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#1
第061回国会 外務委員会 第20号
昭和四十四年七月十五日(火曜日)
   午前十時三十二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 利壽君
    理 事
                佐藤 一郎君
                長谷川 仁君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                梶原 茂嘉君
                杉原 荒太君
                高橋  衛君
                廣瀬 久忠君
                三木興吉郎君
                岡  三郎君
                加藤シヅエ君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                黒柳  明君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務大臣官房長  齋藤 鎮男君
       外務大臣官房領
       事移住部長    山下 重明君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       外務大臣官房領
       事移住部旅券課
       長事務取扱    林  祐一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本利壽君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 旅券法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。
 愛知外務大臣。
#3
○国務大臣(愛知揆一君) 旅券法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 最近の国際間の人的交流は、航空機輸送の進歩と相まって、急激な増加を示し、邦人の海外渡航も昭和三十九年四月の観光渡航自由化後は、毎年約三〇%に近い増加を示し、昨昭和四十三年におきましては三十三万余の多きに達し、今後もこの増勢は当分続くものと思われます。
 現行旅券法は、戦前の旅券制度を参考にして定められておりますので、現在の渡航の実情に合致しなくなってきております。このため、旅券制度に関する国際的諸勧告及び諸外国の旅券制度を参照して国際的な渡航自由化の時代に適合するようわが国の旅券制度を改正し、国民の便宜をはかるとともに、増大の一途をたどる旅券事務の合理化と旅券制度の適正な運用をはかろうとするものであります。
 改正法案の主要な点をあげますと、第一は、一般旅券の効力の拡大と渡航先の包括記載をはかったことであります。現行制度では、日本を出国してから帰国するまで有効ないわば一渡航ごとの旅券が原則であり、渡航のつど旅券の発給申請を行なうことは不便でありますので、わが国と承認関係にある国へ数次渡航する必要がある者に対しては、五年間はいつでも使用できる数次往復用旅券を発給し、あわせて旅券の渡航先は、全世界地域等包括的な記載方法も用いることとしております。なお、わが国と承認関係にない地域に渡航する者等に対しては、従来どおり一渡航ごとに有効な旅券を発給することとしております。
 第二は、事務の地分分散と手数料の改訂をはかる点であります。現行では都道府県知事は、申請の受理及び旅券の交付のみでありますが、改正後においては、たとえば旅券の作成事務の一部を知事に委任できるように改め、また、手数料については、昭和二十六年以来据え置きとなっておりますので、五年数次往復用旅券の発給は六千円、一次往復用旅券の発給は三千円に改正するものであります。
 第三は、その他の事務の合理化及び五年数次往復用旅券制度を実施するために必要な実務上の調整をはかった点であります。
 主要な点を申しますと、申請時の本人出頭の緩和、旅券の二重受給の禁止、旅券の訂正方式の改善、旅券の合冊、査証欄の増補の制度の採用、滞在届け出の制度化、帰国専用の渡航書の新設、刑事事件関係者等に対する発給制限の改定及び返納事由の改定であります。
 次に、罰則については、今回旅券の効力を拡大した関係上、従来の虚偽申請に対する罰則等による旅券法秩序維持がむずかしくなりますので、一般旅券の渡航先以外の地域に渡航した者に対しては三万円以下の罰金を科することとしました。
 最後に、附則でありますが、施行期日、経過措置及び関係法令の改正について規定しております。
 以上が旅券法の一部を改正する法律案を提案する理由及びその内容であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願いいたします。
#4
○委員長(山本利壽君) 次に、補足説明を聴取いたします。
 山下領事移住部長。
#5
○政府委員(山下重明君) 旅券法の一部を改正する法律案について補足説明をいたします。
 現行の旅券は、一回渡航して帰ってくれば失効するといういわゆるシングル旅券を主としておりますが、かかる旅券制度は世界に例がなく、渡航者に多大の不便を与えています。このまま推移すれば、旅券を入手するに多くの日数を要し、旅券行政も円滑を欠くに至ると思われます。
 また、最近は国際的には渡航自由化の趨勢にあり、国連主催の国際旅行観光会議やOECDの観光委員会等は、旅券は五年数次往復用旅券を原則とすべしと勧告しておりますし、世界各国の約半数、特に先進国においてはその大半がこの制度を採用しております。
 しかしながら、他面において、無軌道な渡航者が増大していることも御承知のとおりでありますので、渡航の秩序を守る必要もございます。
 そのため、五年数次往復用旅券を大幅に採用して渡航者の便宜をはかり、他面、秩序ある旅券制度を守るため、旅券面の渡航先以外の地域へ渡航した者に対する罰則の設定、在外における日本国民一般の信用もしくは利益を著しく害する者に対する返納規定の適用等の最小限の整備をはかったものが今回の改正案であります。
