これはあなたたちが持っているというんじゃなくて、第三者が納税者の立場に立てば、取られている、どうやっても持っていかれてしまうというような感じというものを相手側に与えている事件ではないかという点が見受けられるわけなんですが、たとえばこの人は民主商工団体に入っているといういわば潜在的なものが税務署の中にあるかどうかということですね。それと、この種の件で家族でやっている町工場に税務署員と警察官とが共同して踏み込み調査みたいなものをやらなければいけないような強制的なものが必要であったかどうかということですね。拒否されたというけれども、そういう点では、もう少し具体的に、たとえば前年度と本年度との申告の内容あるいは調査の内容について、税額が著しく違っているけれどもそれはどうなのかというような意味のいわば税相談のようなかっこうをかけて持ち込められる内容のものじゃないかというふうにも思われるわけなんですが、判決では、たとえば訴えの中の民商の組織を破壊するでっち上げ事件という点は裁判官は取り上げませんでしたが、そのほかの点は、およそこの被告側が無罪になるという案件なんですが、国税庁長官は最近負けている案件があるという話をされているけれども、その負けるということは、国の側の立場でまずい点といいますか、もっと他に施すべき方法というものがある、それを行なわないで直接行動に移すという点があるんじゃないかというふうに思われる点もあるわけなんですが、一番問題なのは、国税庁の中にこの案件を専門的に扱っている部署があって、そしてまた、国の代弁者になる弁護士さんもいてこの案件を専門的に扱っているという場所で争われているのだろうと思うのですね。だから、だれかが突然任命されてこの事件を扱うというようないわば一般の人たちが適宜弁護士とか代理人を選んだということでなしに、専門的にこれを扱っている部署と人手とそれから担当の弁護人というふうにあって、それが対決しているから、最初からこの問題を見ているときには国側の体制のほうがりっぱでそろっておって、そしていわば無法とか非合法とかと言われている側というのはおっ取り刀のような状態というか、初めは感情的に税に対する不平不満というところから発足して対峙をする。だいぶ格が違うのじゃないかと思うんですよ、実際は国と個人の。それでもなおかつ負けたということに私は問題があるんじゃないかと思うのですが、どうですか。
#153
○政府委員(亀徳正之君) やはり、この事件は、具体的な事実に即してお考え願わなきゃいけないと思います。その前に、先ほど先生が、いやがるところから無理して金を取ってくるのがわれわれの立場というような感じで強くおっしゃいましたけれども、私たちの立場から言えば、逆に納税者の方も、所得あるところに税法に従って税金を納めていただかなければならぬわけでございまして、必要なときには調査に応じていただいて、そしてその過程において真実はどっちが正しいのかということですなおに話し合うという場をつくっていただかなきゃいかぬと思うのでございます。にもかかわらず、具体的な事実は直税部長から答弁させますが、その具体的な状況は相当激しいものがあるわけでございます。たとえば先日岩動先生がちょっと御質問になりました盛岡の場合には、公務執行妨害で告発せざるを得ない、こういうケースも実はあったわけでございまして、抽象的におっしゃいますのでなくて、具体的な事実に即してどちらがどうであったかということを御判断願いたい、そういう意味で直税部長から説明させます。
#154
○説明員(川村博太郎君) 先生のいまの御質問で、被告側がむしろおっ取り刀で相対したのではないか、原告側は、何といいますか、ゆう然と余裕十分で構えておるのではないかというお話でございましたが、これは刑事事件といっても所得税法違反でございまして、むしろ検察庁がこれに入りまして国税側は告発をしたというにすぎない事件でございます。一般に民事事件の場合で申し上げますと、国税局に訟務官というのがございますが、これは最近訴訟事件が多発しておりますので、それこそゆう然と仕事ができるような環境ではございません。
 これは補足して若干申し上げておきます。この六月二十五日の東京地裁の判決でございますが、そういったゆとりがあっておるにもかかわらず判決で負けている、そういうような御意見で、不思議ではないかというようなことにつきましてお答えいたしますと、むしろこの判決は、かなり事実誤認と申しますか、税務調査の実態を御存じない基盤で出ているのではないかということを感じているわけであります。問題は、この調査は白色申告者に対する調査でございますが、相手側は、所得の計算内容について、たとえば申告書上も十分の資料はもちろんない。したがって、税務当局といたしましては、相手方の帳簿についての収支の基礎資料を質問する、あるいは相手方の取引先を聞くことによってその反面調査を通じて所得を調査していくという以外に調査の方法がない、そういう事案でございます。白色申告者の場合には往々にしてこういう事案は多いのでございますけれども、そういう状況であるにもかかわらず、判決は、調査にあたっては、調査の内容、目的等について十分相手方に説明した上でなければそういった一般的な調査権限は行使できないのだというような判決になっておるわけであります。それで、もしそういうものに対して調査をしたがったら、それは犯則調査の原則に従って令状をとって行けばいいじゃないかというような判決内容になっておるわけであります。
 先ほど申しましたような白色申告者の実態、それに対してどういう調査をしなければならないかというような問題、そういう問題と同時に、一々そういう少額の所得者に対してまで裁判所で令状をとって調査を行なえというような判決の内容は、いかにしましても納得するわけにいかないような内容を含んでいるとわれわれ考えるわけでございます。したがいまして、そういうことで控訴をいたしたわけでございまして、判決の内容をよくお読みいただきますと、これではとうてい税務調査ができない、結局、国の財政上必要とする資金というものを税金ということで取っているわけでございますが、そういった財政権というものが執行できないということがおわかりいただけるのではないかと思います。
#155
○横川正市君 まあ、言ってみれば、法律とか権利とか何々権とかというようなものから比べてみて、町の家内労働をやっているようなちっぽけな者から赤子の手をねじるようなかっこうで税金をむしり取るような印象を実は与えていないかということを私は感ずるわけなんですけれども、結局、筋道を立てれば筋道は立つけれども、やった行為というものはやっぱり弱い者いじめじゃないか。国はもっと別に何か方法というものがあったのではないかと言われるようなことは別の方法をとるべきではないかという気がしますね。ことに、何かのあれじゃないけれども、一文銭を拾うためにたいへんな金を使う、いまどき語り草になっておる何とかというさむらいの話があったけれども、ここで納められた税金のために、警察は動員する、税務署がやる、裁判にはかける、そういうことまでして筋道を通していかなければ国の税金を取り立てる筋道が立たないものかどうかということは、その点はもっとあれじゃないかと思うんです。これは大臣にも聞いてもらいたいが、いまの青年なんかこう言うんです。たとえば路上にすわり込むでしょう。そうすると、おまわりさんが道路交通取締法違反だから逮捕するぞと、こうやる。そうすると、青年たちは、おまわりさんに、佐藤内閣総理大臣は憲法違反をやっているのになぜつかまえないのか。ささやかな道路交通取締法で何で逮捕されなければならないんだという、そういう理屈を相手側に言わせるようなことは、これは決して政治の本質じゃないと思うんですよ。やはりこれは筋道を立てて折り目を正した政治の中ではじめて納税者は納得して税金を納めるということになるわけで、この案件もそうだけれども、大体、税金関係で地域に一つの団体ができるというのは、やはり、税がひどいとか、不平だとか、不満だとか、これじゃ困るということが一つの反感になってつくられるのだから、そうでなしに話し合いでやっておれば、何も団体をつくって抵抗するというようなことはやらないだろうと思うんですよ。これが何の理屈もなしに団体ができるとお考えになっておるとすれば、それは間違いだと思う。こういう問題が起こって、国の側にとって筋道を立てるためにやっても筋道にもならないのじゃないか、ということよりも、もっと税の問題についてはよく相談をするというふうな面の強化をし、何回もその問題にひとつ手を尽してもらう。この一番初めのこじれは何かというと、人間は感情のものだから、いたけだかに来られると、何くそといって反発したところから来ておるわけですね。長男坊の人が最初に来た税務署の署員の態度その他に憤慨した、そこからずっとエキサイトしてこういう事件になってきておる。最初の税務署としては、取るものを取ればいいんで、ソフトであろうと何であろうといいわけで、そういうことをやはりもっと日常の行政面でやるべきだと思う。しかも、相手が三井とか三菱とかいう大きいところとけんかするんなら国も別にどうということはないけれども、小さな町工場の家内労働でやっておる者とけんかをやって、そうして、亀徳さんじゃないけれども、負けましたと。これは税体系がどうだ、税行政がどうだという大それたものかどうか、その点は私たちの立場から見ればちょっと納得しかねる問題だと思う。しかし、これはさらに控訴してやろうというわけですから、これ以上いい悪いを言っても、いずれは裁判官の判決にまつにしかずと思うので、あらためてあれはしませんけれども、しかし、これは争われるけれども、これと同種の問題が多発するということは、これは税業務というものに大きな支障になる問題だと思うんですね。先ほど、権利意識かそれとも紛争かと私聞きましたが、権利意識ということよりか、いじめられていじめられて抵抗をするということのほうが多いので紛争が多いんじゃないかと思う。こういうふうな気持ちを持っておりますが、この点は、私の言い分が無理な点があって、あなたたちのほうが全く正しいということならば、聞くに及ばずですよ。しかし、これからの体制の中で、なるほどそういう面もあるかということならば、ひとつ十分検討してもらいたい問題だと、そういうふうに思います。
 予定の時間ですから、あとたくさん残しておりますがそれで終わりたいと思いますが、先ほど一番最初に触れましたように、行政の一体化の中で取り扱ったほうがいいという意見と、それから純然たる第三者、しかもそれは司法ではなしに行政の中の最大の形態としての不服審判所のあり方という問題で何人か論議をされたことですから、これは私どもの考え方は前者の質問と同じなので、この点も取り扱いの面で考慮できる点は、衆議院の附帯決議もあるわけですから、十分御考慮いただきたいと思います。あとで参議院側も附帯決議をつけたいと、こう思っておりますが、その点は十分御考慮いただきたいと思います。
 最後に、一つだけお聞きをいたしておきたいと思うんですが、この協議会から審判へ移行する移行の仕方なんですが、いわば機構的には新たなものができるんですが、内容的にはたとえば第三者を何人か入れるというようなことが変わった内容だと思うんですが、職員とか何とかそういった方はどういう移行の仕方をしていくのかということと、もう一つは、この人たちの身分の問題なんですが、たとえば納税者側から否認をされたときは罷免権というのがあるのか、それとも、いま言っておるように、国税庁が、いわゆる国側に不利な判決をするからこれはやめろというような面で、一体身分の保障というものがあるのか、最大にこの機関というものの公正を期すための担当の人たちの身分の問題、いわゆる機構に移行する内容と身分の問題について質問をして、私は終わりたいと思います。
#156
○政府委員(亀徳正之君) 身分の点は主税局長に譲りたいと思いますが、構成をどうするか、また、移行にあたってどういう考え方であるかという点をまず申し上げたいと思います。
 この法案が成立してから具体的な問題に入るわけでございますが、所長とか首席審判官、特に所長の方などは、大臣の御意向を十分――大臣が直接任命されると同じようなお気持ちでやられると考えておりますが、単に税に詳しいだけでなしに、いろいろ識見豊かな人を外部から迎えるべきではないかと考えております。それから審判官についても、極力民間から任命するという方向で考えたいと思っております。ただ、これも何名採るということをあらかじめ想定するということは非常に困難でありますので、その点はそういう方向で極力努力するというお答えにいたしたいと思います。それからもちろん部内職員で審判官になる者も出てまいると思いますが、これは今後独立性を高めるという意味でも、審判官については、ずっとあと審判所にいて働いてそこで骨を埋めるという人を選んでいかれるべきではないか。ただ、副審判官、審査官という方は、全くその交流を閉ざすということは、かえって人事上気持ちが停滞するような面もございます。また、事実問題を調査したり走り回ったりすることがいろいろ多うございます。その辺はやはり税務の実務というものをある程度知った人々が必要ではないかということで、副審判官、審査官というクラスにつきましては、ある程度人事の交流というものを考えざるを得ないのではないか。しかし、最後の断を下す審判官以上は、民間人をも含めて広く人材を登用するという考え方でいきたいと、かように考えております。
#157
○政府委員(吉國二郎君) 国税不服審判所長以下の身分の問題でございますが、これはやはり国税審判所長も国家公務員でございまして、法律または人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して降任され、休職され、また免職されることはないということは当然でございまして、判決内容によって身分上のことで国税庁から干渉を受けるというようなことは絶対にないということを申し上げておきます。
#158
