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#1
第061回国会 外務委員会 第10号
昭和四十四年五月八日(木曜日)
   午前十時二十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     渡辺  武君     野坂 参三君
 五月六日
    辞任         補欠選任
     佐藤 一郎君     中村喜四郎君
 五月七日
    辞任         補欠選任
     中村喜四郎君     佐藤 一郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 利壽君
    理 事
                佐藤 一郎君
                長谷川 仁君
                増原 恵吉君
                大和 与一君
    委 員
                石原慎太郎君
                杉原 荒太君
                高橋  衛君
                三木與吉郎君
                加藤シヅエ君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                黒柳  明君
   衆議院議員
       外務委員長    北澤 直吉君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省欧亜局長  有田 圭輔君
       外務省条約局長  佐藤 正二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       外務省欧亜局西
       欧第一課長    加賀美秀夫君
       外務省欧亜局西
       欧第二課長    伊藤 義文君
       外務省条約局外
       務参事官     高島 益郎君
       大蔵省主税局国
       際租税課長    竹腰 洋一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○海外移住事業団法の一部を改正する法律等の一
 部を改正する法律案(衆議院提出)
○日本国とフィリピン共和国との間の国際郵便為
 替の交換に関する約定の締結について承認を求
 めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○プレク・トノット川電力開発かんがい計画の実
 施工事のための贈与に関する日本国政府とカン
 ボディア王国政府との間の協定の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテ
 ン及び北部アイルランド連合王国との間の条約
 の締結について承認を求めるの件(内閣提出)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国とオーストラリア連
 邦との間の協定の締結について承認を求めるの
 件(内閣提出)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
 めの日本国とイタリア共和国との間の条約の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出)
○国際情勢等に関する調査
 (国際情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本利壽君) それでは、ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る四月二十五日渡辺武君が委員を辞任され、その補欠として野坂参三君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(山本利壽君) 次に、佐藤一郎君が一昨六日委員を辞任され、昨七日再び外務委員に選任されましたので、現在理事が一名欠員となっております。
 この際、理事の補欠選任についておはかりいたします。
 理事の選任につきましては、先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に佐藤一郎君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(山本利壽君) 次に、海外移住事業団法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、提案理由の説明を聴取いたします。
 衆議院外務委員長北澤直吉君。
#6
○衆議院議員(北澤直吉君) ただいま議題となりました海外移住事業団法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、去る四月二十三日、衆議院外務委員会において起草、提出いたしたものであります。
 政府は、昭和二十七年に戦後の海外移住が開始されるとともに、財団法人日本海外協会連合会及びその後身である海外移住事業団を通じて、昭和四十一年三月末に至るまで、中南米移住者に対し、渡航費として総計五十四億五千万円余を貸し付けてまいりました。
 中南米に移住された方々の総数は昭和四十三年末現在で約六万人でありまして、そのうち九〇%以上が農業に従事しておるものであります。
 これら農業移住者の現状を概観いたしますと、政府及び海外移住事業団の諸援護並びに営農確立のための現地の融資等の措置にもかかわらず、いまだに定着安定の域に達していない方々も多いのであります。
 以上のような点にかんがみまして、政府は、昭和四十一年に行なわれた海外移住事業団法の一部改正により、昭和二十七年四月一日から四十一年三月三十一日までの間に事業団に貸し付けた五十四億円余の渡航費貸付金債権を免除するとともに、同年四月以降は事業団に渡航費を交付することとし、事業団も移住者に対して渡航費を支給することに業務内容を改正したのであります。
 しかし、法改正後も、渡航費貸付金債権は依然として、事業団と移住者との間に残っておりますので、事業団はその回収に努力してまいりましたが、昭和四十一年四月以降は、渡航費を全額支給していること、同じ移住地に渡航費を貸し付けられた人と支給された人が混在して不公平が生じていること、さらには、移住者の中に経済的に良好でない人もいること等の理由によって、回収状況ははなはだ芳しくないのであります。
 一方、それに伴って、債権管理費の累積が無視できない実情にあります。
 また、戦後、米国難民救済法の適用を受けてアメリカ合衆国に移住した三百八十八名に対し、政府は三千百八十五万円余を渡航費として貸し付けておりますが、すでにその九五%が回収済みでありまして、残余の分は回収見込みが立たない状況でございます。
 よって、このような渡航費貸付金の返済という移住者の心理的負担と、四十一年の法改正による不公平を除き、かつ、経済的向上をはかり、もって移住者の営農定着を実現させるため、次のような法的措置を講じようとするものであります。
 すなわち、本改正案の第一点は、政府は昭和四十一年の事業団法の一部改正の際除外されたアメリカ合衆国向け移住者のため事業団に貸し付けた渡航費貸付金債権約四百六十万円を免除するものであります。
 第二点は、事業団は、移住者に貸し付けた渡航費貸付金債権を一括して免除するものであります。
 なお、本法案に対しましては、過去に渡航費を返済した者との間に不公平が生じますので、これに対処する方法として、海外移住事業団が現在特別勘定に保管している回収金を移住者全体の利益になるように使用することが適当と思われます。
 よって、このような観点から、移住者の団体を選定し、これに対し、基金として回収金を寄贈することとし、あわせて貸付金を返済した移住者に対しましては、右団体より感謝状を贈る措置をとりたいと存じます。
 また、本案施行による国庫減収額は約四百六十万円と見込まれますので、衆議院外務委員会におきましては、本案の提出を決定するに際し、政府に対して意見を求めましたところ、愛知外務大臣より、国がアメリカ合衆国移住者に対して、渡航費貸付金債権を免除することについては、残余債権の回収が事実上不可能に近いので、やむを得ないものと考える。また、事業団が移住者に対して、一律に渡航費貸付金債権を免除することについては、問題がないわけではないが、昭和四十一年以降、渡航費は支給することに改められているので、あえて反対しない旨の意見が開陳されました。
 以上が本案の提案の趣旨とその概要であります。何とぞ御審議の上、御賛成あらんことを要望いたす次第であります。
#7
○委員長(山本利壽君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 本案に対する質疑は、後日に譲ることにいたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(山本利壽君) 次に、日本国とフィリピン共和国との間の国際郵便為替の交換に関する約定の締結について承認を求めるの件
 及び
 プレク・トノット川電力開発かんがい計画の実施工事のための贈与に関する日本国政府とカンボディア王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
 以上二案件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。
 愛知外務大臣。
#9
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました、日本国とフィリピン共和国との間の国際郵便為替の交換に関する約定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 わが国とフィリピンとの間の郵便為替の交換業務は、同国が万国郵便連合の郵便為替に関する約定に参加しておらず、また、戦前締結されておりましたフィリピンとの間の郵便振替約定も戦後復活されなかったため、現在まで実施することができない状態となっておりました。政府は、同国との間の地理的及び経済的な関係にかんがみて両国間の郵便為替業務の再開の必要性を認め、かねてから同国政府と郵便為替の直接交換のための約定の締結交渉を進めてまいりましたところ、先般合意が成立し、この約定に署名した次第であります。
 この約定は、郵便為替の表示通貨、料金の割り当て、振り出し及び払い渡しの方法等双方の郵政庁が郵便為替の交換業務を行なうために必要な基本的事項について定めたものであります。
 この約定の締結により、わが国とフィリピンとの間に二十七年ぶりに郵便為替の交換が再開されることになり、公衆の利便が増大することが期待されます。
 よって、ここに、この約定の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、プレク・トノット川電力開発かんがい計画の実施工事のための贈与に関する日本国政府とカンボディア王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 プレク・トノット川電力開発かんがい計画は、カンボディアの首都プノンペン市の西方約七十キロの地点でメコン河の支流プレク・トノット川をせきとめ、多目的ダムを建設し、一万八千キロワットの発電と五千ヘクタールの農業かんがいを実施しようとするカンボディア政府の計画でありまして、総建設費は約二千七百万ドルと見積もられ、そのうち外貨分は千八百万ドル、現地通貨分は九百万ドルとなっております。
 政府は、この計画の実施に他の諸国十一カ国及び国際連合開発計画――UNDPとともに協力することとし、この計画の実施工事のための贈与に関する協定を締結するため、本年一月以来プノンペンにおいてカンボディア政府と交渉を行ないました結果、本年三月二十一日にプノンペンにおいて、わが方力石駐カンボディア大使とカンボディア側プリサラ外務大臣との間でこの協定に署名な行なった次第であります。
 この協定は、本文九カ条及び附属書から成っており、その主な内容は、次のとおりであります。日本国政府は、カソボディア政府に対し原則として四年間にわたり十五億千七百四十万円の贈与を行なうものとし、この贈与は、日本国の供給者とカンボディアのダム公社との間の契約に基づいて行なわれる日本国の生産物及び日本人の役務の購入に充てられることとしております。
 この協定の締結によりまして、カンボディアにとり重要な意義を有するプレク・トノット川電力開発かんがい計画の実現が可能となりますとともに、両国間の経済協力の増進を含む全般的な友好関係の促進に多大の貢献がなされるものと期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、以上二件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#10
○委員長(山本利壽君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 二案件に対する質疑は、後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#11
○委員長(山本利壽君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリア連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件
 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件
 以上三案件を便宜一括して議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#12
○大和与一君 この法律は、さきにベルギーとアラブ連合の法律がもう審議を終わっておりますが、あのときに基本的な共通問題はだいぶお尋ねしましたので、きょうは要点的にお尋ねをするつもりです。
 まず、イギリスとの関係ですが、今回のイギリスとの条約は、イギリスの税制改正に伴って現行条約を改正するものであるというわけですが、もし現行条約のままでいくと、わが国から進出している企業あるいは投資家がイギリスの税制改正によって何らかの不利益をこうむることがあるのかどうか。それからまた、不利益をこうむる具体的な例がいままで出てきているか。そういうことをまずお尋ねをします。
#13
○説明員(竹腰洋一君) 大和委員御指摘のように、イギリスとの条約改定は、主として英国法の改正に基づくものでございます。実は法律改正以前の法律では、配当に対する課税につきましては法人税が課せられるだけで、それが支払われます場合の源泉徴収の課税は行なわれませんでした。個人に対する支払いに対して付加税だけが課せられるようになっておりましたが、その付加税は前の条約によって免除されておりました。ところが、新しい税法改正によりまして、新たに支払われる配当に対しましても所得税は課せられることになりました。その所得税の税率は四一・二五%という非常な高率でございます。そこで条約上、もし前の条約でまいりますと、前の法律では実はかからない前提になっておったものですから、そういう軽減規定が何も置いてございません。したがって、前の条約のままでは四一・二五%がそのまま日本に対して支払われる配当にかかるような仕組みになっておったわけでございます。したがいまして、新しい条約では、新たにイギリスから日本に支払われます配当についての課税につきましての制限税率を設けまして、一般配当は一五%、親子間配当は一〇%という従来の日本に課せられておりましたと同じ制限税率を英国側も取ることにいたしまして、したがいまして、条約を結ぶことによって四一・二五%の税率が一五%に軽減されるというメリットがございます。そこで、現在かなりの件数の日本の子会社が実はイギリスにできておりまして配当の支払いを受けておりますが、その分に対してはこの新しい措置によりまして軽減がはかられることになります。で、その額は、大体これはまだ現在は非常に額は小そうございますけれども、二億円前後が日本側にとっての軽減税額になると思います。
#14
○大和与一君 イギリスとの条約の第二十八条によれば、イギリスの海外領土についても、両国間の合意によって、この条約をそのままか、または修正を加えて適用することができることになっておる。このような地域でわが国が経済関係を持っている場所としてはどのようなものが一体ありますか。現在その適用について交渉中ということであれば、差しつかえない範囲でお答えをいただきたいと思います。
#15
○説明員(竹腰洋一君) 対象地域として考えております地域といたしましておもなものをあげますと、ソロモン、フィジー、ギルバート・エリス、フォークランド、アンティグア、英領ホンジュラス、ドミニカ、グレナダ、モンサラット、クリストファ・ネビス・アンジェラ、セント・ルシア、セント・リンセント、バージンサイシェラスというふうな地域がございます。その中で日本側が非常に大きな関係を持っておりますのはフィジーでございます。これは鉱石の輸入が相当量ございます。そのほか、あとそう大きなところはございませんけれども、特にソロモン、英領ホンジュラスあたり若干の貿易がございます。それで、主としてやはり大きな影響は、船舶の課税に対する影響が大きいと思います。日本の船舶が寄港いたしまして荷物の揚げおろしをいたします場合の積み荷運賃の課税が行なわれる場合もございますので、拡大適用によりまして相互免税の規定が適用になることが相当大きな効果があるというふうに考えております。拡大適用につきましては現在交渉中でございますが、実は先ほどお話し申し上げました税法の改正に伴います問題にからみまして、旧英領は実は英本国の税法に類似した税法を持っておるのでございます。本国が改定いたしましたにもかかわらず、実は旧英領につきましては、まだその改定に従わない部分が相当ございます。したがって、そういう場合をいかにするかということにつきましての部分的な了解事項がまだ最終的な段階に至っておりませんが、もうほぼ合意に達しましたので、近く交換公文が交換される予定でございます。
#16
○大和与一君 わが国がイギリスに支払っておる特許使用料などの内容について御説明をいただきたいと思います。
#17
○説明員(竹腰洋一君) イギリスに対しましての特許権のおもなものといたしましては、業種別に申し上げますと、機械関係が非常に多うございます。機械技術関係でございますが、電気機械製造、輸送機の製造関係、その他機械、合わせまして百五十件、これが一番大宗を占めておりまして、そのほか化学工業関係七十二件、それから紡織機械関係が十七件、四十三年の三月末現在で合計二百三十九件の特許権契約が結ばれておりまして、これに基づく使用料が支払われておるわけでございます。
#18
○大和与一君 イギリスのわが国産品に対する差別的輸入制限についてお尋ねします。
#19
○説明員(伊藤義文君) 日本と英国の間には一九六二年に日英通商航海条約が締結されまして、わが国と英国との間にいわゆる最恵国待遇が相互に付与されているわけでございます。その後両国間の交渉によって、現在いわゆる英国の対日輸入制限というのは自由化になっておるわけでございますが、実際には輸出自主規制というものがございまして、わが国としては、英国が特に関心を有する品目について自主規制を行なっており、その数は現在四十八品目でございます。この自主規制四十八品目の内容といたしましては、繊維製品が四十四品目、家庭用陶磁器が四、合計四十八品目でございますが、これにつきましては、年々両国間の交渉によって、輸出自主規制の撤廃あるいは輸出自主規制ワクの拡大ということで交渉いたしております。
#20
○大和与一君 イギリス側の批准状況はどうですか。
#21
○説明員(高島益郎君) 英国のこの租税条約の批准の手続といたしましては、国会で審議いたしませんで、国会に一定期間テーブルしておきまして、その期間が経過いたしますと、自動的に承認が行なわれたということにみなす習慣があります。現在まだその手続は済んでおりません。近くそのような手続によって承認されるというふうに考えております。
#22
○大和与一君 そうすると、それは期間はどれくらいですか。
#23
○説明員(高島益郎君) 一カ月でございます。
#24
○大和与一君 今度はオーストリア。
 わが国とオーストラリアとの貿易を昭和四十三年について見ると、輸出が四億一千六百三十万ドル、輸入が九億二千百三十万ドルで、わが国が二倍以上の大幅な入超となっておるようですね。こうした貿易のアンバランスは、オーストラリアの関税障壁によるものではないか。この前もちょっと大臣にお尋ねしたことがありましたが、また何らかの非関税障壁はないのか。こうしたアンバランスを是正するために、最近開催された第七回目豪経済合同委員会においてこの問題は取り上げられたのか。また、将来どのようにしたらよろしいのか、政府のお考えをお尋ねいたします。
#25
○国務大臣(愛知揆一君) この日豪両国間の経済関係は、三十二年の日豪通商協定の締結を機会に緊密化してきたわけでございますが、現在わが国は豪州にとりまして最大の輸出相手国としての地位を占めるに至っております。また豪州はわが国にとりまして、羊毛製品、鉄鉱石等のわが国が必要とする一次産品の重要な供給源になっております。これがおおよその概況でございますが、さらに、こうした関係を緊密化するためにいろいろの方策を講じておりますけれども、ただいま御指摘になりました具体的な問題等については、政府としてももちろんでありますが、御案内のように、民間関係の日豪の経済ミッションといいますか、定期的の会談等も最近東京で行なわれておるような関係もありまして、今後一そうそうした点の是正改善につとめていきたい、かように考えております。
#26
○大和与一君 次に、イタリアとの条約関係。
 イタリアとの条約では、配当などの投資所得を受け取る場合に、一般的にはそれらの所得が生じた相手国で軽減税率が適用されるのだけれども、これらの所得が相手国内にある支店等の恒久的施設に実質的に関連して生じたものである場合には軽減税率は適用されない。相手国の高い税率がそのまま適用されることになっておると思います。このような規定になっておるのは一体なぜであるか。それからまた、わが国からイタリアに進出している企業で現実にこの例外規定の適用を受けるケースはあるのですか、これをお尋ねします。
#27
○説明員(竹腰洋一君) ただいま御質問のありました、投資所得に関連して、恒久的施設がある場合に軽減税率が適用を受けないということは、これは単にイタリア条約だけではございません。OECDモデルでもそういう思想に基づいてつくられております。これはその場合は、実はいまちょっとお話がございましたが、限定がございまして、たとえばロイアルティーとか利子の場合に、利子の発生の基因になる債務そのものが恒久的施設を持っておる。たとえばイタリアから日本の企業に対して貸付金をしておるけれども、それは単に形式的な場合であって、実質的にはその資金はイタリアにある日本の企業の支店で運営されていて、その中から利子が支払われるというような場合でございます。こういう場合には、実はその資金というのは本来は――失礼しました、逆でございます。たとえば日本からイタリアに貸し付け金をしている場合、イタリア側は日本の企業に対して利子を払うわけでございますが、その資金が日本の国の中で調達された資金ではなくて、たとえばイタリアの国内で調達された資金であるにもかかわらず、形式上は貸し付け金契約がイタリアの会社と日本の会社の上でできているという理由だけで、その利子が日本に対して支払われるという場合にまで軽減税率を適用するのはいかがか。ほんとうに資金の調達がイタリアの中で行なわれてイタリアの企業に貸し付けてそれが払われる場合には、やはりその利息が払われる相手というのは、まあ資金そのものはイタリアの国内のものだ。だから、その源泉はイタリアの国内であると考えて課税をすべきである。その場合には、そういう利子の課税というのは、非居住者に対する支払いと同一に考えるのではなくて、むしろイタリアの居住者に払われるところと同一の取り扱いを実質的にされるべきであるという考え方に立脚したものでございます。
#28
○大和与一君 ちょっとややこしいですね。OECDモデル条約案では、使用料に対する源泉地国課税は免税としているが、わが国が先進諸国と結ぶ租税条約では、すべて一〇%を課税することとしている。これは、わが国がまだ技術導入国であることによるのではないかと思いますが、事実、イタリアとの関係について見ても、昭和三十九年度わが国からイタリアへの使用料支払い額は五百十一万ドルで、受け取り額七十七万ドルに比べると圧倒的に多くなっています。しかし、イタリアとの条約では、交換公文で、将来わが国がOECD加盟国のいずれかとの条約で一〇%以下の税率を適用するときは、イタリアもこれに均てんできるように条約を改正するため協議することになっている。そこでお尋ねするんですが、政府は使用料に対する税率の一〇%以下への引き下げについてどのような考えを持っていられるのか。わが国の技術導入政策及び技術の使用料に対する課税の問題について大臣のお考えを承りたい。まあ、ほかの方でもいいですよ。
#29
○説明員(竹腰洋一君) 御指摘のございましたように、ヨーロッパ諸国との条約交渉をいたします場合には、OECDモデルをたてにとられまして、軽減税率をOECDモデルどおりに下げろという要求が出てまいります。しかしながら、日本の現在の立場では、御指摘のように、技術の導入国であるということ、それから、それに対する税収の観点から見ましても、これを一挙に引き下げた場合税収上に問題があるという、この二つの観点から、わが国は、いままでロイアルティーを一〇%以下に引き下げました事例はございません。また、今後条約交渉の過程を予想してみましても、当面、私どもいま方針を変える意思はないわけでございますけれども、先々、日本の工業技術が非常に進歩し、これから後進国に対する技術輸出の問題も起こってくるものと思いますが、そういう場合には、逆に日本のほうがなるべく合理的な安い税率にすることが望ましいという立場になろうと思いますが、そういう立場の変化を勘案しながら、かつまた、歳入に対して与える影響等も勘案しながら対策を考えていくべきだと思いますが、その場合にも、単に一国、一国の問題だけではなく、わが国の対外的な一つのそういう軽減税率をいかにするかという基本的な観点からとらえて検討すべきではないかというふうに考えております。
#30
○大和与一君 最後に、イギリス及びイタリアの対日産品輸入制限の現状についてお尋ねいたします。
#31
○説明員(加賀美秀夫君) イタリアの対日輸入制限の現状についてお答え申し上げます。
 イタリアはEEC諸国のうちで対日輸入制限、差別輸入制限につきましては最も制限品目の多い国でございます。しかし、昨年八月やりました交渉におきまして、本年、つまり今年の末までに五十八品目の差別を撤廃するという合意ができました。その合意が執行されますれば、ことしの末には残存の日本に対する差別制限、これは四十五品目になるはずでございます。去年の八月交渉が妥結いたします前は百三の制限品目がございました。イタリタは交渉の妥結の際に直ちに二十五品目を自由化いたしました。それから、今年の初めに十四品目自由化いたしております。したがいまして、今年の末までにイタリア側が約束してこれから自由化するという品目は十九品目でございます。しかしながら、日本側の輸出関心品目である自動車、ミシン、そういった品目につきましては、現在のところまだ制限されております。ちなみに日本とイタリアの貿易額は、昨年は日本からの輸出が七千百万ドル、イタリアからの輸入が七千四百万ドルという形になっております。
#32
○大和与一君 イギリスとイタリアと両方聞いたのですが。
#33
○説明員(伊藤義文君) イギリスの対日輸入制限については先ほどちょっと申し上げたのですが、昭和三十八年日英通商航海条約が締結されて、両国で互いに差別待遇を与えるガット三十五条の援用が撤廃された。そこで、両国間でその後たびたびの交渉を通じまして、現在イギリスの対日輸入制限というものはないわけであります。ただ、実際的にはわが国から輸出自主規制という品目が若干残っているわけでありますが、これも年々減っているわけであります。現在四十八品目に及び自主規制品目があるわけであります。その内容は、繊維品四十四品目、家庭用陶磁器四品目ということになっております。また、昨年度のわが国と英国との貿易量は、わが国の輸出が三億六千万ドル、それに対してイギリスのわが国に対する輸出が二億五千万ドル。したがって、わが国のほうが一億ドルの輸出超過になっているというような現状でございます。
#34
○大和与一君 私の質問は終わります。
#35
○羽生三七君 一つだけ。
 いまあげられているこの三つの国と日本との関係ですが、一つ一つ、制限品目がどうで自主規制がどうということはお尋ねいたしません。それらの品目の数だけでは意味がないので、その条件によってみな違うのですから、意味ありませんから聞きませんが、いわゆるプラス・マイナスといいますか、フィフティ・フィフティにいっているのか。損得から言えばどういうことになっているのか。簡単でいいのですが、一々例証をあげる必要はありません。貿易の量とかそういうことじゃない。いまの制限関係、自主規制も含めて。
#36
○説明員(伊藤義文君) 英国の場合について御説明いたします。わが国は英国に対して自主規制を行なっております。四十八品目でございます。ところが、日本側の残存輸入制限品目は百二十品目でございます。したがって、これを考慮いたしますと、どちらがいいかということは、実は日本のほうが分がいいということは言えると思います。
#37
○森元治郎君 一つ。
 いまイギリスの場合を例にとって、留学生が、日本から向こうへ国費では十六名、向こうからこちらには三名とか、各国との関係で、もうたいへん差があるのですが、これはどういうことなのか。文化関係の人はいないかもしらぬが、もしわかったら知らしてもらいたい。
 それと、海外へ行ってみますと、民間の技術の研修生とか、それから私の費用で行っている留学生、かりにパリにしますとパリにどのぐらいいるんだろうということがいつも実数がつかめない。これは、昔は領事館のお世話にならなければならなかったから、いつでも日本人の実数は把握できるんですね、在外公館が。いま在外公館なんかへ顔出す人は非常に少ないから、かといって、日本人が何人どうしているんだという実態をつかんでないように見えるんですが、その間の事情を伺います。
#38
○国務大臣(愛知揆一君) 担当の者がただいまおりませんから、詳しいことはまた別の機会に御説明するといたしまして、常識的にお答えいたしたいと思いますが、確かにこれは一つの問題だと思うんです。たとえば、大都会、これはニューヨークにしてもロンドンにしても、ほかのところももちろんだと思いますが、正確にその都会におります日本人の数を掌握することはできておりません。これは、かりに総領事館というものがある土地でございましても、総領事館に届け出させることを義務として強制することはできませんですから、したがって、子弟の関係その他で、総領事館に届け出ておけば処遇上有利であり便利である条件を欲する方は、これは求めずして届け出てこられるようでございますけれども、ことに最近は海外旅行が非常に楽になった関係もあり、それから、若い人などはいろいろのってでもぐり込んで滞在をしておる。何をしておるかと問われれば、勉強しているはずなんだが、何をしているかわからない。こういう人がだんだんふえてきておるように見受けられるわけでございます。私もこれは何とかせにやならぬと思っておりますけれども、実は妙手がございません。困っておるようなわけでございまするが、どうかひとついいお知恵がございましたらお教えいただきたいと存じます。
#39
○委員長(山本利壽君) 他に御発言もなければ、三案件に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより三案件について一括討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#41
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認めます。
 それでは、三案件につきまして順次採決を行ないます。
 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#42
○委員長(山本利壽君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリア連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#43
○委員長(山本利壽君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#44
○委員長(山本利壽君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、三案件について本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#46
○委員長(山本利壽君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#47
○羽生三七君 来月九日日本でASPACが開かれることになっておりますので、これに臨む日本側の態度について若干お尋ねをしたいと思います。
 実は、この問題については前の三木外務大臣のとき、それからさらにその前の椎名外務大臣のとき、そのつど当委員会では、日本の外務当局がこの会議に臨む態度についてそれぞれ所信を伺ってきたわけで、かつまた、椎名、三木両外務大臣からそれぞれ当時明確な答えがあったわけであります。したがって、あと一カ月後にこの会議を控えて、この際日本側の態度、愛知外相の態度をお聞きしておきたいと思います。
 今度の会議は、申し上げるまでもなく、さきのアメリカの偵察機撃墜事件、それに伴う護衛偵察、さらに日本海への七十一機動部隊の移動、そういう問題とともに、中ソ国境紛争とか、あるいはベトナム和平会談も停滞をしておる。そういう問題のある際でありますから、おそらくこの会議では、どれを主として国際緊張の要件として数えあげるのかわかりませんが、たとえば朝鮮問題等をその要件に数えあげて、このASPACの軍事的色彩をより強めようという、そういう動きが出てくるのではないかと推量されるわけであります。ニクソン大統領は在野時代「フォーリン・アフェアーズ」にこのASPACに関していろいろなことを書いたことがありますが、それは過去のことで、いま直ちにアメリカ政府の態度も明確でないけれども、しかし、いずれにしても、全体としてこのASPACの軍事化という問題がいままでよりもさらに進められるのではないかというのは、私の単なる個人的な杞憂ではないと思いますが、そういう情勢を前にして、外相のこの会議に臨む基本的な態度についてひとつお伺いをしたいと思います。
#48
○国務大臣(愛知揆一君) ASPACにつきましては、ただいまおあげになりましたように、六月の九日から三日間開催することに決定されております。その準備のために常任委員会が、各国の代表者――これは東京駐在の各国の大使で原則的に構成されておりますが、すでに四回開会いたしまして、来週最終の委員会を開催いたしまして、そこで進行順序等を相談することにいたしております。したがいまして、その常任委員会が終了いたしました機会に、あらためてASPACに臨むわがほうの態度というものも、従来どおりに御説明をいたしたいと実は心組んでおったような次第でございます。そのASPACにつきましては、いま申しましたように、すでに数回の常任委員会も開いておりますが、わがほうの態度は従来と全然変わっておりませんし、また、従来憲章こそございませんけれども、ASPACに関するいろいろの発言その他等をごらんいただきましてもわかりますように、性格というものは定義づけられておる。防衛的な問題を取り上げたり、そういう機構にするというようなことは本来考えられておりませんから、その線をわがほうとしては大切に育て上げていきたい。基本線は全然変わらずに臨むはずでございますし、また、今回の総会を前にしての常任委員会の空気を見ましても、各国の間にもそうした動きがあらわれておるとは私は見ておりません。したがって、今回の総会におきましても、防衛同盟的な、あるいは防衛会議的な性格に近づくような傾向というものは否定してまいるつもりでおりますし、おそらく各国からもそうした要請などは出てこないと現在のところは見ております。ASPACはそもそも各国が自由に意見を交換し合おうということが一つの慣行になっておりますから、総会などにおきまして、たとえば国際情勢の分析、見通し等について各国の代表者の発言等にはどういうものが出てくるかはわかりませんけれども、ただいま申しましたような基本線で運営してまいりたいと思いますから、かりにもこの性格が変わるというようなことはないと思いますし、わがほうとしては、ことしは特に議長国でもございますから、十分その点は胸に入れて運営に当たっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
#49
○羽生三七君 外相のただいまの御意見で大体わかりましたが、かりにもそんな心配はないだろうとのお話でありましたが、かりにもしそういう軍事同盟的色彩が強くなってきた場合はどうかという、三木外相時代、それから椎名外相時代における私の質問――当委員会での他の委員もそうでしたが――に対して両大臣は、そのような動きは断じて拒否する、もし日本の主張がいれられなけれ、ば脱退してもかまわぬ。それまではっきり言っておるわけですね。これはお二人ともそうでした。ですから、その点はひとつ明確にしておいていただきたいと思います。それは、会議がそういう性格のものではないというお考え、また、そういう方向、そういった軍事同盟的な色彩を避けて従来の基本線を守りながら会議を進行したいというお気持ちはよくわかりますが、かりに会議の途中で、いま私が申し上げたような杞憂、心配が現実の問題として起こってきた場合どう対処されるか。その場合には前・両外相の言われたように、もしそういうものになれば日本は脱退せざるを得ない、これを拒否すると言われましたが、その前・両大臣のお考えと違いはないのかどうか、この点もお伺いしたいと思います。
#50
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま申しましたように、ASPACの運営につきましては、従来からの政府の方針を堅持してまいりたい、かように存じておりますから、ただいま御質問ございましたが、私としてはむしろ積極的にこのASPACというものが軍事的な性格を持たないようにリードしていくと、そういうふうな気持ちで運営に当たりたいと考えております。
#51
○羽生三七君 そのお考えを承ってよく了解できますが、ただ会議の際にいろいろな議論も出、また最終的な声明等も出される場合に、よほどその点配慮をされないと、沖繩返還問題にも私は影響が出てくるようなことはないかという一つの心配を持っております。特に韓国の副総理が先日佐藤総理に対して強い韓国側の意向を述べておるようです。たとえば核抜き・本土並みでは絶対困ると、それは「韓国の問題ではないが」という前置きはしておるようでありますが、しかし、強い意思表示をしておるようでありますので、これらの会議の――ASPACの問題だけに私は関していまのことは言っておるわけではございません。日本を取り巻く周辺諸国にそういう動きがあるという前提で申し上げておるわけですが、その辺を十分勘案して対処されることを希望いたします。
 それから次は、昨日も衆議院の外務委員会で沖繩返還に関する対米交渉の姿勢について質疑があったようでありますが、私ぜひこの機会に承っておきたいことは、基本的な外交方針のことではないんで、きわめて技術的な問題になるかと思うんですが、たとえば一番の問題の本質は事前協議の弾力的運用と言われておるわけですね。だから、具体的に事前協議の弾力的運用とか運営とかいうことなんですが、どういうようなことが考えられておるのか。問題の焦点がそこにしぼられてきておるのに、それは一体具体的には、たとえばどういうことが予想されるのか、どういうケースが考えられるのか。これを二、三例証をひとつあげて説明をしていただきたいと思うんです。私は私なりに考えてはおりますけれども、食い違いがあるといけないので、この辺をひとつ承りたい。
#52
○国務大臣(愛知揆一君) 実はその点でございますが、政府として「事前協議の弾力的運用」というようなことばをこの日米交渉に関連して使っていることはないわけでございまして、これが何か政府がそういうことを考えているんだというようなことが伝えられておることにつきましては、私といたしましては少しこれは先回り過ぎているんではないかというような感じがいたします。基本的な態度ではなくて、技術的なことを聞きたいんだと言っておられるのに対して、抽象的なお答えをするようで恐縮なんでありますが、今回東郷局長にこれからの交渉の進め方等についての下準備のために渡米してもらったわけでございますが、その報告から受ける私の印象といたしましても、まず必要なことは、日米双方の、たとえばアジア情勢その他に対する情勢判断、分析というようなことがむしろ非常に大事なことであって、そこから話を煮詰めていきませんと、問題の基地の態様というようなところに攻め入っていくことがむずかしいのではないか、こういうような印象も私としては受けるわけでございますから、今度の交渉はむずかしくもあり、しかも、日程的にも、御承知のように、六月から始めて最終的には十一月の末にひとつ結論づけたいというような、かなり長い期間ほんとうに話し合いをじっくり詰めていこうというかまえでそれに当たりたいと思っておりますので、そうした具体的、技術的な点がもしあるといたしましても、それは最終的な段階で真剣な討議と検討が必要ではなかろうかと考えておりますが、現在、そういう意味で、あまり先回りをし過ぎまして自縄自縛になったり、あるいはまた、肝心の国民的御期待にこたえるような結論をつけたいと思っておりますのに、それがうまく軌道に乗らなかったりすることもおそれますので、ただいま「事前協議の弾力的運用」と言われておるようなことばについてどう考えているかというお尋ねがございましても、私はいま申しましたような考え方でございますから、お答えするまだ時期ではないと、かようにお答えする以外にないわけでございます。
#53
○羽生三七君 「事前協議の弾力的運用」ということばは、外務省が使われなくても、世間の常識になっておるものですからお尋ねしたわけですが、いずれにしても、基本的な問題は、アジア情勢をどう認識するか、あるいは安保第六条の極東条項に関連して日本がどういう方針を打ち出すか等等、その辺のところに重要な関係があって、その基本線との関連で個々の具体的な問題がきまっていくという、それは外相のおっしゃるとおりだと思います。しかし、その基本線が私たちと政府とはだいぶ違うわけですが、それにしても先回りをしてこまかいことまで根掘り葉掘り聞いてということでは私必ずしもないのですね。問題の焦点がそこにしぼられてきておるという印象を受けるわけです。したがって、従来これは事前協議の対象になると考えられておったようなたとえば基地の態様のような場合、その幅を広げて、それは対象にしないとかなんとか、そういうことを「弾力的」と言っておるのかどうかですね。そういう二、三の例をあげてそれをそのとおり対米交渉でやれと言うのじゃないですよ。それで外務省がそういう「弾力的運用」ということばを使っておるわけじゃないですから、これをお尋ねするのもどうかと思うのですが、しかし、一般的にはそのことばが慣用語になっておりますから、その辺、差しつかえない範囲で、たとえばこのようなこともあるいは予想されるというようなことをひとつ。どうしても答えられぬというならかまいません。
#54
○国務大臣(愛知揆一君) たいへんごもっともなお尋ねでございますが、従来から、率直に申しまして、施政権の返還が行なわれるということになれば、特別の定めがない限りは安保条約をそのまま適用されるのが自然の姿であろうと、こう申し上げております。まあ、いまその「特別の定めがない限り」というところに非常な含みがあると御理解いただいておるかと思いますが、そして「特別の定め」という中にも、観念的に考えれば、いろいろのことも観念的には考えられると思いますが、特別の定めなき限り安保条約をそのままの姿で適用されるというふうに考えておって、その中にはいろいろのヴァリエーションも観念的にはあり得るというところまでがお答えの限界ではないかと思っております。
#55
○大和与一君 ちょっと関連して。
 この前私もそのことをお尋ねしたときに、私がお尋ねしたら、大臣は最後にこう言いましたね。アメリカと日本との合意の範囲内で自分たちはさばいている。それではその合意というものは文書か口頭か、何かあったら見せてください、こう言ったら、時間がなくてお答えいただいていないのですが、結局、いままで政府は国民に対して、あるいはわれわれの質問に対して答えていることは、やはりその合意の範囲内だというのです。そうしますと、それをはずれる場合には特別の定めが要るかもしれない、あるいは特別の定めというのは国会になにしなければいけない、こういうことで発展してくる。したがって、いまの「合意の範囲内」というのはどういうものか、はっきり文書があるならば示していいじゃないか、文書がなければ口頭でもメモでもいいからそれを教えてもらいたい、こういう質問をこの前したのですが、お答えがなかったのですがね。
#56
○国務大臣(愛知揆一君) その点は私も従来お答えいたしておるとおりでありまして、現在は条約、交換公文、共同声明あるいは了解事項、全部ありのままの姿を国会に御説明いたしておるわけでございまして、現在それ以外に合意とかなんとかいうものはございません、現在の状況におきまして。
#57
○大和与一君 もう一つ。
 そうすると、いままではこちらからお尋ねをしたときに、そのときに政府の判断で答えているだけであって、別に文書もなければメモもない、自分たちの判断でこういうふうだろうと言っておる、こういうことになるのですね。そのつどただ、いいかげんじゃないですけれども、あなたのほうで判断して言うからこれはややこしくなるのじゃないですか。そういうものはないのですか。合意の範囲内とかなんとかおっしゃったから、それは一体何だと、そうすると、いままで質疑をしたときに答えただけではなくて、もっと何かあるのじゃないですか。はっきりしたものが何かあってそれでお答えになっておるのじゃないかと思いますが、それはないのですか。
#58
○国務大臣(愛知揆一君) それはいま申しましたとおり、現在の安保条約の一連の体系の中では、御承知のもの以外には何もございません。それから、私がいまお尋ねになりました点に触れて前に申し上げたことがあるとすれば、こういうことでございます。今後におきまして交渉によって、あるものについて双方の合意点ができたといたしました場合に、それが書きもののかっこうになるとか、あるいはそれが形式が条約になる場合もありましょう、あるいは交換公文というかっこうになるものもございましょうが、その内容は、まあ、いま仮定のことであり観念的な問題でございますが、国会の御承認を得なければならないような性格のものであれば、当然国会の御審議をいただかなければならない、こういうふうに考えております。
#59
○羽生三七君 そうすると、外相が今度六月渡米される場合には、もうある程度日本側の基本的なものをもって会議に臨まれるのか、十一月総理訪米の際のためのつまり地ならしとかあるいは下打ち合わせとか、そういうことに重点があるのか、その辺はどういうふうなのかですね。来月訪米までにもうある程度のことはきまるのかどうか、大要だけは。
#60
○国務大臣(愛知揆一君) これは、率直に申しまして、交渉にいよいよ入りますわけですから、もうあらゆる点について合意といいますか、こちらの主張を基礎にする合意というものができるように、できるだけの努力はしなければならないと思っております。ただ、七月下旬に国務長官が来日いたしますし、それから、こちらから国連総会のときまた出かけますし、機会があとずっと日程的に一応組まれておりますから、しかも、わがほうといいますか、政府としては、もう国民的な理解、期待というものにこたえるという一番重い立場を持っておりますから、それを貫徹いたしますためには、せいてはいかぬ場合もあろうかと思います。そこはある程度ゆとりをもってやらせていただきたい、こう考えております。そして、総理が前にも申し上げておりますように、だんだん煮詰まってこれで最後の結論が出せそうだということになりました場合に、たとえば党首会談をお願いする、あるいはその他のいろいろの方法によって御理解を広くいただき御協力を願って最終の結末にたどりつきたい、こう考えておりますわけですから、そこまでに至りますまでの間におきましても、交渉の成否ということにかんがみなければなりませんけれども、いわゆる秘密外交をやるというようなことは考えないで、できるだけ国民的な御支援をいただくような態勢で進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
#61
○森元治郎君 大臣、東郷局長を派遣したのは、大臣の命令で派遣したんですか。案外向こうがかたいので驚いたというようなふうに見えるんですが、この点いかがでしょうか。
#62
○国務大臣(愛知揆一君) これは東郷局長もここにおりますから直接お聞き取りいただけばなおけっこうだと思いますけれども、東郷局長は政府の命令で渡米いたしましたけれども、交渉自体は私が六月の三日から始めるということに政府の方針がきまっておりますので、政府の交渉に当たる訓令を執行して内容に触れて交渉したわけでは毛頭ございません。しかし、御承知のように、アメリカ政府も、フィンといういま日本部長も滞日中でもございますし、あるいはスタンズ商務長官も明日か来日するわけでございますし、いろいろの接触はもうすでに始まっておる。できれば、わがほうといたしましても、こちらの意見ということよりも、向こうの態度が現在の時点でどのようになっているかということを知りたいのはこれは当然の私どもの願望でございますが、そういう点で東郷君に活躍してもらった結果、受けた印象は大体こういうことでございます。アメリカ政府としては、沖繩問題の処理を対日外交政策の最重点として緊急に処理をしていかなければならない問題であるという認識が固まって、そうして、私から始める交渉に際して、向こうも備えを十分に積み上げていこうという努力が展開されておる。で、その努力の過程を想像するのに、たとえば何省がこういう右の考え方、何省が左の考え方というようなことではなくて、関係の当局筋が一致して非常に熱心に検討を開始しておる。それから、返還問題をすみやかに片づけなければなるまい、その内容について日本には日本の考え方が、国会の論議等を通じて十分に日本の国民の気持ちはよく了解できる、しかし、アメリカもアメリカの立場で十分真剣に考えなければならないという点が多々あるように思われる、日本ではアメリカの壁が厚いということばがあるようだが、アメリカから見れば、日本の壁はまたえらく厚いものだと、こういう認識を持っているようでございます。したがって、予想したよりもかたいとか薄いとかいうのではなくて、そういうところを申し上げるよりは、いま申し上げましたような状況であるというふうに私は認識いたしまして、こちらとしてもますます一生懸命になって日本の国益の伸長をはからなければならない、万全な用意を広範にいたしまして、あらゆる角度からひとつ積極的にアプローチをして最終の実りをあげたいと、こういうふうな考え方でございます。したがって、東郷君の報告を聞きましても、悲観も楽観もいたしておりません。いよいよその時が来たという、こういう感じを強く持つわけでございます。こういうふうに私は考えております。
#63
○森元治郎君 大臣、その東郷さんは国務省と、ふつうアメリカの代表として国務省筋と、羽生委員に答えられたように、交渉の進め方について東郷局長が下相談をするんだと思ったが、現実、行った東郷君は兵隊さんなどにたくさん会っているようですが、だれとだれと会ったのか。これはもちろん大臣から訓令で会わしたんでしょうが、いかなる人に会ったのかを聞きたいんですがね。
#64
○国務大臣(愛知揆一君) これは別に秘密なことでも何でもございませんから、ひとつ直接当たりました東郷局長から御説明させます。
#65
○森元治郎君 東郷君がかってに動いたんじゃなくて、あなたがサル回しの綱を持って踊らしているんだ。(笑声)何も東郷君がかってにそこに行くんじゃないでしょう。だから、あなたがどこに行けと言ったか聞いているんです。
#66
○国務大臣(愛知揆一君) 何しろ二日間の滞米でございますから、これは会いたい人とあらかじめアポイントをして行ったものもありますし、それから、駐米大使のアドバイスも求めまして、そうして、こういう人に会ったらばよかろうと思う人には、この二日間でできるだけ広い範囲で会ってまいりましたから、中心は国務省でございますけれども、国務省筋の了解も得て、大統領府あるいはペンタゴン等々のしかるべき人たちに会ってまいりました。
#67
○森元治郎君 その「しかるべき人」は秘密でも何でもないと大臣おっしゃるのだから、ペンタゴンはだれという質問です、私の気持ちは。内容にわたって東郷君が交渉したのじゃないんだと大和君かだれかに御説明があったから、それにしては、会議の進め方については、まあ議題の設定とかなんとかあるでしょう。軍関係もあるけれども、それは国務省があれば何も陸軍省まで行かなくても話が済むんだと思うんですがね、向こうの政府の内部のことですから。どなたのところへ行ったのか、行かせたのか。
#68
○国務大臣(愛知揆一君) これは、もう一人田中弘人大使を派遣いたします、最近の機会に。これは、こういう重要な問題を処理いたしますためには、ことばは適当かどうか知りませんけれども、できるだけ広範囲に取材をすることがわがほうの固めを万全にする意味において私としては必要なことだと思いましたから、東郷君のみならず田中君を、大使館の陣容も手薄とは申しませんけれども、さらに補強して取材を展開したほうがよろしいと思いますから、わざわざ大使の肩書きを持っている田中君をも派遣をいたしますのは、国務省だけでなくて、できるだけ広い人たちの理解を求める、考え方を求める。あるいは今後におきまして交渉が始った後においては、こちら側の折衝をなお日本側に有利に展開するためにこういうことをやるのは私は必要な手段だと思っておるわけでございます。
 それから、だれだれに会えると言ったことによって現に会ってまいりましたのですから、当人がここにおりますから、当人から正確にお聞き取りいただきたいと私は申し上げたんでありますが、どうしても私の口から言えとおっしゃるならば、いまここで聞いて、何省はだれ何省はだれと申し上げますが、それよりも、別に私は秘密なことは何もないんですから、東郷君から申し上げさしていただきたいと思います。
#69
○森元治郎君 東郷君がそばにいるのなら、東郷君から例によって紙に書いてもらって見れば、すぐどこのだれにということが言える。どこのだれに会えということを大臣の口から言わぬというところにつまらぬ疑いを持たれてもしかたがないようなことになりますね。
 東郷さん、それでは大臣のお許しを得て、きっぱりと、だれとだれに会って何をしたのか。交渉の進め方だけなのか、内容なのか。なぜ内容かと伺うのは、国会に御報告になる前に、記者会見で東郷局長談が出ておったから、この際、とっくりと実のあるところをこの席で御報告いただきたいと思います。ペンタゴンの人にだいぶ会っておられるようだから。
#70
○政府委員(東郷文彦君) ただいまの森先生の問題にしておられる点が実はどうも私にはよくわからないのは、この六月の大臣の訪米の機会に、沖繩返還問題について少しでも話が実質的に進めることができるようにということで私は命を受けて参ったわけでございます。そういう趣旨を米国政府に、すなわち国務省に伝えました。そこで、国務省のほうで国務省以外の者に会ってくれては困るという事情があれば、これは国務省以外に会えば外交上まずいことになります。御承知のように、沖繩返還問題はおととしの日米会談からいわゆる返還という原則については了解ができております。事の性質上、国務省も大統領府も国防省も関係しているということで、わがほうから、たとえば特にジョンソン次官というような人には会いたいということも申し入れましたが、そのわがほうの趣旨に応じまして、これはもっぱら国務省のほうからいろいろ気をつかいまして、二日間の短時日でございましたけれども、いろいろ約束をむしろ国務省がつくったようなわけでございます。具体的にはこれも東京の各紙が詳細書いてございますので先生も御承知と思いますが、国務省はジョンソン次官、グリーン次官補、ブラウン次官補代理、フィン日本部長、大統領府ではキッシンジャー特別補佐官、スナイダー、ハルペリン両補佐官でございます。国防省では国防次官それから陸軍長官、こういう人たちに会ったわけでございます。
#71
○森元治郎君 そうおっしゃってくれれば大体わかるんですがね。何かこう自分では言わないで、使いに行った者に会った人の名前を言わせようとするから、何でそうなるかなと疑ったわけなんです。そこで大臣に、先ほど大臣御答弁の中に、東郷君の報告を聞いての私の印象では、必要なことはアジアの情勢の判断が大事である、ここから煮詰めていかなければならないということを感じたと、こういうふうなお話なんですね。私も外から見ておって、どうもわれわれの攻撃に幻惑されて、事前協議だのこまかい交換公文だのということに追い回されて大局を忘れているんですね。いまの大臣の印象は大事なんですよ。アジアの情勢の判断のしかたで、アメリカ式でいくならば、とてもじゃないが沖繩は返してもらえないかもしらぬ。われわれあるいは進んだ人々の間の考えならば、これを返させる情勢の判断もあるでしょう。こういうことを大きく対米、世界、アジアに向かって、あるいは国内に向かって世論を喚起することによって問題を前進させられると思うんだが、見ておりますと、こまかいことから入っていって、久住君の基地研究会などの報告がそのまま国会の答弁になるように、こまかいことが多く出ていることは逆だと思うんですね。大臣が東郷さんの報告聞かれたように、アジア情勢、これを大きく、アメリカがへばりつこうとしておることは違う、朝鮮の情勢はわれわれの見るところではあなたの心配するほどではない、こういうことを向こうに大きく打ちつける工作というものがなされていないという感じがするんです。大臣、これは鞭撻なんですよ。悪口だけじゃない。どうお考えになりますか。
#72
○国務大臣(愛知揆一君) 私はいまの森委員のお考え方をかねがね私もひそかに御同感を持ち、また敬意を表しておったわけでございますが、具体的な問題に焦点が国内的にはしぼられております。これは非常に大事なことだと思いますが、しかし、国民的な御期待に沿うのには、やはり相手のほうにもどうしてそういうことが合意として成り立ってきつつあるのかというこの根源が非常に大事なことで、この認識を求めるということは私は大事なことだと思いまするし、また、場合によりましては、先方の考え方の中に私は大いに聞くべきところもあり得るかと思います。そういう点の真剣な討議というものがまず前提において必要である。かねがね私もそういうふうに考えておりましたが、特に先ほど率直に申しましたように、やはりそうだなという考え方を強くした、こういうことを率直に申し上げたわけです。
#73
○森元治郎君 とてもこういう大問題はこまかいところから入っていったらにっちもさっちもいかない。大きな原則で国民世論あるいは動向、科学技術の進歩、向こうの幹部に会ってこれを確実に押え込めるだけの戦略的な見識、政治的な見通しというものをこちらも確立しなければ、ぐんぐん押しまくられてたいへんなことになると思います。それ以上は進みませんが、そこで、これに関連して一つ伺いたいのは、最近、海軍力ということば――海の上の自衛力、海の上の力というものが新聞紙上に大きく出る。日英協議に行かれた際に、イギリスは大体シンガポールから撤退するような日程がこれから始まるのですが、マラッカ海峡は石油の輸送その他で日本にとって大事だろうというような話も含めて、東南アジア、インド洋の入り口の海上の力、何か日本に対する安全保障上の期待みたいなものが話題になったか。ということは、日本の防衛庁でも、沖繩返還後は、形はわかりませんが、返還後は大きな海上兵力が要るのだということを新聞も書き、現に第三次防衛計画も繰り上げ手直しというようなことも出ておりますが、こういう点についてどんなふうに話があったのかどうか伺います。
#74
○国務大臣(愛知揆一君) 問題が二つあるように思いますが、沖繩自身の返還の問題についてまず申しますならば、これは沖繩においてやはり本土並みの自衛ということが、施政権の返還を前提にして考えるならば、これは当然の責務ではないかという認識に立って、これは防衛庁でも現在鋭意いろいろな案を取りまとめ検討しているはずでございます。どういう構想であるかというようなことについては、もう少し固まりますにつれて御説明もあろうかと思います。
 それからイギリスとの関係でございますが、これはイギリスは一九七一年に徹退するということがもう既定の国策になっておりますから、その後において広範なアジア地域というか中近東を含めて、その後の情勢がどうなるかということについてはいろいろの懸念や心配も持っておるようであります。撤退はするけれども、そのあとが紛争が起こらないで、激化しない、安定した状況にどうやったらいいだろうかということについてはいろいろと懸念もしておるようであります。そういう点は話にももちろん出ました。同時に、日本に対してどういう期待を持つかということについては、これはこちら側の自主的な態勢もありますから、日本国の平和憲法によりまして、先ほども羽生委員からお話がございましたが、要するに、軍事的な協力というのは日本としてはこれは絶対にできないし、すべきでない。これを基礎にして、やはりイギリスといたしましても、もう少し広範な地域に対して日本の経済的な援助協力というものを考えてもらいたいというのがイギリスとしての基本線であると私は理解いたしました。これに対してもわがほうとしては、最近の経済力の伸びは、客観的な事実でございますけれども、そうかといって、そう広範囲に大きな期待を急速に持たれてもこれはとてもわれわれの力の及ばないところでありますから、日本の実力と申しますか、それから、今後の見通し等につきましては、できるだけ詳細に説明もし、あとう限りの協力は考えますけれども、これはやはり関係各国とも協力しながら問題を解決していかなければならないという態度でこちらの態度はあるわけです。そこで、たとえば、イギリスの考え方としては、一方においては豪州、ニュージーランドというようなところとも――これは先進国の部類に入るかと思いますけれども――十分今後とも協力をし合って、そして太平洋・アジア諸国の安定ということに対してこの上とも心を配ってほしいというのがイギリス側の期待であり態度であると、こういうふうに申し上げればよろしいかと思います。
#75
○森元治郎君 小さい問題へ入りますが、これは、新聞報道では、韓国の朴という副総理がニクソン大統領に会ったときに、日米の沖繩返還安保交渉――沖繩返還を含めた安保の交渉についておまえのほうにインフォームする、韓国に知らしてあげるよと、こういうことを言ったと。それはインフォームであって、いわゆるコンサルト――協議するではないんだということが出ておりました。これはワシントンの電報であったと思います。そうして、きのうかおととい佐藤総理に会って、やはり日米交渉には深い関心を持って注視しておると。こうなりますと、インフォームすると大統領の口から言ったとすれば、日本がニクソンと話するとそのまま韓国、台湾、フィリピンなどに知らされるものなのか。どういう程度のインフォームなのか。一対一の交渉ではなくて一対一プラス不特定多数。そして、インフォームされたから、なるほどそうですがと引っ込んでいるわけはない。ニクソンは相談するつもりはなくても、知らされて、完全撤退しちまうんだと、それじゃたいへんだよ、そんなことしてもらっちゃ困るとニクソンにねじ込む。向こうの話がもつれる。日本との交渉は停滞する。ややこしくなるんですが、こういうことについて、私はたいへん問題を混乱におとしいれると思うので、インフォームというようなことも、よく話し合って軽々に決断をさせないようにすべきではないかと思うがいかがですか。
#76
○国務大臣(愛知揆一君) この問題につきましては、これも私は前から申しておりますが、沖繩問題については、日本の立場から言えば、これは日米間の交渉問題でございますから、したがって、けじめははっきりして守らなければならない。日本としては交渉の相手はアメリカでございます。したがって、近隣の友好諸国が関心を持つのも自然の姿かとは思いますけれども、しかし、交渉としてはこれは日米間の交渉でございまして、日本の主体的な立場というものは堅持してアメリカを相手にして交渉をすると、これを貫いてまいるべきであると思います。
#77
○森元治郎君 日本政府として、韓国からどうなんだと言われれば、佐藤総理の好きなケース・バイ・ケースで知らせるのか、あるいはほかの方法でやるのか、返事しないのか。どういうふうにします、日本政府は。
#78
○国務大臣(愛知揆一君) 交渉は、いま申しましたように、あくまで日米間の交渉でございます。この線を貫くべきであると思います。
#79
○森元治郎君 日本は、韓国から質問があっても、交渉の、ことに経過その他を国民に伝える前に一々外国に伝え、伝えるという手段を通じて相談をするようなこと、これは厳にやるべきでないと思うのですが、どうですか。
#80
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま私が繰り返し申し上げておりますのは、考え方としてはそういう線になると思います。
#81
○森元治郎君 それじゃ、もう一問で終わりますが、もう一問は、これも新聞に載ったライシャワーさんの話だったと思うのですが、この問題は、安保条約の自動延長、あるいは継続とか、いろいろ表現があります。政府は自動延長というのはきらいのようですが、いずれにせよ、続けていくのだという態度。現行条約どおりならば、すぐ一年後に、いやならやめる、やめてもいいという規定が残っているわけですね。これについて政府はまだ国会にも外にも、お忙しくて一向その先のことは公表というか、腹のうちも見せないのですが、もう対米交渉に臨むにあたっては、大きな腹はできていると思うのですね。延長したと、延長して国民の皆さまがそんなにきらいならば、一年でやめますという手もあるし、黙っていて無限という手もあるだろう。いろいろあるのですね。これについての政府の方針はあるのかないのか。ただきょうの段階は延ばせばいいのだ、来年六月二十三日を越せばいいのだということなのか。ということは、ライシャワーさん――あれほど理解が深いライシャワー元大使でさえ、安保条約は必要だと。理由は、その他のアメリカの多くの評論家が指摘するように、日本のナショナリズムというものは非常に強くなってきて、しかも、経済力も世界有数の力を持っておる。うっちゃっておけば大きな軍国主義的勢力になりかねないから、日本の軍国主義化、ナショナリズム化ショービニストのような気違い愛国者日本にしないために安保条約は必要なんだという新しい角度の安保条約必要論を打ち出してきていることは、これは注目せにやならぬと思うのですね。
 この二点を伺います。
#82
○国務大臣(愛知揆一君) ライシャワー氏の発言というものは私も新聞で読みました。なかなかこれは変わったまた見方だなと、率直に言って、そういう感じを受けました。
 それから、安保条約の延長について大きな腹はあるだろうというお話ですが、大きな腹はこの体制を続けたいという大きな腹なんでございますが、条約的にどういうかっこうでいわゆる自動継続がいいか、そのほかの方法があるか。これもまた考えれば観念的にはいろいろなヴァリエーションがあるのじゃないかと思いますけれども、続けるという大きな腹を堅持しているだけでございまして、御承知のように、自由民主党の大多数の意見というのはいわゆる自動継続が適当でないかというふうになっておりますが、政府としての公式の態度はまだきめておりません。
#83
○森元治郎君 それから第二点の、ライシャワーさんの、安保条約によって日本軍国主義化を押えるためにアメリカ軍が駐留し、基地を持ち、日本全国の領土に根をおろしていく必要があるのだということはどうお考えでしょう。
#84
○国務大臣(愛知揆一君) これは申し上げたつもりですが、まあ私の率直なコメントは、なかなかおもしろい変わった見方だなと、こう思いましたのであって、それ以上はまだ勉強いたしておりません。
#85
○森元治郎君 それは、日本をあのくらい理解しているようでも、やはり日本の将来というものに対する不信といいますか、全面的信頼というに至っていないということは、多くのアメリカ人もまたそのような考えを持っているんじゃないかというふうな判断もするんですね。これは注目すべき発言だと思うんです。
 よろしゅうございます。
#86
○加藤シヅエ君 私は、外務大臣がせんだって英国においでになりましたその時期と前後いたしまして、日本において動物、特に飼い犬がたいへん虐待されているということが、英国の六百二十万部も発行部数がある「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」というのにだいぶ前に出て、さらに最近四月十三日付の「ザ・ピープル」という大衆新聞、日曜大衆紙に――これは五百五十三万部だそうでございますが、この新聞では、日本では犬が虐待されているから日本に英国の犬を輸出するなというようなことから始まって、たいへんなキャンペーンが始まっている。これに対しまして湯川英国大使のもとにその当時すでに五十通くらいのいろいろの英国人からの手紙が参っておったということが、外務省のほうに大使から報道されております。これに対して外務省は返事をお出しになっていらっしゃるようでございますが、非常に簡単な返事をなさっていらっしゃる。で、外務大臣はそのことを向こうにおいでになる前にお聞きになっていらっしゃったのでございましょうか。それから、向こうの新聞の報道によりますと、記者会見のときに、この話がある記者によって出てきたということも出ておりますが、外務大臣は向こうへおいでになる前に、そのことについてお聞きになっていらっしゃったかどうかという点と、それから、向こうの記者会見でどのような質問が出ましてどのようにお答えになったか、まず、それから承りたいと思います。
#87
○国務大臣(愛知揆一君) 先般イギリスの定期協議に出席いたしますその前に、犬の虐待問題というものがイギリスで取り上げられているということは承知して参りました。
 それから、その次のお尋ねでございますが、お答えの前に関連して申し上げますが、この定期協議もずいぶん実のあるがっちりした日程で、ずいぶん多くの問題が取り上げられましたので、イギリス側からあるいはこの問題にも触れられるかなという心配を、率直に申しまして、持って臨みましたが、公式あるいは非公式の場におきましても、本件はイギリス政府側からは何もございませんでしたので、自然こちらも公式に発言することはございませんでした。
 それから、新聞記者会見は非常に大ぜいの人数でございまして、やっぱりいろいろの問題について質問ございましたが、この問題については私がクロスランド商相とやはり個別会談いたしまして、それに関連した質問として、輸出の問題の一つとして犬の問題をイギリスの商工大臣が何かあなたに発言はしませんでしたかと、こういう会見での質問がございましたから、それは事実何もなかったわけですから、何もありませんでしたと答えました。引き続いて、犬の日本における虐待問題が新聞で取り上げられているが、これに対してどういう感想をお持ちですかという趣旨の質問がございましたから、私は、日本人というのは、犬に限らず動物の愛護ということについては、国民感情として、決してよその国に劣らないと思っております。同時に、こういう問題が最も親善関係にあるイギリスにおいて取り上げられ報道されているということは非常に私は残念に思うので、事実をひとつはっきりこうこういう事情であるということを御説明をしたいと思っておりますと、それだけでこの応答は終わったわけでございます。
 それから、さらに私の意見を、それはイギリスでのあれではございませんけれども、つけ加えて申し上げますならば、この運動――運動といいますか――動きが起こりました背景や経過は二つの系統があるように思われるのであります。一つは、やはり犬のイギリスから日本への輸入、あるいは日本から他国に対する輸出、こういうことに関連する問題があるように思われます。それからもう一つは、きわめて、何といいますか、動物愛護という人道的というか、愛情のこもった純粋な気持ちからの運動と、両方あるように私には思われるのでありますが、いずれにいたしましても、私は相当の誤解もあるように思いますから、誤解を解いて実情をイギリスの愛犬家の人たちに知ってもらうということが非常に大事ではないかと思います。そこで、駐英大使館に対しましても、私から、投書などに対してはできるだけ丁寧に、とにかく日本における実情について説明をした返事を個別にまず出すことが必要である。これはすでにやっておりますということでありましたが、さらに努力を続けるように申してまいりました。それから、まだ詳しくこちらの事情は調べておりませんけれども、この誤解を解いたり、あるいは誤解でない面がかりにありとするならば、それに対する対策というものも考えるべきではなかろうかと思っております。
#88
○加藤シヅエ君 外務大臣の記者会見では、非常にほかの問題も山積しておるし、たくさんの記者が来ておるので、特に日本における犬の虐待の質問が簡単に終わり、また新聞の報道によりますと、大臣は徳川時代の犬公方の話なんかなさったんで、非常に英国人はユーモアを好むので、そのお答えはたいへんおじょうずであったと思います。それでそれ以上追及されなかったのは大臣として非常におしあわせだったと思うんでございますが、実情をよく報告して誤解を解くというおことばがございましたが、その実情なるものは、これは日本ではたいへんなことなんでございます。その実情を、英国からはたびたび専門家が日本に来て、これを視察して、詳しくこれを報道しております。その報告は、単に犬をかわいがっている人たちであるということではなくて、これは人道主義的な立場から生命を大切にする国であるかどうかという観点から重視されるわけでございます。英国の動物愛護協会などは女王さまが総裁でいらっしゃって百二十年の歴史を持っておるというような国でございまして、その取り扱いなどについても十分専門的なありとあらゆる手を尽くしているわけでございます。そういうような協会の運動が英国にはいっぱいあるばかりでなく、オランダ、スイス、そのほかのヨーロッパの国にもいっぱいございます。またアメリカでもございまして、アメリカのある州などでは非常にきびしい法律を持っておりまして、犬を虐待するというようなことが起こりましたら、それこそ立ち入り検査をも許されているというようなことで、虐待した者は非常な厳罰を加えられるというような法律もできていて、そうしてそういう法律ができているということを一般の人は別にふしぎとも思わない。それはあたりまえのことだ、人間として命を大切にする、したがって、ほかの生きものの命をも大切にするのがこれが人道的な国家であるというふうに理解されているわけでございます。で、大臣の御認識はどの程度であるか私わかりませんけれども、お察しするところ、まあ、表面的にいい犬をかわいがっているというような意味で動物をかわいがっているというふうに御理解なさっているのかもしれません。英国から輸出して、日本でその犬を飼って、いま非常にそれがブームと言われるくらいはやっておりますが、そういうような犬は純粋な犬であり高価なものであって、その犬を飼っていらっしゃるような方はそれはかわいがるのはあたりまえでございますけれども、問題は、日本には動物に関する愛護のあるいは管理する法律がないために、野犬というようなものが非常に発生する。また、捨てネコというようなものも非常に多くて、その処置を規制する法律がないために、その扱い方が非常に残虐である。いまお手元に資料を差し上げてございますが、それが英文で書かれて写真入りで、ある大学でどんなふうに実験された犬が扱われているというその写真をごらんになっただけでも、これがわれわれ日本人の間にこういうことがあるかと思ってお驚きになるような全くひどい扱いでございます。これはもういまに始まったことでなくて、何回かそれが問題になっておりますが、大学の実験動物の場合にはどうしてこういうことをなさるか、やめてほしいというようなことが福祉協会あたりからしばしば行なわれておりますが、それに対してはいつでも予算がないということで片づけられておりまして、いまだにその残虐な姿が継続されているわけでございます。そういうことが全部そうやって向こうに報道されているのでございますから、大臣がもっと詳しく追及されたら、それはもうえらい目におあいになるところだったので、それ以上言われなくてたいへんよかったと、幸運だったと思うわけでございますが、私がさらに伺いたいのは、ちょっとその前に申し上げますが、日本の犬がこんなふうに扱われているということに対しての対処の方法は、動物愛護の法律を一日も早く成立させる以外に手はないわけでございます。それはまあ、いま日本の運動家の方々が一生懸命やって今国会にもぜひ超党派的な議員立法で出したいという運動が進められているわけでございますから、それをどうぞお心置きくださって、今後英国からそういうことを言われたときには、それはやはりお答えの中に入れていただかなければならないわけです。ただ、私が問題にいたしたいのは、英国で特にこういうようなふうにたびたびキャンペーンのような形でこういうことが報道される。英国の人々の犬やこういう生きもの、鳥でも、生きものの生命を大切にするという感情は徹底しておりまして、一部の人がかわいがっているだけでなくて、あらゆる場所で保護されている。こういうことが徹底しております。それを日本ではいたさないで、神戸の六甲山なんかに行ったらたいへんな捨て犬、野犬の状態がどうであるとか、それから、ことに七〇年の万国博覧会があるというやさきに、大阪それから神戸、西宮、こういうところの保健所、犬の抑留所で野犬をたくさん集めてきて、それを処理する方法がいかに野蛮であるかということは、これは現実の問題として、そこへ行けばだれでも事実を見るわけですから、これを何とも言いわけすることができないような状態で、博覧会に来た人がそういうことを知りましたら、一方で幾らうまい宣伝をしても、やはり心の中で日本人はずいぶん残虐だとか野蛮だとかいう印象が強く残るわけだと私は心配いたします。私が特に申し上げたいのは、戦後十年くらい、英国においては、戦争中の捕虜の扱い方が非常に残虐であったというので、日本人に対する憎しみ、日本人は残虐性が強いというようなことの憎しみが十年間ぐらいはどうも強く残っていたと思うのです。それが藤山さんが外務大臣のときなんか、あちらにその時期においでになりましてずいぶんえらい目におあいになったことも私承知いたしております。いまはそいうことは非常になくなって、日本の経済の発展に対して敬意を表しておる。ところが、いまはその次の時期に来て、日本は金だけうまくもうけるエコノミック・アニマルであるというようなところから、こういうような残虐性、動物に対する野蛮性というようなものが少しも直ってないじゃないかというようなことを通じて、日本に対する軽べつとか反感とか敵意とか、そういうようなものが一部の英国人の心の中に広がっていくのじゃないか。で、それは英国人だけでなくて、ほかのヨーロッパの国の中にも広がっていくのじゃないか。これは非常に私はおそるべきことだと思うのでございますが、外務大臣としてはそういうようなことをどんなふうに見ていらっしゃるか、知らしていただきたいと思います。
#89
○国務大臣(愛知揆一君) 実はまだ帰りまして早早で、そこまで手が回らないのでありますけれども、実は厚生大臣も心配いたしまして、どういうことであったかという、何といいますか、照会もありまして、まだ厚生大臣とも実は相談する時間がございませんですが、今回のこういうことを機にいたしまして、私自身がそういう体験をはだに触れていたしましたので、ひとつ積極的に内閣の中にももちろんでございますが、ひとつ御協力いただきまして、近代国家らしき  私はやはり一種のシェイムであると思うのですね、率直に申しまして。善処いたしたいと思います。
#90
○加藤シヅエ君 英国人の排日感情が起こる下地があるというような心配に対してはどんなふうにごらんになりましたか。
#91
○国務大臣(愛知揆一君) これも率直に申しまして、こういうことが何かそういうことに関連して発展するおそれがあるかどうか、あるいはまたすでにそういう、何といいましょうか、アンダー・カレントがあるのでこういう動きがいつもあるのか、その辺のところも洞察していかなければなるまいと思いますけれども、私も藤山外相当時のこともよく心得ておるつもりでございますが、今回の印象といたしましては、政府筋も、あるいはそのほかの場所でも、いまの新聞記者会見のときのあれ以外には直接口に出されなかったけれども、これはまたイギリスらしいやり方ではなかったかと思いますので、私は公式にそういう苦情や抗議を聞かなかったけれども、それ以上に日本側としてはやはり心していかなければならない問題じゃなかろうかと存じます。いまのところ、日本人自身、人間としての日本人に対する排日、侮日的な動きはもう全部解消されたというか、非常に積極的な日本人に対する親善的気持ちというものが盛り上がってきているというふうに私は観察いたしました。これは政治的に言えば、労働党内閣ウィルソン総理以下の私どもに対する態度、あるいは保守党の方々の態度、それから、それ以外の王室の関係の方々、こういう方々の対日感情というものは非常によろしいので、九月の末にはブリティッシュ・ウイークが東京を中心に行なわれますが、これに非常なイギリス側としては期待をかけておるようでございますから、十分その好意にこたえなければならぬ、こう思っております。
#92
○加藤シヅエ君 では、どうぞ外務大臣、この機会に日本がほんとうに人道主義的な立場に立つ文化国家であるという、そういう立場をさらにわかってもらえるように御努力くださることをお願いして質問を終わります。
#93
○西村関一君 私は、時間がありませんから簡単にお尋ねをいたします。簡単に御答弁を願いたいと思う。
 それはベトナム問題。ベトナムの和平交渉がパリで行なわれており、現在非常に微妙な段階に来ておるということは大臣も御承知のとおりだと思います。私も先般IPUの会議に出ましたみぎりに、あらかじめ予定を組んでおきまして、パリに参りまして和平会談の当事者国の代表団と非公式に会見を試みたのであります。ベトナム共和国――南ベトナムの国会議員と知り合いがございまして、これがパリにおるというので、会う予定をいたしておりましたが、これは会えませんでした。一日早く向こうはサイゴンに帰りまして会えませんでした。また、解放戦線の側の代表団とも会うつもりをいたしておりましたが、これも日程の都合で会えなかったのであります。幸いと申しますか、ベトナム民主共和国――北ベトナムの代表団の副団長のハ・バン・ラウ氏と会見をいたしました。非常に多忙の時間をさいてくれまして、約一時間ばかり会談をいたしました。その内容につきましてはきょうここで申し上げることができませんけれども、そういう接触ができたということを私は私なりに喜んでおるのでございます。
 そこでお伺いいたしたい点は、このベトナム和平会談の成功のために、日本政府としては、当事国ではございませんから、表向いた形にあらわれた努力をするということができないといたしましても、何らかの働きかけを、アジアの大国を自認する日本政府としては、アジアの重大問題であるベトナム問題の解決に対して、ここまでパリ会談が進められておるときに何らかの手を打つというお考えがないかどうか。たとえば、パリにある日本の大使館は総力をあげて情報の収集であるとかその他努力をしておられる点は認めます。また、そのための担当の参事官がおられることも承知いたしております。しかし、なかなか手一ぱいに仕事をかかえておるし、十分な情報をキャッチするということもむずかしいように私は感じたのでございます。当事者国ではございませんけれども、非常に重大な関心があるわけでございます。ただアメリカ側の情報だけにたよらないで、独自な立場でこれら情報を正しく把握して、これが解決に導くために側面的な努力を払い、特にアメリカ側に対してもアドバイスをするし、あるいはサイゴン政府あるいはハノイ政府あるいは解放戦線側に対しても、後者は日本政府としては直接のルートがございませんけれども、何らかの方法をもって解決の努力をするということが私は望ましいと思うのでございます。これは北も南もあるいは解放戦線を通じて、ベトナムの問題はベトナム人の手にまかしてもらいたいという国民的感情が流れておることは御承知のとおりであります。そういう点に対して、外務大臣、大局的な立場からどういうお考えでございますか、まずお伺いをいたしたい。
#94
○国務大臣(愛知揆一君) 簡単にということでございますから、なるべく簡単に申し上げたいと思いますが、おそらく、これはわれわれだけではなくて全世界の人たちがこの会談が一日もすみやかに結実することを期待していると思いますので、私どもとしても、まず第一は情報の収集であると心得ております。で、過般私も、ロンドンへ参りましたときも、時間がございませんでしたので、松井大使にロンドンに来てもらいまして、若干の時間、いろいろの話も直接私も報告をしてもらったわけでございますが、先ほどお述べになりましたように、ずいぶん情報収集等に努力をしておりますが、なかなかこれはある限度以上には出ておりません。それから、イギリス政府との会談のときにも、これは当然やはり見通し等について話も出ました。やはり詳細に申し上げることもちょっとお許しをいただきたいと思いますが、各国それぞれに関心を深くしておりますので、もし日本としてもまず正確な情報をこの上とも掌握しておく一方、求められればお手伝いをするのにやぶさかでない、こういうふうな態度でおるわけでございますが、ただいまもお話がございましたが、また、直接当事者と御接触もお持ちのようなところからも何か示唆がおありになればいろいろとまたお教えをいただきたいと思います。
#95
○西村関一君 こういう公の委員会の席上で申し上げることをはばかる点もございますから、また別の機会に、大臣に個人的にお会いをしてもよろしいと思いますが、私の伺いたい点は、情報の収集に努力をしておられる、努力をしておられるが、私の見たところ、パリにおける日本大使館の陣容は手一ぱいである。松井大使以下非常に努力をしておられる点は私もよくわかりましたのですけれども、だから、特別な大使、公使をそのためにパリに派遣するというようなお考えはないか。それほど情報の収集が必要だとお考えにならないのか。また、その他社会主義国における大使を通じて、あるいはハノイ政府なり解放戦線側の代表部なり大使館があるところもたくさんございますから、そういう方面から情報をお集めになっておられると思いますけれども、私はパリ会談に対する特別な任務を帯びた外交官を松井大使の補佐として派遣をなさるというようなお考えはないのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
#96
○国務大臣(愛知揆一君) 率直に申しまして、ただいままでのところでは、そこまでは実は考えておりませんでしたが、建設的な御意見を承りましたので、よく検討いたしたいと思います。
#97
○西村関一君 この点につきましては、私は日を改めていろいろお伺いいたしたい点がございますが、もう一点だけお伺いして、約束の時間もありませんから、終わりたいと思いますが、それは和平交渉、和平会談の進捗しておる今日におきまして、われわれはその成功を願っておりますが、その事のいかんにかかわらず、戦禍にあえいでおるところの南北ベトナムの回復のために、あるいはベトナムの人民の福祉のために、あるいは産業の開発のために、何らかの今後の処置を世界としては考えなければならない。もちろん、それはベトナム自体の問題でございますけれども、これはただ単に日本と外交交渉のあるところのベトナム共和国との問題だけでなしに、インドシナ半島諸国全体、特に十七度線を境としておりますところの、いま南北に分断されておりますところのベトナム地域に対して、政府としては今後の、ポスト・ベトナムということがいわれますけれども、そういうことをいま考える段階じゃないと思いますが、しかし、今後の腹がまえとしては、私はただ単にサイゴン政府側に対する配慮だけじゃなしに、全体に対する配慮が必要じゃないかと思います。その点だけをもう一点お伺いしておきたいと思います。
#98
○国務大臣(愛知揆一君) パリ会談の結末いかんにもこれはよることであろうと思いますけれども、人道的な立場に立っての復旧ということにつきましては、インドシナ半島全体を対象にして考えねばなるまいということは前々から政府として考えておるところでございますので、ただいまのところは今年度の予算で議決していただきました分にも若干入っておりますけれども、これはいま目前のところでございますし、これは南のほうでありますことは当然でございます。ポスト・ベトナムになりましたら、相当柔軟性を持って考えていかなければならない。三木外務大臣のときにも復興基金という構想を出しておりますし、ああいう線を盛り上げてまいりたい、こういうふうに考えております。
#99
○石原慎太郎君 社会党の委員が御質問なさいました質問に関連いたしまして、二つだけ御質問させていただきます。
 一つは、イギリスの外相との会談の内容についてでございますけれども、イギリスが七一年にスエズ等から撤兵し、ポスト・ベトナムのあとのデザートなアジアというもの、さっき大臣は紛争ということばを使いましたが、紛争が起こるかもしれない、あるいはそのあとのアジアの経営というものに関して、会談のときにイギリスの外相がどのような期待、どのような懸念、どのような予測をされましたか。できれば詳しくお伺いしたいと思います。
#100
○国務大臣(愛知揆一君) 現ウィルソン内閣としては、一九七一年の撤退ということは既定方針であって、これは実行するということが前提で、しかし、それだけに情勢の将来の展開についてはやはり非常な懸念を持っておる。そこで、先ほど申しましたが、特に日本に対する期待としては、まあ豪州、ニョージーランドその他のところと、それからさらに現在日本としてはいろいろの機構で東南アジア諸国と協力関係にあるわけですが、そういうところのお互いの協力関係をますます強くしていただいて、そして日本としてはできる限りの経済協力を展開してもらって、そして民生の安定ということに総合的な貢献をしていただくことが基本的な一番大きな期待である。これが一言にして申しましてのイギリス側の期待であり、希望であると思います。これに対しましてわがほうとしては、先ほど申しましたように、これは日本の主体的な立場から言っても、実は前々から言っておりますように、一九七〇年代が発展途上国の十年間の発展の時期であると、そういう発想からいっても、われわれとしてはGNPの伸び方に即応して、かつ、比率もできればだんだんに上げて協力体制を敷く。要は、相当積極的に前向きに考え、かつ立案しつつある。問題は、平和的で効果的で合理的な援助体制、受け入れ体制というものが必要である。たとえばそれらの国の中には、旧債の償還に追われているところも非常にあるわけです。たとえばインドシナもインドもそうだと思います。そういう面にも着目してこれからも合理的建設的にやっていきたいのだということをわれわれの態度としては表明いたしました。今後密接な協力をしてそういう点について成果があるようにほんとうに期待いたしますというのが先方の態度であったように思います。
#101
○石原慎太郎君 イギリスの期待については私も想像できると思いますが、いまおっしゃいました、非常にイギリスの外相が懸念しておられる外交的な懸念の具体的な御説明をもう少しお聞きしたいと思います。
#102
○国務大臣(愛知揆一君) やはり一つは、中国本土の政策がこれからどういうふうに変わるであろうか。それから、中共を取り巻く周辺の諸国がやはり脅威感を持っている。持っているということは、やはり現実の脅威というものが可能性の問題になってきますけれども、それをどういうふうに判断したらいいだろうかということについていろいろの角度からの検討を相互にいたしまして、そういう点がやはり懸念の焦点ではないかと思います。そのほか、イギリスといたしましては、アラブ、イスラエルの紛争については、これはほんとうにわれわれよりももっと切実な問題だと思います。こういう点においても国際紛争は現にあるわけでございますから、こういう問題が今後さらに激化しないように、現にある紛争がおさまるように、また、将来大きな国は他国に脅威を与えないようにどうやったらできるだろうか、こういう点が、きわめて常識的だと思いますけれども、そういうことが懸念の対象ということでございます。
#103
○石原慎太郎君 その懸念についてのイギリス独特のと申しますか、予測というものは外相は披瀝されませんでしたでしょうか、イギリスの外相は。
#104
○国務大臣(愛知揆一君) なかなか微妙な観察もございますので、あまり詳しくも申し上げられませんけれども、おおよそ御想像がつくかと思われるような点でありますが、それはやはり一口に言えば、相当周到な情勢の分析というものをほんとうに真剣にやっておるということは明らかでございます。
#105
○石原慎太郎君 もう一つの問題をお聞きしますが、ASPACの性格についてでございますけれども、これは当初どのような趣旨をうたったにせよ、たとえば北鮮の米偵察機撃墜というような非常に潜在していた危機が顕在化して出てくるという条件の中で、ASPACのような重要な意味を持つ会議が、そこで討論される問題の中から防衛の問題を省くということは私は妥当でないと思います。また、それが一時的なものであるにせよ、恒久的なものであるにせよ、こういった会議から防衛的な性格というものを除くということは、私は画竜点睛を欠くというか、本来の意味がなくなるという気がいたしますし、三木外務大臣が、そういう性格を付与されたら日本は脱退するということを言われたそうでありますけれども、私は非常に軽率といいますか、だれのための発言かよくわかりませんが、特に社会党の皆さんのような、私から言わせると、無謀な防衛論に対する思惑というか思やりというか、何のための発言か、何のための歯どめかということは私理解できませんが、これから先、やはりアジアの緊張というものがなくなるにこしたことはございませんけれども、顕在し、あるいは潜在しているとき、場合によってはASPACというものが防衛という問題を取り上げるという性格を根本的にいなむということは、私には非常に不当であるような気がいたしますし、そういう発言自体が、国民に対して外交という問題の正当な啓蒙というものを非常に阻害しているという気がいたしますけれども、そういった点、いかがお考えでしょうか。
#106
○国務大臣(愛知揆一君) これはそういう御意見も私あることは理解できるのですけれども、ASPACというのは、これは、できましたときの沿革、それから先ほど私申しましたように、常任委員会の空気、あるいは情勢の意見交換にいたしましても、やはり国の数が相当多うございますから、その国々によってやはり相当の意見が違うこともあり得るわけですが、それを最大公約数で、平和目的に限定して、そして話し合いをし、建設的なプロジェクトを出し合って、そしていいものは相互の協力で成果あらしめるようにしようというので、経済的、文化的、あるいはその他のプロジェクトというようなものが中心になっておりますから、これはやっぱりこの性格を大事に育て上げるのは、私の考え方から申しましても、私のいわゆる平和への戦いの一つの機構だと思うんです。で、御承知のように、現在でもアジア、あるいけ大洋州等を含んでいろいろの国際団体といいますか、というようなものがございまするので、日本はみずからはミリタリーな協力はしない、できたいということで、その他の問題についてはまた別な機構もそれらの国の人は考えるかもしれませんが、私といたしましては、このASPACというものは、これはこの性格でぜひひとつ育て上げていきたい。まだ生まれましてからそう年もたっておりませんし、せっかくこの共通の雰囲気と精神がありますから、それを育て上げていくということに専念することが、ASPACに対する態度として最も私は望ましいことであろうと、かように考えておるわけでございます。
#107
○石原慎太郎君 それはあくまでも大臣の印象というものをお聞きするわけですが、いままでのASPACの経過というものを見られまして、参加している日本以外の国が、このASPACの中に防衛的な性格というものを取り入れようとしている意向があるかどうかということはいかがお考えですか。
#108
○国務大臣(愛知揆一君) これは先ほども羽生委員の質問にお答えしたとおりでございまして、私が就任いたしましてからも、四回か五回会議をやっているのですけれども、私が議長なんですけれども、そこでもその雰囲気は、そういう防衛術的性格のものをここで持ち出そうという国はございません、いままでのところ。それから将来の問題としても、いま申しましたように、ASPACはこれでやっていこうという空気が充満していると申しましょうか、そういう空気でございます。ただ、先ほど申しましたように、総会になれば、それぞれがいろいろな自由な意見を申しますから、どういう意見が出るかは私もわかりませんですけれども、それを取りまとめて、この機構は将来ともこうやって動かしていこうということは、おそらく全会一致で、まあ将来の予想になりますけれども、共同コミュニケというのが出るんではなかろうか、そういうように予測しております。
#109
○委員長(山本利壽君) 本件に対する本日の質疑は、この程度といたします。次会の委員会は、定例日五月十三日午前十時よりと考えております。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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