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#1
第061回国会 本会議 第4号
昭和四十四年一月三十一日(金曜日)
   午前十時五分開議
     ―――――・―――――
#2
○議事日程 第四号
  昭和四十四年一月三十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 第二 参議院予備金支出の件
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
#3
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第三日)。
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。森中守義君。
   〔森中守義君登壇、拍手〕
#5
○森中守義君 私は、日本社会党を代表いたしまして、重要な若干の点について政府にただしたいと思います。
 まず、対中国政策について、総理、外務、通産の各大臣に伺います。
 政府は、イタリアの中国承認の態度表明を知るや、事の重大さに、総理演説の手直しをしたと伝えられましたが、新情勢に対応する中身はつくらず、適当につくろっているにすぎません。在来の政経分離を言わず、世論に対し新しいアプローチを印象づけようとつとめながら、演説の中からは、新しい世界の潮流に即応する何らの前進をも見出すことはできません。のみならず、外務省は、イタリアの中国承認に伴って、台湾に対し、イタリアと断絶しないよう自重を促したと伝えられましたが、同じとき、牛場次官は、二つの中国の考え方が日本の政策として現実味を帯びることはいまのところないと述べ、矛盾を露呈しています。
 また、総理は、中国が国際社会の一員として迎えられるのを歓迎すると言っておりますが、戦後二十三年を経た今日、わが国が最も大きな被害を与えた中国七億の大衆に対して、いまだに戦争責任への反省も示さず、逆に、限られた国際社会に追随して、中国封じ込めに同調、アジアの緊張激化の一翼をになっている政府が、当の被害者たる中国に言うべきことばとしては、いささか常識を欠くもののようであります。朝鮮戦争、ベトナム戦争の過程と結果で、ドミノ理論や中国封じ込め政策の誤りは実証され、世界の平和を根本的に求めるためには、中国との対話が不可欠な要件だと思います。それが、イタリア及びカナダ、ベルギー等の中国承認の可能性が現実の問題となってあらわれたものと思います。このような流動的情勢にあって、地理的にも歴史的にも最も中国と関係が深く、しかも、世界に誇るべき平和憲法を持つわが国が他国に先んじて中国との対話をすべきではありませんか。政府は、この時点で、従来の対中国政策に抜本的に再検討を加え、国交正常化への道を踏み出すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
 さて、当面する問題について伺います。
 まず、日中覚え書き貿易の継続問題でありますが、この取りきめは、昨年末でついに空白を生じております。元来、この取りきめの基礎は、一九六二年松村・周共同発表にもあるとおり、政治経済関係を含む両国の正常化をはかるべきことを双方が確認することにあったものであり、当時の池田内閣はこれに暗黙の了解を与え、プラント輸出に輸銀の融資をつけることで一応の誠意を具体的に示しております。しかるに、現内閣に至ってからは、口にケース・バイ・ケースと体裁のよいことを言いながら、まだ一度もプラント輸出を認めておりません。目下、MT関係者は、懸案の食肉輸入解禁問題に何とかして糸口を見出し、これによって交渉の手がかりをつけようと努力していますが、これは十年来の懸案であり、しかも日本側から最高の専門家を含む視察団が三度も派遣され、一度輸入許可に踏み切りながら、再々方針が変更したといったいわくつきのものであります。輸出入均衡の日中貿易の性格からも、わが国の輸出を確保するためには必然的に輸入の努力が行なわるべきであります。その一環として、現在輸入されている物資のほかに、上積みするものとして提案されたのが食肉であります。国内食肉の不足と価格の高騰が食肉輸入の世論を高めました。これは輸出の確保、食生活の充足、価格の安定という一石三鳥の措置であるのに、政府はこれを純衛生的問題という袋小路に追い込んでしまい、最近、船上加工という奇妙きてれつな方式を編み出したものであります。中国側は、口蹄疫は一九六二年以来発生していないとしばしは言明し、しかも、わが国最高の技術者もこれを是認、西欧諸国にも現に輸出されている事実を、あたかもせせら笑うように、相手の港の鼻先で、引き取った肉に病菌の心配があるとして、買った以上、煮ようと焼こうと、かってだと言わぬばかりに、船上で直ちに加工を始めるということは、国際儀礼としても通用いたしません。この件はなお流動的だとしておりますので、これ以上申しませんが、もしその方式で輸入が行なわれるならば、食品価格の安定には何ら益するところはありません。このようなこそくな手段を弄することなく、この際ずばり生肉輸入に決断をすべきではないかと思います。もしこの食肉問題の解決のみがMT貿易取りきめの条件だと判断するならば、あまりにも皮相的な見解で、存立の基礎を踏まえることを忘れてはなりません。総理は、MT貿易の存続を期待されるのかどうか、また、その見通しについて所見を伺いたいと思います。
 また、総理は、中国を敵視しないと言われるが、台湾を承認している事実の上に、さらに中国封じ込めの方向に手を貸すという具体的事実が、結果的に敵視政策となり、施政の各般にわたって見えるのであります。その最も新しい端的なものが、現在、社会の注目を集めている北京、上海での日本工業展覧会であります。今回の出品物に対する政府の審査は、過去五回の中国での展覧会や、ソ連、チェコ等の社会主義圏を含む世界のどの地域で行なわれたものにも見られない厳重なものであったと言われています。展覧会をやる以上、諸外国との競争もあり、輸出振興のためにも最高の技術を集め、最高の品目を展示するのは当然であります。しかも、今回の場合は、文化大革命の収束期を迎えて一段の躍進を伝えられている中国が、わが国に諸外国に先がけて最初の機会を与えたものでありまして、わが国工業技術の水準を紹介し、貿易振興に役立てる絶好の場であります。しかるに、貿易振興の責任ある政府は、船積み期限ぎりぎりになって、何と十九品目不許可、十九品目持ち帰り条件つきとなり、通産当局の正式見解では、「今回の処分は輸出貿易管理令第一条六項の規定に基づく」とし、「自由主義諸国間の申し合わせの趣旨を尊重しつつ、これら諸国との協調をはかる」といたし、出品者側に対して、しばしばココムとは関係なしと言明していますが、このような規制を加えることは重大な違憲行為ではないかと思います。聞くところでは、外務省のある高官が、「総理が閣議で、中国を利してはならない、全展示物は厳重にチェックせよ」、こういう趣旨の発言があったと語ったともいわれておりまして、一連の経過を見れば、事実上、チンコムの復活であります。これはゆゆしい問題であります。総理自身の意思によるのか、何びとかの要請によるものか、この際、真相をお聞かせ願いたい。
 また、条約上、国内法上、何の根拠もないココム及びチンコムは、ともに行政行為としてとり得る措置でないと思いますが、あわせて見解を求めます。また、この件に関しては、出品者側が訴訟の提起をしていると聞くのでありますが、いずれ法廷で決着を見るでしょうが、今回のことは、世界の潮流にさからうものであり、中国に対する不信、ひいては、当面のM・T貿易存続の基礎を危うくするものと思われますが、総理及び関係閣僚の見解を求めます。
 さて、総理の、接触の門戸を開放すると言われることに、いささかの真実があるなら、民間にのみ犠牲をしいることなく、新しい国際情勢の推移に順応し、具体的な施策を行なうことからまず始めるべきだと思います。
 以下、私は、若干の提案を含めて、総理の見解をただしたいと思います。
 その一つは、政府が二つの中国政策はとらないと言うならば、今日の流動的情勢下に、台湾から申し込まれた三億ドルの援助要請は、筋として、これを拒むべきだと思いますが、処理方針はいかがでございましょう。
 また、この秋の国連総会における中国代表権審議にあたって、当然、重要事項指定の共同提案国になることをやめ、中国の正当な地位の回復を支持すべきだと思いますが、いかがでございましょう。
 戦時中、東条内閣の閣議決定に基づいて、四万人の中国人労務者がわが国に強制連行され、過酷な労役の末、六千五百名が殺害され、十数年間放置されていましたが、わが国民間の有志によりまして、三千数百の遺骨が中国に送還され、そのお返しに、中国紅十字会の好意で、邦人三千数百の遺骨が祖国に帰りました。ところで、かつての周総理の談話によれば、なお八百九十九の日本人遺骨が収集、安置されており、一方、わが国でも、中国人十数名の遺骨を政府で預かっていると聞いております。いつこれを処理されるのか、なぜに政府は、みずからの責任で処理しようとしないのか、その理由を承知したいと思います。
 次に、国際通貨不安の影響を受けて、日中間の決済通貨たるポンドは常に動揺を続けたため、昨年は一時フランに切りかえられ、再びポンドに戻りましたが、このような状況の中で、中国の元が最も安定を保っております。この際、円・元直接決済の道を開いて、両国貿易をより円滑にする意思はありませんか。総理は、昨年、松江での発言で、「円の決済でいけば、日中貿易は伸びるだろう」、こう言われましたが、その真意もあわせてお伺いしたいと思います。
 また、石橋元総理が中国を訪問された際、周恩来総理は、「日本の総理が中国を訪問するのであれば、北京の空港をあけて待っている」、こう言ったことがあります。私は、総理が中国に直接行かれて話し合うことが、何をおいても、両国の平和に通ずると思いますが、その機会をおつくりになる考えはございませんか。
 また、この際、中国との航空路線の開設を考えるべきだと思います。すでに国際電話は東京−北京間に、電報は東京−上海間に十年前に認可されています。通信ができて、航空機ができないはずはなく、かつて総理も、臨時便については検討していると国会で答えています。その検討の結果をお答え願いたい。
 かつて、わが党が中国の外交学会の代表を招請しようとし、政府に拒否されたことがあります。両国政界人の接触は、友好増進に不可欠のものであり、今後、超党派的な立場において中国の要人を招く場合、再びそのような妨害はしないとの約束ができるでありましょうか。また、政府は出入国管理法を制定して、特に国交未回復国との交流を厳重に審査するとの意向であると聞きますが、その意図が那辺にあるかをお伺いします。アメリカでさえワルシャワにおきまして米中会談を持っています。最も中国と関係の深いわが国政府が、外交権をサボタージュして、一切を民間の努力にまかせ、みずからは涼しい顔で政経分離などとうそぶいているようなことでは、国民は納得いたしません。佐藤総理に重ねて申します。みずから中国に出向く考えはありませんか。しからずんば、何らかの恒常的政府間交流を開き、急いで日中国交正常化の方途をつくり、もって、たたえられる総理としてその座を後代に譲られるよう望んで、次の質問に入ります。(拍手)
 大学問題についてお伺いをいたします。
 大学の今日の事態は昨年から学生たちの活動がエスカレートしてきたもので、この間に政府は大学当局とよく話し合い、大学自治を侵すことなく、その方向を示唆するとか、問題の本質を分析するとか、早急に打つべき手があったはずであります。荒れに荒れたあと、その現象だけをとらえて、どうこう言うことならだれにもできます。総理は、荒れ果てた東大を見て嘆く前に、すべきことをしなかった、その責任を追及されてもしかたがないと思います。私は学生たちの暴力を肯定するものではもちろんありませんが、あのような多数の学生があれだけのエネルギーを持ち、ノンセクトの学生の中にも、暴力には同調しないが、大学の現状に対するきびしい批判を持っていることを見のがしてはなりません。
 以下、具体的にお伺いいたしますが、その一つは、教育の機会均等が守られているかどうかということであります。大学問題の本質は、大学が社会の変動に対応できていないばかりか、憲法と教育基本法の理念と著しく遊離していることにあるのではないかと考えます。大学は大衆化したと言われます。しかし、ほんとうに大衆化していると思われるでありましょうか。確かに大学生と大学の数は急激な増加を示している。同世代の二〇%が大学に学んでいます。しかるに、憲法が保障する教育の機会均等と、国民大衆の教育要求に政府はこたえているでしょうか。いなであります。現在の大学の大衆化の内容は寒々としたものと言わなければなりません。文部省は、学生の増加と私立大学の増加について、高度成長の中で高額の授業料を払い得る家庭が増加したためであると言っていますが、これは無責任きわまる見解であります。国民は低収入と高物価の中で、大事な子供に大学教育を受けさせるために身を削っています。しかるに、政府は、自己の責任を大衆の肩に転嫁している。そのことは、私大に対する国の補助を見ても明らかであります。国民が求めるものに政府は全くこたえていません。総理はせめてこの一点ぐらいは肯定されてもよいではないかと思います。
 次に、研究、教育の空洞化についてお聞きしたい。大学の研究、教育機能が全く空洞化、形骸化していないとは言えないでありましょう。言いかえれば、今日の大学は、学生が入学前に抱いていた夢を完全に裏切っていないかということであります。マイクによるマンモス授業は、学生に大学が疎外感を抱かせているものの一つであります。このような状態に置かれている学生が、大学全体、社会全体のことを考えない利己主義な立場になった、あるいは絶望のあまり一切を破壊するという衝動にかり立てられていると見るのは、誤りでありましょうか。教育、研究からの疎外は学生の責任であると考えるのか、あるいは大学当局の責任であって政府は責任なしと考えるのか、これはこの場ではっきりしてもらいたいと思います。
 また、東大入学の中止問題でありますが、政府は、大学当局と国民が強く求めている東大の入試をなぜ中止させたのでありましょうか。政府は、封鎖が解除されれば入試ができるという宣伝を行ない、封鎖が解除されると、今度は学園の荒廃を理由に入試は不可能だと言いたしました。こうした政府の態度は全く、大学当局と学生のみならず国民を欺くものであります。広く国民は、入試に関する決定権は大学にあると信じており、また、そのとおりであります。もし、かりに政府にありとするならば、その法的根拠を明らかにしてほしいと思います。国民と全大学人が納得し得るよう、ここで教えてください。
 大学問題の終わりに、いわゆる十項目の確認書について伺います。内閣法制局は、解釈のしかたによっては法律違反であるといろ見解を明らかにしていますが、政府がかかることにくちばしをいれるのは、大学自治への介入そのものだと私は思います。あるいは百歩譲って、法律違反的な内容を有しているとしても、大学の改革と発展のために確認書が要請されている以上、また、法律のために社会の進歩があるのではなく、社会の進歩のために法律がある限り、歴史の発展にそぐわない法律は進んで改めることこそ、為政者の責務であると考えますが、どうでございましょうか。(拍手)東大をはじめとする全国の大学紛争は、大学が新たな再生を遂げるための生みの苦しみであり、この問題をどのように解決するかによって、大学が真に国民の大学として輝かしい任務をになうことができるか、あるいはその芽をつみ取って千載に悔いを残すか、きわめて重大な局面にかかっております。私は、この際、政府の善意と良識ある処置を喚起して、大学問題の質問を終わります。
 次に、農業問題について農相、蔵相に伺います。
 まず、総合農政についてであります。いま農業は、かつて見られない悪い環境に立たされています。農家には確固たる指針が与えられず、見通しのきかないスモッグ農政に当惑しております。米の生産と食管問題、農家経済の五割が農外所得でささえられていること、貿易自由化による農産物輸入の増大がその象徴であると言えるでありましょう。政府の農産物長期需給見通しでは、目標年次五十二年度の農業就業人口を六百万人、農業戸数を四百五十万戸と見ています。これは単純な前提でございます。一体、その長期的見通しの基本は何に求めているのでありましょうか。基本法農政八年にしてその施策は実効不在であると私は言いたい。西村前農相によって切り出された総合農政は、何ほどの実効性、妥当性を持つものでありましょうか。むしろ食管制度改廃のために用意された便宜的呼称と言うべきではございませんか。かつての桑園減反、あるいはビート作付中止に見る、ネコの目のような農政に、生産農家の不信と危機感はきわめて深刻でありますが、ここでまた、米の作付転換あるいは開田の抑制は、いつか来た道を歩かせるのではないかと思うのであります。およそ農業生産の実態において米作より有利なものは、いままでわずかにミカンくらいであります。反当たり二万円の奨励金や若干の事業費補助では、たやすく転換はできません。予算編成の経過、あるいは農業団体の対応が示すとおりであります。ことに開田抑制の場合は、土地改良融資の中止、基盤整備への影響、土地改良長期計画との関連など、どうするつもりでありましょうか。作付転換、開田抑制が行なわれても、農業の安全を保障し得る確信がおありでありましょうか。要するに、問題は農業への現状認識と農業の将来をどのように方向づけるかでありますが、以上各項について農相からお答えをいただきたい。
 また次は、食糧問題についてでありますが、政府の長期需給見通しでは、目標年次五十二年度に、総需要量千二百四十四万トン、総生産量千四百二十五万トンで、約百八十万トンの過剰と見て、作付転換や開田抑制などの措置をとり、千二百四十四万トンで需給の均衡をはかろうとしておりますが、この見通しは、ここ一、二年の短期的な豊作や在庫量の増大、中でも四十三年度米二百六十五万トン問題が背景としてつくられていると私は見ています。米食民族であるわが国が完全な欧米型への移行は考えられず、米の比重は、目下一人当たり消費量が微減傾向にあるとはいえ、逆に人口の増加により、将来予想以上に大きいものと権威者間では認識されております。また生産量は、四十三年産米の大量豊作水準をもって平均水準と見るべきではありません。さらに食糧栄養構成委員会、FAO等の需給見通しを参考に考えれば、政府の見通しはさらに検討の余地があります。要するに、総需給量千二百四十四万トンの積算を絶対的に確信しているのか、この点承知したいのであります。もし万一その判断を誤った場合の大混乱の責任は、一体どうするつもりでありますか。
 次に、農業問題の今日最大のものとして、食管制度の根幹堅持について伺います。政府は食管の根幹堅持を公約してきました。しかも、その根幹堅持の言い出しの元祖は、人ならぬ福田蔵相が農林大臣のときと言われているのは皮肉であります。由来、食管法は、国民食糧の確保と経済安定をはかるため、食糧の統制を行ない、生産者には再生産を確保する価格で政府買い入れを行ない、消費者には家計を安定させる価格で売り渡す、いわば全量統制をたてまえとしております。また施行令において、「米穀の生産者は、その生産した米穀を政府以外の者に売り渡してはならない。」と規定しています。政府が推進しようとする一部自主流通米や、買い入れ制限のごときは、現行法上大いに問題があります。四十三年度の繰り入れ額二千四百十五億、四十四年度の二千九百七十億でありますが、いずれもその二分の一が事務費、金利、流通費等政府管理費などであって、残りの二分の一が純粋な食管赤字の繰り入れ額であります。もちろん、米価の二重価格制、消費者価格安定のために食管会計損失への繰り入れは容認されているものでありまして、少しも不都合ではありません。それを画一総合予算主義の名のもとに押しつけようということは、無茶というものであります。この際、一部自主流通あるいは買い入れ制限、これらの措置は法制上、財政上問題があり、疑義がありますので、政府は公約どおり根幹堅持に立ち返ることが当然だと思います。この意味で、農林、大蔵両大臣よりお答えをいただきたいと思う。
 最後に、基地返還問題についてお伺いいたします。
 総理は、約五十の米軍基地が返還されると強調し、それをたてに現在百四十八カ所の三分の一に当たる五十カ所が返還されることにより、いかにも基地問題が解決したかのような印象を国民に与えようとしております。しかし、そのことは額面どおりに受け取れません。その背景は、昨年七月、一連の基地紛争のさなかに行なわれた参議院選に際し、基地に対する国民の怒りと不安をそらそうと試みた政府が、できもしない公約を並べ、その結果として昨年末に日米安保協議会を開き、基地整理縮小に関する合意なるものをもって、つじつまを合わせようとするものであります。私は、米側が示した返還のリストを中心に具体的にお尋ねいたします。
 返還される木更津飛行場の場合、「返還後も米軍の不可欠な任務のための継続使用権を必要とする」、こう言っております。また、北富士演習場の場合、「米軍の訓練のため利用が保証されるよう富士演習場区域に合併することが必要である」、こう言っております。言ってみれば、管理権を自衛隊に肩がわりするだけで、いままで同様に使用権が設定されている事実は、国民の求めているものとは、およそかけ離れた距離があります。これを総理は返還と思われるでありましょうか。
 次に、リストの大半は倉庫、住宅、小規模の射撃場、弾薬庫などでありますが、久里浜倉庫の場合、「米軍施設内に同等の倉庫が提供され次第返還する」としております。横浜住宅地区の場合、「より適当な場所に同等の住宅及び支援施設の提供があり次第返還する」としております。実は、これら倉庫、住宅など施設の老朽化にかんがみ、新しいものと取りかえることをていさいよく返還と言うのではありませんか。すると、その面積や公害発生度は総合的に三分の一に基地が減少するという宣伝は、笑止の限りであります。
 また、基地公害の集中的に多発する立川、横田、三沢、岩国、厚木、板付、横須賀、佐世保などの主要施設がはずされてしまっております。今回の協議のねらいが、主要基地の継続的な使用をあらためて双方が確約するためのものとも思いますが、いかがでございましょうか。
 要するに、返還とは、米国自身のための最も効率のよい、軍事力配備のための合理化追求からの実現と見ることと、わが国国民感情を軽くなでたまでのことであって、真の基地の縮小、基地問題の解決とは、お義理にも言えません。いかがでありますか。
 米軍基地は占領の遺産として引き継がれた部分が多く、実情とかけ離れていることは事実であります。よって政府は、この際、徹底的に洗い直し、早急に自主計画を持ち、積極的な交渉を展開する用意があるでありましょうか。お尋ねをいたします。
 要するに、返還の内容とは、とかくかくのごときものであって、国民の基地撤去の希望は全くいれられず、これをもって基地の解決呼ばわりされることは迷惑千万であります。本年になって、あとを断たない基地公害を考えるとき、米軍基地がある以上、国民は常に不安にさらされています。もちろん、東京のどまん中に軍用機が落ちてこないという保証はどこにもありません。安保はすでに日米ともに自動延長に固まってきたと聞きますが、政府は、基地返還等にあらわれた現実を直視して、その廃棄に踏み切ってこそ、初めて国民への責任を果たし得るのではないかと思います。
 以上、総理の誠意ある答弁を求めまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(佐藤榮作君) 森中君にお答えをいたします。
 森中君は、中共を承認すべきであるといろ前提に立って、日中間の貿易や、戦時中の遺骨処理の問題まで触れられまして議論を展開されましたが、私はまず基本的な問題からお答えをいたしたいと思います。御承知のように政府の対中共政策は、従来どおり政経分離の原則のもと、各種接触の門戸を開放してまいる考えであります。中共をめぐる今後の国際情勢を注視することは当然でありますが、イタリアあるいはカナダがどういうように動いたからといって、左右されるようなことはありません。国連代表権の問題につきましては、わが国が重要事項指定方式の共同提案国になるかどうかということは、常に新たな角度から考え、検討することは当然であります。ことしの秋のことについては、いまの時点で明らかにすべきではないと、かように思っております。