 以上がこの法律案についての補足説明でございますが、御審議の上、すみやかに御採択いただきますようお願い申し上げます。
#6
○委員長(山本利壽君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 次いで、これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#7
○佐藤一郎君 それでは一つ伺います。
 今度の旅券行政の簡素化、合理化ですか、これは趣旨としては非常にけっこうだと思うのでありますが、これで、もし今回の改正があると一件当たりの発給に要する時間、これはやはりよほど短縮されますか。
#8
○政府委員(山下重明君) 現在のところ大体二週間ぐらい平均してかかって、おそい場合は三週間ぐらいになることがありますが、この法律が通り、同時に、この法律によって都道府県に作成の事務を一部依頼し、また、値上げされた手数料によって機械化を進め、それら一連の対策が整備されますれば、大体三日ぐらいで旅券が発給できるようになる予定にしております。
#9
○佐藤一郎君 地方にできるだけ権限を委譲、分散するということと、それから機械化ということがつまりセットになっているようですけれども、テレックス導入、そういうことは短時日に予定しているんですか。
#10
○政府委員(山下重明君) 今年度大体大きなところ七県しまして、来年度も大体七県、最終的には五年計画でやりますけれども、非常にたくさんの旅券を出しておりますおもな県はここ一、二年のうちに整備されるということになると思います。
#11
○佐藤一郎君 そうしますと、大体二年ぐらいで、いまあなたの御説明されているような事態、つまり、現在二週間ぐらい少なくともかかっておるものが三日ぐらいでできるようになる、今度の法改正と相まってそういう事態になる、こういうふうに理解していいんですか。
#12
○政府委員(山下重明君) そういうつもりでおります。
#13
○佐藤一郎君 それから、これでほうっておくと百万件に間もなくなるという話ですね。この点は今度マルティプルになりますと、件数自体がずっと減るわけですね。そこらはどういうことになりますか。
#14
○政府委員(山下重明君) この新しい五年数次がほとんど出るようになりましても、最初の一、二年は同じようなペースで上がっていくと思いますが、その後はいまのように三割もふえるようなことがなくなる。最終的には日本全国民のうち何%くらいが海外へ渡航するか、そしてその人たちが一応五年間の旅券を持っているということで、大体のめどがつくようになると考えております。
#15
○佐藤一郎君 今回の改正で、現行法の十三条の一項で発給制限の事由に該当する場合として、「死刑、無期又は長期十年以上の刑にあたる罪につき訴追されている者」こうあったのを、今度は「十年以上の刑」というのを「五年以上の刑」というふうに改正されたようですね。この趣旨はどういうところにあるのですか。
#16
○政府委員(山下重明君) いままでは一回ごとに審査して旅券を出しておりましたけれども、今後は一回お出しすれば五年間はどこへでも行けるというふうになりましたので、いろいろな国外逃亡の事件が多くなるというような可能性があるので、これに対して規制するという趣旨から五年に引き下げたのであります。
#17
○佐藤一郎君 十年以上を五年以上に拡大することによって、どんな罪が含まれるようになるのですか。
#18
○政府委員(山下重明君) 「長期十年以上の刑にあたる罪」というのは、刑法によるもの八十二。窃盗、詐欺、通貨偽造、放火、強姦等、その他爆発物取締規則、麻薬取締法、これらが長期十年でありますが、「長期五年以上の刑」ということになりますと、新たに刑法によるもの三十五。被拘禁者奪取、公印偽造その他刑法によらないもの、銃砲刀剣類所持等取締法、物品税法、保険業法等の違反のものが含まれている、こういうことになります。
#19
○佐藤一郎君 横すべり渡航者に対する旅券の発給制限、これは確かに横すべり自体はいいことではありませんね。ですから、秩序罰ということで罰金刑が科せられるというのは、たてまえとしてはやむを得ないことでありますが、問題は、この罰金刑が科せられることによって旅券の発給制限理由になる。この点について、いろいろ各方面でも議論があるようですが、これについては取り扱いをよほど慎重にされる必要があると思うのですが、それについての方針を伺いたいと思います。
#20
○政府委員(山下重明君) これは「横流れ」と言っておりますところの渡航先以外の地域に渡航する者に対する罰則は、この旅券法維持のために設けたものでありまして、その場合、その旅券法違反を行なった者に対する再発給の禁止の規定がございますが、それは、外務大臣が検討して、重大なものであるというときに適用するということになっておりまして、これは十三条の規定その他の項目についても同じような適用がありますが、その場合、重大なものにだけ限って、そうでないものにはなるたけ発給するようにいままでもやってきておりますが、この横流れ防止の意味の、新たに加えられました罰則についても、同じような態度で慎重に取り扱っていきたいというように考えております。
#21
○佐藤一郎君 「重大な場合」というのは何ですか、再犯のおそれのあるような場合ですか、どういう場合ですか。
#22
○政府委員(山下重明君) 再犯のおそれがあって、旅券法そのものの規定が無になるという場合を想定しております。
#23
○佐藤一郎君 けっこうです。
#24
○森元治郎君 いま「横流れ」ということばが出たから伺いますが、「横流れ」とはどういうことですか。
#25
○政府委員(山下重明君) 旅券面に書かれている渡航先以外の地域に行った場合、たとえば北鮮に渡航する場合に、ソ連行きの旅券を取りまして、旅券面には渡航先としてソ連しか書いてない。その場合に、旅券の渡航先に書いてない北鮮なり中共に旅行する場合に、通常「横流れ」と称されているわけです。
#26
○森元治郎君 何で悪いのですか。
#27
○政府委員(山下重明君) 現在の旅券法でも、旅券面以外の地域に渡航する場合には、渡航先の申請をしなければならないということになっております。
#28
○森元治郎君 かりに私がソ連に行く。ああ、ここがいろいろと問題のある北鮮だなあ、どんなところか行ってみる。これは個人の自由だ。これは善意の横流れか悪意の横流れか知らぬけれども、行ってみたいというのを、行ってはいけません。書いてなくとも、旅行していると気分も変わりますよ。
#29
○政府委員(山下重明君) 現在の旅券法は、いわゆる憲法で言う「渡航の自由」というものに基づきまして、なるたけ自由に渡航できるようにという趣旨で立法されておりますけれども、しかしながら、公共の秩序の維持のために、旅券法上ある、たとえば本人の保護とか国の利益などを保護するためには旅券の発給を制限し得るという規定に基づいておりまして、その規定を維持するためには、ある場合には渡航先を追加しないとか、旅券の発給ができないとかいうことを想定しているわけでございます。
#30
○説明員(林祐一君) 現行旅券法は二十六年の十二月一日から施行されておりますが、渡航目的と渡航先というものが明定されるのがたてまえになっております。そこで渡航先の追加という場合におきましては、あらためて申請者が渡航先の追加をしなければならない。現行第八条の基本義務規定として規定されております。したがいまして、その義務規定に対する措置としてどうするかという問題として考えなければならないということであります。
#31
○森元治郎君 八条の義務はあるかもしれませんが、人間が旅に出れば、レールの上を汽車が走るようなわけにはいかないことがあるのです。ちょっと入ったからといって、附近に領事館もない。シベリア鉄道に乗ってモスクワからイルクーツクを通ってくると、ここから右に入ればあっちに行けるのだなというようなことで行くこともあるだろう。それはそんなにギャーギャー言う必要はないと思うのだな。ただ、いまあげられた「国の利益」、「公共の秩序」、これはどういうことなんですか。
#32
○政府委員(山下重明君) 旅券法の十三条一項五号に、「国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある」場合という規定がありますが、「公安」というのは、これは国内の秩序その他をさし、「国の利益」というもののうちには外交上の利益、経済上の利益、文教上の利益とかいろいろな利益が含まれておりまして、われわれとしては、問題ごとに各省と慎重に協議をして、いたずらに国民の渡航の自由を制限しないように慎重に考慮を払って検討しております。
#33
○森元治郎君 まあ、この質問は、たくさん事実問題のことを聞きたいのだが、改定すると、どうしてもポイントは北鮮関係のことが一番ひっかかるようなんで、どうしてもこれが質問の中心になるのだな。あそこにいわゆる横流れ、横流しで行って、行った者が何をやったか知らぬが、国内では公安を害するおそれ――何を害するのか。商売に行って帰ってきた者は格別何ということはないと思うのだな。それを特にあげつらう「公安との関係」というものはどういうものですか。どんなことがあるんですか。
#34
○政府委員(山下重明君) これは特別に国内の治安を乱す目的をもって渡航して、その渡航の結果によって国内の治安を乱すというような場合が想定されるわけですが、現実に公安の理由で渡航を拒否されたというようなことはここ数年一件もございません。
#35
○森元治郎君 たいして問題は起きていないのですね。そうするというと、その人が行くことによって、経済、外交上とかいろいろな形で何か国の利益に触れるようなことが起こるのだ、起こるおそれがあるということで横流れをしてもらいたくないのだろうが、北朝鮮に行って何が起こるのですか、外交上の関係からいけば。西ドイツの人が分離国家である東ドイツに行ってもしかられるような旅券法上のこともないし、政治上の問題も起きていないというのですね。新聞なんかでは一つもない。あるいは行かないのかもしれないけれどもね。それはまあ別として、分離国家はいろいろありますが、特に北朝鮮の場合に問題になるというのは、韓国あたりが、われわれのほうとは敵対関係にある北朝鮮に友好国日本の市民が行くことははなはだ不愉快であるというようなことだろうと思うのですね。これは想像ですが、その韓国との外交上の国の利益との関係、横すべりについての韓国の日本に対する態度、何が国の利益との関係で問題が起きてくるのかどうか、この点はどんなものですかね。
#36
○国務大臣(愛知揆一君) 御指摘のとおり、今度の旅券法の改正は、私は、もう全般的に言って、非常に善政であろう、喜ばれることだろうという確信を持っておりますが、一つだけ、いま御指摘の未承認国との関係で、これは一回限りのの旅券ということになりますから、その点と、それから十三条一項五号が現行法どおりになっているそれと結びつけての御議論、御懸念というものが、一番の議論の焦点であると、これは御指摘のとおりでございます。これはやはり未承認国というもの、ことに、ただいまもおあげになったようないわゆる分離国家というものが、三つもわが国の周辺にある。こういう客観的な不幸な事態のもとに国際情勢があるということに因を発していると思わなければならないと思いますが、その中で、現在までの私の判断といたしましては、中国の関係、それから北ベトナムの関係というようなものについては、比較的問題がなさそうに見通されます。あるいは慣行も定着しております。ところが、北朝鮮の場合は、これは事務的にも詳しく御説明をいたしたいと思いますけれども、従来は直接北朝鮮向けの旅券の申請というものが事実上なかった。なかったということは、国会議員等以外には出さないという態度が関係者の間にもよくわかっていたからだろうと思います。で、そういう方々は、北鮮へ事実行きたい希望を持っているのだけれども、ストレートに北鮮へ行くということでは旅券の下付がむずかしいであろうという予測のもとに、いわゆる横流れをしておられた。しかし、横流れが法律的にいいことかと言われれば、悪いと、違法であると言わざるを得ない。違法であることに対して、法の秩序として、私から言えば、軽度の罰がかかるということ、これもやむを得ないことではないかと思います。この点は関係各省との間にずいぶんいろいろの論議が行なわれましたが、外務省といたしましても、この審議をお願いしているこういう姿が、まあ現在の条件下においてはやむを得ないというか、あるいは、現在の状態においては最善と思いまして、こういう形で御審議をお願いしたわけでございます。ところが、一方、族券というものは、私は本来から言えば、人権の立場から言えば、自由であること、したがって、旅券というものは身分証明書的なものであることが望ましいことだと思いますが、やはり現実の国際情勢の中におきましては、私どもは国益に関する点から言って望ましくないと思われることはやめていただきたいと国民にお願いするのは、政府の立場として妥当ではないかと思います。先ほど申し上げましたように、これについてはいろいろの見方、イデオロギー的なものの見方の差はありますけれども、三十八度線を中にして、とにかくそこに対峙した状態が起こっておって、そうしてゲリラの活躍等も行なわれているというのが現実の事態であって、しかも、韓国との間には、日本が正常な国交を持ちましてから三年以上、わが内閣といたしましては、韓国政府と友好親善関係を一そう増進したいというのが外交の基本方針でございます。その観点から申しまして、間接に日本としてのこうした外交の基本方針に触れるおそれがあると見られるような場合におきまして、旅券の発給というものをやめたい。これは、しかし、非常に事柄の性質上慎重にそういうことをきめなければなるまいと思います。私は、その旅券というものについての基本的考え方が、これをあるところに対して発給をしたくないと、しないがために法律を改正しているのじゃないのでございますから、自然、制限しなければなるまいと政府が考えた場合のその適用の範囲というものは、できるだけ抑制的に考えなければならない。私は、改正法案が幸いにして成立いたしましたならば、こういう態度、そういう気持ちで運営に当たりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
#37
○森元治郎君 その、ただいまお話にあった、三年来の友好親善関係にある韓国が、かねがねこの横すべりでごくわずかの人の行く分に対して、外交上の手続をとって抗議が来ているようですが、それは、そういうことしたならば韓国が非常に友好親善を害する、日本の非友好的行為で黙ってない、何か措置をとる、報復というか、そういう表現までも入っているような抗議がしばしば来ておるようなんですが、その事実は大臣いかがですか。
#38
○国務大臣(愛知揆一君) 旅券法の運用につきまして、いわゆる横すべりが行なわれて北朝鮮に日本人が渡航しているからといって、旅券法の運用などについて韓国政府から抗議が来たことは私は承知しておりません。それから、かりに、これは抗議があったからといたしましても、日本の法律は日本国民が主体的に国会で制定するものであります。これの行政的に運用するものは日本政府が独自の主体的な立場に立って運用することは当然でございますから、それとこれとは別問題である。しかし、日本の、主体的に考えましても、現内閣は韓国と友好親善関係を結びたい、一そう増進させたいというのが基本国策でございますから、その点から主体的に判断をしていきたい、こういうふうに考えております。
#39
○森元治郎君 大臣の御答弁のような趣旨が当然とるべき国の方針だろうと思うんだが、私なんかの聞いているところでは、しばしば口上書のような形で韓国側から文句が出ておるということを聞いておるんですが、事実はありませんか。
#40
○政府委員(山下重明君) この旅券の横すべりの問題、それらについて書きもので抗議を受けたことは一回もございません。
#41
○森元治郎君 しからば、口頭で抗議を受けたことはあるでしょう。
#42
○政府委員(山下重明君) 私のほうには口頭でも抗議を受けたことはございません。
#43
○森元治郎君 大臣、これはあったんだけれども、公表することは韓国にまずいという配慮から、「ない」というふうに突っぱねておるようにも考えられるんですが、いかがですか。
#44
○国務大臣(愛知揆一君) そこまで想像たくましゅうしていただきたくないんですが、私はもうここで公式に、正式に御答弁申し上げておるのです。私は一回も聞いたこともございません。見たこともないのです。
#45
○森元治郎君 そうまじめな顔して言われると困るんだけれども、(笑声)それは大臣の立場では言えないでしょう。外交上も言っていいことと悪いこととありますから、それ以上言っても「ない」と言い張るだろうからやめますが、いやしくも第三国との関係において一番大事なことは内政の不干渉、これはもうどの国との場合も大事な原則なんですね。これだけは厳に厳守してもらう。たとえ友好国であろうと、先ほど答弁のあったような趣旨で突っぱねる、自分の考えで適当な手段をとる。向こうのおどかしや抗議によって法律までひっくり返して改正をしていくというようなことはほんとうに不見識もはなはだしいことだと思っているんです。大臣はさようなことはないと言うから、ないということにして、話を進めます。
 事実関係に移りますが、北朝鮮にしぼります。北朝鮮に行きたいという人が申請書を外務省に持っていく。外務省の窓口では、これは未承認国だから別に申請書を書いてくれ、こういうふうなお答えがあるんだろうと思うんですね、窓口で。そうすると、ああそうですがと帰って、今度は北朝鮮、北京等に行きたいと、こういって持って行ったときに、その申請書は受け取れるのかどうか。あなた、「別に書いてこい」と言っているんですから、「書いてこい」とは、書いて持ってきたらば受け付けるんだと思って、人のいい人は持っていくでしょう、経験のない人は。そのときはどうしますか。
#46
○説明員(林祐一君) 若干事務的にわたる点でございますので、私からお答え申し上げます。
 かりに未承認共産圏諸国に渡航したいと申請者が私のところの窓口へ参りました場合は、まず渡航趣意書というものを先にお出し願い、その上であらためて旅券の発給申請をしていただく、こういう段取りをとっております。実を申しますと、渡航趣意書と申しますのは、未承認地域につきましては十五部書いて出していただいております。これは現行旅券法の第三条の規定によります申請書提出の事前に出していただいております。相談する関係庁も多いので、行政上の便宜から申しまして、申請者の方々に先に趣意書という形で十五部を出していただいております。それを外務大臣が判断する参考資料として必要な部分を関係省に意見を求める。こういうことでやっております。この渡航趣意書の各関係省の意向がまとまりました上で、あらためて本人から旅券の発給申請書を提出していただく。こういう段取りをとっております。
#47
○森元治郎君 そうすると、北朝鮮に行きたいという趣意書、旅行の目的その他を書いて書類を持っていく。外務省で一応それを受け取るんですね。受け取って法務省なり、商売だから通産省とか、あるいは出入国管理事務所みたいなところに書類を回す。そうすると四つか五つの役所の判断が添えられてまた外務省に戻ってくるんでしょう。質問したんだから、それをまとめる。ある場合には全部反対、ある場合には通産省OK、法務省がOKで、どこどこが態度保留とか、三対二とか、若干の差がある。あるいは全部賛成、いろんな場合がある。きょうは関係各省の方が見えてないが、その場合に外務省の態度は、自分で方針を初めっから持っているのか、関係省の意見を参照して外務省でどうするかということをきめるのか。その間はどういう手続になりますか。
#48
○政府委員(山下重明君) 外務省といたしましても、受け付けた場合、外務省の中でこれは外務省としてどうかという意見を大体きめますけれども、ほかの省に回します場合には、ほかの省において、たとえば通商上どうかというような意見を聞きますので、その通商上こうだという意見が出ますれば、その意見を十分に参照して、さらに外交上これは特にどうだという意見があれば、その上で通産省なり何なりとさらに協議するということがございます。場合によりましては、各省の間で協議ができない場合には、内閣に上がって内閣の決定というようなことになる場合もございます。
#49
○森元治郎君 そうすると、北鮮に行きたいという場合でも、その人個人及び目的その他によっては発給をオーケーするということもあるわけですね。
#50
○政府委員(山下重明君) 御承知のように、先ほど大臣も言われましたように、いままで北鮮についてはまだ積み上げが行なわれておりませんで、現実には一回も正式に申請を出していただいて拒否したというケースがないので、現実には国会議員の方とその同行の方が毎年許可になっている。それ以外の方については、実際に正式の申請を受けてほんとうに各省で協議するということじゃないと、どういうふうな結果になるかわからないわけですが、実際にはそれが非常に困難だということで、現実には、先ほど来出ました横流れという形で正式の申請になっていないという状態でございます。そのために、将来どういうふうにどの程度積み上げられていくかということが今後の問題として残されていると、こういうふうに考えます。
#51
○森元治郎君 私、わからないから間違った質問が多いかもしらぬが、それはかんべんしてもらって、いま北鮮に商売で行っている人なんか、あなたからもらった表では、去年あたり五十名ぐらいあるのですが、いわゆる正式に入ったのは何人ぐらいで、それから、外務省を通さないでいわゆる横流れというか、どうせ旅券は出ないのだからというので行ってしまった数わかりますか。
#52
○政府委員(山下重明君) 正式に行った者は、これは十二名という数字がはっきりしておりますけれども、横すべりで行った数については、全然こちらには確実な数字を持っておりませんけれども、大体の情報によってわれわれが推定しているのは四十三年で、五十名足らずという数字が出ております。
#53
○森元治郎君 十二名は、これは国会議員なんかも含んでいるのですか。
#54
○政府委員(山下重明君) 国会議員の方とそれに同行された方が去年三組出ておりまして、八月に松本善明議員一行。三組出ております。
#55
○森元治郎君 国会議員さんは、私が行きたいと言っても、もらえますか。
#56
○政府委員(山下重明君) いままでの前例でありますれば出ると思いますけれども、具体的には一応関係各省協議して……。
#57
○西村関一君 ちょっと関連して。
 国会議員の場合は平壌行きという旅券が出ておるのですが、れっきとした朝鮮民主主義人民共和国という国家が存在していることは政府も認めておられるかと思います。国交が未回復であるということはそのとおりですが、どういうわけで平壌行きという旅券を国会議員に出すのですか。それは大臣から。
#58
○国務大臣(愛知揆一君) これは御承知のように、オリンピックの場合その他でも国名をどう使うかということは非常にむずかしい問題で、特に未承認国に対する場合は私は非常に微妙な問題であると思いますので、そのときどきの状況下において旅券を発給いたしますからには、旅行をされる方の御便宜その他を考えまして適切な措置を今後も考えたいと思います。
#59
○森元治郎君 「国会議員は前例によって」という答弁だったが、前例というのはやっぱり大事なことですよ。ずっと積み重ねてきているのですから。それなら、一般民間人でもその前例に相当する人々もたくさんおるのだろうと思うのだが、この前例は尊重されますか。
#60
○国務大臣(愛知揆一君) ちょっと私から申し上げますと、国会議員はというお尋ねでございますが、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する虞があると認める」ような範疇に、私はこれは入らない問題であると思います。したがって、前例ではなくて、国会議員等の場合におきましては、私は発給するということは当然である、こういう考え方を前提にして運営いたします。
 それから従来、この前例というのは、要するに、現行法におきましては、いわばやみとでも申しますか、黙認と申しますか、そういうことで行っておられた方々がありますが、それは主として商用でございます。で、その数はそんなに多くはございません。私は、これは今後の運用上適切な参考になる重要な資料である、かように考えております。
#61
○森元治郎君 大臣は国会議員をたいへん高く評価されて感謝にたえないのですが、どうも国会議員は公安を害したり国の利益は害さないということを大臣は保証したわけです。まことにありがたいと思いますが、そうすると、それ以外の日本人は、どうもちょっと調べてみなければ、その他の人はちょっとこれは心配だというふうにも聞けるのですが、これは、法の前には平等だというのは子供でもわかっていることで、国会議員を大事にしてくださることはありがたいけれども、一般人も同じに待遇されてはいかがですか。私は私らを下げろとは言いませんよ。国民を上げてください。私らは落選してしまったら偉くなくなってしまうのだからね。
#62
○国務大臣(愛知揆一君) これは先ほど申し上げましたように、御意見はいろいろあると思いますけれども、私の考え方あるいは政府の考え方としては、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行なう虞がある」と認めなければならぬ場合があり得ると思うのです。したがいまして、この条文につきましは慎重に検討いたしましたが、現行法どおり存置することにしていただきたい、これが政府の原案でございます。したがって、実は率直に申しますと、国会議員の方でも、ソ連との間に国交が開けなかった時期に、ソ連に対して現行の旅券法によります手続をとらなかったケースがございますが、国会議員の場合でも、その条項を援用しまして、未承認国であったソ連に対して旅行するためにの旅券を発給することをお断わりをして、これは訴訟になった、こいう不幸な事例もございますけれども、現在私が考えておりますのは、そういう不幸な前例も十分参酌いたしまして、現実の問題として、国会議員の方は、手続としては、未承認国に行かれようとするわけでございますから、他の場合と違いまして審査はさしていただきますけれども、私は、ここに予想しているような範疇にこれらの方々は入らない、これはもう常識として当然じゃないかと思うのでございますが、同時に、ほかの方々にはそのおそれがある場合が――きわめて例外的な場合かと思いますけれども――あり得る。しかも、先ほど申しましたように、まことに不幸な状態ですが、韓国と北との間は交戦状態でございます。交戦状態というと、国際法上どうだとか国連の問題はどうだとかというむずかしい問題が提起されますけれども、常識的に言えば、交戦状態だと思うのです。その一方と日本とが友好親善関係にあり、かつ、それを増進したいということを日本の外交政策としております。これは時世が変われば、また社会党が天下をお取りになれば、これはまた別の考え方になるでしょうけれども、現在の政府はそういう考え方をしておりますから、先ほど申しましたように、間接的にはなるかもしれませんが、日本政府のしかるべき立場において、こういう方がいま北朝鮮に行かれることは国益に著しい害があると認めざるを得ない場合が私はあり得ると思う。これは韓国政府がどうこうと言うのじゃなく、日本政府の立場においてさようなことがあり得る、こういうふうに私は考えております。
#63
○森元治郎君 やっぱり私はお話を伺っていても、国会議員の場合にはいろんな過去の経過があって、国会議員は一応、力がありますから、行政当局も押しまくられることもありましょう。何だかんだ事実上実績みたいなものができ上がって、それが旅券発給を容易にするようになってきたのだと思うのですが、憲法の前にはだれも平等、法の前に平等だというたてまえから、私はそういう差をつけておるということは、この法律は政府がいかに念願しようとも不平等な差別扱いをしている、これではまずいと思うのですね。やっぱり国会議員並みに、すなわち、だれもが行けるということがほんとだと思うのです。朝鮮は常識的に言えば交戦状態、交戦状態ということばは、用語の選び方としては、外務大臣が言う場合にはこれはなかなか波及するところ大きいのだが、これは許してあげます。が、穏やかじゃない。交戦状態だということばは、これに引っからめてやるつもりはありませんが、これはないほうがいい。いずれにしても、私は国会議員と一般人との差をつけるということは反対である。そして、伺ってみると、人数は、北朝鮮関係は、文化の関係であろうと、スポーツであろうと、商売人であろうと、数はごく少ないのですね。一億一千万の国民の中で百人あるかどうか。あなたがおっしゃった中では、国会議員など十二名、その他知っているところでは五十人くらい。これがために法律に罰則までつけて押えつけるというほどのことはないじゃないか。行政府の指導、国民への理解、納得のさせ方が足りないのじゃないか。これがもっと行政指導のよろしきを得れば、問題のあるような差別的な旅券法を無理して国会を通さなくてもよいのじゃないか。人数も非常に少ないのですよ。これが、五百人だ、千人だというのがどんどこどんどこ、政府が何を言おうと知ったことじゃないと言って、まっ正面切って権威をおかされるようになれば、メンツもありますから、対抗手段もあるかもしれぬが、ごく少ないのですね。そして、行った連中は商用の人が多い。その商用も、見ておりますと、ずっと前はいろんな政治的なことがあったかもしれぬが、いまはほんとうのゲゼルシャフトというか、小さいマージンを取るための安定した商業になっておると思うのですね。これは韓国から見れば、常識的に言う「交戦状態にある国」を日本が応援するのははなはだおもしろくない気持ちは一応わかりますけれども、往復の輸出入を見ても、たいへんな額でもないし、中小企業の商売のようにも見られる。何らおそれるに足らない。人間の質、量、貿易の現実、政治性から離れて純貿易交渉である。しかも、ココムというものは、これは北朝鮮にも、共産圏には適用するんでしょう。日本は一応いまのところこれに従って守っている。それならば、何も特にそれ以外のものは、戦略物資でも何でもないものの経済という自然の人間交流を押える必要はないのじゃないか。韓国にも十分説明ができるんじゃないか。人数が少ないこと、商売がもう純商売になってきちゃったこと、安定した純商売で、決して公安のおそれなんか全然予想されない。それを、韓国を気にするかのごとく、あるいは別に意図があれば別ですが、こういう法律に特に特記して行かせないというようなことまでやる必要ないのじゃないかというのが、これを通読した感じなんですがね。大臣ひとつお答えを願いたい。
#64
○国務大臣(愛知揆一君) 最初に御注意をいただきましたので、常識的とは申しながら、「交戦状態」云々と申し上げましたことは取り消します。
 それから、その次の国会議員の問題なんですが、これは法の上にもちろん国会議員を特殊扱いにしているわけでは決してございません。ございませんけれども、ここに予想しておるようなことを、国会議員になっておられる方がそういうことの範疇に入るような方とは私は思いませんですから、運用上そういう問題が起こることはなかろうということを申し上げたわけでございます。
 それから、冒頭から私も率直に北鮮が一番御懸念のあるところでしょうと申し上げておるところなんですけれども、申し上げるまでもないところですが、十三条は、一般旅券の発給の制限あるいは除外例を設けているわけでございますから、たとえば、友好国に行くような場合でありましても、そこへ行ってそこの国のためにならないようなことをあらかじめ意図していると認められる者、それが間接的あるいは結果的に日本の国益を害する、かように思われます場合には、やはり発給先、旅行先を問わずに十三条というものは置いてあるわけでございますから、その辺のところも御勘考いただきたいと思うのです。
 それから北鮮につきましては、もう私は率直に言うと、こういうことじゃないかと思うんです。北鮮行きの旅行を奨励するつもりは毛頭ございません。しかし、未承認国でございますけれども、先ほど来お話がございますように、きわめて少数な人で、それが純粋の貿易業務というようなことに従事している。そういう人たちが、従来の取り扱いが取り扱いであったために従来は黙認された、いわゆる行く先変更といいますか、横流れをしておられた、こういう実情というものは、私は今後の改正後の運営にあたりましては大きな参考資料になろう、かように申し上げておるわけでございます。
#65
○森元治郎君 奨励はしないが実情はよく参考にしていきたい。そこで事務当局、二十三条教えてください。改正案といままでの旅券法との違いはどうなりますか。
#66
○説明員(林祐一君) 御質問の点は二十三条の罰則規定でございます。二十三条の第一項は、従来の考え方をそのまま踏襲しておりますが、二十三条の第二項に新たにいわゆる横すべり渡航者に対しまして罰則を新設いたしました。内容は、旅券に記載してある渡航先以外の地域へ渡航した場合においては三万円以下の罰金を付される、こういうふうに新たに二項を設けたわけでございます。
#67
○森元治郎君 従来の二十三条は一項だけですね。
#68
○説明員(林祐一君) さようでございます。
#69
○森元治郎君 罰則は何項になっているんですか。
#70
○説明員(林祐一君) 第二十三条の第一項は一から五まで同じでございます。
 それから、別に第一項のほかに第二項を設けまして、その二項は一号と二号に分けて、主としていわゆる横流れ渡航者に対する罰金を付したわけでございます。したがいまして、第一項の一号、二号、三号、四号、五号は内容は同じでございます。ただし、渡航者の問題がついておりますので、若干つけ加えた点はございますけれども、立て方は従来と変わりません。
#71
○森元治郎君 そうすると、二十三条は大別して二項目に分かれていて、二項だけが新しくくっついたわけですか、新しく入っただけ。次の一に該当する者は三万円以下の罰金、それから、旅券に記載した以外のところに行くなということ、それから、帰国の経由地、これだけが新しくつけ加えられたわけですか。
#72
○説明員(林祐一君) 仰せのとおりでございます。
#73
○森元治郎君 これは二十三条の一項だけで済むことにはなりませんか。懲役があって、三万円以下の罰金に処する。これだけの運用によっては、いま企図している旅券法改正を律していくには足りない。
#74
○政府委員(山下重明君) そういうことでございます。
#75
○森元治郎君 どういうところにその足りない法的な根拠があるか、法的なポイントはどこにあるのですか。
#76
○政府委員(山下重明君) いままでと違います点は、いままでは旅券に記載された渡航先以外の地域に渡航した場合については罰則がございませんでしたが、今度はその渡航先以外の地域に渡航した者に対する罰則を新たに設けるということで、二十三条のいままでの虚偽の申請とか、「他人名義の旅券を行使した者」というような項目では律し切れないということで新しく規定を設けたわけでございます。
#77
○森元治郎君 この項目ではひっかからないわけだ。新しいやつをつくればひっかかると、そういうことで入れたのですね。私は、特別な政治的意図がない限り、現旅券法の二十三条で、あとは政府の大きな行政の指導で、業界啓蒙で十分やっていけるような北朝鮮関係の人間の往来、通商の現実だと思うのですね。こういうものがいまさら――七、八年前だというと、たいへん政治問題が大騒ぎになったころには、いろいろな問題もありましたが、いまでは安定したんじゃないか。いわゆるおそ過ぎるんじゃないか。いまごろになってあらためて縄を持ってきて、今度はいけないぞと言いながら、国会議員はよろしいの、従来やみではあったけれども一つの実績になったものは何とかめんどう見ていってやろうというのでは、大きなたてまえと現実が離れるんじゃないか。大体私、日本の法律を見て感ずることは、合理的に書いてないのですね。外国のはずばり書いてありますよ。日本のは抽象的なことを言って、解釈が幾通りもあって、時の権力に都合のいいように持っていく。これは外人に書かしたらば、あなたがくれた参考のあれを見たってずばり書いてありますよ、明快に。あなたがくれた外務省官報何とかという各国の制限の関係の条文とか、スウェーデンの条項でも何でも明快だ。日本のはそこは何も書いてなくて、ふわっとしていて、あっちこっちに障害物を置いてあるというのが日本の法律の悪い特徴だと思うのです。