○多田省吾君 わが公明党でも、最近、税制総点検ということで、所得税あるいはサラリーマン減税等に対しましては一応の成果を発表したわけでございます。税制全般に関して調査を進めていきますけれども、本法案についてもやはり納税者の立場から大きな関心を持たざるを得ないわけでございます。
 最初に概括的な問題を質問させていただきまして、次に逐条的な質問に入らせていただきますが、最初に御質問したいのは、この前の大臣の提案理由の説明の中に、「政府は、昭和四十四年度税制改正の一環として、最近における社会・経済の諸情勢の進展に即し、納税者の権利救済制度の整備充実を図ることが必要であると考え、この法律案を提出いたした次第であります。」と、このように述べておりますけれども、結局、最近における社会・経済の諸情勢のどのような進展が現行のいわゆる権利救済制度である協議団制度と矛盾するのか、そうして、整備充実を図ると申されておりますけれども、具体的にどのような充実をはかられているのか、基本的なまずお尋ねしたいと思います。
#159
○国務大臣(福田赳夫君) いままで協議団という制度があったわけですが、協議団制度が同じ穴のムジナというような批判が出てくるようになったわけです。これは国民の税に対する関心というところがら来ておる、こういうように思うわけですが、そういうものの反省の上に立って、提案をしておるような審判所を設けたい、こういう考えになったわけであります。
#160
○多田省吾君 そういった説明は、衆議院の大蔵委員会におきましても、参議院におきましても、いままで大臣からずっと同じような説明があったわけですけれども、私が質問した、「最近における社会・経済の諸情勢の進展に即し、」と、一応のまくらことばのような話でありますが、具体的にどういう社会情勢のあるいは経済情勢の進展があったのか、いままでの権利救済制度ではどうして矛盾が生じてくるのか、それを具体的にお聞きしたいと思うわけです。
#161
○国務大臣(福田赳夫君) 税に対する関心が非常に高まってきたと、こういうことかと思います。つまり、国民経済全体の中における税の比率はそう高いものではないけれども、所得が多くなると、そこで税の額も多くなる。そういうよらなことから、税に対する関心ですね、これが高まっている。それが反映して、協議団に対するいろいろな批判、見方、こういうものが出てきておる。それを反省してこういう審判所というものに切りかえよう、こういうことでございます。
#162
○多田省吾君 そうしますと、昨年の七月二十六日ですか、税制調査会の「税制簡素化についての第三次答申」というものがありますけれども、その「答申の背景」といたしまして、「税制を納税者に受けいれ易いものとすべきであるという観点から、このような納税者の自主性と個別性の尊重という方向をさらにおしすすめることが望ましいことはいうまでもない。しかし、社会、経済の複雑化を考えるとき、納税者の個別性に応ずる問題の解決をすべて法令や通達等の規定にとり込もうとすることは、かえって法令等の複雑化を招くことになりかねない」とか、いろいろ言っているわけですね。さらに、「このような観点から、当調査会は、協議団制度を中心とする現行の不服申立制度の全般について検討を行なった。」とか、あるいは、「当調査会は、現行の不服申立制度の全般にわたって、新しい社会、経済と納税秩序とに応じて見直しを行なうべき時期であると考えた。」と、さまざまにこの第三次答申では言っているわけでございますが、その第三次答申と提案理由の説明、またいま大臣がお答えになったことは、精神は同じである、そのように考えてよろしいわけでございましょうか。
#163
○国務大臣(福田赳夫君) 今回の提案は、税制調査会の答申そっくりそのままこれを法制化するというものであります。
#164
○多田省吾君 それでは、その答申のように、結局、円滑な環境が整備されるということになれば、いわゆる事後調査なんかの修正申告も円滑になされるはずでございますし、不服申し立て制度というのは、むしろ必要性は後退する。まあ、衆議院の大蔵委員会でも、予防医学が発達すれば結局診療そのものは少なくて済むではないかというような例を引かれましたけれども、むしろ不服申し立て制度というものは後退しても差しつかえないのじゃないか。これをさらに前進させるような姿というものは、円滑な環境が整備されるということがむしろ後退しているからこそ不服申し立て制度の検討に結びつくのであって、この答申の精神とはちょっと違っているように思いますが、この点はいかがですか。
#165
○国務大臣(福田赳夫君) まあ争いがないという状態がもう一番いいにきまっているんですが、そういうこともあり得ない。しかし、そういうあり得る場合に対しましては、納税者の権利をより以上に擁護しよう、こういう趣旨なんです。まあ争いのあるというようなことのないように税務の執行に当たる、この構えにおいては、お説のとおりこれからもさらに進めていきたい、かように考えております。
#166
○多田省吾君 納税者の自主性と個別性を尊重すると、このようにおっしゃっておられますけれども、尊重の仕方が問題でございます。結局、弾力的運用というようなことでかえって恣意課税なんかの弊害が生ずるのではないか、このように考えられますけれども、第三次答申並びに提案理由の説明等を踏まえて、そういった点はどう考えておられるのか。
#167
○国務大臣(福田赳夫君) 税務当局が国民から愛され尊敬されるような行政をしなければならぬ、こういうふうに考えているわけです。しかし、何ぶんにも法律は厳格に執行しなければなりませんから、したがって、法律の執行をめぐりましていろいろな争いが起こる、これもまたやむを得ないのじゃあるまいか、さように考えます。
#168
○多田省吾君 観点が少し違いますけれども、先ほどの国税庁長官のお話によりましても、三十八年、三十九年と不服申し立ての件数が増大する傾向にあるわけでございますが、こういった問題は個別救済ということが主であろうと思いますけれども、やはり納税負担の公平の問題も考えられますし、結局、税金が重いから多くの不服が生ずるんだと、こういうことになろうかと思います。この前の当委員会におきましても、大蔵大臣は、いわゆる所得税の課税最低限の問題で、今度は九十三万円だと。来年は百万円ということを実行しようとしておられるようでございます。しかし、問題は、そのあとにおいて、欧米諸国の課税最低限にも達したようであるからというようなこともおっしゃっておられますが、一面においては、それに固執しない、また社会情勢の変化によって、その後も課税最低限を引き上げることを考えないでもないということをおっしゃった。私は、その長期目標を大蔵大臣また政府はどのように考えておられるかということをお聞きしたいわけです。税の根本的な考え方として、この課税最低限の問題を、百万円を達成したら、その後長期的に、わが党なんかも百三十万円を主張しているわけでありますけれども、政府の所得税の長期見通しについてこの課税最低限の問題は今後どうお考えになっておられるか、これをついでではございますけれども、お答えいただきたいと思います。
#169
○国務大臣(福田赳夫君) 差しあたり、来年は、何とか百万円最低限、こういうふうにしたいと思うんですが、その後どうするかという問題は、税率調整という問題がある。それとの関連をどうするかということにかかってくると思うんですけれども、これはなお税制調査会等の意見を聞きまして今後きめていきたい。ただ、申し上げておきたいのは、減税々々と、これは大きな立場から言ってですが、そういうわけにはなかなかいくまいと思います。つまり、わが国においては、社会資本が非常に立ちおくれておる。この立ちおくれを取り戻さなきゃならぬ、こういう要請があるわけであります。公害の問題にいたしましても、また、過密・過疎という問題にいたしましても、どうしても政府財政で解決されなきゃならぬ問題であります。そういうことを考えると、減税一本でいくわけにはなかなかいくまいと思いますが、しかし、経済が発展をする、財政的な基礎構えも強化されるというのに応じて、そういう財政の需要を充足しながら、また同時に国民負担の軽減ということも心がけていきたいと思うんですが、一本調子の減税というわけにはなかなかいくまいと、かように考えております。
#170
○多田省吾君 いまの大臣の御答弁では、私たちは絶対に納得できないんですね。所得税の課税というものが年々すごく増大しておりますし、また、一方において、法人税あるいは租税特別措置法によって相当アンバランスが生じておると私たちは考えております。また、なるほど社会資本の充実という点も考えなければならないでありましょうけれども、いわゆる勤労者の課税というものが、最近の調査によっても、これは税務当局のお話によっても、一〇・四・一というような、サラリーマンにだけ相当過重な、一〇〇%課税されるというようなアンバランスがありますし、そういった点から、課税最低限が百万円を突破いたしましても、その後において、ますます所得税に対する過重というものを考えれば、当然、百二十万円、百三十万円と、年々課税最低限を高くしていくことはどうしても必要なんじゃないか。大蔵大臣は、いま、減税々々と言ってもとおっしゃいますけれども、この前は極端に法人税減税をはかられたわけです。また、来年におきましては、利子配当の分離課税の問題も生じてくる。このときにおいて、所得税の減税を減税々々というわけにはいかないというお考えは、非常に後退した考えである。そういうことでほんとうによろしいのかどうか、この点をもう一回明確にお答え願いたいと思います。
#171
○国務大臣(福田赳夫君) 物価の問題もありましょうし、所得税減税についてはこれは前向きで取り組まなきゃならないというふうに考えております。ただ、税全体として大きな立場で申し上げますと、減税々々とばかり言っておられない見通しである、かように考えております。
#172
○多田省吾君 それじゃ、法人税、間接税、いろいろ税がありますが、減税々々とばかり言っておられないというのは、そういう法人税や間接税なんかも考えに入れておっしゃっているのか、それとも、所得税減税だけのことを考えていらっしゃるのか、これはどうなんですか。
#173
○国務大臣(福田赳夫君) 所得税は、先ほどから申し上げておるとおり、最低限を百万円に来年はしなきゃならぬ、それからその後についても税率の調整との関連において考慮しなければならぬ、こういうふうに考えます。また、一面、社会資本の充実という問題がこれから大きい問題になってくると思います。特に、私は、公害の問題、過密・過疎の問題、こういうようなことを考えますときに、減税という大きな国家財政全体のスケールから見た場合に、それを一本の調子でいくということはなかなかむずかしいのじゃないか。いろいろ財源調達の手段も考えなきゃならぬ、そういう立場に置かれているということを申し上げておるわけであります。所得税減税につきましては、今後とも前向きで取り組みたい、かように考えております。
#174
○多田省吾君 それじゃ、減税問題で最後にお尋ねいたしますが、そういった大蔵大臣の姿勢であるならば、国民から大きな批判の目を向けられている来年度の利子配当の分離課税の問題は当然撤廃すべきであるし、そういった面の減税をはかる必要はないのじゃないか。そういったこともお考えに入れて大臣はおっしゃっておられるのかどうか、それはいかがでございましょうか。
#175
○国務大臣(福田赳夫君) いま具体的にどれをどうするという考え方で申し上げているのじゃなくて、気持ちとしてはそういうところだということと御了解願いたいと思います。
#176
○多田省吾君 それじゃ、他の問題にまた移りまして、政府は、提案理由の説明の中に、はっきりと、協議団制度は廃止して不服審判所制度を新たに設けよう、このようにしているわけでありますが、なぜ国税通則法の中に国税不服審判所の機構とこれに関する一切の審理・裁決の手続を規定しようとなされているのか。機構であるならば、大蔵省の設置法などを改正して、国税庁協議団及び国税局協議団令、これは政令でありますが、こういったものを廃止すれば足りるのではないかと思われますが、国税通則法の中にこういった制度を設ける理由はいかがでしょうか。
#177
○政府委員(吉國二郎君) 国税不服審判所を設けるということは、実は国税に関します不服申し立ての処理の方式を改めるということを意味するわけであります。その不服申し立ての処理の問題というのは、納税者の権利義務についての重要な、いわば税法上の実体規定でございますので、その審理手続その他は当然税法に規定すべきでございますが、現在税法では国税通則法がこれを規定いたしておりますので、そういう意味で国税通則法の改正という方法をとっているわけでありますが、もちろん機構面におきましては大蔵省設置法の改正が必要でございます。その点で、今回の改正におきましては、このことと同時に、附則において大蔵省設置法を改正いたしまして、そこで設置法との関連を明確にした上で国税不服審判所の機構面を規定するという形をとったわけでございます。したがいまして、国税不服審判所の設置ということのうちに含まれる納税者の権利保護あるいは不服申し立て処理という面の規定は国税通則法で当然規定をいたしますし、国税不服審判所の機構に関する問題は設置法以下の法令で国税通則法との関係を明らかにした上で規定をするという形をとったわけでございます。
#178
○多田省吾君 機構ともう一つの一連の関係のある審理・裁決手続という問題も、すでに昭和三十七年に基礎法として行政不服審査法というものがあります。これを受けて、特別法として、国税通則法に若干の特別の規定が定められているわけでありますけれども、いわゆる機構としても、法構造としても、こちらのほうをきめるのが普通であるのに、国税通則法を変えるということはこれはちょっと腑に落ちないと、こういう点で質問しているわけです。
#179
○政府委員(吉國二郎君) 従来の不服審理手続が、御承知のように、行政の立場におきましては、行政の執行面におきまする監督官庁でございます国税局長の裁決ということにかかるという法律構成をとっておりましたのを、今回は、いわゆる上級官庁である国税局長から切り離しまして特別の裁決機関を設けた。したがいまして、その裁決のやり方等もおのずから変わってまいりました。そういう面では、現在ある国税通則法の規定を整備する必要がございますし、また、その意味から申しますと、不服審査法とも違った面が出てまいりまして、それを補充する意味で国税通則法の当該規定を改めるというのが国税通則法改正の趣旨でございます。もちろん、機構面におきましては、先ほど申し上げましたように、設置法の系統の規定との関連を明確にいたしておるわけでございます。
#180
○多田省吾君 国税不服審判所というものを大蔵省の所轄下に置かないで国税庁の所轄下に置く、こういうことはどういう理由でございましょう。
#181
○政府委員(吉國二郎君) これも前々申し上げておりますけれども、税制調査会でこの点がいろいろ議論がございまして、現在、国税の賦課徴収という権限は、大蔵大臣が法律上国税庁長官に委任をするという形をとっております。賦課徴収という権限は、当然にその賦課徴収の是正を含んでいるわけでございます。そういたしますと、賦課徴収の是正という面は、別の面から見ますると、国民が違法な決定を受けないための権利保護手続でございます。したがいまして、行政部内に不服申し立て機関を設けるとすれば、当然に最高の権限のある部署にその不服の最終の権限を求めるというのがいまの日本の行政組織としては通例でございます。大蔵省に設けるということになりますと、いわば国税庁長官の賦課徴収に関する行政というものを批判する形になるわけで、そういう意味では、いわば国税庁と第三者との問の法律関係をさばく準司法的な機関ということにならざるを術ない。これは総理府に設置しても同じことだと思いますが、そういう意味では、現在の行政組織から申しますと、国税庁に置くのが最も適当ではないだろうかという税制調査会の結論が出たわけでございます。これは、一つは、行政の部面で救済をはかるということが迅速性という点からもより現在の段階では適当であろうという判断を含んでおるものであろうと考えております。
#182
○多田省吾君 それからもう一点、「税制簡素化についての第三次答申」、これは大蔵大臣もこの答申の精神によってそのままいわゆる不服審判所設立ということになったのだということを申されておりますけれども、この第三次答申の中にこのように言われております。「協議団制度は、昭和二十五年シヤウプ勧告に基づいて生まれたものである。当調査会は、この協議団制度を中心とする不服申立制度の十八年にわたる歩みとそれが現在果たしている役割について、具体的な事例分析、統計資料等を通じて詳細に検討したが、現行の不服申立制度は、納税者の正当な権利を救済することを通じてわが国における申告納税制度の定着と納税秩序の正常化に少なからぬ貢献をしてきたものと考える。確かに、納税者の不服をききその正当な権利を救済するための特別な部局として協議団を国税局内に設けるという考え方は、当時において極めて革新的なものであったし、現在においてもなおその意義を失なっていないことは疑いをいれないところであろう。」と、このように言っております。大蔵大臣もこの答申と同じ精神に立っているのだということを申されましたけれども、政府は、昭和二十五年にこの協議団制度が設けられたことによって、設けられる前と設けられたあとと比較してみて、機構とか、あるいは運用、あるいは審理手続、あるいは裁決手続、その他のあらゆる点においてどのような具体的な改善がなされたか、このように前の協議団制度のことではありますけれども、その価値判断といいますか、そういったものを簡単でけっこうですからお伺いしたいと思います。
#183
○政府委員(吉國二郎君) 御承知のように、協議団が設けられます前は、制度自体もいわゆる審査請求制度がだいぶ変わった形をとっております。覆審制度――このあいだ青木先生が御指摘になりましたように、覆審制度でございますと、国税局長が増額決定もできるという制度でございましたが、昭和二士五年には、協議団を設けると同時に、いわゆる棄却制度、増額決定をしない、不利益変更をしないという制度が確立したわけでございます。その場合に、協議団が国税局長のもとにおいて審査の裁決のもとになる議決を担当するということで専門の機関として果たしてまいりました役割りというものが、その後審査件数その他を通じまして審査の公正化という点でかなりの評価を受けたという客観的事実を税制調査会としては各種の資料で検討したわけでございます。そういう意味では、いままで、審査請求と申しますと、たとえば直税の審査請求であれば、直税部の審査部門がこれを扱っておりまして、何と申しましても賦課徴収という面からこれを扱うという面が強かったと言われておりましたが、協議団は、最初出発の点におきましても、ちょうど人員等が不足しておりました関係で、民間の人を試験で採用するというようなことで協議団を設けたこともございまして、そういう意味から申しますと、納税者の主張というものを明らかにし、それに対して税の態度というものも、一応税務署から報告を徴してはっきりとその関係を整理するというようなやり方を続けてまいりました。よく言われておりますように、現在提出して、おります法案と同じように、いわばいまの法案の基礎をつくったのは協議団と言えるかと思います。つまり、事案を検討するに際して納税者の言い分と税務官庁の言い分とを両方照らし合わせながらそこに正当な解決をはかっていくという第三者的な立場を次第につちかってきたことも事実でございます。こういうことで、いわば審査請求というものが第三者的な立場で見直されるというところに納税者として非常に安心感を持った点があるわけでございます。しかし、税制調査会で申しておりましたように、まだその第三者的な立場というものが貫かれていない面がある。つまり、協議団が議決をしながらも、その後国税局長の裁決の際にその議決のとおりにならないケースがあるのではないかという点が次第に危惧されるような状況も出てまいりました。そういうことが今回の国税審判所による行政部内としては最も進んだ独立機関的な立場による裁決をすべきだという改正につながっているわけでございますが、この改正を可能にしたのは現在の協議団の存在であるということは、これは明らかであると思います。一朝一夕にしてこのような第三者機関を設けるということはなかなかできないということでございます。やはり協議団というものの実績がこれを可能にした。いわば、協議団は、現在の制度と昔の制度のつなぎの役目を十分に果たした、さような意味で協議団についての評価というものが考えられるべきではないか、かように考えるわけでございます。
#184
○多田省吾君 話の順序としてもう一点お尋ねいたしますけれども、協議団の事務に関係する法令の中で、昭和二十五年に発足した当時から現在までどのような改正が行なわれたかか、それからもう一つは、事務運用の面において発足当時の考え方を変更させるような方針がとられたようなことはなかったかどうか、この二点をお尋ねしたいと思います。
#185
○政府委員(吉國二郎君) 従来、最初発足いたしましたときには、国税局長は協議団の議を経て裁決を行なうという規定が設けられておりまして、議を経てということでございますと、国税局長は一ぺん協議団の議に付すればそれでよろしい、最終の裁決はそれと関係なくやってもいいという感じが非常に強いわけでございます。そこで、その後この点を改正いたしまして、国税局長は協議団の議決に基づいて裁決をするという制度に改めました。基づいて裁決をするということでございますから、協議団の議決の内容を基礎にして、そこではじめて裁決の結論が出るということになったわけでございまして、この点が非常に大きな変わり方であると思いますし、また、一方、協議団の中におきましても、協議のやり方につきまして、できるだけ納税者の主張というものを整理をいたしまして、税務署の主張も整理をして、その整理したものを中心にして協議を行なうという慣行を次第につくってまいったのでございます。もちろん協議団が全体としての所得というものについての把握を怠るわけではございませんが、納税者の審査請求というものがだんだんいわば更正決定の合理化とともに合理的な内容を備えてくれば、おのずからそれが可能にもなるということで、そういう運用をはかってきたように私は考えております。
#186
○多田省吾君 若干重複するようでもありますけれども、税制調査会も認めているところの、協議団制度というものが現在果たしている役割りとか、あるいは現在においてもなお失っていないその意義とか、こう言っておりますけれども、それはそれぞれどの点を言っているのか、その点をお尋ねしたいと思います。
#187
○政府委員(吉國二郎君) いま、行政不服審査法におきましても、一般の行政不服審査の形は、上級官庁がこれを裁決するということに尽きておりまして、そのために特別の専門機関を設けるという形をとっているのはむしろ税務機構が一番進んでいる。協議団というようないわば課税から切り離された特別な組織があって、それが専門的に審査を担当し、その議決に基づいて裁決が行なわれるという制度は、現在でもなお行政機関における不服審査制度としては最も進んだものであるという評価はあり得ると思います。そういう意味で、現在持っておる意義というのは決して没却されてはいない。そういう意味で調査会は評価をしたものと考えております。
#188
○多田省吾君 これは衆議院の審議のときからいろいろ言われたのでありますけれども、現在の協議団制度というものが、所期の目的に反して、結局、同じ穴のムジナだと、こう言われるようになりまして、その原因というものが追及されたわけでありますが、この批判の原因というものが、税務官庁側の行政に基づいているのか、それとも、納税者側のほうに問題があるとされているのか、これは局長はどうお考えになっておられますか。
#189
○政府委員(吉國二郎君) 同じ穴のムジナという評価というのは、これはなかなかむずかしい問題でございますけれども、一つは、もちろん税務官庁のほうにもあるいは組織のほうにも問題があり得るとは思います。と申しますのは、ちょっと衆議院では数字を間違って申し上げましたが、未決が現在八千件ある。これは時期がちょっと正確でございませんが、ある年度の未決が八千件のうちに、実はすでに議決は済んでいるけれども、局長の裁決がおりない。つまり、局長が裁決するというのを局長が勝手に自分でやるわけではございませんで、やはり補助機関としての直税部とか間税部が関与してその内容を調べて、それに対して意見を付して局長の裁決に回すわけでございますが、そういうことで未決になっておる分が二千件もあったわけでございます。このことは、裁決というものが議決に基づくとは言いながらそれだけ遅延するということを意味いたしますし、場合によっては、せっかく議決が行なわれたのに、それと異なる裁決が行なわれるのではないかという不審を抱かせる原因にはなるかと思います。そういう意味では、組織としては進歩的な組織ではあるけれども、ある意味では一つまだ不十分な点が残っているのではないかということも言えるかと思います。それから納税者側という御指摘の点でございますが、納税者のほうで同じ穴のムジナだと考えがちだというのは、これはやはり国税局がやっていることなら同じことではないかとお考えになるのも無理もない点もあるかと思うのでございます。そういう点では、制度改正によってその点を明らかにして、それを通じて納税者の意識というものを改めていただくのが一番適当なことではなかろうか、かように考えるわけでございます。
#190
○多田省吾君 次に、先ほどから第三者機関としての立場をどうしても保っていきたいというようなお話がありましたけれども、結局、いまの協議団制度も、またこれからの不服審判所も、そういった機関としてはきわめて不満足なものである、こういうことが言われるのじゃないか。たとえば税調の「第三次答申」にも、「審理・裁決機構について」の基本的な考え方として、「三審級からなる司法救済に加えて、行政段階に独立の準司法的機関を設けることは、いたずらに重複の弊を免れない。」とか、あるいは、「税務当局と不服の審理・裁決機構の双方を通じて納税者の取扱いに差異が生ずるようなことは行政機関による救済のあり方及び行政の統一ある運用という観点からみて適当でない」と、このように反対しているわけです。結局、この法案も、第三者機関等と言いながら、こういった答申と同じような考え方でやっておられるのではないか、こう思いますけれども、これはいかがですか。
#191
○政府委員(吉國二郎君) この点は、税制調査会の答申を尊重したわけでございます。
#192
○多田省吾君 ですから、結局は、納税者の権利救済ということを重視する立場から言えば、どうしても裁決機関というものは税務当局から完全に独立したところの第三者機関であることが必要でありますけれども、この税調の答申そのものが、その第三者機関としての運用を離れてそれにまた反対しているような立場に立っていると思います。ですから、その税調の答申を受け継いだ政府案というものも、はっきり言えば、税務当局から独立していない、すなわち真の意味の第三者機関とは言えないし、そういう方向で進んでいない、こう言わざるを得ないと思います。こう思いますけれども、この点に関して政府としては第三者機関という立場をあまり考えられなかったということについてはどうお考えでございますか。
#193
○政府委員(吉國二郎君) ここにも書いてございますが、「当調査会は、現在の行政、司法制度を前提とする限り、行政段階の税務争訟の審理・裁決に当たるものとして、税務当局から完全に独立した第三者機関を設けることは適当でないとの結論に達した。」と言っておるわけでございます。いまの行政、司法機構から申しますと、完全な第三者機関をつくろうとするならば、準司法機関をつくろうとせざるを得ない。しかも、準司法機関というものであれば、それを直ちに高等裁判所につなぐようなシステムが考えられる。迅速化という点から考えても非常にけっこうなことでございますが、いまの三審級というものをここで二審級に改めるということは、現在の制度としては非常な大問題でございます。単に税務機構だけで考え上れる問題ではございません。行政不服審査全般の基本問題であるということがございますので、現在の段階では、ぎりぎり第三者機関的なものをつくるとすれば国税庁の中に完全に独立した第三者機関をつくるべきではなかろうか。先ほど申しましたように、国税局長の裁決権というものを否定いたしまして、独立した国税不服審所長の裁決権というものをあらためて設けるということ、これは課税官庁と完全に切り離された組織として裁決をいたすわけでございますから、いわば完全な独立機関でもございますし、たびたび申し上げておりますように、税務争訟のうち九五%ぐらいは事実認定の問題でございます。事実認定の問題になれば、この法律の九十九条から当然出てまいりますように、国税不服審判所長は国税庁長官に申し出でをしないで独立で裁決ができるわけでございます。もしその裁決の前提が既往の通達を適用しないで別の解釈でやるというときに限って国税庁長官に申し出る。これはわずか五%程度のものであろうと思われますし、しかも、その場合におきましても、国税庁長官は単独でその申し出にこたえるものでなくて、その申し出を拒否しようとすれば、当然に国税審査会に付議をいたしまして、その意見に基づいてこれをしなければならないということで、そういう意味で申しますと、九九%までは独立機関と同じということになるわけでございます。従来の協議団に比べればこれは全く飛躍的な進歩であると私どもは考えているわけでございます。
#194
○多田省吾君 それはわれわれの見解と非常に相違する点でございまして、「第三次答申」そのものが結局第三者機関をさして司法段階の重複であると、こういう見解を出しておりますし、政府もそのようなお考えであると思われますけれども、国税庁長官の任命にかかる不服審判所であるとすれば、やはり独立機関としては力のない存在だと言わざるを得ませんし、また、政府も憲法問題等ともからんでこれは不可能だとおっしゃるならば、家庭裁判所なんかも昭和二十三年の時点に設立されましたけれども、この問題はすでに大正十一年の臨時法制審議会総裁から答申の特別の制度というものがいろいろ論議がかわされまして、そして新憲法下におきまして昭和二十三年に家庭裁判所が置かれたわけです。こういった過程というものが今度の不服審判所の問題ともからんで非常に参考になるのじゃないかと、こういうことを考えます。したがって、こういった特殊な問題の専門裁判所として設けられた家庭裁判所の設立の経過、あるいはその論点、こういったことを法務省の内田参事官にお伺いしてみたいと思います。
#195
○説明員(内田恒久君) 家庭裁判所は、裁判所法ができました少しあとである昭和二十四年一月一日から発足いたしました制度で、それまで家事審判所というところで行なわれていた家庭問題に関する事件、たとえば、離婚に関する審判、調停であるとか、扶養事件であるとか、遺産分割に関する事件、そういったもの、それからそれまで少年審判所で行なわれていた少年審判にかかる事件というものを、結局、家庭内の平和あるいは家族間の共同生活の維持ということと少年の健全な育成ということが同じ問題であるというような発想から、一つの裁判所に統一して行なおうという考え方で、家庭裁判所ということに統一して発足したということのようでございます。家庭裁判所は、地方裁判所と一応格づけの上では同列になる特殊の裁判所と考えることができまして、その不服がある場合の抗告、上訴審は高等裁判所ということになります。
 これらの家事審判に関する事件と少年審判に関する事件は、地方裁判所のほうでやっております普通の訴訟事件、つまり公開の法廷で民事訴訟法、刑事訴訟法といったような厳格な手続でやっている事件とは違いまして、非訟事件といいますか、非公開の法廷で、どちらかというと、裁判で事実を認定し法律を適用して権利義務を明確にするというようなことよりも、具体的妥当な結論を非公開の法廷でもって探求して何か結論を出すといったようなそういう手続をもっぱらやっておるところでございます。もっとも、一部、少年に関する成人の事件、つまり児童福祉法に違反するような事件というようなものは、刑事裁判として普通の手続がございますけれども、大部分一般には少年審判事件それから家事審判事件というものをいま申し上げましたような非訟事件の方法で取り扱っておる非常に特殊な裁判所であるということでございます。現在までその性格の変わらないまま今日に至っておるわけでございます。
#196
○多田省吾君 そういう家庭裁判所の前例等もありますし、納税者の権利救済ということを重点に考えるならば、できる限り準司法的なものにすべきであるということが望ましいのであって、本質論的にいえば重複論というものは私たちには納得できない。こういったものを第三者機関としてもっと準司法的なものにすべきではないかということに関してどのようにお考えか、もう一回お願いしたい。
#197
○政府委員(吉國二郎君) ただいま申し上げました家庭裁判所というものは、いわば地方裁判所の特殊部門のような形と考えられるわけであります。税につきましても、税の専門の部とかあるいは税専門の特別司法裁判所をつくれということも税制調査会ではもちろん議論になったのでございますが、これもいろいろな事情から、たとえば直ちにそれに適用する裁判官が得られるかどうか。と申しますのは、行政段階の審査をその面でぐっと縮めますから、多量の裁判というものが起こり、それが十分こなせるかどうかというような面、また、租税にだけ特別な裁判官を充てることが適当かどうかというような問題がございまして、なかなかにわかには困難であろうかということが判断されたわけでございますし、準司法機関というものを設けた場合、先ほど申し上げましたように、準司法機関となれば、いわば行政機関から独立して判断をいたすものにそれにさらに第三審をつけ加えるということは非常な重複でもございますし、また、その場合には、第三者として判断をされた以上、行政機関である国税庁長官自身が直接裁判所に不服を申し立てるということが起こりかねないわけでございます。そういうことになると、準司法機関としても行政部内のものでございますから、その裁定というものがはたして直接裁判所で行なわれていいのかどうかという法律問題も生じてきょうかと思いますし、また、国税庁長官と準司法機関とが互いに争って納税者が第三者的に参加をするというような裁判形態というものも、これはなかなか法律上むずかしい問題がございます。そんな点からいたしまして、準司法機関というものをつくるためには、むしろいまの行政不服審査の考え方を根本的に改めまして、あらゆる行政行為に対する批判を特別な裁判所を設けるという形で考えざるを得なくなる。その場合には、往年の行政裁判所的なものが問題になってくるわけでございますが、それは終審でない限り不可能ではないといたしましても、それは大変革でもございます。
 そういう意味で、結局、突き詰めて申しますと、いまの司法制度というものの当面の動きから考えますと、国税庁長官のもとにおけるでき得る限り独立した機関というものを設けるということが一番現実的であり、実際的であり、実行可能であるという結果にならざるを得ないと考えるわけでございます。
#198
○多田省吾君 その問題はわれわれにとっては納得できない問題でありますが、次に、協議団の発足当時、民間からも五〇%採るということでやってまいりましたけれども、事実上第一回の試験はありましたが、その後ほとんど何もやられていない。現在、初めからいた方がもう四人しかいないというような姿でございます。これは民間の方から、協議団にしましても、今度の不服審判所にしましても、新しく採用しないというような方向に進むならば、第三者的公平というものが期せられないし、いま主税局長も九五%は事実の認定だとおっしゃいましたけれども、それじゃ民間のいろいろな実情を知っている人はどうかといえば、これは民間出身の方が一番よく知っているわけですから、そういった観点からお尋ねしたいのですが、民間から採用された方々が協議団の発足当時から現在まで大体どういう人数になっているのか、現在何人ぐらい残っておられるのか、それをまずお尋ねしたいと思います。
#199
○政府委員(亀徳正之君) 当時、民間から四百三十二名協議官試験を通りまして、現在協議団に残っておりますのは五十三名でございますが、そのほかに、協議官として採用しましたが、適性その他からほかの第一線に回したほうがいいだろうということで現に署長になったりいろいろなところで働いておられる人もございます。それが何名になりますかちょっと急でお答えできかねますが、現在協議団に残っておりますのは五十三名でございます。
#200
○多田省吾君 先ほども横川委員からお尋ねがございましたけれども、今度の不服審判所に対して移行の仕方はどうかという話がございました。それで、国税庁長官から、なるべく民間からも極力採りたいというようなお話がありましたけれども、一応国税不服審判所の予算定数というものが協議団制度と同じような四百四十九名ということでありますけれども、これはどういう意味なのか、それからいまの協議官の方々からそれに移行するという移行の仕方は具体的にどうなるのか、また、極力民間からも採りたいといいますから、事実それじゃ人数的には大体どういう――極力じゃなくて、大体何名ぐらい採られる予定なのか、そういったことについて全般的にお伺いしたいと思います。
#201
○政府委員(亀徳正之君) 先ほど横川委員の御質問に答えましたように、審判官以上につきましては、民間をも含めまして、当然部内の職員から活用する者もございますが、やはり審判所の審判官として最も適当な人を選ぶという基本方針でいきたいと思っております。副審判官と審査官は、相当手足になって働いていただかなければなりませんし、また、給与面その他で極力処遇策を高めたわけでございますが、なかなかそう広く採り得ないということもございまして、この面ではある程度の人事交流ということを考えざるを得ないだろう、かように考えております。
#202
○多田省吾君 その問題について少しずつお尋ねしたいのですけれども、この前須貝参考人からも指摘されたことでありますが、国税審判所長の任命にあたっては規定が設けられているわけでございます。ところが、罷免のことは全然触れていないわけです。そうすると、審判所長の罷免ということは、単に国税庁長官の権限でやられるのか、それとも、納税者の権利保護という立場からリコール制なんか考えられたらどうかという提案をするわけでありますが、この問題に対してはどういうふうにお考えでございますか。
#203
○政府委員(吉國二郎君) 一般の行政官庁にリコール制度というのは現在もございませんし、リコール制度というものを設けるということにはならないかと思いますけれども、一般に任命について慎重な手続をとるときには、罷免ということは、先ほど私が申し上げましたように、いまの国家公務員法では、法律事由あるいは人事院規則に該当しない限りあり得ないわけでございますけれども、その場合にはやはり罷免についても同様な手続がとらるべきものだと思います。したがいまして、もしかりに罷免ということがあったとしても、当然大蔵大臣の承認を受けて行なわれるべきものである、かように考えておるわけでございます。
#204
○多田省吾君 先ほどもお尋ねしたのですが、国税庁長官は、審判官以上は民間の人を極力入れたいと。副審判官や審査官はそうじゃないような御答弁のようでした。むしろ副審判官や審査官につきましても民間の人を入れて民衆化すべきじゃないかという声も強いわけでありますが、その点についてはどうお考えですか。
#205
○政府委員(亀徳正之君) 現実問題といたしまして、この機構が発足してその要員を確保しなければならないわけでございまして、実際問題としてはある程度人事交流をしないと人員の確保ができないだろうという見通しをいたしております。二十五年に民間から四百三十名採りましたという事例がございますが、当時の昭和二十五年と申しますと、敗戦後なかなか職場もない、外地からも相当引き揚げて来る、こういうことで職場がなくて人があふれたというときでございましたし、それから税務職員も足りないという事態で急激に人数をふやさなければいけないという特殊な事態に応じてかようなことができたのでございますが、今回は単に民間から全部採ればそれでいいんだということではないのではないか。やはり審判所の職員として最も適した人を選んでいく。特に、また、審判官以上の方の俸給は、公務員といたしましては相当高い俸給が支給できるようなたてまえにもなっておりますし、背のように、試験でさっと通って、じゃそのまま任命するというような形ではなかなかうまくいかないのではなかろうか、か上よに考えまして、むしろ選考という仕組みで極力民間をも含めまして適材の人を選ぶという考え方で処理したい、かように考えております。
#206
○多田省吾君 いまの御答弁によりますと、副審判官や審査官には民間の人は入れないと。これでは第三者的な公平というものはどうしても確保できない。先ほども申しましたように、九五%が事実の認定ということにするならば、やはり民間事業等で経験ある人をどんどん入れたほうがいいんじゃないかということも十分考えられますし、また、国税庁の若い有能な官吏の方々を入れるという考え方は一面いいようにも思いますけれども、しかし、反面民間の事情を知らないで強制的になるということも考えられますし、これは十分お考えいただかなければならない問題じゃないか、こう思うわけでございます。
 また、どこに所属するかという問題も、社会党案等では総理大臣のもとに置いてもいいのではないかという考え方がありますが、どうしても国税庁のもとに置くということを固執されておる。もし登記所なんか見ましても、法務省機関にはなっておりますけれども、国税局長が裁決で直せるような点もありますし、別に国税庁の所轄下に置くということだけを固執する必要はないのじゃないか、こういうことも考えられますけれども、これはいかがでございますか。
#207
○政府委員(吉國二郎君) 私は、先ほど申し上げましたように、国税庁に置かなければならないということを申し上げたわけではないのでございまして、ほかに置くことが可能であることは可能であるが、現実の制度としてはむずかしい。ほかの諸制度とのつり合いと申しますか、そういう制度的な全般の進歩と申しますか改善というものが行なわれて、はじめてそこにだんだんとそういう事態が起こるのではないか。もちろん、アメリカのタックス・コートのような考え方もあり得るわけでございます。アメリカでは、タックス・コートから直ちに高裁に訴えが提起できるというような制度が確立いたしております。そういう点では、やはり日本の司法、行政を通じた制度全般につながる問題であるからむずかしいと申しているわけでございまして、思想的にそれが不可能であるとか制度的によくないとかという意味では決してないわけでございます。現在のところ、これが一番可能であり、現実的であり、また、それによって相当な程度納税者の権利救済の度合いも進められるということは先般参考人の方も言っておられたことでございますが、衆議院ではある参考人は、実質から申せばその独立性という点は社会党案と本案とはほとんど変わりがないという評価をしておられたわけでございます。
#208
○多田省吾君 次に、国税庁から出された四十四年度の国税不服審判所の当初予算要求はどのくらいであるのか。それから今回の国税不服審判所の予算定数というものは、同数の四戸四十九名ということでありますけれども、当初からこの考え方に政府として自信がない姿が出ているのじゃないか。いまも納税者の権利救済ということに重きを置いてやっているわけでありますけれども、協議団制度に対するいろいろな不満も多いわけです。先ほど国税庁長官が数字をもって示されましたけれども、四十二年度の処理済みのうち、異議申し立ての段階で一七・三%、審査請求の段階で一四・八%と取下の件数がかなり多い数にのぼっております。こういったことも、納税者のほうに錯誤があったということもあって取り下げたケースもありましょうけれども、大半が、納税者の期待が裏切られて、めんどうだ、どうでもいいと国税庁あるいは税務署当局に悪感情を持って取り下げた例も相当多いのじゃないか。いままでよりもこの国税不服審判所に国民が期待をかけておるとしたならば、こういった、時間がかかり過ぎる、あるいは予算定数の問題、あるいは納税者救済の十分の配慮ということを考えれば、このような姿でいいのかどうか、あるいは、先ほどから申し上げているように、民間からの登用というものも、こういった移行性がそこなわれるのじゃないかということも十分考えられますが、この点に関してどのようにお考えになっていらっしゃるか。
#209
○政府委員(亀徳正之君) 最初に、まず予算の点から申し上げますと、本年度の予算は八億一千六百万円を協議団のほうで計上しております。ただし、実質的には協議団といたしましては九カ月分、それから審判所が来年一月一日から発足いたしますので、その分としては、新しい審判所の分として三カ月分、合計八億一千六百万円が計上されております。なお、今回は、主として人事面、特に給与面の改善に重点をおきましたので、主たる中身は人件費になっておりますが、いずれも発足とともに、部屋とかそういうものを相当拡充したり直していかなければならぬという問題が新たに発生いたしまして、まあ物件費その他で来年度ではさらに追加して相当要求しなければいけないであろう、かように考えております。
 それから先ほどの御質問の取下につきましては、まあどうしても抽象論としてはわれわれはそうでないと思いましても、はたからは威圧をかけて取り下げさしたろうとか疑いの目をもってどうも見られがちでございますが、私は何度も申し上げますように、そうときめつけられるのはどうであろうかと。しかしながら、先ほども申し上げましたように、管理者は、取下の中身というものをよく調べて、いまおっしゃったようなことであるのか、納税者の自発的な取下であるか、そういった点はよく個別に見直さなければいけない、また、かような指導をいたしたいと考えております。
 それからいまの点に関して、異議の申し立てにつきましては、これは税務署でやるわけでございますから、そこでの民間人の登用の問題ではないかと思います。不服審判所の関連につきまして一番のポイントは、いろいろ素材を調べた上でどう判断するかということで、やはり審判官の構成が
 一番問題になるのではないか。したがいまして、いきなり民間の方が全部なっては、大体調査の調べようも御存じないと、こういうようなことで事実上機構が動かないということになろうかと思いますので、副審判官、審査官というものはある程度人事交流でまかないながら、審判官という方々の中に局間を含めて広く人材を登用いたしまして、そこで公正な判断を得るということが最も現実的な措置ではなかろうか、かように考えております。
#210
○多田省吾君 ここで一点自治省にお尋ねしたいのですけれども、地方税では従来まで一審のみで、国税のような二審制は必ずしもとられていないわけでございます。納税者である国民の立場からいえば、これは国税も地方税も同じような同一税でありますから、地方税の不服申し立ての制度というものが非常になおざりにされております。こういった点から、自治省として、その均衡上どういうお考えに立っておられるのか、また、現在の不服申し立て制度についてどういう現況にあるのか、こり舌一を簡単でけっこうですからお尋ねいたしたい。
#211
○説明員(森岡敞君) 地方税につきましては、御指摘のように、市町村税は市町村長が不服申し立ての決定をいたします。都道府県税は都道府県知事が不服申し立ての決定をいたします。その意味におきまして一審制でございます。税制調査会で国税の協議団制度に関連いたしましていま御審議の不服審判所について御審議がありました際に、地方税につきましても不服申し立て制度をさらに合理化すべきではないかということでいろいろ御審議を願いました。ただ、地方税は、申し上げるまでもなく、都道府県、市町村の三千をこえます自治団体の税でございますので、かりにそういう第三者機関的なものを設けるといたしますと、これは各府県、市町村ごとに設けるのかというふうな非常にむずかしい問題があろうかと思います。特に、機構上、なかなか解決がつきにくい面があるわけでございます。税制調査会の答申は、そういうような観点から、地方税につきましては、現行の不服申し立て制度を改めるということではなくて、運用を権利救済に遺憾のないようによくやるようにしたらと、こういうことを御答申になっておるわけでございます。
 なお、御承知済みのことかと思いますが、中身について若干申し上げますと、地方税の中で大きな税目であります住民税、事業税、これはいずれも課税所得の計算は法人税なり所得税の計算の例によっております。したがいまして、課税標準の計算をめぐりますトラブルは、いわば国税不服審判所ベースでの権利救済である程度片がつく、それがまた地方税に使われていく、こういうことでございます。独自のものといたしまして、固定資産税の評価の問題があるわけでございますが、これにつきましては、市町村長から独立いたしました固定資産評価審査委員会といういわば第三者機関を設けまして、そこの段階で評価額が適正かどうかという審査請求をやっていただく、こういう形になっておるわけでございます。
#212
○多田省吾君 次に、税調の「第三次答申」が発表されましてから、昨年の十一月十一日に、日本学術会議の第二部に所属いたします日本税法学会からの「納税者の権利救済制度に関する意見書」が政府に提出されておるのでございます。このような納税者の権利救済に関するような重大な問題に関しましては、学会やその他のあらゆる機関の衆知を集めて改革すべき問題で、国民的な問題だと思いますけれども、こういった意見書というものがシンポジウムまで開いて検討された結果政府に出されたのでありますけれども、この法案には、更正の請求期限の延長、こういうもの以外には全然この意見書の内容は採用されていないわけでございます。特にこの意見書の中で第一番の「不服申立前置主義の廃止」、これは「不服申立制度は必要であるが、行政事件訴訟法第八条第一項本文の原則規定に従い、税務訴訟においても、不服申立てを経ずに、直ちに出訴することができるものと改正すべきである。」という見解ですね。あるいは第二番目に、「課税処分の有効要件としての事前通知」ですか、これはもう内容はおわかりだと思いますから申しませんが、第三番目に「不服申立ての種類」、それから一つ飛ばしまして第五番目に「審査請求手続及び審理・裁決手続」、最後に「不服申立てと徴収との関係」、こういった五点についてそれぞれ意見書が出されているわけでありますけれども、これに対して政府当局はどのようにお考えになっておられるか、簡単でけっこうですから一つ一つお答えいただきたいと思います。
#213
○政府委員(吉國二郎君) 日本税法学会で「権利救済制度に関する意見書」を出されたことはよく承知をしておりますが、「第三次答申」の調査会におきましては、税制調査会といたしましても、学界、法曹界、納税者代表等に御参集をお願いいたしまして一年有余にわたって審査をしていただいたわけでございまして、この簡素化答申の結果に基づいているわけでございます。日本税法学会の意見のうちでもこれと同じ趣旨のことを申しておる部分もございますが、そうでない部分につきましては、政府としては、各界の意見を網羅した税制調査会の意見を中心にこの実現をはかるべきものだということでこれを採用したわけでございます。
 まず、第一に、納税者の出訴について訴願前置を廃止するかどうかという問題は、これはもう前々から申し上げておりますとおり、行政事件訴訟特例法の規定を設けました際にも、大量の処分であるとかあるいは専門的な処分というものについては訴願前置をむしろ継続する必要があるであろうという意見があるわけでございます。それで、税務署の更正決定という処分は、他の行政処分に比べてはるかに大量であり、しかも継続的でございます。そういう意味では、現在ございます行政処分を数の多いほうから比べてまいりますと、ほとんど上位のものはすべてが訴願前置をとっておるわけでございまして、これだけの、異議申し立てでも三万、審査請求でも一万数千という数を考えますときに、全体の訴訟制度自体に混乱を起こさないという意味ではなお訴願前置を必要とするのではないかという考え方がとられたわけでございます。アメリカにおきましては、確かに、タックス・コートに出訴するか地方裁判所に出訴するかは自由になっておりますが、そのかわりに、地方裁判所に出訴する場合には、税金を全額納めた上でいわゆる返還請求という形でやらざるを得ないということになっております。そういう制度をそのまま取り入れていいかどうか、これも一つの問題かと思われたわけでございます。
 第二番目に、更正前の納税者と税務当局の話し合いの手続を整備して、異議申し立てを廃止すべきではないかということ、これもこのあいだ御説明をいたしましたが、アメリカのいわゆる調査官による三十日レターとか九十日レターという制度は、単独制官庁あるいは独任制官庁といいますか、日本のいまの官庁組織としては個々の調査官に官庁の意思決定をゆだねるという形をとっておりませんので、その精神はできるだけ更正にあたりまして実務上取り入れるとしても、制度として取り入れるまでにはまだ現在立ち至らないという判断でございます。
 それから三番目の、置き場所を総理府とする問題は、もう先ほど御説明したとおりでございます。
 それから身分保障、待遇につきましては、これは非常に望ましいことではあると思いますけれども、行政上のいわゆる準司法機関にいたしましても、身分保障は一般の公務員と同じ身分保障になっております。特別の身分保障をしていないという点から、実際問題として特別の身分保障を置くということは実行困難であったわけでございますが、待遇につきましては、特別の給与制度をとるということも考えられたわけでございますが、人数の少ないという点から申しましてそれも困難であろうということで、むしろ高い地位の職給をたくさんに準備をするという形で事実上その問題を解決するようにしたということでございます。
 それから審査請求の方式を現行よりわずらわしくしないということでございますけれども、これは現在の不服審査法その他の考え方と同様でございまして、特にそれをわずらわしくした点はないと思います。税法学会ではいかなることを考えて言われたのか、私どもわからないということでございます。
 それから青色申告者の徴収停止という問題につきましては、従前から、青色申告については、その特典として、青色申告者が異議申し立てを行ないました場合には徴収の執行を停止するという規定がございましたが、これは青色申告というものを育成する時期としてはある程度やむを得なかったわけではございましょうけれども、本来、青色申告というものは、帳簿を正しくつける、それによって課税標準の計算を正確にするというところに意味があるわけでございます。租税債権が確定した後の徴収については、白色申告者とこれを同一に扱う、異なる扱いをする理由はあまりないわけでございますので、御承知のとおり、国税通則法制定の際に、青色申告者についても白色申告者についても徴収猶予という手段をとり得ることにしてこの制度を廃止したものでございます。そういう意味から申しますと、青色申告者だけ徴収停止をさらに復活しようという考え方はむしろ逆行ではないかということで採用しなかったわけでございます。
