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#1
第061回国会 本会議 第17号
昭和四十四年四月十一日(金曜日)
   午前十時四分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第十八号
  昭和四十四年四月十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(中小企業基
  本法に基づく昭和四十三年度年次報告及び昭
  和四十四年度中小企業施策について)
 第二 失業保険法及び労働者災害補償保険法の
  一部を改正する法律案(趣旨説明)
 第三 通商産業省設置法の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君)諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の報告に関する件(中小企業基本法に基づく昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度中小企業施策について)。
 通商産業大臣から発言を求められております。発言を許します。大平通商産業大臣。
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(大平正芳君) 中小企業基本法第八条に基づきまして、先般政府が国会に提出いたしました「昭和四十三年度中小企業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十四年度において講じようとする中小企業施策」の概要を御説明申し上げます。
 四十二年から四十三年にかけまして、わが国経済は景気調整下にもかかわりませず、全体として拡大基調をたどり、中小企業の事業活動もこれまでの引き締め期に比べて順調な伸びを示しました。資金繰りもさしたる逼迫感のないままに推移し、設備投資も引き続き増勢の傾向をたどっております。しかし、この間、労働力不足はますます進行し、中小企業の賃金は著しい上昇を示しており、他方、発展途上国の追い上げ、資本自由化の進展など、国際環境もきびしさを増しております。このように中小企業をめぐる経済環境の変化が目まぐるしいだけに、これに適応し切れず、倒産に至る企業も、これまでになく多数にのぼっていることが注目されます。
 中小企業が、内外のきびしい環境変化を乗り切って、今後ともわが国経済の中で重要な役割りを果たしてまいるためには、生産性や技術水準の低さ、企業体質の弱さなど、依然として未解決のまま残されている構造的問題を克服する努力が必要であります。
 ひるがえって、欧米先進国を見ますと、高賃金、高所得の経済の中で、中小企業はその特性をよく生かしつつ、経済の各分野でかなりの比重をもって存立を続けております。この事実は中小企業独自の存立と発展の分野があることを示すものであり、わが国経済の発展に伴いまして中小企業の活動分野は今後ともますます広がっていくものと考えられます。しかしながら、わが国の中小企業がその持てる成長の可能性を現実のものといたしますためには、高度の技術と高い生産性に裏づけられたいわゆる先進国型の中小企業へと脱皮してまいることがその前提となっております。
 そのためには、四百万の中小企業がその適応能力を充分に発揮して、当面している困難な問題点を一つずつ着実に解決し、一そうの近代化、体質の強化をはかっていくことが何よりも重要であります。それは、とりもなおさず国民経済全体の効率化につながり、わが国経済の今後の成長発展のための原動力となるものであります。
 政府といたしましても、このような観点から中小企業者の自主的な近代化努力を助長し、事業環境の整備をはかることが必要であると考え、中小企業施策を最重点施策の一つとして取り上げております。
 四十三年度におきましては、共同化、協業化を中心とした中小企業の構造の高度化を推進するとともに、設備、技術、経営、労働等各般にわたる中小企業の体質強化及び金融、税制面その他中小企業をめぐる事業環境の整備に重点を置いて施策を講じました。その際、経営基盤の弱い小規模企業の体質改善には特にきめこまかい配慮を払っております。
 さらに、四十四年度におきましては、中小企業の一そうの近代化と体質の改善をはかり、内外のきびしい環境変化を乗り越えていくため、次のような施策を推進していくことといたしております。
 まず第一に、中小企業振興事業団の融資事業を大幅に拡充し、中小企業の共同化、集団化を進めることといたしております。その際、特に中小企業者からの要望の多い工業団地、商業団地、共同施設等について強力な助成をはかる所存であります。
 第二に、国際競争力を強化するため、緊急に対策を講ずる必要のある業種について、業界の自主性と責任を基調とする構造改善を進めることとし、これについて税制面、金融面等から助成を行なうことといたしております。
 第三に、中小企業者の近代化投資等に必要な資金の円滑な供給を確保するため、政府関係中小企業金融三機関に対し財政資金を大幅に投入し、貸し付け規模の拡大をはかる一方、信用補完制度を充実して民間資金による中小企業向け融資の増加につとめる所存であります。
 第四に、小規模企業対策につきましては、経営改善普及事業を充実するとともに、設備の近代化と金融の円滑化にも特段の配慮を払っております。また、地方税における青色申告者の家族専従者について完全給与制を実施する等により、税負担の軽減をはかることといたしております。
 第五に、中小企業の経営管理の合理化と技術水準の向上をはかるため、診断指導事業を充実するとともに、中小企業者の技術開発に対する助成、公設試験研究機関による技術開発、技術指導等を中心とする技術対策の拡充強化につとめます。また、中小企業における労働力の確保と、その資質の向上、従業員の福祉の増進等のための労働対策を推進することとしております。
 第六に、流通部門につきましては、中小企業振興事業団による助成を強化するとともに、中小企業金融公庫及び国民金融公庫の特別貸し付け制度を拡充する等の措置を講じ、その近代化を進めることとしております。
 また、下請企業につきましては、下請代金支払遅延等防止法の運用強化、下請企業振興協会の事業の拡充等により、下請取引の適正化と受注の安定につとめる所存であります。
 以上が、「昭和四十三年度中小企業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十四年度において講じようとする中小企業施策」の概要でございます。(拍手)
#5
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小柳勇君。
   〔小柳勇君登壇、拍手〕
#6
○小柳勇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま報告されました昭和四十三年度の中小企業白書について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 この白書には、現在の中小企業の実態を端的に表現して、「労働力不足と本格的な国際化の時代を迎えた今日、中小企業を取り巻く諸情勢はかつてないほどきびしい」とうたっておるのであります。われわれが日夜はだ身に感じております日本の中小企業の現実は、まさにこのとおりであろうと思います。
 いま私は、ここに三つの具体的な例をあげたいと思います。
 その第一の例はこうであります。
 神奈川県の平塚市に中小企業の鉄工業があります。従業員七十名を使用して資本金一千二百万円、年間約四億円の生産をあげます。そこの社長は、年に数回、九州、北海道、東北などを飛び回って人を求めて歩くのであります。先日も、熊本に行くと言うので、何しに行くのだと聞きますと、来年中学校を出る人を求めて熊本の職安に行くのだ、そうして、ことし中学校の校長をやめる人があるから、その人にお願いに行くのだということであります。労働力不足のために、社長みずから製造、販売、管理の本職をなげうって、働く中学校卒業の人を求めて歩いているのが現在の日本の中小企業の、あるいは小規模企業の、あるいは商店の親方の姿であろうと思うのであります。
 白書では、中学卒を求める人の数は百二十三万人、職を求める中学校卒業者はわずかに二十八万人でありまして、二二%しか充足しておらないということを書いておるのであります。その上、大企業にその大部分が就職して、中小企業では、この社長のように、みずから努力してもなかなか人を求めることができない。また、せっかく入りましても大企業に引き抜かれてしまうのであります。また、白書には、「先進国型の中小企業に発展するためには、技術を革新し、経営を合理化して高級品を生産しなければならない」と指摘しております。そのとおりであります。大学卒の就職状況を見ますと、大企業では、一社平均毎年四人就職いたしております。ところが中小企業では、二百社でわずか一人しか就職できないのであります。発展途上国の追い上げが激しく、かつアメリカは保護貿易に狂奔しております。これに打ち勝ち、欧米諸国の企業進出に対する対抗策を立てるといいますけれども、一体このようなことで何がやれるのでございましょうか。
 中高年齢層の再教育、適材適所の人材配置の問題も古い問題でありますが、今日一向に解決されておりません。その一つの例は職業訓練であります。せっかくの職業訓練も中途はんぱでございまして、今日の技術革新、企業合理化の要請にはこたえ得ないのが実情であります。もともと個人の失業対策、生活確保を主眼として出発した職業訓練でありますから、労働力適正配置のための再教育でないことが今日最も欠陥とするところでありましょう。職業訓練を民間に委託する方法はないか。その場合の助成金は大幅に増額する必要があるが、対策はどうか。中高年齢者を中小企業に雇用した場合、一定期間の企業への助成及び本人の最低生活の保障はできないか。労働力確保のために、中小企業を魅力あるものにしなければならないが、低賃金であると同時に、福祉対策も各省ばらばらでありまして、わずかの予算でほんの申しわけに施策をやっておる、このようなことを抜本的に改革しなければ中小企業に人は得られないと考えるところであります。労働力不足のこの実態、緊迫したこの窮状を打開するのに一体いかなる方策を持っておられるか、通産大臣並びに労働大臣にお伺いしたいのであります。
 また、農村労働力の移動など、総合的に勘案して、緊急特別措置として、大企業、中小企業など企業数に応じて計画配置ができないものであろうか。もちろん憲法上の問題もありますけれども、こういうことを検討したことがあるかどうか、経済企画庁長官にお伺いいたしたいのであります。
 具体的な第二の例はこうであります。
 去る三月の二十五日に、五十四歳になる鋼材加工業の社長が、あの高い若戸大橋の歩道から洞海湾に身を投げて自殺されたのであります。この会社は昭和十八年の創立で、従業員が七十人おりまして、シャーリング会社でありますが、十二億円の負債をかかえて倒産した直後のことであります。八幡・富士の合併の犠牲者であるということで、地元ではたいへん騒ぎました。しかし、それよりもっと私は根本的に考えなければならぬのは、日本の中小企業の持つあわれな宿命が彼を自殺に追い込んだものと受けとめねばならぬと思うのであります。白書はこう語っておるのであります。「企業倒産はことしもまた三〇%の増加を示し、一万七百件に達した。倒産の根本的原因は、中小企業の体質や経営能力の弱さにあるが、さらに景気循環や構造変化などの企業外の要因が加わって、これが相互にからみ合って作用している。しかし長期的には、やはり労働力不足や同業者の乱立による競争の激化などが強く働いている。」、さらに語を続けて、「欧米先進国の中小企業は、従属的、一社専属的な下請は少なく、独自の技術を持って独立専門化しているものが多い」、そう語っておるのであります。日本の中小企業は、下請制度のもとに、その地域の大企業の傘下に編入されなければ生きていけないのであります。下請はまた下請を率い、その下請はまた下請を従えて、機械よりも低賃金の労働力によって、しかも長時間労働によって元請企業の要請にこたえ、その中でわずかの利潤を得て生きているのであります。たとえば八幡製鉄の場合は三百五十四社の下請があります。富士製鉄の場合は二百十九社、蛇の目ミシンの場合は百三十社が下請であります。いわば封建時代の領主と領民との関係にも似ておるのであります。大企業の合併、系列化が進み、系列からはずされ、下請の領民的地位からはずされるときに、その中小企業は死ぬ以外に道はないのであります。たまたま社長が一カ月も病気すれば、会社を経営できるスタッフはいないのであります。元請会社からの代金支払いは長期の手形であるにかかわらず、賃金、材料費は現金で支払わなければならない。社長は資金繰りに疲労こんぱいいたしておるのであります。このような企業倒産が数多くあることを、この社長の自殺は物語っておると思うのであります。これは現在の日本の中小企業の宿命であります。特に最近、金融機関も企業系列と提携をして、金融、産業の一大統合、系列化を編成しつつあります。中小企業にはなかなか大手銀行は金を貸さないのであります。ただいま通産大臣が政府関係機関の金融を話されましたけれども、政府関係三金融機関の融資申し込みに対する充足率は、中小企業全体にとってみれば、わずかに九・一%であります。この際この水準を大きく引き上げなければなりません。
 総理大臣並びに通産大臣に質問したいのは、このような封建的な、従属的な日本の中小企業を先進国並みの中小企業に発展せしめるためには、基本的には一体どうすればいいのか、どうしようと考えておられるのか。
 今後、わが国の経済発展に伴って、中小企業の分野は新たに開ける部面もありましょうが、一方、衰退を余儀なくされる業種も予想され、中小企業の企業転換は引き続き進行するものと考えます。また、炭鉱地帯では、閉山の激しいその炭鉱地域の中小企業、商店は企業転換に夢を託しておるものも多数あるのであります。中小企業の場合、経営能力や資金調達力が弱いために、転換に対しての障害を克服できないのであります。白書にも多くのページをさいて企業転換を分析しておりますが、その対策は明らかでないのであります。企業転換に対してはどんな対策を持っておられるか、たとえば、中小企業整備事業団などの設置を考えることはできないものであろうか、通産大臣にお伺いをいたします。
 また、先進国型中小企業に脱皮し、対等交渉を獲得するためには、中小企業側でも大いに自覚し、努力しなければなりませんが、政府も思い切った施策を講ずる必要があろうと考えるのであります。現在、下請代金遅延等防止法と下請事業協会がありますが、両者ともほとんどその実をあげておりません。この際、政府は、下請業者の組織の強化、特に労働組合に見られるような下請関係法の整備を行ない、一面において親企業に対する交渉力を強め、他面、過当競争によりお互いの足を引っぱり合うようなおろかさからのがれるような対策を考えなければならぬが、通産大臣の所見をお伺いいたします。