 いろいろ聞きたいこと、順次続けていきますが、外務大臣の官報による告示とか云々というのがどこかにあったね。――それはそれじゃあとにして、そこで、いままでの。パスポートに今度は新たに包括的に記載する。その記載のしかたがいろいろあるでしょう。全ヨーロッパとか、全世界とか、いろいろあるでしょう。この未承認国に行くのは除くとか除かぬとかということは併記するのですか。
#78
○政府委員(山下重明君) いまわれわれが考えておりますのは、「すべての国並びに地域」といたしまして、カッコして、「北鮮、中共、北ベトナム、東独は除く」というふうに書くように考えております。
#79
○森元治郎君 それでは、一般旅券にしてヨーロッパへ行く、ロンドン、パリへ行って帰ってくる、そのときにそれは必ず書き込んであるのですか、どんな旅行についても。
#80
○政府委員(山下重明君) 一般旅券についてはすべてそういう旅行先にしたいと考えております。
#81
○森元治郎君 そうすると、何かあらためて未承認国はこれこれの国だと、これを除くと、何で除くのだろうと、五十万人の五十万冊のパスポートを持った人は変に眠っている子を起こすみたいなことになるのだが、そういう感じしませんか。
#82
○政府委員(山下重明君) 確かにそういう感じがいたしますけれども、実際にはこれは渡航の文書の上で渡航先というのは外国の官憲に対しては非常に重要な問題で、除かれている地域をはっきりさせないといけないということになっておるので、そういうふうにしたいと考えておりますが、アメリカなんかでも承認しない国はずっと並べて除いております。大体そういうふうにするのが国際的な慣行であり、そうせざるを得ないと考えております。
#83
○森元治郎君 これは先ほど申したように、寝ている子を起こすような感じがするのだな。きれいな。パスポートにどことどこを除くと、あまりじょうずなやり方じゃないのじゃないかということを強く感じます。
 ところで、この旅券ですが、公用旅券と一般とあります。私も公用を使わせてもらいましたが、一向外国へ行って公用だからといって私らが思うほど――りっぱなパスポートですよね。公用は皮もいいし、菊の御紋がピカピカしているのだが、あまり効果がないのですよ。あまりきかないんですよね。身分証明書だって何だってかまわぬ。学生証明書と同じ扱いだが、あれは一体けじめどうなっていますか、少しルーズじゃないかと思う。
#84
○説明員(林祐一君) 事務的に現行法の立場から申し上げますと、公用旅券は国の要務のために外国に渡航されるという場合に発給されるたてまえになっております。それに対しまして、それ以外のものは一般旅券という形で発給されます。そこで、公用旅券につきましては、その公用旅券を相手の国がどのように尊重するか、あるいは特別の特権と申しますか、そういうものを与えるかどうかということは、国際慣行もございますが、それは相手国次第だというのが現状でございます。
#85
○森元治郎君 私は公用旅券をもらったときに、りっぱなものだから、どっか飛行場をおりていけば、イエスサーでやられるのだと思ったら、何ということはない、同じなんだよな。それなら何も公用なんか持って行くことはないと思うのだが、あれはちょっとおもしろくないね、ああいう旅券は。この者は日本政府の何だとか書いてあるよ。ところが、相手にされないのだな。私ははなはだ権威を失墜してしまった。一般旅券でけっこうだ、何の価値もないのだから、この者については前途よろしくやってくれなんて言っても。もう少しあれは眠っている子を起こして、お互いに尊重しようということを旅券法の会議でもあったらはっきり言ってもらいたいな。何もトランクあけないでくれなんて言えというのじゃないよ。もう少し税関の態度もきちっとしてもらわぬと、おもしろくないですよ。
#86
○政府委員(山下重明君) 公用旅券は国の要務ということで出すということで、一番役に立っているのは、東南アジアでは、一般日本人の入国なんかの問題、非常にきびしく言うところがありまして、一般商社員として来る数なんかを制限されております。そういう場合には、国の要務、たとえばジェトロの場合だとかいろいろな場合、国の要務で行く人はこういう人数の制限から除外される。そういう場合を相手国も国のために、お互いの国のために来たのだということで役に立つことが現在の最も重要な点じゃないかと考えております。
#87
○森元治郎君 きょうは思いつきの質問でまとまりもあまりなかったけれども、まだまだたくさん順序正しく質問することがあります。きょうのところはこれで終わります。
#88
○西村関一君 関連。
 いまの公用旅券の問題ですが、私は御承知のとおり何回か外国の旅行をいたしましたが、ある場合には、院の派遣であるとか特に国の要務を帯びて行くというようなことでない場合には、一般旅券で参った場合もしばしばございます。ところが、出先の在外公館の方々は、一般旅券で行く場合には国会議員の日程もわからないし、所在もつかめないし、ぜひひとつそういう点については明確にお示しをいただきたいというようなことを言われて、いわば公用旅券で来てもらいたいというようなことを言われて、それもそうかなと思って、他の団体、たとえばキリスト教会の世界会議に出るといったような場合でも、広い意味から、広い見解からいけば何らかの形で国益に資するような働きもできるだろうというような見解のもとに公用旅券を出してもらったこともあるわけなんですが、その点はどういうところに限界を置くべきであるか。そういう点はいかがですか。
#89
○政府委員(山下重明君) 大体一般には国の要務ということで、各省において、民間の人たちが海外に出るときに、国の、たとえば通産省の要務で行くというようなことがはっきりした場合に、その各省から外務省に連絡があって公用旅券をお出しする、それから国会議員の方々の場合には、国会の議長なり何なりのお名前で事務局から外務省のほうに書類が来た場合に公用旅券をお出しするという規定になっております。
#90
○委員長(山本利壽君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
  午前十一時四十三分散会
    ―――――――――――――
ソース: 国立国会図書館
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