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#1
第061回国会 本会議 第39号
昭和四十四年七月三十日(水曜日)
   午前九時四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第四十三号
  昭和四十四年七月三十日
   午前九時開議
 第一 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に
  関する法律等の一部を改正する法律案(内閣
  提出、衆議院送付)(前会の続)
 第二 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避のための日本国とインドとの間の協定を修
  正補足する議定書の締結について承認を求め
  るの件
 第三 議院に出頭する証人等の旅費及び日当に
  関する法律の一部を改正する法律案(衆議院
  提出)
 第四 農林省設置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第五 失業保険法及び労働者災害補償保険法の
  一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
  付)
 第六 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 失業保険法及び労働者災害補償保険法の
  一部を改正する法律及び労働保険の保険料の
  徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の
  整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送
  付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
    ―――――――――――――
#3
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)を議題といたします。
 まず、委員長から、本案の中間報告後の委員会審査の経過について報告を求めます。社会労働委員長吉田忠三郎君。
   〔吉田忠三郎君登壇、拍手〕
#5
○吉田忠三郎君 ただいま議長から要請がありました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に関する社会労働委員会の審査経過を御報告申し上げます。
 私は、社会労働委員会の運営をあずかる委員長として、これまで委員会に付託されてきたすべての法律案について、この席から、審査の経過と結果とを報告してまいりました。しかるに、付託を受けた法律案の中でも重要度の最も高いとされるこの法律案に至るや、ただ経過のみしか御報告できなくなったことにふんまんを込めた遺憾の意を表してこの報告を始めることにいたします。(拍手)
 最初にお断わりいたしますが、本法律案の取り扱いは、すでに本会議で中間報告を求めるの動議をめぐる質疑、討論の際、憲法違反論、国会法違反論などにあらわれたように、各党間に見解の一致が見られないという事情のために、法律案の内容もさることながら、法律案の修正手続に関する疑義をめぐって委員会の審査がしばしば難航し、これを打開するための理事会がそのつど介在しておりまするので、審査経過をつまびらかにするには、どうしても委員会の経過に合わせて理事会の経過を差しはさんでいかなければなりません。したがって、報告が、あるときには委員会に入り、あるときには理事会に移るということにならざるを得ませんので、あらかじめ御了承を願っておきます。
 なおまた、手続上の経過と法律案に関する質疑の経過とは若干その趣を異にいたしますので、便宜上、これを大別した分類をとって御報告申し上げることについても御了解を願っておく次第であります。
 まず、審査経過について、進行手続を中心に申し述べることにいたします。
 委員会の審査に期限を付するという異例の決定を受けたのは、つい先日の二十五日の夜八時五十五分でありました。そして、その審査期限は、三日後の二十八日午後十一時までということでありました。これを計算してみると、当日の余り時間三時間五分を入れても七十四時間と五分、その間に睡眠をとり、食事をとり、そうして重要法律案の審査を終えるべしということになったわけであります。
 私は、事の重要性と緊急性にこたえるべく、本会議終了後直ちに理事懇談会を招集いたしました。協議に入りましたところ、社会党大橋理事から、送付案について、衆議院における表決をめぐる憲法違反、国会法違反等の疑義を解くために、衆議院側責任者から実情を聴取すること、また、公明党上林理事から、委員全員に発言の機会が与えられるよう運営を考慮してもらいたいとの要望が出されました。なお、別途委員長の手元に、参議院規則第四十四条による成規の手続をもって、共産党から、渡辺武君の委員外発言を要求する旨の申し入れが届きました。これらを素材として、一応の話し合いを行ないましたが、何ぶんにも懇談会に先行した三晩四日にわたる本会議の疲労が各理事の顔にもあらわれておりまして、健康保険法を取り扱うにはあまりにも不健康な状態であったのであります。その上、前例を見ない新事態に対処すべき各党の方針が未決定であり、したがってまた、質疑通告者の提出もなされていないということのために、具体的な進行手続、段取りについて打ち合わせを進めることが不可能な状況にあることが感知されました。
 よって、とりあえず明二十六日の委員会は、午前十時からいつでも開会し得る態勢に置くこと、各理事はできるだけ早くそれぞれの党の方針確認にあたり、それを待って、直ちに具体的な運営を協議するための理事会を開くこと、それまでに質疑通告者を取りまとめて委員長へ提出をすることの三点のみを申し合わせて、三十分の協議を閉じたのであります。時まさに九時二十一分でありました。
 明けて二十六日、午前十時には委員会を開会するということに決定はしたものの、各党の方針が定まらなければ、理事会の協議のみでは動き得ないのが御承知のとおり国会活動の常であることは申し上げるまでもございません。そのため、各理事の努力にもかかわらず、打ち合わせに必要な準備態勢の整備が意外に手間どって、ようやく午後一時二十五分に至り、理事会を開くことができたのであります。ここで初めて具体的な進行手続に関する協議に入りました。一時間の協議を経て、二つの事項が了解に達しました。
 今後の進行にあたっては、審査の段階はもちろんのこと、議事の運営についても小会派の意向を反映させていこうという方針がその一つであります。
 いま一つは、趣旨説明の聴取を本日中に行なう段取りで進めるという原則の確認でありました。これをややふえんして具体的に述べますと、民社党を代表する中沢伊登子君をオブザーバーの資格で理事会に参加してもらう。共産党から申し出があった渡辺武君の発言を認める。ただし、全審議時間が制約されていることを考慮して、正規の委員の質問時間に不当な制限がかからないように配慮することの二つを、小会派の意向尊重の方法として取りきめたのであります。
 ところが、趣旨説明の聴取については、当日中に聴取するという原則は認められたものの、その時刻をいつにするかについては、意見の合致を見るには、なお引き続き協議及び各理事の党内折衝を必要といたしました。意見の合致を困難にいたした問題の焦点は、衆議院における採決の無効性についての実情を明確につかみ、解明すべきだという要求と、両院の自主独立性を尊重すべきだという意見のぶつかりにあったのであります。院議を尊重して早く審査に入るというたてまえに異議はないけれども、審査すべき送付案そのものに関する憲法上の疑義、もやもやしたよどみをできるならば晴らしていきたい。それには有効か無効かのせんさくにまで深入りするつもりはないが、責任者から事情を明らかにしてもらいたいという要求が、各野党理事から提起されたのであります。これに対して、各院での議事運営、表決に関する事項は、それぞれの院の自主的な判断決定にゆだねられているのであるから、責任者が他の院へ説明に出向く筋合いではないという意見が対立したのであります。この対立の波をかぶりながら、原則論に抵触せず、しかも、要請にもこたえられるような責任者の選定を託された与党理事は、理事会休憩中の一時間をかけて、衆議院社会労働委員会理事の谷垣專一君、それと澁谷直藏君のほか、衆議院法制局長三浦義男君が出席できる旨を提示されたのであります。なお、本院における中間報告に関して、法律解釈を聞くため、本院法制局長今枝常男君の出席を求めることといたしました。
 午後四時十分、理事会で決定した右の四氏のほか、厚生大臣出席のもとに委員会を開会いたしましたところ、大橋和孝君から、衆議院における修正の経緯、採決の事情に関して憲法違反、法律違反ではないかとの質疑があり、続いて上林繁次郎君から、本院における中間報告については、もっぱら国会法の解釈を中心とした質疑が行なわれました。一時間二十分にわたる質疑応答がかわされたのでありますが、事の性質上、法律論のみにしぼった質疑応答では事態の解明が困難であること。したがって、法律論の基礎となるべき事実の認定をあわせて論議することの必要性が判明してまいりましたので、さらに答弁適格者の人選を行なうため五時三十三分休憩に入りました。直ちに開かれた理事会において、本院事務総長宮坂完孝君の出席を求めることに決定し、六時五十五分、委員会を再開いたしたのであります。
 再開後の委員会においては、法律論と運用論とに分けた議論が進められ、約三十分の後、七時二十二分、夕食のため休憩に入ったのであります。直ちに理事会を開き、休憩後の委員会で趣旨説明を聴取すること、そのあとの質疑は各会派が漏れなく行なえるような配慮をすることを確認しました。
 八時十分、委員会を再開いたしましたところ、社会党の小野明君、上田哲君から趣旨説明の聴取に入ることに異議はないけれども、そのことによって送付案の採決にまつわる憲法違反、法律違反の疑義が一切解消されたものとして扱われることのないよう配慮されたい旨の発言が特に行なわれました。続いて斎藤厚生大臣から、修正を含めて法律案の趣旨説明を、次いで衆議院議員谷垣專一君から修正部分に関する提案理由を聴取いたしました。
 午後八時二十七分に散会した後、翌日の質疑の割り当てを、社会、公明、民社、社会の順とすることの取りきめを行なったのであります。
 翌二十七日の日曜日は、前日の取りきめに従って午前十時二十分から質疑に入り、午後七時十四分まで、途中昼食のための休憩を一時間とったのみで質疑を続行いたしました。
 まず、社会党の小野明君は、修正の違法性、その財政効果、審議会との関係、臨時的性格の変更の重大性、受診抑制の危険性などを中心に質疑を行ないました。
 次いで、公明党の上林繁次郎君は、抜本改正の姿勢とその内容、自民党の国民医療対策大綱の措置、薬価基準と診療報酬との関連等々を取り上げて質疑を進めました。また、民社党の中沢伊登子君は、法案と国民のメリット、低所得対策の必要性、ILO条約との関連等について質疑を続けました。さらに、社会党の上田哲君は、主として衆議院修正の成立の経過の違憲性、期限つき審査の議決をめぐる違法性について論議を展開いたしたのであります。そして、三君とも再質問を保留して、次の質疑者に時間をさかれたのであります。
 最後に、委員外発言者共産党の渡辺武君が、中間報告に関する法律解釈をただしたあと、受診抑制の実態について質疑を行なったのであります。
 八時間にわたる質疑の後、委員会を閉じて理事会に移り、翌二十八日の開会は午前十時からとすることの申し合わせを行なったのであります。
 席上、いままでの質疑のあとを顧みると、今後の議事を円滑に進めるには、送付案の誕生をめぐる疑念解消のために、衆議院社会労働委員長が出席をして事実の説明に当たってくれることが最も効果的な潤滑油であるという見解が述べられました。与党理事の努力を求めましたところ、他院の主体性を傷つけるおそれがあるので、きわめて困難であるとの応答がなされました。これに対して、単に客観的な事実を知らせてほしいと言っているのであって、他院のことを批判する意図は全くないのだから、主体性を侵すおそれはないという野党の理事から反論がなされました。
 さらに、委員長が、今日まで院議に沿って審議を進めようと努力してきている苦衷を察して、与党側理事も協力してもらいたいという重ねての要請がなされました。そこで、私は、各理事に対して、議事進行のために一段の協力を依頼するとともに、現状を議長に報告して局面打開についての助力を懇請することを決心したのであります。
 翌日の理事会は、九時半に開くことを申し合わせて散会いたしました。
 審査期限の最終日を迎えた一昨二十八日は、午前九時四十五分に理事会を開会いたしたのであります。与党理事から、努力の限界について報告がなされましたので、副議長、議運委員長の登院を待って協議を進めることとして、休憩に入りました。その後、折衝は遅々として進捗しないままに、第二回、第三回の理事会を開いて、これが打開につとめましたところ、ようやく午後五時過ぎに至って、衆議院社会労働委員会理事の橋本龍太郎君が衆議院社会労働委員長代理として出席することが決定したのであります。
 午後六時四十四分、期限最終日の委員会を開会いたしました。冒頭、社会党の小野明委員から、何ゆえに九時間近くもおくれて開会せねばならなかったのか、期限最終日の大事なときに、このような空白を生じたのはだれの責任によるものなのか、との強いふんまんが投げかけられました。これに対して委員長は、昨日の理事会の模様を説明したあと、本日早朝から、議長、副議長、議院運営委員長に対して、局面打開のための助力を懇請してきた経緯、及び各理事の努力のあとを説明して了解を求めました。
 引き続き、質問を保留していた社会党の上田哲委員の質問に入ったのであります。上田委員と衆議院社会労働委員長代理として出席した橋本龍太郎理事との間に、衆議院修正の経緯に関する質疑応答が続けられましたが、答弁者が衆議院本会議に出席のためやむなく退席せざるを得なくなって、中断された形に終わりました。
 その後、衆議院から出席した谷垣專一理事、澁谷直截理事との間に、修正部分の解釈をめぐる質疑が行なわれたのでありますが、八時二十五分、小野委員から動議が提出されました。その間の模様は、期限つき審査の苦悩を示していますので、少しく冗長となるきらいがありまするが、速記からの引用をお許し願いたいと存じます。
  小野委員 いま発言中の上田君もまだ質問が相当残っている。私も、昨日、委員長と再質問について約束したように、質問がいまだたくさん残っております。ところが、時間は十一時までと限られております。そこで、私には関連でしか発言を許さない。先ほどから何回私が発言を求めても、委員長は認めてくれない。私は非常に不満である。十一時までという期限では、この審査は終わらないというめどがはっきりしてきたと思うのです。そこで、私は、国会法第五十六条の三に定めている審査期間の延長について委員会の要求を提出することを要請します。
  委員長 本院から与えられた時間は、御指摘のとおり十一時であることは、委員長十分に承知しております。それだけに委員長としては、いろいろ勘案をして、できるだけ皆さんの御要望にこたえるように、しかも委員会をスムーズに運営できるように努力をいたしてきたわけであります。この点は御了解いただけるものと思っています。小野君御指摘のように、確かに審査は十分ではなく、御不満があろうかと思いますが、何か委員長が意図をもって小野君の発言をさせないようなことがあったと感ぜられるならば、そのようなことはないはずであります。限られた時間ですから、たくさんの発言者がおられるので、できるだけ多くの方々の発言を許しながら、この審議を実りあるものにしたい。しかし、一度に二人に対し発言を許可するというわけにはいかない、これは規則でそうなっているのですから。御指摘のような扱いになった点は、不満であろうけれども御了解いただけるものと考えます。いま小野君が不満を述べられたようなことは、上林理事においても質疑もいまだ尽きたとは認めておりません。もとより小野君の質疑が尽きたとも考えておりません。その上に、藤原君、中村君、中沢君、澁谷君等々からも質疑通告が来ております。したがって、これ以上進めてまいっても、十一時までに質疑が終局するとは思えない。こういう判断を委員長としてもせざるを得ないのです。
 記録の上では、なお発言は続いているのでありますが、しかし、これで質疑通告をした委員各位の焦慮と不満を知るには十分であろうと考えますので、以下は省略いたします。
 小野委員の申し出を委員長は動議と認定いたしましたので、その取り扱いについて協議する理事会を開くこととして、八時三十分、休憩に入りました。
 理事会においては、委員長の手元に届けられている参考人の意見聴取の申し出及び先刻小野委員の申し入れを満たすのには、少なくも、実質二十四時間の延長を求める必要がある旨の要請を各党の国会対策委員会の話し合いにゆだねることといたしました。
 その後、委員会を再開する運びに至らず、午後十一時の審査期間が満了することとなったのであります。
 以上が議事運営の面から見た社会労働委員会の経過でありますが、次に、審査の内容を中心として経過を申し述べることにいたします。
 それには、まず、この法律案の内容について申し上げなければなりません。
 法律案の説明は、過ぐる六月十八日の本院本会議において趣旨説明が行なわれた当時の政府提出案の内容と、その後に衆議院修正を経て社会労働委員会に付託された法律案の内容との二つに分けて申し上げるのが適当かと存じます。
 本会議において趣旨説明を聞いた法律案の内容は、次のような三つの条文から成り立っていたのであります。−議長、与党のほうが非常に居眠りをしております。せっかく大事なときですから起こしてください。
 第一条は、一昨四十二年に制定され、本年八月三十一日限り効力を失うこととされていた臨時特例法の効力をさらに二年間延長する、したがって、臨時特例法は、昭和四十六年八月三十一日までの時限立法とすることであります。
 第二条は、臨時特例法の母法ともいうべき健康保険法そのものを改正するものでありまして、分べん給付費を被保険者本人については六千円から二万円に、配偶者については三千円から一万円に引き上げる、その見合いとして保険料率を千分の一引き上げるというものであります。
 第三条は、右の健康保険法に関する改正と同じ内容のものを船員保険法についても講ずるというものでありました。
 要約いたしますと、臨時特例法を時限立法のままで二年間延長するという部分と、健康保険法及び船員保険法について分べん給付の改善を講ずる部分の二つが組み合わされた法律案であったのであります。そうして、法律案の前提には、健康保険制度の抜本改正が今後二年間に行なわれなければならないという、法律上の歯どめの上に組み立てられていたことに重要な意味があったのであります。
 次いで、社会労働委員会において提案理由がなされた衆議院送付法律案の内容を、前に申し述べた諸事項と対比して申し上げます。
 第一に、法律案の題名から「臨時特例法」という名前が消えて、「健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案」と改められ、臨時特例法という時限立法の改正部分が削除されております。したがって、臨時特例法は、本年八月三十一日限り失効することとなります。しかし、臨時特例法の失効によって、その中に盛られていた事項のすべてが消えるのではありません。消え去るのは四つのうちの一つだけで、他の三つの部分は、母法である健康保険法及び船員保険法の改正という形で存続されるということになっているのであります。
 御承知のように、臨時特例法には四つの柱がありました。その一つは、保険料を千分の五引き上げること。その二は、初診時の自己負担を一回百円から二百円に引き上げること。その三は、入院当初の一カ月間における自己負担を、一日二十円から六十円に引き上げること。その四は、被保険者本人が外来診療で交付される薬剤が、一日一剤十五円をこえる場合には、十五円の定額を窓口で支払うという、薬代負担の制度を設けること。この四つでありました。
 衆議院送付案は、右のうち、最後の薬代負担制は九月一日以降廃止することとする。しかし、保険料率の千分の五引き上げ、初診料の自己負担及び入院時の自己負担をそれぞれ二倍とする引き上げの三つの措置は、母法に織り込むことによって、法律上は恒久的な制度とする、これが第一の内容であります。
 第二に、分べん給付の改善に関する部分については、本人二万円、配偶者一万円とする改善措置は、そのまま残すことにする。ただし、その見合いとして予定されていた保険料率を千分の一引き上げるという条項は取りやめとする、という内容であります。
 その他に、施行期日を本年九月一日からに改める修正、経過措置の整理に関する修正がなされているのであります。
 続いて、法律案の審査経過を内容に即して申し上げたいと存ずるのでありますが、委員各位の質疑応答を漏れなく述べますと、それは、あたかも会議録をここに再録することになって、煩にたえない結果になることをおそれます。この報告には、委員長の主観を入れないよう留意をいたすべきでありましょうけれども、ここだけには取捨選択の介入をお許しいただきたいと存じます。取捨選択の基準は、この法律案が来たるべき抜本改正との関連で論議をかもし出していることにかんがみ、将来の抜本改正につながる応答という点に置いたつもりであります。しかし、このことは、他の質疑が軽い比重を持つということを意味するものでは、さらさらありません。
 また、審査期間の制約が課せられていたために、質疑通告があった全員の方に発言の機会が与えられなかったという事情がありますので、拾い出した質疑応答の中に、それぞれの委員の氏名を差しはさむことを遠慮した点についても、あらかじめ御了承を願っておきたいと存ずるのであります。
 限られた期間内に、しかも通告者の半数の委員による質疑過程を通じて、浮き彫りにされた事項の若干を申しあげます。
 まず、この法律案と国民のメリットについては、次のことが言えます。衆議院修正によって、法律の上で臨時的性格のものが恒久的性格に移され、被保険者の負担増になる分は、九月以降の四十四年度では百八十三億円、満年度には三百五十三億円ということになるのであります。
 次に、臨時特例法を廃止することは、二年間に抜本対策を出せという法律上の歯どめがなくなるのであるから、重要な変更を意味するのではないかとの指摘に対して、総理大臣、厚生大臣が本会議において、二年以内には抜本対策を講ずる旨の答弁をしていることによって示された政府の姿勢、また、この修正が出されたときに、抜本対策の期限を撤廃する免罪符となるのではないことを附帯決議の形で表明した政治的な姿勢に信頼を置いてもらいたいとの答弁があり、抜本改正の大綱を、今国会が終わる八月五日までに審議会に諮問したいと考えている態度には、いまも変更はなく、再来年の通常国会には抜本改正の道に踏み切れるような法案を出すつもりであるとの決意表明がなされました。
 また、抜本改正案の作成責任の所在については、さきに発表された国民医療対策大綱によって与党の方針が出ていることであるから、今後は政府の責任において作業を進めることにし、また、いまの段階では、社会保障制度審議会が勧告した第三者機関を別に設置する意向のないことが表明されたのであります。
 また、抜本改正案に盛り込むべき事項としては、負担の公平化、給付の均等化、地域保険、職域保険、老人保険に組織を再編成すること、診療報酬体系の是正、医薬分業の検討等を考えていること。その中で被用者の家族を地域保険に移すことは一挙にむずかしいけれども、保険制度を健康管理体制とマッチさせる方向で、方針としては望ましいこと。医療機関の国営化路線は考えないで、現在制度のまま、適正配置、機能分化によって医療供給体制の整備に努力することの表明がありました。
 また、薬価基準の是正と診療報酬の関係に関して、診療報酬の引き上げは、診療報酬の引き上げとして検討し、薬価基準の是正は、実勢価格との差をなくして、それに合わせるというそれぞれの目的を切り離した形で行ない、薬価基準の引き下げ分を診療報酬中の技術料に振りかえるという方針はとらないことが確認されました。
 また、特例法施行後における予算上の赤字見込みと決算上の赤字が大幅に食い違っている事情と今後の収支見通しについて、鋭い追及がありました。
 特例法実施の四十二年度には三百二十億円の見込み赤字が、決算では五十八億円で、その差は二百六十二億円、八〇%の誤差を生じ、四十三年度は百四億円の赤字見込みが決算では四十五億円で五〇%の誤差となった。四十四年には九十一億円の赤字見込みであるが、景気の変動と医療費の動きによって左右される可能性が大きいという見通しの困難さが示されました。
 以上は、法律案の内容に関する質疑の一部でありますが、最後に、中間報告をめぐる質疑応答を通じて、制度は運用よろしきを得て初めて本来の趣旨が生かされること、法律論と運用論とは常に一致するものではないことの確認があらためてなされたことを報告しておきたいと存じます。
 その質疑の詳細を述べることは、期限付き審査の動議が提出されたあの本会議の繰り返しになるので、遠慮いたすことといたします。
 三日という期限がいかにきびしいものであるか、そのために質問の通告をしながらも、全くその機会を失われた藤原委員、中村委員、澁谷委員、また、十分の時間を与えられなかった大橋理事、上林理事、小野委員、上田委員、中沢委員に対して、この機会に心からおわびを申し上げる次第であります。
 さて、これまで報告を進めてまいりましたが、最後に、議長並びに議場の全同僚議員のお許しをいただき、一言申し上げたいことがあります。
 それは私は、本院で定められた院議を尊重、今日まで社会労働委員会の運営にあたっては、当初から期限を付しての院議は無理であったと思いましたが、しかし、この段階では私情をはさむべきではないと心にきめ、その運営については全く党利党略を離れ、しこうして虚心たんかいにひたすら院議を尊重、議長の要請にこたえるよう、公正無私の立場で努力をしてまいりました。このことは、社会労働委員会に籍を持つ同僚議員ひとしくお認めいただけるものではないかと信じているのであります。こうしたことも、私は、ささやかではありまするが、今日残念ながら国民の目から見れば、国会において多数独裁、たび重なる多数横暴がわが国の議会制民主主義を危機におとしいれ、国民の政治不信を増大させつつあるのではないかとの風潮に対し、これを少しでも防ぎ改めようと、国会に議席を置く者の一人としてその責任を痛感したからであります。
 私は、今日みずから保守をもって任ずる自由民主党の各位に思い起こしていただきたいのであります。日本の保守党といえども、自由と民主主義、憲政擁護の歴史を持っております。かつて明治十年代、板垣退助は立志社を創設し、自由民権運動の先頭に立ったのであります。岐阜県金華山において右翼の暴徒に刺され、「板垣死すとも自由は死せず」と、かの有名なことばを残したのであります。また、大正初期における首相、桂太郎の独裁と横暴に対して、憲政擁護の声は、上は元老より下は実業家に至る広範な大衆運動となりました。財界人、新聞記者も立ち上がり、そうして政友、国民両党の党員が猛然として立ち上がったのであります。これが憲政擁護運動第一回の護憲運動として、わが国の歴史に残っておるのであります。かかる保守政党の自由と民主主義を守る良識と伝統は、私はとうといと言わなくてはならないと思うのであります。いまや、この良識いずくにありや、と言いたいのであります。私は、このことを自由民主党のためにも悲しむと同時に、日本の議会政治の大きな不幸と言わざるを得ないのであります。
 国民の不安と不満を取り除くためには、いまからでもおそくはありません。このためには傷だらけの健保法案を廃案とすることであります。このことこそ、国民の期待にこたえるゆえんであると信ずるのであります。そうして日本の議会制民主主義を守るため、いまこそ私たち全議員が責任を負うていることを私は強く訴えて、この報告を終わります。(拍手)
#6
○議長(重宗雄三君) 本案に対し、大橋和孝君、鈴木一弘君から、それぞれ成規の賛成者を得て、修正案が提出されております。
 順次修正案の趣旨説明を求めます。
 〔大橋和孝君登壇、拍手〕
 〔議長退席、副議長着席〕
#7
○大橋和孝君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提出をいたしました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由並びに内容の概要を御説明いたします。
 医療の本質とは何か、今日ほどそれを問われているときはありません。私が、わが国の社会保障水準を見るとき、国民総生産において世界第二位を誇りながら、社会保障水準においては、今日なお昭和三十六年当時の西欧先進諸国に比べ二分の、一ないし三分の一でしかなく、その立ちおくれは著しいものがあります。わが国の社会保障水準がこのように低い水準に置かれているにもかかわらず、政府・自民党は、国民総医療費の国民所得に対する比率だけをとらえて、あたかもわが国の医療保障水準が西欧先進諸国の水準に達しているかのごとき幻想を国民に振り回しているのであります。しかしながら、わが国の医療保障がその内容において、国民の権利として、健康管理を含めた医療を全国民にひとしく保障するという医療保障の理念とは全く……(「大橋君、ちょっと待てよ、修正案が出てなきゃできないよ、ちょっと待てよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)しかしながら、わが国の医療保障がその……(「大橋さん、修正案がないんだから、手元にないから幾ら言ったってだめだよ」「暫時休憩だ」「文書函にあるというのなら、暫時休憩して取りに行かせなければだめだよ」「議長休憩だ」「こういう不正常な運営をしてはいかぬよ」「休憩しなさい」「事務総長、ロッカーに配ってあるか」「ロッカーから持ってきて配れ」「暫時休憩」「議長、休憩にしたほうが早い」「大橋さん、早く内容を教えてください」「休憩をしろ休憩を、だめだ休憩をしなきゃ、大橋君やってはだめだぞ」「事務総長の手落ちだぞ」と呼ぶ者あり)
 議長の命令によりまして、私からこの修正案の内容を申し上げ、それから提案の理由をさせていただくことにいたします。
   健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
  右の修正案を提出する。
            提出者 大橋 和孝
       賛成者……
   〔発言する者多く、議場騒然〕
#8
○副議長(安井謙君) 静粛に願います。
#9
○大橋和孝君(続) それでは、議長のお許しを得まして、私の提案を説明をし、続いて、提案理由の説明をさせていただきたいと思います。
   健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
  右の修正案を提出する。
   昭和四十四年七月二十九日
            提出者 大橋 和孝
   〔「何言っている、われわれ修正案持ってないじゃないか、だめだよ、むちゃだよ」「議長が幾ら言ったってだめですよ」「読んだってわかりゃしないよ、原本ないんだから」「進行進行」「休憩休憩」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然〕  
  ○大橋和孝君(続) 賛成者を得まして、
  健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  題名中「改正する」を「改正する等の」に改める。
  第一条中第四十三条ノ八の改正規定及び第七十一条ノ四の改正規定を削る。
  第二条中第二十八条ノ三の改正規定、第五十九条の改正規定及び第六十条の改正規定を削り、本則に次の一条を加える。
  (医療保障制度の抜本的改革等)
 第三条 政府は、医療保障制度につき、給付内容の充実及び平準化、被保険者及び組合員の
  負担の軽減、公費負担医療の拡充、予防、治療及び後保護を包括した総合的体系の樹立、医師の技術の適正な評価に基づく診療報酬体系の確立等を内容とする抜本的改革を昭和四十六年度から実施するための法律案を作成し、同年度の予算を提出する国会に提出しなければならない。
 2 前項の抜本的改革に際しては、政府の管掌する健康保険事業及び日雇労働者健康保険事業の経営により生じた欠損を国庫からの支出により補てんする措置を講ずるものとする。
    この修正の結果必要となる経費
  この修正の結果、厚生保険特別会計において昭和四十四年度約五十億円、昭和四十五年度約百億円、船員保険特別会計において昭和四十四年度約一億円、昭和四十五年度約二億円の歳出増となる見込みであり、厚生保険特別会計において昭和四十四年度約百六十億円、昭和四十五年度約二百八十億円、船員保険特別会計において昭和四十四年度約三億円、昭和四十五年度約五億円の歳入減となる見込みである。
 私は、日本社会党を代表して、ただいま提出いたしました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由並びに内容の概要を御説明いたします。
 医療の本質とは何か、今日ほどそれを問われているときはありません。わが国の社会保障水準を見るとき、国民総生産において世界第二位を誇りながら、社会保障水準においては、今日なお、昭和三十六年当時の西欧先進諸国に比べ、二分の一ないし三分の一でしかなく、その立ちおくれは著しいものであります。わが国の社会保障水準がこのように低い水準に置かれているにもかかわらず、政府・自民党は、国民総医療費の国民所得に対する比率だけをとらえて、あたかもわが国の医療保障の水準が西欧先進諸国の水準に達しているかのごとき幻想を国民に振りまいているのであります。しかしながら、わが国の医療保障が、その内容において、国民の権利として、健康管理を含めたところの医療を全国民にひとしく保障するという医療保障の理念とは全くかけ離れたものであり、かつ、その背景として、健康保険における保険主義と不当な受益者負担の拡大解釈、医療制度の非民主化、医療費における製薬大企業の利益擁護という資本の理念が貫かれているのであります。そこに国民の健康と医療を国の責任において保障するための計画性が全く欠けていることは、いまさら指摘するまでもないところであります。
 ここで私は、まず第一に、国民生活の立場から見た医療問題について触れておきたいと思うのであります。
 国民のための医療を確立するために、今日の医療問題を国民生活の立場から見たとき、その基本的な問題点は次のとおりであります。
 その第一は、経済の高度成長がわが国の社会構造、疾病構造に著しい変化をもたらしたにもかかわらず、国民大衆の健康な生活を守るための基本的な条件である生活基盤の整備は全く立ちおくれており、さらに、健康保険制度も医療制度も、ともにその変化に対応できてないことであります。
 第二に、相次ぐ保険料の引き上げや患者に対する不当なる一部負担金の増徴に見られるように、現行の健康保険制度が社会保障の理念を否定し、国民生活の実態を無視して保険財政の収支均衡の原理だけを強調するとともに、受益者負担の原則を不法にも拡大解釈して社会保障に導入していることであります。
 第三には、国立及び公的病院においてさえ、ベッド数の三〇・一%が健康保険だけでは利用できない差額徴収ベッドとなっていることであります。たとえ入院したとしても、看護婦は二日ないし三日に一回の夜勤、一人夜勤という過酷な労働条件をしいられておるのは広く知られており、大きな社会問題になっているのであります。この点も皆さん御承知のとおりであると思うところであります。国民大衆に対する医療サービスが低下しておる、こうした事態はきわめて憂慮すべきことであります。
 第四は、このように国民大衆の医療費負担の増大と医療サービスの低下があるにもかかわらず、国民総医療費の四〇%は薬剤費で占められておるという異常な状況であります。これはもっぱら製薬大企業のあくなき利潤追求に奉仕させられておるということが言えるのであります。
 以上四点の問題の上に立って医療問題を考えてみるとき、健康保険制度には次のような問題があるのであります。
 まず、制度の分立から生ずる弊害であります。
 わが国の健康保険制度は八つに分かれており、それぞれ給付の内容も保険料負担も異なって、制度間に著しい格差が生じております。特に、有病率の高い高齢者や低所得者あるいは健康管理の不十分な小零細企業労働者などが給付内容のより劣悪な健康保険に加入せざるを得ないような仕組みになっているのであります。
 次に、わが国の健康保険の給付があくまで治療中心であり、国民の健康管理とか疾病予防については給付の対象外とされており、特に、小零細企業に働く労働者が加入する国民健康保険において、健康管理、疾病予防の観点が全く失なわれているのであります。
 三つ目には、制度の非民主的な運営であります。一部の健康保険組合や共済組合及び業態別国民健康保険組合では、不十分とはいえ、被保険者代表が運営に参加していますが、政府管掌健康保険をはじめ多くの健康保険制度が、被保険者の要求を反映させておらず、被保険者の参加できるような運営を行なっていないことはきわめて重大な問題であります。
 医療制度については次のような問題点があります。
 まず、公的医療機関と私的医療機関、あるいは病院と診療所が無政府的に競合し、それぞれの任務も明らかにされておりません。医療機関は、病院、診療所を問わず、いたずらにデラックス化をしいられ、また、医療器械、設備に過度の投資がなされているのであります。しかもそれが医療費へはね返って国民大衆に過重な負担をしいているのであります。
 ここで私は、一言申し述べて誤解を避けておかなければなりません。以上のことは、病院、診療所自体が、このようにしなければ医業経営が成り立たないというところに深刻な問題があるのであります。すなわち、本来医療行為というものは、医師と患者の相互信頼の関係を基礎としているのでありまして、この基本を今日の制度がゆがめているのであります。
 次に、これも今日の大きな社会問題に発展している医師不足、看護婦不足による医療サービスの低下ということであります。健康管理の第一線機関であったはずの保健所の勤務医師は、その充足率わずか四二・三%にすぎず、僻地医療の第一線機関であったはずの国民健保直営診療施設では、直営診療所を設けている団体数九百五十七のうち、十八病院、五百九十四診療所が休止しております。さらに、高度医療の第一線機関であったはずの総合大病院は、患者の犠牲と医師及び看護婦などの医療労働者の労働強化によって、ようやく診療が確保されている。医師不足、看護婦不足は、医療サービスの低下を越えて、直接国民大衆の健康と生命にかかわる危機を招いているのであります。
 医療費負担の問題点として次に三点を指摘しておきたいと思うのであります。昭和三十年に二千三百八十八億円であった国民総医療費は、三十五年には四千九十五億円に、四十二年度には一兆四千九百三十一億円と六・二倍にも達しているのであります。特に、三十六年度から四十年度まで、その対前年度伸び率は国民所得のそれを大幅に上回ってきたのであります。また、その国民所得に占める比率も、国際比較では確かに西欧先進諸国に近づきつつあるのでありますが、しかし、問題は、このような医療費の伸びに対して、国民大衆が受ける医療の向上とは直接かかわりのない要素があまりにも多く、しかも、国民大衆は、不公平な税制、医療保障制度における保険主義、受益者負担により、税金や社会保険料、あるいは自己負担による医療費の重圧にあえいでいるということであります。医療費の負担割合を昭和四十一年度の推計で見ると、公費負担分一二・六%、千六百三十三億円、保険者負担分二〇・二%、二千六百二十億円であります。言うまでもなく、公費負担分とは税金であります。保険者負担分とは一種の目的税である社会保険料で、わが国の租税制度がきわめて大衆課税的な性格の強い所得税が中心となっており、各種の特別措置や低い法人税率によって企業所得や資産所得の税負担が軽くなっていることは周知の事実であります。また、被保険者である国民大衆の社会保険料負担についても、イタリアの労使負担割合が一九・一対八〇・九、フランスが二〇・六対七九・四、西ドイツが三八・六対六一・四であるのに対しまして、わが国では四六・二対五三・八と、きわめて重いのであります。比率として、被保険者負担の多い国では、国庫負担が被保険者負担を大幅に上回っており、デンマークで約五倍、イギリス、スウェーデンで約二倍となっているのであります。国民総医療費には、国民大衆が健康を維持するために必要とした健康診断費、予防接種費、あるいは平常の分べん、産じょくに伴う費用、リハビリテーションの費用は含まれていないのであります。また、健康保険における差額徴収なども除かれているのであります。したがって、国民の医療費負担は、単に国民総医療費にあらわれたものだけではないということは指摘しておかなければならないと思うのであります。
 次に、わが国の医療費に占める薬剤の問題についてであります。
 わが国の医薬品生産額は、昭和四十二年が五千六百三十三億円であり、三十六年の二千百八十一億円に比べ、約二・六倍の伸びを示しているのであります。その伸び率は国民総生産の伸び率二・二倍を上回っており、国民総医療費の伸び率二・九倍に迫っているのであります。しかも、わが国の医療品輸出額は約三%にすぎません。一方輸入額は六・六%であることは、わが国の医薬品の大部分が国内消費に向けられ、特に国民皆保険以後、宣伝によって売られる保健薬や大衆薬を除くほかは、保険医療や公費負担医療に依存しておるということにほかならないのであります。事実、政府管掌健康保険の診療総点数に占める投薬、注射の薬剤点数の割合は、総数で、三十六年五月の二五・一%に対し、四十一年五月では三八・九%に上昇しております。これはとりもなおさず医療技術を軽視している。また、投薬、注射を多く行なうことによって初めて医業経営が成り立つという診療報酬体系に問題があるのであります。医師も国民大衆もこのような医療を決して望んでいるものではないのであります。
 第二の問題として、医療従事者の立場から見た医療問題であります。
 その第一は、医師及び看護婦の不足による労働強化であります。全国の病院、療養所における一日の診療患者数は、昭和三十年に比べて四十年には九八・〇%にすぎず、一方、この十年間における医療の専門化、高度化がより多くの専門的な知識と技術を持った人手を必要としていることを考え合わせるならば、今日の病院医療はまさに医師及び看護婦など医療労働者の労働強化の上にささえられていると言っても過言ではありません。
 その第二、医学教育、医師研修制度あるいは看護婦養成制度にある前近代的なところであります。医学部紛争が大学紛争の発端となったことは御案内のとおりでありますが、医師の教育、研修制度に根強く残る閉鎖性、封建性は、大学病院に所属する医師の五三・八%を研究員という名目で、無給のまま医局に縛りつけ、それでなくても不足している勤務医師を偏在させているのであります。また、看護婦制度も、看護婦が専門職であるにもかかわらず、今日、学校教育法に基くものではないのであります。
 わが党は、当面の打開策の一つとして、看護婦国家試験の受験資格の特例に関する法律案を提出してきたのであります。さらには、六月十日に本院社会労働委員会におきまして、全会一致で、看護職員の不足対策に関する決議を行なっております。
 その第三は、診療所や病院の経営を圧迫するばかりか、医療の本質をゆがめている診療報酬体系であります。医療はすぐれて科学的であり、技術的であると同時に、医療従事者のチームワークによる総合力を必要とするものであります。にもかかわらず、現行の診療報酬体系は、医師及び看護婦など、医療労働者の専門的な知識と技術と労働を尊重せず、また、今日の進歩した医学、医術に対応できていないばかりか、かえって投薬、注射の使用をあおって、医師を本来の医療行為から遠ざける結果になるのであります。
 ここで、医療制度の問題点について項目を追って指摘しておきたいと思うのであります。
 医療需要体制の社会化は、それに対応した形で医療供給体制の社会化を必要とするのはむろんであります。しかし、わが国において現在進められているところの医療の社会化は、医療の官僚統制化、医療の非民主化でしかないのであります。しかもそれは同時に、患者と医師及び医療労働者の労働強化と人間疎外という大きな犠牲の上に行なわれている医療の合理化を意味するのであります。国立及び公的医療機関が私的医療機関と有機的な結合をはかるどころか、かえってきびしい独立採算制のもとでまっこうから競争をいどんでいる現状は、決して国民大衆のための医療を向上させるものではなくて、医療の官僚統制化、医療の非民主化でしかないのであります。
 次に、医療従事者の労働強化によってからくもささえられている医療ということに言及してみたいのであります。厚生省の「国立及び公的等の医療機関の診療活動調査」によりますと、これらの病院における医師一人当たり一日の入院診療患者数は十九・七人、外来患者数は三十二・四人となっているのであります。この調査結果は、「三時間待って診察三分間」ということばが決して誇張ではないことを示しているのであります。開業医についても、家族を巻き込むいわば家族労働を含んだ上に立って成り立っているのであります。看護婦についても、昭和三十五年から三十六年の病院スト以来、三十七年末に十四万五百七十一人であった病院勤務看護婦は、四十一年末には十七万七千八十四人と二二・三%ふえたが、一方、病院ベッド数も三十七年末の七十五万二千七百十四床から、四十一年末の九十一万八千二百三十三床と二〇・七%ふえ、しかもこの間、医療の高度化は、ますます専門技術と多数の人手を必要としてきたのであります。その結果、たとえば看護婦の夜勤は、月勤務日数のうち国立大学病院が一〇・七回、国立病院が九・一回、しかも一人夜勤は国立大学病院が五六・七%、国立病院が七六・二%というような過酷な労働条件をしいているのであります。
 医学教育制度等の問題点は、わが国の大学医学部及び付属病院における教育研修は、教授を頂点とする医局を中心として行なわれており、それはきわめて封建的、閉鎖的な性格を持っているのであります。医局は教授の絶対的権力のもとで運営され、多数の青年医師を大学病院の診療に無給で従事させてきたのであります。インターン問題に端を発した医学部紛争は、まさにその権力支配に対する学生及び青年医師による改革ののろしであったのであります。また、看護婦養成についても、それが学校教育法に基づいたものでないばかりか、政策的に、看護婦の養成よりは准看護婦あるいは無資格の看護婦助手、副看護婦の養成に力点が置かれて、看護婦の専門職としての地位はかえって低められつつあるのであります。
 診療報酬の問題点としてはきわめて重要かつ深刻な問題があります。わが国の国民総医療費が、昭和三十年度の二千三百八十八億円から四十二年度の一兆四千九百三十一億円と六・二倍にのぼっていることはさきに述べたところでありますが、このように医療費が増大した原因にはいろいろあるでありましょうが、いずれにせよ、これが国民大衆のための医療の向上に費やされたものであるならば、それはむしろ歓迎すべきことでありますが、しかし、それはきわめて疑わしいのであります。今日、個人開業医の側からも、また公私立病院の側からも、消費者物価の上昇、人件費の増大などを理由に、医療費の引き上げを提起されているのであります。また、医療労働者の立場からも、賃上げなど労働条件の改善と定員増をはかるため、やはり医療費引き上げが要求されているのは、御承知のとおりであります。これらの要求は、国民大衆のための医療の向上、医師の所得保障及び看護婦などの医療労働者の労働条件の改善などをはかるためには、当然であると言えようと思います。
 問題は、第一に、医療費の引き上げが、健康保険料の引き上げや患者負担金の増徴となってそのまま大衆の負担にはね返ってくる現行の健康保険制度やあるいはまた公費負担制度にあり、第二に、医療費の四〇%を占める薬剤費、無原則に医療費へ転嫁されているところの設備投資や、看護婦養成制度など、医療費の内容にあるのであります。しかし、基本的には、国民のための医療の向上と、医師の所得保障及び医療労働者の労働条件の改善とは、決して相対立するものではないし、また、国民大衆のための医療の向上と、健康保険制度及び公費負担制度の抜本的な改善とは、言うまでもなく車の両輪なのであります。現行の診療報酬体系が、医師及び医療労働者の技術と労働を軽視したものであり、多くの矛盾点を持っていることについては、すでに指摘されているところであります。医師及び看護婦など医療労働者のチームワークによって初めて全うされる医療において、その技術と労働を軽視し、その経験を評価しない診療報酬体系が、あるいは繁雑な請求手続が、国民のための医療という観点からも、医療従事者の立場からも、いかにゆがんだものであるかは、明らかなのであります。
 ここまで、私は、国民生活の立場から見た医療問題、医療従事者の立場から見た医療問題という観点から、今日のこの混迷しているところの日本の医療の現状を見てきたのでありますが、最後に、地方自治体の立場から見た医療問題について言及しておきたいと思うのであります。
 今日、地方自治体が直面する医療問題の基本的問題点は、第一は、国の委任事務として市町村が運営している国民健康保険の問題であります。国保に対して、大蔵省は、国民健康保険に対する国庫補助こそ財政硬直化の元凶であるとか、あるいはまた、財政制度審議会は、国民健康保険の国庫補助率を引き下げ、地方自治体も負担させるべきであるとか、もっぱら財政面からの攻撃が行なわれているのであります。地方自治体が住民の健康と生命を守る立場から、いかにしてこの国民健康保険を真に住民のための制度につくりかえていくのかという問題であります。第二は、都道府県、大都市、中都市、小都市、あるいは町村など、その規模や置かれた条件によって対応の方法は異なりますが、地方自治体が住民の健康管理と医療を保障する体制をどのようにつくるかという問題であります。今日、医療問題をめぐって地方自治体のかかえる問題は多様であり、複雑であるのであります。たとえば、自治体病院のあり方、保健所のあり方、それらと関連をして、医師、看護婦の充足の問題、あるいは救急医療、成人病医療、過疎地帯の医療対策などなど、きわめて広範にわたり複雑な問題がそれぞれからんでいるのであります。
 そこで、結論的に申し上げますならば、住民のための健康管理体制や、医療保障体制をつくるといっても、それはすぐれて国の医療政策にかかわる問題であります。国は、計画性、実行性に乏しい習慣を断ち切って、国民健康保険制度の抜本的改善と大幅な国庫負担が必要であります。
 以上、私は、日本の医療の現状について、三つの観点から見てまいりました。
 ここで、私は、分べん給付についてちょっと触れておきたいと思うのであります。
 国民健康保険の中の分べん給付に対して、わが党は、今国会、三月十八日に出産手当法を提出しております。内容を簡単に触れますならば、出産に関する格差をなくし、費用は国がすべて負担するものとしたのであります。出産に関する手当は五万円を支給し、第一期妊娠四カ月で五千円、第二期妊娠八カ月で一万五千円を検診及び出産準備費として、第三期には、分べん費、入院に要する費用三万円といたしたのであります。認定は市町村長が行ない、給付について異議申し立てができる、時効は二年とする、手当額は三年ごとに再検討する、施行期日は四十五年の四月一日とするなどの点であります。
 なお、本法案に関連して、働く婦人の保護の見地に立って、つわり休暇及び産前産後の休暇を、現行六週間であるのをそれぞれ八週間に改善する必要がありますので、わが党は、労働基準法の一部を改正する法律案もあわせて提出したのであります。
 以上の観点に立って、政府が本院に提出されました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案を見ますと、これは医療保険の明白な改悪であると言わざるを得ません。
 ところで、私は、まず最初に、この政府提出法案が次の四つの理由によって不法であることを国民の前に明らかにしたいと思うのであります。
 第一は、七月十日の衆議院社会労働委員会の採決が無効であることであります。第二には、七月十四日の衆議院本会議における起立採決は、憲法違反であるということであります。第三は、衆議院において与党の一方的な修正を受け、社会保険審議会や、社会保障制度審議会の議を経ずに、いわば換骨奪胎されたものであるということであります。第四には、与党修正に際して、衆議院本会議における修正案説明は、説明不十分で、法制局・見解でも、法的効果を持たずということであります。
 これらの点につきまして、わが党は、繰り返し政府提出法案の違憲性、不法性を追及してまいったのでありますが、政府自身、事実上このことを裏づけするような答弁を行ないながら、事ここに至ったことは、議会制民主主義の権威を著しく失墜したものであり、遺憾のきわみであります。しかしながら、政府・自民党の理不尽きわまるやり方によって、現実にこのようなまぼろしの法案が、本院の審議の対象になっているのであります。したがいまして、もしこの法案が強行成立させられるとしますならば、それは直ちに国民生活へ甚大な影響を及ぼすわけでありまして、事態をこのまま見のがすわけにはまいりません。私はここに、その立場から、政府提案の健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対しまして、国民生活の防衛とわが国医療保障前進の観点から修正案の提案をいたしたわけであります。
 今回の政府提出法案は、違憲、違法の問題を別にしましても、二重三重の公約違反を犯しているのであります。すなわち二年前の昭和四十二年、健保特例法ができました際に、政府が、二年間の間に抜本改正を用意する、特例法延長はしない、この二点を公約したのであります。これは周知の事実であります。しかるに、これらの公約は全くほごにして、政府は健保特例法延長法案を提出してきたわけでありまして、これだけでも政府としましては、国民に対し重大な責任をとらなければなりません。ところが、政府・自民党は、この健保特例法延長法案を、関係審議会の意見も聞かず、一方的に与党修正をするという言語道断のふるまいに及んだのであります。与党修正によって、時限立法としての保険料率、初診料、入院料の引き上げがそれぞれ本法の中に繰り入れられ、保険料率は千分の六十五が七十に、初診料は百円が二百円に、入院料は一日二十円が六十円になって、恒久化されることになるのであります。分べん費の引き上げがあるとはいえ、被保険者・患者負担を恒久的にふやして、保険財政の収支を改善しようというやり方は、まさに抜本改悪へ大きく一歩を踏み出したものと言わなければならないのであります。
 私は、このような政府提出法案の不法性と反国民的生活圧迫を強く弾劾するとともに、従来の経過を踏まえまして、二年前の特例法制定以前に制度を戻し、すみやかに抜本改正を進めるための修正案を提出いたしました。
 すなわち、第一に、保険料率を二年前の千分の六十五に戻す。
 第二に、初診時一部負担金、これも二年前の百円に戻す。
 第三に、入院時一部負担金も二年前の三十円に戻す。
 第四に、政府は、医療保障制度につき、給付内容の充実及び平準化、被保険者及び組合員の負担の軽減、公費負担医療の拡充、予防、治療、後保護を包括した総合的体系の樹立、医師の技術の適正な評価に基づく診療報酬体系の確立などを内容とする抜本改革を昭和四十六年度から実施するための法律案を作成し、同年度の予算を提出する国会に提出する。
 第五に、抜本的改革に際しては、政府の管掌する健康保険事業及び日雇い労働者健康保険事業の経営により生じた欠損を国庫からの支出により補てんする措置を講ずる。
 以上、この法案に対する修正案の提案理由及び要旨を御説明申し上げた次第であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、可決をしていただきますようお願いを申し上げて終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○副議長(安井謙君) 鈴木一弘君。
   〔鈴木一弘君登壇、拍手〕
#11
○鈴木一弘君 私は提出者といたしまして、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対して修正案を提出いたしましたので、その趣旨説明を行なうものであります。
 さて、近年、医療技術の進歩は目ざましいものがあります。しかし、国民がその恩恵に浴し、満足しているかというと、そうではありません。かえって技術の進歩に反比例するかのように、医療制度の矛盾は深まり、国民の不満の声は増大いたしております。国民皆保険というものの、医療費はかさむばかりであり、入院ともなると、差額ベッドなどで高い金を取られ、手術を受けるともなれば、規定以上に大金が要るという状況であり、国民医療の名にそむいてきているのであります。また、ところによっては、医師のいないという悩みも深刻であり、看護婦も足りないといった現状であります。一体このような状態で国民の健康を守ることができるでありましょうか。そもそも医療保険制度は、すべての国民に対し、その健康を守るために必要な医療を、国の責任で保障する制度であることは言うまでもありません。
 医療費は年を追うごとに増大の一途をたどり、賃金水準の増加や国民所得の増加を上回り、医療保険財政の危機を招き起こしております。特に多大な赤字を生じている政府管掌保険等に対しては、再度にわたる保険料率の引き上げや薬剤費の一部負担の導入など、赤字財政措置が行なわれてまいりましたが、政府が抜本的措置を講じないために、この問題が解決されていないというのが衆目の一致するところであります。この赤字の原因には根深いものがあり、深い掘り下げが必要であります。
 基本的には、国民医療に対する国家の責任体制が十分確立されていないことが最大の原因であります。医療保険の根底にある問題といたしまして、医療制度、薬事制度、診療報酬体系、その他医療面に多くの欠陥があり、医療保険制度の基礎的諸条件が整備されていないのであります。その上に保険制度の乱立、これは医療の差別を生じ、人間相互の信頼感をそこなうばかりでなく、ひいては人命軽視の風潮さえも助長しているのであります。さらに、医師対患者の人間関係の疎外、医倫理の低下、医療の質や技能よりも、物量医療への偏向など、医療の本質を離れた憂うるべき傾向を濃くいたしております。このように、医療保険制度に対して諸問題が生じたのは、その前提となるべき基礎的な諸制度や諸条件を整備することをしないで、国民皆保険体制に入ったところに、最大の災いのもとがあるのであります。
 国民皆保険を国民にしいる以上、国家として国民の健康と医療を守る一貫した体系を確立し、総合的な観点に立って、関係の諸制度や諸条件の整備を行なうべきでありますが、これらは全く行なわれていないのが現状であります。
 さらに、引き続き起こる問題点は、今後においても医療費は増大の要因を持っているということであります。すなわち、医学、医術、薬学の進歩、疾病像の変化、医療概念の拡大、人口の老齢化、社会生活の複雑かつ高度化、都市化の進展、教育文化水準の向上、医療保険制度の発展などによって、医療需要の増大は必至であります。
 わが党は、こうした諸事情を考えるときに、今後の国民医療政策の推進にあたっては、医療のむだを排除し、効率的な医療確保のために、終局的には医療保険制度における医療を近代化、社会化の方向に改善して一元化し、国の責任を増大せしめるように移行させるべきであると主張するものであります。
 このような観点から、わが党は二年前、国の責任をたな上げにして、医療保険の赤字を受益者負担の名のもとに、大衆負担に転嫁する政府の健保特例法に反対してまいりました。政府は、健保特例法は延長しない、二年間に医療保険、医療制度の抜本的な改正案を提出する、という特例法成立時の公約を今回踏みにじって、健保特例法の期限が切れる直前の今国会に、健保特例法の二年延長を提案して、医療保険制度の抜本的改革案については、ついに提出を行なわないで、今日まで引き延ばしてきたのであります。したがって、政府は二年間全く無為無策に終始してきたと言えるのであります。
 しかも、政府は、健保特例法の延長を重要法案の一つとして強行成立させるために、国会の会期を大幅に延長した上、衆議院の社会労働委員会の審議も十分行なわず、前例のない不当な強行採決を行なっただけではなく、健保特例法二年延長案の審議を健康保険法の改悪にすりかえるという言語道断の手段を用いたのであります。また、その修正案は、問題点も多々あるにもかかわらず、説明も不十分であり、その上に審議を打ち切って本会議に持ち込んだのであります。
 しかも、その内容たるや、特例法を廃案とし、健康保険法の改悪、半永久化をはかっているのであります。すなわち、薬剤費等の一部負担は取りやめたものの、保険料率を千分の七十として本法に繰り入れ、初診時、入院時の料金の引き上げ等も本法に繰り入れているのであります。まさに、考えられないような非常識きわまる法案を提議したのであります。
 そして、衆議院の本会議を中断し、さらに議長職権で、記名採決をするべきところを起立採決するという憲法違反の事態を引き起こし、まさに、国会史上類例のない暴挙を続発してきたのであります。(拍手)
 次に、私は、予算面における社会保障費について一言触れておきたいと思います。
 佐藤総理は、口を開けば、人間尊重、社会開発、そして福祉国家をと述べておりますが、実際問題として、佐藤内閣の行なっている政治は、大衆の福祉に対してあまりにも増進していないと思うのであります。人間尊重も単なるスローガンにすぎないことは、社会保障関係予算に明らかであります。しかも、この社会保障関係費の増加分の九割近くが、医療保険の国庫補助、結核の公費負担などの当然増経費なのであります。このため、経費が伸びているとはいえ、それほど社会保障が充実したことにはならないのであります。金額が多くなったといっても、結局はそのようなごまかしであって、実質は、佐藤総理のいう福祉社会の実現にはほど遠いものとなっているのであります。
 では、どうしてわが国の社会保障が著しくおくれているのかといえば、それは社会保障に対する長期計画がずさんなためであります。すでに経済社会発展計画では、社会保障の充実について、まず、わが国の経済社会の実態と、その将来の進路に即した適切な社会保障の長期計画を策定し、これに基づく体系的整備を行なうことが不可欠であるとしており、今後の基本的方向づけとしては、所得保障部門の比重の拡大とともに、医療保険制度の再編成を行なうべきことを特に強調しているのであります。
 政府は、今日における財政硬直化の要素が社会保障費の増大にあると言っておりますが、確かに、社会保障費は、一たん予算化された場合、削ることのできない性格を持っているために、最も硬直的な経費ではありましょう。しかし、わが国のおくれた社会保障の状態を見るとき、これを理由にその充実を怠ってよいとは言えないのであります。
 ここにおいてわが国は、この社会保障充実のための財源として、国民の直接負担に依存する現状から、経済の成長力を伸ばしつつ、その成果を国家や企業が再配分するという福祉国家へと前進でき得る社会保障制度の確立を強く訴えたいのであります。
 私はこの際、以上のことを考慮に置き、さらに重大な国民大衆の健康と福祉向上のために次のような修正案を提出いたしましたので、その趣旨説明を申し上げます。
 まず第一は、保険料の引き下げについてであります。
 いま世界的に社会保障が重視され、その充実度が先進諸国のバロメーターであるとまでいわれております。したがって、わが国の医療制度も、具体的には、国民の健康のための医療保障という問題の性質から考えていかねばならない状態になっているわけであります。すなわち、産業構造の高度化に伴い、疾病そのものも急速に変わってきております。神経障害や精神病、都市の公害や騒音による病気、交通事故などによる負傷者は増加の一途をたどっております。これらは国や企業主の責任において治療がなされておりますが、いまだ不十分きわまりないのであります。したがって、国家の繁栄のために営々と努力をし、生活苦に耐えてきた国民に最大の医療保障を行なうのは当然のことであります。特に低賃金労働者の多数加入している政府管掌の健康保険においては、でき得る限り、それら国民に負担を加重すべきではないのであります。
 ところが、現行の健康保険法における保険料率は千分の六十五となっております。それを健保特例法によって千分の七十としてきたのであります。これは当然、二カ年間に限った立法であったのでありますから、この二カ年間で廃止すべきであると思うのでありますが、衆議院において修正をされ、現行の健康保険法の改正案をもって千分の七十を恒久化して、引き上げてきております。したがって、これは国の責任を転嫁し、事業主と被保険者に対して過重の保険料負担を負わしている保険主義の考え方であって、社会保障の精神には大きく反しております。そこで、健康保険の本来の精神に戻すため、保険料を千分の七十から千分の六十五に引き下げることといたしたのであります。
 第二は、分べん給付の引き上げについてであります。
 本来ならば、分べん給付は当然医療給付で行なうべきでありますが、政府は、分べん費の支給を最低保障額本人二万円、配偶者分べん費一万円と引き上げておりますが、この程度の額では、国民ははたして安心して出産ができると考えているのでありましょうか。私はいなと言わざるを得ません。
 昭和四十年、四十九国会において母子保健法が制定されたことは、すでに御承知のとおりでございますが、このような母子保健対策の推進によって、わが国の母子保健の現状は一歩前進を示したものの、いまだ改善の余地が少なくないのであります。すなわち、先進諸国に比べて、わが国の妊産婦の死亡率はいまだに高率であり、また、戦後著しい改善向上を見た乳幼児の死亡率、体位、栄養状態等についても、その地域格差は依然として縮小されていないなど、なお努力を要する課題が数多く残されているのであります。このような実情に対処して、今後母子保健の向上に関する対策を強力に推進していくために、健全な児童の出生及び育成の基盤となる母体の保護のための対策を強力に講ずる必要があるのであります。したがって、賃金実態や分べん費の現状から考えまして、まだ不十分ではありますけれども、最低保障額を本人四万円、配偶者二万円といたした次第であります。これによって、母子をともども守っていきたい、こう願っているわけであります。
 第三に、国庫負担率についてであります。
 健康保険においては、本年度の国庫負担額は、前年同様二百二十五億円となっており、特例法は従来と同様の額であります。しかし、二年経過した今日においては、実質の価値は下回ってきているというのが実情であります。本来、弱体の社会保険においては、給付費に対し、国庫負担率を、国民健康保険においては四割五分、日雇い健康保険においては三割五分を支出しております。これが現状であります。そういう観点から考え合わせてみるならば、政府管掌の健康保険も同じく弱体な社会保険でありますので、同様の財政措置が必要であることは理の当然であります。したがって、この際、政府管掌の健康保険も国庫負担率を二割五分、二五%とすべきであると主張し、修正をいたしたわけであります。
 以上が、本法案の提案理由であります。
 なお、今回は初診料の一部負担及び入院時の一部負担についても、本来は削除をしたい考えでおりましたが、いずれ本修正案が成立した暁には、抜本的に改正し、内容を改善することを決意いたしまして、修正案の趣旨説明といたすものであります。
 非常に簡単で、ざっぱくな趣旨説明でございますけれども、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに満場一致で御可決あらんことを願うものであります。(拍手)
#12
○副議長(安井謙君) 修正案は、いずれも予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。斎藤厚生大臣。
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(斎藤昇君) 大橋和孝君提出の修正案並びに鈴木一弘君提出の修正案につきましては、政府といたしましては、いずれも残念ながら賛成いたしかねます。(拍手)
#14
○副議長(安井謙君) これにて午後二時まで休憩いたします。
   午前十一時三十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時九分開議
#15
○議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 質疑の通告がございます。順次発言を許します。藤原道子君。
   〔藤原道子君登壇、拍手〕
#16
○藤原道子君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案について、総理大臣をはじめ関係大臣並びに修正案に関し、関係者に質問をいたしたいと思います。
 まず、本論に入ります前に佐藤総理に申し上げたいと思います。
 私は、この法案の審議に立つこと自体はなはだ残念でございます。申し上げるまでもなく、この法案は違憲の疑いが濃い、違法である――大きな世論になっておりますことは、あなたも新聞その他で御案内だと思います。私は、この存在を認めない立場におきまして、なおかつ院議に縛られてこの場所に立ちますことは、まことに残念でございます。
 本法案は、御承知のように、七月十日の衆議院社会労働委員会におきまして、混乱のうちに修正可決したものとされておりますが、これを見ますと、臨時特例法は全く姿を消してしまい、健康保険法の大改悪案が突如として出現したのであります。このような改正は、まず社会保障制度審議会、社会保険審議会の答申を経てから国会に提出されなければならないはずであります。
 そこで、佐藤総理大臣にお尋ねをいたします。
 関係審議会の議を経ることもなく、議員修正という形で、しかも、委員会における成規の手続も踏まずに問答無用の強行採決により、委員会において成立をはかったことは、不法かつ違法であると存じます。したがって、委員会における正当な手続もなく、また、関係審議会の議も経ていないのでありますから、衆議院社労委員会に差し戻すべきであり、委員会において慎重審議を行ない、審議会等の意見も十分聞いた上で議決し直すのが当然であります。しかるに、これを正当であるとする理由は何であるのか。また、衆議院社会労働委員会に差し戻すべきだと思いますが、佐藤総理はこれをどう思われるか、明らかにしていただきたいと思います。
 また、十四日未明の衆議院本会議において記名投票を中断し、突如、起立採決に切りかえるという暴挙に出たのでありますが、憲法第五十七条三項には、「出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。」とあるのであります。それを途中からかってに変更したのは無効であり、憲法違反であり、かつ、多数党なら何でもやれるという多数暴力であることは明らかでございます。この衆議院本会議における異常事態に対して、衆議院の議長、副議長は、その責任をとって辞職しております。あの温厚な人、あの人格者である石井議長がみずから焼身自殺だという――(笑声)何を笑うか、石井議長が人格者じゃないと言うのですか、あなた方は。焼身自殺だという悲痛なことばをどのように総理はお聞きになりましたか。しかるに、あの起立採決を強行し、臨時特例法の一部改正案を参議院に送付した理由は全く納得がまいりません。いかなる理由のもとに正当な議案と言うのか。委員会においても不法、違法の行為により強行し、その上本会議でも違憲行為を重ねたものを、どうして正当な議案と言うことができるのでありましょうか。また、参議院社会労働委員会で審査を了することとされて以来、本委員会における審議の経過は、御承知のごとく、納得のいかないところが多々ございます。
 本法案が衆議院から本院へ送付になったのは七月十四日でございます。すでに本会議における委員長の中間報告で述べられたように、当委員会には国民生活に直接関係の深い法律案が本付託と相なっております。委員長及び理事打ち合わせ会の申し合わせによれば、先議案件から審議することになっており、事実、申し合わせのとおり円滑に議事が進められておったのであります。しかも、二十四日には健康保険特例法案の提案理由の説明を聞くこととなっていましたのに、突如として中間報告を求められ、押し切られたのでございます。
 今回の委員会審議において、この中間報告についての国会法、参議院規則の解釈について、参議院法制局長及び事務総長の要領を得ない答弁では、納得がまいりません。したがって、総理からこの点を明確にお答えをいただきたいのであります。
 わが国の政治形態は議院内閣制をとっておりますので、政府と与党である自民党とは、表裏一体、密接不可分の関係にあります。したがって、内閣提出法律案については、すべて与党たる、自民党は十分連絡、了解の上で提出されているのであります。このことは、与党自民党は、修正を行なうにあたっては、当然今回のような換骨奪胎ともいうべき法の改廃した大修正については、内閣総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会及び厚生大臣の諮問機関である社会保険審議会にあらかじめはかり、あるいはまた、あらためて政府は提出し直すべきであります。また、もし与党による修正は、いわゆる立法府たる国会での修正であって、行政府たる政府としては関知しないということであるならば、政府は、都合のよいときは審議会に、都合の悪いときには国会における与党を駆使して修正を行ない、関係審議会はただ政府の民主主義における隠れみのとして利用しているのではないでしょうか。また、与党の修正案について、政府は事前に閣議決定で行なった結果、厚生大臣がやむを得ないという意見を述べておられますが、これは修正案に政府が関与したことを示すものではないでしょうか。したがって、政府は当然関係審議会にはかるべきであって、これを怠った責任は重大であると思うのでありますが、これに対し、総理大臣及び厚生大臣の所信をお伺いしたいのであります。
 さらに、佐藤総理大臣は、先般の衆議院本会議の大原亨議員の質問に対し、医療抜本改革については従前どおりの方針に変更はない、と言明されたのでありますが、従前の方針どおり二年以内に間違いなく抜本改革案を提出するのであるならば、何ゆえに二年間の時限立法たる特例法改正の原案で行なわないのか、何かこの間にあやがあるように思えます。何ゆえに恒久法たる本法の修正をしなければならないのか、この点につき明確なる御答弁をいただきたいのであります。
 政府は、公約している医療抜本対策についても、今日まで何らの具体的な構想が打ち出されていない状況にあります。また、とかく医療関係団体の意見に左右されがちで、国民の立場において医療問題を解決しようとする熱意がありません。国民皆保険の現状を見ると、保険あって医療なしといわれ、医療が機会均等に受けられず、医療機関の偏在、医療保険の乱立、医療保険の制度による給付と負担の不均衡等々がございます。今後の趨勢である医療機械器具及び医療技術の高度化、新薬の開発、医療の質の向上とコストの上昇による保険医療にどこまで対処しているのかという課題があるが、抜本改正抜本改正と言わないで、この際、政府の確固たる医療保険に対する基本方針及び将来の展望を明らかにされたいものでございます。
 次に、健康保険の問題が、健保特例法をはじめ、日雇い健保を含めて、今日これほど大きな政治問題となったのは、佐藤総理大臣、あなたは、どこに原因があると考えていらっしゃるのでございましょうか。
 戦後、日本経済を復興させ、世界第二位の生産力を持つまでに経済の高度成長をささえてきたその主役は、申すまでもなく、勤労国民にほかなりません。その主役である勤労国民の健康管理体制を国の社会保障の名において確立することこそ、政府の責任であると存じます。しかるに、政府が意図的に回避してきたことに、今日これほどまでに大きな政治問題と化した原因であるのではないでしょうか。国民の健康と生命を守るよりも何よりも、まず生産性の向上、経済復興が先決であるとした戦後保守党政府の政治、あるいはまた、所得倍増のかけ声で、その実は独占資本の育成を最優先させてきた池田内閣以来の政治、ところが、佐藤総理はその主張として、これらの前池田総理のやり方を批判しておられたはずでございます。ところが、今日なお国際競争力に名をかりて、口では人間尊重をうたいながら、公害は必要悪というがごとき佐藤内閣の人間軽視の政治こそ、今日の健康保険の問題がかくも重大な政治問題に発展してきた最大の原因であり、政府・自民党の持つ政治体制の矛盾のあらわれでなくて何でありましよう。
 戦後二十四年、ようやくこのような保守政治の政治理念が根本から問いただされていると言うべきであります。これこそ健康保険制度の問題がこのように大きな政治問題にまで発展した要因であることを思えば、いまこそ改善のメスを加えるべき重大な時期であります。すなわち、政府にとっても急務であるはずの医療抜本改革は、まさにこのような保守政治の政治理念そのものを、さらに付言するならば、佐藤総理大臣の頭の中から抜本的な改革をはからなければならないということを意味しているのではないでございましょうか。
 佐藤総理大臣は、五月八日の衆議院本会議において、また、六月十八日の参議院本会議においても、陳謝釈明をし、あと二年の猶予を請うて、健保特例延長法案の提案を行なったのであります。このように、政府は、特例法の有効期間の二年間を無為に過ごし、抜本改革が間に合わず延長しただけでも政治的責任は重大であるのに、基本的な性格を変える修正を行なうということは、国民を愚弄するもはなはだしいと言わなければなりません。かかる公約違反を重ねてきたその責任をどうとるというのか、具体的に総理大臣からお答えをいただいておきたいのであります。
 次に、厚生大臣にお伺いをいたします。
 まず第一に、今回の健康保険法並びに船員保険法の改悪は、期待される抜本対策のめどを失ったばかりか、さらに進んで、わが国の医療保障を大きく後退させたものであると思われますが、医療保障を一体どのように考えておられるのか、まず大臣の所信を明らかにしていただきたいと思います。
 自民党は、この修正で薬代負担をなくし、分べん給付を改善して、保険料を原案より多少下げたということをもって、あたかも国民に対する善政であるかのように宣伝していますが、とんでもないごまかしであって、保険料の値上げと初診料負担などを本法に組み入れたことは、延長法案を上回る一そうの改悪でなくて何でありましょう。このような改悪は、抜本対策までもう少し時間をかしてほしいというような次元をはるかにこえて、政府をもって言わしむれば、おそらく独占資本の一そうの強化、育成のためには働く国民の負担をもっと重くさせてもよいと考えているところであろうかと私どもは思うのであります。
 厚生大臣、端的にお答えいただきたい。特例法の二年延長によって、高い保険料、薬剤費、初診料、入院料などが、あと二年間に限り国民の負担となるという事態と、健康保険の本法を改めて、これらの患者、被保険者の負担を恒久化させるという対策と、一体どちらが国民のためになるとお考えでございましょうか。この際、全国民の前に明らかにすべきであると存じます。
 そしてもう一つ、特例法延長という政府原案は、あくまで患者、被保険者の重い負担の継続を意味するものであるから、これを撤回させて、本年九月一日からは、とりあえず本法に戻って、保険財政に対しては国庫負担により応急措置をとり、抜本対策を今国会中に作成するというわれわれ社会党の主張と、特例法を延長することとは、一体どちらが国民のためになるとお考えですか。さらに、あなたは、国民に選ばれた誇り高き選良として、また、厚生大臣として、一体だれのために重責をになって働いておられるのでございますか。大臣の信ずるところを率直に御答弁いただきたいと思うのであります。
 第二といたしまして、今回内閣提出になっている健保特例法は、特例法の延長を主たる内容としておりますが、法案の名称の中の「等」というところに、分べん費の引き上げに伴う健康保険法の一部改正及び船員保険の一部改正がこれに当たるのであります。あくまでも法案の内容は、特例法の延長が中心であることは御承知のとおりであります。しかるに、今回の修正は、健保特例法延長法案を事実上廃案といたしまして、健康保険及び船員保険両法について本法の改正を行なうものであるが、これは当初原案の性格に本質的な変更を加えるものであり、いわば新たな立法措置と言えるのでありますが、大臣はいかにお考えですか、お答え願います。
 第三といたしまして、衆議院の社会労働委員会におけるわが党議員の質疑を通じまして諸問題が新たに明らかにされました。まず第一に、保険料率の引き上げや、一部負担制の論拠となっている保険財政の赤字見込みの積算基礎がきわめて不合理なことが明らかとなりました。わが党議員の追及により、本年春闘の賃上げを一七%と見込むと、政府の宣伝する赤字どころか、七十四億円の黒字となることが判明したのであります。これにより、当初の赤字見込み額は根拠のない、ごまかしの数字であり、発表された赤字見込み額は、まさに脅迫のための凶器として使われていたといっても過言ではありません。だからこそ、わが党の山田委員の質疑の留保、正確な資料の再提出ということになったのではありませんか。
 従来の政府発表赤字ということに、いま国民は大きな疑いを持っています。この問題は、保険料率に関する重要な問題であり、国民だれもが納得できるよう明らかにすべきであると思いますが、厚生大臣はどうお考えでございましょうか、御答弁をお願いいたします。
 第四といたしまして、政府は、本年度から医療保険における分べん費の引き上げを行なうこととしているのでありますが、世界の趨勢は、国が手厚くめんどうを見ているというのが常識であります。園田前厚生大臣は、分べん給付を現物給付で行ない、すべて保険から給付されるようにすることをはっきり公約していたのであります。また、私が委員会において出産費は国費でまかなうべきではないかという質問に対しても、前厚生大臣は同意されたのでありますが、なぜ今回分べん費として本人最低保障額は二万円とし、また家族の定額は一万円というわずかの現金給付の額の引き上げで済ますことをしたのか、これでは改善措置とはいえないのではないでしょうか。わが党は今国会において出産手当法案を提出して、出産が次代の社会をになうべきものの出生をもたらすという重要な意義を有するものであることにかんがみ、出産に関して必要な費用に充てるための出産手当を国が支給することといたしております。これに対して厚生大臣はどのように考えますか。また、近い将来に現物給付化をはかられる心づもりはあるのかないのか、あわせてお答え願います。
 その第二といたしまして、安全な出産と母性の保護をはかるためには、単に分べん時における対策のみでなく、妊婦時から産じょく期を通じての一貫した総合的母子保健対策が必要であることは言うまでもありません。昭和四十年、第四十九回国会に母子保健法が制定されたとはいえ、当初から救貧対策に終始して、今日に至るまでその施策はあまりにもおくれている状況にあります。具体的に申し上げますと、第一に、妊娠中における定期的な健康診断の実施は母子保健施策の第一歩ともいうべきものであるが、現在行なわれている妊産婦健康診断に対する公費負担措置はごく一部の低所得者に限られているのであります。広く母子保健対策を進めるという観点から、すべての妊産婦について公費負担で健康診断を行なうようにする考えはないか。
 また、わが国では西欧先進国に比し、依然として妊産婦死亡率が高い実情にあるのであります。たとえば、昭和十五年には、日本は十万対二百三十九・六人、アメリカは三百七十六人、イギリスは二百七十七・九人、こういうふうにわが国よりも、アメリカもイギリスもはるかに上位にあったのでございます。ところが終戦後、次代の健全な発展をはかるためには母子対策が大切である、こういうことが政治の常識となりまして、各国ともに母子保健対策が急速に進められました結果、昭和四十年度におきましての統計によりますと、日本も確かに減っております。しかしながら、十万人対  これは四十年度のデータでちょっと古いのでございますが、日本は八十六・四人、アメリカは三十一・六、イギリスは二十五・五、スウェーデンは実に十三・八と相なっておるのでございます。日本よりもはるかに百二十名から多く妊産婦死亡のあったアメリカでは、実に日本の約三分の一に減じております。イギリスまた日本よりも多かったのが、いまでは二十五・五人、政治よろしきを得れば、命を生むために命を失う女性の悲劇はかくも救えるということが明らかにされておるではありませんか。(拍手)にもかかわらず、日本におきましては、相変わらず低所得階級だけが若干の保護は受けておりますが、すべての妊産婦、これが放置されております。
 さらにまた、今日妊産婦死亡の大きな原因になっておりますのは妊娠中毒症でございます。この妊娠中毒症に限って見ますならば、アメリカは十万人対わずかに六・二です。イギリスは四・五、ところが、わが国では実に三十五・四人と相なっております。だから、妊娠中毒がなぜ起こるのか、その根本的解決をはかろうといたしますならば、やれるのでございます。このことが妊産婦の死亡を招くとともに、さらに重大なのは、妊娠中毒によりまして胎児に与える影響も見のがせないのでございます。この面の対策の現状と将来の展望をお伺いしたいのであります。
 さらに障害児の対策についてでありますが、障害児の発生原因には、遺伝によるものや妊娠中及び出産周辺期に起因するものなど多様でありますが、専門家の言によれば、妊娠初期に三〇%、周産期に六〇%と言われております。したがいまして、出産後に起こる心身障害児はわずかに一〇%です。私はこれらのことがわかっておりながら、その原因を追及し、広くかつ徹底した発生予防対策を進めるべきであるのに、それがやられておりません。出産後の心身障害児のいま置かれておりまする状況は見るに忍びませんが、自分が死んだあとにはこの子はどうなるんだろう、子を殺して親も死ぬ、こうした悲劇は相次いで起こっております。したがいまして、この心身障害児の対策を急ぐと同時に、一面におきまして不幸な子供が一人でも生まれないようにするのがほんとうの政治ではないでございましょうか。私はこの点について真剣な対策を要望いたし、その対策をお聞かせ願いたいのでございます。
 特に筋ジストロフィー、脳性麻痺、自閉症などの重症障害児を抱えた親たちの苦労、あなたのところにも陳情があると思います。ところが、まだその原因や治療方法すら究明されていない状態であります。この対策は早急に進めるべきであると思うが、所信をお伺いしたいのであります。
 次に、働く婦人の問題について労働大臣にお伺いをいたします。
 働く婦人の保護の面について申し上げますと、わが党は、今国会に出産手当法案とともに労働基準法の一部を改正する法律案を提出をいたしております。主たる内容は、出産に伴う産前産後各六週間の休養をそれぞれ八週間に延長することといたしました。データを見ましても、産後六週間で出勤しておる婦人は少ないのでございます。しかも、大切な命を生み出す女性がその機能を完全に回復するのには産前産後八週間は常識でございます。
 第二点といたしまして、使用者は、つわりのために就業が困難な女子が休業を請求した場合には、就業させてはならないものとし、あわせて平均賃金の算定方法、解雇制限の期間及び年次有給休暇を与える要件について、産前産後の休業の期間とつわりのための休業期間との取り扱いを同一にするため、所要の改正を行なうこととしたものであります。これについてはどのように考えられますか。
 次に、労災法と健康保険との関係ですが、職務上の疾病については、労災法ではメリット制をとっている。さらにまた、業務災害週間強化運動等もあり、事業主は、ややもすれば職務外の疾病に認定している事例が見受けられるのでございますが、どのような行政指導をしておられるのか。明らかに労災でありながら、これを健保に繰り入れて業績をあげる行為が行なわれることに対しての行政指導を、詳しくお伺いしたいと思います。
 ILO第百二十一号条約、すなわち、業務災害の場合における給付に関する条約の第七条の二には、「通勤途上の災害が業務災害補償制度以外の諸社会保障制度の対象となり、かつ、これらの諸社会保障制度が通勤途上の災害について支給する給付の合計額がこの条約に基づいて要求される給付と少なくとも等しい場合には、通勤途上の災害は、「労働災害」の定義に含めることを必要としない」といたしております。
 すでにフランス等におきましては、出勤のために一歩門戸を出ましたならば、そこでけがをいたしましょうとも、いかなる災害にあいましょうとも労働災害として扱っております。この点に対しての大臣のお答えを聞きたい。
 わが国は労働災害の中で見るのか、また、社会保険の中で行なわんとするのか、どのように考えているのか、この際、明確にされたいのであります。
 また、ILO第百二十一号条約について検討が行なわれていると思うが、いつごろ批准をする予定でいるのか。
 なお、最近の労働力不足から、女性の職場進出は想像をこえるものがありますことは、御承知のとおりであります。したがって、保育所の要求の強いことは申すまでもないことでございますが、特に乳児保育は強く要望されているところであります。厚生省は幾度か約束しながら一向に前進せず、なお、乳幼児は母が保育することが望ましいという意見さえ出しておられます。なるほど、赤ちゃんには母乳にまさる栄養なしといわれております。このことは、最近各国の常識であり、先進国といわず、競って職場に、地域に、零歳児保育はもとより、保育所は完備されておるのでございます。そうして働く母親に授乳時間を一日二時間、賃金カットなく与えられております。そうしてこの子供たちは母乳によって育てられながら、保育所で安心して保育されておる。私は、これなくして異常妊娠であるとか、やれ健康を害するとか、こうしたことだけを言っているのでなく、その原因となることに対して考えを明らかにしなければなりません。
 そこで、現在、超党派で婦人議員懇談会というのがございますが、この婦人議員懇談会の問題といたしまして、有給育児休暇の制度を検討いたしております。すなわち、八週間の産後休暇が終わってから一年間は有給にする育児休暇制度であります。育児休暇制度をとっている職場もありますが、この間無給であることから十分効果があがっておりません。政府、厚生大臣のしばしば口にせられる母子福祉の増進に重点を置くというならば、至急にこのことの実現をはかるべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。労働大臣あるいは厚生大臣のお答えを願います。
 さらに、この際、厚生大臣、ILO第百三号条約、すなわち、母性保護に関する条約については、いまだに批准されていないが、どのようになっているのか、わが国の福祉国家としての国際的な地位を高めるためにも批准すべきではないでしょうか、大臣はいかようにお考えですか、お答えをいただきたいのであります。
 わが国の国民総医療費の実に四〇%以上を占める薬剤費に、きわめて不明確な点のあることが明らかにされました。
 保険薬剤を医師に一万錠売るのに、一万五千錠の添付がなされたり、二十万円以上もする眼底カメラを景品につけたり、製薬資本がこのように常軌を逸したサービス、実質的な値引きをしてもなお十分なる利潤があがるというおかしな仕組み、このような製薬資本の行き過ぎをささえている現在の薬価基準の矛盾、そして薬事行政に絶えずつきまとう黒い霧、厚生大臣、あなたはこれらの問題を国民の前にもっとつまびらかにする必要があると思いますが、いかがでございましょう。
 さらに、保険財政の破綻を言われますが、それに占める薬剤費のむだはあるのかないのか。また、わが国の薬事行政を、現在検討しておられるという抜本対策において、どのような方向で改革しようとされるおつもりでしょうか、お答えをいただきたいのであります。
 この際、大蔵大臣に対して御質問をいたします。
 今回の政府提出の特例法案、衆議院修正案の内容を見ると、わずかばかりの分べん費を引き上げ、保険料の引き上げや患者の一部負担によって恒久化をはかり、社会保障の本旨にもとるものであると思います。弱体の医療保険には、国保では四五%、日雇い健保では三五%の国庫負担の定率があります。政府管掌の健保には二百二十五億は給付費のわずかに五%であり、これでは、現在過重労働にあり、公害、交通災害、住宅難等々に痛めつけられております弱小政管健保の赤字が出るのはあたりまえでございます。したがいまして、わが党は二割以上の国庫負担を行なうべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
 本来、国庫負担の定率化を政府が怠ったために累積赤字が増大したのであって、早くから国が当然行なうべきことを行なわず、これを被保険者や患者に転嫁した考え方であって、断じて許すことはできません。このことは、一九世紀にかつてドイツにおけるビスマルクが社会保険を創設した時代にとったあめとむちの政策に相通ずるものを想起するのであります。現在は二〇世紀の後半で、社会保障制度の発展した時代における皆保険下における社会保険は、当然国民共同連帯責任において所得再配分効果により最低生活を保障しようとするのであります。換言すれば、政府は保険主義に徹した考え方であって、これは社会保障の精神に相反しております。抜本対策を待たず国庫負担の定率化をはかり、早急に実施すべきではないでございましょうか。
 今日、保険あって医療なしといわれますけれども、ことに、今日重大な社会問題となっておる看護婦不足問題に対し、厚生省がその養成等に対して予算の要求をいたしております。ところが、大蔵省がその審議過程におきまして大幅にこれを削除されたことは、まことに納得がいきません。今日、医療の内容がどのようになっておるか。当然、看護婦、保母等の養成は、国費をもってなすべきものと思います。人命尊重をどのように考えておるのか。
 以上の点につきまして、ぜひ大蔵大臣、さらには総理大臣の御答弁を求めたいと思います。
 全国民の生命と健康を守り、憲法の完全実施と人間尊重の立場から、政府の所信を伺ってまいりましたが、全国民注視の本案審議に際し、私は、この際、特例法並びに特例法延長案の政府原案に対して、修正案を出されました日本社会党の大橋和孝君にもあとで御質問をいたしたいと思います。
 私は、本法案を認めない立場から、修正案はまことに残念であり、反対でございますが、この国会に対しまして、改正案としては取り上げられない慣習にあるとか伺いました。やむを得ず、社会党といたしましては、修正案提案に相なった次第でございます。
 その御質問申し上げます第一は、政府原案並びに自由民主党の修正案について、今日までの政府並びに自由民主党の一連の医療政策に対する日本社会党並びに大橋和孝君の御見解をまず承りたいと存じます。
 私は、今回提出されました日本社会党の大橋和孝君の修正案には何ら疑念を抱くものではなく、全く賛成するものであります。しかしながら、国の医療がますます低医療政策となってあらわれ、社会保障が漸次後退しつつあることは、さきに総理大臣並びに厚生大臣に対して具体的に指摘したとおりでありますが、日本社会党並びに大橋和孝君の御見解はいかがでございましょう。とくとお伺いをいたします。
 また、第二といたしまして、修正案を提出されました大橋和孝君並びに日本社会党としては、憲の法完全実施と人間尊重の立場から、保険財政を含め、総合的にいかなる抜本的構想とその具体的政策を持っておられるのか、この際、とくと承りたいと存じます。
 とりわけ今日、僻地における医療対策、この僻地の人たちからも国民健康保険料は徴収いたしております。しかし、医療機関に恵まれない僻地の人は、政府から詐欺にかかっておるようなものでございまして、保険料は取られるけれども医療は受けられない。これに対して、社会党は、どのような対策を持っておられるか、あわせてお伺いをいたします。
 さらに、十年来の問題である看護婦不足の問題でございます。いまは、医療機関において何が一番悲しいか、保険財政、財政と言われるけれども、ほとんどの入院患者は、保険料だけで入院されておる人はございません。どこの病院へ参りましても、差額徴収をされて、非常に苦しんでおるのみならず、一番看護の面で大事な接触看護、つまり人間としての患者の扱いに欠けておる。これはひとしく患者の訴えでございます。接触する接触看護の時間は、アメリカあたりでは、一日一時間とされておりますが、日本では、わずかに十分足らず。これで患者はだれに苦しみを訴え、だれにすがったらよろしいか、まことに遺憾な状態に放置されております。しかも、その看護婦さんは四人に対して一人、基準看護で四対一と相なっておりますが、社会の人たちは、四人に一人の看護婦がおれば十分じゃないか、こういうことを言われるばかも議員の中にはおります。けれども、皆さん、三交代制でございますから、しかも日曜、祭日の休みがございます。したがいまして、一人の看護婦さんが一日十三、四人を担当している結果に相なるのでございますが、この看護婦問題が、いま政府でいろいろ努力はしておるというけれども、一向に実があがっておりませんが、大橋君はこれに対してどのような対策を持っておられるのか、お伺いをいたします。
 第三に、公害病患者の救済の問題でございます。いまや若い人たちの間にも、あるいは肝臓が、あるいは心臓、あるいは脊椎板ヘルニア、あるいは高血圧等々が相次いで起こっておりますし、女子の中には、キーパンチャー、いろいろな問題が起こっておりますが、これらに対しまして、どのようにお考えであるか。
 第四に、労働災害と職業病の問題、これは保険財政に影響する点は特に重大だと思います。
 第五に、心身障害者の問題でございます。今日、精神病者、あるいは神経病、これらは実にばく大な数といわれておりますが、入院されておりますのはわずかに二十万余でございます。あとは、百数十万、二百万に近い者がちまたに放置されております。結核と精神病、国の力で治療する、全額負担だ、と政府は宣伝をいたしております。けれども、重症の結核患者は、どこの病院に連れて行っても受け付けてくれません。国立療養所でも言を左右にして、排菌患者の入院は拒否いたしております。一体、これらの人はどうして療養が受けられるのか。しかも、排菌をいたしておりますから、感染をいたします。あるいは、精神病者を放置することによって、いろいろな社会的な被害が起こっておりますことは御案内のとおりでございますが、この心身障害者の問題、これをお伺いいたします。
 第六に、高齢者医療の問題がございます。健康なときには健康保険で料金を取り上げられ、定年退職をすれば、あとは国民健康保険でみてもらえ、こういう冷たい老人医療対策が現状でございますが、これに対しての対策をお聞かせ願いたいと思います。
 第七番目には、食品公害の問題がございます。いま私たちは、一日に添加物八十種類から九十種類を食べさせられていることは御案内のとおりであります。したがいまして、一般で肝臓障害を起こすのはこの食品から来ているのではないか、こういうことがいわれ、各般の大きな問題と相なり、それぞれ調査研究が進められております。特にコカコーラの問題等は、いっときもゆるがせにできない問題ではなかろうか。これらにつきましての御見解を伺いたいと思います。
 以上七点についてのお答えをお願いいたします。
 さらにもう一度佐藤総理大臣にお尋ねをいたします。
 今回の改悪により、医療保険制度の抜本改革はますます困難になったといわれておりますが、さきの衆議院本会議の大原議員の質問に対して、従前のとおり抜本改革案は提出をすると答弁をしておられますが、既定方針どおり必ず提出するというならば、ここにあらためて、いつごろ提案なさいますか、そのお約束をしていただきたいと思います。
 衆議院の社会労働委員会、本会議と、混乱した状況の中で一方的につくられ、送り込まれたのが、ただいま提案されている幽霊法案でございます。これを強行成立させれば、今国会は、おそらく憲政史上最低の国会と国民に糾弾されるでありましょう。佐藤総理、あなたは自由民主党の総裁として、この事態を生み出した重大な責任がございます。時限立法たる特例法延長については、あなたは陳謝して、早く通してくれと懇願し、実施過程で恒久法たる本法改正に変更させたことは、政治的にも道義的にもその責任は重大であります。公党を欺き、国民を欺く詐欺行為です。ただ遺憾でありますでは何ぴとも納得できるものではありません。ここに責任をもって対処する決意を伺いたいのでございます。
 最後に、吉田社会労働委員長に対して質問をいたします。
 差し戻されました委員会審議は、わずかに三日の期限が切られてございます。問題の多い委員会でございますから、私も質問の通告をいたしておきました。昨日は朝から開会されると信じまして、眠い目をこすりながらも時間までにきちっと登院をいたしました。にもかかわらず、理事会だ、やあ休憩だ、理事会の繰り返しでございまして、九時間を空費いたしました。わずかに三日間のその中における九時間はまことに重大な空白でございます。委員長はどのように対処されましたか。ついに私は質問の機会が与えられなかったのでございます。
 第一に、吉田委員長にお伺いいたしますのは、委員会の審議は付託の順に従って行なってきました。このように行なうよう委員会でも確認してまいりましたが、健康保険法の審議は他の法案審査を中断して始められたのであります。児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案並びに国民年金法の一部を改正する法律案のその取り扱いは今後どうなるのでありましょうか。ことに七十歳以上の福祉年金が支給される年齢のお年寄りは、年間二十万人死亡されております。これら老い先短いお年寄りが千秋の思いで待ちこがれている法案なればこそ、不満足ではございますけれども、私は一日も早く成案をいたしたい、結論に達して公布させたい、こういう熱意をもって審議してまいりました。ことに失業保険のごときは急がれました。原労働大臣、再三にわたる陳情がございました。あのとき、政府はあくまでも、労働定例日であるにもかかわらずお経読みがしたい、こういう要求でございましたが、私は労働大臣の強い要請にこたえまして、そうして失業保険法は審議終了をいたしました。ところが、本会議の議事日程には毎回載っております。毎回載っておるにもかかわらず、きょうまでさらしものに相なっておる。本日の会議の最初にあたりましても、これを先議すべしとわれわれは動議を出しましたが、多数の暴力で敗れたのでございます。この失業保険は真に必要であるのかどうか、この点は社会労働委員長並びに労働大臣からもお伺いをしたいと思います。この点はまことに残念でございますから、率直な御意見を伺います。また、社会労働委員会の八項目の申し合わせは、健保審議にあたって委員会運営に役立っていたのでございましょうか。
 第二として、このように相次ぐ強行採決は、議会制民主主義の墓穴を掘るものであると考えます。今後の委員会の審査のあり方にも重大な影響を及ぼすでありましょう。議会制度を守り、委員会の民主的運営をはかっていくために、吉田委員長の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。私は誠心誠意日本の議会政治を守りたい。生活に直接に影響のある重要な法案は多々ございます。にもかかわらず、本国会始まりまして以来、衆議院、参議院を通じまして実に十五回の強行採決が行なわれております。異常な事態でございます。この異常な国会におきまして、重要な委員会における委員長としての御所信をこの際お伺いをいたします。
 以上、私の質問に対しまして、関係大臣の誠意ある御答弁を伺いますると同時に、お願いいたしたいことは、大蔵大臣にでございます。日本の社会保障−私はいま、平素より考えております一端を述べただけでございます。社会保障に対する予算があまりにも少ないと思います。心身障害児に対し、あるいはお年寄りに対し、病人に対して、非常に社会保障の予算が削減されておる。このことが、今日大きな社会的悲劇の原因になっていることをお考えいただいて、この健康保険に対する定率の国庫補助を導入いたしますことはもとより、私は社会保障に対して、特段の福田さんの英断をもっての私は予算編成を特にお願いいたしまして、質問を終わりたいと思うのです。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(佐藤榮作君) 藤原君にお答えいたします。
 まず、今回の修正にあたっては、関係審議会の意見を聞くべきだとの御意見でありましたが、政府が健康保険に関する法律制度を改正する場合には、当然そのような手続を経る必要があることは御指示のとおりであります。今回のように、国会におきまして発案、または修正される場合には、その内容のいかんを問わず、関係審議会に諮問する必要はありません。
 次に、衆議院の社会労働委員会の採決は違法であり、法案を再度同委員会に差し戻すべきだとの御意見でありましたが、このことは衆議院自身で判断されるべき問題であると考えます。そして、さきの衆議院本会議でその適法性が議題となり、適法に可決されて参議院に送付されたものである以上、何ら問題はないと考えます。
 また、衆議院本会議における起立採決の問題でありますが、その憲法との関係は、採決後の石井衆議院議長の声明できわめて明らかなところと考えております。
 焼身自殺云々のお話がございましたが、私は立法府の責任者の立場について批判を加えることは差し控えます。
 また、藤原君は、参議院における審議手続上の問題についてもたいへん御不満のようで、あえて私の見解を求められましたが、私はただいまも申すように、立法府の行動につきまして、総理としてとかくの意見を申し上げることは筋違いかと考えます。
 ただ、一言感想めいたことを言わせていただきますと、それぞれの議長の判断は、当然各般の情勢を判断して下された最善の処置であったと確信するとともに、私は、先ほど来藤原君が問題とされた種々の審議経過を通じて、このようにやむを得ない措置をとらざるを得ない異例の条件をつくり出されることのないよう、野党各党の諸君にも、十二分の御協力、御理解をいただきたいと感ずるものであります。あえて私の意見を求められましたので、私の意見を率直に申し上げて御参考に供した次第であります。
 藤原君は、特例法の審議過程の混乱の責任は、あげて総理にあるとの御批判でありましたが、いささか的はずれの御批判ではないかと、かように考えます。
 次に、抜本改正がおくれていることについておしかりがありましたが、その事情につきましては、さきに本会議におきましてたびたび申し上げたところでありますので、くどくはお答えいたしません。抜本改正は非常に困難な問題をはらんでおり、その影響するところもきわめて大きいので、各般の意見も十分伺いながら、国民各位に納得のいくりっぱな成案を得るために、今後とも努力してまいる決意のみを申し上げておきます。
 また、この抜本改正を二年以内に実現せよとの御意見でありますが、私もそのため、今後とも最善の努力を尽くしてまいります。
 また、この機会にその改正の基本方針を示せ、こういうことでありますが、それこそ審議会にとくとはかりまして、ただいま申し上げる機会でないことを御了承をいただきたいと思います。
 お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(原健三郎君) 藤原先生にお答え申し上げます。
 第一の質問は、労働基準法を改正して産前産後休暇をそれぞれ八週間に延長する意思があるかないか、これは労働省でも従来から母性保護に関する調査をやっておりまして、実態の把握にいまつとめておる最中でございます。労働基準法に規定されておる母性保護に関する最低基準の確保については、監督指導につとめておるところでございます。そこで、御指摘のように、産前産後おのおの八週間休暇という具体的な問題につきましては、広い見地から慎重に検討して結論を得たいと思っております。
 さらに、母性のつわりにおける対策についても非常に前向きで目下検討をいたしておる最中であります。
 第二の質問は、育児休暇を一年間の有給休暇にする基準法の改正を行なうべきではないかという御意見でございまするが、近年、一部の企業等で有給休暇を実施しておるところもございますが、労働基準法上の問題としてどのように取り扱うかについては、さらに実態を十分調査の上、婦人労働全般の問題と関連いたしまするので、さらに慎重に検討を加える考えであります。
 質問の第三は、労働の傷病は本来労災でまかなうべきものであるが、健康保険扱いになる例が多いので、健康保険の赤字の原因となっておると思うがどうかという質問でございますが、われわれといたしましては、業務上の傷病であるかどうかについては、全国統一した認定基準によって適正に処理しております。業務上の傷病患者が数多く健康保険に回されておるというようなことはございません。
 なお、業務上の災害であるかいなかについては、判断はむずかしいところでございますので、そういうむずかしいものについては、厚生省と労働省両省の出先機関が相互に協議をいたして処理をいたしておるところであります。したがって、業務上の傷病がゆえなく業務外として健康保険の取り扱いとなり、それが健康保険の赤字の原因の一つとなっておりはしないかという質問でございますが、そういうことはございません。
 質問の第四は、ILO百二十一号条約の七条二項の、通勤途上災害は、労災で見るか、それとも社会保障で見るかというお尋ねでございます。それで、ILO百二十一号条約第七条二項の趣旨は、通勤途上災害については、各国が労働災害の定義を定める際に、これを労働災害とみなすものとしてのその中に包含すべきことを規定しておるのでありまして、通勤途上災害の範囲については触れていないのであります。でありますから、わが国においては、労働者が使用者の支配下にある専用交通機関を利用しておる場合には、業務上として労災保険で取り扱いをいたしております。しかしながら、使用者の支配下にない場合には、業務外として健康保険などの保護になっておる次第でございます。
 なお、通勤途上全般について、業務上とみなすかどうかについては、労災保険給付の改善などと関連してただいま労災保険審議会で審議をしていただいておりますので、その答申がある場合に考えたいと思っております。(「百二十一号はどうするのだ」と呼ぶ者あり)
 百二十一号は、これから申し上げます。
 第五の質問は、ILO百二十一号条約を批准する考えはあるかないかという御質問であります。わが国の現行の労災保険制度からは、高度の災害保障を内容とする一LO百二十一号条約を直ちに批准することは困難であります。だが、現在、労災保険審議会で制度全般の改善について検討が行なわれておりますので、その審議にあたっては、本条約の趣旨を考慮しながら検討してまいる考えであります。
 最後に、失業保険法案についての意見であります。失業保険法案は、言うまでもなく、労働者の暮らしに深い関係のある法律案でございますから、参議院においてすみやかに成立されんことを切にお願い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(斎藤昇君) お答え申し上げます。
 健保特例法等一部改正法案の修正案が衆議院において提出されました際に、関係審議会の意見を聞かないのは違法ではないかというお尋ねに対しましては、その理由は総理がお答えになりましたとおりでありまして、私もその必要はないと考えております。
 先ほど御提出になられました社会党、公明党の修正案に対します政府の意見も、関係審議会には諮問することなしに意見を申し上げましたが、これは当然であると、かように考えておるのであります。(発言する者多し)賛成をいたしがたいとお答えをいたしました。
 なお、今日の医療保険制度は、保険があって医療がないではないか……(「取り消せ」「いまの取り消せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)ということでございますが、私は……(発言する者多し)
#20
○議長(重宗雄三君) 御静粛に願います。
#21
○国務大臣(斎藤昇君)(続) 今日の日本の死亡率の低下、平均寿命の非常に伸びてまいりましたこと、これらは日本の医療の進歩ということにももちろん十分関係をいたしておりますが、さらに、国民皆保険の制度も大きくこれに役立っていると、かように考えまして、日本の保険制度は、今日いろいろ是正しなければならぬ点が多々ありますけれども、国民医療に大きく役立っていると、かように考えている次第でございます。
 なお、今後、この抜本改正といいますか、改正をすべき理想像あるいは方向というものは、どういうものであるかというお尋ねでございましたが、これは、先ほど吉田社労委員長が委員長報告の中で、詳細に私の申し上げましたことを述べていただきましたので、ここに重複を避けさしていただきます。(「大臣に聞いたんでしょう。」と呼ぶ者あり)私の申し上げた事柄をそのまま委員長報告としてお述べになられましたから、私は重複を避けさしていただきます。
 なお、臨時特例法の二カ年延長法案を衆議院の修正によって大幅に変更をされた、どちらが国民のためになるかというお尋ねでございますが、政府といたしましては、さきに政府原案を提案をいたしましたのも、国民のために大いに役立つと、かように考えて提案をいたしたわけでございますが、このたびの衆議院における修正は、御承知のとおりの内容を持っているわけでございます。したがって、薬剤の一部負担の廃止あるいは保険料率千分の一を下げるという点は、直接的には、被保険者あるいは患者の負担の軽減となるわけでございます。したがって、それだけ赤字がふえるということに相なりますが、これらの処理をどう今後やっていくかという問題を残すわけでありますけれども、私は、この考え方も一つの考え方ではなかろうかと、かように考えております。
 なお、二カ年間の臨時特例の中にあった初診時及び入院時の負担を本法に組みかえた、また千分の七十を本法に入れた、これに対する御所見がございまして、私の意見も言っていただきましたが、政府といたしましては、二年以内に抜本改正をぜひやりたい、かように考えておりますので、したがいまして、その点につきましては、差し引き同様であろう、かように考えております。あの修正によりまして、抜本改正をおくらすということは、われわれとしては考えておりませんので、したがって、その点につきましては何の変更もない、かようにお考えをいただきたいと存じます。
 なお、予算編成の際に、政管健保における赤字を算出するについて、その積算基礎が了解、納得できないということでございますが、その予算の積算の基礎は、保険料収入にいたしましても、また支出の分にいたしましても、過去二年あるいは三年の実績を調査をいたしまして、その実績によって、本年はどれだけ伸びるかというやり方をずっとやってまいっておるわけでございます。したがいまして、いままでの実績の伸びよりも非常に伸びる要素が本年特にあるという場合には、また内容が、見込みが変わってくるわけでございまして、本年の春闘相場はいままでにない相場でございましたから、過去三カ年間の平均の伸びから考えますると、実際は六十億あるいは七十億の増加を来たすのではなかろうか、かように衆議院の委員会においても説明をいたしたわけでございます。同様に、支出のほうの、医療費につきましても、これは同じ積算をやっているわけでありますが、これは医療費の改定があるということを予測しないでやっております。したがいまして、もしそれが行なわれるということになりますると、予測以外の大きな支出が必要になってくる、かようなわけになるわけであります。そうして、その赤字は、当初見込みをしておったよりも非常に少ない、そのパーセントは五割を割っているというようにおっしゃいました。それは、実数はそのとおりでありますが、しかし、四千七百億−五千億に近い予算の中で、百億前後の、最初の予算の見込みと決算と違ってまいりますことは、お許しをいただけることではなかろうかと、かように考えます。
 分べん給付を現物給付にする考えはないかというお尋ねでございます。これはいままでの御意見を拝承をいたしております。できるだけ現物給付のやり方のできるような方法を勘案をいたしまして、それに近づけたいと、いま検討中でございまして、抜本改正までには結論を出したいと思っているわけでありますが、何ぶんにも、この分べん費を点数化することは、今日の現状、非常にむずかしい要素をたくさん持っておりますことは、藤原先生もよく御承知のとおりであります。しかしながら、その趣旨を達成いたしますように努力をいたしてまいりたいと、かように考えます。
 分べん費のみならず、出産手当あるいは国民の母子保健対策の重要性につきましては、全く同感でございまして、妊産婦の健康診断等も、あるいは妊娠手帳の利用等も、まだ十分でないということも勘案をいたしまして、これらがいわゆる低所得層対策にとどまることなく、すべての妊産婦の方々がすこやかにお子さんを産んでいただけるような、そういう母子対策を完全に進めてまいる必要がある、来年度は特にこの点に重点を置いてまいりたいと、かように考えます。ことに、障害児の出生あるいは妊産婦の死亡ということを考えますると、これこそは日本の乳幼児対策あるいは母子対策の前向きの、非常に肝心な施策である、私はかように考えまして、これには来年度もさらに本年度に倍して力を入れてまいりたいと、かように考えます。
 乳児保育の点につきましては、育児休暇、しかもそれを有給にすることについての意見、私にもお尋ねがございました。私は、これは望ましい姿だと考えますが、しかし、今日の日本の労働界の現状、産業界の現状、その他から考えまして、直ちに実施することはきわめて困難なことではないだろうか、かように考えております。私は、ただ単に乳児に対して母乳を飲ませるということだけでなしに、少なくとも一年くらいは母親がじかに保育するということが、これが何といっても肝心なことだと思うわけであります。さようなことのできるような日本の労働状態に早くなれることを希望いたしているわけであります。
 百三号条約の批准、いわゆる母子保健に関する百三号条約の批准の点でありますが、この条約は、昭和二十七年に御承知のとおり採択された条約でございまして、ソ連、ユーゴ、キューバ、エクアドル、ブラジル、ハンガリー、スペイン、ウクライナ、ウルグアイ、白ロシア、この十カ国が批准をしているのでありますが、わが国の母子保健の現状に比べまして、この条約の水準よりも高い面もございますが、しかし、一部まだ条約を批准することのできないような条件もありますので、そういった条件の整い次第、批准をいたしたいと考えておりますが、ただいまの段階では、いま申し上げたような段階でございます。一日も早く批准のできるようにいたしたい、かように考えております。
 薬価の点についてのお尋ねがございました。保険に使っておりまするいわゆる薬価基準は、できるだけ実勢価格に合うようにいたしたい。ここ両三年間、毎年薬価の実勢を調査をいたしまして、そしてその調査に基づいて薬価基準を設け、それによって保険の支払いをいたしておるわけでありますが、その調査につきましても、必ずしもまだ十全とはまいりません。中医協の御意見も伺いながら、できるだけ完全な実勢に近い薬価基準を設けてまいりたい、かように考えます。
 薬剤の使用についてむだはないかというお尋ねでございますが、これは薬剤の使用については全然むだはないと、かように申し上げるわけにはまいらないと思います。中にはあるであろう、かように考えます。そういうことのないように、今後さらにレセプトの審査にあたり、あるいはまた実際の指導、調査にあたりまして、十分そういう点は監督をしてまいりたい、かように考えます。同時に、いまの保険制度のもとにおきましては、やはり医薬分業を完全に実施をするということが、まず一つの必要な方策であろうと考えておるわけであります。これは五カ年計画をもちまして、医薬分業も完全にできますように、ただいま検討中であり、すでに指導によって医薬分業をやっている地方もあるわけであります。これを推し進めてまいりたい、かように考えます。
 たくさん御質問の点がございましたので、あるいは落としておる点があるかもわかりませんが、以上大体取りまとめてお答えといたすことといたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(福田赳夫君) お答えをいたします。
 社会保障費がたいへん不足しているじゃないか、あれもやれこれもやれ、たいへん心こまかいお気づかいの御意見を伺いました。私も全く同じ気持ちでございます。何とかして社会保障費は充実をいたしたい。さすがに藤原さん御婦人だというふうに存じております。私は婦人ではございませんけれどもそう思いますが、私は大蔵大臣であります。そこで、財源のほうの心配もしなければならぬ立場にあるわけであります。財源のことを考えますと、それらの問題をどうするか。税をふやすか、あるいは保険料をふやすか、その以外には道がないのです。そういうことを考えながら、政府もこれまでずいぶん努力をしてきており、この十年間を顧みてみましても、毎年二〇%ずつこの社会保障費が増額されてまいりまして、昭和四十四年のごときは一兆円社会保障費、これはかなりの額であります。私は、自由民主党の政務調査会で十五年前に、千億円社会保障費というのを実現をしたいしたいと言って、ずいぶん努力をしたことがあることを思い起こします。まあ今昔の感にたえぬというような感じもいたします。しかし、社会保障費はただいまのような気持ちでありますので、財源の許す限り極力努力をいたしたいと、かように考えております。
 それから医療保険について国費をもっと導入したらどうだと、こういうお話しでございます。これはまあもとより保険でございまするから保険料収入が基本になりますが、しかし、国民健康保険だとか、あるいは政府管掌健康保険でありますとか、あるいは日雇い健康保険でありますとか、まあ弱い立場の者に対しましては国費を導入するという立場をとっております。これは定率のものもありますが、定額のものもあります、またそのときどきの事情によって交付するものもありますが、それをどうするか、どう体系づけるかということにつきましては、これは抜本改正のときに慎重に検討してみたいと、かように考えております。
 それから看護婦の問題につきまして私に御質問がありましたが、これはまあ非常にいま深刻な問題であるというふうに理解をいたしております。厚生大臣とも相談をいたしまして善処をいたします。(拍手、「答弁が落ちている」と呼ぶ者あり)
   〔大橋和孝君登壇、拍手〕
#23
○大橋和孝君 ただいま藤原議員から非常に微に入り細に入りいろいろな御所見を伺いまして、特にまた修正案提出者の私に対しましても七項目にわたる、あるいはまた非常にうんちくの深い御質問をいただきまして、特に僻地の問題あるいはまた財政の問題を含めて社会党の、修正案提出者である私を含め社会党では一体抜本的にどう考えておるかという非常にむずかしい御質問をいただいたわけでありますが、御質問の趣旨に沿えるかどうかわかりませんが、私の力の一ぱいを出しましてこれから御答弁をいたしたいと思うわけであります。
 私の提案をいたしました修正案における政府の一年以内の抜本対策国会提出の義務規定について、私を含めて日本社会党にはいかような抜本策の構想があるか、この際明らかにすべきだと、こういう御指摘でございます。われわれの志向する抜本対策の前提となるのは、今日のわが国医療のどこに欠陥があり、どこに根本的な検討を要するかという、この現状の認識でございます。この点は私は、先ほど提案理由説明の中でるる述べたわけでありますが、ここにそれを要約するならば、わが国の医療制度を中心に見た場合、およそ次の四つの根深い矛盾が横たわっているということであります。
 その矛盾の第一は、現行八つの制度に分立しているところの医療保険の間には、保険料その他の負担及び給付の内容や条件に格差が大きく、貧しいものに対してかえって劣悪な給付が対応するものとなっており、このために、疾病と貧困の悪循環を断ち切れずに呻吟する人々が依然として多いことであります。
 第二には、給付内容が、すべての制度を通じて治療に片寄り過ぎて、疾病の予防や後保護については保険給付のワク外とされ、職場や地域住民の健康管理に実効をあげることのできない仕組みとなっていることであります。これが特に顕著なのは、中小零細企業の労働者を対象とするところの政府管掌健康保険、それに農村、林野の労働者や建設、港湾労働者などの多い日雇健康保険、そして農漁民や零細企業労働者と退職者の加入しておるところの国民健康保険の三つであります。
 第三の矛盾は、制度の管理運営に計画性がないばかりでなく、健康と生命をいかに守るかということよりも、保険財政のバランスをどのように維持するかということばかりにとらわれてきていることであります。わが国の勤労階級は、生活点において劣悪な環境の中に、生産点において過酷な労働条件のもとに耐え続け、これが今日、米ソに次ぐ生産力を生み出してきているのでありますが、この反面では、各種の公害、交通事故、労働災害、職業病等が当然続発することになり、したがって、いま政治に要求されておりますのは、保険財政のことよりも、このような疾病、事故を未然に防ぐための環境の整備にあると言わなければならぬのであります。第四の矛盾は、制度の運営に、被保険者や患者の声がほとんど反映されない、非民主的な仕組みになっておることであります。制度の民主的運営が保障されず、上からの官僚的締めつけが日常化しているところに、国民のための医療が行なわれようはずはないと思うのであります。
 さて、われわれの、医療抜本対策の構想でありますが、日本社会党の運動と政策の基調は、「人間の尊厳」「人間の復権」を国民大衆の立場に立って追求することにあることは、藤原君もすでに御承知のとおりであります。ところが、保守党政府の従来の政策理念は、われわれのこれとは根本的に異なっているため、政府に義務づけられております抜本対策は、この政策理念からまず抜本的に改革せねばならないと思うのであります。政府・自民党の社会保障政策と、われわれのそれとがどの点で基本的な違いがあるのかは、すでに随所で申し上げておるつもりでありますが、昨四十三年十一月二十八日に出されました財政制度審議会報告に、政府の姿勢がきわめて集中的に表現されていると考えますので、この際これを取り上げ、これにメスを入れながら、急務とされている医療抜本改革の基本的政策理念はどのようなものでなければならないかを明らかにしてみようと思うわけであります。
 この財政制度審議会報告は、その正式な表題を「社会保障についての費用負担ならびに政府管掌健康保険及び日雇労働者健康保険の財政再建についての報告」と題して、社会保障全般にわたってかなり突っ込んだ意見を表明しております。それは「まえがき」と「総論」からなっているのでありして、最後の部分で、特に、政府管掌健康保険及び日雇労働者健康保険の財政再建についての報告がなされております。当審議会は大蔵大臣の諮問機関であり、会長は小林中氏であることは藤原君も御承知のところだと思うのであります。報告書の冒頭に、特に会長名をもって、次のように報告の趣旨を述べられております。すなわち、
  財政制度審議会は、社会保障についての費用負担のあり方について検討を行なってきた。この問題は、先きに報告した食管制度、国鉄財政及び地方財政とともに、財政硬直化打開のため、抜本的対策が望まれるものである。
  本審議会は、第二特別部会において、学識経験の深い特別委員の参加のもとに十三回に及ぶ会合を開いてこの問題の検討を行ない、その報告についてさらに総会で審議を重ねた。その結果、今回、社会保障についての費用負担ならびに政府管掌健康保険及び日雇労働者健康保険の財政再建について、報告する運びとなったものである。
  政府においては、この報告の趣旨にそって、制度の改善に勇断をもって当られるよう強く要望する。というものであります。
 ここで、この報告全般に対して少しく批判をしておかなければなりません。それは、すなわち、社会保障という国の重要な政策をどのようにとらえるかということであります。社会保障とは、国民が、一時的あるいは永久に働けなくなった人たちに対して、基本的な社会的権利として正常な生活ができるような手段を保障する社会制度または立法措置をいうのであるとするならば、国の財政事情に伴って社会保障政策が伸縮するものであってはならないのであります。
 戦後、わが国経済の復興や高度経済成長が、基本的には、安価で流動的で豊富な労働力の存在によるものであったことは、ロンドン・エコノミスト紙をはじめ、すでに国際的に認められているところであります。わが国の劣悪な労働条件、貧弱な生活環境、低水準の社会保障等が続く限り、日本は、安価な労働力に事欠かず、独占資本育成のための予算にも一応不自由しないでありましょう。しかしながら、国民の福祉を本来の任務とする政治が、人よりも物に、人間尊重よりも経済主義、財政至上主義に片寄るならば、その政治、その社会は、必ずや破綻と混乱におちいることは疑いのないところでありましょう。今日大衆的に告発されている教育の矛盾や公害、それに健康保険制度の問題などは、そのような破綻の端的なあらわれと言えると思うのであります。健康で文化的な最低限度の生活の水準は、予算の有無によってきめるべきものでは断じてなく、むしろ財政を指導、支配すべきものであるというのがわれわれの主張であり、国民大衆の立場であります。
 したがって、この観点からするならば、社会保障に対して国家財政としてどの程度支出するのが妥当であるかを財政制度審議会は十分な理由を付して述べるべきであるにもかかわらず、当審議会は、この点きわめてあいまいなままに、国庫負担を現状にとどめるのみならず、かえってこれを減らそうとしているのであります。社会保障が西欧先進諸国から見てはるかに立ちおくれているわが国にとっては、社会保障に対する国庫負担を大幅に拡大することこそ必要であります。このことは、昭和三十七年八月二十二日に出されました総理府社会保障制度審議会の「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申及び社会保障制度の推進に関する勧告」の中でるる述べられたところであります。また、「社会保険から社会保障へ」というのも世界的動向として認められるところであります。
 おおむねこのような視点で財政制度審議会報告の内容に入ってみたいと思うのであります。
 念のため、この「まえがき」の部分を読み上げてみたいと思うのでありますが、この「まえがき」では、
 1 財政制度審議会は、昨年来財政の硬直化を打開しその体質を改善するための方策について審議を続けているが、その一環として、社会保障の問題について検討を行なった。
  勿論社会保障制度には、公的扶助、社会福祉、公衆衛生、社会保険等極めて広範な分野が包含され、その内蔵する問題も給付と費用の両面にわたり複雑多岐に及んでいる。それらの問題の全てについてあらゆる角度からの検討を行なうことは当審議会の任務ではない。
  われわれに与えられた課題は、昨年十二月の審議会報告に述べているように、財政が、国民生活の一層の充実、国民経済の均衡のとれ安定した発展を達成するために期待される役割を果しうるような健全にして弾力的な体質を備えるには、いかなる措置が必要であるかを明らかにすることである。
  当審議会はかかる見地から社会保障の問題をとり上げた。従ってここで行なった検討は社会保障の財政的側面にかかわるものであって、国庫負担をはじめとする費用負担のあり方が中心となっている。
 2 しかしながらこのことは、当審議会がただ単に財政支出を抑制しさえすればよいという立場に立つことを意味するものではない。国民福祉の向上のため、社会保障の充実を希う点において、われわれも人後に落ちるものではない。しかし、社会保障は国民負担の上に成立っている制度である。給付の充実は、租税であれ保険料であれ必ず負担を伴う。その意味で費用負担面を無視して社会保障を論ずることはできないのであって、われわれは社会保障の発展は健全な財政的基礎の上に可能であると考える。
 3 当審議会はこのような基本的立場から問題点を検討したが、以下にその検討結果を報告する。
  なお、個別制度としてとりあげたものは、医療保険、年金保険、失業保険及び児童手当制度であるが、このことは公的扶助や社会福祉などの社会保障の他の分野に問題点がないことを意味するものではない。ただ後に詳しく述べるように、現在のわが国社会保障制度の中心的な課題は社会保険制度の問題であって、われわれの検討も自らこれらの問題点に集中され、他の分野についてはこれをとりあげる時間的余裕がなかった結果であることをお断りしておきたい。と述べられておるのであります。
 以上の「まえがき」では、例の財政硬直化を取り上げ、この原因の一つが社会保障制度にあるような指摘があるのでありますが、さらに一番問題となるところは、「当審議会がただ単に財政支出を抑制しさえすればよいという立場に立つことを意味するものではない。国民福祉の向上のため、社会保障の充実を希う点において、われわれも人後に落ちるものではない。」と言っておきながら、そのすぐ後に、「しかし、社会保障は国民負担の上に成立っている制度である。」と言っているのであります。この考え方が大きな間違いと言わなければなりません。社会保障というものは、何も国民相互の互恵制度でも互助制度でもなく、国家が責任を持って、社会の中で生活するのに困難な事態に対して保障する制度であり、この考えが第一義的にとらえられなければならないのであります。この互助制度なり、互恵制度というものは資本の論理であって、社会保障の究極の目標は、費用の負担は全額国庫負担でやるのが当然であります。もちろん、ここに言われているように、租税の収入の中から、社会保障としてワクをとるわけで、そのための目的税をとるというのは、社会保障理念と相反するものであることは言うまでもないのであります。
 次に、総論を見てみたいのでありますが、それは、「現状と問題点」、「改善の方向」の二つの点について述べているのであります。特に重要な点でありますので、全文を読み上げて、その検討をしたいと思うのであります。
 第一の「現状と問題点」は次のとおりであります。
  わが国の社会保障は戦後急速にその分野を拡げて来た。特に三十年代後半においては、医療、年金の分野における皆保険、皆年金の達成をはじめとして、制度的にも給付水準においても目ざましい拡大を示した。かくて全体として給付及び負担の水準は西欧諸国に比べなお低いとは言え、児童手当を除きあらゆる社会保障の制度が出揃うに至っている。
  一方、社会保障給付の急速な拡大に伴い、社会保障関係予算も顕著な伸びを示し、その結果、一般会計予算における社会保障関係費の構成比は、三十年代の始めには一〇%程度であったものが、現在では一四%程度に達している。
  しかしながら、このような社会保障関係予算の顕著な増加にも拘らず、その内容を分析してみると問題が少くない。
  第一に、社会保障関係予算が著しく医療に偏った構造となっており、しかも年々その傾向が強くなっていることである。すなわち、三十年代後半から医療関係予算の平均伸率は社会保障関係費のそれをはるかに上回り、この結果、三十年代半ばにおいては社会保障関係費中約三分の一程度であった医療関係予算が、最近においては約二分の一を占めるに至っている。
  第二に、社会保険に対する国庫負担が著しく高いことである。すなわち、前記の医療関係予算の約六割が医療保険に対する国庫負担であり、これに年金保険や失業保険に対する国庫負担を加えると、社会保険に対する国庫負担が社会保障関係費の半ば以上を占めるに至っている。
  第三に、既存の制度を維持するための経費が巨額に達し、最近においては社会保障関係費の増加の殆んどがいわゆる自然増の経費で占められていることである。
  以上を要約するに、三十年代後半における社会保障給付の拡大は、主として社会保険特に医療保険に対する国庫負担の増加によってなされて来たと言っても過言ではない。三十年代後半における経済の高度成長に支えられたわが国の財政はそれを可能としたし、また社会保険の草創期においては、国庫負担により制度の助長を図ることにはそれなりの意味があったとも言えよう。
  しかし、社会保険が制度として成長するに伴い、これを維持するための費用がぼう大な額に上ってきた。さらに後に詳しく検討するように、既存の制度の中には社会保障としての目的なり機能なりに疑問の生じて来たものがある一方、経済、社会の発展に伴い、社会保障の分野においても新しい社会的需要が生じてくる。他面、国の財政においては、経常的に大きな税収の伸びを期待することが次第に困難となり、一般的に硬直化の現象が顕著となって来たところに、今日わが国の社会保障が直面している大きな問題がある。
  わが国の社会保障にはなお充実を図るべき分野が多く残されている。社会福祉等の分野においても現状必ずしも十分というわけではなく、又社会保険においても年金制度等今後の充実が必要なものが存在する。しかし、医療保険に巨額の租税財源を投じている現状のままではそれは著しく困難である。
  わが国社会保障の全体としての均衡ある発展を望むならば、この際そのあり方に根本的な再検討を加え、いかなる給付をいかなる財源によって行なうかについて明確な理念を確立し、これに基づいて逐次社会保障の給付と費用の再編成を図ることが必要である。
 二、改善の方向
 (1)基本的な考え方
  今後社会保障の充実を図って行く場合、まず第一に必要なことは、社会保障により国が関与すべき給付の範囲と程度についての考え方を明確にすることである。いかなる準備を個人の責任において行ない、いかなる保障を公的に行なうのかについて十分検討する必要がある。
  第二に必要なことは、社会的緊要度の高いものから優先的に充実を図って行くことである。国民の負担能力に限界がある以上、社会的需要の強弱を十分検討し、重点的に充実を図るのでなければ、制度の形だけは整っても内容的な充実は期しえないであろう。
  第三に必要なことは、総合的かつ長期的な立場に立って充実を考えて行くことである。社会保障制度は極めて広い分野に及びしかも相互に関連した制度であるとともに、長期にわたる継続的な給付を必要とするものである。給付においても費用負担においても、統一ある考え方に基づき組み立てられ、かつ将来の見通しに立って考えることがその安定した発展を期するうえで何よりも重要である。
 (2)費用負担のあり方
  社会保障は給付と負担についての明確な認識に基づくのでなければ、健全な発展を望めるものではない。社会保障は国民の負担の上に成立っている制度であるからその負担が可能な限度においてのみ給付の拡大が可能である。給付の拡大は、減税の見送りか、増税か、保険料の引上げか等々に直接つながる国民的選択の問題であることを十分認識しなければならない。
  また、社会保障制度として国が関与することが、ただちに「国庫の負担」――「一般租税負担」を意味するものではない。従来わが国においては、社会保障といえば「国の負担」が問題とされ、各制度とも国庫負担の増加を競う傾向が強かった。この際従来の行き方を反省するとともに、費用負担の現状について検討を加え、社会保障全体を通ずる統一的な考え方に雄づき調整を加えなければならない。
  この点について社会保障制度審議会は、昭和三十七年度に行なった「社会保障制度の総合調 整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」において、社会保障における費用負担のあり方及び国庫負担の優先順位について述べている。
  われわれも原則的にはその見解に賛意を表するものであるが、ここでは特に社会保険制度における保険料と国庫負担について一言述べておきたい。
  社会保険は本来保険料によって給付を行なうべき制度である。社会保障の諸分野のうち、公的扶助や社会福祉、公衆衛生の分野は、その性格上関係者による一部負担を除いては租税財源を
 もってしか行ない得ないものである。これに対し社会保険は、一般的な貧困原因に対する準備を社会的に共同して行なおうとするものであって、この制度までがその財源を租税に求めていたのでは、租税をもってしか行ない得ない他の分野が制約を受けざるを得ない。しかも社会保険自体についてみても、租税財源に依存することは必ずしもその給付の充実を期しうる所以ではない。租税財源は年々の経済状況によりかなりの変動があるとともに、他の政策目的との競合をさけることはできず、個別の制度にとって必ずしも財源を安定しうるとは限らないからである。
  勿論われわれも社会保険に対する国庫負担を全く否定するものではない。国が関与する制度としてその事務費を国庫が負担することは必要であるし、被保険者の負担能力が必要とされる保険料負担に耐え難いような場合には、これを補うための国庫負担も必要である。また制度の初期の段階においては、助長的な観点から財源の一部を租税によることも必要であろう。
  しかしながら、社会保険制度が制度として定着した今日において、なお社会保障に対する国庫負担の半ばが社会保険、就中医療保険にあてられているわが国の現状は異常であると言わざるを得ない。社会保障制度全体の均衡ある発展を期するため、この際社会保障の費用負担について根本的な調整を行なわなければならない。
  つぎに、社会保険の安定した発展という観点から、保険料負担のあり方についてふれたい。
  現在わが国の社会保険制度においては、保険料負担は原則として所得に対する比例料率によっているが、一部の制度においては年間の基準所得を固定し、或いは基準所得の上限を画するという方式をとっているものがある。これらの点をどう考えるかは、社会保険における給付と拠出の対応関係如何にかかるものであるが、少くとも個人的な意味における両者の厳密な対応関係は社会保険の必須の条件ではないと考える。
  社会保険が経済の成長に弾力的に対応しつつ、保険料負担により給付の充実を図って行くためには、保険料負担を能力に応ずる方向で検討することが必要である。
  また、特に短期の社会保険については保険料負担の弾力性を確保することが重要である。現在一部の社会保険はその保険料率(又は額)を固定しているが、社会保険制度である以上、収支の変動に弾力的に対応しうる余地をもつことが基本的な要件である。この点特に現在の医療保険における保険料の定め方には問題がある。
 (3) 制度運営の効率化
  社会保障の諸制度は相互に関連を持っているのであるから、その運営は相互の関連についての総合的な配慮に立ってこそ実効を期し得る面が少くない。今後社会保障制度の改善を図るに当っては、この点についても十分配慮することが必要である。
  特にこの点についての具体的問題の一つとして、社会保険料の徴収面における制度の合理化を望みたい。この問題はかねてから指摘されているところであって、同一の所得に課される保険料が、制度毎に異る基準により、別個の機構を通じて徴収されることが、被保険者、事業主にとって大きな負担となっていることは明らかである。従来この問題の解決をはばんで来た原因の一つは標準報酬制と総報酬制の問題にあったと思われるが、既に述べたようにこの問題は社会保険制度において絶対的なものではない。この際、制度の効率化という見地に立ち、一刻も早く問題の解決を図ることを要望する。
 こういうことであります。
 まず、「現状と問題点」のところでありますが、制度的にみて、「児童手当を除く、社会保障の諸制度は出揃った。そして、制度的にも、給付水準においても目ざましい拡大を示した。」、といわれておりますが、なるほど、制度的には児童手当を除く諸制度は出そろってはいますが、制度が複雑に分立し、その格差は開く一方であり、国民の中に不満をいたずらに助長することになっていると思うのであります。また、社会保障給付の伸び率、社会保障関係費の伸び率を自慢しておりますが、社会保障給付費の対国民所得比では、一九六三年度では日本は五・六%、アメリカ七・六%、イギリス二二・八%、西ドイツ二〇%。先ほどお話しになりましたような比率も、国際比較においても日本は著しく低いのであります。
 次に、社会保障関係予算が著しく医療に片寄った構造になっておると指摘しておられるのであります。しかしながら、これは、他の部分の立ちおくれに基づくものであって、医療部門の抑制ではなく、他の部門の拡大という方向をとることによってバランスのとれた社会保障の構造とすべきなのであります。
 また、社会保険に対する国庫負担が著しく高いことを指摘しているのであります。しかし、ここでも、保険主義に片寄った考えで押し切ろうとしているのであります。社会保険に対する国庫負担が社会保障関係費の半ば以上を占めていることは喜ばしいことであって、他の分野の、たとえば、社会福祉や公的扶助の相対的なおくれを是正する必要があると思うのであります。そして現在、制度の上にない児童手当を、一日も早く創設して、西欧先進諸国の水準にまで持っていくべきであります。
 次に、この報告書は、また次のようにいっているのであります。すなわち、「既存の制度を維持するための経費が巨額に達し、最近においては社会保障関係費の増加の殆んどがいわゆる自然増の経費で占められている」「社会保障給付の拡大は、国庫負担の増加によってなされてきたといっても過言ではない」といっているのであります。これも、前段については、厚生省、大蔵省両省の社会保障、国民生活の向上に対しての取り組みの弱さ、貧困さを指摘するべきで、この考えは当たらないといえるのであります。後段については、一応、社会保障の給付の伸びは認められるとしても、国庫負担の伸びについては少な過ぎるのであります。現在の年金にしても、老後の生活の安定なり、傷病の手当てなりを十分できるとはとうてい言いがたいのが実情ではありませんか。医療保険についても、特例法に示されているように、国庫負担を百五十億円から二百二十五億円に七十五億円ふやして、国の責任はこれで足りると思っているところに行政に携わる者の思想の貧困さがあるのではないでしょうか。
 次に、最も批判されるべき点は、「経常的に大きな税収の伸びを期待することが次第に困難となり、」というくだりであります。今日、日本では、国民総生産は、西ドイツを抜いて、アメリカ、ソビエトに次いで世界第三位にあることは、御承知のとおりであります。しかしながら、一人一人の国民所得では世界第二十位にしかすぎないことも、皆さん御存じのとおりであります。この格差は、一体何によるものでありましょう。一つには、資本の側のみが財を握って、国民に分配されるものがきわめて少ないからであります。社会保障とは所得再分配機能であり、当然国民に平等に分配されるべきであります。税制についても、大企業擁護の税制であって、国民は重税にあえいでいることは一いまさら言うまでもありません。この税制を改めさえすれば、ここでいう税収の伸びに期待できないことはないと考えられるのであります。わが国の社会保障の全体としての均衡ある発展を望むならば、立ちおくれた制度を国の責任で大きく発展させることが必要であるのは、言うまでもないと思うのであります。
 次に、第二の「改善の方向」でありますが、基本的な考え方については、あたりまえの話なのであります。この考え方に即してあえて一言つけ加えるならば、社会・経済の発展に伴い、そのひずみから発生する労働災害、職業病、交通事故等による傷害、公害等、また、人口構造の変動に伴うところの対策が必要であることをつけ加えなければなりません。
 「費用負担のあり方」については、「社会保障は国民の負担の上に成立っている制度であるから、その負担が可能な限度においてのみ給付の拡大が可能である。」といっておりますが、前にも述べましたとおり、社会保障はもともと人間尊重の崇高な立場から出発したものなのであり、また、そうでなくてはならないと言えましょう。しかるに、ここでの考え方は、全く保険主義そのものであって、国民の互恵互助の制度であることに終始しているのであります。福祉国家建設の基礎づくりを行なうものとして、政治の基本に社会保障を考えてみるならば、こうした考えこそを否定しなければならないと考えるのであります。総理大臣の諮問機関として権威ある社会保障制度審議会においても、たびたびこの点について勧告してきたところであると思うのであります。
 さて、お尋ねの抜本対策の件でありますが、「人間の尊重」「人間の復権」は、わが党が目ざす社会主義的変革の基本となる理念でありまして、このゆえに、わが党は、当面する医療問題に対処するにあたりましては、経済の高度成長の中で貫かれてきたところの資本の論理と経済合理主義によって、人間が経済に隷属し、人間の価値そのものを見失っている現代社会において、科学的に人間の復権をいかにかちとり、そのためにわが国の医療をいかに変革するかに政策と運動の基調を置いているのであります。わが党が去る七月五日に発表いたしました医療政策は、この観点を基本に据えて、次の四つの柱を政策の目標としております。
 すなわち、第一の目標は、「すべての国民大衆を対象とする健康管理体制を確立し、公費負担医療の拡充をはかること」であります。
 第二の目標は、「すべての国民大衆に等しくよい医療を保障し、その負担の軽減をはかること」であります。
 第三の目標は、「制度の機構並びにその運営の民主化と、健康管理、医療供給体制の公共的組織化をはかること」であります。
 第四の目標は、「診療報酬体系を適正化し、製薬大企業の利潤追求を規制して、医療費を真に国民大衆の健康及び医療の向上のためのものとすること」であります。
 以上の四大目標を達成するために、われわれは次の政策が必要であると考えております。
 まず、第一の目標、すなわち、「すべての国民大衆を対象とする健康管理体制を確立し、公費負担医療の拡充をはかる」ためには、まず第一に、日常の健康管理を中心とするところの制度の再編成が急務であります。いまや社会保障は、かつての救貧あるいは防貧制度たる性格を越えて、一般国民に対する国の責任として、また国民の権利として認識されておるのであります。この意味においても、わが党は、現行の健康保険制度を健康管理の重要な一環としてとらえるとともに、医療保障を単に医療費の保障にとどまらず、すべての国民大衆の健康と医療を、予防、治療、後保護を一貫して総合的に保障する制度として再編成すべきであると考えているのであります。
 第一の目標を達成するための二つ目は、国民の生活環境及び労働環境の整備であります。国民に対する日常の健康管理体制を確立する最も基礎的な要件は、まずその生活環境及び労働環境を整備することであります。経済財政政策の転換を行なって、社会資本の充実をはかるとともに、産業公害、食品公害、交通事故などについての積極的な発生予防措置を重視し、また労働災害、職業病を防止することはもちろん、労働時間の短縮、保育所の増設、育児休暇の創設など、労働条件、労働環境の改善と向上をはかることこそが国民の健康と生命を守るための基礎的基盤を整備することになるのであります。
 第一の目標達成のために必要な三つ目の政策は、社会構造、疾病構造の変化に即応した公費負担の医療の拡充であります。昭和三十年代以降における経済の効率的な発展を至上のものとした、いわゆる高度経済成長政策が、職業病や、公害病など、多くの社会的要因に基づく障害を増大させたことは言うまでもありません。これらの新たな疾病に対する医療、老人福祉、児童福祉、母子保健、心身障害者福祉の向上にかかわる医療及び分べんは、国家的責任として全額を公費で負担するか、もしくは健康保険の自己負担分を公費で負担すべきでありましょう。また、原爆被爆者の疾病や、公害病などを対象とする医療を制限しているもの、たとえば、所得制限や、居住地制限などについては、これを全面的に撤廃する必要がありましょう。結核、精神病、原爆被爆者の疾病、老人医療、ガン、公害、災害、交通事故などによる疾病、それに分べんなど、全額を公費で負担すべき医療については、すべて健康保険に優先して公費負担制度を適用すべきであります。
 次に、抜本対策の第二の目標、すなわち、「すべての国民大衆に等しく適正有効な医療を保障し、その負担の軽減をはかること」についてでありますが、この実現を期するために必要な政策の一つは、国費負担による給付水準の大幅引き上げであります。わが国の健康保険制度の出発を見るならば、被用者健康保険においては、労働者に対する労務管理対策として、また、国民健康保険においては、富国強兵策を背景に、農民に対する救貧対策として発足したことは、すでに藤原君も御承知のとおりであろうと思うのであります。戦後においても、健康保険制度の運営は、国民大衆の健康と生活を守ることよりは、むしろ保険財政の収支均衡をいかにはかるかということに力点が置かれてきたのでありまして、このことが、今日、医療問題を一そう混乱させ、そのあり方が、理念及び政策の上で問われている一つの重大な原因となっていると思うのであります。
 わが社会党は、予防、治療、後保護を一貫した健康管理体制の確立にあわせて、それに対応する形で、健康保険制度及び保険医療制度を、これまでの制度、機構及び保険財政優先の考え方にとらわれることなく、国民大衆が、もっと適切な健康管理と医療をひとしく受けることのできる体制の確立を目ざして、これを再編成しようとするものであります。すなわち、すべての健康保険における給付率を、六十歳以上の老人、三歳児以下の医療の給付率は十割とし、また、本人、家族を問わず、あらゆる入院医療を原則として十割給付とし、通院医療に限って、当面本人十割、家族八割の給付といたしたいと思うのであります。さらに、薬剤費はもとより、初診料、入院料などの患者の一部負担制度を全廃するとともに、ベッドのいわゆる差額徴収、付き添い看護料などの一部負担をも撤廃すべきであります。次に、被用者保険における傷病手当金は、標準報酬日額の八〇%とし、転帰までに支給いたします。また、医療に対する官僚統制として、著しく医療の内容をゆがめ、不当に医師を拘束しているところのいわゆる制限診療、規格診療と呼ばれるものは、すべて撤廃すべきであります。国民大衆に対する医療は、あくまで現場の医師に責任があるのであって、この現場の医師の良心や自主性を阻害したり、不当に拘束したりすることは、ちょうど、教育の最大の責任者である現場の教師を、文部省が学習指導要領や勤務評定などを通じて束縛することと類似するものと言わなければなりません。
 なお、保険給付の方式についてでありますが、これはあくまで現場給付を徹底すべきであって、いわゆる療養費払いは断じてとるべきではありません。経済成長のひずみをまともに受けているわが国の勤労階級に対して、現金を持っていかなければ医者にかかれない制度を恒久化し、これを習慣として定着させることによって一体何がもたらされるのかを冷静に考えてみなければならないのであります。現金を持っていかなければ医者にかかれないという事態は、国民大衆の早期受診、早期治療を妨げ、したがって、受診率の低下をもたらし、被保険者は、病がかなり重くなってようやく医者にかかることができるような結果になるのは明白であります。このような政策は、わが国の経済成長をささえてきた主人公であるわが国勤労階級に対して、政府がいわば恩をあだで返すようなことになるのであって、申すまでもないのであります。
 最近、いわゆる健康保険制度の統合論が盛んでありますが、八つに分かれているこの制度を一本にするか二本にするかということの問題は、今日の医療問題の本質的な課題ではなくて、本来問題なのは、さきに申し上げましたように、八つの制度の間で保険料その他の負担及び給付内容や条件に格差が大きく、より貧しい者に対して、かえってより劣悪な給付が対応する仕組みとなっているところにあるのでありますので、抜本的対策の課題はここにあると言わなければなりません。この格差を解消して給付水準のいわゆる高位平準化をはかることであると確信しておる次第であります。現行各制度がこのように高位平準化され、充実した給付水準と格差なく軽減された被保険者、患者負担を基礎とするものになった暁には、健康保険制度の統合は、おのずから円満に容易に実現されるようになることは、しごく当然のことであると考えておるのであります。このようにして政府・与党にも、この際この点における本末転倒をなされないよう強く訴えたいと思うところであります。
 なお、健康保険の運営にあたっては、被保険者の自主的な運営を原則とした運営機関を中央及び地方並びに職場及び地域に常設し、健康管理体制と一体となった民主的運営を実現させなければならないと思うのであります。
 第二の目標は、「すべての国民大衆に等しく適切有効な医療を保障し、その負担の軽減をはかること」を達成するために必要な二つ目の政策は、国民大衆の税負担及び社会保険料負担の総点検であります。今日、政府及び保守党の側からなされている主張は、健康保険財政をめぐって、税負担と社会保険料を加えた国民負担が西欧先進諸国の国民負担に比べて少ないという主張、あるいはまた、健康保険財政に対する国庫負担も結局国民負担となるから、保険財政はむしろ受益者負担として保険料や患者負担によって収支均衡をはかるべきであるとの主張であります。しかしながら、これらの主張が私保険の原理に貫ぬかれ、社会保障及び国民大衆のための医療からおよそかけ離れたものであることは、いまさら指摘するまでもありません。われわれは、健康保険財政について現行の税制を徹底的に洗い直すことによって、その財政の相当分を国庫に求めても、決して国民大衆の負担増とはならないし、一方、社会保険料の賦課について、労使折半負担を改めて、逆進性を排除することによって、たとえ現行制度のもとでも国民大衆の負担を軽減することができる立場に立って、健康保険財政の確立をはかることが可能であると確信しておるのであります。
 なお、給付内容の改善、給付率の引き上げにあたっては、国、地方公共団体及び使用主、国民大衆の負担基準を明確にするとともに、一定水準以下の所得層については保険料負担や治療費負担が生活費に食い込まないよう負担免除措置をとることも急務であると考えます。
 できるだけかいつまんで申し上げたいと思います。
 さて、次に、抜本対策第三の目標、すなわち「制度の機構、運営の民主化と健康管理、医療供給体制の公共的組織化をはかる」ために必要な政策でありますが、その一つは、地方自治体を場とする住民参加の制度であります。昭和三十六年に国民皆保険が実施されてから、少なくとも形の上では医療を受ける側の社会化が進行しているに対し、医療機関や薬剤など、医療を供給する側においては、依然として自由競争下に置かれ、また、医師及び看護婦などの医療従事者の教育研修に至っては、封建的な仕組みのもとにあることは、御承知のとおりであります。また、一方、医療の需要と供給の両者をつなぐ診療報酬に対しては、国の予算と保険財政からきびしい規制が行なわれております。さらにまた、以上のような仕組みの中で、健康保険制度及び医療機関に対する官僚統制化、中央集権化が進められているのであります。
 わが党は、制度の根本的な変革を展望する中で、健康保険制度、医療制度及び診療報酬制度に対する官僚統制、中央集権化を排除し、制度の機構及び運営に関する徹底した民主化をはからんとするものでありまして、特に地方自治体を場として、形骸化されない住民参加の制度をつくり上げていくこと、それに、革新首長が積極的にこれを保障していくことが、きわめて重要であると考えるのであります。
 第三の目標達成のための二つ目の政策は、わが国の実態に即した医療機関の機能分化であります。国民大衆のための医療の確立に対応させるために、医療供給体制の公共的組織化をはかることは、最低不可欠の要件だと思うのであります。われわれは、医療機関の機能別に、徹底した公共的組織化をはかるとともに、医師の教育研究制度の民主的な改革、看護婦養成制度に対する公的責任の明確化等をはかって、わが国医療制度の歴史的背景と、今日の実態に即した、医療の民主化、公共化を推進ぜんとするものであります。
 すなわち、国民大衆の健康管理と医療を、最も有効かつ適切に行なうため、保健所・診療所、病院などの機能を徹底的に分化し、それぞれの固有の任務を明確にするとともに、これらを適正に配置して任務遂行に当たらせるようにしなければなりません。特に問題となっている国立ないしは公的病院と、私的病院、もしくは診療所との関係については、両者のいたずらな患者の奪い合いをやめさせて、有機的な結合をはかるため、国立・公立、その他公的医療機関は、高度の総合的設備を備えた機関として、専門的な治療を主とし、開業医による私的医療機関は、地域住民の健康管理の第一線機関として日常的な疾病の予防と治療に当たらせるよう機能分化をはかるべきであると考えておるのであります。そしてまた、これに伴って、現行診療報酬体系を機能分化に見合って適正化することは当然でありましょう。
 第三の目標を達成するための三つ目の政策は、医療機関の適正な配置であります。医療機関については、さきにも述べましたように、機能分化と相待って、だれでも、どこでも、有効適切な医療が受けられるよう、医療機関の体系的整備が行なわれなければなりません。総合病院は、特別区、市町村もしくは自治体協議体にそれぞれ一つ以上を設置するものとし、地域の病院、診療所と密接な連絡をとりながら運営すべきであります。総合病院は、無医地区について医師の配置及び派遣の責任を負うものといたします。また、国及び都道府県は、ヘリコプターや患者輸送車を総合病院に常備するとともに、当該地域と医療機関を結ぶ道路を整備する義務を負うものといたします。さらに、救急事故の増大に対処し、救急医療機関として一定区域内に、少なくとも一カ所以上の救急病院を地区病院として設置し、必要な設備と受け入れ体制を義務づけるべきでありましょう。
 第三の目標である制度の機構並びにその運営の民主化と、健康管理、医療供給体制の公共的組織化をはかるために必要な四つ目の政策は、医学教育、医師研修制度の改革であります。医学教育及び医師研修制度の改革については、国民大衆のための医療という理念に基づいて各大学における自主的かつ民主的な改革を推進する必要があることは、異論のないところでありましょう。
 このため、現在の大学附属病院は、教育病院に改組するとともに、総合病院のうち特に研究指導体制や施設、設備のすぐれたものも教育病院とし、少なくとも各都道府県の一つ以上の総合病院をこれに充てるようにすべきであります。
 さらに、医学教育、医師研修制度における封建性、閉鎖性を温存してきたことはいまや明らかな事実であります。したがって、医局を廃止し、医学部教授と教育病院指導医の交流をはかり、医学博士号を再検討し、大学や研究機関を一般の医師はじめ関係者に開放する等の改革を断行すべきであります。また、医学研究への研究費助成を強化し、研修中の医師に対する身分と生活の保障など、抜本的改善も必要であります。
 次に、第三の目標達成のための五つ目の政策でありますが、これは、看護婦制度の改革であります。
 藤原君は、この問題の権威者でありますから、この点は、藤原君に対する答弁としてではなく、あなたの御要望にこたえてわれわれの考えを広く国民の前に明らかにしたいと思うものであります。
 さて、看護婦の絶対的不足もまた、国民大衆のための医療を危機におとしいれている要因であり、この不足を解消するために、看護婦の専門職としての地位を引き下げる結果となるような安易な方法でこれを充足するわけにはいかないのであります。抜本的な対策としては、看護婦の賃金引き上げ、夜勤制限の徹底、福祉施設の拡充など、労働条件の改善、向上と相まって、医療における看護婦の専門職としての明確な位置づけにこそ求められるべきでありましょう。このような観点に立って、看護婦の養成機関はすべて学校教育法に基づくものとし、養成所を増設して看護婦の増員をはかるとともに、その費用は、公費で負担すべきであると考えます。このように、専門職としての看護婦の地位を向上させる中で、准看護婦のうち知識と経験等の豊かな者は、受講機会の拡大と均等をはかる中で、看護婦国家試験の受験資格を与え、看護婦への昇進の道を広げることが必要であります。将来においては、看護婦、准看護婦の身分を、看護婦に一本化すべきでありましょう。
 さて次に、われわれの考える抜本対策の第四の目標は、診療報酬体系を適正化し、製薬大企業の利潤追求を規制して、医療費を真に国民大衆の健康と医療の向上のためのものとするのであります。この目標達成のために必要な政策は、一つは、医療従事者の技術と労働を十分に評価する診療報酬体系の確立であります。わが国の国民総医療費が年々増加する傾向にあるにもかかわらず、診療所も病院も、ともに経営難を訴え、医療労働者は、低賃金の打破と劣悪な労働条件の改善を要求し、国民大衆もまた医療サービスの低下と負担増にあえいでいること、私の提案理由説明においてすでに明らかにいたしましたとおりであります。
 このことは、現行の診療報酬体系が、医師、歯科医師、薬剤師及び看護婦など、医療労働者の技術と労働を正しく評価しておらず、いかに適正を欠いているかを示していることと思うのであります。
 われわれは、国民総医療費に対してきびしいメスを加え、看護婦の養成費や国立及び公的医療機関の設備資金などは診療報酬によらず、これと切り離して別に大幅な財政資金の投入によって行なうべきであり、医療機関の競合など、制度のゆがみがもたらすむだな二重投資部分等を排除すべきであると考えるのであります。
 また、この一方では、医師及び看護婦など医療労働者の技術と労働に対する報酬と、薬剤費とを分離し、技術中心の適正な診療報酬体系を確立するとともに、地域住民の健康管理を一般診療所に委託するため、診療報酬体系に健康管理費を固定報酬として組み入れ、健康管理業務を安定した医業経営のもとで行なえるようにすべきであります。
 この第四の目標のための二つ目の政策は、保険薬剤の製造、輸入、販売の規制及び広告、宣伝の規制であります。薬剤費が保険医療費のほぼ四〇%以上を占めるのは、診療報酬体系が、医師、歯科医師、薬剤師及び看護婦など医療労働者の技術と労働を適正に評価していないこと、しかも、それと薬剤費の分離が行なわれていないこと等にも原因するのでありますが、大きな原因は、生産する医薬品の相当部分を保険医療ないしは公費負担医療に依存する一握りの製薬大企業の利潤追求にあることは、公然たる事実なのであります。たとえば、去る七月三日、衆議院社会労働委員会で政府原案の審議の際、社会党の山本政弘委員は、製薬業者が医師に医薬品を売るときに、はなはだしい場合には一万錠を売るのに一万五千錠の添付をするというようなことをしているため、厚生省が保険薬価としてきめて健康保険診療報酬支払基金を通じて医師に支払う薬剤費と、業者が医師や医療機関に納めるところの実際の価格との間に大きな隔りが生じておることを示して追及しました。わが国の国民総医療費は、四十二年度で約一兆五千億円、国民一人当たり約一万五千円という膨大な額に達しておりますが、薬剤費は実にこの四割を占めておるという点から申しましても、それがこのように常軌を逸したサービスをしても十分利益を上げることのできる薬価が基礎となっているのですから、問題は大きいと言わなければなりません。保険財政の破綻を口実に、患者、被保険者の負担を倍増することは、この一事を見ても明らかであり、筋違いであると断ぜざるを得ません。政府がまず、このような浪費をやめることこそ先決問題であります。
 今日の薬事行政の貧困を示すもう一つの例は、本年七月一日に閣議決定され、同三日に発令となった薬事法施行令の一部改正、すなわち、本年十月一日から、厚生省の医薬品製造に関する審査、許認可事務の一部を都道府県に移譲しようという問題であります。全国に流通する医薬品の製造の許認可事務はサービス行政ではないのでありますし、しかも、国民の生命と健康にかかわる事務でありますから、一元的、画一的な監督行政のもとで行なわれなければ責任の所在が明らかにならず、また、いかに一定の承認基準のもとで行なわれるとはいえ、人間のやることでありますから、ある県で製造承認されなかったものが他の県において承認されたりする場合が起こり得る等のことを考えるならば、非常に問題があると思うのであります。数年前、アンプルかぜ薬の副作用で死者を出すという事件がありましたが、たとえば、このような場合におきましても、責任の所在は、承認基準を設けた厚生大臣にあるのか、あるいはまた、その基準に沿うて審査し許可したところの都道府県知事にあるのか、きわめてあいまいになることが起こり得ると思うのであります。われわれの考える国民大衆の健康と生命に責任を持つ薬事行政とは、このような逃げ腰のものではない、うしろ向きのものでなく、診療報酬体系の適正化にあわせて、現在の薬事審議会を科学的、民主的に適正な審査を行なう機関に改組すべきであり、保険医療及び公費負担医療において使用する薬剤の製造、輸入、販売や、製薬の広告宣伝を規制をして、もって国民の健康に対する政治の責任を明らかにせんとするものであります。
 なお、個々の問題についていろいろ質疑がありまして、それについての答弁も用意をいたしておりますけれども、非常に要請がありますので、ここで一時とめて、もし、藤原議員からの要請がありましたならば、第二の質問として、それにお答えしたいと思います。(拍手)
   〔吉田忠三郎君登壇、拍手〕
#24
○吉田忠三郎君 藤原道子君に答弁をいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 私は、藤原先生は、私どもの参議院において、与党、野党を問わず、元老格だと考えております。それだけに、いままでに院の役員でございます委員長を、昭和二十九年に労働委員長、昭和三十年には法務委員長、そして四十年には決算委員長と、三たびにわたってつとめ上げた方だと心得ております。したがいまして、日ごろ、その豊富な経験を生かしまして、私ども後輩に対して常に御指導をいたされてまいりましたその姿に、私は、心から尊敬と敬意を払っておる次第であります。そして、いままた、私に対して、この演壇から答弁をさせていただく機会を与えていただきまして、これまた無上の光栄と考えまして、心から感謝申し上げる次第であります。
 さて、そうした経験者でございまして、しかも社会労働委員会におきましては最ベテランでございまするだけに、本日の質問を私は拝聴いたしておりましたところ、非常に広範多岐にわたる御質問でございまして、一言一句私は漏らさずに受けとめておったと思いますけれども、私に対する質問は、要約をいたしますれば、四点あったと記憶をいたしております。
 でありまするから、その第一点の、健康保険法は、他の法律案審査を中断して始められたのではないか、一体、これから児童扶養手当法等の改正案、国民年金法改正案は、どう扱っていくつもりかという意味の御質問があったと記憶をいたしております。第二は、社会労働委員会が八項目の申し合わせをしているのであるが、その申し合わせば、委員会の運営にあたってプラスであったか、マイナスであったかという意味の御質問だと考えております。第三は、いろいろ藤原先生は、高い、そして広い、さらには質的にうんちくのある御質問でございましたが、これまた簡単に要約をいたしますれば、議会制民主主義を守るために、この相次ぐ強行採決は今後重大な影響を及ぼすのではないか、したがって、君は今後社会労働委員会を運営するにあたっては、どういう決意を持っているのかという意味の御質問だと考えております。さらに第四には、いろいろな御意見、御質問がありましたが、これまた法律的な違反性の問題、疑義の問題、あるいは、特に中間報告を動議として求められたこの参議院におきましては、国会法の疑義、参議院規則違反ではないのか、そして、そうした先例は二十数年間の藤原先生の議員活動の中でもあまりないのではないかというお気持ちから、一体そういう先例があったかどうか、こういうような御質問であったと思うのであります。
 これから逐次具体的に答弁をいたしていきますけれども、藤原先生にお断わりを前もっていたしておきますけれども、先般の二十五日のこの本会議で、私はかなり答弁をいたしておりますから、時間の関係もございまするし、私は同じく院の役員でありますから、できるだけ重複を避けまして、簡潔明瞭に答弁をいたしたいから、あらかじめ御了承賜わりたいと思う次第であります。
 この八項目が、一体どのように、委員会運営上プラスになったかマイナスになったかという点につきましては、ただいま申し上げましたように、民社党の中沢伊登子君から、七月二十五日におきまして、この八項目についての同じ趣旨の御質問がございました。私が答弁をいたしたところでありまするから、この点につきましては、会議録をひとつごらんになりまして御了承を賜わりたいと思うのであります。
 ただ、この中で、児童扶養手当法、特別児童扶養手当法、国民年金法についてはこれからどうなるのかという御質問でございましたが、これも先般申し上げましたけれども、委員会を預かってまいりまする委員長の責任感から申し上げますれば、藤原先生御案内のとおり、当時かような状況がなければ、すでに、私は、最も今日世の中で大きな問題とされておりまする児童の問題だけに、児童扶養手当法の一部改正法律案、本委員会におきましても趣旨説明を賜わりましたごとく、国民生活に重大な関係のありまする国民年金法は、すでに私どもの社会労働委員会におきましては議了できたと私は確信をいたしておるのであります。しかし、残念なことには、御案内のとおり、その先議案件が審査中にもかかわらず、その後、御承知のような、いわゆる健康保険法の諸案件が先議されるということが、社会労働委員会のほかの他動的な力によって今日の状況が生まれておるわけでございますから、いかに委員長としても何ともしがたい状況でありますることは、御質問者の藤原先生も御了解いただけるところではないかと考えておるところであります。しかし、今後、こうした不正常の状態を一刻も、私は特に先ほどの報告の末文で、私を含めて、この議場内の全議員に訴えた意味はそこにあるわけでありますけれども、こうした傷だらけの健保特例法を廃案にして、正常な姿になりますれば、残余の審議日程の中では、藤原先生の趣旨の児童扶養手当法の一部を改正する法律案、国民年金法は、私は必ずや社会労働委員会におきましては議了できるものと判断をいたしておる次第であります。
 それから第二番目の議会制民主主義の問題でありますけれども、との点につきましては、私は藤原先生と全く同感でございます。したがいまして、これも先ほどの経過報告の末文で私は申し上げておりまするから、その点で御了承賜わりたいと思う次第であります。
 それから第三番目の規則違反であるかないかということにつきましては、これまたいろんな意見がございまするけれども、この限られた三日間の社会労働委員会の中におきましても、社会党の小野明議員、そしてまた上田哲君などなどの各それぞれの質問者から多く疑義として質疑が展開されたところであります。この点は藤原先生も御承知おきのとおりだと思います。
 さらに、この点については、これまた二十五日のこの本会議におきまして、それぞれの質問者、特に私は日本社会党の森勝治君の質問に丁寧に、しかも親切に、わかりやすく答弁いたしたと思いますから、これもまたその会議録で御参照いただきたいと思うのであります。
 それから最後になりますけれども、こうした事柄が前例があるかないかということにつきましては、私は前例がないと思いますと答えております。
 その他、一体そんなことは法律上どこにあるかということにつきましては、藤原さんは私らの大先輩でございまして、国会法の五十六条の三に当てはまっているのではないかと私は思っているところであります。
 なお、そうした事柄につきまして、さらに私は付言して申し上げますけれども、本法律案審査について、先ほども申し上げましたように、ただいま申し上げたことと関連いたしまして、一体こうした事柄については不法性が存在するのではないか、こういう意味の御質問もございましたが、これにつきましては、さまざまな不法性が衆議院段階、私どもの参議院の段階におきましても、取りざたされていることは御承知のとおりであります。したがって、三日間の社会労働委員会におきましても、この点について集中的に、社会党はもとより公明党、民社党、そしてまた共産党の委員外発言の中からも出てまいりましたことは、このことを示していると思うのであります。そうして、この無効性ではないかという意見は、七月の十四日の衆議院本会議における起立採決は憲法違反ではないのか、このようなことが盛んに質問として展開されました。
 それから、委員会において提案趣旨説明が行なわれていない法案の中間報告を行なわせるのは、国会法、参議院規則及び憲法の精神に反するのではないかとのこの質疑は、おもに社会党の上田哲君が展開をいたしたところであります。
 それからもう一つは、この修正案は衆議院本会議の提案説明が不十分であり、修正動議は無効ではないのかというような、こういう意見が大要としていろいろ、さいぜん申し上げたように、さまざまなこの議論として展開されましたことをこの機会に付言をいたしておきたいと思うのであります。
 こうした疑義が、結果的には、つまり参議院の質問に対する答弁の適格者を社会労働委員会においでを願って、よりその実態を把握すると同時に、事実を明らかにしなければならないということが種々問題になりまして、そうして理事会を再三開いた結果、与党の理事諸君の努力もございましたが、結果的には、衆議院側から橋本龍太郎君が衆議院の社会労働委員長代理、理事として出席をいたし、澁谷直藏君、谷垣專一君も同行いたしまして、もとよりこの二人は今度の修正案の発議者でありますから、説明が必要でありますから、ともに参りまして、ただいま申し上げましたように、いろいろな、さまざまな、私の能力では表現のでき得ないような論議が展開されましたことは、藤原道子さんそのものが社会労働委員会の委員でもございまするだけに、これ以上の私は御答弁の必要はないのではないか、かように考えますから、この点は御了解をいただきたいと思うのであります。
 しかし結果的には、衆議院側からおいで願いました答弁者は、確かに公的な立場で行なわれた答弁でございますからいたしかたないと思いますけれども、私は、あまりにも誠意が感ぜられなかったのでありまして、この点は参議院の社会労働委員長として、まことに遺憾にたえないと思っておるところであります。
 次に、起立採決の問題については、違憲か合憲かという結論は、委員会の任務外のことでもあり、しかも先般、私はこの本会議におきまして、明らかに民社党の中沢君の質問に対して答弁をいたしましたが、この件については、私は今日なお多大な――最高裁判所の結論にまたなければ、合憲か違憲かという答えは出ないと考えておるものであります。参議院で審議を行なったからといって、そのことは参議院が合憲と認めたことにはならないものと考えております。
 二番目は、審議の結果成立しても、憲法違反であることが明らかになれば、すべては白紙であるという、このこともまた私は法律論上、疑問のあるところではないか、こう思いまするけれども、こうした疑問点は、やっぱり法律の専門家に聞く必要があると思うのでありまして、私ども社会労働委員会といたしますれば、そのために衆議院法制局長三浦義男君を呼びまして、そうしてまた、当の責任者でございまする国務大臣斎藤厚生大臣を含めて、この点をいろいろな形で確認をいたしたのであります。
 次に、中間報告の問題については、「提案をしたかいなかということも、中間報告及び採決の対象となり得る」との法制局長の答弁がありましたが、「かりにそうであっても、委員会で十分審議を行なうのが正しいのではないか」との上田委員の質問に対し、この際、参議院の社会労働委員長といたしましても、その責任者たる事務総長をお呼びをいたしまして尋ねる必要があろうと思いまして、事務総長の宮坂君を答弁者として委員会に出席を求めたのであります。そこで、私は、この機会にいささかの誤解もあってもいけませんから、事務総長が当委員会で答弁をいたしましたことを的確に各議員の皆さんにお伝えをいたします。
 事務総長は、かつて議長あっせんによる五派会談というものがございましたが、これは自由民主党、日本社会党、公明党、第二院クラブ、民社党、この五派の会談を示しているわけでございますが、これは昭和三十八年七月五日でございます。このときに、それぞれの申し合わせ事項を行ないましたが、これは時間の関係でその事項については読み上げることを私は避けたいと思います。ただ事務総長は、そのときに議長の所信が述べられておりまするから、議長の所信を読み上げたのであります。参考までに申し上げますと、重宗議長の所信――ただいまも議長をやっておりますから、皆さん御案内のとおりであります。この所信は、「私は、参議院の議長として、議案の審議は常に十分に行なわなければならないものと考えております。先般来、議事が混乱いたしましたことは、まことに遺憾でありますが、この事態が今回のような中間報告に端を発したものであることにかんがみまして、今後、各会派の御協力を得て、このような議事の進め方を避けるよう最善を尽くす所存であります。」、これが当時のいわゆる五派会談で申し合わせができましたそのときに、参議院の議長が所信を述べられたということになっているものでありまして、宮坂総長は、これを当委員会におきまして、上田哲君の質問に対する答えとして読み上げたのであります。これが参議院社会労働委員会における宮坂事務総長の考え方の基調に立っているわけでございまして、事務総長は、一つには、もちろん委員会審議を行なうことが正しいでありましょう、二番目には、今回の健康保険法の場合は以後の慣例とすべきではない、との見解も、これまた多少抽象的ではございましたけれども、この議長所信を精神としてかようなことが述べられましたことをこの機会に皆さんに御報告申し上げると同時に、そうしてまた、質問者の藤原道子先生に御答弁を申し上げておきたいと思うのであります。
 次に、修正動議の問題について、衆議院における修正動議の提案者谷垣專一君は、「薬代一部負担を取りやめ、料率を千分の七十として本法に繰り入れるなどの措置を講ずる」との説明をしておりましたが、法制局長は、「「などの」とは施行期日、字句修正など、法案の技術的整理に関することであり、国民の権利義務にかかわる重大な修正は含まれない」との見解を述べております。
 以上、問題となりました事柄の論議の模様と結果の概要をきわめて簡潔に申し上げまして、藤原道子君の質問に対する私の答弁といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○副議長(安井謙君) 中村波男君。
   〔中村波男君登壇、拍手〕
#26
○中村波男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律の一部修正案について、政府並びに提案者に質問をいたしたいと思うのであります。
 その前に、総理に、私の気持ちは好意でありますが、ことばでは善処を要請いたしたいと思うのでありますが、さいぜん、藤原議員の質問に対しまして、総理の答弁は、全く感情的でありまして、いわゆる身もふたもない答弁であったわけであります。もちろん私たちが質問をいたしますことは社会党に対する答弁でありましょうけれども、社会党は、伸び悩んだといいましても、二〇%以上、一千万以上の支持を得ておるのであります。したがって、国民に答えるという立場でまっこうから質問を受けていただきまして、もう少し親切丁寧に御答弁を願うことをあらかじめお願いを申し上げておきます。(拍手)
 私は、まず最初に、修正案について、その性格と今後の医療保険制度の抜本改善との関連性について政府の見解をただしたいのであります。
 一体、この修正は何を意味するかといえば、外来の投薬時における患者一部負担の廃止と引きかえに千分の七十の料率を健康保険法の中に固定し、これの恒久化をねらっていると私は見ているのであります。つまり、外来投薬時の患者負担の廃止により平年度六十一億円の収入減と引きかえに、料率千分の七十を固定化し、平年度三百二十億円増収の恒久化をはかろうといたしておるのであります。いわば患者負担の軽減修正は一種の粉飾であって、実際には被保険者に負担を重くかけることによって、保険財政収支の均衡の維持という意図が隠されていることは明らかであり、そしてさらに重要な点は、健保特例法の二年の時限を撤廃することによりまして、政府が国会に約束した医療保険の抜本改正をさらにあとに引き延ばして、これをうやむやの形で葬り去るおそれが多分にあると思うのであります。
 総理は、去る六月十八日の本会議におきまして、延長案の趣旨説明の際に、しごく神妙な態度で、抜本改正案の今国会に提出できなかったことはまことに遺憾である、しかし、今国会中に抜本改正の具体案を責任を持って作成する、再延長は絶対に行なわない旨の言明をされたことは、総理は、よもやお忘れではありますまい。しかるに、その舌の根もかわかないうちに、自民党の修正案という形で、二年間の時限立法である特例法を事実上廃案とし、保険料引き上げなど国民負担の恒久化が提案され、これを一挙に議長職権による本会議に持ち込み、数々の違憲、違法の限りを尽くして参議院に送り込み、本院においても、これまた国会法をじゅうりんし、数にものをいわせて中間報告を強引に可決し、社労委に期限つきで審査に付し、いまや、ここに本案を一挙に可決いたそうといたしているのであります。私は、ほんとうに二カ年以内に抜本改正をするという意思があるならば、違憲、違法、公約無視など、数々の暴挙を行なってまで特例法の修正案成立に執念を燃やす必要はないと思うのであります。特例法の薬価一部負担の削除修正をいたせば、それでよかったと私は考えるのであります。特例法が提案された最大の理由は、保険財政の赤字解消にあったし、実際にも大きな成果があがっておるのであります。したがって、今回特例法の二カ年という時限のかせを取りはずしたことは、イコール抜本改正の歯どめをはずしたことにほかならないと私は考えているのであります。
 そもそも、特例法延長という事態は、やむを得ずそうしたというような性格のものではなく、実に意図的に計算づくで出されてきた方針であった。というのは、特例法を二カ年間実施してみた結果、予想をはるかに上回る財政効果を生んでいることがわかり、政府がこれほどうまみのある法律を見のがすわけはないと思うのであります。その具体的内容については、質問時間の制約もあり、政府は百も承知のことでありますから申し述べませんけれども、要するに、政府の医療制度の改正の方向は、医療の機会均等などの、「よい医療を安く」の医療保障原則に反して、医療の格差を拡大し、受益者負担を経済合理主義の立場に立って不当に医療保険の中に持ち込み、働く者と患者の負担を拡大して、医療保障全体の後退をはかるところにあることは明らかであります。しかしながら、政府としては、医療制度の抜本改正を繰り返し公約してきた手前、政府の口からそれを破ることはできない立場にあったのであります。そこで、自民党の修正案という形式を借りて、毒食わば皿まで、目的のためには手段を選ばない悪らつな方法をもって時限立法を葬り、二年後の混乱と責任の回避をはかろうとしたのであるという批判は、実に客観性があり、また、政府・自民党は、数々の暴挙によって民主主義をじゅうりんし、議会制民主主義を形骸化したことは、何としても許せないことであります。
 以上、私の指摘した事項について、総理並びに厚生大臣に弁明を求めますとともに、特に確認しておきたいことは、抜本改正とは、ことばではなく、その内容にあると私は思うのであります。言うなれば、国民大衆の要求している抜本改正とは、医療保障を単なる医療費の保障にとどめず、すべての国民の健康と、医療による予防、治療、後保護まで一貫した保障制度として再編成することであります。政府は、抜本改正の基調をどこに置こうとしているのか、その内容のあらましを明らかにされるとともに、その時期を明確にする政治責任があると私は考えるのであります。総理は、衆議院において、抜本改正はすみやかに行なうという抽象的な表現で逃げておりますし、さいぜん藤原議員の質問に対しても明確な答弁を避けたのでありますが、少なくとも二カ年以内に行なうと、なぜ言明をされないのか。これが私は公約の最小限の問題だと考えておるのであります。重ねて真意をお尋ねいたします。
 次に、私は、審議会に対する政府の姿勢について、総理並びに厚生大臣の所見をお伺いいたします。
 総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会が、今回の特例法延長案の諮問に対して、きわめてきびしく政府のおざなりな医療行政を批判しているのであります。すなわち、前回の特例法は、あくまでも暫定、時限の措置であり、二年以内に抜本対策を樹立することは、「国会及び国民に対する政府の厳粛な公約」であることを指摘し、さらに、特例法を二ヵ年延長することについて、「本審議会は心から遺憾に感ずるとともに、医療保険の前途に対して、まことに憂慮に堪えないものがある」と答申を結んでおります。社会保障制度審議会がこのような手きびしい答申を行なった例は、かつて私は見たことがございません。審議会の答申を無視して特例法の延長案を提出した政府の姿勢を、まず糾弾しなければならないのでありますが、政府は、審議会を隠れみのにし、都合のいいときは答申を利用する、都合の悪い答申には、ほおかぶりで通す、これが政府の御都合主義でありまして、典型的にあらわれておるのが今回の措置だと思うのであります。
 さらに政府は、厚生大臣の諮問機関である社会保険審議会に対しても、同様な不法不信な行為を行なっているのであります。それは、社会保険審議会の有泉会長の抗議文がすべてを物語っております。
 そのおもなる内容を述べてみますと、特例法の延長について、一月諮問を受けて以来、審議に審議を繰り返し、三月二十日に答申を行なったが、衆議院において特例法の延長が取りやめになり、われわれの予期しなかった健康保険法の改正が行なわれた。政府原案について精力的に審議してきたものとして、はなはだ心外であるとともに、抜本対策の諮問を控えて、今後の審議の意欲を失うものであると、抗議の申し入れを行なっていることは御承知のとおりであります。しかるに、斎藤厚生大臣は、去る二十六日の本院社労委員会におきまして、わが党の大橋委員の追及に対し、修正したのは政府でなく自民党である、したがって、国会が修正する場合は、制度上審議会に諮問することになっていないと責任のがれの答弁をいたし、また、総理も、先刻、藤原議員の質問に対して同趣旨の答弁をいたしておるのでありますが、これは全く詭弁であることを私はまず指摘をし、順を追うて究明をいたしたいと思うのであります。
 政府の審議会の答申無視は今回に始まったことではなく、かつて汚職が続発し、政界浄化の声が国民の中に沸騰したため、政府は、やむを得ず政治資金規正法の立案に踏み切り、選挙制度審議会に諮問をした。しかしながら、国会に提案してきた政治資金規正法は、全くの骨抜き法案として悪名高く、国民を憤激させておることは御承知のとおりであります。これらをあわせ考えますとき、今回の審議会無視などはものの数ではないというのが政府の腹のうちではないだろうかと私は疑いたくなるのであります。
 そこで、総理並びに厚生大臣にお伺いをいたしますが、政府の審議会答申の軽視ないし無視の態度をいかに考えていらっしゃるのか、さらに、今後もこのような態度で答申を取り扱ってよろしいと考えていられるのか、明快率直な答弁を求めたいと思います。
 次は、健保特例法の修正に関連して、いわゆる議院内閣制についてお尋ねをいたします。
 わが国は、議院内閣制すなわち政党政治でありますから、政府与党である自民党の政策が大幅に取り入れられることは当然の成り行きであり、また、政府の政策決定にあたって、自民党と調整をはかることもこれまた当然の措置だと私は考えておるのであります。したがって、健保特例法を再延長するにあたって、政府と自民党間で十分な打ち合わせのもとで閣議了解として国会へ提案してきたはずであります。先刻斎藤厚相は、社会党の修正案を提出するについて、審議会の議を経ておらないじゃないか一こういう御答弁がございましたが、もう少し勉強をしていただきたいと思うのであります。でき得るならば、私の質問に答えて、取り消していただきたいと思うのであります。いま私が指摘いたしましたように、われわれ野党が審議会にはかるという制度もありませんし、そういう必要はないのだ、政党内閣でありまするから、これは同じ穴のムジナであるという、こういう考え方が成り立つと思うのでありますし、実体は二つでないということを言いたいのであります。私は、国会に提出された政府案を与党が修正すべきでないなどと考えておるものではありません。いな、議員の修正権、発議権、提案権というものは最大限に確保されなければならないと考えておる一人であります。しかしながら、政党内閣のもとで与党が修正する場合は、それ相当の理由と客観性のあるものでなければならぬと思うのであります。しかるに、今回の特例法の修正案なるものは、実質的には特例法を廃案にし、健康保険法の修正を行なわんとするものであります。それならば、特例法に反対、廃案として、議員立法として健康保険法の修正案を提出し、堂々と審議を行なった上で可決をするのであるならば、何ぴとたりとも文句のつけようはないのであります。しかるに、これを抜き打ち的に提案したために混乱し、しかも廊下採決というような議会史上大きな汚点を残す暴挙を与党・自民党が行なったことは、天人ともに許しがたいことでございます。したがって、可決したと称する修正案の内容については、衆議院の社会労働委員会の委員までが翌朝の新聞によって初めて知るというこっけいきわまりない姿は笑えぬ喜劇であり、われわれがまぼろしの法案として認知しない最大の理由もここにあるのであります。
 また、大学運営臨時措置法案においても、自民党の機関で決定した内容をもとに政府が立法したにもかかわらず、その後、党内タカ派の突き上げを押え切れず、内容の大きく異なる修正案の議員提案を許し、再びこの修正案を取り下げさせて、政府案を強行採決に持ち込むなどの無統制ぶりは、目に余るものがあります。言うならば、政府・自民党は、なれ合いで、政府の公約違反をのがれる手段に、また国会及び世論の操作に、国会の提案権、修正権を利用していることははなはだ遺憾であり、このことは、総理、総裁としての佐藤さんの指導力、統制力の弱さによる現象でもあると私は見ておるのであります。佐藤総理は、これに対していかにお考えになっておりますか、率直にお答えを賜わりたいと存じます。
 なお、修正者の衆議院議員谷垣專一君からは、修正案の提案の理由、趣旨並びに委員会における審議の状況について詳しく説明を願いたいのでございます。
 さきに私が指摘しましたように、修正案の内容は、明らかに健康保険法の改正であります。そのことは、自民党の特例法には反対であったということになると私は思うのであります。しかしながら、実際には修正案が出るまでの間、そのような動きは全くなく、健保特例法は、重要法案として絶対成立させる方針で、審議の促進に全力をあげてきたことは周知の事実であります。それがやみ討ち的に修正案を社労委に持ち込んできた。なぜ私が提案してきたと言わないのは、提案者に一片の良心があるならば、心の痛みを感じられるであろうと考えたからであります。
 七月十日の衆議院社労委員会の採決が、いかに異常、違法であったかは、大新聞をはじめ、ほとんどの日刊紙が一斉に批判したことによってもこれが証明されております。その場にいた人たちは、修正案と称する紙きれが天井に向かって投げ込まれ、怒号と狂乱、紙きれが床に落ちる、あっという間のできごとであったと、口をそろえてその違法性をなじっているのであります。しかるに、修正案の趣旨説明、質疑、討論、採決が行なわれたと言うに至っては、これこそあいた口がふさがらないし、盗人たけだけしいなどという態度とは本質を異にし、ファッショ政治ここにきわまれりと言わざるを得ないのであります。
 そこで、谷垣君に尋ねたい第一点は、特例法から急転して修正案を提出するに至ったいきさつ及び理由と、その背景についてであります。
 第二は、修正の内容からして、なぜ特例法廃案を前提に、健康保険法の修正案として出さなかったか、その理由と理論的根拠がお聞きしたいのであります。
 第三は、社会労働委員会の審議の状況を聞きたいのでありますが、一として、修正動議の提案から採決までの所要時間、わが党議員及び第三者の証言は、いずれも三、四秒だと言っているのであります。二番目は、社労委の出席議員数と賛成者の氏名、七月十一日午前十時、わが党の河野、田邊両議員が石井前衆議院議長に対し、概況説明を求めた際、事務総長より、委員部として確認できた委員は、自民党は委員長を除いて九名、野党は、社会党が七名、民社党が一名、公明党が二名、計十名であったと報告いたしております。これによって明らかなことは、野党の中に賛成した者がない限り過半数には達しないということであります。したがって、可決などはあり得ず、この一点からも衆議院の採決はでっち上げであり、もちろん無効である。これに対して反証をあげて納得のいく説明をいただきたいものでございます。
 三つ目は、廊下採決と言われているように、自民党の委員は、ほとんど廊下にいたことは明瞭であります。新聞の写真を見ましても、谷垣理事は中に完全に入っておったとは見られないのであります。それはそれといたしまして、したがって、出席委員のうち委員会の室内と廊下に分けまして報告を願います。なぜ、このようなことをお尋ねするかと言えば、参議院、衆議院の先例録あるいは規則等を見ましても、委員会は院内の委員会議室で開くことを例とする。このやり方で言うならば、おそらく社会党が議事を妨害したからやむを得なかった、と強弁をされるでありましょうが、もしそれが事実とするならば、警察官なり衛視なりを導入して排除する。その前に社会党をはじめ野党は暴力団ではないのでありまするから、私は、いろいろな話し合いにおいて円満な会議を開くことも可能であったと思うのであります。これを突如として修正案を出して、中へ入れなかったから、廊下でも採決して有効だということになるならば、委員長と提案者だけおれば、ほかの委員はどこにおっても採決をしてよろしいという、こういう危険がありますから、特に質問を申し上げたわけであります。
 以上、私の質問にできるだけ詳しく答弁をお願いいたします。
 次の質問は、保険財政についてであります。
 今回の修正で、薬価の一部負担を削除したことを、政府・自民党は、被保険者負担の軽減だと宣伝をしております。そこだけを取り出せば軽減に違いはございませんけれども、保険料の引き上げを本法に固定したこのことは、国民負担の増大を固定したことにほかならないのでありまして、ここにごまかしの本源があると思うのであります。
 薬代一部負担を取り払うといいますが、薬代負担の収入は、今回の健保特例法の保険料率の引き上げによって生じます平年度四百四十四億円の増収分の一〇%にも満たない三十一億円でございまして、平年度六十二億円にすぎず、赤字対策の上でも最も影響の少ないものであります。特例法の延長で七十四億円の黒字が出ることが、衆議院社労委におけるわが党の山田耻目議員の追及によって明らかになったのでありますが、現段階で薬代一部負担を取り払ったのは、私は当然だと思うのであります。分べん費の改善のための千分の一の引き上げ撤回は、当然のこれまた措置で、引き上げの撤回によって、政府計算による増収は平年度六十四億円となるのに、実際には平年度四十三億円の支出にすぎず、したがって、千分の〇・三、金にいたしまして二十一億円は引き上げ便乗でピンはねをしようとしていることが暴露されて、やむを得ず撤回をしたと見るべきであります。政府は、当初、健保特例法の延長を行なっても、今年度二十七億円の赤字が出るとしていたのでありますが、社会保険庁が計算し、提出した資料によりますと、今年度の賃上げを一七%と見込むと、七十四億円の黒字になることが判明し、当初の二十七億円の赤字見込みは大うそで、赤字対策のための延長はきわめて根拠のないごまかしにすぎなかったのであります。分べん費改善に充てる費用は今年度二十五億円、平年度四十三億円であり、千分の一の引き上げ撤回をしても、赤字対策上ではたいした痛手にはならないはずであります。
 以上、保険財政のからくりのおもなるものをあげたのでありますが、これらの点についての政府の見解を求め、次は、当面の財政について質問をいたします。
 修正案が成立をいたしますと、四十四年度の単年度赤字見込みは、さきにも述べたように、政府原案の二十七億円に加えて六十四億円増加し、九十一億円になると政府は見込んでいるようであります。もともと累積赤字の上積みを極力阻止するという政府の鉄則が大きくくずれる結果になりますが、この九十一億円の赤字に対する財政措置はどのように考えていられるのか。また、厚生大臣は、衆議院社会労働委員会におきまして、物価、人件費の高騰による診療報酬の引き上げはやむを得ないと発言をしていらっしゃいますが、一%を引き上げても約四十億円以上を要するのでありますから、これを含めましての財政措置について大蔵大臣、厚生大臣からお伺いをしておきたいのであります。
 この機会に質問しておきたいと思いますのは、保険料が賃金上昇によって相当伸びるのではないかという点であります。四十四年度予算の編成にあたって、賃金伸び率見込みを一一・二%に抑えているのでありますが、本年度の春闘における大手会社の賃金伸び率は一五・八%であり、政管保険の対象者である中小企業の従業員は、従来は大手よりかなり低かったのでありますが、ここ一、二年来は急速に伸びまして、本年度は一六%ないし一七%の伸びが予想されているのであります。だといたしますと、相当額のいわゆる自然増収が見込めると私は思うのでありますが、それを政府はどのように見ているのか、赤字分に対する財政措置との見合いにおいて、できるだけ詳しく説明をしていただきたいのであります。
 なお、四十四年度予算には予備費百億円を計上しておりますが、もちろん、予備費は不測の経費に充てるものであることは私も承知をしております。しかし、今回の特例法の修正によりまして赤字がふえることが明らかになった現在、この百億円の予備費の使途について検討がなされていると思いますので、その処理方針を明らかにしていただきます。
 以上の諸点については、大蔵、厚生両大臣に答弁を求め、次の質問に入ります。
 次の質問は、国会を混乱に導いた総理の政治責任についてであります。
 今国会における政府・自民党の国会運営がいかに常軌を逸したものであったかは、両院を通じまして十数回の強行採決がすべてを物語っており、暴挙の一語に私は尽きると思うのであります。特に、国民生活に最も関係の深い健保特例法の時限立法を実質的に恒久化するという、すりかえ的な大幅修正を衆議院の社労委で抜き打ち的に行ない、怒号と混乱の中で強行採決を行ない、さらに本会議において明らかに憲法違反の採決を行ない、これを可決したと称して本院に送り込み、本院また国会法を無視して中間報告の強硬手段に訴え、いまやまさに自民党は多数党の独善的な主張を押し通そうといたしておるのであります。すなわち、多数による力、多数決のみあって、その多数決を妥当とする審議の場でありますところの委員会及び本会議は、審議の場にはあらず、多数党のための儀式の場であるにすぎないのであります。
 このような政府・自民党の一連の国会運営は、それはそれなりの理由があってのことだと私は思うのであります。このことについて新聞の社説なども指摘いたしておりますように、七〇年問題に対処するために今国会中に抵抗の多い重要法案はすべて片づけ、身軽になっておいて来年度の通常国会に臨み、条約固定期限前に予算を成立させて、国会の延長を避けようという戦略のもとで本国会の運営が行なわれていると思うのであります。いかがですか。
 だから、防衛、健保、大学などの重要法案の成立のために、憲法、議会政治ルールの違反もやむなしと、党利党略あるのみとする自民党の国会対策は気違いに刃物の感さえあるのであります。田中幹事長は、ほかの法案が全部つぶれても、大学法案だけは今国会中に絶対通せと陣頭指揮をとり、異常なまでの執念を燃やしていられるとのことであります。また、佐藤総理も、内閣の命運にかかわる大学法案は必ず成立させるようにと指示したと新聞は伝えておるのであります。そうだといたしますならば、残り少ない会期の中で大学法案を成立させようとすれば、おのずから強行採決以外に方法がないということは明らかであります。
 この一党専制の国会運営によって議会制民主主義は形骸化を深め、国民の政治不信をますます大きくしつつあることについて、総理の政治責任はまことに私は重大だと思うのでございます。これに対して総理は、いかなる方法で政治責任をとろうとされておられますか。また、いよいよ会期もわずかに少なくなっております中で、力の対決を自民党が続ける限り、国会は一そう混乱し、抜き差しならぬところへ追い込むことは明らかでありますが、それでも政府・自民党は、大学法案等を強行採決に訴えても成立をはかろうと考えておられるのか。総理、総裁としての政治責任と国会の運営方針を示されるよう総理に要求して、政府に対する質問はこれで終わる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(佐藤榮作君) 中村君にお答えいたします。
 私が、先ほど藤原君にお答えしたのが感情的だという御批判をいただきまして私に御注意がありましたが、私はきわめて冷静に感情的にならないような答弁をしたつもりでありますが、ただいまのような御批判をいただきまして、この御注意はありがたくちょうだいし、また、私自身が感情的でない、これはひとつ理論的には私申しましたけれども、感情的ではない、ひとつ御了承いただきたいと思います。また、そのつもりで中村君に対しましても同じ気持ちでお答えいたしますから、御意見と違ったからといって、私が感情的だと、かようにおとりにならないように前もってお願いしておきます。
 まず、今回の修正でありますが、これは衆議院におけるいろいろの論議の経過を勘案して、与党において本修正案が考えられたものでありまして、財政対策はできる限りの最小限にとどめて国民負担の軽減をはかることを目的として行なわれたものであります。実質的な内容におきましても、特例法延長法案の基本をくずすものでは毛頭ありません。また、抜本改正を既定方針どおり、できるだけ早急に実施したいという政府の基本的姿勢には何ら変わりのないことは繰り返し申し上げているところであります。したがいまして、修正は公約のがれの手段という御批判はこれは全く当たっておりません。私は、今回の修正によりまして、二年の内に基本的な問題に取り組まない、かように申しておるわけではありません。先ほども抜本改正につきましては、今後二年以内に実現するように最善の努力を払うことは、先ほど藤原君にもお答えしたとおりであります。このことは、この修正案、これはたぶん皆さん方もお聞き及びのことだと思いますが、この修正案を党内で議論した段階におきまして、総務会、これは自民党の総務会ですが、総務会の決議といたしまして、本修正案の成立にかかわらず、医療制度の抜本改正は既定方針どおり可及的すみやかにこれを実現することを確認する、こういうことが総務会で実現されております。したがいまして、私がただいま申し上げましたことは党の総務会どおりの決定でありますので、この点では重ねてただいまの基本方針は変わらないということを申し上げたいので−あります。
 なお、医療保険制度の抜本対策に関連する分野は、これはたいへん広いのでありますので、これを一挙に実現することはきわめて困難であると考えられます。この点は中村君もたぶん御承知だと思います。実現可能なものから早急に取り上げていくという心組みで、段階的にその実現をはかってまいりたいと、かように考えております。
 中村君からは、抜本改正の考え方についてお尋ねがありました。特に保険より保障をという形で問題を提起されましたが、これは、それはそれとして一つの考え方であろうと考えます。おそらくは英国式の医療保障などを念頭においてのことと思いますが、社会保障制度の重要な柱である医療保障の方式は、世界各国が必ずしも一様ではありません。その他の多くの国々がとっているように、わが国としては、社会連帯の思想を基礎とする医療保険制度を中核として、これを一そう充実させる方向で抜本改正を考えていくことがわが国の実情に即した考え方であると、かように考えております。このような考え方のもとに、医療給付の割合の格差是正、保険料負担の均衡、診療報酬体系の適正化、保険財政の長期安定を基本方針として抜本改正に取り組んでまいる考えでございます。
 次に、政府と審議会との関係につきまして、これはもちろん政府が改正をいたします場合に、審議会の答申を得て、そうしてその答申を尊重して、政府は改善、改正意見をきめることは当然であります。しかし、国会と審議会との関係は、これはもう御承知のことだと思いますが、この審議会に縛られるものではない、かように思いますので、これは、先ほども藤原君にもお答えしたのでありますが、この点が、何か木で鼻をくくったような答弁であったというおしかりかと思います。これは同じように申し上げておきます。
 また、中村君は、議員の発議権、また修正権は、当然尊重しなければならないし、大いにこれは活用をすべし、かようなお話でございます。私も、これらの点で、ただいまの審議会との関係、また、本来の権能、これはもちろん尊重されなければならない、かように思います。そうして、国会の審議そのものにつきましては、これは、国会自身がこの適否をきめていく、かように私は考えておりますので、この点については、私はあえて批判をしない。先ほども、その点ではお答えをしなかったつもりであります。
 また、さような点があるから、どうも総裁としての統制力を欠いておるのではないか、こういうような御懸念、御批判があるようであります。その点は、御自由に私を御批判いただいてちっとも差しつかえありません。いかように御批判あろうとも、私は、それは御自由だと思います。
 次に、国会の正常化について、私の総理、総裁としての政治責任、ただいまの状態では、多数の独善的な審議ではないか、こういうことで、たいへんきびしく、この国会の審議における態度を批判されました。私は、いわゆる多数の暴力行為、これはもちろん避けなければならないが、少数の意見も、聞くべき意見は尊重していくという、そういう態度が、民主主義のあり方だと思います。しかし、少数が多数に立ち向かって、少数まかり通る、多数引っ込め、この議論は、どうも通用しないのじゃないかと思います。
 ここに、何事にかかわらず、七〇年問題と関連して、政府は、そういう発想でものごとをきめておるんじゃないか、こういう御意見でありますが、どうも私は、私ども政府あるいは与党よりも、七〇年問題を引き合いに出されるのは、野党の皆さん方のほうではないかと思います。その点では、昨日も衆議院でもさように私の意見を率直に申しました。もちろん、政治でございますから、あらゆる関連を持つものだ、かように思います。しかしながら、私どもは、特に七〇年というものに対する対策から、すべての発想をしているわけではありません。どうかこの点では、野党の諸君も、さようないわゆる党利党略にとらわれたような考え方で国政を論じないようにしていただきたい。そうしてもっと高度の立場から議論をしていただくように、この上、気をつけていただきたいと思います。かく申す私自身、さような立場で政治を行なっていく、国民のために政治と取り組む、こういう態度でございますから、そういう意味の御批判は、御遠慮なしにひとつしていただきたいと思います。
 そこで、一体会期もあとわずかだ、その際に、大学問題をどうするのだ、かようなお話であります。私は、この点でいろいろの社説も読みますし、また、雑誌にも目を通しました。大学問題こそは、今日国内問題で一番重要な政治課題だと、かように考えております。これは、ひとりわが自由民主党だけではありません。皆さん方ともどもにこの問題を考えたい。さような意味でこの問題と取り組みました。最初に、各党の党首と相談をいたしたわけであります。しかしながら、今日までのところ、まことに残念ながら、一部の党からは、これに対する具体的な対策が出てまいりましたが、しかし、ただ、いま政府が取り組んでおるこの大学問題を批判するだけでは、国民の納得が得られないと思うのであります。やはり今日の重大な問題であり、同時に、日本の将来をきめる重大な大学問題であります。そういう意味から、これは全政党がもっと現実に即した態度で積極的な具体案を提案していただきたい。私どもが政治を担当しておるからといって、具体的提案をなさるものを頭から断わるようなつもりはございません。耳をかすべき謙虚さは十分持っておるつもりであります。ただいままでのところ、これらの点が出ておりません。このことは私はまことに残念なことだと思います。私は、ややいまのお尋ねからは事柄が違う、答えが違うということで御批判を受けるかと思いますが、私、どうも考えますのに、与野党、各政党で、ものの考え方が違う、これはやむを得ないと思います。しかし、ただいま申すような、国家的な、また、国民が、全部が悩みに悩んでいるような大きな重大問題、これには小さな党の考え方で物事に取り組まないで、やはり超党派的に取り組んでいただきたいと思います。大学問題はまさしく、ただいま申すような重大な問題であります。各党派とも、こういう事柄については胸襟を開いて、そして建設的な意見を戦わす、こういう態度であってほしいと思います。
 以上、お答えをいたしました。
 また、この大学法案がどういうように取り扱われるか、これは参議院の皆さま方の良識にまって、そうしてただいまのこの問題を取り扱っていただきたい。これをお願いをいたしまして、私の答弁を終わります。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(福田赳夫君) 保険財政でございますが、御指摘のように、本年度予算の編成をいたします当初におきましては、健保特例法が通過するという前提で二十七億円の赤字でございます。ところが、衆議院の修正によりまして、料率一%引き下げ、これで三十三億円の減少であります。薬価徴収取りやめによりまして三十一億円、合計六十四億円の歳入財源欠陥になるわけであります。ところが、いま中村さんもお話しのように、春闘の相場が予定よりは高かったと、こういうようなことから、大体厚生大臣も計算しているのですが、五十億ないし七十億円の増収が見られそうだ。それでありますので、修正による減収は、おおむね消されるのじゃないか。しかし、それにいたしましても、二十七億円という赤字はなお残る、こういう状態でございます。なお、予算上の扱いにつきまして申し上げますと、料率の一%引き下げは収入の減でありますから、これはいまの自然増収でこれをまかなう、こういうことになります。
 それから薬価徴収取りやめ、この三十一億円は歳出の増加になるわけであります。これは百億円の予備費の一部をこれに充当する、こういうことであります。本年度の保険財政の収支は支障なく行なわれる見通しである、かように存じております。(拍手)
   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(斎藤昇君) 衆議院における修正の内容についての意見、どう思うかというお尋ね、また、抜本改正の基本的な考え方はどうかというお尋ね、また、関係審議会の意見を尊重するかどうかという点につきまして、以上の諸点につきましては、総理からも詳しくお答えがございましたので、私も全く総理のお答えと同様でございますから、そのとおり御了承願います。
 ただ、抜本改正の具体的な内容につきましては、先ほどの御答弁にも申し上げましたように、委員会においておおむねその内容を明らかにいたしましたのを吉田委員長が委員長報告の中に取り入れていただきましたから、それによって御了承いただきたいと存じますが、しかし、ごくごく近いうちに、その大綱を関係審議会に諮問をいたしたい。関係省内の関係するところで調整中でございますが、ごく近くその調整ができましたら諮問をいたしたいと存じまするから、その曉は、具体的な大綱をお目にかけることができるであろうと考えておるわけでございます。それによって御了承をいただきたいと存じます。
 衆議院の修正案について関係審議会に諮問をしなかったことについて重ねて尋ねるということでございましたが、その際に社会党、公明党の修正案について諮問をいたさなかったと申しましたのは、私が、政府が政府の意見を申し上げる際に、関係審議会に諮問をしないで意見を申し上げたのは、衆議院における修正案に対して、やはり関係審議会に諮問をせずに申し上げたのと同様でございます、かように申し上げた。したがって、衆議院の修正に対しまして政府が意見を申し上げます際にはこれは審議会に諮問すべきでないということは、きょうの政府の意見を申し上げます際に関係審議会に諮問しなかったのと同じであって、これは、政府が法律案あるいは改正案を出す場合に、あるいは運営の基本方針を変更しようとする場合に諮問をすべきでありまして、国会において修正をせられます場合に、それをまた政府が諮問をして、その結果によって政府が意見を申し述べるということは、法律の要求するところとは相なっておりませんので、その点は御了承をいただきたいと存じます。
 修正による赤字対策の点は大蔵大臣からお答えをいただきましたので、そのとおりでございます。
 春闘による増収分も大蔵大臣のお答えのとおりでありまして、予備費の使用も大蔵大臣のお答えのとおりでございまして、ただ、残っておりまするいわゆる診療報酬の引き上げが行なわれた場合にどうするかというお尋ねでございますが、これは中医協において答申がございましたら、政府はそれを尊重して告示をいたしたい、かように考えておるわけであります。そういたしますると、幾らかは、とにかく今日考えておりますよりも支出がふえることは当然であると、かように考えます。その際に、一体予備費でまかなえるか、あるいはどうするかということは、その結果を見た上で大蔵大臣と相談をして、政府として決定をいたしたいと、かように考えております。(拍手)
   〔衆議院議員谷垣專一君登壇、拍手〕
#30
○衆議院議員(谷垣專一君) 私に対しまする御質疑は数点あったかと思いますが、特例法を議論しておるのに、これを本法の修正にしたのはどういうことか。それなら当初から本法修正にすべきであるのになぜ本法修正にしなかったのか。この点と、それから衆議院の委員会におきましてどういう提案の説明をしたのか、それから委員会の時間は一体どういうふうな時間であったのか、あるいはその氏名等、そういう問題についての御質問であったかと思います。お答えをいたしたいと思います。
 特例法を出しておるのに、これをいわば廃案にして本法の修正にしたのはどういう理由なのか、それならむしろ当初から本法修正をすべきではないかという点でございますが、これは確かに、御質問のような方法も一つの考え方であろうと思いますが、今回の場合は、同様の内容の法律案が政府案として提出されておるのでありまして、これを審議する過程におきまして、修正を妥当であると考えて、これを修正したのでございまするから、むしろこれは、政府原案を修正する方法のほうがオーソドックスなやり方であると存ずるのであります。で、政府の原案は、御承知のように、いわゆる特例法の有効期間の延長部分と、それから健康保険法そのものの改正と、それから船員保険法そのものの一部改正と、この三つの分野に分かれておるのでございます。で、御存じのとおりに、衆議院におきまする審議の過程におきましても、この特例法の延長に対しまして、これはむしろ廃案にしろ、こういう強い御意見が相当各方面にございました。そのほかに薬剤費の一部負担、これはもう取りやめるべきだ、あるいは分べん給付の改善の裏づけとなっている千分の一の引き上げ、これは取りやめたらどうだというような諸点、その他につきましていろいろ熱心な質疑があったのでございまして、これらの衆議院の委員会におきまする審議のいろんな事情を勘案いたしまして、また国民負担の軽減をはかる必要があると、こういう立場からこの修正をいたしたものでございます。で、この第一の部分でございますところの、いわゆる特例法の延長と申しますか、期限の延長を取りやめるということにいたしますというと、どうしても保険財政の悪化がはなはだしくなりますから、最小限これを現行の健康保険法の中で何らかの措置をとる必要があるかと思います。それが今回の修正になったのでございまして、したがいまして、政府が原案として出しましたそれぞれのところにおきまする第一の特例法の延長、あるいは健康保険法の本文の改正、あるいは船員保険法の本文の改正というものを修正として加えたわけでございますので、法制的に見ましても、内容的に見ましても何らこれが不当なものとは考えておりません。まことに適切な、妥当な修正であったと、かように考えておる次第でございます。(拍手)
 それからこの委員会におきまする事情、時間がどういうふうであったか、あるいは出席の人員が定足数に達しておったかというような点につきまして御質疑がございました。これはいわゆるその両院のそれぞれの独立性の問題がございます。事は、衆議院の内部におきまする議決の問題でございますので、私は本日は、衆議院におきまする修正案の提案者としてここへ参っております。これらのそれぞれの議院におきましてきめましたこと、それらのことは、私は衆議院の委員会の採決が有効かつ合法に行なわれた、その認識のもとに立ちまして、衆議院におきましてそれぞれの採決がなされまして、参議院のほうに送付があったものと、そのように認識をいたしておりますので、私の口から委員会におきまするその他の事情を申し上げますことは差し控えさしていただきたいと思います。(拍手、「答弁になっていない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
   〔中村波男君発言の許可を求む〕
#31
○副議長(安井謙君) 中村波男君。
   〔中村波男君登壇、拍手〕
#32
○中村波男君 両院の独立性ということをたてにとって、提案者の谷垣議員の御答弁をいただかないのでありますが……(発言する者多し)
#33
○副議長(安井謙君) 御静粛に願います。
#34
○中村波男君(続) そこで、私は御答弁をいただくために、もう少し具体的にお聞きをいたしまして、答弁を求めたいと思うのであります。少なくとも谷垣議員は提案者であったのであります。したがって、私の質問したうちの、提案をされてから、いわゆる動議が提出されてから採決まで、目撃者、その場におりました社会党の議員等々の証言によれば、三秒か四秒であったと言っておるのであります。したがって、あなたは少なくとも提案者で、採決をされたというのは見届けていらっしゃると思うのであります。そのことは、これは何もあなたが答弁のできない範疇を越えることではないと私は思うのであります。事実のままをお話しいただければいいのであります。もちろん、とっさの場合でありまするから、時間を見ておりまして、何分何秒などということはわからないでありましょうけれども、その審議の状況、提案説明を、これこれ私は言いました、議長はこのように採決をやりました、こういうふうにお話をいただければ、三秒か四秒であったか、一分であったか二分であったかということは、おおよそ私は見当がつくと思うのであります。その答弁をしていただきたいと思うのであります。
 もう一つは、委員会室の部屋の中に何人いたかということは、もちろんこれは写真その他がないと決定的なことは申し上げられぬと思いますが、少なくとも、谷垣さんが目で見られて、私はこう見ましたが、それは真実であるかどうかについては、証明できるものではないという、そういう限られた答弁でけっこうでありますので、以上二つの答弁をお願いいたします。(拍手)
   〔衆議院議員谷垣專一君登壇、拍手〕
#35
○衆議院議員(谷垣專一君) 当日、私は衆議院の委員室におりまして、そうして所定のごとき提案理由の説明をし、そうして委員長がそれをはかったわけでございまして、そこにだれがいたか、当然私もその中におりますから存じておりますが、しかしこれは、いわば衆議院におきまする、衆議院内部の問題でございますので、これは両方の議院のそれぞれの独立性の立場から、私はここで申し上げることを遠慮さしていただくのが至当だと考えますので、そのように……。(発言する者多し、拍手)
#36
○副議長(安井謙君) 本日はこれにて延会することとし、次会は明日午前零時十分より開会いたします。
 これにて延会いたします。
   午後六時三十分延会
ソース: 国立国会図書館
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