 第三の例はこういうことであります。
 北九州にバナナ荷受加工販売協同組合というのがあります。これは近郊のくだものを販売する業者が十五社集まった協同組合でありますが、商工中金から四千三百万円の融資を受けて、中国バナナを加工販売する協同組合を結成いたしました。貯蔵庫があり、冷凍機二十機を備え、トラック五台、船舶一隻を持った堂々たる加工協同組合でありますが、日中貿易の友好商社であります。ところが、四月十五日の広州交易会を目前にして、今年度分の友好貿易が一体どうなるかという不安にかられている。実情を見てくれということでありますから、私は見てまいりました。ところが、このような友好商社、友好貿易が、西日本の国際貿易促進会だけでも二百一社が組織されているのであります。全国で見ますと、約三百社でありますが、年間およそ百億以上の交易をいたしておるところであります。覚え書き貿易が古井団長などの御苦心によりまして妥結を見ました。本日の新聞によりましても、六千七百万ドルの覚え書き貿易ができるようでありまするが、友好貿易はこの約四倍であります。友好商社の貿易は約四倍でありますが、一体このような友好商社の貿易に対して政府はどう考えておるのか。
 次の点を総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。
 まず第一は、今回の覚え書き貿易が古井団長などの努力によって実りましたが、日本の政府としてはこれをどう受けとめておるか。
 第二は、友好商社約三百社への融資その他今後の援助――積極的に援助しなければならぬと考えるが、通産大臣はどうか。
 また、中国肉の輸入がストップされました。この中国肉一トンの輸入で肥料二十トン、鉄鋼四トンないし五トンの取引ができると商社では言っておるのであるが、中国肉の輸入はできないのかどうか。これは、農林大臣がおられませんので、総理大臣からお聞きいたします。
 また、上海の日工展が中止され、平壌日工展も中止されようといたしております。その理由は、ココムの制限によって出品品目に規制を受け、かつ、出入国管理令によって、商社人の往来が十分にできないことが理由のようであります。通産省は、輸出貿易管理令第一条の別表と戦略物資輸出承認等事務処理要領によって事務的に処理したと言っておりまするが、最近、ココムの制限が東欧諸国に比べて中国に対して非常にきびしくなっておるというが、日中貿易の拡大が特に日本の経済、西日本の経済にとって重大なときに、なぜこのような時代逆行の措置をとるのか。現在、共産圏貿易は輸出が五%、輸入が七・四%しかない。なぜ、もっと、西欧諸国のように、積極的にこの貿易を進めないのか、通産大臣にお伺いしたいのであります。
 なお、戦略物資輸出承認等事務処理要領はどんな法律に基づいた通達か。憲法で戦争を放棄した日本の、通産省が戦略物資の輸出承認ができるのかどうか、判断の基準は何か、お伺いをしたいのであります。
 また、通産省が、補助金交付の対象となる展覧会は、今後、ジェトロの主催のものに限るとの方針をきめたようであるが、なぜこのような差別措置をするのか、通産大臣にお尋ねをいたします。
 また最後に、出入国管理令の締めつけによって、せっかく発展しようとしておる友好商社の行くえをはばんでおるのでありますが、どうしてこのようなことをやられるのか、法務大臣の見解をお聞きしたいのであります。
 以上で私は質問を終わるのでありまするが、中小企業が、戦後混乱の中から日本の経済の発展のために尽くした功績は、まことに多としなければなりません。総事業所数四百二十三万事業所の中で、中小企業はその九九・五%を占めておるのであります。従業員の数は約八〇%を占めておる。中小企業の発展のために技術革新が必要でありましょう。近代的経営管理方式の導入が必要でありましょう。何にもまして優秀な人材がほしいのであります。中小企業が栄え、日本経済発展のために、総理並びに関係大臣は具体的にどのような方策を持っておられるのか、質問いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(佐藤榮作君) 小柳君にお答えいたします。
 たいへん具体的な例をあげて、また適切なお尋ねであったと思います。私の答弁は、当然抽象的にならざるを得ないのですが、その点をあらかじめ御了承いただきたい。
 まず、中小企業につきまして、現状の封建的な制度のもとで、弱肉強食、こういう世界に放置しているということの御批判であったと思います。中小企業団体法におきましては、中小企業が大企業の進出によって、著しい悪影響を受ける場合を想定して対策を講じており、また、基本的には、中小企業の近代化を強力に推進することによりまして対策を講じているものであります。これらの点はすでに御承知のことだと思います。私どもは、いわゆる封建的な制度のままで中小企業を見過ごしておる、こういうものではございません。
 なお、その他の点については、それぞれの担当大臣からお答えさせることにいたします。
 また、この点について別にお尋ねはございませんでしたが、社会党自身の中小企業対策の案が出ておりますが、これについてもなかなか問題はあるのではないか。私が申し上げるまでもなく、成長発展を遂げつつあるわが国の経済、この実態の中で中小企業を据え置くような態度では、これは対策が十分だとはどうしても言えないのであって、こういう意味から、やはり経済はどんどん発展しておる、それに対応して、おくれないように、わが国の中小企業を救い出すこと、それがわれわれのつとめだと、かように実は思っておるわけであります。
 次に、中共貿易についてお尋ねがございました。中共貿易については、私、政府の考え方をしばしば申し上げておりますので、いまさら多くを申し上げるものもないと思います。しかし、どうも、基本的な問題として、わが国が中国を敵視しておる、そういう考え方から貿易が進展しないんだ、こういうような見方をしておられるのではないかと思う。この点についてもすでに説明をいたしておりますから、重ねて申し上げません。われわれは、いわゆる敵視政策をとっておるものではない。お互いの立場を尊重しながら、その上で経済は経済としての進展をはかっていくこと、これがわれわれの努力するただいまの姿であります。
 具体的な問題として、農林大臣からお答えをすべき肉の輸入についてのお話がございました。私がこれまた申し上げるまでもないことでありますが、すでに御承知のように、口蹄疫の流行地域とは申しませんけれども、この条約上のきびしいものがはたして果たされておるかどうか、そこらの疑問がございますので、輸入はする、しかし、船上加工するということで話をしたのでありますが、船上加工ということについては、中共側ではこれは反対だということでこれが実現しなかった。まことに私は残念に思います。また、わずかな数量ではありますが、日本がモチ米を輸入しようと、一般の米はただいま余っておる状態だが、モチ米の輸入ならできるからということで、これまた交渉したのでありますが、これにも賛成がされなかった。したがいまして、今回古井君の手がけた交渉では、金額はきわめてわずかで、七千万ドル程度でございますが、私は、さらに両国が貿易拡大によって必ず利益を受けると、かように確信をしておりますので、あらゆる障害を克服して拡大の方向へさらに努力すべきではないかと、かように思う次第であります。私ども、どこまでも善隣友好の関係に立って、その政治形態、社会形態、組織等は異なっておりましても、お互いに通商貿易は拡大すべきではないかと、かように思っております。在来の方針をこの際私は変更する考えは持っておりません。
 なお、その他の問題については、それぞれの所管大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質疑は、労働力の不足に対する対応策でございます。申すまでもなく、仰せのとおり、異常な労働力の不足下にあります状況におきまして、積極的に経営、設備の近代化によりまして省力経営の実をあげなければならぬことは当然のことと思うのでございまして、政府といたしましては、財政投融資の強化によりましてこの種の設備金融の疎通に努力いたしますとともに、業態によりましては強制的に構造の改善、さらには小規模企業に対しましては機械の貸与等によりまして、そういう政策の具体化につとめておるわけでございます。
 それから労働力の不足対応策といたしまして第二は、どうしても労働者自体の資質の向上、生産性の向上をはからなければなりません。その再教育につきまして十分の配慮をしてまいらなければならないと思います。また、仰せのように、魅力ある職場にいたしまして、新しい新鮮な労働力を吸引する場にしなければなりません。その意味におきまして、住宅その他福祉施設の整備につきましては金融等の措置について助成を怠らないようにいたしたいと思います。
 第二の転換問題でございます。仰せのように、中小企業対策は、一面から見ますと、確かに転換策をいかに賢明に実行するかということにかかっておると思うのでございます。私どもといたしましては、退いて既存の分野を保守するというよりは、進んで積極的にみずからの分野を開拓していくという方向に指導してまいりたいと思います。
 仰せのように、政府機関それ自体の金融力は九%内外でございますけれども、市中金融の中小企業向け金融は四〇%をこえておりますことも御案内のとおりでございます。しかしながら、信用力がひよわでございますので、その信用を補完強化することによって市中金融を受ける資格を固めなければなりません。その意味におきまして、信用保険制度の強化ということに不断の配慮を行なっておる次第でございます。
 整備事業団をつくってはどうかという御提案でございますが、目下そういう考えが政策の日程にのぼっておるわけじゃございませんけれども、御提案として検討してみたいと思います。
 下請企業の問題でございますが、これはもとより下請企業自体の体質の改善をはかりますと同時に、御指摘のように、親企業に対する交渉力を強化していくということが政策の筋でなければならぬと思います。したがいまして、下請系列の近代化、体質改善につきまして、各種の施策を講じておりますことは御案内のとおりでございますが、とりわけ親企業に対する立ち入り検査を公正取引委員会と分担いたしまして、強化いたしまして、下請条件の改善に鋭意つとめておりまして、相当の実績をあげておるわけでございます。また、下請契約の標準化、あるいは手形期限の標準化等を指導してまいりまして、徐々に改善の気配が見えておるわけでございまして、一段とこの面の政策は推進してまいる所存でございます。
 日中貿易についてのお尋ねでございますが、覚え書き交渉が関係者の御努力によりまして、暫定的でございますが、継続の運びになりましたこと、私どもその人たちの労苦に対しまして、十分敬意を表し、その成果を評価いたしておるものでございます。ただ、たびたび申し上げますように、覚え書き貿易方式それ自体は、品目が限定されておりますし、その品目をめぐりましての双方の需給事情の変化に伴いまして、若干の縮小を見ざるを得なかったことを残念と思うのでございますけれども、御指摘の友好商社貿易によります貿易が、過去この日中貿易再開後、十倍もの躍進を見ておりますことは、たいへんけっこうだと考えております。この友好商社貿易は、品目の限定はございませんし、市場の開拓、商品の開拓等に、関係者に鋭意努力していただきまして、拡大の方向をとってまいりましたし、また、今後そういう方向をとられてまいりますことを、われわれは大いに歓迎をいたしております。
 それから、上海日工展の展示中止問題でございますが、これは日工展の川瀬理事長がお帰りになりましてから、この中止の背景というようなものについて十分事情をお聞きしないとわからないのでございます。政府といたしましては、商品の展示によりまして、貿易機会をグローバルに拡大してまいるということにつきましては、いろいろの手段をもって援助してまいるという基本の姿勢を変えるつもりはございません。東西貿易につきましては、いま全体の貿易に占める比重は、たいへんウエートは低いわけでございますけれども、日ソ貿易は着実に拡大しておりまするし、日中貿易それ自体も、年々拡大を見て、世界第一の貿易相手国になっておりますことは御案内のとおりでございまして、双方の需給事情の変化に対応いたしまして、貿易が、そして経済が相互に高度化するに従いましてますます拡大の方向をとるでございましょうし、それは私どもとして歓迎すべきことであると考えております。
 ココムの規制の問題でございますが、ココム調整委員会の申し合わせというものが、たびたび申し上げておりますように、直ちに日本の国民の権利義務を規制するものとは考えておりません。ただ、国際信義上、ココム委員会に参加いたしておりまするメンバーといたしまして、その信義は重んずべきであると考えております。したがって、外国為替及び外国貿易管理法に基づく輸出貿易管理令に基づきまして、通産省におきましても、ここで禁止されている品目につきましては、通産大臣の承認を要するということでチェックする仕組みをとっておるわけでございます。これは、この法律に基づいて適法に処置いたしておるものと、私どもは確信いたしておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(原健三郎君) 小柳さんにお答え申し上げます。
 最初の御質問は、若年労働力を中心とする労働力の不足にいかに対応するかということでございますが、若年労働者だとか、あるいは技能労働者が次第に不足していくことが予想されておるのが現状でございまして、このような事態に対処して、若年者自身に対しましても、いたずらにホワイトカラーにあこがれることのないように職業指導をいたしていきたい。また、輸出産業等の国民経済的に見て重要な産業分野については、重点的な職業指導をいたしてまいりたいと思っております。
 さらに企業自体に対しましては、学歴偏重を是正するように、あるいは労働力給源の転換をやる、あるいは労働条件の改善向上等を促し、そして労働者が進んで就業できるような、小柳さんのお説のごとく、魅力のある職場づくりを推進してまいりたいと、こういうふうに考えております。
