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#1
第061回国会 外務委員会 第19号
昭和四十四年七月十日(木曜日)
   午前十時二十五分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 利壽君
    理 事
                佐藤 一郎君
                長谷川 仁君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                石原慎太郎君
                梶原 茂嘉君
                杉原 荒太君
                高橋  衛君
                廣瀬 久忠君
                三木與吉郎君
                岡  三郎君
                羽生 三七君
                白木義一郎君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務大臣官房長  齋藤 鎭男君
       外務大臣官房領
       事移住部長    山下 重明君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省条約局長  佐藤 正二君
       外務省国際連合
       局長       重光  晶君
       大蔵大臣官房審
       議官       細見  卓君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       外務省条約局外
       務参事官     高島 益郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
 めの日本国とインドとの間の協定を修正補足す
 る議定書の締結について承認を求めるの件(内
 閣提出)
○国際情勢等に関する調査
 (国際情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本利壽君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とインドとの間の協定を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#3
○森元治郎君 まとめて御質問をいたします。
 この修正補足議定書のポイントは、二条、四条、交換公文でしょう。そこで、二条の補足に当たる新たな規定ですね、これの説明をもう少ししてもらいたい。特に「他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされることはない」という、この辺の定義などに関して触れてもらいたいし、四条は八条の3と関連する修正だと思うんですね。例の船舶所得に関する課税率の軽減、五〇%を五五%にするという、これに関連しては、日本の船会社などは年間にどれくらいの金額を納めるものだろうかということですね。もう一つ、それから交換公文の十項目に関する「特別の奨励措置」だ。この場合の日本の投資家がこれによって均てんする措置というのはどういうものだろうかという三点を一括して伺います。
#4
○政府委員(細見卓君) はじめちょっとおくれましたので、あるいはピントがはずれたことをお答えすることになるかと思いますが、恒久的施設の問題につきましては、いままでのインドとの間の条約におきましても、大体の事業活動というのは網羅しておりまして、これによって課税の疑義を生ずるというようなことは、このために生じたということは実はなかったわけでありますが、そのほかの国との条約等を見ましても、ここに掲げておりますような事業活動については、いわゆる情報の提供あるいは科学的調査というような、主として補助的なものでありますから、これについては恒久的施設とはみなさないというのが一般原則として広く認められておりました。それをこの際新たに文言にいたしたというわけであります。これによりまして、このことから直接どうということはないと思いますが、本邦の事業家などがインドへ出てまいりまして活動する場合に、より明らかな形で、こうした場合は課税になるし、こうした場合は課税にならないということが判断できるようになるかと、こういうわけでございます。
 それから、船舶の課税の関係につきましては、これは先般も申し上げましたように、金額といたしましては、いままでの実績で見ます限り、年間六千万を下回る程度のものになろうかと思いますが、しかし、こういう形で、私ども本来は船舶につきましては相互免税ということが一番望ましい姿であろうかと思いますが、インドのように海運事業育成の過程にある国として五〇%というのはほかにも例がありまして、インドとの間にもこういう条約になっておるわけでありますが、それをインドのほうで、従来の五〇%の割り引きにかえて、五%ではありますが、さらにその相互の交流を促進する意味においてこの課税軽減割合を拡大していただいたということは、それなりの意味があるのではないかと思います。したがいまして、租税条約を結びまして、それが直接事業活動にどうこうということは、税そのものが事業活動の結果に対する課税でございますから、それ自身によって直接どうこうということはございませんが、これからインドにおいて事業活動をいたす場合に、日本とインドとの間の租税条約がこういう形で、改善されるような形で結ばれていく、そういう国際環境というのは、事業家のインドにおける今後の活動に大いに役立つものになるのではないか、かように考えております。
#5
○森元治郎君 十項目の交換公文のほう。
#6
○政府委員(細見卓君) スペアリングの点についてであろうかと思いますが、これはインドが、いろいろ開発にあたりまして、この条約に定めておりまする場合の課税免除というものにつきまして、新しい法案あるいは新しい制度というようなものを導入した場合に、いかなることを日本政府としては日印租税条約の精神に従って協力するのかということについて、ただ税を減免するだけというわけにはまいりませんので、その内容について一応両国の間で明らかにし合っておくというのがたてまえでございます。
#7
○森元治郎君 二重課税回避の協定というのは、もうこの国会でも七つか八つくらい出ているだろうと思うのですが、毎国会非常に多いわけで、これを取り扱っている委員会の委員としての感じからいくと、本協定ができていて、修正補足するとプロトコルが出てくるわけだが、これは手続上、一々国会の批准を要さなくてもいいんじゃないか。本協定には大筋がぼすんとできている。それを、小さいやつを一々もったいつけてサインしてやるほどのこともないように思うので、これは条約を扱う専門家と、大蔵省の審議官の税金のほうの見地から、この国会に出さなくて何とかならないか、出さなくて済むのじゃないか、その点をちょっと。
#8
○説明員(高島益郎君) ただいま先生の御質問、まことに政府の気持ちをある程度代弁していただいたような御質問で、非常に寛大な御質問だったと思いますが、これは租税条約に限らず、一般の条約締結の方針に非常に関係するものでございますので、その観点からお答えいたします。
 政府といたしまして条約を締結いたします場合に、その条約の内容が国民の権利義務というものに関係がある場合、これは国会の御承認をいただいて締結するという方針を定めております。したがいまして、一たんそのような形で御承認いただいた上で締結した条約の改正にあたりまして、その内容が国民の権利義務に直接関係しないものがあるといたしました場合においても、それはやはり国会の御承認をいただかなければ改正し得ないたてまえでいままで手続を進めてまいっております。租税条約の場合は、もちろん、これは改正の内容自体も国民の権利義務に関係する部分がございますので、いま言ったような点とは若干問題が違いますけれども、もしかりに、この租税条約の改正部分におきまして、全く権利義務に関係のないような、法律事項に関係のないようなものがたとえあるといたしましても、それはわれわれとしては国会の御承認なくして締結するというわけにはまいらないというたてまえで進めてまいっております。ただしかし、ただいま法律がございまして、その法律の中でそういう改正を行政府限りでできるというような場合におきましては、そのような改正はもちろんその法律の授権する範囲内でございますから、それは当然行政府の権限としてできるというたてまえでやっております。
