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#1
第061回国会 産業公害対策特別委員会 第8号
昭和四十四年四月十一日(金曜日)
    午前十一時二十三分開議
 出席委員
   委員長 赤路 友藏君
   理事 橋本龍太郎君 理事 藤波 孝生君
   理事 古川 丈吉君 理事 河上 民雄君
   理事 島本 虎三君
      伊藤宗一郎君    久保田円次君
      塩川正十郎君    地崎宇三郎君
      葉梨 信行君    中井徳次郎君
      折小野良一君    岡本 富夫君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)      床次 徳二君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      菅野和太郎君
 出席政府委員
        内閣総理大臣官
        房審議室長   橋口  收君
        防衛庁参事官  江藤 淳雄君
        防衛施設庁総務
        部長      鐘江 士郎君
        厚生政務次官  粟山  秀君
        厚生省環境衛生
        局公害部長   武藤g一郎君
        通商産業省企業
        局立地公害部長 矢島 嗣郎君
 委員外の出席者
        法務省民事局参
        事官      宮脇 幸彦君
        法務省刑事局参
        事官      鈴木 義男君
    ―――――――――――――
四月八日
 公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を
 改正する法律案(内閣提出第九四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
四月七日
 諏訪湖の浄化対策に関する陳情書(長野県知事
 西沢権一郎)(第二五九号)
 公害に関する調査試験研究機関の設置に関する
 陳情書(宮崎県市議会議長会長宮崎市議会議長
 奥野弁吉)(第三一一号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を
 改正する法律案(内閣提出第九四号)
 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法
 案(内閣提出第六三号)
 公害紛争処理法案(内閣提出第六八号)
 公害に係る被害の救済に関する特別措置法案(
 角屋堅次郎君外十二名提出、衆法第一〇号)
 公害紛争処理法案(角屋堅次郎君外十二名提出、
 衆法第二〇号)
 公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案
 (小平芳平君外一名提出、参法第一号)(予)
 公害に係る紛争等の処理に関する法律案(小平
 芳平君外一名提出、参法第五号)(予)
 公害委員会及び都道府県公害審査会法案(小平
 芳平君外一名提出、参法第六号)(予)
     ――――◇―――――
#2
○赤路委員長 これより会議を開きます。
 去る八日本委員会に付託になりました内閣提出の、公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。菅野経済企画庁長官。
#3
○菅野国務大臣 ただいま議題となりました公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。
 公共用水域の水質の保全に関する法律は、公共用水域の水質の保全をはかるため、指定水域の指定、水質基準の設定等に関する規定を設け、の相互協和と公衆衛生の向上に寄与することを目的として、昭和三十三年に制定されたものであります。経済企画庁といたしましては、制定以来今日に至るまでの間に、五十九水域について水質基準を設定し、公共用水域の水質の保全に万全を期すべく、鋭意努力を重ねてきたところであります。
 しかしながら、最近における国民経済の急速な成長に伴う産業活動の活発化、人口と産業の都市への署しい集中等により、公共用水域の水質の汚濁原因が多様化するとともに、水質汚濁の問題が全国的に発生する傾向が見られるようになってきております。
 このような事態に対処して、本法の規制対象業種の範囲を拡大するとともに、国と地方公共団体との協力関係を一そう密接にする等により、公共用水域の水質の保全のための施策をさらに強化する必要が生じてきたのであります。また、本法の目的等につきましても、さきに制定された公害対策基本法の趣旨に即しまして、所要の改正を行なうことが適当と考えられるに至ったのであります。
 以上が、この法律案の提案の理由であります。
 次にこの法律案の内容の概略を御説明申し上げます。
 第一点は、公害対策基本法の趣旨に即して、この法律の目的のうち「公衆衛生の向上に寄与すること」とあるのを「国民の健康の保護及び生活環境の保全に寄与すること」に改めるとともに、指定水域の指定要件についても、これに即して所要の改正を行なうことであります。
 第二点は、近年における水質の汚濁原因の多様化の傾向に対処して、この法律の規制対象として、従来からの工場、鉱山等に加え、へい獣処理場等、採石場、と畜場、廃油処理施設及び砂利採取場を追加するとともに、し尿処理施設、養豚場等を政令で指定して追加する道を開くことであります。
 第三点は、水質汚濁問題については、全国的な立場から統一的な対策を実施するとともに、地域の特殊性を考慮して適切な措置をあわせて講ずることが必要であることにかんがみまして、公共用水域の水質の保全につき、関係地方公共団体の長は、経済企画庁長官に対し、必要な協力を求め、または意見を述べることができることとするなど、国と地方公共団体との協力関係の緊密化に関して規定を整備することであります。
 第四点は、水質基準の設定後における指定水域の保全に万全を期するため、都道府県知事が、指定水域の水質の汚濁の状況を把握するため必要な測定を行なうものとすることであります。
 以上が、この法律案の提案理由及び概要であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御可決くださるようお願い申し上げます。
#4
○赤路委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
 本案についての質疑は、後日に譲ることといたします。
     ――――◇―――――
#5
○赤路委員長 内閣提出の、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案、角屋堅次郎君外十二名提出の、公害に係る被害の救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案、並びに予備審査のため本委員会に付託されております小平芳平君外一名提出の、公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案、公害に係る紛争等の処理に関する法律案及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案を議題にいたします。
 質疑の申しが出ありますので、これを許します。河上民雄君。
#6
○河上委員 このたび、公害にかかわる被害の救済に関する法案と公害にかかわる紛争処理法案の二法案が当委員会にかけられ、審議に入っているわけでございますが、本日は少し時間をいただきまして、この両法案を一括して、私どもが疑問とする点について質問を進めてまいりたいと思います。
 実は、私は法案の性質上、まず被害者救済のほうを先に御質問いたしまして、あとで紛争処理法案に移りたいと考えておりましたが、前者の担当大臣であります厚生大臣がお見えになっておりませんので、これは大臣がお見えになりましてから主として質問させていただきたいと思いうのであります。
 幸い、というより当然でありますけれども、総務長官がお見えでありますので、どちらかといえば被害者救済をあとにいたしまして、紛争処理のほうから質問に入らしていただきたいと思います。
 なお、私が考えますのに、このたび提出されました法案は、いわば公害が起きたあとの事後処理法案という性質を持っておると思うのでありまして、したがって、これはさきに公害対策基本法で示されました一つの公害対策全体の基本的な、あるいは全般的な対策の中において初めて生きてくるものではないか、これだけではほとんど意味がない法案ではないかというように思うわけであります。そのような意味におきまして、この法案の審議にあたりまして、あらためて公害対策全般に対する政府の基本的姿勢というものをここで伺い、確認しておきたいと思うのでありますが、これまた厚生大臣がお見えになりましてから、その点について触れたさせていただきたいと思います。
 まず初めにお伺いいたしたいのは、この二つの法案を内閣で提出されました立法の精神といいますか、また、この法案がカバーすべき対象と申しますか、そういうような点につきまして、政府の御意見を初めに承りたいと思います。
#7
○床次国務大臣 公害紛争処理に関する問題につきましては、公害基本法の二十一条によりまして、その紛争処理並びに苦情処理等の措置をするということが、基本的な対策の一環として掲げられておりますので、これを具体的な法案といたしましてまとめてまして、そして紛争処理の適切なる解決に当たりたい、かように考えておるものであります。
#8
○河上委員 このたびの政府案には、紛争処理法案でありますけれども、その第一条に、「公害に係る紛争について、」ということばがありますがこの場合の「公害に係る紛争」というものは、健康被害並びに物的な被害、両方をカバーするというふうに理解してよいものかどうか、その点をお伺いいたします。
#9
○床次国務大臣 御意見のとおり、両者を含んでおります。
#10
○河上委員 それでは被害者救済のほうについてでございますが、このたび出されました政府案においては、被害の性質はどういうものを対象とするか、もう一度確認したいと思います。厚生省。
#11
○武藤(g)政府委員 御質問の点でありますが、大気汚染と水質の汚濁によりまして、その影響によります疾病が起きた場合に、当該疾病にかかった者につきまして、医療費、医療手当、介護手当等を支給するというのが法案の目的でございます。
#12
○河上委員 そういたしますと、紛争処理法案では、物的な被害と、人的な被害といいますか健康にかかわる被害、この両面をカバーすることになっておりますが、被害者救済のほうは物的な被害については何らタッチしない、こういうふうになっておるのであります。この両案が出されているわけでありますけれども、こういうふぞろいというか、まあ少し悪く解釈すれば、めんどうな問題はなるべくそれぞれの法案で落としていくというような感じがするのであります。
 なお総務長官に伺いますけれども、公害紛争処理法案では「公害に係る」という場合の公害の種類からいいました場合に何と何が含まれるか。先ほどの被害者救済の場合は、公害対策基本法にきめられた公害の種類が全部カバーされておらないのです。被害者救済のほうは一体どうなのか、この点について総務長官に伺いたいと思います。
#13
○橋口政府委員 先ほど河上先生から総務長官に御質問がございましたが、今回政府から提出いたしました公害関係の二法案は、御承知のように、公害対策基本法二十一条を受けておるわけでございます。二十一条は、御承知のように、第一項におきましては、公害に関する紛争の処理の措置について政府に義務づけをいたしております。それから第二項におきましては、公害にかかわる被害に関する救済の措置について政府の義務を明定いたしておるわけでございます。したがいまして、今回提出いたしました二法案は、いわば対策基本法を受けまして、車の両輪としての措置の内容を含んでおるわけでございます。
 ただ、御質問がございましたように、公害対策の推進の見地から申しましても、人の健康の問題、生命の問題、それから生活環境の問題につきましては多少の格差がございます。これは対策基本法においてもそういう精神が明らかにされておるわけでございます。したがいまして、紛争処理の問題につきましては、人の健康、生命の問題あるいは生活環境に関する被害の救済の問題も含めて対象といたしておるわけでございます。一方救済法案につきましては、当面要請される人の健康等重大な被害についての救済の措置を定めておるわけであります。そういう意味で、御指摘のように内容に格差がございます。しかしながら、それは事柄の優先度に応じての判断に基づいての提案でございます。
#14
○武藤(g)政府委員 ただいまの御答弁を補足して御答弁申し上げます。
 先ほどの先生の御指摘の点は、紛争処理法では健康なりその他の物的被害を全体的にカバーする、健康被害の法律では健康の救済をやる、こういうふうな説明では、多少そこの関連がはっきりしないではないかという御指摘だろうと思います。
 健康被害の救済に関します法律では、御承知のように、公害問題、つまり公害によりますいろいろな健康被害につきまして、原因者がなかなかわからないという問題がございまして、原因者の究明なりその責任を追及してからでは、被害者に対してなかなか手が差し伸べられないということでございまして、その点に着目しまして、この健康被害の救済に関します特別措置法はいろいろの制度を考えているわけでございます。したがいまして、原因者が大体わかりまして、その相手方もそれを認めるというような場合に、その原因者と被害者との間の、健康被害につきましての具体的ないろいろな問題の紛争を処理するというのが紛争処理法案で行なわれる、こういうふうになろうと思います。それまでの、つまり原因者がわからない間のいろいろな制度を、健康被害の救済に関します法律でカバーするわけでございます。
 それから御質問の第二点の、大気と水だけで、その他の問題は健康被害で取り上げてはないじゃないか、その点、紛争処理法案は公害基本法のそのほかのものを全部カバーしているものと、そこはどういう関係になるのかという御意見でございます。この点は、現在いわゆる公害にかかわる疾患としてはっきり認定されまして、いろいろの運用が行なわれておりますが、そういう問題は、現在のところ大気の汚染と水質の汚濁によって生じた疾病でございまして、そのほかの公害基本法に掲げております問題で出該疾病が起きた、あるいはそれによるものであるというようなことが確認されていないわけでございまして、そういう点で、この点は、この法案の目的は大気の汚染、水質の汚濁に限っているわけでございます。
#15
○河上委員 いま総理府の方が使われたことばに、このたびの両案は公害対策基本法に基づいて出された両輪のようなものだというのがあったわけでありますけれども、いま私が二、三指摘したところでもわかりますように、この法案がカバーする対象というか範囲というものがだいぶ食い違っているわけでございまして、両輪のスケールが違うようでは、なかなか車は走らないのじゃないかというように私は心配するわけであります。公害の原因から見た分類といいますか、そういうものの中には、騒音と健康の関係というものはなかなか証明できないというような説もありますけれども、実は昭和四十二年ですか、公害基本法が通りましたあとに、東京地裁か何かであった裁判があると思うのですけれども、これはおまわりさんが夜勤が多くて昼間家で寝ておる、ところが近所に町工場がありまして、その騒音で眠れない、そのうち一家の主人をはじめとして一家じゅうがみんなノイローゼで病気になってしまった、こういうことにつきまして、裁判所ははっきりとした判定を出しているわけです。賠償金は非常に少ないのでありますけれども、ともかく一つの結論を出しているわけです。そういうことを考えてみますと、やはり紛争処理と被害者救済との関係は、もう少しぴたりと車のスケールが同じになるように努力すべきではないか、こういうように思うのでありますが、この点につきましては、また厚生大臣がお見えになってから伺いたいと思うのであります。
 ついでにもう一つ、そういう意味のふぞろいということについて、私はちょっとつけ加えたいと思うことがあるのであります。それは先般新聞で拝見しますと、公害罪というものを法制審議会で検討中であるというように伝えられておりまして、そこで取り上げておる公害罪というものは、やはり大気、水、食品に関係のあるもの、将来地盤沈下を加えたいというようなお話であります。そうしますと、ここでもまた、紛争処理それから被害者救済と違うスケールが用いられておるように思うのでありますが、一体法制審議会でいまこれはどういうようになっておりますか、ついででございますので、ちょっと確認しておきたいと思います。
#16
○鈴木説明員 本日刑事局長が法務委員会のほうに出ておりますので、かわりまして、お答えさせていただきたいと思います。
 現在、公害につきましては、新聞等にある程度発表されておりますが、刑法の全面改正の作業をしております法制審議会の刑事法特別部会というところで審議をしておりますが、その特別部会の中に小委員会が五つございます。そのうちの第四小委員会というところで公害の問題をもあわせて検討しておるわけでございます。
 この公害の問題につきましては、従来から民事的な問題あるいは行政的な救済の問題、いろいろ問題になっておりますが、刑事犯罪としてどの程度取り締まるかということにつきましては、従来から非常にむずかしい問題が多いわけでございまして、特に一体どの範囲のものを対象として処罰をしていくかという点で困難な問題があるわけでございます。現在第四小委員会でははっきりした最終的な結論がまだ出てはおりませんけれども、現在のところでは、一つは、公害基本法で公害の定義がされております中の、大気汚染あるいは水質の汚濁というような比較的一般国民の健康に害を及ぼしやすいもの、こういうものをまずとらえていこうということで、それを中心に考えておるわけでございます。ただこの点は、何ぶん現在は全くそういう点からの処罰法規というものがございませんので、第一歩として、なるべくはっきりしたところから始めていこうという趣旨で始めておるわけでございます。なお現在の刑法でも、たとえば業務上過失致死傷罪あるいは爆発物等の破裂等のような規定によりますと、ある程度公害の結果がはっきり出てきたという場合は処理できるわけでございますが、それを、ただいま申しましたように、水質の汚濁と大気汚染ということで、直接国民の健康あるいは生命、身体に悪い影響を及ぼすような場合をまず取り上げてやっていきたい、こういうような姿勢で、現在のところ第四小委員会が審議をしておるわけでございます。
#17
○河上委員 いま私が二、三お尋ねしただけでも、車の両輪と称せられるこの二法案の間にかなり食い違いがありますし、公害対策全体の政府の姿勢の中に、何か一貫性を欠いておるのではないかという気がするのでありますが、ひとつこれは総務長官、ここに大臣としておられるわけですけれども、こういうようなことはやはり今後改めていくというか、修正すべきものであるというふうにお考えになりませんか。
#18
○床次国務大臣 公害対策の問題は、基本法を中心として総合されてできるものだと思います。したがってその内部には各種の取り扱いの特別法みたいなものができるのじゃないか。先ほどもお答え申し上げました医療の関係につきましては、これは健康に危険がありました場合には、すぐその健康に対して対処しなければならない、さような意味におきまして、今回の特別法ができたというふうに考えていただきたいと思うし、なお紛争の問題に対しましては、公害紛争全般を通じまして、紛争というものが依然として相当に、健康に対する処置にいたしましても――しかし紛争そのものは残ってまいりますので、紛争の処理ということが考えられる。紛争に対しましては、公害全般を含んだ紛争処理法案というものになってまいる。なお紛争だけでもって処理できないものは裁判所のほうに行くというふうに、全般がまとまりまして、公害基本法の精神に従って総合されて動いていくというふうにお考えおきをいただきたいと思うのであります。
 先ほどちょっと車の両輪ということを申しましたが、両方の法律が同時に一緒に走っていくというわけじゃなくて、どっちかといえば、健康のほうが問題は先行する問題です。健康の問題をやりながら、こっちの紛争の問題を処理していくということになると思うのです。しかしおのおの相補って完全な公害対策というものができ上がっていく、さようにお考えいただきますればけっこうだと思います。
#19
○河上委員 紛争というものについては、健康上の被害にかかわる紛争もあるわけですね。それから物的な問題での紛争もあるわけでございますね。そして紛争処理法案はその両者をカバーするものとしてできるというこういうわけでございますね。一方被害者救済のほうは、物的なほうは被害者の被害に入らぬというたてまえになっておるのかどうか。その辺はまたあとで大臣が来られたところで責任ある御答弁をいただきたいと思いますけれども、健康をとりあえず優先しなければならぬというのが一つの主張でありましょうけれども、紛争処理のほうは両者を合わせてやっておるわけです。したがって、被害の救済に関しても当然両者はカバーさるべきが当然だ、こういうふうに私どもは考えておるわけです。厚生省は一体どういうふうにお考えになりますか。
#20
○武藤(g)政府委員 御指摘の点につきましては、先ほども簡単に触れておりますが、中央公害対策審議会の意見具申にもありましたように、この公害の原因究明という問題がなかなかむずかしい問題を含んでおりますし、それからまた、原因究明がわかりましても、当事者間の争いでなかなか結着がつかない。しかしながらその間被害者はいろいろの現行制度の多少の不備のためにいろいろ困る点もある、とこういうふうな点があるわけでございますが、こういう点やはり健康が何ものにも優先して大切な問題であるということに着目しまして、やはり健康被害をこうむった方々に何らかの措置をすべきではないかというような基本的な考え方の意見具申がございまして、それによりまして、私どもはこの法案の措置を考えたわけでございます。したがいまして、原因の究明を待たずして直ちにこの問題が救済されるようにという観点から、いろいろの制度の仕組みを考えたわけでございます。したがいまして、ただいま先生がおっしゃいました生活妨害の問題あるいは物的損害の問題等につきましては、やはりこの紛争処理を通じて十分措置するのが当然であろう。特に物的被害等の問題については、画一的な制度をつくるということが、私は全く不可能であるとは思いませんけれども、現時点におきまして、直ちに物的被害の問題につきましても統一的な制度をつくるということについては、まだ十分いろいろ検討する必要があるということで、健康の問題を第一に考えまして、とりあえずこの法案を特別措置法として提案した次第でございます。
#21
○島本委員 関連して。いま河上委員が大臣に質問したのは、これは要点としてやはり的確な点を指摘したのです。法律として現在出されているこの三つの法律、その一つは紛争の処理、被害者の救済と水質保全の関係、三つ出してある。やはり出した以上、スタイルの一貫性がなければだめだ。かてて加えて、公害罪の設定に対していま法務省でもいろいろ部会内でこれを討議されておる、こういう報告もありました。その中でも、伝えられるものと、いま言われたものは若干の違いはありますけれども、必ずしもこの方向が一つとは思えないから、この点は法のスタイル上どうなんですかという質問を行なっておるわけです。これはいまのような答弁は私は大臣としてはいいと思います。ただそれで満足することはできないわけです。というと、健康だけを重点にするから、これは水質とそれから大気汚染、これ以外の公害対策基本法にきめられておるやつからは、被害がないという前提に立っておるじゃないか。はたしてないのか。あったならば紛争で全部やってください、こういう考えのようです。それでなければ、今度は水の問題でも出てまいります。今度は一条の目的も修正してあります。そうして知事のいろいろな行政権の問題にまで、いろいろ勧告やこういうようなものも入れているようです。それは悪くない。いいです。前進ですけれども、こういうふうにして全部一本になっておるのに、実際の場合は、このうちのたのただ二つの部分しかなくて、他から被害が発生しないというようなこういうような見地で、もし紛争が発生したならば一切紛争のほうへおまかせだ、ここでやりなさい、われ関せずえん、こういうような態度なのか。しかるにまた法務省のほうでは、これは公害罪として食品関係までも考えられておるようだった。そうなれば、その中に一貫性がどうもないように思われる。全部紛争のほうへ持ってこられる。紛争でさえも、今度三条機関じゃない、八条機関。いわゆる底抜けである、しり抜けである。こういうようなことだったら、やはり一貫性がないのを心配するというのが、河上委員の貴重な意見なんですけれども、私は、もっと厚生省のほうで、この問題についてはやはりあらかじめ今後発生するおそれがある問題はこれとこれと考えられるので、これに対して対策がこうだということを聞きたいのです。二つだけしかない、被害者救済の法律の中で。あとは全部紛争にまかせる、こういうようなスタイルじゃ、仏つくって魂入れずじゃないか。こういうような点を一貫性を欠いておられるわけだ。これは大臣じゃないから、厚生省の事務官僚ですからいたし方がないにしても、やはり一貫性がないということだけは残るのです。法務省のほうも残るわけです。全部紛争のほうでお引き受けいたします、こういうようなスタイルだとすれば、紛争の処理の内容が弱過ぎる。これはどっちころんでもだめだ。車の両輪はぶっこわれてきた。初めからぶっこわれていたのでは進みません。ここをいま真剣に聞いているのです。大臣、これは大事な質問なんですよ。
