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#1
第061回国会 本会議 第18号
昭和四十四年四月十四日(月曜日)
   午前十時四分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第十九号
  昭和四十四年四月十四日
   午前十時開議
 第一 公害に係る健康被害の救済に関する特別
  措置法案、公害紛争処理法案(閣法第六八
  号)、公害に係る被害の救済に関する特別措
  置法案、公害紛争処理法案(衆第二〇号)、公
  害に係る健康上の被害の救済に関する法律
  案、公害に係る紛争等の処理に関する法律案
  及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案
  (趣旨説明)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
#3
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案、公害紛争処理法案(閣法第六八号)、公害に係る被害の救済に関する特別措置法案、公害紛争処理法案(衆第二〇号)、公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案、公害に係る紛争等の処理に関する法律案及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案(趣旨説明)。
 七案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めます。斎藤厚生大臣。
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(斎藤昇君) 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 今日、産業経済の急速な発展と都市化の進展等に伴って発生する公害問題が緊急に解決を要する重大な社会問題となっていることは、すでに御承知のとおりでございます。
 この問題に対処するため、政府といたしましては、公害対策基本法に定められた理念と方向に従い、従来から、各般にわたる公害防止のための施策の拡充強化につとめてまいったところであります。公害問題の解決のためには、公害の発生を未然に防止するための対策が重要であることは申すまでもありません。しかしながら、現に発生している公害による被害の救済をはかることも、また対策の一つとして・欠くことのできないものであります。
 公害による被害については、公害の発生原因者の民事責任に基づく損害賠償の道が開かれておりますが、現段階においては、その因果関係の立証や発生責任者の明確化等の点で困難な問題が多く、このため、被害救済の円滑な実施をはかるための制度の確立が強く望まれているのであります。このような見地から公害対策基本法の精神にのっとり、公害による被害のうち当面緊急に救済を要する健康被害について迅速かつ適切な救済をはかることを目的として、ここに本法律案を提案することといたした次第であります。
 以下、この法律案のおもな内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律による救済の措置は、相当範囲にわたる著しい大気の汚染または水質の汚濁が生じたため、その影響による疾病が多発している地域を指定し、これらの指定地域の都道府県知事または政令で定める市の長が当該疾病にかかっている旨の認定をした者に対して行なうことといたしております。
 第二に、救済の措置としては、医療費のほか、医療手当及び介護手当を支給するものとしております。医療費は、当該疾病の医療に要した額から社会保険等による医療に関する給付の額を控除した額を対象として支給することといたしております。医療手当は病状が一定の程度以上の者に支給し、介護手当は特に介護を要する者に支給することとしておりますが、本人、配偶者等の所得税の額が一定額以上の場合は支給の制限を行なうことといたしております。
 第三に、給付に要する費用についてでありますが、産業界、国及び地方公共団体がそれぞれ分担するものとし、その割合は、都道府県が実施する場合は、産業界四分の二、国及び都道府県それぞれ四分の一とし、市が実施する場合は、産業界六分の三、国・都道府県及び市それぞれ六分の一といたしております。なお、産業界及び国の分担は、公害防止事業団を通じて行なうこととしております。
 第四に、産業界の分担は、本制度に協力することを目的とする民法による法人で、その申し出により厚生大臣及び通商産業大臣の指定を受けたものが、公害防止事業団と契約を締結し、毎年、事業団に対して所定の額を拠出することによって行なうこととしております。
 以上のほか、被害者が損害賠償等を受けた場合における本制度による給付との調整の措置、その他この法律を実施するため必要な措置について規定いたしております。
 以上をもって公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案の趣旨の説明を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(重宗雄三君) 床次国務大臣。
   〔国務大臣床次徳二君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(床次徳二君) 公害紛争処理法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 公害問題は、申すまでもなく、現在緊急な解決を必要とする国民的課題でありますので、政府といたしましては、従来から公害対策基本法の精神にのっとり各般の公害対策を講じているところであります。
 公害対策におきましては、何よりも公害の発生を未然に防止する措置を講ずることが肝要でありますが、同時に、公害が発生した場合に備えて、公害紛争処理制度を整備することが必要であります。
 公害による被害は、単に財産的なものにとどまらず、人の生命、健康に及び、しかも、当事者が多数にわたり、かつ、加害と被害との因果関係の究明も困難である等、公害特有の問題があり、これらが公害にかかる紛争の迅速、円滑な解決を困難ならしめているのが実情であります。
 かかる公害にかかる紛争を処理する行政上の制度として、現在、水質の汚濁、大気の汚染等につきまして和解の仲介制度がありますが、調停、仲裁を行ない得ない等不備な点が多く、また、現行の司法制度をもってしては、必ずしも簡易迅速な解決をはかるのに十分でないうらみがあります。
 このような公害紛争処理制度の現状にかんがみ、また、公害にかかる紛争について必要な措置を講ずべきことを定めた公害対策基本法第二十一条第一項の精神にのっとり、公害にかかる紛争の迅速かつ適正な解決をはかるため、公害紛争処理制度を整備すること等を目的としてここに公害紛争処理法案を提案することといたした次第であります。
 次に、この法律案のおもな内容についてその概要を御説明申し上げます。
 第一に、公害にかかる紛争を処理するための専門的な機構を中央及び地方に置くこととしたことであります。中央に置かれる中央公害審査委員会においては、現に人の健康または生活環境に公害にかかる著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、または及ぶおそれのある紛争、広域的な見地から解決する必要がある公害にかかる紛争、被害地及び加害地が二以上の都道府県の区域にわたる公害にかかる紛争について、調停及び仲裁を行なうこととしております。また、地方に置かれる都道府県公害審査会等においては、これらの紛争以外の紛争について和解の仲介、調停及び仲裁を行なうこととしておりますが、さらに被害地及び加害地が二以上の都道府県の区域にわたる公害にかかる紛争については、関係都道府県が、事件ごとに共同して連合審査会を設け、これを処理することができることとしております。
 第二に、これらの機構においては、人格が高潔で識見の高い者のうちから、委員長、委員または審査委員候補者が任命または委嘱され、これらの者のうちから、事件ごとに指名された仲介委員、調停委員または仲裁委員が、それぞれ所定の手続に従い、和解の仲介、調停または仲裁に当たることとしております。なお、調停の場合には、当事者に対し出頭要求を、また一定の場合に文書、物件の提出要求ないし立ち入り検査を行ない得ることとしております。仲裁の場合にも同様の権限を与えております。
 第三に、これらの機構については、具体的な紛争の処理を通じて得られた公害防止の施策の改善についての意見を、中央においては内閣総理大臣等に対し、地方の公害審査会においては都道府県知事に対して申し述べることができることとしております。
 以上のほか、公害問題は、地域住民に密着した問題でありますので、地方公共団体は、公害に関する苦情について適切な処理につとめる旨の規定を設けた次第であります。
 なお、いわゆる基地公害といわれる防衛施設にかかわる障害に関する事項については、この法律案において別に法律で定めるところによることとしておりますが、これは、その原因となる自衛隊等の行為の特殊性にかんがみて、一般の産業公害と同じ扱いとすることは不適当であり、また、政府は、すでに、防衛施設周辺の整備等に関する法律等により、障害防止工事及び民生安定施設の助成、損失の補償等について手厚い措置を講じ、その補償について異議の申し立て等の制度を設け、円滑な解決をはかっておりますので、これらの措置によることとした次第であります。
 以上が、公害紛争処理法案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(重宗雄三君) 衆議院議員角屋堅次郎君。
   〔衆議院議員角屋堅次郎君登壇、拍手〕
#9
○衆議院議員(角屋堅次郎君) 私は、提案者を代表いたしまして、日本社会党提出、公害に係る被害の救済に関する特別措置法案並びに公害紛争処理法案につき、提案の理由とその内容の概要を御説明申し上げたいと思います。
 戦後わが国の経済は、敗戦の廃墟の中から再出発し、今日世界第三位の生産力を誇るまでに成長いたしましたが、庶民の生活実感からすれば、生活は決して楽になったとはいえず、むしろ物価の上昇、公害の激増、交通事故の多発等による生活と生命の脅威に絶えず不安を感じ、はなやかな見せかけの数字より、もっと中身のある経済成長を待ち望んでおります。特に公害の激増は、近年大きな社会問題であり、政府の相も変わらぬ企業擁護の姿勢に鋭い批判の眼が向けられ、また、企業の社会的責任を無視した経営方針の転換を望む国民的世論も、日増しに高まりつつあります。しかし、依然として政府も、企業も、その態度に根本的な反省は見られず、公害は経済発展の必要悪のごとき観念の存することは、まことに遺憾であります。
 昨年十二月の国連総会において、スウェーデンの提案による、「世界は核戦争による絶滅は避け得ても、公害により同じような脅威を受けている。政府も産業界も必要な責任をとるべきだ」とする決議案が採択されましたが、これは世界のいずれの国よりも、まず、日本の政府と産業界に対する警鐘として謙虚に受け取るべきであります。
 元来、公害対策の万全を期するためには、公害の予防、公害の排除、公害にかかる被害の救済について思い切った法制的、財政的措置を必要といたしますが、かかる観点から、わが国の公害対策の現状を見るとき、両者ともにきわめて不十分であり、特に法制的には、現行の公害対策基本法をはじめ、大気汚染防止法、騒音規制法、水質二法等の抜本改正が必要であり、ただいま提案されました政府の二法案も、原案のままでは、とうてい公害に呻吟ずる患者はもとより、公害追放を望む国民の期待にも沿い得ないと存ずるのであります。すなわち、政府の救済法案は、その対象を大気の汚染と水質の汚濁による健康にかかる被害に限定するのみならず、所得制限をし、しかも被害者及びその家族の生活費についての配慮を全く欠いており、被害者救済としてはきわめて不十分であります。これではもし紛争処理法が完全なものであったとしても、被害者としては当面の医療、生活の費用にもこと欠き、ついには加害者に有利な条件のもとに妥協してでも、急いで紛争解決をせざるを得ない羽目に追い込まれると判断されるのであります。さらに、政府の紛争処理法案は、国に置かれる中央公害審査委員会が独立の行政委員会ではなく、総理府の附属機関とされていて、弱体であることは否定できず、その上、仲裁制度も、当事者双方の合意による申し立てが、仲裁開始の条件であり、したがって、これを利用するかいなかは、事実上加害者の選択にまかされており、今日企業者の倫理意識と責任感では、ほとんどこの制度は画餅に帰すると申せましょう。さらに重大なことは、騒音、振動などの基地公害が現に多発しており、今後もその増加が十分予測されるのに、これを適用除外とし、救済の道を閉ざしていることは、国民の健康、生命よりも軍事を優先するという政府・自民党の姿勢を端的にあらわしたものであり、断じて許すことはできないのであります。
 今日、公害紛争がこじれて補償問題も解決しないまま苦難にあえぐ公害病患者の悲惨さは、わが党が現地調査を行なった新潟の水俣病、富山のイタイイタイ病、四日市の公害病等の患者の実態でも明らかにされ、骨身にこたえるほど公害絶滅に対する政治の責任を痛感したのであります。
 また、新産都市その他の都市の公害紛争を見て、企業の強引さに憤激を覚え、正しい紛争解決の道筋を示すことの必要も痛感しております。
 わが党が、昨年来の公害総点検、公害絶滅の運動の実績の上に立ち、政府と企業の姿勢に警鐘を鳴らし、国民の健康と生命を守り、被害者擁護の立場から公害二法案を提案いたしましたのも、当面の重大な政治的課題に真剣にこたえんがためであります。
 以下二法案の内容について、簡潔に申し上げます。
 まず、公害に係る被害の救済に関する特別措置法案について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、公害にかかる被害の救済は、第一条において明らかなとおり、健康または物についての被害について行うことといたしております。
 第二に、公害病患者の認定は、政府案の場合、指定地域の区域内に、相当期間住所を有することが必要とされておりますが、わが党案では、相当時間指定地域内において過ごした期間が、厚生大臣の定める基準以上であればよいとして、郵便集配人等をも対象としたところに相違があります。また政府案では、公害病認定患者が指定地域外に住所を移したとき、または住所が指定地域でなくなったときには、一定期間で給付が打ち切られますが、わが党案では、指定疾病もしくは障害に該当しなくなったと認められるまで、打ち切られることはないのであります。
 第三は、医療費等の支給について、政府案のような所得制限等の制限を設けていないことはもとよりでありますが、医療費について、政府案では国民健康保険の一部負担金分のみが、支給されるのに対し、わが党案では、健康保険法その他の社会保険各法及び健康保険臨時特例法による一部負担金分をも支給することと定め、また介護手当について、政府案は介護を受けても介護に要する費用を支出しない場合には、介護手当の支給をしないとしておりますが、わが党案では、介護を必要とする状態にあり、かつ介護を受けている者に対しては、当然支給をすることといたしております。
 第四に、生活援護手当については、生計基準額と収入とを比較し、収入が生計基準額を下回ることとなったとき、その差額を生活援護手当として支給し、安んじて療養できるよう措置いたしております。
 第五に、物にかかる被害についての救済は、生計基準額と収入とを比較し、収入が生計基準額未満となったとき、政令で定める期間、その差額を特別手当として支給することにより、物にかかる被害の打撃から立ち上がれるよう措置いたしております。
 第六に、費用は、政府案では、国、県、政令で定める市、事業者の四者負担方式をとり、そのうち事業者は拠出金として拠出することになっております。その場合、政府案に基づく中途半端な拠出で事業者に免罪符を与えることになる危険性があるのでありますが、わが党案では、これを排して国が費用を受け持ち、反面国は、支給した額の限度において、その支給を受けた者が、加害者に対して有する損害賠償の請求権を取得することとして、加害者の責任を徹底的に追及することといたしております。
 次に、紛争処理法案について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、公害の紛争については、和解の仲介及び調停の制度並びに裁定制度を設けて、解決をはかることといたしておりますが、政府案の仲裁制度に対し、裁定制度を設けたことが、わが党案の大きな特徴であります。すなわち、救済法によって当面の費用は十分にめんどうを見てやり、いたずらに加害者に有利となるような妥協を排し、加害者の責任を徹底的に究明するため、当事者の一方のみの申し立てでも開始される準司法的な裁定制度を設けたのであります。
 第二に、組織としては、中央に国家行政組織法による三条機関たる公害審査委員会を、都道府県に公害紛争調停仲介委員会を設けることといたしております。中央は裁定を、地方は和解の仲介及び調停を行なうのであります。
 第三は、中央の公害審査委員会に公害専門調査会を設けたことであります。公害紛争の焦点は、因果関係の究明が困難な点にあるのでありますが、これを究明させるため権威ある自然科学者を専門調査会に動員いたしまして、これに自然科学上の判断を行なわせ、法律的判断たる裁定は、その意見に基づいて裁定委員会が行なうこととし、専門調査会の委員及び臨時委員は、察理、証拠調べに立ち会い、独自でも事実調査をすることを認め、これによって裁判上救済の困難な事案を救済するレールをしいたわけであります。
 第四は、裁定と訴訟との関係について、特に大気の汚染または水質の汚濁によって生じた人の生命または健康にかかる被害についての損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争については、裁定を経た後でなければ、訴訟を提起することができないこととし、裁定の権威を高めるための機構、運営に万全を期することといたしております。裁定委員会の証拠調べ及び証拠保全、職権探知、立ち入り検査等も、公害専門調査会の活動と相まち、裁定の科学性、合理性、客観性を立証するための必要な措置と申すべきであります。
 第五に、裁定の効力は、裁定について、裁定書の正本の送達を受けた日から三カ月以内に、訴えの提起がなかったとき、裁定の内容について当事者間に合意が成立したものとみなすことといたしております。
 以上公害関係二法案の提案の理由とその概要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げまして、二法案の趣旨説明を終わる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(重宗雄三君) 小平芳平君。
   〔小平芳平君登壇、拍手〕
#11
○小平芳平君 私は、発議者を代表いたしまして、公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案、公害に係る紛争等の処理に関する法律案及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案について、提案理由並びに内容の概要を御説明いたします。
 最初に、公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案について申し上げます。
 公害対策の要諦は、公害の発生を未然に防止することにあります。事前防止対策を完全に講ずるならば、公害病の発生もあり得ないのであります。しかし、政府がいままでとってきた公害対策は、経済発展を優先してきたために、事前防止策が立ちおくれ、不幸にして多数の公害病患者を発生せしむるに至ったのであります。すなわち、熊本県水俣、新潟県阿賀野川における有機水銀中毒病、富山におけるイタイイタイ病など、工場排水等が原因と思われる悲惨な公害犠牲者を出してきたのであります。また、四日市における石油コンビナートの大気汚染によるぜんそく患者をはじめとして、京浜工業地帯、東京の環状七号線交差点の大原においてもぜんそく病状が発生していることは、御承知のとおりであります。
 しかるに、これらの公害病患者に対する行政救済の法制度は存在せず、わずかに予算運用で公害病患者の一部に対する医療給付が行なわれているにすぎません。もちろん司法的救済の道もありますが、訴訟に費用と時間がかかることや、救済の迅速性に欠けること、因果関係の立証が困難なことなどの障害があって、公害病救済になじまないのであります。
