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#1
第061回国会 交通安全対策特別委員会 第18号
昭和四十四年七月二日(水曜日)
   午後一時三十四分開議
 出席委員
   委員長 内海  清君
  理事 稻村左近四郎君 理事 大竹 太郎君
   理事 斎藤 寿夫君 理事 田中 榮一君
   理事 山口シヅエ君 理事 板川 正吾君
   理事 河村  勝君
      大野  明君    小峯 柳多君
      葉梨 信行君    山田 久就君
      太田 一夫君    久保 三郎君
      松本 忠助君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)      床次 徳二君
 出席政府委員
        内閣総理大臣官
        房陸上交通安全
        調査室長    宮崎 清文君
 委員外の出席者
        議     員 板川 正吾君
    ―――――――――――――
七月二日
 委員鴨田宗一君、濱野清吾君、千葉佳男君及び
 古川喜一君辞任につき、その補欠として葉梨信
 行君、山田久就君、井上泉君及び小川三男君が
 議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員葉梨信行君及び山田久就君辞任につき、そ
 の補欠として鴨田宗一君及び濱野清吾君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 交通安全対策基本法案(内閣提出第一〇七号)
 交通安全基本法案(久保三郎君外十三名提出、
 衆法第二九号)
     ――――◇―――――
#2
○内海委員長 これより会議を開きます。
#3
○床次国務大臣 ただいま議題となりました交通安全対策基本法案につき、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。
 近年におけるわが国の経済の著しい発展に伴い、自動車交通は、急激な伸展を遂げておりますが、これとともに、道路における交通事故も逐年増加の一途をたどり、昨年一年間における道路交通事故による死傷者数は八十三万人を上回るというまことに憂慮すべき事態に立ち至っているのであります。また、鉄道及び軌道における交通事故並びに船舶及び航空機による交通事故は、幸いに必ずしも増加する傾向にはありませんが、一たび事故が発生した場合には、多数の死傷者を生ずるという重大な結果をもたらすものであり、その防止は、道路における交通事故の防止と同じく、一刻もゆるがせにすることのできない問題であります。
 このような情勢に対処して、政府は、交通安全対策を最重点施策の一つとして取り上げ、諸般の施策を積極的に推進しているところでありますが、今後も予想される道路における交通事故の増加を抑制するとともに、船舶、航空機等による重大事故を防止するためには、総合的な交通安全対策をより強力に推進するとともに、国民のすべてがそれぞれの立場において、国及び地方公共団体の施策に協力するという、いわゆる国民総ぐるみの体制の確立をはかることが、何よりも必要であると考えられるのであります。
 このような見地から、交通の安全に関し、国及び地方公共団体、車両、船舶及び航空機の使用者、車両の運転者、船員及び航空機乗り組み員等の責務を明らかにするとともに、国及び地方公共団体を通じて必要な体制を確立し、並びに交通安全計画の策定その他国及び地方公共団体の施策の基本を定めることにより、交通安全対策の総合的かつ計画的な推進をはかることを目的として、ここに交通安全対策基本法案を提案することといたした次第であります。
 次に、この法律案のおもな内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、交通の安全に関する国、地方公共団体、交通施設の設置者、車両、船舶または航空機の製造事業者及び使用者、車両の運転者、船員及び航空機乗り組み員、一般住民等の責務を明らかにするとともに、交通の安全に関する施策の実施に必要な財政措置等について規定いたしております。
 第二に、総理府に、内閣総理大臣、関係行政機関の長等をもって構成する中央交通安全対策会議を、都道府県に都道府県知事、関係地方行政機関の長等をもって構成する都道府県交通安全対策会議を置く等、国及び地方公共団体における交通の安全を推進する組織を整備することといたしております。
 第三に、国及び地方公共団体は、交通の安全に関する基本的な計画及びその実施のための計画を策定し、これらの計画の実施を推進することといたしております。
 第四に、国は、交通環境の整備、交通安全思想の普及、車両、船舶または航空機の安全な運転または運航の確保、気象情報等の迅速な収集及び周知、車両、船舶または航空機の安全性の確保、交通秩序の維持、救急医療の充実、海難救助の充実、損害賠償の適正化、交通の安全に関する科学技術の振興等をはかるため、必要な措置を講ずることといたしております。また、地方公共団体は、右に述べました国の施策に準ずる施策を講ずることといたしております。
 以上がこの法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#4
○内海委員長 板川正吾君。
#5
○板川議員 ただいま議題となりました交通安全基本法案につき、日本社会党を代表しまして、提案の理由及びその内容の概略を御説明いたします。
 経済の高度成長下で、政府の無計画的な自動車産業育成政策によって、自動車保有台数は逐年驚異的な激増を遂げ、道路交通事故はまさに爆発的増加を示しています。すなわち、昭和四十三年一年間における道路交通事故による死傷者は、死者一万四千二百五十六人と前年に比し四・七%増し、負傷者は八十二万八千七十一人と、前年に比し実に二六・四%という驚異的な増加を示し、死者、負傷者とも史上最高という悲しむべき記録を更新したのであります。
 しかも、現状のまま推移するならば、死傷者の数は三年後の昭和四十六年には百四十五万人、五年後の昭和四十八年には二百万人に達するものと推定され、被害者の数は十二世帯当たり一人になるものと予想されているのであります。
 一方、鉄道事故、海難事故及び航空事故は幸いにして増加の傾向はないが、一度事故が発生した場合には、過密ダイヤ、大型化などによって、多数の死傷者を出すという重大な結果をもたらすものであり、その事故の防止は決してゆるがせにできない問題であります。
 このような交通事故の激増は、ただに国民の生命、身体、財産の損失ばかりでなく、社会生活に甚大な不安を与え、幸福追求の基本的人権に大きな暗影を投げかけているのであります。
 交通戦争、交通地獄という言葉が生れて久しいのでありますが、この間、政府は交通事故防止対策にいかなる努力を払ったでありましょうか、毎年の交通事故の激増が示すように、政府の対策はかけ声だけで何らの効果をもたらしていないという事実は、何人も否定することができません。政府は人間尊重の政治を口にいたしますが、なすことは全く人間不在の政治というほかはありません。
 今日の交通事故の激増をもたらした原因の一つには、政府や独占資本の利潤追求本位の経済成長政策によって、総合的かつ計画的な交通安全政策がなおざりにされてきた点にあるといえましょう。すなわち、経済成長による交通需要の激増に対応しない交通安全施設や、輸送力増強のための、社会資本への極端な投資不足に、その原因があることを指摘せざるを得ません。
 その結果、全国的道路交通の渋滞、過密ダイヤ、殺人的通勤輸送、船込み、空港施設の立ちおくれ等となったにもかかわらず、交通安全という人間尊重の至上命令を、もっぱら罰則や取り締まりの強化、精神訓話と職人的運転技術に依存して、こと足れりとする交通政策を推し進めてきた当然の帰結として、交通安全の今日的危機を招来するに至ったのであります。
 交通安全を確保して、国民の生命、身体、財産を守り、交通事故による社会不安を解消するためには、まずもって、総合的に交通体系を整備して輸送の円滑を期するとともに、交通安全に関する総合的施策を計画的に実施する必要があるのであります。人命の尊重は何ものにもかえることはできませんし、交通安全、事故防止の施策は、いかなる産業政策よりも優先しなければなりません。すべての交通事故から人命を守ることは、いま政治に課せられた重大な社会的要請であると存じます。
 人類は過去において数々の伝染病と戦い勝利をおさめてまいりました。しかし、今日交通事故による死者の数は、すべての伝染病による死者のそれよりもはるかに多いのでありますが、社会は意外と交通事故に寛容であります。人類が悪疫とのきびしい闘争によって勝利を得たように、文明の悪疫といわれる交通事故の防止には、全国民があげてきびしい闘争を起こさなければ、その撲滅は不可能でありましょう。
 ここにわれわれが提案した交通安全基本法案は、陸、海、空にわたって蔓延している文明の悪疫、交通事故撲滅の闘争宣言というべきものであります。
 以上が本法案提出の理由であります。
 以下私は、本法案の内容の概略について御説明申し上げます。
 まず、第一章について御説明いたします。
 すなわち本法案のねらいは、言うまでもなく、交通安全のあり方を明らかにし、交通安全の政策目標を示し、国政の中の交通安全行政に統一的指針を与え、総合的計画の推進をはからせるためのものであります。よって本法案の骨格は陸、海、空にわたる交通安全対策の基本を示すとともに、総合的かつ計画的な施策の実施を促し、そのための国及び地方公共団体の責任と一体的な実行を要求しておるものであります。
 次に交通安全を確保することは、国及び地方公共団体の責任であると同時に、交通運輸事業者もまた、その責任があることを明確にいたしました。
 また、今日交通戦争に立ち向かう交通安全の施策は総合的であり、実行は国民的な協力による総合体制によってのみ可能でありますので、国民は交通に安全に関する国及び地方公共団体の施策に協力しなければならないことといたしております。
 さらに政府は、交通安全の施策を実施するために必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならないことといたしております。特に財政上の措置に関していえば、従来政府の対策は財源措置が十分でなく、地方公共団体の貧困な財政を一そう圧迫するような方法で進められ、このために施策の実行が阻害され、特に機動性を必要とするこの種の対策の実効があがらず、あたら貴重な人命と財産が失われつつありますので、この際、政府は、この点について特段の考慮を払う必要があると考えます。また、政府は、定期的に交通の安全に関する実態調査を行ない、これを公表するとともに、毎年、国会に対し、交通の安全に関して講じた施策及び講じようとする施策等に関して報告しなければならないことといたしております。
 次に第二章におきましては、国及び地方公共団体が交通の安全に関して講ずべき施策を具体的に規定いたしております。
 第一に、第二条において定義しましたような交通安全施設を整備することであります。特に、道路交通の安全を大局的に考えれば、道路そのものを整備することももちろん重要な施策ではありますが、これにつきましては、むしろ、産業経済、交通の利便の見地から検討すべき事項と考え、本法案では、横断歩道橋、道路標識等の交通の安全を確保するための施設を重点的に整備しようとするものであります。
 第二に、車両等可動施設の安全性を確保することといたしております。
 そのためには、それぞれの保安基準を一そう適確に高めていくことと、その基準が確実に守られるよう規制せねばなりません。近時、企業性の追及が急であって、その面から安全性をくずす傾向がありますので、きびしく規制し、一そう保安度を高めさせようといたしております。
 第三に、気象業務の体制整備により、安定運行の確保をはかることといたしております。気象条件が交通安全に重大な関係を持っていることは多言を要しないところでありますが、特に海上交通や航空交通の安全に関しましては、現在の気象業務の体制をさらによく整備することが急がれなければなりません。
 第四に、運転者等の面からの安全の確保について規定を設けております。すなわち運転者はいつでも安全運転ができる最もよい条件のもとに置かれねばなりません。そのためにはまず労働条件を改善し、過労からくる事故を防ぎ、生活環境もそれにふさわしいものに整備されねばなりません。
 第五に、交通規制等を含む交通秩序の維持について規定を設けております。ここにおきましては、陸・海・空の全体にわたり、大衆輸送の確保と安全の両面から新たな規制も考慮しなければならないのであります。
 第六に、交通安全の確保を全うするには国民全体の交通安全思想を普及徹底させることが何よりも重要なことと考えられますので、このために交通安全の教育が教育機関、職域、地域で計画的、組織的に実施されるようにいたしております。
 第七に、交通事故の原因を科学的に究明するため、調査機関の設置等必要な施策を講ずることといたしております。
 交通事故のすべての原因が、運転者等の不注意と、不可抗力に帰せられることは人権にも反するばかりか、問題の正しい解決を誤ることになります。事故の原因が正しく把握され、初めてその責任所在が明確にされて、その対策が立てられなければなりません。交通労働者の長い間の要求である事故原因の正しい究明をこの際ここで実現させようとしているものであります。
 第八に、交通事故の防止に関する科学的かつ総合的な研究等につき規定しております。交通事故防止のための研究をより科学的かつ総合的なものとするとともに、技術開発を推進し、またこれらの成果の利用の促進をはからんとするものであります。
 次に第三章におきましては、救急医療体制等の整備と自動車損害賠償保障制度等の充実について規定しております。救急医療体制におきましては、脳神経外科医療陣営の強化が緊急を要するものであります。
 最後に、以上の施策を実行するには、ただいまの行政部門は多岐にわたっていますので、これを統一的に実行させるため、その機関の整理統合が必要と考えられますが、本法案では、第四章におきまして、別に法律で定めるところにより、交通の安全に関する基本的な計画の策定及びその実施の推進を任務とする行政委員会たる交通安全対策委員会を設置することといたしております。また、第五章におきましては、交通安全対策審議会に関し、所要の規定を設けております。
 以上、本法案を提出いたしました理由及びその大要についてご説明申し上げました。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
 最後に、本法案の審議開始にあたり、念のために一言付言をいたします。
 御承知のように、本法案は、去る四月十五日に本院に提出をいたしました。他方、内閣より交通安全基本法の提出が予定されていたため、同法案と並行審議すべく、閣法の提出待ちとして、上程を控えていたのであります。
 五月九日に至り、ようやく内閣より交通安全基本法が提出されましたので、両法案はいずれも国民の生命、財産を守るための重要な基本法であり、かつ新法でもありますので、その審議には、従来の慣行どおり本会議に一おいて趣旨説明を求めることを適当と認め、その手続をとったのであります。しかるに、議院運営委員会において、自民党、民社党、公明党三党委員の反対により合意に至らず、委員会付託となりました。
 申し上げるまでもなく、交通事故の激増が国民生活に重大な脅威を与えつつあるとき、その抜本的対策を示す基本法の制定はまことに重要な意義を持つものと思います。したがって、同法案の審議は、おざなりであったり、ただ単に早く法案を成立させればいいというものでもありません。法案の内容が真に事故防止に役立つものであるかいなか、国民の注目の中で審議し、国民とともによりよき基本法を制定することが私どもに課せられた当面の責務ではないかと思います。
 しかるに、閣法、社会党提出法ともに、国会の前例を破って本会議の趣旨説明を行なわず、委員会付託となったことは、その意味において遺憾であり、全く理解に苦しむところであります。
 なお、世上には、当特別委員会が去る第五十八国会で採択をした交通安全対策に関する決議の際、政府に対し、自民、社会、民社、公明各党の議員立法として提出されていた交通安全基本法を、次期国会に一本にまとめて提出せよと決議したとし、社会党がその決議に反したゆえをもって、本会議の趣旨説明を行なわせないという説があるそうでありますが、それは次の理由により全くの誤りであり、重大な誤解でありますから、一言釈明をいたします。
 念のために、同決議案中関係する部分を読み上げてみます。
 第五十八回国会、交通安全対策に関する件、昭和四十三年五月二十三日。
  ここ数年来わが国の自動車交通量は急激な増加をみており、これが道路における交通事故発生の一つの大きな要因となって、道路における交通事故による死傷者は逐年増加の傾向を示している。
 また、鉄軌道による交通、海上交通及び航空交通においても、同じくそれぞれの交通量の増大が一つの要因となつて、重大事故が多発する傾向にある。
 このようなすう勢に対処して、人命尊重の見地から交通事故防止の徹底を期するため、政府は、左に掲げる措置を強力に推進すべきである。
 第一 交通安全基本法案について
 すみやかに、交通の安全に関する国、地方公共団体、事業者、住民等の責務並びに交通安全に関する基本的施策を明確にし、国及び地方公共団体を通じての必要な組織を整備し、総合的かつ長期的な施策についての基本計画を策定することなどを内容とする交通安全基本法案を次の国会に提出すること。
 なお、これに伴い、右の法案に関する調査及び立案を行なわせるため、現在の総理府陸上交通安全調査室の所掌事務の変更について検討すること。
 第二以下は省略し、
 右決議する。こういう決議案が採択されたのであります。
 この決議案は、政府に対して総合的かつ長期的施策を内容とする交通安全基本法の提出を求めていますが、それに対する野党の立法権まで放棄して、基本法の立法をすべて政府に一任してはいないのであります。国権の最高機関である立法府が、みずからの権能を放棄して政府に立法のすべてを一任する愚を、私ども社会党はとりません。
 しからば、右決議案に賛成したのはなぜか、その理由はと問われるならば、われわれは、国民の生命財産を守る責任を持つ政府として、国民が強く要求している交通安全に対する基本的施策を示す法案を提出することは、政府の責任を明らかにする意味で必要であると考えて賛意を表したのであって、言われるように、法案の内容まで政府に一任したものでないことは、決議の明文によっても明らかであると思います。
 さらに、決議案審議の理事会においても、私は、他日の誤解を避けるため、社会党が本決議案に賛成する趣旨は前述のとおりであると述べ、来たるべき国会に政府案が提出されたとしても、社会党基本法の提出はあり得ると再三念を押していたことは、当時の関係者もひとしく認めるところであります。したがって、右決議案に賛成したことで、基本法の提出は約束に反し、そのゆえをもって本会議の趣旨説明を拒絶する理由はないのであります。自党に対案提出の予定がないから、他党の提出に言いがかりをつけ、本会議の趣旨説明に反対するというならば、あまりにも党略に過ぎると思います。
 以上、本案の審議に際し、法案の取り扱いに関する誤解を一掃するため、一言付言した次第であります。
#6
○内海委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時散会
ソース: 国立国会図書館
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