 それから事前照会制度につきましては、事前照会制度を法制化すべきであるという点でございますが、これもいろいろ税調でも検討されたわけでございますが、法律上の制度としてやった例は、現在西独に法案として出たということを聞いておりますが、その他ではないわけでございまして、アメリカにおきましては、御承知のとおり、かなり広範な事前照会制度をとっておりますが、これは国税庁長官のいわゆるレギュレーションを基礎にしてやっておることでございます。そういう意味では、むしろ形式を整えるよりも、現在の各種の具体的な租税に対する問い合わせに対する国税庁のとっております態度、書面をもって正確な返答をするというやり方をできるだけ今後整えてまいる。また、同時に、納税者の出される照会も、具体的な案件についての具体的租税債権についての照会であるということにできるだけ近づくようなことにしていただいて、それに応じた文書による回答を今後進めていくということで対処すべきで、法律化するのはまだ時期尚早であるということでこれを採用しなかったといったようなことが、税法学会と異なった結果になった理由でございますが、しかし、税法学会が言っております精神と申しますか、権利救済制度としての前進という意味は、私はこの法案は十分に盛っているものと考えている次第でございます。
#214
○多田省吾君 次に、各条を若干お伺いしたいのですが、第二十三条の「(更正の請求)」の関係でございますけれども、第一項の本文や各号の中に、それぞれ更正があった場合の規定をつけ加えておりますけれども、その理由ですね。従来は、更正の請求が短期間であったときでも、請求前に更正を受ける場合がなかったのかどうか、その場合にはどう処置をしてきたのか、それをまずお尋ねしたい。
#215
○政府委員(吉國二郎君) 御承知のとおり、従来は、更正の請求は一カ月以内ということになっておりましたのを、一昨々年、法人税と所得税について二カ月に延期したわけでございます。通常、更正決定等が行なわれるというのは、申告が行なわれましてからかなりの期間を経るわけでございますし、また、決定を受けた場合に更正を受けるということはほとんど考えられないわけでございますので、更正というものを入れない手続になっておりましたが、今度は一年に延ばすということになりますと、どうしても更正というものが入った規定にしないと実際的でないということで、更正を含めた決定ということにいたしたわけでございます。
#216
○多田省吾君 次に、第二項の規定を追加した理由ですね。政令案の二十三条二項第三号関係に、「行為の効力に係る官公署の許可その他の処分」とか、あるいはいろいろ契約の解除、取り消しがありますけれども、どのようなケースが考えられるのかを具体的に御説明いただきたい。いままではこの問題はどう処置してこられたのか。
#217
○説明員(早田肇君) 第二項以下、一号、二号、三号それぞれ例示してございますが、三号におきましてさらに「その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき。」ということで、なお政令においてここに掲げてあるようなもの以外のものも更正の請求ができるようにしたわけでございます。二十三条の一項のほうで原則的な規定がございます。原則一年ということにしておりますが、一年後にいろいろの事態が生じた場合に、その際納税者のほうから権利として更正の請求をすることができないということでは、やはりいろいろ問題もあります。たとえば第一号でございますが、売買契約をいたした、売買の無効の確認の訴訟があった、その売買契約が取り消されたという場合に、やはりその納税者のその年分の契約について異動が生じます。そういうような場合に、判決の確定後二カ月以内にさらに後発的なそういう理由が生じたということによって更正の請求ができることにいたしたわけでございます。
#218
○多田省吾君 次に、五十八条の還付加算金のことですが、第一項の各号で各加算金計算の式を三種に区分した理由ですね。あるいは、更正決定が取り消される場合の還付加算金は、国の誤りによるものでありますから、納税者に対する罰則的な計算率と同じように日歩四銭とすべきではないか、こういう問題もあると思います。また、二項の三号でございますが、申告納付にかかる国税で、納期前に納付を行なった場合の還付加算金については納付の日の翌日から計算されるという現行規定を削除しておりますが、これはどういう理由か。この三点を五十八条についてお伺いしたい。
#219
○説明員(早田肇君) 五十八条で、これまで、還付加算金につきましては、それぞれ納付の日の翌日から日歩二銭を付することにいたしてあったわけでございます。今回の改正によりまして更正の請求が一年間することができるというようなことに改正になっております。外国におきましても、納税者が御自分のほうの過誤で税金を過大に納めた場合に、それについて還付加算金を付しておるというような例もございません。しかしながら、納税者のほうから過大であるといわれた場合に、それを返します際に、政府側が事務が遅延して長い間返さないということも、これもいろいろ問題がございますので、還付加算金につきましては、原則として納税者側に過誤があったというような場合にはつけないが、納税者側から請求があったときには、その請求日を基準として起算日を計算するということにいたしております。ただ、国側が更正処分をいたした更正の結果、納税者が納めなければならない税額ができた、それで納税者が納付したその後その更正が取り消された、要するに、納税者が納付すべき原因が国側の更正処分にあるというような場合には、納付の日から還付加算金を付するということでございまして、ただいま一番最後に申し上げましたのが五十八条の第一号の分でございます。第二号のほうは、更正の請求に基づく還付金についての還付加算税の規定でございます。
  〔委員長退席、理事青田源太郎君着席〕
#220
○多田省吾君 次に、第七十五条ですが、「(国税に関する処分についての不服申立て)」の一項、二項ですが、いままでも同じ穴のムジナといわれるような現行の協議団制度のもとでも、国税庁長官が国税庁職員のしたところの処分についての不服申し立てについては、これを国税庁の協議団に審理させることとしてあるわけでございます。しかるに、この法案によりますと、なぜ答申の趣旨を尊重しないのか、問題点がございます。長官のした処分について審判所の審理に付させるべきである、こう思いますが、こういうような点はどうお考えになっておられるのか、この一点をお聞きしたい。
#221
○説明員(早田肇君) 国税庁長官ないしは国税庁の職員がいたしました処分については、お説のとおり、従前は、国税庁の協議団でしたわけでございますが、今度は、国税庁の協議団そのものがなくなりまして、国税庁に国税不服審判所が生ずるわけでございます。国税庁長行の処分自身については、国税庁長官に対し異議申し立てをいたしますので、国税庁長官自身が判断いたしております。したがって、これが最終的なものと考えて差しつかえないのじゃないかと思うわけでございます。
#222
○多田省吾君 次に、七十八条の「(国税不服審判所)」について「審査請求に対する裁決を行なう機関」と、このように規定しましたけれども、それはどういう理由なのか。裁判所と違って審判所は行政庁なのですから、裁決を行なう機関というのは審判所長であると思われますけれども、この点はどうか。あるいは、審判所長は、少なくとも大蔵大臣が総理大臣の承認を受けて任命すべきである、あるいは国会の承認を経るという手続をとったらどうかと思いますけれども、いまの姿では結局国税庁長行が任命するような形であります。こういった点。それから現実にこのような公正を期すべき審判所長はどういう分野から迎えようとなさっておるのか。これはあまりお答えいただけないと思いますけれども、そういう考え方ですね。それを七十八条に関しましてお伺いをしておきたいと思います。
#223
○政府委員(吉國二郎君) 第一項は国税不服審判所という機構の説明でございまして、国税庁が租税の賦課徴収を行なうというような意味と同じでございます。実際の処分は国税不服審判所長が行なうということになるわけでございます。
 国税不服審判所の長を大蔵大臣の承認を得て国税庁長官が任命するというのは不十分ではないかという御指摘はごもっともの点がございますけれども、先ほど来申し上げましたように、国税庁のもとに国税不服審判所が置かれますと、現在の国家公務員法、国家行政組織法の規定から申しますと、任命権者というものはどうしてもその外局の長官になるわけでございます。したがいまして、それを飛び越して外局に置かれる附属機関の長官を外局の長のさらに上級の任命権者が任命するという例は、常置機関にはないわけでございます。審査会とか委員会というものにつきましては、附属機関の置かれた当該庁の任命権者を越えて上級の任命権者が任命する例が若干ございますけれども、常置機関としては例がないために、大蔵大臣の承認ということによって客観性を保持しながら任命権者を国税庁長官にせざるを得なかったわけでございます。
#224
○政府委員(亀徳正之君) この法案が通過いたしまして不服審判所長につきましてどのような方を選考するかということは、法案通過後大臣の御意向もお聞きしながら慎重に選考に当たらなければいけないと思っておりますが、具体的にどうとはなかなか現在の段階では申し上げにくいのですが、やはり税金の問題が全くおわかりにならない方では困るとともに、ただ税の専門家というだけでもいけないのではないか。やはり、広い、高い常識を持った方を選定すべきではないか。特に、審判所長につきましては、少なくとも部内ではございませんで、部外から選ぶという方向にたぶんなるのではないかと考えております。
#225
○多田省吾君 先ほども若干御説明がありましたけれども、審判官あるいは副審判官、審査官の行ならべき職務内容ですね、あるいはこの任用資格というものをお伺いしたいし、また、このような資格は法律で定めるべきではないかと思いますけれども、それはどうですか。あるいは、この任命権者は具体的にだれになっているのか、この辺を詳しくお答え願いたいと思います。
#226
○政府委員(吉國二郎君) 国税不服審判所には、国税の審査に当たる審判官と、それに対して審判官を補佐する国税副審判官、さらにこれらを補佐して事務を整理する審査官というものが置かれるわけでございますが、国税副審判官は、特別の資格がある者は国税審判官の職務も行なえることになっております。国税審判官の資格につきましては政令で定めることになっておりますが、これは他の海難審判所等のような準司法機関でも政令できめることにいたしておりますのに準じたわけでございまして、むしろ法律で明らかに資格を政令で定める旨を定めるということが慎重なる規定であるということが言えるかと思います。
 なお、これらの任命権者は、先ほど申し上げましたような理由で、国税庁長官になるわけでございます。このように審判官、副審判官、審査官というような職階を分けておりますのは、やはり国税不服審判所がその事案の内容に応じて最も効果的に、能率的に仕事ができるように考えられた結果でございまして、そこの職能分化を行なえばこのように三つの職階が必要になってくるということであるわけでございます。
#227
○多田省吾君 審判官は、国税庁長官が、民間からも極力採りたいというお答えがございました。政令案によりますと、その現実の問題で、弁護士とか、大学教授、裁判官などの経験者、このようにございますが、はたしてそのようになっているかどうか。これが望み薄であるとすると、税務職俸給表特三等級以上の国家公務員となりますと、税務署長あるいは総務課長以上の方々になるのではないか、そういう民間からの登用がスムーズに行なわれると考えてよろしいのかどうか、もう一回……。
#228
○政府委員(亀徳正之君) 現在の段階で、あらかじめ何名くらい採用できるかということは、事実上お答えすることは無理だと思います。ただ、そういった範囲、同時に、今回のは兼職ができない職務でございますから、そう簡単に人が得られるとは思っておりません。相当な努力をいたさなければいけない、かように考えております。
#229
○多田省吾君 少し詳しくお伺いしたいのですが、昨年の四月九日に税制簡素化特別部会に提出された「協議団の概要について」と、こういうものによりますと、「協議官には税務経験も長く、学歴および年齢的にみて老練の者を当てており、」と言われております。この政令案のおしまいのほうにも、「その他上記の者と同等以上の知識経験を有する者」と、こうございますけれども、これは同じような方々を指していると、このように考えてよろしいのかどうか。
#230
○政府委員(吉國二郎君) いま御指摘になりましたような人は、特別に「職務の等級が一定(たとえば、税務職俸給表特三等級又はこれに相当すると認められる等級)以上の国家公務員」というところであらわしております。「その他上記の者と同等以上の知識経験を有する者」というので考えられますのは、たとえば地方公務員で税務関係を処理しておった人などはまさにこれに該当するのではないか、かように考えております。
#231
○多田省吾君 前にもお尋ねしたのですが、協議団制度のときから民間人の任用というものはどうしても腑に落ちない。昭和二十五年当時においては税務署員の数も少なかったとかあるいはどうのこうのといろいろ理由を並べられましたけれども、第三者的な構成という立場から見て、あるいは最初の発足の当時の五〇%は民間人からという姿から見て、もっともっと民間人起用の実績があってよかったのではないかと思われますけれども、現状はそうではない。結局、こういった点から、今後のこのような不服審判所においても民間人登用という面がおろそかにされるのではないか、このように私たちは思わざるを得ないわけでございます。この観点から、この前の協議団制度のときの民間人任用のことに関して、その意味を長官はどのように考えておられたのか、消極的な考えに陥っておられたのではないか、その評価をどう考えておられるか。これがはっきりしなければ、これからのまたいままでの民間人登用という面が根本的な本質論が食い違っておるのでは、いくら質問してもだめですので、こういった問題をここではっきりお聞きしておきたいと思います。
#232
○政府委員(亀徳正之君) 私は、問題をやはり現実的に処理していかなければならないという立場があろうかと思います。税の仕事は非常に専門的で、税法そのものもむずかしゅうございますし、ただ全部民間人に振りかえればそれでいいという問題では決してない、私はかように考えております。したがいまして、一番のポイントは、特に審査官あたりは人事交流でいいではないかと申し上げております点は、やはり事実問題の調査、そういった点がいろいろある。こういった点は相当熟練した人を充てる必要がある。しかし、一番のポイントは、やはり最終判断をする審判官というところの立場がたいへん大切であろうか。したがいまして、私の考え方は、審判官以上につきまして極力民間からも採るし、また、かりに部内から行きましても、そこで骨を埋めると申しますか、原則的には交流がないという体制にするということが最も現実的な処理の仕方ではないか、かように考えているわけでございます。
#233
○多田省吾君 時間もありませんので、最後にお尋ねしますが、第百条の「(国税審査会)」に関連しまして、審査会の意見というものが二つあるいは三つに分かれた場合はどうするのか、長官としてどういう意見をとられようとしているのか、また、同じ百条の九項の組織及び運営に関する政令事項というものは具体的にどのようなことを規定されるおつもりなのか、この二点をお伺いします。
#234
○政府委員(吉國二郎君) この点は、衆議院におきまして修正が行なわれました。「国税審査会の議決に基づいてこれをしなければならない。」と改まったわけでございまして、「議決」と申しますと、通常は過半数というのが一つの筋だと思います。ただ、この種の委員会で、はたして過半数だけで済むのか、むしろ全会一致が望ましいかという運営上の問題はあるかと思いますが、形式的に申せば、「議決に基づいて」と改まった点にむしろはっきりした点があるのではないかと、かように考えるわけでございます。
 それから審査会の運営等に関する政令におきましては、会長に事故があった場合には、あらかじめ会長の指名する委員がその職務を代理するとか、国税審査会は委員の過半数の出席がなければ議事を開くことができないこと等を規定する予定でございます。
#235
○田渕哲也君 すでにこの問題についてはもういろいろな角度から論議がされておりますので、できるだけ重複を避けて質問を行ないたいと思います。
 最近数年の不服申し立て件数の増加、あるいはそれに対する取消や変更の数の増加、こういうことは一体何を物語っておるというふうに考えられておるか。私は、徴税強化のために無理な更正決定を末端の税務職員に強制しておる、こういう面もあるのではないかというふうに考えますが、その辺はいかがですか。
#236
○政府委員(亀徳正之君) 確かに若干異議の申し立ての件数はふえておりますが、最近四十三年度もまとめましたので、四十年、四十一年、四十二年、四十三年度の数字を見ますと、四十年は三万二千、四十一年が三万六千、四十二年がちょっと減って三万四千、四十三年が二万八千、それから審査の請求も、四十年が発生が約九千件、四十一年一万一千八百件、四十二年一万二千件、それから四十三年がちょっと減りまして一万八百三十三件というようなことになっておりまして、むしろ四十三年は減っておりますし、まあ徴税強化で云々とは思っておりません。とにかく、調査、それから更正並びに決定の件数も有資格者の三%程度でございますし、そう徴税強化で云々とは考えておりません。しかし、いずれにしろ、財産権に関連いたします問題でございますから、こちらの調査した点も不十分な点もございましょうし、いろいろ更正に関連いたしましては納税者の御不満というものもいろいろあろうかと思いまして、また極力全体として少なくなったほうがいいにこしたことはないと思いますが、この数字で直ちに急にわれわれの徴税面でのあれが変わったということはないと、かように申し上げられると思います。
#237
○田渕哲也君 訴訟件数を見ると、四十二年の八百八十七件、これは三十八年に比べて四・七倍ということを言われておりますけれども、税金に対する徴税側と納税者側のトラブルというものは全般的に見てふえていると見ていいのじゃないか。この一つの原因として、やはり経済成長が非常に急速に行なわれて、税金の対象になるものが非常にふえた。ところが、反面、税務署の仕事量がそれだけふえたわけですけれども、それに対する処理能力、つまり仕事量と人員との関係を見た場合、これがほんとうに適正な人員配置と言えるかどうか。その辺が、処理能力の相対的な不足が、調査の不十分とか、あるいは納得のいく徴税が行なわれない一因になっているのではないかと思いますが、これに対する見解はいかがですか。
  〔理事青田源太郎君退席、委員長着席〕
#238
○政府委員(亀徳正之君) 確かに、事務がどんどんふえる反面、税務署の定員がほとんどふえないということで職員がたいへん苦労いたしておりますことは、先生御指摘のとおりでございます。率直に申して、当初六万三、四千ありました定員が、現在は五万一千名でございますが、ここのところ、毎年、法人数もふえる、所得税の納税義務者もふえる、またその中身もだんだんむずかしくなるということで、仕事はふえる一方、定員はふえないということで、毎年予算要求は一生懸命やるのでございますが、全体の公務員の定員をふやすまい、むしろ削減しようというワクの中でございますので、若干ながらふえておりますけれども、とうていわれわれの希望をかなえていただくような状況になっておりません。したがいまして、私たちはたいへん苦労いたしておるわけでございまして、その一、二の例を申し上げますと、どうしても都会地の課税が不十分ではないかということで、これは生身の人を殺すので、宿舎の手当てその他たいへんでございますが、地方局から東京、大阪、名古屋という都会局に相当人員を移しております。それからまた、事務系統別にも極力徴収及び管理というような合理化できる面は合理化いたしまして、人員を浮かしまして、間税から直税に人を移す。あるいは、それだけで足りないで、期限付き転勤と申しまして、定員上の再配分はいたしませんが、たとえばおまえ態本から東京に三年間行ってくれ、そのかわり三年たって希望があれば、もとの態本に帰してやるというところで、無理無理東京に来て働いてもらうというようなこと。また、あるいは、税務署も、これもたいへんな作業でございますが、仕事の多いところは分割をする、そのかわり軽微なところは統合するというような苦労もいたしております。定員がふえない点が非常につらいのでございますが、極力こういったあらゆる苦労を重ねまして、人員の再配分を行ないながら、他方、課税の公平という面での強い要請もございますし、限られた人員でこのように苦労しておることを御理解いただきたいと思います。
#239
○田渕哲也君 税金を取るための人員をふやすばかりが能ではないと思いますが、もう一面、日本の税制というものは非常に複雑である。それからまた、特別措置なんかが乱脈にどんどんつくられて、非常に不合理なひずみというものが全体から見たらできておるんじゃないか。税金というものは、できるだけ簡単明瞭であることと、それから公平であって国民がみんな納得しやすいものである、これが絶対必要な要件だと思うのですけれども、税制の簡素化、それから不合理な税制を是正してできるだけ公平にする、こういった努力も根本的に行なわなければなかなかむずかしい問題だと思うのですが、特に税務署と納税者との関係は、片方はできるだけ軽く、悪いことばで言えばごまかそうとするというような目で税務署の方は見ておられる。それを何とかごまかされないように取ろうとするからいろいろなトラブルが起こるわけで、こういうふうな国民が税金に対して納得をしてもらえるような税制というものをつくることが必要ではないかと思いますが、この点についてどう考えておられますか。
#240
○政府委員(吉國二郎君) まことにお説のとおりだと思います。税制調査会で第三次の税制簡素化答申を出すまで各種の税制簡素化について論議したのも、そのためであると思います。ただ、御承知のように、最近会計その他も非常に複雑になっておりますので、簡素化ということがいろいろな意味で税法自体の複雑化を招くという面もなきにしもあらずでございます。たとえば、税制調査会の答申で、計算を簡素化するために特例を設けるということをいたしますと、制度としては簡素化されるわけでございますけれども、簡易な特例をつくると、その結果として税法は二途に分かれるということで、二つ制度ができてしまう。また、納税者のほうは、簡単な方式でやったほうが安いか、複雑な方式でやったほうが安いかを必ず計算してどちらかをとるということで、かえって複雑化してしまうというような批判もございます。確かに簡素化が必要なことはよくわかるのでございますけれども、実際上はなかなかその簡素化がむずかしい。また、一方、公平という原則からいろいろな要求が出されます。たとえばよく言われる各種の控除、就学者控除を設けろとか、いろいろな控除を設けるということは、実はそれが税法の複雑化につながっておるわけで、その点から非常な難事でありますけれども、私どもぜひ努力はしていきたいと思っているわけでございます。
 ただ、税制調査会で指摘しておりますように、結局、法令や通達をいかに簡素化しても、あるいはいかに努力してみても、なかなか限界がある。むしろ、ほんとうは、納税者が自分が正しいと思う計算が最終的には正しければ受け入れられるという姿が望ましいのではないか。いわば納税者の個別性というものに即した解決がはかられる道が必要ではないかということを言って、最後に到達したのがこの国税不服審判の問題でございまして、いわば一般的な通達というものでは解決し切れない個別事情というものを納税者が進んで主張をし、それに対して審判所が既応の通達の形式的解釈にとらわれずに解決をはかるということが一般化してまいりますと、納税者自身が正しい角度から自分の所得を計算する慣習というものも出てまいりましょうし、それを徹底していけば各納税者については事実上税法の簡素化が行なわれたと同じ結果になるのではないかというのが、第三次答申が権利救済制度というものを税法簡素化の最後の完成点として求めたゆえんであろうかと思います。そういうような点からもちろん私ども努力をいたしますけれども、権利救済制度の合理的な推進という形でより納税者の自主的な計算が合理的に認められることが進められることを期待しているわけでございます。
#241
○田渕哲也君 それからもう一つの税金のトラブルの起こる原因は、特に税務署の経験十数年ないし二十年ぐらいの調査官クラスのベテランの退職が非常に多いということを聞いております。最近は労働力の流動性が高まっておりますので、これは多かれ少なかれほかの部署でも見られることだと思いますけれども、特にほかの官庁、部署に比べて、ベテランクラスの退職が税務署では多い、これらが一つのトラブルの原因ともなろうかと思いますので、この原因をどうつかんでおられるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
#242
○政府委員(亀徳正之君) 中堅職員の方たちの離職が多いことは、事実でございます。同時に、そのバックグラウンドとして、われわれでは中ぶくれということばを使っておりますが、戦後急速に税務官吏の人数をふやさなければいけないということで、一時に多数の職員を採ったわけでございます。それから二十年以上たちまして、ちょうどその人たちが成長してきたということで、スタートのときにはむしろ経験年数が少ないということが非常に問題ではないかということが議論されたわけでございます。それで、むしろ最近は、中堅層の人たちの数が多いから、やめる場合には中堅層の人が多いということで、御参考までに申しますと、経験二十年から二十四年の方たちが全体の職員の四四・九%に及んでおります。二十五年から二十九年が七・四%、それから三十年以上が四・二%、したがいまして、永年勤続表彰というのは二十年たちますと表彰するわけでございますが、そういう表彰を受けるような人が経験二十年以上が実に全体の五六・五%を占めている。逆に一ころ若い職員を採っていないということで、十年から十四年の経験の人たちが五・七%にしかすぎないというようなことで、人員構成が率直に申して非常にいびつな形をとっております。今後は職員の採用問題を真剣に長期構想で考えなければならないと考えておるような次第でございまして、むしろ現在は二十年以上たった経験者がなかなか給与その他の面で優遇されない。しかも、職階の問題で、課長にならなければ給与が上がらない、署長にならなければ給与が上がらないというような仕組みになっておりますので、そういったことではどうにもこの大きな問題を解決することができないということで、ことしは、専門官制度と申しますか、調査官というだけで相当上の給料がもらえるというような仕組みにいたして、そのワクをもらうというような努力をいたしておるようなわけでございまして、率直に言ってなかなか有能な中堅職員がやめていく事実が非常につらいことはつらいわけでございますが、全体として二十年以上の人たちが五六・五%も占めているという大勢ではやむを得ないことではなかろうか。むしろ残った人たちに気持ちよく働いてもらうというためにどうすればいいかということで、私の一番の仕事は、人事院あたりと常にかけ合いまして税務職の俸給を少しでも総体的によくするように地道な努力をいたしておるようなわけでございます。
#243