 このような法制度の不備という谷間に追いやられた公害病患者と家族の肉体的、精神的、経済的苦しみは想像を絶するものがあるのでありまして、これら公害病患者の置かれている悲惨な境遇と、救済制度確立に対する切実な願いを思うとき、わが公明党は、これらの人々を一日も早く救済するために独自の新しい制度を創設する必要性を痛感するのであります。
 公害病は、現代産業社会における人間の、社会的、経済的活動によってもたらされる災害であります。しかも、わが国における公害病の多くは、最近十数年の高度経済成長政策に基づく企業の産業活動によってもたらされたものであります。経済発展という名目のもと、地域の住民に対して塗炭の苦しみを与えることは許せないことであります。また、技術的に解決が困難という理由で放置することはできないのであります。
 次に法案の要旨を説明いたします。
 この法案による救済の対象は、公害にかかる健康上の被害でございまして、救済の種類は、医療費、医療手当、介護手当及び弔慰金の支給及び厚生、生計維持のための資金の貸し付けでありまして、他に健康診断も実施いたすことになっております。
 救済の仕組みでございますが、公害病が発生していると認められる地域と疾病の種類を公害委員会が指定し、次に、都道府県知事は公害病患者及び公害病による障害者を認定し、これらの人に対して知事が救済給付を行なうことになります。
 医療費の支給については、社会保険、社会福祉各法による医療給付を控除した部分、つまり患者の自己負担分をカバーすることといたします。
 医療手当は、通院、入院によって医療を受けている者に対して行なわれるものであって、いわば医療に伴う日常必要とする雑費でございます。在宅治療患者で介護を要する重症患者に対しては介護手当を、また、不幸にして公害病でなくなられた方の遺族に対しては弔慰金を支給することといたします。
 公害病の発生している地域においては、常時住民の健康管理を実施することによって、公害病の予防と早期治療をはかる必要がありますので、健康診断を実施することといたします。
 以上の給付は都道府県知事が行なうのでありまして、これに要する費用の負担については、国が八分の六、都道府県が八分の一、市町村が八分の一をそれぞれに負担することとし、国及び地方公共団体は、給付に要した費用額を限度として公害病の原因者に対して損害賠償の請求を行なうことができる仕組みになっているのであります。
 なお、公害病患者、障害者が置かれている特殊な状況を考えて、事業援助、技能習得、生計維持のための資金の貸し付けの制度を設けることによって、経済的側面からの援助をはかることといたします。
    ―――――――――――――
 次に、公害に係る紛争等の処理に関する法律案について申し上げます。
 御承知のとおり、最近における産業の急速な発展と都市化等によって、全国各地の工業地帯や都市において深刻な公害紛争が惹起しているのであります。
 多くの人々が、いかに公害に悩まされているかを具体的に数字で示しますと、昭和四十二年度において地方公共団体が取り扱った公害にかかる苦情・陳情件数は、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭、地盤沈下など、合計して二万七千五百八十八件に達しておるのであります。四十一年度の取り扱い件数二万五百二件に比較して、四十二年度は八千五百余件増加しているのであります。公害対策が画期的に前進しない限り、遺憾ながら、今後も苦情や紛争は、なおも増加し続けるものと予想されるのであります。
 現在、このような公害にかかる苦情や紛争の解決の方法としては、司法的解決と行政的解決と二つの方法がありますが、司法的解決は、迅速な解決を要する公害紛争にはなじまないのでありまして、どうしても行政的な処理制度が必要となってくるのであります。
 一方、行政的解決としては、ばい煙は大気汚染防止法、水質汚濁は水質保全法、騒音は騒音規制法、鉱山の鉱害は鉱業法、水洗炭は水洗炭業法によって、紛争についての和解の仲介やあっせんの制度が設けられておるのであります。しかし、これらの制度は、公害紛争の処理制度として、個別に取り上げてみても、また全体として見ても、幾つかの欠陥があるのであります。
 まず、第一に、和解の仲介やあっせんの制度は、紛争当事者に対して行政が話し合いの場を提供し、和解への消極的な誘導をするだけで、積極的な関与ができない仕組みであります。公害紛争の特質から考えて、公正な機関が、権限をもって積極的に関与していく調停・仲裁等の方法が必要になるのであります。場合によっては、公害発生源への立ち入り検査などできるようにして、科学的で公正な事案の解決を期することが必要なのであります。この点から考えても、現行の和解の仲介制度は、はなはだ微温的なものと言えるのであります。
 第二に、現行の処理制度は、公害の一部分についてカバーするだけであって、悪臭や日照妨害等については何ら触れていないのであります。公害の苦情、陳情の実態を見ましても、今後、なお、産業の発展、社会生活の変化に応じて、この種の公害は増加することが予想されますので、これらの公害にかかる紛争の処理も取り込んで、制度を確立する必要があるのであります。
 なお、発生源がどのようなものであれ、統一的な紛争処理制度のもとで、これを処理するのが望ましいのでありまして、国民の健康を保護し、生活環境を保全することを第一義と考えるならば、自衛隊や外国軍隊の基地から発する公害についても、他の公害と同一の取り扱いをすべきことは当然であります。
 第三に、現行の公害紛争の処理が、公害原因の種類ごとに別々の法律により、別々の処理機関によって行なわれており、制度が複雑になっていることであります。このことが、紛争処理制度の効率的運用を妨げ、ひいては紛争の迅速な解決に障害を及ぼすことになるのであります。
 第四に、公害や、生活妨害にかかる日常の苦情相談の窓口の設置が法制化されていないことであります。地方公共団体が、それぞれくふうをこらして窓口を設けているところがございますが、必ずしも十分の体制とは申せないのであります。
 以上述べたような、現行の公害紛争処理制度の欠陥を是正し、一元的かつ体系的な紛争制度を確立し、もって公害紛争の迅速、公正な解決をはかろうとするのが、本法律案の提案の理由であります。
 次に、法案の要旨を申し上げます。
 第一に、紛争処理の対象は、公害対策基本法に定められた相当範囲にわたる六種類の原因によって生ずる被害にかかる紛争とし、苦情処理の対象は、日常の生活妨害をも取り扱うものであります。いわゆる紛争処理の対象を典型公害的な事案を取り扱うこととし、苦情処理の対象は相隣関係に基づく生活妨害的な事案を取り扱うことといたします。
 第二に、苦情処理については、都道府県または政令市に設置する苦情相談員が取り扱うこととし、住民の日常の公害苦情の解決のため相談、助言、指導、調査に当たることとします。
 第三に、公害原因が相当範囲にわたる公害の紛争処理については、中央に設けられる公害委員会と都道府県に設けられる公害審査会が取り扱うことといたします。そして、中央の公害委員会は一の都道府県における公害の発生源が他の都道府県に被害を及ぼす場合や、高度の知識、判断を要する場合等の紛争を取り扱い、地方の公害審査会はその他の紛争処理を取り扱うこととなっておるのであります。
 第四に、紛争処理の内容でありますが、和解の仲介、調停及び仲裁の三つの方法をとれるようにいたします。調停については、調停案の受諾の勧告ができるようにし、場合によっては調停案を公表し、調停不調の場合でも、事件の要点及び経過を公表することができることになっております。仲裁にあたっては、仲裁人は関係文書、物件の提出を求め、立ち入り検査ができることとなっているのであります。
 第五に、公害審査機関(公害委員会、公害審査会)は、公害紛争処理のために関係行政機関に対して必要な協力を求めることができるとともに、紛争処理に関連して意見を述べることができることといたしております。
    ―――――――――――――
 次に、公害委員会及び都道府県公害審査会法案について申し上げます。
 わが国においては、従来、公害行政を統一的につかさどる機関が欠除しており、各省庁が既成の行政分野の中で、それぞれ部分的に公害行政を分割担当しているのでありまして、関係するところは十数省庁に及んでいる実情であります。そのために、公害防止の施策に統一性を欠き、体系的な対策の確立がおくれているのであります。わが公明党は、かねてから、これらの欠陥を指摘するとともに、強力な権限を有する行政委員会の設置を主張してきたのであります。
 一方、公害の事後処理のための行政機関についても同様のことが言えるのであります。公害紛争処理については、紛争発生の原因、種類によって、これを取り扱う法律、解決の方法、処理機関が異なっております。たとえば、鉱山の鉱害にかかる紛争は、鉱業法によって通産局長があっせんを行ない、一般の工場、事業場のばい煙にかかる紛争は、大気汚染防止法によって都道府県知事が和解の仲介を行なうなど、紛争当事者、特に、被害者にとって利用しにくい複雑な仕組みになっているのであります。
 また、公害による被害の救済については、これを法律上の明確な権限をもって処理する機関もなく、現在は、国が便宜的に予算上の措置で、一部の地域の公害にかかる疾病について、医療の給付を行なっているにすぎません。
 わが党が提出している公害に係る紛争等の処理に関する法律案と公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案は、以上のような障害を解消するために、具体的な方法を規定しようとするものでありますが、その前提として、公害にかかる紛争処理と被害の救済の事務を一元的に取り扱う機関として、中央には公害委員会を、都道府県には、公害にかかる紛争処理の事務を取り扱う機関として、都道府県公害審査会の設置を明定する必要があるのであります。
 御承知のとおり、公害は、科学的にも法律的にも複雑な性格を持っているのでありまして、これを処理するためには専門的機関が必要となるのであります。特に、中央に設置する公害委員会は、紛争処理については准司法的機能を、被害の救済については、判定機能を有することとなるのでありますが、裁定、判定の公正を期するためには、高度の識見にささえられ、しかも、他の行政機関から制約されずに、独自の権限を行使する機関でなければなりません。この意味において、中央の公害委員会は、国家行政組織法の第三条に基づいて設置する機関とする必要があります。これに伴って、公害委員会の委員については、公害問題について、高い識見を有する者のうちから、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとするとともに、委員の活動を補佐するための事務局を設置することといたすのであります。
