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#1
第061回国会 決算委員会 第16号
昭和四十四年六月五日(木曜日)
   午前十時五十三分開議
 出席委員
   委員長 中川 俊思君
   理事 大石 武一君 理事 鍛冶 良作君
   理事 白浜 仁吉君 理事 水野  清君
   理事 田中 武夫君 理事 華山 親義君
   理事 吉田 賢一君
      椎名悦三郎君    菅波  茂君
      水田三喜男君    赤路 友藏君
      石野 久男君    浅井 美幸君
 出席政府委員
        厚生省医務局長 松尾 正雄君
        厚生省薬務局長 坂元貞一郎君
        厚生省社会局長 今村  譲君
        厚生省保険局長 梅本 純正君
        労働省労働基準
        局長      和田 勝美君
 委員外の出席者
        会計検査院事務
        総局第三局長  増山 辰夫君
        専  門  員 池田 孝道君
本日の会議に付した案件
 昭和四十二年度一般会計歳入歳出決算
 昭和四十二年度特別会計歳入歳出決算
 昭和四十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 昭和四十二年度政府関係機関決算書
 昭和四十二年度国有財産増減及び現在額総計算
 書
 昭和四十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
(厚生省所管)
     ――――◇―――――
#2
○中川委員長 これより会議を開きます。
 昭和四十二年度決算外二件を一括して議題といたします。
 厚生省所管について審査を行ないます。
 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。石野久男君。
#3
○石野委員 厚生省関係のことで、特に医療関係の問題で、最近医師の不当な医療行為に対して患者の救済行為というものがはっきりとしていない。こういう点についてきょうお尋ねしたいのですが、医師の行なう医療行為によって患者が不当に被害を受けるという例が最近続発しております。たとえば昭和四十三年の九月に山形県の整形外科医長が患者の右足と左足を間違えて切開したという事件、また本年四月には千葉大学医学部付属病院で、看護婦が採血のために吸引器を誤って逆にセットしたために、献血者の静脈内に多量の空気が入って危篤状態になったという事件、またこの五月二十六日には川崎市の私立大田総合病院で五十三歳の主婦が蓄膿の手術中、気管支に長さ十五センチのガーゼが二枚詰まって窒息死した事件等々、数多くの事故が起こっております。こういうような問題に関連して、医師等の不当な医療行為によって被害を受けた患者の例が数多くあるわけですが、この場合患者の立場に立った保護法令というものは非常に不十分である。現在厚生省の監督下にあって、こういうような災害といいますか医療災害がたくさん出ておるのだけれども、そういうものに対して医師の取り締まりの法令を当局はどういうふうに考えているか。まず医務局長にお尋ねしたいと思います。
#4
○松尾政府委員 御指摘のような医療の過誤なり不注意なりということによりまして事故があとを断たないということは、私どもも非常に残念に存じておる次第でございます。
 一般に医療の事故が起こりましたときには、その原因がはっきり不注意なり過失なりとしてわかる場合と、それからやはり現在の医学ではなぜそういうことが起こったのかなかなかわかりにくいという場合もいろいろございます。しかしながら基本的には、たとえば千葉の例のごときちょっとした注意で防げるというようなものが大きな事故になりましたということは、やはり関係者十分ひとつ注意をしなければならない。私どももそれぞれ関係の方面には十分注意をするようなことをいたしておりますけれども、ただそういう事故が起こりましたあとの救済問題は、先生御指摘のように一般の民事上の問題か刑事上の問題として裁判に持ち込んで解決をするということが一般に行なわれているわけでございます。そのほか当事者間の示談ということで話がつくという場合もかなり多いように聞いておりますけれども、法的には民事上の損害賠償あるいは過失として刑事上争うという二つの問題でございます。ただそういう場合に一般に医学的なそういう事故につきましては、かりに裁判に入りましても判定に非常に長時間を要するというのが通例でございますので、その間患者さんの方にとりましても負担が非常に大きいという実態があるわけでございます。私どもそういう非常に悪質な事故の起こるような場合には、医道審議会等にはかりましてそれぞれ行政上の処分をするということも行なっているところでございます。
#5
○石野委員 患者が受けた被害の中で費用くらいで処置のできるものはともかくとしても、それも決していいわけじゃありませんが、死に至らしめるというようなことを、わかっていながら法的規制ができないというようなことではまずいのじゃないか。民事的なものあるいは刑事的な裁判事件になってくるというのはそのあとのことであって、その前に厚生省が医者を監督するという立場に立って、それをどういうふうに管理監督するかという法的規制というもの、がなければならぬのじゃないかと考えるのだが、そういう問題については当局はどういうように考えていますか。
#6
○松尾政府委員 一般に医療機関といたしましては医療法上は災害、衛生上その他安全を期さなければならぬといういわば一般的な訓示規定ともいうべきものは設けてあるわけでございます。個々のケースにつきましては、やはりそういう誤りがとにかくあってはならないという原則が何としても医療の根幹でございますので、これが法的になじむのか、あるいはむしろみずからそういうことをきちんとやっていくのがたてまえであるというふうに医療の行為としては考えるべきであるか、これは意見の分かれるところであろうかと思います。ただいま私のほうでは、医療法等ではそういうふうに安全上十分な注意を払わなければならないという管理者の規定もございます。そういう線を中心にいたしまして、具体的な個々のこまかいことにつきましても十分な注意をするような指導を積み重ねなければならないのじゃないか。ただいまのところはそういうように考えておるわけでございます。
#7
○石野委員 積み重ねなければいけないのだというのだけれども、事実上いま医療法によると、医業を開設する場合の許可条件として、施設の構造とか設備あるいは病院等の管理者の監督義務、またそのための報告聴取、立ち入り検査、医療監視員の設置等があります。医師法のほうを見ると、医師免許の資格制度あるいは医道審議会による医師免許の取り消し等が設定されておるのだけれども、しかしお医者さんだってこれは人間ですから、間違いは出てくるわけなんですね。その間違いがあったときに起きる問題は、民事とか刑事などの訴訟で争いをするということなんですけれども、しかしこれだけでは、現在のようにこういうように続発する医療事故というものを見てみました場合に、十分じゃないのじゃないか。事故の処置だけ追っておったのではとてもだめじゃないか。事前にそれをもう少し医者に注意を喚起し、そういうことのないようにするということについての、やはり監督官庁としてどういうようにするかという考え方がなければいけないのじゃないか、そういう点を私はここでお聞きしたいわけです。事件がどうなっているかということについては、これはまたあとでお尋ねしますけれども、そういう問題について何か措置をしなければならぬじゃないか。これほど事故が多く出てきている場合、その点について当局はどういうように考えていますか、もう一度お伺いしたい。
#8
○松尾政府委員 私どもとしては、やはりそういう事故はいろいろなケース、組み合わせというもので起こっておりますので、そういう事例等をあげまして、一般的な注意を強く喚起するという措置はとりたいと考えます。
#9
○石野委員 これは決算の委員会ですから、あとでまた社労とかそういうところでいろいろ論議してもらわなければいけないのですが、いずれにしても、やはりこれに対する当局側の何かの方法を考えなければならぬということだけは、これはもうわれわれとしても考えなくてはいかぬし、当局も当然それをやるべきだ、こういうように私は思うわけです。現在当局はそういう点について何か方策を考えているのか。それとも何とかしなければならぬ、ならぬでほうりっぱなしになっているのか。そこのところが非常に重要なんで、当局としては、こういう続発する事故に対する対策を、具体的にはどういうふうに処置していこう、考えていこうというふうな指示でも与えているのかどうか、その辺のところを少し明確にしておいていただきたい。
#10
○松尾政府委員 事故の中でも取り扱い上特に注意を要しなければいかぬという問題、たとえば、あまり一般的ではないかと存じますけれども、先般東大で高圧室が爆発いたしました。たまたま私どももああいうものについてそういう安全的な基準をきめたいという研究をやっている最中に、ああいう事故が起こってしまった。したがって、研究班としてはそういう最終結論がまだ出ておりませんでしたけれども、とりあえず先般、そういうものについてはこういう注意が必要であるということは、各都道府県にも通達を出しました。具体的にはそういうことでそれぞれ処置をしてまいりたいと存じますけれども、ただ、おそらく先生御指摘しておられる点は、そういう個々の問題よりも、なお一般的な注意というものが足りないのじゃないか、あるいは心がまえというような点に欠ける点があるのじゃないかという点を御指摘であろうかと存じますので、これはひとつ医師会あるいは病院関係団体その他につきまして、適当な方法で私のほうから再度注意を喚起をしたいと存じます。
#11
○石野委員 この問題は、いろいろな基準を設けるとか何とかいっても、また他面においては、実際に手術をするのに右足と左足と違えて切開手術をやるなんという、そういうあやまちが出てくるわけです。これはなぜそうなったかという問題も一つあると思います。しかもそれは手術をする場合に医者一人だけではない。付き添いもたくさんおるわけですから、二人、三人の手術者もおるだろうし、看護婦さんもおるだろうし、経験者がたくさんおって、とにかく右足と左足と間違えて切開手術をするというようなことは、これを防ぐ方法というのは容易なことではないと思う。しかし何かこれをやらないと、これによって被害を受けた者はどうにもならなくなる。だからこの問題については当局側が十二分のやはり対策というものを考えるべきだと私は思う。この点はひとつその問題について、はっきりと当局が何かの方策を講ずるということをここで約束してもらえますか。
#12
○松尾政府委員 先ほど申しましたように、医療行為の中で起こり得る事故というものは、いろいろな角度でありますので、一つ一つを全部洗い上げていくということはおそらく不可能に近い問題であろうと思います。しかしながら事故を防止するためにいろいろくふうされ、非常に苦心された医療機関もあります。たとえば輸血の事故というものが起こります場合、普通のところよりも非常に念入りに三重四重のチェックをして、血液型が絶対に間違いがない、こういうような問題でございますとか、あるいは一般に安全確保のために行なわれている方法、たとえば一つの注射薬を切りますときでも、黙って切るか名前を声を出して切るかということによりまして非常に違うのではないか。千葉の例を考えましても、たとえばあれを自分でプラスとかマイナスとかちゃんと復唱しておれば、それだけで防げるような事例がたくさんあるように思います。したがいましてそういう一般的なもの以外に、そういう安全対策として世に十分承知させるような事例も含めまして、そういうようなものを世の中に普及させたい、こういう処置をとりたいと存じます。
#13
○石野委員 これは重ねて聞きますが、誤診をして、あるいはそれによるところの医療災害というものが出てきた場合、どういうことでそういうふうになったのかということについては、なかなかわれわれ第三者が考えることはできない。しかしただ設備とか何かが不備な場合に起こる事故と、それから診断を間違える場合とは、これは性質が違うと私は思うのです。こういうような場合に医者が不注意である――設備に対する不注意だけではなしに、今度は自分の診断自身に対する不注意とか誤診という場合、これをたびたび起こさせないようにするためには、いろいろな規制が必要になると思いますが、特にこういう誤った診断を行なった者等についてのその後のやはり規制ですね。処罰といいますか、何といいますか、そういうようなものなどについても、もう少し厳格にしないというと、やはり他の類似の事件が起きてくる可能性が出てくるのではないか。従来もそういうものはたくさんあったのかどうかわれわれは知りませんけれども、この一、二年というものは医療災害、そういう誤診によるところの災害が次から次に起きておると思うのです。
 これはなぜそうなったかという問題がここに一つあろうと思う。場合によれば医者が非常に労働過重であるのかどうか、あるいはまた一人の医者のところに何人もの多くの人が――患者が多過ぎるために、とにかく非常に精密な予備診断というものができないままに本作業に移ってしまうということになるのかどうか、それは私はわかりませんけれども、何かやはりそういう外的事情もいろいろあるのじゃなかろうかと思う。そういうような問題を解決しないというと、ただ医者だけの責任でもいけないような点もあるのではないかというふうに思ったりします。そういう問題について私は十分わからないのだけれども、これは医務局長の考えられる点でどういう問題点がいまあるというふうにお考えでしょうか。またどういうふうにしたらいいかということを、もう少し詳しくお話ししてもらいたいと思う。
#14
○松尾政府委員 事故のもとというのがいろいろな組み合わせがございますので、一がいに言いにくいかと存じますが、一つは医者が非常に多忙になっていることはもう事実であります。全国的な傾向を見ましても、受診患者が非常にふえてまいりまして、医師一人当たりの受け持ち患者も非常に増大しておりますので、これは医者が非常に忙しくなっているという点が一つあると思います。しかし医者が忙しくなっているからといって、そういう事故があっていいのだという言いわけには絶対ならないわけでありまして、そういう忙しい中になればなるだけ注意をしなければならないという方法が必要かと思います。一般に病院等におきまして、大事な問題を判定をいたします場合には、一人の判断だけでなしに数人の医者の判断をまとめて行なう、重要な場合にはそういうことが一つ病院におけるあるべき姿とされておるわけであります。そういうことの十分な励行をさらに促す。あるいは疑問のある点については十分横の連絡をとった上で手術をする、いかに主治医といえども、主治医権がありといえども、やはり自分の不審な点については、先輩なり同僚なりいろいろな人の目を通じて、そして安全な診断を確立するという態度が必要だろうと思います。そういったようなことが一般的にやや少し基本的に薄れておる。あるいはいろいろな証明書等につきましても、そういう点を十分踏まえないで、いわば事務的と申しますか、そういうことで処理をするような空気というものが多少醸成されていると思います。そういったようなことは具体的にはなかなか掌握しにくいと思いますけれども、やはり医者自身が全幅の信頼を受けておるという職業でございますので、他から律せられなければならぬということでは困るわけでございます。やはりみずからが強く律するというその精神を喚起するということが何としても基本ではなかろうかと考えております。しかしながら、人間のやることでございますので、いろいろな安全対策あるいは事故の例ということについてはひとつ十分周知徹底をはかりまして、二度とそういうことがないような努力を私ども必ずさせてまいりたいと思います。
#15
○石野委員 これは、医者として注意しなければならない問題をどういうふうに管理、監督していくか、あるいは行為を規制するかというような問題は、あとでまた十分検討を加えてもらわなければならぬし、本院としてもまたこういう問題については考えなければならない問題だろうと思うのです。
 私は、ここで、医者の誤診とか誤断によって起きた患者の災害というものをどのようにして守るかということが非常に大事だと思うのです。患者が医者に診断をされたあと受けた被害を訴えて民事訴訟なりあるいは刑事訴訟に持ち込んでいく事件というものは、よっぽどの場合じゃないとこれはなかなか出てこないと思うのです。しかしそれにしても、相当数現在やはりそれぞれ裁判にかけられたり訴訟になったりしている問題があると思うのです。現在の状況ではどのくらい民事、刑事の事件として出ている件数があるでしょうか。全国じゃなくてもいいです。東京だけでもよろしいですが……。
#16
○松尾政府委員 四十三年に刑事事件として私どもが承知しているのが十七件あるようでございます。民事のほうについては、ただいま全国的な数字をつまびらかにいたしておりません。
#17
○石野委員 ことしの東京地裁で起きている第一審の通常訴訟に対して医療事件で訴訟事件になっている問題で、これは民事、刑事いろいろあると思いますけれども、民事のほうをことしの四月現在で見ますと、未裁のものが四十三件、四十年から四十四年の四月までの間にすでにそれの決裁のついたものが十七件です。これは、第一審の通常訴訟事件の一般のものに対する比率から見ますと、決裁の済んでいるものが〇・〇四三五%という実績がある。ところが未裁のものになりますと〇・二四七三%。解決したものよりも解決しないものがまだはるかに多いわけです。こういうような事情はゆるがせにできないと私は思うのです。こういうようなものに対する処置をもっと敏速にやるというやり方は、当然これは裁判所の問題でもあると思いますけれども、より以上に監督官庁の厚生省として考えなくちゃならぬ問題だと思います。そういう問題について何か配慮をしておりますか。
#18
○松尾政府委員 先ほど申しましたように、裁判というものになりますと、なかなかその究明が専門的な問題でもありまして非常に長時間かかる、そのために患者さんもまた当事者同士も非常に大きな負担がかかるという観点から、何か医療事故に関しまして裁判以外の特別の機構を設けて、そこで専門家の判断をなるべく早く下して適当な処理ができないか、こういう問題は実は私どももいろいろ意識をいたしておるわけでございます。ただそれがいろいろな法制上の問題なりあるいは構成等におきまして、たとえばそれがあまりにも医者中心の保護になってもまずいという点で検討を続けておりますけれども、まだ結論を得るに至っておらない。しかし何らかの意味でそういう裁判以外の機関があって、そこで比較的気軽に持ち込めばいろいろな原因なり始末のしかたなりというものがもっとスピーディーに裁判とは別の形で解決できないだろうか、これはいまずっと引き続き検討している問題でございます。
#19
○石野委員 医務局長が言われるように、私はそういうような機関が当然必要だと思うのです。たとえば他の部門を見ますと、裁判官に対しては弾劾裁判所が設置されてあって、それを処置するというなにがありますし、海上における船舶事故については海難審判制度ができておる。それから不当な行為をした者の不起訴処分に対しては検察審査会の制度があったりします。だから、そういうように学識経験者を中心にして、裁判では非常に手間どっていくというような問題、そういうようなものについての何かのやはり方法を考えなければいかぬ。現在医師会のほうでは医事紛争処理委員会というようなものをつくってやっておるわけだけれども、いま局長が言うようにそれは医師の側に立っておりますから、必ずしも患者の側に十分な味方になってくれるものとは思えないわけです。私はやはりこの際、そういう処理機関として具体的に、まあ医療審判所といいますか審判制度といいますか、そういうようなものをつくらなければならない。これは早急にやらないと、今日これだけ各地で続発する医療災害というものに対する防止手段というものは出てこないのじゃないか、こう思います。そういうような意味で、政府としてはそれを率直に、しかも早期に制度をつくるための工作をすべきではないかと私は思います。いま何か医務局長はいろいろと考えておると言っておりますけれども、その考えておる構想はこれに類似するようなものなのかどうなのか。もしもう構想ができておるなら大体の考え方だけでも聞かしておいてもらえばいいし、できてないのならどういうふうにするかというような問題についてひとつお考えを伺いたい。
#20
○松尾政府委員 中身につきまして、まだこういうしかけでというふうなことを申し上げるところまで固まってはおりませんけれども、しかし先ほど来申し上げましたように、こういう紛争というものをもっと別な形で解決をしなければならない。これは単に医療事故といわれるもの以外に、もっと最近におけるいろいろな薬の副作用問題等もございまして、かなり幅広くなるものではなかろうかということは、省内でもいろいろ議論をいたしております。したがって、そういう角度で何らかの考え方をまとめるべきであるという点については、私ども省内でも意見の方向は一致しておりますので、さらにしかるべくいろいろな相談をするべき機関にも相談をいたしまして、検討を急ぎたいと思います。
#21
○石野委員 これはひとつ早急にそういうものを政府としては考えるべきだし、またこれは立法府の立場からもそういうものは当然考えなければならぬ問題だと思いますので、ひとつ委員長、決算委員会はその当面の委員会ではないけれども、やはりこういう事故に対する方策を院としても考えるように、たとえば社会労働委員会等に対して注意を喚起するというようなことをしてもらいたいと私は思います。
 先ほど医務局長から、事故の起きる大きな原因の中に医者が非常に多忙だという側面もあるという話がありましたが、われわれが見ておっても、実際に医者は非常に忙しい。率直に言えば、医者の数が患者に対して少ないのじゃないか、こういう面を詰めていかない限り、続発する医療事故というものはなかなか防げないのではなかろうか、こういうふうに私は思います。そういうような意味から、現行の医師制度について新しく考えなくてはならぬ問題があるのではなかろうか、また、それをやらない限り、この医師の不足というものを補うことができないのではなかろうかというふうに考えますけれども、局長はどういうふうにお考えでございましょうか。
#22
○松尾政府委員 かつては医者の数も、人口比でヨーロッパ等と比べますと、ほぼとんとんのところへきているので、ふやさなくてもいいじゃないかというような議論もございましたけれども、しかしその後は国民の人口比というようなものでなくて、患者の需要というものが非常に伸びております。そういう関係から、総体的には日本ではやはり不足であるというのが、厚生省の三十六年ごろからの見解でございます。したがいまして、医学部の定数を増加するということについて、三十六年以来文部省にも強力にお願いいたしまして、年々ふやしていただきまして、ただいまのところ、ことしの四月の入学定員が四千四十名までふえてまいったわけでございます。これは三十六年以来千八百名ほどの増加になっておるわけであります。そういうことでふやしてまいりましたけれども、なお需要のほう、患者のふえというものが非常に増加いたしておりますので、なお引き続き、やはりこういう医学部の増加というようなものを基本的に進めてもらいたい、こういうことで新しく新設をするような計画すらもすでに考えていただいているような状態でございます。ただしかし、それだけでもいまの実態にはなかなかすぐには追いつくものではございません。
 いま一つは、まだ公式の見解とは申し上げにくいかもわかりませんけれども、医者がかなり多く大学の中に入っておられますので、大学病院等の姿というものがもう少し合理化し、それからまた、一般の医療機関での勉強というものもできるような体制を組むことによりまして、そういう若い人々に、もっと第一線のほうに出てきていただくチャンス、こういうことをはかることもまた養成とともに対策としては必要ではなかろうかと考えておるわけでございます。
#23
○石野委員 医者をどういうふうにしてふやすかという問題については、基本的にやはり教育制度の問題等、あるいは医師法自体の問題にも触れてくると思いますから、いずれにしても医者の少ないということが、いろいろな事故を起こす原因になっているということに対する対策を早急に講じなくちゃいけぬということも、ここで局長の意見ではっきりしております。そういう点はひとつ早急に――各大学等におけるところの国公私立の医学部の定員数をふやすとかなんとかいうような問題等についても、やはり具体的に政府内におけるところの問題として取り上げてもらうということをやらなければ、これはいけないのじゃないかと私は思います。そういう点については局長は同感でしょうね。
#24
○松尾政府委員 私どもは、とにかく医学部定員あるいは現在の医学部がもう定員をふやせなければ医学部の新設、こういう形でふやしてほしいということで常々主張してまいっておるわけでございます。したがいまして、そういう方向にはいまもいささかも変わりはございません。
#25
○石野委員 医者の不当診断とかあるいは手当てによりまして受けた患者の被害、それを救済することについてやはりもっと具体的に行政上の処置がなされなければいけないんじゃないか、こういうように私は思いますけれども、その点について積極的に具体的な当面とる方策はどのようにしてなされますか。特にそういう問題について医道審議会などで具体的にそれを検討させるということはやられますかどうか、この点ひとつお聞きしたい。医療審判制度とか何かがあれば当然そこらのところがまたやる仕事でございましょうけれども、いまそういうものがないとすれば、当然医道審議会等がそれを具体的に積極的に処置しなければいけないんじゃないか、こう考えますが、政府はそういう点についてどういうようにお考えになっておりますか。
#26
○松尾政府委員 医道審議会におきましては、個々の事例についてはその処分なりその他について処理してまいっておりますけれども、先ほど私が先生にお答え申し上げましたように、こういういわば医道の高揚というものについては再度いろいろな点で喚起をしなければならぬということを申し上げたわけでございますけれども、その私の気持ちとしては当然医道審議会にそういうことをかけ、そしてそういう方向をしっかり審議会としても打ち出すということを固めていきたい、こういう考えであります。
#27
○石野委員 医者の技術的な面だとか医者そのものの人格形成の側面、あるいは倫理的な面や医業としての経済的な面を含めたそういう側面の検討がなされないというと、この問題に対する具体的な処置、方策というものが出てこないだろうと思うのです。そういうことも含めてこれはやはり早急に方策を考えてもらわないと、対策としては出てこないと思いますから、そういう点の配慮は十分してもらいたいと私は思うのです。そういう点などについてもひとつ所見を聞かしておいてもらいたい。
#28
○松尾政府委員 できるだけ幅広く、しかも具体的にいろいろな事例等も参考になるものをつけまして、そして事故防止に役立つような対策を十分すみやかに考えたいと存じます。
#29
○中川委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
#30
○田中(武)委員 石野委員のただいまの質問に関連をして一言お伺いいたします。
 入院、ことに手術にあたりまして、医者というか病院側が本人あるいは家族の、手術の結果死んでもかまいませんといったような誓約書というか、これを入れるというような慣例があるようであります。しかし法律的にいうならば、これはもう承諾ということでなくて、法律上は無効ですね。殺してもらってもかまいませんというのと一緒ですから、もしその理論が法律的に成り立つのなら安楽死、これがまた法律的に許されるということになります。そういうことと関連をいたしまして、誓約書をとる、そういうことについてはどうお考えになり、今後どういうように指導せられようとしておるのか、お伺いいたします。
#31
○松尾政府委員 手術のときに誓約書で事故があっても一切云々というようなことを書きますのは、法的には、それによって事故が起こったからといって責任が免れるものではない。いわば極端に申して無効な誓約書である、こういうふうに考えております。ただ私もなぜそういうふうにああいうものが手術の場合だけに行なわれてきているのか、必ずしも過去の歴史については明らかでございませんけれども、こういう危険もありますよということを承諾した上で受けるという程度の意味しかないように理解をしております。
#32
○田中(武)委員 だれが考えても、そういう誓約書、これが法律的に効果あるとはいえないです。したがいまして、そういう慣例があるということ自体について厚生省としてしかるべく措置というか、指導すべきでないか。そのために泣き寝入りということが往々にあるのではないか。もしかりに誓約書があるのだからということで、そのことが示談等の上において若干有効に働いておるとするならば、これは問題だと思う。これを推し進めていくなら、いま言ったような委託殺人あるいは安楽死、これを合法化することになります。そういう点を含めて今後の厚生省の指導のあり方に対して要望いたしておきます。そういうことのないようにすべきでないか。同時に、そういうことは法律上の効果はない、これは法律的に知識の乏しい一般大衆に対してそういうPRをする必要がある、このように思いますが、いかがでしょう。
#33
○松尾政府委員 先ほど申しましたように、法的に拘束されないようなものがいかにも拘束されるような誤解を与える誓約書がある、これは御指摘のようにまことにおかしな問題でございます。一々注射をするときにも、注射をしますという誓約書を書かなければならぬというのと同じような意味でございます。したがって、私自身は自分で受けましたときにそれを書いた覚えはございませんけれども、やはり手術をいたしますという程度の了解であるということであれば、その範囲にとどめるように、実態もよく調べまして検討させていただきたいと存じます。
#34
○石野委員 医師が誤診をするということは、お医者さんが人間だからそういうことが全然ないということはいえないわけです。しかし本人が作為的にやったのではなくて、全く予想もしないような事故が突発的に出てくるとかなんとかということはあり得ることです。それをできるだけ防ぐような方法を講じなければなりません。しかし診断もしないで診断書を書くことが間々あるようです。
 私はきょうこれは医務局長にお尋ねしたいのですが、これは個人の名前はちょっと伏せますけれども、東京都内で、あるお医者さんに患者さんが見てもらいました。胸部のレントゲン診断はされた。そしてその診断の結果、診断書は肺結核及び十二指腸かいようという診断が出たのだそうです。しかしここへ来るまでの患者さんの事情は、職場の中でいろいろな事情があったようですけれども、これはまたあとで労働基準局にちょっとお尋ねすることですが、とにかくお医者さんはレントゲン撮影はしたけれども、結局手を触れもどうもしないで十二指腸かいようという診断をしたわけです。その診断が出た結果、本人は職場で解雇処分を受けた。この診断を受けたのは女の方ですが、これは本人にとってはたいへんだということで、本人としてはそんな症状も何もないのだが、診断を強要されて受けて、そういう診断が出て、そして解雇になった。これはおかしいというのでほかの二カ所ほどのお医者さんに見てもらったら、全然違う診断書になってきている。こういうことになりますと、これは全く作為的な行為だとしか見られないのですね。こういうような医者があった場合に、監督官庁としての厚生省はこれをほっておくのですか。そういうものに対しては何かの方法を講じて処断すべきじゃないかと私は思う。ことに医師法の第二十条の観点から見ても、これは当然問題が出てくるわけでございます、診断をしないで診断書を書くということになれば。また、刑法百六十条の条項にも触れてくるということにもなりますが、こういうようなことがあったときに、それを放置しておきますか、どうしますか。
#35
○松尾政府委員 具体的にそういう問題がございましたならば、その事例に応じまして私たちも処理をしてまいるつもりでございます。
#36
○石野委員 私はあとでまた関係の方に申し上げますが、こういうところで個人をあれこれ言うことは避けたいと思います。しかし事実上そういう問題があって、現在これはやはり民事の裁判にもなっているわけです。裁判のほうに入っていますが、なかなか審理が進まないままになって困っている問題です。この問題についてはあとで申し上げますから、監督官庁としては積極的にひとつ調べてもらいたい、こう思います。
 それから労働基準局長にひとつお尋ねします。この問題は基準局がすでに扱っている問題で、基準局はすでにそういう行為があって注意は喚起しておる、本人には復職の勧告はしているのだけれども、復職しないということで困っておりますというような状態のように私は聞いております。具体的に人名をあげたり場所をあげたりするのがよろしいのですけれども、それはいろいろ関係が出てくるから私は申し上げません。しかし全然具体的な問題も言わないで答弁はできないと思いますから申し上げますと、問題は砧の生活協同組合の中で起きたのです。医者の関係は、すでに基準局ではその点はわかっておると思いますから、個人のこともなにしますからそれは伏せておきましょう。そこで、この砧生活協同組合に起きた問題で、一昨年の十月十六日に医者が診断書を出したことによって軽率にも十月三十一日に解雇の通知が出ております。しかし、そのあと十一月十五日には大蔵病院と、それから児玉経堂病院の渡辺医師の診断書が別に出まして、これはもうさきの診断書とは全く違うわけですね。そういうことから、解雇の取り消し、復職を要請したけれども、本人はこれだけの処置をされたのではただの復職だけではがまんができぬということで、民事事件として訴えている、こういう事件です。こういう問題について労働基準局としてはこれはほっておくという手はないと私は思うのです。こういうようなことをやった当事者に対して、監督行政上何かの処断をすべきじゃないかと私は思います。ただ解雇の取り消しをしただけでそれはもう済みだというようにお考えになっているのかどうか、その点お伺いしたい。
#37
○和田政府委員 砧生活協同組合の件につきましては、先生の御質問が具体的に触れていらっしゃいませんので具体的なことは申し上げませんが、私どものほうの調査によりますと、本人から解雇不当の申告がございまして、その実情調査のために生活協同組合のほうに照会をして、どういう事実関係かということを調べましたときに、解雇は取り消しをする、そして御本人には復職をしてもらうように組合のほうから伝える、こういうことでございましたので、申告されました事実それ自体につきましては解決をしたわけでございます。ただそれが医師の誤診に基づく問題だということで、人権の侵害があるというような問題につきましては、これは人権擁護局のほうで処理をしていただくほうが妥当だと思いますので、本人にもそういうようにお伝えをしてございます。御本人はただいま裁判の問題としてお争いになっているようでありますが、基準局としましては、基準法の解雇問題という以外にはちょっと手のつけようがございませんので、この件につきましては、実質的に解決をしておりますので、これ以上どうこうということもいたしかねるのではないか、かように考えております。
#38
○石野委員 労働基準局は、事件がある落着点にいっているからもうそれでいいというようないまの考え方のようでございますが、私の知っている限りでは、医者の誤診という問題に、その職場におけるところの管理者、理事者が関係がある。もし基準監督局がそういうように言うのであれば、もう少し触れなくちゃいけませんけれども、医師が診断をして何でもないですねという話であった。診断書は書いてもらってこいと言われて、命を受けて行ったわけです。だから診断書を書いてくださいと医者に言ったわけです。医者に言ったけれども、医者は何にもありませんということであった。医者は遠藤という理事に電話をかけた。それで電話をかけたあと診断書ができたわけです。だから診断書を書く行為の中で――これは当然医務局長のほうの問題にもなってくるわけですが、電話の対話が入っているわけです。その電話の中身というものはどういうことかわかりませんけれども、しかし診察をしたときには、既応症はあるようですが何でもありませんねという話だったそうです。そういうことであったけれども、あの診断書を書いた結果は、先ほど言ったように肺結核並びに十二指腸かいようという診断書が出てきたわけです。しかも、それが出たあと十日もたたないうちに理事会にかけて解雇の決定をしたわけです。解雇をするについては、普通から言っても一カ月の予告期間がなければならぬのに、そういうこともしないで、その月の末には解雇の処置をした。しかも、処置をした中で、退職金とそれからそれに対する見舞い金というものを出しております。見舞い金を一万円出しておりながら、その一万円はいわゆる試用雇用というものだから出したんだということです。ところがこの人は試用じゃないんですね。もうその年の五月に本員として採用されているわけです。そういう者に対して、試用だからお見舞い金を出しましたと理事のほうから本人に対してそういう手紙を出しておるわけです。ここに手紙を持っております。ですから、こういう作為があるわけです。こういう作為は、労働基準局としては裁判所じゃないから調べられないかもしれませんけれども、しかし、結末がそこへいくまでの間にそういう行為があったということは、労働基準局としてほうっておくわけにはいくまいと思います。こういう問題は、やはり具体的に本人からの意思、事情の開陳があると思いますし、これはやはりもう少し具体的に労働基準局が調べませんと、いろいろな労働基準法違反の行為をやっておるにもかかわらず、もう解雇事実がなくなってきているだろうから、私はもうそれ以上のことはやれませんというようなことでは、基準監督局の目は節穴と同じになってしまうでしょう。こんなことなら幾らでも悪いことをして、ある時点で法的な事件になってきてからあとで引き下がりまして、解雇を取り消し、それでおしまいになってしまう。これは職場の中におけるところの、いわゆる雇用関係における不純さを解消することにはならないと私は思います。これは基準監督局はもう少し突っ込んで入り込むべきだと思うのです。ここに遠藤という人から本人に出した手紙がある。私はこういう問題を委員会であれこれこまかいことは言いませんけれども、基準監督局はもう解雇を取り消した、白紙に還元をしたからそれ以上入れませんでは、労働基準監督局に対して訴えておる労働者の意向というものを基準監督局は何にも受けとめてない。これはいわゆる管理者、経営者の側の意見だけを聞いて、被害を受けた労働者の意見は全然聞いてないことになるんで、それは片手落ちだと思うのです。労働基準局は、やはりこういう問題にもう少し入り込んで、その点の監督業務をしっかりやらなくちゃいけないのだと私は思うのですが、それは必要じゃないですか。
#39
○和田政府委員 本件につきましては、御本人から監督署に対する申告は三点ございます。第一点は解雇が不当である、第二点は解雇手続が不当である、第三点は人権の侵害があるということでございます。この一点と二点については基準局の所管の問題でございます。そういうことで、基準法の二十条によりますと、解雇するときには三十日以前に予告をしなければいけない、予告ができない場合には三十日分の解雇予告手当を支払わなければならない、こういうことになっております。したがいまして、解雇の手続等について不当がございますれば、当然監督署としては基準法の定めるところによって処置をいたすことになっております。先生がいま御指摘のような問題点は、本人から申告がございましたので、翌日監督署のほうが生活協同組合に対して、これらの基準法違反問題の事実確認の調査をいたしたわけでございます。その際におきまして手違いがあり、解雇の手続等も基準法の定めるところに従っておらないので、解雇それ自体を取り消すということになりましたので、解雇に至りますまでの手続も、そういう意味においては、したがって解消をしたということでございますので、監督署の法的な措置としては終わりになるわけでございますが、ただ、その問に、先生が御指摘になったような事実確認が私どもにありますれば、当然使用者である協同組合に対して今後そういうことのないように十分指導をいたすことは当然であります。
#40
○石野委員 いまも申しましたように、解雇の取り消しが行なわれてしまえばもうそれでおしまいだというようなことだとあまりにも形の上だけの問題になってしまう。解雇が取り消されておるのになぜ本人は復職しないのかということについては、そこへいくまでの間の行為がやはり本人にとっては問題で、第三にいう人権侵害の問題と関連するわけです。こういう職場におけるところの雇用関係の中で具体的に出てきているいろいろな問題があるわけです。そういう問題についてもう少しあたたかく調査をしなければ弱い雇われ人は救われないと思う。ことに本人は、そういうことのために、たとえば肺結核、十二脂腸かいようの診断を受けたのでノイローゼみたいになってしまった。これはたいへんなことだ、これからどうして生活していったらいいだろうかというようなことで、家へ帰ってからおやじさんと一緒になってどうしたらこれからやっていけるだろうかというふうにいらいらした気持ちになっている。こういうような状態をつくり出していくようなことを雇用者であるところの理事者と医師との間でつくり出したわけです。
 そのことについては、管理者であるところの理事者がそういうようにつくり出した行為であると同時に、医者についても問題があると思う。医者の問題については、お医者さんのほうは、どうもこの人は頭がおかしいようだから――これは医務局長、ひとつ聞いてもらいたいんですよ。あとでほっておくことができないと私は思いますが、とにかく本人は頭がおかしいようだから、本人の精神鑑定をしたらいいと思いますなどというようなことを、その後組合の理事が行ったときに言っております。精神鑑定の必要があると思いますとまでも言っておるわけです。こういうようなことを言わせるような状態を雇用者側と医者との側で事実上つくり出しているわけです。ですから、一面においては、医者のほうの問題が一つありますし、それから一つには、本人は何ら症状を訴えていないのに、あそこへ行って診断してもらってこいというふうに強要して、診断書を強要しておる。職場の医者に行って見てもらってこい、見てもらってこいとたびたび言って、どうしても行ってこいということで実は行ったわけなんだから、こういう実情をもう少し基準監督局のほうで調べなければ、ほんとうの基準監督ができないじゃないですか。だから、こういう点について労働省がもう少しあたたかい調査をすべきじゃないか、私はそう思うのですよ。これは必要ありませんか。
#41
○和田政府委員 御本人が四十二年の五月に試用ということで採用されましたときに、結核の問題がありまして、土曜日一日を休日にして療養を行なう、こういうようなことで試用として採用されたようであります。そして八月になりまして、三カ月の試用期間が終わって、なお結核療養のために、土曜日一日療養のための休日にするということで試用期間を延長しておる、そういう状態で十月になっておりまして、その間における使用者側と御本人との間におけるやりとりについての調査が私の手元にはございませんが、いずれにしましても結核療養のために特に土曜日を一日休日にしておるというようなこと、それが状態として改善をされておりませんので、もう一回再診断を受けるようにしたほうがよかろう、しかもそれも専門医の診断を受けるようにしたほうがよかろう、こういう判断を使用者側のほうでしたようでありますが、それらのことは、勤務の一日休日ということとの関連で、使用者側が専門医の診断を受けるように本人に勧奨することは、それ自体は別にとがめるべき行為ではないのではないかと思います。ただその間における圧力的な行為があったり、あるいは結核の問題がもう全く消えておるのに、使用者側が特に専門医の診断を強い態度で求めるというような事実がございますれば、それは人事管理の上からいって、そう妥当な行為ではないと思いますので、それらのことにつきましての資料は手元にございませんが、そういうようないきさつがあって、専門医の診断、専門医と使用者側との間にどういう事実があったかということは、先ほどの電話の話が出ておりましたが、私どもでは確認できないままで、ただ診断書が出た、そういう内容から十月三十一日をもって退職の手続をした。しかしその退職の手続は、私どもからいいますと、法の手続にははまっておりませんので、もし使用者側がその事実をそのとおり実行するつもりであれば所要の措置を講じましたが、向こうが全部改めておりますので、法律違反問題としてはもう処理が終わっている。ただやりました人事管理の姿が当を得ているかどうかにつきましては、ただいま手元に資料がございませんので、にわかには言い得ませんが、さらに必要があれば調査をさしていただきたい、かように考えております。
#42
○石野委員 これは、私は、基準局長が十分認識をしていないようですからここで申し上げますが、解雇の原因になった診断書は、病名が「肺結核症及十二指腸潰瘍」、付記として「頭書の疾病により当分の間休養の必要を認めます。右診断いたしました」これがある医師においてなされた。これに対して、そんな症状も何にもいま感じられていないので、本人はその後児玉経堂病院に行っております。そこの診断はこういうふうになっております。「右者十月二士一百胆のう撮影を行い、その結果やや収縮が低下しているも、身体的には異常を認めません。」こういうことになって、何もありませんよということの注意を受けておる。それでもなおはっきりしないから、もう少し確実にしようということで、今度は大蔵病院へ行きました。大蔵病院の診断はこういうふうになっております。病名は「胸部レ線所見にて左肺尖部に硬化性病変、消化管レ線検査にて胃炎所見を認める他身体的には大なる異常所見なき事を証明する。」こういうふうになっているわけです。だから本人としては、理事者が言われるように土曜休み云々というように非常にからだのぐあいが悪いとかなんとかいうことは、自覚症状は何もないわけです。しかも、この方の勤務は非常に長い間勤務しております。決してそんな短い勤務じゃない。昭和三十七年の九月より四十二年十月三十一日までの間、世田谷の砧町の生活協同組合に職員としてつとめてきているわけです、その間試用期間が長かったわけです。そういう状態でございます。事情もだいぶ違っていると思います、いまあなたがおっしゃったのとは。ですからこれらの問題については、別に裁判所でも何でもないのだから、私はここであれこれ言いませんが、監督業務として手落ちがあるのじゃないか。だから、これは基準局としても当然なにしてもらわぬと困る、もう一ぺん調査してもらうべきである、こういうように私は考えるわけです。だから、そういう点で一ぺん所見を聞かしてもらいたい。
#43
○和田政府委員 私のほうの手元にただいまございます資料によりますと、先ほどかいつまんで申し上げたようなことでございます。十二月二十五日に最初の診断がありまして、医師の名前は控えますが、「結核症、十二指腸潰瘍」当分療養を要するという要旨の診断書がありまして、それを組合の理事会で審議をした結果、こういう病気であるならばこの際やめてもらおうということにいたしまして、十月二十八日に理事三人立ち会いのもとに本人に通知をして、十月三十一日に解雇をした、こういうことであるわけであります。
 御本人はそれに対して先生のお話しのようにきわめて不満であるということで、生活協同組合に対して、不当解雇であるということで申し立てをし、理事会としては、それならば再度権威のある病院の診断書を再提出をしてもらって、その上で再審議をすることにしよう、それから解雇手続については基準法違反の点がございますので、その解雇手続については、これは組合側が間違っておってまことに申しわけないということを二人の理事から本人に陳謝をしたようであります。
 御本人は、いま先生の言われました児玉病院の件は私どもの調査にあがっておりませんが、十一月十五日に国立の大蔵病院へ診断を受けられて、その結果を二十日に診断書をもらった。それはいま先生がお読み上げになったようなことで、別に異常はない、胃炎のけはあるが、結核のほうはすでに硬化してしまっておって、たいして異常がないということであります。その結果に基づいて、その診断書を理事者側が見まして、十一月二十一日に解雇を撤回をするということになりまして、十一月一日に御本人を本採用にするという決定を、十一月二十二日に理事会の名前で書きとめで本人に通知をいたした、こういうようなことでございまして、私ども手元にありますのはそういうことであります。しかし、そういう十一月一日からいままでの試みの採用であったものを本採用に切りかえるという通知をいたしましたが、いろいろないきさつがあった関係もございましたでしょうが、御本人からは復職の意思表示の特段のものが十二月ごろまでなかったというようなことでございまして今日に至っておる。その間において民事事件として訴訟を起こされた、こういうことでございます。先生がいまお話しになりました点と、少し私どもの調査とが食い違っている点もございますので、調査をいたしてみまして、使用者側の人事管理上に問題があるようならば、監督署としても警告をするようなことにいたしたい、かように考えております。
#44
○石野委員 質問を留保いたします。
#45
○中川委員長 この際、暫時休憩いたします。
   正午休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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