#9
○森元治郎君 相手国もやっぱり同じような法体系でやっているんですか。
#10
○説明員(高島益郎君) これは、それぞれの憲法上のたてまえ、憲法に基づきます行政府のいろいろ慣行というようなものも関係いたしまするので、必ずしもわがほうと同じだとは申し上げられません。したがいまして、この条約につきまして日本では国会の承認をいただいた上で締結する、しかし、相手国では国会の承認は要らないという場合が間々ございます。
#11
○委員長(山本利壽君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
#12
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
#13
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とインドとの間の協定を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
#14
○委員長(山本利壽君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
#15
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#16
○委員長(山本利壽君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#17
○羽生三七君 三、四お尋ねをいたします。
 その第一は、先日マイヤー駐日大使が内外記者団との会見で、沖繩問題に関連して、その見解を明らかにしたようでありますが、その際、マイヤー大使は沖繩返還に関連して、韓国との約束を守るということにかなりの力点を置いて、さらに、西太平洋全域と関連をして、この問題の処置を考える、こういう意味の発言をされておるわけであります。そこでお尋ねいたしたいことは、私たちはもちろん日米安保には反対ではありますが、それはもう言うまでもないことでありますけれども、しかし、その条約の中に極東条項があるのですから、アメリカの立場から言えば、当然この極東の問題に関連して発言しておると、こういうことはそれはわかりますが、しかし、この沖繩返還という問題は日本の固有の、また基本的な権利に関する問題であって、マイヤー大使の発言している問題とは次元が違うのではないか、本質的に問題の性格が違うのではないか、こう考えられるわけであります。したがって、その理解からお尋ねをしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
#18
○国務大臣(愛知揆一君) マイヤー大使とは昨日安保協議委員会で御承知のように私も会っておりますけれども、ただいまの新聞会見で述べたと伝えられているような意見は、何ら話を聞いておりません。したがいまして、いずれまた沖繩問題等について意見を述べることがあろうかもしれませんが、前もって何かこれに対して私がコメントすることは差し控えたいと思います。アメリカの大使としての意見は新聞に伝えられたところで承知いたしておりますが、両国間の外交関係の話し合いにそういうことは出ておりませんので、私としてはマイヤー大使の言動に対するコメントを私は差し控えたいと思います。
 それから、沖繩返還の問題と韓国との関係のお尋ねについては、日本政府としては、前々から申し上げておりますように、これは日米両国間の問題でございます。アメリカの考え方、それに対して日本がどう考えているかということで、両国間の話し合いでいきたい、こう思っております。
#19
○羽生三七君 大臣と大使との間にはまだそういう意味の話し合いはなかったことはもちろん承知しておりますが、しかし、内外記者団との会見の際に、大使の話されたことの全文が明らかになっておりますのでお尋ねしたわけであります。
 しかし、質問をさらに先に進めますが、そこで朝鮮半島の緊張とか、あるいは台湾海峡の緊張ということ自体というものは、これはもう私いつも申し上げるように、第二次世界大戦の終戦処理の結果として起こった問題であって、これは日本の責任ではないと思うのであります。したがって、いま大臣、最後のところでお答えがありましたが、これは沖繩返還問題はあくまでも日米間の固有の問題としてお取り扱いくださることを特に強く希望いたしておきます。
 それからその次は、この大使の発言の中に、「西太平洋全域と関連して」云々という部分があるわけであります。それで、これも大臣が、「直接聞いたわけではないから」とおっしゃればそれまででしょうが、しかし、これはかなり明確に、この文章を読んでみると、これを明らかにしております。だから、「沖繩問題は、西太平洋地域全般の情勢のなかでその地域の安定をささえるというワク付けのなかで考えなければならない」という、そういう表現をとっておりますが、この場合、極東の範囲というのは、かつてしばしば論ぜられた問題でありますが、これは前の政府見解と変わりはないかどうか、これをお伺いいたします。
#20
○国務大臣(愛知揆一君) 「西太平洋」ということばを使っておるようですけれども、それはそれとして、政府としての極東というものに対する解釈、これは前々からの統一見解と申しますか、解釈と全く同じで、それより出てはおりません。
#21
○羽生三七君 それはここに私。プリントしたものを持ってきましたが、これは愛知大臣が安保条約の特別委員会で発言――それは大臣のときではない、一委員として発言をされて、それに対する岸総理大臣の答弁、この抜粋でありますが、ここに出ているわけであります。それをいま大臣がお答えになったとおり、明確に「フィリピン以北」云々という例の統一解釈がここに明らかにされておるわけであります。しかし、一体マイヤー大使の言っておる「西太平洋全域」ということばはきわめてばく然としておるようで、アメリカとしてはずいぶん通俗的に使っておるようにも見受けられますが、しかし、条約なんかの解釈の場合には、かなり厳密にその地域、範囲というものを限定しておかないと問題が起こると思う。そういう意味で、これはアメリカとしては、いまの日本の統一見解、 「極東の範囲」における統一見解と、アメリカの言う「西太平洋全域」というものとは、一体どういう何らかの差があるのかどうか。そこらのところを、大臣でも事務当局でもよろしいですから、お聞かせください。
#22
○国務大臣(愛知揆一君) これは先ほど申しましたように、マイヤー大使がどういうつもりでそういう辞を使ったのか、あるいは私の解釈の「極東」というものとどういう関係を想定し、頭に置いて言ったものか私わかりませんですけれども、いまもお話がありましたが、常識的な範囲で使ったことばではないかと思いますが、ただいまのところ直接話し合っておりませんものですから何ともわかりませんですが、しかし、わがほうの立場というものは、ただいま御指摘のとおり、当時の岸総理大臣の答弁いたしました政府の解釈というものを私としても受け継いでおるわけでございます。
#23
○羽生三七君 私はこの問題はこれでやめますけれども、最後に、いまの問題の最後ですが、要請しておきたいことは、日本の統一見解はきまっておるのですから、マイヤー大使あるいはアメリカ側がこの「極東の範囲」について新しい解釈を示して、「西太平洋全域」という問題についての日本の統一見解と違うような問題を持ち出しても、日本は従来の立場を堅持すると、こう理解してよろしいでしょうか。
#24
○国務大臣(愛知揆一君) そのとおりでございます。この点は、先ほど特に御要請がございました、沖繩問題は日米両国間の話し合いで処理をつけるということと、それから、ただいまの「極東」の解釈というものについては、全くお説のとおりに私も御同感であり、そういうふうにいたしたいと思います。
#25
○羽生三七君 それからもう一つ、このマイヤー大使の発言に関連してもう一点だけお尋ねしておきたいことは、その発言の中に、「沖繩の核兵器の有無も答えるわけにはいかない」と、こう発言しておるわけです。そうすると、これは内外記者団に対してそれを示すわけにいかないと言ったのか、返還交渉の場合には当然日本政府にはもちろんこの話があるものと理解したいのですが、それでよろしゅうございますね。
