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#1
第061回国会 本会議 第35号
昭和四十四年七月二十三日(水曜日)
   午前一時四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十九号
  昭和四十四年七月二十三日
   午前一時開議
 第一 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院送付)(前会
  の続)
 第二 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避のための日本国とインドとの問の協定を修
  正補足する議定書の締結について承認を求め
  るの件
 第三 議院に出頭する証人等の旅費及び日当に
  関する法律の一部を改正する法律案(衆議院
  提出)
 第四 農林省設置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第五 失業保険法及び労働者災害補償保険法の
  一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
  付)
 第六 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 失業保険法及び労働者災害補償保険法の
  一部を改正する法律及び労働保険の保険料の
  徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の
  整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送
  付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
    ―――――――――――――
#3
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。

     ―――――・―――――
#4
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)を議題といたします。
 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。山崎昇君。
   〔山崎昇君登壇、拍手〕
#5
○山崎昇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行なおうとするものであります。
 まず、最初に申し上げなければならないのは、本法案に対し、自由民主党がとった内閣委員会における採決強行についてであります。
 これについては、すでに上程された八田内閣委員長解任決議案の審議において、同僚議員から議会民主主義を否定する暴挙として糾弾され尽くしておりますので、多くは述べませんが、自主防衛を強調した佐藤総理、防衛についてのナショナル・コンセンサス、国民の合意を呼びかけたはずの政府・自民党の正体が、くしくもこの防衛二法案の強行採決によって暴露されたということだけは指摘しておきたいのであります。質疑通告者十名を三名でカットし、七名の委員には何ら発言の機会を与えず、厳粛な委員会の申し合わせ事項を破るという背信行為を行なってまで防衛二法案を可決して、どうして防衛についてのナショナル・コンセンサスが得られるであろうか。このような背信行為を行なう政府・自民党の総元締めである佐藤総理が、こともあろうに国を守る気概を説くとは、国民を愚弄するもはなはだしいと言わなければなりません。ここに国民の平和と安全を確保する崇高なる政治課題である防衛問題に対する政府の考え方の安易さ、ふまじめさが如実にあらわれていると思うのであります。
 すでに国会の論議で明らかになっておりますとおり、万が一の場合に備えるための自衛隊が、有事に際してどう国土を守るのか、戦場はわが本土であるが、どうして国民を守るのか、その見通しを防衛庁自体持っていないのであります。いな、見通しが立たないのであります。また、有事に際して自衛隊十八万の充員をいかに行なうかについての具体的な計画を持ち合わせていないのであります。もちろん、緊急事態の法令の整備すらなし得ない状況であります。それにもかかわらず、本法案の提案に見られるごとく、自衛官の頭数の増加をはかり、ファントムF4E戦闘機の国産に見られるごとく、装備の増強を意図しております。だから、上野駅頭までかり集めに行かなければ頭数がそろわない自衛隊、ナイキハーキュリーズを装備しても配置する基地のきまらぬ自衛隊が生まれるのであります。形ばかりの自衛隊、防衛産業界向けの自衛隊と悪口のたたかれるのもゆえなしとしません。ここに私の指摘する防衛問題に対する政府の考え方の誤りがあるのであります。社会党の非武装中立という考え方を現実的でないと非難する政府こそ、国土防衛の明確な構想なくして自衛隊を増強するという、全く現実無視の政策を強行しているのであります。(拍手)
 今日の世界においては、もはや軍備によっては国を守り得ないのであります。「あなたと呼べばあなたと答える」というのは、皆さま御承知の流行歌の一節でありますが、「防衛と呼べば軍備と答える」という反応型の再軍備から、いまだに脱却できないのが政府・自民党の姿であります。核兵器という人類滅亡につながる暴力兵器の出現した今日、もはや「防衛と呼べば軍備と答える」という答え方自身誤りであります。いわんや、私たち日本人はつとにこの誤りを自覚し、「防衛と呼べば軍備と答える」という反応を再び繰り返すまいと、その決意を平和憲法で宣言したのであります。
 自衛隊の違憲性についても、憲法制定の国会審議を見れば、きわめて明瞭であります。すなわち、憲法議会と言われた第九十帝国議会の衆議院本会議において、当時の吉田首相は、「戦争放棄に関する本案の規定は、直接的には、自衛権を否定していませんが、第九条第二項において、一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も又交戦権も放棄したものであります。」と強調していたのであります。さらに吉田首相は、「従来、近年の戦争の多くは自衛権の名において戦われたものであります。満州戦争然り、大東亜戦争又然りであります。」と述べているのであります。これは憲法の趣旨を正しくとらえたものであり、政府・自民党の諸君は、この制憲議会の審議をえりを正して想起すべきであります。
 今日の自衛隊は、一九五〇年一月連合軍司令官マッカーサーによる「日本国民に告ぐ」という声明によって、警察予備隊として発足したことは御承知のとおりであります。最近、当時の日本再軍備を担当した元在日米軍軍事顧問団幕僚長フランク・コワルスキー大佐は、「日本再軍備」という著書を出版し、日本における再軍備の経過について詳細に述べております。その一部を引用いたしたいと思います。
 まず、この本を書いた目的について、「米国支配のもとで、民主的日本軍隊が創設されたことは、ユニークな歴史的事件であり、日米両国民はその真相を知るべきであると考え、この本を書いた」と述べ、さらに、「私個人としては、あのおそろしい戦争のあと、大きな希望と期待を持って生まれかわった民主主義国日本が、国際情勢のためやむを得ないとはいえ、みずからその理想主義的憲法を踏みにじり、国民がきっぱりと放棄した戦力を再建せねばならなくなったのは悲しいことであった」と心境を述べ、さらに、「日本人は元来権力、特に外国の権力を尊重する性向を持っている」と指摘し、いかにアメリカに従順であったかを述べているのであります。さらに、「マッカーサーは、ポツダムにおける国際協定に反し、極東委員会よりの訓令をおかし、日本国憲法にうたわせた崇高な精神をほごにし、本国政府よりのほとんど助力を得ずして日本再軍備に踏み切ったのである。」さらに、「予備隊編成の初期の段階では、予備隊と折衝する米軍顧問は平気で二枚舌を使い分けねばならなかったし、予備隊の指導者でも事情を知っている少数の者を除いては、話のつじつまが合わず、とほうにくれていた。」さらに、「一九五〇年八月十日、政令第二百六十号警察予備隊令が制定されたが、この政令は言い抜けとごまかしの逸品とも言うべき文書であった。その第一条を読んで、これが日本再軍備の事始めだと気づいた人はいなかったろう」。さらに、「日本が講和条約を取りつけるまでは、占領国の権能が日本国憲法を超越したという理論もあり得よう。しかし、それは詭弁である」。さらに、「第九条は完全に無視され、日本政府はあたかも戦争放棄、軍備禁止条項など聞いたこともないかのようにふるまっている」、と指摘をいたしております。
 私はこれ以上の引用は避けようと思います。日米合作の憲法無視の芝居であり、全く国民はだまされたの一語に尽きるのであります。憲法解釈をどう拡大しようとも、運用面でどうつじつまを合わせようとしようとも、憲法違反の事実は消すことはできません。政府・自民党は、これでもまだ憲法違反でないと強弁するのだろうか。
 また、外務大臣をされた故重光葵さんは、戦犯として巣鴨におられるときに、その反省として、「憲法のごとき国家の基本法が、フィクションの上に眠り、もしくは死文化された場合、国家は危うくなる。いかに理想を取り入れたりっぱな憲法でも、その国上下の構成員、すなわち国民がこれを日常の生活の上に活用して、身をもってこれを守るというのでなければ、憲法はいつの間にか眠ってしまう。昭和の動乱は、憲法の死文化にその原因があることは、日本の将来に対する大いなる警告である」と述べていることも謙虚に聞くべきであり、憲法無視が国家を不幸に招いた根本であることを知るべきであり、いまこそ憲法を守り抜くことをお互いに誓おうではありませんか。(拍手)
