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#1
第061回国会 本会議 第2号
昭和四十四年一月二十七日(月曜日)
   ○開 会 式
 午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長及び議員、内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午前十一時 天皇陛下は衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
   〔一同敬礼〕
 午前十一時一分 衆議院議長石井光次郎君は式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
   式 辞
  天皇陛下の御臨席をいただき、第六十一回国会の開会式をあげるにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
  現下内外の多端な情勢にかんがみ、われわれは、この際、外に対しては、国際社会に平和と繁栄をもたらすために、いつそう積極的に友好親善の関係を深め、内にあつては、経済、貿易、社会福祉、教育、科学技術等、各般にわたり、今日の時代に即応する適切な施策を推進して、国民生活の安定向上につとめ、もつて国運の隆昌を期さなければなりません。
  ここに、開会式を行なうにあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。
 次いで、天皇陛下から次のおことばを賜わった。
   おことば
  本日、第六十一回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、わたくしの喜びとするところであります。
  現下の国際情勢は、きわめて多端でありますが、この間に処して、わが国が、近年ますます諸外国との友好親善を深めていることは、まことに喜びに堪えません。また、内にあつては、全国民が協力して、経済の発展と民生の安定のため、たゆみない努力を続け、その成果をあげつつあることは、深く多とするところであります。
  しかしながら、複雑な内外の情勢に対処し、今後さらに国運を隆盛に導き、世界の信頼を高めてゆくためには、なおいつそうの努力を要すると思います。
  ここに、国会が、当面の諸問題を審議するにあたり、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。
  〔一同敬礼〕
 衆議院議長はおことば書をお受けした。
 天皇陛下は参議院議長の前行で式場を出られた。
 次いで、一同は式場を出た。
   午前十一時八分式を終わる
     ─────・─────
昭和四十四年一月二十七日(月曜日)
   午後三時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程第二号
  昭和四十四年一月二十七日
   午後三時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
 第二 川端康成君のノーベル賞受賞につき祝意
  を表する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、常任委員長辞任の件
 一、常任委員長の選挙
 以下 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
#2
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 この際、おはかりいたします。
 青柳秀夫君から病気のため三十日間請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(重宗雄三君) この際、常任委員長の辞任につき、おはかりいたします。
    内閣委員長     井川 伊平君
    地方政行委員長   津島 文治君
    外務委員長     三木與吉郎君
    大蔵委員長     青柳 秀夫君
    文教委員長     中村喜四郎君
    農林水産委員長   和田 鶴一君
    商工委員長     金丸 冨夫君
    運輸委員長     谷口 慶吉君
    逓信委員長     久保  等君
から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#7
○議長(重宗雄三君) つきましては、この際、日程に追加して、
 常任委員長の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
#9
○船田譲君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
#10
○小柳勇君 私は、ただいまの船田君の動議に賛成いたします。
#11
○議長(重宗雄三君) 船田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、内閣委員長に八田一朗君を指名いたします。
   〔拍手〕
 地方行政委員長に内藤誉三郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 外務委員長に山本利壽君を指名いたします。
   〔拍手〕
 大蔵委員長に丸茂重貞君を指名いたします。
   〔拍手〕
 文教委員長に久保勘一君を指名いたします。
   〔拍手〕
 農林水産委員長に任田新治君を指名いたします。
   〔拍手〕
 商工委員長に八木一郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 運輸委員長に岡本悟君を指名いたします。
   〔拍手〕
 逓信委員長に永岡光治君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ―――――・―――――
#13
○議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件。
 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、菅野国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。佐藤内閣総理大臣。
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(佐藤榮作君) 第六十一回国会が開かれるにあたり、当面する内外の諸問題について所信を申し述べたいと思います。
 教訓に富み、波乱に満ちた明治百年を終え、新しい百年に向かって第一歩を踏み出したわが国は、多くの分野で転換期を迎えつつあり、これからの数年間はきわめて大切な時期であると考えます。時代の流れを的確に把握し、誤りなく歩を進めることこそ、現代に生きるわれわれの使命であります。工業生産力において世界第三位を占めるに至ったわが民族の活力は、さらに豊かな未来を創造する可能性を十分に持っております。人間の尊厳と自由が守られ、国民のすべてが繁栄する社会を実現するとともに、国際的信頼にこたえ、世界の平和と文化に独自の貢献をしなければなりません。
 新たな目標を追求しようとするわれわれの前途には、多くの試練が横たわっております。すでにわれわれは、都市問題、農村の人口流出、大学問題など急激な社会の変化に直面しております。これに賢明に対応するためには、物質的な豊かさが心の豊かさに結びつく新たな精神文明を確立しなければなりません。私は、過去百年間に吸収した近代文化を、未来への展望に立って大きく飛躍させるため、国民の皆さんとともに、進歩する社会にふさわしい倫理観の上に強い社会連帯の意識を育ててまいりたいと考えます。
 わが国の国際的立場を考えるにあたっては、常に国際政治の基調を把握し、時代の新しい流れを冷静に見きわめなければなりません。
 アジアにおいては、多年緊張の中心であったベトナム問題が政治的解決の方向に大きく動き、平和が芽ばえつつあります。和平交渉の前途には、幾多の曲折が予想されますが、この動きが恒久的な平和につながるよう、政府は、今後ともわが国の役割りを果たしてまいりたいと考えます。
 パリ会談を契機として、アジア全体に平和と建設のための協力の機運が盛り上がり、アジアの先進工業国であり、近年とみに国力の充実したわが国に対する国際的な期待は、ますます高まりつつあります。私は、アジアの平和と安定がそのままわが国の平和と繁栄につながることを深く認識し、東南アジア諸国の自助の気概と努力に敬意を払いつつ、その復興と建設に可能な限りの協力と援助を行ないたいと思います。
 他面、国際政治の基調は、依然として変わらず、イデオロギーを異にする二大陣営がそれぞれの集団安全保障体制のもとに共存し、時の推移とともに、それぞれの陣営の中で分裂や意見の対立はありますが、究極的には、その力関係によって世界の平和が維持されております。この冷厳な現実を見失ってはなりません。
 このような国際環境のもと、資源に乏しいわが国の生存と繁栄を確保するためには、わが国のみならず、わが国周辺の平和と安全が保たれることがきわめて肝要であります。
 政府は、今日まで、国力に応じ自衛力を漸増整備しつつ日米安全保障体制と相まって、脅威と紛争を未然に抑制してまいりました。かくして、わが国の安全が保たれ、繁栄が達成されたということは、何人も否定し得ない厳然たる事実であります。国民各位は、引き続き日米安全保障体制を堅持する政府の政策に必ずや強い支持を寄せられるものと確信いたします。
 政府は、日米安全保障体制から派生する諸問題については、安全保障上の要請を考慮しつつ、適切な解決をはかる方針であります。昨年来、日米安全保障協議会において協議の結果、約五十の施設区域について、返還、移転、共同使用を検討することとなりました。このことは、日米双方が基地周辺住民に生活上の不安を与えることのないよう、真剣に対処している一つのあらわれであります。政府は、今後とも、随時米側と話し合って、基地問題について最善の努力を払ってまいります。
 沖繩の祖国復帰については、早期返還を願う国民世論を背景として、ことしこそ、その実現に向かって大きく前進をはからねばならないとかたく決心しております。私は、今年後半の適当な時期に訪米し、ニクソン新大統領と率直に話し合い、日米両国政府及び国民の相互理解と友好協力のもと祖国復帰の実現の時期を取りきめたいと思います。その際、沖繩にある米軍基地が、現状において、まず第一にわが国の安全に果たしている役割りと、あわせてわが国のみならず極東の安全保障に果たしている役割りを認識し、国際情勢の推移を見守りつつ、国民の納得のいく解決をはかりたいと存じます。
 政府の基本方針である本土と沖繩との一体化については、本土復帰のその日に備え、沖繩同胞の意向を十分にくみ入れて推進いたします。沖繩同胞の国政参加については、超党派的な合意によるすみやかな実現を期待するものであります。また、米軍基地の存在から生ずる種々の問題についても、施政権が米国の手にあるという現実に即しつつ、最善を尽くしてまいります。
 わが国とソ連との通商、経済開発、文化交流等の分野における友好親善関係は、近年とみに緊密の度を加えつつあり、政府は今後ともその増進をはかる方針であります。
 しかしながら、両国間の最大の懸案である北方領土問題については、基本的な考え方の相違があり、その前途には大きな困難が横たわっております。私は、国民の強い関心と願望を背景に、忍耐強く交渉を続け、その解決をはかる決意であります。
 韓国、中華民国をはじめ近隣諸国との友好関係を維持増進することが大切であることは、申すまでもありません。同時に、将来のアジアの情勢に思いをいたすとき、最大の問題はわが国と中国大陸との関係であります。アジアの歴史において、古くから、中国本土とわが国とは、相互に理解し合い、政治、経済、文化の面で有益な交流を行なってまいりました。今後、中共で広く国際社会の一員として迎えられるようになる事態は、わが国としてこれを歓迎するものであります。
 しかしながら、現在の中共は、文化大革命は収拾段階に入ったとはいえ、内外に多くの問題をかかえ、いまだ世界すべての国との国際的な理解と協調を基礎とする対外関係を、打ち出すに至っていません。政府は、当面、中共の態度の変化に期待しつつ、従来どおり各種接触の門戸を開放してまいります。
 最近の経済動向を見ますと、国際収支は引き続き大幅な黒字を続け、国内経済も全体として順調に推移し、わが国経済はかつて例を見ない長期にわたる好況を続けております。しかしながら、最近の経済情勢には、消費者物価の根強い上昇基調があり、また、米国景気の今後の動向、流動的な国際通貨情勢など、なお警戒を要する動きも少なくありません。
 私は、内外経済の動向を注視し、慎重にして節度ある財政金融政策の基調を堅持しつつ、さらにその機動的、弾力的運営につとめ、現在の好調をできるだけ長期にわたって持続させたいと考えます。
 このような観点から、昭和四十四年度予算の編成にあたっては、経済の拡大が過度にわたることのないよう、財政規模を適度のものにとどめるとともに、国債発行額を縮減いたしました。
 欧州における通貨不安は、国際通貨体制の安定が世界経済の発展にとって重要な基盤であることをあらためて認識させました。現在、各国は密接な連絡と協調のもとにこの安定のための努力を重ねておりますが、この間にあって、わが国は、今後とも適切な経済運営によって円価値の維持につとめてまいります。
 さらに、自主技術の開発、産業構造の改善などを通じて、国際的競争に耐え得る企業の育成と国内経済体制の整備を進め、貿易及び資本の自由化に真剣に取り組み、一そう貿易の拡大につとめてまいります。関係者の決意と努力を期待します。
 国民税負担の軽減をはかることは、私のかねてからの念願であります。昨年に引き続き今年も、所得税を中心に、国税地方税を通じ平年度約二千六百億円の減税を行なうとともに、住宅及び土地関係税制の改善合理化をはかることといたしました。今後とも、中堅以下の所得者に対する税負担の軽減に、一そうの努力を続けてまいります。
 近年、国民の食生活における消費構造が変化し、米の生産が需要を大幅に上回る一方、畜産物、園芸作物、水産物は必ずしも増大する需要を満たすことができないため、農産物の需給の均衡をはかることが、農政の当面の大きな課題となりました。政府は、需給動向に対応した総合農政を推進し、その基礎の上に農家の生活の安定と向上をはかってまいります。
 中小企業の近代化への意欲は、とみに高まりつつあります。政府はこれにこたえ、少ない人手で高い生産性を上げることができるよう、金融、税制面の助成を通じて、体質を強化し、その振興をはかる所存であります。
 消費者物価の問題は、国民生活にとって切実な問題であり、政府が最も力を入れてきたところであります。そのため、公共料金については、国鉄の旅客運賃以外は極力抑制することとし、生産者米価及び消費者米価を据え置く方針をとるなど、政府が関与する公共料金により、物価上昇を刺激することがないよう配慮いたします。
 公害による生活環境の悪化、交通事故による死傷者の増加、住宅問題などは、急速な経済発展と都市化の進行の過程で生じた人間疎外の要因であります。政府は、社会開発推進の基本的課題として、今後もその解決に全力をあげてまいります。また、老人、母子、心身障害者など社会の進歩と繁栄による恩恵に直接あずかることのできない人々に対して、社会保障を充実し、あたたかい施策を講ずる決意であります。
 過密、過疎問題は、いまや国土全体にまたがる総合的な視野から解決への方向を見出すべきであります。全国にわたって新しい交通、通信、情報網を整備し、各地域の特性に応じた開発事業を進め、魅力ある広域生活圏を展望する新総合開発計画を策定し、均衡のとれた国土開発をはかってまいります。
 行政改革については、真に国民のための行政の実現を期して、今後とも、行政機構及び運営の簡素化、合理化を推進してまいります。地方公共団体におきましても、国と同様、行政の効率化につき、格段の努力をするよう強く要請いたします。
 アジアに初めて招致され、すでに多くの国々の参加が予定されている日本万国博覧会の開催は明年に迫りました。政府は、この大会を成功に導くため諸般の準備を進めております。
 わが国が、戦後経済的に世界有数の国家として発展し続けていることは、すぐれた国民教育のたまものであります。今後、わが国がさらに発展し、国際社会において、指導的役割りを果たし得るかいなかは、教育によって国民の資質をより一そう高め、学問の世界的水準と高度の科学技術を維持、発展させることができるかどうかにかかっております。特に、大学の国家社会の将来に対する使命と責任はまことに重大であります。戦後、大学は、量的にも拡大され、質的にも変貌いたしましたが、このことは新しい時代の要請であり、その役割りは高く評価されなければなりません。
 しかるに、今日、大学紛争という形で表面化した教育の危機は、わが国の前途に暗影を投げかけるものであります。東京大学に見られるように、学園が暴力によって長期にわたり占拠されたにもかかわらず、管理者が秩序維持の責任を果たさず、学生もまた暴力の前に学園の自治を放てきした結果、建物や研究施設が破壊され、学内の信頼関係までも荒廃させるに至りました。
 政府は、もとより学問の自由と学園の自治を尊重するものであります。およそ、学問の自由は、その進歩と社会の発展という大きな目標のために存在するものであり、学園の自治はそのためにこそ尊重さるべきであります。大学は、人間形成という崇高な使命を持つ教育と研究の場であり、破壊的政治活動の場であってはなりません。大学当局、教職員及び学生が、この認識に立って、それぞれの社会的責任を自覚し、暴力に屈せず、ともに協力して、一日も早く大学本来の機能を回復するよう強く期待いたします。(拍手)
 私は、今日の大学が真に国民のための大学として再建され、国民の期待にこたえることができるよう、最善の努力を払うとともに、中央教育審議会の答申を得て、教育制度全体につき、すみやかに改革を断行する決意であります。(拍手)
 われわれ日本人がいま享受している自由は、明治以来われわれの先人が、きびしい内外情勢の中で徐々に築き上げ、幾多の訓練を経て、ようやくここまで到達させたものであります。
 この自由を守り抜くことこそ、国民の総意であると確信いたします。
 暴力を否定する勇気なくして民主主義は保持し得ず、責任と規律なくして真の自由はあり得ません。(拍手)私は、この信念のもと、政治の姿勢を正し、自由と民主主義を守るためあらゆる努力を尽くし、国家の発展と民族の興隆のため全力を傾倒する決意であります。
 国民各位の御理解と御協力を切望してやみません。(拍手)
     ―――――・―――――
#15
○議長(重宗雄三君) 愛知外務大臣。
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(愛知揆一君) わが国外交の基本方針と当面の重要外交施策について所信を申し述べたいと存じます。
 日本国憲法は平和国家の理想を高く掲げております。私は、真にその名に値する平和国家とは、みずからの自由と安全と繁栄を保ちながら、進んで、戦争のない世界の創造を目ざし、「平和への戦い」のために積極的な貢献を行なう国家であると考えます。
 私は、こうした基本的な考え方のもとに、わが国益に最も一合致する政策を自主的に選択し、これを国民の理解と支持のもと、強力に推進いたしたいと存じます。
 まず、外交の基本にある問題として、わが国の安全をいかに確保すべきかにつき一言したいと思います。
 われわれは、ややもすれば、戦後わが国の平和と安全に対し外部から大きな脅威や障害が加わらなかったことを当然のごとく思いがちであります。しかし、この間、世界の各所において、現実に武力紛争が起こり、戦争の脅威が存在したにもかかわらず、わが国が安全と自由を享受し、世界に類例のない経済の発展を達成し得たのは何ゆえでありましょうか。それは、わが国が独立回復以来とってまいりましたわが国の安全保障及び国際緊張緩和のための施策に負うところが大きかったというべきではないでしょうか。(拍手)
 核時代における安全保障の考え方の基本は、戦争が起こった場合いかにこれに対処するかということから一歩進んで、戦争の発生をいかにして未然に防止するかということに移ってきております。
 平和国家を目ざすわが国の今後の施策も、戦争の未然の防止に重点を置くべきは当然であります。この見地からも、国際緊張緩和のための外交をさらに促進し、妥当な安全保障体制を確立することが、車の両輪のごとくに必要であります。国際緊張緩和の努力については、政府は、国際連合の強化、軍縮の促進をはじめ、世界各国との平和友好関係の維持発展等できる限りの施策を講じてまいることはもとよりであります。他方、安全保障体制については、世界に依然として平和に対する脅威が存在しており、国際連合による安全保障体制もいまだ確立されていない今日、わが国が必要かつ可能な自衛力を保持するとともに、その足らざるところを補い、わが国及びわが国を含む極東の安全を確保するため、今後とも日米安全保障体制を堅持することが戦争の発生を未然に防止するゆえんでもあり、わが国益に沿う最も賢明な策であると信ずるものであります。(拍手)
 わが国と米国とは、友好と信頼の精神に基づき、政治、経済、文化等あらゆる分野において緊密な協力関係を維持強化してまいりました。かかる日米両国間の友好協力関係は、わが国の平和と繁栄の維持増進のために重要であるのみならず、アジアの平和と繁栄にとって欠くことのできないかなめの一つであります。
 このような認識に立って、政府としては、このほど発足した米国新政府との間に率直かつ十分な対話を通じ、両国間の友好関係を一そう促進するとの基本的目標のもとに、個々の問題について公正妥当な解決をはかってまいる所存であります。
 当面、日米両国間において最も重要な問題は、沖繩問題の解決であります。
 佐藤総理大臣の施政方針演説に述べられているとおり、政府は沖繩の早期返還について米国新政府との間に全力をあげて交渉を進める方針であります。先般の小笠原返還のごとく、領土を平和的な話し合いで回復することに成功することは世界史にも例の少ないことであります。私は沖繩返還問題の困難さを否定するものではありませんが、沖繩の早期返還は、米国との対決という姿勢によってではなく、日米両国の相互信頼と友情の基礎の上においてのみ実現可能であると信ずるものであります。
 次に、ソ連との関係でありますが、北方領土問題につきましては、政府は、全国民の強い要望を背景として、今後ともソ連政府との間に忍耐強く折衝を続け、あくまでその解決に努力する所存であります。また、隣国ソ連との間に友好善隣の関係を維持して行くことは、単に両国の利益であるのみならず、極東における平和と安定にも資するところ少なからぬものと考えますので、日ソ両国の利益の一致する限り対ソ友好関係を促進し、当面、北方水域の安全操業、航空問題等、懸案の解決に努力して行きたい考えであります。
 中国問題もまた、わが外交のきわめて重要な課題であります。まず、中華民国とわが国との友好関係はますます促進されつつあります。
 他方、中国大陸においては、いわゆる文化大革命が収束の段階に入ったといわれておりますが、事態はいまだ流動的であるように見受けられます。政府といたしましては、当面、事態の発展を注視するとともに、アジアの平和と安定のためにも中共が進んで国際協調の態度をとることを期待するものであります。
 わが国の最も近い隣国である韓国が着々と政治的安定と経済発展の実をあげつつあることは、われわれにとっても心強い次第であります。他方、朝鮮半島には依然緊張含みの情勢が続いております。わが国はアジアのこの地域の安定に特に重大の関心を有するものであり、今後ともその動向に不断の注視を続けて行くことが必要であると考えます。
 パリにおける和平会談が再開の運びとなり、ベトナム問題の平和的解決の見通しが一段と明るくなったことは喜ばしいことであります。
 政府としては、和平実現に至る過程においても、難民住宅の建設等の人道的援助を行なうとともに、今後の和平交渉の進展に応じ、平和維持機構への参加、民生安定と戦後の復興のための協力など、この地域に永続的平和を確保するため、可能な限りの協力を行なう考えであります。
 わが国は、平和国家としていかなる武力紛争にも絶対に関与しないとの立場を堅持してまいりました。しかしながら、私は、わが国は「平和への戦い」には進んで参加し、積極的役割りを果たすべきものであり、これこそわが国の平和国家として進むべき道に沿うものと信ずるものであります。
 たまたま国際連合も、一九七〇年代を「第二次国連開発の十年」とする宣言を行なうこととしております。まことに時宜を得たことと考えます。けだし、いわゆる南北問題の解決は世界の真の安定した繁栄と平和のために今後人類が取り組むべき最大の課題の一つであるからであります。
 幸い、アジア諸国の間には、相携えて共通の課題に取り組もうとの地域協力の機運が高まり、政治、経済、社会の各分野にわたって相互理解と協力のための努力が重ねられてきていることは、心強いところであります。
 政府としては、アジア、特に東南アジアに対する経済協力の一そうの充実につとめるとともに地域協力の促進をはかる考えであります。このため、わが国がになうべき負担や犠牲はもとより少なくないでありましょう。しかしながら、アジアの諸国と手を携えて明るい未来を切り開くといった雄大な国民的気魄をもってこの問題に取り組むことなくしては、世界の期待にこたえ、また、戦争のない世界の創造に真に寄与することはできないと私は考えるのであります。
 わが国が、いまを去る三年前、東南アジア開発閣僚会議の開催を提唱し、東南アジアの経済開発という共通の目標達成に向かって具体的な努力を行なって参りましたのも、このような考えのあらわれであります。
 また、本年六月、わが国においてASPAC、すなわちアジア太平洋協議会の閣僚会議が開かれますが、ASPACはいかなる国、いかなる国家群との対立をも意図するものではなく、参加国の共通の諸問題についての自由な意見交換と協同事業のための協力を通じて、アジア太平洋諸国間の協調を緊密化し、もってこの地域全体の平和と安定に貢献することを目的とする機構であります。わが国としては、これらの機構が、それぞれの分野において、今後ともアジア太平洋地域諸国の連帯と協力の機構として健全な発展を遂げるよう、この上とも一そうの努力を惜しまない所存であります。
 他方、私は、近年ますます深まりつつある欧州、中南米及び中近東・アフリカの諸国との友好関係を今後とも一そう促進してまいりたいと存じます。
 わが国が「平和への戦い」に寄与するためにも、みずからの経済力の充実が必要であることは申すまでもありません。特に、わが国が今後とも高度成長を続けていくためには、国際通貨体制の安定のほか、世界貿易の拡大が不可欠の条件であります。
 国際通貨体制をめぐる問題につきましては、わが国は国際通貨基金の加盟国として、また、いわゆる十カ国会議の一員として、国際協調を通じ、国際的な金融、通貨体制の安定をはかっていきたい考えであります。かかる見地から、国際通貨体制の長期的安定を目的とする国際通貨基金特別引き出し権の創設は、わが国としてもこれを歓迎する次第であります。
 世界貿易の拡大につきましては、戦後のわが国の経済成長が、ガット体制に象徴される自由貿易原則のもとにおいて可能とされたことにあらためて留意する必要があります。わが国が自由貿易によって国の一そうの発展を期さねばならぬ立場にある以上、各国における保護貿易主義の台頭を押え、世界貿易の拡大をはかることは当然でありますが、それとともに、わが国としても、輸入自由化の課題に真剣に取り組んでいかねばなりません。また、資本取引の自由化につきましても、世界各国の指向する自由経済の原則に立って、一そうの努力を払っていく所存であります。
 先般の国際連合第二十三回総会において、わが国を含めきわめて多くの国が、チェッコ事件を遺憾とし、今日の世界における大国の責任の重大なることを説き、平和の維持のため、国際連合憲章の原則を忠実に順守する必要を強調いたしました。他方、中東における情勢は、国際連合の努力にもかかわらず、いまだに改善を見ず、世界平和に脅威を与えております。私は、国際紛争の平和的解決のための努力の必要性が今日ほど大なる時期はないと考えるのであります。
 この関連において特に強調すべきは、世界の諸国が軍縮の実現にさらに真剣な努力を払うべきことであります。政府が核兵器拡散防止のための条約案の精神を基本的に支持する態度を明らかにしてまいりましたのも、かかる立場からであります。
 戦争なき世界の創造のためには、国際平和維持機構としての国際連合の強化に努力すべきものと考えます。特に私は、わが国が平和国家としての積極的役割りを果たし得るためにも、国際連合内におけるわが国の地位の向上に一段と努力したいと考えるものであります。
 私は、以上申し述べました考え方にのっとり、変転する国際情勢の動向を正しく見きわめながら、平和国家たるにふさわしい外交を積極的に進めてまいる決意であります。国民各位の御理解と御支援を切に希望いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(重宗雄三君) 福田大蔵大臣。
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十四年度予算の御審議をお願いするにあたりまして、その大綱を御説明申し上げ、あわせて今後における財政金融政策につきまして、所信を申し述べたいと存じます。
 わが国経済は、昭和四十年の不況を克服いたしまして、その後、三年もの長い間、一貫して拡大の歩みを続け、現在もなお力強い上昇の勢いを示しております。かくて今年は、景気上昇の第四年目を迎え、わが国が従来経験したことのない長期の経済拡大をここに実現しようとしているのであります。いまや、わが国の国民総生産は世界第三位に達したと見られ、国際経済社会におけるわが国の地位はますます重きを加えつつあります。
 しかしながら、今後のわが国経済を展望いたしますと、その前途には楽観を許さないものが多々あるのであります。すなわち、国内におきましては、消費及び投資の両面において、引き続き需要が強調に推移しているのに対し、海外では、アメリカにおける景気の鈍化傾向、流動的な国際通貨情勢など、先行き警戒を要する要因が少なくないのであります。また、国内における消費者物価の上昇の動きは根強く、今後長期にわたる景気上昇の過程において、物価安定のために一そうの努力が要請されるのであります。
 このような情勢に対処いたしまして、わが国経済の均衡のとれた成長を持続し、明るく、豊かな社会を築いていくため、私は、当面、次の三つの点を眼目として財政金融政策の運営に当たりたいと考えております。
 すなわち、第一は、経済の持続的成長を達成することであります。第二は、物価の安定につとめることであります。第三は、経済の国際化に応ずる体制を確立することであります。私は、最善を尽くしまして、この三つの課題に取り組んでまいりたいと思います。
 まず第一は、経済の持続的成長を達成することであります。
 わが国経済は、目下順調な推移をたどっておりますが、経済の拡大が行き過ぎ、景気が過熱し、あるいは、その結果引き締めを招いて経済が深い谷間に落ち込むような事態は、ぜひとも避けなければならないと考えるのであります。経済の持続的成長こそは、国民の福祉と社会の安定の基盤であります。わが国経済の現在の好調を維持し、これを今後の長期の発展につないでいくことこそ、当面最も重要な国民的課題であると存ずるのであります。
 このような観点から、昭和四十四年度予算の編成にあたりましては、公債発行額を縮減して、公債依存度の引き下げをはかりました。公債依存度の引き下げは、慎重な財政運営の態度を端的に表現するものであり、また、将来における財政の景気調整能力を拡大することにもなるのであります。私は、かつて、戦後初めて本格的な公債政策の導入に踏み切ったのでありますが、ここに、景気のよいときには公債依存度を引き下げるという基本原則を確立し、公債政策に不可欠の要件である節度をわが国財政に定着させたいと考えるのであります。
 なお、予算の執行にあたりましては、内外経済情勢の変化を注視しつつ、機に臨み変に応じまして、その弾力的運用をはかってまいるべきことは申すまでもないところであります。
 他方、金融政策につきましても、金融による景気調整手段の再検討を進めるとともに、金融政策と財政政策とが一体となって景気調整の機能を発揮するよう、一そう配意してまいるつもりであります。
 第二に私が重要視しているのは、物価の安定であります。
 今日、消費者物価安定の要請はきわめて強いのでありますが、消費者物価の問題は、経済成長の問題と切り離して論ずることはできないのであります。成長経済下における消費者物価の上昇は、経済成長にまつわる構造的要因に根ざすところが大きく、成長を持続し、成長を進めながら、しかも、同時に消費者物価の安定を確保するというところが問題のかなめであり、また、困難なゆえんでもあるのであります。すなわち、経済成長は福祉社会建設の基盤でありまするが、消費者物価の上昇が過度にわたりまするときは、国民生活の不安定をもたらすことはもとより、貯蓄意欲の減退等を通じて、経済成長自体に悪影響を及ぼすことにもなるのであります。したがって、困難であるとはいえ、成長政策を進めながら、かつ、消費者物価を安定させる、つまり、成長と物価安定を両立させるかまえ、このかまえは全力を尽くして押し進めなければならぬ、かように考えます。
 消費者物価安定のためには、競争条件の整備、低生産性部門の近代化、流通機構の改善、公共企業体の合理化、輸入政策の活用など、経済の構造面にわたる施策を着実に積み重ねていくことが必要であります。
 同時に、財政金融政策の慎重な運営により、総需要が適正な水準を越えて膨張するのを防ぐことが肝要であります。今後、財政金融政策の運営にあたりましては、これらの点に十分配意してまいる所存であります。
 第三は、経済の国際化に応ずる体制の確立であります。
 最近、世界各国間の交流は日を追って自由かつ緊密となり、わが国経済と世界経済との結びつきも、ますます緊密なものとなってまいりました。このように緊密化した国際経済社会において、一国経済の発展は世界経済の繁栄なくしては不可能であり、また、国内経済の諸問題も、すべて世界の動きと関連して考察し、処理しなければならない状況となりました。
 この間、世界におけるわが国の経済的地位は著しく向上いたしました。いまや、わが国は、その国力に応じ、経済協力その他の面において、国際社会における責任を果たしていかなければならない立場に立ち至っているのであります。また、国際金融面におきましても、国際通貨基金の特別引き出し権制度の早期発動等、国際通貨体制の安定強化のため積極的にその役割りを尽くしていかなければならない時期に来ております。
 わが国が、今後一そうの発展を続けていくためには、貿易及び資本の自由化に真正面から取り組んでいかなければならないのでありますが、他面、国際化の進展に伴って、国際競争がますます激化していくことも、また覚悟しなければなりません。このような事態に対処し、わが国経済の効率化を推進するため、科学技術の振興、労働力の有効活用、企業体質の改善、資本市場の整備育成等に一段と努力すべきものと考えます。また、金融制度全般の再検討を行ない、適正な競争原理を導入するなど、金融の効率化を推進しなければならないと考えるのであります。
 昭和四十四年度予算は、以上申し述べました財政金融政策の基本方針にのっとり編成いたしました。
 その特色とするところは、次の諸点であります。
 第一は、公債依存度の引き下げを行なったことであります。
 公債を伴う財政の景気調整機能を発揮させるとともに、財政体質の改善をはかるため、前年度に引き続き公債発行額の縮減に努力いたしました。すなわち、一般会計における公債の発行額は、前年度予算より一千五百億円減額いたしまして四千九百億円といたしました。これにより、一般会計歳入中における公債依存度は、前年度の一〇・九%から七・二%に低下することに相なります。
 第二は、税負担の軽減をはかったことであります。
 最近における国民税負担の状況にかんがみ、昭和四十四年度においては、中小所得者の負担軽減を主眼として、大幅の所得税減税を行なうとともに、地方税につきましても、住民税を中心とする減税を行なうことといたしました。これによる減税額は、国税、地方税を通じて、平年度約二千六百億円にのぼる見込みであります。
 第三は、物価の安定について、格段の配慮を加えたことであります。
 すなわち、米、麦及び塩の価格を据え置く方針をとることとしたほか、公共料金の引き上げは、国鉄運賃を除き、極力抑制することといたしております。さらに、予算及び財政投融資計画を通ずる各般の物価安定対策につきましても、その拡充をはかっております。
 第四は、引き続き総合予算主義のたてまえを堅持し、補正要因の解消につとめたことであります。
 このため、公務員給与費、食糧管理特別会計への繰り入れ等について所要の措置を講じました。
 かくして、一般会計予算の総額は、歳入歳出とも六兆七千三百九十五億円となり、昭和四十三年度予算に対し、九千二百十億円、一五・八%の増加と相なります。
 財政投融資計画の総額は、三兆七百七十億円でありまして、昭和四十三年度当初計画に対し、三千七百八十億円、一四%の増加となっております。
 なお、国民経済計算上の政府財貨サービス購入の前年度に対する伸び率は一二・三%となり、国民総支出の伸びを下回る見込みであります。
 以下、政府が特に重点を置いた施策について、その概略を申し述べます。
 まず、税制の改正であります。
 昭和四十四年度の税制改正におきましては、中小所得者の負担軽減を主眼として、平年度一千八百二十五億円にのぼる大幅の所得税減税を実施し、夫婦と子供三人の給与所得者の課税最低限を、平年度年収九十三万五千円程度まで、約十万円引き上げるとともに、給与所得控除の適用範囲の拡大、税率の緩和等を行なうことといたしました。
 土地税制につきましては、土地の供給の促進と投機的取得の抑制をはかるため、土地の譲渡益に対する課税につき、分離課税方式を導入するなど画期的な改善措置を講じ、土地問題の解決に資することといたしておるのであります。
 このほか、租税特別措置につきましては、住宅対策、公害対策、原子力発電の推進、中小企業対策等、重点的に所要の措置を講ずるとともに、反面交際費課税の強化など、既存の制度の整理合理化をはかることといたしております。
 なお、地方税につきましても、住民税の課税最低限の引き上げ、青色事業専従者の完全給与制の実施など、中小所得者の負担軽減をはかることといたしております。
 次に歳出について申し上げます。
 昭和四十四年度予算におきましては、限られた財源の適正かつ重点的な配分につとめ、国民福祉の向上のための施策を着実に推進することといたしております。
 以下、重点施策の概要について、申し述べます。
 第一は、社会保障の充実であります。
 わが国の社会保障につきましては、経済の発展と国民生活の向上に応じ、年々充実をはかってまいりましたが、昭和四十四年度におきましても、生活扶助基準の引き上げを行なうほか、福祉年金の改善等、低所得者に対する施策の充実をはかっております。また、児童、母子、老人、身体障害者等の福祉対策、保健衛生対策につき、きめこまかく配慮してその充実をはかるほか、二万円年金の実現を期し、年金制度の改善を行なうこととしております。
 第二は、社会資本の整備であります。
 わが国経済の均衡ある発展を確保するため、各種社会資本の整備には特に重点を置き、治山治水、道路整備、港湾・漁港・空港の整備、農業基盤整備、住宅・生活環境施設の整備等を一そう推進することといたしました。
 政府施策住宅の建設戸数は、前年度に対して七万六千戸余り増加し、五十七万三千戸といたしております。
 第三は、農林漁業、中小企業の近代化であります。
 農業につきましては、新しい農政の展開をはかるため所要の措置を講ずることとしております。すなわち、最近の米の需給事情を勘案し、生産者米価及び消費者米価を据え置く方針をとることとし、食糧管理特別会計への繰り入れを増額するとともに、米の自主流通を認めることとしております。他方、農業の生産性向上と選択的拡大及び農家所得の安定向上をはかるため、農業基盤の整備、畜産・園芸の振興、農産物の流通改善等を推進することといたしました。さらに、新たに稲作転換対策を実施するとともに、第二次農業構造改善事業に着手するほか、農業近代化資金の画期的拡充等、農林漁業金融の改善をはかったのであります。
 中小企業につきましては、中小企業振興事業団、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等の融資規模の拡充を中心に、その充実をはかっております。
 第四は、貿易の振興及び経済協力の推進であります。
 貿易の振興につきましては、日本輸出入銀行の貸し付け規模の大幅な拡大をはかりました。対外経済協力につきましては、海外経済協力基金の事業規模の拡大、技術協力の推進、対外食糧援助等、わが国経済の実情に応じて、その推進をはかることとしております。また、万国博覧会の開催準備のため、所要の資金を確保いたしました。
 第五は、文教及び科学技術の振興であります。
 文教につきましては、義務教育教職員の定数を改善し、教育内容の向上をはかるほか、文教施設の整備、私学の振興、特殊教育及び僻地教育の充実、文化・体育の振興など、各般の施策の推進に配意をいたしております。
 科学技術につきましては、新しい動力炉の開発、宇宙開発、海洋開発を中心に、大幅な拡充をはかることとしております。
 最後に、昭和四十四年度の地方財政は、地方税、地方交付税等の歳入の大幅な増加が見込まれるのでありますが、現下の経済情勢にかんがみ、国と同一の基調で節度ある運営を行なうとともに、将来に備え、地方財政の健全化を一そう促進するよう期待するものであります。
 以上、昭和四十四年度予算の大綱について御説明いたしました。
 わが国経済は、戦後二十数年間、幾多の困難を克服して、世界に例を見ない急速な成長を遂げてまいりました。しかし、わが国経済の将来を展望いたしますと、労働力不足をはじめ、成長を制約する内外の諸条件は次第にきびしさを増すとともに、成長に伴う各種のひずみも拡大の傾向を持続するものと見られ、今後克服すべき障害のあまりにも多きを痛感するのであります。
 激動する国際経済環境の中にありまして、わが国経済が今後もさらに前進を続けていくには、いたずらに極端な飛躍を望むことなく、これらの障害を一つ一つ着実に克服していかなければならないと思うのであります。このような努力を着実に積み重ねていくことによりまして、充実した経済力の基盤を確立し、その上に平和で希望と活力にあふれた社会を建設していくことが可能になると信じます。
 私は、この目標に到達するため、財政金融政策を、節度を持って、また弾力的機動的に運営し、当面、経済成長を長続きさせる、物価の安定につとめる、国際化に応ずる体制を確立するという三つの課題を果たすべく全力を傾け、国民の期待と国家の要請にこたえる決意であります。
 国民各位の御理解と御協力をお願いいたす次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(重宗雄三君) 菅野国務大臣。
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(菅野和太郎君) 私は、当面する経済情勢とこれに対処する所信を明らかにし、国民各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
 最近のわが国経済は、個人消費、民間設備投資等の根強い増勢と輸出の好調に支えられて堅調な拡大を続けており、また国際収支は、海外景気の上昇等を背景に急速な改善を見せております。
 他方、国際経済の動きを見ますると、一昨年下期以降回復に転じました世界景気は、その後も基調的には上昇過程をたどっており、また昨年秋一時動揺を見せた国際通貨情勢も、その後の国際金融協力の進展と関係各国の自国通貨防衛のための各種の施策等により再び落ちつきを取り戻しております。
 しかしながら、このような好調に見える経済情勢の中にあって、消費者物価の上昇基調が依然として根強く、また海外経済面においても、先行き米国景気の動向等により世界貿易の伸びの低下が見込まれるほか、国際通貨情勢の推移もなお流動的であるなど、必ずしも楽観を許さない面も出てきております。
 さらに、現在のわが国経済には、量質両面の労働力の不足の本格化、経済の国際化の本格的進展、公共投資と民間投資との不均衡、消費構造の変化に対する供給態勢の不適応、都市への人口の過度集中など経済社会の基本的な条件変化が一そう強まりつつあります。
 このような内外の経済情勢にかんがみ、政府はまず、物価の安定を第一義的な目標とし、経済の拡大が過度にわたることのないよう慎重な態度で臨み、また国際収支の動向に留意しつつ、機動的な経済の運営を行なうとともに、旧来の制度・慣行を改善する等、経済の効率化を促進し、長期的視野に立って、均衡のとれた持続的な経済成長の基盤の整備をはかってまいる所存であります。このような経済運営のもとにおいて、来年度の経済成長は、実質九・八%程度と、本年度の一二・六%程度に対し控え目な姿となる見込みであります。
 当面、特に重要な物価の問題につきましては、現在のような根強い消費者物価の上昇は、国民生活面に大きな負担となるばかりでなく、経済の健全な発展を損なうことになると考えられます。