#26
○国務大臣(愛知揆一君) そのとおりでございます。
#27
○羽生三七君 それではその次の問題。
 十八カ国軍縮委、まあ今度は二十カ国ですが、軍縮委員会に関連する問題をお尋ねするのですが、その前に、今度日本はモンゴルとともに二十カ国になったわけで、また、日本からの議員団もいま――たぶんきのうかきょうあたりモンゴルへ親善使節団が行っておるようでありますが、日本としては、国連の承認はあったわけですが、日本としての直接の国交はまだ持っていない現状ですが、何らかこれ国交を持つような方向に進んでいるのかどうか、その辺をひとつ伺います。
#28
○国務大臣(愛知揆一君) モンゴルにつきましては、ただいまもお話がございましたように、日本としてはもう事実上承認しておるというわけでございます。事実上の承認をしておるんでございますが、問題は、いつお互いに在外公館を交換し合うかという意味を主として、いわば何といいましょうか、正式の国交ということにするのがいいかということにかかっておるような感じでございます。将来の問題としてはそういう方向にいくことが望ましいかとも思いますけれども、なお、慎重に検討いたしたい、かように考えております。同時に、もう事実上の承認関係がございますから、たとえば人の交流でありますとかそのほかの問題については、もう現在でも正式承認国と同じような関係においてすべてが行なわれていると、かような状況でございます。
#29
○羽生三七君 それは一年前に当委員会で質問したときとほぼ同じような現状のようですが、その慎重にしなければならない主たる原因は何でありますか。
#30
○国務大臣(愛知揆一君) やはり中国の現状というものにつきまして慎重な考慮をしなければならない、そういうことが主たるこの考究すべき要件ではなかろうかと、かように考えております。
#31
○羽生三七君 じゃ、この問題はこの辺にしておきます。
 次に、いまのジュネーブ軍縮委員会で日本が化学生物兵器の禁止を主張したのは、これは正しいと思います。それからまた、これに関連してウ・タント国連事務総長もこの禁止の呼びかけをしておるわけでありますし、また、英国も何か具体案を出したようであります。それからまた、ソ連は一九二五年の協定を日本とアメリカは批准すべきではないかという意味の発言もしておるようでありますが、この問題については私が本年の三月十二日の予算委員会で外務大臣にお尋ねをしたわけであります。一体どうして一九二五年の議定書を日本は批准しなかったのか、調印はしたけれども批准しなかったのかということをお尋ねしたわけでありますが、それに対して政府委員――これは外務省ではありません、防衛庁ですか、簡単なお答えがありましたが、外務省からは何らの明確なお答えがなかったわけであります。そこで、その事情をちょっとお聞かせいただきたいと思うんですが。
#32
○国務大臣(愛知揆一君) ただいまお話しのとおりでございまして、一九二五年の議定書は当時批准をしていないのでございます。そこで、本年の三月、予算委員会で羽生委員からお尋ねがございましたときに、実はその当時の事情をよく調べなければならないと思いまして、お答えを留保して調査をいたしまして、当時外務省に勤務しておった人などの意見も思い起こしてもらいまして当時の事情を聴取することにつとめたんでありますけれども、確たる理由というようなもの、公式に御説明するほどのものがなかったものでありますから、そのことを場外で非公式にとりあえず御説明申し上げておいたわけでございますが、その後も私も実は気がかりになって、そのときの状況はどうだったんだろうかということを、その後も引き続き調べるようにしておりますが、どうも事情がはっきりいたしません。率直に申し上げるわけでございます。
#33
○羽生三七君 そこで、まあ過去のことはよろしいんですが、軍縮委員会でこの問題を日本が、朝海代表が演説をしておるのでありますから、当然それを具体化しなければならぬと思います。そこで、その場合には古い一九二五年の議定書をあらためて国会で批准をするというような形もあるわけですが、あまりにも古いことになるわけで、ソ連はこれを要求しておるようです。それも必要でしょうが、同時に、イギリス案も出ておるようですし、日本自身として何らかの案を持つなり、イギリス案が具体的に出てくれば、それがどういうものかわかりませんが、それをよく検討してそれに賛成するなり、あるいは一九二五年のものを批准をするなり、何らかのことをやらなければ、演説をぶっただけでは何にもならぬと思うんですが、その辺はどうお考えでしょうか。
#34
○国務大臣(愛知揆一君) これは全くごもっともで、私も、その関係があるものですから、その後も過去のいきさつを私としてもぜひはっきりさせたいと思って調べたわけですけれども、その事情がどうもつぶさにわからないのです。そこでちょうどいまお尋ねのとおりの私も心境なんでございますが、一九二五年の議定書を、たいへん古いことではありますが、この際批准するというのも一つの態度であり得るかと思いますが、同時に、関係国の間からそれも全部含んだ新しい条約案の提案もありそうでございます、まだ出ておりませんけれども。あるいは、そういうものが適当であるという場合には、新しい条約案として取り扱うことも一案であると思います。さらに進んでは、その状況を見て日本として提案をするということだって考えられないことはないと、こういうふうな考え方で、要するに、一九二五年の議定書の規定している内容、さらにそれを全部カバーして。プラス・アルファでよりよいものができるなら、それに対する態度を決定することによって本件にけりをつけるといいますか、現代に即するような日本国としての態度を表明することができるのではないだろうか、かように考えておるのが現状でございます。
#35
○羽生三七君 それはぜひそれを推進していただきたいと思います。
 ウ・タント国連事務総長が新しくこの問題の呼びかけをしたのは、御承知のように、これは政府の資料ですね、「化学・生物兵器の新しい恐怖――原子・水素爆弾も子供のおもちゃ――」というこの見出しで、サンデータイムスが昨年これを伝えているわけですが、これはアメリカのダグウェイ実験場における化学生物兵器――これは毒ガスですが、その実験で数千頭の羊が死んだ場合の問題をこの資料は示しているわけです。ところが、つい二週間ほど前、アメリカの上院でそのときの問題が論議されて発表した。非公開の部分もありますが、発表した部分はそのときのことを確認したわけですね。しかも、だんだんわかってきたことは、これはもう非常な安上がりの兵器。ですから、どこでもつくれる。水爆、原爆のような費用はかからない。しかも、驚くべき惨禍をもたらすということで国連事務総長が取り上げたと思いますが、幸いにして日本代表がこの問題に触れて問題提起してくれたことは大いに敬意を表します。ですから、これはどういう形にしろ日本がそれを演説した限りにおいては、ぜひ成功さしてもらいたい、こう思いますので、あらためてこれをすみやかに成功させるよう希望しておきたいと思います。
 次に、昨日の日米協議委員会で、アメリカ側が中国の核の脅威をあらためて説かれたようでありますが、これはやっぱりジュネーブ軍縮委員会で朝海代表が演説の中でこういうことを言っておるんですね。要するに、中・仏が参加しなくては意味がないということを言っておるわけです。ところが一方では、日本ではやはり重要事項指定方式を持ち出して中国の国連加盟を実際上は阻止しておる。これは問題が違うんだとおっしゃるかもしれませんけれども、まあ非常にこれは矛盾したことになる。そこで、私しばしば申し上げますように、中国の国連参加を促進するとともに、もしそれがすぐできなければ、私がしょっちゅう繰り返して申し上げることですが、中国、フランス等を含むいわゆる核保有国を中心とするいわゆる核軍縮といいますか、世界軍縮首脳会議というようなものを開いて、そこに中国、フランスの参加を求めてはどうか。ここに原爆の実験後の中国周恩来首相の演説の抜粋を持っております。少なくとも、その後変化のない限りは、アメリカを含む太平洋地域の核非武装地帯をつくりたいとか、あるいは核兵器を全面的になくそうとかいうことを言っておるわけです。ですから、しばしば申し上げますように、参加をすればまことにけっこうと、もししないとするならば一体どういう事情なのか、いわゆる文革後の中国の動向というものもある程度わかると思うのであります。ですから、一方において核軍縮を唱えながら、中国、フランスが参加しなければ意味がないと――これ、朝海代表の演説ですね――言っておるだけではどうにもならないので、この矛盾を一体どう解決するのか。私はいま自分の考えを述べたのですが、私がいま述べたこと以外に、一体この矛盾を解決する道はどういうことがあるのか、もしあれば、その方向を示していただきたい。