 さらに、最近自衛隊員の意識調査が行なわれたようでありますが、六人に一人は自衛隊に入ったことを後悔しているといわれております。憲法違反の存在であり、望まれざる誕生の自衛隊であります。自衛隊員自身が憲法的良心に苦しんでいる姿のあらわれであろう。反対理由の第一は、まさに自衛隊は憲法違反であるということであります。
 反対理由の第二は、本法案こそ佐藤内閣の反動政策のあらわれであり、本法案を転機として日本を再び戦争への道、暗い軍国主義への過程を歩ましめることが歴然としているからであります。
 このことは決して誇張ではありません。佐藤総理が一昨年十一月アメリカから帰国し、愛国心を強調し出してから本法案提出に至るまでの事実の経過が、このことをはっきりと示しているのであります。政府は、なぜ本法案にいう自衛官六千人の増を今年に繰り上げ、成立を強行したのか。それは佐藤総理自身、この成果を持って本年末の米大統領の会談に臨もうとしたところにあります。すなわち、沖繩返還という国民の悲願に結びつけ、この陰に隠れて防衛力の増強をはかろうとしたのであります。
 沖繩県民をはじめ、本土のわれわれが、沖繩返還を要求しておるのは、アメリカの四半世紀にわたる沖繩占領が、国際法的根拠を欠いた全く不法不当な主権の侵害であるからであります。沖繩は即時無条件返還さるべきであり、米軍基地は即刻撤去すべきものであります。しかるに、佐藤内閣は、沖繩返還を極東の安全保障上の考慮に意図的に結びつけ、早期返還ならば沖繩の現状を容認しなければならないと国民をどうかつする一方、自主防衛の名において、あつかましくも憲法第九条の条章を忘れてしまったごとき言動をほしいままにしているのが現状であります。
 法案審議の過程で明らかとなったのでありますが、沖繩返還にからんで第四次防衛力整備計画による自衛隊の拡大強化をさらに意図しているのであります。それは沖繩返還後も米国の果たしている役割りと機能を維持し、その補助戦力として自衛隊の増強を行なうというものであります。防衛庁長官は、「四次防においては、海上、航空部隊を中心として増強し、ゆくゆくは自衛隊を主とし安保体制を従という形に持っていく」と広言をしているのであります。こうなってしまえば憲法は全く空洞化されたも同然であります。自衛隊のある幹部は、憲法あっての国家ではなく、国家あっての憲法だとうそぶいておりますが、事ここに至っては戦前の軍国主義日本の亡霊がよみがえってきたとしか思えないのであります。
 反対の理由の第三は、本法案による増員が全く国民に理解しがたい筋の通らないものであるからであります。
 本法案の内容は、陸・海・空三自衛隊の自衛官七千七百二名、予備自衛官二千名の増員を主体とするものでありますが、この増員は一体何に対して、いかなる情勢に対抗して増員しようとするものであるか、三個師団の戦闘団はいかなる目的で編成されるのか、その根拠は明白でありません。政府は、陸上十八万人体制は一次防以来の自衛隊の悲願である、だから、編成定員としてだけでもお願いしたいと、こう懇願しているのでありますが、いかに頭を下げようとも、国民は理屈の通らない税金のむだづかいは認めるわけにまいりません。陸上十八万体制に政府がこだわるのは、昭和二十八年の池田・ロバートソン会談での密約のためでありましょう。私たちは、今度の法案審議でも十八万体制の合理的な根拠をついに政府の口から聞くことはできなかったのであります。
 また、今日、陸上自衛隊においては多くの欠員をかかえ、その充足もままならないことは国民周知の事実であります。その欠員は一万五千八百余人を数えると聞きます。その欠員をかかえながら、なぜ増員を必要とするのか、政府は説明に窮して、増員をしていただくのは編成定員として、ただワクだけとしてお願いをしているのだと言います。しかし、実質の伴わないワクだけの増員がなぜ必要か、さっぱり理解できないのであります。さらに、予備自衛官三千人増もくせ者でありまして、自衛隊の予備勢力確保のためという予備自衛官制度は、実は昔の赤紙召集の現代版であります。
 反対の第四の理由は、日米安保条約の核安保、アジア安保への質的発展との関連における自主防衛強化の方向が、防衛二法の改正を皮切りにしているという点であります。
 一昨年十一月、佐藤内閣は、アメリカとの間で日米首脳会談を開催し、いわゆる日米安保条約の長期堅持が日米両国の基本政策であることを確認するとともに、日本がアジアの安全のために積極的に貢献する決意を表明したのであります。すでに佐藤内閣が成立して以来、アメリカ原子力潜水艦の日本寄港を許し、また、日韓条約のファッショ的な強行批准をはかるとともに、アメリカのベトナム侵略に全面的に協力し、さらにはASPACをはじめ、東南アジア開発閣僚会議、アジア開発銀行の設置など、アメリカのアジア支配政策に積極的に協力してまいったのであります。これは、日本がアジアの一員でありながら、アジアの諸国民に敵対する立場であることを、私が指摘する必要もないところでありますが、この前提には、日本の軍事力強化の対応措置があるということであります。現在、政府は、沖繩の即時無条件全面返還という国民的要望を逆用し、沖繩の核つき自由使用返還をはかろうとしているばかりでなく、これに加えて、いわゆる自主防衛の大々的なキャンペーンを展開し、核アレルギーの脱却であるとか、みずから国を守る気概を強調しながら、自前の防衛の構想を提起しているのであります。また、財界においても、いわゆるマラッカ海峡の航行安全といった形で、本格的な防衛力の増強に乗り出そうとしているのであります。しかしながら、このような防衛力強化が、単にわが国の平和と安全という観点よりも、朝鮮半島や台湾の防衛を意図していることは、沖繩返還問題一つとってみても明らかであります。すでに、今国会においても、沖繩が自由使用返還された場合に、朝鮮半島に紛争が発生したときには、日・米・韓の共同作戦になると、政府当局が答弁していることを見ても明らかであります。したがいまして、沖繩返還を逆用した防衛力強化は、日米首脳会談以降強調されておりますところの、西太平洋における日米共同防衛責任の確立にほかならず、いわば、その軍事的保証にほかならないのであります。しかしながら、これは、自衛隊が再び侵略戦争の当事者、加害者になるということであり、平和憲法を持つ日本国民として、断じて許すことのできないものであります。
 最後に、この増員に関連して強調しておきたいのは、政府の一九七〇年対策であります。
 この前の安保条約改定の際、渦巻いた国民の批判、怒りにおびえた政府は、早くから来年の安保改定期に備え、種々の対策を講じてきていることは、天下周知の事実であります。その一環としてか、最近、自衛隊の治安出動訓練を強化しているとのことであります。今回の増員も、治安出動を念頭に置いてのことと見られるのであります。このことは、ゆゆしき大事であります。間接侵略に対処するといい、治安出動に対処するといい、要は、国民の政治批判に対して、銃剣をもって立ち向かうということであります。一九六〇年の際も、政府は、自衛隊の治安出動を考えたと聞くがゆえに、万が一にも、国民の中に敵を求めて出動するようなことのないよう、最後に警告をして、私の反対討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(重宗雄三君) 内田芳郎君。
   〔内田芳郎君登壇、拍手〕
#7
○内田芳郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に賛成の意見を表明するものであります。
 最近における国際情勢は、米ソ両国による平和共存体制がある程度確立し、かつての緊張状態は緩和されるやに見受けられまするが、しかしながら、一八九八年より一九六七年までの、約七十年間における戦争の発生は百二十八回に及び、このうち、実に九十五回までがアジア、アフリカ、中東の地区で戦火が起きているのであります。
 このようなきびしい現実のもとに、わが国は従来から、昭和三十二年閣議決定による国防の基本方針に従って、自衛隊及び日米安全保障体制の、この二つの基盤の上に、わが国の安全を確保してきたのであります。したがって、自衛のための必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備してまいったのであります。すなわち、わが国に対する核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存してこれを防ぎ、通常兵器による局地戦以下の侵略事態に対しては、できる限り、わが国が独力でこれに対処し、もってわが国の独立と平和を確保しようとするものであります。
 国際連合による安全保障体制は、いまだ十分に確立されておらず、また、一国だけで自国の平和と安全を保持することはきわめて至難なことである今日、このように国連憲章で認められた地域的集団安全保障の措置をとることは世界の大勢であり、わが国にとりましても、また現実的、かつ、有効な方途であると思うのであります。戦後二十有余年、この間、わが国が独立と平和を保ち、著しい経済発展と国民生活の向上をはかり得たのは、一に自衛隊と日米安全保障条約とによって平和が保たれたからであると信ずるのであります。わが国の革新と称する人々は、日本がいま現に享有している平和のほかに、もう一つの平和があり得ると考えているようでありますが、この考え方は、現実の平和を否定して、別に観念的、抽象的な平和を夢見ているものと言わざるを得ないのであります。
 わが国の防衛力は、自衛のため必要な限度において、一方においては、わが国の置かれている国際的環境、地理的条件及び戦略的地位等を考慮するとともに、他方、わが国の経済力、社会の安定度、科学技術の水準、国民の防衛意識の度合い等を勘案し、これら諸要素の総合的な判断の上に立って、その規模及び内容がきめられなければならないのであります。
 わが国の防衛力の整備は、この考え方に沿って、目下第三次防衛力整備計画にのっとって進められておりまするが、その規模を防衛費においてとらえれば、本年度については、一般会計歳出予算の中に占める比率では七・二%であり、公共事業費の一七・八%、社会保障費の一四・一%、文教及び科学技術振興費の一二%のいずれよりも低位にありますので、決して国民経済や国民生活に関係の深い諸施策を圧迫するものではありません。また、この国民総生産に対する比率は、ここ二、三年来〇・八%ないし〇・九%にとどまっております。米ソは別としても、英・独・仏の約五%、さらに中立国たるスウェーデンの四%に比べても著しく低く、英国戦略研究所発行の最新の「ミリタリー・バランス」によれば、世界各国の国防支出の国民総生産に対する比率の比較において一%以下の国は、わが国を除いて全く他にはなく、わが国は五十数カ国中の最低の比率を示しているのであります。
 このように、わが国の平和と安全を確保する道は、決して非現実的な非武装中立ではなく、国力、国情に応じた防衛力の整備が最も現実的な政策であり、憲法第九条も、独立国が固有に保有する自衛権を否定するものではないのであります。したがって、自衛権はあるが自衛力は持てないというような奇妙な論議は、あたかも権利能力はあっても行為能力はないというにひとしい矛盾があることに目ざめなければならないと思うのであります。この問題に関する一般国民の意向を示すものとして、昨年十月内閣の広報室で行なった国民の国に対する意識調査によりましても、「みずからの国は、みずからの手で守る」ということについて、賛成は八一%も占めております。反対は四%にしかすぎないのであります。
 この法律案は、このような国民世論を背景として提案されたものでありまして、四十二年度を初年度とする第三次防衛力整備計画に基づき、自衛隊の任務遂行の円滑をはかるため、陸上自衛官六千人を主とする陸・海・空の自衛官定数を増加するとともに、予備勢力確保のため、予備自衛官についても員数を改めようとするものであります。特に陸上自衛官六千人増員につきましては、一九七〇年に対処するための治安対策ではないかとの論も一部にはありますが、昭和三十二年度に決定を見た第一次防以来の懸案として第三次防にも引き継がれた十八万人体制のための措置であります。また、自衛隊の現在の欠員数を理由にこの増員に反対する論議もありますが、自衛官の定数は編成上の定数であり、一般行政機関の定員とはその趣を異にすることは当然であります。本来、有事の際に即応できるように、平時より所要の装備を整備して教育訓練を行なっておくことによって、万一の事態に備えようとするものであります。
 自衛隊は、このように国の防衛という重責をにない、日夜訓練に励んでおるのでありますが、さらに、災害派遣及び民生協力の面におきましても目ざましい活動を続け、国民一人一人の心の中に信頼と理解を深めながら成長していることは、いまさら申し上げるまでもないところであります。
 われわれは、日本の独立と平和、自由と繁栄のために、このような国民のための自衛隊を育成するためにも、本法案を一日もすみやかに成立せしめる必要のあることは論をまつまでもないことであります。
 最後に、国内一部の者のゆがめられた批判に対し、黙々として祖国防衛の第一線に日夜精励している自衛隊諸君の処遇については、政府は一そうの改善を行なうとともに、国民とともににある自衛隊を育成するため、防衛に関する国民的自信の回復、国民の連帯意識の確立、さらに加えて、統一と団結をバックボーンとした国家目的の明確化を国民の前に明示すべきであると思うのであります。
 以上の点を強く要望いたしまして私の賛成討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(重宗雄三君) 野上元君。
   〔野上元君登壇、拍手〕
#9
○野上元君 私はいま、日本社会党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行なおうとしております。(拍手)
 私は、この討論に立つわずか数十時間前、ついに人間が月面に立つという感動的な瞬間をテレビで見たのであります。おそらく地球上数億の人々がこの新しい歴史の始まる瞬間をかたずをのんで見詰めたことと思います。そして、この驚くべき科学技術の進歩とこれを実現した人間の知識にいまさらながら感銘を覚えたことでありましょう。そして、この感動はやがて徐々に三人の宇宙飛行士の生命の安全を祈る気持ちに変わっていったのであります。人間の生命のとうとさをこれほど鮮烈に描き出されたことを私は知らないのであります。
 しかしながら、世界の人々がこの三人の宇宙飛行士の生命を気づかっているその同じ時刻に、宇宙飛行士がすばらしく美しいと報告してきた地球上の一角、すなわちベトナムにおいては、何百何千の人々の生命が虫けらのごとく奪われておる事実を思うとき、私は、史上これほど深刻な矛盾があっただろうかという深い感慨に襲われたのであります。
 しかもなお、いまこの本会議場においては、日米安保条約における日本の果たすべき義務という理由のもとに、アメリカの極東における軍事力を肩がわりするための軍備強化法案が、委員会における十分な審議も行なわれずに、したがって、この法案の持つ重要性を国民の前に明らかにしないまま、いきなり本会議上程という異常な雰囲気のもとに審議が続けられておるのであります。わずか三人の宇宙飛行士の無事地球帰還を祈る数億の世界じゅうの人々の姿と、人間の生命を断つことを公然の任務とする組織の強化のための法案とを考え合わせてみるとき、これらのできごとは、はたして同一時代に同時に起きた歴史的事実なのかどうかを疑わざるを得ないのであります。
 この時代錯誤ともいうべき愚かなる提案をめぐっての国会における動きを見詰めている大多数の国民各位、そして傍聴者の諸君は、おそらくタイムトンネルを通して一九世紀の国会をのぞき見ているという錯覚におちいっているのではないかと察するのであります。
 憲法を無視して人類の理想に挑戦し、国民の悲願を破壊する道につながるこの法案に私がどうして賛成できるでしょうか。私は、この法案に対する反対討論に立っていることを、この法案に反対の諸君とともに無上の幸福に思うものであります。
 さらに、私が反対せんとする幾つかの理由は次のごときものであります。
 まず、防衛計画と安全保障との関連であります。
 そもそも防衛計画なるものは、東洋流に言うならば、すなわち、備えあれば憂いなしという考え方、また西洋流に言うならば、ダレスの提唱した真空論に導かれて立案されてきたものと思われるのでありますが、この考え方がはたして今日においても有効に通用するものでありましょうか。私の答えは、いなであります。私は、むしろ逆に、「備えれば憂いますます深し」というのが、偽らざる各国の実情であり、深刻な悩みではないかと思うのであります。
 私はその事実を数多く指摘することができるのであります。故ケネディ大統領は、国連総会における演説の中で、「軍備の強化は必ずしも安全保障を高めることにはならず、むしろ安全保障は低下するものであり、今日安全保障は史上最低の時代である」と強調して、注目されたのであります。このことは、今日、米国内において戦わされておるABM論争の中に明らかに見られるのであります。すなわち、ABMを米国全土に張りめぐらすことができるならば、米国は完全に安全であるかとの問いに対する答えは、すべてノーであったのであります。むしろ完全でないことのほうがみずから戦争挑発の危険をおかさないので、逆に安全度は高いという有力な議論さえ出てきていることは、注目すべき事柄であろうと思うのであります。したがって、全都市をABMでおおうセンチネル計画は放棄され、基地のみを防衛するセーフガード計画に変更されることになった事実は、如実にそのことを示しておると言わなければなりません。
 今日、軍事の領域にあっては、明らかに費用対効果の比率は下がり、収穫逓減の法則が作用し始めていることに気づかなければなりません。この米国内のABM論争の中には、幾多の注目すべき示唆が含まれていると思うのでありまするが、それは後に触れることといたします。
 今日のごとき兵器発達の実情のもとにおいては、かりに全土を兵器庫と化してみても、安全感を満足させることは不可能なるのみならず、むしろますます不安感が高まるものであることに注目すべきであります。あまつさえ、核兵器及びCBWの貯蔵そのことがもたらす恐怖に常におびえていなければならぬという皮肉な現象こそ、見のがしてはならないと思うのであります。
 また、過去においては、平和は戦争によってのみあがない得るものであり、平和とは戦争と戦争との間の戦争のない期間であるといわれてきたことは、御存じのとおりであります。戦争−平和−戦争−平和の繰り返しという過去の事実に基づく思考方法は、今日では明らかに破滅への道であることを身をもって知らなければなりません。今日、断絶の時代といわれているのでありまするが、人類の生存に関してのみは、断絶があっては断じてならないのであります。
 次に、日米安保条約とわが国の防衛ということについてであります。すなわち、条約にある極東の安全、日本の安全ということの持つ意味についてであります。
 さきに、ABM論争に触れたときに多くの示唆が含まれていることを指摘したのでありまするが、強大なる経済力を誇る米国においても、武力による防衛を論ずる場合、本質上、その要求は無限であり、それはあまりにも高価につくものであることに変わりはないのであります。したがって、防衛力の増強というゴールなき競争に狂奔するよりも、国民の経済負担を軽減し、国民繁栄を達成する柔軟政策こそ、最も現実的なものであるという空気が出てきたことに留意すべきであります。また、不完全なABM計画でがまんしたという事実に注目すべきであります。特に、外国人である日本人がこの事実をどう受けとめ、米国人の心理分析に意を用いることは、今日重要なことだと信ずるのであります。米国人が、みずからを守るのに、不完全でもやむを得ないという心情にあることは、米国人が他国の防衛のためにどんな態度をとるであろうかを示唆して、あまりあるものと言わなければなりません。
 また私は、この際、日本を含む極東が米国の安全のための単なる前進基地であるとする米上院外交委員会の論争を知る者にとっては、深く意にとどむべき事柄であることを、特に指摘しておきたいのであります。
 米国と二人三脚を組んで踊らされ、まぼろしの独立と繁栄を追い求め、あげくの果て無情にも捨て去られようとしている南ベトナムの苦悩、そして、いまもなお必死に見果てぬ夢に追いすがろうとする哀れな南ベトナムの姿を他人事として笑ってはおれないのであります。遠からずと言うべきであります。
 次に、われわれが重大な関心を払っておるいわゆる産軍複合体についてであります。
 このことは、すでに米国においてもアイゼンハワー元大統領が、職を去るにあたって警告を発したごとく、重大関心事になろうとしていることは、今日だれでもが知っていることであります。しかも、産軍一体化の運動が開始されれば、もはやストップすることもUターンすることもないのであって、相互依存関係は雪だるま式に拡大されていく一路前進型であることは、すでに実証済みの事実であります。
 しこうして、軍需産業の存立のためには軍備の拡大が必要であり、軍備の必要のためには常に脅威の存在が不可欠となることも、これまた自明の理であります。そこに脅威の捏造が生まれ、緊張への挑発が行なわれるのは歴史の事実が示すところであります。
 最近、ベトナム以後における極東の緊張は、朝鮮半島と台湾海峡に発生するであろうという宣伝がやかましくなされていることは、この間の消息を最も雄弁に物語っていると言えるのであります。早くも脅威の捏造がにおい始め、新たな挑発がひそかに計画されているのではないかとさえ疑われるのであります。「誰がために鐘は鳴る」と言った人がありますが、私は「だれがために防衛はある」という国民の疑惑の声が聞こえてくるように思えるのであります。とにかく、産軍複合のシステムが一たび確立し、回転を開始すれば、その自転運動はもはや何人もとめ得るものではなく、行き着くところまで行くものであり、しかも、その行き着く先は破滅の深渕であり、地獄への片道切符であることを再び強く指摘しておきたいのであります。(拍手)
 また、ベトナム以後の軍需産業をどうするかということが、今日米国では重大な関心事となっているのでありまするが、三次防から四次防へと進む日本の防衛強化の計画は、これら米国の兵器産業にとって最も魅力ある新しい市場を提供することになることは、過去の実績から推して知ることができるのであります。「必要は何ものにもまさる」という哲学を持つ米国産業界が、あらゆる手段を講じて日本進出を試みることは、過去の実績が明らかに物語っていると思うのであります。いずれにせよ、欠陥車に見られるがごとく、あるいは公害防止に消極的な態度に見られるがごとく、人間の生命よりも利潤追求を優先する大資本大企業と、調和よりも国民総生産高を誇りとする政府が、ひそかに、あるいは公然と手を組んだとき、いかなる事態が起きるであろうか、まことに肌にアワする思いがいたすのであります。(拍手)
 次に、軍備拡大と社会不安との関連についてであります。
 史上最南の繁栄を誇る今日の米国において、大学問題、黒人問題、貧困の問題等々層生重起する幾多の社会不安に手を焼いているのでありまするが、その原因を追跡してみると、結局、すべてベトナム戦争にたどり着くといわれているのであります。ベトナム戦争はそれほど多くの不合理と深い矛盾を内包しているのであります。言うまでもなく、その最大のものが平和に対する挑戦であり、具体的には米政府のとっている平和政策の欺瞞性であります。口に平和を叫びながら他国人を平気で殺戮し、多くの自国の青年をも死に追いやっているという事実であります。
 特に、最近沖繩基地で暴露されたCBW、すなわち化学・生物兵器の使用は、まことに衝撃的なできごとであります。それはまさにわれわれの記憶に新たな、過ぐる第二次大戦中において、悪名をほしいままにした地上最大のガスによる人間屠殺場といわれたナチ・ドイツのアウシュウイツ捕虜収容所の拡大的再現であり、天人ともに許さざる行為と言わなければなりません。第二次大戦後、このおそるべき人間屠殺場を計画、指揮した君たちは、ニュールンベルグの国際軍事法廷において、文明の名によって裁かれ、多くの者は絞首台の露と消えたのであります。しかるに、その文明の名による告発者であった米国が、いまこの文明の破壊者となろうとしているのであります。
 われわれは、この悲しむべき歴史の皮肉をいかに見るべきでありましょうか。みずからの不滅を信じて疑わなかったローマ帝国も、いまや遠い歴史の物語にすぎないのであります。米国は、いまやかつてのローマ帝国が歩んだ道を歩んでいるというトインビーの警句を引用するまでもなく、米国は、いまこそ真剣に反省しなければ、みずから絞首台に登らねばならぬ羽目におちいるであろうということを、率直大胆に警告しておきたいと思うのであります。(拍手)
 さらにまた、年間数百億ドルの巨費がベトナム人殺戮のために、ジャングルの中に惜しげもなく捨て去られておる一方、国内のスラム街は依然として存立するという矛盾、ドル危機による威信の失墜等々、多くの社会不安の種をまきつつあることはあまねく周知のことでありまするが、ここでは割愛することにいたします。
 ところで日本は一体どうか。わが国もまた多くの社会不安を醸成しつつあるのでありまするが、この社会不安の原因は、武力による防衛という思想に導かれた軍備強化の政策にあるということを指摘したいのであります。すなわち、戦力の保持は、いかなる理屈をもってしても憲法に違反するということであります。そこにすべての悪の根源があり、社会不安の原点があると思うのであります。国家権力を有する者は、憲法をねじ曲げても自己の要求を実現することができるという事実と、力なき者のいかなる小さなあやまちも断じて許そうとしないおごれる権力を同時に見せつけられる国民が、大きな不安と矛盾を感ずるのはけだし当然のことと言わねばなりません。佐藤総理が、「平和に徹する」と言うとき、国民の多くはにたりと冷笑を浮べて、これにこたえるのであります。なぜか、それは総理の口と腹は全く違っていることを国民が敏感に読みとっているからではないでしょうか。それは、あたかもトラがロザリオを首にさげて祈りをささげている図を連想することからくる国民の皮肉をこめた抵抗の表現ではないでしょうか。
 かく見てまいりますと、今日大きな社会不安となりつつある大学紛争を、法律をもって制圧せんとする試みは、全くの的はずれであり、かえって、火に油を注ぐ結果になることは、目に見えているのであります。政府は、みずからまいた種であるという認識に立たざる限り、大学紛争の解決は、その糸口すら発見できないということを知らねばなりません。口に平和を唱えながら、一方で、戦力の拡大を強行し、護憲を言いながら、憲法の形骸化に狂奔せんとするその矛盾だらけの政治姿勢の中にこそ、今日の多くの紛争の種があることを指摘しておきたいのであります。
 最後に、私は、いま月着陸の実況中継を担当したアナウンサーが、興奮に口をふるわせながら叫んだことばを思い起こしているのであります。それは、三人の宇宙飛行士の成功をたたえるとともに、無事大任を果たして、一日も早く、母なる大地へ、平和なる地球への帰還を心から祈ると訴えたそのことばであります。この母なる大地に永遠の平和を築くことこそ、今日われわれにとって最も崇高なる責務であり、誇りをもって子孫に引き継ぐことのできる最大の資産であると確信するものであります。(拍手)
 われわれは、月着陸をまのあたりに見て多くのことを学んだはずであります。しかし、私はこの際、政府に注意を喚起したい。学ぶということは、ただ単に知るということではないのであります。学ぶということは変わるということでなければならないと思うのであります。学んで変わらざれば真に学んだとは言えないのであります。新しい歴史が開かれたのを機会に、時代錯誤もはなはだしい、しかも破滅の道につながるこの愚かなる防衛計画を中止し、直ちに平和のための政策に転換することを強く要望するものであります。(拍手)
 終わりなき世界平和の確立、これこそ二一世紀への最大の挑戦であります。私は月着陸を見ながら、過去におけるわが党の非武装中立を非現実なりとの判断を下してきた者たちが、いまや逆の立場に立ちつつあることを知ったのであります。非武装こそ、今日のおそるべき科学技術の進歩の時代における具体的にしてかつ有効な平和探求へのただ一つの手段であり、非武装こそ、人類の断絶を回避して二一世紀へのかけ橋になることを確信して疑わないものであります。この際私は、政府の三思三省を促して、私の反対討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(重宗雄三君) 三木忠雄君。
   〔三木忠雄君登壇、拍手〕
#11
○三木忠雄君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行なうものであります。
 法案に反対する理由を述べる前に、私は、今回の防衛二法についての審議過程、さらには、去る十七日に行なわれた政府・自民党の多数を頼む暴力強行採決は、まさに議会民主主義を踏みにじるものであり、国民への背信行為と言わざるを得ないのであります。これは、さきに強行採決した国鉄運賃値上げ法案といい、衆議院における健保特例法案といい、強行採決はいまや国会の年中行事としてまかり通っているという憂うべき状態なのであります。今後におきましては、このような多数を頼む暴力を排し、すみやかに慎重審議が行なわれることを強く切望するものであります。
 さて、今回の政府提出案に対する反対の基本的理由は、本法案が、わが国の平和と安全に対する政府・自民党の全く誤った考え方を前提として提出されていることであります。
 一九六九年、本年は第二次世界大戦の戦火がやんで四分の一世紀を経過し、政治、外交、経済、教育、文化等、あらゆる分野において過去の権威が失墜して、新しい建設を迎えようとしており、まさに国内・国際情勢に一大転換を迎えようとしている年であります。
 いまさら申し上げるまでもなく、世界の平和と安全の確保は人類共通の念願であります。特に戦争の惨禍と世界唯一の核兵器の攻撃を受けたわが国民は、他のいかなる国にも増して強く世界の平和を望んでいるのであります。しかし、今日の国際情勢を見るとき、まことに違憾ではありますが、平和への道はきびしく、依然として国際情勢は複雑かつ流動を続けているのであります。すなわち、ヨーロッパではNATO体制、ワルシャワ体制の再編成がもくろまれており、アジアにおいても英国の退潮、アメリカのアジア政策の失敗と太平洋国家への固執、中国の核武装、ソ連の極東への関心の増大と中ソ国境事件、プエブロ、EC121型偵察機の撃墜事件等を含む三十八度線の緊張など、依然として日本をめぐる国際環境は流動しつつ重大な変貌を呈しようとしております。
 特にアジアでは、極東における緊張の緩和はわが国の平和と安全に不可欠なものであるにもかかわらず、ベトナム戦争における北爆停止に続いてパリ会談が進行中であり、それに伴ってニクソン新大統領のアジア政策変更は、日本に軍事的肩がわりを強制する方向となり、わが国においても、いつの間にか安保を補完的立場に置きつつ自主防衛構想の強化にと政策転換を余儀なくされておるのであります。
 さらに国内では、一九七〇年六月の日米安保再検討期を目前に控えて、沖繩及び北方領土の早期返還、基地撤去闘争、原潜寄港反対、大学紛争がからんで左右の激突の危険性がいよいよ増大しつつあるのであります。
 このような内外情勢のきびしい現実を考えるとき、わが国は平和憲法の精神を宣揚し、自主平和の外交方針の確立によって近隣諸国との外交関係を緊密にし、もってアジアの緊張緩和、世界平和の確保をはかることがきわめて重要であり、また、国内政治の安定度とともにわが国の平和と安全を確立すべきであります。
 しかるに政府・自民党は、一九七〇年以降においても、日米安保体制を長期に堅持しつつ、対米追随外交の姿勢を示し、わが国の安全保障政策を軍事的対応策だけで確保しようという発想に立っているのであります。すなわち、総額二兆三千数百億円にも達する膨大な第三次防衛力整備計画を強行し、さらに仄聞するところによりますと、昭和四十七年度からの四次防計画は五兆円を上回るとさえいわれているのであります。しかし、今回の内閣委員会における審議を通じてみても、いかなる脅威に対応するのかも明確にせず、いわばまぼろしの脅威に対し、ひたすら軍事力のみの増強をはかり、対米一辺倒の姿勢から一歩も脱却しておらず、中国封じ込めを中心とする日米安保体制の長期緊持を前提とした自主防衛構想にエスカレートするきわめて危険な要素を含んだ政府・自民党の防衛政策なのであります。
 私は、日本の平和と安全に対する国民の広い認識と理解の上に立って、外交、経済、安全保障等の諸条件からなる総合力をもって国民的合意を確立すべきであると考えるのであります。ただ武力によってのみ拡大をはかることは、いたずらに近隣諸国に脅威を与えるばかりか、力の均衡に立っての安全保障政策は、いつの間にか戦争への道を歩むことは過去の歴史の証明するところであり、まことに危険きわまりないと言わざるを得ないのであります。過去における忌まわしい戦争の歴史を顧みるとき、いかなる国において、戦争のためと称して軍備を増強した国があったでしょうか。ただ一つとしてないのであります。すべて国の平和と安全を守るという名のもとに、いつしか、果てしない軍備拡張競争の渦中に巻き込まれ、その結果として、悲惨な戦争を巻き起こした事実は、何よりも歴史が雄弁に物語っているところであります。
 政府・自民党は、緊張があるから必要であるという理論を振り回し、この緊張を緩和する努力を全く尽くさなかったばかりか、その意欲さえも持たなかったことに、私はきわめて危険なものを感ずるのであります。このことは、政府の対中国政策に明らかであります。われわれは、今後十年、二十年の将来を考慮しつつ、独立国日本が、地球上のあらゆる国々と平和友好条約を早急に結ぶことと同時に、まず第一に、すみやかな日中平和関係の回復の中で、安保体制の実質的形骸化をはかるべきであることを強く主張するものであります。しかし、政府は、これを一顧だにすることなく、依然としてアメリカの対中国敵視政策に追随し続けております。
 自衛隊が発足して以来、第一次より防衛計画を策定し、三次防、四次防、五次防と、際限なく増強されていく軍事力と対米追随姿勢は、本来の意味におけるわが国の安全保障ではないことを、政府・自民党は知らなくてはなりません。むしろ、真に必要であり、わが国がとる最善の安全保障政策は、軍事力偏重の防衛計画ではなく、国際的視野に立った長期の平和計画でなければならないのであります。すなわち、政治、外交、経済の安定等を基本とした総合力であり、国民的合意の確立をはかることが、最も重要なのであります。
 次に、本法案の根本となる政府の防衛構想が、わが国憲法の平和主義に反し、国民不在のものであるということであります。
 佐藤総理並びに歴代の総理は、国力、国情に応じて自主防衛力の増強を述べ、防衛の基本方針としているのであります。しかし、政府・自民党のこの自主防衛構想には、憲法前文並びに第九条の平和主義が無視されているとしか考えられないのであります。また、これは、自衛権の乱用とも言うべきでありましょう。日本国憲法は、自衛戦力の保持を無制限に許してはいないと解するのが、その趣旨なのであります。世界の各国におきましても、国力、国情に応じた防衛力を保とうとしているのであります。これらの国は、わが国と異なって、憲法の精神においても、憲法前文、条文においても制限はないのであります。恒久平和主義と戦争の放棄を明確にした誇り得べきわが国憲法が、政府・自民党の既成事実の積み重ねによって、まさに失われようとしているところに、国民の不安があるのであります。また、いかなる根拠によって、かくまでも軍事力を増強し、自衛隊を増員するかも国民は知らされていないのであります。私どもは、真の安全保障は、広く国民の認識と理解の上に立つものでなければ、幾ら軍事力を増強しても、これは効率的な安全保障とはならないことを指摘してまいりました。軍事力増強に固執すると、かつて日本帝国が歩んできた道を逆戻りすることになり、かえって近隣諸国に脅威を与え、いたずらに国民に不安を抱かせるものであります。特にこの改正案は、国民にとってまことに意味のないいわれなき自衛隊増強案であります。このことは、自衛隊の募集が思うにまかせず、定員は不足して、充足に悩むという結果となってあらわれてきているのではありませんか。このことを忘れ、欠員一万数千にものぼる陸上自衛官の定員を、本法案によって、さらに六千人もふやすということは、いかなる詭弁を政府がもてあそぼうとも、おおい隠すことのできない事実であり、本末転倒の姿であると言わねばなりません。
 以上の理由により、政府・自民党が強行採決によって国会を混乱させてまでも、自衛隊増強を急がねばならない理由は見当たらないのであります。
 さらに、沖繩返還問題と日米安保に対する政府の態度であります。
 今回の審議の中で、本法案と最も重要な関係を持つ愛知外相の訪米がありました。この沖繩返還交渉の政府の態度は、内閣委員会におきましても十分に明らかになったとは言えません。特に、日米安保条約の事前協議制度の運用に対する国民の疑惑をますます深めたものであります。さらに、愛知外相がいまだ国会で明らかにしなかった日米安保の自動継続申し入れには、猛省を促すものであります。われわれは、日米安保条約がわが国が関与しない戦争に巻き込まれる危険があることを指摘してまいりました。このおそれが現実になったものが米偵察機EC121機の撃墜事件でありました。しかし、沖繩返還とともに、さらにこの歯どめを骨抜きにしようとしていることは、まことに許すことのできない暴挙であります。さらに、国民の悲願であるわが国の非核決議に対しても、わが党はじめ野党の提案に対し、これを拒否し、国民の疑惑を一そう深いものにしたのであります。
 このたびの内閣委員会並びに本会議における審議を通じてまことに残念に思うことは、政府が国会答弁だけを考え、その場しのぎの答弁に終始したことであります。そのような政治姿勢では、一国の重大な安全保障問題を審議することはできないばかりか、ますます国民の疑惑と不信を招くのみであります。
 以上をもって、政府提出の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対し、私の討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(重宗雄三君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#13
○田渕哲也君 討論に入ります前に、議長のお許しを得まして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 昨日の議会におきまして、わが民社党の片山武夫議員が質問途中で急病に倒れ、皆さまに非常に御心配をおかけし、またお手をわずらわしましたけれども、幸いにして軽度の脳貧血でございまして、回復し、現在元気になっておりまして、静養中でございます。
 以上の点を御報告申し上げまして、皆さまに御安堵願い、また厚く御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
 それでは、引き続いて討論に入りたいと思います。
 私は、民主社会党を代表して、ただいま上程されております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行なうものであります。
 まず私は、内閣委員会において、民社、公明、共産の各党にこの法案に対する一言の質問もさせないまま強行採決を行なった自民党の暴挙に対し、激しい憤りを禁じ得ないものであります。国会において、やろうと思えばほとんどのことが合法的になし得る多数党みずからが、議会制民主主義を否定し、国会の権能と存在意義を無視する行動に出たことは、まさに言語道断というほかはありません。この一事だけをもってしても、現在のわが国政治に見られる混乱と、社会における暴力肯定の風潮の最大の責任は、政府・自民党にあると断ぜざるを得ないのであります。自民党議員諸君の良識に訴え、その猛省を促すものであります。
 また、委員会で行なわれなかった審議にかわるものとして、この本会議における審議が行なわれておりますけれども、このような丑三つ時に、体力の限界を越えたきわめて不十分な状態の中で行なわれることは、まことに遺憾であります。との異常な国会のあり方を国民は一体何と見るでしょうか。このようなことが繰り返されると、国民は政治を笑い、さげすみ、そして不信の念をつのらせていくことは明らかであります。
 人類はすでに月にまで行ける時代になりました。与野党の対立があるのは当然ですが、その対立が前進と向上を生むような近代的で効率的なやり方を考え出していくのがわれわれ議員の責務であると考えます。先輩議員諸兄姉の御教示を賜わりたいと思うのであります。
 次に、防衛に対する基本的な考え方として、われわれは、国連による安全保障体制の確立、さらには世界国家の実現をはかり、それによって戦争のない究極的な世界平和を築くことを目標としております。
 したがって、主権国家の属性とされている軍事力は、核戦力であると通常戦力であるとを問わず、お互いの交渉によって、凍結、縮小、廃止に向かって努力を続けるべきであると考えます。しかし、国際情勢の現実は、理想とはほど遠く、武力によって国家間の紛争を解決しようとする人類の愚かな慣習は、遺憾ながらいまだ地球上から姿を消すに至っておりません。われわれは、わが国の平和憲法を誇りとし、それを堅持せんとするものでありますが、万が一にもわが国を侵略せんとするものがあれば、なすところなくそのじゅうりんにまかせるのではなく、決然立ってこれを排撃し、平和国家の存立を全うすることこそ国民の当然の義務であり、また、憲法の精神に沿った行動であると考えるものであります。したがって、外部からの侵略を防ぐための最小限度の自衛力は当然保持すべきであり、「侵さず侵されず」の専守防御の体制の確立こそ必要であります。そして、専守防御の基盤に立った平和外交の展開こそ、わが国の安全と世界の平和に大きく寄与するものと確信するものであります。また、このような自衛力は、国民とともにあってこそ、初めて力になり得るものであり、国民から遊離した軍備などは幾ら量を拡大しても何にもなりません。自主防衛はここにその発想の源を置くべきであります。
 以上の基本的考え方に立って、以下、法律案に対する反対理由を申し述べます。
 反対理由のまず第一は、日米安全保障体制についての考え方の相違であります。
 政府の防衛構想は、過去の日米関係、すなわち、対米依存、対米追随の発想に立つだけで、国際情勢の変化や未来に対する洞察を欠いた、いわゆる方向感覚の欠落の上に打ち立てられたものと言わざるを得ません。
 核については、アメリカ一カ国の核のみにたよる立場を固守するだけで、米ソ両核大国が核防条約を推進している意味合いや、中共の核武装の進展について目をふさいでおります。そして、わが国の核に対する考え方や方針があいまいもことしているのが現状であります。
 また政府は、アメリカの通常戦力による援助に対するひとり合点の期待の上に自主防衛というようなことを口ばしっております。日米安保体制に寄りかかった自主防衛などというものは、それ自体矛盾であり、結果としては、アメリカの極東戦略の中に埋没してしまうのが現状ではないでしょうか。
 今回、米紙の報道によって明らかにされた沖繩基地のVX毒ガス事件が沖繩の住民に与えた不安と脅威は名状すべからざるものがあり、また、国民の驚きと憤りもまた大なるものがあります。このような、国際法の精神に反し人道主義にもとる兵器が、政府も国民も知らぬ間にわが国土に持ち込まれている事実は、現在の日米安全保障体制が決して健全なものでないことを示す何よりの証拠であります。われわれは、まず自主防衛に対する国民の努力が先行し、これが主体となり、それを補うものとして初めて日米安保体制があとに続くものでなければならないと考えます。そのためにわれわれは、日米安保条約を「駐留なき安保」に改定し、米軍の駐留や基地のあり方を根本的に改め、それによって日米関係を正常化し、それぞれの自主性を尊重した対等の立場に立っての健全な協力体制を確立することを主張するものであります。
 ごく最近の世論調査によれば、以上の考え方こそ、国民の最も高い支持を得ておることが報告されております。われわれは、現在さまざまな考え方に分かれ、混迷をきわめておる安全保障に対する国論は、以上の線においてのみ合意の形成が可能であると信ずるものであります。
 反対の理由の第二は、いわゆるシビリアンコントロールについてであります。
 国防の基本をきめるはずの国防会議は、年に一度程度しか開かれず、開店休業の状態です。しかも、わが国の防衛上見のがすことのできない沖繩問題、核防条約問題などは、すべて論議の対象外にされており、軍縮問題またしかりであります。このように、わが国の安全保障が狭い範囲でのみとらえられ、しかも十分な論議が行なわれておりません。これではわが国の防衛は国民に基盤を置いたものとはいえず、その根幹はきわめて脆弱であるといわざるを得ません。このような点を放置して、数量のみふやせば事足れりとする政府の考え方は、基本的に誤っております。砂上の楼閣に幾ら屋上屋を重ねても、わが国の防衛力の強化にはならないことを銘記すべきであります。特に、安全保障を狭義の防衛措置としか理解していない政府の考え方は、時代おくれであるばかりでなく、きわめて危険でもあります。力には力で対決するということではなく、平和外交の積み重ね、軍縮の促進、アジア諸国への経済協力、さらには安全保障をめぐる国民合意の形成など、総合的見地からわが国の安全を考えるべきであります。
 反対理由の第三は、今回の増員を必要とする具体的根拠があいまいであることです。
 自主防衛は、直接にわが国に対する脅威に対抗すべきものであり、したがって、その防衛力は、相手方との関連において相対的に決定されるべきものであります。同時に、わが国が海洋国家であるという事実は、保有すべき自衛力の性格を決定する重要な要素であります。また、ベトナムやチェコの事例は、軍事力の機能が大きく変化したことを示しております。われわれは、このような観点に立って、わが国の保有すべき自衛力の質と量を決定しなければなりません。今回の増員は、第三次防の予定が十八万だから、それに近づけるのだとか、あるいは沖繩返還に備えるためだとか言ってみても、その数字的根拠が那辺にあるのか、われわれは理解に苦しむところであります。現代はコンピューターが回り、人類が月を征服する時代に、ひとりわが国のみがその防衛政策の決定にあたって、何ら科学的、計数的な根拠を持たぬとあっては、まことに寒心のきわみと言わざるを得ません。
 さらに問題があるのは、現在の欠員との関係であります。現在、一万六千人近くの欠員をかかえておりながら、新たに定員をふやすといっても、国民は納得できません。特に今後一そう激しくなると予定されている若年労働力の不足の中にあって、現在の自衛官の数を確保することさえ困難となることは必至であります。このような深刻な問題に対して積極的な手を打たずして、単に定員のワクだけふやそうとする今回の改正は、本末を転倒したものと言わざるを得ません。まず現在の定員をいかにして確保するかが先決問題であります。
 以上、三点の理由から、今回の防衛二法改正案に反対するとともに、政府の猛省を促し、私の討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(重宗雄三君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#15
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、防衛二法案に反対するものであります。
 本法案に関して自民党は、内閣委員会において、三人目の質問者が質疑続行中に、七名の質疑通告者が一言の発言もしないまま、事前の申し合わせを全くほごにして一方的に質疑を打ち切り、またも強行採決の暴挙を繰り返したのであります。これはわが党の絶対容認できないところであります。とりわけ、衆議院において、新しい正副議長が今後の国会正常化について各党に提案を行ない、話し合いが持たれているさなかに、このような暴挙が平然と繰り返されたことは、公党間の信義に反するばかりでなく、議会制民主主義を踏みにじり、国民を侮辱する以外の何ものでもありません。したがって、本法案が本会議に上程されること自体、不法不当なものであり、法案の撤回を要求するものであります。
 そもそも自衛隊は、アジア侵略と日本人民弾圧の先兵として、マッカーサー指令により、憲法第九条をじゅうりんして創設された非合法の軍隊であります。歴代自民党政府は、日米安保条約第三条の規定とアメリカ政府の要求に基づき、この憲法違反の自衛隊を増強するために、一貫して力を注いできましたが、ただいま上程されている防衛二法案は、この自衛隊増強に一そう拍車をかけるものであります。本案は、陸上自衛隊の定員を一挙に六千人増員するのをはじめ、陸・海・空三自衛隊を通じて七千七百二人の定員増をはかり、さらに予備自衛官を三千人増員しようとするものであります。これによって自衛官の定数は、予備自衛官を含め、実に二十九万一千七十四人に達するのであります。中でも陸上自衛隊は十七万九千人となり、一九五三年十月の池田・ロバートソン会談で、米側から日本再軍備の目標として提示された十八万人体制をほぼ達成することになります。これは、事実上米軍の指揮と掌握下にある自衛隊の増強が、アメリカのアジア侵略計画に一そう全面的に加担するきわめて危険な、新たな段階に入ろうとしていることを示すものであります。
 こうした自民党佐藤内閣の自衛隊増強と軍国主義復活強化の計画は、憲法第九条に全く違反するものであり、平和を念願する日本国民にまっこうから挑戦するものであります。今日、特にこの法案は、一九七〇年の日米安保条約の固定期限終了期を一年後に控え、沖繩返還問題をてこに進められている日米軍事同盟の侵略的強化、アジア反共軍事同盟体制への日本の直接的加担の策謀と結びつき、とりわけ重大な危険性を持っております。佐藤首相は一昨年、ジョンソン・アメリカ大統領との会談以後、ことさらに自主防衛や国防意識の高揚を強調し、沖繩の施政権返還の代償として、自衛隊を積極的に増強する姿勢を強め、本年度の予算編成においても、防衛予算の増額を最優先施策として認めたのであります。
 また、愛知外相の訪米を前に、外務、防衛両当局の最高首脳打ち合わせでは、自衛隊の漸増という従来の方針とは異なり、軍事力増強を一そう積極的に推進することをうたっております。さらにまた、沖繩の防衛責任は第一次的にわが国が負うこととして、自衛隊が米軍の一部肩がわりを引き受け、海上防衛力の増強に力を入れるとともに、船舶に対する攻撃力、陸上における機動攻撃力などを強化することを強調しております。このことは、政府の広報紙「今週の日本」も「量的、質的にも、かなり思い切った大転換をはかる考えで、ある」と述べていることでも明らかであります。政府が沖繩の施政権返還を口実に、沖繩防衛計画を突破口として、自衛隊を飛躍的に増強し、アメリカのアジア戦略の一環として直接組み込もうとしていることを示す以外の何ものでもありません。
 この防衛二法案は、第一に、このような沖繩防衛の名による自衛隊の大増強計画と、沖繩を中心とした西太平洋地域での日米共同作戦体制の拡大強化のたくらみを実行するための土台をつくりあげようとするものであります。
 特に、今回の陸上自衛隊十八万人体制の実現は、沖繩防衛計画を織り込んだ昭和四十七年度以後の第四次防衛力整備計画や、防衛庁がまとめた防衛費を国民総生産の二%以上とする自主防衛力整備の長期構想のもとに、一そう大幅な自衛隊増強への地ならしとなるものであります。また、本改正案による海上自衛官千二百二十二人の増員、海上自衛隊航空集団の直轄部隊の新設は、特に沖繩防衛構想や、この具体化を目ざす四次防構想が、海上防衛力の増強を重点的に取り上げていることに見合って、海上自衛隊が第七艦隊やポラリス潜水艦を柱とするアメリカの海上軍事力への従属を深め、日米共同作戦体制を一そう強化しようとするものであることを指摘せざるを得ません。
 第二に、本改正案による陸上自衛隊十八万人体制の確立は、自衛隊の人民弾圧体制の強化に直接つながるものとしてきわめて重大であります。
 本案の衆参両院の審議を通じて、政府は、自衛隊の治安出動を伝家の宝力であるとして、人民弾圧の教範、指揮官心得の作成及び自衛隊法亘二条の政令化を中心とする非常時立法の成案を急いでいることを明らかにし、いわゆる暴徒制圧には直接侵略に備える各種教範の応用、戦車の活用さえ公言してはばからなかったのであります。かつて自衛隊は、一九六〇年、安保条約に反対する全国民の戦いの高まりの中で、この闘争を直接武力で弾圧する目的をもって出動する体制を整えていたことは、いまや天下周知の事実であります。また、一九六五年、日韓条約粉砕闘争の中で、群馬県相馬ケ原で、極秘のうちに国会周辺デモの鎮圧を想定した演習を行なっており、今日では東北や北海道で現に見られるように、一九七〇年の安保反対、沖繩返還を要求する広範な国民の全く無防備で正当な労働運動や大衆行動に対し、戦場における敵軍にも近い想定を立て、狙撃手はもとより、戦車、装甲車隊、航空・空挺部隊、CBR化学部隊などを参加させ、陸・海・空立体の弾圧訓練を強めています。現在、自衛隊は、その装備や訓練内容から見ても、一九六〇年当時をはるかにしのぐ旧天皇制軍隊でさえもあえてやらなかったおそるべき弾圧計画を、警察と一体となって進行させているのであります。
 以上の事実は、第一次防衛力整備計画策定当時から、「非常時における国内治安維持に関し、警察等治安機関に協力し得るものとする」としていた事実によっても、すでに明らかであります。今回の陸上自衛官六千人増員によって、自衛隊の人民弾圧体制に一そうの拍車をかけ、その反民族的、反人民的性格を一段と強めるであろうことは、あまりにも明らかであります。
 以上のごとく、日米軍事同盟の侵略的強化と日米共同作戦体制の拡大強化、人民弾圧体制の強化を目ざす本案に対し、わが党は絶対に反対するものであります。
 最後に、わが党は、憲法違反と対米従属、人民抑圧の軍隊である自衛隊を解散させ、隊員は国の責任で平和産業に就職させることを主張するとともに、日米安保条約の廃棄と沖繩の即時無条件全面返還を実現することこそが、日本の真の独立とアジアの平和を望む日本国民の心からの願いに通ずる道であることを強く主張して、私の討論を終わります。(拍手)
     ―――――・―――――
#16
○議長(重宗雄三君) 藤田正明君外一名から、成規の賛成者を得て、
 討論終局の動議が提出されました。
 これより本動議の採決をいたします。
 表決は記名投票をもって行ないます。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕〔投票執行〕
#17
○議長(重宗雄三君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#18
○議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#19
○議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数        二百二十二票
  白色票          百二十六票
  青色票           九十六票
 よって、討論は終局することに決しました。(拍手)
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名      百二十六名
      任田 新治君    内藤誉三郎君
      高橋雄之助君    田村 賢作君
      小林  章君    伊藤 五郎君
      後藤 義隆君    白井  勇君
      横山 フク君    小山邦太郎君
      植竹 春彦君    山崎 五郎君
      若林 正武君    渡辺一太郎君
      安田 隆明君    矢野  登君
      増田  盛君    長屋  茂君
      永野 鎮雄君    中山 太郎君
      高田 浩運君    中村喜四郎君
      西村 尚治君    八田 一朗君
      宮崎 正雄君    柳田桃太郎君
      佐藤  隆君    黒木 利克君
      楠  正俊君    岡本  悟君
      高橋文五郎君    土屋 義彦君
      船田  譲君    吉江 勝保君
      江藤  智君    大竹平八郎君
      大谷藤之助君    柴田  栄君
      青田源太郎君    栗原 祐幸君
      藤田 正明君    梶原 茂嘉君
      大谷 贇雄君    小枝 一雄君
      前田佳都男君    増原 恵吉君
      鍋島 直紹君    徳永 正利君
      西郷吉之助君    新谷寅三郎君
      井野 碩哉君    石原幹市郎君
      河野 謙三君    上原 正吉君
      杉原 荒太君    剱木 亨弘君
      安井  謙君    山崎 竜男君
      平泉  渉君    玉置 和郎君
      沢田 一精君    近藤英一郎君
      玉置 猛夫君    大松 博文君
      鈴木 省吾君    今  春聴君
      小林 国司君    久次米健太郎君
      佐藤 一郎君    山内 一郎君
      山本茂一郎君    中津井 真君
      林田悠紀夫君    鬼丸 勝之君
      内田 芳郎君    大森 久司君
      岩動 道行君    和田 鶴一君
      河口 陽一君    丸茂 重貞君
      二木 謙吾君    鹿島 俊雄君
      長谷川 仁君    井川 伊平君
      金丸 冨夫君    谷口 慶吉君
      村上 春藏君    田中 茂穂君
      西田 信一君    平島 敏夫君
      山下 春江君    山本 利壽君
      八木 一郎君    田口長治郎君
      平井 太郎君    古池 信三君
      松平 勇雄君    郡  祐一君
      青木 一男君    小林 武治君
      重政 庸徳君    吉武 恵市君
      木村 睦男君    植木 光教君
      亀井 善彰君    長田 裕二君
      上田  稔君    佐田 一郎君
      菅野 儀作君    石原慎太郎君
      源田  実君    熊谷太三郎君
      久保 勘一君    川上 為治君
      山本  杉君    米田 正文君
      木島 義夫君    温水 三郎君
      森 八三一君    三木與吉郎君
      塚田十一郎君    赤間 文三君
      高橋  衛君    迫水 久常君
      斎藤  昇君    塩見 俊二君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      九十六名
      原田  立君    峯山 昭範君
      田渕 哲也君    山田  勇君
      青島 幸男君    塩出 啓典君
      藤原 房雄君    萩原幽香子君
      市川 房枝君    三木 忠雄君
      上林繁次郎君    矢追 秀彦君
      中尾 辰義君    沢田  実君
      多田 省吾君    宮崎 正義君
      中沢伊登子君    田代富士男君
      鈴木 一弘君    二宮 文造君
      渋谷 邦彦君    向井 長年君
      高山 恒雄君    柏原 ヤス君
      北條  浩君    白木義一郎君
      中村 正雄君    村尾 重雄君
      上田  哲君    和田 静夫君
      松本 英一君    安永 英雄君
      竹田 四郎君    杉原 一雄君
      達田 龍彦君    小野  明君
      森  勝治君    鈴木  力君
      中村 波男君    小林  武君
      松本 賢一君    佐野 芳雄君
      林  虎雄君    松永 忠二君
      大矢  正君    横川 正市君
      小柳  勇君    加瀬  完君
      秋山 長造君    藤田  進君
      北村  暢君    成瀬 幡治君
      須藤 五郎君    渡辺  武君
      小笠原貞子君    野坂 參三君
      春日 正一君    河田 賢治君
      岩間 正男君    前川  旦君
      戸田 菊雄君    竹田 現照君
      山崎  昇君    木村美智男君
      村田 秀三君    川村 清一君
      大橋 和孝君    田中寿美子君
      沢田 政治君    松井  誠君
      矢山 有作君    瀬谷 英行君
      吉田忠三郎君    西村 関一君
      鶴園 哲夫君    野上  元君
      千葉千代世君    山本伊三郎君
      武内 五郎君    森中 守義君
      近藤 信一君    鈴木  強君
      森 元治郎君    阿具根 登君
      永岡 光治君    中村 英男君
      久保  等君    岡  三郎君
      羽生 三七君    亀田 得治君
      占部 秀男君    大和 与一君
      木村禧八郎君    田中  一君
      藤原 道子君    松澤 兼人君
     ─────・─────
#20
○議長(重宗雄三君) これより採決をいたします。
 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。
 表決は記名投票をもって行ないます。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#21
○議長(重宗雄三君) 投票漏れはございせんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#22
○議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#23
○議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数        二百二十五票
  白色票          百二十七票
  青色票           九十八票
 よって、本案は可決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名     百二十七名
      任田 新治君    内藤誉三郎君
      高橋雄之助君    田村 賢作君
      小林  章君    伊藤 五郎君
      後藤 義隆君    白井  勇君
      横山 フク君    小山邦太郎君
      植竹 春彦君    木内 四郎君
      山崎 五郎君    若林 正武君
      渡辺一太郎君    安田 隆明君
      矢野  登君    増田  盛君
      長屋  茂君    永野 鎮雄君
      中山 太郎君    高田 浩運君
      中村喜四郎君    西村 尚治君
      八田 一朗君    宮崎 正雄君
      柳田桃太郎君    佐藤  隆君
      黒木 利克君    楠  正俊君
      岡本  悟君    高橋文五郎君
      土屋 義彦君    船田  譲君
      吉江 勝保君    江藤  智君
      大竹平八郎君    大谷藤之助君
      柴田  栄君    青田源太郎君
      栗原 祐幸君    藤田 正明君
      梶原 茂嘉君    大谷 贇雄君
      小枝 一雄君    前田佳都男君
      増原 恵吉君    鍋島 直紹君
      徳永 正利君    西郷吉之助君
      新谷寅三郎君    井野 碩哉君
      石原幹市郎君    河野 謙三君
      上原 正吉君    杉原 荒太君
      剱木 亨弘君    安井  謙君
      山崎 竜男君    平泉  渉君
      玉置 和郎君    沢田 一精君
      近藤英一郎君    玉置 猛夫君
      大松 博文君    鈴木 省吾君
      今  春聴君    小林 国司君
      久次米健太郎君    佐藤 一郎君
      山内 一郎君    山本茂一郎君
      中津井 真君    林田悠紀夫君
      鬼丸 勝之君    内田 芳郎君
      大森 久司君    岩動 道行君
      和田 鶴一君    河口 陽一君
      丸茂 重貞君    二木 謙吾君
      鹿島 俊雄君    長谷川 仁君
      井川 伊平君    金丸 冨夫君
      谷口 慶吉君    村上 春藏君
      田中 茂穂君    西田 信一君
      平島 敏夫君    山下 春江君
      山本 利壽君    八木 一郎君
      田口長治郎君    平井 太郎君
      古池 信三君    松平 勇雄君
      郡  祐一君    青木 一男君
      小林 武治君    重政 庸徳君
      吉武 恵市君    木村 睦男君
      植木 光教君    亀井 善彰君
      長田 裕二君    上田  稔君
      佐田 一郎君    菅野 儀作君
      石原慎太郎君    源田  実君
      熊谷太三郎君    久保 勘一君
      川上 為治君    山本  杉君
      米田 正文君    木島 義夫君
      温水 三郎君    森 八三一君
      三木與吉郎君    塚田十一郎君
      赤間 文三君    高橋  衛君
      迫水 久常君    斎藤  昇君
      塩見 俊二君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      九十八名
      原田  立君    峯山 昭範君
      田渕 哲也君    山田  勇君
      青島 幸男君    塩出 啓典君
      藤原 房雄君    萩原幽香子君
      市川 房枝君    三木 忠雄君
      内田 善利君    上林繁次郎君
      矢追 秀彦君    中尾 辰義君
      沢田  実君    多田 省吾君
      宮崎 正義君    中沢伊登子君
      田代富士男君    鈴木 一弘君
      二宮 文造君    渋谷 邦彦君
      向井 長年君    高山 恒雄君
      柏原 ヤス君    北條  浩君
      白木義一郎君    小平 芳平君
      中村 正雄君    村尾 重雄君
      上田  哲君    和田 静夫君
      松本 英一君    安永 英雄君
      竹田 四郎君    杉原 一雄君
      達田 龍彦君    小野  明君
      森  勝治君    鈴木  力君
      中村 波男君    小林  武君
      松本 賢一君    佐野 芳雄君
      林  虎雄君    松永 忠二君
      大矢  正君    横川 正市君
      小柳  勇君    加瀬  完君
      秋山 長造君    藤田  進君
      北村  暢君    成瀬 幡治君
      須藤 五郎君    渡辺  武君
      小笠原貞子君    野坂 參三君
      春日 正一君    河田 賢治君
      岩間 正男君    前川  旦君
      戸田 菊雄君    竹田 現照君
      山崎  昇君    木村美智男君
      村田 秀三君    川村 清一君
      大橋 和孝君    田中寿美子君
      沢田 政治君    松井  誠君
      矢山 有作君    瀬谷 英行君
      吉田忠三郎君    西村 関一君
      鶴園 哲夫君    野上  元君
      千葉千代世君    山本伊三郎君
      武内 五郎君    森中 守義君
      近藤 信一君    鈴木  強君
      森 元治郎君    阿具根 登君
      永岡 光治君    中村 英男君
      久保  等君    岡  三郎君
      羽生 三七君    亀田 得治君
      占部 秀男君    大和 与一君
      木村禧八郎君    田中  一君
      藤原 道子君    松澤 兼人君
     ─────・─────
   〔発言する者多く、議場騒然〕
#24
○議長(重宗雄三君) これにて休憩いたします。
   午前五時四十三分休憩
   〔休憩後開議に至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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