#22
○床次国務大臣 ただいまの御意見、御趣旨よくわかりました。基本的には、公害というものは、あらゆる対策におきまして、未然にこれを防止し、さらに起きましたときはその処置を講ずる、また関係者にも満足を与える、そこまで全部広範的に行なわるべきだと思うのであります。しかし、今日提案いたしましたところの紛争処理法案につきましては、紛争処理という形において行ななっておる。これに対しましては公害全般を引き受けておる。ただし先ほどの医療の問題につきましては、わかっております医療だけ対象とする。また罪におきましては、犯罪となり得るものを対象として扱われておるのだと思います。全部の問題を全部罪の対象するというお考えではないのじゃないかと思っております。
 それで、結局私に対する問題といたしましては、この紛争の処理法案が、最終的に関係者を納得させる処理方法が行なえるのには少し権限が弱いのじゃないかというお話でありますが、この点につきましては、さらに御説明を申し上げる機会もあると思うのでありますが、現在の紛争処理という扱い方が、いわゆる裁判所の司法的な行為と比べて一段と特色を持っております。すなわち裁判訴訟になりますと、非常に長い時間かかるし、またその手続等もなかなかめんどうであります。むしろ社会的立場に立ちまして当事者の話し合いでもって解決するという方法が中間にあったほうが、この公害問題の紛争処理に非常に貢献するのではないかという意味におきまして、紛争処理機関として今回特殊な立法をいたしたようなわけでありまして、やはりこの点は、公害問題を解決するための最終的な機関と申しません、中間的な機関として、私は大きな役割りを果たし得るのではないか。やはりこれを御利用願いまして、迅速に適正な解決ができるものは、私は、解決し得られていくのではないか。また当事者にも満足を与え得るのではないか。全部が満足できるような結論に到達するとは考えません。やはり裁判所に最後に行くものも相当あるだろうと思います。しかし、そこまでいかない間に処理できまして話し合いができますならば、これは十分効用がある。そういうものをカバーするように、この処理機関を考えておる次第であります。
#23
○河上委員 それでは、いま総務長官から、公害の紛争は最終的には裁判ということになっても、長くかかったりいろいろするので、中間的な措置として、このたび特殊な仲裁手続を紛争処理法案の中に盛り込んだというような御意見だったと承ったわけですが、そこで、この仲裁制度につきまして、私どもあまりよくわからない点が非常に多いのであります。御承知のとおり、仲裁とか、和解とか、調停というようなことばは、ごく常識的にいろいろなところに使われておりますし、またいわゆる調停裁判とか、いろいろ裁判用語の中にも出てまいりまして、一体そういうものと、このたびの法案の中に盛り込まれておるところの仲裁手続というものとが全く同じものなのか、また非常に違った性質のものなのか、そういう点をちょっと伺いたいのであります。
 われわれこれを拝見いたしますと、まず第一に、多くの同僚委員から指摘されたように、これが三条機関ではなくて、八条機関として、総理府の付属機関として性格づけられておりまして、その仲裁にはどうも強制力がないということを遺憾とするのであります。またその仲裁制度を、文章だけ読みますと、どうも双方の合意がないと制度そのものが発動しないように受け取れるのでありますけれども、そういうことではどうしても被害者側が非常に弱い立場に置かれるのではないか。さらに先ほど申しましたように、この仲裁手続をとった場合に、それに被害者が不満な場合、それではいま総務長官が御説明になりましたように、普通の、通常の裁判に訴える道が十分に残されておるのかどうか。この仲裁手続をとったがゆえに、そちらの道が事実上非常に狭められるのではないかというようなことが、この法文を読んだだけで非常に懸念されるわけでございます。全体として、この仲裁制度は、被害者の立場が非常に弱い、泣き寝入りされる危険性が法文の中から読み取れるように思われるのであります。そこでいろいろ申したいことがあるのでありますけれども、この仲裁手続の性格についてここで少し詳しく承りたい、こう思っております。
#24
○床次国務大臣 具体的には、さらに政府委員からお答え申し上げますが、今回の紛争処理の考え方につきましては、いわゆる裁判所の機関としての最後の判決をするというような態度ではなくて、両当事者の互いの話し合いというものを中心として、解決がつくならば解決をつけよう、そうして両者が妥協して話し合いができましたならば、その実施につきましては遺憾のないように実施していく、したがってまとまったものに対しましては、これはほとんど裁判所の判決と同じような効果を持つ、しかもまとまらなかった場合におきましては、当然これは裁判所に持っていって最終的に争っていただいて、そうして結論を得てもらうという段階になっているわけであります。したがって、この機関自体裁判所と同じような強力な権限を持っておりません。いわゆる仲裁、調停をするのにふさわしい権限だけ与えてあるのであります。すなわち文書の提出、あるいは証拠の提出、また実施に対する立ち入り検査ができるという形におきまして、その公平な判断ができますような権限だけは十分に保障しているわけであります。
 なお、公平に行なうことのできますように、その委員会並びに委員の独立性と申しますか、中立性を十分に確保して一これは法律によって確保しているのであります。したがって裁判所と比べますと、非常にその点は弱いとお感じになるのは当然で、これが本来の仲裁調停の性格であるわけであります。なお、三条機関にしなかったから不十分ではないかという御意見かと思いますが、ただいま申し上げますような役割りを果たすのには十分な権限を付与されておりまして、したがってこれは八条機関としてふさわしいものである、その職務を果たすにつきまして十分な役割りが、私どもできると考えているわけであります。
 なお、仲裁、調停等の法律的の意義等につきましては、政府委員からお答えいたします。
#25
○橋口政府委員 お尋ねがございました和解仲介、仲裁、調停の法律用語の使用方法について簡単に御説明申し上げたいと思います。
 和解仲介の和解ということばは、民事法規で使っております和解ということばと同じ概念でございます。それから、調停につきましても、民事法体系におきまして、たとえば民事調停法というような法律がございますが、そういうようなもので予定いたしております調停とおおむね同じ内容であると考えております。それから一番詳しく御質問のございました仲裁でございますが、これも民事法規に基づく慣用語としての仲裁と同じ考え方をとっております。この法律におきましても、民事訴訟法できめておりますいわば仲裁手続の特例事項を定めておるわけでございまして、この法律で定めました特例事項を除いては、民事訴訟法の仲裁手続を準用いたしておるわけであります。したがいまして、仲裁はいわば第三者としての私設裁判官に当事者間の紛争の判断を一任するという行為でございます。したがいまして、これは憲法の、何人も裁判を受ける権利を奪われることがないという規定との関係もございますので、いわば最終的の判断を第三者に委任するという行為でございますから、当然に当事者間に合意が必要になるわけでございます。一方の申し立てによって最終的な仲裁判断が行なわれて、当事者がそれに拘束されるということになりますと、これは憲法違反の問題になってまいります。したがいまして、仲裁につきまして、この規定に基づく仲裁の判断が出ました場合には、民事訴訟法に基づきまして、手続上の瑕疵等によって訴訟ができる場合を除きましては、訴権を放棄するということで、訴訟を受ける利益はないわけでございます。したがって、そういう意味におきましては、当然に双方の合意に基づいて仲裁の手続を申請するということになるわけでございます。
#26
○河上委員 いま私が仲裁手続の性格について特にお伺いいたしましたのは、実はきわめて現実的なそういうケースが起きておるからであります。もちろん現在まだ公害紛争処理法案が発効していないわけでもありますけれども、例の水俣病患者の会社側に対する訴訟あるいは被害救済の要求といいますか、そういうような問題につきまして、仲裁に応ずるかどうかということで、その被害者の間で非常なためらいといいますか、そういうものがあるわけでありまして、それは一たん仲裁に応ずるという同意をした場合に、そこに出てくる仲裁の裁定に対しては、何も文句は言えないということになりはしないか。またそれに対して不服な場合に、あらためて裁判をするということにつきまして、事実上非常にむずかしくなりはしないかという不安が非常に強いわけであります。そのために、この仲裁のあっせんというものがうまくいっておらない、こういう現実の問題があるわけであります。この問題につきましては、先般当委員会においても討議されたわけでありますけれども、その後この問題は、さらに一そう深刻化しておるのが事実であります。そういうことを頭に置きまして、仲裁手続というものを読んでまいりますと、そしていまの御答弁からも少しくうかがわれるのでありますけれども、仲裁に応じた場合、その結果出される裁定に対して不服が生じた場合の被害者側の権利と、さらに訴訟に訴える権利というものがきわめて不安定であるように思うのであります。
 そこで、もう一度伺ってみますけれども、仲裁は訟訴にかわる機能を営むものであるというふうに理解してよろしいわけですか。
#27
○橋口政府委員 当事者間の紛争につきまして、一方の申し立てによって、当事者間に最終的な利害関係を形成する、こういう行為は、日本の憲法体制のもとにおいて、裁判所のみに許されておる行為でございます。したがいまして、行政機関なりあるいは当事者の選んだ仲裁人なりが、一方の申し立てだけによって判断を下し、それによって当事者間の利害関係が形成されるということは許されておらないわけでございます。
 そこで、御質問がありましたような、当事者の合意に基づいてある判断行為を仲裁人に依頼した、それで仲裁人がそれについて仲裁判断を下した場合には、当然その判断に拘束をされるわけでございます。これは当事者間におきまして、当初からその判断に服するということを約してする行為でございます。したがいまして、それについての不服の申し立てということは許されないわけでございます。また先ほども御説明申しましたように、そういう場合には、訴訟の権利を放棄いたしておりますので、再度訴訟することはできないという判決があるようにも承知いたしておるわけでございます。
#28
○河上委員 そういたしますと、今度の法案を読ました限りにおいては、第四条、第十四条、第二十一条などに出てまいりますが、仲裁の裁定は、事実上確定判決と同一の効力を持つようになってしまっている。そしてそれに対して、ことに今度は国家機関がかなり関与しているわけですが、それを取り消すときには、これは民事訟訴法の第八百一条でございますか、かなり確たるといいますか、法律上の一定の事由がないと取り消すことは困難である、できないということになっておるようでございますが、この場合の一定の事由には、被害者にとって著しく不当であると感じたというようなことは入らないわけでございますね。
#29
○宮脇説明員 ただいま河上先生の御指摘の点は、民事訴訟法の八百一条に定めてあります仲裁判断取り消しの事由には該当いたしません。と申しますのは、仲裁手続といいますのは、仲裁人に全幅の信頼を置いて、その解決にすべて服するという手続でございまして、たまたま結果が不当であるというだけでは、仲裁判断取り消しの事由にならないというたてまえになっているからでございます。
#30
○河上委員 そうしますと、従来の仲裁もそうでありましょうけれども、このたびできます法案が実際に効力を発した場合に、一応公法上の機関が間に立って、調停または和解が成立したというものについては、もはや無効もしくは取り消しをすることは困難なんでしょうか、不可能なんでしょうか。
#31
○床次国務大臣 いまの御質問の趣旨は、今度の紛争処理法案は、当事者の方々が、仲裁を希望される、あるいは調停を希望される際におきまして動くのでありまして、どうしても徹底的にやりたいという方は、むしろ最初から訴訟のほうへいくのではないか。しかし訴訟のほうへいくとかなり時間もかかるということで、それよりも話し合いができそうだ、話し合いで解決しようという立場の方は仲裁なり調停のほうでやる。そして調停の場合に話し合いができなかったという場合は、また裁判所に行くという形になりますが、仲裁の場合においては、自分の信用している機関に頼んで仲裁を頼む。両方が合意されれば、それできまってしまいますから、早くできるという意味におきましては、私は先ほど中間的と申しましたが、従来の訴訟とは違った意味において、適切な解決がでできる。しかし、どうもこの程度の仲裁委員会と申しますか、こういうものでは頼りないのだという気持ちの――たとえ仲裁がまとまっても信頼できないという方は、むしろ初めから仲裁は無理なんで、仲裁におかけにならずに裁判所に行っていただく、それがいいと思います。調停の場合にいたしましても、これは相手が応じなかった場合は調停もできないわけですから、その場合には、もちろん裁判所に行く。ですから、最終的に納得いかない方は裁判所でありますが、しかし早目に解決したい、そして大体見込みがあるという場合はは、今回の紛争処理法案は相当役に立つもの、こういうふうに考えていただきたいと思います。
#32
○河上委員 ただ、このたびの仲裁を行なう場合の委員会は非公開になっているわけです。被害者側としては、ことに長年にわたって錯誤または詐欺、脅迫でないものでも、漁場を買うような場合に、漁民に働きかけて、判こさえ押せば幾らでも金を貸してくれるそうだということで、大ぜいの人を集めて、ばんばん判こを押しちゃって、気がついてみたら権利を失っていたというようなケースがたくさんあるわけですね。そういう非常に弱い立場にある者が被害者になる可能性が非常に多いわけでございますが、そういう人たちから見まして、ともかくおまえ、白紙委任状をよこせ、それでその審議の模様も全く非公開である、出たはいいけれども、こんなはずじゃなかったといったときには、いまおっしゃったように、もういわば訴訟の権利を失ってしまうということになりますと、これは結果的に、当事者、特に被害者側は、憲法上認められた裁判所の裁判を受ける権利を実質的に失うことになるのではないかという気がするわけです。もちろんそういうことにならないように運用するとおっしゃるかもしれませんけれども、実際上そういうことになりはしないかという気がするわけです。現在の水俣の被害者の方々と会社側との紛争、ことにその仲裁に入ろうとする仲裁者側に対する不信感というのは、仲裁委員の名前を一切明らかにしないうちに、ともかく同意せえという形でやっているために、なかなか判こを押し切れない、自分たちの信頼できるような委員が間に入れるのか入れないのか、そういうことさえ明らかにしないうちに、白紙委任状でよこせということであるわけなんです。ところが、そういう被害者の方々が、長年の被害のために、そして何回も裏切られたがために、そういう仲裁に対してさえある不信感を持っておりますのは当然と思いますけれども、またこの法案を読みましても、どうもそういうことが事実として起こる可能性が非常に多いように思うのです。そういう点は大臣いかがですか。
#33
○床次国務大臣 現実に水俣の事件、これが仲裁になっているのですが、あの仲裁とこの仲裁とは全く別のものでありまして、また現に問題となっておりますので、その問題には私は触れずに申し上げたいと思いますが、今回つくりました仲裁につきましては、やはり両当事者が信頼して、あの機関ならば仲裁を頼むという前提があって初めて仲裁になるわけです。もちろん仲裁をいたします際におきまして、その委員につきましては十分信頼できるように、その委員の人選におきましても、ここに高潔なる人格を有するということが書いてあります。なお、任命は一応政府の任命になりまするが、しかし独立して仕事が行なえますように身分の保障があるというような形でもって、十分仲裁機関としての公平な立場を得られるようにはしてありますが、しかし初めからどうもたよりないという方は、何も仲裁におかけになる必要はないのでありまして、むしろそういう方は裁判所のほうへ行かれる、あるいは一応調停にかけてみるという考え方でけっこうなんでありまして、十分にやはり相互の信頼感のもとに仲裁というものが行なわれなければ、仲裁の目的は達しないのでありまして、そういう方だけが、実は仲裁の対象として、この機関を利用していただくというふうにお考えおきをいただきたいと思います。
#34
○橋口政府委員 河上先生から問題として御提起がありました、たとえば当事者間の仲裁契約が、いわば錯誤で判こを押してしまったという例をおあげになりましたが、法律が成立いたしますと、和解仲介なり調停なり仲裁の申請をいたします場合には、書面ですることにいたしております。また、政令によりまして、書面の内容も詳細に規定する予定にいたしております。したがいまして、かりに先ほどお話しになりましたようなことが万に一つあった場合におきましても、取り扱う機関において、そういう機関自身が錯誤におちいるようなことのないように、手続の点については研究いたしたいというふうに考えております。
#35
○河上委員 私はまさかこういう公的な機関が、某々会社のように、錯誤を利用して権利を取り上げるなんということは考えておらぬのです。またそうあっては困るわけでございますが、ただ、おそらくこの紛争処理法案で救済さるべき人々には、そういう経験を持った人が非常に多いのだと思うのです。したがって、いまのお話でもうすでに明らかになったように、被害者のほうでは、そこで仲裁に同意するかしないかという選択を迫られまして、一たん同意するほうに乗ってしまったら、これはレールがそっちのほうに走っていって、別な一つの終着点というものがきまっておる。仲裁に同意するかどうかということだけが乗りかえ地点であって、それ以後はもう途中で、ああこれはまずいことをしたというので、左のほうの線を選んでいたけれども、いや右のほうの線に行くべきだったと気がついても、もう乗りかえはきかないというふうに私どもは理解したわけですが、そういうふうに確認してよろしゅうございますか。
#36
○床次国務大臣 全く御意見のとおりであります。したがって、仲裁というものを実施します場合は、十分将来の訴訟の権利がなくなるのだということを前提にして仲裁に応じていただく、またそれだけ機関を信用していただくということになると思います。それに不安を感ぜられる方は、むしろ訴訟なり何なりの道をとらるべきだと考えております。
#37
○河上委員 そういたしますと、最初長官が私に対して御答弁になりましたときに、仲裁というのは中間的な措置である、もしそれでも不服な者が生じた場合には、最後に純粋の裁判所というか、司法機関というものがあるのだというふうた――まあ正確に私はことばを再現したわけじゃないですけれども、そういうふうな御意見があったわけですが、そういたしますと、そういうふうに理解してもいいかもしれませんけれども、実質的には仲裁という中間的措置に乗ってしまった場合は、そのあとはないのだ。つまり中間的措置ではなくて、もうこれは最終的な措置であるというふうに、少なくともその道を選んだ限りにおいては、そう理解せざるを得ないわけです。
#38
○床次国務大臣 仲裁につきましては、仲裁の性格から見まして、全部これを第三者に委任しておるわけです。同時に訴訟の権利を放棄するという結果になりますので、そういうわけであります。しかし、仲裁ばかりでなしに調停の道も残してあるわけで、したがってそれぞれの当事者に、自分の事件はどういうふうな解決をすることがいいかということを十分お考えいただいて、これを選んでいただくということになると思います。どうしてもやはり最終的に安心がいかぬという方は、結局先ほど申しましたように、訴訟へ持っていかれるのじゃないかと思いますが、しかし訴訟にいきますと、ずいぶん長くもかかるし手間もかかりますので、こういう段階――まあ私、中間的な措置と申し上げたのですが、その意味において、訴訟とは違った別の紛争処理の機関が設けられた、しかしこれが一般国民大衆に対しましても、現在の社会制度の立場から見まして、相当役に立つ機会が多いのじゃないか、訴訟にまでまたなくても、これでもってかなり当事者同士において話し合いがついて、結論が出て、そうして紛争処理の目的を達することが相当あるのではないかというふうに、私は期待しておるわけでございます。また国民にもそういう意味においての信頼を得られますならば、現在の公害紛争の問題に対して大きく解決に役立つと考えておるわけであります。
#39
○河上委員 それでは少し角度を変えてお尋ねいたしますけれども、仲裁の裁定に対して加害者側がそれを履行しない場合、その機関の強制力はどの程度のものですか。
#40
○橋口政府委員 仲裁判断は確定判決と同じ効力を持つということを先ほどちょっと御説明申し上げましたが、民事訴訟法の規定によりまして、仲裁判断が出ますと、執行判決を裁判所に申請をいたしまして、その言い渡しを受けますと、これによって強制執行ができるということになるわけでございます。
 なお、詳細は民事局のほうからお答えいただければと思います。
#41
○宮脇説明員 ただいま審議室長からおっしゃったとおりでございまして、仲裁判断はいわば裁判にかわるものでありますから、確定判決と同一の効力を与えておりますが、ここでいいます確定判決と同一の効力というものは、いわゆる既判力の意味でございまして、執行力は当然ないわけであります。それと同時に、強制執行いたします場合には、一応仲裁判断取り消し事由があるかないか審査をいたします関係上、いわゆる執行判決請求の訴えを経て執行判決をもらい、それを添付して強制執行をする段取りになるわけでございます。なお、取り消し事由というのはそれほど広くございませんので、この訴訟はかなり簡単に解決がつくものと推測されます。
#42
○河上委員 そういたしますと、被害者のほうは、もう一たん仲裁に同意をした以上は、その結論に対して不服な場合は訴訟の権利はないわけですね。だから、つまりその発表された瞬間に一つの運命がきまるわけです。加害者のほうには、いまおっしゃったようにそこに幾つかのクッションが置かれることになるわけですが、加害者がぐずぐず言ってなかなか執行しない、裁定の内容をなかなか履行しない場合ですね、直ちに逮捕せられるとかそういうふうなことになるのかならぬのか、それとも、いま何かいろいろ言われたように、いろいろ手続しなければそこまでいかないということなのでしょうか、そこのところをもう一度お伺いいたします。
#43
○宮脇説明員 民事紛争の不履行があったというだけでは刑罰の対象にならないということは、御承知のとおりと存じます。これは民事、刑事をはっきり分けました現在の紛争解決処理の体系上、いたし方ないことでございます。さよう御了承いただきたいと存じます。
#44
○河上委員 そういたしますと、まあ、このたびこういう制度ができましたことはまことにけっこうなことではありますけれども、一つ一つ詰めていきますと、現在の法体系そのものがそうなっているといえばそれまででございますけれども、被害者のほうは生殺与奪の権を握られるけれども、加害者のほうはなおあらゆる法律的な手段を使って、そこに防衛する権利というか、余地が残されておるという制度であるというふうに私どもは断定せざるを得ないのです。
 ですから、もう一つ伺いたいのでありますけれども、では、調停とか和解の場合に、加害者と被害者との関係はどうなるかを少し伺いたいと思います。
#45
○橋口政府委員 和解の仲介は、平たいことばで申しますと、当事者間で仲直りをしたらどうかということを事実上あっせんする行為でございます。したがって、あっせん老の立場においてある判断を示すというようなことは予定いたしておらないわけであります。かりにそういうあっせん行為がありまして、当事者間で和解が成立いたしますと、通常は民法上の和解契約が締結されるというのが普通であろうかと思います。それから調停につきましては、当事者間の紛争について、調停者の立場において調停案を示すわけでございますから、ある種の判断を示すということになるわけでございます。和解の仲介、調停、いずれも当事者の一方からの申し立てによって行為が開始されるわけでありますが、そのようにして提示されました調停案、つまり調停者の判断に対しては、当事者は態度を留保し得るわけでございます。したがって、調停案の内容に双方が満足しました場合には、和解の仲介と同じように、やはり民法上の和解契約が締結されるというのが普通の形であろうかと思います。
#46
○河上委員 もし調停が成立して、なお相手方といいますか、一般には加害者と思いますが、加害者側がこれを履行しない場合、被害者側としてとり得る措置というものはどういうものでありますか。
#47
○橋口政府委員 先ほども申し上げましたように、当事者間に一つの和解契約が成立いたすわけでございますから、契約不履行という事態が発生するわけでございます。したがいまして、その不履行に対する救済制度としましては、現在の民事法規のワク内で対処するということになるわけでございます。
#48
○河上委員 そういたしますと、訴訟を起こすとか、そういうふうなことになるのじゃないかと思うのでありますが、まあ私はあまり法律に詳しい者ではございませんけれども、仲裁とか調停とか和解という、ごく一般に使われるようなことばと、この法案に用いられているそのことばの意味の違いについて関心を持ちまして、もう一度少し詳しく読みましたところ、いま言ったような、御質問申し上げたような疑念を持ったわけでございますが、いま総務長官はじめ事務当局の方々の御答弁によりますると、私の頭に浮かびました一つの疑問というものは、これはむしろ事実であると、法律の上でそういうような印象をいま私は持っておるわけなんであります。もしこのような形であるといたしますならば、この紛争処理法案は、実際に実施に移しました場合に、被害者の救済に役立たないような場合が非常に多くなるのじゃないかということを懸念するわけであります。もちろん提案者は、従来の法体系というものをあまりこわしたくないということで、いろいろ御苦心なさったのだろうと思います。その上で時代の要求にこたえようという配慮もあったんだろうと思うのでありますけれども、しかしこの辺、いまの法体系をそのまま、そのワク内でぐるぐる走り回ったのでは、実際の公害対策というのはなかなかできないんじゃないかという一例として、この紛争処理法案を私は読まざるを得なかったのであります。こういう点は、大臣ひとつもう一度この法案を――すでに提出されているわけでありますけれども、なおいま国会の審議中でございます。これはもう一度よく考えていただかないと、何かもうこういうものが出た、もうごたごたは全部片づくんだ、われわれ被害者はめんどくさい、いろいろな法律上の裁判を、司法機関を通して七年も八年もやらぬで済むのだというような希望を与えるけれども、実際はそうはいかないんだということになりますと、これは非常に大きな問題だと思うのです。政治の上からいいましても、これは非常に大きな問題ではないか、こんなふうに私は思うのでありますが、総務長官の御意見をひとつ……。
#49
○床次国務大臣 ただいまの御質問は、まだ本法の手続を御理解になっておらないのだろうと思います。先ほども答弁いたしましたように、和解なり仲裁なり調停というものができ上がりましたならば、これは非常なショートカットだと思います。あとは執行だけの問題になりまするから、従来の訴訟手続で参りますよりもよほど早く結論が出てきて、その分は、私は被害者に対しては大きな利益である、かように考えております。ただし、もしもこの紛争処理機関が裁判所と同じように長い時間かかって、それで手数がかかるならば、決してショートカットということばを申し上げるわけにはいかないのでありますが、今回の処置につきましては、よほどこれが敏速に行なえて、しかもその結論が得られれば、これはもうすでに軌道に乗ったものとして処置ができる、そこで大きな実益がある。しかしどうしても法律的な手続において不安があるとおっしゃるならば、これは従来どおり訴訟でもっておやりを願うよりしかたがないのであります。しかし訴訟の場合と比べるとよほど大きな利益があるから、また運用のいかんと申しますか当事者の御利用の場合におきましては、私は、大きな役割りを果たす、かように考えて、ぜひとも一般において紛争処理機関として、訴訟に訴えずに、ひとつこれによっていくんだというような気持ちを持っていただきたい。元来ほかの争いと違うものでありまして、事柄が公害という問題で、加害者も被害者も普通の事件とは全く別の立場にあるものであります。その趣旨を十分に生かしていきましたならば、私は役に立つものと考えております。
#50
○河上委員 いま長官から言われましたお気持ちはよくわかるのでございます。事実これによって、裁判では長引いてどうにもならないようなものがかなり救済されるというような御意見については、一面十分理解できるのでありますけれども、ただ、和解、調停、仲裁と、それぞれ少しずつ事情は違うと思いますし、そのそれぞれにおきましても、やはりどうも被害者のほうが依然としてめんどうな手続が残っておる。ことに仲裁の場合は、一たん出発点で同意いたしますと、もう途中の乗りかえがきかないという点は、これは非常に重大なことだと思いますので、なおまた別な機会を与えられますならば、さらに突っ込んで質問したいと思うのであります。
 いま長官が言われましたのは、調停とか和解の場合は確かにそういう効果はあると思うのでありますけれども、仲裁の場合は、逆の意味の不安がかなりつきまとうのではないかという気がいたすのであります。
#51
○床次国務大臣 この点は、本法におきましては、その手段を当事者の方に強制しているわけでないのであって、当事者が納得された場合においてかような処置がとり得るし、また原則として相手方が同意する、お互いの話し合いということを前提として考えておりますので、そういうわけであります。どうしても話し合いに応じない、初めからけんか腰のものにつきましては、もとよりこれは適用すべきものではない。軌道に乗ってこないのでありますから、その場合におきましては、決して被害者なり何なりの権利を害するということにはならない。むしろこれを利用しよう、活用しようという方に対して、またそういうケースに対して、これが大きく効果をあげてくるのだと考えておるわけです。
#52
○河上委員 なお仲裁裁定の場合、審査の過程は非公開でございますが、その非公開にした理由というのはどういうわけですか。
#53
○床次国務大臣 本来この手続につきましては、先ほどからも申し上げておりますが、当事者の意思というもの、話し合いをしようという精神を根本にいたしております。したがって、この手続等におきましても非公開の原則をとっておりまして、お互いに胸襟を開いて話し合っていく。しかしこれを判断するところの機関は、十分な公平な独立な権限を持った機能でもって行なっていく。これを信頼していただいて、当事者が調停なり和解なりに応ずるという形になっておるわけであります。したがって、これを公開して争うということは、本来の性格になじんでおらないものでありますので、非公開というふうにしておるわけであります。
#54
○河上委員 それは、加害者と被害者が力においてバランスがとれている場合は、あるいはそれでもよいかと思いますけれども、実際上は加害者が圧倒的に強い力を持ち、被害者のほうが非常に弱い立場に立っておるというケースが多いわけでありまして、いまのような形では、やはり被害者側が仲裁裁定に対して非常な不安を持つというのは、先ほどの機関の性質上からも残るのではないか、こういうことを私は懸念するわけであります。
#55
○床次国務大臣 ただいまの問題は、被害者と加害者の力の強さという問題よりも、現実において、機関がいかに公平にあり得るかという問題であると思います。いかに加害者が大企業でありましょうとも、審査委員並びに審査会というものが適正にその職務を遂行することができますならば、もちろん公平な判断はなし得る。しかも立場において独立的な地位は守られて確保されておるわけでありますから、その職責が果たし得ると思うのであります。したがって、当事者において、片方は大企業であり、片方は個人でありましょうとも、お互いがこういう機関の判断にまかせようという話し合いの気持ちさえ持てば、私はその点は成立し得ると思う。しかし大企業というものがあくまでも応じないんだという立場をとる場合におきましては、当然こういうような機関と申しますか作用は働かない。こういうのはどうしても訴訟へいって徹底的にやっていただくよりしかたがないと思うわけであります。
#56
○河上委員 まだ、この問題については私はあまり納得ができないのでございますけれども、紛争処理法案については、まだいろいろと問題点がたくさんございますので、そちらのほうに少し話題を移してまいりたいと思うのです。
 今回の法案で私が一番強く感じましたのは、仲裁裁定の性格であります。ことに被害者にとってこれがどういう意味を持つかということであったわけですが、もう一つは、基地公害というものを今回の法案から除外した理由がはなはだあいまいでありますし、大体除外すること自体非常に問題があると思うのであります。立法者はわれわれ国会でございますけれども、これを提案した内閣として、その理由をどういうふうに考えておられるのか、伺いたいと思います。
#57
○床次国務大臣 基地公害を別個に除外しておるじゃないかという御意見でありますが、本法におきましては、やはり公害として、基地によって発生いたしました公害も、同じ法律の対象として取り扱っておるわけであります。ただし、その紛争処理の方法におきまして、一般産業公害といわゆる基地公害と申しますか基地防衛施設によるところの障害の取り扱いとは別の取り扱いをしておるというわけでありまして、何ゆえさような別な取り扱いをするかということにつきましては、これはいわゆる基地公害につきましては、国が発生さした公害でありますけれども、しかしその性格が一般産業とは非常に異なるものがあるというところが第一であります。また第二点といたしまして、今日までの実情を申し上げますと、基地公害に対しましては、すでに基地周辺に対する特別措置法という措置がありまして、いろいろと障害が発生いたしましたときには、これに対する処置が今日まで実行されておるのであります。個々の障害を除くための施設をなしましたときに、それに対して国から積極的な補助をいたしまして施設を行なう。また民生安定のための必要があります場合におきましては、移転等も行ない得るようになっておりまして、また損害を発生いたしましたときには、損害に対して補償をする措置もあるわけであります。これがすでに行なわれておって相当実績をあげておる。この点は他の公害とは著しく事態を異にしておるわけであります。したがって、いままでの実績をあげております行為をそのまま十分に伸ばしてまいりまして、そして基地の公害紛争の処理に当ってまいりたいと思うのであります。
 なお、紛争処理機関といたしましても、今日の状態におきましては異議の申し立てをいたしまして、そしてこの申し立てに対して国が処置をいたしておりまして、最終的な措置をはかるようになっておりまして、予算から申しましても百五十億くらいのものがすでに現実において予算としても盛っておりますし、過去において実施されましたものも百三十億円くらいのものが、基地公害という意味において処置せられておるわけであります。この実績をあげておるということ、また先ほど申し上げましたように、防衛施設というものの特性から見まして、私はそういう取り扱いをすることが適当ではないか、かように考えましたので、本法の中におきましては「別に法律で定めるところによる。」という表現をいたしておるわけでありますが、別の法律と申しますのは、先ほど申しました周辺に対する特別措置法がこれに当たるわけです。
#58
○河上委員 紛争処理では騒音というものは取り扱うわけでございますね。
#59
○床次国務大臣 基地の公害におきまして、やはり代表的なものは飛行機の騒音だと思います。これに対してもちろん対象として取り扱っておるわけであります。
#60
○河上委員 日本には大体飛行場は六十くらいあるように聞いておるのでありますが、あるいはもっと多いかもしれませんし、少ないかもしれない。昭和四十年ごろの数字でございますが、そのうち羽田と大阪というようなところでは、非常に騒音による公害というものが訴えられておりますし、また横田の基地あるいは板付の基地等では非常に大規模な騒音による公害調査というものが行なわれております。また厚木でも学童に対する騒音の影響というものは調査されております。それらを見ますと、生活妨害と同時に、それにとどまらず健康障害さえ起こしておるようであります。こういう公害に対しまして、総務長官のお話では、基地に関しては別に取り扱うというようなことでありますが、民間空港の場合は紛争処理法案で取り扱うおつもりですか。
#61
○床次国務大臣 国の中におきましても、自衛隊並びに条約によって駐留するアメリカ軍隊の関係が別になるわけでございます。これは同じ飛行機でありましても、普通の民間定期航空とはだいぶ騒音の状態が違う。しかも演習等、時間がそう限られませんし、なかなか激しいときには激しい、集中して行なわれることがある。同じ公害でありましても、だいぶ騒音の状況が違ってまいります。したがってそれに合うような施設をするという状態であります。民間の騒音に対しましても、従来から措置がありましたけれども、防衛庁の施設に対しましてはさらに一そうこの点を徹底させておるのでございます。むしろそういう騒音対策から申しますと、より広い範囲において対策を現実に講じてきておったのでありまして、詳細につきましては、防衛庁のほうからお答えいたします。
#62
○江藤政府委員 防衛施設の設置とかあるいはこれの運用に伴って生ずる障害の防止につきまして、それらの紛争処理をこの法案から除かれる趣旨につきましては、ただいま総務長官から申されたとおりでございます。また具体的に航空機の騒音によって生ずる障害の防止につきましては、ただいまおおむね総務長官から御説明になったとおりでございまして、従来から、防衛庁におきましては、騒音によって生ずる具体的な問題、たとえば生活環境にかかわるものにつきまして、あるいは各人の健康にかかわる障害等につきましてはいろいろ調査しまして、そのつど具体的に地元の市町村の当局者あるいは被害を受ける当事者の方々あるいは都道府県の方々等と十分協議しまして、具体的な救済対策を講じてまいっておるのでございます。
#63
○河上委員 それではお伺いいたしますけれども、いま伊丹空港について、川西市の二千七百世帯の方々が騒音の公害に関連して訴訟を起こしておるというようなことがございますが、板付とかあるいは小牧とか、そういうような民間空港と同時に自衛隊もしくはアメリカ軍が共同で使っておる空港につきましては、いま総務長官は軍用の飛行場の騒音と民間空港の騒音とは違うということでありますけれども、私、寡聞にして、その騒音の相違を住民が聞き分ける手段というのが開発されているのかどうか、いまだ聞いておらないのでありますが、もしそういうことが事実上区別が困難であるとするならば、こういうこと自体全くこっけいな話になってくるのじゃないか、こう思うのであります。
#64
○床次国務大臣 私が申し上げた意味を御理解いただけなかったと思いますので、補足いたしたいと思いますが、民間の空港でありまするならば、大体時刻表によって動いておるというわけでありまするが、軍の関係の演習につきましては、民間のような定時のスケジュールはない。そのときそのときによって、演習計画によって動いてくる。なお、非常時等にありましては時期を問わず飛び出すこともあり得るというように、形式におきまして非常に違う。また機数等におきましても、場合によっては機数が多くなることもあるのじゃないか。これは民間の定時航空とは違うわけであります。その意味において違うので、物理的な音響そのものの騒音の性質が違うわけじゃないけれども、その断続性とか時間とか時刻ですね、いつ起きるかというようなことが――これはだいぶ夜間になることもあるし、早いこともあるかもしれない。その点は民間の空路とはだいぶ違うのじゃないか。さような意味におきまして、特殊性を私どもは考えておったわけです。
 それからなお、民間と伴用する場合でありまするが、伴用します場合は、もちろんこれは自衛隊の施設と同じように取り扱って処理するように法律ができております。
#65
○河上委員 それでは、空港騒音に関しまして被害者が被害の申し立てをする経過につきまして、紛争処理法案の場合と、先ほど総務長官があげられました周辺特別措置法並びにいわゆる特損法ですか、この二法の場合と違いがあるのかないのか、それは全く同じであるのか、つまり被害者のほうの権利という点で全く同一であるのかどうか。こんなふうに私が質問いたしますと、政府側では、いや、むしろ自衛隊あるいは米軍基地の周辺のほうが手厚い何やらをしておるというようなことを言われるかもしれませんけれども、私が問題にしておりますのは、そういうこまかい、どういう場合にはどうということではなくて、被害者が被害を申し立てて、そしてそこに一つの結論が出た場合に、不服がある。そういう不服の申し立てがずうっと流れていく経過ですね。そういう点で基地の場合とそうでない場合との間に違いがあるのかないのか、その点を伺いたいと思います。
#66
○橋口政府委員 防衛施設として供用しております飛行場と民間航空に供用しております飛行場周辺の公害に関する紛争について差異があるかというお尋ねでございます。総務長官からもお答えいたしましたように、実質論といたしましては、防衛施設周辺整備法と公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律とは、内容にかなり相違がございます。いわゆる民生安定施設、道路その他し尿施設等についての予算措置も講じておるわけでございます。民間のほうはそこまでの手厚い措置をいたしておらないわけでございます。
 それから、お尋ねがございました、ある予算措置なりあるいはある行為があって、それに対して不服がある場合にどうするかということでございますが、これは予算によりまして、病院その他医療施設に対する防音装置を施すとか、あるいは民生安定のための施設を整備するということに対しての不服ということはあり得ないわけでございまして、そういうものにつきましては、予算の範囲内において、防衛施設庁において善処をいたしておるわけでございますから、自分のところに、あるいは自分の町村に予算の配賦が少ないということにつきましては、一般的に申しまして、防衛庁に対するいわば苦情の問題として処理すべきものではないかというふうに考えるわけでございます。
#67
○床次国務大臣 足らなかったならば、さらに政府委員から申し上げますが、元来、紛争処理のたてまえは、地元の公共団体、県、市町村というものを十分重視して、地元の実情に合う結論を出したいという意味です。この点は、防衛庁におきましても、防衛施設に対しましても、一般の施設におきましても同じことでございますが、十分に公共団体、長、これがいろいろ諸般の施設をいたします際に関連がありますので、そういうものを経由して出てくる。したがって、こちらの府県の審査会に対しましても、府県知事を通って審査会のほうへ渡ってまいる。また防衛庁のほうにおきましても、防衛施設庁のほうへ回っていくことになる。そして、先ほどお話がありましたように、防衛施設につきましては、市町村がいろいろ施設をなします場合に対する処置がずっときめられております。なお、民生安定の施設もいろいろあるわけでございまして、そういうふうな形でもって、でき得る限り地元の公共団体というものを活用するというよりも、地元の公共団体が非常に大きな役割りを果たしておりますので、その意見を十分に聞いて、そして紛争の処理に処す、あるいは防衛施設庁のほうへ意見が流れていくというふうな取り扱いになっておるわけであります。
#68
○河上委員 そういたしますと、この紛争処理法案で考えられておりますような、和解の仲介とか調停とか、そういうプロセスは全然ないことになるわけですか。
#69
○橋口政府委員 防衛施設周辺に生じました障害について、和解の仲介なりあるいは調停なり、今度の公害紛争処理法案で予定しておりますようなそういう紛争処理の制度があるかというお尋ねでございますが、これは別の法律に具体的な措置の内容をゆだねておるわけでございます。現在ありますのは、先ほど来御説明申し上げております防衛施設周辺の整備等に関する法律、その他関係法律でございまして、その法律の中には、異議の申し立ての規定はございますが、いわゆる第三者機関による紛争の解決のための調停あるいは仲裁等の制度は、現在のところは設けておらないわけでございます。
#70
○河上委員 そういたしますと、やはり基地を除いたということは、被害者の権利の保護からいいますと、非常に大きな重大な制限になるのではないか。だから、こういうことになりますと、そういう紛争が今後非常に先鋭化してくる可能性もあるわけでありまして、神奈川県では、空港に向かって付近の住民が風船を飛ばして妨害するというようなことさえいわれておるようなことでありまして、決して基地周辺のトラブルがなくならないどころか、ますます先鋭化してくるという状況でございます。ある意味で、そういうことにならないようにするためにも、和解の仲介とか調停ですか、そういうような制度を全然必要と考えられないのかどうか、その点お伺いします。
#71
○床次国務大臣 防衛施設に関しましては、先ほど申し上げましたように、民生安定それから損失補償等の手段がありますので、これは形は違いますけれども、被害の解決に対しましては、現実に大きく役立っておるわけであります。したがって、その取り扱いをいたしておるわけでありますが、なお、いわゆる紛争処理の一環に当たります異議の申し立て等につきましては、やはりその道が開かれております。それによって最終的な結論は得られると考えておるわけであります。
#72
○島本委員 ちょっと関連。
 これは一つの問題で、前に長官がはずしてやるから、そこまでいっちゃったのです。大臣、初め、基地公害に対しては、国が発生するので、これはもう一般の産業公害とは異なるものである、そういう性質だとおっしゃった。しかし、その被害は同じじゃないですか、どこが違うのかという質問だったわけです。結果は同じなんです。ところが、同じだとすると、民生の安定のための措置があり、また損害賠償のための措置がある、こうしても、異議の申し立てがあっても、和解、調停、仲裁というような制度がない。ないというならば、異議の申し立てをしたあとどうなるんだ。不満だったら風船も飛ばそうとするのが現状じゃないか、こうなる。長官は、いまそれに対して、絶対あり得ない、こういうような答弁のように聞こえたのです。もしそうだとすると、基地の紛争、いままで終戦以来何件あったか、係争中のものは何件か、解決したものが何件か、これはおわかりのことだと思いますが、資料としてこれは出しておいてもらいたい。このことを特にお願いしておくほかに、長官に、いまの問題に対して疑念が残ります。これに対してはっきり答弁してやってほしい。
#73
○床次国務大臣 基地公害の特色と申しますのは言いろいろの形でもって公害が起こっておる。しかし公害対策基本法にいうところの公害の種類は、やはり限られておるわけであります。本法の対象といたしますのは、公害対策基本法の対象とする公害だけになるわけであります。いわゆる基地公害につきましては、それ以外の、ずいぶん別途のものがありまして、これはここにいう紛争処理とは別に解決すべきものだというふうに私ども考えておるわけであります。
 なお、防衛施設の特色というもの、これは先ほどちょっと飛行場の例を申し上げたのでございますが、防衛という特殊な立場にございますために、民間のものとは違う。国の施設でありましょうとも、あるいは土木の事業あるいは建設その他におきましても、民間と変わらない形のものがむしろ多いのじゃないかと私は思います。しかし、防衛施設に関しましては、国の施設であるけれども、民間のものとは違う。空の場合は、まあ音には違いありませんが、音の発生その他の原因等が非常に違っておるし、また、原因調査等におきましても、これは民間なり他の一般の国の施設と違って、立ち入り検査等に対しましても必ずしもなじまない面があるわけです。そういう防衛施設の特色を持っておるので、別な扱いをしているというふうに私ども考えておるわけであります。
 根本的には、防衛庁のほうから申し上げたい。
#74
○江藤政府委員 今回の公害紛争処理法案におきましての和解の仲介、調停、仲裁等が防衛庁にないではないかという御質問でございますが、公害対策基本法の二十一条を受けましたこの法案でございますが、二十一条におきましては、「政府は、公害に係る紛争が生じた場合における和解の仲介、調停等の紛争処理制度を確立するため、必要な措置を講じなければならない。」というふうになっております。和解の仲介、調停等の紛争処理の制度でございまして、確かに御質問のように、和解の仲介とか調停ということばを用いた制度、あるいはそういうような第三者機関は防衛庁にはございませんけれども、これに類似した周辺整備法、その他の法令におきましての異議申し立て等の再審制度がございますので、この法律の規定によりまして、実際の紛争処理について遺憾なきを期したいと考えております。
 先般も申し上げましたが、こういうような法案があります。その法案をただ機械的に運用しておるわけではございませんで、実際の運用にあたりましては、その紛争をきわめて民主的に解決しようという趣旨におきまして、具体的には被害者の代表である方とか、あるいは市町村の方、あるいは都道府県の方が中に入っていただきまして、国会議員なり、あるいは都道府県議会議員、市町村議会議員等、地方住民を代表する方々も具体的には中に入っていただきまして、いわゆる第三者的な立場で御意見を申していただいておりますし、そういうような実際の運用にあたりましては、第三者機関という正規の法的な制度ではございませんけれども、異議申し立て等いろいろな紛争の処理解決にあたりましては、できるだけそういうような方々に中に入っていただきまして、円満に解決しようとしてつとめておるということでございまして、実態的には、和解の仲介とか調停のような趣旨のことが行なわれておるというふうに御理解願いたいと思います。
#75
○島本委員 それはほんとうの答弁になっていませんよ。それは異議の申し立てがあるというのです。あったならば、法律を改正しなくてもやれるのだから、紛争中のものや何かあり得ないし、全部解決されたという前提で、異議の申し立てがあるから他の機関は入れられないということになるのです。しかし、いま川上委員がはっきり聞いたのは、異議の申し立てがあるのはわかる、しかし、それは完全かというのです。それでなければやっぱり和解、調停、仲裁、こういうようなものは必要ではないか、なくてもやれるのか、聞いているのです。あなたは国会議員が中に入って、地方公共団体が中に入って云々といいますけれども、幾らやっても、これでは陳情程度でしょう。陳情程度だから、これは解決されないで残るというのがいままでの例でしょう。したがって、法律改正でこれに対処しなければならないということは当然なのじゃないかというのです。やらなくてもいいというのは総理の本会議での答弁ですよ。ですから、それを具体的な問題で和解、調停、仲裁ということをやらないで、申し立てがあるから全部できる、どうしてできるのだと聞いているのです。いまの答弁は何かおかしいよ。われ中空になすな恋をやっているじゃないですか。そんなものはだめだ。もう一ぺん。
#76
○江藤政府委員 先ほど申し上げましたように、紛争処理法案におけるような和解の仲介とか、調停、仲裁等の制度は防衛庁にはございませんけれども、実質的には異議の申し立て等によりまして、いまの紛争処理の解決につとめておるということでございます。なぜそのような制度を――実際の紛争処理にあたって、この公害紛争処理法案からなぜそのような具体的な措置を除くか、別の法律の体系によるべきであるかということにつきましては、先ほど具体例を総務長官がお答えになっておりますように、そもそもこの防衛施設の設置あるいは運用によって生ずる障害につきましては、本来互譲の精神というものを前提として、和解の仲介とか調停というような制度にはなかなかなじみにくいという点がございまして、われわれの防衛施設関係のいわゆる基地公害というようなものにつきましては、行政的なベースにおきまして、できるだけ防衛施設庁を中心として問題を処理してまいりたいというふうに考えておるのでございます。
#77
○河上委員 要するに異議の申し立てをした場合の処理というものは、何とかそうしたいというだけの話であって、具体的に、制度的にあるいは法律的に何の保障もないわけでありまして、こういう紛争処理法案をつくる本来の立法の趣旨からいいましたら、これを機会にそういうものを整備し、解決していくのがたてまえだったのじゃないか、こんなふうに思います。新聞報道などに伝えられるところによれば、基地を除くというのは、内閣が提出する直前になって特に加えられたというふうにも取りざたされているわけです。これはおそらく事務当局の段階でいろいろ検討しているときには、そういう区別をすべきでないということでやっておったのではないかと思うのです。そこに特に基地を紛争処理法案の対象にすることについて何ら支障がないということでやっておったのじゃないかと思います。どうしてもこれを除かなければならない理由というものは一体どこにあるのか、それをここで大臣から伺いたいと思う。
#78
○床次国務大臣 この法案を検討しておる段階におきましては、基地公害につきましても、法律上同じように取り扱うということに考えられておったときもあったわけであります。しかし実際におきまして、府県の審査会あるいは中央の審査委員会等の活動におきましては、基地周辺整備法というものの存在、その運営というものを頭に置いて考えられる、すなわちこの制度は当事者の相互の互譲によってできるものでありますので、周辺整備法等の法律によりまして、その運用がうまくいきますならば当然これは互譲の精神によって解決できるのではないか、さように考えておったわけであります。これは結果において同じ事態になりますことを、法文に書きます場合に表に出ておるのと裏に出ておるのとの差であった、今日になって私どもそういう経過はあったものと思っております。しかし実質上におきましてはやはり同じ効果をあげ得る、どうしても足りないものは裁判所に行かざるを得ない。社会的なと申しますか、正義に立った一つの解決方法である。したがって先ほどからるるお尋ねがありましたように、仲裁あるいは調停だけではもの足りないという考え方がありまするならば、そういう方はどうしても裁判所に行かざるを得ないということになるわけです。最終的にはそういう事実を踏まえながら、途中の解決と申しますか、あるいはできるだけすみやかに適正に解決する方法があればその方法をとるべきではないか、かような意味において、今日の紛争処理法案になっておるわけです。したがって防衛庁がとっております処置もそれとほとんど同じであります。しかも現実に今日まで運用されておって効果をあげておるわけでありますから、現在まで運用しておりまする法律を十分に活用いたしましたならば、その目的を十分に達し得ると考えましたので、別の法律によるという姿に書いてあるのでございます。
#79
○赤路委員長 厚生大臣が来ておるのですが、時間の関係はもうありませんので、質問しますと中途はんぱになりますが、厚生大臣は次の機会にしますか。
#80
○河上委員 せっかく来られたのですから、基本的な姿勢について……。
#81
○赤路委員長 わずかしかないね。もうあと三十分ないくらいですから、二時から本会議で。――どうしますか、やりますか。
#82
○河上委員 もう少しやりまして、厚生大臣もせっかくお見えですからやります。
#83
○赤路委員長 ちょっとやめて。
  〔速記中止〕
  〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
#84
○河上委員 それでは、総理府の考えでは、異議申し立ての制度がうまくいっておるというふうな感じになるのでありますけれども、それにつきましては、やはり資料をもってわれわれにその事態を納得せしめるような努力をしていただかないと困ると思うのであります。
 続いて、これは一般的な問題になるかもしれませんが、今後の紛争処理法案で、立ち入り権の問題があるわけでありますが、従来では通産省が、具体的に言いますと、地方通産局が公害源に対して立ち入り権を持っておって、地方公共団体は、現実にどうもそこは疑わしいと思っても、入ることもできないということだったわけでありますけれども、今度は審議会がこれに立ち入り権を認められておるように書いてあるわけでありますけれども、通産省は当然鉱山、工場などに対する監督権を依然として持っておると思うのでありますが、そういう通産省の監督権と、今度の法案によって持ちます審査会の権限というものとの関係はどうなっておりますか。
#85
○床次国務大臣 本法によりまするところの審査会の立ち入り権というものは、この事件を解決するために必要な限度においての立ち入り権でありまして、この目的のために必要な限度にとどまるわけでありますが、十分その権限を行使して、そうしてその目的を達し得るような立ち入り検査は、当然これはできるものと考えております。
#86
○河上委員 しかし公害対策全般から言いますると、日ごろからある監視が必要である、規制が必要であるということと、紛争が起きましたあとも当然相当長くかかる、それを非常にショートカットするというお話でありますけれども、少なくとも一定期間があるわけでありますが、そういたしますと、紛争が起きてから審査会が立ち入る場合に、通産省はこれに対して積極的に協力をするかどうか。先般横浜市が公害調査をいたしましたときに、通産省が、企業の秘密の部分が非常に多いというようなことを理由の一つにあげて、最終的な報告まではまだ協力できないというようなことで、中間報告の段階では資料の提供を、言を左右にして多少ちゅうちょされたというようなことを聞いておるわけなんです。そういうような問題が審査会と通産省との間に起こり得る可能性が十分考えられるのでありますが、こういう点について、総理府として、また通産省として、どうお考えになるのか。
#87
○床次国務大臣 この問題は大事なところでありまして、審査会が判断をいたしますのに必要な検査はやはりしなければならぬということはもちろんでありまして、審査会自体が立ち入り検査をいたしまするが、同時に必要な資料を持たなければならない、全くお説のとおりであります。このために、本法におきましては、特に審査会に対しまして、関係行政機関に対しまして協力を要請し得るように、その関係機関のいろいろな必要な資料をもらって、そうして審査に利用することができるように、道を講じてあるわけであります。
#88
○矢島政府委員 ただいま総理府総務長官のお話しになった点は、おそらくこの法案の第四十三条「資料提出の要求等」というのだろうと思います。これによりまして、中央委員会なりあるいは審査会等が関係行政機関の長、その一つである通産省に対して、公害発生の原因の調査に関する資料の提出、その他必要な協力を求められた場合においては、積極的に協力しなければならぬと思っております。
#89
○河上委員 そういうときに、会社側が企業の秘密をたてにとって協力を拒んだ場合、審査会として、これに対してある強制力を持ち得るかどうか、その点ですね。
#90
○橋口政府委員 審査会が、調停案作成あるいは仲裁案作成のため必要な限度において、立ち入り検査をいたすわけでございますが、立ち入り検査に対しまして、立ち入り検査を受ける側に受忍義務を課しておるわけであります。したがいまして、正当な理由なくして立ち入り検査を拒んだり、忌避したり、あるいは妨げたりというような場合には、一定の制裁がございます。ただ正当な理由の範囲の問題でございますが、これは最終的には非訟事件手続法によりまして、裁判所の判断によって処理されるべき問題でございますが、しかし、主観的に企業者の秘密ということだけで、それが正当な理由になるというふうには考えておらないわけでございまして、客観的に見ましても秘密としての性格を持ち、またその秘密が外部に知れることによって企業の運営そのものができなくなるというようなものにつきましては、われわれとしては、正当な理由があるというふうに考えております。ただ最終的には裁判所の判断に服すべきものというふうに考えております。
#91
○河上委員 それでは、紛争処理法案につきましては、私がいまるるいろいろ御質問申し上げました限りにおきまして、いろいろの問題点がある。その点については、政府側も若干お認めになっておられるようでございますが、この点についてはなお時間をかけて御質問したいと思うのでありますけれども、いませっかく厚生大臣がお見えになりました。本来被害者救済法について、実は本日私は御質問申し上げたかったのでありますけれども、残念ながらすでに時間がだいぶ迫っておりますので、一点だけ、法案それ自体というよりも、この法案を出されるにあたりましての厚生大臣の一つの御決意というものを承りたいと思うのであります。
 大体この二法はすでに多くの方がお認めのように、事後処理法案でありまして、すなわち患者が出たりあるいは紛争が起きてからこれを処理するというものでありまして、公害対策といたしましてはきわめて重要な部分でありますけれども、本来の公害対策の一環にすぎないわけであります。本来公害対策は、何もなく済んだという形が一番望ましいのでありまして、起きたあと英雄的に処理するよりも、むしろ何もない形に散文的に処理できるのが一番正しいのだろうと思うのであります。その点から見まして、ここで私はちょっと、公害問題に対する政府の基本姿勢というものを、被害者救済法案の質問に入る前に、大臣からお伺いしたいと思うのであります。
 御承知のとおり、昭和三十年以降の日本の公害というものは、ある意味においては急速なる石油産業の発達というものを背景にいたしまして、石油公害を一つの基幹、柱として展開されてきたというように理解できると思うのでありますが、こういう種々の公害対策に関する実施法を次々と出されるにあたりまして、そういう石油公害の将来へ向かっての見通しというものを、大臣はどんなふうに考えておられるか、その点をまずお伺いしたいと思うのであります。
#92
○斎藤国務大臣 河上さんのおっしゃいますように、私は、公害問題というものは、公害のない産業、これが目的でなければならぬと思います。産業が発展をしてまいっても、しかし公害を与えないようなそういう産業というのが目的でなければならぬと思います。したがって公害が起きてからら、それによって健康をそこなわれておる者に対してどうするとか、紛争が起こってどうするとか、こういう問題は、私はむしろ二次的な問題だ、一日も早くこういった法案ももうなくて済むというようにありたいものだと思うわけです。
  〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
 しかしながら、現実にいままでが手おくれといわれれば、そのとおりだと思うのでありますが、公害が発生をし、そして紛争も起こって、健康もそこなわれるという現状でありますから、この現状を見捨てておくわけにはまいらない、こういう意味で、この二法案をお願い申し上げておるわけであります。ことにいまおっしゃいました大気汚染の元凶である石油というものに対する見通し、考え方はどうかというお尋ねでございますが、これも科学技術が進んでまいりますにつれまして、私はもっともっと早く低硫黄の重油あるいは石油、または煙から硫黄分を取り除くという技術の進歩をこいねがっておったのでありますが、ようやく緒についてまいりまして、そして実用化ができるようになってまいりました。したがって、あとはそういった方面の資金と、それから実用化を促進するということでございまして、私はこのことは成就できるのじゃないか。通産省あるいは通産大臣にもそういった計画を一つ年次的に立ててもらって、そしてこの程度の低硫黄であれば、いま起こっておるような、そういう大気汚染の心配はないというように目標を示してもらうように、計画を立ててもらうようにお願いしておりますが、いま通産省におかれても、あるいは石油関係の業界におかれても、御検討中であり、日ならずして石油から起こる亜硫酸ガスの公害というものもないような時代が迎えられるのじゃないか、またそういうようにしなければならぬ、私はかように思っております。
#93
○河上委員 もう一つ、それに関連してでございますけれども、現在大気中に排出されておる物質の量というものを具体的にどういうように把握しておられるか。そしてそれがまた将来どういうふうに伸びていこうとしているか。私どもの知る範囲におきましては、SO2のほか、いわゆるCOの伸びが近年急に目立っておるように思うのであります。そういう点から見まして、自動車公害というものに対する対策がいまにして立てられないと、たとえこういう二法案をつくりましても、もうとても任にたえないというようなことになるんじゃないかと思うのでありますが、そういうようなことにつきまして、厚生省あるいは通産省はどういう具体策を用意しておられるか、この機会に伺いたいと思います。
#94
○斎藤国務大臣 自動車の排気ガスもおっしゃるとおり問題でございます。これは通産省あるいは運輸省からお答えいただくのが適当だと思いますが、この自動車の排気ガスにいたしましても、一酸化炭素の排出を少なくするような設備、装置がだんだん進んでまいりまして、この九月か十月から出る新車には、いままでよりももっと低いCOの排出量の、二・五ですか、そのように規制せられたわけでありますが、中古車についてもまたそれに準じて、指導、取り締まりをやってもらうことをお願いいたしておりますし、これも科学技術の進歩によって、もっともっと低めていくことができるであろう、かように考えます。同時に自動車は、たくさん集まって走るところと、そうでないところで非常に違うわけでありますから、道路の構造あるいはまた通行のしかたというようなものにも検討を加えてもらいまして、そして一酸化炭素が、その一定の地域に特によけい排出するということのないような方途を考えてもらわなければならぬ、かように思います。これは建設省あるいは取り締まり当局また地方自治体において、いろいろ検討を加えてもらいたいと思っておりまするし、すでに東京都においても、そういうような考え方で検討を加えている模様でございます。そういうような方法を講じまして、一酸化炭素が、ある地域に特に高い濃度で発散されないような方途を考えてまいる所存でございます。
#95
○河上委員 これは事務当局の方にお答え願ってけっこうなんでありますが、自動車の台数が、昭和三十年から四十二年くらいまでにどのくらい伸びておるか。そして昭和五十年、六十年にはどういうふうになるか、そういうような見通しをはたして持っておられるのかどうか。また石油消費量というより、重油消費量の伸びが、昭和三十年から四十二年までどのくらい伸びて、これが昭和五十年、六十年という段階になりましたときにはどの程度になるのか。そういうことを、事務当局でけっこうでございますが、どのように把握しておられるか、それをお伺いしたいと思うのであります。もしそういうことについての十分な見通しというものなしに、ただこういう法案を出すだけでは、ほとんど意味がないのじゃないかということを私は強く、ここに両大臣おられるわけですけれども、肝に銘じていただきたいと思うのであります。もちろんこれは一省だけではなかなかできないことでありましょうけれども、各省協力いたしまして、昭和四十二年からことしにかけまして、次々と公害関係の法案が出ておるわけでありますが、この時期にあたって、例の公害審議会の昭和四十一年十月七日に出されました答申、その答申で述べられた趣旨というものをもう一度再確認して、この際、予想というか、将来の見通しというか、そういうものを十分にここで確認していただきたいと思うのであります。
#96
○斎藤国務大臣 自動車の、それから今後の重油、石油等の使用量の見方につきましては、通産省その他から数字はお答えをいただけると思います。私のほうといたしましては、そういう点を十分考慮に入れ、踏んまえまして、そして少なくとも、いままでよりも大気が汚染されないように、そのためには各地区に公害の防止計画をつくってもらい、現に汚染が環境基準をこえておるところは、これを下げるような、実際的に個々の工場について方策を樹立してまいる。まだ汚染されていない地区につきましては、そういう工場が新しく設けられるというような場合に、排出基準をきめまして、そしてその地域にこれだけの工場がきても、これだけの排出基準でこれだけの排出量であれば、環境基準をずっと下回るというところで押えていくというようにいたしまして、一カ所に集中して、今日より以上の公害を発生しないようにこまかい具体的な施策を、国におきましては各省と連絡をとり、また府県、市町村の段階において、それぞれの機関において、そういった事柄を実行に移してまいりたい、かように考えます。大気汚染の環境基準につきましても、ただきめただけ、あるいは規則をつくっただけというだけではとうていまいりませんので、それに即応した実際の活動にこれから入っていく所存でございます。
#97
○矢島政府委員 先生おっしゃるとおりに、大気汚染防止対策を講ずるためには、今後における発生原因である重油なら重油あるいは自動車の需要の増加の見通しというものを十分に検討した上でやっていかなければならぬことはもちろんでございます。たとえば先般亜硫酸ガスの環境基準がきまりまして、その環境基準を今後どういうふうにして達成していくかという方策を私どものほうでただいま研究しておりますが、その前提となるのは、まずもって重油の消費量がどういうふうになるのであろうかということが大前提でございます。
 お尋ねの数字について一、二申し上げますと、非常にラウンドで申し上げますと、四十一年度では、重油の総内需でございますが、約五千二百万トン、そこでこの四十一年度の数字をまず頭に置いて五千二百万と御記憶願いまして、環境基準は四十四年度、ただいまから出発するわけで、この四十四年度、本年度の数字はどれぐらいになるかというと、八千四百万、一応これは五年、十年というふうに分けてやるわけですが、次の五年間の四十八年度は一億二千万、それから十年後の五十三年度、最後の年が一億七千五百万、こういう数字になるわけです。繰り返しますと、最初の四十四年度が八千四百万、五年目が一億二千万、十年目が一億七千五百万。その比率を申し上げますというと、最初の年から最後の五十三年度が二一三%増しということになります。それから最初の年と五年とは一五〇%、かような数字に相なります。こういう数字を前提にいたしまして、いま計画に取り組んでいるわけでございます。
 なお、自動車につきましては、ちょっと手元に資料がございませんので、ただいま申し上げられませんが、同様の作業が必要であろうと思いますす。今秋、厚生省を中心として一酸化炭素の排出環境基準がきまりますが、その際には同様な見通し、同様な手法を用いまして対策を講じていかなければならぬ、かように存じております。
#98
○河上委員 いま数字を大臣もお聞きになったと思うのでありますが、現在までのことを前提に公害対策を立てても全くナンセンスであるということが、いまの数字からおわかりだと思うのでございます。いま運輸省の方も来ておられませんようですし、十分な資料もございませんようですのでで、これらの点につきましては、また次回に保留させていただきます。きょうは厚生大臣のお見えになるのを実は待っておったのでございますが、被害者救済法案についての質問はちょっと時間がございませんので、これを次回に譲らせていただきまして、あらためて法案の内容につきまして、またその背景、精神などについてお尋ねしたいと思います。
 以上をもって、きょうの私の質問を終わりたいと思います。
#99
○赤路委員長 島本君、あなたさいぜん資料要求をしていましたね。どこへしましたか。
#100
○島本委員 防衛庁。それは終戦以来いままでに基地公害によると思われる紛争があったのかなかかったのか。あったとすると、その件数と、概要。それからもうおさまったのかおさまらないのか。おさまったとすると、その件数。それから係争中のものであればその理由。こういうようなことです。それ、わかりましたね。
#101
○江藤政府委員 ただいまの資料要求でございますが、具体的に防衛施設の周辺整備に関する法律に基づく異議の申し立て件数とかあるいはいわゆる特損法に基づく異議の申し立て件数、こういうようなものははっきりわかりますけれども、この基地問題によって、基地公害に基づく紛争ということになりますと、具体的にどういう範囲のものであるということになりますと、たいへんむずかしいものでございまして、たとえば立川の……。
#102
○島本委員 そんなことを言っちゃいけませんよ、あなた。たとえば大砲の騒音、飛行機の騒音で乳が出なくなって、農氏がついに通信線を切ったというあの野崎事件という、ああいうのは何の委員会にかかった。かかってないけれども、存在したじゃないか。だからそういうのを除いて、かかったのだけ出すというのではだめだから、終戦以後起きたこういう事犯について、それを資料として出せと言っている。それを、いまのような周辺法によって扱ったのだけを出すなんて、そんな詭弁はだめですよ。
#103
○鐘江政府委員 わかる範囲のものにつきまして、後刻御提出いたします。
#104
○島本委員 わかる範囲でまずけっこうだけれども、それくらいのことが後方部隊からの援助がないと言えないのか、防衛庁、だめだよそんな答弁。さっき言ったのを聞いていたらわかるでしょう。いま救済をやっているのだから、これにかからなければならないようなものはどういうものなんだということをさっきから言っている。経過を知っているじゃないか。それを隠しに隠して、周辺法の適用を受けたものだけでいいのか。特損法にかかるものだけに限るのか。そういうのを詭弁というんだ。終戦後いままであった事件についてて、それはもちろんわからないものはわからないでしょう。わかっている範囲で出す、あたりまえのことですよ。
#105
○赤路委員長 島本君に申し上げます。
 またあらためて、防衛庁長官でも呼んでおやりください。
 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
  午後一時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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