#36
○国務大臣(愛知揆一君) 私もたびたび申し上げておるところでございますけれども、中共政府が対外的に、何といいますか、柔軟路線といいますか、もう少し国際社会に対する寛容な態度、これをだんだん示してくれるようになることを期待しておるわけでございますが、これはやはり中共自体の態度の問題に非常に大きなウエートがあるわけでございますから、こちらとしては願望を披瀝するにとどまるわけであって、特に朝海代表をして発言させておりますように、核の問題等については、フランス、中国というようなところが参加しなければ実際意味がない、これはもう客観的な事実をそのまま表明しておるわけでございます。そういうところからして、中共というところが他に脅威を与えないような、ほんとうに文字どおり平和国家であるような態勢を示してくれることを私どもとしては望みながら情勢の展開を待っているというのが、偽らざる私どもの現在の態度でございます。
#37
○羽生三七君 きょうはこれを論ずるのが主題ではありませんから他に質問を転じますが、実際、いずれにしても中国の核開発がだんだん進んでいくのはきまったことで、ただそれのテンポが早いかおそいかというだけのことだろうと思います。したがって、それが進むにつれて中国の核脅威という問題を必ずアメリカは持ち出すし、また、日本の中でもそういう議論が起こるだろうと思います。それに対する有効な対策は、それに対して「核には核を」ということではなく、全般的な軍縮も含めて、新しい一つの平和のあるいは核軍縮の方向というものを探究していかなければならないと思います。したがって、その意味でもっと具体的な方針が持てるようにさらに問題の前進をさせるように希望しておきます。これはこの程度にとどめます。
 それから第三点は、やはりジュネーブ軍縮委員会で、日本が核の地下実験禁止を主張したことも正しいと思います。ただ一つ、それは正しいには違いないが、一つの疑問があります。ちょうどさっきの中国の核の問題と同じような矛盾があります。それは、日本が核防条約に関連して平和利用の成果を非核保有国も享受しなければならぬというたてまえをこれはとっておるわけです。一両日前ですか、自民党の外交調査会でもそういう方向を出しておるようです。しかし、現状では核の軍事利用と平和利用とが明確にいま区別しがたい今日の段階で、この地下実験の禁止と平和利用との関係は一体どういうことになるのか。たとえば日本政府は六月二十八日に国際原子力機関に文書で平和目的の核爆発実験の公開を求めたいという意思表示をしておりますね。六月二十八日のこれは新聞に出ております。そうすると、平和利用という、いわゆる大気圏の実験はできないのですから結局地下実験になるわけですけれども、それは軍事利用も平和利用もないのです。大気圏の実験ができないとすれば、地下実験になる。そうなると、地下実験を禁止しろという主張は正しい、われわれは全面的に支持します。ところが、それと一体平和利用をやる場合にはこれを公開せよと、その平和利用の場合もこれは地下実験以外にその道がないとするならば、これは非常な大きな矛盾とぶつかることになる。これは私の理解が間違っておるのかどうかわかりませんが、この辺は一体どういうことになるのか、ひとつ解明をしていただきたい。
#38
○政府委員(重光晶君) ただいま羽生先生の御指摘になりました問題、実は私どもの理解している限りにおいては、平和利用のための核爆発というものがまだ現実に技術的に完成していないというのが事実でございます。それにまつわる議論といたしましては、それが技術的に完成した暁においては、その技術的要素をも考えましてこの核爆発禁止の条約と何らかの調整をはからなければならないという考え方が一般的でございます。ただ、これはまだ技術的に完成しておりませんものですから、どういうふうにかみ合うかということは、いまの段階においてどこの国もはっきりした意見を出していない、これが現状ではないかと了解しております。
#39
○羽生三七君 それは現状の説明はそれでわかりますが、どうしたらいいか、理論的に非常な矛盾ですからね。明確に平和利用と軍事利用とが区別がつかぬ。これはそういう段階では非常にむずかしい問題だということはよくわかりますが、そうすると、この大気圏では実験できないとすれば、大気圏以外では地下実験以外にないのだから、それを禁止すると、われわれもそれを全面的禁止に賛成ですけれども、そのことと平和利用ということと、しかも公開せよと日本が要求しておるわけですね。これは外務省ですか、科学技術庁ですか、とにかくそういう要求を国際原子力機関にやっておるわけです。どうもその辺は理論的に非常に矛盾するのではないかと思います。
#40
○政府委員(重光晶君) この平和利用のための核爆発、これはいま申しましたように、技術的に完成していないものですから、これにまつわる国際的な制度もまだ完成しておりません。ただ、考え方といたしましては、平和目的のために核爆発をやる場合には、国際機関でそれを統制するのが好ましい、そういう考えから軍事利用のものとは格別に区別すこるとができるであろうというのが考え方でございます。ただ、先ほど申されました核実験禁止の条約とどういう組み合わせになるかということは、技術的な問題が解明せられてからと、こういうことでございます。
#41
○羽生三七君 これはわかったようなわからぬようなことですが、これは一つの問題として提起しておきます。これは十分御検討を願いたいと思います。これは大臣どうですか。
#42
○国務大臣(愛知揆一君) これは実際わかったようなわからないようなことであるとおっしゃるのが私は正鵠を射ておると思います。これは私も専門ではございませんからなにでございますが、非常にこれはむずかしい、また複雑な問題だと思いますので、その道の専門家等の意見を十分聞いて政府の考え方というものはだんだんに固めていかなければならない、かように考えております。
#43
○羽生三七君 それは他日の懸案にしておきます。
 そこで、この間森委員が日本の核探知の能力について御質問になったわけですが、私の知っておる範囲では、どうも日本がこのジュネーブ軍縮委員会で相当な能力を持っておるように発言されたようですが、やはりアメリカや、ソ連、続いてイギリス、この三国が一番探知能力はあるようですね。すると、日本の能力はその他の国に比べればすぐれておるようですけれども、決して米ソ等に比べてそんなにすぐれておるものではないというのが現状ではないかと思われます。ですから、もしこれをやるなら、私は若干専門家のほうへいろいろ調べてみたんですが、私は予算でも少したくさん取って、核探知クラブのメンバーに値する成果をあげるようにと思ったんですが、これは予算だけじゃだめで、スタッフがまず第一番に必要だろうと、機械等の設備の問題もあると思いますが、人事関係等もあって、なかなか容易ではないと思うけれども、まあ、あれだけの演説を軍縮委員会でやられたのなら、それに値することをやらないと、どうもアメリカやソ連、イギリス等が日本よりはるかにすぐれたものを持って、その国自身がやっておることを、こっちがはるかにおくれた技術水準で探知といっても、これは実効はなかなかあげかねると思うんですが、その辺はどうなのでしょうか。ジュネーブでは非常に日本が確信に満ちた発言をされておるようですが、そんなにすぐれた技術水準ではなさそうでありますので、ちょっとお伺いしておきます。
#44