 日中貿易の覚え書き貿易については、その延長が実現することを期待しており、望ましいとしばしば申しております。政府としては、側面から今後も可能な限り協力いたします。
 中共への延べ払い輸出に対する輸銀資金の使用につきましては、従来どおり、ケースバイケースで処理いたします。吉田書簡はたびたび説明いたしましたように、もともと政府間の取りきめのようなものではないので、これを破棄する処置をとる、あるいはその内容を変更するとかというような性格のものではありません。
 中共からの食肉輸入については、従来家畜衛生面の問題として検討してきたのでありますが、今回特別なくふうをして、そうして日中貿易促進の見地から、わが国家畜に対する衛生上の安全性を確保しつつ、食肉輸入を実現する方策について検討しているのであります。どうも輸入されて、さっそくそれを屠殺し煮沸する、それは国際儀礼上もけしからぬじゃないか、かように言われますが、私は、わが国の国内における防疫上どうしても必要だ、かように考えております。
 日工展への出品品目について私が閣議で発言したというような事実は全然ございません。日中貿易については、できるだけ前向きで対処するというのが政府の基本的な考えであります。ずいぶんこの日工展の問題では、通産、外務大臣とも努力をした結果が、示されたような件数にものぼっておるのであります。しかし、これがただいま訴訟がされているということは、御指摘のとおりであります。
 また、日中貿易につきまして、米国や、中華民国からの圧力によってわが国の日中貿易政策が変更されるというようなことは一切ございません。なお、一部政界からの要請によって、台湾から逆に日本に圧力がはね返ってくるというようなこともございません。どうしてこのようなことがあり得るのか、私はむしろただいまのようなお尋ねに疑問を持つ次第であります。
 中華民国の借款は続けていくかどうかということですが、これはもちろん承認し、条約上りっぱに外交交渉を持っている国でありますから、今後借款の問題等が提起されれば、具体的に考えてまいるつもりであります。
 遺骨の引き取りの問題でありますが、中共各地域において死没した邦人の遺骨については、昭和三十一年に、日本赤十字社等の民間三団体と中国紅十字会との協定が結ばれ、送還されている経緯もありますので、現に中共側において保管されているといわれる八百九十九柱についても従来の方法によって処置してまいりたいと存じます。一方、わがほうで保管している中国人労務者の遺骨十一柱については、昭和四十二年一月に、日本赤十字社を通じて中共側に送還方を申し入れていますが、いまだに回答に接していない状況であります。
 次に、私は、最近の国際金融情勢から見まして、決済方式の改善が日中貿易拡大のため重要であると考えております。ポンド、フラン、かように変わりましたけれども、いずれも国際的に動揺をしております。したがって、今後中共側と円建て方式を含めて何らかの適切な決済方式で合意が成立することを期待しているものであります。
 政府は、中共との間に定期便の運航は、いまのところ考えておりませんが、臨時便については、具体的にそのような事情が生じた場合に検討したいと思います。
 中共との人の往来につきましては、これまでの方針を変更する考えはありません。
 次に、わが国と中共は、国会議員を含めて、民間レベルの交流や、記者交換、貿易などが、かなり広範に行なわれております。また、私が北京を訪問するならば、喜んで北京空港を私のために使わす、こういうお話でありますが、私は、ただいま訪問する考えは持っていません。(笑声)これは二回にわたって重ねてお尋ねでありますから、明確に申し上げておきます。
 また、日中大使級会談については、相手の出方を見ながら、慎重に検討したいと考えております。
 次に、教育問題についてのお尋ねであります。
 私は、戦後の教育を見るのに、教育基本法に定める教育の機会均等の理念は、ほぼ達成されていると思います。最近よく、大学の大衆化ということがいわれますが、このことは主として、戦前七、八万しかいなかった大学生が、現在では百五十万にものぼっておる、こういうところから、ただいまのような話があるのでありますが、それにつきましても、どうもまだ開放されてないじゃないか、かように森中君から御指摘になりました。私が申し上げるまでもなく、わが国の就学率は、小学校は九九・八二%、中学校は九九・九〇%、さらに進学率から申せば、高等学校は七六・七三%、大学の場合は二三・一先、これらのパーセンテージは、世界的にたいへん高い数字だと、私、かように思います。いわゆる大衆化されている、かように思います。しかしながら、経済的な事情によりまして進学が困難な者については、育英奨学制度の拡充につとめるなど、一そう教育の機会均等につとめなければならない、私もかように考えております。
 大学教育の空洞化と、こういうことばを使われましたが、私はこの空洞化という意味がよくわからないのであります。たぶん、大学の管理運営機構が、変貌した大学の状態にそぐわなくなっているということではないかと思いますが、そのことにつきましては、たびたび指摘したとおりであります。政府に責任がないとか、政府は責任を免れる、かようなものではございません。私は今後、中央教育審議会の答申を得て、近く大学の運営問題を含め、教育制度全体について改革をはかる方針であります。政府の責任を果たしてまいる考えであります。
 東大入試の問題についていろいろお尋ねがありました。法的根拠を問う、示せ、かようなお話であります。通常の場合は、入試を実施するのが大学であるのは、これは当然であります。学校教育法施行規則にも、学生の入学、退学、休学、卒業等は学長がこれを定めるとなっておりますが、これは通常の場合、どのような科目で入学試験を行なうかというような技術的な問題を定めたものであって、東大の場合のように、異常な事態に適用されるものとは私は考えておりません。また、そういう意味におきまして、政府の責任が問われるのではないかと思っております。今回、文部省と東大とで協議を重ねたのは、きわめて妥当な措置であったと、かように私は思います。
 確認書の問題についてもお尋ねがありましたが、森中君の御意見は、確認書が現行法に触れるのなら、法律改正をして確認書の正当性を裏づけよと言っておられるようですが、忌憚なく申せば、かなり乱暴な御意見だと私は思います。政府としては、確認書が大学制度の根幹に触れる内容を含んでおるので、十分論議を尽くした上、適当な措置をとりたいと、かように考えております。
 次に、基地の問題について申し上げますが、まず、基地を論じます前に、米軍が都合のいいように基地を整理しようという考えだという点であります。この日米安全保障条約は米国のためにあるのではありません。わが国の安全のために基地があるのであります。この点をまずよく考えていただいて(拍手)、しかる上で基地の整理についての考え方をひとつ研究しようではございませんか。何だか、基地があるのは日米安全保障条約の目的でなくて、米軍の都合のいいところだけあるのだというようにもとれる、かように思われております。私は、今回、施設合同委員会で、たいへん具体的に入ってこの点がだんだんきまりつつあることは望ましい形だと思っております。しかし、お尋ねになりましたが、私自身、まだ十分にその細部については承知しておりません。これまことに申しわけございませんが、これは別の機会に関係大臣から聞き取りいただきたいと思います。政府は、ただいま申しますように、わが国の平和と安全のため必要欠くべからざる施設、区域については、引き続きその存続を認めていく考えでありますが、基地そのもののあり方や運用等につき、また、付近住民の生活の実態等について考えます際に、十分今後とも検討を加えまして、遊休施設の返還等をはかる方針であります。ことに横浜市内などはもうこれでなくなったような気がいたします。かくして積極的に基地対策を講ずることによって基地周辺住民の不安感を取り除き、福祉の向上をはかってまいりたいと考えております。
 以上、お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(愛知揆一君) 総理がすべてにお答えを申し上げたようでございますから、私からはほんの一、二補足して申し上げたいと思います。
 覚え書き貿易でございますが、これは日中貿易の私どもは本筋である、本筋のルートである、かような考え方を持っておりますから、この拡大等につきましては、側面的な立場でございますが、政府としては十分協力してまいりたいと思っております。こういう考え方でございますから、たとえば、食肉や日工展の問題をおあげになりましたが、日工展は政府は補助金を出しております。そうしてココム等の関係もございますが、十分誠意を尽くして、また、政治的に十分配慮いたしまして、品目の数で言えば、七千品目の中のわずか十九品目ということになっておるわけでございまして、政府の考え方や誠意、これを十分ひとつ御理解をいただきたいと思います。
 それから、遺骨につきましても、ただいま総理からもお話がございましたが、中共側にあります邦人の遺骨については、赤十字等を通じまして、その後もあらゆる連絡をいたしておりますが、なかなか向こうさんも思うような態度を示してくれておりません。それから、なお、日本側にあります中国側の遺骨につきましては、ほとんどすべて送還をしたことは御承知のとおりでございますが、なお、その後発掘いたしました十一柱につきましては、東京の伝通院で手厚く供養をいたしておるわけでございます。
 それから、民間レベルのいろいろの交流でございますが、これも総理からお話がございましたけれども、十分配慮しておるつもりでございますが、イタリアその他の動向も十分見ていかなければなりませんが、ただ、私の見ておりますところは、国によっては、政治的には柔軟な姿勢を示しますけれども、経済的あるいはある種の経済的な問題等につきましてはかえって中共側に対してきびしい態度や措置をしておるところもある。やはり、これは、それぞれの国の考え方あるいは国益という立場からいろいろと考えているということがよくわかるわけでございまして、それにつきましても、わが国としては、国の主体的な立場で国益を守りながら、しかも隣国である中共、大きな人口を持っている隣国、こういう関係については、日本らしい主体的な考え方がなければならないと思うのでありまして、外国が、ことにヨーロッパの国が、ある種の理由からやりました措置等について、一喜一憂してこちらがふらふらするようなことは、私は外交の本体ではないと思うわけであります。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(大平正芳君) 日中の覚え書き貿易、プラント輸出、食肉輸入、日工展、四つの問題がございましたが、総理大臣並びに外務大臣からあらましお答えがございましたので、ただ一点だけ、日工展の経過、根拠、そういったところについて補足的に御説明さしていただきます。
 日工展の出品は、いま外務大臣が言われましたとおり、七千品目にのぼるといわれておりますけれども、日工展当局の要望のとおり、去る十三日、全品目についての査定を終えまして輸出承認を終了いたしたのでございます。十九品目について持ち帰り条件がつきましたが、これにつきましても日工展当局の責任者に御了承いただきまして、日工展当局は政府の措置をきわめて多とされておるのであります。
 ココムは、もちろん、森中さんが御指摘のとおり、直ちに政府の行政を制約するものとは思いません。ただ、私どもは、こういうココム関係者との間の申し合わせというものを尊重いたしますことが、わが国の国際的信用と、わが国の貿易の発展の上から大切であると考えまして、輸出管理令の中にこれを受けて規定をいたしまして、それを根拠として公正な査定をいたしたものでございまして、東欧諸国、ソ連等に対する西欧各国の査定基準よりこれがきびしいというようなことは一切いたしていないつもりでございます。したがいまして、違憲のそしりを受ける心配はないと心得ております。(拍手)
  〔国務大臣長谷川四郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(長谷川四郎君) 農産物の長期需給見通し、また、国際的に見れば、食糧不足の点も考慮すべきではないかという御意見でございました。政府は、昨年の十一月、農産物の需要と生産の長期見通しを公表いたしまして、その後の農政の指針とするものにまず農家の経営改善の参考に資することとしたのでございまして、もちろん十年後の見通しでありますから、全く一つのめどであります。農業生産は国民消費の実態に即しまして、その動向に沿って行なわれるべきものであろうと思うのでありまして、したがって、今後消費の伸びないものについては生産を押えるようにいたしまして、消費の強いものに対しては、これを伸ばすような方策を考えなげりゃならぬ、それが政策の基本でなければならないというような考え方でございます。
 昭和五十二年の見通しによれば、米は完全自給、また畜産物、果実、野菜等も相当程度自給できると考えるのでございますけれども、その反面、小麦、飼料、大豆等については、相当輸入にまたなければならない面も出てくるであろうと考えております。しかし、将来の国際的な食糧事情を考えてみるときに、国際機関というものの見通しから考えましても、食糧はむしろ過剰の傾向にあるというようなことを発表されておるのでございまして、その不足のおそれはないのではないかというように考えておるのでございます。
 また、自主流通、買い入れ制限等でございますけれども、自主流通米の構想は、現行の食糧管理法のもとにおいて、米の需給緩和の実態に即応しまして、所要の米管理の改善をはかるという考え方に立っておりまして、消費者の要求するもの、また、消費者の選好に応じた、つまり良質米の生産、消費の増大をはかることをねらいといたしておるのでございまして、食糧管理の立場からする行政的な規制のもとに、政府を通さない米の流通の道を開くものでございますが、したがって、食糧管理法に違反するものではないと考えております。なお、政府といたしましては、現段階において米の買い入れ制限を行なうことは考えておりません。
 次に、四十四年産米価決定のその手続と方式という質問でございますが、政府としては、最近における米の需給の大幅な緩和の実情及び物価安定の緊急性にかんがみまして、生産者米価及び消費者の米価を据え置く方針をとることが適当であろう、この旨を明らかにした次第でございまして、もとより米価の正式な決定は、今後食糧管理法に基づきまして、かつ、米価審議会にはかった上、これを行なう予定でございますが、政府としては、右の方針について、この際国民各層の理解と協力を得たいと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(福田赳夫君) 自由流通米についてのお話でございましたが、ただいまきわめて明瞭に農林大臣からお答えがありましたのと私は全く同様に考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(重宗雄三君) 北條浩君。
   〔北條浩君登壇、拍手〕
#12
○北條浩君 私は、公明党を代表して総理並びに関係閣僚に若干の質疑を行なうものであります。
 総理は、先日の施政方針演説において、「明治百年を終え、新しい百年に向かって第一歩を踏み出したわが国は、多くの分野で転換期を迎えつつある」と述べておられます。当然政治の分野にありましても大きい転換期が訪れていることを、総理みずから認められたことばと思うものであります。
 昨年は、国の内外に権威の失墜が相次いで起きました。ドルの威信地に落ち、ソ連の権威昔日の面影なく、東大紛争は明治百年の旧時代に終えんを告げて、ここに新しい百年の幕があけたのであります。一方、人間がやがて月へ到着するという時代に、この地上には、紛争と殺りくがますますその度を加えようとしております。精神文明の著しい立ちおくれが、人間をして肝心の人間性を失わしめたことが、まさしく現代社会の病根であろうと思うのであります。
 総理は、続いて「人間の尊厳と自由が守られ、国民のすべてが繁栄する社会を実現する」と言い、さらに「物質的な豊かさが心の豊かさに結びつく新たな精神文明を確立する」と言われましたが、少なくとも現在までは、総理のこのことばとは正反対な事態であったではないか、このように思うのであります。
 そこで私はお伺いいたしたい。総理はいかなる方途をもってこの理想を実現されんとするのであるか。新しい精神文明とは一体何を意味するのか。それとも、これは単なることばのあやでありますか。きのうの答弁で総理は、政治の姿勢を正すことだ、このように言われましたが、それだけでは、新しい精神文明とは納得ができないのであります。この際、総理の言われる新しい精神文明とは何であるか、もっと詳しくこの論拠を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)また、総理の言われるように、新しい精神文明を興すためには、まず政治姿勢を正すことだ。それがそれほど大事であるなら、なぜ施政方針に具体的な方途を示さなかったのですか。ただ一言、施政方針では、「政治の姿勢を正し」と言っているにすぎないのは、まことに不可解であると思うのであります。政治姿勢を正すために、政治資金の規制を行なうとは、総理の二年越しの懸案事項であり、公約ではないでしょうか。なぜ政治資金の規制を行なうと、はっきり総理は言われないのですか。
 さらに、この点についてお伺いしたいのでありますけれども、さきに世論の総攻撃を受けて廃案になった政府案は、いさぎよく撤回して、少なくとも第五次選挙制度審議会の答申案まで前進させて、本国会で成立させる、そのような覚悟は、総理にはおありにならないのか。それとも、政治資金規制の問題は、さきの廃案とともに終わったとして、これで逃ぎ切ったとでも考えておられるのかどうか。もしもそうであるとすれば、国民を愚弄し侮辱するもの、これに過ぎるものはないと思うのであります。(拍手)かつて、佐藤総理は、共和製糖事件など相次ぐ黒い霧の発生に対して、「政界の一部で公党の道義にそむき、国民の不信と疑惑を招いたことは遺憾であり、国民に申しわけない。積年の病弊を根絶するため、積極的かつ具体的な措置をとることが私の義務である」、このように政治資金の規制を叫んだことを、よもやお忘れではないと思うのであります。巨額の政治献金が、特定の利益に結びついて政治腐敗の温床となっていることは、最近の日通事件、京阪神土地事件を見ても明らかなことであります。このような腐敗の事実を前にして、意識的に会社、法人などの政治献金を規制しないのは、全くうしろ向きの政治姿勢と言うほかはありません。
 さらに、四十三年上半期の政治献金の報告書は、総額で九十七億円、そのうち半分以下の四十五億円だけが寄付として届けられ、その他は会費名義にして出所を明らかにせず、逃げているのであります。政治の姿勢を正すためには、まず、選挙の腐敗を正さなければなりません。選挙の腐敗是正は、資金の規制と公開原則の徹底、この二本の柱を確立しなければ、達成できるものではありません。この明白な事実に対し、総理はどのように考えておられるか、明確な御答弁を承りたいのであります。
 次に、外交問題について質問をいたします。
 まず、私は、佐藤総理の重大なる決意をお伺いすることから質問を始めたいと思うのであります。佐藤総理は、これまで沖繩の祖国復帰を必ず御自分の手で実現させるとの決意をしばしば明らかにされております。国民は、佐藤総理がこの問題に政治生命をかけておられることを確信しておるのであります。佐藤総理の御決意には、いまでもいささかの変わりもないものと信ずるのでありますが、いかがでありましょう。また、きのうまでお伺いいたしました佐藤総理の御答弁によりますと、沖繩返還は、もし早期復帰を望むならば、将来本土並みにすることを条件に、核つきでもしかたがない、このように感じられますけれども、この点きわめて重大なことでありますので、総理のお考えをはっきりとお伺いしたいと思うのであります。
 申すまでもなく、本年は、まことに重大な年であります。秋には、佐藤総理は訪米され、ニクソン大統領と初めて会談されるわけでありますが、これは、一昨年の十一月に行なわれたジョンソン大統領との共同声明から満二年目にあたるのであります。佐藤総理が、任期中に沖繩返還のめどをおつけになるつもりならば、はっきりと国民の合意をとりつけた日本側の構想を持って訪米される必要があることは、もはや常識であろうと思うのであります。つまり、今後十カ月の間に、わが国は、まことに重大な選択を迫られていると、このように思うのであります。
 しかしながら、外交交渉は相手のあることであります。交渉に成功するためには、相手がどう考えているか、これを十分につかまなければなりません。それに対して、こちら側の主体的な考えをかみ合わせていく、そこに合意が成立するのであります。施政方針演説の中でも、佐藤総理は、沖繩の施政権返還について「日米両国政府及び国民の相互理解と友好協力のもと祖国復帰の実現の時期を取りきめたいと思います」、このように信念を強調されたのであります。来たるべきニクソン大統領との会談に際しても、佐藤総理は、同様な態度でお臨みになるであろうと、私は期待しております。
 そこで、われわれは、まずこの問題についてのアメリカ政府の考え方をはっきりつかんだ上で、そこから疑問点を導き出し、政府にお尋ねいたしてみたいと思うのであります。
 まず、ニクソン大統領は、その内外政策白書で、このように言っております。「日本はアジアで集団安全保障の指導的役割りを演じなければならない」、また、「日本が一たび指導的役割りを引き受けるなら、沖繩は確実に返還できるであろう」――いかがですか、佐藤総理。ニクソン大統領は、アジア集団安保へ日本が指導的役割りで参加することを沖繩返還の条件としている。これに対して、総理はどのように答えられるつもりですか。お伺いいたします。
 次に、沖繩の米軍基地の性格をいかに理解すべきか。去る一月二十七日の沖繩からの報道によれば、このほど嘉手納基地からほど近い山間地帯、通称多幸山に、核兵器の貯蔵庫と見られるものが六つも完成したと伝えられております。ほかにも、沖繩では、最近ますます盛んに基地建設が行なわれております。ここ数年、われわれは国会において、沖繩返還の場合、その基地の態様について政府はどうするつもりか、いろいろ追及してまいりました。それに対し、佐藤総理は、「いまのところ白紙でございます」、このように白紙一本やりで押し切ってきたのであります。白紙――なるほど、これはいかにも日本的なことばで、含蓄があり、その意味は、白紙にこれから何か書いて見せますというようにもとれますし、何にも書かないで済ます、このようにもとれるのであります。とにかく今回の施政方針演説では、何物も盛り込まれていなかったことは、たいへん残念だと思います。ところが、去る一月六日の下田駐米大使の記者会見、あるいは去る一月二十一日の全国経営者大会における愛知外相の講演、さらに二十四日の床次総務長官の記者会見、これらを検討いたしてみますと、どうも、ふに落ちないところが、出ております。すなわち、下田大使は、「アメリカの方針は、基地は現状維持だ」と言い、それを追って愛知外相は、「しばらくは基地の地位を承認してもいいのではないか」、さらに床次総務長官も、「基地は現状維持よりしかたがない」と言われたのであります。現状のままの基地を認めるということは、核つきを意味するのか、その場合は安保条約の変更もあり得ると考えているのか、いかがですか。この点、総理並びに外相にはっきりお答えを願います。
 また総理は、基地の態様について、「アメリカ側はキューバのグアンタナモのようなことを考えているかもしれないが、自分はまだそこまでは考えていない」とも発言しておられますけれども、あるいはそのようなこともあり得るとお考えになっているのかどうか、お尋ねしたいのであります。
 今月二十八日からきのうまで、沖繩問題に関する日米京都会議が開かれました。ニクソン大統領のブレーンもホワイトハウスから出席されたようで、日米双方がお互いの感触を知るためにはなかなか重要な会議でありました。報道によりますと、沖繩基地問題研究会の久住座長は、自衛隊の沖繩防衛分担構想を次のように報告をしております。「施政権が全面的に返還されたあとは、当然の帰結として、沖繩に対する防衛の責任は第一次的にわが国が負うことになる。……日本が陸上防衛、沿岸警備、防空を分担することになるから、それまでにこれらに関連する基地の移管計画も検討する必要があろう。しかし、基地全般に関しては、本土の基地とあわせて今後の日米安保体制の進展の中で判断さるべきものである」。このように言っております。有田防衛庁長官にお尋ねしたい。防衛庁としては、この点について、どういう構想をお持ちになっておりますか。それがありませんと、佐藤総理はニクソン大統領との会議がおできにならないわけであります。以前、防衛庁は南西師団の設置を考えているという新聞報道が流れたこともありますが、いまはどんな構想になっておりますか。また第三次防衛計画、それを手直しなくてもできるのでありますか、お答えをいただきたい。
 また、このたびの予算案は、自衛隊の六千人増強、その他、防衛予算はずいぶん豊かになっておりますが、これは沖繩返還とは関係はないのですか、福田大蔵大臣に御説明をいただきたいと思います。
 さらに、ニクソン大統領の希望しておられるプラス・アルファは、初めに申しましたように、アジア集団安全保障において、日本に指導的役割りを演じてほしいということであります。ASPACの軍事同盟化、あるいはPATO、すなわち太平洋条約構想、それは広く知られているニクソン大統領の持論であります。こういう期待にこたえまして、すでに日本に近い国々の政府からは、いろいろな積極的な意見が出ております。たとえばお隣の韓国では、朴大統領が本年の年頭記者会見で、「ベトナム戦後のアジアの緊張に備えて、しっかりした集団安全保障機構を設けたい」と発言し、また、タイのタナット外相も、「ベトナム戦後に、参戦国軍を北大西洋条約機構のように、アジア太平洋条約機構に置きかえる案が一部にあるが、私は、アジアの自由諸国家が、日本も含め、軍事防衛同盟でなく、政治的防衛同盟を結ぶのが好ましいと思う」、このように発言しております。タナット外相によれば、アジアの国々の軍隊は、軍事力どころか、軍事同盟をつくったところで張り子のトラにすぎないそうで、なかなかおもしろいことを言っております。
 このように各国から、ニクソン大統領の要望にこたえて、いろいろ意見が出ておりますけれども、佐藤総理は、いつまでも、日本だけは関係ない、このような態度をおとりになるつもりかどうか、お尋ねをしたのであります。この点、愛知外相にもお伺いいたします。
 この問題に対し、佐藤内閣がどういう態度をおとりになるか。これがやはり沖繩返還交渉のプラス・アルファとして、アメリカ側の望んでいる重要な点だと思うのであります。ところが、日本が集団安保に参加すると仮定しても、現行憲法第九条はそれを許しません。現行憲法は、日本が個別的自衛権を持つことを認めているが、集団的自衛権を持つことは認めていないというのが、これまでの政府の解釈です。ところが、すでに憲法調査会では、集団的自衛権を認めるように解釈を変えてしまえ、そうすれば憲法改正をしなくてもいいではないか、このような議論も出ていたようであります。この点、佐藤総理の決意のほどをお伺いをしたいのでありますが、解釈を変えることは今後とも絶対にしない、このように国民に対し約束をしていただけますかどうか、お伺いしたいのであります。
 さらに、もう一つのプラス・アルファとして考えられる問題があります。アメリカが沖繩基地施設に注ぎ込んだ費用は、ばく大なもので、約十二億ドルに達しているそうであります。水道も電気もアメリカ軍のものなのであります。施政権返還を要求するとすれば、政府はこれをどうなさいますか。日米共同防衛となれば、そういう設備投資の負担はどうなりますか。幾らか肩がわりをするわけでしょうか。ドル防衛の見地からすれば、アメリカにとっては重要な問題であります。愛知外相はどうお考えになりますか。福田大蔵大臣にも所信をお伺いしたいと思います。肩がわりというのは、費用面が大きな問題だと思うからであります。
 次に、佐藤内閣の当面の試金石となる問題についてお伺いいたします。
 沖繩県民の超党派の要求であるB52の撤去、新労働布令の撤回に対し、どういう決心で臨まれておられますか。すなわち、いままでの答弁では、B52を常駐させないとアメリカが言っているから、しばらく待てとのようでありますけれども、新布令の実施延期になった三月一日までに撤去の見通しがあるのでしょうか。もしだめなら、どうするのでしょうか。また、二月四日のストは回避できない情勢にあるようでありますが、その責任をどう感じておられますか、総理の決意のほどをお伺いしたいと思うのであります。
 佐藤内閣に最も欠けているものは、沖繩同胞の境遇をわがことのように憂える一体感であります。一体感のない政府が、幾ら口先だけで本土・沖繩一体化などと言っても、国民は信用いたしません。沖繩同胞にかわって本土政府が強くアメリカ側に働きかけるのは当然の義務ではありませんか。その努力をろくにやりもしないで、沖繩同胞だけに自重を要求するような態度では、国民は政府を信頼するわけにはいかないのであります。もしも、佐藤内閣が沖繩県民の生命、基本的人権を守る要求に対してさえ期待に沿う行動ができないようなら、それはとりもなおさず、今後の沖繩返還交渉においても佐藤内閣が国民の期待に沿うことができないことをみずから証明することになるのではありませんか。佐藤総理の積極的な御答弁をお願いいたします。
 次に、国連政策についてお尋ねいたします。
 日米安保条約の前文にも明らかなとおり、日米両国の国連政策は安保体制の基礎になっている重要な問題であります。ところが、これまで政府は、国連に派遣した代表団に、国会に対する活動報告をさせたことがありません。これは、はなはだ不満であります。この通常国会におきましては、ぜひとも代表団が国会に出席して活動報告を行ない、質問にも応ずるようにしていただきたい。そういうよき慣行をつくることが必要ではないかと思うのでありますが、総理の御見解をお伺いしたいと思うのであります。
 昨年十一月、十二月の国連総会におきまして日本代表団が最も力を入れたのは、中国代表権問題と朝鮮問題決議でありました。二つの決議において、日本は両方ともアメリカ側の共同提案国となり、ロビー活動もアメリカ以上に活発に行なったと聞いております。それどころではありません。先ごろカリフォルニアのサンタバーバラで開かれた日米ハト派議員会議におきまして、アメリカのゴールドバーグ前国連大使が明らかにしたところによりますと、イタリアの中国問題特別提案に、アメリカは賛成の意向を持っていたけれども、日本はこれに反対した、このようなあきれた事実があったということであります。一体これはどういうことでありますか。国民の気づかぬ国連で、政府は何をやっているのかわからないのであります。愛知外相、この点について説明をしていただきたいと思います。
 あの中国代表権の重要事項指定方式とか、朝鮮問題決議とかは、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視政策に形式上の基礎を与えているものでありますから、これらの国々との善隣友好の道はなかなか開けないのであります。わが党は、この決議について、せめて日本が共同提案国となるような活動をまず改め、棄権すべきだ、このように主張するものでありますけれども、政府はいつまでそれを続けるおつもりか、お答えを願いたいのであります。
 次に、経済問題についてお伺いしたいと思います。
 一月二十三日、経済企画庁が発表した消費者動向予測調査によりますと、昨年の秋ごろから家計が苦しくなって、貯金や預金を引き出すとか、借金をしてやりくりをする世帯がふえて、一年前に比べて暮らし向きが悪くなったと答える世帯が非常にふえております。これに比べると、よくなったと答えている世帯は非常に減少しておるのであります。さらに、この原因は消費者物価の上昇にあると言っておるのであります。国民一人一人の立場からいえば、国民総生産が世界第三位であるなどといっても、毎日の生活は質が低下して、物価は上がる、公害、交通難は急増する、このように経済の恩典は全く感じられないのであります。国民生活にマッチしない経済発展などもうごめんだというのが、国民の偽らざる感情であります。総理は、この国民の声をどのように感じ、どのように責任をおとりになるか、まず、このお考えを承りたいと思うのであります。
 総理は、総理になられたときに、池田内閣の経済政策を批判して、「量の拡大が必ずしも国民福祉に結びつかないばかりか、人間性喪失の方向へ向かっている。経済の質の向上と人間性尊重の経済に変えるべきだ」、このように強調したはずであります。ところが、佐藤内閣になって以来、ただの一度もこのことばを実行したことがないのであります。それだけではなく、かつて批判した経済の量的拡大の政策を最近では誇らしげに言うようにさえなっているのであります。現在では量の経済に対する反省どころか、何のための経済の拡大なのか、だれのための繁栄なのか、このような目的意識さえあいまいになってしまっているのであります。すでに米英諸国でも量的拡大に片寄ったことに対する反省が痛切になされており、当然わが国でも真剣に質の問題に取り組むべきときがきている、このように思うのであります。しかるに、経済社会発展計画のように、発足二年にして全面的改正をしなければならないようになっております。この一点だけを見ても、いかに無定見であり、口先だけの質の向上と人間性尊重にすぎなかった、そのことが言えると私は思うのであります。その結果、物価上昇などの質の面のひずみをますます拡大してきたのであります。私は、総理が公約された質的向上、人間性尊重の経済運営、国民福祉を優先する政策、これに直ちに変更することを要求するものであります。もしもこの点に自信がないならば、総理自身の政治主張とあまりにも違い過ぎたこの現実に対し、総理は責任をとって辞職されるのが政治家のとるべき道ではないか、このように思うのであります。この点、所見と決意のほどを承っておきたい。
 次に、具体的な問題についてお伺いいたします。質の面の最も大きなひずみは急速な消費者物価の上昇であります。その原因は、第一に、政府が国債発行を含めたインフレ助長的な財政金融政策をとってきたことであります。企業の投資意欲をかき立てるために低金利政策や財政上の種々の助長政策をとり、大企業の利潤増大に協力し、膨大な設備投資需要を起こさせ、そのために需要供給のバランスをこわしたことであります。すなわち、政府の国民不在の大企業優先の政策が、物価上昇の原因であると断定するのでありますが、総理のこれに対する見解並びに政府の対策を承りたいのであります。
 原因の第二は、政府が農業や中小企業の近代化、生産性向上のための施策を怠っているからであります。今回も体質強化をうたい、構造政策に力を入れると述べておりますけれども、その予算書を見ますと、農林関係財政投融資は、財投総額のわずか五・五%にすぎません。また、中小企業対策費も、総予算の〇・六%、四百三十億円という少額にすぎないのであります。これで、はたして近代化、構造改善ができると考えているのでありましょうか。三倍や四倍の額に引き上げるのが当然と思いますけれども、この点、予算の組みかえなり、補正なりをなさるお考えはないかどうか、お伺いしたいのであります。
 第三の原因は、経済のあらゆる分野に管理価格、カルテル行為、やみ再販価格など、自由かつ公正な競争を阻害するような制度や慣習があるためであります。これらの制度や慣習を排除して、公正な有効競争の実現をはかることが大切でありますけれども、すでに独占禁止法は骨抜きにされ、また、公正取引委員会も、政府や財界の圧力によって、その機能を十分に発揮できない現状であります。経済の質的向上をはかり、物価を押えるためにも、独占禁止法を強化し、また、公正取引委員会の拡充をはかるべきだと思うのでありますが、総理はどう考えておられますか、お伺いしたいのであります。
 以上、いずれも政府主導型の物価上昇の原因でありますが、特に、消費者米価並びに公共料金の値上げが、物価高騰の最も大きな原因であります。政府自身が毎年、消費者米価をはじめとする一連の公共料金を、国民の反対を押し切って、強引に引き上げたことが、諸物価の高騰を誘い出し、現在の物価高を生んだのであります。物価安定を唱える政府自身が、物価上昇の真犯人になっていると言わざるを得ないのであります。これほど国民をだましていることはないではありませんか。今回も、世論や国民の願いをよそに、国鉄運賃の値上げを決定しております。その物価への影響はわずか〇・二%とうそぶいていますけれども、必ずや国鉄運賃値上げは、他の物価へ波及することは必至であります。政府はいさぎよく、物価上昇の真犯人の汚名をそそぐべく、国鉄運賃の値上げを直ちに撤回すべきであると思いますけれども、勇断を叫ぶ総理の決意のほどをお聞かせ願いたいと思うのであります。
 次に、税金問題についてお尋ねいたします。六兆七千億円にのぼる一般会計予算を見まして、国民のだれでもが感じることは、依然として、量の拡大のみを誇示し、国民生活を無視しているということであります。ひとしく、ことしもインフレ高進と物価の連続的値上がりを覚悟しなければならない、このように感ずるのであります。いま国民が政府に望んでいるのは、経済の高度成長よりも、物価の安定と大幅減税であります。ところが、今度の予算編成を見て、大きな矛盾を感じますのは、史上最高といわれる一兆二千億円にものぼる租税の自然増収が見込まれておりながら、減税は、わずかその一三%にすぎない一千五百三億円であるということであります。これではだれも納得はできないのであります。九月の税制調査会の答申を一千億円も下回った減税は、どういうわけでありますか。また、当然増経費を押えても、減税に回すべきであったのを、なぜしなかったのか、この点、総理並びに大蔵大臣にお答えを願いたいと思います。
 また、わが国の税制は、非常に各種税目の間に課税負担のアンバランスがあるのであります。その代表的なものが、八千億にのぼる大企業などの交際費に対する不当な特別措置であり、また、利子、配当などのように、働かずして得た不労所得に対する分離課税であります。これに対して、サラリーマンなどの給与所得者は、給料から所得税が天引きされ、また事業所得のように必要経費も認められないため、他の所得者に比べて税負担が非常に過重となっておるのであります。ところが、昭和四十四年度の税改正では、親子五人世帯で年収百万円の場合、六千四十九円の減税となり、月割りにすればわずか五百円にすぎないのであります。これでは物価上昇に対して焼け石に水でしかないのであります。どこに総理の言う人間尊重の政治がありますか。これでは全く国民の期待を裏切るものとしか言えないのであります。総理は、この際、税制のバランスを乱している交際費課税、利子配当分離課税などの特別措置を大幅に改廃していく気持ちはないかどうか、承りたいのであります。また、所得税については、特にサラリーマンに重点を置いて、親子五人世帯の年収百三十万円までの大幅減税を断行すべきであると思いますけれども、どうでしょうか。またサラリーマンの必要経費をどう考えておるか、あるいは給与所得控除の大幅引き上げが必要と思うけれども、この点につきまして総理並びに大蔵大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
 次に、社会保障について若干お尋ねをいたします。
 政府の経済社会発展計画によれば、社会保障長期計画を策定し、これに基づく体系的整備を行なうと言明しておりますが、いまだに社会保障長期計画が決定したことを聞いておりません。人間性尊重の上に立って福祉国家の繁栄と発展を遂げるためにも、当然長期展望を示すことが政府としても重要な政治的課題であると思うのであります。総理自身、しばしば社会保障の充実を期すると決意を披瀝しているにもかかわらず、一向具体的に示し得ないのは、いかなる理由によるのでありましょうか。国民は抽象的なきれいごとを並べるだけでは納得するわけはありません。この計画が具体的にどう進んでいるか、また進める意思がおありなのかどうか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
 次に、昨年十二月、社会保障制度審議会の申し入れ書によれば、「社会保障の実績は、人口一人当たりの水準でいえば西欧のほぼ三分の一、国民所得の比率でいえば目標の二分の一しか達成していない、その実績はむしろ後退ぎみといわねばならない」と、このように述べております。これを裏書きするように、昭和四十四年度の予算では、社会保障費の伸びはわずか一六・一%となっておりますが、これは当然増が大半で、先進国並みの水準にする努力は全く見られないのであります。社会保障費は最優先的に確保し、早急に拡充強化をはかる必要があると思いますが、総理のお考えをお聞きしたいと思うのであります。
 次に、児童手当制度についてお伺いいたします。総理はもとより、歴代の厚生大臣は、その実現を約束しておきながら、昭和四十四年度に至るも、いまだに創設の運びに至らない現状であります。このことは、政府の政治的無責任、無能ぶりを遺憾なくあらわしたものであり、国民を欺瞞するもはなはだしいと言わねばなりません。昨年末における児童手当懇談会の結論では、昭和四十四年度から実施できるはずでありました。しかし、今回もまた見送られることになったのは、なぜでありますか、今後の見通しとあわせまして、国民が納得できるような答弁を願うものであります。
 次に、老人問題について伺います。人口構造の著しい変動とともに、老人福祉の問題はますます重要なものとなっております。したがって、政府も老人福祉対策は重点政策として取り上げておりますが、予算面ではせっかくの老人の公費医療負担が実現を見なかったのであります。また、老人福祉対策については、六十五歳以上の約四十一万人に及ぶ寝たきりの老人の収容施設定員は、現在、四十三年、四十四年度予算計上分を入れても、わずかに一万人にすぎません。いずれにしても、愛情のない対策としか言えないのでありますが、大蔵大臣並びに厚生大臣の、今後の老人福祉に対する見解を伺いたいのであります。
 また、ILO第一〇二号条約、すなわち社会保障制度の最低基準の条約は、すでに一九五二年に決定されておりますが、いまだにわが国は批准をいたしておりません。さらに、一昨年第五十一回ILO総会で決議された第一二八号条約、すなわち障害、老齢及び遺族給付に関する条約について、これも早急に批准すべきであると考えますが、両条約に対する政府の見解を厚生大臣より承りたいのであります。
 最後に科学技術について質問をいたします。
 わが国の経済の発展、国民福祉の向上のために科学技術の振興が不可欠の要素であることは言をまたないところであります。現在の科学技術は、一人一人の専門技術にたよっている時代から大きく変化し、それぞれの部門をまとめていくという大規模な研究開発の時代へと移ってきたのは御承知のとおりであります。したがって、技術開発はすでに一企業、一産業のみではとうていなすことができないのであり、ここに国の科学技術に対する役割りが重要になってきているのであります。しかも、わが国が今後生きる道は技術移民、技術輸出に負うところが大きいと思いますけれども、国の役割りなどについて総理はどのように認識されておりますか。科学技術に対しては日本民族は優秀な民族であるにかかわらず、政府の施策と熱意のないために各国に大きなおくれをとっているのが現状であります。まことに残念であるとともに、総理はこの責任をどのようにお考えになっておりますか。
 科学技術関係予算は一般会計に対し約三%にすぎません。西欧諸国が一〇%前後となっているのに比べ、はなはだ少ないのであります。また、わが国の民間分も含んだ国民一人当たりの研究費負担額は、アメリカの十二分の一、イギリスの四分の一、フランスの三分の一、西ドイツの五分の二にすぎないのであります。政府は、経済社会発展計画において、昭和四十六年度までに国民所得比率二・五%まで研究投資額を引き上げると言っておりますけれども、現状では一・七%前後で、まことにほど遠いのであります。国家百年の大計の上からも、冷淡な態度を捨てて国の支出を大幅にふやすべきであると思いますけれども、総理並びに大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
 例を海洋開発について申しますと、海洋海底資源の開発は、資源に乏しく、四面海に囲まれているわが国にとりまして、実に重要であります。ところが、最近では外国石油資本が日本近海の海底油田調査に乗り出し、すでに数十億の調査費をもって行なっている現状であります。これに対しわが国の海洋開発の科学技術庁予算は、四十四年度二十五億円にすぎません。このままでは日本の近海の資源は外国資本のものとなるおそれがあります。必ずや何倍にもなって返ってくる資金であり、日本を宝庫にすることも夢ではないはずであります。この点につき、国家民族の将来を考え、ここにも強い指導性が必要であると思うのでありますけれども、総理の海洋開発に対する決意のほどをお伺いし、私の質問を終了いたします。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(佐藤榮作君) 北條君の御質問にお答えをいたします。
 御質問の内容が外交、内政両面についてきわめて広範でありますから、私はおもな点についてお答えをいたしたいと思います。また、衆参両院においてすでに前の質問で詳しく述べました問題等につきましては簡略にいたしたいと思いますので、あらかじめ御了承を願いたいと思います。
 まず第一は、私の政治姿勢についてのお尋ねであります。施政方針演説で述べた趣旨をさらにふえんいたしますと、今日、科学技術の急激な進歩によって、ともすれば人間の尊厳が見失われ、精神の衰退を招きがちであります。われわれは、人類の英知が物質文明を支配し、科学技術とともに哲学、文学、芸術などが栄える人間性豊かな社会を目標としております。その努力が新たな精神文明を確立することにつながるのであります。その方法はいろいろあると思います。具体的にこの点を説明しろということでありますが、私は、このことを広く国民の皆さんとともに考えていきたいと思います。
 その場合、やはり基本的には何といいましても教育であると、かように思います。私は、ひとり学校教育、こういう意味ではございません。広い意味の教育でございます。今日、国際社会は競争の時代であります。一国の将来が青少年の双肩にかかっていることは古今東西を通じて変わらない真理であります。日本民族のすぐれた伝統の上に、人間形成に重点を置いた教育を行なうことこそ、新たな精神文明を確立する道ではないかと、かように私は考えております。
 政治姿勢を正すということ、これは政治家の立場においてまず新たな精神文明、かような意味で私は申したのであります。
 そこで、政治資金規正法、これはすみやかに出せ、しかも最初の案をぜひともつくれと、かように政府を鞭撻されましたが、私もこのことにつきましては、今日までわれわれの出しました案が成立を見なかったことについてまことに残念に思っております。今回重ねて提案する方針でありますから、審議に御協力をいただきたいと思います。とにかく政治資金規制について第一歩を踏み出すことが最も大事なことではないか、かように考えます。
 また、選挙法につきましてもいろいろの御意見があると、かように思いますが、これまた当然なければならないので、これらの点についても今後とも検討を続けてまいるつもりであります。
 次に、沖繩問題について、いろいろの角度から焦点を当てて北條君がお話しになりました。沖繩返還問題につきましては、私の基本的考え方は、昨日、これは衆議院ではありますが、竹入委員長に対しまして詳しくお答えをいたしましたので、おわかりいただけたと思います。
 基地のあり方の問題につきましては、今年後半の訪米までにおおよその結論を出したいと考えております。御質問の中にありましたキューバのグアンタナモ基地のようなものにするかどうかというような話は、いままで日米交渉では全く出ておりませんし、また、私のほうからさような話をするつもりもありません。
 またニクソン大統領のアジア政策その他につきまして、いろいろの点からお尋ねがございました。ニクソン大統領は、わが国がどんな憲法を持っているかよく知っているはずであります。したがいまして、わが国の憲法を無視するようなことは、幾らアメリカでも、日本に対してさようなことを申し出るわけはございません。
 ASPACについてもいろいろ御心配のようでありますが、これまたすでにしばしば申し上げましたように、これが特別な政治的な、また軍事的な同盟に変貌するわけはございません。したがいまして、いわゆる集団安全保障方式と、こういうものについていろいろお尋ねがありましたが、私は、わが国の憲法がある限り、また憲法について私どもはその解釈を一、二にするつもりはございませんから、この点もいろいろ先走って御心配のようでありますが、との本会議の席上におきまして、はっきりこの憲法第九条についての在来の解釈を変えるような考え方を持っていないことを重ねて申し上げておきます。
 愛知外務大臣の発言だとか床次総務長官の発言、下田駐米大使の発言などに触れられましたが、いずれにしても沖繩問題の本質は、沖繩県民を含む日本国民の強い願望である施政権の早期返還を、わが国の安全保障上の要請をそこなうことなく、達成することにある、かように私は考えております。祖国復帰を早期に実現したいし、また、わが国の安全もそこなうことのないようにしたいというのが私の考え方であります。したがいまして、この交渉が困難なものであるということだけはぜひとも認識していただけることと思います。
 B52及び新布令をめぐりまして、ゼネストの話が出ております。これにつきましては、私は屋良主席その他ともいろいろ話し合っておりますし、政治的なストライキはぜひともやめてほしいし、ことに祖国復帰を前にしてアメリカと交渉しようという際に、この種のゼネストによる政治ストライキ、これはぜひとも回避してほしいし、これを強く要望いたしましたが、それについては沖繩県民が安心するような方途に出ていかなければならないということもわかりますので、B52の撤去並びに布令が軍労務者に役立つようなものであるように、政府の考え方をアメリカにたびたび申し出ておるような次第であります。今後ももちろん、衆参両議院におきましてこの点が問題になっておることでありますので、さらにさらに米側の注意を喚起したい、かように私は考えております。
 次に国連の問題でありますが、まず、国連代表団を国会に出席さして報告さしてはどうかと、かような御提案でございます。国連代表団は外務大臣の指揮下にあり、その活動については従来どおり外務大臣から報告をさせております。私はそれで十分ではないかと思いますが、しかし、事柄は国会の問題でありますので、国会独自で――また、何人といえども国会に出席して話をすること、これは国会が独自におきめになればいいことではないかと思います。私は、外務大臣のもとにおいて活動しておる国連代表であり、外務大臣の責任においてこれを外務大臣から報告することでこと足りると、かようには考えておりますが、国会のことに私自身政府の考え方を押しつけるつもりはございません。
 また、国連における諸種の活動につきまして、問題が多い場合には棄権したらどうか、こういうお話でありますが、私はメンバーの一員として棄権というのはまことに無責任なことじゃないだろうか、それこそ自主的外交を貫け、こういう考え方に徹すれば棄権などはすべきでない、かように私は思っております。また、ケースバイケースで判断すべき問題であろうかと、かように考えます。問題は、今後中共の国連の加盟についていわゆる重要事項指定方式の共同提案国となるかどうかという点にも触れられたと思いますが、このことは現時点で明らかにすべき性質のものではない、かように私は考えております。
 また、第二十一回国連総会における各国の応酬等についてのお尋ねがありましたが、これは外務大臣からお答えをいたさせます。
 次に、中国問題について触れます。わが国と中国大陸との関係につきましては、私もわが国と中国大陸との関係がいつまでもいまのままであってよいとは思っておりません。これは長期的展望に立っていろいろ考えてまいりたいと思います。したがいまして、ただいま問題になっております食肉の輸入であるとか、あるいはまた日工展の問題等についても、先ほどお答えしたとおりでありますので、これは関係がないということで御了承をいただきたいと思います。
 次に、経済運営についてのお尋ねでありますが、経済運営について非常な具体的な問題を種々お話しになりました。私は国民の皆さん方が北条君が言われたような御意見、極端に言えば、所得がふえなくてもよい、それよりも公害や交通事故のない生活を望んでいるというようにもとれましたが、はたして国民がそのような生活を望んでいるかどうか、私には疑問に思えます。私はやっぱり政治の究極の目標は、国民のたれもが物心両面において安定した豊かな生活を享受できるようにすることであると考え、つとに人間尊重、国民福祉優先の施策を推進していくべきものであり、北條君の言うように、いまから変更せよと、かように言われましても、どうもそれに従うわけにはまいりません。いろいろお話がございましたが、それは省略して、他の機会に譲らしていただきます。
 物価については、その原因なり、対策なりについて、一昨日以来たびたび申し上げてきたところであります。実はこの二十八日に、再開国会の合い間を見まして物価安定推進会議のお集まりをいただいたのでありますが、席上、当本会議とは違いまして、委員の方々からは今回の政府の決意について、おほめと激励と、助言をいただき、意を強くした次第であります。ここでは物価問題につきまして最善を尽くしてまいる決意のみ、あらためて申し上げておきます。
 この際に、国鉄運賃の旅客にしろ、引き上げはやめろということでありますが、これはやめるつもりはございません。ただ、便乗値上げは極力これを避けるということで態度を決定しております。
 また、米の消費者、生産者米価、両方ともこれは据え置くという方針――方針と申しましても、すでに議会におきまして公式に公約した事項でございますから、食管法や、あるいは米価審議会等に十分説明をいたしまして、法律に触れることなしに、この方針は貫くつもりでございます。なおその上とも具体的な問題について、あらゆる努力をいたします。
 その次に、減税についてお話がありました。一兆二千億円もの自然増収がありながら減税は非常にわずかだと、こういう御指摘でありました。何かばく大な額にのぼる税金がどこかへ消えてしまったようにとれるような感じの御質問であります。これは国民諸君に錯覚を与えてはたいへんだと思いますので、一言この点だけお答えしておきます。
 私が申し上げるまでもなく、一つは安全保障なり、あるいは社会資本の充実なり、こういった行政のサービスの向上が自然増収によってまかなわれ、国民の皆さんに還元されておるのだということを御理解いただきたいのであります。減税ばかりではございません。あらゆる方法で国民に還元させておるということをお考えいただきたい。同時に減税そのものも、規模から見ましても、また十数年ぶりの税率の緩和が行なわれたことからいっても、ここしばらくの間見られない、かなり大きな減税であるということも御理解がいただきたいのであります。私はさらに今後、中堅層以下の所得層の減税に重点を置いて減税並びに租税負担の公平化に努力してまいる決意であります。その他、詳細につきましては、大蔵大臣から答弁いたします。
 社会保障についてであります。私は国民福祉の調和のとれた発展を願うものとして、その充実には十分つとめてまいりました。いまや、社会保障関係が一兆円にも達しようとしております。御提案の社会保障長期計画も今後の社会保障の一そうの充実と効率化のために歓迎すべきものかと思いますが、当面、当然その重要な分野である医療制度の問題にまず取り組んでいく段階ではないかと考えます。
 児童手当の問題については昨年来の児童手当懇談会の答申の結果、新たに児童手当審議会を設置することになりました。実施の具体的方向について御研究願うことになっており、実現に向かって一歩大きく前進したものと、私はかように考えております。
 老人問題につきましても、今後の問題としてこれと取り組むつもりであります。
 最後に、北條君から、科学技術の振興について熱心な御発言がありました。施政方針演説において申し述べたとおり、今後わが国がさらに発展し、国際社会において指導的役割を果たすかいなかは、一つには科学技術の発展が可能かどうかにかかっております。幸い、わが民族は優秀な頭脳に恵まれておりますことは御指摘のとおりであります。この頭脳を有効に活用することこそ、これが政治のつとめであります。私は予算、行政、さらにはただいま懸案の大学問題など、あらゆる面、あらゆる機会を通じて科学技術の振興に一そうつとめてまいるつもりであります。その際に、いままであまり言われなかった点、いわゆる海洋開発、この点を公明党から特に指摘されて、これに力を入れろと、私もしごく同感でございますので、これら新しい分野についても、さらに科学技術の進歩をはかるべく前進するようにいたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたしますが、第一は沖繩の問題でございます。あらためて申し上げるまでもございませんが、この国会が始まりましてから沖繩の返還の問題につきまして総理が言われておりますこと、また示されております姿勢と申しますか、これは、私のもって心から範とすべきものと心得ております。私は、この点につきまして総理が示されておる姿勢や、示されておる説明と申しますか、この基本線を旨といたしまして、これからの取り扱いに、まことに微力でございますが、全力を傾倒いたしたいと考えております。どうか御理解をいただきたいと思います。
 それから、アジア全体の防衛問題とでも申しましょうか、北條議員からお示しがございましたように、外電等の伝えておりますところの情報によりますと、たとえば韓国の大統領あるいはタイ国の首相、外相というような人たちが、ただいまお話しになりましたような考え方を持っておるやに伝えられております。それらについて評論することは差し控えたいと思いますが、問題は、わが国のとるべき態度であると思います。この点は、総理の施政演説にも、また私の外交演説にも触れておいたわけでございますが、日本の立場といたしましては、現行の憲法の精神、これが何よりも大事なことであると思います。平和国家らしい日本の立場として、アジアから緊張が起こらないように、あるいは現に起こっておる緊張を緩和する、その手段としては武力というようなことを絶対に欲しない、あくまでもこの立場を貫くべきものであると思います。したがいまして、たとえば、ASPACの問題にしても、これはいかなる国、いかなる国家群にも偏しない、参加国の共同の福利の増進ということを目的にしておりますから、この線で日本としてはますます指導的な立場で一生懸命にやっていきたい。あるいはアジア・太平洋地域閣僚会議の理念も私はそうであると思いますから、そういう理念のもとにおいて、日本としては今後一そうの努力を傾け、また、経済協力ということも大事なことでありますが、同事に、昨今の状況から見れば、技術協力ということがやはり非常に必要な重点ではないかと考えられますので、まだまだ不十分と思いますけれども、四十四年度の御審議を願っております予算にも相当この思想は具体的に出しておるつもりでございます。要するに、平和的な手法によってわが国としてはアジアに平和をもたらしたいということ全力をで傾倒してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
 それから、その次の問題は、国連におけるわが国のやり方について、過去にとった態度についての御批判とあわせての御質疑がございましたが、まず、国連代表の立場は、ただいま総理からもお述べになりましたように、外務大臣の指揮監督のもとに活躍しておるわけでございますから、これは外務大臣の立場から申しますれば、私が国会に対しまして全責任を持ち、また、あらゆる情報を持って国会に御説明をする、こういう立場をどうかひとつとらせていただきたい。同時に、国会におけるいろいろの御論議については、私を通しまして、国連代表にも十分日本の国益や世論を反映した行動力をとらせるようにいたしたい、かように考えているわけでございます。
 さて、その次の具体的な問題でございますが、たとえば、ただいま京都で行なわれましたいわゆる京都会談に出席した方の発言なども新聞に伝えられておりますので、お答えをするのにこういう点につきましてもちょっと触れさせていただきたいと思います。たとえばアメリカの前国連大使であったゴールドバーグ氏が、イタリアの中国問題特別提案について、米国は賛成の意向を持っていたが、日本がこれに反対したというようなことを言われたことが報道されておりますが、一九六六年の第二十一回国連総会において、イタリアよりいわゆる委員会案というものが関係諸国に非公式に提示されたことがございますが、その提示されました当初において、わが国として、イタリアの提案の趣旨というのか、ねらいということが明確でなかったわけであります。したがって、その当時イタリアの委員会案に対しまして、日本代表は必ずしも好意的な態度を示しませんでした。そのことは事実であります。しかし、その後いろいろの話し合いを経てみますると、イタリア案というもののねらいというものは、全く白紙の立場で、方法論だけが提案されたということがわかりましたので、その内容であるところの問題については白紙であるというのならばということで、その後、日伊間の代表間の話が進んだわけであります。その二十一回の総会以降、過去三度にわたって提出されましたイタリアの案のいずれに対しましても、その後わが国は賛成いたしておりますことは周知の事実でございます。ところが、当時アメリカが、イタリア案のいま申しました案が最初に内示されたときに、アメリカは当初からこれに好意的な態度であった、これも事実なんでありまして、そのことをただいま出ましたような記事が触れているのではなかろうかと思います。要するに、この経過が示しておりますように、わが国の代表は常に主体的に慎重に行動しておる、どこの国がどう言ったからといって、それだけにとらわれていないということは、この事実が私は証明しておると思います。(拍手)
 それから、その次は、ただいまお尋ねの具体的な点でありますが、重要事項指定方式であるとか、あるいは朝鮮問題の決議案などに対して、日本が共同提案国となるような活動はやめたらどうか、棄権すべきであるという御質問に対しては、ただいま総理からもお答えをいたしましたけれども、共同提案国に参加するかいなかは、決議案提出の際の各国の態度、これをめぐる国際情勢などを勘案しながら適宜に取り扱うべき問題であると思うのでございまして、朝鮮問題や中国代表権問題に対するわが国の基本的な従来からの態度というものは、いまここで変えるべきであるとかどうとか申し上げるべきものではない、基本的態度は是認していただきたいと思います。私もこれが過去においてはきわめて妥当であったと思います。しかし、今後、共同提案国になるかいなかにつきましては、そのときの状況によって考えるべきものでございましょうから、現時点で一つの考え方を断定的に明らかにすべき性質のものではない、かように私は考える次第でございます。
 それから、いま一度沖繩問題に返るわけでございますが、御質問の、沖繩の基地に過去において投入されたアメリカの経費を日本が負担すべきであるのかどうか、あるいは共同使用の負担についてどう考えるかという点でございますが、これらは、問題としては、今後起こる日米間の返還に伴う話し合いの過程で取り上げられるべき問題であろうかと思いますが、私の現在の見込みといたしましては、過去において米軍が投入した経費を日本で負担させるというような考え方はないように私は現時点においては予想いたしておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣有田喜一君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(有田喜一君) まず、沖繩の防衛構想に関するお尋ねでございますが、施政権が日本に返還されれば、沖繩はわが国土となりますので、あの小笠原返還の場合と同じように、国土としての沖繩防衛は当然わが自衛隊が当たらなければならぬ、かように考えております。したがいまして、そのために必要な陸上防衛力、また防空力、また哨戒その他の海上防衛力を整備する必要があるのであります。しかし、沖繩返還の態様などによって、整備すべき防衛力も多少変わってまいりますので、今後の交渉の推移を見きわめつつ、慎重に検討の上、整備をいたしたいと考えております。
 それから次に、三次防計画を修正する必要があるかどうか、こういうお尋ねでございますが、御承知のとおり、三次防は、昭和四十二年度から四十六年度に至る五カ年間の計画でありまして、沖繩のことは考えずに計画されております。したがいまして、沖繩の返還が早くなれば、第三次防を修正する必要がある、かように考えております。
 以上……。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(福田赳夫君) 沖繩に米軍が投入いたしました軍事費の負担の問題、私にもお尋ねがありましたが、ただいま愛知外務大臣から答弁したとおりに私も考えております。
 また、自衛隊に六千人の増員をはじめ、防衛費にはばかに寛大であるが、農業費、中小企業対策費、社会保障費等にきびしいというようなお話でございまするけれども、六千人の増員は、第三次防、ただいま防衛庁長官から申し上げましたこの計画を実行するために必要なものでありまして、これは新たなる計画とは考えておりません。
 それで、予算のこの量の問題でございまするけれども、総予算の中で四十四年度に防衛費の占める割合は七・二%、七・三%という四十三年度から〇・一%下がるという状態です。また、GNPの中において占める割合も〇・八%ということで、四十三年度からちょっと下がるというような状態であります。また、予算全体の伸びといたしましても、総予算全体が一五・八%伸びる、その中におきまして、防衛費の伸びは一四・六%、かような控え目の結果になっておりますが、私は、わが国の経済がここまで発展した今日におきまして、わが国がみずからを守る体制、これは当然とらなければならぬ姿勢である、かように考えておるのでありまして、現実の問題といたしましては、防衛費が横ばいないし多少下がっておるような傾向でございまするけれども、防衛費につきましては、今後わが国として力を尽くさなきゃならぬ、かように考えております。
 農林予算、特に財政投融資が、全体の財政投融資の構成比として五・五%しかない、こういうお話でございまするけれども、農林予算が四十四年度予算で七千六百八十八億円、それから農林省関係財政投融資が千七百五億円でありまして、新農政を実行するに十分なかまえである、かように考えております。特に御指摘申し上げたいのは、農林漁業公庫におきまして、いままで千人百億円の融資を考えておったのですが、今度、新年度は二千億円、また、農林中央金庫におきまして、近代化資金、すなわち一般会計の利子補給をして支出する貸し出し金額が千二百億円であったものを、この際大幅に増額いたしまして三千億円にいたすということになっております。これは財政投融資の中の計算に入っておらない額でありまするが、これも農村の近代化、総合農政を推進する上にきわめて有効な働きをなすと、かように考えております。
 また、中小企業の予算の支出幅が少な過ぎるじゃないかというお話でございまするが、元来中小企業は、これは国の予算支出の対象としてなじまない性格を持っております。つまり税と金融、これが中小企業対策の主力になる、かように考えておるのでありまするが、中小企業のいわゆる三機関というものがありますが、この中小企業金融三機関の四十四年度における貸し出し幅は、実に八千五百億円という膨大なものになるのでありまするし、また税の問題におきましては、これは従来とも中小企業に特別の措置をかなり講じておりますが、特に今回の税制改正におきましては、中小企業構造改善を進めるために特別償却を大幅に進める、かような措置をとることにいたしておるのであります。
 それからさらに社会保障につきましては、本年度の予算におきましては、公共投資、つまり社会資本と相並んで重点を置き、ただいまも御指摘ありましたけれども、四十三年度に比べて四十四年度におきましては、社会保障予算は一六・一%の増額となり、これはかなり高い増額幅になるわけであります。いよいよわが国の社会保障予算、これは六兆七千億円の中で一兆円になんなんとする、かような段階に相なる次第でございまして、特に老人対策につきましては、根本的な医療制度の改正の問題なんかもありまして、公費負担は、今回は実行いたしませんけれども、寝たきり老人対策等、きめこまかな老人対策を進めておるということを、御知承願いたいのであります。
 また、児童手当の問題につきましても、児童手当、金のずいぶんかかる問題でありますので、これが具体化には時間がかかりますが、さらに前向きでこれに取り組むということにいたしておることを御了承願いたいのであります。
 最後に、税の問題でありまするが、税の問題につきましては、ただいま総理からもお話がありましたが、一兆二千億円もある自然増収、これをなぜ国民に還元せぬかというお話でありまするが、一方、国におきましては、ただいまお話しのような社会保障費も進めなければならぬ、公共投資もしなければならぬ、あるいは農林の、あるいは中小企業の、いろいろの需要があるのであります。その需要にも振り向けなければならぬわけでありまして、一兆二千億円の自然増収がありまするが、それらに実に九千億円を必要とするのであります。残った三千億円を、国債の減額に千五百億円、減税に千五百億円と、こういうふうにいたしましたが、その減税の千五百億円、これは中小所得者の税負担の軽減に全部を振り向ける、ネット減税でございます。しかも長い間叫ばれた税率調整をこの際行なう、こういうふうにいたしておるのであります。税制調査会は、これのおおむね倍以上にのぼる規模の減税を答申をいたしておるのであります。長期答申というその意味合いでありまして、これをどういうタイミングで行なうか、これは財政の事情によってすべきであると、これが去年の夏行なわれました税制調査会の長期答申であります。その長期答申をさらに区切りまして、昨年末に至りまして、国の財政の状況から大体千五百億円、初年度千五百億円程度の減税がよかろうと、かような答申をいたしておるのでありまして、税制調査会の答申をそのまま今度実現をしておるのだ、というふうに御了解を願いたいのでございます。
 なお、特別措置につきまして大幅に整理せいというお話でございますが、これはごもっともだと思います。しかし、急激にというわけにもまいりません。本年度におきましては、交際費の課税を拡大するなど、当面している若干の問題を処理いたしておるのであります。
 なお、所得百三十万円までの人に減税をせよというお話でございまするが、これはおそらく百三十万円以下の人は免税、課税最低限を百三十万円まで引き上げよと、こういうお話かと思うのでございます。その線で減税政策は進めておるのでありますが、本年度は九十三万円までいたしておることは、御承知のとおりであります。まあ九十三万円でどういうようなかっこうかといいますと、英国では七十八万円、ドイツでは八十八万円、米国が高いのでありますが、百三十三万円になっております。その間におきましてまあ九十三万円というのが、四十四年度の高さでございますので、まあまあかなりのところにいっておると、かように考えておりまするが、四十五年度におきましては、これが百万円をこえるというふうにぜひいたしたいと、かように考えております。サラリーマン減税につきましては、今後もなお検討を進めていく考えであることを、御了承願いたいのであります。
 科学技術を尊重せよということにつきましては、総理からも御答弁がありましたが、四十四年度予算におきましても、格別の配意をいたしておるのであります。わが国は今後資源、物的資源が少ない。やっぱり人的資源――頭脳の開発、この問題には財政当局といたしましても、最大限の力を出して取り組んでいきたい、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(斎藤昇君) 老人福祉対策の緊要の度を加えてまいりましたことは、北條議員のおっしゃいますとおりでございます。二万円年金の実現に決意をいたしましたのもさような関係からでございますが、おっしゃいますように四十万人に及ぶ寝たきり老人対策はさらに緊急であろうと、かように考えます。本年の、新たに在宅の寝たきり老人に対しまして、訪問診療をいたしますとか、あるいは家庭奉仕員を大幅に増しますとか、特殊ベッドを貸与いたしますとか、こういった新規の事業といたしまして、三億円をいま国会で御審議を願うわけでございますが、これだけでは、まだ十分ではないと考えます。引き続きまして、十分老人福祉対策に欠くることのないようにいたしたいと思っておるわけであります。
 特殊の養護収容施設の緊急整備につきましても、前年度は、六億二千万円の整備費でございましたが、本年は、十億二千万円で整備をいたしたい、かように思いますが、さらに引き続いてこれも増してまいりたいと、かように考えます。
 なお、ILO百二号条約と百二十八号条約の批准についてでございますが、百二号条約につきましては、すでに批准のできる最低条件を十分に満たしておるのでございますが、御承知のように、百二十八号条約のごとく、社会保障の各部門にわたって、もっと程度の高い条約の採択をILOにおいてただいま検討中でございまするので、そういった条約ができますことを考えまして、その段階において、百二号条約を批准するかどうかを考えたいと思っております。現在でも批准し得る条件は十分満たしておるわけであります。百二十八号条約は、厚生年金法の改正を待てば十分批准ができるのでございますが、この改正案を本国会において御審議を願いたい、かように思っておるわけでございます。(拍手)
#18
○議長(重宗雄三君) これにて、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時二十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時七分開議
#19
○副議長(安井謙君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。瀬谷英行君。
   〔瀬谷英行君登壇、拍手〕
#20
○瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表いたしまして、総理はじめ関係大臣に若干の質問をいたします。
 質問に先立ちまして、要望したいと思うことが一つあるのでありますが、衆議院並びに参議院の代表質問の答弁を聞いていまして感じましたことは、たいへん抽象的な御答弁が多いわけであります。代表質問というのは、ことばを並べればいいというものではないのでありまして、やはり実のある答弁がないと質問するほうも張り合いがないわけでありますから、いよいよこのしんがりの代表質問にあたりましては、実のある答弁をお願いしたいと思うのであります。そうでないと、正月の新聞じゃありませんけれども、確かにかさはかさばっておって、あけて見れば、めでたづくしでありますけれども、中身がさっぱりない、こういうことになるので、その点をまず要望したいと思います。
 ききの施政方針演説で、物価の問題は国民生活にとって切実な問題であり、政府が最も力を入れてきたところであるというふうに総理は述べられました。大蔵大臣及び企画庁長官も同趣旨のことをそれぞれ強調されました。ところが、力を入れてきた、最重点施策だ、最善を尽くすなどとおっしゃるわりには、さっぱり成果のあがっていないのが物価問題ではないでしょうか。そこで、私は物価問題についての政府の基本的な考え方をまずお聞きしたいと思います。
 庶民大衆にとって物の価格がどんどん上がるということは、政治に対する信用をそれだけ下げるということではないでしょうか。経済の成長率が幾らであるとか、国民の総生産が世界で第三位に達したということを幾ら言ってみても、そんな話は買いものに出かける主婦にとって何の足しにもならないのであります。毎年毎年、消費者物価の上昇が休みなしにとめどもなく続く国が、世界の先進国の中にはたしてあるのでありましょうか。政府が物価の休みない上昇になれ過ぎて、表向きはともかく、腹の中ではいささかも責任を感じなくなっているのではないかということを私は懸念いたします。物価ばかりは、国民大衆に対してことばの上のごまかしがきかないのであります。原子力潜水艦や放射能の安全性を説くようなわけにはいかないのであります。経済運営の基本的な態度が物価の安定にあるというふうに、演説では各大臣繰り返して述べておられました。今度こそ本気になって物価の抑制に全力を傾注するという決意がおありならば、何よりも実績をもってお示しをいただきたいと思います、総理が、はたして実績をもって国民の前に、このように物価の安定には全力を尽くしましたと言うだけの自信がおありかどうか、お伺いをしたいと思います。
 そこで、政府の施政方針の中で不可解な点をひとつ質問をしたいと思います。物価の安定を最重点施策として、いやしくも公共料金の引き上げによって、物価の上昇を主導することのないように極力これを抑制する、こういうふうに言いながら、国鉄運賃を除外しているのはいかなる理由でしょうか。公共料金の中でも運賃は王様です。一体、国鉄の運賃は物価と無関係だとお考えなのでしょうか。世間の常識ではそうではないはずであります。国鉄の運賃は決して孤独ではありません。一たび上がれば、私鉄の運賃、バス、タクシー、通運料金をはじめ、もろもろの物価を大挙道連れにするのが従来のならわしであります。今回に限りその心配がないとおっしゃるならば、その理由、根拠を具体的に御説明を願いたい。聞くところによりますと、来年度予算の編成に当たり、経済企画庁長官は、当初、国鉄運賃の値上げに反対をしていたが、結局上げることに同意したということであります。いささか八百長的な印象を受けないわけでもございませんが、物価と国鉄運賃の関係をどのように見ているのか。公共料金抑制の方針と運賃値上げは矛盾しないと判断をされたのか、お尋ねをしたいと思います。
 物価の中で今日最も異常で、悪質な症状を呈しているのは、土地価格ではないかと思うのであります。道路、鉄道あるいは学校等の公共用地をはじめといたしまして、庶民の住宅が、いずれも土地価格の異常な高騰により、建設がはばまれ、ゆゆしい社会問題となっていることは、御承知のとおりであろうと思います。国会でも、すでに地価対策について決議が行なわれました。それにもかかわらず、数年を経て、一向に具体的かつ有効な手が打たれないのは、いかなる理由によるものでしょうか。地価対策閣僚協議会が、昨年十一月発足したということでございますが、この問題は、きのうきょうのできごとではないのです。いまごろ小田原評定をやって、しかも、見るべき策が何にもないということは、明らかに政治の怠慢というべきであって、政府としてもいたく責任を感ずべきであろうと思います。土地問題のために、たとえば、つとめ人は、何十年勤続しても、なけなしの退職金で、一戸のマイホームを求めることすら困難なのに、たまたま、祖先伝来の土地を所有している者は、労せずして、ぬれ手でアワの億万長者になれるという現実が今日でございます。このような不合理なことが許されていいことでありましょうか。政府は、農地解放に準ずる土地改革を断行して、土地の公有をはかり、土地の有効な利用を推進するというような、思い切った措置を講ずる勇気がないかどうか。抜本的な対策を避けて、土地税制の改善程度で、今日の深刻な土地問題を解決する自信が、はたしてあるのかどうか。今日までの対策は、いずれもおまじない程度の気休めにすぎません。いま真剣にこの問題と取り組んで、一刻も早く対策を講じないと、抜き差しのならない事態になると思うのでありますが、総理の見解をお伺いしたいと思います。
 物価に関連して、減税と賃金の問題についてお尋ねをいたします。
 いままでの代表質問の中で、与党議員の質問の中に、物価の値上がりは、公共料金の引き上げだけではなく、春闘の中で高い賃金の春闘相場ができて、それが物価を引き上げるのではないか(「そのとおり」と呼ぶ者あり)こういう意味の発言がございました。自民党の諸君は、そのとおりだというふうに言っておられます。だとすると、政府もそういう考え方ではないかと思うのでありますが、しかし、労働者の賃金引き上げ要求は、決して漫然と行なわれるものではありません。労働組合は、物価の上昇を計算した上で、物価に見合う賃金を要求するのが常であります。賃金が必ず物価のあとを追う形になっておりまして、物価に先んじて賃金を上げてくれるような気のきいた使用者は、あまり聞いたことはございません。第一、政府の公務員賃金に対する方針ですら、そのようになっております。春闘相場などということばができてしまいましたが、春闘が年中行事になったのも、もとはといえば、物価の上昇が、毎年休みなしに続くからであります。したがって、これまた、例年のこととなりましたが、人事院の勧告が行なわれることと思います。ところが、スト権の代償として制定をされたはずの人事院勧告が、毎年若干切り捨てられ、値切られるという傾向にあります。勧告は、額のみならず、実施の時期も正しく実施すべきだと思いますが、政府は、ことしこそ完全実施を約束できるかどうか、お伺いをしたいと思います。(拍手)
 労働者の中には、公務員や公共企業体あるいは民間の基幹産業労働者のように日の当たる労働者ばかりではなく、零細企業や組織されない労働者も少なくないはずであります。政府は、日の当たらない産業労働者のためにも、保護の手を差し伸べる義務があると思うのでありますが、家内労働法制定等についてはいかなる配慮がされているのかお聞きしたいと思います。
 賃金は働く者にとって命の綱でありますが、物価を追って毎年賃金の引き上げをはかっても、この賃金が税金によって少なからず食い荒されてしまいます。総評はサラリーマン税金酷書というのを発表いたしました。総評のサラリーマン税金酷書によりますと、月収六万、妻と子供二人の平均的サラリーマンで、所得税、住民税、間接税で結局は賃金の一割をこえるということであります。総評のサラリーマン税金酷書に指摘されるまでもなく、税が高いという実感は、いまや国民が一様に抱いているところではないかと思います。(拍手)また最近は、日本サラリーマン・ユニオンという組合が旗上げをいたしました。総評や同盟に加盟している労働組合ではありませんが、給与所得の減税、厚生年金の増額、住宅対策、教育費負担軽減、中高年齢層の雇用増進、物価安定、こういうしごくもっともな闘争目標を掲げ、財界の有名人をメンバーに入れ、国会議員にも入会を呼びかけてまいっております。
 確かに、だれが考えても、税の自然増収一兆二千億以上に対して減税わずかに千五百億ではひど過ぎます。これぞまさしく、やらずぶったくり精神に徹した仕打ちと言わなければなりません。(拍手)税収の増加分はいずれも国民の努力の結晶であります。政府としては、取り過ぎた分をつり銭として国民に返す義務があると思います。租税特別措置等についてはばかに気前がいいが、一般納税者に対してはつり銭も返さないというのは、どういうわけなんでしょうか。総理は、施政方針演説で、国民の税負担の軽減をはかることは私のかねてからの念願でありますと言っておられます。仁徳天皇のような思いやりがこの演説にはこもっているのであります。しかし、ほんとうにそうなら、いま少し税を納める正直者に対して、あたたかい思いやりがあってもいいと思うのですが、どうでしょうか。
 さらに、日本の税制の特徴は、不公平であると同時に、むずかしくてわかりにくくできているということだと思います。つまり、納得がいかなくて首をひねっている間に、さっさと金を取られてしまうというような仕組みになっております。これでは納税意欲にますます水をさす結果になります。税制のあり方として、第一に安いこと、第二に公平なこと、第三にわかりやすいこと、そうして第四に民主的であってほしいと思います。取りやすいところから取るのではなくて、取ってもいいところから取るという考え方に徹すべきであろうと思います。その意味で、交際費、広告費、政治献金といったような種類の課税ももっと考えてしかるべきではないかと思うのでありますが、大蔵大臣の見解をお伺いをしたいと思います。
 私は、税金が高過ぎるという庶民の実感をすなおに申し上げたつもりであります。しかし、決して税金を取るなと言っておるのではありません。国民は、自分たちの納めた税金が有意義に活用されておるということを知れば、決して文句は言わないと思うのであります。要は、税金の使い道に納得できるかどうかということであります。
 税金の使い道の中でも大きな比重を占めている自衛隊について若干の質問をしたいと思います。
 わが党の成田委員長の質問の中に、新聞の世論調査が取り上げられておりましたが、それによると、現在程度の自衛隊ならあってもいいと考える人が六四%いるが、自衛隊の増強に賛成する人は一九%にすぎなかったというのであります。このパーセントはなかなか示唆に富んだ、うなずける数字であります。これは、言いかえれば、自衛隊員の増員が、いまの世間の常識では納得されないであろうということをも示しております。防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案によりますと、陸上自衛隊で六千名、海上自衛隊、航空自衛隊で千七百名、合計七千七百名が増員をされるようになっております。現在の自衛隊でも相当数の欠員があるのに、防衛庁の任務遂行の円滑をはかるためというだけの理由で七千七百名の増員をはかるのは、まことに不可解と言うほかありません。ことに、一般の公務員は総定員法や定年制等で要員を極端に押えられ、公共企業体では、業務の実態から要員増を必要とする場合すら、合理化で増員が認められないありさまであります。一体どういう必要に迫られて自衛隊をいま増強しなければならないのか、欠員の充当がなされないまま予算定員をふやすのはどんな理由によるものか、また、自衛隊の増員を必要とするような情勢の変化が現実に起きているのかどうか、御説明をいただきたいと思います。自衛隊の性格についての論議は別にいたしましても、七千七百名の増員は具体的な問題でありますから、抽象的な一般論ではなくて、答えていただく必要があろうと思うのであります。また、自衛隊にしても、他の役所ではどこも人の節約をするときに、防衛庁だけが別世界で、わけもわからずに何となくふえていく、こういうことでは、おそらく割り切れないと思うからであります。当の自衛隊員にうしろめたい思いをさせないためにも、この点はぜひこの国会で納得のいく御答弁をお願いをしたいと思います。
 次に交通問題と過密・過疎対策について質問をいたしたいと思います。
 まず、鉄道について言うならば、日本では二つの現象があります。一つは、東京、大阪周辺に代表される過密ダイヤと通勤地獄であり、いま一つは、辺地や過疎地帯における赤字閑散線区の問題であります。過密ダイヤと赤字線区の関係は表裏一体の関係にあり、国全体の問題として解決しない限り、国鉄、私鉄を問わず、交通機関の処理能力を越えているのではないかと思うのであります。総合的な国土計画とそれに対応する交通政策が確立されるのでなければ、地域格差の解消も、過密・過疎問題の解決も、とうてい望み得ないところまで追い詰められている感があります。そこで、あらためて交通政策の立ちおくれを立て直す必要があろうと思うのでありますが、当面大きな問題となっております国鉄運賃の値上げと国鉄の財政についてお尋ねをいたします。
 国鉄の財政は赤字だ、赤字だというふうに言われております。しかし、赤字の原因は何か、なぜ赤字になったのかを説明をしてほしいと思います。国鉄の新年度収入見込みは、運賃改定分を除外しても、つまり、値上げをしなくとも年間一兆円をこえているのであります。この上さらに運賃を上げて、九百十億を上積みしようとしております。現金収入が年間一兆円をこすような企業が今日どこに存在するでありましょうか。これだけの収入をあげながら、二兆になんなんとするばく大な借り入れ金を背負い、その償還のために、四十四年度においても一千五百億、四十九年度には実に三千億の返還を必要とする見込みになっております。運賃値上げで見込んでいる金額よりも借り入れ金の返済の金額がはるかに大きいということは、いかにも不自然であります。もしも赤字の原因が、外部資金に依存する輸送力増強、通勤通学輸送等であったとするならば、国鉄は高利貸しに金を借りて慈善事業をやっていたようなものということになりますが、どうでしょうか。国鉄財政推進会議の意見書によれば、政府出資、運賃改定、内部の合理化によって財政の再建を期待するようになっておりますが、これは運賃値上げを世間に納得させるための三方一両損的な妥協案の感じがいたします。国鉄の借金をそのままにして財政の再建を期することは不可能だと思います。それは、割れた水がめに一生懸命ひしゃくで水をくみ込んでいるにひとしいからであります。今回の運賃値上げは、ひしゃくで間に合わないからコップの水を一ぱいさそうという程度のものであります。これでは何回運賃値上げをしてみても国鉄の構造的な問題が解決をされないと思います。逆に、政府出資で国鉄の借金を片づければ、運賃の値上げも必要がなくなるわけであります。本来国鉄の借り入れた金は、政府が投資をすべき非採算投資を肩がわりしてきたものが多いということでありますから、それならば、政府がここで勇断をふるってもむだはないと思いますし、税金のこれこそ生きた有効な使い方になるのではないかと思うのであります。なぜならば、ここで運賃の値上げを回避できれば、物価問題に寄与すること、はかり知れないものがあるからであります。
 もしも相変わらず、国鉄が従来どおりの財政構造を続けていくならば、いかに一兆をこす収入があろうとも、過度の借入金、公共負担、市町村納付金、鉄道建設公団に対する出資等で、結局財政的に身動きすることができず、運賃値上げをしばしば繰り返すほかなくなるのではないかと思います。その結果、合理化を進めるということになりますと、国鉄は運賃を上げて、サービスを悪くするということになってしまいます。現に四十三年十月のダイヤ改正でも、通勤列車が前より減らされて、急行列車がふえている。こういう苦情が通勤者から出ております。また、赤字線区の人たちからは、辺地におる人間も同じ日本国民じゃないか。われわれをうば捨て山に捨てるようなことをするのか、こういう心配の声が上がっております。ぜひこの点は、政府としても慎重にお考えをいただきたいと思うのであります。
 次に、中国問題についてはすでにかなり詳細に触れられておりますから、南北朝鮮の問題について質問をしたいと思います。
 外務大臣の演説によりますと、朝鮮半島には依然緊張含みの情勢が続いているというふうに報告をされております。しかも総理は、昨日の衆議院における代表質問の答弁で、近い将来、朝鮮半島に緊張状態が存在するのではないかと思うと答弁をされております。ベトナムに和平が到来することはまことに望ましいことであり、われわれも心から望むところでありますけれども、ベトナム戦争が河岸を変えて、朝鮮半島に移動してきたのでは一大事であります。総理は、昨日の羽生議員の質問に答えて、ベトナム戦争も南ベトナム政府の要請にこたえてアメリカが戦っているのであって、米国が国際緊張の要因をつくっているのではないと答えられました。しかし、沖繩基地を利用してB52を爆撃に出動させているのも、エンタープライズをはじめ原子力航空母艦や戦艦をベトナム海域に派遣して、何十万という大軍をベトナムに上陸をさせ、大々的な戦闘を展開しているのも、ほかならぬアメリカではないでしょうか。われわれは、ベトナムがアメリカ本土に対する攻撃を加えたという話を聞きません。総理は先ほど、森中議員に対する答弁で、基地はアメリカのためにあるのではない、日本のためにあるんだと、こういうふうに言われました。沖繩は日本の領土であります。アメリカが沖繩の基地を最大に利用してベトナム戦争を行なっているのも日本のためだということになるのでしょうか。さらに、愛知外務大臣の記者発表によりますと、総理のお答えは沖繩をアメリカが自由に使用できるということを考えての答弁である――これは議事録でありませんから、正確にはわかりませんが、そのような意味の発表を先ほどざれたそうでありますが、しからば、沖繩基地は今後どういうことになるのか。その点、非常に重要であろうと思いますので、総理から、あるいは外務大臣から、真意のほどをここで明らかにしていただきたいと思います。せっかくベトナムに和平のきざしが見えてきたと思われる今日、近い将来、朝鮮半島に緊張が存在するのではないかという推測は、またどういう根拠に基づくものであるのか。これも昨日の総理の御答弁にございましたので、具体的に御説明をいただきたいと思うのであります。
 かりに不幸にして、南北朝鮮が第二のベトナムとなった場合の日本の立場は、ベトナム以上に慎重を要すると思うのでありますが、このような場合でも、政府は日本の中立よりは日米安保条約を優先して考えられるつもりなのかどうか。その点もお伺いをしたいと思います。施政方針演説では、韓国、中華民国をはじめ、近隣諸国との友好関係の維持増進を述べているのでありますが、南北朝鮮の問題は目と鼻の先のことで、きわめて重要だと思います。総理は中共に限らず他国を敵視する政策はとらないと答えているのですから、韓国と境を接する朝鮮民主主義人民共和国との友好関係、国交関係も、懸案事項と同時に、現実に即して考えるべきではないでしょうか。在日朝鮮公民の帰国問題、あるいは里帰りの問題などは人道上の問題であって、何ら日本の国益をそこなう問題ではないはずであります。この程度の問題にまで韓国が干渉してくるということは、はなはだ不可解で、常識では考えられないところでありますが、韓国が何と主張しようとも、南北朝鮮は今日明らかに別個の独立国であることは否定できない事実であります。したがって、政府は人道上の問題を常識的にすみやかに処理をすべきであると思いますが、政府の見解をお伺いをいたします。(拍手)
 次に、北方領土の問題についてお尋ねをいたします。
 この問題については、両国間に基本的な考え方の相違があって、前途に大きな困難が横たわっているというふうに述べられましたが、日ソ両国の間で同じ問答を繰り返している限り、問題はいつまでも解決しないと思います。たとえば歯舞、色丹から返還を求めていくというふうな方法は考えられないのかどうか。平和条約の締結、領土問題の解決はきわめてむずかしい問題であることは、だれしもよく承知をしておりますが、国後、択捉と歯舞、色丹は同時解決という方針を続けるならば、沖繩以上に解決の困難な問題として残されるのではないかという気がするのでありますが、それとも政府において成算がおありかどうか、お答えを願いたいと思います。
 最後に、東京都知事の公営ギャンブル廃止の問題でありますが、これについては政府、自治省は反対の意向を表明されたということも伝え聞いておりますが、公営ギャンブルが健全なレジャーであるというふうには考えられないのでありまして、私は美濃部都知事の英断に敬意を表するものであります。政府としては、この公営ギャンブルの廃止の問題についてどのようにお考えになっているかということを、最後にお尋ねをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(佐藤榮作君) 瀬谷君にお答えいたします。
 物価問題について、政府は重要政治課題だといいながら何にもしていないじゃないか――まず最初におしかりを受けました。しかし、政府が努力しておることは――何にもしておらないのではない、ずいぶん努力しておると私は考えております。ことに今回の施政方針演説などは、いままでにない具体的な点を説明したと思っております。また、企画庁長官も物価問題につきましては、いままでにない具体的な方法で説明しておるように思います。
 そこで、それはともかくといたしまして、この物価問題から鉄道運賃、これを押えろと、かように言われましても、ちょっとただいまはさように賛成するわけにはまいりません。しかし、公共料金が物価を一般に引き上げるその素因になると、こういう意味から便乗値上げは私どもはさせないように、極力これを抑制する、これは具体的に申しておることであります。ただ、後に申し上げますが、鉄道運賃の問題は国鉄再建の問題とも関係してまいりますので、その際に詳しく説明をしたいと思います。
 また、税制、それから減税、それから物価、賃金等について、るる社会党的な説明をなされました。しかし、これは私はずいぶん議論のあることだと思いますので、ただいまのところはひとつ伺っておくことにいたします。これをただいまここで論争しようとは思いません。
 また、税制のあり方については後ほど十分大蔵大臣から説明する予定であります。
 また、公務員の給与についてのお話もありましたが、これまた私どもが人事院勧告、これを熱心に実施したいと、こういう意味で、この人事院勧告を尊重しておる、その誠意は御了承いただきたいと思います。
 そこで、物価の問題で御指摘になりましたように土地の問題、これが一つございます。土地の問題は、もちろん今回とったような処置だけで十分だとは私も思っておりません。それかといって、御提案になりましたように、農地解放に準ずる土地解放、ことをやれと、こういうお話でありますが、まあそれだけの実は勇気もございません。ただ、私はこの際に申し上げたいことは、この土地の問題が物価の基幹であるというだけに、これについて地道ではあるが、これの高騰を防ぐような措置をそれぞれとっておる、かように御理解をいただきたいし、ことに公有地の活用、これは私どもは今後とも力を入れるつもりであります。そういう意味で、公有地の払い下げなどは慎重に扱わなければならない問題だと、かように思っております。積極的に土地改革を断行して公有に移すと、そこまでは考えませんが、ただいまある公有地の払い下げ、これはどこまでも慎重にいたしたいと思います。また、土地税制あるいは土地の収用制度の改善などを総合的に実施していくことによりまして、地価の安定をはかっていくべきだと思います。この点では賛成もしていただける部分もあるのではないかと思います。
 そこで、国鉄の問題でありますが、国鉄の問題については、先ほど瀬谷君が御指摘になりましたような点にも、国全体として交通の問題を考えろという、その御意見には私も賛成する点が多いのであります。しかし、この過密地帯に対する交通網の整備、これは御指摘のとおりでありますが、いわゆる過疎地帯に対して、その過疎地域の開発のためにいままで鉄道が果たしていた役割りが非常に大きいのでありますけれども、この過疎地帯の開発は、鉄道だけがこれを負うのだ、こういうことに考えることにはならないのじゃないかと思います。国土の利用のあり方などにさかのぼって考えてみましても、ただいまは道路もあれば、またバスも通っておるし、その他交通機関はそれぞれ変わってまいっておりますから、そういう点をも考えて、先ほど御指摘になりましたように、地方では取り残されるのだ、こういう不平があるのだ、こういうことでありますが、そういう点については、地方地方に適した交通の整備、これが必要ではないだろうかと思います。
 とにかくただいま、この鉄道の運賃を引き上げろ、こういうことは、申すまでもなく、国鉄財政の改善委員会でいろいろの具体的な案が出、そのうちの一部に、旅客運賃については上げることはやむを得ない、しかして、それを上げるにしても、最小限度に食いとめよう、かように考えておるところであります。これまた中身を十分御審議をいただきたいと思います。
 次に、自衛隊の増員について反対だ、こういう御意見であります。私どもは、自衛隊については、国力、国情に応じて自衛力の充実をはかっていくということ、これが独立国家わが国の国防の基本方針でもあります。今回増員をお願いしたものは、いわゆる第三次防衛計画の線に従った増員であることを御理解いただきたいと思います。
 次に、中共の問題はもうすでに議論が尽きたようだから――尽きたとは言われませんが、各質問者が質問したから、おれは北鮮問題について尋ねる、こういう点から北鮮についての考え方をお尋ねでございました。これは瀬谷君のお気持ちから申せば、北鮮との国交関係を考えたらどうか、こういう点に重点があるのではないかと思います。しかし、政府としては、現状におきましては、わが国が承認している大韓民国以外に、朝鮮半島に別個の国家が存在するとの立場はとっておらないので、北鮮についての云々の考え方は持っておりません。三十八度線は緊迫していることは事実でありますが、私は、この三十八度線がいわゆるベトナムのような事態になるとは考えておりませんし、また、さようになってはたいへんだと私は思います。
 また、その際に、沖繩の基地のあり方についての御意見が述べられました。ただいま、沖繩はわれわれが潜在的主権を持っておる、こういう意味で、沖繩の返還を要望しておりますが、もう、いかにも沖繩が返ってきておるかのような御発言で、沖繩は日本の領土だ、日本の領土を使ってベトナム戦争が行なわれておる、これはけしからぬ、かように言われますが、事実はそのとおりではありません。ただいまは残念ながら、沖繩には米国の施政権があるのであります。私どもは、これに対して何らの施政権を持っておらない、この点を無視されては困るのであります。したがいまして、朝鮮半島におきましてこの沖繩の基地が使われる云々は、私は、現状においては補給的な立場で使われていることは、施政権を持っておる米国として使っておるのでありまして、私どもとしてはやむを得ない状態ではないかと、かように思います。こんなことがあるからこそ、私は、沖繩を一日も早く祖国に復帰させるんだ、そして施政権をこちらに持って、そして沖繩が戦争や、あるいは沖繩住民がその人権が無視されないようにいたしたいものだ、われわれの施政権下において沖繩住民が安心して生活ができるようにしたい、これが私の念願でもあります。
 最後に、ギャンブルの問題についてお尋ねがございました。私は、この問題は別に地方公共団体の財政上の理由からだけで申すのではありません。ギャンブルのことば自身が意味するように、あまりいいことではございません。完全にやめてしまうことができるかどうか、これは実際の問題としてそういう意味でこの問題を考えてみたいと思います。これをやめて、そうしてギャンブルが一切行なわれないような世の中になれば、こんなけっこうなことはありません。しかし、私は、さような点について疑問を持たざるを得ないのであります。公営はやめたが、何かの形で残る、こういうようなことでは、運営の公正さを確保するためからいっても、むしろマイナスのようにも私は思います。要は、いま法律で認めたこのいろいろの競馬その他は、これは健全なものであるかどうか、ギャンブルと言われるような不健全なものであってはならない、かように私は思います。いずれにしても、私は、国民に健全なレクリエーションをより多く与えること、これが必要ではないだろうかと思います。それこそ抽象的にギャンブルを云々するよりも、具体的に、はたしてギャンブル廃止がどういう結果になるか、それもよく考えて、そうして対策を立てることが必要かと、かように私は思います。(拍手)
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(菅野和太郎君) 物価の問題については、総理から大体お答えがありましたが、なお、私から補足して申し上げたいと思います。
 この消費者物価が現状のままで推移すれば、私は、来年度におきましては、おそらく五・七から六%になるのじゃないか、こう考えておるのですが、それほど消費者物価を上げちゃいけないということで、大体五%という目標を定めていろいろ政策を考えておるのでありますからして、そこに政府が非常にいま苦心をいたしておるところでありまして、その点はひとつ御了解を得たいと思うのであります。
 そこで、問題は、国鉄の運賃と物価との関係、これはもちろんあります。国鉄の運賃が上がれば消費者物価が上がることはもちろんでありますが、しかし、私どもは無条件で上げたのではありません。いまも瀬谷議員からお話がありましたとおり、まず国鉄の体質改善が先決問題だ。そこで体質を改善して、その上に、いままで国鉄は独立採算制であったけれども、今日では独立採算ではやっていけないからして、これに対して国並びに地方団体が応援しなければならぬ、財政的の支出をしなければならぬということを主張いたしまして、幸い、国からも四百億円という融資をするし、また、市町村も二十五億円という納付金を減らすということをやってもらった。その上でなお赤字であれば適正な運賃の値上げをしようということでいまやっておるわけでありまして、まだ最後の適正な運賃の決定はやっておりませんが、そういうことで運賃値上げということをしたのでありまして、できるだけこれが一般の消費者物価へ影響を及ぼさないようにやりたいという考えをしております。そこで、お尋ねのとおり、これがほかの私鉄や何かに影響しやせぬかというお話がありましたが、先ほども総理からお話がありましたとおり、交通関係の公共料金は極力これを抑制するという方針をとっておりますからして、したがいまして、一般物価に及ぼすような公共料金は押えるというかたい決意でやっておりますから、御了承を願いたいと思うのであります。
 それから、なお、問題は、いま、すべて物が上がる上がるという気分があります。
 消費者物価の上昇のムードがあります。ある意味では騰貴感というものを国民が持っておりますから、これを押えることが肝心なんであります。でありますからして、そこで、何とかして国民が持っておるこの消費者物価の上昇気分、ムードを消したいということでいろいろ努力いたしておるのでありますが、具体的にそれが何か効果があったのかどうか、その点についてはまだはっきり申し上げかねますが、たとえば、昨年の十一月には消費者物価が五・一%上がってあったのでありましたが、昨年の十二月は三・九%に下がりました。やはり、政府が消費者物価を押えるのだということが国民一般にわかってまいりますと、おのずから消費者物価も下がるということになると思うのでありまして、そういう意味で消費者物価の上昇ムードを消すことにまずわれわれは努力いたしておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(原健三郎君) 瀬谷さんにお答え申し上げます。
 私に対する質問は二つございまして、第一は公務員の給与に関し、第二は家内労働法に関してでございます。
 公務員の給与については、総理からも答弁がございました。人事院の勧告については、その制度が設けられた趣旨にのっとりまして、できる限り尊重していきたいということは、もう言うまでもないところでございます。去る一月二十八日の給与関係閣僚会議におきましても、人事院勧告が出た場合にはこれを完全実施するよう努力するという基本方針を確認いたしたところでございます。また、政府は、このような基本的態度に立って、当面、来年度予算におきましては五%をあらかじめ給与費に計上いたしております。さらに、これをこえるような内容の勧告がございました場合には、予備費をもって対処する考えでございます。とにかく、来年度どのような内容の人事院勧告が出されるか、まだ推測もすることができませんような次第でございますが、勧告が出された時点において、関係閣僚とも十分協議の上、完全実施に向かって最善の努力をいたしたい考えでございます。
 それから、第二の家内労働法の制定でございますが、これにつきまして、昭和四十一年の十月に法制的措置を含む総合的家内労働対策について家内労働審議会にその答申を求めました。二年間審議していただきまして、昨年の十二月の二十二日に答申をいただきました。その内容は、さしあたって、家内労働に関して最も基本的な事項、第二は、緊急と認められるものについて、立法措置をやることが必要であるという答申が出ました。それで、その基本的にして緊急的な立法措置とはどういうものであるか、その答申の中に具体的な内容が盛り込まれております。その第一は最低工賃制度を設けること、第二は家内労働手帳の交付などの制度をつくること、第三は安全衛生対策を打ち立てること、第四には工賃に関する権利を保護すること、第五には労働時間についてもその対策をきめること、第六にはこの仕事の打ち切り等については予告をすること等々の、九項目にわたる内容の答申を受けております。私といたしましては、この答申の線に沿いまして、家内労働法案を作成し、できるだけ本通常国会に提出いたしたい考えでございますので、現在まだその準備を進めておる段階でございます。提出の際にはよろしく御審議をお願い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(福田赳夫君) 税制のあり方についてでありますが、お話のように、税制は適正でなければならぬ、また、税の徴収は公平でなければならぬ、同時に、使い方がこれが均衡を得た公明なものでなければならぬ、全く私も同様に出与えます。
 そこで、税制の問題でありますが、これは各界の意見を聞いたほうがよかろう、しかも、わが国の権威著たちの意見を聞くべきであるというので、御承知のとおり、税制調査会が政府に設けられております。この意見を聞きながら政府案をきめ、また、国会におきましても慎重に御審議を願う、かようなたてまえをとっておりますが、昨年の夏、税制調査会で長期税制のあり方について答申がありました。四十四年度におきましては、その約四割方を実行をするということになっておるのでありまするが、四十五年度以降の課題といたしましては、その残り部分、つまり六割に相当する部分、その二つの重点は、課税最低限を百万円までに引き上げるという問題と、それから中堅所得者以下の階層に対する所得税の税率の改正をする、この二つの問題であります。これを進めていきたい、かように考えております。税の負担感が――重い重いというふうに言われます。そういうような見地から、間接税を大幅に取り入れたらどうかというような意見を言う方もかなり多くありまするけれども、これは税の理論から言いますると、能力に応じた課税方式ではないという欠陥があるのでありまするが、御承知のように、この負担感というような点から見ると、妙味もまたあるのでありまして、まあ極端に、間接税として大幅に移行するというようなことは、いかがかと思いまするけれども、ある程度はそういうことも考えられるべきじゃないか、そんな感じもいたします。
 それからなお、直接税の中におきましても、所得税、法人税の関係をどういうふうにするか、その割合をどういうふうにするかという問題もありましょう。それから、御指摘のように、交際費課税の問題、政治献金に関する問題、広告費の問題、これも検討さるべき問題だと思います。交際費課税につきましては、四十四年度税制改正におきまして、これを重課することにいたしまして、御審議をお願いすることにいたしております。それから政治献金、つまり政治家に対する献金、これにつきましては、それが所得とみなさるべきものであるという以上、政治家に対する献金といえども、遠慮することなく課税をいたさしていただいておりますので、御了承いただきたいと思います。また、広告費に対する課税、これはいろいろ法制的に議論があります。これがどういうふうに物価にはね返るかというような問題もありまして、なかなか結論づけはむずかしい問題かと思いまするけれども、今後の検討問題にいたしたいと、かように考えております。
 なお、先ほどもお話があったのですが、一兆二千億円も自然増収があるのに、千五百億円の減税とは、どうも聞こえないじゃないか、こういうようなことでございまするが、しばしば申し上げておりますように、いま国債を出してまで国の歳出の需要を充足しようとする政策をとっておるこの際であります。国債を出しておる現在の財政下において千五百億円の減税、これはそう少ないものでもなく、かつ、これが千五百億円、平年にすると千八百二十五億円になりまするけれども、これが全部所得税に回るという、そういう減税は近来なかったことなんであります。この点もひとつ御了承願いたい、かように存ずる次第でございます。
 金の使い方につきましては気をつけろというお話でございますが、これは一銭一厘といえどもおろそかにせずという気がまえをもって当たってまいりたい、かように思っております。(拍手)
   〔国務大臣原田憲君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(原田憲君) 瀬谷さんにお答えいたします。私に対する御質問は、物価問題から、また過密過疎問題から、運賃問題からとらえて、現在の国鉄財政を再建するためには、国の財政負担と合理的経営をもってすれば運賃値上げをしなくてもよいではないか、こういう御意見、お尋ねであったと思います。私は、そのお考えは決して否定するものではございません。しかし、御質問の中にもありましたように、今日二兆円という多額の負債を持ち、将来十年後には五、六兆にも及ぼう、このままでいきましたら、そういうものを国だけで負担せよということは無理な話でございます。そこで、考えを出しまして、先ほど経済企画庁長官からもお話がございましたが、四十四年度予算案では、国鉄再建のための再建債の発行と、その利子補給金の交付、それから借り入れ金のうちの長期低利の財政資金、これを拡大する、また、市町村納付金の軽減をしてもらう、これらの財政措置の拡充をはかりまして、そうして国鉄自身の構造改善、企業努力、これらにつきましても別途立法措置を講じまして、万全を期する所存でございます。同時に、いわゆる利用者の皆さん方にも、御迷惑とは存じますけれども、ひとつ国鉄再建のために、ということは、皆さまの御利用のためにも一部負担をお願いいたしたいというのが、運賃の改正でございます。運賃改正が、値上げをすることが、物価に影響することがなしとしないとは存じまするけれども、運賃は最も経済成長の中に吸収されやすいものでございます。どうぞひとつ御理解を賜わりたいと存ずるのでございます。
 それから過疎の問題に対しまして、総理からもお答えがあったのでございますが、過疎対策といたしましては、新しく鉄道をはずしてしまったら交通機関がなくなるというようなところでございますから、それにかわるためには、たとえばバス路線をつくるとか、あるいは、バスがついておるところならば、これが赤字になるならばこれを補助しようというような方法をもちまして過疎対策も講じていこう、こういうことを新しく予算措置としてとっておるような次第でございます。
 何とどよろしく御協力をお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○副議長(安井謙君) 中村正雄君。
  〔中村正雄君登壇、拍手〕
#27
○中村正雄君 私は、民社党を代表して、今後わが国が取り組むべき幾つかの重要課題につきまして政府の所信をただしたいと存じます。
 お伺いしたい第一点は、最近の東大問題を中心とする大学問題についてでございます。私は、今日東大が収拾のつかない長期の混乱に突入し、入試中止という最悪事態を招いた根本の原因は、次の諸点にあると考えます。
 その第一は、政府並びに大学当局が社会の急速な進歩に対応する大学制度の改革を怠り、これを今日まで放置してきたこと、その第二は、大学側が学生運動の本質を見抜けず、長期にわたって学生暴力を学内に温存してきたこと、その第三は、大学自治のあり方に混迷を来たし、学内における違法行為に対しましても、大学側が治外法権的特権を主張し、政府また学園自治を口実に暴力排除に対する職責を放棄したこと、この三点がそれでございます。
 私は政府並びに大学当局がまず以上の諸点を謙虚に反省し、対立ではなく、互いの協力を通じて問題の解決に当たる共同姿勢を確立することが、すべての前提であると考えます。それでなくしては東大の再建はあり得ません。この見地から、私は東大の当面の正常化のために次の二つのことが最低限必要だと考えます。
 その第一は、例の十項目の確認書については、東大内部の意見対立でも明らかなように、その中には多くの問題があることは事実でありますが、しかし、この際はそれをも含めて、今後の東大正常化方針について、早急に大学と学生並びに大学と政府の合意を確立すること、第二は、それと並行して正常な授業の再開を早急に実現することの二点であります。同時に、東大問題を含めて今後大学紛争の根本的解決をはかるためには、当面次の諸点が推進されなければならないと考えます。
 第一は、暴力排除の学校体制を全国的に確立すること。第二は、今後の社会進歩に見合う長期的高等教育のプランを早急に樹立することとともに、当面の大学制度改革のための三カ年計画を樹立して提示すること、第三は、私立大学に対する大幅な国庫助成を具体化すること、第四は、向学心を持つすべての青年に大学の門を開く受験制度の改革を断行すること、以上の四点の推進を提案いたします。十項目確認書の今後の取り扱いを含め、東大の正常化並びに大学紛争解決に対する上述の諸提案に対しまして、佐藤総理より政府の具体的方針を明らかにしていただきたいと存じます。
 質問の第二点は、国民生活と日本経済の双方にとっての重要課題でありまする物価問題であります。
 総理はその演説の中で「消費者物価の問題は、国民生活にとって切実な問題であり、政府が最も力を入れてきたところであります。」と言っております。また、経済企画庁長官もその演説の中で、「当面、特に重要な物価の問題につきましては、現在のような根強い消費者物価の上昇は、国民生活面に大きな負担となるばかりでなく、経済の健全な発展を損なうことになると考えられます。このような物価情勢にかんがみ、政府としては、物価の安定を最重点施策としてこれに全力を傾注することとしていく」と言っておられます。私も同感でございます。現在の国民生活の中で最も脅威を国民が感じておりますのは、消費者物価の上昇であります。企業の経営者も、そこに働く労働者も、お金持ちも貧乏人も、すべての国民に共通した生活の脅威は物価の上昇であります。したがって、国の施策の重点もまたここになければなりません。しかるに、総理は、その次の演説において、「このため、公共料金については、国鉄の旅客運賃以外は極力抑制することとし、」と言って、国鉄運賃の値上げを言明されております。
 いわゆる公共料金といわれるものが、消費者物価を左右する重要な要素であることは言を待ちません。したがって、これを押えることが、経済的な面だけじゃなく、心理的にも、物価を安定させるゆえんであります。国鉄運賃の値上げは、危殆に瀕しておる国鉄財政の建て直しのためと、先般来説明されております。しかし、国鉄財政の再建は、国鉄企業が国の企業である限りにおきましては、政府の財政措置によってやる気になれば可能であります。来年度の歳入は、経済の好況と相まって戦後最大に豊かな財源を持っております。十分に可能なはずであります。政府の重点施策だと言明されておる物価安定を犠牲にしてまで、国鉄運賃を値上げする理由が私には了解できません。
 同じ交通運輸産業の中でも、特に、民間の中小の私鉄、バス、タクシー等の企業は赤字にあえぎ、倒産寸前にあります。特に、ここに働く労働者の賃金は、他の産業に比べて低賃金を余儀なくされ、労働条件も日々悪化いたしております。しかも、そこに働く労働者は、企業の性質上、会社経理を日々熟知いたしております。したがって、会社に対する当然の要求も、労働基準法が保障いたしておる最低の労働条件も守られないままに放置されておる現状であります。国の企業も赤字で困っておるが、物価安定という大目標のためには、運賃の値上げはこれを認めない、民間企業も政府に協力してがまんしてほしいというのであれば、企業関係者も納得し、世論も拍手を送るでありましょう。しかるに、政府関係企業の公共料金のみは、例外的に値上げして、民間企業の料金は、これを据え置くというのは、本末転倒した施策と言わなければなりません。私は、そこに佐藤内閣の政治姿勢を見ることができると思います。極端な権力主義的な姿であります。
 私は、福田大蔵大臣に最初にお尋ねいたします。
 国鉄財政の再建は、政府の財政措置によって十分まかなえると思いますし、これを断行するに、法律上も財政上も何らの支障はありません。国鉄の予定しておりまする増収額は、国鉄自体の財政規模から見ても大きな額ではありません。いわんや国の財政規模から見れば、ほんの微々たるものであります。二年や三年国鉄運賃を据え置いても、国鉄財政の再建は可能であります。なぜ政府の大方針だと明言する物価安定施策に障害を来たす運賃値上げを断行するのか、なぜ国の財政措置によって国鉄の再建をはからないのか、その理由をお尋ねいたします。
 次に、原田運輸大臣にお尋ねいたします。
 さきに申しましたように、中小の私鉄、バス、タクシー企業は、赤字経営に悩み倒産寸前にあります。合理化すべき点はほとんど合理化し、赤字経営のしわ寄せは、そこに働く従事員の労働条件にきておる現状であります。歴代の運輸大臣は、これらの中小企業に対して、料金値上げ以外の方法において、経営改善に全力を尽くすとしばしば言明しておられましたが、いまだ具体的な施策は何ら実行されておりません。新たに運輸大臣に就任された原田君は、これら中小の交通企業に対して、どのような経営改善のための援助措置を講ぜられる考えであるか、具体的に明示していただきたいと存じます。
 次に、菅野経済企画庁長官にお尋ねいたします。
 予算編成途上おける新聞の報道によりますると、菅野長官は、国鉄運賃値上げには反対の態度を示しておるとしばしば言われてまいりました。それがなぜ運賃値上げに賛成されたか、その理由をお尋ねいたします。
 また、交通産業は、鉄道、バス、タクシーとそれぞれ形態は異なっていても、相互に代替性を有し、有機的に一体をなしております。経済法則に従って、高い運賃よりも安い運賃の交通機関に利用者が流れるのは自然であります。現にバス運賃とタクシー料金のアンバランスによって、田地や私鉄のターミナルにおいては、通勤者がタクシーに殺到している現象が見られます。国鉄運賃の値上げによって、一つには、私鉄、地下鉄その他の交通機関の運賃値上げを押えることができるかどうか。二つには、運賃のアンバランスによって交通機関の混乱を生ずるおそれがありますが、それをいかにして回避するか、決意と見通しをお尋ねいたします。
 質問の第三点は、今後のアジアの変化に対処するわが国の外交と安全保障の再検討についてであります。
 すでにベトナム和平の進行とともに、アメリカ、イギリスのアジアからの後退、ソ連のアジア進出と中ソ対立の激化、米中の対話回復や朝鮮の危険な動向等、幾つかの重要な変化がアジアに起ころうとしていることは周知のとおりであります。この中にあって、今後わが国に要請される課題は、自主外交の確立と、安全保障面での過度の対米依存からの脱却の二点だと考えます。この見地から、特に今後の対米関係の再検討の課題として、沖繩、安全保障問題に集約して政府の方針をただしたいと考えます。
 その第一は沖繩問題であります。最近ともすれば下田発言や、愛知外相発言に見られるごとく、沖繩返還交渉にあたって、本土並み返還をちゅうちょするような発言が見られますことは、きわめて遺憾しごくでございます。言うまでもなく、沖繩問題はいまや単なる狭義の安全保障上の問題ではなくして、わが国の真の独立と今後の日米関係の正常化をかけた重要な政治問題であります。佐藤総理はこの秋、沖繩、安保問題等を中心に渡米され、交渉に当たると伝えられておりますが、この際、国民の立場に立って、端的に佐藤総理にお伺いいたします。
 その第一は、佐藤総理は、沖繩問題の解決にあたって、沖繩と本土とを区別しないという原則を守られるかどうか。第二に、基地返還にあたって、核基地の排除を米側にはっきりと提案されるかどうか。同時に、原則的に基地の自由使用を否定されるかどうか。第三に、したがって、交渉のスタートを本土並み返還に統一される意思があるかどうか。以上三点について、佐藤総理の率直なお答えをいただきたいと存じます。
 その第二は、今後の日米安保条約の位置づけであります。第二次大戦終結後二十四年を経過し、現在全国に百四十八カ所の米軍基地と、四万人をこえる在日米軍によって、日本の安全が守られます姿は、はたして独立国として正常な姿でありましょうか。しかも、そこには常に裁判権をも含む治外法権的特権がつきまとい、基地問題をめぐる日米の衝突が絶えないのであります。
 周知のように、国民世論は、日米安保条約を今後どうすべきかについて分裂いたしております。それはわが国の平和と安全をどうして守るかという国家存立の基本問題に対する混迷の縮図であると私は考えます。この安全保障をめぐる対米姿勢の混迷は、もはや安全保障の分野にとどまらず、わが国の政治、社会、経済、思想といった国内体制の広い分野にまで大きな混迷をもたらしております。したがって、日米安保条約の位置づけに対する国論の統一こそは、今後の建設的な国内体制の確立と日米関係の正常化の双方にとって緊急の課題だと言わなければなりません。
 私は、安全保障をめぐる今後の日米関係は次の諸原則に立って律すべきものだと考えます。
 第一に、日米の友好関係はあくまでもこれを堅持しなければなりません。政治的外交的に日米対決は避けるべきであると考えます。
 第二は、核時代の極東の緊張という現状の中にあって、日米安保条約が日本の安全と極東における戦争の抑止に一定の役割りを果たしておる事実を客観的に評価すべきであると考えます。
 第三には、それと同時に、現行安保条約には、占領の遺物としての駐留並びに基地条項を基本とする条約上の明らかな欠陥がある事実、並びに基地問題をめぐる日米関係の悪化等、多くの政治的マイナス面を持っていることを直視すべきであります。
 第四に、わが国の安全保障は、世界の多くの国々がそうであるように、自主防衛を基本とし他国との安全保障、すなわち、日米安保はわが国の自主防衛を補完するものとして位置づけるべきであると考えます。
 上述の見地に立つとき、今後の日米安保条約の取り扱い方としては、安保条約の即時廃棄論並びに現行安保条約の自動延長は、ともに拙劣なものだと言わなければなりません。わが国の安全はまずわが国が責任を負うという立場を確認し、そのために必要な自主防衛体制の青写真を国民の前に提示すべきでありましょう。その上に立って、アメリカに対し、条約上の欠陥と政治的マイナス面をはっきりと説明し、その改定を要求するならば、アメリカは必ず日本の要求に同意するでありましょう。また、そのような努力が尽くされてこそ、日本の国民も日米安保条約に正しい理解を示し、わが国の安全保障に対する混迷を除去することができると思います。
 私は、日米安保条約に対する最低限の要求として、すでに戦争抑止力としても大きな効果を持たない米軍の常時駐留の排除と、基地の原則的な撤廃を基本的内容として、アメリカ側に改定要求を提案すべきだと思いますが、これに対しまする佐藤総理の率直な御所見を伺いたいと思います。
 最後に、日米安保をめぐる国論混迷の現状を直視して、安保条約を主題にして、憲政の常道に従い堂々と解散を行ない、民意を明確化する意思があるかどうか、佐藤総理の所信を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(佐藤榮作君) 中村君にお答えいたします。
 やや順序が違うようですが、先に外交問題からお答えしたいと思います。
 安保、沖繩問題――沖繩問題というものは、やはり安全保障条約を十分理解して初めて沖繩問題の解決もあるのでありますので、これをまあ別々にすることは――私は、国民に対しても、これを一体として話すべきものじゃないだろうか、かように思っております。
 で、中村君の先ほどの御質問は、すでに同様な質問が今朝行なわれておりますし、また私は、この見解は、再三にわたって私の見解を述べておりますから、この席上では重点的にお答えをいたしたいと思います。
 民主社会党の御主張は、現在の安保体制が占領政策の遺物であり、実情にそぐわなくなっているから、常時駐留を廃止し、基地の原則的撤廃を内容とする条約に改正せよというのだと理解します。そうして、それをやはり沖繩にこれを適用しようというのがお考えだろうと思います。この点については西村委員長にもお答えしたのでありますが、政府は一九七〇年以隆も安保条約を堅持するという方針であります、したがいまして、中身におきましては残念ながら民主社会党とは意見を異にするものであります。
 自動延長でなく、改定の方向で米側と交渉せよとの御意見でありますが、ただいまさような考え方にまでまだ達しておりません。安全保障条約体制は堅持すると申しましても、それはどういう形でこれを堅持するか。いままでまだ結論を出しておりません。安全保障条約はまず第一義的に、たびたび申すのでありますが、わが国の安全とわが国を含む極東の平和と安定に大きな役割りを果たしております。中村君の御意見は、わが国の安全をいつまでも他国に依存すべきではない、さらに自主防衛の努力をすべきだという御趣旨かと思いますが、私もその御意見には基本的に賛成であります。しかしながら、政府といたしましては、自衛力を漸増、整備しつつ、その足らざるところを日米安全保障体制によって補い、わが国の安全を確保していくという基本方針に変わりはありません。特に、非核三原則を本土において立てましたゆえんも、沖繩の米軍基地というもの、いわゆる米軍の持つ戦争抑止力、これあるがゆえでございます。そういう意味で、沖繩の基地のあり方等はわが国の安全保障体制とこれは一体として考えていくべきものだと、こういうことになるのであります。
 沖繩の問題につきましては、たびたび申しますが、早期返還を望む国民論を背景に、沖繩の米軍基地がまず第一にわが国の安全とわが国を含む極東の安全保障に果たしている役割りを認識しながら、米国との相互信頼の基礎に立って解決をはかるというのが私の基本的な考え方であります。この点では中村君も、核の時代にはというような表現をされておりますので、また対立ではなく、相互理解の上において解決すべきだと、かように言われておりますので、私はわかっていただけるのではないかと思います。沖繩の問題は、ただいま申し上げるように本土の安全保障と密接な関係がある。しかも、わが国が基本的にとった態度、それも沖繩が米施政権下にあって、アメリカが持つその軍事力、これはアメリカの本土の軍事力も、グアムやハワイのものも沖繩と一緒にいたしまして私は申すのでありますが、その軍事力を中心にして――いわゆる中心ではありません、わが国の自衛力を中心にしての補完的な働きを実は期待しておる。そういう点がございますから、この点を十分考えないと、沖繩の問題を解決するわけにはいかないのであります。この点は、しばしばいままで説明してまいりましたから、もうすでにその点では誤解はないかと思いますけれども、重ねて申し上げておきます。
 次に、大学の問題につきまして、大学制度の根幹に触れる、いわゆる確認書の問題が出てまいりました。これは大学制度の根幹に触れる重大な問題でございますので、十分論議を尽くした上、政府、学園協調のもとに適切に対処したいと考えております。さらに、このような点を含めて、当面する大学教育の課題に資するための方策につきましては、現在、中央教育審議会において審議中であり、適切な答申が得られることを期待しております。中村君から具体的に四つの提案がなされました。いずれ、これらの点をも含めて中央教育審議会において十分審議をいただき、適切な方針を得たいと思います。私は、大学の紛争をも含めて、戦後の教育が大きな曲がりかどにきている、この認識を持っておりますし、今後とも、この問題と真剣に取り組んでまいるつもりであります。ただ、一党一派に偏するとか、あるいは一部の者の考え方で、将来の教育問題の根幹を定める、こういうようなことがあってはならない。慎重な上にも、また、各界各層の具体的な御意見を聞きながら、りっぱなものをつくりたい、かように思って、民社党の先ほどの御提案に対しましては、心から敬意を表し、十分審議をいたすつもりであります。
 また、参議院には縁のないことだと実は思っていたのでありますが、解散についてお尋ねがありました。私は、解散は、たびたび申したのでありますが、考えておりません。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(愛知揆一君) 沖繩の問題につきましては、ただいま、総理からも、さらに詳しく御説明がございましたから、私は加えることは何もございません。また、午前中に申し上げましたとおり、総理の言われておる、この問題のとらえ方、それから、この説明をされております説明ぶり、これは、基本的に非常に大事なことであると思うのでありまして、したがいまして、たとえば、核についてどうする、自由使用についてどうするというような方法論的といいますか、さらに、具体的なものについては、現在政府が一方的に断定的な考え方を申し上げる時期ではないと思うんであまりす。基本的な問題のとらえ方につきまして、十二分に、情重に検討すべき時期ではないか、かように考えております。
 なお、先ほど瀬谷議員から、私に対する御質問がございましたのに、お答えする機会がございませんでしたから、一言申し上げます。
 朝鮮半島に緊張ということについておまえは触れておるが、一体どういう根拠であるか。こういう御質疑であったかと思いますが、これは御案内のように、一昨年来、客観的な事実として、たとえばゲリラの侵入というものが報道もされております。また、国連軍の報告などにも指摘されておるものがございますので、そういう点をとらえまして、この緊張があることが、私としても心配である、こういうことを申したのでありまして、それだからといって、ベトナムの第二戦線的なものができるというようなことを、全然考えているわけでもございませんし、そういうことにならないように、国際緊張緩和の政策をとらなければならない、こういうことを申したつもりでございます。
 なお、申すまでもないところでありますが、大韓民国との間に国交ができましてから三年でございます。この大韓民国との間の正常なる国交ということについては、私は、常にこれを大切に守っていかなければならないと考えておりますことを、あわせて申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(福田赳夫君) 国鉄につきましては、申し上げるまでもないんですが、財政が非常にむずかしい事態になってきておるわけであります。そういうことから、国鉄を憂える皆さんが参集されまして、国鉄財政再建会議がつくられた。この会議では、答申を出してまいりまして、三者、つまり国鉄自体、また政府、それから一般乗客、この三者でこの問題は解決すべきである。かようなことから、国鉄当局は、みずからの手で合理化努力をしなきゃならぬ、また、政府は、これに対して財政援助をしなけりゃならぬ、また、一般利用者である国民、つまり料金の引き上げをすべきである、かようなことをまあ言われたのであります。そこで、それを受けて、国鉄もその考え方でここでやってみよう、それから運輸省もその考え方でひとつ努力してみよう、こういう腹をきめて、大蔵省に対して国の協力方を申し入れてきたのが、今回の四十四年度概算要求ということになってきておるわけでございます。それで、私はそれを受けまして、国がそういう協力をする、その協力の四十四年度における要請は四百八億円になるわけでございまするが、それをそのまま応ずるかどうかということは、これはかなり国の財政とすると大きな問題であったわけでございまするけれども、ひとつその協力を全面的にやろうという決意をいたしたわけであります。そのかわり、まあひとつ、重大な段階に来た国鉄財政でもあり、しかも皆さんの意見がそろって、国鉄自体も合理化しよう、また運賃のほうの処理もしょう、こういうときであるから、その全員――全部が三者一体となって動くようにしてもらいたいという要請を、国鉄当局、また運輸当局に対していたしまして、でまあ運賃引き上げということになったわけでございまするが、四十四年、これは、私はもとよりでございますが、企画庁長官、また政府全体といたしまして、物価を何とかして安定をさせたい、そういう年にしたいという考え方を持っておるわけであります。
 そういう考え方に即応いたしまして、財政当局といたしましては、財政の硬直化というようなことからいえば、かなりの問題ではありまするけれども、両米価の据え置きをいたし、その結果、五百五十億円余の食管会計の繰り入れをふやさなければならない、また、麦の価格の据え置きをする、また、塩につきましてもそうだ、電信電話会社に対しても据え置きだと、こういう公共料金が物価体系の中で刺激的な役割りをすることを避ける考え方をとり、これを予算案の中に実現したのです。したのですが、国鉄の問題は、そこまで気運が来、しかも、これをほうっておくと、一年延ばし二年延ばしにするということになりますると、せっかくそういう気運が出、皆さんが覚悟をきめたのでございまするのに、その処置、手術ということが非常にむずかしくなる、だんだんと重病になってくる、こういうことを考えまして、ただ一つの例外になりまするけれども、公共料金――国鉄だけはこれは引き上げをしたほうがいいのではあるまいか、かような結論に到達いたしたわけであります。
 ただし、国鉄当局は、当初は、旅客ばかりではない、貨物につきましても若干の引き上げを考えておったのでありまするが、それはやめてもらって、旅客だけにする、物価に対する波及効果の少ない旅客だけにとどめてもらうということにいたしたわけでありまして、何とかして国鉄はこの際再建をいたしてもらいたいものだ、その一念からさような措置をとったわけでありますので、どうぞよろしく。(拍手)
   〔国務大臣原田憲君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(原田憲君) お答えいたします。
 ただいま大蔵大臣から詳しく御説明になりましたので、重複を避けさせていただきたいと存じますが、先ほどもお答えいたしましたが、国鉄財政に対して、正直に言いまして、私は大蔵大臣も過去には冷たかったと思っております。しかし、いまもお話がありましたように、この国鉄という国の経済社会の動脈、これを再建しなければならぬというところから、いまのような措置をとり、また、自治省も私は冷たかったと思うのでありますが、これも納付金も軽減しよう、こういうことで、国地方を通じて国鉄再建のための措置をとっていただける、国鉄みずからも合理化をする、そこで、たいへん御迷惑でございますけれども、利用者の皆さん方にも御負担を願いたい、こういうことでございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 それから、中小の私鉄というものについて新しい助成策を考えておるか具体的に言えと、こういうことでございました。地方の中小私鉄がたいへんいま困ってきておることは事実でございます。これが、ただ赤字になったからといってつぶれてしまったんでは、地方の交通がつぶれてしまうわけでございますから、この運営に困難なものについて、企業ベースでは維持することが困難な必要路線については、国または地方公共団体において補助金の交付等の助成策を講ずる所存でございまして、これは先ほども申し上げましたが、昭和四十四年度予算案において所要の措置をとることにいたしておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(菅野和太郎君) もう国鉄の問題につきましては、大蔵大臣、運輸大臣から詳細なお話が出ましたから、私からこれ以上申し上げる必要はないと思います。でありますからして、ただ、ここで問題になるのは、国鉄運賃に便乗して、私鉄や何かの値上げをしないかということを御心配になっておられるようでありますが、もちろん、これは便乗値上げはいたしません。そうすると、国鉄と私鉄との間に運賃の不均衡が生じないかということについての御心配のおことばをいただいたのでありますが、もちろん、私もそれをよく承知をいたしております。しかし、この際その運賃の不均衡を訂正するよりも物価上昇のムードを消すほうが私は国策だと考えておりますので、そこで、便乗値上げは一切ささぬということでやっておりますから、さよう御承知を願いたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○副議長(安井謙君) 野坂参三君。
   〔野坂参三君登壇、拍手〕
#34
○野坂参三君 いま、国民は、激動する内外の情勢の中でわが国が進むべき道を真剣こ考えております。安保条約と沖繩の問題をはじめ、大学問題、物価、食管制度、社会保障、公害、その他多くの重大な問題が解決を迫られております。私は、その中で、沖繩と安保条約の問題について、日本共産党を代表して、総理の所見をただしたいと思います。
 第一は、この問題に対する政府の基本的な態度であります。
 周知のように、ニクソン新政府の対日政策は、ジョンソン時代以上に強硬なものであります。ニクソン大統領は、かねてから、日本の自衛力増強を強く求め、新たなアジアの集団安全保障機構の中で、日本が指導的役割りを果たすときが来れば、沖繩返還が可能になると言明しております。このことは、そのときまでは沖繩を返さないということにほかなりません。現に、沖繩の総合労働布令の内容は、アメリカが、返還どころか、力による支配を一そう強めようとする意図を示しているではありませんか。
 しかるに、日本政府の態度はどうか。驚くべきことに、愛知外務大臣は、沖繩の米軍基地を現状のまま認めてもよいではないかと言い、下田駐米大使は、アメリカの意向にさからって闘争するならば、返還は絶対不可能だとも言っております。いち早く、こうしてアメリカの代弁者としての姿勢を打ち出しております。いやしくも国の重大問題に関して、交渉の前から相手の意に沿うことにきゅうきゅうとするこのような態度で、どうして国民の期待にこたえ得る交渉ができるでしょうか。まず総理の見解をお聞きしたいと思います。
 スエーデンのベトナム民主共和国承認、イタリア、カナダ、ベルギーの中国承認の動きなどを見るにつけても、これほど卑屈な対米従属の政府を日本国民が持っている、この不幸を私はあらためて痛感せざるを得ません。愛知外相は、外交方針演説で、沖繩返還に関連して、「平和的な話し合いによる領土回復は世界史に例が少ない」と自賛しております。しかし、沖繩はもともと百万同胞が住む日本固有の領土であり、ポツダム宣言に基づいて、当然すでにわが国に返されているべきものであります。ところが、この領土が戦後二十四年間にわたって、不法にもアメリカの軍事占領下に置かれ、これを歴代の自民党政府が進んで許してきたこと、これこそ、国際的にもまれで、日本の歴史の上では全く前例のないことではありませんか。だからこそ、沖繩の県民も、本土の国民も、この不法な事態を即時打ち切り、無条件全面返還の実現を強く要求しておるのであります。
 沖繩返還をめぐる日米交渉に当たって、政府はこれまでの沖繩に対する態度を真剣に反省し、さきの三大選挙で示された沖繩県民の即時無条件全面復帰の要求をアメリカ政府に突きつける決意があるのかないのか。また、ニクソン政府が沖繩占領を固執した場合に、断固として、国民とともに沖繩全面返還をかちとる決意があるのかどうか、国民の前に明らかにしていただきたい。
 第二に、政府のいわゆる沖繩返還の構想についてであります。
 昨日の衆議院で、総理は、沖繩の返還についての国民の論議が、一つは、沖繩が将来本土並みになるという保障さえあれば、施政権返還が先決だという意見であり、いま一つは、返還の時期がおくれても核兵器は認めないという意見のこの二つであると言っておられます。これほど国民を愚弄するものはありません。沖繩の三大選挙で示された沖繩県民の即時無条件全面返還の要求は、総理のことばでは全く抹殺されているではありませんか。あなたは、どこまで沖繩県民をはじめとする日本国民の要求を無視されるのか、ここではっきりとお答え願いたい。
 また、総理は、従来から沖繩の米軍基地が、わが国のみならず、極東の安全に果たしている役割りを認識しながら、早期返還をはかると述べておられます。一体沖繩米軍基地の役割りとは何か。アンガー前高等弁務官も離任の演説で再確認しているように、それは第一に核基地、第二に自由使用、第三に、沖繩基地が、日米をはじめ、米韓、米台、米比ANZUSなど多角的軍事同盟条約のかなめとなっていることであります。これが沖繩基地の役割りの具体的内容であります。しかも、総理は昨日、政府が非核三原則を打ち出したのは、沖繩を含めてアメリカの戦争抑止力という前提があったからだと述べ、沖繩を非核三原則の適用からはずすことさえにおわせております。そのことは、ついいま民社党の中村君の答弁に対しても同じことを申されております。これでは総理の早期返還は、まさに核基地つき自由使用返還にならざるを得ないではありませんか。この際、政府がすでに固めたと伝えられている政府見解、その内容をここで明確にしていただきたいことを私たちは要求せなければなりません。
 一たび沖繩が核基地つき自由使用で返還されることになれば、日本の施政下に核基地が置かれ、また自由出撃が合法化されて、日本をますます核戦争の危機に引き入れることになります。これは日本国民が戦後一貫して掲げてきた原水爆禁止、核戦争阻止の悲願を踏みにじるものであって、国民は断じて許すことはできません。
 現在沖繩にはメースBをはじめ、各種の核兵器と膨大な核弾頭の貯蔵施設があります。さらに各方面の報道によれば、新たに六つの核兵器貯蔵庫が完成し、核魚雷サブロックの貯蔵施設と見られる建設工事やABMスパルタン・ミサイルの関連施設の工事も始まっております。また、アメリカ政府は、施政権返還後の沖繩にポラリス潜水艦を寄港させるよう日本政府に求めているとも伝えられております。
 こうした沖繩における重大な事態の進行に対して、政府はアメリカ政府にいまだ一片の抗議も警告もしておりません。しかも、いま沖繩県民が命を守る問題として、二月四日のゼネストに向けて総決起しようとしているB52撤去の要求についてさえ、それを断固としてアメリカ政府に求めていないのであります。それは結局政府が核つき返還を考えていることを裏書きするものではありますまいか。現にジョンソン米国務次官も、この二十八日、米国上院外交委員会で、自民党が核基地の維持を望んでいると、こう証言をいたしているではありませんか。もしそうでないとするなら、政府は沖繩返還に際して、ポラリス潜水艦の寄港その他一切の核兵器と核基地を認めないと、ここで国民の前にはっきりと約束できますか。総理の明確な答弁を求めます。
 第三は、米軍の沖繩占領と不可分の関係にある安保体制といわれる日米軍事同盟の強化が着々と進行している問題であります。
 総理は、第九回日米安保協議委員会で打ち出された若干の基地の整理案を持ち出して、国民の意向に沿った基地対策に取り組んでいるかのように宣伝しております。しかし、この基地整理案なるものは、返還の名で、国民の全面的な基地撤去の運動を弱め、分裂させようとするものにほかなりません。実際には米軍の継続使用を条件として、基地を自衛隊に移管するなど、より有効で能率的な基地の再編成を行なうことをねらったものにほかなりません。それは基地撤廃への第一歩でも何でもありません。
 しかも重要なことは、この基地整理案と同時に、自衛隊と在日米軍によるいわゆる日米軍事専門家研究会同、こういうものの設置がきめられたことであります。この会同は、基地機能の専門的検討を行なう以上、アメリカの極東戦略や、それへの自衛隊の対応策にも当然触れざるを得ません。すなわち、これは日米両国政府の長年の懸案であった軍事協議機関の公然たる設置であり、事実上の日米両軍の統合司令部の発足といって差しつかえありません。これによって自衛隊の防衛負担を一そう増大させ、日米共同作戦体制を一段と強化することになるのであります。総理の答弁を求めます。
 すでに政府は、米、日、韓を統一する極東戦略計画の一環といわれるF4Eファントム機の採用をはじめ、陸上自衛隊六千名の増員、非常時立法の準備、アジア諸国への経済協力の推進など、日米軍事同盟の強化と日本軍国主義の復活を推し進めております。このことは、安保条約がたとえ自動延長であろうとも、政府が実際に進めている内容は、ニクソン新政権の要請にこたえて日本がアメリカのアジア侵略政策の中心的役割りを果たそうとするものであります。
 また政府は、沖繩の施政権返還を利用して、陸上自衛隊一個師団九千名の常駐を含む沖繩防衛構想をまとめるなど、日米共同作戦体制を西太平洋の全域にまで拡大することをねらっております。それだけでなく、下田駐米大使は、沖繩返還のためには、さらに日本は独自のアジアを含めた防衛策を樹立しなければならないとまで公言しております。
 総理にお聞きしますが、一体アジア防衛策とはいかなる内容のものでありますか。また、政府は今後アジアでいかなる防衛責任を分担しようとしているのか、明確な答弁を要求します。
 最後に、沖繩と安保条約に関していずれの道を選ぶかという、日本の将来を左右する重大な問題についてであります。
 今日、国民の前には二つの道があります。その一つは、沖繩の基地つき返還を認め、安保条約を堅持して侵略的な日米軍事同盟を一そう強化する道であります。もう一つは、沖繩の全面返還をかちとり、安保条約を廃棄して、祖国の独立、民主、平和、中立を実現する道であります。最近の世論調査の結果は、国民の大多数が後者の道を強く要求していることは、総理を含めて皆さんの御承知のとおりであります。
 日本共産党は、国民の意思に沿い、サンフランシスコ平和条約第三条を廃棄して、沖繩の即時・無条件全面返還をかちとることを主張します。また、一九七〇年六月には、安保条約第十条に基づき、この条約の終了を米国政府に通告して条約を廃棄し、日本全土から米軍と米軍基地を取り払うことを主張します。これこそ、祖国の主権と独立を回復し、平和と安全を守り、アジアと世界の人民の期待にこたえるただ一つの正しい道であります。(拍手)
 現在、わが国がこうした重大な岐路に立っているとき、今後の進路の選択をめぐって、政府が国会を解散し、総選挙を行なって国民の意思を問うことは当然の義務であると考えます。この点について総理の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま野坂議長から、たいへん勇ましい御意見の発表がありました。私も謹聴した次第であります。この点では、おそらく私どもの答弁は必要でないというようなお気持ちでお話になったのではないかと思います。しかし、私はこの機会に、たびたび申したことではありまするが、この沖繩問題や安全保障条約と取っ組んでおる日本の態度は、いわゆるアメリカの代弁者、さような態度ではございませんし、日本国民にかわって、また代表をして、私どもは、アメリカと交渉をして安全保障条約を結び、またさらに、アメリカと友好親善関係のうちに、あらゆる問題を解決していこう、これが私どもの態度であります。したがいまして、この基本的態度は、よし、共産党の主張があろうとも、私が申し上げておかなければならないことでございます。せっかくの機会ですから、二、三の点について私の考え方を申し上げます。
 もうすでに、対米政策あるいはまた返還問題について具体的に関係閣僚できめたものがあるのではないか、こういうお話でございますが、まだきめたものはございません。この点ははっきり申し上げておきます。私が沖繩返還問題を手がけたのには、さまざまな意見がございます。第一次訪米に続いて沖繩を私自身が訪問し、二度目の訪米によりまして、私は私なりに、この交渉の手がかりをつかめたと確信しておるのであります。今年後半の適当な機会に訪米いたしまして、ニクソン大統領と話し合って、返還の時期を取りきめたいというのが私の基本的な考え方であります。正直に言って、この交渉は私はなまやさしいものだとは、つゆ思っておりません。野坂議長が言うように、これをいままで放置しておいたのは歴代自民党内閣の怠慢であるというような感覚、あるいは本来のわが国の領土が――また、最近の選挙でもあらわれておる沖繩住民の意思を背景にして、その上に立ってアメリカと交渉してこい、これはたいへん私は勇ましい御意見だというのであります。かようなことでこの問題が解決できると思ったら、これは大間違いであります。われわれは、そもそも沖繩問題の発生した原因をはっきり認識しなくては沖繩問題の基本的な解決をはかることはできないのであります。私は、沖繩問題の背景となっている国民的苦悩の中からわが国の進むべき方向を見出し、国民全体の力によって沖繩の祖国復帰を実現することを念願しております。このことをこの際はっきり申し上げて、野坂議長に対する答弁といたしたいと思います。
 ただ二、三の点におきまして、たとえばこの日米軍事専門家研究会合、こういうもの、これはたいへんなものだというような御指摘でございますが、実はこれはたいへんなものじゃございません。御承知のように、日米合同委員会がございますが、その下部機構としてこれはあります。そうして最近は、基地約五十個所について、いわゆる廃止あるいは供与、あるいはその他転換等の事務がございます。それらの点を円滑にやろうというのがこの専門家研究会合の仕事でございます。したがいまして、事実上このことのあることは認めますが、そうおそれるようなものでもないことだけはっきり申し上げておきます。これは共産党の方としてはよく事情を御承知のことだと思いますが、他の国民の方々が特別の意味があるように、野坂議長の発言でありますだけに、さように思われても困りますので、念を入れて私は説明をしておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○副議長(安井謙君) 青島幸男君。
   〔青島幸男君登壇、拍手〕
#37
○青島幸男君 私は、総理の施政方針演説を聞きまして、その中で述べられている政治姿勢につきましては、たいへんけっこうなものであると感じました。むしろ名文であると思います。しかしながら、たいへん残念なことに、総理の言われていることと、やっていらっしゃることは、どうもしばしば食い違いがあるように思います。
 今国会で中心議題になっております安保、沖繩、大学、物価問題についてもいろいろとお伺いしたいのですが、時間も限られておりますし、これまでの他の質問者たちに対する御答弁で政府の考え方は一応理解し得たかに思っております。ですから、私は、問題を明治百年恩赦に政治資金規正法の二点にしぼりまして、政府のお考えを伺いたいと思います。
 私は、まず、明治百年恩赦についてお尋ねいたします。そもそも、昨年三月の参議院予算委員会におきまして、市川房枝議員が「明治百年恩赦をやるといううわさがあるが、これはどうなのか」、こう質問したのに対しまして、赤間法務大臣が「そのようなことは考えておりません」、こう答弁をされまして、総理もこれをお認めになりました。また国民の強い反対があったにもかかわらず、政府は自民党の圧力に屈してか、恩赦を施行されました。新聞の報道によりますと、この恩赦の対象は千九百万人にのぼるといわれておりますが、実はその九九%以上を占めるのがスピード違反などの道路交通法違反等であり、実際には恩恵を受けておらず、実質的に恩恵を受けるのは、約四万人に及ぶ選挙違反者であります。しかも、救済される四万人の選挙犯罪者の大部分が自民党関係者であるということです。昨日も公選法違反の疑いを受けている自民党のさる議員が、恩赦を目的に上告を取り下げ、国会議員を辞任するという事件があったと聞きました。こうした事柄から、総理が常日ごろ言われておりますスローガン「寛容と調和」の意味するところは、実は、おのれに寛容、自民党に調和と解釈して、はじめて納得がいくものであると思います。選挙は議会制民主主義の根本をなすものでありますから、特に選挙違反者に対しては最もきびしく臨むべきが当然であります。しかるに、選挙違反者救済が主たる目的であるとしか思えないかかる恩赦を行なったことは、民主政治を根底からくつがえし、ひいては国民の政治不信を招くものであると思います。こう見てまいりますと、そもそも明治百年という行事そのものが、最初から選挙違反者を救済するための意図をもってたくらまれた政府の陰謀ではなかったのかとすら思われるのであります。こういうことでまいりますと、さしずめ、ことしならば沖繩返還めどつき恩赦とか、来年ならば万国博大成功記念恩赦などと銘打って、またぞろ選挙違反者救済を主たる目的とした恩赦をたくらんでいるのではなかろうか、こういう危惧が国民の中に生ずるのも、これまた当然のことと言わざるを得ません。
 かかる疑惑と不信に満ち満ちた明治百年恩赦につきまして、総理は現在どのようにお考えになっておられるのか、その所信をお伺いしたい。ただし、いままでの政府答弁のように、「善処いたします」とか、「いま明確にお答えできる筋合いのものではありません」とか、「はなはだ遺憾には存じますけれども……。」とかいうような、一般国民には通用しない答弁のしかたではなくて、明治百年恩赦を行なったことは、政府として当然とるべき措置であったか、あるいは適切なものでなかったか、どうお考えになっているか、この際国民の前にはっきりとお答えいただきたい。
 さらに、自治大臣は、今回の恩赦に関しては、どういう事情からかよくわかりませんが、自民党内で特に御熱心に恩赦の実施を総理に迫られたというように伺っておりますが、正しい選挙を推進する役割りをになう自治省の最高責任者におなりになりまして、現在はどういうふうにお考えになっておられるか、その所信を伺いたい。
 また、大学問題では法と秩序をきびしく説かれていらっしゃる法務大臣は、この点についていかがお考えになっていらっしゃるか、所信を伺いたい。
 次に、今国会に提出予定となっております政治資金規正法について、総理並びに自治大臣にお伺いしたいと思います。
 国民は、政界の黒い霧追放のために、完全な政治資金規正法の実施を心から望んでおります。このことは総理もよく御理解になっておいでになりまして、一昨年四月二十六日の衆議院本会議では、「政治資金規正法は、政治の基本姿勢につながるものなので、真剣に取り組みたい」、また、同じく六月八日の衆議院本会議では、「審議会の答申を十分尊重し、小骨一本抜くことはしない」、さらに加えて、六月十三日の閣議では、「政治は悪であるという印象を与えないためにも、政治資金規正法の今国会成立を期する」と、かように政治資金規正法については非常に深い御理解を示し、熱心なる意気込みを見せたのでございますが、昨年四月十五日の参議院予算委員会では、「初めは改正案を二月中に出すつもりだった。しかし、二月がだめになったので、今度は三月にと思った。それもできなかったので、私も責任を感じ、関係者を督励している」と、こうふうに骨抜き改正案ですら総理の熱意が疑われるような答弁をなさるようになりました。さらに、昨年五月十四日の衆議院本会議では、「政界浄化は政治資金の規制だけでは実現しない」などと、最初の発言とはまるで違ったものになってきているのであります。はたして、どちらが総理の真意なのか、その政治姿勢について、はなはだ理解に苦しむのであります。ぜひとも、全国民の熱望しております審議会の答申どおりの完全なる政治資金規正法を今国会に提出、成立できるよう、勇気をもって総理が対処されることを望んでおる次第であります。
 先ほどの公明党の北條議員の質問に対しまして、総理は、「私どもの考えたとおりのものは無理かもしれないが、今国会においても政治資金規正法の充実には努力します。何よりもまずこの問題については一歩踏み出すことが肝要だと思う」と、こういうふうにお答えになりました。先ほど来私が申し上げましたとおり、この問題についてのいままでの経過は、総理御自身が実は一番よくおわかりと存じます。今度こそ、本腰を入れて臨んでいただきたい。最近よく総理は、「どろをかぶっても」とか、「命をかけても」とか、しばしば最大級の決意を披瀝されておりますが、正しい議会制民主主義をはぐくむためには、公職選挙法の抜本的改正とか、完全なる政治資金規正法の成立のためにこそ、総理は政治の最高責任者として命をかけられるのが当然だと、私は確信しております。
 昨日の衆議院本会議において、楯氏の政治資金規正法に関する質問に対する答弁の中で、総理は「政治資金規正法の改正は、ぜひ成立させたいと願っている。しかし、完全なものを成立、実現するのは現状ではむずかしい」とも言われております。しかし、成立をはばむ要因がもしあるとすれば、それは国会での発言としては多少穏当を欠くことばかもしれませんが、財界と政府との腐れ縁であるという以外は考えられません。この腐れ縁は、学生のゲバ棒よりももっと悪質な暴力と言わなければなりません。(拍手)総理は、施政方針演説の最後に、「暴力を否定する勇気なくして民主主義は保持し得ず、責任と規律なくして真の自由はあり得ません。私は、この信念のもと、政治の姿勢を正し、自由と民主主義を守るため、あらゆる努力を尽くす」という、たいへんけっこうな所信を表明されておりますが、政治資金規正法をはばむ暴力に、ぜひとも勇気をもって対処していただきたいと願うものであります。この件に関しまして、総理並びに自治大臣の見解をお伺いしたい。
 以上述べてまいりましたように、明治百年恩赦、政治資金規正法に対処されてまいりましたいままでの総理並びに政府の態度は、欺瞞と不誠実さに満ち満ちており、決して総理の言われるところの、「進歩する社会にふさわしい倫理観の上に強い社会連帯の意識を育てる」と、こういうことにはならないと、私は確信しております。
 ことばだけではなくて、実際かつ具体的に、政治姿勢を正していかれることを念願いたしまして、私の所信を交えました質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(佐藤榮作君) 青島君にお答えいたします前に、先ほどの野坂議長のお尋ねのうちに、私の答弁漏れがございましたので、それをひとつお許しを得て、この機会にお話をし、お答えしたいと思います。
 野坂議長も、やはり各党と同じように、最後に解散をお尋ねになりました。しかし、私は、いままでお答えしたように、解散は考えておりません。これだけはっきり申し上げておきます。(拍手)
 次に、青島君にお答えいたします。
 私は、最初、たいへん出だしがいいと、たいへんほめられた――かように実は喜んだのですが、あとはどうも私の演説をあまりよく聞いておられないようです。また、その後の答弁等についても、いろいろと御理解をいただいておらない。あとはたいへん悪くて、実は失望した次第であります。また、その意味におきまして、私は反省もいたしたのであります。もちろん、反省したことをつけ加えておきます。
 私は、申し上げるまでもなく、政治家は政治の姿勢を正し、国民の政治に対する信頼を高める、そういうことに私ども政治家の責務があると、かように私は思っております。私は、清潔な政治に徹するということをしばしば申しておりますし、また、その意味においての努力もいたしております。また、お話にありましたように、いま急激な社会構造の変化によりまして、社会生活全体にさまざまな混乱や矛盾が起きていると思います。これらの一つ一つを克服して、国民生活の安定と向上をはかっていくことが、政治の最大の仕事だと私は考えております。まあこういう点から、先ほど来のような青島君の御質問が出たのだろうと思います。したがって、そういう意味で憂いを同じくする者として、私は青島君の説に共感をおぼえるものであります、しかし、その考え方につきまして、私は幾多の実はわれわれと考え方を異にするものを持つのであります。
 たとえば、明治百年を記念する意義、そういうものは必要ないのじゃないかと、こういうお話でありますが、これはどういうところから出てくるのだろう。やはり国民こぞって明治百年を記念すること、これは適当だと、かように申しております。やはり青島君の若さからわれわれとは違うのだろうと、かようにも思うのでありまして、やはり明治の偉業をしのんで将来の発展への努力を期する趣旨のものである、これが明治百年の記念の行事であったと、かように思います。
 そういう意味から申しまして、その際に罪を犯し刑に処せられた者に対しても、それぞれその分に応じて国家社会に貢献することができるように、恩赦を行なったものであります。私は、特に選挙違反者を救済すると、こういう意味でこの制度を設けたのではありません。その点をはっきり申し上げておきます。で、このことにつきましては、私は一部の非難のあることも知っております。しかし、国民大多数が、政府のやりましたこのことを理解している、また支持している、かように私は確信をしております。この点については、遺憾ながら青島君と考え方を異にしております。
 次は、政治資金規正法の規制の問題であります。この点についてずいぶん問題のあること、これは私も百も承知しております。また、これを正さなければ、政治の姿勢を正すと言いましても、から念仏になると思います。そういう意味から私は、政治資金規正について、これはどうしても法案を成立させたい。かように考えておるのであります。皆さん方と私と違っておりますのは、皆さん方はやはり理想を追求しておる。そういう意味におきまして、必ずしも私どもは目的を達成することができないと思っております。最善の方法だとは思っておりません。私は現在、選挙制度やその他諸般の事柄を考えながら、一歩でも前進していく。そういう改善の方向で、この政治資金の問題と取り組む考えでございます。
 簡単ではありますが、以上お答えいたします。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣野田武夫君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(野田武夫君) 青島君にお答えいたします。
 ただいまの明治百年恩赦の選挙関係につきましては、総理から御答弁がきわめてごていねいにございましたから、つけ加えることはございません。
 さらに、政治資金規正法につきましても、これも御同様でございまして、すでに総理からお答えがありましたとおり、現在の選挙関係から考えて、一歩でも前進のできるいい案をひとつつくって、実現したいということで、同じことでございます。
 ただ一つ、特に私へ御指名がありました点についてお答えしますが、青島君は、どうも事実を少しきわめないで御質問があったと思います。私は、明治百年の恩赦のときは、自治省にもおりませんし、また党の選挙関係にもおりません。だから、非常に熱心に私が恩赦を支持したのじゃないかということでございましたが、その当時、私はこの恩赦については関係がありませんでした。
 それから、もう一つ、先ほど恩赦の目的が選挙違反に対してであると、これは違っております。ほかにも――決して選挙違反だけではございません。これは法務大臣からお話があると思いますが、その際、特に私が青島君のことばに気をつかいましたのは、自民党を中心として考えているというお話がございましたが、恩赦の結果、おそらく私の記憶は間違っていないと思いますが、第一番に、恩赦の適用で復権の実行された方は、社会党の市会議員に実行されておる。これはお調べになるとわかります、そういう記録がございますから。特に、これだけお答えしておきます。(拍手)
   〔国務大臣西郷吉之助君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(西郷吉之助君) 青島君の御質問にお答えいたしますが、先ほど私に対しましても、恩赦はどうかという御質問がありましたが、いますでに佐藤総理から御答弁がありましたので、これを省略いたします。私も全く同感に考えております。
 なお、先ほど千九百万人という数字をお述べになりましたが、これは誤解なきようによく御承知願いたいと思いますが、これは復権令によりまする復権該当者の数が約千九百万人と推定されるわけでございまして、この中の大部分ば交通違反の関係者でございます。ごくその中の一部がその他の者でございますが、この選挙のものが入っているとすれば、これは文書違反等、選挙違反の中でも最も軽微なものが少しは入っているかと思いますが、大部分は交通違反に関するものであります。誤解なきように御承知願いたいと思います。
 なお、先ほど中央更生保護審査会についてのおことばがありましたから、お答えしておきますが、中央更生保護審査会につきましては、明治百年記念恩赦の基準に該当する者がみずから出願いたしまして、そうして現在――去る一月二十九日におきまして受理件数は六百件でございます。その中で、すでに処理したものが二百五十二件、こういうことでございます。
 なお、さっき選挙についておっしゃいましたが、これも申し上げておきたいと思いますが、公職選挙法での事件がこの中でどうか。これは復権と違いまして、中央更生保護審査会で審査する部分――特赦の部分でございます。この事件――選挙に関するものは三百三十八件でございまして、すでにこれを処理したものが百八十六件、こういうことになっております。
 また、党派別ということをおっしゃいましたが、この特別恩赦の手続に際しましては、出願者は、自分の党派はどこであるとかということは、何も要件になっておりませんから、こういうことは一々申し出る必要もないし、また、中央更生保護審査会でもそういう点を調べる必要もございませんので、そういう点は明白でございません。
 以上、御答弁申し上げます。(拍手)
#41
○副議長(安井謙君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#42
○副議長(安井謙君) 日程第二、参議院予備金支出の件を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長徳永正利君。
   〔徳永正利君登壇、拍手〕
#43
○徳永正利君 今回御報告いたします予備金の支出額は、総額三百七十三万四百八十円でありまして、これは議院運営委員会の承認を経て支出した議員の御遺族に対する弔慰金であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#44
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本件を問題に供します。本件は、委員長報告のとおり承諾することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、本件は承諾することに決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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