○田渕哲也君 税務署の方々に気持ちよく働いてもらうということは非常に大事なんですが、そのためには待遇面の配慮も必要ですけれども、もう一つ重大なことは、国民との関係が悪ければやっぱりいやな思いをされるだろうと思います。よく新聞の漫画を見ても、税務署というのはいつも悪役であまりいい感じを持たれない。先ほど大蔵大臣も親しまれ愛される税務署と言われましたけれども、これはかけ声だけではなかなかむずかしいのではないか。ほんとうは税金の徴収ということは国にとっては非常に大事な仕事でありますから、ほんとうに親しまれ愛され国民が納得して税金を納められるためには、もっとPRを行なわれたほうがいいのじゃないか。最近はよく酷税白書というようなものが出ますけれども、これはむしろ税金を取る側を攻撃するようなものが多いわけで、酷税の酷もひどいということですけれども、むしろ大蔵省側あるいは国税庁側から国の税の国税白書というものを出して、税金の仕組みなり、使われ方なり、そういうものが国民全部にわかるようなPR、そういうものが必要ではないかと思いますが、そういうお考えがおありかどうか。
#244
○政府委員(亀徳正之君) やはり税務というものが国民に親しまれるところでなければ仕事がなかなかうまくいかないことは、先生おっしゃるとおりでございます。相当なPRの予算もちょうだいいたしまして、いろいろパンフレットをつくり、また、市販の冊子でございますが、いろいろ税金の中身を申し上げるようなことで努力をいたしております。「税金とそのゆくえ」とか、「二十年のあゆみ」というようなパンフレットもつくり、また、私も「こんにちは奥さん」に引っぱり出されましたり、そういうところにも出まして、われわれの立場というものを極力PRしておるわけでございます。しかし、聖書にも遊女(あそびめ)と収税人というものがどうも皆から憎まれるようなことで書いてありますように、しょせんなかなか喜ばれることにも限界がございまして、喜ばれっぱなしでちっとも取らないんでは、何をしているんだかわからぬことになる。しょせんは、税務署に気持ちよくいろいろ尋ねてきていただいたり、御相談に応ずるということが一番大切なことではないか。特に私いつも税務の会議その他で強調いたしますことは、申告納税制度をいかに定着さしていくか。そのためには、納税者をともかく疑ぐってかかるということはいけないことではないか。やはりまじめな納税者を一人でも多く育てる。そのためには、ともかくまじめに申告しようとしておられる方には、若干の間違いなり税法の不知があったら、むしろこちらから進んでお教えするというような親切な態度が必要ではないか。そのかわり、整然と帳簿は整えておりましても、計画的に脱税をしておるというようなところは、どこまでも真実をつかむべく努力をするということが一番大切なことではないかということで、日々声をかけている次第でございます。
 なお、いろいろPRその他のやり方について、いろいろまだ不十分な点があろうかと思いますが、今後ともその改善に一そうの努力をいたしていきたい、かように考えております。
#245
○田渕哲也君 国税不服審判所の審判官並びに職員等の任命、採用等についてはすでにお答えいただきましたけれども、現在ある協議団に四百数十名の職員がおられるわけですが、これがそのまま不服審判所に移るということなんですか、この点についてどう考えておられますか。
#246
○政府委員(亀徳正之君) 私は、現在協議団にいる方でそのまま移る方もおられるかと思います。しかし、この制度発足とともに部内職員から移す人は、新しい不服審判所に最も適した人、特に審判官――それはこれからの問題ですが、審判官以上になる人は、単に成績主義にかり立てられて動くとかいうことでない、公正な人を安定的にこの審判所に移す。また、同時に、民間からもそういう方々を引き入れてくるということにいたしたい。そういう意味で、よくありますように、現在の協議団も一ころはおば捨て山とかいろんな悪口を言われたわけでございますが、そういうことであってはいけない。それから特に現在の協議団の運営の方法も、一々主管部の鼻息をうかがってやるようなことはいけないということで、大半のものは、主管部の意見なしに、協議団独自の議決があれば局長はそのままそれを裁決として実施していくということはできるように、相当有能な人を実は協議団にやっております。それで、直税部の課長の経験者とかあるいは補佐をやっているとかという人をむしろ移して、協議団を現在においてもますます強化する方向で実は運営しておるわけでございますが、新制度の発足とともに一そうそういう点に配意していきたい、かように考えております。
#247
○田渕哲也君 現在の協議官は税務行政官でございまして、主管部との間に人事交流もされておりますけれども、国税不服審判所になれば、先ほどからの御答弁のように、審判官以上はほとんど交流というものは考えないという御答弁でしたけれども、その他の人についてはどの程度交流を考えておられますか。
#248
○政府委員(亀徳正之君) なかなか人事というものはむずかしゅうございまして、停滞するような感じになりますと生き生きいたしませんし、同時に、あまり極端に人事交流をやりますといわゆる独立性という点に問題が出てくるということで、非常に大切なむずかしい問題かと思います。それで、毎々御答弁申し上げておりますように、手足になって事実問題を調査する人たちはむしろ主としては交流によったほうがよいのではないか。したがって、不服審判官、特に審査官につきましては、ある程度交流いたしたほうが、よどみがないと申しますか、あまりよどんでおりますと水もくさくなるようなあれでございますので、やはり交流ということをやったほうがいいのではないか。しかし、審判官になりますと、同時に待遇面でも――補足して申し上げますと、実は、現在、ずっと税務署で育っていった人が最終に行ける地位はまあ国税局長まで、国税局長になっている例が現在三つばかりあるわけですが、これは行政職の一等級にいるわけでございます。今度の首席審判官は行政職一等級を実は十一取っておりまして、いわば局長クラスに匹敵するポスト、それは民間からも採る必要があるので、それだけ優遇しておかなければならぬという配意もあるわけですが、そういうふうに総じて待遇を高めておりますので、審判官以上は安定的にそこでこの仕事に専念していただくということが可能だし、また、そうお願いしたい、かように考えておる次第でございます。
#249
○田渕哲也君 今度の国税不服審判所が国税庁の管轄にあるわけですが、この場合人事交流というのが非常に矛盾する面を持っておるわけです。人事交流をひんぱんに行なわなければ、よどんで、おば捨て的な感覚になりやすい、ひんぱんに行なえば、ほんとうに国民の権利を守る立場になれるだろうかという危惧があるわけです。審判所におる間に、税務署と違ったような、たてついたようなことをすると、出世の妨げになるというようなこともあるでしょうし、これは非常に矛盾する要素を含んでおると思います。本来はこれは独立の司法機関にすべきであって、便宜上は当面こういう措置をとらざるを得ないからこうなっておると思いますけれども、将来の形としては、やはり独立した準司法機関に変えていく方向に進まなければならないと思いますけれども、この点についてはどう考えておられますか。
#250
○政府委員(吉國二郎君) 税制調査会でもいろいろ検討いたしました結果としては、いま御指摘になったような準司法機関的なものというものも一応検討されたわけでございます。あるいは、さらに進んで、司法部の中に特別の部門を設けて税の訴訟に当たらせるということも考えられたわけでございますが、結局、先ほど来申し上げておりますように、現在の日本の行政、司法制度全般の中で、それと矛盾しない形としてはいまの形よりほかないということになっておりますので、将来わが国の行政、司法制度そのものも必ず変わっていくと思います。その変わっていく方向というのは、行政救済というものについても次第に独立機関的なものができるということも考えられる。そういう方向と一致してこの制度がおそらく将来変わっていくということは考えられ得るわけでございますが、何といたしましても、いきなりそのような制度ができるといたしますと、これはなかなか困難であろうかと思います。先ほど申し上げましたように、協議団というものができて二十年たって、そういう実績から今回これだけ独立機関的なものをつくる下地ができたわけでございます。今回の制度がまた将来の段階の一つの下地になるものであることは間違いないと、そういう意味では、そういうものの可能性をつくり上げるという意味でもこの改正というものが一つの意味を持つことはあるんじゃないか、かように考えておるわけでございます。
#251
○田渕哲也君 協議団から国税審判所に変わるわけですけれども、形をいくらつくっても、実際は、その中で働く人がほんとうに国民の権利を守っていくんだという意識で意欲を持って働ける体制をつくることが大事ではないかというように考えます。ところが、こういうふうに制度の変更ということは、実際にここに行く人、あるいはいろいろ部署の変わる人にとっては、非常に大きな問題なんですね。したがって、配置転換とかあるいは労働条件、待遇、そういうものについては十分労働組合側と事前協議を行なってもらいたいと思うのですけれども、この点はどう考えておられますか。
#252
○政府委員(亀徳正之君) 私も組合とたびたび会見いたしまして、私のところには国税労組と全国税と二つございますが、双方平等に会見に応じておるわけでございますが、ただ、具体的な個別の人事を組合と話し合ってきめるというわけには相まいらないと思っております。ただ、今度の不服審判所ができたら、たとえばちょうど先生御質問になったような点がみんな関心が深いわけでございまして、人事の、もしも行った場合の交流というのはあと一切ないのかあるのかというようなこと、こういう一般的な考え方についてはある程度話してあげておきませんと、職員の間に不安がつのるということにもなりますので、そういった基本的な考え方その他は十分組合側にも説明いたしております。また、同時に、個々の人事に関連いたしましても、国税庁の特色としまして、一定のところに住んでおりますと、納税者の方との特殊な関係がつき過ぎてどうも問題があるということがあってはいけないということで、ほかの省庁とも違いまして転勤を相当勇敢にやっております。それだけに、事前に、職員の希望なり、また職員の家庭の状況というもの、あるいは病人がいるかいないかとか、あるいは両親が年をとってそれのめんどうを見なきゃいかぬとか、どうしてもここを離れられない事情があるとか、こういった個別の事情を事前に十分聴取するような仕組みにいたしておりまして、全部希望を聞くというわけにはまいらない場合が残念ながらございますが、極力職員のそういった希望なり実情というものを十分把握いたしまして人事異動をやるというふうに配慮いたしておる次第でございます。
#253
○田渕哲也君 次に、行政不服申し立て制度についてですけれども、もちろん、これが持っておる利点とか、あるいは現実に果たしておる機能からいって、これ自体の存在の必要性を否定するものではありませんけれども、しかし、訴訟に先立ってこれをどうしても前置させなければならない理由というのは、納税者の権利救済の視点から見るなら必ずしも出てこないのではないか。なぜなら、国民の側に立って考えるならば、行政上の不服申し立てと訴訟のいずれを選択するかということは、国民の判断にゆだねるべきものではないか。もちろんいろいろな理由はあろうかと思います。たとえば、大量に行なわれる処分で不服申し立ての裁決によって行政の統一性をはかっていくとか、あるいは、専門的技術的性質を有する問題であるとか、あるいは、裁判所がこれだけ訴訟がふえれば処理能力がないとか、いろいろな問題があろうと思いますけれども、しかし、こういういかなる理由づけにもかかわらず、つまるところは国の便宜による制度にすぎないのではないか。特に法令の解釈とか通達の変改の合理性が争われる場合においては、不服申し立ての前置の制度というのは国民にとっては非常に迷惑であるし、事実上国民の出訴権に制約を加えることになると思いますけれども、この点はいかがですか。
#254
○政府委員(吉國二郎君) ただいまのいわゆる訴願前置主義というものについては、いま御指摘のあったような理由があげられておるわけでございますが、結局において、全体の制度としての仕組みではたして納税者並びに国民一般の権利救済というものが円滑にいくかどうかという観点から考えなければならないと思うわけでございまして、税の面だけを考えれば裁判所に直ちに出訴するということも考えられるわけでございますけれども、ただいまのような多量な案件が裁判所に一度に持ち込まれるということになれば、全体の訴訟遅延を来たすという結果にもなりかねない。現に、訴訟件数がふえる以上に未決件数がふえておる状況でございます。そういう点から申しますと、現在の段階では、従来のいわゆる前置される行政不服手続をより合理化して具体的な合理的な解決がはかれる道をはかりつつ、一方において将来の司法制度の発展というものを待つのが必要ではないであろうか。全体としての仕組みがくずれるというおそれがありますし、一ぺんやってみたらいいだろうという御意見も確かにあるのでございますが、問題は、そういうような制度をとってはぐあいが悪いといってあと戻りはなかなかできないわけであります。そういう意味では慎重を期することが適当ではなかろうかというのが税制調査会の一般的な空気であったわけでございまして、その点は相当問題がある点ではございますが、私どもとしてはやはり調査会の判断をもとにしたほうがいいのではないかという感じがするわけでございまして、なお、先ほど申し上げましたように、アメリカ等では確かにタックス・コートと地方裁判所の出訴と選択をいたしておりますけれども、御承知のとおり、地方裁判所に出るためには税額を全部納めてしまわなければならないという制約がございます。そういうことがわが国ではたしていま直ちに適当であるかどうかという点ももう少し考えてみる必要があるのではないか。そういう点を勘案いたしまして、今回は従来の制度を一応踏襲するということにいたしたわけでございます。
#255
○委員長(丸茂重貞君) 本案の質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト