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#1
第061回国会 外務委員会 第3号
昭和四十四年三月十八日(火曜日)
   午前十時十五分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 利壽君
    理 事         佐藤 一郎君
                長谷川 仁君
                増原 恵吉君
                大和 与一君
    委 員         杉原 荒太君
                高橋  衛君
                廣瀬 久忠君
                三木與吉郎君
                加藤シヅエ君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務大臣官房長  齋藤 鎭男君
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省条約局長  佐藤 正二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       外務省条約局外
       務参事官     高島 益郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
 めの日本国とベルギー王国との間の条約の締結
 について承認を求めるの件(内閣提出)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国とアラブ連合共和国
 との間の条約の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出)
○在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する
 法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○国際情勢等に関する調査
 (国際情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本利壽君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ連合共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件
 以上、二案件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。愛知外務大臣。
#3
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 政府は、ベルギーとの間の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約を締結するため、昭和四十一年五月以来ブラッセル及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十三年三月二十八日に東京において、わが方三木外務大臣とベルギー側ユッペール駐日大使との間でこの条約に署名を行なった次第であります。
 この条約は本文二十九カ条及び附属議定書から成り、その規定は、OECDモデル条約案にできる限り従ったものであります。条約のおもな内容は次のとおりであります。事業利得につきましては、相手国にある支店等の恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税につきましては、配当及び利子については一五%、使用料については一〇%をこえない税率で課税し得るものとしております。さらに、政府職員、短期滞在者、短期滞在の教授、学生等の受け取る報酬や手当等につきましては、原則として滞在地国で免税としております。
 この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化面での交流は一そう促進されるものと期待されます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 続きまして、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ連合共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 政府は、アラブ連合共和国との間の所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約を締結するため、カイロ及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十三年九月三日にカイロにおいて、日本側在アラブ連合共和国安藤大使とアラブ連合共和国側シャーバーン財務次官との間でこの条約の署名を行なった次第であります。
 この条約は本文二十六カ条から成り、その規定は、OECDモデル条約案をできるだけ採用しておりますが、発展途上国としてのアラブ連合共和国の経済構造を考慮して投資所得について源泉地図の課税を相当広範囲に認めている点に特色があります。内容のおもなものは次のとおりであります。
 すなわち、事業所得につきましては、相手国内にある支店等の恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としておりますが、これらの点は、OECDモデル及び先進国との最近の条約例と同様であります。
 次に、投資所得のうち特許権等の使用料に対する源泉地国での課税につきましては、先進国との条約例と同様に税率は一五%をこえないものとしておりますが、利子及び配当につきましては、源泉地国での課税を相当大幅に認めております。すなわち、利子につきましては、源泉地国においてその国内法令に従って課税し得るものとし、配当につきましては、わが国が源泉地の場合には、一五%をこえない税率で課税できるものとしておりますが、アラブ連合が源泉地の場合には、ほぼ同国の現行国内法令による課税ができるものとしております。
 さらに、短期滞在の教授、学生等が受け取る手当等につきましては、他の条約例と同様に、原則として滞在地国で免税としております。
 この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化面での交流は、安定的な基礎の上に発展するものと期待されます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 以上二件につきまして、何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(山本利壽君) 次に、補足説明を聴取いたします。
 高島条約局参事官。
#5
○説明員(高島益郎君) 初めにベルギーとの租税条約につきまして簡単に御説明申し上げます。
 ヨーロッパの国との租税条約は大体完成いたしまして、今国会に後ほど御提出いたしますイタリアとの租税条約、ベルギーとの租税条約で大体完結いたします。これはすべてOECDの租税条約のモデルに従いまして締結されておりますので、ほとんど各国並みでございます。
 なお、御参考までに日本とベルギーとの間の租税条約に関する経済交流の実態を若干御説明いたします。企業進出について申し上げますと、日本からベルギーへの企業進出、現地法人は九つ、それから支店が二つ、それから駐在員事務所十五ございます。それから、ベルギーから日本への企業進出につきましては、現地法人が三あるだけでございます。
 それから次に、船舶、航空機の交流でございますが、船舶につきまして、日本が年間七十回ベルギーに行っております。それだけでございまして、航空機につきましては、サベナが北極回りで週二回往復するというのがございますが、それ以外には現在のところまではございません。この船舶、航空機につきましては、所得について相互に租税を免除するという定めになっております。
 それから、投資所得の関係で申し上げますと、日本からベルギーに対しまして払っております配当及び利子は年間約三十六、七万ドル、それからパテントその他の使用料が九十万ドルございます。これに対しまして、ベルギーのほうから日本に対しまして払っております配当及び利子はございません。それから、パテントその他の使用料につきましては、わずかに七、八千ドル程度のものがあるだけでございます。
 以上が大体ベルギーと日本との租税条約の関係での経済交流の実態でございます。
 次に、アラブ連合との租税条約でございますが、中近東につきましてはこれが最初の租税条約でございまして、その点につきまして、非常にこれからの租税条約交渉の一つの出発点になるものでございます。
 御参考までに日本とアラブ連合との間の租税条約関係の経済交流の実態を申し上げますと、日本からアラブ連合への企業進出は、支店一、駐在員事務所十四ございますが、アラブ連合から日本への企業進出は、支店が一あるだけでございます。
 船舶、航空機の往来について申し上げますと、船舶について、年間日本から百五回行っております。これに対しまして、アラブ連合からは全然ございません。それから、航空機につきましては、日航が週二回アラブ連合にとまっております。
 投資所得の関係では、日本とアラブ連合との間に経済交流の実態はまだほとんどございません。
 大体こういう関係でございまして、日本とアラブ連合との租税条約につきましては、中近東諸国との租税条約の一つの出発点となるという意味で注目している次第であります。
#6
○委員長(山本利壽君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 以上二案件に対する質疑は、後日に譲ることにいたします。
    ―――――――――――――
#7
○委員長(山本利壽君) 次に、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。
 愛知外務大臣。
#8
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。
 この法律案におきましては、在外公館に勤務する外務公務員の給与制度を合理化するとともに、在外公館に勤務する外務公務員の給与額を改めることといたしております。
 まず、従来の在勤俸及び加俸の性格を明確にするため、これらを一括して在勤手当に改めることといたしました。
 従来の在勤俸に相当するものとしては、今回の改正案において、在勤基本手当と住居手当の二種の手当を設けました。
 一般的に申して、世界各地における物価は、毎年相当に上昇しており、わけても、住宅費は他の物価に比し急激に騰貴する傾向にあります。したがって、従来の在勤俸を、衣食等の経費に充当するための在勤基本手当と住宅費に充当するための住居手当に分けることにより、一そう現状に即した給与額が支給されるよう制度を合理化したものであります。
 また、従来の加俸については、配偶者加俸を配偶者手当に、館長代理加俸を館長代理手当に、兼勤加俸を兼勤手当にそれぞれ改めることといたしました。
 さらに、外務公務員法(昭和二十七年法律第四十一号)第十五条の規定により外国において研修を命ぜられた者に対しては、勉学を中心とするその生活の特殊性にかんがみ、一般在外職員に対して支給される諸手当にかわり、研修員手当を支給することとし、この面においても制度の合理化をはかることといたしました。
 次に、昭和四十一年の在勤俸の支給額の改定以来、世界各地の物価の上昇により、在外公館に勤務する外務公務員の生活条件に大きな変動が見られ、また、各任地間の給与額にも若干の不均衡が生じてまいりました。他方、最近の国際情勢にかんがみ、わが国の外交機能の拡充強化は急務となっており、在外職員をしてその職責遂行を遺憾なからしめるためにも、在外職員の給与の支給額を全体として改善することが是非とも必要となってまいった次第であります。
 以上のとおり、外交活動強化の一環として、在外公館に勤務する外務公務員の給与制度を合理化し、また給与額を改善するための法的措置といたしまして、この法律案を提出する次第であります。
 何とぞ、本案につき慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
