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1968/07/09 第61回国会 参議院 参議院会議録情報 第061回国会 本会議 第32号
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1968/07/09 第61回国会 参議院

参議院会議録情報 第061回国会 本会議 第32号

#1
第061回国会 本会議 第32号
昭和四十四年七月九日(水曜日)
   午前十時四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十三号
  昭和四十四年七月九日
   午前十時開議
 第一 北海道防寒住宅建設等促進法の一部を改
  正する法律案(衆議院提出)
 第二 道路運送車両法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第三 都道府県合併特例法案(内閣提出)
 第四 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関す
  る法律の一部を改正する法律案(内閣提出、
  衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、交通安全対策基本法案及び交通安全基本法
  案(趣旨説明)
 以下 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君)諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 交通安全対策基本法案、
 交通安全基本法案、
 以上両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。床次国務大臣。
   〔国務大臣床次徳二君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(床次徳二君) 交通安全対策基本法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 近年におけるわが国の経済の著しい発展に伴いまして、自動車交通は、急激な伸展を遂げておりますが、これとともに、道路における交通事故も逐年増加の一途をたどり、昨年一年間における道路交通事故による死傷者数は八十三万人を上回るというまことに憂慮すべき事態に立ち至っているのであります。また、鉄道及び軌道における交通事故並びに船舶及び航空機による交通事故は、幸いに必ずしも増加する傾向にはありませんが、一たび事故が発生した場合には、多数の死傷者を生ずるという重大な結果をもたらすものであり、その防止は、道路における交通事故の防止と同じく、一刻もゆるがせにすることのできない問題であります。
 このような情勢に対処して、政府は、交通安全対策を最重点施策の一つとして取り上げ、諸般の施策を積極的に推進しているところでありますが、今後も予想される道路における交通事故の増加を抑制するとともに、船舶、航空機等による重大事故を防止するためには、総合的な交通安全対策をより強力に推進するとともに、国民のすべてがそれぞれの立場において、国及び地方公共団体の施策に協力するといういわゆる国民総ぐるみの体制の確立をはかることが、何よりも必要であると考えられるのであります。
 このような見地から、交通の安全に関し、国及び地方公共団体、車両、船舶及び航空機の使用者、車両の運転者、船員及び航空機乗り組み員等の責務を明らかにするとともに、国及び地方公共団体を通じて必要な体制を確立し、並びに交通安全計画の策定その他国及び地方公共団体の施策の基本を定めることにより、交通安全対策の総合的かつ計画的な推進をはかることを目的として、ここに交通安全対策基本法案を提案することといたした次第であります。
 次に、この法律案のおもな内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、交通の安全に関する国、地方公共団体、交通施設の設置者、車両、船舶または航空機の製造事業者及び使用者、車両の運転者、船員及び航空機乗り組み員、一般住民等の責務を明らかにするとともに、交通の安全に関する施策の実施に必要な財政措置等について規定いたしております。
 第二に、総理府に内閣総理大臣、関係行政機関の長等をもって構成する中央交通安全対策会議を、都道府県に都道府県知事、関係地方行政機関の長等をもって構成する都道府県交通安全対策会議を置く等国及び地方公共団体における交通の安全を推進する組織を整備することといたしております。
 第三に、国及び地方公共団体は、交通の安全に関する基本的な計画及びその実施のための計画を策定し、これらの計画の実施を推進することといたしております。
 第四に、国は、交通環境の整備、交通安全思想の普及、車両、船舶または航空機の安全な運転または運航の確保、気象情報等の迅速な収集及び周知、車両、船舶または航空機の安全性の確保、交通秩序の維持、救急医療の充実、海難救助の充実、損害賠償の適正化、交通の安全に関する科学技術の振興等をはかるため、必要な措置を講ずることといたしております。また、地方公共団体は、右に述べました国の施策に準ずる施策を講ずることといたしております。
 以上が交通安全対策基本法案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(重宗雄三君) 衆議院議員久保三郎君。
   〔衆議院議員久保三郎君登壇、拍手〕
#7
○衆議院議員(久保三郎君) ただいま議題となりました交通安全基本法案につき、提案者を代表しまして、提案の理由及びその内容の概要を御説明いたします。
 経済の高度成長下における政府の無計画な自動車産業育成政策によって、自動車保有台数は逐年増加を遂げ、一方、道路交通事故は驚異的な増加を示しております。すなわち、昭和四十三年一年間における道路交通事故による死傷者は、死者一万四千二百五十六人と、前年に比べ四・七%増し、負傷者は八十二万八千七十一人で、前年に比し実に二六・四%という驚異的な増加を示し、死者、負傷者とも史上最高という悲しむべき記録を更新したのであります。
 しかも、現状のまま推移するならば、死傷者の数は三年後の昭和四十六年には百四十五万人、五年後の昭和四十八年には二百万人に達するものと推定され、被害者の数は十二世帯当たり一人になるものと予想されているのであります。
 一方、鉄道事故、海難事故及び航空事故は、幸いにして増加の傾向にはありませんが、一たび事故が発生した場合には、過密ダイヤ、大型化などによって多数の死傷者を出すという重大な結果をもたらすものであり、その事故の防止は決してゆるがせにできない問題であります。
 このような交通事故の激増は、ただに国民の生命、身体、財産の損失ばかりでなく、国民生活に大きな不安と脅威を与えているのであります。
 交通戦争、交通地獄ということが言われ始めてから久しいのでありますが、この間、政府は交通事故防止対策にいかなる努力を払ったでありましょうか。毎年の交通事故の激増が示すように、政府の対策はかけ声だけで何らの効果をもたらしていないという事実は何びとも否定することができません。政府は人間尊重の政治を口にしますが、なすことは全く人間不在の政治と言うほかはありません。
 今日の交通事故の激増をもたらした原因の一つには、政府や独占資本の利潤追求本位の経済成長政策によって、総合的かつ計画的な交通安全対策がなおざりにされてきた点にあると言えましょう。すなわち、経済成長による交通需要の激増に対応し得ない交通安全施設や、輸送力増強のための社会資本への極端な投資不足にその原因があることを指摘せざるを得ません。
 その結果、道路交通の渋滞、過密ダイヤ、殺人的通勤輸送、船込み、空港施設の立ちおくれ等となったにもかかわらず、交通安全という人間尊重の至上命令を、もっぱら罰則や取り締まりの強化、精神訓話と職人的運転技術に依存して事足れりとする交通政策を推し進めてきた当然の帰結として、交通安全の今日的危機を招来するに至ったのであります。
 交通安全を確保して、国民の生命、身体、財産を守り、交通事故による社会不安を解消するためには、まずもって、総合的に交通体系を整備して輸送の円滑を期するとともに、交通安全に関する総合的施策を計画的に実施する必要があるのであります。人命の尊重は何ものにもかえることはできませんし、交通安全、事故防止の施策は、いかなる政策よりも優先しなければなりません。すべての交通事故から人命を守ることは、いま政治に課せられた重大な国民的要請であると存じます。