○国務大臣(愛知揆一君) 私の考え方はこうなんです。日本自身が非常な金を使う、あるいは日本自身がそういう探知機構を持ってそして世界じゅうの探知をしようというような、そんな大それた考え方を持っているわけではございません。これは私どもの理想として、国際機関がそういう大きな崇高な使命は担当すべきものであって、そこに対する科学技術的な協力、そして日本の知恵とか考え方というものがそういうところに活用されるということが私はねらいでなければならないと思いますから、日本だけが探知機構を持って、そして国際的ななにをやろうというところまで私は考えておるわけではございません。もしそうならば、これはまあおそらくたいへんな金と機構と施設が要るのではなかろうかと考えております。
#45
○森元治郎君 ちょっと関連して。この核探知の話を一生懸命勉強しているんだが、結局こういうところに問題のむずかしさがあると思う。「確かにつかまえた。麹町の何丁目でドカンとやった」と言っても、これはよその国だといえば、入っていけない。四丁目のそこの町内会長は、「そんなことはさせないよ、それは別の音じゃないか」というようなことになったら、何ぼどこの国がやったやったと言っても、これはどういうふうになりますかね。やはり相互信頼、協力ということができないと、探知しても、その音は別の音だろうと言われたときにはどうしますかね。
#46
○国務大臣(愛知揆一君) そういう性質のものでございますから、ですから、各関係国の相互信頼をもとにした、同時に、理想的に言えば、やはりそこに査察ということが当然保障されなければ目的を達することはできないと思います。ですから、これはもうちょっとやそっとのことでない。非常な人類的な大事業である。したがって、いま、えらそうなことを言ったとおっしゃいますけれども、そういうことを提唱し、そういう考え方が国際的に出てきて、そしてそれが完全に保障ができるところまで持っていくという、非常に大きな、長い時間のかかる私は国際的な大仕事だろうと思う。それに少なくとも日本は積極的に協力をしたり、指導的な立場に入るべきではないかという意欲を持って当たりたいと、こういうわけでございますので、考えれば考えるほど、むずかしい問題だと思います。
#47
○石原慎太郎君 ちょっと関連質問さしていただきたいんですが、いま大臣が査察ということをおっしゃいましたけれども、これはつまり非保有国が保有国に対する査察という意味でおっしゃられたのですか。
#48
○国務大臣(愛知揆一君) それは、現に現在でも核防条約などについていろいろ問題がありますように、理想的に言えば、全世界の各国が一国残らず参加した国際機関が平等に査察ができるような国際機関をつくって、その査察に平等に応ずるという態勢がなければ、ほんとうの理想的な姿ではない、かように考えますので、どうもここに常識的に申し上げておりますことを、こういうことはどうだ、こうだということになりますと、非常に御説明がむずかしくなると思いますが、私は理想的に言えば、いま申したとおりだろうと思っております。
#49
○石原慎太郎君 そうすると、それは愛知大臣個人の核散防なりに対する一つの基本的なもののお考えと解釈してよろしいですか。
#50
○国務大臣(愛知揆一君) 基本的には、理想的にはそのとおりだと思います。ただ、政治の問題として現実的にとらえた場合に、やはり妥協ということもあるだろうと思います。
#51
○羽生三七君 そこでですね、技術的な問題は別として、これは日本がそういう地下実験の禁止を提唱しておるわけですから、その場合には、それを結実させるためには核拡散防止条約の修正という形をとるのか、単独の何か別の条約というものが考えられるのか。もし単に一般的な注意を喚起するということであるならばいいですが、成功させるということならば、具体的にどうするかということがなければならぬと思いますが、その辺はどういう判断をなさっておられますか。
#52
○国務大臣(愛知揆一君) これは見通しの問題にもかかってくると思いますけれども、私のこれは私見でございますけれども、核防条約は条約として、そして核地下実験の停止ということについては、私は別個の条約でもいいのではないかと思っております。
#53
○羽生三七君 それは何か日本としては情勢によっては用意をするなり考慮するということを考えての御発言でしょうか。
#54
○国務大臣(愛知揆一君) それは全面核実験停止というものが技術的にできる、多くの国の同意を得られそうだということをまず見通しとしてつけなければなるまいと思いますけれども、そういうことを考えてみますと、新しい別個の条約であっても一向差しつかえないじゃなかろうか。いつもお話しありますように、現在の時点においては条文的にはクローズド・イッシューになっている核防条約に、わざわざこれは押し込めて考えなくても私はいいのじゃなかろうか。多数の条約体系でりっぱな目的が達成できるというならば、方法論にそう拘泥しなくてもいいのではなかろうか、こういうふうに考えるからそういうふうに申し上げたわけであります。
#55
○羽生三七君 最後に。まあ、いま全面核軍縮とおっしゃいましたが、それは私たちの希望として、朝海代表が出発する前に当委員会で申し上げておいたことがありますが、それはわれわれの基本的な希望でございますけれども、なかなかそれは容易でない。しかし、その段階の一つとして、いまの地下実験の禁止ということも政府は考えられておると思うし、またそういう意味の発言をされていると思いますね。したがって、それは核防条約の修正でなくて別個な案としてもよいと発言なさった以上は、具体的に問題を進展させていただきたい。というのは、私、ただいまもこの委員会で申し上げましたが、つくづく考えてみて、この軍縮問題の技術的また現実的な対策として、軍縮委員会で一つ一つ積み上げていくことも必要であるが、このいろいろな方法を総合してみると、軍縮委員会でこれはということが成功したことがほとんどないというのですね。ほとんど、結成以来いろいろな国からいろいろな発言があるけれども、結局超大国の意向に押されて、まとまった成果をあげることはほとんどできない。つまり、おしゃべりの場になってしまう。ですから、個々の技術的な問題も大事だけれども、やはりこの軍縮委員会、今度二十カ国ですか、その全体に活を入れるような次元の高い理想論もときどきぶち上げてもらいたいと思うのですよ。そうせぬと、ジュネーブ軍縮委員会へ行って何を言ってもだめだと、最終的には米ソ両超大国の意向どおりに動くので、他の国は何を言っても成功の可能性はないという空気が支配的だと聞かされております。でありますから、一つ一つ積み上げていくという努力も大事だけれども、同時に、ときどき、ひとつ日本が次元の高い理想論をぶち上げて、軍縮委員会に活を入れてやってもらいたいと、こう思うわけであります。これは向こうの実際の状況をいろいろ聞くにつけてその感を非常に深くいたしますので、これは御注文として申し上げておきますが、御感想があれば承りたい。
#56
○国務大臣(愛知揆一君) なかなかこれむずかしいところで、次元高くぶち上げることは私も大いに賛成なんですが、それをやればやったで、具体性がない演説だけしたって何になるかという御批判を受けるし、具体的なアプローチも必要だと思うし、その努力をしておるつもりですが、それでは何もできないじゃないかとおっしゃられる。まあ、お互いにまだこの問題に対するかまえ方というものはコンセンサスができてない、それだけに一人一人の考え方の中にもいろいろ矛盾や希望が錯綜しているんじゃないかと思いますから、たとえば最初の日本が参加した軍縮委員会も、これは八週間ですか、続きますと一応休憩になるわけですが、その間において最初に参加をした日本代表の気持ちなども十分私どもとしては参考にして、これからの日本の出方というものに理想を追いながら、また現実的にいろいろ活躍の姿勢というものも考えてまいりたいと、かように考えます。
#57
○羽生三七君 これで終わりますが、私の言ったことは決して矛盾しておるわけではないと思うので、個々の問題について具体的に実効をあげるような努力をしてもらいたいが、この軍縮委員会ではなかなかそれが進まないので、ときにはまあ大所高所の議論で関係国の注意を喚起するという努力もあわせてやらないと、なかなか実効があがらないんじゃないか、そういう意味で申し上げておるのでありますから、その点はお含みをいただきます。
 きょうはこの程度にいたしておきます。
#58
○森元治郎君 ソビエト訪問ですがね、ブラッセルの大使館には九月の十日ごろ。グロムイコ外務大臣が定期協議に来るのが日取りきまりましたか。
#59
○国務大臣(愛知揆一君) グロムイコ外相が来る日取りはまだきまっておりません。
