くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第061回国会 産業公害対策特別委員会 第17号
昭和四十四年六月六日(金曜日)
    午前十時五十七分開議
 出席委員
   委員長 赤路 友藏君
   理事 橋本龍太郎君 理事 藤波 孝生君
   理事 古川 丈吉君 理事 河上 民雄君
   理事 島本 虎三君 理事 本島百合子君
      葉梨 信行君    渡辺  肇君
      加藤 万吉君    中井徳次郎君
      米田 東吾君    折小野良一君
      岡本 富夫君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
 出席政府委員
        総理府統計局長 岡部 秀一君
        経済企画庁国民
        生活局長    八塚 陽介君
        科学技術政務次
        官       平泉  渉君
        科学技術庁科学
        審議官     高橋 正春君
        厚生省環境衛生
        局公害部長   武藤き一郎君
 委員外の出席者
        議     員 角屋堅次郎君
        法務省刑事局参
        事官      鈴木 義男君
    ―――――――――――――
六月六日
 委員久保田円次君辞任につき、その補欠として
 渡辺肇君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員渡辺肇君辞任につき、その補欠として久保
 田円次君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法
 案(内閣提出第六三号)
 公害紛争処理法案(内閣提出第六八号)
 公害に係る被害の救済に関する特別措置法案
 (角屋堅次郎君外十二名提出、衆法第一〇号)
 公害紛争処理法案(角屋堅次郎君外十二名提出、
 衆法第二〇号)
 公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案
 (小平芳平君外一名提出、参法第一号)(予)
 公害に係る紛争等の処理に関する法律案(小平
 芳平君外一名提出、参法第五号)(予)
 公害委員会及び都道府県公害審査会法案(小平
 芳平君外一名提出、参法第六号)(予)
 公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を
 改正する法律案(内閣提出第九四号)
     ――――◇―――――
#2
○赤路委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案、角屋堅次郎君外十二名提出の公害に係る被害の救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案、予備審査のため本委員会に付託されました、小平芳平君外一名提出の公害に係る健康上の被害の救済に関する法律案、公害に係る紛争等の処理に関する法律案及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案並びに内閣提出の公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
#3
○島本委員 きょうは、おもに公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案を中心にして、いままで各委員がいろいろ質疑されておりますが、それとあわせて十分皆さんの意見をただしたい、こういうように思うわけであります。
 その前に、大体、公害紛争処理法案、公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案、この二法も並行審議をされておるわけであります。それぞれ明らかになった点は浮き彫りにされつつあるわけであります。ことに公害紛争処理法案、この中では、いわゆる基地周辺に対するところの法律と申しますか、特損法または周辺整備法、これにかかわる場合には、これは立ち入り検査を含むところのいろいろな条件を含むと思われますこの紛争処理法案、これからは除外される、こういうような点は、まさに憲法十四条違反のおそれがないかという点が依然として残っておるのであります。また、公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案、これについては、目的の点等につきまして、かつて公害対策基本法が論ぜられました際、それを上回るようなこういうような目的が付されておる点等について、もっと一考を要するのじゃないか、こういうような点等も現在審議せられておる状態であります。しかし結論が出つつあるということは、私はほんとうに同慶にたえない、こう思っておる次第であります。
 今回の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案、これはまさに重要な法律でございまして、兄たりがたく弟たりがたい、こう思われる点でございます。この点について、今後は逐条を含めて、ひとつ十分審議してまいりたいと思うわけであります。
 その前に大臣にちょっと伺っておきたい点がございます。企業責任が明確になったにもかかわらず、いまもって補償問題の解決がおくれている事件と申しますか、事犯と申しますか、こういうような公害にかかわるところの紛争、こういうようなことについては、いままでずっと、これは政府の怠慢じゃないか、指導の怠慢じゃないか、こう論ぜられておったわけであります。この点等については、法律と並行してこの問題の解決を急がれていたはずでありますが、いままでに企業の責任が明確になったにもかかわらず解決されていない、こういうような被害者の救済問題はあるのですか、ないのですか。この点等について、皮肉な質問ではございませんが、まず大臣にひとつ承っておいて、次に入らしてもらいたいと思うわけです。
#4
○斎藤国務大臣 公害について企業の責任が明らかにされたものというお話でございますが、いわゆる公害病らしき疾病が、いろいろ医学的に検討の結果、これはどういう原因からきたのであろうということがはっきりいたしたものをおっしゃるのであろうと思います。これはある鉱山あるいは工場から流れてきた排水の結果ではなかろうか、そのことがきまったというのが、御承知のように、水俣あるいは阿賀野川の公害と称せられているものにあるわけでございます。これがそういうように決定をいたした場合に、その公害を発生したところの企業がどの程度の責任を負うか、これはいま民事上の問題だということに一応されているわけでございます。そこで、話し合いで結末がつけばよし、あるいは民事上の訴訟の手続で済めばよしということで、あるところにおいては話し合いが進められ、あるところにおいては民事訴訟が起こっている。そしていま訴訟の審理中であるというのが現状だ、かように存じております。
#5
○島本委員 もうすでに、原因者と目される、こういうような点も政府としての見解が発表され、またいろいろそれに対する公害病の認定を行なって、そしてこの病気に対しての治療の抜本的な開発、そういうようなものもきわめて強い要請がいままでなされておったわけであります。ことにこれは私は常に気になっておった、いまでも気になっておるのでありますけれども、いわゆる公害というものが問題になり始めてきたのは、何としても水俣、この水俣の場合には、委員長もおられますけれども、九州だけの問題ではない、世界の問題になっておる。その場合には、厚生省は明らかに原因者並びにこの原因までもはっきりこれを指摘なすった。これに対しての救済の措置だとか、または抜本的な治療の開発というようなものは常に気になっておった。はたしてこれが、法律ができたから、これに当てはめたならば、いままでの困難は全部吹っ飛んで、できるというようなものではなかろう、こうも思うから、現在並行していろいろ処置をされておるのではないか、こう思います。この抜本的な病気治療の開発、それからこの紛争の処理、水俣病の。これはいまどうなっておりますか、まずひとつ聞かしていただきたい。
#6
○斎藤国務大臣 水俣病の治療の対策につきまして、治療の研究費というものを政府はできるだけ支出いたしまして、そうして医学上動員できる、いわゆる治療陣営という方々の研究をさらに進めてもらっているわけでございます。
 それから、紛争の処理という点につきまして、いま別途御審議をいただいております紛争処理法案というものを提案いたしまして、それによって処理をいたしたい、かように考えておるのでありますが、しかしながら、紛争処理法案が成立し、これが発足するまで待てない、何とかして紛争を早く解決つけてもらいたいという要望が水俣の患者同盟の方々からありましたので、私は第三者機関として、これは法律に基づくものではございませんが、水俣病補償処理委員会というようなものをつくりまして、ただいま調査をしてもらって、なるべく早くそれらの人の手によって、そして会社側と患者側との話し合いが円満に解決することを期待いたしておるわけでございます。
#7
○島本委員 前からこの問題について、私どもも声を高くして要請しておったことであります。それで大臣、このイタイイタイ病のカドミウムによるところのもの、またいわゆるこの水俣病といわれるのは有機水銀、この原因によるところの病気、それからそのほか大気汚染によるところのいろいろな病気があります。この公害病と政府が認定する以上、窓口は厚生省である場合には、治療に対する抜本対策の点も、この際やはり開発とあわせて研究調査も進めなければならない義務がある。この点、政府としては百年河清を待つような、いまだに抜本的な治療法がないと聞いておる、ほんとうにこれらはまだないのですか。
 それから、紛争処理を、水俣病の場合は特に処理委員会を設けてやっている。私どもの聞いた話によりますと、会社側の意向を代弁するような機関であっては困るというので、全面的にそれに乗れない、あくまでも前からの紛争の経過を踏んまえて、ほんとうにこの紛争処理法案ができる前に、これ以上、いままでの苦労をおもんぱかって解決をはかってやるというなら、みな乗るのではないか。まず熱意の問題とあわせて、まだまだこういうような点のいわば根本的な疑いの解決ができていないという点、私は遺憾だと思います。大臣をはじめ厚生省や政府の姿勢にもよるのではないかというように思って、私は残念なんであります。
 この病気の治療の開発のぐあい、それから水俣のあっせんの成果というようなものは、私はおろそかにできないことだと思います。いままでの説明で私は納得すればいいのですけれども、これで納得できないゆえんはそこにあるわけです。おわかりだと思います。この二つ、もう少しつまびらかにしておいてもらわないと、次へ進めません。
#8
○斎藤国務大臣 病気の治療対策につきましては、政府も必要な研究費を出して、一日も早く、もっと変わった、そして一発でなおるような治療方法はないかというので、私自身、厚生省自身ももどかしく思っているのであります。しかし御承知のように、これはなかなか、医学陣営においても研究をたゆまず進めてもらっているわけでございますが、まだこれならというきめ手がないように思うのは非常に残念でございますが、さらに進めてまいりたいと思います。
 それから、あっせんの事実上の機関の信頼度の問題だと思いますが、特に三人のお方をお願いしてあっせんに乗り出してもらったわけでございますが、これらのお方は、私は、どこからごらんになっても会社側に味方をする人だというように思える方ではない、かように思っているわけであります。三人のお名前、経歴はすでに島本委員も御承知のことかと存じます。
#9
○島本委員 私どものほうでは、それを知らないわけではございませんけれども、患者の意向やいままでのこういうような長引いた原因等考えます場合には、いまのような状態で患者がいるということは残念だ。ですから、今後この問題に対しては、あなたもほんとうに誠心誠意これにぶつかってもらわないとだめなんだ、こういうような趣旨で聞いておるわけです。
 そうすると、農水産物の物的被害によるところの、生活権が脅かされている人たちに対する生活保障の面をあわせて、いろいろの被害者の救済というものを、今度これには全然考えられないようですが、特にこれを盛らなかったという理由は、まず大臣はっきりしておいていただきたい。
#10
○斎藤国務大臣 ただいまの点は、厚生省といたしましては、健康被害というものに限って救済の特別の立法をしようということで、農作物その他物的被害につきましては、これは現在の法のたてまえでやっていく、かように考えておるわけでありまして、厚生省としては、健康の被害というものを、これは一日も捨てておけませんから、社会保障的な見地から早く特別立法をしたい、かように考えております。
#11
○島本委員 そこが問題なんです。私どものほうでいろいろな――公明党さんも社会党からも案が出ておりますが、考え方の違いだけで済まされない問題は、農林水産物の物的被害による生活権を脅かされている人がないか、あるのか。またこれは物的な損害だけじゃなしに、それによって被害を受けている人の生活権、この救済とこの生活保障の措置ということになりますと、これはやはり厚生省のほうで考えなければならない問題じゃないかと思うのです。物的損害に対する損失の補償、こういうような考え方もあるけれども、それによって生活の被害を受けている方の生活の保障をどうするんだ、こういうような点については、やはりもう手抜きされない問題だと思うのです。それは別な問題だからおれは関係ないんだ、被害者の救済と関係ないんだといったって、生活の保障の点ははっきりあるじゃありませんか。むしろこれを考えてやらないことにおいては、真の意味の健康の救済にならないのじゃないか、こう思うのですが、この点私は釈然としません。
#12
○斎藤国務大臣 広く申しますると、生活全般の基盤が確立してこなければ、国民のしあわせな生活ができない。これは公害病に限らずすべてそうだと思います。しかしその施策は厚生省だけでやれるものではございません。いわゆる万般の施策にまたなければならない点が多々あるだろう、かように考えます。公害によって生活環境が悪くなった。そのために農作物がとれなくなった。あるいは漁業ができなくなった。そこで生活を脅かされるという場合には、やはりその農作物なりあるいは漁業被害に対する補償をやるということで、その生活に対する圧迫というものをのけていくというのが今日の大体のたてまえになっているわけです。そこで、そういった農作物やあるいは漁獲物に対する被害というものは、これは御承知のように民事補償でやるというたてまえになっておりまするし、しかしそれは捨ておけないというならば、これはまた別の方策を立てていかなければならぬのじゃないだろうか。この別の立法というものもあるいは必要になってくるかもわからないと思うのでありますが、さしあたり健康被害というものに対してまず手をつけて立法化をしよう、第一歩を踏み出した、かように御承知をいただきたいと思います。
#13
○島本委員 私もその点全然知らないで言っておるわけじゃございません。あの悪い空気の中で病院に収容しております。空気清浄室という部屋があるわけです。そこへ入っておると、空気がいいからやはり患者のからだがぐあいがよくなる。こういう部屋がございます。九州にあるのです。ところがそこへ入っておる患者は何ら生活の保障がないのです。したがって、夜来てそこで寝るだけなんだ。朝――暗夜ひそかにじゃないのです、もう朝明けると、働きに出るのですよ。自分で生活のかてを得なければ生活ができないのです。そしてまた夜来て、空気清浄室のある病院に来て、また患者は寝ておるのですよ。これでなおると思いますか。なおらないのですよ。生活の保障がないからですよ。また、それによって失われる物的な損害、こういうようなものに対して何らかまわないから、その人はまだやっておるじゃありませんか。夜来て寝るのです。昼働きに行くのです。これでなければ療養できない。これでなおると思いますか。根本的にこれは考え方が間違いじゃありませんか。大臣、この点はなおす必要があります。ここにいま私が言ったのは、事実を申し上げておるのです。現に病院に行って、その患者にも会ってまいりました。こういう患者は好ましくないけれども、そうせざるを得ない。その原因は、何としても農水産物の物的被害によるところの生活権が脅かされておるという点とあわせて、この生活保障の措置が考えられない、こういうような状態であるからだということになるじゃありませんか。そして医療だけさせておる。これで、どういうふうな人ができます。これは不十分だと思いませんか。現にそういうような人がいるのですよ。これでいいと思いますか。大臣、それはかわいそうです。この際大臣はあたたかい気持ちで、そういうような人を救済してやるのでなければ、ほんとうの救済にならないじゃありませんか。一生懸命働いてきて悪い空気を吸って、もうだめなんです。そしてそのままいたら死ぬ人です。病院に来てまた寝て、空気清浄室ですよ、いい空気を吸って、生活のかてを得るためにまた働きに出るのですよ。望ましくない、好ましくないけれども、それを見のがさなければならないのです。あわれじゃないですか。この点は、私は抜けておるとしたならば、これは根本的な欠陥じゃないか、こういうふうに思いますが、この法律によれば、そういうような点は十分救済できますか。
#14
○斎藤国務大臣 この法律によりますると、そういう方はできるだけじっと入院をして、昼間働かないでやってもらえるようにしたいわけでございますが、そこで、昼間働かないための生活の保障をどうするかということでございます。そこで、そのために生活の資が得られないということであれば、これは一般の社会保障でやるという立て方で、自分の働きができないその償いをさらにするというところまではいっておりません。その点は、足らぬとおっしゃれば足りません。しかしこの考え方は、そういった補償という考え方ではなくて、社会保障的な見地から、さしあたって困っている点を救済をしようということでございますので、いまおっしゃいますように、働けばこれだけお金が得られるが、病気のために働けなくなった、それをカバーしてやるという考え方に立っておりませんが、そういう立て方も私はあると思います。そういう立て方になりますると、こういった公害というようなものが、民事訴訟というような関係と全然離れてしまって、国で一切持つというような考え方に立てば、またそういう考え方ができるだろうと思うのであります。ただ、今日そういう方々の中にも、民事訴訟をやっておられる方がある。そのいわゆる民事訴訟によって損害賠償権が今日あるという解釈のもとに運用をされておりますので、そういった判決等がもし出れば、そういうものが民事訴訟の対象にならないということになれば、これは国として別の立法をしなければならぬじゃないだろうか、私はさように考えているのであります。
#15
○島本委員 大臣、これはやはり考え方の違いだけじゃなく、法の一つの性格と不備を初めから持って生まれてきた法律である、こういうようなことが言えるんじゃないかと思うわけです。この被害者の救済の不徹底性、これは法律の第八条、第九条第二項、第二十二条、こういうようなところに示されているとおり、救貧的な性格ですね。これを端的に表明しているものにすぎないわけです。それも徹底していない。形式的なんです。医療手当、介護手当の問題はあとからゆっくり部分的にやっていきたいと思いますが、大ざっぱにいって、こういうような支給なんかにも、医療費そのものの支給なんかにも、いわゆる所得によって制限してやろうとする考え方、これはほんとに被害を受けたからそのものをなおしてあげますという考えじゃなしに、貧乏だから救貧のために手伝ってあげましょうという程度なんです。これはいけませんよ。この程度じゃだめなんです。これじゃほんとうに公害によるところの被害者の救済にはならない。一種の公害という不法行為によるところの被害の救済、またそれに対する補償、こういうようなものだというような考えでないと、私はほんとうの救済にはならないと思うのです。困窮者に対する何ほどかの施しをしてやるんだ、こういうふうな考え方があるとしたならば、公害被害者の救済、こういうふうなことは表看板であって、中身はほんとうに施しをしてやるんだ、こういうふうなことにしかならない。こうなりますと、公害対策基本法第三条第一項の事業者の責務に照応し、かつ同法二十一条第二項の政府の責任に基づくものである、こういうようなことの評価ができない。したがって、これは根本的に考え直すか、これに対する対策を樹立するか、こうでなければならない。基本法にそのまま沿うたような実施法ではない、あくまでも救貧的な施しの措置だ。このような考え方じゃ私困ると思うのです。大臣どうですか。
#16
○斎藤国務大臣 公害に対する被害は、これは原因者に負担をさせるのが当然であるというような考え方が基礎にある。その考え方が間違っているということになってしまえば、公害に対する対策は一切国でやる、原因者はおかまいなしということになれば、私は法の立て方はまた別になってくると思います。
 そこで私は今日、たとえば大気汚染につきましても民事訴訟が出されております。どういうような司法上の解釈になるか。こういうようなものは民事訴訟の対象にならぬというようなことになれば、これは国で一切やってまいらなければならない、かように思うわけでありますが、ただいまはこれは民事の損害賠償、いわゆる発生源の者が責任を負うべきだという一般の理念に従っておりますので、それで政府あるいは国が特にやります点は、それと離れて、それはそれとしておいて、捨ておけない緊急の救済措置をやろう、こういう考え方に立っておりますので、島本さんからごらんになれば非常に不徹底で御不満な点が多々あろうと思うのでありますが、しかし法の立て方、全体的の考え方というものはそこに基づいておりますので、その点御了承をいただきたいと思います。
#17
○島本委員 やはりこれはよくするために、あいまいさがあったならばその辺ははっきり除去するか訂正するか、その上に立って、国民に対してのこれは一つの政府の義務ですから、こういうような点を考えてやらなければならないと思う。
 それで、大臣がいまそこまで言ったならば、この際もっといい方法があるんですよ。原因がはっきりしている、それを政府がかわって支払ってやる。そのかわり訴訟を起こす。訴訟を起こしたならば、その分は弱い被害者にかわって国または自治体でやってやる。そして取ったならば、その必要なものはそこへ納めて、そして患者にやって、あと必要なものは基金の中に置いて、いつでも国または地方自治体が代行してやるのだ。原因がはっきりしている、被害者もはっきりしている、原因者もはっきりしている、こういうような場合に救済するためには、徹底した方法があるとすれば、そういうような方法だってある。現にこれは社会保障制度審議会が、求償権が明白な場合には、それを国または地方公共団体がかわって行使すべきだ、こういうふうにして政府に答申してあるわけなんです。それを大臣は受けているじゃありませんか。あなたは受けているんです。したがってその受けたたてまえからいうと、いま私が言ったようにしてこれを実践するのが、患者に対してのほんとうの思いやりであり、救済という意味になる。いま残念ながら角屋さんいませんが、党の案はそれを出していたわけです。ですから、大臣は社会保障制度審議会のほうから公害の問題に対してのいわゆる答申を受けているわけです。受けた受けた。あなたもちゃんと答弁しているんです。その中には、政府に、求償権が明白な場合にはそれを国または地方公共団体がかわって行使すべきだ、こういうように答申してある。それをあなたは受けられた。そうしたならば、逆に基金を含んで、政府がかわってこれを弱い被害者の立場に立ってやってやるという点をあなたは受けてこられたわけになるのです。その辺あいまいじゃありませんか。その辺をすきっとしておいたほうがいいと思うのです。救済法ですから、ほんとうに世界に冠たる優秀な法律にするためには、その辺まで一歩踏み出さぬとだめです。どうですか。
#18
○斎藤国務大臣 先ほども申しますように、そういう考え方も一部にありまするし、また成り立つ考え方でもあろうかと思いますが、これらにつきましては、さらにもう少し十分いろいろと検討する要があるんじゃないか、かように思います。
#19
○島本委員 それとあわせまして、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案、この中で、私はいま被害者の救済の不徹底性、この問題について少し触れてみたわけですが、基本的な問題として、もう一つ企業の損害賠償義務との関係が不明確だ。この点もやはりはっきり指摘しないとだめだ。これをあいまいにしておいたならば、法律の実施がおかしいものになる。この企業の損害賠償義務との関係の不明確性、これは第四章、はっきりとこの問題の機構が載せられておりますが、事業者の費用負担に関する機構、こういうようなものがはっきり載っております。法第十六条によりますと、費用の拠出の機関としては、民法第三十四条により財団法人が設立される、こういうことになっておるのでありますが、この設立の責任者はだれなのか、財団が設立されないときにはこれはどうなるのか。民法第三十四条によるとするならば、財団法人のこの点はやはりはっきりさしておかないとだめじゃないか、こう思いますが、この点、大臣いかがですか。
#20
○斎藤国務大臣 これは法律上はその点は不安心じゃないかとおっしゃいますのもごもっともだと思うのでありますが、事実的には、間違いなくそういった財団ができまして、そしてこの法律を施行するのに何の支障もないという心証を私ども得ているわけでございます。そういうことで御了承いただきたいと思います。
#21
○島本委員 やはりこの企業の損害賠償義務との関係の不明確性という点は、公害の健康被害に関する特別措置法を実施するためには、やはり実施の際に重大な障害になるおそれがある。こういうようなことのために、いま言った設立の責任を負う者はだれなんだ、それから財団が設立されないときには一体どうなるんだ、これは重大なんです。それともう一つは、財界の一部がこれを設立するんだと新聞にも報道されておるし、これは大臣も大丈夫なんだ、こう言っている。私はおそらく大丈夫だと思います。かつてこの委員会で、古川理事もおりますけれども、基金をつくる際に、厚生省のほうでは、大臣、あなたのほうでは八分の五の拠出を要求したはずです。ところが、今回二分の一、八分の四だ。八分の四と八分の五、何ぼ違うのですか。八分の一の違いじゃないか。高度経済成長、これで生産力が世界で二位、三位だといわれているのに、八分の一の違いを負担できないような企業家はないはずなんです。財界でも、そういうようなことじゃおかしいじゃないかということをだいぶ言われます。これはやはり責任の問題がこの中に入るから、言うとおり出さないんだというのが一つの論拠であって、そうなると、自分が加害者なんだということを認めることになるから、どうしてもだめだ、自主的に拠出する。これを認められたのが二分の一、八分の四なんです。ですから八分の五と八分の四、ほんの八分の一の違いでも、そのニュアンスが、おれは原因者じゃないんだということを天下に証明して拠出する、こういうような態度になってあらわれているわけです。それを受けて大臣が立法するわけですから、決してそれは財界からの拠出、これは間違いはないであろうという想定は成り立つと思います。しかし政府と財界との間に、ある種の連係があるというようなことを了解ができる。この了解だけで立法すること自体に、基本的な――これはやはり脆弱性というか弱さというか、こういうようなものがあるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。これが問題になるのです。むろんこうじゃだめだ、もう少しやるならば具体的にして、もっと的確にして、責任者もはっきりきめておいたほうがいいんじゃないか、こう思うわけなんですけれども、そういうような不安定な――不安定というとちょっとなんですけれども、連係があるということ、信用ができるということだけで立法してしまう、こういうようなことになりますと、やはり私は基本的な脆弱性がある、これを指摘しなければならないと思うのです。私の言うのは間違いでしょうか。
#22
○斎藤国務大臣 先ほどおっしゃいました結論は、とにかく国で全部やってしまえ、そして原因者がわかればそれに求償したらいいじゃないか、こういう御議論だと思うのであります。ところが大気汚染というものは、なかなか原因者がわかりにくいというところに問題があるわけでありまするし、そしてまた、こういった公害の求償を当該の原因者に全部持たせる、これはただいまの民法上のなにからいけばそうだと思うのでありますが、それが判決でどういうふうになるかというのをいま見守っておるわけでございます。したがってそれまでは国が全部持てという議論も一応あるわけでありますけれども、先ほど申しましたような事柄で、まずまず応急的なものとして、身体に被害のあるものについて応急的措置をやろう、その費用についても国や公共団体で全部見るべきだ、こういう議論も一部あるわけであります。しかし、だれかわからないにしても産業界も一部あるのだからというので、八分の五にするか半々にするかというような予算の折衝みたいなことが行なわれた結果、両方に理由があるから、半々というのはちょうどころ合いであろうというので、半々になったと了解をいただきたいと思います。
 そこで、事業者側のいわゆる団体というものがほんとうに信用してできるのかどうか、先ほど申しますように、法律的には確保されておりませんが、実際問題といたしまして、すでに設立準備の段階になってきておりますので、この法案が通れば即刻、財団法人の申請が行なわれるもの、かように了解をいたし、またそのほうの進み方も進んでおりますので、私は信頼し得る、さように思っておるわけでございます。
#23
○島本委員 この「事業者の拠出」という法第十七条、「事業者は、公害対策基本法第三条第一項に規定する責務を有することにかんがみ、医療費等の支給の措置が円滑に実施されるように、前条第一項の指定を受けた法人に対し、同項の拠出金にあてるため拠出を行なうものとする。」わけです。これははっきり載っているわけです。そうすると、この財団法人ができる。法第十七条によって事業者から拠出金に充てるための拠出を受ける。そうなりますと、一体どういうような事業者からどういうような方法で拠出を求めるものであるか、これがまだはっきりしていないのですが、この点は事務当局、どういうふうになっております。
#24
○武藤(き)政府委員 十七条に基づきまして事業者が拠出するわけでございますが、それにつきましては、この事業者が、政府のほうで本年度の事業費を大体見積もりまして、それの約二分の一をつまり法人に負担していただくわけでございますが、それの総額につきまして、どこの事業者がどれだけ持つかということは、事業者の話し合いで持つというふうに現在考えられます。
#25
○島本委員 そういうことのようですが、そうだとすると、どういうような事業者からどういうような方法で拠出を求めるものであるかということは明らかではない。この点については何人も責任を負わない、いわば事業者の任意の寄付に期待するだけのことだ、こういうことになるとすると、公害防止事業団は、この財団法人から契約に基づく拠出を受けるべきものとされているから、これに基づいて都道府県に納付金を納付することとされているわけですが、この業務に区分経理されるものでありますから、拠出金が集まらなければ納付は不可能、不可能になるならば当然これは実施できないということになってしまう。こうまできめておりながら内容がはっきりしていない。これだったら、実施不可能のおそれがあるのじゃないか。せっかくつくってもできないじゃないか。そういうような内容のはっきりしない法律ではいけませんが、どっちでもいいからひとつ……。
#26
○武藤(き)政府委員 その点につきましては、民法三十四条の規定によります法人が、つまり厚生大臣、通産大臣の指定を受けるわけでございますが、この民法法人、つまり両大臣が指定をいたします法人が事業団と契約をする、その契約につきましては、当然両大臣の承認を受けるわけでございます。そういうふうに一応法人につきましては、それぞれこれが明らかになりますように監督関係がございます。これに基づきまして、この法律の実施の確保については問題がない、かように考えております。
#27
○島本委員 任意の寄付に依存するわけです。その場合には、もうはっきり拠出させる義務を負わせるのですか、任意の寄付によるのですか、いずれでしょう。
#28
○武藤(き)政府委員 民法法人が、契約に基づきまして事業団に納付義務を負うわけでございます。
#29
○島本委員 そうすると納付不可能ということはまずない、どういうような事業者からどういうような方法で――この方法は問わない。しかしこういうようなものがはっきりしない場合は、責任がはっきりしないわけです。どうもはっきりしないけれどもその義務だけ負わす。おそらく経団連か日経連か、こういうようなことを想定しているのじゃないか。向こうは日本とともに栄えているから、もう絶対うそを言うわけはないだろう。こういうような、淡いといえば失礼ですけれども、単なる希望によって、これは提出されたのじゃないか、こう思われまするけれども、しかし法律としてやる以上、もっとこの点ははっきりさしておかないとだめなんじゃないか。そうでなければ、私はいやなことばで言いますけれども、任意の寄付に依存するということになってしまうのじゃないか。この任意の寄付、こういうようなものが、次に、事業者というのはいわば公害の原因者、こう目される人たちなんです。おそらくそうでしょう。そういうような公害の原因者と目される人たち、この人たちから任意の寄付をなさせる、そういうようなことだとすると、事業者の寄付が公害対策基本法第三条第一項のこの責務にかんがみてなされるものである、こうすると、寄付によって事業者の公害被害者に対する責務が果たされた、こういうような解釈がされてもいい余地が残されるじゃありませんか。これじゃやはり性格としてまことに間違いである、こういうように考えざるを得ないわけです。大臣、これは大事ですから、ひとつあなたの考えをこの際はっきりさしておいてもらいたい。
#30
○斎藤国務大臣 ここにいう事業者というのは、非常に広い意味に使っております。したがいまして、事業者は、大気汚染であるならばずいぶんと数が多いであろうと思います。したがって、そういった事業者が具体的にどういうように負担をするかというのは、事業者の団体でひとつ考えてもらいたい。事業者の団体も自分のほうで考えるということになっております。また大気汚染でありませんでも、公害特定の事業者というのは、これはわかっておるわけでありますが、その事業によって利益を受けている他の事業者もまた多々あるだろう、かように思います。したがいまして、そういう判断は事業者団体にまかせるのが適当であろう、かように考えております。
#31
○島本委員 大臣がいま言ったようなことをはっきりやると、求償権を今度被害者のために国がかわってやってやり、裁判によってきたものは費用を弁償さして、ちゃんと被害者にやるものはやる、そういうように国がやってやったほうが一番すっきりする。やはりこれは社会党案のほうがいいような気がはっきりするわけです。しかしその辺、いまの案、これを一歩前進だと言っておるので、私は、その中に入ろうとしても、事業者の寄付によってこれをやるのだというたてまえをとる以上、この寄付によって、事業者の公害被害者に対する責任の一端がもう果たされたものだ、こういうような解釈が事業者になされないという裏づけはありますか。おれはやっておるのだぞ、やっておるのにまた被害者が補償を請求するとはもってのほかではないか、こういうように考える事業者はありませんか。むしろそういうようなおそれのあるやり方だから、ここが心配だ。
#32
○斎藤国務大臣 この法律は、さきにも申しますように、損害補償をかわってまず先にやってやるという考え方ではありません。したがってこのために金を出しても、これは損害補償の一部をもうすでにやったのだというような解釈は、事業者には成り立たないのであります。そういう解釈は私どもはとっておりません。事業者の損害補償、損害賠償をまず国がかわってやってやるという考え方であれば、そうすればいまおっしゃいますような、すでにもう一部払っておるということを言う事業者が出てくるかもわかりませんが、これは損害賠償をかわって国、公共団体がやってやるという趣旨ではございませんから、したがって、いまおっしゃいますような解釈は生まれてこないと私は思います。
#33
○島本委員 生まれてこないと言っても、生まれてくる。だから、この点があいまいだというわけです。むしろ全部経営者がそれをやってやるんだというところまで踏み切ったらいい。それでなければ全部国がやるんだ、いずれでもいいじゃありませんか。三分の一、二分の一、この程度ずつ負担するんだというならば、出した人は思うでしょう。第一次に私は出したんですよ。その恩恵を受けながら、そしてまた裁判に訴えるとはおまえら道義も解しないじゃないか、こういうふうにいわざるを得ないでしょう。そこがこの法律の持っている一つの不徹底さだというのです。これは大臣認めても、あなたはそうだと言えないでしょう。私はおそらくそう思いますよ。それとも認めないのか。
#34
○斎藤国務大臣 最初に申し上げましたように、考え方が二つある。被害者の損害を国や公共団体がかわって全部見るという立て方に立てば、いまおっしゃるとおり。ところがこの法律は、健康被害に対してとにかく困った人に対する応急の社会保障的な措置をやろうということでございますから、したがって、拠出した事業者も、自分の損害賠償的なそういう義務をこれで果たしてしまったんだ、一部果たしたんだということは言い得ないし、また言わせない。こういう法律の立て方でございます。
#35
○島本委員 この点については、事業者から、いかなる方法で拠出を求めようとするものであるか、これが明らかでない以上、この責任についても明白じゃない。したがって、拠出金が集まらなければ、納付は不可能とならざるを得ない。しかし、これは絶対確信がある、こういうふうに申されましても、任意の寄付に依存しているこの実態からして、これはやり方としては、私どもなかなか理解することはできない。しかしながら、一歩踏み出してこれを認めたにしても、公害原因者と目される事業者によってこれが拠出される以上、それによって第一次の責任解除である、こうようような考えを業者が持つであろうということは当然考えられるわけです。この点で、裁判をやった場合、おれは出しているんだからともし言った場合には、これはどうにもできなくなるじゃありませんか。この点で、まず第一次的にこの基金の内容、これが十分じゃない。この点は私は指摘せざるを得ないわけであります。
 それと同時に、次に入っていきたいと思いますけれども、これはいかがでございましょうか。政府案による救済の対象、これは大気の汚染と水質汚濁にかかわる健康の被害、こういうことになっておりますけれども、これで十分である、こういうようにお考えでしょうか。またそのほかに、水俣病をはじめとして、いろいろ適用範囲も具体的になされるわけですけれども、公害基本法できめられている公害といわれている問題に対する適用、またその拡大、こういうようなものが当然考えられなければならないのですけれども、いま言ったように、健康被害、これは大気の汚染と水質汚濁、この辺に限定して出されているようでありますが、この辺はどういうようなお考えなんですか。あえて言うと基本法違反の実施法じゃないか、こう思わざるを得ないわけです。いま角屋議員が見えられましたけれども、ほんとう言えば、もう少し前の論戦に参加してもらいたかったわけでありますけれども、しかしいまからでもおそくのうございまして、ようやってきてくださいました、こう感謝せざるを得ないと思います。いま言ったように、この救済の問題に対しては基本法違反のおそれがないか、この点の答弁を願います。
#36
○武藤(き)政府委員 政府提出の健康被害の救済に関する特別措置法では、大気と水によります健康被害の問題を取り上げております。その他の公害につきましてはどうして取り上げないかという御指摘でございます。先般からこの点も当委員会でたびたび議論がございましたが、その点につきましては、他の公害、たとえば振動、悪臭あるいは騒音、地盤沈下というものの影響によって公害病と認定できる疾病が発生するということは、現在のところまだ確認されておりませんし、したがいまして政府案の対象としては、大気と水による健康被害としたのでございます。
#37
○島本委員 適用範囲はどうですか。
#38
○武藤(き)政府委員 適用範囲につきましては、当該公害病患者が発生しております地域を指定する予定でございます。
#39
○島本委員 その地域の中にいろいろな条件があるようです。しかし社会党が過般いろいろ総点検運動をしてまいりました際に、この条件にはまらなくとも、それに劣らないような重要性のある、また患者の出ているところもあるようです。またその方面には、厚生省からも調査に行っているところもあるようです。たとえば富山県の新湊の吉久というあの地域、あれは小部分ですけれども、あそこに対する被害はまことに大きいわけです。トタンも腐り、自動車も腐り、健康の被害も大きいが、その部分だけに限定される。そうなると、今度条件にはまらないではずされるおそれもある、こういうようなことも考えられておりますが、それと同じ地域も他にないわけじゃなかろうと思います。この場合等においての救済の中に、こういうような地域も十分入れて考えてやらないと、画龍点睛を欠くおそれがあるのではないか、こういうように思うわけですが、いま言った、具体的に被害が発生していても小地域の場合、こういうような場合には条件にはまらないか、この救済の方法に対して遺憾ないかどうか、この点等の御高見を拝聴しておきたいと思います。
#40
○武藤(き)政府委員 いま先生の御説明にありました吉久地区の問題でありますが、これは降下ばいじんによります大気汚染によって問題が出ておるところであります。町当局が十二、三名の者に対しての対策を講じているようでございますが、この地域の状況は、ある特定の工場によります降下ばいじんの問題でございまして、最近ではだいぶ改善されたというふうに私どもは報告を受けております。ここの地域を他の四日市等と同様に扱うかどうかにつきましては、十分前向きで検討いたしたい、かように考えております。
#41
○島本委員 ついでですから、前向きで検討するというのは、四日市、こういうようなところと患者の出るぐあいはほとんど同じような状態になっておるわけですが、地域が狭いだけなんです。自動車の塗料がはげるのです、ばんばんとはげるのです。トタンも穴があくのです。あの吉久地区から市街地のほうに入ると、あなたの住所はどこですか、こう聞かなくても、その車を見ればわかるといわれているのです。あれはほんとうに限られた地域ですけれども、その対策は重要ですから、これはやはり中に患者も発生しております。そういうようなところに対して、小地域であるからこれは該当しないというようなことがないように、四日市とそれらと同様に扱うものである、こういうふうに私は解釈して次に進みたいと思うのですが、前向きで検討するということばは何回も聞いているのです。その点では、古川委員が聞いたときも、やはりそういうような、前向きというような答弁がありましたけれども、私の場合はしつこい。前向きの答弁というのは、四日市と同様に扱う、こういうようなものを含むものである、こういうように考えて次に進みたいのですが、そういうような考えで、大臣よろしゅうございますか。
#42
○斎藤国務大臣 どのくらい患者が発生しておるのか、私もまだ詳細存じておりませんが、できるだけこの法律によって適用をしてまいりたい、かように考えております。
    〔「それ以上は無理だ」と呼ぶ者あり〕
#43
○島本委員 それは無理であろうとなかろうと、公害にはいままで対策が甘かったから、これから若干無理しても、無理じゃないです。(古川(丈)委員「調査しなければならぬ」と呼ぶ)調査はもう十分されておるのです。知らないのは古川委員だけです。
 それで、今度もう少し具体的に入っていきますけれども、公害全体の疾病、それと同時にこの救済の対象、こういうようなこととあわして、医療費と医療手当それから介護手当、こういうような点は政府案として出されているのですが、埋葬料及び生活援護手当、こういうようなものについては、原爆の被害を受けた人、こういうような人に対しては配慮がされているものであるというふうに聞いているわけです。十分ではないけれども、配慮されておるものである。それがまた今回法の改正さえも行なわれておるわけです。その際に、公害のほうにはそれも入らないということになると、これはやはり公害を重要視しているということにならないんじゃないかと思うのです。何ゆえに生活援護手当とこの埋葬料、こういうようなものをこの中に入れなかったのか。まず大臣、これに対してはっきり答弁してもらいたい。
 それと同時に、これを入れた社会党案が出されておるわけでありますけれども、社会党案のほうはよくぞここまで考えられたものであると、ここに私は称賛を与えておきたいと思うのです。しかしそれにしても、社会党案にしてもまだ金額が不足だと思うのです。私は提案者でありませんから、この際うんと言っておきたいのですけれども、社会党案でもまだ――どれほど考えておるのであるか、私が聞いた範囲においてはまだ少ない、こう思いますけれども、大臣にはこの埋葬料とそれから生活援護手当を入れなかったという基本的な考え方、社会党案提案者の角屋議員には、これは入れたということは大いによろしゅうございますけれども、金額をどのように見、それで十分だとお考えかどうか、大臣から順次御答弁賜わりたいと思います。
#44
○斎藤国務大臣 ただいまの問題につきましても、いわゆる原爆のような――発生原因者に損害を賠償させるという、そういう考え方が一方のほうにあるわけです。この問題にはありますけれども、原爆のごときはそれを補償させる相手方はない。したがって全部国でやるという形で、同じ社会保障的な考え方に立っても、そこに違いがあるわけでございます。そこで、先ほども申しますように、これはそういった原因者負担という考え方をなくしてしまえば、いまおっしゃいますようなことも全部国でやって、そしてこれは社会全体が責任を負う、そういう立て方も一つの立て方であろうと思います。しかしそういう立て方に立っておりませんのは、先ほど申し上げたとおりでありまして、こういうものについては民事補償なんというものはあり得ないのだということになれば、原因者負担という考え方を離れて、そういう考え方をとらないという、そういう基礎に立って立法すれば、いまおっしゃたようなことまで考えていかなければなるまい、かように考えますが、それらの点につきましては、ただいま大気汚染につきましても損害賠償訴訟を起こしており、これを裁判所が受け付けてそして審理しようという立て方になっておりますから、この結果こういうものは損害賠償には熟しないというようなそういう判例でも出れば、そうすればこの立て方をがらりと変えていかなければなるまい、かように思っております。
#45
○島本委員 不十分です。
#46
○角屋議員 先ほど来議論の点について、私のほうの党の救済立法の関係等からも、簡潔に御答弁を申し上げておきたいと思います。
 ただいまの質問の前に、政府案では大気汚染、水質汚濁の二つに限定しておる問題に島本委員触れられたわけでありますが、これは本特別委員会でもいままで質疑が行なわれてまいりました。その際にも私からも御答弁申し上げたのでございますが、島本委員御承知のように、現行の公害対策基本法の第二条については、この法律における公害の点について、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭、こういう六つの問題によって、「人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。」、こういうふうになっておりまして、単に大気汚染、水質の汚濁のみならず、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康または生産環境にかかわる被害が現に出ておる、それがここでいう公害であるということを第二条で明記しておるわけでありますし、しかも第二十一条では、それに関連いたしまして、第一項で紛争処理制度の問題に触れ、さらに第二項で「政府は、公害に係る被害に関する救済の円滑な実施を図るための制度を確立するため、必要な措置を講じなければならない。」、こういうことで、そういう第二条の関係あるいは第二十一条の関係を受けて立法をするといたしましたならば、政府案の大気汚染と水質の汚濁に限定をして救済の法律を出すというのは、基本法本来のたてまえから見て不十分であるということは明らかな事実でございます。基本法違反であるとか何であるとか、そういう議論よりも、やはり母法であります公害対策基本法の意味するものとの関連からいえば、これは単に人の健康の被害は大気汚染あるいは水質の汚濁ばかりでなしに、騒音以下に述べる問題からも当然被害が出るし、またそれに対しては、第二十一条の第二項の「救済の円滑な実施を図るための制度を確立する」ということが要請されておるわけでありまして、先ほど斎藤厚生大臣からの御答弁もありましたけれども、さらに基本法から見ても、前進すべきものである、こういうふうに考えます。問題は、そういう場合にしからば騒音以下の問題について、公害地域の指定を行なうあるいは公害疾病の指定を行なう、さらに社会党案でいけば、その疾病に伴うところの障害の指定を行なうという点について、具体的に日本の公害の場合に、医学的な立場その他から見てどういう疾病が指定できるかという問題については、これはまた別個の問題だと私は思うのであります。立法からいえば、基本法から見ましても、そういうものを包括した救済制度をつくるというのが原則でなければならない、こう思うわけでございます。
 それから第二項の点につきまして、健康被害についての医療費、医療手当、介護手当のほかに、生活援護手当さらには埋葬料というものまで社会党案には含まれておるという点について、御称賛がございましたが、ただその際に金額等の問題に触れられましたけれども、立法の中では金額を明示しておるわけでもございませんし、一応の素案的なことは考えておりますけれども、十分実態に即して、具体的な数字というものは明定していかなければなりませんし、同時にその金額そのものにつきましても、今後の物価その他の状況によって改定は当然考えられるというふうに思うわけでございます。今日の時点において、各項目についてわれわれがどういう数字を想定しておるかということについては、むしろ真剣な意味において、さらに検討の段階であるということを申し上げたほうが適切かと思うのであります。
#47
○古川(丈)委員 関連して、島本委員と斎藤厚生大臣との質疑応答を承っておりまして、斎藤厚生大臣の言われるように、やはり加害者が被害者に対してするんだという原則だけはあくまでも基本的にあるんだ、こういう考え方から言われれば、私は政府案はやむを得ないと考えまするし、またどの加害者がどの程度ということがはっきりわからぬから、ともかくその場を救済しなければならぬ、こういうたてまえからいえば、政府原案としては当然なことであって、もしそういうようなたてまえからいくならば、生活保護なりあるいは埋葬料というものは、私は少し領分を出ておるような気がいたします。
 それからもう一つは、いま角屋議員が提案者でおられるのをうっかりしておりまして、ちょうどいい機会だから申し上げておくが、公害基本法で六つの公害を対象にしておるわけですけれども、しかし今度の被害者救済という制度は、通常大気汚染または水の問題等で、原因と結果との相当プロバビリティの多いものをとらえて、その救済を考えておられるわけだ。地盤沈下とか臭気とか騒音というのは、どれだけ直接加害者と被害者の病気との因果関係があるか、また因果関係の程度というものを測定をすることは実際の問題としてむずかしい。そういう場合の救済方法は別途考えなければならぬと思うけれども、しかし救済制度の今度の法律案の趣旨からいえば、やはり原因と結果とが相当はっきりしているというたてまえからいえば、私は、なるほどていさいとすれば、すべての公害を対象とするのが何だか形は整っておるけれども、形が整ってかえってばく然として、目的を実際に解決するのにかえって私はあいまいになると思う。
 社会党案について、私の意見だけ申し上げておきます。以上でございます。
#48
○角屋議員 古川委員、意見として申し述べられたわけですが、私はそういう見解も見解としては十分あり得ることと思います。ただ、私どもが公害基本法の第二条を受けて、第二十一条第二項というもので考えました点につきましては、やはり六つの公害の原因による被害を救済する、あるいはそれに関する紛争処理制度をつくるということは、政府の場合にも与党の場合にも、救済立法を考える場合の前提条件であったということはまぎれのない事実だと思います。私どものこの六つの問題をとらえた、健康にかかわる被害についての救済あるいは物にかかわる被害についての救済というものを立法化いたしました場合に、健康にかかわる被害の救済についての頻度が、今日の日本の公害の実態においてどういうものに一番多いかということになれば、社会的問題化しておりますのは、私どもの承知しておるところでも、大気汚染あるいは水質の汚濁に深刻な事態と頻度が出ておるということを否定するものではございませんけれども、しかし騒音一つを考えてまいりましても、今日基地公害を除外するかどうかということが議論になっておりますが、そういうことを乗り越えて、やはり騒音等によるところの健康にかかわる被害あるいはそういうことを通じての物にかかわる被害、たとえば畜産その他の問題を考えました場合の物に関する被害というのは、現実に基地周辺では問題になっておるわけでありまして、そういうものはやはり包括して考えるというのが、政治の立場、立法のたてまえからいえば当然のことだと思うのであります。したがいまして、現実の起こっておる頻度とかあるいは深刻な事態は六つのうちのいずれに多いかということは、私は本来分けて判断をすべきではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
#49
○島本委員 私は、先ほど社会党が考えている生活保護手当と埋葬料はまだ額が少な過ぎるんじゃないかと申しましたが、これは政令にゆだねられている事項でありまして、政令にゆだねられている事項の内容と、偶然か何か知らぬけど、何か夢に思ったのか、少し心にあったものでありますから、それだけでは不足だと言ったのでありまして、まだあらわれておらなかった、これだけは事実でございまして、この点は角屋議員のほうにちょっとおわびをしておきます。
 それと同時に、今度は大臣にもう一回お尋ねをいたしまするけれども、この給付の内容について、医療費と医療手当、介護手当――しかしこの第七条の医療手当の範囲だけにとどまらないで、病院に入院しながら働きに出なければならないという現実もある、こういうようなことを私も前に質問の中で申しましたが、少なくとも休業補償に相当するものの支給の制度化ということは、これはやはり何らかの形で考えてやらないと、真の意味の被害者の健康の救済にならないんじゃないか、こう考えまするけれども、これは別途に考えるか、今後の問題として取り入れるか、この問題は粗略にできない問題です。おそらくこの問題を考えないわけではなかろうと思いまするけれども、大臣いかがです。
#50
○斎藤国務大臣 先ほども申し上げますように、また古川委員もおっしゃいますように、この立て方は、いわゆるそういった損害については原因者に損害賠償の責任があるという立て方から出発をしておるものでございますから、そこで、いま休業補償的なものというのも、そのために生活が著しく困るというのであれば、これは生活保護法の適用を受けてやるという考え方に立っております。休業補償として、さらにそれを越えたものを出すということになりますと、損害賠償的なにおいが出てまいりますので、ただいまは考えておらぬのでございます。これを社会保障的な意味として取り入れるかどうかということにつきましては、御熱心な御意見もございますから、さらに検討をいたしたいと思いますが、さしあたってはさように考えるわけでございます。
#51
○島本委員 最後の一言がよけいです。さしあたっては考えておらないとは何事ですか。さしあたって考えているけれども、成文化はもう少し研究さしてくれというならいい。全部いままでいいことを言って、最後に、さしあたっては考えていない。大臣、私を侮辱するのですか。いまのことばは、いままで言ったのは全部認めた、必要だけれども、さしあたっては考えていない。これは全部打ち消した。もう一回答弁してください。
#52
○斎藤国務大臣 先ほど申しましたのは、前段において、考え方の基本的考え方が違います。したがって、いま考えている考え方に立てば、そういう考え方は受け入れられませんと、はっきり申し上げます。しかしながら、そういう考え方に立ってもなおかつ考えられる点はないか、また非常にその点について御熱心な御要望のようでございますから、そういう考え方に立っても、なおかつ休業手当のようなものは考えられないかどうかを検討いたしますが、さしあたっては基本的な考え方に立っておりますので、さように申し上げたんで、決して侮辱をいたしておるのではございません。非常に尊重いたしております。
#53
○島本委員 公害というものは、五つの特性を持って、現在一番被害を受けている人の多いのは日本なんです。これは日本が法律的に世界に冠たる立法だといばるのは――大臣じゃないかしらぬが、いばる人もありますけれども、それはそれだけの被害者を出しているということがうらはらになっておりまして、これはいばれた現象じゃないのです。しかし公害というもの、これは受けたくて受ける国民はないのでありますから、いわばこの問題に対しては特に措置してやる必要があるのです。むしろ原爆を受けたそれ以上の――これから原爆はないと思います。しかしながら公害だけはいつでも忍び寄ってくる。また、御飯は一日に三回食べればいいけれども、きたない空気だけは二十四時間吸わなければならないのです。それを運命づけられるとしたならば、それを除くことが政治です。そのために特に考えなければならないのが、いまの公害対策の立法です。二回も三回も言いたくない。したがって、もうこういうような点等に対しては、休業補償等の問題に対しても、その必要性があるならば、立法のいかんは問いません。行政的にできればそこでやってもよろしい。しかし、その措置だけは十分今後考えておいてほしいと思います。私は今後のためにも、もう大臣が何を言おうと、これは必要だということだけはここで断言しておきます。今後の法案の扱いのために、再び大臣の答弁は要求しません。ただ私は、これはまことに重要な要素を持っているものであるから、これだけははっきり申し上げておきます。答弁をしたらおかしくなるから、答弁はよろしい――どうしてもしたいのですか。
#54
○斎藤国務大臣 御答弁はよろしいということでございますが、非常に重要な御発言であり、また私は基本的にそれは大事なことだ、かように考えます。私は、その公害立法の立て方も、これは産業全体の責任だというような立て方になってこなければならない時世が、あるいは来るのではないかしらんとも思うわけであります。それは一つは大気汚染にかかわる、先ほども申しました民事訴訟の問題、これがどういう判決になるかわかりませんが、その判決いかんによりましては、やはりこういう問題は民事訴訟にはなじまない、全部国や公共団体の責任でやるべきだというような、何といいますか、法の立て方に変えなければならないようなことになるのではないか。さようになれば、いまおっしゃいますような、そういう理論的な基礎に立って、健康被害あるいはその他の被害についてもがらりと変わった立て方を考えていかなければならない。日本の現状は、あるいはそういうふうになるのではないだろうかという気もいたすわけです。そういう意味におきまして、私は島本委員の御発言も将来を見通された一つの御発言であろうと思う。ただそういう問題を軽々に損害賠償の対象にならないのだというようにきめてしまうことは、いまの民法その他の関係もございますから、軽々には論じられない。いまは今日の既存の解釈に従って、また島本さんも、それは原因者負担だ、原因者負担だ、原因者に賠償させるべきだという意向も強いわけでありますから、これは今後、原因者ではなくて全体の責任だというように、社会的責任というような形に発展するかしないか――島木さん自身の先ほどからの発言の中にも、矛盾する基礎的な要素が入っているのではないかと考えます。
#55
○角屋議員 いまの点について、島本委員と斎藤厚生大臣との間に御質疑がございましたが、提案者の私どもの立場からも若干触れておきたいと思う。
 この公害にかかわる健康にせよ物の被害にせよ、これに対する損害賠償の問題は、これは本来加害者と被害者の間において正当に処理されるべきであるということは、私どもの党の立場からもそのとおりに考えているのでございます。したがいまして、社会党の公害対策基本法の中では、無過失賠償責任の法理を導入するという前提の上に立って、企業者の責任を取り上げた党の公害対策基本法の該当事項の中で、単に故意または過失のみならず、無過失のものについても、公害にかかわる被害が出た場合には、企業者はその責任を負うべきであるという考え方に立ちまして、加害者責任追及、加害者からの損害賠償というものは、正当な方法を通じて処理さるべきであるということには何ら変わりはございません。今回の公害関係の紛争の立法、救済の立法は、これは政府案の立て方は基本的にどうか知りませんけれども、私どもは訴訟への道と、それから紛争処理の立法と救済の立法は、いわば車の両輪のごとくきわめて密接に関連をしてとらえているわけでございます。木筋の救済立法につきまして、先ほど、金額の問題について、政令にゆだねることでございますけれども、多い少ないの御指摘が当初出ましたけれども、私どもは、そういう先ほど来申し述べております点から見て、公害にかかわる被害の問題については、新しい立法の紛争処理制度を通じ、また紛争処理制度を通じて解決できない双方の問題は訴訟に持ち込まれるということの道も開きまして、そこで本来処理されていく。しかし斎藤厚生大臣からも御指摘のように、また現実に公害裁判まで持ち込まれた事態もお互いに十分認識しておりますように、公害にかかわる被害の紛争あるいは救済の処理という問題については、なかなか因果関係その他をめぐりまして長期を要している。そういう長期を要している中において、公害病の患者の悲惨な実態が現実に存在しているということを考えてみますと、単に医療費等について今日新しい立法においてめんどうを見るというだけではなしに、最小限やはり生活のささえをしてやるということが必要である。これは、十分である、十分でないというのは――法の立て方として、救済立法においては、必要最小限のことについてはやはり十分めんどうを見てやる。そういう被害者自身の主体的条件を確立した上に立って、紛争処理制度を通じ、あるいは裁判等の道を通じて、正当な解決がなされていくということを私どもとしては期待しておるわけでありまして、ここですべて、救済立法で救済の問題を片づけるという意味で、この救済立法と、党の場合も違っているわけではありません。
    〔委員長退席、古川(丈)委員長代理着席〕
これは島本委員も十分御承知のところかと思いますが、斎藤厚生大臣の御答弁に関連して、私どもの党の考え方についても、ふえんをして申し上げておきたいと思います。
#56
○島本委員 その点につきましては、いままでの質疑の過程を通じまして一そう理解を深めることに対しては、きょうはほんとうに有意義だった、こういうふうに思うわけであります。
 もう一歩進めて、今度は医療費の中に入ってみたいと思いまするけれども、これは政府案の第五条です。この中には医療費の支給にあたって、健康保険等の給付を受け、もしくは受けることができたときのこの解釈は、今後やはり問題になり、いままで指摘が十分あったわけであります。この場合、新薬の使用等によって健保の適用が除外された、このときの支出額が当然問題になるのではないか。この場合も、健康保険等の給付を受けることができたときに当たるのではないか、こういうようなことは当然考えられますけれども、法文上この考え方では少しおかしい。したがって、こういうような場合には全額支給される、こういうような考え方なのじゃないか、私は公害に関してはもう常にそういうふうに思ってきているわけです。ところが、いままでの質疑の過程を通じていろいろ意見を聞いてみましたところが、そうでもなさそうであります。
 この際、医療費の関係に限定して伺いたいわけでありますけれども、社会保険各法のうち、これは国民健康保険の一部負担のみを支給対象として――これは五条の第一項、それからまたこの対象となる医療費の範囲については健康保険の診療方針による、こういうような限定が法第五条第二項のところにはっきりしているようであります。こうして見ます場合には、やはり必要に応じて健康保険の診療方針によらない医療でも、公害の場合は当然これは支給対象とみなす、こういうようなことでなければ、これからの医療の開発さえもまだできておらない、これに対する抜本的な施策さえもできておらない、こういうことはいま大臣も言明されたばかりでありまするけれども、この第五条によりますと、大臣の言明と考え方、この解釈が現行のものにのみ限定されると、これは公害の実態に沿わない、こういうような危険性が感じられるわけであります。この点、角屋議員も、社会党案第六条第二項、この中には、必要に応じて健康保険の診療方針によらない医療でも支給対象とする道が開かれておる。この場合に限っては、これは大臣、社会党の考えのほうが正しいのじゃないか。公害の治療の問題に関してはこういうように考えます。いま大臣も答弁があったように、まだ治療法の開発さえも行なわれておらない。したがって、最もいいと思うこういうような新しい方法、これもあすにしてもうすぐにできるかもしれない。しかし患者にそれを実施できない、こういうようなことがあったら悲劇であります。こういうようなことがないようにするためには、新薬の使用等、これも健保の適用は除外になっているものでも、あらゆる方法をここに盛り込む必要がある、こういうふうに思うわけなんであります。この点等に対して、私の考え方が間違いなのか政府の考え方が間違いなのか、これはやはり医療費の問題に限っては討論になるのではないか、こういうふうに思うわけなんであります。私は、これはあくまでも社会党案に賛成であります。また古川委員もここにおられますけれども、党派のいかんを問わず、当然これは社会党案でなければだめだ、こういうふうに思っているに相違ありません。大臣の御高見を拝聴いたします。
#57
○斎藤国務大臣 診療報酬の制度の中に、新しい治療法あるいは新しい薬が見つかれば、そのほうに指定をして、そしてやってまいりたいと思います。もし間に合わない場合には、公害病の研究費というものを支出いたしておりますので、その中からまかなって、そうして実際問題としては差しつかえのないようにいたしたい、かように考えております。
#58
○島本委員 介護手当を伺います。
 この介護手当はどういうような性質のものであるのか、厚生省の事務当局から、これは説明を願いたいと思います。
#59
○武藤(き)政府委員 介護手当は、第九条をごらんいただきますとそこに書いてございますが、身体上の障害によって介護を要する状態にありまして、かつ現に介護を受けておるものに対して、政令の定める範囲で介護手当を支給する、こういうふうになっておりまして、結局、身体上の障害によって他人の手助けを受ける状態にあり、かつ現実に他人の介護を受けておるものに対して手当を差し上げる、こういうことでございます。
#60
○島本委員 金額は。
#61
○武藤(き)政府委員 金額は政令できめる予定でございますが、このたび認めていただきました予算では、一日三百円でございます。
#62
○島本委員 一日三百円の支給で介護を専門にやるような人が、厚生省の責任において配給できますか。
#63
○武藤(き)政府委員 金額そのものにつきましては、私どもも最小限の金額というふうに考えております。この点につきましては、原爆等の手当との均衡その他を考えましてきめたわけでございますが、なお、この手当の支給の増額につきましては今後大いに努力いたしたい、かように考えます。
#64
○島本委員 最後がもやもやして聞こえなかったのです。それでこの金額は、政令にゆだねられている分は、実態に即して今後考えていきたい、こういうような答弁でなければならない、こういうように思うのですが、大臣これはそういうように考えていいでしょう。
#65
○斎藤国務大臣 ただいま公害部長が答弁をいたしましたように、これは一人の介護人を専門的に雇い得るというものにはほど遠いと思います。いろいろ家人の手その他手数もかかるであろうからということで、原爆患者の介護手当に見合ったもので予算をセットいたしました。しかしこれはこの公害病の介護手当だけでなしに、その他の制度における介護手当とも関連したものでございますので、今後この額の増額につきましては、時宜に適するように努力をしてまいりたい、かように思います。
#66
○島本委員 この場合の限定の中に、現に困っておって、介護を要する。親や近親者がおる場合にはこれに該当するからやってもらえる。しかし天涯孤独である、そういうような人は、頼めば最低千五百円から二千円かかる。それだけの費用がなくて、必要だけれどもかかれない、かかってない人には三百円も支給しない、こういうような考え方、これは少し無慈悲だ。必要があると認めた場合には、これはもう支給してやらなければならない、こういうように考えるわけです。当然、社会党案もこの点には触れて、千五百円の案が、政令の中ですけれども、これも考えられておられるようであります。しかし、そうなると、同じ政令で、片や三百円、片や千五百円。やはり、これはもう千五百円でも私は少ない、こういうように思うわけでありまするけれども、しかし、基本的には、ほんとうに困っている人が、現にそこに介護人を置かなければ支給してもらえない、これでは、少しやり方としては困るんじゃないか、こういうように思いまするけれども、この点は、必要である人は全部にもうやってやるべきじゃないか、こういうように思うのです。
 もう一つ――まあ、これだけひとつケリをつけましょう。
#67
○武藤(き)政府委員 この手当の額につきましては、大臣からもお話がございましたように、今後なお他の制度及び――手当の額につきましては、なお増額についても努力をいたしたい、かように考えます。
 先生が御指摘のような、たとえば天涯孤独のような方につきましては、やはりそういう方は、病院に入院なさる必要がございましょうし、また、病院でなければ、いわゆるそれに準ずるような収容施設等で、十分収容して保護してあげるということで、実際上のいろいろの不便を除くということが必要じゃなかろうか、かように考えまして、運用をいたすべきではなかろうか、かように考えます。
#68
○島本委員 この点では、社会党の提案者もおられまするので、介護手当についての社会党案の考え方を、この際、伺わしてもらいたいと思います。
#69
○角屋議員 いま介護手当の問題について、島本委員から御指摘もございましたが、政府案の第九条、私どもの党の案でも、第九条の関係で、介護手当の支給を明定しているわけでございますが、政府案の場合は、島本委員の御指摘のように「介護を要する状態にあり、かつ、介護を受けているものに対し、政令の定めるところにより、介護手当を支給する。」ということで、これで切れていればいいのですけれども、そのあとに「ただし、その者が介護者に対し介護に要する費用を支出しないで介護を受けている場合は、この限りでない。」要するに、現金支出というものが伴わなければ介護手当を支給しない。「介護を要する状態にあり、かつ、介護を受けているものに対し、」介護が行なわれておっても、現金支出を伴わない場合には、「ただし、」以下の規定によって、介護手当の支給が行なわれないものと法律上は解釈されるわけでございます。
 本来、介護の場合は、お互いに病気のときの経験等から申しましても、患者としては、もちろん、第三者を頼む場合も当然起こり得ると思いますけれども、やはり気心のわかった近親者が介護するというふうな事態も当然起こり得るわけでありまして、近親者が介護をするという状態にあって介護をする場合においては、生活その他の条件に相当な障害を越えて介護をやるということでございまして、現金の支出等を伴わない場合においても、現実にはそれ相当のやはり配慮をしなければならぬことが、当然、救済立法としては考えられてしかるべきだと思います。そういう考え方に基づきまして、社会党の第九条におきましては「介護を必要とする状態にあり、かつ、介護を受けているものに対し、政令の定めるところにより、介護手当を支給する。」近親者等で金銭の支払いを伴わないという場合においても、これは「介護を必要とする状態にあり、かつ、介護を受けている」ということは、はっきり状態として規定できるわけでありますから、そういう場合には、きめた介護手当が支給できるようにするということは当然のことかと考えておるわけでございます。
#70
○島本委員 いまの角屋議員の答弁に対して、大臣、どのようにお考えでしょうか。
#71
○斎藤国務大臣 社会党案の御説明がございましたが、これは運用によりまして、私は解決のできる問題だろうと思うのであります。介護を受けていますというだけで介護手当というのも困るということでございますので、やはり介護を受けておれば、それだけの費用がかかるわけでありますから、実際問題として、金銭授受がはっきりあったかどうかというところまで見定めなくていいんじゃないか、私はかように思います。
#72
○島本委員 じゃ、今後、その点等については、実施上、角屋議員の答弁と斎藤厚生大臣の答弁は一致したものである、こういうふうに私は解釈し、次に進みたいと思いますが、それでよろしゅうございますね。――それでは、次に進みます。
 これは所得制限――政府案では、被害者、その配偶者及び扶養義務者に一定額以上の所得があった場合に、医療手当及び介護手当を支給しない、まあこういうことになっておりますけれども、社会党案では、この制限は付されておらないようであります。この点もやはり重要な問題の一つだろうと思います。公害には、やはり所得制限を付してこれは救済する、救貧的なこの措置だけでよろしいんだ、こういうような考え方では、公害に対する対策、もうこういうようなことには断じてなるものじゃない、こういうように私は指摘せざるを得ないわけであります。この点等については、所得制限を付した理由及びこの制限に対しては基準をどこに置いたのか、この点について、ひとつ大臣並びに関係当局のこれの見解を承りたいと思うのです。
#73
○武藤(き)政府委員 医療手当、介護手当に所得制限をつけました趣旨は、療養に伴いますいろいろの雑費あるいは介護のために現に要した費用を補てんしようとするわけでございますが、この健康被害の円滑な救済に資するという点で、治療効果を高めるという目的をもっていわば給付するわけでございまして、どちらかといえば、補完的な、付随的な給付でございます。したがいまして、こういう点を他の制度等、たとえば原爆等の手当等参照しまして、一定の給付制限の措置をとる制度としたわけでございまして、現実には、政令では、原爆と同じように、所得税額で一万七千二百円以上の方には支給制限を課するというふうに考えています。
#74
○島本委員 これは救済の対象及びその内容のほうには、まあ原爆のそのやり方を参照しないで、今度、いまのように、所得制限だとか介護手当のほうになると、それを準用するわけです。どうもこのやり方が一貫しておらない。私は、それで、あくまでもこの所得制限を付すべきじゃない。公害の場合は、特に所得制限を付すべきじゃない、こういうように思うわけなんです。所得制限を付した場合には、これは完全な医療、救済、こういうようなことにはならない。あえて私は、初めからこのことをこの問題に対してはぶつけておきたいと思うのです。私、これは重要だと思うからであります。
 所得制限を付さなければならないとして所得制限を付してあります。念のために、総理府の統計局、きょう来ておられますか。−四十三年の平均の国民所得はどういうようになっておりますか。
#75
○岡部(秀)政府委員 四十三年、平均一カ月間の実収入を見てまいりますと、全国で八万七千三百八十九円になっております。この世帯は、世帯人員が平均をいたしまして三・九六人、ちなみに有業人員は一・五四人になっている、そういう平均家庭を出したわけですが、その世帯において八万七千三百八十九円の実収入を持っておるという状況になっております。
#76
○島本委員 念のために、北海道、関東、それから東海、この方面の平均の所得、これはどれほどになりますか。
#77
○岡部(秀)政府委員 北海道は八万二千四百八十五円、世帯人数は三・九一人、有業者は一・四五人となっております。
 関東は九万二千百五円で、世帯人数は三・九六人、有業者は一・五三人でございます。
 東海地区は八万七千六百九十一円で、世帯人数は四・〇三人、有業者は一・六六人となっております。
#78
○島本委員 どうもありがとうございました。
 厚生省の事務当局にお尋ねしますが、この所程制限は、年幾ら以上のものが制限を受けることになりますか。
#79
○武藤(き)政府委員 所得税額一万七千二百円では、給与所得の総額九十三万円――これは標準四人世帯でございますが、九十三万円以上の場合が所得制限がかかる、こういうことでございます。
#80
○島本委員 いまの総理府の発表によりますと、関東方面は九万二千円なら年額百十万四千円以上になり、こういうような人が受けた場合には、全部所得制限にひっかかる。それから東海の場合には八万七千円ですから年額百四万四千円、これでさえもひっかかるじゃありませんか。東海というと四日市を含むじゃありませんか。こういうようなものじゃ、せっかくやっても、この所得制限の点で、救済するといっても救済できないようにしてしまう。これでは画竜点睛を欠くどころか、おそらくとんでもないような法律だ、こう言わざるを得ないわけです。大臣、これじゃ救済できないじゃありませんか。救済しようとしても、これだけの所得の人が、いま総理府の統計ではっきりしているのですから、大部分の人がのがれてしまうじゃありませんか。適用できないじゃありませんか。これは私は納得できませんね。
#81
○斎藤国務大臣 いまの数字は大体平均所得ということで、若干平均所得より上回るところがあり、また下回るところがありますが、大体平均所得。先ほど申しました九十三万円、これは四人世帯で九十三万円、その者が納める所得税は一万七千二百円ということですから、先ほどの統計局の数字とぴったり当てはまらぬところもありますけれども、まあまあ平均の所得のある方というわけでありますから、まあ大部分はこの平均所得よりも少ない方が多いわけであります。
#82
○武藤(き)政府委員 統計局長のお話は平均でございますので、私どもはこの一万七千二百円で、現在たとえば広島、長崎等の原爆等で実施をしております実績からいたしますと、大体七割五分程度の方は救えるというふうに考えておりますし、予算も大体そういう計算で組んでおります。
#83
○島本委員 東海は平均して八万七千六百幾らというようなことだったわけです。そうすると、年間百五万以上になります。そういうふうになってしまいますと、四日市を含めて東海はほとんど所得制限にひっかかってしまう。せっかく受ける医療も介護も全部これはだめだということにされたら、幾ら法律をつくっても、適用を受ける人はなくなってしまう。これはいけませんよ。何のための統計ですか。統計はうそじゃないと思う。これはもう少し検討を要します。これは勤労者ですから、四日市をはじめとして、こういうようになる人は勤労者がほとんどでしょう。一般市民はもちろん入ります。そういうふうになりますと、これは認めるわけにまいりません。これは仏をつくって魂を入れないどころか、法律をつくって適用者を全部除外してしまうようなものだ。天下の悪法これ救済法なり、こういうように言われたらどうなりますか。いままで笑ったことのない大臣が泣き出す。これはまあ冗談ですけれども、ほんとうに所得制限はいけません。これだけはもう一回慎重に考えて、次回までに所得制限の問題に対してのはっきりした適用のデーターを調べてもらいたい。大ざっぱに八割あたりとか九〇%まで適用されるとか、こういうことじゃ理解できない。せっかくデータまで出たが、これでは勤労者、所得ある人はほとんど除外されてしまう。こんなことじゃいけません。次の水曜日までの間に、もう少し詳しいデータをこの問題に対して提出してもらいます。所得の点で合いません。
 角屋議員に、この点についての社会党の意見を承っておきます。
#84
○角屋議員 意見と申し上げますよりも、私どもの党の立法におきましては、所得制限という政府案のような考え方をとっていないのでございまして、質疑の過程で島本委員が自分の見解として申されましたように、本来公害で被害を受け、健康に侵害を受けて病床に呻吟をする、そして救済を受けなければならぬという者に対しては、やはり所得制限を設けずに救済が得られるようにするのが本筋である、かように考えておるわけでございます。
#85
○島本委員 次に私は、適用の住所による制限があるようでありますけれども、少し事務当局から詳しくこの適用に対しての住居に関する制限、これを説明してもらいたいと思います。
#86
○武藤(き)政府委員 第三条の後段におきまして「当該疾病が厚生大臣の定める疾病であるときは、当該申請の時にその管轄に属する指定地域の区域内に住所を有しており、かつ、その時まで引き続き当該指定地域内に住所を有する期間が厚生大臣の定める期間以上である者に限って行なう」ということでございます。したがいまして、ここで現在考えておりますのは、いわゆる大気関係の疾病の場合に、その地域に厚生大臣の定める期間、大体三年を考えておりますが、地域に三年間の居住歴があるという者について、大気関係の疾病の認定を行なうということを考えております。
 それから第四条の二項で、「当該認定に係る疾病が厚生大臣の定める疾病であるものが、当該指定地域外に住所を移したとき、」つまり地域外に引っ越したときには、「厚生大臣の定める期間を経過した日以後は、適用しない。」これも大気関係のことを考えておりますが、地域外に引っ越しをした場合には、大気関係の疾病患者が引っ越した場合は、大体三年間を限って適用をいたしたい、かように現在のところ法律の運用は考えております。
#87
○島本委員 現在国のほうで行なっているいろいろの施策、いわゆる広域行政をだいぶ考えられておるようであります。そうしてそれによりますと、新国土総合開発計画が経済企画庁総合開発局から出されております。閣議決定にもなったようであります。それによりますと、管理方式の中枢管理機能の集積、電話そのものによっても、見て聞いて書く、いわゆるコンピューターを入れ、データ通信も採用される。基準年度は昭和四十年、完成年度は昭和六十年、そうして人も一定のところに住まないで、おそらくは通勤するか何かで、東京を中心として新幹線様式を採用し、北海道札幌まで五時間五十分、福岡まで五時間四十分で行けるようにしたい、こういうような構想の発表があったようであります。そうなりますと、当然通勤する人もできてくるし、そういう可能性のほうが今後の状態としては容易に考えられるわけでありますけれども、そこに居住していないとやれない、しかし四六時中はそこに勤務している、こういうような人に対して適用にならないということは、これまた重大な法の一つの欠陥なんじゃなかろうか、こういうように思われます。この点に対してはどうなんでございますか。
#88
○武藤(き)政府委員 先生が御指摘のような問題につきましては、やはりいわゆる労災関係の問題に近い考え方で整備をすべきじゃなかろうか、かように考えております。私どもが大気関係でこういう一つの法の運用を考えますのは、やはりその指定地域に長く住んでおって、二十四時間その大気の影響を受けて、そこに公害病として認定できるという状態になったということを一つの制度として卓与えるわけでございまして、その地域の影響を――ある程度一定期間以上の者に限るということはやむを得ない、かように考えております。
#89
○島本委員 そこに住まないで、そこへ通勤してこの病気になった人は、そうすると公害病ではないという根拠をどこに求めますか。
#90
○武藤(き)政府委員 御設例のような場合は、やはりいわゆる労働災害として、そういう問題をとらえるのが妥当ではなかろうか、かように考えます。もしもそういうことがありますと、今度は、そこの地域に住んでいて、ほかに職場があるとか、あるいはほかにいろいろ用事で、ほかの地域に出ていくというふうな場合は、逆にまた除外をするというようなことになりますので、やはり制度としては、私どもの考えた制度のほうが、制度としてそういう公害病として認定するのが妥当ではなかろうか、かように思います。
#91
○島本委員 そうすると、妥当、妥当でないという考えではないのです。水にしろ大気汚染にしろ、それによって影響を受けたいわば公害被害者、一方は労災被害者であり、一方は公害被害者である、これをどういうふうにしてきめるのですか。住居によってだけきめるのですか。同じ原因で受けた人でも、それはあなたのいまの説明では、一方は労災法の適用を受けるものである、一方は公害にかかわる健康被害としての救済を受けるものである、こういうようなことになってしまうわけです。しかし、原因は同じじゃありませんか。原因は同じであって、しかしそこに住んでいる人はこっちのほうだ、住んでいない人は、これはもう労災法だ、どうもこのやり方が妥当だとは考えられないのです。この点、説明の誤りじゃございませんでしょうか。念のために、社会党原案を提案されました角屋議員の、ひとつ高邁なる御意見を賜わりたいと思います。
#92
○角屋議員 ただいま質疑が行なわれている点については、政府案では第三条の認定の条項に関連した御質問でありますが、わが党のほうでいきましても、第三条に関連する事項でありますけれども、私は、これは政府案の場合も社会党案の場合も、指定地域を設ける、それで指定疾病が指定をされるという、あるいはわが党の場合には指定疾病ばかりではなしに、それに基づく障害まで含めておりますけれども、それは別といたしまして、指定地域あるいは指定疾病というものが設定される。その場合に、具体的に公害病患者の指定をどうやるかという方法論の問題について、指定地域ということに固定をして、そして指定患者をきめていく、したがって政府案では指定地域から解除をされる、あるいは指定地域以外のところに住居を移すというふうな場合についての厳密な限定が行なわれてくるということになっておりますけれども、私どものほうでは、指定地域、指定疾病の指定のたてまえまでは同様な考え方をとっておりますが、先ほど島本委員御指摘のように、指定地域以外から指定地域に、相当の期間毎日、職場の関係等で、そこに住む、あるいはそこにおるというふうな者については、わが党案の第三条の二項になってまいりますけれども、「厚生大臣が特に指定する疾病又はこれに基づく障害については、一日のうち相当時間を当該指定地域内において過ごし、その期間が指定地域ごとに、かつ、当該時間数に応じて厚生大臣が定める期間をこえる者に限り、同項の認定を行なう」というふうな形で、指定地域外から指定地域に勤務等をする者が指定疾病にかかっておるというものについては、公害病患者の認定を行なうという、現実の指定地域を設けた場合に除外される危険性のある者、しかも公害病患者として指定することが相当であるというふうな者を、その中に含める形の条文形式をとりました。この点は、政府案の場合にやはり問題指摘があるように、さらに検討を要する問題だし、実態としては問題があろうかというふうに私どもも考えておるわけでございます。
#93
○島本委員 これははっきり申し上げまして、実は私もいま角屋議員と同じような見解に立つものなんです。これは広く救済する。それから間違えず適確に救済する。この意味ではあまりにこれに詳しい要件は付すべきじゃない、こういうふうな考えなんです。私もこれは決して肩を持つわけではありませんけれども、角屋議員の説明でいいんじゃないかと私は思うのですが、これに近づけてこれを実施するようにするのが、本法案の趣旨を生かすもとになるんじゃないか、こういうように思います。これはいまあまり両方でやってもらいたくはございませんけれども、しかし大臣、やはり行政的にいま角屋議員の答弁をここへ生かして今後実施すべきじゃなかろうか、こう存じますが、この点はあまり深追いしたくはございません。よろしゅうございますか。
#94
○斎藤国務大臣 深追いをされないということでございますからけっこうでございます。ただこの大気汚染による疾病、たとえばいわゆる四日市ぜんそくとかいわれている病気は、これはその疾病自身を見て、これは大気汚染からきたぜんそくだ、これはそうでないぜんそくだということがなかなか判別しにくい。診断をして、そしてこれは大気汚染のぜんそくだということがわかれば、これは非常にやさしいと思うのですが、それが非常にわかりにくい。そこで大体大気汚染地域内においてはぜんそくが多いから、その一定地域内におけるぜんそくは、本来からのぜんそくの患者の人であっても、これはもう大気汚染に基づくものだ、こう認定せざるを得ないというのが今日の現状でございます。同時に、その汚染地域から離れて、そして相当期間をたてば、これは大気汚染によるぜんそくがなおるんだというのが定説になっておるものでございますから、したがってこういう立法をとっておるわけであります。角屋議員のおっしゃいますように、一日何時間以上そこにおれば大気汚染のぜんそくになる公算が非常に多いというデータが出てまいれば、またそれも一つの方策であろうと私は思います。そういうような疾病本来のなにを持っておるものでありますから、これによって救われる。大気汚染でなくても、本来からぜんそくの方も、その地域におればこれは適用を受けざるを得ない。そういうような関係にありまして、この点は医学的に非常にむずかしい。私は医学の専門じゃございませんから、ただ医学者から聞いて受け売りをしているにすぎませんが、そういう段階におきましてはやむを得ないのじゃないか、かように思っております。
#95
○島本委員 この際ですので、ひとつ政府案第七条第一項、この医療手当の問題に関して、事務当局から少し詳しく説明してもらいたい。
    〔古川(丈)委員長代理退席、委員長着席〕
#96
○武藤(き)政府委員 第七条の医療手当でございますが、これはいわゆる認定を受けた方が現にその医療を受けている場合に、いろいろ入院あるいは自宅にあって療養をされている場合に、その医療効果を高める意味で、政令で定める限度の状況に応じまして医療手当を差し上げるということで、現在のところ考えておりますのは、入院をなさっておられる方には大体四千円、それからそれ以外の方には二千円の医療手当を支給する予定でございます。
#97
○島本委員 これは四千円と二千円、これにもやはり所得制限があるわけですね。先ほどの点にちょっと戻って恐縮ですけれども、現在の入院では、こういうようなものの平均はどれほどになっているのでしょうか。これも厚生省ですから十分おわかりだと思いますので、その点をここに対比させてもらいたいと思うのです。
#98
○武藤(き)政府委員 入院費の実態につきましては、いまちょっと調べておりますが、入院をなさっておられるいろいろの費用あるいは医療費につきましては、これは当然医療費の中で支払われるわけでございますが、医療手当といいますのは、そういう健康保険あるいは国民健康保険でのいろいろの自己負担分について、この制度ですべてがまかなわれるわけでございますが、それ以外にいろいろ費用が要るので、医療手当を差し上げるということでございます。
 現在、公害病として阿賀野川、水俣それから四日市等で現に入院しておられる方の実績を調べますと、新潟の阿賀野川では六万七千円でございます。それから水俣でも大体六万七千円でございます。それからイタイイタイ病の富山の場合は六万二千円でございます。それから大気汚染の関係では六万円でございます。
#99
○島本委員 そうすると、それほどかかるわりあいに、医療手当として支給する分、これは医療費の関係も当然出てくるわけでありますけれども、介護手当を含んでも、医療手当の面だけではこれはやはり額が不十分だ、こういうようなことになるのじゃないかと思いますけれども、これを出した根拠は何なんですか。
#100
○武藤(き)政府委員 いま御説明しました入院の六万円あるいは六万数千円の実績は、これは入院しておられる方が現に入院費あるいは医療費、もちろんこれは食費等も含みますが、その一切を含めたものでありまして、それ以外に、たとえば病院で生活しておられる場合にいろいろ費用が要るという方に四千円を差し上げる。それから通院しておられる方は、いま申し上げませんでしたけれども、通院者はたしか一万六千円くらいの見当でございます。そういう方々が通院するためにいろいろ諸雑費が要るということで、二千円差し上げるということでございまして、入院費用、通院の費用と直接的には関係はございません。つまり治療効果を高めるために、雑費をそれぞれ四千円、二千円差し上げるわけでございまして、この額は、他の類似の制度といいますれば、原爆等でこういう類似の医療手当を出しているにすぎませんので、そういうものを勘案しまして、私どもは予算を請求し、財政当局とその額をきめたわけでございます。なお、この額につきましては、当然今後いろいろ実態に応じて増額については十分検討いたしたい、かように思っております。
#101
○島本委員 今後十分この額については検討を要すると思います。第三条による公害病の認定、この件を少し事務当局から詳しく説明してもらいたいと思います。
 時間がたちますので、私もこの辺でそろそろ終わりたいと思いますが、公害病の認定は、今後の一つの問題としてもちょっと疑念がございますので、これは少し詳しく事務当局から説明してください。
#102
○武藤(き)政府委員 この三条で認定するわけでございますが、この場合には、当然その前提としまして疾病をまず指定いたします。現在考えられております疾病は、有機水銀中毒症、それから富山のカドミウムによるイタイイタイ病、それから四日市等で考えております慢性気管支炎、そういうものが病気としては考えられておるわけでございまして、まずそういう病名の指定が行なわれ、それからその地域が指定をされます。その場合には当然患者の発生の状況を見まして、その地域を指定するわけでございます。この認定権者は都道府県知事でございまして、ただし第二項では、政令市の場合には市長が行なうということでございます。
 まず患者は、実態といたしましては主治医がいるわけでございましょうが、その方との御相談の上、知事または市長に申請するわけでございますが、その場合にはいわゆる認定審査会、これは医学者によります審査会でございまして、現在それぞれの地域でもこういう制度が行なわれております。その意見を聞きまして、公害病患者であるかどうかということを認定するということでございます。
#103
○島本委員 これもいわゆる公害被害者認定審査会の意見を参考にするのですか。ここで認定するのですか、厚生大臣が認定するのですか、この辺を少し……。
#104
○武藤(き)政府委員 認定権者は知事または市長でございますが、実際上はこの審査会の意見に基づきまして、その意見どおり認定がされるというふうに現在も運用されておりますが、この法律によりましても、そういうような運用が行なわれる。それから認定されますと、患者さんには医療手帳というものが渡りまして、医療手帳を持っていきますと、医療機関にお金を支払わないで医療が受けられる、こういう仕組みになるわけでございます。
#105
○島本委員 この認定審査会、それと知事の決定、政令市である場合は市長ですか、この弾力的な運営ということがやはり今後問題になってくると思います。公害病の認定の可能性、おそらくこういうようなものもデリケートな問題です。しぼればこれは幾らでもしぼれる。ある程度弾力性を持たせるならば、これはある程度それによって救済できる。この辺の運用が今後の重大なポイントにもなるのじゃないかと心配されるわけです。先ほどの所得制限の問題等も合わせて、せっかく法律をつくっても、これを適用するような人の少なきを誇るがごとくに排除していく、こういうようなやり方は通りません。三条によって公害病の認定、こういうようなものにあたっても、やはり私の場合には、十分にこの意向を尊重して、あまりにも締めることがないように、この点等については十分配慮すべきである。いわゆる弾力的運営でこれは適用すべきである、こういうように思っておるわけであります。
 だいぶ時間もたちましたが、私は最後に、これは大臣に強く要望して、今回の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の分については質問を終わりたい、こういうふうに思っておりますけれども、実際は画期的な法律であるというようにいわれながらも、内容を審査してみますと、まだまだきびしい点や今後改正を要する点が多いようであります。不十分な私の質問の中にも、これが出されたわけであります。やはり今後の運営の面等につきましても十分これを考えないと、画龍点睛を欠くおそれが当然あると思います。ことに公害に対しては、おそらくは世界に誇るべき法律案だというような声さえも聞くのでありますけれども、しかしそれにしても内容は意外に貧弱である。こういうようなことであります場合には、これはやはり法治国家としての恥でありますから、この点は今後の問題としても十分考えておいていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 しかしながら、できた以上、全会一致をもってこれを通すように、政府側も委員とともに十分検討し、国民のために修正あるいは附帯意見を付して、これが満場一致で通ることを心から期待するものであります。公害に対する取っ組み方としてはいまだしの感がございますけれども、いままでの努力だけは、私は心から敬意を表しておきたい、こういうふうに思うわけでございます。これはまだ賛成ということは言っておりませんけれども、それにしても、今後の問題もありますから、満場一致でこれが通るように、それぞれ修正または附帯意見、こういうような点に対しての要望も心から付しておきたい、こう思うわけであります。
 いま米価の問題等で忙しいその間に、角屋提案者もよくはせ参じてくださいました。この点等につきましても、心から敬意とともにお礼を申し上げまして、私の質問はこれで終わります。
#106
○赤路委員長 午前中の質疑はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。
    午後一時二十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十一分開議
#107
○赤路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。岡本富夫君。
#108
○岡本(富)委員 きょうは、おもに今度の被害の救済に関する特別措置法案について質疑を行ないたいと思います。
 最初に、きょう午前中、島本委員も若干触れていらっしゃったのですが、ちょっと私、この法案について納得できないところがありますので聞きたいのですが、第四章の十六条に規定する費用払い出しの機関、民法三十四条によるところの財団法人を設立する。こういうことでございますけれども、この設立につきまして、責任者がだれであるか、それがきょうの午前中もはっきり答えがなかったわけでありますが、その点についてもう一度、大臣からはっきりしたお答えを願いたい思います。
#109
○斎藤国務大臣 法律には責任者を明定いたしておりませんが、事実上は、日本経済団体連合会が中心となって、案を進めてもらっておるわけでございます。
#110
○岡本(富)委員 それは暗黙の了解のようにとれるわけでありまして、やはりはっきりした責任者をきめておきませんと、財団法人ができた、あるいはできるといいましても、やるんだ、やるんだ、これでずっと引っぱられましたら――ということは、昨年、私予算委員会で通産省に対して、企業から資金を集めるのだ、基金をつくるのだ、こういうことも聞きました。それからもうずいぶんになっておる。ところが、まだなかなか調整がつきませんというような話をしておる。今度この財団法人は、通産省が責任を持ってやっておるのか、それとも厚生省で責任を持ってやっておるのか。前の厚生大臣は園田さんでしたが、もう一つ前は基金のなにが違っていたわけです。今度のは性質が違うわけですから、厚生省が音頭をとって、中心になってこの財団法人をつくるのか、その点もう一ぺんはっきりしておいていただきたいと思います。
#111
○斎藤国務大臣 この財団は、通産省と厚生省の両方でやっているわけでございます。
#112
○岡本(富)委員 この財団法人は、第十七条にありますけれども、いかなる事業者からどういう方法で拠出を求めるのか、これをもう少し明らかにしていただきたいと思います。また、だれが責任者なのか。
#113
○斎藤国務大臣 ただいま財団の設立準備の進行中でございまして、事実上名前があがって、それらの人が中心になって、いま進めてもらっているわけでありますけれども、法律にはその名前も、ことに個人の名前も出しようがございませんので、出ておらないわけでございます。
#114
○岡本(富)委員 その点がはっきりいたしませんと、この救済法案は、御承知のように金がなかったらできないわけであります。できるでしょう、あるいはまた、それを期待してやっているのだ、こういうようなあいまいなことでは、この法案ができましても、その基金がまだおくれていますということになりまして、結局施行はできない。古川さんあたりが早くやってくれやってくれと言いますけれども、結局かっちりした金の出どころ、だれが責任者であるのか、これが法案にはっきりできなければ、当委員会においてひとつその点をはっきりと答えていただきたいと思います。この財団法人をつくって、どういう事業者から金を拠出させて集める、その責任者はだれになるのか、これを当委員会ではっきりしてもらいたいと思うのです。
#115
○斎藤国務大臣 できた場合のその財団の理事長といいますか、それがどなたになるか、まだ関係者でいろいろ協議をしてもらっておることだと思います。しかし音頭とりは、先ほど申しました日本経済団体連合会、この会長以下役員の方にいま財団の設立の準備をやってもらっておるわけでございます。
#116
○岡本(富)委員 そうすると、ひるがえって言えば、経団連の会長がこの財団法人をつくる、こういうことになるわけですね。
#117
○斎藤国務大臣 会長以下役員に設立準備手続をいま進めてもらっているわけでございます。
#118
○岡本(富)委員 おおむねそれでわかりましたが、じゃ今度は、各事業者からの任意の寄付に期待してつくるということでありますが、これはおそらく、ことしだけその基金があって来年はなくてもいいというものじゃないと思うのです。そこではたしてその拠出金が、これだけの予算をこちらで組んだ、あるいはこれだけ必要なんだというものに対して、寄付が集まるのかどうか。栄枯盛衰のならいということがありますから、いまもうかっておるから出せる、しかし企業も余裕金がありませんと、会社をつぶしてまでは出しません。これは一般常識でありますが、ずっとそれだけの寄付が、拠出金が集まる見込みを持った財団法人であるのか、またそれはだれが保証するのか。ことしだけで来年は集まらぬで、パーになってだめになりました、こういうようなことではちょっとぐあいが悪いのでありますから、その点の確約をひとつこの場でしていただきたい。
#119
○斎藤国務大臣 これは公害基本法に基づき、また本法に基づいて、事業者はこの公害救済についての責任があるということに基づいて、そういう団体をつくるということになっておりますので、ただ普通の慈善事業の寄付を集めるからというのとは違って、やはり事業者のどなた、だれということはきまっておりませんけれども、少なくとも公害に関係のある事業が連帯してやるということで、これは具体的に法律で義務づけてはおりませんが、抽象的に、事業者はそういう責任があるという自覚のもとにやっていただくわけであり、法律でもそういう意味で明らかにしているわけでございますから、途中で消えてしまうということはないと、かように確信をいたしておるわけでございます。
#120
○岡本(富)委員 そうしますと、その寄付行為によって資金を集めるわけでありますけれども、そうしますと、事業者の公害被害者に対する責任というものがそれで果たされる、こういうことになりますが、それは過失責任なのか、無過失責任なのか、この点もひとつこの場ではっきりしておいていただきたい。
#121
○斎藤国務大臣 これは損害賠償法等にいうそういった具体的な責任ということではなくて、事業者全体がそういう責任を持って、そしてこの公害対策あるいは公害の医療救助について、事業者もその責任の一端を分担しよう、こういうわけでございますから、しいて言えば、これは無過失責任でございます。しかし、これによって個々の損害を与えた責任を、少なくともこの部分においても免れるものではございません。それとは別個の、いわゆる公害事業に協力する責任があるという責任からきているわけであります。
#122
○岡本(富)委員 そうしますと、そうした無過失責任、まあ事業者の公害に対する責任の上で大体拠出するのだということになりますれば、寄付によって集める、寄付を強制するということはこれは憲法違反だ。そことのかみ合わせと申しますか、普通一般寄付といいますと、これは君のところ何ぼや、これだと明らかに憲法違反ですからね。そういう面との関連というものはどういうようになりますか。
#123
○斎藤国務大臣 これはそういった責任に基づいて拠出をされるわけでございまして、強制的な割り当てをしてやるというようなものではございませんから、理由なしに強制的割り当てをやって、出さなければ罰金だとかいうようなことになれば、これはあるいは憲法違反になるかもしれませんが、そういう筋のものではないと思います。
#124
○岡本(富)委員 そうしますと、拠出する根拠というものが非常に薄弱であるように思うのです。企業全体の責任において集めるのだ。しかし、一人その中で、私のところはそんな公害なんか出していない、もしも出しておるのだったならば、私のほうに直接言ってくれ、こういうことになります。そういった場合に、そういう人が一人出てくると、みなそうなってきたら、これはもうこの基金というものは集まらないということで、非常にあいまいです。じゃ寄付を強制してとれるものでもないということになりますれば、非常に根拠が薄弱で、何かこう人の良心に訴えてつくるというようなものになるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点どうでございましょうか。
#125
○斎藤国務大臣 その点はちょっとばくとしておりますから、もし拠出がなかったらどうするんだ、あるいは申し合わせをやった人たちの間でやらなかったら、そのなにはどうするのだ、それはその団体の中の問題なんです。しかしそれにしましても、そういった指定された財団法人が、ここでいう義務を果たさなかった場合にどうするのだ、その点のないことは、これは法律的に欠けているじゃないかとおっしゃれば、これは私は欠けていると思います。しかし、それがなくても十分信頼ができるという心証のもとに立法をしたわけでございます。
#126
○岡本(富)委員 その点が、私ども公明党案、あるいは社会党案と比べまして、非常に根拠薄弱な、どっちかといいますれば、そうしたものによって集められた寄付でもって救済しようということでありますから、そっちのほうが非常に弱い感じをしている。現実の救済というものが非常にむずかしくなってくる。それは政府にまかしておいてくれ、こういうふうになればそれは別としまして、それはちょっといままでの――これは厚生省は全部責任持つのだということになる。ここで答弁として、通産省と厚生省が責任を持ちますというような話ですけれども、これはわれわれといたしまして、通産省に念を押さなければいけませんけれども、いまは厚生大臣しかいませんから、厚生省が全責任を持ちます、こういうことにいまだったら答弁あると思うのです。ところが、斎藤厚生大臣ならばそうではないと思いますけれども、いままでの救済に対するところの、あるいはまた公害行政に対するところの厚生省のあり方につきまして、十五年前に熊本県のあそこの水俣市におけるところの奇病が発生して、そして非常に大ぜいの被害者が出た。そして昭和三十四年のことでありましたが、三十四年の七月に、厚生省の科学研究班ができまして、そうして新日本窒素の水俣工場の廃液が原因である、こういうように推定だけした。ところが工場側の反論によって沈黙してしまった。こういうような実例から見まして、やはり相当法的にきちっとした規定をしておきませんと、こうして現実に起こって、たくさんの人が病気になって困っておる、たくさんの人が死んでいる、こういうのでも、企業の反論にあってあえなくついえておる。こういう姿は今後はないのだ、そういうことは絶対ありません、これをひとつはっきりしておくか、あるいはまた、そこまでは責任持てないというのであれば、次元は違いますけれども、相当私たちはそれに対して不信感を持っているわけでありまして、国民の皆さんの声といたしましても、今度のこの基金をつくるといったところで、ほんとうにはっきりしたものができるのだろうか。企業の圧力、あるいはまた、まだまだだといって引き延ばされて、そうして結局寄付金も集まらなかった、ことしは集まったけれども、来年はできなかった、こういうようなことになって、そしてほんとうの救済ができないじゃないか、こういう感じがするわけであります。そこで厚生大臣が、絶対厚生省の、あるいは政府の責任において寄付は拠出させてやるという確約はできましょうか。
#127
○斎藤国務大臣 これは先ほど申しますように、経済団体連合会を信用するかしないかということに一にかかっているわけでございまして、それ以外の方法でどういう方法があるかと、いろいろわれわれも考えたわけでございます。たとえば四日市の大気汚染、これについての医療救済の一部の金、それは大企業だけ拾えばわかりますが、中小企業、いろいろなものが入っているわけであります。ことに住宅地、それから中小企業や何かの非常に多いところ、川崎といったようなところを考えますと、どの企業とどの企業といって名ざしをすることは非常に困難であります。結局そういった産業に関係のある方々が、おれたちが責任を負いましょうというこれに信頼をして、そうしてそういった関係の企業の方々がお互いに責任を分担し合おうということで出していただくことが一番適切ではなかろうかということで、こういうことになったわけでございます。
#128
○岡本(富)委員 そこが私どもの出した法案との見解の相違でしょうけれども、公明党案あるいは社会党案によりますと、原因者に対しては、まず原因をはっきりさせること。それから原因のわからないものに対しては、各企業がやはり税金を出しているわけでありますから、これは政府のほうから一般の救済として基金をつくる、特別会計をつくる。そうしてまず被害者に対しては救済をしておく。そして原因を明らかにする。そういうことが起こったということは必ず原因があるのにきまっておるわけですから、結果があるということは原因があるのですから、その企業にそうしたものを全部負担をさせる。こういうふうなはっきりしたものを、私のほうでは対案を出しているわけでありますけれども、いまの政府案によりますと、その点が非常にあいまいである、こういうように考えるわけです。だから、いまこのことを討議してもしかたありませんから、大臣、必ず政府の責任あるいは厚生省なら厚生省の責任において基金を確保して、そして救済に万全を期します、これはひとつはっきりしてもらいたいと思います。ただ信頼しておりましてということではだめです。それ以外に方法はありませんなんて言われるが、しかし私たちの出しているように、あるのです。ですから、はっきりしたお答えを願いたいと思います。
#129
○斎藤国務大臣 これはその原因者が一人であるというような場合には非常に明確であります。しかし不特定多数の原因者という場合、ことに一番わかりにくくなってまいりますのは、たとえば自動車の排気ガスによる公害、これは不特定多数であってほとんど明定しがたい。そういうこともございますので、そういった関連産業の人たちに、半分は医療救済による施策に要する費用を負担してもらおうという以外にないように思うのであります。したがって、これが確保できるかどうかということは、先ほど申しますように、事業団体の信頼感をどう見るかというわけでありますが、厚生省の責任ということだけでなしに、これは政府の責任として、信頼をいたしておる、こういうことでございます。
#130
○岡本(富)委員 では、政府の責任において、必ず基金はつくって救済はきちっとやります、これははっきりするわけですね。
 それで、きょうは、この救済をする範囲、現在政府が考えております、特に厚生省が公害の認定をした人、これをまず救済しようということでありますが、この範囲につきまして、どういうところを考えているのか、これをひとつ明確にしてもらいたいと思います。
#131
○武藤(き)政府委員 現時点で救済を考えております地域につきましては、阿賀野川の地域、富山のイタイイタイ病の神通川の地域、四日市の大気汚染によるぜんそくの地域、それから熊本の水俣の地域につきましては、現在補償問題でいろいろ進行中でございますが、この問題がこの法律の施行までに決着がつかなかった場合には当然考えていかなければいけない、かように考えております。なお、ほかの地域等、たとえば京浜、阪神等につきましては、今後調査を進めましていろいろ検討していきたい、かように考えております。
#132
○岡本(富)委員 過去の厚生省の公害に対する姿勢というものは、企業に対して非常に遠慮をしておったり、あるいはまたどこからか圧力がかかって落ちてしまったのか、先ほど申しました一つの事業を見ましても、公害行政に対しては怠慢というか――怠慢でもないのでしょうけれども、あるいはあいまいであったのか、しかしまあ前園田厚生大臣のときから、現斎藤厚生大臣になってからは、相当一生懸命に行政をやってもらっているというように解しております。
 そこで、いま話がありました熊本県の水俣の問題でありますけれども、これに対しても相当もう研究されておりまして、厚生省のほうではずいぶん力を入れていらっしゃると思いますが、現在会社と被害者との間においてどういうようなことが行なわれておるのか。また、聞くところによると、互助会というのがありまして、厚生省が仲に入っていろいろとめんどうを見ておる、そういうふうにも伺っておるわけでありますが、その経過について詳しくひとつ説明してもらいたいと思います。
#133
○斎藤国務大臣 御承知のように、水俣における患者の方々の団体がございまして、この団体と会社とが交渉をし、そして一応協定ができて、その協定によって、会社がある金額をずっと払ってきていたわけでありますが、これがはっきり公害病であるということがきまりまして以来、その協定が一時中止になって、新しい損害賠償という問題に切りかわってきたわけでございます。そこで、会社側と話し合ってもなかなか話がらちがあかぬ。それで厚生省に、ひとつ損害賠償の基準をきめてもらいたいというお話が、これは両方から、会社側からもあり、また患者側からもあったわけでありますが、しかしこの基準を法律、規則によってきめるということはなかなか困難であり、できがたいことである。これは損害賠償責任に基づいたそういう裁判の結果にまたざるを得ない。したがって事実上その問題を解決するために、ぜひ厚生省が仲に入って、そういう第三者機関でも設けてもらいたいという切なる要望がございましたので、それに応じまして、先般第三者のあっせん機関をつくって、そして三人の方に委員になっていただいて、調査をし、両方の意見をよく聞いて、適当な解決案を出してもらうということにただいまなっているわけであります。しかし患者の中には、そういったあっせんにはまかせられない、自分たちは裁判でやるというお方が一部おられますので、いま両方に分かれて、そういう段階にあるというのが今日の現状でございます。
#134
○岡本(富)委員 そうした互助会――水俣病患者の家庭互助会ですか、それと、それから新日本窒素の間に入った厚生省は、これはたしかこの前、前厚生大臣だったと思いますが、仲に入ってよく調整をしてあげよう、こういうようなことを現地で話したことを新聞で伺いましたけれども、それに基づいて、おそらくそうした調停委員のようなものができたのではないかと思うのでありますが、聞くところによると、この調停を引き受けておるところの三人の委員から、白紙委任状を出せ、こういうような話があったというわけですね。問題はそこからこじれてきた。ですから、この白紙委任状を出してしまいますと、これはもう訴訟の自由がなくなってしまう。したがいまして、そこに大きな不信の念がありまして、そしてこの調停ができておらない、現在こういうふうな現状ではないかと思うのです。それはただ、調停をするのですから、両方から意見をもらって、そして調停をするのでありますから、どちらかというと一番弱いのはその被害者なんですから、そちらから白紙委任状をとってしまったんじゃ、これを渡すということは、非常に犠牲になっている人たちから見れば不信である。これはわれわれ第三者的に考えても、そういうように感ずるわけでありますが、この点について、厚生省のほうではどういうふうに三人の方から聞いておるのか、あるいはまたその委員に対して、あなたのほうからどういう意見を出しておるのか、これをひとつお聞きしたいのですが……。
#135
○斎藤国務大臣 ただいまの御質問の点に、事実とちょっと違っている点があると思うのでございます。白紙委任状云々の点は、三人の委員のお方から、おれたちに白紙委任状を出せ、そういうことは毛頭言っておられません。それに似たような事柄のありましたのは、患者の団体の方から、ひとつ第三者機関を設けてもらいたい、そしてまた会社側からも、そういう要望がございました。ところが、一面、患者側の中には、一応おまかせするというならまだ格別、まあやってみてくれ、よければそれに乗ろうじゃないか、うまくなければ困るのだ、というような意見があったりいたしてまいりまして、ひやかしのために第三者機関を設けるというようなことでは困る、少なくとも道義的に一応はおまかせをするから、ひとつ何とか第三者機関をつくってもらえぬかということでないと、私のほうも責任を持って仲に入る委員の方にお願いのしようがないということで、一応おまかせをいたしますからというように、患者側の方々の了承を得てもらえるのかということが、いまの白紙委任状と間違えられて伝わっているところでございます。患者側の大部分の方々は、われわれは一応おまかせをするから、その結論に従います、会社側も、そういう両方の意見を十分聞いて調停をしていただければそれに従いましょうという約束ができましたから、そこで第三者機関をつくって三人のお方にお願いをしたというのが現実でございます。三人の委員の方は、おれたちに一任せいというような、それは全然ございません。そういう実情でございます。
#136
○岡本(富)委員 この水俣病がはっきりした公害であり、また、会社の責任であるというような、厚生省からのはっきりした結論が出たわけでありまして、その直後に、この互助会の各家庭を、江藤さんというのですか、この社長が現地で一軒一軒回って、当社としましてはこの政府の見解に従う所存でございます、微力でありますが、誠意をもって御遺族並びに患者の方々に対してお力になりたいと考えておりますと言っている。こうした会社のはっきりしたあれが出ているわけですね。したがって、どちらかといえば、患者側に立って、そうした被害者側に立ってのあっせんをするのが厚生省の立場ではないかと思う。両方対等にしたのでは、片方はもう頭を下げているわけですから、また、加害者とはっきりしているわけですから、そうした点から、いま厚生大臣から話が出ましたように、第三者だといっても、若干被害者の立場、この方面からやっぱり話をまとめてやる委員会でなければならない、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
#137
○斎藤国務大臣 そのとおりでございます。私どもも、患者側から切なる御要請がございましたから、どうせ公害紛争処理法案ができるのだからそれまで待てばいいのだろうというような態度では、患者の方々に対してお気の毒だ、かように思って、患者側の立場に立って、そうしていまの三人のお方をお願い申し上げた、そういういきさつでございます。今日の心情もまたそのつもりでおるわけでございます。
#138
○岡本(富)委員 そうしますと、その委員会の性質というものがこれで一応はっきりしたと思いますが、次に、そうした十四、五年になるところの長い水俣病というものは、今後わが国におきましても、そうした水銀あるいはメチル水銀によるところの被害のために相当予防もしなければならぬというわけで、もうすでに厚生省で研究をなさっていると思いますけれども、去る二月二日に、熊本県芦北郡津奈木町の開業医の松本敞さん、この人が胃の出血で死亡したという事件がありますけれども、これについて御存じでしょうか。
#139
○武藤(き)政府委員 熊本県から報告を受けております。
#140
○岡本(富)委員 それについて、潜在患者、すなわち水俣病の潜在患者、不顕性水俣病、この対策につきまして、その後厚生省はどういうような手を打ったのか、あるいはまた、どういう判断のもとに現在対策を立てておるのか、これをひとつお聞きしたいです。
#141
○武藤(き)政府委員 本件は、武内教授が解剖を行なって、意見として発表されたわけでございます。いわゆる潜在水俣病患者として、死後、いわゆる解剖の結果わかったわけでございます。この点は非常に注目すべき問題ではございますが、こういう問題につきましては、現在でも水俣病の審査会というのはずっと活動しておりまして、いろいろ疑わしいものがあれば、審査会に申請するようにということが県、市当局で行なわれております。去る五月二十九日におきましても、いままでいろいろ要観察患者がございましたけれども、新しく五人の患者を認定患者といたしております。したがって、こういうふうにいままで十何年を経ておりましても、まだ現在、水俣病患者として認定できない、はっきりしない方々もいたわけでございますが、こういう場合には、やはりこの審査会の活動によりまして、こういう潜在的な患者を見つけていくということが至当なことではなかろうか、かように考えております。
#142
○岡本(富)委員 松本さんは、十八年前に、私のからだを医学的に役立ててほしいと、病理解剖依頼の遺言書を熊本大学の病理学教室に送っている。また解剖の結果、実はこの松本さんは、水俣病であることがはっきりしたわけであります。ところが、この松本さんは、自分が水俣病にかかっておるということが、全然症状がわからなかった。しかし家族の話では、自分が水俣病であるということは知らなかったけれども、ここ十数年来、手術をするとき、メスを持つ手がふるえたり、診療が十分できなかった、こういうことがありました、そういうふうに家族が証言しておるわけでありますけれども、この津奈木地区では、すでに水俣病の五人の患者が発生している、こういうことを考えますれば、まだまだ潜在しておるのではないか。またこの松木さんは、漁民が非常にお世話になったというので、魚をたくさん持ってきたのを好んで毎日食べたということです。ことしの二月二日まで、なくなって解剖されるまでわからなかったというような一つの例を見ましても、この潜在患者というものが相当あるのではないか。それに対して厚生省は、いまあなたがおっしゃった審査会というのは、どういう性質のものか、あるいは厚生省が直接に指揮をとって、あとの患者が出ないように対策を立てるためにやっておるのか、ひとつそれを聞かしていただきたいと思います。
#143
○武藤(き)政府委員 この水俣病の審査会でございますが、これは熊本県が設けております審査会でございまして、これに選ばれておられる方は、熊本大学の先生と、それから水俣市におられまして、長年水俣病患者を扱っておられる先生、すべて、医者でございます。
#144
○岡本(富)委員 私、いま申し上げたいことは、この松本敵さんの死亡によって解剖した結果、はっきりと水俣病であるということがわかったわけでありますけれども、それについて、その後厚生省は、ただその審査会にまかしたままであって、あと何も手を打っておりませんというのか。それともまた、こういう一つの例を見ましても、まだまだ潜在患者があって、一日も早く救済しなければならぬということになれば、今後どんな強力な手を打っていくのか、あるいは何もやっていかないのか、この二点についてお聞きしたいと思います。
#145
○武藤(き)政府委員 先般、熊本県から、この報告を受けましたので、県当局にこの解剖をやりました武内教授、その他の専門家の御意見を十分聞きまして、今後の対策については、先生方の御意見を十分聞くように、かつまた、それを厚生省に伝達するように指示をしております。まだその正式の公文書は参っておりませんけれども、その結果によりまして、私どもとしては専門家の意見を聞いて、至急この問題に対処したい、かように考えております。
#146
○岡本(富)委員 現厚生大臣になってから、相当強力に公害行政に取り組んでいるように私はお見受けしておりましたけれども、人の命というものは大切なものでありまして、一刻もゆるがせにすることはできないという面からも考えまして、こうした解剖されて初めて不顕性の水俣病のものがあるということがはっきりした今日においては、もっと強力な調査班をつくるとか、あるいはまた調査費を十分出して、こうした隠れたところの水俣病を調べて人命を守っていく、こうするのが、やはり現在の公害行政の大きな一環であると同時に、また一番の根本になるのではないか、こういうように私は思うのです。外から全然見ることができない、こういうむずかしい潜在患者がいるということを聞いたこの地の人たちは非常に心配しているわけでありまして、この住民の不安に対して、これからどういう手をもっと強力に打つのか。ただ学者の皆さん方の話を聞いてそれからだ、こういうことではなくて、そこに乗り込んでいって、もっともっと強力にやるのか。はっきりした調査班をつくるのか。ただ、そこらのお医者さんにお願いして、そこにいるお医者さんが片手間にやる、これではうまくいかぬと思いますが、今後どういうような手を打っていくのか、これについて、ひとつ大臣からでもけっこうでありますから……。
#147
○斎藤国務大臣 御承知のように、病状が外にあらわれない場合にどうして見つけるか、これは非常にむずかしい問題だ、私は医学者ではございませんが、そう思うわけであります。しかしながら、このなくなられた松本さんを執刀された武内先生、この方も審査会の委員に入ってもらっているわけでございます。この審査会を構成しておられる方々は八名でございますが、いずれも水俣病については、日本における最高権威だと思います。そういう方々にお願いして、そして健康診断によってさらに自覚症状がなくても発見する道はないかどうかということを検討していただいているので、それ以外にちょっと手の施しようがないというのが今日の現状でございます。私は、こういった先生たちが、こういうようにすれば、またそれに金が要るということであれば、これは金や何かには糸目なく、どこまでもやっていきたいと思いますが、こういったお方にお願いする以外に、今日の日本の医学の技術としてはないというのが現状でございますので、残念でございますが、そういった発見方法がもしできるならば、一日も早く発見していただくようにお願いしているわけであります。さように御承知願いたいと思います。
#148
○岡本(富)委員 実は、こうした潜在性水俣病患者に関する調査がはっきりされていなかった、いまの日本の医学ではできない、こういうようなお話でありますけれども、私はそうではないと思うのです。なぜかなれば、市民の一部では、もう相当やかましく指摘をされていたわけでありまして、患者の家庭や軽症者の中には隠す人も多いわけでございますけれども、事実その付近を検診をし、あるいはまたいろいろな現在の科学の方法をもって被害者を検診したときに、必ずもっと早くわかるのではないか。いま大臣は、私は医者でないからわかりませんけれどもという話でありますけれども、私は、厚生省の被害者に対するこうした態度というものは非常に怠慢であるように思う。もう少し強力な調査班をつくって、この調査をもう一ぺんやってもらいたい。
 なぜかなれば、私ども富山県のイタイイタイ病で出かけたときも、ぼくが初め厚生省に、この問題はどうだという話をすると、これは栄養失調でございますというような答えで、なかなか進まなかった。そうして私どもが現地に行き、やかましく言いまして、やっとあれだけの大きな問題が出てきたのであります。もう少し早く手を打っておれば死なずに済んだ人もいたと思うのです。私が行ったときに会った永井さんは、その次に行きましたらなくなっておった。こういう面から見れば、水俣病に対しては、各個人から直接話を聞くなり、あるいは診断をするなり、そうした広域的な健康診断を行なって、早期に発見をすることが大事じゃないかと思うのですが、厚生大臣、どうでしょう。
#149
○斎藤国務大臣 いまおっしゃいますように、健康診断もやり、それから疑わしい方は特に綿密な検査をやって万全を期するということは必要だと思いまするし、その態勢はとっておるわけであります。
 なくなられた八十五歳の松本さんは、自分がお医者さんであり、それにもかかわらず、自分でもそういう自覚症状もあまりないというような状態であったわけでございまして、解剖してみれば、脳にそういったいろいろな所見が見られるということでございますから、事前にどういう手を打ったらもっとよかったかという点もまだ解明されておりませんし、なくなられたのは水俣病関係でなくなられたのかどうかという点もまだはっきりしていないという現状で、そういう点になりますと、非常にむずかしい医学的な問題がまだ残っておるというととを私は申し上げましたので、いまおっしゃいますような意味における態勢というものは、これは足らないところがあればもっともっと強化をしてまいらなければならぬということにつきましては、全く同感でございます。
#150
○岡本(富)委員 もっと強力に検診もし、早期検診を行なって具体策を検討していく、いま私のこういう提唱に対して、同感であるということの答弁をいただいておりますけれども、そこで、こうした潜在患者を一日も早く引き出して手当てを加える、そして救済していくというのも大事な問題であろうと思うのですが、次にいま水俣における公害認定患者は何人になっておりますか。
#151
○武藤(き)政府委員 現在まで百十一人でございましたが、これに新しく五月二十九日に五名加わりましたので、百十六名でございます。
#152
○岡本(富)委員 それで新しくこの五名も認定患者の中に入ったと解してよろしいわけですね。
#153
○武藤(き)政府委員 そうでございます。
#154
○岡本(富)委員 水俣病にかかった方が、自分はそのときは自覚症状はなくても、結婚いたしまして産んだ子供さん、こういうお子たちは胎児性水俣病患者というのでありましょうか、そういう人は何人ほどいるのでしょうか。
#155
○武藤(き)政府委員 胎児性水俣病患者は二十二名、今度新しく一名認定されまして二十三名でございます。このうち二名はなくなっておりますので、現存しておられる方は二十一名でございます。
 なお、先ほど百十一名プラス五名と申しましたが、百十一名のうちなくなっておられる方がすでに四十二名でございますので、現存の方は六十九名に今度の五名を加えた七十四名ということでございます。
#156
○岡本(富)委員 この胎児性の患者の方々も、この人たちは直接魚を食べてその病気になったのではありませんけれども、おかあさんの胎内におる間から、お気の毒にもそういう病気になっておるわけでありますが、こういう人も公害患者の中に入れて、やはり今度の救済の対象にできるのであるか、またそういうようにするのであるか、これをひとつお聞きしたいのです。
#157
○武藤(き)政府委員 いわゆる胎児性の水俣病患者も、認定されれば補償の対象になることは当然でございます。
#158
○岡本(富)委員 厚生省のほうから、もしも認定されれば対象になるのは当然でありますという答えを聞こうとは、私は思わなかったですね。どこかあっちのほうで認定されればなるんだというような言い方でありまして、厚生省のほうで認定しなければ、いまのところは、この法案を見ますと認定患者にならないのです。その点ひとつはっきりしてもらいたいと思います。
#159
○武藤(き)政府委員 この法案でも、第三条をごらんになりますと、いわゆる機関委任事務として、知事あるいは政令市の市長が認定するわけでございます。その場合には、当該地域に設けられました公害被害者認定審査会の意見を聞きまして認定をするという仕組みになっておりまして、これは法律に基づきました問題でございますので、厚生省が直接全国の患者を認定するという法のたてまえではございません。
#160
○岡本(富)委員 すでに水俣病が発生して相当期間を経まして、現在患者として認定された方がいるわけでありますが、あとの胎児性の人たちは認定されておるのか、されていないのか、あるいはまた、されていなければ厚生省はもっと強力に認定するようにしていくのかどうか、この点ひとつはっきりしてもらいたい。
#161
○武藤(き)政府委員 先ほど私が新しい方を含めて百十六名、そのうち生存の方が六十九名というふうに患者の認定数を申し上げましたけれども、この中には胎児性の生きておられる方二十名を含むものでございます。
 それから死亡の四十二名のうち胎児性の方が二名おられますが、これも当然認定をされて死亡なさったわけでございまして、これは一切生存者、死亡者を問わず、当然補償の対象になるわけでございます。
#162
○岡本(富)委員 大体明らかになってまいりました。
 そこでちょっと戻りますけれども、この水俣病の審査会の姿勢あるいは認定基準、こういうものは厚生省ではっきりと出しておるのかどうか、あるいはまた県に自主性を持たしておるのかどうか。もしもただ県のベースだけでやっておるのでありましたら、これはゆゆしいことでありますので、厚生省のほうでもっと立ち入って、この基準というものを出さなければならない、こういうふうに思うのであります。先日開かれた審査会は六年ぶり。この審査会の活動ぶりを見ますと、いま厚生大臣が答弁なさったようなすばらしい活動をしておるようには見受けられないのでありまして、その点から考えましても、この認定基準をつくり、同時に厚生省から直接指揮ができるような、あるいはそういう調査班がどうしても必要ではないか。人の命はとうといものでありますが、もう一ぺん大臣からはっきりした答えを、この二点についていただきたいと思います。
#163
○斎藤国務大臣 この審査会は、先ほど部長が申しましたように、患者のほうから認定をしてもらいたいという申請があったときに開くわけでありますから、そういう意味で、開いたのはあるいは六年ぶりであったかもわかりませんが、しかし、水俣病に対する対策は、これらの先生が中心になっていろいろと助言もしていただき、またごやっかいになっておるわけでございまして、たとえば健康診断をやるという場合にも、こういう先生たちにお願いをするわけでありますが、これは審査会として健康診断をやるというのではございません。これは法規的な理屈になって申しわけありませんけれども、六年ぶりに開かれたというのは、いま法的な意味のものが開かれた、かように御理解をいただきたいと思います。
#164
○岡本(富)委員 聞くところによると、この審査会が昨年秋は、その以前の死亡者については審査の打ち切りをきめた、こういうふうなことも風聞しておるわけですが、なぜ打ち切ったのか、その理由はどういうわけなのか。あるいはまた、有力な証拠、証言をちゃんと握ったために、もう死亡者に対しては必要なくなったのかどうか。もしもそれがはっきりしたのであれば、潜在患者もはっきりつかめるわけですが、どのようなぐあいの研究と調査ができたのか。私が当地に行って調べた姿を見ますと、これはいま厚生大臣が答えておるような、また厚生省が考えておるような非常に強力なものではない。したがって、やはりもっともっと厳密に厚生省がこの問題に対して取り組まなければならない。こういう救済法案をつくる、これと同じ、またそれよりも強力に――もうすでに病気になっておる人でありますから、その点もっともっと強力に手を打たなければならない、こういうふうに思いますので、私はきょうは特にこの点をしつこく話をしておるわけです。ですから、今後どういう方法で対処するのか。現在の審査会というものが、いまも申し上げましたように、強力なんだというふうに解することはできないのですよ。現地の意見もそうなんです。だから、私たち――いま厚生大臣の話は、ちゃんともう有力な人、一番、何といいますか権威者にまかしてあるんだというような答弁でありますけれども、私はそれではならないと思うのです。ひとつ今後もう少し前向きに、もっともっと強力に手を打つ。どういうような対処をするか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思うのですが、どうでございましょう。
#165
○斎藤国務大臣 さらにより以上に活動のできるように、今後十分検討いたしたいと思います。
#166
○岡本(富)委員 何が活動できるように検討するとおっしゃったんでしょうかね。厚生省から特別班くらいつくって、そうして潜在患者を見つけて、これを強力に救済するのか、それとも、いまのこの人たちにもう少しお願いしますというような簡単なものなのか、ひとつその点についてもう少しわかりやすく……。
#167
○斎藤国務大臣 あるいは定期に一斉健康診断をやるようにするとか、いろいろな方法もあろうかと思います。厚生省から行ってみましても、専門のお医者ではありませんし、そしてまた、外から見たところでは何ともないというのをどうして見つけ出すかという、その技術の点になると非常にむずかしいから、それらの点はそれらのお医者さんによく研究をしてもらわなければならぬと、私は申し上げたわけでありますが、しかし、若干でも自覚症状があるというようなお方は、これを見過ごさないように、健康診断をやり、そうでないかということをもっと強力にやる必要も、いまお話を伺って、あるかに思いますから、要すれば定期診断とかいろいろなことをやってもらって、そうして見つけ出すのに骨も折れるし、見つけ出す技術としてこれをどうしてやるかということになると、われわれが行ってみたところで技術がないわけですから、こういう方の学問的な御意見、また学問的なそれぞれの進歩開発に待つ以外にない、さように申し上げたわけでして、冷淡に聞こえたかもしれませんけれども、そういうようなことでございます。
#168
○岡本(富)委員 実は私、これは非常にしつこく申し上げて恐縮なんですが、県庁で待っておるのです。きのうもやいやい電話がかかってまいりまして、特に友だちが向こうにおりまして、たとえばこの審査会に対して申請が二十人出たというのです、こういう症状がありまして。そうして認定されたのは五人、あとの十五人は、そういう症状があるにかかわらず、認定されていないというんですね。こういう面からも一つ考えますと、やはり厚生省のほうから直接現地調査をしてもらわなければならぬと私は思うのです。ただ熊本県から報告だけとる、どうなっていますかと……。こんな簡単なことじゃなくして、もう一歩前へ進んで、直接調査を――だれでも行って、どんな状態になったんだと、もう少し現状を把握していただきたいと思うのです。いままで私たちがやかましく言いまして、ずいぶん現地へ乗り込んでいって、そうして現状の姿を厚生省でよく把握をして、前向きの手を打ってもらう。こういういままでに経過がありますので、近いうちに現地へ行って、ほんとうの現地の姿はどうなんだ、報告を、見るのと聞くのと大違い。ですから、現地に調査に行っていただけるかどうか、この点をひとつお聞きしたいのです。
#169
○斎藤国務大臣 現地にもたびたび厚生省の関係係が参っておるようでありますから、さらに特に特命をいたしまして、十分調査をいたしたいと思います。
#170
○岡本(富)委員 こういう話を私は聞いておるのですよ。六月の下旬に、厚生省から現地に実態調査に行くというような計画があるんでしょうか。こういうことを現地で話しておったのですが、これはどうですか。
#171
○武藤(き)政府委員 私どものほうでは、いま補償委員会が検討されておりますが、早く現地の患者のいろいろの声を聞いてほしいということが、先般来から希望がございまして、七月にならないできるだけ早い機会に来てくれ、こういう希望がありますので、その前にぜひ行きたいということを熊本のほうに言ってありますので、あるいはそのことではないか、かように考えております。
#172
○岡本(富)委員 そうすると、現地からも来てもらいたい。これは日本窒素と現在の患者との間の調停というようなそれで行くわけですね。私、いま大臣から、この三人の調停委員というものは、決して会社側でなくて患者側なんだということを聞いて、一応は安心いたしましたけれども、何か確約書を出せとか、あるいはまた白紙委任状とまではいかなくても、それに近いような、一筆とるといいますか、それでありましたら、これはもう訴訟の自由をそれで奪ってしまうわけでありますから、そういうことのないように、もう一度念を押しておきたいと思いますが、どうでしょうか。
#173
○斎藤国務大臣 その三人のうちの一人は、民事訴訟、民事調停の第一人者と考えられる弁護士さんでございますから、そういうような民事訴訟の権限をなくしてしまうような、そんな考えは持っておられないと思いますし、現実に三人の委員の方からそういうようなことのお話があったことも聞いておりません。先ほど申しますように、調停委員をつくる前に、私のほうで、調停委員の方をおつくりするについては一応おまかせいただけますかということを聞いたのが、その白紙委任状というように伝わっているんじゃないか、かように御了解いただきたいと存じます。
#174
○岡本(富)委員 いまお聞きいたしまして、おまかせするということは白紙委任状ではないのだ、そうですね。それからまた、その調停委員の中には弁護士もおるのだから、次にもしもそれが不満であったときに、裁判ができるのである、こう解してよろしゅうございますね。
#175
○斎藤国務大臣 さようでございます。
#176
○岡本(富)委員 次にただしたいことは、午前中にもちょっと話が出ておりましたが、また法案にちょっと戻りまして、第八条、第九条第二項、第二十二条等に示されているところの救済の性格、その中で医療手当、介護手当、こういうものに対して所得制限をするのがおかしい。確かにこれはおかしいことでありまして、交通事故によるところの自賠法なんかも所得制限がないわけでありますから、この点は所得制限をもう一度考えて、そして修正する考えがあるのかどうか、これをひとつはっきりしておきたいと思うのです。その点について、大臣どうですか。
#177
○斎藤国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、これは健康被害に対する応急の社会的保障という考え方で立案をいたしておりますので、したがってある程度以上の所得のあられる方には遠慮をしていただくというたてまえはくずしたくない、さように考えております。
#178
○岡本(富)委員 そうすると年間九十三万円ですか、この所得制限としますと、月に大体八万余りですね。イタイイタイ病にかかりましたときに、入院費あるいはまた通院費あるいはまた往診に来てもらう。そうした費用はどのくらいかかるでしょう。
#179
○斎藤国務大臣 先ほど政府委員から答弁いたしましたように、あるいは入院費は六万三千円とか六万円とかいうようにかかっておりますが、これらは全部保険及びこちらの公費負担でやるわけでございます。したがって、そういった医者に払う金は全部公費負担でまいりますから、そうでないいろいろな――入院しておればあるいはちり紙も買う必要もある、おかしも食べてみたい、いろいろなこともあるでありましょうから、入院している方には医療手当として、そのほかに月四千円を支給する。通院しておられるお方で重い方は、交通費やその他も要るでありましょうから、十分まかなえないでありましょうけれども、二千円の医療手当を差し上げる、こういう仕組みにいたしておるわけでございます。
#180
○岡本(富)委員 私は過日イタイイタイ病の患者の家を何軒か回ったことがあります。医者にかかる金もなく、みな家の中でじっと静かに寝ておった。死を待つばかりの姿の人たちがたくさんいましたが、そういう人たちが医者にかかるについては、そうしたお金がかかるのだ。いまあなたのお話でありますと、みな公費でやっていただけるのだ、こういうことでありますと、その点についてだいぶ矛盾があるように考えられるのですが、どうでございましょうか。
#181
○武藤(き)政府委員 厚生省が医療研究補助金で、現在社会保険の自己負担分についてのいろいろの援助を申し上げておりますが、その以前には、先生がおっしゃったように、わずかな自己負担分、いわゆる国保でいいますと三割程度のお金もなくて病院にも行けない、そういうような現実がありましたので、現在までは医療研究補助金等でまかなっているわけでございますが、今後はこの法案によりまして、そういうものを含めて一切この費用を見て差し上げる。そのほかに、先ほど大臣からお話がありましたように、入院、通院に諸経費が要るだろうから、四千円、二千円の費用を差し上げる、こういうことで今度の法案を考えたわけでございます。
#182
○岡本(富)委員 いま富山県の一つの例をとりますと、県で予算を立てたりあるいはまた研究費を出してもらったりして、患者の救済に当たっているような状態でありますけれども、いまのところでは毎月どのくらいずつイタイイタイ病の患者はもらっておるのか。それと、この救済法で支給するところの月額とどういうふうに変わってくるのか、これを向こうのほうでは一番問題にしているわけですね。どういう差が出てくるのかということをお聞きしたいのでありますが、どうですか。
#183
○武藤(き)政府委員 現在、富山では、すでに厚生省の医療研究補助金等によりまして、患者がいろいろ自己負担をするということはすっかりなくなっております。したがいまして、この制度では、いわゆる研究補助金が、この法律によりまして、保険と保険で見ない部分につきまして給付を行なうわけでございます。そのほか新しく、入院患者には四千円支給の医療手当がまいりますし、通院患者には二千円の医療手当がまいる。それから、これはほとんど在宅でございますが、介護を受けておる方々には一日三百円の介護手当が出る。いわゆる医療手当、介護手当等が実質的に患者の方の手に入るということになろうかと思います。
#184
○岡本(富)委員 現地の状態をつぶさに見ますれば、介護手当――要するに介護する人もいないわけですし、雇うというと非常に高い。先ほどもお話がありましたように一日二千五百円、高いところでは三千円くらい取る。そうすると、九千円の介護手当ではとても足らぬ。いまのところほったらかしてあるわけです。こういうことになりますれば、その介護手当――要するに家政婦なんかを雇いますと非常に高いですから、月八万円で、そこから税金を引きますから、これはこの家庭が食べていけなくなる。ですから、もうしようがないから置いてある。こういうことではほんとうの救済にはならないと私は思います。したがいまして、この所得制限はやはり撤廃すべきじゃないか。先ほど明らかにされたところによりますと、金銭の授受のないところに対しては出さないのだという話がありましたけれども、お金をうんと持っておる人たちは、家政婦なんかを雇ったりして介護させる、手当てをさしております。そういうのははっきり金銭の授受があってわかる。しかし、こういう人は所得制限でだめになってしまう。それからそれだけの介護手当も出されない、家政婦も雇えない、こういう人には、雇ってないのだからこれを出すことはできない、こういうことになりますと、これは先ほども少し話があったけれども、結局は、この救済法は何にもならないということになるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか、大臣。
#185
○斎藤国務大臣 常時介護を要するお方は、やはり病院あるいは施設に入っていただくことが一番いいし、またそうする以外に道はないのじゃないか。あるいはまた実際に介護者を雇い入れるということも必要であろうかと思いますが、病院に入れば、入院費として保険及び公費で負担をするというたてまえになっておりますので、これはそういう程度に至らなくて、ときどき介護を頼むという程度の方であり、それらの方は、あるいは親戚の人あるいは身内の者、家族の者というふうなのもあろうと思いますから、介護してくれれば三百円支払いますということにしておけば、三百円は支払ってもらって、ときどき見にきてくださるということにはこと欠かぬのじゃないだろうかと私は考えるわけであります。
#186
○岡本(富)委員 それは厚生大臣、現実を見ずして言っていらっしゃるのじゃないかと思うんですがね。きょう日三百円では来ませんぜ。(「ないよりもいいという程度だよ」と呼ぶ者あり)ないよりいいということかしらぬけれども、これは三百円では来ない。身内の人といいましても、現実にあちこち回りまして、そんな人もいないですね。また入院いたしましても、そうしたあれをつけてくれというわけですね。病院によりましては、付き添いをつけてくれ、そういうことになりますと、それだけの金は払えない、こういうことで、現実にせっかくこうして救済法ができましても、この所得制限があれば使用できないのじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、これはもう一ぺん一考をしていただきたい、特にこれは申し入れておきます。
 次に、先ほど、この基金を拠出するところの事業所、これは自分たちの企業によって起こった公害の責任においてつくるのだというような話がありましたが、そうしますと、公害病のこの人たちに対して、いま考えておるのが、九州の水俣、それから四日市あるいはまた阿賀野川ですか、三カ所でしたですね。そういうことになりましたら、その地域の企業が金を出すのか、日本全国の経団連、日本全国の企業が金を拠出してできる財団法人なのか、これをひとつお聞きしたいのです。どうですか。
#187
○斎藤国務大臣 財団法人の中で、どういうように拠出金の出し方をおきめになっておられるか、まだそこまで聞いておりませんが、私はおそらく全国的な意味において拠出をされるのではないだろうかと思います。と申しますのは、ただいまは三カ所あるいは四カ所を考えておりますが、これから大気汚染にいたしましても相当地域がふえてくるだろう、かように思います。水質汚濁による地域の指定はそうたくさんはふえてこようと思いませんし、そんなことがあっては相ならぬと思いますけれども、大気汚染はまだ調査が行き届かないという意味で、ほんとうならば指定をしなければならないであろうところも、まだ指定が早急にできないという現状でもございますから、したがって、企業もやはり全国的立場においてお考えになってもらっているのであろうと、私は推測をいたしておるのであります。
#188
○岡本(富)委員 それで、法案もちょっと詰めておかなければいかぬので、そうしますと、第三条に公害の地域居住、居住期間の制限ということがありますのは、ちょっと理屈に合わぬのですね。企業から集まるのは全国から、今度救済するのは地域だ、こういうことになりますれば、ちょっとこれは理屈に合わないように思うのですがね。どうですか。
#189
○斎藤国務大臣 私は、いま日本経済団体連合会で考えておられるのは、その地域のものだけ負担さそうというのでなくて、やはり事業者連帯責任という意味でお考えになっておられるのではなかろうか、またそれも一つの正しい道であろうという推測をいたしているだけであります。まだ最後決定は聞いておりません。
#190
○岡本(富)委員 そうすると、あの基金についてはだいぶんこれははっきりしないわけで、責任を持つとおっしゃったのだから、やはり責任を持てるようにやってもらわなければいけませんですね。そうすると、この居住三年以上の制限を加えるということは、ちょっと理屈に合わないように思うのですね。
#191
○斎藤国務大臣 その居住三年以上と申しますのは、大気汚染でぜんそくになるというようなものは、その汚染地域に来て大体三年くらいいた者がなるであろう、こういう医学的な判定からきているわけでございます。それが公害病と認定する要件でございます。そういうように御理解をいただきたいと思います。
#192
○岡本(富)委員 先ほどちょっと話がありましたように、居住はこっちであっても、つとめるところがそこであればいいわけですか。つとめるところが――、いまたとえば四日市なら四日市を指定しておる。四日市につとめておる。その人はもっと離れたところにいる。それでも居住三年の中に入るわけですね。どうですか。
#193
○斎藤国務大臣 これはこまかい問題で恐縮でございますけれども、大体いままでの大気汚染の公害ぜんそくというものは、その公害汚染地域に相当長くいた人を公害ぜんそく、こういうように医学上今日では判断をいたしておるわけであります。そこで先ほども御議論が出ましたように、一日のうちで何時間以上その汚染地域におったならば、そして何年おれば、というデータは出ておりません。したがって、あるいはそういうこともあるかもわかりませんが、その地域に住んでいるという人は、実際は公害によって起こったぜんそくかそうでないぜんそくか、これはわからなくとも、みな公害ぜんそくとして認めてしまう、そうする以外に道がないというのが今日の状態で、医者が診断をして、これは公害ぜんそくだ、これは普通のぜんそくだ、この判別ができないというのが今日の現状なんでありますから、そういう、これなら大部分の患者の方が救えるだろうかということで、認定をしているわけであります。しかし、一日に八時間以上そこで勤務をしておれば、五年おればぜんそくになるというようなデータが出てまいれば、そういうこともまた考えていかなければならぬかと思います。
#194
○岡本(富)委員 それから、四日市の現実の状態でありますけれども、第七条の医療手当のところでありますが、休業補償、生活更生のために援助も必要である。これは公明党案あるいは社会党案にも出ておりますけれども、先ほども島本委員からも話がありましたが、四日市では昼仕事に行って夜は病院に帰っておる、こういうような状態で、なかなかなおらないと思います。ということは、やはり一家の中心の柱である御主人が病気にかかっておるわけでありまして、そうしないと、うちにいるお子さんたちや家族の人を食べさせていくことができないというのが非常に悩みなんだということを訴えられましたけれども、先ほど、生活保護でいけるじゃないか、こういうような話がありましたけれども、そうすると、現在の生活保護ではほんとうに子供を学校にやることができないというようなことでありまして、やはり自分がなりたくてなった病気でもないし、また自分の過失によってなった病気でもないし、また先天性の、自分のからだが弱くて病気になったのでもないし、そうした見地から考えますれば、これはやはり生活の更生のためには特別な手当、あるいはまた補助をしてあげなければほんとうではないのではないか、こういうように私も思うのですが、この点どうですか。
#195
○斎藤国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、休業手当に相当するようなものも出すのが至当でないかという御意見、これも一応ごもっともと思いますが、しかしこれは損害賠償という意味でなくて、当面の社会保障という意味でございますので、そこで、十分な損害賠償なら、これはもうできるだけ十分なものを見なければなりませんけれども、当面の応急的な社会保障的な手当というわけでございますので、その点は、生活に困るようになれば生活保護のほうでやっていくというように、ただいまのところは割り切っておるのでございます。
#196
○岡本(富)委員 そうしますと、この金を出すほうの、要するに企業の責任において今度の基金を出そうということでありますから、それと若干矛盾をしてくる。生活保障であれば、現在の生活保護法では出ておるわけですね。これは国民がみんなで互助の精神といいますか、お互いに寄って、そうした人たちを助けていこう、そのためにできた生活保護法でありますから、それとちょっと、お金を出して今度の基金を集めて、そして公害の人たちを救済していこうというそれとのズレといいますか、いまあなたが答弁なさったのとは、ずいぶん違うと思うのです。この点は、要するに基金のできたその根本が違うわけですから、その点についてはどうでございましょうか。
#197
○斎藤国務大臣 それですから、たとえば公害病を発生せしめた企業者の民事責任をかわってやるという形であるなら、お金の出し方も、その当該地域の、あるいは当該公害を発生せしめた者から強制的に取るという行き方がほんとうだろうと思うのでございます。ところが、いまのはそうではございませんので、企業全体として、公害対策費についても一応負担をするというたてまえで、今度の費用の拠出というものを考えておりますので、個人的の個々の公害賠償責任に基づいてこの金を拠出をするというのではない、ということを申し上げておるわけでございます。さように考えるとつじつまが合っていただけるであろう、かように思います。
#198
○岡本(富)委員 だから先ほどお話がありましたように、今度の公害基金をつくるのは、企業が公害を出したその責任において、じゃ私たちも負担をしようというわけで基金ができたということになりますれば、これは一般の社会保障とは違うわけです。一般の社会保障であれば、これは生活保護でいいとしましても、非常に少ないから私は不満なんですけれども、いまのところしかたがないとして、そこに大きな相違が出ているわけです。ですから休業補償なんというものは、一般の生活保護ではない、こう考えていいんじゃないでしょうか。どうでございますか。
#199
○斎藤国務大臣 そこで、休業補償に見合うようなものは、私は絶対いけないとは言っていないわけでございます。今後またそういう方向についても検討をしなければなるまいと思いますが、いま出発でございますから、そういう考え方で出発をいたしておるわけでございますが、今後の情勢を判断をし、検討を加えていく問題はそこにまだ残っているとは考えております。
#200
○岡本(富)委員 いまお話しのように、これでは万全ではない、こういうことでございますね。そうなってくると、実はこれはまた大蔵大臣に聞かなければいけないのですけれども、大蔵大臣は、この間、私が本会議で、今度のこの救済の金は少ないんじゃないかと言うたら、少ないとは思わない、こういうような答弁があったので、これはまた次の機会に、大蔵大臣に質問をするようにいたします。いまの考えを、厚生大臣ひとつ変えないようにしていただきませんと、一般の社会保障の中に埋没さしてしまう危険が非常に含まれておりますので、今後前向きにこれは検討をしていただきたいと思います。また増額をお願いしたいと思います。
 それから、この救済法ができまして、指定地域を含むところの、都道府県に所在するところの保険医療機関等が、積極的に地域公害対策に取り組む方針を非常にさえぎってくるのではないか。もうすでにこの救済法で救済したんだから、そうやかましゅう言うことは要らぬということになって、積極的な公害対策というものが非常に阻害されるのではないか、こういうようにも考えられるわけでありますが、この点について、厚生大臣の意見をお聞きしておきたいと思います。
#201
○斎藤国務大臣 私は、医療機関から見れば、むしろ逆であるのがほんとうであると思います。こういう制度ができました以上は、この制度の恩典に浴せるように、お医者さんにも十分協力をしてもらわなければなりませんし、またそういう患者になった人を一日も早くなおしていく、また新しい治療方法も見出していくというように、医療機関の方々も、この立法の趣旨に従って、いままでより以上に一そう御勉強を願えるものだろう、かように期待をいたしているわけでございます。
#202
○岡本(富)委員 期待をせずに、私のいま申し上げたのは、これによって安心をしてしもうて、そして地域公害対策に取り組むこの方針に対して非常に弱くなっていく、そういうことにならないように、厚生省で督励してもらいたい。また厚生省の姿勢はそうでなければならぬ、こういうふうに私言っているのですが、どうですか。
#203
○斎藤国務大臣 全くそのとおりでございます。
#204
○岡本(富)委員 では、厚生省に対する質問はそのくらいで終わりまして、次に、公害罪の新設についていまちらほら話が出ておりますけれども、六月の四日、五日の両日に、法務省で第十七回の全体会議が開かれて、公害罪の新設について取りきめた模様であります。その範囲あるいは量刑、こういう問題でまだ非常に難航しているんじゃないか、こういうようなことも聞いているんですが、これはどうでございますか。
#205
○鈴木説明員 ただいま法務省で行なっております刑法の全面改正におきましては、全体を五つの小委員会に分けて、それぞれ原案をつくって、それを刑事法特別部会と申します全体の会議にかけて、そこでさらに議論をする、こういう形で進めておるわけでございます。
 この公害に関係のございます規定につきましては、その中の第四小委員会というところで原案をつくったわけでございます。
 内容といたしましては、一番中心になる規定といたしましては、これは毒物等の放流という名前で呼んでおりますが、毒物あるいは健康に害のあるものを、大気あるいは河川その他の公共の水域に流出あるいは放出いたしまして、多数人の生命身体に危険を及ぼした場合、危険を生じさせた場合、これを毒物等の放流ということで処罰しようとするわけでございます。これに対しましては、一応第四小委員会の案では五年以下程度の懲役を考えていたわけでございます。このほかにもう一つ、いまのような大気汚染あるいは水質汚濁ということと直接関係はございませんけれども、もう一つ多数人の飲食に供するものあるいはその原料、こういうものに毒物あるいはその他の健康に害のあるものを混入した場合、これもやはり新しく犯罪として考えていこうということでございまして、この場合は三年以下程度の懲役を考えていこう、こういうふうにしております。それから、いまの二つの犯罪はいずれも故意犯でございまして、そういう毒物であるということ、あるいはそれを河川等に流せば多数人の生命、身体に危険が生ずるということを行為者のほうで知っていなければ犯罪にならない場合でございますが、このほかに、いまの二つの犯罪につきまして、過失でそういう犯罪を犯した場合をもあわせて処罰しようという規定をまた別に設けたわけでございます。この三つの新しい犯罪の規定につきまして、昨日の法制審議会刑事法特別部会の第十七回会議で一応の議論があったわけでございます。
 ただ、これらの規定は、いずれも新しい犯罪に関するものでございますので、昨日の会議ではいろいろな意見が出まして、このままの形ですぐさま可決する、あるいは承認するということは少し時期が早いということで、一応この種の規定を設けるということだけにつきまして採決をいたしまして、その結果、ほとんど大多数の賛成がございまして、これらの規定を設けようということにきまったわけでございます。
 ただ、その内容につきましては、特に一番最初に申し上げました毒物等の放流という規定について、幾つか疑問が出まして、一方では、もう少し広く処罰することを考えたらいいのではないかという意見、たとえば、先ほど申しました第四小委員会の案では、大気汚染とそれから水質汚濁関係だけを考えておりますが、このほかに、騒音とか、あるいは臭気その他の公害についても考えるべきではないかという意見が一方にございました。これとともに、もう一つは、この規定のままでは、犯罪になる場合と申しますか、犯罪にしてよい場合と、犯罪にするのは酷な場合とがどうもちょっとはっきりしていないのではないかという意見もございました。特に、いわゆる公害の原因が、一カ所から出てくるのではなくて、数カ所から出てくるような場合に、たとえば企業の場合に、一つの企業からはそれほどのものは出てこないのだけれども、多数の企業が集まった場合に非常に危険なことになるというような場合に、常にそれを全部処罰するというのは少し行き過ぎではなかろうか。その点は、この案でも、そういう場合まですべて処罰するつもりではできていないわけでございますが、そういう点が、案自体を読んだだけでは、処罰される場合とされない場合とまだはっきりしていない点もあるというような指摘がございまして、先ほど申しましたように、一応置くという方向で採決がございましたが、内容についてはさらに検討する、こういうことになったわけでございます。
#206
○岡本(富)委員 この間の報道によると、大気汚染と水質汚濁、この二種類だけのように聞いておりましたのですけれども、いま河川に混入して毒物を流すというのがありましたけれども、食べ物の中に毒物を入れる、混入した場合、こういう場合もやはりその中に入るのだということを聞きましたが、これ以外に、御承知のように臭気のものすごいのがありますね。あるいはまた騒音。この公害基本法に定めた公害を全部含める考えであるのかないのか、また公害の過失責任を事業者に負わせるというねらいなのかどうか、この二点についてひとつお聞きしたいと思います。
#207
○鈴木説明員 ただいま御指摘の点でございますが、この第四小委員会でつくりました案といたしましては、公害基本法にございます六種類の中で、大気の汚染とそれから水質の汚濁、この二つだけを一応とらえていこうということでございました。先ほど申しましたように、昨日の全体会議では、もう少し広げたらという意見もございましたけれども、多数の空気としては、やはり騒音あるいは臭気、地盤沈下等、その他の公害につきましては、国民の生命あるいは人体に対する危険ということにおいて幾らか程度の違いがありますのと、刑法では、なるべく、悪いということが非常にはっきりしている場合だけをとらえていく。しかもこれは最初の立法でございますので、あまり広くなって、何と申しますか、それほど悪くない行為まで入ってくる。入ってきて、それらに対して、懲役、罰金ということで前科者になるということも控えたいという考慮もありまして、やや多数の空気としては、さしあたってはこの二つに限りたい、こういう意見が強かったわけでございます。ただ、その点は、先ほども申しましたように、さらに第四小委員会のほうで検討を続けるということになっております。
 それから、過失責任の点につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、過失で犯した場合にも処罰する、こういう第四小委員会の案になっているわけでございます。なお、この点につきまして、したがいまして、公害が発生したという場合に、故意で公害を発生させるということはわりに少ないだろうと思います。いままで出ている場合も、過失に近いような場合が多いのではないかと思うわけでございますが、過失も同様に処罰するということになっておりますので、危険が生ずるということを知らないでやっても、普通の人から見れば、そういうことをすればあぶなくなるということがわかるはずであったというような場合に、不注意で危険を生じさせたという場合は、やはり処罰されることになるわけでございます。
 昨日の会議では、過失といっても、経営を実際に担当している者、企業の経営を担当している社長以下の役員あるいは職員というものを処罰するだけでは足りないので、何か、企業そのものに罰金なり何なりを科するというようなことを考えるべきではないか、というような意見も一部には出ておりました。
#208
○岡本(富)委員 それで、過失責任の追及でありますが、いまもあなたからちょっと話もありましたように、四日市や、千葉や、川崎や、こういうところへ密集する工業地帯ですね。こういうようなところに対しては、その過失性を証明するのはきわめて問題になってくると思うのですが、こういう場合は全企業にするのか、それともどういうようにやるのか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
#209
○鈴木説明員 ただいまの点でございますが、この案をつくりました第四小委員会の意向といたしましては、どの程度の有害物と申しますか、ある程度の有害物を出すこと、たとえば自動車を運転して亜硫酸ガスを出すということは、いろいろそれを規制する方法がございまして、もし、そういうことはしてはいけない、あるいはこれ以上出してはいけないというように特に法律上できめられておりますような場合には、その出すこと自体がいけないことになると思うのでございますが、もし、そういうことがまだ十分はっきりきまっていないという場合には、ある程度の有害物を出すことも、世の中の一般の常識から認められておるような場合があるのじゃないか、そういう認められている程度のことで出している場合には処罰しない、こういう考え方があるわけでございます。
#210
○岡本(富)委員 たとえば、こうした四日市や川崎、千葉あたりの密集した工場で、亜硫酸ガスはこれ以上出してはいけないという排出基準もきまっていると思います。きまっておりますけれども、もっと規制しないと、今度は環境基準がきまりますから、もっともっと一木一本については排出基準がきびしくなってくると思うのです。そういうような過失の有無の調査ですね。そこまで排出が規制できていなかった、要するにオーバーした、そのことによって公害が発生しているという場合は、これはどういうふうに法務省としては調査をするのか、この点についてひとつお聞きしたい。
#211
○鈴木説明員 これは現在、犯罪の疑いが出ました場合には、大体におきましてまず警察のほうで、一体その疑いがあるかどうか、それからその証拠はどういう証拠があるかということを捜査するわけでございますが、もちろんそのあとで、今度は検察官が、警察の捜査では足りない面を補足する意味で、さらに捜査することになるわけでございます。捜査の方法はいろいろございますけれども、こういう公害問題というように、非常に科学技術と密接な関連があるものにつきましては、これは普通の警察や検察官だけの判断ではなかなかむずかしいわけでございますので、そういう点については、専門家の判断というものを十分考慮して捜査が行なわれるということになろうかと思います。
#212
○岡本(富)委員 一つの例を取り上げているわけでありますけれども、亜硫酸ガスが何ぼ出ているかということはなかなかしろうと目にはわからないわけです。それから、いまの亜硫酸ガスがどのくらい出ているかというようなことは一々立ち入り検査もやっていない。これは企業から、これだけ出ておりますという報告によってやっているわけですから、それも報告書をちょっと書いたらそれでおしまいですからね。といって、一本一本煙突の上に上がって、どのくらい出ておりますかというようなことを言って警察が調べたところで、わからない。ですから、これは非常にあいまいな、実態に即してこないことになってくるのではないかというふうに心配をしているわけですが、その点についてどのような解釈をしておるのかお聞きしたいのです。
#213
○鈴木説明員 こういう犯罪の捜査につきましては、現在一般にそうでございますが、必要がある場合には、押収、捜索あるいは現場の検証と申しますか、実際にその場を見ることができるようになっておりまして、これは相手が――相手と申しますか、工場等で承諾しない場合には、裁判所のほうの令状をもらいまして、強制的に立ち入って調査をすることができるわけでございます。もちろん中へ入るだけでは、どの程度のものが出ているかということはわかりませんけれども、中へ入りまして、どういう程度に生産その他の活動が行なわれているかということ等を確かめまして、その上で、それによってどのくらいの有毒物が出てくるかということについては、先ほど申しましたように、鑑定という制度がございまして、専門家の判断を十分尊重することができるようになっておりますので、そちらのほうで、ある程度のことはできるだろうと思っております。
#214
○岡本(富)委員 との問題につきましては相当むずかしいと思うのです。亜硫酸ガスの問題一つだけを取り上げても、私が先ほどから申し上げたように、排出基準がどれだけであってどれだけ排出されておるか、川崎一つ取り上げましても、どれだけの工場を捜査しなければならぬか。全国の警察官をみな動員して各個に行くということは、そんな非常識なことはできませんから、捜査には相当な矛盾といいますか、それをどういうふうにやるかはそちらで考えられるわけでしょうけれども、むずかしいと思うのですね。しかし、ただ罰金だけで済ますというなら、たいがい罰金だけ払ってそれで終わりですからね。まあいま明らかになりましたのは、その責任者である社長、これは刑罰になるが、会社に対しては今度は罰金と、こういうことになるわけですね。
#215
○鈴木説明員 ただいまの御指摘の点のうちで、会社に対して罰金ということは、まだこの案としてはできていないわけでございまして、そういう意見もあるということを、先ほど申し上げたわけでございます。もちろん社長その他の重役の場合でも、本人が故意にこういうことをやったとか、あるいは本人に、社長個人に過失があったということが認められないと、刑罰は科せられないわけでございます。
#216
○岡本(富)委員 まあ、これもこの程度にしておきましょう。
 最後に、科学技術庁に、新潟の水俣病についてちょっと意見を聞いておきたいと思うのですが、昨年九月二十五日に政府見解が発表されたこの阿賀野川の水銀中毒事件でありますけれども、昭和電工鹿瀬工場の長期汚染が関与し、中毒発生の基盤をなした、こういうような発表があったわけでありますけれども、その後訴訟に持ち込まれたりしておりますが、農薬でなかったというような新しい事実がだいぶ発表されておるわけでありまして、これについて科学技術庁として、ひっくるめて、今後どういう見解をとっていくか、あるいはまたこれをもっともっと明らかにするためにやっていくのか、厚生省と両省の御意見を承りたい、こう思うのです。
#217
○高橋(正)政府委員 ただいま先生の御指摘の点につきましては、去る五月二十一日に朝日新聞に掲載されました記事によるものだろうと思っておりますが、この記事によりますと、新潟地震の前にすでに患者が発生をしておった、その事実というのは工場廃液説に有力な裏づけになるだろうということでありまして、本件につきましては、さっそく厚生省を通じまして、その発表者でございます新潟大学の椿教授の調査の結果等を資料としていただくように手配いたしてございますが、本日現在、まだないようでございます。したがいまして、この記事自体が新聞社の調査によるものでございますので、この記事にございますように、同教授が県の有機水銀中毒症患者診査会におきまして、この患者の発病の時期を訂正いたしますと、正式に書類に基づきまして、新潟県のほうから厚生省を通じて、多少期日の変更等を言ってまいると思いますが、その段階におきまして調査の内容を十分に調べてみたいと思います。
 ただ、私どもの九月に発表いたしました政府の統一見解と申しますのは、先生も御承知おきのとおり、私どもが独自に見解を出したものではございませんで、厚生省が行ないました調査の結果、そしてそれに基づきますところの食品衛生調査会の意見に基づきまして、各省庁の見解を統一したものでございます。したがいまして、私どもが見解を出しました資料となりましたのは、この調査報告書の中に記載されておる事実のみでございます。当時やはりこの患者の発生の時日というものにつきましては、原因を究明いたします上におきまして重大な一つの要素になると思ったわけでございますが、新聞記事にもございましたように、この報告書自体におきましては、患者の二十六名のほとんどが九月ないし十月に発生したということになっております。当時私のほうで、最初に死亡いたしました患者につきましては、特にそのような点について留意いたしまして、厚生省を通じまして新潟大学のほうに連絡をいたしましたのですけれども、患者記録その他資料が十分でない。しかもこれは新潟大学に入院しておった患者ではなくて、市中の病院に入っておった患者でございますので、そういう点について資料が得られなかったわけでございます。ただこの結果につきまして、今後必要がございますれば、関係各省で打ち合わせの上検討いたしたいと思いますが、私見でございますが、私どもの政府の統一見解は、長期汚染によるものか、あるいは長期汚染の上にいわゆる短期汚染が加わって発生したものかわからないけれども、その長期の汚染ということが、寄与の度合いはわからないけれども、すべて基盤になっておるということが結論でございますので、この地震前に患者が発生いたしましたという事実が科学的に立証されましても、私どもの見解は特に変える必要はないと思っております。この記事では、「政府見解が、有力な裏付けを得たことになる。」と書いてございますが、そこまでいきませんでも、特に見解は変える必要はないと思っております。
#218
○岡本(富)委員 そうしますと、今度は逆に、地震によって農薬が流れて、そしてこうなったというほうの裏づけも全部とっておりますか。
#219
○高橋(正)政府委員 調査の時点におきましては、農薬が流出をいたしましたということは、調査班の検討いたしました資料の範囲内におきましては明定しがたかった、こういうことでございます。その後におきまして、その事実を左右いたしますような研究並びに検討の結果は出ておりません。
#220
○岡本(富)委員 そうしますと、政府の統一見解というのは、その当時も私追及したことがあるのですが、長期汚染が関与し、中毒発生の基盤をなしたということは、はっきりと鹿瀬工場の長期汚染が今度の病気の発生源であるということと解していいでしょうか。
#221
○高橋(正)政府委員 生物の体内におきます有機水銀によりますところの病気の発症ということについては、まだ具体的なと申しますか、十分な研究がなされておりませんから、確定的に申し上げるわけにはいきませんけれども、私どもの、基盤となっておると申しますことばの意味は、要するに、必ずこの病気の発生の際の原因として長期汚染というものが存在しておった。長期汚染というものがなければ、この水銀中毒は起こらなかった。ただし、その長期汚染だけで発症したのか、長期汚染というものが土台になりまして、それの上に短期汚染が加わってなったのか、それはわからないけれども、必ず土台には長期汚染があっただろう。その長期汚染の原因といたしましては種々のものがあるけれども、昭電の排水以外のものは大体消去し得るというのが結論でございます。
#222
○岡本(富)委員 きょうは平泉さんに来ていただきましたので、そういうわけで、もう一つはっきりした見解を、科学技術庁なり何なりがいろいろなことを言っておりますけれども、もう一度これはやり直して調査し直すというくらいの強い姿勢で検討してもらいたいと思うのです。それでありませんと、こういう事件がうやむやにされていくたびに、日本の国の公害行政というものがゆがめられていく。したがって、今後またいろいろと起こってくるであろう問題が、こんないいかげんな答えをそのままにしておきますと、これはうまくいかないと思うし、ここから政府不信がきておるわけです。したがって、もっとひとつはっきりとした――いま訴訟をやっている最中でありますけれども、われわれはここへ昭和電工の社長を呼ぼうじゃないかというくらいきびしいことを言ったこともあるのです。したがって、もう一度これは検討していただきたい、そうして御返事をいただきたいと思うのですが、平泉さんどうでございますか。
#223
○平泉政府委員 この前、この問題については技術的見解というのを出しております。この問題については、科学技術庁としては、いわゆる特別研究促進調整費という財源を持っております。そうして各省にその金を配賦して研究をやらせておる。その結果としてこれは出たわけであります。科学技術庁としては、こういう問題については、環境科学技術というものを大いに高めて、こういう問題を技術的に究明できるものは大いに究明していかなければならぬということで、われわれも、特別研究促進調整費ということで大いに研究を進める計画を立てたわけでございます。この調整費は全部で約七億円近い金を盛っておる。こういう問題については、各省からのいろいろな要求がありましたので、ぜひこういう環境の問題については極力やりたい、こう思っている次第であります。
 本件につきましても、先生ただいま御指摘のとおり、今後いろいろ新しい事実が出てくる――現在までのところ、事実がまだ不足であるというのが、この技術的見解の中でもおくみ取りいただけるだろうと思います。新しい事実が出ますれば、われわれとしても、さらにどんどん研究を深めることができるだろうと思います。そういうことでありますから、御了承を願います。
#224
○岡本(富)委員 厚生大臣、最後にひとつ、こういううやむやな態度でほっておくということは、まことに、人命尊重からしましても、また今後に対しても非常に問題が残ると思うので、したがって、もう一度蒸し返しのようで悪いのですけれども、しかし、これははっきりしないとまずいと思いますから、厚生省のほうもひとつ再度調査していただきたい、こういうように思いますが、いかがでしょうか。
#225
○斎藤国務大臣 よく検討いたしまして、再調査をする要があればいたしたいと思います。
#226
○岡本(富)委員 では、約束の時間ですから、これで終わります。
#227
○赤路委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト