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#1
第061回国会 建設委員会 第15号
昭和四十四年四月二十五日(金曜日)
    午後五時十六分開議
 出席委員
   委員長 始関 伊平君
   理事 大野  明君 理事 金丸  信君
   理事 草野一郎平君 理事 田村 良平君
   理事 井上 普方君 理事 佐野 憲治君
   理事 吉田 之久君
      伊藤宗一郎君    池田 清志君
     稻村左近四郎君    仮谷 忠男君
      進藤 一馬君    菅波  茂君
      丹羽喬四郎君    葉梨 信行君
      廣瀬 正雄君    古屋  亨君
      堀川 恭平君    湊  徹郎君
      森下 國雄君    山口 敏夫君
      阿部 昭吾君    金丸 徳重君
      山崎 始男君    大橋 敏夫君
      北側 義一君
 出席国務大臣
        建 設 大 臣 坪川 信三君
 出席政府委員
        内閣法制局第二
        部長      田中 康民君
        建設政務次官  渡辺 栄一君
        建設大臣官房長 志村 清一君
        建設省河川局長 坂野 重信君
 委員外の出席者
        自治省財政局財
        政課長     首藤  堯君
        専  門  員 曾田  忠君
    ―――――――――――――
四月二十五日
 委員葉梨信行君、廣瀬正雄君、古屋亨君及び小
 川新一郎君辞任につき、その補欠として菅波茂
 君、湊徹郎君、仮谷忠男君及び大橋敏夫君が議
 長の指名で委員に選任された。
同日
 委員仮谷忠男君、菅波茂君、湊徹郎君及び大橋
 敏夫君辞任につき、その補欠として古屋亨君、
 葉梨信行君、廣瀬正雄君及び小川新一郎君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
四月二十三日
 自転車道の整備等に関する法律の制定に関する
 請願外一件(神田大作君紹介)(第五〇二九
 号)
 同(塚本三郎君紹介)(第五〇三〇号)
 同(橋本登美三郎君紹介)(第五一六四号)
 同(松本善明君紹介)(第五一六五号)
 同(小峯柳多君紹介)(第五二六六号)
 同(小山省二君紹介)(第五二六七号)
 同(澁谷直藏君紹介)(第五二六八号)
 同(葉梨信行君紹介)(第五二六九号)
 同外五件(坊秀男君紹介)(第五二七〇号)
 同(松澤雄藏君紹介)(第五二七一号)
 同(渡辺肇君紹介)(第五二七二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律
 案(内閣提出、第五十八回国会閣法第九七号)
     ――――◇―――――
#2
○始関委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律案を議題といたします。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。金丸徳重君。
#3
○金丸(徳)委員 たいへん大事な時期の大事な法案でありまして、慎重にお伺いいたしたいところもたくさんあるようでありますが、時間がだいぶおくれておるようでありますから、要点だけをお尋ね申し上げまして私の責任を果たさせていただくことにいたします。
 まずお伺いいたしたいのでありますが、本法提案の根本の動機であり、また理由でありますところの、わが国の国土が最近の台風、集中豪雨などのためにとかく災害をこうむりやすくなっておるということのようでありますが、全体的にお調べになりまして、わが国の国土はどの程度安定度を保っておるのか、増しつつあるのか、それとも減りつつあるのか、不安の度が増しつつあるのか、この点についてまず御見解、実情を承っておきたいと思います。
#4
○坪川国務大臣 最近の不幸な集中豪雨、ことに台風その他地理的条件からくる客観的不利な立場に置かれておるわが祖国の国土に対する荒廃状況は年々ふえてまいっていることは、御指摘のとおりでございます。これに対しますあらゆる施策を打ち出してはおる次第でございます。たとえば治水五カ年計画という重要な建設行政の大きな年次計画を打ち出して、一級河川、中小河川、あるいは小規模河川その他に対する施策を打ち続けておる次第でありますが、それとともに、砂防あるいは森林、あるいは地すべり、それらを含めましての施策も、それぞれの立法措置によって万全を期しつつはありますけれども、しかし、最近の非常な台風あるいは地理的条件あるいは気象条件からくる人命、財産というような非常に重要な問題の危険度合いというものが非常に濃くなってきており、また、その不幸な現象が非常に顕著になってきておることを考えますときに、これに対応するだけの施策を打ち出さなければならぬという政府また建設省の考えから、本法の制定をお願いいたしておるのでございますが、しからば、御指摘になりましたそれらに対するところの度合いといいますか、あるいはそれらに対する現況はどうかということになりますと、一つの科学的なものを基礎に置いての基準なり、あるいは標準なり、あるいは度合いということの客観的なことは申し上げられませんけれども、主観的な考えからいいますと、非常にそういうような度合いというものは顕著になってきておるということだけは、私は否定できない、こう考えております。
#5
○金丸(徳)委員 大臣から、たいへん心配しなければならないような国土の状況の御表明がありまして、いまさらに対策の緊急さを痛感するような次第であります。
 建設省は、先年、このたび重なる各地における崩壊災害などにかんがみまして、国土の診断をなさったように聞いておるのであります。どういう程度に、どのような方法でなさったかはつまびらかにしないのでありますが、各地における風化の度合いでありまするとか、また、気象条件の激変というようなものに伴いまして国土は非常に不安の状況に置かれておるということからして、全国的に丁寧にお調べになったように聞いておるのであります。そうして、そういうことを基本にいたしまして今回のこの緊急立法とでも申しますか、そういう提案をなさったように承るのでありますが、状況はいかがでございましょうか。これは事務当局のほうから御説明をいただければありがたいのであります。
#6
○坂野政府委員 先生御指摘のように、最近の災害の実態を見てまいりますと、異常な集中豪雨等によります局地的な災害が特に顕著でございます。特に昭和四十二年度におきましては急傾斜地の崩壊による災害が非常にふえております。それに対しまして、緊急に私どもは昭和四十二年の六月から七月にわたりまして全国的な調査をいたしました。調査のしかたといたしましては、地形、地質あるいは表層土の深さだとか、あるいは水分の状態だとか、あるいは傾斜度、高さの問題、そういうものと、先ほど先生がおっしゃいましたような土質の問題、非常にやわらかくてくずれやすいというようなものを全国的に調査いたしまして、その結果、私どもの調査では、全国的に見まして、崩壊によって災害のおそれのある個所がおおむね七千四百カ所に及んでおるということがわかったのであります。
#7
○金丸(徳)委員 それでは、七千四百カ所というのは、当面特別な対策を要するとごらんになっておるものの数、こう承知してよろしいのですか。といいますのは、このままじんぜん日を過ごしてしまいますと、またしてもこの七千四百カ所にプラス何千カ所がこのほかにも出てくる心配のあるところもたくさんあるように思われるのでありますが、その点はいかがでありますか。
#8
○坂野政府委員 御指摘のとおりでございまして、当面、対策工事といいますか、防災工事を必要とする地点が七千四百カ所くらいあろうということでございまして、相当な時間を経過いたしましてだんだん状況が変わってまいりますので、それ以外にも、もちろん、そういった何らかの対策を講じなければいかぬような個所もだんだん出てまいると思うわけでありますが、とりあえず、四十二年度の調査では、防災工事が必要であるという地点を重点にいたしまして調査した結果でございます。
#9
○金丸(徳)委員 大臣、ただいま河川局長からのお答えの中で御了承のように、すでに七千四百カ所、すぐにも防災工事をしなければならないところがある、そのほかに、年を経るに従ってこれはふえてまいる。言ってみますれば、日本全国もう災害の不安のないところがないような――平地は別といたしまして、崩壊のおそれのないところのほうがむしろ少ないといってもいいくらいの危険な状態におちいっているようであります。山国、特に急傾斜の山をたくさん持っておる日本の国土といたしましては、そういうことも十分予想されるのであります。これは一体どういうことから生じたことでありますか。日本は、産業的に見ますと、すでに世界第三位もしくは第二位にまで迫ろうという産業があるくらいに進んでおります。文化の点におきましてももう世界一流の状況に達しておる、国民生活も年々高まっておるというような状況の中におきまして、その国民生活の基盤である、また産業の基礎であるところの国土が、至るところそのような危険な状態におちいりつつ、しかもなおこれは年を経るに従ってふえつつあるというような状況というものは、これは見のがしがたい状況でなければならない。こういうことになった原因は一体どこにあるとごらんになっておられますか。
#10
○坪川国務大臣 先ほども申し上げたごとく、わが国土の地理的条件あるいは気象的条件、それらからくるところの一つの悪条件を持っており、その悪条件を克服いたしながら、従来とってまいりました森林法とか、あるいは砂防法とか、地すべり防止法とかいうような法律に依存いたしながら、これらの措置がやはり即効薬としてあるいは万能薬としても一応役割りは果してまいったことは私は認めたいと思うのでございますが、しかし、それ以上、やはり根本的な地点というものを見まして、そうしてただいま河川局長が申しましたごとく、最も重要な危険の個所、その濃度の多い七千四百カ所にまで及んでおるところをそのまま放置いたしまして、従来の森林法、砂防法、地すべり防止法に依存することによって手をこまねいている時期ではないという私は気持ちを持ちましたものですから、いま御審議を願っておる法案の提案をいたしました気持ちもここにありますので、これの制定をいたしまして、そうして危険度の多い個所から重点的に、ひとつこれらの危険の不幸を避けて人命と財産を守るという対策を打ち立てたい、こう考えますとともに、その原因、よってきたるゆえんたるものは、やはり天然的、地理的、気象的な不幸を年々繰り返すことも一つの理由といたしますが、それだけに責任を転嫁するような気持ちは、われわれ国土開発を担当する建設省としては持っておりません。私は、そうした不幸を取り除くために、従来の法律によっての依存を改めまして、新たなる角度からこうした施策をいたしますとともに、中小河川、小規模河川等の改修もいたしつつ、総合的なる国土保全対策を打ち立ててまいりたいという考えでございます。
#11
○金丸(徳)委員 従来の森林法あるいは砂防法、あるいは政策的にいいますと、治山治水五カ年計画の実施あるいは地すべり防止法、こういうようなことでそれぞれ法制的な施策を強力に進めつつあったにもかかわすず、危険度は増しつつある、国土の安全度はむしろ減りつつあるというようなことであったのであります。といたしますると、そういう法律があったにもかかわらず、実はその法律の裏づけになるところの施策、力が足らなかったからと見なければならないのであります。これは極言さしてもらいますと、法律が必要ではなくて、法律が大切ではなくて、むしろ、この段階になりますと、法律もさることながら、その裏づけになるところの実質的な国土安定のための力づけこそ必要じゃないかと思うのであります。この点が欠けておりますと、法律を百つくりましても千つくりましても足りないのじゃないか、こう私は心配いたすのであります。私は、この法律が非常に重要であり、そしていままでの法律をもってして足りないところを埋めるという意味におきまして、非常に緊急であり、大切であることは認めます。認めますけれども、しかし、いままでの経験に照らして、それで満足するわけにはまいらないのであります。何とかこの法律を実施すると同時に、いままでにも増しての裏づけを、予算的におきましても、技術、人員的におきましても、用意をしてかからなければいけないと思うのでありますが、この点について大臣はどういうような御決意を持っておられますか。
#12
○坪川国務大臣 御指摘になりましたとおりでございまして、私は、その具体的な裏づけをいたしまして、そしてこの不幸を避けていくということが、この立法の大きなねらいであろうと思います。したがいまして、御承知のとおりの森林法あるいは地すべり防止法、あるいは砂防法なんというような法律によって、それぞれの具体的な施策はそれぞれとってまいりましたけれども、それよりも、最も人命、財産に大きな危険を与える具体的な個所を適切に把握いたし、認定いたしまして、そうしてそれらの措置を具体的に予算的裏づけも講じまして、地方自治体と密接な連絡をとりながら、国が適切な予算配慮あるいは行政指導及び法的措置を講ずるということが、この法のねらいであり、私ども建設省がとらなければならない当然の責任、態度であろう、こう考えております。
#13
○金丸(徳)委員 その点につきまして、私は、建設当局がこの立法にあたりまして、すでに実質的に四十二年度以来施行されておるということについて敬意を表するのであります。法律ができてから予算を用意するとかというようなことでなくて、すでに実質的に工事を――試験的にといいますか、急ぎのところはやっておられるということについて、その誠意を認めたいと思います。ただ、しかし、その四十二年度における一億円の国費の用意でありますとか、四十二年度における三億円の用意、施行個所が九十六カ所ですか、新規としては七十カ所――昨年度は七十カ所のようでありますが、こうしたものは、七千四百カ所と予想されるところの現段階における必要工事量からしますれば、まことに天井から目薬といった感がなきにしもあらず、どう見ても、率直に申し上げますと、まことに隔靴掻痒の感があるのであります。そこで、今度はもう法律をつくり、予算の裏づけをしながら強力にお進めになろうというお考えで本法の提案になったと思うのでありますが、本年度におきましては、予算において国費四億円ということであります。本法を提案なさるということを前提としての予算としてはあまりに少ないように思う。先ほど大臣の御決意を表明になりましたことと思い比べまして、あまりにも少ないように思う。したがって、またしても、法律をつくって、裏づけのないような結果になることをおそれるのでありますが、四十四年度はやむを得ないとかりにいたしましても、来年度以降においては、どういう心がまえの中で、いままでのような諸法律とは違って、これこそ実質的な力を伴った法律として世に益しよう、世間の期待にこたえようとなさっておられるのか、それらの見込みをひとつこの際お示しを願いたい。
#14
○坪川国務大臣 金丸委員御指摘になりましたごとく、これらの仕事をいたす場合における四十四年度の予算措置といたしましては、一応四億を配慮いたしておるような次第でございますが、われわれといたしましては、この法の制定をいただきました上は、少なくともこれらに対するところの完全な措置を危険度の多いところからやってまいりたい、こういうような非常な熱意を持っておりますので、四十五年度の予算編成に際しましては、八月からその作業をいたしますが、われわれといたしましては、もっと意欲を燃やすことは当然でございますが、実施上の予算拡大には最大な力を注ぎまして、現在の四十四年度の時点においては、一応全国百カ所を目安にいたしまして、最も危険度の多いところに対する施策の万全を期しつつ、四十五年度から全力をあげてこれらの解消に最善の努力をいたす覚悟でございます。
#15
○金丸(徳)委員 くどいようですけれども、よほど力を入れませんと、先ほど申しましたように、ますますその危険度にあとから追いかけられる。むしろ、七千四百カ所が、三年たって、ある程度工事はしたけれども、一万五千カ所にふえてしまったというようなことをおそれるものですし、もし、いままでわが国における最大の政策上の、国策上の欠陥がありとしますならば、国土の保全に対する力が足りなさ過ぎたということであろうと私は極言したいように思うものですから、その他の条件がよくなって、いい国だという、その裏づけを国土保全の上においてお示しが願いたい。その一つの方法、一つの促進剤になるという意味において、私は本法の実施に非常な期待を持っておるものですから、あえてくどくお伺いいたしたようなわけであります。
 そこで、法律の中に入って一、二点心配になるところをお伺いいたしたいのでありますが、この法律によりまして、第七条でありますか八条でありますか、個人の所有地に対して、作為もしくは不作為の義務を課しておるようであります。私はこの法律を読みながらふと心配になったことでありますが、およそわが国における急傾斜地、それもここで取り上げなければならないような危険にさらされておる、天災に弱いところの急傾斜地の所有者というものは、作為、不作為の義務を履行するだけのその土地からの収益なり利益というものをなかなかあげがたいような状況に置かれておることは、私がここで詳しく申し上げるまでもないことと思うのであります。そうなりますと、この法律施行によりまして、やっかいものと言ってはいけませんけれども、近ごろは山の中の人口が減るくらい、山の中に産業が興らない、生活は不安定だという状況におきましては、そうでなくてさえもやっかいものになりがちな土地の上に、さらにいろいろこの法律における義務を課せられる、あるいは権利を制限されるというような事態が起こりまして、これは少し困ることになりはしないかと思うのであります。そういうことに対しまして、何らか私権保護の立場からいたしましての考慮が払われておるかどうか、その点をひとつ御解明が願いたい。
#16
○坂野政府委員 先生御指摘のように、急傾斜地の崩壊が非常に危険な地域につきましては、第七条で行為の制限をいたしておるわけでございます。そういう行為をすることによって急傾斜地の崩壊の危険があるということにつきましては、これは尊い人命を守るためでございますので、必要最小限度のものはこの法律の中にうたっておるわけであります。しかし、特に軽易なようなものはこの中に入れないということで断わり書きがついておりますし、それから第九条には、土地の保全という立場から、これはいわゆる法律的な義務ではございませんが、努力義務を課しておりまして、そして崩壊が生じないように、土地の所有者とか管理者とか、あるいは占有者等につきましては、そういう訓示的な立場から、ぜひひとつ守ってもらいたいということと、また別に、今度は被害のほうの立場から申しますと、被害者がやはり自衛上の見地から自分自身を守っていただくというような、これもそういった努力義務というものを課しているわけでございます。それでも確かに急傾斜地の崩壊によって被害を受けるような問題につきましては、改造といった防災工事を施行するとか、あるいは場合によっては家屋の移転というような、そういう問題も含めて勧告ということを考えているわけでございます。
 それから第十条に改善命令ということでうたっておりますが、これは主として急傾斜地崩壊危険区域として指定する以前においていろいろな制限行為が行なわれておって、そのためにどうも非常に危険である、これは放置できないというようなことにつきましては、相当な条件を付して、必要やむを得ないものに限ってそういった防災工事の施行を命ずるということに、相当限定いたしておるわけでございますが、確かに急傾斜の危険なところに住んでおられる方は、何といいますか、自分自身を守る社会的な責任があるのじゃないかという立場で、そういうぐあいに最小限にしぼっております。また、個人ではどうしても防災工事が施行できない、昔から自然がけであったものが、そのままに放置するとあぶないというような場合につきましては、個人では財政的にも経済的にも非常にむずかしい、あるいは社会的に見てそういうものは不公平であるという場合には、都道府県自体がみずから防災工事を実施するということを規定しているわけでございます。相当私権の制限という立場はございますけれども、できるだけひとつ厳格な制限のもとで運用してまいるという考え方で法律はできておるわけでございます。
#17
○金丸(徳)委員 他人の生命を守るためだから、この程度の努力は社会的に見てもよかろうじゃないかというような考え方に立っての立法のように思えるのであります。法制局から来てもらっております。こういうような立法のしかたというものは、他にたくさんあるのですかどうかということと、それからもう一つ、先ほども申しましたように、急傾斜地というものは、平地における土地と違って、上下左右に非常にデリケートな関連性を持っておるのです。平地においては隣の土地がどうあろうと、それほど生命、財産に関係があるとも思えない。しかしながら、急傾斜地においては、上のほうの条件で影響を受けることもありましょうし、その土地の状況によって下流にたいへんな災害を及ぼすということもあるわけで、右、左も同じであります。そういうような特殊な地帯において、一般の土地所有者と同じような制限なりあるいは受忍義務を課してよろしいかどうか、これは全体的にいって何となしに酷に思うのでありますが、もしそれが状況上やむを得ないとするならば、何らかの方法においてこれを補償するとか、何か講じられなければならないようにも思うのであります。これは法制局のほうとしてはどういうような御見解に立っておられるか。
#18
○田中(康)政府委員 まず最初の御質問の、ほかにもそういう例があるかということでございますが、ございまして、河川法の二十六条、二十七条、五十五条というように、河川区域内の土地なんかにつきまして同じような許可を要することとして、不許可の場合には、補償しないで一定の工事を制限してしまうということがあります。それ以外にも、砂防法の四条、地すべり等防止法の十八条、四十二条、道路法三十二条、宅地造成法八条、調べますと、いろいろございます。
 そこで、一般的に私権を制限いたします場合に、補償しないで私権の制限ができるかということが疑問になるかと思いますが、私たちが従来考えておりますのは、その私権に内在する当然の制約として、法律がこういうことをしてはいけないということを書く場合には、補償は要らない。すなわち、先ほど河川局長から申しましたが、社会的に見て当然その程度の義務をこうむることは受忍すべき限度内であると考えられる場合には、その制限をいたしましても、補償をしなくてもよろしい、こういうように憲法の解釈上なっておりまして、これは最高裁の判例でも認められております。
 ところで、この急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の急傾斜地につきまして、いまお述べになりましたような制限を課することが、それが社会的に見て通常受忍すべき範囲内であるかどうかということに相なるかと思いますが、私の見解――これは法制局の見解でございますが、この法律によります制限をすることによって受ける利益は、まさに急傾斜地の崩壊による災害から国民の生命を保護するためにいま言ったような制限を課する、これは一条の目的にも書いてございますが、そういう大きな目的でしておるということと、それから、それによってこうむります所有者の制限は、先ほど河川局長がいろいろ申しましたように、そう非常にひどい制限を課しておるわけではなくて、相当の範囲内における制限を課しておるということとあわせ考えまして、私たちといたしましては、まさに社会的に所有者が受忍すべき範囲内の制限である、このように考えたわけであります。
 なお念のために申し上げますが、確かに、急傾斜地は、平地と違いまして、及ぼすべき範囲が広いということは、おそらく災害防止のためにする工事が金がかかることが多いのではないかという御質問だと思うのであります。その点につきましては、私も先生と同感でございますが、ただ、憲法の上から見ますると、そういうものは、無資力者であろうと有資力者であろうと、やはり一律に受忍すべき範囲内のものでありまして、無資力者についてそういうことを考えなければいけないとすれば、むしろそれはやはり国なり地方公共団体なりが別途の施策を講ずべきではないか、かように考える次第であります。
#19
○金丸(徳)委員 別途に施策を講ずべきであるということであれば、それにたよる以外にはない。ただ、この法律がこれは生命を守るということに限定して立法されておりますけれども、これでは足りないことはもう御承知のとおり。生命だけを守ればいいということではなくて、やがてそれが足りたときには、次には他人の財産の保護にまで及ばなければ、ほんとうに完ぺきなものではないと私は思う。そういう意味におきまして、そのときにはどうなるであろうかということを心配いたします。
 もう一つは、他人の生命には関係ないが、公共の不安を除去するとか災害を防止するという意味においても、かなり役立つ場合において、土地所有者のみに損害をかけるとか、あるいはその損害を引き受けるのがあたりまえだという考えに立っておると、急傾斜地だけに何か気の毒ではなかろうか、こう思うのです。これはいまの私の感覚なんです。もし、将来、大臣がおっしゃるように日本の国土の平均的開発が行なわれまして、平地や都会と同じように山の中にもりっぱな国土の状態が現出された場合においては、こういう心配はいたさなくともよろしいと思う。それとは逆に、平地や都会がぐんぐんと発展していくのに比べて、山地、特に急傾斜地帯は、人口は減ってくる、産業は衰微する、捨てておかれるような状況の中において、その土地の所有者に向かってさらに泣きつらにハチがさすような状況であっては、管理の上からいってもまずいのじゃないかと思いますから、念を押したのであります。何らかの対策を講じなければならないであろうというお答えで一応私はおさめます。ということは、時間が足りなくなりますから――今後よほど政治的におきましても法律的におきましても御検討願っておかなければならぬことだと思うのです。
 もう一点だけ自治省にお伺いをいたすのであります。
 この法律の施行によりまして、都道府県はかなり負担が増すように思われます。指定されたところの工事については、国は二分の一以下は負担するけれども、その他のものについては、受益者あるいは都道府県なりが負担する、そしてまた、個人が負担できないようなところは関係町村が負担するというようにも受け取れます。そこで、いままでそういう指定がない場合においてはよかったかもしれませんけれども、今度指定されますと、その指定地を受け持っておるところの地方団体は、それだけ当然工事費が増してまいります。基準財政需要額が増してきはせぬかと思うのです。そういう意味において、どのような御用意をなさっておられるか。
#20
○首藤説明員 御指摘のとおりでございます。この事業につきましては受益者負担の制度もございますが、自余のものにつきましては国が半分、府県が半分、こういうのが一応の負担区分に相なっております。金額もまたふえてまいっておりますので、当該地方負担については適切な財源措置をする心要がある、このように私ども考えております。具体的には、四十四年度は、この負担に対しましては、県に対して地方債と交付税の基準財政需要額の増加をもちまして的確に措置をする、こういう考え方でございまして、大体地方債は地方負担の約四割程度、それから残りの六割程度は、これは河川費の中に事業費補正という特別の措置を講じますが、それによって需要算定をいたすつもりでございます。
#21
○金丸(徳)委員 念のためにお伺いをいたすのでありますが、地方交付税の算定にあたりまして、従来とかく人的要素が重視されておって、地況的要素といいますか、地質的要素といいますか、端的に言いますと、山地あるいは山の状況というものがあまり強く問題にされてなかったように思うのであります。そういうことが、とかく、山つき町村の財政をして貧窮ならしめる原因の一つとも受けとれておったのでありますが、交付税の算定にあたりましてはこれをどのように改善されつつあるのか、また、こうした国土の状況にかんがみまして、今後どのような御処理をなさるおつもりなのか、お考えのほどをここでお示し願いたい。
#22
○首藤説明員 御指摘のように、従前、地方交付税の基準財政需要額の算定は、ともすれば財源不足等の問題もございまして、地方団体の静止的な行政――静かなると申しますか、動いていない行政、そういうものに関する需要の義務的な経費の算定、これが中心になっておったのでございます。ただいまのような時勢に相なりますと、もう少し動態的な建設事業に対する算定を強化すべきである、このように私ども考えておるわけでございまして、本年度の改正から、単位費用の中で特に投資的経費、これを分けまして充実をするという措置をとっておるわけでございます。ただいま申し上げました地方交付税の方法等はその一例でございまして、その方法によりまして実際の地方負担額が的確に算入される、こういう分野がぐっと広まってまいっております。これはその一つの例であろうと思います。
#23
○金丸(徳)委員 お考えのようなことはよくわかる。敬意を表したいのですけれども、実質的にどういうことになりましょうか。それは計算に入っているのだ、こういう御説明だけであって、実際のさいふがふくらまぬと、市町村長におきましても、あるいは都道府県――都はどうか知りませんけれども、道府県知事などは非常に困りはしないか、こう思うのであります。そこで、こういう急傾斜地の崩壊に対する国の特別施策が強力に進められるというこの機会をつかまえまして、自治省としては、いままでとかく財政その他の関係上見て見ないふりをしておったかもしれないような山つき地帯に対して、その分まであたたかい目をもってそろばんをはじいてもらわなければなるまい、こう私は思うものだから、あえてお伺いをいたしておるのであります。具体的には、こういうものに対して、たとえば地方団体が半分負担をするという場合に、全額これを見てやるというような腹づもりがあるのかどうか、その全額のうちのある部分は地方債によってやるとか、あるいはどうとかいうような、何となしにみみっちいことをされておりますと、またこの法律がせっかく仏つくって魂入れない結果をもたらしはしないかと思います。むしろ、これに指定されることにきん然と進んで同意するような、地方団体の協力を得るといいますか、そうした意欲を巻き起こすような対策が自治省としても裏づけされなければならないと思う。どうでありますか。
#24
○首藤説明員 ただいま申し上げましたように、この法律に基づきます施行事業の裏負担――地方団体の負担分でございます。これをそっくりそのままつかみ上げまして、これをただいま申し上げましたような事業費補正の対象として財源措置をする、それを河川費の基準財政需要額の中に織り込む、こういうことでございます。交付税では裏負担の六割を盛り込みまして、それから残りの四割は地方債でもって措置をする、したがって、両方で地方負担は完全に財源措置が具体的にされる、そういうことを申し上げておるわけでございます。
#25
○金丸(徳)委員 先ほど建設大臣の御説明もありましたように、来年度あたりからは相当なる腹づもりをもって、多額の予算で大事なおくれた仕事に取りかかってもらわなければならないという場合において、自治省方面におきましてもそれに対する十分なる協力体制をこしらえてもらわなければならぬということを痛感するものですから、御用意を願いたいということであります。
 私はちょうだいいたしました時間がだいぶ過ぎましたから、もう結論に入ります。
 このような法律が施行されることにつきましては、動機が動機でありますだけに、御説明がありましたように、広島あるいは岡山、その他新潟、山口もそうでありますが、各地において、思わざる災害を受けたというようなことでこの法律が急がれるという意味におきまして、私はむしろおそきに失したかの感さえもするのであります。したがって、繰り返すようでありますけれども、ただこの法律をつくったらそれで足りるということのないような態度、方針をもって、いままでのその他の法律の穴まで埋めるような形で進められることを私は期待いたします。とかく山の中は荒れがちでありますことは、私がここで申し上げるまでもございません。山の中に安心の状況をつくり出すという大国策の大きな実施という意味において、大臣の御決意を促したい。御決意を承って、私の質問を終わることといたします。
#26
○坪川国務大臣 この法案の御制定をいただくことによりましてわが国の国土保全の大きな基盤をつくることは、当然でございますけれども、従来これらの危険度の多い、すなわち生命、財産の危険度の多かった不幸な山間僻村の地、この不幸の顕著な地点に対しまして、御制定をいただきましたならば、直ちにこれらに対する諸施策をいたしましてそして万全を期しまして、基本的なこの不幸を除去いたすことこそ、重要な政治の課題であろう。いままで御指摘になりましたそれらの意見を十分そんたくいたしまして、建設省は十分真剣に取り組んでまいりたい覚悟でございますので、御了解願いたいと思います。
#27
○始関委員長 吉田之久君。
#28
○吉田(之)委員 急傾斜地法案につきまして、若干の御質問をいたしたいと思います。
 特に初めに、私は思うのでございますけれども、人間がこの社会で生きていくためには、いろいろな災害と戦い、かつこれを克服していかなければなりません。いずれの災害もたいへんおそろしいことばかりでございますけれども、特に、全く予告なしに、しかもきわめて不気味な、かつ決定的な犠牲をしいる最たる災害というものは、私は山津波だと思うのです。しかも、最近われわれの記憶になまなましいところでは、昭和四十二年の七月九日に西日本を襲いました集中豪雨によりまして、六甲山系や呉市など、あるいは長崎県下で非常に大きな被害が出ております。神戸で瞬間に七十五名あるいは呉市で百七十三名がとうとい犠牲になられた。こういうことを契機にいたしまして、かねてこの問題に対処しておられた建設省が、早急に急傾斜地法案をつくらなければならないということで鋭意努力されて今日に至りました点は、深く敬意を表したいと思うのです。しかし、しょせん、やはりこれほど深刻な災害に対する対処のしかたが、都道府県を軸としなければできないものかどうか、国みずからが直接全国各地にわたっていろいろと深刻な問題をかかえているこの種の対策に手を伸ばすことは、将来ともできないだろうかという点に一つの疑問を感ずるわけでございます。その点、大臣はいかがにお考えでございますか。
#29
○坪川国務大臣 吉田委員御指摘になりましたごとく、府県、地方自治体に依存するというそのうらみ、また、その非難あるいは誤解等もあることは私は承知いたしますが、しかし、基本的にこれらの問題点をとらえましていたす場合には、地方自治体の十分客観的なあらゆる状況資料、資材あるいは地理的条件等も十分やはりそんたくいたして国が適切な措置を講ぜなければならない。たとえば七千四百カ所ございますけれども、それらに対するところの人命、財産の上において最も危険な度合いからくる個所というものをやはり建設省自体の機関において調査し、それを資料といたしていくことも正しいかもわかりませんけれども、やはり自治体を通じてそれらの重要なる条件を判断いたす大きな資料といたしましては、やはり地方自治体との関連性、連絡が非常に必要であり、ことにこの法案が、避難体制の問題から、あるいはこれに関連する諸般の問題の措置を講ずる、いろいろ考えますときに、私は、そういうような点においては、国みずからの責任においてやることは当然でございますけれども、本質的な、総合的な、一貫的なる立場でいたすことは、万全を期する意味においては適当ではなかろうか、私はこう考えておる次第であります。
#30
○吉田(之)委員 まずは当初のすべり出しとしてはこの方法でやるよりほかにしかたがないと思いますけれども、しかし、将来はさらに国が直接責任を負ってやるという方向にまで進んでいくべきではないかという考え方をいたしますので、これは要望をいたしておきます。
 次に、はしょって具体的な各条項にわたって御質問をいたしたいと思うのですが、第七条を見ますと、いろいろと行為の制限について書かれております。同時に、この急傾斜地法案は、砂防法、地すべり等防止法、森林法等による行為と非常に重複いたしてまいります。また、該当地区の指定においても、重複して指定されるというように承っております。しかも、たとえば補助率等で効率のいいほうと申しますか、有利なほうを選択してよろしいという仕組みになっていると思うのです。実際これを実施していく都道府県あるいは地方自治体におきましては、その選択のしかた等で非常に事務的にむずかしい判断や繁雑な問題が出てくると思うのです。これもやむを得ないと思いますけれども、やがてはこうした関連した諸法案を一つにまとめて、こういうがけくずれと申しますか、山津波に対処していくという形になるべきではないかと思いますが、いかがでありますか。
#31
○坪川国務大臣 私は、その観点から一元化をはかるという事態をすみやかにいたすような適切な措置を講ずることは非常に必要である、こう考えております。
#32
○吉田(之)委員 次に、第八条の特に二項につきまして御質問をいたしたいと思うのです。これは必要な制限行為の措置をとらせようとする場合に、その命ずべき相手が判然としないという場合にはどうするかというようなことが書かれてあるわけであります。どうしても相手がはっきりしない場合は、そこに危険がある以上は、これは代執行をいたす以外にない。代執行するのはだれなのか、都道府県なのか、その辺のところを明確にしていただきたいことが一つ。
 それから、問題は、そういう相手がいない、したがって、まるがかえでこちらが全部やらなければならない、それならば、あと回しにしようかというふうな問題が実施面で出てきはしないかという点をわれわれは心配いたします。しかし問題は、金が要る、一〇〇%要る、あるいは若干向こうでいろいろと負担する、あるいは協力するという問題も重要ではございますけれども、そこにどんな危機があるのかということのほうが、はかられるべき尺度であると思いますので、実施の際には、相手が判然としない、代執行をしなければならない場合にも、優先順位をあと回しにしたりするようなことがないような指導をいたさなければならないと思うのです。その点の御配慮はいかがでございますか。
#33
○坂野政府委員 第八条は、先生の御承知のように、制限行為に対する違反的な問題を扱っているわけでございまして、御指摘のように、義務者の所在がどうもはっきりしないというような場合には、都道府県知事がこれの代執行に当たるということでございまして、もちろん、これは違反の状態でございますので、そういった余裕はございませんので、できるだけ早くそういった危険の度合いあるいは災害の起きた場合の災害の危険性というものを勘案いたしまして、即時早急に代執行をやっていくということにいたすわけでございます。
#34
○吉田(之)委員 制限行為の代執行というのは非常に新しいことだと思うのです。それだけに、いろいろと実施面においてむずかしいデリケートな面も生じてまいると思います。その点、格別の指導が必要であろうと思います。
 次に、第九条の問題ですが、第一項、いわゆる土地を所有している者に対しては、急傾斜地の崩壊が生ずるおそれがある場合には、それを予防するように所有者はつとめなければならないというふうに書いてございますが、それに対して非常に強い規定がない。罰則がない。いわば、かくあってほしいという訓示規定ないしは希望する程度の文言に受け取れるわけでございます。現状いたし方ないと思いますけれども、その場合に、ならば、それに応じていろいろと予防措置を講じようとするけれども、しかし、とりあえず持ち合わせの費用がないというふうな場合に、国や都道府県はどのような措置を講じようとするのかという問題が一つであります。
 第二項、今度は、そこで被害を受けるおそれのある人たち、急傾斜地の下なんかに住んでいる人たちが、その被害を軽減するために必要な措置を講ずるようにつとめなければならない、これも同じような規定だと思いますが、民法百九十九条の占有保全の訴えの規定によって、これを援用して処置していくというふうにわれわれは理解いたしたいのでございますけれども、この場合といえども、必要な経費が伴ないます。その辺の援助をどのように処置していくのかという問題でございます。
 以上、お尋ねいたします。
#35
○坂野政府委員 御質問の第一点は、九条の一項でございますが、一般的に土地の保全をはかるために、人工的な原因によって非常に崩壊するおそれがあるという問題は、それぞれ原因者に責任があるわけであります。自然的な問題につきましてはいろいろと学説が分かれているようでございますが、一応この法律におきましては、個人の私権というものをあまり制限しては困るという立場も考慮いたしまして、努力義務ということで、法的な義務ではございませんが、形式規定ということでうたっているわけでございます。
 それから第二点の御質問は、急傾斜地の崩壊による災害を防止するために必要があると認める場合におきましては、その土地の所有者、管理者あるいは占有者、それから制限行為を行なった者、あるいは被害を受けるおそれのある者等に対しましては、勧告をいたしまして、防止工事の施行あるいは家屋の移転ということをやるわけでございますが、その際におきましては、公庫法によりまして公庫の融資をもってこの救済措置を講ずるというぐあいに考えておる次第でございます。
#36
○吉田(之)委員 この急傾斜地に対しては、何としてもできるだけ早く予防する、また、その加害のおそれある所有者あるいは被害を受けるであろう住民、こういう人たちの協力を求めるということは最も大事だと思うのです。したがって、将来はこの条文などももう少し強い条文に書き改められるべきではないか。そのかわりに、いま局長が申されたいわゆる融資の問題あるいは援助、指導の方法、そのほうを強化していくということになることが私は最も理想的だと思うのです。この点も、将来にわたっての要望の意味で申し上げておきたいと思います。
 それから、第十条をずっと読ましていただきました。ずいぶん難解な文章でございました。一体何のことかよくわからないでいろいろ聞いてみましたら、要するに、悪質宅地業者をどのように規制し縛っていくかということのようでございます。大体法律というのはかくもむずかしく書かなければならないものかというふうに驚いているわけでございますが、同時に、そういう悪質宅地業者、これはもう今日社会問題となっております。天災によるだけではなしに、明らかに人災ではないか。もうけんがためにそういう業者がもたらしている社会的な犯罪被害というものは、非常に無視できないと思うのです。この業者などに対するこの法律上での処置はどのようにしようとするのか、御説明をいただきたいと思います。
#37
○坂野政府委員 この法律によりますと、まず新しく宅造をしようとする場合でございますが、それは第七条の第一項によりまして、先ほど出てまいりましたように、都道府県の知事の許可を受けさすということにいたしました。それに違反した場合には、第八条で必要な監督処分を行なって、これに従わないときには罰則を適用するということになっております。
 それから第十条でございますが、急傾斜地の崩壊危険区域の指定の以前に宅造等が行なわれているというような場合に、災害防止のために必要な場合には――九条の勧告は先ほど申し上げました。指定以前に行なわれた宅造であっても、災害防止のために必要な場合には勧告をする。しかし、十条でもって、それでもなおその危険がきわめて著しい、ほっておけないという場合には、十条の第二項によって改善命令を出すという、いわば三本立てになっておりまして、それに違反した場合の罰則の問題もございますし、また、十条の場合も行政代執行によって悪質な宅地業者を取り締まるということに相なっておるわけでございます。
#38
○吉田(之)委員 次に、第十二条でございますが、これは「制限行為に伴う急傾斜地の崩壊を防止するために必要な工事以外の工事」というのは、人工を加えていない自然がけのことをさすのでございますか。
 それから、ついでに質問しておきますが、その次のほうに「被害を受けるおそれのある者が施行することが困難又は不適当と認められるものを施行するものとする。」、この辺はどういう意味をさしておられるのか。また、もしもそれが一定額以上の工事費用を伴う工事であるという意味であるならば、その金額はどのくらいのもの以上をさそうとしているのかという質問であります。
#39
○坂野政府委員 第一点は、自然がけの場合でございます。
 第二点は、そこに抽象的に書いてございますが、急傾斜地の所有者、管理者もしくは占有者、あるいは今度は被害を受けるおそれのある者、いずれか、あるいは重複する場合がございますが、いずれかの者が考えまして、たとえばそこに家屋があったような場合に、移転の適地がない、しかも、災害を防止するための工事をするには非常に多額の経費を要する、あるいは技術的に見ても非常に困難である、あるいは社会的に見ても不公平である、たとえば自然がけがございまして、従来はどうにか急傾斜地がもっておった、しかし、自然現象の地震によってその急傾斜地が危険になってきた、そういうような場合には、社会的に見ても、その土地の所有者だとか、あるいはそこに住んでいて被害を受けるおそれのある者にそういう工事をやらすということは、不公平じゃないか、そういうような場合に限りまして、都道府県知事がみずから工事を施行するという立場でございますので、金額の制限というものはございませんが、ただ、防止工事をいたします工事の採択といたしましては、とりあえず緊急なものからやっておるわけでございますけれども、一カ所当たり五百万程度以上のものを採択いたしていくという考え方でございます。
#40
○吉田(之)委員 次に、二十一条でございますが、先ほど金丸委員もいろいろ質問の中で述べられておったとおりでございます。要するに、二分の一の国庫負担では将来非常に地方自治体が行き詰まってくるのではないか。特に、この急傾斜地をかかえている都道府県は、全国均一に同じ状態で存在しているわけではございません。各都道府県の立地条件によって大きく違います。また、地質、地形等によってもいろいろ異なります。こういうことを考える場合に、先ほど来いろいろな説明も承りましたけれども、将来この二分の一という補助率を三分の二などにだんだん上げていくことを主として考えられるか。それとも、まず二分の一なら二分の一で、できるだけ予算を大きくして、七千カ所の地域を一刻も早く手当てをしていくことに重点を注がれようとするか、どちらにウエートを置かれますか。
#41
○坪川国務大臣 私といたしましては、先ほどの御質問の前段にお答えいたしましたごとく、これのみの法律に依存をいたすということでなくして、緊急の措置といたしましてこの法案の制定を願いまして、最も危険度の多い個所に対する即効的な仕事をいたしますとともに、総合的な施策を講じまして、これら災害、不幸のなきよう措置を講ずる総合的な法律の制定も、私は必要であろうということを踏まえてまいりたい、こう思っております。財政的な措置、予算的な措置につきましては、私といたしましては、やはり十分国が財政援助をいたすようなことで、地元に対する負担の――ことにこうした地区は地形的に集中的なところが多いと考えますときに、それらに対する犠牲といいますか、負担を非常に重くするような措置は講じたくない、国においてなるべく措置を講ずるよう最善の予算措置を講じたいという方針で進めたい、こう思っております。
#42
○吉田(之)委員 二十三条に、都道府県は、この工事により著しく利益を受ける者がある場合には、費用の一部を負担させることができるとありますが、もっともな話だと思うのです。しかし、実際は、著しく利益を受けるという判定は非常にむずかしい問題が出てまいります。また、その負担金を取るということもなかなか困難な問題が出てまいります。もともと、私は、こういう地形によって生ずる急傾斜地の被害を食いとめていくという問題は、受益者負担金を的確に取っていくことは、初めから無理を承知でやられなければならない施策だと考えております。その点、将来末端で無理を生じないように、あるいはまた、こういう解釈のしかたによって各地各様の考え方が生じないように、よく指導をなされなければならないと思いますが、いかがでございますか。
#43
○坪川国務大臣 いま御指摘になりました点等につきましては、県条例によってそれぞれ措置を講じますが、その運営につきましては、御指摘になりました点のなきよう十分行政指導をいたしてまいりたい考えでございます。
#44
○吉田(之)委員 次に、四十七年までに約千カ所措置をしていきたいというふうに承っておりますが、七千カ所あるわけですね。個所の数だけでピッチを推しはかるわけには単純にまいらないと思いますが、普通考えますと、まず五年かかって千カ所やるとすれば、七千カ所やるには、五、七、三十五年、二十一世紀がやってくるころまでこれを一生懸命やってなければならないという計算になります。一体、現在のこの七千カ所、五戸以上の対象区域に対していつごろまでに完全に処置をしようとお考えになっておるのか、その構想をお聞かせいただきたい。
#45
○坪川国務大臣 千百カ所を対象としております地区は、三十戸以上を対象といたしております。七千四百カ所におけるところの人口を見ますと、大体五戸平均といいますか、五戸以下ということになります。しかし、われわれといたしましては、戸数の三十戸あるいは五戸以内というような数の問題ではないと思います。人間の少ない多いというよりも、一人の生命を守るということが政治の要諦であろうと考えます。いま、御承知のとおりに、百四十カ所を四十四年度にいたしております。昨年は大体百カ所いたしております。こういうようなことで、われわれといたしましては、さっきおっしゃったような総合的な措置も考慮に踏まえまして、さしあたりそれを助長し、四十七年度に及びますが、それまでにこれらのお気の毒なる個所に対しましてもわれわれはこれの適用をいたすような財政的な裏づけをもち、そうして行政指導もいたして、これらの個所の危険な人命、財産を守るような措置を十分配慮いたしてまいりたいと考えております。
#46
○吉田(之)委員 最後に、私が言おうとしておりましたことを大臣がおっしゃってくださったので、非常に心強く、また同意、同感を感じておる次第でございますが、実は五戸以上の問題が解決しても決してこの問題は解決したことにはならないのです。私なども山国の県の出身でありますが、大臣もおそらく山国をかかえていると思うわけであります。山に入りますと、ほとんど一軒ずつ建っておるのです。せいぜい二戸ずつぐらいが点在しておるのです。したがって、この急傾斜地法案ができましても、その地区は、うしろに山をかかえておって非常に危険にさらされながら、何ら措置されないで残るわけです。五人の命も一人の命も、五戸の問題も二月、二戸の問題も、その重要さにおいては何ら選ぶところがないと私は思うのです。したがって、こういう非常に点在している山間僻地特有の急傾斜地の危機を今後どのように解決していくかということを早急にあわせ検討されなければならないと思います。要望を付し、このことをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
#47
○坪川国務大臣 御承知のとおり、これのみに万能薬あるいは即効薬を期待いたすものではなくて、総合的な対策、言いかえまするならば、山間僻地の不幸なこれらに対する問題点として必ず関連してくることとして、奥地産業道路の問題、あるいは奥地の山村開発道路というような問題、あるいは小規模河川の問題その他いろいろな施策が総合的に必ず打ち出されなければならないし、当然これらの措置を講じなければならぬと考えておりますので、これによってあとのものを放置するというような姿勢でなくて、あらゆる建設行政の中にこれを踏まえましてこれらの危険個所に対する対応策を講じたい、こういうような方針で臨みたいと考えております。
#48
○吉田(之)委員 以上をもって私の質問を終わります。
#49
○始関委員長 北側義一君。
#50
○北側委員 上程されております急傾斜地法案につきまして質疑を進めてまいります。
 日本の国土というものは、平地が非常に少なくて、山が非常に多いわけです。そういう面で、だんだん都市化されていっている。このままでいきますと、昭和六十年には市街地人口が約八〇%というようにいわれております。そういう点から考えますと、非常に危険なそういう急傾斜地でも住居をかまえなければいけないような実態になっておるのが現在の状況ではないかというように私は思うわけなんです。一昨年の七月に起こりました神戸のがけくずれも、私、実は視察に行ってまいったわけでありますが、ああいう非惨な災害はもう二度と繰り返してはいけないと思うわけです。つきましては、先ほど述べておられたとおり、一昨年建設省の調査になった危険個所は約七千四百カ所といわれておるわけですが、その内容につきましてお伺いしたいと思います。
#51
○坂野政府委員 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたように、私のほうの昭和四十二年七月の調査では、人家が五戸以上の、著しい被害のおそれのあるもの、それから人家が五戸以下であっても、官公署、学校、病院等の公共的な建物に著しい被害を及ぼすおそれのあるもの、それから物理的には急傾斜地の傾斜の角度が三十度以上、それから急傾斜地の面積が一ヘクタール以上というようなものを対象にして調査をいたしました結果が、七千四百カ所でございます。もちろん、この場合には、地質の調査、あるいは表面の土の厚さだとか、それから地表水だとか、地下水だとか、そういうものも含めまして調べたわけでございまして、それでその分布状況を申し上げますと、市街地人口が三万人以上のものが一五%でございます。その他の都市にかかわるものが一五・七%、郡、市町村にかかわるものが六九%ということになっております。
 それから戸数でございますが、五十戸以上のものが約七百八十カ所ばかり、三十戸ないし四十九戸のものが八百十三カ所、それから三十戸以下のものが五千七百四十カ所というぐあいになっております。
#52
○北側委員 大体調査されたこの中で、特に大事なのは――これは全部大事なんですが、その中でも特に緊急にやらなければいけないような個所は大体どれくらいあるのですか。
#53
○坂野政府委員 これは、先ほどお話がございましたように、約千百カ所でございます。
#54
○北側委員 先ほどの大臣の答弁を聞きますと、ことしの予算として、一応事業費が八億、それから国費が四億ですね、約百カ所、そのほかこれは継続も入っておるのですか。――そうしますと、あと少なくとも九百から千は残っておる、このようになるわけですね。そういう点で、もう神戸、広島のような、そういう災害がまたいつ起こるかわからない、そういう個所がずいぶん残っておるということにつきまして非常に心配なわけなんです。いままで、四十二年、四十三年のやられた実績は大体どうなっておりますか。
#55
○坂野政府委員 申し上げます。
 四十二年度が三十六カ所実施いたしております。その中で完成したものが十カ所でございます。それから四十三年度が九十六カ所実施いたしました。完成したものが三十七カ所でございます。四十四年度が、先ほどお話がありましたように、百四十カ所予定いたしております。少なくとも五十カ所は完成いたしたいというぐあいに考えております。そういたしますと、四十四年度に百カ所近く完成を見るということでございます。
#56
○北側委員 先ほど申しましたとおり、たとえばこの事業費の経過を見ますと、四十二年に事業費が二億、国費が一億、四十三年が事業費が六億、国費が三億、それから四十四年が事業費が八億、国費が四億、このようになっておるわけです。ここで思うのは、前年度に対しての予算額の比率の伸び、これは非常に少ないように思うのです。そういう危険個所、非常に緊急にやらなければいけない個所も約千カ所近くある、このようにお聞きしておりますので、そういう面から見ると、この予算額は少し少ないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、大臣、これはどうですか。
#57
○坪川国務大臣 御承知のとおりに、いままで措置を講じてまいりました施策は、この法的な裏づけを持った施策でないというようなことからくる――あらゆる総合措置を講ずる、たとえは、移転の場合の家屋の融資とかあるいは避難体制、それらへの措置とか、あるいは有害行為の規制とか、いろいろございますので、単なる予算の数のみによってこれをいまの時点において認定するということは――この法的な措置を裏づけさせていただきました後においてこれらの問題を十分解明いたして、それぞれ適正な措置を講じたい、こう考えております。
#58
○北側委員 この表によりますと、非常に危険な個所というのは、やはり一つの府県に非常に危険な個所が多いのじゃないか、このように思うわけなんです。たとえば三重県の場合ですと、五十戸以上六十五カ所、兵庫県の場合も三十五カ所、このようになっておりますね。広島の場合は百カ所、このように集中的にそういう危険個所があるということは、やはりその地方公共団体がどうしても二分の一の事業費を出さなければいけない、そういう点で、危険度の多いところからはやっていくでしょうが、どうしても予算その他の関係で、都道府県のほうも、そういう問題について、危険度のあるところも、そのままあと回しにされるようなそういう危険性がないか、このように心配するのですが、それはどうですか。
#59
○坂野政府委員 確かに先生の御指摘のように、私どもの調査では、県によって相当な危険個所のアンバランスがございます。しかし、私どもは、アンバランスがございますけれども、工事を実施します場合には、やはり危険性の度合いというものを重点にいたしまして、それから当面、やはり人家の戸数の多いものということを対象にいたしますので、そういった対象の地域は必ずしもこの全体には比例いたしておらぬかと思いますけれども、いずれにいたしましても、二分の一はやはり府県以下の負担でございますので、先ほど自治省からもお話がございましたが、裏負担の二分の一につきましては、県のほうに対する地方財政の面とあわせてひとつ総合的に考えてまいりたいということで、私ども、そういった面につきましては、今後とも大蔵省、自治省とも事務的に十分話を詰めて協議しながらやってまいりたいというぐあいに思います。
#60
○北側委員 私たちが心配するのは、そのように非常に多い府県、こういうところが、予算の関係て――建設省としてはそれを指定しても、やはりどうしても予算の関係があるのじゃないかと思うのですよ。そういう点で心配なわけなんです。そういう点は、よく建設省のほうで調査していただいて、特に危険度の多いところ、そういうところについては、本来ならば、財政的にも措置を講じてもらうのが一番ありがたいわけなんです。しかし、その問題につきましては、これは二分の一と一応きまってありますので、そんなに多くするような答弁はいただけないと思いますが、ひとつそういう危険個所の事業の推進、これだけは特に力を入れてやっていただきたいと思うのです。そうしなければ、また同じ二の舞いを繰り返すようでは、せっかくこの法案ができても私は何にもならないと思いますので、その点ひとつお願いしておきたいと思います。
 それから、この急傾斜地の崩壊が四十二年度はずいぶん起こったわけです。これはたとえば都市化とか、そういういろいろな問題の原因はあろうと思うのですが、そのほかにその原因は何かありますか。
#61
○坂野政府委員 これは先ほど御議論がございましたように、特に急傾斜地の崩壊がふえたというはっきりした数字的なあれはございませんけれども、最近、気象的な条件といたしまして、御承知のように非常に局地的な集中豪雨というのがふえております。したがいまして、最近は、中小河川の災害だとか、あるいは山地にいたしましても、広い地域ではなくして、局地的なそういった急傾斜地の被害というものが非常にふえておるわけでございます。一つは、そういった気象的な条件も最近どうも変貌してきたのじゃないかということが考えられますのと、やはり人口の稠密度によって、がけ下に住む人家の数もふえてきたというような傾向と、両方相重なってこういった急傾斜地の崩壊による被害というものが増大してまいったというぐあいに私どもは考えております。
#62
○北側委員 次に、この法律案の規定するところの急傾斜地の崩壊危険区域の指定、必要に応じて砂防法その他の法律の規定に基づいて指定された区域と重複して行なう、このようになっておるわけです。まず、この場合において、この急傾斜地の法律案及び他の法律に規定する措置で重複するものがあれば、その他の法律に規定する措置が適用される、このように私たちは解釈しておるわけですが、こういう二重指定をやることによってこれはどういう実益があるのですか。
#63
○坂野政府委員 お答えいたします。
 従来の急傾斜地の崩壊の防止は、宅造等の規制法、砂防法、地すべり防止法等、先生おっしゃるようにございまして、それぞれの目的の範囲内で行なわれておったわけでございますが、宅造等の規制法は、宅造という特定の行為を規制しております。防災工事の施行だとか、あるいは警戒避難体制の整備とかは、その中にうたっておりません。砂防法ではまた、主として治水上の見地から砂防を実施しているわけでございますけれども、それも同じく、警戒避難体制の整備だとか、あるいは移転する場合の公庫の融資等の措置もございませんし、地すべり防止法も、同じように特定の地すべり現象というものを対象にしてやっておりますけれども、行為制限と地すべり防止工事の施行あるいは公庫の融資はございますが、警戒避難体制の整備だとか、あるいは災害危険区域の指定というような措置はございません。それからまた、森林法では、森林の保続培養の見地から、行為の規制と治山工事というものはございますけれども、警戒避難体制の整備とか公庫の融資は講ぜられておりません。このように、既存の法令では急傾斜地の総合的な対策としては不十分でございますので、そういう観点から、重複指定をいたしまして、そして従来の法律でできないようなそういった総合的な施策をこの法律によってやってまいりたい、そういう趣旨で重複指定は有効だと考えております。
#64
○北側委員 では次に、急傾斜地の崩壊防止区域内の土地の所有者は、崩壊の生じないようにその土地の維持管理につとめなければならない、このようになっておるわけです。ところが、その義務違反に対する罰則がないわけですが、これはどうなっておるのですか。
#65
○坂野政府委員 崩壊の危険のある土地の所有者は、民事上、被害を受けるおそれのある者の請求によって、崩壊の事前防止の措置とか、あるいは損害賠償の担保をしなければならないと考えるわけでありますが、崩壊のおそれが、いわゆる自然現象に基づくもので、そういった急傾斜地の所有者等に責任があるということが考えられない場合の本条の適用につきましては、法律的な学説がいろいろ分かれておって、見解も一致していないようでございます。このような崩壊のおそれのある土地の所有者の法律上の義務の内容でございますので、本法案の九条も努力義務だけを規定して、そういったバランス上からいいましても、その違反に対して罰則を設けることはいたさなかったわけでございます。
#66
○北側委員 そういう場合、たとえば急傾斜地の崩壊によって神戸のような多大な人命に対する、また財産に対する被害が生じた、そういう場合に、国としてはそれに対する何らの方法も講じないわけですか。たとえばいろいろな賠償問題とか、そういう問題について、これからもそういうことがあっては困るわけですが、そういう場合どうなんですか。
#67
○坂野政府委員 先ほど申し上げましたように、国に責任がございませんので、そういう意味の賠償はやらないわけでございます。
#68
○北側委員 そういう面で、やはりそういう危険性のある個所がずいぶんあるというわけですね。そういう場所を早くやらなければいけない、このようになってくるのではないかと思うのです。たとえば、被害が大きければ大きいほど、その急傾斜地の所有者も賠償能力がない、こういうことも考えられるわけです。やはりそういう状況のところに対しては、国の施策として早く措置を講じてもらいたい、このように思うわけなんです。
 それから、先ほども少しお伺いしたのですが、現在緊急措置を講じなければいけない、そういう個所の一番多い都道府県はどこなんですか。
#69
○坂野政府委員 兵庫県でございます。
#70
○北側委員 概略ずっと言うてもらえませんか。
#71
○坂野政府委員 申し上げます。
 兵庫県、三重県、広島県、熊本県、宮崎県、和歌山県という順序でございます。
#72
○北側委員 たとえば、兵庫県、それから三重県、和歌山県ですね、ここらの例で、本年のあれで大体何カ所くらいあるのですか。
#73
○坂野政府委員 三重県が五カ所。あと多い順序に申し上げます。兵庫県が六カ所、富山、石川、岐阜、福井、和歌山が四カ所。多いところはそういうところでございます。
#74
○北側委員 わりかた多いところの平均もそういうようになっておるのですが、先ほども少し申したとおり、そういう個所が非常に多いわけですが、この個所をきめられたのは、どういう基準できめられたか。これは当然、緊急に措置を講じなければいけない、そういう場所をきめられたものですが、これについて、自後、神戸とか、ああいう非常に大きな被害が出ることのないように、はっきりした危険個所、そういうところはきちんとやっておいてもらいたいと思うのです。
 その急傾斜地の崩壊、これは地方公共団体の県知事あたりがこの問題について事務を進めていくのか、それとも国の事務でこれをやっていくのか、これはどうですか。
#75
○坂野政府委員 これは、先ほど申し上げましたように、都道府県知事が、防災工事の条件に適合するものがありますと、それに基づきまして防災工事をやることにいたしまして、国はこれに対して二分の一の補助をいたすというぐあいにいたしております。
#76
○北側委員 そうすると、危険個所というのはあくまでも都道府県がきめるわけですか。
#77
○坂野政府委員 都道府県知事が指定をいたします。
#78
○北側委員 それをさっきから私言うておるわけなんです。少ない場所があるのですから、やはり危険な場所の多いところを先にやらなければいけない、私はこう思うわけなんです。平均同じようにそういう危険個所があるのだったら、何も言わないのです。その点を私はさっきから申し上げておるわけです。それをお聞きしたわけなんです。やはり危険個所からやっていくのが順当じゃないかと思うのです。たとえば、ある都道府県の県知事から申請がある、その場合も、危険個所の多い場所は、どうしても予算の関係である程度削ってくると思うのですよ。そういう心配があるから、建設省でそういう危険な場所をたくさんかかえておる都道府県に対しては何らかの手を打たなければいけないのではないか、このように私はさっきから言っておるわけなんですよ。大臣、これはどうでしょうかね。
#79
○坪川国務大臣 これらの措置あるいは指定いたすような問題につきましては、非常に重要な問題でございます。したがいまして、県知事は絶えず建設省の地方建設局あるいは土木出張所、工事事務所等と連絡いたしまして、これらの、御指摘になりましたような点で不均衡のないような措置を行政指導の上においてとることを御了承願いたいと思います。
#80
○始関委員長 北側君、時間の点がございますから、簡潔にお願いします。
#81
○北側委員 では、法案の第七条第一項の最後のほうに、「政令で定めるその他の行為については、この限りでない。」このようにあるわけです。その「その他の行為」とはどういうことでしょうか。
#82
○坂野政府委員 これは、第一点は、砂防とか地すべり等、他の法令で許可を受けたもの、それから第二点は、いろいろございますが、要するに、軽微なるものについてはこれを除外するというぐあいに考えております。
#83
○北側委員 また、同条の「誘発するおそれのある行為で政令で定めるもの」とは、これは何をさしておるわけですか。
#84
○坂野政府委員 これはさしあたっていま予想できないわけでございます。したがいまして、政令を制定することは現在考えておりませんが、将来必要があろうということで、条文にうたったわけでございます。
#85
○北側委員 時間をせいておられるようですから、一応これで終わりますが、この問題で一番大事なことは何かといいますと、結局、先ほど私申しました点と、やはり二分の一のいわゆる国の補助、この点にあろうと思うのです。これをやはり建設大臣はよく目を通していただいて、そうして再びあのような危険な事故がないように――その順序というものを間違うと、これは非常に問題になろうと思うのです。予算化の問題も、これはそう一挙に予算化するわけにいかないから、一応本年は百カ所、このようになっておろうと思うのです。しかし、いずれにいたしましても、千カ所あるということは、それに対する対策、千カ所設けなければいけないということですから、これに対しては、このような法案を提出された以上は、やはりその法の趣旨に沿ってもういう事故がなくなる、このようにやらなければ何にもならないと思うのです。その点、最後に建設大臣の意見をお聞きしたい。
#86
○坪川国務大臣 先ほどから金丸委員、吉田委員、また北側委員の御指摘になりましたこの共通した重要な問題につきましては、建設省といたしましては最善の措置を講じまして国土の保全と人命、財産の守りをいたしたい、こう考えております。
#87
○始関委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#88
○始関委員長 これより討論に入るのが順序でありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#89
○始関委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)
 おはかりいたします。
 ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#90
○始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#91
○始関委員 長次回は、来たる五月七日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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