 人類は過去において数々の伝染病と戦い勝利をおさめてまいりました。しかし、今日交通事故による死者の数は、すべての伝染病による死者のそれよりもはるかに多いのでありますが、社会は意外と交通事故に寛容であります。人類が悪疫とのきびしい闘争によって勝利を得たように、文明の悪疫といわれる交通事故の防止には、全国民があげてきびしい闘争を起こさなければ、その撲滅は不可能でありましょう。
 ここにわれわれが提案した交通安全基本法案は、陸、海、空にわたって蔓延している文明の悪疫、交通事故撲滅の闘争宣言というべきものであります。
 以上が本法案提出の理由であります。
 以下、法案の内容の概略について御説明申し上げます。
 まず、第一章について御説明いたします。
 すなわち本法案のねらいは、言うまでもなく、交通安全のあり方を明らかにし、交通安全の政策目標を示し、国政の中の交通安全行政に統一的指針を与え、総合的計画の推進をはからせるためのものであります。よって本法案の骨格は、陸、海、空にわたる交通安全対策の基本を示すとともに、総合的かつ計画的な施策の実施を促し、そのための国及び地方公共団体の責任とその一体的な実行を要求しておるものであります。
 次に、交通安全を確保することは、国及び地方公共団体の責任であると同時に、特に交通運輸事業者もまた、その責任があることを明確にいたしました。
 また、今日交通戦争に立ち向かう交通安全の施策は総合的であり、実行は国民的な協力による総合体制によってのみ可能でありますので、国民は交通の安全に関する国及び地方公共団体の施策に協力しなければならないことといたしております。
 さらに政府は、交通安全の施策を実施するために必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならないことといたしております。特に財政上の措置に関していえば、従来政府の対策は財源措置が十分でなく、かつ、地方公共団体の貧困な財政を一そう圧迫するような方法で進められ、このために施策の実行が阻害され、特に機動性を必要とするこの種の対策の実効があがらず、あたら貴重な人命と財産が失われつつありますので、この際、政府は、この点について特段の考慮を払う必要があると考えます。また、政府は、定期的に交通の安全に関する実態調査を行ない、これを公表するとともに、毎年、国会に対し、交通の安全に関して講じた施策及び講じようとする施策等に関して報告しなければならないことといたしております。
 次に第二章におきましては、国及び地方公共団体が交通の安全に関して講ずべき施策を具体的に規定いたしております。
 まず、第二条において定義しましたような交通安全施設を整備することであります。特に、道路交通の安全を大局的に考えれば、道路そのものを整備することももちろん重要な施策ではありますが、これにつきましては、むしろ、空港、港湾等の整備と同様に、産業経済、交通の利便の見地から検討すべき事項と考え、本法案では、横断歩道橋、道路標識、航行保安施設等の交通の安全を確保するための施設を重点的に整備しようとするものであります。
 第二に、車両等可動施設の安全性を確保することといたしております。そのためには、それぞれの保安基準を一そう適確に高めてゆくことと、その基準が確実に守られるよう規制せねばなりません。近時、企業性の追求が急であって、その面から安全性をくずす傾向がありますので、きびしくこれを規制し、一そう保安度を高めさせようといたしております。
 第三に、気象業務の体制整備により、安全運行を確保することを規定いたしました。気象条件が交通安全に重大な関係を持っていることは多言を要しないところでありますが、特に海上交通や航空交通の安全に関しましては、現在の気象業務の体制をさらによく整備することが急がれなければなりません。
 第四に、運転者等の面からの安全の確保について規定を設けております。すなわち運転者、操縦士等はいつでも安全運転、安全運行ができる最もよい条件のもとに置かれねばなりません。そのためにはまず労働条件を改善し、過労からくる事故を防ぎ、生活環境もそれにふさわしいものに整備されねばなりません。
 第五に、交通規制等を含む交通秩序の維持について規定を設けております。ここにおきましては、陸、海、空の全体にわたり、大衆輸送の確保と安全の両面から新たな規制も考慮しなければならないのであります。
 第六に、交通安全の確保を全うするには国民全体に交通安全思想を普及徹底させることが何よりも重要なことと考えられますので、このために交通安全の教育が教育機関、職域、地域で計画的、組織的に実施されるようにいたしました。
 第七に、交通事故の原因を科学的に究明するため、調査機関の設置等必要な施策を講ずることといたしております。交通事故のすべての原因が、運転者等の不注意と、不可抗力に帰せられることは人権にも反するばかりか、問題の正しい解決を誤ることになります。事故の原因が正しく把握され、初めてその責任所在が明確にされて、しかも、その対策が立てられなければなりません。交通労働者の長い間の要求である事故原因の正しい究明をこの際ここで実現させようとしているものであります。
 第八に、交通事故の防止に関する科学的かつ総合的な研究等につき規定しております。交通事故防止のための研究をより科学的かつ総合的なものとするとともに、技術開発を推進し、またこれらの成果の利用の促進をはからんとするものであります。
 次に、第三章におきましては、救急医療体制等の整備と自動車損害賠償保障制度等の充実について規定しております。特に、救急医療体制におきましては脳神経外科医療陣営の強化が緊急を要するものであります。
 最後に、以上の施策を実行するには、ただいまの行政部門は多岐にわたっていますので、これを統一的に実行させるため、その機関の整理統合が必要と考えられますが、本法案では、第四章におきまして、別に提案いたしております交通安全対策委員会設置法によって、交通の安全に関する基本的な計画の策定及びその実施の推進を任務とする行政委員会たる交通安全対策委員会を設置することといたしております。
 また、第五章におきましては、交通安全対策審議会に関し、所要の規定を設けております。
 以上、本法案を提出いたしました理由及びその大要について御説明を申し上げた次第であります。(拍手)
#8
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。杉原一雄君。
   〔杉原一雄君登壇、拍手〕
#9
○杉原一雄君 ただいま提案された法案に対し、日本社会党を代表して質問いたします。
 まず第一に、七月上旬、警察庁発表によると、今年一月から六月までの交通事故件数はおそるべき伸びを示しています。七千二百五十六人の死亡者、四十二万三千六百六十二人の負傷者、昨年に比しそれぞれ一四・八%、二八・五%というおそるべき増加を示しているのであります。交通戦争は激化し、国民は不安と恐怖の中に暮らしています。総理は、本会議場を通じ、全国民に対し、人間尊重を基調とし、祈りをこめて、交通戦争絶滅、交通安全宣言に相当する交通事故ゼロを目ざして努力する決意を表明していただきたいのであります。第二に、交通政策の基本構想を明らかにしてもらいたい。
 昨年五月二十二日、本院において、交通安全対策に関する決議を行ないました。その第一項に、「国及び地方公共団体の講ずべき交通安全対策の基本を定めるとともに、その総合的な実施を推進する体制を確立すること」とあるが、今次の基本法の政府提案、社会党の積極的提案もその努力の一つと考え、敬意を表します。ただただ、憂慮にたえないことは、戦後の交通事故、死傷者六百五十万人、死者、昨年だけでも一万四千二百五十六人、死傷者年々百万人になんなんとしていることであります。交通道徳の振興もさることながら、日本の地理的条件、気象条件、都市の分布状況、とりわけ経済の高度成長政策のひずみ現象として、一方では公害の激発、他方では交通事故の激増となり、日本全土に不安と暗い影を投げているのであります。総理は大勢に流されることなく、交通基本政策を新全国総合計画と関連させながら、抜本的対策を示してもらいたいのであります。
 新全国総合計画の中の交通政策を見ると、まず鉄道について、過去、線の輸送と面の輸送を担当し、今日のような高密度、高水準の経済社会活動の開花をもたらしたと鉄道を評価しながらも、鉄道は経済的、機能的に限界に達したと判断を下しているが、はたしてそうかどうか。そうして新しい交通政策として、新幹線の形成、航空輸送の増加、自動車輸送の主力化を目ざし、とりわけ面の主力を自動車に置くことを明らかにしているのであります。後ほど立証いたしますが、人命尊重の第一の交通安全の観点から見て、再検討する必要を感じないかどうか、伺いたいのであります。
