くにさくロゴ
1968/06/26 第61回国会 参議院 参議院会議録情報 第061回国会 外務委員会 第16号
姉妹サイト
 
1968/06/26 第61回国会 参議院

参議院会議録情報 第061回国会 外務委員会 第16号

#1
第061回国会 外務委員会 第16号
昭和四十四年六月二十六日(木曜日)
   午前十時十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二十一日
    辞任         補欠選任
     土屋 義彦君     石原慎太郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 利壽君
    理 事
                佐藤 一郎君
                長谷川 仁君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                梶原 茂嘉君
                杉原 荒太君
                廣瀬 久忠君
                三木與吉郎君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                黒柳  明君
                白木義一郎君
                野坂 参三君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務大臣官房長  齋藤 鎭男君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省条約局長  佐藤 正二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査
 (国際情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本利壽君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 去る二十一日土屋義彦君が委員を辞任され、その補欠として石原慎太郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(山本利壽君) それでは、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#4
○森元治郎君 きょうは、大臣も安保でお疲れのようだから、安保をちょっとわきのほうへ置いておいて、いま新聞で大きく報道されているのは、中国の国連加盟の問題に対する政府の態度、あるいは、大きな外交的動きではソ連の集団安全保障の構想がやがて活動に入り、日本にも呼びかけがあるんじゃない、だろうか。トロヤノフスキー大使もあしたあたりお帰りになるんでしょうが、そうすると大臣にもお話があるのじゃないかということを大きく報道しているわけですね。そこらのことをひとつ伺ってみたいと思うのです。
 集団安全保障というものの考え方は、集団で安全保障の体制に入っている人々が団結してほかと対抗するという趣旨のものじゃないのですね。これは国連創設以来、そういうふうな新しい、旧同盟と違ったものが出てきたわけなんです。ソ連がどうしてこういうふうな構想を打ち出してきたのか。世界のいろいろな新聞を見ても、大きな傾向としてはイギリス軍が東南アジアから、シンガポールから撤退をし、ベトナムもいずれ片づくであろう。アメリカ軍も逐次撤退をするであろう。空白になってくる。そこヘソ連は中国を封じ込めるような、中国を頭に置いてこれらの地域に進出をはかろうとしておるんじゃないかというふうに伝えられておるわけです。大臣は、日本政府は目下安保条約で頭が一ぱいで、肝心の大陸中国、ソ連に対する手というものは、いまのところはっきり打ち出されておらないが、こういう動きをどういうように解釈されるか、その点をまず概括的に伺いたいと思います。
#5
○国務大臣(愛知揆一君) 最近におけるソ連の動向についてはいろいろ伝えられておりますけれども、的確に私の見方として申し上げる段階までまだ情勢の分析ができておりません。御案内のように、世界党大会が開催されたわけであります。その党大会の状況等についてもできるだけ十分な観察をいたしておるわけでありますが、同時に、ソ連としてのアジア集団安保体制というようなものも伝えられてはおりますけれども、いかなる具体性を持って、いかなる構想で展開しているのかということも、さだかにはまだつかめておりません。状況を十分注視しながら対策を講ずべきものは講じていかなければならない、かように考えておりますが、ソ連としても、最近アジア諸国に駐在している大使を相当大ぜい本国に呼んで、いろいろの会議等を通じて向こうも情勢の分析等に一生懸命やっておることでありますから、そういうわけで、十分注目いたしておりますけれども、まだ、こうこうであるということを申し上げるほどの状況分析はできておりませんことは、先ほど申し上げたとおりであります。
#6
○森元治郎君 日本では、このベトナム戦争が何らかの形で火をふかないような状態――休戦の成立、平和というのには時間がかかるでしょうが、静かな状態ができる、イギリス軍は撤退する、あとどうしようかということに対して若干の不安を持っておられるようでありますが、日本としては、ASPACでもありましたように、何とか日本の経済力を進歩の途上国に対して応援をして、そして平和な経済的な関係をこの東南アジア地域に打ち立てていきたいというだけで、政治の問題に対する指針というものははっきり出ていないように思うんです。防衛庁あるいは財界のほうでは、イギリス軍が撤退したあとは、アメリカからの要請もあるんでしょうし、日本自身の経済上の必要性――石油をどうしてもシンガポール、マラッカ海峡を通して持ってこなきゃならぬという状況だから、自衛力のうちの海軍力を増強しなければならぬということがしばしば強く報道をされております。私はポスト・ベトナムにあたっては、経済面もさることながら、イギリス、アメリカという大国――東側から見れば帝国主義国といいますか――が撤退したあとは、自分自身で集団的になにをするにしても、大国はこれに加わらない。ソ連も加わり、日本も加わり、タイ、ベトナム、カンボジア、みんな集団安全保障ということじゃなく、大国がタッチしないという、かれらの自立をみんなで助けるというふうにして、初めてインドをはじめ、東のインドネシア、北は朝鮮から、みんなに問題が起きても、大きく火が広がらない。関係国で、仲間うちで相談させるというような政治的指針を打ち立てるのが大事じゃないか。いま中国が東南アジア、インドシナ半島に何かするのを押えるとか、それに日本が手伝うとか手伝わないとか、またまた大国が、われわれが助けようという国々を土台にされたんでは気の毒であるから、そういう意味の集団安全保障ということは考えるべきではない。自分自身で経済的に、総理はガンジー首相に「自助」と言っておられましたが、政治的にも自助でひとつ片づけていくというふうに、外から育てあげていくということを日本としても考えていくべきじゃないかと思うんです。これは意見でありますが、御意見を伺いたい。
#7
○国務大臣(愛知揆一君) これは御同感でございまして、お気づきかとも思いますけれども、今年初頭以来、いろいろの機会に政府として打ち出しておることばも、それから、ただいま御引用になった佐藤総理とガンジー首相との会談にも出ていることばです。自助という考え方、それと地域協力という、これがやはり特にアジア・太平洋地域においては適切な考え方ではなかろうかということで、先般のASPAC会議でもそうでございましたし、それから、その前の経済関係閣僚会議、そのほかいろいろな機会に日本としてはそういう気持ちで各国に触れ合いをしており、これをできるだけ伸ばしていきたい。イデオロギーにとらわれない、むしろ太平洋・アジア地域という、その地域的な、しかも発展途上国がほとんど全部でございますから、そういう中から自助の気持ちとそれから地域的な協力の精神というものが盛り上がって、これがひとり経済の問題だけではなくて、広い意味の安全保障といいますか、そういうふうな考え方に進んでいくことが望ましいのではないか。日本としては、軍事的な協力とかあるいは機構というものは全然考えてもおりませんし、考えるべきでもないと思いますから、特に日本としての発想はそういう点が重点でなければなるまいかと考えております。
#8
○森元治郎君 したがって私は、ソ連がどういう構想を持ってくるのか持ってこないのかということはつまびらかにいたしませんが、この安全保障ということばは、今日では対抗的な意図がその下に入っているのが普通なんですね。どれに対してのわれわれあるいは加盟国の安全というふうに、対抗的になる。せっかくベトナムがあれほどの戦争がおさまり静かになるというなら、大国のいろいろな形での介入、幼稚園の中に大学生が入っていって一緒に遊ぼうということはしばらくやめて、幼稚園、中学生は幼稚園、中学生で遊んで、おとなはその運動場には行かないというふうにこれを引っぱっていきたいと思うし、もう一つは、どうせ安全保障というなら、何といっても中国じゃないかと思う、問題は。せっかくいまのところは日米あるいは米ソ、日ソは悪い関係にはない。もう一つ中国との関係がよくなれば、まず世界の平和は当分確立するのですが、集団というならば、体制の違うこの四つくらいは何らかの形で折れ合っていける方向に、その方向を阻害しないようにそれぞれの国が自制し努力していくということが大事だと思いますが、抽象的に伺います。
#9
○国務大臣(愛知揆一君) そういうお考え、基本的に私も何も異存はございません。御同感でございますと申し上げたいと思います。
#10
○森元治郎君 そこで、やはり中国の問題に戻ってくる。世界政治の問題は、結局は中国をどうしようかということになろうかと思うのです。私自民党に伺いたいのですが、自民党は中国本土――北京のほうから見れば敵視政策と言われておりますが、こんなことが一番頭に引っかかるのじゃないか。同じ話をするにしても、もう少し静かに話をしてくれないか。あまりどぎついことばでやられたのじゃ、せっかく中国と話をしようと思っても、メンツもない。もう少しやわらかい、常識的といいますか、そういうことばで話をしてくれるならば、イデオロギー、本質問題はともかくとして、接触しやすいムードができるのだ。それを中国はしないで、こちらから見れば悪態の限りを尽くしたのじゃ話にならない、まず静かに出てきてくれないかというのが、私は歴代の自民党総裁、総理大臣、関係者の声明、演説などを通じて底に流れていると思いますが、この点どうですか。
#11
○国務大臣(愛知揆一君) これもまたそのとおりでございます。私どもとしては、現在のところ中共政府は、党の要人が言っておりますが、日本として敵視政策というようなことをことさらにとっていることは覚えがないことであり、どうしてこうも強いことを言われるのか、何とかもう少しさらっとしてもらえないかというような御趣旨のお話がございましたが、私もそういうことはたいへん望ましいことだと考えております。
#12
○森元治郎君 ただマルクス・レーニン主義を世界で一番正しく信じているという中国の立場としては、ことばが激しいことはこれは当然なことだと思うんです。現実政治では、そのことばが激しいからといって、一々あまりにその激しいことばにひっかかっておることもどうかと思うんですね。人おのおのくせがあるように、国の言い方にも、くせも方法も違いますので、それはある程度がまんをするというか、こういうこともまた一方大事だと思うんです。そこで、結局世界問題は中国の問題に立ち返ってくる。そういうときにあたって、国連で、二十四回になりますか、総会がある。代表権の問題が例によって議題になる。自民党の中のほうにも、重要事項の指定については賛成しない、せめて共同署名国にはならないでくれというような意見もあるようですが、新聞で見ると、早くもことしの秋には重要事項指定方式でいくのだということが出されている。考えてみると、ことしの場合は態度をきめるのが非常に早いなと、こんな印象がするんです。もう安保で手が一ぱいだし、軍縮会議は七月から始まる。朝海君が行く。あるいは国連局長も行ってしまう。九月ごろまで国連の専門の局長はジュネーブにいるようで、ジュネーブからニューヨークに行く。とてもじゃないが、じっくり考えるいとまがない。しかも、安保は七月交渉に入り、九月には大臣が国連に出るついでに安保の相談もする。幸い、中国を承認するというカナダ、イタリアなどでも、承認の方向と重要事項であるということは必ずしもぶつからないのだというような、やわらかいといいますか、きわめて柔軟な態度を打ち出している。世界を見渡しても、ソ連とは仲が悪い。世界共産党会議をやっても、中共を徹底的にたたくことはできなかったが、まあまあ希望の数だけの各国共産党を集めた。中国のために口からあわを出して国連総会席上でがんばってくれるのはアルバニアを先頭とするその他数は少ないから、ことしは問題ないからこれでいこうというふうに軽くきめる客観的な四囲の情勢があったように思うので、ことしはこれでいってだいじょうぶだと、来年はまた来年だというふうなのが、早くも腹をきめられた大きな原因だというふうに理解をしているのでありますが、いかがですか。
#13
○国務大臣(愛知揆一君) この国連における中共の代表権の問題、これをどういうふうに扱うかということについて公式にまだ政府としての見解をきめ、あるいは発表しておるということはございません。これは慎重の上にも慎重に考えて最終的に態度をきめるべきものであると、かように考えております。
#14
○森元治郎君 情勢はどうですか。昨年と同じような程度で大きな変化はない、特にことしは大きな変化はなさそうだという判断ですか、投票の場合にですね。
#15
○国務大臣(愛知揆一君) これはまあ非常に多くの数の国々の動向のことでありますから、にわかに予断を許さない場合もありましょう。また私は、いまこの今日のこの時期に私の予測を申し上げることもいかがかと思いますけれども、大体いま森委員からお話がございましたように、大勢はあまり変わっていないのではないだろうか、まあ大体の観測としてはさような見方ができるのではなかろうかと、客観的に、そういうふうに考えております。
#16
○森元治郎君 中共を承認できない、台湾を捨てて北京を承認できないという理由は一体どんなことなんでしょう。私が拾い上げてみますと、中国とは講和条約を結んだ当の相手国――カイロ会談であろうとテヘラン会談であろうとポツダム会談であろうと、蒋介石の中国との間に結ばれたんだ。そういう過去の経過、中共はあとから出てきたのだということ、そして講和会議でアメリカのダレスの強圧もあったでしょうが、とにかくやむを得ず二十六年の暮れに、二十九日だったと思うが、今日の日台条約の基本になるような限定承認の条約を結んだという条約があるから、中共に引きかえることはできないのだということもあったでしょう。また、佐藤尚武さんのように、戦時中、中国蒋介石は大陸において降伏した日本軍に対して非常に武士道的な扱いをしてくれた、この東洋の義理人情といいますか、そういう節に対してはわれわれとしては忘れることはできないのだということを佐藤さんは言う。あるいはまた、台湾にたいへん日本は投資があるのだと、あるいは商売が非常に盛んである、これをいま承認することによって中国の領土に編入をされてしまったんでは、われわれの貿易の大きな一つの口がなくなってしまう、投資したものの回収が不可能になるなどの考えもあるでしょうか。それから、アメリカの対極東政策の上からどうしてもそこに踏み切れないのだ。いろいろな原因もあろうかと思いますが、私がいまあげたような原因についての御批判を、御見解を承れれば幸いだと思います。
#17
○国務大臣(愛知揆一君) 批判というようなおこがましいことは私にできませんけれども、いまおあげになりましたようないろいろの点、そのほかにもいろいろあろうかと思います。たとえば、中国側の見解からすれば、どうしても「一つの中国」ということは、北京も同時に台湾もこれはそれぞれの立場から相譲れない。これはわれわれ外国からとやかく言うべきではないことだと思いますし、また触れることが非常に困難な問題であります。いつも申し上げることでありますけれども、こういう環境の中で、日本としては一番隣国であり大事なところでありますだけに、いままでも苦心してこの間に処してきた。結局、いまお話もございましたような経過で、国民政府との間には外交関係が正式に設定されている。一方、中国本土に対しましては、経済関係とか、あるいは人的交流であるとか、こういう面において、おそらく他のどこの国と中国本土との関係よりも多くの、たとえば貿易においても実績をあげており、あるいは人的交流におきましても、たとえばアメリカが何回となく、百何十回となくトライして、いわゆる大使級会談をやろうとし、かつ、そこでたとえば新聞記者、学者の交換ということをまず第一に実現しようとしているようですが、これができないのに比較いたしまして、いろいろ険しい道を歩んで来ましたけれども、日本としてはともかくまだ事実上の関係が持たれているというようなことは、少なくともいままでのやり方としては私は賢明な日本としての歩んで来た道ではなかったろうかと思います。先ほどもお話が出ましたが、こちらもいろいろと考えていかなければならぬこともございましょうが、私は、中国本土側もいろいろと考えられてしかるべきことであると思いますけれども、今回の九全大会あるいは林彪報告等にあらわれているいろいろな事実その他から想像し、情勢分析してみましても、中共政府というものが対外的にどういうふうな政策を展開するか、あるいは、対内的に文化革命の収束をどういうふうに手ぎわよくやられるのか、こういったような点については、私はまだまだアンノウン・ファクターが多いように思いますので、今後の情勢の推移に対して忍耐強く静観をしていくということが日本の国益を守る上に妥当ではなかろうか、こんなふうに考えておるわけでございます。
#18
○森元治郎君 こういうムードが日本人の中にあるのですね。終戦前、日本が早く降伏して戦争を終わりたいために、樺太や千島もやっちまう。台湾は引き揚げた。あのときはなるほど放棄した。放棄させられた。さて時間がたって見ると、二十四年もたって日本人はどんどんあそこへ行ったり来たりして、たいへんいい思いをしてくる人もある。措しくなってきた、みすみすあれが中国のものになってしまうのは。というようなムードも、これは日本人の中にあると思うのです。そこで、お伺いしたいのは、日本は台湾の処置については発言できるのかできないのか。台湾はかくあるべしと言えるのかどうか。あるいは、放棄させられたのだから何も言うことはないという答えが一つ。放棄したって、それはどうあってほしいくらいは言えるのだ、こういう意見もあるでしょう。政府はどういうふうにお考えですか。
#19
○国務大臣(愛知揆一君) 条約論としては、私は、放棄したものであるから、これに対してとやかく言うべき立場にないというのが日本の立場ではないかと思います。なお、条約解釈について正確に法理論的の御説明でございましたら、政府委員から説明いたさせます。
#20
○森元治郎君 法理論というのは、これは法律とは力では何ともならないのだ、理屈は合っていても腕力の強い者がかってなことをやるのだから。法理論はいずれ伺うとして、しばらく台湾問題というのは国会で論議されないですね、もっぱら事前協議の問題をやっているから。それで伺いますが、これは一体だれがきめるものと現政府は考えておられるか。しばらく国会でもやりませんから。愛知外務大臣、佐藤内閣では、これは関係国――平和条約加盟国がやるのか、あるいは当時の五大国がやるのか、人民投票で所属を決定すべきか、いろいろありますが、一体日本はどの立場が好ましいとお思いですか。
#21
○国務大臣(愛知揆一君) これはただいまも話がございましたように、条約論だけでいってもあるいはあまり効果がないことかもしれませんけれども、条約論的に言えばやっぱりサンフランシスコ平和条約といいますか、関係国あるいはもう少しあれすれば、当時の連合国と申しますか、そういうようなところできめるべきものであろうかと思いますし、また政治的に言えば、これは結局、先ほど申しましたように、いま日本政府としてかりにも「一つの中国」というようなことに触れて、あるいは二つに考えられるというようなことを言いますれば、これはたいへんな問題になりますから、そこの点には私は触れないでお答えいたしますけれども、終局的には、その地域あるいはその地域住民というような人たちの気持ちというものが尊重されるというのが望ましい道ではなかろうかと思います。しかし、それ以上コメントすることは差し控えたいと思います。
#22
○森元治郎君 大臣のお話を聞くと、日本は放棄したから台湾がどこへ行くのかということについて何も法理論的には言うべき立場にない、しかし、連合国が決定されるべきものだと思う、連合国か決定されれば、これには承諾も不承諾もありません、これを認めると。しかし、いま大臣は、やはり現に住んでいる台湾の住民の気持ちが反映されることが望ましいと。というのは、やはり人民投票といいますか、何らかの形で住んでいる人の気持ちもその決定にあたっては考慮の中に入れられるのがいいんじゃないか、こういうふうに理解したんですが、そうでしょうか。
#23
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、ただいま申しましたように、日本政府として台湾の帰属についてどうこう言うべき立場にはないし、私からも何もこれに対しては触れるべきではない、これは私の考え方でございます。しいてお尋ねがあったので、そういうふうな考え方もあるでしょうという意味でお答えしたので、私の気持ちではございません。
#24
○森元治郎君 これで終わりますが、こういうふうに中国が出てきたらばどうなのかという質問であります。中国は五十年でも百年でも待つんだ、台湾は取る、こういうことでいま来ておりますが、もし中国の中に台湾が入る、そうして中国がここに軍備も施さない。アメリカはもちろん撤退する、軍備も施さない。台湾の現状は、むしろ徳川時代、戦国時代に所領安堵というのがよくありますね。秀吉が柴田勝家のほうに攻め込んで、土地も何も一切取らないで、そのままおまえはそこに住んでよい、所領安堵ということにして、そして国連の議席もそのままあってもいいが、それは中国の中の台湾なんですね。ソビエトにおけるウクライナ、白ロシアのごとく、もちろん外交権――外交権といいますか、大きい意味での中国の中の一つ、そうして軍備を置かない。所領安堵ですから、いままでどおりの生活を諸外国でやってよろしい。国連における投票権は二票でも二つの中国じゃありません、中国の中の台湾ですから。そういうようなフォーミュラが打ち出されて、だれかが唱道しあるいは北京のほうで発言があった場合には、これはよほど台湾支持者も、支持国も動揺して、悪くないという気分になるんじゃないかと思うんですね。中国の憲法は、革命の当初のころの憲法、改正前の憲法では、ソビエト社会主義共和国連邦のような連邦憲法であったんです。それが後に改正されて、ユナイテッド・ステーツというふうなことではなくなって今日きておるようなんですね。ですから、あれが特別国――白ロシアあるいはウクライナのように、ソ連の一つのステートではあるが国連で議席は持つ、ただし香港のように商売は自由にやっていてよろしい、こういうような態度に出てこられた場合は、私は台湾支持は減って中国承認に切りかえられると思うんです。もちろん、そのときにおける中国のそのことが信頼できるかどうかということで問題になると思いますが、それでいいと言うんなら、私は大きく中国問題は転換するんじゃないかと、まあ愚考するわけなんですがね、どうですか。
#25
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申し上げましたように、この問題は国際的にも非常に大きな問題でありまするし、同時にまた、中共政府も国民政府ももうこの種問題につきましては、私はまあ当然だと思いますけれども、非常なキーン――ということばが当たるんじゃないかと思いますが――でございます。また、日本としては、たとえば条約論としても日本がとやかく言うべきではない立場にある。こういうようないろいろの点から、いま御設定になりましたようないろいろのことも、まあ観念的には考えられるでございましょうが、いまこの時点で日本の政府としてそれに対してとかくの意見を申し上げますことは、どうかひとつごかんべんをいただきたいと思います。
#26
○西村関一君 初めに大臣にお伺いいたしたいと思いますのは、河崎一郎前大使の問題でございます。私は、問題になりました、河崎氏の書かれました「素顔の日本」、英文の原書取り寄せを待っておりまするうちに、日本訳が出ました。日本訳で読んでみましたが、随筆的には書いておられますけれども、私としましては、河崎大使がまあいわば罷免されるような理由が見当たらない。外交官としての言論、表現の自由という、また、ある意味において日本の真相を知らせるという立場から書いておられるというふうに、むしろ善意的に解釈したのでありますが、大臣、伝えられるところによりますと、あの著述について大臣は非常におおこりになったと、そしてあのような処置をとられたというふうに漏れ承っておるのでございますが、その間の事情についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
#27
○国務大臣(愛知揆一君) 御質問がございましたから、この機会に詳しくひとつ御説明をいたしたいと思います。
 河崎君の著書は今回に限りませんで、実は前にも外国語で出版されたものがございます。そして今回の「素顔の日本」というものがあらわれたわけですが、これは実は外国語で出版されているわけでございます。むしろ、問題になるというか話題になりましたので、あらためて日本語版がつくられて非常に売られておるわけですが、そして著者は特命全権大使、日本の国民全体を代表して任国に駐在しておるその立場から見まして、そして外国語で書かれた著書、外国字で書かれたということは、外国人に見せるのがおもであり、読ませるのがおもでございましょう。私は、まあ結論的に意見が違いますことを遺憾に思いますけれども、私はそういう観点から言ってまことに不適当な著書であると断定せざるを得ませんでした。全部を読んでほしいと本人の希望もございますから――当初英語版の中で問題にされた、ある新聞で英語でその解説紹介が出た。もちろんそれだけでもって私は判断したのではなくて、全文を読み、かつ、とりあえず外務省で仮訳をいたしました日本文についても私は点検をいたしました。そして御本人が言われるように、私は全部を読みまして、なおかつ、これは特命全権大使とし、かつ外国人を読者として外国語で書かれた著書としては私は不適当と断定いたしました。したがって、当時――三月の上旬から中旬にかけての出来事でございますが、たまたまラ米大使会議のために東京におりまして、それから帰任の途上であったわけですが、私としては外務省の事務当局にも相談をした上で、こういうものを大使として書かれてあれするのは困ると思うがこの際一身上の進退についてどう考えるかということを旅行中に連絡をいたしまして、本人から辞意の表明があったわけです。そして、その後帰朝命令を出しまして帰国いたしまして、正式に辞表の提出がございました。で、私は同時に、河崎一郎君という人はこれはすばらしい素質を持っている人です。外国語について申しますならば、数カ国語に非常にたんのうでございます。そういう点から見れば、まれに見る素質を持っている人でありますから、大使としては不適任でありますけれども、いろいろの面で役に立つ人でありますから、これからひとつ第二の人生において大いに彼としても働いてもらわなければならない人だと思っておりますから、その面においては十分な私は協力も約束し、かつ実行もしておりますが、同時に、形式的にはこれは罷免とか、あるいは懲戒とかいうものではないのです。本人がわれわれの考え方を了として、それはいろいろ主観的には本人の意見も言いたいこともございましょうけれども、しかし、なるほどということで辞表を出したわけですから、普通の場合の依願退官と同じ取り扱いにいたしております。すなわち、現在は待命中でございますから、退官を前提の普通の依願退官は、若干の期間待命として今後のいろいろの準備などをやる余裕を与えている、こういうわけでありますのが現在までの経過でございます。
#28
○西村関一君 河崎一郎氏の問題については、大臣及び事務当局においてもいろいろ配慮もあった点は私も了解いたしますが、私個人としましては、ただ一度ポーランド大使であったときにお目にかかった程度でございます。いまお話がありましたように、外務省きっての語学の達人であるということも聞いておりましたし、また、多方面に広い深い教養の持ち主である。ただ、何と申しますか、少し外交官として変わり者であるというような印象を受けたのでございますけれども、いろんな配慮がなされたとはいえ、あのような英文で書いた著書が問題となって事実上やめざるを得ないという羽目に至らされたということに対して、今後外交官として自分の思想の表現の自由というものがどの程度まで保障されるんであろうかという点について、私はあれを読んで日本人として反省させられる点が多々ある。むしろ外国に向かって日本のいいところばかり、あるいは日本人のいいところばかり宣伝するんじゃなくて、欠点と思われるような点についてもよく理解させるということも必要だと思うんであります。私は、そういう意味から申しまして、いろんな配慮がなされつつあるということは了といたしますけれども、有能な一外交官を失うということは必ずしも日本のためになるというふうには思わないのであります。私、ここに持っておりますが、最近ソビエト・ロシアの「水爆の父」といわれておるサハロフ氏が「進歩・平和共存及び知的自由」という論文を書きまして、これは一応公開ということを前提として出したものでございまして、ニューヨーク・タイムスに大きく取り上げられたことは大臣も御承知のところだと思うんでございます。最近日本訳が出ましたので、私は英文でも読みましたけれども、この日本訳を手に入れまして読んでみたのであります。ソ連にとっては、ソ連の指導者の考えとは必ずしも一致しない大胆な意見を出しているんであります。もちろん、科学者として、原子物理学者としてどうしても平和共存でなければいけないということを強調しているんであります。終局的には世界政府にまで至らなければいけないということを共存の諸段階の中で述べているのであります。そういうことのために、私はこの四月にモスクワを訪問いたしましたときに彼に面会を求めたのでありますが、どういう理由かはわかりませんけれども、面会することが許されなかったんであります。たいてい、ほかの人たちについては全部面会を希望した人は面会しましたけれども、サハロフ博士については面会は許されなかったんであります。聞くところによりますと、やはりこの論文が原因となって罷免されたのではないかということが、クレムリンの中のことでありますからわかりませんけれども、そういうことがいわれているのであります。私は、ソ連のことはともかくといたしまして、日本におきましては言論の自由が憲法において保障されておる。外交官であるからといってそういう点が制限されるということについては私は理解ができないんであります。ただ、大臣の見解と私の見解とが河崎氏の著書について若干食い違っておると思いますけれども、どういう点がいけなかったのであるか、その点。また、どういう法的根拠、公務員法でありますとか、外交官の勤務についての規則でありますとか、そういうものにどういう点が抵触するのか。今後活発な言論活動が外交官はできなくなる。善意――それは悪意に満ちたことはいけないし、国益に反することはいけないと思いますけれども、しかし、前向きに自由な言論の発表をする、自分の意見の発表をするということは、当然外交官としてすべきこと、だと思うのであります。私は、彼が有能な人であるだけに、性格的には若干、私の触れたところでは少し変わった人だという印象を受けましたけれども、非常に有能な人であるだけに、その取り扱いについてはもっと慎重にやらるべきではなかったかと思うんでございますが、そういう点、きょうは官房長にもおいでをいただいておりますが、どうお考えでございますか。
#29
○国務大臣(愛知揆一君) これはですね、先ほど申し上げましたように、どの点がどうだとかいうような問題ではなくて、全体として、こういう本を特命全権大使の肩書きで書くという、そういうこと自身が、私から見れば特命全権大使としてふさわしくないと、こう断定せざるを得ないわけでございます。言論の自由とかなんとかいう問題ではございませんで、要するに、特命全権大使として、日本国民を代表する人としての言動としてふさわしくないかどうかという問題であります。
 それからその次に、そういったような私の考え方、それから外務省の事務当局の考え方が本人に伝わりまして、そうして、先ほど申しましたように、本人といたしましても辞表を出しておるわけですから、それで、それに対して通常の依願退官という手続をとりつつあるわけでございますから、したがって、これがどういう公務員法上のなにになるかとか、あるいは、これは認証官であるから、認証官についてはどういうふうなあれがあるということもいろいろございましょうけれども、いま私は何も包み隠すところなく私の所見を申し上げておるわけでございます。もし立場をかえてあなたが外務大臣でおられる場合にこういうことが起こりました場合に、どういう御処置をおとりになったであろうかということをひとつお考えいただきまして御同情いただきたいと思います。私は、友人としての河崎君に対してはまことに忍びない。これは私と大体同時代の、学生の当時から個人的にも知っております。どうかひとつ私からお願いいたします。これ以上、どこがどうしだこうしたと、ぎすぎすしたことにはしないでいただきたいということを私は切にお願いいたします。
#30
○森元治郎君 ちょっと関連。
 河崎君を言うわけじゃないんだが、この外務省の人事異動見ていても、えらい人は、出世する人は、出ちゃ帰ってきて課長になり、また出て大使になって、帰って局長になる。河崎君はいなか回りばかりなんだよね。中近東とかアフリカとか、それから、ソビエトは共産圏の親玉だが、その一子分のポーランドぐらいしか行かない。そういうむしゃくしゃも一つ。性格も一つ。それからもう一つは、外交官の中に、河崎君――ということではないが――も含めて、きざなのがいるんですよ。日本人に会いたがらない大公使や役人がいるんです。これはいるんですよ。あのやろうとめし食うとまずくなると。だれと会うかというと、外人。その外人もよくしたもので、白いのとしか会わないのですよ。白いのとは盛んにこれやるが、黒いのとはやりたがらない。黒とそれから黄色いほうもだめ。こういうくせは、四十五、六――五十以上の外交官に多いんです。最近は変わりました、時代が変わったから。そういう点もこれから大臣たる者は見ていかないと、こういうことは出てくると思うんだな。人事をもう少し交流させ、いい風に当ててやる。それから、日本人と会いたがらない人がたくさんいるわけです。白いのが来ればとたんに、自分がホッテントットのような顔をしながら、にこにこするんだよ。河崎君の顔もどうもそっちのほうに似ているような顔にも見えるけれども、これは外交官の昔の人に多いんです。どうかひとつ大使クラスあたりの人事では、もっと近代的な再教育をして、礼儀をわきまえない日本人でも――だんだんにいま農協さんあたりからたくさん行きますが、こういう人が来ても親切にしてやって、たとえば、つまらない話だけれども、この問おこっていたのは、スパゲッティをローマで食べたいと言ったならば、言った人はうどんかそば食うぐらいのつもりだったろうが、スパゲッティだけをしょっぱなからは食わさないんですよね、これは。それで向こうでは豪儀なコースの中にスパゲッティが出てくるんだから、外務省のきざなお役人がきざなことを言ったらしいんだが、それでおこつちゃって、森君は外務委員だからよく言ってくれと。スパゲッティ食いたかったんだと。それが初めからずっと出てきた中に入ってきたと言うんだ。なぜスパゲッティだけを食わせないかと。そういうのには親切にひとつ教えてやるように、依然として外交官が国民のエリートだということをなくするように、ひとつ再教育を留意してもらいたい。
#31
○西村関一君 いま外務大臣から苦衷をお述べになりましたので、私もこれを了といたしまして、これ以上この問題についてはお尋ねすることはやめたいと思います。
 次にお伺いいたしたいと思いますのは、沖縄の返還問題に関連いたしまして、大臣アメリカにおいでになりまして、いろいろ要路とお会いになったようでありますが、アメリカの最大関心事はどこにあるか。ヨーロッパにあるのか、アジアにあるのか、あるいは沖縄にあるのか。ニクソン政権の最大関心事はどこにあるというふうにお感じになりましたか。この点をお伺いいたしたいと思います。
#32
○国務大臣(愛知揆一君) これもいろいろの見方はあると思いますけれども、まあ、第一がどこ、第二がどこというふうに的確に分けることはできない。アジアも、ヨーロッパも、中近東も、非常な問題を多数かかえておるということが強く印象づけられるわけでありますけれども、何と申しましても、ベトナムを何とか収拾しなければなるまい。これはもう国民的願望の上に立って、ニクソン政権としての外政の問題といたしましては、これがもう最大の焦点じゃないだろうかというふうに私は印象を受けたわけでございます。
#33
○長谷川仁君 いまのちょっと関連で、私、与党ですけれども、いまの森先生の外交官の人事の問題、これは私もほんとうに同感でございまして、私も長い間海外生活しまして、今日の外務省では、私が一番海外を歩いてみて感じますことは、この人事の配置が非常にでたらめ――と言っちゃ悪いけれども、おかしな点があるんですよ。たとえば、中国畑でもって三十年もやっているのがアメリカの書記官になったり、参事官になったり、そういった例がずいぶんあると同時に、これから外務省も本格的にアジア問題に取っ組んでいくという場合に、たとえば韓国語やあるいは朝鮮語ができる外交官は一体何人いるか。あるいは北京語が十二分にしゃべれる外交官が何人いるかということを考えた場合、おそらくそれはもう五本の指に数えるほどしかないと思うんですよね。ですから、そういった点も根本的に考えていかなければ、ことばの通じない外交官なんてこれは意味ないし、外語を出ても、いま車だってタクシーだって乗れない者がたくさんいるのを私は知っています。ですから、そういう点において、アジア外交を重視するならば、もっと外交官の語学教育なり、あるいは情報収集にしても、香港あたりの情報担当官のを見ていると、のりとはさみでつくった情報ですよね。われわれよりもまだスピードのない情報を集めている。そういった点について大臣どうお考えなのか、この際聞いておきたいと思います。
#34
○国務大臣(愛知揆一君) これは一朝一夕になかなか思い切ったこともできませんので、実は苦慮しておりますが、相当の大人数ですから、そして、ことに離れておりますから、なかなか人柄を知り、掌握するということは非常にむずかしい。しかし、いまお話しになったようなことは全く私も御同感でございますから、だいぶ手がけてはおるつもりでございますが、もう少し時間をかしていただきましたら、逐次ひとつよい姿にするようにいたしたいと思っております。
#35
○長谷川仁君 それと、大臣にお伺いしたいのですけれども、私は本会議でも総理及び外務大臣にお伺いしたのですが、このイメージ・ギャップの問題に関連して、たとえば極東情勢の分析でも、アメリカあたりでは膨大な経費と膨大な人的な動員、さらに衛星まで使って、そして極東情勢をあらゆる角度から科学的に分析している。日本の場合に、たとえばこれから大臣がワシントンへ行って交渉する場合に、たとえば中共問題はこうだ、北鮮の問題はこうだと言った場合に、向こうが科学的なデータを持って、そして突き詰められた場合に、大臣はそれを、何を根拠に私たちはこう思うのだということを自信を持って言えますかね。私ども非常に不安を持つわけなんですけれども、この点、いかがでございますか。
#36
○国務大臣(愛知揆一君) そういう点は私も感ぜざるを得ないのです。そこで、やはり何といっても外務省の必要なことは情勢分析その判断だと思うのですけれども、何といいますか、世界全体が非常に一面において多極化していますね。そうして国の数が非常に多くなり、そして東京におきましても、連日のごとく外国の相当な人が出入りしている。この日常の事務に、ともすると追われがちであるし、それから、外務省の機構改正は御承知のように漸次進んでおりますので、だいぶよくなると思いますけれども、ただ、この情勢分析とか、政策の総合判断とかいう面が、従来どうも乏しかったように思います。それで、たとえば政策企画委員会というようなものを少数精鋭で充実して、必ずしも各局の代表というものの集まりじゃなくて、もうそれに専念した一つの考え方を整理し、積み上げていく。それを大臣、次官が直接に掌握してそれを必要に応じてルーティンに置きかえていくというようなことをすることを初めといたしまして、その面をできるだけ充実したいと思っております。なおまた、コンピューターを使うやり方その他もいろいろあります。たとえば漢字のコンピューターでの使い方というのもテクニカルにはいろいろ難点があるようですけれども、そういうことに及んでも検討を始めてみたいと思います。
 御注意のほどは重々ごもっともで、今後ともできるだけのことはいたしたいと思います。
#37
○西村関一君 いま私の質問に対して大臣が、ニクソン政権の最大の関心事はベトナム和平の問題にあるというふうに観察をされたというおことばでございましたが、それは確かに、いまアメリカの面目を保ちながら、どのようにしてベトナム戦争を終結させるかということが大きな問題であることは言うまでもないと思うのです。さらに対ソ外交と申しますか、あるいはヨーロッパに対する経済外交、そういう点につきましても、アメリカのドル危機と関連をいたしまして大きな課題ではなかろうかと思うのでございます。さらにベトナムの次は朝鮮だというようなことが一般にいわれておりますが、こういう問題に対してアジアの外交の問題、前段のことはともかくといたしまして、後段のベトナムの問題、また朝鮮の問題等に対して、アメリカ・ニクソン政権の要路と接触をせられた大臣として、また大臣の独自のお考えとして、どういう情勢判断をしておいでになりますか、お伺いをしておきたいと思います。
#38
○国務大臣(愛知揆一君) ベトナムにつきましては、たまたま私が参りまして会談を始めたのが六月二日でございますけれども、その三日には大統領が飛び立ってミッドウェーに行ったわけですし、それから、国務長官も私との会談を終えてから早々にまたベトナムの問題に忙殺されておったようです。そういうことから見ましても、アメリカとしてもなみなみならぬ努力をいたしておりますから、いわゆるシースファイアといいますか、撃ち方やめということが、私はだんだんに期待が近づいているのではないかと思います。日本の独自の立場ということになりますれば、もうそれから以降のことだと思いますが、まずさしあたっては、よくいわれますけれども、国際監視団あるいは国際会議、そういうところへの参加を求められた場合には、日本の法制的に許される限度においてはできるだけの協力をしなければならない。それから、インドシナ半島のさしあたりの難民救済というようなことにもできるだけのことはやっていかなければならない。要するに、私は独自の考え方から言えば、ベトナムを何とか終結するということは、そのことに私は非常に意味があると思いますのは、これを契機としてやはりアメリカのものの考え方というものも相当変わるのではないか、それに対して私どもがどういうふうな協力をするかという点に大きな意味があるんじゃないかと思います。私はベトナムが済んだら朝鮮だと――いまもお話が出ましたが――必ずしもそういう発想には賛成できないのでありまして、朝鮮半島においては、私はやはりこれもいろいろの御意見があろうと思いますが、大韓民国政府というものが日本とも国交ができましてから三年有余になりますが、人心も安定し、自信を持ってき、経済的にも相当の進歩が見られておる。こういうふうな国づくりが着々成果をあげているということは、とりもなおさず緊張緩和の道じゃなかろうかと思うのでありまして、やはり先般ASPAC会議でも私ども主張いたしましたように、平和へのイニシアチブを、お互いの建設ということへの戦いによって緊張を緩和していく、緊張が起こらないように未然に防止していく。そういう点にこれから日本の主体的な努力がますます自信を持って始められてしかるべきではないだろうか。そういうことによって、一口にいわれるように、ベトナムの次には朝鮮で何か戦争が起こりそうだというような、何となしの危機感というものを事実の上において具体的に防いでいくということが私は日本の進む道ではないだろうかなと、こういうふうな感じを持っております。
#39