#9
○委員長(山本利壽君) 次に、補足説明を聴取いたします。
 齋藤官房長。
#10
○政府委員(齋藤鎭男君) 補足説明をさしていただきます。
 この法律は、昭和二十七年に制定せられまして以来、今日まで過去二回、すなわち昭和三十七年及び四十一年の二回にわたりまして改正されました。今回が三度目の改正でございます。従来の改正は、いずれも単に給与額の改定にとどまりましたが、今回の改正にあたっては、前回の改正以後の各地における物価の上昇等にかんがみ、給与額の改定を行なうと同時に、制度自体の改善、合理化をもはかったのであります。
 まず、制度の点につきましては、従来在勤俸及び加俸と呼称されていたものをすべて手当に改め、在外職員に対して支給される諸手当を総称して在勤手当と呼ぶこととし、これにより在外職員の俸給以外の給与はすべて手当であることを明確にいたしました。また、兼勤加俸は兼勤手当と、館長代理加俸は館長代理手当と、また、配偶者加俸は配偶者手当とそれぞれ呼ぶことといたしました。特殊語学手当については、従来の呼称に変更は加えませんでした。
 また、従来の在勤俸に相当するものといたしまして、今回、在勤基本手当と住居手当を設けました。在勤基本手当は衣食等の経費に充当するために支給され、住居手当は、実費補償をたてまえとして住宅費に充当するために支給されるものであります。一般的に申しまして、世界各地における物価は、毎年上昇いたしておりますが、とりわけ住宅費は、他の一般諸物価の変動と遊離して、急激に騰貴する傾向を持つものであります。しかるに、現在の制度におきましては、この点に関する配慮は特に払われておりません。よって今回、従来の在勤俸を住居費の部分とそれ以外の要素に分離して制度を合理化し、一そう現状に即した給与額の支給が行なわれるよう配慮した次第でございます。
 さらに、外務公務員法第十五条の規定により外国において研修を命ぜられた者、これには上級、中級研修員及び語学研修員がございますが、これにつきましては、その生活態様が一般在外職員と異なり、勉学を中心とした生活を送っていること、授業料について個人差が大きいこと、及び大学の寮あるいは下宿等に入居している者が多く、純粋な住宅のための経費のみ分離支給することは実際的でないこと等の理由に基づき、一般在外職員に対して支給される諸手当にかわり、研修員手当のみを支給することといたしました。研修員手当の運用につきましては、別途、外務省令で定めることとなっておりますが、生活及び研修の条件を考慮して、研修員の間に均衡のとれた給与を支給し得るよう、目下その具体案を検討中でございます。
 以上が制度合理化の要旨でございますが、他方におきましては、前回の改正以来、世界各地における物価の上昇は著しいものがあります。国際通貨基金――IMF――の統計によれば、昭和四十年の年平均を一〇〇とした場合、昭和四十三年六月現在、統計に掲載された七十五カ国の実質生計費指数、これは生計費指数を対米ドル為替相場変動指数で調整したものでございますが、その平均値は、八・二%上昇しており、また、この七十五カ国中わが在外公館、これは実館でございますが、これの所在国五十八カ国についての平均値は九・四%上昇しております。また、米国につきましては、昭和四十年以来昭和四十三年七月までに消費者物価指数は一〇・六%上昇しております。このような物価の上昇により、在外公館に勤務する職員の生活は相当に圧迫され、在外職員をしてその職責遂行を遺憾なからしめるためにも、その給与の支給額を全体として改善する必要が生じてまいりました。よって今回、在外職員のための在勤手当を標準予算額の約九%、年度予算にしまして約四億五千万円増額することにいたした次第でございます。
 次に、諸手当につきまして簡単に御説明いたします。
 まず、大使の在勤基本手当につきましては、昭和二十七年にその額が定められて以来、昭和三十七年に端数調整程度の手直しが行なわれたのみで今日に至っております。今次改正に当たっても予算ワクの制約もあり、大使の在勤基本手当は原則として据え置くことといたしましたが、わが国と諸外国との関係の重要性の推移にかんがみ、格づけの調整をぜひとも必要とするポストに限り、格づけの調整に伴う額の改定をほどこしました。
 総領事及び館長領事につきましても、在勤基本手当を新たに設定いたし、その支給額は、月額一千ドルから一千三百五十ドルまでを五十ドル刻みで八段階に区分し、職務の重要性、物価及び近接公館との均衡を考慮して、それぞれの格づけを行なった次第であります。
 一般在外職員の在勤基本手当の額の算出に当たっては、ワシントンを基準地にとり、各任地の生計費指数に従って地域差を定めましたが、特に勤務条件の困難な地域については特別の配慮を加えました。
 住居手当につきましても、同様ワシントンを基準地として地域差を定めた次第でございます。なお、住居手当は、家具つきでない住宅の一カ月に要する家賃を基準とし、かつ、法律別表に掲げる額を限度とする実費補償方式をとることにしておりますが、その運用の細則につきましては、外務省令でこれを定めることとなっておりまして、目下具体案につき鋭意検討を進めております。
 終わりに、現行制度における在勤俸額と、これを在勤基本手当と住居手当に分離した後の支給額の総計とを比較してみますと、たとえばワシントン在勤、配偶者同伴の場合には、公使については一四%、参事官については一二・一%、一等書記官については一〇・六%、二等書記官については一一・六%、三等書記官については一〇・九%、それぞれ増額となっております。また、いずれについても、住宅費に充当し得る額が相当増加しているので、改正案の実施により、従来の衣食等の経費の増大のしわ寄せが住宅にかかっていたような事態が漸次解消され、改善の方向へ向かうことが期待されるものであります。
 以上がこの法律案についての補足説明でございますが、御審議の上、すみやかに採択いただきますようお願い申し上げます。
#11
○委員長(山本利壽君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#12
○大和与一君 今回は住宅について若干前進をするわけですが、それと比較してまさるとも劣らない問題は教育と医療の問題だと思います。私はずいぶんあっちに行きまして相当強いお話を聞いておりまして、それで、非常に概説的でいいのですが、教育と医療について現在どの程度のことを本省として、政府として考えておるかということを聞きたい。
#13
○政府委員(齋藤鎭男君) ただいま大和委員の御質問にございましたように、制度の改正をいたす場合には、住居費の設定とあわせまして子女教育、この二つの部面における改正がぜひ必要であると考えておりました。また、外務審議会におきましても、その意見具申ないしは勧告はその必要性を強調しておりました。われわれといたしましては、これをぜひ実現するということで大蔵省側とも話をしてまいったのでございますが、いずれにしましても、この住居費の設定ということが非常にむずかしいことでございまして、各在外公館とのいろいろ連絡によりましても、はたしてどのようにやったら具体性が出るかということで、むしろそのほうに重点を置きましたために、今回はむしろ住居費の設定に力を注ぐということで、子女教育手当につきましてはこの次の改正に譲るということにいたしました。ただし、学校につきましては、従来から先生方の御援助もございまして、在外の全日制の学校をふやす。具体的には日本の学校の先生を送るということ、それから、現地で雇う学校の先生に対して給与額を増額する、そういうこそく的なことにおいて本年度は満足したいというように考えた次第でございます。
#14
○大和与一君 その場合には、希望して行ってくださる方はいいんですけれども、そうでなくて、逆に言うと、現地ではどうしてもほしい。そうすると、政府として無理に行ってもらう。しかし、行ってもらう以上は何とかしてやらなければならない。こういう点はどういうふうになっておりますか。
#15
○政府委員(齋藤鎭男君) それは任地によって違うと思いますが、低開発国につきましては、子女を東京に置いておく者が一般的に多いわけであります。これをぜひ連れて行くといいます場合には、御指摘のように、特別の手当をやらざるを得ないと思います。むしろ、一般の在勤俸そのものを増額をして、子弟を東京に置いておけない者は、教育のできるような国、たとえば欧米諸国に子供を教育のために出すというようなことで御満足願うようにしておる次第でございます。
#16
○大和与一君 逆に、非常に経費がかかりますから、日本の国内で外国に行く人の子女をできればややまとめて――これは学校差がいろいろありますし、実力差があるから簡単にいかないけれども、そういう配慮。あるいは、やっぱり外国に長くおられて子女が日本語に弱いとか、いろいろな悪条件がありますね。そういうのには、ちょっとえらい言い方で変だけれども、単校と連絡をとりながらやはり少しはめんどう見てもらう、こういうところまでの配慮をしておられるんですか。
#17
○政府委員(齋藤鎭男君) 残念ながらそこまでは行っておりませんが、子女を東京に置いて行く者につきましては、寮に相当するものを外務省の費用でつくって、教育まではできませんが、日常の生活を監督するということはしております。
#18
○大和与一君 病気の手配ですね、これはどこまで行っているか。どこへ行っても、とにかくその話を聞いただけで、特に若い人なんか、給料がなくなるような感じがするんですが、それは、実際に病気の病名によってとか、あるいは長いとかということによってめんどうを見ているんですか。自分の給料だけで、それは全部やむを得ぬということになるんですか。特に若い人が赤ん坊なんか入院さして、ほんとうに非鳴上げているのをよく聞いていましたんですがね。
#19
○政府委員(齋藤鎭男君) その面につきましては、二つの点を申し上げられると思いますが、一つは、政府の共済組合というものがございまして、一定の額を補償するという制度もございます。他の一つは、医療につきましては、外務省関係の医者を派遣しておりまして、残念ながら、経費の関係で広くは派遣できませんが、現在はアフリカのナイジェリアと中近東のレバノンに医者を置いております。この医者を定期に巡回させるとか、それから、日本から直接一年に二回医者を各国に回しております。
#20
○大和与一君 モロッコのラバトで聞きましたんですが、たとえば、ベイルートにおれば、アラブ、シリア、それからアラビア半島、モロッコぐらいまで定期的にお医者さんが回る、こういうことをきちんとやるということぐらいのことはやっておられるんですか。
#21
○政府委員(齋藤鎭男君) これも経費の関係で、年に何回というふうにはきめておりません。今後御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
#22
○大和与一君 やっぱり病気の問題が一番大きい問題だと思うんです、直接的には。それで、たとえばロンドンで薬を買っても、とにかくたくさん経費がかかってどうにもならぬ。こういうわけですから、その辺を相当強くめんどう見てやらぬと、ほんとうにそれだけで給料がなくなるというような感じを受けるんですがね。
 それで、次は物価の問題ですが、いわゆる世界じゅうで物価の下がったところがありますかね、さっき上がった話はだいぶ聞いたけれども。
#23
○政府委員(齋藤鎭男君) 詳細調査してみたいと思いますけれども、われわれの知っている限り、ございません。
#24
○大和与一君 そうすると、特に世界的に変動の激しいところ、たとえば、私も三年前に行って、マドリッドとカイロ、非常に低いということを聞きましたんですが、そうなると、それだけ今度やっぱり手当の出し方、考え方が変わらなければいかぬわけですね。ほかと比べてそういう点の配慮はどの程度になっておるんですか。
#25
○政府委員(齋藤鎭男君) これは、はなはだしいのはベトナムとブラジルでございますけれども、そういう地域差というものに特に今後は重点を置いたわけでございます。物価の上昇率が一番多いところという意味での地域差、勤務条件の非常に悪いところ、気候条件とか生活環境が悪いところの地域差、これはほかのことばであるいは表現したほうがいいかもしれませんけれども、そういう地域差に重点を置いたという点が特色であるというふうに思います。
#26
○大和与一君 やっぱり国際的な一つの物価の上下のものさしがあるわけですね。それで出発しているのだから、スライディング・システムというか、そういうことはやっぱり考えられませんかね。それはやっぱりうんとお金がかかりますか。
#27
○政府委員(齋藤鎭男君) この点につきましても、制度の改善でございますので、このたび考えたわけでございます。これは御承知のとおりに、法律によりまして、もしそういうことが起こった場合には、そういう措置をとってあとから国会に報告せよということになっておりますけれども、これはそういう事態を待てる場合はいいけれども、待てない場合には、何とかしてスライディング・システムみたいなものをつくりたいというふうに考えたのでありますけれども、この点は、大蔵省のたてまえとしては、予算の仕事を外務省に譲り渡すということになるので、その点、制度上問題がありますと同様に、もう一つ問題は、そのシステムそのものが非常に困難でございまして、非常に簡単なやり方ならば、そういう場合には一号上のクラシフィケーションに当てはめるというようなこともできるのでございまして、これもやはりただいま申し上げました制度上の問題で非常に困難ということで、このたびはそれをあきらめた次第でございます。
#28
○大和与一君 やはり場所によって、大使の場合も一館員の場合も影響を受けるのは同じですから、そうしますと、ほんとうにその国の政治経済情勢の大きな変動があった場合にどうにもならぬ。そうすると、日本から銭をもらって穴埋めするか、借金をするか、とにかくどうにもならぬ。こういうふうな実態は相当あるんじゃないですか。その場合に一体政府はどういうことをしているんですか。
#29
○政府委員(齋藤鎭男君) その場合、一番多いケースは、いままでの例では住居、住宅があったわけでございます。政治制度の変更によって大きく変動したというのは、住宅以外のものにつきましては従来例がございませんけれども、住宅につきましては、御承知のように、ベトナムで戦争が起こりましたために住宅費が約三倍に上がっております。こういう場合にはやむを得ませんので、手当以外の面でめんどうを見るというようなことをしております。たとえば奥さんが帰ったためにおらないという場合にも、妻加俸についてある程度めんどうを見るというような、この辺は法律の許す範囲内において考えたいというようなことをしてまいりました。これでは不十分であるというように考えております。
#30
○大和与一君 たとえば住まいの場合に、家具がついているところとついていないところがありますね。それだけでもだいぶ違いますね。これがついていないところへ入って家具を買う。今度は転勤すると、それは二束三文だ。こういう場合に政府は少しはめんどうを見るんですか。
#31
○政府委員(齋藤鎭男君) この場合、政府がめんどうを見るわけにいきませんので、各公館ごとに家具委員会というものをつくりまして、不使用になった家具をその委員会に預ける。その委員会から今度家具を買う。そういう制度をとっているところがかなりございます。外務省としてこうしろという訓令のようなものは出しておりません。
#32
○大和与一君 この特殊語学の研修生ですが、これはどれくらいアップするんですか。大体でいいですよ。
#33
○政府委員(齋藤鎭男君) 研修につきましては、いわゆる上級、中級の研修生、それから語学そのもののために研修する語学研修生の三種類ございますが、そのほか特殊語学を勉強する者には手当を出しております。この第二のいわゆる特殊語学の手当は今度は増額しておりません。前者の上級、中級、それからいわゆる語学研修生につきましては、これは授業料の実費補償をしておりますので、個人差はございますが、大体平均して五%上昇しているように考えます。
#34
○大和与一君 そうすると、たとえばカイロでアラビア語を専門にやっている若い人がおっていろいろ話を聞いたんですが、アラビア語を勉強したいものだから、直接アラビアの女と交際したい――あすこは戒律がやかましいからなかなか接近ができないが――そういうデートの費用までは出ないということですか。
#35
○政府委員(齋藤鎭男君) お答えになるかどうかわかりませんが、まあ、実費補償という制度をとりましたので、その実費の中へ入るということならば出るわけでございます。従来はどんぶり勘定でいろいろとまとめておりましたから、実際のかかる経費になりますと出せませんでしたけれども、もし勉学のための実費が必要だということならば、出せるわけでございます。
#36
○大和与一君 もう一つ。現地採用の人からずいぶん苦情を聞いてきたんですよ、あっちこっちで、去年も南米、北米まで行ってきて。これはもうちょっとめんどうを見てやらぬと、大体生活がほんとうに自立しておるかどうか疑問だと思うんです。相当長い間その土地におって親がみんなおるから、だから、まあ小づかいかせぎだと、こういう程度のことを政府は考えてやっておるのなら、それは間違いだと思うんです。そこら辺どのようになっているか。
#37
○政府委員(齋藤鎭男君) 現地傭員につきましてはいろいろの種類がございまして、非常に程度の高いクラークから掃除人あるいは庭師に至るまで、これはみんな現地傭員ということで十ぱ一からげにしておりますが、そのどの職種につきましても各公館において不足をしておりますので、毎年予算要求としては最重点を置いておりまして、今年度も約二〇%増額してございます。ただ、非常に各地とも物価の上昇によって現地傭員が逃げていく可能性がございますので、その程度の増額ではなかなか押え切れないというのが現状でございます。
#38
○大和与一君 これはよほど注意せぬと、別に腹中の敵とまではいかぬけれども、案外その人たちはほんとうのことを言いましたよ。それは、在外公館なんかのいろいろのいいこと悪いこと、たくさん言っていた。だから、これはやっぱり少なくとも自活できる程度のめんどうはそれぞれの職種によってやってやらぬと、それをたてまえにして、最低はこうだと、あとはできるだけやると、こういうふうにせぬと、これは政府の態度がよくないと、こういう感じをやや強く受けましたから、それだけ申し上げて、終わります。
#39
○加藤シヅエ君 このいただきましたリストを拝見いたしますと、ワシントンを基準にしてということでございましたが、ソビエト・ロシアとか、チェコスロバキア、こういうような共産圏では、非常に金額が多いわけでございますね。これはいろいろ必要があってのことと思いますけれども、こんなにたくさん出す必要がどういうふうに起こってくるのか、その辺をちょっと説明していただきたいのでございます。
#40
○政府委員(齋藤鎭男君) 御質疑は共産圏についてでございますか。
#41
○加藤シヅエ君 はい。ソ連とかユーゴスラビアとかポーランドなんかは金額が非常に多いのでございますね。これはどうしてこんなに多くしなくちゃならないか。その生活状態がどういうふうになっているか。
#42
○政府委員(齋藤鎭男君) 共産圏につきましては、先ほどちょっとお話し申し上げましたように、まあ、地域差を考える場合に、特殊勤務条件というものが、低開発国と同じように、他の欧米諸国と違うという点を考慮に入れたわけでございます。たとえば、最近は物資もよく出回ってきたようでございますけれども、一時は非常に物資が足らないとか、あるいは外国に旅行するのに非常にむずかしいとか、まあ、この点は病気になった場合に共産圏から外へ出るとか、いろいろございまして、いわゆる衣食住に必要な経費というものが他の諸国よりも多いという判断をしたわけでございます。
#43
○加藤シヅエ君 食糧なんかは、そこの住居しているところで得られなくてよそから取り寄せなくちゃならないような状態なんでございますか。
#44
○政府委員(齋藤鎭男君) まあ、外交官として品位を保つために必要ないろいろな諸物資の購入の場合に、いわゆる食という点ではそういう必要があるいはないかとも思いますけれども、衣その他、要するに、西欧諸国の人々と付き合うというために、まあ、ほかの諸国に駐在しておる方よりもよけいに経費を要するというように判断をしたわけでございます。
#45
○加藤シヅエ君 この議題から少し派生をした問題かと思いますけれども、在外公館、ことに大使館、公使館、総領事館等を回っておりまして、いま使っているその家を買えばたいへんに経済的なものであるにもかかわらず、それを買うことができないために非常に高い家賃を払っている。それでさらに家賃の値上げも考えられる。そういうときに、なぜ大蔵省をもう少しよく説得して安いうちに買い取るということの努力がなされないのでございますか。その間の事情を伺いたいと思います。
#46
○政府委員(齋藤鎭男君) 加藤先生の御指摘の点、まさにわれわれの考えておる点でございまして、これはもう先生方の御協力によりまして最近ではかなり国有化の措置が進んでおります。ただ、その国有化する場合に優先順位をつけますと、低開発国等において家が全くないというところにどうしても優先順位を高くせざるを得ないのでございます。現在国有化している対象は、主として低開発国でございます。その場合も、すでにできておる家を買う場合と、新しく日本の建設技術で建てる場合、両方ございますが、外務省といたしましては、その地域の特殊性によりまして、この二つの措置をあわせて進めております。
#47
○加藤シヅエ君 齋藤官房長はインドネシアの大使として御在勤になっておりまして、その大使館の問題が当時いろいろ新聞に報道されておりますが、それはどういういきさつでございますか。現在ではどうなっておりますか。私ども外から見ますと、ああいうところに大使館があるというのはあまり適当でないように思いますけれども、これはどういうことになっているのか、説明していただきたいと思います。
#48
○政府委員(齋藤鎭男君) これは私駐在しておりました以前からの問題でございますので、官房長としてお答え申し上げますが、御承知のように、インドネシアの経済発展というものがおくれておりましたために、商社等の事務所に使用する家屋そのものが絶対数が少いわけでございます。そこで、普通の住宅の二階を借りたり、あるいは小さな家を数社で借りているというようなことで、商業活動にも差しつかえるということで、事務所の建設を非常に希望しておったわけでございます。ところが、新しく建設をするということは、あそこでは許可その他が非常にむずかしいので、まあ、非常に苦慮しておったのでございますが、たまたま大使館の建設の話が起こった際に、あの現在の大使館の敷地というのは、あそこでは一番大きな通りに面しておりまして、相当りっぱなものをつくりたいということで、大使館として必要なもの以上に、将来大使館の人員の増大ということを見込んで、かなり大きなものを建てたわけでございます。国有財産でございますので、もしそこにあいている部屋があったらば、これは一定の費用を取って貸してもいいということがございますので、その住宅事情の、事務所事情の悪い間だけこれを貸そうということで、大使館の一部を貸すことにしたわけでございます。ただ、この問題につきましては、大使館の外交特権等の問題もございますし、あるいは機密保持の事情もございますので、いわゆる大使館と商社の使うべき区域、これを峻別したわけでございます。土地を分けたのではございません。ある階数――一階、二階は大使館、それ以上は商社ということにいたしまして、エレベーターも入口も全然別にしたわけでございます。この家賃が当時非常に安かったのでありますが、これも国会で御指摘を受けて、少し安過ぎるというお話もございましたので、最近これを上げた事情があります。将来そういう事務所事情というものが好転した場合には大使館から出ていただくという、最初の契約の際に、お話がついているのでございます。
 以上です。
#49
○加藤シヅエ君 そうすると、あれは全部国有財産で、それで商社に貸している、その家賃は大使館の収入でなくて国家の収入として受け入れていらっしゃるのですか。
#50
○政府委員(齋藤鎭男君) そうでございます。
#51
○加藤シヅエ君 土地とかいろいろの事情からそういうことも将来とも起こるかもしれません。で、現に大きなビルディングの中にあとから入り込んでいって、そこに総領事館なんかがあったりする場合は珍しくないと思いますけれども、何かちょっと国が建てたところを商社に貸しているというようなのが少し納得できないような形じゃないかと思うんでございますが、それじゃ、将来はだんだんに全部大使館の所有のものにかえていく方向になっているんでございますか。
#52
○政府委員(齋藤鎭男君) 仰せのとおりでございます。
#53
○加藤シヅエ君 これも少し派生的なことになるんでございますが、私ども外国へ参りますとき在外公館でいろいろとお世話になるわけでございます。で、これは外交旅券や公用旅券で旅行する場合にはいろいろあっせんしていただかなければなりませんので、これは当然のことかと思いますけれども、まあいろいろのところへ参りまして事情を伺いますと、あまりにも旅行者が多くて、そして私的な旅行者に対してもやはり間接的に偉い方から頼まれたりなんかして在外公館の方が出迎えしたり、いろいろとあっせんしたりということで、非常にたくさんの時間と人員をそういうところにさかなきゃならないというようなのが実情じゃないかと思うわけでございます。しかし、外国へ旅行している限り、その方に対してなるべくたくさんの便宜をはかって有効な視察をなさることは好ましいことだと思いますけれども、これはその在外公館の人員の構成の中にどういうようなたてまえでそういうような、そういうところに使われる人を取っておくのか。それから費用をどのくらい取っておくのか。ことに、そういうことにばっかり使われるような若い方はあまり喜ばないと思うんでございます。それで、そういう人の使い方というのは、やはり外交官として志望している人に対しては、それは旅行あっせん業みたいになってしまってあまりおもしろいことではない。それで私は、いつもそういうときにお世話になりなりながらでございますが考えることは、旅行あっせん者はひとつ別にきめて、別ワクにして、もうそれだけをやらせる。外交官志望として来ている方にはそういうことはさせないというようなことを考えていらっしゃるかどうか、そこを伺いたいんでございます。
#54
○政府委員(齋藤鎭男君) 御同情いただきましてたいへんうれしい次第でございますが、まあ、お世話するにもいろいろございまして、たとえば飛行場の送迎あるいは通関というような非常に庶務的な仕事から、いろいろ経済事情の調査のような、調査上の仕事もございます。したがいまして、だれか専任をつくるというわけにもいきません。たとえばローマのように観光を主としたお客さんの場合にはそこに一人人を置いておりますけれども、そのほかの公館では大体公館員が交代でやっているというのが現状でございます。また、いま申し上げましたように、調査のようなことはそれ専門の人がおりますので、むしろこういう点に御協力申し上げるのが新しい在外公館のあり方ではないかというような考え方もしておりますので、将来ともいまの形でやるよりやむを得ないのではないかという考え方をしております。
#55
○加藤シヅエ君 特別、特殊の問題について視察をしたいという場合には、在外公館のそれぞれの専門の方が協力なさるのはこれは当然だと思いますけれども、多くの場合は、観光あるいはショッピング、そういうようなときに公務員を使うということは私はちょっとおかしいんじゃないかと思うんでございます。むしろ交通公社のようなところと特別契約をして、そういうお客さまはそちらへ回すというようなことはできないものでございましょうかね。(「大臣、大臣」と呼ぶ者あり)
#56
○政府委員(齋藤鎭男君) おそらく大臣も同じお考えと思いますが、よく研究して、そういうことができればあるいは考えてみたいと思います。
#57
○国務大臣(愛知揆一君) 私からもお答えをいたしたいと思いますが、実はごく最近の経験でございますが、先週ラ米大使会議をやりまして、十数人の中南米の大使諸公の会議をやったわけでございますけれども、そのときも、一番先任の大使から、自分をはじめとしてまあ全大使館員が、いま加藤委員から御指摘になったようなことで全く忙殺されてかなわぬという悲鳴を上げたような報告がございました。私も実情を知っておりますだけに、非常に同情いたしたわけでございます。いま官房長からるる御説明申し上げましたが、たいへんそういう点御同情いただきましてまことにありがたいと同時に、私といたしましても十分今後考えていかなければならぬ。ちょうど、私も思いつきみたいではあったんですけれども、やはりいま御指摘がありましたような旅行者だとか、あるいはそのほかにもいろいろ会社、団体がございますが、そういうところは、何か現地大使館を活用してそういうところの人に援助協力を求めるのも一つの方法ではなかろうかということを申したのですけれども、やはり旅行者の方々から言えば、遠いところに来ればやっぱり大使館のお世話になるということが非常に信頼性もあるしたよりにもなる。こういう環境でありますことは、これまた私認めざるを得ないわけです。その辺のところをいろいろひとつくふうをこらしてみたいと思っております。
#58
○大和与一君 ちょっと関連。この問題、私も前から何べんか言っていることなんです。それと、相手を責める前に国会議員も反省せねばいかぬですが、たとえばパリに行って、あしたはノートルダムというダムを見たいという、こういうのもおります。これはちょっとお粗末なんですけれども、今度は逆に、たとえばある議員が在外公館の人に非常に態度が悪い。それが今度はその次の国に行ったら、何かあったんですかと、ちゃんとマークされている、甲乙丙みたいに。こういうのもちょっと困る。私はやっぱり歓送迎、ショッピング、これははっきり交通公社なら交通公社にやらせる。これはきちんとしていい。何も国会議員なんかこわがらなくてもいいのだから、その辺きちんとやる。やるとすれば費用がどれぐらいかかるか、これはぜひ大臣としてそういう心づもりで検討してもらいたいと思うんですよ。前向きでぜひこれはやったほうがいい。これはほんとうにつまらないことで、むだですよ。その点もう一回大臣にひとつ明快な態度を表明していただきたい。
#59
○国務大臣(愛知揆一君) これは前向きに積極的にくふうをこらして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
#60
○加藤シヅエ君 この在外公館の公務員の給与の中に、配偶者を伴う場合の手当というのがちゃんと見込まれているわけでございます。配偶者と申しましても、外交官の配偶者というものが公費によって外国に行っているということには、単なる妻ということ以外に、何かがそこに期待されているのではないかというふうに私は考えるわけでございますが、これは当局としてはどういうふうに考えていらっしゃるか、それも伺いたいわけです。
#61
○政府委員(齋藤鎭男君) これはいわゆる在外公館の勤務とは違うわけでございますけれども、御承知のように、在外公務員の仕事の中には、いわゆる大使館事務所でやっている仕事以外のものがたくさんございまして、その大部分は社交活動でございますが、あるいは社交活動を通じて情報を収集するということもございますし、あるいは工作をするということもございます。そういう事務所外の仕事につきましては、いわゆる妻、配偶者の協力ということで、まあ外交官の職務というものは、これは何時から何時までという期限を切っておりませんのも、大使館事務所以外の仕事も外交官の仕事であるというふうに考えておりますので、いわゆる大使館事務所外における妻の協力というものは、いわゆる外交官の妻としての仕事であるというように考えております。
#62
○加藤シヅエ君 それでは、配偶者が外国に参ります場合には、やはり語学とかその国の事情とか、何か外交官の妻、配偶者としての活動というようなことに資するところが期待されているわけだと思いますが、それに対する研修というようなものはどんなふうになすっていらっしゃいますか。
#63
○政府委員(齋藤鎭男君) これは研修所において妻の研修もやっております。ただ、いろいろ個人差――個人差といいますか、個人の事情がございますので強制はできませんが、事実上はほとんど全部が参加をしております。
#64
○西村関一君 いままでいろいろ質問がありましたのでほとんど尽きておるかと思いますが、一つだけお尋ねをいたしておきたいと思います。
 それは在外公館員の手当、給料、そのほか必要経費というものが、それぞれの地域にあります他の外国公館の公務員の手当と比べてどのくらいのところに日本はあるのか。それは地域によって違いましょうけれども、たとえばワシントンではどうか、あるいはニューデリーにおいてはどうか、あるいはパリにおいてはどうか、どのくらいのランクにあるのかちょっと伺いたい。
#65
○政府委員(齋藤鎭男君) これは別に西村先生に別表を差し上げても差しつかえないと思いますが、御希望があればあとで差し上げるようにいたしたいと思いますが、例をとりますと、パリの例でございますが、参事官の例をとりますと、日本を一〇〇としてアメリカが一〇六から一二二、英国が一一九から一二二、イタリアが一二四から一三〇、これが参事官でございます。一等書記官に例をとりますと、日本の一〇〇に対してアメリカが一二八から一四三、英国が一〇二から一三五、イタリアが九二から一三一でございます。二等書記官を例にとりますと、日本の一〇〇に対してアメリカが一一三から一三四、英国が一〇九から一一三、イタリアが一二一から一三一でございます。一番若いところで三等書記官ないしは外交官補を例にとりますと、日本の一〇〇に対しましてアメリカが一一七から一二九、英国が一〇七から一二三、イタリアが一四〇から一七七というところでございます。
#66
○西村関一君 いまのパリの例から考えましても、その他のところもそう上のランクにあるとは思われない。いま伺う時間がありませんけれども、いま私の申しましたワシントンとかニューデリーというようなところを例にとりましても、決して上のほうにあるとは思えない。それから、外交官試験を通っていない人たちで最近いろいろ活動をしている人たちが日本だけじゃなくて外国の公館にもある。そういう人たちの例をとってみるというと、日本は非常に低い。これは私は数字をいましっかりつかんでおりませんけれども、そういうことを感ずるのです。日本は、政府がいつも言われるように、アジアの大国、世界の大国でありますから、やはり在外公館に勤務するところの公務員としてはやはりそれだけの品位を保っていかなければならない。また、それに伴うところ廉恥心というものを持って大事な勤務に従事しなければならぬと思います。そういう点におきましてもこの法律の改正案では一歩前進するかと思いますけれども、なお不十分なところがあるのじゃないか。諸外国の例と比べて、いま御答弁がありましたところだけを見ましても、なお及ばないところがある。特に私は大公使におきましてはまあまあのところまで行っているように思いますけれども、下のほうの人たちに対しましては、他の外国の例と比べて十分な活動ができないような状態にあるというふうに思うので、そういう点に対して特別な配慮が必要じゃないかと私は思うのであります。その点、大臣、いかがお考えになりますか。
#67
○国務大臣(愛知揆一君) 今回のこの改正案は、先ほど来官房長からも御説明いたしておりますように、また、ただいまもお話しがございましたが、相当の改善ではあると思いますけれども、まだまだ足りないところがたくさんございます。先ほど来お話が出ました点を総合して申し上げますと、全体としてもっと待遇を改善したいということがまず第一点ですが、その次に、たとえば物価の変動、それから生活程度といいますか、生活水準の変動、こういったような点は、国連の統計あるいはその他いろいろのデータからいろいろと資料を求めて財政当局とも折衝したわけでございますけれども、私は率直に言えば、ちょうど国家公務員等に対しましては人事院が勧告を毎年やります、まあ、それらの点を考えてみても、将来はできれば一年に一回はそのときどきの情勢を的確に調査をしておいて改定をするという考え方ができぬものだろうかと、この点を一つ考えております。
 それからもう一つは子女手当、これは先ほども御説明一応いたしましたが、これは今回懸案として将来の問題に残ったわけですが、これもひとつぜひ取り上げたいという点ですね。
 それからいま具体的のお尋ねがあった上下の格差の問題、これは前回の改定案以来、かなりその点には考慮が払われてきたように思いますし、それから、公館長だけでなくて、その次席の地位にある人に対してもある程度の考慮を加えなければならないという点も今回の場合においてはさらに考えられております。こういう点が、まあ改善のあとではあるがまだ足りないと考えております。
 それからもう一つ、やっぱり格差の問題に関連して、先ほどもちょっとお話がございましたが、いわゆる外交官試験――純粋のキャリア以外の人を上の地位に登用するということともあわせて、これは人事行政上も考えなければならないと思います。すでに御承知のように、現在ではそういう人でない人で大使になっておる人もございますし、今後もまた相当出てくると思います。そういう人事上の人事政策としてこういう点もあわせて改善をしていかなければならない。まあ、こういうふうに考えておるわけでございます。
#68
○委員長(山本利壽君) 以上をもちまして本案に対する質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#69
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認めます。
 本案に対する討論、採決はこれを次回に譲ることとし、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#70
○委員長(山本利壽君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#71
○森元治郎君 大臣に二、三点伺いたいと思います。
 もちろん、沖繩返還に関する日米の関係、外交交渉を中心にして伺いますが、向こうの、アメリカのこれに対する態度というものはおわかりになってきたかどうか、だんだんと。私らが見るところでは、安保条約は必要なんだ、沖繩も必要なんだ、いまのままでいいんだ、日本が何か小ざかしいことを言って来そうだけれども、来たら、何を出してくるか見てやろう、動かざること林のごとしといったような感じがするのですが、向こうの態度はっきりわかったものがありますか。
#72
○国務大臣(愛知揆一君) 沖繩をめぐる日米交渉の問題について、現在までのところの経過を取りまとめて申し上げますと、こういうことになると思います。
 こちら側といたしましては、いろいろの御論議が国内的にも非常に活発に出ております。それから、昨日佐藤総理が参議院の本会議でも申し上げましたように、いろいろの御論議を通して自分は自分なりにだんだん考えなければならない点が明らかになったように思う、こういうことをもう少し真剣に取りまとめて、まず私を派遣する、そして、それをいわば本格的な下交渉のスタートにして、十一月末の自分が行ったときにちゃんとひとつ話をまとめて、将来皆さんからよい結果であったと言われるような結論を導き出したい、こういうことを昨日も言っておりましたが、そのとおりでございます。そこで、六月の二日から大体三日間ロジャース国務長官と私は話を始めたいと思って、その日程はきまっておりますが、アメリカ側としても、いまのお尋ねに直接触れる点ですが、アメリカの政府側は、まだそういうわけで本格的な下交渉もまだやっておらぬわけでございますから、現在、よく向こうの人も申しますが、私のほうも白紙でございますということで、いわば権威筋といいますか、当局筋からはこれといった、沖繩問題に対してどういうふうな扱いをするかということについてはきめてもおりませんし、また私としてもそれを捕捉するところまで行っておりません。やはり、もうしばらく双方がそれぞれいろいろと考えて、どういうふうなアプローチをするかということを含めて、これからの問題であろうかと考えておるわけでございます。
 それから、官辺筋はそうでございますけれども、しかし、このことだけは申し上げられると思いますことは、その日程をきめる話し合いの場合におきましても、沖繩問題を取り上げてそうして協議に応ずるということについては、向こうも心がまえを十分に持ってこの交渉に当たるということははっきりしておる、これは言えると思いますが、中身につきましては、いま申し上げましたとおりでございます。
 それから同時に、先般来、アメリカの各派の上院や下院の議員の人たちが日本に来られ、これは各政党との間にもいろいろ自由な意見の交換が行なわれたわけでありますが、また、京都会議というようなものにも相当の人たちがアメリカ側からも参加いたしました。これらの人たちがそれぞれ日本で開陳しておった意見もございますが、アメリカへ戻ってからどういうふうな考え方であろうかというようなことについては、こちらとしては、政府直接ではないにしても、いわば情報と申しますか、あるいは向こうの世論と申しましょうか、そういうことを掌握する一つの有力な手段でもございますから、そういう人たちがどういうふうな考え方をしておるかということを取材することにつとめております。それらを総合いたしますと、返還ということについては、日本の願望というものがよく理解できて、これは早く取り上げる――テーク・アップしなければならない。これはコンセンサスができているようでありますが、しかし、それ以上のことになりますと、その人々によりましてずいぶん意見が違っておるようでございますから、これらのどういうところが主導的な考え方になっておるかというととは、なかなかこれは見通しが困難なように存ぜられるわけであります。そういうことで、私といたしましても、ここ一月なり二月なりの間に、先ほど申しましたように、取り上げ方、アプローチのしかたをも含めまして真剣に腹がまえをつくりたい、かように考えておる状況でございます。
#73
○森元治郎君 大臣、佐藤さんとジョンソンの共同コミュニケには、種々二人が討議の結果、沖繩を返還する方針のもとに沖繩の地位に関して共同してかつ継続的に検討することを同意したと、わざわざ大きく書いておる。このコミュニケが出てからもう一年と七、八カ月になりますね。コミュニケにこれほど大きく「共同して継続してやるのだ」とうたいながら、あなたのお話では、六月に下交渉のスタートとして行くのだと、これは日本政府の怠慢じゃないか。返してくれと強調した佐藤さんの方針からいけば、すみやかに向こうに接触をして、先ほどお話しのあった接触のしかたとか取り上げ方について、もうすでに細々ながら公式、非公式に何回か話があってしかるべきだったと思うのですが、このコミュニケで実施してないことがはっきり受け取れるのですが、いかがですか。
#74
○国務大臣(愛知揆一君) それは、そういうふうに御理解なさるのも私、ごもっともだと思われるのです。ただ、この前の国会のときにも御説明したと思いますけれども、あそこのコミュニケにあります。そういう方向で相談をしようという趣旨が出ておるものを基礎にいたしまして、私の前の三木外相当時も、正式というか公式といいますか、一回会談があったことも事実です。それから、ジョンソン駐日大使が在任中は、私もしばしば接触をいたしております。しかし、そういうところがらまずどういうふうに取り上げていこうか、それから、どういう点が問題になろうか、これは考えてみますと、一番最初に大筋の考え方がまとまるということがまず第一に絶対的に必要なことなんでありますけれども、技術的な面などを考えてみれば、いま国会で論議の焦点になっていることも含めまして、そのほかずいぶんたくさんいろいろの事項がございます。そういう問題点を双方がそれぞれ整理をしつつあるというようなことも、やはりその方向に向かっての動きが出ているということに御理解願えると思うのでございます。
 それからもう一つは、アメリカ側としての――これは何べんも政府側として申し上げているわけですが、ニクソン氏が大統領になり、ニクソン大統領も、本件については佐藤・ジョンソン会談の共同コミュニケをそのまま実行するんだとはっきり言っておるわけでございますけれども、何しろ政権が、政党も違って新たにできました今日となりますと、先方のいろいろの人事の配置も変わってきておりますし、やはり、ですから新政権が落ちついたところで交渉を本格的にやるというのが、これは自然の姿じゃなかろうかと思うのでありまして、多少おくれているようにごらんになるかもしれませんが、当方の都合といたしましても、国会というものが現にこうして活発に動いておるわけでございまして、私としても、国会が終了したその直後から本格的な下交渉ということで、アメリカ側の都合も幸いに合致いたしましたから、それをいま申しましたように本格的な下交渉の姿にしたい、こういうわけでございます。そして、あと大体半年足らずでございますけれども、問題が深刻な問題でありますだけに、その間できるだけ接触を続けまして、十一月末に持っていきたい、こういう考え方でおるわけでございます。
#75
○森元治郎君 大臣がおやさしくお答えになると、たいへんもっともらしく聞こえるんですがね、これだけ両国政府が共同して言っているんだから、三木さんや愛知大臣がジョンソン大使にお会いしたような偶然の会合のようなものではなくて、コミュニケの文面から見ると、同じテーブルにすわって、向こうとこっちになって、紙を持って、どうしよう、こうしようというのが共同だろうと思う。そうして次回は何日にして、議題をどういうふうにして、あるいは進め方という、これはうたってあるんで、ニクソンが大統領になってからまだ日も浅いとおっしゃいますが、総理が一昨年の暮れにジョンソン大統領に会ってから、昨年まる一年があるんですね。ですから、こういう大きな問題、こっちから申し入れておいて、しかも共同して継続して協議しようというならば、さしずめ下の段階で、事務当局の段階で、一月あたりから、じゃ、どうしようかということが継続して協議で話し合いが行なわれてしかるべきだと思う。私は強く強調したと、総理が返せ返せと強調しておきながら、しかもうまく共同して継続して相談しようというのに、やらなかったというのは、これはたいへんな怠慢だと思うのですが、お感じになりませんか。
#76
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申し上げましたように、そういうふうにおとりになりますこともごもっともな点があると思いますけれども、しかし、何と申しますか、接触は……。
#77
○森元治郎君 そのとおりと言えばいいんですよ。
#78
○国務大臣(愛知揆一君) まあそのとおりと言えないところもありますので御説明をいたしておるわけなんですが、随時それはもちろん接触はしておりますけれども、両三年中にめどをつける、そこのところの成果をあげます一つのタイミングというものがございます。ちょうど今年の後半期が一番その熟すときである。そしてそこで十一月末ごろにいわゆるトップ会談で成果をあげることができれば、この共同コミュニケというものがそのまま生きる、そのとおりのことになる、これを目標にいたしているわけでございます。
#79
○森元治郎君 私は怠慢だと思うが、そういうことにして、十一月に総理が行くという日取りは、いつどういう機関で話し合いをしてきめたのですか、何日間どうだという。
#80
○国務大臣(愛知揆一君) これはかつて予算委員会で総理からもお答えをいたしておると思いますが、これは返還交渉に当たるワン・セットの日程でございます。それで当方としては、国会が済んだならば、その直後に、まず、何といいましょうか、さっき申しましたような私とロジャース長官との間で会談を持ちたい。それから幸いにことしは東京での番になっておりますが、アメリカの主要閣僚が東京に来て会談をやることになっております。そうしてそれらの機会の接触を煮詰めていって、十一月ごろが一番いいと思われるが、そういう日程でこの沖繩を中心にする日米交渉をやりたいというのが当方の希望でありまして、これは正確な日時は覚えておりませんけれども、私と当時のジョンソン駐日大使の間で、まず日本側が申し入れをいたしまして、同時にワシントンで下田大使からもアメリカ政府のほうに申し入れをいたしました。そうしてその結果、アメリカ側が完全な賛意を表されて、まず、それでは私とロジャースとの間の会談の日程をきめましょう、六月の二日から三日ごろはどうでしょうかということでありましたから、これはこちらの、国会終了後直ちにということの希望に合致するわけですから、これは外交辞令でもありましょうけれども、私の訪米を歓迎いたしまして、これでまず一つの日程はフィックスいたしました。これは日米間の合意であります。
 それから、その次の問題の日米閣僚会議を東京でやることについては、これまた完全に合意でございます。ただその日取りについてはまだきまっておりません。大体夏ということになりますから、そのときに、ワン・セットの日取りの交渉なんですが、十一月ごろ総理が来られると、これまた歓迎であるということでございますから、十一月ごろということになっておりまして、こちらとしては十一月の末ごろが望ましいということが、そのときの話に出ておりますが、これまた日時は確定いたしておりません。こういうわけで、一連のワン・セットとしての日程については、一つは完全に日取りまできまりましたし、あとは、おおよそのところではございますが、原則的な合意ができている。その中には、たとえば十一月の末ごろということも、大体の原則的な合意ができておる、こういうふうに御理解いただいてけっこうと考えております。
#81
○森元治郎君 内容に触れて総括的に交渉の話をいま伺っておるのですが、佐藤さんが十一月に話し合われた結果というのは、何年に返還するということをきめるわけですね。何年に返還するか、その態様はこうこう、日取りはもうこれできまる、あるいは交渉によって、あなたの渡米後における両方の閣僚会議、佐藤さんの訪米でも、何しろ大問題ですから、十一月できまらないということがあり得ますか。絶対にここで日がきまるのだという確信を持って申されますか。
#82
○国務大臣(愛知揆一君) それは、率直に申しますれば、わがほうとしてはきめたいという不動の姿勢で交渉に当たりたい。まあそれは相手方のあることで、交渉事でございますから、それこそ仮定の問題としてあり得るか、絶対にどうかとおっしゃられれば、それはそういうことも仮定の問題としてはあり得るかもしれませんが、こちらとしては不動の姿勢でいきたい。それからこの案件は重大なものでありますだけに、やっぱり交渉の日程をきめるということも、私は相当重大なことではないかと思いますが、いまるる申し述べましたような次第でございますから、向こうもそのときに何とか結論を出したいという気持ちではなかろうかと、私は推測いたしております。
#83
○森元治郎君 ここで返還のめどをつけるということは、もう一年八カ月、それからあと六カ月引き続いているわけですね。そして不動の信念だと、これでまとめるんだと。しかし、いまのところ私らも、アメリカがどう出るかということを確としてつかみ得ないんですが、その国民に対する長年にわたる公約が、話不調に終わって、後日に引き延ばされるようなことがあったんでは、これは大きな政治的責任だと思うんです。これは当然内閣総辞職にも発展し得る内容を持ったものだと思うんですが、そのくらいに私は重大に考えるんですが、担当大臣はどんなふうにお考えになりますか。
#84
○国務大臣(愛知揆一君) まあ私も冷静に冷静に事に当たりたいと思いますけれども、気持らから言えば、それで自分で悲壮がったりセンチメンタルになってはいけないと思いますけれども、これはいまおっしゃるような、非常に現内閣としては、ほんとにこれにかけていくという気持ちでおりますことは、かねがねの総理大臣の言動によっても御理解いただけるかと思います。まあ何と言いますか、そういう意味では、私も担当者として悲壮な気持ちだと申し上げればいいのかもしれませんけれども、そういう感情的なことではなくて、冷静に、しかし十二分に知恵才覚を働かし、そして国民世論にこたえるということで事に当たらなければなるまいと、そういう意味では非常な決心をいたしておるつもりでございます。
#85
○森元治郎君 要するに内閣の命をかけて交渉に臨むんだということですね、簡単に言えば。
#86
○国務大臣(愛知揆一君) まあ私は総理大臣ではございませんから、内閣をかけてとまで言えば、言うてもこれはおかしな話だと思いますが、私としては、私の立場におきまして、いま申しましたような気持ちでやっていきたいと思います。
#87
○森元治郎君 内閣は共同体だからね、担当大臣が逃げていちゃだめなんです、これは。ところで総理は、一つだけ大きい声することばは早期実現、これだけはもう大きい声するんですね。そこで、早期、長期ということですが、早期とはどういうことを言うんですか。
#88
○国務大臣(愛知揆一君) これはできるだけ早くという意味でございます。それから、やはり交渉事ですから、国民の世論を踏まえてということになって、これは何年何月に返すか返さぬかと、イエスかノーかというだけの問題じゃなくて、関連する、それこそ基地の態様の問題という非常に重要な問題もございますし、またそれ以外にですね、これは小笠原返還、まあ無事に成功したと思いますけれども、あのときでも事務的、技術的な問題はずいぶんあったようでございます。そのとき私当事者じゃないので、詳細なことは必要に応じて政府委員からも御説明させたほうがいいかと思いますが、そういう点などをいろいろ考えますと、それとの相関関係ということもあり得るんじゃなかろうかと思いますから、なるべくすみやかにという意味であって、千九百七十何年ということをいま申し上げることはできない、そういう性格の問題じゃないか、なるべくすみやかにということで事に当たりたいと思います。
#89
○森元治郎君 なるべく早く、基地との関係もある、相手があることだから。そうすると、早期が長期になるかもしらぬ、それが伺いたい一点。
 第二点は、このごろの新聞、アメリカ人、日本人、その他いろんな研究者、政治家、権威筋から七二年という数字が出てくるんですね。一九七二年、もう一般の国民は人がいいから、佐藤さんほどずるくないから、七二年というと、三年かとか二年かとか考えやすい。この七二年という年はどうですか。
 それから短期というのは、十年も短期といえば短期になる。悠久の自然から見れば、千年や二千年から見れば短期だ。一体どのくらいを短期とおっしゃるのか、伺いたい。
#90
○国務大臣(愛知揆一君) いまもちょうどおことばがございましたが、それなら長期になるのかと言われても、十年というような単位で考える長期というようなことは、本件についてはあり得ないと思いますから、なるべくすみやかにと。それから七二年という数字が出ましたのは、私の理解するところでは、この間、基地研の方々が非常な御熱心な御勉強の結果、一つの報告書が出ましたが、その中に七二年とか、あるいはその三月とかということが出たのが初めて出たのではないかと思いますが、これは基地研の考え方も、あのほかの部分も含めて、貴重なわれれわの資料ではございますけれども、あれは政府の意を体して書かれたものでは全然ございませんで、あの方々が自主的に討議の結果をおまとめになったものでございますから、参考にはいたしますけれども、あれは政府の意見ではないということを申し上げておかなければならないと思います。
#91
○森元治郎君 めどをつけるのも両三年ですからな。総理のめどをつけるのも。だから、めどをつけるのは二、三年でするらしい、これは。だとすれば、七二年というのは常識的だと思うんですが、この辺でなければ、なるべくすみやかにということにはならないんじゃないでしょうか。
#92
○国務大臣(愛知揆一君) それは、先ほども申し上げたような性格の問題ですから、私といたしましては、七二年なら早期であって、七十何年なら中期であってということではなくって、なるべくすみやかにということを、現在の私としては考えております。
#93
○森元治郎君 まことにあやふやで、やっぱり交渉事というのは、筋がないときまらないんですね、全然くにゃくにゃしていたんではね。やはり二本なり三本なりの筋というものがあるんですね。これが一つもこの内閣にはない。国民の意見を聞くなんて、どこを取り上げたのか、さっぱりわからない。そこで、おそいなら本土並みということを、総理も過去においてよく言われたが、おそければ――おそいのはどのくらいおそいのか知りませんが、かりに十年おそければ、諸君の言う本土並みで返ってくるんだよということであれば、そんなことはどこから考えついたのか。アメリカ側の権威筋、官辺筋の非公式、公式の場での片言隻句からそういう確信を得たのか、出どころを伺いたいんですがね。
#94
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほどもお答えいたしましたように、官辺筋からは、これはもうそれこそ、白紙が伝染したのかもしれませんけれども、私のほうの政府としても白紙でございますと、ただいまのところは、こういうことをよく言っているくらいでございまして、そういうところから流れてくるところの観測を基礎にして考えるというのではなくて、ただいまのところはいかにあるべきかということを、こちらとして腹案を固めていこうと、こういう態度でございます。
 それから、この点はもう再々、私のみならず、ほかの政府側からも申されておりますように、一番最初に、この国会の始まりました冒頭ごろに、早期返還ならば本土並みはむずかしいと、あるいは長期ならば本土並みということも考えられるかもしらぬというふうに、多くの意見の中で、大別すればこうであるというふうなことをあの当時総理が答弁しているわけで、これは決して二者択一というようなものではございません。そのほかにも考え方はいろいろございましょうと言うただけのことでございまして、政府の意図というものは当時におきましても明らかにしているわけではございませんことは、よく御承知のとおりだと思います。
#95
○森元治郎君 このアメリカ側のほうから来る人、向こうの新聞、社説、政治家、議会、いろいろなところから流れてくる一つの大きなにおいは、日本がさっぱりアメリカの希望するような協力をしていない、ただおんぶして経済繁栄だけやっている。その上大事な、ヴァイタルな沖繩の基地まで本土並みに返せと言うなら、引き揚げてしまえといったような、孤立主義的といいますかね、またああいうふうに立ち返るかもしれぬ。一つにはおどしもあるだろうし、一つにはせっかちな結論もあるだろうが、今後何かあっても、アメリカが日本を防衛しなければならぬ場合に軍事的、政治的、経済的にあっても、そういうムードがアメリカにあるとすれば、議会としては、国の政府としては、その行動を制約されると、日本援助に、あるいは安保条約の協力義務の遂行に思い切ったことができなくなる、後退すると、こういうことがよく言われておる。必ず今後の交渉には、こういう空気がいろいろな形で出てくると思います。アメリカがこういうふうに、そんなに協力が薄いのならという冷たい感じで後退する――軍事基地の日本のをほとんどみんな持っていってしまうというわけではない、条約は今後続げていくというのですから。しかし、総体的に後退していくということは、けっこうなことなのですか、どうなのですか、政府としては。
#96
○国務大臣(愛知揆一君) まあアメリカにはアメリカとして、いろいろな立場でいろいろな意見があるようでございます。先ほど申し上げましたように、まあ率直に言えば、従来はアメリカは全体が大きな政治問題として沖繩返還問題というものをしかく大きくは取り上げていなかったようにも見受けます。それから、先般来アメリカの国会の人たちが日本へ来て非常な率直な各政党その他の意見を聞かれたというようなことなどは、非常に私どもとしては、ことばは悪いかもしれませんが、ありがたかったと思います。ところが、そうやって認識を高め、かつ相当の影響力のある人たちが、沖繩問題を処理しなければならぬぞと、早期に何とか処理をしなければならぬぞということが相当なスピードでアメリカの政界等において取り上げられつつあるというような状態になったことは、非常にけっこうなことだと思いますが、それらの方の中でもずいぶん意見が違っておる。また、それ以外のいろいろの情報をとってみれば、いま森委員がおあげになりましたように、そんなにかってなことを言うなら引き揚げてしまうぞというような人も中にはいるようでございますが、これはきわめて一部の意見ではなかろうかと、かように考えます。基本的に安保条約を継続していかなければならない、いろいろの意味で日本の協力を求めていかなければならない、沖繩は日本の施政権に返還しなければならない、その辺までのところは私はコンセンサスであると見ていいのではないかと思います。それから先の点になりますと、やはり意見の違いがある。おそらくは、ニクソン政権におきましても、早期に結着をつけなければならないとすれば、いかなる方法で日本との合意を取りつけようかということを相当真剣に現在考え中であるのではないかと私は想像しております。
#97
○森元治郎君 それで、その交渉には、いろいろなアメリカ側の立場からいけば、注文は山ほどあるだろうと思う。その一つに、この朝鮮の問題を、私も、数は少ないが、アメリカの戦界研究家でこっちに来た人に個人的に話しても、朝鮮問題について日本の協力を求めたいということは、わずか三人ですから大きなことは言えないが、どう考えるのだ。あるいは、日本に反対の国の手に落ちたならばお前脅威と思わないのか。われわれは守ってやっておるじゃないか。何万人ですか――二、三個師団、五万人くらいいるでしょう、アメリカ兵が国連軍の形で。それにもってきて、この間は本国から大空輸、レティナ作戦とかいって、ああやって飛行機を飛ばしておる。これは即東北アジアの平和安全のためと同時に、お前ら直接の関係じゃないか。だからひとつ、お前、憲法もある、海外派兵もむずかしいだろうが、日本の自衛権のワクの中で何とかアメリカ軍の守っておるこのわれわれに対して効果的な寄与をしてもらいたい。寄与の内容は私はわかりませんが、そういう気持ちは非常に強い。ことに金がかかるということですね。つらくなってくると金のことを気にする。うまくいっておるときは何ぼかかっても平ちゃらですが、つらくなってくると金のことが気になる。お前のためにやっておる、どうするんだ。沖繩は返す、こっちは協力しない。朝鮮問題は必ずや向こうの政治的要求として日本側に決断を迫ってくると思うのですけれども、向こうの言い分によれば、日本の安全、韓国の安全というものは、これは相互にから合うものである、こういうふうに向こうは言っているんですが、こういうアメリカの必ずやあると予想される朝鮮の問題について、どの程度の一体協力を求められた場合にやるつもりか、現状維持でいくのか、大ざっぱにまず方針から伺います。
#98
○国務大臣(愛知揆一君) 大ざっぱというお話でございましたが、まず基本的な考え方、姿勢でございますね。これは、わがほうの立場というものはこういうことではないかと思います。日本と――これは沖繩を含んでですね、沖繩の施政権が返るということでこれからやっていこうということですから、沖繩は日本の領土である、その日本と日本を含む極東の安全ということが私は安保条約の目的であり、条約の面でも明らかになっておりますが、日本からいえば、日本を守ることが第一義で、日本の安全を確保するということが第一義であろうと思いますから、沖繩の施政権が日本に返った場合に、その観点からいって、どういう安全保障が一番――一番ではない、必要にして十分であるかということをあくまでこちらとしては考えるべきじゃないか。そこから割り出して、国民世論というものも一方に非常に強くあるわけですから、そこを踏まえて、目的としては、第一義的に日本の安全が従来どおり確保されるのに必要にして十分な体制はいかにあるべきか、ここが私は一番のポイントじゃないかと思います。
#99
○森元治郎君 これはもちろん、沖繩の返還、基地の返還のあり方、また基地の態様にもよることでしょう。かりにアメリカが全部沖繩から引き揚げてしまったとなれば、また話はたいへん違うけれども、機能の縮小というようなこと、いろいろなことと関連して出てくる問題だから、一つ取り上げて朝鮮の問題と言われても、どういう対策ということはむずかしいと思うのだが、少なくともこれだけはきょう言えると思うことは、従来われわれが常識的に知っている線から踏み出して、新たなアメリカと取りきめをして、韓国の平和と安全は即日本の平和と安全に影響するから十分対応する措置をとるなどというような約束などはあり得ないと思うのですが、いかがですか。
#100
○国務大臣(愛知揆一君) それは考えたくございませんね。したがって、あり得ないようにしなければならないと思います。
#101
○森元治郎君 これに関連する総理のおことば、大臣の代表である総理は、政府の方針としては、沖繩返還に関して条約の改定、新たなる取りきめなどはつけたくない――つけさせられるかどうかわかりませんが、国会の答弁では。したがって、かりに朝鮮の問題などについてそういうような外交上の取りきめなどはない、やらないという根本方針ですか。
#102
○国務大臣(愛知揆一君) まず第一に、いまの前のお尋ねの中には、たとえて言えば、韓国との間にアメリカも入れて三国防衛同盟というような趣旨のものを押しつけられることがありはしないか、それに対するおまえの態度はどうなのか、こういうふうな趣旨も含まっているわけですね。ですから、そういうことは私は考えたくありませんし、そういうことはあり得ない、こういうふうにさっきお答えをいたしたわけです。
 それから、その次のいまの御質問は、安保条約を改定するのか、あるいはこれに類するような何か特別の取りきめが要るのかどうか、それは考えているのか、あるいは押しつけられた場合にはどうするかということですが、これは昨日の総理の本会議での御答弁にも、そこのところは、特別の取りきめをしない限りということばがついておるわけです、その答弁の中には。そしてそのあとに、外交交渉ですからフリーハンドというものを与えていただきたいということもつけ加えてありますが、その点は御理解を原則的にいただけるかと思います。それならどういう特別の取りきめということを考えているのかと言われると、同時に、私どもと言ったらいいと思いますが、私のみならず、返還されれば憲法は沖繩に適用されるわけですね、それから特別の取りきめがなければ安保条約というものもそのまま適用されるということも自然の姿でございましょうと言うておるので、そこでやはり考え方は、相当、何と言いましょうか、御解釈というか、御理解がいただけるのじゃないかと思います。考え方の趣旨はそうでございます。
 それから、特別の取りきめというのは、もうかりに――ほんとうにかりに、一つの論理の仮定論とすれば、それは安保条約を改定するということも入りましょうし、あるいは安保条約に基づく交換公文ということもあり得ましょうし、いろいろの形態が考えられるかと思いますが、かりに法律ゼミナール論的な論理からすれば、しかしそういうことをつけて言っているわけではございませんし、それからいま申しましたように、特別の取りきめがなければ安保条約もまたそのまま適用されると考えるのが自然でございましょうと言っておりますようなところから、そしてこれもいつも申しておりますように、最終的に言えとおっしゃられれば、基地の態様についてはいまだに白紙でございます。しかし、私どもなりに国会の御論議などを通じて考えなければならない点については、だんだん頭の中では煮詰まりつつございます、こういうふうに総理も言っておりますが、これは私はむしろそういうふうに当事者として考えている。これを総理がそのまま自然にすなおにきのう取りまとめて御答弁したものと、かように私は理解いたしております。
#103
○森元治郎君 もう一つは、具体的問題でなく仮定の問題というのは非常にやりにくいのですが、ただ政府をしかりおくことが一つあるのは、安保条約というと安保条約のことばかりを考えるのですね、日本は。三国同盟といえば三国同盟のことばかり考えるのです。日英同盟といえば番犬のことばかり考える。いま改定だといえば、環境の外交については一つも気を配らない。やはり外務大臣というのは四方八方に目を配って、そうして外側もじょうずにやり、いま当面の問題も進めるという配慮も大事だと思うのだが、つい事務に没頭しちゃうのですね。その例が、ソ連の船が伊豆の沖に来て魚とりをやった。何で来るのでしょう、あそこまでサバとりに。私はサバじゃないと思う。安保条約の交渉をやっておる。何を一体やるのだか、私らも非常に関心があるよということを、魚にかこつけて来たのだと思っている。外交ってそうですよ。これはいま国会論議を聞いても、政府の答弁聞いても、中国と北朝鮮の話は出てくるが、ソ連というものは出てこないですね。よほどこの関係がよくて平和だと見えて、核兵器を一ぱい持っているおっかないソ連はかまわない。朝鮮がどうしたの、中国がどうしたのという話。しかし、ソ連はなかなかやるなと思うのは、珍宝島という、ロシア語で何とかいう島でやっていますね、紛争を。ああいうことでも、トロヤノフスキー大使が外務省に来て大臣に経過報告をしているのですね。なかなかやるものだと思うのです。なに私はけんかしているわけじゃなし、たいしたことはないと思うのだが、接触してこられた。愛知さんも悪くないですね、来てもらえば。安保条約にしても、何もわれわれこそこそソ連をひっぱたこうという手先をやっておるわけではないし。こういうことを絶えず、何の問題に限らず接触をしつつ、日本の平和的な意図をある程度相手に伝えながら事を運んでいくということが、外務大臣、大事なんです。私は単なる魚とりじゃないと思う。そういう意味で、北京にもわかるように――ルートは別です、方法は別として、絶えず目を配りつつやっていかないと、警戒心を非常に高める。警戒心を高めれば、疑心暗鬼にもなる。話せばわかることもわからなくなって、まして対ソ関係については、核拡散防止条約で日本はまだ調印もしていない、西ドイツもやっていない、これは何をやるつもりだろうといったような気持ちもあるでしょう。いろいろな他国も非常に注視しておるのですから、こういうこともやっていかないと、まずい結果を固定させてしまうおそれがあると思うのです。こういうことも外務大臣としては十分配慮される必要があると思うが、どうでしょう。
#104
○国務大臣(愛知揆一君) いま森委員から、政府をおしかりおくという前提でいろいろ御意見を承りまして、たいへん私も同感なんです。実は私からも、これは場所柄もわきまえず、あまり率直なことを申し上げるとお受け取りになると恐縮なんですけれども、いま少し国際情勢全般についての御論議を大いに野党の方々からも御展開をいただいて、われわれのやることにも大いに御鞭撻をいただきたい。何といっても多面的に、いまおことばがございましたように、常に冷静に気を配って、情勢を分析し、判断し、態度をきめていかなければならない。私はこれはもう持論なんでございます。もっとそういう面でひとつ多面的な御論議で、大いに御鞭撻あるいは御批判いただくことが、私どもとしても大歓迎するところでございます。
 そういう前提で一、二申し上げますと、たとえば、いまソ連との関係の話が出ましたが、これはもうわがほうの一番堅持している北方領土の問題というものが、実にこちらも執拗にねばっておりますが、それはそれとして、最近におきましては日ソ航空協定が結ばれて、来年の三月までの間に自主運航されてシベリアの上空が開放される。これは私は最近における日ソ間の外交としては、とにかく一つの特色ではなかろうかと思います。
 それからいまサバの問題がございましたが、これは安保条約というようなものにひっかかっているよりは、むしろもう少しいろいろの点があろうと思います。小さなことからいえば、カニの交渉がいま行き詰まっている。これはソ連大使をまたわざわざ招きまして、これの促進を要請しておるわけでして、漁業委員会が近く開かれるし、まあそういう関係のこと等も相関的に取り上げていかなければならない問題だと思います。
 それから、中ソの紛争については至大な関心を持っていま見守っております。いろいろの見方がございましょうが、これなども今後われわれのいくべき道について、非常に大きな考えていかなければならない問題を含んでいるのではなかろうか。
 それから拡散防止条約のお話にも触れられましたけれども、私は公にも申しておりますように、まあ精神はけっこうだと思います。一歩か二歩前進するという意味ではけっこうだと思いますけれども、それだからといって、私は調印とか、批准とかということについては、日本の立場としてもっと真剣に考えるべきところを考え、またひとつ国民世論にもお尋ねをして、とるべき態度を間違えないように、いわば積極的に拡散防止条約についての取り扱いについては、わが国の国益という点からいって、どういうふうに積極的な考え方をやったらいいかということを含めて対処しなければならないと考えております。
 それから先ほど来、朝鮮のことについてお話がございましたが、わがほうとしては、平和憲法ということからいいますと、私は平和への戦いということばをよく使いますけれども、やはり国際紛争が起こらないようにしていくということが必要であります。憲法の制約というか、憲法の精神のもとにおいて、それをどうやってできるかということは、やはり経済協力とか、そのほかの平和的な手段によるほかはない。しかも、それによって政情が安定するということを広い意味でねらっていくことをアメリカはどう考えるか。森委員のおことばによれば、どんな考えを押しつけてくるかということは、あろうかないかわかりませんが、それとは別に、日本としての立場というものをできるだけ貫いていく必要があるのではなかろうか。したがいまして、これは国会の開会中でたいへんどうもそういう点からいえば御協力いただかなければならぬことでありますが、来月早々はバンコクで東南アジア閣僚会議がございますが、各国からも、どうしても日本は外務大臣が出てくれなければ困るという、これもある意味からいえばありがたいことであるし、ある意味からいえば非常に重荷だと思いますけれども、バンコクへ参って、参加国は相当多いわけですから、これらの人たちの考え方や希望というものを聞くことも、また日本の外交の必要なことじゃなかろうか。したがって、また、引き続き範囲は違いますけれども、六月にはASPACの総会がございますが、このASPACにつきましても、世間ではいろいろのことをいう、あるいは国によっては別な期待もあるかもしれませんけれども、ASPAC精神に基づいて地域間の平和的な協力、これがかりそめにも軍事同盟的なものに、かりにもにおいが出てきたり――性格が変わらないようにASPAC精神を守り抜いていく、これもやはり非常に必要なことではないかと思うわけでございます。同時に、先ほどもちょっと申しましたが、これは定期にやることではございますけれども、特に本年は東京で中南米大使会議、十八カ国の大使を招致をいたしまして、一週間くらいにわたって中南米方面から見ました国際情勢の推移ということについても真剣に検討しておるわけでございます。
 どうか、そういうふうな、私としては多面的に、世界的に目を見開いてわがほうの立場というものを考えていきたい、こういうふうに考えておりますので、先ほど申しましたように、おしかりはおしかりとし、またいろいろの面で御批判や御激励を賜わればたいへんしあわせであると存じます。
#105
○羽生三七君 一点だけ。予算の総括質問と一般質問を、私、予算委員会におりましたので、外交に関する総理並びに愛知外相の考え方をずっと承ってきたわけですが、そこで一点だけお伺いしたいことは、つまり核に関する限り本土にはこれは持ち込まないし、沖繩についてはちょっと疑問があったけれども、本土と沖繩は一体であって特別の取りきめのない限り別扱いはしない、そういうふうに問題をせんじ詰めていくと、結局、問題は事前協議が非常に問題になってくると思います。基地の使用の態様ということにも関連しますが、事前協議ということが非常に将来問題の、どういう取りきめになろうとも、かなり大きなウエートを占めることは間違いないと思うのです。
 そこで一点だけお伺いしたいその点は、かりに、もし沖繩にベトナム戦争のような問題があった場合、それは沖繩であると本土であるとを問わず、それは日本ということになるのですから、沖繩が日本に返還された以上、その場合には、事前協議でイエス、ノーのどういう範疇に入るのか、これは非常に重要な問題だと思うのです。というのは、私は条約のこまかい解釈、何条の規定から言うとどうだとかこうだとかいうことは、あまりきょうはここでは問題にしません。問題は、政治的、国際的、外交的な判断から、それはイエスかノーかどららの範疇に入るか、こういう問題であります。
#106
○国務大臣(愛知揆一君) こういう点については、いずれまた他の機会でも御論議が重ねられることと思いますが、とりあえず、本日のお答えとしては、昨日、本会議で総理大臣が答弁いたしておりますが、これは事前協議というのはイエスということもあるし、ノーという場合もあるということは、岸内閣以来一貫した政府の見解でありますということが、まず前段でございますね。それならばどのような場合にノーといい、どのような場合にイエスというかということでありますが、それはあくまでもわが国の国益の面から自主的に判断してきめることである、こういうわけでございまして、ただいまのお尋ねは、さらにこの国益とは、具体的に当てはめて、いまの御設問のようなところにどう当てはまっていくかということなんでありますが、この点については、まだ十分に真剣に検討しなければならない。先ほど申しましたように、返還に関連しての基地の態様ということと私は関連してくる問題だと思いますが、先ほど申しましたように、第一義的に日本の安全を期する上におきまして、こういう場合にどうやることが必要にして十分であろうかということを考えるのが判断の基礎になる、こういうことではなかろうかと思いますので、その判断の基礎になるような考え方等については、まだ十分に真剣に詰めた腹案的なものを持っていないというのが現在の現状でございます。考えなければならない問題点というものは、いま申し上げたような角度から考えていかなきゃならない、かように存じておるわけでございます。
#107
○羽生三七君 いま森委員の質問の中に朝鮮の問題も出てきましたが、もし朝鮮半島に問題が起こったとき、そういうことは想定したくないんですけれども、アメリカの上下両院議員と話をしても必ず出てくる問題が朝鮮問題、まあ政府でもそういうことをかなりお考えになったと思いますが、そういう私は将来不幸にして何らかの問題が起こった場合等を想定して、先ほど一応ベトナム――現に起こっておることですから、ベトナムについて、いまは沖繩はアメリカの施政権下にありますが、かりにもし日本の地域に返った場合、日本の政府としてならそれはどういう態度をとるかということをお尋ねをしているわけです。そこで、国益についても、実はこの間、一貫して総括、一般質問を予算委員会で聞いておって、国益に対する考え方が、ナショナルインタレストと言えば共通みたいに考えているけれども、その間のそれぞれの国益についての解釈が相当違うということがだんだん聞いておるうちにわかってきたわけです。したがって、いまの外相のような御答弁になるかと思いますが、そうすると、かりに一応言えることは、イエスともノーとも、その状況を判断してと言われますが、そうすると、日本に沖繩が返ってきた場合に、本土たると沖繩たるとを問わず、日本とかかわりのない他国の戦争に日本から直接出撃することに事前協議を求められた場合にイエスと言うこともあり得るということですね。イエスともノーとも、つまりそれも意思がはっきりしているなら全部ノーだと、こうお答えになるわけですが、イエスともノーとも状況によってということは、イエスと言うこともあり得るということですね。
#108
○国務大臣(愛知揆一君) これはまず一般論としての事前協議というものは、いまもお答えいたしましたように、イエスと言うこともノーと言うこともあり得るものだ。ところが、これは一応沖繩という問題を、ちょっとお答えの順序からいって別にいたしますと、本土についての場合はもう事前協議のやり方、内容、それから実績が一度もなかったというようなことは、一連の定着した考え方が私はできていると思うんです。それで、今度、その次に同様に沖繩の基地に関連してどう考えていったならば必要にして十分な日本の安全が期し得るかということを、わがほうとしては主体的に考えればいいのではなかろうかというところまでは、私は、皆さまも御同様に安保ということを前提にすればお考えになるんじゃなかろうかと思いますが、ただ、この点も十日の日ですか、総理大臣が言ったように、仮定のことではあるけれども、もし発進した場合に、沖繩から来たんだか日本の内地から来たんだか、受けるほうからいえばわからぬじゃないかと、そういうところも私はわきまえておりますという趣旨を申し上げたことは、そういう辺のところをどういうふうに考えたらいいかということで、いままあ考え中でございますということを、かなり考え方というものは、少なくとも考えなければならぬ点は明らかにしたのではなかろうかと思いますが、私は羽生委員のお尋ねになっている気持ち、それから焦点は非常によく理解できるんですけれども、それだけにこうした大きな、ほんとうにこれは真剣になって考えなければならぬ問題ですから、現在のところ政府の見解はどういう場合にノーと言うのか、どういう場合にイエスかとおっしゃられても、ちょっとこのところのお答えはもうしばらく時間をかしていただきたいと思います。
#109
○羽生三七君 もう一点で終わりますが、なぜ私お尋ねするかというと、私の関連質問に対して、特別の取りきめをしない限りということで本土と沖繩の一体化を言われましたが、その後のずっと状況を見ておると、特別の取りきめをすることはまずないというようにもとれるのですね。そうなると、いまの問題が全く問題の範囲、焦点の中心になるので特にお伺いをしたわけです。そうすると、もしそういうようなことは、いま外相のお考えになっているような非常な御苦心はよくわかりますが、事と次第によっては特別な取りきめをしなければならないものがあるんじゃないですか。そうしなければ、全部事前協議に、いまの問題で一点にすべてかかってくるということになると思いますね。
#110
○国務大臣(愛知揆一君) お考えの筋は私もそうだと思うんです。それで、いつも答弁は煮え切らないのですけれども、特別の取りきめがなければということがまだくっついているんです。くっついていることをひとつ御了解いただきたいと思います。やるという意味ではございませんですが、それをも含めて白紙ということが、まあこれはわれわれの考え方でございます。
#111
○大和与一君 一つは大臣、岸さんは自衛のためには核を持ってもいいという意味のことを言って、その核とは、まあきわめて小さい携帯用といいますか、そういうことをちょっと言ったように記憶しているんですが、それは政府としてそれをきちんと認めているのでしたかね。もう一つは、第六条は第五条を受けているんだ、それ以外には全然すき間はないんだと、こういうふうに解釈していいのか。第五条の拡大解釈、あるいはほんとうの緊急突発が起きた場合、五条で解釈して事後協議になることがあり得るのではないか。これはどうですか、いまの羽生先生のとちょっと関連しますが。
#112
○国務大臣(愛知揆一君) まず第一の核の問題は、岸総理がそういう趣旨の御答弁、御説明をしたことは私も明らかに記憶いたしております。これは御批判は別として、事実の経過から申しますと、この国会を通じて法制局長官が憲法論をやっておりますが、要するに、憲法で言えば核であっても自衛だけだ、攻撃的な性格のものでなければ憲法上は許されると、まあこういう答弁をしているのとつながっていると思いますけれども、同時に、現内閣としては、これはいままでは本土を中心の論議でありますけれども、核は、非核三原則というものはそのまま堅持していくというのが佐藤内閣の基本方針ですから、核については、たとえば小規模のものであっても持たない、開発しない、持ち込まさせないというのが現内閣の基本方針である、これが私の考え方でございます。それから安保条約の第五条は、現実に日本の領土にだれもが目に見えて襲いかかられたときの規定であると私は解しておりますから、五条と六条の差というものは条約上もきわめて明確ではなかろうかと、かように考えております。
#113
○西村関一君 関連。時間もありませんから、一言で申しますが、いまの核三原則の問題については、持ち込まない、三原則の中の最後の持ち込まないということは堅持するといいましたが、これは政策上持ち込まれることもあり得るという御答弁もありましたから、そういう点でわれわれとしては不安を感じているわけなんです。政府の政策によって持ち込む場合もあり得るというようなことも心配いたしますので、そういう点に対して、いま外相が御答弁になりましたような、あくまで三原則は堅持するという御答弁をそのまま受け取ってよろしいかどうか、あらためて一点だけ承っておきたいと思います。
#114
○国務大臣(愛知揆一君) その点はいろいろの御批判もございましょうが、いま私が申しましたのは、本土について申し上げるという従来からの態度、これを申し上げたのでありまして、憲法上から言えば、つくらず、持たずというのが憲法上にもかかわる問題でございましょうし、政府としてもやる気持ちは毛頭ない。それから、持ち込まさせないというほうは、憲法上から言えば、本土の場合であっても、よく法制局長官が申しますように、砂川判決においても明らかにされているように、外国の軍隊が持ち込んでくるというものは、憲法に、少なくとも、なじめない問題だというように解釈されているようです、憲法上は。しかし、政策としては、従来から本土については非核三原則を現内閣としては堅持してまいります、これが内閣の方針でございます。で、沖繩につきましては、持ち込まさせるのか、させないのかというようなところまでいかない、基地の態様に関連して、まだ考え中というか白紙だというのが、繰り返して申し上げている態度でございます。
#115
○委員長(山本利壽君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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