#60
○森元治郎君 大体十月に入りますか、九月下旬ですか。
#61
○国務大臣(愛知揆一君) まだ何とも申し上げるところまでいっておりません。
#62
○森元治郎君 そうですが。今度訪問される目的をこの際伺いたいと思うのは、定期協議で九月か十月、大臣の国連出席もあるからでもありますが、その辺だと報道ではされておる。一月待てばここで十分定期協議で自分のホーム・グラウンドで話し合いができるのに、大使会議があるからといって、そのついでに寄る。何かこう急ぐような感じがするのですが、その間の事情はどういうことでしょう。
#63
○国務大臣(愛知揆一君) これは大体正確に報道されていると思いますから、特に申し上げることはないのでありますが、ヨーロッパの大使会議というものは、外務省といたしましてもかねがね非常に重要な会議と考えておるわけでございまして、これはブラッセルで九月の十日から開かれることになっております。これにはやはり在来外務大臣が出席して主宰することになっておりますので、これを行ないたい。ところが、すぐそれに引き続いて国連総会がございますし、また、アメリカとの間のいわば愛知・ロジャーズ第三回の出会いというものも予定されておりますから非常に能率的に歩かなければなりませんので、シベリア経由で行くのが一番便利である、かように考えたわけであります。ところが、シベリア経由で行くということがソ連側にもわかりました。ソ連側として、それならばひとつモスコーに招待をしたいということが出てまいりましたので、これを受けたのが真相でございまして、これは定期協議とは全然別でございます。
#64
○森元治郎君 その際シベリアを通っていくということを向こうが知って、それでは大臣立ち寄ってくれというので招待を受けて、それでは立ち寄ろう、一たん寄る以上は、大臣も、新聞に話しているように、領土の問題を訴えるというのですが、何かこの機会を利用して新しい提案というか、あるいは、三木さんが行ったときにコスイギンが言ったように、愛知大臣としての思いつきのようなものがあるのか、特に用意はしていないのか、どちらですか。
#65
○国務大臣(愛知揆一君) 私は思いつきで大事な外交をやろうとは考えておりません。ソ連側が、そういう機会があるならばモスコーに寄ってほしいと招待をしてくれましたからこれを受けたわけでございまして、十分じっくりひとつまだ間のあることでもございますし、私としての態度をどういうふうにするかということは、これから十二分に検討いたしたいと思っております。
#66
○森元治郎君 これは平和条約の締結と北方領土返還要求との関連ですが、共同宣言を昭和三十一年の暮れに結んでもう十三年もたっておる。その後、前大臣も、愛知さんも領土問題についてはソ連側と話をしておりますが、機会あるごとに、その事実というものは共同宣言の第九条にある「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する」、これは一種の平和条約締結に関する交渉の継続の一つのステップというふうに解釈してよろしいのか。いや、継続する平和交渉というものは別個に、交渉というものは別個にあるのだ、こういうふうに理解してよろしいのか、いずれでしょうか。
#67
○国務大臣(愛知揆一君) そういう点につきましていずれあらためて御説明もしたりまた態度を表明したりすることにさせていただきたいと思います。
#68
○森元治郎君 いや、私の伺っているのは何も特にむずかしいことじゃなくて、いま北方領土の返還を佐藤さんが向こうのポドゴルヌイ議長などに会ったときなどにもおっしゃることは、それは一つの平和条約締結に関する交渉の一端として行なわれておるのだろうか、いや、そうじゃなく、平和条約の交渉というのは、新たに日本が平和条約の締結に関して正式の交渉を持ちましょうと言ってから始まるのか、こういう事実だけの理解のしかただけを伺っておるのですがね。
#69
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、かねがね申し上げますとおり、北方領土の返還ということについては、それこそ機会あるごとに、あらゆる機会において忘れたことはございません。いつでも日本側の主張というものは申しております。私はテクニカルにこの条約がどうとか何とかということは別にして、領土の返還という国民的願望が達成できるように努力したいと、同時に、政府がいままで言っておりましたことはそれさえできれば平和条約は締結できると、こういうふうに考えております。きわめて常識的であり、法理論的ではないかもしれませんが、そういうふうに私は考えております。
#70
○森元治郎君 それでは、領土の話し合いが折り合いがつけば、即これは平和条約の締結に通ずるのだということですが、平和条約の話し合いをするということも、当然その中には、共同宣言にあろうとなかろうと、平和条約の大きなものは領土問題でありますから、平和条約締結に関する交渉を開きながら領土問題の話を進めることもできるのですね。日本政府としては、いや、そうじゃないと、交渉ということに入らないで領土問題を詰めていって、そうして見通しがついたならば平和条約の交渉に入るつもりだと、こういうふうに二つあると思うのですがね。同じようでありますが、ちょっと違うので、大臣のお考えをただしておきたいと思います。
#71
○国務大臣(愛知揆一君) 御意見は、聞きようによりましては、領土は二の次で平和条約さえ結べばいいんだというふうにも聞かれるようなニュアンスもあるようですが、さような考え方ではございません。領土問題が何より重大な国益であると、かように私は考えております。
#72
○森元治郎君 私は領土問題をドロップして平和条約の交渉をやりなさいなんて聞いているのじゃなく、平和条約といえば、さっきから何回も言ったように、当然領土問題も入ることは、これは明々白々たるものですから、平和条約の交渉に入るという形ですよ、形式を申し入れをしつつ、領土問題を従前どおり主張されていくという道をおとりになる道もあるんじゃないか、あるいは領土問題にある程度話を煮詰めて、見通しができて初めて平和条約の交渉に入るのかということを伺っただけなんです。
#73
○国務大臣(愛知揆一君) 私は領土問題が一番大事な問題だと、かように考えます。
#74
○森元治郎君 重ねて伺いますが、領土問題を、いわゆる形式上の交渉ということには入らないで、領土問題はそれ以前にしっかりしたものを見つけて、日本の主張に応ずるようなときになって初めて平和条約の締結の交渉というものは始められるべきものだと、こういうふうに理解してよろしいのですね。
#75
○国務大臣(愛知揆一君) くどいようでございますが、平和条約を結べばいいんだというようなアプローチは私はしたくないと思います。
#76
○森元治郎君 それは大臣、変なことにからまっちまって話がとんちんかんなんだが、私は形を伺っておるので、社会党は領土を捨ておいて早く平和条約を結べということを言っているのでは絶対にないので、もう一回申し上げますが、平和交渉、これは形式の問題が相当入ります。専門家の条約局長もいるから大臣を助けてあげてくれたらもっと明快になるかと思うんだが、平和条約の交渉という、そういうかちんとした固いものに入る前に領土問題を煮詰めていく、要求する、そうして向こうが日本の要求に応ずるような形になったならば、それからいわゆる平和条約締結の交渉に入るという、そういう方法が一つある。もう一つは、初めから平和条約の締結――もちろん領土問題を日本が放棄して平和条約の締結をするのじゃなく、これを含めて、平和条約とは即ち領土問題と言ってもいいくらい、条約の大きな重要な部分を占めるものですから、これを煮詰めていって、そうしていっそそれを含んでおるのだから、平和条約の話し合い、交渉に応じてもいいんじゃないか、こういう二つがあるが、いずれをおとりになるのか。大体大臣の私の受けた感じはそうじゃない。形式的な平和条約に入る前に、やはり領土問題を片づけて、ある程度の日本側の主張をいれられる段階で初めて平和条約の締結の交渉に入るのだと、こういうふうに理解するのですが、よろしゅうございますか。
#77
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、くどいようですが、北方領土の返還ということが、日本のソ連に対する最高の政策の問題であると、これは単なる条約論とか、テクニカルな扱いの問題ではございません。
#78
○羽生三七君 これはこういうことではないですか。平和条約を結ぼうじゃないか、その主たる障害は領土問題だから、これを片づけようじゃないかと、そういうことでしょう。それでいいのじゃないですか。
#79
○国務大臣(愛知揆一君) いや、それはなかなかそうはいきません。領土問題が一審大事です。
#80
○森元治郎君 それでは、大臣のことばを今度別に翻訳すれば、領土問題が片づかない限り平和条約の交渉はあり得ないのだ、入らないのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
#81
○国務大臣(愛知揆一君) そのとおりでございます。
#82
○森元治郎君 よろしゅうございます。
#83
○岡三郎君 これは一つの意見にも関係してくると思うのですが、いわゆる中国との関係ですね。これは軍縮会議において論じても始まらない話なんですが、私は、最近非同盟国が第三勢力という問題を論議して、やはり世界の平和という問題とのからみ合いの中において、いまジュネーブで持たれておる軍縮会議そのものは、結局中国を横目でにらみながら米ソのデモンストレーション、その中に日本とかモンゴルが新しくアクセサリーとして参加しておる程度の問題であって、具体的には米ソとの間に協調がどう保たれていくかということがこの一つの大きな目的だろうと思うのですが、しかし、それをいつまで続けても軍縮そのものというものは何にもならないのじゃないか。先ほど羽生さんに言われたとおり、やはり対中国の問題というのは中国の外交方針の変化を待つと言っておられるが、これでは何ら目的というものは一歩ずつでも近づかないと思うのですが、こういう点についてももう少し、ようやく今度はソビエトへ外務大臣が行かれるのですが、総理大臣が出かけるということになるというと、問題が大きくなるかしらぬが、外務大臣は、中国でも、あるいはその他非同盟国でも、あるいは東欧圏にでも、もっと積極的に、外交折衝というかそういう問題について出かけられる必要があるのじゃないか。これは外務大臣、今度の場合は、ソビエトに行かれる場合は、もっと多角的に行ったことを利用と言っては変ですが、もう少し東欧圏なりその他非同盟国なり、そういった問題について、もうちょっと積極的外交を展開したらどうなんですか。
#84
○国務大臣(愛知揆一君) たいへんありがたいおことばでございまして、私としては非常にそういう点に意欲を持っているつもりでございます。今後計画をいたしますにつきましても国会の御承認が必要でございますから、どうぞ御協力をいただきたいと思います。
#85
○岡三郎君 いま、私は軍縮会議に日本が参加することについていろいろ関心を持たれていることについて、その中においていまアメリカの下院なんかにおいて、外交委員会ですか、多核弾頭のミサイルの問題について、いまの情勢がこのまま続いていくというと、軍縮ではなくて、米ソのまた新しい軍拡競争時代が展開されてくる心配がある、そういう点で早急に多核弾頭ミサイルについては米ソとの間に交渉を持つべきであるという強い意見が出てきた。軍縮会議においてこの問題が提起されてなくて、直接的にアメリカの下院においてこれが取り上げられておるということは、アメリカ自体においても、軍縮会議というものはこれは一つの飾りの機関であって、実態的には米ソの交渉の中においてこの協調路線といいますか、こういうものがどう展開されていくかに問題があるのだというふうにとられておる節が多くあるわけですが、多核弾頭ミサイルの防衛と、それからアメリカにおけるミサイル防衛という問題とのからみ合いの中で新しい軍縮問題というのはやはり多核弾頭ミサイルをどうするのか、これをどうするのかということの方向づけがない限りにおいては、地下核爆発の実験の禁止なんというものも、およそこれはナンセンスじゃないかというふうに考えるわけですが、この点どうですか。
#86
○国務大臣(愛知揆一君) それは先ほど申しましたように、この核というものに対してどういうふうに考えていくか、何から手をつけていいかということについては、これは先進国というか、核保有国などでもいろいろの考え方があるし、また、なかなか軍縮委員会があったってたいしたことはできてないじゃないかということも言えると思います。しかし、日本の立場としては、たとえばこの委員会に入ったら入ったなりで最善を尽くす、あるいはその他の外交折衝の面におきましてもできるだけの努力を尽くすということであって、一つ一つに、これはだめじゃろう、これはどうなるんだと言われても、ただそこの論議だけではだめなんで、やっぱり実行が大事ではなかろうか――行動でございますね、そういうふうな考え方で、とにかく忍耐強くこうした世界的な大事業に対して日本国民らしい行き方で努力を続けていくということが一番必要ではないだろうか、かように考えるわけでございます。私は、軍縮委員会なら委員会に入(はい)れたということも新しい事実なんですから、頭から、こんなところでやってもだめじゃないかとまあおっしゃらずに、ひとつできるだけの努力をしなければなるまい。おそらく軍縮委員会のほうだって、いろいろいままでの経過から見て、日本のような国をやっぱり入れてここに新味を出そう、何か新しい期待があるからこそついに踏み切ったんではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
#87
○岡三郎君 私は、ドゴール退陣後におけるヨーロッパの問題やフランスの軍縮会議のかかわり合いとの問題は、問題はそうないと思う。問題はやはり中国の問題であって、中国の情勢の変化を待つといっても、周辺の状況が動かなければ中国自体もまたなかなか動けないのではないかという要素もあると思う。そういう面について、沖繩の問題についてのマイヤー大使の発言というものもかなり影響してくるようにも考えられるんですが、中国に対する政策というものについてアメリカ一辺倒になっている立場から言って、なかなかそれは持ち出しにくいとはいっても、時々刻々変化しているわけです。特に、今度はアメリカの大統領がルーマニアへ行くというふうな問題をめぐって新しい波紋を投じている。そういうふうなことから言って、日本自体も積極的に中国との国交回復といいますか、中国との関連の中において日本が橋渡しをしていくというふうなことができるものかどうかということを考えたときに、これはできるかどうかは別にして、やはりその間については、アメリカと十分いろいろと打ち合わせをするということは必要だと思いまするが、積極的にやっぱり中国との国交について苦労していくべきで、こういう点についても、それはいまのところはだめなんだ、向こうはてんでだめだということであってはならぬと思うんですがね。こういう点について、貿易交渉とかそういう問題についていろいろとやっておるけれども、具体的に中国に大使が行くというふうなことにはならぬですか。
#88
○国務大臣(愛知揆一君) 私どもといたしましても、中国との関係が現状でいいとは全然思っておりません。同時に、いままででも政府としては苦心惨たんしているところであると申し上げていいんじゃないかと思いますが、他国に比較いたしまして、隣国でありますし、大きな国でありますだけに、よく申し上げることですけれども、たとえば米中間は、大使級会談と言うといかにも政治的に新味のあるやり方のように思われますけれども、百何十回やっても新聞記者の交換さえもできないわけですね。日本の場合におきましては、いろいろの時期によって変遷はございますけれども、とにかく人的交流もできておれば、商売上の関係もできております。最近も、一時非常に悪くなったんじゃないかといわれておりますが、事実はそれに反して相当の貿易量も維持できる。これは他国に比べて、当然のことながら、かりに政治的に承認をしている国と比べたって、はるかに日本のほうが実績があがっておるわけでございます。こういうふうなやり方というものは正常な姿ではないかもしれませんけれども、私は事実に即した賢明な方法ではないかと思います。
 それから、よく敵視政策と言われますけれども、私どもは、俗なことばで言えば、たいへんなことを言われているけれども、私どもとしてはそれに対してもじっとこらえている、こういう態度でおりますわけでございまして、この上は、先方の考え方、まあ文革も済んだというわけでございましょうし、これからいろいろ中共内部にも建設的な意見が出てまいりますれば、それと相照応して、私どもとしても無策でいるわけではございません。