○西村関一君 いま大臣のおっしゃった点については私もきわめて同感でございます。俗にいう、ベトナムの次は朝鮮だという考え方については、大臣はそういう考え方を持たないで、むしろ緊張緩和、調和と和解というところに重点を置いて日本外交を推進していくべきだというお考えについては私も全く同感でございます。ただ、ベトナム和平への道は必ずしもたんたんたる道でない。現在なお非常に苛烈な戦闘が繰り返されておる。パリにおけるところのベトナム和平拡大会議が進展しているかのごとく見えますけれども、なかなか、予測するところは必ずしも楽観を許さないという状態でございます。こういう点に対してベトナム共和国と国交を持っているわが国としてどういう情勢判断をしておられるか。臨時革命政府が南ベトナムにおいて樹立され、これと国交を結ぶところの国々が逐次ふえてきておる。解放民族戦線代表部が大使館に昇格して、それぞれ大使を交換するというような国が出てきておる。もちろん、これは社会主義国が中心でございましょうけれども、そういう情勢の推移がございます。また、サイゴン政府と申しましょうか、ベトナム共和国政府の側におきましてもいろいろ意見、その統治下にあるところの人たちの中からも新しい、平和勢力が生まれてきておるというような動きがございます。北のベトナム民主共和国側におきましてもきわめて柔軟な態度を示しておりますが、まだ基本的な姿勢は変えてない、当初の四原則は依然としてくずしていないという情勢でございまして、これに対してポスト・ベトナムのことを考える前に、まずアメリカの友邦をもって任じている日本としては、アメリカ合衆国に対してこの事態、特にベトナムの事態に対してどのような見解を披瀝していかれるべきであるか。私はアメリカに再々参りまして、アメリカ人がベトナムの問題に対してあまりにも知らされていないという感を率直に受けておるのでございます。事実を知らされてないということでございます。そういう点に対してもわれわれは、アジアの大国である日本、よく政府が言われるアジアの大国である日本、また私も、アジアの指導的な役割り、世界の指導的な役割りをになう日本という考え方には変わりないのでございますが、その立場に立ってベトナムの真相をアメリカ側に伝えるということがわれわれの責務ではないかと考えるのでございます。そういう点に対する御判断はいかがでございましょうか。
#40
○国務大臣(愛知揆一君) まず、その事実関係でございますが、結局その問題は、申すまでもなく、二つにしぼられると思うのでありまして、一つは軍事的な問題、要するに撤兵の問題だと思います。それから一つは、この南越の政治問題の解決、要するに、ベトナム人同士の話し合いでこの政治問題を解決しなければならない。この二つの方向に向いて積極的な歩みをアメリカにもしてもらいたいし、北越側に対しても望むところではないかと考えておりますが、先ほどもお話が出ましたが、たまたま近く七月早々――一日からでございますけれども、アジア公館長会議を東京で開きまして、ベトナム問題等を中心にして、できるだけ周辺の情報収集をやる。また、私どもが考えておりますような見方もぶっつけ合って、ひとつわれわれとしてはこのアジア情勢についての情勢判断をそれぞれの担当の公館長等の報告を求めてとっくりひとつ情勢分析をしたい。それによって必要となる措置についてはまた適宜措置をすることにいたしたい、かように考えております。
#41
○西村関一君 時間がありませんので、一言委員長に私はお願いをいたしまして質問を終わりたいと思うのですが、いま大臣のお話しのように、アジアの公館長会議等でとくと報告を聞いて情勢の正しい分析をしたいということでございます。私は、ベトナムの問題にいたしましても、中国の問題にいたしましても、あるいは朝鮮民主主義人民共和国の問題にいたしましても、お互いがもっと実情を知り合うことが必要だと思うのでございます。こういう委員会では時間が制限せられますし、また、新聞記者の方々もおられますから、自由な意見の交換ができない。これは与党とか野党とかを離れて、ベトナム問題、あるいは中国問題、朝鮮問題等々について話し合うような機会をぜひ理事会等において御検討していただきたい。そして私は、社会党は事ごとに政府に反対するということを一部の自民党の諸君は言われますけれども、そういうことではない。協力すべきところは協力していく。政府の情勢分析の足りないところはわれわれの知っている範囲内においてこれを提供していく。また、われわれが学ぶべきところは学んでいく。そういう考え方に立って日本の外交を推進していくことが外務委員会の責務であろうと思います。そういう点に対して委員長の御見解を伺っておきたいと思います。
#42
○委員長(山本利壽君) ただいま西村委員からの御発言は、まことに私どもも同感でございまして、実は、けさほどの理事会のときに各理事話し合いまして、ちょうどいま御説のような趣旨のことが話題に出まして、今後各党――まあ、この委員会には理事が出ておらない党もございますけれども、それらの党からもやはり代表の方に出ていただいて、いまお話しのような一つの研究の場を持ちたいというふうに、せいぜいこれからその方向へ努力しようという話し合いもしたところでございまして、御趣旨に沿いたいと考えます。
#43
○黒柳明君 けさの新聞は一斉に核防条約のことを報じていますけれども、外務大臣が九月国連に出席なさる前に調印するんではないか、総理はじめ外務大臣、政府首悩の意見が固まった、このような新聞報道が一斉にされておりますけれども、外務大臣のこの核防条約、国連出席前に調印するのではないか、こういう報道に対する御見解いかがでしょう。
#44
○国務大臣(愛知揆一君) 私のこの核防条約についての考え方は、従来おりあるごとに委員会等で申し上げておりますとおりで、特にきのうきょう変わっているわけではございません。どういうわけできょう相当数の新聞に大きく取り上げられたか私にはわからないのでありますけれども、実情はこういうことでございます。
 前々から申し上げておりますように、核防条約のそもそもの趣旨とするところはけっこうであると、こういうふうに政府としては見ております。そうして、核防条約が国際間で話題になり、議題になりましてから、日本側の主張というものもある程度は取り上げられてまいりましたことも御承知のとおりでございます。同時に、しかし、日本としては核武装絶対反対、しかし、平和利用等におきましては十分の力を持って特殊の立場を持っている。こういう立場から言いまして、日本として態度を表明いたします場合には、この上ともに日本としての立場というものが十分上がるようにしたいものであるというふうにかねがね考えておったわけでございます。ところで、ENDCの加盟もきまりましたので、おそらく米ソ両国をはじめ日本にも早く調印をし、批准をし、これを寄託をしてくれという要請は高まるであろうということはおのずから想像ができます。また、すでに相当の国々も調印をし、あるいは批准をいたしておりますから、それらの国々でも、日本のような有力な国に態度を明らかにしてくれという要請も高まってまいるでありましょうから、そろそろ日本としても態度を明確にする時期が近づいていると考えざるを得ないわけでございます。しかし、私は外国の人たちにも言っておるのでありますけれども、日本としては誠実にこういう案件は処理したい、政府として調印だけしてあとは批准や、批准の寄託というものはまた時間をかせいでもいいんだというような考え方はとりたくない、やはり国民的な合意の上に立ってこういう問題は処理をしたいのだと。十分ひとつ国民的にもこの種の問題についての論議が十分行なえるように、そうしてそこでコンセンサスがもたらせられるようなふうなかっこうで処理をしたいということを言っておりますわけでございまして、そういう方向で漸次ひとつ本件の取り扱い方に対して国民的な合意が取りつけられるように、だんだんと慎重に、しかし真剣に考えてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。したがいまして、私が九月国連総会に参りますまでに政府の態度がきめられるか、あるいはもっとその後になりますか、いずれにいたしましても、いましばらく相当の時間をちょうだいさせていただきたい、かように考えておるわけでございます。
 なお、その間ENDCに参加いたしましてから最初の会合が七月三日からジュネーブであるわけでございますが、その会議の空気なども相当の参考になるのではなかろうか、こういうふうにも考えておるわけでございます。
#45
○黒柳明君 西独なんかでもまだ議会筋に若干の論議する余地があると伺っていますし、また、きのうのインドのガンジー首相のお話でも、まだ慎重を期したい、こういうことですし、自民党、与党の一部でも慎重論がある。野党も、まだ社会、共産そうして私どもも――私どもは基本的には精神は賛成ですけれども、まあ条文、条項そのもの、まだまだ不平等性を含むものである、こういうことで反対せざるを得ない、こういう立場をとっているわけです。ですから、外務大臣がまだ時間をかしていただきたいと、こう言うおことばの中には、当然西独あるいはインドと同じような、条項そのものについて全面的に満足するものではない、こういうようなお考えからですか、いまのお話というのは。
#46
○国務大臣(愛知揆一君) これは西独あるいはインド等ともまた私は日本は違う立場ではなかろうかとも思いますけれども、そういったような点につきましても、考えるべきところは十分に考えた上で処理したい。ただ、ただいま条項の上での問題というお話もございましたが、これはいい悪いは別といたしまして、いまさら申し上げるまでもございませんが、条約文としてはもういわばクローズド・イッシューなんです。ですから、日本ががんばっても、条約の中をこれを修正するということはできないわけですから、結局、これに対して参加するかしないか、まあその際にいろいろのまた何がしかのことは考えられるかもしれませんが、条約それ自体としてはもうクローズド・イッシューになっております。その点が一つの特殊な点であるということもわれわれとしては心得てかからなければならぬと、かように考えております。
#47
○黒柳明君 三木さんの場合には、コンセンサスを形成すると、こういう意味も当然あったんでしょうけれども、野党の意見を三回か四回聞きまして、それが、いま外務大臣、若干日本の意思も条文の中に反映されていると、こういうふうに言われたんですが、なきにしもあらずだったと思うんですけれども、相当軍縮会議に臨む、こちらも参加して、そこで発言もしなきゃならないでしょうし、また、沖縄との関係も若干当然からむ必要性も起こってくるんじゃないかと思うんですけれども、コンセンサスを形成する意味からも、まあ前外務大臣のやり方を踏襲するというわけじゃないですけれども、またこの際、いまも発言がありましたように、野党の意見ももう一回聞くと、こういうようなことはお考えになってみないですか。
#48
○国務大臣(愛知揆一君) まあ率直に申しまして、与党の中の意見もまだ固まっておりませんわけですから、その辺から始めていかなければならない、いずれにいたしましても、さように考えております。
#49
○黒柳明君 沖縄の返還との関連性というものは全然お考えになっておりませんですか。一部には、やっぱり沖縄返還とからんで核防条約の調印を迫られるんじゃないかと、こういうようなことがうわさされているわけですが、その必要性はどうでしょう。
#50
○国務大臣(愛知揆一君) この委員会におきましても、そういう御論議が、非常にきめこまかに御質疑をいただいたこともございますが、そういう点も十分頭の中に入れて処理をしてまいりたいと考えております。
#51
○黒柳明君 条約そのものの中にまあこちらが手を加える余地はないと、これはもう当然そうですけれども、若干まだこちらの意思を反映できないこともないと思うんです。ですから、まだまだ一〇〇%満足し得るものではないわけですから、いろんな方面からの意見を聴取して、不平等性というものを除去していくと、こういう努力も積み重ねる必要もあるんじゃないかと思うんですが、あるいは、まあそういうことは全面的に考えない、あとはその時期を待ってともかく調印、批准をすることだけが残されておると、こういうことでしょうか。
#52
○国務大臣(愛知揆一君) 私、先ほど申しましたのはそういう意味じゃございません。条約としては修正の余地はございません、現状は。しかし、日本がそれに対して態度をきめます場合に、その態度をきめるときに日本としてとるべき姿勢については何がしかの考慮ができるかもしれない、そういう意味を申し上げたわけでございます。
#53
○黒柳明君 問題は違いますけれども、ソ連に行かれるというようなことも、きのうの、またきょうあたりの新聞に出ていますけれども、まだ決定はされていないと思うのですが、向こうからの訪日、外務大臣の訪日ということはちょっと考えられないわけですけれども、日本の外務大臣として訪ソするという、こういうお考えはいかがでしょう。
#54
○国務大臣(愛知揆一君) 実は昨晩何か放送もあったようですし、今朝の新聞も私も見たのでありますけれども、訪ソあるいは向こうの訪日ということはまだきまっておりません。これも御質疑がございましたからこの際明らかにさせていただきますけれども、九月の上旬にベルギーのブラッセルにおきましてヨーロッパの大使会議をやることにしております。これには駐米大使の参加も求めておるわけでございまして、先ほど申し上げましたアジア公館長会議などと同様に、それからきょうもここでも御質疑が出ておりましたが、ヨーロッパ、ソ連等の情勢等も十分掌握をしなければならない、その上で国連総会に――九月の十六、七日ごろからと予定しておりますが――国連総会に出、同時にまた、ロジャーズ長官との第三回会談もその際に別にワシントンで行ないたいと、こういう日程を心組んでおるわけでございますが、時間的の関係もございまして、現在シベリア経由で参りますのが一番時間的にも早いわけでございますので、シベリア経由で参りたいと考えている、そういうところからこの訪ソ説というものが流れ出したというふうに私は考えておりまして、その際、たとえばソ連のほうの人が、寄るのならばそのときに何か話でもするというのならば、またそれも考えられることかと思いますが、そこまでのことはまだ何らきめておりません。
#55
○黒柳明君 沖縄問題も非常に煮詰まる段階にありますし、十一月の総理の渡米のときには相当な線も出ると、こう期待されるわけですけれども、当然に北方領土問題についても急速にやっぱり返還の方向に積極的に日本の外務省としても乗り出さなければならぬじゃないか、何も沖縄後が北方領土というふうにきまった問題でもありません。従来も北方領土についての接触はなされてきているわけですが、特に沖縄問題が固まる方向に一応は行くであろうという時期ですから、いまの訪ソについては、まあうわさあるいは単なるそういう行きがかり上の報道であるにしても、外務大臣としては積極的にこの北方領土問題もこの時期に解決しなければならない、こういう御意図はないでしょうか。
#56
○国務大臣(愛知揆一君) 私にはもちろんございますし、それから、衆参両院におけるいろいろの御論議を通しましても、北方領土問題についてもっと積極的になれ――まあ、今回の報道とは別でございますけれども、おまえもなるべくすみやかな機会に訪ソしてこの問題をさらに打開するようにという御激励もいただいておりますので、その点は、今回の報道とは別に、私も積極的に考えなければならないかと思っております。
#57
○黒柳明君 けっこうです。
#58
○委員長(山本利壽君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト