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#1
第061回国会 産業公害対策特別委員会 第7号
昭和四十四年四月四日(金曜日)
    午前十時二十三分開議
 出席委員
   委員長 赤路 友藏君
   理事 橋本龍太郎君 理事 藤波 孝生君
   理事 古川 丈吉君 理事 河上 民雄君
   理事 島本 虎三君 理事 本島百合子君
      岡崎 英城君    久保田円次君
      塩川正十郎君    野呂 恭一君
      葉梨 信行君    中井徳次郎君
      岡本 富夫君
 出席政府委員
        総理府総務副長
        官       鯨岡 兵輔君
        内閣総理大臣官
        房審議室長   橋口  收君
        防衛庁参事官  江藤 淳雄君
        防衛施設庁総務
        部長      鐘江 士郎君
        科学技術庁原子
        力局長     梅澤 邦臣君
        法務省民事局長 新谷 正夫君
        厚生政務次官  粟山 ひで君
        厚生省環境衛生
        局公害部長   武藤g一郎君
        通商産業省企業
        局立地公害部長 矢島 嗣郎君
 委員外の出席者
        議     員 角屋堅次郎君
        行政管理庁行政
        管理局審議官  石原 壽夫君
本日の会議に付した案件
 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法
 案(内閣提出第六三号)
 公害紛争処理法案(内閣提出第六八号)
 公害に係る被害の救済に関する特別措置法案(
 角屋堅次郎君外十二名提出、衆法第一〇号)
 公害紛争処理法案(角屋堅次郎君外十二名提
 出、衆法第二〇号)
 公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案
 (小平芳平君外一名提出、参法第一号)(予)
 公害に係る紛争等の処理に関する法律案(小平
 芳平君外一名提出、参法第五号)(予)
 公害委員会及び都道府県公害審査会法案(小平
 芳平君外一名提出、参法第六号)(予)
     ――――◇―――――
#2
○赤路委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案、角屋堅次郎君外十二名提出の公害に係る被害の救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案、並びに予備審査のため本委員会に付託されております小平芳平君外一名提出の公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案、公害に係る紛争等の処理に関する法律案及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案を議題にいたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。古川丈吉君。
#3
○古川(丈)委員 今度の国会に、政府が公害紛争処理法案と公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案の二つの法案を出されたことに対しましては、私は心から敬意を払うものでございます。従来非常に問題になっておることでありましたけれども、こういう法案をまとめるということになりますと、なかなかたいへんなことだと思いますが、幸いにして二法案が提出されましたことは非常に喜ばしいと存じます。私は公害紛争処理法案について質問をいたしたいと思うのであります。
 従来、それぞれ公害の生じないように、騒音防止法、大気汚染防止法等が設けられておりまして、その中には和解の仲介というようなこともその法律にあったわけでございますけれども、今回の紛争処理法案には、調停と仲裁という新しい制度を設けられたわけでありますが、政府が調停と仲裁の制度を新しく設けられました動機と申しますか、理由と申しますか、その辺のところをひとつ伺いたいと思います。
#4
○橋口政府委員 古川先生から御指摘がございましたように、現在の大気汚染防止法、騒音防止法、水質保全法等におきましては、和解の仲介の制度が設けられておるわけでございます。その制度に基づきまして、相当期間の歴史を持っております水質保全につきましては、かなりの和解の仲介の申し出もあり、また仲介の成立した実績もございます。
 ただ、和解の仲介制度は御承知のように和解の事実上のあっせんをするという行為でございます。仲介者が一定の判断を示したりある事実をきわめたりするということは必要のない行為でございます。したがいまして、現在要請されております公害紛争の処理のために必要な紛争の処理のためには、和解の仲介制度のみをもってしては必ずしも十分ではないわけでございます。さらに公害対策基本法におきまして、和解の仲介、調停等の紛争処理のための制度を設けるべきことを政府に対して義務づけをいたしておるわけでございます。ただいま御説明しましたような和解の仲介制度の実態なりあるいは公害対策基本法の要請にかんがみまして、裁判訴訟に至るまでの前の段階といたしまして、簡易迅速に紛争を処理する、そういう制度として、今回公害紛争処理法案を立案し、和解の仲介に加えて調停及び仲裁の制度を設けたわけでございます。
#5
○古川(丈)委員 国家行政組織法には、その三条機関と八条機関とがありますが、三条機関と八条機関とどう違うのか、その点を御説明願いたい。
#6
○石原説明員 三条機関、八条機関と申しておりますのは、現行の国家行政組織法で第三条に規定する機関と、それから第八条に規定しておる機関という意味でございまして、公害紛争処理法案の中で設けられました公害審査委員会というのは、第八条に基づく合議制の機関ということでございまして、第三条に規定するいわゆる行政委員会というものではないということでございます。
 それで一般論としまして、第三条、第八条を分けます場合に、いろいろございますが、最も特徴的なことは、その合議制機関が行政官庁として国民に対してかなり強い強権、公権力を発揮するというような場合に、行政委員会ということになっておるのが一般論でございます。実態としましてはいろいろ違った形のものもできておりますが、一般論として申し上げますと、そういうことになります。
 それから第八条と申しますのは、御承知の審議会等といわれる諮問機関、それから参与機関、それからそれ以外に、御承知の近畿圏本部とか中部圏本部とかいったたぐいのもの、こういうようなものがあるわけでございます。
#7
○古川(丈)委員 権限の問題で三条機関と八条――形式的には、三条に規定されるもの、八条に規定されておるものということのようでありまするが、権限的にも三条機関は権限が非常に大きい、こういう実質的な差異があるようですが、三条機関には大体どういうものがありますか。例示的に、ひとつおも立ったものをお教え願いたい。
#8
○石原説明員 お答え申し上げます。現在総理府にございます公正取引委員会、それから国家公安委員会、土地調整委員会、首都圏整備委員会、法務省にございます司法試験管理委員会、公安審査委員会、運輸省にございます船員中央労働委員会、労働省にございます中央労働委員会、公共企業体等労働委員会、これだけがあるわけでございます。
#9
○古川(丈)委員 中央公害審査委員会は、ただいまの御説明によりますと、国家行政組織法の八条の規定による八条機関ということのようでありまするが、ただいま三条機関の例示もされ、また八条機関にも触れられましたが、今度の中央公害審査委員会は、権限においてかなり強いものがあるように見受られるのであります。たとえば立ち入り検査の件等、あるいは指揮系統においてそういう感じをいたしますが、その点はいかがですか。
#10
○石原説明員 今度できます公害審査委員会は、第八条の合議制機関ではございますが、法案にもございますとおり、「所轄の下に、」とか、委員長、委員の職権の独立行使というようなこともうたいまして、これは第三条機関といわれる公正取引委員会と組織的には同じ形をとっておりまして、組織管理から見まして、ほとんど第三条の合議制機関と変わらない形をとっております。
#11
○古川(丈)委員 形式的には八条機関ではあるけれども、三条機関の性格に非常に近い性格のものである、そういまの御説明で思われるのでありまするが、中央公害審査委員会では、このたび常勤の委員が三名で、非常勤が三名というように、常勤の委員が、新しい制度として三名を持つような委員会というのは非常に少ない。その点からいっても非常に充実したものだと思いまするが、さらにその委員会に所属する職員はどの程度に配置されるか、その辺をひとつ伺いたいと思います。
#12
○橋口政府委員 ただいま御質問ございましたのは、中央委員会の事務機構をどの程度のものにするかという御質問だろうと思いますが、委員会の委員は、御指摘がございましたように、委員長以下六名、非常勤三名を入れまして六名でございます。事務機構といたしましては、予算折衝の過程におきまして、定員としまして十六名の増を予定いたしております。ただ、十六名の定員増のほかに、現在総理府その他各省で持っております定員を活用いたしまして、事務職員の総数としましては二十一名でスタートをすることにいたしております。当初どの程度の職員を配置するかというのが、この制度を考えます場合の一番むずかしい問題であったのでございますが、地方にどの程度の権限を配分し、中央委員会がどの程度の仕事をするかということとも関連いたしまして、そういう点、地方と中央との管轄の問題も勘案いたしまして、とりあえず十六名の定員増、さらに五名を加えて二十一名でスタートをすることにいたしておるわけであります。
#13
○古川(丈)委員 六名の委員とただいま橋口審議室長の御説明がありました事務機構とで、大体初めての制度でありますから、事務量も私はなかなか推定しにくいと思いますけれども、この程度で大体事件を処理し得る確信を持っておられるのかどうか、その点をさらに伺いたいと思います。
#14
○橋口政府委員 事務局の総数は二十一名でございますが、中央委員会の事務組織といたしましては、中央公害審査室という部屋を設けることにいたしております。室長以下二十一名ということになるわけでございます。どの程度の件数が中央委員会の事件になるかということでありますが、これは地方に現在苦情処理等を含めて申し出がございます件数は相当な件数にのぼっております。ただ、公害事件の性質から見まして、できるだけ地元に密着した段階で処理をするのが適当というふうに考えまして、地方に相当程度の権限を配分いたしておるわけでございます。したがって、中央で所管いたしますのは、人の健康なりあるいは生活環境に重大な障害のある事件、あるいは二府県以上にまたがる事件、あるいは全国的な見地からの配慮が必要な事件というふうに限定をいたしております。なお、委員会の発足は本年の十月を予定いたしております等々のことを考えまして、当面の措置といたしまして、二十一名でスタートをいたすわけでございますが、公害取り扱い件数の状況等を見まして、将来はさらに検討してまいりたいというふうに考えております。
#15
○古川(丈)委員 問題は、中央公害審査委員会が、ただいま政府当局から御説明のありましたように八条機関ではある。それをさらに強化された、より以上権力を持つところの三条機関にするほうがいいじゃないかという意見が、根本的に私はあるだろうと思うのです。ただいまも社会党のほうからそんな意見がちょっと飛び出たようですが、しかしいままでの御説明を伺いますと、八条機関だけれども、実質的には相当三条機関に近いものである。しかも委員並びに事務機構におきましても、新しく発足する委員会としては非常に充実したものである、こういう観点から、私は出発の当初としては是認さるべきものだと思います。さらにまた、ともすれば政府職員機関が膨大に過ぎて、今回また総定員法も出ておるようなわけでありまして、そういう意味からいって、行政機構の拡大あるいは人員がやたらにふえるということは、国全体の方針として望ましくない、こういうたてまえからいっても、新しく発足する機構としては、私はこの程度で発足することが妥当だと信じます。
 次にお伺いしたいのですが、ただいま申し上げましたのは、中央公害審査委員会のことでありますが、地方の都道府県の公害審査委員会についてお伺いしたいのであります。
 法案によりますと、府県によりましては、都道府県公害審査会を条例で設けることができるところと、設けないで、ただ委員だけを委嘱することができるところと、二通りになっておるようであります。これは、条例で都道府県公害審査委員会を設けるところと、そうでないところと、政府の方針としてはどういうぐあいに指導されるのか。あるいは全く地方におまかせになって、各府県が審査会を設けるか、あるいは委員だけを委嘱しておいて、事件のつど委員会を組織するというような形をとるのか、政府のその方針と、大体都道府県の中で審査委員会を条例で設ける見込み、あるいはそうでないところの見込みはどんなものか、その点をひとつ伺いたいと思います。
#16
○橋口政府委員 公害現象の発生を全国的に見ますと、府県により相当の差がございます。公害現象なりあるいはそれに伴う紛争処理の多発しております地域と非常に少ない地域とございます。それに伴いまして、府県の事務体制も、公害の部局を設けておりますところと、係程度のものを設置しておるところと、相当な差がございます。そういう実態に着目いたしまして、また公害に対する事務としましては、国の事務であると同時に地域住民の問題でもございますので、これは府県の事務であるという認識に立脚いたしまして、会を設ける、組織としての審査会を設けるところと、名簿を用意しまして、必要に応じて、候補者名簿の中から、仲介委員その他の必要なものを指名する弾力的な方式と、二つ予定をいたしておるわけでございます。まあ、どの程度の府県が審査会を設け、あるいはどの程度が名簿方式になるかという見通しの問題でございますが、これは、先ほど御説明しましたような公害現象の地域的なばらつきもございますので、的確に予想することは困難でありますが、現在各都道府県の中で公害課を設けておるところは二十二ございます。それから係を設けておるところが十二ございます。これもそれぞれの府県の予算の多寡とも関係いたしておるわけでありますので、そういう点を勘案いたしまして、政府といたしまして、どの府県に審査会を設け、どの府県は名簿方式でという指示をする予定はございませんが、見通しとしましては、公害現象の相当多い府県は審査会方式がとられるのではないだろうか、こういう見通しを持っておるわけでございます。
#17
○古川(丈)委員 中央審査委員会と、地方と、二つあるわけですが、先ほど地方と中央との管轄の問題に多少お触れになりましたけれども、ただこの法律案を見て考えられることは、府県によって取り扱いが異なりやしないか、こういうことが一つ心配になるわけです。そういうような問題に関する意見があるわけでございまするが、これは全国共通のものを、あるいはそういうことのないようにやらなくてはならぬと思います。政府としては、管轄の問題と関連して、府県ごとに扱いが変わらないようにしていただくことが必要だと思いますが、その点につきましての政府のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
#18
○橋口政府委員 公害紛争事件の処理に対する姿勢の問題に関連をいたすと思いますが、この法律によりまして、国に中央委員会が設けられ、地方に審査会または審査委員が設けられるわけでございますが、この中央委員会と地方機構との間に直接の上下の関係はないわけでございます。先ほどもちょっと触れましたように、公害事件に対する紛争処理の問題は、国の事務であると同時に、やはり地方団体の固有の事務というふうに考えられますので、直接の指揮、命令、上下の関係は、予定いたしておらないわけでございます。ただ、実際問題として、御指摘がございましたように、事件に対する処理の方式なりあるいは処理の姿勢が異なるということは好ましくないことでございますので、中央委員会が発足いたしました際に、中央委員会としての内部の取り扱いの準則を設ける予定にいたしております。また、その準則に基づいて、地方に対する事実上の指導もいたしてまいりたい。さらに、中央委員会には相当程度の経費を計上いたしまして、地方に対する指導旅費等も予定をいたしておるわけでございます。そういう点もございますので、ただいま御指摘がございましたように、府県ごとに格差が出たり、あるいは中央の取り扱いと地方とが異なるということは万ないように善処いたしたいというふうに考えております。
#19
○古川(丈)委員 ぜひともそうお願いしたいのであります。
 次に、ちょっと問題点を変えまして、今回の紛争処理は、行政機関として行なわれるわけでございまするが、この紛争処理とそれから一般の民事訴訟との関係。法案によりますると、仲裁の場合は双方から申し出がある場合に仲裁が行なわれるわけですが、したがって両者を束縛し、それと同時に裁判を排するように解されるわけでございますが、その関係をひとつ御説明を願いたいと思います。
#20
○新谷政府委員 公害紛争の処理のいろいろの方式と、民事訴訟との関係という御質問でございますが、民事訴訟とおっしゃいましたのは、おそらく裁判所による司法上の紛争の解決手段、いろいろございますが、それとの関係と理解いたしまして、お答え申し上げます。
 今回の紛争処理法案に規定されます仲裁制度につきましては、これは法律で明記してございますように、民事訴訟法上の手続に乗っかってまいります。したがいまして、これは一般の仲裁手続と同様に手続上は考えてよろしいかと思うのでございまして、もしもこの仲裁手続を行なうという合意がございますれば、民事訴訟を提起いたしましても、これは権利保護の利益を欠くものとして訴えは却下されます。したがいまして、仲裁手続と民事訴訟とは両立はしないわけでございます。和解の仲介と調停につきましては事情が違っておりまして、たとえこの法律による和解あるいは調停の手続が進行しておりましても、民事上の訴えを提起することはもちろん差しつかえございませんし、また裁判所による和解なり調停の手続を進めることも一向差しつかえないわけでございます。
#21
○古川(丈)委員 仲裁が成立される場合には裁判の判決と同じ効力を生ずる、その他の場合には一方が承諾しない場合には、また民事訴訟の権限があるということでありまするから、これはやはり行政機関として当然のことだと思います。先ほど三条機関、八条機関の関係を少し質疑応答いたしましたが、この点から見ましても、私は八条規定によることが適当であるというように感ずるわけでございます。
 次に、少し問題点を変えまして、委員の任命につきましては、中央審査委員会は国会の承認を得ることになり、また地方の場合は地方議会の承認を得ることになっております。いま国内の政党的の立場から言いましても、実情から申し上げましても、地方で知事が単独で任命できる場合には、あるいは委員の任命が片寄るかもしれないという心配がありましたけれども、法案が、議会の承認を得ることになっておりますので、この点は私は非常に適宜な処置だと思います。
 紛争処理に関していま一つお伺いをいたしたいのは、中央、地方とも調停等に要する費用は、政令ないし条例で定めるものを除き、各当事者の負担としております。これは公害の特殊性から見まして、被害者にあまり負担をかけてはならぬと思うのですが、その点はどう考えておられるのか、ひとつ政府のお考えをお聞きしたいと思います。
#22
○橋口政府委員 調停、仲裁はいずれにしましても行政上の行為でございますし、行政上の行為の便益を受ける特定人に対するサービスでございますから、現在の法体制のもとにおきましては、当事者の負担になるのが原則でございます。これは民事調停におきましてもそういうたてまえをとっておりますし、その他の紛争処理につきましても、費用は当事者の負担が原則でございます。しかしながら、ただいま御指摘がございましたように、公害事件の特殊性にかんがみまして、できるだけ当事者の負担が少なくなるよう、具体的には政令できめることにいたしておりますが、ただいまの御趣旨もございますから、できるだけ当事者の負担が過重にならないよう対処してまいりたいというふうに考えております。
#23
○古川(丈)委員 公害処理の審査委員会の点は、中央、地方とも大体の点は了解いたしたわけでありまするが、先ほど橋口審議室長からお話のありましたように、現在各府県でも公害課とかいうものを設けて、こういう紛争処理法ができていなくても、地方公共団体は住民と非常に密接な関係がありますから、地方公共団体自身において、いろいろな苦情処理をいたしておるわけです。私はこういうような処理法で、中央、地方に審査会ができましても、やはりそういうところが行政的に処置をされるという処理の方法が非常によいと考えるのでありますけれども、それに対する政府の考え方についてひとつ伺いたいと思います。
#24
○橋口政府委員 苦情処理につきましては、この法律案の四十九条にも一条を設けまして、「地方公共団体は、公害に関する苦情について、住民の相談に応じ、関係行政機関と協力してその適切な処理に努める」ということをうたっておるわけでございます。先ほどもちょっと触れましたように、地方団体に対する公害に関しての苦情の申し出は相当な件数にのぼっておりますし、しかも逐年増加する傾向にあるわけでございます。地方団体におきましても、それぞれ課を設けあるいは係を設け、それに対応する措置をとっておるわけでございますが、ただその中には、総理府関係に類するような苦情も相当程度含まれておるわけでございます。しかしながら、それらを含めまして、地方公共団体においてさらに現在の苦情処理の体制を強化してまいるように、法案が成立しました暁には、自治省とも協議いたしまして、十分善処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
#25
○古川(丈)委員 ただいま御説明されましたように、四十九条において、条文の上でも苦情処理の規定があるわけですが、ぜひともひとつそれも並行して十分活用されまして、審査会とかなんとかいうようなところに行かないで、そういう事件が解決されるように、できるだけその方面の行政を充実していただきたいと思います。
 この法案について一番大きな問題は、先ほど申し上げたとおり、中央審査委員会を行政組織法の三条機関とするか八条機関とするかという問題と、もう一つ、基地公害といわれる問題だと思います。第五十条によって、いわゆる基地の公害は「別に法律で定めるところによる。」と定められておるわけですが、公害基本法第二条に規定する公害そのものは、基地にもひとしく起こるわけでございます。この処理は、防衛施設に関しましては、あるいは立ち入り検査ということも適しないし、そういう特殊性がありますので、私は一般の処理方法と別にすることは賛成であります。またそうあらなくてはならぬと考えておりますが、ただ実際の公害を処理することは、基地公害といえども必要であります。この点につきましては、現に防衛施設周辺の整備等に関する法律がありますが、その法律と、この「別に法律で定めるところによる。」という条文との関係、「別に法律で定めるところによる。」というその内容につきまして、政府に伺いたいと思います。
#26
○江藤政府委員 公害紛争処理法案の第五十条におきまして、防衛施設にかかる公害につきましては、別の法律の定めるところによるということになっております。したがいまして、いわゆる基地公害的なものにつきましては別の法律体系でいく。公害対策基本法の二十一条に基づくこの法案の実際の処理については、処理の対象としては基地公害も入りますけれども、具体的にその処理をどうしていくかということは、別の法体系によるということになっておりまして、必ずしも周辺整備法だけをいうわけではございません。(「新しいものをつくるのか」と呼ぶ者あり)そのほかの法律といたしましては、たとえばいわゆる特損法というような法律もございますし、公海で訓練、演習をやる場合に水面の使用制限をする、した結果に伴って生ずる漁船の操業制限の補償の法律がございますが、こういうような法律、あるいは自衛隊の場合でございますと、自衛隊法百五条によって、漁船の操業を規制した規定がございますが、そのような法律の規定に、おのおの補償額に異議がある場合には再審制度を認めておりまして、その再審制度そのものが、必ずしも和解の仲介とか調停ということばを使っておりませんけれども、広い概念におきましては、同趣旨の救済制度であるというふうにわれわれは考えております。さらにまた、法的には紛争処理法案のような整備された法律ではないかもしれませんけれども、その運用にあたりましては、被害者を代表する団体であるとか、あるいは市町村あるいは都道府県等が中に入りまして、いわゆる第三者機関的な性格を持って中に入っていただきまして、その法律の実施の運用にあたりましては、被害者の立場も十分留意いたしまして法の運用をいたしておる、そういうふうなことによりまして、実質的には紛争処理法案と同じような、あるいはそれ以上の対策を現在講じておりますので、別の法体系で差しつかえないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
#27
○古川(丈)委員 そうしますと、いわゆる基地公害につきましては、公害紛争処理の、この法律とは別な法律という意味は、防衛施設周辺の整備に関する法律を含んで、また必要あれば別の法律も考えられる、しかし、現在においては、いま御説明のありましたように、基地公害については、あるいはこの公害紛争処理法案よりも一歩進んでやっておる点もあるし、さらにまた、やり方としても非常に民主的に運営されておる、大部分は防衛施設周辺の整備に関する法律によって処理されておる、こういうように解釈するわけですが、ただこの法律の書き方からいきますと、いまもちょっと意見が出たように、別に法律を定めるというようなことが書いてあるから、別の法律をひとつ一緒に出せという意見は、当然この書き方からすれば起こると思うのですけれども、差しあたり具体的なそんなはっきりしたものは頭にない、すでにあるこの法律において大部分はカバーしている、しかし、この法において非が生じた場合は、さらに加えて別に法律で定めることがあり得る、こういうように解釈されると思うのですが、その点についていま一度お伺いしたいと思います。
#28
○江藤政府委員 防衛庁といたしましては、現在できております法律の救済制度並びにその制度の実質的な運用の面におきまして、一般産業公害等に比較して相当進んだ手だてを積極的にいたしておるというふうに考えておりますが、もちろん現在の制度が必ずしも完ぺきなものであるかどうかということになると、それは問題があるかもしれませんので、それはさらに引き続き今後とも法律の整備をし、あるいは予算の増額等もはかりまして、さらに紛争の解決には前向きで考えていかなければならぬと思いますが、しかしながら、現在のところ、われわれといたしましては、相当進んだ制度があり、しかもそれで相当運用の妙を発揮しておるつもりでございまして、現在のところ、大体において紛争が円満に解決できておるというように考えておりますので、今後この公害紛争処理法によりまして、民間産業の公害問題の処理がどういうふうに実態的に運用されていくか。それと、基地公害の紛争処理の関連等も考慮しなければなりませんが、この時点におきましては、さらにまた防衛庁関係の法律案の整備というものにつきましては、この際には進んで検討しなければならないというふうには考えております。
#29
○古川(丈)委員 一般のこの法案に対する意見を言う人の中には、基地公害をこの法案から除外するのはけしからぬ、頭からそう考えておる人がたくさんあると私は思うのであります。けれども、ただいま御説明のありましたように、すでにあの法律によって非常にそういう点については意を用いて実際に行なわれておる、こういうことで、私たちも了解しておるわけですけれども、一般的にはその点を十分理解していない。したがって今度の法案から基地公害を何だか除外しておるような感じを持つ人が非常に多いわけでありますので、すでにこういうことをやっておるのだという点は、広く知らしめるように努力してもらいたい。いまのお話のように、さしあたってはすでにある法律で解決しておって、特に具体的に立法しなければならぬというようなところまでいっておらぬ、しかし将来やってみて、その後においてそういう必要があれば、いまお話しのように、立法することもあり得る、こういうような態度をはっきりさせていただかないと、いま申し上げておるとおりに、基地を公害紛争処理法案から除外しておるのはけしからぬ、こう頭ごなしに言われる場合が非常に多いと思いますが、その点は特にお願いしたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、今度の公害紛争処理法にいたしましても、また厚生省の所管でありまするが、被害救済の問題にいたしましても、これは公害が起きたあとの問題であります。
  〔島本委員長代理退席、藤波委員長代理着席〕
公害は今後ともなくさなければならぬということのほうが大事なんで、紛争処理は、公害が起こってしかたがなく紛争が起こる、あるいは被害が起こるためにあとの措置をするにすぎないのでありますから、これは政府全体として、公害が起こらないように、すでに公害基本法ができ、騒音規制法、大気汚染防止法なり、あるいはこの間大気汚染の環境基準も設定されまして、そういうぐあいに、公害の生じないように今後政府としてはやらなければならぬ。この点が私は非常に大事だと思いますので、所管の点はいろいろ各省にまたがることも多いと思いますけれども、政府が一体となって、公害を発生せしめないということに重点を置いて、国の政治をやっていただきたい、こういうことを非常に念願をいたすわけであります。
 私は、紛争処理法案に対する質疑はこれにて終わりたいと思います。
  〔藤波委員長代理退席、島本委員長代理着席〕
#30
○島本委員長代理 藤波孝生君。
#31
○藤波委員 続きまして、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案についてお伺いをいたしたいと存じます。
 この被害救済の制度につきましては、かねてから厚生省を中心として、ずっと議論が進められてまいりまして、一日も早く法律にまとめてもらいたい、こういうふうな各方面の期待のうちに作業が進められてきたものと、私ども理解をしておるわけであります。特に中央公害対策審議会において、いろいろ議論もかわされて、意見の具申が行なわれた、そういった具申でありますとか、また社会保障制度審議会でも、強くこういった方向づけを期待して、そういった中で各省庁の意見をまとめながら成案化をしたもの、こういうふうに私ども受け取っておるわけであります。救済制度については、ひとつ早く確立をしてもらいたい、こういう気持ちでまいりましただけに、いろいろ私どもも議論するところもあるわけでありますけれども、しかし、この法律案が通過するということになれば、日本の公害問題に果たす役割りというものは大きなものがあると率直に評価をして、歓迎しておるわけであります。そういったことを一応念頭に置いて、いろいろ問題点についてお伺いをしてまいりたいと思うわけであります。
 最初に、この法律をおまとめになりました立法の趣旨について、政府のお考えをお伺いいたしたいと思います。
#32
○武藤(g)政府委員 この法案を出すについて、いろいろ長い時間かかったわけでございますが、公害問題の解決のためには、未然に公害の発生を防止するということが一番大切なことであることは言うまでもありません。すでに発生しております公害の被害の救済をはかることが、さらに重要な問題であることは言うまでもございません。公害によります被害につきましては、必ず原因となりますものがありまして、その原因となるものを排出しております企業等がまたあるわけでございますが、現在のいわゆる民事責任制度におきまして、損害賠償の道が開かれてはおりますけれども、いろいろ因果関係の立証の問題、あるいは発生責任者の明確化をはかるという点で、いろいろ困難な問題があるわけでございます。したがいまして、民事救済制度にその道はあるとはいえ、現実の問題として、先生御承知のように、各地でいろいろ問題が起きているわけでございます。こういうような実態を踏まえまして、被害救済の円滑な実施をはかるための制度が従来から非常に要望され、またその趣旨が公害基本法でもうたわれ、また国会におきましても、その点の修正が行なわれたわけでございます。そういうようなことで、緊急に救済を要する人たちの著しい健康被害につきまして、いわゆる企業の民事責任とは切り離しました行政上の一つの措置として、本法案の制度を私ども立案したわけでございます。
#33
○藤波委員 さっきも申し上げたように、医療の救済という考え方を早くまとめてもらいたいという各界の要求にもかかわらず、とにかく提出をするのは今日に至ったわけでありますが、厚生省の側から見て、この法律案がまとまるのがたいへんおくれた、所定の手続を、審議会にいろいろかけておったということもあるかもしれませんけれども、その辺について厚生省のお考えがあれば、この際率直に部長のお考えを承っておきたいと思います。
#34
○武藤(g)政府委員 考え方といいますよりは、むしろ経緯をお話ししたほうが御理解いただけると思いますが、一昨年秋に、私どもが公害の救済制度の立案をいたしましたときに、いわゆる企業責任をどういう形で求めるか、あるいはその費用の根拠なり、あるいはそういったものを、どの程度各地方公共団体あるいは国あるいは企業に持たせるか、そういうような問題が一つの中心課題でございまして、結果におきまして、いろいろ各省との話し合いが進みませんで、四十三年度ではこの問題が取り上げられなかったわけでございます。したがいまして、昨年の春から中央公害審議会に諮問いたしまして、被害救済の問題につきまして議論が行なわれて、結果としては、ただいま提出しましたような案に落ちついたわけでございますが、やはり理屈を申しますと、いろいろな議論がございます。しかし一番困っておられる被害者を早急に救済するという立場から、いろいろの考え方はあるにしても、何とか現状で一つの制度を考えるべきではないかということで、人の健康に関します――被害者をとりあえず救うということで、今度の法案を考えたわけでございます。これにつきましても、企業の負担割合の問題とか、あるいは国と地方との負担割合の問題とか、あるいはそれと関連しまして、生活保障の問題をどうするかといういろいろな問題がございましたけれども、やはり現に健康被害を受けられまして、いろいろ困っておられる方をとりあえず救うというようなことで、この法案を考えたわけでございます。
#35
○藤波委員 いまの御答弁で、厚生省としては必ずしも満足すべきものではないけれども、一番困っておる人を早急に救うということを対象にしてきめたのだ、こういうふうにお答えがあったわけでありますが、公害基本法第二十一条の公害被害の救済制度によりますと、公害被害全般に対する救済措置というものを考えている、そういうふうに私ども理解しているわけでありますが、この法案では、どうして健康被害以外の被害について救済の手を差し伸べようとしなかったのか。各方面にわたって被害の様相はあると思うのですが、特に健康被害に限った理由を、ひとつお伺いいたしたいと思います。
#36
○武藤(g)政府委員 御指摘のように、健康被害のほかに、休業によります所得の問題、あるいは精神的な慰謝料の問題、あるいは農林漁業等の被害がございますけれども、中央公害審議会の意見具申にもございますように、とりあえず最小限度と申しますか、一番困っておられる健康被害に限ることが、いわゆる制度としてすぐ成り立つということにおきまして、今度の措置を考えたわけであります。たとえば、いま申しました所得補償の問題等は、いろいろ現在の社会保障制度との関連等もございます。それから精神的な慰謝料的な問題につきましても、これまた制度として、ある程度いわゆる画一的な制度にすることもなかなか問題がございます。それから農林漁業の問題等につきましても、これは農林水産業というものがやはり健康被害とは違って、いろいろそのときの事情あるいは実態によって、定型的に処理をするということは制度上非常にむずかしかったわけでございます。もちろん、こういう問題は今後の検討に待たなくてはいけませんけれども、比較的単純というと語弊がありますけれども、いわゆる処理がしやすくて、しかもどうしてもまずやらなければならないということにつきまして、今度法案をまとめたわけでありまして、健康被害以外の問題につきましては、先ほどから御審議のありました公害紛争処理法の制度の活用によりまして、救済措置が行なわれることを、私どもとしては期待しているわけでございます。
#37
○藤波委員 この制度に要する費用の分担についてお伺いをしたいわけでありますが、分担の割合については、これはやはり法律案をおまとめになる中でも一番問題点であったろうというふうに推察をしておるわけでありますが、考え方によっていろいろ意見の分かれるところであろうと思います。しかしながら、事業者、国及び地方公共団体の三者が分担する。まずその三者が分担するというたてまえについて、考え方をお伺い申しておきたいと思います。
#38
○武藤(g)政府委員 原因者がわからない段階で、どういう制度をつくるか、その制度をつくった場合に、その財源をどこに求めるかということは非常にむずかしい問題でございますし、また考え方もいろいろあるわけでございます。結論的に申しますと、この制度が、民事責任とは切り離されました一つの行政救済措置であるというような観点から、国と地方公共団体もその一部を負担することが適当であろうかと思います。それから、産業界としても、全体として社会的な責任を買うという観点から、やはり負担していただくということが至当であろうということで、三者で出そうというふうになったわけでございます。
#39
○藤波委員 一つの考え方として、国及び地方公共団体――これは原因者かわからないという場合も往々にしてあろうと思いますけれども、考え方の基本としては、やはり事業者が大幅にこれを分担していくということ、そして原因者がわからない場合においても、産業界でその責任を持っていくというような、公害の発生源に対する世論の要求というものがあろうと私ども理解をしておるわけであります。その辺について特になかなか発生源がつかみにくいという場合、それからどの企業であるかということがつかみにくいというような、いろいろな条件が出てこようと思いますけれども、基本的に厚生省としては、産業界にその責任をとってもらうという考え方で進むべきものだと私ども考えておるわけでありますが、その辺についての部長のお考えを承っておきたいと思います。
#40
○武藤(g)政府委員 公害の被害が出た場合、それには必ず原因があるわけでございますが、その原因を、どこまでだれが負担するかということが一つの議論の分かれ目でございます。厚生省といたしましては、やはり事業をやっておられます産業界にかなりの負担をしていただきたいということが率直な気持ちでございます。しかしながら、これに対しまして、もちろんはっきりした原因者であることがわかれば、それはもう全面的に企業が持つけれども、まだどこに原因があるかわからないという段階で、直ちに企業が全体として全部責任を負うということについては、何か踏み切れないものもありますし、産業自体もそれぞれの責任におきまして、国家には税を納めておるわけでございますし、それからまた、いろいろ行政施策の上におきまして、公害の防止あるいはいろいろの指導面で、国及び地方公共団体も、それぞれ産業施策については責任を持たなければいけないのじゃないか、こういう議論もありまして、結果として、みんなでひとつこの問題を解決しようということで、こういう制度をつくったわけでございます。
#41
○藤波委員 厚生省の公害を担当せられる立場からは、やはり基本的には、これは発生源の企業が全面的に責任を負うべきものというふうにお考えになっておられると見ていいですね。
#42
○武藤(g)政府委員 はい。
#43
○藤波委員 続いて、事業者、国及び地方公共団体の負担割合の根拠をどういうふうにお考えになっておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
#44
○武藤(g)政府委員 まあ、私いま三者で負担するということにつきまして、一つの理屈なり考え方をお話ししたわけでございますが、この法案では、産業界が二分の一を負担することになっておりまして、それ以外をいわゆる国なり地方公共団体が持つようになっておりますが、その点につきましては、いろいろまた御議論があろうかと思いますけれども、産業界が一番ウエートを高く持っていただく、それからまた、現実に現在各地で、原因者がまだ確定しないけれども、いろいろ公害によって被害者が出ておりますけれども、それにつきましての費用の実態等を見まして、それに準じまして、こういう制度を考えたわけでございます。
#45
○藤波委員 この種の制度については、これは健康の被害ということに限定をせられておるわけでありますが、将来精神的な慰謝の問題であるとか、あるいは農林漁業に対する被害の問題であるとか、そういった面も検討していかなければならぬと思うのであります。そういう場合に、率直に審議会の考え方にも出ておるように、これは立てかえ払いだというような考え方であるとするならば、何か当面の間に合わせということでは、ないよりもいいというふうに考えざるを得ないわけでありますけれども、それにしても、所得について被害者の所得の制限を設けて、所得によってこの制度の運用を左右する、いろいろ制限を設けるというふうな考え方は、公害というものに対する考え方として、もう一つやはりきびしさが足りぬのではないかという感じがわれわれ濃厚にするわけであります。その辺について、ひとつ厚生省の考え方を承っておきたいと思います。
#46
○武藤(g)政府委員 この制度につきまして、いわゆる所得制限を設けることははたして適当かどうかという御意見でございます。この点につきましては、過日からいろいろなところで議論が行なわれてきたわけでございます。この制度が、緊急に救済を必要といたします健康被害につきまして、いわば原因者がわかるまでのつなぎ的な措置としての考え方と同時に、社会保障的な性格を持つ制度であるというような観点から、やはり医療費を負担できない方を対象とするということでございますので、負担可能な高額所得者は除外することもやむを得ないのじゃないかということで、所得制限を課したわけでございます。
#47
○藤波委員 それはその立てかえ払いの――具体的に申し上げますが、お金が少ないから、そういった所得制限を設けた、こういう意味ですか。
#48
○武藤(g)政府委員 実際的には、そういうような意味も多少はあるわけでございますけれども、負担可能な高額所得の方は、いわばこの制度によらなくても、実際には医療費の支払い等にはお困りにならないのではないか、したがいまして、その限度で所得制限を課すこともまたやむを得ないのではないか、かように考えたわけでございます。
#49
○藤波委員 所得のいかんにかかわらず、公害によって被害を受けて、それに精神的にはショックを受けておる。これは公害の被害者ならば必ずそうだと思うわけでありますが、そういう意味では、あなたはお金があるから自分で払っていきなさい、あなたはお金がありませんからしばらく立てかえておきましょうというような考え方でなしに、公害というものはやはり貧富にかかわらず、公害によってたいへん御迷惑をおかけいたしました、せめて発生源がはっきりするまで、原因がはっきりするまで、その補償があるまで、とりあえずこういった制度で医療をお受けいただくようにいたしますからというようなたてまえが、公害に対する考え方ではないかと私は思うわけであります。その辺について、もう一つ突っ込んだお考え方を承っておきたいと思うのであります。どうもその辺がなまぬるいような気がしてならないのであります。公害から受ける被害者の心情を何も理解しないで、ただしゃくし定木に、あなたは金があるから自分でやっていきなさいというような考え方であるような気がしてならないわけであります。その辺についての率直なお考え方を承りたいと思うのであります。
#50
○武藤(g)政府委員 先生の御指摘の点につきましては、私自身わかるのでございますが、制度としてやはり一種の応急的なつなぎ措置、あるいは一種の社会保障的な性格をも持っておるというような観点から、やむを得ずこういう制度を考えたわけでございまして、もちろん運用等につきましては、十分先生の御指摘になった点を考えて、できるだけの人を対象として考えていきたい、かように考えております。
#51
○藤波委員 この制度の給付について、不支給、それから返還の処置を設けた理由をお伺いいたしたいと思うのです。
#52
○武藤(g)政府委員 法律の二十四条に「損害賠償その他の給付を受けた場合において、これらの給付のうちに医療費等の支給に相当する給付があると認められるときは、その価額の限度において、医療費等の全部若しくは一部を支給せず、又はすでに支給した医療費等の額に相当する金額を返還させることができる。」という一条があるわけでございます。この制度は、先ほどから申しましたように、原因者がわかりませんので、当面の応急措置として緊急に救済をします健康被害に対しまして制度を考えたわけでございますが、健康被害に関連しまして、発生責任者がわかりまして、損害賠償を行なう、あるいはかりに損害賠償という形では行なわれないにしても、それに相当するような支給が明らかに行なわれた場合に、つまりこの法律によります制度を適用されてさらに給付をもらっていくということは、やはりいわゆる二重に公害の被害者が支給を受けるという形になりますので、その限度では、やはりこの制度からはずしていくということが適当ではなかろうか、こう考えたわけでございます。
#53
○藤波委員 公害が発生をしてきたという中で、私どもいつも感じますことは、どうしても企業がいろいろな理由をつけて逃げ回るという場合が多いわけでございます。これはきょうは矢島さんもお見えでありますけれども、そういう意味で、こういった制度が、とにかく早く発生源をつかんで、そして企業にその責任をとってもらうということをあくまでもたてまえとして進んでいく、それが厚生省の側から見た公害対策でなければならぬと思うわけでありますが、こういった制度ができることによって、かえって発生源を究明する努力が、何か理由をかこつけておくれてしまうというようなことがあったら、これはとんでもないことだと実は思うわけであります。そういった意味で、ひとつ公害部長、厚生省としての基本的な見解を表明をしておいていただいて、あくまで公害対策に対する基本的な考え方と、それから当面それが発生源をつかむまでの応急の次善の策として、こういうふうに被害者に対して手を打つのだという姿勢だけははっきりしておいてもらわぬと困る、そういう意味で、お考え方を伺っておきたいと思うのであります。
#54
○武藤(g)政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、こういう制度をつくった趣旨は、現実に被害者が発生してきておるその事態に着目しまして、応急に手を差し伸べる制度をつくったわけでございますが、こういう制度ができたから、たとえば原因者のほうでも、いわばこの制度に隠れて原因追究を受けないようにするというようなことがあることは絶対許されないことでございますし、また公害の原因者を、あるいは原因を追及していくということは、政府としては、絶対、第一に考えなければいけないことでございまして、この制度のためにそういうことがいささかもゆるぐということがあってはいけない、かように考えております。
#55
○藤波委員 ちょっとこの機会にひとつお教えを願いたいと思うのですが、ある地域で何か公害が発生した場合に、その発生源を究明するというか探求をしていく、その努力あるいはその責任、その辺の国と県との関係ですね。たとえば国はどの程度責任を県に与えておるのか、その辺の国と県との責任者としての立場を、国はどのようにお考えになっておられるか。あくまでも国が責任を持って、それの現地調査を県に命ずるのであるか、あるいは県から意見の具申をしてきて、国がそれに対して結論を出すのであるか。その辺について、従来の慣行でもけっこうですから、基本的な態度をひとつ承っておきたい。
#56
○武藤(g)政府委員 この点につきましては、一つのはっきりした基本的な原則、理屈があるというわけではございません。ただ、いろいろの法律によりまして、大半は都道府県知事もしくは市町村長が、それぞれの法律によりまして立ち入り検査その他の権限を持っているわけでございます。したがいまして、その限りにおきましては、第一次的には県なり市町村がそれぞれの発生源と見られますところに行きまして、いろいろ調査をやるということが必要かと思います。そのほか、国自体として直接責任を持っております。法律によりますれば、国が責任を持つという立場でございます。
 現実の問題としまして、いろいろ府県なり市町村で問題が起きましたときに、まず第一次的には地方公共団体がそれぞれ御努力をなさっているようでございますけれども、いろいろ専門家を動員するあるいは費用を見るというような点につきまして、必ずしも地方公共団体だけで処理をするということが不可能な場合が多いわけでございます。そういう場合には、国がいろいろの援助をする、あるいはむずかしい問題になりますれば、先生御承知のように、国みずから研究班等を組織して原因究明に当たるということでございまして、この点につきましては、いま世間で問題になっております大きな問題は、すべて国のレベルまでこの問題の解決が求められているということでございますので、この公害問題がますます複雑になり、またむずかしい、いろいろな新しい科学が進むと同時に、この傾向は進むのではないかということで、国としてもその責任は十分考えておるわけでございます。
#57
○藤波委員 これは、いつどこでどういう公害が発生してくるかというのは予測できない。全国的に、工業開発を中心にして経済成長を遂げておるわけでありますから、そういう意味では、その面からだけ考えても、いつどこで発生してくるかわからないので、相当厚生省としては全国的に神経を使って進んでいかなければならないと思うのですが、全国的にどうですか、各県が公害に取り組んでおる組織なり機構というものは、相当整備されてきておると考えてよろしいか、お伺いしたいと思います。
#58
○武藤(g)政府委員 基本法ができましてから、公害関係の部局がここ一、二年急速にできてまいりまして、先ほどの紛争処理のときにも御披露がありましたように、たしか専門の部課があるところが全府県の約半分だったと思いますが、だんだん整備をしてきております。ただ、専門家の確保あるいは養成という点がなかなか急速にはできませんので、そういう点でやはり不十分な点がございます。これは国自体でもそうでございますけれども、この点が今後考えなければいけない問題である。それからまた、研究機関等も一応形としては置かれたけれども、その中身が十分でないという点があるようでございます。
#59
○藤波委員 たとえば一つの河川でいろいろ公害が起こってきた、そういう場合が多いわけであります。大きな河川というのは、大体各県にまたがっているような場合が多い、県境になっている場合が多い。したがって、その県が、一つの公害が発生をしてきたということで、責任を持っていろいろ調査をしたり、その発生源を探求するというのは非常にやりにくいと思う場合が多いわけであります。そういう意味で、適宜、そういう公害が発生してきたら、厚生省が直接乗り込んで行って、現地でいろいろ調査をしたり結論を出したりという努力をお進めいただかなければならぬ場合も多かろうと思うわけでございますが、それは厚生省の担当官だけではなかなかたいへんなことで、そのつどその問題に応じた学者を動員するとか、いろいろ研究者を動員するという場合が多かろうと思います。これはそういうことになっておりますが、随時そういう問題が起こってきたら、そういった調査団を構成するというふうなかまえになっておるのか、厚生省として、公害問題について、いついかなる問題が発生してきても、すぐにその調査におもむけるような学者を委嘱してあるのか、その辺の体制はどういうことになっておるのかをお伺いしたいと思います。
#60
○武藤(g)政府委員 その点、私どもの理想を申し上げますと、まだ不十分でございます。実態を申しますと、いろいろ府県等で問題が起きますと、府県で処理し切れない問題あるいは相談したいような問題については必ず連絡がございます。その場合に、私どもとしては、現在の厚生省には、公害関係の研究機関としては、公衆衛生院それから衛生試験所という二つの機関がございまして、その中にそれぞれ専門の部局があるわけでございますが、そこにおられます専門家と相談いたしまして、適当な方を派遣する、あるいはそれで足りない場合は、各省と連絡をして研究班を組み、それでも足らない場合は、たとえば大学等の先生方も御委嘱申し上げて、研究を進めるというようなことでございまして、これはやはり公害の分野が非常に範囲が広い、ますます複雑になってきて範囲が広いということで、いつでも機動隊を準備しておくということはなかなかできない問題でございますが、さればといって、問題が起きましたときにまごまごするというようなことがあってはならないということで、そういう点は十分配慮をしてまいりたい、かように考えております。
#61
○藤波委員 さっきも申し上げておりますように、公害による被害者の心情というものを考えると、問題が起こってきた、県へ飛び込んだ、県はすぐに厚生省に連絡をとった、厚生省はすぐに調査団を派遣してきた、その辺のばっと呼吸の合う迅速な処置というもの、これはどれだけ医療の救済をしてもらうよりも一番肝心なことだと思うわけであります。そういう意味で、将来は厚生省にいろいろな公害というものは、大体これまでずっと具体例も出てきて、日本の経済社会が発展をしていく中で起こってくる公害問題、変貌を遂げていく過密、過疎などの中で、いろいろな公害が予想されるわけでありますから、将来はそういうスタッフをひとつそろえるところまで、厚生省の公害対策というものは、組織の上でもお取り組みを願うということを、ぜひ公害部長、あなたの決意としてお願いをいたしておきたいと思うわけであります。きょうは大臣がお見えになったら、そういうこともひとつ率直にお願いをしたいと思ったわけでありますが、公害部長、十分その辺も御留意を願います。
 もう一つは、裏返しのような話になりますけれども、そういうことは申し上げたくはないけれども、学者を動員する場合に、一つ間違うと、非常にイデオロギーの片寄った方が、その調査なり研究なりの中へお入りになると、その学者の一言一句によって相当大きな影響を及ぼす、これはどういうイデオロギーとかと言う気持ちはありませんけれども、現体制を破壊しよう、とにかく転覆をさせようというふうな、極端な考えでも出てくると、なかなか、どう持っていったらいいか、自分たちが受けておる公害に対する考え方というものはどういうふうに考えたらいいのだというふうに、ずいぶん迷っておる国民にとっては、いま私は具体的な例を申し上げようとは思いませんけれども、困惑の度を増す、こういうことになって、実際の公害問題よりもさらに大きな精神的な混乱状態が、公害というものをさらにややこしくしてしまうというような場合もありはしないかということを私どもおそれるわけで、その辺についての基本的な厚生省の考えというものを、一方で十分ひとつ、随時調査団を派遣できるような体制というものがほしいと同時に、一面、そういうふうな考え方についても、公共という立場から十分な御配慮も願いたい、こう思うわけであります。その辺についての公害部長の考え方を承るというのもおかしいかもわかりませんけれども、ひとつ、あとのほうはいいけれども、前者の、厚生省としての常時の公害対策のスタッフをそろえるという面についての考え方を、ひとつ承っておきたいと思います。
#62
○武藤(g)政府委員 私どもの部局の専門スタッフは決して十分ではございませんし、厚生省でありますために、主として健康問題等を中心とした専門家が多わけでありますが、やはり公害問題につきましては、それぞれの幅広い専門家の参画というものが必要でございます。したがいまして、そういう意味では、厚生省もできるだけ幅広く、かつ多量に専門家をかかえたいわけでございますけれども、それにつきましては一応の限界というものがございますので、そういう点につきましては、各省の応援を求めまして、公害問題の急速かっ公正な解決、あるいは原因者の把握あるいは原因の把握ということについて努力してまいりたいと考えております。御指摘のように、そういう体制については不十分だというふうに、私どもは現在認めています。
 それからなお、後段のことにつきましては、やはりこの公害問題につきましては非常に複雑な問題がありますし、単に一つの分野からだけの究明ということですべてを察知するということは非常に危険でございます。したがいまして、非常に時間をかけて、かつ慎重にやらなくてはいけない問題があるわけでございます。そういう点につきまして、学者の人選その他につきましては、十分先生のお話しのような点は考えていきたい、かように考えておりますが、やはりそういう、世間でいろいろ心配をしあるいは問題になっておりますような問題の解明には、冷静で、やはり社会全体の動向その他について十分高い知識と同時に、いわゆる高い次元におきます一つの識見を持たれる方を選考する必要がある、かように考えております。
#63
○藤波委員 ぜひひとつそういう姿勢を堅持していただいて、つけ加えるようでありますけれども、公害が起こってきたら何か調査団を派遣する、調査団の主力は通産省である、通産省関係の研究所であるというようなことのないように、やはり基本的に、厚生省の公害対策の姿勢というものはき然たる態度をもって、学問的に、人間の尊重、社会開発を進めるという意欲に燃えて公害に対処してもらうということをぜひひとつお願いしておきたいと思うわけであります。
  〔島本委員長代理退帯、委員長着席〕
 幸いに政務次官がお見えになりましたので、総括的なことで最後に一つお伺いをしておきたいと思うのでありますが、社会保障制度審議会の答申の中に、この審議会は法案の意義を高く評価しながらも、こういう文章があるのです。政府は、公費による公的医療制度を確立して、発生者に対する償いを求める権利、これが明白な場合には、国または地方公共団体等がかわって行使するたてまえとすべきである、この疾病の特質から見て、各種医療保険に負担させる、あるいは所得制限を加えるというようなことは適当ではない、こういう意見を表明しておるわけでありますが、これに対する政府の考え方をひとつ承りたいと思います。
#64
○粟山政府委員 社会保障制度審議会の答申は、公害にかかわる健康被害の救済に関する恒久的制度について示唆されているのでございますけれども、本来、公害には必ず原因となる特定の有害物質がある。それからまた、特定の有害物質を排出する企業というものが存在するものでありますが、一方、その有害物質の排出と被害の発生との間の因果関係そのものが不明確である場合が少なくないということ、原因者または被害者が不特定であるか、または特定できても多数であることなどの特質を有しておりますので、そのため、この両者間の司法関係を明確にするため、中央公害対策審議会の意見具申でも触れられておるとおりに、司法の分野における民事制度の改善についての検討、あるいは科学技術面での解明等が期待されるところでございます。審議会での御示唆の点すなわち所得制限を設けることの可否、あるいは求償権の代理取得制の可否、あるいは各種医療保険制度との関係なども、これらの問題に対する多角的な検討などを踏まえた上で結論さるべきものであると考えております。
#65
○藤波委員 補足をして公害部長にお尋ねいたしておきたいと思います。
 いまの政務次官のお答え、一応理解をするわけでありますが、社会保障制度審議会の答申の中にある、いま申し上げた所得制限をしたり各種の医療保険を適用することは決して好ましいことではないというこの表現に基づいて、将来さらにこの制度を改善していくというお考えを持っていらっしゃるかどうか、その点についてお伺いをいたしておきたいと思います。
#66
○武藤(g)政府委員 社会保障制度審議会の御意見は、一つの御意見として、私どもはよくわかるわけでございますが、結論的には、いま政務次官のお話しになりましたように、十分慎重に検討をいたさなくてはならない問題だと思います。
 先ほどからお話がございますように、公害の問題は民事制度でも非常にむずかしい問題である。それから原因究明でもなかなかむずかしい問題がある。したがいまして、この司法制度におきますいろいろの問題の改善なりあるいは科学的な究明という問題がもう少し進みますれば、あるいはこの被害の救済につきましての、現在いろいろ御指摘の問題点等がなくなるような一つの制度が考えられるということも予想できますので、そういう点につきまして、そういう制度ができますれば、こういう問題はいわば自然消滅するのではないか、かように考えております。それまでの間に、いま御指摘のような点につきましては、いろいろ御意見等あるようでございますので、十分慎重に検討いたしたい、かように考えております。
#67
○藤波委員 続いて、少し条項を追って細部にわたってお尋ねしたいと思うわけであります。
 まず第一条でございますが、公害には、さっきもちょっとお伺いいたしましたけれども、いろいろな原因があり、しかもそのいろいろな被害の中の健康被害をとっても、多様にわたっておると思いますが、特に今回のこの法律案で、救済の対象を大気の汚染と水質の汚濁にかかわる健康被害に限ったというその理由を、もう一度明確にお伺いいたしたいと思います。
#68
○武藤(g)政府委員 御指摘のように、この法律では、大気の汚染と水質の汚濁によりまして起きました問題を処理するようになっております。現在のところ、実態を見ましても、それ以外で健康被害が出たというようなことはないわけでございます。もちろんこれは直接的な問題でございますが……。また将来にわたりましても、その他の公害で健康被害が起きるという予想も、われわれは現段階ではいたしておりませんので、現実を踏まえて、この法案を出したわけでございます。
#69
○藤波委員 ちょっともう一つ突っ込んでみたいと思うのですが、この第一条の中に「著しい」という文句が入っておる。これは大気の汚染、水質の汚濁について著しい――これはどの程度を著しいというのか。もし何か資料があれば、お伺いしたいと思うわけであります。
 もう一つは、「その影響による疾病が多発した場合」、こういう文句が入っております。特に水質の汚濁によっていろいろ健康被害を受ける場合に、たとえば漁業地域の水質の汚濁による健康被害、これはいろいろな形で出ております。たとえば廃液の処理が十分でないために水質が汚濁して、そうして、従来海にもぐって魚を取っておったあまさんが、これはまあ明らかに健康被害で、皮膚がかゆくなってくるという場合も多分にあるわけであります。ところが、そういう場合には、その地域で取れる魚は油でくさいぞ、水質の汚濁した地域の魚であるぞというレッテルを張られることがこわいばかりに――これはまたいずれ水質の保全のところで、経済企画庁にお伺いしたいと思うのですが、そういう健康被害というものが外に出ることをおそれて、むしろないしょにして、よごれた海にもぐっておるというような場合もあるわけであります。そういうふうに具体的に考えてまいりますと、「著しい」という水質の汚濁の現象、それから「多発する」という文句を書いてありますが、被害を受けた者がわざわざ表に出さないで、その被害を耐え忍んでおるという場合も、公害の場合にはたくさんにあるわけであります。その辺についてどういうふうにお考えになっておられるか。明らかに健康被害であるならば、健康被害に限るのであるならば、少なくとも健康被害については、著しいとか多発とかいうみみっちいことを言ってないで、全部手を差し伸べるというような考え方がほしいと思うのであります。その辺についての厚生省の考え方を承っておきたいと思います。何でそういうものをカバーしていこうとするのか。それとも当面の間に合わせなのか。非常に気の毒な人を救うのだという立法の趣旨は、そこの辺をどういうふうにお考えになっておられるかを承わりたい。
#70
○武藤(g)政府委員 第一条の目的のところで、「著しい大気の汚染」云々とございますが、これは大気の汚染が生じて病気が出るという場合でも、あるいはあるかと思いますが、いわゆる公害にかかわる疾患というような状態が出ます場合には、大体いろいろ汚染状況が著しい場合に生ずるというようなことでこの表現ができたわけでございまして、病気そのものがとにかく軽ければそれは見ない、あるいは入院して動けなくならなければ見ないのだというような趣旨でこの法律をつくったわけではございませんで、その点はやはり医者にある程度かかる、それは公害病であるという認定がなされる段階でありますれば、それは当然見るという趣旨でございます。それから「疾病が多発した場合」というふうに非常に限定的な書き方をしておりますが、やはり公害病として認定できるような段階になる場合には、かなり疾病そのものがある程度多発をしていなければ、そういう認定はできないのではないかという点に着目しまして、こういうことを書いたわけでございまして、決して著しい大気の汚染でなければ、いわゆる公害病としての認定をしないとか、あるいは疾病そのものが多発だから、何十人も出なければだめなんだというようなつもりで、この法案を書いたわけではございません。
#71
○藤波委員 よくわかりました。
 続いて、第二条で一つお伺いしたいと思いますが、ここの指定地域の指定基準というのはどういうふうにお考えになっておられるか、御所見を承っておきたいと思います。
#72
○武藤(g)政府委員 指定そのものは、著しい大気の汚染または水質の汚濁が生じているということ、それから、その影響によって疾病が起こっている、多発しているという二つの条件ができた場合に、この指定をするという考え方でございます。具体的には、この水質の場合には、これは発病原因と、いわゆる疾病とがわかる場合が非常に多いわけでございますので、この点は疾病が多発している地帯、たとえば神通川下流一帯とか、あるいは水銀中毒が発生しております阿賀野川の下流域だとかいうことで、これは患者がいらっしゃいますれば、その地域を含んで指定をする。場合によっては、別に指定をしなくてもいいんじゃないかという御議論、患者そのものを認定すれば、別に指定をしないでもいいんじゃないかというような御意見もあろうかと思いますが、一応たてまえとしては、指定をしているわけでございます。
 それから大気汚染の関係は、これは先生、三重のほうの御出身でございますのでよくおわかりだと思いますが、大気汚染と疾病の関係は、専門家によりますと、非特異的な関係というのだそうでございますが、疾病に関しまして、発病原因がいろいろあるわけでございます。したがいまして、この点につきましては、一定の程度を越えますと患者が発生する。たとえば慢性気管支炎でありますれば、慢性気管支炎の有症率が相当高いというようなことに着目しまして、たとえば四日市でありますれば、現在やっておりますように、一つの地域を調べまして指定をするという考え方でございます。
#73
○藤波委員 具体的にいろいろ名前が出ましたが、当面指定を予定をしている指定地域、それから具体的な疾病というものは、もうすでに方針はきまっておりますか。今後何らかの機関で検討するお考えであるのか、その辺、もしきまっておりましたら、ひとつお伺いをしたいと思います。
#74
○武藤(g)政府委員 きまっておると申しますと、まだこの法案そのものが通らないわけでございますから、その点は不確定でございますが、大体予想されるものとしては、イタイイタイ病患者が多発しております神通川の流域、それから有機水銀中毒が多発しております阿賀野川の流域、それから熊本の水俣につきましては、現在すでに原因者と目される会社がその点をはっきり認めておりますし、現在まだ解決できておりませんけれども、患者との間の交渉がいま行なわれております。もちろん、もしもこの法律の施行までに解決を見ない場合には、とりあえず解決ができるまでは、これは指定しなくちゃいけないのじゃないか、かように考えております。
 それから、大気汚染につきましては、現在のところ、四日市の海岸地帯を四日市のほうで条例で指定されておりますが、そういう点を指定するつもりでございます。病気としては、慢性気管支炎、肺気腫、気管支ぜんそくというような問題を考えております。
#75
○藤波委員 その辺の指定地域というのは、将来もどんどん公害が発生してきたら追加をしていく、まだ決定したわけではないわけでありましょうけれども、そういう考え方でありますか。念のためにお伺いをしておきます。
#76
○武藤(g)政府委員 公害病がどんどん広がるというようなことは、これは絶対に避けなければいけない問題でございますが、汚染がありまして、そこに疾病が多発していると認められる場合は、十分調査をいたしまして、指定地域を追加するという考え方でございます。
#77
○藤波委員 公害の救済という厚生省の側から見た考え方は、そういう公害が発生した場合には、できる限り広い地域にわたって、しかもあらゆる場合にその適用を受けさせるということを基本にして考えていかなければならぬ、こう思うわけであります。にもかかわらず、さっきからお伺いをいたしております中に出てきておりますように、「著しい」ということばが出てきたり、「多発」をしておるという形容詞がわざわざつけであったりしておるわけで、そういう点については非常に残念なものも、私ども率直に言って、持っておるわけであります。厚生省に、さらに今後こういった面にわたっては、できる限り広く、しかもあらゆる機会に公害を救済していくという基本的な姿勢を、ぜひひとつお願いを、あらためてしておきたいと思うわけでありますが、この指定というのは、地域とそれから疾病を一緒にひっつけて指定をするのですか。その辺、もうちょっと整理をしてお伺いしたいと思います。
#78
○武藤(g)政府委員 そのとおりでございます。
#79
○藤波委員 次に、第五条で、被用者保険の本人の一部負担金を医療費の対象としないのはどういうわけか、お伺いをいたしたいと思います。
#80
○武藤(g)政府委員 被用者本人につきましては、現在一部負担制度というのがございます。一般的には少額でございますし、また現行の制度では、所得の低い方々に対しましては、一部負担金が免除されているような実情にありますので、そういう点を考えまして、本制度では、この点に特段の措置を講じなかったわけであります。
#81
○藤波委員 第七条の支給の要件と支給額について、考え方を承りたいわけでありますが、また同時に、金額の算定の根拠をひとつ明快にお答え願いたいと思います。
#82
○武藤(g)政府委員 医療手当の問題でございますが、本手当は、公害疾患にかかっておられる方が、慢性的な、かつものによりましては非常に重症の方もおられるわけでございますが、こういう問題につきまして、治療方法等が必ずしも確立されていない、可能性についても不安がある、そういうようなことにつきまして、いろいろ長期にわたる療養を続けていかなければならない場合もある。そのために特別の出費もかさむというような実情がございます。こういう点から、精神的な不安をやわらげますとともに、療養に伴う諸雑費を補てんするというようなことで、医療効果を一そう促進するという意味で、この医療手当制度を考えたわけでございます。
 この額なり条件につきましては、政令で考えられているわけでございますが、大体いまのところ、予定としましては、入院患者につきましては月四千円程度、通院患者につきましては月二千円を考えておるわけでございます。この根拠につきましては、これは多ければ多いほどけっこうなわけでございますが、また患者の病状の程度に応じまして、いろいろ区別されるべき性質のものかもしれません。この点につきましては、一応所要経費の一般的なレベルというものを考えまして考えたわけでございます。そのほか、他のそういうふうな制度とのバランス等も考えて、現在、予算ではいま申し上げました金額を考えたわけでございます。
#83
○藤波委員 病気にかかった人の気持ちというものは非常に繊細、デリケートなものがあると思うわけであります。この法案のどこかに明示してあるだろうと思うのですが、公害病にかかって医療を受ける、受けて、この医療手当を受けようとする場合には、本人の申請によるのですか。それとも、医療を施した施設が自動的にその適用を本人に通知するのですか、どういうかまえになっておりますか。所得制限がありますだけに、本人からの申請ということについては、いろいろデリケートな問題が具体的には出てくると思うのですが、その辺どういうふうにお考えになっておられるか、承りたいと思います。
#84
○武藤(g)政府委員 法律制度としては、本人の申請でございます。ただ、先生御指摘のように、その法律の運用なりあるいは周知につきましては、十分やらなくてはいけない問題もいろいろございますので、そういう点につきましては、診療機関等も含めまして、関係機関が、やはり公害の疾病にかかられた場合には、そういう点はまわりの者が十分援助してあげるという体制をとっていきたい、かように考えております。
#85
○藤波委員 ひとつぜひその辺を徹底していただいて、各地方公共団体なり、あるいは医療施設なり、あるいは民生委員とか、いろいろな中で、気の毒な方々を守る立場でお働きになっていらっしゃる方に、特別の配慮をお願いしたいと思うわけでありますが、もう一つだけ、どうもこだわるのですけれども、所得制限という項がありますだけに、その辺もやはり本人の申請になりますね、お伺いをしておきます。所得が幾らであるかということも、本人が申請をするのですか。
#86
○武藤(g)政府委員 制度としては、そうでございます。
#87
○島本委員 ちょっと関連。その所得制限の金額は、何に基づいて制定されたのか。それから総理府発表の勤労者統計というものが出ている。この勤労者がかかった場合は、所得制限に全部ひっかかるわけです。これはそういうようなのを見込んでやったのか、その根拠をこの機会にはっきりさせておきたいと思います。
#88
○武藤(g)政府委員 所得制限の問題は、医療手当の問題と、もとの医療費と両方あるわけでございますが、医療手当のほうは、これは現在原爆被爆者に対します医療手当がございまして、これにつきまして所得制限がかけられております。これは所得税額が一万七千二百円以上の場合に、支給制限を原爆被爆者医療法では行なっておりますが、この額と同額でございます。
 それから、医療費につきましては、そういうような一律な切り方はいたさないで、通牒でやろうと思っておりますが、医療費につきましては、その点は財政当局と十分考慮して、相当高額所得者だけを除こうというような考え方でございます。
#89
○藤波委員 いま島本先生からお伺いがありましたが、もう一回、医療手当と介護手当について所得制限をした趣旨をお伺いしたいと思います。
#90
○武藤(g)政府委員 医療手当と介護手当は、医療費に伴います諸雑費あるいは精神的な不安等につきましての費用でございます。それから介護のために出します費用につきましては、これは原爆被害者に関するものと同じようなことを考えております。この両手当は、健康被害を円滑に救済するということを目的といたします点で、どちらかといいますと、やや補完的な制度でございますので、一定の所得のあられる方につきましては支給制限措置をとることも、ほかの制度との均衡上やむを得ないのではないか、かように考えております。
#91
○藤波委員 一般制度との関係でというお話があり、しかもこの制度が補完的なものである一ずいぶん弱腰に感じられて、次善の策だからこういうのでいいのだというような考え方がもし厚生省にあるとすれば、これは非常に残念なことだと私は思うのですが、その辺について、この措置をきめるまでのいきさつ、各審議会等からも意見の答申があったろうし、その辺のいろいろな話し合いがあったと思いますが、もう一回、おさらいをして、部長の考え方を承っておきたいと思います。
#92
○武藤(g)政府委員 なかなか率直にお話しするのもつらいのでございますけれども、いきさつをお話しいたしますと、やはり健康被害を受けられまして、医者に十分な治療を受けることができないような方も中にはおられる。いわゆる国保等では七割程度、あるいは健保では、家族の方は半分程度、その自己負担分についてなかなか支払いができなくてお医者さんに通うこともできない、あるいはできにくくなっておるというような状況が、現実に一部の地方であったわけでありまして、そういう点につきまして、やはり医療だけは十分受けられるようにしようではないかというようなことでこの制度を考え、それからまた、その際に、やはり重症の方につきましてはいろいろ入院等で費用がかかっているというような点に着目しまして、何らかの援助をすべきではないか、なかなか生活保障その他の保障までは手が回らぬにしても、何らかの援助をすべきじゃないかというようなことを考えまして、この制度と似たような制度としましては、原爆につきましての制度がございましたので、こういう制度に準じて、その制度との均衡等を考えまして、いまお話しいたしましたような最小限の手当を考えたというのが従来のいきさつでございます。
#93
○藤波委員 介護手当の金額の基準が示されたわけでございますが、これは何を補完をして――三百円なら三百円ということで、今日介護していけるのかどうか。厚生省は一番実態を知っておるはずだと私は思うのです。それでなければならぬと思っておるのですから、そういう意味で、何を補完するのか、ひとつお伺いしておきたい。
#94
○武藤(g)政府委員 一日三百円の根拠でございますが、これは原爆被爆者の介護手当も日額三百円になっておりますが、それと、それから生活保護その他の問題につきましても同程度の金額というように私ども記憶しておりますが、そういう額を考えまして考えたわけでございます。
#95
○藤波委員 いろいろいきさつも、御説明をいただいたし、口で言えない御苦労も厚生省としてはあろうと思うわけであります。今日介護するのに一日幾らくらいかかると厚生省では考えていらっしゃいますか。一番具体的にぶつかってみえる厚生省でありますから――私はそれが少ないとかなんとかいま言いませんから、金額は幾らくらいとはじいていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
#96
○武藤(g)政府委員 都会におきまする家政婦さん等の日当につきましては、まだ私も最近存じませんけれども、(「二千円だよ」と呼ぶ者あり)いまどなたかおっしゃいましたように、二千円近いものだ、かように考えております。
#97
○藤波委員 高いですね、ほんとうに。普通医療を受けようと思う者は、介護の必要のある人というのはなおさら困る人に違いないが、非常に高いですよ。特にそれが公害病で、自分で求めたのではなしに、人からやられてこういう病気になったのだということで医療を受ける。決してそれは三百円でいいと政府が考えておるわけではないにしても、補完すべきもとは何もないのですから、補完補完とおっしゃるけれども、政府は三百円と考えておるのかというような感じは必ず持つに違いないと思うのですけれども、将来ぜひこの辺は十分御配慮を願って、基準が原爆患者の手当が基準だというのではなしに、やはり現実と照らし合わせた考え方というものを厚生省がどうしても持っていただかないと、どうもその辺救われない感じがするのであります。政務次官、ひとつお考え方だけ承っておきたいと思います。
#98
○粟山政府委員 お説のとおりと思います。できるだけ御趣旨に沿うような方向に持っていくように努力しなければいけない、したい、そう思います。
#99
○藤波委員 続いて、ちょっと飛んで、第十六条の関係に入りますが、救済措置の実施に協力をするという目的で設立される法人で、指定予定のものがありましたらあげていただきたい。また指定法人と公害防止事業団との間に締結される拠出契約はどのような契約になるのか。この契約によって、拠出金の確保は十分はかれると考えていいのかどうか、その辺について考え方を承っておきたいと思います。
#100
○武藤(g)政府委員 事業者の関係から拠出されます費用につきまして、その費用を負担する団体の問題でございますが、現在経団連が中心となりまして、新たに財団法人を設立するように準備中でございます。名前は私ども報告を受けておりませんが、現在設立の準備中でございます。
 それから、その法人と公害防止事業団との間に締結される内容でございますが、この法律によります医療費、医療手当、介護手当の支給に関します費用の半分を、毎年一定の期日までに事業団に拠出する、それからこれにつきましては相当期間継続するというようなことにつきまして、契約を結ぶことになろうかと思いますし、その点につきましては、厚生、通産両大臣の、契約を締結される場合には、承認を必要としまして、内容につきましても十分監督できる、かように考えております。
 指定法人からはたして拠出金が確保されるかどうかという問題につきましては、この契約によりまして確保できるというふうに考えますけれども、また実際、関係団体のほうでも、この点は十分お約束を現段階でもいただいておりますし、絶対に問題はないように処置するとお考えになってけっこうだと思います。
#101
○藤波委員 指定法人からの所定の拠出金が拠出されなかった場合にはどうしたらいいのか、そういう場合を想定して、ひとつお考えを伺いたいと思います。
#102
○武藤(g)政府委員 この点もちょっといま触れましたけれども、契約を結ぶということでございますので、まず絶対だいじょうぶだというふうに私どもは考えております。しかも指定法人につきましては、これは通産省が御監督なさると思いますので、その点については、絶対先生の御心配のようなことはない、こういうふうに考えております。
#103
○藤波委員 次いで第十七条、いまのことになりますが、指定法人に拠出する事業者の範囲は、どのように厚生省はお考えになっておられるか、お伺いいたしたいと思います。
#104
○武藤(g)政府委員 これは通産省のほうがお詳しいわけでございますが、私どもが現在受けておる連絡では、なるべく広い範囲の事業者から拠出を求めるというように、経団連のほうでも申しておられますので、たぶんそういうふうになる、かように考えております。
#105
○藤波委員 いまの問題について、通産省矢島部長お見えでございますが、事業者の範囲をどのように通産省はお考えになっておられるか、お伺いいたしたいと思います。
#106
○矢島政府委員 事業者の範囲につきましては、特に限定する意向はございません。その指定法人ができました場合に、彼らの社会的責任の認識のもとに、集め得る範囲のものを考えております。特に通産省として、この程度の事業者が至当だというふうな限定的なことは考えておりません。と申しますのは、中央公害対策審議会の答申にございますように、事業者といいますか、産業界全体の社会的責任に基づいて負担するということになっておりますから、そういう趣旨に沿うためには、特に限定することなく、産業界全体、広い範囲の事業者から拠出されることが至当である、かように考えます。
#107
○藤波委員 指定法人の彼らとおっしゃいました。指定法人の彼らがずっと集めてくるのだ、それは非常に広い範囲から集めてくるのだ、こういうふうにおっしゃいましたが、全くその辺は指定法人にまかせるというお考えですか、承っておきたい。
#108
○矢島政府委員 私どもとしては、その点は指定法人にまかせるというと語弊があるかもしれませんけれども、特に限定したり、あるいは特にこの程度という指示をするつもりはございません。要はその指定法人が、総額としての必要な額だけを必ず出すということに重点を置いております。
#109
○藤波委員 その場合の事業者の範囲の基準というようなものは、やはりあるのじゃないかと私は思うのですが、そういった点についても、大づかみな話でもけっこうでありますが、通産省としてはお考えを持っていないのか、ただ指定法人が、彼らが産業界から集めてくればいいのだということで、全くまかせるのか。もう一回ひとつ念のためにお考えをお聞かせ願いたい。たとえば業界であるとか事業者の規模であるとか。特に業界ですね。公害の場合は発生源としての考え方があるわけでありますから、しかもこれまでにもずいぶん具体例があるわけでありますから、その辺についての通産省の考え方は、固まっていないなら固まっていないでけっこうでありますけれども、全くまかせていくのかどうか、お伺いしておきたいと思います。
#110
○矢島政府委員 再度の御質問でございますが、特に限定したり、特に指定したりする考えはございません。要はその総額を必ず納めてもらう、そこに重点を置いて考えております。
#111
○藤波委員 それで集まるとか集まらぬとかいうことは、これは僣越でありますから、私はいま言うつもりはありませんけれども、少なくともやはり公害が発生をする、企業の側からいえばどういう言い方になるかわかりませんが、私ども国民の側から見れば、危険性ということばをあえて使いたいと思いますが、そういった業界というものがやはり主体になってやるべきものだと私どもは考えますが、その辺について、通産省はどのようにお考えになりますか。産業界全般でいいわけですか。
#112
○矢島政府委員 私の答弁が若干形式論になって恐縮でありますが、特に限定したり特に指定したりすることはいたしませんけれども、実際問題として常識的に考えますと、産業界の中でもやはり公害に関係するような業界が主として財団法人に拠出するというようなことになるのじゃないかと思ってはおります。ただ、いまここで、中央公害対策審議会の答申にありますように、個々の業者の民事責任ということを離れて、産業界全体の社会的責務、こういうことで進んでいるわけでありますので、特に限定したり指定したりするという考えはないということであります。
#113
○藤波委員 もう一回念を押しますが、特に業界を指定したり規模を指定したり−全く産業界の中から要るだけの金額を集めればいい、こういうふうにいまの段階であろうと何であろうと、通産省はお考えになりますか。もう一回、念のためにその辺あらためてお伺いをしたいと思います。
#114
○矢島政府委員 先生の御質問に直接お答えすれば、どういう事業者から集めるかということは、その財団法人にまかせてあるわけであります。先生が再度御質問になったのは、そういうことでは一体ほんとうに集まるのかどうか、こういう御懸念だろうと思います。ところが、これは先ほど厚生省のほうからも話がございましたが、本件につきましては、いわば一年がかりで業界を十分説得しまして今日に至ったわけであります。いわば十分の根回しというものができておるわけであります。もちろん最終段階あるいは現段階におきましても、はっきり経団連首脳から約束をとってございますから、単に現在と申しますか、法案を出す際の段階に約束をとったというだけではなく、いわば一年間にわたってそういう点の必要性を説得いたしまして、十分根回しをやったという経緯がございますので、必ずその金額は出すということには間違いないと確信いたしております。
#115
○藤波委員 どうも矢島さん、くどくなって申しわけないのですが、その金額が集まるかどうかということは、大きな会社が一つか二つ出しても、それを満たすだけの金額は、そのつもりならば、経団連の首脳がそれこそ約束をしたら出るでしょう。それはまあその辺の心配はないのです。ただその内容として、何でもいいからそれだけの金額が集まればいいのだということでは、これは公害に対する考え方というものはそれではいけないのではなかろうかという感じがするわけでございます。そういう意味で、せっかく通産省も一年間もかかっていろいろ根回しをされたわけでございますから、そのいきさつの中で、それを話してくれとは申し上げませんけれども、通産省としては、こういう方向にいくのが望ましいという基準は、やはりあるのではなかろうかという感じがするのであります。たとえば、こういう公害が発生するような業界が特に主になって拠出しなさいとか、あるいは発生源になる企業は、大きい小さいにかかわらず、やはり責任を負って出しなさいとか、そういった、企業の責任というものの裏づけに立った拠出という考え方が、公害であるだけに、要求されていいと私は思うのです。総額が集まればいいんだというどんぶり勘定では、ちょっと私ども納得しかねる気がするわけで、あなたも決してそういうふうにおっしゃってみえるわけではないと思うのですけれども、いまお話しになれないとしても、何かこういうことが望ましいというような御発言でもいただけたら、たいへんありがたいと思うわけであります。くどいようで申しわけありませんけれども、ひとつあらためてお伺いをしておきたいと思います。
#116
○矢島政府委員 公害に対する産業界全体としての社会的責任ということを考えますと、特に産業界自身が、この審議会の答申にある産業界全体としての社会的責任ということを認識すれば、どういうふうに出すかという考え方はおのずから浮かんでくるものと私は思います。ただ通産省がダイレクトに、この程度で出しなさいというような基準をつくるということは、やはりなかなかむずかしいわけでございますし、そういうことをやることは、自主的に産業界に喜んで出してもらおうという趣旨からいいまして、かえって逆行するようなことになるのではなかろうかと思います。産業界の良識に期待して、その負担の中身を彼らが考えてもらうということを期待しております。
#117
○藤波委員 産業界の社会的責任、そして産業界の良識、たいへんりっぱなことばで、私どもぜひそのようにお願いしたいと一番願っておる一人でありまして、そうありたいと思いますけれども、やはり法人にまかせるというのではなしに、この拠出については、産業界の社会的責任、産業界の良識、それがおのずから出てくるであろうと思いますから、それを期待したいわけであります。その辺についての基準は、今後も法人と通産省がよく話し合ってやっていくというお考えをお持ちにならないか。法人でまとめて金を集めればいいんだという突っ放した言い方ではなしに、今後もひとつ十分通産省は話し合って、国民の期待にこたえていく、こういう立場はやはり鮮明にしてもらわなければ困ると思うのですけれども、今後、基準について法人とお話し合いになって、よく提携をして進んでいくというお考えを持っておられるかどうか、念のために、もう一回部長さんにお伺いをしておきます。
#118
○矢島政府委員 もとより、この財団法人が産業界全体としての社会的責任を果たすというために、どういうふうに拠出していくかということについては、私どもとしても関心があるわけでございますので、基準をつくるとか、そういうようなことは一応別といたしまして、この財団法人を指導監督する際において、この点については、もちろん財団法人とよく話し合っていきたい、かように考えます。
#119
○藤波委員 どうもくどいことを申し上げまして、すみませんでした。ぜひひとつそういうことで、通産省としては、産業界の社会的な責任というものを産業界が十分果たせるように、今後も十分な話し合いの上に立って指導をしていっていただきたい、こういうふうに、重ねてお願いをしておきたいと思うわけであります。
 続いて第十八条に入りますが、法律上では、国の負担割合が明確に規定されていないのであります。その理由はどういうことになっておるか、部長の御説明を承っておきたい。
#120
○武藤(g)政府委員 これは特に他意があったわけではございませんけれども、事業団が地方で負担をなさる県または市町村に納付する割合は書いてございます。それから事業団に拠出されます事業者団体の拠出の割合も、いまお話がございましたように二分の一でございまして、これも明記してございます。したがいまして、その差し引きが国の交付金の割合になるわけでございますので、結果として明らかでございますので、書かなかったわけでございます。具体的には、国の場合は、市が認定権者になる場合には、これは六分の一でございますし、それから県が認定権者になる場合には、これは県が四分の一、国の交付金は四分の一ということで、六分の一の場合と四分の一の場合と、両方に分かれるわけでございます。
#121
○藤波委員 次に、第二十条に移らしていただきますが、公害被害者認定審査会、この委員は、知事または政令で定める市長が任命する、こういうことになっておりますが、この審査会の委員の撰出基準を承りたいと思います。そういうものはありますか。知事並びに市長にまかせるのかどうか。厚生省としてのお考えを承りたいと思います。
#122
○武藤(g)政府委員 具体的な任命そのものは、知事さんなり市長さんがやられるわけでございますが、「医学に関し学識経験を有する者」ということでございますので、これがいわば基準と申してもよかろうかと思いますが、具体的には、たとえば現にいろいろ治療をやっておられます臨床家の方、あるいは公害問題等につきましていろいろ研究をやっておられる大学の医学部の先生、そういう方が現にも委員をやっておられますが、こういう方々がやはり選考される、かように考えております。
#123
○藤波委員 この第二十条によりますと「医学に関し学識経験を有する者」、こいうことになっております。これは全く医学に関する学識ですから、お医者さん並びにそういった筋での研究者の方ということになると思いますが、これは単に医学だけでなしに、一般の社会的な学識経験というものもこれに含まれる必要があるような気もするのですが、全くお医者さん的な人にまかしていいのかどうか、そういう考え方なのか、もう一回念のために承っておきたいと思います。
#124
○武藤(g)政府委員 結論から申しますと、「医学に関し学識経験を有する者」の中から選ぶことでございますが、公害被害者認定審査会というものは、申請をなさった方が公害医療を受けるための患者であるかどうかというような点を、主として医学上の問題として判断するわけでございますので、そのほかの要素で、この方はだめとかいいとかいうことをいろいろきめるのではないという考え方でございますので、この審査会は、医学上の学識経験者の方によってのみ運営されるのがむしろ公正ではないか、かように考えております。
#125
○藤波委員 もう一回念のためにお伺いいたしますが、純医学的に認定するという審査会だと考えてよろしゅうございますか。それならば、たとえば県なりその政令で定める市の医師会に委託するというような方法もあるのではなかろうかという気もするのです、純医学的なものであるだけならば。その辺とのからみ合わせも考えて、ひとつお考えを承っておきたいと思います。
#126
○武藤(g)政府委員 第三条によりますれば、「その者の当該疾病が当該指定地域に係る大気の汚染又は水質の汚濁の影響によるものである旨の認定を行なう。」ということで、その認定の際に意見を聞くということでございます。もちろん先生のお話しのような点も考えられますけれども、やはり医師会以外の、たとえば大学の先生等も現実の問題として審査会にも入っておられますので、そういう点は、中心はもちろん臨床家の方が中心でございますけれども、やはり大学の先生等も入れて運用しておるという現実も踏まえまして、こういうふうに考えたわけでございます。
#127
○藤波委員 いろいろ承ってまいりまして、最後のところでさらにお伺いをしておきたいと思うのですが、さっきの所得制限、どうもこだわるようですけれども、もう一ぺん最後に整理をしておきたいと思います。
 第二十二条で、医療費について支給制限がある。その趣旨、それから具体的な基準をもう一回承りたいと思います。
#128
○武藤(g)政府委員 医療費についての支給制限の問題は、先ほど医療手当等のところで、あわせて私簡単に触れておきましたけれども、さらに念を入れて御説明いたしますと、やはりこの制度が、医療費にお困りになっておられる方についての一応原因者がわかるまでのつなぎ的な性格と、それから社会保障的な給付の性格の二面を持った制度でございますので、いろいろ御意見はあろうかと思いますけれども、一応支給制限の制度を考えたわけでございます。もちろんこの問題は、医療手当よりもさらに医療費そのものでございますので、この運用については十分慎重に考えていかなければいけないということで、現在のところ額そのものはきめておりませんけれども、高額所得者をはずしていこう、こういう考え方でございます。
#129
○藤波委員 その基準は厚生省できめるわけでありましょうか。これも法律案が通ったらすぐにきめるわけですか。どういう機関できめるのですか、高額の基準は。
#130
○武藤(g)政府委員 具体的には、知事または市長さんがおきめになるわけでございますが、この点は各府県でばらばらであるということではいけませんので、厚生省が基準等につきましては十分考えていきたい。この医療費の問題は、たとえば医療費の負担の内容も、いろいろ患者の方々によって違いますし、場合によっては、一家の中で一人だけでなくて、複数の公害医療患者の方が出られることもありますので、医療手当等のように一律にきめるということでなしに、弾力的に考えていく必要があるということを考えております。
#131
○藤波委員 いろいろ承ってまいりましたが、最後に、政努次官にひとつ率直にお願いをしておきたいと思うわけであります。
 中央公害対策審議会のこの被害の救済の制度についての意見の中にも、「将来の課題」として、ちょっと読み上げますが、「たとえば、行政分野においては、救済費用の財源について、事業者、国、地方公共団体等の費用負担の方法及び原則に関し検討を進めるとか、あるいは紛争の処理制度の実施の状況如何によっては被害の救済制度そのものについて再検討を加えるとか、被害の救済制度の社会保障制度との関連づけについて改めて考慮するなど、公害問題の動向に即応した多角的な検討を行なってゆくことが必要であろう。」こういうふうな文面も見られるわけであります。私どもこの審議に当たっておりましても、今回非常に厚生省が中心になって、また通産省は通産省なりにいろいろ御努力になって、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法をおまとめになるについては、たいへんな日時も要し、労力も要して、御苦労があったということを御推察するわけであります。しかしながら、その評価は高く評価しながらも、今後に残された問題は非常に多いということを、私ども実は与党として審議に当たりながらも、公害の被害を受けた方々の心情を思うときに、いろいろ改善をしなければならぬところの多々見受けることを率直にひとつ御披露申し上げておきたいと思うわけであります。
 そういう意味で、従来も非常に公害対策には熱心にお取り組みをいただいてまいりましたが、今後もひとつ厚生省はき然たる姿勢をもって、公害対策、できる限り予防措置を講じ、被害が発生した場合については万全の対策を講じて、被害者に対して救済の手を差し伸べる、そういう姿勢を今後とも、厚生省の中においてというみみっちい話ではなしに、日本の政治の中に、政府の中に――粟山政務次官もせっかく御婦人の立場で政務次官におなりになって、各方面の期待は非常に大きいわけでございますから、ひとつ熱心にお取り組みをいただいて、今後もこの被害救済については、さらに前進し、改善を進めるという姿勢を、この機会に御表明をいただいて、私の質疑を終わりたいと思うのでありますが、政務次官の御所見を承っておきたいと存じます。
#132
○粟山政府委員 ただいま皆さまの御意見を伺いながら、でき上がろうとしておりますものについても、まだまだ十分でないことは、もう御質問いただき御返答申し上げておるうちにも、いろいろとたくさんな未熟な問題が出てきているということを率直に認めております。したがいまして、今後もこういう公害が起きないようにということについては、もう至急にあらゆることを考えて対策も考えなければなりませんし、また起きてきます問題については、この処理についても、被害者の方、ただその方だけが悩むというようなことのないように、これから厚生省としては、また厚生省ばかりでなく、他の関係省ともいろいろと御相談をしながら、できる限りのことは検討して、万全の策が立てられるように努力をすべきであるし、やりたい、そういう考えでございます。
#133
○藤波委員 政務次官の非常に熱意に満ちた御答弁を了といたしまして、以上で私の質疑を終了いたします。
 ありがとうございました。
#134
○赤路委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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