 すなわち、今日の急激に増加していく道路、橋、自動車の欠陥が暴露されている現状にかんがみ、赤字だから鉄道を撤去する、小回りがきくから面の交通の自動車まかせにするという方針を大転換し、大胆に未来の交通像、デザインを示されることを期待するのですが、いかがでしょうか。
 第三に、欠陥道路、欠陥橋などと交通安全対策について。
 昨年八月十八日、国道四十一号線上、集中豪雨のため飛騨川事件が起こり、一瞬にして百数名の人命が濁流にのまれたという恐怖の教訓はわれわれの記憶に新しいのであります。刑法上の責任なしと結着がついたらしいのですが、行政上の責任はないかどうか。道路をつくる場合、集中豪雨五百ミリを最高限度としている。それをこえる七百ミリの雨についに四十一号線は敗北したのであります。不可抗力ということばで逃げることは断じて許されないのであります。日本の気象、風土などの歴史的教訓に学び、全天候性に対応できる道路づくりの必要が痛感されるのであります。
 参議院特別委員会において「バス旅行等の安全確保に関する決議」を上げたのだが、建設省が全国の道路を総点検し、緊急改修計画を樹立されたと承っているが、本年はすでに七月、適切な計画のもと、国、県、市町村の改修が進んでいると信頼したいのでありますが、その概況はどうでございましょうか、提示いただきたいと思うのであります。
 そしてまた、本年七月二日、一日に三万台の自動車が通る富山大橋、北陸の大動脈国道八号線が神通川を渡る重要な橋、豪雨、増水の圧力に耐えかね、地盤沈下に伴い橋がくの字になり、二メートル五十五センチ橋脚が下がったのであります。一瞬にして交通はとまり、毛細管並みに細い迂回道路はたちまち人と車で埋まってしまい、麻痺寸前の状態、パンク寸前の状態であります。そのことを私は現地を調査して身にしみて感じてまいりました。われわれは永久橋と言います。永久橋は必ずしも永久ではなく、欠陥に満ちた危険橋であることが証明されたのであります。おそろしいことであります。県も直ちに県所管の橋を総点検いたしましたところ、至るところに危険な橋のあることがわかり、真剣に改修計画に乗り出しております。
 そこで建設大臣、七月二日の富山大橋の沈下の教訓から、まず第一に、全国にわたっていわゆる永久橋と名づけられる各橋の総点検を開始されたいと思います。と同時に、その原因の究明と責任を明らかにしてもらいたい。水流の変更、河床の沈下、昭和十一年以来の管理、パトロールの経過、そして設計図すら現在ないという。一体河川、道路などの台帳がどのように管理され、継承されているか明らかにしてほしいのであります。
 次に、大臣は、交通上きわめて重要な橋であるから、交通難を一日も早く緩和するため応急措置をとられたと思うが、どうでしょうか。そうして、すでに相当時日も経過いたしましたから、建設省として恒久改修計画ができておればそれを明らかにして、一日もすみやかに復旧されることを要望いたすのであります。
 第四に、欠陥車、欠陥者、すなわち、欠陥。パトロール等と交通安全対策について。
 東名高速道路が完通する、わずか一カ月に百五十名の死傷者を出す。芸術道路をうたい、フランスのものまね舗装でスリップ事故続発、実は日本では五十キロ出せる道路しかないことをよいことにして、低速用タイヤその他の車体で十分であった。これがほんとうに百キロ道路を走り出すとたいへんであります。あらゆる矛盾や欠陥が一挙に吹き出したのであります。とりわけアメリカから鋭く追及がなされた日本製自動車の欠陥の暴露と相まって日本全土にわたって欠陥車恐怖を巻き散らしている。車十台に一台の欠陥車、ある評論家が、「交通道徳高揚で事故が防げるなどという非科学的な精神訓話を信ずるわけにはいかない、車は凶器だと疑ってみるのが現代の正しい生き方だ」と喝破しているのであります。メーカーの行き過ぎた保護という最大の役割りを果たしているのは通産省である。国民のための通産省から、業界のための通産省に堕落しているのではないだろうか。だから、国民の千人や万人死んでも、国際競争力にうちかつためにやむを得ないと言い、国民の自動車抑制への切なる願いを一向に顧みようとしない。車は狭い国土に必要度をはるかにこえてあふれ、すでにその効用を発揮できないばかりか、国民の健康と生命を侵害しているのであります。通産省は、自家用車の運用状況を調査したことがありますか。自家用トラックの年間運営費がどれくらいかかり、流通費用のむだが物価高などを起こし、経済効率にどれくらいの重大な影響を与えているか、調査点検したことがあるか。この際、人の命を大切にするという大命題に向かって、車の需要を大胆に制限する勇気に満ちた政策がとれないものかどうか。
 次に、総理府長官がまとめて答えてもらいたいのは、一つは、自動車の道路上の監督行政についてであります。「日本には車検制度があるから、米国のように欠陥車をきびしく取り締まる必要がない」というような無責任行政は許されないのであります。
 二つには、欠陥者すなわちドライバーの問題であります。自動車教習所の乱立と監督行政の不行き届きで、不正教習、でたらめ合格によって、欠陥ドライバーが二一%も大量生産されているということは、きわめて重大であります。現状はどうか、今後の対策はどうであるかを明らかにしていただきたいのであります。
 法第二章に、交通安全対策会議の設置が規定されております。例によって例のごとく、のろのろ行政、欠陥行政の隠れみのにならぬか、運営の構想と決意を伺いたいのであります。
 第五に、最近の交通事故の動態と基本対策について、重ねて総理府長官にただしたいことは、最近の五年間の交通事故発生の状況であります。事故の場所別、状態別発生の概況と、それに対応する方針であります。第一位のアメリカ、第二位の西ドイツ、それに迫る日本、その国際的比較検討も明らかにし、事故防止の基本政策を明確にしてほしい。
 重ねて総理の決意を伺いたい。
 それは、欠陥道、欠陥橋、欠陥車、欠陥ドライバー、日本の交通事故率は世界において不名誉な三役の座にあります。これは、一にかかって、日本の行政の欠陥、各省の不統一、そしてまた、戦後日本の経済があまりにも急速に発展し、世界からエコノミック・アニマルと批判されている。欠陥車がこれを明らかに実証しております。いまこそわれわれは、日本の発展、文明のテンポがスローダウンしてもいいから、性急にかけ足してきた戦後社会の欠陥、日本の欠陥を、この際総反省すべきではないだろうか。特に、今秋渡米される総理の引き出ものとして自動車資本の自由化を用意されていると聞くこの際、愛国者をもって自任する総理は、勇断をもって日本民族の独立の道を断固として明示すべきではないでしょうか。
 社会党の久保議員に対して質問いたします。
  一つ、前文において人命尊重の論理が貫かれていると見るが、いま一度その真意を述べてもらいたい。
 二つ、そのことが第一条目的の表現にもはっきりあらわれていると思うが、どうだろうか。
 三点は、閣法第九条において、歩行者の責務がうたわれているが、社会党案でどこでそのことが規定されているか、明瞭にしてほしいのであります。
 四点は、閣法第十四条で、交通安全対策会議の設置がうたわれている。社会党案で第二十条交通安全対策委員会の設置、第二十一条において交通安全対策審議会の設置がうたわれているが、政府案との違い、社会党案の委員会と審議会との運営上の違いと根本的ねらいは何であるかを明らかにしてほしいのであります。
 交通戦争には、前線も銃後もありません。一歩外に出れば戦場であります。家の中でさえ安全とは言えないのであります。夜半、就寝中にトラックが飛び込んで、一家みな殺しの記録もあります。いまこそ政府が先頭に立ち、交通戦争撲滅の努力を宣言すべきであり、われわれ国民もひとしく総点検し、総反省の上に立ちながらも、交通戦争を告発するため総決起すべきときであると信じます。
 以上をもって質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(佐藤榮作君) 杉原君にお答えいたします。
 御指摘のように、いわゆる交通戦争は、急激な社会の発展に伴ってもたらされたものであり、人間疎外の大きな要因となっております。しかし、一方では、東名高速道路の全通に見られるように、新しい道路網が国民に対して新しい利便を与え、また、経済発展の原動力となっていることも事実であります。
 問題は、都市における交通の渋滞、特に、それが原因となりまして、通園通学児童や一般歩行者に危険をもたらしたり、社会生活や経済活動の円滑な発達を阻害していることであります。人間尊重は、私の政治の基本理念であり、交通の安全に関する施策は人命の保護を直接の目的とするものである点におきまして、他のいかなる施策にも優先すべきものと考えております。このような見地から、各種の交通機関による交通事故の発生を可及的最小限度に押えること、このために総力をあげてまいりたいと決意しております。最近、歩道橋等の交通安全施設の整備が目立って進んでまいりましたが、まだまだなすべき多くのことを残しております。問題は、これらを総合的、かつ、計画的に推進することにあり、私は、この交通安全対策基本法がその有力な支柱となることを期待するものであります。
 次に、鉄道、道路、海運及び航空を通じて総合的交通輸送体系を確立することは、きわめて大切な課題であり、国鉄財政再建促進特別措置法におきましても、将来にわたるわが国の交通体系全体の見通しを策定することを規定し、鋭意その策定に当たっている段階であります。その基本的な考え方は、旅客と貨物の輸送の各種各様の態様において、それぞれの輸送手段がどのような形で分担するのが最も国民経済的に見て効率的であるかに焦点があらわれるべき問題であると、かように考えます。杉原君のお尋ねは、自動車は鉄道よりも危険であるから、鉄道を自動車輸送に切りかえることには反対だと、さような御意見のように伺いましたが、私は、この考え方につきましては、たやすく全面的にこれに賛成するわけにはまいりません。交通政策のあり方としては、ただいま申し上げましたような趣旨におきまして考えるべき問題であり、交通安全の課題は、それぞれの輸送手段ごとに確保さるべき問題である、かように考えます。したがいまして、その本末を誤らないようにいたしたいものだと思います。
 最後に、杉原君からは、欠陥道路あるいは欠陥自動車、あるいは欠陥ドライバーの問題等、これは欠陥行政の結果であるとのおしかりがありました。また同時に、政府に対しまして強い反省を求められました。これらの点につきましては、それぞれの担当大臣から詳細にお答えするところだと思いますが、私は、特に欠陥自動車の問題につきまして一言しておきたいのは、ひとりこの問題は国産車だけの問題ではありませんが、いずれにせよ、きわめて遺憾なことであると言わざるを得ません。関係業界に対しましては、所管大臣から厳重な注意を指示したところでありますが、今後は、関係業界の品質管理体制の強化と欠陥車についての善後措置につきまして、十分監視してまいるとともに、政府としても、従来の車検制度のあり方や修理工場に対する監督指導方針、あるいは万一欠陥車が発生した場合の事後処置等につきまして適切な改善措置をとってまいります。
 ただ杉原君は、すべてを行政の欠陥に原因を求めておられますが、私は、決して責任のがれで申し上げるわけではありませんが、交通安全は、ひとり政府のみで達し得る問題ではなく、国民のすべてがそれぞれの立場におきまして、いわゆる国民総ぐるみの体制を確立することが何よりも肝要であると考えます。今回提案いたしました法律案もそのような趣旨を織り込んで策定されたものであり、これにより、交通安全対策の総合的かつ計画的な推進が一そう確保されるものと、かように考えております。十分御審議のほどお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣坪川信三君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(坪川信三君) 杉原議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 御質問の第一でございますが、飛騨川バス転落事故に対する道路管理者の刑事上の過失責任はないことが判明しておりますが、かかる悲惨な事故の再発を防止しなければならないという行政上の責任は十分痛感しているところであります。すなわち、事故発生後直ちに危険個所の総点検を行ない、その結果早急に対策を実施する必要がある個所については、防護施設の設置に努力をしているような次第であります。防護施設の設置状況は、指定区間内国道につきましては、昨年度中には百三十カ所を完了いたしております。引き続き本年度は、六百二十六カ所について現在実施中でありまして、その他の道路につきましても、危険個所の防災工事を重点的に実施している次第でございます。なお、本年四月からは、建設省の道路局内に道路交通管理室を設けまして、道路情報の収集及び伝達の業務を行なうほか、異常気象時における交通規制を行なうこととし、個所ごとに規制基準を定めまして、すでに実施しているような次第でございますので、御了承願いたいと思います。
 御質問の第二点でございますが、指定区間内の国道につきましては、従来月に一回程度定期的に点検を実施しておりますが、飛騨川バス転落事故直後、危険個所の総点検にあわせて橋梁の総点検を実施しており、危険と思われる橋梁については、逐次必要な対策を講じております。
 富山大橋につきましては、目下調査官を派遣いたしまして原因を調査いたしており、異常な穿掘により橋脚が沈下したものと推察される次第でございます。交通確保につきましては、現在とりあえず上下流の橋を迂回路に実施しており、早急に仮橋を建設すべく目下下部工事を着手しており、七月十五日までに歩行者の仮橋が完了いたし、八月の中旬までには車道用の仮橋も完成する予定で、目下工事を鋭意急ぐよう指示をいたしているような次第でございます。富山大橋の本復旧につきましては、現在その復旧工法等について検討中であり、それらのことが決定いたし次第、早急に完成するよう指示をしていることで御了解願いたいと思います。また、昭和十年に架設されましたこの大橋の設計図あるいは施工実施内容等の書類につきましては、目下、県並びに関係当局に強く指示いたしておりますが、御案内のような不幸な空襲等によりまして、かなり入手の困難な事情もあるやに聞いておりますが、指示は強くいたしておりますとともに、今後かかる重要なる書類の保管につきましては、十分万全の措置をとるよう重ねて指示をいたしておりますので、御了解願いたいと思います。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(大平正芳君) 欠陥車について、自動車生産行政の改善についての御指摘でございました。私ども正直に申しまして、これまでの自動車生産行政は、内需の充足、輸出の伸長をはかりながら、来たるべき自由化に対処するために、業界の体制整備でございますとか、輸出の振興であるとか、あるいは技術の開発であるとか、そういう方面に傾斜しがちでございまして、正直に申しまして、いま御指摘のように、自動車交通の増大がもたらす社会的、経済的な影響を究明するとか、とりわけ安全性に対する指導と点検におきまして、必ずしも十分でなかったことを反省いたしております。この反省の上に立ちまして、いろいろ原因を究明いたしておるのでございますが、意外に欠陥車の原因が、設計面、組み立て面における安全性の検討に欠くるところがあったということが最大の原因のように思われます。特に耐久テストの強化等によりまして、この面の安全性の検討を強化してまいるつもりでございます。また、部品の品質管理の徹底でございますが、社内検査を充実することによりまして御期待にこたえなければならぬと考えております。さらにメーカーと販売業者とユーザーとの連携を密にいたしまして、欠陥の早期発見と、これに対応した修理が即座にできるような体制の整備を急がなければならないと、鋭意努力中でございます。(拍手)
   〔国務大臣床次徳二君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(床次徳二君) まず、欠陥車に対しまして公安委員長にかわりましてお答え申し上げますが、交通取り締まり、または交通事故の捜査におきまして、従来以上に車両の構造面につきまして捜査を強化して、疑わしい場合におきましては陸運事務所にその旨を通報するとともに、専門的な調査、鑑定を慎重に行なった上で処置いたしたいと思います。
 なお、免状――運転免許の問題でありまするが、資格年齢や運転免許の試験の内容等につきましては、これまでも必要と考えられる強化をはかってきたところでありまするが、特にマイクロバスにつきましては、交通事故の結果が非常に大きいものでありますので、その運転資格をなお強化する必要があるのではないか、かように考えまして、具体的な処置を検討している次第でございます。
 なお、本法におきまするところの交通安全対策会議等の運営の問題についてお話がありましたが、こういう緊急を要するもの等につきまして十分な適切な処置が必要ではないかというおことばでありました。まことにさようであります。原則といたしまして、この交通安全対策会議が作成しておりまするところの交通安全基本政策は、将来起こり得る事態を想像し、過去の事態から検討いたしまして、総合的な長期的な施策をつくっておるわけでありまして、したがって、今日の場合におきましては、その実施において問題なく処理することができると思っておるのでありまするが、しかし、緊急な場合、特殊な場合におきましては、その運営に対しましては十分配意いたしまして、すみやかに交通安全対策会議等の運営を行なうということで対処いたしたいと思います。
 なお、交通事故の総くくりといたしまして、最近の五年間におけるところの交通事故の発生状況その他についてのお尋ねがございましたが、事故件数だけ申し上げますると、死者が昭和三十三年を一〇〇にいたしますと、昭和三十九年は一六一でありましたが、四十年は一五一、四十一年は一六九、四十二年は一六五、四十三年は一七三というふうな指数の激増を見ております。負傷者に対応する指数を申し上げますると、三十三年が一〇〇でありますると、三十九年は二二六、四十年は二三〇、四十一年は二七九、四十二年は三五三、四十三年は四四七というふうな推移を見ておるのでありまして、したがって、これらの場所あるいは状態別その他、事故の現状を十分検討いたしまして、そうして将来におけるところの交通事故の発生の予測というものを考えまして、長期的な視野のもとに、実施すべき計画を策定いたしたい。これが今回の提案いたしましたところの交通安全対策基本法におけるところの中央交通安全対策会議の作成いたしまするところの基本計画でございまして、それに従って実施いたしたいと思うのであります。
 この本法の制定によりまして、ただいま国におきまして、交通事故の長期的予測に基づく総合的な、長期的な施策の大綱ができると同時に、やはり地方公共団体におきましても、それぞれの地域における実情に応じましたところの交通安全計画を作成することになります。今後はこの計画を着実に実施することによりまして、国及び地方公共団体、なお一般国民が総ぐるみになりまして、総合的に運動を推進してまいりたいと思うのであります。もって、交通事故を徹底的に防止するように努力いたしたいと存じます。(拍手)
   〔衆議院議員久保三郎君登壇、拍手〕
#14
○衆議院議員(久保三郎君) お尋ねは三点のようであります。
 まず第一に、目的についてお尋ねがありました。特に前文並びに第一条に関係して、本基本法の精神、これは人命尊重、それを中心に考えておるのだろうが、そのとおりであるかどうか、というお話であります。全くそのとおりでございまして、基本法についてのものの考え方でひとつ申し上げたいと思うのでありますが、これは基本法でありますから、この基本法だけでは、実際の政策というか、そういうものは出てこぬはずであります。ただ問題は、政府自身のいわゆる取り組み方をひとつ宣言するというか、これが一つであると思います。それからもう一つは、大きくわれわれが提案いたしておりますとおり、政策の目標をひとつぴたっときめていくというその目標について、具体的に実効あらしめる体制を整える、この三段なり、四段がまえが基本法の中に盛られなければ、基本法の値打ちはないのではなかろうか、というふうに考えております。
 そこで、前へ戻りますが、まさに、いま強調してもし過ぎないのは人命尊重の問題であり、人間性回復の問題だと思うのであります。そういう意味で、しかも、それは一般的ではなくて、いま交通事故と人間の関係は、御承知のように、直接的に人命、身体、財産、こういうふうに直接的なかかわり合いが出てまいりましたので、特に、その旨をはっきり規定することが、われわれ自身の目標を内外に示すことだと思うのであります。ところが、政府案については、すでに御案内のとおり、責任のあり個所は、国、地方公共団体のほかに、いろいろございます。そういうものを規定しました。
 そうしますと、国あるいは地方公共団体の責任というのが何か、あとからこれもお答え申し上げますが、歩行者の責任と同列に薄められる危険性があるわけであります。いわば、ことばをかえて言えば、総ざんげのような形で出てくる。これであっては、政策の実施も、責任のあり個所も明確にならないのではなかろうかというふうに、てまえどもは考えておるわけであります。特に前文は、政府案じゃありませんから、第一条の目的は、少なくとも国民の生命、身体、財産、それを交通事故から守るのだという宣言が私は必要だと思うのでありますが、政府案にはない。われわれのほうでは、御承知のように、第一条には「国民の生命、身体及び財産を交通による危害から保護し、」云々、こういうふうに考えて書いているわけであります。先ほど総理からの御答弁では、なるほどお答えの中では、人命尊重を強調されておりますが、そうだとするならば、何がゆえに、この法律案には書かなかったのかというふうにも考える次第であります。
 いずれにいたしましても、われわれは、人命を尊重するという立場を貫き通していきたいというのが基本法提案の大きな柱であります。
 次に、歩行者の責任というのが政府案では書いてあるが、衆法においては、どうなるのかということであります。これは歩行者の責任ばかりではありませんで、私どもの提案にはないのが、たくさん政府案には責任が所在しております。たとえば車両等の使用者の責任、車両の運転者等の責任、それから歩行者の責任、変わったところでは、住民の責任というのがございます。私どものほうには、いわゆる国及び地方公共団体の責任と運輸事業者の責任を明確にしただけであります。歩行者の責任について類似するものということでありますが、あれば、一般国民の協力であります。これは第六条において、「国民は、交通の安全に関する国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。」ということで、いわゆる訓示規定をここに設けました。これは、提案の説明でも申し上げたように、まさに総力戦でありますから、国民もこれに協力していただくということは当然かと思うのであります。ただし、歩行者の責務でありますが、これは、ここで政府案がいうものは、おそらくこういうものの担保は、道路交通法の中で担保されるべき筋合いのものである。あるいはそれぞれ航空法、あるいは海上運送法、あるいは索道法、あるいは地方鉄道法、地方軌道法、そういうもので、それぞれの規定がありますので、ことさらに、この歩行者の責務をこの中に入れる必要はない。むしろこれによって、何か責任のあり個所がぼけてきはしないかというふうに考えるわけであります。それから、先ほど申し上げたように、運転者の責務とか、そういうものは、すべてそれぞれの関連法律の中で責任を担保してありますし、また、担保をきつくするなら、そこできつくすることであると考えているわけであります。
 最後に、いわゆる政策実行あるいは立案の体制についてであります。
 御指摘があったように、交通運輸ばかりでなくて、すべてそうなのでありますが、特に現在当面する交通安全に局限いたしましても、交通安全を担当するそれぞれの省庁はたくさんございます。運輸省、警察庁、建設省、文部省、厚生省そのほかにもございます。そういうふうなことで、特に、仄聞するところによりますというと、政府案の交通安全対策基本法案をつくる際に、各省庁間においていわゆる意見の調整ができないままに提案が長引いたという話を聞いております。法案の中にもそういうのが散見しております。そのことは別として、いずれにしても、いま最も大事なのは、この安全施策を着実に一体として実行するような体制を築くことが何よりも大事だと思うのであります。そのためには、ただいま申し上げたように、各行政機関をひとつ一元化するということだと思う。しかし、各省庁の権限を全部一元化することも、これまた現実的にはなかなか不可能に近いこともあります。そこで、少なくとも交通安全に対してのみは、この一元化をしていこうということで、先ほど御説明申し上げましたように、国家行政組織法第三条によるところの行政機関として交通安全対策委員会を設置しよう。で、交通安全対策委員会では、これは先ほど申し上げましたように、別途、交通安全対策委員会設置法案を提案いたしておるところでありますが、そこでは特に、交通の安全に関する基本的な計画を策定する、交通の安全に関する基本的な計画の実施を推進する、交通の安全に関して関係各行政機関が講ずる施策の総合調整を行なうこと、まあこういうことを特別につかさどらせようというので、総理府の外局としてこれは設ける。さらにこれだけじゃなくて、民間専門家の意見も聴取しようということでありますので、いわゆる審議会を総理府の附属機関として設けることが、われわれの提案の骨子であります。政府案においては、御案内のとおり、総理府の附属機関として、交通安全対策会議を設けようと。なるほど総理大臣が会長でございます。重みがあるようでありますが、いままでの経験からすれば、御承知のように、これは一回か二回の国民会議で経験したようなかっこうになりはしないか。あとの具体的な、先ほど御質問にあったように緊急の場合の対策、これは各省庁ばらばらであります。そうなった場合には、提案説明でも申し上げたように、いわゆる機動性を必要とするこの種の問題に対しての対応する体制が、いまと同じであってはならないということであります。そういう意味で、われわれのほうは特別な対策を立てたわけであります。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
#15
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#16
○議長(重宗雄三君) 日程第一、北海道防寒住宅建設等促進法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。建設委員長大和与一君。
   〔大和与一君登壇、拍手〕
#17
○大和与一君 ただいま議題となりました北海道防寒住宅建設等促進法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 現行法におきましては、住宅金融公庫の資金によって北海道に建設される住宅は、簡易耐火構造以上の防火性能を有する防寒住宅に限られておりますが、本法律案は、最近における建築材料の進歩及び北海道における木造住宅建設の実情にかんがみ、第一に、北海道においては、木造住宅についても、防火性能を有する防寒住宅であれば、住宅金融公庫の資金を貸し付けることができること。第二に、防寒住宅における防火性能について、構造上必要な技術的事項は、建設省令、大蔵省令で定めること等の改正をしようとするものであります。
 本委員会における質疑の内容は、会議録により御承知願いたいと存じます。
 質疑を終了し、採決しました結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#18
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#19
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
#20
○副議長(安井謙君) 日程第二、道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長岡本悟君。
    〔岡本悟君登壇、拍手〕
#21
○岡本悟君 ただいま議題となりました法律案は、最近における自動車保有台数の急増に対処し、自動車の登録及び検査に関する事務処理の能率化をはかるため、電子情報処理組織を導入するとともに、民間車検のより一そうの活用により、車検制度の合理化をはかること等を内容とするものであります。
 委員会におきましては、当面問題とされている欠陥車問題を中心として、自動車の安全性確保のための諸方策について、参考人の意見をも聴取しつつ、熱心な審議が重ねられましたが、その詳細は会議録に譲りたいと思います。質疑を終了し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 続いて、森中委員から提出された、自動車の安全確保のため当面政府のとるべき措置に関する各派共同の附帯決議案は、全会一致をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#22
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#23
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#24
○副議長(安井謙君) 日程第三、都道府県合併特例法案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長内藤誉三郎君。
   〔内藤誉三郎君登壇、拍手〕
#25
○内藤誉三郎君 ただいま議題となりました都道府県合併特例法案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 本案は、最近における社会、経済の発展に伴い、都道府県の区域をこえる広域にわたる行政の合理的かつ効率的な処理と、行財政能力の充実強化をはかるため、都道府県の自主的な合併が容易に行なわれ得るよう、特例措置を定めようとするものであります。
 内容の骨子を申し上げますと、
 第一に、都道府県の自主的な対等合併を期待することを基本の立場とし、合併は、自然的、社会的及び経済的に一体性のある区域、または将来一体性のある区域として発展する可能性の強い区域であって、広域にわたる行政を合理的かつ効果的に処理することのできる区域について行なわれることとし、合併の手続として、関係都道府県議会の三分の二の議決による申請に基づいて内閣総理大臣が国会の議決を経て処分できる方法を開こうとするものであります。なお、この場合、関係都道府県の議会の議決が半数をこえ三分の二に満たないときは住民投票に付さなければならないことにしております。
 第二に、都道府県の合併の実施を円滑ならしめるため、国会議員の選挙区、合併都道府県の議会の議員の任期及び定数、職員の身分の取り扱い、地方交付税の額の算定等の国の財政措置について特例を設けるとともに、合併都道府県の建設を促進するための財政上の配慮、公共企業体等の協力、国の地方行政機関の所管区域の整備等について所要の規定を設けることにしております。
 なお、この法律は、十年間の限時法とすることにしております。
 委員会におきましては、大阪市及び名古屋市において現地公聴会を開催するほか、参考人の意見を聴取し、また、建設委員会と連合審査会を開く等慎重審査を行ないました。その間、広域行政の諸問題をはじめ、合併手続と住民投票、合併の効果、国の権限の地方への委譲等の問題について熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して松澤委員より反対、自由民主党を代表して熊谷委員より賛成、公明党を代表して原田委員より反対の意見が述べられ、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
#26
○副議長(安井謙君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。和田静夫君。
   〔和田静夫君登壇、拍手〕
#27
○和田静夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ここに内閣提出の都道府県合併特例法案に反対する討論を行なわんとするものであります。
 わが国憲法における地方自治の規定は、憲法が全体として保障する民主主義体制との関連において不可分の要素として、わが国の伝統的な官僚制支配に対する深刻な反省を込めたものであることを、私は自治大臣を通じて総理はじめ全閣僚に思い起こしていただきたいのであります。もちろん、欧米の民主的な地方自主制度を原理的に導入してきたはずのわが国の現行制度が、わが国の政治的、社会的風土の中にあって、所期の効果を十分発揮していないことを知らないわけではありません。住民の権利意識の未成熟、議会や議員活動の中に、いろいろと前近代的なにおいをかぎ分けることもできないわけではありません。しかし、わが国に近代的な意味における地方自治の概念が導入されてから、一体何年経過したというのでありましよう。
 政府はいま、広域行政の要請ということを理由に、府県の規模を拡大せんとして、この都道府県合併特例法案を提案をしてきております。しかし、府県が戦前的官治自治体から脱皮して、完全自治体になって、一体何年経過したというのでありましよう。
 そして、何にも増して強調されなければならないことは、府県自治の伝統の浅いわが国において、府県がまさに完全自治体として、さまざまな新しい時代の要請にこたえて、自主的な解決をはかっていく方向が追求されなければならないにもかかわらず、政府は、この府県の自主的な解決機能を涵養する努力を何もしなかったということであります。それどころか、府県の自治体としての活動を不満足にしてきたものは、一にかかって中央政府の官僚的拘束そのものであります。
 新河川法や道路法で権限を上に集中してみたり、地方建設局、通商産業局、地方農政局等、国の出先機関や公社、公団をやたらにつくり、いわゆる天下り官僚を府県に配置して、府県の自治体としての性格を薄め、国の出先機関化してきたのは、ほかならぬ政府ではありませんか。地方制度に関する政府の諮問機関さえ、府県なり市町村の自治体機能の拡充という観点から、行政事務の再配分、財源配分を何度も何度も答申したにもかかわらず、機関委任事務という明治憲法下の概念を存続せしめて、補助金で、そして無数の通達で、府県の活動をがんじがらめに縛り上げてきたのは、ほかならぬ政府ではありませんか。
 地方自治の区域を変更する問題は、欧米諸国でそうであったように、密接に行政事務再配分のそれと結合して初めて、ことばの厳密な意味における地方分権の再編成の問題としてあらわれるものであります。しかるに、わが国においては、行政事務再配分のほうは一向に取り上げられず、広域行政の要請ということから府県合併のみが、すなわち、地方自治の区域の変更のみが取り上げられようとしていることは、世に答申の「つまみ食い」と称されるゆえんであります。このことは一体何を意味するのでありましょうか。
 まさにいま企図されている府県合併が、地方分権の再編成を意味するものではなくて、中央集権の徹底として、道州制への布石として位置づけられているということにほかなりません。広域行政の必要性、一体これ以上何が必要だというのでありましょうか。よく府県の区域がじゃまになるといわれた河川行政や道路行政については、河川法を改正したではありませんか。道路法を改正したではありませんか。各個別行政ごとに起こってくる広域行政需要については、美濃部東京都知事も明言をしていますように、地方行政連絡会議法に基づく地方行政連絡会議があるではありませんか。総合的な開発行政についてはその総合性は、国土総合開発法の体系がまず全国総合開発計画を持ち、ブロック的には首都圏、中部圏、近畿圏と、それぞれ中間的な開発計画があり、そして府県はこれらの計画に即した地方計画を持つことになっている、そのことによって保障されているではありませんか。その総合性を破壊してきたものは、各中央省庁の縦割り行政、セクショナリズムであるということは、多くの識者が指摘しているところであり、自治大臣もまた認められたところではありませんか。それどころか、今度のいわゆる自主的府県合併の方式は、事態をさらに悪化させると思うのであります。すなわち、一部の府県が、自己の恣意的関係から利己的に合併をすることにより、圏域内他県との調和が破れ、合併した圏域内の一部と、合併しない圏域内の他の県との間にアンバランスが生ずるおそれがあることであります。地元では、むしろこの府県合併によって、近畿は一つ、中部は一つという共同的連帯が失われるのではないかという懸念をさえ持っているのであります。繰り返し強調をいたします。広域行政の必要性、一体これ以上何が必要だというのでありましょうか。
 政府にとって必要なのは、広域行政という名による中央集権であり、地方自治ではない。まさに地方自治そのものを破壊をした官治行政なのであります。(拍手)
 日本国憲法がその第九十二条で「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて法律でこれを定める。」とうたい、第九十五条で「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」とこれを受けているのは、単なる手続の問題ではありません。ここには、直接民主主義としての住民自治という日本国憲法的理念の強調が明確にあるのであります。
 しかるに、政府は、この憲法の条項を官僚的に、手続論的に解釈をして、それぞれの県議会の三分の二以上の賛成があれば、住民投票を省略した地方自治体の区域の変更に道を開こうとしているのであります。これは、単なる手続の簡素化ではありません。明確に、住民自治という日本国憲法的理念への挑戦そのものであります。
 日本国憲法下で、明治憲法体制下における地方自治の嚮導原理が機関委任事務という形で温存されていること自体、アナクロニズムというだけでは済まされない問題を含んでおります。ましてや、道州制への一里塚としてのこの都道府県合併特例法案に見られる地方自治思想が、単にプロイセン・ドイツ型のそれであるばかりではなく、戦前のわが国普選下の政党政治を太平洋戦争への突入に誘導していったわが国内政の基本線であったということを想起をし、その意味からも、私は、現在のこの時点でこの法案が出されてきたことについて、決して見のがすことができないのであります。
 多数の国民とともに、歴史への逆行を指摘し、非難せざるを得ません。
 以上申し述べて内閣の猛省を促し、内閣提出の都道府県合併特例法案に強く反対するものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○副議長(安井謙君) 熊谷太三郎君。
   〔熊谷太三郎君登壇、拍手〕
#29
○熊谷太三郎君 私は、自由民主党を代表して、都道府県合併特例法案に賛意を表するものであります。
 本法律案は、都道府県の合併の手続について、地方自治法に定める現行方式のほかに、関係都道府県の議会の議決による申請に基づき、内閣総理大臣が国会の議決を経て定めることができる特例を設けるとともに、その合併を円滑ならしめるため、国会議員の選挙区、合併都道府県の議会の議員の任期及び定数、職員の身分の取り扱い、地方交付税の算定等に関する特例措置を定めようとするものであります。
 最近、わが国における社会、経済の著しい発展に伴って、現行都道府県の区域を越える広域行政の必要性と、都道府県の能力の充実強化とが強く要請されてきているのは事実であります。
 このような社会情勢に対処するため、都道府県の自発的意思に基づく合併の道を開くことは、まことに時宜を得たものと考えるのであります。
 以下、私は、合併による具体的効果について、若干あげてみたいと存じます。
 府県合併によって地域が広域化する結果、現在の狭い府県の境界内のみでは解決のつかない住宅難、水不足、公害、交通難等の諸問題の解決が促進され、また合併によって府県の行政能力が増大されることによって、学校、病院などの公共施設の合理的配置が可能となり、幹線道路、水資源の開発、住宅、工業団地など大規模な公共事業の一貫した効果的遂行が可能となるのであります。
 さらに、合併によって強力になりました府県による行政が行なわれます結果、従来の後進地域にも、工場、住宅等の分散配置の道が開かれ、公共施設等の設置促進により地域の均衡ある発展が期待され、過疎問題の解決にも資するものと考えるのであります。また、合併によって府県の行政能力が増大されるのでありますから、二重構造としての府県の根幹はそこなわれるものではないと信じます。
 次に、本法案による合併手続について、憲法第九十五条により住民投票を必須の要件とすべきであるとの論議が行なわれましたが、本法案は、憲法第九十五条による特定の地方公共団体のみに適用される特別法に該当しないことは明らかであります。現行法による都道府県合併の手続は、個別の法律を制定してこれを行なうことといたしております。しかし、憲法上都道府県の合併の方法が、この方法によってのみしか行なわれ得ないものではなく、憲法第九十二条の定めるところによれば、地方自治の本旨に基づき法律でこれを定めることとしているのでありまして、地方自治の本旨に基づいたものである限りにおいて、現行法と別の方法を法律で定め得ることは、市町村の合併手続の例に照らして考えましても、何ら憲法上問題はないのであります。
 また、本法案は、決して民意を軽視して合併を推進しようというものではありません。すなわち、本法案は、府県の合併は都道府県議会の三分の二の特別多数によるか、または過半数をこえても三分の二に満たない場合には、住民投票による過半数の同意を得なければ、その申請ができないことになっておりますので、どこまでも民意を尊重し、憲法の要請する民主主義的な手続を十分保障しようとするものであります。
 もちろん、地方自治の問題といたしましては、国の権限の地方委譲、税財源の地方移譲等、切実な要望はたくさんありますが、この問題については、さらに一そう今後政府の善処を要望するものであり、さらに、合併後の新府県の民主的行政運営のあり方などにつきましても、なお十分配慮の要がありますが、少なくとも本特例法案により、地域住民の福祉の向上がより一そう民主的、効率的にはかられますことは、疑いないものと考えるのであります。
 以上、理由の一端を述べまして、私は本法律案に賛成いたすものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○副議長(安井謙君) 原田立君。
   〔原田立君登壇、拍手〕
#31
○原田立君 私は、公明党を代表いたしまして、政府提案の都道府県合併特例法案に対し反対の討論を行なうものであります。
 第一の理由は、合併に関する政府の具体的ビジョンがないということであります。政府は提案理由の説明の中で、都道府県の区域を越える広域行政の合理的処理と府県の自治能力の強化という観点から、合併は時代の要請であると述べておりますが、現在の府県制度を根本的に再検討する時期にきているとするならば、一体どのような規模が理想の府県なのか、適正な府県の規模はどうなのか、現在の府県の境界を拡大すればそれですべてが解決できるのか、自主的合併を期待するのだから自由に合併してくださいというあなたまかせでよいのか、この点はなはだあいまいであって、政府自身何ら具体的構想を持たず、あるいは持てども秘密にして示さないのか、全く理解に苦しむのであります。もし、時代の潮流であり、現在の府県の制度を再検討するというならば、これは全国的視野に立って策定すべきであり、特定地域のみの合併や干渉は許されるべきではないと考えるものであり、納得できない点であります。
 第二の理由は、府県制度そのものの改革よりも、運営の中身の改革こそが先決であるということであります。政府・自民党は、選挙のたびごとに、中央に直結する地方自治をスローガンにうたってまいったのでありますが、このことはとりもなおさず地方公共団体を国の出先機関化し、地方自治を中央の支配下に置かんとする意図がうかがえるのであります。現在の府県制度が広域行政の役割りを果たし得ないのは、何も区域の広い狭いの問題ではなくして、府県の固有事務は一割自治と、九割からの国の委任事務を強制されていること、さらに中央各省の出先機関を通じてのリモコンに左右され、災いされていること、それにもまして、地域の広域化を妨げている最大の原因は、中央各省庁のなわ張り争いによるものであります。このことは決して府県の合併によって解決できるものではなく、むしろ現行の縦割り行政の悪弊を取り除くことにあり、また、委任事務を解消するためにも、国と地方との行政事務の再配分を行なう以外に道はないのであります。なかんずく九割をこえる国からの委任事務を押しつけられ、三割程度の自主財源、地方交付税の配分と地方債の許認可で金縛りにし、一千億円を上回る超過負担、さらに膨大な赤字をかかえて動きのとれない地方公営企業と、その単年度独立採算制度等、このような弊害によって地方公共団体を極度の栄養失調におとしいれているのであります。しょせんは、府県制度の改革よりも、まず、いかにして憲法に保障するところの地方自治の本旨、真の地方公共団体の姿に近づけることかであります。この点、政府・自民党の運営は本末転倒と言わざるを得ないのであります。
 第三の理由は、ことごとく政府のやり方は答申案のつまみ食いであるということであります。地方制度調査会は、現在まで地方制度の根幹に触れる幾多の重要な答申をされているが、政府は、これらの答申の中で、自分の都合のよいところだけをつまみ食いをしており、その典型が本法案であります。その証拠に、政府は、「さきに地方制度調査会に対し、府県の合併に関し諮問し、その答申を得たので、この答申に従って本法案を提案した」と提案理由を述べております。しかるに政府は、合併及び広域行政に伴う根本的かつ表裏一体である行政事務の再配分あるいは税財源の配分について、臨時行政調査会や地方制度調査会の答申には一点も触れず、行財政にわたる地方制度の根幹には一言半句も触れないのであります。わずかに合併に関する所要の経費を交付税及び譲与税その他国庫負担金、補助金等の特例をもって合併に援助、協力するとうたってあるのみで、これもまた本末転倒のそしりを免れ得ません。これらの根本的解決を離れて地方制度の改革はなく、広域行政も府県合併も全く枝葉末節であり、有名無実であります。
 第四には、この法律によって、決して地域格差は解消されないということであります。地方制度調査会は、「府県の行政水準はできるだけ均衡がとれていることが望ましいので、合併と並行して開発のおくれている後進県に対してその開発を進めるため、行財政上の施策を講ずることが必要である」と、かように答申しております。本法案の第二条では、「合併関係都道府県間の格差の是正に寄与する」とうたわれておりますが、何ら、行財政上の保証はなく、具体的に法律化されず、穴だらけの法案であります。しかも、都道府県の適正規模も定めないで、自由かってな統合を許すならば、数少ない富裕府県を中心に三、四府県が合併するケースのみが予想され、残余の弱小団体との格差はますます広がるばかりであります。
 申すまでもなく、わが国の人口流動は、大都市及びその周辺に集中し、いわゆる東海道メガロポリスという太平洋沿岸の巨帯地域に過度集中しております。しかも、その富裕府県は現在この巨帯地域に存在しているのでありまして、これら三、四府県の合併は今後一そうのこの地域に産業、人口の過度集中をもたらし、今世紀末には取り返しのつかない過密の弊害を集積することは火を見るよりも明らかであります。しょせんは、大都市の過密弊害を地続きに拡大する結果となるのであって、東京都に近接する埼玉、千葉、神奈川の近県を見れば明白の事実であります。
 最後に、この法案は全く民意が反映されていないという点であります。過日、大阪及び名古屋で公聴会が持たれたが、その公述人の大半の声がそれを如実に物語っております。申すまでもなく、憲法はその九十二条で、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて法律で定める旨、規定いたしております。この合併法案は、この組織及び運営に関する基本的な事項であります。すなわち、憲法第九十二条及び九十五条を受けて地方自治法第六条は、都道府県の廃置分合しようとするときは、法律でこれを定める、としております。そして、その法律とは、地方自治の本旨に基づき住民投票で決する特別法であることは今日の定説であります。しかるに、今回の特例法案は、将来の合併を予想しての一般的、普遍的な規定となっております。もちろん、地方自治法が、市町村合併について特別法を必要としないたてまえをとったのは、市町村は元来、基礎的地方公共団体としてその住民との結びつきがきわめて強く、住民意思の反映が容易であるからであります。しかるに、都道府県は国と市町村との中間的地方公共団体でありますので、市町村ほど住民との結びつきが強固でない、したがって、府県合併という重大な事件については特別に住民投票により住民意思を確認する方式を採用したものと解すべきであって、この点、住民投票を省略するこの特例法は明らかに憲法違反のそしりを免れないものと思うものであります。言うまでもなく、地方自治は民主主義の学校であり、民主主義の基盤であると申されております。その民主主義の基盤である地方自治、住民自治という本旨を忘れて、民意を反映しないこの合併法案は明らかに時代に逆行するものと言わねばなりません。
 以上、数点にわたり重大な誤りを指摘し、政府の猛反省を促して反対の討論を終わります。(拍手)
#32
○副議長(安井謙君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#33
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#34
○副議長(安井謙君) 日程第四、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長吉田忠三郎君。
   〔吉田忠三郎君登壇、拍手〕
#35
○吉田忠三郎君 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過と結果を申し上げます。
 原子爆弾被爆者に対しては、昭和三十二年から、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律によって、健康診断の実施と、特別の医療措置がなされてきたほか、昨年からは、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律によって、特別手当、医療手当、健康管理手当、介護手当の支給がなされているのであります。この法律案は、これらの措置に加えて、新たに葬祭料の支給をも行なうこととするものであります。
 社会労働委員会におきましては、医療面及び社会面における専門家五人を参考人として、被爆者対策全般にわたる意見を聞き、あわせて質疑をかわしたほか、政府当局に対して、現在及び今後の問題点をめぐる質疑を行ないました。
 質疑終了後、討論はなく、全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、大橋和孝君提出にかかわる被爆者対策再検討の要望を含めました十項目にわたる附帯決議を全会一致で委員会の決議とすることに決しました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#36
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#37
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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