 それから第二は、現在の職業訓練制度は、労働力不足という観点から不十分であるというお説でございますが、私どもも、今日のように労働力が不足し、技術革新の進展に伴う技能労働の質的変化に対応させるためには、どうしてもこの職業訓練が不十分であることは同感でございます。それで、四十二年六月に、今後の職業訓練制度のあり方について中央職業訓練審議会に諮問をいたしました。そして一年有余の審議の結果、去年の七月に「腕と頭」を兼ね備えた新しいタイプの職業人を養成確保するため、労働者の職業生活の全面的対策として職業訓練を行なうことなどを内容とする答申をいただきました。その答申に従いまして、労働省といたしましては、このほど現行職業訓練法の全面的改正をする法律案を取りまとめて国会に提出をいたしているところでございます。かなり御期待に沿えるものと存じておりますので、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
 次に、職業訓練が大企業偏重になり、中小企業の技能者の不足に対応できないのではないかということでございますが、現行の職業訓練法においても、中小企業の技能者不足の解消に重点を置いておりますが、今後は中小企業の事業主が共同して行なういわゆる職業訓練について、国及び都道府県の運営費補助金を一挙に昭和四十四年度倍額にいたしておる次第でございます。これによって認定を受けた事業内職業訓練の訓練生は、大企業の単独訓練についた人が約二万六千人あるのに対して、中小企業の共同職業訓練のいわゆる訓練によってその免状を受けた者は約五万八千人となっておりますので、中小企業のほうがはるかに職業訓練を受けた人が多くなっております。
 それからまた、都道府県や雇用促進事業団が設置しております一般職業訓練所がございますが、そういう訓練所や総合職業訓練所の修了者がたくさんございますが、そのおよそ七割が中小企業の事業場へ就職いたしておる実情でございます。今後とも職業訓練については、中小企業の技能労働者対策に重点を置いて一そう努力し、御期待に沿いたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(菅野和太郎君) 労働力が大企業に集中しておるが、その労働力の適正配置について何か考えておるかという御質問であったと思うのでありますが、この問題につきましては、通産大臣、労働大臣から詳細な御答弁がありましたので、私はこれ以上つけ加える必要はないと存じますが、ただ一つ申し上げたいことは、この労働力が大企業あるいは都市に集中しておるということは、これは最近における科学技術の発展の結果としての経済の発展によって起こってきた問題であります。しかし、そのように工業が大型化してきたということについては、御存じのとおり、公害というものが発生してまいりましたので、そこでこの大型の工業化という問題に対していま反省をしているときでございます。したがいまして、今後は大型工業化をどうするかという問題で、いま学者の間で唱えているポスト・インダストリアル・ソサエティーという問題が起こってきておるのでございまして、従来のような工業集中化、都市集中化については、反省しなければならぬというような問題が起こっておりますから、したがいまして、私はこういう社会の変遷に応じて工業が都市に集中するという傾向が、おのずから私は漸次薄らいでくるのではないか。むしろ政府としては、産業を地方化するという施策をとるべきではないか。そうして公害の問題などをそれで解消すべきじゃないか、というふうに考えておりますので、したがいまして、このいまお尋ねの問題につきましては、そういうように工業の地方化というような問題を積極的に考えて、労力が大企業にばっかり集中する、あるいは都市ばっかりに集中するという傾向を、何とかしてこれを緩和したいというようなつもりで、今後政策をとりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣西郷吉之助君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(西郷吉之助君) お答え申し上げますが、いわゆる友好商社の中共への渡航につきましては、御承知のとおり、国の利益なり、公安を害さない限り、従来これを認めてきておりますし、今後ともこの方針に変わりはないと考えております。
 また、中共からのわが国への入国でございますが、これは経済なり、文化、スポーツの交流等につきまして、そのつど慎重に検討をいたしまして、これまた国の利益に合致いたす限りにおいては、これを認めてきておりますし、この方針は今後とも堅持したいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(重宗雄三君) 内田善利君。
   〔内田善利君登壇、拍手〕
#13
○内田善利君 私は、公明党を代表いたしまして、昭和四十三年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十四年度中小企業施策について、総理並びに関係大臣にお伺いいたします。
 わが国の中小企業を取り巻く条件は、近年一段ときびしさを増大してきているのが現状であります。すなわち、国内においては、労働力不足に加えて大企業の中小企業分野への進出が激しくなっており、同時に、消費内容の急速な変化及び技術革新の進歩には著しいものがあります。
 こうした国内条件の変化とあわせて注目されるのが国際環境の変化であります。わが国はここ数年来、軽工業分野を中心に発展途上国のきびしい追い上げを受けております。加えて一九七〇年実施が予定されている特恵供与は、さらに発展途上国の追い上げをいよいよ急なものにすると思うのであります。わが国の残存輸入制限撤廃を望む声は、国際的にますます高まりつつあります。また、三月一日からの第二次資本自由化により、従来ワク外に置かれてきた中小企業分野をも巻き込んだのであります。このような内外を通じての中小企業をめぐる情勢を、どう政府は分析しているのか、基本的な考えを、まず総理にお伺いいたします。
 最近は、特に中小企業の経営者や従業者の中から、自分の事業、自分たちの職場の将来について深刻に悩む声が多く出ておりますが、今日、中小企業の置かれている条件を考えてみるとき、このような疑念や悩みが出るのは、むしろ当然と言えるのではないでしょうか。このような事態にまで追い込んだものは、それは口先では中小企業保護とか近代化の促進をただ唱えるばかりで、何の実質もない政府の中小企業対策不在の政治姿勢にほかならないためだと思うのであります。このような情勢を背景にして重点的に質問いたしたいと思います。
 まず第一に、小規模企業対策についてであります。
 わが国の小規模企業は、中小企業の大部分を占めており、また、大企業をささえ、日本経済の中枢的役割りを果たしているのであります。小規模企業の製造業については、わが国において事業所数三百六十五万、また、従業員数千三百五十五万人を占めており、中小企業の八八%にも当たります。これを諸外国と比較してみますと、イギリスは三七%、西ドイツは四四%、アメリカは五二%になっており、きわめてわが国は高率であることがわかります。このように、わが国の中小企業は、小規模企業を底辺として構成されているのであります。こうした小規模企業は、資金も零細であり、また、絶えず資金面、営業面にわたり不安があり、低利益と低賃金にあえぎながら、無理をしながら産業発展に、輸出にと努力を重ねているのであります。このような産業構造の下積みとなっている小規模企業に対しては、大衆福祉の上から特に積極的な政策が必要であると思うのであります。小規模企業は、わが国の産業構造から見れば、潜在失業の一つの形態であるということもいえます。したがって、小規模企業問題を構造的に解決するためには、経済全般について、その発展方向を考えていかなければなりません。その上で、他の産業部門に将来吸収されない小規模企業については、社会保障的な考え方に立って保護を与えていくことが必要だと思いますが、通産大臣の見解を伺いたい。
 また、小規模企業については、特に金融、税制による積極的な対策が必要であります。特に、専門分野を担当しているものについては、その独立と発展のために積極的に援助を行ない、総じて、社会保障的見地から小規模企業対策を考え、もって生活の安定と向上に努力していくことが最も望ましいと思いますが、大蔵大臣の見解を伺いたい。
 小規模企業には、いわゆる家内工業が含まれております。これは、わが国に見られる特異なもので、元来婦女子労働の分野として、低賃金と過重労働、それに加えて疾病や危険物使用による身体の危険など、多くの社会問題を生じております。大衆福祉の立場からすれば、こうした家内工業、内職労働こそ最優先に保護されなければなりません。そこで、まず一般労働者の賃金水準を高めるために、最低賃金制を確立し、さらに社会保障制度を充実するとともに、他方においては、家内工業法、家内労働法を確立することが急務と考えるのでありますが、労働大臣の見解を伺いたい。
 また、商業、とりわけ小売り業者は、そのほとんど大部分が小規模企業であります。このために小売り店の協同組合化を推進し、商品の共同仕入れ化などの共同事業を拡大したり、専門化あるいはスーパー化の方式をとるなどの助成を行ない、その近代化、経営合理化を進めることが大切であります。そうして、一人の犠牲者もなく、すべての企業が相互扶助の精神に立って繁栄していく福祉社会の産業体制を確立すべきであると思うが、総理の所信を伺いたい。
 第二に、先進国型経済への道と中小企業問題についてであります。
 昨年の中小企業白書は、労働力不足や発展途上国の追い上げなど、環境の変化について警鐘を打ちならしたものといわれております。ことしはさらに一歩進めて、先進国型中小企業への脱皮という努力の目標と、その可能性を明らかにしたものであるといわれております。しかし、技術革新の早いテンポ、寡占化などを考えると、現在の欧米先進国の姿が、何年かあと、その段階に到達したわが国に当てはめられるかは疑わしいのであります。同じ中小企業といっても、わが国は米国、西ドイツなどに比べて、生産性や企業体質の点で格段と劣っております。白書によれば、たとえば、生産性について見ますと、その国の大企業の生産性に対して、米国の中小企業は七七、西ドイツは七四であるが、わが国の中小企業はわずかに五二の生産性であります。自己資本比率や資金調達力の点でも、わが国の中小企業は、欧米に比べて大幅に劣っているのであります。また、大企業との関係を見ましても、欧米は独自の製品、独自の技術を持って独立、専門化しているのに比べまして、わが国では、多くの中小企業が従属、下請的な関係にあるのが現状であります。要するに、欧米の場合は、高賃金、消費需要の高度化といった条件変化に適応できる能力を身につけておりますが、わが国においては、これらの変化に対応する姿勢がまだ整っていないのであります。白書が取り上げた中小企業の国際比較は、わが国の中小企業にビジョンを与えているとともに、適応体制の整備という面で問題を残しているわけでありますが、今後の具体策について、総理並びに関係大臣に伺いたい。
 他方、白書は、重大な誤りをおかしている点があります。それは、製造業中心の欧米型中小企業の統計値にあまりにも依存度が高過ぎることであります。商業サービス部門の中小企業には、全く適応性に欠けており、実態的にすこぶる浅薄なままに作成されていることであります。政府の発表する白書は、昨年は、国際化白書、ことしは先進国化白書などという国民に対してりっぱなイメージアップのみにとらわれ過ぎる反面、こうした実質面において欠陥を生じているのであります。このような白書について、総理及び通産大臣はいかに考えるか伺いたい。
 第三は、転換業の問題についてであります。
 ことしの白書は、転換業について積極的に取り上げ、これにメスを入れているのが特徴の一つでありますが、実態調査の結果、七〇%までが転換に成功しているとの結果が発表されているが、ややよ過ぎる感じを受けるわけですが、統計値に誤りはないか、明らかにしていただきたいのであります。
 中小企業が既存の分野で生き残るにせよ、転換をはかるにせよ、まず要求されるのは、企業自体の努力にあることは疑う余地がありませんが、同時に、必要なのは、情報面や資金面などでの、国や地方公共団体、金融機関などの援助が大切であると思うが、総理及び関係大臣の見解を伺いたい。
 以上私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 中小企業対策の基本的態度、これはいまさら申し上げるまでもなく、中小企業基本法の定むるところに従って、中小企業が大企業に伍して、そして近代的な産業発展におくれをとらないように、さような中小企業であるように、政府が金融、税制その他指導の面等において種々くふうをこらす、これが基本的な態度であります。
 ところで、具体的にそれぞれのお尋ねございましたが、まず、小規模企業は、中小企業の中でも特に近代化がおくれておるものでございますので、政府としても、ただいま申すように、金融、税制指導等の措置を通じて、きめのこまかい配慮を払っております。ただ、今後、日本経済が先進国型の経済に移行する過程におきまして、小規模企業もそれに適応をはかっていく必要があり、単に社会政策上保護的な立場からだけでなく、小規模企業の自主的な近代化努力を助長する方向で施策の充実をはかる、こういうことに重点を置きたいと、かように政府は考えております。
 人手不足の進行や、需要構造の変化、技術の進歩、後進国の追い上げといったような一連の環境変化が、中小企業に対し、きびしい適応を迫っていることは御指摘のとおりであります。しかしながら、このような試練を乗り越えなければ、先進国型の中小企業への発展は期待できないのであります。中小企業の前途につきまして、労働力の不足と賃金の上昇を理由に、不安視する見方もないではありませんが、激しい変化に対応して、近代化された設備、高度の技術体系、すぐれたアイディア、これを活用いたしまして、そうして戦い抜く能力さえあれば、私は、日本の中小企業には、またそれだけの十分な適応性、適応力、能力とバイタリティ、これがあることを確信しております。その自主的な近代化への努力に積極的な支援を与えたい、かように私は考えております。
 最後に、白書におきましては、先進国型中小企業に関する分析は製造業を中心として行なっていること、これまた御指摘のとおりでありますが、商業やサービス業等につきましても、商店の規模、構成、商業の生産性等につきましては可能な限り国際比較を行なっているものであり、実態把握に欠けるとは私は考えておりません。しかし、なおこまかな注意をすることによりまして、中小企業が当面悩んでいる諸問題について政府はあたたかい支援をする決意でございます。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(大平正芳君) 小規模企業対策につきまして、社会保障的な考え方を貫く、あるいは加味すべきではないかという御意見でございますが、私どもといたしましては、小規模事業対策を、そういった性格のものではなくて、あくまでも経済政策の一環として推進すべきものと考えております。何となれば、わが国の経済の発展の道程におきまして、仰せのように、十分の雇用の機会を持ちながら、生産性をあげていない、低賃金に呻吟いたしておる、というような状態を、できるだけ早く経済のベースに乗せるには経済政策としてどうすべきかという観点から、積極的な近代化の努力を惜しむべきでないと考えておるのでございまして、御案内のように、共同化、協業化、あるいは専門化、あるいは高級品化、そういう方法を通じまして、小企業の独自の分野を開拓することを助成しようといたしておるものでございます。しかしながら、個々の企業者は、仰せのように、たいへん弱体でございまするので、商工会に対する助成を通じまして、新しい情報の分析、PR、あるいは経営の診断、指導、いま総理も仰せられたように、金融、税務等のあっせん指導、そういったことを、きめこまかくやりまして、小規模企業の独自の分野の積極的な開拓という方面に力をいたそうと存じておる次第でございます。
 それから欧米との比較におきまして、政策的なおくれが目立つじゃないかという御指摘でございました。仰せのとおりだと思います。数十年も前に、二重構造解消の仕事を先行的にやってのけた欧米諸国と比べまして、いま私どもが、まさに問題の最盛期と申しますか、二重構造解消のピークを控えておる今日でございますから、問題が山積いたしておることを私どももよく承知いたしておるわけでございます。したがって、製造業ばかりでなく、流通業にわたりましても、できるだけ周到な資料を整備して、政策の方向と手段を用意いたしまして、遺憾なきを期せという御指摘に対しましては、十分御期待に沿うように努力をしなければならないと考えております。(拍手)
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(菅野和太郎君) 小規模企業に対しての金融、税制面の対策についてお尋ねがありましたので、私は大蔵大臣としてお答えいたします。
 なお、この問題につきましては、総理並びに通産大臣から政策的に抽象的な御答弁がありましたが、少し私は具体的にお答えしたいと思うのであります。
 まず第一に、金融面について申し上げたいと思いますが、小規模企業に対する金融上の対策といたしましては、まず、これら小規模企業を対象とする民間金融機関の育成強化をはかる必要があります。昨年の相互銀行法、信用金庫法等の改正により、態勢を整備するとともに、小規模企業の実態に即応した融資を行なうよう指導いたしておるのであります。これとともに、政府関係中小企業金融機関におきましても、小規模事業者に対する融資には格別の配慮をしておりますが、特に国民金融公庫は、一般の金融機関から資金の融資を受けることを困難とする国民大衆に対して小口の事業資金の供給を使命としており、その四十四年度の貸し付け規模は、普通貸し付けで四千十二億円を含めて四千四百十九億円と大幅に拡充しております。
 また、中小企業につきましては、物的担保の不足等により市中金融機関から融資を受けることが困難である場合が多いのでありますので、信用保証協会の保証を付することによってこれら企業の信用力を補完し、市中金融機関からの融資が円滑に行なわれるよう配慮しておるところでありますが、特に従業員五人以下の小企業者につきましては、物的担保のみならず人的保証のない場合でも、小口の借り入れについて信用保証協会の保証が受けられるよう特別な制度が設けられておるのであります。
 以上のように、小規模企業に対しては、国民金融公庫等の融資等を通じて、中小企業対策の見地から十分配慮を行なっておると考えておりまするが、これらの機関も金融機関として業務を行なっているものであり、今後とも政府関係金融機関としての特殊性を生かしつつ、金融ベースに即してでき得る限りの配慮をしたいと考えております。
 次に、税制面に関する、どういう対策をとっておるかということを申し上げたいと思います。政府は、従来から事業所得者、特に小規模事業者の税負担の軽減について常に配慮しているところでありまして、今回の税制改正におきましても、次のとおり中小所得者を中心とする所得税及び住民税の減税や事業税の減税を行なうこととしております。
 第一は、所得税につきましては、基礎控除、配偶者控除、扶養控除等の引き上げを行なうなど、低額所得層の負担の大幅軽減につとめております。
 第二には、地方税につきましても、住民負担、特に低所得者の負担の実態を勘案し、個人住民税について、基礎控除、配偶者控除、扶養控除及び白色専従者控除を引き上げ、さらに、青色申告者の専従者給与につきましては、十七万円の控除限度額を廃止し、国税にならって、完全給与制に移行するほか、個人事業税の事業専従者控除も同様に、引き上げないしは完全給与制に移行することとしておるのであります。
 また、昭和四十年に小規模企業共済法が制定され、小規模企業者の福祉の増進と小規模企業の振興に寄与することを目的として小規模企業共済制度が発足しましたが、この制度に基づく掛け金についても、生命保険料の控除等として、所得控除をすることとするなど、実情に即する配慮を行なっているところであります。
 予算措置面につきましては、なお、一般会計におきましても、小規模事業対策については、かねてより十分配慮しておるのでありますが、四十四年度におきましては、三十三億三千万円を計上しております。これらによって、商工会、商工会議所の経営指導員及び補助員の定数を増加するとともに、その待遇改善をはかることとして、公務員の給与改善に準じた給与改定を行なうとともに、期末手当も加算いたしまして、四十三年度から補助しておる一カ月分と合わせて、計二・五カ月分を補助することといたしておるのであります。
 なお、転業について、金融、税制面でどういう措置を、対策をとっておるかという御質問がありましたが、先ほど、総理並びに通産大臣からお答えがありましたとおり、従来、中小企業に対しましては、中小企業の温存主義をとっておったのでありますが、もう今日の事情のもとでは、温存主義はとれない。とるよりも、むしろ進んで、転業をおすすめするほうが、中小企業者のために、将来のためになるということで、最近通産省では、転業主義をとっておるのであります。
 そこで、その転業する場合の金融面並びに税制面で、どういう補助をしておるかというお尋ねがあったと思うのでありますが、そこで、第一、金融面では、わが国の中小企業が、最近における需要構造の変化、人手不足型経済への移行、資本の自由化、特恵関税などによる国際競争の激化などに対処するため、その業種を転換するケースは、今後予想されるところであります。このような業種転換については、従来から、政府関係中小企業金融機関におきまして十分配慮してきておるところでありますが、さらに、四十四年度からは、中小企業金融公庫に設けられる構造改善貸し付けにおいて、構造改善の一環として、業種転換も対象とすることとしており、業種転換に対する金融上の措置も、一段と充実することにいたしたのであります。
 次に、税制面におきましては、中小企業の業種の転換に対する助成措置といたしまして、すでに、中小企業構造改善準備金、特定織布業構造改善準備金、スクラップ化促進のための税額控除など、種々の措置が講ぜられておるのでありまして、また、本年度の税制改正の一環として、中小企業構造改善準備金制度につきましては、特に、転換計画に基づき転換を行なう者に対しては、特別の積み立てを認めるなど、制度の合理化をはかっておりまして、とにかく、金融面、税制面において、転業を促進するような対策をとっておることを、はっきり申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(原健三郎君) 内田さんにお答え申し上げます。
 私に対する質問は、小規模企業対策として、早急に最低賃金制を確立し、第二は、家内労働法を制定すべきではないかという御質問でございますが、お説に対しましては、全く同感でございまして、それで、中小企業の賃金は、逐次大企業と格差は少なくなっておりますが、まだ依然としてかなり立ちおくれております。
 そこで、賃金の低廉な労働者の労働条件を一そう向上させるため、昨年最低賃金法を改正して、実効ある最低賃金の決定につとめてまいりました。その結果、製造業を中心として、すでに現在まで七百万人をこえる労働者に最低賃金の適用を見るに至っております。最低賃金の上昇率は、一般賃金の上昇率を上回っておるというところまで来ております。今後も一そう最低賃金制適用拡大をはかってまいりたい所存でございます。
 第二番目には、工賃その他労働条件が低い家内労働者につきましては、いままでおよそ十年間にわたって調査審議を経てきまして、昨年十二月、家内労働審議会の答申をようやく得ましたので、この答申に基づきまして、本国会に家内労働法案を提出いたしておるところでございますので、よろしく御審議のほどをお願い申し上げたいと思います。
 この法案の内容は、家内労働者の生活の安定をはかるため、第一、工賃の最低額を保障する、第二、安全衛生の確保など、家内労働者の労働条件の向上につとめる、そうして基本的でかつ緊急なものを内容としておるところであります。
 政府としては、今国会において御審議をわずらわし、本法案の成立を待って、さらに適切なる家内労働対策を進めてまいる所存でありますので、よろしく御審議のほどを願います。(拍手)
     ―――――・―――――
#18
○議長(重宗雄三君) 松下正寿君。
   〔松下正寿君登壇、拍手〕
#19
○松下正寿君 私は、民主社会党を代表して、政府提出の中小企業の動向に関する年次報告並びに明年度施策について質問いたします。
 まず、総理大臣にお伺いいたします。
 白書は、「わが国中小企業の位置づけ」の項におきまして、中小企業の従業者数は約二千五百万人で、農業従業者の約二・四倍、工業における中小企業の出荷額は全体の約半分と報告しております。ちなみに、産業別国民所得における農業生産部分は約一〇%程度で、中小企業の工業生産より下回っております。ところが、総理自身もお気づきのとおり、本年度の中小企業政策予算は四百億円足らずでありますが、農業予算は、農業基盤整備費だけでも一千六百二十三億円、すなわち四倍強が計上されております。私は、決して農業予算が多過ぎるということを言っておるのではございません。しかしながら、政府の報告がいうように、中小企業の経済的活動規模がそれほど大きいものであるならば、また、政府が中小企業をして先進国への道を求める新しい成長発展に進ましめるならば、現在程度の予算規模では、これはちょっとどうにもならないのではないかと思われます。本年度の中小企業予算編成におきまして、政府が最も重点を置いた中小企業振興事業団の融資は、資金量をふやすという条件を交換にして貸し付け金利を引き上げております。このように、中小企業政策の質量並行しての前進はきわめて遅々たるものであると思われる。そこで結局、予算が少ないから政策の積極性が薄い。そこで政策効果が顕著にあがらない。したがって、予算増額の速度も鈍い。このような悪循環が中小企業対策の実態であります。白書は、これはまさに優等生の作文でございますが、中小企業政策の実態はこのとおりであります。総理は、中小企業全体の体質改善についてどのような抱負と決意とを持っておられるか。中小企業予算を明年度は少なくとも一千億円台に増額する政策強化をはかるべきであると思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。
 次に、通産大臣及び外務大臣にお伺いいたします。
 白書で指摘しておられるとおり、四十二年度における工業品輸出の中小企業の占めるシェアは、割合は四三%、これに大企業製品の下請を含めますというと、輸出シェアは依然として五〇%内外であります。したがって、生産の九〇%以上を輸出に依存している企業が中小企業の三割を占めております。ところが、米国の化合繊維品輸入制限や特恵関税の実施など、外国からの圧迫――外圧はまことにきびしい。かりに米国の輸入制限が実施されますというと、国内での繊維品の過剰供給は必至であります。また、繊維品以外への輸入制限の波及のおそれもまさに大きいと思われる。また、特恵関税実施は、いまやわが国にとっても時間の問題でありますが、当面実施する特恵品目は何であるか。その税率はどういうことになるか。これは中小企業の輸出業者にとって早々に対応策を準備すべき問題であります。そこで通産大臣にお伺いしたい。米国の化合繊維品輸入制限のごとき、米国内の繊維産業は好況でありまして、わが国からの輸入は、全米消費のわずかに三%にすぎないにもかかわらず、選挙公約であるというような理由から実施するという不合理千万な制限に対しては、断固として反対すべきものであると思います。いかがでしょう。通産大臣には国内産業対策の面から、外務大臣からは外交交渉の面から、政府の公式の御見解をお伺いしたい。
 次に、通産大臣にお伺いいたします。
 私は、白書にいうとおり、中小企業を温室に入れてその弱さを持ったままの姿で保護するというのではなく、外部の空気の中で強く育てるという方針には賛成するものであります。その意味で、繊維工業及び中小企業関係業種全般にわたって、業界ぐるみ、産地ぐるみの構造改善事業を実施していくという基本方針には賛成であります。この見地に立って、白書で報告されている施策についてお伺いしたい。
 第一点は、おそらく大臣も痛感しておられるでありましょうが、わが国の中小企業政策は、法律や制度の数は多く、間口はまことに広いのでありますが、奥行きは至って狭い。下請代金法や百貨店法のようないわばざる法も法であります。予算は年四百億円内外にすぎない。構造改善が必要なのは中小企業政策それ自身であると言っても過言ではないのではないでしょうか。政府は、中小企業政策拡充五カ年計画で、政府の政策の体系化と政策目標の確立をはかるべきではないか、これをお伺いしたい。
 第二点として、大臣は、中小企業の構造改善の「前さばき論」、「アフターケア論」ということをお考えになったことがあるでしょうか。構造改善は、単に一部の強力な中小企業団体、いわば中小企業のエリートだけが活用すべき制度ではありません。多数のまとまりの悪い業界の団体を説得し、構造改善事業以前の近代化業種指定であるとか、部分的な協業化の推進であるとか、構造改善実施に至るまでの施策を「前さばき」として強力に実施すべきであると考える。また、近促法指定を受けて五カ年を経た業種を卒業生として扱うのではなくして、構造改善を実施せしめるアフターケア政策が必要であると思われる。このような業種別対策の一貫性について見解を伺いたい。
 第三点として、流通部門業種、特に小売り商業の構造改善につき、どのような計画を持っておられるかをお伺いしたい。
 また、環境衛生関係の十七業種、すなわち美容、理容、クリーニング等、対個人サービス業の近代化と構造改善についていかなる抱負を持っておられるか。これらの業種を厚生省の環境衛生法の指導下に置くというだけでなくして、産業政策として見直すべきではないかと思われるが、いかがでしょうか。この点について、厚生大臣の見解をお伺いしたい。
 最後に、小規模企業対策について通産大臣にお伺いしたい。
 私は、家族労働中心の生業としての小規模企業は、特殊な下請部品加工業、小売り業、対個人サービス業では、地域産業としての役割りをもって今後も強く生き抜くと思う。私は、これらに対する国民金融公庫の融資や、商工会等を通ずる情報提供や、企業診断サービスをもっと強力に推進すべきものであると思われるのであります。
 最後に、私は、中小企業に負わされておるところの大きな問題は、いかにしてわが国の経済の根幹をなすところのこの中小企業の生産性を高め、大企業並みに――大企業に近づけるかにある、いかにしてそれを実行するかにあると思われる。これについては金融措置、設備の改善等いろいろあると思われますが、しかし、結局において最もその基礎となるものは、中小企業自身の精神的近代化にあると思われるのでありますが、それら一切の点についての関係大臣の御見解をお伺いいたして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(佐藤榮作君) 松下君にお答えいたします。
 まず、中小企業のその規模なり、あるいは人員、さらにまた、その生産等から見まして、いま、その予定した予算が少ないのである、もっとその規模なり人員なり、また経済的効果など考えれば、もっと多いのが当然だと、こういう第一のお尋ねであります。私が、申し上げるまでもなく、この予算は一般会計だけではございません。財政投融資や税制、あるいは金融を通じて総合的に施策を展開しているのでありますから、全体としてごらんいただきたいと思います。ただ、予算が四百億程度では少ない、かような御批判は当たらないのではないかと思います。私は、中小企業に対しまして、それかといって、現在までの施策で十分だと、こういうつもりはございません。ただ、ごらんになる場合に、全体としていままで政府がいろいろ努力しておる点、それを御注意いただけば、まず政府が中小企業の位置づけに十分意を用いていること、これがおわかりができるのではないかと思います。
 また、中小企業振興事業団の一般案件に対する貸し付け金利、これを引き上げたが、これも時代逆行ではないか、こういう御批判でありますが、この融資の希望は実はたいへん強いのであります。そのために、融資ワクを対前年に比べまして大幅に引き上げまして、実に一七八%、かようにのぼっております。したがいまして、融資ワクが拡大された一面、金利もやや少し高目にした、五厘ばかり上げたと、こういう結果になっておるのであります。全体といたしましての施策はこれでバランスはとれたと、かように私は考えております。中小企業対策が後退したと、こういうようなものではない。十分めんどうを見るつもりであります。なお、今後とも経済情勢の変化に応じまして適時適切な処置をとる、これは中小企業を弱体化ささない、こういう観点から、政府の当然の責務である、かように考えておりますので、その点もつけ加えておきます。
 最後の中小企業の今後のあり方、一体、この中小企業といかに取り組むかというその姿勢についてのお尋ねであります。これは私が申し上げるまでもなく、体質改善をする、これに積極的に取り組むわけであります。政府はその抱負と決意についてどんなに考えているかというお尋ねでありますが、率直に申しまして、いままでの中小企業対策、これはどちらかというと、弱い者に対する保護的な色彩が非常に強かった、こういう感がなきにしもあらずであります。その結果、一方では生産性の低い中小企業を温存させるとともに、他方では、せっかく自主的な努力で伸びようとする意欲をそぐ結果にもなった、かように考えます。したがいまして、今後の中小企業対策といたしましては、この二つの目的を達するように十分配慮して、一方に片寄らないようにしたい、ここに政府の今後なすべき方向がある。また、かくして初めて中小企業に対する近代化への自主的な努力に対してこれに報いる、支援を与えるということにもなるのではないか、かように考えております。
 また、この中小企業に対しまして、今後私どもが注意しなければならないことは、明確な情報を提供し、親身の指導をすること、この正確な情報の提供ということが必要であり、そうして、この上とも親身な指導と助言、技術の開発、さらには金融、信用の拡充、税制の面でのきめこまかい配慮を払っていくというところにあるのではないか、かように政府は考えておるわけでございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(大平正芳君) 第一の特恵問題でございますが、一九七〇年の初期実施を一応の目標といたしまして、先進国――日本を含めまして、この間、OECDに暫定的なリストを出したわけでございます。これはリストが出そろったところで、先進国間で検討が行なわれることになっておりまして、したがいまして、まだ発表の段階ではございません。ただ、私どもといたしましては、日本の産業に特に大きな影響がございます、たとえば繊維産業でございますとか、雑貨産業であるとか、そういうものにつきましては、暫定リストの提出にあたりまして、最大限の配慮を加えております。御指摘のように、アメリカの繊維の自主規制強化の動きでございますが、わが国の繊維産業は、後進国の追い上げ、国内の労働力の不足等で、いま非常な困難な局面に立っておるやさきでございまして、もし最大の輸出先であるアメリカにおいて、そのような措置がとられるということになりますと、ゆゆしい問題でございます。業界、政府、各省一体となりまして、そのような措置がとられないように、アメリカ側に十分な反省を求めて、そういうことが御提案になりました場合は、反省を求めたいと思っております。
 それから、中小企業対策としてとられております構造改善の体系化と政策目標をはっきりさせよという御指摘でございます。経済が大きな変革期に際会いたしておりますし、開放経済下にありまして、国際競争も苛烈化いたしてまいっているし、国内では労働力の異常な不足という、二重、三重の変化にさらされているわけでございますから、これの適応力を高めるということが、構造改善の道標でなければならぬと思っております。その実行にあたりましては、いま総理からもお話がありましたように、情報の提供、診断、指導、アフターケア等については、十分配慮してまいるつもりでございます。
 流通部門につきましては、一番やっかいな分野でございますが、卸、小売りの段階におきまして、いろいろの協業化、共同化、近代化の施策が行なわれておりますことは御承知のとおりでございますが、輸送とか包装の機械化、それから消費者行政の推進、消費者信用の確立、そういった一連の政策を組み合わせることによりまして、流通部門の基盤の近代化に資したいということで、非常に困難な政策分野でございますけれども、せっかくすきを入れているところでございます。
 小規模事業対策につきましては、内田さんにお答えしたとおりでございます。
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(愛知揆一君) わが国の中小企業が、輸出の面に占めている実態的のシェアが非常に大きいという点につきましては、御指摘のとおりと存じます。そこで、現在アメリカについてどういう問題があるかということを、この機会に申し上げますと、御承知のように、綿製品につきましては、輸出の自主規制というものが日米間の取りきめで行なわれております。また、鉄鋼やタイルなどの品目につきましては、アメリカで保護貿易主義の動きがあまり起きないように、これを緩和するようにという目的でやはり自主規制が行なわれておりますことは、御承知のとおりでございます。
 一方、アメリカ側では、連邦やあるいは一部の州におきまして、御承知のようなバイアメリカン法というものが存在しておりまして、これがわが国の対米の輸出上障害となっておるという事実も指摘しなければならないと思います。さらに、米国の関税法によりましてまたASPというような制度もございまして、関税の評価面で輸入制限的な効果を持ち得るような特殊な制度もアメリカに実は存在しておるわけでございます。先ほど申しましたこれまでに行ないました自主規制はともかくとして、こうしたアメリカ側の行なう輸入制限的な措置につきましては、その撤廃や軽減につきまして、機会あるごとにその撤廃あるいは緩和を求めておるわけでございます。ところが、それはそれといたしまして、最近、御指摘のような繊維製品について大幅の自主規制を求める動きが起こってまいりました。これは、ただいま通産大臣からもお答えいたしましたように、日本としてはゆゆしき影響がある問題でございます。その自主規制を求めてきておる内容というものが今後どういうものであるかということについては、まだ明らかでございませんが、試みに現在アメリカの議会に議員提案として出されております繊維輸入制限法案というようなものを見ますと、すべての繊維品につきまして輸入のレベルを過去数年間の平均水準に押えるというような、現在の水準から見ますると大幅なカットバックになるおそれがございます。それからまた、全体の水準がいかに定められるかは別といたしまして、品目別にこまかいワクが設けられるというようなことに万一なりますと、米国の市場における嗜好の変化などに応じて弾力的な輸出をすることが困難になります。こういつたように考えられますので、二月初旬に、ニクソン大統領の記者会見等でこうした考え方が出てまいりましたその直後から、先般来当議場でも御報告を申し上げておりますように、いち早く政府といたしましては、米政府に対して、日本といたしましてはかような自主規制その他については応ずることは絶対にできないということの申し入れをいたしました。それから三月になりましてから、さらに重要と考えましたので、東京におきましても、駐日大使を特に招致いたしまして、私から、米国内でかような動きが起こることを未然に防ぐように、わがほうの立場を詳細に申し入れると同時に、わがほうの態度を米国側に十分伝えるように要請をいたしました。さらに、三月の下旬には、駐米大使をしてスタンズ商務長官に対してさらに繰り返し申し入れをいたしました。このスタンズ長官は、最近にあるいは関係国を歴訪しました途次、日本にも来日するかもしれません。こういうふうに直接アメリカ側に申し入れをいたしておりますと同時に、ヨーロッパあるいはアジアの国々の繊維品輸出国もわが国と同様な立場や条件にあるものも相当ございますので、これらの諸国とも緊密に連絡をいたしまして、繊維品貿易に対して国際的に規制が行なわれるというようなことが実現しないように、十分連絡をとって同調してもらうように要請涼しておるわけでございます。
 特恵の問題につきましては、通産大臣からお答えがございましたとおりでございます。
 以上御答弁申し上げました。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(斎藤昇君) 理容、美容、クリーニング等の環境衛生関係の中小企業に対しましては、ただに環境衛生という見地からだけでなしに、やはり一般中小企業といたしまして、その企業の近代化、あるいは構造改善につとめさせておるわけでございまして、このために、機械設備の導入とか、あるいは協業を推し進めさせておるわけでございます。昭和四十年度から、御承知のように、予算的にも助成の措置を講じてまいりましたし、昨年からはまた、御承知のように、環衛金融公庫を設けまして、金融融資の面からも助成をいたしまして、行政の面と、業者の自主的な活動を促進をいたしまして、御期待にこたえるように今後も一そう努力をいたしてまいりたい、かように思っております。(拍手)
#24
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#25
○議長(重宗雄三君) 日程第二、失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(趣旨説明)。
 本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。原労働大臣。
   〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(原健三郎君) 失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 失業保険法及び労災保険法は、いずれも、昭和二十二年に制定されて以来、数次の改正により逐次その内容を整備してきたところでありますが、両保険とも、労働者五人未満の事業所の多くについて未適用のままとなっている現状にあり、これらの零細企業に働く恵まれない労働者に両保険の適用を拡大し、その福祉の増進をはかることは、きわめて重要なことであると考える次第であります。
 また、失業保険につきましては、低所得層を中心に給付全般にわたってその内容を改善し、失業者の生活の一そうの安定をはかるとともに、失業保険経済の現状に照らし、保険料率の引き下げを行ないまして、国民の負担を軽減する必要があると考えるのであります。
 さらに、失業保険におきましては、季節的受給者の現状、不正受給の状況等にかんがみ、制度の健全化をはかる必要があると存ずる次第であります。季節的受給者は、全受給者の約四〇%に達し、毎年繰り返して全給付額の約三〇%を受給しており、制度上種々の問題を生じているところであります。このため、短期循環的に離職者を多数発生させる事業主から特別保険料を徴収し、これを通年雇用等の費用に充てることによって不安定雇用の解消をはかるとともに、被保険者期間の計算方法を合理化する等の必要があると考えるのであります。また、不正受給が年々増加している現状に対処するため、これを防止する必要があると考える次第であります。
 以上のような事情にかんがみ、政府といたしましては、中央職業安定審議会及び社会保障制度審議会に諮問し、本年二月末及び三月初めにそれぞれ答申を得、また、労災保険審議会の承認を得た上、失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、国会に提出いたした次第であります。
 次に、この法律案の内容の概略を御説明申し上げます。
 第一は、五人未満事業所に対する失業保険及び労災保険の適用範囲の拡大であります。
 まず、失業保険につきましては、労働者五人未満の事業主に雇用される者を新たに当然被保険者とすることといたしましたが、百万をこえるこれらの事業所を一時に適用することには、種々問題がございますので、当面は、製造業等から段階的に適用拡大を行なうことといたしました。
 次に、労災保険につきましても、労働者を使用する事業は、すべて当然適用といたしますが、失業保険と同様、危険有害でない業種は、当面、任意適用とすることといたしております。
 第二は、失業保険における給付のほとんどにわたって、その内容の改善をはかったことであります。
 その一は、一般失業保険における保険給付の改善であります。まず、配偶者の扶養手当につきまして、政令によりその日額を現行の二十円から三十円に引き上げるとともに、失業保険金の日額につきましても、告示により、賃金の比較的低い等級の日額を十円ずつ引き上げることといたしました。さらに、二十年以上の長期被保険者の給付日数を現行の二百七十日から三百日に引き上げるほか、技能習得手当の日額も改善することといたしております。
 また、受給資格者が死亡した場合や長期間の業務災害等の場合にも失業保険金の受給ができるよう、受給要件の大幅な緩和をはかることといたしました。
 その二は、日雇失業保険における給付の改善でありまして、日雇失業保険金の日額を、現行の第一級五百円、第二級三百三十円から、それぞれ第一級七百六十円、第二級五百円に引き上げることといたしました。さらに、賃金水準の変動等に応じてすみやかに日額の改善をはかることができるよう、告示により改定することができることとしたほか、第一級の保険金を受けやすいよう、その決定要件を緩和することといたしております。
 その三は、就職支度金及び移転費の改善であります。これらの給付につきましては、いずれも福祉施設として支給することといたしておりますが、まず、就職支度金につきましては、従来、失業保険金及び扶養手当の合計額の三十日分または五十日分であったものを、一定の場合さらに二十日分を加算することとし、また、移転費につきましても、着後手当を新設することといたしました。
 第三は、失業保険の保険料率の引き下げでありまして、最近の失業保険収支の状況を勘案し、また、今後の保険経済の推移等を考慮して、現行の千分の十四から千分の十三に引き下げることといたしました。
 第四は、失業保険制度の現状にかんがみ、制度の健全化をはかることといたしたことであります。
 その一は、三年間連続して短期離職者を多数発生させた事業主から、特別保険料を徴収し、これを通年雇用等季節的失業の防止のための費用に充てることといたしたことであります。なお、特別保険料の内容につきましては、事業主に過大な負担とならないよう留意いたしておりますが、特に中小零細事業主については、離職者五人までは徴収しない等、特別の配慮を加えているところであります。
 その二は、通常の労働者に期待し得る通常の雇用期間さえ満たせば、給付に何らの差別を加えないという趣旨のもとに、受給資格を得るのに必要な六カ月の被保険者期間の計算につきまして、現在は最低四カ月二十二日の雇用期間で足りるとしているのを、原則どおり満六カ月の雇用期間に改めるとともに、一カ月間の賃金支払い基礎日数を現行の十一日以上から十四日以上に改めることといたしたことであります。なお、就労の実態を考慮し、二以上の事業主に雇用された者につきましては、被保険者期間の通算について特別の配慮を加えることといたしております。
 その三は、不正受給者に対しまして、現行の不正受給金の返還命令制度に加え、新たに納付命令制度を設けることといたしたことでありますが、労働者に対して過酷なものとならないよう、納付額は不正受給金額と同額以下とし、またその基準は、労働大臣が中央職業安定審議会の意見を聞いて定めることといたしております。
 以上のほか、失業保険におきまして、失業の認定回数、失業保険金等の支給方法、日雇い失業保険の保険料の納付方法等について整備をはかることといたしております。
 次に、この法律案の施行期日につきましては、失業保険及び労災保険の適用の拡大は、実施準備に万全を期するため、別に法律で定める日から施行することとし、その他の事項は、それぞれの内容により、昭和四十四年七月一日、八月一日、十月一日の三段階に分けて施行することといたしております。
 以上が失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。(拍手)
#27
○副議長(安井謙君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。大橋和孝君。
   〔大橋和孝君登壇、拍手〕
#28
○大橋和孝君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、内閣総理大臣及び関係各大臣に対して若干の質問をいたします。政府の明確な御答弁をいただきたいと思うのであります。
 ただいま労働大臣から趣旨説明がありましたように、今回の改正案は、五人未満事業所の適用、保険料率の引き下げ、給付内容の若干の改善は見られますが、重大な改正点は、季節労働者を制度から締め出そうというものであります。社会保障制度の一環として重要な位置を占めておるこの失業保険制度を、本来の趣旨に反して著しく後退させるものであります。
 そこで、まず総理大臣にお尋ねをいたします。
 総理は、かねてより人間尊重、社会開発を口にし、社会保障の充実に努力すると説かれております。戦後二十余年を経て、わが国の社会保障制度は、児童手当を残し、一応表面的には形を整えてきております。しかし、その内容を見ると、今回の失業保険制度の改正に見られるように、最近後退するものが二、三出てきております。総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会は、社会保障が昭和四十五年には、三十六年当時の西欧水準に達する施策の推進を強く要望したのであります。しかしながら、今日の段階においてその実績を見ると、社会保障制度審議会も、昭和四十年までは若干の進展もありましたが、その後は停滞ぎみで、国民所得の比率でいえば、目標の二分の一にしか達していないと指摘しているのであります。また昭和四十二年三月、政府は、四十年代への挑戦として、経済社会発展計画を発表しておりますが、その中で、「わが国の経済社会の実態とその将来の進路に即した適切な社会保障長期計画を策定し、」とありますが、満二年を経過いたしました今日においても、政府は、いまだにその計画を策定したと私は聞いておりません。政府は、この計画についてどのように考えておられるのか伺いたいと思います。
 次に、近年の社会構造の変動に伴って、農林業、中小企業もこの大きな波をまともにかぶっておるのであります。これらについて基本的対策の確立の必要性は高いと考えられます。たとえば、出かせぎの必要のない農政、さらには通年雇用を可能とする中小企業対策の確立であります。特に過密過疎問題の激化に伴って、地域開発の立ちおくれ、零細農切り捨て政策がこの出かせぎ労働という変形を生み出しているのであります。現在、出かせぎ労働者は六十万人と推定されております。本来の就業形態から見ますと、この出かせぎは異常な型であり、これに伴って家庭問題、労働問題など、深刻な問題を引き起こしているのであります。これには種々の要因がありますが、結局、地域間の経済、所得の格差、産業、職業間の格差によるものであります。生産性が低く、所得の少ない農林業では生活水準を維持できず、やむを得ないところから出かせぎに出るのであります。したがって、この問題を解消するためには、地域の経済格差と二重構造を是正し、地域の開発をするなど抜本対策を確立する必要があるのであります。経済審議会はすでに地域経済社会の展望を示しておりますが、総理はどのような方針をお持ちであるか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、労働、厚生両大臣に質問をいたします。
 今回の改正案の第一に、被保険者期間の計算を変えようとしております。被保険者期間は、昭和二十二年に国会修正で各会派一致で可決したものであります。これを今回の改正案に入れることは、以上のような経過から見て国会の意思を無視するものであります。特にこの改正によって現在季節的受給者五十八万七千人のうち十二万五千人は、そのほとんどが稼働日数は百五十日前後であるために受給資格が得られず、この制度から締め出されることになります。著しい既得権の侵害と言わなければなりません。
 第二に、この改正では、低所得階層への配慮がなされておりません。一般の労働者には千分の一の保険料率の引き下げを行ないながら、日雇い失保のほうは引き上げることになっております。現行でも日雇い労働者は一般の労働者よりも料率が高いのに、さらに引き上げることは、給付率の改善があるとしてもうなずけません。
 次に、適用範囲の拡大についてであります。一応の意義は認めますけれども、何ゆえに全面適用に踏み切らなかったのか。零細企業に働く労働者こそ、手厚く保障すべきではないかと思うのであります。将来、いつの時期に全面適用が実現するのか、お尋ねいたします。一応労働保険には、五人未満事業所への適用拡大の考え方が入ってきましたが、医療保険のほうにはないのであります。この給付の不均衡を社会保障の観点から見るときどうお考えになるのか。この点、厚生大臣に御所見を伺いたいと思うのであります。
 第四に、失業保険財政は、最近の景気の良好なことと相まって、失業保険財政は著しく好転し、昭和四十二年度末における積み立て金累積額は実に千九百三十億円となっております。しかしながら、今回の改正案では、一部、制度の改善は見られるけれども、この財政の良好の状態に見合った制度の大幅な改善には至っておりません。たとえば、従来からわれわれが主張してきております保険給付率を八割に引き上げること、保険料率の引き下げ、さらには先ほども触れた日雇い失保の大幅な改善等を行なうべきであるのに、反対に保険料率を引き上げております。そしてこの日額につきましても、伝えられるところによりますと、このたび厚生省で考えられている日雇い健康保険では、三段階の等級区分を設けているのに、日雇い失業保険では二段階となっているのであります。両保険は、元来不離の関係にあり、段階区分を同一にすべきであるのに、何ゆえに労働省はきめの荒い二段階方式をとったのか。低所得者層に対する配慮がこの点でも欠けていると言わざるを得ないのであります。労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
 さらには、社会保障制度の分立、給付格差が現行の社会保障制度には見られます。この点につきましても、社会保障制度審議会の過去、数回にわたる勧告と全く相反することになります。厚生、労働両大臣の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
 次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。
 まず、資金運用部資金についてお聞きしたい。この資金運用部の積み立て金は各種、社会保険料を積み立てておりますが、大蔵省資金運用部資産残高は、四十四年度末の見込みでは、実に十二兆円を突破するばく大な額となっておるのであります。従来から、年金積み立て金の使途、運用の民主化、そして、国民全体の福祉向上にのみ振り向けるべきであるとの勧告なり、意見があるにもかかわらず、大蔵省は、わずかにその四分の一以下しか国民福祉に回そうとしません。この点、大臣はどう考えておられるのか、明確な御答弁をいただきたいと思います。
 次に、先ほど、総理にもお聞きしたところでありますが、社会保障の長期計画策定に見合って長期財政計画を策定する必要があると思いますが、この長期財政計画の樹立に力を尽くすお考えがあるかどうか、お伺いしたい。
 第三に、失業保険、健康保険、その他社会保険にあっては、事務の執行に要する費用は、毎年度予算の範囲内で保険事業の事務に要する費用について国庫が負担するたてまえとなっておるのであります。健康保険等にあっては、事務費は事実上、全額国庫負担となっております。失業保険にあっては、先ほど申し上げました積み立て金の利子が充てられ、国庫からはわずか一億五千万円が支出されているにすぎないのであります。これは健康保険等に比較して著しく均衡を失するものと思います。社会保険の事務費補助に一貫した原則があるのかどうか、はなはだ疑わしいのであります。あわせて大臣の御意見をお伺いしたい。
 最後に、農林大臣にお尋ねいたします。
 現在の農政は、多くの問題をかかえながら展開されていることは、農業白書にも指摘されております。その問題の一つに農家の兼業化、特に出かせぎがあります。また、出かせぎ人については、昨今の新聞に労働災害や労働条件の劣悪な状態が報道され、大きな社会問題になっていることは御承知のとおりであります。この出かせぎ労働者の把握状態を見ても、労働省は六十万人と言い、農林省の農家就業動向調査によりますと、二十二万人と言っております。このようなことで、政府は本腰で出かせぎ対策に取り組むことができるのか、はなはだ私は疑問であると言わざるを得ません。農政の失敗を労政によって補っているところに問題があるのであります。今回の改正は、農業収入、出かせぎ収入、失業保険を加えて、かろうじて生活をささえている零細農民から、一本の柱である失業保険を打ち切ることに大きな問題があるのであります。このささやかな失業保険金を期待しなくても、安心して農業に従事できる農政の確立が不可欠であります。この二点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
 以上で私の質問を終わりますが、この改正案には数々の改悪面が見られます。政府は、失業保障という観点から、以上私が指摘してきました点について、すみやかに改善をするよう強く要望するものであります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 長期的な視野に立って計画的に施策を進めていくことが、社会保障の充実発展のためにきわめて必要なことは、御指摘のとおりであります。しかしながら、社会保障の重要な一翼をになう医療保険制度におきまして、種々の懸案問題をかかえている現段階におきましては、社会保障だけの長期計画を樹立することは多くの困難があります。そこで、御提案は今後の課題といたしまして、さらに検討さしていただくということにいたしたいと思います。
 次に、出かせぎのない農政という問題について御意見を述べられました。もとより、これは理想的な農政のあり方だ、かように私も思いますが、現実の問題として、日本の農業から兼業農家が姿を消し、単作地帯からは季節労働者すら出なくなる、こういうことは容易には実は考えられません。もちろん農政の中心課題として、より多くの自主経営農家を育成していくための施策を強力に推進してまいりますが、一面におきまして、出かせぎの方々の権利を守り、その職場環境の改善と労働条件の改善のための指導監督をしていくことにいたしたい、かように思います。また、通年雇用の可能な中小企業をつくれと、こういう御指摘でもありますが、この点も、中小企業に労働者を安定させるためには、基本的には中小企業の企業力を強化し、そうして、これを魅力のある職場にするということが急務であると考えます。通年雇用融資制度あるいは通年雇用奨励金制度というようなものも、この通年雇用に寄与するところがたいへん大きいと思いますので、これらの利用につきましても、今後十分考えてまいるつもりであります。
 最後に、過密、過疎の問題につきましては、今後の重要な政治課題として取り組んでまいるつもりであります。現在策定中の新全国総合開発計画におきましても、その対策を積極的に展開していきたいと思います。仕事が国内至るところにあるという、こういう状態を起こせば、いまの出かせぎの問題もある程度解決するのじゃないか、かように思いますので、基本的なそれぞれの計画を積極的に進めてまいりたいと思います。
 なお、出かせぎについて、私が申し上げるまでもなく必要なことは、やはり就業経路の正常化、いわゆる縁故等によって仕事にありつくのでなしに、やはり職業安定所の紹介によるとか、あるいはまた能率、効率をあげる、あるいは災害防止等についても、十分事前に知識を与える等々の施策が必要ではないだろうかと思います。やむを得ず出かせぎをするのでありますから、これらについて起こる弊害、これに対する対策を怠らないようにすること、これが必要ではないだろうか、かように思います。
   〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(原健三郎君) 大橋さんにお答え申し上げます。
 第一のお尋ねは、現行失業保険法の被保険者期間の計算は、昭和二十二年に国会修正をしたものであるが、主としてそれを変えるというのは、院議を無視するのじゃないかということでございますが、御承知のように、現行の被保険者期間の計算方法は、終戦直後にあったものでございまして、その混乱期においては日給制が多かったこと、稼働日数も低かった時代に制定されたものでございますから、その結果、被保険者期間は六カ月とされながら、実際は雇用期間としては最短四カ月二十二日で受給資格を取得することができるような変則的な制度でございます。しかし、最近におきましては、ほとんどが月給制となり、また、現在の雇用失業情勢におきましては、通常の労働者の場合は、六カ月の雇用期間と一カ月十四日の基礎日数は十分期待できるものと考えております。今回の改正では、今日の社会経済情勢の実情に即して制度の健全化をはかっておるものでございますので、国会の御意見を無視したとは考えておらないところであります。
 それから、今回の改正は、出かせぎ労働者に対して期間計算の面から制約を与えることになる、これが一番問題であるという御指摘でございましたが、実は、そう思っていろいろ調査いたしました。現在の雇用情勢のもとで、通常の労働者に期待し得る通常の雇用期間さえ満たせば給付に何らの差別を加えないという趣旨のもとに、期間の計算を六カ月に改めたような次第でございます。しかしながら、季節的受給者のうち大部分を占めておる冬期受給者は、およそ八割ございますが、従来から、そのほとんどが満六カ月以上で受給資格をつけておりますので、影響はございません。それでまた、残りの二割ぐらいの人は夏期受給者でございます。これに影響があるとおっしゃるのでございますが、現在のままでは一部に影響を受けるものもあろうかと考えますが、受給資格をつけることが容易になるよう、いわゆる被保険者期間を通算いたしまして、二カ所で働けば、あるいは二カ所の事業所に働く場合には、その前後期間が分かれておりましても通算いたしますから、決して悪影響はなかろうと存ずるところであります。
 次に、保険料率について低所得者に配慮がなされていないとおっしゃいますが、低等級者の失業保険日額の引き上げ、配偶者分の扶養手当の日額の引き上げとか、日雇失業保険金日額の引き上げ等々、かなりの改善をいたしておるところであります。また、保険料率は千分の一の引き下げを行なって、労使の負担の軽減をはかっておるところでございまして、低所得者についても負担の軽減となっておることは言うまでもございません。
 それから、適用範囲の拡大について、なぜ全面的にやらなかったかとおっしゃいますが、理論としては、同時に全面適用いたしたいのでございますが、現在、未適用となっているものは約百万の多きに及んでおります。その百万にのぼる五人未満の事業所を一挙に把握して直ちに実行することは事実上非常に困難でございますので、今回の改正において任意適用とされた業種につきましては、行政庁の事務処理体制の整備と、企業の体制の整備が伴い次第、すみやかなる機会に全面的に適用いたしたいと考えておる次第であります。
 それから、失業保険の財政状態がよくなってきているのであるから、それに見合った改善をなすべきであるという御意見でございます。基本的には、雇用失業情勢の推移とか、他の社会保障制度との関連等を考えて、制度の趣旨に照らして改正をやる必要があろうと認めて今回の改正になったものでございまして、失業保険財政がいいからどうかということが最大の理由となっているのではございません。しかしながら、今回の改正案においては、給付全般にわたってその内容を改善いたしております。また、保険料率の引き下げによって労使の負担を軽減するなど、大幅な改善をしたことは、御指摘にもありましたとおりでございます。
 それから、日雇失業保険金日額の等級区分を、三区分しておったのを二区分にしたのは粗雑であるとおっしゃいますが、実は、三区分しておりました三級の三百三十円のものをなくしまして、一ペんに五百円に上げてしまったのでございまして、一級のほうもまた七百六十円に上げました。両方とも等級はややこしく区別せずして、いずれもその金額を引き上げておるのでございますから、決して支障を来たさない改善であると考えております。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(斎藤昇君) 五人未満の事業所の被用者を医療保険にどう扱うかという問題につきましては、これを地域保険のままにしておくか、あるいは被用者保険のほうに入れるか、いま、医療保険の抜本改正を考えます中におきまして、このたびの失業保険に入れたということを勘案をしながら、検討をさせてもらいたいと思います。
 なお、社会保障費の給付がいろいろとアンバランスであるという御意見はそのとおりに思います。いろいろと制度の発生の原因、仕組みの方法等によりまして相当違った点もありますので、まず、医療保険につきましては、できるだけその給付を統一をいたしたいと考えて、これも抜本改正の中で考慮をいたしたいと思っておりまするし、また、公的年金もそれぞれ制度によって違った面もありまするので、公的年金制度調整連絡会議におきまして、その点をただいま検討をいたしております。できるだけ給付の公平を期してまいりたいと、かように思います。(拍手)
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(菅野和太郎君) 最初に、資金運用部の資金をもっと国民の福祉に使ったらどうかという御質問であったと思うのでありますが、御承知のとおり、いま国が行なっております各種社会保険の積み立て金は資金運用部に預託されまして、財政投融資計画の重要な原資を構成いたしておるのであります。これらの資金は、年々の財政投融資計画に従いまして、主として住宅政策、環境整備、厚生福祉施設はじめ、被保険者と国民の福祉向上に役立つ分野に運用されるよう、十分配慮いたしておる次第であります。
 次に、社会保障の長期計画に関連して、財政的に長期計画をつくるべきじゃないかという御質問があったかと思うのでありますが、これにつきましては、総理からお答えがありましたので省略さしていただきます。
 最後に、失業保険の事務費は、他の社会保険の事務費に比較して少額であるという御質問があったと思うのでありますが、この各社会保険の事務の執行に要する経費は、それぞれの保険事業の事務執行に支障を生ずることのないよう、各特別会計において所要額を計上いたしておるのであります。
 次に、社会保険各特別会計における事務の執行に要する経費は、経費に対する一般会計からの組み入れについては、それぞれの制度の財政事情を勘案して所要額を計上しておるところでございます。
 失業保険の特別会計においては、最近の雇用情勢の好転により積み立て金が累増し、現在その運用収入をもってその事務費の大部分をまかなうことができる状況にありますので、これらの事情を考慮いたしまして、一般会計からの所要額の組み入れを行なっておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣長谷川四郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。
 農家の出かせぎ者は近年非常に減少はしております。昭和三十八年が二十九万八千名、昭和四十二年が二十一万九千名、このような減少の傾向にはございますけれども、家を遠く離れて働きに出ていくということは、これはいろいろな問題が残ります。したがいまして、各般の面においてこの点については十分配慮をしなければならないと考えております。また、農政面におきましては、農業で生活ができる農家をできるだけ数多く育成して、そうして農業生産の振興をはかる、これが主眼でなければなりません。したがって、農政を充実していくことが必要であると思うのであります。このために、農業生産基盤の整備、農産物価格の安定、流通の改善、農業構造の改善の促進などの、各般の施策の充実に、政府としては真剣に取り組んでまいる考え方でございます。
 次の、零細農家の兼業の形としましては、通年的勤務及び自営業等、安定的な兼業の占める割合が大きいので、出かせぎ、失業保険にたよっている農家は、比較的少ないと思われます。しかし、現実には、出かせぎに依存せざるを得ない農家が相当数存在していることも事実でございまして、農林省といたしましては、今後とも、出かせぎ労働を含めて、農業労働対策の充実をはかってまいる考え方であります。試みに、数字をちょっと申し上げますと、通年的勤務が、五十アール以上の方々が四三・四%、五十アール以下が五五・七%、したがって、出かせぎの率は、五十アール以上の方々が七・一%、五十アール以下の方が三・二%、このような数字をあらわしておることも御了承賜わりたいと存じます。(拍手)
#34
○副議長(安井謙君) 渋谷邦彦君。
   〔渋谷邦彦君登壇、拍手〕
#35
○渋谷邦彦君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部改正法案について、総理並びに関係閣僚に若干の質問をいたすものであります。
 従来、高度経済成長によって生じたひずみの問題については、しばしば論争の焦点となり、加えて、政府の冷淡な措置が各般にわたって指摘されているのであります。ことに、総理の言う人間尊重とは、あまりにもかけ離れた現状であると言わざるを得ません。少なくとも、文化国家、福祉国家を目ざして歩みを進めるというのであれば、社会の底辺にあえぐ人々が、いまなお相当数にのぼっている現状を解消すべきであり、政治の恩恵が、これらの人々にまであまねく行きわたってこそ初めて人間尊重と言えるのであります。今回上程されております二つの法案なども、適用を受ける該当者にとっては、生活を大きく右左されるだけに、慎重な配慮と、弾力的な運用がなされるべきであります。
 まず、総理と農林大臣に伺いますが、先ほども、大橋議員のほうから質問が出ましたとおり、季節的出かせぎ労働者の存在について、基本的に、今後のあり方を含め、どのような考え方を持っておられるか、この点について、明確にお示しをいただきたいのであります。昭和四十年に策定された出かせぎ労働者対策要綱によれば、「農家における生活費の補充のため、恒常的に季節出かせぎするという不自然な形態を改める必要がある」とありますが、現在、どのように改善されているのか。さらに、要綱には、「農業経営を近代化し、農家所得の向上をはかるとともに、地域開発による雇用機会の造成により、在宅通勤の機会を増大することも必要であり」ともうたっておりますが、この点について、どのような解決策が持たれ、その後、効果をあげているか。この点についてもお示しをいただきたいのであります。
 また、出かせぎ労働者の相当数が農業などの従事者に多いという統計から見ましても、ここにも政府の農業政策の欠陥があまりにも鮮明に浮き彫りにされているのではないかと言えるのであります。
 農業構造改善といい、また農業の近代化といい、すでにもう言い古された感がございます。一方においては、この改善を力説されながらも、一向に進展を見せていない、そのように申し上げても決して言い過ぎではないと、このように思うわけであります。農業改善のいかんは、先ほども問題になりましたように、とりわけ中小農家にとっては死活問題であります。こうした法案の改正が行なわれる際、並行的に、なぜ農業問題の障害要素を取り除くためにも、適切な措置が講じられなかったか。こうしたところにも、先ほどは、農業構造改善のための施策と取り組んでいる、こういう農林大臣の御答弁がありましたけれども、それにしては全く具体性に欠けるものではないか、このように思うわけであります。
 また、通年雇用を可能にするため、今回の法改正を機会に、中小企業の育成、整備などの対策が当然課題となってきますが、いかなる対応措置を考えられておりますか、あわせて念のために再確認を含めて御答弁をいただきたい。
 次に、法改正に伴う問題点の一つに、現在六十万人と推定されております季節出かせぎ労働者が、被保険者期間の計算方法の変更により受給資格が得られなくなるというおそれ、これは先ほども出たようであります。労働大臣の御答弁では、得られる。まあこまかい点については、委員会の質疑にゆだねたいと思いますけれども、どうも今回の改正点を見ますと、その点は、先ほどの答弁では明確を欠く、このように思いますので、重ねてこの点、究極的には締め出しにならないかという心配もございますので、明らかにしていただきたい。当然、季節出かせぎ労働者が時期的に制約を受けることは、政府当局も十分承知しておるはずでございますので、よしんばそれが直接的であれ、あるいは間接的であれ、締め出しを行なわない、間違いのないという保証があるかという依然として疑問が残るのでありますので、重ねてこの点について申し上げておきたいのであります。
 次に、労働大臣にお伺いいたしますが、まず労働福祉行政についてでございます。
 失業救済の一環として、福祉行政の充実強化をはからねばならないことは、論を待たないところであります。観念的な政治の筋論ではなく、対策の必要な現実があれば、これを補うための施策が要求されるのは、自明の理であります。しかし、現状は必ずしも満足すべき段階にあるとは思われないだけに、今後に臨む政府の具体性に富む方針を示していただければ幸いであります。
 次に、昨今の福祉施設に対する支出の増大の傾向について、引き続き無制限に支出が可能であるならば、第一条の目的規定を、労災保険と同様に、「労働者の福祉に必要な施設をなすこと」の明文を入れて改正する必要はないかということであります。本来、これらの福祉関係の支出金の大部分は、失業の予防対策あるいは就職促進のための職業訓練などのために用いられるべきであり、したがって、一般会計から支出されることが労働行政としては適正ではないか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
 次に、今回の改正点の一つに、五人未満の事業所まで拡大適用されることになりましたが、必然的に被保険者が急増することは当然でございます。したがいまして、保険料の増収があるわけでございますので、さらに保険料を引き下げる用意はないか、または給付内容の改善に充てるべきではないか、これは直ちに行なっても行なえないわけはないのではないか、このように考えられますので、この点についての御所見をお伺いいたします。
 次に、三年継続して短期離職者を一定数以上出した場合、事業主に対し特別保険料が徴収されるという仕組みになっておりますが、五人以下の事業所のほとんどは、申すまでもなく零細企業であります。その零細企業からまた特別保険料の徴収ということが行なわれますと、深刻な重荷になりかねない、こうしたことが当然推測されます。したがいまして、こうした問題についても格段の措置を講ずる用意はございませんかどうか、この点も明確にお示しいただきたい。
 次に、新たに設置されますところの納付命令制度というものがあります。確かに不正防止の手段としてはけっこうな方法かと思いますけれども、実はこれは諸外国にも例はございません。言うなれば、労働者にとっては過酷な規制という疑いが出てくるわけであります。ごく一部の者のために多くの善良な労働者が不愉快な影響を受けることは許されないことであります。ことに、こうした面におきましては運用のやり方が非常に大事だというふうに思います。しばしば、お役人仕事というとこの運用の面が問題点として指摘されてまいりますが、労働大臣としてはどのような決意をもってこうした運用をこれからはかっていかれるおつもりなのかどうか、この点についてもお答えをいただきたい。
 今回の改正は、主として給付内容を中心として若干の修正を試みようとしているわけでありますが、むしろ労災保険における年金額あるいは遺族一時金などの大幅な改善こそが緊急の課題ではないかと、こう思うわけであります。厚生省関係の援護法あるいは厚生年金、国民年金に基づく障害年金の引き上げが予定されておりますだけに、労災保険もこれらに準じて均衡を保つ上からも引き上げることが妥当ではないか。しかるに、今回なぜ問題にされなかったのか、その理由を明らかにされるとともに、今後の対策についてお示しをいただきたい。
 次に、この機会にお伺いしておきたいことは、労災補償の支払いについてであります。「迅速且つ公正」にと明文がございますように、なかんずく迅速に処理されることが最も肝要であることは申すまでもありません。しかし、実際には時間がかかり過ぎる、また、審査がきびし過ぎる、こういう不満の声があることも事実であります。これについて労働大臣は、どのように実態を把握されているのか、国民の納得のいくように説明をお願いしたい。
 最後に、総理にお伺いいたしますが、現在行なわれております建設事業の態様については、季節的に労働者の需要に変化がございまして、したがって、季節的労働者が顕在化してきたとも言えるわけであります。この現象は、公共事業などの事業計画と発注が年間適正に行なわれていない結果によるのではないかと思われるのであります。公共事業の事業計画について、通年雇用により就労が安定するよう実施方法を講ずることが望ましいと判断されるのでありますが、御見解をお示しいただきまして私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(佐藤榮作君) 渋谷君にお答えいたします。
 出かせぎのない農業の雇用の問題、同時にまた通年雇用、こういう制度の確立等について重ねてお尋ねがございました。先ほど大橋君にもお答えしたばかりでございますが、しかしこの問題は、御指摘のように、いまや単なる経済問題ではなく、これが社会問題をしばしば引き起こしております。したがいまして、同時に政治的な問題でもある。そういう意味で、重ねて政府の所見を申し上げますが、これらの問題と真剣に取り組んで、農業自身の本来のあるべき自立農家の育成強化についてこの上とも努力してまいるつもりであります。
 また、通年雇用の問題につきましては、その職場として中小企業の強化、これが先ほども申しましたように、魅力のある職場にすること、これが大事なことだろうと思います。この点重ねて、簡単ながらお答えする次第であります。
 次に、こういうような事柄が起こることからも、やはり季節的に好不況がないように、また全国的に仕事の量が、公平と申しますか、あんばいされることが必要だ、こういう御指摘でありますが、そのとおりだと思います。どうも、労働、工事、仕事自身がときに季節的に片寄るとか、あるいは地域的に片寄るとか、もちろん天候その他の都合から、そういうこともあり得ることだと思いますが、計画をする政府側におきましては、国内にまんべんなく仕事が行なわれるように、また、季節的にもできるだけこれを年間平均して行なうように努力してまいりたい。この上とも努力するつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣長谷川四郎君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(長谷川四郎君) ただいま総理からもお話がございましたが、農家の方々が家を遠く離れて出かせぎに出るということはなかなかいろいろの問題もあるので、この点につきましては大いに配慮しなければならない点がございます。これらについては、各般の面からこれらの問題の解決をつけていかなければならない、このように考えておりますが、農林省に、出かせぎ対策に対してという重ねてのお話でございますが、農林省において出かせぎ対策としては、農業委員会を中心といたしまして、就業の相談、この活動の実施を通じてこの問題の改善をはかっていくとともに、一方、改良普及職員によって、留守家庭の営農及び生活についての必要な助言や指導を行なっております。また、施策の実施によって、農家世帯数の出かせぎについては逐次改善は見つつあるものと考えられますけれども、なお一そうこれらの問題の充実をはかってまいる考え方であります。したがいまして、本年度の予算といたしましても、農家労働力の対策事業として予算額が、農業就業近代化事業に一億二千二百二十五万七千円、したがって、さらに生活教室の開催、これらに千七百七十七万八千円、昨年から見ると、かなり大幅にこれらに重点を置いて、この施策を通しまして、そうして留守家族に対しましても、また出かせぎの者につきましても、大いにこれらのほうに向かって、政府としてはできる限りの努力を傾けておるところでございます。(拍手)
   〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(原健三郎君) 渋谷さんにお答え申し上げます。
 第一は、出かせぎ労働者に対して期間計算の面から制約を与えておるのではないか。これは非常に異論の多いところでございますが、私どもの考えとしては、通常の労働者に期待し得る通常の雇用期間さえ満たしていただけば、給付には何らの差別を加えないという趣旨のもとに、こういう期間を六カ月に改めようとしておるのであります。実際に当たってみますと、季節的受給者のうちおおよそ八割の方は冬期受給者でございまして、この冬期受給者は、従来からそのほとんどが満六カ月以上で受給資格をつけておりますので影響はございません。また、残りの二割でございますが、それは夏期受給者に多いのでございますが、現在のままでは一部に影響を受ける者があることは当然でございます。しかし、今度改めまして、受給資格をつけることが容易になるように、被保険者期間の通算というのを特別に考慮に入れて加えております。すなわち、三カ月一カ所で働いて、一カ月よそで働いてもそれで四カ月、あと二カ月どっかで働く、合計しまして六カ月になれば、これは通算いたしまして支給いたしますから、私はほとんどこれで支障を来たさない、悪影響ないものと存じておるところでございます。
 それから失業者を対象とした血の通った労働福祉行政をやるべきである。当然でございまして、失業中の生活の安定と就職の促進をはかることが最も重要であると思っていろいろやっておるのでございます。そのために労働省といたしましては、失業保険金の支給、就職の特に困難な者に対する特別対策をやる、あるいは職業の紹介等種々の施策をやっておるところでございますが、今後も、なおさらにきめのこまかい配慮をいたしたいと思っております。
 それから福祉施設費は一般会計で当然やるべきであるという御質問でございますが、就職者に対する就職支度金等の給付金の支給や移転就職者のための宿舎の建設とか、職業訓練施設の設置をやるとか、被保険者の失業の予防、就職等に非常に密接な関係がございますものでございますから、失業保険の福祉施設は、保険事故の発生防止とその早期解消をはかるために行なうものである点にかんがみまして、直接被保険者の福祉の向上を目的としたものでありますから、保険金の中からこれを使用することは、決して一般会計からやらなくても、これが当然のことであると、こう考えておる次第でございます。
 それから保険料率の引き下げまたは保険給付内容の改善など、制度全体を改善すべきであるということで、ごもっともでございますが、このたびも保険料率を千分の一引き下げることによって、労使の負担の軽減をはかっておるところでございます。
 それから特別保険料の徴収は、零細企業に負担になるのではないかということですが、特別保険料は、季節的受給者の実態にかんがみ、通年雇用等季節的失業防止のための費用に充てるために、短期離職者を多数発生させている事業主から徴収するものでございます。その内容につきましては、事業主に過大な負担とならないように種々配慮をいたしておるところでございますが、特に零細企業につきましては、その負担を軽減するため、五人までは徴収しないことにいたしております。なお、今回の改正で保険料率の引き下げをやったことは、さいぜん申し述べましたとおりであります。
 それから次に、納付命令制度は失業者にとって過酷な制度であるということ、これもたびたび御質問をいただくのでございますが、失業保険における不正受給は近年著しく増大し、しかも悪質化いたしております。昭和四十二年度において不正受給の件数は二万九千件にのぼっております。金額にいたしまして五億円以上にのぼっておるところでございます。この不正受給に対する制裁としては、現在、不正受給金額を返還させる制度がある、不正受給を受けた場合にそれを返還すればよいということになっております。あるいは刑事罰の規定もあるのでございますが、全然効果がございません。したがって、納付命令制度を設けることは、失業保険における不正受給が大量、かつ、悪質化しておる現状にかんがみまして、万やむを得ざる措置であろうと考えるところでございます。
 しかし、この制度が労働者にとって過酷なものにならないよう、納付命令金額は不正受給金額と同額以下とすることにしております。
 それから五人未満の適用をはかった場合の財政的の影響等いろいろございましたが、五人未満の適用をはかった場合、財政的な影響は、いまかりに失業保険の五人未満事業所の大部分に適用した場合の収支推計を行なってみますと、約五十億円をこえる支出超過となるものと見込まれます。しかし、現在の収支状況から見て、この程度の支出超過を生じましても、十分対処できるものと考えております。
 次に、厚生年金、国民年金は給付額の引き上げがはかられておる、労災保険についても給付額を引き上げるべきではないかということでございます。実は労災保険制度の改善につきましては、最近、労働災害の続出もあり、また、各方面から強い要望もございますので、現在、労災保険審議会において鋭意検討を願っておるところでございますが、その答申のでき次第改正いたしたいと思っております。大体前向きの姿勢で改正いたしたいと思っておる次第であります。
 それから労災保険の給付を迅速かつ公正にやるべきものであるという、――ごもっともでございますが、労災保険は、個々のケースによって非常に事情も違いますし、間違いがあっては困りますので、若干おくれる場合もありますが、迅速、公正にやりたいと、これから督促してやる考えであります。(拍手)
#39
○副議長(安井謙君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#40
○副議長(安井謙君) 日程第三、通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長八田一朗君。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
   〔八田一朗君登壇、拍手〕
#41
○八田一朗君 ただいま議題となりました通商産業省設置法の一部を改正する法律案について、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、通商産業省職員等に対し、その職務の執行に必要な研修を行ならため、本省の附属機関として、通商産業研修所を設置しようとするものであります。
 なお、本法律案は、衆議院において、施行期日につき所要の修正が行なわれております。
 委員会におきましては、本研修所の組織と研修内容、臨調答申に基づく行政改革の現状と今後の方針、産業公害対策、日中貿易、消費者行政、綱紀粛正等の諸問題について質疑が行なわれましたが、その詳細については会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#42
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#43
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時散会
ソース: 国立国会図書館
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