 このような物価情勢にかんがみ、政府としては、物価の安定を最重点施策としてこれに全力を傾注することとし、来年度については、いやしくも公共料金の引き上げにより物価上昇を主導することのないよう、国鉄運賃を除き極力これを抑制することといたしました。すなわち、消費者米価については、昨年度一四・四%、本年度八・〇%の引き上げに対し、来年度はこれを据え置く方針を明らかにし、基礎的な生活物資である麦、塩についても、その値上げを行なわないこととし、電信電話料金については、その体系の合理的な改定を行なうにとどめ、実質的には引き上げを認めないことといたしました。また国鉄運賃については、国鉄経営の状況にかんがみ、長期にわたる根本的な構造改善が確実に実行されることを前提とし、国及び地方の財政援助と相まち、最低限度の幅に限って値上げを認めることにいたしましたが、国鉄運賃の値上げが他の関係公共料金の便乗値上げを誘発することのないよう、特にきびしい態度をとることにいたします。
 もとより、消費者物価の上昇は、わが国経済の急激な発展に伴う経済各部門の生産性上昇の格差による構造的な要因に基づくところが大きいので、この面からの各般の施策を地道に推進していくこともまた基本的に重要であります。
 このような観点から、農業、中小企業等低生産性部門の合理化・近代化、流通機構の改善、公正な競争条件の整備、輸入政策の弾力的活用、消費者行政の推進などの諸施策を一そう強力に推進するとともに、生産性が上昇している部門では、その成果の一部を価格引き下げに回すような環境をつくってまいりたいと考えております。
 また、土地問題につきましては、地価の高騰に対処するため、地価対策閣僚協議会等の場において検討を進めているところでありますが、今後、土地関係法令の運用、土地税制の改善等を通じ、土地の有効利用を促進するとともに物価の安定に資する所存であります。
 以上申し述べましたような政府の施策と、国民各位の御協力により、来年度の消費者物価の上昇率を五%程度におさめたいと考えております。次に、わが国経済の効率化を進め、今後における経済成長の基盤の整備をはかるため、まず財政面においては、公債発行額を極力押えるとともに、昨年度に引き続き、総合予算主義の定着をはかることにより、財政が適正な資源配分、景気調整などの機能を十分果たし得るよう配慮いたしました。さらに、総合農政の推進、中小企業の構造改善等、産業体制の効率的な整備、金融の効率化、企業の体質の改善につとめ、また社会資本の充実、過密過疎・公害対策の強化等を通じ、社会開発の促進をはかることといたしております。
 次に、国際経済関係の緊密化する中にあって、世界経済におけるわが国の地位の向上にかんがみ、国際化に即応する体制の整備につとめつつ、貿易及び資本の一そうの自由化を進めるとともに、引き続き、輸出の振興、経済協力の推進、貿易外収支の改善につとめることが重要であります。
 また、労働力不足の進展に備え、労働力の有効活用及び人的能力の開発を促進する所存であります。
 わが国経済が、今後、安定かつ持続的な成長を遂げていくためには、長期的な観点からその進むべき方向を示すことが必要であります。このような見地から、私は次に経済社会発展計画と全国総合開発計画について申し述べたいと存じます。
 まず、一昨年策定を見た経済社会発展計画について申し上げます。
 この計画は、経済の効率化を軸として、物価の安定と社会開発の推進を最重点の政策課題とし、四十二年度を初年度とする五カ年計画でありますが、その後におけるわが国経済の目ざましい成長により、現段階において計画と実勢との間にはかなりの乖離が生じてきております。
 私としては、上記の政策課題は、依然として堅持されるべきものであると考えますが、この計画が、政府のみならず、民間経済活動の指針として重要な役割りを果たしつつあることにかんがみ、また、その後における情報化社会への進展等に見られる変化を踏まえ、新しい観点から政策課題について配慮しつつ、本計画について検討を加える段階にきたと考える次第であります。今後、政府としては、経済審議会等の場を通じ、各方面の英知を集め、計画のあり方等も含め、この問題に積極的に取り組み、わが国経済の進むべき方向を明らかにしてまいりたいと考えております。
 次に、国土総合開発の問題について申し上げます。
 現在の全国総合開発計画は、三十七年に策定をみたものでありますが、その後における急速な経済成長と都市化の進展に伴って、地域経済社会は急激な変化を遂げ、いわゆる過密過疎現象が問題となってきております。
 このような事態に対処して、都市、農村を通じて豊かな社会を創造し、住みよい国土を建設していくためには、全国にわたる情報・通信網と高速交通体系を整備して国土の開発可能性を拡大し、この基礎の上に、各地域の特性に応じた開発事業を推進するとともに、魅力ある広域生活圏を形成するなど、新しい国土経営の基盤をつくり上げることが必要であります。
 このため、現在、新しい全国総合開発計画の策定に取り組んでおりますが、この計画は、それができ上がる過程において、全国民の深い御理解と御協力を得て、実効あるものとすることが肝要でありますので、関係各方面の御意見も十分取り入れつつその策定を進め、国土開発の基本的方向を明らかにしてまいりたいと考えております。
 以上、わが国経済の当面する諸情勢について私の所信を申し述べました。
 国民各位の御理解と御協力を切望いたします。(拍手)
#21
○議長(重宗雄三君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#23
○議長(重宗雄三君) 日程第二、川端康成君のノーベル賞受賞につき祝意を表する件。
 日本芸術院会員・文化勲章受賞者川端康成君は、昨年十二月十日、一九六八年度ノーベル文学賞を授与されました。まことに喜びにたえません。(拍手)
 つきましては、本院は、同君に対し、院議をもって祝意を表することとし、その祝辞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 議長において起草いたしました祝辞を朗読いたします。
  日本芸術院会員川端康成君 君はその作品にすぐれた感受性をもつて日本人の心の精髄を巧みに表現し千九百六十八年度ノーベル文学賞を授与されました
  参議院はここに君の偉大な功績をたたえ院議をもって心からの祝意を表します
   〔拍手〕
 祝辞の贈呈方は、議長において取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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