#89
○岡三郎君 「無策でいるわけではございません」と言っても、具体的にいま非常にむずかしい問題だと思うんですが、最近において台湾が日本との貿易収支じりの関係もあって、ヨーロッパのほうに一億ドルばかり機械その他注文先を取りかえるとか、いろんな問題が出ておるし、韓国の実態等もいろいろと問題があると思うんですが、やはり、いつ日本が外交上においてある程度の自主的な歩みをするかという点は識者がずっと注目しているところだと思うんです。後手を引いてはならぬ、といって何もあせる必要はないということになるかもしれませんが、アジア・太平洋大使会議で、当面中国との関係は現状でいいんだと言っておりまするが、しかし、われわれ国民から見るというと、とにかく、軍縮会議においても、その他アジアの平和においても、中国というものをよそにおいてやられることについては、無力感というか何というか、少しもぴったりした実感がわいてこない。何かやっていても、やっていること自体が、端的に言うと、全く無力感ということの一言で尽きると思いますが、そういう中においてアジア自体も時々刻々移っているということから見て、台湾の問題なり韓国の問題をさておいて、日本がやはり積極的に、自民党内部における一部隊の人だけにこれをまかしておくということでなくて、やはり野党を含めた総体的な外交というふうなものを打ち出していく時期に来ているんじゃないかという感じがするわけなんです。そういうふうなことで、日本が、アジアの緊張とか、一言に言われている敵視政策とか、そういうものを積極的に緩和していくというふうな面が、かなり外交全体について貢献するということになるんじゃないかと思うんですがね。これはアメリカがやってできることじゃないと思うんです。そういうふうな点について、中国のいま文革後におけるいろいろな問題について、非常にむずかしいけれども、やはりそういうことについて一部の人にまかせるということでなくして、積極的にやはり日本の外交としてこういう問題について提案をしていくというふうな形があってしかるべきじゃないかと思うんですがね。これは言ってもなかなかそれ以上のお答えは出ないと思いますがね。
#90
○国務大臣(愛知揆一君) お話しになっておりますそのお気持ちには私も御同感の点が多々ございます。先ほど申しましたように、このままでいいとは私は考えませんけれども、しかし、これには順序、方法もあり、あるいは、よく「バスに乗りおくれるな」ということばも出るようでございますが、バスに乗ったがためにたいへんな方向に連れていかれてしまうこともあって、場合によっては目的地に歩いて行ったほうが早く堅実に歩き着けることもございましょうし、まあ、これは非常に大切な問題でありますだけに、私どもとしても情勢をよくながめながら、また考えるべきこと、打つべき手というものについては十分ひとつ考えてまいらなければならないと思います。
#91
○岡三郎君 もう終わりますがね。最近ソビエトのほうでアジア安保の問題を提起をされて、アジアの安全保障という問題について新しい提起のしかたがなされておるんですが、これについては外務省としてまだ検討されておらないわけですか。
#92
○国務大臣(愛知揆一君) 私自身といたしましても、できるだけこのソ連のいわゆるアジア安保というものについては考え方を掌握したいと思いまして、自分でも努力をいたしておりますが、ただいままでのところ、新聞等にいろいろの記事が出ておりますが、それ以上具体的な考え方というものをまだ掌握いたしておりません。要するに、何かアジアあるいは太平洋地域も含んででございましょうが、いろいろソ連として何か新しい構想を打ち出したいという意欲は感ぜられますけれども、具体的にどういうことをどうやろうとしているのかということはまだつかめません。あるいはそういう具体的なところまでまだ考えられているのではないという見方も私は成り立ち得るかとも思っております。
#93
○岡三郎君 中ソ間が非常に問題をはらんでいるし、いま世界全体を見て、中近東の問題もあるけれども、やはり何といっても、活火山になるか休火山になるかは別にして、アジア自体が、一番戦争の危機というか、そういうふうな流動している姿というものが激しくなりつつあるというふうにも感ぜられるわけです。この点については戦争に発展するとはなかなか思えないと言っておっても、何かのはずみというか、そういうふうな面について、やはり朝鮮の南北の問題を通じての一つの問題、台湾と中国との問題は、これは問題は外においておいても、そういうような問題をあわせて中ソとの関係というものが、さまざまな形でアジア全体の諸国に影響を非常に来たしてきている。そういう中において、新しい一つの動きとしてアジア全体の安全というか平和という問題について、一体どういうふうにアジア諸国が考えていくのか。中国とソビエトの問題は、これはわれわれの範疇以外だからこれはもうわれわれがとやかく言うても始まらぬ、こういうことではなくて、韓国、北朝鮮の問題を含めて、全体としてアジアの平和というか、そういう問題とどういうふうに取り組んでいくかということが新しい段階に特に強く指摘されてきている時期に来ているんじゃないか。そういう面について、当面するところは、やはり日本と中国との関係をやはりもう少し至近距離に置いておくという方向の努力というものが必要なんじゃないか。ただ、これは中国の実態はそう変わらないんだから、対中国方針というものは従前のとおりでいいという形だけではこれは問題にならぬと私は思っているわけです。そういうふうな点について、直接的にやはりいま問題を提起していくこと自体がむずかしいとしても、アジア全体に対するところの平和というものについて、日本がやはり積極的にこれに対して取り組むというふうな姿勢をやっぱり持っていかないというと、沖繩の返還の問題も含めて、実態としてアジアをどういうふうに安定させるかという方向が非常にいまのところは他力本願的になっているというふうに考えるわけですよ。そういう点について、これ以上言ってもしかたありませんが、自主外交という面について、ある程度外務省自体、日本国政府自体の積極的なる方針をとられるように私としては希望して、終わります。
#94
○国務大臣(愛知揆一君) いろいろの御高見を伺いまして、まことにありがとうございますが、一言申し上げたいと思いますのは、まず消極的な面では、日本としてはもうあらゆる意味において軍事的な協力というようなことは絶対にやるべきでないし、またなし得べきことでもないと思います。そこで、一九七〇年代というのは私は非常に大事な年だと思います。大事な十年間だと思いますが、幸いにして国民経済も依然として上昇過程にございますから、経済協力あるいは技術協力、特に人的な面における協力、トレーニングというようなことを含めて、そうして、これはまあ何としても平和的に、アジアの人たちが、たとえば国民所得がある程度急速に向上するような実績があがるようにしていくことによって、時間はかかるかもしれませんが、国際的緊張とか戦争、あるいは実力闘争というようなことに対する人間としての嫌悪の観念を植えつけていく。そういうことが私は日本としてなし得る平和への戦いではないだろうか。そういう面にできるだけの努力をひたむきにすること、これが積極的になし得る最善の道ではないか、こう考えまして、たとえば先般のASPACにいたしましてもそうでございます。太平洋・アジアの閣僚会議にしてもECAFEにいたしましても、イデオロギーということを問題にしないで、この地域に位置しておる国々の相互協力、そうしてお互いに平和的に民生を向上させるという努力をひたむきにやろう、こういう日本の考え方というものはだんだんに私は理解され、定着してきているのではないかと思いますので、こういうふうな基礎の上に立って最善の努力を続けたいと考えております。
#95
○委員長(山本利壽君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午前十一時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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