 また、地方の機構については、各都道府県に公害審査会を必置することによって、紛争処理についての体制を常時整えておく必要があるのであります。
 次に、この法律案の要旨を申し上げます。
 国家行政組織法第三条に基づいて、総理府の外局として、公害委員会を設置し、公害にかかる健康上の被害の救済に関して、健康診断並びに認定患者及び認定障害者の認定の事務並びに公害にかかる紛争の処理等に関する事務に当たらせることといたします。
 公害委員会の委員は六名とし、公害問題に関し高い識見を有する者のうちから、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命することといたします。なお、委員会の議事及び委員会の行なう公害にかかる紛争の処理に参与させるため、特別委員を置くとともに、公害委員会に事務局を置くことになっているのであります。
 都道府県に都道府県公害審査会を設置し、公害にかかる紛争の処理に当たらせることといたします。
 以上が三法案の趣旨でございます。(拍手)
#12
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。千葉千代世君。
   〔千葉千代世君登壇、拍手〕
#13
○千葉千代世君 私は、日本社会党を代表して、公害関係二法案に関連し、佐藤総理並びに関係各大臣、同二法提案者であります衆議院議員角屋堅次郎氏に対し、質問いたします。
 昭和三十年以降の高度成長は、物価のとめどもない上昇や、公害、交通事故、住宅難など、いわゆる新しい貧困の問題を生み出しました。とりわけ、無計画な設備投資と都市づくりの結果としての産業公害、都市公害は、基地公害をも含めて、いまだかつて経験したことのない被害を国民に与えています。富山県のイタイイタイ病、新潟県阿賀野川の水銀中毒、熊本県における水俣病による悲惨な状態、四日市、京浜、京葉、阪神、北九州など工業地帯における亜硫酸ガス、東京その他の全国的な自動車排気ガスなどによる公害病は、国民の生命と健康を毎日毎日むしばんでおります。自治省の調査によっても、昭和四十二年度の公害の苦情、陳情件数は二万七千件にのぼり、前年比三五%増という状態を示しているのであります。まさに公害は一億総被害と言われるほどに日本全体の深刻な社会問題となっています。公害はまた世間全体の問題でもあります。昨年十二月の国連総会では、公害問題で国際会議を開こうというスウェーデンの提案が採択されました。同国大使は、「世界は、核戦争による絶滅を避けるととができても、公害による同じような脅威を受けている。政府も、産業界のたれもが、必要な責任をとるべきだ。」と強調しております。佐藤総理は、この核戦争に匹敵するほどの脅威となっている公害の現状を真に正しく認識しておられるでありましょうか。私は、残念ながら、政府の公害対策の基本姿勢は、このような危機意識を欠いているがゆえに、小手先の対症療法に終始しており、国民の生命と健康を守る長期的な予防対策を放棄していると言いたいのであります。(拍手)石炭から石油へ、石油から原子力エネルギーへと急速にエネルギー政策が推し進められている中で、原子力公害を含めた長期予防対策を欠くならば、全人類は将来、地球に適応できなくなるであろうと、心ある学者はすでに警告しているのであります。公害の現状認識とその対策の基本姿勢について、佐藤総理の見解を伺いたいと思います。
 私は、次に、公害に関する企業の責任について、総理大臣、通産大臣及び厚生大臣にお尋ねいたします。
 まず、企業の公害防止努力についてであります。
 公害を有効に防止するためには、総設備投資に対する公害防止設備投資の比率を三%まで高めることが最低線とされております。欧米の諸国では五%、カナダではすでに九%に達していると聞いております。これらに比べてわが国においては、公害防止の設備投資はわずかに一・七%にすぎないのであります。各地で発生しておる公害病も、企業が当然とるべき必要な措置をとっておれば未然に防ぎ得たであろうと考えられるのであります。一方、公害の事後救済についても、企業はその責任を果たしているとはおせじにも言えないのであります。政府提案の医療救済法案によれば、産業界の費用の拠出は救済費用の五〇%となっており、その額も平年度でわずかに約一億二千万円にすぎません。昭和四十二年度の企業交際費六千九百三十三億円に比べると、あまりにも奇妙な対照を描き出しておると思います。租税特別措置法などによって企業のみを助成しているがために、公害防止、公害救済の費用の投資、拠出についても企業の負担を軽減する政府の施策は、しょせん産業擁護を第一義とするものであり、国民の生活環境の保全と健康の保護を第二義としているように受け取れるのであります。政府は、今後企業の公害防止施設の設備投資を強力に指導し、脱硫装置の完備をはかるとともに、また輸入原油に対し、現地脱硫の方法などを考えておりますかどうですか。さらに一方、公害救済医療費に対する事業者拠出分を大幅にふやすように考えておりますか、御答弁願いたいと思います。
 また、すでに政府によって公害病と認定されたにもかかわらず、いまだに被害者に対して補償もせずにうそぶいている水俣窒素、新潟県昭和電工、富山県三井金属の諸企業に対してどのような考え方を持っておりますか。補償の問題は、最終的には裁判で争うべきものとして手をこまねいておられるおつもりですか。紛争処理制度との関連についてもお考えを聞きたいのであります。
 次に、通産大臣に対し、工業立地と公害防止策についてお伺いいたします。
 去る三月には、静岡県富士市における住民の火力発電所建設に反対する事件がありました。それは、公害によって地域の環境を汚染され、ひいては生命と生業をも侵害される住民のやむにやまれぬ行動であったということを考えるとき、この事件の前に当事者が打つべき手をはたして打っていたのであろうか、そうではないでしょう。過去において国や自治体がとってきた立地政策や公害対策、企業の公害防止の怠慢に対する不信感があったからでありましょう。いままでのような立地政策を改めない限り、また、企業が社会的な責任を自覚してみずから公害防止をしない限り、いかなる地域においても公害反対運動は絶えないでありましょう。また、地元が公害を発生するような企業を受け入れたくなくても、国の産業政策の上から、あるいは企業の都合の上からやむを得ず進出を認めるといった現実もあるのでございます。現に、千葉県友納知事は、私どもが公害視察に行った際に、千葉県としてはこれ以上はお断わりしたいと思っても、首都圏間のつき合いで断わり切れない場合もあるからとおっしゃっておりました。今後の工業立地は住民の環境保全を大前提とし、広域的に公害防止の効果的な手段を、企業も国も自治体も十分講じ、しかも、地元住民の完全な納得の上で実施さるべきものと考えるのでありますが、通産大臣は、公害防止からの工業立地の規制についてどのような具体的方針をお持ちか、お聞かせ願いたいのであります。
 次に、私は、文部大臣及び厚生大臣にお尋ねいたします。
 学校児童、生徒を公害から守る対策についてどのように考えていらっしゃるかということでございます。児童が、国の将来の大事なにない手であることは申すまでもありません。しかし、最近は全国の各地で公害によって児童の健康がむしばまれ、学校における教育活動が妨げられております。厚生省の実施したばい煙等影響調査によりますと、公害のない地域に比べて、大阪、四日市、京葉、市原の公害地帯では、学童の中に目やのどの痛み、せき、たん、頭痛、吐きけなどの自覚症状を訴えたり、欠席する者が多い、こう示されております。さらに進んで、子供たちの小さなからだの中の小さな肺臓が、間断なく吸わされる亜硫酸ガスのために命を奪われる一歩手前にある。こういう子供がたくさんおります。もうけ仕事に狂奔するおとなたちが寄ってたかって子供たちの大切な命を奪いつつあるとしたならば、まことにゆゆしい問題と言わなければなりません。一刻も放置してはおけないと思います。また、羽田空港、伊丹空港、横田基地の周辺では、航空機の騒音によって授業がしばしば中断され、学童の注意力散漫、音に対する異常な反応などの事実が種々の調査で指摘されているのでございます。児童を空気のきれいな静かな環境で、心身ともにすこやかに育て、勉強させてあげるのが私どもおとなの共同の義務だと思います。
 ですから、ばい煙よけのマスクをかけて運動場を走り回り、工場ばい煙が舞いおりてくるとあわてて空気清浄室へ逃げ込む学童たちの姿は、とても見るに耐えないものでございます。この空気清浄装置はあまり効果がないと聞くけれども、その効果はどのようなものでございましょう。あるいは設置状況について厚生大臣にお答えいただきたい。また、学童に対する公害調査、公害健康診断、公害病の認定、公害等不適格事業の拡大などについてどのような具体的な方針をお持ちであるのか、お聞きしたい。
 さらに、汚染地域の学校を他に移す等、抜本的な施策を考えているかどうか、文部大臣にお尋ねいたします。
 次に、公害罪について総理に伺います。
 目下、法制審議会刑事法特別部会において、産業公害発生者の刑事責任の法制化を検討中であることは御承知のとおりであります。事業活動から生ずる公害が、かくまでも人間の生命を侵害している段階に至った現在、公害罪の検討は時宜を得ていると思いますけれども、事業者の社会的責任を喚起し、公害発生を予防する意味においても、意義が大きいと思います。いままでの政府の公害の新規立法は、とかくすると事業者側の圧力によって左右され、出てきたものは骨抜きでもって、被害者よりむしろもうけ仕事のほうに妥協的になっているという傾向が多くありました。今後、法制審議会が公害罪の新設を答申したら、政府は事業者側の圧力に屈することなく、断固としてその法制化に踏み切るかどうか、特に総理の決意を披瀝されたいのであります。
 私は続いて、紛争処理における基地公害の取り扱いについて総理にお尋ねいたします。
 衆議院本会議において、佐藤総理は、基地公害を紛争処理法案の適用から除外した理由として、「基地周辺整備法等の運用によって、住民の生活安定、福祉の向上の措置をとっているので、整備法の改正は必要はない」と答弁しております。基地公害を紛争処理法からはずし、しかも整備法も改正しない、別途立法もしないということでは、はたして基地公害にかかわる紛争を有効に解決し、住民の生活安定をはかれると、心底からお思いになっておられますか。総理は、基地公害の実態を御存じないのではないかと疑える節も多々あります。米軍基地百四十八カ所、自衛隊基地千八百八十八施設の多くを数え、横田基地の騒音は夜間で九十八ホンに達しております。一時間に、多いときは平均十一・四回も飛行機が通る状態であります。ある新聞の世論調査によると、もはや基地公害はがまんすべきでないという段階にきているというのが圧倒的でありました。基地公害の深刻さ、なまぬるい基地公害対策に対する不満が正直に反映されているのであります。総理は、このような実情をよく認識し、紛争処理法制における基地公害の取り扱いについて、被害者の立場に立って再考すべきものと考えますが、所信をお述べいただきたいと思います。
 さらに、衆議院議員角屋堅次郎氏にお尋ねいたします。
 政府案の二法の内容を見ますと、救済の不十分に加えて、紛争処理もまた当を得ていないために、合理的なルートで解決の見当がついていないと思います。それらの点についてどうするか、また、今後の見通し等を詳しくお答えいただきたいと思います。
 最後に、熊本県水俣病患者の悲痛な叫びを紹介し、公害被害者の救済について、政府が一段と力を傾注することを要望して、私の質問を終わります。
 「銭は一銭もいらん、そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に水銀液ば飲んでもらおう。上から順々に、四十二人死んでもらう、そのあと順々に水俣病になってもらう、それでよか」。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(佐藤榮作君) 社会経済の伸展に伴って、各種の公害問題が発生しておりますが、公害の発生を極力押え、明るく、健康で、住みよい社会をつくることは、私のかねてからの念願であります。今回、関係二法案を用意いたしましたのも、この私の念願である社会開発、人間尊重の政治を一そう強力に推進しようとするものであり、これにより公害対策が飛躍的に充実し、均衡のとれた充実した福祉社会の建設に役立つことを期待しているものであります。以上、私は現状についての基本的な考え方を申し述べました。
 なお、お尋ねのありましたように、石油から原子力と、エネルギー革命が順次進行してまいります。今後こういう原子力の平和利用は飛躍的に高まっていくものと考えられます。千葉君は、かような時代に備えて長期的対策を立てよとの御主張でありましたが、原子力につきましては、特に万一の場合の被害はおそるべきものでありますので、長期的対策というよりも、むしろ原子力による災害は絶対に起こさない、そのための安全確保の措置を具体的に個々の案件について確実にとっていくことが大切である、かように考えます。もちろん石油燃料については、ただいま御指摘になりましたように大気汚染、これから救済する、こういう意味で脱硫装置や、低硫黄の石油を使うとか、等々の問題があろうかと思います。ともかく原子力について、われわれは格別な配慮をいたさなければならない、このことを申し上げておきます。
 次に、公害の企業者責任を明確にせよとの御発言でありましたが、政府といたしましても基本的にはそのとおりに考えております。このことは、一昨年に制定された公害対策基本法にも明らかにされているところであり、公害の発生を未然に防止する責任は、第一次的にはその事業活動を行なっている事業者にあると考えます。しかしながら、現実の公害、とりわけ大気汚染等につきましては、原因者と見られるものが多数に及ぶのが普通であり、原因者の特定が困難な場合が多く、また、企業活動と被害の発生との間の因果関係の立証が困難な場合が非常に多いのであります。このような現実のもとにおきましては、企業責任を前提として、原因者の無過失責任を主体として対策を考えても、対策の実効があがりにくいものと私は考えますので、今回の法案におきましては、当面の応急措置として、産業界、国及び地方公共団体が、それぞれの社会的責任の観点から責任を分かち合うという構想をとったものであります。したがいまして、科学的、技術的に公害の原因が特定できる場合におきましては、当然にその企業の責任は明確に追及さるべきものであって、政府がこれをうやむやにするというようなことは毛頭考えておりません。誤解のないようにお願いいたします。
 次に、現在法制審議会におきまして、刑法の全面改正の審議が進められており、公害罪新設もその中で懸案となっていると聞いております。政府としては、その答申を得た上で前向きで善処したいと考えておりますが、その場合には、被害者の立場を擁護する立場において問題を取り上げていくことは申すまでもございません。
 最後に、基地公害について申し上げます。公害紛争処理法案から基地公害を除外しておりますのは、衆議院本会議でも説明いたしましたように、防衛施設周辺整備法等の運営によりまして、基地周辺の住民の生活安定や福祉の確保のための措置が実行されつつあるので、これを除外したものであります。基地公害は頭からやむを得ないものとして、放置している、かようなものではございません。なお、基地周辺整備法につきましては、今後の運用の状況を見まして、基地公害軽減のために、必要があれば、これを改正するにやぶさかではありませんが、当面のところは、特に改正することは必要ない、かように考えておる次第でございます。
 お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(大平正芳君) 公害に対する企業側の姿勢についての御質疑でございました。
 第一は、設備投資の御指摘がございました。千葉さんは、設備投資が一・七%にすぎないという御指摘でございましたが、目下四千ばかりの公害型企業の設備投資を調査いたしておりまして、ようやく資料が集まりまして、集計中でございますので、まだ私どものほうは全体の数字を掌握いたしておりません。ただ、電力とか石油精製等につきましては、七%とか、あるいは一五、六%とかいうような数字はつかんでおりますけれども、全体としてはまだ掌握いたしておりませんで、近く発表の段取りになると思っております。
 それから、この設備投資の前提といたしまして、御指摘のように、防止技術の開発が非常に大事でございます。工業技術院におきましても、この開発をやりまして、すでに脱硫技術は完成いたしまして、実行に移しております。これに要する資金といたしましては、公害防止事業団はもとよりでございますが、開銀にも特別融資の制度を設けまして促進をいたしておりますと同時に、割り増し償却でございますとか、固定資産税の軽減でございますとか、そういった方法を講じまして、公害設備投資の促進をこの上とも努力してまいるつもりでございます。
 第二の、立地政策についての問題でございます。私どもとしては、既存の石油業法あるいは電気事業法等による認許可を行なうにあたりましては、脱硫装置の設置の義務づけその他、公害全体について十分事前に配慮した上で認許可を与えることにいたしているわけでございまして、そればかりでなく、産業公害総合事前調査というものを広く行ないまして、その結果によりまして、たとえば、現に工場地帯を形成中でございます鹿島地区でございますとか、水島地区でございますとか、そういった場合の公害防止上の配慮は相当周到にやっているつもりでございます。今後、たとえば、東三河のように、いまから新しく工場が誘致されるであろうという地域につきましては、どの程度の工場の誘致が認められるか、どの程度の稼働が可能であるかというようなことも、事前に県当局と御相談して、十分調査して、前もって指導方針を打ち立てているような次第でございますので、御指摘の立地政策の運用にあたりましては、この上とも十分配意してまいるつもりでございます。
 それから富士川左岸の火力発電でございますが、これは低サルファ――サルファ含有率を一・三%以内のものを使用する、それから二百メートル以上の高煙突にするということを許可基準にいたしておりまするが、まだ目下地元と話をしている最中でございます。三十五万キロワットの発電は、電力の需給上から申しますと、できるだけ早く話がついていただきたいと思っておりますけれども、目下そういう条件で私どもは許可するつもりでおりますけれども、最終的には地元と調整中であると、御承知おきを願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(斎藤昇君) 企業が新たに進出してくる場合についての公害防止につきましては、ただいま通産大臣からお答えをいたしましたが、厚生省といたしましても、必要な各地域に公害防止対策の計画をそれぞれ各地域において立てていただきまして、そして、その計画に合致しない場合には、新しく工場の進出をさせない、というようなことに協力をいたしたいと、かように思っております。
 なお、水質汚濁による公害病患者の補償を放置しておいてよいのかというお尋ねでございますが、熊本の水俣病、あるいは阿賀野川や神通川のイタイイタイ病等に対しましては、このたび、ただいま御審議を願っておりまする健康に対する被害の救済の行政的措置をとりあえず講じまして、そうして自余は、被害者の損害補償は、これは民事責任でございますから、民事裁判で争われることと思いますが、しかし、民事裁判は非常に手間がかかる、また、日にちが長びくというので、紛争処理法案を提案いたしまして、その紛争処理の一環としてやっていただければ早く解決するんじゃないか、これが紛争処理法案を提案いたしておる理由でございます。同時に、紛争処理法案の成立、実施、それが待てないというので、先ほどお尋ねの熊本の水俣病患者の同盟の方々が、それまでの間でも、一日も早く第三者の調停をやってほしいという御希望の切なるものがございますので、その方向で、できるだけ近い機会に、ごく最近のうちに第三者のあっせん機関を設けたいと思うて、ただいま人選中でございます。
 学童児童に及ぼす大気汚染の影響は、おとなに対するよりも激しいものがあるという御意見は、そのとおりに存じます。したがいまして、そういった地域における学童の日ごろの一般的な健康保持につきましては、特に留意をいたすよう指導をいたしておるわけでございます。今後も指導いたしてまいりたいと存じます。
 なお、空気清浄機械がはたして効果があるのかというお尋ねでございますが、われわれのほうの調査によりますると、ばいじん、いわゆる粉じん、それから亜硫酸ガス、これに対しては相当効果があるという結果が出ておるのであります。一酸化炭素については効果は疑わしい、かようなことでございまするので、一酸化炭素に対する空気清浄の方途もただいま検討をさせているような次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣坂田道太君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(坂田道太君) 千葉さんにお答えを申し上げたいと思います。
 公害によります被害が非常に大きくなって、児童生徒の健康に影響を及ぼす、文部省はこの対策いかんと、それから、公害による被害を受けている学校を公害のない地域に移転させる考えはないかと、その他、学童に対する公害調査、公害健康診断等についてのお尋ねかと思います。
 学校に及ぼす公害の実態につきましては、昭和四十二年二月に高等学校以下を対象といたしまして調査をいたしました。調査対象校約四万四千校でございますが、何らかの公害を受けておるというのが約二千校、その大半は騒音と大気汚染でございます。また、公害が生徒児童に影響を及ぼしておるその実態でございますが、やはり耳鼻咽喉及び気管支に関する疾患がやや多く見られるようでございます。また、身体に及ぼす影響につきましては、昭和四十三年十二月調査を実施し、いま集計をいたしておる最中でございます。それから騒音の児童生徒の身体及び学力に及ぼす影響につきましては、四十三年九月調査を実施し、専門の研究者がいま分析検討をいたしておるところでございます。
 公害が広域にわたる場合が多うございますから、学校限りだけで対策を講ずるということは非常に困難な面が多いと思います。やはり基本的には公害発生源に対する対策が考えられなけりゃならないわけでございますが、しかし、文部省といたしましても、たとえば、二重窓等の防音設備やあるいは空気清浄装置の取りつけ等について補助をいたしておるわけであります。それから、どうしてもその公害防止装置で処理ができないという場合については、やはり学校の移転、それに対する改築の補助、これは従来もやっておるわけでございますけれども、今後ともそういうような場合におきましては考えなければならないというふうに思います。
 そういうふうに考えるわけでございますが、健康管理につきましては、定期及び臨時の健康診断におきまして、公害によりまして発生しやすい疾病につきましては特に留意をいたしまして診断を行なうとともに、日常におきます健康観察を徹底するように関係都道府県教育委員会に対しまして指導助言を与えておる次第でございます。(拍手)
   〔衆議院議員角屋堅次郎君登壇、拍手〕
#18
○衆議院議員(角屋堅次郎君) 千葉さんの御質問についてお答えを申し上げたいと思います。
 公害の予防、公害の排除、公害の救済に関しまして、日本の公害の現状から適切な各般にわたる御質問がございましたが、私に対する御質問は、政府案で出されております二法案の内容に関連をいたしまして社会党案との相違点、あるいは公害対策の万全を期するために今後の審議を通じてどういうふうに処理すべきであるかという御趣旨の質問かと考えますので、そういう観点から御答弁申し上げたいと思います。
 私が先ほど提案の中でも申し上げたのでありますが、政府案のたとえば公害救済法案について見ますと、いわゆる大気汚染と水質汚濁によって生じた公害の疾病、こういうものに対して、これが相当多発をした場合、これに公害病の地域を指定し、患者を指定する、こういうやり方をやり、そしてそういう患者に対しては医療費、医療手当、介護手当を支給しよう、政府案としてはそういう考え方に立っているわけでありますが、申し上げるまでもなく、公害の被害は、単に人的な健康被害ばかりでなしに、物的な被害も生ずるわけであります。したがいまして、物的な被害についてどうするかという点は、立法過程でも私どもいろいろ討議をしたのでありますが、物そのものの被害というよりも、むしろ物の被害によっていわゆる生活の侵害がされる、それを最低限補償するという立場をとったのでありますが、いずれにいたしましても、公害の救済を考える場合においては、人的、物的両面にわたる被害について、被害者に、医療の状態においても、あるいは再建の立場から見ても、最低限のやはりめんどうを見てやる。そして紛争処理制度、あるいは民事訴訟等を通じてやる場合に、先ほどの提案のときに申し上げましたように、安易な妥協をしなくていい基礎づくりをきちっとしてやる、こういうことが本来望ましいと思うのであります。そういう観点から見ますと、政府案では、医療費、医療手当、介護手当のみであって、生活保障的要素というのは全然欠けておるところに基本的に問題がございます。さらにまた、所得制限を設けたり、介護に実際に人がついておりましても、介護に要する費用を支出しなければ介護手当を出さない、こういうふうな非常に人間尊重を言う佐藤総理として、きわめてきめこまかい配慮を欠いておるような法案の内容になっておることは、まことに遺憾であります。
 また、被害者救済のいわゆる費用の問題でありますが、これは私ども立法の過程で、いわゆる政府あるいは地方自治体、企業者、こういうものの基金制度による配分をやるか、あるいはその他の方法をやるかでずいぶん考えてみたのでありますが、やはり企業者にある程度の負担をさせる場合に、企業者が公害責任に対する免罪符的な危険性を持ってはいけない。したがいまして、私どもといたしましては、被害者の救済については、国がこれを受け持つ。同時に国が支給した分についての加害者に対する損害賠償の請求権を取得する、そして加害者に対する責任を徹底的に究明する、このことのほうが、今後の公害対策の前進にもなるし、また、か弱い被害者の救済のためにも、このほうが筋道としてよかろう、こういうふうに考えたのであります。
 さらに、被害者救済に関連しての問題は、提案のときに申し上げましたように、政府案の弱点は、何といっても公害の紛争処理をするたとえば中央公害審査委員会というのが、国家行政組織法の八条機関であって、強力な権限を持つ独立の三条機関の形式をとらないというところに、運営上の致命的な欠陥があると思います。
 同時に、千葉先生の御指摘のように、公害の問題については、因果関係の究明が相当に困難な事態がしばしば起こってまいります。これらの問題については、やはり日本の有数な多数の科学者を動員して、科学的な究明に基づいて因果関係を明らかにするということが必要でございまして、民事訴訟の場合で申しますならば、本来弁論主義がとられ、被害者が多くの場合に立証をしていかなければならぬというようなたてまえをとっておるわけでありますが、公害の特殊性、現状から見まして、そういう民事訴訟のルートでは被害者のいろんな問題の解決について十分な措置ができないという特殊性もございます。したがいまして、紛争処理の場合に、社会党案は、政府案のような仲裁、しかも両者の合意でなければ仲裁が発動しないという形ではなしに、一方の申し入れによって準司法的な役割りを果たす裁定制度というものを設けまして、公害の専門調査会をつくる、その科学的な調査を基礎にして、そして正しい裁定を下す、こういう制度を導入いたしておるわけでございまして、本来、今日の日本の公害紛争の現状からするならば、ここまで踏み切ることが必要な段階にきておる、こう考えておるところでございます。
 同時に、政府案の紛争処理のもう一つの致命的な欠陥は、政府は最終決定の段階におきまして、おそらく与党内の国防部会であるとか、あるいは政府機関の防衛庁であるとか、いろんなところから最終的な圧力が加わったのかもしれませんけれども、今日多くの地域において問題を持っておる基地公害を紛争処理制度から除いておるということは、これは国民の健康、生命よりも軍事優先という佐藤内閣の政治姿勢を端的にあらわしたものだ、われわれとしてはそう考えざるを得ないのであります。(拍手)これが政府の紛争処理法案の致命的欠陥の一つである、こういうふうに思うのであります。
 いずれにいたしましても、公害にかかわる救済の問題、あるいは紛争処理の二法案の問題全体を通じて、救済については、いわゆる被害を受けた者が生活の面でも医療の面でも、あるいは物的被害を受けた場合の生活再建の面でも必要な最小限のめんどうを見てやる。そして紛争処理制度を通じて正しい解決をやる場合に、安易な妥協をしなくてもいい、そういう処置をとってやる。本来加害者といわゆる被害者の立場で公害の問題でも合理的に処理をしていくというのが筋道でございまして、救済の場合に政府がこれに肩がわりをしていくという立場でわれわれも考えているわけではありません。公害紛争の処理がなされる場合、本来政府が出した分は受け取ると、こういう立場に立っておることは御承知のとおりでありますし、また、紛争処理の問題については、今日のいわゆる四日市公害、あるいは富山のイタイイタイ病、あるいは新潟の水俣病等の裁判上の紛争が長期にわたっておる現状からいたしましても、先ほど来申しております公害の特殊性からいたしましても、紛争処理制度を通じて、日本の科学者を動員し、権威ある裁定制度を通じて被害者を守る、こういう制度に大胆率直に踏み切るべき段階にきておる。そういう点では政府の紛争処理法案はざる法案といわざるを得ないし、こういうことでは被害者や国民の期待にこたえ得ないのではないかと、こういうふうに思うのであります。
 さらに私は、総理以下の御答弁の中で若干触れたいのでありますが、大平通産大臣がたとえば富士川左岸の火力発電所の問題につきまして御指摘がございました。過般私も現地調査に参ったのでございますが、大平さんが富士川左岸の火力発電所の設置について実態をどれだけ承知しておられるかわかりませんけれども、あすこに百五万キロワットの全体的な火力発電所を設置しようという計画のようでございますが、御承知のように、富士市周辺地域の市町村は、富士山ろくの傾斜に沿っており、二百メートルの高煙突に上げましても、富士市周辺の地域に拡散をした亜硫酸ガス等の被害が及ぶであろうということは、当然予想されるのでありまして、公害の問題について事前調査を綿密にやるならば、あの海岸地帯からの風向によって周辺地区に大きな被害を及ぼすであろう、こういうところに、大体設置を予定しておるというおことばは出ないはずだと思うのであります。また、総理の御答弁の中でいわゆる企業者責任等の問題について触れられましたけれども、私どもは、政府提出案の基本的性格と、あるいは公害のいろいろな処理の形の中でのいわゆる公害の問題については、企業者責任、しかも無過失賠償責任の法理に基づいて、この問題に厳正に対処するということで政府もなければならぬということを付言いたしまして、答弁にかえさせていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(重宗雄三君) 沢田実君。
   〔沢田実君登壇、拍手〕
#20
○沢田実君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました公害関係法案七法のうち、閣法二法について総理及び関係大臣に質問いたします。
 政府が今日まで強力に推進してまいりました高度成長政策は、一体われわれ国民に何をもたらしたでありましょうか。政府・自民党がみずから宣伝しておりますとおり、確かに数量的には若干の繁栄がもたらされ、消費財の増加など日常生活の内容にある程度の成果をもたらしたようであります。しかし、この繁栄は、大衆の真実の繁栄ではなく、単なる皮相的なものにしかすぎないのであります。高度成長のひずみは、交通事故、公害、物価高等々に著しくあらわれ、いまや国民の生命と財産をむしばんでいるのであります。この点、経済成長とそれのもたらすひずみについて、どう総理は考えておられるか、所信を伺いたいのであります。
 特に、昭和三十年以後急激に増加してきた公害は、現在では全国各地に爆発的に広がるに至りました。国民の健康よりも企業の発展を優先させる高度成長政策を推進すれば、このような公害が生ずるであろうことは当然予見すべきであったにもかかわらず、その責任者である政府も企業も予見せず、あるいは予見しても公害は必要悪として目をつぶり、あえて成長政策を推進してきた結果、このような災禍に至らしめたのだと断ぜざるを得ないのであります。国民の生活環境と健康の保護よりも、経済発展と産業擁護を優先させた政府のこの責任は、まさに重大と言わねばなりません。この責任をどう考えているか、お伺いしたいのであります。
 公害対策の眼目が事前防止にあることは、わが党による提案理由に指摘したとおりでありまして、国会論議の中でも、わが党は、政府に対して再三にわたって公共施設の整備、工場立地規制の強化、都市計画の実施などの施策の拡充を迫っているのであります。しかしながら、政府はいまもって抜本的な改善策さえ提起していないのであります。一方、今回提案の公害の事後救済についても、政府の姿勢には依然として加害者である企業の顔色をうかがい、被害者に対してはつとめて国の財政支出を渋る態度がうかがわれるのであります。公害政策こそ人間尊重、社会開発を唱える佐藤総理の取り組むべき重要な課題であり、最優先さるべきものであると思うのでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。
 次に、救済制度の性格について厚生大臣にお尋ねいたします。
 衆議院本会議における答弁によりますと、政府案の救済措置は立てかえ払いではなく、社会保障的な措置であるということであります。しかし、そうかといって、社会保障制度であるとは言い切っておりません。その性格づけが非常にあいまいなのであって、一種の妥協の産物と見ざるを得ません。費用負担の割合についても事業者の負担を軽くし、その責任をあいまいにしていることがうかがわれるのであります。また、国や地方公共団体の費用の支出についても根拠があいまいであります。公害救済は社会保障的措置であると政府が主張する裏には、医療手当については年額百五万二千円以上の所得者には支給を制限するなど過酷な条件を課する意図が秘められていると思うのであります。一体、救済制度のたてまえがどこにあるのか、明確な答弁をお願いいたします。
 次に、被害者救済の対象地域と被害者の範囲について厚生大臣にお伺いいたします。
 今回の政府提案による救済対象地域は、熊本、新潟、富山、四日市、京浜及び阪神となっているようでありますが、現実に公害にかかる健康上の被害を受けているのは、この他にも大気汚染については千葉県市原、名古屋南部、北九州などの地域があり、水質汚濁、煙害についてみると、長崎県対馬や群馬県安中においてはすでにイタイイタイ病の第一期、第二期、第三期、第四期の症状の発生が学者、医師によって指摘されているのであります。公害対策は予防医学の面から実施されなければならないのでありまして、回復不能の状態になってから措置するようでは手おくれとなるのであります。したがって、救済対象地域にしても、認定患者の範囲にしても、さらに拡大する必要があると思うのであります。この点に関して厚生大臣はどのような所見をお持ちであるか、お聞かせ願いたいのであります。
 さらに、群馬県、長崎県、宮城県のカドミウム禍に関しまして、三月末厚生省は見解を発表いたしましたが、人体調査もせず、安中市の東邦亜鉛のひどい煙害も調査せずに「イタイイタイ病のおそれはない」という無責任な見解は、全く理解に苦しむものであります。参議院産業公害等特別委員会においても、イタイイタイ病の権威者である萩野博士や石崎教授、小林教授等は、参考人として、「対馬においてイタイイタイ病第三期、第四期、安中市においてはイタイイタイ病第一期、第二期症状の患者がすでに発生している」と警告しているのであります。総理及び厚生大臣は、このような無責任な厚生省見解をどう思っているのか。また、五月から始めるという人体調査を含めた再調査に対して、萩野博士等の権威者をも参加させる考えはないかどうか。さらに健康や農作物の被害者住民に対する補償に関し、いかに考えておられるかを、あわせてお尋ねいたします。
 次に、紛争処理法案の対象から、基地公害を除外した理由について、総理及び総理府総務長官にお聞きしたいのであります。
 公明党は、昨年、党の総力をあげて基地の総点検を敢行いたしました。調査の結果、基地周辺における公害は、想像を絶するものがあります。被害の種類、被害範囲も広いのでありまして、はたして現行の基地周辺整備法や特別損失補償法が機能し得るかどうか、深い疑念を抱くものがあります。総理は、口を開けば愛国心を強調し、国防の重要性を訴えておりますが、現実に基地公害をこうむっている住民にとっては、公害をなくさずに何が国防かと言いたいのであります。基地は重大な国民の公害よりも優先するというお考えなのか、総理の所信を承りたいのであります。
 また、基地周辺整備法等の改正はせずに、政令によって措置の拡充をはかるということでありますが、どの程度拡充するのか、その内容について総務長官にお伺いいたします。また、基地公害にかかわる紛争処理、苦情処理について、今後どのような体制整備をはかるのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、紛争処理機構の問題について総務長官にお伺いいたします。
 政府の提案による中央公害審査委員会は、国家行政組織法第八条によって設置される機関でありますが、公明党は強力な権限を有する第三条機関でなければ、公正かつ迅速に、また、権威をもって事案の解決に当たることはできないと信ずるのであります。総務長官は衆院での質疑に対し、「八条機関でありましても、公害紛争の適正な解決をはかり得る」と答弁しておりますが、実際その機関が設置された場合、三条機関とは権限上、大きな違いがあるのであります。たとえば、審査会の委員の活動を補佐する事務局機構の充実等を考えましても、第三条機関では独立の事務局機構を設置することになるのでありますが、第八条機関ではそれさえ設置し得ないのであります。さらに、具体的な問題の処理にその例を見ましても、富山県におけるイタイイタイ病の認定を著しくおくれさした要因は、複雑な因果関係の立証にあたって、各省間のセクショナリズムからくるところの見解の不統一、また、経済界からの強力な圧力があったことを思い起こすならば、当然公害委員会は人命の尊重を第一義とする性格上、公正取引委員会などと同等、いな、それ以上の強力な機関であってしかるべきであると主張するものであります。総務長官の所信を承りたい。
 最後に、重油関税と公害税についてお伺いいたします。
 大気汚染、水質汚濁など、公害発生の多くの原因は、重油を燃料・原料として使用することにあるのであります。これらの重油、原油は、ほとんど輸入にたよっていることは御承知のとおりであります。これに対する関税は、昭和四十四年度課税見込み額八百四億余円の多くにのぼっております。しかし、この関税収入の約一〇%に当たる八十二億円が石油関係企業に還付金として交付されるのでありまして、ここにも、政府の企業擁護の姿勢が見られるのであります。関税収入の相当の部分を公害対策費に充てるのも、企業責任を果たさせる意味からいって、一つの方法ではないかと考えられるのでありますが、総理の所見を伺いまして、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(佐藤榮作君) 沢田君にお答えいたします。
 公害問題に対する政府の基本的姿勢につきましては、先ほど千葉君にお答えしたとおりでございます。ここでは、今後一そう公害問題絶滅を目標として真剣に取り組んでまいる政府の決意を再度申し上げまして、詳細は譲らせていただきます。
 次に、公害を未然に防止することはもちろん必要なことでありますが、一たん生じました公害に対する対策、救済政策、これまた公害対策として見のがすわけにいかない問題であります。本来、公害の発生原因者の民事責任につきましては、損害賠償の道が開かれてはおりますが、公害の特殊性から、その因果関係の立証や、発生責任者の明確化が困難なために、迅速かつ妥当な解決をはかるためには不十分であります。このための対策として、行政上の救済措置を講ずることを内容とする公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案を考えたものでありまして、緊急に救済を要する健康被害にとりましては、大きな福音となるものではないかと、かように政府は考えております。
 次に、基地公害についていろいろお尋ねがございました。ことに、何よりも国防ということを優先して考えておるのではないか、こういうことを御指摘でありました。これまた、先ほど千葉君にお答えいたしましたとおり、中身は省略させていただきますが、私どもは、基地周辺の方々がたいへん迷惑をこうむっておられる、これにつきましては十分認識し、また、これにつきまして十分対策を立てるその用意、またその決意でございますので、どうか誤解のないようにお願いをしておきます。
 最後に、公害対策を強化するために重油、原油等の輸入関税をそのほうへ使用する、こういうことは望ましいことではないか、そういうことを政府は考えないか、一種の目的税としてこれを使わないかというお尋ねであったと思います。私は、現在のところでは、この公害対策を目的税で処理するということは考えておりません。必要な措置は、一般会計予算なり財政投融資なりの計画におきまして十分に財源手当てをする、こういうように考えております。しかし、ただいまも御指摘、御推奨がありましたように、目的税、これにつきましても、他の機会にまたそういう問題も十分検討してまいることにいたします。ただいまはその必要は考えておりません。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(斎藤昇君) 公害にかかる健康被害の救済についての一体考え方はどうなんだというお尋ねでございますが、衆議院のほうでお答えをいたしましたように、これは社会保障的な行政措置だと、かように私はお答えいたしました。そのとおりに考えておるのでございまして、健康被害に対する損害賠償を会社、工場にかわって立てかえ払いをしてやる、こういう考え方ではないのでございます。したがいまして、所得制限につきましても、高額所得の方々に医療の手当を出すということは、先ほど申しました考え方から申しますと、かえっておかしいと、こういうことで、一定以上の所得税額を納める人にはこの給付はしないというようにきめたゆえんでございます。
 なお、生活保障としては足りないじゃないかというお尋ねでございますが、生活保障につきましては、いわゆる生活扶助法等の法律を満度に活用をいたしまして、そしてそれによって生活保障をいたしてまいりたい。この法案は、やはり医療の救済という点に重点を置いているわけでございます。
 それから、認定の地域及び患者、これは狭きに失しはしないかというお尋ねでございますが、大気汚染と水質汚濁に基づく相当範囲に及ぶ健康障害が生じました際には、地域もあるいはその患者の数も、認定患者として幅広い認定を将来広げてまいる、かような所存でございます。
 市原、あるいは北九州、あるいは名古屋の南部という地域も、大気汚染による公害病患者があるということになりますれば、その地域にも適用をいたしてまいる、こういう所存でございます。
 患者の発生を待つ前に予防をもっとする必要があるという御所見に対しましては、全く同感でございまして、この患者の救済ということも肝心でありますけれども、公害源をなくしていく、そして、公害病患者をつくらないということが何よりも肝心なことだと思っているわけでございます。
 カドミウム汚染、安中、対馬あるいは宮城におけるカドミウム汚染について、厚生省が先般発表いたしましたのが、どうも企業寄りであるというような御意見のようでありますが、先般の厚生省の発表は、水質の汚濁、それから米あるいは土壌という点から推察をいたしましての発表でございますが、しかしながら、健康診断に基づくものはただいま精密にやっておるわけでありまして、少しでも一般住民の方々に、今後そういう心配のないように、予防措置をさらに強化をしてまいる所存でございまするし、先般やりました水質あるいは土壌等の調査も、さらに引き続いてやってまいる所存でありまするし、先般の調査から漏れたという地域もあるようでありますから、その地域もさらに重ねてやり、この調査を十分進めてまいりますとともに、健康被害については最大の注意を払って、権威ある医学の方々を網羅をしてやってまいりたいと、かように思います。(拍手)
   〔国務大臣床次徳二君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(床次徳二君) 今回の公害紛争処理法案におきまして、基地公害を除いておるのではないかという御質問でございますが、基地公害に対しまして、すなわち、防衛施設にかかる障害に関する紛争に対しましても、十分、政府といたしましては、一般産業公害と同じような重要性をもって対処しておるのであります。ただ、その具体的措置の方法につきましては、本法の第五十条に、特に「別に法律で定めるところによる。」といたしたのであります。先ほども御説明申し上げたのでありまするが、その原因となりますところの自衛隊等の行為の特殊性から見まして、一般の産業公害と同じように取り扱うことは不適当である。なお、政府はすでに防衛施設周辺の整備等に関する法律等によりまして、障害の防止工事の助成、あるいは民生安定施設の助成、あるいは損害補償等につきましての措置を講じておりますし、なお、損失補償につきましては異議の申し立て等を設けておるのであります。この実情につきましては防衛庁長官から御説明申し上げる次第であります。
 次の御質問は、公害紛争処理の機関、政府案といたしましては、中央公害審査委員会と称しておりますが、これを八条機関といたしておるのでありますが、これは三条機関とすべきではないかという御意見でございまするが、八条機関といたしまして、準司法的な機関で、しかも、公害紛争に対しまして調停、仲裁ということを主として行なわせるのであります。すなわち、当事者の互譲の精神というものに基づきまして、社会的に見まして迅速、円満にこれを解決したいというところが主眼であります。したがいまして、その目的を達するために、委員会の独立性、中立性というものに対しまして、十分、総理大臣の所管のもとにおきましてこれを確保していく。委員長、委員等につきまして、独立に職権行使及び身分の保障の規定をいたしておるのであります。なお、その職務を執行するにあたりまして必要と認められますところの権限、すなわち出頭命令権あるいは立ち入り検査権等、調停、仲裁等を行なうに必要なものにつきましては十二分に措置を講じておるのでありまして、したがって、第八条の機関といたしましても、その所期の目的を十分に達し得るものでありまして、今日におきましても、現に八条機関といたしまして設立いたしました紛争処理機関の例もあるのであります。政府といたしましては、十分であると考えておるのであります。
 なお、御意見のごとく、この機関に対しまして、いわゆる裁定的な行為をさせるということになりますると、これは三条機関のほうが適当であるというふうにも考えられますが、政府案におきましては、さようなところまでは進んでおらない。今日の調停、仲裁等が最も現在の紛争処理に対しましては適当であって、それから先の取り扱いに対しましては、むしろ、いわゆる裁判によることが適当であると考えておる次第であります。
 なお、事務機構等におきましては、公害審査室を設けまして、事務の処理に遺憾なからしむるよう努力しておりますし、なお、研究機関と行政機関の意見を求め、そうして十二分な審査に資するということに対しましては遺漏なきを期しておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(大平正芳君) 特に私に御指名がなかったようでありますが、御質問の全体を拝聴いたしまして、第一に、御指摘のように、事前防止に全力をあげなければならない、それが一番大切な方策であるということにつきまして、そのとおり存ずるのでございます。私ども国内におきましては、防止技術の開発に多くの精力を傾けなければならぬと思いますが、なお、現地におきましても、現地脱硫の方法について新しいくふうをこらすべく、いま調査中でございます。
 それから第二点といたしまして、企業側がどうも公害問題の処理に積極的でないという批判が各方面にあるわけでございます。公害問題が社会問題化し、また、具体的な法律問題になってまいりましたのは、きわめて最近のことでございまして、公害の責任の所在あるいはその限界というようなものが現行の法制ではっきりしておりませんし、また、よるべき判例もないというような状態に置かれておりまするので、なかなか企業側の姿勢もはっきりした姿勢をとり得ない状況にありますことを、もどかしく思うております。したがいまして、そういう段階におきまして、今度御提案になっております二つの法案が成立いたしますならば、社会的責任を企業が果たす場合におきましての基準といたしまして、たいへん私どもは企業指導にあたりまして役に立つ法案であると思いますので、なるべく早く成立さしていただきますようにお願いいたしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣有田喜一君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(有田喜一君) 私に対しても答弁の要求がなかったのでございますが、しかし、答弁しろということでございますので申し上げますが、いわゆる基地に関する障害を、この紛争処理法案の対象の外にしたことは、先ほど総理大臣並びに総務長官から御答弁申し上げたとおりであります。
 そこで、もう少し詳しく申すなれば、自衛隊及び在日米軍の行為、あるいはその防衛施設というものは一般産業と根本的に違いまして、その米軍の行動、あるいはその施設の設置変更等は第三者の機関の判断にゆだねることは適当でない、こういう場合が多いのであります。また、ことに調停、裁定等を行なう者は、文書、物件の提出とか、あるいは立ち入り検査等を行なわなければ公正な処理ができない場合が多いのでございますが、これらにつきまして、防衛施設にはさようなことを許されない場合が多いのでありまして、かようなことから、防衛施設関係については御承知のように、実体法として防衛施設周辺整備法がありまして、いろいろ対策を講じております。ことに御承知のとおり、基地周辺の人々に対しましては相当御迷惑もかけておるし、そこでわれわれとしましては、基地はわが国のために必要なものであるけれども、それらの周辺の方々に対して、より以上の対策を講じて、できるだけ御迷惑をかけないようにしたいというので、先般皆さんの御審議を経て通過しました四十四年度の予算におきましても、昨年度に比べまして相当大幅な増強をやってもらったような次第であります。この上とも、私どもは、いわゆる基地周辺整備法の運用と、それから予算の増額と相まって適切な方策を講じてまいりたいと、かような考えでおりますから、その点を御承知願いたい。(拍手)
#26
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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